第17回 千葉演習林 利用者説明会 - 東京大学大学院農学生命科学研究

2012
第 17 回 千葉演習林 利用者説明会
東京大学千葉演習林
2012/06/18
プログラム
午前
午後
10:00 開会・趣旨説明
13:30 江草智弘
森林流域における流量・水質の空間分布形成要
因についての研究
10:15 福山欣司
映像モニタリングによるカエル類の生息調査
13:45 小田智基
森林伐採後10年間の植生成長に伴う水収支変
化
10:30 澤祐介
オオルリの営巣環境選択
14:00 中渕遥平
斜面安定解析による樹木根系の崩壊防止機能
の評価について
10:45 鈴木牧
①シカの影響を受けた暖温帯旧薪炭林の生態系機
能を回復させる,②広葉樹二次林における植食性昆
虫へのニホンジカの採食の影響
14:15 武田愛美
森林の成長に伴う樹冠遮断蒸発量の変化が河
川流出に与える影響
11:00 尾崎煙雄
①維管束植物相調査,②昆虫相調査
14:30 山本博一
檜皮剥皮が樹木に与える影響
11:15 鈴木義人
シバヤナギに形成される虫えい(ゴール)の形成
機構の解明
14:45 山中征夫
①ブナ科植物の堅果落下量の経年変化,②ジョロウグモの個体
数密度の経年変化,③ヤマビルの生態と防除,④森林葬〔人々の
身近な演習林のあり方として〕
11:30 小森谷あかね
①千葉県産のマツ材線虫病抵抗性クロマツ候補の
選抜,②ヒメコマツの保全・回復対策
15:00 休憩
11:45 原正利
房総丘陵に分布する温帯性植物の立地と生態
15:15 加藤久佳
房総丘陵の地質と化石に関する基礎的調査
15:30 徳橋秀一
2012年度地質の調査研修
15:45 岩崎寿一
2012年度千葉演習林ボランティア会Abies活動
紹介
12:00 昼食(カレーライス\400)
於:清澄講義室
16:00 千葉演習林教職員の個人・組織研究の紹介
発表:12 分,質疑応答:3 分
16:15 その他の調査要旨の紹介
16:30 高木俊
植物の防御戦略がシカ-植物-昆虫相互作用系
に与える影響
16:45 講評・閉会
17:00 休憩
17:30 懇親会
社会人\3,000,学生\1,000
於:清澄宿舎食堂
20:00 閉会
表紙写真:タゴガエル Rana tagoi(アカガエル科
Ranidae)
日本固有種。本州、四国、九州に分布する。千葉県では 1970 年代に分布が確認され、丘陵部の源流域および周辺の
森林より知られている。岩の割れ目等に隠れていることが多い。
撮影場所:千葉演習林
目次(発表順)
映像モニタリングによるカエル類の生息調査
福山欣司 .............................................................................................................................. 1
オオルリの営巣環境選択
澤祐介 ................................................................................................................................. 2
シカの影響を受けた暖温帯旧薪炭林の生態系機能を回復させる
鈴木牧・藤森雄大・伊藤江利子 ......................................................................................... 3
広葉樹二次林における植食性昆虫へのニホンジカの採食の影響
藤森雄大・鈴木牧 ............................................................................................................... 4
植物の防御戦略がシカ-植物-昆虫相互作用系に与える影響
髙木俊 ................................................................................................................................. 5
維管束植物相調査
尾崎煙雄・天野誠・御巫由紀 ............................................................................................. 6
昆虫相調査
尾崎煙雄・宮野伸也・斉藤明子・鈴木勝・斉藤修 ............................................................ 7
シバヤナギに形成される虫えい(ゴール)の形成機構の解明
鈴木義人 .............................................................................................................................. 8
千葉県産のマツ材線虫病抵抗性クロマツ候補の選抜
松浦孝憲・小森谷あかね・遠藤良太 .................................................................................. 9
ヒメコマツの保全・回復対策
小森谷あかね・松浦孝憲・遠藤良太 .................................................................................. 9
房総丘陵に分布する温帯性植物の立地と生態
原正利ほか若干名 ............................................................................................................. 10
森林流域における流量・水質の空間分布形成要因についての研究
江草智弘 .............................................................................................................................11
森林伐採後 10 年間の植生成長に伴う水収支変化
小田智基 ............................................................................................................................ 12
斜面安定解析による樹木根系の崩壊防止機能の評価について
中渕遥平 ............................................................................................................................ 13
森林の成長に伴う樹冠遮断蒸発量の変化が河川流出に与える影響
武田愛実 ............................................................................................................................ 14
檜皮剥皮が樹木に与える影響
山本博一 ............................................................................................................................ 15
2012 年度千葉演習林調査・研究計画
山根明臣・蒲谷肇・山中征夫・新海明 ............................................................................ 16
房総丘陵の地質と化石に関する基礎的調査
加藤久佳・伊左治鎭司 ...................................................................................................... 17
2012 年度地質の調査研修
徳橋秀一 ............................................................................................................................ 18
2012 年度千葉演習林ボランティア会 Abies 活動紹介
岩崎寿一 ............................................................................................................................ 19
森林の断片化による樹木-種子食性昆虫-鳥類間相互作用系の崩壊プロセスの解明
髙木悦郎・富樫一巳 ......................................................................................................... 20
キマダラヒカゲ属 2 種の生態調査
粟野雄大 ............................................................................................................................ 21
河川における流速、河床基質に対応した資源の移動機構
五十嵐祥晃 ........................................................................................................................ 22
千葉演習林のサンコウチョウの基礎研究と鳥類標識調査
前原一統・前原初子 ......................................................................................................... 24
千葉県房総丘陵におけるヒメコマツ実生の生育環境と遺伝的特性
礒辺山河 ............................................................................................................................ 25
マメ科植物の胚柄発達様式多様性の解明
遠藤泰彦 ............................................................................................................................ 26
堂沢風致林における植物群集動態の調査
梅木清 ............................................................................................................................... 27
清澄山の地衣類相調査
原田浩・泉宏子・吉川裕子・坂田歩美 ............................................................................ 28
蘚苔類相調査
古木達郎 ............................................................................................................................ 29
房総丘陵に分布する糞生菌類の研究
吹春俊光・成谷哲 ............................................................................................................. 30
千葉県清澄山における冬季の降水中硫酸イオン高濃度について
横山新紀 ............................................................................................................................ 31
清浄地域における浮遊粒子状物質について
内藤季和・井上智博・横山新紀・中西基晴・依田彦太郎・押尾敏夫・伊藤昭治・水上雅義 ............. 33
デジタル撮影空中写真の活用(林野庁補助事業「デジタル森林空間情報利用技術開発事業」
)
大萱直花・宗像和規・古田朝子 ....................................................................................... 34
多様な施業計画に対応した森林資源管理システムの検討
中島徹 ............................................................................................................................... 35
多様な管理方式を組み合わせた人工林管理に関する研究
龍原哲 ............................................................................................................................... 36
スギ品種の材質調査
山下香菜 ............................................................................................................................ 37
「日本の中山間地域における人と自然の文化誌」に関連した演習林内のフィールド調査
原正利・西谷大 他 ......................................................................................................... 38
先史時代編組製品の素材研究
鈴木三男 ............................................................................................................................ 39
千葉県森林インストラクター会活動予定
相馬行雄 ............................................................................................................................ 40
2012 年度 千葉演習林教職員の研究 ............................................. 41
映像モニタリングによるカエル類の生息調査
慶応大学生物学教室
福山欣司
調査場所:猪ノ川および郷台作業所
要旨
本研究では、カエル類の生息状況を自動的にモニタリングする方法の開発を行ってきた。
従来の音声モニタリングに加え、昨年度から自動録画装置(タイムラプスカメラ)を用い
て、カエル類の出現と繁殖アクティビティのモニタリングを試みている。調査期間は 2012
年 9 月までと 2013 年 2 月から 3 月。
調査場所と調査対象種は以下の通り。
1. 猪の川:カジカガエルのモニタリングのために IC レコーダー1台(地図1)とタイム
ラプスカメラ2台(地図 1、写真1、2)を設置している。何れもタイマー式で夜間
にスイッチが入る。日中はスイッチオフの状態になっており、前を横切ったりしても
問題はない。
2. 郷台作業所:事務所下の池で産卵するカエル類(ヤマアカガエル、アズマヒキガエル、
モリアオガエル)の映像モニタリングを行っている。ここに設置したタイムラプスカ
メラ(写真3)は、毎日 7:00AM、10:00AM、13:00PM、16:00PM に写真を撮影する。
写真1:猪の川上流側のタイムラプスカメラ
写真2;猪の川上流タイムラプスカメラ
写真3:郷台作業所下の池のカメラ位置
の設置風景
の設置風景
1
オオルリの営巣環境選択
山階鳥類研究所
澤祐介
調査場所:43・44・46・47林班にかけての本沢林道沿い
要旨
オオルリCyanoptila cyanomelanaは,低山の渓流沿いの林で繁殖し,コケに覆われた崖
の棚,斜面に生えた木の根元,建造物などに営巣する。
一般的に鳥類は巣内の卵や雛に対する捕食圧が高いため,捕食を回避するために営巣場
所を選択する。植性に覆われた被覆度の高い営巣場所は捕食者から見つかりにくく営巣成
功率が高くなるが,そのような巣では抱卵個体が捕食者を見つけるのが遅くなったり,捕
食者から発見された場合に逃走しにくくなることで親鳥が捕食されるリスクが高まるトレ
ードオフが存在する。本調査ではオオルリの巣を見つけ,周辺環境の調査及び営巣成功率
の測定を行うことにより,営巣場所選択の戦略を明らかにする。また,個体の経験によっ
ても営巣場所選択が変化することが知られているため,オオルリを捕獲・標識し,個体識
別することで,経年的な変化を追うことを目的とする。
オオルリの捕獲にあたり,カスミ網を使用するため通行時には注意いただきたい。カス
ミ網には,図1のような旗を必ずつけている。また,オオルリの巣を発見した場合は,本
沢林道以外の場所であっても教えていただきたい。
図1.カスミ網設置の様子
2
シカの影響を受けた暖温帯旧薪炭林の生態系機能を回復させる
東京大学大学院新領域創生科学研究科・森林総研北海道支所
鈴木牧・藤森雄大・伊藤江利子
調査場所:小坪沢(47B1)
・平塚(34B1)
・檜尾(20A)
目的
房総半島の広葉樹二次林(旧薪炭林)では,管理放棄による植生の遷移とシカの過剰採
食の影響で,林床植物を中心とする生態系全体に強い影響が生じている.本プロジェクト
では,①シカと遷移が及ぼす植物相,動物相,土壌への影響を定量し,また②人為的にシ
カを排除したり遷移をリセットしたりした場合に,これらの要素がどのように反応するか
を検討する.
