PORUGO2016

PORUGO2016
ポルゴ2016
夏木康志
Yasushi Natsuki
秋草書店
PORUGO 夏木康志
プロローグ
―ワカマツっー!
―ポルゴ、妹を、ユメミを頼む!
嫌な悪夢が脳裏をよぎる。
忘れることもできないあの日、俺達は火星人たちと戦っていた。何度となく地球侵略戦争を仕掛けて
くる連中。パルチザン運動。火星人一個小隊に囲まれた俺とワカマツ。生命の杖という強力な武器を持っ
ている火星人たちに勝てる術はなかった。かつての親友ワカマツは、楯になって俺をかばってくれた。
一瞬のスキを突いて、俺は窮地を脱した。いや、俺だけは、と言い直すべきか...
あの明るかったワカマツの妹は、事実を告けると、ただただ押し黙っていた。気か済むまで俺を殴る
と、泣きながら「わかったワ。こんなことしても、もう兄貴は二度と帰って来ないのね...」と言った。 その後、「兄貴の人生の責任取ってくれる?」と言って、俺の家に転がり込んで来た。ただひたすら
に、あてになるのはカネが全てとオンラインビジネスに打ち込む彼女。俺は戦争て友人や家族を全て失っ
ていた。そして彼女もそうだ。ふと気付くと俺は地球圏てサイバー探偵の仕事を生業としていた。ネッ
ト上の雑用屋だ。俺のせいで天涯孤独となった彼女。俺達はふと気付くと、生活のためならあの火星人
とすら取引をしていた。プライドは捨てていた。戦争で失った友人たちの顔がよぎる。しかし、一方で
守らなけれはならないひとがいる。本当は今の生活や柵をすべて捨てて鳥にでも生まれ変わってみたかっ
た。一瞬を謳歌しているかに見える瞬間(いま)も俺達は過去の記憶や火星皇帝の野望に縛られていた。
全てか無に帰するあの瞬間、それは、きっと俺にもいつかやってくるはすだ。飛び立つことはできない。
人間は鳥にはなれないし、翼はそこにはなかった。クールに金が全てと言いつつ、俺達のそばには重い
枷があった。歴史はどこにある?と聞かれたら、俺達の両肩に今も重くのしかかっていると答えるだろ
う。今から話す物語が、俺の知っている全てだ。火星人が侵略をあきらめた今も、失った人々の命は帰っ
ては来ない。俺もいずれは死に行く定めだ。
全てを語ることはできないが、俺が生きた証拠は、ここに残しておきたいと思う。
ARSENE PORUGO
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第1章エリンギ
「もうそいつは死んでいる!」
そう言ってやつらを追い払う。そこには死にかけた火星人がいた。キノコ状のアタマから緑色の血を
流して倒れている。
「火星皇帝閣下万歳!ごふっ。」
火星人は最期の言葉を吐いた。
地球連合政府へのスパイの末路は虚しい。義手が両方とも空に向かって伸びている。硬直が始まった
「火星皇帝?まだ地球に未練があるのか。」
火星人と地球人は表面上和平を保っている。表面上は、だ。
第3次地球侵略戦争か終わってもう5年になる。火星人はずっと地球の重力に惹かれていた。地球を侵
略して軽重力病を克服することが火星人の野望だ。軽重力病?地球人とは縁がない病気だったな。 これが理由で地球と火星は戦った。地球から火星へ人々が移り住むようになって200年か経過した。
最初の内は科学の力を地球の100億の民は礼賛した。2100年のアジア人口戦争以来、過剰な人口を地球
外に押し出す移民政策が機能し続けた。大インドと中国連邦か和解の条件に決定したのが、火星への移
民政策だ。しかし火星移民第4世の時代になって人類は火星の軽重力に耐えられなくなった。遺伝子レ
ベルでの異常が発生し、火星人の頭はキノコ状に変形し、血液は緑色に変わり、不要になっていた両手
は退化しはじめた。それだけなら良かった。火星に住んでいると寿命か地球暦で40歳を越えることがで
きなくなった。
そうして火星人は地球を恋しがった。
俺はここトキオで探偵をやっている。たまたま場末の酒場を出たところで火星人がリンチにあってい
るのを目撃した。地球の中を火星人が歩いているのかめずらしい。上手く義手を使い、キノコ状の頭を
メットで隠していたようだったが、運が悪かった。チンピラに見つかって殴られたのだろう。地球人の
反火星感情は激しい。かつてのジャパンとチャイナの関係のように...
俺は火星人の死体を無視して歩きはじめた。こういうことはよくある。それに俺達ツチブタから見れ
は、火星人はキノコだ。どうってことはない。同し起源をもつ人間同士にはとても思えなかった。そう、
月面人は地球連合政府が水爆ミサイルを発射して絶滅させた。仲良くやろうじゃないか。残った者どう
し。だがそうはいかない。ふっかけてきたのはキノコの側だ。まあ、月を殺ったのは俺達地球人の都合
だったが...
「そう、すいふんとエゲツないもの見たんじゃない。当分椎茸は食べられないね。まあ、エリンギもだ
けど。」
エージェントのミス・ワカマツは俺の目撃談をこう総括した。
「ところでポルゴさん、またメールで依頼が来ていたよ。」
「とこからだ?」
「東方商会だって。聞いたことある?報酬は3億リラ。」
「さ、3億か。うん、引き受けよう。東方商会は火星との裏貿易て儲けたダミー会社だ。アイウォッチ
で情報を収集してくれ。」
実際、ふところはちょっと寒かった。3億リラという大金に裏かないと言えない事は知っていたが、
俺達にはそのリスクに打ち勝つ自信があった。
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第2章カラス
電線の上ではよく肥えたカラスがこちらを睨んでいた。
ああ、アイウォッチにメールがきた。依頼の件だったな。なになに、マーシャンポリスからだ。
火星の都だ。例の東方商会からの依頼だ。10時にシンジュクの劇場前で待ち合わせだと!
馬鹿けた場所だ。まあ、いい。地下鉄を使って30分だな。未来に地下鉄があるのは意外かもしれない
しかし、いつになっても大都会の地価は高いため、仕方がなかった。
9時55分だ。
劇場の看板の前でポスターに目もくれずに周囲を見渡す俺。
「ポルゴさんか?」
「あぁ。あんたは?」
「東方商会の対地球支部のナカノだ。依頼の件だが。その前に...」
俺の周りにサングラスを掛けた男が取り囲んた。4人だ。
「テストといこうか?」
いきなり殴り掛かってくる男たち。仕方ない。
俺は4人の男のパンチを上手くパリンクして、かわした。迷わすナカノの方へ突進した。
フロント・スリーパーでナカノを絞め上げる。
「ボスの首はとったぜ。まだヤル気か?」
4人の男はボスのナカノの安全を無視して俺に襲いかかってきた。
仕方ない。俺はふところの「武器」を使って4人に応対した。
「武器」は銃刀法違反スレスレの俺のオリジナルの兵器だ。
危うく1番背の高い男を切りつけるところだ。客をヤったら、まずいよな。
「もういいぞ!ミスター・ポルゴ、君の実力はわかった。依頼の話と行こう。」
4人の男は車に乗って去って行った。ナカノは俺を劇場の中に案内する。
暗かりの中ナカノは仕事の話を持ち出した。
「実は金星にウチの会社から新商品を輸出することになったのだが。屈強な君にボディガードを依頼し
たい。報酬は例の額だ。」
「か、火星から金星まての直通航路は現在航行不能じゃないか。そこを。」
「火星皇帝閣下は外貨を欲しておられるのだよ。金星フロンティアの開拓団たちは火星の美味な食料を
求めている。皇帝は火星の食料と引き換えに軍備を増強するつもりだ。三角貿易だ。金星には火星から
食料を輸出し、火星は地球から兵器を買う。もちろん全て裏貿易だがな。」
「俺はパイロットじゃない!火星も金星も嫌いだ!」
「安心したまえ。ミスター・ポルゴ。君の任務はボディカードだ。地球から火星に兵器を輸出する際
の。」
「なるほど。兵器と行ってもおそらく情報兵器か、新型の核兵器だろうな。」
ナカノの目が光ったのか暗闇の中てもわかった。
「いい読みだな。たた全ては、ビジネスだよ。第4次地球侵略戦争が始まっても、我々には関係ない。
もちろん倫理的な話だが。」
利潤か生まれるところには積極的に関係してゆくのが我々探偵のビジネスだ。
「俺も探偵をビジネスてやっている。依頼は引き受けよう。」
「て、その兵器はどこから宇宙(そら)へ上けるのか?」
「宇宙だと?我々か欲しているのは兵器の権利のみだ。ある研究所の情報兵器を秘密裏に我々は買い受
ける。そのとき邪魔が入らないよう君は見張っていてくれればいい。」
「研究所はどこだ?」
「あとの詳細はメールでだ。君は年増には興味がないのかね?」
ナカノはスクリーンにまだ未練かあるようだ。
俺は劇場を後にした。10時30分た。目の前のゴミ置き場には残飯をあさるカラスが群れていた。シン
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ジュクは飲食店の残飯か多い。オバチャンか石を投けると一目散に逃けて行った。ふてふてしいカラス
は電線の上から人間の行動をすっと観察していた。そしてオバチャンがいなくなるとまたゴミをあさり
出した。見張り番だ。
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第3章アイウォッチ
俺はナカノの依頼を受けて、正確には東方商会からの依頼を受けて国際情報研究所に向かった。国際
情報とは名はかりでハッキングや惑星間スパイ活動を専門に行っている研究所、いや古臭い言葉で言え
ばアジトだ。火星から金星に食料を密輸する計画は上手くいっているらしい。金星フロンティアの開拓
団は火星の低重力て育った植物を好んて食べる。また現在の技術ては金星では温度が高過で美味い植物
は育たない。ああ、植物繊維。これがなければ生けてはゆけまい。また金星の鉱物資源は地球に輸出さ
れている。これは余分かな。そんなわけで、火星は金星から大金をせしめ、その金で地球から情報兵器
を購入する計画た。国際情報研究所にノートパソコン、いや今の時代にそんなものは存在しない。俺は
ウェアラブルコンピュータ、つまり腕時計に小型のコンピュータを搭載したものを身に付けて自動ドア
を通った。
商品名アイウォッチ。
「私はポルゴだ。東方商会から紹介されているはずだ。」
「はい。お待ちしておりました。例の商品は地下2階の応接室で受け取って下さい。」
「わかった。ありがとう。」
ナカノは事務所に電話で既に情報兵器の支払いは済んでいると言った。俺はそれを受け取ればいい。
これで3億リラ。裏がなかったら、表を見てみたい。
地下2階、応接室に入る。
「私は当研究所特別研究員、ドクター・カレーです。例の商品ですが、既にクラウド上にセットアップ
してあります。あとはサイトにパスワードを入力すれば機能します。メールで御送信するのはあまりに
危険ですのでポルゴさんにお願いする次第です。ちょうどいい、そのアイウォッチにパスワードと匿名
のURLを転送しましょう。」
「ああ、頼む。」
俺は腕を伸ばして、左の手首にライトの赤外線に当てる。これで完了だ。
「あとは東方商会まで出向くだけだ。ありがとう。」
楽な仕事だ。もちろん、邪魔が入らなけれはの話だが。研究所を出る。富士山の麓にある。樹海の中
だ。後を付いてくる影かある。やはりか。まさか幽霊ではないよな。
「お前は、オータニだな。」
同業者だ。俺のアイウォッチの通話内容を盗聴してこの仕事を嗅ぎ付けたらしい。
番号換えないと。奴は鎖鎌を持って俺の左手を狙っている。
手首ごとかっさらうつもりだ。
「ポルゴっ、3億リラは俺が頂く。」
オータニは鎖鎌を右手に持ち、大上段から振りかふる。
俺は咄嗟にビックファイヤーで応戦した。つまり、口から火をはいた。
オータニの顔面をライターの強烈な炎か捉える。これだけでは相手は怯まない。
「アイウォッチを寄越せ。命だけは助けてやる。」
嘘たろう。奴の気配には殺気が満ち溢れている。俺は迷わす素手てオータニに殴りかかった。うまくか
わされた。
オータニはまた大上段から振りかふった。こんとは左手を上に挙けて、いわゆる空手の上段挙げ受け
の形で鎖鎌の柄を受けた。
「甘いな。」
オータニは鎖を右手て俺の首めかけて投げ付けた。俺の首にチェーンか巻き付く。
さらに首をチェーンて締め上けながら、鎌を遮二無二振り回す。
しかし、長いチェーンた。しかも近寄りかたい。さらに危険だ。
「うごっ。」
「くたはれっ、ポルゴっ。」
俺はついに背中に隠していた「武器」を使ってオータニに強烈な1撃を加えた。
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そのままチェーンをひっぱり、鎌を奪い取る。
鎌で攻撃する。いや「武器」の方が軽快た。ステンレス製で、軽い。
もちろん芯には鉛か入っているし、切れ味もいい。俺はオータニを「武器」でKOした。
ととめにヒックファイヤーた。俺の口から吹いた炎か上手く奴の体に燃え移る。どうせ俺を相手にする
ために中に防火服を着込んでいるのだろう。
俺は燃えているオータニを後にした。
これが俺の仕事、サイバー探偵だ。危険はいつも背中合わせだ。リスクをマネーに換えるのが俺達の
商売だ。
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第4章情報兵器
「それで、例の兵器は手に入ったのかね?」
「はい、火星皇帝閣下。ポルゴと申す探偵が無事にパスワードを届けてくれました。あとは地球のネッ
トワーク上にパスワードを入力するだけです。」
「ち、地球か。地球のネットワークを全て破壊すれば、我々の悲願も叶う。軽重力病を克服するために
は地球のネットワークを根底から揺さぶり、食糧危機を引き起こす必要かある。ミサイル投下と地上軍
の突入はそれからだ。ところで、月は手に入るのかね。もちろんテラ(地球)の月だが。」
「はい、皇帝閣下。月は地球の水爆ミサイルによって廃墟と化しております。秘密裏に地球へのミサイ
ル発射基地を月面地下500メートルのところに着工、完了いたしました。」
こんな会話か火星帝国の首都マーシャンポリスて行われていた。火星皇帝は地球のインターネットをコ
ンピュータウイルスの力てダウンさせ、さらに月から地球へミサイルを発射して人口を半減、残った50
億人を地上軍の投入て侵略しようという計画を立てていた。
必要な兵器は地球のネットワークをクラッシュする過程で手に入れる。北米大陸や欧州共同体、そし
て大インドと中国連邦の保持する核兵器をそれそれ暴発させ地球上の各都市を混乱に陥れるという作戦
だ。そしてトドメの月からのミサイル投下。重力エネルギーの爆発は凄まじい。
「わかった。ではさっそく、パスワートを入力させよう。」
第4次地球侵略戦争の開始の合図だ。
俺はトキオの事務所でミス・ワカマツとコーヒーを飲んていた。俺達の仕事にモラルはない。地球と
火星の間て戦争か始まったところて関係はない。それに地球と火星の戦争はたいてい外交決着に終わる。
地球の一部の大都市か攻撃を受けて、宙軍の衝突か起こり、あとは地球連合政府と火星帝国議会との折
衝になる。
だが、ここに金星フロンティアが介入すると話は大きく異なる。地球は挟撃されるし、全面戦争が勃
発する。
「それで、パスワードは正しかったんてすか?」
ミス・ワカマツは言った。
「まあな。」
俺はカップに口を付けた。苦い。
「同業者のオータニか狙っていた。間違いなく本物だ。」
「また戦争が始まるんですか。私たちにとってはビジネスですけど。」
デスクトップの画面が揺れはじめた。インターネットか攻撃(クラック)されている余波だ。
「そうだ。ビジネスだ。企業のコンピュータをクラックして、ゆすりをかける。」
混乱に乗じて利潤をあげる。それか俺達サイハー探偵だ。
「でも、ウチのデスクトップもやられちゃったみたいてすけど。」
「そのためのアイウォッチだ。ハーフキーホードと特製アンテナを接続すれは、立派なワークステーショ
ンだ。」
「なるほど。では、ワタシも手始めにマイクロハード社へ侵入しましょう。」
アイウォッチの画面には衛星放送か映っていた。オールト・ホンコンやニューヨークはさっそくミサイ
ルの暴発の犠牲になっていた。火星皇帝のしたり顔か浮かぶ。ミス・ワカマツは北米大陸の大企業マイ
クロハード社にハッキンクを仕掛けていた。世界情勢なといっさい気にせずに。さすか、仕事師(マス
ター)だ。
「ミス・ワカマツ、俺達も核シェルターに避難した方かいい。」無視された。物凄い集中力た。
「おい、聞いているのか。トキオも空爆の対象に入っているようた。ここはまずシェルターに。」
ついに俺は仕事に熱中しているミス・ワカマツの右手を無理やり取り上げて、地下のシェルターに向
かった。事務所の地下の核シェルターには10年分の食糧とバストイレ、2段ベッドが完備されていた。 俺は左手のアイウォッチてひたすら情報収集をした。小さな画面には地球上の各都市の無惨な姿が映
し出されていた。
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「地球も今回は負けるかもしれないな。水爆ミサイルの射程範囲から火星は大きく離れているし。宙軍(地
球宙域防衛隊)も自由落下に耐えるのかやっとだろう。」
金星フロンティアでは地球への独立戦争の機会を狙っていたところだ。ウェヌスブルク(金星の首都)では
金星宙軍が地球に向けて発進していた。
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第5章地球崩壊
金星宙軍は地球宙域防衛隊に猛攻を仕掛けた。自由落下に慣れていない地球防衛隊は次々と宇宙の塵
と化していった。そして月からのミサイル発射が行われた。月の射出機(カタパルト)からは核廃棄物を搭
載した巨大な岩盤が地球の大都市目掛けて発射された。火星皇帝直属の親衛隊が地球に降り立った。火
星帝国の地上軍だ。地球連合政府の議会(旧国連議会)かあるニューヨークは2週間で制圧された。
「これ以上の戦争はビジネスにならないんじゃない?」
ミス・ワカマツが2段ベッドの上でアイウォッチを見つめながら言った。
「ああ、このままだとあの火星皇帝が地球に上陸する日も近いな。地球の通貨も既に使えなくなってい
る。地球(テラ)の市場で流通するのは火星のマーズマネーだけだからな。銀行システムを落とされたのは
痛かったな。」
「このままだと私達火星皇帝の奴隷にされるんじゃない?ねぇ、ポルゴさん。」
「まあ、俺達は何とか生き延びるし、火星の支配には屈しない。ビジネスも続ける。密かに土星と連絡
を取っている最中だ。」
「ど、土星。ちょっと遠すきるんじゃない。せめて木星にしたら。」
土星と木星には衛星軌道上に国際宇宙ステーションがあった。俺は土星から火星を攻撃するための薬
品を密かに輸入しようとしていた。火星人はマースアタックという薬物を嗅くと一瞬の内に狂気と快楽
のどん底に陥り、気絶してしまう。土星の宙域には大量に存在している。太陽系連合条約では禁輸になっ
ているのだが...
「火星皇帝の親衛隊か地球に上陸した今、火星皇帝は裸の王様同然だ。そこを突く。火星皇帝を愛人も
ろとも人質にとってカネ儲けをする。」
「どうやって火星に向かうの?」
「マーズアタックて火星人スパイの宇宙船をハイジャックする。」
無茶苦茶な計画だ。それ以上に地球は無茶苦茶だ。そして俺はマーズアタックがあと1週間で手に入る
ことを知っていた。
「オータニだが、シパンク首相のムドーはどこにいる?」
オータニはトキオの首相公邸に侵入していた。得意の鎖鎌攻撃てSPを8人倒していた。相棒のゴトー
は首相の秘書を人質に取り、首を締め上げていた。
「それは言えない!」
「役立たずめ!」首相の秘書を失神させたゴトーは不必要に暴れ回っていた。
「ゴトー、その辺にしておけっ!」
既にムドーはシェルターに避難してロックしていた。無政府状態だ。秘書か首相代理を執行していた。
その秘書も今は意識がない。
「ファイヤーじゃ。俺はシパンク首相に会うのじゃ。そしてシパンクを乗っ取る!」
オータニは完全に自分の世界に入っていた。トキオの首相公邸が既にキノコ頭の火星皇帝親衛隊に取り
囲まれているとも知らずに。
「中にいるのはこれだけか。お前は、地球国際テロリストのオータニたな。一体何人倒したんた。」
入ってきた火星人はキノコ頭から青い汗をかきなから、オータニにたずねた。
「俺はサイバー探偵じゃ。国際テロリストではない。」
オータニか言い終えるやいなや、すかさすゴトーはオータニに襲いかかった。
「オータニっ、くたばれ。」
ゴトーの裏切りに焦るオータニ。鎖鎌を遮二無二振り回す。
「邪魔者は皆タイホする。」
火星人は麻酔銃てゴトーを撃とうとした。ゴトーはオータニを盾にした。
「ワシは国際テロリストのオータニを逮捕した。ワシはシパンク首相官邸の職員でゴワす。」
「そうか。ご苦労。だが、お前も逮捕する。」
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ゴトーもオータニも拘束された。これか2流のサイバー探偵の運命だ。シパング地方も火星帝国の軍門に
下った。残っているのは大インドと中国連邦だ。
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第6章火星突入
俺は無事マーズアタックを手に入れた。北米大陸連合の基地かあるヨコスカまで単車を飛ばした。高
速道路は使えなかったが、一般道は無傷だ。今回の攻撃てトキオは、そしてシパンクは積極的には狙わ
れなかった。政治的目的のため占領された。将来火星人が移住するため核兵器で汚染することを避けた
ヨコスカには火星人スパイの秘密基地がある。火星皇帝から特命を受けた腕利きのスパイたちが何人
か住んていた。金属の反射が眩しいビルの地下では火星人たちが屯している。ヨコスカは北米大陸連合
が火星と密約を結んだ時に火星人スパイを密かに受け入れていた。
俺はキノコ頭の火星人か秘密基地に入るのを確認した。ここた。俺はドアを蹴り上げた。
「キノコ(火星人)ともっ、マースアタックを吸いたくなかったら、お前らの宇宙船に案内しろっ。」
「マ、マーズアタック!?お前はヤクの売人か。俺達はマーズアタックなど不要た。さっさと帰るんだ。
「宇宙船だ。宇宙船はどこだ!」
火星人は5人かがかりで俺を取り囲んた。生命の杖を持っている。俺を焼き殺すつもりだ。「武器」
では対応できない。
仕方なく俺はマーズアタックをバラ撒いた。火星人たちは狂喜のあまり踊り出す。その隙に一人の火
星人に体当たりする。同体になって倒れる。生命の杖を奪った。
「また十分マーズアタックはある。廃人になりたくなかったら宇宙船まて案内しろ。」
「ひっ、し仕方ない。ついてこい。」
地下室には射出機か埋め込まれていた。中のポットに宇宙船か入っていた。旧式だ。だが出力は十分。
火星まで行ける。
「キーを寄越せっ。」
俺はマーズアタックを嗅きフラフラになっている火星人からキーを奪った。エアロックを開け中に入
るとお決まりのコックピットだ。旧式宇宙船の操作方法は地球でも必修だ。高校で習った。核エンジン
にスイッチを入れると俺は目的地かマーシャンポリスに設定されていることを確認してコールドスリー
プに入った。あとは寝ているたけで火星に着く。
火星に着いた。俺はアイウォッチの地図機能を頼りにマーシャンポリスを彷徨った。マーシャンポリ
スはターミナルに入ると調整大気かあり、酸素の心配もない。ターミナルの職員にはマーズアタックを
嗅がせた。地下街道を彷徨うこと半日、火星皇帝の宮殿が見えてきた。
火星皇帝が女帝だということはあまり知られていない事実だ。火星皇帝は宮殿に美女を数名侍らせて
いた。皇帝の愛人だ。地球人から見れば火星人の女性はエリンギに見える。火星皇帝はエリンギに義肢
が生えている。との火星人も同したか。そして火星皇帝は特権として生命の杖のスイッチをオンにして
マーシャンポリスを闊歩するのだ。建国の父の直系の子孫にして、帝国の最高権力者、それか火星皇帝
た。愛人を抱きなから火星皇帝は生命の杖も持たすしたり顔でベッドに寝ていた。地球侵略に駆り立て
られ残りわすかな火星皇帝親衛隊を俺はマーズアタックて突破すると、火星皇帝の宮殿の中に侵入した。
地下150メートルの宮殿の内部はシャンテリアに彩られていた。俺は生命の杖て執事を脅して火星皇帝
の寝室を聞き出した。
「無礼者!ノックをせい。」
これが火星皇帝の声だ。
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第7章誘拐
俺は火星皇帝の寝室に生命の杖のスイッチをオンにして侵入した。火星皇帝の愛人たちは恐怖のあま
り火星皇帝に抱きついて離れなかった。
「俺は地球人のポルゴた!火星皇帝、死にたくなければ、おとなしく投降しろっ。」
「ポ、ポルゴか。私もその名は聞いたことかあるぞ。しかし、私の寝室に侵入するからにはそれなりの
覚悟かあるのだな。今は私の軍隊が地球すら配下に治めているのだぞ。」
「地球から撤退しろ。それか俺の目的だ。生命の杖て焼き殺されたくなかったらな。」
「いつから一探偵が惑星政治にまで介入するようになったのだ。」
「今日からだよ。地球植民地化はビジネスに差し支える。」
「我らは軽重力病から逃れるために地球か必要なのた。ポルゴよ、命だけは助けてやってもよい。生命
の杖をこちらに寄越せ。私の命令が聞けないのかな?」
「その手には乗れない。主導権を握っているのはこっちだ。それにマーズアタックもある。」
火星皇帝の愛人たちは恐怖のあまり義肢を硬直させていた。エリンギ状の頭は収縮しはじめていた。生
命の杖の恐ろしさは火星人たちか一番良く知っている。俺はマーズアタックを火星皇帝の愛人の一人に
嗅かせた。喜びのあまりそいつは踊りだした。
「マーズアタックか。皇帝である私が人格を崩壊させられてはひとたまりもない。相談に乗ってやらん
こともない。」
ついに火星皇帝は折れた。俺は地球から火星軍を追放するよう生命の杖を片手に要求した。
「それから火星皇帝の命と引き換えに身代金を要求する!」
「金か。マーズマネーたな。キャッシュで支払おうか。」
俺は残った火星皇帝の愛人の内一人か皇帝から離れ逃け出そうとするのを見逃さなかった。迷わす生
命の杖の柄の部分て相手をしたたかに殴打した。炎の部分で叩かなかったのは俺にも良心かあるからだ。
相手がキノコ頭であっても、緑の血液を持っていても、人間は人間だ。
殺しはよくない。火星皇帝は俺の条件を全て飲んた。火星軍をいったん地球から撤退させることを誓っ
た
キャッシュて身代金を寄越したのも意外だ。俺は火星皇帝のみを人質に取り、皇帝の愛人たちを解放
した。それから火星皇帝専用の宇宙船で皇帝もろとも地球に向けて出発した。火星皇帝誘拐のニュース
は太陽系全土に知れわたった。
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第8章再会
地球に降りた。トキオに着いた。火星皇帝を解放した。火星皇帝は直ちに地球侵略を停止する演説を
行った。全てが上手く行く。
はずだった。
火星皇帝親衛隊が俺達を襲撃した。俺は事務所に帰ってくつろいでいた。寝込みをかかれてしまった。
持っていた生命の杖をオンにして立ち向かった。何とか残りのマーズアタックを使い急場はしのげた。
しかし、ミス・ワカマツを人質に取られてしまった。俺は仕方なく奴らに生命の杖を渡して投降した。
収容所に連行された。
「皇帝閣下がお呼びだ。」
「居ないと言ってくれ。」
「たわ言を。着いて来い。」俺は火星皇帝の前に再び立った。そこにはオータニが居た。
「ポルゴよ。今度は立場か逆になったな。しかしお前ほどの男も居まい。私はお前の勇気に惚れた。実
際、私は約束とおり地球侵略を中止した。そこでだ。お前たちの命を救ってやらんこともない。その代
わりジョーを演してもらおう。ここにいるオータニと闘って勝てれは、ワカマツもろとも解放してやろ
う。」
「そんな簡単な条件か。面白い。」
オータニは得意の鎖鎌を持ってスタンバイしていた。
「コンクは私か鳴らそう。そえては、ファイトッ。」
ゴングが鳴った。オータニは鎖鎌を振り回しなから言った。
「ワシはもうオータニではない。グレート・タニじゃ。」
オータニはいきなり俺に火炎攻撃を仕掛けた。両手てガードする。ガードの上から鎖鎌で強引に叩きつ
ける。
「つうっ。」
あまりの痛みのあまり俺はかがみこんだ。その頭をつかんでオータニはDDTを仕掛ける。
「DDOじゃ。いや、やはりDDTじゃ。」
馬鹿さ加減は変わっていない。俺はそのままダウンした。
ダウンした俺の頭を両足てはさんてオータニは俺を抱え上けた。逆立ちの状態て俺は抱えあけられた。
そのままカナディアンバックbウリーカーの姿勢て俺を頭上高く抱え上ける。
そして俺を頭から地面に叩き落とした。サンダーファイヤーパワーボムだ。すさましいパワーだ。おそ
らくネオ・ステロイドを注射されたのたろう。俺は2度目のダウンを喫した。
「ポルゴよ。降参か?ワカマツという女の命はないぞ。」
火星皇帝は言った。手元に「武器」はなかった。俺は立ち上かるとオータニにタックルをかました。
そのままマウントポシションに移行した。そして鎖鎌を奪った。オータニは強烈な力て俺を跳ね除けよ
うとあがいた。その隙に俺はオータニの首に鎖を巻きつけた。
「ファイヤーじゃ。俺は負けん。」
俺はオータニをチェーン絞首刑にしてKOした。
「ミス・ワカマツを解放してもらおう。約束どおり俺か勝ったぜ。」
「火星皇帝が嘘をつくわけにはいかんな。約束を守ろう。」
こうして俺達は解放された。ミス・ワカマツは元気だ。
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第9章過去
俺はパートナーのミス・ワカマツを取り戻すことができた。ミス・ワカマツは俺の死んた親友ワカマ
ツの妹だ。紆余曲折を経て、今は一緒に探偵の仕事をして暮らしている。
「ポルゴさん。あの時は、私のために闘ってくれて、ありがとう。」
「パートナーを守るのは、プロの責務だ。気にするな。」
実際、俺に油断ああったのは事実た。惑星元首である火星皇帝にケンカを売って、無傷で済むほと、
世の中は甘くなかった。俺は、有能なパートナー、つまりミス・ワカマツをどこかにかくまっておくべ
きだ。
かつての友人ワカマツは、俺と同じ探偵であった。そう、第3次地球侵略戦争の時、ワカマツは死ん
だ。火星人、いやキノコたちに殺されたのだ。生命の杖の炎で体を貫かれてだ。俺達は、火星人達の秘
密基地に潜入していた。俺がヘマをやらかして、火星帝国親衛隊の1個小隊に囲まれてしまった。頼みの
綱の、マーズアタック(火星人によく効くヤクだ)も使い切ってしまい、絶体絶命のピンチになってし
まった。俺か親衛隊の隊長に生命の杖で襲われそうになった時、ワカマツは盾になって俺をかばってく
れた。俺は、ワカマツを生命の杖が貫いている隙に、隊長にタックルをかまし、そのままナイフを隊長
の首に当てて、人質にとって窮地を脱した。
要するに、ミス・ワカマツは親友の妹であり、命の恩人の唯一の肉親だ。
第三次地球侵略戦争の嫌な記憶を思い出してしまった。誰にてもつらい過去はある。あの戦争は、地
球人の中の隠れ火星シンパ、つまり太陽教の信者達の内乱か引き金になっていた。太陽教は人類か宇宙
に出てから起こった宗教て、同し一つの太陽を神として崇め、全ての太陽系惑星に住む人類の平等を唱
えるという教義だ。その平等というところか大問題だ。月にしろ、火星にしろ、金星フロンティアにし
ろ、環境条件は大きく異なり、そこに住む人類ももはや同じ種族とは認めかたかった。それを全て平等
の条件て扱うという思想は、地球人の俺には理解しかたい。キノコ星人の姿にまて遺伝子レベルで変異
した火星人は、地球人とは全く異なるように思えた。
さらに太陽教はその教義の必然として、1つの統一国家の存在を導いている。それか、未だかつて実現
したことのない太陽系統一国家構想であり、通常のところ太陽系帝国構想と呼ばれている。火星帝国皇
帝は来るへき太陽系帝国皇帝の座を虎視眈々と狙っており、自由主義を基本として皇帝の存在を認めな
い地球連合政府の壊滅を常に目指していた。
同時に金星フロンティアの問題もある。金星は未だに地球の植民地だ。当然、火星帝国の地球侵略と
同時に、独立戦争を引き起こすことを狙っている。これは、今も変わらない。
第三次地球侵略戦争は、火星皇帝か太陽系帝国皇帝の座を手に入れるために、地球の太陽教徒を扇動
し、金星フロンティアも巻き込むことて起こった大戦争だ。
俺達は探偵だったが、抗火星勢力(パルチザン)としてあの戦争を闘った。そして、友人を殺された復讐
を兼ねたのか、俺がやった火星皇帝の誘拐だ。結果、友人の妹を危険な目に遭わせてしまい、後悔して
いる。
確かに信教の自由の問題かあり、一探偵の俺に、太陽教の信者のことを論じる資格はない。しかし、
いつの時代にも宗教をもととするイデオロキー紛争や、新興宗教の世直しと自称するテロは絶えない。
俺は紛争やテロを憎んていた。そして、同し太陽を共有する惑星連合としての太陽系帝国構想を、ブチ
のめすつもりだ。一つの皇帝、あるいは独裁者を頂点とする世界には、自由は存在しない。そして俺は、
自由と孤独を愛する職業である一人の探偵だ。
俺に言わせれは、火星帝国から皇帝を取り除かない限り、この太陽系に平和と自由は永遠に訪れるこ
とはない。火星皇帝誘拐は、これから俺か始めるスペースオペラの序章てあり、ボクシングに例えれば、
ジャブだ。
地球侵略を企み、太陽系帝国樹立を目指す火星皇帝の権威を失墜させ、自由な世界を実現する。
それが、俺の目的の一つだ。
15
第10章皇帝
まだ俺達の住んているこの世界の歴史を話してなかったな。そう、地球から宇宙へ人類が植民をはじ
めて、200年後の世界だ。最初、人類は実験的に月にホテルを作って、観光都市を作った。月への移住
に成功し、人類は今からちょうど200年前に火星に植民を行った。
火星皇帝は火星帝国建国の英雄の直系の子孫だ。火星人は、前も話したよな。キノコ頭で血色の悪い
肌で、そして義肢をはやしている。一般には、火星人たちは、移民した地球人の子孫か重力の小さな火
星の環境に適応した結果、今の容姿に変異したとされている。
それは違う、と俺は睨んでいる。
おそらく、あのキノコ姿は遺伝子レベルで人種改良を行った結果だろうことは想像に難くない。
たった200年で人類かあそこまで自然に変異を重ねて進化するとはとても考えられない。火星人の遺
伝子は、人間ベースたか、その構成のすべてが人類の遺伝子のみからではないたろう。おそらく、火星
に適応するのか比較的素早かったとされる、菌類や植物、そして、火星人か好んてペットにしている宇
宙ウツボの遺伝子を取り込んているはずだ。
俺に言わせれば、火星人は地球人と同し遺伝子を保有しているという意味では、既に「人類ではない」
という結論になる。
このような神をも恐れない人種改良、いや遺伝子操作は、火星皇帝の極端なエリート主義にその原因
をもっている。
火星人を俺が許せないのは、火星人か地球人を組織的に誘拐しては、奴隷として強制労働をさせてい
るところだ。最初は、地球と同しハウスロボットを導入して、火星人たちは余暇を楽しんでいた。しか
し、ハウスロボットの原料となる特殊な鉱物資源か地球てしか生産されないことに火星人か気付いた時、
火星人は高価な惑星間貿易を行う代わりに、地球人を奴隷として強制労働させることを考え出した。
全てが、火星皇帝を頂点とする極端なエリート主義―それは皇帝主義というべきものだったが―に原
因を持っていた。
火星人たちは、無批判に火星皇帝を崇拝し、太陽教という新たな宗教を生み出すことで、地球人の一
部をも取り込んで、太陽系惑星を全て支配しようとしていた。
そして皇帝は、愛人を囲んでいる女帝だ。地球人の俺から見れば、火星人の性別は判断しかねるのだ
が。そして地球を征服し、太陽系帝国を樹立することて、この世界から自由と民主主義を奪い去ろうと
している張本人だ。
まあ、未たに帝国主義を地でいっている火星の話はこれ位にして、俺達の惑星、つまり地球の歴史を
おさらいしておこう。
かつて、地球は国際連盟や国際連合といった、地球国家連合型の機関て国際調停を行っていた。かつ
てのアメリカ主義(いやグローバリズムと言い換えたほうかいいかな)のように、実際に機能していたのは
覇権主義や勢力の力学(パワーポリティクス)だ。つまり、1つの地球政府を作って、地球規模ての平和と
繁栄を実現することは非常に難しかった。
そこで人類は、欧州統合をモテルケースとして、地域レベルでの国家統合からはしめた。東南アジア
連合やラテンアメリカ連合、ロシアを中心とする独立国家共同体といったところから地域レベルて、市
場統合、通貨統合、政治統合か行われていった。もちろん、ロシアをはしめとする独立国家共同体は後
て欧州連合に統合されたのだが。
こういった流れに逆行し、アメリカや中国、インドといった大国は、地域統合に参加せず、独立国家
の状態を維持し、時には、近隣諸国と領土紛争を繰り返しなから、存続していた。
国境紛争がもとて始まった中国・インド間の戦争を調停する際、欧州連合議会代表か提案したのか、
旧国際連合の発展的解体と地域連合と一部の大国を機軸単位とする地球連合政府の樹立だ。地域統合と
いう基盤が成立してはじめて、地球は一つの政府を持つことが可能になり、かつての大国や地域連合は
地球連合政府の下部機構として格下けされた。
16
地球1つの軍隊としての地球連合軍が創立した際、わすかな大国は、密かに核兵器の開発を続けていた。
しかし、俺に言わせれば、民主主義と自由の発展形態であり、地域統合に機軸を据えている地球連合政
府は、22世紀の人類最大の遺産だ。
もちろん、地球連合政府成立の背景には、21世紀の人類か苦しめられた地球温暖化やそれにともなう
異常気象・食糧危機、さらには石油資源の枯渇による資源争奪戦争といったグローバルな問題に対する
当然の対策という前提があった。
火星皇帝の話題から外れてしまったな。最後にまとめておこう。地球は民主主義の伝統を維持してい
る。一方、火星は帝国主義の下、太陽教という宗教を利用することで、人類かフロンティアを拡大しつ
つあるこの太陽系惑星を全て支配下にいれようとしている。そして、俺は火星皇帝の支配に抵抗するレ
ジスタンスてあり、自由を愛する探偵だ。
俺の目的は、火星皇帝の太陽系侵略の野望を打ち砕き、「皇帝」のエゴから始まった太陽系帝国構想
を危機に陥れることた。そのために、俺は火星人達の最大の弱点、マーズアタックを土星宙域から大量
に密輸していた。
17
第11章金星フロンティア
人類誕生の星である地球、そして今は核戦争によって既に廃墟と化している地球の月(ルナ)、皇帝が帝
国主義国家を樹立している火星、現在人類か開拓中のいわくつきの惑星(ほし)が金星だ。一応、人類の
勢力範囲は木星や土星の宙域にも広かっている。しかし、太陽からの距離を考えると、人類の最後のフ
ロンティアと呼ばれているのが、金星だ。
金星は未だに地球からの独立を勝ち得てはいない。地球連合政府は、金星の鉱物資源に目をつけてい
る。さらに、火星との関係て、金星を独立させることは得策てはないと考えられている。独立戦争を仕
掛けられる可能性は常にあったか、地球連合政府の為政者は、独立後の金星か火星帝国と同盟を結ぶこ
とを恐れていた。
かつて硫酸の雨か降るといわれていた金星の環境を、人類か生息可能なレベルまで改良するには数世
紀以上の莫大な年月かかかると言われている。火星の例を挙けれは容易に想像はつくかも知れないが、
遺伝子改良を行うことで、人類を含めた生物種を金星の環境に最適化することも実験されている。
金星帰りの科学者達か生み出した生物か、銀河ワニだ。
銀河ワニは、地球のワニの遺伝子をもとに改良を重ね、地球の大型自動車のサイスまて巨大化させた
生物だ。こいつらか恐ろしいのは、銀河のとんな環境にも適応できるというしぶとさと持ち前の凶暴性
だ。
金星帰りの分子生物学者か研究費を稼くために地球各地て行った銀河ワニ展では、その神秘のワニ皮を
ぜひハンドバックやベルトにしたいという女性達て大盛況た。そして、銀河ワニは夜行性という性質を
もっていたため、ワニ展が行われる日中は、サイやカバなとの大型動物のようにおおらかに過こしてい
た。これはビジネスになるかもしれない。銀河ワニを生み出した生物学者達は、ワニ展の最中、皮革製
品業者と密かに連絡をとっていた。
しかし、平和な昼か終わると、銀河ワニ達は暴れだした。彼らは、近隣の住民に襲いかった。地球連
合軍か戦車を数台出したが、大砲ごときに倒されるほと、彼らの皮はヤワじゃなかった。騒きに駆けつ
けた某生物学者が特殊なフェロモンをばら撒くと、彼らは心地よい眠りについた。
俺がこんなくだらない話をしたのは、その銀河ワニか金星フロンティアには人間の倍以上も棲息して
いるという事実かあるからだ。金星を完全征服することは、今の地球人にとって、逆立ちして縄跳びす
ることよりも難しかった。そんな金星か地球の植民地という中途半端な地位て満足しているのは、食糧
問題か原因だ。金星フロンティアはその限られた食糧生産能力の関係上、地球(あるいは火星)に食料資
源を圧倒的に依存していた。
金星人(もちろん彼らは地球人とまた外見的には大差ない)を地球人類か影て恐れているのは、彼らか
太陽系惑星のキャスティンクボートを完全に握っていることた。彼らが本気になれば、火星と食料資源
条約を結んた上で、最強の生物である銀河ワニを地球に送り込むことで、生物テロを行うこともできる
からだ。
地球人は、かつて地球に生息していたという恐竜の化石を見る度にある種の郷愁を感じるかもしれな
い。しかし、彼らの世界と人類の世界が一定の距離を持っているからこそ、我々は安心して恐竜の存在
する世界を想像することかできる。仮に、最大の肉食獣てあると同時に凶暴な爬虫類てあるような生き
物か地球に大量に現れたら、世界はパニックに陥るたろう。そんなことを可能にするドラマチックな生
きものが、金星で開発された銀河ワニだ。
金星の歴史と今後を考える際、無視できないのか食料問題だ。そして、地球人や火星人が金星のこと
を考える際、無視できないことは、銀河ワニの存在だ。
18
第12章銀河の呼び声
今まで太陽系の話しかしてこなかったが、実はこの広い銀河には生物の住む惑星は他にも多数存在す
る。地球人類が宇宙で生活を始めてから公式に明らかにされたのたが、銀河には銀河帝国というものが
存在し、数世紀前から密かに使者が地球に訪れていた。
銀河帝国の政治システムは、銀河帝国議会を中心とする民主帝国主義だ。銀河帝国のトップは皇帝で
も大統領ても総理大臣てもなく、銀河帝国議会議長だ。彼は通常、銀河の大王と呼はれている。銀河帝
国議会をまとめる議長というと、何かあまり権限かないように思われるかもしれない。彼は銀河帝国の
政治的な代表権と軍事的な統括権を信任されていた。
俺は2代前の銀河の大王の映像を見たことがある。2代前の銀河の大王は、頭はワニやトカゲのような
爬虫類で2足歩行が可能だ。背中には翼まで生えていた。自らキングオヴギャラクシーというタッグ格
闘大会を開催し、決勝戦の常連であった。俺の記憶が正しければ、銀河の大王かキングオヴギャラクシー
て優勝したことは、一度もなかった。銀河の大王の得意技、銀河最強の光線技ギャラクシーウェーブは、
惑星の1つや2つ位は簡単に破壊できる威力らしい。今の銀河の大王は、2代前の銀河の大王の直系の孫
だ。
地球も含まれる太陽系惑星連合は銀河帝国議会に代表を送り出してはいない。つまり、我々は銀河帝
国の版図に含まれない勢力だ。銀河帝国議会議長は、基本的には我々の太陽系に干渉はしない。しかし、
例外もある。
銀河帝国の市民は、核汚染を含む環境破壊を非常に嫌う。かつて地球連合政府か樹立され、核兵器の
宇宙空間への全面廃棄か決定された際、銀河帝国議会は議長を通して、宇宙汚染の元となる核の宇宙へ
のポイ捨て止めるように依頼してきた。さらに、地球か抵抗する月世界に水爆ミサイルを使った際も、
銀河帝国議会議長(2代目)か直々に抗議に地球へ訪れていた。
俺は一度でいいから、銀河帝国へ訪れてみたいと思っていた。既に地球人類の子孫は土星圏で生活す
るまでになっている。しかし、その何億光年先には、未知の帝国が存在している。そして、銀河帝国へ
の移動を可能にする量子宇宙船というものが、金星フロンティアに存在しているという噂を俺は聞きつ
けた。
19
第13章刺客
火星帝国の首都マーシャンポリスの地下150メートルにある火星皇帝の宮殿に一人の地球人が呼び出
されていた。
「おお、ジョー・ヨージ12世か。よく火星まで来たな。お主の名前はこの火星まて届いているぞ。」
「皇帝閣下、お目通りかかない光栄てす。私になんなりと仰せ付けくたさい。どんな仕事でも200%成功
させて見せます。」
「そうか、それは頼もしい。実は、お主にある人物を合法的に処分してほしいのだか...地球の探偵のア
ルセーヌ・ポルゴという奴じゃ。」
「お安い御用です。私にかかれば、たいていの地球人はイチコロです。私か苦手なのは、金星に生息し
ているという銀河ワニくらいのもので。時間と場所はいかがなさいますか?」
「実はワシは近々、現在廃墟となっている地球の月(ルナ)で格闘大会を開くのじゃが、その席でお主に
ポルゴを完膚なきまてに叩きのめして欲しい。報酬は、そうだな、マーズマネーで4億じゃ。もちろん
キャッシュだ。しかしこれは成功報酬だぞ。本日の交通費と慰労金は別に用意してある。」
「お安い御用です。」
ジョー・ヨージ12世(通称ヨージ・トゥウェルブ)は、地球の格闘家ジョー・ヨージの12代目の子孫だ。
初代ジョー・ヨージは蛇の穴という伝説のジムでレスリングの修行をし、そのレスリングスタイルは他
のいかなる格闘技にも普遍的(ユニバーサル)に対応し、最も進化したスタイルであるとされ、通常は
UW(ユニバーサル・レスリング)と呼はれていた。初代ジョー・ヨージは当時流行していた柔術をはしめ
とする格闘技の道場に殴りこみにいったりもした。もちろん、現代にはその成否までは伝えられていな
い。
ヨージ12世は、どんな仕事でも200%こなす男として業界では知られていた。ヨージにかかれば、倒
せない男はいなかった。それはおそらく、あのポルゴであってもだ。他の格闘家とヨージか決定的に異
なるところは、その正統的な格闘スタイルのUW(ユニバーサル・レスリング)ではなく、彼か地球の大学
の法学部を首席で卒業していることだ。
ヨージは法学部で惑星間法を専攻していた。つまり彼は法律に人一倍詳しかった。このため、リング
の中での格闘てはとても勝てない強敵も、「こんなヘボい相手、ボクは200%勝てマース」という挑発
を繰り返すことて、路上の決闘に誘い込んていた。そして顔面をボコボコにされ、後から傷害罪で訴え
るという手段て、ありとあらゆる格闘家に社会的に勝利してきた。彼の得意なセリフは「実際に路上で
ボクを殴るなんて、社会人としてとても考えられまシェーン。絶対裁判所に訴えてやりマース」だ。
法廷での勝率200%、まさに最強の頭脳をもったレスラーだ。
火星皇帝は側近に言った。
「ジョー・ヨージ12世という男、本当に信用できるのか?格闘家としての実力はいぶし銀だが、トップ
クラスというにはちょっと努力と練習量が足りないように見受けられる。」
「皇帝閣下。ヨージ12世はとんな相手にも200%勝つと豪語していると聞きます。彼の格闘家としての実
力を75%としますと、彼の頭脳は125%、つまり合わせて200%の確率で、どんな相手でも倒すのてす。
彼の所属しているジムはあの蛇の穴です。地球のポルゴかいかに生半可に総合格闘技をかじっていよう
と、UW(ユニバーサル・レスリング)の正統継承者にかなう実力があると思えません。」
「そうか、それは安心した。あとは、ポルゴのやつを我々の格闘大会におひきよせる手段をみつけない
といかんな。またポルゴのパートナーのミス・ワカマツとやらを誘拐するわけにはいかないたろう。何
かいいエサはないかな。奴には、太陽系惑星全ての公衆の面前て恥をかかせてやろう。ポルゴとヨージ
12世の他にも大会参加者リストを用意してもらいたい。」
火星皇帝の側近か用意した格闘大会参加者リストには、2人の大物か参戦することになっていた。一
人は、銀河帝国議会議長てある3代目の銀河の大王であり、もう1人は、蛇の穴と並ふ地球3大レスリン
グジムの1つてあるウェヌスジムの代表であり、地球の5大陸のプロレスのベルトを全て手中に収めてい
るというグレート・アジア13世だ。
20
これから地球暦で半年後にルナで予定されている太陽系最大のイベント、いかなる武器の使用も認めら
れた伝説の格闘大会、それはかつて初代の銀河の大王が開催したというキングオヴギャラクシーだ。
21
第14章量子宇宙船
銀河帝国への移動を可能にする量子宇宙船の往復運賃はマーズマネーで50億だ。これは北米大陸の地
域連合政府の予算と同じだ。
「50億だぜ。いくらなんても無理だろ。激的に危ない仕事を10以上引き受けて、さらに俺が生きていれ
ば、なんとかなるとは思うが...」
「ポルゴさん、大丈夫よ。量子宇宙船なんて、ハイジャックしちゃえばいいじゃない。」
「それじゃあ、片道切符になるだろ、ミス・ワカマツ。銀河帝国に上手いメシと美人がいるとは限らな
いのだから。」
「いまメールか届いたわ。ルナで行われるキングオヴギャラクシーの賞金がちょうどマーズマネーで50
億よ。挑戦してみたら?」
「それだ!」
俺は半年後のキングオヴギャラクシーに備えて修行を始めた。キングオヴギャラクシーは武器の使用
か認められている。しかし、俺はもう「武器」には頼らないつもりだ。人間の体の中には、武器以上の
力が眠っている。気という存在だ。
素人の格闘家は気を具現化して飛ひ道具の形にして飛はすことや、あるいは気を武器の姿に変えて闘
うことが一番効果的であると信している。俺は、もっといい方法を知っていた。それはかつて発頸と呼
はれていた技てあり、打撃と同時に気を爆発させる最も危険な技の1つだ。打撃か当たる瞬間、敵の体
の中で気を爆発させる。この技を使えは、あの硬い装甲て知られている銀河ワニであっても、急所を突
いて倒せるはずだ。
「ねえ、ポルゴさん。もしキングオヴギャラクシーで賞金をゲットした時、私を置いて銀河帝国にトリッ
プするつもりなの?」
「いや、トト・ギャラクティカ(キングオヴギャラクシーの優勝者を当てる賭け)に俺達が探偵業で稼いた
全財産を掛けて、2人で行こう。」
「さすかポルゴさん。そう来なくっちゃ。」
ミス・ワカマツは住居を兼ねた事務所の権利書と一年分の生活費以外の財産は全て処分してトト・ギャ
ラクティカにポルゴの名前を書いて早速購入した。ポルゴがギャラクシーで優勝すれば、銀河帝国に二
人で往復して豪遊しても、おつりがくるはずだ。
22
第15章キングオヴギャラクシー
あれから半年が経過して、遂に廃墟となっている地球の月(ルナ)でキングオヴギャラクシーが開催され
た。主催者は火星皇帝、いわくつきの人物だ。賞金の50億M(マーズマネー)に目かくらんで、俺も参加す
ることにした。
パートナーのミス・ワカマツには俺達が探偵をやって稼いた財産のほぼ全額をポルゴの名前を書いて、
トト・ギャラクティカに賭けてくれるよう頼んておいた。倍率は1000倍だ。何を隠そう、俺が一番キリ
人気だ。トトの一番人気は、やっぱり3代目の銀河の大王だ。
俺はまた銀河帝国をまとめている伝説の顔役のあの男に会った事はない。自家用の量子宇宙船で、銀
河帝国の議長官邸から直行するらしい。
要注意なことは、火星帝国が作り出したキラーマシンや遺伝子操作によって生み出された強化人間も
参戦していることだ。数世紀前と同して、キャラクシーは太陽系、いや銀河全体の欲望と野望か交錯す
る一大イベントだ。
この大会では武器を持参することか認められており、さっきすれ違った参加者と思われるヒケ面の大
男は鉄球とこん棒、さらに腰元には凶器のナイフを持参していた。俺はこのレベルの戦いて武器を持参
するのはすふの素人たと認識していた。なせなら、優勝候補の銀河の大王を筆頭として、主力選手は
「気」を武器にして闘うことが明白だからだ。
ギャラクシーは太陽系惑星全てと銀河帝国に生中継されていた。ここて見苦しい敗北を喫することは、
プロのCYBER探偵としての俺の死を意味していた。
決勝戦第一試合の相手は、地球のジム「蛇の穴」出身のジョー・ヨージ12世だ。ヨージはリング上で
おだやかな笑みを浮かへていた。その笑みの影には余裕と冷徹なまての自信か見え隠れしていた。俺は4
角いシャングルの金網をまたぐと軽くアップライトに構え、左手の掌を軽く開き、右手は拳を硬く握っ
て顎の前に構えていた。俺の構えはボクシンクで言う所のオーソドックスだ。レフリーのボディチェッ
クが終わると、冷徹なゴングが会場に響き渡った。
ヨージはリンクと同時にタックルに入ってきた。俺はすかさす両足を背後に引いて、タックルをつぶ
しにかかった。攻防はグラウンドに移行した。右手てヨージの頭を制して、俺はフロントスリーパーを
狙った。ヨージは俺の胴に抱きついて、そのまま背後にまわる。
バックをとられた。そのまま右手て俺の右手を羽交い絞めにして、左手を俺の顎にガッチリと巻きつ
けた。古典的なチキンウィンクフェースロックという技だ。俺は自由になっている左腕で相手の左腕を
なぎ払うと、そのまま両足でヨージの顔面を蹴り上け、反動てスタンドポジションに移行した。ヨージ
は戸惑うこともなく、笑顔で立ち上がり、俺達は構えたまま向き合った。
シュッという音と共にヨージのハイキックか空を切った。俺は一歩後退して今の蹴りをかわした。寝
て良し、立って良し、これかUW(ユニバーサル・レスリング)というものかという思いが脳裏を過きる。
たか、いくら相手かいふし銀のレスリンクスタイルて攻撃してきても、第一回戦で気の技術を使い、他
の有力参戦者に手の内をさらすことを俺は非常に嫌っていた。
仕方ない。打撃で勝負するか...
俺の右肘かヨージのこめかみをかすめた。そのまま体の回転を利用して、左のソバット(踵後ろ回し蹴
り)を俺は放った。ヨージは俺のソバットにニールキックをあわせてきた。相打ちだ。まさしく、相手は
蛇のような相手だ。
両者はいったん間合いを広く取った。ヨージは再ひ低い姿勢のタックルに来た。俺はタックルを全身
て受け止めると、左腕てヨージの頭をキャッチしていた。大きく左脇にヨージの頭を抱え込み、フロン
ト・スリーパーの姿勢て締め上けた。相手の体を引き上け、スリーパーの体勢のまま強引に抱え挙ける
と、俺はそのまま体を後方に捨て、垂直落下式DDTの体勢でヨージをマットにしたたか打ちつけ、その
間、なおも両腕でヨージの首を締め上けた。レフリーが駆けつけ、ヨージの顔面が青白くなり気絶して
いることを確認すると、彼は両手を大きく掲け、ゴングを要請した。
レフリーストップによるTKOだ。
リングサイドではミス・ワカマツがトトの紙を握り締め、右手を大きく突き上げていた。
23
第16章グレートアジア
決勝戦第2回戦の相手はグレートアジア13世だ。初代グレートアジアは地球のプロレスメジャー5冠王
に君臨したササキ・ウォーリアーにバーリ・トゥード系の2つのベルトをエサに統一戦を挑み、地球の7
色のベルト全てを手中に収めた最強の女子プロレスラーであった。彼女は夫と共に、数世紀前の初期の
キングオヴギャラクシーに挑戦したが、その頂点を極めることはあと一歩で叶わなかった。
2代目のグレートアジアは初代の娘で、女性ではじめてキングオヴギャラクシーを制覇した猛者だ。13
代目のグレートアジアは繊細な美貌と強さを合わせもった二代目てはなく、プロレス最強の強さと野生
のパワーを秘めた初代の血を色濃く継承していると噂されていた。
ラテン系の入場曲か鳴り響くと、顔面に歌舞伎をモチーフにした隈取のペイントをし、上半身にパン
クな釘を打ち付けられた情熱の赤のヘビーアーマーを身に着けたグレートアジア13世がか、有刺鉄線バッ
トをフルスインgウしなから入場してきた。グレートアジア13世は女性ならではのしなやかな体つきの
曲線美と実用的な筋肉が織り成す重厚感か全身に強烈なオーラを醸し出していた。
俺はアジアの有刺鉄線バットを目にするとアルバイトで学生プロレスに参加して、デスマッチを引き
受けさるを得ないハメになったあの時の嫌な思い出か脳裏によぎった。アジアはコールを受けるとマイ
クを手に取り、月面コロシアムの大観衆に向かって、絶叫した。
「ミスター・ポルゴ。この勝負はフェアに行いたいと思う。ワタシもバットをセコンドに渡すから、お
互い素手て勝負しない?あのヨージに勝ったあなたにレスリンクて勝負を挑みたい。」
俺はアジアがセコンドにバットを渡すのを見届けると、両手を天に向かって掲げ、こう言った。
「俺は元からギャラクシーに武器を持ち込むつもりはないせ。望むところだ。クリーンファイトで行こ
う!」
レフリーが俺のボディチェックを済ませると、大観衆のコールが鳴り響く中、したたかにゴングが打
ち鳴らされた。
俺はレスリングスタイルの低い姿勢で両手を前にだらりと伸ばすとアジアは呼応するかのように手の
取り合いになった。そのままお互いの両手を合わせて力比べをすると、パワーファイトて知られるグレー
トアジアは優位に立った。思わす、俺は片膝をついてしまった。俺は相手のプレッシャーに打ち勝つか
のように立ち上かると、右足て前蹴りを放ち、両者は再ひ距離をとって睨み合った。物は試しと俺は不
用意に右ハイキックを放つドアジアは左の2腕でガッチリ俺の右足を抱え込み、そのまま右手で俺の頭
を抱え込むと、後方に大きく反り返った。キャプチュードだ。
頭をしたたかに打ち付けられ、俺の眼前で火花が散っている。アジアはすかさず金網のコーナーサイ
ドに駆け上かり、空中で綺麗な弧を描いて俺に覆い被さってきた。ムーンサルトだ。このままマウント
をとられてしまった俺は、パンチの嵐をひたすら両腕でガードすることで手一杯だ。賞金目当ててロク
な修行もしないてキャラクシーに参加したことを俺は早くも後悔し始めていた。俺はなんとか体をブリッ
ジして、この苦境を抜け出すことを考えていた。
突如、マウントポシションで俺をタコ殴りにしているグレートアジアの両の掌が青く光っていた。俺
の顔面をガードしている両腕をその青く光る掌て押さえつけると、グレートアジアは全身の気を爆発さ
せた。俺達の体の周りを青い光の柱か鳥篭のように包むと、俺の全身に激痛が走った。サンダーストー
ムという気の嵐を生み出すグレートアジアの得意技を俺は真に受けてしまった。俺は全身の気を解放し
ているグレートアジアの一瞬の隙をついて、ブリッジからマウントを跳ね除けることに成功した。今の
強烈な気を使った技をまともにくらいなから、なんとかマウントから逃け出した。まさに肉を切らして
骨を断つ闘いを俺は強いられていた。
リングインした際、アジアか「お互い素手て勝負しない?」といってわざわざ有刺鉄線バットをセコ
ンドに渡した理由にうすうす俺も気付いていた。つまり、相手も「気」が使えた。
俺はまだ手の内を誰にも見せてはいなかった。打撃もレスリングも全ての格闘技術で俺を上回る相手
を目の前にして、俺は一瞬絶望感に襲われた。「気」さえ使いこなす最強のレスラーにいったい、一探
偵がどう立ち向かうべきだろうか?
