鍼・温灸治療の症例 ● 左臀部から下腿・胆経の坐骨神経痛。男性 56 歳。 ワインを毎日、1本ずつ飲んできた。それにもか かわらず肝機能のアルコールの数値を現すγGTP はやや多い 60 である。 肝兪穴を重点的に鍼・温灸治療をしたところ、体 がものすごくだるくなって3日間、会社を休んで 寝ていたという。 この患者さんはご婦人の紹介で、 「上手な先生だか ら我慢してかかるように」と勧めてくれたので治 療を続けている。 ● 五十肩、 烏口突起部の痛みが意舎穴の治療で改 善した。女性 42 歳。 仕事が忙しくて外食が多く、この1年で8㎏太っ た。症状は左烏口突起部の痛みで腕が横水平位置 から上に上げられない。また後ろにも回すことが できない。 治療穴 ① 左第3頚椎横突起部の硬結部 ② 肩上部の前肩井穴 ③ 肩甲間部の魄戸穴 ④ 肩甲間部の外肺兪穴 ⑤ 左と右の意舎穴 ⑥ 前腕外側部の三焦経・支溝穴 最も肩の患部に響くツボは反対側の右の意舎穴で あった。 食事の改善はラーメンをソバに変えること、お菓 子をリンゴやミカンにするなどで体重が2㎏減少 した。 この治療を1週間に2回のペースで6週間、行っ て約80%改善した。 ● 胃の中に鍼を刺されたような感覚で響いた。 女 性 51 歳。 最近、食べすぎて胃が重いという。背腰部に診断 按摩を行うと左胃兪穴に硬結・圧痛があった。 このツボに1寸3分・00番鍼で刺鍼して回旋・ 雀啄をすると、鍼をしたところはあまり感じなく て、胃の中に鍼を刺されたような感覚でジクッと 響いた。 ● 耳の後ろの強張り感は親知らずが原因であっ た。女性 30 歳。営業 仕事柄、外食が多い。普段、胃の痛みで治療にか かっている女性である。 2週間くらい前から右の耳の後ろが強張るように なって、こんなところは痛くなったことがないの で変だなーと思っていたという。 強張る部位をよく揉んでみると、最も圧痛のある 部位は上完骨穴であった。 このツボは筆者の経験上、奥歯の症状に関係した ツボなので「右の奥歯は悪くないですか」と聞く と「親知らずが生えてきて、奥歯に当たっている ので近々、抜くことになっています」という 上完骨穴を持続圧すると親知らずの付け根にジワ ーッと響いた。 上完骨穴に関係の深い手のツボは三焦経の上中渚 穴であることが多いので指圧すると激痛があった。 この2穴を治療して肩凝り感が60%程度改善し た。右上中渚穴に円皮鍼を貼って、患者さんに自 己治療として円皮針の上から軽く指圧するように 勧めた。 1 ● 舌のザラザラ感が心に関係するツボの治療で 軽減した。女性 49 歳。 咽喉ガンの手術の後、舌がザラザラした感覚にな った。 舌を上顎に押し付けてもらいザラザラ感を確認し て、胸部・腎経・歩廊穴と左手・心経・通里穴を 持続圧しながらもう一度、舌を押しつけるとザラ ザラ感が軽減した。 1 寸・00 番鍼で刺鍼し、回旋・雀啄して響きを得 て置鍼し、温灸を行った。 背部の左心兪穴にも同様に治療した。 治療が終って舌の感覚を確かめてもらうと、本人 の感覚で 50%以上、改善しているとのことだった。 ● 頻尿に第 2 仙骨棘結節の際のツボが効く。 男性 55 歳。 たまに頻尿になることがあるという。 仙腸関節部の膀胱兪を調べると右側に圧痛があっ た。母指持続圧をすると下腹部に少し響いた。 このツボの中心部である第2仙骨棘結節の際を左 右、指圧すると右側に圧痛が強くあった。このツ ボを母指持続圧すると、さきほどの膀胱兪穴より も下腹部に強く響きが起こった。 1寸3分・00番鍼で刺鍼して回旋雀啄し、響き を得たので置鍼して温灸を行うと下腹部が温かく なった。 足が冷えていたので、極力、靴下をはくように勧 めた。 2週間経って治療にかかったとき聞くと、治療か ら2日目で頻尿が治ったという。 ● 攅竹穴の刺鍼で前歯に響いた。女性 52 歳。 目が疲れるというので目の周囲を指圧すると、攅 竹穴に圧痛があった。美容で使う5分鍼で鼻の方 に向けて刺鍼すると、右攅竹穴で右前歯が上に持 ち上げられる感じがして、左攅竹穴で左前歯が下 に押し下げられる感じが起こった。 普段、前歯は何も症状はないということだった。 ● 上天突穴の鍼・温灸で痰が上がってきて咳が出 た。男性 63 歳。 少し咳っぽいというので、のどを軽く揉むと天突 穴よりも上天突穴に硬結があった。このツボに1 寸3分・00番鍼で約2㎝刺入して温灸をしたと ころ、グッと痰が上がってきて咳き込んだので、 すぐに鍼を抜いた。 帰るとき、のどの咳っぽいのがだいぶ楽になった と言った。 ● うつ伏せで肺兪穴に置鍼して温灸をしたら、 鼻 から吐く息が温かく感じた。女性 58 歳。 かぜがなかなか治りきらないという。腹臥位で硬 結・圧痛のあった肺兪穴に刺鍼して温灸を十分に 行った。 すると吸う息は変わらなくて、吐く息だけが温か く感じた。 ● 5 日間、アルコールを飲んでいない。男性 56 歳。 ほとんど毎日、飲んでいた男性が、この 5 日間は 飲んでいないという。 「ホー、頑張っているね」といったら「実は熱が 出て飲めなかったんです」 「どうして熱が出たの」 、 「俺、痔瘻を手術していて悪化すると熱が出るん です。 」 「痔があったとは知らなかったけど、肛門 の左右でどちらが悪かったですか。 」 「右側です。 」 左右の下髎穴を指圧すると右側に圧痛が強くあっ たので、右下髎穴を重ね母指で持続圧すると肛門 部に響いた。 痔は腎の弱りから起こることがあるので、腎兪穴 を調べるとやはり右腎兪に硬結があった。 これも持続圧すると肛門部に響いて、かすかに温 2 かい感じが起こった。 百会穴を指圧して後方にずらし圧を行うと肛門に 響いた。 足の腎経・照海穴を指圧しても肛門に響いた。 筆者が肛門に関係のあると考えているツボを指圧 したら、すべて肛門に響いた。 これらのツボに鍼・温灸を続け、アルコールを制 限すると症状はかなり改善されると思われる。 ● 帯状疱疹で督脈のツボを治療して軽減した。 女 性 34 歳。 左外大腸兪穴に帯状疱疹が出て、病院の薬を飲ん で2週間たっている。 痛みはなくて痒いという。 帯状疱疹ウイルスは脊髄に存在するということで 督脈のツボを調べた。大腸兪穴の中心部である腰 椎4/5棘突起間・腰の陽関穴の5ミリメートほ ど外側の窪みを左右、指圧すると右側には圧痛が 少なく左側に圧痛があった。このツボに 1 寸・0 0番鍼で刺鍼して回旋・雀啄すると、湿疹部の痒 みが少し強くなった感じがした。さらに持続して 行うと痒みがほとんど感じなくなった。 最後に、帯状疱疹の湿疹部に中国鍼で接触鍼を行 った。 ● 膝の半月板が再生していた。女性 71 歳。 主訴は右内膝眼穴の痛みと、右肩に力が入らない 感じで挙上困難である。 6年前に膝の痛みでレントゲンを撮ったとき半月 版がすり減っているといわれた。 治療穴は右意舎穴、右内膝眼穴、右側頚部・第4 頚椎横突起部(阿是穴)で週1回のペースで4カ 月間、かかって階段の昇り降りと右肩の症状がほ とんど改善した。 最近になって以前と同じ病院で膝のレントゲンを 撮ったところ、 半月板が再生しているといわれた。 ※ 肩が上がらない症状に対して、同じ側の側頚 部・頚椎横突起部に硬結・圧痛があって、このツ ボを治療すると肩があがるようになる。 ● 第2趾の足底部の硬結に対して、背側部・胃 経・陥谷穴の鍼・温灸で軽減した。女性 39 歳。 左の第2趾の裏側が硬くなって、歩くと痛くて不 自由ですという。 硬結の背側部は胃経・陥谷穴である。左右の陥谷 穴を同時に指圧すると左側に圧痛が強くあった。 この圧痛をさらによく調べると、陥谷穴よりもや や前方で第2・第3中足骨関節の後縁の陥凹部で あった。 この阿是穴に1寸・00番鍼で刺鍼して響きを得 て置鍼し、温灸をしたら、足底部の硬結のところ にズキズキと響いた。我慢をしてもらって3分間 ほどたつとズキズキが感じられなくなった。家に 帰ってから電話があって、靴を履いて歩いたら痛 みが半分くらいになったとの報告があった。 患部に響きを感じなくても、手に気が巡り、血も 巡って温かくなったものと思われる。 細い鍼で圧痛穴に刺鍼すると、まれにこのような ことがある。 ● 志室穴の置鍼・温灸で両手・両足の指が温かく なった 女性・34歳 手足が冷えるというので、1回目の治療では、手 の冷えに対して厥陰兪穴、足の冷えに対して関元 兪穴に置鍼して温灸を行った。治療直後、少し手 足が温まった。 今回、2回目の治療で診断按摩をよく行うと、志 室穴に硬結・圧痛があった。 このツボに置鍼して 温灸を行うと、1回目よりもはっきりと手足の指 先が温かくなった。 手足の冷えに志室穴の治療が重要だと思った。 ● 膀胱兪穴に置鍼して温灸をしたら足底部がつ った。女性 79 歳。 足の第5趾の裏のタコが歩いて気になるというこ とで、 仙骨部の膀胱兪穴を調べると圧痛があった。 このツボに鍼・温灸をしたら、第 5 趾にはっきり と響いた感覚はなかったが、足の裏がジーッとし た後、足底部がつった。 しばらくして治ったが、治療して気を巡らせてい るのに、つるというのは、なぜか分からない。 ● 下髎穴の響き 女性・50歳 腹臥位で仙骨部に診断按摩を行ったところ、左下 髎穴に圧痛があった。 母指持続圧を行うと胃が動いた。下髎穴で胃に響 くことはめずらしい。 1寸・00番鍼で刺鍼してゆっくり雀啄すると、 下腹部に響いたあと足底の湧泉穴に響いた。 同じツボでも指圧と鍼では響き方が異なる。 ● 妊婦の腰部に温灸が気持ちよい。女性 29 歳。 妊娠2カ月の女性。以前から鍼にかかっている患 者さんであるが妊娠2カ月で、まだ安定期に入っ ていない。そこで鍼はしないで臀部にバスタオル を掛けた上から温灸をした。ほんわかとしたほど よい温かさを感じて気持ちよいという。 4カ月くらいまでは按摩と温灸をして、5カ月に 入ったら鍼治療も加えようと考えている。 ● 地機穴が全身に響いた 女性・50歳 やや肥満で美食家の患者さん。飲食の不摂生が予 想されたので、下腿・脾経に診断按摩を行うと地 機穴に硬結・圧痛があった。母指圧すると飛び上 がるほどの痛みがあった。 1寸3分・00番鍼で左右のツボに刺鍼して雀啄 すると胃に響いて、さらにのどが広がる感じがし て、最後、額の奥がスッキリする感じがした。 ● 尺沢穴の鍼・温灸でめまいが起こった 女性・33歳 のど風邪を引いたというので、肘の肺経・尺沢穴 を揉むと硬結・圧痛があった。 1寸3分・00番鍼で刺鍼して温灸をあてると、 目がまわるという。 