諸外国の海運関係施策

諸外国の海運関係施策
平成 25 年 2 月
(公財)日本海事センター
はじめに
外航海運は世界の様々な動きに直接影響を受ける世界にまたがる単一市場で
活動を行っており、我が国外航海運業もこのような市場において厳しい国際競
争にさらされている。このような状況に対して、諸外国でも、自国の海運業の
国際競争力の強化、自国籍船の維持、増加などのため、様々な海運関係施策を
積極的に実施、強化している。我が国外航海運業が、このような競争下におい
て他国の海運業と競い、発展していくためには、競争条件を整備していくこと
が不可欠である。
そこで、(公財)日本海事センターは、2011 年度(平成 23 年度)より、我
が国海運関係施策の立案に携わる関係者の様々な検討に資するべく、諸外国が
採用している海運に関する各種施策について、可能な限り最新の状況を調査し、
とりまとめていくこととした。初年度は、海運国として中国、韓国、デンマー
ク、ノルウェー、スウェーデン、そして、便宜置籍国としてパナマ、リベリア
を調査したところであるが、これに続き 2012 年度(平成 24 年度)は、シンガ
ポール、台湾、インド、フランスを調査の対象とした。初年度同様、できる限
り同じ調査項目での調査により、相互に比較ができるよう努めた(本報告書の
冒頭には、昨年度の調査結果も含め各国の比較対象表を掲載した)。
本報告書が今後の我が国海運関係施策の検討に活用されれば、これに勝る幸
いはない。
平成 25 年 2 月
公益財団法人
日本海事センター
目
次
シンガポールの海運強化策························································· 31
Ⅰ
1
外航海運の現況と外航海運政策の動向 ··········································· 31
2
船舶登録制度 ············································································ 33
3
海運関連税制 ············································································ 37
4
船員関連制度 ············································································ 39
5
カボタージュ ············································································ 41
6
その他
(船舶の売却益に対する税の免除、海事クラスター基金) ······· 41
[データ編]
1
シンガポール経済の概況 ····························································· 43
2
シンガポール外航海運の概況 ······················································· 46
台湾の海運強化策 ····································································· 52
Ⅱ
1
外航海運の現況と外航海運政策の動向 ··········································· 52
2
船舶登録制度 ············································································ 53
3
海運関連税制 ············································································ 54
4
船員関連制度 ············································································ 56
5
カボタージュ ············································································ 58
[データ編]
1
台湾経済の概況 ········································································· 59
2
台湾外航海運の概況 ··································································· 61
インドの海運強化策 ·································································· 65
Ⅲ
1
外航海運の現況と外航海運政策の動向 ·········································· 65
2
船舶登録制度············································································ 68
3
海運関連税制············································································ 69
4
船員関連制度············································································ 73
5
カボタージュ············································································ 75
6
航海命令·················································································· 76
[データ編]
1
インド経済の概況 ····································································· 77
2
インド外航海運の概況 ······························································· 80
フランスの海運強化策 ······························································· 84
Ⅳ
1
外航海運の現況と外航海運政策の動向 ·········································· 84
2
船舶登録制度 ··········································································· 86
3
海運関連税制 ··········································································· 91
4
船員関連制度 ··········································································· 93
5
カボタージュ ··········································································· 96
6
その他(船舶償却制度、船舶投資優遇制度、船舶の徴用) ··················· 97
[データ編]
1
フランス経済の概況 ································································ 103
2
フランス外航海運の概況 ·························································· 105
海運関係施策比較対照表
日本
シンガポール
すべて日本人でなければならない。
国籍要件なし。
存在する。
存在しない。
従来型の
自国籍船の
配乗要件
【国際船舶登録制度】
1.登録要件
(1)登録主体
・日本の国籍を有する者
・日本の法令により設立された法人その他の団体
第
二
船
籍
制
度
(
国
際
船
舶
登
録
制
度
等
)
(
2
船
舶
登
録
制
度
(2)対象船舶
・総トン数 2,000 トン以上の船舶
・遠洋区域又は近海区域を航行する船舶
2.効果
(1)
固
定
資
産
税
登
録
免
許
税
配
乗
要
件
非国際船舶
国際船舶
課税標準×1/6
課税標準×1/15
船価の 4/1000
船価の 3.5/1000
日本人のみ
国籍要件なし
)
(2)賃金:
-
(3)その他:国内輸送には原則従事不可
-1-
台湾
インド
フランス
・ 国籍要件なし。
・ ただし、船長は台湾人でなけれ
ばならない。
・ 船長はインド人でなければなら
ないが、その他の職員については
外国人 2 名まで配乗可能。
・ ただし、所定のインド人船員訓練
義務を果たせば、最大で船長を除
くすべての船員を外国人とする
ことができる。
・ 船長及びその業務を代行する
船員は EU/EEA 加盟国、スイ
ス又は特別の条約を締結して
いる国の国籍を有していなけ
ればならない。
・ 外国人船員の許容される割合
について労使協議が継続中。
存在しない。
存在しない。
存在する。
【国際船舶登録制度(RIF)】
1.登録要件
(1)登録主体
・ 所有者が自然人の場合
○単独の所有者:EU/EEA 国籍
○複数の所有者:EU/EEA 国籍を
有する者が対象船舶の持ち分の
半分以上を有する。
・ 所有者が法人の場合
○EU/EEA 域内に本社又は主
たる営業所を有する法人が対象
船舶の持ち分の半分以上を有す
る。
(2)対象船舶
・ 遠洋 航 海 /国 際 沿海 航 海に
用いられる船舶及び 24m 以
上のプレジャー用船舶
○ただし、EU 加盟国とアルジ
ェリア、モロッコ、チュニジアを
結ぶ国際定期旅客船は対象外
2.効果
(1)配乗要件
乗組員の 25%以上は EU/EEA 国
籍又はスイス国籍でなければな
らない。(船長及びその代行者に
ついては、従来型と同じ。)
(2)賃金:最低賃金 620.05 米ドル
(51,464 円)/月(208 時間)
(3)その他1:国際船舶登録制度に
登録された船舶に 183 日以上乗船
して航行に従事した船員はそれ
によって得た所得は非課税とな
る。(「船員所得税の免除・軽減」
の欄を参照)
(4)その他 2:海運会社は、国際船
舶登録制度に登録された船舶に
乗船して航行に従事した船員に
ついての社会保障費(雇用者負担
分)が免除される。
(「船員の社会
保障料の軽減」の欄を参照)
-2-
従来型の
自国籍船の
配乗要件
第
二
船
籍
制
度
(
国
際
船
舶
登
録
制
度
等
)
韓国
中国
・ すべて韓国人でなければならない。
・ ただし、部員については外国人6人まで配乗
可能。
・ すべて中国人でなければならない。
・ 交通運輸部の承認を得れば外国人船員を
配乗可能(ただし、該当事例なし)。
存在する。
存在しない。
【国際船舶登録制度】
1.登録要件
(1)登録主体
・ 韓国の国民
・ 韓国法によって設立された商事法人
・ 韓国に主たる事務所を置く法人で、その代表
者が韓国の国民であるもの
(2)対象船舶
・ (1)の登録主体が所有する船舶
(BBC/HP 船舶の場合は、韓国の外航運送事業
者が賃借する船舶)
・ 総トン数 500 トン以上の船舶
・ 船齢が 20 年以下の船舶
【済州島特別船舶登録制度】
1.登録要件
(1)登録主体
国際船舶登録制度と同じ
(2)対象船舶
国際船舶登録された船舶であって済州島を船籍
港とするもの
(BBC/HP 船舶の場合は、国際船舶登録された
船舶であって済州島を船籍登録予定地とするも
の)
2.効果
(1)
(
2
船
舶
登
録
制
度
)
農漁村税
登録税
取得税
財産税
地方教育税
地域資源施設
税
配乗要件
非国際
国際
済州
○
○
○
○
○
○
○
○
×
△
○
×
×
○
×
×
×
×
A
B
B
(注 1)○課税、△半額免除、×免除
(注 2)A:部員についてのみ外国人6人まで可、B:船
長、機関長以外は外国人可
(2)賃金:
国際船舶においては外航運送事業者と船員労働
組合連合団体が労働協約にて合意した賃金水準
で外国人船員を雇用可
(3)その他:
国内輸送には原則従事不可
-3-
デンマーク
ノルウェー
スウェーデン
・ 国籍要件なし。
・ 職員は、デンマークの免状を保
有していなければならない。
・ 船長を除き国籍要件なし。
・ 船長は EU/EEA 籍若しくはノル
ウェーの労働許可を有する者で
なければならない。
・ 船長を除き国籍要件なし。
・ 船長は EU/EEA 籍でなければ
ならない。
存在する。
存在する。
存在しない。
【デンマーク国際船舶登録制度
(DIS)】
1.登録要件
(1)登録主体
・ デンマークの国民
・ 国内居住デンマーク人が運営す
る組織
・ 3 分の 2 以上をデンマーク人が
所有し、経営者が国内居住のデ
ンマーク人である事業体
・ 一定の外国の会社
(2)対象船舶
・ 総トン数 20 トン以上の船舶
・ 国際航海に従事する船舶
【ノルウェー国際船舶登録制度
(NIS)】
1.登録要件
(1)登録主体
・ ノルウェーの個人及び企業
・ 外国の個人(ノルウェー人の代表
者を指名する必要あり)及び企業
(ノルウェー国内で船舶管理を
行っている必要あり)
(2)対象船舶
・ 長さ 15m 以上、自己推進する貨
物船等
・ 国際航海に従事する船舶
2.効果
(1)配乗要件:
① 船長は原則としてデンマーク
若しくは EU/EEA 籍。但し、
EU/EEA 籍以外の船長もデン
マーク船社が雇用する場合に
限り、当局の承認を得て配乗
可。
② 承認外国人船員を配乗可。
(2)賃金:
外国人船員をその出身国と同じ賃
金水準で雇用可。
(3)その他:
国内輸送には従事不可。
2.効果
(1)配乗要件:
船長は原則としてノルウェー人。但
し、ノルウェー人以外の船長は法令
講習を受ければ、当局の承認を得て
配乗可。
(2)賃金:
外国人船員をその出身国と同じ賃金
水準で雇用可。
(3)その他:
国内輸送には従事不可。
-4-
日本
シンガポール
あり:2009 年度より適用(2013 年度改正) 存在しない。
・ 選択期間:5 年間(変更不可)。
・ 対象船舶:日本船舶。なお、日本船舶を
1 隻増加させた場合には 3 隻までの準日
本船舶(注)にトン数標準税制が適用可能
である。
(ただし、トン数標準税制の適用
は日本船舶及び準日本船舶の合計で 450
隻が上限である。
)
(注)準日本船舶:日本の外航海運会社が運
航する日本船舶以外の船舶で、その子会社が
所有するもののうち、航海命令による航海に
確実かつ速やかに従事できる船舶
・ 対象所得:対象船舶に係る所得
・ 用船比率:なし
・ 計算式:純トン数×下記みなし利益×船
舶稼働日数で課税。
(
ト
ン
数
標
準
税
制
3
海
運
関
連
税
制
)
・ みなし利益
(1)日本船舶
(1 日、100NT 当たり)
~1,000NT
120 円/100NT
1,001~10,000NT
90 円/100NT
10,001
~
60 円/100NT
25,000NT
25,001NT~
30 円/100NT
(2)準日本船舶(日本船舶の 1.5 倍)
(1 日、100NT 当たり)
~1,000NT
180 円/100NT
1,001~10,000NT
135 円/100NT
10,001
~
90 円/100NT
25,000NT
25,001NT~
45 円/100NT
-5-
ただし、シンガポール籍船の運航により得た所得
及び外国籍船のシンガポール域内における運航
によって得た所得は非課税となる。また、全世界
にネットワークを有し、確固とした実績があり、
シンガポールにおいて、海運活動を拡大する計
画、誓約を明らかにする国際海運企業として認定
された企業(認定国際海運企業)については、外
国籍船の運航によって得た利益一般についても
非課税となる。
(「その他税政」の欄を参照)
台湾
インド
フランス
あり:2011 年より適用。
あり:2004 年 4 月 1 日より適用。
あり:2004 年より適用。
・ 選択期間:10 年間(変更不
可)
・ 対象所得:海上運送より生じ
た課税所得
・ 対象企業:台湾領域に本社を
有し海上運送に従事する営
利企業
・ 用船比率:なし
・ 計算式:純トン数×下記みな
し利益×365 日で課税
・ 選択期間:10 年間(途中脱退可)。
・ 対象所得:対象船舶(インド籍船及
び一定の外国籍船)に係る所得。
・ 用船比率:運航船腹量の 49%以下。
・ 計算式:純トン数×下記みなし利益
×船舶稼働日数×法人税(30%(そ
の他諸税とあわせた実効税率は
32.455%))
・ 選択期間:10 年間(変更不可)
・ 対象企業:売上の 75%以上を
船舶の利用から得ていること
・ 対象所得:船舶の利用(人及
び物の輸送)に直接関係する
業務から得る利益。
・ 計算式:対象船舶 ( 注 ) の純トン
数×下記みなし利益×船舶の
所有又は用船日数
(注)対象船舶:以下の要件をすべ
て満たす船舶
・ 総トン数 50 トン以上
・ 適格会社が所有、裸用船又
は定期用船する船舶
・ 人/物を輸送する船舶、外
洋にて曳航を行う船舶、救
難に従事する船舶、又は海
上での支援を行う船舶
・ 戦略的/商業的管理がフラ
ンスから行われている船舶
・ みなし利益
(1 日、100NT 当たり)
67 TWD
~1,000NT
(190.28
円)/100NT
49 TWD
1,001~
(139.16 円)
10,000NT
/100NT
32 TWD
10,001~
(90.88
25,000NT
円)/100NT
14 TWD
25,001NT~ (39.76
円)/100NT
・ みなし利益
(1 日、100NT 当たり)
~1,000NT
1,001~
10,000NT
10,001~
25,000NT
25,001NT~
46 INR
(70.38 円)/100NT
35 INR
(53.55 円) /100NT
28INR
(42.84 円)/100NT
19 INR
(29.07 円)/100NT
・ 2013 年 4 月 1 日以降のみなし利益
(1 日、100NT 当たり)
70 INR
~1,000NT
(107.1 円)/100NT
1,001~
53 INR
10,000NT
(81.09 円) /100NT
10,001~
42 INR
25,000NT
(64.26 円)/100NT
29 INR
25,001NT~
(44.37 円)/100NT
-6-
・ みなし利益
(1 日、100NT 当たり)
0.93 ユーロ
~1,000NT
(100 円)/100NT
0.71 ユーロ
1,001~
(76.5 円)
10,000NT
/100NT
10,001~
0.47 ユーロ
25,000NT
(50.6 円)/100NT
25,001NT
0.24 ユーロ
~
(25.8 円)/100NT
・ その他:適用を受ける企業は、
適用期間中に EU 加盟国を旗
国とする船舶の割合(純トン
数で計算)を維持、増加させ
ることを約束する必要があ
る。
韓国
中国
あり:2005 年より適用。
なし
・ 選択期間:5 年間(変更不可)。
・ 対象所得:外航海上運送活動及びそれに
付随する活動(為替差益等を含む)にもと
づく所得。
・ 対象企業:用船船舶の年間運航純トン数
の合計が基準船舶(所有船舶等)の年間
運航純トン数の合計 5 倍以内の企業
・ 計算式:純トン数×下記みなし利益×船
舶稼働日数で課税
(
ト
ン
数
標
準
税
制
3
海
運
関
連
税
制
・ みなし利益
(1日、100NT 当たり(注))
1400 ウォン
~1,000NT
(98 円)/100NT
1,001~
1100 ウォン
10,000NT
(77 円) /100NT
10,001~
700 ウォン
25,000NT
(49 円)/100NT
400 ウォン
25,001NT~
(28 円)/100NT
)
(注)規定上は1NT 当たりの額が定められ
ているが、比較のために 100NT 当たりの額
を記述した。
-7-
デンマーク
あり:2001 年より適用。
ノルウェー
あり:1996 年より適用(2007 年改正)。 なし
・ 選択期間:なし。ただし、選択後
・ 選択期間:10 年間(変更不可)
。
に通常法人税に変更した場合、当
・ 対象所得:運賃、用船料、船
初選択時より 10 年間は再選択不
舶売却益など海運事業とそれ
可。
に密接な関連を有する活動に ・ 対象所得:運賃、用船料、船舶売
係る収入。
却益など海運事業とそれに密接な
・ 用船比率:定期用船の船腹量
関連を有する活動に係る収入。
が所有船及び裸用船の船腹量 ・ 用船比率:なし。
の 4 倍を超えてはならない(4 ・ 計算式:海運企業が所有・運航す
倍までの定期用船船舶につい
る船舶に対して、純トン数×下記
て、トン税の適用が可能)。
税額×船舶稼働日数で課税。課税
・ 計算式:海運企業が所有・運
額は毎年国会(予算)で定められ