研究の概要
2006 年 11 月,各調査地に 10×10 m の区画を 8 個設置し,林相,鳥類相,林床植生,土
壌動物相,リター及び土砂の流亡速度,地温を調査した.2008 年 2~4 月,各区画に対し下
図のような実験処理を行った.以後,各実験区において実験前と同様の調査を定期的に行
い,各要素の経年変化を追跡している.2011 年度からは,実験区によるリター分解過程の
ちがいを定量するため,リターバッグ法による調査を開始した.
図:実験設定の説明.
太線はシカが入れない柵,白い四角は上層
木が伐採されている部分.シカ排除区(E),
上層木伐採区(C),伐採+シカ排除区(EC),
無処理区(Ctrl)を各 2 反復,3 か所の調査
地にそれぞれ設定している.
本年度の調査内容
① 分解過程調査(リターバッグ法)
(伊藤・鈴木)…… 昨年度からの継続.5・7・11 月に
バッグを回収し,重量測定・C-N 含量の分析を行う.
② 植生調査,毎木調査(藤森・鈴木)…… 8 月下旬に林床・下層植生の追跡調査を行う.
(鈴木のスケジュール的に可能なら)11 月に毎木調査を行う.
③ 植食性昆虫相・土壌動物相調査(藤森)……この節の調査については詳細未定.別紙を
参照.
※各追跡調査の方法の詳細は鈴木ら(2009)「演習林」の記事をご参照ください.
ほかの利用者にお願いしたいこと
イノシシ等が柵を壊すことがあります。壊れているのを見かけた方は、早急に鈴木か千葉
演習林までご連絡ください。よろしくお願いします。
3
広葉樹二次林における植食性昆虫へのニホンジカの採食の影響
東京大学大学院新領域創生科学研究科
藤森雄大・鈴木牧
調査場所:小坪沢(47B1)
・平塚(34B1)
・檜尾(20A)
研究の背景と目的
草食動物であるシカ類はその採食活動によって世界各地の森林生態系に大きな影響を
及ぼしており、現在までに様々なシカによる生態系への影響についての研究がなされて
きた。シカによる植生への影響が多数明らかにされているにもかかわらず、その植物を
餌とする植食性昆虫についてはあまり研究されていない。中でも鱗翅目、半翅目、コガ
ネムシ類甲虫、直翅目の昆虫は手が付けられていない。そこで本研究では、ニホンジカ
による強度影響下にある広葉樹二次林の千葉演習林において、シカの摂食による半翅目、
コガネムシ類甲虫、直翅目などの植食性昆虫への影響を明らかにすることを目的とする。
方法(予定)
パントラップで直翅目昆虫を、ピットフォールトラップで地表徘徊性甲虫を、ビーティ
ング法で半翅目、コガネムシ類甲虫を捕獲する。
捕獲は exclosure(シカ排除柵)内外で行い、植生と捕獲できた昆虫相、伐採の有無など
の環境要因を比較して評価する。ビーティング法では数回調査地に赴き調査区内の複数個
所(四隅から少し内側の四か所)で昆虫の捕獲を行うことを予定している。
調査時期は盛夏から秋にかけてを想定している。調査の詳しい間隔・時期は未定。
予想される結果
直翅目昆虫は伐採区においては群落高や植物の多様性の違いにより exclosure 内は種
数・個体数共に多く外で少ない。非伐採区においては林床植生が乏しいために変化がない。
半翅目は伐採区では直翅目昆虫と同様の理由で内側では個体数が多く、外側では少ない。
非伐採区ではシカによる影響で樹木の栄養状態の違いで内側が個体数が多く外側が少ない。
地表徘徊性甲虫も内側が多く外側が少ないといった結果になると予想している。
4
植物の防御戦略がシカ-植物-昆虫相互作用系に与える影響
東邦大学理学部生命圏環境科学科
髙木俊
調査場所(希望): 千石 33D(継続利用・網室周辺)
楢の木台(長期生態系プロットの奥のモミ林)
要旨
大型草食獣が、生物間の相互作用を介して、生態系に与える間接効果の方向性や強さは
多様である。草食獣がもたらす間接効果がどのような要因に依存するかをあきらかにする
ことは、どのような相互作用系が草食獣の増加に対して脆弱 or 頑健かの評価を行う上でも
重要である。本研究では、本土と海洋島におけるシカ-植物-昆虫相互作用系に着目し、植
物の防御戦略の違いが間接効果のプロセスや強さに与える影響を明らかにする。
海洋島は、大陸の生物群集に見られない様々な特徴があるが、そのひとつに大型草食獣
の欠如と採食抵抗形質の喪失が見られる。例えば伊豆諸島においては、カラスザンショウ
などの植物でトゲの喪失が知られている。このような防御形質に見られる差異は草食獣-植
物の 2 者間の相互作用だけでなく、植物を利用する昆虫との間接相互作用にも影響するだ
ろう。
本研究では、草食獣との進化的な相互作用の背景の異なる、本土(房総半島・伊豆半島)
と海洋島(伊豆諸島)におけるシカ-植物-昆虫相互作用の比較を行う。房総半島中部・伊
豆半島中部・伊豆諸島新島(1980 年頃人為導入)においてシカの生息が確認されている。
千葉演習林においては、植物の形質の野外パターン調査を行う際に利用させていただく
他、各産地由来の植物を移植し、シカからの採食されやすさ、採食後の反応を実験的に比
較したいと考えている。移植を行う時期・植物種は未定であるが(7 月頃?)、逸出のない
よう十分管理出来る形で行う(鉢植え・繁殖体の除去・実験期間終了後の速やかな撤去)
予定である。
千石に設置の実験区↓
排除柵
コントロール
5
維管束植物相調査
千葉県立中央博物館
尾崎煙雄・天野誠・御巫由紀
調査場所:千葉演習林内全域
目的
東京大学千葉演習林の位置する清澄山系は千葉県内でも特に生物多様性が高く、その維
管束植物相と分布を明らかにするため、演習林と協力して平成 22 年度からフロラ調査を継
続している。平成 24 年度も昨年度と同様の調査と標本採集を行う。
現地調査の時期・回数
平成 24 年度は年間に 10 回程度、各回1泊2日程度の現地調査を予定
現地調査の場所・方法
演習林内全域において、次期毎に標本未採集種の生育地を狙って踏査し、標本採集を行
う。採集した標本は東京大学演習林と千葉県立中央博物館でそれぞれ保管する。
進捗状況
平成 24 年 5 月現在、千葉演習林内において約 900 種の維管束植物を確認した。うち約 750
種については標本を採集し、東京大学演習林と千葉県立中央博物館で保管している。
6
昆虫相調査
千葉県立中央博物館
尾崎煙雄・宮野伸也・斉藤明子・鈴木勝・斉藤修
調査場所:千葉演習林内全域
目的
清澄山系は房総丘陵の中でも最も生物多様性の高い地域である。この研究課題では、清
澄山系の昆虫相の特異性を明らかにすることを目的とする。併せて、清澄山系の昆虫に関
する資料の充実も目的とする。
現地調査の時期・回数
研究期間は、H24 年度〜26 年度とし、年間 8 回程度、各回1泊2日程度の現地調査(採
集)を行い、標本化と同定を行う。同定困難な分類群については専門家による協力を得て
同定を進める。
現地調査の場所・方法
演習林内全域において、林道周辺等での任意採集(捕虫網等を使用した採集)および各
種トラップ調査を行う。おもなトラップの種類は下記のとおり。下記以外のトラップも考
慮中だが、その都度、演習林担当者の方と相談して実施。
(1)ベイトトラップ:地面にプラスチックコップを埋め、昆虫を誘引する餌を入れ、地
表性の昆虫を捕らえる。原則として設置後 24 時間以内に回収。
(2)ライトトラップ:夜間、林内などで水銀灯などの灯火を点灯し、これに集まる昆虫
を採集する。通常、日没直後から深夜にかけて行い、終了後は撤収。
(3)枯れ枝トラップ:樹木の枝やつるを吊してこれに集まる昆虫を採集する。数ヶ月か
ら1年程度設置する。
7
シバヤナギに形成される虫えい(ゴール)の形成機構の解明
茨城大学農学部資源生物科学科
鈴木義人
調査場所:郷台林道沿いのシバヤナギ生育場所
要旨
虫えい(ゴール)は植物の寄生虫が形成するコブであり,葉や茎などに分化した組織が,
色や形の全く異なる組織に分化したものである。本研究で対象とするシバヤナギに形成さ
れるゴールは,ハバチ(Pontania sp.)が形成者であり,産卵時に卵と共に分泌される卵
台液が初期ゴールの誘導にかかわり,その後,孵化した幼虫からの摂食刺激によって更に
大きく成長する。昨年までに,ゴール内には維管束系が発達していること,また,幼虫の
摂食部位はカルス様の細胞分裂が盛んな組織であることが判明した。また,それらの現象
に関与することが知られている植物ホルモンのオーキシンやサイトカイニンが卵台液,幼
虫内に高濃度で含まれること,さらに,幼虫はトリプトファンを前駆体としたオーキシン
合成能を持つことも示された。本年度は,ハバチにサイトカイン合成能があるか否かを明
らかにするとともに,およびオーキシンやサイトカイニン生合成遺伝子の特定や共生微生
物の関与などを探る。また,オーキシンやサイトカイニンによりゴール形成がどこまで説
明できるかに関する検討を行う。
演習林では,主にシバヤナギの生育場所においてハバチ幼虫およびゴール組織の採集を
行う。
8
千葉県産のマツ材線虫病抵抗性クロマツ候補の選抜
千葉県農林総合研究センター森林研究所
松浦孝憲・小森谷あかね・遠藤良太
調査場所:クロマツ暫定採種園(南沢 45 林班 C6 小班)
概要
マツ材線虫病に抵抗性の高いクロマツは、西日本で選抜された数少ないクローンのみで、
遺伝的な多様性が充分とはいえない。
そこで、千葉県内のマツ材線虫病抵抗性クロマツの育種を進めるため、その候補木をマ
ツノザイセンチュウ接種試験により選抜を行っている。この候補木の一部に演習林クロマ
ツ暫定採種園(南沢 45 林班 C6 小班)由来の材料を利用する(接種試験場所は千葉県農林総
合研究センター森林研究所)
。
ヒメコマツの保全・回復対策
千葉県農林総合研究センター森林研究所
小森谷あかね・松浦孝憲・遠藤良太
調査場所:前沢 28 林班 B4 小班集植所(雌雄花着花調査、結実調査)
札郷苗畑(さし木試験)
前沢 28 林班 D1 小班集植林(薬剤樹幹注入試験)
概要
千葉県のヒメコマツは寒冷期の遺存樹種として、房総半島の地史的、植物地理学的観点
から学術的価値が非常に高い貴重なものであるが、急速に減少し、保全、回復が大きな問
題となっている。
そこで、房総丘陵に点在して生存する個体群の繁殖のための着花、結実調査、現地個体
