卸薬業H26.7月号 - 日本医薬品卸業連合会

卸DI実例集
Question No.1609
B型肝炎ワクチンを母子感染予防のために
使用する場合の接種時期が変更になったと
聞きました。どの様に変更されたのですか。
また、何故変更されたのですか。
(2014年1月)
第371回
グロブリンの注射です。B型肝炎ワクチンについ
ては、2回目を初回接種の1か月後、3回目を初
回接種の6か月後に接種します。このスケジュー
ルは乳児受診時期に沿うものであり、現行の接種方
法に比べ接種漏れが少なくなることが期待されて
います。今後、添付文書の改訂が予定されています。
■B 型肝炎母子感染防止事業開始から今日に至る
Answer
までの経緯について
平成25年10月18日、厚生労働省より、B型肝炎ワ
B型肝炎はB型肝炎ウイルス(HBV)の感染に
クチンおよび抗HBs人免疫グロブリンのB型肝炎ウ
よって起こり、慢性B型肝炎患者の10~15%が肝
イルス母子感染の予防方法の変更について、公知申
硬変、肝細胞癌を発症することが知られています。
請を認める通知が発表されました(薬食審査発1018
HBVは主に感染者の血液や精液などの体液を介
第1号、保医発1018第1号)。現在承認されている
して感染します。母親がB型肝炎ウイルス保有者
B型肝炎ワクチンの母子感染予防のための接種方
(HBVキャリア)の場合、妊娠中や出産時に母親の
法は、初回接種が生後2~3か月となっており、生
血液により、胎児あるいは新生児がウイルス曝露を
後2か月未満の接種は保険適用外とされています。
受けることによって感染します(母子垂直感染)。
このため接種スケジュールが複雑であり、接種漏れ
の問題が指摘されていました。
日本では、HBVキャリアの新たな発生を根絶し、
HBVによる肝硬変、肝細胞癌の撲滅を目指し、1985
今回公知申請が認められた用法は、生後12時間以
年から「B型肝炎母子感染防止事業」が実施されま
内のB型肝炎ワクチンの接種および抗HBs人免疫
した。本事業の対象者は、ハイリスク群であるHBe
Vol.38 NO.7 (2014)
16 (396)
抗原陽性HBs抗原陽性妊婦から出生した児となっ
ていましたが、1995年4月よりHBe抗原陽性陰性
にかかわらず、HBs抗原陽性のすべての母親から出
生する児を対象に健康保険給付の対象となり、現在
に至っています。
母子感染防止事業開始当時のB型肝炎ワクチン
Question No.1610
「レアディジーズデイ」というイベントを耳
にしましたが、医療に関連するイベントで
すか?
Answer
は血漿由来の製剤で、現在の遺伝子組換えB型肝炎
レアディジーズデイ
ワクチンほど抗体産生がよくなかったことや、出生
(Rare Disease Day:
直後の新生児にB型肝炎ワクチンを接種すること
RDD)と は「 世 界 希 少・
に対し、安全性を危惧する意見があったため、B型
難治性疾患の日」のこと
肝炎ワクチンの接種開始時期が生後2~3か月に
で、より良い診断や治療
設定されました。
による希少・難治性疾患
母子感染防止事業開始9年後には、母子感染に
の患者さんの生活の質
よ り 発 生 す る 乳 児HBVキ ャ リ ア 率 は0.26 % か ら
の向上を目指し、第1回
0.024%に低下したとの報告があります。
(白木 厚
目は2008年スェーデン
生省研究報告 1997)
で開催されました。
しかし、2004年の厚生労働省科学研究班の報告
西暦2008年は閏( うるう)年〔英語ではleap year
(森島恒雄 分担班)によると、HBVキャリア小児
(跳ねる年)〕にあたり、暦の上でもレアな一日の
の約30%が母子感染防止事業からドロップアウト
2月29日を初めての「レアディジーズデイ」
(以下
した症例であるこという調査事実が明らかになり
RDD)としました。また2008年は米国の希少医薬
ました。これを受け、厚生労働省、各関係団体から、
品法(Orphan Drug Act)施行25周年にあたります。
各医療機関において適切な処置が行われるよう母
うるう年は4年に一度、毎年開催したいという参加
子感染予防対策の周知徹底を促す要請文が発出さ
者の希望から2月の最終日がRDDとなりました。
れました(雇児母発第0427001号)。このドロップ
翌2009年2月28日には世界各地の30カ国で開催さ
アウト症例が発生する背景には、B型肝炎ワクチン
れ、ヨーロッパでは600を超える患者団体が参加し、
の接種スケジュールが複雑であることが指摘され
