アフリカ知的財産機関(OAPI)

アフリカ知的財産機関(OAPI)による知的財産の保護
-コモロ連合の加入に伴う特許及び商標の取扱い-
〔概要〕
アフリカ知的財産機関(OAPI)は、アフリカのフランス語圏の国により、1977年3
月に中央アフリカのバンギで採択された「バンギ協定(Bangui Agreement)」によっ
て創設された政府間機関であり、バンギ協定によって導入された知的財産の保護の
ための統一した制度を実施するために設けられた機関です。
その後、バンギ協定は1999年2月に、世界貿易機関(WTO)の「TRIPS協定」の
規定に合わせるために改訂され現在に至っています。
バンギ協定には本文の他に付属書において、特許、意匠、商標等、10の異なる分
野の知的財産の保護に係る実体規定及び手続規定が設けられています。
OAPIの特徴は、メンバー国が知的財産の保護に関し国内法令を設けることを放
棄しており、各メンバー国は自国の知的財産法令を有していないことです。そのため、
バンギ協定はメンバー国に共通の知的財産法であり、各メンバー国の国内法として
の効力を有しています。
また、各メンバー国は知的財産を管轄する特許庁等の特別の部局を有していない
ため、OAPIがメンバー国の知的財産を管轄する国内官庁の役割を担っています。
本件記事では、OAPIの全体像を紹介するとともに、OAPIによる特許及び商標の
付与、並びにコモロ連合(KM:Union of Comoro)が新たにOAPIに加入したこと
に伴う特許及び商標の取扱いについて概説します。
<目 次>
1.アフリカ知的財産機関(OAPI)の概要
2.アフリカ知的財産機関(OAPI)により付与される権利
3.バンギ協定に基づくOAPI特許の取得
4.コモロ連合のバンギ協定加入によるOAPI特許の取扱い
5.バンギ協定に基づくOAPI商標の取得
6.コモロ連合のバンギ協定加入によるOAPI商標の取扱い
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〔詳細〕
1.アフリカ知的財産機関(OAPI)の概要
(1)アフリカ知的財産機関(OAPI)設立の経緯
(a)OAPI創設以前
フランス語圏のアフリカ諸国は、①統一された法制、②共通の官庁、③手続きの集
中化の三原則を掲げた「リーブルヴィル協定(Librevill Agreement)」に基づき、
「アフリカ及びマラガシイ知的財産庁(OAMPI)」(注1)を1962年9月に設立しました。
「リーブルヴィル協定」は、保護の対象として特許、商標及び意匠を扱っており、12
カ国がこの協定に署名しています。
(b)バンギ協定によるOAPIの創設
その後1977年3月2日に、アフリカ知的財産機関(OAPI)(注2)の創設に関する「バ
ンギ協定(Bangui Agreement(注3))」が署名・採択され、「アフリカ及びマラガシイ知
的財産庁」に代わり、OAPIメンバー国に共通の知的財産庁としての機能を有する
「アフリカ知的財産機関(OAPI)」がカメルーンのヤウンデに創設されました。
また、バンギ協定により、OAPIメンバー国に共通の知的財産の統一法令が導入さ
れました。
OAPIはフランス語圏のアフリカ諸国により創設された機関ですが、フランス語と英
語を公用語としています。
(c)OAPIの役割
OAPIはアフリカのフランス語圏のほとんどの国おいて知的財産権の保護を確実
にする役割を担う機関であり、知的財産に関しOAPIの各メンバー国の国内官庁及
び知的財産に関する資料及び情報の中央資料館としての役割を担っています。さら
にOAPIは、知的財産の教育及びメンバー国の開発政策への参加を行っています。
その後バンギ協定は、世界貿易機関(WTO)の「知的所有権の貿易関連の側面
に関する協定(TRIPS協定)(注4) 」の規定に合わせるため、1999年2月24日に改訂
されました。
改訂された1999年のバンギ協定(注5)には、特許、意匠、商標など、知的財産の異
なる10分野について保護のための実体規定及び手続規定が設けられ、2002年2月
28日に発効しました。
1999年2月にバンギ協定が改訂された時点でのメンバー国は15で、合計人口は
1億人でした。
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(2)OAPIメンバー国の知的財産法令とバンギ協定の位置付け
OAPIメンバー国は、知的財産の保護に関し国内法令を設けることを放棄しており
ます。各メンバー国は自国の知的財産法令を有していないため、バンギ協定は原則
としてメンバー国に共通の知的財産法であり、各メンバー国の国内法としての効力を
有しています。
また、特許、商標等の権利を取得するためにOAPI出願をする場合、特定の国を
指定することはできず、自動的にすべてのメンバー国が指定され、権利が付与された
