創造性のマネジメント

Technology Marketing
第12回 創造性のマネジメント
山口大学 大学院 技術経営研究科・副研究科長・教授 福代和宏
Creative Thinking Process Model
Robert C. Muller, AI & Soc. (1993) 7: 4 – 39
2
(c) Prof. Kazuhiro FUKUYO, PhD, 2013
Creative Thinking Process Model
Motivation
Thorny problem
Creative thinking process
Interim creations
Final creation
Primed mind
Influences







3







動機
厄介な問題
創造的な思考プロセス
中間段階の解決策
最終段階の解決策
待ち受ける精神
影響
(c) Prof. Kazuhiro FUKUYO, PhD, 2013
創造性のマネジメント
論理
発想法
環境
思考
力
創造
性
Amabile (1998)
知識
動機
創造性の構成要素をマネジメントする
4
(c) Prof. Kazuhiro FUKUYO, PhD, 2013
経験
学習
発想法からのアプローチ
ブレーンストーミング(Osborn, 1953)


自由な発想
形態分析法(Zwicky, 1957)


プロパティとディメンジョンの変更
シナクティクス(Gordon, 1961)


アナロジー
KJ法(川喜多, 1965)


5
アイデアのグルーピング
(c) Prof. Kazuhiro FUKUYO, PhD, 2013
発想法批判
創造性を誘発するのに、設計者にとって一連のテクニッ
ク(中身は空だ)よりも大切なのは、現行の実際のやり方
と製品についての知識、そして、技術プロジェクトや工業
プラントの現場での観察を通じて得られた、直接の体験
に基づく知識と洞察を蓄積していくことである

E. S. ファーガソン『技術屋の眼』
6
(c) Prof. Kazuhiro FUKUYO, PhD, 2013
社会心理学的アプローチ
Amabile(1983)の指摘




興味ある課題では創造性が強化される
金銭的報酬を与えると創造性を低める
他人の存在は創造性を低める
Roberts(1999)の指摘



組織構成員は固定化せず、多様化が必要
マーケティングと研究開発部門の協同が必要
丹羽(2006)の指摘


7
革新のためには計画と実施の分離が必要
(c) Prof. Kazuhiro FUKUYO, PhD, 2013
模倣が創造性の源
模倣は独創の母。唯一人の母である(小林秀雄「モオ
ツァルト」)
工学における模倣: リバースエンジニアリング




8
機械を分解したり、製品の動作を観察したり、ソフトウェアの
動作を解析するなどして、製品の構造を分析し、そこから製造
方法や動作原理、設計図、ソースコードなどを調査すること
(Wikipedia)
市販品などの秘密保持契約(NDA)なしで合法的に入手でき
る製品についてリバースエンジニアリングを行うことは合法
(c) Prof. Kazuhiro FUKUYO, PhD, 2013
レオナルド・ダ・ヴィンチの
経験・観察主義
才能を増進し覚醒させて各種の趣向を思いつかせる一
方法(中略)
君がさまざまなしみやいろいろな石の混入で汚れた壁を
眺める場合、もしある情景を思い浮かべさえすれば、そ
こにさまざまな形の山々や河川や岩石や樹木や平原や
大渓谷や丘陵に飾られた各種の風景に似たものを見る
ことができるだろう。(中略)
この種の石混りの壁の上には、その響の中に君の想像
するかぎりのあらゆる名前や単語が見出される鐘の音
のようなことがおこるのである。
上巻 p. 213



9
(c) Prof. Kazuhiro FUKUYO, PhD, 2013
Dean Kamenの体験主義



セグウェイの発明者
「私は自分では、二人(エジソンとテスラ)のうちではエジ
ソンに近いのではないかと思います。不器用ですし。実
際に手を汚してあれこれ試してみないと正解にたどりつ
かないんです。(中略)私のような不器用な人間は、既存
の道具や技術をひねり回して、何かが生まれるのを待つ
しかないんです。」
「王子様になりそうもないカエルにも、たくさんキスをしろ、
ということです」
Make:02、オライリー・ジャパン、pp. 18 - 33
10
(c) Prof. Kazuhiro FUKUYO, PhD, 2013
体験主義
MITのチャレンジ




体験主義の重要性
将来、「工業の個人化
(Personal fabrication)」が
起きるという予想
MITがFabrication
Laboratoryを設置
レーザーカッター、NCフラ
イス盤などを準備
学生に自由に工作をさせ
る
11

ITが急速に進化したのは、
手元でプログラミングから実
行までいろいろ試すことが
できるからではないか?

