2010年度~2011年度の経済見通し(PDF 726KB)

News Release
2010 年度~2011 年度の経済見通し
『日本経済:自律的な安定成長へ向け始動』
2010 年度実質 GDP 成長率:+2.7%
2011 年度実質 GDP 成長率:+2.1%
2010 年 5 月 25 日
野村證券株式会社
金融経済研究所 経済調査部
2010 年 5 月 25 日
日本経済の予測要約表
国
内
総
生
産
生
産
・
物
価
対
外
収
支
[2010年5月21日時点]
[2010年2月15日時点]
09年度 10年度 11年度 09年度 10年度 11年度
(予)
(予)
(予)
(予)
(予)
-1.9
2.7
2.1
-2.2
2.0
2.4
実質国内総支出
<内需寄与度>
-2.4
1.7
1.7
-1.9
1.2
2.0
<民間内需>
-3.0
1.7
1.9
-2.5
1.2
2.1
<公的内需>
0.7
0.0
-0.1
0.6
0.0
-0.1
<外需寄与度>
0.4
1.0
0.4
-0.3
0.7
0.5
民間最終消費支出
0.6
1.2
0.8
0.5
1.0
0.9
民間住宅投資
-18.5
2.2
6.1
-18.3
3.5
6.1
民間企業設備投資
-15.1
6.5
9.1
-15.4
6.5
9.1
民間在庫品増減<寄与度>
-0.5
0.1
0.0
-0.5
-0.2
0.2
政府消費
1.8
1.2
0.7
1.9
1.0
0.7
公的固定資本形成
8.7
-5.4
-7.9
7.3
-4.4
-7.3
財貨・サービス輸出
-9.6
14.6
6.7
-11.1
11.6
9.9
財貨・サービス輸入
-11.8
9.9
6.4
-12.2
8.6
9.6
名目国内総支出
-3.7
2.1
2.0
-3.9
1.2
2.3
-1.8
-0.5
-0.1
-1.7
-0.8
-0.1
GDPデフレーター
鉱工業生産
-8.9
14.4
5.7
-10.0
10.5
8.8
国内企業物価
-5.2
-0.2
1.5
-5.4
-1.5
0.7
-1.7
-0.7
0.1
-1.6
-1.3
0.0
消費者物価
除く生鮮食品
-1.6
-0.8
0.1
-1.5
-1.2
0.0
完全失業率(%)
5.2
4.7
4.3
5.2
4.9
4.4
5.2
10.9
12.4
5.5
10.9
13.1
通関出超額 (兆円)
6.6
12.1
13.6
6.6
11.8
14.1
貿易収支 (兆円)
貿易・サービス収支 (兆円)
4.8
8.9
9.4
4.6
8.7
9.7
15.7
22.1
22.6
15.9
20.8
22.9
経常収支 (兆円)
(注)1.断りがない限り、前年度比%。
2.-0.0 の場合も 0.0 と表示している。
(出所)野村證券金融経済研究所
経済見通し前提表
2009年度
2010年度
2011年度
ドル円相場(年度平均)
93.0
95.0
90.0
無担保コール・オーバーナイト(期末値、%)
0.10
0.10
0.10
5.0
5.0
5.0
71.0
90.0
100.0
消費税率(期末値、%)
WTI(年度平均、ドル/バレル)
(出所)野村證券金融経済研究所
野村證券株式会社 金融経済研究所 〒100-8130 東京都千代田区大手町 2-2-2 アーバンネット大手町ビル
このレポートは、作成日現在におけるマクロ経済全般についての情報提供を唯一の目的としており、有価証券等の勧誘を目的としているものではありません。なお、このレポートに記載されてい
る情報は、当社が信頼できると考える情報源に基づいたものですが、正確かつ完全であることを当社が保証するものではありません。このレポートに記載された意見、経済全般の実績、評価又は
将来動向の表示等は、作成日時点におけるものであり、予告なく変わる場合があります。この資料には、特定の前提条件の下に特定の手法により導き出されたシミュレーション、試算等が示され
ている場合があります。これらシミュレーション等の結果は、前提条件が異なる場合、別の手法による場合等においては、異なる結果になることがあります。また、当該結果は将来の結果を保証
するものではありません。このレポートは、提供させていただいたお客様限りでご使用いただきますようお願い申し上げます。
1
2010 年 5 月 25 日
四半期実質国内総支出・鉱工業生産・物価予測表
09年
10年
1-3
4-6
7-9
10-12
1-3
4-6(予)
7-9(予)
民間最終消費支出
301581.0 304479.0 306398.2 308456.1 309455.2 309764.7 310848.8
(前期比)
-1.2
1.0
0.6
0.7
0.3
0.1
0.4
(前年同期比)
-3.7
-1.1
-0.4
1.2
2.7
1.7
1.5
民間住宅投資
14844.4 13389.0 12413.7 12079.8 12113.4 12398.4 12633.0
(前期比)
-7.1
-9.8
-7.3
-2.7
0.3
2.4
1.9
(前年同期比)
0.1
-9.9
-20.3
-24.5
-18.2
-7.4
1.8
民間企業設備投資
72941.5 70231.1 68802.1 69665.4 70390.3 71657.3 73233.8
(前期比)
-9.9
-3.7
-2.0
1.3
1.0
1.8
2.2
(前年同期比)
-19.5
-22.2
-21.1
-13.9
-3.2
2.0
6.4
民間在庫投資
855.1
212.6
-225.7
-995.7
-21.7
-221.7
278.3
<前期比寄与度>
-1.4
-0.1
-0.1
-0.2
0.2
0.0
0.1
政府最終消費支出
98023.7 98251.8 98345.2 99027.2 99522.2 99701.0 99936.9
(前期比)
0.7
0.2
0.1
0.7
0.5
0.2
0.2
(前年同期比)
0.6
1.8
2.1
1.8
1.5
1.5
1.6
公的固定資本投資
19094.7 20485.6 20282.1 20040.2 19704.8 19810.1 19285.1
(前期比)
4.3
7.3
-1.0
-1.2
-1.7
0.5
-2.7
(前年同期比)
-1.8
13.9
11.6
9.3
2.4
-3.3
-4.9
公的在庫投資
256.7
256.8
219.0
247.2
254.0
254.0
254.0
<前期比寄与度>
0.0
0.0
0.0
0.0
0.0
0.0
0.0
純輸出
7896.1 15764.3 18628.9 21927.3 25853.3 25615.0 25931.7
<前期比寄与度>
-0.7
1.8
0.4
0.6
0.7
0.0
0.1
(前期比)
-51.1
99.6
18.2
17.7
17.9
-0.9
1.2
(前年同期比)
-75.4
-50.4
-36.0
34.9
230.3
63.5
38.5
輸出
59211.7 65177.1 70788.9 74884.5 80041.3 81241.9 82623.0
(前期比)
-24.8
10.1
8.6
5.8
6.9
1.5
1.7
(前年同期比)
-36.5
-29.3
-22.7
-4.7
34.3
24.6
16.7
輸入
51315.6 49412.8 52160.0 52957.2 54188.0 55626.9 56691.4
(前期比)
-18.0
-3.7
5.6
1.5
2.3
2.7
1.9
(前年同期比)
-17.4
-18.5
-16.2
-15.3
5.7
12.6
8.7
実質国内総生産
516838.9 526092.5 526731.0 532237.5 538672.3 540729.9 544174.8
(前期比)
-4.2
1.8
0.1
1.0
1.2
0.4
0.6
(前期比年率)
-15.9
7.4
0.5
4.2
4.9
1.5
2.6
(前年同期比)
-8.9
-5.7
-5.2
-1.1
4.6
2.8
3.3
GDPデフレーター
91.7
90.2
89.9
89.2
89.2
89.1
89.6
(前年同期比)
0.3
-0.6
-0.7
-2.7
-3.0
-1.3
-0.3
鉱工業生産 (2005年=100)
74.2
79.0
83.2
88.1
94.3
96.9
97.9
(前期比)
-20.0
6.5
5.3
5.9
7.0
2.8
1.0
(前年同期比)
-34.6
-27.4
-19.4
-4.3
27.5
22.7
17.6
国内企業物価(2005年=100)
104.2
102.8
102.9
102.1
102.4
101.9
102.2
(前期比)
-3.3
-1.3
0.1
-0.7
0.3
-0.5
0.2
(前年同期比)
-1.9
-5.5
-8.3
-5.2
-1.7
-0.9
-0.7
消費者物価指数(総合)
101.0
100.6
100.0
99.7
99.9
99.3
99.2
(2005年=100) (前期比)
-0.8
-0.4
-0.5
-0.3
0.2
-0.6
-0.1
(前年同期比)
-0.1
-1.0
-2.2
-2.0
-1.2
-1.3
-0.9
消費者物価指数(除く生鮮食品)
101.0
100.5
99.9
99.7
99.7
99.1
99.0
(2005年=100) (前期比)
-0.5
-0.5
-0.6
-0.1
0.0
-0.7
-0.1
(前年同期比)
0.0
-1.0
-2.3
-1.7
-1.2
-1.4
-0.9
完全失業率
4.5
5.1
5.4
5.2
4.9
4.8
4.8
10-12(予)
311470.5
0.2
1.0
12909.2
2.2
6.9
75064.6
2.5
7.8
478.3
0.0
100052.2
0.1
1.0
18834.7
-2.3
-6.0
254.0
0.0
26272.0
0.1
1.3
19.7
84275.5
2.0
12.5
58003.5
2.3
9.5
547127.6
0.5
2.2
2.8
88.6
-0.7
99.0
1.2
12.4
102.4
0.2
0.2
99.4
0.2
-0.3
99.3
0.4
-0.4
4.7
(単位:2000年連鎖価格10億円)
11年
1-3(予)
4-6(予)
7-9(予)
311782.0 312405.6 313030.4
0.1
0.2
0.2
0.8
0.9
0.7
13107.1 13286.0 13429.7
1.5
1.4
1.1
8.2
7.2
6.3
76791.1 78634.1 80159.6
2.3
2.4
1.9
9.1
9.7
9.5
478.3
178.3
378.3
0.0
-0.1
0.0
100206.0 100386.0 100623.5
0.2
0.2
0.2
0.7
0.7
0.7
18380.8 17976.4 17670.8
-2.4
-2.2
-1.7
-6.7
-9.3
-8.4
254.0
254.0
254.0
0.0
0.0
0.0
26464.2 26844.3 27551.8
0.0
0.1
0.1
0.7
1.4
2.6
2.2
4.8
6.3
85455.3 86566.3 88037.9
1.4
1.3
1.7
6.8
6.6
6.6
58991.1 59722.0 60486.1
1.7
1.2
1.3
8.9
7.4
6.7
549269.3 551786.5 554940.3
0.4
0.5
0.6
1.6
1.8
2.3
2.0
2.0
2.0
88.6
88.8
89.5
-0.7
-0.4
-0.2
100.5
101.8
103.2
1.5
1.2
1.4
6.6
5.0
5.5
102.8
103.6
104.1
0.5
0.7
0.5
0.4
1.6
1.9
99.4
99.4
99.3
0.0
0.0
-0.1
-0.4
0.1
0.1
99.3
99.3
99.0
0.0
0.0
-0.2
-0.4
0.2
0.1
4.5
4.5
4.4
(注)1.断りがない限り、10 億円単位。比率は%。
2.2010 年 1-3 月期までは実績、それ以降は野村證券金融経済研究所予測。
3.-0.0 の場合も 0.0 と表示している。
4.四半期の額、指数、失業率は季節調整値(国内企業物価指数は除く)。
(出所)内閣府、経済産業省、総務省、野村證券金融経済研究所
野村證券株式会社 金融経済研究所 〒100-8130 東京都千代田区大手町 2-2-2 アーバンネット大手町ビル
このレポートは、作成日現在におけるマクロ経済全般についての情報提供を唯一の目的としており、有価証券等の勧誘を目的としているものではありません。なお、このレポートに記載されてい
る情報は、当社が信頼できると考える情報源に基づいたものですが、正確かつ完全であることを当社が保証するものではありません。このレポートに記載された意見、経済全般の実績、評価又は
将来動向の表示等は、作成日時点におけるものであり、予告なく変わる場合があります。この資料には、特定の前提条件の下に特定の手法により導き出されたシミュレーション、試算等が示され
ている場合があります。これらシミュレーション等の結果は、前提条件が異なる場合、別の手法による場合等においては、異なる結果になることがあります。また、当該結果は将来の結果を保証
するものではありません。このレポートは、提供させていただいたお客様限りでご使用いただきますようお願い申し上げます。
2
日本経済
2010 年 5 月 25 日
自律的な安定成長へ向け始動

日本経済は輸出と景気対策効果の恩恵を受け、急速に持ち直した。景気回復の恩恵は内需へと波及
しており、2010 年 1-3 月期には家計消費は 4 四半期連続、設備投資も 2 四半期連続で増加した上、
住宅投資が 5 四半期ぶりに増加に転じた。円高や各国での経済政策効果の衰退が予想される上、欧
州を震源に世界経済の先行きに不透明感が高まっていることが懸念される。ただし、好調なアジア経
済に支えられ、輸出が腰折れする懸念は現在のところ限定的であるとみられる。

好調な輸出の恩恵を受け、設備投資の回復基調が鮮明化し始めた。稼働率は設備投資拡大の節目
となる水準を上回り、企業の期待成長率が大幅に上方修正されるなど、設備投資回復に向けた条件
は整いつつある。家計消費も経済政策の恩恵を直接受け難い商品へも広がりを見せ始めた。今後は
政策効果の終了前後の駆け込み需要や反動によって攪乱されると見込まれるものの、雇用環境と企
業業績の改善を受け、家計消費は比較的堅調に推移する可能性が高い。

市場のコンセンサス予想と比較して、我々の成長率予想は強気である。最大の違いは、設備投資に対
する見方である。コンセンサス見通しは、我々と同様に輸出・生産の順調な回復を予想しながらも、設
備投資は 2011 年末でも 90 年代以降の最低水準に届かないと想定している。ただし、設備投資を巡る