メディアにも多く取り上げられました。また、米国
ていました。
でも、約200の患者団体をはじめ、NIH(国立衛生研
日本産科婦人科学会と日本小児栄養消化器肝臓
究所)やFDA(食品医薬品局)の政府機関が参加し、
学会は、B型肝炎ウイルス母子感染の予防に関する
イベント当日には、各国にて講演会や患者団体の交
B型肝炎ワクチンの用法について変更を要望して
流会、署名活動、国会議員とのディベート、政府へ
おり、この度、前述の公知申請が認められました。
の意見書の提出が行われました。現在では60カ国
【参考資料】
以上の国で開催されるまでになっています。
1)わが国におけるB型肝炎母子感染防止の経緯と
universal vaccinationの必要性について 白木
和夫 小児感染免疫 Vol.21 No. 2 2009
2)B型肝炎ワクチンに関するファクトシート 国
立感染症研究所 2010.7.7
3)厚生労働省 第7回予防接種基本方針部会 資
料 2013.11.18
4)B型肝炎ワクチンの添付文書改訂についての要
望 日本小児科学会 2011.9.21
5)薬 食 審 査 発1018第 1 号、保 医 発1018第 1 号 米国ではおよそ7,000種の希少・難病性疾患がレ
アディジーズと定められており、欧米では10人に
1人が罹っているというデータがあるといわれて
2013.10.18
6)予防接種に関するQ&A 2013 日本ワクチン
います。
日本では、特定非営利活動法人(NPO)知的財産
産業協会
〈執筆協力会社〉明祥㈱おくすり相談室
研究推進機構(PRIP Tokyo)がRDDの趣旨に賛同
Vol.38 NO.7 (2014)
17 (397)
し、2010年 か ら 毎
「国際希少・難治性疾病・創薬学会」、世界と地
年2月最終日を世
域の希少・難治性疾患の患者とその家族の健康状
界 希 少・難 治 性 疾
態を、よりよい知識・研究・治療・情報・教育・認
患の日とし、今年で
知の提供により改善することを目的とした国際会
5回目を迎えてい
議(ICORD;International Conference for Rare
ま す。2014年 は 北
Diseases and Orphan Drugs)」の 第 7 回 大 会 は
海道から沖縄まで
2012年に日本が開催地となり、世界の共通した医
全 国20ヶ 所 に 及 ぶ
療関連の問題をすべての関係者が情報共有する場
ウェブサイトが開設されました。開催地では患者
がアジアにも広がりました。
団体、ボランティア、行政、関連団体・企業などが協
来る2016年はうるう年、3回目のレアデイが近
力し、病気の方々の参加を得て共に啓発活動を展開
づいています。医療関係者として興味あるイベン
しています。2014年の東京開催のテーマは「より
トのひとつです。
そう~ WE walk together with YOU ~」、希少疾
患・難病をとりまく現状を知って、患者さんの想い
に寄り添う。一つでも多くの疾患の治療法が確立
されて患者さんが笑顔で生活できる。そんな未来
参考および引用:
への「一歩」を共に踏み出そう、という想いが込めら
・レアディジーズデイ 世界希少・難治性疾患の日
www.rarediseaseday.jp/
れています。東京会場では2010年の入場者が300
人でしたが、2014年には1,800人を数えるまでにな
りました。イベントでは、パネル展示などで「希少・
難治性疾患」の治療薬や進行中の研究について紹介
し た り、患 者 さ ん の
生の声を聞いたりす
る こ と が で き ま す。
2010年に公開された
ポンペ病治療薬開発
をテーマとした「小さ
な命を呼ぶとき」は実
話に基づいた映画と
して話題を呼んだこ
とは記憶に新しいと
ころです。
Vol.38 NO.7 (2014)
18 (398)
・Rare Disease Day;Wikipedia,the free encyclopedia
・Scripintelligence日本;www.scripintelligence.jp/
archives/12350
・特定非営利活動法人 知的財産研究推進機構
(PRIP Tokyo)
*RDD 日本開催事務局 http://www.prip-tokyo.
jp/
・薬剤師のための情報サイト『DIオンライン』
2014.3.5.配信
・薬事ニュース、オピニオン。2012.2.11.掲載
・第7回国際希少・難治性疾患・創薬学会(ICORD
2012)開催報告
〈執筆協力会社〉㈱ほくやく 医薬営業本部