韓国デジタル音楽市場の現況と活性化のための条件

<韓国デジタル音楽市場の現況と活性化のための条件>
(株)WIZMAX 代表理事 クム・ギフン
今回のシンポジウムを通じて日本の音楽について知ることができまして、非常にうれしく存じま
す。これまで、市場の現況については市場規模、データーなど多くの発表が行われ、よくご存知
だと思います。それで、私は企業行動を中心にお話したいと思います。実際、韓国でデジタル音
楽市場が形成される過程で、企業はどのように変化し、その過程で市場がどう変わっていったの
かについて知ることが、今の市場の現状を理解し未来を予測する上で大きく役立つと思います。
しかし、企業行動については主観的な判断が入る余地があるので、その点は勘案していただきた
いと思います。
韓国のデジタル音楽市場は形成されてから約7年が過ぎていますが、まずデジタル音楽市場の形
成過程における主な懸案についてお話します。そして、音楽事業モデルがどのように変化してき
たのかについてお話し、最後に、市場活性化に向けた主な課題をお話して、講義を終わらせてい
ただきます。
まず、デジタル音楽市場の形成過程をみますと、VALUE CHAINの流れがあります。デジタル
音楽市場はNETWORK、DIGTAL DISPLAY, CONTENTS SERVICEの順で、 VALUE CHA
INの流れが形成されます。デジタル音楽だけでなく、全てのデジタルコンテンツ市場がVALUE
CHAINのメカニズムを有していますが、その中のネットワークとは超高速網や最近話題とな
っているWIBROやHSDPAなど、コンテンツを届けるネットワークの進化を意味します。デジ
タル市場ではまずネットワークの進化が起きます。ネットワークの進化と同時に起きるのがディ
スプレーです。たとえば、超高速インターネットとPCがあれば、メディアプレイが可能となり、
モバイルで超高速インターネットが利用できるようになれば、大容量コンテンツをダウンロード
できるデバイスが登場します。デバイスによってある程度市場が形成されると、コンテンツサー
ビスが生まれます。このメカニズムは非常に重要で、他のVALUE CHAINと同じく、循環しな
がら発展します。
韓国でデジタル音楽市場が形成された時期は、1999年~2000年とされています。もちろ
んその以前の1997年、1998年に「チョンリアン」、「ナウヌリ」といったPC通信で、M
P3ファイルダウンロードサービスが初めて提供されました。そのとき1曲当たり900ウォン
だったと覚えています。そして、その後超高速インターネットすなわちASDLサービスが提供さ
れ始めましたが、そのときは網のスピードがそれほど速くなかったため、ダウンロードサービス
が主流を成していました。そのときMP3ダウンロードサービスが提供されましたが、1曲ダウ
ンロードするのにかかった時間は15分から20分程度です。2001年に入り、超高速網のス
ピードが本格的に速くなり、この時期にストーリミングサービスが登場しました。サービスの開
始は2000年度ですが、本格的に市場が形成されたのは2001年度からだといえます。20
03年に入り、MP3 PLAYER、特にMP3
PHONEが発売され、ポータブルデバイス基盤のダ
ウンロードサービスが再び広がりました。2001年から2003年まで、ダウンロードサービ
スはほとんど中断された状態でしたが、これについては後ほど説明いたします。2007年から
はWIBROやHSDPAなど、超高速無線インターネット網を利用した動画像と融合したメディア
型事業モデルが発展すると予想しています。これについては、もう一度説明いたします。
では、まず韓国のデジタル音楽市場の形成過程についてお話します。日本の場合、胎動期からす
ぐ拡大期へと移行したようですが、韓国の場合は胎動期の後、すぐ試練期が訪れました。その次
に市場形成期が到来し、その次市場拡大期となりました。このような時期の変化において、モメ
ンタムを提供したのが、違法コピーサービスの変化でした。市場が胎動した2000年頃には、
「レッツミュージック」、
「チューブ」、
「エムピケット」
、
「M4U」などの大手企業やメジャーレ