の遺伝子保存のためのさし木試験、樹幹注入試験(注入後の薬剤効果の追跡)に取組んで
いる。
このほか、演習林内、国有林内の個体について、2009 年から、結実状況とマツノマダラ
カミキリの後食痕の確認のモニタリングを、千葉演習林、県立中央博物館、房総のヒメコ
マツ研究グループと共同で実施している。
9
房総丘陵に分布する温帯性植物の立地と生態
千葉県立中央博物館
原正利ほか若干名
調査場所:演習林内全域
目的
房総丘陵(特に清澄山系)は気候的には暖温帯に属し、植生としては全域が常緑広葉樹
林帯に入るにもかかわらず、ヒメコマツ、ツガ、アサダ、カツラ、シナノキ、タニギキョ
ウ、アカショウマなど温帯性の植物が多数、分布し、生物多様性を豊かにしている。これ
は 1 種の遺存分布と考えられるが、ヒマコマツ、フサザクラなど一部の種をのぞき、その
詳細分布や、立地、生活史などの生態は不明な点が多い。本研究課題では、千葉演習林内
を踏査して、清澄山系における温帯性植物の詳細分布と立地環境を調査し、遺存分布を可
能にしてきた立地条件を解明することを目的としている。
調査場所・方法
演習林内全域の尾根筋および沢筋を中心に歩きながら、温帯性植物の分布を、GPS を用い
て調査し、その場所の地形、周辺の植生についても調査・記録する。適宜、標本採集も行う。
GIS を用いてデータ解析を行う。
現地調査の時期・回数
1 年間に5~6回(最大)
、各回1泊2日程度
その他
演習林内の保護樹の分布等について情報提供をお願いしたい。
10
森林流域における流量・水質の空間分布形成要因についての研究
東京大学 森林理水及び砂防工学研究室
江草智弘
観測地:千葉演習林 猪ノ川流域(特に袋山沢・新田,相の沢)
背景と目的:森林流域における河川水の流量・水質は空間的に大
きくばらつくことが知られている。例えば隣り合った 1ha の流域
を比較しても、流量・水質は大きく異なることが多い。その空間
的なばらつきを決定する要因についてはいまだ明らかになって
いない。そこで、本研究は、猪ノ川流域における河川水の多点デ
ータなどから、流量・水質の空間分布決定要因を明らかにするこ
とを目的としている。
今までの研究内容:
(1)河川水の流出経路推定・・・降雨は土
壌に浸透し、その一部はさらに基岩まで浸透した後に湧出する
ことが知られている。我々は特に基岩に浸透した地下水(基岩
地下水)に着目した。猪ノ川全域(500ha)における河川水の流
袋山沢
新田
河川水採取地点
採水器・水位計設置予定地点
量・水質の多点観測結果から、流出経路の分離を行った。その結果、基岩地下水の流出は
数 ha の小流域でばらつき、数 100ha の大流域では流下とともに増加することが明らかとな
った。解析の結果、基岩地下水は標高の低下とともに増加することが明らかとなった。
(2)河川中における、栄養塩の吸収量測定・・・河川中において、一部の溶存物質(窒
素・リンなど)は生物による吸収・物理的な吸着の影響を受け、濃度変動することが知ら
れている。我々は、源位置添加実験(河川に窒素・リンを添加し、流下に伴う吸収量を調
べる)の手法を用いて、猪ノ川における窒素・リンの吸収・吸着量を調査した。その結果、
猪川における窒素・リンは吸収・吸着が起こる場合と起こらない場合が存在しており、ま
た吸収している場合でもその吸収量は他流域に比べて少ないことが明らかとなった。
今年度の課題:(1)降雨時の流出経路推定(2)河川中の窒素・リン吸収決定要因の特定
今年度の観測予定:定期観測は主に袋山・新田、その他の観測は集中的に行う
(1) 降雨・土壌水・地下水など水質サンプリング(2週間に1度程度:袋山沢・新田)
(2) 降雨時の河川流量・水質(黒滝・鳥居沢・相の沢への自動採水器・水位計設置)
(3) 平水時の河川流量・水質サンプリング(8,10 月にそれぞれ3日ほど:猪ノ川全域)
(4) 栄養塩添加実験(7,8,11 月にそれぞれ1日:相の沢出口)
11
森林伐採後 10 年間の植生成長に伴う水収支変化
東京大学 森林理水及び砂防工学研究室
小田智基
調査場所:袋山沢・新田
概要
森林伐採などにより、森林の植生が失われると、森林流域からの蒸発散量が低下し、流出水量
が増加することは、これまで様々な流域で観測されている。しかし、樹木の成長に伴いどの程度
の期間で水収支が元の状態にまで回復するのかについては、研究例が少ない。本研究では、1999
年 4 月に皆伐、2000 年 4 月に植林が行われた、東京大学千葉演習林袋山沢試験地を対象とした。
袋山沢における長期間の流量観測の結果、森林伐採後、流出水量は
およそ 300mm/year 増加したことが分かった(真板ら,2005)
。さら
に、その後の観測の継続により、植林後 10 年経過した 2010 年でも
伐採流域では対照流域に比べ、流量が多い状態が続いており、伐採
前の状態に近づいている傾向は見られない。そのため、植林後 10
年間が経過しているにも関わらず、蒸発散量は伐採直後と比較して
ほとんど変化していないと考えられる。これは、降水が樹冠上で蒸
図 1 袋山沢の毎木調査プロット
発する樹冠遮断量が伐採前の状態に回復していないことが原因
1000
であると考え、2011 年には樹冠遮断量の計測を行い、非伐採流
その結果、2011 年 5 月~12 月の期間において、林外雨量の平
樹高 (cm)
域(A 流域)と伐採流域(B 流域)での樹冠遮断量を比較した。
600
400
均値は 1524 mm 、A 流域の樹冠通過雨量と樹幹流量の平均値は
200
それぞれ 1051 mm 、66.6 mm 、B 流域の樹冠通過雨量と樹幹流
0
05
06
07
08
09
10
11
1500
1000
500
0
2012 年度の予定
観測地
流出量(mm/yr)
考えられる。
04
2000
樹冠遮断量は、A 流域では 406 mm、B 流域では 263 mm であった。
とが、植林後 10 年で水収支がほとんど変化しない原因であると
2002 03
図 2 毎木調査プロットにおける平均
樹高の変化
量の平均値はそれぞれ 1192 mm 、68.8 mm であった。両流域の
この結果から、植生回復による樹冠遮断能力の変化が小さいこ
B1
B2
B3
800
94 95 96 97 98 99 00 01 02 03 04 05 06 07 08 09 10
図 3 袋山沢における伐採後の流量
袋山沢・新田
変化
観測項目
・林外雨量(新田)、樹冠通過雨量(袋山沢内 20 点)
、
樹幹流量 (袋山沢内 6 本) を計測(2 週間に 1 回程度)
・開空度の測定(夏、冬)
・毎木調査(秋)
・流量観測
図 4 袋山沢 A・B 流域における樹冠遮断量
12
斜面安定解析による樹木根系の崩壊防止機能の評価について
東京大学 森林理水及び砂防工学研究室
中渕遥平
調査場所:千葉演習林北西部の 8 林班(第 1,2,6,7,8,12,13,14 林班)
要旨
樹木根系には土質強度補強効果があり、森林が発達した地域は斜面崩壊が生じにくいこ
とが認識されている。本研究では、千葉演習林で多数の表層崩壊が発生した 1970 年 7 月 1
日の集中豪雨についてモデル計算を行い、各林班の林齢に応じた土質強度定数を与えるこ
とで、崩壊の発生機構を再現できるかを検討している。解析対象地としては、特に崩壊が
集中していた千葉演習林北西部の 8 林班(第 1,2,6,7,8,12,13,14 林班)を選出。崩壊位置
は、演習林によって作成された崩壊位置の概略図と 1974 年撮影の航空写真を利用して決定
した。
1970 年の降雨による崩壊の位置
:崩壊箇所
70 年当時の林齢分布図
13
森林の成長に伴う樹冠遮断蒸発量の変化が河川流出に与える影響
筑波大学 生物資源学類
武田愛実
調査場所:袋山沢水文試験流域
調査目的
森林の成長に伴う蒸発散量の変化は、河川流出量に大きな影響を与える。蒸発散は主
に蒸散と遮断蒸発からなるが、河川流出量への森林の影響が、蒸散ではなく遮断蒸発に
よるものであることが調査流域(後述)で実施された研究結果から示唆されている(真
板、2006)
。しかしながら、任意の成長段階の森林における遮断蒸発量を単独で精度よ
く推定するのは難しく、森林の成長が河川流出量に及ぼす影響について、蒸散と遮断蒸
発量の占める割合が明確に分離できていない。
本研究では、遮断蒸発量の推定のために、降雨終了後に蒸散が開始されるまでの時間
を樹液流計測によって求め、樹冠上での微気象観測データと合わせて Penman-Monteith
式に適用することで、遮断蒸発量を単独で推定し、観測値と比較検討することを目的と
する。
調査場所・調査頻度
袋山沢水文試験流域 B 流域で行う。B 流域は1999年に皆伐され、翌年にスギ・ヒノキ
の苗木が植栽されてから12年が経過している。
調査期間は2012年4月から2013年3月までの1年間で、2週間ごとにデータ回収と機械の
メンテナンスを行う。
調査項目
調査項目は主に、微気象観測、樹液流計測、林内雨・樹冠流量計測である。
微気象観測(湿度と風速)は調査流域内のツリータワーで行い、ツリータワー周辺の
スギ3本を対象に樹液流を計測する。計測に使用する機械は自作のグラニエセンサーで、
直径2.5mm、全長20mm のヒーター付きセンサー(HS)と温度センサーを樹木に挿し、HS
に0.2W のジュール熱を与えて2本のセンサーの温度差を計測するものである。電源はバッ
テリーと南側斜面に設置したソーラーパネルによる。
また、調査流域内にサンプラーを設置し、林内雨量と樹冠流量を観測する。
14
檜皮剥皮が樹木に与える影響
東京大学新領域創成科学研究科
山本博一
調査場所;相ノ沢 10 林班 C4 小班
概要
「檜皮」とは屋根葺き材用にヒノキから採取した樹皮で、樹齢 70 年以上の立木から、およそ
8~10 年の間隔で採取される。これは樹皮がもとのように再生されるまでに要する年数に拠る。
こうして定期的に採取される檜皮材は文化財の修理に欠かせない材料である。重要文化財に指定
されている桧皮葺の建造物は約 700 棟あり、これを維持するために年間約 3500 ㎡の葺き替えが