我慢できそうだというので、5分くらいそのまま 温灸を続けると、めまいが治まって汗をビッショ リとかいた。 ● 鍼灸治療で胸とのどにびっしょり汗をかいた 肺気腫の患者さん 男性・80歳 呼吸の度に、のどがヒューヒューと音をたててい る。早足で歩くと息苦しいという。 伏臥位で肺兪穴に硬結・圧痛があったので、この ツボに1寸3分の00番鍼で刺鍼して回旋・雀啄 して響かせ、置鍼して温灸を行った。 起きると胸とのどにびっしょりと汗をかいていた。 この治療を4回行うと、ヒューヒューという呼吸 の音が小さくなり早足歩きの息苦しさが軽減して きた。 ● 肘の治療で、手が温かくなった 女性 65歳 肘の痛む部位は左上腕骨外側上顆であった。この 部位に1寸・00番鍼で1㎝ほど刺鍼してゆっくり雀 啄した。 そろそろ響きが起こるころだと思って「どうです か」と聞くと「何も感じません」という。引き続 き雀啄を行うと、肘には何も感じないで、手の平 が温かくなった。 3 ● 申脈穴の皮内鍼で後頸部の凝りが軽減した 女性・68歳 右頸が凝るようになった頃から、右のくるぶしの ところが痛くなったと患者さんが説明してくれた。 頸の痛む部位は、後頸部から天柱穴にかけてであ った。くるぶしの痛む部位は申脈穴であった。背 臥位で右申脈穴に皮内鍼を貼付すると、このツボ がジーンとするという。しばらくして右頸の後ろ 側が、普段、凝りを感じる感覚で響くという。そ の後、後頸部が温かくなって凝りが軽減した。 ● 外反母趾を矯正方向に曲げて、疼痛部位に刺鍼 したら効いた 女性・33歳 右足の外反母趾の部位に靴が当たって痛むという。 見ると赤く腫れている。 外反母趾を矯正方向に圧迫(内反・底屈)して、 その状態を維持したまま疼痛部位の関節部に、1 寸の00番鍼で刺鍼した。ジーンとした感じで強 く響いた。置鍼して温灸をした。 抜鍼して指圧すると、痛みはほとんど感じなくな っていた。治療室の床を裸足で外反母趾に体重を かけて歩いてもらうと、痛みはほとんど起こらな くなっていた。 ● 2㎝の大きさの子宮筋腫が約1.5㎝になって、 妊娠してもよいと言われた 女性・28歳 流産した後、約7カ月間、週1回で鍼灸治療にかか った。婦人科の検査を受けたところ筋腫が小さく なっていて、医師から妊娠してもよいと言われた。 治療を始めて3カ月経って、冬の1月でも冷えて いた足が温かくなり、生理がきても生理痛がほと んど起こらなくなった。 好きな肉と甘いものも控えて、体重は標準体重よ りもやや少ない体重になって調子がよい。 ※関元兪穴と志室穴に鍼・温灸を行った。 ● 中華料理と紹興酒の飲食で、めまいがして吐い た 男性・61歳 1年前までは弁当を持って会社に行っていたのだ が、営業で外回りの仕事になって外食が多くなっ た。若い時からカツ丼やラーメン、天ぷらが好き だった。昼食はこれらの食事が多く、夜は接待で 飲食する機会が増えた。 ある夜、接待を受けて中華料理を食べて、最後に 「これを飲んだら多いかな」と思いながら紹興酒 を飲んだ。次の朝、起きようと思ったらめまいが 4 して吐いた。 ※治療穴は肝兪穴、胆兪穴、胃兪穴であった。 ● 咳が厥陰兪で軽減した 女性・30歳 咳がなかなか治らないという。 腹臥位で肩甲間部に診断按摩を行うと、肺兪穴よ りも厥陰兪穴に硬結・圧痛があった。 このツボに刺鍼して置鍼し、温灸を行うと、うつ 伏せになっている状態で頭がグルグルと回ってい る感じがするという。我慢してもらって温灸を続 けると、回る感じがなくなった。 少したってから、のどの奥からグッと痰が上がっ てきたという。 ベッドに起きて、試しに咳をしてもらうと、すご く楽になっていた。 ● うつ病 女性・41歳 2年前から何をするにも体力と気力がなくなり、 うつ病と診断されて薬を飲んでいる。7年前に喘 息になって6年間位、ステロイド剤を使用した。 食事ではバターが大好きである。しかしコレステ ロール値は高くない。日中、頻尿がある。睡眠中 にも排尿で2回起きる。眠りが浅い。 ・治療 ①背臥位 腹部を触診すると、右の肝の募穴・期門穴に圧迫 不快感があり、胃の募穴・中脘穴、膀胱の募穴・ 中極穴、腎の募穴・京門穴に冷えがあった。 これらのツボと経絡的に関係する下肢に診断按摩 を行うと、右曲泉穴、左足三里穴、左照海穴に硬 結・圧痛があった。他、うつ病に反応の現れるこ との多いツボを調べると、頭部の百会穴と胸部の 膻中穴に圧痛があった。 1寸3分・00番鍼で刺鍼して置鍼し、温灸を行っ た。 腹部の募穴の冷えは、改善して温かくなった。 ②腹臥位 背腰部に診断按摩を行うと硬結・圧痛はほとんど 左側に多く、膀胱兪穴、志室穴、三焦兪穴、胃兪 穴で、肝兪穴だけが右側に強くあった。 これらのツボに刺鍼して響きを得て置鍼し、膀胱 兪穴・志室穴・胃兪穴に温灸を行った。 ほぼ同様の治療を1週間に2回の治療回数で2ヶ 月間(16回)行った。 ・改善した症状 治療を受けた夜はぐっすり眠れて、排尿で起きる ことがなくなった。嫌な夢を見なくなった。だい ぶ元気が出てきた。うつ的症状が少なくなって外 出できるようになった。毎日飲む薬を自己判断で 2日に1回にしている。 ・改善していない症状 1日用事で外出すると、ひどく疲れる。雨の降る 前日や、気圧が低くなる日は調子が悪い。 ・現在、週1回の治療を継続している。 ● 踵の内側部の痛みが右腎兪の鍼で改善した 男性・65歳 歩くと右踵の内側部が痛いという。 経絡は腎経なので右腰部の腎兪・志室穴に診断按 摩を行うと、腎兪穴に硬結・圧痛が強くあった。 1寸6分・0番鍼で刺鍼して雀啄をすると、ちょうど 痛む部位に響いた。 そのまま置鍼して温灸を行うと、踵が温かくなっ た。 鍼を抜いて踵を拳で叩くと痛みはほとんどなく、 ベッドから降りて歩いてもらうと痛みは半分以下 になっていた。 ● 頭のフケと耳垢が多くなった症状が、腎兪穴の 治療で改善した 男性・61歳 2年位前から、日中、小便の回数が少なく、夜間 1~2回小便に立つようになった。1年位前から 頭のフケと耳垢の多いことが気になってきたと言 う。 腎と膀胱の弱りと判断して、募穴の京門穴と中極 穴を調べると共に冷えており、腎兪穴と膀胱兪穴 に圧痛があった。このツボに治療を続けると、夜 間の排尿がほとんどなくなり、フケと耳垢が少な くなった。 ● 右手関節の背屈痛は冷えが原因だった 女性・33歳 今年の春、車の免許を取って通勤に運転を始めた。 いつの間にか右手の手首がだんだん痛くなって、 台所で調理をするのが辛くなってきたといって来 院。 触ると右手が冷たい。 手関節を背屈すると、大腸経・陽谿穴と三焦経・ 陽池穴に痛みが出ていた。 「何か手を冷やすことをしませんでしたか」と聞 くと「そういえば運転中、ハンドルを握っていて 右手に冷房が当るのです。それかしら。 」という。 坐ってもらい手の平をベッドにつけて手関節を背 屈し、痛みの出る状態のまま刺鍼して響かせると、 かなり強く響いた。 置鍼して温灸を行った。 抜鍼して手関節を背屈してもらうと、痛みなく背 屈できた。 ● まぶたのものもらいが、大腸経の井穴・商陽穴 の鍼・温灸で改善した 女性・35歳 2日前からまぶたにものもらいができて、左上ま ぶたが赤く腫れている。まず左右の合谷穴を圧迫 すると、左右ともに圧痛は少しあるという。 次に、示指の爪甲根部の商陽穴を左右圧迫すると、 左側に圧痛が強かった。左商陽穴に1寸00番鍼 を弾入して約1㎜刺鍼すると、示指が抜けるよう な感じの響きがあった。置鍼して温灸を行うと腹 鳴が起った。 さらに温灸を続けると、まぶたの腫れている部位 がズキンズキンと心の拍動と共に疼いた。治療が 終了した時点では、ものもらいの所がズーンと重 い感じがするとのことだった。 自宅に帰ってシャワーを浴びたところ、ものもら いの所から膿が出て、次の朝にはほとんど治って いたという。 ● 左志室の硬結・圧痛に対して雀啄を繰り返して いると、吸う息が楽になった 女性・44歳 いつも肺兪穴を治療すると「空気の中にメンソレ ータムが入っている感じで気持ち良い」という患 者さん。 志室穴に刺鍼して60秒間位響かせていたところ、 吸う息が楽になった。 中医学に「腎は納気を主る」と説明があり、この 腎の作用が発揮されたものと考えられる。 ● 志室穴の治療で排尿が良くなったら、髪の毛が 臭わなくなった 女性・39歳 左肩凝りが主訴で、背腰部の硬結・圧痛穴は左胃 兪穴と右志室穴であった。治療後、排尿がよくな るということが続いたら、以前は髪を洗っても2 ~3日で臭っていたのが、最近、洗った後、しばら くしても臭わなくなったという。 ● 天牅穴と肩井穴で耳鳴り難聴が改善した 女 性・60歳代 占い師の女性患者さんが、耳の周囲の圧痛(耳門 穴、和髎穴、角孫穴)に刺鍼して治療していたが あまり良くならなかった。 5 良く揉むと側頸部から肩にかけて凝りがひどかっ たので、三焦経・天牅穴と胆経・肩井穴に鍼・温 灸を行った。 翌週来院して聞くと「耳鳴りの回数が減って聞こ えが良かった」と言われた。 ● ジョギングして膝が痛い 男性・28歳 何年もジョギングして、最近初めて右膝の皿の下 が痛くなった。また膝を深く曲げると痛みが出る という。 仕事で大阪勤務から東京の本社勤務になって6ヵ 月経った。 背臥位で診断按摩を行うと膝の痛みの部位は、右 膝の膝蓋骨の下で胃経の外膝眼穴(奇穴)であっ た。胃の弱りが予想された。 「大阪から東京に転勤になって、外食して味が濃 いと思いませんか」と聞くと、 「そうなんです、何 を食べても味が濃いです」との答え。本人は胃の 不調を感じていないが、腹臥位で背腰部に診断按 摩を行うと、右胃倉穴に硬結・圧痛があった。 腹臥位で膝を強く屈曲してもらうと痛みが出ると いうので、胃倉穴を指圧して、もう一度膝を屈曲 してもらうと痛みが軽くなった。 ・治療 ①背臥位で外膝眼穴に寸3・0番鍼で刺鍼し、雀啄 して響かせて置鍼して温灸を行なった。腹鳴が起 こった。 ②腹臥位で右胃倉穴に刺鍼して温灸を行なった。 胃に響いた。 ・外食で味の薄いものを選ぶのは難しいが、でき るだけ薄味のものを食べるように説明した。 週1回の治療を5回行って膝を深く曲げても痛 みがほとんど起こらなくなったので、早歩きを行 うことを勧めた。 ● 逆子が治った 女性・39歳 妊娠6ヶ月まで正常であったのに、6ヶ月の検診 で逆子だと言われた。刺鍼したツボは志室穴と三 陰交穴で響かせないで置鍼し、温灸を15分間ほ ど長く行った。 