状況をみる限り、コンセンサス予想は余りにも悲観的であり、今後上方修正される余地が大きいと考え
られる。

我々と同様に日銀も、2011 年度にはデフレから脱却すると予想している。ただし、1)金融市場が不安
定化していること、2)コア CPI は日銀が「物価安定の理解」で示した前年比+1.0%まで上昇することが
視野に入っていないこと、3)デフレ解消に向けて政府との共同歩調を強めていることから、日銀は金
融緩和姿勢を維持し、追加緩和策が実施される可能性も十分残されているとみられる。

欧州発のソブリン(政府債務)リスクの台頭は、財政再建の必要性を改めて認識させた。一方、過去の
経験からは、財政再建のためには安定的な景気拡大が必須と言える。民主党政府は、「財政再建」と
「成長戦略」への取り組みを強化する見込みである。成長戦略としては、特に「アジア経済戦略」への
取り組みが注目される。
以上の議論を踏まえ、野村證券金融経済研究所は 2010 年度の実質 GDP 成長率を+2.7%と大幅に
上方修正し、2011 年度は+2.1%と小幅ながら下方修正した。
野村證券株式会社 金融経済研究所 〒100-8130 東京都千代田区大手町 2-2-2 アーバンネット大手町ビル
このレポートは、作成日現在におけるマクロ経済全般についての情報提供を唯一の目的としており、有価証券等の勧誘を目的としているものではありません。なお、
このレポートに記載されている情報は、当社が信頼できると考える情報源に基づいたものですが、正確かつ完全であることを当社が保証するものではありません。こ
のレポートに記載された意見、経済全般の実績、評価又は将来動向の表示等は、作成日時点におけるものであり、予告なく変わる場合があります。この資料には、特
定の前提条件の下に特定の手法により導き出されたシミュレーション、試算等が示されている場合があります。これらシミュレーション等の結果は、前提条件が異な
る場合、別の手法による場合等においては、異なる結果になることがあります。また、当該結果は将来の結果を保証するものではありません。このレポートは、提供
させていただいたお客様限りでご使用いただきますようお願い申し上げます。
3
2010 年 5 月 25 日
(1) 好調なアジア景気の恩恵を享受
安定感を高めつつある
日本経済は金融危機後のリバウンドから、足下で安定感を高めつつある。
日本経済
2010 年 1-3 月期の実質 GDP 成長率(1 次推計値)は前期比年率+4.9%と、
2009 年 10-12 月期の同+4.2%から加速し、景気回復の勢いが衰えていない
ことを示した。内訳をみると、外需寄与度が前期比+0.7%ポイントと 2009
年 10-12 月期の同+0.6%ポイントから拡大しただけではなく、家計消費が
前期比+0.3%と 4 四半期連続で増加、民間設備投資は同+1.0%と 2 四半期
連続で増加した上、住宅投資は同+0.3%と 5 四半期ぶりに増加に転じたこ
とから、内需寄与度は同+0.6%ポイントと着実な回復を見せ始めている。
日本経済が安定的な回復軌道を辿ることができるかという点からは、輸出
の持続力とともに内需が自律的な回復を継続し得るかが注目される。
(図表 1-2) 日本の輸出ウェイトで合成した
世界成長率と実質輸出
(図表 1-1) 日本の輸出の国・地域別内訳
(%)
(前年比 %)
12
40
11
35
北米(左軸)
欧州(左軸)
アジア(左軸)
その他(左軸)
世界成長率(左軸)
日本の実質輸出(右軸)
(前年比 %)
30
20
10
米国向け
10
9
0
8
30
7
-10
6
25
欧州連合(EU)向け
中国+香港向け
当社予想
5
20
韓国+台湾+シンガポール向け
4
-30
3
-40
2
15
-50
1
10
中東向け
0
-60
-1
-70
-2
東南アジア向け
5
-20
-80
-3
インド+ロシア+ブラジル向け
0
(年)
-5
63 65 67 69 71 73 75 77 79 81 83 85 87 89 91 93 95 97 99 01 03 05 07 09
(注)1.世界成長率は各地域の成長率を日本からの輸出割合に基づいて加
重平均したもの。
2.北米は米国、カナダ。アジアは韓国、香港、シンガポール、台湾、オー
ストラリア、中国、インド、インドネシア、マレーシア、フィリピン、タイ、ト
ルコ、ベトナム。その他はアルゼンチン、ブラジル、メキシコ、ロシア、
南アフリカ。
(出所)各種資料より野村證券金融経済研究所作成
-90
-4
(年)
-100
97
98
99
00
01 02
03
04
05
06 07
08
09
10
11
(注)1.世界成長率は各地域の成長率を日本からの輸出割合に基づいて加重平
均したもの。
2.北米は米国、カナダ。アジアは韓国、香港、シンガポール、台湾、オース
トラリア、中国、インド、インドネシア、マレーシア、フィリピン、タイ、トル
コ、ベトナム。その他はアルゼンチン、ブラジル、メキシコ、ロシア、南アフ
リカ。
(出所)各種資料より野村證券金融経済研究所作成
対アジア向け輸出に牽
実質輸出は、金融危機後の世界的なリバウンド局面の終息から緩やかに増
引され、輸出は好調維
加ペースを落としながらも、中国をはじめとするアジア新興国の成長の恩
持
恵を受けて今後も堅調に推移することが予想される。日本は、元々中国や
ASEAN 諸国との貿易関係が密接であったが、近年ではアジア諸国の持続
的な高成長を背景に、日本にとっては輸出相手先として益々存在感が増し
ている。2009 年の全輸出に占めるアジア向け輸出のシェアは 54.2%(う
ち中国(含む香港)向けは 24.4%)と、米国(同 16.1%)
、欧州(同 12.5%)
を大幅に上回っている。
野村證券株式会社 金融経済研究所 〒100-8130 東京都千代田区大手町 2-2-2 アーバンネット大手町ビル
このレポートは、作成日現在におけるマクロ経済全般についての情報提供を唯一の目的としており、有価証券等の勧誘を目的としているものではありません。なお、
このレポートに記載されている情報は、当社が信頼できると考える情報源に基づいたものですが、正確かつ完全であることを当社が保証するものではありません。こ
のレポートに記載された意見、経済全般の実績、評価又は将来動向の表示等は、作成日時点におけるものであり、予告なく変わる場合があります。この資料には、特
定の前提条件の下に特定の手法により導き出されたシミュレーション、試算等が示されている場合があります。これらシミュレーション等の結果は、前提条件が異な
る場合、別の手法による場合等においては、異なる結果になることがあります。また、当該結果は将来の結果を保証するものではありません。このレポートは、提供
させていただいたお客様限りでご使用いただきますようお願い申し上げます。
4
2010 年 5 月 25 日
野村グローバル・エコノミスト・チームは、2010 年、2011 年の実質 GDP
成長率を米国が前年比+3.3%、同+2.7%、ユーロ圏は同+1.1%、同+1.8%
とそれぞれ予測している。一方、アジア新興国(アジア除く日本、豪州、
ニュージーランド)に関しては、同+8.9%、同+8.1%と先進国を大幅に上
回る高成長を安定的に継続する見通しである。
韓国や台湾の後塵を拝
ただし、アジア諸国の発展は日本の輸出産業に対する強力な競合相手の台
した 2009 年の日本の
頭との意味合いも併せ持つ。実際、アジア諸国と比較すると日本の輸出回
輸出パフォーマンス
復は決して速いペースで進んでいるわけではない。特に、韓国、台湾に対
しては大きく水をあけられる形となっている。このように、韓国や台湾に
比べ日本の輸出パフォーマンスが劣っていることを、日本経済(日本企業)
の悲観材料と捉える向きもある。すなわち、同じアジアに位置し、輸出構
造も似通っている韓国や台湾の後塵を拝していることは、日本企業の輸出
競争力が韓国や台湾の企業、あるいは中国や東南アジアの現地企業に比し
て低下していることを示唆しているのではないか、との見方である。
(図表 1-3) 日本と韓国及び台湾の輸出伸び率格差と為替増価率格差
[日本と韓国]
(輸出伸び率格差、前年比 %ポイント)
50
(通貨増価率格差、前年比 %ポイン ト 逆目盛り)
韓国輸出伸び率>日本輸出伸び率
韓国ウォン増価率<日本円増価率
45
[日本と台湾]
(輸出伸び 率格差、前年比 %ポイント)
(通貨増価率格差、前年比 %ポイン ト 逆目盛り)
52
-90
-60
台湾輸出伸び率>日本輸出伸び 率
48
-80
台湾ドル増価率<日本円増価率
-55
44
40
-70
韓国輸出伸び率<日本輸出伸び率
35
韓国輸出伸び率-日本輸出伸び率(左軸)
-30
24
-25
-30
20
-20
-20
16
-15
12
-10
8
-5
0
4
0
10
0
5
-4
10
-8
15
-12
20
15
10
-10
5
20
-10
30
-15
-20
韓国ウォン増価率-日本円増価率(右軸)
-25
81
83
85
87
89
91
93
95
97
99
01
03
05
07
09
-35
台湾ドル増価率-日本円増価率(右軸)
-40
-5
-40
28
20
0
-45
台湾ドル増価率>日本円増価率
32
-50
25
台湾輸出伸び率<日本輸出伸び 率
36
-60
30
-50
40
韓国ウォン増価率>日本円増価率
40
-16
50
(年)
-20
25
台湾輸出伸び 率-日本輸出伸び 率(左軸)
83
85
87
89
91
93
95
97
99
01
03
05
07
09
30
(年)
(注)輸出はいずれも GDP 統計ベースの実質輸出。各通貨増価率は国際決済銀行(BIS)公表の実質実効為替レートを用いて計算。
(出所)各種資料より野村證券金融経済研究所作成
日本と韓国・台湾の輸
我々は足下までの日本の輸出回復力が、(欧州諸国を上回りつつも)韓国や
出伸び率格差は、為替
台湾に比べて劣っているのには、為替動向の影響が大きいと考えている。
変化率格差でほとんど
説明できる
実際、日本と韓国・台湾の輸出伸び率格差(韓国及び台湾の実質輸出前年
比-日本の実質輸出前年比)と、為替増価率格差(韓国及び台湾の実質実
効為替レート前年比-日本の実質実効為替レート前年比)を並べてみると、
いずれにおいても為替増価率格差が 2 四半期程度先行して、輸出伸び率格
差と高い相関を有していることが確認できる(図表 1-3)。円の増価率がウ
ォンや台湾ドルに比べて高いほど、日本の輸出の(韓国・台湾の輸出との)
相対パフォーマンス悪くなることを示唆する結果である。例えば、2009
年には韓国の輸出前年比が日本のそれを最大で 25%ポイント程度上回っ
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このレポートは、作成日現在におけるマクロ経済全般についての情報提供を唯一の目的としており、有価証券等の勧誘を目的としているものではありません。なお、
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定の前提条件の下に特定の手法により導き出されたシミュレーション、試算等が示されている場合があります。これらシミュレーション等の結果は、前提条件が異な
る場合、別の手法による場合等においては、異なる結果になることがあります。また、当該結果は将来の結果を保証するものではありません。このレポートは、提供
させていただいたお客様限りでご使用いただきますようお願い申し上げます。
5
2010 年 5 月 25 日
ていたが、これは、ウォンの前年比増価率が円よりも最大で 60%ポイント
程度低かったことの影響を強く受けたものと解釈できる。
2010 年・2011 年はウ
図表 1-3 に示されているように、2009 年後半以降、ウォン及び台湾ドルと
ォン・台湾ドル共に対
円との増価率格差は縮小(円相対安)傾向にある。これは 2010 年以降、
円で増価基調を辿る見
韓国・台湾と日本の輸出伸び率の差が縮小する可能性を示している。また、
込み
野村グローバル為替調査チームの予測に拠ると、2010 年・2011 年共にウ
ォンならびに台湾ドルは対円で増価基調を辿る見込みである。これは、韓
国企業・台湾企業との輸出競争において、日本企業に吹いていた向かい風
が、追い風へと変わることを意味している。2010 年・2011 年は、日本の
輸出伸び率が韓国や台湾の伸び率を上回る可能性も考えられる。
リスクは欧州経済の行
日本の輸出に対する最大のリスク要因は、欧州経済である。結論を先取り
方だが…
すれば、我々は財政問題を契機に欧州経済が大幅なマイナス成長に陥らな
い限り(これは我々のメインシナリオではない)
、日本経済に対する影響は
軽微であると見ている。欧州経済の失速が日本経済に波及する経路として
市場では、直接・間接両面の影響が意識されているようだ。
(図表 1-4) 実効円レートの要因分解
(図表 1-5) 中国の名目 GDP 寄与度
(前年比 %)
35
(前年比、%)
40
資源国・新興国通貨
アジアNIES通貨
ユーロ・ポンド
ドル
実効為替
円高
30
25
円安
30
当社予想
20
25
15
20
10
15
5
10
0
5
-5
0
-10
-5
(年)
-15
00
01
02
03
04
05
06
07
純輸出
在庫投資
総固定資本形成
政府消費
個人消費
名目GDP
35
08
09
-10
1991
10 11
(注)1.実効為替は円の各通貨に対するレートを日本からの輸出割合に基づいて加
重平均したもの。
2.アジア NIES は韓国、香港、シンガポール、台湾。
3.資源国・新興国はアルゼンチン、オーストラリア、ブラジル、中国、インド、イ
ンドネシア、マレーシア、フィリピン、ロシア、南アフリカ、タイ、トルコ、ベトナ
ム。
4.2010 年、11 年については当社予想より試算した暦年末値。
(出所)各種資料より野村證券金融経済研究所作成
1993
1995
1997
1999
2001
2003
2005
2007 (年)
(出所)国家統計局資料より野村證券金融経済研究所作成
日本の輸出に占める欧
直接的な経路とは、欧州景気の悪化とユーロ安・円高が日本の輸出減速を
州向けの割合は 1 割強
促す経路である。既述したように日本の輸出に占める欧州向け輸出の割合
は 2009 年には 12.5%に過ぎない。野村グローバル為替調査チームは、年
明け以降平均 124 円台であったユーロ円相場が、年後半にかけて 110 円前
後まで下落すると予想している。仮に円が対ユーロで 10%増価したとして
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6
2010 年 5 月 25 日
も、実質 GDP に与える影響は 0.05%ポイント程度であると試算される。