必要となる。近年、檜皮の採取が樹木の成長阻害や材質悪化をもたらすのではないかという見方
が示されたため、樹皮採取に協力する森林所有者が減少している。このことが文化財修復用資材
の安定的な確保を阻害するのではないかと懸念されている。例えば、京都府京北町の森林組合で
は次の理由で剥皮が制限されている。①皮を剥くときにヘラが甘肌に突き刺さり、ヤニツボがで
きる。②皮を剥いた年は日焼けして色目が悪い。③皮を剥くときに下枝を落とすが年数が経つと
この部分を皮が覆うため外見上は無節に見え、このことが材木業者から苦情が出る。この結果、
檜皮の採取量が減ったと報告されている。
そこで、本研究において文化財の檜皮資材を採取するための剥皮行為がヒノキにとって、どの
ような生理的影響があるかを検証するため、福岡県から千葉県の間にある4カ所の大学演習林の
樹齢 69~88 年生のヒノキ 80 本を斜面方位、林縁効果、立木密度、獣害に大きな差異が生じない
よう配慮して選び、うち 40 本について剥皮し、残りの 40 本については対照木として観察の対象
とすることとした。この実験によって「ヒノキ林所有者がもつ檜皮材採取により樹木の生育阻害
や品質低下がおこるのではないか」という疑念を検証することが期待される。1998 年の剥皮後、
5年後、10 年後、15 年後に剥皮木・対照木の樹幹解析を行い、幹の肥大成長、檜皮資材となる
樹皮の成長、木材としての材質変化の有無について検証する。
形成層活動が始まった直後の通常の檜皮採取による材への影響評価と原皮師の技術水準の違
いによる材への影響評価を行った結果,形成層活動の休止期間と同様に活動が始まった直後にお
ける通常の剥皮行為は材に影響を及ぼさないことが確認できた。また原皮師の技術水準の違いに
よる影響評価については、剥皮のために最初にヘラを入れる行為に着目し、極端なケースとして
ヘラを深く差し込み技術的にきわめて未熟な段階にある原皮師、すなわち素人に近い技術者によ
る剥皮を想定した実験を行ったところ、ヒノキ立木の品質を低下させることなく檜皮材を持続
的・安定的に生産していくためには、原皮師の採取技術水準の維持がきわめて重要であることが
確認された。
剥皮木の直径は早くて2年で剥皮前の直径に回復し、剥皮後6年で 8 割の剥皮木の胸高直径が
剥皮前以上に回復していた。剥皮後 9 年間で剥皮木と対照木の直径成長に有意な違いは認められ
なかった。したがって、剥皮が直径成長に悪影響を及ぼしていないと推察される。
15
2012 年度千葉演習林調査・研究計画
NPO 法人 房総の野生生物調査会
山根明臣・蒲谷肇・山中征夫・新海明
活動事業
1.
自然生態系の調査・研究
2.
農林業被害にかかわる野生生物の生態調査と被害対策
3.
自然観察会の開催
4.
千葉演習林の支援〔春・秋の演習林一般公開、ニホンジカの生息数調査、高校生ゼ
ミ等〕
調査・研究
蒲谷 肇,山中征夫・研究課題:ブナ科植物の堅果落下量の経年変化(継続)
研究内容:ブナ科植物の堅果の豊凶調査を行い、周期性を調べる
研究方法と場所:シ-ドトラップによる堅果の回収、シ-ドトラップを7箇所に設置〔天
津事務所裏山、速尾見本林(42D2)
、安野(2C5)
、楢ノ木台(8A1)、仲ノ沢(29B4)、札郷
見本林(28E)
、荒樫沢(24B2)
〕
調査時期:9月~12月、月1~2回(堅果の落下時期)
新海 明・研究課題:ジョロウグモの個体数密度の経年変化(継続)
研究内容:ジョロウグモの個体数密度を記録する <論文2点提出>
研究方法と場所:ロ-ドセンサス法により郷台林道等で調査する
調査時期:年1~2回(主は9月~10月)
山中征夫・研究課題:ヤマビルの生態と防除(継続)
研究内容:ヤマビルの生態を明らかにし、防除対策に役立てる
研究方法と場所:天津事務所・分析室において飼育個体の体重測定と生態観察及び演習林
内におけるヤマビルの生息状況調査をする
調査時期:飼育個体の観察を週1回(金曜日)、通年を通して主要林道における生息状況の
調査をする
<院生・小泉紀彰さんの支援なくなる>
山根明臣・研究課題:森林葬〔人々の身近な演習林のあり方として〕
(継続)
研究内容等:
「里親制度」を参考に、樹木葬が一般的であるが、森林葬の実現に向けて問題
点を整理する。研究期間は3年間を予定し、近隣における事例調査・資料収集などを行う。
※森林野生動物の放射能汚染の実態調査(パートナ―を探しています)
16
房総丘陵の地質と化石に関する基礎的調査
千葉県立中央博物館
加藤久佳・伊左治鎭司
調査場所:千葉演習林全域
要旨
本研究では,清澄山系における主として大型化石の分布を把握し,堆積環境や地質構造
史を反映した各層準の古生物相を解明することを目的とする。このため,演習林内に分布
する安房層群天津層および上総層群黒滝層,黄和田層などから軟体動物をはじめとした大
型化石を採集・検討する。また,未報告であるがオウナガイ類やキヌタレガイ類などの化
学合成生物群集に属する軟体動物化石が演習林内の転石から見つかっており,源岩(露頭)
も発見される可能性がある。
調査は上記層準の分布地域でのランダムサンプリングになりますが,化石は多くありま
せん。貝化石などを発見された際は情報をお寄せいただければ幸いです。
17
2012 年度地質の調査研修
(独)産業技術総合研究所(産総研) 地圏資源環境研究部門 客員研究員
徳橋秀一
利用場所:黒滝口から郷台畑にかけての猪ノ川 (本流) 沿い
利用期間:10 月頃(月曜日~金曜日の 5 日間:宿泊施設は利用しない予定)
要旨
本研修は、地質関連会社から産業技術総合研究所の地質調査総合センターへの依頼から
始まったものであり、これらの会社 (資源系、建設系、環境系など)に就職しながら、大学・
大学院時代に地質調査に関連した実習や訓練などを受けなかった若手の技術者を主な対象
に、希望者を募って実施しているものである。これまでに 2007 年、2008 年、2009 年、2010
年の秋 (10 月) と 2011 年春 (5 月) の過去 5 年間実施している (月曜日から金曜日の4泊
5日で実施)。
本研修では、地質調査 (地質図の作成など) を実施する際の基礎となる地質学的なルー
トマップづくりの作業を猪の川沿いで行う。黒滝より上流の猪の川沿いには、新第三紀の
地層 (上位より、安野層、清澄層、天津層と名づけられている地層) が、ほぼ全面的にか
つ連続的に露出するとともに、河川が蛇行しているために、同じ地層、同じ凝灰岩鍵層が
繰り返し現れることから、地層の連続性を確認することや、また、断層によって地層がず
れる様子を確認することができるなど、地層や地質構造の基礎を理解しながらルートマッ
プを作成する上で非常に適している。また、猪の川林道の黒滝口近くにある黒滝は、地質
学の世界で有名な“黒滝不整合”の名前の発祥の沢でもあるなど、地質学の研究において
非常に付加価値の高いルートでもある。さらに、安全に歩ける平滑な河床である上に、林
道もすぐ近くにあることから、初心者が沢沿いでルートマップづくりの作業を安全に実施
しながら、地質学的な見方と地質調査法の基礎を学ぶ上で、本ルートは極めて優れている。
これまで本研修の管理・運営は、地学情報サービス㈱が実施してきたが、諸般の事情か
ら昨年夏に自主廃業したことから、その後の検討の結果、一般社団法人日本地質学会
(http://geosociety.jp) が引き継ぐ予定である。実施・利用形態はこれまでと同じで、林
道に入るための鍵や駐車カードなどをお借りしたい。宿泊は民間の宿を利用し、演習林の
宿泊施設は利用しない予定。
E-mail: [email protected],
18
2012 年度千葉演習林ボランティア会 Abies 活動紹介
千葉演習林ボランティア会 Abies
岩崎寿一
1)千葉演習林ボランティア会 Abies について
千葉演習林ボランティア会 Abies は千葉演習林で活動しているボランティア団体で
す。Abies とは千葉演習林のシンボルツリーである「モミ」の学名を拝借したもの
です。2004年に発足して今年で9年目になります。現在の会員数は45名。昨
年の活動回数18件、日数は延26日、参加人数は157名でした。
2)主な活動
① 千葉演習林主催行事のサポート(春、秋の一般公開、高校生ゼミナール、鹿調査参
加)
② 演習林研修会、利用者説明会などの聴講。
③ 歩道補修、苗畑除草、建物清掃等の作業。
④ 会員対象の演習林内樹木や草本の観察会と研修会。
⑤ 演習林見学者の案内。
⑥ Abies 通信の発行(年6回発行し Abies のホームページへ掲載)
3)昨年度の活動トピックス
①2011年3月17日予定していた Abies 総会を中止しました。
②2011年9月11日 お月見研修で初の水生生物観察会を行いました。
③2011年10月15日生態水文学研究所へ研修に伺いました。参加者16名。
4)今年度の活動計画とトピックス
①今年度の活動計画数は22件です。
②ボランティア会 Abies が“森たび”東京大学演習林の見どころ100に掲載されま
した
③2012年3月
Abies 事務局所在地を千葉演習林天津事務所に変更しました。
(暫定)
④除草、下刈り、歩道修理などの作業の回数を増やしたいと考えています。
⑤生態水文学研究所のボランティア会「シデコブシの会」が千葉演習林に研修に来た
いと云っておられました。実現する事を願っています。
5)最後に
千葉演習林ボランティア会 Abies は従来の活動に加えて、
「千葉演習林の目的である教
育研究や、良く整備された美しい森林とすばらしい環境について一般の人に伝える」
と云うことも大きな役割だと考えています。演習林と市民を繋ぐ架け橋になれるよう
会員各自一層の努力をしたいと思っています。
19
森林の断片化による樹木-種子食性昆虫-鳥類間相互作用系の崩壊プロセスの
解明
東京大学大学院農学生命科学研究科 森林動物学研究室
髙木悦郎・富樫一巳
調査場所:作業所構内(天津,札郷)・演習林周辺(黄和田畑,蔵玉,筒森)
1.調査内容と利用場所
1.1.シードトラップによる落果調査(各月)
札郷作業所近くのモチノキ植栽地(前沢)にシードトラップ(図 1)を設置し,落果とモ
チノキタネオナガコバチ(図 2)による寄生の関係を調査する.