6月の梅雨の時期は意外と身体が冷えるので、昼 間も就寝中も、もっと厚着をするように勧めた。 治療して3日経って、それまで下腹部を蹴られて いたのが、胃の方を蹴られるようになった。その 後のエコーの検査で逆子が治っていた。 ● 内肩中兪穴で鼻水がたくさん出た 女性・65歳 のど風邪を引いたというので、腹臥位で肩部の小 腸経・内肩中兪穴に診断按摩を行うと硬結・圧痛 があった。 このツボに1寸3分・00番鍼で刺鍼して響かせ、 置鍼して温灸を行なうと、急に鼻水がたくさん出 てきた。 すぐに鍼を抜いて座ってもらい、鼻をかんでもら った。 鼻の症状に対しては外風府穴を取穴することが多 いが、内肩中兪穴で鼻水が出たのはめずらしい症 例であった。 ● 脊椎菅狭窄症で右足の第2趾と左足の第4趾が シビレる 男性・74歳 腹臥位で背腰部に診断按摩を行うと、関元兪穴の 重ね母指圧で、シビレの出る足指に響きが起こっ た。 第2趾と第4趾はそれぞれ胃経と胆経に関係が深い ので、経絡的に関係する背腰部の胃兪穴と胆兪穴 の診断按摩を行うと、このツボよりも外側の右胃 倉穴と左陽綱穴に強く硬結・圧痛があり、母指持 続圧を行うと足指のシビレ感が軽減するという。 このツボに1寸3分・00番鍼で刺鍼して回旋雀啄を 繰り返すと、シビレ感がほとんどなくなった。 置鍼して温灸を行なうと、足指が温かくなった。 一週間後の2回目の治療で聞くと、10分位歩くと足 の指にシビレが起こっていたのが、30分歩くと起 こるようになったという。 ● 志室穴の治療で水がおいしく飲めるようにな った 女性・38歳 目の疲れと肩凝りが主訴であったが、背腰部に診 断按摩を行うと志室穴に硬結・圧痛があった。 週1回の治療を2ヶ月続けたところ、目と肩凝りは かなり改善した。しかしそれ以上に排尿がよくな った。 治療前は、昼間は頻尿で1時間に1回位の割合で トイレに行っていた。夜間は寝ていて2回くらい 排尿に起きていた。 治療後は、昼間は2時間に1回位になり、夜間は 排尿で起きなくなった。またそれまで水分補給は、 お茶が好きで真水は嫌いだった。 治療を受けて帰るとき、なぜか水が飲みたくなっ てコンビニで水を買って飲むようになった。水が 美味しいという。 6 ● 左大趾(足の母指)の先が痹れる 男性・44歳 左大趾の先が痹れるというので、経路的に肝の弱 りと判断して左上腹部の季肋部・左肝の募穴・期 門穴を圧迫すると圧痛があった。 試しに右の期門穴を圧迫すると圧痛がない。健康 診断の血液検査では、肝臓の機能はすべて良いと いう。 「目が疲れませんか」と質問すると「最近、 左目の視力が落ちている」という。 腹臥位になって、肝兪穴に診断按摩を行なうと左 肝兪穴に硬結があり、その外側の魂門穴を指圧す ると、さらに強い硬結・圧痛があった。 左魂門穴に00番鍼で刺鍼して軽い響きを持続さ せていると、左母趾に温かみを感じた。 ゆをたっぷりつけるのよ。塩分摂りすぎだと思っ ていたわ」との話。 ・治療 右上側臥位で右腎兪穴に寸6・0番鍼で刺鍼すると、 刺鍼したツボには全く痛みを感ぜず、右環跳穴に 響いてひどく重だるくなった。置鍼して温灸を行 うと、臀部から下肢にかけて動かすことができな いほど重だるく響きが起こった。この感覚が薄ら ぐまで約10分間程、温灸を行った。 次に股関節を屈曲して環跳穴に痛みが増強する姿 勢にして刺鍼して響かせた。股関節を伸展して膝 窩部の委中穴に刺鍼し、回旋・雀啄して響きを得 て抜鍼した。右上側臥位で腎兪穴の位置する腰椎 2/3椎間関節に逆捻転を行うと、ゴグッと関節が鳴 った。背臥位になってもらい、右足股関節を屈曲 して蹴る動作に治療師が抵抗すると、割合力強く 蹴ったので起き上がれると判断し、ゆっくり寝返 りをしてから四つん這いになり、椅子に手をかけ て立ち上がってもらった。右手に杖をついてその 場で足踏みをしてもらった。激痛は無くなったが、 まだ右股関節が痛いという。 今日は塩分を取らない食事をして、ズボン下と靴 下をはいて温かくして寝て下さいと指示して治療 を終了した。 ・治療2回目(初診の2日目) 昨日の治療の後、2時間ほど眠って起きたら、排 尿と排便がたくさんあって、家の中を杖を使って 歩けるようになったという。 右上側臥位で右腎兪穴・右環跳穴・右委中穴に診 断按摩を行うと、昨日よりも硬結が半分くらいに 軟らかくなっていた。足の浮腫みも強く母指圧す るとほんの少し指の痕がつく程度になっていた。 1回目と同様に鍼・温灸治療をした後、腰部の逆 捻転と順捻転を行うと両方の手技でゴクッと関節 が鳴った。 治療を終了して「立って下さい」というと、側臥 位からそのまま起き上がることができた。そして 杖を使ったが、前日よりもスムーズに歩行ができ た。 ・治療3回目(初診の3日目) ギックリ腰になった日から、ビールが何となく飲 みたくなくなって飲んでいない。塩分をほとんど とらない食事にしたら、尿がたくさん出て、今朝 体重を量ると1.5㎏も減っていた。今日の午前中3 日振りでマンションの部屋からでて、外を歩いた。 2回目と同様に治療した。 養生法として、引き続きビールと塩分を控え目に ● 普通と違った響きが起こった 女性・45歳 背臥位で、足の腎経・照海穴(陰蹻脈の主治穴) に刺鍼したら後頸部から後頭部に響いた。 次に腹臥位で、足の膀胱経・申脈穴(陽蹻脈の主 治穴)に刺鍼したら、咽喉部に響いて咳が出た。 一般的には、これらのツボの治療効果は逆である。 ● ギックリ腰・往診治療 男性 68歳 月に1回程度、不定期に鍼灸治療にかかっている 患者さん。 血圧が高く、降圧剤を飲んでいる。 風呂から上がってパンツを履こうとして片足を持 ち上げたところ、よろけて転びそうになり、壁に 手をついて踏ん張ったその時、腰に変に力が入っ てギクッとなり、その後右股関節部に激痛が走っ てまったく歩くことができなくなった。 早朝、往診すると、昨夜から右側を上に同じ姿勢 で寝ているという。患部に診断按摩を行うと最も 痛むツボは右環跳穴であった。背腰部に診断按摩 を行うと腎兪穴に硬結・圧痛があり、強く持続圧 を行うと環跳穴と下肢膀胱経に響いた。下肢に診 断按摩を行うと膝窩部の委中穴に圧痛があり、足 関節部から足背部に指圧の窪んだ痕がついた。浮 腫んでいた。 ギックリ腰の直接の原因は、よろけて踏ん張った ことであるが、その後全く動けないほどの激痛に なったということは、足が浮腫むという腎の弱り があったためと思われる。 腎を弱らせた原因について、塩分の摂りすぎや 足・腰を冷やすなどの生活がなかったかを聞くと、 横で聞いていたご夫人が「最近、お寿司を食べる と醤油をたっぷりつけるし、おそばを食べてもつ 7 して、パンツ1枚で寝ないでパジャマの下を履い て寝るように説明して治療を終了した。 穴に硬結・圧痛があり、特に左が強かった。 治療しようとすると「先生、腎盂炎になる前に頭 のここが痛かったんです」と言って、頭頂部の督 脈・強間穴に指を置いた。このツボを指圧すると 強い圧痛があったので、寸3・00番鍼で刺鍼して雀 啄を繰り返していると、左の腎兪穴辺りにズーン と響いた。足の親指にも痛みを感じるという。最 後に左右の腎兪穴に刺鍼して温灸を行った。後半 は、すごい眠気がきて私の話がほとんど聞こえな かったという。食事で塩分を控えて、温かくして 寝るように説明して治療を終了した。 ● 右母指球部(魚際穴)のチリチリ感が肺兪穴で 改善 女性 55歳 1ヶ月前から右母指球部(魚際穴)がチリチリし て気になるという。違和感の部位は肺経の流注部 位なので、右上側臥位で肩甲間部に診断按摩を行 うと肺兪穴に硬結・圧痛があり、母指持続圧を行 うと母指球部にジワーッと響いた。 寸3・00番鍼で刺鍼するとジーンと痛みを伴う 感じで響いた。この治療を2回行ったところ右母 指球部に強い痒みが起こって、その痒みが感じな くなったとき、チリチリ感も無くなって改善した。 ● 腰痛で鍼温灸治療の後の帰り道にラーメンを 食べたら、ドッと汗をかいてすっかり治った 男性・38歳 腰痛を一通り治療して80%改善した。しかし終っ た時、足を触ると冷たかった。 治療の帰りに何となく温かい物を食べたくなって ラーメンを食べたら体中から汗が出て、その後、 すっかり腰痛が治ったという。 ● 右五十肩で鳥口突起部の下部が痛む 男性 62歳 鳥口突起部の痛みは、今までの治療経験上、肺兪 穴が治療穴になることが多いので肩甲間部膀胱経 1行線に診断按摩を行うと、やはり肺兪穴に硬結 があって、母指持続圧を行うと鳥口突起下部に響 いた。さらに背腰部全体を診ると、右脾兪穴の部 位に10円玉大の薄茶色のシミがある。 脾の弱りが考えられたので「飲食をして、食欲不 振とか腹が張るなどの不快感がありませんでした か」と聞いても「無い」という。 しかしツボにシミが現れているということで、長 い間の脾の弱りがあったものと思われる。 経絡で同名の経絡は関係が深い。この場合は「手 の太陰と足の太陰」である。 今回の右五十肩は、最初に脾の弱りがあって脾か ら肺に病が移って肺の流注部位である鳥口突起部 に疼痛が現れたものと考えられる。 ● 脊柱管狭窄症の改善例 Aさん(男性)は、甘い物が好きで左右の胃兪・脾 兪穴が凝っている。主症状は硬い歩道の上を15 分ほど歩くと右ふくらはぎから足裏の母趾と第2 趾の付け根の間の部位が、痺れ痛くなって歩けな くなる。 治療穴は、右内大腸兪穴に小さな硬結・圧痛があ って、このツボを強圧すると下肢に響き的症状が 発生する。 Bさん (男性) は、 酒と脂っこい食べ物が大好きで、 肝兪・胆兪・脾兪・胃兪穴が凝っている。主症状 は、歩くと右臀部から大腿後側部にかけて鈍い痛 みが出て歩けなくなる。上体を反らしても同じ症 状が起こる。 治療穴は大腸兪穴と膀胱兪穴で、強圧すると響き 的症状が再現する。 鍼・温灸治療は、これらのツボに寸6・0番鍼で刺 鍼して回旋・雀啄を行うと、症状に似た響き的痛 みが再現する。 置鍼して置鍼部位のツボに温灸を行うと、温めて いるツボよりも臀部や下肢に温熱を感じて、とて も気持ち良いという。 Aさんは特別に食事の改善をしていないが、 約6ヶ 月間の鍼灸治療で舗装の上でも1時間くらい歩け るようになり、ゴルフ場では4~5時間歩けるま で回復した。 ● 腎盂炎が治って1週間経ってからの鍼・温灸治 療 女性・29歳 急に39度の熱が出た。病院へ行くと腎盂炎との診 断で抗生物質を飲んで熱は下がったが、体がだる いという状態であった。 背臥位で腎の募穴・京門穴(第12肋骨端)を指圧 すると圧痛があった。