頂門の一針 - Melma!

2014/08/04発行
頂門の一針
□■■□──────────────────────────□■■□ わたなべ りやうじらうのメイル・マガジン「頂門の一針」3385号
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2014(平成26)年8月4日(月)
客船沈没日に朴大統領「空白の7時間」:加藤達也
安倍は石破人事で詭道を選ぶな:杉浦正章
アメリカは本当に頼れるか:Andy Chang
キスカ島守備隊を救出せよ(下):伊勢雅臣
私の「身辺雑記」(129):平井修一
話 の 福 袋
読 者 の 声
身 辺 雑 記
□■■□──────────────────────────□■■□
第3384号
発行周期 不定期(原則日曜日発行)
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客船沈没日に朴大統領「空白の7時間」
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加藤 達也
野党・メディアが問題視
【ソウル=加藤達也】韓国の旅客船沈没事故が起きた4月16日におよそ7
時間にわたって、朴槿恵(パク・クネ)大統領の所在や動向が分からない
空白の時間帯があったことが明らかになり、韓国メディアや野党が問題視
している。
この時間帯には事故の救出者数が二転三転するなど状況が刻々と変化して
いたが、「7時間の空白」が事実であれば朴大統領は重大な事態の推移を
全く関知していなかったことになる。
朝鮮日報(電子版)によると朴氏は事故当日、午前10時ごろに最初の報告
を書面で受け、夕方に中央災害安全対策本部に姿を見せるまでの間、空白
の時間帯になっているという。
同紙は7月7日に国会運営委員会で行われた大統領府による野党側への説
明を引用し、空白の時間帯に「(大統領本人を前にした)対面報告も大統
領主宰の会議もなかった」と指摘した。
側近の金淇春(キム・ギチュン)秘書室長は、野党、新政治民主連合の朴
映宣(パク・ヨンソン)院内代表の質問に対し、午前10時に朴大統領に書
面による報告をした際、執務室に大統領がいたかどうかすら「分からな
い」と回答。対面報告をしなかった理由を追及されると「執務室が遠いか
ら」などとお茶を濁した。
大統領への報告はメールやファクスによる「書面報告」が常態化していた
とされ、この日の質疑でも野党側は書面報告について、他人の意をくみ取
れない朴大統領の「不通(プルトン)」政治の本質だとして非難してい
る。産経ニュース2014.8.3
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安倍は石破人事で詭道を選ぶな
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杉浦 正章
留任か外相などで処遇し、党内対立を避けよ
孫子に「兵は詭(き)道なり」があるが、宰相たる者、内閣改造で詭道を
選んではならない。首相・安倍晋三は王道を行くべきだ。王道とは自民党
の将来を見据えた後継者の育成である。
石破幹事長を安保担当相に回して勢力を削ぐなどという人事構想は詭道そ
のものであり、内紛の原因を首相が自ら作ることになる。アベノミクスの
総仕上げ、集団的自衛権行使に向けての法改正、そろそろ足音が聞こえだ
した解散・総選挙など正念場はこれからであり、自民党はかつての怨念の
戦いを再現して、野党とマスコミの餌食になってはなるまい。
元首相・森喜朗が「石破だ安倍だとけんかしている時じゃない」と発言し
ているが、全く同感だ。
正直に見て安倍は久しぶりに登場した首相らしい首相だ。登場してすぐ民
主党政権の不吉なる暗雲を吹き払い、アベノミクスで経済を回復させ、外
交安保で自民党本来の路線を取り戻した。
極東環境の激変を見据えた集団的自衛権の行使容認も成し遂げようとして
いる。安倍は将来自民党政権にとって「中興の祖」と位置づけられる可能
性がある。建武の中興は2年半で崩壊したが、平成の中興は安倍長期政権
が必要だ。そのためには党内基盤の安定が不可欠であり、奸佞(かんね
い)じみた側近らによる「石破外し」の進言などに耳を貸してはならない。
歴代首相の白眉は何と言っても吉田茂と佐藤栄作だろう。この2人の特色
は自民党長期政権の礎を人事によって築いたところにある。吉田は「吉田
学校」と言われ、その優等生は池田勇人と佐藤栄作であった。
池田は病気に倒れたが、その流れは佐藤栄作が引き継いた。佐藤は人事の
佐藤と言われるように、田中角栄、福田赳夫、中曽根康弘、竹下登、宮沢
喜一などを登用して育成した。
佐藤は名秘書官・楠田實に「為政者たるものその地位に就いたときから後
継者を育成しなければならない」と使命感に燃える言葉を残している。
今回の改造人事も安倍は後継者育成に主眼を置くべきであろう。幸い党内
には内紛の目はない。内紛の種をせっせとまいている首相経験者はいる。
原発再稼働反対の細川護熙と小泉純一郎だが、まあ犬の遠吠えの域を出ま
い。時々近くに来て吠えるのが、古賀誠だが、評論家の域を出ない。野中
広務もそろそろ隠居した方がいい。テレビでピントが狂った発言を繰り返
している。しかもいずれもノーバッジばかり。政権は俯瞰図で見れば平穏
なのである。
そこで生臭い人事の話に移行するが、ここで安倍が石破を 切る振り を見
せたのはなぜか。会社組織でも偏狭な社長はナンバー2を切ろうとして必
死になるが、安倍はこれを真似ようとしたのだろうか。どうもそうではな