コード会社が参加し、音楽サービス、MP3有料サービスが開始されました。そのとき、大規模
な投資が行われ、1999年から2000年までこの音楽サービスに投入された金額は500億
ウォンから700億ウォン程度とされています。そして、このとき無線市場が初期の形を整え始
めました。
しかし、2000年5月に「ソリバダ」が韓国でサービスを開始したことを機に、ダウンロード
基盤の有料サービス会社は急速に衰退し、わずか6カ月間で有料音楽サービスは全滅することに
なりました。そして、この時期に「ボックスミュージック」がストーリミングサービスを開始し、
ユーザはこれ以上有料で音楽を聴く必要がなくなりました。これを受け、DRMコンテンツを届
けるのに必要なコアサービスソリューションの開発者も開発を中断せざるを得なくなり、会社が
破綻する事態に陥りました。振り返ってみると、2000年度、2001年度の全世界のSDR
Mフォーラムを主導した国も韓国であり、MP3プレイヤーを初めて作った国も韓国でした。し
かし、コンテンツの違法コピーの活性化で、産業インフラが完全に崩壊する事態に陥ったのです。
さらに、無料音楽サービスの急速な広がりで、オフラインレコード売上げが急減しました。約3
0%から40%ずつ市場規模が縮小したのです。一方、モバイル市場は着ベルを中心とした無線
音楽市場が形成されました。ご周知のように、着メロ中心の市場でした。このような中、モバイ
ルCPが登場しましたが、提供されたサービスはミディファイルだったため、レコード会社やレ
コード製作会社の収入はなく、作曲家など著作権者だけが収入を得ることができました。その結
果、レコード会社が作った音楽サイトは破綻し、オフライン音楽市場は急速に縮小しました。モ
バイルの成長にもかかわらず、収入が生まれず、レコード会社は同時期に急激な収益減少に陥っ
たのです。さらに、この時期は、2002年8月ごろに発生したPR費事件で、レコード会社へ
の風当たりが非常に強かった時期でもあります。
ところが、2005年8月にSKテレコムが待ち歌サービスを開始したことで、モバイルで初め
て音源製作者に収入が発生するサービスがスタートすることになりました。この待ち歌サービス
が成功を収め、ようやく著作認定権部分でのデジタル音楽市場の収益が生み出されたのです。さ
らに、2002年7月にソリバダに対して初の仮処分決定が下されたことも、レコード業界にと
って好材料となりました。そのため、有料市場への期待感が広がり、音楽専門企業が再登場する
ことになりました。このとき、レコード会社が音楽市場に対する進出を再び検討することになり、
DRM開発会社が再登場することになりますが、不幸にもソリバダがVersion2を提供し始めま
す。そのため再び市場は停滞することになります。
しかし、待ち歌市場や無線市場は成長を続けました。そして重要な点は、2003年7月ごろに
「マックスエムピ3」などのメジャー会社が有料サービスを開始したことです。さらに、200
4年にSKテレコムの「メロン」がスタートし、4,5年前のように大型資本によるデジタル音
楽市場への進出が再び行われ始めました。しかし、市場規模の拡大にもかかわらず、依然として
違法コピーサービスは残っており、市場歪曲現象は続いています。以上が、韓国のデジタル音楽
市場の形成過程です。
次は韓国のデジタル音楽市場の現況についてお話します。ご周知のように、CDなどのオフライ
ンメディアはオフラインのレコード製作会社を通じて、そして流通網を通じて、市場に出回りま
す。しかし、デジタル音楽市場では流通網がデジタル流通網に変わり、それが超高速網や有無線
インターネットに変わります。これを受け、PC、モバイル、PDA、MP3
Playerなどのデジタ
ルデバイスが本格的に普及し、韓国のレコード業界はデジタル市場への参入を試みるようになり
ました。
韓国にも2000年度には、IKPOPというレーベルモバイルのような会社がありました。しか
し、このような試みを違法コピーサービスが遮断しました。違法コピーサービスの会員がボック
スミュージックの場合、1800万人まで増加しましたが、会員が900万、1000万に達し
た状態でオフライン市場が崩壊し、レコード会社は大規模な投資ができなくなったのです。さら
