平成25 平成25年度 25年度 研 究 紀 要 第8号 広島県立福山特別支援学校 はじめに 本校では平成25年度, 「肢体不自由特別支援学校として,児童生徒個々の持つ能力や可 能性を最大限に伸ばし,自立し,社会参加するための『生きる力』を育くむ」のミッショ ンのもと,次のビジョンに基づきながら教育活動を展開してまいりました。 (1) 児童生徒の安全を確保し,安心して,明るく生き生きと学べる学校。 (2) 専門性の向上を基に,魅力ある教育内容を創造し,自立活動や教科等の指導の充実 を図る学校。 (3) 特別支援学校のセンター的機能を発揮するとともに, 「開かれた学校づくり」を推進 する学校。 教育内容の創造につきましては,平成19年度から平成23年度まで5年間にわたって 「自立活動を基底にすえた,児童生徒一人ひとりのニーズに応える教育内容の創造及び実 践へ向けて」,「仮説 ~児童生徒の実態に沿った個々の支援や,工夫された教材及び支援 具等の活用によって,児童生徒は生き生きと学習活動に臨むことができるであろう~」と いう研究テーマで,授業研究に取り組んできました。 その研究の積み重ねの上で平成24年度から3年計画で, 「児童生徒のコミュニケーショ ン能力を育てるための授業作りをめざして」「~一人ひとりのコミュニケーション力の把 握とアプローチ~」と新しい研究テーマを設定し,より具体的に教育内容として創造でき るよう,授業研究に取り組んでまいりました。 今年度の研究紀要には,新たに次の内容を付け加えております。研究の状況を具体的に あらわすため公開授業研究会研究協議対象授業指導案を,また本校の第1ビジョンである 「安心安全な学校づくり」を推進するためのアクシデント研修や不審者対応研修を,そし て豊かな感性を育てるため図書館教育について,付記しております。 そうした本年度の研究をまとめた研究紀要第8号を発刊しました。つたないまとめでは ありますが,皆様から忌憚のない御意見や御指導を賜りますようお願いいたします。 平成26年3月 広島県立福山特別支援学校 校 長 佐 藤 光 目 次 はじめに 目次 1. 授業研究について ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・1 2. 摂食指導について・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・37 3. 自立活動研修について ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・40 4. 公開講座について・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・45 5. 感染対策の基本について・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・48 6. 医療的ケアについて・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 49 7. 不審者対応研修について・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・50 8. アクシデント研修について・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・51 9. 進路指導研修について・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・54 10. 図書館教育について・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 55 11. 教職員研修について一覧・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・56 編集後記 平成25 平成25年度 25年度 授業研究について 授業研究について 平成25年5月30日 教育企画部 研究の 研究のテーマ 「児童・ 児童・生徒の 生徒のコミュニケーション能力 コミュニケーション能力を 能力を育てるための授業作 てるための授業作りをめざして 授業作りをめざして」 りをめざして」 ~ 一人ひとりの 一人ひとりのコミュニケーション ひとりのコミュニケーション力 コミュニケーション力の把握と 把握とアプローチ ~ 授業研究に 授業研究に当たっての基本方針 たっての基本方針 1 2 3 研究テーマを踏まえ,児童生徒の実態把握の再検証を行い,課題設定を行う。 授業内容の創造・実践を行う。 校内授業研究ならびに公開授業研究の指導案検討を全体で行う中で,児童生徒や学 部の抱える課題を共有したり学部間の系統性を形成したりして,個別の指導計画や 教育支援計画に反映させていく。 4 年度末に「今年度の研究のまとめ」を行う。 昨年度の 昨年度の成果と 成果と課題 昨年度から,新たに上記の研究テーマを設定し,児童生徒が自分の思いをどういう方 法や動きでコミュニケーションしようとしているのか,しっかり状況を把握することで 児童生徒の思いをくみ取り,それによって,また新たなアプローチの方法を見出せるよ うな授業作りをめざして取り組んだ。 そして年度末のまとめで次のような成果と課題を確認した。 ○研究テーマについては全教職員に意識され,指導案の中の児童生徒観でコミュニケ ーション力についての実態把握したことを記入,それに基づいて題材を設定し,具 体的な指導内容として指導観を記述していくという,これまでに積み上げてきた指 導案の作成ポイントをおさえた記述の仕方になってきた。 ○コミュニケーション力の実態把握については,日常観察や取り組みの中で行われて いるが今後もより正確な実態把握に努めることが必要である。 また,コミュニケーションとは意思や感情を相互に伝え合うことであるが,その対 象は,はじめは教師対子どもからはじまり,やがて子ども相互へと広がっていくこ とでより豊かなコミュニケーション活動が期待できる。児童生徒どおしのコミュニ ケーションの実態把握と,そのアプローチも今後積極的に行っていくことが必要で ある。 ○授業研究の具体的な進め方については,一人一研(年間一人一回の授業研究)は研 究協議をどう深めていくか,参観できる体制をどうつくっていくか等,毎年課題が 解決されないままになっている。 今年度の 今年度の改善点 今年度,研究協議の深め方については,企画部と授業者で事前に打ち合わせをして協 議の論点を整理しておくことで改善を図る。 校内研や公開研の指導案全体検討では,教職員全員が対象児童生徒の実態を知ったり, 授業のあり方を学びあったりしていくことを基本にして,その中で小,中,高でそれぞ れどんな取り組みをしていくかや,研究テーマが授業の中でどのように取り組まれてい - 1 - るかなどを検討していく。 参観体制については,その日の授業形態を工夫することでできるだけ多くの人が参観 できるようにする。 一人一研については昨年度の反省を踏まえ,一学級一研で研究授業を行うことに変更 し,研究協議の時間を確保することで研修を充実させていく。 研究のすすめ 研究のすすめ方 のすすめ方 昨年度のまとめを踏まえて,今年度も昨年度と同様のテーマをかかげて,一学級一 研・校内研・公開研の 3 本立てで授業研究をすすめていく。 公開授業研究会 校内授業研究 小・中・高 学部 一学級一研究授業 ☆ 学級単位で授業研究を行う。 ☆ 各学部単位の校内授業研究を行う。 (今年度は小学部 2 本,中学部高等部から 1 本ず つ) ☆ 公開授業として,研究授業を実施し研究協議を行い,テーマに沿った公開授業研究 会を実施する。 <一学級一研究授業について 一学級一研究授業について> について> ・6月~2月の間で,一学級一研究授業,指導案検討,授業反省を中心とした授業研究 を行なう。 授業研究全体計画に基づき,年間計画作成。(〇月に,何年何組が研究授業) 年間計画に基づき,1 ヶ月ごとに授業日を調整・決定。 (〇月〇日〇時間目に,何年何組が研究授業) 授業 1 週間前までに学年での指導案検討。 研究授業実施 学年会(参観者も含)で意見交換・反省会 まとめを行い,共有フォルダーに入れる。 - 2 - 授業評価表の活用 <校内授業研究につい 校内授業研究について について> ○ 10月30日(水) 高等部 中学部 ・講師 本校部主事・指導教諭による指導助言 ○ 11月29日(金) 小学部 小学部 ・講師 福岡教育大学 准教授 一木 薫 先生 ・参観体制を組んでできるだけ参観できるようにする。 授業研究全体計画に基づき,年間計画作成。(授業者決定) 授業 1 ヶ月前の学部会での指導案検討 授業実施3週間前PCに入れ,全体検討 →指導案送付 研究授業実施。(参観体勢を組む。 ) 全体で授業研究会をもつ。 まとめを行い,共有フォルダーに入れる。 <公開授業研究会について 公開授業研究会について> について> ・日時 平成26年 1月24日(金) ・指導助言および講師 福岡教育大学 准教授 一木 薫 先生 ・公開授業 学年 1 クラス公開授業(その中で研究協議対象は各学部 1 クラスずつ) - 3 - 研修名 本年度の授業研究について 期 日 平成 場 所 職員室 講師等 本校 25年 6月 教育企画部 3日(月) 村上博子 参加者 本校職員全員 目 内 本校で行っている授業研究のテーマ,概要について知り,今後の授業改 善や指導力の向上につなげる。 的 前年度の反省を受けての変更点として,一人一研究授業を一学級一研究 授業に変え,内容を充実させていくことを確認する。 1 本年度の研究テーマについて 2 授業研究に当たっての基本方針 3 昨年度の成果と課題 4 今年度の改善点 5 具体的な研究の進め方 容 資料:平成25年度 授業研究について 本校では例年一人一研究授業・校内研・公開研の3本立てで授業研究 を行い,指導案検討や授業後の研究協議を行うことで,授業改善や指導 力の向上に繋げてきたことを本校職員に周知できた。 一人一研を一学級一研究授業に変えて,少しでも多くの先生が授業に 成果と 参観しやすくすることで,今後多くの先生方に参観していただき,授業 課題 後の反省会の内容をより充実させていくことが課題である。クラス実態 等で難しいこともあるが,せっかくの良い機会なので初任者の先生を含 め,多くの先生方に,他のクラスや他学部の先生の授業を実際に参観し て,協議をし,お互いの授業改善につなげていく。 - 4 - 期 日 (指導案検討) 平成25年 10月 7日(月) (研究協議) 平成25年 10月 30日(水) 2校時:高等部1学年4組 久保優一朗 教科領域/単元 自立活動(言葉・コミュニケーション) 「友だちとゲームをしよう」 3校時:中学部2学年2組 出原俊彦 自立活動(個別) 「身体を動かそう」 助 言 者 学部・学年・学級 中学部主事 力石 洋三,高等部主事 藤井 隆,指導教諭 川口 辰之進 高等部1学年4組(Ⅲ類型) ,中学部2学年2組(Ⅲ類型) 1.2時間目「高等部1学年 自立活動(言葉・コミュニケーション) 」 <授業者 久保 優一朗先生より> 自分の気持ちとして,生徒から「楽しかった」など一言でも言えてよかった。自分の気持 ちを表現できる授業展開がねらいだった。 また,授業者として,体調管理ができていなかった。 <質問・意見> ●ゲームを通しての全体目標が深められた場面は →3人が同じ視線の位置にいることでお互いに意識できた。友達の名前が出てくるゲームの 中で意識できた。 ●普段の個別でしていることは →A は朝の医療的ケアが中心,B は本を読むことやセリフの練習。体ほぐしや立位。C は電動 車いすの練習や好きな先生に会いに行き話をすること。 ●この授業は個別課題を整理した自立の授業である。その視点を取り入れるべきではないか →生活活動の授業の中身になってしまっていた。あらためて,授業内容の見直しをしないと いけないと思う。 指 導 内 容 ・課 題 <助言者より> ・手だてがもう少し具体的だとよい。 ・言葉・コミュニケーションの時間なので, 「好きなものや色など」生徒が答えられるよう なものの中から選ぶようにしたら良かった。会話のやりとりができるようにする。 2.3時間目「中学部2学年 自立活動(個別) 」 <授業者 出原 俊彦先生より> 生徒がとても意欲的に長い時間取り組めていた。ピアノをもっと弾きたかったのではない かと思える意思表示が見られた。授業展開として足湯からマッサージ身体ほぐしができてよ かった。 <質問・意見> ●ピアノの光は見えているのか →見ているような視線が感じられるが音を聞いて楽しむ様子がより確実に見られる。 ●片手にマラカス,片手にピアノという動作は難しいか →バランスの問題があるので,一つ持つことで興味を広げていきたい。そして,興味のある もので何か意思表示の合図に発展させていきたいと思う。 ●前半のマッサージと後半の楽器では明らかに目線が違った。 <助言者より> ・コミュニケーションとは「伝えたい気持ちが大事」である。 ・本人の気持ちを汲み取ることができていた。 3.全体を通して 川口先生 「目標」はできる,わかるものを取り入れること。そして,35 時間の中でステップアップ しながら,スモールステップで「力がついた。できたがわかる。 」もので評価していくこと が大切である。 - 5 - 校内授業研のまとめ 校内授業研のまとめ 期 日 (指導案検討)平成25年 11月 5日(火) (研究協議) 平成25年 11月 29日(金) 小学部 教科領域/単元 2校時:5学年1組 藤井孝子 生活活動「お店屋さんごっこをしよう」 3校時:4学年1組 内田猛 助 言 者 学部・学年・学級 自立活動(からだ) 「からだをうごかそう」 福岡教育大学 特別支援教育講座 准教授 一木 薫 先生 小学部5年1組(Ⅲ類型) ,小学部4年1組(Ⅲ類型) 1. 2時間目「5学年 生活活動」 <授業者 藤井 孝子先生より> 児童の実態に合わせ,好きなうた,興味のある食べ物を使って楽しく授業を行い,コミュ ニケーションにつなげたいと思い,この授業を考えた。いつもと雰囲気が違い,後ろをふり 返ったり,自分を落ち着けるため歌を歌ったりしていた。本来なら食べてすぐ終わりたかっ たが,片づけとあいさつまで良くがんばった。目標は達成できたと思う。反省点として,参 観者に近づいていってはいけないと児童をつかんでしまったので,もっと信頼しても良かっ たのではないかと思う。 <質問・意見> ●(飯干)授業者の先生から見て目標は達成できたと思いますか? →人に言葉で伝えることを目指している。今回は2回目でお金のやりとりは難しかったが, 支援を受けて店員役は経験することができた。B児はお金を払うことができ,A児は立ち止 まることができたので,お金を渡すと商品がもらえることを感じてもらえたらと思う。 指 導 内 容 ・課 題 →(飯干)いろいろな要素がありすぎ,1つ1つが未消化になってしまったので,目標をも っと焦点化し,重点的な指導をしてはどうか? ●(藤江)指導案を読んだ時点では,将来の社会参加やQOLの向上を目指した授業かと思 ったが,A児の言葉が増えていること,B児の模倣が上手になったことを生かした,コミュ ニケーションの基礎を大切にした授業だと感じた。