ときにはすべてのメンバー国において当該権利が保護されます。
従って、OAPIのメンバー国において知的財産権を取得したいときには、メンバー
国の国内特許等でなくOAPI特許、商標等の権利を取得すればよいことになります。
また、OAPIはOAPI知的財産権の登録及び維持に関するすべての管理業務を
行っております。
(3)アフリカ知的財産機関(OAPI)により付与される権利の性格
OAPIによって付与された知的財産に関する権利は、自動的に当該権利が効力を
有する各メンバー国の国内法令に基づく独立した権利となります(協定第3条(1))。
従って、OAPIによって付与された権利の侵害事件等は、当該侵害等が生じたメン
バー国の裁判所によって処理されます(付属書Ⅰ第43条、付属書Ⅲ第47条等)。
(4)国際条約におけるアフリカ知的財産機関(OAPI)の位置付け
(a)パリ条約における位置付け
OAPIのメンバー国はすべてパリ条約の締約国となっています。パリ条約の締約国
はパリ条約の適用を確保するために必要な措置をとらなければならず、パリ条約の求
めるすべての問題についてパリ条約に適合する法制を採択しかつ維持する義務を負
うと共に、行政面においてもそのような義務を履行しなければなりません(パリ条約第
25条)。
OAPIメンバー国は、パリ条約に適合する法制として共通のバンギ協定を採択し維
持しています。
また、パリ条約の締約国は、特許庁、知的財産庁等の工業所有権に関する特別の
部局を設置する義務があります。特別の部局は国ごとに設置しなくても、その設立の
ための特別の取極めに基づいて工業所有権に関する各国の特別の部局としての性
格を有する共通の官庁であってもよいとされており、OAPIはパリ条約の下では各メン
バー国のための共通の知的財産庁の機能を有しています。即ち、知的財産に関しO
APIはメンバー国の国内官庁の役割を担っています。なお、日本では特別の部局と
して「特許庁」が設置されています(パリ条約第12条(1)、第13条(3)(b))。
3
さらに、パリ条約の締約国は、特許、実用新案、意匠及び商標を公衆に知らせるた
めの中央資料館を設置する義務があり、OAPIはパリ条約の下ではメンバー国のた
めの共通の中央資料館の役割を担っています。
なお、日本では独立行政法人、工業所有権情報・研修館が中央資料館として設置
されています(パリ条約第12条(1))。
(b)特許協力条約(PCT)における位置付け
OAPIのメンバー国はすべてPCTの締約国であり、PCTの下ではOAPIは各メン
バー国の「国内官庁」(特許を与える任務を有する締約国の政府の当局-日本では
特許庁)、「指定官庁」、「選択官庁」又は「受理官庁」としての役割を有しています(P
CT第2条)。
2.アフリカ知的財産機関(OAPI)により付与される権利
(1)アフリカ知的財産機関(OAPI)により付与される権利
改訂されたバンギ協定の付属書には、特許、商標等、知的財産の異なる10分野
について、保護のための規定が設けられています(協定第4条(1))。
表1は、バンギ協定の付属書Ⅰ~付属書Ⅹに規定された保護の対象となる知的財
産の10分野を示したもので、これら10分野のうち、Ⅰ特許、Ⅱ実用新案、Ⅲ商標及
びサービスマーク、Ⅳ意匠、Ⅴ商号、Ⅵ地理的表示、Ⅸ集積回路の回路配置及びⅩ
植物新品種の出願を直接OAPIにすることができます(協定第6条(1))。
OAPIは、バンギ協定及び付属書Ⅰ~Ⅹに規定された共通の手続きに従って、特
許、商標、意匠出願等の審査を行い、権利を付与し公開します(協定第8~14条)。
〔表1〕バンギ協定の付属書に規定された保護の対象となる知的財産の10分野
Ⅰ
Ⅱ
Ⅲ
Ⅳ
Ⅴ
Ⅵ
Ⅶ
Ⅷ
Ⅸ
Ⅹ
特許
実用新案
商標及びサービスマーク
意匠
商号
地理的表示
著作権
不正競争に対する保護
集積回路の回路配置
植物新品種
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(2)OAPIメンバー国
図1は、OAPIメンバー国(17カ国)をアフリカの地図上に示したものです。OAPI
のメンバー国はアフリカの中央部から西部に位置しており、2013年5月に加入したコ
モロ連合だけが東アフリカのタンザニアとマダガスカル島の間のインド洋に位置して
います。
〔図1〕OAPIメンバー国
<コモロ連合のOAPIへの加入>
コモロ連合(KM:Union of Comoro)(以下、「コモロ」と記します。)が2013年3
月25日にバンギ協定への加入書を寄託し、2カ月後の2013年5月25日にバンギ協
定への加入が発効しました。コモロの加入によりバンギ協定のメンバー国は17となり
ました。
コモロはアフリカ大陸の東、マダガスカル島北西のインド洋に浮かぶコモロ諸島で
構成された国です。面積は2,236km2(ほぼ東京都と同じ)で首都はモロニ、人口は
約80万人で公用語はフランス語とアラビア語、民族的にはバントウ系黒人を主流に