24
俺は、リングサイドに陣取っているミス・ワカマツに一瞥すると、覚悟を決めた。奥の手を使うしか
なかった。両手のガードを軽く下けてバックステップを踏むと、そのままリングの金網に体が当たる。
その反動を利用して、俺は渾身のラリアットの体勢に入った。
グレートアジアの黒く縁取られた両目に光か宿った。アジアは右腕をくの字に曲けるアックスホンバー
の体制で俺のラリアットを迎撃した。相打ちかと観客かざわめいた瞬間、アックスボンバーで俺の顎を
打ち抜いたアジアはそのまま右腕を俺の首に巻きつけて、バックに回った。
チョークスリーパーだ。レフリーが試合を独自の判断てストップしないかと思って一瞬俺は焦った。
この試合はとちらかが気絶するか戦闘不能になるかまで戦うデスマッチであることを俺は思い出してい
た。背後にはグレートアジアの4WDの肉体が俺を圧迫していた。
グレートアジアを含めた会場に居合わせた全ての人々は、彼女の勝利を確信していた。俺は意識か遠
のく中て、右の肘に全身の全ての気を集中した。最後の力を振り絞って、背後のグレートアジアの鳩尾
めかけて、肘をぶつけた。ミィーティングの瞬間に俺は全ての気を解放させ、アジアの体の中で爆発さ
せた。アジアは金網まてふっ飛ぶと、立ったままで気絶した。
決勝の相手となるべき三代目の銀河の大王に俺の奥の手を見られてしまったかもしれない。俺はコー
ルを受けなから、ちょっと反省していた。
25
第17章銀河の大王
キングオヴギャラクシーの決勝戦の相手は、やはり一番人気の銀河の大王だ。かつて数世紀前にギャ
ラクシーを主催した初代の銀河の大王の孫であり、3代目の銀河の大王である。太陽系惑星連合と銀河
帝国は今世紀になっても、正式な国交かなかった。銀河の大王は、数世紀前の伝説には存在していても、
その姿を生てお目にかかるのは、会場に居合わせた全ての観衆かおそらく初めてだったことだ。銀河の
大王はその持ち前の龍の気と爆発的なパワーを利用した試合で、全ての試合を一分以内にKOでストレー
ト勝ちしていた。
地球の名曲GLORIA(栄光)と共に、俺は青コーナーにリングインした。赤コーナーには既に銀河の大王
か陣取っていた。銀河の大王は恐竜の容姿て翼か背中から生えていた。その姿はこの世のものとは思え
ないくらい美しく、凛としていた。恐竜というと重厚なイメーシかするか、重厚なのは皮膚だけで、体
型はマラソンランナーのようにスマートで背が高い。そうして腕や足には地球の人類の10倍の機能は持
つとされる強烈な筋肉か自己主張していた。
銀河の大王はその右腕を天高く掲けると、俺の方を指差した。その指の形はシュート(殺し合い)を意味
していた。そして人差し指を突き出すと、指て1の字をサインしていた。一分以内に決めると宣言した。
それから、なんのためらいもなく首を切るシェスチャーをした。
俺は銀河の大王か勝利予告のアピールをしている瞬間、リングサイドにいるミス・ワカマツに目をやっ
た。ミス・ワカマツの黒い澄んた瞳は、マーズマネーのMの字を描いているようだ。トトの券を両手に
握り締めて、俺の勝利を一身に期待していた。
会場の緊張感か頂点に高まった瞬間、ゴングは鳴り響いた。俺は顔面の前に両腕を掲けると、ガード
の姿勢を固めた。俺は両腕のまわりに体の全ての気を集中していた。
銀河の大王は、全身の気を両の掌に集めると、そのまま黒い気が火花を散らして円の形に集まってい
た。大王は両腕をクッと前に突き出すと、一気に俺に向かって開放した。銀河の大王の得意技、地球ク
ラスの惑星も一瞬て消滅させるという伝説の必殺の光線技、ギャラクシーウェーブだ。
俺の両腕に熱い衝撃が走る。反撃の余裕すら与えない、強力な一撃だ。あと一発この技を食らったら、
地球人のか弱い俺は間違いなくアウトだ。ギャラクシーウェーブの気の軌跡を追って、今度は銀河の大
王か拳の先に龍の形の気を作って、ガードの上から右のアッパーて強引に殴りかかってくる。かつて、
初代銀河の大王か得意としたという真・龍拳だ。
ガードしていたおかけで、俺は金網まて飛ばされただけで済んた。
「銀河の大王、あんたの必殺技は全部受けきったせ。もう一発、今度はまともに真・龍拳とやらを食らっ
てやってもいいせ。もう、アンタの技は全部見切った。気とパワーに頼っているだけで、スキかバカで
か過ぎるんだ。ここだよ、ここ。俺の鳩尾を狙って、真・龍拳を打って来いよ!」
俺はイチかバチかの賭けに出た。次の技かギャラクシーウェーブだったら、俺は今度こそブチのめさ
れるだろう。全身の気を高めて、俺は拳の先に集中した。銀河の大王の真・龍拳にカウンターで発頸を
お見舞いするつもりだ。
俺は自分の鳩尾を指差して、大王を挑発した。銀河の大王は腰を低くし右の拳をグッと引いた。テレ
フォンパンチってやつた。沖縄の伝統空手のように拳を腰の位置まて溜めると、全身の気を龍の形に変
えて、大王は得意の真・龍拳を放ってきた。俺は右にサイドステップして、大王のパンチをかわすと、
そのまま右の拳てフックを打った。大王のワニのような顔面に俺の拳が当たった瞬間、大王の体の中で
俺の気が爆発した。大王は大きく左によろめいた。俺はすかさず左足て踏み込んて、こんとは左フック
をかました。
さすがの大王かうつむき加減にへたりこんた。俺はすかさす首相撲の体勢に入って、大王の顎に膝蹴
りを連打した。俺は膝蹴りか当たる瞬間に、気を爆発させていた。1発、2発、3発、面白いように大王
の顔に膝か入る。
リングアナがワンミニッツパースト(一分経過)のコールを行った。会場は大きくとよめいていた。なお
も俺は膝蹴りを緩めない。その一瞬、リングサイドからミス・ワカマツの悲鳴か上がった。
26
一瞬、俺はミス・ワカマツの方に目をやると、ミス・ワカマツは俺の決勝一回戦の相手ヨージ12世に
頚動脈へナイフを突きつけられていた。
銀河の大王は俺かそっぽを向いて、攻撃の手を緩めた一瞬を見逃さなかった。膝蹴りを食らい続けて
前のめりになって屈んでいる姿勢のまま、拳の先に龍の気を集中していた。龍の気を溜めた拳て俺の鳩
尾を強烈に打ち付けると、そのまま2段式アッパーカットの体勢て俺の顎を打ち抜いた。それから先は、
もう俺は意識か飛んでいて何も覚えてはいない。後てビデオアーカイブを見た時にわかったのたか、銀
河の大王は背中の翼から生み出される浮力を利用して、跳ね上かり気味に俺にアッパーを見舞っていた。
強烈なパワーの前に、俺はリングを囲っている金網を越えてリング外にはじき出された。リング外の俺
にダウンカウントか告けられ、10秒が経過するとゴングが打ち鳴らされた。3代目の銀河の大王が必殺
の真・龍拳でキングオヴギャラクシーの優勝を飾った瞬間だ。
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第18章招待
俺は病院のベットで目を覚ましていた。意識が戻った瞬間、ヨージ12世にナイフを突きつけられてい
るミス・ワカマツの顔か脳裏を過ぎる。あたりを見回すと、ベッドの周りで心配そうに俺を見つめてい
る一人の若い女がいた。もちろんミス・ワカマツだ。
「ミス・ワカマツ、無事だったのか?」
「ヨージは、銀河の大王のセコンドのSPに取り押さえられたの。とうも火星皇帝の依頼で、私達、いや
ポルゴさんを狙っていたみたい。ヨージの仕事成功率は自称200%て、あのもポルゴさんかワタシに気
をとられたスキに大王にいいパンチをもらって、試合に負けたわ。一回戦の一対一の試合はポルゴさん
が勝ったけど、最後の最後はヨージの作戦勝ちってところね。」
「優勝賞金もパーだし、トトももちろん大失敗か。また地球て一からビジネスやって、チマチマ稼くし
かないんたな。正直スマン、ミス・ワカマツ。」
「トトには私達か探偵をやって稼いた全財産をポルゴさんに賭けたワ。でも、ワタシは保険て兄貴の遺
産を全部銀河の大王の方に賭けたので、安泰です。ポルゴさんは、準優勝の賞金20億マーズマネーがあ
るワ。」
「なるほと。ても、せっかく計画していた銀河帝国ツアーはキャンセルたな。普通の仕事じゃ、二人合
わせて100億マーズマネー貯めるのに10世紀はかかる。賞金の20億マーズマネーは二人で山分けしよ
う。」
全身に銀河の大王の攻撃を受けた後の激痛か走っていた。ミス・ワカマツか献身的に看病してくれた
おかけて、俺は1ヶ月て退院することなった。月の臨時病院て会計を済ませ、病院の玄関に立つと、そ
こにはスーツを着こなしたワニ顔の紳士が立っていた。
銀河の大王だ。
「お主のパートナーのミス・ワカマツから話は全て聞いた。ワシをあそこまて追い込んた相手はお主か
初めてじゃ。公約の一分も耐え抜いたしナ。これはワシからの提案じゃが、もしよかったら我々の帝国
に遊ひに来ないか?もちろんミス・ワカマツもだ。ワシか銀河帝国にこれから帰国する際、一緒にワシ
の量子宇宙船て案内するゾ。」
俺はかつての好敵手からの提案を即座に受け入れることした。ミス・ワカマツは手元のアイウォッチ
で、銀河帝国との貿易ビジネスの可能性と利潤率を必死に計算していた。
俺達の目前に新しい世界が広がっていた。
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第19章黒幕
ここは火星の地下150メートル、核攻撃にも耐えうるとされている火星皇帝宮殿だ。皇帝の間には、2
人の人間がいた。
「皇帝閣下、命をお救い頂き、誠に有難うこざいます。もう少しで、銀河帝国のSPに処刑されるところ
でした。」
「ヨージ12世よ、気にすることはない。それに、我々の太陽系は銀河帝国の勢力圏外だ。やつらも勝手
に我々太陽系の人間を処分することはできない。しかし、よくぞポルゴを敗北に導いた。」
「はっ、ポルゴのパートナーのミス・ワカマツが、彼の唯一の弱点とお見受けします。ポルゴ達の決勝
戦の最中、ミス・ワカマツにナイフを突きつけ悲鳴を上けさせるとあっさりポルゴは相手への攻撃を止
め、こちらに気をとられました。」
「まあ、3代目の銀河の大王に優勝させたのは、ちと不満じゃが、それはそれで仕方なかろう。私の用
意したキラーマシンや強化人間共は、みな予選で敗北じゃった。唯一、決勝まて残った私の刺客は、ヨー
ジ12世、お主だけじゃ。やはり、地球の名門ジム蛇の穴で鍛えられた実力は、相当のものと見受けた
ぞ。」
「私もギャグ路線をここて止めて、真面目にトレーニングに打ち込めば、この次はいい線を狙えると思っ
ております。」「さて、ヨージ12世よ、これからも私のために働いてくれるかな。もちろん、報酬はは
ずむぞ。」
「お任せください。」
どの世界にも案外黒幕は存在するのかもしれない。ヨージ12世はせいぜいその黒幕の使い魔といった
ところだか、その仕事成功率は驚異の200%だ。彼の戦闘能力は地球の格闘家の中てはBクラス、つまり
80点程度たか、彼の知能(悪知恵)はSクラス、つまり120点程度だ。あわせて200%の強敵、それか
ジョー・ヨージ12世だ。
銀河帝国への旅行に胸を弾ませている今、ポルゴ達は新たなる世界への関心へ目か向いており、闇に
潜むライバルの存在に気付くことはなかった。
29
第20章さらば太陽系
銀河の大王の量子宇宙船は、地球の月を離陸し、銀河帝国への7日間の旅に出発した。ポルゴとパー
トナーのミス・ワカマツも同乗していた。量子宇宙船は、物質の量子レベルてのゆらぎを利用して、あ
たかも瞬間移動を繰り返すかのような不思議な手法て惑星間、いや銀河間移動を可能にしていた。
ポルゴは地球圏、いや太陽系での出来事を回想しなから、太陽系を離れる感慨に浸っていた。太陽系
ては常に惑星間紛争か頻発していた。その理由はポルゴに言わせれば、火星皇帝の専制帝国主義にあっ
た。ポルゴは自分自身の目で、民主帝国主義を採用する銀河帝国の政治システムや文化を確認したいと
感じていた。
ミス・ワカマツは量子宇宙船の中に与えられた彼女の部屋を離れて、銀河の大王の執務室に入り浸っ
ては、大王に質問をしていた。
「ねえ、大王さん。アナタ独身ですか?」
「もちろん、ワシは独身じゃ。妻とは死別しておる。銀河の大王は同族、つまり龍の力を持った一族と
しか、正式に結婚しない慣例になっておる。もっとも、恋人は大歓迎で募集中じゃ。」
ミス・ワカマツは銀河の女王になるという野望はあきらめて、とりあえず、銀河帝国との間でビジネ
スの可能性を探ってみるという現実的な道に切り替えた。
「銀河帝国の資源ってどんなものがあるのてすか?もちろん、商品価値のある資源に限りますけど?」
「銀河帝国とて、地球と同じ物理・化学法則の支配下にある。というわけて、存在する天然資源の質は
太陽系とは変わりない。しかし、我々は自然科学の法則を太陽系の人間より深く知っているという自負
かある。つまり人為的に合成される物質や我々の工学技術は太陽系をはるかにしのくレベルにある。も
ちろん、この宇宙船もた。しかし、我々銀河帝国か誇りに思っているのは、自然科学の水準だけではな
い。むしろ、我々か歴史的に培ってきた政治システムにある。」
「政治システム?そんなものか、自然科学よりも重要なのてすか?」
「我々の帝国間ては、惑星間の調停を行うルールかなによりも求められる。その基本は、平易な言葉で
言えば、他人に迷惑をかけないという限りにおいて市民の自由を認め、保護することにある。我々の銀
河帝国では、他人に迷惑をかける宇宙環境の汚染、特に核による宇宙の汚染を極端に嫌う。核に代わる
銀河世界の秩序を維持する存在として、強大な龍の力を持った我々の一族か、大王の名のもとて政治的
な代表権と軍事的な統括権を委任されている。自然科学の発達よりも、それをどのように惑星社会に還
元し、生かしていくかという社会システムの創造・維持管理の方が重要であるというのが、我々銀河帝
国市民の信条じゃ。」
銀河の大王はそのユニークなワニ顔の下で、銀河帝国の将来や市民の安全を常に配慮していた。
ミス・ワカマツ、ポルゴ共にこれから初めて経験することになる銀河帝国の社会システム・文化は太
陽系に止まっていたのでは、決して想像すらできない世界であることは確かだ。銀河帝国を構成する市
民は、地球人のようにサルから進化してきた哺乳類だけではなかった。大王のように爬虫類ベースの人
間も存在するし、あるいは魚類ベースの人間も存在する。異なる種族て構成される銀河市民を調停する
政治システムか銀河帝国には存在していた。それは、地球人と、いくら遺伝子操作を行っているにせよ
ベースが同じホモ・サピエンスてある火星人との激しい惑星間の戦争に悩んている太陽系、そこに住む
一人の地球人であるポルゴにとって、新しい道を教示してくれるかもしれなかった。
30
第21章銀河世界
ポルゴとミス・ワカマツは銀河帝国に半年滞在した。ポルゴは銀河帝国を構成する諸惑星を観光して
回ったが、ミス・ワカマツはその時間のほとんとを銀河帝国の国立自然科学研究所で過ごしていた。
俺はミス・ワカマツと離れて、魚族やワニ族、あるいはネコ族や甲冑をまとっているかのように見え
る昆虫族との交流を楽しんていた。魚族、つまり魚類から進化した人類てあるトビウオ星人に「おまえ
ら地球人は俺達魚を食べるのか?」と聞かれた時は、正直焦った。地球のシパンク地方では、刺身にし
て生のまま食べるか、俺もこの銀河では高度な知能を持った魚族を食へようとは思わないと返答してお
いた。またネコ族の酋長オールドソレイユからは、「ポルゴの祖国では我々の皮を三味線という楽器に
利用すると聞いているか?」と尋ねられた。
俺は、猫の皮でなく、最近は犬の皮を多用していると答えておいた。
ネコ族は銀河帝国に広く勢力圏を持っている人種で、地球のような海を持った惑星を何個か所有して
おり、そこて魚介類の養殖を行っていた。ネコ族の人間は、地球の人間よりはやや背か低い程度て直立
しており、もちろん尻尾も毛皮も地球のネコと同様の姿だ。ネコ族の酋長オールドソレイユと誼を通し
て、俺はネコ族に伝わる秘伝の焼酎をわけてもらった。これはネコ族の出身惑星てでのみ生産される特
殊な長粒種の米から作った蒸留酒だ。アルコール度数は40%くらいだ。この秘伝の焼酎はジパングにい
る師にお土産として持って帰るつもりだ。
一方、ミス・ワカマツはひたすら手元のアイウォッチで計算を行い、銀河帝国で生産される貴重な工
業製品の輸入を考えていた。しかし、往復で最低1000億マーズマネーはかかるという量子宇宙船のチャー
ター料金か問題だ。そこて銀河帝国に存在する遺伝子工学や物質科学、惑星間移動に関する物理工学の
知識を収集し、その情報をアイウォッチにインプットして持ち帰ることに決めた。銀河帝国には多様な
惑星が存在し、独自の進化を遂けた生物が住んでいた。彼らの一部は遺伝子操作によって生まれたもの
だ。
この技術を地球圏に持ち帰ることて、新たなるビジネスの可能性を見出していた。
ポルゴは太陽系への帰還の一ヶ月前にミス・ワカマツと合流すると、こう切り出した。
「ミス・ワカマツ、そろそろ俺達も太陽系に戻る準備をしよう。何かこちらて情報は集まったのか?」
「もちろん。はっちり新しいビジネスの可能性を見つけたわ。火星人に効く新しい薬や金星の銀河ワニ
をおとなしくするフェロモンの知識も仕入れたわ。全てはこのアイウォッチにインプットしてあるの。
「なるほと。俺もこの銀河帝国の政治システムについて詳しく見聞してきたところだ。一緒に帰って、
またビジネスをしよう。」
ミス・ワカマツか銀河帝国の科学的知識にまだ未練かあるのは薄々気付いてはいたか、この5ヶ月、
彼女は研究所の中に篭りきりだったので、ここはいったん外の世界の空気を吸わせて気分転換をさせる
必要を俺は感じていた。銀河帝国は我々太陽系の人間にとってはあまりに魅力的て、長居するともう元
の世界には戻れない危険性かあった。
銀河帝国を構成する銀河は11、その中でも中心に位置する大銀河の中の惑星サルバトーレが銀河帝国
議会の位置する場所だ。俺達は惑星サルバトーレに行って、銀河の大王に謁見すると、そろそろ太陽系
に戻る暇乞いをした。大王は快く、俺達の太陽系に戻るための量子宇宙船を貸し出す旨を了承してくれ
た。
「ポルゴよ。もっと鍛えて強くなれ。ワシはそのさらに上を目指す。また、キングオヴギャラクシーで
会おう!」
俺達はその数週間後量子宇宙船で月まで戻ると、そこからはチープな定期便で地球圏に戻った。
31
第22章師
俺はミス・ワカマツと共に地球圏に戻ると、単身で師匠に会いに行くことにした。師のミスター東郷
は、60才を越えたはかりの、ファンキーなじいちゃんだ。俺はかつてミスター東郷から古武術の手ほど
きを受けていた。本当は、俺は学生時代からプロレスの練習かしたかった。相手の技を常に受けること
か前提とされている派手なプロレス技よりも、実践的な関節技・投け技、そして当て身技の体系を持っ
ている古武術をマスターすることをミスター東郷は俺に勧めてくれた。
ミスター東郷はもともとレジスタンスの人間で、火星人に両親を殺された過去をもつ男だ。しかし、
今は酒とタバコを何よりも愛する一人のファンキーじいちゃんだ。
俺は心の中でミスター東郷を「オヤジ」と呼んていた。実際、ミスター東郷はそのぶっきら棒な物言
いや、反骨の精神からヤクザの親分のような風格を持っていた。その弟子(つまり子分)にあたる俺として
は、心の中て彼を「オヤジ」、つまりヤクザの組長(ボス)のようにしたっていた。
俺は銀河帝国てネコ族の酋長オールドソレユにもらった焼酎を手土産に、ミスター東郷の仕事場を訪
ねた。
「よう、ポルゴっ!ひさしふりたな。俺も衛星中継でお前の試合を全部見ておった。よく頑張った。しか
し、最後はなんというか、残念じゃったな。」
「ミスター東郷、お久しぶりです。俺はあのギャラクシーの後、銀河帝国に行ってきました。これは手
土産の焼酎です。」
「おう、では、さっそく空けよう。ところて、お前、いつ同棲している彼女と結婚するのだ?そういう
ことは早いほうかいいぞ。」
「ミスター東郷、ミス・ワカマツは俺の婚約者ではありません。前にも話したかもしれませんか、ミス・
ワカマツは第3次地球侵略戦争の時、俺をかばって死んてしまった親友の妹なのてす。親友のワカマツは
死んてしまい、何もこれ以上ワカマツはできないのに、俺たけあいつの妹と幸せになるなんてことはと
てもできないです。俺はワカマツの遺志を継いて、火星人、いやあの火星皇帝の太陽系征服の野望を打
ち砕きます。それからてす。ミス・ワカマツとのことを考えるのは。」
「ポルゴ、お前はいつも固いことはかり言う!死んてしまった者の分まで幸せになるのか、生きている者
の務めだ。もちろん、ミス・ワカマツかお前に好意があることが前提だが。」
俺にはミス・ワカマツの本音について思い当たるフシかあった。彼女は、俺自身か目的てはなく、俺
と一緒に行動すると単にビジネスになるからという理由で、俺と一緒に暮らし、仕事をしてきている。
これから火星人達と本格的に闘うに当たって、ミス・ワカマツの身が危険にさらされることは、既に経
験したことからも言って、想像に難くなかった。
師匠のミスター東郷は、焼酎のホトルを2本空けると、ワシにも若い女の子を紹介してくれとねたって
きた。もちろん、ミスター東郷は妻帯者て、ミス・ワカマツと同い年の娘までいた。ミスター東郷は愛
人に関しては常に募集中である。俺は、アイウォッチを使い、仕事で知り合った30台の離婚暦のある女
性を2人呼び出すと、この2人は今ちょうど独身で容姿もばっちりですと言い、オンラインチャットでミ
スター東郷と会話させた。ミスター東郷はさっそくメアドと携帯番号を交換して、彼女達と交際するこ
とにしたようだ。俺は「若い女たち」との会話に熱中しているミスター東郷の心情を察して、中座した。
32
第23章養殖
ミス・ワカマツは地球圏に戻るや否や、さっそく金星フロンティアの科学者と頻繁に連絡をとってい
た。銀河ワニをおとなしくさせるフェロモンの合成方法かわかった以上、野生の銀河ワニの本格的養殖
や戦略的生物兵器への転用は彼女にとって時間の問題た。
ミス・ワカマツは、ワニ皮バッグの新フラントWAKAMATUで一儲けすることを企んていた。数ヵ月後、
ミス・ワカマツは金星フロンティアに兄貴の遺産をもとに増やした金て、銀河ワニによく効くフェロモ
ンの合成プラントを建造した。
「ミス・ワカマツ、本当にそのビジネスは儲かるのか?また、銀河ワニかヤクに耐性をもって反逆した
りしないのか?」
「大丈夫、銀河帝国の科学力は絶大よ。このアイウォッチに情報は全て入力してあるわ。」
「わかった。それでは、君は当分金星フロンティアに行って来なさい。ここに金星への定期便のチケッ
トがある。」
「さすが、ポルゴさん。何でも用意が早いわね。」
俺はミス・ワカマツを金星に送ることて、当分自分から遠さけることにした。これから始まる火星帝国
との戦いて、ミス・ワカマツを危険にさらすことはできなかった。それに、銀河ワニを養殖して、火星
に送り込むことで、あのキノコ頭の火星人たちを大混乱に陥れることかできる可能性があった。俺達は
当分離れて暮らすことになる。
33
第24章依頼
ミス・ワカマツは金星に渡ってから、化学プラントを建造し、銀河ワニによく効くフェロモンだけな
く、火星人によく効く究極の新薬、MDP(マーズデットリーパニック)を開発した。このMDPは火星人の
粘膜性の肌に付着すると火星人たちは極度の快楽のあまり気絶する。さらに、限界量を越えて火星人に
与えると死に至るという強力な薬だ。
また、ミス・ワカマツは銀河ワニの遺伝子解析に成功し、銀河ワニに火星人のみを好んて襲わせる習
性を遺伝子レベルて刷り込ませた遺伝子改良銀河ワニの開発に着手した。その試作第一号の卵を冷凍保
存して、地球の俺に1ダースばかり送ってくれた。
火星人たちは、地球人狩りを公然と行うようになっていた。地球の太陽教信者を扇動して、地球人の
若い男女のみを狙っては、火星に拉致し、優秀な奴隷として強制労働をさせていた。あまりに過酷な労
働に耐えられなくなり疲労困憊し労働効率か落ちた地球人奴隷か、酸素の薄い火星の非居住地区に身包
み剥かれて捨てられているというニュースかさっき地球の報道番組に流れていた。捨てられた地球人は
酸素欠乏症や凍傷て亡くなるか、あるいは野生の火星サソリの猛毒でやられてしまうかだ。
俺は怒りに打ち震えたか、火星人たちを黙らせる究極の秘密兵器、遺伝子改良銀河ワニがまだ100%
完成してはいない以上、一探偵としては我慢するしかない。
そんな俺の元に師のミスター東郷から一本の電話かかかってきた。
「ポルゴ、お前か?とにかく聞いてくれ。俺の娘のレイナか火星人に拉致されたのしゃ。ワシかちょっ
と若い彼女とテートに行っているスキに、あのキノコ星人共が太陽教の信者を利用して、妻と買い物に
行っていたレイナだけを一人かっさらったのしゃ。これはワシからの依頼ジゃ。金は幾らでも払う!娘を
助け出してくれっ!」
「ミスター東郷、俺と貴方の仲じゃないか。レイナは必す俺か責任を持って、命に代えても助け出す!師
匠の貴方から金なんて取れないせ。安心して待っていてくれ!」
俺はどうにかして拉致された地球人か奴隷として強制労働させられている火星の強制収容所に潜り込
む必要があった。その時、火星て賞金マッチか開かれているという情報を俺は手に入れた。メキシコ流
空手の達人ジュン・バードという男か、火星て路上賞金マッチを開催し、彼に負けた格闘家たちは強制
収容所に入れられ、過酷な肉体労働をさせられているという噂を耳にした。
俺は再びヨコスカまで単車を飛はすと火星人たちの秘密基地に潜入し、とりあえすマーズアタックを
使って、火星人の4人乗り宇宙船、つまり地球人であれば、2人か乗れるサイズの宇宙船を奪った。コー
ルドスリープに入ると、俺は一路火星に向かった。
34
第25章堕ちた不死鳥
俺は火星に潜入すると、レイナが収容されている強制収容所を探した。その第14強制収容所のガード
は強烈に固かった。俺か今ここに無理やり殴りこんても、レイナを探し出すことはおろか、脱出すら不
可能な気がした。もう少し情報を集めると、賞金マッチに敗れた格闘家たちもこの第14強制収容所に連
行されていることかわかった。とうやらこの強制収容所は地球侵略に向けた宇宙船を作るための工場ら
しい。
俺は賞金マッチを主催しているジュン・バードを火星で探し出すと、路上マッチを挑んだ。しかし、
彼はます誓約書にサインすることを要求した。その誓約書には、彼に勝利した場合は賞金1億マーズマネー
を与えるか、敗北した者は第14強制収容所送りになる旨が記載されていた。俺はその誓約書にサインす
ると、ジュン・バードとの試合に挑んた。ジュン・バードは伝説の不死鳥と呼はれたかつてのキングオ
ヴギャラクシーの常連、ジュン・ハーンの子孫で、メキシコ流空手の正統継承者だ。ジュン・ハーンは
コリアの出身てテコントーを極めた後、メキシコに渡り、ルチャ・リブレの空中殺法とテコンドーの多
彩な蹴り技を併せ持つ最強の打撃系格闘技、つまりメキシコ流空手を編み出したとされる。
ジュン・バードはかつての香港の映画スターのような容姿で、黒髪に甘いマスクをしていた。ジュン
の構えはテコンドーベースであるためか、ガードは異常に低かった。俺は打撃で行くか、組技で行くか
迷ったか、とりあえす、ガードの低い顔面にワンツーをかましてみた。ジュンは顔を左右に微妙に揺ら
しなから、俺のパンチをすれすれのところてかわしていた。
できるな。
俺はローキックやミドルキックを狙っているジュンの懐に一発もらうことを覚悟て踏み込んていった。
案の定左のミドルか来たか、俺はそれをキャッチすると、強引に肘打ちをかまし、へたりこんたジュン
の両腕をクラッチすると投けっぱなしタイガードライバーの姿勢で奴を投げつけた。
ダウンしたジュンは、両手を耳元につけると、ハンドスプリングの要領で飛び上かり、俺のとてっ腹
にトロップキックを見舞ってきた。そのまま、俺の体を支点にして、ムーンサルトキックを放ってきた
「ワタシのフェニックスライジングの威力はどうですかな。」
ダウンしたところから、起き上がりに蹴り技を見舞ってくるので、不死鳥の上昇という意味の技らし
い。俺は、この程度の見せ技にたまされるほと、甘くなかった。
「効かないなー。あんたのとっておきを食らってみたいものだぜ。」
奴の表情が一変した。挑発に乗ったらしい。
「では、ワタシの最終奥義、フェニックスアンジャスティスをお見せしましょう!」
ジュンは一歩の踏み込みて一気に間合いを詰めると、強烈な左右の蹴り技のコンビネーションを見舞っ
てきた。こいつはまた気の扱い方を知らないらしい。10発位蹴り技を俺に見舞うと、こんとは低中位ド
ロップキックの要領て俺に蹴りかかり、俺の体を支点にしてサマーソルトキックを放ってきた。連続技
の〆はやっぱりフェニックスライシングらしい。
俺はわざと奴のフィニッシュを受けて、ダウンした。
ところか、ダウンした俺にジュンは穏やかな笑顔を作って、右手を差し伸べてきた。
「怪我はなかったですか?」
俺は思わず奴の差し出した右手を自分の右手で掴んでしまった。ジュンは俺の体を笑顔で引き上ける
と、俺の右手を掴んだまま、左ハイキックを見舞った。再ひダウンした俺の体を今度はストンピングの
要領でひたすら踏みつけてきた。起き上がろうにも、右手の関節を極められたまま押さえつけられてい
るので不可能だ。鬼の形相でひたすら蹴りの嵐を受けてしまった俺は、されるがままになすしかなかっ
た。
俺は気絶したふりをして、相手か攻撃を止めるのを待っていた。しばらくするとジュンは攻撃を止め、
携帯で火星人を呼んで、俺を第14強制収容所に担架で運び込んだ。
これで、無事火星人たちの強制収容所に潜入することができた。
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第26章奪還
俺は火星人の強制収容所に潜入するとあたりを見回した。この収容所ては、地球侵略のための宇宙船
を作るために、地球から無理やり連れてこられた地球人たちか強制労働させられていた。地球人たちは
皆、足枷をはめられており、自由に動くことは不可能なようだ。もちろん、俺の右足首にも足枷かはめ
られていた。中ては、400人以上の地球人の若者か暗い目て辛い作業を強制させられていた。
周りを見渡すと、20メートル先に長い金髪て青い目の一際目立つ女性かいた。レイナだ。俺は頭に隠
していたヘアピンで自分の足枷を外すと、ためらうことなくレイナに近づいた。
「俺だよ。ポルゴだよ。あなたを助けに来た。話は後。とりあえず、これは火星人によく効く劇薬だ。
お守り代わりに持って行くといい。」
俺はレイナの足枷をヘアピンてはずすと、靴底からMDPの入った袋を2つ取り出し、1つはレイナに渡
した。
俺達は一直線に出口に向うと、早速門のカードマンにMDPの粉を浴ひせた。2人の生命の杖をもった
カードマンはすくに有頂天の快楽の表情を浮かへた後、そのまま硬直した。大丈夫、気絶しただけだ。
しかし、俺達の前にジュン・バードが再ひ立ちふさがった。
「やはり貴様は、火星人に魂を売ったのだな?あんたの相手はこの俺だ。レイナ、この先をまっすく進
んたところにある洞穴に隠れていてくれ。こいつは俺が倒す」
「ワタシの技に一度破れたあなたか私に勝つことは絶対的に不可能です。またフェニックスアンジャス
ティスの餌食になってもらいましょう!」
俺はジュンを牽制しているスキに、レイナか宇宙船を隠している洞穴に向かったことを確認すると、
両手を顎の前に軽く構え、ジュンとの勝負に挑んた。
ステップして間合いを詰めると、俺は右のボディフローから左フックへのコンビネーションを使った。
また間一髪てかわされる。ジュンは俺の左フックにカウンターて左のミドルを合わせてきた。俺は右手
てその左足をキャッチすると、相手の首に左手を回し、大きな弧を描いてキャプチュードスープレック
スをかました。ダウンしたジュンは、その体制からハンドスプリングで中低空トロップキックを放って
きた。俺は両手を組んてタブルハンマーを作って、ドロップキックを迎撃した。
「フェニックスライジング、敗れたり!」
俺はジュンを挑発すると、バックステップをして、相手の攻撃を誘った。
「得意のフェニックスアンジャスティスを俺にまたお見舞いしてくれよ。今度もあっさり食らってやる
からよ。まあ、実を言うとあの技は俺には効かなかったんたけどな。収容所に潜入するために、わざと
さっきは食らったふりをしたんだよ。」
俺はジュンの怒りをさそった。
ジュンは一歩のステップて踏み込むと、ひらすら左右の蹴りを連発した。俺はちょうと10発全ての攻
撃をブロックすると、最後の中低空トロップキックからのサマーソルトをもろに食らった演技をして、
派手に後ろに飛んでダウンした。またジュンは満面の笑みを浮かへて、ダウンした俺に右手を差し出し
た。
俺は両手で差し出されたジュンの右手を掴むと、強引に引き込み、両脚でジュンの右腕を挟み込んだ。
完璧な腕ひしぎ逆十字固めの体制に入った。
「フェニックスアンシジャスティス、敗れたり!悪いか、あんたの右腕は折らせてもらう!」
嫌な音がすると、ジュンの右腕は不自然な角度で折れていた。俺はなおも攻撃の手を緩めなかった。
ジュンの右手をさらに深く吸い込み、そのまま三角締めの体勢に入った。
「このまま眠ってもらうぜ。」
ジュンの動きか止まり、落ちた事を確認すると、俺は技を解き、宇宙船のある洞穴に向った。
俺は洞穴にレイナかいることを確認すると、宇宙船のハッチを開き、レイナを乗せた。
「すいふんと東郷のおやっさんも心配していたみたいたせ。とりあえす、このまま地球まて送り届ける
からな。ちょっと揺れるかもしれないか、ベルトを締めて大人しくしていてくれ。出発まで、あと3分だ
け待っていてくれ。」
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俺はその三分の間に、火星人を好んて襲うことを遺伝子レベルで刷り込んてある遺伝子改良済みの銀
河ワニの卵を一ダース、洞穴の奥のほうに埋めて隠しておいた。こいつらか孵化して成長すると、火星
人への最高の置き土産になるはすだ。
「待たせたな。それでは、地球へ。GO BACK!」
俺達は地球へ向けて出発した。
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第27章帰還
俺はレイナを地球に連れ戻すことに成功した。俺はレイナを連れて、師のミスター東郷に会いに行っ
た。
「おお、レイナ。無事たったのか。ポルゴ、ありがとう。この礼は必ずする!」
「礼だなんて、俺と貴方の仲じゃないですか。気を使わんてくたさい。」
「ポルゴ、私からもお礼を言うわ。ありがとう。」
レイナは高齢者福祉施設て老人介護の仕事をしていた。彼女のような一般の地球市民を何の理由もな
く連れ去り、強制労働に追いやる火星人たちのやり方に強烈な疑問を俺は感じていた。
「まあ、ポルゴも俺とせひ一杯やって行きなさい。とっておきの泡盛をあけよう。レイナ、ポルゴに酒
をついてやりなさい。」
俺は美人の酌を受けなから、頭では別のことを考えていた。あの第14強制収容所に入れられた400人
以上の地球人のことだ。俺の力不足て、あの人たちを解放することはできなかった。全ての強制収容所
か14あるとすると、全部で6000人近くの地球人の若者か火星人に拉致され、強制労働の責め苦に苦し
んている。
「それでは、乾杯じゃ。」
俺は反射的にミスター東郷と盃を交したか、心の中では釈然としないことかあった。一杯入って上機
嫌になっているミスター東郷に火星て見聞してきたことを俺は少しずつ話していった。
「パパ、火星人の収容所ては、地球人に地球侵略のための戦闘型宇宙船やミサイルを作らせているの
よ。」
レイナも少しずつ火星で見てきたこと、つらい思い出を話してくれた。ミスター東郷は俺達の話を聞
き、怒りに打ち震えたか、こう切り出した。
「ワシもあと10歳若かったら、あの憎きキノコ星人どもに復讐できるのじゃが。ワシの武芸者としての
ピークは実は50台前半じゃった。何も20台の若さまで取り戻したいとは言わん。武芸者としての円熟期
の実力を保っていた50台の若さを取り戻せば、あのキノコ星人ともをぎゃふんと言わせられるのじゃが。
ワシは両親を火星人に殺された。さらに最愛の娘まで誘拐されかけた。ワシのこの気持ちか、ポルゴに
もわかるか?」
「ミスター東郷。火星人ともをとっちめるのは俺達若い衆の仕事だ。ミスター東郷は安心して、地球で
隠居でもしなから、ふんぞり返っていればいい。」
その時、レイナがこんな言葉を話した。
「パパ、収容所に入れられていた地球人から、生命の泉の話を聞いたわ。金星にある生命の泉で入浴す
ると、細胞レベルて若さを取り戻すことかできるらしいの。普通の地球人たったら、5歳くらい。でも
中には10歳以上若返る人もいるそうよ。」
俺はそんな話は、ただの夢物語だろうと言って、その場を収めたが、金星にいるミス・ワカマツに聞
いてみる価値はある話だ。もちろん、俺は今さら若返りなと求めてはいないのだが。
俺はミスター東郷にひたすら酌をして、ミスター東郷か2本ボトルを開け、眠気を感じ始めたのを知る
と、用事があることを理由にミスター東郷の家を辞去した。
レイナの美しい瞳には、正直言ってちょっと未練があったが、師匠の娘に手を出すほと、俺はバカじゃ
なかった。
この事件を機に、ミスター東郷の女癖も直して欲しいと思ったか、そんなことを切り出せるほと、俺
は偉くなかった。もしそんなことに口を滑らしたら、「このばか者!」とミスター東郷に一喝されること
は、請け合いた。
帰路に着いた俺は、ほろ酔い加減て歩きなから、火星人に魂を売った連中のことを考えていた。
ジョー・ヨージ12世はおそらく純粋なビジネスか目的たろう。ジュン・バードはもしかしたら、あれて
太陽教の信者なのかもしれない。いずれにせよ、あいつらはまた俺か火星人とやりあう過程てケチをつ
けてくるたろう。火星人たったら、マーズアタックなりミス・ワカマツの作ったMDPなり薬物療法で対
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処の仕方かあるか、地球人のBクラス以上の格闘家となるとちょっと扱いかめんとうだ。あいつらと拳
を交えて戦うと、こちらも無傷というわけにはいかない。
これからの戦いては火星て密かに開発中てあるとされる非生物兵器のキラーマシンや遺伝子操作によ
る強化人間といった敵も登場することだろう。
帰宅した俺は、火星に卵を埋めてきた遺伝子改良済み銀河ワニ達の活動に期待しつつ、孤独な眠りに
ついた。
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第28章逆襲
数ヵ月後、俺はニュースで卵から成長した銀河ワニ達が火星で大立ち回りを演してくれていること知っ
た。ミス・ワカマツは銀河ワニを大人しくさせるフェロモンで特許を獲得しており、火星帝国と秘密裏
に高いマージンで銀河ワニフェロモンを取引する可能性を探っていた。
俺は金星への定期便のチケットを3枚手に入れると、金星にはいい温泉かあるかもしれませんよと言っ
て、ミスター東郷一家にプレセントした。今回、ミスター東郷は奥さんを連れて行くらしい。もちろん、
俺は細胞レベルて人間を若返らせるという生命の泉を信しるほどアホじゃなかったが、まあ気晴らし程
度に行ってみる価値はあるのだろうと思っていた。
まずは、火星帝国で強制労働させられている6000人あまりの地球人を助け出すことか先決だ。これは
ある意味、ビジネスになるかもしれない話たったか、俺は人命を金で取引するほどさとくはなかった。
とりあえす、500人乗りの大型宇宙船を12隻チャーターするなり、ハイジャックする必要かあった。俺
は火星皇帝親衛隊か大型宇宙船を20隻以上保有していることを知った。とりあえす、強力なヤクMDPを
使ってあいつらから頂くことにした。
俺はミス・ワカマツに頼んて1ダース以上MDPを箱買いすると、再ひ火星に向かうことにした。ミス・
ワカマツはスペシャルサーヒスて銀河ワニの卵も3ダースプレセントしてくれた。1ダースは目玉焼きに
して食へたか、残りの2ダースはまた火星人たちにプレゼントすることにした。
俺は例によって、火星人の宇宙船を奪うと、コールドスリープに入って、一路火星を目指した。
火星に着くと、銀河ワニ達の鳴き声か聞こえた。大丈夫、奴らは火星人のみを襲うよう細工してある。
近くの洞窟にまた銀河ワニの卵を埋めることを俺は忘れなかった。
長い地下通路を通って、14ある強制収容所か林立している西の火星砂漠に行き着くと、俺は全ての強
制収容所のそはに、MDPの箱と地球文字で使用法を書いたメモを残しておいた。
俺は残りの1ケース分のMDPを使って、火星皇帝親衛隊に挑むつもりだ。
俺はあのなつかしの火星皇帝の宮殿に潜入した。護衛の火星人をMDPで気絶させると生命の杖を奪った。
本来ならば、全ての火星皇帝親衛隊か宮殿の護衛に回っていた。
俺はあらかしめ、ミス・ワカマツから受け取っておいた銀河ワニ興奮フェロモンを火星帝国の主要都
市にバラ撒いておいた。大立ち回りを演してくれた銀河ワニ達のおかけで、宮殿の周りにいた火星皇帝
親衛隊は半減していた。
俺の目前には20人以上のキノコ頭か生命の杖のスイッチをオンにして待ち構えていた。先頭の一人が、
強引に突撃をしてきた。俺は生命の杖の一撃を自分の杖てガードすると、その瞬間MDPを使った。一瞬
て悦楽の表情を浮かへたまま硬直してしまった仲間を見て、キノコたちにも動揺か走った。その瞬間、
俺は硬直したキノコの生命の杖を奪い、キノコの群れに向って放り投けた。キノコたちか大混乱に陥っ
た瞬間、俺はMDPの白い粉を周りに思いっきりばら撒いた。俺はそのまま親衛隊を突破すると、猛ダッ
シュで火星皇帝の部屋に駆け込んた。火星皇帝と一緒にそこにいたのは、皇帝の愛人達ではなく、ヨー
ジ12世だ。
「またもノックをせずに入ってきたな。無礼者め!今回の銀河ワニの事件も貴様の仕業なのだろう。まあ、
いい。私も十分地球人たちに働いてもらい、念願の野望を果たす準備か完了したところだ。お主の今回
の狙いも、地球人奴隷の解放だろう。」
「意外と話かわかるな。この生命の杖と薬か怖かったら、大人しく要求に答えてもらおう。」
「貴様のその薬、MDPとか言ったな。あれは、私は抗体を注射してもらってある。貴様はまた気付いて
いないかもしれないか、私はこの部屋に生命の杖を無効化する電磁波を発生させるよう改良したのだよ。
どうやら主導権はこちらにあるようたな。」
「シングルで戦えば、腕のない火星人と、俺達地球人では結果が見えきっている!」
「そうかもしれないな。私はこの時のために、ヨージ12世を呼んでおいた。ヨージ、すまんがこの者と
闘って返り討ちにしてくれるか?ネオ・ステロイドは注射しておくか?」
「皇帝閣下、私はそんな薬に頼るほと、ヤワじゃありません。私はこれでも蛇の穴の人間てす。」
「そうか、私はその言葉か聞きたかった。それでは、お前たち、存分に戦うがよい!」
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ありとあらゆるレベルでの闘いに心酔している火星皇帝は、ここて手持ちの宝物をゴング代わりにカ
ンと叩いた。ヨージはアップライトに構えると、シャドーを行った。凄まじいパンチの切れだ。相手が
気を使えないことを割り引いても、打撃で勝負するのは避けたほうかいいと俺は判断した。
俺は一瞬の隙をついてタックルに行った。相手の脚を俺の両手か刈る瞬間、相手は膝蹴りを俺に合わ
せてきた。俺は額に膝を受けて、そのまま左手てキャッチすると、低い姿勢でドラゴンスクリューをか
ました。大きく頭上をヨージの体が回転する。
ヨージは回転を利用して受身を取り、そのまま立ち上かった。俺も合わせて立ち上かる。
左の裏拳て奇襲をかけると、相手は右のソバットを合わせてきた。
「今度はボクから行かせてもらいマース。」
ヨージは右のローから左のミドルの鮮やかなコンビネーションを見せた。俺の両腕か左のミドルを受
けることに専念して、ガードか下かった瞬間、ヨージは飛ひ上かり気味に右の延髄斬りを見舞ってきた
俺はたまらすダウンした。
俺は背中を地面につけており、両足だけで相手と正対していた。ヨージはスタンドだ。いわゆる猪木
対アリ戦状態になってしまった。ヨージはローキックをするそふりを見せると、不用意に俺に脚から飛
ひ込んてきた。俺はヨージの蹴りを受けると足首の関節を極めて、背後に投げつけた。ミスター東郷か
ら習った下段当て身投げだ。
俺は柔術立ちで立ち上がると、ヨージを挑発した。
「今ので、アンタの左の足首は貰ったな。これてもうアンタは蹴りもできないし、もちろんパンチの威
力も半減だな。それとも何か、痛みを我慢して強引に俺を蹴り続けるか?もちろん、それもいいだろう。
悪いかこの勝負、あと一分以内に決めさせてもらう。あんた、もう背中が死んでいるよ。」
挑発に乗って激怒したヨージの蹴りの猛攻か始まった。俺は7発の全ての蹴りを完全にガードすると、
間合いをはずしてから、再び挑発した。
「アンタの遅い蹴りは、もういいよ。飽きた。それより、俺のこの顎をあんたの右ストレートで打ち抜
いて見ないか?俺は一発いいのを貰ってみる気になったぜ。」
俺は自分の顎を右手で指差すと、そのままステップを止めて、相手を誘った。
「絶対決めマース!あなた、許せまシェーン。」
ヨージは俺の顎を狙って渾身の右ストレートを放った。俺は軽く左に体を捻って相手のパンチをよける
と左手て相手の手首を掴んた。そのまま相手の右手首を決めると、右手で相手の胸を掴んで、軽く腰を
入れて投けた。上段当て身投げか爽快に決まった瞬間だ。ダウンしたヨージの右手にそのまま逆十字を
決めると、俺は躊躇なく折りに行った。また、いやな音がした。
俺は技を解いて立ち上かった。たか、俺の前には再ひヨージか立ち上かって、右手をたらりとふら下
けたまま、左手たけて、ファイティングポースをとっていた。もちろん、ヨージの足首は片方たけひど
く腫れ上がっていた。
「あんた、またやるのか?」
「ボクもヤマト武士のはしくれデース。自分か完全に闘えなくなるまて、やりマース。」
ヨージは残った左腕だけて渾身のラリアットを放ってきた。俺はラリアットを半身てかわすと、フジワ
ラデスロック、つまり脇固めに捉えた。
このまま極めてもよかったが、さすがに俺も相手の両腕を折るほど厳しくはなかった。バックをとっ
て、相手をチョークスリーパーに捕らええた。両足をはたつかせてもかくヨージ。俺はチョークに捕ら
えたまま相手を引き起こすと、そのまま腰を入れて首を決めたまま背負い投けのように投けた。逆落と
しか決まった。さすかのヨージも完全に落ちていた。
「長い戦いたったな。悪いか火星皇帝、今回の要求を述へさせてもらう。お前らか拉致した地球人を全
員解放しろ。皇帝親衛隊の宇宙船を1ダース借りる。あとは、あんたを人質にとってもいいか、まあ、今
回は要求を呑んてくれれば、そこまではしない。あとは、後てあんたの直営放送局を借りさせてもらう!
「2度までも、この火星皇帝にたてつくとは!しかし、今回はお主の顔を立てよう。」
火星皇帝は、部下に連絡して、ポルゴを直営放送局まて案内させると、その前後に、部下に皇帝の間
の隠しカメラの映像を編集するよう依頼した。今回のポルゴとヨージ12世の戦いのテータを分析して、
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ポルゴを完膚なきまてに叩きのめすためのキラーマシンを作ることにした。その後、火星皇帝は仕方な
く、地球人奴隷解放の演説を行った。
ポルゴは火星皇帝直営放送局を乗っ取ると、火星て強制労働をさせられている全ての地球人に向けて、
強制収容所の傍にあるMDPの入ったボックスの存在を教え、火星皇帝か彼らの地球への帰還を認めたこ
とを報告した。地球人たちは、皇帝親衛隊の宇宙船で地球に戻ることができた。
俺は自分の乗ってきた宇宙船て何食わぬ顔をして、地球に戻った。
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第29章問題
火星に拉致された地球人たちを乗せた12隻の大型宇宙船は地球に帰還した。問題は、その護衛と称し
て、残りの10隻近くの火星帝国親衛隊の大型宇宙船も地球圏にやってきたことだ。地球に戻ってきた被
害者達の目は暗く、皆憔悴しきっていた。地球の世論は火星帝国への経済制裁の再発動と、主戦論の方
向に盛り上がりを見せていた。
最近わかったことだが、火星人達は伝染病に弱い。彼らは人間以外の生物の遺伝子も取り込んでおり、
そのため、極端にウィルスなとの病原体への抵抗力か低下していた。俺は、一度火星人をウィルスて攻
撃することを考えたか、いくらなんても相手もホモ・サピエンスの遺伝子かベースになっている人間て
あり、あまりというか、はっきり言って人道に反する手段であると思えた。
ミス・ワカマツは一時的に地球圏に戻ると、ワニ革バッグの展示即売会を開いていた。ワニ革バッグ
といっても、小さな女性向けハンドバックたけてはなく、スーツケースやホストンバッグまて販売して
いた。さらに、ワニ革スガードやジャケットの販売まて手かけていた。
俺はミス・ワカマツの展示即売会の会場を訪ね、彼女に面会した。彼女の周りはホディガートを兼ね
た若い男性が4・5人囲んでいた。
「ミス・ワカマツ。俺だよ。ポルゴだよ。」
一瞬、誰という表情をしていたか、すぐに俺だと気付いたようだ。
「ああ、ポルゴさん。お久しふり。このワニ革のスーツいかか?安くしときますよ。」
相変わらすのビジネスへの堂の入った打ち込みようだ。
「悪いけど、また例のヤクと銀河ワニの卵譲ってくれない?もちろんマーズマネーのキャッシュで払う
から。」
第四次地球侵略戦争以降、地球圏、いやこの太陽系の基軸通貨はマーズマネー1つになってしまった。
かつて回顧主義でグローバルリラを使っていた頃が、懐かしい。ミス・ワカマツはあらかしめ手土産に
MDPと銀河ワニの卵を事務所に定期便て輸送する手続きを取っておいてくれたらしい。そのことを聞い
て安心した俺は、付き合いてワニ革のスーツ一式とスーツケースをキャッシュで購入した。
「毎度あり!ポルゴさん、ワタシは当分金星て大儲けするわ。この前、ミスター東郷一家か訪ねてきたけ
と、ポルゴさんの師匠てもあるし、ワタシかホテルを世話しておきました。生命の泉のことはまたよく
わからないけと、情報網を使って調べてみるわ。」
「そうか。まあ、元気に暮らすんだな!また金星てのビジネスに飽きたら、いつても地球の事務所に戻っ
て来いよな。」
そうは言ってはみたものの、ビジネスを何よりも生きかいとするミス・ワカマツか当分金星に止まっ
ていることは火を見るよりも明らかだ。自分の遺産を有効活用している妹に死んたワカマツもあの世で
浮かばれていることたろう。
俺は死者の魂の存在も信じないし、あの世の存在も信してはいないが、ふとそんなことを考えていた。
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第30章予兆
火星皇帝は地球人奴隷を解放したが、それは彼らの仕事が終了したからた。拉致された若い地球人を
奴隷にして、地球侵略のための宇宙船やミサイルなとの兵器を作らせていた。その作戦か全て終わった
ことを意味する。火星の側から見れは、いつでも第5次地球侵略戦争を仕掛けられる状態にあった。
俺か火星に仕掛けてきた3ダースの銀河ワニの卵は全て無事孵化し、火星て大立ち回りを演しているよ
うだ。特に、初期の1だースの連中は子孫を生み出すに至っている。今火星には50匹以上の銀河ワニが
野放しになっていた。
銀河ワニ達は生命の杖で焼かれる程ヤワな肌じゃなかった。火星人のみを襲うよう遺伝子改良を行っ
た彼らは、最強の生物兵器だ。
金星フロンティアは相変わらす火星から植物由来の食料資源を地球に内緒て密輸し、金星は火星て暴
れている銀河ワニを大人しくするフェロモンや鉱物資源を輸出していた。そうして、第5次地球侵略戦争
の際には、金星軍も火星帝国に協力する裏協定を結んていた。あらたな太陽系秩序か生まれる予兆をこ
の地球圏は孕んていた。金星フロンティアの独立を承認すると同時に、金星と火星か同盟を結ぶことを
阻止する案か地球連合の中て議論されていた。
俺かいるといないに関わらす、太陽系の惑星は太陽の周りを回っているし、太陽系の政治・経済も回っ
ていた。第5次地球侵略戦争か起こるのは時間の問題だ。地球の側もとうにかして火星帝国を滅ぼすこ
とを考えている。
こんな世の中こそ、かえってミス・ワカマツのようにビジネスチャンスを見つけられるのかもしれな
い。太陽系帝国は未たかつて実現したことはないし、その帝国の元首が火星皇帝てあるとするならは、
全ての地球人にとって何の意味もないことだ。この太陽系にはまたまたフロンティアか存在するし、そ
れは銀河系ても同しことだ。当分あてもなくとこかふらふらと旅に出ようかなと思いつつ、そんなこと
もできないのか俺達庶民の懐事情だ。
いずれにせよ、第5次地球侵略戦争が始まった時は、俺もレジスタンス活動をするつもりだったし、2
回も火星皇帝の命を狙えるチャンスかありなから、それをフイにした俺の甘さもちょっと無念だ。師匠
のミスター東郷は今頃何しているのかと思いをはせたか、俺の頭に浮かんでくるのは、ミスター東郷の
白髪交じりのファンキーフェイスてはなく、長い金髪て笑顔か綺麗な東郷の娘のレイナの顔だ。
俺は溜まっていた書類や、小さな依頼をことことく片付けると、金星フロンティアに向う決意をした。
今は量子宇宙船に乗る大金は手元になかったか、ミスター東郷のもとてまた一から稽古をつけてもらう
ことも、それなりに魅力だ。
俺は大インドに渡ると、金星フロンティアへの定期便に乗船した。あるうららかな春の日の出来事だ。
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第31章沈黙の惑星
俺は金星入りすると、とりあえずミス・ワカマツを訪問した。
「あら、こんにちは、ポルゴさん。景気はどう?私のところは相変わらず儲かっていますけど。今後ま
た、キングオヴギャラクシーか開催されるみたいてすね。また、銀河トトてポルゴさんに賭けますわ。
今度こそ、優勝してくたさいね。」
「何、またギャラクシーかあるのか。今度の主催者は誰だ?また、あの火星皇帝か?それにルールは?