同チームが、2010 年の実効円レートはむしろ円安気味に推移すると予測し
ている点も踏まえると、日本経済への影響は非常に軽微であると判断でき
る。
中国景気に対する影響
間接的な経路とは、同地域を最大の貿易相手国とする中国景気の減速が日
も軽微と見られる
本へ波及する経路である。しかしながら、2008 年の中国の名目 GDP 成長
率は前年比+16.6%であったが、この内、外需寄与度は同+0.3%ポイントに
過ぎない。中国経済はかつての外需主導から、近年では明らかに個人消費
と設備投資を中心とした内需主導へと変貌している。また、中国の輸出に
占める欧州向け輸出のシェアは 22.0%と、北米向け(同 19.9%)を上回っ
ているが、アジア向け輸出(47.3%)の半分以下に過ぎない。これらの点
を踏まえれば、欧州向け輸出の減少が中国景気に変調をもたらすとは考え
難い。
むしろ、欧州発の財政問題による日本経済へのリスクとしては、当社のメ
インシナリオではないが、<1>円相場の急騰や株価の急落に繋がる、<2>
日本の財政問題に対する市場の懸念を喚起し、長期金利が急騰するケース
の方が影響はより大きいものとなろう。
(2) 輸出回復の恩恵が内需へと波及
実稼働率は設備投資の
ここに来て、輸出拡大の恩恵が設備投資へと波及し始めた兆候がはっきり
回復を示唆
と確認できる。まず注目されるのは、生産の拡大に伴って企業の稼働率が
順調に上昇している点だ。広く知られているように、稼働率と設備投資の
間には高い相関が確認される。製造業の実稼働率とコア機械受注(船舶・
電力を除く民需)を並べてみると、前者の動向を後者が追随している様を
見て取ることができる(図表 2-1)。企業は生産水準に比べて生産能力が過
大である時(稼働率が低い時)には設備投資を抑制し、逆の場合は設備投
資を増加させると考えられる。過去の経験則では、実稼働率が 70%程度の
水準を上回ると、企業の設備投資は下げ止まり、増加傾向へと転じる傾向
にある。実稼働率は 3 月時点で既に 72.0%と同水準を上回っている。企業
の生産計画や各種先行指数が増産傾向の継続を強く示唆している点を踏ま
えれば、実稼働率は上昇基調を継続すると見込まれる。
企業の成長率見通しが
次いで注目されるのは、企業経営者の期待成長率の改善である。内閣府が
大幅に改善
年に一度上場企業約 2500 社を対象に行っている調査によれば、企業の実
質経済成長率見通し(今後 3 年間の平均値)は、前回調査時点の+0.2%か
ら+1.0%へと上方修正された。業界需要の実質成長率見通し(今後 3 年間
の平均)も同様に、-0.2%から+0.5%への上方修正となった。前年度調査
からの上方修正幅(経済成長率見通し:+0.8%ポイント、業界需要の成長
率見通し:+0.7%ポイント)はいずれも、調査開始(経済成長率見通しは
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定の前提条件の下に特定の手法により導き出されたシミュレーション、試算等が示されている場合があります。これらシミュレーション等の結果は、前提条件が異な
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7
2010 年 5 月 25 日
1973 年度、業界需要成長率見通しは 1978 年度)以来最大である。業種別
に見ても、多くの業種で需要見通しが上方修正されている(33 業種中 28
業種が上方修正)
。
設備投資動向を見通す
企業が見込んでいる向こう 3 年間の経済成長率・業界需要成長率の平均値
上では、期待成長率の
は前者が+1.0%、後者が+0.5%と決して高い値ではない。ただし今後の景
水準ではなく修正幅が
気動向、特に設備投資の動向を見通す上では、<1>全体平均での上方修正
重要
幅が過去最大である点、<2>ほとんどの業種で需要見通しが上方修正とな
っている点が、期待成長率の水準そのものよりも重要と考えられる。
期待成長率の加速度と
より厳密に言うと、企業は設備投資を行う際に足下の生産実績ではなく将
設備投資の関係
来予想される生産水準を参照していると考えられる。将来予想される生産
水準に応じて生産能力の水準を決めるのだとすると、予想生産量の伸び(期
待成長率)は生産能力の伸び(設備投資の水準)に影響を及ぼすことにな
る。この場合、設備投資の伸び率に影響するのは、期待成長率の加速/減
速度合いである。実際、企業による実質業界需要の成長率見通し(今後 3
年間の平均)の前年度調査からの修正幅(期待成長率の加速度)と、設備
投資伸び率は似通った動きをしている(図表 2-2)。直近の期待成長率が過
去最大の上方修正幅となったことは、今後設備投資が高い伸び率となる可
能性を示す結果と捉えられる。
(図表 2-2) 企業の期待成長率の加速度(前年差)と
設備投資の伸び率
(図表 2-1) 稼働率と機械受注
(%)
(年率兆円)
(前年差 %ポイント)
(前年比 %)
16
1.2
20
15
0.9
16
85
14
0.6
12
80
13
0.3
8
0.0
4
75
12
-0.3
0
70
11
-0.6
-4
65
10
-0.9
-8
60
9
-1.2
-12
55
8
95
コア機械受注(右軸)
90
実稼働率(左軸)
-16
-1.5
各年初時点での企業の期待成長率の修正幅(左軸)
7
50
-1.8
-20
各年の実質設備投資(右軸)
(年)
45
91
93
95
97
99
01
03
05
07
09
-24
-2.1
6
11 (年)
80
(注)1.製造業稼働率は、稼働率指数を実稼働率に換算したもの。
2.稼働率の 2010 年 4 月以降の値は野村證券金融経済研究所の鉱工業生産
予測値に基づく試算値。
3.機械受注の細線は実績値、太線は 3 カ月移動平均値。
(出所)経済産業省資料より野村證券金融経済研究所作成
82
84
86
88
90
92
94 96
98
00
02
04
06
08
10
(注)1.企業の期待成長率は『企業行動に関するアンケート調査』(内閣府)におけ
る実質業界需要の成長率見通し(今後 3 年間の平均)。
2.『企業行動に関するアンケート調査』の調査時点は各年度最終四半期近
辺。図中では、調査時点の暦年で表示。例えば、2009 年度調査の結果は
2010 年として示している。
3.実質設備投資は GDP 統計ベースの暦年値。
(出所)内閣府資料より野村證券金融経済研究所作成
野村證券株式会社 金融経済研究所 〒100-8130 東京都千代田区大手町 2-2-2 アーバンネット大手町ビル
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る場合、別の手法による場合等においては、異なる結果になることがあります。また、当該結果は将来の結果を保証するものではありません。このレポートは、提供
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8
2010 年 5 月 25 日
家計消費には慎重な見
家計消費に関しても、徐々に自律回復の兆しが表れ始めている。実質家計
方も依然見られる
消費は 2009 年 4-6 月以降、
4四半期連続で上昇しているにもかかわらず、
依然として慎重な見方がある。背景には、この間、総賃金が概ね横這いに
留まる中で、家計消費はエコポイントやエコカー買い換え補助制度と言っ
た政策効果によって押し上げられて来たことが挙げられる。実質家計消費
支出の財・サービス別前期比寄与度を確認すると、2009 年 4-6 月期以降の
消費拡大の大部分を耐久財支出が占めている。同時期にエコカー購入補助
制度やエコポイント制度などが実施されており、これらの対象品目である
耐久財への支出が個人消費を押し上げて来たことは間違いないだろう。
今年に入り、家計消費
注目されるのは、今年に入って政策効果の恩恵を直接受けない品目へと、
は広がりを見せ始めた
消費が広がりを見せ始めた点だ。全体の消費動向に比べて景気に対する感
応度の高い品目として、外食、衣服、教育関係費が挙げられる(図表 2-3)
。
家計調査におけるこれらの品目への支出を見ると、いずれも前年比プラス
の伸びへと浮上していることがわかる(図表 2-4)。つまり、個人消費は、
政府の消費刺激策による効果のみではなく、景気回復を受けて自律的な回
復過程へ移行し始めたと考えられる。
(図表 2-3) 品目別支出の全体の消費支出との
相関係数(外食、衣服、教育関係費)
(図表 2-4) 品目別支出の推移
(外食、衣服、教育関係費)
(前年比、%)
8
(相関係数)
0.9
外食
衣服
0.8
消費支出
外食
衣服
教育関係費
6
教育関係費
4
2
0.7
0
0.6
-2
-4
0.5
-6
0.4
-8
-10
0.3
-4
-3
←先行
-2
-1
0
1
ラグ(四半期)
2
3
07
4
遅行→
(注)1.当該品目への支出を全体の消費支出で回帰し、自由度修正済決定係数
を示したもの。ラグはマイナスの場合、当該品目への支出が先行してい
ることを示し、プラスの場合、当該品目への支出が遅行していることを示
す。●は相関係数が最大となる時点。
2.外食は学校給食を除く。衣服は洋服、シャツ・セーター類、下着類を合計
したもの。「教育関係費」は、学校給食や制服、通学定期代など、教育に
直接的、間接的に必要とされる諸経費を、大費目の「教育」に加えたも
の。
3.該当する品目の消費者物価指数によって実質化。
4.データは農林漁家世帯を含む二人以上の全世帯。
(出所)総務省資料より野村證券金融経済研究所作成
当面は政策効果の影響
から攪乱され易いが
08
09
10
(年)
(注)1.外食は学校給食を除く。衣服は洋服、シャツ・セーター類、下着類を合計
したもの。「教育関係費」は、学校給食や制服、通学定期代など、教育に
直接的、間接的に必要とされる諸経費を、大費目の「教育」に加えたも
の。
2.該当する消費者物価指数により実質化。
3.農林漁家世帯を含む二人以上の全世帯。
(出所)総務省資料より野村證券金融経済研究所作成
今後の消費動向は、引き続き政府経済政策の影響により攪乱されやすい状
況が続こう。年明け以降、政策効果は徐々に減退しつつあるが、9月末に
はエコカー購入補助制度が、12 月末にはエコポイント制度が終了する予定
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9
2010 年 5 月 25 日
である。このため、制度終了の前後には駆け込み需要とその反動が消費の
攪乱要因となることが見込まれる。また、6 月には「子ども手当」の支給
が開始され、消費を刺激することも期待される。一方、国内での厳しい財
政状況を背景に、来年度の子ども手当の支給増額は見送られる公算が高ま
っている。この点を勘案し、来年度に関しては子ども手当の支給増額見送
りをメインシナリオとした。
雇用環境の改善が消費
ただし、既に消費の裾野が拡大し始めたことから示唆されるように、雇用
に寄与する見込み
環境の改善を反映して、各種政策効果剥落後も家計消費は比較的堅調に推
移する可能性が高まっている。
雇用者数は、2009 年 7-9 月期に前期比+0.3%
と持ち直し、10-12 月期には同-0.1%と足踏みしたが、2010 年 1-3 月期に
は同+0.6%と増加した。雇用者数の先行指標である新規求人倍率も、09 年
7-9 月期(0.76 倍)を底に順調に持ち直すなど、雇用環境は改善している。
雇用増加の初期局面では、賃金の安価な非正規が中心となるため一人当た
り賃金は伸び悩むことが想定されるものの、2007 年より3年間にわたった
下落局面を脱し、増加局面へと転じる見通しである(図表 2-5)
。一人当た
り賃金が下げ止まり、上昇へと転じることで、家計景況感の改善が促され、
消費の下支え要因として作用することが見込まれる。
政策効果剥落による下
家計消費の下振れリスクとしては、政策効果の剥落が予想以上に消費抑制
振れとボーナス効果に
方向に働く可能性が挙げられる。一方で、上振れ要因としては、ボーナス
よる上振れリスク
支給の回復が挙げられる。前回の景気回復局面でも、2002 年度の企業業績
回復の恩恵が、2003 年度のボーナスに反映された結果、4-6 月期には一時
的に賃金が上昇している。2010 年度・2011 年度の企業業績見通しを踏ま
えれば、2009 年度に激減したボーナスが回復し、消費の一時的な上振れ要
因となることが見込まれる(図表 2-6)
。
(図表 2-5) 一人当たり賃金の推移
(図表 2-6) 経常利益と一人当たり賞与推計
(前年比 %)
(万円)
185
5
4
3
正規雇用者要因
非正規雇用者要因
非正規雇用比率要因
一人あたり賃金
(兆円)
36
当社推計
32
180
当社試算
一人当たり賞与(左軸)
175
28
170
24
0
165
20
-1
160
16
155
12
150
8
2
1
-2
-3
-4
145
-5
(年)
-6
4
経常利益(左軸)
140
94 95 96 97 98 99 00 01 02 03 04 05 06 07 08 09 10 11 12
(出所)総務省、厚生労働省資料より野村證券金融経済研究所作成
90
92
94
96
98
00
02
04
06
08
0
10 (年度)
(注)一人当たり賞与は経団連調査による。
(出所)経団連、財務省資料より野村證券金融経済研究所作成
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このレポートは、作成日現在におけるマクロ経済全般についての情報提供を唯一の目的としており、有価証券等の勧誘を目的としているものではありません。なお、
このレポートに記載されている情報は、当社が信頼できると考える情報源に基づいたものですが、正確かつ完全であることを当社が保証するものではありません。こ
のレポートに記載された意見、経済全般の実績、評価又は将来動向の表示等は、作成日時点におけるものであり、予告なく変わる場合があります。この資料には、特
定の前提条件の下に特定の手法により導き出されたシミュレーション、試算等が示されている場合があります。これらシミュレーション等の結果は、前提条件が異な
る場合、別の手法による場合等においては、異なる結果になることがあります。また、当該結果は将来の結果を保証するものではありません。このレポートは、提供
させていただいたお客様限りでご使用いただきますようお願い申し上げます。
10
2010 年 5 月 25 日
(3) 市場コンセンサスに残される上方修正余地
市場コンセンサス予想
我々の予想と市場コンセンサス予想と比較すると、2010 年度・2011 年度
に対して野村予想は強
共に我々の方が日本経済に対し強気である。我々の予想とコンセンサス予
気
想の違いを浮き彫りにするため、金融危機発生前のピークから発生後のボ
