中途視覚障害者における書の受傷から社会復帰に

大前:中 途視覚 障害者 における障害 の受 傷か ら社 会復帰 にいた るまでの心理 的変化 とそのプ ロセ スの研 究(II)
中 途視 覚 障 害 者 に お け る障 害 の受 傷 か ら社 会 復 帰 に
い た る まで の心 理 的 変 化 とそ の プロ セ ス の研 究(豆)
大
前
太
一*
Researchonpsychologicalchangesandprosessesduringrehabilitation
ofpeoplewithacquriedvisualimpairment(ll)
TaichiOmae
旨
本 論 分 は、 中 途 視 覚 障 害 者 に お け る 障 害 の 受 容 ・克 服 に関 す る 研 究 で あ る。 人生 の 途 上 で さ ま ざ まな
不 慮 の 病 気 ・事 故 に よ り、視 覚 障 害 を負 っ た 人 が 、 そ の 心 理 的 ス トレス をの り越 え、 社 会 復 帰 に い た る
ま で の 心 理 的 変 化 と そ の 条 件 ・プ ロセ ス につ い て 、 面 接 調 査 を 行 い 、 今 後 の 臨 床 心 理 学 的 援 助 につ い て
検 討 した もの で あ る。20名 の 方 に 半構 造 化 面接 を した 結 果 、心 理 的 プ ロセ ス と して 、 シ ョッ ク期,混 乱
期 、適 応 へ の 努 力 期 、 適 応 期 を想 定 す る こ とが で き るが 、 こ れ らの 時期 は 、 一 方 向性 で は な く、 行 きつ
戻 りつ す る こ とが うか が え た 。 さ ら に、 障 害 を受 容 して い る 人 は 、 支 え て くれ る人 を必 ず 持 っ て お り、
そ の支 え を快 く受 け 入 れ よ う とす る こ とが で きて い る 。 家 庭 を 支 え な くて は な らな い と い う危 機 感 は 、
受 容 に も ス トレス に も大 きな 影響 を持 つ 。障 害 を受 容 す る 上 で 、趣 味 や 欲求 が 大 き な影 響 を も って お り、
生 きが い を持 つ こ とが 大 き な力 と な る こ とが うか が え た 。 経 済 的 ・福 祉 的 支援 や リハ ビ リテ ー シ ョ ン と
同 時 に、 心 理 的 な支 援 が重 要 で あ る こ とを示 唆 した。
1.は
じめ に
(1)近 年 さ ま ざま な 病 気 や 事 故 に よ り、 突 然 視 覚 障 害 者 と な る い わ ゆ る 「中途 視 覚 障 書 者 」 数 の
増加
私 は幼 児 期 か ら高 校 を卒業 す る まで の期 間 、和 歌 山 県 に あ る盲 学 校 で す ご して きた。 こ の学 校
は 個 々 の 障 害 の 程 度 を考 慮 しつ つ 、 普 通教 育 を行 う過 程 が 幼 稚 部 か ら高 等 部 の 段 階 まで 設 け られ
て い る。 そ の 他 に 、視 覚 障 害者 の 多 くが 職 業 とす る 「針 ・灸 ・マ ッサ ー ジ」 師 の を資 格 得 る た め
の専 門 学 科 が 設 置 さ れ て い る。 生 徒 数 の 半 分 以 上 が この 専 門学 科 に所 属 して い る。 ま た そ の 多 く
が 人 生 半 ば に して 突 然 に事 故 や 病 気 に よ り視 覚 に障 害 を きた した 人 で あ っ た。
平 成20年9月26日
受 理*和
歌 山 県 ス ク ー ル ・ソ ー シ ャ ル ワ ー カ ー
一27一
奈 良 大 学 大 学 院研 究 年 報
第14号(2009年)
私 は 彼 ら と学 校 生 活 ・寄 宿 舎 生 活 を共 に す る 中 で 、 彼 らが 視 覚 に 障 害 を き た し、 現 在 に い た る
まで の 苦 しみ や 葛 藤 に つ い て 、話 を聞 く機 会 が 多 くあ っ た。 そ の 中 で 強 く心 に残 って い る こ とが
あ る 。 そ れ は 、 彼 らが 失 明宣 告 を受 け て か ら盲 学校 へ の 入 学 を決 意 す る まで の 期 間 につ い て で あ
る。 もち ろん す ぐに入 学 を決 意 す る 人 もい る が 、 多 くの 人 が 、 障 害 者 とな った とい う事 実 を受 け
入 れ られ ず にい るの が 現 実 で あ る。 また3年 間 の 学 校 生 活 に お い て も、 不 適 応 をお こ して い る 人
は 数 多 い 。 しか し、彼 ら と過 ご して感 じた こ とは 、3年 間 とい う学 校 生 活 の 中 で 、様 々 な 葛 藤 を
経験 しつ つ も、 多 くの 人 が 障害 を受 容 して い る とい う こ とで あ る。 そ れ は 、 同 じ境 遇 を持 つ 仲 間
同士 の 支 え あ い 、 教 師 や 家 族 、 そ の他 福 祉 関係 者 な どの 支 えが あ る と考 え て い る 。 しか し、 一 方
で は 、 自分 が 障 害 を きた した とい う事 実 を 十 分 に受 け入 れ られ ず 、 障 害 を き た した こ と に対 し、
シ ョック を引 きず った ま ま学 校 を去 る人 もい る。
受傷 後 の 心 の 傷 が どの よ うな もの で あ り、 ま た そ れ を どの よ う に緩 和 して い くか とい う こ と に
つ い て 、 多 くの 分 野 で 研 究 が な され て きた。 そ の ひ とつ が 「リハ ビ リ テ ー シ ョ ン心 理 学 」 とい う
分野 である。
(2)リ ハ ビ リテ ー シ ョン医 療 にお け る研 究
中途 障 害 者 の 心 理 的 問 題 に関 心 が 向 け られ る よう に な っ た の は 、 第 二 次 世 界 大 戦 直 後 、 障 害 者
が 多 数 発 生 した こ と に始 ま る 。Guttmannは
戦 傷 後 の 背 損 者 の 経 験 か ら、 受 傷 後 に シ ョ ッ クや 反
応 性 うつ 状 態 が 生 じや す く、 そ れ に対 す る配 慮 と対 応 の重 要性 を指摘 した 。
ま た、Michaelsは 戦 傷 障 害 者 で は身 体 障 害 へ の反 応 に加 え て神 経 症 的 要 因 が 大 きい こ と を指 摘
した。 こ れ ら心 理 的 問 題 に対 して 、 力 動 精 神 医 学 の 立 場 か ら精 神 分 析 医 に よ る対 応 が検 討 され た
の で あ る。 そ の他 に もKnudsonは
、 身 体 訓練 が 戦 争 神 経 症 患 者 の リハ ビ リテ ー シ ョンに重 要 で あ
り、 理 学 療 法 士 は精 神 面へ の対 応 が教 育 され て い る こ とが 望 ま しい と主 張 し、 さ らにGoldberger
&Goldbergerは
、 リハ ビ リ テ ー シ ョ ン専 門 家 は 身体 障 害 後 の心 理 的 障 害 や心 身 症 を扱 え る よ う
に簡 易 精 神 療 法 を 身 に つ け る べ きだ と主 張 した 。 この よ う な多 くの 指 摘 に よ り、 リハ ビ リテ ー シ
ョ ン分 野 へ の 心 理 的 側 面 へ の 関 心 が 高 ま っ た の で は な い か と考 え ら れ て い る(本
田他,1992,
P196)。
1950∼1960年
代 に は 中途 障 害 者 の 心 理 的 問 題 と回 復 に対 し、 「障 害 受 容 」 理 論 が提 唱 さ れ た 。
