12 月 11 日作成 < ドイツに従ったユーロ圏 > 週末の EU 会議の会場で

12 月 11 日作成
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ドイツに従ったユーロ圏
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週末の EU 会議の会場で、普通では絶対見られないシーンをスカイニュースは捉えま
した。会場に現れたのはフランスのサルコジ大統領。彼は着席していた各国首脳に挨拶
をしていきました。そこにイギリスのキャメロン首相が通りかかりました。首相はすれ
違いざま、大統領に握手をしようとした。ところが大統領は首相を無視し、他の首脳と
挨拶を続けました。
欧米のニュースはこのシーンの驚きをもって取り上げました。どうやらユーロ圏が
「ドイツ流」を受け入れた一方、今度は EU という組織が岐路に立たされた事が浮き彫
りになりました。(以下の WEB 参照)
http://www.thesun.co.uk/sol/homepage/video/news/3989329/Sarkozy-snubsCameron.html#ooid%3dx3ZWI0MzpKAqXr1Nc6wLbukfBdti0IwX
さて、会議で主導権を握ったドイツ。最近メルケル首相は大先輩で鉄血宰相と言われ
たビスマルクからも学んでいるとされています。そして「鉄の女」の称号がついた彼女
は、会議で他のユーロ圏にも「ドイツ流」の厳しい財政規律を適用することに筋道をつ
けました。つまりはフランスにも一定の配慮をしながら、ユーロ圏はドイツに従う恭順
の意を示したという事です。 ならば、ギリシャやイタリアが更に悪化した場合、ドイ
ツはもっと踏み込んだ対応を迫られる事になると思います。一方新しい約束にはイギリ
スは加わりませんでした。
先週号で、今の欧州は米国が加勢する前の第二次世界大戦の構図に似ていると言いま
した。当時の欧州は軍事力でドイツに圧倒され、僅かにイギリスだけが対抗していまし
たが、今度は経済で似たような勢力図が固まってきた気がします。
このレポートは、アナリストの分析に基づく執筆者の作成日における見解で、海外デリバティブ取引の売買や特定の投資戦略への参加の勧誘を意図したものではありません。当社が信頼
できると判断した公開の情報源から得た情報に基づいて作成されていますが、必ずしも当社の意見を反映したものではなく、その正確性や完全性を保証するものではありません、事前事
後の通告なしに変更される場合があります。この資料にある海外デリバティブ取引の商品価格や商品価値は変動する可能性があり、そのリスクや、外貨建ての商品は、為替相場の変動リ
スクをお客様が負うこととなります。さらに、過去の実績は、必ずしも将来の成果を保証するものではありません。資料の内容がすべてのお客様に適合的であるとは限りませんし、お客様は、
ご自身の状況や投資目的に鑑み、ご自身で投資に関する決定をしていただく必要があります。また、売買取引に際しては、海外デリバティブ取引の場合、最大で 9.45 ドル(税込)もしくは最
低 1.05 ドル(税込)の手数料が必要となります。なお、この資料の全部、一部又は、目的や方法を問わず、無断での複製、転載、転送などを行わないようにお願いしま
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したたかなイギリス
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ところで、ニューヨークタイムスに面白い記事がありました。最近米国内のファンド
マネージャーの多くが、NY 時間の AM2 時半にアラームをセットし、中には寝室にコン
ピュータースクリーンを 6 台も持ち込むトレーダーがいるそうです。これは欧州危機が
始まってからの現象です。そのトレーダーは 2 時半に起きると、CNBC とブルーンバー
グ TV、更に端末のブルーンバーグを立ち上げてヘッドラインを待ち構えます。
CNBC は NY 時間の AM2 時から 4 時までのコーナーをロンドン支局が担当しますが、以
前はこの時間帯の国内の視聴率は上がりませんでした。しかし今は 40%伸びていると
のことです。また個人トレーダーを顧客に持つ TD トレーディング社では、この時間帯
の取引量が前年比で 1.5 倍になったと報道されています。
これでお分かりでしょう。欧州危機は世界的災いですが、一時的に潤う国があるとし
たら、それは金融センターのロンドンを抱える英国です。実は今回の会議の合意には、
財政規律だけでなく、ヘッジファンドなどの動きを封じ込める規制も含まれています。
ならばイギリスが参加しないのは当然です。
先週号でロンドンを拠点にするヘッジファンドがイタリア債の暴落で大儲けをしてい
る話をしました(NHK 特集)。このヘッジファンドに対する法人税、また膨大なトレー
ダーの所得税は英国を潤しています。だから、サルコジ大統領が危機で欧州を食い物に
するヘッジファンドに甘い英国を快く思っていないのも当然です。恐らく、ロンドンの
ヘッジファンドはチャンスがあればこれからも攻撃してくるでしょう。ならばこの戦い
にも注視が必要です。
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ドイツ流を心配する米国
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ところで、メルケル首相の「欧州危機は長期戦」というスピーチに内心穏やかでない
のは誰でしょう。筆者の答えは何を隠そうオバマ大統領です。
大統領はドイツと同じ財政規律重視を掲げています。ではなぜでしょうか。実はオバ
マ政権は発足当時と今ではフィロソフィーが違います。更に、今は本音と建前を使い分
けています。次はそこを説明します。
そもそも金融危機を引き継いだオバマ政権は、発足当時、原因となった金融に厳しい
態度をとりました。結果、株価は翌年の 3 月に最安値を付けました。ここからオバマ大
このレポートは、アナリストの分析に基づく執筆者の作成日における見解で、海外デリバティブ取引の売買や特定の投資戦略への参加の勧誘を意図したものではありません。当社が信頼
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低 1.05 ドル(税込)の手数料が必要となります。なお、この資料の全部、一部又は、目的や方法を問わず、無断での複製、転載、転送などを行わないようにお願いしま
統領は大きく変わりました。規制強化の方向性は変わらないのですが、実際は改革を推
し進めてはいません。なぜなら金融を縛り株価が下がると、貯金のない米国は耐えられ
ないからです。要するに、今オバマ政権の建前はドイツ、本音は英国と同じ金融頼み。
とみるべきです。
そこでオバマ政権は、財政出動ではなく FED に救済政策をやらせています(QE シリ
ーズ) 。 結果がドル安です。ドル安は株高を呼び、政権の支持母体ともいえる自動車
産業を潤します。
そんな中で今回大統領は欧州会議にガイトナー財務長官を派遣しました。欧州に対し、
長期的対策と緊急対策のバランスを要請したといわれています。ただ本音は ECB が FED
と同じような積極的行動が可能になるように働きかけをしたと思われます。なぜならオ
バマ政権には時間がないからです。ただドラギ総裁の発言は、どちらかというとドイツ
に配慮したイメージでした。
いずれにしても、今の米国は欧州の影響を無視できる力はありません。ではもし来年
も同じような事が起こればどうなるか。理由が何であれ、株価が下がればオバマ大統領
の再選は厳しいでしょう。
この様に、オバマ大統領は欧州に即効性のある対策を望んでいます。即ち中央銀行が
マネーを刷る政策です。ですがソレを頑なに否定しているのがメルケル首相の「長期戦
宣言」です。
どうやら今の欧米の状況は 70 年前と同じ。オバマ民主党政権にとってメルケルドイ
ツは難敵という構図に映ります。では当時一部の共和党がイギリスよりもドイツを支持
した様に、もしも来年共和党政権が誕生すれば米国はどうなるのでしょう。今とは違う
政策が予想されますが、それは順次ここで考えていきたいと思います。
金融ストラテジスト
滝澤
伯文
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