BitTorrent 入門

BitComet による
BitTorrent 入門
文責
akina@部長
1.はじめに
BitTorrent(ビットトレント)とは、ピア・トゥー・ピア(P2P)ネットワークによるフ
ァイル共有ソフトウェアである。社会問題を引き起こした Winny やそれまでにおけるファ
イル共有ソフトウェアとはひと味違ったものである。
今回は、通信の概念と簡単な導入方法を紹介する。
2.サーバー・クライアント型とピア・トゥー・ピア型
2.1.サーバー・クライアント型
サーバー・クライアント型とは、WWW(ワールド・ワイド・ウェブ)のように、主とな
るコンピュータ(サーバー)に使用者のコンピュータ(クライアント)がぶら下がるよう
に形成されたネットワークである。図1にネットワークの概念図を示す。
通信を行うサービスはすべてサーバーを介して行われるのが、サーバー・クライアント
型ネットワークの特徴である。クライアントは、受信時にはサーバーから情報を受け取る
だけ、送信時にはデータはサーバーに送りつけるだけである。クライアントには負担はほ
とんどかからない点がメリットである。
しかし、すべてのサービスをサーバーに依存しているため、サーバーが停止してしまう
とサービスが成り立たなくなってしまう点がデメリットである。
2.2.ピア・トゥー・ピア型(P2P)
ピア・トゥー・ピア型とは、すべてのコンピュータが対等な関係で形成されたネットワ
ークである。図2にネットワークの概念図を示す。
すべてのコンピュータがサーバーでありクライアントであることがピア・トゥー・ピア
型ネットワーク特徴である。1台のコンピュータが停止しても他のコンピュータだけでネ
ットワークは維持される点がメリットである。
しかし、すべてのコンピュータがサーバーとクライアントになるため、それぞれに負荷
がかかる。ローカル・エリア・ネットワーク(LAN)は基本的にはピア・トゥー・ピア型
のネットワークである。
図1
サーバー・クライアント型
図2
ピア・トゥー・ピア型
3.BitTrrent の特徴
BitTrrent はピア・トゥー・ピア型のファイル共有ネットワークだが、サーバー・クライ
アント型のネットワークもあわせ持つことが最大の特徴である。BitTrrent 自体にネットワ
ークに流れているファイルの検索機能はなく、接続先の書かれたトレントファイルを
WWW やその他の方法から入手することから始まる。
サーバー・クライアント型では、ある一つのファイルを取得するためにユーザが集まる
と、ダウンロード要求が一極集中し、全体の拡散速度としても豊富と言われた帯域を占有
するだけの速度しか出すことが出来ない。しかし、BitTorrent では、
「相手(ピア) から
ファイルの一部を受けとるには、自分もファイルの一部を渡さなければならない」という
規則が導入されており、貧弱な帯域を持つユーザでも全体のファイル共有に協力できるよ
うになっている。これにより、人気のあるファイルに対する要求であっても、ダウンロー
ド中のユーザを含め、たくさんのコンピュータが協力することで、ネットワーク、特にサ
ーバーへの負担を大幅に減らすことができる。
4.BitTorrent の仕組み
BitTorrent の仕組みを簡単に解説する。
4.1.用語
BitTorrent における用語を以下に示す。
トラッカー(tracker):新規接続者にピアの IP アドレスを教えるサーバー。
トレントファイル:拡張子*.torrent のファイル。トラッカーへのリンクを含む。
ピア(peer):直接接続してデータのやりとりを行っているコンピュータ。
シーダ(seeder):完全なファイルを提供しているコンピュータ。
リーチャー(leecher):ダウンロード中のコンピュータ。
負担率(Share Ratio):アップロード量とダウンロード量との比。
4.2.通信の仕組み
トレントファイルを読み込むと、シーダに接続されピアの情報をダウンロードする。シ
ーダからの情報をもとにピアへアクセスし、ダウンロードを始める。また、自身もすでに
ダウンロードした部分から別のピアへとアップロードを始める。
5.BitTorrent の導入
5.1.BitTorrent クライアントソフトウェア
クライアントソフトウェアとは、BitTorrentネットワークにピアとして参加するためのソ
フトウェアである。クライアントソフトウェアには、各アーキテクチャやオペレーティン
グ・システム(OS)に合わせてさまざまなものが公開されているが * 、ここでは日本におい
て最も普及しているクライアントソフトウェアである、
「BitComet」を例に挙げ、解説する。
5.2.BitComet
