最近の税関行政について

公益財団法人日本関税協会東京支部前橋地区講演会
最近の税関行政について
平成28年3月17日
東京税関監視部長 水井 修
目 次
Ⅰ.税関等について・・・・・・・・・・・・・・
Ⅰ.税関等について・・・・・・・・・・・・・・
1.税関の歴史・・・・・・・・・・・・・・・
1.税関の歴史・・・・・・・・・・・・・・・
2.税関の管轄・・・・・・・・・・・・・・・
2.税関の管轄・・・・・・・・・・・・・・・
3.税関における主要業務等・・・・・・・・・
3.税関における主要業務量等・・・・・・・・
4.我が国の貿易動向・・・・・・・・・・・・
4.我が国の貿易動向・・・・・・・・・・・・
Ⅱ.税関の使命・・・・・・・・・・・・・・・・
Ⅱ.税関の使命・・・・・・・・・・・・・・・・
1.安全・安心な社会の確保・・・・・・・・・
1.安全・安心な社会の実現・・・・・・・・・
2.関税、消費税等の適正・公平な課税・・・・
2.適正かつ公平な関税等の徴収・・・・・・・
3.貿易の円滑化・・・・・・・・・・・・・・
3.貿易の円滑化・・・・・・・・・・・・・・
Ⅲ.関税・税関を巡る国際的な状況・・・・・・・・
Ⅲ.伊勢志摩サミット等を踏まえたテロ対策・・・
Ⅳ.関税・税関を巡る国際的な状況・・・・・・・・
1
2
3
5
8
11
13
19
23
32
49
Ⅰ. 税関等について
1
1. 税関の歴史
[我が国税関の歴史]
(鎖国政策を続けた江戸時代には、長崎の出島が日本と外国を結ぶ唯一の港)
安政5年(1858年)
米、蘭、露、英、仏と
「安政5か国条約」締結
安政6年(1859年)6月
横浜、長崎、箱館(函館)港が開港し、
「運上所」を開設
慶応3年(1867年)10月
江戸築地鉄砲洲に江戸運上所を開設
<横浜海岸通之図(横浜海港資料館 蔵)>
<東京運上所(錦絵「東都名所 鉄砲洲明石橋之景)>
(翌年東京運上所と改称、東京税関の起源)
明治5年(1872年) 11月
全国の運上所を「税関」と呼称統一
(「税関」が正式に発足)
昭和18年(1943年) 11月
税関官制廃止、海運局に統合(税関閉鎖)
昭和21年(1946年) 5月
税関再開
その後、税関は貿易の伸長とともに歩み続けていますが、「人」、「物」、
「金」、「文化」、「情報」の流れが加速・グローバル化する中で、果たすべ
き役割も大きく変わってきています。
2
2. 税関の管轄
[全国税関の管轄区域]
全国には、9税関、69支署、111出張所、
10監視署が設置(平成28年1月1日現
在)されています。
神戸税関管内
税関支署数
税関出張所数
税関支署出張所数
税関支署監視署数
15
3
14
2
門司税関管内
税関支署数
税関出張所数
税関支署出張所数
税関支署監視署数
11
3
11
1
長崎税関管内
税関支署数
税関出張所数
税関支署出張所数
税関監視署数
税関支署監視署数
4
1
9
1
1
東京税関管内
税関支署数
税関出張所数
税関支署出張所数
税関支署監視署数
大阪税関管内
税関支署数
税関出張所数
税関支署出張所数
4
7
5
1
8
4
10
函館税関管内
税関支署数
税関出張所数
税関支署出張所数
13
0
9
横浜税関管内
税関支署数
税関出張所数
税関支署出張所数
税関支署監視署数
7
5
10
2
名古屋税関管内
税関支署数
税関出張所数
税関支署出張所数
税関支署監視署数
4
5
11
1
沖縄地区税関管内
税関支署数
税関出張所数
税関支署出張所数
税関支署監視署数
3
2
2
1
3
2. 税関の管轄
[東京税関の管轄区域]
東京税関は、首都圏の玄関である成田空港、羽田空港、東京港を
管轄するとともに、日本海側の山形県、新潟県も管轄しています。
酒田(支)
成田(支)
山形県
山形(出)
佐渡(監)
東港(出)
新潟コンテナ検査センター
新潟(支)
成田航空貨物(出)
東京航空貨物(出)
新潟空港(出)
三条・燕(派)
新潟県
柏崎(出)
直江津(出)
東京外郵(出)
芝浦(出)
太田(派)
前橋(出)
群馬県
晴海
新砂
辰巳
新木場
有明
品川コンテナふ頭
本関
埼玉県
山梨県
立川(出)
山梨(派)
東京都
(管轄区域)
◆東京都、◆新潟県
◆山梨県、◆山形県
◆群馬県、◆埼玉県
◆千葉県のうち
市川市原木
成田市、
香取郡多古町
山武郡芝山町
大井(出)
青海コンテナふ頭
大井コンテナふ頭
青海コンテナ検査センター
城南島コンテナ検査センター
※(支)
(出)
(監)
(派)
:
:
:
:
支署
出張所
監視署
政令派出所
羽田(支)
4
3. 税関における主要業務量等
[全国税関における主要業務量と定員]
税関の主要業務量と定員(2003年を100とした指数)の推移
( 2003年を100とした指数 )
190
180
入国者数
輸入申告件数
税関定員
170
160
150
140
130
(参考)
2015年度定員 : 8,922人
2016年度定員 : 8,962人
120
(2016年度は平成28年度予算政府案)
110
100
90
2003
2004
2005
2006
2007
2008
2009
2010
2011
2012
2013
2014
(年)
2015
※ 入国者数は法務省「出入国管理統計」により、2015年は「出入国管理統計月報」による速報値
※ 税関定員は年度であり、2015年度定員には緊急増員人数を含む
5
3. 税関における主要業務量等
[東京税関の主要業務量]
東京税関は、輸出で約2割、輸入で約3割の貿易額の輸出入を処理するとと
もに、税関の租税収入額の約4割を徴収しています。
また、入国者のうちの約5割が東京税関管轄の港・空港から入国しています。
項
貿易額
(平成27(2015)年速報値)
※1
租税収入額
(平成26(2014)年度)
目
全国税関
東京税関
全国比
輸出
75兆6,322億円
15兆7,905億円
20.9%
輸入
78兆4,676億円
25兆4,814億円
32.5%
8兆9,143億円
3兆3,151億円
37.2%
1兆0,755億円
3,972億円
36.9%
7兆8,163億円
2兆9,170億円
37.3%
6兆5,698億円
2兆0,177億円
30.7%
3,610万人
1,916万人
53.1%
うち 関税
※2
うち 内国消費税等
※3
うち 消費税
及び地方消費税
入国者数(平成27(2015)年) ※4
※1
※2
※3
※4
: 「貿易額」は速報値
: 「租税収入額」は国税収納金整理資金における収納済額で、年度集計
: 「内国消費税等」は、 消費税・地方消費税、酒税、たばこ税、石油石炭税等
: 「入国者数」は法務省出入国管理統計(月報)による速報値
6
3. 税関における主要業務量等
[輸入に占める東京税関の割合]
平成27(2015)年の全国税関の輸入に占める東京税関の割合は、貿易額(速
報値)で見ると約3割ですが、通関件数で見ると約6割となっており、東京税関
は、全国税関の中でも忙しい税関と言えます。
【全国税関 の 輸入 に占める東京税関の割 合】
(平成27(2015)年)
東京税関
輸入 (約3割)
貿易額
(速報値)
輸入
通関件数 東京税関
(約6割)
7
4. 我が国の貿易動向
[我が国の貿易額及び差引額の推移]
平成27(2015)年の貿易額(速報値)は、輸出は約75.6兆円で3年連続の増加、
輸入は約78.5兆円で6年ぶりに減少。貿易赤字幅は約2.8兆円と大幅に縮小。
【
(兆円)
貿
易
額
】
78.5兆円
6年ぶり減少
100
輸出額
90
【 差 引 額 】
(兆
円)
20
輸入額
15
80
10
70
60
5
▲2.8兆円
50
75.6兆円
3年連続増加
40
30
0
▲5
20
▲ 10
10
0
▲ 15
90
92
94
96
98
00
02
04
06
08
10
12
14
90
92
94
96
98
00
02
04
06
08
10
12
14
※ 財務省貿易統計 (2015年の数値は速報値)
8
4. 我が国の貿易動向
[輸出入額の地域別推移]
◆【全国】2015年はASEAN向けの輸出額が過去最大
◆【全国】2015年は中国、EUからの輸入額が過去最大
≪輸出≫
≪輸入≫
(兆円)
中国
ASEAN
米国
(兆円)
EU
中国
ASEAN
米国
EU
20
20
01年 米国同時多発テロ
08年 リーマンショック
18
米国
中国
18
11年 東日本大震災
97年 アジア通貨危機
95年 阪神淡路大震災
16
08年 リーマンショック