障 害受 容 とは 、 障 害 に よ って 変 化 した 諸 条件 を心 か ら受 け 入 れ る こ とで あ る。
そ こで は 、 障 害 は当 事 者 が 克 服 す べ き課 題 と され て きた 。 これ は 健 常 時 の 身 体 を基 準 と した生
き方 か ら、障 害 を負 っ た こ と に よ っ て変 化 した 身体 を基 準 に した 新 しい 生 き方 に 、 で き る だ け早
く転 換 させ る こ とが重 要 だ とす る 考 え 方 で あ る 。
Graysonは
障 害 受 容 の 重 要 性 を最 初 に主 張 した 。 障 害 受 容 を 、 身体 、心 理 、社 会 の3つ
の側面
か ら複 合 的 に と らえ る べ きで あ る。 つ ま り、 受 容 は 、 「身体 的 に は患 者 が 障 害 の 性 質 や 原 因 や 合
併 症 や 予 後 を よ く知 る こ と、社 会 的 には 雇 用 や 住 宅 や 家 族 や そ の他 の 関係 に対 して現 実 的 で あ る
こ と、心 理 的 に は、 ひ どい情 動 的 症 状 を示 さ ない こ と」 で あ る と言 っ た(南 雲,1998,P57)。
また 、2つ の苦 しみ の 過 程 か らの圧 力 に打 ち勝 つ 必 要 が あ る と主張 した 。 す なわ ち、 外 か らの
現 実 的 な圧 力(差 別 や 偏 見 な ど、 障害 者 に対 す る社 会 の 否 定 的 態 度)は
一28一
、 自分 自 身 を社 会 に統 合
大前:中 途視覚 障害者 におけ る障害の受傷 か ら社会復帰 にい たるまでの心理 的変化 とその プロセスの研究(ll)
す る こ と に よ っ て 克 服 し、 内 か らの 圧 力 〔自我 が 障 害 され た 身体 像(bodyimage)を
再構成 し
よ う とす る苦 痛 に み ち た無 意 識 の欲 求 〕 は 、 身体 像 の再 構 成 に よ り克服 す る 必 要性 が あ る。
ま た 、 当 時 の リハ ビ リテ ー シ ョン医 学 の代 表 格 で あ る ラ ス ク(Rask、H.A.)は
、 「障 害 に と
らわ れ る な 」 と か 、 「残 され た もの の 中 に価 値 を見 出せ 」 とい っ た 障 害 に お け る価 値 を 転 換 させ
る こ とを主 張 した の で あ る。 お そ ら く当 時 の社 会 的 思 想 が そ の よ うな もの で あ った もの と考 え ら
れ る。 さ らに 、60年 代 は 、wrightが 価 値 変換 論 を提 唱 した 。 切 断 者 の 心 理 変 化 と して 価 値 変 換 が
重 要 で あ る と したDemoboの
考 え を障 害 者 一般 に 拡 張 、 さ ら に価 値 変 換 を追 加 した もの で あ る。
受 容 にい た る た め の4つ の 価 値 変 換 と は、
enlargingthescopeofvalue:価
値 範 囲 を拡 張 す る(他 に も価 値 が あ り、 失 った 価 値 に と らわ れ
な い)
subordinatingphysique:身
体 的外 見 を従 属 させ る こ と(身 体 的外 見 や 能 力 よ り も人格 的 な価 値
の方 が 大 切 で あ る)
transformingcomparativevalueintoassetvalues:相
対 的 価 値 を資 産 価 値 にか え る こ と(人
と比
べ な いで 、 自分 の価 値 を考 え る こ と)
containingdisabilityeffects:障
害 に起 因 す る さ ま ざ まな波 及 効 果 を抑 制 す る こ とで あ る 。
ま た こ の 年 代 に は 、 心 理 的 立 ち 直 り過 程 に段 階 を仮 定 す る 立 場 か ら、Cohn(1961)とFink
(1967)ら
によって 「
段 階 理 論 」 が提 唱 され た 。 日本 で は 、 高 瀬(1956)が
身体障害者 の心理的
問題 に着 目 し 「障 害 の受 容 」 の概 念 を紹 介 した のが 最 初 の よ うで あ る が 、 そ の 後 、 国 立 身 体 障 害
者 セ ン ター グ ル ー プ に よ り、 受 容 理 論 、 段 階 理 論 が 、 期 を一 に して 日本 に導 入 さ れ る な ど し、
「障 害 受 容 」 に関 す る研 究 が 少 しず つ な され る よ う に な っ て きた(本 田他,1992,p197)。
段 階理 論 、価 値 転 換 論 は 、 日本 で も大 きな影 響 力 を もっ た もの で あ っ た 。 上 田(1980),は
、そ
の論 文 の なか で 、 「障 害 受 容 」 に つ い て 「障 害 の 受 容 とは あ き らめ で も居 直 りで も な く、 障 害 に
対 す る価 値 観(感)の
転 換 で あ り、 障 害 を もつ こ とが 自 己 の全 体 と して の 人 間 的価 値 を低 下 させ
る もの で は な い こ と の認 識 と体 得 を通 じて 、恥 の意 識 や劣 等 感 を克服 し、積 極 的 な生 活 態 度 に転
ず る こ と」 と定 義 し、段 階 理 論 を紹 介 して い る 。 こ の理 論 は 、 キ ュ ブ ラ ー=ロ ス の死 の 受 容 の プ
ロ セ ス を基 に した もの で あ る。
エ リザベ ス ・キ ュ ブ ラー=ロ ス に よ る死 の 受 容 プ ロセ ス は 以 下 の よ うに纏 め られ て い る 。
1)否
認;自 分 が 死 ぬ とい うこ とは嘘 で は ない の か と疑 う段 階 で あ る。
2)怒
り;な ぜ 自分 が死 な な け れ ば な らない の か とい う怒 りを周 囲 に向 け る段 階 で あ る。
3)取
引;な
ん とか死 な ず に す む よ うに取 引 を し よ う と試 み る段 階 で あ る 。何 か に す が ろ う とい
う心 理 状 態 で あ る。
4)抑
うつ;な
に もで きな くな る段 階 で あ る。
5)受
容;最 終 的 に 自分 が死 に行 くこ とを受 け入 れ る段 階 で あ る。
同 じ く、段 階理 論 も五 つ の 段 階 に分 け られ て い る。
1)シ
ョッ ク期
障 害 の発 生 直 後 で 集 中的 な医 療 を受 け て い る と きの心 理 状 態 で あ る。 肉体 的 に は苦 痛 で あ って
も意 識 の上 で は そ れ ま で の延 長 上 に あ り、健 常 時 と同 じ 日常 生活 の こ とを あ れ こ れ考 え る 。不 安
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奈 良大 学 大 学 院研 究 年 報
第14号(2009年)
は あ ま り強 くな く対 人関 係 も問 題 な い。
2)回
復への期待期
シ ョッ ク期 はあ ま り長 続 きせ ず 、救 急 的 な 医療 が 一段 落 し、 身体 的状 況 が 安 定 す る と と もに く
る 反応 で あ る。 「傷 さ え治 れ ば 」 「病気 さ え治 れ ば 」 と考 え、 周 囲 の 人 との会 話 も治 癒 後 の 明 るい
見 通 しの下 に 約 束 な どをす る。
3)混
乱期
治療 を続 け て も変 化 が 見 られ な い こ とや 、周 囲 の状 況 か らそ う簡 単 で は な い こ と に気 づ き始 め
