Yasutomo Oda MD, PhD. Saga Univ. 内容 PBL workshop in Okayama Univ. 5-6 Dec. 2008 事例検討 シナリオの役割 シナリオ作成のコツ シナリオ作成のコツ ─ Active PBLのために 小田康友 佐賀大学医学部 地域医療科学教育研究センター 1 2 Yasutomo Oda MD, PhD. Saga Univ. Yasutomo Oda MD, PhD. Saga Univ. シナリオ(1)【シーン1】 シナリオ(1)【シーン2】 中田勝弘 21歳男性、佐賀大学医学部3年生 新入生歓迎コンパで飲酒(ビールジョッキ4杯+焼酎2杯)した 後、自力で歩けなくなった。友人に背負われて帰宅したが、 友人の呼びかけに対する反応が弱く、その後、嘔吐、尿失禁 していたため、救急車を要請。 発熱あり、飲酒前に風邪薬を服用していた模様。 Fact/Problem Hypothesis Need to know Learning Issue バイタルサイン(救急車内) 意識レベルⅡ-20 体温38.8℃ 血圧130/60mmHg 脈拍120bpm・整 SpO2 97% 右下肺のエア入りが不良 呼吸数24回/分 Fact/Problem Hypothesis 3 Yasutomo Oda MD, PhD. Saga Univ. シナリオ(2)【シーン1】 「しっかりしてくれよ、まったく・・・」 寝ている中田に声をかけ、隆志は中田のアパートを後にした。新入生歓迎コン パで酒を飲み、歩けなくなった中田を送り届けたところだ。もう22時を過ぎている が、隆志はこれから二次会に合流しなくてはならない。 隆志と中田の属するワンダーフォーゲル部にとって、今日は大事な日だった。 三日前の入学式以来、地道に続けてきた新人募集活動が功を奏し、興味を持っ た新入生3名が、部の歓迎会に来てくれたのだ。にもかかわらず、今日参加した 上級生は、三年の隆志と中田、そして四・五年の先輩をふくめて5名だけ。ほか の2人の部員は、 「熱が出た」とか言って歓迎会をドタキャンしてしまったのだ。 隆志と中田は、盛り上げ役に徹し、お酒も良く飲んだ(2時間でビールジョッキ 4杯+焼酎2杯)。中田が途中から「気分が悪い」といって、壁にもたれかかって いたのは知っていたが、勧誘に忙しくて、気遣っている余裕は無かった。 帰る頃には、中田は寝ぼけて一人では立てなくなっていた。アパートへ運びこ み、布団に寝かせたものの、呼びかけても、うなるだけでちゃんとした返事はしな い。変ないびきをかいて、仰向けで大の字に寝てしまった。体が妙に熱っぽく、息 が荒い。テーブルの上に、開封した市販の風邪薬があるところをみると、風邪で もひいていたのだろう。今日は薬を飲み、無理して参加したようだ。 5 Need to know Learning Issue 4 Yasutomo Oda MD, PhD. Saga Univ. シナリオ(2)【シーン2】 「お茶くらい、買っといてやるか」 ふと隆志は立ち止まった。あの調子では、明日も二日酔いだろう。500ccのペッ トボトルを2本買うと、中田のアパートへと戻った。 ドアを開けると、ツンと異臭が鼻についた。「吐きやがったな」と隆志は舌打ちし た。中田は右向きで背中を丸めた姿勢で、枕に吐物をまきちらしている。ときどき ゴフッ、ゴフッ、とむせたように咳き込んでいる。布団をはぐと、何と、尿失禁までし ており、ジーンズ・布団までぐっしょりだ。 「すみません、こんな事情で、二次会に遅れそうです」 隆はキャプテンに電話した。だが、キャプテンの返事は意外なものだった。「バ カヤロー、すぐ救急車を呼べ! 俺もすぐ行くから!」 何で? 救急車に同乗したのは初めてだが、乗り心地は良く無い。うるさいし、揺れるし、 狭い。こっちが車酔いしてしまいそうだ。 救急隊が連絡しているのは、佐賀大学附属病院の救急部のようだ。「意識レベ ルⅡ-20、体温38.8℃、血圧130/60、脈拍120の整、呼吸数24回で、SpO2 97%。 右肺のエア入りが不良で・・・」という声が聞こえてくる。 「大学か・・・」隆志はつぶやいた。「また学生の急性アル中事件」とかいって、 問題になるかもしれない。ワンゲル部、廃部の危機? でも、ひょっとして、中田って、結構ヤバイのか?? 何で?? 6 1 Yasutomo Oda MD, PhD. Saga Univ. Yasutomo Oda MD, PhD. Saga Univ. シナリオ(2)【シーン3以降】 Think, Pair, Share 中田の病態は、抗ヒスタミン剤入りの総合感冒薬を倍量服用 した後、急速に飲酒したため生じた極度の眠気・意識レベル 低下と判明。嘔吐の誤嚥のため、右誤嚥肺炎も併発。また、 インフルエンザAを検出。 ワンゲル部の他2名もインフルエンザAであったことが判明し、 保健管理センターが全学に注意を喚起。 隆志は、翌々日に老人保健施設での学外実習に参加したが、 途中から咳、発熱のため早退。インフルエンザAと判明 翌週、老人保健施設ではインフルエンザAの集団感染が発 生、3名が肺炎で大学病院に搬送、うち1名が死亡 1ヵ月後、学部長の謝罪会見 二つのシナリオの特性を考えてみよう 病態は同じでも、シナリオとしては別物 7 Yasutomo Oda MD, PhD. Saga Univ. Yasutomo Oda MD, PhD. Saga Univ. 