01年 米国同時多発テロ
11年 東日本大震災
16
14
14
97年 アジア通貨危機
95年 阪神淡路大震災
中国
12
12
ASEAN
10
EU
8
ASEAN
10
EU
8
6
6
4
4
2
2
米国
0
0
90
92
94
96
98
00
02
04
※ 財務省貿易統計 (2015年の数値は速報値)
06
08
10
12
14
(年)
90
92
94
96
98
00
02
04
06
08
10
12
14
(年)
9
4. 我が国の貿易動向
[輸出入品の推移]
◆【輸出】自動車の輸出が15%前後で推移
◆【輸入】2015年は原粗油の割合が減少
【輸 出 】
(注)下段( )は総額に対する構成比。
1990年
1995年
2000年
2005年
2010年
2011年
2012年
2013年
2014年
2015年
順位
414,569 億円
415,309 億円
516,542 億円
656,565 億円
673,996 億円
655,465 億円
637,476 億円
697,742 億円
730,930 億円
756,316 億円
自動車
自動車
自動車
自動車
自動車
自動車
自動車
自動車
自動車
自動車
1
73,587 億円
49,797 億円
69,301 億円
99,288 億円
91,741 億円
82,042 億円
92,250 億円
104,125 億円
109,194 億円
120,468 億円
(17.8%)
(12.0%)
(13.4%)
(15.1%)
(13.6%)
(12.5%)
(14.5%)
(14.9%)
(14.9%)
(15.9%)
鉄鋼
鉄鋼
鉄鋼
鉄鋼
半導体等電子部品
半導体等電子部品 半導体等電子部品 半導体等電子部品 半導体等電子部品 半導体等電子部品
2
3
4
5
19,347 億円
38,299 億円
45,758 億円
44,016 億円
41,528 億円
37,092 億円
34,955 億円
37,931 億円
39,584 億円
39,146 億円
(4.7%)
(9.2%)
(8.9%)
(6.7%)
(6.2%)
(5.7%)
(5.5%)
(5.4%)
(5.4%)
(5.2%)
映像機器
18,776 億円
自動車の部分品
17,815 億円
科学光学機器
26,257 億円
鉄鋼
30,368 億円
鉄鋼
36,754 億円
半導体等電子部品 半導体等電子部品 半導体等電子部品 半導体等電子部品
35,648 億円
33,394 億円
35,526 億円
36,908 億円
鉄鋼
36,683 億円
(4.5%)
(4.3%)
(5.1%)
(4.6%)
(5.5%)
(5.4%)
(5.2%)
(5.1%)
(5.0%)
(4.9%)
鉄鋼
科学光学機器
自動車の部分品
自動車の部分品
自動車の部分品
自動車の部分品
自動車の部分品
自動車の部分品
自動車の部分品
自動車の部分品
18,085 億円
17,358 億円
18,642 億円
28,006 億円
30,833 億円
29,972 億円
32,051 億円
34,762 億円
34,750 億円
34,833 億円
(4.4%)
(4.2%)
(3.6%)
(4.3%)
(4.6%)
(4.6%)
(5.0%)
(5.0%)
(4.8%)
(4.6%)
電算機類(含周辺機器)
電算機類(含周辺機器)
17,589 億円
鉄鋼
16,443 億円
16,006 億円
科学光学機器
24,780 億円
プラスチック
23,360 億円
プラスチック
21,878 億円
科学光学機器
20,845 億円
有機化合物
25,204 億円
有機化合物
24,396 億円
プラスチック
24,440 億円
(4.2%)
(4.0%)
(3.1%)
(3.8%)
(3.5%)
(3.3%)
(3.3%)
(3.6%)
(3.3%)
(3.2%)
【輸 入 】
1990年
1995年
2000年
2005年
2010年
2011年
2012年
2013年
2014年
2015年
順位
338,552 億円
315,488 億円
409,384 億円
569,494 億円
607,650 億円
681,112 億円
706,886 億円
812,425 億円
859,091 億円
784,637 億円
原粗油
原粗油
原粗油
原粗油
原粗油
原粗油
原粗油
原粗油
原粗油
原粗油
1
44,695 億円
28,201 億円
48,189 億円
88,233 億円
94,059 億円
114,147 億円
122,472 億円
142,448 億円
138,734 億円
81,836 億円
2
3
4
5
(13.2%)
(8.9%)
(11.8%)
(15.5%)
(15.5%)
(16.8%)
(17.3%)
(17.5%)
(16.1%)
(10.4%)
魚介類・同調製品
衣類・同付属品
電算機・付属機器類
衣類・同付属品
液化天然ガス
液化天然ガス
液化天然ガス
液化天然ガス
液化天然ガス
液化天然ガス
15,184 億円
17,525 億円
28,770 億円
24,695 億円
34,718 億円
47,872 億円
60,037 億円
70,590 億円
78,509 億円
55,374 億円
(4.5%)
(5.6%)
(7.0%)
(4.3%)
(5.7%)
(7.0%)
(8.5%)
(8.7%)
(9.1%)
(7.1%)
衣類・同付属品
23,283 億円
衣類・同付属品
25,976 億円
衣類・同付属品
26,804 億円
衣類・同付属品
32,480 億円
衣類・同付属品
32,602 億円
衣類・同付属品
34,127 億円
(3.8%)
(4.3%)
非鉄金属
14,253 億円
魚介類・同調製品 半導体等電子部品 半導体等電子部品
16,313 億円
21,399 億円
23,480 億円
(4.2%)
(5.2%)
(5.2%)
(4.1%)
(3.8%)
(3.8%)
(3.8%)
(4.0%)
石油製品
電算機・付属機器類
衣類・同付属品
電算機類(含周辺機器)
半導体等電子部品
石炭
石油製品
石油製品
13,839 億円
14,595 億円
21,154 億円
20,663 億円
21,360 億円
24,592 億円
24,618 億円
27,054 億円
28,710 億円
29,943 億円
(4.1%)
(4.6%)
(5.2%)
(3.6%)
(3.5%)
(3.6%)
(3.5%)
(3.3%)
(3.3%)
(3.8%)
液化天然ガス
19,853 億円
石炭
21,107 億円
石油製品
22,261 億円
石炭
23,206 億円
通信機
26,787 億円
通信機
28,652 億円
通信機
29,307 億円
(3.5%)
(3.5%)
(3.3%)
(3.3%)
(3.3%)
(3.3%)
(3.7%)
衣類・同付属品
12,592 億円
半導体等電子部品 魚介類・同調製品
11,509 億円
16,501 億円
(3.7%)
※ 財務省貿易統計
(3.6%)
(4.0%)
半導体等電子部品 半導体等電子部品
10
Ⅱ. 税関の使命
11
税関の3つの使命
[税関の3つの使命]
1 安全・安心な社会の実現
覚醒剤等の不正薬物や銃器、テロ関連物品など、社会の安全・安心を脅
かす物品等の密輸出入の水際取締り。
2 適正かつ公平な関税等の徴収
税関で徴収する関税、消費税等の額は、日本の国税収入の約15%(平
成26年度 約8.9兆円)に相当し、国の財政を担う重要な任務。
3 貿易の円滑化
貿易の秩序維持と健全な発展を目指すため、適正な通関を確保しつつ、
簡便な手続と円滑な処理の実現に努める。
12
1 安全・安心な社会の実現
13
1. 安全・安心な社会の実現
[不正薬物の摘発件数と押収量の推移等]
不正薬物の摘発件数と押収量の推移
(摘発件数:件)
(押収量:kg)
2,000
1,200
覚醒剤
大麻
その他
件数
1,500
900
1,000
600
500
300
0
H18
H19
H20
H21
H22
H23
H24
H25
H26
H27
合計
378
816
498
403
364
509
626
1,007
630
519
その他
41
39
3
18
15
50
11
135
6
63
大麻
196
491
87
52
27
57
132
13
74
34
覚醒剤
140
287
408
333
322
402
482
859
549
422
件数
391
395
313