る 。自分 の不 注 意 を悔 や ん だ り、加 害 者 へ の 攻 撃 ・非 難 をす る。そ してす べ て を失 っ て し まっ た 、
な に もで きな くな って しま っ た とい う嘆 きの 感 情 に支 配 され 、 深 い 抑 諺 状 態 に 陥 る。
4)適
応への努力期
毎 日の訓 練 を通 して 価 値 転 換 が 徐 々 に な され 、 周 囲 へ の 心 が 開 き始 め る。
5)適
応期
具 体 的 な 問題 を一 つ 一 つ 解 決 し、家 族 や地 域 社 会 の 中 で何 らか の 新 しい役 割 を得 る こ とに よっ
て再 適 応 が は か られ る。
こ の理 論 は 、現 在 で も、 リハ ビ リテ ー シ ョ ン現 場 に お い て 、確 固 た る地 位 を 占 め て い る。 例 え
ば、 著 名 な リハ ビ リテ ー シ ョ ン機 関 で使 用 さ れ て い る 「個 別 計 画書 」 に は 「障 害 の受 容 」 が挙 げ
られ てお り、受 容 度 の 評 価 の 覧 に は、 シ ョ ック期 、 否 認 期 、怒 り ・恨 み 期 、 悲 嘆 ・抑 欝 期 、解 決
へ の 努 力 期 、 受 容 期 の6つ
の ス テ ー ジ が示 され 、入 所 者 の受 容 の段 階 をチ ェ ックす る形 式 に な っ
てい る(柏 倉,2㎜)。
(3)段 階 理 験 の 批 判 と今 後 の 研 究
段 階 理 論 が 多 くの 支 持 を集 め て い る に も関 わ らず 、 一 方 で は こ の 理 論 に対 す る 批 判 も大 きい 。
なぜ な ら ば、 こ れ を 障 害 者 全 体 に当 て はめ た と き、 か な らず し も この理 論 が 適 用 で き る と は言 え
ない か らで あ る。 また 、 本 研 究 の テ ー マ で あ る失 明 に つ い て 考 え て み る と、 あ ま りに も唐 突 で 、
自分 を取 り巻 く環 境 の 変 化 が 大 き く、 シ ョ ック期 はお とず れ な い こ と も多 い よ うで あ る。 この段
階 理 論 に対 す る批 判 の論 文 も多 い 。 「総 合 リハ ビ リテ ー シ ョ ン」 とい う雑 誌 の なか で 、1994年 と
2003年 に障 害 受 容 とい うテ ー マ が 組 まれ て い るが 、1994年 の もの は 、段 階理 論 の 批 判 が 中 心 的 な
もの で あ る。 ま た こ の理 論 は 、 克 服 で きた 人 の 理 論 で あ る。 しか し現 実 に は 、 この 理 論 通 り回 復
す る こ とは な く、 長 期 に わ た りシ ョッ クの 中 に さ ら され て い る人 もい る 。 そ の よ うな 人 に どの よ
う に して 働 きか け るか が 、 今 後 の課 題 で は ない か と感 じてい る。
2.研
究 目的
本研 究 で は 、 障 害 の受 傷 か ら社 会復 帰 にい た る まで の 心 理 的 変 化 につ い て 中途 に視 覚 障 害 を き
た した 人 を対 象 に面 接 調 査 を し、社 会 生 活 に適 応 で きた 要 因 につ い て考 察 を した い 。 また 、適 応
で きて い な い 人 に対 して は 、援 助 の 方 法 につ い て 新 しい モ デ ル を提 供 した い。 また 、 人 間 の発 達
に お け る 観 点 か ら、 障 害 と、心 身 の発 達 にお け る課 題 につ い て 、 エ リ ク ソ ンの ラ イ フサ イ ク ル論
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大前:中 途視覚 障害 者 にお ける障害 の受傷 か ら社会復帰 にい たる までの心 理的変化 とその プロセスの研 究(ll)
を元 に考 えて い きた い 。
3.研
究方法
青 年 期 お よ び 中年 期 の 視 覚 障 害 者 お よそ20人 程 度 に対 し、 イ ン タ ビ ュ ー調 査 を行 っ た◎ な お 、
対 象 は 、 盲 学校 在 籍 者 お よび卒 業 生 で あ る。
(1)面 接 ■ 査 内 容
盲 学校 在 籍 者 に は、障 害 の 受 傷 か ら学 校 に入 学 す る まで の 期 間 お よび現 在 の学 校 生 活 に つ い て 、
卒 業 生 には 、 障 害 の受 傷 か ら学 校 に入 学 す る まで の 期 間 と、 盲 学 校 在 籍 期 間 、 盲 学校 卒 業 後 につ
い て イ ン タ ビ ュ ー調 査 を して い った 。 面接 方 法 は、 半 構 造 化 面 接 を用 い た。 共 通 して 質 問 す る項
目は 、次 の項 目 とす る。
①
最 も苦 しか っ た こ と
②
最 も うれ しか っ た こ と
③
支 え に な った こ と(も し くは 人 な ど)
④
立 ち 直 れ た 要 因 は な に だ と思 うか
⑤
そ の期 間 に どの よ う な援 助 が 必 要 で あ っ たか
⑥
今 一 番 苦 しい こ と は な にか
⑦
突 然 の失 明 とい う中 で 、 今 抱 え てい る危 機 感 はあ るか
⑧
今 後 中途 失 明 者 が 障 害 を克 服 す る にあ た って 、 な にが 大 切 と思 うか
(2)面 接 時 間
一 人 当 た り、20分 か ら60分 とか な り幅 が あ った 。
4.中
途 視 覚 障 害 者 に お け る 障害 受 傷 か ら社 会 復 帰 に至 る まで の プ ロ セ ス の仮 脱
今 回 は イ ン タ ビ ュー 調 査 で あ る た め 、 人数 が 限定 され て し ま う。 そ の た め 、 そ こで 得 られ た 知
見 が 必 ず し もす べ て の 人 に適 用 で きる とは言 え な い。 しか し、今 後 の ケ ア に 関 し、 有 益 な情 報 が
得 られ る もの と期 待 した い 。
こ れ ま で述 べ て きた 段 階 理 論 は、 批 判 こ そあ る もの の、 多 くの支 持 を集 め て きた こ と も また 事
実 で あ る。 した が っ て 、 お そ ら く多 くの 人 が この 理 論 に近 い形 で克 服 の道 を歩 ん で い った もの と
考 え られ る。
そ ん な 中で 現 在 、 障 害 の 克 服 や 受 容 に関 して 、 もっ と も大 き く影 響 す る要 因 は環 境 で は ない だ
ろ うか と考 えて い る。 克 服 しに くい要 因 と して以 下 の3点 が 指摘 で きる の で は な い だ ろ うか 。
(1)視 覚 障 害 を克 服 で きて い ない 人 は、 克 服 で きて い る人 に比 べ て 、精 神 的 に支 え あ え る友 人 が
少 ない 。
人 間 は 、同 じ境 遇 を持 つ仲 間 同士 集 ま っ り、慰 め 、支 えあ っ て い る グ ル ー プが 多 く見 られ る。
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実 際 に社 会 で は、 災 害 等 にあ った 人 、 身内 を失 っ た人 同士 が支 え あ う ため に作 られ た 自助 グ ル
ー プな どが 活 動 して い る。
克服 で きて い な い 人 は 、 同 じ境 遇 を持 つ 仲 間 と して、 支 え あ え る 友 人 が 少 な い の で は な い だ
ろ うか 。 この こ と を明 らか にす る た め 、 イ ン タ ビュ ー の項 目に③ の項 目 を設 け た