いようだ。
7月24日の会談で安倍は石破に「集団的自衛権の問題も含めて国民にきち
んと知らせるにはあなたが一番良い。だから安全保障担当の大臣になって
欲しい」と切り出したと言われている。
しかし同時に「今後は来春の統一地方選などがあり、地方を歩けるのは石
破さんしかいない」とも述べており、これは幹事長留任を示唆したとも言
える。要するに安倍は瀬踏みをすると共に党内の反応を探ったのだ。
石破のもとには安倍の 安保担当相人事 について政界、財界などから同情
論がひっきりなしに伝わっているようであり、石破側近からは「野に下っ
て総裁選の準備を」とけしかける声も出ている。
いずれにしても石破も同人事を受ける構えにない。それもそうだろう、国
政選挙勝利は安倍の功績もあるが、4割は石破の功績でもある。地方選挙
での取りこぼしはあるが、石破の責任だけにするのは酷だ。
秘密保護法の成立を実現させ、ぶれはあったが集団的自衛権の行使容認へ
の公明党との調整も実らせている。集団的自衛権の行使に詳しい人材も石
破の他に居ないわけではない。石破が推したと言われる元防衛庁長官・中
谷元などでも十分にこなせるのだ。
要するに石破を「外す」ということの利害得失を安倍は考慮する必要があ
る。外せば既に前回の総裁選で地方票のトップを獲得した石破である。政
権を脅かす存在に確実に 成長 して、来年秋の総裁選挙に出馬することは
間違いないのだ。
幹事長を留任させるか主要閣僚に取り込めば 成長 はするが、政権を脅か
すことはまずあるまい。石破にも禅譲期待が生じ得るからだ。従って安倍
は改造を政局にしてはならない。
石破の処遇は伴食大臣としてではなく、幹事長留任か、外相または財務相
として処遇し、後継者育成の姿勢を示すべき時であろう。安倍も、その側
近なる者も総選挙と参院選挙で圧勝した首相は、なかなか降ろせるもので
はなく、次の国政選挙まではまず政権が継続する可能性は強い事を考え、
平地に波乱を起こしてはなるまい。2014年08月04日
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アメリカは本当に頼れるか
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Andy Chang
イスラエルとパレスチナの戦争はいよいよ熾烈化して終わりが見え
ない。エジプトやその他の国が停戦を調停してもハマスが一方的に
攻撃を始めてまた戦争になる。
アメリカは介入したくないから、ケリー国務長官が調停しているが、
アメリカの提案はイスラエルに不利な条件でうまく行かない。オバ
マは無理を承知でイスラエルに停戦を強要している。
イスラエルとハマスの戦争に対するアメリカの態度を見ると、もし
アジアで紛争が起きた場合にはアメリカが民主国家を援助するか、
テロに有利な条件で紛争を調停するのか甚だ疑問に思う。
●ハマスに人道主義は通じない
ハマスは3000発のミサイルをイスラエルに撃ち込んでいる。ハマス
はイスラエルの滅亡を誓うグループだから攻撃を当然としている。
ハマスは平和を拒否するグループだから、テロ攻撃を正当と思って
いる。テロのハマスと民主国家イスラエルが平和交渉をするのは不
可能である。イスラエルが滅亡するか、ハマスが滅亡するかである
とすれば、自由民主を尊重する国家はどちらを選ぶだろうか。
ハマスはパレスチナ内部の闘争分子で、学校や病院に隠れてミサイ
ルを発射し、パレスチナの子供たちを防衛盾にしている。だからイ
スラエルが反撃すれば子供を傷つける。ハマスは傷ついた子供の映
像を流してイスラエルが幼児を殺傷したと宣伝する。
イスラエルは攻撃を開始する前に大量のビラを流して人民に退避を
呼びかけているが、こんな戦争はこれまでなかった人道的なことで、
イスラエルが無辜の子供を殺傷するのではない。ハマスが強制的に
子供たちを集めているから当然死者が出るのだ。これでは停戦は無
理で、テロに人道主義は通用しない。アメリカでは死傷した子供の
映像を見てイスラエルを非難する無理解な人も多い。
●毛沢東の人海戦術
毛沢東も人海戦術を使って無辜の人民を戦争に追い込んだ。国民党
軍と毛沢東の共産党軍が対峙した時、毛沢東の共産軍は村の人人を
駆り集めて最前線に並べ、後ろに控えた共産軍が銃剣で突撃を命じ
たのだった。村人たちが前進を拒否すれば殺される。殺されたくな
いからみんなが撃たないでくれ、助けてと叫びながら前に進む。共
産軍はその後から追いかけていく。
武器を持たない村人たちが泣き叫びながら突撃してくると、撃てば
無辜の人民を殺傷する、撃たなければ背後に武器を持った共産軍が
いる。国民党軍は退却するしかない。これが人海戦術だ。結論を言
えば非人道グループと人道を論じるのは無駄ということ。ハマスも
中国共産党も人道道徳、相互信頼など一切ない。
このようなグループと人道的な交渉ができるはずがない。世の中に
は友愛の海を信条としたルーピーな元総理や、オバマのように雄弁
自慢で、話せばわかると思う者も多いが、宥和政策、人道や平和道
徳は相手に悪用され、人道主義側が損をするだけである。
●オバマとアジア紛争
アメリカはイスラエルを支持しているはずだか、オバマの態度は実
に曖昧でいつも決断しない。ハマスは既にイスラエルに向けて3000
発のミサイルを発射したにも拘らずアメリカは紛争に介入しない、
したくないから平和調停をする。テログループと民主国家イスラエ
ルの間に調停する余地はない。
オバマが日本を訪問した際に、尖閣は日米安保の範囲内にあると述
べたことで日本人は安心した。だが本当に紛争がおきて中国の軍艦