402
296
326
308
382
390
1,896
0
指定薬物は、「危険ドラッ
グの乱用の根絶のための
緊急対策」(平成26年7月18
日策定)の一環として、平成
27年4月、関税法上の「輸
入してはならない貨物」に
追加された。
摘発件数は1,462件と“不
正薬物全体の約8割”を占
め、押収量は約37kgを記録
した。
月別の摘発件数をみる
と、8月までは200件前後と
高水準で推移していたが、
9月以降は減少傾向とな
り、最も多かった月の半数
以下となった。
うち、指定薬物 1,462件
平成27年における不正薬物全体
の摘発件数は1,896件(前年比約
4.9倍)と、“過去最高”を記録。
押収量は“5年連続で500kgを超
える”など、依然として深刻な状況。
指定薬物の月別摘発件数
300
250
250
218
207
200
170
191
141
150
122
88
100
75
50
0
出典:財務省ホームページ
4月
5月
6月
7月
8月
9月
10月
11月
12月
14
1. 安全・安心な社会の実現
[摘発事例①]
【摘発事例1】
チョコレートケーキに隠匿された覚醒剤を摘発
【摘発事例2】
大型機械に隠匿された覚醒剤を摘発
平成27年1月、東京外郵出張所は、中国から到着した
国際スピード郵便物の検査において、チョコレートケーキ
に隠匿されていた覚醒剤約2kgを摘発した。
平成27年1月、大井出張所は、中国から到着した海上
貨物の検査において、鉄板曲げ機に隠匿されていた覚醒剤
約39kgを摘発した。
15
1. 安全・安心な社会の実現
[摘発事例②]
【摘発事例3】
テキーラボトルに隠匿された覚醒剤を摘発
平成27年4月、東京税関(本関)は、メキシコから到
着した航空貨物の検査において、テキーラボトルに隠匿さ
れていた覚醒剤約3kgを摘発した。
【摘発事例4】
スーツケース内のダンボール箱に隠匿されたコカイ
ンを摘発
平成27年11月、成田税関支署は、ブラジルから成田
空港に到着したブラジル人男女の携帯品検査において、
スーツケースに収納したダンボール箱に隠匿されていたコ
カイン約18kgを摘発した。
16
1. 安全・安心な社会の実現
[知的財産侵害物品の差止状況]
【知的財産侵害物品の輸入差止実績の推移】
平成27年1月~6月の輸入差止件数は16,367 件で、上半
期の輸入差止件数としては過去最多をわずかに更新し、
引き続き高水準。
輸入差止点数は、392,229 点で、1 日平均で、90 件、
2,100 点以上の知的財産侵害物品の輸入を差し止めてい
ることになる。
【仕出国(地域)別輸入差止件数構成比】
平成27年1月~6月の仕出国別輸入差止件数は、中
国を仕出しとするもの14,924 件(構成比91.2%、前年
同期比1.7%減)で、引き続き高水準。
出典:財務省ホームページ
17
1. 安全・安心な社会の実現
[知的財産侵害物品の差止事例]
(輸入差止めが多い物品等)
(健康や安全を害する物品)
これらの侵害品の使用は、消費者の健康や安全を脅かす危険性があります
落下などの
虞あり!
発火などの
虞あり!
事故・故障等
の虞あり!
出典:財務省ホームページ
18
2 適正かつ公平な関税等の徴収
19
2. 適正かつ公平な関税等の徴収
[税関における関税、消費税等の徴収額]
○ 平成26年度の税関における収納額は、約8.9兆円であり、前年度より増加
(前年度比36.6%増)。
○ 内訳は、消費税及び地方消費税(6.6兆円)、その他内国消費税(1.2兆円)、
関税(1.1兆円)等となっている。
○ 税関における収納額は、租税及び印紙収入(国税)の約15.4%に相当し、重
要な役割を担っている。
○ 消費税率の引き上げにより、税関における収納額は今後さらに増加。
(兆円)
とん税及び特
別とん税
0.02兆円
<税関収納額の推移>
10.0
8.9
9.0
8.0
6.5
7.0
6.0
4.9
5.0
4.0
3.7 3.6
4.3
3.9 4.0 3.9 4.1
その他
内国消費税
1.2兆円
4.5
5.0
14.0
消費税
及び
地方消費税
6.6兆円
11.9
10.0
8.0
3.0
6.0
2.0
4.0
1.0
関税
1.1兆円
0.0
H10 H11 H12 H13 H14 H15 H16 H17 H18 H19 H20 H21 H22 H23 H24 H25 H26
(年度)
出典:財務省ホームページ(関税・外国為替等審議会資料)
15.4
16.0
12.0
5.6 5.8
5.4 5.6 5.5
(%)
18.0
<租税及び印紙収入(国税)に
占める収納税額割合の推移>
7.1 7.4 7.5
7.9
9.4
8.6 9.0 8.9
10.0
10.7
12.5 12.3
12.7
11.1 11.4
2.0
0.0
H10 H11 H12 H13 H14 H15 H16 H17 H18 H19 H20 H21 H22 H23 H24 H25 H26
(年度)
20
2. 適正かつ公平な関税等の徴収
[輸入事後調査及び関税等に関する犯則調査の状況①]
輸入事後調査の状況
平成26事務年度
平成25事務年度
対前年度比
調査を行った輸入者 ①
3,545者
98.1%
3,614者
申告漏れ等のあった輸入者 ②
2,363者
97.4%
2,427者
申告漏れ等の割合 ②/①
66.7%
-0.5ポイント
67.2%
申告漏れ等に係る課税価格
1,082億5,406万円
121.9%
888億1,810万円
1,110億3,856万円
123.1%
902億3,075万円
49億472万円
137.3%
35億7,179万円
内国消費税
68億9,791万円
142.3%
48億4,910万円
計
118億263万円
140.2%
84億2,089万円
7億4,865万円
126.1%
5億9,389万円
1,511万円
10.6%
1億4,279万円
(注)課税価格過大申告分除く
関税
追徴税額
加算税
重加算税
納付不足税額が多い上位5品目
平成26事務年度
順位
分類
品目
1
02類
肉類
2
85類
3
平成25事務年度
納付不足税額
順位
分類
品目
27億8,682万円
1
02類
肉類
14億3,075万円
電気機器
15億2,800万円
2
85類
電気機器
9億5,663万円
84類
機械類
13億3,672万円
3
64類
履物類
7億5,291万円
4
30類
医療用品
6億9,136万円
4
84類
機械類
6億5,510万円
5
64類
履物類
6億2,470万円
5
62類
織物衣類
5億6,690万円
出典:財務省ホームページ
納付不足税額
21
2. 適正かつ公平な関税等の徴収
[輸入事後調査及び関税等に関する犯則調査の状況②]
犯則調査の状況
平成26事務年度
平成25事務年度
対前年度比
着手件数
353件
274%
129件
処分件数(注)
333件
250%
133件
告発件数
5件
125%
4件
通告件数
328件
254%
129件
平成26事務年度
対前年度比
総額
脱税
額
告発分
平成25事務年度
関税
29億386万円
829%
3億5,047万円
内国消費税
2億8,608万円
342%
8,373万円
計
31億8,993万円
735%
4億3,420万円
関税
28億9,110万円
849%
3億4,042万円
2,549万円
46%
5,492万円
29億1,658万円
738%
3億9,534万円
内国消費税
計
17
(注1)処分件数には、平成26事務年度以前に着手し、当該事務年度に処分したものも含みます。
(注2)脱税額の合計は、端数処理のため数値が合わないことがあります。
出典:財務省ホームページ
22
3 貿易の円滑化
23
3. 貿易の円滑化
[我が国の認定事業者(AEO)制度]
我が国の認定事業者(AEO:Authorized Economic Operator )制度
(米国で発生した同時多発テロ以降、各国にて)
国際物流におけるセキュリティ対策の強化の必要性
国際競争力向上等のため
税関手続簡素化等の物流円滑化の推進の必要性
背景
Authorized
Economic
Operator
Program
財務省・税関は民間事業者とのパートナーシップの構築により、国際物流における一層のセキュリティ確保と円滑化の両立を図り、あわせて我
が国の国際競争力を強化するため、国際標準に則ったAEO制度を平成18年3月に導入
※1 AEO制度が求める具体的要件例
AEO制度とは?