(2)視 覚 障 害 を克 服 しに くい の は 、 家 族 が 本 人 を理 解 で きて い な い 。 中 途 失 明 をす る とい う こ と
は 、 本 人 の み な らず 、家 族 に も大 き な負 担 と な る。 こ れ ま で家 族 の一 員 と して 果 た してい た役
割 が 果 た せ な くな る ケ ー ス も少 な くない 。 障 害 を克 服 で きて い な い 人 は 、 本 人 を含 め 、 家 族 同
士 お互 い を十 分 に理 解 で きて い な い の で は な い だ ろ うか 。 こ の こ とを 明 らか に す る ため 、 イ ン
タ ビュ ー で は 、③ と⑥ の 項 目を設 け た。
(3)視 覚 障 害 を 克 服 して い な い 人 は、 克服 して い る 人 よ りも、 将 来 に対 す る 目標 ・危 機 感 が 薄
いo
中途 障 害 者 の 中 に は、 家 庭 を持 ち 、子 供 を養 うな ど、 家庭 を支 え な け れ ば な らな い とい う危
機 感 の 中 に さ ら され て い る人 が 多 い。 一 刻 も早 く社 会 復 帰 した い ・しな くて は な らな い とい う
強 い思 い を持 っ た 人 が 多 い 。
しか し、 未婚 者 な ど は、 親 が 経 済 的 に支 え て くれ た りと、 前 者 に比 べ て、 や や 危 機 感 が 薄 い
と感 じ られ る 。 この こ と を明 らか にす るた め 、 イ ン タ ビ ュー の 中 に⑧ の 項 目 を設 け た。
今 回 の研 究 で は 、 この3点
を 明 らか にす る と と もに 、 これ 以外 に も障 害 の 克 服 に お け る重 要 な
要 因 はあ る の か 、 あ る とす れ ば そ れ は な にか に つ い て 明 らか に して い きた い 。
5.事
例の概要
イ ン タ ビュ ー 調 査 は20人 につ い て行 った が 、今 回 は平 成18年 度 に発 表 した 事 例 、1か ら3は 省
き、 事 例4か
1)事
ら8ま で の事 例 につ い て の み報 告 をす る。
例4
Dさ ん 、30台 前 半 。15年 前 視 覚 障 害 を受傷 。 中2の 冬 休 み か ら 目の痛 み を感 じて い た 。 そ の年
の3月
に病 院 を受 診 。 緊急 入 院 を余 儀 な くされ る。 そ の後 手 術 を受 け る。 高 校 入 学 後 、5月 、夏
に も手 術 を受 け る。 一 時 は視 力 の 回復 もあ る もの の失 明 の 可 能 性 が 高 く、 ラ イ トハ ウ ス に入 所 。
そ の期 間 に失 明 。視 覚 障 害 は じ ょ じ ょに悪 化 を して お り、 毎 日の点 滴 、4回 の 手 術 な どか ら失 明
の 覚悟 は で きて い た よ う で あ る 。 障 害 を克服 す る 上 で 支 え に な った の は、 家 族 や 友 人 、 そ して趣
味 で あ る 。 大 好 き な テ レ ビァ ニ メ が終 わ る と、 とに か く来 週 の アニ メ まで 頑 張 ろ う とい う気 に な
れ た よ うで あ る。 必 要 な援 助 と して は 、 もっ と障 害者 が どん な こ とで も相 談 で きる場 所 が ほ しい
とい うこ とで あ る。 前 向 きに な れ た要 因 は な い 。状 況 の 中 で しか た な しに物 事 を選 択 して生 きて
きた とい う。 現 在 の 課 題 は 、収 入 を得 る こ とで あ る。 中途 視 覚 障 害 者 に た い して 必 要 な援 助 は 、
視 覚 障 害 者 は孤 立 して い るの で 、 そ れ を な くす こ とだ とい う。 ス トレス に感 じて い る こ と は、 見
る こ と全 般 で あ る が 、 普 通 文 字 が 読 め ない 、 落 と した もの を拾 え な い こ とだ とい う。
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大前:中 途視覚 障害者 におけ る障害 の受傷 か ら社会復帰 にい たるまでの心理 的変化 とそのプ ロセスの研究(皿)
2)事
例5
Eさ ん。 現 在30歳 台 半 ば 。10年 前 ベ ー ジ ェ ッ ト病 に よ り視 覚 障 害 者 とな る 。発 病 時 は、 目の前
を蚊 が 飛 んで い る よ うに思 え た り、 仕 事 の 帰 り、 車 を運 転 して い る と、左 目に水 を入 れ て か き回
され た よ う な感 じを覚 え た 。 光 は感 じる が 、 物 の 判 別 が で きな くな り、病 院 を受 診 。1年 ほ ど は
仕 事 を続 け て い た が 、 そ の後 盲 学 校 に入 学 。2年 後 に は、 文 字 が 完 全 に読 め な くな り、 さ ら に2
年 後 に失 明 を した 。 難 病 と言 わ れ て い る ベ ー ジ ェ ッ ト病 とい う病 気 が 確 定 した こ と、朝 目が 覚 め
て 周 りが 「見 え ない 」 こ と、 車 ・バ イ ク な ど乗 り物 を運 転 で き な くな った こ とが 辛 か っ た よ うで
あ る 。 しか しそ ん な中 で 、 人 の あ りが た さが 分 か っ た こ とが 嬉 しか った とい う。 家 族 ・兄 弟 、 入
学 して か らは 、 学校 の 仲 間 に支 え られ た とい う。 これ まで 必 要 な援 助 は 特 に なか っ たが 、 そ れ ま
で カ ー マ ニ ア で あ った た め 、 車 や バ イ ク(ス ポ ー ツ カ ー な どの 個 性 的 な 車)が 好 き だ か ら乗 りた
い との こ とで あ っ た 。 自分 が 前 向 き に な れ た の は 、 「何 か が した い」 とい う欲 が 出 て きた と きだ
とい う。 そ れ を満 た す た め に頑 張 ろ う と思 え た よ うだ 。現 在 の 目標 は 、仕 事 を成 功 させ 、 完 全 に
自立 をす る こ とだ そ うだ 。
中途 視 覚 障 害 者 に対 して 必 要 な援 助 は、 外 出 に さ い して の サ ポ ー トだ とい う。 自分 の 殻 に閉 じ
こ も らず 、 外 に 目 を向 け る こ とが 大 切 だ とい う。 現 在 の生 活 の 中 で の ス トレス は 、掃 除 を して い
て、 きれ い に な っ たか な どが 分 か らな い こ とだ とい う。
3》 事例6
30台 後 半 、 女 性Fさ
ん。16年 前 交 通事 故 に よ り視 覚 障 害 者 と な る。事 故 か ら2ヶ 月 は 、 全 く
見 え ない状 態 で あ っ た。 入 院 後 、 回復 し、7年 間 は車 の運 転 もで きて いた 。 そ の 後 緑 内 障 に よ り、
進行 し、現 在 は 、 ほ ぼ 失 明 状 態 と な って い る。
これ まで 辛 か っ た こ とは 、恋 人 な ど 自分 が大 切 に思 って い る人 に して あ げ た い こ とが 見 え な い
た め にで きな か っ た こ とで あ る。 また 、 同情 され る こ と も辛 か った よ うで あ る。 そ の 他 、 事 故 に
よ り顔 に傷 を負 った こ と、 メ イ クが や りに くくな っ た こ とが辛 か った よ うで あ る。 しか し、今 振