1.2.野外操作実験(4 月~1 月予定)
天津事務所,札郷作業所,演習林周辺(黄和田畑,蔵玉,筒森)のモチノキに袋掛け(図
3)による操作実験を行う.
1.3.サンプリング調査(6 月,7 月,9 月,11 月,1 月)
天津事務所,札郷作業所,郷台作業所,演習林周辺のモチノキとタラヨウの着果を定期
的にサンプリングし,着果量と昆虫による寄生の関係を調査する.
1.4.野外撮影(11 月~3 月予定)
天津作業所,札郷作業所,植栽地(前沢)のモチノキに野外自動撮影カメラを設置し,
モチノキの果実食者を明らかにする.
図 1.モチノキ植栽地に
図 2.産卵中のモチノキ
図 3.モチノキの枝に
設置したシードトラップ.
タネオナガコバチ成虫.
掛けた袋.
2.協力依頼事項等
本研究では、村川氏をはじめとする千葉演習林の職員の方に,調査,着果の採集,およ
びシードトラップを用いた落下果実の採集等に多大なるご協力をしていただいている.
3.これまでの結果
Takagi, E., Iguchi, K., Suzuki, M. and Togashi, K (2010) Selective oviposition in
fertilized seed of Ilex integra by the wasp Macrodasyceras hirsutum (Hymenoptera:
Torymidae). European Journal of Entomology, 107: 197-202.
Takagi, E. and Togashi, K. (2012) Evidence of sex change in Ilex integra. Botany,
90, 75-78.
Takagi, E., Iguchi, K., Suzuki, M. and Togashi, K. (2012) A seed parasitoid wasp
prevents berries from changing their colour, reducing their attractiveness to
frugivorous birds. Ecological Entomology, 37, 99-107.
20
キマダラヒカゲ属 2 種の生態調査
東京大学森林動物学研究室
粟野雄大
調査場所:札郷付近(下図参照)
要旨
ヤマキマダラヒカゲとサトキマダラヒカゲというササ・タケ類を食べる2種のチョウの
生態を比較するため、調査地内を巡回し、生息状況を調査する。網を使って調査範囲内の
草木をたたきながら、出てきたキマダラヒカゲ類を捕獲し調査を行う。なお、調査の際に
は千葉演習林の村川功雄氏にお手伝いいただいている。
県道 81 号から札郷作業所道に入り 100m ほど
上がったところで右側に入った道沿い
21
河川における流速、河床基質に対応した資源の移動機構
千葉大学大学院 理学研究科
五十嵐祥晃
調査場所:猪ノ川周辺
概要
それぞれの生態系は閉鎖系ではなく、生態系の間での資源の移動は系内の生物群集やその生
産性に強く影響を及ぼす。河川と森林生態系はこのようなつながりを持つ典型的な例であり、
河川での生産物を多くの陸上の生物が利用している。このような生態系間の資源の移動は非生
物的な物理化学的作用によるものもあるが、多くは生物的作用によるものである。河川におい
て、流下する栄養塩類は藻類によって河床の生態系に取り込まれ、また、羽化昆虫によって川
から森林への資源の移動が起こる。そこで、河川における資源の移動機構を解明するには、河
川内のどのような区間で藻類による資源の固定がおこるか、そして、羽化昆虫の陸上への移動
が起こるのかを明らかにすることが必要になる。本研究では、流下する栄養塩や羽化昆虫の量
を左右する流速と、生物の固着性に関係する河床基質に着目し、藻類の同化量、水生無脊椎動
物量、昆虫の羽化量の変異とこれらの環境要素の変異の対応を調べることにより、生態系間の
資源の移動機構を解明することを目的とする。
昨年の実験結果により、流速の速い場所で水から基質への資源の固定がおこり、固定された
資源は基質が石である箇所で底性生物に移り、羽化により陸上へ移動するという一連の機構を
明らかにすることができた。しかし、河川では水温、光量、落葉による資源の流入など季節的
な要素により環境が大きく変化し、生物的作用による資源の移動機構も季節的に変化すると考
えられる。河川から陸上への資源の移動の全体像を把握するために、資源移動機構の時間スケ
ールでの変化を解明することを目的とし、通年の調査を行う。
野外調査は、2011 年 6 月から 2012 年の 5 月にかけて、毎月、東京大学千葉演習林の猪川周
辺で行う。約 100mの区間を対象とし、流域を河床基質、流速により4つのユニット、石瀬、
石淵、岩瀬、岩淵に区分した。それぞれのユニットで、藻類量を各 3 か所、底性生物量を各 10
か所、昆虫の羽化量を各 3 か所調査する。また、魚類、陸生の無脊椎動物を含む河川内、およ
び周辺の陸生の生物について炭素及び、窒素の安定同位体を測定し、食物網の構造を推定する。
加えて、流速、光量、流下資源の量に対応した藻類の同化量の推定を行うために、2012 年1月、
4 月、7 月の 3 回、河川の水と均一な基質を用いた室内実験を行い、藻類による同化量を推定す
る予定である。
底性生物量と羽化量には顕著に季節性が見られた。底性生物量については基質が石の区間で
は6月から8月にかけて大きく減少し、その後8月から 12 月にかけても少しずつ減少していっ
た。基質が岩の区間についても 6 月から 8 月にかけては減少したが、石の区間とは異なり 10
月から 12 月にかけて大きく増加している。羽化量については基質が石、岩ともに 6 月から 8
月にかけてがピークであり、その後は小さい値で推移している。
底性生物の 6 月から 8 月にかけての大幅な減少と、
羽化量のピークが一致していることから、
22
底性生物はこの時期に羽化によって陸上に移動していることがわかる。一方、10 月から 12 月
の期間には河床基質が岩の区間でカゲロウなどの藻類食性の無脊椎動物が優占しており、落ち
葉に由来する栄養塩が藻類にとりこまれ、さらに水生昆虫に利用されていることが示唆される。
一方、この時期、河川内に多くの落葉が観察されるが、これらを利用するトビケラ等は少なく、
落下直後の落ち葉は利用しづらい資源であることが示唆される。
このように、秋から冬にかけての落葉の供給など、季節的な環境変異が、底性生物量、さら
には羽化量など生物的要素に大きく影響することがわかった。引き続き年間調査を続けること
により、一年を通じた環境変化に応じた生物の機能を解明することができると考えられる。
23
千葉演習林のサンコウチョウの基礎研究と鳥類標識調査
文理開成高等学校・日本鳥類標識協会
前原一統・前原初子
調査場所:本沢、折木沢~郷台作業所の稜線部
調査内容
現在、サンコウチョウの演習林内での捕獲個体数は過去7年間で、二十数羽にとどまり、
繁殖地での換羽の状況については十分な資料が得られていない。また、巣立ち後の幼鳥の
捕獲は、営巣地付近での捕獲を試みているが、2003から2010年に東大千葉演習林
では25巣余りの営巣が濁川、大仙場、黒川、本沢、猪ノ川、小屋の沢、などの沢沿いで
観察されている。
また、捕獲(環境省鳥類標識調査、環境省事務所長-鳥獣捕獲許可)調査では、サンコ
ウチョウはじめ、オオルリ、キビタキ、センダイムシクイ、ミソサザイなどの夏鳥や、カ
ラ類、コゲラ、メジロなどの漂鳥を調査し、鳥体の抱卵斑※1の確認することにより、繁殖
を推定する上での有用な成果を収めている。
今後もサンコウチョウの発育初期の標識装着による年齢の追跡調査と年齢、性別におけ
る個体の形態変化、繁殖地での換羽の基礎調査を主に行い、合わせて個体群の変遷を経年
調査により調べていく。また、同一環境の生息鳥類についても標識調査、目視による調査
に加え、演習林およびその周辺で繁殖している個体群の個体形態ついての調査を開始する。
調査重点地域として、本沢、及び折木沢から郷台作業所の稜線部に継続的に捕獲用網を設
置し、サンコウチョウ、メジロをはじめとする演習林内を移動する鳥類全般の標識調査を
行う予定である。
生息鳥類においては、絶滅危惧種 B(環境省)に含まれるヤイロチョウの飛来(さえずり
を確認、平成24年5/28,29)やミゾゴイが繁殖期(5月から8月)に毎年観察(猪