○
○
○
○
○
1.AEO制度へ参加する事業者は、自社が関与する物流において
①税関手続等に関する法令を遵守すること(コンプライアンス遵守)
②取扱貨物の安全を確保していること(セキュリティ管理)
を税関と共にあらかじめ確認 (※1)
貨物、輸送、敷地等のセキュリティ確保
内部監査
委託先管理
税関との連絡体制、社内連絡体制
教育・訓練の体制
AEO事業者が取り扱う貨物には、「盗難・すり替え・差し込み」
がされない体制整備が必要
2.税関はAEO事業者に対して、適正な税関手続と貨物管理を行う者として、簡素化・
迅速化した税関手続を提供(※2)
AEO制度の対象となる事業者(計580者)(※3)
税 関
パートナーシップ
輸入者
91者
輸出者
241者
倉庫業者
125者
税 関
通関業者
115者
通関業者
製造者
運送者
8者
(※3:平成28年3月1日現在)
輸出入者
出典:財務省ホームページ(関税・外国為替等審議会資料)
製造者
-
運送者
※2 AEO事業者に対する緩和措置例
○ 輸入手続:貨物の国内到着前に輸入許可を受けることが可能
○ 輸出手続:貨物が自社倉庫等にある状態で輸出許可を受ける
ことが可能
○ 保税運送手続:運送ごとの保税運送承認が不要
○ 新たな保税蔵置場等を設置する場合、税関の許可が不要
(税関への届出のみ)
○ 税関に届け出た倉庫等における保税地域許可手数料が免除
○ 通関業者は、特定の税関官署の管轄区域内に蔵置されている
貨物について、予め選択した税関官署に輸出入申告を行うこと
が可能
保税地域
倉庫業者
24
3. 貿易の円滑化
[我が国のAEO相互承認の現状]
相手国のAEO制度を相互に承認し、二国間の安全かつ円滑な物流を目指すAEO相互承認
現在、我が国は米国、EUを含む7組の相互承認に署名
台湾
署名済み
ヨルダン
イスラエル
シンガポール
わが国が協議・研究中
米国
インド
カナダ
タイ
スイス
ノルウェー
香港
韓国
EU
トルコ
アンドラ
マレーシア
中国
NZ
ドミニカ共和国
出典:財務省ホームページ(関税・外国為替等審議会資料)
メキシコ
25
3. 貿易の円滑化
[輸出入申告官署の自由化(経緯)]
規制改革実施計画(平成25年6月14日閣議決定)
「通関手続におけるIT利用推進に係る工程表を作成し、広く関係先の意見を聞きながら、通関手続のペーパーレス化を実現すると
ともに、平成29年度のNACCS更改時には、少なくとも特定輸出申告について、船積地にかかわらず一元的にNACCSに申告すること
によって輸出通関が完了するよう検討を行い、結論を得る。」(平成25年度検討・結論(平成29年度まで順次実施))
関税・外国為替等審議会答申(平成26年12月30日)
輸出入申告官署の自由化については、平成29年度のNACCS更改時までの実施に向け、「引き続き検討すべき事項」とされたところ。
【概要】 ○ 貨物の積卸地を問わず全国のどの税関官署にでも輸出入申告を認める「輸出入申告官署の自由化」について、
・ 輸出入申告を蔵置官署に対して行うという原則は維持するが、AEO輸出入申告については、特例的に非蔵置官署に
対して行うことを可能とする。
・ 通関業の営業区域制限を廃止する ことを基本的方向性とし、平成29年度までの実施に向けて、具体的な検討を行う。
○ また、これを機に、通関業法についても、必要な見直しを検討する。
申告官署の自由化・通関業制度のあり方に関する研究会(平成27年4月~6月)
関税局における検討に資するため、本年4月から6月にかけて、学識経験者、貿易関係者を委員として開催。6月19日にとりまとめを
行った。その後、同「とりまとめ」を財務省ホームページで公表し、広く意見募集を行った。
平成28年度における関税率及び関税制度の改正についての答申(平成27年12月16日)
閣議決定後、国会へ法案提出(平成28年2月9日)
出典:財務省ホームページ(関税・外国為替等審議会資料)
26
3. 貿易の円滑化
[輸出入申告官署の自由化(基本的な考え方)]
出典:財務省ホームページ(関税・外国為替等審議会資料)
27
3. 貿易の円滑化
[輸出入申告官署の自由化(イメージ)]
【AEO事業者による輸出入申告の場合】
輸出入者
委託(選択可能)
蔵置官署
非蔵置官署
B通関業者
A通関業者
【現状】
輸出入者
蔵置官署
非蔵置官署
A通関業者
B通関業者
自由化
委託
貨物
申告
(選択可能)
申
告
Y税関
X税関
【一般の輸出入申告の場合】
※通関業者の営業区域制限の廃止に伴うもの
貨物
申
告
申
告
輸出入者
委託(選択可能)
蔵置官署
X税関
非蔵置官署
Y税関
A通関業者
貨物
申
告
X税関
出典:財務省ホームページ(関税・外国為替等審議会資料)
B通関業者
Y税関
28
3. 貿易の円滑化
[通関関係書類の電子化・ペーパーレス化①]
取組みの全体像
目 標
○ 通関関係書類の電子化・ペーパーレス化の促進
⇒通関関係書類の提出の省略、電子化又はPDF等による提出
○ NACCSにおける貿易手続全般に係る国際物流情報プラットフォームとしての機能強化
⇒民民間の貿易取引の電子化の推進・NACCSとの連携
平成29年度(2017年度)の次期NACCS等の稼動時までの取組み
○ 他法令手続等の電子化の推進
⇒他法令手続等に係る電子申請率の向上に向けた施策の検討
○ 民民間の貿易取引の電子化の推進・NACCSとの連携(海上運送状、保険料明細書等)
⇒損害保険業務のNACCSとの連携に向けた検討
○ 通関手続に係る電子手続の原則化
⇒通関関係書類のPDF等の電磁的記録による提出について更なる促進策を検討
⇒マニュアル申告(書面による申告)の縮小に向けた環境整備(窓口電子申告端末の増設、net-NACCSの利用の慫慂等)
⇒関係法令等の改正の検討(原則化の対象者及び手続の範囲等)
【参考】これまでの取組み
○ 通関関係書類の簡素化
➢ 簡易審査扱い(区分1)とされる輸出入申告の通関関係書類を原則として提出省略 (平成24年7月実施)
○ NACCSを利用した通関関係書類のPDF等の電磁的記録による提出
➢ NACCSの新規業務により、通関関係書類を電磁的記録により提出することを可能 (平成25年10月実施)
○ 他省庁の輸出入手続のNACCSとの連携
➢ 医薬品医療機器等法関係手続を新たにNACCS業務に追加 (平成26年11月実施)
29
3. 貿易の円滑化
[通関関係書類の電子化・ペーパーレス化②]
30
3. 貿易の円滑化
[通関関係書類の電子化・ペーパーレス化③]
通関関係書類の提出が必要な申告(書類審査扱い(区分2)及び検査扱い(区分3))に占める電磁的記録
により提出された申告の割合
90%
80%
海上
航空
輸出
輸入
76%
73%
57%
70%
70%
55%
60%
48%
50%
47%
40%
33%
28%
61%
54%
57%
52%
66%
76%
62%
61%
61%
59%
60%
81%
67%
66%
64%
64%
76%
74%
72%
72%
81%
79%
77%
30%
27%
20%
28%
10%
10%
4%
10月
0%
1月
4月
7月
10月
1月
2月
3月
①貨物別の提出状況(%)
10月
(10/13~
31)
H26
1月
4月
7月
4月
5月
6月
7月
8月
9月
10月
11月
②輸出入申告別の提出状況(%)
10月
10月
H27
1月
2月
3月
4月
5月
6月
7月
8月
9月
10月
11月
(10/13~
31)
H26
1月
4月
7月
10月
H27
1月
2月
3月
4月
5月
6月
7月
8月
9月
10月
11月
海上貨物
28
42
48
52
57
63
65
68
73
74
76
76
77
79
81
81
輸出申告
27
41
47
49
54
59
62
66
70
72
72
72
72
74
76
76
航空貨物
4
9
28
47
52
54
55
56
57
58
58
60
59
61
61
62
輸入申告
10
17
33
49
55
57
58
58
61
62
63
64
64
66
66
67
(注)マニフェスト等による輸出入申告を提出状況の算出対象から除外
「マニフェスト等による輸出入申告」とは、航空貨物において、貨物の価格が20万円以下の輸出貨物(平成10年6月導入)又は 課税価格が1万円以下の輸入貨物
(平成13年4月導入)について、申告項目を大幅に簡素化したマニフェスト等による申告を認める制度。
「マニフェスト等による輸出入申告」については、書類審査扱い(区分2)又は検査扱い(区分3)となった場合であっても、税関が通関関係書類の提出が必要と判
断した場合のみ書類が提出されることから、提出状況の算出対象から除外。
31
Ⅲ.伊勢志摩サミット等を
踏まえたテロ対策
32
伊勢志摩サミット等を踏まえたテロ対策
[伊勢志摩サミット及び閣僚会合一覧]
昨年の邦人殺害テロ事件やパリ市内における同時多発テロ事件などの厳し
いテロ情勢を受け、また、本年の伊勢志摩サミット及び関係閣僚会合等に向け
て、テロ対策の強化は政府全体の喫緊の課題となっています。
5月26日~27日の伊勢志摩にお
ける首脳会議のほか、各地で10
の閣僚会合が開催される。
15
出典:財務省ホームページ
(関税・外国為替等審議会資料)
33
伊勢志摩サミット等を踏まえたテロ対策
[伊勢志摩サミットの政府準備体制]
伊勢志摩サミット準備会議
議 長:内閣官房副長官
構成員:内閣危機管理官
国家安全保障局次長
警察庁警備局長
法務省入国管理局長
財務省関税局長
海上保安庁次長
・
・
伊勢志摩サミット準備会議
警備対策部会
警備対策
ワーキングチーム
伊勢志摩サミット準備会議
広報部会
サイバーセキュリティ
ワーキングチーム
34
伊勢志摩サミット等を踏まえたテロ対策
[伊勢志摩サミットにおける警備対策の基本方針(抄)]
伊勢志摩サミットの開催に際しては、全ての関係府省庁が緊密に連携を図り、
政府一丸となって総合的・一体的な各種の警備対策を実施
(平成27年9月15日 伊勢志摩サミット準備会議警備対策部会決定)
1
情勢認識
イスラム過激派等によるテロ事件が世界各地で続発中
シリアにおける邦人殺害テロ事件が発生
国際会議の開催に際し、過激な勢力等による暴動等の違法行為事案が発生
政府機関や民間企業、重要インフラに対するサイバー攻撃の脅威も深刻
主要国首脳が来日する伊勢志摩サミットは、テロリスト等の格
好の標的となり得るほか、関係閣僚会合開催地や東京を始めとす
る我が国の主要都市においても、テロ等が発生するおそれを払拭
できない。
グレンイーグルズ・サミット(英国開催)
ソフトターゲット
首都圏・大都市!