が尖閣海域で海保と衝突したらアメリカは(特にオバマは)どのよ
うな調停を持ち出すだろうか。
アメリカは紛争に介入したくないからどんな条件でも構わず、中国
に有利な条件を日本に押し付けて平和交渉を強要するかもしれない。
イスラエルとハマスの紛争でオバマがイスラエルのナタニヤフ首相
に電話で停戦を強要したのと同じである。このような事態になれば
日本は決してアメリカの言いなりになってはならない。自分の国、
国民が第一である。ハマスと中国はテログループだからオバマの提
案する宥和政策は一方的譲歩である。ナタニエフ首相のように、自
国の安全を第一義にして交渉すべきだ。
●台湾関係法とアメリカ
台湾人はこれまでアメリカが台湾を中国併呑から守ってくれると信
じてきた。そして台湾関係法はアメリカの国内法であると述べてき
た。しかし中国の侵略が起きて戦争になった場合、アメリカがどこ
まで介入するかは甚だ疑問である。
アメリカは台湾はアジアの平和を守る最重要な拠点だと知っている。
台湾を失えば中国の太平洋進出を防ぐことは出来なくなり、中国海
軍が太平洋を航行しても、中国の潜水艦がカリフォルニアの沿岸ま
で接近しても対処できない。
だが台湾関係法の内容を見れば、アメリカは台湾の戦略的重要性を
認めているにも拘らず、「台湾の自己防衛のために武器を提供する」
と書いただけである。台湾の軍隊の中国人が中国に寝返ってアメリ
カの提供したF16が3機も中国側に逃亡した(うち一機は墜落した
そうである)事実がある。この事実があるからアメリカは台湾に最
新式のF16-C/Dを売却しない。中華民国が台湾に存在する限り中国
に内通する中国人の軍人や政治家が居る。アメリカは台湾の独立を
推進すべきだが、いつも曖昧政策を維持しているから中国に内通す
る中華民国を阻止できないのである。
●日本は自衛力を持つべき
アメリカの衰退と共に日本がアジアの平和維持に重要な役割を持つ
ことが明らかになった。アメリカは何度も日本の集団的自衛権を歓
迎すると明らかにした。日本国内では集団的自衛権について他人の
戦争に加担するのかと言った言論もあるが、アメリカにも日本の戦
争に介入するなと言う言論がある。アメリカだって日本防衛のため
にアメリカ人の血を流すことを拒否しているのである。自分の国は
自分で防衛する他はないのである。
アメリカは日本や台湾の大切な保護者であることは確かだが、今回
のイスラエル紛争におけるアメリカの煮え切らない態度を見れば日
本は早急に自衛力を持ち、憲法改正を急ぐべきである。
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キスカ島守備隊を救出せよ(下)
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伊勢 雅臣
濃霧の中を、救援艦隊はキスカ湾に突入していった。
■1.米艦隊の猛攻
一方、米軍は日本軍の電信を傍受し、暗号解析をした結果、「救援艦隊は
千島を出港し、7月26日か27日にキスカ増援を試みる」と判断した。そこ
で、救援艦隊を一気に仕留めようと、戦艦2隻、重巡洋艦4隻、軽巡洋艦
1隻、駆逐艦7隻の大艦隊で、キスカ南西海上で待ち構えていた。
26日午後7時7分、数隻のレーダーで敵艦を探知した。「来た、来た」と
ばかり、総攻撃にかかった。戦艦は36センチ砲518発、巡洋艦は20センチ
砲478発を撃ち込むという、すさまじい砲撃を行った。
「撃ち方止め」の命令が出た時には、レーダーから目標が消えていた。翌
27日朝、目標地点に哨戒機を巡回捜索させたが、敵艦の残骸も発見できな
かった。米司令官は「敵艦隊全滅」を確信し、キスカの南南東200キロの
洋上で、給油艦から燃料の補給を受けるように命じた。
実は、レーダーが探知したのは200キロ遠方の別の島々の反響映像だっ
た。米艦隊が補給地点に集合する予定時刻は29日午前4時。救援艦隊は予
期せぬ衝突で29日に突入を延期し、米艦隊は「幻の敵艦隊」への砲撃後、
29日にその道を空けていた。
■2.「すごい霧だ」
29日午前0時時点の橋本少尉の天候予測は「午前の濃霧または霧雨、午後
曇りとなり霧薄らぐ」だった。午前6時25分、木村は各艦に発光信号を
送った。「1430突入の予定。各員共同一致任務の達成を期せよ」
「突入す」という短い電信がキスカ島に送られた。日本海軍特有の音色
だ。感度もいいので、キスカの近くに来ている。電信室では「ワァー」と
いう歓声があがった。「来た来た」と言いながら、躍り上がる者、「万
歳」と叫びながら室外に飛び出す者。抱き合い肩をたたき合う男たち。
その直後、米空軍の暗号電信を傍受した。電信室が鎮まり返った。暗号解
析をする。濃霧のため、哨戒機が飛行中止を連絡した電信だった。「万
歳、もう飛行機は飛ばんぞ」。「敵機飛行不可」の電信が暗号化され、山
中の守備隊や救援部隊に伝えられた。
午前11時、突入まであと2時間。「これにて電信室を爆破す。艦隊のご苦
労に深謝す」との最後の電信が発信された。11時30分、最後の通信手段で
ある移動電信機と電池を背負い、電信室の時限爆弾のタイマーのスイッチ
を入れた。
外に出ると、一面の乳白色の霧だ。口々に「すごい霧だ」とうれしそうに
言う。これほど霧がありがたかったことはない。海岸まで2キロの道のり
を、雪解けのツンドラに足をとられながら歩く。電信隊が海岸に到着した
時は、陸海の将兵が2列づつ整列して、坐って待っていた。
あと1時間、艦隊の姿はまだ見えない。5200人が霧の彼方を見つめていた。
■3.「『阿武隈』だ!