ノ川、本沢)され、ハチクマ(2004・5)、オオタカ雄・(ヤマドリ捕食2005・6)、
ジュウイチ(2012.5)県内希少種ほか、千葉県内では繁殖が未確認※2とされている
ミソサザイ、クロツグミ、トラツグミ、キビタキ、センダイムシクイ、などが繁殖、また
は、繁殖の可能性が高い状況(ランク B)での観察 がされた。また、ウソ、イカル、ハギ
マシコなどの亜高山帯の鳥類が冬期に観察され、標高が低い地域の鳥類の繁殖、越冬地と
して貴重であることが考えられる。
※1 腹部の一部の羽毛が繁殖期に脱落し皮膚が露出している。
※2 千葉県自然史動物編・平成14年・千葉県、千葉県の保護上重要な野生生物・
2003年・千葉県
24
千葉県房総丘陵におけるヒメコマツ実生の生育環境と遺伝的特性
宇都宮大学農学部森林科学科 森林生態学・育林学研究室
礒辺山河
調査場所:四郎冶沢・スミ沢・荒樫沢におけるヒメコマツの生育地
要旨
調査場所(図―1 赤枠)におけるヒメコマツの実生(図―2)を対象にして、生育環境、
年齢・葉の健全度の調査を行う。また、実生から遺伝解析用のサンプルを採取する。その
後、マイクロサテライトマーカーを用いて自殖率の評価および親子解析を行う。
実生調査の際に個体識別用のタグをつけるので抜かないようしてください。
図-1.調査場所
図-2 ヒメコマツ実生
25
マメ科植物の胚柄発達様式多様性の解明
茨城大学理学部
遠藤泰彦
調査場所:第 15 林班および第 19 林班の尾根沿い
背景
被子植物の胚柄は、いわゆる哺乳類のヘソの緒に相当し、胚への栄養分の通り道と胚の
胚嚢内での固定という重要な役割を担う構造である。一方、これまでの研究では、胚柄は
胚の発達段階の初期、つまり、子葉分化開始段階で計画的細胞死に向かい、消失すると言
われて来た。ところが、申請者の観察の結果、被子植物中 3 番目に多い種からなるマメ科
では、比較的早期に胚柄が消失する型と子葉分化後も胚柄が残る型とがあることが明らか
となって来た。そこで、これら 2 型がマメ科植物のどのような種で認められるのか、また
これら 2 型の進化過程はどのようなものであったのかを明らかにすることを目的として、
本調査を行うこととした。なお、2011 年 8 月 29 日に同様の調査を行ったが、時期が遅く、
適切な発達段階にある種子を入手できなかった。
調査内容
(現地調査とその後の解析の具体的内容)
ミヤマトベラおよびジャケツイバラの様々な発達段階にある種子を採集し、液浸標本と
する。この種子を用い、回転式ミクロトームで切片を作成し、内部構造を観察する。これ
により、子葉段階にある胚の胚柄の状態を明らかにする。
採集場所
・第 15 林班(ジャケツイバラ)および第 19 林班(ミヤマトベラ)の尾根沿い
採集期日
・ミヤマトベラ(果実各 5 個)採集予定:7 月 25 日(水曜日)と 8 月 6 日(月曜日)の 2
回
・ジャケツイバラ(果実各 5 個)採集予定:6 月 13 日(水曜日)と 6 月 27 日(水曜日)の
2回
26
堂沢風致林における植物群集動態の調査
千葉大学園芸学研究科
梅木清
調査場所:27 林班 堂沢風致林
調査内容
1982 年に林床植生と樹木群集が調査されたプロット(15 個;図 1)の場所を、2011 年に
特定し、部分的にプロットを再設定した(林床植生調査プロット 12 カ所、樹木群集調査プ
ロット 9 カ所)
。これらのプロットのデータを過去のデータを比較することで植物群集の約
30 年間の変化を明らかにした。今後、これらのプロットにおける測定を継続しつつ、風致
林に一部(図 1E 中下付近)において比較的大きな調査プロットを設置して植物群集の動態
を継続観察することを構想している。ただし、2012 年に調査の予定はない。
図1
堂沢風致林における林床植生・樹木群集調査プロット
青い線で囲われた部分:堂沢風致林。A 上〜E 下:1982 年に設置されたプロットの位置。
赤い x:プロット再設置を断念した場所。
27
清澄山の地衣類相調査
千葉県立中央博物館
原田浩・泉宏子・吉川裕子・坂田歩美
調査場所:千葉演習林全域
調査内容
千葉県内でも最も種多様性が高いと予想される清澄山周辺の地衣類相を明らかにするた
め,千葉演習林全域を対象として,現地調査を行い,採集した標本の分類学的検討・同定
を行う.開始した平成 22 年度から林道沿いで調査を行っており,24 年度もまず林道沿いで
実施し,ひととおり終了した後には山道沿いに対象域を広げる予定である.調査時期とし
ては主に冬季を予定している.
また,演習林に保管されている地衣類標本についても同定を試みているところである.
28
蘚苔類相調査
千葉県立中央博物館
古木達郎
調査場所: 猪ノ川とその支流流域
調査内容要約:
千葉県立中央博物館が今年度から3年度計画で進める重点研究「房総丘陵の自然—過去、
現在、未来—」の一環として取り組む。
これまで、清澄山とその周辺の蘚苔類については、新版千葉県植物誌(1975)を作る際
に浅野貞夫先生が採集した標本などが残されているが、本格的な調査は行われていない。
そこで、演習林に生育している蘚苔類相とその分布を明らかにすることを目的とする。
今年度は、演習林が保管している蘚苔類標本の再検討と現地調査を行う。現地調査は猪
ノ川とその支流流域の重点的に行う予定である。
標本調査は、既に借覧しており、現在研究中である。
現地調査は主に秋以降に行う予定である。
他の利用者に留意して欲しい点:
もし、樹木から懸垂している大型の蘚苔類を見かけましたら、生育場所を教えて頂ける
と幸いです。
29
房総丘陵に分布する糞生菌類の研究
千葉県立中央博物館
吹春俊光・成谷哲
調査場所:千葉演習林全域
目的
1)糞生菌:動物の糞は有機物に富む微生物にとって魅力的な基質で,糞の分解過程では,その
分解に関与する菌類が多種・多様に発生することが知られている(吹春 2012)
.欧州ではそ
の生態を含め古くから注目を集め,20世紀初頭には187属757種の菌類が目録化されている
(Sylloge Fungorum 1882-1930)
.日本における研究は遅れており,特に担子菌類ハラタケ類
で,糞上にみられる種としては,今関・本郷(1987)が図示した担子菌ハラタケ目491種のう
ち,糞生の生態が知られているのはわずか16種のみであり,日本では,未知・未調査の種類
がまだ豊富に期待できる.●申請者のグループは,2005年に長野県から日本新産のヒトヨタ
ケ類を2種(Fukiharu et al 2005)
,2012年には日本菌学会で,北海道(苫小牧演習林)産と
京都(芦生演習林)産のヒトヨタケ類未記載種を2種報告している.現在,千葉県内で採集
されたニホンジカ,イノシシ糞等の培養をおこなっており,クズヒトヨタケ,トフンヒトヨ
タケなどの千葉県の新産菌が分離されている.●今回の研究では,房総丘陵で採集されるニ
ホンジカ等の糞より発生する,担子菌類に属する日本産糞生ハラタケ類について調査をおこ
なう.
2)一般大型菌類:千葉演習林の大型菌類目録は佐々木(1954)のみである.今回の調査では,
1987年から約20年以上にわたり県立中央博物館で収集した大型菌類の標本情報と今回の採集
情報をあわせ,東大千葉演習林産の大型菌類に関する総合的な大型菌類目録を作成する.
現地調査の時期・回数
1)糞の採集:1 年間に数回の採集を実施する.持ち帰った糞は,千葉県立中央博物館で「湿室
培養」をおこない,糞生菌類を発生させ,分離・培養し,同定をおこなう.
2)一般菌の採集:糞の採集にあわせて,演習林内に発生する大型菌類の調査を実施する.
参考
吹春俊光 (2012)
糞生菌のはなし. In 二井一禎・竹内祐子・山崎理生編“微生物生態学へ
の招待”, pp. 75-88. 京都大学学術出版会, 京都.
Fukiharu,T., K.Takarada, T.Hosoya. and N.Kinjho (2005)
Three Coprinus species
occurred on the animal dung collected at Yatsugatake range, central Honshu, Japan.
Bull. Natun. Sci. Mus., Tokyo, Ser. B 31(4): 117-126.
佐々木敏雄(1954)千葉県演習林産材質腐朽菌目録.東京大学農学部演習林報告 46:
182-192.
