DVD付き図書の図書館での貸出しについて

会員出版社各位
2008.4.23
日本書籍出版協会
DVD付き図書の図書館での貸出しについて
DVDの貸出しには著作権者の許諾が必要
DVDを付録にした書籍や雑誌が増加しておりますが、このような出版物が図書館で購
入を控えられるという事態が生じています。
これは、DVDに収録された動画が、著作権法上「映画の著作物」であり、その貸出し
については著作権者の許諾が必要になりますが、DVD付き図書の 1 点 1 点ごとに、各図
書館がその許諾を得たり、DVDの部分のみを貸出し禁止にするといった手間が煩雑であ
るため、購入そのものを控えてしまう傾向があるためです。
出版社の立場からすると、DVD付き図書は本とDVDが一体となって利用されること
が望ましく、DVDを外して本だけが貸出される状況は避けてほしいという場合もあると
思います。しかし、著作権者の権利を無視することは許されることではなく、図書館でD
VDを含めて貸出しされることを想定するのであれば、刊行時の契約に際して、DVDに
収録された動画の著作権者の了解を得ておくことが望まれます。
法律上の根拠
著作権者は貸与権を有しています。したがって、本の貸与も原則は著作権者の許諾が必
要で、現に、レンタルブック店における有償の貸与行為に対しては、出版物貸与権管理セ
ンターが許諾業務を行い、貸与権使用料を徴収しています。
しかし、著作物の無償の貸与は、例外的に許諾を要することなく行うことが認められて
おり(著作権法第 38 条第 4 項)、したがって図書館では、著作権者の許諾を得ることなく
本や音楽用CDを貸出すことができます。
いっぽう、映画の著作物の著作者には、有償・無償を問わず、著作物の複製物を譲渡ま
たは貸与する行為に対して「頒布権」が認められています(著作権法第 26 条)。したがっ
て、映画の著作物は、図書館で貸出しするために著作権者の許諾が必要になります。
著作権法には、映画の著作物も無償で貸与する場合には、著作権者の許諾を得ないでも
補償金を支払って行うことができる旨の規定(38 条 5 項)がありますが、現実には、補償
金の額についての合意が、図書館側と権利者団体側でついていないため、適用されている
例はありません(個別の映画会社が、使用料の支払いを条件に、図書館での貸出しを認めてい
る例はあります)。
映画の著作権者との契約で許諾を受けてください
映画の著作物の著作権は、映画製作者に帰属します(法第 29 条)。したがって、許諾を
得る相手方は、映画製作者であって、監督や演出家ではありません。制作、監督、演出、
撮影、美術等を担当してその映画の著作物の全体的形成に創作的に寄与した者は、
「著作者」
として認められますが、「著作権者」ではないことに留意してください(法第 16 条)。
「映画の著作物」の範囲は、いわゆる劇場用映画に限らず、それと同様の視聴覚的効果
をもたらすものも広く映画であるとされています。付録DVDに収録された動画はすべて
映画の著作物と言えるでしょう。ゲームソフトの影像も映画であるとした判例があります
(ただし同じ判例で、中古ゲームソフトの頒布権については否定しています。図書館が購入し
た出版物の付録DVDの頒布権まで否定しているわけではありません)
。
契約上の留意点
出版社自体が、映画の著作物の著作権者である場合は、貸出しを認めるかどうかは出版
社の判断で決めることができますが、出版社が、外部の製作会社に委託してその動画を製
作した場合には、著作権の所在を明確にしておく必要があります。
既存の映画の著作物の全部または一部を利用する場合には、出版社の判断で、貸出しの
諾否を決定することはできないので、映画の著作物の著作権者(上記で述べました通り、
映画製作者であることがほとんどです)
の意向をあらかじめ確認しておく必要があります。
映画以外でも注意が必要
一般的に、DVD、CD‐ROM等のデジタルメディアが本や雑誌の付録についている
場合、図書館では、何が含まれているかわからないデジタルメディアを貸出して著作権侵
害に問われることを怖れますから、その貸出しについて、出版社に可否を問い合わせなけ
ればならなくなります。
出版社としては、あらかじめ「貸出しができる」旨を表示しておけば、いちいち問合せ
に答える手間も省け、また図書館でも安心して購入し、利用できます。
図書館でDVDの貸出しが可能であることを、出版物上へ表示してください
貸出しについて、著作権者の許諾を得られた場合は、次のような趣旨を本の奥付あるい
はDVDのケース等のわかりやすい箇所に表示することが望まれます(様式等は適宜)。
【表示例】
「本DVDは、図書館等での非営利無料の貸出しに利用することができます。利用者か
ら料金を徴収する場合は、著作権者の許諾が必要です。」
また、図書館での貸出しを禁ずる場合に、その旨を表示することもいいでしょう。
■まとめ(各出版社にお願いしたいこと)
以 上
DVD付き出版物については、
① あらかじめDVD部分の著作権者から図書館における貸出しの許諾を受け、
② 図書館での貸出しが可能である旨を出版物に表示する。
以 上
問合せ・連絡先
日本書籍出版協会
〒162-0828 東京都新宿区袋町 6 番地 Tel. 03-3268-1303 Fax 03-3268-1196
日本図書館協会
〒104-0033 東京都中央区新川 1-11-14 Tel.03-3523-0811 Fax 03-3523-0841
日本映像ソフト協会
〒104-0045 東京都中央区築地 2-12-10 Tel.03-3542-4433 Fax 03-3542-2535