一方でその他の理工学分
野は装置依存性が大きく
なっているので、試行錯誤
体験が少なくなり、成長しに
くくなっているのでは?
(c) Prof. Kazuhiro FUKUYO, PhD, 2013
エジソンによる白熱灯の発明

既存の技術


白熱灯



ガス灯、アーク灯
1802年、デーヴィによる原理発見
エジソン以前に20名もの発明家
エジソンの発明の新しさ、優位性はどこにあるか?
12
(c) Prof. Kazuhiro FUKUYO, PhD, 2013
スワンによる白熱灯の発明



Sir Joseph Wilson Swan
イギリスの物理学者、電気技師
1860年




1875年



炭化した紙をフィラメントとして使用
不十分な真空度
弱い電源
真空度の向上
炭化した糸をフィラメントとして使用
1878年

13
白熱灯を完成
(c) Prof. Kazuhiro FUKUYO, PhD, 2013
エジソンの発明の特徴




オームの法則の理解
徹底した素材検討
システム思考
発明のシステム化
14
(c) Prof. Kazuhiro FUKUYO, PhD, 2013
オームの法則の理解

電圧=抵抗×電流 (E = RI)





ゲオルク・オーム(1826)
電力=電圧×電流 (P = EI = RI^2)
10A×10Vのランプと1A×100Vのランプは同じエネル
ギー(電力)を消費する
しかるに、前者は後者よりも100倍の銅線用材料を必要
とする。
「われわれは電流を大きくしなければならないと思ったが、
エジソンは電圧を高めようとした」(ジェール『メンロー
パークの回想』)
15
(c) Prof. Kazuhiro FUKUYO, PhD, 2013
高抵抗フィラメントの探求


フィラメントが十分に熱放射ができるように、高温になっ
ても溶けない材料が必要
エジソンが試した金属材料



16
白金、クロム、モリブデン、タングステン
当時は融点は不明
エジソンが周期律表を知っていた可能性(バイロン・ヴァン
ダービルトの指摘)
(c) Prof. Kazuhiro FUKUYO, PhD, 2013
エジソンのExhaustion作戦

“Try everything” spirit

電球のフィラメントとして適切なものを見出すため、約
1600種の素材を試した
“Owing to the enormous power of the light my eyes
commenced to pain after seven hours’ work and I had to
quit.” (January 27, 1879)

17
(c) Prof. Kazuhiro FUKUYO, PhD, 2013
システム思考


「私はいつもの方法でガスに関する全ての種類のデータ
を収集した。ガス工学協会のすべての会報、ガス関係雑
誌のすべてのバックナンバーを購入した」
エジソンはガス照明を電気照明に置き換えるために、ガ
スによってなされたすべてを正確に模倣しようとした
18
(c) Prof. Kazuhiro FUKUYO, PhD, 2013
白熱灯に関連して開発したもの


並列型の電力システム
発電機、整流器



電力メーター


直流で送電するため(固定観念)
発電機回転のための蒸気機関の検討
電気分解を利用
送電線

19
地中埋設、絶縁材充填
(c) Prof. Kazuhiro FUKUYO, PhD, 2013
発明のシステム化=環境整備

アプトン





チャールズ・バチェラー
ジョン・クルージー
ジェール


ヘルムホルツの弟子
エジソンの発想、原理の数式化
機械工
「エジソンの最大の発明は、科学研究所の発明」(ノー
バート・ウィーナー)
20
(c) Prof. Kazuhiro FUKUYO, PhD, 2013
エジソンの限界 1

電流戦争(1880年代後半)


いくつかの背景



エジソンとテスラの個人的な確執
エジソンは実験には強かったが、交流送電に必要な数理的な
知識を持たなかった
直流側の主張


ウェスティングハウス&ニコラ・テスラ陣営(交流)とエジソン
(直流)の闘い
低周波交流は感電した際に、心拍を乱す恐れがあって危険
交流側の主張

21
高電圧直流は感電した際に筋肉を硬くし、感電した人を胴体
から離れられなくしてしまうので危険
(c) Prof. Kazuhiro FUKUYO, PhD, 2013
エジソンの限界 2

直流の技術的限界



交流の優位性




変圧器によって電圧を変えられる
送電損失=抵抗×電流^2
同じ電力を送るなら高電圧、小電流が有利
交流の問題点


直流送電システムは全体を通じて同じ電圧で作動
電線の抵抗による電圧降下が大きいため、発電所と消費地の距離は1マイル
(1.6キロ)程度に制限される
長距離輸送の際、波長より十分短い距離しか送電できない=長距離輸送には
直流送電の方が有利
転機



22
ナイアガラの滝による発電(1896年11月)
ちなみに25Hz(テスラは60Hzを提案)
交流送電の勝利
(c) Prof. Kazuhiro FUKUYO, PhD, 2013
発想法

創造性自体はなかなか制御できないが,創造性を助け
る思考力は「発想法」を学ぶことで高めることができる


23
人間の脳の性質を知る
様々な発想法を学ぶ
(c) Prof. Kazuhiro FUKUYO, PhD, 2013
人間の脳


外から何も与えられないと、何かを創造しようとしても決
まりきった思考を繰り返すだけの状態になってしまう
その状況から抜け出るには、新しいデータを必要とする


Ron Hale-Evans, MINDパフォーマンスHACKS, O’Reilly, 2007,
p.90
新しいデータを得る方法


24
目についた雑誌を読む
さいころを転がす
(c) Prof. Kazuhiro FUKUYO, PhD, 2013
de Bono: PO

PO

hypothesis, suppose, possible, poetryなどの単語に含まれるPOであ
り、Provocative Operation (刺激を与える作業)の略でもある。