航する船舶に対して、純トン
る。
数×下記みなし利益×所有・
用船日数(船舶稼働日数では
ない。)で課税。
・ みなし利益
(1 日、100NT 当たり)
~
8.97 DKK
1,000NT
(127.5 円)/100NT
1,001~
6.44 DKK
10,000NT (91.5 円)/100NT
10,001~
3.85DKK
25,000NT (54.7 円)/100NT
25,001NT 2.53DKK
~
(40.0 円)/100NT
・ 税額
(1 日、100 NT 当たり(注))
~
無税
1,000 NT
1.8 NOK
1,001~
(25.34
10,000NT
円)/100NT
10,001~
1.2 NOK
25,000NT
(16.7 円)/100NT
0.6 NOK
25,001NT~
(8.45 円)/100NT
(注)規定上は 1,000NT 当たりの額
が定められているが、比較のために
100NT 当たりの額を記述した。
-8-
スウェーデン
日本
シンガポール
【認定国際海運企業】
1. 認定の対象
全世界にネットワークを有し、確固とした実績が
あり、シンガポールにおいて、海運活動を拡大す
る計画、誓約を明らかにする国際海運企業
2.認定の効果
海運利益に対する免税。期間は、
「更新可能な 10
年間」又は「更新不可能な 5 年間。
特になし
【認定海事リース業】
1.認定の対象
確固とした実績があり、シンガポールにおいて
海運やコンテナへの金融業務を拡大する計画、誓
約を明らかにする企業
2.認定の効果
(1)リース会社、ファンド、事業信託等が得たリ
ース収入について最長 5 年間下記の通りとなる。
‐船舶のリース収入
…免税
‐コンテナのリース収入 …5%又は 10%の軽
減税率
(2)船舶投資マネジャーのマネジメント関連所得
については、10%の軽減税率が適用される。
そ
の
他
税
制
3
海
運
関
連
税
制
(
【認定海運関連支援サービス】
1.認定の対象
確固とした実績があり、シンガポールにおい
て、補助的な海運活動を拡大する計画、誓約を明
らかにする企業
2.認定の効果
船舶ブローカー業務、フォワーダー・物流サービ
ス、船舶管理、船舶代理業務等の認定されたサー
ビス提供から得られた所得の増分について、5 年
間 10%の軽減税率が適用される。
)
【源泉徴収の免除】
1.対象ローン
外国の貸し手からの下記のためのローン
(1) 船舶の購入又は建造
(2) コンテナ、複合一貫輸送用機器の購入
2.対象企業
(1)船舶の購入又は建造
・ シンガポール籍船を有する-海運企業(シン
ガポール籍船が対象)
・ 認定国際海運企業(前掲)
・ 認定海事リース会社
(2)コンテナ、複合一貫輸送用機器の購入
認定コンテナ投資企業
3.効果
金利支払いについて、2011 年 6 月 1 日から
2016 年 5 月 31 日までは、個々の事例を申請す
ることなく、源泉徴収税が免除される。
-9-
台湾
特になし
インド
特になし
フランス
・ 地域経済税(地方税)のうち企
業付加価値税(売上高の 1.5%
(一部減額措置あり))は、外航
船の利用により得られた利益に
ついては非課税。
・ 公海を航行する船舶及び公海に
おいて開発に従事する船舶につ
いては、その売買、修理、改造、
維持管理、用船及び賃貸につい
て付加価値税(VAT(19.6%))
が課されない。
・ 上の船舶のための舶用品、海洋
開発に係る物品の売買、賃貸、
修理、維持管理については付加
価値税が課されない。
- 10 -
韓国
中国
特になし
・ 中国出資の外国籍船を中国に転籍する場合、
一定要件の下で関税及び増値税(付加価値税)
の免除を認める優遇税制がある。(2007 年よ
り適用。とりあえず 2015 年 12 月末まで。)
・ 外航海運を含む国際運輸サービスについては
営業税(営業収入に対して 3%))が免除。
(
そ
の
他
税
制
3
海
運
関
連
税
制
)
- 11 -
デンマーク
特になし
ノルウェー
特になし
スウェーデン
特になし
- 12 -
日本
シンガポール
【所得控除制度】
なし
【非課税手当(航海日当)】
・ 対象船員:組合員たる船舶乗組員
・ 対象船舶:外航船、内航船、一定の漁船
・ その他:乗船中の船員が支給を受ける航
海日当(金額は労働協約によって決定さ
れる。)は非課税。
(
船
員
所
得
税
の
免
除
・
軽
減
4
船
員
関
連
制
度
シンガポール籍船上での雇用から得られる所得
については、雇用が実質的にシンガポール域外で
なされる場合は、免税とする。
)
なし
なし
なし
【船員の帰国費】
雇用者に予期せぬ事情が生じ、船員を帰国させる
という義務を果たせなくなった場合、当局が代わ
って帰国費を手当てする。ただし、後に雇用者か
ら帰国に要した費用を徴収する。
船員の
社会保険料
の軽減
(4 船員関連
制度)
船員の
派遣・帰国
費の補助
(4 船員関連
制度)
- 13 -
台湾
インド
フランス
【所得控除制度】
なし
【所得控除制度】
なし
【所得控除制度】
なし
【非課税手当(航海日当)】
なし
【非課税手当(航海日当)】
なし
【課税免除制度】
・ 対象船員:船員として給与を受
けており、連続する 12 ヵ月の間
に 183 日以上
・ 対象船舶の航行に従事した者対
象船舶:国際船舶登録制度に登
録された船舶
なし
なし
【社会保障費雇用者負担の免除】
・ 対象船員:対象船舶に乗船する
船員で社会保障制度に加入して
いる者
・ 対象船舶:国際船舶登録制度に
登録された船舶
なし
なし
なし
- 14 -
中国
【所得控除制度】
・ 対象船員:遠洋漁業船や外航船に乗り韓
国から離れて労働を行う者
・ 対象船舶:外航船、遠洋漁業船(海外の
操業基地を含む。
)
・ そ の 他 : 控 除 額 は 月 150 万 ウ ォ ン
(105,000 円)。期間雇用や中途退職の場
合、勤務の日数に応じて減額。
【所得控除制度】
・ 対象船員:外航船員
・ 対象船舶:規定なし
・ その他:附加控除額は月 1,300 元(16,471
円)。
【非課税手当(航海日当)】
・ 対象船員:内航船員
・ 対象船舶:内航船
・ その他:月 20 万ウォン(14,000 円)までの
乗船手当は非課税。
(
船
員
所
得
税
の
免
除
・
軽
減
4
船
員
関
連
制
度
韓国
)
なし
なし
なし
なし
船員の
社会保険料
の軽減
(4 船員関連
制度)
船員の
派遣・帰国費
の補助
(4 船員関連
制度)
- 15 -
デンマーク
【所得控除制度】
・ 対象船員:デンマーク居住船
員
・ 対象船舶:DIS 船舶以外のデ
ンマーク籍船であって、近距
離など一定の輸送以外のもの
・ その他:控除額は、年
56,900DKK (808,549 円。月当
り 67,379 円)。期間雇用船員の
場合や中途退職した場合は、
勤務日数に応じて減額。
ノルウェー
スウェーデン
【所得控除制度】
【所得控除制度】
・ 対象船員:ノルウェー居住船員
・対象船員:スウェーデン居住船員。
・ 対象船舶:NIS 船舶、国際航海に ・対象船舶:EU/EEA 加盟国の旗
従事する NOR 船舶等
を掲げる商船、旅客船又は商業海運
・ その他:控除額は、年 80,000NOK に関連する目的で用いられる船舶
(1,126,400 円。月当り 93,867 円) ・ そ の 他 : 控 除 額 は 、 商 船 は 年
又は総所得の 30%のいずれか少
36,000SEK (431,640 円。月当り
ない方。期間雇用の船員の場合や 35,970 円)、旅客船は年 35,000SEK
中途退職した場合は、勤務日数に (419,650 円。月当り 34,978 円)(注)
応じて減額。
【税額控除制度】
・ 対象船員及び船舶:上記所得控
除に同じ。
・ 控除額:商船は年 14,000SEK、
(167,860 円。月当り 13,988 円)、
旅客船は年 9,000SEK(107,910
円。月当り 8,993 円)(注)
(注)期間雇用や中途退職の場合、
勤務日数に応じて減額。
【課税免除制度】
・ 対象船員:EU/EEA 国企業に雇
用されるスウェーデン居住船員
で、年間 183 日以上船上で働く
者。
・ 対象船舶:一定の外洋を航行す
る外国籍船
なし
なし
なし
6 ヵ月以上同じ船舶若しくは同じ
船主の船舶に乗り組んでおり、過
去 3 ヵ月間に国内に寄港しなか
った国内居住の船員に対し、帰国
費用の 50%を補助。
なし
なし
- 16 -
日本
(
カ
ボ
タ
ー
ジ
ュ
内
航
輸
送
の
外
国
籍
船
へ
の
開
放
) (
5
カ
ボ
タ
ー
ジ
ュ
シンガポール
規制あり
規制なし
【例外】
・ ①法律又は条約に別段の定めがある場
合、②海難事故等を回避する場合、③国
土交通大臣の特許を得た場合
・ 特許は以下の場合に認められている。
① 自ら使用する空コンテナの国内輸送
② 二国間条約等により個別に国内輸送
につき定めをした国(英国、ノルウェ
ー)、航海に関する最恵国待遇を与え
た国(フランス、ドイツ、デンマーク、
スウェーデン、インド、タイ、ハイチ)
の船舶について、通し船荷証券を有す
る積み荷の国内輸送
・ 国土交通大臣の特許に基づき、日本の海
運会社の外国籍船に限って、沖縄県の特
別自由貿易地域又は自由貿易地域に立地
する企業が扱う貨物の内航輸送が可。
)
償
却
制
度
優
遇
措
置
、
買
い
換
え
特
例
・ 特別償却制度(環境低負荷船について初
年度の償却率を日本籍船の場合 18%、特
定外国子会社保有の外国籍船の場合 16%
上乗せ。
・ 耐用年数 15 年の船舶につき 200%定率法
による減価償却を行う場合、通常 13.33%
の償却率が、日本籍船で 31.33%、特定外
国子会社保有の外国籍船で 29.33%とな
る。)
・ 買換特例(船舶を譲渡して別の船舶を購
入したときは、譲渡差益の 80%相当額に
ついて課税の繰り延べ可。)
(
6
そ
の
他
)
- 17 -
【船舶の売却益に対する税の免除】
1.対象
① 認定国際海運企業として船舶を所有するか、
シンガポール船籍の船舶(シンガポール船籍
を取得する予定の船舶を含む)を所有し、か
つ船舶運航事業を行っていること
② 認定海事リース業として船舶を所有し、かつ
船舶貸し渡し業を行っていること(船舶の売
買を主たる事業として行う者は対象外)
2.内容
所有していた期間や船舶を保有する特別目的会
社の所有割合にかかわらず、売却益が免税とな
る。また、建造中の船舶の売却による利益も同様
に免税となる。
台湾
規制あり
インド
規制あり
フランス
規制あり
【例外】
【例外】
・ 海外の海運代理店の設置が当 ・ 当局により許可された場合(イン
局に認められた場合
ド籍船が利用できない場合等)。
・ 台湾船社が所有する外国籍の ・ 当局の許可が 90 日以上にわたる
ばら積み船については、当局
場合、インド人船員の配乗義務又
により運航が認められる場合
はインド人船員の訓練義務が課
がある。
(2011 年 12 月現在、
せられる。
3 隻のセメント船、13 隻の一
般貨物船が運航)
EU/EEA 加盟国の海運会社が利用
する船舶であって、EU/EEA 加盟
国に登録され、EU/EEA 加盟国の
旗を掲げるもののみがフランス国
内の港間の輸送に従事することが
できる。
なし
船舶を含む有形固定資産は減価償
却の方法により損金算入される。こ
の減価償却については通常定額法
が用いられるところ、船舶などには
特に定率法による減価償却が認め
られる(償却期間 8 年以上、225%
定率法)。加えて、船舶の場合は中
古船購入の場合にも減価償却が認
められ、また、引渡し前に一部支払
いが行われている場合には起工の
日から償却が開始できる。
なし
- 18 -
【例外】
行政府が政令に基づき許可を与え
る場合(航海ごとに許可が必要。)
韓国
(
カ
ボ
タ
ー
ジ
ュ
内
航
輸
送
の
外
国
籍
船
へ
の
開
放
中国
規制あり
規制あり
【例外】
【例外】
・ ①法律又は条約に別段の定めがある場 2 国間協定で相互に認める場合(現実には事例な
合、②海難事故等を回避する場合、③国 し)。
土海洋部長官の許可を得た場合。但し、
BBC/HP 船舶は韓国籍船と同様の扱い。
・ 特定航路(釜山-仁川、釜山-光陽)につ
いて国土海洋部長官の許可に基づき自社
貨物の輸送可
) (
5
カ
ボ
タ
ー
ジ
ュ
)
償
却
制
度
優
遇
措
置
、
買
い
換
え
特
例
なし
なし
(
6
そ
の
他
)
- 19 -
デンマーク
規制なし
ノルウェー
規制なし
スウェーデン
規制あり
【例外】
① EU 籍船
② 2 国間協定で相互に認める場合
③ スウェーデン籍船が利用不可
能な場合
・ 新造船割 増償却 制度( 通常
12%を新造船の初年度のみ
20%)
・ 圧縮記帳制度(船舶を売却し
た年度と 同年度 若しく は翌
年度に船舶を取得した場合、
当該取得 価額を 売却益 から
控除可)
なし
なし
- 20 -
日本
制純
度賃
※金
なし
用雇
助用
成費
なし
なし
(
そ
の
他
の
海
運
に
対
す
る
助
成
策
6
そ
の
他
シンガポール
なし
なし
「その他税制」の欄の【認定海事リース業】参照
船
舶
投
資
会
社
に
よ
る
配
当
へ
の
課
税
の
特
例
)
【海事クラスター基金】
人材育成、事業の拡大を支援することを通じ、シンガポー
ルにおける海事クラスターの発展を促進するため、海事港
湾庁により設立された。2002 年に 8,000 万ドルで設立され、
2009 年に 4,500 万ドルの追加拠出がなされている。
そ
の
他
・ 人的資源部門
海事産業内で人材開発、トレーニングなどを行う場合に基
金からの支援がなされる。基金からの支援は原則必要額の
70%である。
・ 事業開発部門
シンガポールで設立された海事会社及び機関、あるいは新
たな海事分野に進出する既存の会社及び機関に対し、初期
投資費用のうち一部を助成する。
- 21 -
台湾
インド
フランス
なし
なし
なし
なし
なし
なし
なし
なし
【船舶投資会社出資者による減価償却】
複数の法人、個人が資金を出し合って船舶を購入
し、その船舶を海運会社にリースして用船料収入
を得ようとする場合に、合資会社又は合名会社な
どの形をとったペーパーカンパニーを設立する
ことがある。租税法第 8 条はこのようなペーパー
カンパニーを納税主体とせず、かわりに各出資者
を納税主体とすることを認めている。この場合、
ペーパーカンパニーが受け取った用船料収入を
分配した配当が各出資者の収入の一部となり、各
出資者は自らが営む他の事業からの収入とこの
配当収入を合算するとともに船舶の減価償却分
について持ち分に応じた償却費を計上すること
が可能である。
減価償却の方法は通常の船舶と同じであるが、各
出資者の損金算入額は以下の限度がある。
1.EU/EEA 加盟国登録船舶又は特定の会計年
度の 3/4 以上の間、EU/EEA 加盟国域内を航行し
た船舶(錨泊も含む)の場合
<償却額の限度>
当初の 36 ヵ月については船舶の賃貸料などから
得られる利益の 3 倍で、かつ、当初の 12 ヵ月に
ついては、ペーパーカンパニーへの出資者が他の
活動から得る法人税課税所得の 1/4
2.「1.」以外の船舶の場合
<償却額の限度>
船舶の賃貸料などから得られる利益から当該船
舶に係る諸費用を減じた金額を持ち分に応じて
按分した額
【持ち分の譲渡益に対する特例】
・船舶投資会社の出資者が 2 年以上保有した持ち
分を譲渡して得た利益については、その 10%に
ついてのみ課税される。
※海運会社の船員雇用費用を軽減し自国の船員の雇用を促進することを主な目的に、本来海運会社が源泉徴収
して納めるべき船員の所得税について一定の条件を満たす場合にその全額を免除する又は納付した所得税と同
じ額を政府が助成する制度(所得税だけでなく国民保険料が免除又は助成の対象に含まれることもある。)。
- 22 -
韓国
中国
なし
なし
純
賃
金
制
度
雇
用
費
用
助
成
【国家必須船隊における雇用助成金】
なし
非常事態発生時に備える国家必須船舶に指
定されると、外国人船員の配乗が制約され、
その代わりに配乗せざるを得なくなった韓
国人船員の雇用費用のうち、外国人船員を雇
っていれば生じたであろう雇用費用との差
額については政府が補助。
(
そ
の
他
の
海
運
に
対
す
る
助
成
策
6
そ
の
他
)
船
舶
投
資
会
社
に
よ
る
配
当
へ
の
課
税
の
特
例
船舶投資会社の配当については、出資額が 3
億ウォン以下のときには、分離課税方式で税率
5%で課税。
- 23 -
なし
デンマーク
ノルウェー
・ 対象船員:デンマーク居住船
員
・ 対象船舶:DIS 船舶
・ 助成額:対象船員の源泉徴収
分
・ 対象船員:ノルウェー居住船員
・ 対象船舶:NOR 船舶であって、国
際航海に従事するか 300 海里以上
離れた港間を航行する船舶
・ 助成額:船員 1 名当たり、源泉徴
収し納税した船員の所得税、国民
保険料及び船社負担の国民保険料
分(上限 198,000NOK (2,787,840
円))
なし
なし
・ 対象船員:以下のすべてを満たす
船員。①EU/EEA 籍又はノルウェ
ーに居住、②暦年で 130 日以上乗
船又は海運企業に正規に雇用、③
ノルウェーの国民保険に加入。
・ 対象船舶:NIS 船舶及び NOR 船
舶。
・ その他:助成額は、NOR 船舶の場
合には対象船員の総賃金の 12.1%、
NIS 船舶の場合には対象船員の総
賃金の 9.3%を海運企業に助成(還
付)。
【海運補助金】
・ 対象船員:スウェーデン籍船の
スウェーデン船員。
・ 対象船舶:スウェーデン籍船
・ その他:船員の所得税及び社会
保障費雇用者負担分に対して海
運企業に補助金が支給される。
なし
なし
なし
- 24 -
スウェーデン
日本
海
運
政
策
関
連
基
本
デ
ー
タ
登
録
船
舶
荷
動
き
量
シンガポール
隻数:5,619
G/T:17,423,229
隻数:2,877
G/T:53,900,000
コンテナ荷動き量
12,180,119TEU
コンテナ荷動き量
2,989,010TEU
海上貿易量
984,698,564 トン
海上貿易量
254,099,182 トン
韓国
海
運
政
策
関
連
基
本
デ
ー
タ
登
録
船
舶
荷
動
き
量
中国
隻数:2,916
G/T:12,083,742
中国
隻数:4,148
G/T:37,924,243
香港(中国)
隻数:1,935
G/T:70,205,767
コンテナ荷動き量
10,674,104TEU
コンテナ荷動き量
47,251,512TEU
海上貿易量
701,356,404 トン
海上貿易量
2,242,381,196 トン
- 25 -
台湾
隻数:906 隻
GT:2,990,088
インド
隻数:1,443 隻
GT:9,762,040
フランス
(従来型)
隻数:658
G/T:1,524,287
(RIF)
隻数:161
G/T:5,527,622
コンテナ荷動き量
6,137,198TEU
コンテナ荷動き量
4,315,893TEU
コンテナ荷動き量
3,116,904TEU
海上貿易量
427,628,618 トン
海上貿易量
642,916,213 トン
海上貿易量
152,572,410 トン
デンマーク
ノルウェー
スウェーデン
(DAS)
隻数:279
G/T:185,474
(NOR)
隻数:1,469
G/T:2,618,195
隻数:452
G/T:3,369,262
(DIS)
隻数:534
G/T:11,416,132
(NIS)
隻数:535
G/T:13,893,715
コンテナ荷動き量
483,547TEU
コンテナ荷動き量
554,131TEU
コンテナ荷動き量
1,072,999TEU
海上貿易量
12,110,383 トン
海上貿易量
29,212,080 トン
海上貿易量
35,034,788 トン
※表中の各通貨換算レートは、1 シンガポール・ドル=75.77 円、1 台湾元=2.84 円、1 ルピー=1.53 円、1 ユーロ
=107.70 円、1 ウォン=0.07 円、1 元=12.67 円、1DKK=14.21 円、1NOK=14.08 円、1SEK=11.99 円、1 米ド
ル=83 円で計算した。
※海運関連基本政策データの「登録船舶」は IHS Fairplay のデータに基づき JMC が作成(100GT 以上の商船)、
「荷動き量」は IHS Global Insight のデータに基づき JMC が作成。
- 26 -
海運関係施策比較対照表(便宜置籍国)
パナマ
国籍船の配乗要件
(原則)
登録隻数*1
(対象年 2011 年/
1,000 総トン以上)
リベリア
事実上要件なし(法律上は原則として全乗員のうち
10%はパナマ人)
要件なし。
6,413 隻
2,771 隻
2,771 隻中
6,413 隻中
パナマ所有分:1,251 隻(構成比 19.5%)
外国所有分(上位 5 か国):
外国所有分(上位 5 か国):
登録の国別配分*2
(対象年 2011 年/
1,000 総トン以上)
国名
隻数
構成比
1
日本
2,372
37.0%
2
中国
534
8.3%
3
ギリシャ
379
5.9%
4
韓国
373
5.8%
5
台湾
328
5.1%
3,986
62.2%
五か国合計
船舶登録に係る
収入