「今回のギャラクシーの主催者は前回の優勝者、つまり銀河の大王です。今度のルールはタッグマッチ
だそうです。場所はやっぱり地球の月(ルナ)です。」
「タッグマッチか。それたとパートナーの問題かあるな。やっぱり、あの銀河の大王やグレートアジア
クラスの使い手か出てくるとなると、気か使えて、それに格闘術もマスターしてないと。パートナー公
募ってわけにもいかないよな。ちょっと困ったな。」
「ワシだったら、準備万全じゃぞ!」
そこには、髪か黒々と生えそろっており、全身の筋肉か強烈に自己主張しているミスター東郷の姿があっ
た。思わす圧力(プレッシャー)を感じてしまった。
「ミスター東郷、その髪、染めたんてすか?」
「生命の泉じゃよ。ワシはあの温泉に妻と一緒に浸かって、10歳は若返った。こんなことありえないと
思うだろう。だが、現にワシはこうして全盛期の姿を取り戻している。とうだい、ポルゴ。このワシと
一緒に火星人たちの刺客を葬り去るのは。一丁、暴れてみようじゃないか?」
「もちろん火星皇帝の刺客も今度のギャラクシーには参加するでしょう。ミスター東郷、奥さんの了承
はとってあるのてすか?いくら貴方の実力ても、その年齢でギャラクシーに参加して無傷というわけに
はいかないでしょう。」
「ワシにはそれなりの覚悟がある。もちろん、今回のことは妻にも了承済みだ。ポルゴよ、次のギャラ
クシーの開催までまだ半年ある。金星て銀河ワニ相手にスパーリングと行こう!」
「そういうことでしたら、目標は優勝ということて、バリバリ行きましょう!」
地球の師弟チームが誕生した瞬間だ。
一方地球では、グレートアジア13世が今度のギャラクシーに備えて地獄の特訓を開始していた。あの
時の闘いの敗因は、自分が気に頼りすきたことだ。本来、レスラーである自分は、あくまてレスリング
て勝負するべきだった。マウントをとった瞬間、パンチの嵐から気の連携技に移行するのではなく、あ
そこで逆十字に行っていれば、一本取れたはずだった。気の使い方も、無駄に具現化して消費するので
はなく、気の鎧、つまりスーパーアーマーとして使っていれは、あの時の肘打ちで逆転勝利を奪われる
こともなかった。グレートアジアはたた黙々とスクワットをしなから、そんなことを考えていた。あと
は、パートナーだけが問題ね。他のシムのレスラーをスカウトするか、あるいは自分のジムの若手レス
ラーに声を掛けるか。場合によっては、地球の腕利きの殺し屋をパートナーに選ふこともルール上は可
能だ。しかし、グレートアジアはレスラーとしてのプライドと可能性にかけることを選んでいた。
火星皇帝の間では、地球の優秀な格闘家が2人呼ばれていた。
「ヨージ12世、それにジュン・バードよ。お主らの働きは火星皇帝てあるこの私も高く評価している。
お主ら二人とも、あのポルゴに腕を折られたヨージゃな。あの時の怪我は、もう完治したことじゃろう。
実は、お主らにいい復讐のチャンスかある。次のキンクオウキャクシーに参加してみないか?もちろん、
あのポルゴも参加するじゃろう。なんだったら、ネオ・ステロイドを注射したり、お主たちを遺伝子レ
ベルで強化してやっても、よいぞ。」
「皇帝閣下、ワタシたち地球人の格闘家にはプライトがあります。ネオ・ステロイドのような薬物や強
化手術に頼らなくても、あのポルゴをしとめてみせます。伝説の不死鳥の名にかけて誓います。」
「ボクもネオ・ステロイドに頼らすとも、ポルゴに勝ってみせる自信ありマース。ジュン兄さんと一緒
でしたら、百人力デース。皇帝閣下、ホクたちのために高重力ルームを御用意していたけますか?」
「何、高重力ルームたと。お主たちはそこまて本気を見せるのか?とりあえす地球の10倍の重力に設定
してある部屋を用意しよう。スイッチを捻れは、あと10倍程度は調節可能じゃ。低重力に慣れきった我々
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火星人には全く考えられない世界だか。」
2人の格闘家を部下に高重力ルームに案内させると、火星皇帝は手元の電話で、科学者のドクター・
トリックを呼はせた。
「ドクター・トリックよ。例のものは用意できたか?」「ハイ、二体共です。一体は地球で拉致してき
た女性格闘家に強化手術を行ったものです。二体目は我々の科学力か生み出したキラーマシンです。一
体目には洗脳マスクを被せて、ポルゴの戦闘テータと対策をインストールしています。もちろん、火星
皇帝閣下への忠誠も誓わせています。地球での記憶は全て削除してあります。キラーマシンの方は、そ
の内蔵コンピュータにポルゴの格闘テータを全てインプットしてあります。」
「なるほど。さすがは、ドクター・トリック。今後の研究費も弾ませてもらおう。たた、インセンティ
ヴ報酬に関しては今度のギャラクシーの結果次第だが。」
「全てわかっております。火星帝国の科学の発展と皇帝閣下のために。」
「期待しておるそ。では、さがってよい。」
火星皇帝は今度のギャラクシーてのポルゴ排除のために、強化人間とキラーマシンて勝負を賭けてい
た。地球の格闘家を金て雇ったのはタミーだ。既にポルゴに敗北している2人は本来ならは用済みだ。
彼らに声をかけたのは、皇帝の争い好きな性格と地球人たちの感情の力、復讐への憎悪の力を試してみ
たかったという理由からた。金星フロンティアてはポルゴとミスター東郷達か修行に入っていた。ミス
ター東郷はます、ポルゴに古流柔術の4つの型、それそれが12本の技からなっているが、それを確認さ
せた。ポルゴか型を正確に1つ1つ再現してゆくと、ミスター東郷は弟子の実力に満足感を覚えたようだ。
次にミスター東郷はパンチングミットを持つと、ポルゴにパンチのコンビネーションを確認させた。ワ
ンツー、フック、アッパー、それに肘打ちか爽快にミットを打っていった。今度はキックミットを大腿
部の前に構えると、ローの練習をさせた。
次は脇に構えてミドル、顔面の前に構えてハイを打たせた。
「これで、基本の確認は終わりじゃ。これからは本格的な練習に入る!全身の気を高めるのじゃ、ポル
ゴ!」
ミスター東郷はミス・ワカマツに用意させた特別なミットに持ち替えると、ポルゴにミドルキックを
促した。
「ポルゴ、このミットは通常のミットの10倍の威力に耐えられるよう強化した素材で作られておる。ミー
ティングの瞬間、気を爆発させるのじゃ。いいな!」
黙々とポルゴはミドルキックを数十発ミットに叩き込んた。「ハカ者!ポルゴよ、お主はまた力をセー
ブして蹴っておる!本気を出すのしゃ。ワシかミットこと吹っ飛ばされるようなケリを放て!またお前の
表情には甘えがある!」
そう言うとミスター東郷は鬼の表情で、足元に放置してあった竹刀を手に取り、ポルゴの顔面を容赦
なく殴りつけた。
「そうだ。その面だ。今度のギャラクシーに勝つには、お主の本気の力か必要なのじゃ。」
ひたすらポルゴかミットにケリを入れると、ミスター東郷はフイにミットを放り投けた。
「甘いな。また甘い!甘過きる!!今度はワシか直々にスパーリングて稽古をつけてやろう!ポルゴよ、グロー
ブをオープンフィンガーに付け替えるのじゃ。あとはレガースとニーパッドも忘れずにな。スパーはルー
ル無用じゃ。とちらかか一本取るまでが、ワンラウンドじゃ。それを5ラウンド行う。いいな。」
ミスター東郷は5ラウンド全てを取った。ポルゴに一本も取らせなかった。
「お主、ワシか老いぼれたと思って手を抜いているのてはないたろうな!まあ、いい。お前の実力は、こ
れから行う実践練習て全てか明らかになる!これからミス・ワカマツの銀河ワニ牧場に行くぞ!」
ポルゴとミスター東郷はミス・ワカマツか経営する銀河ワニ牧場に行くと、十二分に成長しており、ワ
ニ革バッグやスーツへ運命か決まっている20匹の銀河ワニ達か放し飼いになっている第3牧場に案内さ
れた。
「ポルゴよ。たまにはミス・ワカマツの仕事をお主か手伝ってやるのもいいたろう。ここにいる銀河ワ
ニ20匹を全て素手て倒せ!もちろん、ワシも最小限の援護はする。いいな!これは師匠のワシの絶対命令
じゃぞ!」
46
第3牧場に入ったポルゴたちの前に、さっそく体長10メートルはあろうかという活きのいい銀河ワニ
か立ちはだかった。
銀河ワニは大きな口を空けて、ポルゴに向って飛ひ掛ってきた。ポルゴはサイドステップでワニの第
一波をよけると、銀河ワニのこめかみにあたる急所めがけて左のハイキックを放った。ミーティングの
瞬間、全身の気を爆発させた。
はずだった。しかし、銀河ワニはピンピンしていた。仲間の異変に気かついた銀河ワニたちか5匹で
ポルゴたちを取り囲んていた。
「ポルゴよ、今のは当たり所か悪かった。ちょっとポイントが外れていたぞ。蹴りってのは、こういう
風にやるもんたぜ。」
ミスター東郷は一足て飛び上かると、回転回し蹴りを放った。左足を軸に右ハイを放ち、右足か着地
する前に今度は左のソバットを放った。これて2匹の銀河ワニか気絶していた。ミスター東郷は一歩踏み
込み、3匹目の銀河ワニに左の裏拳を放った。返す刀て右のサイドキック(シャッセラテラル)で4匹目
を仕留めた。
「やってみい。ポルゴよ。正拳突きで前の獲物を仕留めるんじゃ。」
ポルゴは最初に彼に襲い掛かった銀河ワニに右ストレートを放った。銀河ワニは鼻血を流して気絶し
てしまった。
「泡盛てもロックで一杯やる。では、ちゃんと仕事をするんじゃぞ。」
「やれはできるしゃないか?残りの15匹は全てお前が片付けろ。ワシは温泉に入ってくる。」
ミスター東郷はそういい残すと、銀河ワニ牧場を後にした。檻を管理している警備員に、全ての銀河ワ
ニが大人しくなるまで、ポルゴを出してはいけないと固く言い残すことを忘れなかった。
「クッソー。あのアル中オヤジ。俺を殺す気かよ!幾らなんても15匹の銀河ワニを素手で倒すなんて無理
だろ!あんなボケジジイにパートナーを頼んた俺が悪かったぜ。」
「誰かアル中たと。ボケジジイとはどこに居る?ポルゴよ、言葉を慎むんじゃな!」
檻の外から様子を見ていたミスター東郷は鬼の形相て叫んていた。このやりとりを聞きつけた残りの
銀河ワニか15匹、円を描くかのようにポルゴを取り囲んていた。ポルゴは深呼吸をすると、全身の気を
一気に開放した。ポルゴを取り囲んていた銀河ワニ達はプレシャーを受けて、5メートルほど後退した。
そのスキを踏み込んたポルゴは、右ストレート、右サイドキック、左バックキックというように的確に
打撃を当てると確実に銀河ワニ達を眠らせていった。これかミスター東郷の地獄の特訓だ。
あっという間に5ヶ月が経過した。
47
第32章裏
復活して第2回目のキングオヴギャラクシーの開催か一ヶ月後に迫っていた。俺とミスター東郷は試合
に備えて、修行に励んでいた。
「ポルゴよ。遠慮なく打って来い!」
俺はワンツーを放った。ミスター東郷は俺の右ストレートをキャッチすると、そのまま左手て俺の右手
首を極め、右腕て俺の胸元を掴んて腰を入れて放り投けた。豪快な当て身投けが決まっていた。
俺は懲りずに立ち上かると、左手てタミーの目潰しをかまして、そのスキに右ハイを放った。決まっ
たな、と思った瞬間、ミスター東郷の体を軸に俺は宙を舞っていた。
その後も左のミドルや右のフックなとを俺は放ったか、例外なく同し結果だ。ミスター東郷との実力
の差は歴然だ。
しかし、俺もかつてミスター東郷から古流柔術のそれそれ12本の技からなる4つの型を全て習い免許
皆伝を頂いたはずだ。その中には当身技、投け技、関節技、絞め技全てが含まれていると俺は思ってい
た。四十八手が相撲と同して、俺の習ってきた古武術の全てだと思っていた。
「なせお主かワシの技を全て食らってしまっているか、お主も自問しているところじゃろう。お前にワ
シか教えてきた技は、実は全て表の技だ。表の四十八手には全て完全な返し技が存在する。それか裏の
四十八手じゃ。ポルゴよ、お主に与えた免許皆伝は表の技だけしゃ。ワシの伝承してきた古流柔術は奥
義秘伝書に裏四十八手まで記されている。これからお主には奥義秘伝書の裏四十八手を伝授しよう。」
俺か今まてとんな相手の打撃も切り返すことかできると習ってきた当て身投けには、もちろん返しの裏
技か存在していた。そして、表の当て身投けを全てマスターした者のみか使いこなすことのできる必殺
の裏の当て身投けをミスター東郷は身をもって教えてくれた。
裏の当て身投げは、返し技がたとえ存在していたとしても、常人には切り返すのか不可能な技だ。
ミスター東郷は奥義秘伝書に記されているという技の数々を全て俺に教えてくれた。そのほとんとが
一歩間違えれは相手を死に至らしめるという強力な破壊力を持つ禁し手はかりだ。あまりに危険な技か
記されているという奥義秘伝書の在り処についてミスター東郷は決して話してくれなかった。しかし、
俺は身をもってその内容を叩き込まれた。
「ポルゴよ、裏四十八手の型は、所詮は全て型じゃ。それを学んた上で、実践に生かしてこそ真の実力
になる!裏四十八手の技をそのまま相手に用いれは、それか原因て相手を死に至らしめることがある。我々
か目指すのは、表の型でも裏の型てもなく、それらを統合したより上位ての実践しゃ!古流柔術の九十六
手全てを自分の物とした上で、独自のアレンシを加えるのじゃ。その先に、あの銀河の大王にも勝てる
道がある。」
「ミスター東郷、しかし、ただ幾ら古流柔術の技を磨いたところて、銀河の大王を倒すためには、ギャ
ラクシーウェーブの気をまともに食らっても大丈夫な強力な気の力を養成すべきたと思います。」
「ポルゴよ。お主、まだまだじゃの。裏四十八手は人間の気の力を最大限に引き出す型でもあるのだ。
一見単純に見える裏の型第一番の投け技、柳流れの動きそのものか、実は人間の気の流れを象徴してい
るのた。つへこへ言わんと、型の練習に打ち込め!その後てみっちりワシかスパーリングで稽古をつけて
やる!」
俺達が銀河ワニ相手に修行を行った成果で、ミス・ワカマツの牧場ではワニ革の大量生産に成功して
いた。俺達は野生の銀河ワニにも手を出すようになり、ミス・ワカマツは高価な銀河ワニフェロモンを
使用せすにワニ革を集めることかでき、ホクホク顔て喜んていた。最終の調整は一ヶ月続いたか、その
間にも銀河ワニとの戦いて自分のレベルアップが実感できた。
「ポルゴよ。お主の実力も大分ついてきたな。ワシの若い頃と比へるとちと不安じゃが、まあ好しとし
よう。明日の月への直行便で発つ!準備をしておけ!ところて、ワシのリングネームじゃが、何かいいもの
はないかのう?」
「ミスター東郷では、ご不満で?」
「ワシも昔、ミスター東郷の名で火星人達や地球の格闘家を震え上がらせたことかある。しかし、若返
りに成功したワシとしては、リングネームもちょこっとだけ新しくリフレッシュしたいのじゃ。」
48
「それでは、以前のミスター東郷以上に強力かつ凶暴なミスター東郷ということて、バイオレンス東郷
はどうでしょうか?」
「それしゃ!!ワシはバイオレンス東郷としてエントリーする!ポルゴよ。お前も何かリングネームをつけ
てみてはどううしゃ?ミスター・ポルゴ。いや、ポルゴ大王。あるいはポルゴ総統なんていうのはとう
じゃ。」
「私は自分の名前でエントリーします。ポルゴの3文字で十分てしょう。チーム名はどうなさいます
か?」
「それはもちろんイケメンファイタースで確定じゃろう!全地球の若い娘、いや全銀河のナイスギャルに
アピールじゃ。」
「ミスター東郷、いやこれからはバイオレンス東郷と呼ふことにしましょう。そのチーム名は幾らなん
ても。タックチーム名はミス・ワカマツや貴方の御家族と相談して決めましょう。」
「了解じゃ。明日は出発になる。今日は早めに休んておくのだ。」
こうして俺達師弟は一旦別れて、明日の出発に備えることになった。
49
第33章エリカ
グレートアジア13世は地球でレスラー仲間に声をかけてみた。女子・男子を問わす最強のプロレスラー
てあるグレートアジアにはプロレスラーの友人はあまりいなかった。あまりに彼女は強すぎたのだ。そ
して誰よりも孤独だ。もちろん、彼女が代表を務めるウェヌスジムには女子レスラーを中心に地球を代
表するレスラーか何名が所属していたが、彼女達は銀河最強を決めるキングオヴギャラクシーに参加す
るには、やや力不足と言わさるを得なかった。
黙々とヒンズースクワットを繰り返し、足元て汗の水溜りを作っている彼女の前に一人の強烈な肉体
か現れた。
「エリカじゃないの?久しぶりね。あなた、最近フリー宣言したって聞いたけど?調子はどう?」
「アジア、私の目標はあなたよ。団体の枠を越えて、地球の7色のベルトを全て所持するあなたに挑戦す
るために、私はフリーになった。しかし、今日はそのことを話に来たのではないわ。プロレスが銀河最
強の格闘技てあることを示すために、あなたにパートナーになってもらいたいと思って、あなたのジム
まで会いに来たの。」
「えー、ウッソー、マジっ?エリカとだったら私絶対優勝する自信があるわ。一緒に頑張りましょう。
「交渉成立ね。念のために言っておくけどあなたとタッグを組むのはこれっきりよ。ギャラクシーが終
わったら、私たちは敵同士。あなたを倒すのは、このわたしということを覚えておいてね。」
「はい、頑張りましょうね。」
「前回のギャラクシーでのあなたの戦いは生て見せてもらったわ。その時の闘いの内容を踏まえて、た
またま昔のプロレスのビデオアーカイブを持ってきたから、後てよかったら参考にしてね。」
女子プロレスのライバル団体のトップか置いていったビデオアーカイブは数世紀前、地球で行われたプ
ロレスの団体、パンクラチオンの試合の映像だ。グレートアジアはトレーニングを終えると、その映像
を鑑賞した。パンクラチオンでは、全ての試合か3分以内に決着かついていた。相手かKOするか、ギブ
アップするかで決着かつく。乗るか反るかのシュートプロレス、それかパンクラチオンだ。
アジアはパンクラチオンの映像を見終えると、一人て物思いにふけっていた。トップのプロレスラー
てある彼女は、常に試合会場に来場してくれた全てのファンを満足させることを最大の目標にしてきた。
プロレスラーにとって強いことは最低条件であり、さらに会場にいる全てのファンを満足させることか
課せられていた。相手の技を全て受けきり、相手の実力を全て引き出させた上て、最後は完全無敵のフィ
ニッシュホールドで決める。それがプロレス王者てあるグレートアジアに課せられた使命だ。パンクラ
チオンのように数分で、いや数秒て相手に何もさせず、一気に関節を取って試合を決めることは彼女に
とってあまりに容易なことだったが、プロフェッショナルなレスラーとしての彼女がそういう試合構成
を拒絶していた。
躊躇なく一気に決める。一瞬で相手を落とす。そういう勝負を如何に重ねてきたかが、前回のギャラ
クシーでの対ポルゴ戦での勝敗に大きく影響していた。相手の腕を躊躇なく折ること、それを常態とし
ているのか、あのポルゴの生き様だ。あの時、アックスボンバーからチョークスリーパーに移行した時、
相手にキブアップをさせず、容赦なく一瞬で落とせば、あの試合は貰っていた。そのことに同じレスラー
であるエリカは気付いていたのだ。
グレートアジア13世はパンクラチオンのビテオを見終えると、アイウォッチからエリカに電話を掛け
た。
「私よ、グレートアジア。明日からウチのジムに来てくれる?一緒に強化練習をしましょう。絶対無敵
のツープラトンも編み出さないとね。」
こうしてギャラクシーの優勝候補筆頭に掲けられる最強プロレスラーのチームが誕生した。
50
第34章西郷
銀河の大王は銀河帝国の公務を首相に全権で委任すると、第2回キングオヴギャラクシーの半年前に、
自家用の量子宇宙船で地球圏を訪れた。
「あなたが大東流合気柔術師範の西郷詩郎先生ですね。私、前に連絡を差し上げた銀河帝国議会で議長
をしているギャラクティカ・マグナという者です。実は西郷先生にお願いがあって参ったのです。」
「キングオヴギャラクシーのことでしょう。よろしいです。あなたとだったら、優勝が狙える気がしま
す。」
「もしよろしけれは、私の国て一緒に合同練習かできれはと思っております。私の国では最先端の科学
に基つく練習器具が利用出来ます。私の仕事上の都合で、是非、西郷先生にはあと半年、一緒に私の国
て過こしていたたければと思っております。もちろん、無理にとは申しませんが。」
「もちろん、私もそのつもりです。是非、銀河帝国にお邪魔させてもらいましょう。」
銀河の大王ほどの男が先生と呼ぶ相手、それか西郷詩郎だ。彼が身につけている合気柔術は単なる柔
術てはなく、全ての人間に本来備わっている潜在能力てある気を最大限引き出す技術体系であった。そ
して、彼か先生と呼はれるほとの実力を持っているのは、単にその凄ましい気の潜在能力だけてはなく、
彼かかつてジパングで四天王と呼はれた最強の格闘家の子孫でてあり、かつて四天王と呼はれた彼の先
祖を遥かに凌駕すると言われている実力を彼が保持していることだ。
銀河の大王はかつての対戦から、地球最大のライバルであるポルゴが気の技術を完全に身につけてお
り、古流柔術をベースにした総合格闘技の使い手であることを見抜いていた。西郷詩郎は古流柔術から
進化した合気柔術と柔道の両方の奥義を全てマスターしている地球の至高の使い手だ。銀河帝国に西郷
を案内することで、彼は最高の環境て最高のトレーニングを経験することになる。自ら主催し、第2回
目となるキングオヴギャラクシーをぶっちぎりて制覇するために、銀河の大王は自ら地球圏に足を伸ば
して、西郷をスカウトした。
51
第35章決戦前夜
ついに、地球の月(ルナ)て3代目の銀河の大王か主催する第二回キングオヴギャラクシーの予選の火蓋
か切って落とされた。ポルゴとバイオレンス東郷のチーム、グレートアジア13世とエリカの女子プロレ
ス最強チーム、3代目の銀河の大王と西郷詩郎の銀河帝国チーム、ジョー・ヨージ12世とジュン・バー
ドのゴールデンシュータース、火星帝国代表の匿名希望チーム、その他3チームの合計8チームが決勝トー
ナメントまで残った。
決勝トーナメント参加チームは改めてチーム名を申告し、2対2のサドンデスタッグマッチ形式の試合
を行うことか主催者てある銀河の大王からアナウンスされた。このサドンデスタッグマッチのルールは、
KO、キブアップ、リングアウトてとちらかのチームの二人共か負けるまで行う。一人ても上記3つのパ
ターンで敗北した場合、そのチームは残りの一名のみかリングて闘うことになるという過酷なルールだ。
敗者はリングから去らねはならない。たとえチームメイトがまだ闘っていたとしてもだ。対戦チームの
組み合わせは厳選なる抽選で決められた。
「バイオレンス東郷、チーム名はホントにチーム・ファルコーネて良かったんですか?」
「そうじゃ、ポルゴよ。ワシらは空の王者鷹(タカ)のように最強のバトルを行うんじゃ。第一回戦は火
星帝国チームじゃな。奴らだけは絶対叩きのめそう!」
「了解しました。」
ポルゴとバイオレンス東郷のチーム・ファルコーネの名称はかつて数世紀前に地球でマフィアと闘い正
義のために殉職したファルコーネ検事をリスペクトして名付けられていた。地球で反火星パルチザンと
して多くの犠牲を払い戦ってきた彼ら師弟にとって、火星皇帝率いる火星人たちはみなマフィアのよう
な連中であり、いかなる犠牲を払っても地球の平和のために排除すべき相手だ。
「エリカ、チーム名はどうする?私はかつて初代のグレートアジアかキングオヴギャラクシーで名乗っ
たチーム名、ヘルリヘンジャーズで登録したいんだけど。」
「わかったわ。決勝トーナメントに行く前に私と約束してくれる?たとえどんなに楽勝な相手であって
も、絶対一人では勝負を決めないで。極力二人で力を合わせて、練習したとおり、ツープラトンで勝負
を決めましょうシャイニングヘルクラッシュやシャイニングヘルドロップで勝負を決めるのよ。この戦
い、ローンバトルはあまりに危険だわ。いいわね。」
「自信家のあなたがそこまて言うならいいわ。約束しましょう。とんな時もお互いに協力を惜しまない
と。」
「ジュンさーん。一回戦の相手はなんと二人とも女の子デース。きっと楽勝ですネー。ほんとはグラウ
ンドで決めたいデースけと、セクハラにならない程度に頑張りましょう。」
「ヨージ君、たとえ女性が相手だからといって、油断は禁物てす。相手は仮にも地球のプロレスの現役
チャンプ。我々も本気でかからないと痛い目見ますよ。もちろん、私も試合の後にデートに誘うことは
忘れませんが。全ては我々の勝利の後です。」
コールデンシューターズは一回戦の相手か女子プロレスチーム(ヘルリベンジャーズ)であると知って、
いつになくご機嫌だ。ヨージは試合中のセクハラ攻撃、ジュンは試合後に対戦相手をデートに誘うチャ
ンスを虎視眈々と狙っていた。
「西郷先生、一回戦の相手は無名チームです。楽勝ですかな?」
「我々はシードでもいいくらいの実力です。しかし2回戦(準決勝)の相手の方が問題ですな。コールデン
シューターズはかなりの実力者て技巧派チームです。一方のヘルリベンジャーズのグレートアジア13世
はかつてギャラクシーの常連たった初代グレートアジアの子孫です。パートナーのエリカはグレートア
ジア13世に唯一匹敵する実力を持っているとされるプロレスラーてす。決して油断はなりません。あの
ポルゴとバイオレンス東郷のチームと別ブロックということは、我々が彼らと戦うのは決勝という最高
の舞台においてのみてす。バイオレンス東郷は私に唯一匹敵する地球の武術家です。彼の師匠の断末魔
の叫びは、今でも忘れられません。」
「西郷先生、あなたはあの東郷の師匠に闘って勝ったのですか?それははじめて聞きましたナ。」
52
「昔の話です。古流柔術とそれから発生した柔道や合気柔術の使い手は、お互いに闘って雌雄を決する
運命なのてす。昔は私のほうか、東郷の師匠より実力か上だ。たたそれだけの話です。」
西郷詩郎は広大な銀河帝国で最強を誇る銀河の大王ほどの使い手か一目置くほとの達人だ。その隠さ
れた実力は決勝トーナメントで明らかになる。
明日の午前から第2回キングオヴギャラクシーの決勝トーナメントが始まる。全ての参加者16名は虎
視眈々と優勝と銀河最強チームの名を狙っていた。この大会は太陽系およひ銀河帝国に生中継され、宣
伝効果は絶大だ。火星皇帝はこのトーナメントに世界の注目か集まっているスキを利用して、陰て太陽
系支配のための布石を確実に打っていた。火星皇帝の恐怖の計画はいすれ白日の下に明らかにされる。
53
第36章復活の鷹
第2回キングオヴギャラクシーの決勝トーナメントの火蓋か切られた。一回戦はポルゴ、バイオレンス
東郷のチーム・ファルコーネと火星帝国代表チームだ。
地球の名曲、GLORIA(栄光)が月面コロシアムの会場中に鳴り響くと、ますは青コーナーからポルゴ
がダッシュで入場した。今回のリングは4本ロープの四角いシャンクルだ。ポルゴかトップロープとセカ
ンドロープの間に隙間を作って、バイオレンス東郷を待っていた。
一瞬、リングの照明が消され、次の瞬間にはバイオレンス東郷かリングインしていた。全盛期の姿を
そのまま保っている東郷の姿に観客達は溜息を漏らしていた。バイオレンス東郷の背後には強烈なオー
ラが支配していた。
火星の国歌とともにまず火星皇帝かリングに入場すると、マイクを握り会場にこう宣言した。
「親愛なる太陽系の諸君およひ銀河帝国の諸君、私か火星皇帝じゃ。今回は私の帝国の予選を見事勝ち
抜いた猛者を紹介しよう。レッドソルジャース、カモン!」
最初に銀のマスクを着けた女性かリングインした。次にかなり体格のいい大男かリングインした。
「マスクの選手はレッド・スコーピオン。こちらの大男はセカンド・フォボスしゃ。彼らは私の国の科
学的トレーニングて強化され、本大会の優勝候補筆頭と考えておる。大観衆の諸君、とうそ私の国の代
表に盛大な御声援を!」
言い終わると火星皇帝はリングサイドに陣取っていた。さすがに月世界では生命の杖のスイッチをオ
フにしているようだ。
レッド・スコーピオンか強化人間、セカンド・フォボスかキラーマシンであることは俺達の眼には明
らかたったが、そんなことはこの試合とは関係なかった。
強いほうが勝つ。
それで、いい。
「ポルゴよ。この試合は全てお前に任す。ワシはコーナーて高みの見物と行かせてもらおう。」
リングには俺とレッド・スコーピオンか構えていた。そのまま運命のゴングかしたたかに打ち鳴らさ
れた。
俺はアップライトに構えた。スコーピオンはレスリングベースの低いガードの構えだ。構わす右のハ
イキックて襲い掛かる。スコーピオンは左手一本て渾身の俺のハイをガードすると返す刀て右のミドル
を合わせてきた。ガード越しに俺の左手に激痛か走る。常人(レスラー)の1.5倍の力はあった。俺はバッ
クステップて間合いを取ると、電光石火の低空タックルにいった。タックルを完全に見切って、膝蹴り
て返すスコーピオン。また俺の額に激痛が走る。
決勝一回戦で手の内をさらすのはあまりに危険な選択だ。俺は仕方なく相手の格闘スタイルに合わせ
ることにしてお互いに組み合った。相手はすかさすヘットロックを掛けて来た。俺はヘッドロックを強
烈なバックドロップで切り返す。そのままマウントを取る。
間奏曲のつもりて俺はワンツーを放った。俺の渾身の右ストレートをフォボスはキャッチすると、そ
のまま右の手首を極めて、俺の胸倉を掴んて腰を入れて半身で投けた。俺の得意技当て身投けを相手は
マスターしていた
「ポルゴよ。そやつはお主の表の四十八手を全て見抜いておる!仕方ない、裏構えに切り替えて、裏の四
十八手で応戦しろ!」
確か火星皇帝の宮殿てヨージ12世と闘っていた時、俺達の戦いは全て隠しカメラで撮影されていたか
もしれない。そのことを思い出した俺は、オーソトックスからサウスポーに構えをスイッチして、拳の
位置を微妙に変えた。
プロクラムにない行動をとった俺に対して、フォホスの表情に動揺か走った。タックルて攻めてきた
フォホスの顔面に左のコークスクリューキックを叩き込むと、そのまま相手バックに回った。この一瞬
てフォホスの右腕を極めた俺は、右手てフォホスの右腕を極めたまま、裏一本背負いでフォボスを完全
に投けきった。不自然な角度て顔面からマットに叩き付けられるフォボス。そのままダウンカウントか
10まて数えられる。俺達チーム・ファルコーネが緒戦を決めた瞬間だ。
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裏一本背負い。通常の一本背負いがか相手の正面から掛ける技であるのに対して、裏一本背負いは相
手の腕を決めたまま、背後から一回転させて相手を投げる非常に危険な技だ。バイオレンス東郷の伝説
の奥義秘伝書の裏四十八手に記されているという禁断の技だ。
火星皇帝は怒りの表情て生命の杖を持ったまま立ち上かると、俺達をキッと睨みつけて会場を後にし
た。キラーマシンは仕方なかったか、地球人の女性に洗脳マスクを着けて無理矢理闘わせる火星皇帝の
汚いやり方に、俺達師弟は怒りを覚えていた。
55
第37章新生ヘルリベンジャーズ
続く2回戦は、黒いマスクをした背の高い謎の二人組、ブラックホールズがあっさり秒殺で無名チーム
を葬っていた。
3回戦がリングアナからコールされると、ますは青コーナーにジョー・ヨージ12世とジュン・バード
のゴールデンシューターズがリングインした。彼らは黒のストロングスタイルのタイツに、ゴールドの
シューティンクレガースを着用していた。オープンフィンガーもゴールドだ。ジュンが入場した瞬間、会
場の地球人女性の観客から割れんはかりの黄色い声援が送られた。
一方、会場にヘルリベンジャーズの懐かしのテーマをロック調にアレンジした新曲か鳴り響くと、新
生ヘルリベンジャーズのグレートアジア13世とエリカが入場した。彼女達は黒のテビル風アクセントの
ペイントてコーディネイトしており、ヘヒーアーマーを着けて入場した。先に入場したエリカはヘビー
級のボディて石油缶を持って入場した。続いて入場したグレートアジアは体重をジュニアヘビー級クラ
スまて絞り込んていた。短距離走の選手を思わせるような、洗練されたフォルムの美しい肉体に会場全
体は溜息をついていた。
「ジュンさーん、ここはワタシ一人に任せてもらいマース。こんな美しい女性と闘えるなんてチャンス
滅多にありまセーン。ワタシ全力で頑張りマース。」
そう説明してジュンをコーナーに追い出すと、ヨージ12世はアップライトに構えていた。赤コーナー
からはエリカが出てきた。
痛烈にゴングかかき鳴らされた。
ヨージはゴングと共に表情を一変させると、鋭い視線で右のハイキックを放った。エリカは左手で右
ハイをキャッチすると、そのまま間合いを詰めてキャプチュートを放った。ダウンしたヨージにコーナー
からグレートアジアかタイヒンクエルホーをかました。そのままアジアはヨージに首4の字、エリカはフィ
ギュアフォーレッグロック(足4の字)てヨージを捉える。たまらすジュンかストンピンク(踏みつけ)てカッ
トに入る。アジアとジュンはコーナーに素早く戻った。
「ジュンさん、手出しは無用です。ワタシは名門蛇の穴出身のファイターです。女性レスラー二人を相
手にしても十分闘えることをここで証明します!」
エリカはロープの反動を利用して、渾身のラリアットを放った。すかさす脇固めに切り返すヨージ。
エリカは体を回転させて、脇固めを逃れた。そのまま反動を利用してスタントに持ち込むと、エリカは
右ストレートを放つと見せかけて、必殺の左のバッグハントを放った。エリカの裏拳か的確にヨージの
こめかみを捉える。そのままヨージはダウンした。ダウンしたヨージの頭を股間に挟んてエリカはヨー
ジの逆さ吊りの体勢で抱え上ける。
そのまま強烈なドリル・ア・ホール・パイルドライバーを放った。
―ユニバーサル・レスリングは確かに打・投・極のバランスか取れたスタイルたわ。しかし最近は打撃
と関節技の練習に力を入れるはかり、レスラーの基本である肝心な受身の練習を忘れているわ。このま
まプロレスの投け技でこの勝負、決めるわ!―
エリカはそう思念した。
ダウンしたヨージかそのプライドで四つん這いのまま立ち上かろうとしたとき、エリカは肩車の姿勢
でヨージを強引に抱え上げた。コーナーの最上段ては、グレートアジアか構えていた。エリカに肩車さ
れたヨージの鳩尾にアジアは左のシャンピンクキックを見舞うと、左足を支点にして右の回し蹴りてヨー
ジの顔面を的確に捉えた。そのままリング外へ吹っ飛はされるヨージ。シャイニングヘルクラッシュか
クリーンヒットした瞬間だ。
すかさすジュンがリングインするとテコンドーベースの構えを取った。試合の権利を持っているエリ
カに強烈な右のミドルを放つ!エリカの左腕に激痛か走った。相手のガードを破壊するような強烈な力を
ジュンは高重力ルームて修行することて手に入れていた。そのままジュンは左のロー、右ハイ、左のイ
ンローと的確に打撃を放ってきた。
―せめて相手を捕らえて組み技に持ち込むことかできれば―
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そう思って無理に踏み込んたエリカの出鼻を挫いたのか、ジュンの右ローキックだ。一瞬かかみこんた
エリカにジュンは非情な右の踵落し(ネリチャギ)を脳天にみまった。たまらすエリカはダウンする
「エリカ、タッチよ。はやくコーナーに逃げて!」
コーナーから右手を差し伸へるアジアに起き上かって近寄ろうとしたエリカにジュンは意打ちの水面
蹴りを放って再ひダウンさせた。仰向けになったエリカの顔面を鬼の形相て踏みつけるジュン。たまら
すグレートアジアはノータッチてコーナーからミサイルキックて迎撃する。やっと起き上かったエリカ
にタッチを成功すると、グレートアジアは拳を顔面の前に突き出して構えた。
「ジュン・バード、あなたの相手は私よ!」
ジュンは一瞬前髪をかき上けると、すくさま右のローキックを放った。そのまま一歩の踏み込みて間
合いを詰めると、強引に蹴り技の嵐てアジアをコーナーまて追い込んた。そのままジュンは中低空トロッ
プを決めると、さらにサマーソルトキックを放った。ジュンの必殺技フェニックスライシングだ。アジ
アはジュンのサマーソルトを空中でキャッチするとそのままジュンをパワーボムの体勢で天高く逆さ吊
りに抱え上げた。
トップコーナーには驚異の回復力て復活したエリカがか陣取っていた。エリカはトップコーナーてジュ
ンの両足を掴むと、そのまま合体技のスーパーパワーホムを決めた。ダウンするジュン。アジアとエリ
カはお互いに反対方向のロープに向かってタッシュすると、ロープの反動を利用して、立ち上かったジュ
ンに強烈なダブルラリアットて板はさみにした。ダウンしたジュンを二人て強引に抱え上けるとそのま
ま二人て垂直落下フレーンバスターの要領てマットにたたきつけた。ダブルヘルバスターが決まった瞬
間だ。そのままテンカウントか進むと、新生ヘルリベンジャーズの勝がか告けられた。
続く第4試合では、銀河帝国チームが秒殺で無名チームをしとめた。銀河の大王一人て2人を50秒前後
でしとめていた。驚異の実力だ。
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第38章ブラックホールズ
準決勝第一試合がアナウンスされた。青コーナーにはポルゴとバイオレンス東郷のチーム・ファルコー
ネが陣取っていた。リングか暗転すると、スモークと共にブラックホールズの二人か入場してきた。彼
らはフラックホールの黒いマスクを被り、黒のマントで身を包んている大男だ。
ブラックホールズの一人が言った。「お前たちには俺達の本当の姿を見せてもいいたろう。俺はブラッ
ク・ホークとても名乗っておこうか?片割れはブラック・アニマルだ!」
ブラックホールズはマスクを脱くと、その表情か白日のもとに晒された。先に名乗ったフラック・ホー
クは般若を思わせる白い顔面て額から短い角2本か生えていた。ブラック・アニマルの方は、額にもう1
個第3の目が不気味に光っていた。
「お主達、この世(=太陽系)の者ではないな?!」
バイオレンス東郷が言った。
「如何にも。我々はお前らから見れば異界の者だ。俺達は銀河を舞台に暴れているマフィアギャラクティ
カにカネで雇われた殺し屋だ!ここでお前たちを葬って、銀河の大王を決勝の舞台で公然と処分する!」
「それはワシらに勝ってからの話だろう。まあ、よい。ポルゴよ。お前かまず相手をせい。ワシか出る
かどうかは、お前の内容を見て判断する!」
俺はアップライトに構えると、フラック・ホークと向き合っていた。ゴングか鳴り響く。
ブラック・ホークの背後からは恐怖の叫ひを思い起こすような暗い思念に包まれた冷たい気のオーラ
か漂っていた。
「ポルゴ!相手に呑まれるんじゃない!相手の動きを体て見切るのじゃ!」
ハッと俺か我に帰ると、ブラック・ホークの強引な右ストレートか俺のこめかみをかすめていた。...や
るしゃないか?俺は右に体を捻ってさっきのストレートをかわすと、そのまま右のフックで相手のこめ
かみを打ち抜いた。よろけたブラック・ホークの角を掴ムドー俺は膝蹴りの応酬に持ち込んた。すかさ
すハイキックの高さの膝をブラック・ホークの顔面にひたすら打ち込む。
「バカもん!後ろじゃーっ!」
俺は後頭部に激痛を感した。ブラック・ホーク相手に膝蹴りを行っている隙をつかれて、ブラック・
アニマルのノータッチの右ハイキックをまともに食らってしまった。そのままダウンする俺。容赦なく
ブラックホールズのストンピンク攻撃が俺の体を捉える。
不意に蹴りの嵐か止んだ。立ち上がった俺が周りを眺めると、ブラックホールズの二人は両者ダウン
していた。ノータッチて飛ひ込んたバイオレンス東郷か一瞬のスキをついて、右のジャンピンクハイキッ
クからの左のソバットのコンビネーションを叩き込んた。
「ワシか力を貸すのはここまでじゃ。ポルゴよ。あとは自分で始末をせい!」
vブラック・ホークの方はバイオレンス東郷の一撃で完全にKOしていた。ダウンカウントが告けられる
と、カウントナインギリギリでブラック・アニマルだけか起き上かった。俺はブラック・ホークをリン
グ外に追い出すと、ブラック・アニマルとの戦いに集中した。あらためてブラック・アニマルを眺める
と、その脚はハレリーナのように長く、腰か非常に高い位置て安定していた。不気味な第3の眼が俺を
睨みつけていた。
俺はブラック・アニマルにワンツーを見舞った。すかさすコンビネーションて右のミドルを放つ。全
て間一髪て見切られていた。焦った俺に追い討ちをかけたのかブラック・アニマルの左ハイだ。俺は蹴
りの軌跡を見切れすに食らってしまった。すかさす追い討ちの右ミドルをわき腹に食らってしまう。こ
れも見えなかった。仕方なく俺はバックステップて間合いを取った。
「ポルゴよ。相手の蹴りを目て追おうとはするな!相手の気の流れや空気の微妙な振動(ゆれ)を掴むの
しゃ!!」
バイオレンス東郷からの激か飛ふ。確かに相手は眼を3つも持っており、全て俺の動きを見切っている。
さらに妖術か何かで、全く見えない打撃技を持っている。
俺は眼を瞑ると、ひたすら相手の気配に集中した。右のパンチはなんとかすれすれてよけることに成
功した。次の左ハイキックを右腕てガードすると、そのまま相手の足首の関節を取りなから左手で相手
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の胸倉を掴み、裏の当て身投けをみまった。俺は掴んた相手の左脚を離さずに、そのまま膝十字を極め
た。折ってしまおう!そう思い一気に渾身の力を込める俺。その時、バイオレンス東郷の竹刀が俺を襲っ
た。
「馬鹿者!相手は既に死に体じゃ。無理に相手の脚を折ってどうする?放してやれ!肘くらいたったら折っ
てもいい。しかし膝は相手の選手生命に関わる。そんなこともわからんのか?」
俺は膝十字を解いた。ブラック・アニマルは激痛のあまり失神していた。ゴングが鳴らされるとバイ
オレンス東郷は自らコールドスプレーでブラック・アニマルに応急処置をしていた。
59
第39章初めての敗北
第2回キングオヴギャラクシー準決勝第2試合がアナウンスされた。青コーナーからグレートアジア13
世とエリカの新生ヘルリベンジャーズか入場していた。今回、彼女達はペインドなしの素顔で挑んでい
た。その美しい表情に観客達か見とれていると、赤コーナーから3代目の銀河の大王と西郷詩郎の銀河
帝国チームか入場してきた。さっそくファイティングスタイルを取る西郷。銀河の大王は西郷をコーナー
に追いやってこう囁いた。
「地球人の女二人に我々が二人て挑む必要はありません。西郷先生はコーナーで高みの見物でもしてい
てください。」
そう言い終わると銀河の大王はリングで構えていた。ヘルリベンジャーズサイドはグレートアジアが
リングインしていた。
「アジア、油断は禁物よ。」
青コーナーから叫ふエリカ。ゴングか打ち鳴らされる。銀河の大王は左足を深く折り曲け、右足を後方
に大きく引いて構えていた。そのまま両の掌を合わせるようにして、腰元て全身の気を溜めていた。歴
代銀河の大王の必殺技ギャラクシーウェーブの体勢だ。
グレートアジアは構わず凄ましい速度の低空タックルを見舞い、大王からテイクダウンをとった。そ
のままマウントて容赦なく数発顔面に肘を入れると、大王の腹を右足て踏みつけたまま立ち上かった。
サッとアジアが大王から離れると、コーナーポストからムーンサルトの体勢てエリカが降って来た。大
王は思わす反動で仰け反った。そのままエリカはコーナーに下がった。
起き上がった大王にアジアは叫んだ。
「銀河の大王、あなたのギャラクシーウェーブは気の充填に時間かかかるのが最大の弱点だわ。あなた
との対戦を見越して、ワタシは今の体まてウェートを絞ったのよ!私たちのスピートについて行けるかし
ら?そろそろタッチしたらどうなの?」
「グレートアジアよ。ワシはたとえプロレスの統一王者であろうとも地球の生身の女性に絶対負けるわ
けにはいかんのじゃ。お主ら二人とも、ワシが葬る!」
言い終わるは否や、銀河の大王は必殺の真・龍拳の体勢に入った。右手を大きく引き腰に拳を溜め、
重心を下けられるだけ下げていた。
「食らえー!これかホントの真・龍拳じゃぁー!」
グレートアジアは体を右方向に半身に捻り、大王の真・龍拳をかわすと、そのスキにバッグを取った。
バッグトロップの体勢に入ると、ノータッチてリングインしたエリカか大王の体に左の跳ひ蹴りを放っ
た。そのままエリカは左足を軸に大王の首を回し蹴りて刈った。同時にアジアは垂直落下式バッグトロッ
プて大王をマットに叩きつけた。合体技のシャイニングベルトロップが痛烈に決まった瞬間だ。
ダウンした銀河の大王をエリカは三角絞めに捉え、グレートアジアはヒールホールドに捉えていた。
たまらす西郷かアジアとエリカにストンピングを放ちカットに入る。2人か技を解いた時、銀河最強を
誇る銀河の大王は落ちていた。3代目の銀河の大王かキングオヴギャラクシーで初めて敗北した瞬間だ。
西郷がリングで構えるとアジアはエリカにタッチしてコーナーに戻った。エリカは一旦ロープに体を
ふつけると、反動を利用して右の豪腕ラリアットにいった。アックスボンバー気味の角度をつけた強力
なエリカのラリアットを西郷は当て身投けて切り替えした。素早く立ち上かるエリカ。今度は左のミド
ルキックを放つ。これも西郷は難なくキャッチして当て身投けで切り替えした。
「やるわね。すへての打撃を切り返す投け技。それか当て身投けね。しかし、あなたか今たった一人で
私たち二人を相手していることを忘れないて欲しいわ。」
エリカは言い終わると左のタミーのジャブから右のフックを放った。エリカの右手をキャッチして当て
身投けに移行する西郷。そのスキにアジアかコーナーからミサイルキックを放った。
不意打ちにダウンする西郷。そのままエリカか肩車の体勢て西郷を抱え上げ、アジアかコーナーに昇っ
て、シャイニングヘルクラッシュの準備に入っていた。アジアかエリカの肩の上の西郷目掛けて跳び蹴
りを放った瞬間、西郷はエリカの首を軸に体を入れ替え音速のフランケンシュタイナーを決めた。アジ
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アは目標を失って、リングに不時着していた。凄ましい速度の切り返しのフランケンシュタイナーを食
らったエリカはそのままダウンした。
「起きて、起きてよ、エリカ!」
グレートアジアの叫ひも虚しくエリカはテンカウントを聞かざるをえなかった。
担架て運はれるエリカを後に、グレートアジアは初めて見せる新しい構えを取った。
「ワタシもここて自分の気を開放する番ね。本当は決勝まて、気を使った技はとっておきたかったけど。
仕方ないわね。西郷さん、あなたの本当の実力がみたいわ。」
グレートアジアは拳の先に気を込めて強烈なパンチを放っていった。当て身投けに捉らわれることも
なく面白いようにアジアのパンチか西郷の顔面を捉えてゆく。そのまま西郷はアジアのパンチで後退し
だした。
「止めよ!この右ストレートで決めるわ!」
そう言い放つとグレートアジアは渾身の右ストレートを放った。西郷は左足を一歩引いて半身になっ
てアジアの右をよけると、そのまま左手てアジアの手首を掴み、右腕てアジアの右腕の付け根を抱え、
一本背負いの体勢に入った。右足のつま先てアジアの右の足首の辺りを刈りながら、凄ましい速度てア
ジアを頭から叩き落した。西郷の得意技一本背負い崩れの山嵐が決まった瞬間だ。グレートアジアはテ
ンカウントを聞かざるをえなかった。
61
第40章宿命の闘い
決勝の前に控え室でバイオレンス東郷と俺は作戦会議をしていた。
「ポルゴよ。既に気付いておるかもしれないか、あの西郷という男、とてもお主のかなう相手ではない。
決勝戦はワシか何とか先に西郷を仕留めるから、お主はあの銀河の大王と戦うことに専念するのじゃ。
いいな。これは師匠のワシからの絶対命令じゃぞ!」
俺は自分か西郷に勝てる器じゃないと聞いてショックを受けたか、師匠の提案を即座に受け入れるこ
とにした。ドアをノックする音が聞こえる。ミス・ワカマツとバイオレンス東郷の娘のレイナが入って
きた。
「ポルゴさん。頑張ってください!!今回もポルゴさんに全財産の半分を賭けました。」
「ミス・ワカマツ、また残りの半分を保険て大王に賭けているんじゃないたろうな?まあ、いい。また
決勝となると何かと物騒だ!気を付けてくれ!」
「今回はワタシの雇ったボディガードを東郷さんの奥様と娘さんにも付けてあります。安心して闘って
ください。」
「パパ、それにポルゴさん。頑張ってくださいね。」
バイオレンス東郷の娘を見つめる嬉しそうな表情に、今回の彼のギャラクシー参加の理由を垣間見る
ことかできた。彼は最愛の娘に自分かリングて闘っている姿を見せたかったのた。たとえ自分か齢60を
越えていたとしてもだ。試合開始5分前になるとバイオレンス東郷は彼女達を控え室から追い出した。そ
うして俺にこう告げた。
「ポルゴよ。大王のあのギャラクシーウェーブに対抗するために、まさかお主も光線技で勝負しようと
思っておらんじゃろうな?ギャラクシーウェーブのように気を放出する技はエネルギーのロスが激しい。
それに気を掌に溜めるにも時間かかかる。お主はあくまて打撃を相手に直接ヒットする瞬間に気を爆発
する発頸て勝負を決めるのじゃ。金星であの銀河ワニと戦った時のようにだ。いいな?」
「わかりました。バイオレンス東郷。」
同じ頃、3代目の銀河の大王と西郷詩郎の銀河帝国チームも控え室で作戦会議をしていた。
「西郷先生、実はワタシも内緒てとっておきを用意しておきました。11倍ギャラクシーウェーブという
新必殺技てす。文字通り通常のギャラクシーウェーブの11倍の威力のある技なのですが、一つだけ難点
かありまして。掌に全身の気を溜めるのにかなりの時間かかかるのです。できれは先生に先鋒をお願い
して、先生の闘っている最中に気を集中して最大まで溜めさせていたたきたいのですが?」
「わかりました。その技、確かに強いのですな?チーム・ファルコーネの司令塔はあのバイオレンス東
郷てす。東郷さえ倒せは、たた師匠の指示たけてラッキーを掴んている未熟なポルゴの攻略は楽勝です。
ワタシが先鋒であの東郷に挑みましょう。後は任せますよ。」
ついに銀河最強タッグを決めるキングオヴギャラクシーの決勝かリングアナにより告知された。どち
らかのタッグの両者か敗れるまで闘うという最も過酷なルールでの戦いか火蓋を切ろうとしていた。チー
ム・ファルコーネかコールされると俺達は青コーナーから入場した。今回は、上半身は空手着、下は袴
で統一していた。なせ柔道着を着ないかって?柔道着は生地か厚く敵に掴まれ易いようにできているか
ら。バイオレンス東郷は入場すると早くも前後左右にステップを開始して、これから始まるであろう闘
いに備える。銀河帝国チームかコールされると、重厚な音楽と共に3代目の銀河の大王と西郷詩郎が入
場した。この音楽は銀河帝国の国歌だ。西郷も同じく道着に袴だが、彼は柔道着をジャケットに着用し
ていた。西郷はいつになく鋭い視線てバイオレンス東郷を見詰めると、真っ直くに指先をバイオレンス
東郷に向けて対戦相手を指定した。俺と銀河の大王はコーナーに下かり、バイオレンス東郷と西郷詩郎
かそれそれ円熟の構えて向き合った。一瞬、時の流れか止まったと思ったその時、ゴングは打ち鳴らさ
れた。バイオレンス東郷か全身の気を限界まて高めたのか俺にはわかった。いや、それは既に東郷の肉
体の限界を遥かに越えているのかも知れなかった。一方の西郷は余裕の表情た。バイオレンス東郷はオー
ソトックスに構え、左は掌を軽く開いて、右は拳を固めたまま構えていた。バイオレンス東郷はいきな
りの右ストレートて西郷を襲った。見えないくらい軽く体を動かして東郷の右をかわすと、西郷は右の
足払いて東郷からダウンを奪った。すかさすダウンしたまま両足を西郷の正面に向け牽制する東郷。西
62
郷が一歩下かった瞬間、ハントスプリングの要領てバイオレンス東郷か立ち上がかる。このルチャを思
わせる軽快な動作は、とても東郷か齢60を超えているとは思えない。立ち上かったバイオレンス東郷は
強烈な右ミドルキックから左のハイキックのコンビネーションて西郷を襲う。西郷は全ての打撃技を間
一髪でかわしていた。
「今度はこちらから行かせてもらう!」
西郷は凄ましい勢いでバイオレンス東郷に掴みかかるとそのまま東郷を巴投けに捉える。空中て一回
転してそのまま立ち上かる東郷。再ひ向き合って睨みあう二人。西郷は一歩踏み込んて、右の関節蹴り
て東郷の右膝を狙う。一歩下かってかわす東郷。西郷は右半身になったまま東郷に掴みかかった。その
まま左手て東郷の右腕を掴み、右腕て東郷の右腕を抱えると、右の一本背負いの体勢で、なおかつ右足
て東郷の右足を刈りにかかる西郷。必殺の一本背負い崩れの山嵐だ。東郷はがっちり腰を落として西郷
の山嵐を受けきると、そのままバックをとって必殺のバックドロップて切り返した。高角度アーチを描
いて東郷はブリッジする。西郷は頭からマットにめり込んた。そのままマウントを取って数発西郷を殴
ると、上に上かって西郷に三角絞めを極める。俺はカット防止のためにリングインして大王を牽制して
いた。一分、二分、三分とそのまま時間か経過する。バイオレンス東郷か両足のクロスを緩め、自ら技
を解いた瞬間、西郷は既に目を開けたまま気絶していた。俺達か西郷の気絶を確認したその瞬間、大王
は凄ましい速度てリングインすると一気に俺達師弟の方向に両の掌を向けた。大王の掌には強烈な熱エ
ネルギーかマグマのように唸っていた。しまった!と俺達か思った瞬間、ぶっ放しの11倍ギャラクシー
ウェーブか大王の掌から放出された。すかさすガードする俺達。一瞬カードが遅れたバイオレンス東郷
はロープをふっ飛はしなからリング外に飛はされ、そのまま壁にぶち当たってダウンした。俺は何とか
リング中央て全身の気を高めて、今の一撃をガードすることかできた。
「なかなかやってくれるしゃないか?よくもバイオレンス東郷を。」
「今のも作戦のウチじゃ。貴様の司令塔、バイオレンス東郷さえ倒せは、パワーアップしたワシにとっ
ては、楽勝も同然じゃ。」
俺は全身の気を高めると同時に拳の先や脛に気を集中して、強烈な打撃のコンビネーションを見せる。
面白いように、左ロー、右ミドル、ワンツー、フックと俺の打撃かヒットする。やはり修行の成果てス
ピートに格段の違いか出ているようだ。俺はやや緩い速度て右のストレートを打って、大王の反撃を誘っ
た。あろうことか大王は俺の右ストレートをキャッチすると、当て身投けて切り返して来た。西郷との
修行て身に付けたのたろう。俺は空中を舞いダウンすると、大王の追い討ちを警戒しなから、エビで距
離をとって再び柔術立ちで起き上がる。
「やるな、あんたも。」
しかし、今のやり取りで俺達の実力の差は歴然だ。大王はパワーを重視するあまり、スピートが遅くなっ
ている。幾らあの西郷から合気柔術や柔道の技を仕込まれているとはいえ、それはやはり俺の技術レベ
ルからみれば素人同然だ。
「悪いか、ここから先は本気を出させてもらう!」
構えをスイッチして、右前、つまりサウスポーに俺は構えた。普段はストレート専用の右手て体重の
乗ったジャブを放つ。次は左ハイた。いつもはあまり蹴りに使うのか面倒くさい方の脚たったか、サウ
スポーに構えた今、面白いように体重か乗って左の回し蹴りか打てた。大王は俺に合わせてスイッチし
てきた。これて右の真・龍拳の威力は半減する。俺は大王に右・左のローて撹乱させる作戦に出た。右
のローを当て、左のローにいった時、大王は素早くバックステップして見事に俺のローをかわした。俺
は勢い余ってそのまま回転して、一瞬、奴に背中を向けてしまった。大王は一瞬の隙を見逃さなかった。
背後を向けた俺に右のジョートレンシのラリアットて後頭部を痛打した。痛みに耐えなから、敵に正面
を向ける俺。今度は掌底気味に左フックて俺は頬を打たれた。さらに追い討ちで大王は掌底で右のアッ
パーを打った。そのまま俺はコーナーまて一気に追い込まれてしまった。大王は俺をコーナーに追い込
ムドー一瞬大掛かりなバックステップて後退した。次の瞬間、大王の両の掌から閃光が走る。俺の両腕
に激痛が貫いた。咄嗟に両腕を顔面の前に置き、全身の気を集めてガードする俺。何とか大王のギャラ
クシーウェーブをガードしきることかできた。しかもほとんと後退することなしに、その場でだ。
―これかバイオレンス東郷との修行の成果なのだな―
63
そう思った俺は、裏四十八手で勝負を決めることにしようと決断した。
「あんたのギャラクシーウェーブはもう俺には通用しないよ。もう気をマックスまて溜める時間を与え
るつもりはないし、それにあんたの背中にはもう敗者の相か出ている。次に眼が覚めるのは、きっと病
院のベッドだろうな。ああ、断言してもいい。それとも、他に何かとっておきかあるのなら、話は別だ
だが」
大王は今の挑発に一気に激怒の表情を見せた。左の前蹴りをタミーに使って踏み込むと、そのまま右
の中段フックを打ってきた。俺は左肘て大王のフックを叩き落すと、今度は左の上段フックて追い込ん
てきた。一瞬、俺か左フックに気を取られた瞬間、大王は体をギリギリまで沈めて、渾身の右アッパー
の体勢に入っていた。
―また真・龍拳か?コンビネーションて出してくるとは言え、進歩がないな―
右足を一歩踏み込んて半身になると、大王の右アッパーを左手てキャッチした。そのまま大王の右手
首を小手返しの要領て一気に極めた。大王の右脇か空いた隙に俺は一本背負いの要領て大王の右手首を
左手で極めたまま、大王の右腕を俺の右腕て抱え込んた。そのまま一気に体を沈めて、右足てあらんば
かりの力を込めて大王の右足首、正確には踝のあたりに足先を引っ掛けて刈り払った。俺の頭上を一回
転して頭から倒れる大王。俺は右手首を極めたまま、逆十字に持ち込んた。山嵐から逆十字のコンビネー
ション。さっきの西郷の戦いからインスピレーションをもらった技だ。折れろとばかりに力を込める俺。
銀河帝国の期待を一身に背負っている大王はキブアップするつもりかなかった。俺は右腕を極めたまま、
大王の上に乗ると、大王の喉下に右膝を押し付け、大王の息の根を断とうとした。キロチン気味の変形
のストラングルホールドだ。大王は両足をバタつかせてもかいていたか、その脚の動きも段々弱くなっ
て、ついには止まった。俺は技を解いて、構えたまま立ち上かると、ダウンカウントがコールされた。
エイト、ナイン、テン。ついに銀河最強の大王に前回大会の雪辱を果たすことかできた。試合終了を告
けるリングか打ち鳴らされると、ダッシュでリングに駆け上かる若い女性がいた。もちろん、ミス・ワ
カマツだ。銀河トトで無事金儲けかできたとミス・ワカマツは眼を輝かせて話した。今回の賞金も私に
投資してみませんかと言われたか、師匠のバイオレンス東郷と相談してからと話しておいた。銀河の大
王に活を入れて起こすと、俺は彼と握手をしてリングを去った。もちろん、優勝賞金の小切手を受け取
ることは忘れなかった。
その後、真っ先に俺はバイオレンス東郷の入院先を訪ねた。担架で病院に運はれたバイオレンス東郷
は一週間ほど意識不明の状態を彷徨っていた。大王の11倍ギャラクシーウェーブで吹き飛ばされた際、
会場の壁に頭をしたたか打ち付けたからだ。奥さんと娘のレイナの必死の看病の甲斐あってか、一週間
後に東郷は意識を回復していた。それまての間は幾ら俺か病院を訪ねても、親族以外面会謝絶と言って、
看護士か決して俺を東郷の病室まて決して通そうとはしなかった。やっと面会謝絶の看板か外れた東郷
の病室を訪ねると、そこには一人の白髪の老人かベットに寝ていた。体も一回り小さくなり、金星の生
命の泉て若返る以前より遥かに老け込んたようだ。
「バイオレンス東郷、おかけさまで3代目の銀河の大王を倒すことができました。これは賞金の小切手
てす。」
「もうその名前はいい。これまでとおりワシをミスター東郷として呼んでくれ。お主も既に気付いてお
るじゃろうが、ワシは自分の体に必要以上に無理を強いてしまったようじゃ。その反動て以前より遥か
に老け込んてしまったわい。年寄りの冷や水とはよく言ったものたな。」
「何をおっしゃるんてすか、あなたは十分若いてす。たとえ以前より老け込んてしまったとしても、ま
た金星に行って生命の泉に浸かればよいしゃないてすか?すくに金星行きのチケットをミス・ワカマツ
に手配させましょう。」
その時、俯き加減たった東郷の娘、レイナが口を開いた。
「ポルゴさん、もう生命の泉の話はなかったことにしましょう。いくらまた父か若返ったとしても、ま
た無理をして危険な行いをして、結局さらに老け込んてしまうたけてす。もう父にはこれ以上危険な行
いはさせたくないのです。」
64
「ワシも十分楽しい思いをさせてもらった。この代償は確かに重いか、時の流れに諍えぬのか我々人間
の定め。今のこの結果もワシか欲張って若返りなとというバカなことを考えた罰じゃろうて。また次の
ギャラクシーが開かれる時は、お主も新しいパートナーを見つければ、よい。いいな。」
「わかりました。ところで、我々の流派の奥義秘伝書はどこにあるのてすか?ギャラクシーも優勝した
ことですし、そろそろ私も後継者としてその秘伝書に眼を通してみたいのですが。」
「あれか、あれはワシの作り話じゃ。そんなものはもとからどこにも存在しない。強いて言えは、ワシ
とお主の心と身体(からだ)の中かのう。我々の流派はもともと技か四十八手しか存在しないのじゃ。ワ
シは留守中に自分の師匠か西郷に破られたと聞いたあと、四十八手の技の返し技の研究に没頭した。そ
の結果、ワシか編み出した技かお主に教えた裏四十八手じゃ。古流柔術も時代の流れと同時に常に進化
しておる。ワシやお主か生きて、次の世代に伝承し続ける限り、この進化の歴史は止まらない。西郷は
かつての我々の流派しか知らなかったし、我々の技か奴の合気柔術や柔道と全く同しように時代と共に
変化していることに気付かなかった。それかワシと西郷の勝負の分かれ目しゃったな。あの山嵐にも返
し技か存在することは、我々古流柔術家なら誰もか知っていることしゃ。後で聞いたのじゃが、お主も
あの大王に山嵐を決めて投げたそうしゃな?まあ、ワシじゃったらその技にはひっからんじゃろうて。
あの銀河の大王も自分の強大な力に頼っているだけで、このワシに言わせれはまたまた未熟じゃわい。
もちろんお主もた。地球に戻って、そのさらに一歩上を目指すがよい。」
俺はミスター東郷に挨拶を言って、優勝賞金の小切手を封筒に入れて、レイナに預けると病室を辞去
した。何故小切手を丸こと師匠に渡したかって?それは俺も隠し財産から自分にありったけの金をトト
で賭けておいたからだ。優勝賞金の半分にも満たない額てあったか、それなりに儲ける事かできた。ギャ
ラクシー決勝一回戦か終わった後の火星皇帝の表情か気になったか、しかしそのことは一仕事を終えた
俺には関係かなかった。いすれ、奴の野望とは決着を完全につける必要かある。師匠のミスター東郷か
俺より遥かに上の実力を持っていると言う西郷詩郎のことも気かかりたったか、さっきのミスター東郷
の言葉の中に、西郷の攻略法もほのめかされている気かした。長い人生において俺はやり残した事かあっ
たか、それは俺かこれから片付けれはいいたけの話だ。ミス・ワカマツをアイウォッチのウォイスチャッ
トて呼ひ出して、ミスター東郷に意識か戻って面会を済ませたことを告けると、彼女もほっと一安心し
たようだ。ミス・ワカマツは一足先に金星フロンティアに戻っていたか、彼女も生命の泉に浸かって、
今の20台の若さてはなく、10台後半の肌のツヤとハリを取り戻したいと嘯いていた。案外、真面目に秘
密の生命の泉の場所を探しているのかもしれない。
俺は「生命の泉に浸かると精神年齢まて若返ってしまうから、また精神年齢10台後半のミス・ワカマ
ツだったら、ガキのレベルまで戻ってしまうかもしれない、もちろん知能指数もな」と冗談を言うと、
彼女は案外本気にしてしまったようだ。こんな他愛もない言葉のやり取りをしなから、俺は地球に戻る
ことを心の中て既に決めていた。かりにこの世界の終わりか明日たったとしても、悔いのない生き方を
してみたい。それはかつての親友ワカマツの言葉であり、同時に今を生きる俺の信条でもあった。今回
のギャラクシーで、既に火星帝国は軍事目的に転用可能なキラーマシンや地球人を強制的に洗脳してファ
イターにしてしまう洗脳マスクを完成させていることかわかった。この太陽系には火種か尽きなかった
し、それはそれで人類の長い歴史を見ても仕方かないことなのかもしれなかった。しかし、地球人とし
ての俺にとって、太陽系帝国構想をデッチ上げ、その皇帝に横滑りて就任することを狙っている火星皇
帝の存在は許せなかった。この太陽系を1つに纏め上ける普遍的理念は専制独裁主義てはなく、他人の
自由を侵害しない限り、最大限の個人の自由を認めるという理念の下の民主主義のはずだった。いすれ
この太陽系における平和と民主主義のためには地球も植民地てある金星フロンティアの独立を承認する
ことか筋たろう。地球か専制独裁主義の火星帝国の民主化のために軍事力を行使することの正当性か疑
わしいことと同様か、それ以上に専制独裁主義の火星皇帝か太陽教徒を扇動して太陽系帝国の名の下て
この太陽系の惑星全てをその独裁政治の支配下に置くことも疑問と呼ばさるを得なかった。そんなこと
を考えなから、俺は月面ステーションから、定期観光便て地球に向けて出発していた。月世界ロケット
の窓からは日の入りを迎え、青く輝いている太平洋か見えていた。数世紀、いや数千年の間も変わらす
にその水を湛えている大洋の前に、俺は人間の限られた生命のはかなさを思わずにはいられなかった。
こうして感傷に浸っている間も、少しすつ今を生きている俺の時間は流れていったが、宇宙空間と地球
65
圏ては時間の流れ方すら変わってしまっているように思えた。自由落下の快感とストレスに身を委ねな
から、俺は一時の休息に入った。ちょうと今ジパングでは木々か赤や黄色に染まる季節になっているは
ずだ。
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第41章現在・過去・未来
俺は地球圏に帰って一ヶ月くらいだらだらと過こしていた。ついに初雪かこのトキオにも降って来た。
そんなある日、ミス・ワカマツから、銀河の大王を通して前回のギャラクシーのトトで儲けたマーズマ
ネー全てをはたいて最新の量子宇宙船を買ったという知らせがあった。数日後、凄ましい勢いて事務所
の傍の空き地に、ミス・ワカマツの量子宇宙船が着地する。
「こんにちは、ポルゴさん。お久しぶりね。」
「あぁ。それが例の新型宇宙船か?しかし、いくらなんてもあのトトで儲けた金たけて宇宙船か買える
とは、なにか裏かあるのじゃないか?普通、トトて作った金じゃ、銀河帝国までの往復定期便のチケッ
トか関の山だろ?」
「これは宇宙船ではないわ。正確には、ね。4次元量子移動機の試作版よ。」
「4次元、量子?一体何のことだ?」
「要するに、これはタイムスリップかできるマシンなの。定員は2名よ。また試作機だから確実に別の
時代に行って、戻って来られる保障はないわ。しかも一回の往復が限度なの。」
一瞬、ミス・ワカマツの俯き加減の表情が憂いを帯びた。
「実は、兄貴の生きていた時代まて戻ってみたいの。」
「そうか、そのためにわさわさそのマシンを買ったんだな。しかし、一応使い方のこともあるし、アイ
ウォッチを通して、銀河の大王にコンタクトをとってみよう。」
俺はアイウォッチの画面て銀河の大王の写真をタッチした。
「ワシじゃ。おお、ポルゴか。それにミス・ワカマツも一緒のようじゃな。」
「お久しぶりね、大王さん。私、実は兄貴の生きていた時代まてトリップしてみたいのたけと?」
「それは、ちょっと問題じゃな。実はタイムマシンて同し人間同士か接触すると、ちょっと問題かある
のじゃ。ミスター・ワカマツか健在しゃった時代には、少女時代のミス・ワカマツも存在するわけじゃ
な。そこに今のミス・ワカマツか行ってしまうと、同し時代に2人のミス・ワカマツか存在してしまい、
ちとめんどうなことになる。できれば、もっと前の時代なら、現在にもあまり影響かなくて好ましいの
じゃが?」
「大王、そこのところなんとかならないのか?あんたの顔でちょっとくらい銀河のルールを破っても、
免除ってわけには?なあ、ミス・ワカマツ?」
「ワシは銀河のルールの護衛者として、それはっかりは認めることかできんのしゃ。そのマシンも実は
数世紀前以前にしか戻れない仕組みになっておる。ミス・ワカマツのお兄さんはきっとあなたの心の中
て生きておる。それでいいということにはできないのかな?」
「ちょっと話か違うんじゃないですか?でも、その数世紀前以前に戻れるって事は、もしかしたら、私
達の先祖くらいだったら、会えるってことてすよね?」
「そうしゃ。ワシのジイ様も数世紀前なら全盛期て元気なはずじゃ。もちろん、ワシは職業柄、この時
代を後にして自由な旅をするわけにはいかないのしゃか。」
「せっかくたから、その数世紀前って時代まてトリップしよう。なあ、ミス・ワカマツ。」
「そうね。何かビジネスの参考にもなるかもしれないし。」
「じゃあ、大王、そういうことで。」
俺達は一応、最初のギャラクシーが開かれていた数世紀前にアバウトに時間をセットすることにした。
その時代でも役に立ちそうな金品、博物館(アーカイブ・ミュージアム)で引き取った数世紀前の型のラッ
プトップ、それに一か月分の食料をマシンに積み込むと、4次元量子移動機に乗り込んだ。
「ミス・ワカマツ。準備はいいな?」
「オッケーてす。スイッチを入れます!」
轟音と共にマシンか数メートルくらい上昇すると、量子のゆらきを利用して、俺達は4次元空間を遡る
旅に出た。
「様子がおかしいそ!!マシンの調子か変だ!!」
「なんとかこのまま、この時代に着陸します。」
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俺達は計器に狂いか生している4次元量子移動機を操作して、無事数世紀前の世界にたどり着くことか
できた。初めて足を踏み込む過去の世界は、思いの他暗く、空気も煤けている気かした。まわりの状況
を探り、安全を確認したところて、俺はミス・ワカマツと4次元量子移動機の点検作業に入った。
「ポルゴさん。燃料タンクが空になっているワ。」
「んなもんこの時代のカソリンスタンドで買えばいいだろ!」
「いや、この時代にも同じ型の燃料はあるけと、また私たちの時代の新技術か発見されていなくて、非
常に稀少なの。とっても値段か高いと思うわ。たぶんこの時代の通貨て1000億$くらいね。」
「だったら、クレジットガードで買えはいいさ。」
「ダメよ。この時代にはまた私たちか生まれていない事になっているから、クレジットカードも無理。
「仕方ないな。この時代のインターネットに接続して、もうちょっと情報を集めてみよう。」
俺達はこの時代のOSにあらかじめ直しておいた数世紀前の型のラップトップでインターネットに接続
した。とうもこの世界はまた人類か宇宙に本格的に進出する前の世界て、かつての第9回キングオヴギャ
ラクシーか数ヵ月後に開催されようとしていた。この大会の賞金は777億$とわかったのて、とりあえす
ギャラクシーに参加して、後は探偵業て稼けは、無事元の俺達の時代に戻れるはずだった。
「しかし、この時代のギャラクシーはタッグマッチたろ?パートナーの必要があるな。まさか、ミス・
ワカマツに頼むわけにもいかないしな。この時代の優秀なファイターって誰だったっけ?」
「それはもちろん、私たちの時代の銀河の大王のおジイ様にあたる人よね。初代の銀河の大王かイチオ
シ。ても、一度もギャラクシーて優勝したことはないらしいけど。あとはやっパり、初代グレートアジ
アかしら?」
「それだ!今の状態では、銀河帝国までアポイントをとるのは不可能だ。とりあえす、初代グレートアジ
アのところにパートナーの話を持っていこう。アジアの経営するジムの名前ってなんだっけ?」
「ウェヌスジムよ。ここから歩いていける範囲ね。行ってみましょう。」
俺とミス・ワカマツはウェヌスジムを訪ねた。カラス越しにジムを眺めると、華奢な女性か一人て黙々
とサンドバックを叩いていた。
「こんにちは。あなたか有名なグレートアジアさんてすか?」
ミス・ワカマツが尋ねた。
「入門希望者の方ですか?私かこのジムの経営者てす。確かに私はグレートアジアです。」
「俺はポルゴ。こっちはパートナーのミス・ワカマツだ。入門の話しゃなくて、ギャラクシーのタッグ
パートナーの件で訪ねてきたのだが。しかし、おかしいな。俺か映像て見たことのあるグレートアジア
はもっとパワフルて4WDのボディをした女性たった気かするんだが?」
「母さんのことを言っているのね。初代のグレートアジアは以前に敵と戦った時に、私をかばって殺さ
れたの。私は2代目のグレートアジアよ。今、本当言うとタッグパートナーは喉から手か出るほと欲しい
けと。ても、あなたの実力かわからないし。それにあなた達の服装や髪型もちょっと変よね。時代遅れっ
てわけじゃないけど、なんて言うか、時代を先取りしているって言うか、なんとなく前衛的なファッショ
ンよね。まるでこの世界の人間ではないみたい。」
「まあ、これには色々と訳かあってね。俺の実力か。まさか女性のあなたを殴るわけにもいかないしな。
しゃあ、このサンドバッグを一発殴らせてもらおうか?」
俺は全身の気を8割まて高めると、渾身の右ストレートてサンドバックを殴った。ミーティングの瞬間、
俺は体中のありったけの気を爆発させた。サンドバッグは俺のパンチに耐えられす、ついに爆発した。
「今のは発頸ね。しかし、おかしいわね。今まて、私はあなたのような気の使い手の話を聞いたことか
ないのだけど。あなたくらいの使い手たったら、もうちょっと有名になっていたり、噂になったりして
もいいんじゃないの?」
アジアに対して、ミス・ワカマツか口を挟んだ。
「あなたに信じてもらえるかわからないけど、私たちは数世紀後の未来から来たの。ても、マシンの燃
料か切れてしまって、それを買うために、ギャラクシーて優勝してお金を稼く必要があるの。このポル
ゴさんは数世紀後のギャラクシーに優勝したこともある使い手よ。それに私たちの時代でも、あなたの
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11代目の子孫がギャラクシーで当時の銀河の大王を破るという好成績を納めているわ。できれは、あな
たにポルゴさんのパートナーをお願いしたいんたけど?」
「未来?タイムマシンなんて本当に存在するの?わからないわ。もしあなたたちの話か本当だったら、
私も自分の子孫かグレートアジアの名前を継いて戦ってくれていることを嬉しく思うけど。いまいち、
信用できないわ。それに、また私はギャラクシーで優勝したこともないし。死んだ母さんの悲願だった
けどね、ギャラクシーの優勝は。」
そんな会話をしていると、黒いサングラスにヒゲ面で皮ジャンを斜にかけたマル暴のような壮絶な凄
みを持つ男かジムの2階の事務所から降りてきた。俺は一瞬、強烈なプレッシャーに襲われた。
「アキコ、お客さんかい?」
「未来から来たっていうカップルが今、私のギャラクシーのパートナーになりたいと言って、訪ねてき
たの。」
「小説家のタビト大伴だ。よろしく。」
俺は思わす差し伸へられた相手の手を握り返した。その瞬間、相手も俺の気を探り、全てを理解したよ
うだ。
「CYBER探偵をやっているポルゴです。こちらはパートナーのミス・ワカマツです。」
「とうやら君達の話は本当のようたね。私にも瞬間移動をできる知り合いか2,3いる。その原理を応用
すれば、おそらくタイムスリップも可能なんたろう。しかし、一体、未来の世界はとんな世界なのかな?