午後零時12分、救援隊は島を南東から回り込んで、キスカ湾に入ろうとし
ていた。先頭を行く最新駆逐艦「島風」が、敵レーダー波を探知。一同、
身を固くした。入港作業をしていた前甲板の分隊長が「敵らしきもの左艦
首前方」と報告。
「司令官、敵艦らしいです。攻撃します」と有近参謀が具申すると、木村
は即座に「よし」と答えた。「阿武隈」から魚雷4本を発射。発射と同時
にそのあたりの霧が晴れ、敵艦と思っていたのは、小キスカの山だった。
轟音が響いて、魚雷は見事に命中。
「司令官、いまのは私の誤り、小キスカの山でした」と有近参謀が頭を下
げると、木村は「それより島が見えたのが何よりうれしい」霧は少しづつ
晴れつつあり、湾内入港と収容作業には好都合となった。しかし、急がね
ばならない。
警戒役の「島風」など3隻は湾外に停泊し、「阿武隈」など収容役の8隻
は計画通り、湾内の所定位置に錨をおろした。木村の目には涙がにじんで
いた。「よかったな」と有近の肩を叩く。7月29日午後1時40分、つ い
にキスカ湾に辿り着いた。
海岸で待つ守備隊の方は、魚雷の爆発音でとっさに身を伏せた。しか
し、再び、静寂に戻り、そろそろと砂浜で身を起こすと、黒い艦船の影が
見えた。「敵艦だ」「鉄帽かぶれ」「動くな」と緊張した声で命令が飛
ぶ。砂浜に伏せたまま時間が過ぎる。
海軍将兵が叫んだ。「『阿武隈』だ!」4隻が見えた。5隻、6隻、7
隻、8隻と、その数が増える。みんな立ち上がった。「ほんとに助けに来
てくれたんだ」「ありがとう。ありがとう」 男たちの伸びきったひげ面
を涙が濡らした。それでも隊列は乱さない。
■4.歩兵銃、投棄
救援艦隊から上陸用舟艇が次々と降ろされ、陸地に向かう。砂浜に到着
すると、待っていた将兵達が整然と乗り組み、すぐにまた母艦に引き返す。
母艦に着くと、縄ばしごを上がる。その際に、歩兵銃が海にドボンドボ
ンと投げ込まれた。通常は、命にかえても手放すな、と教えられていた
が、木村は収容作業の時間短縮のために携行品は最小限とし、銃も放棄す
るよう指示していた。
渋る陸軍に対して、木村は、ガダルカナルの撤退の際に銃を携行したた
めに出港が遅れた例があり、また、いざ海戦となった場合、船内に銃が散
乱していては戦闘はできない、と強硬に主張した。
陸軍北方軍司令官の樋口季一郎中将は、参謀本部に相談することなく、
独断で「やむを得ざる場合は放棄するを得」と決断した。「兵器は作れる
が、人間は作れない」と樋口は書き残している。
樋口は、この5年前、満洲はハルビンの特務機関長をしており、ナチス
のユダヤ人2万人がシベリアを横断して逃げてきたのを救った人物である
[a,b]。
さらに日本降伏後に北海道占領を目指して南下してきたソ連軍に対し
て、千島列島・占守島で痛撃を与えた戦いでの司令官であった[c]。その
時に戦った陸軍将兵の中には、このキスカ島撤退で救われた人々もいただ
ろう。
海軍の木村少将と陸軍の樋口少将、この2人がキスカ島撤退作戦で、見
事な陸海連携を生み出していた。
■5.「お互いに本当によかったな」
乗り組みの際に各人に許されたのは、かばん一つだったが、手に何か
もって、縄ばしごを上ってくる者がいた。「荷物は捨てろ」と甲板からメ
ガホンで指示が飛んだが、「これは戦友の遺品、遺骨であります」「遺
品、遺骨は許す」
喜びを爆発させるように、一気に縄ばしごを駆け上がる守備隊員。甲板
に上がってから、「ただ日本の軍艦に乗ることさえできれば、あとはどう
なってもよいと思いました。本当にありがとうございました」と一礼する
隊員。簀(す)巻きにして釣り上げられる傷病兵。
キスカ島での陸軍北海守備隊司令官の峯木十一郎は最後の一兵まで乗り
込むのを確認していた。「残っている兵はおらんだろうな。病人は全部収
容したか」「犬2匹は偽装のために残しましたが、島にはもはや1人の兵
もいません」
峯木のひげ面がわずかながら、ほころんだ。海軍部隊の司令官・ 秋山勝
三少将とともに最後の上陸用舟艇に乗り込んだ。海軍の軍用犬「正 勇」
が尾を振って駆け寄ってきた。しかし、海が怖いのか、乾パンで誘っ て
も、ついてこない。上陸用舟艇のエンジン音が高まり、後進全速。「正
勇」が吠え立てる。「仕方がない。生きろよ」
秋山が「阿武隈」の縄ばしごを上がる。幕僚が続く。甲板では木村や有
近が待ち構えていた。真新しい少将軍装の木村と一年の守備で薄汚れた少
将軍装の秋山が向かい合った。「司令官、ありがとう」「お互いに本当に
よかったな」 短い言葉を交わし、固く握手をした。2人の目が潤んでいた。
■6.アッツ島英霊の加護
霧が晴れ始め、視界がかなり開けてきた。14時20分、「出港用意」 の
ラッパが鳴り出した。用済みの上陸用舟艇は、船底に穴をあけて湾内に
沈めた。
14時35分。各艦が碇を上げて、順次、出港。5200人を収容する のに、か
かった所要時間は55分。救援部隊とキスカ島守備隊、双方の準 備と訓練
の賜だった。
救援艦隊はスピードを上げて、キスカ島を離れていった。救出された将
兵は鉄帽のあごひももそのままに、甲板でじっと身を潜めている。キスカ
島では砲撃と空襲を連日のように浴びていただけに、今日だけ何もないの
はおかしい。そろそろ来るのでは、と身を縮めていた。
「敵の本格的な攻撃を受けても大丈夫ですか」「そのときはお手上げで
す」 守備隊を救出するために、救援隊の方も生命をかけての作戦だった。
16時35分、見張り員の声がした。「敵潜水艦一隻、右正横、距離 千」 有近が双眼鏡で確認すると、敵潜水艦は浮上航行中で、艦上で乗員 が
「阿武隈」の方を向いていた。「戦闘配置につけ」のサイレンが響く。
艦内の緊張が一気に高まる。
「司令官、どうしましょうか。知らぬ顔で行きますか。一発やりますか」
「ほおかむりで行け。この際だ。触らぬ神に祟りなし」木村はにっこり
笑った。
その瞬間、敵潜水艦がパッパッと発光信号を出し、すぐに潜航して消え
てしまった。味方の巡洋艦と誤認したようだった。煙突の一本を白く塗っ
た偽装工作がまんまとうまく行った。
夕刻が近づき、艦はアッツ島の南を通った。甲板上は立錐の余地もない
ほどだったが、誰ともなくアッツ島に向かい、帽子をとって頭を垂れた。
玉砕したアッツ島守備隊への黙祷だった。「阿武隈」の乗員も同じよう
に、頭を垂れる。全艦が祈りに包まれた。北の波間から、「万歳」の声を
聞いた者がいた。
8月1日朝、島影が見えた。幌筵島だ。上空には日の丸をつけた陸軍戦
闘機「隼(はやぶさ)」が飛んでいる。キスカ島では敵機は毎日のように
見上げていたが、友軍機を見るのは久しぶりだった。
岸壁では出迎えの将兵が、大きく帽を振っている。停泊している艦艇の