131 百万米ドル/年 *3

歳入割合 1.24% *4
リベリア所有分:190 隻(構成比 6.8%)
すべての自然人又は法人(ただし、個人については
パナマに住所を有し、5 年以上居住していること)
登録可能
船舶
制限なし
- 27 -
隻数
構成比
1
ドイツ
1,185
42.8%
2
ギリシャ
505
18.2%
3
日本
110
4.0%
4
ロシア
109
3.9%
5
台湾
94
3.4%
2,003
72.3%
五か国合計


登録可能
主体
国名
16 百万米ドル/年*5
歳入割合 6.4%*6
① リベリア市民権又は国籍を有する者
② リベリア法人
③ 外国海事事業体(Foreign Maritime Entity)
要件は以下の全てを満たすこと:
(ア) 本国で、法人格を有すること
(イ) 本国で、船舶を所有する資格があるこ
と
(ウ) リベリアに常設事務所を有するか、リ
ベリアにおいて登録されている代理人
を指定していること
① リベリア国内及びリベリアと他の西アフリ
カ諸国との間の貿易に従事する純トン数 20
トン以上の船舶
② 純トン数 500 トン以上の国際貿易に従事す
る船舶
③ 娯楽目的に使用される 24 メートル以上のヨ
ット、又は他の船舶
【初期登録費用(Initial Registration Fee)】
【登録税(Registration Tax)】
なし。ただし規定上は以下の通りで、現在は免除
されている。
7,000
(米ドル)
6,500
6,000
5,000
3,000
2,500 米ドル
トン当たり 0.13 米ドル(上
限 3,900 米ドル)に 1,500
米ドルを加算。その他、事務
費として 6,500 米ドル。
(米ドル)
2,000
1,000
500
0
0

14,000 トン未満
14,000 トン以上
3,000
2,000
登
録
費
用
及
び
デ
ィ
ス
カ
ウ
ン
ト
主
要
な
も
の
料金
4,500
4,000
初
期
費
用
純トン数
(総トン数)
(総トン)
20,000 40,000 60,000
15,000 総トン超については、総トン当たり 0.10
米ドルを 3,000 米ドルに加算(上限 6,500 米ド
ル)
【領事料/年(Single Annual Consular Tasa)】
3,500
(米ドル)
(
3,000
3,000
【登録税/年(Annual Tonnage Tax)】
純トン数
料金
14,000 トン未
満
14,000 トン以
上
トン当たり 0.40 米ドルで、
少なくとも 880 米ドル
ト ン 当 た り 0.10 米 ド ル に
3,800 米ドルを加える
2,700
(米ドル)
2,500
)
2,000
2,000
1,800
1,500
年
間
費
用
1,200
(総トン)
1,000
500

(総トン数)
0
0


10,000
20,000
30,000
15,001 トンから 3,000 米ドル
領事料のほか、年間税(annual tax)、検査料
( annual inspection fee )、 事 故 調 査 料
(accident investigation fee)及び国際会議へ
の政府参加料(以下、これらをまとめて「付加
料金」という。)が課金される。
- 28 -
登録税のほか、海難調査費、国際海事機関参
加費用、安全検査費用、登録証書費用等が課
金される。

新造船の登録に対するディスカウント
(10 万総トン以上船舶の登録税 50%ディスカウン
ト(1 年間)、領事料及び付加料金 50%ディスカウ
2000 年 7 月 1 日以降にリベリア籍に登録された船
舶に関しては、総トン数や登録する船舶数に応じ
て、ディスカウントされる可能性がある。
(交渉ベ
ースで決定)
ント(3 年間)などがある。)
船齢 5 年未満の船舶登録に対するディスカウ

ント(新造船を除く。)
(10 万総トン以上船舶の登録税 50%ディスカウン
ト(1 年間)、領事料及び付加料金 25%ディスカウ
ント(3 年間)などがある。)

移動式海洋掘削装置(MODUs)のパナマ籍復
帰に対するディスカウント
(登録税及び検査料以外の税金を 2 年間免除。)

デ
ィ
ス
カ
ウ
ン
ト
大量登録ディスカウント(1 年間)
(16 隻から 50 隻を登録している場合、新たに登録
した船舶に係る登録税、領事料及び付加料金の 35%
ディスカウントなどがある。)
同一暦年中に 3 隻以上の登録を希望する船舶

がある場合のディスカウント
(同一の経済グループに属する船舶が同一暦年中
に 3 隻以上登録される場合、新規登録船舶に係る登
録税、領事料、付加料金を 60%ディスカウント(1
年間);新規登録船舶が新造船である場合、登録後
の二年目及び三年目については、その総トン数に応
じた新造船のディスカウントが適用される。)
24 か月間 PSC 検査による拘留がなかった船舶

に対するディスカウント
(領事料及び付加料金を 15%ディスカウント)

大気汚染削減のための革新的措置導入船舶に
対するディスカウント
(ディスカウント率は交渉ベースで決定)
注:ディスカウントの併用はできない。
可能
定
義
外国登録船舶を裸用船する場合、自国の国旗の掲揚を認める船舶登録制度*7
裸用船限定
あり
原登録国証明書
必要
(他国へのチャー
ターアウトの許
可)
あり
原登録国証明書
必要(自国の旗を掲げ
させる権利の撤回)
同意が必要とされる
者
船主、抵当権者、及び
記録された債務の保
有者
期間
2 年(更新可能)
原登録国の法が適用
船主、抵当権者
期間
裸用船契約期間中
私法関係の登記
原登録国の法が適
用される
私法関係の登記
通常船籍登録と同
一
登録料
可能
定
裸用船限定
同意が必要とされる
者
登録料
チャーター
アウト
(両国については、通常
登録制度と同様、それぞれの国の旗を掲げることを許可している。)
チャーター
イン
条
件
可能
される
新造船の通常登録と
同一
可能
自国登録船舶が外国人に裸用船された場合、外国の国旗の掲揚を認める船舶登録制度*8
- 29 -
義
(たとえば、パナマ籍船の場合、パナマと最恵国待遇協定を締結していないロシアなどに当該船が入港
する場合に課せられる高額な港湾諸費を回避するため、本制度が利用されている。)
条
件
裸用船限定
あり
期間
裸用船契約期間中
私法関係の登記
引き続き有効
【休航特別登録(Lay-up Registry)】
休航中の負担軽減措置:

休航登録証書発行

年間検査料免除、事故調査料免除等による
裸用船限定
あり
期間
2 年(更新可能)
私法関係の登記
引き続き有効
LISCR の設立

リベリア政府は 2000 年に、自国の船舶登録制度
の運用する権限を、米国法人である LISCR に授
権。2000 年の 1698 隻を 2010 年には 3467 隻と、
リベリア籍船を増加させることに寄与。
負担軽減(実際の負担軽減措置の内容につ
いては、当局個別対応により決定)
その他

船内証書備置義務免除

完全な配乗義務も定期検査も要求されな
い。
「ハーモナイズド検査プログラム」の導入

年次安全検査(Annual Safety Inspection)、ISM
コード、ISPS コードの三つ全ての検査を 1 回の
乗船検査で行うことにし、検査の重複回避。

寄港時間の短縮。
【船舶検査員の IT 装備推進】
パナマ本局との 24 時間オンライン化と画像・映
像添付可能な検査報告方式の導入
*1 出典:CIA ホームページ, The World Factbook。本文中の登録隻数及び登録総トン数に係るデータは IHS Fairplay, World
Fleet Statistics (対象船舶は 100 総トン以上)を活用しているが、本比較表においては、共通データを用いる都合上、CIA の
データを用いている。
*2 出典:CIA ホームページ, The World Factbook
*3 出典:在京パナマ大使館・パナマ海運庁共催「パナマ籍商船~最近の動向~」
(2011 年 12 月 5 日)講演会資料に記載されて
いる 2010 年度船舶登録制度関連収入
*4
2010 年度国家予算 10,575 百万米ドルを分母として算出
*5 出 典 : リ ベ リ ア 財 務 省 『 2008 年 7 月 1 日 か ら 2009 年 6 月 30 日 年 度 の 国 家 予 算 』 available at
http://mof.gov.lr/doc/0809%20Budget%20Book%20Final%20080905.pdf による海事分野での収入(maritime revenue)。
*6
2008 年度の歳入予測 249 百万米ドルを分母として算出
*7 (財)日本海運振興会『外国籍船に自国国旗を掲揚させる制度に関する実態調査報告書』(2006 年 6 月)2 頁。
*8
同上
- 30 -
Ⅰ.シンガポールの海運強化策
1.外航海運の現況と外航海運政策の動向
(1)外航海運の現況
シンガポールの海上貿易量は、輸入が 1 億 6,086 万トン、輸出が 9,324 万
トンで、合わせて 5 億 5,410 万トンである(2011 年)。
港湾貨物取扱量は、リーマンショックの 2009 年を除けば、毎年増加して
おり、2011 年は 5 億 3118 万トン、うちコンテナは 3 億 938 万トンである。
これはリーマンショック前の 2008 年に比べてそれぞれ 3.1%、0.3%の増加で
ある。コンテナの取扱数は 2994 万 TEU、うち輸入は 166 万 TEU、輸出は
133 万 TEU のみであり、トランスシップ貨物が約 9 割を占める。入港船舶
数は、毎年着実に増加しており、2011 年は 21 億 2 千万総トンである。また、
船舶燃料売上は 4320 万トンで世界トップクラスである。
シンガポールは国際海運の戦略拠点に位置するという特性を生かし、国際
ハブ港湾、国際海事センターとして発展することを目指しており、現在、シ
ンガポールの海事産業は 120 の国際海運グループを含む 5,000 以上の企業か
らなり、17 万人を雇用し、GDPの7パーセントを占めるに至っている。
<図Ⅰ-1>港湾貨物取扱量
(出典:シンガポール政府海事港湾庁
- 31 -
資料)
<図Ⅰ-2>コンテナ取扱量
(出典:Containeristation international yearbook,IHS Global Insight)
<図Ⅰ-3>入港船舶
(百万総トン)
2,500
2,000
1,459
1,621
1,785
1,919
2,120
1,500
1,000
500
0
2007
2008
2009
2010
2011
(2)外航海運政策
1959 年に自治権を回復してから、政府は強い海事セクターを作るため、ま
ず労働集約的な造船、船腹修繕業を支援することにした。その後、1967 年に
東ラグーンにコンテナターミナルを作ることにし、137 百万ドルを投じて
1972 年にタンジョンパガーターミナルを完成させた。また、政府は海事産業
に対する様々な支援を行い、その結果、1960 年には船舶修繕部門で 9,400
人を雇用するだけの小さな船舶修繕国家にすぎなかったが、1970 年代中ごろ
- 32 -
には、海事セクターは 20,000 人を雇用する規模に膨れ上がった。
その後 1980 年代の不況期に国際海事センターというスローガンが登場し
た。貿易産業大臣のもとに経済委員会が設けられ、シンガポールの競争上の
長所と短所を分析し、次の 10 年間の戦略を組み立てた国際海事プログラム
を作成した。同プログラムはシンガポールの海事産業の様相を変化させるこ
とを企図し、シンガポール船籍の登録料を低減させること、行政手続きを簡
素にすること、事業者が競争力をもてるようにすること等が盛り込まれた。
以降、シンガポールにおいては、貿易や投資を促進し、シンガポールを国
際ハブ港湾、国際海事センターとして発展させるという明確な国家目標のも
とに、様々な政策が取られている。その政策は以下に述べる海運に関する支
援策に限らず、港湾整備、ブローカー、金融業者、保険業者、法律事務所な
どの誘致など多岐にわたる。また、海事港湾庁はワンストップドキュメント
センターを運営し、船主、代理店、船長が入港に関する手続きをオンライン
で行えるようにしている。
更に、海事港湾庁は海事に関する国際会議を誘致する活動なども行ってい
る。
2.船舶登録制度
政府は、シンガポールを国際海事センターとして発展させる意図のもと、シ
ンガポール籍船に対して税制上の優遇措置を導入し、また登録料を安価にする
等により、登録船舶の増加を図っている。シンガポール籍船の数は着実に増加
し、2011 年には 2,877 隻となっている。ただし、シンガポールは便宜置籍国を
意図しているわけではなく、船舶検査なども国際的な水準に併せて行っている。
- 33 -
<図Ⅰ-4>シンガポール籍船の数及び重量
(出典:シンガポール政府海事港湾庁
資料)
(1)登録可能主体
商船登録規則第3条で、シンガポール籍となる船舶の所有者は以下のもの
に限定されている。
①シンガポール市民(シンガポール永住者を含む)
②シンガポールで組織された会社
ただし、下記のいずれかの場合に限る。
・当該会社の払込資本金が5万ドル以上の場合(商船登録規則第5条(1))
・当該会社が下記(ⅰ)から(ⅳ)のいずれかの船舶登録を完了している、申請
している、又は申請する予定だと登録権者に通知している場合(商船登録
規則第5条(4))
(ⅰ)合計の純トン数が 4 万トン以上の 2 隻
(ⅱ)合計の純トン数が 3 万トン以上の 3 隻
(ⅲ)合計の純トン数が 2 万トン以上の 4 隻
(ⅳ)合計の純トン数に関わらず5隻
(2)登録可能船舶
あらゆるタイプの船舶が登録可能である。ただし、外資系企業が所有する
場合は、1,600 総トン以上で、自走式であることが必要である。なお、船齢
が 17 年以上の船舶は、登録官がすべての面で満足な状態にあると判断しな
い限り登録できない(商船登録規則第8条)
- 34 -
(3)登録の費用
①初期費用
登録料として、純トン数(NT)1 トンにつき S$2.50 、下限 S$1,250 (500
NT)、上限 S$50,000(20,000 NT)が課せられる。
なお、複数船舶又は大型船舶を登録しようとする場合に、割安の登録料
が 適 用 さ れ る ブ ロ ッ ク ・ ト ラ ン ス フ ァ ー ・ ス キ ー ム (Block Transfer
Scheme)がある。具体的には、下記(ⅰ)から(ⅳ)のいずれかの船舶登録をし
ようとする場合に、登録料は、純トン数(NT)1 トンにつき S$0.50 、1隻
につき下限 S$1,250(2,500NT)、上限 S$20,000(40,000NT) となる。
(ⅰ)純トン数が 4 万トン以上の1隻
(ⅱ)合計の純トン数が 4 万トン以上の 2 隻
(ⅲ)合計の純トン数が 3 万トン以上の 3 隻
(ⅳ)合計の純トン数が 2 万トン以上の 4 隻
(ⅴ)合計の純トン数に関わらず 5 隻
<図Ⅰ-5>登録料
②年間費用
年間トン税として、純トン数(NT)1 トンにつき S$0.20 、下限 S$100
(500 NT)、上限 S$10,000(50,000 NT)が課税される。
- 35 -
<図Ⅰ-6>年間トン税
③その他
所有者の変更があった場合、純トン数(NT)1 トンにつき S$1.25 、下限
S$1,250 (1,000 NT)、 上限 S$6,000(4,800 NT)の再登録料が課せられる。
(4)登録のメリット
シンガポール籍船の運航により得られた収益については、シンガポール所
得税が課税されない。また、シンガポール籍船に乗船する船員の所得税につ
いては、雇用が実質的にシンガポール域内でなされる場合には免税となる(所
得税法 13(1)(w))。更に、シンガポール籍船の売却益については、課税対象外
となる。(税制の詳細については、3.参照)。
シンガポール籍船に乗船させる船員の国籍に制限はない。
(5)登録の現況
2011 年現在、シンガポール船籍は 2,877 隻である(シンガポール海事港湾
庁)。このうち、1、000 総トン以上の船舶は、CIA の The World Fact Book
によれば、1,599 隻(2010 年)であり、その実質的な所有者を国籍別に分ける
と、シンガポールが 633 隻(構成比 39.6%)、以下、日本 164 隻、ノルウェー
153 隻と続く。外国所有分の上位 5 ヵ国は下表の通り。
- 36 -
国名
隻
数
構成比
1
日本
164
10.3%
2
ノルウェー
153
9.6%
3
デンマーク
149
9.3%
4
台湾
77
4.8%
5
インドネシア
60
3.8%
603
37.7%
五ヵ国合計
3.海運関連税制
(1)海事関連企業に対する所得税の特例
船主や船舶運航事業者がシンガポールに拠点をおくよう、以下のような優
遇税制を設けている。
①海運利益の非課税(所得税法 13A)
シンガポール籍船の運航により得た所得は非課税となる。シンガポール
籍船の運航に関連して実行した外国為替及びリスクマネージメント行為か
ら生じた所得も非課税である。また、外国籍船については、シンガポール
域内の運航により得た所得のみ非課税となる。
②認定国際海運企業 に対する特例(所得税法 13F)
(a)認定の対象
全世界にネットワークを有し、確固とした実績があり、シンガポール
において、海運活動を拡大する計画、誓約を明らかにする国際海運企業。
なお、認定を得るための具体的要件は、法令等で定められておらず、
海運会社は認定を得るために、政府とのネゴシエーションを重ねている。
海運会社から聞き取ったところによると、シンガポールでの雇用がどう
なるかとか、継続的にシンガポールで業務を拡大するつもりかなどにつ
いて確認されるということである。ちなみに、認定を得るために必要な
資本金や営業収入等の額が一部で囁かれているが、それらの額は会社に
よって異なるという情報があり、ここでは敢えて触れなかった。
(b)認定の効果
①(シンガポール籍船の運航により得た所得の非課税)に加えて、外国
籍船の運航によって得た利益も非課税となる。期間は、「更新可能な 10
年間」又は「更新不可能な 5 年間」とされている。いずれの期間とされ
- 37 -
るかは、海事港湾庁の裁量であり、「更新不可能な 5 年間」の後に「更
新可能な 10 年間」が適用されることもあるようである。
③認定海事リース業 に対する特例(所得税法 13S,43ZA)
(a)認定の対象
確固とした実績があり、シンガポールにおいて海運やコンテナへの金
融業務を拡大する計画、誓約を明らかにする企業。認定を得るための具
体的要件が法令等で定められていないのは②と同様である。
(b)認定の効果
(ⅰ)リース会社、ファンド、事業信託等が得たリース収入について最
長 5 年間下記の通りとなる。
船舶のリース収入
免税
コンテナのリース収入
5%又は 10%の軽減税率
(ⅱ)船舶投資マネジャーのマネジメント関連所得については、10%の
軽減税率が適用される。
④認定海運関連支援サービス に対する特例(所得税法 43ZE、43ZF)
(a)認定の対象
確固とした実績があり、シンガポールにおいて、補助的な海運活動を
拡大する計画、誓約を明らかにする企業。認定を得るための具体的要件
が法令等で定められていないのは②と同様である。
(b)認定の効果
船舶ブローカー業務、フォワーダー・物流サービス、船舶管理、船舶
代理業務等の認定されたサービス提供から得られた所得の増分について、
10%の軽減税率が 5 年間適用される。
なお、この増分とは、認定海運関連支援サービスの地位を得る前三ヵ
年の平均の税引き前純利益(基準所得)を上回る分のことである。
(2)船舶ローンの金利支払い等に対する源泉徴収の免除
シンガポール居住者が国内で行う事業のために調達した借入金につき、利
子を支払う場合、その利子は受取人にとってシンガポールにおける所得とみ
なされ、シンガポールで所得税を納付する義務が発生する。しかし、利子の
受取人が非居住者である場合、非居住者から所得税を直接徴収するのは困難
であるので、本来の納税者である非居住者に代わり、利子の支払い人である
シンガポール居住者に所得税の徴収及び納付を義務付けている(源泉徴収税)。
このような源泉徴収税の対象となる所得は、利子の他に使用料、経営管理料
などがあり、税率は所得税法で定められている。利子の場合は、源泉徴収税
率は原則 15%(二国間租税条約に基づき、別段の定めをする場合あり)である
が、船舶の建造等のためのローンについては、下記の条件に該当するものは
源泉徴収税は免除される。
- 38 -
①対象ローン
外国の貸し手からの下記のためのローン
(a)船舶の購入又は建造
(b)コンテナ、複合一貫輸送用機器の購入
②対象企業
(a)船舶の購入又は建造
シンガポール籍船を有する海運企業(シンガポール籍船の購入又は建
造に関するローンが対象)
認定国際海運企業(シンガポール籍船及び外国籍船の購入又は建造に
関するローンが対象)
認定海事リース(船舶リースカテゴリー)会社(シンガポール籍船及び外
国籍船の購入又は建造に関するローンが対象)
(b)コンテナ、複合一貫輸送用機器の購入
認定コンテナ投資企業
③効果
金利支払いについて、2011 年 6 月 1 日から 2016 年 5 月 31 日までは、
個々の事例を申請することなく、源泉徴収税が免除される。
4.船員関連制度
(1)船員福祉制度
シンガポール籍船で働く船員の数は、時期により異なるが、2012 年 8 月
現在、約 5 万人で、そのうちシンガポール人は 1000 人以下である。海事産
業の成長にとって、船員が果たす役割は重要であり、政府はシンガポール籍
船に乗船する船員の所得税を免税とする他、以下のように、様々な福祉制度
を用意している。
①船員の帰国費建て替え
商船法第 85 条は、船員を帰国させる義務は雇用者にあると定めている。
しかし、雇用者に予期せぬ事情が生じ、船員を帰国させるという義務を果
たせなくなる事態に備えて、船員の利益のために「帰国規則」を定め、雇
用者が義務を果たせない場合に、海運当局が船員の帰国の手配及び帰国費
用の支払いをすることを定めた。ただし、帰国のための費用その他の出費
については、後に雇用者から徴収することになっている。
この規則が適用されるのは、シンガポール籍船に乗り込む船員である。
②教育補助
シンガポール人船員が技能を高め、より高次の資格を得る目的で、講座
- 39 -
に参加する場合に講座参加費を助成することとしている。助成額は、講座
受講料と月 300 ドルの手当てである。
③長期勤務者退職賞
シンガポール人船員の長期間にわたる海運への貢献を評価し、また職業
としての船員の魅力を高める趣旨で、報奨金制度を設けている。具体的に
は、15 年以上航海した者で 60 歳以上で退職したシンガポール人船員に対
し、勤務 15-19 年の場合に 1,000 ドル、同 20-24 年の場合に 2,000 ドル、
同 25-29 年の場合に 3,000 ドル、同 30 年以上の場合に 4,000 ドルを支給
する。
④船員特別救済基金
海上で行方不明となったシンガポール人船員の扶養家族に対し、当該船
員の行方不明前の賃金をベースとして計算した最大 12 ヵ月分の前払い金
が支給される。また、家族が緊急に必要とする場合には 2,000 ドルまでの
前渡し金も支給される。これは、一般に船員が行方不明となった場合、保
険会社は 7 年間の待機期間が経過するまで、保険金を支払わないため、こ
の基金が設けられている。なお、金銭的支援を受けた行方不明船員の扶養
家族は、雇用者又は保険会社から補償を受けた場合には、当基金から得た
金銭を当局に返済しなければならない。
⑤思いやり支払い(Compassionate Payment)
シンガポール人船員の死亡時に、当座の必要資金を支援するため親族に
最高 1,000 ドルを支払う。自然災害、火事、末期又は深刻な慢性疾患、事
故といった予期せぬ困難に遭遇した船員にも支払われる。
⑥シンガポール船員救援基金
雇用者が破産等により義務を果たせなくなった場合に、シンガポール籍
船内で困難に陥った船員が食糧、水、船舶の燃料を確保できるよう、彼ら
が帰国できるまで、或いは問題が解決するまでの間、この基金が支援する。
この基金は、シンガポール海事港湾庁と二つの労働組合により設立され、
運営されている。
(2)外国海技資格の承認制度
下記の国と取り決めを締結し、当該国の発給する海技資格の承認を行って
いる。
アルゼンチン、オーストラリア、アゼルバイジャン、バハマ、バングラデ
ィシュ、ベルギー、ブラジル、ブルガリア、カナダ、チリ、中国、クロアチ
ア、キプロス、チェコ、デンマーク、北朝鮮、エストニア、フィジー、フィ
ンランド、フランス、グルジア、ドイツ、ガーナ、ギリシア、ハンガリー、
- 40 -
香港、アイスランド、インド、インドネシア、アイルランド、イラン、イタ
リア、ジャマイカ、日本、韓国、ラトビア、リトアニア、マレーシア、メキ
シコ、ミャンマー、オランダ、ニュージーランド、ノルウェー、パキスタン、
パプアニューギニア、フィリピン、ポーランド、ルーマニア、ロシア、スロ
バキア、スロベニア、南アフリカ、スペイン、スリランカ、スウェーデン、
タイ、トルコ、ウクライナ、英国、米国、ベトナム、セルビア・モンテネグ
ロ
5.カボタージュ
内航運送がほとんど存在しないこともあり、規制はない。
6.その他
(1)船舶の売却益に対する税の免除(所得税法 13A等)
①対象
(a)認定国際海運企業として船舶を所有するか、シンガポール船籍の船舶
(シンガポール船籍を取得する予定の船舶を含む)を所有し、かつ船舶運
航事業を行っていること
(b)認定海事リース業として船舶を所有し、かつ船舶貸し渡し業を行って
いること(船舶の売買を主たる事業として行う者は対象外)
②内容
所有していた期間にかかわらず、売却益が免税となる。また、建造中の
船舶の売却による利益も同様に免税となる。なお、船舶売却によって損失
が生じた場合でも、当該損失により、会社が他の事業等で計上した利益を
減じることはできない。
(2)海事クラスター基金
人材育成等を支援することを通じ、シンガポールにおける海事クラスター
の発展を促進するため、海事港湾庁により設立された。2002 年に 8,000 万ド
ルで設立され、2009 年に 4,500 万ドルの追加拠出がなされている。
① 人的資源部門
海事産業内で人材開発、トレーニングなどを行う場合に基金からの支援
がなされる。基金からの支援は、原則必要額の 70%である。
(a)訓練
海事産業の人材が知識、経験を高めるために承認された訓練プログラ
ムに参加する場合に支援する。
(b)人材
海事関係会社が、研修生を受け入れる場合、社員を海外に派遣して特
定の技能を身につけさせる場合、社員に経営管理プログラムに参加させ
- 41 -
る場合に支援する。
(c)人材開発投資
海事関係会社又は団体が、海事関連の人材のレベルアップを図る取り
組 みをする場合、海事関係会社がトレーニングをするためのインフラ
を整備する場合に支援する。
上記の教育訓練プログラムの参加者数の推移は以下の通り。
<図Ⅰ-7>マリタイムクラスターファンド関連
の教育訓練プログラムの参加者数
2,500
2,266
2,000
1,696
1,500
954
1,000
500
577
679
2007
2008
0
2009
2010
2011
②事業開発部門
シンガポールで設立された海事会社及び機関、あるいは新たな海事分野
に進出する既存の会社及び機関に対し、その初期投資費用のうち一部を助
成する。本スキームの対象となるのは、シンガポールで事業を発展させる
と確約する会社等である。
- 42 -
【データ編】
1. シンガポール経済の概況
(1)シンガポールの概況
面積:710.3 平方キロメートル
人口:518 万人(2011 年 6 月末、国民、永住権取得者及び長期滞在(1 年超)
の外国人が含まれる)
民族:国民及び永住権取得者の 74.1%が華人系で、13.4%がマレー系、9.2%
がインド系である。
首都:シンガポール
言語:英語、中国語(北京語)、マレー語、タミル語
宗教:仏教(42.5%)、イスラム教(14.9%)、キリスト教(14.6%)、道教(8.5%)、
ヒンズー教(4%)ほか
(2)シンガポール経済の概況(2011 年)
名目 GDP 総額 – 326,832 百万シンガポールドル(259,824 百万米ドル)
名目 1 人当たり GDP:63,050 シンガポールドル(50,123 米ドル)
実質 GDP 成長率(%):4.9
貿易収支(US$):674 億 5,300 万
経常収支(US$):569 億 8,900 万
外貨準備高(US$):2,376 億 6,200 万
対外債務残高(US$):0
為替レート(期中平均):1 US$=1.2578SGD
海上荷動き量(トン数):輸入・160,859,824.77/輸出・93,239,357.86
海上コンテナ荷動き量(TEU):輸入・1,659,864.43/輸出・1,329,146.01
(荷動き量のデータは IHS Global Insight による)
シンガポールの人口は 2011 年 6 月現在で 518 万人であり、人口密度は
6,489 人/km2 と極端に高い。地理的特性を生かして、海運業や航空業が発達
しているほか、機械・輸送機器、鉱物性燃料などの鉱工業も発達している。
2002 年から 2007 年までは高い経済成長率を記録していたが、2008 年には
金融危機の影響で落ち込み、リーマンショック後の 2009 年には 1.0%のマイ
ナス成長となった。しかし、2010 年に入ってから、景気は順調に回復し、
建国以来最高の 14.8%の経済成長率を記録した。2011 年は前年に比べれば鈍
化したものの、経済成長率は 4.9%を記録した。
失業率は、景気が悪化した 2009 年でも 3.0%であり、2011 年には過去 14
年間で最も低い数値である 2.0%を記録するなど、極めて低い水準で推移して
いる。住宅等の建設事業が堅調なこともあり、建設業の雇用創出件数の増加
が失業率の低下に貢献している。外国人家政婦の増加などにより、外国人労
働者は全体で 85,000 人増加している。もっとも 2011 年後半には、製造業の
- 43 -
低迷等により、2009 年の大不況以来の解雇件数も報告されている。
2011 年においては、政府収入約 501 億 SGD のうち、海事港湾庁(Maritime
and Port Authority、以下 MPA)による収入が、約 2 億 6000 万 SGD を占め、
そのうちの約 2 億 5,000 万 SGD が港湾使用料と海事サービス料である1。
① 2002 年~2011 年の GDP
② 2002 年~2011 年の貿易収支
1
MPA Financial Report 2011, p. 5.
- 44 -
③ 2002 年~2011 年の貿易依存度
(3)行政機構
行政機構図は下記の通りである。
(出典:シンガポール政府 HP)
このうち、運輸省は、海事交通局、陸上交通局、航空局、国際・セキュリ
ティ局、開発局、広報局、航空事故調査局の 7 つの局を有し、海事に関して
は海事交通局が所管している。また、同省は他に民間航空庁、陸上交通庁、
海事港湾庁、公共交通会議の四つの法定機関(statutory board)を有し、海事
産業振興、港湾監督等については、海事港湾庁の所管となっている。海事港
湾庁は、1996 年に運輸・通信省(現運輸省)の海事部門、国家海事委員会、シ
ンガポール港湾庁の規制部門の機能を引き継ぐ形で設置された同庁の組織図
は、以下の通りである。
- 45 -
(出典:海事港湾庁 HP)
2.シンガポール外航海運の概況
(1)ネプチューン・オリエント・ライン
①概要及び沿革
Neptune Orient Lines (以下「NOL」)は 1968 年に設立された。1997 年
にアメリカの船会社 APL を買収し、現在 NOL は海運事業を行う APL と、
倉庫や一貫輸送などの物流サービスを提供する APL ロジスティクスを子会
社として有している。NOL の収入の 85%は APL から、15%は APL ロジス
ティクスからであり、収入合計は 92 億米ドルである。
- 46 -
NOL の収入推移
APL はコンテナ事業しか行っていないが、世界で 7 番目に大きいコンテナ
船オペレーターとして知られている。
コンテナ取扱量は 2011 年で 595 万 8 千 TEU であり、2003 年に比べて約
2倍となっている。この間、2009 年はリーマンショックで取扱量が前年に比
べて減少したが、他の年は前年に比べて増加している。
APL のコンテナ取扱量
- 47 -
②運航船舶等
運航船舶は 127 隻で、うち所有船が 43 隻(280 万 DWT)、傭船船舶が 84
隻(440 万 DWT)である。傭船船舶の国籍別内訳は、リベリア 41%、アンテ
ィグア・バーブーダ 14%、香港 8%、シンガポール 8%、マーシャルアイラ
ンド 6%、パナマ 5%等である。
幹線航路は 40、フィーダー航路は 32 である。アジア・中東域内の比重
が高く、全体の 44 パーセントに当たる 260 万 TEU は同地域内のものであ
る。
船員は全部で 1,155 人。国籍の内訳は、フィリピン人 35%、中国人 23%、
インド人 15%、シンガポール人及びマレーシア人がそれぞれ 8%、ミャン
マー人が 6%である。
(2)Pacific Carriers Limited (PCL)
①概要
本社 シンガポール
従業員数 200 名
② 沿革
クォック(Kuok)社の 100%子会社であり、1973 年に設立された。海運業
界において世界的経営を行い、今日では、シンガポールだけでなく、マレ
ーシア、オーストラリア、米国、英国に事務所を有する。主としてドライ
バルク船のサービスを行っているが、タンカーについても力を入れ始めて
いる。また、現在同社はフィーダー・コンテナ船及び重量物荷役可能な多
目的船の所有・管理に積極的に取り組んでいる。
クォックグループ全体として 2007 年における売上は 10 億 7,900 万
SGD であり、対前年比 167%増であった。同社は 2007 年以降、財務情報