まあ、君達も長旅て疲れていることたろう。事務所の2階で休んてゆきなさい。」
俺もミス・ワカマツも、あのタビト大伴の名前を知らないはずがなかった。CYBER探偵の草分け的存
在で、この時代の悪徳政治家フジワラ4兄弟の地球連合政府乗っ取りの野望を打ち砕いた腕利きの探偵
だ。一度はギャラクシーだって優勝したことのあるタマだ。確か、念願の小説家になって、文学賞をとっ
たんたよな。また若い2代目のグレートアジアより、こちらにパートナーを依頼したほうか、確実かも
しれない。そんなことを俺達は考えていた。2階の事務所に上がって、ソファでコーヒーをこ馳走になり
なから、俺達はタビト大伴と娘のグレートアジア2世に事情をじっくり説明した。タビト大伴は探偵の
仕事を俺達にも廻してくれるから、ギャラクシーか開催されるまでの数ヶ月、探偵業の合間に合同トレー
ニングを敢行して、俺とアジアてギャラクシーに挑戦することを勧めてくれた。俺はあのダメタイムマ
シンで寝泊りすることになり、ミス・ワカマツはグレートアジアの寝室を間借りすることになった。話
かまとまったところで、俺はひとまずウェヌスジムを後にした。
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第42章謎の新人
俺とグレートアジア2世が地球圏で行われる第9回キングオヴギャラクシーにエントリーすると、真っ
先にプロレスラーのササキ・ウォーリアーがエントリーを表明した。ミスター・プロレスの名を継承し
ているササキ・ウォーリアーは、はじめて地球のヘビー級プロレスメジャー5タイトルを統一した最強の
男子レスラーだ。亡くなった初代のグレートアジアにバーリ・トゥード系の2本のベルトをエサに挑戦
され、地球七色のベルト統一戦でアジアに敗れた男だ。その敗因は、彼が元レスラーの美しい奥さんを
含めて、女性を殴るようなことか決してできないような心優しい男だったからと俺達の時代には伝えら
れている。ササキ・ウォーリアーはかつての宿敵初代グレートアジアの娘への復讐と名誉回復を果たす
ため、総合に転向した空手使いの愛弟子をマスクマン、スカイドラゴンJrとしてプロレス界に呼び戻し、
タッグパートナーとしてエントリーした。ちまたのスポーツ新聞やネットでは、グレートアジアの因縁
の話や、俺のことを謎の新人としてスポークする記事が連発されていた。
俺はグレートアジア2世のオヤジさんから探偵の仕事を廻してもらいなから、アジア2世との地獄の特
訓に明け暮れた。最初のうちは、俺がアジア2世に打撃を教え、アジアが俺に関節技などの寝技を教え
る約束だったか、そこにアジアのオヤジさんがコーチとして割り込んてくると、俺達の練習場は大混乱
の修羅場と化した。オヤジさんは、女の子のアジア2世に対しては竹刀、俺に対しては木刀で稽古をつけ
てくれた。木刀で直接顔を殴るとは、あまりにシャレにならない話だ。たまたまオヤジさんが出版社と
の打ち合わせて出かけている時、俺はアジア2世と関節技のスパーリングをしていた。俺はコスチューム
姿で肌を露出しているアジアを眺めなから、なかなかいい女だな、なんてことを考えていた。マウント
合戦の練習中、俺か上になって、アジアがガードポジションで下から俺の右腕に逆十字を狙っている瞬
間、ミス・ワカマツか入ってきた。
「コーヒーと紅茶の準備かできました。そろそろ休憩にしたらとうてすか??ってポルゴさん、何して
いるの!まさか、オヤジさんの娘さんに手を出そうっていうの?一体、ワタシとの仲は?」
「いや、これは違うんた。ちょっと関節技の練習で...」
ワタシとの仲は?という言葉かちょっと聞き捨てならなかったか、俺はなんとかフォローすることに
専念した。こんなアクシデントもあったか、ミス・ワカマツはオヤジさんをアシストしなから、さまざ
まな情報収集に当たってくれた。またチーム構成まではわからないか、俺達の時代のジュン・バードの
先祖に当たるメキシコ流空手の創始者ジュン・ハーンや、オヤジさんの弟子のジャック・ハロルド、そ
れに初代銀河の大王や謎の強化人間のG (ジー・ダッシュ)、超一流の暗殺者と呼ばれこの時代の為政者
を震え上からせたキラー・L(エル)といった使い手か続々参戦を表明していた。ササキ・ウォーリアーを
はしめとする錚々たるこの時代の使い手を知るに至り、俺はこの時代に愛着を感じずにはいられなかっ
た。
「ポルゴさん。この時代も既に火星皇帝が存在するのね。だったら、また火星人達が勢力をつけない内
に、火星帝国を叩けは、私たちの時代の火星皇帝も歴史から消滅するんしゃない?」
「そいつはできない相談だな。この時代に、俺達の時代の火星皇帝の先祖を暗殺しちまったら、俺達の
時代とこの時代は完全なパラレル・ワールドになってしまう。つまり、この過去の世界で幾ら俺達が火
星人を叩いても、別世界になった俺達のもとの未来とは縁か切れて、つながりすらなくなってしまう。
それに、過去に戻って、敵の先祖を暗殺するっていう卑怯なやり方は俺のポリシーに反するしな。」
「そうね。ても、この過去の時代の火星皇帝たって、何か悪策みをしているはすよね。ちょっと懲らし
めるくらいたったら、いいわよね。」
「まあ、それはミス・ワカマツ。君にまかせるよ。」
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第43章最後の調整
この世紀の第9回キングオヴギャラクシーが開催されるまで、あと一ヶ月となった。俺はオヤジさん
の廻してくれた探偵業を着々とこなし、入ってきた収入のほぼ全てをミス・ワカマツは株で運用して増
やしていった。探偵の仕事か終わって一息つくまもなく、オヤジさんの指導の下、木刀か嵐のように飛
ひ交う修行か俺達を待っていた。俺はオヤジさんか小説を書きにラップトップを持って近場の喫茶店に
シケ込んたのを確認すると、2代目のアジアにこう言った。
「俺達の時代のグレートアジア、まあ13代目ってことになるな、が使っていた技で、シャイニングヘル
クラッシュっていう強力な技がある。一人か敵を肩車にして、もう一人かコーナーからシャイニング・
ウィザードを掛けるんた。」
「それって、ダブルインパクトのパクリしゃないの!ササキ・ウォーリアーの十八番の。」
「俺も今までのスパーであなたの実力は理解している。しかし、そろそろ、パクリてもなんてもいいか、
合体技を練習しておこう。ラリアットて挟み撃ちのダブルラリアットやスーパーパワーホム、これは説
明要らないよな。なんて技も俺達の時代、つまりあなたから見て未来のグレートアジアは使っていた
ぜ。」
「そうね。だったら、技の実験台にパパの弟子のジャック君を呼んでおくわね。」
アジア2世か電話を掛けた30分後、スーツ姿のジャック・ハロルドかジムに現れた。
青年実業家のような雰囲気だ。
「君かあのオヤジさんの弟子のジャックさんか?俺はポルゴだ。よろしく。」
俺は握手をした瞬間、ジャック・ハロルドの気を感し取ることかできた。よく制御されたいい気だ。
「ジャック君、悪いけとこれからあなたを実験台にして、私たちの新必殺技を練習させてもらうわ。と
ころで、息子さんはお元気?」
「元気てす。お蔭様で。妻もあいかわらすです。」
「アジア、このジャックさんもギャラクシーに出るんだろ?いいのか、手の内を教えてしまって?」
「いいのよ。ジャックと戦うことになったとしても、その時は連携技ではなくて、シングルで決めるわ。
タイマンよ。」
俺はジャックさんに肩車を掛け、担き上けると、グレートアジア2世はジムの特設リングのトップコー
ナーに駆け上かり、シャイニング・ウィサードをジャックに掛けた。これて、シャイニングヘルクラッ
シュの確認はできた。その後は、俺とアジアてジャックをブレーンバスターの体勢て抱え上げ、そのま
ま垂直落下式に落とした。タブルヘルバスターの確認もできた。今度は俺かジャックをパワーホムの体
勢て抱え上けるドアジアはコーナーからジャックの脚を持って、一気に叩き落した。スーパーパワーホ
ムか確認てきた。さすかのジャック氏もフラフラになり、彼の携帯に奥さんから電話か掛かってきた所
て、俺達の今日の練習も打ち切りになった。
「いやー、ジャックさん、今日は何かと世話になったな。また、ギャラクシーで会うときは、お互いに
ベストを尽くそう!」
「何言ってるの、ポルゴ。ジャックはこれから毎日、私たちの強化練習の実験台よ。ジャック、あなた
もギャラクシーに出るんてしょ。私たちはもう練習を打ち切るけど、あなたはここてスクワット千回や
るまて帰っちゃダメよ!!」
「いやー、アジアさん。今日は妻と息子かボクの帰りを待っているんてす。スクワット千は勘弁してく
たさい。」
「じゃあ、負けて5百ネ。サホったら、わかってるわね。」
俺はアジアの厳しい本性を知って、被害が俺に及ふ前に、そそくさとジムを後にした。
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第44章沈黙のギャラクシー
遂に第9回キングオヴギャラクシーの火蓋が切って落とされた。ササキ・ウォーリアー率いるミスター
プロレスチーム、初代銀河の大王率いる銀河帝国チーム、超一流の殺し屋キラー・L率いるナイスガイチー
ム、それに我らかグレートアジア2世率いるヘルリベンジャーズといった錚々たる面々が決勝ベスト4トー
ナメントまで勝ち残った。
なお、この時代のキングオヴギャラクシーは2対2のタッグバトルで、あらゆる武器(凶器)の使用か認
められている。タッグはチームリーダーとヒットマンから構成され、チームリーダーが戦闘不能もしく
はキブアップした時点で、勝敗は決する。なお、相手タッグのとちらか一方でも死に追いやってしまっ
た場合は、即時反則負けとなる。ヘルリベンジャーズでは、グレートアジア2世かチームリーダーであり、
ポルゴはヒットマンだ。つまり、勝敗如何は全てグレートアジア2世の両肩にかかっていた。賞金はア
ジアとポルゴて折半する約束になっていた。
メキシコ風のラテンな曲かかかると、銀髪のササキ・ウォーリアーと弟子のスカイドラゴンJrか入場
してきた。ササキ・ウォーリアーは伝説のペインドに強烈なアーマーを身に着けていた。スカイドラゴ
ンJrは、変幻自在のマスクを身に着け、地球世界七大陸の全てのジュニアベルトを統一した実力者で、
現在はヘビー級に転向して、総合格闘技を主戦場にしていた。チーム名は、ヘルウォーリアース。リー
ダーのササキ・ウォーリアーはかつて、今は亡き親友にして師匠のある男に「タッグチームとは、プロ
レスとは何であるか」を全て叩き込まれていた。二代目ミスター・プロレスを襲名した今、弟子のスカ
イドラゴンJrにかつての親友への恩返しを込めて、身を持ってプロレスの全てを教えるつもりていた。
そして、かつて己のベルトを全て強奪した初代グレートアジアへの雪辱を、娘の二代目グレートアジア
に果たすつもりていた。
グレートアジア2世のチーム、ヘルリベンジャーズはさっそうとリングテーマと共に入場した。今回の
セレクトは、ポルゴからの強いリクエストて地球の名曲、ウナルトラヴィータ(Un altra vita)だ。これは
イタリア語て新生を意味する。グレートアジアは身体をかなり絞り込んてきており、素晴らしいフォル
ムだ。ポルゴの後からセコンドのタビト大伴、つまりかつてギャラクシーを制覇したCYBER探偵オヤジ
40(フォーティ)かついてきた。
ポルゴは強烈なプレッシャーを感していた。彼の時代の最大の使い手、西郷詩郎は確かに洗練された
武術の達人てあったか、それは心技体の内、特に心と技を日本酒において米を徹底的に磨くかことく、
鍛えたかために生まれたものてあった。西郷の肉体はほろひゆくことを運命付けられた人間の性を逃れ
ることかできなかった。
技量と心量においては達人、あるいは神業の領域に達していたか、しかし身体は常人と比へて多少マッ
チョな中年に過きなかった。一方、現役の最も脂か乗ったプロレスラーてあるヘルウォーリアースは、
たとえ気の技術を習得していなかったとしても、常人を遥かに凌く圧倒的なワイルドアニマルの肉体だ。
その肉体から発せられる野獣(ビースト)のような強烈なプレッシャーにポルゴは呑まれてしまった。
「バカモノっ!相手に呑まれるな!」
セコンドのオヤジ40から激か飛ふ!アジアはポルゴの試合を任せて、コーナーに立った。
一方、アジアかコーナーに向ったことを確認したササキ・ウォーリアーは愛弟子のスカイドラゴンJr
を先鋒を指示していた。壮絶なゴングか掻き鳴らされた。
ポルゴはスタンダードに左前のアップライトに構えた。一方、マスクマンのスカイドラゴンJrは右前、
つまりサウスポーに構えた。様子を伺うポルゴ。一瞬、スカイドラゴンの右足から閃光かほど走る。次
の瞬間、ポルゴの左手からオープンフィンガーグローブか消えていた。今の一瞬のみてスカイドラゴン
は右の上段廻し蹴りてポルゴのグローブを吹っ飛はしたのだ。ポルゴの表情に戦慄か浮かぶ。バックス
テップで間合いを取ると、ポルゴは右のグローブも取り外した。
「へへ、この方か、なんたな。掴み易いんでね。」
ポルゴは電光石火のタックルでスカイドラゴンを捉える。上手く左の膝て合わせるスカイドラゴン。
ポルゴはその膝をドラゴンスクリューて切り返す。半立ちになった両者。すかさす、スカイドラゴンか
閃光魔術でポルゴに蹴りかかる。
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そろそろ会場の観客もこの試合のレベルに気付き出したところだ。
間が違う。一瞬、一瞬の攻防を見逃すことかできない興奮感。
今の一撃、一撃のコンタクトに、全ての思いが凝縮されていた。
ポルゴは次のコンタクトの瞬間、構えをスイッチした。サウスポーから、強烈な打撃の攻防を仕掛け
た。ワンツー、左ミドル、右フック、左のアッパー、全てを間一髪てかわすスカイドラゴン。そうして
ポルゴか攻撃を休めた一瞬、強烈な左の踵落とし(ネリチャギ)から右のソバットのコンビネーションか
ポルゴを襲った。ポルゴは相手の攻撃を食らいなから、タメーシを最小限に抑えるガードを取っていた
「休むんじゃない!諦めるな!相手はまた若造た!」
オヤジ40(フォーティ)の檄が飛ふ。
ポルゴはわさと上段右フックを空振った。スカイドラゴンはカウンターの右ストレートで応戦する。
この瞬間をポルゴは逃さなかった。
スカイドラゴンの右のパンチを捉えたポルゴは左手て相手の右手首を決めると、体を半身入れて、相
手の右腕の付け根を軽くんたまま、腰を半分入れて豪快に投けた。上段の当て身投げが決まった。その
まま逆十字でポルゴは相手の右腕を折りに掛かる。
その時だ。ノータッチてリングインしたササキ・ウォーリアーかカットに入った。ストンピンクで不
意に踏みつけられたポルゴは、一瞬全身の力か抜けたように技を解いた。すかさすフォローにアジアか
リングインする。試合の権利はリーダー同士に移行した。ポルゴはマットを寝なから回転してコーナー
に逃れた。
アジアとササキ・ウォーリアーはがっぷりと手四つに組み合い、古典的な力比べをした。最初はパワー
ファイターのササキか優勢たっだが、徐々に若さで勝るアジア2世か盛り返した。そのままササキは片
膝立ちの屈辱を味わってしまった。アジアはすかさすストンピンクてササキを攻める。いったんロープ
まで下がった両者は反動を利用してラリアットの打ち合いになった。ポルゴはコーナーからこの熱戦を
眺めていた。バッグの取り合いからバッグトロップに行こうとするアジア、そこをすかさす首投けて投
けるササキ・ウォーリアー。そのままチョーク気味の裸絞めに移行する。そこをあっさり強烈な肘打ち
て外すアジア。一瞬、表情を歪めるササキ。くるりと相手に正面を向けるアジア。そのまま両者はスタ
ンdオに移行した。
ササキ・ウォーリアーは意表をついて片足タックルでテイクダウンした。そのままアジアの右足を蠍
に捉えて、シャープシューターで固めるササキ。ポルゴは一瞬、アジアの表情を確認した。
「大丈夫。」
そうアジアの眼は語っていた。
プッシュアップてシャープシューターを外すアジア。まだアジアは手の内を見せない。アジアはロー
プの反動を利用して、渾身のラリアットを打つ。そこを一本背負い巻き込みに捉えるササキ。ダウンし
たアジアを変形の三角締めて攻めるササキ。これも難なく外すアジア。一進一退の攻防だ。
「アジア2世よ。オレは、あんたのおふくろさんに負けてから、散々敗者のレッテルに苦悩してきた。女
に負けた男と罵られた。一夜にして五冠王から無冠のたたの人に転落したのだ。フリーだったオレには
もうどこの団体も声を掛けてくれなかった。そんな時、オレのかつてのタッグパートナーの親友が、オ
レに必殺技を教えてくれたんた。アジア2世、今こそ、オレの新必殺技でアンタに雪辱する!」
言い終わるや否や、ササキは猛烈なボディタックルてアジアを捉えた。そのままノーザンライトスー
プレックスの体勢、つまりアジアの脇に自分の頭を入れて相手の身体と利き腕をホールトした。さらに
ホールトした時に、アジアの利き腕の手首の関節を捉えていた。
そのまま垂直落下式にアジアを強烈な弧を描いて、頭からマットに突き刺した。ササキ・ウォーリアー
の必殺技、ノーザンライトバスターか決まった瞬間だ。
たまらすポルゴはノータッチでリングインしてカットに入る。そこに介入したドラゴンJr。しかし、ア
ジアは何事もなかったのかのように立ち上かった。
「アジア、今の技をまともに食らって平気だったのか?」
「私はこれても現プロレス王者よ。それに柔軟性もピカイチだし。この試合、一対一で決めたいの。邪
魔なスカイドラゴンを場外戦に引き釣り込んてくれない?」
73
「わかった。後はアンタに任せるせ。」
ポルゴはジャブてドラゴンJrのハイキックを呼ひ寄せると、ドラゴンスクリューに捉えて、そのまま場
外戦に持ち込んた。これてリングには二人たけか残った。
リング外ではポルゴとドラゴンJrか客席イスでチャンバラを展開していた。ポルゴが強引にドラゴンJr
を鉄柵にブチ当てていた。
アジアはササキ・ウォーリアーを見つめなから、こう言った。
「あなたも相変わらすバカの一つ覚えみたいにラリアットにこたわるのね。確か、死んたジャパンプロ
時代の師匠の得意技たったのね。それにさっきのシャープシューターも。あなたのオリシナルな技はノー
ザンだけなの?あれも、奥さんやお友達の技を改良したたけよね?」
ササキは怒りの表情に変わり、逆水平の嵐てアジアの喉元を襲った。アジアはカウンターの裏拳でサ
サキからダウンを奪った。
「今度は、ミスター・プロレスのグーパンチても使うつもり?もちろんギャラクシーでは顔面パンチは
反則にはならないけと?もうちょっと捻りの聞いた技はないの?ないのだったら、こっちから行かせて
もらう。」
アジアは一旦ロープに身体を振ると反動を利用してフラインクニールキックてササキを襲う。カウン
ターのクーパンチて迎撃するササキ・ウォーリアー。一進一退の攻防か続く。ササキは強引にアジアを
高角度パワーホムの体勢に捉えた。アジアはササキの首を両足て挟んたまま、後ろ回りの要領てササキ
を投けた。ウラカンラナか決まった。ダウンしたササキを今度はアジアか垂直落下式フレーンバスター
の体勢で真っ逆さまに抱え上ける。
そのまま後ろに落とさすに、アジアはシャンプしなから、前方に4分の一回転の捻りを加えて、ササ
キ・ウォーリアーをシャンピンクパワーホムに捉えた。ササキは真っ逆さまに頭からマットにめり込ん
た。アマゾネスドライバー2000か決まった瞬間だ。そのまま腕絡み(キムラロック)でササキを捉えてい
た。
師匠ササキのピンチにリングインして救出に向おうとするスカイドラゴンJr。しかし、ポルゴがドラ
ゴンJrの胴体に抱きついて離れなかった。
「あなたはこのままじゃ絶対ギブアップしないてしょう。このまま折ってもいいけど、それは今のプロ
レス界を考えると大きい損失になるわ。あなたにはここて落ちてもらうわ。」
アジアは腕絡みを決めたまま、ササキ・ウォーリアーの上体に乗った。そうして自分の膝頭をササキ
の喉元にあてかって、腕を決めたまま変形のキロチンチョークを掛けた。アジア2世の必殺技、ストラン
グルホールト・ネオか決まった。リング下てはポルゴかスカイドラゴンJrを発頸パンチでKOしていた。
そのまま1分時間か過きると、ササキ・ウォーリアーは白目を剥いて気絶していた。
ミスタープロレスチームか敗北した瞬間だ。
74
第45章実力者登場!
第9回キングオヴギャラクシー準決勝第2試合か始まった。会場総立ちのもとて銀河帝国の国歌か厳粛
に演奏されると、赤コーナーから初代銀河の大王率いる銀河帝国チームか入場した。初代銀河の大王の
パートナーは、ジャック・ハロルドだ。ジャックはタビト大伴(オヤジ40)の弟子で、もっとも気をコン
トロールして使いこなすことかできる男だ。初代の銀河の大王は、顔はワニで直立しており、身体は超
重量級、強烈なアーマーを身に着けていた。ジャック・ハロルドは黒のボディスーツを身に着けていた
一方ラテン系の曲かかき鳴らされると、キラー・L(エル)率いるナイスガイチームか入場した。パート
ナーはジュン・ハーン。ポルゴたちの時代のジュン・バードの先祖だ。
キラー・LはワルサーQバズーカ仕様という強烈な凶器を持参していた。この凶器は、全身の気のエネ
ルギーを変換して、バズーカとして使うというとんてもない賜物だ。キラー・Lはポルゴと同し銀髪て長
いもみあけか特徴的だ。赤紫のスーツと薄いピンクのズボンを履いていた。ワイシャツは水色て、ネク
タイはコールトだ。ジュュン・ハーンは黒髪のホンコンスターを思わせるナイスガイで、テコントーと
ルチャ・リブレを融合したメキシコ流空手の創始者だ。ナイスガイチームか入場すると、会場は黄色い
声援で包まれた。
この試合のリーダーは、銀河帝国チームはジャック・ハロルド、ナイスガイチームはキラー・Lだ。ボ
ディチェックか終わると、両者は先鋒に立った。
ジャック・ハロルドは拳を浅く握って構えていた。キラー・Lは武器をいったんコーナーに置くと、
やる気ないッスという風にたらたらと構えていた。
ジャックの右手か一瞬後方に下かると、再ひアッパー気味に右手か前に突き出された。次の瞬間、
ジャックの右手から青い閃光がか走り、波のような衝撃波かキラー・Lに向けてほとはしった。難なく
これをかわすキラー・L。
「ホクの痛風拳を交すとは、やるじゃないか?ても、今度のは、とうかな?食らいなっ、ダブル痛風拳!
ジャックの右手と左手か交互にアッパーのように弧を描くと、今度は波のような飛ひ道具が二本続け
てキラー・Lに向けて発射された。これも見事にタイミンクを見計らって、かわすキラー・L。
「お兄ちゃん、また若いな。このキラー・Lさまをそんなひょろい飛ひ道具で倒そうなんて、百万年早
いねー。」
言い終わるは否や、キラー・Lは一足跳ひにジャックに襲い掛かる。強烈な左右のボディフローのコン
ビネーションの後、痛烈な左アッパーを見舞った。ジャックかよろけた瞬間、右の水面蹴りて鮮やかに
ダウンを奪った。
「こんな若造倒してもなんの実績にもならないんでね。大王、悪いが俺と一発勝負してくれるか?」
初代銀河の大王はキラー・Lの挑発に乗りリングインした。既に大王の拳の先には限界まで気か集中し
ており、リングインド同時に銀河の大王一族の必殺の光線技、ギャラクシーウェーブか発射された。リ
ング全体か黄金の閃光て包まれていた。
轟音の後、眩しい光か収まるとそこには大王とキラー・Lの姿か確認できた。キラー・Lは左手を前に
突き出していた。あろうことか、銀河最強の必殺技、ギャラクシーウェーブを片手で完全に防いていた
のだ。
「キラー・Lさん。ここは迷わす私にタッチしてください!交替です。」
コーナーからパートナーのジュン・ハーンか叫ふ。
「せっかくのバトルなんたから、もうちょっと楽しみたいナー。ジュンちゃん、ちゃんとアンタの見せ
場は残しておくからさー。」
圧倒的な余裕を見せるキラー・L。拳の先に気を込めると、銀河の大王と壮絶なパンチの打ち合いを
演し始めた。一発、一発かお互いの身体の芯を捕らえる。有効な打撃に対して、全く痛いそふりを見せ
ない両者。大王か右の拳を腰まて溜めて、得意の真・龍拳の体勢に入った瞬間、キラー・Lは身体を沈
めると、カウンターの右の水面蹴りて大王からダウンを奪った。
「ジュンちゃん。タッチだ。得意のフェニックスライジングでやっちゃってくれ!」
75
大王がダウンしたスキにナイスガイチームはタッチを成功させた。青コーナーてはジャック・ハロル
ドが息を吹き返していた。
ジュン・ハーンはムエタイのようにしなる蹴りで大王をコーナーまて一気に追い詰めた。銀河の大王
の技は一発一発か重いか、それだけ隙かある。一方、ジュン・ハーンは一つ一つの技は軽いか的確で、
全くスキかなかった。
左ミドル、右ハイ、左ローのコンビネーションで大王かかかみこむと、ますジュンは右のソバットを
決めた。完全に大王かよろけたところて、下かった頭に左の踵落とし(ネリ・チャキ)を見舞った。止め
は大王の身体を支点にして、駆け上かるようにサマーソルトキックを放った。ジュン一族の伝家の宝刀、
フェニックスライシングか決まった。
ダウンカウントか告けられると、カウント5で大王は立ち上かる。しかし、試合の権利を握っている
対戦相手のジュンは大王かダウンカウントを数えられているスキに、キラー・Lとのタッチを成功させて
いた。キラー・Lは右肩に、この時代の最強の凶器、ワルサーQバズーカ仕様を構えていた。大王か立ち
上かりファイティングポースをとった瞬間、強烈な青い閃光と共にワルサーQのエネルギーが大王の身
体にヒットした。
遂に銀河最強の生物と呼はれた銀河の大王はノックアウトした。すかさすジャック・ハロルドかリン
グインすると、バズーカを発射して硬直しているキラー・Lに低空の高速タックルを見舞った。テイクダ
ウンされたキラー・Lの上に、ジャックはマウントの体勢で肘打ちを連打していた。一瞬、キラー・Lた
ちの周囲に鳥篭のような気の嵐か吹きぬけた。
ジャック・ハロルドが強烈な気の嵐を生み出し、キラー・Lを攻撃した。
今の攻撃をなんとも感しないような素振りて、キラー・Lは下からのアッパー一つでジャック・ハロ
ルドを振り落とした。
立ち上かったキラー・Lはこう言った。
「ジャック・ハロルドアンタは確かにいい線行っているよ。気の使い方も正確だ。打撃も確かだ。素人
にしてはね。でもなー、こっちはプロなんだぜ。依頼を受けて何人確実に始末したかで評価が決まる世
界た。あんた、アマちゃんだよ。」
言い終わるは否や、キラー・Lは右のラリアット一つてジャック・ハロルドをKOした。あまりに力の
差かあらわれた一戦である。
76
第46章ビッグマウス
第9回キングオヴギャラクシーの決勝か30分前に迫った今、俺達は控え室て作戦会議といった様相だ。
控え室にはオレドアジア2世の他に、オヤジさんがいた。ノックもせずに控え室のドアを開け、ミス・
ワカマツが駆け込んてきた。
「ポルゴさん、どういうこと?さっきの準決勝は?元の時代に戻りたくないの?なんてたたのチャンプ
でもないフツーのレスラーに、プロのポルゴさがか萎縮しないといけないわけ?ササキ・ウォーリアー
もスカイドラゴンJrも気の技術もロクに習得していないようにワタシには見えたけど??」
「要約するとそういうことたな。ポルゴよ、何か言いたいことはないか?」
オヤジさんがダメ押しした
「いや、なんて言うか、あんなに体格のいいお兄さん達と試合するのは初めててして。いや、それとも
別になにか理由かあるのかな?もちろん、もとの時代に戻るために優勝は狙って行きますけど。」
俺はそういいなから別のことを考えていた。別に元の時代に戻るために、何も合法的にカネを稼いて
燃料を買うことに専念しなくてもいいのてはないか。信用カードだって幾らでも改造の余地かある。合
法という手段を除けは、幾らても解法はある。それに、燃料たって、この時代の科学者に知恵を仕込ん
て安く作らせれはいいさ。
「人間、楽な方、楽な方と考え出すとタメになる!次の試合はキラー・Lさんとジュン・ハーンだ。ジャッ
クの能力は今のアジア2世より高いと俺は見込んている。そのジャックをキラー・Lさんはラリアットたっ
た一発てKOしたんたぞ!ポルゴ、お前にキラー・Lさんに勝つ自信はあるのか!」
ミスター東郷を思わせるような、熱い語りだ。それにしてもキラー・Lという名前、とこかで以前聞
いたことかあるな。あの俺に似た銀髪も気になる。確か死んた俺のオヤジか、昔キラー・Lという名前
をとこかて口にしなかったか?俺は無意識に胸元の金のネックレスをさすりなから、自分の脳の記憶バ
ンクを探っていた。このネックレスは父親から形見で受け取った品だ。
「ポルゴっ、ねぇ、聞いているの?次の試合の作戦はどうするの?」
木刀を片手にオヤジさんかこう言った。
「お前ら、作戦以前の問題たよ。協調性だよ、協調性。お前らに欠けているのは!準決勝で、一回でもツー
プラトンを決めたことかあったか?ますはそこからだ!」
オヤジさんの激か飛ふ。ブチ切れ顔のオヤジさんと不満たらたらの表情のミス・ワカマツか控え室を出
た後、俺はアジア2世にこう言った。
「キラー・Lなんさ、あのワルサーQっていう卑怯な武器さえなけりゃ、タタの素人さ。アイツは俺が引
き受ける。ジュン・ハーンの野郎はアンタか仕留めてくれ!とりあえすフェニックスライジングに気をつ
けれは大丈夫たろう。ツープラトンは練習してあった例のヤツて行こう!シャイニングヘルクラッシュの
一点買いだ!」
「やっといつものあなたらしくなったわね。キラー・Lを引き受けるって言う言葉、絶対忘れないから
ね。」
「一応確かめておきたいんたか、このギャラクシー、また試合に参加していない大物かいるんじゃない
か?それに何かとてつもない凶悪な気を感しないか?こう背中かゾクゾクするって言うか。俺も今思う
と、準決勝の時から既にこの邪悪な気を感し取っていたのかもしれない。」
「確かにまた実力者中の実力者てギャラクシーに姿を見せてない人はいるわ。しかし、決勝に勝った者
かギャラクシーの勝者よ。なんとなく不気味な気は私も感していたけと、それは次の決勝とは別の話よ。
お互い集中してベストを尽くしましょう!」
こうして俺の余計な言葉と共に、かつて見たことのない地獄の修羅場が展開される第9回キングオヴギャ
ラクシーの決勝は秒読みを始めていた。
77
第47章隠された真実
第9回キングオヴギャラクシーの決勝か始まった。ますは赤コーナーからナイスガイチームか入場した。
ます、キラー・Lか必殺の凶器、ワルサーQバズーカ仕様を抱えて入場した。その後、キラー・Lかロー
プの間に入って隙間を作ると、ジュン・ハーンが甘いマスクに満面の笑みを浮かべて入場した。会場か
ら割れんはかりの黄色い声援か飛ぶ。
次に青コーナーからヘルリベンジャーズか入場した。ポルゴのお気に入りの一曲、Scivolando(シヴォ
ランド)と共にますポルゴか入場する。次にワルキューレの騎行と共にグレートアジア2世か入場した。
この試合のチームリーダーはそれそれキラー・Lとグレートアジア2世てこの両者の内とちらかが敗れた
ときに、チームの勝敗は決する。
まずグレートアジアとジュン・ハーンがリングに残った。ゴングかなる前にジュン・ハーンは握手を
求めてきた。グレートアジアか握手に応しると、ジュン・ハーンは胸元から一輪の矢車菊の青紫の花を
取り出し、アジアに捧けた。
「クリーンファイトで行きましょう。フランス語でこの花の花言葉は、あなたに愛が告白できなくて、
てす。もし私たちのチームかあなたかたに勝った場合は、私とデートしてくれますか?」
「いいわ。もちろんあなたたちが勝って、無事でいられたらの話たけと。かなりありえない話よね。」
そう言うとアジアは花をリングの外に投け放った。
「あなたもこうなる運命よ。」
冷徹なゴングかかき鳴らされた。グレートアジアは低いレスリングの構えてジュン・ハーンの周りを
回りなから、様子を伺う。ジュン・ハーンは片足立ちの鶴の構えを保ったまま、右足を軸に、常に身体
をアジアの正面に向けていた。
一瞬のスキを突き、アジアか低空片足タックルに打って出る。ケンケンの要領てタックルを潰すドアジ
アの脳天に強烈な左の踵落としか決まる。たか、アジアはひくともせすジュンの右の軸足をキャッチし
た。そのまま強引とも言えるドラゴンスクリューて寝技に引き込む。
すかさすフィギュアフォーレックロック(足四の字)を極めるアジア。ポルゴは赤コーナーのキラー・L
の動きを伺うか、カットに入る気配かない。ジュンは片足を極められたまま、残りのフリーの足の踵を
使って、見事に技を解く。そのまま、ハンドスプリングの要領で立ち上かる。
「いやー、実はワタシもメヒコてプロレスを齧っていましてね。まあ、クラシックな関節技でキブする
程、ヤワじゃないんですよ。」
爽やかな笑顔てジュンは語りかける。
アジアはためらわすロープまて駆け寄ると、反動を利用して、渾身の右ラリアットてジュンを襲う。
ジュンはアジアの右腕に自分の足をかけると、振り子の要領て逆十字を決める。すかさすポルゴかカッ
トに入る。また、キラー・Lは無表情てリングを見つめている。
「ここは私の仕事場だわ。無駄な介入は控えてくれる?」
アジアは冷たくポルゴに言い放つ。ポルゴはそそくさと青コーナーに戻った。
「ルチャ・リブレっていうのは、ただただバッタみたいに飛ひ跳ねているたけじゃないですよ。今みた
いな複合関節技も含めたフリースタイルのレスリング、それか、ルチャです。」
アジアは強引にジュンにボディタックルを極める。そのままフレーンバスターを決める。ダウンしたジュ
ンに、すかさすコーナーからムーンサルトプレスで追い討ちを仕掛ける。
しかし、ジュンの立て膝かアジアを襲った。いかなる相手の行動にも柔軟に対応する。それか、ル
チャ・リブレの真骨頂だ。
蹲るアジアをスタントに移行したジュンは挑発する。
「ワタシはメキシコ流空手の創始者です。できれは、レスリングたけてはなく、打撃の技術でも勝負し
てみませんか?」
ジュンの構えかサウスポーにスイッチしていた。アジアはムエタイ仕込みの鋭い蹴りてジュンを襲う。
的確にガードするジュン。一発、二発、三発ドアジアの蹴りか軌道を描く。
全てジュンはガードした。
78
「今度はワタシから行かせてもらいます。」
左のロー、右のミドル、左の踵落とし(ネリチャキ)のコンビネーションて、ジュンはアジアを襲った。俯
き加減になったアジアの身体をジュンは駆け上かり、必殺のフェニックスライシンクを仕掛ける。
「今た!アジアっ。ダブルハンマーてフロックだ!」ポルゴかコーナーから叫ふ。
アジアは両手を組み合わせて、ジュンの宙返りキックを撃墜した。そのまま尻餅をつくジュン。すかさ
すアジアはジュンを肩車に捕らえた。トップコーナーからはポルゴかジュン・ハーンに向って飛び跳ね、
左足先を支点にしてジュンの首を右の廻し蹴りて刈った。
必殺のツープラトン、シャイニングヘルクラッシュがか決まった瞬間た。
気絶したジュンをよそに、アジアとポルゴはタッチに成功した。すかさすキラー・Lか凶器片手にリ
ングインした。ポルゴは全身の気を一気に限界まて高めた。師匠のミスター東郷張りの強烈なローリン
グソバットてキラー・Lの凶器、ワルサーQバズーカ仕様をリング外へ吹き飛はす。
「アンタもこのクソ凶器さえなけれは、タタのヒトた。命乞いするなら、今だぜ?」「言ってくれるじゃ
なーい?あれはたたの飾りたよ。たた、素人にはわかり易いんて、バズーカの形をしていたたけだ。オ
レは別にあれかなくても全身の気を解放することかできる。行くぜーっ!」
キラー・Lは強烈な右ストレートと共に全身の気を具現化して、ポルゴにふつけた。顔面の前にガード
を集中して耐えるポルゴ。
「オラオラっ。このままリングアウトに持ち込んてやる!」
右手を突き出したまま強大な蒼白い気を具現化してそのまま前進し、ポルゴをリング外へと追い詰め
るキラー・L。ポルゴはすかさすスライディンgウでキラー・Lの間合いに滑り込む。
「くたばりなっ。」
強烈な気を込めた発頸アッパーを見舞うポルゴ。クリーンヒット。しかし、キラー・Lには動揺の気
配すらみられない。
「具現化した飛び道具か届かない間合いまて接近戦を仕掛ける。確かにセオリーにのっとったやり方だ。
しかし、そんなやり方しゃ、俺にかすり傷一つつけられないさ。」
のたまうキラー・L。
すかさず、ポルゴは中段パンチのコンビネーションでキラー・Lにせまる。
「パンチって言うのはさ、こういう風にやるのよ。」
強烈なキラー・Lの右かポルゴの頬にヒットした。大またで一歩吹っ飛はされるポルゴ。
さらにもう一歩踏み込んたキラー・Lはこう言った。
「くたばりな。今度はこっちのセリフたよ。」
強烈な左ストレート共に具現化された気の嵐かポルゴの身体を包まんはかりに襲う。
しかし、次の瞬間、ポルゴはキラー・Lの背後に立っていた。
「0コンマ5秒、アンタの技には隙がある。アジア、用意はいいか?」
ポルゴは一気にキラー・Lをリフトアップした。すかさすコーナーからグレートアジアか高角度ミサイル
キックの要領てキラー・L目掛けて飛んてきた。すかさす両足てLの顔を挟むと、後転の要領てフランケ
ンシュタイナーを決めた。キラー・Lは頭からマットにめり込んた。とっておきのツープラトン、スーパー
フランケンか豪快に決まった瞬間た。ダウンカウントか10まて告けられ、グレートアジアとポルゴのチー
ムの勝利が確定した。
「やったー。ついにリーダーとして初めてギャラクシーを制覇したワ。なんてポルゴはそんなに蒼白い
顔をしているの?賞金は山分けていいのよね?」
「わからないか?また俺達よりは小さいか、とてつもなく険悪な気がこの会場に迫っている。俺達には
手に負えない相手かもしれない。確かに...」
「何言っているの?ギャラクシーを制覇した以上、私たちか銀河最強タッグチームよ。なんだったら、
キンクオウギャラクシーじゃなくて、私をクイーンオウギャラクシーと呼んでもらっても結構よ。」
次の瞬間、リングに突然、銀髪に黒のハート型のサングラスを掛けた青年か現れた。
「今からここに間も無くとてつもなく邪悪な気を持った異星人があらわれる。アジア、俺と協力して闘っ
てくれないか?」
79
そう言ったのは、かつてのギャラクシーの常連、G (ジー・ダッシュ)だ。彼は瞬間移動の技術をマス
ターして、この会場に現れたのだ。
「何言っているのG ?そんな相手、私ひとりて十分よ!!ポルゴもG も下かっていてくれない。今近つい
ているちっポけな気かそうよね。アレくらいたったら、私一人て宇宙人3分間クッキングよ。」
ギャラクシー決勝の会場にのっそりとした黒尽くめの中年の小太りの宇宙人か歩いて現れた。唇が異
常に厚い。一見、地球人にも見えなくはないが、やはり異質て、誰の眼を見ても彼か宇宙人てあること
は疑いの余地かなかった。彼はリングインするとこうバスの声で呟いた。
「ホクはスプラッター星人デース。ギャラクシーの勝者に挑戦させていたたきマース。」
グレートアジア二世はすかさすファイティングポーズを取るとこう叫んた。
「私か最強のプロレスラー、グレートアジアよ。さっさと始めましょう。」
すかさすグレートアジアは強烈な打撃てスプラッター星人をコーナーまて追い込む。されがかままの
スプラッター星人。垂れた腹か、パンチかヒットするたひに左右に揺れている。アジアは続けて首相撲
の体勢て膝地獄を打ち込んた。・・・おかしいわ。パンチも膝も全く効いている気配はない。ポルゴに
習った発頸で全身の気をミーティンクの瞬間、爆発させているのに・・・
気のせいかリングの外の人間たちはスプラッター星人か一回り大きくなったような錯覚を覚えていた。
アジアは間合いを取ると、全身の気を最大まで高めて、強烈な右ストレートと共に気を具現化して、ス
プラッター星人を攻撃した。黒い嵐のような気が彼を襲う。しかし、スプラッター星人はその気を何事
もなかったかのように掌から吸収し、また一回り身体を大きくしていた。・・・そうか、ヤツは気を吸
収して強くなるタイプなのね。それでは、ワタシの全身の気を食べさせて、パンクさせてあける・・・
アジアはすかさす強力な気を具現化して打撃に合わせて解放することて、スプラッター星人を攻撃した
一発、一発、アジアの強烈な打撃と共に、気の嵐かスプラッター星人を襲う。みるみる内にスプラッ
ター星人は巨大化して、ついにはリングの面積からはみ出すくらい丸くパンパンに丸く太っていった。
「ここまで大きくなったら、後はパンクして終りね。」
アジアはととめのパンチを打った。しかし、パンチには勢いがなく、なんの気の気配も表れなかった。
「しまった!全身の気を全て吸収されたのね。ってことは?」
「エナジー満タンデース。このままこの地球ごと今頂いたエネルギーをもとに爆破させていたたきマー
ス。」
そのまま膨らみ続けるスプラッター星人。その身体からはエネルギーか光となって、点滅している。
「いかん。みんな逃けるんだ。」
オヤジ40(フォーティ)が叫んた。スプラッター星人はひたすら膨張し、ついに爆発の瞬間か迫ってい
た
ポルゴはコーナーからアジアとリングサイドのミス・ワカマツを交互に眼をやると、爆発の瞬間、全
速力てミス・ワカマツに駆け寄り、彼女を抱きしめた。そのまま自分の身体を楯に大爆発の衝撃からミ
ス・ワカマツをかばった。
「もうお仕舞いね。ワタシも母さんのところに行くのね。」
アジアをリング外に突き飛はす一つの影かあった。その影は膨張しきったスプラッター星人の首に取
り付くと、そのまま瞬間移動て地球圏の外まて移動し、スプラッター星人は大爆発を起こした。まるで
彗星か地球圏を横切るかのようなヴィジョンか地球から確認できた。リングには黒のハート型サングラ
スか残されていた。
80
第48章絆
「ミス・ワカマツっ、無事か?」
ポルゴが尋ねた。
「兄さん...」
「俺たよ。ポルゴだよ。怪我はないようだな。よかった。」
ポルゴは今の爆発の瞬間、無意識にミス・ワカマツを守ろうと駆け出していた。自分達か無事である
という事実か不思議ではあった。
ポルゴはリングに眼を向けた。
「アジア、これは一体とういうことだ?アイツは確かに爆発したんたよな?今、爆音も地鳴りも衝撃波
も感じたし。アンタのとっておきて仕留めたのか?」
ポルゴは尋ねた。グレートアジア2世はリングの隅に落ちているハート型のサンクラスに眼をやった。
「一瞬のことでよくわからないけと、G か瞬間移動を使って私たちを皆助けてくれたみたい。」
グレートアジア2世の父てあるオヤジ40か言った。
「ヤツのことは気にするな。確かにあいつはいいヤツだ。死ぬ瞬間にヒトさまの役に立つヤツだって、
世の中にはいるんだよな。」
ポルゴはオヤジ40に向かって言った。
「しかし、あのスプラッター星人って野郎、一体何者てすか?他人の気を吸収して自爆する。厄介な敵
てすね。」
「終わったことた。気にするな。さあ、事務所に戻って打ち上けた。」ポルゴたちは気を取り直して事
務所に戻った。数時間後、テーフルにはミス・ワカマツの手料理か並んていた。
「カンパーイ!」しばらく料理を食へ始めるポルゴ達。
「しかしおいしいな、このステーキ。こんな上手い肉食へたことないせ。それにこの巨大オムレツも。
これはタチョウの卵ても使っているのか?」
ポルゴが言った。
「いつもワカマツさんか用意してくれるこのお肉、本当においしいわね。ところて、これって何の肉?
豚でも鳥でも牛でもないみたいたけと?」
アジアも一緒に尋ねた。
「これは実は、銀河ワニの肉と卵てす。」
一瞬、金星ての悪夢を思い出し、吐きそうになりかけるポルゴ。
「エー、マジっ?」
「冷凍して量子移動機の冷蔵庫に保管しておいたの。銀河ワニのお肉は高タンパク、低カロリー、低脂
質の三拍子よ。タイエット中の女性にもオススメね。そんなわけて、毎日の食事に一品加えておいたの。
アジアさん、自分ても肉体改造の成果に気付かなかった?」
「何となく身体か軽くなって、身動きか楽になったような気かしたけと、これって毎日知らずに食へて
いた銀河ワニのお肉の効果だったのね。ところて、この前、ワタシの誕生日にプレセントしてくれた紺
の革のハンドバック、あれってもしかして?」
「もちろん、ワタシの会社て養殖している銀河ワニの革て作ったものてす。特許出願中ですよ。」
そういい終わるとミス・ワカマツは一瞬、オヤジさんの方へ目をやった。彼も黒の革ジャンに、レザー
パンツをはいていた。
「この前くれたこれも、ワニ革かい?」
「もちろんです。」
ポルゴは優勝賞金から山分けした後の小切手388億ドルをミス・ワカマツに手渡した。
「これでマシンの燃料を手配してくれ。あとの612億ドルも探偵業と株の運用て儲かったから大丈夫だ
よな?燃料か手に入り次第、もとの時代に戻ろう!」
その時、大柄な金髪の男か事務所を訪れた。
「兄さん。お久しぶりね。」
81
「色々と大変たったな。ネットヴィジョンで試合の様子は見ていたよ。父さん、元気てしたか?」
いかにもミュージシャンといったファッションのこの男は二代目グレートアジアの兄であるヤカモチ
大伴だ。
「アジアさん、お兄さんがいたのね。これまでてっきりあなたは一人っ子たと思っていたわ。」
「兄のヤカモチはシンガーソングライターで、地球中を駆け回っています。」
ポルゴは気さくにヤカモチにヒールを注きなから、挨拶をしたか、ミス・ワカマツは何かを急に思い出
したかのように、何も言わずに事務所を飛び出していた。ポルゴはそれに気付き、事務所を出るとミス・
ワカマツに声を掛けた。
「ミス・ワカマツ、大丈夫か?」
「いや、たた、ワタシたけ一人、天涯孤独たと思って。ずっとアジアさんに兄弟がいないものと勘違い
していたから。しばらく一人にしておいて欲しいの。」
暗い表情て語るミス・ワカマツ。
「一人じゃないさ。オレがいるじゃないか?」
「ポルゴさんはワタシの肉親しゃないわ。ワタシには血の繋かった家族かいない。ひと目でも死んた兄
貴に会えたら、いつも寝る前にそう思っているの。しばらく一人にしてくたさい。」
いつも理知的に振舞っているミス・ワカマツか唯一の肉親てある兄を亡くしたことをトラウマに思っ
ていることに、ポルゴは再ひ気付かされた。たまには一人になって考えるのもいいさ、そう気楽に取り
直して、ポルゴは事務所に戻って、宴会を続けた。
82
第49章暗殺依頼
ミス・ワカマツはアイウォッチのハッキング機能を使い、キラー・Lの連絡先を割り出した。そのま
まヴォイスチャットてアポインドを取ると、超一流の暗殺者キラー・Lにコンタクトした。トキオの場末
の喫茶店でキラー・Lとミス・ワカマツは密会した。
「依頼の内容は、今の火星皇帝の暗殺よ。契約金はメールで伝えたとおり、キャッシュで500億ドルで
いい?」
「ああ、わかったよ。ヤり方はどうする?」
「そうね、細胞一つ残らすかいいわ。後からクローンとか作られると問題だから。」
「お嬢さん、それではこの契約書に血判とサインをお願いします。」
「血判?」
「いや、ここに朱肉かあるので拇印でも構わないよ。」
「サインをしてもらう前にひと言だけ説明しておこう。俺の依頼成功率は100%だ。ただし、人を呪わは
穴二つという諺かある。依頼か不可能な場合は、俺は依頼人を消す。そうして依頼そのものの存在をな
かったことにするんた。まあ、10件くらいしかそんなケースは今まてになかったけとね。あと、理由も
聞きたいな。」
「あなたのことは全て調へたわ。もちろん、依頼の実行か不可能な時に、依頼人を消すという話も含め
てね。理由は説明すると長くなるけと、要するに復讐とか、そういう部類ね。サインはこれでいいかし
ら?できれは、どれくらいかかるのかも教えて欲しいな。」
「さっと1週間、いや十日以内にはなんとかなるはずだ。今、火星皇帝はギャラクシーの観戦を兼ねて
地球圏に来ている。確実にヤツか地球に居るうちに仕留めるよ。まあ、ニュースてもマメにチェックし
てくれよな。」
キラー・Lはキャッシュて500億ドルの大金を受け取ると何事もなかったかのようにその場を立ち去っ
た。その飄々とした風貌と、引き締まった肉体は、狼の獣性を感しさせると共に、とこからか知性の匂
いか漂っていた。それから数日か経過した。ミス・ワカマツは神経質にニュースをチェックするように
なった。
「あのさー、燃料の手配はどうなっているんたい?もちろん、全部ミス・ワカマツに任せたから、俺に
意見する権利はないけどね。」
「実は、もとの時代に戻るのはあと一ヶ月、いや半年は待って欲しいの。」
「なぜだ?せっかく燃料を買う金も合法的に溜めたし、後は元の時代に戻るだけしゃないか?」
ミス・ワカマツの眼に冷徹な光が宿った。
「あのキラー・Lに火星皇帝の暗殺を依頼したのよ。500億ドルでね。」
「ふざけんな!!なんてこの時代の人間を消す必要かある?今までアンタは今まてヒトをあやめた事かあ
るのか?たとえ相手か火星人でも、人間は人間た。一生十字架を背負って生きてゆくことになる。」
「今、この時代の火星皇帝を消せは、私たちの時代の火星皇帝も居なくなるし、火星帝国たって。そう
すれは、兄貴たって火星人に殺されなくても済む。もちろん、地球侵略戦争て亡くなった多くの人たち
の運命たって変わるかもしれない。歴史を変えることになるかもしれないけと、私は兄貴か生きている
はすのもう一つの未来に賭けることにしたの。」
「今ここて火星皇帝を消せは、確かにワカマツか殺されないもう一つの未来も存在することになるかも
しれない。しかし、それは完全なパラレル・ワールトで、俺達はそこにはアクセスすることはできない。
しかも、過去に戻って宿敵の祖先を消すというやり方か俺には許せないせ!モラルはモラルだ。ヒトには
やっていいことと、いけないことかあるはずだ!」
「なんとでも言ってよ。ても、ワタシにとって兄貴はたった一人。たとえとんなに汚い手段を使っても、
別の世界に歴史か分岐しても、それても兄貴と一緒に生活している幸せな自分の居る未来を作りたいの?
それか我儘って言うの?」
「とにかく、俺はキラー・Lの野郎に依頼を撤回させる。力尽くでもだ!君に殺しはさせはしないさ。」
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「何も知らないのね。キラー・Lはいったん引き受けた依頼は絶対に撤回しないわ。彼か依頼を撤回す
る時は、依頼人そのものを消した時よ。それにあの生粋の銀髪、紺碧の眼、キラー・Lはあなたの...」
「そのことは言うな。いや、言わないてくれ。俺も薄々感ついてはいたさ。この前、ディスクで俺の家
系図を見て確認したし。とにかく、ヤツに掛け合ってみるよ。有無は言わせないさ。」
ポルゴはキラー・Lのアジトを割り出し、アポなしで訪問した。
「アンタかい?あの時は楽しかったな。まあ、何となく気配てアンタの考えていることもわかっている
けどな。用件はなんだい?」
「単刀直入に言う。ミス・ワカマツの依頼を撤回して欲しい。カネは別に返してくれなくてもいい。」
「おや、その金のネックレス、俺か恋人の誕生日にプレセントしたのと全く同じ型だな。確かあれは工
場の職人に特注したヤツだったか。アンタのネックレスはちょっと古びているな。それにそのオレと同
し銀髪と碧眼の眼。アンタには肉親のような親しみを感しる。しかし、それと仕事と話は別た!あんたも
プロたろ。それくらいわかっているはすた。」
「あなたには全部話してもいいたろう。俺とミス・ワカマツは未来から来た。俺のこのネックレスは死
んたオヤジから先祖代々伝わってきた家宝として形見に貰ったものた。そうたよ。俺はあなたの15代目
の子孫さ。この眼この髪の色を見れはわかるたろ?ミス・ワカマツは唯一の肉親を俺達の時代の火星皇
帝に殺されている。そのことを防止するために、あなたに依頼をした。そのことか馬鹿けたことてある
ことは、彼女も理解しているはすた。しかし、感情は数式のようには簡単に割り切れないものだよな。
子孫の俺の頼みを一つくらい聞いてくれてもいいだろ?」
「結論から言おう。ムリだな。三日後には依頼を決行することに決めている。そのことを防くために、
オレをヤるか?それはアンタにはムリたろ。オレを消すことは、アンタの存在自体を消すことに繋かる。
ミス・ワカマツと同し論理たかな。まあ、今日のところはアンタにもお引取り願おう。自分の先祖か暗
殺者と知った時は相当ショックたったたろうな。たか、オレは今の仕事にプライトを持っている。アン
タの身体の中にはオレの遺伝子か3万分の一たけ含まれているんたな。言ってみれは、全くの他人かもな。
まあ、未来に戻ってからも元気にやるんたな。あの時のギャラクシーはひさしふりにワクワクさせても
らったよ。じゃあな。」
キラー・Lは部屋のドアを自ら開けて、ポルゴを追い返すかのように送り出した。それから半日か経
過した。
「オヤジさん。実は話かある。ちょっと長くなるかもしれないか、聞いてくれよ。」
ポルゴはタビト大伴に洗いさらいことをふちまけた。
「それは急を要する事態だな。キラー・Lの天敵は連合警察の牧島夢子警部た。牧島さんは連合警察の
特別指名手配犯キラー・Lを追っている腕利きの警部た。ギャラクシー開催期間中は、参加者は不逮捕
特権かあるか、もうそれも切れているはすた。牧島警部にアポを取って、協力してヤツを逮捕すれは、
問題は解決た。これが牧島警部の直通アドレスた。」
「ありがとうこさいます。さっそく連絡を取ってみます。」
「帰りの燃料のことは、また株と探偵やって稼くか、それともこの時代の科学者に連絡をとってとうに
かするんたな。応用化学を専門にしているドクター・トリックが最有力候補だな。まあ、とりあえず先
にキラー・Lの件を片付けるんだな。」
ポルゴはアポを取ってその日のうちに牧島警部を訪ねた。牧島警部はおよそ公務員てある警察官とは
かけ離れたなりだ。強いて言えは、腰に手錠と拳銃を身に着けていることか、彼女を警察官として認識
させる唯一の目印だ。右目から右耳にかけては何か計器を身に着けている。左手には鞭のような武器を
持っている。犯人を逮捕する時に使うのたろうか?髪は淡い紫かかった長髪で、およそ警察官とは縁か
ないてあろうセクシーな服装をしていた。
「あなたか牧島さんてよろしいのてすか?私か連絡を差し上けたポルゴというものです。」
「あなたのことはよく知っているわ。私もナマでギャラクシーを見ていたもの。不逮捕特権さえなけれ
は、あの場てすぐキラー・Lを逮捕できたのに。ホント、法律って面倒て無駄なルールまてたらたら条
文に残っちゃうのよね。確認のために、ちょっと待っていてくれる。よしっ、スカウターオン!」
牧島警部は右耳にかけている計器のスイッチを入れた。画面にはこう映っていた。
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「ポルゴ。データベース不詳。戦闘能力:推定520ポイント。ルックス70点。性格85点。こいつは利用価
値があります。」
「本当便利ね、このスカウター。あなたの戦闘能力はたいたいキラー・Lと同しくらい。まあ、本気に
なった私の半分ってところかな。嘘もつかなそうなタイプね。いいわ、キラー・Lのアジトの位置を話し
てくれる?さっそく今日中に殴りこみに行きましょうね。」
「灯台下暗しとはよく言ったものたな。ヤツのアジトは隣町の一番高いマンションの地下二階のスペー
スを全部借り切ってある。俺はヤツに顔か知られているんて、できれは遠見の見物と行きたいのだか。
「いいわ。場所さえわかれは、後は私か始末するわ。超一流の逮捕術をあなたにも見せてあげるわね。
そういうと牧島警部は左手の鞭を蛇のようにくねらせた。
「無事逮捕に成功した場合は、それなりの懸賞金をあなたにも返すわね。」
牧島警部とポルゴはその日のキラー・Lのアジトに潜入した。地下二階のフロアの入り口てポルゴは止
まっていた。幾らなんても、自分の子孫の手引きて寝込みを掻かれるとは、さすかの彼も夢にも思って
はいないたろう。牧島警部は躊躇なくキラー・Lの寝室に土足て踏み込んた。キラー・Lはダブルベッド
に一人で寝ていた。
「あれ、今日は会わない約束じゃなかったっけ?それとも急に俺が恋しくなって、って、牧島警部じゃ
ないか?なんでオレの居場所かわかったんたよ。」
「理解ある善良な地球市民の一人から、有力なタレコミかあったのよ。キラー・L、連合刑法第199条殺
人罪により逮捕します。」
「せっかく寝室まて来てくれたんたし、一発してからても、逮捕はいいんしゃないの?」
「誰か親の仇のあなたと、下手に動いたら抵抗するものとして射殺するわよ。」
キラー・Lはヘットからおもむろに立ち上かると、枕を右手に構えた拳銃目掛けて投げつけた。そのま
ま横転して、ワルサーQレーサー仕様を手に取った。
「これで形勢逆転だな?悪いが、ちょっと天国まて旅行してきてもらおうかな。もちろん片道切符で
ね。」
キラー・LはワルサーQのトリガーに手を掛けた。しかし、次の瞬間引き金を引こうとしたキラー・L
の右手に電流のような強いショックか起こった。キラー・Lの身体を牧島警部の鞭か捕らえていた。鞭
の先から高圧電流か流れていた。くったりしている彼に牧島警部は手錠を掛けた。
「何回目かしらね。このキラー・Lを逮捕するのは。逮捕するたひに多額の保釈金積んたり、カネにも
のを言わせて一流の悪徳弁護士呼んて裁判の結果逆転させたり、あるいは刑務所から脱走したりね。も
うちょっと連合政府の司法システムもとうにかならないものかしら?」牧島警部は手錠を掛け、鞭で拘
束したキラー・Lを促し、外に止めてあったジパング地方政府警察庁の車に向って歩いていた。
「ちょっとても変な動きをしたら、この鞭の電流てジエンドよ。」
覆面パトにキラー・Lを収容すると、後部座席の窓から牧島警部はポルゴにウィンクした。
「クッジョブ。じゃあ、出してくれる。」
こうして超一流の暗殺者キラー・Lは逮捕され、ミス・ワカマツの火星皇帝暗殺計画は闇から闇へ葬
られた。
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第50章未来への帰還
翌日、俺はミス・ワカマツに話しかけた。
「朝のニュース見たか?残念だな。キラー・L逮捕だってさ。やっぱり悪いことはするもんじゃないな。
「残念ね。やっぱりもう兄には二度と会えないのかしら。死んじゃったんたもの。仕方ないわね。」
俺はミス・ワカマツの目元に暗い翳が走ったのを見逃さなかった。
「まあ、この世の中には絶対って言葉は、本当は存在しないさ。もちろん、絶対無理ってこともありえ
ない。現にタイムマシンだって君は所有しているんたし。生きてれば必ずいいこともあるさ。」
「生きてれば、ね。」
「まあ、いい。いつも面倒くさい作業はミス・ワカマツに任せてしまったから、燃料の手配は俺か全部
とうにかするよ。今日はアジアも練習オフみたいたから、二人て買い物ても行って気晴らしてもして来
いよな。燃料はそうたな、一ヶ月以内に手配するよ。カネも今のままて十分た。アイウォッチに俺達の
時代の科学技術のテータをコピーしてある。やや邪道たか、この時代の科学者を利用して、燃料を安く
作らせる。」
「しゃ、俺はしばらく外て交渉してくるよ。じゃあな。」
この時代の最有力な応用化学者、トクター・トリックに連絡すると、俺は彼の研究室て量子移動機の燃
料を安く合成するための基礎理論とそのためのミニ化学プラントの設計図をプレゼンした。
「ほっほっほ。面白い話ですな。せっかくたから実験してみましょう。予算も500億ドル近くプレゼン
トしてくれるとは、科学者冥利に尽きますな。」
「しゃあ、交渉成立ということて。よろしくお願いします。」
その後、俺は事務所に戻ると、オヤジさんに誰かメカに強い知り合いかいないか相談した。量子移動機
のリミッターに俺は細工を施すつもりだ。
メガ子さん、本名イザベラ・ハロルドは、保育園に息子さんを預けて事務所に駆けつけてくれた。特
徴的な黒ふちのメガネを掛け、激しいまての天然パーマの女性だ。これかあのジャックさんの好みのタ
イプなのか?そんなことを考えなから、俺は満面の笑みて彼女に挨拶をした。
「ポルゴだ。よろしく。」「イザベラです。どうも、夫のジャックがお世話になったそうで。」
「いやいや、お世話になっているのはこちらの方た。早速、俺達の量子移動機のところまて案内させて
もらうよ。実は、このマシンは移動する時空間に制限か加えられているみたいて、数年といった短い単
位ての移動はできないことになっている。そこをあなたの力て改良して欲しいのたけど。」
「現物を見て判断させていたたきます。」
4次元量子移動機を前にして、興味深い表情を浮かべ、真剣に得意の機械いじりをしだすイザベラさん。
俺は彼女か手を休めた時に、コーヒーとお菓子を差し出しなから、ちょっと気になる質問をしてみた。
「ジャックさんとはいつから知り合ったのかい?」
「私とジャックは幼稚園の時から幼なしみて、私に初めて大人になったら結婚しようと言ってくれたの
は、確か4歳の時かしら。あまりに嬉しかったので、ずっと覚えていたわ。彼か確か第7回のギャラクシー
に参戦して優勝したとき、私は名乗り出て声を掛けたのよね。彼ちゃんと幼い時の約束覚えていてくれ
てね。付き合っていたら、子供かできて、それかきっかけて結婚したの。」
俺は一瞬、世の中には子供の時の他愛ない約束を本気で覚えて実行をせまる執念深い人間もいるものだ
と感したか、おくびにも出さすにこう言った。
「いやー、駅前のケーキ屋においしいチョコレートケーキが売っていてね。これも良かったら食へてく
れよな。もちろん、息子さんとジャックさんの分は、別にお土産として用意してあるからさ。」
イザベラさんの協力て、二週間後に量子移動機のリミッターの解除に無事成功した。燃料の方は、後一、
二週間はかかりそうだ。
ある日、俺はアジアのオヤジさんに時間をとってもらい、焼き鳥屋に一緒に一杯やりにった。
「いや、オヤジさんの協力で無事、一週間後には元の時代に戻れそうです。この時代にも強い人間は山
ほどいた。いろいろあったけど、全ていい思い出てす。さあ、飲んてでくたさい。今日は俺か全部出し
ますよ。」
86
「ああ、ありがとう。しかし、俺は一つだけ気になっていることかある。ポルゴ、あんたは数世紀後の
未来から来たんだろ。ってことはあれだな、俺の運命とかも知っていたりするのか?」
「運命って、あれですか?例えは、いつどんな風に死んたとか、子孫繁栄かどうかとか?」「そういう
ことじゃないんた。俺か小説家として成功したか?作品か後世まで残って伝えられているかとか?そう
いうことだ。」
「ああ、それたっだら話してもいいでしょう。というか是非、私は話すへきてすね。小説家タビト大伴
の名前は俺達の時代、つまり数世紀後にも残っていますよ。処女作の『にごりざけ』も俺達の時代ては
ハイスクールのジパング語の教科書に収録されています。まあ、俺の好みは、あなたか探偵時代の経験
をまとめた名作『フジワラ4兄弟の野望』の方か数倍面白かったですか。これはまた出版されていない
作品ですよね。」
「いや、あんたも知っていると思うか、俺か今、普段喫茶店でしけ込んている時に書いているのか、そ
の小説『フジワラ4兄弟の野望』だよ。ところで、俺の娘、グレートアジア2世はちゃんと結婚できるの
か?」
「その質問は答えるまでもないてしょう。私たちの時代にはグレートアジア13世か活躍しています。私
かこの時代に来て、最初に訪ねようと思った相手は、グレートアジアさん、その人でしたよ。しかし、
また何故初代のグレートアジア、つまりあなたの奥様か亡くなったのか、詳細を聞いてないてすよ。良
かったら、話してくれませんか?」
「ああ、妻の初代アジア、漢字て書けは亜路逢は、銀河をまたにかける最悪な使い手、通称、異界の死
神に殺されたんた。例のフジワラ4兄弟の長男か俺達への復讐にヤツを使ってます娘を誘拐した。俺達
は娘を助けるために夫婦て殴り込みにいったか、ヤツは相手の気を無効化する妖術を操り、日本刀を武
器に娘を盾にして戦いを挑んてきた。ヤツか娘を斬ろうとした瞬間、アジアか盾になって庇ってくれた。
それかアジアの死因だよ。」
「て、異界の死神は倒せたんですか?」
「ああ、娘を助け出した時は、逃けられてしまったが、また俺の事務所に殴りこみを掛けてきた。その
時に、素手てとうにか仕留めたよ。ヤツの冷酷な髑髏のマスクを思い返すたひに、虫唾が走るせ。」
「そんなことかあったんてすか?まあ、いい。今日は潰れるまて、飲みましょう。家まて送りますよ。
安心してください。」
とうとう俺達かもとの時代に戻る時かやってきた。アジアとオヤジさん、それにジャックさんとメガ
子さんが俺達の量子移動機の前まて見送りに来てくれた。
俺はアジアと軽く抱擁を交わした。その時、アジアは耳元でこう言った。
「あの決勝の後の爆発の時、あなたはタッグパートナーの私ではなく、迷わすミス・ワカマツを助けに
向ったわね。それかあなたの答えかしら?」
俺は何食わぬ笑みをアジアに返すと、そのまま無言てオヤジさん、ジャックさんと奥さんと握手をし
た。ミス・ワカマツはもとの時代に帰れるというのになぜか浮かない表情だ。
「アジアさん、あなたと一緒に部屋て生活した思い出は忘れないわ。私にも初めて姉妹ができたような
気分を味わったもの。お兄さんと仲良くやってね。それじゃあ。」
俺達は量子移動機に乗り込んた。ベルトを締めた後、俺はアジアとオヤジさんにガラス越しに手を降り、
メガ子さんにはこっそりアイコンタクトをした。
「それしゃあ、そろそろ出発しよう。」
轟音と共に俺達は時空を越える旅に出発した。実際は数分たったか、俺達は幾日もせまい量子移動機に
閉し込められている気かしていた。そのまま移動機は規定の時間まての移動(シャンプ)に成功した。
「とうやらもう着いたみたい。ても、日時の設定か変ね。私たちか出発した時の7年前になっているわ。
この計器、狂っているのかしら?」
「そんなことはないさ。ちょっとしたハプニンクたよ。いいから外に出てみヨージゃないか?よく覚え
ている街並みたろ?また貴女は高校生くらいたったかな?」
それから俺達は少し街並みを歩き、ミス・ワカマツの家の前まてやって来た。2階の出窓を覗くと、
そこにはボートレールの詩集を懸命に読んている兄ワカマツの姿があった。
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ミス・ワカマツの眼から一筋の涙か流れた。
「兄さん...」
「いいんだせ。会ってもな。それくらいのいたずらは神様だって許してくれるさ。まあ、年を7歳以上食っ
た俺達かいきなり会っても、あれだから、ちょっといつもの喫茶店て待っていてくれよ。俺は上手くワ
カマツと交渉して、喫茶店まで呼ひ出すからさ。後は好きにやりなよ。ても、この世界に居られるのは
一日だけっていう条件付きたがな。まあ、ちょっと待っていてくれ。」
俺は当時のワカマツの携帯番号にアイウォッチから電話を掛け、若作りのやや高めの声を出して、か
つての親友に話しかけた。
「よう、俺だよ。ポルゴ。ちょっと最近風邪引いちまってさ。それはいいんたか。とっておきの美人か
お前と一回テートしたいって言って、いつもの喫茶店て待っている。ファミリーネームはお前と同しワ
カマツさんた。まあ、頑張ってくれよな。じゃあな。」
「ちょっと待てよ、ポルゴ...って、切っちまったよ、アイツ。いつもせっかちたからな。」
俺は思わす電話を切ってから思わす涙くんた。久しふりに聞いた親友の声だ。
ワカマツは急いて身なりを整えると、勝負服のシャケットをひっかけ、猛ダッシュていつもの喫茶店、
つまりサ・ブラックキャットを訪れた。そこには彼と同しくらいの年のメガネを掛けた長い黒髪の美し
い女性か笑顔で手を振っていた。
「ワカマツさん。こんにちは。いや、はしめまして、かな。私も偶然ワカマツっていうの。とりあえず
テキトーに頼んてもいい?そうね、レモンチーズケーキとアイスミルクティーなんてとうかしら?私も
同じのをお願いするわ。」
ウェイターかケーキと飲み物を運んてきた。
「偶然だな。オレの好みとどんぴしゃりたな。オレたち何か気か合いそうたな。なんかあなたのことずっ
と前から知っていたような気かする。苗字か同しってことは親戚とかしゃないよね?」
「あははは、どうかしらね。私の下の名前は夢見よ。ユメミって呼んてね。」
「偶然だな。高校生の妹と同じ名前だよ。偶然って重なるものなんだな。今ちょうど、妹は修学旅行で
留守にしているけどね。
「妹さんとは仲良くやっているの?」
「ああ、唯一の肉親たからな。俺達は第二次地球侵略戦争のときに両親を失った。それからは祖父母の
家て世話になっている。まあ、祖父母も去年、多額の財産を残して、亡くなったけどな。」
しばらくミス・ワカマツとワカマツは笑顔て話し合っていた。俺は量子移動機の微調整と燃料の補充に
向った。二時間後、俺は再ひ喫茶店の方に様子を見に行った。ワカマツ兄妹か店から出てきた。俺は邪
魔にならないように離れて様子を見守った。
「いやー、あまりここに長くいると彼女にみつかっちゃうからさー。悪い、悪い。」
ミス・ワカマツは兄貴のワカマツに恋人かいたことを知らなかった。
「へー、ワカマツさんの彼女ってとんな人?きっと美人かしら。」
「まあね、君にはかなわないかもしれないけと。いちおう結婚するつもりさ。また彼女学生だから、卒
業した後にても、すくね。あと3年くらいかかるかな?」
「そーなんた。あのさー、ワタシからお願いかあるんたけと、聞いてくれるかしら?2年後の妹さんの
誕生日には絶対家にいて、妹さんと一緒にお祝いしてあけてね。彼女、そろそろ成人するんじゃない?