下肢・腎経で圧痛のあるツ ボは照海穴であった。このツボを指圧しながら京 門穴を圧迫すると圧痛が軽減した。照海穴に寸3・ 00番鍼で刺鍼して響きを得て置鍼して温灸を行な うと、腰部(腎臓の後ろ側)にジワーと響きを感 じた。 腹臥位で背腰部に診断按摩を行うと、左右の腎兪 8 Bさんは好きだった酒を全く絶ち、 鍼灸治療を約2 ヶ月続けて、毎朝40分くらい歩くことができ、 1時間くらい電車で立っていてもひどく痺れ痛み が出なくなってきた。 ● 脊椎間狭窄症の症例 最近、脊柱管狭窄症(病院でMRIによる診断)の男 性患者さん(Cさん、Dさんとする)が続いた。 昨年、治療にかかって症状が改善した男性患者さ ん(Aさん、Bさん)と症状は少し違うが、診断と 治療はほぼ同じで、いずれも80%程度改善した ので発表する。 昨年の患者さん、Aさんの症状は10分間くらい 歩くと右足裏(肝経・行間穴裏)に痺れ・痛みが 出て歩けなくなる。喫茶店などで休むとまた歩け る。特にデパートなどの床が固い場所で症状が出 て、ゴルフ場の土の上では長時間歩ける。 腰部に診断按摩を行うと、右大腸兪穴の内側に小 さいが非常に硬い硬結があり、このツボを強く指 圧すると裏行間穴に響いた。 今年のCさんは、少し歩くと両側の臀部に痛みが 出て歩けなくなる。 診断按摩では、両側・関元兪穴の強い母指圧でや はり臀部に響きが起こる。 Dさんは、少し歩くと左足の大腿・後側部と踵の 崑崙穴(膀胱経)に痛みが出て歩けなくなる。 診断按摩では、左膀胱兪穴を母指の指先で強く指 圧すると、左下肢後側部から踵に響いた。 〔治療〕 ①腰部・仙骨部の原因となっているツボに、1寸 6分・0番鍼で切皮痛を感じさせることなく刺入 する。 ゆっくり回旋・雀啄をくり返して気持ちよい響き を発生させる。 治療の時、患者さんの身体に痺れ・痛みの症状が 起こっているときは、響くことによって、これら の症状が次第に消えていく。 治療中に症状が出ていない時は、響くことによっ て下肢に痺れ・痛みの症状が再現される。 しかし運鍼を続けると次第に症状が消える。 響きの感覚が感じなくなった後、大抵、患部に温 かみを感じる。 置鍼したまま温灸を行うと、さらに腰部・臀部・ 下肢が温まって気血の循環が良くなる。 この治療を週に2回から1回受けると、数ヶ月で 症状が改善されてくる。 ● 治療のポイント ①脊椎管狭窄症という病名であっても、臀部や下 肢の症状に対する治療穴は、ほとんどの場合、大 腸兪穴・関元兪穴・膀胱兪穴のどれかである。 ②正確にツボをとらえて母指で強圧すると、響き として症状が再現されることが分かる。 ③さらに、大腸兪穴・関元兪穴・膀胱兪穴に硬結・ 圧痛が現れるのは、その上の背部にある肝兪穴・ 脾兪穴・腎兪穴の硬結・圧痛が原因で、飲食の不 摂生と老化現象が根本原因と思われる。 ● 三焦兪穴が石門穴に響いた 女性・33歳 胃の具合が悪いということで腹臥位で背腰部に診 断按摩を行うと、左胃兪穴と左三焦兪穴に硬結・ 圧痛があった。 胃兪穴に1寸3分・00番の鍼を刺鍼してゆっくり 雀啄すると、胃のあたりにズーンと感じるという。 胃の募穴・中脘穴と思われた。 次に三焦兪穴を同じように刺鍼すると、三焦兪穴 が石門穴の下あたりにズーンと感じるという。三 焦の募穴・石門穴と思われた。 兪穴と募穴の関係が、古典中医学の理論どおりで あった。 ● 足の甲が冷える 女性・32歳 冬になって、足の甲が冷えるという。 触ってみると足の胃経・解谿穴が最も冷えていた。 顔を診ると右の口の角(胃経・地倉穴)に小さな吹 き出物がある。 「何か、胃に悪いものを食べませんでしたか」と 聞くと「チョコレートが大好きですけど、いけな いかしら」と言う。 腹部を触診すると、胃の募穴・中脘穴が冷えてい た。 中脘穴と両側・解谿穴に1寸・00番鍼で刺鍼して かすかに響かせてから温灸を行った。 5分くらいの治療中、ずっと胃が鳴っていた。 ・ 治療のポイント ①腰部・仙骨部に原因となっているツボが必ずあ る。 しかし、そのツボは母指の指先でかなり強く指圧 して判断できるツボである。 9 ②細い鍼を使って気持ちよい響きを起こして3分 から10分間響かせる。 ③置鍼して温灸を行う。 を見て、 「私の乾癬も治らないでしょうか」という。 よく診ると肩部の右肩中兪穴の部位と、左手背側 面の中指の付け根の部位に乾癬があった。 和製中国鍼で接触鍼を行うと、チクチク感が気持 ちよく、温灸を行うとさらに気持ちよく感じると いう。 「こんな治療で治るなら、続けてくるからやって ください」と患者さん。 乾癬の治療は、わずか5分程度である。 3回治療して、痒みが少なくなってきたので、あま り掻かなくなったという。乾癬の範囲が狭まって、 皮膚の色が良くなってきた。 ● 持病の咳が秋から冬にかけて、毎年起こる 男性・営業マン 持病の咳には、どんな薬よりも鍼・温灸が一番効 くといって治療にかかる営業マン。 全身按摩を40分間行った後、背臥位で咽喉部に 診断按摩を行うと、天突穴の上1寸、やや左側に圧 迫不快感があり、圧迫すると咳が出る。 左肘内側部の尺沢穴にも圧痛があり、尺沢穴を指 圧しながら上天突起を指圧すると咽の圧迫不快感 が軽減する。 上天突穴と左尺沢穴に置鍼して温灸を10分間ほど 行った。 これで咳と共に痰が出て、その後、咽がすっかり よくなった。 ● 感覚のない胃倉穴が胃に響く。 男性・40歳く らい 昨年の春から営業にまわるようになってから夜の 接待的飲食が多くなり、常に胃の存在を感じるよ うになったという。 背臥位で上腹部を調べると、ちょうど胃の募穴・ 中脘穴に冷えと圧迫不快感があった。 背臥位で胃兪穴を中心に診断按摩を行うと、膀胱 経2行線の胃倉穴に最も反応があった。 左右の胃倉穴を同時に指圧すると、右の胃倉穴は 圧痛を感じて、左の胃倉穴は何も感じないという。 「さて、どっちが1番のツボかな」と考えて、右の 胃倉穴に寸3.00番鍼で刺鍼すると胃に感じる という。次に左の胃倉穴に刺鍼すると、右よりも さらに強く胃に響くという。ゆっくり雀啄して気 持ちよい響きを続けていると胃がゴロゴロ鳴り出 した。 置鍼して左右のツボに同時に温灸を行うと、左は 熱感を感じないという。 温灸を続けると左右のツボとも、かすかに赤くな ってきた。すると左胃倉穴には熱感を感じないが、 腹部の胃がすごく熱くなってきたという。 帰るとき「胃がスッキリして腹に何もなくなった 感じです」と言って帰った。 ● 三叉神経痛と左手のしびれ 女性・72歳・主 婦 ・主訴;昨年、三叉神経痛(第一枝)発症の後、左 手が痺れる。額の左陽白穴周辺の痛み、左頭項部 の痛み、飲酒後の背中の痒み。 ・既往歴;6年前、子宮ガンで子宮摘出。肝機能 異常あり。 ・所見;左眉上のむくみ。左足のむくみ。左天枢 穴に硬結・圧痛あり。 ・治療(左上側臥位) 左関衝穴・足竅陰穴の刺絡。30滴。 左陽白穴(側臥位)の刺鍼。 左外関穴に刺鍼し響きを得て置鍼。 左腎兪穴。左肝兪穴、左肩井穴、百会穴に刺鍼し 響きを得て置鍼。置鍼したツボに温灸。 ・治療結果; 週1回の治療を4回続けると、左額の腫れが引いて 知覚がよくなった。また左手の痺れ感も軽減して きている。飲酒後の背中の痒みが起こらなくなっ た。 ・患者さんの感想 今まで1度も鍼を受けたことがなかったが、揉まれ てどこを触られても気持ちよくて鍼も痛くない。 治療毎にツボがはっきり分かる様になってきて、 自分からそこそこと言うようになった。 左半分が全体的にむくんでいるので、2回目の治療 から腎兪穴を加え、水分代謝を高めるようにした。 治療の度に症状が少しずつ改善していて、今では 患者さんの方が熱心である。 ● 陽白穴の刺鍼で、鼻水が止まった 女性・55歳 近視があって老眼がすすんでいるということで、 目の周囲に診断按摩を行うと、目の上の陽白穴に 細いスジ状の硬結と圧痛があった。 ● 乾癬に接触鍼 男性・37歳・会社員 肩凝りで初めて治療にかかった患者さん。 待合室においてあるアトピー性皮膚炎の改善写真 10 1寸・00番鍼で刺鍼すると、最初、目の奥が響い て、さらに鼻の奥に響いた。 週1回の治療を継続して、老眼はあまり改善してい ないが、近視が治ってきていること、たまに急に 鼻水を垂れていたのが、最近、鼻水が出ないこと に気がついたという。 ※陽白穴の刺鍼は、患者さんにツボの皮膚をつま んで盛り上げてもらうと刺鍼しやすい。 ● アトピー性皮膚炎の患者さんの肘に温灸する と、1秒もたたない内に腹鳴が起こった 男性・40歳 肘内側部のアトピー性皮膚炎で治療にかかった。 患部を揉むと右尺沢穴に硬結・圧痛があり、この ツボに寸3.00番鍼で刺鍼して響きを得て置鍼 した。 次に温灸をすると、その直後に腹鳴が起こった。 「腹が動いたのは、臍の上でしたか、下でした か?」と効くと、 「上のようでした」ということで、 尺沢穴の温灸で胃が動いたと思われる。 指圧しても鍼をしても胃が動かなかったのが、温 灸をするとすぐに反応した。 ● 右気海兪穴の鍼で全身が汗ばむ 女性・68歳 右頚・肩凝りで、症状がひどいときに治療にかか る患者さん。 虚証体質で痩せていて、身体全体がヒンヤリと冷 たい。 背腰部の硬結・圧痛穴は右気海兪穴である。 このツボに寸3.0番鍼で刺鍼してゆっくり雀啄 すると、刺鍼部の鍼は痛みや響きを感じない。し かし1分くらい経つと全身が温かくなって汗ばん でくる。 指圧すると硬結・圧痛があるのに、鍼をすると何 も感じないで身体が反応を起こす。不思議である。 ● ギックリ腰 男性 32歳 自動車整備士 慢性腰痛があったところに、風邪を引いて咳を したらギックリ腰になった。 患者さんの夫人がいつも鍼治療にかかっていると いうことで、鍼は怖いがこれほど痛いのを治すの には仕方がないと思って鍼治療にかかった。 腰は特に右腰が痛いということで、右上側臥位で 治療を始めた。 腰部に診断按摩を行うと右大腸兪穴に圧痛があり、 重ね母指圧で指圧すると右足の崑崙穴に響くとい う。 11 1寸6分・0番鍼で刺鍼し、ゆっくり雀啄するとや はり崑崙穴にズンズンと響くという。 置鍼をして温灸を行った。 側臥位で股関節の屈曲伸展他動運動を行うと、最 大屈曲位で腰に痛みが出るということで、股関節 屈曲位を維持してもう一度大腸兪穴に刺鍼して響 かせた。 右崑崙穴の圧痛に対して、1寸00番鍼で刺鍼し て軽く響かせた。 最後、腰椎椎間関節の逆捻転を行って治療を終了 した。 ベッドから降りて立ってもらい、先ず、足踏みを してもらった。 次に前かがみにならないようにして、膝を屈伸し て立ちしゃがみを行った。 