にご周知のように、2001年、2002年度はITバブルで資金市場が凍結されました。この
ようなことから、市場への対応そのものが困難になりました。
そうした中で、着ベルCPといったモバイルCPやオンラインサービスプロバイダーが新しく登場
し、さらに、CPやOSPの新登場により代理店、エージェントなどが生まれ、市場参加者全体が
極めて混乱した葛藤関係に置かれました。
このように、違法コピーサービスが音楽市場に与えた影響のひとつは、オフライン流通企業のデ
ジタル事業への転換の機会を遮断したことが上げられます。そのため、市場がコンテンツを有し
ているにもかかわらず、コンテンツを製作する製作者や音楽産業の利害関係者によって市場がコ
ントロールできない現象がおきました。
第二の影響は、デジタル音楽市場の形成を遅らせたことです。大規模の無料サービスの提供でき
ちんとした市場のパイが形成されず、全般的に収益減に陥りました。
「ボックスミュージック」
や「マックスエムピ3」も一時は倒産寸前にまで陥りました。会員数が1800万人に達したに
もかかわらず、無料サービスであるため、収益が発生しなかったのです。そして、コンテンツ市
場には葛藤構造が拡大しました。違法コピーサービスをめぐって企業間で利害関係が交錯したの
です。
さらに、最も重要な点はサービス技術開発競争力が大きく低下したことです。企業が大型化でき
ず収益率が低い状況では、当然新技術や新サービスモデルの開発におろそかになるしかありませ
ん。しかし、これは国全体の競争力低下につながります。その代表例として、DRMソリューシ
ョンやマルチメディアチップ、これに関連したソフトウェア技術が上げられますが、この分野で
初期には韓国が最も先行していました。しかし、今は2、3年遅れており、2、3年遅れを取っ
ていることで、そのほとんどのものをロイヤルティーを支払って導入しなければならない状況に
いたっています。
このように、音楽市場のサービス部門が停滞したことで、新ネットワークやデバイスを創出すべ
き大手IT企業が直接市場に進出することになりました。これは携帯キャリアを中心にコンテン
ツ市場が再編される結果をもたらします。韓国では現在携帯キャリアがサービス市場に進出して
おり、一部の携帯キャリアの場合、コンテンツ制作市場にも進出しています。このような状況は
大型市場がコンテンツ市場を左右する結果をもたらしており、最近発生しているSKTと音源管
理者との葛藤はその一例と言うことができます。
私は韓国市場を冷静に見つめる必要があると思います。網のスピードが速いからといって、携帯
電話のユーザが多いからといって、IT大国ではないと思います。VALUE
CHAINの好循環構
造が安定的に定着している市場がよい市場であると思います。韓国のコンテンツ市場は全くその
ような構造が定着していません。だから冷静に見つめる必要があると申し上げたのです。
市場の主な懸案をみると、まず違法無料サービスに対する規制が極めて重要だといえます。韓国
で大型違法コピーサービスを提供して、破綻した会社は一社もありません。
「ボックスミュージ
ック」、「マックスエムピ3」も再生しており、
「ソリバダ」も再生作業に取り組んでいます。か
つて、違法コピーサービスで企業ランキングに上位入りした企業は、依然として再生作業を通じ
て資本の面で成功を収めています。これを受け、市場では違法サービス規制に対する不信感が大
きく高まっています。これは資本が回らないことを意味します。よいデジタル事業モデルがあっ
ても、違法無料サービスを恐れ、なかなか投資が行われません。さらに、健全な新規資金が入っ
てこないため、市場形成が困難になり、小規模企業を中心に市場が形成されます。さらに、市場
で非合理的な競争が行われようになります。違法コピーサービスが復帰することにより、従来の
有料サービス企業との摩擦が生じ、その企業と提携関係にあるCPとも対立することになります。
第二の懸案は、合理的なコンテンツ流通構造の定着です。デジタルコンテンツ市場では非常に多
くの企業が非常に多くのモデルを持って事業を展開します。したがって、様々な種類のコンテン
ツ使用情報に対する使用料金の徴収、分配に対する統合システムが必要になりますが、これまで