トムにかけての実質 GDP 及び各需要項目・指標の落ち込み分が、2011 年
末までにどれだけ取り戻されるか(2011 年末 GDP/ボトム÷金融危機前の
ピーク/ボトム)を、我々とコンセンサス予想の両者に対して計算した結
果が図表 3-1 に示されている。
最大の違いは設備投資
この結果を見ると、我々は実質 GDP が 2011 年末時点で、金融危機後の落
に対する見方
ち込み分の 93.2%を取り戻すと予想しているのに対し、コンセンサス予想
では、83.9%に留まると見ていることが分かる。需要項目毎の「回復進捗
度」を見ると、最大の違いは設備投資に対する見方の違いである。ここで
注意したいのは、コンセンサス比で見ると我々の設備投資見通しは強気だ
が、輸出や生産に匹敵するような大幅な回復を見込んでいるわけではない
という点である。野村予想に従うと、輸出・生産は 2011 年度末までに直
近の落ち込み分の 9 割超を取り戻す形になるが、設備投資の戻りは 65.6%
である。むしろ、景気のボトム(2009 年 1-3 月期と想定)から 3 年を経過
しても、設備投資が落ち込み分の 38.1%を取り戻すに過ぎないというコン
センサス予想は弱気過ぎるように感じられる。
(図表 3-1) 日本の景気回復ペースの見通し(「コンセンサス予想」と「野村予想」)
[コンセンサス予想]
08年以前の 直近のボトムか
ピークからボト ら11年度末に
ムにかけての かけての上昇
下落幅
幅
ピーク÷ボトム 11年末予測値÷ボトム
①
②
%
%
実質GDP
[野村予想]
08年以前の 直近のボトムか
ピークからボト ら11年度末に
ムにかけての かけての上昇
下落幅
幅
ピーク÷ボトム 11年末予測値÷ボトム
①
②
%
%
回復進捗度
②÷①
%
9.4
7.9
83.9
個人消費
3.8
4.9
130.6
設備投資
32.1
12.3
輸出
57.4
住宅投資
鉱工業生産
実質GDP
回復進捗度
②÷①
%
9.4
8.7
93.2
個人消費
3.8
4.4
116.7
38.1
設備投資
32.1
21.1
65.6
54.9
95.7
輸出
57.4
54.8
95.5
32.3
10.7
33.3
住宅投資
32.3
14.4
44.6
47.6
41.2
86.7
鉱工業生産
47.6
43.9
92.2
(注)1.コンセンサス予想は ESP フォーキャスト調査(2010 年 5 月)に基づく。
2.回復進捗度は世界金融危機前のピークからボトムまでの落ち込み幅が、2011 年末までに何%取り戻されるかを計算したもの。
(出所)各種資料より野村證券金融経済研究所作成
野村予想は、輸出・生
我々は、今後の設備投資回復を見込む背景として特別なことを想定してい
産の回復に伴う設備投
資の回復を予想
に設備投資にも波及すると考えている。例えば、日本の実稼働率は輸出・
るわけではない。簡単に言えば、輸出・生産の回復が時間差を伴いつつ徐々
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このレポートは、作成日現在におけるマクロ経済全般についての情報提供を唯一の目的としており、有価証券等の勧誘を目的としているものではありません。なお、
このレポートに記載されている情報は、当社が信頼できると考える情報源に基づいたものですが、正確かつ完全であることを当社が保証するものではありません。こ
のレポートに記載された意見、経済全般の実績、評価又は将来動向の表示等は、作成日時点におけるものであり、予告なく変わる場合があります。この資料には、特
定の前提条件の下に特定の手法により導き出されたシミュレーション、試算等が示されている場合があります。これらシミュレーション等の結果は、前提条件が異な
る場合、別の手法による場合等においては、異なる結果になることがあります。また、当該結果は将来の結果を保証するものではありません。このレポートは、提供
させていただいたお客様限りでご使用いただきますようお願い申し上げます。
11
2010 年 5 月 25 日
生産が急速に回復したことを受け、2009 年 2 月(49.8%)に底を打ち、直
近 2010 年 3 月の 72.0%まで一本調子で上昇した。今後も輸出・生産が堅
調に推移するとの見通し(この点は野村予想もコンセンサス予想も同じ)
に従えば、こうした稼働率の上昇基調は持続する公算が大きい。こうした
中、稼働率と機械受注(船舶・電力を除く民需、以下コア機械受注)が高
い相関を有している点を踏まえれば、設備投資の増加を見込むのが自然で
はないか(図表 3-2)。
コンセンサス予想では
試みに、野村予想及びコンセンサス予想に従って GDP 統計ベースの設備
90 年代以降の景気底
投資が動いた場合に、コア機械受注がどのように推移するかを推計してみ
入れ時まで設備投資が
ると、2012 年 1-3 月期のコア機械受注は野村予想で年率 10.9 兆円、コン
回復しない
センサス予想で同 9.8 兆円との結果が得られた。先行き、稼働率上昇の後
を追う形でコア機械受注は着実に増加すると我々が想定しているのに対し、
コンセンサス予想は稼働率が上昇してもコア機械受注の回復は極めて緩慢
なものに留まり、2011 年度末でも IT バブル崩壊後やアジア金融危機後の
最低値にすら届かないと想定していることになる。
(図表 3-2) 稼働率と機械受注
(%)
(年率兆円)
95
16
90
15
85
14
80
13
75
12
70
11
65
10
60
9
実稼働率(左軸)
実稼働率推計値(左軸)
55
8
コア機械受注(右軸)
コア機械受注(移動平均値、右軸)
50
7
コア機械受注推計値(野村予想、右軸)
コア機械受注推計値(コンセンサス予想、右軸)
45
6
91
93
95
97
99
01
03
05
07
09
11
(注)1.製造業稼働率は、稼働率指数を実稼働率に換算したもの。
2.稼働率の 2010 年 4 月以降の値は野村證券金融経済研究所の鉱工業生産予測値に基づく試算値。
3.機械受注の細線は実績値、太線は 3 カ月移動平均値。
4.コア機械受注推計値は、コア機械受注と設備投資(GDP 統計ベース)の過去の相関を用いて、先行きを延
長推計したもの。「野村予想」では野村證券金融経済研究所の設備投資予測値、「コンセンサス予想」では
ESP フォーキャスト調査における設備投資予測値のコンセンサスを用いて延長推計している。
(出所)経済産業省資料より野村證券金融経済研究所作成
コンセンサス予想は、
コンセンサス予想が正しいとすると、生産の回復や稼働率の上昇が生じて
生産・稼働率の上昇に
も設備投資がそれほどは追随しないといった事態(日本経済が趨勢的に成
設備投資が追随しない
事態に
長率を低下させていった 1990 年代にすら生じなかった事態)を発生させ
る何らかの要因が存在していることになる。概念的には、<1>生産回復、
稼働率上昇が生じても企業マインドは冷え込んだ状態が続き(成長期待が
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12
2010 年 5 月 25 日
高まらず)
、設備投資が抑制されるケース、<2>企業が設備投資を専ら海外
で行うようになり、国内での設備投資は増加しないケース、が考えられる。
しかし、企業の期待成
しかし、既に前項で指摘したように、<1>のケースは実際のデータに照ら
長率は大幅に改善して
し合わせると現実味が乏しい。業界需要の実質成長率見通し(今後 3 年間
いる
の平均)は、前回調査から+0.7%ポイント上方修正されている。この修正
幅は、調査開始以来最大である。企業は 2009 年 4-6 月期以降の景気回復
を受けて、成長期待を好転させていると考えられる。
海外での設備投資を加
なお、<2>のケースについては、確かに昨今、企業が海外への生産設備の
速させる動きも観測さ
移設や海外での設備投資拡充を計画しているとの報道を目にすることがし
れない
ばしばある。しかし、この点を以って今後の国内設備投資動向に過度に悲
観的になる必要はないと我々は判断している。重要なポイントとしては、
1)今後予想される更新投資中心の設備投資増加局面では、国内の既存生産
設備を対象とした投資が行われるため、「海外流出」が起こり難い、2)企業
は向こう数年間、生産設備の海外への移管を従来に比べて加速させるとの
計画を立てていない(図表 3-3)、3)そもそも、日本企業の海外設備投資は
総設備投資の 1 割強に過ぎず、海外への流出が国内設備投資を抑制する度
合いは限定的である(図表 3-4)、といった点が挙げられる。
(図表 3-4) 日本企業の総設備投資に占める
海外設備投資の割合
(図表 3-3) 日本企業の海外生産比率
(%)
(%)
22.5
22.5
2 0 .1
2 1 .0
20.0
2 0 .0 2 0 .4
20.0
1 9 .6 1 9 .5
1 7 .4 1 7 . 8
1 7 .31 7 .3
17.5
1 7 .9
製造業
17.5
1 5 .2
15.0
1 4 .0
1 3 .7
1 3 .2
1 3 .1
1 6 .1
1 5 .8
1 5 .4
1 5 .0
15.0
1 6 .6
1 6 .3
1 5 .1
12.5
1 2 .9
1 1 .1
1 0 .5
1 0 .2
9
.3
9 .1
10.0
1 2 .7
12.5
1 1 .3
10.0
7.5
6 .1
8 .7 8 .7
5 .4
3 .2
2.5
8 .2
8 .1
7 .6
7 .8
8 .2 8 .1
6 .3
2 .6 2 .4
5.0
0.0
86 87 88 89 90 91 92 93 94 95 96 97 98 99 00 01 02 03 04 05 06 07 08 09 (予)14
(年度)
(注)1.『平成 21 年度企業行動に関するアンケート調査報告書』に基づく。
2. 2014 年度は企業計画。
(出所)内閣府資料より野村證券金融経済研究所作成
コンセンサス予想は現
実味に乏しい
8 .8
8 .5
7.5
3 .8
1 0 .2
9 .6
9 .4
9 .1
1 0 .3
全産業
9 .9
6 .6
4 .64 .6
5.0
1 1 .7
1 1 .1
8 .1
5 .3
5 .7
(年度)
2.5
86 87 88 89 90 91 92 93 94 95 96 97 98 99 00 01 02 03 04 05 06 07 08
(注)1.国内設備投資は『法人企業統計』、海外設備投資は『海外事業活動基本調
査』の値。両者の合計を総設備投資とした。
2.2008 年度の海外設備投資は、『海外現地法人四半期調査』に基づく野村證
券金融経済研究所の推定値。
(出所)財務省、経済産業省資料より野村證券金融経済研究所作成
以上のように、我々の経済見通しはコンセンサス比で強気であり、その差
は主に設備投資の見方の違いに起因している。輸出・生産の回復、稼働率
の上昇基調が続く中、設備投資がそれらに追随して増加するというのが野
村予想、設備投資の増加は緩慢なものに留まるというのがコンセンサス予
野村證券株式会社 金融経済研究所 〒100-8130 東京都千代田区大手町 2-2-2 アーバンネット大手町ビル
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13
2010 年 5 月 25 日
想である。コンセンサス予想が示唆しているのは、生産が回復し、稼働率
が着実に上昇しても設備投資への波及は極めて限定的という(1990 年代に
も見られなかった)日本経済の姿であるが、前述のように、こうした事態
を生み出すメカニズムは現時点では想定し難いと我々は考えている。
(4) 日銀は金融緩和姿勢を継続
コア CPI は 2011 年半
堅調な景気回復の恩恵を受けて、日本経済に根強く残存してきたデフレ圧
ばにゼロ近傍へ上昇す
力は徐々に解消に向かう公算が高まっている。インフレ率は、高校授業料
る見通し
の実質無償化等の政策の影響を受け、2010 年中は下振れることが予想され
る。ただし、潜在成長率を上回るペースでの景気回復が持続する結果、需
給ギャップ((現実の GDP-潜在 GDP)/(潜在 GDP))は急速に縮小し、
2011 年半ば前後には概ねゼロ%近傍へと回帰する見通しだ。
日銀も同様の見方
この我々の見通しは、日銀の見方とも概ね一致している。4 月 30 日に公表
された『展望レポート』で日銀は、2010 年度のコア CPI 見通しを前年比
-0.5%(政策効果を含まない値)に据え置いた一方で、2011 年度に関して
は前回 1 月から上方修正し同+0.1%と、来年度にはデフレ脱却が視野に入
るとの見方を示した。
(図表 4-1) 消費者物価指数の見通し
(前年比 %)
3
(図表 4-2) 日銀の「政策委員会の大勢見通し」
実質GDP
予測値
2009年度
2
2010年4月
公立高校授業料の無償化
私立高校授業料の減額
診療報酬の引上げ
1
2010年1月時点の見通し
2009年10月時点の見通し
2010年度
0
2010年1月時点の見通し
-1
2009年10月時点の見通し
エネルギー
2010年10月
たばこ税の引上げ
食料(除く酒類)
-2
2010年6月
高速道路の一部無料化
コアCPI(制度要因を除く)
コアCPI
2010年1月時点の見通し
1月
2月
3月
4月
5月
6月
7月
8月
9月
10月
11月
12月
1月
2月
3月
4月
5月
6月
7月
8月
9月
10月
11月
12月
1月
2月
3月
4月
5月
6月
7月
8月
9月
10月
11月
12月
1月
2月
3月
4月
5月
6月
7月
8月
9月
10月
11月
12月
1月
2月
3月
4月
5月
6月
7月
8月
9月
10月
11月
12月
1月
2月
3月
-3
2011年度
コアコアCPI
2007年
2008年
2009年
2010年
2009年10月時点の見通し
-2.2~-2.1
<-2.2>
-2.5~-2.5
消費者物価指数
(除く生鮮食品)
-1.6
-1.5~-1.5
<-2.5>
<-1.5>
-3.3~-3.2
-1.5~-1.5
<-3.2>
<-1.5>
+1.6~+2.0
-0.5~-0.2
<+1.8>
<-0.5>
+1.2~+1.4
-0.6~-0.5
<+1.3>
<-0.5>
+0.8~+1.3
-0.9~-0.7
<+1.2>
<-0.8>
+2.0~+2.2
-0.1~+0.2
<+2.0>
<+0.1>
+1.7~+2.4
-0.3~-0.1
<+2.1>
<-0.2>
+1.6~+2.4
-0.7~-0.4
<+2.1>
<-0.4>
2011年 2012年
(注)1.エネルギーは電気代、都市ガス代、プロパンガス、灯油、ガソリン。
2.予測の前提は、10 年度、11 年度について WTI が 90.0 ドル/バレル、99.8