アラブ人、マダガスカル人、インド人などです。
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(3)OAPIメンバー国の主な国際条約への加入状況
表2は、OAPIメンバー国の知的財産に係る主な国際条約への加入状況を示した
ものです(2013年7月1日現在)。
〔表2〕OAPIメンバー国と知的財産に係る主な国際条約への加入状況(17カ国)
国
名
(BF)ブルキナファソ
(BJ)ベナン
(CF)中央アフリカ
(CG)コンゴ
(CI)コートジボアール
(CM)カメルーン
(KM)コモロ
(GA)ガボン
(GN)ギニア
(GQ)赤道ギニア
(GW)ギニアビサウ*
(ML)マリ
(MR)モーリタニア
(NE)ニジェール
(SN)セネガル
(TD)チャド
(TG)トーゴ
パリ条約
PCT
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マドリッド ハーグ ベルヌ WTO WIPO
プロトコル
協定
条約
Trips
設立
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*ギニアビサウは旧ポルトガル領で公用語はポルトガル語ですが、それ以外の国は旧フラン
ス領で公用語はフランス語です。
OAPIのメンバー国はすべて、工業所有権の保護に関するパリ条約、特許協力条
約(PCT)、文学及び芸術作品の保護のためのベルヌ条約、及び世界知的所有権機
関(WIPO)設立条約に加入しています。
しかし、OAPIのメンバー国は標章の国際登録に関するマドリッド協定議定書(マド
リッド・プロトコル)には加入していませんので、マドリッド・プロトコルによる国際登録の
出願においてOAPIを指定してOAPI商標を取得することはできません。また、意匠
の国際寄託に関するハーグ協定にはメンバー国の一部が加入しているだけであり、
世界貿易機関(WTO)にはコモロと赤道ギニアが加入しておらず、この二カ国にはT
RIPS協定は適用されません。
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(4)広域特許条約としてのバンギ協定
特許協力条約(PCT)は、広域特許を付与することを定める条約であって、国際出
願をする資格を有するすべての者に対して広域特許の出願をする資格を与える条約
を広域特許条約として取り扱っています(PCT第45条)。
バンギ協定は、ヨーロッパ特許条約と同様、特許協力条約(PCT)で規定する広域
特許条約であり、複数のメンバー国において効力を有する特許(広域特許)がOAPI
によって与えられます。そのため、PCT国際出願においてOAPI特許を指定し、OA
PIに対して国内段階に移行し、特許要件を満たせばOAPIメンバー国すべてに効力
を有する広域特許が与えられます。OAPIによって与えられた広域特許を「OAPI特
許」と呼んでいます。
なお、PCTを利用せず直接OAPIに特許出願しても「OAPI特許」を取得すること
ができます。同様に、OAPIに直接商標出願又は意匠出願すれば、広域商標、広域
意匠としての「OAPI商標」、「OAPI意匠」を取得することができます。
3.バンギ協定に基づくOAPI特許の取得
バンギ協定の付属書Ⅰ(ANNEX I)にはOAPI特許に関する実体規定及び手続
規定が設けられています。OAPI特許の権利期間は出願から20年です。
OAPI特許を取得するルートは、従来ルート(パリルート)及びPCTルートの2つの
ルートがあります。
(1)従来ルート(パリルート)
OAPIのメンバー国はすべてパリ条約の締約国であり、出願人は直接又はパリ条
約による優先権を主張してカメルーンのヤウンデにあるOAPI本部にOAPI特許出願
をして特許を取得することができます。OAPI特許出願では特定のメンバー国を指定
することはできず、自動的にすべてのOAPIメンバー国を指定したものとみなされま
す(協定第7条(1))。
OAPI特許出願がされると、OAPIで方式審査及び実体審査が行われ、新規性、
進歩性、産業上の利用可能性等の特許要件を満たしていればOAPI特許が付与さ
れます(協定第8条(1))(付属書Ⅰ第22条)。
付与されたOAPI特許は、各メンバー国において当該メンバー国の法令に基づく
独立した特許権となります。従って、OAPIによって付与された特許の侵害事件等は、
当該侵害等が生じたメンバー国の裁判所によって処理されます(協定第3条、付属書
Ⅰ第43条等)。
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(2)PCTルート
OAPIのメンバー国はすべて特許協力条約(PCT)の締約国であり、出願人は直
接又は優先権を主張してPCTに基づく国際出願をすることができます。国際出願に