韓国はそのようなインフラを有しておりません。そのため、CPはその気さえあれば、有無線イ
ンターネットからのサービス売上げデーターをだますことができ、これによって企業間で不信感
が生まれています。
また、もうひとつの問題は、コンテンツ提供者とサービス事業者間の合理的分配基準がきちんと
整備されていないことです。実際、音源管理者とCPがどの程度の比率で分配すべきかはある程
度、客観的かつ合理的根拠を持って、データーを通じて決めなければなりませんが、韓国にはこ
のような基準が設けられていません。たとえば、消費者の使用頻度、市場規模、投資規模に関す
るデーターに基づいて、合理的な客観的な数字指標を確保し、これを維持するのが非常に重要で
す。市場が変動すれば、そのファクターの中の変動要素に基づいて、料率を調整するといった合
理的なアプローチ方法が求められます。
第3の問題は大手企業の市場独占化です。これは、市場支配企業たとえば、VALUE
CHAIN
で通信ネットワークや再生メディアのデバイスなどVALUE CHAINを形成している特定企業、
すなわちVALUE CHAINでの寡占企業が市場全体を席巻することで発生する不公正な競争を拡
大を意味します。最近の通信会社のMP3携帯電話向けサービスに対する公正取引問題がその代
表例であり、このような葛藤構造は当分続くと見られます。
第4の課題はグローバル競争力の向上ですが、これは本シンポジウムの目的のひとつといえます。
今後、デジタルコンテンツ分野では、国家間交流が活発に行われるようになります。しかし、こ
れに向けては、全般的な国のインフラの水準、産業インフラの水準がある程度コミュニケーショ
ンが可能なレベルに標準化される必要があります。どんな形であれ、そのような基準や制度があ
る程度のコミュニケーションが可能なレベルに標準化されてこそ、国家間の交流が可能になりま
す。システムが異なる状態では、交流することができません。
初期の市場においては、違法コピーサービスが問題となっており、2000年度半ば頃からは流
通問題が台頭しましたが、現在はこの4つの問題が複合しています。そのため、それら問題への
対応が一層困難になっています。
個人的な意見ですが、私は違法コピーサービスに関する論争はやめるべきだと思います。違法コ
ピーサービス問題は論外として、残りの問題について悩む必要があると思います。
次は、音楽産業モデルの進化について、お話いたします。私は今後メディア、デバイス間でコン
バージャンス(統合)が起きることによって、ビジネスモデル間でもコンバージャンスが発生す
ると予想しています。たとえば、現在私たちが知っているデジタル音楽事業のビジネスモデルの
ほとんどは、過去1世紀間使用されてきたコンテンツに対する流通モデルです。実はMP3ダウ
ンロードも、オフラインでCDを購入していたのが、インターネットで(ファイルを)購入する
のに変わっただけです。すなわち、メディアの変化があっただけで、産業メカニズムそのものが
変わったわけではありません。
しかし、そのような過程で、メディアはエンターテインメント市場で非常に重要な軸として形成
されました。これまで、エンターテインメント産業の公式は、メディアが広報を担当し、コンテ
ンツの販売を通じて収益を得るというもので、これが基本的なVALUE CHAINでした。しかし、
これがメディアと統合されると、新しい形のビジネスへと進化します。
メディアコンバージャンス音楽事業を予測してみますと、放送とコンテンツ流通の融合がその代
表的なものになるでしょう。現在音楽コンテンツデジタル市場は2500億ウォン、3000億
ウォン程度と見ています。データーの売上げを合わせても、4000億ウォンに過ぎないため、
いつでもコンテンツ市場はメディア市場によって吸収されたり、ビジネス上のコンバージャンス
が行われる可能性を有しています。
さらに、音楽コンテンツをめぐっては、数拾兆ウォンに上る通信市場と、数拾兆ウォンに上るデ
バイス市場があります。いくつかの例を挙げますと、現在韓国の携帯キャリアが提供している定
額制モデルの場合、大義名分は違法コピーサービスへの対応モデルですが、実際はコンバージャ
ンスに備えた料金制だと思います。実際、期間制や定額料金制はコンテンツ流通においては容易