ドル/バレル、円ドルレートが 95.5 円/ドル、91.0 円/ドル。2010 年 4 月以
降、公立高校授業料の無償化、私立高校授業料の減額、診療報酬の引
き上げが行われると想定。2010 年 6 月以降、一部高速道路無料化が行
われると想定。2010 年 10 月以降、たばこ税の引上げが行われると想
定。
3.コアコアCPIは、食料(酒類を除く)及びエネルギーを除く総合指数。
(出所)総務省、厚生労働省資料より野村證券金融経済研究所作成
(注)1.値は、前年度比%、なお、<>内は政策委員見通しの中央値。
2.各政策委員は、政策金利について市場金利に織り込まれたとみられる
市場参加者の予想を参考にしつつ、上記の見通しを作成している。
3.「大勢見通し」は、各政策委員が最も蓋然性の高いと考える見通しの数
値について、最大値と最小値を 1 個ずつ除いて、幅で示したものであり、
その幅は、予測誤差などを踏まえた見通しの上限・下限を意味しない。
4.2009 年度について、実質GDPは政策委員の見通し。消費者物価指数
(除く生鮮食品)は実績値。
(出所)日本銀行資料より野村證券金融経済研究所作成
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14
2010 年 5 月 25 日
ただし、追加緩和策実
ただし、日銀は引き続き緩和姿勢を続け、追加緩和策が実施される可能性
施の可能性は残存
は残されていると考えている。その背景として、1)足下で依然として金融
市場の混乱が続いており、依然として急速な円高や株価急落リスクが残さ
れていること、2)2009 年 12 月に日銀が明確にした「物価安定の理解」
(消
費者物価指数の前年比で 2.0%以下のプラスの領域にあり、1.0%程度を中
心と考えている)で想定したレベルまでのインフレ率の上昇が視野に入っ
ていないこと、3)政府からの追加緩和要請が高まっており、日銀も政府
と共同歩調をとる姿勢を示していること、等が挙げられる。
日銀は成長基盤強化の
特に 3)の点に関する動きとして、日銀は「成長基盤の強化に貢献する」
貢献へ踏み出した
として新たな資金供給策の検討を進めていることが注目される。これは、
明らかに政府が現在とりまとめを行っている「成長戦略」を意識した措置
であろう。
中銀としては異例の措
5 月 21 日に公表された新たな融資制度の骨子案によれば、従来の共通担保
置
オペと同様の方式、貸付利率は政策金利(現行 0.1%)
、貸付期間は原則1
年で借り換え(ロールオーバー)も可能、となっている。今後は各金融機
関の取り組み状況を踏まえ、貸付総額、貸付受付期限、借り換え可能回数
を定めるとしている。詳細に関しては今後の発表を待たなければならない
が、白川総裁は 4 月 30 日の記者会見で、
「(対象事業としては)イノベー
ションを促進するような研究開発、科学技術振興、環境エネルギー事業な
ど様々なものが考えられる」と指摘しており、仮に日銀が特定産業向けの
投融資を対象とした資金供給にまで踏み込むならば、中央銀行としては異
例の措置と言える。
(図表 4-3) CPI と潜在成長率
(%)
5.0
潜在成長率 (左軸)
(図表 4-4) 日本の短期金利動向
CPI(食料・エネルギー を除く、右軸)
4.5
1.2
6
円LIBOR12ヶ月金利
5
4.0
1.0
4
3.5
3.0
3
2.5
2
2.0
1
0.8
0.6
1.5
1.0
0.4
0
0.2
-1
0.0
無担保コールO/N金利
0.5
0.0
(%)
(前年比 %)
-2
81 83 85 87 89 91 93 95 97 99 01 03 05 07 09 (年)
-0.2
2005 2005 2006 2006 2007 2007 2008 2008 2009 2009 2010 (年)
(注)OECD(経済協力開発機構)資料より野村證券金融経済研究所作成
(注)LIBOR:ロンドン銀行間金利、O/N:オーバーナイト金利。
(出所)ブルームバーグより野村證券金融経済研究所作成
野村證券株式会社 金融経済研究所 〒100-8130 東京都千代田区大手町 2-2-2 アーバンネット大手町ビル
このレポートは、作成日現在におけるマクロ経済全般についての情報提供を唯一の目的としており、有価証券等の勧誘を目的としているものではありません。なお、
このレポートに記載されている情報は、当社が信頼できると考える情報源に基づいたものですが、正確かつ完全であることを当社が保証するものではありません。こ
のレポートに記載された意見、経済全般の実績、評価又は将来動向の表示等は、作成日時点におけるものであり、予告なく変わる場合があります。この資料には、特
定の前提条件の下に特定の手法により導き出されたシミュレーション、試算等が示されている場合があります。これらシミュレーション等の結果は、前提条件が異な
る場合、別の手法による場合等においては、異なる結果になることがあります。また、当該結果は将来の結果を保証するものではありません。このレポートは、提供
させていただいたお客様限りでご使用いただきますようお願い申し上げます。
15
2010 年 5 月 25 日
当面、政策効果は限定
日銀はこれまでもデフレの主因として、生産性・潜在成長率の低下に言及
的とみられる
してきた。今回、日銀が中央銀行としては異例ながらも、潜在成長率の向
上に貢献する姿勢を示したことは十分評価できよう。ただし、足下で企業
の資金需要が低迷していることを踏まえれば、今回のオペが銀行の貸出行
動や債券相場に与える影響は軽微なものに留まろう。本格的に政策効果の
発揮が期待されるのは、一段と景気回復期待が高まる、あるいは企業の資
金需要が回復する等の条件が満たされ、市場で金利上昇圧力が台頭する、
あるいは利上げ期待が高まるような状況であろう。我々は、日銀の利上げ
は 2012 年以降になると予想している。
(5) 政府が取り組む二つの課題
「財政再建」と「成長
政府は、日本経済が抱える中長期的課題として、
「財政再建」と「成長戦略」
戦略」
を挙げている。両者とも6月中には具体的な目標・政策を公表する予定で
ある。
日本の財政状況は、主
今回のギリシャを発端としたソブリン(政府債務)リスクの台頭は、財政
要国中最悪
再建の必要性を強く意識させるものであった。日本の財政状況が、先進国
中で最悪な状況にあることは論を待たない。IMF(国際通貨基金)は 5 月
14 日に公表したレポートで、日本政府が何ら財政再建策を講じない場合、
2015 年には政府債務残高が GDP 比で 250%に達するとの見通しを明らか
にした。これは、同レポートに掲載されている 56 ヶ国中、先進国・新興
国を含め最も高い値である。同じく 2015 年の財政赤字見通しは、同 7.3%
と先進国ではスペイン(ただし 5 月 10 日に公表された追加支出削減策は
反映されていない)に次ぐ高水準にある。
(図表 5-1) 各国の財政状況比較(IMF 見通し)
(政府債務残高;対名目GDP比、%)
300
250
日本
200
ギリシャ
150
米国
イタリア
100
ポルトガル
英国
50
スペイン
0
-16
-14
-12
-10
-8
-6
-4
-2
0
(財政収支;対名目GDP比、%)
(注)1.データは 2009 年から 2011 年と 2014 年、2015 年。白抜きは 2015 年。
2.ポルトガル、スペインは 5 月 10 日に発表された追加削減策を反映していない。
(出所)IMF(国際通貨基金)資料より野村證券金融経済研究所作成
野村證券株式会社 金融経済研究所 〒100-8130 東京都千代田区大手町 2-2-2 アーバンネット大手町ビル
このレポートは、作成日現在におけるマクロ経済全般についての情報提供を唯一の目的としており、有価証券等の勧誘を目的としているものではありません。なお、
このレポートに記載されている情報は、当社が信頼できると考える情報源に基づいたものですが、正確かつ完全であることを当社が保証するものではありません。こ
のレポートに記載された意見、経済全般の実績、評価又は将来動向の表示等は、作成日時点におけるものであり、予告なく変わる場合があります。この資料には、特
定の前提条件の下に特定の手法により導き出されたシミュレーション、試算等が示されている場合があります。これらシミュレーション等の結果は、前提条件が異な
る場合、別の手法による場合等においては、異なる結果になることがあります。また、当該結果は将来の結果を保証するものではありません。このレポートは、提供
させていただいたお客様限りでご使用いただきますようお願い申し上げます。
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2010 年 5 月 25 日
政府は「財政運営戦略」 世界的な金融危機以降、サミットを中心とした国際会議の場では、景気回
と「中期財政フレーム」 復に向けた政策対応と並んで財政健全化に向けた議論が高まっている。し
を策定中
かし、日本は OECD 加盟国の中でも中期的な財政再建計画を持たない数少
ない国の一つだ。このため、政府は国家戦略室が中心となって 2011 年度
から 2013 年度までの歳出の大枠を定める「中期財政フレーム」と、中長
期的な財政健全化の道筋を示す「財政運営戦略」の策定を進めている。
4 月に公表された有識者による「論点整理」に着目すると、<1>財政運営戦
略を策定する前提として、
「ベースライン・シナリオ」を設定する、<2>そ
の前提として「プルーデント(慎重な)」な経済見通しを採用する、<3>財
政健全化目標として公的債務残高/GDP 比を安定的に縮減させていくこ
とを設定する、等の提案がなされている。また、財政規律を維持していく
ための財政運営ルールとして、<1>トップダウン型の予算編成方式、<2>
ペイアズユーゴー原則(恒久的な歳出増または減税は、恒久的な歳出削減
または歳入確保により、財源を確保するとの原則)
、<3>財政赤字(あるい
はプライマリー・バランス赤字)縮減ルール、<4>構造的財政赤字(ある
いは構造的プライマリー・バランス赤字)縮減ルール、の導入を促してい
る。
こういった財政再建路線の流れは、将来的には日本の財政状況に対する市
場の信任獲得に繋がることが期待できる。一方で、短期的には来年度の子
ども手当の支給見送り、各種所得控除の見直し、事業仕分けの強化等を通
じた歳出の削減を促し易く、景気に対して下押し方向に働くリスクが高い
点には注意が必要だ。
(図表 5-3) 名目 GDP 成長率と財政状況
(図表 5-2) 財政運営戦略のイメージ
ゴール/マイルストーン(例)
(兆円)
20
達成目標時期
基礎的財政収支(左軸)
④公的債務残高の対GDP比を安
定的に縮減させる。(ストック目標)
○○年度
=所要のプライマリー・バランス黒
字を達成。(フロー目標)
10
財政収支(左軸)
8
名目GDP成長率(右軸)
③プライマリー・バランスの均衡を
○○年度
達成。
②プライマリー・バランス赤字(対G
○○年度
DP比or 金額)を半減。
①2011~13 年度の3年間におい
て、後述のような中期財政フレー
ムを設定。
(前年度比、%)
10
(2013 年度)
0
6
-10
4
-20
2
-30
0
-40
-2
-50
-4
(年度)
-60
1990 1992 1994 1996 1998 2000 2002 2004 2006 2008 2010
(注)フロー目標については、プライマリー・バランス(基礎的財政収支)に代えて財
政収支を用いることも考えられる。(例えば EU は財政収支赤字の対 GDP 比
-3%以内が基準。)
(出所)国家戦略室
(注)2009 年度、2010 年度は内閣府推計値。
(出所)内閣府、財務省資料より野村證券金融経済研究所作成
野村證券株式会社 金融経済研究所 〒100-8130 東京都千代田区大手町 2-2-2 アーバンネット大手町ビル
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定の前提条件の下に特定の手法により導き出されたシミュレーション、試算等が示されている場合があります。これらシミュレーション等の結果は、前提条件が異な
る場合、別の手法による場合等においては、異なる結果になることがあります。また、当該結果は将来の結果を保証するものではありません。このレポートは、提供
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-6
2010 年 5 月 25 日
「財政再建」のために
振り返ってみれば、過去にも「改革と展望」、「基本方針」として、幾度と
は財政規律の強化と安
なく財政健全化目標が掲げられてきた。2004 年度以降は、小泉政権下にお
定した成長が必要
ける財政再建路線の下、1999 年度には 30.1 兆円あった基礎的財政収支の
赤字を 2007 年度には 6.4 兆円まで縮小させた。ただし、その後は景気の
大幅な悪化受けた税収の落ち込みと経済対策による歳出の拡大から、2009
年度には 40.6 兆円へと拡大、2010 年度も 33.5 兆円の赤字となる見込みで
ある。過去の経験は、財政再建を達成するためには、財政規律の強化に加
え、安定した経済成長が重要であることを示している。
注目される「アジア経
政府は既に、中長期的な日本経済の成長力向上に向けた取り組みを始めて
済戦略」
いる。現在は、昨年 12 月 30 日に発表した基本方針を基に、
「新経済成長
戦略」の具体案の取りまとめが行われている。成長戦略の全容を確認する
には 6 月まで待たなければならないが、個別の項目についてはある程度の
方向性を見出すことができる。特に注目を集めているのは「アジア経済戦
略」である。この点に関しては、既に 2010 年度予算にも盛り込まれ、実
施に向けて動き始めている。国土交通省による羽田の 24 時間国際拠点空
港化には、2009 年度補正予算も合わせると 1,441 億円もの予算が決定し、
外務省が掲げる二国間経済連携協定(EPA)の推進やアジア太平洋自由貿
易圏(FTPPA)の構築などが組み込まれるなど、アジアの高成長の取り込
みに向けた枠組みが強く志向されている。
約 16 兆ドルのアジア
加えて、アジアでは現在、大規模なインフラ需要が生まれていることも大
きな注目を集めるきっかけとなっている。アジアの一人当たり GDP は日
のインフラ需要
本や欧米といった先進国に比べて低水準に留まり、インフラ整備の必要性
は先進国よりも依然として大きい。経済産業省資料によると、2005~2030
年にアジア・オセアニアで必要なインフラ投資額は約 16 兆ドル(およそ
1,600 兆円)と莫大な額の需要が見込まれている。
(図表 5-5) 世界のインフラ投資予測
【2005-2030 年、総額 41 兆ドル】
(図表 5-4) 一人当たり GDP の推移
(ドル)
50,000
(兆ドル)