遊びの要素を大切にしていて良かった。 <一木先生より> ●児童の椅子の滑り止めマットはしっかりと伸ばして敷いて使うと良い。授業に集中するた めに姿勢を正すという意図を大切に。 2. 3時間目「4学年 自立活動(からだ) 」 <授業者 内田 猛先生より> C児が体調不良のため欠席で,T3が忌引きのため,T1T2が毛布ブランコをする際は 看護師にもう1人の児童を見守ってもらい授業を行った。B児は前日に寝ておらず,2限ま で眠っていたが3限前に目覚めた。毛布ブランコでは,笑顔で声を出し,腕を動かしてもっ としたいとアピールをした。A児はいつもと違う雰囲気で授業開始とともに目をつむってし まった。頭を上げるのは難しかったが, 「もっとする?」の言葉かけや毛布ブランコの刺激 で目を開けるなどして気持ちを伝えた。最後にA児は良い表情が出ていたが,便が出たため, ふり返りを省略し,おむつ交換をして授業を終わった。 - 6 - <質問・意見> ●(寺田)A児のうつぶせで頭を上げる動きは意図的に自発したものか?(顔が見えなかっ た) → 首の後ろの筋がはることもあったが,思った以上に上がらず,今回は呼吸によるものだ と思われる。普段調子が良いときは自発的に1,2回上げる程度である。 ●(飯干)やりとりが上手で,音楽の取り入れやダイナミックな動きなど環境作りが良かっ た。それぞれの活動で何をねらい,今後,児童にどのような力をつけていきたいか? → ふれあいリラックス体操はいつもしているから,授業の始まりの意識づけに使った。首 の上げ下げは,首がすわらないとしても首の動きを引き出すことにつなげたい。そしてそれ を他部位の随意的な動きにつなげたい。楽しいと感じ,楽しい気持ちを伝えることを大切に したい。また「終わり」など言葉が分かってきているので,要求表出や言葉の理解につなげ ていきたい。 ●(馬場)B児が毛布ブランコで声を出し,右手を動かしていたが,動作も意思表示ととら えるのか? →給食前に手でたたいて伝えることもあるので,意思表示だととらえるが,今回は声を出し 指 てほしかったので,指導案には声を出すことのみ記載した。声と動作が出るときはうれしく 導 て本当にしたいとき。 内 ●言葉かけに笑顔になるとあるが,言葉かけがなければどのような反応をすると思うか? 容 →終わりが分かってきているなど,現在言葉を入れている途中。 ・ <一木先生より>五感をしっかりと使っていて良かった。児童の毛布ブランコの満足の先に 課 何を求めるかを大切にしてほしい。今の力を「聞く力」 「見る力」 「表現する力」につなげて 題 いく。 3. 全体を通して 一木先生 特別支援学校では,児童生徒の実態に合わせて,指導要領の中から必要な内容を選択するの で,先生の力が児童生徒の成長に大きな影響力を持っている。授業の目標設定をする際には, 全員の共通のものさし(よりどころ)となる指導要領(今していることはどの教科のどこに 当たるのか)と個別の指導計画の目標とを重ね合わせて授業を作り,評価してくことが大切 である。実態把握では,自立活動の6つの区分それぞれから児童生徒をじっくりと見ること, 各教科等においてどの段階に児童生徒がいるのか一人ひとり把握することが大切である。そ こから出発して,児童生徒に将来どうなってほしいか,今の課題ができたら次に何をするの か,そのために今何を目標にして,この授業では何をするのかと長期的な見通しを持ち,ス モールステップで授業を考える必要がある。学校にいる間は,教員と児童生徒がほぼ1対1 で恵まれた環境にいるが,卒業後の施設での現状は厳しい。今回の研究テーマ「コミュニケ ーション」とあるように,児童生徒のコミュニーションについての実態を今一度しっかりと 把握し,人と関わる力を育むためにこれからどのようなことをするのかが,大事になってく る。 - 7 - 平成2 平成25年度公開授業研究会 年度公開授業研究会 公開授業研究会 公開授業研究会要項 研究会要項 研究テーマ 研究テーマ 「児童・生徒のコミュニケーション能力を育てるための授業作りをめざして」 ~一人ひとりのコミュニケーション力の把握とアプローチ~ 期日/ 期日/平成2 平成26年1月24日 24日(金) 会場/ 会場/広島県立福山特別支援学校 広島県立福山特別支援学校 〒720- 720-0841 広島県福山市津之郷町津之郷280 広島県福山市津之郷町津之郷280- 280-3 TEL (084) 084)951- 951-1513 FAX (084) 084)951- 951-3864 - 8 - 目 次 1 日程 ・・・1 2 全体会 ・・・2 3 公開授業会場一覧表 ・・・3 - 9 - 日 9:30~10:00 10:05~12:00 程 受付 公開授業 小学部 2校時 3校時 10:10~10:55 11:05~11:50 中学部 2校時 3校時 10:10~11:00 11:10~12:00 高等部 2校時 3校時 10:05~10:55 11:00~11:50 ※公開する授業については、3ページを参照 してください。 ※2校時- 小学部3年,高等部2年 3校時- 中学部3年 が,研究協議の対象となります。 12:00~13:30 昼食・休憩(小会議室) 13:30~ 支援機器の見学(支援室) 14:20~16:20 全体会(体育館) 1 - 10 - 全体会 体育館 14:20~ 学校長挨拶 来賓紹介 14:25~ 研究授業について 14:40~ 研究協議 14:55~ 講演(指導助言も含めて) 講師 演題 16:15~ 授業者の反省 福岡教育大学 准教授 一木 薫 小・中・高 先生 「卒業までに育む『人と関わる力』とは」 ~特別支援学校に求められるカリキュラム開発~ 閉会行事 2 - 11 - 公開授業会場一覧表 2校時 3校時 場所 番 号 小3-1 ① 田辺重子 自立活動室 ② さまざまな感覚刺激を感じよう 寺田圭祐 小6-2・3 ③ 自立活動 身体を動かそう 石黒淳子 中1-1 ④ 高等部 2年 自立活動 冬の味覚を味わおう 奥田佳子 高2-3 ⑤ 高等部 3年 総合的な 学習の時間 (マイ・ノートをつくろう) 林 美則 高3-2 ⑥ 小学部 2年 自立活動 さわってあそぼう 津國晴美 小2-1 ⑦ 小学部 4年 自立活動 長堀美香 小4-2 ⑧ 中学部 2年 自立活動 山路敏正 自立活動室 ⑨ 中学部 3年 自立活動 本田易久 中3-1 ⑩ 高等部 1年 自立活動 湯村真子 高1-2 ⑪ 学部・学年 教科・領域 授業内容 小学部 3年 自立活動 からだをうごかそう 小学部 5年 自立活動 リズムあそび 小学部 6年 自立活動 中学部 1年 課題について調べよう こねこね こなあそび しっかり感じて,見てみよう リラックスして身体を動かそう つかもう,奥歯で噛もう ペッタン技法で文字アートをつくろう 来校者昼食 支援機器の見学 ※ ※ ※ 授業者名 馬場 健 小会議室 支援室 ⑫ ⑬ 授業時間は,小学部 中学部 2校時(10:10~10:55)3校時(11:05~11:50) 2校時(10:10~11:00)3校時(11:10~12:00) 高等部 2校時(10:05~10:55)3校時(11:00~11:50) の授業が,研究協議の対象となります。 一覧表と会場図の番号で,各授業の場所をお確かめ下さい。 ※ ご案内の内容と一部変更がありますのでご注意ください。 3 - 12 - 自立活動(からだ) 学習指導案 指導者 教諭 馬場 健 T1 教諭 金本 裕子 T2 1 日時・場所 平成 26 年 1 月 24 日(金)2 校時 10:10~10:55 小学部 3 年 1 組 教室 2 授業形態 決定学級 3 学部・学年 小学部 第 3 学年 1 組 (2 名) 4 題材名 からだをうごかそう 5 題材設定の理由 (Ⅲ類型) ○児童観 本学級は男子児童 2 名が在籍しており,知的障害と肢体不自由と視覚障害を併せ有する重複障害学 級である。日常生活動作は全介助であり,吸引や経管栄養などの医療的ケアが必要な児童である。視 覚障害を有しているため周囲の状況の把握や友達・指導者との関わりにおいては触覚刺激や聴覚刺激 を重要な手段としている。音や音楽への反応は敏感で,聞きなれた曲を聴くと笑顔になったり,また 初めて聞く曲は考えるような表情になったりする。 「リラックス体操」の音楽を聴くと,フッと力が ぬけることもよくある。そのため,活動をする時には毎回決まった音楽や歌を聞かせるなどしてこれ から行う活動や状況を伝えるようにしている。 「からだ」の授業ではトランポリン・回転盤・ピーナッツボールなど主に前庭感覚を刺激する活動 や簡単なゲームやプールなどの活動を行ってきた。また,活動の最初には身体の四肢に触れる「リラ ックス体操」をほぼ毎回行い,「からだ」の授業の開始を意識させたり,自分の身体を意識させたり してきた。前庭感覚刺激は 2 名とも好きな活動で,よく笑ったり,自分から身体を動かしたりするこ とができている。 A 児は脳室周囲白質軟化症,ウエスト症候群と診断されている。視力は光覚程度である。表情が豊 かで動きも多い児童のため,指導者が児童の反応を理解しやすい。しかし,指導者の言葉掛けを意識 して声や動きを表出することはまだ不安定である。好きな活動に対しては声を出して喜んだり,「い くよいくよ!」など活動前の言葉掛けで期待をしたりする様子がみられる。安定はしないが好きな活 動が止まったときや,指導者からの言葉掛けがあったときに,「身体を揺らす・笑顔になる・『グー』 と声を出す」などの行動をすることがある。母親や慣れた先生の声がすると喜び,大人を呼ぶように 声を出すこともある。また,声のトーンに敏感で嬉しそうな声で話しかけると喜び,怒った声で話し かけると不機嫌な声を出したり静かになったりする。B 児の声に反応して声を出すことが何度かあっ たが,B 児はあまり積極的に声を出す児童ではないため,A 児の B 児に対する認識ははっきりとはわ からない。相手の存在に気づいてはいるが,相手を意識することは少ない状態であると考えられる。B 児と 身体に触れたり触れられたりする活動をすると大人に触れられるときとは違って考えるような表情 をすることがある。これまで授業や休憩時間などを使って身体に触れている中で笑顔になることが何 度かあった。 B 児は,ウエスト症候群,難治てんかん,未熟児網膜症による視力障害(全盲)と診断されている。 体調面では1年生の終わりごろからてんかん発作の型が変わり始め,現在もまだ薬の調整を行ってい る。茫然と静止する発作や身体をピクンと動かすことがあり,その時には外部からの刺激が入りにく い状態にある。薬や発作の影響で授業中に覚醒が低くなることが多い。また,発作の影響のためか何 - 13 - をしても反応が出せない状態もある。覚醒しているときは不随意運動が出ることも多く,また感覚過 敏もある。コミュニケーションについての表出は多い方ではないが,時々声を出したり楽しいことが あると笑顔になったりすることがある。調子が良い時などは,大人の言葉掛けに応じるように笑顔に なったり腕を動かしたりすることを繰り返すことができる。また,「もう一回する?」の言葉掛けに 特に笑顔になることもある。給食時間に「たべる?」という言葉掛けをすると口をモゴモゴ動かしだ すなど,その時の状況にあった単語の理解が芽生えはじめている。母親や慣れた先生などに話しかけ られると笑顔になる。教室で A 児が大きな声を出して笑ったり泣いたりしていると,喜んだり考える ような表情になったりする。そのため,支援者とは違う「子ども」の存在が学級にいることは認識で きているだろう。 A 児に触れた時は,考えるような表情になることもある。また,時々触れている 方の手をゴソゴソと探索するように動かすこともある。相手を意識しつつあるが,一緒に何かをして楽 しむということはできていない。 ○題材観 本題材では,自立活動の 6 区分のうち,「人間関係の形成(1)他者とのかかわりの基礎に関する こと」「コミュニケーション(1)コミュニケーションの基礎的能力に関すること」を中心に授業を 行っていく。 児童は2名とも楽しい活動をした後,その活動を「もう一回してほしい」という期待感を持ったり することはある程度形成されてきている。しかし,要求をすることは難しく,指導者からの言葉掛け に応じるように声や表情を出すことも不安定である。児童が好きな活動でかつ何度も繰り返すことの できる毛布ブランコは児童の「もう一回してほしい」という期待感を高め,要求につなげていくこと に適した活動である。そして,児童の気持ちが高まっているときに指導者から言葉掛けを行うことで, 児童の応答的な動きや表情を引き出すことが期待できる。また,児童の覚醒を高めることもねらうこ とができる。 児童は慣れた大人との関係はある程度安定しているが,視覚障害を併せ有するため,児童同士の認 識はしっかりともてていない状態にあると考えられる。そのため,支援者とは違う「子ども」への存 在への気付きを深める必要がある。そして,相手の存在を確認した上で同じ場で遊びを楽しむという ということが,子ども同士の関係づくりの初期段階であると考えられる。聴覚や触覚を活用しながら 相手を確認することが,相手の認識を深めることにつながるだろう。そして,その活動に続いてお互 いが好きなエアーマットを一緒に行い,「友達と一緒にいる」と「楽しい」を結びつける経験につな げていく。その経験を積み重ねることで友達との人間関係を育むことが期待できる。 ○指導観 リラックス体操ではおだやかな言葉掛けを行い,児童が自分の身体に触れている大人を意識できる ようにする。毛布ブランコでは児童の期待感を引き出せるよう,縦揺れや小刻み揺れなどそれぞれの 児童の好きな動きをとりいれていく。活動の後には児童の「楽しい」の気持ちに共感するよう指導者 も楽しそうに言葉掛けを行い,児童の応答的な笑顔や動きを引き出していく。応答を引き出すときの 言葉掛けは短めにし,その後ある程度の時間児童の反応を待つようにする。 二人で一緒に活動するときには相手の身体を触れたり,また触れられたりするなどの「触れあい」 の時間をしっかりととるようにする。また,声を聞かせたりすることで友達の存在を意識させるよう にする。触れあいを促しつつも,児童の姿勢や動きが安定してきたら,指導者からの接触を最低限に留 め児童の表情の変化を注意深く観察する。エアーマットの活動の時も,安全性に配慮しながらお互い - 14 - が触れ合えるようにして, 「一緒に活動している」ということを感じられるようにする。 各活動をする時は,毎回使用している歌や音楽を聞かせて,活動への意識を高めるようにしたい。 また,言葉掛けや活動に対する表情や動きの変化を確実に見ながら授業を進めていきたい。 6 題材の目標 ・指導者の言葉掛けに応えるように動き出したり,表情を出したりする ・友達の存在に気づいて,表情を変えることができる 7 指導計画[全 42 時間] 本時 33/42 8 本時の目標 ○全体の目標 ・指導者からの言葉掛けに応じるように動きや表情を表出することができる。 ・クラスの児童と触れあって表情を変えることができる。 ○個々の目標 児童名 個々の実態・様子 目標 手立て A ・楽しい活動があると,声や動き ・言葉掛けに対して応じる ・楽しそうに言葉掛けを はよく出るが,指導者の言葉掛け ように声や動きを出したり し,児童の気持ちを高め に応じるように出すことは不安 できる。 るようにする。 定。 ・友達に触れたり触れられ ・身体が相手にしっかり ・友達に触れられると動きを止め たりして,喜んだり考えた と触れるようにする。楽 て考えるような表情になること りするなど表情を変えるこ しい活動を一緒に行う。 がある。 とができる。 ・普段は笑顔や声を出すことは少 ・「もう一回する?」の言葉 ・児童の好きな活動をし ないが,嬉しいときには言葉掛け 掛けに対して応じるように て,気持ちを高めた後に に応じるように笑顔になったり 笑顔を表出したり声を出し 言葉掛けをする。 声を出したりすることがある。 たりできる。 ・言葉掛けの際の言葉を ・友達に触れられると考えるよう ・友達に触れたり触れられ 数語にしぼる。 な表情になったり,探るように指 たりして,表情を変えるこ ・覚醒が高まった状態で を動かしたりすることがある。 とができる。 触れあいをする。友達の B 声を聴かせる。楽しい活 動を一緒に行う。 9 準備物 布団(2枚),エアーマット,ステップバイステップ with レベル,毛布ブランコ,クッション,CD, CD プレイヤー - 15 - 10 指導過程 学習活動 指導上の留意点 □課題 ①はじめ ○支援・留意点 ☆評価の観点 A(T2) B(T1) 全体 ○体調と姿勢を確認する。 ○体調と姿勢を確認する。 ○ 布団 の上 で仰臥 位にな ○クッションを枕にする。 る。 のあいさ つをする。 ○日直の児童の側で言葉掛 (2分) けを行う。日直にスイッチ をおさせる。 ②リラッ 身体の力を抜くことができ 身体の各部に触れられるこ ○言葉掛けをしながら身体 クス体操 る。 とを受け入れる。 に触れていく。 を す る 。 ○落ち着けるよう穏やかに ○感覚過敏に配慮し,適度 ○CD プレイヤーでリラッ (8分) 言葉掛けをする。 に圧をかけながら身体にふ クス体操の CD をならす。 ☆身体の力を抜き,落ち着 れる。 くことができたか。 ☆ 手や 足の 動きを 少なく し,触れられることを受け 入れられたか。 ③毛布ブ 毛布ブランコが止まったこ 毛布ブランコが止まったあ ○始める前に「桃の木」の ランコを とや,言葉掛けに対して応 との, 「もう一回する?」等 最初を歌って,次の活動を する。 じるように声を出したり, の言葉掛けに対して応じる 意識させる。 ように笑顔になったり腕を ○各自の布団の上で行う。 ○左右揺れを数回する。次 動かしたりすることを繰り ○揺らしているときは「桃 に小刻み揺れを数回する。 返す。 の木」の歌をうたう。 ○体調や表情に応じて回数 ○左右ゆれを数回する。 ○揺れを止めた後に言葉掛 を増減したり,小刻み揺れ ○揺れの最中に笑顔が出な けを行い,反応を待つ。 をしたりするなどの調整を かった場合は,止まった時 ○スペースを広めにとり安 する。 の言葉かけは少なくし,再 全に配慮する。 ○ 楽 しそ う に言 葉掛 けを 度揺らす。 ○待っている児童に「○○ し,児童の気持ちを盛り上 ○体調や表情に応じて回数 ちゃん楽しそうだね」と楽 げる。 を増減したり,上下揺れを しそうに言葉掛けをする。 ☆言葉掛けに対して,頭を したりするなどの調整をす 揺らしたり声を出したりす る。 ることができたか。 ○「もう一回する?」の言 (13分) 身体を揺らしたりする。 葉掛けの後はしばらく反応 を待つ。 ☆言葉掛けに対して,笑顔 になったり動きを出したり することができたか。 - 16 - ④友達に 触れたり 触れられ たりする。 (7分) 友達に触れたときや触れられた時に表情を変える ○仰向けや側臥位など姿勢 ○仰向けや側臥位など姿勢 を変えながら B 児の手・身 を変えながら A 児の手・身 体に触れさせたりする。 体・髪に触れさせたりする。 ○声が出るように気持ちを ○A 児の顔や経鼻経管に触 盛り上げる。 れないように気を付ける。 ○ステップバイステップで ○手を A 児の首の下や胸の 録音された B 児の声を聞か 上におくようにして A 児に せる。 触れさせる。 ☆笑顔になる,動きを止め ☆目をじっと開ける,A 児 て 考 える よ うな 表情 をす の いる 方向 に眼球 を向け る,など表情を変えること る,右手を探るように動か ができたか。 す,身体の動きを止めて考 ○二人の名前をそれぞれ呼 びかける。 ○児童の動きや姿勢が安定 したら,指導者は児童への 接触を最低限にする。 えるような表情をするなど ができたか。 ⑤2人で ○安全性に配慮しながら, ○安全性に配慮しながら, ○始める前に「バスごっこ」 一緒にエ 手が B 児の身体に触れさせ 手が A 児の身体に触れさせ の最初を歌って,次の活動 アーマッ るようにする。 るようにする。 を意識させる。 トをする。 ○触れあいをするときは経 ○顔が向いている方に A 児 ○「バスごっこ」の歌をう (10分) 鼻経管に気を付ける。 がいるようにするために,B たう。歌の最後では, 「ぎゅ 児 が右 側に なるよ うにす ー」っと触れあいをするよ る。 うにさわらせる。1 回目先 ○触れあいをするときは胃 生,2 回目以降は友達同士 ろう部位に気を付ける。 で。 ⑥友達に ○B 児の身体や手に触れさ ○A 児の身体や手に触れさ ○エアーマットの活動前と 触れる。 せる。 せる。 表情の変化を比べる。 振り返り ○「楽しかったね」などの をする。 言葉掛けをする。「桃の木」 (3分) 「バスごっこ」の最初を歌 う。 ⑦終りの ○体調と姿勢を確認する。 ○体調と姿勢を確認する。 ○日直の児童の側で言葉掛 挨拶をす けを行う。日直にスイッチ る。 (2分) をおさせる。 ※吸引などの医療的ケアについては,看護師の指導の下で必要に応じて実施する。 11 評価の観点 [児童の活動に関する評価] ・指導者からの言葉掛けに応じるように動きや表情を表出することができたか。 ・クラスの児童と触れあって表情を変えることができたか。 [指導状況に関する評価] - 17 - ・実態に応じた指導をしていたか。 ・教材・教具は目標達成に対して効果的であったか。 12 年間指導計画 ○健康の保持と身体の動き,コミュニケーションに関すること ・マッサージを行い,身体のリラクゼーションを図る。 ・友だちとの関わりを通して,見通しや期待感を育てる。 ・揺れや揺さぶり遊びなどを経験し,感覚統合能力を高め,刺激を受け止める力,身体をイメージ する力を養う。 13 教室内配置図 学習活動①~③ CD プレイヤー 布団 布団 A B 洗 面 (*毛布ブランコは各自の布団の上でおこなう) 台 学習活動④~⑦ CD プレイヤー 布団 布団 A B エアーマット 洗 面 (*活動④では一つの布団の上に二人のる) 台 - 18 - 自立活動 学習指導案 指導者 1 日時・場所 教諭 本田易久 平成26年1月24日(金) 3校時 11:10~12:00 中学部3年1組教室 2 授業形態 個別 3 学部・学年 中学部 4 題 材 リラックスして身体を動かそう 名 第3学年1組 1 名 (Ⅲ類型) つかもう,奥歯で噛もう 5 題材設定の理由 ○生徒観 本生徒は,ダウン症とウエスト症候群の疾患を有する生徒である。特に,ウエスト症候群は,小さいてん かんの発作が頻繁に起き,頻度は少ないが,時間の長い発作もあることが特徴である。その場合,全身が 脱力して顔面から前に倒れてしまうので,どのような状況の時も,怪我をさせないように最大限の注意を払 っている。また,時間の長い発作の場合は,その後眠くなることが多く,無理をさせないでしばらく休養させ ている。 身体的には,胸椎から腰椎にかけて側彎が進行しており,覚醒が不十分なときは,床に座っていると自 然に身体が左に倒れてしまう。しかし,確実に覚醒しているときは,極端に身体が倒れることはなく維持す ることができている。昨年 7 月より,側彎の補装具を着用するようになり,倒れることは少なくなってきている。 側彎の進行を防ぐということは現代医学でも難しいということだが,補装具に頼り筋力の低下や筋の硬直 が懸念されるので,筋力や筋の柔軟性を維持することが課題である。 排尿については 10 時・12 時・14 時の定時排泄が確立している。また,手すりを利用することで立位での 排尿もできるようになり,以前の座っての排尿より,スムーズに短時間で排尿することができるようになって いる。 食欲は旺盛で,食物(給食など)が見えると,手を伸ばし側にいる人の腕などをつかみ催促する。スプー ンを見せるとそれを見て握り,自力で口まで運び,スプーンに載った食物が少し残ることはあるが上手に 口腔内に入れ,そのスプーンを,自分で出すことができている。皿を目の前に出して意識させることで,手 すく に持ったスプーンを皿の位置に持って行こうとする行動も見られるようになってきているので,食物を掬え そしゃく るようになり,自分で食事ができるようになることが課題である。咀嚼は不十分で,舌で潰すようにして飲 み込むことが多い。小学部の頃は,誤嚥による肺炎の状況がよく見られたが,徐々に自力で咳をして吐き 出すことがうまくできるようになり,現在のところその状況はない。食物を噛んで食べることができるように なることも課題である。スポーツドリンクや牛乳などの飲み物も,コップで上手に飲むことができている。 塗ったり貼ったり書いたりの作業は,手添えをして行なっている。嫌がって手を引っ込めてしまうこともあ るが,握ったものを落とさないように手を添えることで,落とすことが少なくなってきている。 楽器の鈴やマラカスなどを振って遊ぶことが好きなので,積極的に自分の周囲を見渡して探すが,視線 が常に下方にあり,視野が狭いので,見つけることが難しいときが多い。視線を上げることと追試できるよ - 19 - うになることが課題である。また,自分の気になるものが手の届かないところにあると,あぐらの姿勢から ば は 四つ這いの姿勢になり,這って取りに行こうとする。左肘が脱臼したままなので,安定性は不十分だが,気 分が乗っている時には,5~6mは移動することができる。筋力を維持増進するには,よい運動になるので, 自由にさせたいが発作があるので,安全に留意しながら長時間はさせないようにしている。 コミュニケーションについては,その場から移動したい時など,側にいる人に手を挙げて「抱きかかえて 欲しい」と要求する。また,給食の時など「食べたい」と介助者の顔をのぞきこんだり,周りの教員の方を見 つめたり,手を伸ばし側にいる人の腕などをつかんで引っ張ったりすることが,少しずつ見られるようになっ てきているので,「いただきます」「ください」のサインを覚えることが課題である。更に,名前を呼んだり言葉 をかけると,顔を上げてその人を見たり,腕を突っ張って返事をしたりすることも,時折見られるようになっ てきている。 ○題材観 筋力や筋の柔軟性を維持するストレッチやフィジオロール・ベンチ椅子を使っての運動は,担当 PT と連携 し,昨年度より日々時間を見つけ毎日続けてきている。フィジオロールやベンチ椅子は,不安定なことから怖 がることもあったが,日々続けていく間に徐々にその怖さも薄らいできており,リラックスをしてしっかり身体を 伸ばしたりひねったりの運動ができるようになってきている。現在のところ,腰の可動域は広がり,筋力や筋 の柔軟性を維持することはできている。 つか 鈴を使っての追視・握りの練習は,本人が普段から興味を持って掴んで振ることが好きなのだが,視線が いつも下方にあり,目線より上にあると視野に入らないことや,ゆっくり動かしても追視しようとしないことから, 中 2 の 2 学期からはじめてきた。徐々に鈴の位置や揺らし方を変えることで,少しずつ視線が上がってきてお つか り,追視も以前に比べ良くなり,的確に掴むということも少しずつできるようになってきているので,継続して 取り組むことが必要だと考えている。 食欲は旺盛で要求する行動は積極的なので,そのことを通してコミュニケーションの力を付けていくことが 有効ではないかと考え,「いただきます」などのサインの会得を目標に続けてきている。また,給食では,咀 嚼は不十分で,舌で潰すようにして飲み込むことが多いということから,健康・安全のため,きざみ食にしてい るので,なかなか咀嚼の練習ができないのが現実である。そういう理由から,家庭より毎日スナック菓子を持 ってきてもらい,毎日奥歯で噛む練習をしている。給食では,スプーンを使っての摂食指導を行ってきている つか ので,その延長として,自分で菓子を見て親指と人差指で掴み口に入れる練習も行ってきている。 ○指導観 体力作りや食事指導だけでなく,学校でのすべての教育活動の中で,表情や動きを観察し言葉かけや目 を合わせることを含め,スキンシップをしながらコミュニケーションの力を付けていくことが必要だと考えてい る。その上で,身体作りや食事指導・コミュニケーション能力の獲得は,長期計画で継続的に行う必要がある。 一年次からの様子の変化や家庭での様子,そして S 園の担当 PT や整形医との連携を行いながら実態を把 握し,取りくみの方向性を模索してきた。また,本生徒との人間関係作りにおいては,身体のふれあい等を通 して,言葉をかけたりその時々の反応等を理解したりしながらコミュニケーションを取ってきた。身体作りに関 しては,本生徒の興味関心のあることを通して工夫しながら行うことが必要だと考えている。 しかし,発作の関係もあり,登校時は充分覚醒していないことが多い。覚醒が充分でない時には,自分か つか ら好きな玩具を探したり「抱きかかえて欲しい」と手を上げたり,相手の腕を掴んで「食べさせて欲しい」など の要求行動は極端に少なくなるので,まずは,確実に覚醒レベルを上げることが必要である。そういう目的も 視野に入れ,無理のない範囲でストレッチを行い,徐々に覚醒レベルを上げることと同時に,その都度,表情 - 20 - や反応を見ながら進めていくことが必要だと考えている。 鈴を使っての追視・握りの練習は,徐々に鈴を上にあげたり,揺らし方を変えたりしているのだが,本人の 視線を確認しながら調整していくことが必要だと考えている。 つか つか スナック菓子を親指と人差指でつまむということはできないが,なんとか手で掴もうとし,掴むと口の方まで 持って行こうとするようになってきている。まずは,目でスナック菓子に視線を向けさせること,そして,そこへ 手を持って行って握ることが確実にできるようによう継続して練習していくことが必要だと考えている。その段 階で,指でつまむということも少しずつ練習していくことが,自力でものを食べることにつながると考えている。 現在のところ,口の中に入った食物を自分で奥歯に持って行き,噛み砕くということはできないので,奥歯付 近にスナック菓子を入れることにより,上手に噛むことができるようになってきている。給食の摂食指導も含 め,咀嚼ということを視野に入れながら,取りくむ必要がある。 6 題材の目標 ・ 身体機能の維持・増進を行う。 ・ 追視ができるようになり,視野を広げる。 ・ 目と手の協応ができるようになる。 ・ 「いただきます」などサインを覚える。 そしゃく ・ 咀嚼ができるようになる。 7 指導計画[全175時間] 本時140/175 8 本時の目標 生徒名 実態 目標 手立て ・常に周りの玩具などを探して ・教員と目を合わせ,授業の始 ・ゆっくりとした言葉で話しか 視線が合いにくい。 ・側彎があり,覚醒が不十分な まりを意識する。 け,注目させる。 ・教員と一緒に身体を動かした ・関節・筋の可動域を確認しな 状態の時は,座位を取って り,揺れを感じたりして,確 がら,ストレッチ体操を行い, いても左に倒れてしまい,声 実に覚醒し,声や目線・表情 徐々に覚醒させていく。 や目線・表情での表現が難 で表現する。 しい。 ・普段の視線が下方にあること A が多く,また,目と手の協応 ・視線を上げ,動くものを追視 つか し手で掴める。 が不十分である。 ・天井から吊り下げた鈴を,高 さを変えたり,色々な揺らし 方をしたりして,それを追視 つか させ掴まえさせるようにす る。 ・食物を意識すると,手を伸ば したり体を伸ばしたりして要 ・「いただきます」「ごちそ うさ ま」のサインをする。 ・言葉で「いただきます」と言い ながら,左右の手を近づけ 求する。両手を近づけると, るように補助し,手を重ねる 手を合わせることもある。 ことができたら食べ始めるよ うにする。 - 21 - つか ・食物を自分で掴むことや持た つか ・食物を見て掴もうとする。 ・親指と人差し指を使って食物 つま せたものを口まで運ぶことが を摘むよう介助する。 つか 難しい。 つま ・掴んだ食物を口まで持ってい ・摘んだ食物を食べやすいよう く。 そしゃく ・咀嚼は不十分で,舌で潰すよ に位置を変える。 ・奥歯で噛んで飲み込む。 ・口まで持って行ったら,奥歯 う に して飲 み込 む ことが多 で噛むよう食物を奥歯に当 い。 たるように入れる。 9 準備物 布団・シーツ・フジィオロール・ベンチ椅子・鈴・紐・タイマー・スナック菓子(毎日家庭から持ってきている)・ス ポーツドリンク(毎日家庭から持ってきている)・エプロン・コップ・タオル・ゴム手袋・アルコール消毒液・BGM の CD・CD レコーダー 10 指導過程 学習活動 ・車椅子から降車し,布団 指導上の留意点 課題 ○支援 ☆評価の観点 ※留意点 ○骨盤・手・腕の位置を確認し,座位での安定を図る。 に 移 動 し , あ ぐ ら に な ※当日の覚醒の度合いによっては,仰臥位にする場合もある。 る。 ・あいさつ(2 分) 始まりの挨拶をする。 教員と目を合わせ,授業の始まりを意識する。 ○ゆっくりとした言葉で語りかける。 ☆目を確実に合わせることができたか。 身体ほぐし(25 分) ・脚の伸縮運動 教員と一緒に筋肉や筋・関節を動かしたり伸ばしたりする。 感覚を声や目線・表情で表現する。確実に覚醒する。 ・腰のひねり運動 ○ゆっくりと伸展・屈曲しながら進めていく。 ・ベンチ椅子に座っての運 ※どの活動も左右対称におこない,関節可動域に十分留意する。 ☆動かしている・伸ばしているということを意識し,その時の感覚を声や目線・表 動 情で表現できたか。 ・フィジオロールを使って の運動 リラックスして揺れを感じる。 ○ゆっくり前後・左右・上下の揺らしを行う。 ※フィジオロールから落下させないように安全に留意する。 ☆その時の感覚を声や目線・表情で表現できたか。 ・腰の補装具の装着 ※位置を確認しながら確実に装着する。 つか ・鈴を掴む つか 揺れる鈴を追視し,確実に掴む。 ○鈴の高さや,揺らし方などを色々変えながら進めていく。 ※発作があるので,周囲の安全に十分留意する。 つか ☆鈴を確実に追視し,掴むことができたか。 - 22 - つま 摘むことや咀嚼の練習(20 分) ・車いすへの移動 ○車椅子に乗り,テーブルを装着し,エプロンをつけ,濡れタオルで手を拭き,ア ルコール消毒液で消毒する。 ※体幹が倒れないように垂直に近い状態にする。衛生面に留意する。 ・「いただきます」のサイン をする 手を合わせる。 ○スナック菓子を見せ,言葉をかけると同時に,両手を近づけるように補助す る。 ※スナック菓子を食べるということを,確実に意識させるようにする。 ☆手を合わせることができたか。 ・摂取 つか スナック菓子を見て掴む。 つか ○目の前にスナック菓子を提示し,それを触らせ掴もうとするまで待つ。 つか その後,うまく掴めるよう,手を添えるなどの支援をする。 つか ※口に入れやすいよう,スナック菓子の端を掴むように位置を調整する。 つか ☆自分でスナック菓子を掴もうとしたか。 スナック菓子を口までもっていく。 ○口に入れるまで待つ。 口に入れたら,なるべく奥歯の位置に入れるよう補助する。 ※途中でスナック菓子を落としたら最初からやり直す。 ☆スナック菓子を口に入れようとしたか。 奥歯で噛む。 ○口・歯・噛んだ音などで確認し,徐々にスナック菓子を奥に行くようにする。 ※噛む前に口から出してしまわないように,噛むまで教員の手で保持しておく。 (スナック菓子がなくなるま で繰り返し) ☆奥歯で確実に噛むことができたか。 コップの取っ手をよく見て握り,口まで持っていく ○コップを見せ水分補給することを意識させる。取っ手を握りやすい方向へ向 ・水分補給 こぼ け,零れないように補助し,口まで行ったら徐々に方向ける。 ※一気に飲んで喉につまらせないように,息づきなどを確認しながらコップの傾 きを調整する。 ・「ごちそうさま」のサイン をする 手を合わせる ○空になったスナック菓子の容器を見せる。 ☆手を合わせることができたか。 活動の振り返り(3 分) ・身辺整理 教員と関わりながら,手・口元を拭き,エプロンを外し,気持ちと身辺を整える。 教員と目を合わせ,意識する。 ・あいさつ ○ゆっくりとした言葉で語りかける。 ☆目を確実に合わせることができたか。 - 23 - 11 評価の観点 「生徒の活動に関する評価」 ・確実に覚醒し,自分の思いや感情・感覚を,表情で表現できたか。 ・リラックスして揺れを感じることができたか。 ・鈴を追視できたか。 ・「いただきます」「ごちそうさま」のサインをすることができたか。 つま ・スナック菓子を自分で摘み,口まで持って行き,奥歯で噛むことができたか。 「指導状況に関する評価」 ・実態に応じた指導をしていたか。 ・教材・教具は目標達成に向けて効果的であったか。 12 年間指導計画 個別の指導計画による 13 教室配置 (中学部3年1組教室) CD S ○ 鈴 T ○ フィジオロール 机 布団 スナック菓子・タオル エプロン・ゴム手袋 車椅子 スポーツドリンク・コップ アルコール消毒液 - 24 - ベンチ椅子 自立活動(創作・感覚) 学習指導案 指導者 メインティーチャー 奥田 佳子(T1) サブティーチャー 池上 民 (T2) 1 場所・日時 平成26年 1月24日(金) 2校時 10:05~10:55 高等部2年3組教室 2 授業形態 決定学級 3 学部・学年 高等部 第2学年3組(Ⅲ類型) 4 題 材 名 冬の味覚を味わおう 2名 5 題材設定の理由 ○生徒観 2名とも,本校中学部から高等部へ進学し,Ⅲ類型(自立活動を中心とした教育課程)で学習している。2 名は障害特性から身体的な接触は難しい。しかし,お互いの存在を意識し合っており,お互いの声に反応し て笑うなど生活体験から仲間としての人間関係を築いている。 Aは,1歳7ヶ月の時に頭部左側を損傷(急性硬膜下血腫)し,後遺症による体幹機能障害,視覚障害を 有する。手探りや気配で察知したり,手に持ったものを口に入れたりすることで確認している。右手足に麻痺 があり,ほとんど動かすことができないが,左手足は活発に動かすことができる。あぐら座位では安定した座 位が取れ,車椅子でも座位は取れるが,自分の楽な姿勢に傾いてしまうので長時間は難しく,時々座り直し たり畳に降りたりする時間が必要である。 挨拶や質問に対して左手を前に振ることにより「はい」を表現することができ,興味のないことや嫌なことな どには反応を示さないというように,自分の意思を示す。また,「お茶」や「ご飯」などの言語は理解しており, その欲求を言葉で伝えることができるが,雰囲気で発している場面もあり,正確ではない。賑やかな雰囲気 が好きで,テンションが上がってしまうと大きな声を出したり,激しく体を揺さぶったりすることで,気持ちを表 現している。 Bは,脳性まひによる体幹機能障害,四肢の拘縮があり,右側わんが進んでいるため,生活全般におい て支援を必要とする。上肢は両上肢機能全廃であり,自らの意思で道具を持ったり使ったりすることはできな いため,指導者の支援が必要である。可動域が狭く,骨が弱いため支援するときには十分な配慮が必要で ある。聴力はあり,声がする方に顔を向けることができる。友達の声や大人の声をよく聞いており,楽しそう に笑うこともある。普段からよく使う「ご飯」「お茶」「笑顔」などといった言語は理解しているが,どこまで言語 を理解しているかは分からない。視力は目の前のものを注視したり,動いているものを目で追ったりする様 子が見られることや光の下では眩しそうな表情をすることもあるので,明暗ぐらいは分かると思われる。口か ら水分補給をしたり給食(ペースト食)を食べたりすることができるが,固形物を噛むことはできない。 コミュニケーションは,楽しい時や機嫌がいいときは笑顔になったり,声を出したりすることで気持ちを表現 し,不快の時や気持ちが落ち着かない時は泣いて意思表示をすることができる。現在はあいさつや好きな事 柄に対しての返事を,笑顔を見せることで伝えられるように口角を上げるよう指導している。しかし,表情の 表出は不安定であり,タイミングよく笑顔になった時にはしっかり褒めるようにしている。 また,痰の吸引の医療的ケアも必要なため,授業中においても痰が絡んだ時は痰の吸引を優先させる。 痰は体調によっても異なるが,仰向けでいると絡むことが多い。自力で咳きこんで痰をあげることができ,吸 引器で吸引すると落ち着いている。痰が多く呼吸が速くなっているときは,看護師と連携し,鼻から吸引して - 25 - もらうこともある。 ○題材観 本題材は,野菜,調味料の味や匂いを確かめながら調理をし,自分が感じたことを表情・声・視線・しぐさ で表すことを目標に,自立活動の内容6区分の内,「環境の把握(1)保有する感覚の活用に関すること」「コ ミュニケーション(1)コミュニケーションの基礎的能力に関すること」を中心に授業をおこなっていく。 本題材においては,甘さや塩からさおよび酸っぱさを感じさせてくれる調味料を使用したり,ゆずや大根の 香りなどを匂ったりすることで,生徒たちが保有している感覚のうち,味覚や嗅覚を刺激するのに適している。 基本的な味である甘味や塩味は少量でも味を感じやすく,好きや嫌い表情や声に出して意思表出しやすく, 自分の気持ちを伝えやすい。大根やゆずは冬が旬であり,冬の味覚を味わうことで季節を感じ,環境の把握 に繋がる。 材料は粉末,液体,固体があり,形態の異なるものを使用することでそれぞれの触感の違いを感じること ができる。 ○指導観 指導にあたっては,材料の香りや味を確認させ,それぞれの反応を確かめながら進めていく。また,活動 する前には今から何をするのか必ず言葉かけをおこない,動作を意識させ安全に注意しながら取り組むよう にする。 Aは直接触ってする作業(揉む・ちぎるなど)は積極的に手を動かすことができるが,力のコントロールが難 しい。また,道具を使う場合は道具を手から離すこともあるので注意が必要である。特に左手で作業する場 合は,スプーンなど振り回すことがあるので安全に作業させる。左手を使い作業をすることで,保有する機能 を維持する。また,指導者の言語を理解し,的確に活動することができたときはきちんと褒め,指導者とのや り取りを通して,簡単な言語指示によって動作を獲得させたい。 Bは手指の関節が硬く,道具を自ら持って作業することは難しいため,支援が必要である。そのため,手 が硬くなっているときはマッサージをして関節を緩ませてから道具を持たせるようにする。味覚や嗅覚は敏感 で,酸っぱい味や匂いは嫌いであるが,チョコレートのような甘い味や匂いは好きである。刺激を受けた時に 表した表情を,指導者がタイミングよく言葉にすることで,自分の気持ちを理解してくれたという経験を増やし, コミュニケーションの手段として活用できるように育てていきたい。 生徒の気持ちをくみ取りながらも授業であることを意識させ,主体的に活動ができるようにしっかりと言葉 をかけながら行う。 6 題材の目標 ・野菜の感触や調味料などの味覚を確かめることで,季節を感じる。 ・自分の気持ちを表情・声・視線・しぐさで表し,他者とのやり取りを図る。 7 指導計画 [全70時間] 本題材 本 時 全 3時間 3/3時間 - 26 - 8 本時の目標 ○全体の目標 ・個々の感じたことを伝えあうことで,お互いのコミュニケーションを図る。 ○個々の目標 生徒名 実態 目標 手立て ・揉むやちぎるといった動作は ・「優しく」や「離して」などの言 ・指示が伝わるようにはっきり A できるが,力をコントロール 葉かけに対して,適切な動作 と言葉がけを行う。 することは難しい。 をすることができる。 ・嗅覚や味覚を感じ取ることは ・食べ物の味や匂いを感じ, ・材料が何かを伝えてから, B できるが,好き嫌いの表出は 好き嫌いを笑顔などの表情や 匂いや味を確かめさせる。味 不安定である。 声で表出することができる。 わうときは舐める程度の量を 与える。 9 準備物 エプロン,大根,ゆず,調味料,ピーラー,ビニール袋,洗い桶,ペットボトル,布巾 10 指導過程 指導上の留意点(□課題 ○支援・配慮 ☆評価 ※留意点) 学習活動 A(T2) B(T1) 全体 1 . は じ め の 挨 ○教員と一緒に挨拶をす ○挨拶をするAの顔が見え ・それぞれの準備が整って 拶をする。(2分) る。 る位置に移動する。 いるか確認してから,挨拶 をする。 2.身じたくをし, ○スモッグを着させ,手を ○エプロンを着させ,手を ・身じたくをし,手指を清潔 本時の活動を確 洗う。 認する。 (8分) 洗う。 に保つ。 ○匂いを嗅いだ後,大根を 食べ物の味や匂いを感 ・ゆず大根の匂いを嗅ぎ, 食べさせ味見をする。 じ,好き嫌いを笑顔など 味見をさせる。 の表情や声で表出する ことができる。 ○匂いを嗅いだ後,漬け汁 の味を舐める。 3.ゆず大根を 「優しく」や「離して」など ・ゆず大根を作るための材 作る。(35分) の言葉かけに対して, 料は計量しておく。大根と 適切な動作をすること ゆずも切ったものを用意す ができる。 る。 ①材料を確認 し,混ぜる ○塩,砂糖の順番で味見 ○塩,砂糖の順番で味見 ・材料の確認し,砂糖と塩 をする。酢は直接匂わせな をする。酢は直接匂わせな の味見をさせる。酢はお皿 いようにする。 いようにする。 - 27 - に移し匂いだけ嗅がせる。 ○砂糖と塩を袋に入れ,袋 ○砂糖と塩だけの時とそれ の上から揉ませる。袋を破 に酢を加えた時の袋を触ら らないように注意する。 ②ゆずを絞る せ,匂いを確認する。 ○ゆずの香りを確かめ,袋 ○ゆずの香りを嗅がせる。 ・ゆずの香りを確かめてか の上から優しく絞るように 好き嫌いを表出することが ら,それぞれの方法で果汁 声をかける できたら,言葉で本人に確 を絞る。 認する。 ○ゆずを上から押さえるよ うに触らせる。 ③大根の皮をむ ○細く切った大根を食べさ ○細く切った大根を舐めさ ・皮をむく作業をする。 く せる。大根の皮を順番にむ せる。 くことを伝える。 ・大根は1つのものを2人 ○Aが作業している様子を でむく。Aから作業を行い, ○ピーラーをしっかりと手 見させる。 お互いの作業の様子を見 に持ち,怪我をしないよう ○道具を持たせ,手指の て,交流する。 に安全に注意する。 可動域に無理のない範囲 ○Bが作業している様子を で皮をむく動きを体験させ みさせる。 る。 ④材料を混ぜて ○袋の上から大根と調味 ○袋の上から触り,大根の ・材料を混ぜあわせる。 揉む 料が均等に混ざるように, 硬さや温度を感じさせる。 優しく揉ませる。 ・袋を二重にして,調味液 ○出来上がりの匂いを嗅 がこぼれないようにする。 ○調味料が溶けたら,袋か がせる。 ら手を離すように声をかけ る。 ☆「優しく」や「離して」など の言葉かけに対して,適切 ☆食べ物の味や匂いを感 な 動 作 を す る こ と が で き じ,好き嫌いを笑顔などの た。 表情や声で表出することが できた。 4.活動を振り返 ○ 生 徒 の 気 持 ち を く み 取 ○ 生 徒の 気 持ち をくみ 取 ・教員と一緒に活動を振り り返る。(3分) り,頑張ったことを発表す り,頑張ったことを発表す 返る。 る。 る。 5.おわりの挨拶 ○教員と一緒に挨拶をする ○挨拶をするAの顔が見え ・それぞれの体調を確認し をする。(2分) る位置に移動する。 - 28 - てから,挨拶をする。 11 評価の観点 [生徒の活動に関する評価] ・個々の感じたことを伝えあうことで,お互いのコミュニケーションを図ることができたか。 ・個々の目標を達成することができたか。 [指導状況に関する評価] ・実態に応じた支援をしていたか。 ・教材・教具は目標達成に対して効果的であったか。 12 年間指導計画 ・別紙 13 教室内配置図 棚 畳 長机 T1 入 B 口 机 A T2 ロッカー 流し - 29 - 2014/01/24 広島県立福山特別支援学校公開授業研究会 特別支援学校の教育課程の現状と課題 • 教育課程は、各学校で、教育目標を達成するために、教育の内容を 授業時数との関連において総合的に組織した学校の教育計画 卒業時までに育む『人と関わる力』とは ~特別支援学校に求められるカリキュラム開発~ • 在学児童生徒の多様な実態に応じて適切な教育課程を編成する特 別支援学校には、在学期間に、何を、どれだけの時間をかけて指導 するのか、教育内容や配当時数を決定する裁量が委ねられる。 → 各学校の判断が子どもの学びを大きく左右する。 福岡教育大学 一木 薫 • 例えば、各教科を自立活動に置き換えた意義や根拠を問われたとき、 重複障害者等の教育課程の取扱いを 適用した意図を明確に説明で きるでしょうか? • 養護学校教育義務制実施から約35年が経過した現在、特別支援 自立活動の指導で特に問われること 学校には、自らの裁量による教育課程編成の意図と教育成果が問 われる。 • 「なぜ、その指導目標、指導内容なのか」 • 各教科や自立活動の授業を担当する教師は、個々の児童生徒が在学期 間にどの程度まで力を高めることができるのか、見通しを十分に描くこと ができずに、日々の実践に不安を抱えている実態も明らかになっている。 • 各教科の場合と異なり、自立活動では指導する内容を個々の 子どもの実態に応じて選ぶことできるので、より個別性に対応 した授業実践ができる。 在学期間に、何を、どれだけの時間をかけて指導するとよいのか • 子どもの学びの成立が、指導を担当する教師の力量に左右さ れがち。 学校が主体となるカリキュラム研究が喫緊の課題 広島県立福山特別支援学校では 学習到達度チェックリスト • 卒業後の生活では、どのような1日を過ごしていますか? • 知的障害が重度な子どもに 対して、初期段階の発達を 手がかりに、国語や算数など 教科の観点で目標設定を行 うためのガイド(徳永,2013) • その生活をよりよく生きていくために必要な力は? • 「人と関わる力」について、どんな場面で、誰と、どのように関 わることができると、よりよく生きていくことにつながるのか? • その「人と関わる力」を、今は、どの場面で育んでいますか? • 「人と関わる力」の実態把握、目標設定に必要なものさし(学 校で共有するものさし)は? - 30 - 研究協議 1 授業者の 授業者の反省 <小学部 3 年生 馬場 健>「自立活動(からだ) 」 :からだをうごかそう 今回の授業の毛布ブランコでは,大人からの言葉かけに反応する,対大人とのコミュニケーションに焦 点を置き,エアーマットでは友だちに気づく,対児童とのコミュニケーションに焦点をおいて授業を行っ た。毛布ブランコでAは,大人からの働きかけに対して声を出して反応する事を目標とし,今後あいさつ や呼名への返事につなげることをねらった。Bは,本日体調がすぐれず,あまり笑顔が出なかったが,今 後,呼吸状態の改善や摂食指導を通して声を出すことを増やしていきたい。エアーマットでAは友だちの 手に触れると考えるような表情をし,Bは手を動かして相手を確認していた。本時間全体を通して,バス ごっこの曲をかけての活動をあまり楽しめず反省として残ったが,歌なしでの規則的なゆれを楽しめたの で,今後の参考にしたい。 <中学部 3 年生 本田 易久>「自立活動(個別) 」 :リラックスして身体を動かそう つかもう,奥歯で噛 もう Aとは出会って2年で,実態把握の結果,Aは寝ころぶと指が吸うことができ,食べ物への興味が強い ので,自分で持って食べることができるのではないかと考えた。物を口に入れることや食物を噛むことが 徐々にできるようになった。今後,長期的な繰り返しの中で少しずつ伸びていってほしい。今回はコミュ ニケーションというテーマなので,本時では,Aの好きな食べるという活動を通して,周りを意識するこ と,大人との関わりの中で楽しみを見つけることを目標とする。Aは,側わんがあるため,転がっての体 幹のひねりやベンチ椅子での背筋の伸びで,縮まった筋肉を伸ばすようにした。今回のビデオで普段背中 側からでは見えない本児の活動中の気持ちよさそうな表情を見ることができたので良かった。 <高等部 2 年生 奥田 佳子>「自立活動(創作・感覚) 」 :冬の味覚を味わおう Aは意思表示ができるので対大人とのコミュニケーションを目標に置き,Bはこちら側のくみ取りが 必要なので,自分の気持ちを相手に伝えることを本時の目標とした。AB同士のコミュニケーションは障 害特性上難しい。Aは適切な行動をするという目標だったが,3回繰り返して授業を行ったので,流れを 覚えて来つつあり,ゆずをしぼるなどそれぞれの作業を指示通りに行うことができた。Bは甘い砂糖の味 見で, 「砂糖」と聞くだけで自分から口をあけるなど,おいしい,食べたいという気持ちを表出できた。 ABともにお互いの声に耳を傾け,互いを意識できていたように思う。補足として,Aの車椅子のブレー キは,Aの動きで転倒恐れがあるのでわざとはずしている。 2 研究協議( 研究協議(授業について 授業についての についての質疑・ 質疑・応答) 応答) 質問①: (馬場先生へ)見えない児童に対して,とても優しく丁寧な言葉かけで良かった。参観していてあ おむけや側臥位での活動が多いように感じたが,意図はあるのか?(広島) 授業者: ふれあいの際,側臥位をとったが,それ以外はあおむけ姿勢だった。児童がリラックスしやすく, Bの声も出しやすくなるため,意図的にあおむけ姿勢をしていた。 質問②: (馬場先生へ)授業開始時,Bの覚醒が低かったが,Aの声を聞いて動き出したような気がしたが どうなのか?今回は毛布ブランコでの活動だったが,抱っこでの2人の反応はどんな感じなの か?(南特呉分校) 授業者:BはAの喜んだ声に普段からよく反応する。本時では,探索よりも不随な感じはしたが,Aの声 に反応していたように思う。Bは普段からAの声を聞いて活動への期待感を持っているので,順 - 31 - 番を意図的のAの後にしている。AもBも抱っこや抱っこでのゆさぶりが好きで,Bは特に激し いゆさぶりを好み,Aは抱っこをするだけで声が出るほど喜ぶことがある。 質問③: (本田先生へ)先生との信頼関係がばっちりで良かった。奥歯で食物を食べるのは難しいが,どの ような指導の工夫を行っているのか?ハンガーに鈴がついている教材はどのように使うのか? 授業者:本児は指をかむくせがあるし,かむ力も強いが,舌の真ん中に食物を置くと歯の方へ寄せること ができずそのまま飲み込んでしまう。奥歯でかむことができるように口の中に入れる際に,意図 的に奥歯の上に食物を置くようにしている。最初は1,2回かんですぐに飲み込んでいたが,繰 り返しているうちに何度もかめるようになった。鈴のついたハンガーは生徒の遊具。本児は発作 が多く,倒れ込んでけがをするおそれがある。何かに集中しているときは発作が起こりにくいの で,少し目を離す際などはそれで遊んでいる。また,どこを見ても鈴が視界に入るようにハンガ ーの両端に鈴を取り付けている。鈴が1つのものと2つのものを用途に応じて使い分けている。 (那覇) 質問④: (奥田先生へ)女子2人での調理活動で,先生も含め,みんながエプロンや三角巾をつけて女子会 のようだった。活動時の正しい服装を楽しくかくにんするためにおしゃれ,女子会など楽しい雰 囲気を交えて一緒に確認しても良いと思う。Bは目が良く動き,表情を変えていたが,Aは砂糖 と塩の味見で反応が同じに見えたがどうか?姿勢も含め,今後,何を課題とするか?(千葉) 授業者:Aは塩辛い物も甘い物も好きなので,どちらもうれしい反応だった。酢は苦手なので,味の違い なども今後は意識し,もっと表情に出すことができたら良いと思う。Bも同様に気持ちをもっと 表情に出せたら良いと思う。姿勢の崩れにも注意していく。 3 講演( 講演(指導・ 指導・助言も 助言も含めて) めて) 福岡教育大学 特別支援教育講座 准教授 一木 薫 先生 「卒業までに育む『人と関わる力』とは」~特別支援学校に求められるカリキュラム開発~という 演題で,肢体不自由特別支援学校に在籍する児童生徒に対するコミュニケーションについての講演が授業 者への指導・助言も含めておこなわれた。 <講演内容> 講演内容は資料として別紙に掲載。 <指導・助言> それぞれの授業においてさまざまな観点からコミュニケーションを育てる工夫がなされていたとの指 導・助言をいただいた。それぞれの指導・助言を一部紹介する。 小学部(馬場先生) 「行くよ,行くよ」 「もう1回?」 「やる人?」など児童が期待して意思表示をしやすい問いかけがあっ て良かった。児童が言葉に反応したのか,毛布が動いた動きに反応したのかなど,児童が何を手がかり に見通しを持っているか考えてみると良い。 中学部(本田先生) 丁寧なストレッチが良かった。表情が見えないとのことだったので鏡を利用すると良いのでは。鈴など 「もの」への興味を人への興味へと広げていき,三項関係がつくれたら良い。また目と手を使う手指動 作の活動を今後大切にしていくと良い。 - 32 - 高等部(奥田先生) 嗅覚を利用して気持ちの表出を促していて良かった。Aは触覚を手がかりにしているのなら,利き手 だけでなく,両手で物に触ってはどうか?また聴覚優位の生徒に触覚を利用することは今後も続けてほ しい。 <指導者から授業者への質問> 一木先生:担任している児童生徒は何を手がかりに外界(変化等)をとらえていると思うか? 馬場先生:ABともに見えないので,聴覚を主に活用していると思われる。言葉が分かりつつあるので, 言葉かけの際,単語を簡単な物で統一するようにし,イントネーションや間を大切にするこ とを心がけている。また,スイッチを使用する際には,言葉に音を合わせて吹き込み(はじ めます→鈴,おわります→太鼓など) ,結びつきをねらっている。 本田先生:周囲の人の声に頭を上げたり,今日のようにいつもと違う状況で動く人を目で追ったりする など,視覚をしっかりと使っていると思われる。言葉かけも良く聞いているので聴覚も手が かりにしていると思う。 奥田先生:ABともに見えにくいので,基本は聴覚だと思うが,触覚や嗅覚など様々な感覚を使ってい ると思う。また空気感や雰囲気を察しているような気がする。 一木先生:聴覚への働きかけで,言葉かけの中でも,言葉を理解しているのか,声の変化を感じている のか,活動が始まって気づいているのか,パターンがいつもと違って気づくのか,教員の立 ち位置,因果関係など,児童生徒にとっての手がかりが何なのかという細かい見極めが必要 である。また,こちらからの働きかけに対して児童生徒の言葉以外の小さな反応を再び受け 止めることも大切である。 4 講師講演後の 講師講演後の質疑・ 質疑・応答 質問①:講義の中で,今後の成長した姿を想像できるかという話があった。成長というと,プラス,伸び るというイメージがあるが,現状維持というのは成長として評価して良いのか?(亀井先生) 講 師:本質問では,今後の指導の見通しを持てるかということが聞きたかった。小学部段階では,でき ることが増えるが,中高では現状維持や悪くならないようにということも目標になりうる。 5 外部参加者 広島県 広島市 東広島市 三原市 福山市 特別支援学校 特別支援学校 4名 1名 小学校 中学校 特別支援学校 学校評議員 1名 1名 (講演のみ) 1名 1名 (授業参観のみ) 府中市 千葉県 小学校 特別支援学校 1名 1名 高知県 沖縄県 特別支援学校 特別支援学校 1名 1名 - 33 - 計13名の参加 平成26年3月17日 平成25 平成25年度 授業研究」 のまとめについて 25年度 「授業研究 研究」のまとめについて 教育企画部 今年度授業研究の具体的な進め方としては, 「一人一研究授業」を「一学級一研究授業」に変更し,校内 研・公開研と合わせて3本柱とし,授業改善に取り組んできた。昨年度の反省を基に授業数を減らすこと で,ひとつの授業をできるだけ多くの人が参観し充実した研究協議となるようにした。 この1年の反省や意見を集約し,成果と来年度にむけての課題を明らかにしたい。 1 研究テーマについて 「児童・生徒のコミュニケーション能力を育てるための授業作りをめざして」 ~一人ひとりのコミュニケーション力の把握とアプローチ~ 昨年度より上記のテーマを設定し,自立活動の「コミュニケーション」を意識した授業作りに取組 んできた。 2年目となる今年度は,さらに児童生徒のコミュニケーション力の実態把握をより正確にしていく ことや児童生徒どおしのコミュニケーションの実態把握とアプローチを課題とした。 2 研究の成果と課題 (1)一学級一研について 内容 ・一学級について一人が一回の授業研究を行う。 ・学年単位での指導案検討の実施。 ・学部・学年を越えての授業参観・授業反省の実施 今年度から,一つのクラスで一人が授業研究を行う方法として「一学級一研」を行うこととした。 