を公開していない2。
③グループ運航船舶(2012 年 10 月現在)
船種
隻数(注文中)
ばら積み貨物
94(18)
タンカー
5
合計
99(18)
(出典:PCL HP)
(3)Pacific International Lines (PIL)
①概要
本社 シンガポール
2
東南アジア造船関連レポート 30 (2011 年)22 頁。
- 48 -
株式資本 1,848 万 SGD
売上高 3.9 億 US$以上 (2010 年グループ全体で)
②沿革
1967 年に設立され、沿岸航行による海運業からビジネスをはじめたが、
現在では 95 ヵ国 500 ヵ所に業務を展開し、コンテナ運航船社としては世
界第 18 位の実績である。1960 年代に外国海運会社として中国の市場に入
った草分け的存在であり、現在も海外と中国を結ぶコンテナ便を週に 20
便提供している。また、中国では 10 の支店と 13 の事務所を有する。香港
に法人登録される Singmas Container Holdings を子会社に持ち、インド
ネシア、バングラデシュ、オーストラリアにおいて倉庫業務を行っている。
③グループ運航船舶(2012 年 7 月現在)
150 隻の船舶を所有・運航し、300,000 TEU を取り扱う。
(4)川崎汽船現地法人(“K”LINE PTE LTD)
①沿革及び業務概要
2001 年に川崎汽船グループのグローバル展開を最前線で担う目的で発
足した。以降、日本の川崎汽船から受託する業務と、“K”LINE PTE
LTD(以下「“K”LINE」)自身で荷主等と契約する業務の二本立てにより、
業務を拡大している。“K”LINE は、シンガポール政府から、認定国際海
運企業の資格を得ており、後者の業務から得られる利益については、免税
となっている。
主力事業は、コンテナ船、タンカ―、ドライバルクの三部門である。コ
ンテナ船は東南豪州・シンガポール航路と西豪州・シンガポール航路を運
営している。タンカーはアフラマックスに加えてケミカルタンカーでアジ
ア・中近東等をカバーしている。ドライバルクは、主にパナマックス、ハ
ンディマックス型を運航し、アジア太平洋水域からインド・中東、更には
大西洋水域を運航している。売上高の推移は下記の通り。
- 49 -
③ 航船舶
以下の通り、合計 31 隻(うち所有船 17 隻)である。(2012 年 12 月末現在)
バルカー
ケープサイズ 2 隻(うち所有船 1 隻)
パナマックス 9 隻(うち所有船 5 隻)
ハンディサイズ 13 隻(うち所有船 7 隻)
タンカー
アフラマックス 4 隻(うち所有船 2 隻)
ケミカル 1 隻(うち所有船 1 隻)
コンテナ
2 隻(うち所有船 1 隻)
所有船は 17 隻のうち、シンガポール船籍が16隻、パナマ船籍が1隻、
非所有船はシンガポール船籍が 5 隻、あとはパナマ、マーシャルアイラン
ド船籍などである。
職員は、160 人程度で、うち 80 人が女性である。“K”LINE 自身は、
船員を雇用していない。
(5)シンガポール海運協会
1985 年に シンガポール国家海運協会 (Singapore National Shipping
Association )として設立された。目的は、メンバーたる船主、運航事業者、
船舶管理者、エージェント、船舶仲買人の利益擁護とシンガポールを国際海
事センターとして発展させることであり、1997 年に名称をシンガポール海運
協会(Singapore Shipping Association )に変更した。
会員は3つのカテゴリーに分かれている。一つ目は、通常会員(Ordinary
Members)で、海運会社など 263 社がメンバーとなっている。二つ目が賛助
会員で、これは銀行、保険などの会社 42 社がメンバーとなっている。三つ
目が個人会員である。シンガポールの海運会社はほとんど同協会に加盟して
- 50 -
いる。
現在は、シンガポール、アセアン、世界の海運の利益のためということで
活動の幅を広げている。他国の海運協会と連携した活動も行っているし、更
には海運自由の原則、海上安全の確保、海洋環境の保全のために、各国政府、
非政府組織とも連携して活動している。シンガポールを国際海事センターと
して発展させるため、政府とも連携している。
具体的な例を挙げると、人材開発プログラムを実施し、海運入門から、海
運法及び紛争処理など様々なコースを提供している。また、回章文の送付、
セミナーの実施、出版事業なども行っている。
- 51 -
Ⅱ.台湾の海運強化策
1.外航海運の現況と外航海運政策の動向
(1)外航海運の現況
台湾経済は過去 20 年間、平均経済成長率が 5.0%と堅調に成長しており、
年によって経済成長のバラツキが小さく、安定した経済成長を続けている。
マイナス成長を記録したのは 2001 年(-1.65%)とリーマンショックの 2009
年(-1.81%)のみである。2001 年は、世界規模の不景気に加え、両岸関係
の悪化が原因で、マイナス成長となった。
2002 年には WTO 加盟を果たし、貿易総額は 2002 年の 2,486 億ドルから
2011 年の 5,897 億ドルへと 9 年間で 2 倍以上に増加するなど貿易量も拡大
させている。
2011 年の台湾発着の海上荷動き量は(IHS Global Insight による)、輸入
3 億 5,266 万トン、輸出 7,497 万トンで、輸入が 4.7 倍多い。これは、石炭
や鉄鉱石、原油などの資源を輸入に頼っているためである。しかし、海上コ
ンテナ荷動き量をみると、輸入 262 万 TEU、輸出 352 万 TEU で、輸出が
90 万 TEU 多くなっている。これは、輸入した資源を台湾国内で加工するこ
とで付加価値の高い製品を生産し、コンテナ貨物として輸出するという事情
が反映されているものと考えられる。台湾の貿易収支は過去 10 年、200 億
ドル台前後の黒字を達成している。
なお、2011 年の北米航路におけるコンテナ荷動き量をみると、台湾発着貨
物は 116.8 万 TEU でアジア全体(1,816.7 万 TEU)の 6.4%、欧州航路では
52.1 万 TEU でアジア全体(1,830.5 万 TEU)の 2.8%となっている。不定
期航路についてみると、2011 年の台湾の輸入貨物は米国から 524.9 万トンで、
アジア全体(13,336.8 万トン)の 3.9%、欧州からは 132.1 万トンで、アジ
ア全体(6,785.8 万トン)の 1.9%となっている。
IHS Fairplay "World Fleet Statistics"によれば、2011 年現在、百総トン
以上の台湾籍船は 906 隻、299 万総トンである。2000 年比で隻数が 33.2%
増加しているのに対し、総トン数では 29.9%の減少となっている。また、2011
年の千総トン以上の台湾商船隊は 692 隻、2,411 万トンである。2000 年比で
みると、隻数が 33.3%増、総トン数が 87.5%増となっている。
台湾の外航海運企業の発展は著しい。台湾の主な海運会社としては、エバ
ーグリーンマリン(長榮海運)や陽明海運がある。エバーグリーンマリンは台
湾最大の定期船を専門とする海運グループであり、定期船の船腹量では、マ
ースク、MSC、CMA-CGM に次ぐ 73.1 万 TEU の世界シェア 4.4%で世界第
4 位にランクインしている。なお、陽明海運は 35.9 万 TEU の世界シェア 2.1%
で 14 位にランクインしている。
(2)台湾海運政策の動向
台湾では、国家の競争力向上を目的として、国際海運と航空分野において
- 52 -
東アジアのハブとなる目標を掲げており、特に経済分野で密接な関係にある
中国と、ヒトとモノの行き来を円滑化する方針を持っている。2008 年、国民
党の馬英九政権となると、対中国政策を大幅に転換し、同年 12 月に台中間
で「三通」
(通商、通信、通航の直接化)を実現させた。現在では、台湾側 7
都市、中国側 21 都市の間のチャーター便が毎日運航(週 108 便)されてい
る。海運についても、台湾側が 11 港、中国側が 63 港を開放した。現在、台
湾政府は三通の対象区間を拡大させる考えを持っており、台湾の港湾におけ
る FTZ(Free Trade Zone:自由貿易地域)3も拡大の方向で取り組んでいる。
現在、台湾の 4 大港(基隆港、台北港、台中港、高雄港)に、FTZ が設けら
れている。
2.船舶登録制度
(1)概要
台湾の船舶登録制度では、船舶所有者や乗組員(船長)の国籍等に関して
一定の要件が定められている。また、現時点において、第二船籍制度又は国
際船舶登録制度は導入されていない。しかし、台湾船主協会を中心に政府に
働きかけを行っており、政府側でも議論の場を設ける機運が高まっている。
(2)登録要件
船舶登録法第 5 条によれば、台湾の法律に基づき登録され、台湾国籍を付
与された船舶は、同国の国旗を掲げて航行することができる。台湾船舶とし
て登録可能な船舶は以下の通りとなっている。
(a) 政府所有船
(b) 台湾国民により所有される船
(c) 台湾の法律の下で設立され、かつ経営の主たる場所が台湾国内に存
在する企業の所有船舶。ただし、外国の出資を含む場合、台湾国民
の出資比率が 50%を下回らないこと。
船舶所有者は、船籍港を選択し、同港の港湾当局において所有権や抵当権
等の登記及び船籍の登録を行う。船舶登録に関連する費用は表Ⅱ-1の通り
である。
3
FTZ 内においては、中国貨物も含め、輸出入貨物に関税がかかることなく輸出入を行う
ことができる。ただし、FTZ 内での事業においては、雇用する台湾人従業員数は、総従業
員数の 60%以下になってはならないとされている。
- 53 -
<表Ⅱ-1>台湾における船舶登録関連費用
相続又は寄付により取得した船舶の場合
評価額の 0.1%
寄付により公益法人が取得した船舶の場合
評価額の 0.02%
売買等、上記以外の理由により取得した船 評価額の 0.2%
舶の場合
所有権保存又は共同所有権分割登記
評価額の 0.05%
(評価額が 60 百万ドルを超え
る部分については、0.025%)
賃借権設定登記
期間 10 年未満:評価額の 0.05%
期間 10 年以上:評価額の 0.1%
期間未設定:評価額の 0.05%
抵当権設定登記
300 台湾元
抵当権変更登記
100 台湾元
船籍港の変更
10 トン毎に 2 ドル
船籍原簿の抹消
10 トン毎に 1 ドル
(船舶登録法第 60 条及び Maritime Law Handbook, Suppl.40 (August
2011)より作成)
当局によれば、2011 年の船舶登録による収入は、35,785,000 台湾元であ
った。
(3)配乗要件
台湾船籍の配乗については、船長は台湾人でなければならない(船員法第
5 条)が、船長以外の船員に国籍に関する要件はない。
3.海運関連税制
(1)海運関連税制
①概要所得税法上、台湾では海運企業を含む国際輸送業に対して営利事業
所得税、営業税、船舶とん税などの税が課せられるが、台湾船籍について
は固定資産税が課されない。また、日本で導入されている特別償却制度や
買替特例制度を含め、海運事業による収入・収益への課税の特例措置は設
けられていない。
②トン数標準税制
トン数標準税制(トン税)については、2009 年に国会に法案が提出され、
2011 年 1 月 10 日より適用されている。しかし、現在は世界的な海運不況
もあってか、台湾の最大の製鐵企業である中国鋼鉄の子会社である中鋼運
通(China Steel Express Corporation)のみトン税を選択している状況で
- 54 -
ある。中鋼運輸は鉄や金属スクラップを専門に輸送する企業で、近年大き
く利益を上げていることから、トン税を選択している。
(a) 計算方法
トン税における税額計算方式は、
「対象船舶の純トン数×下記みなし利
益×365 日×営利事業所得税(17%)」である。みなし利益は表Ⅱ-2 の
通りとなる。
<表Ⅱ-2>みなし利益(1 日、100NT 当たり)
67 TWD
~1,000NT
(190.28 円)/100NT
1,001~
49 TWD
10,000NT
(139.16 円) /100NT
10,001~
32 TWD
25,000NT
(90.88 円)/100NT
14 TWD
25,001NT~
(39.76 円)/100NT
換算レートは 2012 年 12 月 3 日時点、1台湾元=2.84 円
(b) 対象企業
トン税を利用することができる企業は、台湾領域に本社を有し、海上
運送に従事する営利企業である。ただし、以下の条件を満たすことが求
められる4。
―対象企業は、トン数標準税制利用年度中、すくなくとも一隻の台湾籍
船を所有していること。
―対象企業の全所有船の純トン数総計に占める台湾籍船の純トン数総計
の割合は、同制度適用から 3 年で 15%、5 年で 30%に達すること。
―台湾人労働者をすくなくとも 35 名雇用していること。
―15 名の船員毎に 2 名の台湾人見習い船員を訓練すること。
(c) 対象所得
海上運送とそれに密接な関連を有する活動により生じた所得以外の所
得については、通常の税額計算方式が適用される。
(d) 対象船舶
トン税の対象となる船舶は、所有船又は海上輸送目的で用船される
300 総トン以上の船舶である。ただし、以下の船舶は除かれる。
―裸用船契約に基づき貸船された船舶
行政院経済建設委員会(Council for Economic Planning and Development)ホームペ
ージによる説明より。
4
- 55 -
―売店、レストラン、ホテルとしての利用に供される船舶
―漁船、ヨット、港湾内作業船、作業船、シャトルボート、港湾フェリ
ー
(e) 拘束期間
トン税を利用する企業は、10 年間その利用を継続しなければならない
(変更不可)。
③営利事業所得税
営利事業所得税は日本の法人税に相当し、各納税年度の総収入から原価
費用及び損失を控除した残額(利益)に対して課税される。台湾の立法院は
2010 年 5 月 28 日、営利事業所得税を現行の 25%から 17%に引き下げて
いる。なお、課税所得額が 12 万台湾元以下の場合、営利事業所得税の適
用は免除される。
所得税法第 25 条によれば、海運事業を含む国際運輸業の本社が台湾に
ある場合、基本的に課税対象となる。しかし、海外で得た所得について、
既に海外で課税対象になっている場合、台湾の航港局に認定してもらうこ
とにより、その課税分は台湾に支払う分から控除してもらえる措置がある。
④営業税
台湾国内における物品、労務及び輸入品の販売は、
「付加価値型及び非付
加価値型営業税法」(以下、営業税法)の規定により営業税が徴収される。
付加価値型営業と非付加価値型営業5で税率は異なる。海運を含む国際運輸
業は付加価値型営業に分類される。
付加価値型営業に課される営業税税率は、ゼロ税率または免税項目を除
き、5%と設定されている。海運業を含む国際運輸業、国際運輸用の船舶・
航空機及び遠洋漁船、国際運輸用の船舶・航空機及び遠洋漁船用に販売さ
れる物品または労務の場合、営業税法に基づき、ゼロ税率が適用される。
ただし、国際運輸業の場合、台湾領内で国際運輸業務を運営している外国
の運輸企業には、当該国が台湾における国際運輸事業に対し、類似租税の
免除がある場合に限られている。
4.船員関連制度
(1)概要
台湾では、船員資格取得のための訓練費が当局によって補助されている。
しかし、社会保険料の軽減、派遣・帰国費や訓練費の補助等それ以外の船員
5
特定業種(銀行業、保険業、信託投資業、証券業、先物取引業、質屋業及び特殊飲食業)
及び小規模営業者がこれに該当する。
- 56 -
に対する優遇措置は導入されていない。
(2)船員資格訓練補助制度
船員資格取得のための訓練費補助制度が、小規模ながら 2006 年に開始さ
れている。実績は表Ⅱ-3 の通りで、2006~2011 年に補助を受けた人数は延
べ 7.509 人で全体の 3 分の 1、その総額は 6,107 万台湾元(日本円で約 1 億
7,343 万円)程度である。2011 年は補助額が大幅に削減されており、公費負
担の訓練対象者が制度開始以来最も低い 1,030 人となり、総支給額も最も低
い 667 万台湾元(日本円で約 1,894 万円)となった。
政府が補助をする対象は、船員資格訓練の中でも、操舵訓練などの必修科
目である。これ以外の専門科目については、基本的には自己負担となる。ま
た、階級昇進についての訓練も補助の対象になることがあるが、この場合は、
船社が補助することが多いとのことだ。
<表Ⅱ-3>公費、自費別の船員訓練実績
合計
年度
人数
(1)+(3)
費用
(2)+(4)
2006
3,030
2007
公費負担
自己負担
2,475
人数
(1)
1,324(44%)
費用
(2)
1,111(45%)
人数
(3)
1,706(56%)
費用
(4)
1,364(55%)
4,203
3,514
1,209(29%)
1,082(31%)
2,994(71%)
2,432(69%)
2008
3,912
3,097
1,226(31%)
1,015(33%)
2,686(69%)
2,082(67%)
2009
4,590
3,615
1,414(31%)
1,171(32%)
3,176(69%)
2,444(68%)
2010
3,880
3,056
1,306(34%)
1,061(35%)
2,574(66%)
1,995(65%)
2011
5,843
3,685
1,030(18%)
667(18%)
4,813(82%)
3,018(82%)
合計
25,458
19,442
17,949(71%)
13,335(69%)
7,509(29%)
6,107(31%)
単位:人(人数)、万台湾元(費用)
(3)外国人船員承認制度
台湾は STCW 条約に加盟していない。そのため、台湾政府は 2 国間レベル
での船員承認制度の整備を進めている。2001 年 12 月 17 日より、フィリピ
ン、インドネシア、ベトナム、ミャンマーにおいて船員として認定された現
地の船員を、台湾籍船へ乗船可能とした。現在、台中双方の船舶に双方の船
員が乗船可能になるよう議論を重ねている最中とのことだ。なお、台湾籍船
に乗船する船員の半数は外国人船員で、フィリピン人船員が最も多いとのこ
とだ。
また 2001 年 12 月 6 日、交通部は台湾政府に認定された台湾人船員が、マ
ーシャル諸島、パナマ、リベリア、香港、シンガポール、英国籍船において
も乗船可能にした。
- 57 -
5.カボタージュ
台湾ではカボタージュ規制が行われている。当局の許可を得ない限り、外国
籍船により台湾の沿海、河川、湖沼及びその他の通航水域における水上輸送を
経営することは認められていない。台湾の港湾間の海上輸送及び客船業務は台
湾籍の船舶によって実施されなければならない。
ただし、海上運送法第 4 条 及び 34 条によれば、海外の海運代理店の設置が
当局に認められた場合や、台湾船社が所有する外国籍のばら積み船については、
運航が認められる場合がある。2011 年 12 月現在、3 隻のセメント船、13 隻の
一般貨物船の外国籍船の運航が認められている。一般貨物船によって輸送され
ている品目は、砂、砂利、セメントクリンカー、鉄鉱石が主なものである。
- 58 -
[データ編]
1.台湾経済の概況
(1)台湾の概況
面積:35,873 平方キロメートル
人口:2,323.6 万人(2012 年 1 月)
首都台北の人口:389.7 万人(2012 年 1 月)
言語:中国語(公用語)、閩南語(台湾語)、客家語
宗教:道教・キリスト教・仏教など
(2)台湾経済の概況(2011 年)
名目 GDP 総額(現地通貨建):13 兆 7,450 億台湾元
名目 GDP 総額(米ドル建):4,664.2 億ドル
1 人当たり GDP:20,083 ドル
実質 GDP 成長率:4.03%
貿易収支:278 億 4,800 万ドル
経常収支:416 億 0,000 万ドル
外貨準備高:3,855 億 4,700 万ドル
対外債務残高:45 億 4,400 万ドル
為替レート(期中平均):1 ドル=29.4690 台湾元
海上荷動き量:輸入 352,655,503.37 トン/輸出 74,973,114.35 トン
海上コンテナ荷動き量:輸入 2,616,272.57 TEU/輸出 3,520,926.33 TEU
(荷動き量のデータは IHS Global Insight による)
台湾の人口は 2012 年 1 月現在、2,323.6 万人であり、主要産品は電気・電
子、鉄鋼金属、繊維、精密機械である。失業率は 2012 年 9 月現在 4.3%であ
る。図Ⅱ-1 に 2002 年から 2011 年の GDP、図Ⅱ-2 に貿易収支の推移を示
す。過去 10 年の台湾の名目 GDP(米ドル建て)は、2009 年こそリーマンショ
ックの影響でマイナス成長になったものの、2010 年、2011 年は電気・電子
関連品の輸出が好調で、堅調に増加している。2012 年は台湾の歴史上、初め
て 5,000 億ドルを超える可能性がある。
- 59 -
<図Ⅱ-1>台湾のドル建てGDPの推移(2002~2011 年)
単位:億ドル
5,000
4,500
4,000
3,500
3,000
2,500
2,000
2002 2003 2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011
台湾 3,011 3,108 3,400 3,648 3,763 3,931 4,002 3,776 4,302 4,664
(データ出所:Jetro ウェブサイト)
図Ⅱ-2 に台湾の貿易収支の推移を示す。台湾の貿易収支は過去 10 年、200
億ドル台前後を推移している。また、サービス貿易や雇用者報酬などを合算
した経常収支では、約 120 億ドル貿易収支よりも大きい値となっている。
<図Ⅱ-2>台湾のドル貿易収支の推移(2002~2010 年)
単位:億ドル
350
300
250
200
150
100
50
0
2002 2003 2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011
台湾 249
261
174
195
242
304
185
306
265
278
(データ出所:Jetro ウェブサイト)
- 60 -
2.台湾外航海運の概況
(1)海運会社
台湾の主な海運会社としては、エバーグリーンマリン(長榮海運)と陽明海
運がある。
① エバーグリーンマリン(長榮海運)
(a)概要
本社 桃園県蘆竹郷
資本金:34,735 百万台湾元(2011 年末現在、日本円で 98,233 百万円)
売上高:108,156 百万台湾元(2010 年末現在、日本円で 306,026 百万
円)
従業員数:4,486 名(2011 年末 6 月末現在)
(b)グループ運航船舶
<表Ⅱ-4>エバーグリーンマリン保有コンテナ船の隻数、船腹量
(2011 年 12 月 6 日現在)
船種
コンテナ船
自社所有船
傭船
計
隻数
TEU
隻数
TEU
隻数
TEU
93
382,475
91
349,480
184
731,955
(出典:アルファライナーウェブサイト)
(c)沿革
エバーグリーンマリンは台湾証券取引所に上場しており、本社を桃園
県蘆竹郷に置く台湾のコンテナ運送会社である。創業者は張栄発で、
1927 年に澎湖諸島(当時の日本領台湾の澎湖庁)で生まれ、台北商業実
践学校を卒業後 18 歳で日本の船会社の台北事務所に就職し、さらに地
元船会社で三等航海士として働き、後には一等航海士となり船長にまで
なった。独立した会社を持とうとし、1968 年 9 月 1 日に「Central Trust」
という中古船 1 隻でエバーグリーンマリンを設立した。翌 1969 年に 2
隻目を購入し、中東航路に投入した。1970 年代にはさらに船を購入し、
1974 年に米国航路を開設した。転機となったのは 1970 年代のエネルギ
ー危機であった。これにより海運市場が急速に縮小したのをきっかけに、
エバーグリーンマリンは在来船をコンテナ船に置き換える戦略をとった。
1975 年、東アジア・東南アジアと北米の間でフルコンテナ船の定期航路
を開設し、以後台湾のみならず世界的にも大手のコンテナ運送会社とな
った。1984 年にはコンテナ船では初となる世界一周路線も開設した。こ
の路線は東向き及び西向きの双方向でアジア・欧州・米国を結ぶなど、
現在も拡大を続けている。
エバーグリーンマリンは、エバー航空などの物流企業を所有するエバ
ーグリーングループ(長榮集団)に属している。2011 年 12 月 6 日現在、
- 61 -
184 隻のコンテナ船を保有し、東アジア・米国間を中心に、世界 80 ヵ
国以上、240 以上の港に運航している。コンテナ船の船腹量ではマース
ク、MSC、CMA-CGM に次ぐ世界第 4 位のコンテナ船企業である。
子会社には、台湾の海運会社ユニグローリーマリン(立栄海運、
Uniglory Marine)、英国の子会社エバーグリーン UK(Evergreen UK)、
イタリアの海運会社イタリア・マリッティマ(Italia Marittima)があ
る。2007 年には英国コンテナ船子会社のハツ・マリン(Hatsu Marine)、
イタリア・マリッティマ、エバーグリーン・マリンの三社の路線を統合
し単一の「エバーグリーン・ライン」(Evergreen Line)に改称した。
また、90 年代に入り、定航海運の世界では主要定航船社同士によるア
ライアンスを通じたサービス提携が拡大してきたが、エバーグリーンマ
リンは単独運航を貫いてきた。
② 陽明海運
(a)概要
本社 基隆市
資本金:28,187 百万台湾元(2011 年末現在、日本円で 79,900 百万円)
売上高:111,701 百万台湾元(2011 年末現在、日本円で 316,633 百万
円)
従業員数:4,398 名(2011 年末現在)
(b)グループ運航船舶
<表Ⅱ-5>陽明海運保有コンテナ船の隻数、船腹量
(2011 年 8 月 1 日現在)
船種
コンテナ船
自社所有船
傭船
計
隻数
TEU
隻数
TEU
隻数
TEU
48
221,393
36
138,018
84
359,411
(出典:アルファライナーウェブサイト)
(c)沿革
陽明海運は、本社を基隆市に置く、台湾ではエバーグリーンマリンに
次ぐ規模を持つコンテナ運送会社である。1972 年 12 月 28 日、台湾政
府は公営の陽明海運を設立した。陽明海運は 1978 年からコンテナ船の
運航を開始し、国際的なコンテナ船企業として拡大していった。1995
年 3 月には中華民国立法院の決議により、公営企業の輪船招商局を吸収
合併した。1996 年に陽明海運は民営化され、現在に至っている。
現在、陽明海運は CKYH と呼ばれるアライアンスを COSCO(中国)、
川崎汽船、韓進海運(韓国)と組んでおり、コンテナ船事業を中心に事業
を展開している。コンテナ船事業の他には、グループ内に内陸輸送、港
湾業務、国際物流などの物流企業を多数保有し、台湾、ベルギー、オラ
- 62 -
ンダ、米国にコンテナターミナルを保有する。
また、基隆駅前の旧日本郵船ビルを改装して「陽明海洋文化藝術館」
を設け、海洋文化や芸術活動の展示・教育などを行う財団法人陽明海運
文化基金会を運営している。
(2)台湾の外航海運関連データ
①台湾籍船の船腹量
IHS Fairplay World Fleet Statistics によれば、2011 年現在、百総トン
以上の台湾籍船は 906 隻で、総トン数は 299 万総トンとなっている。台湾