上でも帽を振っている。「阿武隈」甲板でも、みなが帽を振って応えた。
「ありがとう」「万歳」「おーい」。誰もが叫んでいた。誰もが泣きじゃ
くっていた。生きて帰ってきた。一人も残さずに生きて帰ってきた。
■7.もぬけの殻
米艦隊は、ちょうど日本の救援艦隊がキスカ湾に突入した29日だけ、 給
油のために攻撃の手を休めたが、30日から再び、キスカ島に向け艦砲 射
撃を再開した。
日本軍の陣地からは黒煙が上がり、時々、爆音が聞こえていた。黒煙
は、撤退前に最大限、ゆっくり燃えるようにストーブや炊事場に石炭やツ
ンドラの灌木(かんぼく)を入れ、爆音は時間差を置いて時限装置をセッ
トしていたのである。
米軍はアッツ島奪回作戦では日本軍の激しい抵抗で、上陸兵力1万1千
人中、死傷者1800人も出しただけに、キスカ島でも同様の抵抗がある も
のと考え、今度は百隻近い大艦隊と、3万5千人近い大兵力を揃えた。
8月14日、米艦隊はいっせいに艦砲射撃を加えた後、15日の日の出 を期
して上陸を開始した。濃霧の中を日本軍陣地に向けて手探りで進軍。
「守備隊が待ち構えている」という思い込みから、各地で激しい同士討ち
が起き、死者25名負傷者31」名を出した。さらに駆逐艦「アブナ・リー
ド」が機雷に触れて、死者行方不明者70名を出した。
日本軍の軍医が偽装のために掲げた「ペスト患者収容所」と書かれた看
板を見て、あわててワクチンを取り寄せまでした。もぬけの殻と気がつい
たのは8月18日、日本軍主力の兵舎に到達した時だった。日本軍撤退
後、20日も経っていた。
米軍はキスカ上陸作戦の戦果として、「捕虜は雑種犬3頭」と発表し
た。海軍の「正勇」の他、陸軍の2頭も、猛烈な艦砲射撃を生き延びたの
である。米軍航空兵は「われわれは10万枚の(投降を呼びかける)チラ
シをキスカ島に投下した。しかし、犬では字が読めなかった」と自嘲して
いる。
■8.英霊の加護と天佑
北方軍司令官の樋口は、後に、作戦成功の要因として、濃霧と海軍の友
軍愛とともに、アッツ島英霊の加護を上げている。アッツ島守備隊があま
りに見事な玉砕を遂げたので、アメリカ軍はキスカ島守備隊同様の戦術を
とるものと考え、まさか撤収するとは考えもしなかったのだった。
木村は日記に、「国後」の衝突事故で突入が29日に延び、また米軍も そ
の日は「まぼろしの敵艦隊」攻撃後に、哨戒を解いていたこと。さらに
濃霧に守られながらも、突入時のみ霧が晴れて入港・収容作業が迅速容易
に行われた事を挙げて、「以上はすべて天佑にあらずしてなんぞや」と書
いている。
天皇陛下からは、次のようなお言葉が電文で寄せられた。
陸海軍能く協同し有ゆる困難を克服して
今回の作戦を完遂しえて満足に惟(おも)う。
陸海軍一致協力して作戦・準備・訓練に人事を尽くしたことで、英霊と
天が助けてくれたのだろう。
■リンク■
a. JOG(085) 2万人のユダヤ人を救った樋口少将(上)
人種平等を国是とする日本は、ナチスのユダヤ人迫害政策に同調しな
かった。
http://www2s.biglobe.ne.jp/nippon/jogbd_h11_1/jog085.html
b. JOG(086) 2万人のユダヤ人を救った樋口少将(下)
救われたユダヤ人達は、恩返しに立ち上がった。
http://www2s.biglobe.ne.jp/nippon/jogbd_h11_1/jog086.html
C. JOG(203) 終戦後の日ソ激戦
北海道北部を我が物にしようというスターリンの野望に樺太、千島の日
本軍が立ちふさがった。
http://www2s.biglobe.ne.jp/nippon/jogbd_h13/jog203.html
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1. 将口泰浩『キスカ島 奇跡の撤退 木村昌福中将の生涯』★★★、新潮文
庫、H24
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2. 阿川弘之『私記キスカ撤退』★★、文春文庫、H24
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3. 三船敏郎(出演)『太平洋奇跡の作戦 キスカ』(DVD)★★★、東宝、H25
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私の「身辺雑記」(129)
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平井 修一
■8月1日(金)。朝は室温28度、快晴、まあまあ涼しかったが、すごい日
射し。風もないから9時には32度、犬はハーハー、クーラーをつけた。
国際コラムニストの加藤嘉一氏の論考「中国共産党が参考にする『シンガ
ポールモデル』習近平が尊敬するリー・クアンユーが10年前に指摘した中
国社会の 病巣 」(ダイヤモンドオンライン7/29)にはショックを受け
た。支那では公務員になるのは「汚職で蓄財が目的」なのだという。以下
引用。
・・・
7月末、私はシンガポール共和国にいた。多様性を保ちながら発展してき
た都市国家も、来年度(2014年)で50歳になる。 建国の父 であるリー・
クアンユー初代首相(1923年9月16日∼)はどんな思いでその時を迎える
のだろうか。
「開発独裁」とも称される権威主義的体制の下、政治的には事実上の一党
独裁で、経済的な繁栄を続けてきた。
社会主義市場経済を掲げる中国では「シンガポールモデル」と呼ばれ、中
国共産党(以下、中共)は指導部から中堅官僚まで、その発展モデルを大
いに参考している。
1991年に設立されたシンガポール有数の国立大学である南洋理工大学で
は、これまでに1万人以上の中共官僚が 研修 に訪れ、「シンガポールモ
デル」を巡るガバナンスの在り方を学んでいっている。同大学は「海外党
校」(中共官僚の育成機関である「中央党校」に倣った称号)とも呼ばれる。
以前、私自身シンガポール国立大学リー・クアンユー公共政策大学院を訪
れ、学生たちと交流する機会があった。そこでは中共の官僚たちが学んで
いた。
30代の商務部官僚に「シンガポールモデルは参考になりますか?」と聞く
と、「国家の大きさも異なるし、比較性という意味では慎重になるべきだ
が、シンガポールの経験は参考になる。特に政府のガバナンス力は際立っ
ている」と回答してきた。
「役人の腐敗防止」という観点から、シンガポール政府が役人たちに高額
の報酬を払っているのは有名な話だ。私が付き合ってきたすべてのシンガ
ポール政府役人は自らの待遇に対して満足、あるいは納得がいっているよ