月の初めまでに授業者名と具体的な授業内容・日程・場所を表にして掲示し,参観を呼びかけた。 その結果昨年度よりは学年・学部を越えた参観者があり,授業反省も充実することができた。しか し,公開授業研究会当日の一研授業は,参観が難しいため学年・学部を越えての反省ができなかった。 来年度より公開研では協議対象授業のみの公開とし,日常の一学級一研を充実させる方向が望まし いと思われる。 (2)校内授業研究について 内容 ・各学部,年一回の校内授業研究を行う。 ・学年・学部を越えた授業参観,全校での指導案検討・反省会を実施。 ・外部から指導・助言者を招き,指導・助言を受ける。 実施 平成25年10月30日(水) 中学部・高等部 指導・助言 本校 部主事 力石 洋三・藤井 隆司 本校 指導教諭 川口 辰之進 平成25年11月29日(金) 小学部 講師 福岡教育大学 准教授 一木 薫 先生 - 34 - 各学部が年間一回の校内授業研究を行った。指導案検討を実践研究として全体会で行い,各学部の実践 報告をする中で,学部間の系統性を形成することを目標に取り組んだ。 今年度は小学部2本,中学部1本,高等部1本で行い,外部講師を小学部のみにし,中学部・高等部の 研究協議では講師として部主事及び指導教諭から指導助言を受けた。また,授業風景を撮影し特に見て欲 しい児童生徒の様子を映すことで協議のポイントが分かりやすく,積極的な協議に繋がった。 指導助言においては,実態把握の大切さ,長期的な目標を立ててからスモールステップでの授業作りを することの重要性についてアドバイスを頂いた。詳細報告は別紙の通り(研究紀要掲載)であり,その後 の授業にいかしていくことができた。 (3) 公開授業研究会について 内容 ・今年度の授業研究の成果を発表する場として授業を公開し,研究協議を行う。 ・講演会も同時開催する。 ・各学部から研究協議対象授業を出し,指導案の検討を行う。 実施 平成26年1月24日(金) 指導・助言及び講師 福岡教育大学 准教授 一木 薫 先生 ・今年度は小学校から1名,中学校から2名,特別支援学校から9名,学校評議員1名,計13名の参 加者があった。その内,県外からの参加は3名。 ・今年度から福岡教育大学の一木先生に指導・助言ならびに講演の講師をお願いした。実態把握をきめ 細かく行うことや将来を見据えた取り組みの大切さなど,本校のテーマに関する貴重な助言をいただい た。 ・今年度は研究協議が深まるよう,ポイントとなる授業場面をビデオで流しながら授業反省を行った。 ・外部参加者のアンケートでは,「児童生徒とのやりとりが丁寧でじっくり向き合っている。 」「活動の流 れはあっても,まずは子供たちの意思を確認して次の作業にいくというコミュニケーションの基本を大 切にしている。」「いろいろなクラスの授業が見れてよかった。」等の感想があり,公開した授業を高く 評価してもらうことができた。 ・自立活動部が中心となって発信している「自立活動ハンドブック」や「自立活動だより」が県内外の先生 たちに非常に参考になっていることや指導教諭への研修要請があるなど,本校の教育へ期待する記述が あった。 3 まとめ ・ 「コミュニケーション能力を育てる授業作り」というテーマを掲げて2年目になり,それぞれの児童生徒 のコミュニケーション力についてよりていねいな実態把握をしながら,それに基づいた取り組みを日々 の授業の中でおこなうようになってきた。その中で,児童生徒どおしのコミュニケーションにも視点を 向けるようになってきた。 ・一木先生からの指摘にもあったように,実態把握については,児童生徒が何を手がかりに外界をとらえ ているのか(言葉の理解か,聞いたことのある音としての理解か,視覚理解か,実際の動きでの理解か 等)を今後もより細かく見ていくことが求められている。そのためには,教員間で共通するチェックリ ストも必要になってくる。今後,自立活動部とも連携しながら検討していく必要がある。 ・研究テーマについては,全教職員に意識され日々の取り組みが行われていることが指導案から伺われる。 今年度指摘されたことをもとに,来年度も継続して同テーマで取組み,コミュニケーション力の向上を - 35 - めざしたい。 ・授業研究のすすめかたとして,今年度は多くの人が授業参観でき,研究協議が深まるよう一学級一研究 授業としたが,多くが公開研の日に重なったため参観が難しくなった。今後は公開研当日は協議対象の 3クラスのみを公開とすることで,日頃の一学級一研究授業を充実させたい。 ・校内研や公開研の研究協議の深め方については,今年度はVTRの活用,事前の司会・授業者の打ち合 わせなどで改善を図った。時間が限られた中での協議だったが,授業者の反省が簡潔で論議したい点に しぼられていたり,ビデオで児童の姿を見ることで目標設定が的確だったかどうかが共通認識できたり して,一定の成果はあったととらえている。 ・公開研の研究協議については,学部ごとの分科会形式にしてはどうかという意見が以前から出ている。 これについては,児童生徒の下校時間をこれ以上早められない中では難しいと思える。 企画部としては,全体会で行っている「校長あいさつ」「研究概要の説明」までを昼時間に行い,午後から の全体会は授業反省から始めることで研究協議の時間を今より15分程度多く確保して全体協議を充 実させるのが望ましいのではと考えている。 4 次年度に向けて ① 一学級一研究授業として,できるだけ多くの人が参観できるよう体制を組む。 ② 校内授業研究については,他学部の児童生徒のことをより知ることができ,学部間の系統性を形成 するうえで大切な場になっているので,次年度も3学部で行っていきたい。平成26年10月31 日(中),平成26年11月27日(小・高)の予定である。 ③ 公開授業研究会については,本校の授業を公開し,広く意見を求め授業改善に繋げていくことをね らって従来通り講演会と同時開催とする。平成27年1月23日の予定である。 - 36 - 研修名 第1回 摂食指導研修 期 日 平成 場 所 プレイルーム 講師等 本校 25年 指導教諭 4月 川口 15日(月) 辰之進 参加者 新転任者及び希望者 目 的 教職員の専門性の向上のため 本校の児童生徒の多くが,自力摂食が困難で教員の介助により給食を摂取して いる。また本校では児童生徒の摂食嚥下機能に応じた形態食を提供している。 従って,嚥下に関する基礎的な知識,摂食介助の際の配慮事項,介助者の一定 以上の技量,形態食への知識等は必要不可欠であり,本校の新転任者には必須の 研修である。 1 2 内 容 3 4 5 食べることの意味→生命維持,食機能維持,認知,コミュニケーション力ア ップ→ QOL の向上 教育的な意味がある(給食時間は自立活動の時間でも ある) 摂食のメカニズム→摂食 5 期と嚥下 3 期について 準備期,口腔期,咽頭期の中では,嚥下機能に関る筋肉群の動きと密接な関 係があり,そもそも運動機能障害のある児童生徒にとっては,複雑な筋肉の 協調運動である嚥下が困難な状況に陥りやすい。 体験: 口を開けたまま飲み込む → 口を閉じない(口唇閉鎖)と嚥下が極 めて困難となる,多くの児童生徒が開口状態にある。 摂食・嚥下障害とは何か? 多様な要因による困難な嚥下 誤嚥のリスク大 → 誤嚥性肺炎・窒息の原因となる → 生命の危険(要 緊急対応) いつ何時緊急事態に陥るかもしれないので,慌てること なく万 全の対応ができるようにしておくことが重要である 摂食嚥下の改善のポイント→気質的要因+機能的要因+心理的要因 観察と実態把握の大切さ →要因は相互に影響し合って密接に関係している 摂食指導の実際(改善へのアプローチ) 現象→原因要素分析→要素細分化→改善策 教育的視点で,何の力をつけてどのような状態を目指していくのか?を明確に しておくことが必要である 資料:障がいのある子どもたちのための摂食・嚥下障害対応ガイドブック 難しい専門用語が次々出てきて困惑したことは否めないが,それほどまでに本 校の摂食指導はレベルの高いものを求められるシビアな状況であることを理解 して頂いた。実際,かなり困難な状況で食べている児童生徒が多く存在している。 成果と ポイントは常になぜ?という疑問を持つことである。なぜむせたのか?なぜ口か 課題 らこぼれるのか?・・・全てに理由があり,その原因を科学的に追究して改善す ることが必要である。単なる食事介助ではなく,児童生徒の QOL の向上を念頭に 置き,常に教育内容としての摂食を意識することを忘れてはならない。 - 37 - 研修名 第2回 摂食指導研修 期 日 平成 場 所 プレイルーム 講師等 本校 25年 7月 自立活動部 16日(火) 藤井義子,在川友子 参加者 本校教職員39名 目 的 摂食・嚥下機能にふさわしい食形態を知り,安全な摂食指導を行うため。 1 内 摂食・嚥下機能に見合った食物形態とは 誤嚥しにくい食形態とは口腔内の移送がしやすい訓練食を基準とする。 2 食べにくいものとは 食べにくいものとは,硬い,ぱさぱさしている,ねばる,ばらつくもの。 3 安全で食べやすいものとは 食物にとろみをつけるなどして,粘調度を高め安全な食形態にする。 4 形態食の3要素 形態食の3要素とはかたさ,まとまりやすさ,くっつきやすさである。 5 訓練食にふさわしい食物形態の特徴 軟らかい,まとまりやすい,適度な粘度がある,密度,性状が均一なもの。 容 6 摂食機能に合わせた形態食 摂食機能が良くなると,形態食に一段上の食品を追加する。 7 段階的嚥下食の特徴 嚥下食の食物条件 開始食,嚥下食Ⅰ,嚥下食Ⅱ,嚥下食Ⅲ,移行食の特徴について 8 本校の形態食の現状 パン(普通,カッター,ペースト),ごはん(普通,硬がゆ,全がゆ,ペー スト),副食(普通,きざみ,テリーヌ,ペースト)の形態食がある。 9 ゼリー食について 摂食の開始食としてイオンサポートから作ったゼリー食を提供している。 10 本校児童生徒のゼリー食を摂食している様子 摂食機能に影響を与える食物形態について,児童生徒に合った望ましい食形 態についての研修を行った。この研修では段階的な形態食について知っても 成果と らうことにより,個々の児童生徒が実際どの段階にあたり,どの段階の形態 課題 食が望ましいかについて考える機会になった。課題としては,実際の摂食指 導の中でどのような形態の食物が安全なのか,本校の給食などで嚥下しやす い形態にするためにどのような工夫が必要かを考える必要がある。 - 38 - 研修名 第3回 摂食指導研修 期 日 平成 25年 場 所 プレイルーム 講師等 本校栄養士 8月 23日(金) 広川真由美,本校 自立活動部 藤井義子,在川友子 参加者 本校教職員32名 目 的 必要な摂取カロリーや栄養素などについて研修し,適切な栄養摂取の支 援を児童生徒に行うことができる。 1 内 摂取カロリー,エネルギーについて 『日本人の食事摂取基準(2010 年)』では,身体活動レベルⅠ,Ⅱ, Ⅲのレベルにより,各年齢,性別によって必要なエネルギー量が示さ れている。 2 重症児の栄養状態について 必要栄養量は,運動量,筋緊張,呼吸状態などにより個人差が大きい。 日々の体調や血液,尿検査などから栄養状態を調べる。 3 栄養素の働き 栄養素には,たんぱく質,無機質,ビタミン,炭水化物,脂質などの 五大栄養素や,鉄,亜鉛などの微量元素がある。 4 望ましい摂取のしかた 容 1回の食事で,主食,汁物,主菜,副菜がバランスよく摂取できるよ うにする。 5 水分摂取について 水分摂取の工夫として,起床時,就寝時,入浴前後などにとる。水 分を料理の一品として利用する。 (例:スープ,みそ汁,ゼリーなど) 6 本校の給食について(本校 栄養士 広川先生から) エネルギー量は,小が 561Kcal,中・高が 740Kcalと定める。 学校給食では,1 日に必要な栄養素の1/3,ビタミン類は1/2が摂 取できる。 7 まとめ 1日のトータルで栄養量を考える。3食で摂取しにくい場合,食事内 容や食事回数を工夫する。摂取状況など家庭との連携を行う。 摂取カロリーなどの栄養面からの研修を行った。本校の給食について も,本校の広川栄養士から説明があり,給食の栄養素などについて学ぶ 成果と ことができた。児童生徒の栄養管理については,学校と家庭等の関係者 課題 が連携して行うことが重要であると考えることができた。そのために も,児童生徒の栄養状態や食生活などの実態把握に基づき,個々に応じ た取組が課題となる。 - 39 - 研修名 自立活動部研修(介助の基本について) 期 日 平成 場 所 プレイルーム 講師等 本校 25年 4月 保健安全部 9日(火) 内田猛,指導教諭 川口辰之進,看護師 柳本節枝 参加者 本校職員20名 アクシデントが起こらないようにするための安全への配慮を通して,介助 の基本を知る。 (介助の基本) 1 紙おむつの交換の際のゴム手袋の使用について ・なぜゴム手袋をつけるのか。 ・ゴム手袋を使用する際の配慮事項。 2 本校で起こったアクシデント ・アクシデントの紹介。 3 車椅子の乗降・操作 ・ティルト,リクライニングの説明。 ・乗降,移動の際の注意事項。 4 抱きかかえ方 ・抱きかかえるときに配慮することの説明。 ・急にするのではなく,ゆっくりゆとりを持って。 5 転落防止について 内 容 ・目を離さない。無理をしない。 6 衣服の着脱 ・可動域に注意しながら無理な負荷がかからないようにする。 ・指などの関節の引っ掛かりにも注意。 7 投薬管理 ・保護者から依頼されている薬の種類,使用法などの確認。 ・坐薬の置き場を担任団で確認しておく。 8 てんかん発作 ・発作の種類,対応の仕方などを保護者と確認する。 9 水頭症のシャントの注意点 ・磁気に近づけすぎないように注意する。 10 医療的ケア 医療的ケアハンドブックを参照。 資料「介助の基本」 「医療的ケアハンドブック」 「保健安全の手引き」 (持参) 昨年度の研修とは少し内容を変更して今回の研修を行った。紙おむつ交 換の際の手袋については看護師に説明をしていただくことで,正確な内容 成果と を伝えることができた。また,アクシデントの内容を簡単にではあるが説 課題 明することで,より危険意識を持って話を聞いていただけたのではないか と思う。今回はアクシデントを起こさないための内容が中心であったが, その善し悪しも含め,内容をまだまだ考えていかなければならない。 目 的 - 40 - 研修名 自立活動部研修(自立活動について) 期 日 平成 場 所 プレイルーム 講師等 本校 25年 指導教諭 4月 川口 19日(金) 辰之進 参加者 新転任者及び希望者 目 的 教職員の専門性の向上のため 自立活動の概要について,新転任者及び希望者へ理解していただくこ とを目的として実施した。資料としては,本校制作の自立活動ガイドブ ック第 2 版を活用し,具体事例を交え補足説明を加えて説明した。 研修内容の項目については以下のとおりである。 第 1 章 肢体不自由教育について 第 2 章 自立活動とは 第 3 章 重度・重複障害児教育のポイント 内 教科,生活単元とは異なる自立活動について,成立までの経緯,それらの意 味と理念を説明した。