P2P を用いた動画配信サービスの提案 A Proposal of Video Delivery

P2P を用いた動画配信サービスの提案
A Proposal of Video Delivery System Based on P2P Network
基盤ソフトウェア学講座 0312007041 柏木 貴紀
指導教員: 澤本潤 杉野栄二 瀬川典久
1. はじめに
め,他の P2P システムよりも各ピア毎へのアクセ
近年,YouTube などの動画配信サービスの普及
ス負荷は軽減される.しかしピースを選択する手
により,個人単位で動画を用いて情報を発信する
法は,ピースの順番に関わらず,ファイル全体を
ことが容易となった.今後も情報発信するための
完成させることに重点が置かれているため,ファ
媒体として動画を用いる動きが活発化すると予想
イルの先頭部分のピースを先に集め,揃い次第順
される.これら動画配信サービスの大半は,利用
次再生を行う,といった形をとるストリーミング
量の増加に伴い,サーバへの負荷増加や,サーバ
配信には適していない.
増設に伴うシステムの大型化といった問題が深刻
になってきている.
そういった中,データ共有の面で Hybrid Peer
to Peer(以下 Hybrid P2P)技術が注目されている.
ストレージを個人端末に分散し,サーバ側への負
荷減少及びネットワーク全体の利用効率を向上さ
せるなどの点で,様々なサーバ・クライアント型
システムの欠点を補うことが期待されているが,
従来の Hybrid P2P 型システムは動画配信に特化
しているものは少なく,適しているとは言えない.
そこで本研究では,Hybrid P2P 技術を動画配
信に適した形で用い,信頼性の高い動画配信の実
現を目的とした動画配信システムの提案を行う.
2. 関連研究
2.1. BitTorrent
図 1.BitTorrent ネットワークイメージ図
2.2 . BiToS
A. Vlavianos らの研究 2)で提案された BiToS は,
ここで,本研究の基となる HybridP2P 型システ
動画配信を想定し BitTorrent のピース選択手法を
ムの中で代表的な BitTorrent1)について説明する.
改良したものである.図 2 のとおり,動画の再生
BitTorrent とはコンテンツ伝送ソフトウェアのひ
具合に合わせて順次再生開始予定位置を設定し,
とつである.構成を図 1 に示す.ピアとよばれる
その位置に近いピース数個を最優先グループとし
クライアント同士でネットワークを形成し,ファ
て,一定の確率で優先グループ内のピースを優先
イルのやりとりもピア同士の通信のみで行うが,
的にダウンロードするようにすることで,スムー
各ピアの情報は,サーバ(トラッカー)側で管理する.
ズな動画再生を可能とした.
このネットワーク上でやり取りされるファイルは
しかし,優先グループ内のピースを集める際は
一定サイズごとに分割されており,その分割され
通常の選択手法のままであるため,必ずしも再生
た断片ファイル(ピース)をピア同士でダウンロー
位置に一番近いピースがダウンロードされるとは
ド・アップロードしあうことでファイル全体を完
限らず,依然再生待ちの時間が発生する可能性が
成させる.すべてのピアがアップロードも行うた
ある.
クライアントソフトは,動画検索,トレントフ
ァイルのダウンロード,ネットワークへの参加(ト
ラッカー・他ピアとの通信),動画再生を行う.ネ
ットワーク参加及びトラッカー・他ピアとの通信
部は,BitTorrentAPI を用いて実装する.動画再
生部は,JMF(Java Media Framework)を用いて
実装する.サーバソフトは,ピア情報を管理し,
図 2.BiToS 手法
各ピアの情報を一定時間ごとに取得し全ピアに伝
搬する機能,動画情報の登録,トレントファイル
3. システム概要
本システムは,BitTorrent を基にして信頼度の
の作成などの機能を有する.これらの機能はすべ
て BitTorrentAPI を用いて実装する.
高い動画配信の実現を目的とし,既存研究より動
画配信に適したピア・ピース選択手法の提案を行
5. 評価について
う.
本システムの評価は,まずサーバ・クライアン
提案するピア・ピースの選択手法は,BiToS 手
ト型動画配信方式と比較して行う.
法に改良を加える.再生位置に近いピース数個を
順にクライアント(ピア)の数を増やしていき,同じ
優先グループに設定し,その中のピースを集める
動画がどのくらいの遅延時間で再生できるかを検
際,さらにその中で最も再生位置に近いピースを
証する.本システムは,BitTorrent の特性上,ク
持つピアに要求を出し最優先でダウンロードする
ライアント数が多くなるにつれてダウンロード先
ようにする.また,要求を受けたピアの中でも一
が増えるため遅延が少なくなると予想される.
番通信速度の速いピアを選択し,ダウンロードを
行うように改良する.
また,BiToS 手法を採用したシステムとの比較
も行う.ネットワーク上に同数のピアを用意し,
この手法により,BiToS における,グループ内
本システムとどちらが再生時の途切れが少ないか
で一番再生位置に近いピアが初めに選択されると
を検証する.本システムは,より速く再生位置に
は限らないといった問題点を解消し,よりスムー
近いピースを集めようとするため,再生途切れは
ズな動画の再生と,途切れ時間の短縮につながる
少なくなると予想される.
と考える.
6. まとめ
本稿では,近年普及している動画配信サービス
の問題点について触れ,それらを解決するために
Hybrid P2P 型の動画配信システムを提案した.
今後は,評価実験を行い,有用性を示す予定で
ある.
図 3.提案するピア・ピース選択手法
参考文献
1)
4. システム構成
本システムは,クライアントソフトをインスト
BitTorrent,Inc.:Bittorrent,
http://www.bittorrent.co.jp/
2)
A. Vlavianos et al.:BiToS: Enhancing
ールしたピアと,それらを管理するサーバソフト
Bittorrent for Supporting Streaming
をインストールしたトラッカーで構成される.ク
Applications,Proc.Conf.25th IEEE
ライアントソフト及びサーバソフトは,どちらも
Computer and Communications Societies
Java で実装を行う.
(INFOCOM’06), pp.1–6, Apr. 2006.