最後に、ゆっくり上体の前屈と後屈を行ってもら うと、十分ではなかったが治療前には全くできな かった動作が、かなりできるようになっていた。 ● 花粉症 男児 10歳 今年から発症した。母親が肩凝りで鍼灸治療にか かっていて、3歳のころから治療院に何度か来て いるので、鍼灸治療を勧められても抵抗がなかっ たようである。 クシャミ・鼻水・目の痒みの他に咳が少しあった。 治療 ①背臥位 両手の合谷穴と鼻梁の鼻通穴に刺鍼して、響かせ ずそのまま置鍼した。次に置鍼してある合谷穴に 温灸を行うと「手の平が熱いです」と言い、鼻通 穴に行うと「足の裏が熱いです」と言う。ノドの 天突穴に刺鍼して響かせず抜鍼した。目の痒みに は、目の周囲の眼窩を指圧した。 ②腹臥位 外風府穴に置鍼して温灸を行った。 1回・20分間の治療を毎週3回行って、症状はほ とんど消失した。 ● 踵の痛み 女性 71歳 冬の間、寒さと通院に時間がかかることで4ヵ月 ほど治療を休んでいた。朝、起きてベッドから降 りるとき、右足踵が痛くて歩けないという。よく 診ると痛むという部位がカサついていて、指圧す ると飛び上がるほど痛みがあった。 腹臥位で背腰部を揉みながらいろいろ聞くと、寝 ていて今までオシッコに起きるのが1回だったの が、2回から3回になっているという。 冷えによる腎・膀胱の弱りとみて腎兪穴と膀胱兪 穴を揉むと硬結・圧痛があった。特に膀胱兪穴に 圧痛が強くあり、下腹部の膀胱の募穴・中極穴を 触れると冷えていた。 この冬、雪が3回も降ったことなどで冷えによる 腎・膀胱の弱りと判断した。右膀胱兪穴に、0番1 寸6分鍼、右足踵の疼痛部位に00番1寸の鍼を 置鍼して温灸を行った。 この治療を続けて、踵の痛みと夜間の排尿が改善 してきている。 ● 花粉症 男性 35歳 今まで花粉症はなかったが、今年は大量飛散で発 症した。 症状はクシャミと水の様な鼻水、目の痛み(痒み を通り越して痛いという) 、夜の鼻詰まりである。 背臥位で患部(鼻部・眼窩周囲)と腹部、手足 に診断按摩を行うと患部では鼻梁の鼻通穴、腹部 では左天枢穴(大腸の募穴)に冷えと圧痛があっ た。 手では左大腸経・合谷穴に硬結・圧痛があり、 足は足部に冷えがあった。 治療は左右鼻通穴に1寸00番鍼を刺鍼し、鼻の中が むず痒くなる響きを得て置鍼。 左合谷穴に刺鍼して、ゆっくり雀啄してズーンと した響きを得て置鍼。 目の痒みに対して上眼窩と下眼窩の圧痛部位を指 圧した。 温灸は左合谷穴と左天枢穴と左右鼻通穴に行った。 腹臥位になってもらい、診断按摩を行うと花粉症 に関係するツボに硬結・圧痛が現れていた。 治療穴は左外風府穴、左右肺兪穴、左膏盲穴、左 大腸兪穴で刺鍼して温灸を行った。 体を冷やさない養生法として、ビールを飲まな いこと、シャワーではなく、お風呂に入ること、 ズボン下を履くことなど説明した。 1回の治療で目の痒みと鼻水の症状が八割とれた。 4回の治療で、夜の鼻詰まりが治って花粉症はほぼ 完治した。 ●鍼温灸治療して24時間後に出産 女性 33歳 定期的に2週間に1回治療にかかっている女性。 初の出産。出産予定日1週間前で、体重が14kg増 加して足に浮腫みが出てきて早く産みたいという。 いつも硬結・圧痛のあるツボは右腎兪穴である。 右上側臥位で最初、腎兪穴を指圧したとき、お腹 の中で少し胎動があった。 12 このツボに寸3・00番鍼で刺鍼して、いつもより強 く響かせて置鍼し、温灸を10分間ほど長目に行っ た。 抜鍼して下腿の三陰交穴と太谿穴の硬結・圧痛に 対して指圧をした。 治療時間は、午後3時であった。 その夜、帰ってから20分おきに陣痛があってあま り痛くなかったが病院へ行った。 明け方5時頃から10分間隔になり、昼頃から2~3 分おきになって本格的に陣痛が始まり、約4時間後 の午後3時30分、3100グラムの男児を無事出産し た。 ● 膝の痛み 主婦 34歳 書道の会の新年会があって,久し振りに洋食を 食べてワインを飲んだ。その帰り道,歩いていて 左膝がキクッとなり痛くて歩けなくなった。 痛みの部位を聞くと,左膝の膝蓋骨の下,胃経・ 鶴頂穴である。 胃経なので「何か,食べすぎた のが原因ではないですか」と聞くと「新年会の帰 りです」という。 上腹部を圧迫すると,中脘穴とその左側の梁門穴 に硬結と圧迫不快感があった。背臥位で膝の裏に 枕をあてがい,鶴頂穴に1寸・00番鍼を約1㎝ 刺入してゆっくり雀啄すると,最初,足背部の肝 経・行間穴に響いた。さらに雀啄を続けると胃が 動いて,鼻の中で鼻毛が動く感じがするという。 聞くと花粉症もあるという。 最後,膝の関節運動法を行い,立って左膝に体重 をかけて屈伸をしてもらうと痛みは起こらなかっ た。 ● 咳の治療 理学療法士 28歳 風邪を引いて、咳がなかなか治らないという。 肩甲間部が重苦しいというので伏臥位で診断按摩 を行うと、胸椎3/4番棘突起間の右横1cmの部位 (内肺兪穴と名付ける)に硬結・圧痛があった。 ちなみにこの反応穴の横1~2cmの部位に肺兪 穴が位置する。 肺兪穴は風邪など呼吸器疾患の治療穴である。 右内肺兪穴に1寸6分・0番鍼をやや深めに刺鍼 して、ゆっくり雀啄すると背骨に沿って下方に響 いた。 そのまま置鍼して温灸を行った。 最後、右上の側臥位になり、胸椎3/4椎間関節の 関節運動法を行って終了した。 その夜、寝て汗をかき、翌朝、咳はほとんど治っ ていたという。 ●背中の痛みは腎臓結石であった。 女性 40歳 背中の一点が痛いといって来院した。 腹臥位で背腰部を揉んで調べると、肝兪穴から腎 兪穴まで硬結が続いていたが一番の硬結・圧痛は 右の志室穴であった。 このツボに刺鍼してゆっくり雀啄してかすかな響 きを起こしていると、急に刺鍼部の痛みが激しく なって動けなくなった。 あまり痛がるので、抜鍼して右上側臥位で休んで もらった。 30分ほどたつと痛みが軽減してきたので帰って もらった。 2ヶ月ほど経ってまた治療にかかってくれたので、 あの後、どうなりましたかと聞くと、病院へ行っ て診てもらったら腎臓結石であったという。自覚 症状をよく聞いて治療をすべきだったと反省した。 ● 右顔面神経麻痺がお孫さんとしゃべって笑っ て治った。 男性 73歳 今年の春、右肩が凝って冷える感じがあった後、 右顔面神経麻痺になった。 右側のまぶたと口角がかなり垂れ下がり、汁物が こぼれる、声が不明瞭になるなどの症状で、患者 さんはかなり不機嫌な様子。 病院の治療と鍼・温灸治療にかかって少しずつ改 善していたが回復が遅い傾向であった。 患者さんは脂肪肝があって肝臓の働きが十分でな いので、筋肉に十分に栄養を与えることができな いこと、老廃物の処理が十分ではないこと、また 腹部の胃のツボである中脘穴がいつも冷えている ことが顔面部の麻痺の部位(胃の経絡の部位)の 回復を遅らせていると考えられた。 夏になって7歳になるお孫さん(女の子)が一ヶ 月ほど遊びに来た。 「元気すぎて相手ができないよ」と言いながら、 そのお孫さんとよくしゃべって笑ったという。こ れが大変よいリハビリになったと思われて急速に 回復した。 の骨がくっついている状態だから、このままでは 手術して人口骨頭を入れるしかないといわれた。 背臥位で診断按摩を行うと圧痛部位は鼡径部の気 衝穴と股関節部の日本環跳穴であった。この2穴に 刺鍼して置鍼し、温灸を行ったところ腹鳴がおこ った。腹臥位で背腰部・仙骨部に診断按摩を行う と、右腎兪穴と右志室穴で右日本環跳穴に響き、 右大腸兪穴と右次髎穴で気衝穴に響いた。 これらのツボに刺鍼すると下腹部がヒクヒクと動 いた。 患者さんは、いままでの健康診断で特別腹部の病 的症状はなかったので、ゴルフなどのしすぎによ る股関節だけの障害と思っていたが、腹部内臓の 弱りが原因で股関節痛が起こっていることを納得 した。 治療が終わってベッドに座って右足を持ち上げる 動作を行うと、普段の靴下を履く動作に比べてよ り高く足を持ち上げることができた。 治療6回目で股関節に響くツボは右志室穴、鼡径 部に響くツボは右大腸兪穴にしぼられてきた。階 段の昇り降りもゆっくりとできるようになって、 手術をしなくてもよさそうとの希望をもって治療 を継続している。 ● 脳出血後遺症による左手足麻痺 男性 61歳 5年前に発症して手足に拘縮が強い。杖をついて自 分でどうにか歩行できるが、手は全く動作ができ ない。 腹臥位で背腰部に診断按摩を行うと、次のツボに 硬結・圧痛があった。左肺兪穴、左厥陰兪穴、左 腎兪穴、左大腸兪穴、左右風池穴。 1寸3分00番鍼で左肺兪穴に刺鍼すると、左母 指と示指に響いた。左厥陰兪穴に刺鍼すると、左 中指と薬指に響いた。 1寸6分0番鍼で左腎兪穴に刺鍼すると 左照海 穴に響いた。左大腸兪穴に刺鍼すると、左腓腹筋 外側部に響いた。 最後に右風池穴に刺鍼すると、左下肢全体に重だ るい感じで響いた。響きがあったあと、温かく感 じた。 手足の麻痺は、手足の付け根の体幹部に治療穴が ある。 ● 股関節痛 女性 70歳 (階段の昇り降りや、靴下をはく姿勢で足をひきつ けると股関節が痛む。 2年前から痛み出した。整形外科ではX線で股関節 ● 男性 38歳 胃の弱りと肩凝り 仕事のストレスによる胃炎と右肩こりで、月2回の ペースで治療にかかっている。 腹臥位で左胃兪穴と右肩甲間部・右肩上部に治療 13 したあと、最後坐位になって右肩部を揉んで圧痛 を調べると、いつも風門穴に硬結・圧痛が残って いる。 このツボに1寸00番鍼で刺鍼すると決まってゲッ プが出て肩凝りがスッキリする。 腹臥位で左胃兪穴に刺鍼するよりも、坐位で風門 穴に刺鍼するとゲップがでるのは、坐位の方が刺 激が強いからだと考えられる。 ● 右下顎のオトガイ孔の近くの激痛 女性 33歳 顎の痛みは以前、治療した歯が原因かと思って歯 科医でレントゲン撮影したが異常はないとのこと。 下顎の激痛部は左オトガイ孔の近くであった。 頚部に関連穴があると予想して、伏臥位で後頭部 と後頸部に診断按摩を行うと右翳風穴と右完骨穴 に圧痛があった。 このツボを指圧すると、両方のツボで共に激痛が 軽減した。 完骨穴は直刺、翳風穴はオトガイ孔に向けて斜刺 し、それぞれ軽く響かせて置鍼して温灸を行った。 次にオトガイ孔は胃経、完骨穴は胆経、翳風穴は 三焦経の流注部位なので、腹臥位で背腰部の胃兪 穴、胆兪穴、三焦兪穴に診断按摩を行うと、左胃 兪穴の背骨寄りのツボと右胆兪穴の外側の陽綱穴 に圧痛があった。 この2穴に刺鍼して置鍼し、温灸を行うと腹鳴が あった。 