自立活動という教育領域の中で,人間としての基本的 な行動を遂行するために必要な力と,障害による学習上又は生活上の困難を 改善・克服するために必要な力の 2 点を育成することが求められる。この 2 容 点を常に意識して取り組むことの重要性を研修した。 第 第 第 第 4章 5章 6章 7章 認知発達について コミュニケーションについて 感覚について ムーブメントについて 障害特性,感覚特性に十分配慮し,児童生徒の内面に伝わる指導を提供する ことの大切さを説明した。 第 8 章 自立活動実践例 第 9 章 摂食指導について「形態食による取り組み」 第 10 章 車いす等の姿勢保持装置について 第 11 章 オリジナル教材教具の紹介 第 12 章 本校の専門書蔵書一覧 自立活動と各教科等を合わせた指導である生活単元学習の違いにつ いては,概ね理解できたのではないかと思う。今後は,各担任として, 成果と その理解を元に,個々の児童生徒への個別具体の自立活動としての教育 課題 内容を構築していくことが求められる。その際に生じる新たな疑問など は,その都度研修を重ねて解消させていくことが必要となる。 - 41 - 研修名 自立活動部研修(コミュニケーション研究について) 期 日 平成 場 所 プレイルーム 講師等 本校 25年 8月 自立活動部 23日(金) 馬場 健 参加者 本校職員32名 目 的 教職員の専門性の向上のため <コミュニケーション研究報告> 1 コミュニケーションとは ・コミュニケーションの定義について ・初期コミュニケーションの発達について Ⅰ快受容と注意反応 Ⅱ期待反応 Ⅲ大人への積極性・要求表出 ⅣYES/NO・選択による要求表出 2 三項関係と共同注意について ・共同注意…他者の関心を共有する事物や話題へ注意を向け行動を調整 する能力 ・三項関係…「子ども」が「他者」と何らかの「対象」への経験を共有 する関係をもつ。「子ども」「他者」「対象」の三項の間の関係。 ・三項関係の発達 内 容 1混沌とした世界 2自己と他者・物のゆるやかな文化 3刺激的な他者との二項関係 4物との二項関係の成立 5物を介した初期の参考関係 3 アセスメントリストについて ・作成の目的・手順について ・引用文献・参考文献について ・項目・段階について 4 アセスメントリスト記入演習 ・記入の仕方について 5 アセスメントリストについての意見・感想の交流 ・グループに分かれて意見・感想の交流 6 まとめ ・今後について コミュニケーションの力は学校生活全体で必要な力である。しかし, 重度重複障害を有する児童生徒とコミュニケーションをとることは難 しいことが少なくない。乳幼児の発達理論を知ることは児童生徒の指導 の参考になるだろう。また,児童生徒の実態を客観的に把握するために 成果と アセスメントリストを活用していくことは今後大切になるだろう。アセ 課題 スメントリスト演習では次のような意見が出た。「項目を整理して分か りやすくしてほしい。」「視覚障害があると難しい」「分かりにくい項目 がある」「覚醒状態・体調・人間関係に左右される」など。以上の意見 をふまえて調整を行い,年度末に再度研究報告を行う予定である。 - 42 - 研修名 自立活動部研修(コミュニケーション研究について) 期 日 平成 場 所 プレイルーム 講師等 本校 25年 3月 自立活動部 24日(月) 馬場 健 ,片山 歩 参加者 本校職員35名 目 的 教職員の専門性の向上のため 内 <コミュニケーション研究報告2> 1 コミュニケーションの発達について コミュニケーション発達の流れ 2 認知発達について 聴覚・言語発達に焦点をあてて ・聴覚機能面のチェックについて ・聴覚・言語発達における認知の発達段階について ・聴覚発達質問紙 3 重度重複障害の子どものアセスメントリストについて リストの作成について ・リスト作成の目的 容 ・リストを作成した手順 ・リストの活用方法 内容の説明 ・区分について 表出コミュニケーション,認知 A(聴覚・言語) 認知 B(視覚・周囲環境の把握),人間関係 ・発達段階について 0か月~18か月までを6段階に分ける。 ・書式についての説明 ・記入の目安 記入演習,アンケート記入 今後の課題 コミュニケーションの初期発達についての復習を行い,それから聴 覚・言語の発達に焦点をあてて研修を行った。これまでは表出コミュニ ケーションに焦点をあてた研修を行ってきたが,今回は受容コミュニケ ーションに焦点をあてた。アセスメントリストの第一版が完成し,校内 成果と に報告することができた。アンケートでは「役に立てていきたい」「○ 課題 ○の項目が分かりにくい」などの意見があり,今後の指導に活用したい。 今後はさらに内容の追加修正を行っていきたい。また,アセスメントリ ストの校内での活用を進めていくため,活用事例の研修を行っていく必 要があるだろう。 - 43 - 研修名 自立活動部研修(実践報告会) 平成 平成 25年 26年 期 日 場 所 プレイルーム 講師等 本校 8月 3月 自立活動部 29日(木),12月 24日(火), 24日(月) 教員3名,本校 教員 2名(以下に記載) 参加者 本校職員 目 的 教職員の専門性の向上のため 今年度は,年間3回にわたって,各担当に児童生徒においての 自立活動の(個別)日々の取り組みについて実践報告を行った。 第1回 内 容 実践報告<平成25年8月29日(木)> ・小学部4年 長堀 美香 ・小学部5年 片山 歩 第2回実践報告<平成25年12月24日(火)> ・中学部3年 在川 友子 ・高等部1年 沖田 憲弘 第3回実践報告<平成26年3月24日(月)> ・中学部3年 小川 佳津恵 実践報告を始めて今年度で3年目となるが,今年度より自立活動部員 以外の教員の取り組みも報告をすることにした。実践報告をすること で,発表者本人は自分の取り組みについて振り返り,様々な意見をもら うことができ,新たな取り組みのヒントを得ることができる。また参加 成果と 者については,校内の児童生徒の実態・取り組みを知ることができ,児 課題 童生徒のことを全職員に共通認識してもらうには良い場であるととも に,担当する児童生徒への対応で参考となるものが得られる場であると 考える。来年度以降も,できるだけ多くの発表者を募り,実りある実践 報告を進めていきたい。 - 44 - 研修名 公開講座①(理学療法士から見た肢体不自由児教育) 期 日 平成 25年 場 所 体育館 7月 23日(火) 講師等 本校特別非常勤講師 参加者 本校職員60名 目 的 小畠 幸男氏 外部教育関係者14名 本校教職員の専門性の向上を図るとともに,地域の特別支援教育のニー ズに応える。 1 重症児が学校生活を送るうえで大切なことは ①身体的・精神的にリラックスできていること。 ②子ども達が学習しやすい姿勢や動きを保障すること。 2 肢体不自由を呈する小児の障害とは? ○中枢神経マヒ ○神経・筋疾患 ○染色体異常 ○代謝異常 ○整形外科的疾患 3 脳性マヒ(CEREBRAL PALSY: CP )とは 脳性マヒは一つの疾患単位ではなく,周産期に起因する障害によって起こる非 進行性の中枢神経系の障害の総称である。脳病変は進行することはないが,永 続的であって一過性ではなく,症状は年令と共に変化する。 4 脳性マヒの分類 ○ 痙直型 ○アテトーゼ型 ○失調型 ○弛緩型 ○混合型 5 姿勢反射について 姿勢を保持し運動を行うためにはその姿勢を保持するための反射の発達が必要 であるが,重症児・者では立ち直り・平行反応などの中脳や大脳皮質レベルの 反応はなかなか発達してこないので難しい。 6 姿勢反射 内 容 脊髄レベル(屈筋吸引・伸筋突張・交叉性伸展反射)脳幹レベル(非対象性緊 張性頚反射・対象性緊張性頚反射・緊張性迷路反射・陽性支持反応)中脳レベ ル(頚の立ち直り反応・身体に対する身体の立ち直り反応・パラシュート反応) 大脳皮質レベル(シーソー反応・傾斜反応または平衡反応・背屈反応) 7 図と写真で解説 ○新生児期の全伸展パターンと全屈曲パターン○CP児の仰臥位姿勢○TLR の 影響が長期に続いた場合○全身の過伸展が捻転を伴い非対称性の姿勢を作り出 す○原始反射の抑制○TLR の抑制 8 一方的に ATNR が強い子どもには 他動的に,顎を反対方向に向かわせる。(筋緊張が変わるので,これだけでも抑 制になる)正中位指向を心がける。 (頭を真っ直ぐに正中に向ける) 9 学校生活を送るうえで大切なこと 自ら姿勢を変換できない重症児・者の生活において,生命機能の維持や変形・拘 縮の進行予防や改善等に姿勢維持は重要である。 その姿勢が抗重力姿勢か従重力姿勢か,活動的な姿勢か安静的な姿勢か,対称的 な姿勢をとっているか,常に把握し1日の流れの中でそれらが網羅され,偏るこ との無いように配慮されなければならない。 成果と 課題 例年に比べ他校(普通小中校)からの参加者が多かった。普通校の内の特別支援教 育の推進について専門知識が乏しく日々悩みながらの切実な実態を背景に質問が相 次いだ。小畠PTは詳しい児童生徒状況が把めない中でのアドバイスは困難とされつ つも,分かる範囲で的確なアドバイスをされていた。事前に質問のアンケートを取り, 連携をしておくことの必要性を感じた。 - 45 - 研修名 公開講座②(福祉制度・サービスの現状について) 期 日 平成 25年 場 所 プレイルーム 7月 24日(水) 講師等 社会福祉法人「まほろば学園」理事長 藤井 康宏氏 参加者 本校職員51名 目 内 本校教職員の専門性の向上及び,特別支援教育のセンター的機能を発揮 的 し,地域の保・幼・小・中学校の教職員等に対しても,公開研修 会として情報を提供するため。 容 1 あいさつ・講師紹介 2 講演 「Le vent se leve(風立ちぬ)」 障害福祉サービス事業所「風」の立ち上げに至る経緯と今後の見通 しを,講師のお子様の誕生から今日に至るまでの話を交えながら丁 寧にお話しいただいた。その後,今後「風」で新しく始める放課後 デイサービスについての概要説明があった。 3 質疑応答 4 お礼の挨拶 資料:障害福祉サービス事業所「風」パンフレット 障害福祉サービス事業所「風」の立ち上げに至る過程と,これからの 成果と 事業の展開について講演していただいた。事業所を新規に設立すること 課題 の困難に直面しながら,粘り強い取り組みで今日の事業展開にまで至ら れた経過を具体的に理解することができた。 - 46 - 研修名 公開講座③(本校における支援機器の活用について) 期 日 平成 場 所 体育館 講師等 本校 25年 支援部教職員 参加者 本校職員63名 目 的 容 ・外部教育関係者4名 本校教職員の専門性の向上を図るとともに,地域の特別支援教育のニー ズに応える。 1 内 8月22日(木) 2 3 本校における支援機器の活用例 小学部から,スーパートーカー・ビックマック・ジェリービーンスイ ッチと小太鼓・ステップバイステップ・ミニドームスイ ッチライト・iPad・ビックマック・アイトーク・タッチ パネル PC 中学部から,ステップバイステップウイズレベル・バイブレーティン グライト音楽付き・パワーリンク 3・クリップアーム棒 スイッチ・感覚ボールスイッチ・エアーリンクコードレ ススイッチ 高等部から,PC を,実際の授業でどのように活用しているか,写真等 を紹介しながら支援機器を作動させ,実践を報告した。 使用方法の説明 ① スイッチ類 ② コミュニケーションエイド類 ③ 感覚指導機器・おもちゃ類 ④ PC 関係 種類ごとに,活用例で紹介した機器その他数点の機器の使用方法・ 特徴を順に紹介した。 触ってみよう ①②③④のコーナーを作り自由に回って試してみる (各担当者が使用方法を説明し,質問に答えた) 本校職員にとって,他の学部・学年・学級で支援機器がどのように活 用されているか知ることができ「自分のところでの活用の参考になり, すぐにでも実践したい」という感想が多かった。また,外部の教育関係 者からは「自分の学校に無い物ばかりでとても参考になった」という感 成果と 想が出され,概ね目標は達成できた。課題としては,本講座で紹介した 課題 支援機器以外にもたくさん支援機器はあるので,機を見て紹介し実践を 広めていく必要がある。また,開催時期が原因かどうかは不明だが,外 部からの教育関係者の参加が少なかったので,今後開催時期の検討も含 め,参加者増につながるよう考えていく必要がある。 - 47 - 研修名 感染症防止対策研修 期 日 平成 25年 場 所 プレイルーム 8月 21日(水) 講師等 福山市民病院看護部安全管理室 感染管理認定看護師 三宅智津恵氏 参加者 本校教職員53名 目 的 校内感染の予防と衛生面の管理について理解を深める。 「知って得する感染対策」 感染症に対する正しい知識や感染予防のための適切な対応が大切。 適切な手洗いの実施,物品の衛生的な取り扱いなどを実践していく。 1 感染経路 空気感染:結核 飛沫感染:インフルエンザ,風疹,手足口病など 接触感染(直接接触感染,経口感染): 感染性のあるのは汗以外の血液,体液,分泌物,排泄物,傷のある粘膜 2 予防策 (1)手指衛生 流水と石鹸による手洗いと手指消毒が基本 洗い残しに注意し,細菌は手指消毒が有効 (2)防護具 手袋のはずし方 外側が手に触れないように注意 内 容 マスクの付け方 隙間があかないよう装着する。 (3)咳エチケットについて 3 感染対策における具体 (1)オムツの取り扱いについて 手袋を使用する。室内での保管は,バケツの外側を清潔区域,内側 を汚染区域と考える。汚染した手袋やオムツで触れないようにする。 (2)プールを介しての感染 プール熱,手足口病,流行性角結膜炎など プールの前後はシャワーでしっかり体を洗う。 適正なプールの塩素濃度(ビニールプールは特に注意) (3)洗浄や消毒,滅菌について 医療的ケア用具 4 演習 「手洗いの実際」 感染予防について,身近なところから具体的にたくさんのことをお話しい ただいた。データや写真等で分かりやすく,また,実際に演習を行って意識 を高めることができた。具体的なお話だったので,分かりやすく即実践につ 成果と ながるものであった。手指衛生が基本かつ大切であることを改めて考えさせ 課題 られた。また,本校から出た質問や課題にも丁寧に答えて説明をしていただ いた。研修した知識を活かし,日々配慮しながら児童生徒の安全な生活を守 っていきたい。 - 48 - 研修名 医療的ケア研修会 期 日 平成 場 所 プレイルーム 講師等 25年 8月 9日(金) おひさまこどもクリニック 小児科専門医・小児神経専門医 村上 知恵氏,高橋 康太氏 参加者 本校教職員50名 目 的 医療的ケアを適切に行う為,専門家を招き,医療的ケアの知識を深める。 ★医療的ケアを進めるにあたって 1 児童生徒の理解を深める ・重症心身障害児について 内 2 医療的ケアの知識を深める (1)呼吸障害 ・呼吸障害の症状について ・気管切開や気管カニューレに伴う事故や合併症,医療的ケアの 注意点及び事故発生時の対応 (2)摂食嚥下障害(経管栄養) ・栄養障害の悪循環(免疫機能の低下⇔嚥下機能障害⇔栄養障害) ・胃ろうからの注入の注意点,事故発生時の対応 3 本校の医療的ケアの疑問点について ・担任は,呼吸障害の症状を健康観察や保護者との連携等で把握し ておく。 ・気管切開や気管カニューレの児童生徒のプール入水時の注意点 ・事故予防,事故発生時の対応を含めた危機管理体制の再考 容 ・呼吸障害の症状の観察のポイントとその対応について,動画などで実 際に見ることができたので,理解しやすかった。 ・日頃良く目にする事柄について,具体策を多く知ることができた。 成果と ・医療的ケアの機器(ボタン式胃ろうカテーテルや気管カニューレ)の 実物を見て触れることで,教員が医療的ケアを行う際の参考になった 課題 と思う。 ・健康観察や事故にならない方法,事故後の対処方法をより詳しく知る ことができ,今後の危機管理体制の見直しの必要性を強く感じた。 - 49 - 研修名 不審者対応研修 期 日 平成 25年 場 所 体育館 講師等 福山西警察署 8月 9日(金) 生活安全課 職員3名 参加者 本校教職員37名 目 (1)児童生徒の安全確保 的 (2)的確な判断と教職員の連携 (3)防犯対応の学習 1 福山西警察署による不審者対策に関する講習 ・「不審者発見時の緊急対応マニュアル」を見ながら,各項目について 全職員で確認する。 ・警察官から助言や指導を受ける。 ・教職員からの質問や悩みの相談。 内 容 2 護身方法の訓練 ・基本的な護身術の実技指導を受ける。 【資料】「不審者発見時の緊急対応マニュアル」 ・本校で作成している「不審者発見時の緊急対応マニュアル」の内容に ついて,警察の方とともに確認することができた。 ・教職員の質問や不安な面について相談することができた。 ・本校の児童生徒の安全を確保するために日頃から心がけること,緊急 時の対応(素手,パイプ椅子,かばん,傘,さすまた,それぞれについ 成果と てについて)警察の方からの話及び実地の指導を受けることができた。 課題 ・この研修を,日ごろの防犯意識に繋げ,実際にマニュアルに従って行 動できるよう真剣に訓練していく必要がある。 ・不審者が校内に侵入できないよう施設設備等検討していく必要があ る。 ・不審者が校内に侵入した場合,安全を確保するための道具や施設設備 を充実させる必要がある。 - 50 - 研修名 平成25年度 新転任者対象研修会 期 日 平成 5月 場 所 プレイルーム 講師等 本校 25年 保健安全部 アクシデント研修① 10日(金) 内田 猛,本校 指導教諭 川口 辰之進 参加者 本校職員17名 目 内 的 アクシデントを起こさないために注意すべきことを考える。 1 インシデント・アクシデントの定義について ・医療的ケアハンドブックNO.2より抜粋した資料を使用。 ・本校で使われている様式についての説明。 2 以前起きたアクシデント報告 ・以前本校で起きたアクシデントについて書かれたアクシデント報 告書を基に説明。 ・どのような状態のときにアクシデントが起きているのかを確認。 3 衣服の着脱の演習 ・2人組になって演習。(児童生徒役,介助を行う役。) ・児童生徒役になっての感想や,実際に着脱の介助を行ってみての 感想の発表及び気付いたことの交流。 4 抱きかかえ方(2人)の演習 ・3人組になっての演習。(抱きかかえる役が2人,児童生徒役が 1人。) ・児童生徒役になっての感想や,実際に2人で抱きかかえてみての 感想の発表及び気付いたことの交流。 容 資料「レジュメ」 「アクシデント報告書」 「アクシデント報告書様式」 「イ ンシデント・アクシデントについて」 衣服の着脱や2人組での抱きかかえ方といった,日常生活で頻繁に行 成果と う内容を,演習を通して交流し,注意点を確認することができたのは良 課題 かった。アクシデント,インシデントの様式が若干変更されたというこ ともあるので,全体に周知徹底する必要がある。 - 51 - 研修名 平成25年度 新転任者対象研修会 期 日 平成 6月 場 所 プレイルーム・プールサイド 講師等 本校 25年 保健安全部 アクシデント研修② 7日(金) 内田 猛,本校 指導教諭 川口 辰之進 参加者 本校職員16名 目 内 的 プールでのアクシデントを起こさないために注意すべきことを考える。 1 過去本校で発生したアクシデント報告 報告書をもとに以前起きたアクシデントを振り返った。 2 プール用車椅子の使用について 小さいものと大きいものの両方を使って演習を行った。バランスの 取方,方向転換などが児童生徒の使っているものよりも難しいとい うことがあった。 3 濡れた床の滑りやすさの演習 廊下を水で濡らして演習を行った。濡れた床がどの程度滑りやす いのかが分かっていただけたのではないかと思う。 4 濡れた衣服(ラッシュガード)の着脱の演習 濡れたラッシュガードは体に引っ付きやすく脱がせにくいという ことが分かっていただけたのではないかと思う。普段着よりも児童 生徒の間接の動きなどに注意していただきたいと思う。 容 資料「アクシデント報告書」 プールの授業はアクシデントが起こりやすい状況で行われるため,過 信することなく注意を払って授業を行っていただけたらと考え,今回の 成果と 研修を行った。今回の演習では濡れた床の滑りやすさや,濡れた衣服を 課題 脱がせることの難しさが分かっていただけたのではないかと思う。しか し,児童生徒役になっていただいた先生に,「子どもの体の可動域を模 してやっていただく」という制限をかける必要があったように思う。 - 52 - 研修名 平成25年度 新転任者対象研修会 期 日 平成 10月 場 所 プレイルーム 講師等 本校 25年 保健安全部 内田 アクシデント研修③ 25日(金) 猛,本校 指導教諭 川口 辰之進 参加者 本校職員16名 目 的 冬場に気を付けないといいけないことを考える。 1 内 教室の湿度管理について ・快適な室内の温度・湿度 冬 温度18℃~24℃ 夏 温度22℃~26℃ 湿度45%~65% 湿度50%~70% 2 低温やけどの注意 ・就寝時低温熱傷では湯たんぽによるものが圧倒的に多い。電子サ ーモスタットを有しない構造が要因の 1 つにある。近年の湯たん ぽブームにより,使用中の発症が増加する傾向にある。 • 体の同一箇所を暖房器具に長時間触れさせないようにする。 • 暖房器具を使用する人の状態によっては周囲の人が配慮する。 3 衣服の着脱時の注意(冬服) ・演習 ・気付いたことの共有 容 資料「湿度,低温やけどについて」 冬場に注意しなくてはならないことを中心に研修を行った。参加者の 多くの方が,気付いたことを出し合って共有することができ,実りある 成果と ものとなった。今回の研修では湿度,低温やけど,衣服の着脱について 課題 の研修を行ったのだが,冬場には他にどのようなことがアクシデントに つながるのかを再度確認し,研修に盛り込む必要があるかもしれない。 - 53 - 研修名 進路指導研修(障害者総合支援法について) 期 日 平成 25年 場 所 プレイルーム 8月 29日(木) 講師等 府中地域障害者生活支援センター 所長 平岡 辰士氏 参加者 本校職員50名 目 的 障害者総合支援法の概要を講演会で学習し,教職員の専門性を向上させ るため。 ○障害者自立支援法から障害者総合支援法に改正された主な内容。 ・難病患者が障害者の範囲に含められ,障害福祉サービスの対象とな る。 ・障害福祉サービス利用にあたって「サービス等利用計画」が必須と なり,その作成は指定特定相談支援事業者による。 ・「障害程度区分」が「障害支援区分」に改訂される。 ・重度訪問介護の対象に,重度知的障害者・重度精神障害者まで含め られる。 ・ケアホーム(共同生活介護)をグループホーム(共同生活援助)に 統合する。 内 容 資料: 1 「障害者総合支援法の概要理解」:平岡辰士講師で作成 2 「共に生きる社会をつくる 障害者総合支援法 利用者のためのか んたんガイド」:東京法規出版 自立支援法から総合支援法に改正されることで,障害福祉サービスの内 容から制度や運用までどう変わったのかを分かりやすく解説していた 成果と だいた。特に「指定特定相談支援事業者」については新設の事業となる 課題 ので相談員を「育てる」ためにも積極的に利用していくべきであると言 われていた。 - 54 - 研修名 図書館教育研修「読み聞かせについて」 期 日 平成 場 所 体育館 講師等 25年 8月 23日(金) 広島県立図書館 読書活動ボランティア 正井 伊達 さゆり氏 悦子氏 参加者 本校職員40名 目 内 本校では,読書活動年間計画に基づき,朝の読書活動をはじめ生活活 的 動・自立活動などの授業において絵本の読み聞かせに取り組んでいる。 読み聞かせの意義を再認識し,併せて実践力の向上をめざす。 1 読書活動ボランティアさんによる読み聞かせの実演 2 講話「こどもと読み聞かせ」 3 読み聞かせについて 4 実習 容 5 6 広島県立図書館の利用について 絵本・図書の紹介 資料: 「読み聞かせについて」,インターネット予約案内,互助文庫・教弘文 庫案内,新刊児童図書リスト, 「中学生・高校生向けの図書の紹介」, 「図 書部!!」お知らせ 本校では, 全学部で『読み聞かせ』を行なっているが,それぞれの教 員が試行錯誤しながら,また,創意工夫しながら日々取り組んでいる。 今回,広島県立図書館のご協力により,初めて『読み聞かせについて』 成果と の研修会を実施した。読み聞かせとはなにか,読み聞かせを通して児童 課題 生徒に何を伝えるのか,ということを改めて考えることができた。また, 読み聞かせの基本についても知ることができ,実習においてそれを確か めていくことができた。今回研修したことを今後の実践に生かしていき たい。 - 55 - 11 教職員研修について 教職員研修について 平成25年度研修実績一覧 日時 4月 3日 (水) 4月 3日 (水) 4月 4日 (木) 4月 9日 (火) 4月15日 (月) 4月16日 (火) 4月19日 (金) 5月10日 (金) 6月 3日 (月) 6月 3日 (月) 6月 7日 (金) 6月10日 (月) 7月16日 (火) 7月22日 (月) 7月23日 (火) 研修名・内容 担当分掌(講師等) 起案・各種届出の仕方の研修 管理職 教務事務の手引きと全体計画の研修 教務部 会計事務研修会 事務長 介助の基本研修 保健安全部 摂食指導研修① 自立活動部 支援機器研修 地域支援部 自立活動研修①(自立活動について) 自立活動部 アクシデント研修① 保健安全部 授業研究全体計画 教育企画部 キャリア教育研修 進路指導部 アクシデント研修② 保健安全部 教育実践報告会 自立活動部 摂食指導研修② 自立活動部 保健安全部 福山消防署 地域支援部 普通救命講習会 公開講座① 「理学療法士から見た肢体不自由教育について」 理学療法士 (本校特別非常勤講師) 小畑 幸男氏 進路研修部 7月24日 (水) 公開講座② 「福祉制度,福祉サービスの現状」 社会福祉法人 「まほろば学園」理事長 藤井 康宏氏 7月25日 (木) 勉強会「コミュニケーションについて」 教育企画部 7月29日 (月) 支援機器研修「ビッグパットについて」 地域支援部 保健安全部 8月 7日 (水) 医療的ケア研修会 8月 8日 (木) 施設見学研修会 8月 9日 (金) 不審者対応研修会 おひさまこども クリニック 高橋 康太氏 村上 知恵氏 進路指導部 保健安全部 福山西警察署 8月20日 3校合同自立活動実践報告発表会(西条特別支援学校) (火) - 56 - 自立活動部 保健安全部 8月21日 (水) 福山市民病院 感染管理認定看護師 感染症防止対策研修会 三宅 智津恵氏 8月22日 (木) 公開講座③ 本校における支援機器の活用について」 地域支援部 教務部 8月23日 (金) 広島県立図書館主幹 図書館教育「読み聞かせについて」 正井 さゆり氏 読書活動ボランティア 伊達 悦子氏 8月23日 (金) 自立活動研修(コミュニケーション研究報告会) 摂食指導研修会③ 自立活動部 8月29日 (木) 自立活動実践報告発表会 自立活動部 進路指導部 8月29日 (木) 府中地域障害者 生活支援センター所長 進路研修会 平岡 辰士氏 8月30日 (金) 8月30日 (金) 9月 2日 (月) 勉強会「コミュニケーションについて」 教育企画部 不祥事防止研修 管理職 進路連携報告会 進路指導部 9月 2日 (月) 中四肢体不自由教育研究協議会の報告 教育企画部 10月 7日 (月) 校内授業研究会指導案検討(中・高等部) 教育企画部 アクシデント研修 保健安全部 校内授業研究会(中・高等部) 教育企画部 校内授業研究会指導案検討(小学部) 教育企画部 校内授業研究会(小学部) 教育企画部 公開授業研究会指導案検討 教育企画部 自立活動実践報告発表会 自立活動部 公開授業研究会 教育企画部 10月25日 (金) 10月30日 (水) 11月 5日 (火) 11月29日 (金) 12月 9日 (月) 12月24日 (月) 1月24日 (金) 2月 6日 (木) 2月24日 (月) 3月17日 (月) 3月24日 (月) 3月24日 (月) 3月26日 (水) 不祥事防止研修会 管理職 メンタルヘルス研修 管理職 授業研究についてのまとめ 教育企画部 自立活動研修(コミュニケーション研究報告会②) 自立活動部 自立活動実践報告発表会 自立活動部 卒業生進路報告・課題・連携報告 進路指導部 - 57 - 編 集 後 記 今年度の研究紀要ができました。 本年度は,授業研究のテーマを「児童生徒のコミュニケーション能力を育てるため の授業作りをめざして~一人ひとりのコミュニケーション能力の把握とアプローチ」 として掲げて2年目でした。本テーマを基に学習指導案を作成し,授業を行い,テー マの視点に基づいた授業評価や研究協議を行うことで授業改善を目指しました。研究 方法としては,一学級一研究授業,校内授業研究,公開授業研究の3つの柱で行って きました。本テーマを設定して 1 年目はそれぞれの児童生徒のコミュニケーション力 についての実態把握をしつつ,それに基づいたアプローチを日々の授業の中でやって きました。本年度は,児童生徒のコミュニケーションについてより丁寧な実態把握を 行うとともに,児童生徒同士のコミュニケーションにも視点を向けて授業づくりを行 ってきました。来年度も継続してこのテーマで授業研究を行います。児童生徒の将来 を見据え,より豊かなコミュニケーション能力を育むことができるよう授業改善に努 めていきたいと思っています。 十分なものとは言えませんが,今後の特別支援教育の推進資料としてこれをご覧い ただいた方々のお役に立てれば幸いと存じます。 (教育企画部 研究紀要編集担当) 平成2 平成25年度 研究紀要 第8号 発行日 平成26年3月 発行者 広島県立福山特別支援学校 〒720-0841 広島県福山市津之郷町津之郷280-3 TEL 084-951-1513 FAX 084-951-3864 http://www.fukuyama-sh.hiroshima-c.ed.jp/ 編集者 広島県立福山特別支援学校 教育企画部
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