籍船は 2000 年比で隻数が 33.2%増、総トン数で 29.9%減となっている。
2011 年の台湾船籍の隻数は対前年比 33.8%増と大幅に増加したが、総ト
ン数でみると同 4.2%増と微増に留まった。
<表Ⅱ-6>台湾籍船の隻数・船腹量の推移(2000-2011 年)
2000
2001
2002
2003
2004
2005
2006
2007
2008
2009
2010
2011
隻数
680
656
649
637
639
636
628
629
637
641
677
906
総トン数
5,086,185
4,617,926
4,289,028
3,477,144
3,556,310
3,226,277
2,785,711
2,749,607
2,671,941
2,635,992
2,869,019
2,990,088
(出典:IHS Fairplay “World Fleet Statistics”)
IHS Fairplay World Fleet Statistics によれば、千総トン以上の台湾商
船隊の隻数は 692 隻となっている。隻数ベースでは対 2000 年比で 33.3%
増となっている。総トン数でみても、2011 年は 2,441 万トンで同 87.5%
増となっている。2011 年の台湾商船隊の隻数は対前年比 4.5%増、総トン
数は 16.7%増となっている。
- 63 -
<表Ⅱ-7>台湾商船隊の隻数・船腹量の推移
(2000-2011 年、1,000GT 以上の船舶)
2000
2001
2002
2003
2004
2005
2006
2007
2008
2009
2010
2011
隻数
519
542
728
537
531
556
574
589
631
637
662
692
総トン数
13,020,717
14,783,200
15,126,627
15,306,608
15,558,189
16,059,609
16,496,490
17,500,520
19,457,626
19,062,576
20,917,259
24,408,306
(出典:IHS Fairplay “World Fleet Statistics”)
- 64 -
Ⅲ.インドの海運強化策
1.外航海運の現況と外航海運政策の動向
(1)外航海運の現況
インドは、3,287.263 平方 km2 の国土(世界第 7 位。日本の約 8.8 倍)、約
7,000km の海岸線(日本は約 29,751km)、約 12 億 1,000 万人(2011 年、世界
第 2 位)の人口を有する国で、日本商船隊(国際団体交渉協議会(IBF)協約適用
船 2,369 隻)には 3,782 名のインド人船員が乗り組んでいる(2012 年 11 月時
点)。
IHS Fairplay によれば、インド商船隊の船腹量は、560 隻 12,374 千総ト
ンであり(図Ⅲ-1 参照)、この 10 年間(2001-2011 年)は隻数ベースで 37.6%、
総トン数ベースで 74.7%増加している。海運省によれば、外航に従事するイ
ンド籍船は 372 隻 10,013 千総トンであり(図Ⅲ-2 参照)、この 10 年間
(2001-2011 年)は隻数ベースで 63.2%、総トン数ベースで 60.5%の伸びを示
している。
しかし、貨物の自国籍船積取比率は、1980 年代後半の 40%から 2008 年の
8.4%にまで下落している6。さらに、インド籍船の平均船齢はここ 10 年間
(2001-2011 年)で 17 年から 21 年へと高齢化してきている7。なお、インドの
海上貿易量は 1999 年以降およそ年平均 11%増えている。
Ministry of Shipping, Maritime Agenda: 2010-2020 (January 2011), pp. 303-307;
Deloitte, National Conclave on Shipping 2012, p. 7
7 Indian National Shipowners’ Association, Annual Review 2011-2012, p. 17; “INSA
lobbies Indian government for dollar bond”, Lloyd’s List (Thursday 20 December 2012)
6
- 65 -
<図Ⅲ-1>インド商船隊(1,000 総トン以上)の船腹量推移
14,000
564
千総トン
隻数(右軸)
560
12,000
12,374
440
10,000
8,000
386
600
500
400
7,476
6,496
300
6,000
200
4,000
100
2,000
0
0
* 2002 年の隻数は異常値と判断し除外した。
(IHS Fairplay, World Fleet Statistics より作成)
<図Ⅲ-2>インド籍船(外航船)の船腹量推移
14,000
372
千総トン
隻数(右軸)
12,000
350
10,013
10,000
256
300
250
8,000
6,000
400
193
200
5,504
150
5,402
4,000
100
2,000
50
2011
2010
2009
2008
2007
2006
2005
2004
2003
2002
2001
2000
1999
1998
1997
1996
1995
1994
1993
1992
1991
0
1990
0
(Ministry of Shipping, Indian shipping statistics 2011 より作成)
- 66 -
国 内 に は 、 13 の 中 央 政 府 管 轄 港 (Kolkata, Paradip, Visakhapatnam,
Chennai, Tuticorin, Cochin, New Mangalore, Mormugao, Mumbai,
Jawaharlal Nehru, Kandla, Port Blair, Ennore)と 187 の州政府管轄港が存
在し、その海上荷動き量は、輸入 432,277,723.68 トン、輸出 210,638,488.95
トンに上る(2011 年度。IHS Global Insight)。
(2)外航海運政策の動向
インドの外航海運政策は、海運省(Ministry of Shipping)が所管している。
同省は、2004 年にはトン数標準税制を導入し、2005 年には「国家海事発展
計画(National Maritime Development Programme)」を策定し、2011 年に
は 同 計 画 の 後 継 と し て 「 マ リ タ イ ム ・ ア ジ ェ ン ダ (Maritime Agenda:
2010-2020)」(10 ヵ年計画)を策定するなど、海運・海事分野の発展に向け積
極的である。インドにおいて海上貿易は、貿易量の約 9 割 5 分、貿易額の 8
割 5 分強を占めるため(図Ⅲ-3)、外航海運はインドのさらなる経済発展に寄
与する重要な輸送手段と考えられているからである。
国家海事発展計画は、海事産業への民間投資増大や国際競争力の向上を目
的とするもので、約 390 ものプロジェクトからなる。2011 年度までに見込
まれた民間投資分を含む累計投資額は、港湾関連に 5,580 億ルピー(8,537.4
億円(1 ルピー=1.53 円。2012 年 12 月 17 日時点、以下同じ。))、海運・造
船修繕・内水航路関連に 4,454 億ルピー(6,814.6 億円)である8。
マリタイム・アジェンダでは、2010 年 4 月から 2020 年 3 月までの累計投
資額について、港湾分野は 1 兆 945 億ルピー(1 兆 6,745.7 億円。うち民間投
資分は 7,288 億ルピー(1 兆 1,150.0 億円))9、海運分野は 1 兆 2 千億ルピー(1
兆 8,360 億円)と積算している10。また、マリタイム・アジェンダは、外航海
運に関する中心的政策課題として、インド商船隊の増加とインド籍船による
積取比率の増加とを挙げている。特に商船隊の増加に関しては、2010 年に
10,752 千総トンであった船腹量を 2020 年までに 43,000 千総トン(所有船
30,000 千総トン及び用船 13,000 千総トン)に増加させる数値目標を掲げてい
る。また、2020 年までにインド籍船登録トン数を 2 倍にすることを目的と
して、第二船籍制度の導入にも言及しているが11、インド船主協会は反対し
ているため、今後の議論が注目される。
“National Maritime Development Programme formulated Sethusamudram Ship
Channel Project Commissioned capacity addition in major ports during 2005”, released
at December 30, 2005, by Press Information Bureau, Ministry of Shipping, India
9 Ministry of Shipping, Maritime Agenda: 2010-2020 (January 2011), para.10.3.1
10 Ministry of Shipping, Maritime Agenda: 2010-2020 (January 2011), para.14.5
11 Ministry of Shipping, Maritime Agenda: 2010-2020 (January 2011), para.14.6.13
8
- 67 -
<図Ⅲ-3>インド貿易量に占める海上貿易比率の推移
100%
96.8%
95%
96.3%
95.0%
90%
87.8%
85.1%
85%
83.0%
80%
貿易量に占める海上貿易の比率
貿易額に占める海上貿易の比率
75%
(IHS Global Insight データより作成)
2.船舶登録制度
(1)概要
外航船についての船舶登録制度は、商船法(Merchant Shipping Act, 1985)
及び船舶登録規則(Registration of Ships Rules, 1960, 1994 and 1997)が規
定している。
(2)登録要件
登録可能な船舶は、推進機関を備えた海上航行船舶である。15 純トン未満
の船舶は登録を義務づけられていない(Merchant Shipping Act, §22)。
船舶登録制度を利用できる者は、①インド国民、又は②主たる営業所がイ
ンドに所在する法人又は団体である(§21)。1 隻の船舶について 10 の所有権
区分を設定しなければならず、その所有者・企業として登録することができ
るのは 2 名から 5 名である(§25)。なお、海運省海運総局によれば、1 隻の船
舶について複数の所有者・企業を求める理由として、
「船舶が単独所有される
ことによる恣意的な(ときに脱法的な)船舶の運航・管理を防ぐため。」と説明
している。
船籍港として Kolkata, Chennai, Cochin, Mormugao, Mumbai の 5 港が設
けられている。
- 68 -
(3)配乗要件
船長はインド人でなければならないが、その他の職員については外国人 2
名まで配乗可能である(DGS Order no.5 of 2008, para.7, II, and 8)。
ただし、後述する「船員訓練要件」(3(1)②参照)を基本単位(T)として、
「T
×1」の訓練義務を実施すれば、訓練船員以外の船員の 3 分の 1 まで外国人
船員を配乗できる。
「T×2」の場合には 3 分の 2 まで、
「T×3」の場合には 3
分の 2 以上の配乗がそれぞれ可能となる(表Ⅲ-1 参照)。
<表Ⅲ-1>配乗要件緩和のためのインド人船員訓練要件
訓練船員以外の船員に
必要な船員訓練義務
占める外国人比率
T×1
1/3 まで
T×2
1/3 から 2/3 まで
2/3 以上
(船長を除きすべて可)
(DG Shipping Circular No.1-A of 2011 (12.01.2012)より作成)
T×3
3.海運関連税制
(1)トン数標準税制
インドは 2004 年 4 月 1 日にトン数標準税制を導入した。2011 年度末のト
ン数標準税制利用企業は表Ⅲ-2 のとおりであり、ほぼすべての海運企業が
利用しているという。
<表Ⅲ-2>トン数標準税制利用企業一覧(2011 年度)
法人名
1 Tci Seaways
2 Tag Offshore Ltd.
3 Sanmar Shipping Ltd.
4 Tolani Shipping Co. Ltd.
5 Seamec Ltd.
6 India Steamship
7 Raj Shipping Agencies Ltd.
8 Sci Forbes Ltd.
9 Gati Coast to Coast
10 Greatship (India) Ltd.
11 Great Offshore Ltd.
- 69 -
12
13
14
15
16
17
18
19
20
21
22
23
24
25
26
27
28
29
30
31
32
33
34
35
36
37
38
39
40
41
42
43
44
45
46
47
48
49
West Asia Maritime Ltd.
Essar Shipping Ltd.
Caravel Logistics Pvt. Ltd.
Trans Asian Shipping Services (p) Ltd.
Good Earth Maritime Ltd.
KC Maritime India Ltd.
Shreyas Shipping & Logistics Ltd.
Mercator Lines Ltd.
Shipping Corporation of India Ltd.
Great Eastern Shipping Co. Ltd.
Arcadia Shipping Ltd.
Apeejay Shipping Ltd.
Ocean Sparkle Ltd.
Garware Offshore Services Ltd.
Glory Shipmanagement Pvt. Ltd.
Sealion Sparkle Maritime Services
Sea Sparkle Harbour Services
Sealion Sparkle Port & Terminal S. (Dahej) Ltd.
Dolphin Offshore Services Pvt. Ltd.
Jaisu Shipping Co. Ltd.
Samson Maritime Ltd.
Ocean Diving Centre Ltd.
Hind Offshore P. Ltd.
Aet Tankers India Pvt. Ltd.
Pratibha Shipping Co. Ltd.
Dredging Corp of India Ltd.
Albatross Marine Services
Van Oord India Pvt. Ltd.
Rajamahendri Shipping & Oil Field Servieces Ltd.
Kei - Rsos Maritime Ltd.
Meru Shipping Lines Pvt. Ltd.
Epsom Shipping (I) Pvt. Ltd.
T M Harbour Services Pvt. Ltd.
Five Stars Bulkcarriers (P) Ltd.
Seven Islands Shipping Ltd.
Castle Ships Pvt. Ltd.
M. Pallonji Shipping Pvt. Ltd.
PFS Shipping (India) Ltd.
- 70 -
50
51
52
53
54
55
56
57
58
59
Polestar Maritime Ltd.
Good Navigation Pvt. Ltd.
ITT Lines (PVT) Ltd.
Orion Offshoure Services Pvt. Ltd.
Chandra Maritime Pvt. Ltd.
Vamsee Shipping Carrier Pvt. Ltd.
Vamsee Overseas Marine Pvt. Ltd.
Svitzerwijs Muller Hazira
L&T Sapura Shipping Pvt. Ltd.
M. Pallonji Logistics Pvt. Ltd.
(FOSMA 提供資料より)
①の計算方式及び税率
・計算式:純トン数(NT)×下記みなし利益×船舶稼働日数×法人税 30%*
*ただし、総課税所得金額が 1,000 万ルピー(1,530 万円)を越え
る場合の実効税率は 32.455%(法人税×加算税(Surcharge : 5%)
×教育税(Education Cess : 2%)×中等・高等教育税(Secondary
and Higher Education Cess : 1%)
・みなし利益(1 日、100NT 当たり)
~1,000NT
1,001
10,000NT
10,001
25,000NT
25,001NT~
46 INR (70.38 円)/100NT
~ 35 INR (53.55 円) /100NT
~ 28 INR (42.84 円)/100NT
19 INR (29.07 円)/100NT
なお、2013 年 4 月 1 日からは下記みなし利益が適用される予定である。
海運省海運総局は、みなし利益の増額について政治的な理由で決められた
ものであると説明している。
~1,000NT
1,001
10,000NT
10,001
25,000NT
25,001NT~
70 INR (107.1 円)/100NT
~ 53 INR (81.09 円) /100NT
~ 42 INR (64.26 円)/100NT
29 INR (44.37 円)/100NT
* 換算レートは、いずれも 2012 年 12 月 17 日時点
- 71 -
1 INR=1.53 円。
②対象企業
トン数標準税制を利用することができる企業は、海運事業を主目的とす
る イ ン ド の 企 業 で あ り 、 そ の 実 効 的 経 営 地 (the place of effective
management)がインド国内であること、また、対象船舶を少なくとも 1
隻所有しているものである(Income Tax Act, §115VC)。
トン数標準税制を利用する企業には、一定のインド人船員を訓練しなけ
ればならない「船員訓練要件」及び 8 年以内の「新船購入等再投資義務」
が課せられる。
「船員訓練要件」(Income Tax Act, §115VU)は、配乗船員 10 名当り 1.5
人のインド人船員に対して乗船訓練を施すものである(Guidelines for
providing training by shipping companies opted for tonnage tax
scheme- dated 12.12.2007)。これまでの訓練実績(運航日数一日当たり必
要訓練船員数(船員 10 人当たり 1.5 人)×対象船舶運航日数)は図Ⅲ-4 のと
おりである。
<図Ⅲ-4>トン数標準税制利用企業による訓練実績の推移
訓練実績(人・日)
198,000
212,000
343,630
355,948
376,477
359,777*2
212,175
40,000*1
2004年度 2005年度 2006年度 2007年度 2008年度 2009年度 2010年度 2011年度
*1 2004 年度の訓練実績は 2005 年 1 月 1 日から 2005 年 3 月 31 日までの 3
ヵ月間の数値
2
* 2011 年度は見込みの数値
(Indian National Shipowners’ Association, Annual Review 2011-2012, p. 24
及びインド海運省海運総局提供資料より)
8 年以内の「新船購入等再投資義務」(Income Tax Act, §115V-115VV)は、
トン数標準税制の利用による内部留保を活用させるものであるが、2011
年度についてみるとトン数標準税制利用企業全体(59 社。2011 年度時点)
- 72 -
で 470.8 億ルピー(720.3 億円)がこの再投資に充てられている12。
③対象所得
トン数標準税制の対象となる所得は、対象船舶の運航から生じる所得、
船舶管理料収入及び用船料収入である(Income Tax Act, §115V-I)。
船舶の売却益等キャピタル・ゲインは対象所得に含まれておらず、イン
ド船主協会は改善を求めている。
④対象船舶
対象となる船舶は 15 純トン以上のインド籍船又は一定の外国籍船(所有
権移転付裸用船)であって、海運企業が運航する所有船又は用船(スロッ
ト・チャーター、スペース・チャーター、ジョイント・チャーターによる
用船を含む)である(Income Tax Act, §115VB)。ただし、用船は運航船腹
量 に 占 め る そ の 割 合 が 49% を 超 え て は な ら な い (Income Tax Act,
§115VV)。
⑤拘束期間
トン数標準税制を利用することを選択した企業は、10 年間は当該税制を
継続して利用することが想定されているが、いわゆるオプト・アウトは可
能である。すなわち、トン数標準税制の利用開始から 10 年以内に通常税
制へ移行する海運企業は、通常税制の適用を望む会計年度が始まる 1 年前
までにその旨の申請をすることで、トン数標準税制からオプト・アウトす
ることができる。
なお、いったんオプト・アウトした海運企業がトン数標準税制の適用を
再び望む際には、オプト・アウト時と同様に、その 1 年前に申請すること
でオプト・インできる。したがって、インドのトン数標準税制には、いわ
ゆる拘束期間は存在しないと言える。
(2)その他
船舶についての特別償却制度は存在しない。減価償却費は定率法により算
出される。外航船の償却率は 20%である(Income Tax Rule, New Appendix I)。
4.船員関連制度
(1)船員所得税軽減制度
特に船員のみを対象とした税制は存在しない。しかし、税法上、国外で年
間合計 183 日以上労働するインド人は、非居住者として、国外で得た所得に
ついて所得税が免除される制度があり(Income Tax Act, §6; The Direct Tax
12
Indian National Shipowners’ Association, Annual Review 2011-2012, p. 19
- 73 -
Code, 2010, Chap.II, §4)、インド人船員も当制度を利用できる。
実際には、インド籍船は度々国内に入港するため、それに乗組む船員には
上記 183 日要件のハードルは高い。これについてインド船主協会は、インド
人船員によるインド籍船離れを助長していると批判している。
(2)外国人船員承認制度
インドでは、承認取極を締結している 4 ヵ国(英国、イタリア、マレーシア、
イラン)が発給した資格証明書を受有する者を承認し(相互承認)、インド籍船
への配乗を認めている。海運省海運総局によれば、これまでの承認例は英国
のみである。
また 36 ヵ国(セントヴィンセント、ドミニカ、ギリシャ、グルジア、バヌ
アツ、ブルネイ、リベリア、マーシャル諸島、クウェート、バハマ、カター
ル、バルバドス、オランダ、モルディブ、日本、ベリーズ、ジャマイカ、マ
ン島、ルクセンブルク、キプロス、マルタ、ノルウェー、フランス、デンマ
ーク、アイルランド、バングラデシュ、ガーナ、ラトヴィア、モーリシャス、
アンティグア・バーブーダ、ベトナム、オーストラリア、シンガポール、香
港、パナマ、ベルギー)については、インドが発給した資格証明書を受有する
者を承認(一方的承認)する取極めを締結している(表Ⅲ-3 参照)。
<表Ⅲ-3>
外国人船員及び自国船員の承認取極締結国(2012 年末現在)
相手国名
相
互
承
認
一
方
的
承
認
インド国署名日
2002 年 5 月 22 日
1
イギリス
2
イラン
3
イタリア
4
マレーシア
1
セントヴィンセント
2005 年 7 月 15 日
2
ドミニカ共和国
2003 年 1 月 28 日
3
ギリシャ
2002 年 8 月 23 日
4
グルジア
2002 年 6 月 10 日
5
バヌアツ
2002 年 11 月 22 日
6
ブルネイ
2002 年 8 月 23 日
7
リベリア
2001 年 7 月 10 日
8
マーシャル諸島
2001 年 7 月 16 日
9
クウェート
2001 年 12 月 13 日
2002 年 7 月 10 日
2002 年 10 月 22 日
2001 年 9 月 3 日
2001 年 7 月 10 日
10 バハマ
- 74 -
2005 年 6 月 7 日
11 カタール
2001 年 7 月 10 日
12 バルバドス
2001 年 12 月 10 日
13 オランダ
2003 年 3 月 5 日
14 モルディブ
2002 年 11 月 20 日
15 日本
16 ベリーズ
2002 年 5 月 8 日
17 ジャマイカ
2002 年 5 月 1 日
2002 年 3 月 19 日
18 マン島
2002 年 7 月 3 日
19 ルクセンブルグ
2001 年 11 月 29 日
20 キプロス
21 マルタ共和国
2001 年 9 月 28 日
22 ノルウェー
2002 年 9 月 28 日
23 フランス
2002 年 6 月 22 日
2002 年 3 月 5 日
24 デンマーク
2004 年 1 月 29 日
25 アイルランド
26 バングラデシュ
2001 年 11 月 29 日
27 ガーナ
2001 年 11 月 23 日
28 ラトビア
2001 年 11 月 23 日
29 モーリシャス共和国
30 アンティグア・バーブーダ
2002 年 5 月 10 日
2002 年 1 月 9 日
31 ベトナム
2001 年 7 月 16 日
32 オーストラリア
2002 年 3 月 19 日
33 シンガポール
2001 年 7 月 11 日
34 香港
2001 年 9 月 3 日
35 パナマ
2001 年 7 月 9 日
2005 年 7 月 11 日
36 ベルギー
(インド海運省海運総局提供)
5.カボタージュ
150 総トン以上の船舶のうち、インド船舶又はインド国民及びインド法人に
よって用船された船舶以外の船舶は、沿海貿易に従事することができない
- 75 -
(Merchant Shipping Act, §407)。ただし、海運省海運総局による許可を得たも
のに関しては、この限りではない。
この海運総局による許可は、インド籍船が利用できない場合に与えられる。
その手続きは、運航予定の海運企業がインド船主協会の了解を得た上で、同局
に申請する。許可に要する日数は通常 3 日である。
この許可が 90 日以上にわたる場合には、インド人船員の配乗義務が課せられ
る。カボタージュ規制の例外の許可期間が 90 日から 181 日までの場合には、
職員及び部員の 3 分の 1 以上のインド人船員の配乗を、180 日を超える場合に
は、2 分の 1 以上のインド人船員の配乗をそれぞれ義務づけている(DG
Shipping Circular No. 1-B of 2011 (12.01.2011))。
ただし、この配乗義務が実施困難な場合には、トン数標準税制のもとで同税
制利用企業に求められるインド人船員訓練義務(船員 10 人に対して 1.5 人)を果
たすことで、配乗義務の履行に代えることができる(Shipping Development
Circular No.22 of 2011)。
6.航海命令