PO-1

思いついたアイディアをくだらないものとは見なさない


タンカーをバラバラにしたらどうか?
PO-2

何の関係もない言葉を並べてみてヒントにする


Edward de Bono, PO: Beyond Yes and No, 1972
「砂」と「火事」
PO-3

常識を疑う

25
週休2日という仕組みを疑う
(c) Prof. Kazuhiro FUKUYO, PhD, 2013
Bob Eberle: SCAMPER

Bob Eberleが考案したブレインストーミングのための手法








Michael Micalko, Thinkertoys, 1991
S: Substitute, 入れ替え(一部または全部を)
C: Combine, 組み合わせ(他のものとの)
A: Adapt, 適用(他の用途に使われていたものを)
M: Modify, 修正
P: Put to another use, 他の用途
E: Eliminate, 削除(一部を)
R: Reverse, 逆転
26
(c) Prof. Kazuhiro FUKUYO, PhD, 2013
Schmidt & Eno: Oblique Strategies


発想のための「易」
例



Cut a vital connection
The tape is now the music
The most important thing is the thing most easily forgotten

27
http://stoney.sb.org/eno/oblique.html
(c) Prof. Kazuhiro FUKUYO, PhD, 2013
その他の方法1
制約を設ける

音楽に頼る
フランスの文学グルー
プ”Oulipo”が唱えた理論
(1960)

制約を与えれば、制約のない
場合よりも創造性の質が高ま
る

○○を使わないで××を作る


28
接着剤を使わないで模型を作
る->嵌め込み式プラモデル
水なしで薬を飲む->チュア
ブル

音楽によって創造性を高
める


クラシック(Bach)や環境音
楽(アンビエント)が好まれ
る
歌詞があるものは時として
邪魔になる
(c) Prof. Kazuhiro FUKUYO, PhD, 2013
夢ソナー

入眠状態の利用

夢うつつの常態で見たことをヒントにする

ダリはスプーンを持って居眠りし、スプーンが落ちることで目覚めた

エジソンはベアリングボールを持って居眠りし、それを落したときの
音で目覚めた


ケクレはベンゼン環の構造(亀の甲)を夢から着想したとの説がある
(ケクレの講演から。ただし本人が話を面白くしようとしたという説も
ある)


29
D. Goleman, P. Kaufman, The Art of Creativity,
http://www.psychologytoday.com/articles/pto-19920301-000031.html
参考:Wikipedia
ただし、夢日記が体に悪いとの説もあるので注意
(c) Prof. Kazuhiro FUKUYO, PhD, 2013
アイディアが生まれた経緯を確認する

ある有益なアイディアが生まれたら、そのアイディアが誕
生した経緯を追跡してみる





何を参照したか?
どこで思いついたか?
誰と相談したか?
新しいアイディアが必要なとき、同じ手順でその新しいア
イディアが生まれる可能性がある
行き詰まったときは、同じ手順をたどらないようにするこ
とで、新しいアイディアが生まれる可能性がある
30
(c) Prof. Kazuhiro FUKUYO, PhD, 2013
その他の方法2
エミュレーション


常に考え続ける
他の人の立場で考えてみ
る
具体的に


31


瞑想する
通勤時間などに少しずつ
考える
家康なら・・・
母親なら・・・
(c) Prof. Kazuhiro FUKUYO, PhD, 2013
Peirce: Abduction(仮説形成)

パースは「アブダクション(=仮説形成や推論と言い換え
られることが多い)」を第三の論理として取り上げた


残りの論理は「演繹 (deduction)」と「帰納 (induction)」
アブダクションの形式:

The surprising fact C, is observed


But if A were true, C would be a matter of course


(しかし、Aが正しいとすれば、Cは当然のことである)
Hence, there is reason to suspect that A is true

32
(驚くべき事実Cが観測された)
(ということで、Aが正しいと思う理由がある)
(c) Prof. Kazuhiro FUKUYO, PhD, 2013
Frankfurtによる解釈

The surprising fact C, is observed


But if the proposition A, which accounts for C, were true,
C would be a matter of course


(驚くべき事実Cが観測された(これは同じ))
(しかし、Cについて説明する主張Aが正しいならば、Cは当
然のことである)
Hence, we accept the proposition A as an hypothesis

ということで、主張Aは仮説Aとして受け入れてよい

33
Harry G. Frankfurt, Peirce's Notion of Abduction, The Journal of
Philosophy, Vol.55, No.14 (Jul. 3, 1958), pp.593-597
(c) Prof. Kazuhiro FUKUYO, PhD, 2013