に納得できないモデルですが、メディアにおいてはいくらでも可能なモデルです。たとえば、今
後DMBが活性化すれば、チャンネル加入を前提にコンテンツが提供されたりします。今も、携
帯電話やDMB携帯電話を買えば利用権やコンテンツがただでもらえたりしますが、これと同じ
く通信会社に加入すれば、一定期間サービスをただで受けることができるのです。このような形
で、新メディアによるコンテンツ流通部分はメディア市場に吸収されており、このような現象は
今後さらに加速すると見られます。特に、DMBやWIBROが拡大すると、その傾向はさらに強
まるでしょう。問題は、韓国の場合、インターネット放送に対する著作権料徴収基準を持ってい
ないということです。そうなれば、DMBやニューメディアを通じたインターネット放送が拡大
する場合、コンテンツ流通市場が再び再編される可能性があります。
次は市場活性化に向けた主な課題についてお話いたします。市場活性化に向けた課題には様々な
ことがありますが、ここでは公共インフラ面での課題をひとつだけ取り上げることにします。そ
れは、公共音楽情報DBに正確な著作権情報を登録する必要があるということです。韓国の場合、
零細なレコード会社が多いため、効果的なレーベル管理が行われていません。このような部分
が公共音楽情報DBを通じて早期に体系化される必要がありますが、このような取り組みは最近
になってようやく行われ始めています。これは、個人的な意見ですが、公共音楽情報DBが整備
されれば、統合清算システムも整備される必要があると思います。日本のように、資本力のある
レコード会社やコンテンツライセンス管理会社が存在すれば、個別の企業が合理的なシステムを
作り上げることもできるでしょう。しかし、韓国の場合、ほとんどが零細企業であるため、個別
の企業レベルで対応することは困難であります。そのため、統合清算システムの導入は必要不可
欠であり、これは市場の透明性を確保する上でも必ず必要です。さらに、統合生産システムの導
入は、サービス企業の重複および過剰投資を防止します。今のユーザの音楽サイトに対する期待
水準は非常に高く、このようなユーザのニーズに応えられるサイトを作るためには約50億~1
0億ウォン程度の資本が必要です。このような状況の中で清算システムによる重複投資、過剰投
資が発生すれば、状況はさらに困難になります。弊社の場合、現在5つの清算システムを使用し
ており、5つの清算システムに5つのコード方式で約40万の音楽がラッピングされています。
このようなものが統合管理できてこそ、売上データーを清算することができます。そのため、こ
のようなインフラは必ず整備されなければなりません。
法律的、政策的課題については、やや個人的な意見を述べさせていただきます。私はまず、著作
権集中管理団体の監督機能を強化する必要があると思います。これは、現行の著作権集中管理団
体および機関は、デジタル産業に対して絶対的権限を有しており、場合によってはコンテンツの
ライセンスを直ちに停止させることもできます。すなわち、企業の存続をも左右しかねないパワ
ーを持っているのです。さらに、現行の信託管理団体はオフライン時代にオフラインパッケージ
販売などをサポートするために発足させたもので、その制度が現在のデジタル時代においてもそ
のまま継続されるというのは、合理的でないといえます。また、信託管理団体は市場の調整者と
して、公共性と中立性、合理性を担保しなければなりません。したがって、市場の公共性や中立
性、合理性を担保する管理、監督を行うことも必ず必要です。現在内部にある理事会や会員者に
よる管理は行われているが、これはあくまでも信託管理団体内で行われています。さらに、韓国
市場では信託管理団体が特定会社の株を買収したり、共同ファンドを設けたりすることがありま
すが、これは公共性と中立性を損ないかねない行為です。現在、韓国の音楽市場の音源管理者の
うち、市場を調整できる力量を持って公共性や中立性を確保できる唯一の機関は、信託管理団体
です。その信託管理団体の公共性や中立性が損なわれれば、市場は大きく混乱します。そのため、
これについて話し合う必要があると思います。