海運省海運総局は、インド籍船及び用船に対し、公共の利益又はインド海運
の利益の観点から必要と認める場合、その目的港又は目的地、航路、乗客又は
積荷の等級、荷役又は乗客乗降の優先順位について命令することができる
(Merchant Shipping Act, §411)。
インドの航海命令の発動例は少なくない。最近の例としては、2011 年初頭の
リビア内戦に際して、リビアに取り残されたインド国民を帰国させるために、
インド海運公社(SCI)に対し発動されている。海運省海運総局によれば、当局は
どの海運企業に対しても命令することが可能だが、民間会社が航海命令を受け
ると荷主との契約に支障をきたすことを考慮し、通常は国営の海運企業に対し
て発動するという。
- 76 -
[データ編]
1.インド経済の概況
(1)インドの概況(JETRO・海外ビジネス情報等より)
面積:328 万 7,263 平方キロメートル
人口:12 億 1,019 万人(2011 年国勢調査、出所:外務省)
首都:ニューデリー(New Delhi) 人口 1,675 万人(2011 年末)
言語:ヒンディー語(他に憲法で公認されている州の言語が 21)
宗教:ヒンドゥー教、イスラム教、キリスト教、シク教、仏教、ジャイナ教
(2)インド経済の概況(2011 年度)
(JETRO・海外ビジネス情報、IHS Global Insight より)
名目 GDP 総額(現地通貨建):82,326,520 ルピー(単位:100 万)
名目 GDP 総額(米ドル建):1,717,947 万ドル(単位:100 万)
1 人当たり GDP:1,514 ドル
実質 GDP 成長率:6.5%
貿易収支:▲189,759 ドル(単位:100 万)
経常収支:▲78,498 ドル(単位:100 万)
外貨準備高(年末):268,721 ドル(単位:100 万)
対外債務残高(年末):345,819 ドル(単位:100 万)
為替レート(期中平均):1 ドル=47.9215 ルピー
海上荷動き量:輸入 432,277,723.68 トン/輸出 210,638,488.95 トン
海上コンテナ荷動き量:輸入 2,219,976.08TEU/輸出 2,095,917.35TEU
インドは独立以来、輸入代替工業化政策を進めてきたが、1991 年の外貨危
機を契機として経済自由化路線に転換し、規制緩和、外貨積極活用等を柱と
した経済改革政策を断行した。その結果、経済危機を克服し、さらに成長へ
と転じた。
2005-2007 年度には 3 年連続で 9%台の実質 GDP 成長率を達成し、
2008 年度は世界的な景気後退の中にあったが 6.7%を維持、2010 年度は 8.4%
まで回復した(外務省ホームページ「各国・地域情勢」より)。
2011 年度のインド経済は,世界的な景気減速や,インフレ抑制のための度
重なる利上げや急激なルピー安によるコスト増により,企業の設備投資や消
費者の購買意欲が低下し,実質 GDP 成長率は 6.5%と 2002 年度以来 9 年ぶ
りの低成長となった(ジェトロ『世界貿易投資報告(2012 年版)』より)(図Ⅲ-
5 参照)。
- 77 -
<図Ⅲ-5>
インドの実質 GDP 成長率(基準年:2004-2005、単位:%)
12.0
10.0
9.5
8.0
9.6
9.3
8.4
6.7
6.0
8.4
6.5
4.0
2.0
0.0
2005-06 2006-07 2007-08 2008-09 2009-10 2010-11 2011-12
(ジェトロ「国・地域別情報(インド:基礎的経済指標)」より)
(3)行政機構
インドは連邦共和制国家(Sovereign Socialist Secular Democratic
Republic)であり、28 の州(State)と 7 つの連邦直轄領(Union territory)から
構成される。州は直接選挙で選ばれた州主席大臣(Chief Minister)により統治
され、連邦直轄領は中央政府の直接支配下に置かれ、大統領により任命され
る行政官を通じて統治される。2013 年 1 月末現在、インドには 51 の省が存
在している(表Ⅲ-5 参照)。大臣には、閣議に参加することができる大臣
(Cabinet Minister)と閣議には参加できないが上位に大臣のいない閣外専管
大臣(Minister of State(Independent Charge))及び閣外大臣(Minister of
State)がいる。
- 78 -
<表Ⅲ-4>インド行政省一覧(2013 年 1 月末現在)
1
農業省
Ministry of Agriculture
26
零細・中小企業省
Ministry of Micro, Small and
Medium Enterprise
2
化学・肥料省
Ministry of Chemicals and
Fertilizers
27
鉱業省
Ministry of Mines
3
民間航空省
Ministry of Civil Aviation
28
少数派問題省
Ministry of Minority Affairs
4
石炭省
Ministry of Coal
29
5
商工業省
Ministry of New and
Renewable Energy
Ministry of Overseas Indian
Affairs
6
通信・情報技術省
7
消費者問題・
食糧・公共配給省
Ministry of Commerce and
Industry
Ministry of Communications
and Information Technology
Ministry of Consumer Affairs,
Food and Public Distribution
新エネルギー・
再生エネルギー省
在外インド人
問題省
パンチャーヤティ
・ラージ省
8
法人業務省
9
30
31
Ministry of Panchayati Raj
Ministry of Parliamentary
Affairs
Ministry of Personnel, Public
Grievances and Pensions
Ministry of Petroleum and
Natural Gas
32
議会問題省
Ministry of Corporate Affairs
33
人事・苦情処理・
年金省
文化省
Ministry of Culture
34
石油・天然ガス省
10
国防省
Ministry of Defense
35
計画省
Ministry of Planning
11
北東地域開発省
36
電力省
Ministry of Power
12
上下水省
37
鉄道省
Ministry of Railways
13
地球科学省
Ministry of Earth Sciences
38
陸上運輸・
幹線道路省
14
環境・森林省
Ministry of Environment and
Forests
39
農村開発省
15
外務省
Ministry of External Affairs
40
科学技術省
16
財務省
Ministry of Finance
41
海運省
Ministry of Shipping
42
社会主義・エンパ
ワーメント省
43
統計・事業実施省
Ministry of Social Justice and
Empowerment
Ministry of Statistics and
Programme Implementation
44
鉄鋼省
Ministry of Steel
45
繊維省
Ministry of Textiles
46
観光省
Ministry of Tourism
47
部族問題省
Ministry of Tribal Affairs
48
都市開発省
Ministry of Urban
Development
49
水資源省
17
食品加工業省
18
保健・家族福祉省
13
重工業・公企業省
20
内務省
21
住宅・都市貧困省
22
人的資源開発省
23
情報・放送省
24
労働・雇用省
25
司法・公正省
Ministry of Development of
North Eastern Region
Ministry of Drinking Water
Supply and Sanitation
Ministry of Food Processing
Industries
Ministry of Health and Family
Welfare
Ministry of Heavy Industries
and Public Enterprises
Ministry of Home Affairs
Ministry of Housing and
Urban Poverty Alleviation
Ministry of Human Resource
Development
Ministry of Information and
Broadcasting
Ministry of Labour and
Employment
Ministry of Law and Justice
50
女性・児童開発省
51
青年問題・
スポーツ省
Ministry of Road
Transportation and
Highways
Ministry of Rural
Development
Ministry of Science and
Technology
Ministry of Water Resources
Ministry of Women and Child
Development
Ministry of Youth Affairs and
Sports
(出典:総務省大臣官房企画課『インドの行政』(平成 21 年 12 月)表 3-1(31 頁)
を Government of India Web Directory (http://goidirectory.gov.in/index.php)に
基づき一部加筆修正。)
- 79 -
海運分野を所管するのは、海運省(Ministry of Shipping)である。海運省に
は大臣と閣外大臣が置かれ、次官(Secretary)の下に海運担当と港湾担当 2 名
の局長(Joint Secretary)、港湾担当の開発顧問(Development Advisor)、用船
首席監督官(Chief Controller of Chartering)、次官補兼財務顧問が置かれて
いる。海運省には「Directorate General of Shipping, Mumbai」、
「Andaman
& Lakshadweep Harbour Works, Port Bihar」、「Directorate General of
Lighthouses & Lightships, New Delhi」の 3 つの外局があり、そのうち商船
法の執行や各種政策の実施にあたるのがムンバイの海運総局(Directorate
General of Shipping, Mumbai)である。
2.インド外航海運の概況
(1)海運会社
イ ン ド の 主 な 海 運 会 社 と し て は 、 イ ン ド 海 運 公 社 (The Shipping
Corporation of India, Ltd.)、Great Eastern Shipping Company Ltd.(GE
Shipping)、Mercator Lines Ltd.(MLL)、などがある。
2011 年度のインド船主協会加盟海運企業による外貨収入は、1,066 億ルピ
ー(1,631 億円)、トン数標準税額は 4.45 億ルピー(6.8 億円)である(表Ⅲ-5)。
<表Ⅲ-5>インド外航海運による外貨収入額及びトン数標準税額
(単位:億ルピー)
2011 年度
2010 年度
2009 年度
外貨収入額
1,066
1,480
1,460
トン数標準税額
4.45
4.45
(出典:Indian National Shipowners’ Association, Annual Review 2011-2012)
①インド海運公社(The Shipping Corporation of India, Ltd.)
(a)概要
本社 ムンバイ
資本金 46 億 5,800 万ルピー(2012 年 3 月末現在。71.2 億円)
売上高 446 億 7,180 万ルピー(2012 年 3 月末現在。683.4 億円)
従業員数 2,985 名(2012 年 7 月末現在)
- 80 -
(b)運航船舶(外航)
<表Ⅲ-6>インド海運公社所有隻数及び船腹量(2013 年 1 月 1 日現在)
船種
隻数
総トン数
載貨重量トン数
原油タンカー
19
1,282,934
2,353,718
プロダクトタンカー
15
558,772
952,728
ケミカルタンカー
1
21,035
33,058
ガスタンカー
2
35,556
35,202
VLCC タンカー
4
647,232
1,274,175
バルクキャリア
16
570,141
993,496.30
コンテナ船
7
186,899
255,845
オフショア
17
29,375
34,234.39
貨客船
1
9,700
5,140
合計
82
3,341,644
5,937,596.43
(出典:インド海運公社ホームページ)
<図Ⅲ-6>インド海運公社船隊船腹量の推移
4,500
94
4,000
100
千総トン
隻数(右軸)
82
3,500
3,000
88
3,921
65
2,724
80
70
3,342
2,500
90
60
50
2,000
40
1,500
30
1,000
20
500
10
0
0
2000 2001 2002 2003 2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012
(Ministry of Shipping, Indian shipping statistics 2011 (Table 4.1, p. 119)及び
インド海運公社ホームページより)
(c)沿革
インド海運公社は、中央公共企業(Central Public Sector Enterprise)
の一つであり、1961 年の Eastern Shipping Corporation と Western
- 81 -
Shipping Corporation の合併により設立された。当初は、旧・海運省
(Ministry of Shipping)の管轄下におかれた非公開有限会社であったが、
1992 年には政府の保有株式売却政策に基づき公開企業に変更、1997 年
に導入された公共企業の民営化及び保護育成に関する枠組みのもと、
2008 年 8 月に中央公共企業の一地位としての Navratna を付与されてい
る。2010 年 11 月時点の政府資本比率は 80.12%であったが、追加株式
公開を継続して行ったことで、2011 年 3 月末時点での政府資本比率
63.75%となっている。
①Great Eastern Shipping Company Ltd.(GE Shipping)
(a)概要
本社 ムンバイ
資本金 15 億 2,290 万ルピー(2012 年 3 月末現在。23.3 億円)
売上高 201 億 6,230 万ルピー(2012 年 3 月末現在。308.4 億円)
従業員数 655 名(2012 年 3 月末現在)
(b)運航船舶
<表Ⅲ-7>GE Shipping 所有隻数及び船腹量(2012 年 3 月末現在)
船種
隻数
載貨重量トン数
原油タンカー
9
1,142,253
プロダクトタンカー
14
715,726
ガスタンカー
1
17,577
バルクキャリア
10
740,371
合計
34
2,615,927
(GE shipping, Annual Report 2011-2012 より作成)
(c)沿革
1948 年に創業した GE Shipping は、繊維業と砂糖取引で財を成した
Sheth 一族とその資金協力者であった Bhiwandiwallas 一族の支援を受
ける民間最大の海運企業である。その事業は、原油等原材料の運搬を主
とする海運部門と、オフショア部門からなり、海運部門収益の約 75%は
タンカー事業によってあげられている。
(2)インドの外航海運関連データ
①インド籍船の船腹量
前出の図Ⅲ-2 参照。
- 82 -
②インドの船員数
UNCTAD によれば、2010 年に世界に供給された職員数は 624,062 名で
あり、インドは第三位(49,497 名)である(表Ⅲ-8)。インド海運省の年報
(Ministry of Shipping, Annual Report 2011-2012)では、インド国内には
137 の船員教育機関があり、年間 15,042 名(部員 6,196 名、職員 8,846 名)
が訓練・受講可能だという。
<表Ⅲ-8>2010 年中に世界に供給された職員数(上位 5 ヵ国)
供給国
供給職員数
市場占有率(%)
フィリピン
57,688
9.2
中国
51,511
8.3
インド
49,497
7.5
トルコ
36,734
5.9
ウクライナ
27,172
4.4
世界全体
624,062
100
(出典:UNCTAD, Review of Maritime Transport 2011(BIMCO,
Manpower Update のデータを UNCTAD 事務局が集計したもの))
- 83 -
Ⅳ.フランスの海運強化策
1.外航海運の現況と外航海運政策の動向
(1)国際貿易の現況
IHS Global Insight によれば、2011 年のフランスの輸入貿易総額は名目で
約 7 億 300 万ドル、輸出は約 5 億 8,900 万ドル、日本の輸入は約 8 億 2300
万ドル、輸出は約 8 億 7,900 万ドルとなっており、輸入、輸出ともに日本に
ついて世界第 5 位である。そのうち、海上貿易額のみをとると、フランスの
輸入は約 1 億 9,000 万ドル、輸出は約 1 億 6,200 万ドル、日本の輸入は約 7
億 5200 万ドル、輸出は約 7 億 5,900 万ドルとなっており、貿易総額に占め
る海上貿易総額の割合で比べると、日本が約 89%であるのに対してフランス
は約 27%となっている。海上荷動量で見ると、フランスは、約 1 億 5300 万
トンで日本の約 7 分の 1 程度にすぎず、コンテナ荷動き量で見ても、約 300
万 TEU で日本の約 4 分の 1 程度となっており、日本に比べれば海上輸送の
重要性はそれほど大きくはない。
(2)外航海運の現況
フランスにおける海運業の 2010 年の付加価値は約 19 億ユーロ(Ministère
de l’Écologie, du Développement durable et de l’Énergie, ‘Références, Les
comptes des transports en 2011’)で、GDP に占める割合は約 1%である。
フランス商船隊の規模を見ると、貨物船の隻数は増えていないが、それ以
外の船舶の隻数は増えている(図Ⅳ-1 参照)。また、船腹量はいずれも増加
している(図Ⅳ-2 参照)。貨物船については、一隻当たりの平均総トン数(GT)
は 2000 年代初めには 2 万 GT 台であったが、2010 年には 3 万 GT を越え、
2011 年には 3 万 7,000GT 台となっている。隻数の増加がないことを考える
と、船舶の代替の際に大型化が進んでいると考えられる。
- 84 -
<図Ⅳ-1>フランス商船隊の隻数の推移
船舶
貨物船
2000
270
199
2001
283
212
2002
277
205
2003
265
193
2004
286
210
2005
302
195
2006
321
208
2007
370
240
2008
382
221
2009
421
235
1,000GT以上
2010
2011
467
486
251
259
(出典:World Fleet Statistics より作成)
<図Ⅳ-2>フランス商船隊の船腹量の推移
船舶
貨物船
GT
GT
DWT
2000
4,463,824
4,240,031
5,408,125
2001
4,976,331
4,737,792
5,944,513
2002
5,113,257
4,840,945
5,810,340
2003
4,504,624
4,281,012
4,802,379
2004
5,714,850
5,465,638
6,510,722
2005
4,776,037
4,424,994
4,634,979
2006
5,871,287
5,509,419
5,671,721
2007
6,413,943
5,960,394
6,234,117
2008
6,208,337
5,611,885
5,995,070
2009
7,001,318
6,308,085
6,728,128
1,000GT以上
2010
2011
8,685,204 10,442,370
7,932,704 9,647,417
8,376,048 10,158,519
(出典:World Fleet Statistics より作成)
フランス籍船で航海に従事した船員の実数は、2010 年で 13,515 人で表Ⅳ
-1 のとおり、漸増傾向が見られる。
- 85 -
<表Ⅳ-1>フランス籍船で航海に従事した船員の実数
2006年
2007年
2008年
2009年
2010年
従来型 国際船舶
9,751
3,174
9,742
3,312
9,826
3,396
9,613
3,586
9,976
3,539
合計
12,925
13,054
13,222
13,199
13,515
*2006 年の国際船舶にはケルゲレン籍船が含まれる。
(出典:Ministère de l’Écologie, du Développement durable et de l’Énergie,
‘Repères – Chiffres clés du transport’ 2009, 2011, 2012.
(3)外航海運政策の動向
フランスの海運強化を論じた報告書としては、上院議員の Henri de
Richemont 氏が 2003 年にまとめた、いわゆる『リシュモン報告書』がある
が、近年は将来の海運強化策のグランドデザインとなるような戦略方針は出
されていないとのことである。
フランスにおいてここ 10 年間で採用された海運強化策としては、2003 年
に導入されたトン数標準税制、第二船籍制度であるケルゲレン船舶登録制度
に代わって 2005 年に導入された国際船舶登録制度(RIF)が挙げられる。
これらの海運強化策が導入された背景には、オランダ、英国、ドイツなど他
の欧州諸国がすでにトン数標準税制を導入していたこと、ノルウェーやデン
マークなどの国際船舶登録制度が一定の成功をおさめていたことなどがある。
2.船舶登録制度
フランスには、従来型の船舶登録制度、一時登録制度(裸用船登録制度を含
む。)及び国際船舶登録制度(RIF;Registre International Français)がある。
一時登録制度(裸用船登録制度)は、荷主の要望などに応じて船籍を変更す
る必要に応えて、1975 年に導入された。
国際船舶登録制度は、2005 年に、1987 年に導入されたケルゲレン13船籍制
度に代わるものとして導入された。この導入の理由としては、ケルゲレン登録
船舶は、船員に係る経費の観点から十分な国際競争力を発揮しなかったこと、
EU の制度と調和を図る必要があったことなどが挙げられる。
ケルゲレン登録船舶については 2006 年からその登録先を順次国際船舶登録
ケルゲレン諸島は、南インド洋にあるフランス領南方・南極地域の島々。南緯 48 度 35
分から 49 度 54 分、東経 68 度 43 分から 73 度 35 分に位置し、南極大陸から約 2,000 ㎞
離れたところにある。
13
- 86 -
制度に移行させ、その結果、現在では、フランスの国旗を掲げる外航商船でケ
ルゲレンに置籍しているものはない。
(1)従来型の船舶登録制度
①登録主体
(a)所有者が自然人の場合
(ⅰ)所有者が一人のとき
 所有者は EU/EEA 国籍を有していなければならない。ただし、
所有者のフランス居住期間が 6 ヵ月以下の場合、フランス国内
の住所を選定しなければならない。
(ⅱ)所有者が複数人のとき
次の 2 つの要件を満たさなければならない。
 EU/EEA 国籍を有する者が持ち分の半分以上を有していなけ
ればならない。
 指名された EU/EEA 国籍の所有者 1 名のフランス居住期間が 6
ヵ月以下の場合、フランス国内の住所を選定しなければならな
い。
(b)所有者が法人の場合
次の 2 つの要件を満たさなければならない。
 EU/EEA 域内に本社又は主たる営業所を有している法人が持ち分
の半分以上を有していなければならない。
 フランスに所在する本社若しくは主たる営業所、又は、フランスに
本社若しくは主たる営業所がないときにはフランスに住所を有す
る所有法人の常設事務所が、船舶の管理及び検査を行っていなけれ
ばならない。
②登録可能船舶
次の 2 つの要件を満たさなければならない。
 EU 域内で建造されたか、又は EU 域内で課され得る輸入税及び手
数料を納付済みである船舶
 総トン数 10 トン以上の船舶
③その他
(a) 海上労働法第 3 条及び税関法第 221 条において船長及びその業務を
代行する船員についてはフランス人でなければならない旨規定されてい
たが、EU 法に適合しないとして 2008 年にこれら規定の削除が決定さ
れ、これら規定は 2010 年 12 月 1 日に失効した。現在は、運送法第
L5522-1 条において、船長及びその業務を代行する船員については
EU/EEA 加盟国若しくはスイス又は特別の二国間条約を締結している
- 87 -
国の国籍を有していなければならないとされている。外国人船員の割合
については、労使協議中で具体的には定まっていない。このことは、外
国人船員が実態上許容されていないことを意味する。
(b)登録料は無料。
(2)一時的登録制度(裸用船登録制度を含む。)(関税法典第 219 条)
一時的登録制度は、そもそも外国に登記、登録され、外国の旗を掲げてい
た船舶を、買取条件付リース、裸用船契約によって船主が実質的に当該船舶
を支配するようになった場合、一定の条件の下で、フランスの旗を掲げる権
利を特に認める登録制度である。
①登録主体(裸用船登録の場合は、従来型の船舶登録制度((1)①)に同じ。)
買取条件を行使した場合の所有者が以下の要件を満たすとき
(a)所有者が自然人の場合
(ⅰ)所有者が一人のとき
 所有者は EU/EEA 国籍を有していなければならない。ただし、
所有者のフランスに居住する期間が 6 ヵ月以下の場合、フラン
ス国内の住所を選定しなければならない。
(ⅱ)所有者が複数人のとき
次の 2 つの要件を満たさなければならない。
 EU/EEA 国籍を有する者が持ち分の 4 分の 1 以上を有していな
ければならない。
 指名された EU/EEA 国籍の所有者 1 名のフランス居住期間が 6
ヵ月以下の場合、フランス国内の住所を選定しなければならな
い。
(b)所有者が法人の場合
次の 2 つの要件を満たさなければならない。
 EU/EEA 域内に本社又は主たる営業所を有している法人が持ち分
の 4 分の 1 以上を有していなければならない。
 フランスに所在する本社若しくは主たる営業所、又は、フランスに
本社若しくは主たる営業所がないときにはフランスに住所を有す
る所有法人の常設事務所が、船舶の管理及び検査を行っていなけれ
ばならない。
②登録可能船舶
従来型の船舶登録制度と同じ。
ただし、裸用船登録制度の場合は以下の条件を満たす必要がある。
 登録主体が裸用船していること
- 88 -