ロンドンでテロ発生!
35
伊勢志摩サミット等を踏まえたテロ対策
[伊勢志摩サミットにおける警備対策の基本方針(抄)]
伊勢志摩サミットの開催に際しては、全ての関係府省庁が緊密に連携を図り、
政府一丸となって総合的・一体的な各種の警備対策を実施
(平成27年9月15日 伊勢志摩サミット準備会議警備対策部会決定)
2 主な対策
(1)情報収集・分析の強化
国内外における情報収集、外国治安・情報機関等との情報交換
テロ等の未然防止、水際対策の強化及びサイバー攻撃の予兆把握に資する
情報の収集・分析を強化
関係機関の間での迅速かつ的確な情報共有を徹底
国民及び民間事業者等の協力の促進
(2)水際対策の強化
テロリストや過激な反グローバリズム活動家等の入国阻止
テロ関連物資の国内流入を阻止
入国審査・輸入貨物の検査の強化
水際関係機関間の連携を強化
国民及び民間事業者の協力の促進
36
伊勢志摩サミット等を踏まえたテロ対策
[世界の主なテロ事件]
主に一般市民を標的とした世界のテロ事件
ボストンマラソン爆弾テロ事件
2013年4月15日ボストンマラソ
ンの競技中のゴール付近で2度
爆発が発生した爆弾テロ事件
ロンドン同時爆破テロ事件
2005年7月7日、グレーン
イーグルス・サミット開催
中、ロンドンの地下鉄3ヶ所
及びバス3台が連続して爆破
され、56人が死亡したテロ
事件
パリ市内における同時多発テロ事件
2015年11月13日武装したISIL※とみら
れるテログループが国立競技場などを
ターゲットに市民130人以上を殺害し
た無差別テロ事件
シリアにおける邦人殺害テロ事件
2015年1月及び2月、ISIL※に拘束さ
れていた日本人2名が、相次いで
殺害された事件
地下鉄サリン事件
1995年3月20日オウム真理
教がサリンを使用し複数の
地下鉄駅構内で起こした同
時多発テロ事件
バルド国立博物館での銃乱射事件
2015年3月18日チュニジアの博物
館で外国人観光客が武装した男2
人組に襲われた事件
ジャカルタ爆弾テロ事件
2016年1月14日ジャカルタ中心部
で複数の爆発及び銃撃戦により、
7人が死亡したテロ事件
※イラク・レバントのイスラム国
37
伊勢志摩サミット等を踏まえたテロ対策
[シリアにおける邦人殺害テロ事件]
ISILにシリア国内で拘束されていた日本人人質2名が、日本政府やヨルダン政
府の解放努力にもかかわらず、相次いで殺害されるという最悪の事態が発生。
経 緯
1.
2.
3.
4.
5.
6.
2014年 8月
2014年10月
2015年 1月20日
同 日
2015年 1月24日
2015年 2月 1日
湯川氏ISILに拘束
後藤氏シリアで行方不明
日本政府に対し、2名の身代金2億ドル要求
安倍首相はテロ行為を激しく非難
ISILは湯川さん殺害写真をwebで公表
後藤さん殺害の動画を公表
ISIL(イラク・レバントのイスラム国)
主な活動地域:イラク・シリア及び周辺国
活動目的:独自のカリフ制国家の建国
スンニ派イスラム教徒の保護
攻撃対象:イラク・シリア両国の政府及び治安部隊など
最高指導者(カリフ):アブ・バクル・アル・バグダディ
38
伊勢志摩サミット等を踏まえたテロ対策
[パリ市内における同時多発テロ事件]
2015年11月13日、フランスのパリにおいて武装したISILとみられるテログルー
プが国立競技場、コンサート会場やレストランなどをターゲットに無差別テロを
実行し、市民130人以上を殺害。
ホームグロウン・テロリスト
が計画を先導し、偽装難民やベ
ルギーを本拠地とするテロリス
トが合流したもの。
(出典:YAHOOニュース)
ホームグロウン・テロリスト
テロ組織などの主義主張に感化されて過激化し、自らの居住する国でテロ
を行うこと。集団の中で行動するテロリストに比べて動向の把握が困難で
あり、テロリストとして把握・識別することも困難。
ホームグロウン・テロリストによるとされる主な事件
• 米国フォートフッド陸軍基地銃乱射事件(2009年11月)
• ボストンマラソン爆弾テロ事件(2013年4月)
39
伊勢志摩サミット等を踏まえたテロ対策
[パリ市内における同時多発テロ事件の特徴(変化)]
ローンウルフ(テロ)
個人的な社会への不満などを背景
インターネットなどを通して過激思想に心酔
単独又はごく少数でテロを計画・実行
空 爆
組織的なテロ
組織的にテロを計画
シリア等で訓練を受ける
テロリストを難民としてフランスに渡らせる
テロを実行
さらなる一歩を踏み出した!
40
伊勢志摩サミット等を踏まえたテロ対策
[アジアにおけるテロ]
アジアで初めて実行されたISIL関連のテロ事件等
ジャカルタ爆弾テロ事件(インドネシア)
1月14日10時55分頃、首都ジャカルタの中心部で爆弾テロ事件が発生
8人が死亡し、20人以上が負傷
シリア在住のインドネシア人ISIL戦闘員バルン・ナイムがインドネシアの過激
派メンバーとテロネットワークを形成し主導した組織的な犯行
武器や弾薬は、フィリピンから提供された可能性が高く、フィリピンの過激派
の一部でISILに忠誠を誓うなど、アジアでISIL指示のネットワークを構築
ISILの活動に関係しテロを計画(マレーシア)
1月22日~24日にマレーシア人男性7人(26~50歳)を拘束
弾薬やISILの旗などを押収
国内各地でテロを計画
拘束された1人は、上記テロ事件を企てたナイムから指示されていた
ISILの活動領域がアジアまで広がり
我が国へテロの脅威が迫る!
41
伊勢志摩サミット等を踏まえたテロ対策
[サミット開催期間中に起きたテロ事件]
ロンドン同時爆破テロ事件
(グレンイーグルス・サミット:2005年7月6日から7月8日)
2005年7月7日午前8時50分頃、
イギリスの首都ロンドンにおいて
地下鉄3ヶ所が爆破され、その約
1時間後にバスが爆破されたテロ
事件であり、56人が死亡し約700
人が負傷した
実行犯は4名で、揃いのバックパックを背負っていた青年
アルカイダが関与を認めている
開催場所であるスコットランドのグレンイーグルス・ホテル
からテロが起きた首都ロンドンまで500㎞以上離れている
首都圏がテロ標的に!
