現地駐在員だより 住んでみたサウジアラビア JETRO リヤド事務所 星出 純江 政治・経済や現地情勢といったことをレポートするべきかもしれないが,これらについ ては,多くの方が多方面から分析され,非常に知見に富んだ分かりやすい報告をされてい るので,今回の駐在員便りは普通に暮らして,見て聞いて感じたそのままを報告させてい ただくこととしたい。 2014年7月に長年の念願だったサウジアラビア再訪が初の海外駐在という形で実現し, 生活を始めて早1年半が過ぎようとしている。1年過ぎてようやく見えてきた物・事もあ るが,まだまだ分からないことだらけのこの国・人々のことを知るのが何より楽しい。 よく,周りの人たちからは「生活大変ですよね」 「ご苦労が多いのでは」とご心配いただ くが,確かに日本の生活を基準に考え,自由に動き回れる国と比べたら不便はある。が, それにも増して,楽しいことも多くある。 ―やはり,人との繋がり― 日本とは文化・習慣の全く異なることへの興味が尽きないのであるから,新しい発見が できれば,うきうきするし,人との出会いもわくわくである。元々は知らない人へのアプ ローチは苦手であり,できれば自分から近づいていくこともなかった。したがい業務上, 調査担当としての情報集めも人にコンタクトするよりは,まずはインターネットでと試み たが,ネットで開示されている情報などとても限られており,詳細は全く分からない。法 律や規則が改正されると報道があり,改正後の内容を見たいと思って,これまたネット検 索するがなかなか詳細には行き当たらない。結局は,担当者を探し当てて聞きに行くのが 手っ取り早いと分かった。担当者を探し当てるといっても闇雲に代表番号に電話しても誰 も出ないこともあるため,誰かひとり組織内に知り合いができたら,その人を頼って「こ れに関する担当者を紹介してくれる?」と聞くと,親切に紹介してくれる。ネットワーク の社会,人と人との繋がりが大事だとは,正にこのことだなぁと実感する。 38 中東協力センターニュース 2015・12 ―友達作り― 仕事上のネットワークは色々な人の助けで何とかできても,難しいのは友人作りである と思う。どこへでも自由に行き来できるわけではないので,なかなか人に巡り会うチャン スがなく,だからと言ってやたらと声をかけて歩くわけにもいかないので,どうやって友 達を作ればいいのだろう,と悩んだ。女性だけの集いがあると出向いてみても,そう簡単 には友達にはなれないが,それでも向こうが興味を示し連絡してきてくれて友達になった 人もいる。よくどの人もとても愛想よく「いつでも誘ってくれていいのよ」と言ってくれ るものの子ども4人のお母さん,大学院の博士課程に通い,仕事もしているという人に一 体いつ誘えばいいのだろうと気後れしているうちに誘うタイミングを逃したこともある。 そんな中でも思い切って「今度食事に行こう」と誘って快く付き合ってくれて友達になっ た人もいる。ちなみにここでの友達はみんな女性である。 一度友達になると,とても気にかけてくれて,しばらくこちらが連絡しないと「もうず っと会っていないけど,どうしているの?」と連絡をくれる。とても人の面倒見がいい国 民性であると感じる。 ラマダン中には自宅のイフタール(1日の断食明けの最初の食事)に招いてくれた。普 段は女友達や親戚全て女性ばかりの集まりであったが,この日は,招待されていたのは私 ひとりで息子さんたちとも一緒に食事ができた。ご主人はマッカに巡礼に行っているとの ことでお留守であったが,テレビに映るカーバ神殿と巡礼者に熱心に見入っている姿は印 象的であった。とても敬虔なご主人で年に何回かマッカに行くそうである。 手作りの家庭料理イフタール(写真)はとても美味しかった。この日,私のためにアラ ブ料理を用意してくれたが,普段はイタリアンあり,中華ありと各国料理を家庭のイフター ルで楽しむそうである。 週末の大きな楽しみのひとつは紅海でのダイビングである。もともとスキューバーダイ バーであった私は息子を出産後10数年一度もダイビングをしていなかったが,サウジにい 友人宅でのイフタール 39 中東協力センターニュース 2015・12 ボートに並んで泳ぐイルカ 紅海の水面下 て紅海を潜らないなんてもったいないと,今年になってから思い立ち,ジェッダ日本人会 ダイビングメンバーからもお誘いいただき,時々通うようになったが,砂漠に囲まれたリ ヤドでは味わえない楽しみである。毎週潜れるジェッダ駐在員が羨ましいと思うこともし ばしばである。 しかしひとつだけ残念なのは,20数年前に見たあの綺麗な青さが今はないことである。 海沿いの道路を車で走りながら眺めているだけで,本当に感動するほどに美しかった青さ が沿岸開発のためか,見られなくなった。 ―社会の変化― 先にも述べたが,私がこれまで会って個人的に話したことのある女性のほとんどは子ど もが4人いる人達がなぜか多かった。昨年3人目を出産した友人の娘さんもやはり4人の お母さんになるのかどうかは分からないが。 ある時,ある人から兄弟姉妹が何人いるのかと尋ねられたので,逆に尋ね返すと15人だ という。ただし,1人のお母さんからではなく,お父さんの奥さんは3人いたと。平均し て5人を1人が産んでいることになる。これまでのサウジアラビアの家族とは,このよう な子どもがたくさんいる,1人の女性が5人か6人は出産するというイメージであった。 ただ,最近耳にする話では,子どもは2人だけ,という人が増えてきているという。また, 女性は20歳前後までには結婚しており,早ければ20代前半で子どもも1人か2人はいるの が一般的と思っていたが,女性の社会進出が進むにつれ,結婚年齢は遅くなり,子どもを 産む年齢も高くなってきているようである。中には,30歳を過ぎても結婚しないで仕事を 続ける女性もいる。どの程度の割合でこのような女性がいるのかは分からないが,確実に 社会の変化は起きている。 これから5年,10年いやもっと先の20年,30年とこの国がどう変わっていくのか,こ の20年で見せた以上の変化なのか,それとももっと小さな変化なのか,変わりゆく姿を見 ていくのが楽しみである。 40 中東協力センターニュース 2015・12
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