登録主体が検査、配乗、利用等を行っていること
③その他
裸用船登録制度の場合は、裸用船された船舶のそもそもの登録国とフラ
ンスの二重登録となるが、そもそもの登録国において、法律上、その国の
旗を掲げる権利を放棄することが認められていなければならない。
(3)国際船舶登録制度(RIF)
①登録主体
従来の船舶登録制度と同じ((1)①参照。)。なお、国際船舶登録制度に一
時的登録する場合は、一時的登録制度(裸用船登録制度を含む。)と同じ((2)
①参照。)。
②登録可能船舶
(a)遠洋航海14及び国際沿海航海15に用いられる船舶並びに 24m以上のプ
レジャー用船舶
(b)次の船舶は除かれる。
 国内定期旅客船又は指定された国際定期旅客船(具体的には、EU
加盟国とアルジェリア、モロッコ、若しくはチュニジアの間の航路
を運航する国際定期旅客船)
 専ら国内輸送に従事する船舶
 港湾の支援船(タグ船、浚渫船、水先船など)
③その他
(a)配乗要件
船長及びその代行者は EU/EEA 加盟国の国籍を有していなければな
らず、また、乗組員の 25%以上は EU/EEA 又はスイス国籍でなければ
ならない。
(b)最低賃金
RIF 創設法(loi, no 2005-412 du 3 mai 2005)に基づく決定において、
月 208 時間の労働時間に対して 620.05 ドルの最低賃金が定められてい
る(1 ドル 85 円で換算すると 1 時間当たり約 253.4 円)。
(4)フランス登録船舶の隻数、船腹量の推移(下表は一時的登録制度(裸用
14
次の線と陸地に囲まれた海域の外を航行することをいう。
北緯 72 度の線、北緯 72 度から 10 度までの西経 12 度 40 分の線、経度 0 度から東経
46 度 20 分までの北緯 30 度の線(章末地図Ⅳ-1 参照)
15 上記(脚注 1)の海域の内側で、フランスの港と外国の港の間又は外国の港と外国の港
の間を航行することをいう。
- 89 -
船登録制度を含む。)に登録された船舶を含むものである。)
フランス登録船舶の隻数を見ると大きな増加は見られないが、船腹量につ
いては大きく増加している。このことから、フランス商船隊と同様に、フラ
ンス登録船舶についても、船舶の代替の際に大型化が進んでいると考えられ
る。
<表Ⅳ-2>
2000
2001
2002
2003
2004
2005
2006
2007
2008
2009
2010
2011
従来型
隻数
GT
700
1,502,525
699
1,406,815
707
1,541,221
711
1,459,752
700
1,375,270
713
1,293,349
713
1,279,321
746
1,168,556
775
1,286,736
785
1,255,322
639
1,218,777
658
1,524,287
100GT以上の船舶
ケルゲレン
隻数
GT
102
3,178,664
108
3,087,799
102
3,032,279
116
3,285,721
126
3,524,865
145
4,211,713
105
1,690,080
国際船舶
隻数
GT
55
164
168
165
160
161
3,103,052
5,089,300
4,944,445
5,584,176
5,449,155
5,527,622
隻数
198
197
199
200
203
197
197
190
190
201
175
184
従来型
GT
1,269,792
1,166,438
1,297,646
1,222,981
1,158,150
1,070,456
1,049,830
924,970
1,040,124
1,000,397
1,003,552
1,305,473
DWT
1,343,523
1,030,932
1,117,196
998,190
734,607
608,849
487,865
286,879
565,145
331,363
331,068
790,902
100GT以上の貨物船
ケルゲレン
隻数
GT
DWT
82
3,129,372
5,363,473
82
3,008,618
5,028,004
72
2,918,320
4,697,580
77
3,160,459
5,128,161
79
3,381,741
5,312,766
87
4,033,497
6,361,620
57
1,527,985
2,193,418
隻数
37
96
96
95
90
89
国際船舶
GT
3,071,265
4,881,603
4,729,432
5,370,616
5,219,425
5,277,378
DWT
4,603,827
7,255,491
6,976,888
8,167,493
7,713,893
7,790,659
(出典:World Fleet Statistics より作成)
<図Ⅳ-3>フランスに登録された貨物船(100GT 以上)
(一時的登録制度
(裸用船登録制度を含む。)に登録された船舶を含む。)の隻数の推移
(出典:World Fleet Statistics より作成)
- 90 -
<図Ⅳ-4>フランスに登録された貨物船(100GT 以上)
(一時的登録制度
(裸用船登録制度を含む。)に登録された船舶を含む。)の船腹量の推移
(出典:World Fleet Statistics より作成)
3.海運関連税制
(1)トン数標準税制の概要
フランス籍船・EU 籍船の増加によってフランスの海運産業の国際競争力
を強化することを目的に、2002 年 12 月 30 日にトン数標準税制関連法が制
定され、実際の適用は一部の例を除き 2004 年 1 月 1 日から行われている。
①税の計算方式及び税率
トン数標準税制における税額計算方式は、
「船舶の純トン数×みなし利益
×船舶の所有又は用船日数」という計算式で求められる。
<表Ⅳ-3>みなし利益(1 日、100NT あたり)
純トン数
ユーロ
1,000 トン未満
0.93
1,000 トン以上 10,000 トン未満
0.71
10,000 トン以上 25,000 トン未満
0.47
25,000 トン以上
0.24
②適格会社
(a) 船員を配乗した船舶の利用から売上の 75%以上を得ていること
(b) EU 加盟国の旗を掲げる船舶の割合(純トン数で計算)を、2004
- 91 -
年 1 月 17 日又はトン数標準税制適用開始日から維持又は増加させるこ
と。
③対象所得
船舶の利用に直接関係する業務から得る利益。船舶の利用に直接関係す
る業務とは、人及び物の輸送に必要な業務をいい、次のような活動も含ま
れる。
船舶の曳航/救難活動/荷揚げ・荷卸し作業/コンテナの賃貸/船内の
スペースの賃貸
④対象船舶
(a)~(e)のすべての要件を満たす船舶
(a)総トン数 50 トン以上の船舶であること。
(b)次のいずれかの船舶に該当すること。
(ⅰ)適格会社が、単独所有、共同所有する船舶。ただし、関連会社16で
ない会社及びトン数標準税制を選択しなかった関連会社に裸用船され
ている船舶は除く。
(ⅱ)適格会社に裸用船又は定期用船されている船舶。
(c)次のいずれかの船舶に該当すること。
(ⅰ)人又は物の輸送に従事する船舶
(ⅱ)外洋において曳航に従事する船舶
(ⅲ)救難又は海上支援活動に従事する船舶
(ⅳ)海上で必要とされる(ⅰ)~(ⅲ)以外の活動に関連する輸送活動
(d)戦略的かつ商業的管理がフランスで行われている船舶
(e)トン数標準税制適用期間においてトン数標準税制を選択しなかった
関連会社のために取得された船舶に該当しない船舶
⑤拘束期間
トン数標準税制を選択した場合、10 年間はトン数標準税制が適用される
(2)地域経済税(Contribution Economique Territoriale)(地方税)
2010 年 1 月 1 日から職業税に代わり、地域経済税が課されることになっ
た。地域経済税は、企業不動産税(CFE:la Contribution Foncière des
Entreprises)と企業付加価値税(CVAE: la Contribution sur la Valeur
Ajoutée des Entreprises)からなる。CFE は、企業の保有する土地、建物等
16
ある会社と他方の会社の間において、①一方が他方の会社の株式の半分以上を保有する
か、若しくは議決権を行使できる場合、又は②第三者を通じで①の条件を満たす場合、両
社は関連会社とされる。
- 92 -
の評価額に応じてコミューンの定める税率で税が課されるものであり、
CVAE は、企業の売上高に対して 1.5%の税が課されるものである(ただし、
中小企業に対する減額措置がある。)。このうち CVAE については、海運会社
の場合、内航船(国内の港間を輸送する船舶)による売上のみが対象となる。
(3)付加価値税(国税(VAT(仏語:TVA)))
フランスでは、基本的に、国内で行われるすべての製造及び商業上の取引
に対して付加価値税が課される。また、欧州連合加盟国以外から輸入される
商品は、フランスの領土内に到着した段階で課税される。
ただし、欧州連合の欧州理事会指令 2006 年第 112 号(2006/112/EC)第
148 条第(a)項、第(c)項及び第(d)項を受けて、所得税法第 262 条第 2 項第 2
号及び第 3 号により、フランス国内で行われる、次の①及び②に関する取引
については付加価値税が課されない。くわえて、所得税法第 291 条第 2 項第
5 号により、次の①及び②の対象となる船舶及び物品の輸入についても付加
価値税が課されない。
①次の船舶の売買、修理、改造、維持管理、用船及び賃貸
(a)公海を航行する商船
(b)公海において工業活動に従事する船舶
(c)漁船、救難船及び支援船
②次の物品の売買、賃貸、修理及び維持管理
(a)①の船舶に取り付けられる物品
(b)海洋開発に用いられる物品
(c)海洋漁業のための漁具及び漁網
4.船員関連制度
(1)所得控除制度
連続する 12 ヵ月の間に 183 日以上、フランスの国際船舶登録制度(RIF)
に登録された船舶に乗船し船舶の航行に従事した者は、それによって得た給
与については所得税を免除される。
現行の所得税免除制度は、2005 年の RIF 導入の際にその一部として導入
されたもので、新たな船員の確保と船上でのキャリア継続の奨励を目的とす
る。
なお、当局の説明によれば、フランスでは所得税法上、海外に年間 183 日
以上滞在したことを証明した場合、そこで得た所得についてはそもそも課税
されないことになっているが、船員が海上労働で得た所得については解釈が
分かれ、課税、非課税の扱いに不統一が見られたこともあり、RIF 導入時に
船員の所得について非課税となる場合の要件の明確化を図った面もあるとの
ことである。
- 93 -
①対象者
次のすべての要件を満たす者。
(a)船員として給与を受けている。
(b)連続する 12 ヵ月の間に 183 日以上 RIF 登録船舶に乗船し船舶の航行
に従事した。
②徴収手続
課税が免除される所得については申告の必要がない。フランスには、給
与の源泉徴収制度がないため、すべての納税義務者は暦年の所得に基づい
た申告を行うのが原則である。
(2)社会保障費軽減制度(Code des Transports, Article L5553-11)
社会保障費を負担する義務を有する船員を雇用している会社は、被雇用者
がフランスの国際船舶登録制度(RIF)に登録された船舶に乗船し船舶の航
行に従事した場合には、雇用者負担分(社会保障費の約 2/3 に相当)の社会
保障費を納める必要がない。この分の社会保障費は政府が補助金として負担
している(年間約 7,500 万ユーロ(1 ユーロ=110 円で計算すると約 82 億 5,000
万円))。この社会保障費の免除制度は、2005 年の RIF 導入の際にその一部
として導入されたもので、新たな船員の確保と船上でのキャリア継続の奨励
を目的とする。
①対象者
以下のすべての要件を満たす船員を雇用する会社。
(a)フランスを旗国とする商船であって、主として国際的な競争下にある
海上輸送活動に用いられているものに乗船する船員(当局の説明によれ
ば、具体的には RIF 登録船舶のことを指す。)
(b)社会保障制度に加入している船員
②徴収手続
該当する船員を雇用している会社は、賃金から源泉徴収した社会保障費
の被雇用者負担分(社会保障費の約 1/3 に相当)のみを国立海洋救済機関
(L’Etablissement National des Invalides de la Marine)に支払う。なお、
本来雇用者が払うべき社会保障費については国立海洋救済機関に対して政
府から補助金が支払われる。
(3)外国海技資格の承認制度
フランスは、承認取極を個別に締結し、承認取極締結国の発給する証書を
承認してきたが、EU の制度と調和をはかり、EU/EEA 加盟国が発給する証
書はすべて承認することになった。現在では、EU/EEA 加盟国の発給する証
- 94 -
書及び承認取極締結国の発給する証書の承認を行っている。
承認に際しては、船長及びその代行者を除き、講習の受講や試験の合格と
いった条件を課していない。船長及びその代行者については、フランス語能
力及びフランス海事法令に関する国家試験の合格を条件に承認を行っている。
①承認取極締結国リスト
アルジェリア、ドイツ、オーストラリア、ベルギー、ブラジル、ブルガ
リア、カナダ、コート・ジボアール、クロアチア、デンマーク、エストニ
ア、ガーナ、インド、イタリア、ラトビア、リトアニア、マケドニア、マ
ダガスカル、モロッコ、ミャンマー、ノルウェー、オランダ、フィリピン、
ポーランド、ルーマニア、英国、ロシア、セネガル、シンガポール、スロ
ベニア、チュニジア、ウクライナ、ベトナム(38 ヵ国)(2012 年 11 月時
点)
(下線は、EU/EEA 加盟国)
(参考)EU/EEA 加盟国
オーストリア、ベルギー、キプロス、チェコ、デンマーク、エストニア、
ドイツ、ギリシャ、フィンランド、フランス、ブルガリア、ハンガリー、
アイルランド、イタリア、ラトビア、リトアニア、ルーマニア、ルクセ
ンブルク、マルタ、ポーランド、ポルトガル、スロバキア、スロベニア、
スペイン、スウェーデン、オランダ、 英国、アイスランド(EEA)、ノ
ルウェー(EEA)、リヒテンシュタイン(EEA)
- 95 -
②国籍別承認実績
<表Ⅳ-4>2009 年の国籍別承認実績
アルジェリア
1
オーストラリア
5
ブラジル
0
カナダ
4
クロアチア
14
エストニア
1
インド
135
ラトビア
99
マケドニア
0
モロッコ
3
ノルウェー
0
フィリピン
291
ルーマニア
342
ロシア
0
シンガポール
9
チュニジア
10
ドイツ
ベルギー
ブルガリア
コート・ジボアール
デンマーク
ガーナ
イタリア
リトアニア
マダガスカル
ミャンマー
オランダ
ポーランド
英国
セネガル
スロベニア
ウクライナ
2
69
201
93
1
0
1
20
61
3
8
52
43
40
2
82
合計:1591
③講習/試験
フランス語能力試験(論述・口頭)及びフランス海事法令に関する国家
試験を実施している。海事法令については、教科書(全 18 頁)が作成さ
れており、ナントの国立海事高等学校の海事試験部のウェブサイトで公開
されている(http://ucem-nantes.fr/)。
5.カボタージュ
原則として、EU/EEA 加盟国の海運会社が利用する船舶であって、EU/EEA
加盟国に登録され、当該国の旗を掲げるもの以外は、フランス国内の港間の輸
送に従事することができない(関税法第 257 条)。ただし、行政府が、政令で
定める条件に従い、前述の要件を満たさない船舶に対して特定の輸送について
許可を与える場合には、その限りではない。
許可は航海ごとに得る必要がある。近年では年間約 250 航海程度について許
可が与えられている。通常は、用船者が申請し海事局で許可の決定が行われる。
パリ MOU のホワイト・リスト掲載国の船舶であれば、通常申請日の翌日には
許可が下りる。
- 96 -
6.その他
(1)船舶償却制度
事業の用に供される有形固定資産は、減価償却の方法により損金算入する
ことができる(注:フランスには固定資産税はない。)。減価償却は通常定額
法に加え、船舶のほか、耐用年数が 3 年以上の新規機械・装置、ホテルの建
物・設備、耐用年数が 15 年を超えない軽工業建物などについては定率法を
用いることができる。
定率法を採用する場合の償却率は、定額法の償却率(1/償却年数)に法令
で定める係数を掛けたものである。
例
減価償却期間 8 年の場合の係数:2.25
この場合の償却率:28.125% (=1/8×2.25)
なお、船舶については以下の特例措置が定められている。
①中古船を購入した場合にも定率法を用いることができる。
②通常は引き渡しが行われた月の第 1 日目から船価を基礎に償却を開始す
ることになる。(A)引き渡し前に一部の支払いが行われている場合には、
この一部支払額(ただし、購入額の 50%を上限とする。)を基礎にして起
工の月の最初の日から償却を開始できる。
(B)起工が引渡し年度の以前に
行われている場合には、船価からそれまでの償却額を差し引いた残存価額
を基礎にして引渡しが行われた年度の最初の日から償却を開始できる。
【②の例】
船価:10 億円
支払い:起工日までに 6 億円、引渡し日に残りの 4 億円
起工日:X 年 9 月 15 日
引渡し日:X+1 年 6 月 1 日
(会計年度は暦年とする。)
<X 年(引渡し日の前年)の償却額>
(A)により償却することができる。具体的な償却額は、一部支払額
(6 億円)より少ない購入額の 50%(5 億円=(10 億円×0.5))を基礎
に計算する。
定率法(償却年数が 8 年で、法令で定められる係数として 2.25 が適用
される場合)を用いると、年率 28.125%の償却となり、償却開始は X
- 97 -
年 9 月 1 日となることから、X 年の償却額は以下のとおりとなる。
5 億円×28.125%×4/12=4,688 万円
(※ 9 月 15 日から 12 月 31 日までを 4 ヵ月として計算する。)
<X+1 年の償却額>
起工が引渡し年度(X+1 年)の前年度に行われているので、
(B)によ
り残存価額を基礎にして引渡しが行われた年度(X+1 年)の最初の日か
ら償却を開始できる。償却額は以下のとおりとなる。
(10 億円-4,688 万円)×28.125%=2 億 6,807 万円
残存価額
(2)船舶投資優遇制度
複数の法人、個人が資金を出し合って船舶を購入し、その船舶を海運会社
にリースして用船料収入を得ようとする場合に、合資会社又は合名会社など
の形をとったペーパーカンパニーを設立することがある。租税法第 8 条はこ
のようなペーパーカンパニーを納税主体とせず、かわりに各出資者を納税主
体とすることを認めている。この場合、ペーパーカンパニーが受け取った用
船料収入を分配した配当が各出資者の収入の一部となり、各出資者は自らが
営む他の事業からの収入とこの配当収入を合算するとともに船舶の減価償却
分について持ち分に応じた償却費を計上することが可能である。
減価償却の方法は、
(1)のとおりであるが、各出資者の損金算入額には以
下①及び②の限度があり、減価償却額とは一致しない。③に述べる設例を見
れば、明らかな通り、EU/EEA 加盟国に登録されている船舶の場合、節税効
果が大きい。
<図Ⅳ-5>船舶投資優遇制度を利用した取引の概念図
①EU/EEA 加盟国に登録されている船舶等の場合の損金算入の制限
- 98 -
EU/EEA 加盟国に登録されている船舶又は特定の会計年度において、そ
の 4 分の 3 以上の間、EU/EEA 加盟国域内に錨泊又は同域内を航行する船
舶については、当該船舶を現に利用する出資者を除き、以下の限度が適用
される。なお、この限度によって損金算入できなかった償却額は繰り越す
ことができる。
(a)当初の 36 ヵ月の間は、同一会計年度において、賃貸料又は船舶から
得られる利益の取り分の 3 倍が損金算入の限度で、かつ、
(b)当初の 12 ヵ月については、ペーパーカンパニーへの出資者が自らの
他の活動から得る法人税課税所得の 4 分の 1 が損金算入の限度
②①以外の船舶の場合の損金算入の制限
①以外の船舶については、次の限度が適用される。
特定の会計年度について、ペーパーカンパニーが得た賃料収入から同社
の支払った対象船舶に係る諸費用を引いた金額を持ち分に応じて按分した
額が損金算入の限度。
なお、①同様、損金算入できなかった償却額は繰り越すことができる。
③設例
【例1】
船舶投資会社への出資者が A のみ
船価:10 億円
船舶購入、引渡し日:X 年 3 月 1 日
償却期間:8 年
用船料:6,000 万円/年
用船料関連経費:500 万円/年
用船開始日:X 年 10 月 1 日
- 99 -
定率法(初年度は 10 ヵ月分を償却)
年
X
残存価額
10 億円
X+1 7 億 6,563 万円
X+2 5 億 5,029 万円
EU/EEA 加盟国登録船
左記以外(②)の場合
減価償却額
等(①)の場合の損金
の損金算入額
算入額
2 億 3,437 万円
2 億 906 万円
5,500 万円
残存価額×1/8×2.25×
10/12
1 億 6,406 万円(注1)+4,500 万円(注
2)
6,000-500 万円(用船料-経費=
Y)減価償却額が Y を超えるため
2 億 1,533 万円
1 億 8,000 万円
5,500 万円
残存価額×1/8×2.25
6,000 万円×3 (賃貸料の 3 倍)減価
償却額が賃貸料の 3 倍を超えるた
め(注3)
1 億 5,477 万円
1 億 8,000 万円
残存価額×1/8×2.25
残存価額×1/8×2.25+2,523 万円
(注4)
X+3 3 億 9,552 万円
1 億 1,124 万円
1 億 4,665 万円
残存価額×1/8×2.25
残存価額×1/8×2.25+3,541 万円
(注5)
同上
5,500 万円
同上
5,500 万円
同上
X 年の損金算入額:2 億 906 万円
(注1)所有期間(7 ヵ月)の減価償却額:2 億 3,437 万円×7/10=1
億 6,406 万円
(注2)賃貸期間(3 ヵ月)の減価償却額:2 億 3,437 万円-1 億 6,406
万円=7,031 万円
この 7,031 万円については、賃貸料の 3 倍という上限額が
適用されることから、4,500 万円(=6,000 万円×3/12×3)
までの損金算入が許容され、実際の損金算入額は、所有期
間の減価償却額と賃貸期間の減価償却額を合わせた 2 億
906 万円で、2,531 万円は損金算入できない。
X+1 年の損金算入額:1 億 8,000 万円
(注3)賃貸期間の減価償却額は、2 億 1,533 万円であるが、賃貸料
の 3 倍という上限額が適用されることから、1 億 8,000 万円(=
6,000 万円×3)まで損金算入可能で、3,533 万円は損金算入
できない。
X+2 年の損金算入額:1 億 8,000 万円
(注4)賃貸期間の減価償却額は、1 億 5,477 万円で、賃貸料の 3 倍
よりも少額であることから、1 億 5,477 万円の損金算入が認め
られるほか、X 年及び X+1 年に損金算入できなかった額
(6,064 万円=(2,531 万円+3,533 万円))のうち 2,523 万円
を合わせ、1 億 8,000 万円まで損金算入が可能となる。
X+3 年の損金算入額:1 億 4,665 万円
(注5)上限額は当初の 36 ヵ月(X 年 10 月 1 日~X+3 年 9 月 30 日
- 100 -
まで)にのみ適用されるから、1 月から 9 月までの 9 ヵ月につ
いては、賃貸料の 3 倍、すなわち 1 億 3,500 万円(=6,000
万円×9/12×3)が損金算入額の上限となる。9 ヵ月間の減価
償却額は 8,343 万円(=1 億 1,124 万円×9/12)であるから、
全額損金算入することができ、この年については 1 億 1,124
万円全額が損金算入できる。さらに、X 年及び X+1 年に損金
算入できなかった額(6,064 万円)のうち、X+2 年に損金算入
された 2,523 万円を除いた 3,541 万円を損金算入することが
できる。
【例2】
ペーパーカンパニー(船舶投資会社)への出資者:A=40%、B=60%
船価:10 億円
船舶購入費用(経費):1,000 万円
購入、引渡し日:X 年 1 月 1 日
用船料:6,000 万円/年
用船開始日:X 年 1 月 1 日
償却期間:8 年
X 年の A の他の事業による所得:2 億円
X 年の B の他の事業による所得:5 億円
(会計年度は暦年とする。)
<X 年の償却額>
定率法に基づき計算した船舶の償却額:2 億 8,125 万円
上限額を適用した場合の償却額=賃貸料×3:1 億 8,000 万円
ペーパーカンパニーの計算上の所得:
6,000 万円(賃貸料)-1 億 8,000 万円(減価償却)-1,000 万円(購
入費用)=-1 億 3,000 万円
出資者 A の減価償却による損金算入額:5,000 万円
1 億 3,000 万円×40%=5,200 万円
ただし、償却が認められるのは A の他の事業による所得の 1/4(5,000
万円)までであるから、損金算入額は 5,000 万円となる。
(200 万円は
翌年以降に損金算入できる。)
出資者 B の減価償却による損金算入額:7,800 万円
1 億 3,000 万円×60%=7,800 万円
B の他の事業による所得の 1/4 は 1 億 2,500 万円であるから、7,800
万円全額について損金算入できる。
- 101 -
④その他-持ち分の譲渡益
2 年以上保有した持ち分の譲渡益については、その 10%にのみ課税され、
残りの 90%については課税免除となっている。
(3)船舶の徴用
フランス法人の海運会社及びフランス国旗を掲げる船舶を有する、外国法
人の海運会社は国益のための海上輸送を確保しなければならないとされ(防
衛法第 L2213-5 条)、船舶の徴用と当該船舶に必要な運航要員の動員が行わ
れ得る。
国益のための海上輸送であっても、輸送の条件は、基本的に、利用する省
庁と海運会社が運輸大臣と協議の上で締結する協定で定める(同法第
L2213-7 条)。この協定は、輸送費用や、利用の条件などを定める。協定が
ない場合や、海運会社によって協定が執行されない場合には、運輸大臣、経
済・財務大臣の共同決定により、船舶の徴用及び当該船舶の運航に必要な要
員の動員が行われる(同法第 L2213-8 条)。
ただし、船舶の徴用が行われたのは第二次世界大戦の頃であり、その後は、
政府が市場から通常の用船料でチャーターしている。アルジェリア戦争
(1954~62 年)の時には、一部徴用された例もあったようであるが、それ
以降 50 年近く徴用は行われていない。
- 102 -
[データ編]
1.フランス経済の概況
(1)フランスの概況(JETRO・海外ビジネス情報より)
面積:632,759 平方キロメートル(本国のみ 日本の約 1.7 倍)
人口:6535 万人(2012 年、暫定値)
首都:パリ(2,200 万人、2008 年時点推計)
言語:フランス語
宗教:カトリック(90%)
(2)フランス経済の概況(2011 年)(JETRO・海外ビジネス情報及び IHS
Global Insight より)
名目 GDP 総額:1,996,583,000,000 ユーロ
名目 GDP 総額:2,775,518,000,000 ドル
一人あたりの GDP(名目):44,007 ドル
実質 GDP 成長率:1.7%
貿易収支(国際収支ベース):-73,488,000,000 ユーロ
貿易収支(国際収支ベース):-102,158,000,000 ドル
経常収支(国際収支ベース):-38,934,000,000 ユーロ
経常収支(国際収支ベース):-54,123,000,000 ドル
フランスの人口は 2011 年末時点で約 6,535 万人。主要産業は、化学、機
械、食品、繊維、航空、原子力等である。農業は西ヨーロッパ最大。
2009 年に戦後最大のマイナス成長(実質-3.1%)を記録したが、2010 年
及び 2011 年は内需が景気をけん引し、実質 GDP 成長率 1.7%となった。失
業率は 2009 年 10.0%、2010 年 9.7%、2011 年 9.8%なっている。
2011 年は、鉱物性燃料の国際市況の高止まりなどを受けて過去最大の貿易
赤字を記録した。
フランスの 2011 年総輸出額に占める主要品目割合は、原子炉・ボイラー・
機械類が 11.4%、自動車が 9.1%、航空機及び宇宙飛行体が 8.6%、電気機器
が 8.2%となっている。
(3)行政機構
フランスでは、大統領の下に首相がおり、首相が各省を統括する。
海運政策については、環境・持続可能開発・エネルギー省が所管している(図
Ⅳ-6 参照)。
同省の下にある海運関連部局は社会経済基盤・運輸・海洋局となる(図Ⅳ
-7 参照)。
なお、造船、舶用工業を所管するのは生産復興省で、海上保安庁の役割は
フランス海軍(La Marine Nationale)に属する海上憲兵隊(La Gendarmerie
Maritime)が担う。
- 103 -
<図Ⅳ-6>
外務省
国民教育省
司法省
経済・財政省
社会問題・保険省
国土平等・住宅省
内務省
貿易省
生産復興省
大統領
首相
エコロジー・持続可能な開発・エネルギー省
労働・雇用・職業訓練・社会対話省
国防省
文化・通信省
高等教育・研究省
女性の権利省
農業・食品産業・森林省
国家改革・地方分権・公共部門省
海外領土省
手工業・商業・観光省
スポーツ・青少年・生涯教育・団体活動省
- 104 -
<図Ⅳ-7>
エコロジー・持続可能開発・エネルギー大臣
環境・持続可能開発顧問
エコロジー・持続可能開発・エネルギー大臣付き
運輸・海洋・漁業担当大臣
持続可能開発省庁間代表
海難調査官
海洋閣外相
官
房
持
続
可
能
開
発
庁
エ
ネ
ル
ギ
ー
・
気
候
局
社
会
経
済
基
盤
・
運
輸
・
海
洋
局
民
間
航
空
局
海
洋
漁
業
・
養
殖
局
開
発
・
住
宅
・
自
然
局
危
機
防
止
局
2.フランス外航海運の概況
フランスの主な海運企業としては、CMA-CGM がある。
(1)CMA CGM の概要
CMA CGM は、世界第 3 位のコンテナ船社。本社はマルセイユにある。子
会社としては U.S. Lines、Delmas、ANL などが知られている。2011 年の売
上高は 14.9 十億ドル(1 兆 1,920 億円(1 ドル=80 円で計算))、純利益は-3000
万ドル(-24 億円)。
CMA CGM は、リーマンショック直後の経営不振を受けて、2010 年 1 月
にトルコの Yildirim グループから 5 億ドルの出資を受けた。報道によれば、
同社は金融機関に対して 50 億ドルの負債を抱えており、同社は 2012 年 10
月 16 日に政府の戦略投資基金(Fonds stratégique d’investissement)から
1 億 5000 万ドルの転換社債購入による資金供与を受ける旨発表した。また、
報道によれば、Yildirim グループは転換社債購入によりさらに 1 億ドルを出
資することになっている。
<表Ⅳ-5>CMA-CGM の売上高と純利益
(単位:百万ドル)
2009
2010
2011
売上高
10,543
14,290
14,900
純利益
-1,447
1,627
-30
(出典:Hoover’s Company Records – In-depth Records, 2012)
- 105 -
(2)CMA CGM の沿革
Campagnie Generale Transatlantique (Transat)と Messageries
Maritimes(MessMar)が 1977 年に合併して Campagnie Generale Maritime
(CGM)が設立された。Compagnie Maritime d’Affretement (CMA)は、1978
年にレバノン生まれのジャック・サーデ(Jacque R Saadé)氏によって設立
された。
CGM は国有会社であったが、1996 年に民営化された。同社は 1998 年に
Australian National Lines(ANL)を買収した後、1999 年に CMA と合併
して CMA CGM グループが誕生した。
(参考)CMA CGM ホームページより
船舶隻数:394 隻(170 航路)
コンテナ船腹量:2,117,188TEU
寄港地数:400(150 ヵ国)
コンテナ輸送実績(2011 年)
:1,000 万 TEU
全世界従業員数:17,200 人
フランス国内従業員数:4,150 人
- 106 -
(2)船腹量・船種
<表Ⅳ-6>フランスを旗国とする商船の船腹量と船種
エネルギー船
種類
オイルタンカー
液化ガス船
合計
隻
35
9
44
2012年7月1日
GT
DWT
2,458,729
4,569,526
385,476
338,680
2 ,8 4 4 ,2 0 5 4 ,9 0 8 ,2 0 6
隻
36
12
48
2012年1月1日
GT
DWT
2,627,981
4,862,962
482,869
448,780
3 ,1 1 0 ,8 5 0 5 ,3 1 1 ,7 4 2
隻
35
12
47
2011年7月1日
GT
DWT
2,600,968
4,825,962
482,060
448,780
3 ,0 8 3 ,0 2 8 5 ,2 7 4 ,7 4 2
隻
16
3
25
25
15
2
86
2012年7月1日
GT
DWT
99,972
157,531
180,187
348,800
1,946,819
2,103,368
179,625
82,939
24,876
22,092
17,257
6,121
2 ,4 4 8 ,7 3 6 2 ,7 2 0 ,8 5 1
隻
16
3
26
25
15
2
87
2012年1月1日
GT
DWT
99,972
157,531
180,187
348,800
1,960,925
2,120,498
164,247
73,332
24,876
22,092
17,257
6,121
2 ,4 4 7 ,4 6 4 2 ,7 2 8 ,3 7 4
隻
16
3
27
26
15
2
89
2011年7月1日
GT
DWT
99,968
157,531
180,187
348,800
2,011,682
2,181,498
164,537
73,582
24,876
22,092
17,257
6,121
2 ,4 9 8 ,5 0 7 2 ,7 8 9 ,6 2 4
隻
5
47
6
18
76
2012年7月1日
GT
DWT
41,564
5,957
841,775
146,540
1,867
155
11,559
2,856
8 9 6 ,7 6 5
1 5 5 ,5 0 8
隻
5
46
7
19
77
2012年1月1日
GT
DWT
41,564
5,957
814,871
139,540
1,978
230
11,798
2,875
8 7 0 ,2 1 1
1 4 8 ,6 0 2
隻
6
45
6
17
74
2011年7月1日
GT
DWT
49,846
9,390
772,691
130,140
1,765
230
9,948
1,549
8 3 4 ,2 5 0
1 4 1 ,3 0 9
非エネルギー船
種類
ケミカルタンカー
ばら積み貨物船
コンテナ船
Ro-Ro船
一般貨物船
その他
合計
旅客船
種類
客船
フェリー
小型旅客船
その他
合計
総合計
206
6 ,1 8 9 ,7 0 6
7 ,7 8 4 ,5 6 5
212
6 ,4 2 8 ,5 2 5
8 ,1 8 8 ,7 1 8
210
6 ,4 1 5 ,7 8 5
8 ,2 0 5 ,6 7 5
(Ministère de l’Écologie, du Développement durable et de l’Énergie,
‘Statistiques - Flotte de commerce sous pavillon français,’ Juillet 2012 よ
り作成)
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<地図Ⅳ-1>
赤線と陸地で囲まれた海域以外の海域を航行する場合に遠洋航海とされる。
北緯 72 度、東経 46 度 20 分
北緯 72 度、西経 12 度 40 分
北緯 30 度、東経 46 度 20 分
北緯 10 度、西経 12 度 40 分
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