生命と地球環境の共進化

生命と地球環境の共進化
東京工業大学地球生命研究所
丸山茂徳
地球史20大事件
40億
50億
① ③
⑤
② ④
②
地
球
誕
生
④ ⑤ ⑥
生 原 光
命 初 合
誕 大 成
生 陸 生
の 物
消 の
失 出
現
⑥
⑦
マ
ン
ト
ル
オ
ー
バ
ー
タ
ー
ン
⑧
全
球
凍
結
⑧
⑩ ⑫
⑭
⑯
⑪ ⑬ ⑮
⑨
⑨
真
核
生
物
出
現
10億
0
⑩
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⑪
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大
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生
物
出
現
⑫
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大
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大
量
絶
滅
⑬
古
生
代
型
生
物
の
大
量
絶
滅
⑭
人
類
の
誕
生
⑰
20億
⑱ ⑳
⑲
⑮ ⑯ ⑰
人自
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③
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⑦
10億
CO
①
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陽
系
誕
生
20億
30億
⑱ ⑲ ⑳
海 ア天
洋 ンの
の ド川
消 ロ銀
失 メ河
ダ
銀
河
と
衝
突
地
球
の
消
失
Contents
1 生命誕生の研究史(1-17)
●生命とは何か
●前駆的化学進化実験のまとめ
2 冥王代地球表層における生命誕生場の提唱
3 生命誕生までのシナリオの提唱
神秘的な時代から実証的な研究の時代へ
ユーリ・ミラーの実験
←この凹みが鍵
生命誕生場の諸説
原初大陸上説
5
系統樹からの示唆
LUCA
Commonote(s)
前駆的化学進化
生命誕生場の諸説
1
2
3
4
5
6
オパーリン説(干潟説)
ミラーの実験、還元場説
惑星科学=原始大気は酸化大気
中央海嶺起源説(熱水場)
中央海嶺蛇紋岩起源説(還元的熱水場)
原初大陸表層説
生命とは何か?(1)
生態系の誕生
生態系の壁
大きさの目安
(分子量)
膜
DNA
DNAワールド
DNAの壁
代謝
RNA
RNAワールド
塩基対
核酸
糖
高分子タンパク質
有機化合物
ヌクレオチド複合体
RNAの壁
触媒の壁
アミノ酸
簡単な
有機化合物
アミノ酸合成
101
フィッシャートロプシュ反応
無機化合物
宇宙分子雲Cosmic molecular cloud
深海熱水系環境Deep-sea hydrothermal water
隕石、彗星 Meteorite, stardust
実験室での実験Laboratory experiments
Modified after Maruyama et al., 2013
“Habitable Trinity” モデル
(Dohm and Maruyama, 2014)
大気・海洋・大陸の共存と太陽エネルギーによる定常的物質循環
宇宙空間
大気 (CO2, N2)
三重点
海洋(H2O)
Rock
Rock
岩石 (P+K etc)
太陽エネルギー
生命とは何か?(2)
1. 膜、代謝、自己複製
2. 有機ラジカル・イオン・連鎖反応体
C,H,O,N主体!=有機物 →無限大
ケイ酸塩鉱物の種類<100
→ケイ素主体(無機化合物)の生命はありえない
安定領域が極端に違う物質の化学反応
生命現象に至る前駆的化学進化はCO2、N2、
H2OがFe3Pと化学反応することから始まった。
その後誕生した生命はさらに40億年以上絶え間
なく連鎖反応しつづけた。
ABEL モデル
●二段階形成モデル
第一段階: Fe3P(シュライバサイト)が普遍的に存在
第二段階:そこに生命構成主成分元素が降臨
● Fe3Pが、裸の地球(原初大陸)上に存在
海洋誕生時(44億年前)の地上でリンと水が激しく反応
多種多様な高分子有機物が生まれ、生命合成反応が開始
生命の構成要素と単位
部品から車を創る
生命構成単位(Building blocks of life)
Aono, unpublished
RH041
Empirical experiments
2つの問題:
●反応式の左辺の
条件(還元vs酸化場)
●濃度
C, N
First life
間違ったイメージ
H2O
oxic
実際の冥王代 More than million kinds
表層環境 of combination
anoxic
x
=
∞
Empirical experiments
Reactants
x
Product
=
First life
After prebiotic
stage (million
times of mixture
of chemical
materials, first life
was born,
Geological environment is presumed from reactants and products.