うだった。「これだけの報酬をもらっておいて汚職をする気にはならな
い。公私混同の必要もない」(シンガポール通商産業省若手官僚)。
一方の中国であるが、「政府の役人は安月給で働くべし」という伝統的観
念がいまだ根強く、実際に、大学卒業後に省庁入りした役人の初任給は
5000元(約7万5000円)未満、課長・局長クラスになっても1万元といった
ところだ。私が付き合ったことのある多くの外務官僚は、「在外公館勤務
になった際に資産を貯めこむしかない」と愚痴をこぼしてきた。
2012年上半期に世界を震撼させた所謂 薄煕来事件 を法治主義の進歩とし
たり、習近平主席が就任以来大々的に展開している 反腐敗闘争 を制度の
改善と見る向きもあるようだが、実際は、これまで以上に政治的であり、
制度設計ではなく権力闘争に立脚した産物であり、「法治の確立」ではな
く、「人治の横行」だと私は現状を捉えている。
リー・クアンユー氏は自著《From Third World To First :The Singapore
Story 1965-2000》のなかで、これからの50年間、中国は計画経済から市場
経済、農村ベースから都市ベース、きつくコントロールされた共産主義社
会から開放的な市民社会への転換を遂げる必要があると主張する。
中国の指導者に対して、「国民によるより多くの政治参加を許容し、国民
生活に関わる圧力を緩和し、経済低迷期において社会を不安定化させる可
能性のある要因を調整していかなければならない」と提言する。
建国の父 は、同著のなかで、中国が未来に向かっていく上で、最大にし
て致命的な問題は「腐敗」だと断言する。
「中国では腐敗は政治文化と結託しており、経済改革を施したとしても根
絶するのは難しい。省、市、国のレベルを問わず、多くの共産党の幹部や
政府官僚が腐敗と無関係ではいられない。より深刻なことに、法律を執行
する役人、公安や裁判官なども腐敗している。
この問題の根源的原因は文化大革命時代に一般的な道徳規範が破壊された
ことにある。そして、1978年に始まったトウ小平による改革開放政策は、
役人たちが汚職腐敗へアクセスする機会をより大きくしてしまった」
リー・クアンユー氏は、中国の指導者が法体系を整備して適切な制度を設
立したいと願っており、かつ儒教を再強調することによって、道徳規範を
広めようとしているという中国の現状に対する認識を披露しているが、と
同時に、
「しかしながら、政府役人が非現実的なほどに低い報酬しか与えられない
状況下では、それらの奨励や措置は効果を生まないであろう。たとえ、ど
れだけ死刑や無期懲役といった処罰を強化しても、である」
と、近年の中共指導部の「反腐敗闘争」に対して根本的な疑問を投げかけ
ている。
行き過ぎた取り締まりは政治情勢そのものを不安定にもさせる。と同時
に、より深刻なのは、歴史的に「腐敗は文化」であった中国政治、現実的
に「腐敗すらできないのに役人になる意味は無い」と考える中国官僚に、
容赦なくメスを入れることによって生まれる前代未聞の事なかれ主義と怠
慢主義であろう。
「人民に仕える役人なのだから道徳的に振る舞うのは当たり前だ。給料は
上げない。我慢しろ。不適切な言動が発覚した場合は徹底的に締め上げる」
昨今の中国政府官僚は習近平主席からそう 最後通牒 されているのだ。
リー・クアンユー、リー・シェンロン父子のコメントから示唆を得るとす
れば、「この状況下では、政府官僚は動かない。政府機能は動かない。改
革事業は動かない」という不安要素を、習近平・李克強政権の統治リスク
と見なさないわけにはいかない。
真の意味で持続可能な発展を実現するために、構造改革が急務となってい
る昨今の情勢下では尚更であろう。国家建設において依然として政府機関
が主導的な役割を果たしている昨今の体制下において、「政府役人のやる
気と執行力」は鼓舞されるべきであっても、喪失されるべきものではない
からだ。
??
習近平主席はリー・クアンユー元首相のことを「尊敬できる長者」と呼
び、過去においても政治家として、一国家を統治する者としての教えを請
いている。複数の太子党関係者によれば、習主席が顕在する政治家で最も
尊敬しているのがリー・クアンユー氏だという。
私から見ても、「権威主義的で、目的を達成するためなら手段を選ばな
い」という点において両者は繋がっている。政治的には自由を許さず、体
制内外を問わず対抗勢力を徹底的に締め上げ、その存在すら許さない。
そんなリー・クアンユー氏は、90歳を目前にした2013年8月に出版した自
著《One Man's View of the World》のなかで、2007年11月の訪中時に初め
て面会した習近平に対する印象を以下のように綴っている。
「習近平は胸襟や視野が広く、問題の本質を見極める能力に長けている。
しかも、その才能を見せびらかそうとしない。ずっしりした印象を持っ
た。彼は過去において多くの困難と試練に立ち向かった。一歩一歩奮闘し
た。愚痴を吐かない男だ。私は習近平をネルソン・マンデラ級の人物だと
見ている」
習近平は尊敬するリー・クアンユーからの称賛をどう受け止め、自らの執
政過程にどう活かそうとするのであろうか。(以上)
・・・
?
日本では昔、公務員を評して「休まず、遅れず、働かず」と言ったが、積
極的に働くと周囲から嫌われるし、失敗すれば出世に響く、だから言われ
たことだけをやっていればいい、という仕事ぶりを揶揄したのだ。
中共の役人、官僚は上から下まで今や戦々恐々、汚職蓄財どころではない
から「休まず、遅れず、働かず」で、習がいろいろ指示したところで一所
懸命にはやるまい。習は江沢民派を殴り倒したが、自らの手足もひどく痛
めたのである。習はチャウシェスク、金正恩級の人物だと小生は見ている。
■8月2日(土)。朝は室温30度、晴。5時ごろ犬に起こされたが二度寝し、
寝坊、7時起床。朝食は下ごしらえをしておいたが、カミサンが調理して
くれた。速攻で散歩へ出かけたものの、犬には30度はきついのだろう、勝
手にUターンした。9時には32度近くになったのでクーラーをかける。原発
再稼働は喫緊の課題だ。
国際関係アナリストの北野幸伯氏の論考「集団的自衛権行使容認は日本の
安全のため 戦争準備に入った中国を牽制する唯一の道」(ダイヤモンド
オンライン6/30)は世界の今をよく伝えている。以下引用。
・・・
(ソ連が崩壊した90年代以降2008年のリーマンショックまで米国一極体制
が続いた。リーマン以後は)(1)米国が衰退した、そして(2)中国とロ
シアが狂暴化した。
この二つが、世界情勢でもっとも重要な変化である。では、この変化は、
日本にどのような影響を与えたのか?