り返 っ て み る と、 失 明 以 前 よ り自分 自 身 、 強 くな れ た こ とが嬉 しか っ た よ うで あ る。 これ まで の
期 間 で支 え に な った 人 は、 母 で あ る。 また 、盲 学 校 で は とに か くい ろ ん な 人 に お世 話 に な っ た よ
うで あ る 。現 在 の 課 題 は、 短 気 な とこ ろ を治 す こ とだ とい う。今 後 中途 視 覚 障害 者 に対 して必 要
な援 助 は 、 自分 の経 験 か ら、 「い つ か 時 が な ん と か解 決 して くれ る よ」 と言 っ て あ げ る こ とだ と
い う。 現 在 ス トレス を感 じて い る こ とは 、行 動 す る こ と全 般 だ とい う。 非 常 に 明 る い性 格 とい う
印 象 を もっ た。
4)事
例7
40歳 台 後 半 、Gさ
ん 。19年 前 、 網 膜 色 素 変 性 症 を受 傷 。21歳 の と き、夜 見 え に くい こ とか ら分
か っ た 。5年 前 ま で は普 通 の 仕 事 を して い たが 、 失 敗 す る こ と も多 く、 リス トラ を宣 告 され た 。
家 族 は 娘 夫 婦 と3人 で あ る 。
障 害 を負 って か ら辛 か っ た こ とは 、周 りが健 常 者 で 、 周 囲 の 人 と違 っ た動 きな ど を しな くて は
な らな い こ とで あ っ た。 な に よ り仕 事 を して い る と きが辛 か っ た よ うで あ る 。 こん な こ と もで き
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奈 良 大 学 大 学 院研 究年 報
第14号(2009年)
な くな った の か と思 うこ とが 歯 が ゆ か った よ うで あ る。 職 場 の上 司 で、 盲 学 校 の 知 り合 い が い た
ため に、 盲学 校 に くる こ と に な っ た。 仕 事 を止 め て か ら も普 通 の仕 事 を探 して い た よ うで あ る。
入 学 して か ら支 え に な って い る人 は、 娘 、 担 任 の先 生 な どで あ る。
これ まで の 期 間 で 嬉 しか っ た こ とは 、 生 活 面 で は、 障 害 基 礎 年 金 が も らえ る こ と を教 えて くれ
た こ と、駅 な どで 「大 丈 夫 で す か?」 な ど と声 をか け て くれ た り、 連 れ て行 っ て くれ た こ とで あ
る。
今 後 の課 題 は 、 国 家 試験 に合格 す る こ と だ とい う。
今 後 中途 視 覚 障 害者 にた い して 必 要 な援 助 は、 盲 学 校 の よ う な学 校 を紹 介 す る こ とだ とい う。
現 在 、 ス トレス を感 じて い る こ とは 、物 を探 す こ とで あ る。 知 らず に コ ップ に入 っ て い る もの
を ひっ く り返 した り して し ま う こ と もあ る よ う だ。
5)事
例8
60歳 半 ば 、Hさ ん 。元 は金 属 会 社 に勤 め て い た 。19年 前 緑 内 障 を発 症 。 そ の後 、白 内 障 も発 祥 。
手 術 を繰 り返 し、視 力 の 変 動 を繰 り返 した 。 そ の ころ 、勤 め先 の 関 連会 社 に出 向 した後 、眼 圧 が
あ が り始 め た。 医 師 は 以 前 か ら持 っ て い た虹 彩 炎 が原 因 とい うが 、本 人 は 新 しい 仕 事 や 人 間 関係
か らか くる ス トレス 、 また は 、 仕 事 が 特 に視 力 をつ か う仕 事 で あ っ た こ とが 原 因 で は な い か とい
うこ とで あ っ た。 そ の ころ は 、 自動 車 も運 転 して い た が 、 あ る と き、横 か ら飛 び出 して きたバ イ
ク と接 触 す る交 通 事 故 に あ った 。 事 故 は軽 か っ たが 、 も う 自動 車 の運 転 は で き ない と思 い、 あ き
らめ る こ とに な っ た。 現 場 で働 くの も危 険 とい うこ とに な り、 障害 者 が た く さん 働 い て い る別 の
部 署 に移 っ た。 しか し、希 望 退 職 を募 っ て い た ので 、 そ れ に乗 り、退 職 す る こ と にな っ た。 ち ょ
う どそ ん な時 、 家 の郵 便 うけ に盲 学 校 の 公 開 講 座 の 案 内 の チ ラ シが 入 っ て お り、 そ れ が 盲 学 校 に
行 く きっか け と な っ た。 そ して、 盲 学 校 の先 生 な どの勧 め か ら、入 学 を決 意 した の で あ る 。
障 害 の 受 容 は、 中 途 障 害 者 に とっ て一 番 悩 む とこ ろ で は な い か、 とい うこ とで あ っ た 。
「自分 の 場 合 も何 回 も手 術 と、 再 発 を繰 り返 しなが ら、 視 覚 障 害 を受 け入 れ て い っ た わ け で す
が 、 お 医 者 さ ん にか よ っ て い る 間 は 、 あ くまで 病 気 を治 したい 、 とい う気 持 ちが 強 い の で 、 なか
なか 障 害 を受 け 入 れ られ る もの で はあ りませ ん で した」 と語 っ て くれ た。
お 医 者 さん か ら治 療 方 法 の 限界 を言 い 渡 され て も、 他 の 人 か らの 情 報 に よ っ て、A眼 科 が い い
か ら とい って 、 受 診 した。 そ して 、 盲 学校 に通 って い る と き に、 医 師 の す す め もあ っ て 、 も う一
度 眼 圧 を下 げ る 手術 を受 け た との こ とで あ っ た。
障 害 を負 って か ら一 番 辛 か った の は、会 社 に勤 め て い る と き、で きな い こ とが 増 えて い くこ と、
仕 事 を止 め て か ら、 子 供 にか か る お 金 な ど を考 え た こ とで あ った よ うで あ る。 ま た、 何 度 手 術 を
して も、 よ くな ら ない こ とが 辛 か っ た よ うで あ る 。 回 りの 人 が 健 常 者 だ った の で 、 自分 の せ い で
足 を引 っ張 らな い か と思 う と、 辛 か っ た よ うで あ る 。 自動 車 の 運転 を止 め て 、 電 車 通 勤 を して い
る 時 代 、 電 車 が 到 着 す る と、 「こ こ で ホ ー ム に飛 び込 ん だ ら、 楽 に な れ る の で は な い か 」 と さえ
思 った よ うで あ る 。
これ まで の期 間 、嬉 しか った こ とは 、 こ れ ま で付 き合 っ た こ との な い 人 との付 き合 い が で きる
よ うに な っ た こ とで あ る。 子 供 と同 じ よ うな世 代 の 人 と机 を並 べ て勉 強 した こ と も新鮮 な体 験 だ
一34一
大前:中 途視覚 障害者 におけ る障害 の受傷 か ら社会復帰 にいた るまでの心理 的変化 とそ のプ ロセスの研究(ll)
っ た とい う。 ま たそ の こ とに よ り、 子 供 に対 す る態 度 も変 わ っ た よ うで あ る。 そ して 、 盲 学 校 に
入 学 して か ら は、 皆 同 じ よ うな境 遇 の 人 が 多 く、 と て も楽 に感 じた とい う。 学 校 の チ ャ イ ムの 音
を聞 く と、 自分 が仕 事 を止 め て こ ん な楽 を して い い のか と思 っ た よ うで あ る。