冥王代地球表層における
生命誕生場の提唱
多様で動的な冥王代表層環境
44億年前
40億年前
原始海洋誕生
火山(赤)
上は表層暗黒
下は薄い大気(薄い灰色)
間欠泉(濃度+エネルギー問題+周期性)
気体成分の濃集と高分子有機化合物の合成
生命の誕生場はどこか?
環境的要素
原始大陸上
温泉説
中央海嶺
熱水系説
火星説
宇宙説
酸化的大気(CO2-H2O, O2なし)
○
×
○
×
局所還元的アルカリ熱水系
○
○
?
×
乾湿反復環境
○
×
○
×
多様な鉱物(Ni,Co,Fe3P)
○
△
?
○
KREEP玄武岩
○
×
?
×
ウラン鉱床
○
×
?
×
放電(落雷)
○
×
?
×
太陽エネルギー
○
×
○
×
低温アンモニア合成
○
×
?
×
還元的気体の高濃度化
○
×
?
×
周期性のある環境
○
○
?
×
生命構成要素(Building block)の階層的な単位
ヌクレオチド
生命誕生までの道のり
①
②
③
④
生命誕生までのシナリオ
コモノーツ誕生
大量絶滅と地球生命誕生
生命を合成するための新たな研究手法
RNA world からDNA Worldまではとてつもなく遠い
↓
冥王代類似環境微生物のゲノム情報解読
↓
最初の生命の合成
地球生命の誕生
生
大量絶滅
コモノーツの誕生
DNA World
Top-down Approach
(世界の研究動向)
人工生命実験
GAP
自己複製プログラミング
RNA World(酵素)
リボース、ATP、ペプチド
アミノ酸の合成
NH3の低温合成
Top-down Approach(新)
冥王代類似環境微生物
のゲノム情報解読
1. 最初の代謝
2. 最初の膜
3. 最初の自己複製プログラム
前駆的化学進化実験
Bottom-up
Approach
24
今後の課題
ゲノム移植と 人工ゲノム細菌の作製
M. mycoides
の全ゲノムを
化学合成(1.1 Mb)
酵母内で
アッセンブリ
M. capricolum
の細胞へゲノム移植
人工ゲノム細菌
(人工生命?)
菌体の性質(菌体サイズ、増殖速度、発現するタンパク質など)が、
M. capricolum から M. mycoides に変化し、
移植後の細胞は M. mycoides とまったく区別がつかなくなった
生命の設計図はゲノムだけで十分なのか?という大きな問いに答えた
コンピューターを親に持つ生命の誕生
Lartigue et al. 2007. Science 317:632-8; Lartigue et al. Science 325:1693-6, 2009; Gibson et al., Science 329:52-56, 2010.
例え:自己複製プログラム
• 1 パソコンOS(700人の共同作業で数千万行
のプログラム)→最初の生命の自己複製過程
• 2 酵素(ペプシン)の製造、人間、タンパク→
アミノ酸→酵素、5000-6000種類、遺伝子で
順番とプロセスを制御
• 3 受精細胞→250種類の組織細胞→生体
• (遺伝子が設計制御)
• 4 では遺伝子(DNA)はどのように創られた
のか?
プレートテクトニクスの役割
猛毒海洋(pH<1,高塩分、富重金属)の中性化
安山岩
+ ++
++ +
+
+
+ +
原初大陸
風化・浸食・運搬作用
鉱床
局所的
アルカリ環境
地球生命の起源と進化:
なぜ20種類のアミノ酸しか使わないのか?
まとめ
1 生命とは、
●膜・代謝・自己複製
●有機ラジカル・イオン・連鎖反応体
2 シュライバサイトのある地球表面に
生命構成元素が降臨(ABELモデル)
→有機化学反応が継続し続ける
3 表層環境の多様性が生命誕生に至る前提条件
(原始海洋=4㎞±1㎞の限定条件)
4 地球生命の誕生プロセスの提唱