答えは簡単で「日中関係が悪化した」。中国は「米国は弱体化して、同盟
国の日本を助けられないだろう」と予想し、攻勢をかけてきたのだ。10年
9月、「尖閣中国漁船衝突事件」が起こった。
どう見ても中国が悪いのだが、同国は「レアアース禁輸」など過酷な制裁
を次々と日本に課した。さらに世界にむけて「尖閣は中国固有の領土であ
り『核心的利益』だ!」と宣言した。
12年9月、日本政府が尖閣を「国有化」すると、両国関係は最悪になる。
その後、中国は「領海侵犯」「領空侵犯」を常態化させた。13年1月、い
わゆる「レーダー照射事件」が発生。同年11月、中国は尖閣を含む空域に
「防空識別圏」を設定。今年5月、6月には、中国の戦闘機が自衛隊機に異
常接近し、問題になった。
こうした中国の動きには一貫性があり、「尖閣を奪いに来ている」と見る
のが妥当だろう。実際、中国は世界に向けて「日本と戦争しますからよろ
しく!」と宣言している。
信じられない? では、証拠をお見せしよう。
<中国専門家「尖閣侵攻で強さ見せつける」 戦争 発言に凍りついた瞬間
(産経2014/2/23)
スイスで1月に開かれた「世界経済フォーラム年次総会」(ダボス会議)
で、取材にあたった米メディア幹部がぞっとする「影響力を持つ中国人の
専門家」の談話を伝えた。
この専門家は「多くの中国人は尖閣諸島への侵攻で軍事的な優位を地域に
見せつけ、シンボル的な島を確保することができると信じている」と語った。
世界大戦の引き金になりかねない話の行方に、周辺は凍り付いたという>
つまり、多くの中国人は尖閣侵攻は「よいこと」と考えている。
<テーブルの出席者は静まりかえり、マイクを握った参加者の1人が
「岩だけで価値を持たない島のために世界戦争を起こす可能性を認識して
いるのか」と質問したところ、この専門家は「理解している」と回答。尖
閣諸島はシンボル的な価値があると繰り返した>(同上)
実をいうと、これは「過激右翼の少数意見」ではない。中国を頻繁に訪れ
るロシア人たちに聞くと、「日本との戦争は不可避。戦争になっても中国
は絶対負けない!」という機運が満ち満ちているという(中国人は「ロシ
ア=味方」と思っているので、ロシア人には本音をもらす)。
?
日本人には信じられない話だが、むこうはとっくに「戦争準備」を進めて
いる。10年から現在に至るまでの中国の動きは、すべて「尖閣強奪」に向
けた「計画的行動」と見るべきなのである。
次に、日本が中国の脅威を克服する方法を考えてみよう。これは、簡単
だ。日米同盟が強固であればいい。衰えたとはいえ、米国一国の軍事費
は、世界総軍事費の40%以上を占めている。中国は、既に軍事費世界2位
だが、それでも米国の5分の1の水準に過ぎない。そして日本は(米国に見
捨てられた)グルジアやウクライナと違い、軍事費世界6位の強国である。
日本一国で中国と戦えば勝てない可能性が高い。通常兵器での戦いには勝
てるかもしれない。しかし、中国が「尖閣を渡さなければ、東京に核を落
とす!」と恐喝したらどうだろう? 日本の政治家は「やれるもんなら
やってみろ!」と言えるだろうか?
だが、日米が一体化して中国と戦えば、必ず圧勝できる。そう、大切なの
は「尖閣有事の際、米国は日本を助ける可能性が高い」と中国が信じるこ
となのだ。それが、尖閣侵攻を思いとどまらせる抑止力になる。?
では「日米同盟」は「強固」なのだろうか? 日本国民全員が「昔ほどで
はない」ことを知っている。「日米中正三角形主義者」の鳩山由紀夫元総
理、そして自称「人民解放軍の野戦軍司令官」の小沢一郎氏が、ぶち壊し
たからだ。安倍総理は、必死に日米関係改善を目指しているが、「右翼」
「軍国主義者」「歴史修正主義者」など、不本意なレッテルを貼られて苦
しんでいる。
どうすれば日米同盟を決定的に「強固」にできるのか? その答えが「集
団的自衛権行使」だ。
日米同盟は強固なものなる。そして、中国は尖閣を侵略することが、とて
も難しくなるのだ(だから、集団的自衛権に関して必死で反対している)。
「集団的自衛権」行使を認めるためには、大きく二つの方法がある。一つ
は、「憲法改正」すること。もう一つは、「憲法解釈」を変えること。こ
の二つは似ているように見えるが、結果はとても異なる。
まずは「憲法改正」。ここで筆者は米国製「日本憲法」を神聖視していな
いことを強調しておく。しかし、だからといって情勢を考えずドンドン変
えればいいわけではない。
「憲法改正」は、それが「米国製」であるが故に問題が起こる。つまり、
中国、韓国だけでなく、米国もまた「米国製日本国憲法」の改正には反対
なのだ。
米国はこう考える。「なぜ日本は、米国製憲法を改定したいのか? 常識
的に考えれば、米国の支配から脱却したいからだろう」
たとえば、米保守系シンクタンク、ヘリテージ財団のブルース・クリング
ナー上級研究員は13年7月、安倍総理について、「河野・村山両談話の継
承と靖国不参拝を明言するべき」「安保政策では、憲法9条改正よりも集
団的自衛権の行使容認を優先すべき」と語った。
つまり「憲法改正」は「脱米国」なので「悪」。「解釈変更」による「集
団的自衛権行使容認」は「善」であるということだ。
「憲法改正」は、確かに「脱米国」であり、多くの日本人の願いでもあ
る。ところが、日本は今、中国と戦争前夜にある。そんな緊迫した時期
に、わざわざ中国と米国二国を敵に回すのは自殺行為だ。
また、安倍総理の「靖国参拝」時の反応を見てもわかるように、米国が反
対すれば、欧州もオーストラリアも同調する。つまり、「憲法改正」は、