30
千葉県清澄山における冬季の降水中硫酸イオン高濃度について
千葉県環境センター
横山新紀
調査場所:鴨川市清澄(防災無線中継局)
はじめに
千葉県清澄山(標高は 377m,県内第三位)は図1のとおり房総半島南部に位置して太平
洋に直接面しており,主として県北部に立地する発生源の影響をほとんど受けない地理的
な条件にある。また,図2のとおり降水量は県内でも最も多く,年
間降水量 2000mm を超えることも珍しくない。降水観測は清澄山頂
直下で 2008 年度から開始し,2009 年度から清澄山系において月1
回渓流水の採水を開始し成分測定を実施している。今回,硫酸イオ
ンについて降水と渓流水の変動について報告する。
方法
降水のサンプリングは㈱小笠原計器製作所の US-330 型自動降水
採取機により1ヶ月毎に実施した。なお,試料はイオンクロマトグ
図1
調査地点
ラフィー(東ソー製,IC-2010)を用いて分析を行なった。
結果と考察
図 2 に県内 8 地点で実施した 2010 年度の nss-SO42-濃度を示した。
清澄の濃度は 26.04 μ
mol/L であり都市,工業地域の市川(16.43μmol/L,市原(18.38 μmol/L)と比べて5割程度
高く,県内で最も高い濃度である。
図 3 に清澄の 2008 年度からの nss-SO42-濃度変化と 2009 年度からの渓流水の nss-SO42濃度(×0.1)変化を併せて示した。降水濃度は 2008 年度は概ね通年で 10~20 μmol/L 程
度であったが,その後 2010 年 2 月に 90 μmol/L を記録するなど冬季に急上昇した。それ
以降も 2010 年 7,8 月に 10 μmol/L 程度だったものが 2011 年 2 月には 80μmol/L と急上昇
を繰り返した。なお,こうした濃度の大きな変動は県内の他の地点では見られなかった。
一方,渓流水濃度は 8 月頃に最低値を記録したあと 2 月に最高濃度に達し,夏季に低く
冬季に上昇する濃度変化の傾向が見られ,降水濃度変動と渓流水濃度変動傾向はよく一致
していた。
図 4 に 2008 年度からの清澄の降水量の変化を示した。降水量の極端に少ない場合に降水
成分の高濃度が見られることがあるが,2010 年 2 月や 2011 年 2 月はそれぞれ 100mm 前後の
降水量があり,降水量が少ないことによる高濃度ではない。むしろ,清澄山では冬季には
かなり高濃度 nss-SO42-のまとまった量の降水があることを示していると考えられる。また,
渓流水の nss-SO42 濃度も降水濃度傾向と概ね一致して冬季に濃度の上昇が見られることか
ら,降水の濃度変動が渓流水濃度変動に大きく影響している可能性がある。
31
図4
32
降水量推移
0
降水,渓流水の非海塩硫酸イオン濃度の推移
600
500
400
300
200
100
0
4月
年降水量
3月
2月
nss-SO42- 濃度
3月
12月
2011年1月
佐倉
11月
10月
9月
8月
7月
6月
清澄降水濃度
9月
10
月
11
月
20 12
11 月
年
1月
2月
8月
5月
4月
香取
7月
6月
3月
80
5月
2月
旭
4月
2010年1月
12月
11月
10月
9月
8月
7月
6月
市原
3月
9月
10
月
11
月
20 12
10 月
年
1月
2月
8月
5月
銚子
7月
4月
図2
6月
3月
2月
500
5月
12月
一宮
4月
図3
2009年1月
30
11月
40
10月
市川
9月
8月
7月
6月
2010年度降水量(mm)
2000
3月
9月
10
月
11
月
20 12
09 月
年
1月
2月
5月
2008年4月
非海塩起源硫酸イオン濃度(μ mol/L)
60
8月
降水量(mm)
0
7月
4月
5月
6月
年
08
20
25
1500
20
15
1000
10
5
清澄
0
nss-SO42-濃度及び降水量
100
90
渓流水濃度
70
(移動
平均)
50
(移動平均)
20
10
2010年度非海塩起源硫酸イオン濃度
(μ mol/L)
2500
30
清浄地域における浮遊粒子状物質について
千葉県環境研究センター
内藤季和・井上智博・横山新紀・中西基晴・依田彦太郎・押尾敏夫・伊藤昭治・水上雅義
調査場所:鴨川市清澄(防災無線中継局)
目的
千葉県では大気汚染が深刻であった 1982 年から、大気中の浮遊粒子
状物質の広域的な影響や長距離輸送などの知見を得るために周囲に工
場や道路などの発生源のない清浄地域での測定を開始し現在まで継続
している。千葉県のバックグラウンドレベルを把握することにより大気
汚染評価の資料とすることが目的である。
方法
図1 調査地点
新宅機械製作所のサイクロン式ローボリュームサンプラーにより、ほ
ぼ 1 ヶ月単位で浮遊粒子状物質の測定を行った。調査地点は清浄地域として鴨川市清澄(防災無
線中継局)及び市原市国本(畜産センター市原乳牛研究所)、対照地域として市原市岩崎西(環
境研究センター)とし、図1に示す。清浄地域の2地点は標高約 360m(清澄)200m(国本)の
山頂付近にある。対照地域の岩崎西は東京湾岸の京葉工業地帯に隣接している。使用したろ紙は
石英ろ紙で、加熱処理は行っていない。長期間にわたるため、粒子状物質濃度以外の分析項目は
一定していないが、最近 16 年間は水溶性成分として 8 種のイオン、CHN コーダーにより元素状
炭素と有機炭素を分析している。
結果
図2に 1982 年 1 月から 2010 年 3 月までの浮遊粒子状物質の濃度推移を示した。1997 年以前
は市原で 11~12 月に高濃度が認められるが、その後、高濃度は認められなくなり、最近数年間
では清浄地域と工場地域の差が顕著では無くなってきている。清浄地域である清澄はこの間、ほ
とんど変化がなく、元素状炭素濃度もほぼ一定しているが、国本は時々濃度上昇が認められ、気
流の関係で一時的な汚染を受けたと考えられる。
図2 浮遊粒子物質の濃度推移
33
デジタル撮影空中写真の活用(林野庁補助事業「デジタル森林空間情報利用技
術開発事業」)
一般社団法人 日本森林技術協会
大萱直花・宗像和規・古田朝子
調査場所:
(選定中)
要旨
千葉演習林全域を対象にデジタル空中写真を撮影する。分類等の教師用データとして現
地調査を実施する。
空中写真から作成予定のデータは、50cm 解像度オルソ、2m メッシュ DSM、立体視用デー
タである。現地調査は、表 1 の内容で実施するが、調査地点は様々な林相、林齢を対象と
するよう選定中である。調査地においてはチョークによるマーキングを実施するが、杭等
の残置はしない。
表 1 現地調査内容
調査種別
標準地
地点数
4
面積
0.1ha
調査項目
胸高直径毎木、樹高 20 本、下層植生、植被率
(森林生態系多様性基礎調査準拠円形プロット)
簡易
10~15
約 0.02ha
本数、胸高直径 5 本、樹高 5 本、植被率
空中写真 DSM を用いた林分材積推定、オルソデータを用いたオブジェクトベースによる
林相区分、本事業で開発した PC 上でデジタル空中写真を立体視するソフト「もりったい」
の材積推定精度検証 等を実施する。
────────────────────────────────────────
空中写真データは、森林・林業に関わる研究には使用許諾申請の上、無償で利用可能で
す。希望者は大萱([email protected])までご連絡ください。ただし、天候等の条
件により撮影できない場合もございます。
34
多様な施業計画に対応した森林資源管理システムの検討
東京大学大学院農学生命科学研究科森林科学専攻森林経理学研究室
中島徹
調査場所:人工林固定試験地等(特に現地に精密機器等は設置しません)
要旨
本研究の目的は千葉演習林の人工林や固定試験地を対象に、リモートセンシング等で把握
した林分の現況を基礎に、多様な施業計画に対応した林業経営収支予測システムによって、
無間伐林や高齢林等の幅広い人工林の将来を予測できる仕組みを検討することである。今年
度は、昨年度実施された異なる林分の樹幹解析結果等とあわせて、研究を継続することを予
定している。
図 2. リモートセンシングによる三次元鳥瞰図
図 1. 樹木幹解析のための伐倒の様子
1200
本数密度 (本/ha)
30
25
Frequency
平均樹高
(m)(m)
tree height
Average
35
20
15
× 推定値
Estimated
10
Observed
◇ 実測値
5
実測値
実測値
推定値
実測値
推定値
1000
800
600
(林齢
(林齢
(林齢
(林齢
(林齢
20)
45)
45)
102)
102)
400
200
0
0
0
20
40
60
80
100
120
Stand
age (年)
(year)
林齢
2 10 18 26 34 42 50 58 66 74 82 90 98
Diameter class (cm)
直径階 (cm)
図 4. 直径階別本数の予測の一例
図 3. 樹高の成長予測の一例
35
多様な管理方式を組み合わせた人工林管理に関する研究
東京大学大学院農学生命科学研究科 森林経理学研究室
龍原哲
調査場所:2林班 C5-a 小班
研究の目的
一般的な皆伐施業では、樹木を伐採してから苗木が成長して成林するまでの間は林地が
樹木によって完全に覆われていないので自然環境の劣化を引き起こす可能性がある。特に、
近年苗木がシカの食害を受け、林地の回復を難しくしている。林地が露出する機会を減ら
すため、植栽と伐採の周期を長くする長伐期施業、木材生産のために一部の樹木を抜き切
りしてその後に苗木を植栽することを繰り返し、林地を露出することなく木材生産をおこ
なうことができる複層林施業を導入し、多様な施業を組み合わせることにより環境保全を
考慮した人工林経営の仕組みを理論的に確立することが本研究の目的である。
今年度の計画
二段林下木の成長経過の調査
樹下植栽された下木の林分構造および成長を分析し、複層林の成長を予測したり、樹下
植栽された樹木が成木する可能性を予測することを目的としている。