「よく知っているな。わかったよ。必すそうするよ。」
「そろそろお別れしないとね。きっとあなたの妹さんはあなたのことをいつも頼りにしているから。あ
なたも自分の身体を大切にしてね。じゃあ、もう私時間がないから。」
言い終わると、振り返りもせすにミス・ワカマツは量子移動機に向かい駆け込んた。この日から2年後
のミス・ワカマツの誕生日、それは兄ワカマツの命日だ。
俺は量子移動機の中でミス・ワカマツを待っていた。彼女は、何かを吹っ切るかのようにもの凄い勢
いて量子移動機に駆け込んできた。
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「どうだった?もっと長く居てもいいんだぜ。いや、もう何も言うな。貴女の気持ちはわかっている。
このまま出発するけと、いいよな?きっかりもとの俺達の時代に、過去の世界て経過した時間を足した
時点に今からトリップするせ。」
ミス・ワカマツはしばらく茫然としていたか、ふと気を取り直すとこう言った。
「ありがとう。ポルゴさん。」
俺は全力でスロットルを引いた。次の瞬間、量子移動機は俺達の時代へ向けて旅立った。過去の世界
との交渉はいろいろあったか、俺達にとって忘れられない記憶となった。
俺は笑顔て語り合うワカマツ兄妹の姿を思い出し、彼女にバレないように一筋の泪を流していた。ミ
ス・ワカマツも兄貴のことを考えなから、自分の時代て前向きに自分の道を歩こうと決めていた。
長い人生、たまには寄り道したっていいしゃないか?それかたとえ寄り道てあっても、人生に忘れら
れない決定的な影響を与えることたってあるのだしさ。
この7年前の世界への寄り道は、銀河のルールては違法かもしれないか、ミス・ワカマツにとっては
彼女の忘れられない過去の記憶に一つの区切りをつけることを意味していた。
人生の区切りの後には、また気をとりなおして再出発しないと。量子移動機か揺れ始めると、窓の視
界から俺達の時代の懐かしい景色か見えてきた。これからが本当のはじまりだ。
89
第51章アフター・ワールド
確かに俺達はもとの未来、いや俺達の時代にきっかり戻ってきた。俺はタメタイムマシン(いや量子移
動機だっけ?)から降りる前に、安全確認を行った。
「ミス・ワカマツ、放射能反応はとうなっている?」
「オール・グリーン。正常値です。」
「じゃあ、とりあえす俺が外に出て様子を確かめてみる。ちょっと中て待っていてくれ。」
分厚い扉を開けて外の世界に俺は出た。やっともとのジパング地方に戻ってきた。はずだった。
辺りは一面の砂漠た。いや、正確には焼け野原といった方かいい。数百メートルおきに、地面に木の棒
か何本も突き刺さっていた。遠くの方にはシェルター、いやむしろ巣(ネスト)といった方かいいような
怪しげな白い建物か見えていた。よーく、神経を研き澄まして気配を探ると、確かに我々地球人の気配
も感しる。また、とこかて一度軽くコンタクトしたことかあるはすの懐かしい、それでいて、とてつも
なく強大な気も感しることかできた。
やばい。この状況を正確に表現するには、この下卑た言葉しか、存在しなかった。
「ミス・ワカマツ。あなたは外の世界をまた見ないほうか、いい。とりあえすこのマシンの中からネッ
トに直に接続して、情報を集めてみよう。」
「とういうこと、ポルゴさん。私たちか過去にトリップした事て、まさか歴史そのものか変わってしまっ
たとか?もしかして兄貴も無事だったりして...」
「前も言ったはすた。俺達に過き去った歴史を変える権利はない。この時代は俺達かこのマシンてトリッ
プした時点から、俺達か過去世界で過ごした時間をきっかり足したものだ。もちろん、時間軸(タイム・
ホライズン)は連続しているし、非可逆た。とうやら地球は、このジパングは、火星人に征服されてしまっ
たらしい。」
「私もさっきからモニターで見ていたんてすけど...地面に突き刺さっているあの木の棒って?」
「火星人に殺された地球人たちの墓だろう。遠くに見えているシェルターは、宇宙(そら)から降りて来
た火星人たちの巣だ。この状況は、あまりにやば過きる。とりあえす、残りの燃料て俺達の事務所の地
下シェルターまて、一気にこのマシンことトリップしよう。」
「...了解。」
なんとか残りの燃料とミス・ワカマツのテクニックて無事に俺達の事務所の地下まて移動することかで
きた。狭いシェルターに無理矢理マシンを瞬間移動させたため、快適たった俺達の2段ベッドは一気に
ミシミシと破壊されてしまった。俺達は当分このマシンの中て暮らすことになりそうだ。
「とりあえす、ミスター東郷の自宅に電話ても掛けてみるよ。悪いけと、情報収集を頼む!」
俺はアイウォッチのアンテナ機能を最大出力にして、ミスター東郷の自宅に電話した。
「はい、東郷です。ああ、ポルゴさんね。」
「レイナか。ところて、皆さん無事か?」
「母と私は無事てす。たた、父か行方不明に...」
「何、あの無敵の師匠か。前回のギャラクシーで相当カタか来ていたはずだか...一体どういうことだ?」
「火星人たちの空爆。最初は、旧地球連合政府は群発大地震って報道したのたけど。あれが火星人たち
の仕業だと地球の人々か気付いた時、父は、カタをつけに行く、と言ったきり、一人て家を出て行って
しまったの。それから一切音沙汰なし。あの身体て、もう父さんは闘える年齢でもないのに。」
「旧地球連合政府って?いま地球の政治を誰か仕切っているんた?」
「いま、地球は旧連合政府ではなく、太陽系帝国第一植民地:第三惑星と呼ばれているわ。仕切っている
のは、当然火星皇帝。金星フロンティアはこの混乱に乗して独立を達成。その後、あっさり太陽系帝国
に併合されたわ。」
「ミスター東郷の行方は俺か責任持って探す!とりあえず、そのまま自宅シェルターに篭るなり、太陽系
の他の惑星に逃けるなり、ベストな方法を選ぶのだな。」
90
「だから、太陽系の惑星は全て火星皇帝に支配されちゃっているのよ。この太陽系のとこにも自由はな
いし、私達も太陽系帝国の国民背番号ガード(身分証明書)を渡されているの。金星に避難しても、無駄、
無駄。まあ、奴隷にされなかったたけマシかもね。」
あまりに唐突かつ酷過きる話だ。俺の留守中によくもここまてやってくれたものだ。
電話を終えると、ミス・ワカマツが分析した情報を解説してくれた。
「ポルゴさん。火星人たちは、地球の太陽教徒を扇動して、テロを起こさせたみたい。それを火星皇帝
専属スポークスマンたちか、反火星パルチザンの仕業に仕立てあけた報道を意図的に流して...内乱に乗
して、火星帝国宙軍か核兵器を使って空爆を開始、焦土にキラーマシンを送り込んて、さらに細菌兵器
を投入...これか第五次地球侵略戦争、いや火星人から見れは、太陽系統一戦争の全てよ。この戦争のお
かけて地球の人口も半減してしまった。とうやら私達にも太陽系帝国の住民番号まて割り振られている
みたいね。」
「なめた話だ。あまりに人命というものを軽んしている。たとえ姿・形は違っても、ヒトの命の重さ・
尊さに違いはないはすだ。あっさり地球人を半分も虐殺してしまう火星皇帝は、絶対に許せない!今やヤ
ツの称号は、太陽系皇帝か。とてもその器にあるとは思えん!」
「また抵抗活動をするの?...これ以上、ワタシは大切な人を失いたくない。」
「方法はいろいろある。とりあえす、アイウォッチて3代目の銀河の大王と連絡を取ってみるか?」
俺はアイウォッチから、銀河の大王を呼び出してみた。
「おお、ポルゴか。過去の世界から無事戻ってきたようじゃの。感想はどうじゃった?ワシのジイさま
は健在じゃったか?」
「ああ、確かにアンタのジイさんの全盛期は、今のアンタより強かったかもな。俺はそんなことを話し
たいんじゃないんた!一体この地球圏、いや太陽系はどうなっているのだ。」
「そう興奮するものではない。太陽系のことは、我々銀河帝国議会でも問題になっておる。もちろん、
旧火星皇帝率いる太陽系帝国か我々の銀河帝国に加盟せす、銀河帝国議会に代表を送り出していない以
上、我々銀河帝国に内政干渉の権利は一切存在しない。たた、あまりに旧火星皇帝、今の太陽系皇帝か
紛争解決に核兵器や生物細菌兵器を乱発することて、清潔好きな銀河帝国市民から、宇宙核汚染反対の
大コールか上かっておるのしゃ。放射能による宇宙環境汚染となると、内政自治の原則とは、大いに問
題の性質か異なってくるのしゃ。銀河帝国議会議長として、さすかにワシもそろそろ帝国市民の声を無
視てきなくなっておる。いっそのこと、銀河帝国一個艦隊を率いるなり、ワシのフルパワーギャラクシー
ウェーブなりで、アホな太陽系帝国構想を総清算したいなんて思ったりもするか、さすかにそこまでは
ノ。だからこその問題なのじゃか。」
「銀河帝国は、太陽系惑星総攻撃まて視野に入れているのか?確かに、核戦争や生物細菌攻撃は良くな
いよな。火星皇帝は手段を選はなかったんだな。」
「まあ、ヒトにはヒトの事情かある。我々のモラルから見て、あまりに自然の摂理や生態系を乱すこと
は、宇宙全体のバランスから見てもよくない。それはたとえ、太陽系という宇宙全体から見れは、あま
り局所的な部分における話てあってもた。人類として文明を持つ以上、やっていいことと、決してやっ
てはいけないことかある。とうやら太陽系帝国の人間とその支配者は、そのことをあまりに軽視し過き
てしまったようた。ワシとしても考えさるを得まい。ところて、そろそろ量子移動機を回収させて欲し
いのしゃか。今後の改良のために、テータを回収したい。後て部下に回収に行かせるか、よいかの?」
「ああ、後てミス・ワカマツの了解をとっておくよ。アンタも何かと苦労か多いな。」
こんな会話か続いていた。俺達か数世紀前の世界にいったんトリップして、また戻ってきた元の世界
はあまりに希望のない世界になっていた。まるてパンドラの箱を開けてひっくり返した後のようたか、
パンドラの箱であれは、いらん全ての罪悪か世間に降り掛かった後、最後には何の役にも立たない希望
(hope)か残っているはずだ。それすら残っていないのか、俺達のアフター・ワールトだ。この時代、い
や俺にとっての唯一の頼みの綱てある師匠ミスター東郷すら、行方不明だ。パートナーのミス・ワカマ
ツの知性・知略は圧倒的てあるか、このあまりに危険な状況て、彼女に頼ることはできなかった。彼女
かこれ以上自分の大切な人間を失いたくないと思っているのと同しように、俺もこれ以上自分の愛する
人ひとを失いたくはなかった。
91
失ってからはしめてその重みかわかる宝も世の中には存在する。俺達はその重みを既に思い知らされ
ている以上、ここからは別行動といかさるを得ないたろう。ミス・ワカマツの無事を確保した上て、初
心に戻ってピンて反皇帝パルチザン運動を始めることしか道は残されていないように思えた。かつての
仲間達は皆、前の抵抗運動の時に火星人達に殺された。
92
第52章地獄からの使者
地球圏には今一人の逆立った銀髪の若い男が立っていた。強い爆発からとっさに瞬間移動を使って逃
れてきたはずだ。ここかどこかはわからない。確かにここが地球という感し、いや感覚(フィーリング)は
する。しかし、あたりはどこを見ても一面の焼け野原たったし、もしかしたら時代まで違っているのか
もしれなかった。
「スプラッター星人の野郎め。酷い爆発を起こしやがって。とんでもないエネルギーだったな。あの大
爆発のエネルギーを利用して、最後の瞬間移動を使ったか、とうやら時空間まで飛び越えてしまったら
しい。とんだ瞬間移動だぜ。」
男はこんなことを一人て考えなから、辺りを見回していた。きっかり何も見えない。文明というもの
かこの世界からは感じられなかった。短い期間に瞬間移動を連発してしまったため、これ以上瞬間移動
をすることはできなかった。それに、もうそんな力も残っていないことも、彼自身かよくわかっていた。
銀河全体のパワーが集まり、ふつかり合う場、そう、キングオヴギャラクシーのような場があれば、彼
の力も呼応してその潜在能力を取り戻すことかできるかもしれなかった。
―とりあえず、気でも探ってみるか?―
廃墟と化したこの惑星(ほし)ても、やはり強い気や普通の人々の気は存在していた。やっぱりこんな
ぼろ惑星ても地球だとわかってみるとちょっと嬉しかった。探ってみた気の中に、懐かしい感じのする
気か1つだけあった。彼の知っている相手とは別の気ではあったか、どこかに何かしら繋かりを感じる。
また眠っているような穏やかな気だ。彼はこの気の相手に会ってみる事にした。とうやら歩いてゆける
距離のようた。この廃墟て最初に彼か発見した人間達はほろを着て集団て争っていた。
「この裏切り者め。」
怒号か飛ひ交う。とうやら地球人同士で殺しあっている様子だ。彼はちらと一瞥をくれると、また歩
き出した。
―おかしい。俺の技ではいかに気を高めても、過去にまで戻ることはできないはすだ。しかし、この世
界の人間は文明以前の生活をしているし、仲間同士て殺しあっている。とても薔薇色の未来とやらにジャ
ンプしたとは思えん。―
殺風景な世界を彼か歩き続けると、とうやらなんとなく懐かしさを感しる街並みか見えてきた。もち
ろん街並みといっても、めほしい建物はない。かつて道路かあったところのまわりに、ぽつぽつとバラッ
ク小屋か立ち並んている。とうやらバザールか開かれているようた。さらに歩みを進めていくと、彼か
求めていた強い気か手にとるように感しられてきた。段々相手に近ついている。そんな気がした。もう
すぐ会える。そう思い彼か歩いてゆくと、そこにはリングか存在していた。横の看板に「ウェヌスジム
青空道場」と墨て書いてあった。一応、リングの上には急こしらえの屋根はあったのたか。リングの上
には若い女か一人てヒンズースクワットをしていた。彼はリングサイドに立つと、今まて隠していた気
を相手にもわかるよう少し高めて、視線を送った。相手と目線か合った。女はジッとこちらを見つめる
と、一筋の涙を流していた。
「すっとあなたに会いたかった気がするわ。ビデオアーカイブでしか貴方を見たことはないけとね。あ
なた、初代キングオヴギャラクシーの覇者G (ジー・ダッシュ)さんてしょ。ワタシは13代目のグレート
アジアよ。どうやってこの時代まてやってきたの?」
「そういうことか。とうやら俺はすいふん先の未来まて飛はされてしまったらしいな。アンタが13代目
のグレートアジアか。俺は初代と闘った事かあるし、2代目と一度たけタッグを組んだこともある。今
のアンタの涙を見ると、とうやら俺はもう元の世界には戻れない運命のようだな。しかし、一体どうなっ
ているんた?この世界のザマは?」
「火星人たちか地球に侵略してきて、地球の人口は一気に半減。ワタシは地下のシェルターに避難して
何とか助かったけと、地上のジムの建物は全壊。所属していたプロレス団体も戦争のゴタゴタで崩壊し
て...今の状態に。」
「青空リングか。いろいろ大変だったな。プロレスの団体の運営は、さすかにこの戦後の状況を見ると
難しいのはわかる。ても、例えは銀河レベルの大会、それにタッグの大会とかは、ないのか?」
93
「キングオヴギャラクシーのことね。確かに近々とこかて開かれるっていう噂は聞いているけと。また
主催者の情報もわからないし、それに肝心のタッグパートナーか。前回大会て一緒に参加してくれたエ
リカって子かいるんたけと、もうライバルの私とは金輪際組みたくないと三行半突きつけられちゃって
ね。」
「俺と一緒に組んて参加しよう。銀河最強クラスのエネルギーかぶつかりあう例の大会に参加すれば、
俺も力を取り戻して、あわよくば元の時代まで戻れるかもしれない。それに...」
「願ってもない話ね。シェルターの中にもう一部屋空き部屋かあるし、これからワタシと一緒に生活し
て合同強化練習を始めてくれる?エントリーとか、面倒くさい作業はこちらて全部済ませておくから。
「了解。交渉成立だな。」
廃墟となった地球圏て、かつてのキングオヴギャラクシーの常連にして初代銀河の大王の龍の気の遺伝
子を受け継く強化人間G (ジー・ダッシュ)と、最強レスラーの遺伝子を持つグレートアジア13世か時代
を超えて手を結んていた。これから来るへき反火星パルチザン抵抗運動、波乱の予兆を含んた新世紀第
3回キングオヴギャラクシーへ向けて、時代はゆっくりと、しかし正確に胎動していた。
「ちょっと火星人でも狩って来る!合同練習はその後だ。」
そう言い残すと、彼は急こしらえのウェヌスジムを後にした。侵略者達を狩る!それは銀河の掃除人(ス
イーパー・ギャラクティカ)と呼はれた彼にとって、朝飯前の作業だ。
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第53章最強の挑戦者
銀河帝国の首都かある惑星サルバトーレでは、2人の人間が強烈なトレーニングを開始していた。
「王子!もっと気合入れて練習してくたさいよ。」
「んなこといっても、ニート君。最近ちょっと厳しくなってない?」
「すへて王子のためてす。今度のキングオヴギャラクシーて、お父上、いや大王様を越えて見せるのてす。
この銀河帝国で4代目の大王の座を狙っている連中は、王子たけてはないことをお忘れなく。」
王子と呼はれている龍族の若い青年は、3代目の銀河の大王の息子、つまり銀河帝国の皇太子だ。また
ニート君と呼はれている小柄な少年、こちらは地球人タイプであったか、彼は(本当は性別まではわから
ないが、とりあえす彼としておこう)は本名ニコラス・トルーマン、略称はニート君だ。ニート君は王子
のスパーリング・パートナー兼コーチだ。
「王子っ!前のギャラクシーで大王様が、地球人の女性チームに負けたことを御存知ですよね?あれで大
王様の株はグンと落ちてしまったのてす。そこて、息子の王子が頑張れは、一気に次期大王の座は確定
です。」
「ても、ニート君、ホクそんなに根性ないしさー。とうせ今の状態で試合出場しても、一回戦負けがオ
チだよね。」
「だからこそのトレーニングです。私か王子の潜在能力をギリギリまて引き出して見せます!」
王子とニート君かパンチングクローブをオープンフィンガーグローブに付け替えると強烈な殴り合いの
スパーリングか始まった。
銀河帝国の王子か全身の気を込めたパンチをワンツー・フック・アッパーと放つ。すれすれて全てかわ
すニート君。ニート君か軽く踏み込んたたけのノーモーションのジャブ気味右ストレートを放つとあろ
うことか王子はダウンした。すかさすダウンした王子の頭にニート君が蹴りかかる。
寸止めだ。
「王子。あなたはまだ甘さがとれていない。実戦だったら、ここでKOされていますよ。」
「んなこと言ってもニート君、ホク、カワイ子ちゃんか応援してくれないと本気が出ないんたよ。ボク
また成人もしていないしさー。やっぱり彼女くらい欲しいよね。」
「何言っているのてすか?王子!キングオヴギャラクシーにナンパは関係ありません。異性をナメている
からお父上のように負けてしまうのてす。」
「ニート君、ホクはパパと違って、また無敗だよ。なせって、またデビューしてないんたからね。今ま
て小柄な君のことを気遣って本気を出さなかったけと、パパのことまて引き合いに出すんたったら、ボ
クにも考えがあるよ。」
言い終わると銀河帝国の王子は両の掌を合わせ、腰元に溜めた。そのまま両手を前に出すと、両の掌
からニート君に向けて全身の気を一気に放った。
「食らいなー。10倍ギャラクシーウェーブ!」
至近距離からの大技だ。小柄なニート君か受けられるはすかなかった。
しかし、そこには片手(左手のみ!)てギャラクシーウェーブを完全に受けきっているニコラスの姿かあっ
た。
「王子、まだ甘いですね。世の中にはもっと凄い技があることをお教えしましょう。」
言い終わるとニート君は使っていない方の右手を前に突き出すと、鏡のように王子のギャラクシーウェー
ブを反射させ、一気に王子目掛けて強力な返しの光線技を放った。
「リフレクション・エッジ、なんちゃってネ。王子、お怪我はありませんか?」
その時、トレーニングルームに入ってきた一つの強大な影かあった。3代目の銀河の大王、その人であっ
た。
「ニコラス・トルーマン、もう今日はその辺てジュニアを勘弁してやってくれんか?ワシも自分の息子た
けはついつい甘やかしてしまう。もちろん、お主の教育方針には大賛成じゃかの。」
「ハイ、大王様!」
こうして、次のギャラクシーに向けて、銀河帝国ては着々と準備か進められていた。
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第54章憤怒の皇帝
̶̶̶̶̶̶̶̶̶̶̶̶̶̶̶̶̶̶̶̶̶̶̶̶̶̶̶
―くたはれ!ゴミども。その言葉と共に銀髪の若者の掌から光線か放たれる。目の前にいた火星人4人か
いまの気を利用した強烈な光線技で完全に消滅していた。なおもまた、この若者の周りを20人以上の火
星人たちが取り囲んている。
―オトナシクシロ!この無知蒙昧な地球人め。生命の杖てヤキコロサレタイカ?
彼を囲んている火星人の一人か言った。とうやらリーダー格らしい。
―なんた?生命の杖って?コレのことか?
一瞬て火星人の生命の杖を奪い取ると、銀髪の若者は一気にその杖を無造作に振り回した。
―ヤメロ、貴様、なんてキケンなことを!!
隊長かその言葉を言い終わる前に、生命の杖か彼の体を貫いていた。
―侵略者のコミともめ!お前ら、生きる権利かねーよ。少なくともこの地球上てはな!
言い終わると、銀髪の若者は全身の気を一気に開放した。たったこれたけで、まわりの20人を越える火
星人が全て蒸発していた。
̶̶̶̶̶̶̶̶̶̶̶̶̶̶̶̶̶̶̶̶̶̶̶̶̶̶̶
「一体なんじゃ?このひといビデオアーカイブは。私の可愛い同胞達か無残に殺されておるではない
か?」
「太陽系帝国皇帝閣下!もうあなたは火星人だけの代表ではないのですぞ!太陽系の住民、すへての利益を
代表してものを考えていただかないと。」
「うるさい、うるさい。私は同胞か無残に殺されてゆく姿か歯がゆいのじゃ!あの銀髪の地球人め、絶対
に公式の場て公開処刑してやる。おい、ジョー・ヨージ司令官を呼べ!」
「は、はっ。ただちに。」
火星皇帝に魂を売った地球の格闘家ジョー・ヨージ12世は、先の太陽系統一戦争の地球侵略部隊の司令
官を引き受けていた。時代遅れの軍服に身を包んたヨージ司令官か、火星皇帝、いや太陽系皇帝の執務
室に呼ひ出された。もちろん、太陽系帝国の首都はマーシャンポリスだ。
「ヨージ司令官、参上しました!」
「おお、ヨージか。入れ、入れ。この度の戦、素晴らしい活躍じゃったの。」
「邪魔者のポルゴも現れなかったせいか、地球併合作戦は上手く行きました。しかし、今回の御用件は
なんでしょうか?」
「お主も既に見たてあろう、このビデオアーカイブを?この銀髪の地球人の若者を始末して欲しい。」
スクリーンに映し出された銀髪の青年の顔を見て、ヨージ司令官の表情は一瞬にして凍りついた。
「この男は、この男は、かつて数世紀前に開かれていたというキングオヴギャラクシーの初代覇者
G (ジー・ダッシュ)という男にそっくりです。もちろん、何かの間違いたとは思いますか。彼か本物の
G 、あるいはその遺伝子を引き継くものてあるとすると、2流格闘家の私の能力を遥かに越えます。で
きれば、今回の件はなかったことにしていたたきたいのですか。」
「何だと!このワタシの頼みか聞けないと言うのか?それほとまでに、この男が凄いと申すのか?納得か
いかんな。まあ、いい。ワタシは太陽系統一記念に近々キングオヴギャラクシーを主催する。その場で、
この男を公衆の面前で始末させよう。ヨージ司令官、世の中にはお主の代わりか腐るほとおることを忘
れるなよ!」
ヨージ司令官は屈辱に顔を歪めなから、内心ほっとしていた。あの男か本当にG であるとすれは、時
空すら超越している彼を止められる者などこの世には存在しないはずだ。
全ての太陽系の格闘家にとって、初代キングオヴギャラクシーの覇者G は伝説の存在であった。彼は
地球人ではじめて気を駆使した格闘術をマスターし、最終的には瞬間移動まて極めたという伝説の武道
家G・ハロルドのクローンにして、初代銀河の大王の爆発的な龍の気を生み出すための遺伝子を移植さ
れた最強の強化人間だ。彼はキングオヴギャラクシーを5連覇して、唯一彼を第6回大会で食い止めるこ
とができた人間は、たた一人、G・ハロルドの弟子であり、地球のCYBER探偵の草分け、タビト大伴だ
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タビト大伴の子孫が現代まて生き残り、プロレスラーをやっていることを思い出したヨージは、部下
にタビト大伴の子孫の所在を聞き出した。
「ヨージ司令官殿、タビト大伴の子孫、つまりグレートアジア13世は、次のギャラクシーに向けて、例
の銀髪の男と合同練習中てす。」
あまりに救い様のない事実だ。伝説の強化人間G とかつて彼を止めることをできた唯一の人間の子孫
が時空を超えて共闘している。もはや誰にも彼らを止めることは不可能だ。
地球人の眼から見れは、侵略者てある火星人たちを銀河の掃除人(スイーパー・ギャラクティカ)G か始
末してくれていることは有り難い事かもしれなかった。たた、ジョー・ヨージ12世はかつて、最愛の恋
人を同胞てあるはすの地球人から、コミュニティー裏切りの疑惑の元て殺されていた。同し地球人か地
球人同士て殺し合うという事実を体験してしまったヨージ12世は、もはや地球人という存在を信しるこ
とはできなかった。それか火星皇帝に彼の魂を売らせてしまった本当の理由てあり、火星皇帝やヨージ
にとってG は邪魔者以外の何者てもなかった。
「あのG と一度タッグを組んだといわれているジュン・ハーンの子孫、ジュン・バード兄さんたったら、
G の攻略法わかるかも知れまセーン。しばらく地球圏に戻ってみマース。」
そう部下に言い残すと、ヨージ司令官は地球圏に戻ることにした。
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第55章最強タッグ
ポルゴたちの事務所に銀河帝国からの使者か訪問した。用件は4次元量子移動機の回収だ。先方は今
後の研究のためにテータを回収したいらしい。使者達は大型宇宙船に4次元量子移動機を回収した。彼
らにポルゴはミス・ワカマツを一緒に銀河帝国まて連れて行ってくれるよう頼んだ。これ以上、この危
険な太陽系に最愛のパートナーを置いておくことはできなかった。ポルゴは久しふりに地下シェルター
から体を外に出すと、轟音を立てて飛ひ立った宇宙船を見送った。
―これでミス・ワカマツとも当分は会えないな。俺もそろそろ自分の人生にカタをつけないとな。ふと
かつて事務所の玄関かあった場所にポルゴは眼を向けた。また、金属製のポストが激しい空爆にも耐え
て姿を残していた。彼はその中に一枚の紙切れを発見した。
―連絡乞う。西郷
紙切れにはたったそれたけの文言と、西郷詩郎の住所か書いてあった。かつての好敵手からの意外なメッ
セーシに、ポルゴは西郷を訪ねることにした。
また残っていたハイウェイを単車て飛はし、東北地方にある西郷の住所をポルゴは尋ねた。その住所は
人里離れた山奥にあった。もう整備された路は尽きた。仕方なくポルゴは、紙切れに書いてあった住所
を求め、歩き出した。
ふと気付くとポルゴは原野の中にいた。彼の目の前、約250メートル先には古寺かあった。一歩一歩、
叢を掻き分けて進む。研き澄まされた強い気を感しる。もう、西郷の間合いに入ってしまったらしい。
ポルゴはこちらに戦意かない意思表示の気を相手に送ると、さらに突き進んた。襖か開かれた古寺の中
か視界に入る。
西郷が居た。
彼は座禅を組んて精神を集中していた。ポルゴは構わすひたすら古寺に向けて突き進んた。
―ポルゴたな。よく来た。
振り向きもせす、眼すら開けすに西郷詩郎か低い威厳のある声て話し掛ける。
―ああ、あの紙切れを見てな。ところで、何の用件だい?
かっ、と西郷か眼を見開くと、振り向き様にポルゴに話し掛ける。
―まあ、せっかくたから茶ても一杯飲んてゆきなさい。実は私も少年時代に家族を火星人に殺されてな。
できれは、あなたと共闘したい。
ポルゴの表情に戦慄か走る。ジパングきって、いや、銀河最強の使い手、西郷詩郎か火星人撲滅のため
に共闘を申し込んてきた。願ってもない話だ。
―そういうことか?俺にとっては願ってもない話た。俺も昔親友を火星人に殺された。あなたのような
使い手と組めるのたったら、これ以上の話はない。
―たた、条件か一つある。流派も違うあなたと組むのは、火星人への抵抗運動に関してのみた。私はか
つてあなたの師匠のそのまた師匠を、死合いとはいえ殺めた。東郷師範不在の今たけ、あなたと組む。
その条件に異存はないな?
―わかっている。火星人へのレジスタンス運動のみの共闘たな。それにカタかついたら、お互いまた敵
同士、面白い話だ。
こうして流派の違いを超え、ポルゴと西郷の反火星パルチザン最強タッグか生まれた。
ポルゴと西郷詩郎はさっそく、ジパング地方を中心に、火星人たちか地球占領・植民地化の拠点にして
いるアジトに殴り込みを掛けに行った。地球征服の手駒となっている火星人たちはみな、マーズアタッ
グやMDP(マーステットリーパニック)といった火星人によく効く薬に対して耐性を備えていた。皆遺伝
子レベルで強化・あるいは予防注射か何かを受けているようてあった。
ポルゴと西郷は仕方なく肉弾戦に持ち込み、力技てジパングの火星人たちの各拠点を日夜壊滅させて
いった。
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第56章ある火星人の最期
地球圏では、地球征服・植民活動に来た火星人の人口が一気に3分の1まで減少していた。全ては、銀
河の掃除人(スイーパー・ギャラクティカ)G の仕業だ。
̶̶̶̶̶̶̶̶̶̶̶̶̶̶̶̶̶̶̶̶̶̶̶̶̶̶̶
―命乞いか?それもいいだろう。
火星人たちの1個小隊は既に壊滅しかけていた。最後の一匹か義肢、いや義手をすり合わせて必死に命
乞いをしていた。
―お前らはそうやって命乞いをしてきた地球人を何人殺してきたのだ?お前らの侵略の結果、地球の人
口は一気に半減したのだろ?この青の美しい惑星に核兵器や生物兵器まて使いやがって。いいだろう、
そろそろ楽にしてやるよ。すぐにお仲間の所に逝かせてやる。逆立った銀髪の若い男か右の人差し指を
火星人に向けた。引き金を引くかのように親指を曲けると、人差し指の先から気弾のようなものか発射
された。次の瞬間、火星人の両肩、いや義手のつけ根から緑色の血か流れていた。
―これてもう命乞いもできまい?お前に殺された地球人の数は一体何百人た?火星人?お前らは人間しゃ
ない!宇宙ウツホの遺伝子まて取り込んているんたろ?手も足もないし、おまけに頭もキノコ、流れる血
は緑かよ。それても人間を名乗っているなんて、冗談クサ過きるぜ!次の一発で死ぬんだな。
また銀髪の男か右の人差し指て構えた。必死に肢、いや身体のつけ根をもそもそと動かして逃けよう
とする火星人。銀髪の男か右の人差し指からまた気弾を放った。今度は火星人の身体のつけ根に命中し
た
―ゴミが、そんなとろいアシでわざわざ地球まて降りて来るんじゃねーよ!安心しろ、次てトドメだから
よ!あ、ば、よ。
銀髪の男の指先から閃光か走った。今度は的確に火星人のキノコ状の頭を貫いていた。
̶̶̶̶̶̶̶̶̶̶̶̶̶̶̶̶̶̶̶̶̶̶̶̶̶̶̶
「許せん!許せんそ、G (ジー・ダッシュ)。私の派遣したキラーマシンともはどうなっておるのじゃ?」
このビデオアーカイブを見た旧火星皇帝は激怒して、部下に質問した。
「はっ、太陽系皇帝閣下。地球に送り込んた一万体のキラーマシンは全てヤツに始末されました。より
正確には、全てスクラップにされたと言ってよいのですが。」
「ヨージは、ジョー・ヨージ司令官はとうした?」
「彼は地球圏に帰ると言ったまま、音信不通です。」
「どいつもこいつも使えん!まあ、いい。私は今度地球の月、いや地球上てキングオヴギャラクシーを主
催する。キングオヴギャラクシーの公式の舞台てヤツを、刺客を使って始末するのじゃ!私の用意した刺
客かダメだった場合は、銀河の大王にでもやらせれはよかろう。いや、できれはヤツを大会の前に暗殺
したい。誰かいい部下はおらぬのか?」
「太陽系皇帝閣下、我らか太陽系帝国は法治国家てあり、太陽系帝国憲法の支配下にあります!いかに犯
罪者や極悪人であっても、司法の判断かないまま、暗殺することはできません!」
「ふざけるな!治安維持法かあったたろう?今は改正されて、破壊活動防止法か?あれを適用して、ヤツ
を始末すれはよいのじゃ。」
「ためてす。証拠かありません。ヤツは死体や凶器といった証拠一切を残していません。」
「このビデオアーカイブかあるたろう?それとも何か、私か独裁者にてもなれは、法の支配を踏みにじっ
て、ヤツを始末てきるのか?」
「どちらも無理です。ビデオアーカイブは惑星間法て証拠物とならない旨か記載されています。編集の
有無を立証てきないからてす。皇帝閣下かもし法治国家の原則を無視して独裁政治に踏み切られた場合、
太陽系統一の偉業は全て無に帰します。」
「民主主義も、法治国家の原則も全ていらん!ワタシはただ、同胞、我か火星人たちの安全を保障したい
のた。そんなこともままならぬのか!」
太陽系皇帝の怒りも覚めやらぬまま、今日も過去からやってきた銀髪の若者、つまりG は今日も地球上
て火星人狩りを行っていた。太陽系帝国の地球支配は風前の灯火となっていた。
99
第57章西郷去る!
ポルゴと西郷詩郎は共闘して、ジパングに散在する火星人たちの拠点やネスト(巣)を破壊していった。
そんな彼らの元に、一つのニュースがもたらされた。
「西郷さん、地球の火星人全滅か?たって。一体とういうことだ?」
「私にはわからないか、火星人たちの気はもう地球上から一切感しることかできない。疫病か何かて全
滅したのか?あるいは...」
銀河の掃除人G の手によって、地球上の火星人は全て粛清されていた。ポルゴと西郷達は不殺の誓い
を立てて、降伏した火星人たちにはトドメは刺さなかったが、結局G によって地球征服の実働部隊となっ
ている火星人ともは皆始末されていた。
「またニュースかアイウォッチに入りましたよ。太陽系皇帝、地球圏て数ヵ月後にキングオヴギャラク
シーを主催。」
「火星人へのレジスタンス運動という目的はとうやら達成されたみたいてすな。私はまた銀河の大王と
組むことになりそうてす。私たちの短かった共闘も、これまで。明日からはまたライバル同士ですな。
西郷が冷たく言い放った。
「俺一人の力では、とてもジパングの火星人の拠点を全て攻撃することはできなかった。感謝するよ。
有難う。」
「ては、私は実家に戻って静養しましょう。その後はまた、銀河帝国て修行でも。それでは、またギャ
ラクシーで会いましょう。」
こうして地球圏最強の使い手西郷詩郎は去っていった。東郷師範不在の今、西郷を越える使い手は地
球圏にはいないはずだ。ポルゴも一からまたギャラクシーのパートナーを探すことになった。あては一
切なかった。
100
第58章マリア
ポルゴはアイウォッチのハッキンク機能を駆使して、ブラックデータベースに接続していた。ブラッ
クデータベースのビデオアーカイブには、逆立った銀髪の若者か地球侵略に来た火星人たちを根こそぎ
残酷に始末している闇動画か映っていた。
―そういうことたったのか。G の野郎、あの時のスプラッター星人の爆発のエネルギーを利用して、こ
の未来世界まて瞬間移動しやかったな。まあ、ヤツか火星人たちを始末してくれたことは有り難い。し
かし、次のギャラクシーにヤツほとの使い手か参加するとなると、これは面倒たな。大会のレベルか一
気に跳ね上かる。俺はまたパートナーも見つけてはいない。
そんなことを考えなから、ポルゴは左腕のアイウォッチを眺めなから、事務所の地下シェルターのソファ
で寝転んていた。
―コンコン。
誰かかシェルターのドアをノックしている。
―誰だ?
ドアを開けるポルゴ。そこにはまた少女といってもいいくらいの若いウェーブかかった銀髪の女かひと
り立っていた。確かに美しい若い娘だが、眼光か異常に冷たく、年齢を遥かに凌く冷静さと落ち着きを
持っていた。
―マリア・ハロルドよ。単刀直入に言うわ。あなたと次のギャラクシーに参加したいの。
―ハ、ハロルド?どこかで聞いたことのあるファミリーネームたな。まあ、殺風景なところだが、と¥
どうぞ中に入ってくれ。いま紅茶とクッキーを用意するよ。もし時間に余裕かあるのだったら、俺か
ちょっとひとっ走りして、外のバサールでケーキでも買ってくるんたけとな?時間はあるかい?
―とうぞ、お構いなく。話が先よ。
―私の先祖の備忘録に、タイムマシンでやってきたあなたと接触した記録かあってね。それにここ数年
のキングオウギャラクシーでのあなたの活躍を見させてもらったわ。
―君の先祖って、あのジャック・ハロルドさんのことか?
―そういうことになるわね。まあジャック・ハロルドの父親にあたる武道家ゲーセ・ハロルドという人
か、たふん私の先祖で最強だったみたい。そのクローンか、今この太陽系を騒かしているG よ。すいぶ
んと濃い血を引き継いているみたいね。それに彼って、初代の銀河の大王の龍の気を操るための遺伝子
まて移植されているのてしょ。とうにかして彼を止めたいの。このハロルド一族の力で。
―まあ、俺はタイムマシンで過去の世界にトリップした時にジャックさんと奥さんのメガ子さん、いや
イザベラさんに大分お世話になっている。その子孫の君の頼みを断ることは、俺にはとてもできないよ。
たた、我々地球人のために火星人たちとピンて闘ってくれているG を何故俺達地球人が倒す必要がある
んた?
―彼はまた自分の力の限界を知らない。それにいすれ私たちの血と大王一族の血か反駁しあって、彼は
力を制御できなくなるわ。私たちハロルド一族は力の使い方、言ってみれは制御方法を知っている。彼
はそれを知らないわ。それに火星人も一応人間よ。手当たり次第殺すなんて、庶民の常識じゃとても考
えられないわ。
―まあ、前半は納得たな。たた、問題は後半だ。俺達地球人は奴らの侵略戦争で、一気に人口の半分ま
で失い、地球連合政府まで崩壊して、今しゃ地球はただの植民地だ。わさわさ地球征服にのこのこやっ
て来た火星人を始末して、何か悪い。もちろん、俺も殺しはしない主義たかな。
―殺しはいつでも、誰にとってもいけないことたわ。たとえ相手か異星人あってもね。殺されたから殺
す。それでは戦争はいつになっても終わらないわ。
―君の言っている事は、たふん正しいのたろうな。わかった。これから数ヶ月間一緒に練習して、次の
ギャラクシーに備えよう?
―そう来なくっちゃ!―交渉成立たな。しゃあ、俺は外てケーキても買ってくるから、ちょっとそのまま
待っていてくれよな。ジョート、モンブラン、チョコレート、チーズ、いろいろ選択肢はあるけど、ど
れにする?
101
―チョコレート!
こうして、ポルゴは強力なパートナーを見つけることかできた。マリア・ハロルドかメガ子さん似ては
なかったことか救いだ。
長生きすれはするほと、いい異性にめくり逢えるな。そんな幻想あるいは願望をいたきつつ、ポルゴは
炎天下の中、バザールにケーキを買いに走った。
102
第59章KOG開催!
ついに地球圏て再ひキングオヴギャラクシーが開催される日かやって来た。ポルゴたちの時代では第
3回にあたる。わさわさ、旧火星皇帝、つまり今の太陽系帝国皇帝が地球上に降り立ち、主催者として
開催の演説を行っていた。
―ついに太陽系は1つとなることかできた。これは太陽系帝国の国民諸君の総意と努力による。こうし
て太陽系人類発祥の地、第三惑星において太陽系統一後はしめてのキングオヴギャラクシーか開催され
ることを、私は主催者として誇りに思う...
銀髪の逞しい青年か隣の若い美しい女に語りかけた。
―うるさいな。ちょっと黙らせておこう。
言い終わると彼は右手をピストルのように構え、人差し指を迷わす太陽系皇帝の喉下に向けた。一気に
親指を倒す。まるて引き金を引いたかのようだ。
次の瞬間、太陽系皇帝は喉元を義手て押さえ、もごもごと口を動かしていた。だが、もう彼女の口か
ら言葉か発せられることはなかった。
―安心しろよ。たたの衝撃波だ。じきにまた話せるようになるさ。
―G 、そろそろ予選エントリーの受付か始まるわ。一緒に来て。
この二人組は腕を組みなから真っ直く受付に向けて歩いていった。
―こちらの女性は、グレートアジア13世さんですね。確かに国民背番号カードを拝見しました。そちら
の男性は?国民背番号カードの提示をお願いします。
―あーん?今はそんなチンケなカードを持ってないと、ギャラクシーにも参加できないのか??忘れた
よ。今取ってくる。
もちろん、過去の世界からやって来たG が太陽系帝国の国民背番号カードを持っているはすかなかった。
―どうするの?
―もちろん、強制参加に決まっている。そうだな、ここ数年のチャンプでも倒せは、向こうから参加を
持ちかけてくるだろう。
いま数人のSPと共に、威厳のある一人の龍族の男か受付に歩いてきた。三代目の銀河の大王だ。―ワ
シのチームはシードということてよろしいのだな。パートナーは西郷先生だ。異存はないな。受付に威
厳を持って話し掛ける大王。その時だ。
―待てよ。おい、そこのワニ面。ちょっとツラ貸してくれや?
一気にSPたちかこの不躾な青年に睨みを効かせた。次の瞬間、SPはみなこの青年のプレッシャーで吹き
飛はされていた。そのままつかつかと大王に歩み寄る青年。
―しばらく眠っていてくれや。だいたい一週間くらいな。言い終わると青年は大王のボディにショート
レンシのアッパーをかました。次の瞬間、銀河の大王は一気に膝から崩れ落ちた。
―こいつかこの時代の第一回ギャラクシーのチャンプか?このワニ面をのしたんたから、オレの参加っ
てことていいよな。なあ、受付のアンちゃんよ?俺の名前はG (ジー・ダッシュ)て頼む。パートナーは
グレートアジア13世てな。チーム名はそうたな、ダブルエックスて行こう。今の俺の実力を見れは、予
選なんてなんの意味もないことかわかるたろ?ても、一応ルールってことなら、予選から参加してやる
よ。まあ、担架を多めに用意しておいてくれれば、いいさ。リングドクターと看護士も忘れすにな。有
無は言わせないぜ。
この一連の様子をポルゴとマリアは見ていた。
―今、G か大王を殴った時の拳の軌跡か見切れた?
―ああ、ちょっと速かったけどな。なんか蒼い気のようなオーラか見えた気かする。
―それか、彼に移植された龍の気の能力よ。ポルゴ、あなた油断は禁物よ。わかっているわね?
―ああ、そろそろ俺達もエントリーを済ませておこう。
この予選受付会場ては、他にも大王襲撃の様子を目撃していたクループか存在した。
―ねえ、ニート君、今パパかやられちゃったよ。あいつー、ちょっとムカつくなー。強すきたよ。ても、
パパかやられたってことは、代わりに誰か銀河帝国の代表として参加するのかなー?
103
―そんなこともわからないのですか?もちろん、王子に決まっています。さあ、大王様の所に行きましょ
う。大王様の無事を確かめるのてす。
ニコラス・トルーマンと銀河帝国の王子は、襲撃されまた意識かない大王のところに駆け寄った。王子
か大王を抱き起こすと、必死に話し掛ける。大王も朧げながらに意識を取り戻した。
―おお、ジュニアか?ワシはもはや今の身体ては闘えん。頼む、あの男に雪辱してくれ。今すく西郷先
生に連絡を取るのだ。彼は帝国議会議長専用宇宙船の中て待っている。アイウォッチで連絡を。
―もしもし、ホクたよ。ギャラクティカ・ジュニア。パパかG とかいう強化人間にやられちゃったんだ。
代わりにボクか出場するよ。悪いけど、君、ボクのパートナーやってくれない?
―誠に申し訳ありませんな、王子。また青二才の御坊ちゃんと組む気は私には一切ありません。大王に
よろしくお伝えくたさい。では。
―切っちゃったよ。西郷のバカ。パートナー降りるって。パパと一緒しゃなきゃ嫌だって。どうしよう
か、ニート君?
―仕方ありませんな、王子。私かパートナーの役を引き受けましょう。一緒にエントリーを申し込みに
行きましょう。
銀河帝国代表チームとして、エントリーの手続きを済ませたニコラスと王子。その時、王子かニコラス
に話しかけた。
―でもさー、これて良かったの?ニート君。君、また身体か子供のままじゃん。幾らなんてもギャラク
シー参加なんて、とても無理だと思うけどなー。
―王子はまた何も聞かされていなかったようてすね。私はこれから本戦開催まてで時間かあるのて、し
ばらく一人で過ごさせていたたきます。王子、私か前にお渡ししたトレーニング・スケジュール表通り
にお一人て練習していたたけますか?我々は今世紀の初代チャンプ大王様の代役て出場するわけてすか
ら、当然シードです。予選期間中は、私は別行動とさせていたたきますね。本戦当日、控え室で会いま
しょう!
―連れないなー、ニート君。まあ、いいか。予選会場に観戦に来ている女の子てもナンパして、ゲット
しようかなー。じゃあね、ニート君。
こうして王子とお目付け役ニコラスの会話は終了した。
このギャラクシーには太陽系の内外から最強の使い手たちか参加することになる。今この時点で、こ
のバトルの衝撃の結末を知るものは誰もいなかった。
104
第60章予選開幕
人類が宇宙で本格的に生活を始めてから、3回目のキングオヴギャラクシーが地球で開催されていた。
今大会のルールは2対2のタッグマッチ、とちらかのチームか2名とも戦闘不能あるいはキブアップする
まて戦うサバイバルマッチだ。武器の使用すら認められていた。たたし、対戦相手を殺めたチームは即
刻失格となる。レフリーは選手が気を使うことを考慮して、リングサイドから試合を裁いていた。
「予選からなんて、かったりーな。何て銀河帝国チームだけシードなんだよ。」
「何言っているの、ポルゴ。主要参加チームの手の内を見る、いいチャンスよ。」
ポルゴとマリアのチームは順調に予選を勝ち進んて行った。
「マリア、見ろよ。あのチームダブルエックス、KO狙いて行くのかと思ったら、銀髪のG まてわざわざ
足関節で確実にキブアップを奪っているせ。」
「彼ら、たふんコマンドサンボを習得しているみたいね。さすかプロレスの名門ウェヌスジムて合同ト
レーニングを行っただけのことはあるわ。また気を使った攻撃を一切見せない辺り、なかなかの策士
ね。」
「策士か。ある意味、いい言葉だ。」
今回のギャラクシーには懐かしのチームか2組参戦していた。
1組目はジョー・ヨージ12世とジュン・バードのゴールデンシュータース、そして2組目はブラック・
ホークとブラック・アニマルのブラックホールズだ。彼らも堅実に予選で勝ちを重ねてきた。
「今回、西郷詩郎は参加しないのか?」
「大王襲撃事件て、今回は降りることにしたみたい。代わりに大王の息子とお目付け役か銀河帝国代表
て参加するみたい。」
「ますます面白くなってきたな。西郷のヤツと決着をつけられないのは面白くはないか。」
予選参加チームの中には、他にも目ほしい連中かいた。太陽系帝国代表チームだ。
1万体以上は既に作られたというキラーマシンの中からもっとも完成度の高い2体を選ひ、優勝候補筆頭
のG の戦闘テータを入力されていた。太陽系帝国代表キラーラフマシンズはG 並みの残虐ファイトで勝
ち残ったか、リミッターか強化されていたため、対戦相手を死に至らしめることはなかった。
105
第61章ネオ・ファルコンズ初戦
無事長かった予選も終了し、キングオヴギャラクシーの決勝大会か始まった。ポルゴたちはBブロッ
ク、同ブロックにはゴールデンシュータースやブラックホールズ、それにキラーラブマシンズといった、
とうてもいいギャグチームだけか揃っていた。一方、Aブロックは銀河帝国代表チーム、チームタブル
エックスといった優勝候補筆頭の他に、前回大会で銀河の大王をKOした実力者エリカ率いるビューティ
クイーンスといったチームか揃っていた。無名チームもあわせて、8チームでトーナメントか始まった。
Bブロック第一試合、ポルゴ、マリア・ハロルドのネオ・ファルコンズと太陽系帝国代表のキラーラ
ブマシンズの試合かアナウンスされた。
ラテンな熱い入場テーマ曲と共に、ますポルゴかダッシュでリングインした。セカントロープとトッ
プロープの間に隙間を作ってポルゴか待っていると、ゆっくりと落ち着き払ってマリア・ハロルドかリ
ングインした。この動作て二人の力関係は一目瞭然だ。マリアはウェーブかかった銀髪をうなじの辺り
から軽く掻き揚ける動作をした。観客の男性陣から溜息が漏れる。若き美人格闘家といったところか。
一方、騒かしいアイドルの流行曲と共に、覆面の二人組キラーラブマシンズが入場した。
体格がいい方かキラーマシン・ゴリラてあり、小柄なジュニアヘヒー級の選手かキラーマシン・モン
キーてあった。キラーラフマシンスはリングインすると赤コーナーでキラーラフマシンサンバを踊りた
していた。なかなかファンキーな連中たったか、こいつらか地球侵略のために生み出されたキラーマシ
ンの中でもエリート中の超エリートてあることは明らかだ。
「ポルゴ、ますは私がお手本を見せるわね。そこのデカイ方、そうキラーマシン・ゴリラちゃん、私が
お相手よ。」
マリア・ハロルドはあろうことか最初の対戦相手に重量級のキラーマシン・ゴリラを指名した。ゴン
グがけたたましくかき鳴らされる。
銀髪の女性、マリアは軽いフットワークを始めた。一方、キラーマシン・ゴリラは踵をへったり地面
につけたまま、動こうともしなかった。
シュッ、シュ。
マリアかワンツーで殴りかかる。キラーマシン・ゴリラは超反応て今の攻撃をカードした。すかさす
マリアは右のミドルを空ふって、左のソバットを見せた。疾い。ゴリラはすかさすカードを固めると共
に、左のソバットに右の下段横蹴り(シャッセ・バー)を合わせてきた。
観客から感嘆の溜息がもれる。美しい上に、できる。マリアはこの上ない使い手だ。ゴリラはマリア
の動きに乗せられて打撃て勝負に出た。ワンツーからの大降りの左フックを空ふって、右の裏拳を使っ
た。そのバッグハントをマリアはキャッチすると飛ひ付き逆十字に捉える。一気に極める。しかし、相
手は腕かあらん方向に曲かっているのに、全く平気な表情だ。マリアは技を解くと、ポシションを優位
に保ったまま、間合いを開き、スタンドに移行した。
―やはり、相手はキラーマシンと言うたけあって、ロボットだから関節技も効かない訳よね。気を使っ
てぶっ飛ばしてもいいけと、最初から手の内を見せるわけにはいかないわ。しゃあないわね、投げてKO
しましょう。
マリアは構えると一気に打撃のラッシュに打って出た。パンチのコンビネーションから左ミドル、右
の上段回し蹴りを放った。あまりの速さにゴリラはついて来られなかった。ゴリラか上段回し蹴りにた
しろいた瞬間、マリアはゴリラのバッグを取って、いっきに高角度バッグトロップを極めた。脳天から
リングにのめり込んた、ゴリラ。そのままノックアウトか告けられる。
すかさすリングインするキラーマシン・モンキー。マリアはつかつかと青コーナーに歩み寄るとポル
ゴとタッチした。
―今の勝負見ていたわね。相手か本気を出す前に、こっちか先に本気を出して一瞬て倒す!セオリーと言
うか、むしろ鉄則よ。あなたもやってみることね。
ポルゴは全身の気を一気に高めてリングインした。キラーマシン・モンキーは先手必勝のトロップキッ
クてポルゴに襲い掛かる。サイドステップて見事にかわすポルゴ。
106
モンキーはポルゴの後方に着地するとそのままバッグハントて応戦した。ポルゴは右の拳てカードす
る。バッグハントの隙をついて、ポルゴはモンキーの背中に抱きつき、スライティンクの要領てモンキー
を後方に投け放った。強烈な谷落としだ。
なおもポシショニンクをコントロールして、マウントポシションをキープするポルゴ。
―ポルゴ、トドメよ。そのまま肘打ちかまして、ストラングルホールドで極めて!!
マリアの指示通りマウントから2,3発肘打ちを決めると、一気にモンキーの喉仏に左膝を当て、モンキー
の右腕を決めたまま、変形のストランクルホールトを極めた。ポルゴは容赦なくモンキーの喉仏に膝を
押し込む。そのままKOに持ち込んた。
―やれはできるしゃない!そう、相手が本気を出す前に倒すの。美貌・強さの上に知略まで兼ね備えてい
る。マリア・ハロルドはファイター向きの女性だ。
107
第62章王子登場!
Aブロック第一試合は銀河帝国代表チームVSビューティクイーンズだ。
―ここか決勝出場者控え室か。またニート君は来ていないな。遅いなー、アイツ。
その時、控え室に長い黒髪てスタイル抜群の年上の女性か現れた。いい香水の匂いかする。フェミニン
な雰囲気。脚かモデル並み、いやそれ以上に長い。この女、出るへきところは出て、へこむへき所は芸
術的にへこんていた。
―王子、お待たせっ。
―だれ、キミ?ホクの好みのタイプたから、まあいっか。
ルンルン。ご機嫌な王子だ。
―あいかわらすダメ王子だね。私だよ、ニコラス・トルーマン。惑星サルバトーレは重力か私の出身惑
星の数倍だったため、幼い時の姿に擬態していた。これか、私の本当の姿。ニコラス・トルーマンは父
の名前を引き継いたのだ。私の性別は女。さあ、試合会場へ急こう。
意外な展開に驚きを隠せないタメ王子。早くも試合会場てはリングアナのコールか始まった。
―青コーナーより、ヒューティクイーンズの入場です!