2回目の治療で感想を聞くと、1回目の治療で 80%くらい改善したという。 2回目も同様の治療をして完治した。 ● 腰痛の原因が牡蠣フライ 女性 70歳 腰痛の原因が牡蠣フライの油によって胆嚢が弱っ たためであった女性。 慢性腰痛で月2回ペースで鍼治療にかかっている。 今日は右腰が痛いという。痛む部位をよく聞くと、 右腸骨陵の胆経・五枢穴・維道穴であった。 背腰部と下肢に診断按摩を行うと、胆兪穴と陽陵 泉穴に硬結・圧痛があった。 胆嚢の弱りを予想して、 「何か脂っこいものを食べ ませんでしたか」と聞くと、 「先生、牡蠣フライは いけませんか?」と答える。 「牡蠣フライが大好きで、ここ数日、毎日、食べ てます」 「牡蠣は身体に良いのですが、フライにして油を たくさん食べたので、油によって胆嚢が弱ったた めですよ」と説明すると、 「食べ物で腰痛になるな 14 んて本当かしら」と認めたくない様子であった。 ● 右腰痛 女性 55歳 肝臓の血液検査の数値が悪いということで、精密 検査をしている女性。主訴は右腰痛で、寝ていて も1~2時間で腰が痛くなって目が覚める。 寝ていられず、起きて座って我慢しているという。 右上側臥位で腰部に診断按摩を行うと、大腸兪穴 に1番の硬結・圧痛があった。このツボにステンレ ス製の0番1寸3分の鍼で刺鍼し、呼吸に合わせてゆ っくり雀啄すると左足全体にも響いた。 2回治療にかかっていただいたが、2回目も1回目と 同様に刺鍼した反対側に響くという変わった症例 であった。 その後、精密検査の結果、肝臓ガンと肺ガンが見 つかり、入院したので鍼灸治療は打ち切りになっ た。 ● 左耳鳴りと難聴 女性 54歳 病院の治療を受けて、薬を飲んでいるが改善しな い。 背臥位で右の耳に腕時計を当てると秒針の音が聞 こえて、左の耳では聞こえないという。 耳の周囲に診断按摩を行うと、左胆経の曲鬢穴に 小さな硬結と圧痛があって、このツボを中指で圧 迫すると耳の中にツーンと響くという。 また左股関節部の環跳穴に自覚的に違和感がある というので、この2穴を中心に全身的に鍼灸治療 を週に2回のペースで1ヵ月半、15回行ったと ころ、ほとんど耳鳴りはなくなり腕時計を左耳に 当てても正常に聞こえるようになった。 ● 食後のだるさ 女性 65歳 5年程前まで当院の鍼灸治療に継続的にかかって いた65才の女性。小柄でやや痩せている。 体調が良かったので治療を休んでいたが、食後ひ どくだるくなるということで、また治療にかかる ことになった。 全身に診断按摩を行うと腹部では中脘穴に硬結・ 圧痛があり、左梁門穴に冷えがあった。 背腰部では左意舎穴、左胃倉穴に硬結・圧痛があ った。 下肢では両側足三里穴と左脾経の地機穴に硬結・ 圧痛があった。 食事内容を聞くと、和食を比較的少量だが食べた あと何か甘いもの1つ食べたくなるという。 鍼に敏感な患者さんなので、00番鍼でこれらのツ ボに軽く響く程度に刺鍼して温灸を行った。 (1週 間に1回の治療) 1回目の治療のあと、身体全体のだるい感じが2 日後に起こった。 2回目の治療では、翌日にだるい感じが起こった。 3回目は、家に帰ってから起こった。 4回目は、治療直後に起こって、家に帰ってから はだるくなかった。 回復に応じて、だるさの現れ方が次第に早くなる ことがわかる。 以前よりも食欲が出てきて、食後の甘い物も食べ なくなった。 ● 足の裏の痛み 女性 51歳 痛む部位をよく聞くと、右足底部の第2趾の付け 根で奇穴・裏内庭穴の部位である。 裏内庭穴は胃経のツボなので、胃の弱りと判断し て上腹部の胃の募穴・中脘穴を触診すると、少し 冷えがあって深部に硬結がある。 好きな食べ物は甘い物で、食後に必ず何か甘い物 を1つ食べるという。 下肢の胃経に診断按摩を行うと、足三里穴に圧痛 が強くあり母指圧すると腹鳴が起こった。 1寸3分00番鍼で刺鍼して雀啄すると、足の痛む 部位(裏内庭穴)にジーンと響きが起こった。 置鍼して、その上から温灸を行った。3分くらい 行うと、足の痛む部位(裏内庭穴)が温かくなり、 同時に中脘穴の冷えも解消していた。 抜鍼して歩行すると少し痛みを感じるだけで、ほ ぼ普通に歩くことができた。 ● 手の震え 女性 60歳 新聞を持って読んでいると手が震えるという女性。 病院でパーキンソンの疑いで調べたが、パーキン ソンではないといわれた。いつも手が冷たくて、 乾杯で冷たいグラスを持っていることができない。 最近、心臓の検査で、僧帽弁の開閉が不完全で血 液が逆流していることが分かった。 そこで心臓関係のツボを調べると、肩甲間部の心 兪穴と厥陰兪穴に硬結・圧痛があった。前腕の心経 の通里穴にも圧痛があった。 この2穴を中心に週1回の治療を2ヶ月行って、最 近、冬の時期にもかかわらず手の冷えがなくなっ てきた。 新聞を持っているときの手の震えはまだあるとい う。治療を続けてもっと手が温かくなると、手の 震えも改善する可能性があると思われる。 15 ● 膝窩のガングリオン 女性 40歳 3年前にスキーで転んで左膝の靭帯を傷めたあと、 膝窩部の委中穴のやや下方にピンポン玉くらいの 大きさのガングリオンができた。 ほとんど痛くないので、何も治療しないでいると いう。 私の治療では今まで、ガングリオンの周囲に4~6 本置鍼してきた。盛り上がりの周囲や真ん中をよ く揉むと、周囲の最も踵よりのところに硬結があ って圧迫して痛むツボがあった。 このツボ、1穴だけに置鍼して、週1回の治療を6 回続けて、ガンクリオンが柔らかくなって少し小 さくなってきた。 ※ガングリオンは盛り上がりの周囲で最も圧痛の あるツボが効く。 ● 膝関節痛と糖尿病 女性 72歳 左膝が痛いというので診断按摩を行うと、膝蓋骨 内側の脾経・内膝眼穴の1cm上の阿是穴であった。 「何か病気はありませんか?」と聞くと、糖尿病 があるという。 糖尿病に関係してこのツボに痛みが出ていたと考 えられる。 ● 糖尿病で網膜の黄斑部に浮腫 女性 75歳 特に左目の視力が悪く、渋い感じがしてまぶたが 厚ぼったいという。 背臥位で目の周囲に診断按摩を行なうと、上睛明 穴と太陽穴に圧痛が強かった。 両側太陽穴に1寸00番鍼で刺鍼して、軽く響かせ ると左目だけに涙が出た。治療後、目の渋い感じ がほとんど無くなったという。 数日後、黄斑部の浮腫の検査をしたところ、浮腫 はまだあるということだった。 ● 目の周囲にできた脂肪腫 女性 38歳 週1回ペースで継続治療をしているOL。 左目の内側部・睛明穴の2mmほど下に、直径2mm くらいの脂肪腫ができた。病院へ行って治療しよ うと思っているのだけれどと言う。 この部位と関係する左小指の小腸経・少沢穴を見 ると赤味が強かったので、井穴刺絡を3回行った ところ、幾分、脂肪腫の大きさが小さくなった。 「この治療を続けると、なくなると思います」と 説明して、治療を続けている。 ● 腎兪穴と手足 女性 45歳 特に症状はないが健康管理で鍼灸治療にかかって いる女性。 硬結・圧痛のある右腎兪穴に刺鍼すると、いつも下 肢に響いて、その後、足の裏と手の平が温かくな って汗ばむ。 患者さんは、お風呂に入った温かさと違って、芯 から温まる感じだという。普段、手足が冷えてい ないが、この反応が起こる。手まで温かくなるの は、足の少陰腎経の経絡が次に手の厥陰心包経に 繋がるためと考えられる。 ● 鍼管を置く音が一番、気になった。 女性 肩凝りで鍼が初めてということで、ドーゼを軽め にして終了した。終わって、鍼は痛くなかったし、 肩凝りもだいぶ取れましたということだった。 後で紹介してくれた女性の患者さんに「治療して どう言っていましたか」と訊くと、意外な返事が 返ってきた。 「鍼は痛くなかったけど、鍼を置く音なのか、カ チャンという音がとても気になった」と。鍼管を シャーレに置くときの当たる音であった。 治療師は慣れっこになって気にしていないが、患 者さんはこんなことにも気になるのだなと反省し た。 ● コブの上にコブ 男性 50歳 長年の凝りで、コブのような肩井穴に刺鍼して雀 啄したら内出血を起こしてしまい、コブの上にコ ブができてしまった。 ● 右足の裏が痛い 女性 74歳 この2ヶ月ほど病院に通って電気をかけて、湿布 をしているが治らないという。 痛む部位をよく聞くと、右足底部の第2・第3中 足骨頭の関節である。 爪先立ちをすると、一番体重のかかる部位である。 経絡は胃経なので、腹臥位で右の胃兪穴と胃倉穴 を指圧すると胃倉穴の方に圧痛が強かった。 胃倉穴を持続圧すると、足底の疼痛部位に響きが 起こった。 このツボに1寸3分の0番鍼を刺入してゆっくり 雀啄すると、刺入に応じてズンズンと足底の疼痛 部位に響いた。 置鍼したまま温灸を行うと足底部が温かくなった。 足底部を一度も治療しないで、胃倉穴だけを4回 治療して治った。 16 ● 左片麻痺 男性 52歳 脳卒中の後遺症で左片麻痺の患者さん。 腹臥位で左肩部、肩甲間部に診断按摩を行なうと、 肩甲骨内縁の附分穴に硬結・圧痛があった。 1寸3分の00番鍼で2cmほど刺鍼して、ゆっくり 弱啄を繰り返すと、左手の母指と示指に響いて手 指が動く感じがするという。置鍼したまま手を見 ると指は全然動いていない。しかし、この状態は 運動法を行なうチャンスと思い、手指の屈曲と伸 展を私が補助しながら行なわせた。指の屈曲でや や力が入るのが感じられた。本人も動いたことが 分かって、もっとやってくれという。屈曲と伸展 を10回行なって終了した。 肩部、肩甲間部のツボで、うまく手に響かせて動 く感じを与えながら手指の屈曲・伸展運動を続け てゆくと、次第に改善すると思われる。 ● 温灸で火傷させてしまった症例 女性 90歳 肩凝りで治療にかかっている、おばあさんに坐位 で温灸を行なった。 いつも行なっているので、だいたいの熱さの加減 が分かるのだが、熱いと言わなかったので少し時 間を長めに行なったところ、1週間後に来たとき、 右肩井穴が少し火ぶくれになっていた。 「ヒリヒリするでしょう」と聞くと、 「何も感じな い」という。 お年寄りは感覚が鈍くなっているので、ドーゼに 気をつけなければいけないと思った。 ● ムチウチ症や寝違いの症例 坐位で頚を曲げると痛いという場合、痛みの出る 角度に頚を曲げてもらい、その痛む部位に0番鍼 で刺鍼して軽く響かせ、抜鍼して頚を動かしても らうと痛みが取れることが多い。 つまり運動誘発痛に刺鍼するわけである。 しかし若い患者さんで効き過ぎて貧血を起こして 倒れることがあるが、少し横になってもらうとお さまる。