18
45,000
40,000
世界計
日本
米国
ユーロ圏
アジア/オセアニア総額:約16兆ドル
(全体の約38%)
16
アジア
空港・港湾
14
35,000
12
30,000
10
25,000
鉄道・道路
電力
水道
8
20,000
6
15,000
4
10,000
2
5,000
0
アジア
/オセアニア
0
60
63 66
69 72
75
78 81
84
87 90
93
96 99
02 05
08
(出所)国際連合資料より野村證券金融経済研究所作成
北米
中南米
欧州
中東
アフリカ
(出所)経済産業省資料より野村證券金融経済研究所作成
野村證券株式会社 金融経済研究所 〒100-8130 東京都千代田区大手町 2-2-2 アーバンネット大手町ビル
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2010 年 5 月 25 日
政府系機関を利用した
既に各省庁では重点分野の選別を行い、官民一体となってアジアのインフ
具体的施策の検討が進
む
ラ需要獲得に向けて動き始めている。具体的には、経済産業省などが中心
となって、政府開発援助(ODA)や国際協力機構(JICA)、国際協力銀行
(JBIC)等の政府系機関を利用した金融面での企業支援を実施、それらを
拡張していくことを提案している。例えば、経済産業省は市場強化措置と
して、日本企業のインフラ事業運営にあたって、それ自体では採算性が見
込みにくい案件に対する途上国政府による財政支援(赤字補填、Viability
Gap Funding:VGF)向けの資金として ODA を活用する道を探っている。
これに基づき、インフラの建設を政府、運営を民間が行うという「上下分
離型インフラ整備」を行うことを提案している。
ただし、財政赤字の拡
また、JICA や JBIC を通じた、リスクの高い途上国での事業展開、新規投
大に繋がるリスクも
資に対する資金の融通、拡大が検討されている。こうした政府支援は、ア
ジアのインフラ整備関連の日本企業の受注獲得シェアを高めていくことに
寄与しよう。ただし、政府系機関による金融支援は財政赤字拡大につなが
る可能性もある。実際に、JICA の「海外投融資業務」は、相次ぐ損失によ
り 01 年に凍結された経緯がある。政府系金融機関の金融支援の運営には
慎重を期する必要があると考えられる。
インフラファンドの活
用
この点から注目されるのが、経済産業省等より提案されている「インフラ
ファンド」の組成支援である。インフラファンドとは民間資金を募集し、
有料道路や発電所などのインフラに特化して投資するファンドである。経
済産業省の提案は、政府がこのインフラファンドの組成を支援することに
よって、公的資金に頼らずにアジアのインフラ需要を獲得することを意図
している。
政府が「インフラファンド」の組成を支援する方法として、貿易保険の対
象をインフラファンドに広げ、アジア諸国におけるカントリーリスクを回
避できるようにすることが経済産業省等から提案されている。貿易保険は
投資対象国で生じる政治的問題や、予期せぬ政策変更による損失を補償の
対象としている。投資や融資とは異なり、通常の事業リスクは対象外であ
るため、この形での政府支援は財政赤字拡大にはつながりにくい。
「財政なき経済成長」
近年、アジア・新興国におけるインフラへの受注を獲得するため、日本は
を目指し、所得移転を
他国と激しい競争を強いられるようになっている。こうした中で、官民の
通じた経済成長率を高
協力強化という形で政府関与を強めていくのは重要なことと言える。しか
めることも可能
し、日本の財政状況を考える限り、中国やロシアのような手厚い支援を企
業に施すことは困難であり、支援には限界がある。そうした中で、経済産
業省等によって提案されているインフラファンドを利用し、「財政なき経
済成長」を推し進め、所得移転を通じて経済成長率を高める手法は、
「アジ
ア経済戦略」としてひとつの重要なポイントになると考えられる。
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2010 年 5 月 25 日
(図表 5-6) インフラファンドの設立・投資支援
(図表 5-7) 貿易保険業務の流れ
出資
年金基金
機関投資家
等
元険
受 引 ①保険料
受
)
インフラファンド
④保険金支払
(独)日本貿易保険
配当
再
保
険 ②再保険料
引
受
出資・融資
貿易保険
相手国政府による送金規制等の実施
取引等相手先
支払保証等
相手国政府
⑥政府間交渉により長期的に回収
経済産業省
(貿易再保険特別会計)
配当・金利
日本貿易保険
貿易保険
⑤再保険金支払
、
(
保険利用者
保 (商社、メーカー等)
収③
不輸
能出
等不
の能
事
故代
発金
生回
【保険契約の締結後】
① 日本貿易保険は保険契約に基づき被保険者から保険料を徴収
② 国は日本貿易保険が負う保険責任について再保険を引き受け、
日本貿易保険から再保険料を徴収
【保険事故が発生した場合③】
④ 日本貿易保険は保険契約に基づき被保険者に保険金を支払う
⑤ 国は日本貿易保険に対し再保険金を支払う
【保険金支払後の債権回収】
⑥ 被保険者及び日本貿易保険は債権回収を行い、支払再保険金
部分に係る回収金を国に納付
インフラ事業
(出所)経済産業省資料より野村證券金融経済研究所作成
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米国経済
2010 年 5 月 25 日
2010~11 年は緩やかな成長に
経済活動は強まりつつあるが、深刻な景気後退は米経済に需給の大幅緩和
という傷跡を残した。コアのインフレ率が前年比+1%以下まで低下してお
り、野村では米連邦準備制度理事会(FRB)が今後 12 カ月にわたり金融
政策を据え置くと予想している。
景気動向
景気回復の勢いは引き続き強まっている。個人消費と設備投資がともに目
覚しい回復をみせ、雇用情勢はようやく本格的な回復局面に入った模様だ。
こうした明るい材料にもかかわらず、
野村では 2010~11 年の米国経済は、
全般的に緩やかな成長にとどまると予想している。実質 GDP 成長率は 10
年 4-6 月期に加速するが、その後、前年同期比+2.5%~+3.0%へ減速しそ
うだ。第一に、「信用逼迫」が確かに終わったとは言え、家計や企業のディ
レバレッジ(債務削減)の動きは暫く続く可能性が高い。第二に、これま
で V 字型回復のけん引役を担ってきた住宅部門の回復ペースがさらに緩や
かとなる可能性が高い。第三に、これまでの財政刺激策が財政圧迫要因に
なる見込みである。09 年の米国経済復興・再投資法の景気刺激効果が年内
に薄れ始め、また、ブッシュ政権が打ち出した減税策の一部が 10 年末に
おそらく期限切れとなるからだ。さらに、州と地方政府が財政難に直面し
ている。
物価動向
失業率の高止まりに示されるように生産能力は過剰で、賃金や物価の下落
圧力となるが、この圧力はなかなか解消しないだろう。野村では、生産能
力の過剰が続く状況の下で、食品・エネルギーを除くコア消費者物価(CPI)
の前年比上昇率が低下を続け、10 年末までに前年比で+0.8%となり、11
年中にはさらに低下すると予想している。現在、インフレ期待は十分安定
している。
財政・金融政策
FRB は 11 年 6 月まで FF 金利を据え置くとみられる。このところの金融市
場の混乱で成長の下振れリスクは高まっているが、FRB が主要中央銀行と
通貨スワップ(交換)協定を再締結したことが混乱の深刻化に歯止めをか
ける一因となった。野村では、FRB は利上げ開始後も当分はバランスシー
トの縮小には着手せず、11 年後半、あるいはそれ以降にごく緩やかなペー
スで住宅ローン担保証券(MBS)の売却を進めると予想している。
リスク要因
欧州の財政危機が米金融市場に波及する可能性はある。しかし、一方で、
市場環境が早期に回復する場合、センチメント改善で潜在成長率を上回る
成長が長期化する可能性もある。ただし、余剰生産能力がかなりあるため、
デフレに陥る可能性は無視できない。
野村證券株式会社 金融経済研究所 〒100-8130 東京都千代田区大手町 2-2-2 アーバンネット大手町ビル
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2010 年 5 月 25 日
米国経済見通し要約表
実質 GDP
個人消費
非住宅固定資本形成
住宅投資
政府支出
輸出(財・サービス)
輸入(財・サービス)
GDP への寄与度
国内最終需要
在庫投資
純輸出
失業率(%)
非農業部門雇用者数
(前期差、1,000 人)
住宅着工件数(季節調整済み
年率、1,000 戸)
消費者物価(前年比%)
コア消費者物価
3Q09 4Q09 1Q10 2Q10
(季節調整済み前期比年率%)
2.2
5.6
3.2
4.0
2.8
1.6
3.6
3.7
-5.9
5.3
4.0
2.3
18.9
3.7
-10.9
10.0
2.7
-1.3
-1.8
2.0
17.8
22.8
5.8
7.1
21.3
15.8
8.9
7.4
3Q10
4Q10
1Q11
2Q11
2.7
2.8
5.4
8.2
-2.2
7.9
5.8
2.8
2.7
6.4
7.9
-1.6
8.6
5.0
2.2
1.4
4.5
7.6
-0.5
8.9
3.0
2.8
2.7
8.0
7.9
-0.9
6.0
2.7
(季節調整済み前期比年率%ポイント)
2.4
1.5
2.3
3.5
2.2
0.7
3.8
1.6
0.8
0.5
-0.8
0.3
-0.6
-0.3
0.0
2.4
0.2
0.2
1.5
0.1
0.6
2.7
-0.2
0.3
(前年比%ポイント)
9.2
9.4
8.6
-395
154
236
554
655
795
-0.3
1.7
1.1
1.7
1.0
0.9
9.2
9.4
8.6
9.6
10.0
9.7
9.6
9.3
9.0
8.8
8.7
-261
-90
54
350
10
200
235
235
587
559
617
644
664
696
719
754
-395
154
236
-1.6
1.5
1.5
1.7
2.4
1.3
1.9
1.0
1.4
0.8
1.0
0.7
1.0
0.9
1.3
0.9
554
-0.3
655
1.7
795
1.1
-10.0
-2.9
-8.7
-3.4
-6.6
-3.4
連邦財政収支(対 GDP 比%)
経常収支(対 GDP 比%)
政策金利(フェデラルファンド
(FF)金利誘導目標水準、%)
3 カ月物ドル LIBOR 金利(%)
2 年物財務省証券利回り(%)
5 年物財務省証券利回り(%)
10 年物財務省証券利回り(%)
30 年物住宅抵当融資金利(%)
2009 年 2010 年 2011 年
(前年比%)
-2.4
3.3
2.7
-0.6
2.7
2.4
-17.8
2.1
6.5
-20.5
1.6
9.1
1.8
0.0
-1.0
-9.6
10.2
7.2
-13.9
9.0
4.1
0-0.25
0-0.25
0-0.25
0-0.25
0-0.25
0-0.25
0-0.25
0.50
0-0.25
0-0.25
1.00
0.30
0.96
2.37
3.40
5.06
0.25
1.14
2.69
3.85
4.93
0.29
1.02
2.54
3.83
4.99
0.50
0.75
2.05
3.25
5.00
0.45
1.00
2.30
3.50
5.00
0.40
1.25
2.60
3.75
5.05
0.55
1.40
2.75
3.90
5.15
0.70
1.50
2.85
4.00
5.30
0.25
1.14
2.69
3.85
4.93
0.40
1.25
2.60
3.75
5.05
1.25
1.60
2.95
4.10
5.40
(注)1.失業率は労働力人口に対する比率。
2.財政収支は年度(前年 10 月~9 月)。
3.金利は期末値。
4.太字は実績値、その他は野村予測。
5.2010 年 5 月 20 日現在。
(出所) 米商務省、米労働省、米連邦準備制度理事会(FRB)よりノムラ・セキュリティーズ・インターナショナル作成
野村證券株式会社 金融経済研究所 〒100-8130 東京都千代田区大手町 2-2-2 アーバンネット大手町ビル
このレポートは、作成日現在におけるマクロ経済全般についての情報提供を唯一の目的としており、有価証券等の勧誘を目的としているものではありません。なお、
このレポートに記載されている情報は、当社が信頼できると考える情報源に基づいたものですが、正確かつ完全であることを当社が保証するものではありません。こ
のレポートに記載された意見、経済全般の実績、評価又は将来動向の表示等は、作成日時点におけるものであり、予告なく変わる場合があります。この資料には、特
定の前提条件の下に特定の手法により導き出されたシミュレーション、試算等が示されている場合があります。これらシミュレーション等の結果は、前提条件が異な
る場合、別の手法による場合等においては、異なる結果になることがあります。また、当該結果は将来の結果を保証するものではありません。このレポートは、提供
させていただいたお客様限りでご使用いただきますようお願い申し上げます。
22
ユーロ圏経済
2010 年 5 月 25 日
ユーロ安のプラス効果
ユーロ安によって、財政健全化が景気にもたらすマイナス効果が相殺され
よう。
景気動向
5 月のユーロ圏の製造業購買担当者指数(PMI)速報値は小幅減速したも
のの 10 年ぶりの高水準近くにとどまり、サービス業の生産は 3 カ月連続
で加速し、33 カ月ぶりの高水準に達した(フランスでは 45 カ月ぶり)
。野
村では、2010 年 4-6 月期の実質 GDP 成長率は前期比+0.6%に加速し、年
央頃に設備投資が回復すると予想している。ただし、欧州の政府債務危機
は深刻化しており、最近打ち出した政策措置で危機を食い止められなけれ
ば、野村の成長率予想の下振れリスクが明らかに増大しよう。
物価動向
ユーロ安と商品価格上昇が物価の上振れリスクとなるなか、コアインフレ
率は底入れした。野村では、消費者物価(HICP)上昇率が 10 年 10-12 月
期には前年同期比+2.0%に達すると予想している。
財政・金融政策
各国中央銀行は、欧州債券市場の混乱を受け、ユーロ圏周辺国の国債買取
りに踏み切った。また、欧州中央銀行(ECB)は、国債買取りを不胎化す
る流動性解除策も発表した。加えて、応札額を全額供給する形で 3 カ月物
(固定金利)および 6 カ月物(変動金利)の資金供給オペを再開した。金
融政策に関する野村予想は金融市場と異なり、10 年 12 月に ECB が利上げ
を開始し、11 年中頃には流動性政策が正常化するとみている。ギリシャ、