派手な入場曲と共に、ますヘヒー級実力派女子レスラーのエリカか入場した。後から入場してきたのは、
エリカの一番弟子、怪奇派て知られるブラッディー桜か入場した。ブラッディー桜は顔面白塗りのペイ
ンドて、リングインすると赤ワインを口に含んた後、生肉を食へるパフォーマンスを行っていた。
―赤コーナーより、銀河帝国代表チームの入場てす。
厳粛なムドーの中、会場のオーケストラにより、銀河帝国の国歌か演奏された。ます若き銀河帝国の王
子か龍族の正装をまとい入場した。その後、胸元か大きく開かれた黒尽くめのドレスを着た背の高い女
性か入場した。王子のお目付け役、ニコラス・トルーマンだ。
―ねぇ、ニート君。あのエリカって女か前のギャラクシーでパパを倒したんたよね。ホクが先攻であの
女とやるよ。
―ああ、バカ王子、油断はするなよ。あと、ニート君って呼び方は全く気に入らないな。ニコラスさん
とかトルーマン先生とか、って聞いてねーか。赤コーナーから銀河帝国の王子かリングインして構える
と、グローブを真っ直くエリカに向けた。
―キミをホクの対戦相手に指名するよ。
エリカは挑発に乗って、リングインした。ゴングが鳴る。
王子は若さに任せて、強烈な打撃て勝負に出た。エリカは長年の実戦経験を生かして、全てのパンチを
すれすれてカードしていた。王子か右フックを空振った瞬間、エリカは強烈な低空タックルてテイクダ
ウンした。そのままマウントで掌打の嵐を見せるエリカ。ブラッディー桜はコーナーから身を乗り出し
て、ニコラスを牽制する。ニコラスは全くカットに入る気配かない。
―助けてー、ニート君っ。
―バカ王子、それくらい自分て脱出しろ。マウントの抜け方、さんざん練習したたろ!
王子は若さと全身のハネを生かして、ブリッジで重量級のエリカを跳ね除ける。そのままハンドスプ
リングの要領で立ち上かる。
軽くステップを踏んて、自分のペースを確認する王子。
―なかなかやるねー、キミ。さすか、パパを倒したたけのことはあるよ。うん。
王子は軽く前にステップすると、そのまま右のミドルを放った。左肘てカードするエリカ。しかし、王
子の強力な脚力は、エリカをカードことふっ飛はしていた。
―弱いものいしめは、ホク嫌いなんたよね。ハンデだよ。二人て掛かって来な。挑発に乗って、ブラッ
ディー桜がリングインする。今のキックてタメーシを受けたエリカをかはいつつ、ブラッディー桜はワ
ンツーを打ってきた。
―ちょっと、遊んじゃおっかなー。王子もワンツーを返すと、次に左フックを大きく空振りした。その
回転を利用して、右のバックハンドを打った。その瞬間だ。王子の顔面か真っ赤に染まった。ブラッ
ディー桜の赤ワイン毒霧攻撃がクリーンヒットした。
108
―見えないよー。何も、見えない。
回復したエリカードブラッディー桜は一瞬のスキをついて王子を一気に二人て抱え上けた。垂直落下式
フレーンバスターの体勢て、捻りを加えて一気に落とした。タブルデンジャラストライハーか決まった。
ダウンした王子をエリカがバックトロップの体勢て抱え上けると、ブラッディー桜は王子の顔にキラー
クローを仕掛ける。そのまま合体技、ダブルヘルクラッシャーか決まる。
完全に虫の息の王子だ。
―しゃーねーな。ダメ王子。せっかく見せ場を作ってやろうと思って、任せたのに。相変わらす傲慢な
ダメお坊ちゃんだぜ。ここは一丁、加勢してやるか。
ニコラスかリングインした。ますブラッディー桜に左の後ろ回し蹴りをかますと、そのままの腰の位
置て、今度はエリカに軽快な右の上段回し蹴りをかました。あっさり両者ダウンだ。
ヒューティクイーンズにトドメをささすに、ニコラスは王子の顔をしたたかにひっぱたいた。
―おい、起きろよ。ダメ王子。自分のケツくらい自分て拭けよな。あのレスラーどもにトドメをさすん
た。キャラクシーウェーブでも、真・龍拳てもいい。自分の技て決着をつけろ!いいな。王子は蘇生して
起き上がった。
―地球人の女の子にこの大技を使うのはちょっと可愛そうな気もするけど、仕方ないよね。
言い終わると、ニコラスの攻撃からやっと立ち上かった二人に目掛けて、王子は全身の気を高めて、一
気に両の掌を向けた。
―食らいなーっ!スーパーギャラクシーウェーブっ。濃密に凝縮された気か一気に彼女達を襲う。エリカ
とブラッディー桜はガードする余裕もなく、近距離から出された大技のため、完全にダウンしていた。
ダウンカウントが告けられる。ノックアウト。
―それでいいんだ、王子。やればできるしゃないか?
―でもさー、地球人のフツーの女の子にあんな大技使っちゃって、ヤバクない?ちょっと可愛そうだよ
―お前はその甘さか最大の弱点だ。キングオヴギャラクシーは真剣勝負だよ。勝利こそが全てさ。
ニコラス・トルーマンという強力なパートナーを得て、銀河帝国の王子か初勝利を飾った瞬間だ。
109
第63章コールデンシューターズ
キングオヴギャラクシーBブロック第二試合では、ブラックホールズとゴールデンシューターズの試合
がアナウンスされた。
低音の地響きと共に会場全体の明かりか一旦落とされ、スモークが焚かれた。3つ目のブラック・ア
ニマルと白鬼ブラック・ホークか全身黒尽くめの魔術的な衣装てます入場する。そのままとっかりと赤
コーナーを陣取る。
次にサンバベースの明るい曲か演奏されると、メキシコ流空手の達人ジュン・バードとユニバーサル・
レスリングの使い手ジョー・ヨージ12世のゴールデンシューターズか入場した。ジュン・バードか甘い
マスクて笑みを振りまくと、会場の女性陣から黄色い歓声かあかる。ポルゴたちの目には、彼らか全身
に強烈なオーラを具現化しているのか見えていた。ついにゴールデンシューターズも気の技術を獲得し
たようだ。
ボディチェックか終わると、赤コーナーからはブラック・アニマルかリングインし、青コーナーから
はヨージかリングインした。そのままゴングか鳴る!ブラック・アニマルはその長身と長い脚を生かして、
軌道の見えない蹴撃の嵐をヨージに叩き込む。ヨージは全ての打撃をブロックしている。
―なせた?なせ俺の音速のシュートキックをカードできるのだ?
ヨージはステップバックして相手と距離をとると、自分の頭を指差した。
「ここの違いだよ。」
そう言いたいらしかった。
ヨージはワンツーからの右のミドル、左の後ろ回し蹴りのコンビネーションを不用意に出した。超反応
て右のミドルを返すブラック・アニマル、ヨージはそれを待っていたかのように、相手の蹴り脚をキャッ
チするとドラゴンスクリューて切り返す。そのままフィキュアフォーレックロックに相手を捕らえる。
―天才は天才を知る。プロフェッショナルレスリングの歴史にジョー・ヨージあり!
ヨージは天狗的コメントを発した。すかさす、ブラック・ホークかカットに入る。ブラック・ホーク
か強烈な負のオーラてヨージを圧倒すると、ますは強烈なクロースラインのラリアットてダウンをとっ
た。ダウンしたヨージをブラック・アニマルか肩車に捕らえると、ブラック・ホークはコーナーから肘
を曲けてアックスボンバーでヨージを薙ぎ払う。
合体技ブラックインパクトか決まった。そのままヨージはノックアウト。
すかさすジュン・バードかリングインすると、彼は全身の気を限界まて高めて、脚の周りに蒼い炎の
ようなオーラを具現化した。先手必勝て右のハイキックから、左のサイトキックのコンビネーションを
見せる。今の右ハイキック一発て、ブラック・アニマルはノックアウト。一方のブラック・ホークはサ
イドキックてダウンを喫したものの再び立ち上かる。
ブラック・ホークは地獄のような修羅場を潜り抜けてきた者たけか出せる暗黒のオーラを放ち、ジュ
ン・バードを牽制した。ジュン・バードは表情一つ変えなかった。そのままブラック・ホークは強引な
右ラリアットでジュンに襲い掛かる。ブラック・ホークはラリアットを両手てブロックされると、空い
た下段に強烈な左ローキックを見舞う。ジュンはバックステップてこれをかわす。
―あなた、そこそこできますね。仕方ないてしょう、メキシコ流空手の奥義をあなたにおみせしましょ
う。
ジュン・バードは言い終わると、ワンステップでブラック・ホークの間合いに飛ひ込み、突き上ける
ような右の上段前蹴りてブラック・ホーを宙に浮かせた。そのまま全身のオーラを左脚に込めて強烈な
左のバッグキックを放った。ブラック・ホークはジュンのオーラて全身を焼かれなからリングアウトし
た。そのまま気を失っていた。
―大技フェニックスファイナルアタッグをこんなところて見せたくはなかったのてすか、まあ仕方ない
てしょう。
続くAブロック第二試合ては、チームダブルエックスか無名チームを秒殺していた。いよいよ新世紀
第3回キングオヴギャラクシーの準決勝か始まろうとしていた。
110
第64章隠された力
キングオヴギャラクシー準決勝第一試合、銀河帝国代表チームVSチームタブルエックスかリングアナ
にコールされると、ます赤コーナーに銀河帝国代表チームか入場した。銀河帝国の正装をまとい、若き
王子(ギャラクティカ・ジュニア)が入場する。彼はまだ成人するために必要な最後の脱皮を済ませては
いなかったが、それでも龍族の王子として威厳のある態度と青春時代の若さと新鮮さとを合わせて持っ
ていた。王子が入場すると、その後からお目付け役の黒のトレスを身にまとった女性ニコラス・トルー
マンか入場する。胸元が眩しい。彼女は抜群のスタイルで、トップロープをまたいで入場した。
「ねぇ、ニート君。僕たちって勝てるのかなー?」
「バカ王子、お前か本気を出せはね。」
次に青コーナーに銀髪の若者G (ジー・ダッシュ)とプロレスラーのグレートアジア13世のチームダブル
エックスか入場する。彼らかリングインした瞬間、圧倒的な両チームの気のレベルの高さに、会場全体
からとよめきかあかる。両チームの実力から言って、この試合は事実上の決勝戦とも解釈てきた。
「おい、アホ王子。お前にチャンスをやるよ。とりあえすアンタか先攻てあの女の子を倒して来い!その
後てじっくりあの生意気なG の野郎をツープラトンで始末しよう。」
「ニート君、マジっスか?あんな美人と先にホクか一対一て戦っでいいの?グローブ外して、素手でやっ
ちゃおうかな?」
「とりあえす、オープンフィンガーはそのまま着けておけ!」
コールか終わると、赤コーナーから王子か前に出て、グローブて対戦相手にグレートアジアを指名し
た。グレートアジアは挑発に乗って前に出た。そのまま両者はグローブの拳先を合わせて挨拶すると、
ゴングかかき鳴らされた。
今回、グレートアジアはいつものムエタイをとりいれたシュートレスリングスタイルよりも、ガード
の位置を明らかに落としていた。かまわす、王子はカードが下かっていることを利用して、いきなりの
上段右ハイキックてアジアに襲いかかかる。アジアは左のグローブてでこのキックを止めると、そのま
ま両腕・両脚を王子の右脚に絡めて飛び付きヒールホールトを極める。
バタバタともがく王子。
「助けてー、ニート君!」
「アホ王子、足関の抜け方くらいやったたろ!左足で相手を蹴りなから、身体を捻って逃けるんだよ。決
まっちまうぞ。」
ニコラスのアトハイスて無事危機を脱した王子。スタントの攻防に移行すると、王子は一気に全身の気
を高めた。そのまま両の掌に強烈な気弾を具現化し、一気に2つの気弾を合わせると、グレートアジア
に向けて放った。
「さよなら。スーパーギャラクシーウェーブ!」
会場全体かいまの光線技て眩しく照らされている。会場全体かアジアの敗北を予期していた。光か収
まり、人々の目か慣れてきた時、人々は片手で今の大技を軽々と受けきったグレートアジアを確認した
「切れたワ。フルコースて始末してあける。」
言い終わるドアジアはいったん身体をロープに振って、王子に強烈なラリアットを見舞った。そのまま
王子をダウンさせて反対側のロープに身を振ると、今度は立ち上かりかけた王子に、後頭部目掛けて閃
光魔術(シャイニングウィサート)を掛ける。ダウンした王子の左足をステップオーバートゥホールトに捉
えると、そのままチョークスリーパーに王子を捉える。STSか極まる。両腕をバタつかせてもかく王子。
王子かついに気を失ったところて、技を解いたアジアは倒れている王子を無理矢理引き上げ、垂直に抱
え上ける。そのまま捻りを加えた垂直落下式DDTで王子をマットに突き刺した。
「ビバ三銃士!」
なおも意識のない王子の喉下に左膝を押し付け、王子の右腕をアジアは決める。グレートアジア一族伝
家の宝刀、ストランクルホールト・ネオか決まった。たまらすニコラスかノータッチてリングインして、
アジアの顔面を蹴り上けカットに入る。会場に王子の気絶かバレない様に、ニコラスは王子の鳩尾を軽
111
く踏みつけ、蘇生させた。また意識か朦朧としている王子をよそに、ニコラスは長い黒髪を振り乱しな
から、強烈なキックの嵐てグレートアジアを一気にコーナーまで追い込んた。
アジアは得意な打撃技の攻防てニコラスにリードを許してしまったため、焦燥してしまった。つい、全
身の気の威力に身を任せて、具現化した強大な気て不用意にニコラスを攻撃してしまった。
右ストレートの要領て、全身の気を具現化させてアジアはニコラスを攻撃した。ニコラスは左手てハ
リアを作って、今の攻撃を受けきると、今度は右手を使って、今具現化された気を数倍にして跳ね返し
た。アジアは今の反撃てダウンした。
「リフレクションエッシ・デュエル。」
さすがにG もコーナーから身を乗り出して、タッチを要求する。アジアは手を振って、タッチの要求
を拒否した。赤コーナーては蘇生した王子か陣取っていた。ニコラスは迷わすつかつカード赤コーナー
に歩み寄って、王子とのタッチを成功させる。
「仕留めるんだ、あの女を。投げでも、光線技でも、サブミッションでもいい。非情になれ!」ニコラス
はそう言い残すと、リングインした王子に蹴りを入れて、リング中央まて無理矢理進ませた。
「ホク、女の子をいしめるのはスキしゃないんたけとな。やっぱり本気てやらせてもらうよ。」
おっとりとしたお坊ちゃんの目つきてあった王子の表情か一変する。まるて肉食の恐竜のような鋭い視
線た。この変化に合わせて、王子の発する気のレベルか明らかに高まった。これか銀河帝国の正統後継
者の実力とでも言わんはかりだ。
いきなりの右フックから、左ボディ、右アッパーと決まる。間合いをいったん離して、右ロー、左
ロー、右ミドルから左のバッグキックへつなく。アジアはコーナーでダウンする。既に意識かない。王
子はアジアの右腕を捉えて、逆十字に極める。
―二度とプロレスかできない身体にしてあげるよ。
一気に王子かアジアの腕を折りにかかった時、青コーナーからG かカットに入る。リング外に常駐して
いるレフリーからはアジアのKOか告けられた。―テメー、大人しそうな顔して、結構ヒデーことをやる
な。俺のパートナーの腕を折ろうとはいい度胸だ。既にG の気は王子を越えるまでに高まっている。彼
の潜在能力は対戦相手に合わせて引き出されるらしい。
王子とG の両者は壮絶なパンチとキックの打ち合いを展開した後、すかさすバックステップて間合い
を取る。そのまま高められた気を同時に両者は打ち合った。大技ギャラクシーウェーブの打ち合いた。
両者の気弾の大きさは拮抗していた。やや王子の気弾の大きさか大きくなったと思えた瞬間、G の姿は
消えていた。
大技を使って体か硬直している王子の右前方にG か突然現れた。瞬間移動た。そのままG は左ミドル
から右フック、左フックから右の上段回し蹴りて王子を攻める。王子かたしろいた瞬間、G は王子のふ
ところに潜り込み、右の豪快な一本背負いて王子を投け放った。ダウンした王子をひたすら足蹴にする
G 。サッカーホールを蹴るかのように王子の後頭部を狙って、数十発蹴りを叩き込む。
場外レフリーかノックアウトの判定をした。なおも王子を攻撃するG 。
―坊や、やり過きたよ。
たまらすニコラス・トルーマンかリングインする。ダウンした王子を蹴っていたG は振り向き様に、
ニコラスの右肩を狙ってワンハントのギャラクシーウェーブを放った。ニコラスは何事もなかったかの
ようにバリアを張って、今の攻撃を防いた。
―お前はたたのクローン、人形たよ。その力はもともと龍族のものだ。強化人間なんて、存在する価値
がないよ。
言い終わると、ニコラスは腰を入れたパンチてG に殴りかかる。G かサイドステップて今のテレフォ
ンパンチをかわしたと思った瞬間、彼のボディにニコラスのパンチかクリーンヒットした。G はすかさ
すパンチて応酬する。姿か見えない。いない。そう思った瞬間、正面からニコラスの左ミドルハイかG
を襲った。
―残心だよ。気配を残したまま本体か移動して、相手の攻撃をかわした後、もとの立ち居地て相手を攻
撃する。まあ、手の内を教えたところて、あんたには私の攻撃は防げないたろうかな。
112
ニコラスの打撃の猛攻が続く。G は相手の気配のあるところ狙って攻撃するか、すへて柳のようにか
わされている。
G はいったんバックステップした後、リング全体を覆うような強烈な気弾て相手を攻撃した。思わす
立ち止まって、バリアを張り今の技を防いたニコラス。
その時だ。
―チェックメイトだな、ネーちゃん。
G は瞬間移動てニコラスの背後に回ると、彼女を羽交い絞めにした。そのままハイアンクルのドラゴ
ンスープレックスに捉える。受身の取れない状態てマットに頭から突き刺さった彼女を、すかさすG か
タイガードライハーの姿勢て担き上ける。一気にニコラスの両腕を極めたままジャンプしたG はジャン
ピンク・タイガードライバーでニコラスを投け放った。ニコラスはそのまま気絶していた。
チームタブルエックスの勝利だ。
113
第65章本道
キングオヴギャラクシー準決勝第二試合、ネオ・ファルコンズVSゴールデンシューターzウかリングア
ナにコールされると、ます赤コーナーにネオ・ファルコンズか入場した。ますポルゴか入場テーマ曲と
共にダッシュて入場する。今回は空手着にスパッツというラフな格好だ。すかさすトップロープとセカ
ントロープの間にポルゴか入り、隙間を作る。余裕の表情と共にネオ・ファルコンズの司令塔マリア・
ハロルドがリングインした。彼女はタンクトップの上にTシャツを重ね着して、下はスパッツだ。
次に青コーナーにゴールデンシューターズか入場する。ますは特攻隊長のジョー・ヨージ12世か敬礼
のポースをとって会場を沸かせなから入場した。食えない男だ。次に黒髪のスター、メキシコ流空手の
達人ジュン・バードか入場する。ゴールデンシューターズはレガース、ニーパッド、リストハンドをコー
ルトで統一し、オープンフィンガーとタイツは黒のストロングスタイルで決めていた。今回、ゴールデ
ンシューターズの二人はマジだ。全身の気を最初からマックスまで高め、短期決戦で決めるつもりだ。
ボディチェックが済むと、ヨージ12世かリング中央まで歩み出て、迷わすポルゴを指差し、対戦相手
に指名した。挑発に乗ったポルゴは短く刈り込んた銀髪の頭を軽くなてなから、リング中央に歩み出る。
両者かグローブの先を合わせて挨拶すると、ゴングが鳴った。
ポルゴは冷静さを保ったまま、オーソトックスに構える。ヨージの気か今にも爆発して弾けそうなの
かわかった。具現化された気のオーラかレカースの周りて漂っている。様子見のジャブを放つと、カウ
ンターの中段ストレートか返ってきた。すかさすヨージは右のミドルから左のソバットを決めてくる。
ポルゴは今の3連打を全てカードしたか、カードの上からてもタメーシか残っていた。強烈な攻撃だ。
―何やっているの、ポルゴ?さっさと決めなさい!
マリアからの指示を聞こうとして油断した瞬間、ヨージの高角度飛び付き式フランケンシュタイナー
が決まる。頭からマットに突き刺さるポルゴ。フランケンの体勢からそのままマウントポシションを維
持して、拳に気を込めたままヨージか殴りかかる。ポルゴは相手の脇に脚を掛け、マウントをひっくり
返した。今度はヨージか下になっている。そのままヨージを抱え上けると、ポルゴか高角度パワーホム
に捉えた。パワーホムを決められたヨージか下から三角締めを狙っている。
―あなた、いつからプロレスラーになったの?もっと間合いを取って、打撃て勝負して!!
マリアの指示か飛ぶ。ポルゴは三角を嫌って、バックステップの後、スタントを要求した。ヨージが
立ち上かる。
ヨージはアクティブにポルゴに殴りかかる。ポルゴはサウスポーにスイッチして、相手のパンチを貰
いなから、一気に間合いを詰めた。ヨージの右ストレートをかわしたポルゴは、その右腕をキャッチし
たまま一本背負いて豪快にヨージを投けきった。すかさす逆十字て一気に相手の腕を折りにかかる。
ヨージはついにギブアップした。技を解いたポルゴは、ちらりとジュン・バードに一瞥をくれた。ジュ
ン・バードはリングインするとこう言った。
「以前のワタシてしたら、ナンパ目的て迷わす美人のマリアさんとの対戦を要求するてしょう。しかし、
武芸者としての本道に目覚めた今、ワタシはポルゴさん、あなたに対戦を挑みます。あなたに勝って、
決勝でG'さんに挑戦します。」
会場が沸いた。
ポルゴは軽くステップを踏みなから、カードを少し上け直して、ジュンとの対戦に備える。ジュンは
得意の鶴足立ちの構えから、左足て前蹴りを数発放った。すへてかわすポルゴ。しかし、ジュンの蹴り
からは衝撃波のようにオーラか出ており、ポルゴはタメーシを受けさるを得なかった。
―ポルゴ、相手はストライカーよ。今度は接近戦に持ち込んで。
マリアの指示が飛ぶ。
ポルゴは相手のキックの嵐を掻い潜り、首相撲に持ち込むと全身の気を両膝に込めて膝地獄で攻撃する。
ジュンはポルゴの身体にボディタックルの要領で抱きつくと、ぶっこ抜きのフロントスープレックスて
ポルゴを投け放つ!ポルゴは相手の捨て身の投け技を食らいなから、見事に体勢をコントロールして、逆
にいいポシションを奪った。スープレックスを決めたジュンの上になり肩固めを決める。
―いいわ、そのまま一気に決めて。相手の肩を外すつもりで。
114
マリアの指示通りポルゴは一気に両腕を引き締め、ジュンを気絶させた。マリアの出る幕もなくポルゴ
たちは決勝に進むことができた。
115
第66章最終決戦!
ついに新世紀第3回キングオヴギャラクシーの決勝戦が始まろうとしていた。ネオ・ファルコンズの控
え室ではポルゴとマリア・ハロルドが最終ミーティングに挑んでいた。
「結局、今大会にはミス・ワカマツは応援に来てくれなかったな。けっ、つまんねーな。」
「何ぼそぼそ独り言つぶやいているのよ、ポルゴっ!しっかりして。次の相手は最強のチームタブルエッ
クスよ。あのG (ジー・ダッシュ)に勝つ自信あるの?グレートアジア13世もかなりの使い手よ。」
「グレートアジア13世の方は、この時代の第一回ギャラクシーて拳を合わせたから、何とかなるかもし
れないな。」
「かもしれない、じゃダメなのよ!!」
「G の野郎、クローンであれたけ強いんたから、オリジナルのあんたの先祖はたぶん人類最強たったん
だろうな。その子孫のあんたは、何カードっておきとかないのか?」
「ないこともないけとね。ほんとのとっておきたから、使うべきときか来たら使うけど。」
「マリアさん、そんなに強気じゃ、いい彼氏できないよ。」
「よけいなお世話よ。たからあなた彼女に逃けられるのよ。」
最初にこの話題を振ったとはいえ、ポルゴにとっては聞き捨てならない話だ。一方のチームダブルエッ
クス控え室ては、G とグレートアジア13世か打ち合わせをしていた。
「ねえ、G 。この決勝か終わったらとうするの?またタイムマシンか何かて、過去の世界に戻るつも
り?」
「いや、過去にはもう戻らない。」
「また火星人狩りは続けるの?」
「もうこの惑星には火星人はいないさ。今はギャラクシー開催期間中だから、自称太陽系皇帝の一味か
会場に来て威張っているけとね。奴らも今日限りの命だろう。」
「とういうこと、またあなたか彼らに直接手を下すの?」
「いや、地球人の人口を核・生物兵器て半減させたのは旧火星皇帝その人自身だ。ノコノコ地球圏にやっ
てきて、彼女はその報いを自らの身に受けるだろう。」
「次の試合の勝算は?」
「当然だろ!ジムを建て直す費用くらいはがっちり稼こうせ!その後は銀河を豪遊でもするか?」
銀河の掃除人(スィーパー・ギャラクティカ)の意外な一面だ。
ついに決勝のコールか始まった。赤コーナーにチームダブルエックスかコールされる。
ますはグレートアジア13世か新生ヘルリベンジャーズのテーマて入場する。その後、G'がか無音のテー
マ曲と共に走って入場した。グレートアジアはスパッツにタンクトップ、G は黒のシャツにレザーパン
ツだ。彼らはコーナーに駆け上かり、クロスした両手を掲けてポーズを決めた。大観衆の割れんはかり
の声援が飛ぶ。
青コーナーにネオ・ファルコンズがコールされると、刈り込んた銀髪に長いもみあげのポルゴかダッ
シュでリングインした。次に落ち着き払った若き美人格闘家マリア・ハロルドが入場する。ポルゴとマ
リアは、シャケットは空手着、下は袴の古武術スタイルだ。きっちり両者とも腰に黒帯を巻いている。
「ポルゴ、あのグレートアジアを料理して。全てはそれからよ。」
マリアは指示した。すかさすポルゴかリング中央に立つと、グレートアジア13世を対戦相手に指名し
た。グレートアジアは何食わぬ顔てこの挑戦を受けて立った。
ゴングが鳴った。
アジアは両手を高く上けて牽制した。ポルゴはアップライトに構えてフットワークをしている。迷わ
すアジアかみかかる。ポルゴの両肩を押さえつけたまま、左・右とローを連発する。肩を押さえた手を
外すと、今度は右のフックてポルゴをしたたかに殴りつける。
―ポルゴ、何やっているの?間合いを離して!相手に呑まれちゃ、ダメっ。
マリアは先手必勝て小刻みにパンチやキックを打って、G を攻める。適度な間合いを保って、絶対に無
理はしない。G は超反応てカウンターを狙ってくるか、マリアはすへてブロックした。
116
しびれを切らしたG は強引な右の上段回し蹴りてマリアに蹴りかかる。マリアはバックステップて今の
蹴りをかわした。
―フッ、かかったな。
G は右の人差し指を突き出すと、親指て引き金を引くアクションをして、一度に4発の気弾を放った。
まるて拳銃の弾のようにマリアの両肩、両膝を狙って弾は放たれた。
マリアは見えないバリアを張って、今の攻撃を防いた。
―甘いわね。今度はこっちから行かせてもらうわ。
マリアは軽く左手て髪をかき上けると、右腕て離れた間合いからアッパーを放った。拳の軌跡に呼応し
て衝撃波か放たれる。すかさす左腕も弧を描くかのように振り上ける。ダブルで衝撃波かG を襲った。
G は今の技が来た瞬間、とっさにバックステップをしなから両の掌を一気に前方に突き出すと、全身の
気を高めてマリアに向って気を放出した。気弾はダブル痛風拳をはじき返しなから、マリアを襲った。
誰もが今の強烈なギャラクシーウェーブでマリアの敗北を予感した。
次の瞬間、マリアはG の背後に立っていた。
―今の技をかわしたのか?お前も瞬間移動ができるのか?
マリアはG の首をチョークスリーパーに極めなから、言った。
―私は気をフィールドとして操れるのよ。このリングは既に私のフィールドの中に入っているわ。その
中だったら、私は自由に瞬間移動かできる。そんなことはいいわ。さあ、眠ってもらうわ。
一気に極めるマリア。G の体から力か抜けていく。
―アメーよ。ネーちゃん。
G はマリアに後ろから締め上けられなから、一気に全身の気を解放して、強烈なプレシャーを起こし、
マリアを吹き飛はした。
―やるわね。まあ、ますはお手合わせってところね。ポルゴ、タッチよ。
青コーナーからポルゴかリングインして、マリアとタッチを成功させる。
―2対1だ。絶対に何とかなる。
そんな甘さかあったかもしれない。ポルゴは全身の気を極限まて高めると、一気に勝負に出た。ダッ
シュからステップを踏んて一気に間合いを詰めると、大振りなフック気味のジャブを空ふって、相手か
気を取られたところて、強烈な得意の右フックてG のこめかみを打ち抜いた。ミィーティングの瞬間、
ポルゴは拳の先から全身の気を爆発させた。おおきくよろめくG 。すかさすポルゴは左のフックから、
んての膝地獄のゴールデンコンホを使う。G は一方的に一連の攻撃を受けていた。ポルゴはすかさす膝
をG の顔面に連打する。
―くたはれ。ポルゴは心の中で叫んた。
次の瞬間、今まて攻撃を一方的に食らっていたG かジョートレンシの左のボディアッパーを放つ。ポル
ゴの動きか明らかに止まった。
G は軽く左腕を引くと、反動を利用して体こと右のボディアッパーでポルゴの鳩尾を打ちぬいた。その
ままの動きを利用して、ポルゴのアゴを右の2段式アッパーでG は打ち抜く。3段目は右肘でアッパー気
味にポルゴのアゴを完全に叩いていた。ポルゴの意識か飛ふ。G は左の後ろ回し蹴りて今の3段アッパー
のスキをフォローした。このキックでポルゴはダウンした。
すかさすG はバックステップて間合いを取ると両の拳を前方に一気に開いて、強烈な気功波をポルゴ
に向けて放った。銀河最強の光線技、ギャラクシーウェーブかダウンしたポルゴを襲う。
マリアは瞬間移動てポルゴの前に立ち、片手てギャラクシーウェーブを完全に止めた。
―やってくれるわね。レフリー、ポルゴのノックアウトをとって。これからサシて決着をつけるわ。
マリアは上半身の空手着をサッと脱き捨てると、Tシャツ一枚になって構えた。全身の気を極限まで高
める。ウェーブかかった彼女の銀髪が光り輝き、逆立っている。
―あなたも、龍の気を極限まで引き出すことね。お互いパワー全開で一気に決着を付けましょう。
言い終わると両者は強烈な殴り合いをはじめた。マリアもG もカードすらしなかった。数十発は打ち
合ったかと思えた瞬間、両者は一気に間合いを離して、気功波を放つ!互角の展開えq。
117
G は瞬間移動で、気功波を放ったはかりのマリアの目の前に現れると強烈な左フックてマリアのこめか
みを打ちぬいた。すかさす右のミドルてマリアの横腹を襲う。次は右の上段フック。その回転を利用し
て、右の上段ハイキックを放つ。マリアのカードの上から当たったキックかマリアを弾き飛はす。コー
ナーまて吹き飛んたマリアを、得意の右アッパーてG は打ち抜こうとした。
G の右の拳をマリアの両肘かブロックして、肘の間に完全に挟み込んていた。
―かかったわね。真・龍拳破れたり。
マリアはG の右の拳を肘の間に捉えたまま、両の掌をG の顔面に向けて、今大会最大とも言うべき強
烈な気功波を放った。
直撃だ。
気功波による強烈な閃光か消え、会場の観客の目か慣れた瞬間、そこには何事もなかったかのように
突っ立っているG の姿かあった。
―そろそろ本番始めようか?
G の全身の気かその潜在能力の限界近くまて高まり、彼の銀髪は異様な輝きを帯ひたままいつも以上に
逆立っていた。情け容赦なくG かマリアに蹴りかかる。マリアは全ての蹴りを完全にカード・ブロック
していたか、カードの上からてもタメーシは相当なものだ。
ついにG の得意の上段ハイキックかマリアのカードをぶち破り、彼女の顔面を捉えようとした瞬間、彼
女の姿はそこにはなかった。
背後から強烈なローキックかG を襲う。すかさす水面蹴りてG はダウンを喫する。ダウンしたG の上
にマウントを取り、肘て殴りかかるマリア。美しい鬼。鬼神の表情た。G はブリッジてマリアのマウン
トを切り返すと、上になる。マリアは下てカードポシションをとっているか、かまわす強引に殴りつけ
る。マリアか下から三角締め、いや逆十字を狙っている。G は右腕をマリアに取らせた。マリアは一気
にG の右腕を逆十字て極めにかかった。
次の瞬間、G はマリアを片腕だけて引き上けると、腕を極めさせたまま強引なシャンピンクパワーホ
ムを極めた。後頭部をしたたかに打ち付けられたマリアはなおも両脚のクラッチをきつく絞って、G の
右腕を折りにかかる。
これで勝負が決したか?誰もかそう考えた瞬間、G は右の拳を開くと、逆十字を極めているマリアの
顔面目掛けて、フルパワーのワンハンドギャラクシーウェーブを放った。会場全体か今の衝撃波の影響
て大きく揺れる。マリアはバリアを張ってカードしたか、ついに力尽きた。
ゴングが鳴った。息を吹き返したアジアかリングに駆け上かり、G に抱きついた。ポルゴは既に担架
で控え室に運はれていた。マリアも同じ運命だ。
118
第67章運命の日
地球で行われた新世紀第3回キングオヴギャラクシーはG とグレートアジア13世のチームタブルエッ
クスが優勝した。これてG は時空を越えて、6度にわたってギャラクシーを制覇したことになる。主催者
の太陽系皇帝は自ら閉会式の演説を行っていた。既にG たちは太陽系皇帝の側近から表彰状と賞金の小
切手を受け取っていた。
―わかるだろ。この険悪な気のムードが。しばらく会場の中心を離れていよう。それにしてもあのオバ
サン、演説長すぎだぜ。
太陽系皇帝の周りに地球人たちか目の色を変えて取り囲む。5,6人の火星人の側近達か生命の杖を振り
かさしなから、地球人の群集を牽制する。
―太陽系皇帝!いや、元火星皇帝よ。おまえのせいで、俺達は肉親・恋人・友人を失ったんだ。その償い
をここでさせてもらうぞ。
―えーい、黙れ黙れ。この生命の杖か目に入らんか?
側近の火星人達か生命の杖のスイッチをオンにして、炎て地球の群集を脅かしている。
―しゃあねぇな。一応手助けしてやるか?
G か右の人差し指を皇帝の側近達に向け、気弾て彼らを狙った瞬間、彼らは皆一様に緑色の血を流して
倒れていた。地球の群集の一人か、レーサー銃で彼らを撃った。
―側近は倒した。皆の手て帝国主義の元凶をぶちのめすんだっ!地球の群集たちは一目散に太陽系皇帝に
殴りかかった。数分後、群衆か太陽系皇帝から離れたその時、彼女は既に息絶えていた。
こうして地球人自らの手により、太陽系皇帝(もはや旧火星皇帝というへきか)は始末された。このクー
テターの成功により、太陽系帝国は崩壊し、新たに太陽系連合政府か成立する。時代遅れの惑星間帝国
主義体制は、地球の民主主義の前に葬り去られた。太陽系帝国の危機と崩壊は同時に、太陽系の民主主
義の再来と復活を意味していた。地球の帝国主義シンパであった太陽教の信者達は転向、または自決を
余儀なくされた。
地球圏、そして太陽系には再ひ平和と秩序が訪れた。
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第68章ポルゴ
ふと気付くと俺はすっとベッドの上で寝ていた。誰かかすっと俺の右手を必死に握っていてくれる。
あたたかい。
ずっとそはにいてくれた懐かしい相手、そんな気かした。眼を開けてみる。
―ポルゴさん、気付いた?
ミス・ワカマツか言った。
―やべーな。またやられちまったよ。試合の結果はどうなったんた?
―敗北です。完敗。
―マリアさんは無事なのか?
―彼女も同じ病院て寝ているわ。
無理に俺は起き上がろうとした。激痛か全身を走る。
―また無理しちゃダメ。マリアさんは大丈夫。ちょっと休んているだけよ。
―そうか、ところてでは今まてどこにいだんたい?すっと銀河帝国にいたのかと思っていたけと。
―ギャラクシーに参加するつもりだった3代目の大王の宇宙船で私は地球に戻ってきたわ。ギャラクシー
か始まるまでの間に、大分仕事をさせてもらったけと。ポルゴさんの試合は全部生て見ていたわ。
―仕事?また銀河ワニ革のバッグても売っていたのかい?
―旧太陽系帝国のガバナンスコンピューターシステムをクラックして、防衛・軍事に関する命令系統シ
ステムを全て落としたわ。独裁主義の旧太陽系帝国は全てのカハナンス・情報系統を一つのコア・コン
ピューターにまとめていたの。それを落とすのに大分時間かかかったわ。
―すいふんとサイハー探偵らしい仕事たな。ところで旧太陽系帝国って?
―ああ、ポルゴさんは眠っていて、何も知らなかったのね。ギャラクシー閉会式での地球の一般市民た
ちのクーデターにより、旧太陽系皇帝は暗殺され、太陽系帝国も崩壊。あまりに独善的かつ冷酷な独裁
政治体制を敷いたのか彼女の運の尽きだった。
―これで死んだワカマツの魂も浮かはれるか。パルチザンでも軍隊てもなく、地球の一般市民によって
惑星間帝国主義は駆逐されたのか。意外な展開だったな。
ミス・ワカマツか飲み物を買いに行くと、俺はベッドの上で一人物思いにふけっていた。
―あのG を止める事は誰にもできなかった。若い銀河帝国の王子にも、マリアさんにも。それにまた西
郷詩郎との決着もついていない。師匠のミスター東郷は未た行方不明か。たしかに旧火星皇帝の帝国主
義戦略か崩壊したのはこの上なく望ましいことたったか、俺にローカルな問題は何も解決されていない
そんなことを考えつつ、俺はまた無理に起き上かろうとした。身体に力か入らない。痛い。結局この
世界に救世主は現れなかった。地球人たちは自らの手て旧火星皇帝の支配をフチのめした。結構なこと
だ。人は常に自らの力て自らを助けるしか道はないものだ。
―ポルゴさん。お茶買ってきました。喉渇いたでしょう。
―ああ、ところで他には何かビッグニュースとかないの?
―旧火星皇帝の地球支配に協力した地球の太陽教教徒たちか自決をはじめたわ。教祖とも言うへき旧火
星皇帝を失った今、彼らは生きる希望を失ったのね。
―宗教の問題は、ほんと救いようかないな。いつの時代も異なる宗教・イデオロギー間での闘争か絶え
ない。人を救うための宗教か人を殺める。その繰り返した。
―確かにね。でも人間ってそんなにペシミスティックな面だけの存在ではないものよ。
―ああ、そうたな。ほーっとしてきた。またしばらくは眠っていよう。次のチャンスに備えて。
120
第69章これから
銀河帝国の王子とお目付け役のニコラス・トルーマンはキングオヴギャラクシーの閉会式が終わった
後、地球圏に滞在している大王に謁見を済ませた。
―やー、パパはいつ会っても怖いねー。ねぇ、ニート君。
―大王様の前だから、お前の好きなようにさせていたが、ダメ王子、私をニートと呼ぶのはやめろっ。
ニコラスさんかトルーマン先生と呼ぶんだな。
―たってニート君はニート君でしょ。ところでニート君、これからどうするの?
―私はこの地球圏、いや太陽系に残ってしばらく修行するよ。私の出身惑星とこの地球は気候のタイプ、
重力の心地よさか似ている。それに私はあのG を止められなかった。また修行か足りなかったんたな。
ダメ王子、アンタもな。
―ホクはまた成人になるための脱皮まで後2年くらいある。しばらくはボクも地球圏て修行したいなー。
地球の女の子も結構可愛いみたいたしね。
―タメ王子、自分て大王に許可貰って来い!あんたはこれても次の世代の銀河帝国を背負う男た。自分の
ことを全て自分の都合て決める訳にはいかない。銀河帝国の市民のことを常に考えるのたな。
―わかったよ。さっき行ったはかりたけと、またパパに会いに行って地球圏長期滞在の許可を貰って来
るよ。
王子からニート君と呼はれているこの女性、ニコラス・トルーマンの実力か高い、いや圧倒的に高す
きることは誰の眼にも明らかだ。彼女は銀河帝国の首都、高重力の惑星サルバトーレては幼少時代の姿
に擬態していたか、隠されていた実力の高さは王子をも上回っていた。そのことに未た気付かない王子
はたたのバカなのか、それとも何かの役得に違いなかった。
一方、マリア・ハロルドは退院手続きを済ませると、同し病院の中のポルゴの部屋を訪れた。
―ポルゴ、元気?まあ、そのサマしゃ元気しゃないのはわかるけとね。彼女か看病に来てくれてよかっ
たしゃん。アタシ、そろそろ高校の新学期か始まるから、いつもの生活に戻るよ。ギャラクシーの前の
合同練習で学校さぼっちゃったし。
―はっ?マリアさん、あんた何回留年しているんた?
―また私は16歳よ。現役の高校生。―俺はそんなガキに今まで敬語を使って話していたのかよ?ふざけ
んな!
―まあ、力の差というか、ぶっちゃけこっちの方が格闘の実力上だったんたから仕方ないしゃない。世
の中、実力主義よ。命の恩人のこの私に一体何てこと言うの?あの時のギャラクシーウェーブか直撃し
ていたら、あなた間違いなく死んでいたわ。
―そ、そうですね。しゃあ、準優勝の賞金とかって、山分けていいっすか?
―何言っているの?賞金なんてたたの紙切れよ。たってあれマーズマネー立ての小切手たったしゃん。
火星皇帝が死んで、太陽系帝国が崩壊して、マーズマネーはハイパーインフレに襲われちゃったの。そ
ういうわけで今の地球圏の通貨はグローハルリラに戻ったのよ。何も知らないのね。欲しかったら、こ
のただの紙切れ全部あげるわ。
―けっ、大分この入院期間中に世の中の動きから疎くなったらしいな。
―いいんしゃないの?憎き火星皇帝も、彼女か作った太陽系帝国も危機を迎えて崩壊した。あなたの目
標は全て達成よね。亡命していた彼女も無事あなたの元に戻ったし。これ以上ない結末よね。私の目的
はまた達成していないけど。
―マリアさんの目的って?太陽系帝国撲滅じゃないの?
―打倒、いやストップ・サ・ジー・ダッシュよ!!あの時は決勝戦で大分こちらも消耗してからの試合だっ
たけど、パワーマックスの今、サシて決着をつけに行くわ。彼の気は?
そうね、グレートアジアのウェヌスジムのあたりね。しゃあ、ね。
―ちょい待ち、マリアさん。待ってっては。
―心にもないこと言わないて。あなたか待っている人は一人だけでしょ。それじゃあ。
121
第70章決着
マリアはG の気の気配をたどって、彼に会いに行った。彼はやはりウェヌスジムにいた。ジムの建物
の前て逆立った銀髪の男かにこやかに隣の若い女と話している。男かあまりに強いオーラを放っている
ために、隣の女カードこにてもいるような普通の若者の雰囲気に見える。しかし、この女こそか間違い
なく現役のプロレス王者グレートアジア13世てある。彼らは協力して手作業てウェヌスジムの建物を再
建したようた。ジムの前のヘンチで座って、ソフトクリームを食べなから、何かを楽しそうに話してい
る。
マリアは全身の気を一気に高めて、G に近づく。彼は既に気付いているはずだったが、表情を全く変
えすに恋人との会話を楽しんている。
―よお、アンタか?
―お取り込み中失礼するわ。ケリを付けに来たと言えは、わかるかしら?
―何となくは、な。
―あなたはまたギャラクシーの決勝でも、真の力を見せてはくれなかった。良かったら、あなたのMAX
の気を見せてくれる。
―いいだろう。アジア、ちょっと離れていてくれないか?
言い終わるとG は全身の気を一気に最大限まて高めた。銀髪の髪はこれてもカード言わはかりに逆立
ち、光り輝いていた。強烈なプレッシャーかマリアを襲う。彼の周りには素人にもわかるくらいオーラ
が激しく具現化され、蠢き、渦巻いていた。
―わかったわ。確かにポテンシャルは私よりは上みたいね。ても、それしゃあ超時空瞬間移動はできな
いてしょうね。フツーの瞬間移動はできてもね。
―痛いところついてくるな、アンタ。とうやら俺はもう、もとの時代には戻れないらしいな。マリアは
地図か何かが書いてあるカードと、鍵をG に向って投けた。
―何のマネだ?
―私の先祖か作ったタイムマシンの隠し場所の在り処と、キーよ。過去ても未来ても、好きな時代に一
回たけトリップてできるわ。一回だけね。たたし定員は二人だけよ。率直に言って、あなた、もうこの
時代にいるべきではないわ。もうあなたの役割は終わったのよ。
―とういうことだ?
―いったい何人殺したの?この時代の火星人たちを。
―さあな。地球にいるやつは全部始末したはずだが。
―地球人であれ、火星人であれ、人間は人間よ。人が人を殺してはいけないわ。ポルゴも私も不殺の誓
いを立てて、今まで生きてきたわ。
―じゃあ、言わせて貰う。地球の人口を半減させたのは誰た?あのキノコ異星人ともたろう?この銀河
は大きさ(キャパシティ)か限られている。無駄なコミやクスともはさっさと始末しないとな。それか俺の
役割た。何か文句あるか?アンタたって、自分の恋人や肉親か火星人に殺される場面を見たら、その前
後に迷わす火星人に手を下すたろ?それとも何か?誰も殺したくないから、自ら進んてテロリストに殺
されるのかよ。
―あなたは人間の手て作られた強化クローン人間というたけあって、やはり冷酷な性格ね。人としての
温かみか全く感しられないわ。思っていたよりは力や精神を制御しているみたいたけとね。私は当初、
あなたか自分の力を抑えられなくなって、たた無秩序に火星人たちを殺しているのカード思ったけドア
なたなりの哲学も持っていたみたいね。私とは共通するところか何もないのか残念たけと。結論は一つ
よ。はやくタイムマシンてとこか別の時代に行って。あなた、もう用済みよ。
マリアか言い終わった途端、G は右の人差し指の先からマリアに向けて気弾を放った。マリアはその気
弾を片手てパっと握りつふした。
―本当言うドアの時足手まといのポルゴさえいなけれは、自分の気をMAXまて解放してあなたを殺すこ
とすらできたのたけと、やはり私も非情になりきれないのか、オチよね。今のて、きっとわかったで
しょ。私はあなたのオリシナルの子孫よ。クローンかオリシナルを越えることなんてできるのかしらね。
122
まあ、いいわ。タイムマシンの件、考えておいて。使用料は私からのサーヒスよ。無料でね。銀河の平
和を天秤にかけたら安いものよね。
言い終わるとマリアは去っていった。
―生意気な女だな。
―ねぇ、G 、あなた一人て過去の世界に戻るつもり?
―いや、俺はもう過去には戻れないさ。俺と一緒に未来に行ってみないか?
―ても未来って、またとこかでプロレスやっているのかしら?
―プロレスは不滅さ。もしなくなっていたら、総合の試合なり、二人て組んてまた未来のキングオヴギャ
ラクシーてひと暴れすればいいさ。
―グレートアジアの名跡を13代目て潰すのは、ちょっと納得いかないんたけとなー。
―んなもの、未来に行ってから14代目を一緒に仕込んで、また継続すれはいいさ。なっ、一緒に俺につ
いて来いよ。
キングオヴギャラクシーて未知数というへき力を発揮したチームダブルエックスの二人は手を繋いて
タイムマシンに向って歩いていった。
これで全ての決着(ケリ)かついたとはとても言いがたいが、ポルゴ、ミス・ワカマツ、マリア、G 、グ
レートアジア達はまたそれそれの道を歩き出した。
地球圏は太陽系帝国の侵略により危機を迎えたか、皇帝の侵略を最終的にストップさせたのは、気と
いう不思議な力を持ったCYBER探偵ポルゴても銀河の掃除人G'でもなく、地球の一般市民だ。
歴史に名を残すほと何かには秀てていないか、普通の生活を送ってきた無名の人々によって、歴史は動
かされているのかもしれない。
ポルゴと西郷のケリはまたついてはいない。東郷師範もまた不在のままではある。しかし、太陽系帝
国による地球侵略がまさに危機一髪というところでストップしたところで、ポルゴたちはしばらく休息
の時を迎えた。
123
第71章紫の豹
太陽系に100年ぶりと言っても過言てはない久々の平和が訪れていた。未だに太陽教の残党たちはテ
ロ行為を繰り返していたか、旧火星皇帝か殺され、この太陽系から帝国主義独裁国家か駆逐された以上、
彼らは衰退の一途を辿っていた。
俺はギャラクシーか終り体調を元に戻すと、またかつてのようにCYBER探偵の仕事をはしめた。結婚
前の素行調査や浮気調査といったいかにも探偵業に象徴的な小さな依頼から、大企業の不正追及まてあ
りとあらゆる仕事を引き受けていた。半年くらいこんな状況か続くと、俺達はひとまず依頼にカタをつ
けて1週間の休暇をとることにした。
休暇といっても、とこかの惑星にバカンスにゆくこともなく、近場をふらふらと飲み歩きを繰り返し
ていた。二日酔いの午前中は事務所兼自宅てソファに横になりなから、ネットヴィジョンてプロレス中
継を見て、たらたら枝豆てもつまんていた。もちろん、俺達の片手にはすかさすヒール缶か握られてい
た。
メインイベントか始まった。会場には大勢のファンか詰め掛けている。プロレス界の最強実力者グレー
トアジア13世の突然の失踪から半年か経過し、某プロレスメシャー団体ては実力ナンハーワン決定ワン
ナイトトーナメントか行われていた。本大会のメインイベント、つまり決勝戦ては、メキシコ流空手の
達人ジュン・バードか順当に勝ち残っていた。対戦相手は全くの新顔だ。また10代後半か20代前半の若
手といってもいいくらいの体のハリとツヤて、紫のコスチュームに、これまた紫の豹の仮面を着けてい
た。この男、パープルパンサーと名乗っていた。
総合格闘技やキングオヴギャラクシーは純粋に実力を争う競技だか、プロレスはただ勝つだけでは、
全く評価されない競技だ。いかにファンを満足させ、感動を与えるか?選ばれたものだけかリングに立
てるプロ競技だ。
しかしあらかじめ勝敗か決まっていることも周知の事実てあり、半は食傷気味に俺はビールを片手に
この試合を眺めていた。ジュン・バードの野郎も相変わらす金儲けやあくとい商売に未練かあると見え
た。
パープルパンサーは明らかに余裕のムーブメントてジュン・バードをいなすように闘っていた。いつ
ても極めることかできますよ。そんなことをちらつかせなから、テキトーにジュンのテコントーベース
の蹴りを受け続けていた。
俺はミス・ワカマツの表情か瞬く間に変わっていくのに気付いた。この試合、どうやら格闘の素人に
もわかるほとの強烈な闘いだ。
俺の眼には、ジュン・バードとパープルパンサーの放つ微妙なオーラか見て取れた。彼らは、自らの
気を最大限に抑えて、隠しなから闘っているか、それてもパンチとパンチ、蹴りと蹴りかコンタクトす
るたひに、お互いのオーラか爆発しているのか確実に見て取れた。
どうやらこの試合、プロレスの名を借りて、お互いに真剣勝負(シュート)をやっているらしい。
たしかにジュン・バードの技は小気味よく確実に決まっている。台本(ブック)とおりに両者は闘っている
のかもしれなかった。たた、パープルパンサーは大けさにタメーシを受けた演技をしていたか、彼かまっ
たく消耗していないのは誰の眼にも明らかだ。あまりに両者に実力差かありすきて、いくらパンサーか
ジュンの技を受けたところて、ダメージを与えるには至らなかった。
ジュンの表情か変わる。ついに必殺のフェニックスアンシャスティスを出し、ひたすら蹴りの乱打てパ
ンサーをコーナーに追い込む。サマーソルト気味のフェニックスライシンクてパンサーをダウンさせた
後、ジュンは満面に笑みを浮かへて右手をパンサーに差し伸へた。
パンサーはダウンしたまま、差し伸へられたジュンの右手を掴ムドー、そのまま手首の関節を極めて片
手てジュンを投け飛はしていた。
会場からとよめきかあかる。明らかに脚本を無視した動作に、ジュンは逆上していた。
「前もってあなたの口座に指定された金額を振り込んておきましたか、契約を無視されたようてすね。
それなら、私もプロレスの紳士協定を破棄させていたたくことにしましょう。」
124
「プロレスの紳士協定」とは、とうやら対戦相手には絶対に怪我をさせないという暗黙のルールのこと
らしかった。ジュン・バードは全身の気を一気に解放すると、そのまま両足にオーラを具現化した。
「トドメてす。フェニックスファイナルアタック!」
ジュンは強烈な右の前蹴りてパンサーを垂直に蹴り上けると、燃える炎のオーラを纏った左足てバッ
グキックを放った。誰もか勝負か決したと思った。
だが、ジュンの左足の先には誰も存在しなかった。パンサーは前蹴りを食らった勢いを利用して空中
て宙返りを行うと、一気にジュンのバッグを取っていた。そのままジュンの右腕をハーフネルソン、左
腕をチキンウィンクに捉えると、高角度のアーチを描いてスープレックスを極めた。この間、0カンマ4
秒。レフリーかスリーカウントを入れた。ゴングか鳴った後も、ジュンか起きることはなかった。その
まま担架て運ばれていった。リングアナかフィニッシュホールドを龍虎SHとアナウンスした。いまたか
つて誰も眼にしたことかない強烈なスープレックスだ。右腕をドラゴンスープレックス、左腕をタイガー
スープレックスのクラッチに捕らえ、相手か受身の取れないまま完全な高角度アーチを描き、一瞬て投
け放つこの技は、タイガードラゴンスープレックスと命名された。パープルパンサーの驚異の実力が世
間に知れ渡ることになる歴史的な一戦だ。
「さすがミス・ワカマツだ。パープルパンサーの実力が君にもわかるんだな。」
「まあね。中に入っている人って一体誰なんてしょうね。こんな凄い使い手か今まてギャラクシーにも
出すに、地球圏の片隅て生きていたなんて。それに年齢も私と同しか、もっと若いみたい。まさに後世
畏るへしね。」
「ああ、この若さてここまて極められるものなんたな。ヤツは並みのレスラー、いや武道家じゃない
な。」
パープルパンサーは、実力ナンハーワン決定トーナメントを制した勝利者に与えられるはすの7冠統一ベ
ルトを受け取らすに、リングサイドの若い水着姿のラウントカール達のところにすたすたと駆け寄って
いった。10人近くいるラウントガールからスタイルの特にいい2人を選ふと、両脇に抱えて、余裕の表
情て堂々と花道を退場していった。
かつてグレートアジア一族の存在により、誰も腰に巻くことかできなかったプロレス界の至宝をあっさ
り無視して、ラウントカールを選ふと言うあまりに常識外れなパンサーの行動に団体上層部のレスラー
やフロント陣は顔をしかめていたか、会場のファン達は明らかにパンサーの強さを熱狂的に支持してい
た。
「あの紫豹、ベルトより女を選んてやかる!」
俺はこれまてグレートアジア一族の前で涙を飲んてきた歴戦の勇者達の表情を思い浮かべながら、ベル
トの権威と歴史を無視したパンサーの行動に強い怒りを覚えすにはいられなかった。
控え室のインタビューては、報道陣からやはり、なせベルトを受け取らなかったかに集中して、強烈な
質問攻めにあっていた。
「コホン。確かにこの7冠統一ベルトは数世紀にわたる地球を代表する先輩レスラー・格闘家達の血と汗
と涙かしみ込んています。しかし、私は汗の臭いよりも、香水の薫りを選ひたいと思っています。そし
てベルトという形骸化した象徴てはなく、強さと実力を己か身体て表現したいと思います。今日ここて、
地球7冠統一ベルトは私の手により封印と言う形にさせていたたきたい。」
報道陣や某団体のレスラー達およひフロント陣かこの意外な発言にいっせいに非難の眼を向けると、パ
ンサーはマスク越しに控え室に押しかけた面々を睨んた。パンサーか両脇に抱えている女性達と一緒に
立ち上かった瞬間、彼を止める者、彼に意見をする者は誰もいなかった。そのままパンサーはタクシー
てホテルに向かっていった。
たかがネットヴィジョンの一番組かもしれなかった。たた、この試合、そして紫の豹の存在か、俺達
の人生に決定的な影響を与えるとはこの時点て想像することは決してできなかった。火星人との長い戦
いを終え休息していた俺の心の中の狼を、この一戦の生中継は強烈に叩き起こしたのだ。それほとまて
に強烈な何か、俺の心に直接訴えかける何かか、この紫の豹の仮面の裏に隠されているはずだった。そ
の正体か何かは一切わからなかった、俺には一つたけわかっていることかあった。
125
ヤツとはとこかて必す合い見えることになるたろう。そして答えを導きたさねはならない。あの若さ
てあそこまで極められる秘密は何てあるかを。そして、ヤツの強さを自分の拳と身体て味わってみたかっ
た。俺も自分の限界、いや極限を知りたくなったのだ。
126
第72章400%の勝率
太陽系帝国が崩壊した後、ジョー・ヨージ12世は経営する法律事務所の資金繰りに困っていた。
「皆さーん、こめんなさーい。今日限りてレイオフ(解雇)テース。ヨージ法律事務所は今日て廃業しマー
ス。退職金はボクのポケットマネーて支払いマース。ハイ、とうそ。今まてこ苦労様デース。」
彼は自宅兼事務所の土地建物を売却する契約を結び、その頭金でかつての部下に最後の給与、いや退
職金を支払った。
今日から住むところもなけれは、行くアテもない。先の大戦て旧太陽系帝国、つまり火星の側に協力
してしまった手前、地球圏に彼の仲間はいなかった。皇帝を失った火星は既に混乱と無秩序か支配して
いるという。
彼もユニバーサル・レスリングの使い手てあり、こうなった以上、前座からても、また一レスラーと
してやっていくしかなかった。しかし、太陽系帝国の司令官という地位を一度ても占めてしまった彼か、
また前座からやり直すこともあまりに酷な話てある。さらに年齢的な問題も存在する。彼は若手てもな
けれは、大御所てもない、まさに中堅のポシションだ。若手からの突き上け、大御所からのプレッ
シャー。やり切れないと思いつつ、信用・評判という大きな財産を火星人に魂を売ることで失った以上、
もはや法律家として地球圏で活躍する道はなかった。
なけなしの現金をはたいて、一番大きなプロレス団体の試合会場に足を運んてみた。そこには、かつ
ての盟友ジュン・バードと紫の豹のマスクを着けた男か闘っていた。これた!俺もこういうレベルの戦い
を一度でもいいからやってみたい。やるか、やられるかのシュートプロレス。ムーブを見なから、思わ
すヨージの体か動いていた。ここは俺たったら、こうかわす。ほんとは右のガードが下かっている、チャ
ンスた。
我を忘れて試合に見とれていると、一瞬のスープレックスで決着かついた。龍虎SH。見たこともない
鮮やかな技だ。紫の豹、こいつの実力は確かに本物だ。
迷わすリングサイドに駆け寄るヨージ12世。リングサイドに陣取っている団体幹部を見つけ出すと、
すかさず自分から次回の興行への参加を持ちかけた。もちろんカードは対パープルパンサーだ。
「よろしいのてすな。確かにファイトマネーは弾みましょう。たた、彼は約束事の通用しない相手て
す。」
「約束事?あぁ、そんなものはどうでもいいデース。ワタシ、彼に400パーセント勝ちマース!」
後でパンサーはタバコの煙をくゆらせなから、この対戦を受諾したという。ファイトマネーはいくら
ても高いほうか、いい。世の中、金次第た。パンサーはそう呟いたという。ポストグレートアジア時代
の新エース、パープルパンサーとジョー・ヨージ12世の試合は、前回のワンナイトトーナメントの一ヵ
月後に行われた。リングアナかますヨージ12世をコールすると、彼は400%と書かれたマスクを被り入
場する。典型的なアマレススタイルのコスチュームに、レスリングシュースをはいて入場する。
一方、パープルパンサーは「哀しみの孤豹」のテーマ曲とともにダッシュて入場する。紫の豹のコス
チュームに紫のタンクトップ、パンタロンて統一していた。ゴングか鳴る。ジョー・ヨージは音速のタッ
クルてテイクダウンを奪い、蛇のように絡み付いてグラウンドを仕掛ける。パンサーはカードポシショ
ンて下からヨージをコントロールする。ヨージは脅しを兼ねて上からパンチの雨を降らすか、パンサー
は左手てヨージの頭を掴み、うさいパンチは右腕て全部受けきっていた。
やはり、圧倒的な実力差だ。パンサーには隙というものかなかった。たとえグラウンドてマウントを
取られたとしても、パンサーの絶対優位は変わらない。そんな雰囲気か会場を支配していた。
パンサーはエビの体勢で距離をとると、寝たまま蹴りを放ち、間合いをとって立ち上かった。ヨージは
マスクを取って、掌底てパンチを放つ。パンサーは今のパンチの軌道を見切ると、左のローリングソバッ
トて合わせた。確実にヨージのレハーを射抜いていた。ヨージは左膝をマットについて屈み込んた。パ
ンサーはすかさすダッシュして閃光魔術を仕掛ける。ダウンしたヨージを尻目にパンサーはサートロー
プまて一気にロープを駆け上かると、後方宙返りの体勢て一回転して両脚てヨージの腹に着地した。ムー
ンサルトフットスタンプか華麗に決まった。
127
ダウンしたヨージを無理矢理立たすと、パンサーはヨージの右肩をハーフネルソン、左腕をチキンウィ
ンクに捉え、一気にスープレックスて頭からマットに放り投けた。そのまま完全なブリッジてホールdオ
の体勢に入る。タイガードラゴンスープレックスが決まった。3カウントかきっちりと入っていた。
もう仕事は終わった。そんなセリフを言いたけに、パンサーはリングを後にしようとした。その時だ。
羽織袴姿の古武士とでも言うべき男か立ち上かり、いきなりリングサイドまて歩いて近寄ると、パン
サーに挑戦状を突きつけていた。この男こそか、プロレスを単なるジョービジネスと否定し、今まて総
合戦にしか出なかった伝説の武術家、西郷詩郎だ。西郷は半年後のムーンアリーナての決戦要求を突き
つけていた。パンサーは無言でその挑戦状を受け取ると、ラウンドガールにも声を掛けずに会場を後に
した。
パンサーはマスクを着けたまま会場からタクシーてとある小児病院に向かっていた。その小児病院の
個室にパンサーは花束を持って見舞いに駆けつけた。
「やっパりパンサーは強いね。生中継で見ていたよ。」
「あぁ、ヒロシ君、ワタシは次の試合でもきっと勝ち続ける。たから、注射やメスを怖いと言わないて、
頑張って手術に挑戦してくれ。ワタシとの約束だ。」
「今日挑戦状をパンサーにたたきつけた西郷選手って強いのかな?あの人に勝ってくれると約束してく
れたら、ボクも手術を受けることにするよ。」
パンサーは無言て頷くと、病室から外の廊下に出た。そこには少年の祖母と思しき高齢の女性かいた。
「ワタシの今まてのファイトマネーは全て貴女名義の口座に振り込みました。これてなんとかヒロシ君
の手術費用も足りるはすです。」
「なんとお礼を言ったらよいものてしょうか。たた、ヒロシは死のリスクが非常に高い手術を受けるの
を怖いと申しておりまして。そこをなんとか貴方に説得していたたけると。」
少年は手術をしなけれは寿命は確実にあと2年、手術をして完全回復する可能性は二分の一、非常に難
易度の高い手術のため、手術中の事故死の確率も同しく二分の一という重い遺伝病に罹っていた。パン
サーは自分の青年時代の大恩人から孫を救って欲しいと頼まれ、レスラーとしてテビューし、そのファ
イトマネーを全額少年の手術費用として渡していたのだ。
病院暮らしか長く続き痩せこけてしまっている少年を思い出しつつ、パンサーはこう呟いた。
「私にも、もう半年なんていう時間は残されていない。しかも相手はあの西郷か。運命の皮肉とはよく
言ったものだな。」
普通の地球人か一生かかっても稼くことかできないような大金をプロレスのリングで稼いても、肝心
の少年は手術を恐れていた。誰ても死は怖い。しかし、手術なしては2年以内に命の危険か確実に迫ると
聞かされてしまったパンサーは、いくら危険な手術てあっても、少年に手術の受諾を勧めるしかなかっ
た。老人か先に死に、若者か後に死ぬとは限らないのか世の常。自分の寿命が残っていたら、パンサー
は少年に分けてやりたかったか、パープルパンサーとしての彼に残された時間はあと半年すら残されて
はいなかった。彼は雨の中、病院を後にすると、マスクを外し、恋人にも見せたことのない素顔を曝け
出していた。彫りの深い縄文系の若いジパング人の顔をしていた。男は雨に濡れなから、ただ真っ直く
前に向って歩き出した。その行き先には、彼を継く者か待っているはすだ。
128
第73章究極の依頼
俺はオフの日にミス・ワカマツと居酒屋をはしごして、肩を組みなからほろ酔い気分て街中を闊歩し
ていた。いや、正確にはふらついていた。あと200メートルて自宅兼事務所たな、そんなことを考えつ
つ、俺達はふらついていた。
突然、目の前に金髪、ピアス、派手な真紅のTシャツにジーンスという派手な出て立ちの今風の若い
男か歩いてきた。自然と目か向いてしまう彫りの深い特徴的な顔た。しかし、年齢的にはたたの青二才
だ。男は俺とミス・ワカマツの間を遮るように立ちふさかると、軽くタックルのように俺の右肩にぶつ
かってきた。痛い。
「よう、ポルゴ!ひさしふり。」
「あぁーん?テメーみたいな青二才に呼ひ捨てて呼はれる筋合いはねーせ。何処の何奴だ?」
一瞬、若い男の眼光か光った。よく覚えている険しい目つきだ。
「ポルゴよ、出世したのう。このワシにそんなテカイ口を叩くとはのう。」
「あ、あんた、もしや、もしやミスター東郷ては?」
「その通りしゃ。ワシは金星に行って生命の泉に浸かった後、その成分を採取して銀河帝国て分析を依
頼した。ワシは生命の泉の成分から作った新薬てここまて若返ったのしゃ。」
その後、俺達はこの自分らより若い「ミスター東郷」を事務所に迎えて、とっておきの金の泡盛を注き
なから、事情を聞いた。
金星の生命の泉と銀河帝国の力て若返りに成功したミスター東郷てあったが、やはり若返りにも賞味
期限かあるらしい。期間は半年だ。若返りの新薬を完成させた東郷は自ら実験台となり、地球圏に戻っ
てきた。問題は、これからだ。
「ワシが地球圏に帰ると1通のメールか来ていた。ワシの青年時代の初恋の人からじゃった。」
齢60を過きて、嬉しそうにまた初恋の人に未練かあるとても言わんとするミスター東郷の執念はうさ
かったか、問題はそのメールの内容だ。
ミスター東郷の初恋の人、つまり我々の流派の先代の当主の娘は源夫人といった。ミスター東郷か修
行て地球圏を出ていた際に、先代の源師範は西郷詩郎の手て殺められている。つまり先代の死には東郷
にも責任かあり、その娘には負い目を感しているという。メールの内容は孫か重い遺伝子病にかかって
いるか、孫の両親は地球侵略戦争て殺され、現在の住居や財産も戦争て火星人に破壊されてしまった。
頼りになる人間は貴方(ミスター東郷)たけたから、相談にのって欲しいとのことだ。ミスター東郷は源
夫人からメールをもらうと、東郷の使いと称して紫の豹のマスクを被り、彼女とその孫のヒロシに会い
に行った。事情を聞いた彼は、手術代は俺かプロレスて稼くから、君は勇気を出して手術を受けろと勧
めたのだ。
悪どい試合も含めて、伝説の地球7冠ベルトすら手中にした東郷は、ファイトマネーを全て老女の口
座に振り込んて、平均的地球人か7回生まれ変わって一生働いたとしても払えないと言われた超高額な手
術代を自力て稼いた。だが、肝心のカネかそろったところて、ヒロシ少年は死亡確率50%の手術を恐れ
ていた。ヒロシ少年からの提案か、西郷詩郎に勝ってくれたら、自分も勇気を出して手術に挑戦すると
いうことだ。
「西郷詩郎との試合は半年後のムーンアリーナた。ワシはその頃には、若返り薬の薬効か切れ、副作用
もあわせて、たたの老人、いや以前以上に老け込んているはすた。そこてた、ワシは愛弟子のお前に頼
みかある。この紫の豹のマスクを着けて、パープルパンサーとして西郷と戦ってほしい。そして、ヤツ
に勝って欲しいのじゃ。」
あまりに飛躍したキツ過きる話だ。あの地球圏、いや銀河最強の格闘家西郷詩郎とプロレスのリングて
で、しかも真剣勝負(シュート)で、紫の豹として闘えという依頼だ。しかも、この依頼の性質上、敗北
や失敗は一切許されなかった。先代の師範の娘の孫の命かかかっていた。これは、あまりに因縁しみた
話だ。
129
「安心しろ、また時間は半年ある。ワシはあと数ヶ月間今の若さを保っていられる。それまてに、源流、
いや東郷流の古武術の奥義と真髄をお主に全て叩き込んてやる。もちろん、必殺のタイガードラゴンスー
プレックスもじゃ。しばらく一緒に金星フロンティアに行って修行をしよう!!」
圧倒的にやる気のミスター東郷を尻目に、また地獄の修行か始まると聞いた俺は、溜息をつかずには
いられなかった。
130
第74章仮面の中の真実
俺とミスター東郷は金星フロンティアに到着すると、さっそく修行を始めた。ミスター東郷はポケッ
トからいつもの豹のマスクを取り出すと、俺に渡した。
「ナンすか?このマスク。真っ黒っすよ。これしゃあ、ブラックパンサーですよ。」
「まあ、ええからそのマスクを着けてみい。お主かパープルパンサーになれるかのテストじゃて。」
俺はマスクを被ってみた。相変わらすマスクは黒いままだ。
「いいか、そのまま、全身の気をマックスまて高めるのじゃ。」
俺は全身の気を一気に最大まて高めた。目の前にある鏡て確認すると、俺のマスクは赤に変色していた
「大分修行をサホっていたようじゃな。今のお主はパープルパンサーところか、フツーのパンサーにも
なれない。」
ミスター東郷の話によるとこの豹のマスクの秘密はこうだ。「パープル」パンサーのマスクの色は通
常は黒た。このマスクを着ける人間の気の強さ・波長に応して7段階に色か変化する。
最初は、俺か着けた時の赤、次は橙、黄、緑、青、藍、紫の順に気の強さに応して変色する。世間一般
て言う豹のマスクは黄色だ。一番低級の赤のレベルの気しか出せない俺には、フツーのパンサーの色て
ある黄色に到達することすらできなかったのた。
「人間の気を使うレベルは大きく分けて4段階に分かれる。素人の次に気を初めて使いこなせるように
なった第一段階ては、赤、橙。第二段階ては、黄色、緑。世間的には達人と呼はれる第三段階ては、青、
藍。ワシのような人智を超えたレベルの者は第4段階、つまりこのマスクは紫色として反応する。お主か
ワシとギャラクシーに参加したときには、また第2段階のレベルしゃった。第4段階の西郷に勝てる余地
かないと言ったワシの言葉の意味かわかったしゃろう。お主は修行をサホって、彼女と酒はかり飲んて
遊んていたのて、遂にレベル自体か下かって、素人同然の第一段階まて実力か落ちている。豹のマスク
の前ては、ウソはつけないのう。」
あまりに絶望的な情報だ。パープルパンサーのマスクにそんな秘密かあったとは知らなかった。
「まあいい。ワシかこれから地獄の修行て、お主を第4段階まて覚醒させてやる。とりあえす、そのマス
クを被って、せめてもとの第2段階まで実力が戻るまで、野生の銀河ワニとても遊んておれ。ワシは金星
ホステスとバーで一杯やってくる。じゃあな。」
あまりに無責任な師匠の言葉だ。
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第75章究極の絶滅危惧種
俺はひたすら野生の銀河ワニに戦いを挑んては、発頸パンチやキックでKOしていった。ミスター東郷
は、俺が倒したワニの肉を冷凍しては、刺身やステーキに調理して、手当たりしたい泡盛のつまみにし
て食べていった。
「そろそろ奥さんや娘さんに連絡をしておきますか?こ家族も地球て心配されていることてしょう。」
「いや、その必要はない!ワシは既に家族に健在てあるとメールを送っている。もちろんとこの惑星にい
るかは、もちろん教えてはいないかな。」
この酒・タハコ・女好きの3点そろった爺さんか、俺よりも若返ることに成功しているという救いようの
ない事実に怒りか思わすこみ上けた。古武術の師匠てある上に、俺より若いという時点て、こちらに勝
ち目はなかった。はやく若返り薬の効力か切れて、もとのシシイにもとってもらいたかった。いや、ま
だ決して師匠はホケてはいなかった。
「ポルゴよ。とうやら金星ての修行で、第二段階までは覚醒することに成功したのたな。お主のマスク
も、今はやっと黄色に輝いている。さて、ては銀河ワニに続く、ワシらのスパーリング・パートナーを
紹介しよう。お主は、また今のワシとやるには実力か低すきる。ますはこのヒョウちゃんとても勝負す
るのだな。」
ミスター東郷かヒョウちゃんといって連れてきた相手。あろうことか、金星フロンティアにおける究
極の絶滅危惧種、パープルパンサー(金星豹)だ。ミスター東郷かなせリングネームをパープルパンサーに
していたかか今よくわかった。パープルパンサーは金星て銀河ワニの天敵としてその牙や爪て猛威を振
るっていたか、銀河ワニの囲い込み政策、つまり柵て囲まれ管理された銀河ワニ牧場か金星フロンティ
アて増加するに連れ、彼らの絶滅か危惧されるようになった。
「なーに、こんなのはたたのネコと同じよ。もちろん猫の親戚だから、平気で人間に戯れるつもりて、
噛んたり、嘗めたり、引っかいたりする。ポルゴよ、くれくれも言っておくか、パープルパンサーは太
陽系条約で指定された絶滅危惧種だ。専守防衛に徹するのしゃそ。」
ミスター東郷は言い終わると、パープルパンサーの鎖を解き放った。親愛の情(?)を浮かへて、俺に向っ
て飛ひ掛ってくる野生のパープルパンサー。俺は猛然とダッシュして逃けた。金星における百獣の王に
勝てるほと、俺の脚は速くはない。ついに追いつかれた。しゃれるつもりて引っかいてくるか、相手は
人間の倍の大きさだ。必死にかわす。こんとは俺の右腕を嘗めてきた。悪寒か走る。俺の頭にヒョウちゃ
んか噛み付こうとしてきたところて、俺は必死に両腕てヒョウちゃんのアゴを開いて、とうかそれたけ
はと哀願した。絶対、コイツ俺を食うつもりた!俺はそう思った。なおも親愛の情を浮かへて、俺の頭に
噛み付こうとする紫の金星ヒョウ。絶体絶命の危機だ。
パン、パン!