そのあとで頚の痛みもスッキリと取れる。 ● 左のこめかみが疲れたときにズキズキする 女性 55歳 左上横臥位で、こめかみに診断按摩を行なうと胆 経の曲鬢穴に小さなグリグリとした硬結と圧痛が あった。 このツボは骨の上にあって深く刺しづらいので、 患者さんの手を借りてツボをつまんでもらい、皮 膚が盛り上がった状態で00番1寸3分のステンレ ス鍼を約2センチ刺入した。撚鍼を繰り返すと気 持ち良い響きが起こり、同時に左肩の肩井穴にジ ンジンと響くという。 3分間ほど響かせたあと、置鍼してその上から温 灸をかざして温めた。今度は腹鳴が起こった。 治療が終わったとき、患者さんは「ボーとしてフ ラフラします」というので、20分ほど寝てから 帰ってもらった。 2回目の治療のとき、前回の治療で症状の80% は取れたということであった。 右上横臥位で、まず左大腸兪穴に0番鍼で刺鍼す ると腹鳴が起こったので、鳴り止むまで雀啄を続 けた。次に右合谷穴に00番鍼で刺鍼して雀啄を繰 り返すと、歯が浮く感じがするという。治療して 症状が再現すると後で治るので、我慢してもらっ て治療した。 最後に右下関穴に前下方に向けて00番鍼を1cm ほど刺鍼して、ゆっくり雀啄すると、上歯全体に 鈍痛が起こった。これも気が巡ることによる響き であるので、鈍痛が感じなくなるまで雀啄を続け た。2回目の治療で症状を聞くと、治療した次の日 はほとんど痛まなくて、病院へ行かなくて済んだ という。 ● 右肩関節に違和感があり、回すとゴリゴリと音 がする 男性 54歳 坐位で肩を動かしてもらい、耳を近づけてどの辺 りから音が出るか聞いてみると、肩関節後面部の 肩貞穴(小腸経)あたりからであった。 そこで、私は横に位置して右膝に患者さんの腕を 乗せて支え、肩関節外転位の状態に維持して、肩 貞穴に0番1寸3分の鍼で刺鍼して雀啄し、響き を得たところで置鍼したまま温灸を行なった。 抜鍼して肩を回してもらうと、1回の治療でゴリ ゴリ音が3分の1くらいに減少して、患者さんも 肩が楽に回ると言って嬉しそうに何度も回してい た。 ● 偏頭痛の治療 50歳 女性 今日は右偏頭痛がすると言う。右上横臥位で頭部 に診断按摩を行うと、側頭部の臨泣穴から目窓穴 にかけて圧痛があった。足部の臨泣穴を指圧する と飛び上がる程の圧痛があり、腹部の胆の募穴・ 日月穴にも圧痛があった。いつもは背部の胆兪穴 を重点的に治療するのだが、今回は胸部の日月穴 と足の臨泣穴に刺鍼して微かに響かせてから温灸 を行った。患者さんは急に眠気が襲ってきて2~ 3分であったが眠ってしまったと言う。診断按摩 から刺鍼して温灸まで15分間位の治療を終えると、 頭部には治療しないのに偏頭痛が治っていた。 ● 目ヤニが出て涙が止まらない 女性 77歳 眼科医で薬をもらって注しているが、治らないの で使わないでいるという。 仰臥位で眼の周囲に診断按摩を行なうと、眼の横 の太陽穴に圧痛が強い。鍼は嫌だというので、温 灸を行なうことにした。左右の太陽穴に皮膚がほ んのり赤くなるまで行なった。 伏臥位で、頚部から背腰部の硬結・圧痛を調べる と、風池穴と膈兪穴から肝兪穴にかけて凝ってい る。 これらのツボを重点的に指圧を行なった。 一週間後、再び治療の際に聞くと目ヤニはもう気 にならないということだった。 ● 肩井穴の響き 35歳 女性 専業主婦 今日は右下肢の胆経の経絡上に、シビレ痛みを感 じるという。先ず、最初に右上横臥位で肩の治療 から始めようと肩井穴に刺鍼して雀啄すると、右 足の第5趾・第4趾に響いた。そこから上行して 下腿・大腿の外側部を上行してお腹に響いて、さ らに雀啄を続けていると眼の奥に響いた。肩井穴 1穴の刺鍼で足から腹部を通って眼まで響いたこ とになる。使用鍼はステンレスの寸3の0番鍼で あった。 ● 痔の治療 男性 趣味はテニス 27 歳 大学時代からテニスをしていて社会人になっても 熱心に続けている。 数回、腰痛で治療にかかっていたが、 「先生、実は 痔があるのですけど、治療してもらえるでしょう か」というので「痔はどの程度ですか」と聞くと 「そんなにひどくはなく、テニスで特に力が入っ たとき痛むのです。たまに出血します」という。 「パンツを下げて肛門に鍼をしますが、いいです ● 歯が痛くて眠れない 50歳代 女性 痛む歯は主に上の歯ということで、頬に診断按摩 を行うと右下関穴に圧痛が強い。上の歯は大腸経 が流注しているので手の大腸経を調べると、右合 谷穴に硬結・圧痛がある。背腰部では左大腸兪穴 に硬結・圧痛があった。聞くと便通も良くないと いう。 17 か」というと「やって下さい」との返事。 「テニスをやっている人は踏ん張るので、みんな 痔持ちなんです」という。 普段、腰痛がある左側を上に側臥位になってもら い、パンツを肛門が出る位置まで下げて両足を前 後させた。 痔は仙骨部に必ず圧痛が現われているので診断按 摩を行うと、左下髎穴に圧痛があった。このツボ に1寸・00 番鍼で刺鍼して回旋・雀啄を繰り返す と肛門に温かくなる感じで響いた。 次に肛門の周囲鍼として1寸6分・0番鍼の鍼を 1寸3分の鍼管に入れて、鍼管を持った押し手が 皮膚に触れないように鍼管を立てて1㎝ほど出た 鍼柄を弾入した。 肛門の上下・左右に4本置鍼して温灸を行った。 鍼を通して熱感が深部まで伝わって、すごく気持 ちよいですという。 「痔は一般的にアルコールの飲み過ぎや、辛い物 の食べ過ぎが原因ですが、このような物はどうで すか」と聞くと「大好きです」とのこと。 痔の原因は、テニスで足に力が入ることではなく アルコールと辛いものが原因のようであった。 2週間後に治療にかかったときに聞くと、1週間 は痔が気にならなかったという。 女性 42 歳。 最近、コーヒーを飲むと動悸がすることがありま すという。 背臥位で心臓の弱りを現すツボである胸部の左歩 廊穴を指圧すると圧痛があった。 母指持続圧をすると、心臓の音が大きくなるよう な気がしますという。 1寸・00番鍼で刺鍼して雀啄回旋すると、 最初、 左小指に響いた。 さらに運鍼を続けると響きは歩廊穴から上がって 前頸部から頬を伝わって目の睛明穴に響いた。 置鍼して温灸をすると、小指と睛明穴にさらに強 く響き的な感覚が起こって、しばらくしてからス ーッと引いた。 寝不足で朝、コーヒーを飲むと心臓に無理がかか って動悸が起こる。 ※歩廊穴:胸部の第5肋間部にある腎経のツボ ● 鼠径部痛が胃兪穴の刺鍼で改善した。女性 44 歳。 右鼠径部に鈍い痛みがあるという。 揉んで調べると大腿動脈部である。この部位は 胃経・脾経の流注部位なので、腹臥位で背部の脾 兪・胃兪、意舎・胃倉穴を指圧すると、右胃兪穴 に最も硬結・圧痛があった。 このツボに違いないと思って母指持続圧すると、 下腿前脛骨筋部の胃経に響いて大腿動脈部には響 かなかった。 しかし胃兪穴のひどい硬結・圧痛から間違いな いと判断して1寸3分、00 番鍼で刺鍼すると、今 度は動脈部に響いた。 ゆっくりと回旋・雀啄を繰り返すと、大腿動脈 の拍動が強くなるという。 置鍼して温灸をした後、鼠径部を圧迫すると鈍 い痛みはほとんど感じなくなっていた。 ● 膝の内膝眼穴の痛みは、 バター料理を食べたこ とが原因だった。女性 68 歳。 「ハワイでテニスをしたら、ずっと治っていた膝 が痛くなりました」という。 膝の痛みの部位を調べると、左膝蓋骨下端の内膝 眼穴である。 このツボは、脾(膵臓)の弱りで圧痛が現われる ことが多いので、 「ハワイで何か洋食的な物を食べ ませんでしたか」と聞くと「ハワイの友人がすご くバターを使う人で、普段よりもバターを多く食 べたと思います」とのこと。 脾経の募穴・章門穴を圧迫すると圧迫不快感があ った。 内膝眼穴に1寸・00番鍼で刺鍼して響きを得た ところで、章門穴を圧迫すると圧迫不快感が軽減 した。 置鍼して温灸をすると腹鳴が起こった。 ベッドから降りて左膝に体重をかけてもらうと、 膝の痛みは半分以下になっていた。 ● 膝痛の左曲泉穴に刺鍼したまま腹臥位になっ て肝兪穴を治療。女性 68 歳。 横断歩道を渡っていて歩行者の信号が点滅した ので、ちょっと急ぎ足でかけだした。その瞬間に 左膝がグキッとなって、歩くと次第に痛みが強く なった。 治療室でも左足をかばった歩き方をしている。 背臥位で揉んで調べると痛みの部位は肝経の曲 泉穴であった。1寸・00 番鍼を用いて体患部に向 けて斜刺で刺鍼し、響きを得て置鍼して温灸をし た。その後、テープで貼って鍼を押さえたまま腹 ● 歩廊穴の指圧で睛明穴と上肢の心経に響いた 18 臥位になってもらった。 背腰部で診断按摩を行うと左肝兪穴に硬結・圧 痛があった。このツボには1寸3分・00 番鍼で刺 鍼して回旋雀啄を行うと置鍼してある左曲泉穴に 響いて、かえって痛みが強くなった。 置鍼したまま温灸を行うとスーッと痛みが軽く なった。 抜鍼してベッドから降りて歩いてもらうと、左 足をかばった歩き方ではなくなっていた。しかし 少し痛みはあるという。 が出るのは、あまりないことである。 ● 頭だけ汗をかく人が全身に汗をかいた。女性 74 歳。 筆者の鍼灸治療にかかるまでは、寝ていて汗をか いても頚や頭だけであったが、最近、全身に汗を かくようになったという。 また寝ている間に排尿で2回、目が覚めていたの が1回になって足の冷えを感じなくなった。 最も重視して治療するツボは右志室穴で、大きな 硬結・圧痛があって1寸3分・00 番鍼で刺鍼して 3分間くらい雀啄して十分に響かせてから温灸を 5分間ほど行う。 ● 章門穴の鍼・温灸で大腿動脈部・衝門穴に響い た。女性 44 歳。 主訴は右鼠径部(大腿動脈部・脾経・衝門穴)の 痛みで、歩行して足を前に出すと痛み、体重をか けるとさらに痛むので右足をかばって極めてゆっ くりとしか歩けない。 鼠径部が痛む前に右側腹部の奥に鈍い痛みがあっ たという。 側腹部を揉んで鈍い痛みの部位を調べると、 丁度、 11 肋骨端の脾経募穴・章門穴であった。 このツボに 1 寸 6 分・0番鍼で刺鍼してゆっくり と雀啄すると、胃の形が分かるような感じで響い た。 脾の募穴なので膵臓に響きが起こるはずだと思っ たが起こらなかった。 置鍼して温灸をすると、今度は大腿動脈部・衝門 穴が、以前、最も痛かったときと同じくらいの強 さで響き的痛みが起こった。 「少しの時間ですから我慢して下さい」と説明し て、2分間くらい行うと痛みが引いた。 患者さんは、 ものすごく我慢した様子で終ると 「の どがカラカラです。