二つのシナリオの特性 シナリオの役割 シナリオ(1) 8 症例報告/サマリー形式で、簡潔な情報提示 知識基盤の構築に臨床的背景を与える シナリオ(2) 当事者意識(医師、患者・家族)を惹起する ストーリー仕立てで、場面描写、患者背景が詳しい 臨床推論を促進する それぞれに有効性 グループ討論において; 初級者にはシナリオ(2)。場面、人物に二重化しやすい。 ポイント PBLの目的や学習者に応じて、シナリオはアレン 議論のトリガーが豊富に埋め込まれている。 シナリオ(1)は、上級者向のCase study向け。より複雑 な情報・病態を組み込むことも可能。 ジすべき シナリオはtutoringによって活きる 9 Yasutomo Oda MD, PhD. Saga Univ. Yasutomo Oda MD, PhD. Saga Univ. 初心者の特性 10 医師の思考過程を追体験 現場経験、知識とも乏しい初心者は; 文字情報から状況を描く実力に乏しい 医師はどのようにして診断しているか 文字情報から当事者の立場に二重化しがたい どのようにしたら診断が上達するか ⇒叙述的シナリオが有効 ⇒模擬患者・ビデオによる情報提供の有効性 医師の思考過程=臨床推論 古典的研究から認知心理学的研究へ 仮説演繹法(Elstein 臨床推論の実力養成のために 過不足ない事実がそろった症例報告的シナリオ 1972) 医師は仮説を想起し、検証する形で患者に質問 仮説形成までのプロセスは? はでは、場面から事実を見出す努力が不要 ⇒問題発見能力・情報収集力が育たない 11 12 2 Yasutomo Oda MD, PhD. Saga Univ. Yasutomo Oda MD, PhD. Saga Univ. 臨床推論のモデル 患者・状況 の特徴 Tutoringによってシナリオは活きる 元々の 知識 Tutor Notesの役割は重大 詳細な疾患の解説はNG (→熱意には敬服するが、多くのtutorは読まない) シナリオのねらい、期待する議論を明確にして、 問題表象 評価 効果的なtutoringをサポート 実行(治療・ マネージメント) 専門外テューターのため、 最低限必要な知識を解説 情報収集 コンテクスト Gruppen, Frohna, 2002 13 Yasutomo Oda MD, PhD. Saga Univ. Yasutomo Oda MD, PhD. Saga Univ. Active tutoringのススメ 14 シナリオ作成の手順 テクニック 埋め込みたい学習課題を列挙 Think aloudの推奨、思考過程の共有 ワイワイ(why-why)・アプローチ 発言・疑問・発表へのpositive feedback 経験談もときに有効 前提 PBLの目的、学生の学習段階を明確化 不明な用語へのワンポイント・アドバイス ストーリー リアリティ・臨場感⇒当事者意識を惹起 疾患は典型例を⇒プロトタイプとして記憶される “産婆術” 診断が容易であることは問題ではない 患者の人物設定、心理・社会的背景 わかっていること、わかっていないこと、わからな 学生に決断を迫る場面を くてはならないことを、学生自らが 明確にする努力をアシスト 15 Yasutomo Oda MD, PhD. Saga Univ. Yasutomo Oda MD, PhD. Saga Univ. シナリオの構成例 16 Possible Learning Issues Page 1: 患者プロフィール、場面 Page 2: 病歴、背景 Page 3: 身体所見 一つの物語 を形成 Page 4: 検査 Page 5: 診断と経過 Page 6: 転記 List of Possible Learning Issues Resource List:教員、テキスト、文献 17 PLIとは シナリオライターの企図した学習課題 構成 (基礎医学的) (臨床医学的) Populational (疫学・公衆衛生的) Behavioral (行動科学的) Biological Clinical 18 3 Yasutomo Oda MD, PhD. Saga Univ. Yasutomo Oda MD, PhD. Saga Univ. まとめ Tips 症例にはタイトルをつける シナリオの形態 初心者には叙述的シナリオが有効 内容にちなんだものや、患者氏名(あからさまに変なもの はNG)でもよい 診察所見について PBLの目的・学習者のレベルに応じて異なる 当事者意識(医師、患者・家族)を惹起する 「髄膜刺激症状(+)」と 臨床推論を促進する 「頚部の他動的前屈時に抵抗が感じられる」 検査について シナリオはtutoringによって活きる 詳細なデータは不要なことが多い Tutor グラフ・画像は、正常を添付し比較させる Active 方針について 病状説明はロールプレイを前提に 19 notesを大切に tutoringのススメ ちょっとした工夫でシナリオは効果的に 20 4
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