スペイン、アイルランド、ポルトガルは大規模な財政健全化策を打ち出し、
またイタリアも 11、12 年に財政健全化を一段と進めることが予想される。
しかし、10 年については、併せてユーロ圏経済の 75%を占めるドイツ、
フランス、イタリア、オランダ、ベルギーは大幅な財政健全化策をとって
いない。野村では引き続き、ユーロ圏主要国はギリシャに対する柔軟な態
度を維持し、同国政府が公約を守る限り、債務が持続可能な水準に達する
まで十分な猶予を与える意向だと考えている。
リスク要因
金融市場の緊張が強まることから、我々の成長予測には下振れリスクがあ
る。また、インフレ見通しについても下振れリスクがある。
野村證券株式会社 金融経済研究所 〒100-8130 東京都千代田区大手町 2-2-2 アーバンネット大手町ビル
このレポートは、作成日現在におけるマクロ経済全般についての情報提供を唯一の目的としており、有価証券等の勧誘を目的としているものではありません。なお、
このレポートに記載されている情報は、当社が信頼できると考える情報源に基づいたものですが、正確かつ完全であることを当社が保証するものではありません。こ
のレポートに記載された意見、経済全般の実績、評価又は将来動向の表示等は、作成日時点におけるものであり、予告なく変わる場合があります。この資料には、特
定の前提条件の下に特定の手法により導き出されたシミュレーション、試算等が示されている場合があります。これらシミュレーション等の結果は、前提条件が異な
る場合、別の手法による場合等においては、異なる結果になることがあります。また、当該結果は将来の結果を保証するものではありません。このレポートは、提供
させていただいたお客様限りでご使用いただきますようお願い申し上げます。
23
2010 年 5 月 25 日
ユーロ圏経済見通し要約表
3Q09
実質 GDP
個人消費
固定資本形成
政府消費
輸出(財・サービス)
輸入(財・サービス)
GDP への寄与度
国内最終需要
在庫投資
純輸出
失業率(%)
雇用者報酬(一人当たり、
前年比%)
労働生産性(前年比%)
単位労働コスト(前年比%)
財政収支(対 GDP 比%)
経常赤字(対 GDP 比%)
消費者物価(HICP、前年比%)
コア HICP
政策金利(主要リファイナン
ス金利、%)
3 カ月物 Euribor 金利(%)
10 年物ドイツ国債利回り(%)
ドル/ユーロ為替レート(ドル)
4Q09
1Q10
2009 年 2010 年 2011 年
2Q10
3Q10
4Q10
1Q11
2Q11
(季節調整済み前期比年率%)
1.6
0.1
0.8
2.4
-0.6
-0.1
-1.0
0.9
-3.7
-5.3
-1.6
0.4
3.1
-0.4
2.0
2.0
12.2
7.4
5.7
5.7
12.2
5.1
0.9
3.6
1.6
1.2
1.2
2.0
3.6
3.8
1.6
1.1
1.6
2.0
4.1
4.5
2.0
0.7
1.7
2.0
8.2
5.3
1.8
1.1
1.7
2.0
6.6
5.3
(前年比%)
-4.0
-1.0
-10.8
2.3
-12.7
-11.3
(季節調整済み前期比年率%ポイント)
-0.4
-1.3
-0.5
1.0
1.3
2.0
0.4
-0.7
0.5
0.2
0.1
0.9
2.0
0.9
0.0
1.4
0.3
-0.1
1.1
-0.4
1.3
1.4
-0.2
0.6
(前年比%ポイント)
-2.5
0.0
1.2
-0.7
0.1
0.0
-0.8
1.0
0.6
1.1
0.0
-2.0
1.7
5.8
3.3
1.8
1.0
1.5
2.0
6.1
4.8
9.6
10.0
10.3
10.3
10.2
10.1
10.0
9.9
10.0
10.1
9.6
1.4
1.2
1.3
1.0
0.8
1.0
1.5
2.0
1.5
1.0
2.1
-2.0
3.4
-0.1
1.3
2.3
-1.1
2.2
-1.1
1.7
-0.8
1.7
-0.7
1.4
0.1
1.7
0.3
-2.3
3.7
-6.3
-0.6
2.0
-0.9
-6.9
-0.2
1.6
0.5
-6.4
0.1
-0.4
1.3
0.4
1.1
1.1
0.9
1.6
0.9
2.0
1.0
2.2
0.9
2.2
1.2
1.9
1.1
0.3
1.4
1.7
0.9
2.0
1.2
1.00
1.00
1.00
1.00
1.00
1.25
1.50
1.75
1.00
1.25
2.25
0.75
3.22
1.46
0.70
3.38
1.46
0.63
3.09
1.36
0.80
3.30
1.18
0.95
3.00
1.15
1.10
3.40
1.15
1.33
3.50
1.15
1.78
3.60
1.15
0.70
3.38
1.46
1.10
3.40
1.15
2.45
3.80
1.15
(注)1.失業率は労働力人口に対する比率。年間は各年第 4 四半期(4Q)の平均値。
2.金利・為替は期末値。
3.太字は実績値、その他は野村予測。
4.2010 年 5 月 21 日現在。
(出所) 欧州委員会統計局、欧州中央銀行(ECB)、トムソン・ロイター・データストリームよりノムラ・インターナショナル plc 作成
野村證券株式会社 金融経済研究所 〒100-8130 東京都千代田区大手町 2-2-2 アーバンネット大手町ビル
このレポートは、作成日現在におけるマクロ経済全般についての情報提供を唯一の目的としており、有価証券等の勧誘を目的としているものではありません。なお、
このレポートに記載されている情報は、当社が信頼できると考える情報源に基づいたものですが、正確かつ完全であることを当社が保証するものではありません。こ
のレポートに記載された意見、経済全般の実績、評価又は将来動向の表示等は、作成日時点におけるものであり、予告なく変わる場合があります。この資料には、特
定の前提条件の下に特定の手法により導き出されたシミュレーション、試算等が示されている場合があります。これらシミュレーション等の結果は、前提条件が異な
る場合、別の手法による場合等においては、異なる結果になることがあります。また、当該結果は将来の結果を保証するものではありません。このレポートは、提供
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24
英国経済
2010 年 5 月 25 日
逆風の先
経済成長と労働市場は 1 月の天候不順に伴う活動後退から大幅に持ち直し、
景気回復が逆風を受けながらもその勢いを維持していることがうかがえる。
景気動向
月次経済統計、景況感調査や堅調な雇用統計は、2010 年 1-3 月期の経済成
長が、1 月の天候不順にもかかわらず、力強いことを示している。1-3 月期
GDP1 次速報値は予想より弱かったが、野村では 5 月 25 日発表の 2 次速
報での上方修正を予想している。長期的には、消費は 09 年の個人消費の
急激な落ち込みから回復し始めるものの、借入れ環境の改善が遅れ、企業
収益が弱含み、家計がディレバレッジ(債務削減)を進めるなか、低迷が
続きそうだ。公共支出の削減も見込まれるため、景気回復のペースは緩慢
なものとなろう。
物価動向
10 年 4 月の消費者物価(CPI)上昇率は前年同月比+3.7%に加速、2 カ月
連続で、コンセンサス予想を上回る野村予想より強かった。付加価値税
(VAT)の軽減措置の終了に伴う押し上げ効果が続いており、また、ここ
数カ月のポンド下落、新車買替え支援制度で下落傾向にあった自動車価格
が上昇した影響も考えられる。野村では、CPI 上昇率は政策目標値の+2.0%
を上回る状態が続くとみているが、10 年 10-12 月期には前年比効果が表れ
ると共に、GDP ギャップのマイナス幅が解消しないため、政策目標値を下
回る水準まで再び鈍化するだろう。
財政・金融政策
総選挙は、いずれの政党も過半数を獲得できない、いわゆる「ハングパーラ
メント」となり、保守党と自由民主党が連立を組むことによって、70 年ぶ
りの連立政権が誕生した。近く財政再建強化策の発表が見込まれることは
明るい材料だ。5 月の金融政策委員会(MPC)会合では、予想通り政策は
据え置きとなり、イングランド銀行(BOE:中央銀行)は『インフレーシ
ョンレポート』でインフレ予想を引き上げた。しかし、記者会見でのキン
グ総裁のハト(景気重視)派的発言は我々の予想外だった。MPC はより信
頼に足る統計が発表されるまで、金融緩和の効果と景気回復の強さを見極
めようとしているようだ。野村では MPC による政策金利引き上げは 10 年
11 月以降との予想を据え置いており、利上げが早まる可能性はやや後退し
たとみている。
リスク要因
予想に対するリスクは引き続き下向きだ。野村では、追加の財政引締め策
への懸念を背景に、銀行セクター、家計の貯蓄行動を巡る不透明感が続く
公算の方が大きいとみている。
野村證券株式会社 金融経済研究所 〒100-8130 東京都千代田区大手町 2-2-2 アーバンネット大手町ビル
このレポートは、作成日現在におけるマクロ経済全般についての情報提供を唯一の目的としており、有価証券等の勧誘を目的としているものではありません。なお、
このレポートに記載されている情報は、当社が信頼できると考える情報源に基づいたものですが、正確かつ完全であることを当社が保証するものではありません。こ
のレポートに記載された意見、経済全般の実績、評価又は将来動向の表示等は、作成日時点におけるものであり、予告なく変わる場合があります。この資料には、特
定の前提条件の下に特定の手法により導き出されたシミュレーション、試算等が示されている場合があります。これらシミュレーション等の結果は、前提条件が異な
る場合、別の手法による場合等においては、異なる結果になることがあります。また、当該結果は将来の結果を保証するものではありません。このレポートは、提供
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25
2010 年 5 月 25 日
英国経済見通し要約表
実質 GDP
民間消費
固定資本形成
政府消費
輸出(財・サービス)
輸入(財・サービス)
3Q09 4Q09 1Q10 2Q10
(季節調整済み前期比年率%)
-1.1
1.8
1.5
2.2
-0.2
1.2
-0.5
1.7
11.8
-10.3
11.7
3.9
2.5
4.2
0.8
0.2
2.4
16.0
0.0
3.5
4.9
20.0
1.5
2.9
2.9
2.2
5.9
-0.8
2.6
1.0
2.3
2.8
3.7
-1.5
2.8
2.2
2.6
2.8
4.4
-1.6
4.2
2.6
2.0
2.5
4.2
-1.7
4.5
3.9
2009 年 2010 年 2011 年
(前年比%)
-4.9
1.3
2.5
-3.2
0.6
2.7
-14.9
1.9
4.1
2.2
1.4
-1.5
-10.6
3.8
4.0
-11.9
4.5
2.9
GDP への寄与度
国内最終需要
在庫投資
純輸出
(季節調整済み前期比年率%ポイント)
2.2
0.0
1.6
1.8
2.2
-2.6
3.0
0.4
0.4
0.4
-0.7
-1.3
-0.4
0.1
0.4
2.0
0.2
0.1
2.1
0.2
0.3
1.9
0.1
0.1
(前年比%ポイント)
-4.2
1.0
2.0
-1.4
0.6
0.2
0.7
-0.3
0.2
失業率(%)
財政収支(対 GDP 比)
経常収支(対 GDP 比)
消費者物価(前年比%)
小売物価(前年比%)
政策金利(基準金利、%)
10 年物国債利回り(%)
ポンド/ユーロ為替レート
(ポンド)
ドル/ポンド為替レート(ドル)
3Q10
4Q10
1Q11
2Q11
7.9
7.8
8.0
8.1
8.3
8.3
8.3
8.2
1.4
3.0
7.7
-10.2
-1.3
2.2
-0.5
8.2
-12.1
-1.5
3.2
4.6
8.1
-9.8
-1.4
1.7
3.3
1.5
-1.4
2.1
0.6
3.3
4.0
3.6
5.2
3.2
4.9
2.8
4.4
1.8
3.5
0.50
3.59
0.50
4.02
0.50
3.92
0.50
4.10
0.50
4.30
0.75
4.50
1.00
4.75
1.25
4.75
0.50
4.02
0.75
4.50
1.50
4.80
0.89
0.90
0.89
0.85
0.82
0.80
0.78
0.77
0.90
0.80
0.75
1.63
1.62
1.52
1.39
1.40
1.44
1.47
1.49
1.62
1.44
1.53
(注) 1.失業率は労働力人口に対する比率。
2.金利・為替は期末値。
3.太字は実績値、その他は野村予測。
4.2010 年 5 月 21 日現在。
(出所) 英国政府統計局、イングランド銀行(BOE)、トムソン・ロイター・データストリームよりノムラ・インターナショナル plc 作成
野村證券株式会社 金融経済研究所 〒100-8130 東京都千代田区大手町 2-2-2 アーバンネット大手町ビル
このレポートは、作成日現在におけるマクロ経済全般についての情報提供を唯一の目的としており、有価証券等の勧誘を目的としているものではありません。なお、
このレポートに記載されている情報は、当社が信頼できると考える情報源に基づいたものですが、正確かつ完全であることを当社が保証するものではありません。こ
のレポートに記載された意見、経済全般の実績、評価又は将来動向の表示等は、作成日時点におけるものであり、予告なく変わる場合があります。この資料には、特
定の前提条件の下に特定の手法により導き出されたシミュレーション、試算等が示されている場合があります。これらシミュレーション等の結果は、前提条件が異な
る場合、別の手法による場合等においては、異なる結果になることがあります。また、当該結果は将来の結果を保証するものではありません。このレポートは、提供
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26
中国経済
2010 年 5 月 25 日
好ましくない政策
景気回復は堅調だが、向こう数カ月にわたり政府が好ましくない政策を打
ち出し、これが景気の重しとなりそうだ。
景気動向
景気は安定した拡大期に入り、2010 年 1-3 月期の実質 GDP 成長率が、09
年 10-12 月期の前年同期比+10.7%から同+11.9%に加速した。純輸出の成
長寄与度が-1.2%ポイントとなった模様であり、成長加速は内需に後押し
された。4 月の鉱工業生産が前年同月比+17.8%へ減速したが、小売売上高
(名目)は同+18.5%へ加速した。また、1~4 月の都市部固定資産投資(名
目)は前年同期比+26.1%に減速した。とりわけ、新規プロジェクト投資計