おいてすべてのPCT締約国を指定したものとみなされ、OAPIのメンバー国はすべ
てOAPI特許のために指定されたものとみなされます(協定第7条(2))。
出願人が国際出願の優先日から30カ月以内にOAPIの国内段階に移行する手
続をとれば、OAPIで方式審査及び実体審査が行われ、新規性、進歩性、産業上の
利用可能性等の特許要件を満たしていればOAPI特許が付与されます(協定第8条
(1)、付属書Ⅰ第22条)。
従来ルートの場合と同様、付与されたOAPI特許は、各メンバー国において当該メ
ンバー国の法令に基づく独立した特許権となります。従って、OAPIによって付与さ
れた特許の侵害事件等は、当該侵害等が生じたメンバー国の裁判所によって処理さ
れます(協定第3条、付属書Ⅰ第43条等)。
❐ OAPIにおける特許審査の実情
バンギ協定及び付属書Ⅰ(特許)には、新規性、進歩性、産業上の利用可能性等
の実体審査を行う旨が規定されていますが、実際は方式審査のみで実体審査は行
われておらず、通常は出願から3年で特許が付与されるとのことです(現地代理人情
報)。
4.コモロ連合のバンギ協定加入によるOAPI特許の取扱い
(1)PCT締約国のコモロ連合がOAPIに加入
特許協力条約(PCT)の締約国であるコモロ連合(KM:Union of Comoro)(以
下、「コモロ」と記します。)のバンギ協定への加入が発効し(2013年5月25日)、OA
PIのメンバー国になりました。コモロの加入によりOAPIのメンバー国は17となりまし
た。
コモロがOAPIのメンバー国になったことにより、2013年5月25日以降にされた国
際出願は、OAPI特許のためにコモロの指定を含みますが、国内特許のためにコモ
ロを指定することはできません。コモロがOAPIに加入するまでは、国際出願におい
て国内特許のためにコモロを指定することができましたが、加入後はPCTによって国
内特許を取得するルート、即ち、国内ルートを閉じました。そのため、PCTによってコ
モロで特許を取得したい場合には、OAPI特許を取得すればコモロの国内特許と同
じ権利を取得することができます。
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(2)OAPI特許の拡張
OAPI特許はヨーロッパ特許と同様、PCTで規定する広域特許条約に基づく広域
特許であり、通常は国際出願がされた日に当該広域特許条約に加入している国のみ
を広域特許のために指定することができます。
しかし、OAPI特許の場合は、コモロがバンギ協定に加入してOAPIのメンバー国
になる2013年5月25日より前にされた国際出願に基づいて取得されたOAPI特許
であっても、当該OAPI特許のコモロへの拡張を請求することができます。
上記請求はコモロのバンギ協定への加入が発効した日(2013年5月25日)から2
0カ月以内(2015年1月25日まで)に手数料を支払って行うことができます。
❐ OAPIのメンバー国になる前のコモロでの特許保護の実態
コモロは、バンギ協定に加入してOAPIのメンバー国になる前からパリ条約及び特
許協力条約(PCT)に加入していますが、バンギ協定加入までは知的財産に関する
法律は制定されていませんでした。そのため、国際出願でコモロを指定して国内段
階に移行しても特許付与の手続きは行われず、特許の保護を求める場合は、新聞紙
上に自らの特許であることを主張する「警告通知」(Cautionary Notice)を掲載する
ことにより実務上保護を受けていました。
上記事情は、特許だけでなく他の知的財産についても同様でした。しかし、コモロ
がOAPIのメンバーとなった2013年5月25日以降は、OAPIに特許、実用新案、意
匠、商標等の出願をして権利を取得すれば、当該権利はコモロにおいても効力を有
します。
5.バンギ協定に基づくOAPI商標の取得
バンギ協定の付属書Ⅲ(ANNEX Ⅲ)にはOAPI商標に関する実体規定及び手
続規定が設けられています。商標登録の権利期間は出願日から10年間で、更新す
ることができます。
OAPIのメンバー国はすべてパリ条約の締約国であり、出願人は直接又はパリ条
約による優先権を主張してカメルーンのヤウンデにあるOAPI本部にOAPI商標出願
をしてOAPI商標登録を得ることができます。OAPI商標出願では特定のメンバー国
を指定することはできず、自動的にすべてのOAPIメンバー国を指定したものとみな
されます(協定第7条(1))。
OAPI商標出願がされると、OAPIで方式審査及び識別力や先後願について実体
審査が行われ、登録要件を満たしていればOAPI商標登録がされます(協定第9条
(1))。
登録されたOAPI商標は、各メンバー国において当該メンバー国の法令に基づく