中国、韓国だけでなく、米国、欧州、オーストラリアなども敵にまわすリ
スクがある。
おそらく「安倍は軍国主義者、右翼、歴史修正主義者!」と、再び世界的
反日プロパガンダが展開されることだろう。そうなると、ほぼ確実に「さ
よなら尖閣!」である。
一方、「憲法解釈変更」による「集団的自衛権行使容認」は、米国も歓迎
している。なぜか? これも常識的に考えればわかる。日本には今も「個
別的自衛権」はある。だから、中国が攻めてきたら反撃できる。
では、集団的自衛権は何のためなのか? 普通に考えれば「同盟国の米国
をもっと助けるため」となるだろう。集団的自衛権行使容認にも、中韓は
猛反発している。しかし、米国、欧州、オーストラリアなどは反対しない
ので、日本は孤立しない。よって、尖閣を奪われることもない。
「集団的自衛権容認」で日米同盟は強固になり、中国は尖閣侵略を躊躇す
るようになるだろう。仮に侵略を企てても、日米で撃退できる。
しかし、もう一国、とても気になる存在がいる。それが、プーチン・ロシ
アだ。
ウクライナ問題で孤立したプーチンは、中国に急接近している。日米vs中
国であれば、日米は圧勝できる。しかし、日米vs中ロであれば、どちらが
勝つかわからない。だから「日本は、中ロを分裂させ、ロシアを日米陣営
にひきずりこまなければならない」。
こう主張しているのは「世界3大戦略家」といわれるエドワード・ルト
ワック氏である。同氏は「自滅する中国」の中で、「日本は生き残ること
ができるか?」についてこう書いている。
<もちろん日本自身の決意とアメリカからの支持が最も重要な要素になる
のだが、ロシアがそこに参加してくれるのかどうかという点も極めて重要
であり、むしろそれが決定的なものになる可能性がある>
要するにルトワック氏は、「ロシアが日米側につくか、中国につくかが勝
敗を決める」といっているわけだ。だから日本は、中ロを分裂させるた
め、今秋予定されているプーチンの日本訪問を実現させるべきだ。
しかし、その前に、プーチンとケンカしているオバマ大統領にルトワック
の本を読ませよう。そして、「プーチンを招くのは、米国が永遠に覇権国
家でいるためです。中ロを同時に敵にまわしてはいけないと、世界3大戦
略家が言っています!」と説明し、宗主国を懐柔しなければならない。こ
れがもっとも大変なのだが…。(以上)
・・・
安倍氏は、ヤバイことになりつつあるプーチンと欧米の手打ちをとりもつ
べきだ。どちらも第2次冷戦なんて嫌なのだから。そして両方からポイン
トを稼ぐのだ。世界の味噌っかすは中共だけにする、これが肝腎だ。
夕方、孫・子来襲、泊。ブリと各種野菜煮、中華丼風の野菜炒め、刺身、
豆ごはんなどを8人で楽しむ。
■8月3日(日)。朝は5時でも室温30度、快晴、暑い。こうなると「不快
晴」だ。犬はハーハーで、ハーフ散歩。8時には32度に迫った。猛暑だ。
外交評論家・草野徹氏のいささかイタイ論考「民間機撃墜 リーダーシッ
プの違い」が興味深かった(朝雲7/31)。
・・・
ウクライナ東部で7月17日、マレーシア航空機が親ロシア派の地対空ミサ
イルで撃墜された。同ミサイルはロシアが供与した兵器の一部で、誰もが
31年前の大韓航空(KAL)機撃墜事件を想起した。オバマ大統領は21日、
真相究明にロシアの責任を追及した。
ウクライナ当局がマレーシア機が撃墜されたと発表したのは、米東部時間
17日午前10時前。ニュース専門テレビはその前から「マレーシア機が消息
絶つ」「墜落か」などと伝え、早い時点では「米国人の乗客23人」との情
報もあった。
「撃墜」という公式発表の後も「犠牲者多数」など刻々と続報が入り、数
時間後には世界中が300人近い民間人が犠牲になった事実を知った。
その頃、デラウェア州ウィルミントンを遊説中だったオバマ大統領は、同
事件について「It lookslike it maybe a terrible tragedy」と述べた。
約300人もの犠牲者なら、「a terrible tragedy」(恐ろしい悲劇)以外
ないのに、大統領が「lookslike」(…のようだ)とか「maybe」(かもし
れない)という口調では、国民もやりきれない。
当然、批判が起きた。親オバマのCNNコメンテーター、ピアーズ・モーガ
ンは「大統領はとんでもない失敗をした」と怒った。オバマ信者のMSNBC
のクリス・マシューズもKAL機事件の時のビデオを流し、レーガン大統領
を懐古した。それほど対応が違うのだ。
1983年9月1日、ニューヨークからアンカレッジ経由ソウルに向かっていた
KAL機が、サハリン上空でソ連軍戦闘機に撃墜された。ソ連は当初は関与
を否定したが、米国が傍受したパイロットの交信記録を突き付けられて、
5日後には撃墜の事実を認めた。
レーガンはカリフォルニア州サンタバーバラ北方の牧場で、「旅客機(韓
国らしい)がソ連軍に撃墜された」との第一報を得た。それを知らせてき
たクラーク大統領補佐官(国家安全保障担当)に「国家安全保障会議
(NSC)の全員を集めろ」と命じ、翌朝、エアフォース・ワンでワシント
ンに戻った。
彼は直ちに側近やNSCメンバーと協議。3日にラジオで演説、5日には執務
室から全米向けテレビでソ連の「虐殺行為」を国民に訴えた。当時、「言
葉の巡航ミサイル」と評されたレーガンの即応だった。
彼は確かに激怒していたが、側近らに「過剰な反応」は戒めた。同事件を
理由にソ連との戦争など論外で、核軍縮のこれまでの進展を台無しにはで
きない。ソ連を戦略防衛構想(SDI)で震撼させたばかりの上、経済的に
も追い詰めていた。