42
伊勢志摩サミット等を踏まえたテロ対策
[我が国に対する国際テロの脅威]
我が国のテロの脅威(過去に確認されているもの)
アルカイダ幹部らが日本をテロの対象に名指し(2003年10月、2004年5月・10月並びに2008年4月)
国際テロ組織関係者リオネル・デュモンが繰り返し我が国へ入出国(1999年から2003年)
シリアにおける邦人殺害テロ事件において、ISIL発出とみられる映像メッセージ(2015年)
身代金を要求
日本の総理大臣へ。日本はイスラム国
から8500㎞以上離れているが、この十字
軍に進んで参加することを誓っている。
日本の国民へ。2人の命を救うために2
億ドルを支払うという賢い決断を日本政
府にさせるため、圧力をかける時間はあ
と72時間しかない。さもなければ、この
ナイフが悪夢になるだろう。
要求を拒否(72時間後)
おまえらは、悪魔の連合の愚かな者たち
と同様、アラーの意思に基づいた、権限と
能力を有する血に飢えた戦闘集団である
我々イスラム・カリフ国家のことを、まだ理
解していない。
勝ち目のない戦いに参加するというお前
の愚かな決断で、このナイフはケンジを殺
すだけでなく、日本人がどこにいようとも
見つけ次第殺害し、死体の山を築くことに
なるだろう。日本の悪夢のはじまりだ。
我が国がテロ標的となる!
43
伊勢志摩サミット等を踏まえたテロ対策
[税関におけるテロ対策等]
税関においても、情報分析機能の強化や関係機関との連携強化等により、テ
ロ対策の強化に取り組んでいます。
税関における情報分析機能の強化と
国内外の関係機関との連携強化
税関による銃器・爆発物等のテロ関連
物品等の水際取締り
◇ テロ関連貨物に係る情報の一元的管理
◇ 海上コンテナー貨物に係る積荷情報の
出港前報告を原則義務化
(平成26年3月施行)
◇ 警察等の関係機関との連携による
海上・航空貨物に対する厳正な取締り
◇ 航空機旅客に係る事前情報の入手
◇ 国内関係機関との合同訓練の実施
◇ 税関相互支援協定等の締結
(平成27年1月現在:27ヶ国・地域)
① 事前旅客情報(API)の報告を義務化(NACCSに
よる電子的報告も可)
(平成19年2月施行)
② 乗客予約記録(PNR)の報告を求めることを可能
にする規定を整備
(平成23年10月施行)
③ 税関によるリスク判定をより一層効果的かつ効率
的に行う等の観点から、従来よりNACCSによる電
子的報告が可能だったAPIに加え、PNRもNACCS
による電子的報告を可能とする規定を整備
15
(平成27年4月施行)
44
伊勢志摩サミット等を踏まえたテロ対策
[積荷情報に係る出港前報告の義務化]
海上コンテナー貨物に係る出港前報告制度を活用した水際取締り
船積24時間前
コンテナー貨物情報の事前報告
報告後24時間以内
税関によるリスク分析
税 関
海外の事業者
ハイリスク貨物の事前通知
貨物の船積・出港
海外の船積港
海外の事業者
入港・貨物の船卸
本邦の船卸港
船積の取り止め
運航者
(船会社)
ー
コ
ン
テ
ナ
貨
物
情
報
の
事
前
報
告
利用運送事業者
運航者
積
荷
情
報
を
活
用
し
て
リ
ス
ク
分
析
テロ等の
ハイリスク
貨物と判定
報告内容
の不備等
ハイリスク
貨物の
事前通知
情報の
追加・訂正
を指示
船積→出港
入港→船卸一時停止
情報の
追加・訂
正
利用運送事業者
入港→船卸
問題
なし
船積→出港
45
伊勢志摩サミット等を踏まえたテロ対策
[航空機旅客に係る事前情報の入手]
航空機旅客に係る乗客予約記録(PNR)の取得・活用
PNRとは
PNR(Passenger Name Record)とは、航空会社が保有する旅客の予約記
録。(氏名、国籍、連絡先、旅程、航空券の購入時期・支払方法等の情報を
含む。)
※ 入国する航空機旅客に係るPNR報告制度を導入(平成23年度関税改正)
取組状況等
『邦人殺害テロ事件等を受けたテロ対策の強化について』(平成27年5月29日国際組織犯罪等・国際
テロ対策推進本部決定:菅官房長官が本部長)において、「全ての旅客のPNRの電子的取得の推進等」
が盛り込まれている。
1.
システム整備が完了した航空会社から順次、PNRの電子的報告を開始。(平成27年7月~)
2.
電子的PNRの分析・活用等を一元的に行い、効果的・効率的取締りを実施。(平成27年7月)
3.
EU系航空会社は、EUの個人情報保護法制を理由として、PNRの電子的報告ができない旨表明しているため:
① PNRの電子的報告を求め、EU系航空会社への働きかけを継続。
② 外務省等の関係省庁と連携の上、EU当局に対し、日・EUPNR協定等の法的枠組みの構築(注)の働きかけを継続。
③ 日EU首脳協議など各種首脳会談等の機会で、PNRの必要性について言及。 引き続き、WCO(世界税関機構)、G7、APEC、
ASEM等の場で関係諸国との連携を強化。
(注)EUは、PNR協定を締結済みの米・豪・加に対しては、PNRのEU域外提供を行っているものの、EU議会から個人情報保護の観点から
疑念を呈する声が挙がり、その他の国との新たな協定締結の動きが停滞している状況。
46
伊勢志摩サミット等を踏まえたテロ対策
[保税地域の管理者等の必要な取組]
自社が管理又は通関した貨物が、テロ行為に利用された場合、自社や社会
へ与える影響は甚大
警備体制の強化
自社の取り扱っている貨物、特
に新規顧客の貨物について実輸
入者や配送先等を把握
内容点検の強化など
不審点を発見
自社の貨物のセキュリティーに
責任を持つ
AEO制度の
創設趣旨
こうした取組により、
テロ未然防止に万全を期す!
47
伊勢志摩サミット等を踏まえたテロ対策
[情報提供依頼]
不審な貨物などがありましたら税関までお知らせください。
<例>
インボイスに記載されているものと、違う物品を発見した場合
内容物のバランスが悪く、左側と右側で重量が異なる場合
実在しない住所が記載されていたり、通関を異常に急いだりする輸入者の場合
営業内容からみて、関係なさそうな貨物を輸入し、説明があいまいな輸入者の場合
仕出国と関連性が薄いと思われる場合
梱包テープを必要以上に使用しており、過剰に梱包されている場合
時計・スイッチ・リード線・電池などが一度に収納されている場合
内点の結果、テロ組織等の旗章などを発見した場合 等
これらにかかわらず、テロが連想される事象について、
些細な情報でも、
御提供をお願いいたします!