では次に、現在韓国で議論を呼んでいるP2Pの有料化について、お話いたします。 P2Pの有
料化については、個人的に大変心配しています。P2Pが有料化すれば、違法コピーサービスが有
料化することにより、市場のパイが拡大すると思われがちですが、実際果たしてそうなるでしょ
うか。P2Pは個人のパソコンでコピーや配信が行われます。そこに事業者が介入して使用料を徴
収する仕組みとなっていますが、私の知る限りでは、現在の著作権法や制度の面でその部分を効
果的に管理できるシステムが韓国にはありません。ユーザのPCでコピーや配信が行われている
に、課金はP2Pサービスを提供する事業者が行うということは、ビジネス的に合意すれば取引は
成立するものの、社会的なシステムではコントロールすることができません。そのため、そのよ
うなシステムに変わる場合、現在としては市場をコントロールしたり、市場のロードマップを描
いたりすることが困難になります。現在、ストーリミングやモバイルダウンロード市場に対応す
る制度も不十分な状態で、P2Pまで有料化すれば、サービス市場にはより大きな混乱が生じるこ
とでしょう。ライセンスを管理するライセンスメカニズム上で、音源管理者がこれをコントロー
ルできる法律的、制度的根拠はまだないとされていますが、このような状況の中で、P2Pを有料
化すれば、若干の有料市場の拡大は期待できるものの、従来の市場はより大きな混乱に陥ると思
います。そのため、P2Pの有料化については、更なる議論が必要だと思います。
次は著作権使用承認に関する制度整備について、お話します。現在日本では著作権・実演権集中
管理制度を検討しているそうですが、デジタル市場ではそのようなアプローチが必要です。デジ
タル音楽市場は展開速度が非常に速いにもかかわらず、3つに権利が分かれており、特定権利者
によって他の権利者の権益が侵害されるケースがあります。たとえば、実演家団体と利害関係が
交錯しているため、著作隣接権者からは使用承認を受けたにもかかわらず、著作権者から使用承
認が受けられず、サービスを提供できないケースもあります。もちろん、これと全く逆のケース
もあります。そのため、オフラインでレコード小売店がレコードを販売する際、著作権者や実演
権者から使用承認を受けなくても済むのと同じように、この使用承認制度についても見直す必要
があります。この部分については、制度に関する問題のほかにも、法律的な部分についても検討
する必要があり、韓国はこの部門に対する整備を急ぐべきです。
次は、非常に解決の困難な問題のひとつですが、通信および端末事業者のコンテンツ流通および
製作市場の進出を規制する必要があるかどうかの問題です。まだ、韓国はこの問題に対して、結
論を出していません。情報通信部が管掌する通信業者と端末業者は区分されています。通信事業
者が端末機事業を展開する場合、年間販売できる台数が制限されており、これと同様に端末機事
業者が通信市場に進出する場合、韓国政府が規制します。通信市場に進出する際は、一定の資格
を有しなければならないとして、事業者の数を制限するのです。通信と端末機市場はこのように
統制されていますが、サービス市場とコンテンツ市場には市場調整者が全く存在しません。その
ため、コンテンツサービス市場やコンテンツ市場では、市場メカニズムが機能する前に、資本の
論理によって市場が支配されることになりました。実際、韓国の従来のメジャーレコード会社は
そのほとんどが、他の会社に買収されたり、レコード事業から手を引いたりした状態で、成長し
た企業はほとんどありません。
最近の音楽市場の傾向は、コスダック企業を対象としたBack door listing(迂回登録)が非常に活
発に行われたということです。これはコンテンツ市場が市場のメカニズムよりは、資本市場の論
理によって動き、市場の歪曲現象が非常に深刻であることを物語っています。したがって、対症
療法的措置で対応するのではなく、市場のインフラ的要素から見直していく必要があると思いま
す。
以上、簡単に韓国の音楽市場についてお話させていただきましたが、現在韓国の音楽市場は非常
に混沌としています。こういう時であるこそ、市場の制度、市場のメカニズムなど基本的な部分
を見直していかなければなりません。