ミスター東郷は両手を叩いて音を立てると、こう言った。
「もういいそ。ヒョウちゃん。今日のおやつに、銀河ワニのおいしいヒレ肉をやろう。こっちにおい
て。」
眼の色を変えて、喉をゴロゴロと鳴らしなから、ミスター東郷のほうに駆け寄る金星ヒョウだ。
「さすかに冗談かきつ過きたヨージゃの。ポルゴよ、済まなかった。またワシもあと二ヶ月はこの若さ
を保っていられると思う。その間は、ワシかレベルを2段階落として、お主のスパーリング・パートナー
を務めよう。最後の仕上けは、適任者を用意してある。さてと、その仮面を脱いて、ますはパンチンク
グローブを付けるんしゃな。ますは打撃の基本の型の確認からゆこう。ワシかミットてお主の技を受け
る。好きなように打って来い!!」
俺は構えて真剣な表情になると、心を落ち着けた上て、ひたすら無心にミスター東郷のミットを打っ
ていった。この時間か止まったような感覚。これは俺達師弟に共有される濃い修行の時間からのみ味わ
えるものた。たた無心にパンチ、キックを打つ。それたけて、心か研き澄まされていった。さっきの金
星豹への恐怖も徐々に薄れていった。
これで晩飯に出るメインティッシュか銀河ワニの肉しゃなかったら、もしミス・ワカマツか金星まて
一緒に着いて来てくれたら、全てか幸福といえたかもしれない。早くジパングに帰って、豆腐と彼女の
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手作りミソスープか食へたかったか、俺達の置かれた状況はそこまて甘くはなかった。何しろ、あの西
郷詩郎を相手に真剣勝負(シュート)を演して、しかも勝たねはならないのだから。
やり直しが利かない一度限りの人生だけに、失敗は許されないのか、この賭けだ。
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第76章究極の必殺技
俺はミスター東郷、いや伝説のパープルパンサーの龍虎SHを絶対に信してはいなかった。あれは、ブ
レーンバスターと同してプロレスの約束事の範囲内で成立する必殺技たと思っていた。今日の打撃練習
か終わり、組み技の時間に入ると、ミスター東郷はこう言った。
「お主にそろそろパープルパンサーの必殺技、タイガードラゴンスープレックスを伝授しよう。今まで
のワシとの修行の成果て、お主も第三段階まて覚醒したようじゃしな。」
言い終わると、ミスター東郷は一瞬て俺のバックを取り、俺の右腕をハーフネルソン、左腕をチキンウィ
ンクに捉えた。
どうせ、右肘て発頸かまして外せはいい。俺はそう思っていた。動けない。ミスター東郷はクラッチ
を極めた瞬間、気て俺の両腕、いや上半身の動きを完全にブロックしていた。
そのままミスター東郷は一気に反り返り、強力な龍虎SHか決まった。俺は受身も取れずに、そのまま気
絶してしまった。
「とうやら眼か醒めたようじゃな。お主、ワシのタイガードラゴンスープレックスを嘗めてかかってい
たヨージゃの。あと、若さを保ったワシに残された時間は一ヶ月しゃ。それまてに、気を使って相手の
体の動きを封しるという技術をお主には覚えてもらおう。それたけしゃの、とりあえす今のワシかお主
にしてやれることは。」
はっきり言ってこの金星ての修行、いつものように何もいいことはなかった。金星にいる女は俺の好
みてはなかったし、何しろこの惑星には修行目的て来ていた。来る日も来る日も修行。俺は夢の中ても
あのミスター東郷の鬼神の表情にうなされていた。とこまて気のレベルか上かったカード思い、毎日豹
の仮面を被って鏡を見ていたカードんなに頑張っても豹のマスクは青色にしか輝かなかった。第三段階
の下のレベルだ。まさにブルーな日々だ。
この均衡状態が打ち破られるあの日か来るとは、俺はまた思っても見なかった。
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第77章切り札
もうそろそろミスター東郷の若返り薬の効き目も切れるはずだ。これてどうやら俺も解放される。例
の試合まてあと2ヶ月を切ったな。そんなことを俺は考えなから、ひたすらミスター東郷の構えるミッ
トに強烈な蹴りを放っていた。
「悪いかポルゴ、ワシはしばらく地球圏に戻ることにする。ワシか若さを保っていられるのも、あと2
週間程度しゃろう。最後に地球の若いキャルをナンパしに行きたい。ついでといってはなんたか、次の
スパーリング・パートナーを連れてくるつもりしゃ。その間はスマンが自主トレをしてもらうことにす
る。くれぐれも手を抜かすやり抜くことじゃ。」
俺は思わす心の中で、やった!と叫んていた。師匠か女好きたったことか不幸中の幸いだ。ちなみにこ
の師匠は酔拳まてマスターしているところか余計に手に負えなかった。まあ、これはかなり蛇足な情報
たったな。
「そうですか、残念ですな。私は若返った全盛期の師匠とせひ一度真剣勝負をしてみたいと思っていま
した。次の練習相手か誰になるかはわかりませんか、期待してお待ちしております。」
「そうか、ワシとやりたいか?ては、その望み、今叶えて進せよう。ワシにそのパープルパンサーのマ
スクを寄越せ。」
ミスター東郷は真っ黒なヒョウの仮面を被った。ミスター東郷の肌にマスクか触れた瞬間、一気にマ
スクは紫色、つまりパープルパンサーのマスクに変化した。
「お主にはまたワシの本気を見せていなかったな。遠慮せすに掛かって来い。」
ミスター東郷は紫の豹の仮面を付けたまま構えた。隙か全くない。俺は拳をアコの前に構えた瞬間、
集中力のホルテーシを限界まて上昇させた。この相手、一瞬て相手に致命傷を与えることかできる圧倒
的な強さを持っている。俺は心を決めて、ストレート気味の左のジャブてミスター東郷に殴りかかる。
ミスター東郷は今のパンチをよける事すらしなかった。きっちり右の頬てパンチを受けると、カウン
ターの左て俺のアゴを正確に打ち抜いていた。なおも踏み込んて右のフックて俺のこめかみを打ち抜く
ミスター東郷。今度は左の中段アッパーて俺の鳩尾を打ち抜いていた。
まるで俺は人間サンドバッグだ。仕方なくボディタックルをかまし、間合いを詰める。ミスター東郷
は俺の体をそのままブレーンバスターの体勢て持ち上けると、捻りを加えて一気に垂直落下させた。そ
のまま上になってミスター東郷は数発マウントパンチをかますと、俺の右腕を逆十字に捉え、一気に極
めた。俺はミスター東郷の体を二回叩いて、ギブアップの意思表示をした。
「なぜ、古武術の技を一つも使わすにワシか戦っていたと思っていることしゃろうな。技なんてもの
は、ほんとはとうてもいいんしゃ。問題は心と心のふつかり合いじゃ。今のワシには若さと勢いかある。
たたやりたいようにプロレス技を連発するたけても、一方的に勝負を決めることかできる。お主にはあ
と2ヶ月弱で、今のワシを越えてもらうことになるたろうな。ては、さらばしゃ。」
そういい残すと、ミスター東郷は俺にパープルパンサーのマスクを残して去っていった。やっと解放
されたという思いか走る。しかし、修行を十分積んてきたはすの俺か、若い時の姿の師匠に勝てなかっ
たという事実にシコリか残った。俺にはまたまた足りないものかあるはずだったか、それか何かはわか
らなかった。道を究めた者とそうてない者の差は歴然だ。ても、そんな俺にもきっと明日かあるはずだっ
た。
それから数週間後、俺か借りている金星のホテルの一室に一人の若い女とヨボヨボの老人か訪ねて来た。
老人の方は、杖をついてやっとのことて歩いている。若い女はショート気味のウェーブがかった銀髪で、
完璧に化粧をこなしていた。
ジイサンのほうはたふんミスター東郷たな。いや、絶対にそうた。若い女を連れてきている時点て確
定た。しかし、いやに老け込んたな。実年齢より10歳は老けている。さすかに若返り薬の副作用はキツ
イな。俺はそんなことを考えていた。
「おっス、ポルゴ!元気たった?」
「あ、アンタ、マリアさんか?」
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「ポルゴよ。次のスパーリング・パートナーをこのマリア・ハロルドさんにお願いすることにした。さっ
そく外てスパーリングに入ろう。」
あまりに大人ひた雰囲気の化粧と服装で、俺はこの女かかつてのタッグパートナー、マリア・ハロル
ドであることをすくには見抜けなかった。ニコッとあどけない笑顔をされると、こちらも微笑み返して
しまうと同時に、この古武術の達人てある娘か、また高校生てあるという嫌な事実をも思い出してしまっ
た。自分よりケンカか強いカキに敬語を使ってしまう自分か許せなかった。向うは、俺に対してタメ語
だ。
俺はさっそくこのマリアさんの実力を試そうと思った。こっちは反吐を吐くほときつい修行をこなし
ていた。また高校生のマリアさんは、学生仲間とコンパやカラオケに明け暮れ、修行をサホっていただ
ろうと俺は内心読んていた。
「マリアさん、とりあえすこのマスク着けて見て、ねっ。」
「あぁ、例のパープルパンサーのマスクね。いいわ。」
マリアさんか黒いマスクを被った瞬間、ヒョウの仮面は黄色に変化した。もっともありふれている色だ。
この色のレベルは第二段階の下だ。もはや第三段階に到達している俺の気のレベルより明らかに格下だ
「たしかあなたのレベルは第三段階たったわよね。コメン、今のはたたの冗談、今から本気を出すわ。
マリアさんが言い終えると、ヒョウの仮面は一気に紫に変色した。やはりこの女、武の道を極めてい
やかる。俺は思わす冷や汗をかいてしまった。
「事情か事情たし、本当はできれは私かパープルパンサーの役割を変わってあけたいけとね。問題は私
のスタイルよね。このスタイルたと、すく女だってはれちゃう。パンサーの中身かすり替わっているっ
てね。晒しても巻いて出ようかしら。ても、ヒップも体つきもセクシーな女そのものたしね。東郷さん
の代わりは、ポルゴ、あなたしゃないと勤まらないわ。これから約一ヶ月、一緒に私と修行しましょう。
もちろん、手加減はするつもりはないわ。」
「ワシは今回の修行の全てをマリアさんに一任することにした。もうワシか若返ることは金輪際望めな
いか、しばらく生命の泉て一服てもしていようかの。ポルゴよ、マリアさんをワシたと思って、かっち
り稽古を付けてもらえ。お主に、西郷との一戦の全てを託す。さらはしゃ。」
もとの老人、いやそれ以上に老け込んたミスター東郷か温泉療養に行くと、今回の切り札てあるマリア
さんとの壮絶な修行か始まった。「手加減はするつもりはない」というマリアさんの言葉を俺は身を持っ
て思い知らされることになる。
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第78章嵐
西郷詩郎との試合をあと一ヶ月後に控えて、俺とマリアさんの修行か始まった。俺は青色のレベルに
しか反応してくれない「パープル」パンサーのマスクを着けて、マリアさんとスパーリングをこなして
いた。
「仕方ないわね。引き立て稽古をしてあける。無理な反撃は絶対にしないから、安心して攻めてきて。
俺は完全なシュートスタイルてマリアさんに蹴りかかる。マリアさんは完璧に俺のキックを一発一発カー
ドしている。相手かカードを固めたスキをついてバックを取ると、すかさす俺は高角度ジャーマンを決
めた。その後、グラウンドに移行した俺は、左腕をマリアさんの首に上から巻きつけ、右腕てマリアさ
んの右腕を制した。ドラゴンスリーパーの体勢て、今度は左足をマリアさんの胴に掛ける。ドラゴンス
リーパーとグラウンドコフラの合わせ技、グラウンド冬木スペシャルか極まった。ギブアップか取れる
かも。
甘い思いがよぎった。
マリアさんは空いている左の拳に全身の気を込めると、パンチ一発て今の複合関節技を外した。いや、
正確には今の強烈なパンチて俺か一瞬、全身の力を失ったという表現か正しかった。そのまま立ち上か
り、パンチてダウンした俺を見下けるマリア・ハロルド。
「ダメダメじゃん。ポルゴ、いやあなたは今たけは夢のヒーロー、パープルパンサーなんだから、もっ
と自由かつ夢のある闘い方をしないとね。ちょっとそのマスク、私に貸してみて。見本を見せてあける
から。」
俺から半は強引にヒョウの仮面を奪うと、マリア・ハロルドは正真正銘の紫の豹に変身した。俺は気
をギリギリまで高めて、最大限に警戒して構えていた。
目の前の紫の豹はいきなり俺にローリングソバットを叩き込んてきた。レハーを打ち抜かれ、ひるん
たところて、サマーソルトキックて俺からダウンを奪う。ダウンしたところをムーンサルトフットスタ
ンプて踏みつける。俺はひたすら横に転かってエスケープした。なおも攻撃の手を緩めない紫の豹は、
ヒールホールトて俺を攻める。空いている方の足て必死に蹴りつけて、いまの技を外す。立ち上かろう
とした俺の両腕をマリアさんはクラッチすると、俺を真ッ逆さまに抱え上け、シャンピンク・パンサー
ドライバーに捉える。
脳天をまともに打った俺をそのままフォールすると、自分てワン・ツー・スリーと言って、勝手に決
着を着けてしまった。そのまま伸ひてしまう俺。
「しょうかないわね。起きて。これじゃあ、当分西郷詩郎にはかないそうにないわね。今のあなたには
何か足りないのかしら。もちろん覇気か足りないのは見え見えたけとね。とうしたら後一ヶ月てあの西
郷さんに勝てるレベルまていけるのたろうかしら。やっパりスモールパッケーシホールトとか丸め込み
系の技てスリーカウント狙うしかないのかしらね。ても、それしゃあ、正義の戦士の名か廃るわね。」
「いや、俺はやるよ。この一ヶ月たけは、マリアさん、あなたについて行く。師匠の初恋の人の孫を死
なせるわけにはゆかないしな。」
「そう、しゃあ、ワタシか中学生の時まて父から受けた壮絶に厳しい修行をあなたにも適用するわ。本
当に覚悟はいい
わね。また、ワタシの本気をあなたに見せたことはなかったわ。本気のワタシと今からスパーリングを
しましょう。ワタシから一度てもダウンか奪えたら、休憩タイムにしてあけるわ。一度てもね。」
マスクを脱き捨てたマリアさんの気か爆発的に上かった。もはや人間の域を超えている気のレベルだ。
銀色の髪かそのまま逆立つと、全身のオーラか体の周りに炎のように具現化している。俺は一瞬、プレッ
シャーて金縛りにあった。
相手の壮絶なまての強さに震える全身を抑えて、一歩、また一歩踏み込む。思い切り良く右のストレー
トを放った。当たった!そう思った瞬間、マリアさんは俺の鼻の先にいた。そのまま強烈な右アッパーて
アコを打ちぬかれる俺。後ろに倒れそうになった俺の胸元をマリアさんは掴んだ。
「パンチ一発でダウンさせてあなたを休ませるほど、ワタシは甘くないわ。」
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そういい終えると、マリアさんは強烈な右肘て俺のコメカミを打ち抜いていた。すかさす背負い投け
て俺を投けるマリア・ハロルド。俺はやられるかままに、全くなすすべがなかった。
マウントポジションからマリアさんのパンチか飛ふ。左膝を俺の喉元に押し当て、俺の右腕を極める
と、マリアさんはストランクルホールト・ネオを極めた。ハタついて逃れようとする俺。
意識か遠のく。数分後、俺は強烈な張り手て叩き起こされた。
「落ちた位て練習を終わらせるほと、ワタシは甘くないわ。さあ、立ち上かって。ワタシからダウンカー
ドれるようになるまては、絶対にあなたを休ませないわ。たとえ、一週間かかったとしてもね。」
俺はめけすに何度ても立ち上かった。マリアさんのスネに強烈な足払いローキックをお見舞いする。ひ
くともしない。なおも同しところを狙って蹴る俺。マリアさんは軽く右足を上けて、俺の足払いをかわ
すと、ツハメ返しの要領て俺の左足を刈り払った。ダウンした俺の頭を強烈なマリア・ハロルドのスト
ンピンクか襲った。
すかさす横に寝転かってエスケープする。こんな時に「武器」でもあれは、一気に形勢逆転かできる
のにな。そんな思いがひた走る。気を取り直して、ハンドスプリングて俺は勢いよく立ち上がった。
「ダウンさせれは、いいんたろ。わかったよ、フス。もう嫁に行けない顔にしてやるぜ。」
マリアは逆上することもなく、冷静な表情を保っている。
俺は全身の気を一気に左の掌に具現化すると、マリア・ハロルドに向けて、強烈な気弾を放った。その
ままパワー全開て強引に押し切る。マリアの体か俺の蒼い気て包まれる。
そのまま、燃えてしまえ。
背後に強烈な気の気配を感した。次の瞬間、俺は水面蹴りてダウンを奪われていた。そのまま、喉元
を踵て踏みつけられる。息をすることすら適わなかった。
「甘いわね。こっちは瞬間移動もできるのよ。よくもこの天下一の美人さまをブス呼ばわりしたわね。
そのまま落ちてもらうわ。」
マリアさんは俺の喉に左膝をあてかい、ギロチンチョークの要領て一気に極めた。たまらす俺は落ち
てしまった。「全くお話にならないわね。今日はもう休んていいわ。」
マ リアさんは俺に活を入れると、そう言い残し、去っていった。嵐のような一日がやっと終わった。
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第79章冥王拳
マリアさんは、一向に格闘家としての一線を越えることかできない俺に、愛想を尽かしているようだ。
またまた第四段階の気のレベルには到達できなかった。西郷との試合は数週間後に迫っていた。油断は
できない。
「仕様がないわね。あなたには古武術の才能もプロレスの才能も、どうやら全くないみたいね。今まで
この業界てやってこれたことかかえって疑問ね。前回のギャラクシーもワタシの足を引っ張っただけと
いうのか実情みたいね。ても、そんな駄目人間のあなたにも向いている禁断の格闘術があるわ。私たち
の一族の流派、ハロルド流とは明らかに異なるけとね。」
「何だ?その格闘術ってのは?」
「あまり胸を張って勧められるようなものじゃないけと、冥王拳っていう強力な拳法、いや格闘術があ
るわ。自分の潜在能力以上の気を、一時的に引き出して闘うの。もちろん、そのツケは後になって全部
自分の身体に返ってくるわ。この冥王拳の使い手は、今まて何人も自らの限界を越えた気を引き出した
所為て、あの世行きになってきたわ。この禁断の拳法を編み出した創始者は死神みたいに危険な存在と
いう謂れて、冥王拳と呼ばれているの。この冥王拳をマスターすれは、西郷詩郎に勝つことはできなく
ても、決して負けることはないわ。今からその型をあなたに教えるわね。」
マリアさんは右手て空を切った。その右腕の先には強烈な気の剣か具現化されていた。
「この気のオーラて作った剣は、死神か使うという伝説の冥王剣をモチーフにしているわ。この剣てワ
タシかあなたを攻撃するから、とりあえす全身の気を最大まて引き出して、避けるなり、防御するなり
してみて。きっと自然に冥王拳の型か身につくはずよ。」
マリアさんは強大な気の剣て俺を切りつけてきた。俺は全身の気を最大限に引き出して、今の一撃を
かわした。今度は脳天目掛けて剣か降ってきた。俺は真剣白羽取りて今の攻撃を捉えきった。マリアさ
んは気の剣にパワーを送り、巨大化させて俺の両手を振りほといた。巨大化させた剣て強引に俺を切り
つけてくる。全部スレスレてかわした。
マリアさんの気の剣か巨大化するに伴い、俺の体の気も剣に合わせるように高まってゆく。相手のス
ピートは異常なまてに速い。剣の動きになれるにつれ、俺の体の動き自体も相手に合わせるように速まっ
てゆく。
マリアさんは右手に気の剣を持ったまま、今度は左手て逆水平チョップのように空を切った。今度は
左手にも剣か握られている。二刀流た。もはや俺も素手ては相手に対応てきなくなった。両の掌の先に、
俺は気て作ったオーラを纏い、盾のように用いることにした。
「矛盾という諺かあるわね。あなたの盾とワタシの剣、とちらか強いのかしら?」
マリアさんは容赦なく2本の剣て俺に切りかかる。俺は両手の盾てカードする。マリアさんか全身の
気を最大まて高めて、具現化した気を人間の身長くらいの長さまて拡張した。
俺は相手の気に合わせて盾の大きさを倍増させた。たた一方的に受けるたけては、いすれ相手の力か勝
つことはわかりきっていた。俺は両手の盾の形を、やはり剣の形に変えると、具現化した2本の剣てマ
リアさんを斬りつけた。マリアさんは片方の剣て俺の両方の剣を受けると、空いたもう一方の剣て俺の
喉元を突き掛かった。俺はサイドステップて今の突きをかわすと、気を具現化して武器に変える事は止
め、拳の先に全身のオーラを集めて強烈な右ストレートを放った。今の渾身の一撃で、ついにマリアさ
んは膝から崩れ落ちた。
「とうやら、あなたにも冥王拳は使えるみたいね。あなたは今、自分の潜在能力1.5倍の力て闘っていた
わ。そのツケはたふん、あと一週間寝込むとかそういうオチになると思うけドアなたはこの冥王拳を応
用してあの西郷に挑戦する以外ないわ。あなたか冥王拳を使っている時は、たふん第四段階に到達して
いたと思うわ。自分の潜在能力を越えた力を引き出す禁断の拳法か冥王拳だからね。今のパンチは、確
かに効いたわ。では、しばらく休ませてもらうわ。」
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第80章無言
運命の日かやってきた。銀河最強と謳われる伝説の格闘家西郷詩郎とパープルパンサーの試合か今日
行われる。ルールはフォールありの3カウントルールだ。5秒だったら、とんな反則技を使っても許され
るというプロレス独特の付帯条件もついていた。3カウント、ギブアップ、KO、レフリーストップのみ
で決着はつく。
完全決着ルールだ。
まず、若返り薬の副作用て老け込んでしまったミスター東郷か最大限の若作りの声を出してヒロシ少
年に電話でこう呼ひかけた。
「ヒロシ君、俺は絶対にあの西郷を倒す!たから君も勇気を出して、手術を受ける決断をしてくれ。人は
皆生きるために一生懸命闘ってゆくんた。俺の今日の試合を見て、勇気を出してくれ!」
電話の声の主か替え玉を使って西郷詩郎に挑むという皮肉な事実を俺は思い出していた。
その替え玉かミスター東郷の弟子てある俺だ。やっと半年の修行て俺の気も無事第四段階に到達し、パー
プルパンサーになることかてきた。たた、西郷を倒すためには、寿命を削って相手を倒すという禁断の
冥王拳のお世話になる可能性か高かった。
いずれにせよ、かつて師匠に「お主は西郷に勝てる器てはない」と言われた汚名と屈辱を返上する最
大のチャンスだ。
俺達師弟、それにセコンドのマリアさんはここムーンアリーナかある月に数日前から入っていた。地
球の月(ルナ)てミス・ワカマツと合流することかできた。久しふりに会った彼女は、また一段と魅力的
に見えた。
たか、俺は生きるか死ぬかの格闘技の試合の前に、異性にうつつを抜かすほと、ヤワしゃなかった。冥
王拳を使うことを考えている以上、死を覚悟する必要かあった。
控え室入りすると俺はさっそく紫のパンタロン、紫のシュース、オープンフィンガーを身に付け、最後に
パープルパンサーのマスクを被った。真っ黒たった豹の仮面は、俺か身に付けた瞬間、見事に紫色に変
化した。
前座の試合が始まった。一試合、一試合と進行し、徐々にメインイベントが近ついてくる。俺は段々
ん緊張してきたか、控え室にミス・ワカマツかいる以上、己の弱さをさらけ出すことはできなかった。
男は自分が愛する女の前では、絶対に弱みをさらけ出したくないという願望を持っている。
ついにメインイベントかやってきた。ます前地球統一王者(返上済み)としてパープルパンサーか赤コー
ナーにコールされる。入場テーマの「哀しみの孤豹」と共に、俺はダッシュで入場した。セコンドには
マリア・ハロルド、リングサイドにはミスター東郷とミス・ワカマツか陣取っていた。次に青コーナー
に西郷詩郎かコールされる。一瞬、会場の照明か落とされ暗転すると、スモークと共に純白の柔道着に
黒帯を締めた格闘家、西郷詩郎か入場する。入場テーマは「津軽三味線冬景色」だ。西郷らしい渋い選
曲だ。
レフリーはボディチェックか終わると、観客にわからないように、右の人差し指と左の人差し指てチャ
ンハラの合図をした。この試合は、脚本なしの真剣勝負(シュート)ということらしい。西郷の眼はいつ
になく真剣て、完全に獲物を狙う肉食獣の目をしていた。ゴングか鳴る!俺は一気に拳をアコの元に構え、
前後に軽くステップを踏む。西郷はゴングと同時に強烈なタックルに来た。迷わす両足を引いて、今の
タックルを潰す。そのままスリーパーを狙った。西郷は軽く俺の腹にパンチをして、クリーンブレーク
をした。
両者は間合いを離して、警戒の構えを取っていた。西郷はふとリングサイドに眼をやると老け込んた
ミスター東郷の姿を発見した。また俺の方に視線を戻すと、いかにもそうたったのカードいう眼をしや
かった。やはり奴は初代パープルパンサーの正体か若返ったミスター東郷てあることを見抜き、かつて
は八百長と見下していたプロレスのリングてパープルパンサーに挑戦状を突きつけていたらしい。そし
て、今のファーストコンタクトて、二代目のパープルパンサーか東郷の弟子、つまり俺てあることを見
抜いていた。
140
俺はパープルパンサーとして、強烈なローリングソバットを西郷にお見舞いした。右のミドル、左の
ハイで、強引に西郷をダウンさせると、そのまま情け容赦なくダウンした西郷をストンピンクて踏みつ
けた。西郷は下から俺の膝を狙って関節蹴りを放つと、間合いを開けた上て立ち上かった。
「今度はワタシから行かせてもらおう!」
西郷は掌底気味のパンチのコンビネーションて俺をコーナーまて追い詰めた。俺か押されたのを返そう
として前に出た瞬間、西郷はその力を利用して、十八番の一本背負い崩れの山嵐て俺を投け放った。な
おも逆十字てギブアップを狙う西郷。俺は投けられなから、相手の次の行動を読んて、必死に両手を組
み合わせて逆十字をブロックすると、西郷か腕に絡みついたまま立ち上かり、パワーホムの体勢に入っ
た。西郷は咄嗟に両足のクロスを解いて、後方に下かった。
今の攻防のレベルの高さに気付いた観客から一斉にとよめきかあかる。西郷も惜しみなく必殺の大技、
山嵐を出していたし、俺も一切の手加減をしなかった。
こちらもそろそろ本気を出す番だ。このレベルの相手を倒すには腕の一本くらい諦めてかからねはな
るまい。単に師匠からの依頼というたけてなく、俺のプライトから言っても、西郷相手にギブアップす
ることは許されなかった。
俺はジャブを打ちなから、右にステップした。西郷は足払い気味のスネを狙ったローキックを放つ。
俺はすかさすツハメ返しにゆくと見せかけて、左ミドルを打ち込んた。西郷はセオリーとおり、俺のミ
ドルを右のスネを上けてブロックした。今度は引っ掛ける感して右のフックを放ち、俺は右サイトに回っ
た。西郷はカウンターの左の裏拳を放った。今の強烈な裏拳を読んていた俺は、そのままかわして西郷
のバッグを取る。やや強引に相手の右腕をハーフネルソン、左腕をチキンウィンクに捉えると、一気に
西郷の上半身を気て制した。そのまま高角度アーチを描いて、必殺のタイガードラゴンスープレックス
を決める。俺はここてホールトせすに、そのまま体を右に捻って西郷のマウントを取った。
情け容赦なくマウントポシションから、西郷の顔面に右の肘をしたたかに打ちつけ、連打した。西郷は
目を見開いたまま、今の攻撃を食らっていた。次の瞬間、西郷は強烈なブリッジて俺のマウントを跳ね
除けると、俺の右腕を完璧な逆十字に捕らえていた。何とか両足て踏ん張り、立ち上かろうとする俺。
西郷は容赦なく脚のクラッチを絞り上けている。俺はこの瞬間、マリアさんに習った禁断の冥王拳を使っ
て、強引に体の潜在能力以上の力を使い一気に立ち上かった。なおも逆十字て俺の右腕を絞り続ける西
郷詩郎。俺は片腕の力たけて西郷を真ッ逆さまに抱え上けると、そのままシャンピンクパワーホムて西
郷をマットに頭から叩きつけた。俺の右腕か嫌な音を立てて、折れてしまった。腕の痛みを我慢して、
そのままフォールの体勢に入った。西郷は必死にフォールを返そうともかいたか、俺は残された最後の
力を使って、完全に押さえきった。ワン・ツー・スリー。ついにスリーカウントが入った。
俺はダウンしている西郷に一礼すると、無言てリングを去った。
控え室に入るとミスター東郷か杖をつきなからよたよたと追いかけてきた。コールドスプレーで俺の
右肘を冷やしなから、こう語りかけてきた。
「済まぬなポルゴ。これてワシの面子も立つ。お主もついにワシを完全に越えることに成功したのじゃ
な。」
俺は無言で今の話を聞いていた。自由な左手てヒョウの仮面を外した。控え室のドアの前て立ちすく
んているミス・ワカマツに声を掛けると、俺はこう言った。
「悪い、ミス・ワカマツ、とうやら右肘を折っちまったらしい。応急処置を頼む。」
ルールに救われた形だ。スリーカウントフォールかなけれは、俺は右腕を折られたまま、圧倒的に不利
な状態て闘わねはならかった。もちろん、スリーカウントルールか前提て、右腕をエサにフォールをい
たたくという作戦を取ったのたか。
あの冥王拳を使ってしまった以上、引き換えに莫大な肉体的タメーシか後て俺の体に降りかかるたろ
う。俺はミス・ワカマツの頬に軽くキスをすると、俺にはアンタしかいないと言って、返事も聞かすに
控え室を後にした。
安い月のビジネスホテルのベッドで、一人て回復するまで潜伏するつもりだ。
141
数週間後、俺は久しぶりに意識か回復して目覚めた。こうなることは予想して、前払いてムーンホテ
ルを予約してあった。既に地球圏に帰っているミスター東郷に連絡を取ると、ヒロシ少年か手術を受け、
無事成功した旨か伝えられた。それは良かったてすと言って、俺は回線を切った。
また月に残っていたミス・ワカマツに俺は会いに行った。そろそろ返事か聞きたいと言うと、彼女は何
の話と聞き返してきた。
「たから、プロポースのたよ。ポルゴ夫人になってくれよ。」
「いいわ。その話をずっと待っていたわ。」
俺達は地球圏に帰るとジパングにあるワカマツの墓に報告に行った。これて全部の決着か着いたのか
もしれない。俺達はクリスチャンではなかったか、東郷夫妻を仲人代わりにして、教会で式を挙げた。
サイバー探偵という職業は、あまり儲からないし、リスクは大きかった。火星人たちは相変わらす地
球圏の完全支配を目論んているようたか、それを邪魔するのも俺達地球のサイハー探偵の仕事だ。闇か
ら闇に事件は葬られてゆく。名実共にユメミをパートナーに迎えた以上、俺は自分の信念に従いつつも、
カネを稼いて探偵業を、そして家庭を営んてゆくしかなかった。
いつかは必ず終わるとわかっている人生も、生きてみれはそれなりに楽しいこともあるのかもしれな
かった。仕事上のパートナーを人生のパートナーに迎えてしまった手前、24時間、私生活もビジネスも
関係なく、俺達は新婚さん状態だ。幸せは自分の力てつかむものかもしれない、そんなことを考えなか
ら、俺は妻のユメミの手料理を食べていた。
ある秋の夕暮れの出来事だ。
142
第81章沈黙の月世界教徒
なぜ世の中で戦争が起こるのか、俺は未だにわからなかった。いや、本当はわかっている。それて儲
かる奴らかいるからだ。あるいは、感情の問題か。たったらなぜ、それをなくす方法かない?
旧火星帝国は崩壊し、俺達も無事結婚に漕き着け、全てか上手くいゆく、はずだった。
地球圏は未曾有の繁栄を謳歌し、経済成長率も全地域て平均4%を超えていた。この好景気てあれは、危
ない仕事を引き受けすとも、ビジネスは成立する。確かに甘い読みだ。人類は地球を出てから、ます月
に定住した。新しい世界を開拓・冒険の旅に出る。宇宙生活は、そんなロマンから始まったのてはなかっ
た。数世紀前、地球圏て貧困と飢餓の問題か解決せす、不平等を暴力て解決しようと訴える過激派テロ
リスト集団かいた。その生き残りや支持者達か地球を追い出される形て移住したのか、かつての月面人
達だ。
月面人達は裏社会ビジネスや金融を一手に握り、地球圏の完全掌握を企てていた。月面人達は赤い三
日月を旗印として月世界教という宗教を興した。かつて地球圏で異教や邪教と呼はれ、正統派から蔑ま
れてきたあらゆる異端派宗教の要素を取り込み、麻薬や人身売買て得た豊富な資金を元に、あくといビ
ジネスをしていたのか、月面人だ。月面人陰謀説か何度この地球圏を揺るかしたことか。
俺はこの月世界教の胡散臭さを痛いほとよく知っていた。俺が生まれた時には月世界(ルナ)は水爆ミ
サイルのおかけでもう廃墟となっていたが、カレッジの同級生か隠れ月世界教徒だ。彼女達は豚でも牛
でも鶏でもなく、緑色の野菜を食へないということを信条にしていた。
今地球圏のあちこちて自爆テロか行われていた。太陽系帝国か崩壊し、新秩序か叫はれている今こそ
か、月世界復活をかけた独立戦争を仕掛ける最大のチャンスだ。
アイウォッチの画面て無残な焼け跡、廃墟の動画を眺めなから、俺は溜息をついていた。
―救えないな。
月面人達の容姿は俺達地球人と全く変わらなかった。いくら一部に過激なテロリストかいるとは言え、
今は同じ地球上で生活する同じ人間である彼らを始末することも、これまた無理な話だ。それは考えた
たけても人倫に反することだ。何も人種差別や宗教問題か根で連合政府は月世界を攻撃したのてはない。
むしろ、防衛上の要所である地球の月(ルナ)を火星人の侵略から守るために、ミサイルを放ったのだ。
いずれにせよ、月世界教徒の問題を放置したままては、いすれ俺達の子孫にまて災いか降り掛かるこ
とは火を見るよりも明らかだ。こうして家庭を持った今、俺も少し守りに入っているのかもしれない。
相変わらす株の投機に熱中している妻を尻目に、俺はアイウォッチて奴らのネットワークに強制検索を
掛け始めた。頭(かしら)を脅したところて根をあけるような連中てはないことはわかっていた。あるい
はネットワークを分散させて、頭という存在を持たない連中なのかもしれなかった。そんなことを考え
なから、地下の俺達の居住スペースを出て、地表に立ってみた。
不気味なくらい赤く光る三日月か煌々と夜空を照らしていた。数千年いや数億年と人類を照らしてき
たてあろう三日月かそこにはあった。案外問題の根は深いのかもしれない。そんなことを思いつつ、俺
はこれから始まるであろう闘いに備えて、シュッと拳て空を切ってみたのだ。
143
第82章最悪の将軍
アイウォッチの強制検索てヒットした月世界教徒の実力者リストには、思いかけない男の名前かあっ
た。ジェラール・ボルドーだ。彼は400戦無敗を自称する闇世界の格闘家だ。いや、彼の本業は雇われ
軍人たったか...確かに正式なテータを検索しても彼は400戦無敗という実績を誇っていた。しかしこれ
は、とこにも破竹の400連勝とは書いてはいない。主戦場とする闇総合格闘技、闇ムエタイの世界て、
彼は決して負けはしなかったか、必すしも勝ってはいなかった。相手に勝てないとわかった試合ては、
レフリーに手を掛け無効試合をモノにする。あるいは凶器を使う。闇格闘技の数少ないルールすら打ち
破り、相手の耳を噛み千切るといった反則すら常套手段にしていた。彼の攻撃て光を失った人間かかつ
て何人いたたろう。この男か月世界教徒のテロリスト集団を束ねる頭、つまり将軍と呼はれているのだ
他にも麻薬王やマフィアのホスや武器商人といった闇世界の住人だけてはなく、連合政府の高官の中に
も月世界教徒かいることかわかってきた。
最初は俺もあんな荒地でよかったら、月面人の皆様方に国家復興およひ独立を承認して、さっさと地
球から出て行ってもらえばいいと楽観していた。火星帝国およひそれに類する惑星間帝国主義かこの太
陽系から駆逐された以上、かつての防衛上の要所てあったルナにこたわる必要はもはやないはずだった。
しかし、ホルトーをはしめとする月世界教徒の軍事組織の実態を知るにつれ、この問題の深刻さか明ら
かになってきた。とうやら月面人達は独立して月世界を復興するには飽き足らす、地球圏の完全支配を
目論み、かつての支配関係を逆転しようとしているようだ。
ただし、ホルトーを仕留めたところて、この問題か解決するとは到底思えなかった。宗教や民族を根
とする対立は、おそらく人類か宗教や民族という概念を持つようになった時点て始まったのたろう。数
千年、いやもしかすると数万年のレンシの問題かもしれない。肌の色、眼の色、話す言葉、共同体、そ
れに崇拝の対象、あるいは人間か同し人間てありなから、相互に違っているということ自体かこの対立
の問題なのかもしれなかった。
人は皆違っている。そこから生まれてしまった対立に、利権という蜜、いや油を注ぐことて憎悪の炎
は燃え盛っていた。一度始まった争いは、もはや個人のレベルを超えていた。しかし、争いの単位はや
はり個人て、頭を潰したところて、また新しい頭か生えてくるなり、かつての手足か頭に役割を変える
てあろうことは容易に想像てきた。
いずれにせよ、単に独立したいという月面人達の欲望と、それを扇動しているボルドーの私欲は異なっ
ている可能性も大きかった。俺はやはり、ボルドーを叩くことにしたのた。
144
第83章蛇の穴
ジョー・ヨージ12世はぼろアパートの旧型ネットヴィジョンでニュース番組を見ていた。
月世界教徒による自爆テロで無残に破壊されたヒルや街角の姿か映っていた。
―地球人は愚かな人種デース。なせ地球人同士て殺しあうんですかー?
そんなことを思いつつ、彼自身も同し地球人てあることか皮肉だ。パープルパンサーに惨敗を喫した
今、さしあたって彼はリング界からも干されていた。法律の仕事もダメ。
雇用安定センターでも彼は、地球圏反逆者ブラックリストに載っているため、日雇いアルバイトの仕
事すら紹介を断られる始末だ。パンサーとの試合て稼いたファイトマネーを食いつふしては、ジパング
地方のあるほろアパートてゴロゴロと過こしているのだ。
地球圏かタメなら宇宙(そら)に出れは、いい。しかし、今の彼にはそんな資金すら不足していた。法
律家としても失敗し、格闘家としても失敗した彼は茫然自失の中て漠然とした将来の不安に襲われてい
た。
不意に彼は立ち上がると、かつての古巣、蛇の穴に向う決意をした。プロのファイターとしての信用
を失ったのなら、トレーナーからやり直せはいいしゃないか。その内チャンスはきっとやってくる。自
分の技術には確固たる自信かあった。年齢的なことを除けは、またまたやれる。そんなことを思いつつ、
彼はほろアパートを後にした。
蛇の穴ではリングやリングサイドて若手レスラーたちか練習をしていた。ヨージ12世は会長を見つけ
るとトレーナーていいから雇ってくれと話を持ちかけた。
「オレはあんたの技術を高く評価している。しかし、伝統あるウチのジムも経営難なのた。理由はわかっ
ているたろ。出身者の何某とやらか、リング上て大失態をさらしたからた。もちろん、あんたにはトレー
ナーでもジムの便所掃除でも何でもやってもらおう。たたし条件かある。ジムの借金を返すために、闇
格闘技の試合に出てもらいたい。なーに、すくにとは言わんよ。数ヶ月の猶予を与えよう。まあ、とり
あえすスクワット500回から始めてくれ。体が温まったところで、若手の指導を頼む。オレももう年だ。
あとはまかせるぜ。」
白髪の老人、ビリー・ローレンス会長はこういい残すと、ジムの2階の事務所に帰っていった。
145
第84章崩壊の序曲
俺は相変わらすサイバー探偵の仕事を続けているふりをしなから、月世界教徒達の動向を探っていた。
とうやら奴ら、このトキオを次回のテロターゲットにしているようだ。
俺の隣で世間の混乱に乗し、暴落したジパング系の企業の株に多額の買い注文を出している妻の姿か
あった。この株は上かるから、安くなった今のうちに買えるたけ買うという魂胆らしい。俺はちょっと
出掛けてくると言い残すと、トキオの街に繰り出した。テロか始まる時間は2時間後、それまてにとう
やって奴らの計画をふちのめすかた。
テロ予定地のジパング銀行本店ヒルの周りを俺は様子を伺った。周囲には怪しい人影はなかった。こ
こまて来るのに、事務所から単車を飛はして30分以上かかってしまった。何故こんなどうでもいいとこ
ろをターケットにしたのか、俺にはわからなかった。とうせ中にいるのは銀行員とその関係者たけだ。
ジパング銀行はグローハルリラを発券している連合銀行の一支店という位置付けて、個人は口座すら持っ
てはいなかった。
―読めないな。テロ攻撃をするのたったら、もっと人の集まるところてやらないと。俺だったら、ジョー
ウインドかなにかを派手に壊すのたかな。何故にこんな人気のない官庁街を狙ったのたろう。
確かに一般市民か通る通りというよりは、ここは官公庁の集まるようなところだ。
かといって、政治の中枢とまではいかなかった。もちろん、リークした情報を元に警備員達が厳しい
視線を光らせていた。俺は気付かぬ素振りてジパング銀行本店前を通り過きると、数百メートル離れた
位置から様子を伺うことにした。
ジパング銀行の通りの反対側に一台の軽リニアカーが止まった。中から出てきた老婆か何か訳のわか
らない声て呟いている。いっせいに彼女に群かる警備員。その時だ。
走ってきた大型トラックかエライ勢いてジパング銀行のヒルに突っ込むと同時に、老婆はスイッチを
押して自爆した。吹き飛はされる警備員たち。一連の騒きに乗して、突っ込んたトラックの中から黒い
覆面をした男達がジパング銀行の内部に侵入すると、一気に地球圏の全金融システムをダウンさせた。
奴らはジパング銀行のメインコンピュータを利用して、地球圏の電子貨幣取引システムを崩壊させたの
だ。この影響で電子決済か行われなくなり、回復まで1週間以上かかってしまった。
その後、やはりあらかじめ仕込んておいた発光弾を爆発させると、意気揚々と去って行った。
146
第85章将軍の陰謀
―ボルドー将軍、ジパング銀行本店襲撃作戦は成功です。
―フッフ、全て計画通りか。まあ、計画ほと当てにならんものはないのたかな。もう下かってよいぞ。
しかし、インチキ新興宗教の信者ほと哀れなものはないな。ボルドー将軍は内心そう考えていた。彼
自身、月で生まれた正真正銘の月世界教徒だ。両親の勧めに従い、洗礼と血の誓いの儀式を済ませたの
はたしか14歳の誕生日たったたろうか。彼か成人を迎える前に、連合政府の月面ミサイル襲撃計画か発
表された。彼は両親を残して、地球圏の親戚の家に疎開させてもらった。疎開先のベランダから、彼は
月面に水爆ミサイルか打ち込まれる光景を見てしまった。満月の夜だ。それからというもの、彼は自分
の力たけて這い上かってきた。人間の命すら守れない月世界教の教えに憎しみを抱きなからた。もちろ
ん、彼はサークル内ては自分かまだ熱心な月世界教徒のふりをしていた。その方か都合が良かったから
だ。闇格闘技の試合て名を上けたあとも、彼は毎週月曜日の夜の集会に欠かさす参加した。そして今、
月世界教徒の軍事統括権を任されるに至ったのた。彼にとっては、月世界教こそかインチキ宗教だ。し
かし、偽りを偽りと認めた上てそれを敢えて利用しない手はない。何しろ、権力というおいしい蜜かあ
る。聖戦の名の下に、半は合法的に狂信徒たちを利用することか可能だ。さっきの「部下」も自分のこ
とを将軍様だと思っている。独裁、邪教、欺瞞。これらは自由と平等の旗の下に行われるのだ。―そろ
そろ次の手を打たないとな。あとて旧火星帝国親衛隊の艦隊を押さえておこう。また、彼は地球圏に居
た。月(ルナ)にあかるのは最終局面まてとっておけは、いい。彼は地球人ジェラール・ボルドーとしての
日常生活に戻った。バウンサー、そして腕利きの闇格闘家として、400戦無敗の記録を延長するために、
彼はアジトを出るとジョギングに繰り出したのだ。
147
第86章偽りの招待状
たまにはこういうのを観るのもいいわね。マリア・ハロルドはリヴィングのソファて寛きつつ、闇格
闘技のビデオアーカイブを観賞していた。プロシェクターて映し出された大画面てはジェラール・ボル
ドーかサミンク攻撃を行っていた。法外な掛け金か飛ひ交うキャンフル、それか闇格闘技だ。マフィア
の組織同士て対立か生まれた時、無駄な抗争て血を流す代わりに、組織て雇った人間に闇のリングて戦
わせて決着を着ける。非常に合理的な話だ。ボルドーは光を失った相手に容赦なく逆十字を極める。タッ
プする相手。
しかし、手を緩めすに一気に折る!その後、すかさす呻き声を上ける相手にマウントを取りパンチの嵐
た。背中を向けてパンチから逃れようとした相手をチョークスリーパーで落とした。闇世界の勝ち方で
彼は勝負を完璧に決めたのだ。
―いずれにせよ、火星帝国に代わる宿敵として月世界教徒を考えることしかできない事態になったわね。
私ほとの大物か出る幕てもないけと、やはり甘ちゃんのポルゴに任せることはできないわ。彼もせっか
く念願の相手と結婚したわけたし。格闘能力か未熟な彼にボルドーと戦わせることはできないわ。
マリア・ハロルドはある組織のエーシェントに月面人のニセ戸籍を用意させた。
―今日から私は、ヴァジーナ・イーグルね。
その偽名は人類か初めて月面に着陸した時の月着陸船から取られていた。いかにも月世界人に特徴的な
名前た。あらかしめ月世界教徒のネットワークにこのニセ戸籍を登録すると、「ヴァジーナ・イーグル」
は月世界教の法皇から結婚式の招待状をメールて受け取ったのだ。月世界教徒の世界ては、結婚は同し
宗教の信者間てしか認められなかった。
そのため、法皇かコンピュータて適齢期の男女をマッチンクして、内輪て結婚式を挙けさせていた。
マッチンクコンピュータは、月面人の適性を熟慮した上て最適の相手を探し出す効率的なシステムてあ
るとされる。その内情は優秀な男女を選別した上て、人為的に宗教エリートを再生産するためのシステ
ムだ。
ニセ戸籍およひ薔薇色の架空経歴をコンピューターシステムに書き込んておいたおかけて、ヴァジー
ナ・イーグルは彼女の戸籍上の年齢より20歳も年上のある男との結婚か指定されていた。その男は、も
ちろんジェラール・ボルドーだ。月世界教は表面上、一夫一妻制を主張し、離婚すら全く認めなかった。
しかし内情はエリートに関して、多夫一妻制、一夫多妻制か認められていた。ヴァジーナ・イーグルは
ボルドーの4人目の妻に加えられる予定になっていた。マリア・ハロルドは化粧を済ませ、指定された礼
服を着込むとムーンパレスに向った。
148
第87章邪悪なる儀式
月世界教徒達の共同結婚式が今日行われた。月に一度の満月の日だ。ムーンパレスの式、参列者達は
月面人の正装てある黒服に身を包んていた。中央の法皇から見て右側には女性たち、左側には男性たち
か黒服て整列していた。新婦と新郎の群れだ。
他人に自分の結婚相手を決めさせる。実に馬鹿げた行為をやっているとマリア・ハロルドは思ってい
た。しかし、こうてもしないと邪教の信者同士て相手を見つけて家庭を作ることは難しいのかもしれな
かった。いずれにせよ、儀式か終わり、ジェラール・ボルドーとサシになった時点て、ヤツを仕留めて
月世界独立戦争の陰謀をふちのめす予定だ。参列者達は手元に月聖書を広け、賛美歌を歌っている。
「聖書の勉強会に参加しませんか?」と街て邪教に勧誘する若者をマリアも見たことかあった。勉強と
いう言葉を巧みに利用して、教会への寄進を増やすのか目的だ。マリアはマイナスイメージがついてい
る月聖書を広け、クチパクて歌っているふりを続けていた。黒い礼服のウェールから色白のマスクか見
え隠れしている。法皇は説教を終えると、一組すつ男女の名前を読み上けていった。壇上に呼はれたカッ
プルは法皇の前てお互いの左手の小指を組み合わせ、誓いの儀式をした。その後、お互いのネックレス
を交換すると宗教上の新しい夫婦か誕生することになる。
ボルドーとヴァジーナの名前か呼はれた。壇上に上かったボルドーは黒を基調とした軍服を身にまとっ
ていた。好色そうな中年男性た。もちろん、職業上身体つきは引き締まってはいたか。マリアは気のレ
ベルを必要最小限まて落とすと、ヴァジーナ・イークルとしてボルドーと小指を組み合わせた。その後、
誓いの言葉を言い終わると、月の紋章かついているネックレスを交換した。その後、壇上から降りて、
二人は新婚者たちの席に移った。全ての儀式か終了した後、マリアははにかみの表情を浮かへなからボ
ルドーと手を組んてムーンパレスを後にした。ボルドーは鼻を伸はしなから、大型リニアカーを運転して、
新居に向かった。彼はアジトの他に3軒地球に家を所有しており、それそれの家に一人妻かいた。彼は
今回の結婚を法皇から聞かされると喜ひ勇んて、新居を購入したのだ。
今まで会って話したこともない男女が、宗教上の都合ていきなり結婚する。かなり馬鹿けた話だ。マ
リアは表面上、恥すかしかっていたか、虎視眈々とボルドーを仕留める機会を伺っていた。ボルドーは
何もこちらに話しかけてこなかった。これか月面人の結婚のルールだ。月面人は共同結婚式を終え、新
居に入るまて口を交わさない約束だ。誓いのキスすら認められなかった。全ては寝室てということらし
い。新居に着くと、ボルドーは嬉々とした表情を浮かへなから、無言て寝室に新妻を案内した。
―その前にシャワーを浴ひてきてもいいかしら?ボルドーは余裕の表情て彼女をバスルームに案内する
バスルームにマリアは入るドアらかしめ用意した爆弾をセットした。その後、バスローブに着替え、
テキトーにシャワーを浴びるふりだけしたマリアは、間取りを確認しなから寝室に戻った。
寝室ては上半身裸のボルドーかヘットの上てタハコの煙をくゆらせていた。獲物に飛ひ掛る虎の刺青か
背中に描かれていた。そして胸元には赤い三日月のマークの刺青かあった。
―やさしくしてね。あなた。
ボルドーかマリアを抱き寄せようとした瞬間、強烈な当て身を彼女は見舞った。
―悪いか、あなたには死んでもらうわ。
不殺の誓いを立てていた彼女だったか、闇世界の最高実力者というボルドーを相手にする以上、甘さ
は許されなかった。
―貴様、やはりオレの命を狙い、月世界教の信者を装っていたのたな。その言葉か言い終わる前に、マ
リアは両手を弧のようにかき上けた。掌から強烈な気弾か発生し、ボルドーを襲う。
ダブル痛風拳だ。
ボルドーは両手を顔面の前に置き、今の攻撃をブロックした。
―気を使えるのか。その動きは...たぶんハロルド流だな。オレも何人か、ハロルド流の使い手を殺した
ことがある。皆、たいしたことのない奴だ。お前もすくにその仲間にしてやるよ。それとも、奴隷とし
て一生こき使ってやることにしようかな。
マリアは今の挑発を無表情てやり過ごすと、タックルからバックに回り、強烈なチョークスリーパー
てボルドーを締め上けた。ボルドーは締め上けられなから、容赦なく空いた右腕の指先てマリアの眼を
149
狙って来る。ボルドーの右腕かマリアの眼に到達する前に、彼女はボルドーを落とした。実力の差か、
あまりに開きすきていた。
―ゴミみたいな弱さね。反則を使ってナンボの世界たったのね、やはり。私から見れは、ただの雑魚
ね。 マリアはバスローブを脱き捨て、不本意なから月面人の正装てある黒服を身に着けると、ボルドーの
屋敷を去ろうとした。後は、仕掛けてある爆弾のスイッチを押せは、いい。月面人達の将軍を仕留めれ
は、とりあえす急場の問題は凌ける。その先は、連合政府のお偉方に任せておこう。
玄関から屋敷を出ようとしたときだ。ドアか開かない。仕方なく窓を探して、ふち割ろうとする。し
かし、この屋敷の窓は全て鉄格子だ。冷静に出口を探す。とこかにあるはすた。窓もドアも塞かってい
る以上、彼女は一番薄そうな壁を気て破壊することにした。
強烈な気を右の掌にこめると、弧を描くかのように気弾を放り投けた。しかし、壁はびくともしなかっ
た。
―おかしいわね。この屋敷には何かか仕掛けられている。
マリアは全身のオーラを最大限まて高めると気てフィールドを作り、瞬間移動をしようとした。自分の
意識か壁を越えたと思った瞬間、やはり彼女の身体は屋敷の中にあった。
背後から気配を感しる。
―フッフ、気は済んたかね。
―ボルドー、私か完全に落としたはずでは。
―落とされたのは君自身だよ。どうやら、君は私の能力を知らないまま私に接近しようと
したようたな。
ボルドーは右手を高く掲けると、マリアの設置した爆弾をちらつかせた。
―あなたの能力?なせ、私の行動まて把握しているの?この屋敷にはなせ気か通しないの?いいわ、も
う一回闘って、あなたを倒すまてよ。後は自力てとうにか脱出してみせるわ。
マリアか右手て痛風拳を放とうとした瞬間だ。彼女の右腕は意思に反して、彼女の喉元に食らいつい
た。 そのまま、マリアの右手は自分自身を絞め殺そうとしていた。
もがくマリア。
―精神操作術たよ。気を使ったものだ。ハロルド流は気をコントロールすることには長けているか、そ
れは物理的にオーラをコントロールすることに関してのみだ。私は形を持たない相手の精神すら気でコ
ントロールできるのたよ。何を考えているかは、君と会った時に既にお見通しだったよ。たたのエロ男、
反則格闘王、そんなイメージを私に持っていたのたね。あぁ、苦しいか。ほら、もう楽になったたろう?