水を飲まして下さい」と訴え た。 次の治療で聞くと鼠径部の痛みはあの後、3分の 1くらいに減ったという。 治療して激痛的な響き的痛みが起こると、 その後、 劇的に改善することが多い。 ● 坐位で肩井穴に刺鍼して貧血が起こった。 男性 77 歳。失敗例 肺ガンと大腸ガン(人工肛門)を手術している患 者さん。 胃が痛んで右肩が凝るというので、右上側臥位で 左胃兪穴と右肩井穴に1寸3分・00 番鍼で刺鍼し て雀啄し、軽く響かせて温灸をした。 すると胃がズーンとした感じで痛くなり、坐った 方が楽な気がするので坐りたいという。 坐ってもらい3分間くらい休んでもらって、それ では「坐ったまま肩に鍼をしましょう」と説明し て右肩井穴に刺鍼すると、 「何だか気分が悪くなっ た」というので顔をみると真っ青で貧血を起こし た状態だった。 また右上側臥位に寝てもらい下腿と足部を 10 分 間くらい揉もとおさまったので終了した。 ● 左五十肩的な痛みが肝兪穴の刺鍼で響いて改 善した。男性 59 歳。 朝、パジャマを脱ごうとして腕を後ろに回すと左 肩が痛いという。 坐って腕を後ろに回して痛む部位を揉むと三焦経 の臑会穴であった。 左上側臥位で背腰部全体に診断按摩を行うと肝兪 穴、胃兪穴、肓門穴、志室穴に硬結・圧痛があっ た。 指圧で肩に響くツボはどれかと持続圧したが、特 に響くことはなかった。 最初に肓門穴に刺鍼して運鍼すると、わずかに響 いた。 次に硬結・圧痛の強くあった肝兪穴に刺鍼すると、 普段起こる鈍い痛みの感覚で響きが起こった。 肝兪穴の硬結・圧痛なので、 「普段、アルコールの ● 第2頸椎棘突起の硬結(下天柱穴)に刺鍼した ら、くしゃみが連発して出た。女性 72 歳。 うつ伏せになってもらい後頸部を揉むと、第2頸 椎棘突起の左側に硬結があった。 このツボに1寸3分・00番鍼で刺鍼して回旋・ 雀啄をすると、急に激しくくしゃみが出た。 すぐに鍼を抜いて起きてもらい鼻をかんでもらう とスッキリしたが、このツボに刺鍼してくしゃみ 19 量はどうですか」と聞くと「最近、飲み過ぎと思 ってだいぶ減らしている」とのこと。 肝臓の弱りで左五十肩的な痛みが起こったものと 判断した。 つかまってやっと上がってきた。治療パジャマに 着替えることができず、そのままベッドに横にな った。 昨年の 12 月に大腸ガンを手術(人工肛門はつけ ていない)をして 4 カ月経っている。 腰部と下肢に診断按摩を行うと腎兪、大腸兪、上 環跳 (大転子上部) 、 上巨虚に硬結・圧痛があった。 1寸3分・00番鍼で刺鍼して回旋・雀啄すると 特に大腸兪の鍼で上巨虚に響いた。 大腸兪と上巨虚の置鍼部に同時に温灸をしたとこ ろ、上巨虚にものすごい響き的な痛みが起こって 患者さんはウンウンと唸って痛みをこらえていた。 この反応は大変効くので「少しの時間ですから我 慢して下さい」と説明して3分間ほど行った。 治療が終って右足がしびれたような感覚で力が入 らないと言って、20分ほど休んでから帰った。 この治療を毎日続けたところ腰痛は急激に改善し て3日間で80%改善した。 ● かぜで痰が出る症状と肩凝りが、 尺沢穴の刺鍼 で改善した。女性 48 歳。 週に 1 回ずつ治療にかかっている女性である。 「ちょっとかぜを引いたようで、のどが変で痰が 出て、いつもより肩が凝るのです」という。 仰向けになってもらい、のどを軽く揉むと天突穴 の右側の胸鎖乳突筋部に硬結があって咳が出そう になった。 のどの右側に症状があるので肘内側部・肺経・尺 沢穴を左右指圧すると、右側に硬結・圧痛が強く あった。 このツボに1寸3分・00 番鍼を2㎝くらい刺鍼し て雀啄すると、肩凝りの部位にジーンと響いて、 その感覚が後頸部から後頭部にまで伝わった。 さらに雀啄を続けると、のどの奥がグッと感じて 痰が上がってきて飲み込んだという。 00 番鍼で刺鍼して痛くなく響かせることを続け ると、そのツボと関係する経絡に気が巡って、い ろいろな症状が改善される。 ● 生理中の腰痛が関元兪の鍼・温灸で改善した。 女性 35 歳。 生理2日目で腰が痛くてまっすぐに立っているの が辛い。腹臥位で腰部と仙骨部に診断按摩を行っ て圧痛を調べると関元兪に反応があった。 1寸3分・00 番鍼で刺鍼して軽く響きを得て置鍼 し、温灸を行うと下腹部の両横の胃経・水道(任 脈・中極の2寸外方)あたりに響いた。 一旦、温灸を置いて置鍼してある鍼を回旋・雀啄 して、 もう一度、 響かせてからまた温灸を行った。 治療を終了して着替えると、腰がすごく楽になっ ていた。 ※筆者の使う尺沢穴は、上腕二頭筋腱橈側部で肘 内側・横紋部のやや下方、腕橈骨筋付着部の硬結で ある。 経穴の教科書(山下詢著)による尺沢穴のツボの 位置は、 「肘窩横紋上で上腕二頭筋腱の橈側、腱の 外方から腱下に刺鍼する」となっている。 ● 三陰交の刺鍼・温灸で腰が石のように重く感じ た後、温かくなった。女性 43 歳。 月経は2日目が最も辛くなるということで、治療 したのは予定日の3日前であった。背臥位で三陰 交を指圧すると両側に圧痛があったので、左右の ツボに1寸3分・00番鍼を刺鍼して回旋雀啄し、 響きを得て置鍼した。さらに置鍼部に温灸を行う と「腰が石のように重くなってきた」というので 我慢をしてもらい、温め続けると重い感じがスー ッとなくなって今度は腰が温かくなった。 ● 耳の痒みが前天牅の刺鍼で軽減した。女性 51 歳。 右の耳が痒いという。耳の周囲に診断按摩を行う と乳様突起に胸鎖乳突筋が付着するところの天牅 に圧痛があった。試しにこのツボの前側にある胸 鎖乳突筋を挟んで前方の阿是穴を指圧すると、こ ちらの方に圧痛が強くあった(前天牅)。 手背部の上中渚を左右調べると反対側の左に圧痛 が強かった。このツボに美容治療用の03番鍼で 刺鍼して響きを得て置鍼した。 右前天牅に1寸3分・00番鍼で刺鍼して回旋・ 雀啄すると、左上中渚に置鍼してある部位に響き が起こって、その感覚が上昇して肘の方に伝わっ た。 右耳の痒みは、一時、かえって強くなったが引き ● 下腿・上巨虚に耐えられないほどの響き的痛み が起こったあと腰痛が急激に改善した。男性 62 歳。 腰と臀部の激痛で、当院の2階の階段を手すりに 20 続き回旋・雀啄を続けると軽減した。 ● 腎兪の置鍼・温灸でガクガクと体が動いた。男 性 34 歳。 主訴は腰痛。右側の方がつらいというので右上側 臥位になってもらい、最も硬結・圧痛のあった腎 兪に刺鍼して置鍼し、温灸をした。 「先生、腸が動いています」といったが腹鳴は起 こらなかったので筆者には分からなかった。さら に温灸を続けると体が少しずつ動き出した。 温灸をして体が動くというのは、あまり経験のな い反応なので「大丈夫でしょうか」と聞くと「さ っきよりも腸が動いていて、いっしょに体も動き ました」という。 時間は計っていなかったが約2分で動きが治まっ た。 患者: 「腹の中が熱いくらいになっています。 最近、 ビールを飲むと腹が冷える感じがあったのですが、 腰痛と関係があるでしょうか」 筆者: 「あなたの腰痛では腎兪というツボが一番、 凝っていますから、腎が弱っているところにビー ルなどの冷たい物を飲んだから腰痛になったと思 いますよ」と説明した。 ● 母指のシビレ感が井穴の鍼・温灸で改善した。 女性 52 歳。 右母指のシビレに対して井穴・少商と、その反対 側の「外少商」に03番鍼(直径0・10㎜)を 置鍼して線香灸をしたら母指がジンジンと感じた。 帰ってから、その感覚が夜まで続いて、次の日に なるとシビレ感が70%くらい改善していたとい う。 ● 右肝兪穴の置鍼・温灸で右胸が温かくなった。 女性 44 歳。 仕事の付き合いでアルコールを飲むことが多い患 者さんである。 腹臥位で硬結・圧痛のある右肝兪穴に1寸3分・ 00番鍼で刺鍼して回旋・雀啄した。これでは肝 臓の部位に響き的な感覚は起こらなかった。 次に置鍼して温灸をしたところ、右胸部の内側が 温かく感じた。 肝臓への血流が多くなったものと推測される。 肝兪穴は強く指圧したり鍼をしても、ほとんど響 き的な感覚は起こらないが、温灸をすると温かく 感じるという感覚で響きが起こる。 ● 響く感覚が症状と同じ。女性 62 歳。 歩いていて右足の第2趾が痛むという。痛む部位 は胃経・内庭穴(第2趾の中足指節関節の外側部) であった。このツボに00番鍼で刺鍼して置鍼し 温灸を行ったところ、 「歩いていて痛くなる時と同 じような感覚です」という。 我慢をしてもらって温灸を続けると、今度は「胃 のところが硬くなって、この感じは、寝ていてた まに起こる感覚です」という。 足の痛みと胃が硬くなる症状が置鍼と温灸で再現 された。 鍼・温灸を行うと治ろうとする響き的反応として 症状と同じ感覚が起こる。 ● 口を大きく開けられない。女性 72 歳。 最近、口を大きく開けられなくなったという。 一般的に顎の症状は胃の弱りで起こることが多い ので「胃が弱っていませんか」と聞くと「この夏、 暑かったので、果物を冷蔵庫に入れて冷たくして 食べていました。最近、ちょっと食欲がありませ ん。 」という。 そこで上腹部の胃経募穴・中脘穴を触診すると冷 えていた。 左右の足三里穴を指圧すると右側に硬結・圧痛が 強くあった。このツボに刺鍼して中脘穴と2穴を 同時に温灸で2分間ほど温めた。 口を多く開けてもらうと、普段よりも開けられる という。 腹臥位になってもらい背腰部を調べると右胃倉穴 に硬結・圧痛があったので刺鍼して響きを得て置 鍼し、温灸をした。 終わって起きて口を開けてもらい、自分の指を3 本縦に並べて口に入れると、ちょっときついが入 れることができた。 ● 瀉血で肩凝りが改善した。男性 52 歳。 肩凝りがひどくて按摩に、月に 3 回くらい定期的 にかかっている男性。 「先生、肩から血を取ると効くって聞いたけど、 できますか」と聞くので行うことになった。1 週 間に 1 回を3回続けたら、その後、2週間たって も肩が凝らないので、いつまで凝らないかなと観 察すると 4 週間たって凝りを感じるようになった。 それ以来、按摩を 30 分して最後に瀉血をすると 1 カ月に 1 回の治療でもつようになった。 瀉血の部位は両側の肩井穴と右肝兪穴の内側部に ある細絡である。 21 月3回、 かかっていた患者さんが月1回になって しまった。 22
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