BitComet は中国の開発グループ(詳細は不明)によって開発されているクライアントソ
フトウェアである。
BitComet は C++言語で開発されており、安定したコアと非常に低い CPU 負担率が一定
の評価を得ている。また、Microsoft Windows に特化された機能により、インターネット
接続の共有、Windows ファイアーウォールを自動で設定し、ネットワーク初心者に対して
も優しいつくりとなっている。直感的でわかりやすいユーザインターフェース(UI)にも
人気がある。
1つのトレントファイルで共有されているものからダウンロードしたいものだけを選ん
でダウンロードすることができるのが大きな特徴である。
5.3.BitComet の導入
5.3.1.プラットフォーム
BitCometはインターネット環境を持つMicrosoft Windows 98 / Millennium Edition /
2000 / XP / Server 2003 / Vistaに対応する。Windowsプラットフォーム以外ではJavaで動
作するAzureus † をおすすめするが、ここでは詳細は割愛する。
5.3.2.インストール
インストールファイル(BitComet_X.XX_setup.exe)を公式サイト日本語版(http://
jp.bitcomet.com/)や BitTorrent などから入手し、インストールする。手順については割愛
する。なお、2007 年 7 月現在の最新版(X.XX に入る数字)は 2007 年 7 月 19 日に公開さ
れたバージョン 0.91、安定版はバージョン 0.70 である。
Windows ファイアーウォールなどの Windows 標準機能についての設定は BitComet が
自動で行ってくれる。必要に応じて、セキュリティ対策ソフトウェアの設定を行うこと。
5.3.3.使い方
BitComet 0.70 の起動画面を図3に示す。基本的な使い方は、WWW でトレントファイ
ルを検索し、ダウンロードして開くだけである。トレントファイルを実行すると BitComet
が起動する。その後の画面(図4)でダウンロードしたいファイルだけを選んでダウンロ
ードをすることもできる。OK をクリックするとダウンロードが始まる。
あとは、まったりダウンロードが完了するのを待つだけである。ダウンロード終了後も
負担率が 3.0 くらいになるまでアップロードを続けることが望ましい。
ABC(Windows9x/Linux用クライアント)、Azureus(Javaによるクロスプラットフォー
ム)、Opera9(WWWブラウザ内蔵機能)など、ソフトウェアの形態も多岐にわたる。
† 公式サイト(英語)
:http://azureus.sourceforge.net/
*
図3
BitComet の起動画面(Microsoft Windows XP クラシックスタイル)
図4
トレントファイル読み込み時の設定
5.4.トレントファイルの作成
トレントファイルを作成するためには、シーダとなるサーバーコンピュータを自前で用
意するか、提供してくれるサービスを探す必要がある。
BitComet には、サーバー機能は内蔵されていない。また、本稿は簡単な使い方のみを解
説するものであるので、詳細は割愛する。
6.BitTorrent の展望
BitTorrent は、最近より一般的になりつつある。大手ソフトウェアメーカーでも、修正
パッチやテンプレートファイルなどを Torrent ネットワークを通じて配布を行っている。
また、BUFFALO などが出す NAS システム(LAN 用 HDD)にも、BitTorrent クライ
アントソフトウェアが内蔵されるようになってきた。
未来のユピキタス社会では、すべての電化製品がネットワークに接続されている。情報
の更新に、既存のサーバー・クライアント型ネットワークではサービスに限界が来てしま
う。Torrent ネットワークを用いることで、半永久的にネットワークを維持することができ
る。企業はネットワーク負担の比較的軽いトラッカーを運営するだけですむ。また、最近
ではトラッカーとなるサーバーが停止した場合でも、Torrent ネットワークを維持する方法
も開発されている。
既存のネットワークを変えていくために、Torrent ネットワークの考え方は非常に有用な
方法なのである。
7.参考文献
インターネット百科事典 Wikipedia「BitTorrent」
http://ja.wikipedia.org/wiki/Bittorrent
(2007 年 7 月 22 日)
BitComet 日本語公式サイト
http://jp.bittorrent.com/
(2007 年 7 月 22 日)