対象地は安野2林班 C5-a 小班の二段林内に設置した5つの区画である。この林分は、上
木の植栽が 1902 年、下木の植栽が 1992 年、上木はスギで下木にスギとヒノキが混植され
ている。1996 年に、この林分内にA~E区の5区が設置され、以後、上木、下木の成長を
測定している。区画は図1
のように斜面に沿って平行
に設置され、区画内の上木、
下木の直径および樹高と立
木位置が測定されている。
今年度はこの区画内にあ
る下木の直径および樹高を
測定する。長期間の測定結
果を基に、斜面上の位置や
上木からの距離などの要因
によって、下木がどのよう
に成長していくかを明らか
にする。
図1 安野2林班 C5-a 小班に設置された試験地の立木位
置図(2005 年度の調査結果を基にした GIS 出力図)
36
スギ品種の材質調査
森林総合研究所木材特性研究領域
山下香菜
調査場所:スギ品種見本林
要旨
スギの強度的性質と化学成分の構造について品種間差を調べるために、スギ品種木を伐
採し、丸太試料を採取する。
スギの強度的性質や心材含水率などの材質は、品種によって異なることから、成長量だ
けでなく材質が優れたスギの育種が進められている。木材の主成分であるセルロース、へ
ミセルロース、リグニンのうち、結晶性セルロースの配向方向は、木材のヤング率(たわ
みにくさ)に影響を及ぼし、品種によって異なることが明らかにされている。非晶性多糖
類のへミセルロースは、木材の吸湿性、粘性、熱分解性に影響を及ぼすが、その構造解析
はほとんどされておらず、その構造が同一樹種内で変異があるかどうかも明らかでない。
本研究では、力学特性の測定とへミセルロースの構造解析を行う。ヤング率が特に低いと
されているボカスギと、中程度であるアヤスギを用いる予定である。スギの材質は個体間、
生育地間、個体内(半径方向、樹高方向)でバラツキがあるので、由来や生育履歴、試料採
取位置が明瞭な試料を用いて解析することが重要である。
37
「日本の中山間地域における人と自然の文化誌」に関連した演習林内のフィー
ルド調査
千葉県立中央博物館/国立歴史民俗博物館
原正利・西谷大 他
調査場所:千葉演習林内全域
要旨
東大千葉演習林と周辺集落との関わり(薪炭材の払い下げ)や、植物学・地質学等の視
点から、演習林内を歩き、GPSを用いて炭焼き跡(写真1)といった遺構、特徴的な地
質(写真2)記録していく。
炭焼き跡(写真1)
特徴的な地質(写真2)
38
先史時代編組製品の素材研究
東北大学植物園
鈴木三男
調査場所:千葉演習林内全域
調査目的
先史時代の遺跡から出土する編組製品の素材の植物種を同定し、先史時代における植物
利用を明らかにするために、
1) 編組製品に使われた可能性のある現生植物の素材可能部分(茎、葉、木材、樹皮等)の
試料を採取し、組織切片を作成し同定のための基礎資料とする
2) 先史時代の編組製品復元製作実験を行うため、同定された素材植物(ムクロジ、イヌビ
ワ、ツヅラフジ等)の素材可能部分(木材、蔓)を採取する
調査内容と方法
演習林内の林道を自動車で移動しながら、目的植物を探索し、ムクロジ,イヌビワにつ
いては胸高直径 10cm 以下の幹材 3 本を伐採し、木材を採取、ツヅラフジの蔓 20m、ウラジ
ロ、コシダの葉柄各 3 本を採集する(保護地域、保護植物,調査研究対象個体は除く)。
他の利用者に留意して欲しい点
試料は採取してしまうので、調査研究中の個体、プロット、エリアにはそれが明確に分
かるように表示しておいて欲しい。
39
千葉県森林インストラクター会活動予定
千葉県森林インストラクター会
会長 相馬行雄
房総丘陵の地形や草本・木本の観察
相馬行雄
実施場所:黒滝~猪ノ川沿い~郷台畑
実施日:H24 年 12 月 3 日(月)
内容
(1)
房総丘陵の豊な自然が保たれている演習林内の房総特有の地形や、急斜面の植物、
杉・檜等人工林等の観察と知識取得
(2) 参加者は千葉県森林インストラクター会会員 5 名と一般参加者 45 名合計 50 名
特に他の利用者に留意して欲しい点及びお願い等
(1) 下見は、7~10 名で 10 月 27 日(土)、11 月 24 日(土)予定しています。
(2) 当日、お昼には郷台畑宿舎休憩とトイレの利用をお願い申し上げます。
房総丘陵のモミ・ツガ等の観察
岩崎 寿一
実施場所:石尊山~前沢~麻面原天拝園
実施日:H25 年 1 月 18 日(金)
内容
(1) 演習林内のモミ・ツガの大木等の観察と知識取得
(2) 参加者は千葉県森林インストラクター会会員 6 名と一般参加者 40 名合計 40 名
特に他の利用者に留意して欲しい点及びお願い等
(1) 下見は、7~10 名で 11 月~12 月頃予定しています。
昨年の観察会の様子(今澄にて)
40
2012 年度
区分
千葉演習林教職員の研究
代表者
協力者
課題名
利用場所
備考
山田利博
種苗ゼミ
マツ材線虫病抵抗性マツの育種
武者土採種園、郷台
千葉県森林研究所
畑、演習林全域のマ
共同研究
ツ植栽地
科研(基盤A)分担
千葉県下、東大新領
(代表:佐橋憲生)、
域福田研、田無演習
千葉県森林研究所
林
共同研究
千葉演利用
組織研究
組織研究
山田利博
梅林利弘、種苗ゼミ
生体分子の相互作用に基づいたマツ
材線虫病発病機構の解明
組織研究
山田利博
各地方演習林担当者
演習林における放射性Cs汚染状況モ
ニタニング
東大各地方演習林
組織研究
久本洋子
種苗ゼミ
房総半島産ヒメコマツの保全
演習林全域、房総丘 ヒメコマツ研究グ
陵
ループ共同研究
組織研究
久本洋子
鈴木 牧、二次林調査班 広葉樹二次林の更新動態とシカの影響
桧尾20A、平塚
34B1、小坪沢47B4
組織研究
當山啓介
廣嶋卓也、三次充和
高齢人工林の混交林化技術の確立
演習林全域
組織研究
當山啓介
施業WG
大学演習林による森林経営計画作成
の知見活用
室内作業のみ
組織研究
村川功雄
演習林基盤データ整備 ピットフォールトラップを使った地表徘徊 楢ノ木台長期生態系
生物部門昆虫班
性甲虫相の調査
プロット
組織研究
藤平晃司
演習林基盤データ整備
フロラ調査
生物部門植物班
個別研究
廣嶋卓也
時系列三次元リモートセンシングによる
郷台林道および本沢 科研(基盤C)分担
広域森林資源シミュレーションシステム
林道沿いの人工林 (代表:露木 聡)
の開発
個別研究
廣嶋卓也
カーボンクレジット適正価格の検討
千葉演習林2007~
2012年度人工林間
伐地、北海道、秩
父、樹芸、生態水文
個別研究
廣嶋卓也
日本-台湾におけるスギの成長比較
千葉演習林吉田試
台湾大演習林共同
験地、台湾大溪頭試
研究
験地
41
演習林全域
千葉県中央博物館
共同研究
2012年度千葉演習林教職員の研究課題
千葉演利用
礒辺山河、逢沢峰昭、
種苗ゼミ
房総丘陵ヒメコマツ系統保存個体の遺 天然成木生育地、札
伝的多様性の検討
郷苗畑、集植地
個別研究
久本洋子
個別研究
當山啓介
人工林固定試験地データ活用による幹
室内作業のみ
曲線式の再検討
個別研究
鶴見康幸
千葉演習林における野外作業での被
ばく量調査
個別研究
大石 諭
自然災害に対応した林道管理システム
林道全線
の開発
個別研究
塚越剛史
種苗ゼミ
サンブスギにおける非赤枯性溝腐病菌
仙石33D
糸の成長について
個別研究
里見重成
米道 学、塚越剛史、軽
込 勉、種苗ゼミ
キヨスミミツバツツジのさし木増殖技術の
札郷苗畑(さし木床)
確立
個別研究
軽込 勉
塚越剛史、里見重成、
種苗ゼミ
房総半島南部におけるヒノキ漏脂病の
演習林内のヒノキ林
実態に関する研究
個別研究
軽込 勉
塚越剛史、里見重成
有用広葉樹(ケヤキ)の増殖法(挿し
木)についての研究(試行)
42
演習林内の各種作業
場所
札郷苗畑
科研(奨励研究)
区分
代表者
協力者
課題名
利用場所
備考
個別研究
山田利博
楠本 大、坂上大翼、木
村徳志、来田和人、山
口岳広
北海道固有の森林資源再生を目指し
たエゾマツの早出し健全苗生産システ
ムの確立
田無演習林、北海道
農水省実用技術開
演習林、北海道立林
発事業(代表:後藤
業試験場、森林総合
晋)
研究所北海道支所
個別研究
山田利博
養菌性キクイムシが伝播する菌類によ
る樹木の衰退・枯死に関するアジアで
の緊急調査
東~東南アジア
個別研究
山田利博
個別研究
千葉演不使用
日本と韓国で発生しているブナ科樹木
韓国、日本
萎凋病に関する比較研究
二国間交流事業共
同研究 代表
廣嶋卓也
森林伐採・更新と木材利用に関わる炭
素終始モデルの開発(伐採・更新方法
決定モデルの開発)
森林総研受託研究
個別研究
久本洋子
タケ亜科植物における推定雑種検出を
可能とするDNAバーコーディングの検 実験室
討
「女性研究者養成シ
ステム改革加速」事
業スタートアップ研
究費
個別研究
久本洋子
北方針葉樹トドマツにおける花成遺伝
子のDNA変異解析
北海道演習林、実験 科研(基盤B)分担
室
(代表:後藤 晋)
個別研究
久本洋子
ミズナラとカシワの雑種のDNA分析
実験室
個別研究
當山啓介
個別研究
當山啓介
黒河内 寛之
河川敷のニセアカシア林の成長解析
個別研究
三次充和
鈴木廣志(鹿児島大)
房総半島外房地域におけるヌマエビ科 房総半島外房地域
甲殻類の流程分布の現状とその形成 (塩田川~平砂浦流
要因
入河川)
個別研究
三次充和
久本洋子
十脚甲殻類を対象としたより簡便な
DNA抽出法の開発
裏表紙写真:ヤマトグサ
三重大学、壇国大学
校、韓国山林科学院
科研(基盤B)海外
分担(代表:伊藤進
一郎)
後藤 晋
林業に対する環境制約の影響と持続可
科研(スタート支援)
北海道、東北、宮崎
能性の試算
代表
室内作業のみ
実験室
Theligonum japonicum [ヤマトグサ科 Theligonaceae]
本州(関東以西)に分布する多年草で、山地の林内に生える。花期は 4‐6 月。千葉県では清澄山系より確認されてい
る。牧野富太郎が日本人として初の新種報告を行った植物として知られている。
(画像 左上:全草
右下:雄花)
撮影場所:千葉演習林
43
2012
東京大学千葉演習林
2012/06/18