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報告1「自然人類学からみた性差・ジェンダー・セクシュアリティ」

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自然人類学からみた
性差・ジェンダー・
セクシュアリティー
九州大学 地球社会統合科学府
自然・生物学人類学
瀬口 典子
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性差、ジェンダーステレオタイプが強調される
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セックス/ジェンダー
生物学的な性=セックス
社会的・文化的に構築された性=ジェンダー
– なぜか日本ではジェンダーが社会的・文化的に構築された「性差」と翻訳されている。
– ジェンダーは二つでなくてもよい
– 生物学的な性も二つとはいえない
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染色体上の性と表現型の性
個人の生物学的性は最低3つのレベルで決定することが可能。
– 染色体上の性
– 生殖腺における性
– 表現型における性
この3つが首尾一貫していることが一般的だが、そうでない場合も多々ある。
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人類における生物的性差
性的二型 (Sexual dimorphism)
– 表現型の明らかなFemale とMaleの違い
生殖腺
第二次性徴、たとえば、体のサイズ、筋肉の量、脂肪のつき方の違いなど
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Sex determination 性の決定
Intersex で生まれてくる子供は 1/1500~1/2000 くらい?
– http://www.isna.org/faq/frequency
男性らしさ、女性らしさの決定=遺伝子と環境の複雑な相互作用
– 体だけでなく、心の性はあるのか?
XX-XY の性の決定はすべての疑問に対する答えを供給しない。
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生物学的な性差の強調
なぜ、この社会では性差が強調されるのか?
性役割が押し付けられるのか?
– その理由付けに性差が使われているのか?
少子化問題と結び付けられているのか?
– Heterosexuaityの強調?
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– 性的多様性と家族のあり方・多様性の排除?
–
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性差と人類進化
人類の進化をみると、
進化とともに性差は小さくなっていく
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A. アファレンシスの性的二型
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現代人への進化変遷
骨盤のモダン化
現代的な形態の骨盤はホモ・エレクタスのときに始まった
脳のサイズが大きくなる
胎児の脳のサイズも大きくなる
広い産道の発達
性差が小さくなる
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Homo erectus ホモ・エレクタス
成長・発達の変化
– 歯根、歯冠の発達・長幹骨(long bone)の発達から推測
成長ペースは現代人と類人猿の間
類人猿よりも成熟するのに時間がかかる
– 親が子供の面倒を見る時間が長い
– 子供は親から守られている時間が長い
– 親から学ぶ時間が長い
経験を積むことができる
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科学への批判
科学は客観的か?
トーマス・クーン Kuhn (科学史, 哲学者)
– 科学者も生まれ育った文化的背景からの影響を受けている。
– 科学者もある時代のものの見方、考え方から自由ではありえない。
– 分析、解釈に主観・バイアスが入っている可能性が高い。
–
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古人類学におけるジェンダーバイアス
人類進化論
– 女性が進化、先史にどのように描写されているか。
– ジェンダーのステレオタイプを基にした進化モデルが、大衆にいかに植え付けられているか。
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古人類学
古人類学
– 人類の起源
– 研究のゴールは人類の起源 (女性、男性、その他すべて)を研究すること。
– 過去の生活形態をできる限り再構築すること。
しかしながら、人類起源の学問は:
– 先史における女性の役割を無視、あるいは、軽視してきた。
– 研究者たちの生きている時代のジェンダーステレオタイプを映したまま、先史における女性像が語ら
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れてきた。
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先史時代の女性像
1960年代 “Man the Hunter(狩猟者)” model
By Washburn and DeVore (1961)
– 男による肉の獲得
男によって、形態変化、テクノロジーの発達、社会革新がおこる。
女は家にいて、子供を育てる。
男は外に出て、食料を「狩猟する」
Lee のアフリカのクン!サンの研究 (the subsistence of !kung, 1968)
–無視される。
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先史時代の女性像
1970年代- “Woman the Gatherer(採集者)” model
– Sally Slocum, Adrienne Zihlman, and Nancy Tanner (1975, 1976, 1978, 1981)
– Draper (1975, 1976) はクンサンの女性の生活と愛を詳細に描いた。
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先史時代の女性像
1970年代- “Woman the Gatherer(採集者)” model
– 女性は子供を生んで育てるだけではない。採集活動に子供も抱いて連れて行き、危険に注意を払
い、狩猟者に狩猟情報をも提供する。
– 女性は食料の重要な調達人である。
– 女性は社会単位の中心である。
– 女性は新しいテクノロジーの発明者、社会における革新者である。
この仮説は実際の狩猟採集民の民族学的データ、霊長類のデータなどを基につくられた。
狩猟よりも植物採集のほうが先に始まった可能性(歯の噛耗)
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先史時代の女性像
1980年代 “Man the Provisional (供給者)” model
– Owen Lovejoy (1981)
– 狩猟だけでなく、男性が採集も行う。
– 二足歩行の起源
男性が、より多くの食料を、一夫一婦制の家族に調達するために、二足歩行が進化した。
女性は、男性が家(ホームべース)に食料を持って戻ってくるように、発情周期を失う
その代わりに乳房と臀部が大きくなり、一年中、性交ができるようになった。
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先史時代の女性像
1990 年代以降
– Lovejoy のモデルはいまだに 教科書や「科学テレビ番組」によく紹介される。
– いまだに博物館の人類進化展示にはジェンダーステレオタイプが見られる。
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女性の進化
女性の進化は長い間語られなかった
近年、女性の生物人類学者が多くなってから:
– 骨盤の研究・脳の進化の研究
二足歩行の進化の側面だけではなく、脳の大きな胎児を分娩することを人類進化の視点から研
究
脳の大きな胎児の出産は母体にとっては危険
–助産婦、助け合い、ヒト社会の文化的進化
人間の乳幼児は親・大人の助けが長い間必要
–Infant Helplessnessがどのように人類の進化に影響を与えてきたのか?
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Lovejoyのモデル
 「二足歩行」が人類の進化のカギを握る
 女性のセクシュアリティーを武器に食料を男性から得る
Falkのモデル
 言語能力こそが脳容量の増加の要因であり、人類進化のカギを握る能力だと説明
 大人が乳幼児へ語りかけるmotherese(マザリーズ)と言語の進化
Rosenberg, Trevathanのモデル
 脳の大きな胎児の出産に関連する女性の進化
 親の世話が必要な乳幼児が人類進化の鍵を握る
人類の脳の増加と相関して、人類の性差(身体のサイズの差など)は減少している。
人間社会では、生存のために言語能力は必須

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まとめ
 科学研究の内容と方法もやはりジェンダーバイアスによる影響を受ける
 人類進化史が過去において、人類学者の偏見の上に構築されたのは明らか
これは、現在では古人類学の常識
 しかし、世間一般には、現代の男と女の固定観念が当てはめられた進化史だけが浸透している
 脳の性差、行動の性差などが間違った人類進化史で説明され、固定されたジェンダー役割が提示さ
れる
例えば、『話を聞かない男、地図が読めない女』(アラン・ビーズ他著

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まとめ
 人類は幅広い優れた認知能力のおかげで進化してきた。
一方の性が特定の能力に優れている?
一方の性だけが知能が高い?
一方の性だけが人類進化に寄与した?
 こうした主張はさっさと捨て去るべき。
 科学的研究のモデルを構築する際に、科学者は社会的、政治的な内容・影響も考慮・注意を払うべ
きである。
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