これ まで の期 間 に支 え に な っ た 人 は 家 族 、 特 に奥 さん だ とい う。 会 社 勤 め を して い る と き も電
車 通勤 に な っ た と き は毎 日駅 ま で送 り迎 え を して くれ た 。 と き に は会社 の 近 くま で送 っ て くれ た
こ と もあ っ た よ うで あ る。 学 校 に入 学 して か らは 、 同 い 年 の 先 生 だ とい う。 勉 強 以 外 に も、 プ ラ
イ ベ ー トに い ろ い ろ な行 事 な ど に誘 って くれ た よ うで あ る。
盲 学 校 入 学 まで で 立 ち直 れ た要 因 は 、会 社 の先 輩 に ク リス チ ャ ンが お り、 教 会 に連 れ て行 っ て
くれ た こ とな どだ とい う。 と にか く、 シ ョ ック か ら立 ち 直 る上 で タイ ミ ング よ く盲 学 校 に行 け た
こ とが 大 変 嬉 しか っ た よ うで あ る 。
こ れ ま で に ほ しか った援 助 は、 闘 病 と障 害 受 容 の 間 で苦 しみ な が ら、 職 場 や 医 師 か ら手 を切 ら
れ、 世 間 に放 り出 され る た め 、 た ち ま ち、 収 入 が な くな り、 生 活 が 困窮 して くる 。 生 活 支 援 に繋
が る福 祉 制 度 の 活 用 まで に た ど り着 くの が大 変 だ っ た。
何 も分 か ら な くて途 方 に くれ る こ と に な っ た ため 、 で きれ ば医 療 の段 階 で そ の よ うな ケ ー ス ワ
ー カ ーが い て 、 相 談 に乗 っ て くれ た ら とい うこ とで あ っ た。
現 在 の 生 活 の 中 で の 課 題 は、健 康 で あ る 限 り、ず っ と仕 事 を続 け られ る こ と だ と い う。 そ して 、
地 域 に喜 ん で も ら え る施 術 者 に な る こ とだ そ うだ。
中 途 視 覚 障 害 者 に対 して必 要 な援 助 は 、 今 後 ど う した らい い か 分 か ら な くな る の で 、盲 学 校 と
い う と こ ろが あ る、 訓 練 施 設 が あ る とい う こ と を教 えて あ げ る こ とだ とい う。 収 入 が な くな る の
で 、福 祉 制 度 な どの情 報 の提 供 が 必 要 だ との こ とで あ った 。
今 の生 活 の 中 で ス トレス を感 じて い る こ とは、仕 事 で は、患 者 さん の症 状 が難 しい ケ ー ス で は 、
どの よ うに治 そ うか と考 え る こ とで あ る。
また生 活 面 で は 、 最 近 視 力 障 害 が 進 ん で 、物 を探 す こ とが大 変 に な っ て きた こ と、65歳 に な っ
た い ま、徐 々 に視 力 障 害 が進 み 、 全 盲 に な った と きの こ と、
また健 康 面 を含 め た将 来 の生 活 は ど う な るか 、 な どの心 配 が あ る こ とだ そ うだ 。
6)事
例9
50歳 前 半 、1さ
ん。12年 前 網 膜 色 素 変性 症 と診 断 され る 。 そ して2∼3年
ほ ど前 に失 明 。 本 人
は そ れ を 「真 っ暗 な世 界 で は な く、 真 っ 白 な世 界 で す 」 と言 っ て い る。 元 は 自営 で 運 送 業 を営 ん
で い た。 発 症 当時 は 視 力 も良 く、不 自由 さ も感 じて い な か っ た よ うで あ る 。9月 に受 診 を した の
だが 、 そ の 年 の1月
ごろ か ら毎 日霧 が か か っ た よ うな状 態 に な り、 家 族 に 「毎 日霧 が か か って 大
変 だ」 とい う話 をす る と、 「霧 な ん か か か っ て ない よ」 と言 わ れ 、 視 力 の 変 化 に気 づ い た よ うで
あ る。 ま た そ の ころ 、1ヶ 月 の 間 で 連 続 して 自動 車 で の 接 触 事 故 を お こ して い た 。 ぶ つ か る 瞬 間
まで 自動 車 が 視 野 に入 っ て い な か った よ うで あ る。 ただ 、視 覚 障 害 は この こ ろか ら とい うわ け で
は なか っ た よ うで あ る。 二 十 歳 前 後 か ら夜 盲 の 傾 向 が あ った よ うで 、 夜 歩 い て い て 田 ん ぼ に 落 ち
て しま った り、 階 段 を踏 み 外 す こ とが あ った よ うで あ る。 そ の こ ろか ら 自分 はあ ま り視 力 は よ く
な い と思 っ て い た よ うで あ る 。 医 師 か ら網 膜 色 素 変 性 症 と診 断 され 、 仕 事 もで き な くな っ た 時 、
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奈良大学 大学院研 究年報
第14号(2009年)
昔 の 知 り合 い で 盲 学 校 の教 師 を して い た人 が い た こ とを思 い 出 し、 連絡 を と っ た。 そ して 、 そ れ
が 盲 学 校 に行 くき っ か け とな っ た の で あ る。 しか し、入 学 の相 談 こそ した もの の 、 ど う して も入
学 す る決 意 はで きず 、 別 の仕 事 を探 そ う と して い た よ うで あ る 。 とに か く、 入 学 試 験 だ け で も受
け に行 こ う と思 っ た。 合 格 通 知 が 着 て 、 入 学 が 決 ま っ て か ら も止 め よ う と思 って い た とい う。 し
か し、4月 に入 って 、 「や っ ぱ りこ こ しか ない 」 と思 い 直 した とい う。
この 間 、 も っ と も苦 しか っ た こ と は、 仕 事 が で きな くな り、生 活 手 段 が な くな っ た 中、 当時 幼
稚 園 と小 学 校 低 学 年 の二 人 の 子 供 を 育 て ない とい け な い の で 、 苦 しい とい う よ りは 、 「途 方 に く
れ ま した」 とい う。 そ の こ ろ は 盲 学 校 の こ と も よ く知 らな か った 。 ま た盲 学 校 にい る3年
間 も、
生 活 面 で 収 入 が ない こ とが 苦 しか っ た よ うで あ る。 学 校 生 活 自体 は楽 しか っ た とい う。
これ まで の 期 間 で うれ しか っ た こ と は、 家 族 が 障 害 を負 っ た 自分 に対 して 、理 解 が あ っ た こ と
とい う こ とで あ る。 「大 変 な こ と に な っ た」 とい うの で は な く、 「そ うな っ て し ま った の な ら しか
た ない よ」 とい う雰 囲 気 で あ っ た よ うで あ る。 そ して学 校 で は、 自分 と同 じ よ うな 人 が た くさん
い るの だ と思 う こ とが 嬉 しか っ た とい う。
障 害 を克 服 す る上 で 支 え に な っ た 人 は 、 家 族 。 理 解 し、 協 力 して くれ た とい う。 盲 学校 で は 先
生 だ とい う。
立 ち直 れ た 要 因 は、 な い よ うで あ る 。 目が 見 え な くな っ た こ と 自体 、 「なぜ 自分 が!」
とい う
気 持 ち に は な ら なか っ た よ うで あ る 。 元 か ら夜 盲 の 傾 向 もあ った か らで は な い か とい う こ とで あ
