公的土地評価の注意点、不動産鑑定評価に関して こんにちは。不動産鑑定士の若杉と申します。 前回は、企業の経営者様ご自身で、公的評価制度を基に、自社の概ねの土地価格を把握す る方法をご紹介させて頂きました。 いずれの公的評価制度も、概ねインターネット環境さえあれば、瞬時に閲覧が可能であり、 非常に利便性に優れているものですが、それぞれの目的に応じて公表されているものであ り、地価水準の把握等の理由で利用する場合には注意が必要となります。 そこで、今回は、まず、公的評価制度を利用する場合の注意点についてお話ししたいと思 います。 1.地域の類似性について 前回ご紹介した、地価公示、地価調査につきましては、対象地の近くにあるからという理 由のみで、安易にその価格から、対象地の価格を推定することには注意が必要です。 例えば、対象地が住宅地域にあるにもかかわらず、距離が近いという理由のみで、商業地 域に係る地価公示、地価調査価格を参考にすることはできません。なぜならば、住宅地域に おいては快適性が重視され、商業地域では顧客の流動性が重視されるなど、異なる要因で価 格が形成されるためです。したがって、利用に際しては、地域や用途の類似性に気を付ける 必要があります。 2.土地の個別性について また、地価公示、地価調査、及び、路線価につきましては、いずれも、その地域における 標準的な土地についての価格です。しかしながら、土地は非常に個別性が強いものであり、 角地か否か、形状の良し悪しのみならず、敷地内の高低差や敷地の規模、道路との接面状況 等により、価格は大きく異なってしまいます。たとえ、隣が地価公示対象地点だったとして も、実際は、その半分の価格もないということも十分に考えられるのです。 3.時間的相違について 地価公示を例にとり、タイムラグについて説明したいと思います。地価公示価格は、毎年 1月1日時点の地価が公表されますが、その公表時期は、3月下旬頃であり、皆様がご覧頂 ける時点で、すでに3ヶ月程度前の価格であるということです。 ■神戸ビジネスメールマガジン ― KCCI■ また、実際の不動産鑑定士による地価公示の作業については、時間的な制約から、前年の 秋頃までの取引事例を基に検証し、少なからず将来予測も行いながら1月1日時点の価格 を算出しているのが現状です。したがって、実質的には、皆様が最新の情報を閲覧できる時 点においても、すでに6ヶ月程度のタイムラグが生じている可能性があります。 さらに、次の地価公示価格が公表されるのは、翌年の3月下旬であることから、最長で1 年半程度前の価格が時価として公表され続けていることになります。 地価公示のみならず、路線価の公表時期も7月初旬であることや、固定資産税評価につい ては3年に1度評価替えが行われるなど、必ずしもタイムリーな価格が提示されているわ けではないことに注意が必要です。 以上のような注意点に留意しながら、概ねの土地価格を把握することは可能ではありま すが、先述の通り、土地は、その存する地域や個別性により大きく価格の水準が変わること、 また、建物を含む収益物件や借地権、地代、家賃、立ち退き料等については、公的価格のみ での推定は困難であり、このような場合には、専門家である不動産鑑定士へのご相談が効率 的であると思います。 以下に、法人様が、不動産の鑑定評価をご依頼された方が良いと思われるケースについて 代表例をお示ししたいと思います。 1.不動産(自社ビルや投資用物件等)を担保に、金融機関から融資を受けるとき 2.会社と役員との間で、不動産の売買や交換等を行う必要があるとき 3.事業譲渡、事業承継、合併、会社分割等に際して、不動産が含まれているようなとき 4.長年賃貸借していた土地や店舗、事務所等に関して、賃料が市場の実態とは大きく乖離 して、見直しが必要となったとき 5.法令や企業会計上の要請により、保有不動産の時価評価が必要となったとき (減損会計、賃貸等不動産の評価、債権の評価、現物出資 etc.) それでは、最後に、不動産鑑定士が提供する成果物の種類について、簡単にお示し、終わ りにしたいと思います。 ≪不動産鑑定評価書≫ 法令上の鑑定評価であり、適用可能な手法は全て適用し、最も精度の高いものとなります。 通常、鑑定評価といえば、この不動産鑑定評価書のことを指します。 ■神戸ビジネスメールマガジン ― KCCI■ 報酬については、やや高くはなりますが、公的機関(税務署、裁判所など)に提出するため には、一般的に、最も説得力の高い、この不動産鑑定評価書が必要となります。 ≪簡易鑑定評価書≫ 先ほどの不動産鑑定評価書をやや簡略化したものであり、一部手続きの割愛等を行って いる場合がありますが、概ねの価値の把握が可能です。 説得力については、鑑定評価書にやや劣りますが、報酬が安く、公的機関等の第三者に提 示する必要まではなく、社内稟議の参考資料として必要である、といったような場合に有用 です。 ≪調査報告書≫ 不動産の価格以外の調査報告書であり、いわゆるコンサルレポートのようなものになり ます。例えば、物件調査報告書、市場分析報告書、広大地判定意見書、収益性診断等、ご要 望に応じて、専門家としての意見をとりまとめ致します。 但し、上記≪不動産鑑定評価書≫以外の名称は、各不動産鑑定事務所において様々であり、 報酬につきましても、対象不動産の価格水準や種類に応じて異なります。 尚、どのような成果物が必要か、どの程度の報酬や時間がかかるのか等のご相談は、無料 で行っていることがほとんどですので、お気軽に不動産鑑定士にお尋ね頂ければ幸いです。 有限会社旭不動産鑑定所 不動産鑑定士 若杉 和宏 〒651-0084 神戸市中央区磯辺通 3 丁目 2 番 4 号 藤和シティホームズ三宮 102 号 TEL 078(232)0650 FAX 078(232)0658 E-mail [email protected] http://www.asahikantei.com/ ■神戸ビジネスメールマガジン ― KCCI■
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