画額は同+31.3%となり、中央政府が 09 年 12 月以降、新規プロジェクト
の着工規制を要請しているが、地方政府では依然として大規模な社会基盤
(インフラ)整備プロジェクトの着工が続いているようだ。
物価動向
10 年 4 月の消費者物価(CPI)上昇率は前年同月比+2.8%と、3 月の同
+2.4%から加速し、生産者物価(PPI)上昇率も同+6.8%と、3 月の同+5.9%
から加速した。インフレ加速の主因は、悪天候の影響で食料品価格が上昇
したことにある。10 年通年では、潤沢な食料品供給、製造業の過剰生産能
力や労働生産性の急激な上昇が続いていることから、前年比+3.0%と緩や
かな加速にとどまるだろう。
財政・金融政策
堅調な景気回復とインフレ圧力の高まりを踏まえ、政策当局は一連の金融
引締め政策を導入した。たとえば、中国人民銀行(PBC:中央銀行)は、
過剰流動性を回避し、銀行融資の伸びを抑制するために、1、2 月には預金
準備率を合計 1.50%ポイント引き上げ、1 月 20 日には融資制限を再び要
請した。不動産市場の過熱と一部大都市でみられる不動産バブル台頭への
対策として、中央政府は、第二、第三抵当権の頭金比率と最低金利の大幅
引き上げ、不動産や公共住宅の供給拡大など、積極的な投機的不動産投資
抑制策を打ち出している。地方政府でも独自の不動産市場引締め策を矢継
ぎ早に打ち出し始めており、野村では、今後こうした動きが加速すると考
えている。金融政策については、PBC はまだ利上げサイクルには入ってお
らず、6 月に 0.27%ポイントの利上げが実施され、年後半に二度にわたっ
て各 0.27%ポイントの追加利上げが行われるとみている。加えて、10 年
7-9 月期には、0.5%ポイントの預金準備率の追加引き上げが実施されると
予想される。また、投資過熱の兆候が一段と顕著となれば、中央政府が新
規プロジェクトの着工規制が強化されるとみられる。公共投資を抑制しき
れない状況下での積極的信用引締め、という好ましくない政策の組合せは
7 月までは続きそうだ。
リスク要因
野村では、公共投資を抑制せずに、融資制限の厳格化を通じて、積極的な
金融引締め政策を実施する可能性が、過去数十年で最も良好な経済パフォ
ーマンスを妨げる主なリスクと考える。仮にこうした状況が続けば、11 年
の CPI 上昇率は、予想以上に加速する可能性がある。そうすれば、PBC へ
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このレポートは、作成日現在におけるマクロ経済全般についての情報提供を唯一の目的としており、有価証券等の勧誘を目的としているものではありません。なお、
このレポートに記載されている情報は、当社が信頼できると考える情報源に基づいたものですが、正確かつ完全であることを当社が保証するものではありません。こ
のレポートに記載された意見、経済全般の実績、評価又は将来動向の表示等は、作成日時点におけるものであり、予告なく変わる場合があります。この資料には、特
定の前提条件の下に特定の手法により導き出されたシミュレーション、試算等が示されている場合があります。これらシミュレーション等の結果は、前提条件が異な
る場合、別の手法による場合等においては、異なる結果になることがあります。また、当該結果は将来の結果を保証するものではありません。このレポートは、提供
させていただいたお客様限りでご使用いただきますようお願い申し上げます。
27
2010 年 5 月 25 日
の信用引締め圧力が一段と強まり、経済の不均衡が拡大しよう。最近の金
融市場の混乱やユーロ圏の債務危機が中国経済にもたらす影響は限定的と
なろう。
中国経済見通し要約表
3Q09
実質 GDP(前年比%)
4Q09
1Q10
2Q10
3Q10
4Q10
1Q11
2Q11
2009年 2010年 2011年
9.1
10.7
11.9
10.5
9.9
9.6
9.4
9.7
8.7
10.5
9.8
消費者物価(前年比%)
コア消費者物価(前年比%)
-1.2
-1.5
0.7
-0.6
2.2
0.3
3.0
0.8
3.5
1.2
3.2
1.6
3.3
2.0
3.4
2.4
-0.7
-1.1
3.0
1.0
3.6
2.0
小売売上高(名目、前年比%)
固定資産投資
(名目、年初来、前年比%)
鉱工業生産(実質、前年比%)
15.4
16.5
18.1
19.0
19.5
18.0
20.0
18.0
15.5
18.6
18.0
33.4
30.1
25.6
26.0
27.0
28.0
26.0
24.0
30.1
28.0
22.0
12.3
18.0
19.6
17.5
16.6
15.5
12.0
11.5
11.0
16.0
13.8
輸出(米ドル建て、前年比%)
輸入(米ドル建て、前年比%)
貿易収支(10 億米ドル)
経常収支(対 GDP 比%)
財政収支(対 GDP 比%)
-20.3
-11.8
24.1
0.2
22.6
61.5
28.7
64.5
14.9
14.9
30.3
2.9
3.2
12.8
13.2
3.0
11.4
38.6
5.0
11.5
1.8
11.7
14.0
0.0
-16.0
-11.2
196
6.1
-2.2
11.0
26.0
70
2.3
-2.5
8.3
12.1
30
0.9
-1.3
1 年物貸出基準金利(%)
1 年物預金基準金利(%)
預金準備率(%)
為替レート(人民元/米ドル)
5.31
2.25
15.50
6.83
5.31
2.25
15.50
6.83
5.31
2.25
16.50
6.83
5.58
2.52
17.00
6.68
5.85
2.79
17.50
6.55
6.12
3.06
17.50
6.45
6.39
3.33
18.00
6.40
6.66
3.60
18.00
6.35
5.31
2.25
15.50
6.83
6.12
3.06
17.50
6.45
7.20
4.14
18.00
6.10
(注)1.財政収支は中央政府・地方政府連結ベース、財政年度は 1~12 月。
2.金利・為替レートは期末値。
3.太字は実績値、その他は野村予測。
4.2010 年 5 月 21 日現在。
(出所)中国国家統計局、中国人民銀行、中国商務部、CEIC データベースより野村国際(香港)作成
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28
2010 年 5 月 25 日
世界経済見通し
全世界
先進国
新興国
BRICs
米州
米国
カナダ
ラテンアメリカ
アルゼンチン
ブラジル
チリ
コロンビア
メキシコ
アジア・太平洋地域
日本
豪州
ニュージーランド
アジア(除く日本・豪州・NZ)
中国
香港
インド
インドネシア
マレーシア
フィリピン
シンガポール
韓国
台湾
タイ
ベトナム
欧州先進国
ユーロ圏
フランス
ドイツ
イタリア
オランダ
スペイン
英国
その他新興国(EEMEA)
チェコ
エジプト
湾岸協力会議(GCC)
ハンガリー
イスラエル
カザフスタン
ポーランド
ルーマニア
ロシア
南アフリカ
トルコ
ウクライナ
実質GDP
(前年比、%)
2009年
2010年
2011年
-0.9
4.7
4.3
-3.4
2.6
2.4
2.1
7.0
6.4
4.7
8.9
8.0
-2.5
3.6
2.9
-2.4
3.3
2.7
-2.6
3.6
2.9
-2.5
4.6
3.7
-2.3
2.5
3.0
-0.2
5.9
3.6
-1.5
4.7
4.0
0.1
3.0
4.0
-6.5
4.1
3.9
3.4
7.6
6.8
-5.2
3.4
2.0
1.3
3.0
3.3
-0.6
2.7
3.4
5.7
8.9
8.1
8.7
10.5
9.8
-2.8
5.5
4.0
6.4
8.8
8.3
4.5
5.9
6.3
-1.7
7.0
5.2
0.9
5.0
4.5
-1.3
10.2
5.3
0.2
5.5
4.0
-1.9
7.9
4.3
-2.3
3.3
4.8
5.3
6.5
6.6
-4.2
1.2
1.9
-4.0
1.1
1.8
-2.5
1.3
2.0
-4.9
1.8
2.6
-5.1
1.1
1.5
-4.0
1.2
2.0
-3.6
-0.5
0.2
-4.9
1.3
2.5
-3.5
4.3
3.9
-4.5
0.8
1.4
4.8
5.2
5.5
0.0
7.9
5.4
-6.3
-0.2
3.4
0.3
2.7
3.8
-1.5
3.5
5.0
1.7
3.3
4.2
-7.0
2.8
3.1
-7.9
5.5
4.4
-1.8
3.2
3.6
-4.7
4.4
4.5
-14.0
3.6
4.0
消費者物価指数
(前年比、%)
2009年
2010年
2011年
1.5
3.2
3.2
0.0
1.5
1.4
3.3
5.2
5.2
2.4
5.3
5.3
1.0
2.5
2.0
-0.3
1.7
1.1
0.4
2.1
2.0
5.0
5.1
4.6
6.3
8.0
8.0
5.0
5.3
4.8
1.5
2.1
3.0
4.2
3.3
3.5
5.3
4.7
3.6
0.3
3.5
3.8
-1.4
-0.9
-0.1
1.9
3.0
3.3
2.1
1.6
2.5
0.7
4.6
4.7
-0.7
3.0
3.6
0.5
3.3
3.5
2.1
9.4
7.9
4.8
5.0
6.2
0.6
2.2
3.6
3.3
5.9
6.0
0.6
3.5
3.0
2.8
2.8
3.8
-0.9
1.7
2.1
-0.9
5.1
4.0
6.7
11.2
11.4
0.6
2.0
1.9
0.3
1.7
2.0
0.1
1.9
1.8
0.2
1.4
2.0
0.8
1.7
2.1
1.0
1.3
2.0
-0.2
1.8
2.0
2.2
3.2
1.7
7.7
6.4
6.5
1.1
1.7
1.8
11.8
13.5
8.1
5.8
6.8
7.4
4.2
4.7
3.2
2.7
3.0
2.9
7.1
6.1
6.0
3.4
2.6
2.8
5.8
4.0
3.6
11.7
7.5
8.4
7.2
5.3
6.2
6.2
7.2
5.4
16.7
10.3
8.7
2009年
2.67
0.52
5.22
6.11
1.73
0.13
0.25
6.84
11.50
8.75
0.50
3.50
4.50
3.58
0.10
3.75
2.50
4.47
5.31
0.14
4.75
6.50
2.00
4.00
0.68
2.00
1.25
1.25
8.00
0.92
1.00
1.00
1.00
1.00
1.00
1.00
0.50
5.49
1.00
8.25
0.13
6.25
1.00
7.00
3.50
8.00
8.75
7.00
6.50
10.25
政策金利
(年末値、%)
2010年
2011年
3.25
4.12
0.68
1.48
6.15
6.98
7.00
7.85
2.26
3.04
0.13
1.00
1.25
2.75
8.65
8.89
13.00
13.00
11.50
11.50
4.00
5.00
4.00
5.50
5.25
5.50
4.37
5.25
0.10
0.10
5.00
5.25
3.75
4.25
5.38
6.43
6.12
7.20
0.40
1.25
6.00
7.25
7.50
7.50
3.00
3.50
5.50
7.00
0.70
1.50
2.50
3.50
1.88
2.38
1.75
3.00
10.00
12.00
1.16
2.12
1.25
2.25
1.25
2.25
1.25
2.25
1.25
2.25
1.25
2.25
1.25
2.25
0.75
1.50
5.90
6.62
0.75
2.00
9.00
10.00
0.13
1.00
5.50
7.50
2.50
3.50
7.00
7.25
4.25
5.00
7.00
6.50
8.00
8.25
7.00
9.00
7.75
8.75
9.00
9.00
(注)1.合計は購買力平価(PPP)を用いて表示通貨を統一し、世界経済に占める各国 GDP の割合を基に算出。実質 GDP、消費者物価指数は年間平均値。
先進国は米国、カナダ、日本、豪州、香港、シンガポール、ユーロ圏諸国、英国。上記以外の国・地域を新興国とする。BRICs はブラジル、ロシア、インド、
中国。その他新興国(EEMEA)は欧州新興国、 中東、アフリカ。湾岸協力会議 (GCC)はバーレーン、クウェート、オマーン、カタール、サウジアラビア、ア
ラブ首長国連邦。
2.2009~2010 年の米国の政策金利は、フェデラルファンド金利誘導目標(0.0-0.25%)の中心値。
3.インドの物価は卸売物価指数。
4.香港、シンガポールについては政策金利の代わりにそれぞれ 3 カ月物香港銀行間取引金利(Hibor)、3 カ月物シンガポール銀行間取引金利(Sibor)を掲載。
5.予測値は 2010 年 5 月 21 日現在。
(出所) 野村グループ
野村證券株式会社 金融経済研究所 〒100-8130 東京都千代田区大手町 2-2-2 アーバンネット大手町ビル
このレポートは、作成日現在におけるマクロ経済全般についての情報提供を唯一の目的としており、有価証券等の勧誘を目的としているものではありません。なお、
このレポートに記載されている情報は、当社が信頼できると考える情報源に基づいたものですが、正確かつ完全であることを当社が保証するものではありません。こ
のレポートに記載された意見、経済全般の実績、評価又は将来動向の表示等は、作成日時点におけるものであり、予告なく変わる場合があります。この資料には、特
定の前提条件の下に特定の手法により導き出されたシミュレーション、試算等が示されている場合があります。これらシミュレーション等の結果は、前提条件が異な
る場合、別の手法による場合等においては、異なる結果になることがあります。また、当該結果は将来の結果を保証するものではありません。このレポートは、提供
させていただいたお客様限りでご使用いただきますようお願い申し上げます。
29
2010 年 5 月 25 日
野村證券からのお知らせ
当社で取り扱う商品等へのご投資には、各商品等に所定の手数料等(国内株式取引の場合は約定代金に対して最大
1.365%(税込み)
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等による損失が生じるおそれがあります。商品毎に手数料等およびリスクは異なりますので、当該商品等の契約締結
前交付書面、上場有価証券等書面、目論見書、等をよくお読みください。
野村證券株式会社
金融商品取引業者 関東財務局長(金商) 第 142 号
加入協会/ 日本証券業協会、
(社)日本証券投資顧問業協会、
(社)金融先物取引業協会
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