る。 医 師 か ら も、 将 来視 力 が 低 下 す る こ とを予 想 され てい た よ うで あ る。
欲 しか っ た援 助 は 特 に な い が 、 駅 か ら 自宅 まで 白杖 を つ い て 歩 くよ う に な る と、 「話 しか け る
と悪 い の で は ない か 」 とい う思 い か ら、知 り合 い か ら話 しか け て くれ な くな っ た。 以 前 と同 じ よ
う に話 しか け て ほ しか っ た とい う。 また 目が見 え な い とな に もで きな い と思 わ れ るの が 少 しい や
だ った よ うで あ る 。 以 前 か ら聴 覚 障 害 者 との 関 わ りが あ った か ら、 自分 が 障 害 者 と な っ た こ と自
体 は不 自由 とは思 っ た が 、 シ ョッ ク はあ ま りなか った とい う。
現 在 の 生 活 の 中 で の 課 題 は、 仕 事 を繁 盛 させ 、 もっ と安 定 させ る こ とだ とい う。 そ れ と、 同 じ
よ うに視 覚 障 害 を負 った 人 に、 い ろ い ろ な情 報 提 供 をす る こ と を もっ と積 極 的 に した い と い う こ
とで あ る 。
今 後 中 途資 格 障 害 者 に と って 必 要 な援 助 は、 自分 が 目が見 え な くな っ た とい う こ と を どの よ う
に して受 け入 れ られ る か とい う こ とが 課 題 と思 うの で、 そ の た め に周 囲 が援 助 をす る こ とが 大 切
だ とい う。 周 囲 も、 行 政 も、 い ろ い ろ な 方 法 や情 報 を提 供 す る こ とだ とい う。
現 在 の生 活 の 中 で 感 じて い るス トレス は、 特 に視 覚 障 害 者 だ か ら とい っ て感 じる ス トレス は な
い とい う。
6.考
察
本 論 文 で 報 告 した 事 例 は5事 例 だ け で あ り、必 ず しも一 般 論 と して 断 言 で き る結 果 で は な いが 、
そ の 中 で 得 られ た こ と につ い て考 え て み た い。
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大前:中 途視覚 障害者 におけ る障害 の受傷 か ら社会復帰 にい たるまでの心理 的変化 とその プロセ スの研究(皿)
1)受
傷 に よ る心理 的 プ ロセ ス につ い て
突 然 の 失 明 とい う危 機 に 陥 り、 た と えそ の 事 実 を冷 静 に受 け止 め る こ とが で きた と して も、 そ
れ に よ って 背 負 う心 理 的 ス トレス が 大 きい こ とは 間違 い な い。
もち ろん イ ン タ ビ ュー…を した9人
につ い て も同 じで あ る。
受 傷 か ら現 在 まで の 心 理 的 変 化 の プ ロ セ ス を考 察 す る と、以 下 の点 が 示 唆 で きた 。
ーム
シ ョ ック の段 階
9醒
混乱期
6
0
適 応 へ の努 力 期
4
適応期
しか し、 これ らの 段 階 は 、決 して 一 方 向 性 で は な く、 行 きつ 、 戻 りつ す る複 線 的 な段 階 と考 え
た 方 が 妥 当 で あ ろ う。
2)次
に 、現 在 の状 況 に つ い て 個 人 的 な嬰 因 が 影 響 して い るが 、 その 嬰 因 に つ い て 考 察 す る 。
(1)受 容 して い る人 は、 支 え て くれ る 人 をか な らず 持 って い る。 ま た、 そ の 支 え を快 く受 け入 れ
よ う とす る こ とが で きて い る。
仮 説 の 中 で 、(1)に
つ い て考 え て み た い 。 同 じ境 遇 を持 ち、 精 神 的 に支 えあ え る友 人 は も と よ
り、 さ ま ざ ま な人 に 「支 え られ た」 と語 る 人 が 多 か った 。 また③ の 支 え にな った こ と(も し くは
人)は あ ります か?と い う項 目で 、 家 族 を上 げ る 人 もほ とん どで あ っ た。Aさ
ん(事 例1)は
友
人 、 近所 の 人 に支 え られ た と語 っ て くれ た 。 そ して 、 盲 学校 入 学 後 も多 くの 人 に支 え られ て い る
喜 び を語 っ て くれ た 。Bさ ん(事 例2)の
場 合 、家 族 や 恋 人 に本 当 に支 え られ た と語 って くれ た 。
そ の 支 え が あ った か ら こそ 、 さ らに交 友 関係 を広 げ る こ とが で きた 原動 力 とな っ た も の と思 わ れ
る 。Fさ ん も母 や 、 盲 学 校 で は とに か くい ろ い ろ な人 に支 えて も ら った こ とを 語 っ て くれ た。G
さん 、Hさ ん 、1さ ん も家 族 に とて も支 えて も ら っ た こ と を話 して くれ た 。
しか し、Cさ ん(事 例3)は
あ え て 支 えて くれ た人 は以 前 の 職 場 の 同僚 と語 って くれ たが 、 あ
ま り好 意 的 に は 思 って い ない よ うで あ る。 周 囲 の 人 の 心 遣 い も逆 に気 分 を害 す る 経 験 の よ うで あ
る 。 障害 者 と して の 自分 と、 そ れ を支 え に な っ て くれ る 周 囲 の存 在 を ど う して も受 け 入 れ られ な
い 。 そ れ は これ まで 辛 い と き、 苦 しい と き支 え て くれ る存 在 を作 る こ とが で きて い なか っ たの か
も しれ な い。
そ の こ とは 、障 害 の 受傷 以 前 か ら、 遺 伝 や 環 境 な どに よっ て形 成 され たパ ー ソ ナ リテ ィ に も影
響 して い る か も しれ な い 。 そ の よ う な人 に対 し、他 人 の支 え を快 く受 け入 れ られ る よ う、 人 に心
を 開 け る よ うに な る こ とが 大 切 で あ ろ う。
そ の ため に臨 床 家 は な に を す るべ きか 、考 え な くて は な らな い の で は ない だ ろ うか。
(2)家 庭 を支 え な くて は な ら ない とい う危 機 感 は 、受 容 に もス トレス に も大 きな影 響 を持 って い
る。
報 告 した事 例 の 中 で6人
は未 婚 者 で あ り、 ど う して も家 計 を支 え な くて は な らな い とい う危機
感 はや や 少 な い もの と考 え られ る。 しか し、Gさ
ん 、Hさ ん、1さ
ん は既 婚 者 で あ り、家 庭 を築
い て い た。 特 にHさ ん 、1さ ん は 、 子 供 を育 て な くて は な らない とい う危 機 感 を持 っ て い た 。 し
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奈 良 大 学 大 学 院研 究 年 報
第14号(2009年)
か しそ れ は、 逆 に大 きな ス トレス で あ っ た こ と も また事 実 で あ る 。
① の も っ と も辛 か った こ と とい う質 問 に対 し、Hさ
お金 な ど を考 え た こ と」 と答 え て い る 。 ま た、1さ
ん は 、 「仕 事 を止 め て か ら、 子 供 にか か る
ん は、 「仕 事 が で きな くな り、生 活 手 段 が な
くな っ た 中、 当時 幼 稚 園 と小 学校 低 学 年 の 二 人 の 子 供 を育 て な い とい け な い の で 、 苦 しい とい う