連絡先は最寄りの税関又は密輸ダイヤル0120-461-961へ
48
Ⅳ. 関税・税関を巡る
国際的な状況
49
関税・税関を巡る国際的な状況
[二国間(あるいは数カ国間)の経済連携協定(EPA)の推進①]
WTOとEPA/FTAの関係
● 160以上の加盟国・地域で、モノ・サービス
の貿易自由化や貿易関連のルール作り(知
的財産のルール等)を行っている。
● 加盟国は他の全加盟国の同種の産品につ
いて同じ関税率を適用(=最恵国待遇)。
● 1度の自由化で留まらず、自由化交渉(ラウ
ンド)を繰り返し実施。
● 紛争処理システムを備える。
加盟国・地域が多い
自由化がより進んでいる
WTO=世界貿易機関
(World Trade Organization)
FTA=自由貿易協定
(Free Trade Agreement)
● 一部の国・地域の間だけで、モノ・サービ
スの貿易をWTOよりも自由化。
モノの貿易自由化
(関税を下げる)
サービス貿易の
自由化
EPA=経済連携協定
(Economic Partnership Agreement)
● モノ・サービスに加え、投資の自由化、
規制の緩和、制度の調和等、幅広い経
済関係を強化。
投資自由化、
ル-ル整備
規制の緩和、
制度の調和
様々な
協力
扱う分野が広い
50
関税・税関を巡る国際的な状況
[二国間(あるいは数カ国間)の経済連携協定(EPA)の推進②]
経済連携協定(EPA)では、協定を締結した国同士の貿易について、一般的な関税率
よりも低い関税率を適用することが認められています。(WTOの下での一般的な関税の
取扱いの例外)
例外
WTO
EPA
協定締結国のみで関税撤廃
最恵国待遇(原則)
(他の全ての加盟国に対し、関税を等しく適用)
出典:JETRO日本貿易振興機構パンフレット(監修 経済産業省)
高 自由化度 低
EPAと関税率
51
関税・税関を巡る国際的な状況
[二国間(あるいは数カ国間)の経済連携協定(EPA)の推進③]
各国とのEPAの進捗状況(2015年12月時点)
発効済国との貿易につ
いては、
EPA税率の適用が可能
日本は、2002年
のシンガポール以
降、14のEPAを発
効済です。
また、現在10の
国・地域と交渉中で
あり、モンゴルとは
2015年2月に署名
に至るとともに、
TPPは2015年10月
に大筋合意、2016
年2月4日に署名
に至りました。
(注1)
(注2)
(注3)
(注4)
署名 : 2016年2月4日
ASEANとの日ASEAN包括経済連携協定は、物品貿易については署名・発行済であるが、投資・サービスについては、2010年から交渉中。
GCC(湾岸協力理事会) : アラブ首長国連邦、オマーン、カタール、クウェート、サウジアラビア、バーレーン(計6か国) ; 2009年以降、交渉延期
RCEP(東アジア地域包括的経済連携) : ASEAN加盟国(インドネシア、カンボジア、シンガポール、タイ、フィリピン、ブルネイ、ベトナム、マレーシア、ミャンマー、ラオス)、日本、中国、韓国、豪州、ニュージーランド、インド(計16か国)
TPP(環太平洋パートナーシップ) : シンガポール、ニュージーランド、チリ、ブルネイ、米国、豪州、ペルー、ベトナム、マレーシア、カナダ、メキシコ、日本(計12か国)
(関税・外国為替等審議会資料を元に東京税関が作成)
52
関税・税関を巡る国際的な状況
[二国間(あるいは数カ国間)の経済連携協定(EPA)の推進④]
日本の貿易総額のうち、約22%がEPA発行済国との貿易であり、交渉段階の国・地域
を含めると、約85%がEPA対象国との貿易となります。
【日本の貿易総額に占める国・地域別割合】
22.3% 発効済
15.5% その他
・台湾(4.3%) ・香港(2.7%) ・ロシア(2.3%)
・メルコスール(1.3%)
[うち ブラジル(1.0%)、アルゼンチン(0.1%)]
・イラン(0.4%) ・南アフリカ共和国(0.6%) 等
・ASEAN(14.7%)
・チリ(0.7%)
・インド(1.0%)
・豪州(4.2%)
・メキシコ(1.0%)
・スイス(0.7%)
・ペルー(0.2%)
(ASEAN メンバーのうち二国間EPAも発効済の国)
・タイ(3.5%)
・インドネシア(2.7%)
・マレーシア(2.9%) ・ベトナム(1.8%)
・フィリピン(1.3%)
・ブルネイ(0.3%)
・シンガポール(1.9%)
47.3% 交渉中
・GCC(10.9%)
※2009年以降、交渉延期
0.02% 署名済
・中国(20.5%)
・韓国(5.7%)
・EU(9.9%)
・トルコ(0.2%)
・コロンビア(0.2%)
・モンゴル(0.02%)
14.9% 大筋合意・署名済
84.5% EPA発効済・交渉段階の国・地域
※ 貿易額は、日本は財務省貿易統計(2014年)、他国はIMF Direction of Trade Statistics(2014年)より作成
・米国(13.3%)
・カナダ(1.3%)
・ニュージーランド(0.3%)
※TPP交渉参加国
53
関税・税関を巡る国際的な状況
[世界のFTA/EPA動向(自由貿易~経済連携の歴史) ]
GATT
WTO
FTA/EPA
広域連携
(World Trade Organization)
(Free Trade Agreement
/Economic Partnership
Agreement)
(TPP、RCEP、TTIPなど)
名 称
関税及び貿易
に関する一般協定
世界貿易機関
自由貿易協定
/経済連携協定
TPP : 環太平洋戦略的経済連携協定
RCEP: 東アジア地域包括的経済連携
TTIP : 環大西洋貿易投資パートナー
シップ
年 代
1948~1995
1995~
1955~(特に2000年以降活発)
加盟国
/適用国
(地域)
125か国
(1995年時点)
162か国
(2015年11月時点)
二か国・地域(発効件数:266
(2014年末現在))
関税や各種輸出入規制などに関
する貿易障壁を取り除き、多国間で
自由貿易を維持・拡大するために
締結された国際協定で、
・ 「自由」
(貿易制限措置の関税化及び
関税率の削減)
・ 「無差別」
(最恵国待遇、内国民待遇)
・ 「多角的通商体制」
の三原則により自由貿易を実現し
ようとしたもの。
GATT24条では、特定の国(地域)
が相互の間で経済統合を発展させ、
自由貿易協定の締結によって関税
同盟、自由貿易地域などの地域協
力体制を設定することを認めている。
1995年に国際機関としてWTO(世
界貿易機関)が発足したことに伴い、
その役割はWTOに移行された。
GATTの機能を継承・増強し、
無差別で自由な貿易を促進し、
公平な貿易のルールを定める
ために設立された国際機関。
GATTが協定であったのに対
し、WTOは機関であるため、よ
り強い統制力を持てるようにな
るとともに、GATTでは物品に関
する貿易だけが対象であったも
のが、WTOでは知的所有権や
サービスに関する貿易も対象と
なっている。
ドーハ・ラウンド交渉は2001年
に開始を決定したが、先進国と、
急速に台頭してきた新興国との
対立などによって中断と再開を
繰り返し、事実上の停滞状態に
陥った。
その後、関税分野を除く貿易
円滑化協定が2014年11月に採
択された。
WTOでは、原則全ての加盟国に
等しい関税を適用するよう求めて
おり、これが世界的な貿易ルール
の原則となっているが、このWTO
のルールを補完するものとして、
更なる貿易自由化のために、実質
上の全ての貿易について関税を
撤廃するなど、一定の条件の下で
主に二国(地域)間で締結される
協定。
WTOドーハ・ラウンドの停滞が主
な要因となり、2000年以降、二国
(地域)間で自由な貿易を実現し、
貿易や投資の拡大を目指す協定
の締結が活発になっている。
(General Agreement on Tariffs and
Trade)
概 要
(解 説)
複数国・地域(広域)
二国(地域)間の自由貿易協
定の締結が活発になる中、二
国(地域)間にとどまらず、複数
国で広域な連携を図る動きが
広がっており、既に発効してい
る地域連携協定として、
・「AFTA」(ASEAN自由貿易地
域)
・「NAFTA」(北米自由貿易協
定)
などがある。
2013年から、「TPP」、「RCEP」、
「TTIP」といった広域連携(メガ
FTA)の交渉が一挙にスタートし
ており、このような広域連携は、
新たな経済統合の枠組みとして
発展する可能性も指摘されてい
る。
なお、「TPP」は、2015年10月
に大筋合意、2016年2月4日に
署名に至った。
54
関税・税関を巡る国際的な状況
[ TPP大筋合意の概要① ]
TPP協定交渉の経緯
2010年
3月
10月
ニュージーランド、シンガポール、チリ、ブルネイ(P4協定加盟4カ国)、米、豪、ペルー、ベトナムの8か国で交渉開始
マレーシアが交渉参加(計9カ国に)
2011年
11月 APEC首脳会議、TPP首脳会合(於:ホノルル)
2012年
11月 メキシコ、カナダが交渉参加
2013年
2月
3月
7月
8月
10月
12月
2014年
2月
4月
5月
10月
11月