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独立した登録商標となります。従って、OAPI商標の侵害事件等は、当該侵害等が
生じたメンバー国の裁判所によって処理されます(付属書Ⅲ第47条等)。
6.コモロ連合のバンギ協定加入によるOAPI商標の取扱い
(1)コモロのバンギ協定への加入発効後にされたOAPI商標出願
コモロがバンギ協定に加入した2015年1月25日以降にされたOAPI商標出願は、
自動的にコモロを含むすべてのOAPIメンバー国を指定したものとみなされます(協
定第7条(1))。
そして、登録要件を満たしていればOAPI商標登録がされ、コモロを含む各メンバ
ー国において当該メンバー国の法令に基づく独立した登録商標となります。従って、
OAPI商標はコモロの国内商標となり、OAPI商標のコモロにおける侵害事件等はコ
モロの裁判所によって処理されます(協定第3条、付属書Ⅲ第47条等)。
(2) OAPI登録商標の拡張
コモロのバンギ協定への加入発効前にOAPIですでに登録されている商標の効力
は、発効後の更新時に自動的にコモロに拡張されます。
なお、更新を待たずにOAPI商標登録の効力をコモロに拡張するよう請求をするこ
とも可能です。上記請求はコモロのバンギ協定への加入が発効した日(2013年5月
25日)から20カ月以内(2015年1月25日まで)に手数料を支払って行うことができま
す。
❐ OAPIのメンバー国になる前のコモロでの商標保護の実態>
コモロはバンギ協定に加入しOAPIのメンバー国になる前からパリ条約に加入して
いますが、バンギ協定加入までは知的財産に関する法律は制定されていませんでし
た。そのため、商標については、新聞紙上に警告を掲載して自らの商標であることを
主張する「警告通知」(Cautionary Notice)を掲載することによりコモロにおいて実務
上保護を受けていました。
なお、コモロで「警告通知」によって保護を受けている商標の効力をOAPIに拡張
することはできません。OAPIでは実体審査を経て商標を保護しており、「警告通知」
を正規の保護手段とは認めていないためです。
しかし、コモロがOAPIのメンバーとなった2013年5月25日以降は、OAPIに特許、
実用新案、意匠、商標等の出願をして権利を取得すれば、当該権利はコモロにおい
ても効力を有します。
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( 注 1 ) OAMPI: フ ラ ン ス 語 名 “Office Africaine
et Malgache de la Propriete
Industrielle” の 略 。 英 語 名 は “African and Malagasy Intellectual Property
Organization”
(注2)OAPI:フランス語名 “Organisation Africaine de la Propriete Intellectuelle”
の略。
(注3)バンギ協定の正式名称は“ Bangui Agreement Relating to the Creation of an
African Intellectual Property Organization, Constituting a Revision of the Agreement
Relating to the Creation of an African and Malagasy Office of Industrial Property
(Bangui (Central African Republic), March 2, 1977)
(注4)TRIPS: Agreement on Trade-Related Aspects of Intellectual Property Rights
( 注 5 ) 改 訂 さ れ た バ ン ギ 協 定 の 正 式 名 称 は 、 “ Agreement Revising the Bangui
Agreement of March 2, 1977, on the Creation of an African Intellectual Property
Organization (Bangui (Central African Republic), February 24, 1999)”「アフリカ知的
財産機関の創設に係る1977年3月2日のバンギ協定を改定する協定(中央アフリカ共和国
バンギ、1999年2月24日)」
(参考文献)
バンギ協定(1977年3月2日)
改訂バンギ協定(1999年2月24日)
PCT NEWSLETTER(June 2013 No. 06/2013)
WIPO ホームページ
2013年7月12日
(IP情報室)
ⓒSEIWA PATENT&LAW
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