よ りは 、 「途 方 に くれ ま した」 と答 え て い る 。 しか し、 こ の こ と を解 決 す る 手 段 と して 、 二 人 と
もほ ぼ共 通 の 答 え を 出 して い る こ と も注 目す べ き点 で あ ろ う。 イ ン タ ビュ ー の 項 目の⑦ の 「今 後
中途 視 覚 障 害 者 に対 して必 要 な援 助 は?」
とい う質 問 に対 し、Hさ
ん は 、 「闘 病 と障 害 受 容 の 間
で 苦 しみ なが ら、 職 場 や 医 師 か ら手 を切 られ 、 世 間 に放 り出 さ れ る もの です か ら、 た ち ま ち、 収
入 が な くな り、 生 活 が 困 窮 して き ます 。生 活 支援 に繋 が る福 祉 制 度 の 活 用 ま で に た ど り着 くの が
大 変 で す 。何 も分 か らな くて途 方 に くれ る こ と に な ります 。 で きれ ば、 医 療 の段 階 で そ の よ うな
ケ ー ス ワー カ ー が い て、 相 談 に乗 っ て くれ た ら い い なあ 、 と思 っ て い ます 。」 と話 して くれ た。
1さ ん も、 「自分 が 目が 見 え な くな っ た と い う こ と を どの よ うに して 受 け入 れ られ る か とい う こ
とが 課 題 と思 う の で 、 そ の た め に周 囲 が 援 助 をす る こ とが 大 切 だ 」 とい う。 「周 囲 も、 行 政 も、
い ろ い ろ な 方 法 や 情 報 を提 供 す る こ とだ」 と話 して くれ た 。 イ ン タ ビ ュ ー調 査 の 中 で 、盲 学 校 を
は じめ 、福 祉 施 設 に関 す る情 報 な どは世 間一 般 に は ほ とん ど知 られ て い ない こ とが 明 らか に な っ
た。 医 師 は診 断 こそ 行 う もの の 、 それ 以 後 の生 活 面 に関 す る情 報 は 持 ち合 わ せ て い な い の が現 実
の よ うで あ る 。適 切 な 情 報 提 供 を行 え るか 否 か が 、 中 途視 覚 障 害者 の 精 神 面 を大 き く左 右 す る重
大 な問 題 な の で あ る。
(3)障 害 を受 容 す る上 で、 趣 味 や欲 求 が大 きな 影響 を持 っ て い る 。
イ ンタ ビュ ー の 中 で、Dさ ん やEさ ん は 趣 味 や 生 きが い な ど につ い て 語 っ て くれ た。Dさ ん は 、
支 え に な った こ との 中 で 、 趣 味 を あ げ て い る。 また 、 「大 好 き なテ レ ビァ ニ メが 終 わ る と、 と に
か く来 週 の ア ニ メ まで頑 張 ろ う とい う気 に なれ た」 と語 っ て くれ た。Eさ
ん も、 イ ン タ ビ ュ ーの
中で 、 「そ れ まで カー マ ニ ア で あ っ た た め 、車 や バ イ ク(ス ポ ー ツ カ ー な どの 個 性 的 な車)が
好
き だか ら乗 りた い 」 と語 っ て くれ た。 また 、 自分 が前 向 き に な れ た の は 、 「何 か が した い」 とい
う欲 が 出 て きた と き だ と語 って くれ た。 これ まで 述 べ て き た、 「周 囲 の 支 え」、 「情 報 の提 供 」 と
は 異 な って い るが 、 イ ン タ ビュ ー の 中 で 明 らか に な っ た見 逃 す こ との で きな い重 要 な 要 素 で あ っ
た 。 今 ま で 当 た り前 の よ うに存 在 して い た視 覚 情 報 が 障 害 に よ っ て失 わ れ 、 周 囲 の 支 え が あ り、
情 報 の提 供 が 行 わ れ た と して も、 「今 後 も こ の 苦 しい状 況 の 中 で 生 き て い か な け れ ば な らな い 」
そ の こ と を想 像 す る だ けで 苦 しみが 感 じる の で は な い だ ろ うか 。 だか ら こ そ趣 味 や生 きが い を見
つ け 、 そ れ を達 成 したい とい う欲 を もつ こ とが大 切 なの で は ない だ ろ うか 。 盲 学 校 や福 祉 施 設 で
しば しば 行 わ れ て い る社 会 復 帰 に向 け て の訓 練 は 、視 覚 障 害 が あ って も生 き て い け る た め の もの
で あ る 。 しか し、 人 間 が 生 きが い を見 つ け 、 そ の 人 ら し く生 きて い くた め の 援 助 が 必 要 な の で は
な い だ ろ うか 。
マ ズ ロ ー は 、 ニ ー ズ の 階 層 性 につ い て述 べ て お り、 高次 の ニ ー ズ で あ る成 長 欲 求 に基 づ く 自己
実 現 に つ い て 論 じて い る。 適 応 的 に生 きる た め に は 、真 ・善 美 ・個性 ・正 義 ・楽 しみ ・自 己充 実
な ど自 己実 現 を具 現 化 す る た め の営 み が 非常 に 重 要 で あ る こ と を示 唆 す る もの で あ る。
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大前:中 途視 覚障害 者 にお ける障害 の受 傷か ら社 会復帰 にいたる までの心 理的変化 とその プロセスの研 究(ll)
3)支
援モデルの構築
中途 視 覚 障 害 者 の 支援 モ デ ル と して、 各 事 例 か ら次 の 支援 が 必 要 で あ る こ とが 示 さ れ た 。 まず
リハ ビ リテ ー シ ョン に よ る支 援 が 必 要 で あ る 。
次 ぎ に、 コ ミュ ニ テ ィ心 理 学 の 中 の キ ー概 念 で あ る社 会 的支 援 の必 要 性 で あ る 。社 会 的 支 援 に
は、 情 緒 的 支援 、 道 具 的 支 援 、 情 報 的 支 援 、 評 価 的支 援 が含 まれ て い る。
さ らに 、 こ ころ の ケ ア と して の 心 理 臨 床 的 支 援 が 必 要 で あ る。
4)エ
リク ソ ンの 心 理 一 社 会 的 危 機 か らの 考 察
今 回の 事 例 は、 青 年 期 、成 人期 、壮 年期 の 方 々 で あ る。
青 年 期 に視 覚 障 害 を きた した場 合 は 、 ア イ デ ンテ ィ テ ィ の確 立 に 困難 を き た して い る。 「自分
は何 を しよ う と して い る の い か」、 「自分 は何 か 」 な どの問 を抱 え て なや む の は青 年期 の 特 徴 で あ
る。
成 人 期 、壮 年 期 に視 覚 障 害 を きた した と き は、 ア イ デ ンテ ィ テ ィの 揺 り戻 しを体 験 す る こ とが
示 され た 。 や が て 、 自分 の な か で折 り合 い をつ け 、 他 者 との 親 密 な関係 性 を築 き、 次 の世 代 の 育
成 に 関心 を示 して い る。 そ うで な い場 合 は 、孤 立 し、 自己 陶 酔 し、 ナ リ シス ト的 に行 動 す る傾 向
が み られ る。
中途 に視 覚 障 害 を受 け て も、発 達 的 な 危機 、 課 題 は ほ ぼ 同 様 に み られ る こ とが示 唆 され た 。
付記
今 回 の 面接 調 査 に ご協 力 い た だ き ま した 皆 様 に こ こ ろか ら感 謝 を 申 し上 げ ます 。
参考文献
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大 学 出版 会