日米首脳会談:日米の共同声明を発出
安倍総理「交渉参加」表明
日本が交渉参加(於:マレーシア)
TPP閣僚会合(於:ブルネイ)
TPP首脳会合、閣僚会合(於:バリ)
TPP閣僚会合(於:シンガポール)
TPP閣僚会合(於:シンガポール)
日米首脳会談、閣僚協議(於:東京)
TPP閣僚会合(於:シンガポール)
TPP閣僚会合(於:シドニー)
TPP首脳会合、閣僚会合(於:北京)
2015年
4月 日米閣僚協議(於:東京)
日米首脳会談(於:ワシントン)
7月 TPP閣僚会合(於:ハワイ)
9月-10月 TPP閣僚会合(於:アトランタ)、大筋合意
※2016年2月4日 署名(於:オークランド)
出典:財務省ホームページ(関税・外国為替等審議会資料)
55
関税・税関を巡る国際的な状況
[ TPP大筋合意の概要② ]
TPP協定の意義 <10月5日、アトランタでのTPP閣僚会合にて大筋合意>
○21世紀のアジア太平洋にフェアでダイナミックな「一つの経済圏」を構築する試み。
世界のGDPの約4割、人口の1割強を占める巨大な経済圏。
○TPPによりわが国のFTAカバー率は22.3%から37.2%に拡大。
○物品関税だけではなく、サービス・投資の自由化を進め、さらには知的財産、電子商
取引、国有企業など幅広い分野(前文+30章)で新しいルールを構築。
出典:財務省ホームページ(関税・外国為替等審議会資料)
56
関税・税関を巡る国際的な状況
[ TPP大筋合意の概要③ ]
TPP協定の効果
○農産品の重要5品目を中心に関税撤廃の例外を数多く確保しつつ、全体では高いレベルの自由化。
○自動車や自動車部品、家電、産業用機械、化学をはじめ、我が国の輸出を支える工業製品について、11カ国全
体で99.9%の品目の関税撤廃を実現。
○サービス・投資等の分野で、中小企業も含めたわが国企業の海外展開を促進するルール、約束を数多く実現。
<投資>
・投資先の国が、投資企業に対し技術移転等を要求することを禁止
<貿易円滑化>
・急送貨物の迅速な税関手続を確保するため、「6時間以内の引取」を明記
・関税分類等に関する事前教示制度を義務付け
<ビジネス関係者の一時的入国>
・多くの国で、滞在可能期間の長期化、家族の帯同許可等を実現
<電子商取引>
・デジタル・コンテンツへの関税賦課禁止。
・ソースコード(ソフトウエアの設計図)の移転、アクセス要求の禁止
<知的財産>
・模倣・偽造品等に対する厳格な規律
・地理的表示の保護を規定
○原産地規則の完全累積制度の実現により、中間財等を生産する中堅・中小企業も、我が国に居ながらにしての海
外展開が可能。
出典:財務省ホームページ(関税・外国為替等審議会資料)
57
関税・税関を巡る国際的な状況
[ TPP大筋合意の概要④ ]
税関当局及び貿易円滑化
環太平洋パートナーシップ協定(TPP協定)の概要
内閣官房TPP政府対策本部
平成27年10月5日より抜粋
税関手続について予見可能性、一貫性及び透明性のある適用を確保
するとともに、締約国間の協力の促進、国際基準への調和、通関等の
手続の迅速化、行政上及び司法上の審査の確保等について規定。
本章のルールにより、例えば以下のようなメリットが考えられる。
○迅速通関(関税法の遵守を確保するために必要な期間内(可能な
限り貨物の到着から48時間以内)に引取りを許可)
○急送貨物(通常の状況において、必要な税関書類の提出後6時間
以内に引取りを許可)
○輸入者、輸出者又は生産者の要請による書面での事前教示制度
(関税分類、原産性等)(150日以内に回答)
○自動化(輸出入手続を、単一の窓口において、電子的に完了するこ
とができるよう努める)
出典:財務省ホームページ(関税・外国為替等審議会資料)
58
関税・税関を巡る国際的な状況
[ TPP大筋合意の概要⑤ ]
TPP交渉参加各国の関税撤廃率
国
我が国
米国
カナダ
豪州
NZ
シンガポール
品目数ベース
95%
100%
99%
100%
100%
100%
貿易額ベース
95%
100%
100%
100%
100%
100%
国
メキシコ
チリ
ペルー
マレーシア
ベトナム
ブルネイ
品目数ベース
99%
100%
99%
100%
100%
100%
貿易額ベース
99%
100%
100%
100%
100%
100%
(参考)日本の直近のEPA(日豪EPA)における関税撤廃率:89%
(注)NZ、シンガポール、ブルネイについては、全ての品目について関税撤廃。
出典:財務省ホームページ(関税・外国為替等審議会資料)
59
関税・税関を巡る国際的な状況
[ TPP大筋合意の概要⑥ ]
TPP協定の概要
※前文に加え、以下の30章で構成。
(3)原産地規則及び原産地手続
(4)繊維及び繊維製品
(5)税関当局及び貿易円滑化
TPP協定が締約国間のその他の国際
貿易協定と共存することができることを
認める。また、本協定の二以上の章にお
いて使用される用語の定義を定める。
(2)内国民待遇及び物品の
市場アクセス
物品の貿易に関して、関税の撤廃や
削減の方法等を定めるとともに、内国
民待遇など物品の貿易を行う上での
基本的なルールを定める。
関税の減免の対象となる「TPP域
内の原産品(=TPP域内で生産され
た産品)」として認められるための要
件や証明手続等について定める。
繊維及び繊維製品の貿易に関
する原産地規則及び緊急措置等
について定める。
税関手続の透明性の確保や通
関手続の簡素化等について定め
る。
(6)貿易救済
(7)衛生植物検疫(SPS)措置
(8)貿易の技術的障害(TBT)
(9)投資
ある産品の輸入が急増し、国内産業に
被害が生じたり、そのおそれがある場合、
国内産業保護のために当該産品に対し
て、一時的にとることのできる緊急措置
(セーフガード措置)等について定める。
食品の安全を確保したり、動物や植
物が病気にかからないようにするため
の措置の実施に関するルールについ
て定める。
安全や環境保全等の目的から製品
の特性やその生産工程等について
「規格」が定められることがあるところ、
これが貿易の不必要な障害とならな
いように、ルールを定める。
投資家間の無差別原則(内国
民待遇、最恵国待遇)、投資に関
する紛争解決手続等について定
める。
(10)国境を超える
サービスの貿易
内国民待遇,最恵国待遇,市
場アクセス(数量制限等)に関す
るルールを定める。
(11)金融サービス
(13)電気通信
金融分野の国境を越えるサービスの提
供について、金融サービス分野に特有の
定義やルールを定める。
(12)ビジネス関係者の
一時的な入国
ビジネス関係者の一時的な入国の
許可、要件及び手続等に関するルー
ル及び各締約国の約束を定める。
(16)競争政策
(17)国有企業及び指定独占企業
(18)知的財産
(19)労働
(20)環境
競争法の整備と締約国間・競争当局間
の協力等について定める。
国有企業と民間企業の競争条件の
平等を確保する国有企業の規律につ
いて定める。
特許権,商標権,意匠権,著作権,
地理的表示等の知的財産の十分で
効果的な保護、権利行使手続等につ
いて定める。
貿易や投資の促進のために労
働基準を緩和すべきでないこと等
について定める。
貿易や投資の促進のために環
境基準を緩和しないこと等を定め
る。
(21)協力及び能力開発
(22)競争力及びビジネスの
円滑化
サプライチェーンの発展及び強化、
中小企業のサプライチェーンへの参
加を支援すること等について定める。
(23)開発
(24)中小企業
(25)規制の整合性
開発を支援するための福祉の向上
等や、女性の能力の向上、開発に係
る共同活動等について定める。
中小企業のための情報、中小
企業がTPP協定による商業上の
機会を利用することを支援する方
法を特定すること等を定める。
加盟国毎に複数の分野にまた
がる規制や規則の透明性を高め
ること等を規定する。
(26)透明性及び腐敗行為の防止
(27)運用及び制度に関する規定
(28)紛争解決
(29)例外
(30)最終規定
協定の透明性・腐敗行為の防止のため
に必要な措置等に関するルールに関わ
る事項等を定める。
協定の実施・運用等に関するルール
など協定全体に関わる事項等を定め
る。
協定の解釈の不一致等による締約
国間の紛争を解決する際の手続につ
いて定める。
締約国に対するTPP協定の適
用の例外が認められる場合につ
いて定める。
TPP協定の改正、加入、効力
発生、脱退等の手続、協定の正
文等について定める。
(1)冒頭の規定及び一般的定義
協定の合意事項を履行するための国
内体制が不十分な国に、技術支援や人
材育成を行うこと等について定める。
出典:財務省ホームページ(関税・外国為替等審議会資料)
電気通信サービスの分野について、
通信インフラを有する主要なサービス
提供者の義務等に関するルールを定
める。
(14)電子商取引
電子商取引のための環境・
ルールを整備する上で必要とな
る原則等について定める。
(15)政府調達
中央政府や地方政府等による
物品・サービスの調達に関して、
内国民待遇の原則や入札の手
続等のルールについて定める。
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