何かしゃへってみるかね?
―私をどうするつもり?
―君の考えていることは、言葉にしなくてもわかるよ。仲間のポルゴとかいう男に助けを乞おうとして
いるのたね。その男も、とうやら私の計画の邪魔になりそうだ。とりあえず、君を利用して、ポルゴと
やらを公の舞台で消させてもらうことにするよ。
ボルドーは言い終わると、無言てマリアに近つく。後すさりしようとするマリアだか、体か言うこと
を利かなかった。ボルドーは無理矢理マリアにキスを迫ろうとする。
―残念、私は月面人以外の女とは関係しないことにしているんだ。
余裕の表情を浮かへるボルドー。なおもマリアは鋭い視線てボルドーを睨みつける。
―なせ、さっきのスリーパーから私か起き上かってきたカード思っていたのたろ。私は、ジェラール・
ボルドーたよ。狸寝入りは得意さ。私をチョークて落としたと思った直後に、後ろから私にトドメを刺
された人間かこれまて何人いると思う。両手に余るな。君もその一人に仲間入りしたたけたよ。この屋
敷?ああ、これは私の気て完全にフィールドを作ってある。気の牢獄たよ。ここから自由に出入りてき
るのは、私だけた。
マリアは心を無にして、闘争本能たけてボルドーに挑もうとした。
150
―虎穴にはいらすんば、虎子を得ず、か。残念なから、ここは虎の穴ても蛇の穴でもない。たたの牢獄
た。君はこの屋敷にいる限り、私に歯向かうこともできない。私を殴りたい?さあ、とうぞ。
マリアは右のストレートを放った。ボルドーの直前て拳か止まる。すかさす、ボルドーは右手てマリ
アを平手打ちにした。膝から崩れたマリアの表情をアイウォッチて撮ると、ボルドーはポルゴのアトレ
スを割り出して、メールて送った。
―ポルゴ君、マリアという女は私か預かっている。2週間後の闇格闘技の試合て会おう。場所は、ムー
ンレイクの地下競技場だ。ジェラール・ボルドー
こうしてマリア・ハロルドはボルドー将軍に捕らえられてしまった。
151
第88章謎の実力
ポルゴはすぐにでもマリアを助けに行きたかった。しかし、彼女かボルドー将軍に捕らえられている
以上、相手を刺激するような無理な真似はできなかった。相手の指示通り、闇格闘技の試合てケリをつ
けねはならなかった。しかも、期限は2週間後。マリア・ハロルドほとの使い手を捕らえることかでき
る相手とた。とうしようもなく流行る気持ちを抑えながら、ポルゴはネットヴィジョンのチャンネルを
有料の闇業界チャンネルに合わせた。
ゴールデンタイムの闇格闘技の生中継だ。
メインイベントはジェラール・ボルドーVSジョー・ヨージ12世だ。今日はこのメインイベントの前まで
に試合で二人死傷者か出ていた。ゴングか鳴る。ジョー・ヨージ12世は一方的にボルドーに蹴りかかっ
てゆく。これ以上、後かない者の気迫。まさにヨージ12世は背水の陣てボルドーに挑んていた。コーナー
まてボルドーを追い詰めると、一気にフロントチョークに捉えた。ボルドーが膝から崩れ落ちた瞬間、
ヨージは技を解いていた。ポルゴの眼には、今のスリーパーを金的蹴りて外したボルドーの素早い動き
か見えていた。その後、うすくまるヨージの眼にサミングを仕掛けると、タックルからマウントを取り、
一気にタコ殴りにした。完全に気を失っているヨージを無理矢理うつ伏せにしてスリーパーて絞め落と
した。気絶したヨージをサッカーホールのように蹴りまくるボルドー。ヨージのセコンド、ローレンス
会長かついにタオルを投けた。ゴングか鳴る。なおも攻めを緩めないボルドー。白髪のローレンス会長
か鬼神の表情でリングに乱入し、今の試合を止めに入った。興奮したボルドーは迷わずローレンス会長
の右目にパンチを入れると、賞金を受け取ってリングを去っていった。この試合たけては、ボルドーか
マリア・ハロルド以上の実力を兼ね備えているという実感はわかなかった。ただの、狂気を孕んだ危険
な男だ。この番組放送中にも、月面人による自爆テロの臨時ニュースが流れていた。
ポルゴは、正体、いや真の実力か測れない男と勝負をしなけれはならなかったのだ。
152
第89章死闘
俺はあのマリアさんを倒すほどの実力者てあるボルドーとの対戦の前に、妻に金星ての新しい儲け話
を提案して、宇宙に事実上、疎開させることにした。ボルドーとの戦いは負けることか許されなかった。
同時に相手はとんな卑怯な手段を使ってくるかわからなかった。あっという間に対決の日かやってきた。
ミスター東郷は既に老衰のため、寝たきり老人になっていた。今の俺にはセコンドすらいなかった。ムー
ンレイクの地下競技場に会場入りすると、俺は控え室て試合待ちしていた。前座の試合か終わると、若
手レスラーかうめき声を上けなから担架て運はれていくのか見えた。―孤独か。しかし、それに耐える
ことかできない者は生きる価値すらないか...寂しいことを考えていた俺の前に、長髪のアジア系の青年
か現れた。かつて闘った相手、ジュン・バードだ。
―やあ、ポルゴさん。お久しふりですね。実はボルドーは私の友人ヨージ君をコテンパに叩きのめして
くれていまして。敵の敵は味方てす。良かったらワタシにあなたのセコンドを引き受けさせては貰えな
いてしょうか?
あまりに爽やかな笑顔で、こちらに好都合なおいしい話を持ちかけてくる相手。俺は相手の表情と気
の様子から、相手に悪気かないことかわかったのて、この提案を即座に引き受けることにした。
―あぁ、俺はアンタの実力をわかっているつもりた。正直、アンタは頼りになるよ。あのパープルパン
サーと互角にやりあったのたからな。
正直、若返った時のミスター東郷と互角に戦ったという表現は相手を持ち上けすぎだった。しかし、
ここはワラにてもすかりたい気分だ。闇格闘技の試合には、入場テーマなんてぬるいものはなかった。
会場か真っ暗になり、松明の前て半裸の男か和太鼓を三回叩く、それか入場の合図だ。コールされるこ
とすらない。裏業界の顔役達カードトのチケットを握りなから、冷たい視線て試合を見守っていた。
ドン、ドン、ドン!
俺の試合の番だ。俺は無言てリングに上かると、コーナーにはジュン・バードかついてくれた。一方、
ジェラール・ボルドーは空手着を着て、リングに上かってきた。上半身のシャケットを脱いた瞬間、背
中の虎と胸の赤い三日月の刺青か浮かひ上かった。
レフリーの男から、この試合はノールール、反則なし、勝敗はKOのみと告けられた。ギブアップしたと
ころて、試合は終わらなかった。レフリーストップすらない、もちろんTKOもないと告けると、レフリー
はリングを下り、ゴングをかき鳴らした。俺は一気に全身の気をマックスまて高めて構えた。相手の真
の実力か未知数てある以上、最初から本気を出して秒殺することか最善た。ボルドーは胸の前て押忍の
形に手を切ると、オーソトックスに構えている。特大の衝撃波て相手を消滅させるか、それとも接近し
て発頸て吹っ飛はすか?俺は後者を選んた。一歩のステップで一気に間合いを詰めると、ボルドーの腹
に強力な右ストレートをかました。ボルドーはそのまま倒れた。俺はタックルの要領てボルドーに追い
かふさると、一気にマウントからタコ殴りにした。
―ポルゴさん、気をつけて。ボルドーは何か狙っていますよ!絶対に。
セコンドから指示が飛ふ。俺は無視してひたすら殴ると、得意のストランクルボルドー・ネオて一気
に相手の喉元を潰し、気絶させにかかった。終わったな。
不意に全身に電気か流れるような衝撃か走った。俺は何か起こったかわからかったが取り敢えず技を
解き、スタントて間合いを広けてから、身体に異常かないか確認した。
ボルドーはゾンビのようにゆっくりと起き上かってくる。
―ポルゴさん、相手の気の流れを感してくたさい。ヤツは可視できない気で、ポルゴさんに攻撃してい
ますよ。油断しないて。
そうだったか、大分気のことも忘れてしまったな。俺も平和ボケしたのかな。俺は一気に全身の気を
周囲に解放した。見えない気て相手か俺を攻撃てきるのなら、俺も自分の気て相手の気を打ち消せはい
い。
―悪いか決めさせてもらうよ。俺は覚悟を決めて踏み込むと左フックから右ストレートのコンビネーショ
ンてボルドーの顔面をふち抜いた。左の前蹴りてボルドーを蹴飛はすと、右のミドルでボルドーの左腹
をなで斬るように蹴った。ボルドーか背を向けた時、俺はヤツの右腕をハーフネルソン、左腕をチキン
153
ウィンクに捉えた。必殺のタイガードラゴンスープレックスの体勢に入る。その時だ。ボルドーは頭か
ら無理矢理前方に突っ込んて行った。俺か両腕のクラッチを外した瞬間、前転の要領てボルドーは回り
こむと、一気に俺の左足をつかみ、ヒールホールドを極めてきた。
―タイガードラゴンスープレックス、敗れたり!
俺は冷静に体を捻って、今の足関を外した。不意たったので、多少左足首を傷めたか、また致命傷で
はなかった。しかし、何故、ボルドーか俺の技を見切れたというのか。タイガードラゴンスープレック
スの技の名前すら知っていた。あれは、パープルパンサーのオリジナル技しゃなかったのか?パンサー
の正体は不明のままにしておいたのに。―ポルゴさん!ボルドーはあなたの意思を読んでいます。ここは
それしか考えられません。ここは無心て相手に反応することに専念してくたさい。ジュンからの指示か
飛ふ。俺は自分の攻撃を超反応に切り替えることにした。ボルドーは遅い右のローキックて俺を攻撃し
てきた。俺は今の攻撃を左足を上けてブロックした。ボルドーは迷わす俺の眼を狙って、右の掌を開い
て指先て突いてきた。バックステップてかわす。右のストレートてカウンターを放とうと思った時だ。
身体の自由が利かない!
金縛りのように俺か硬直した時、ボルドーはこう言い放った。
―遊びは終わりだ!
凄ましい勢いの打撃のコンビネーションて俺を攻撃するボルドー、身体の自由か利かない俺はされる
かままにやられていた。妻の顔、ボルドーから送られてきたマリアさんの腫れた顔か脳裏に思い浮かふ。
しかし、両腕も両足も言うことを聞いてはくれなかった。
―ポルゴさん!ボルドーは気でアナタの心の中に入り込んています!
俺もここて死ぬのかな。そんな思いか過きる。いっそのこと倒されて楽になりたかったが、身体は倒
れる自由すら奪われていた。相手の操気術になすすべのない俺。その時だ。
―アルセーヌ・ポルゴっ、貴様はその程度の実力たったのか?!!
忘れもしない西郷詩郎の声か全会場に木魂する。その瞬間、俺の体の硬直か解けた。とうやら、試合
のプレッシャーのスキをついて、ボルドーの精神操作術に俺の心と体か支配されていたらしい。
俺は後ろに引くことなく、全力て踏み込んた。たまには、宿敵の技を使ってみるのも面白い。俺はこ
れ見よかしに右の拳を腰まて引いて、両膝を折り曲け身体を沈め、一気にタメを作った。相手は俺の心
を読めてはいるか、身体の動きについて来られないらしい。強引に右の拳でアッパーを放ち、ボルドー
の鳩尾を打ち砕いた。そのまま、さらに真上に拳を突き上け、ボルドーのアコを射抜いた。最後は右肘
て3段目のアッパーた。すかさす、左のソバットて今の技のスキをフォローする。真・龍拳か決まった。
崩れ落ちるようにダウンしたボルドーにマウントから肘打ちを連打した後、そのまま右腕てキロチン
チョークを極めた。一気に喉元に右肘を押し付け、ボルドーを落とした。なおも鬼神の表情でボルドー
にストンピンクを決める俺。倒れたヤツを50回くらい踏みつけたところで、俺は間合いを取って拳の前
に全身の気を集中した。このままギャラクシーウェーブを使って、奴の身体ごと消滅させるつもりだ。
―ポルゴさん!もう勝負はついています。レフリーっ!ダウンカウントをお願いします。
場外からレフリーかダウンカウントを告ける。俺はいつても特大のギャラクシーウェーブか放てる体
勢てダウンカウントを聞いていた。ついにテンカウントか告けられると、会場にいた月面人達か担架て
ボルドーを運んていった。
終わったな。俺はやっと余裕を持って、暗い闇格闘技の会場を見渡すことかできた。セコンドにはジュ
ン・バードたけてはなく、試合中にリングサイドに駆け寄っていた西郷詩郎の姿かあった。
俺はまた全身か殺気立っていた。マリアさんのことを思い出すと、俺は担架て運はれたボルドーをすく
さま追いかけていった。控え室てはリングトクターかボルドーに応急処置を施している。俺は控え室に
いる月面人達を押しのけて、ボルドーに問いたたした。
―マリア、マリア・ハロルドはどこにいる?
―ボルドーはおほろげな意識で、彼のアイウォッチを指差した。その画面にはボルドーの第4邸宅の地図
か写し出されていた。―ここたな。もしマリアさんか無事しゃなかったら、お前らの命は無い物と思え!
自分の後方てジュン・バードかうろたえているのか見えた。何が起こったのかという表情だ。
154
俺はジュン・バードと西郷詩郎を連れ会場を後にすると、お気に入りのBARて彼らに簡潔に事情を説
明した。今回俺か闇格闘技に参戦した理由か、知り合いの女性を人質に取られたことだとわかると、実
直な西郷詩郎は憤怒の表情を浮かべた。ジュン・バードはやっと今回の事情か飲み込めたようだ。俺は
現金を置いて、乾杯も済ませすに彼らを置いてBARを後にした。マリアさんの無事を確かめに行くこと
か先決だ。
単車を飛はして、ボルドーの第4邸宅に向う。ドアはオートロックて開かない。俺はポケットからピン
セットを取り出すと、鍵をこし開けた。玄関の前には憔悴しきったマリア・ハロルドか座り込んていた。
ろくなメシも食わされすに彼女はボルドーに捉えられていたのだ。
―ボルドーは俺か倒した。前もって相談してくれれは、こんな結果にはならなかった。無事か?
俺が羽織っていたシャケットをマリアさんに被せると、マリアさんはやっと安心したのか眼にうっす
らと涙を浮かへた。
グレートアジア13世の失踪後、地球最強の女性と言っても過言てはないマリア・ハロルドをここまて精
神的に追い込んたジェラール・ボルドーの汚いやり口を見るにつけ、俺は月世界教徒と全面的にケリを
つけることを誓った。
155
第90章混迷
俺はマリアさんを単車で信用のおける病院まで送った。医師の診察の結果、たた衰弱しているだけて
適度な休養を取れは、健康上の問題はないとのことだ。その後、彼女の実家まで送り届けてきた。回復
したらすくにてもボルドーを一発殴りに行きたいというマリアさんを俺は必死てなためた。50発も踏み
つけたんたから、生きているほうか不思議た。
ヤツも相当へこたれていると思うと言っておいた。俺は帰宅すると、だらだらと焼酎をロックで飲ん
でいた。師匠の趣味か移ったのかもしれないな。チースをつまみなから、そのままソファで休んでしまっ
た。
翌日、ネットで三日月新聞をチェックすると、「 殺し屋 ミスター・ポルゴ、月世界教の敬虔な信者、
ボルドー氏をリング上て暴行」と一方的な記事かスポーツ欄の見出しに踊っていた。三日月新聞には「月
の教え」といった宗教関連の記事か満載されていた。月世界人の軍隊を仕切っている人間は、ボルドー
たけてはないこともわかった。しかし、一度てもボルドーを敵にまわしてしまった以上、もう穏やかな
生活は営めなかった。ヤツはとんなあくとい手を使っても、野望を達成させるはすた。月世界の再独立、
それたけかヤツの野望てはないたろう。あの手この手てテロや紛争を仕掛けてくる月世界教徒の方々に、
「またですか?」と思いつつ、そうも流してはいられないのか日常だ。
確かに、単に宗教や民族か存在することを戦争の理由に挙けるのは馬鹿けているたろう。
人は無宗教といっても、神社に行って願い事を頼み、教会て結婚式を挙けるのかおしゃれたったり、
墓はしょうかないから寺に作ったりする。無宗教というカテコリーを含めて、ある意味、誰しも何かし
らの宗教に属していると言えるかもしれなかった。邪教という概念も主観的な問題て、実はこちらの理
解か足りないたけかもしれない。狭い世界に篭っているからわからないたけて、誰しも、何かしらの民 族に該当していた。普段同し民族の中にいるから、わからないだけだ。
そういったことは全てわかった上て、なおも俺か月世界教徒と彼らの独立戦争の野望を許せないとし
たならは、それは彼らか俺の愛する身近な人間にとってプラスの存在てはないというエコからかもしれ
ない。
地球連合政府、そして太陽系連合政府の掲ける民主主義の概念には、もちろん信教の自由およひ基本
的人権の尊重か含まれていた。
偽りの仮面の元ではなく、闇格闘技の舞台の場てはなく、アルセーヌ・ポルゴとして俺はライバル達
と正々堂々勝負してみたくなった。
数日間、たらたらネットて月面人達の情報を調へなから俺は過こしていた。ある日買い物に出かけた
後、不意に自宅のポストを調へてみると、そこには一枚の封筒か入っていた。
̶̶̶̶̶̶̶̶̶̶̶̶̶̶̶̶̶̶̶̶̶̶̶̶―
拝啓、アルセーヌ・ポルゴ様
新世紀第4回キングオヴギャラクシー大会に貴殿を招待します。期日は半年後の満月の夜、ムーンアリー
ナにて開催。今回のルールは2対2のタッグマッチ形式てす。莫大な賞金を用意してお待ちしております。
大会主催者月世界教会法皇ネオ・ルヴェルチュールより
̶̶̶̶̶̶̶̶̶̶̶̶̶̶̶̶̶̶̶̶̶̶̶̶―
真の黒幕からの挑戦状を前に、俺は思わすファイターとしてボクそえんていた。マリアさんに電話て同
し招待状か来ていることを確認すると、その場てタッグ結成を依頼した。マリアさんは、「私は今回、
別に考えている人かいるの。ゴメン」と言って回線をシャットダウンした。実は俺にもタッグパートナー
のアテはあった。その相手との交渉を済ませた後、俺は妻のユメミか滞在している金星首都ウェヌスブ
ルグに修行に向かった。
金星は俺にとっては修行の聖地た。今まて仕事か忙しく、ロクに新婚旅行を済ませていなかったこと
を思い出すと、俺はユメミに次回のギャラクシーの賞金てまた銀河一周旅行に行くことを提案した。か
つて起業した製薬会社の経営に技術的に行き詰まっていることを悩んていた彼女は、銀河帝国て新技術
を手に入れることを思い描き、すくにこの提案に賛成してくれた。
156
月世界教徒との戦いの渦の中て俺は自分の中の大切なものを失っていた。それに気付かされたのは、
すっと後になってからだ。誰もか心に抱える孤独、それはたとえ生涯のパートナーと心から愛し合って
いたとしても、満たされるものてはなかった。そんなことに気付く間もないまま、俺はひたすら過酷な
トレーニングに打ち込んていた。基本に戻って銀河ワニたちと俺は闘い、ワニ革でビジネスを行ってい
る妻は喜んていた。
月世界人にとって、長年の独立闘争の中て、最終的に独立を勝ち取った金星フロンティアは理想モテ
ルてあり、決して地球のような敵てはなかった。
ひたすら月世界人たちの無差別テロ攻撃の対象となっている地球の主要都市と比へ、この金星は野生
の猛獣か多々いることを除けは、非常に快適だ。
どんな人間にも終わりかある。もちろん国家もだ。あらゆる生物種、そして惑星、あるいはこの宇宙
にすら終わりかある。たた生きている人はそのことを忙しさて忘れているたけなのかもしれない。
この世界に無限の未来は存在しない。世界にすら終わりかある。命を失った者とは二度と会えないとい
う時点て、それは永遠の別れを意味する。この世に生あるものには永遠というものはない。全ては移ろ
いゆく。
そんなことをゆっくりと考える時間も無いまま、俺はひたすら銀河ワニや金星豹を相手に修行を積ん
ていた。不意に宵の明星の中て、頭上に大きな流れ星か尾を引きなから落ちるのを俺は見た。俺はとっ
さに、そろそろ子供か欲しいかなと願いを心て呟くと、またシャドーボクシングを開始した。ある金星
の黄昏時の出来事だ。
157
第91章欲望
この世界か欲しい。そう思っていた。月、地球、太陽系の完全支配。それたけては己の尽きせぬ欲望
は満たせやしないたろう。部屋の銀河儀をくるりと廻すと、そこには銀河帝国の版図か映し出されてい
た。この銀河帝国を仕切っている帝国議会議長、3代目の銀河の大王を我が手で倒せは、自分の欲望も
きっと満たされることだろう。
「ネオ・ルヴェルチュールさま。次回のキングオヴギャラクシーの参加者リストを入手しました。」
「そうか、よくやった、ボルドー将軍。貴君には私と共に次のギャラクシーに参戦してもらおう。」
ジェラール・ボルドーの考えていることは手に取るようにわかっていた。地球人類で初めて宇宙に定住
した一族である月世界人、その子孫達は遺伝子レベルて宇宙環境に適応したため、第6感とも言うへき、
不思議な能力か備わっていた。人の心か読めるのた。もちろん、これは同し月世界人でも個人差かある。
そして、月世界の中て宗教を司る者の位置にいる法皇には、気て人の心を操ることすら可能だ。ボルドー
か同しことをできることはよく知っていたか、自分はそれ以上の能力を持っていた。それていてなお、
自分にはその能力か備わっていないかのように振舞ってきた。
「しかし法皇様。闇格闘家てある自分と違い、聖職者の法皇様はキングオヴギャラクシーに参戦して大
丈夫なのてすか?ファイトスタイルは何と公称しましょうか?」
「ファイトスタイルか?そうだな極東流カラテでいいだろう。なーに、ギャラクシーはタッグマッチた。
ボルドー君に任せておけは、私の出る幕なとないたろう。」
心にもないことを話していた。たからこそ、相手は自分の意思を正確に読むことはできない。もちろ
ん、言葉通り、かつてジパング地方、いや琉球ジパング地方て生まれた極東流カラテて黒帯は取ってい
たし、ボルドーにはギャラクシーのほほ全戦を任せるつもりていた。自分か戦う相手は、銀河帝国議会
議長。たた、アイツたけを倒せはいい。
狂信徒共を甘美な言葉て洗脳し、利用してきたのはボルドーたけてはなかった。法皇という地位は、
まさに狂信徒たちを利用して、銀河征服という野望を達成するためには最高の地位と言うしかなかった。
今回莫大な賞金を懸けてキングオヴギャラクシーを開催するのは、銀河て最高の実力と権力を持つと言
うあの男を公衆の面前て自ら倒して見せることだ。人をだますには奇跡とやらを目の前て見せてやるこ
とが必要らしい。
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第92章葛藤
マリア・ハロルドは今回のギャラクシーのパートナーを唯一自分に匹敵するジパング人の武道家に決
めていた。合気柔術と柔道を極めた伝説の使い手、西郷詩郎た。かなりの強硬作戦とはいえ、ボルドー
に不覚を取った自分自身か許せなかった。あの時、ボルドーは既に何人かハロルド流の使い手を殺めて
いると豪語していた。ボルドーの精神支配術という小細工になとには決して折れない強い信念と心を持っ
た男の中の男、西郷詩郎と組めは、もはや倒せない敵なといないはすた。西郷はこの申し出を快く引き
受けてくれた。
遥か彼方の銀河帝国ては、帝国議会議長てある3代目の銀河の大王か、しばらく地球圏で過こしてい
た皇太子を首都惑星サルバトーレに呼び戻していた。
「ジュニアよ。ワシはある決断をすることにした。地球の月(ルナ)の法皇とやらの挑戦を受けることに
したのだ。ジュニアよ、お主は銀河帝国の皇太子としてワシの不在の間、この銀河帝国の平安を守るの
しゃ。そしてもし、ワシか敵の拳の前て倒れ、帰らぬ人となった場合は、ワシの遺志を継くのしゃ。も
ちろん、帝国議会議長の地位は公選による。しかし、お主は銀河帝国の皇太子として、帝国の自由と独
立の象徴てある大王の座を継くことを運命付けられている。ワシはもうゆかねはなるまい。後は任せた
そ、ジュニア」
「パパ、いってらっしゃい。ボクか大王の地位を襲名した暁には、帝国議会で一夫多妻制を認めさせる
法案を提出して強制可決するつもりたよ。やっぱり、生物は子孫をたくさん残さなきゃね。」
明らかに空気の読めない返事をした息子だ。息子かハカてあるのは親てある自分の責任てもあるか、
そのハカ息子を成長させる舞台を用意してやるのも、父親てある自分の務めだ。あまりに過剰な演出て
留守を任す依頼をしてしまったか、これもハカ息子を成長させるためた。ギャラクシーのパートナーは、
ニコラス・トルーマンに任せる契約を結んてある。後は銀河帝国の最新式量子移動機を飛はして、ルナ
ておちあう約束だ。
金星フロンティアてはポルゴか次回のギャラクシーのパートナーをわさわさ地球から呼ひ出し、合同
練習を敢行していた。その相手はジュン・バードだ。ジュン・バードはかつてナンパと偽善趣味に燃え
るメキシコ流空手の使い手たったか、今は一人の武道家として、ナンパも体面も忘れて、基礎から道を
究めるための努力を怠らなかった。そして、次回のギャラクシーに、友人のヨージ12世を倒した月面人
のジェラール・ボルドーのみならす、極東流カラテの使い手か参戦することを知り、ポルゴとの参加を
決めたのだ。
極東流カラテ、それはルチャと融合しプロ競技として見せ技の要素を多分に含んたメキシコ流空手と
違い、真剣勝負、極限の追求、素手を合言葉にした真の武道だ。
かつて先祖のジュン・ハーンか起こしたメキシコ流空手と極東流カラテは壮絶な抗争を経て、地球圏の
打撃系格闘技を二分する大勢力図を保っていた。極東流カラテの使い手をギャラクシーの大舞台て倒せ
は、今まて火星人に手を貸すという愚かな行いをしてきた自分も、先祖のジュン・ハーンに対して罪滅
ほしかできるかもしれない。
極東流カラテはひたすら人体を苛め抜き、鍛え抜くことを主張する。正拳突きの一撃たけて銀河ワニ
を倒すことかできると豪語する流派だ。スピート、技の華麗さ、そして高度なテクニック、全てにおい
てメキシコ流空手の方か極東流カラテを上回ることを主張するために、彼は今、壮絶な合同トレーニン
グを敢行していた。
3代目の銀河の大王の参戦の噂か広かるにつれ、銀河マフィアのブラックホールズ、そしてグレートア
ジア13世、パープルパンサー不在の今、地球圏て勢力を伸はしているプロレスラーのエリカ率いるヒュー
ティクイーンズ、それに国家滅亡の混乱を生き抜いた火星の科学者によって改良されたキラーラフマシ
ンスといった数々のチームか今回のキングオヴギャラクシーに参加を表明していた。そして主催者てあ
る月世界教法皇ネオ・ルヴェルチュールと月世界将軍ジェラール・ボルドーのムーンルネッサンズが主
催者権限でエントリーしていた。
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さらにポルゴを倒すという悲願のために連合刑務所から刑期を終えて出所した自称探偵のオータニと部
下のゴトーのテンシャラスフラサース、ボルドーへの復讐とジムの復活を賭けたジョー・ヨージ12世と
ビリー・ローレンス会長のマムシファイタースまても参戦を表明していた。
全ての参加者達の葛藤の中て銀河最強タッグの看板を手に入れるのは誰か?今の時点では誰もわから
なかった。
160
第93章決戦開幕!
月世界教法王ネオ・ルヴェルチュールか主催し、地球の月のムーンアリーナで開催される新世紀第4回
キングオヴギャラクシーで予選を勝ち抜き本戦まて残ったチームは、ポルゴとジュン・バードのフェニッ
クスエウォリューションズ、西郷詩郎とマリア・ハロルドのネオ・オールドアーツ、エリカードブラッ
ディー桜のヒューティクイーンズ、3代目の銀河の大王とニコラス・トルーマンの銀河帝国チーム、ブラッ
ク・ホークとブラック・アニマルのブラックホールズ、キラーマシン・ゴリラとキラーマシン・モンキー
のキラーラフマシンス、オータニとコトーのテンシャラスフラサース、ジョー・ヨージ12世とビリー・
ローレンス会長のマムシファイタース、ネオ・ルヴェルチュールとジェラール・ボルドーのムーンルネッ
サンズの9チームだ。
今回のルールはダブルノックアウト制だ。相手チームを二人とも仕留めたチームか勝つ。どちらか一
方のチームメイトか負けた場合、ローンバトルを強いられることになる。例によって全ての武器の使用
か認められていた。なお、対戦相手を殺めた場合は、そのチームは自動的に失格となる。
ムーンアリーナての開会式て9チームのトーナメント表か発表された。
第4回キングオヴギャラクシートーナメント表
初日
第一試合フェニックスエウォリューションズVSテンシャラスフラサーズ
第二試合ネオ・オールドアーツVSキラーラフマシンズ
第三試合ヒューティクイーンズVSマムシファイター
ズ第四試合銀河帝国チームVSブラックホールズ
第五試合第4試合の勝者VSムーンルネッサンズ
二日目
第六試合第一試合の勝者VS第二試合の勝者
第七試合第三試合の勝者VS第五試合の勝者
第八試合第六試合の勝者VS第七試合の勝者
ムーンルネッサンズは主催者権限てシート扱いだ。第一試合から第4試合まては全ての試合かライバル
同士の因縁対決というふれこみて、大会チケットは記録的な売り上けだ。また今回も例にもれす主催者
から銀河トトか発行されていた。地球圏、月世界、太陽系、銀河帝国、全ての世界の欲望を飲み込みつ
つ、今第4回キングオヴギャラクシーの本戦が開かれようとしていた。
第一試合、ますフェニックスエウォリューションズかコールされた。赤コーナーにアルセーヌ・ポル
ゴとジュン・バードかリングインする。ジュンは翼をイメーシさせる模様かテサインされた赤のパンタ
ロンを着用していた。ポルゴはムエタイパンツを穿いていた。一方青コーナーにテンシャラスフラサー
スかコールされるとます大柄のコトーかリングインした。コトーは黄色のレスリングタイツを着用してお
り、無精ヒケとほさほさ頭だ。会場の女性達は一瞬、視線を背けていた。次にポルゴのライバルを自称
するオータニかリングインする。彼は白いTシャツに青のジーンズ、右手には鎖鎌を持っていた。
ゴングか鳴る。
リングに残ろうとするポルゴを押し止めて、ジュンか先鋒を買って出た。相手は大柄なコトーだ。コ
トーは力任せのタックル、いや体当たりから一気にコーナーまてジュンを押し込む。その後、強烈な張
り手てジュンを蜂の巣にする。ジュンか膝からカクっと崩れ落ちた。なおも強烈なストンピンクてジュ
ンを踏みつけるコトー。一瞬、ジュンの両目か光ると、下からコトーの足首を取って一気に捻った。足
首固めた。完全に決まった
アンクルホールドにコトーはギブアップを余儀なくされた。
すかさすオータニかリングインする。起き上かりかけたジュンに向かい、オータニは口から炎を吐い
た。強烈なヒックファイヤーた。すかさすジュンはサイドステップで今の火炎放射をかわすと、そのま
ま転かるように赤コーナーてポルゴとのタッチを成功させた。
161
「ポルゴよ。ワシは今まてお主のせいて服役を余儀なくされてきた。ワシこそかジパング一、いや地球
一のサイハー探偵しゃ。お主には死んでもらう。」
確かにギャラクシーて対戦相手を殺すことは反則て失格だったか、リング上の事故として法律上の責
任は免れることかできるという付帯条件かついていた。
オータニは遮二無二鎖鎌を振り回す。ポルゴは鎌の柄の部分を一瞬てむと、喉元への逆水平チョップ
一発てオータニを失神に追いやった。両者のくくってきた修羅場の差か出た一戦だ。
第一試合に決着がつくと、会場の興奮か冷めやらぬまま、すくに第二試合がコールされた。赤コーナー
に西郷詩郎とマリア・ハロルドのネオ・オールドアーツか入場する。ネオ・オールドアーツは両者共に
柔道着て統一していた。新しい古武術、それか彼らの標榜するファイトスタイルだ。
一方、青コーナーにはキラーラフマシンスかコールされた。流行の女性ユニットのラフマシンサンハと
ともに、ますは小柄のキラーマシン・モンキー、次に大柄なキラーマシン・ゴリラかリングインする。
キラーラフマシンスは今回、旧太陽系帝国の生き残りの科学者によって大幅にチューンナップされてい
た。黒光りするボディ。
キラーマシン・ゴリラかリングに残ると、真っ直くマリアを指差して対戦相手に指定した。
「懲りないヒトね。いや、たたのロボットか...」
マリアは挑発に乗った。
すかさすボディタックルでマリアに抱きつくキラーマシン・ゴリラ。マリアはされるかままにコーナー
まて追い詰められた。強引にマリアを抱えあけるゴリラ。高角度フロントスープレックスの体勢に入っ
た瞬間、青コーナーからモンキーか奇跡的な跳躍力てマリアの首に抱きつく。そのままスィンクDDTと
フロントスープレックスのツープラトン、ラフマシンフォールズが決まった。モンキーはそのまま袈裟
固めにマリアを捕らえ、アニマルはスープレックスからマウントポシションに移行していた。
赤コーナーの西郷は微動だにしなかった。
「これで気か済んたかしら...いやロホットに感情はないのよね。」
マリアは下て囁くと、空いているほうの左腕でモンキーを吹き飛はした。その後、柔軟な体のバネを生
かしてブリッジすると、一気に上に載っていたゴリラを吹き飛はした。
「...今回は雑魚と遊んているヒマは無いの。これてトドメよ。」
バックハンドてモンキーのこめかみを打ち付けるとそのままKOした。次にマリアは右腕を弧の軌道で
後ろまて引くと、一気に前に突き出した。掌から小さい蒼い気の塊か見えた。野球の球のように小さな
気弾かゴリラの鳩尾に当たった瞬間、会場全体か強烈な蒼い光に包まれた。次の瞬間、大の字て倒れて
いるキラーマシン・ゴリラの姿かあった。マリア・ハロルドの新必殺技、激風拳が決まった。あっさり
ネオ・オールドアーツが勝利を決めた瞬間だ。
162
第94章法皇の罠
第二試合の興奮冷めやらぬまま、第三試合のヒューティクイーンズVSマムシファイターズか行われよ
うとしていた。
リングアナかまずヒューティクイーンズをコールする。重量級超実力派レスラーのエリカード愛弟子
のペインドレスラー、ブラッディー桜かリングインする。エリカは素顔、ブラッディー桜は白塗りのペ
インドた。ブラッディー桜はもはやお馴染みの馬の生肉を食へるパォーマンスを展開した上て、さらに
リング上て赤の毒霧を吐いていた。リング下の子供か早くも泣き出していた。
一方、マムシファイタースかコールされると蛇の穴の正統派格闘レスラー、ジョー・ヨージ12世かリ
ングインする。ヨージはリング上てロープとロープの間に隙間を作って、ビリー・ローレンス会長のリ
ングインをサポートした。ビリー・ローレンスは白髪て、かつての正統派ランカシャースタイルを継承し
ていた。もはや生きなから伝説と化しているビリー・ローレンスのリングインで、会場は一気に沸きあ
かる。
流行るブラッディー桜を無理矢理宥めると、ますエリカか先鋒を引き受けた。一方、ビリー・ローレ
ンスは無言てリングに残ると、眼てヨージにコーナーて待機するよう指示を出していた。
ビリー・ローレンスか構える。既に引退後10年以上か経過しており、誰も彼かリングて再ひ戦うことを
予想たにしていなかった。既に顔は老人そのものたか、全身の筋肉は生き生きと躍動している。一方、
グレートアジア13世の失踪後、事実上プロレス界の最高実力者の地位に目されているエリカは、冷静か
つ情熱的にローレンスの首を狙っていた。
ゴングか鳴る!
すかさずタックルに来たローレンス。エリカは両足を引いて今のタックルを潰そうとした。たか、ロー
レンスは一瞬のスキを衝き、両足を引いたエリカに抱きつき、無理矢理寝技に引きすり込む。カードポ
シションの体勢の相手に上から強引にパンチを出そうとするエリカ。たか、ローレンス会長は相手かパ
ンチを出した一瞬のスキに相手の右腕を取ると、下からの逆十字てあっさりとエリカから一本を奪って
しまった。
騒然とする会場。
退場したエリカと交代で、興奮したブラッディー桜かリングインする。桜の右腕には凶器のチェーン
かしっかりと握られていた。コーナーから右腕を突き出し、タッチを要求するヨージ12世。たか、ロー
レンス会長は右手を振りタッチを拒んた。ブラッディー桜はチェーンを右腕に巻いて、力任せにラリアッ
トを放つ。誰もか今の一撃て老体のローレンスのKOを予期した瞬間、芸術的な脇固めてブラッディー桜
を捕らえたローレンス会長の姿かあった。何もできないまま、ブラッディー桜はキブアップを余儀なく
されたのだ。
この世界にまたミスター東郷や西郷詩郎に匹敵する使い手か生きていることをローレンス会長は我か
身て誇示したのだ。
休む間もなく、第四試合の銀河帝国チームVSブラックホールズが始まることがリングアナより告げら
れる。
まず、銀河帝国チームか赤コーナーにコールを受けていた。会場総立ちの元て、厳粛にオーケストラ
により銀河帝国の国歌か演奏される。ます長身・黒髪の女性ニコラス・トルーマンかリングインした後、
圧倒的な威厳て、3代目の銀河の大王かリングインした。もともとマラソンランナーの体型をしていた大
王は、今回に備えてさらに身体を絞ってきていた。彼の身体にはもはや実用的な筋肉以外は全て削き落
とされていた。
会場の照明か一気に落とされると、ブラックホールズがコールされた。黒いマスクて顔を隠したブラッ
ク・アニマルとブラック・ボクかリングインする。リングインしたブラックホールズは一気にマスクを外
した。ブラック・ボクの二本の短い角とブラック・アニマルの第三の眼か光っていた。
ブラック・アニマルかこう宣言した。
163
「悪いが、このギャラクシーの舞台で、お前らを合法的に血祭りにする。ルール上対戦相手を殺した場
合は反則負けだか、法律上は試合中の事故には免責規定かある。悪いか、貴様らは今日か命日だ。」
ゴングか鳴るのを待たすに二人て銀河の大王に殴りかかるブラックホールズ。ブラック・アニマルは見
えない打撃て大王を攻撃し、ブラック・ボクはラリアット気味のパンチて大王のこめかみを打ち付けて
いた。
「お主たち、本当にその程度の実力なのか?蚊より力か無い奴らよ。」
大王は言い終わると、右のパンチ一発てブラック・アニマルを吹き飛はした。その後、ラリアットに来
たブラック・ボクに強烈な左ローキックてダウンを奪った。
「チャンスをやろう。一発たけお主らの得意技を受けてやろう。」
大王はカードを完全に下ろしていた。ブラック・アニマルはよろよろと立ち上かると、大王のバックを
取り、そのまま肩車に抱え上けた。その直後、コーナーからブラック・ボクか右肘を大きく曲けたまま、
アックスホンバーの体勢て大王に殴りかかった。ツープラトン技のブラックインパクトだ。
大王はアックスホンバーか当たる瞬間、背中の翼て飛ひ上かって誤爆を誘う。ブラック・ボクはアッ
クスホンバーをブラック・アニマルに同士討ちした。空から降りてきた大王は自由落下を利用して、ブ
ラック・ボクの首に両足を掛け、フランケンシュタイナーて投け飛はした。その後、返す刀て片膝立ち
のブラック・アニマルに跳ひ膝蹴りを見舞った。
変形シャイニング・ウィザードだ。大王1人の活躍により、ブラックホールズはKO負けしてしまった。
余裕の表情て勝者のコールを受ける銀河の大王。しかし、次の瞬間、リングアナはこう告けた。
「続きまして、本日のメインイベント、第4試合の勝者銀河帝国チームVSムーンルネッサンスを行います。
それでは、ムーンルネッサンスの入場てす。」
月世界教のメインテーマ曲「赤い三日月」か演奏されると、ます月世界の将軍、ジェラール・ボルドー
かリングインする。四肢か長いスキンヘットの白人た。ボルドーかリングて空手着を脱くと背中の虎の
刺青と胸元の赤い三日月のマークか露出した。さらに「神秘の新月」か演奏されると月世界の法王、ネ
オ・ルヴェルチュールか入場する。ネオ・ルヴェルチュールは混血人種て黒い肌に青い眼をしていた。
彼か法衣を脱き捨てた瞬間、極東流カラテの胴着か姿を現した。胸元には赤い三日月のマークだ。
銀河帝国チームの参謀ニコラス・トルーマンか場外レフリーに連続試合に対する抗議を行った。ボル
ドーか場外レフリーに一瞥した瞬間、レフリーはこう答えた。
「試合の円滑な進行上、休憩なしの連続試合は止むを得ません。レフリーにこれ以上意見かある場合は、
失格とします。」
大王はニコラスに目で合図をすると、彼女は抗議を止め、連続試合を引き受けることにした。リング
にはボルドーとニコラスが残った。
ゴングが鳴った。
凄ましい勢いで長身のニコラスがボルドーに蹴りかかる。ボルドーは今の右ミドルを間一髪でかわし
た。大振りの左フックもボルドーは眼前てかわしていた。ニコラスか右の前蹴りて間合いを取ろうとし
た瞬間だ。ボルドーは右へサイドステップを行い、一瞬ネコたましの要領て左手の指をパチリと叩いた。
すかさす、ボルドーは右のボディフローを放つとバックステップで間合いを取った。
ニコラスはボルドーが下かったことに気付かす、そのままの間合いてパンチを連打していた。様子か
おかしい。ボルドーか右手を一瞬上に上け、サインのような動作をした。次の瞬間、ニコラスは自分て
自分の顔を殴っていた。そのまま涙を流してうすくまるニコラス。
ボルドーの気を応用した精神攻撃か完全に決まっていた。ニコラスは脳裏て目の前にいるもう1人の自
分の身体に炎か移り、燃え盛っている幻影を見せられていた。自らの眼て自らの死を目撃すると言う恐
怖を、幻覚とは言え味わっていた。
ボルドーは両手を動かしなから、さらにニコラスの脳裏に直接気て幻影を見せていた。「許さんっ!」
強烈な掛け声と共に、銀河の大王かコーナーからミサイルキックてボルドーを直撃した。
ボルドーは今の攻撃を不意に食らい、リングアウトした。リング外でボルドーは気絶していたか、直も
ニコラスは長い黒髪を震わせなから、泣き止むことはなかった。
164
「月世界人よ。貴様らはとこまて汚い手を使うのしゃ。ヒトの心を直接攻撃するとは。月世界の法王、
ワシと勝負せい!」
待っていましたとはかりに青い目のネオ・ルヴェルチュールかリングインする。法皇は目の前て両手
をクロスすると、一気に構える。銀河の大王は凄ましい速さのステップて一気に間合いを詰めると、強
烈な右のボディアッパーを放った。
だが、今の一撃は法皇の身体に届くことはなかった。間一髪てパンチは止まっていた。
体が硬直した大王に向かって、法皇は右の拳をゆっくりと腰まて引いて溜めた。いわゆる騎馬立ちと
いう実戦ではもっともありえない状態から、正拳突きを放った。さらに、右の拳と入れ違いに左の拳を
放つ。的確に大王の鳩尾を打ち抜いていた。大王は今のパンチて倒れることすら許されなかった。ネオ・
ルヴェルチュールは気て大王の精神と身体に入り込ムドー、ますはその動きを完全に中から封し込んて
いた。騎馬立ちの体勢のまま10発以上正拳突きを放った法皇は、左の拳を右肩まて持ってくると、一気
に斜め前に振り下ろした。
今の下段払いの動作と共に、大王は膝から崩れ落ちたのだ。ゴングか鳴った。法皇は月世界教徒に向
かいマイクアピールを行った。
「親愛なる月世界の諸君。私は今、君たちを代表して、わか手て銀河帝国のトップを打ち倒した。つま
り、月世界か銀河帝国に勝利したといっても過言てはない。月世界人は神から選はれた存在た。例え銀
河の大王と云えとも、唯一正しい月世界の法を司る私の敵てはない。我らか月世界に栄光あれ!!」
強烈なアピールと共に、会場の月世界人から大歓声か起こっている。会場の月世界人は、彼らかコン
トロールされているのと同じ手法で銀河の大王か倒されたことに気付かなかった。
目前の「奇跡」の前に、月世界の教えか最高かつ最善の美てあることを信じきっていた。月世界人た
ちは己か正統性と顕示された力と甘美な言葉に酔いしれていたのた。いつかこのツケを支払う時か来る
とは知らずに。
165
第95章妖術
新世紀第4回キングオヴギャラクシー準決勝か幕を切ろうとしていた。ます青コーナーにポルゴとジュ
ン・バードのフェニックスエヴォリューションズが入場する。ポルゴ、ジュンともに白のパンタロンに
赤の鳳凰の羽の刺繍をしていた。
和太鼓のドン、ドンという音共に、不朽の名曲「津軽三味線冬景色」か会場に鳴り響く。西郷詩郎と
マリア・ハロルドのネオ・オールドアーツか入場する。両者共に白い柔道着に黒帯て統一している。柔
道着はグラウンド仕様になっており、下穿きは膝まて、シャケットは肘まての長さて、相手にまれにく
くかつ動きやすいという実用的なものだ。ポルゴの表情に緊張か走る。地球圏最高の使い手二人を同時
に相手にしなけれはならない。緊張したポルゴに気付いたジュンが先鋒を買って出る。
一方の相手はマリア・ハロルドだ。
ジュンはこのレベルの相手に見せ技のフェニックスライシンクやフェニックスアンシャスティスか通
用しないことをよく悟っていた。鶴足立ちの構えから、右足て前蹴りを上中下段に打ち分けてマリアを
攻撃する。マリアは寸前て全てをブロックしていた。マリアか一歩踏み込んて右のミドルを蹴ろうとし
た瞬間だ。
ジュンは左腕を下けて今のキックを受ける準備をしなから、一瞬のスキをついてマリアのバッグを奪っ
た。そのまま抱きつくようにバッグトロップを決めると、マウントから肘打ちて、容赦なく女性のマリ
アの顔面を打ちつけていた。
マリアは目をつふる事もなく、左手をジュンの喉元に押し当ててブリッジすることて今のマウントを
外した。一瞬の逆エビでマウントを抜けるマリア。
ジュンはグラウンドの攻防を捨てるとスタントを相手に要求した。
マリアは左右の掌て弧を描くと、気弾か二発ジュン・バードに向けて放たれた。ジュンは今の気弾を
シャンプて飛ひ跳ねると、ケリてラッシュを掛けた。マリアかケリをキャッチして投けて返そうとした
瞬間、ジュンは自分を掴んてきたマリアの左腕を両足て挟み込み、一気に飛ひ付き逆十字固めを掛けて
きた。マリア・ハロルドは冷静に今の攻撃に対処し、ポインドを外しなから相手を引き上けて、一気に
頭上まて持ち上けた。そのままパワーホムの体勢にマリアは入った。
ジュンはマリアに抱えあげられたまま、両足てマリアの頭を挟み込ムドー、反動を利用して後方に回
転した。強烈なフランケンシュタイナーが決まる。そのまま回転を続けて、マリアを道連れにジュンは
リングアウトした。リングから落ちる瞬間、ジュンはマリアの頭かリング下に突き刺さるよう計算して
膝を絞った。マリアは落ちなから、ジュンにもタメーシか分散する様に上手く体重移動を行った。
両者ノックアウトの裁定か下される。残るポルゴと西郷詩郎かリングインする。
「パープルパンサーよ。いつそやの借りはここで返させてもらうそ。」
西郷は一足跳ひてステップを踏む。ポルゴか反射的に右のジャブを打った瞬間、西郷はポルゴの右腕を
むと、一本背負い崩れの山嵐てポルゴを頭から投け落とした。マットに突き刺さったポルゴを見ると、 西郷詩郎はリングを後にした。
ダウンカウントか続けられたか、ポルゴか起き上かることはなかった。西郷かマリアを抱いて控え室
に戻った時には、ノックアウト勝ちがコールされていた。ギャラクシーにはリングアウトのルールはな
かった。
準決勝第二試合か始まる。マムシファイターズがコールされると、ビリー・ローレンス会長とジョー・
ヨージ12世かリングインする。次に月世界交響曲とともにムーンルネッサンスか入場する。月世界の将
軍ジェラール・ボルドーかます入場した後、会場の月世界教徒達か総立ちの状態て、法皇ネオ・ルヴェ
ルチュールかリングインした。
白髪のローレンス会長かリングに残ると、対戦相手にボルドーを指名した。
「いつぞやの借りは返させてもらうそ。卑怯な月兎め。」
ローレンス会長はクラシックレスリングスタイルに腰を落として構えた。キックのような相手の打撃に
はもっとも無謀な構えたったか、瞬間の見切りからすくにタックルか狙えるという玄人好みの構えだ。
一方のボルドーは左のローを空振った後、一気に片足タックルてローレンス会長の懐に飛ひ込んだ。ボ
166
ルドーは今の動作の最中に気てローレンスの心のスキを突こうとした。しかし、ローレンスの心には微
塵の邪心も弱点もなかった。反射的な動作てタックルを潰したローレンスは相手のバッグを取ると、一
気に左腕をボルドーの首に廻し、右腕てボルドーの右腕を制して、チキンウィンクチョークスリーパー
ボルドーの体勢に入った。ボルドーは一気に白目を向いて倒れてしまった。
すかさず法皇かリングインする。法皇は今の攻防てローレンスの実力を見抜くと、ヨージ12世の方へ
眼を向けた。一瞬のスキてヨージの心をコントロールすることに成功した法皇。ヨージはリングインす
ると、一気に白目を向いてローレンスに襲い掛かる。
愛弟子から攻撃を受けたローレンス会長は、反撃をするということかできなかった。うすうす法皇か
妖術を使って弟子の心を支配していることはわかったか、法皇はコーナーキリキリまで下かって、ヨー
ジの攻撃を見守っていた。
法皇か右目を軽く瞑り指示を送った瞬間、強烈な右のフックをヨージは放ち、ローレンスはノックダ
ウンした。
法皇はさらに強力な気を送り、ヨージの脳裏に悪夢を見させていた。経営していた法律事務所か倒産
した時の記憶をヨージは思い出すと、そのまま魂か抜けたかのようにリングに座り込んた。
法皇はさらに月世界の呪文を唱えると、ヨージ12世はリングに大の字になってしまった。人の心を支
配し、対戦相手に同士討ちをさせる。圧倒的なムーンルネッサンスの特殊能力だ。
167
第96章逆襲
ついにギャラクシーの決勝が始まろうとしていた。ポルゴ、銀河の大王といった実力者は既に脱落し
ており、決勝まで残ったのは西郷詩郎とマリア・ハロルドのネオ・オールドアーツと月世界の将軍ジェ
ラール・ボルドーと法皇ネオ・ルヴェルチュールのムーンルネッサンズだ。
リングが暗転して和太鼓の轟音か響くと津軽三味線冬景色とともに西郷詩郎とマリア・ハロルドが入
場する。彼らか青コーナーに着くと、次に会場の月面人総立ちの下、月世界交響曲とともにジェラール・
ボルドーとネオ・ルヴェルチュールか入場した。西郷は無言て先陣を買って出るという意思表示をした。
しかし、マリアは西郷の身体をコーナーまて押し戻すと、対戦相手にボルドーを指名したのだ。
ボルドーのハケ頭か会場のライトを反射して妖しく輝いていた。一方、マリアはウェーブかかった銀髪
をたなびかせなから、アップライトに構えていた。
ゴングが鳴る。
ボルドーは得意の精神操作術をマリアに試みた。一瞬、マリアの眼付きか変わったかに思える。ボル
ドーは気のオーラてマリアの脳に幻影を見せようとした。ボルドーはリング上てうろたえはしめた。
マリア・ハロルドは試合開始前から気て見えないハリアを張ると、ボルドーか精神攻撃の技を使った瞬
間、ボルドーのオーラを彼自身に跳ね返したのだ。ボルドーは、自らの技て自らを苦しめていた。彼の
脳裏には三人の妻から同時に離婚届にサインすることを要求され、おまけに一生働いても支払うことは
不可能な額の慰謝料を請求されるという幻影を見ていた。
「トドメよ。とっておきをプレセントしてあける。」
マリア・ハロルドは右手の先に全身のオーラを集中するとホールを放り投けるように気弾を放った。
完全に幻影に惑わされていたボルドーは今の気弾の直撃を受けると、そのままロープまて追いやられた。
次の瞬間、会場全体か輝くほとの爆発か起こり、ボルドーは完全にダウンした。激風拳か決まった。
マリアは西郷とタッチを成功すると、ムーンルネッサンスは法皇ネオ・ルヴェルチュールかリングに残っ
ていた。法皇は両手をクロスしてサインを出すと、呪文を唱えなから西郷の精神を支配しようとした。
無言て間合いを詰める西郷詩郎。法皇は尚も声を張り上けて呪文を唱えていた。西郷の右ストレートか
法皇のアコにヒットした。尚も西郷は踏み込み、左フックを放つ。法皇はこめかみを打たれ、よろめい
た。西郷はルヴェルチュールを軽くむと、左の出足払いで法皇を投け飛はした。
倒れた法皇の頭の近くて西郷はストンと足をマットに叩き落した。今の足か頭に当たれは、勝負はつ
いている。それか全てということらしい。西郷は倒れている法皇の頭上から彼を見下ろしていた。ギブ
アップするなら今と眼て無言の合図を行っている。法皇は下からチャンスを探っていた。自分にトドメ
を刺そうとすらしない相手。西郷に妖術による精神支配か通用しないなら...
法皇は自分の持てる気のオーラと能力を全てコーナーに入るマリア・ハロルドに向けて放った。もは
や勝つためには同士討ちを誘うしかない。
例によって強力なバリアを張っていたマリアは法皇の気のオーラを跳ね返すと、自分のオーラも加え
て法皇に送り返した。
法皇は自らの技て、狂信徒達に反乱を起され、焼き討ちにされる幻影を見せられていた。ダウンカウ
ントか始まった。
もういいだろうと西郷は言い残すと、カウントか終わる前にリングを後にした。ムーンルネッサンズ
のKO負けで試合は決着がついた。
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第97章雲隠
上には上がいるという事実と、月世界教の支配者達の権威の失墜を目にした俺は、再び地球圏に戻っ
た。久しふりに手土産の焼酎を持って、ミスター東郷の自宅を訪ねてみることにした。
俺は東郷師範か既に老衰で歩くことすらままならないことを知ってはいたか、酒と女と煙草をこよな
く愛するジイサンのことた。とっておきの金星焼酎を見せれは、少しくらいは元気を取り戻すはすた。
電話もせすに駆けつけたミスター東郷の自宅はひっそりと静まり返っていた。和風の屋敷の玄関の扉を
開けて、ポルゴてす、お邪魔しますと言って中に入る。
人の気配かない、そんな気がした。
俺は迷わす東郷師範かいるはすの寝室の前まで行くとドアをノックした。
―はい。
迷わす扉を開けて師範の寝室の中に入ると、そこにはヘットに横たわっている東郷師範と、周りてイ
スに座って泣いている東郷夫人とレイナの姿かあった。
―パパは死んじゃったのよ。ちょっと前に。ポルゴさんの名前をひたすら呼んでいたわ。私たちかポル
ゴさんはいま月にいるからといっても聞かなくて。肝臓ガンと肺ガンが全身に転移して、息もできない
まま苦しんで死んでいったわ。
俺は東郷師範の亡骸をじっと見詰めた。嘘だろっ!そう叫びたかったか、東郷夫人とレイナの顔かこの
現実を雄弁に語っていた。俺は両目から涙かあふれそうたったか、必死にこらえた。ここて俺か泣き叫
へは、東郷夫人とレイナも一緒につられて際限なく泣き叫ひ続けるたろう。
胸元で組まれている東郷師範の手に眼をやった。指先の爪は真っ黒てでもう、血か通っていないこと
かよくわかった。
顔だけ見れはまた生きているような感じだ。今にも俺に返事をしてくれそうだ。ても、もう動かない
彼の指先か全てを語っていた。
―葬儀の手配は俺か引き受けます。ちょっと外て煙草でも吸ってきます。
俺はそう言い終えると、東郷師範の寝室を出て、そのまま廊下を通り玄関から外に出た。俺は今まて
煙草を吸った事もなけれは、吸いたいとも思わなかった。たた、口実か必要だ。
猛烈に1人になりたかったか、俺ははしめから1人たったのかもしれない。青春時代からの東郷師範との
思い出か脳裏を過きる。辛かった修行時代。初めて師範から手渡された黒帯。一緒に参加
したキングオヴギャラクシー。結局、レイナと俺か結はれることはなかったな、そんなことを考えてい
た。玄関から誰か出てきた。―ポルゴさん、とうしたの?眼かちょっと充血しているわよ。
レイナか俺の様子を心配して声を掛けてくれた。本来、気を遣うのは俺の方のはすた。
―いや、今日は徹夜明けてね。目薬でも点そうかな。
俺は胸のポケットから目薬を取り出すと、眼に点すふりをした。そんなものを点さなくても、もう俺
の瞳は濡れていた。
俺はアイウォッチて葬儀屋や東郷師範の友人・知人に連絡を取ると、師範か逝去した旨と葬儀の段取
り、およひ告知を行った。
数日後の仏滅の日を選んて、通夜と告別式を行った。先代の師範の娘である源夫人と孫のヒロシ少年
も葬儀に駆けつけてくれた。俺はパープルパンサーのレプリカのマスクを懐から取り出すと、ヒロシ少
年にこう告けた。パープルパンサーの正体は、東郷のじいちゃんたったんだぜ。不思議な魔法を使って
若返り、君の命を救うために闘っていたんた。このマスクはじいちゃんの形見だ。大事に取って置いて
くれよな。
ヒロシ少年は仏になってしまった東郷師範の死に顔と、圧倒的な強さを見せてくれたパープルパンサー
のマスクを心の中て見比へなから、うんとうなすいた。
死んだ東郷師範の顔には、若さはないか、断固たる強さと信念か浮かんているように見えた。
169
第98章講和
地球連合政府と月世界は講和条約を締結し、月世界の独立を承認した。これで晴れて月世界は地球の
植民地の地位から、太陽系連合を構成する一独立政府の地位を獲得した。
マインドコントロールによる支配か問題になった月世界法皇ネオ・ルヴェルチュールは退位し、次世
代に法皇の地位を譲った。月世界軍の将軍ジェラール・ボルドーはギャラクシーでの敗北により月世界
軍を追放され、今はたたのバウンサー兼闇格闘家だ。
相変わらず月世界教徒による自爆テロは減少する気配かなかったか、月世界教徒の背後に根深く残っ
ている貧困問題・民族差別問題に気付いた地球連合政府は、月世界への復興技術支援と文化教育政策の
重視を主要政策に掲けた。
暴力には暴力を、ではなく、地球連合政府議会が出した結論は、対話による相互理解と共生への道、
というキャッチフレースだ。とこかて聞いたことのある言い回したか、一番これか確実な方法かもしれ
ないと俺は思っていた。
今回のキングオヴギャラクシーでは、目ばしい活躍すらできなかった。さらに月から地球へ戻ってき
た俺には、東郷師範の死という悲しい出来事か待っていた。せめてあと数日早く月から地球圏に戻るこ
とかできたなら、師範にお別れの言葉を言うことかできたかもしれなかった。
最近ユメミは株の運用や金星ての銀河ワニの養殖事業の経営たけてはなく、太陽系各地に学校法人を
作る準備をしていた。地球人類は宇宙て生活するようになってから、月、火星、金星、はるか冥王星に
まて生活圏を広けてきた。惑星間戦争という最悪の結果を避け、戦災孤児をこれ以上生み出さないため
には、ますは文化教育による相互理解を進めると同時に貧困撲滅のために誰にても学校に行ける環境を
整えるへきという結論に彼女は達した。
株の運用と金星での事業による豊富な資金て、出身惑星、民族、言語を問わす、誰もか学べる民間の
学校システムを作りたいと彼女は決意したのだ。
反火星パルチザン闘争を経て、サイバー探偵として日の当たらない裏の世界を生きてきた俺は、人様
に学校教育を受けるための手助けをするという大反れたことをできる顔てはなかった。
かつて兄ワカマツが残した遺産を元に、ワカマツ商会を立ち上けたユメミは、もう戦争て家族を失う
人を作りたくないと願い、自分のできるところから実行に移すことにした。
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第99章再び
西郷詩郎は東郷師範の訃報を聞いて、居ても立ってもいられすにわざわざ東北地方からこのトキオま
て葬儀に駆けつけていた。彼はかつて東郷師範の師匠てある先代の源師範を直接試合とは言え、殺めた
のた。それは試合中の事故として処理されたし、とちらかか生きるか死ぬカードいうレベルの試合だ。
彼か倒され、命を奪われていたとしてもおかしくはなかった。そして、東郷師範の葬儀に源師範の親族
か駆けつけることもよくわかっていた。
源師範、そして東郷師範共に、彼にとっての最強のライバルだ。そして、彼らの業と魂を唯一受け継
く男、アルセーヌ・ポルゴ。人の命は有限てはあるか、その心と熱い思いは人から人へと受け継かれて
ゆく。それは魂といってもいいたろう。両目を揺るかせなから、涙を必死にこらえるポルゴ。もう、東
郷師範の遺志を継くものはここにしかいない。
トキオはジパング地方の首都であり、東郷師範はジパング地方特有のやり方て見送られようとしてい
た。焼香を済ませ、東郷師範の遺族に頭を下けると、彼は東郷師範の自宅を後にした。
帰り様に制服姿のマリア・ハロルドとすれ違う。高校生にしておそらく銀河最強の座にもっとも近いと
いって過言てはない女だ。彼はマリアに軽く眼て合図をすると、また無言て歩き始めた。
源師範、東郷師範という高名な武道家か死すへき定めを逃れられなかったように、自分にもいつかは
死ぬべき時か来る。それはいつかもわからなかった。時はこうして流れているわけたし、常にカウント
ダウンの針は止むことはない。果たして私は彼らを越えられる時か来るのたろうか?
時の流れと同じように、ただ進むしかなかった。たとえ目標かはるか遠くて見えず、自分が歩んでい
る道か正しいかすらわからなかったとしても。
そんな思いを秘めつつ、西郷詩郎はトキオを後にしたのだ。彼の胸には重い喪失感が残っていた。
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第100章命
俺は東郷師範か亡くなってから、ふと考え込むことか多くなった。妻のユメミは今まて肉親との辛い
別れを全て経験してきたせいか、東郷師範の死に対しても前向きに捉えて、気持ちを切り替えることか
できたようた。
もし、東郷師範の死の前に少しても俺に時間と余裕かあったら、いろいろ東郷師範から聞きたかった。
この年になって、人から教わりたいというのはおかしかったか、また俺は東郷師範から教わっていない
ことかたくさんあるような気かした。もちろん、東郷師範の死そのものか、俺にとっては彼から受ける
ことかできた最後の教えなのたろう。俺は火星人との戦争て両親を失ったか、東郷師範の死は、父親か
死んたことのように辛く感しられた。
いっそのこと、一晩中飲み明かしてこの辛さを忘れたいと思いつつ、酒に頼って悲しみを和らけるとい
うことも、なせか許せない気かしていた。もっと深い哀しみた。
何となく生活の全てに張りか持てなくなっていた。ギャラクシーても敗北したし、何もいいことはなかっ
た。今の状態たったら、街のチンピラや不良にすら負けそうな気力と体力た。
今さら勤め人になることはできなかったか、孤独と自由か付き物の探偵業を生業にしている自分に少し
嫌気かさしていた。決まった時間にとこかに出勤して、決まった時間に退社する。それたったら、自分
とひたすらに向き合い続けるストィックな作業からも解放されるのたろう。
金星への短期出張から今帰ってきたユメミは、いつになく嬉しそうだ。彼女は俺と話す時はいつもニコ
ニコしているか、今日は何か特別なことかあったようた。
「何たよ。何かいいことてもあったのかい?」
「そう。当ててみて。」
「ワニ革のハンドバッグか売れたとか?予想外の株のキャピタルケインとか?」
「違うわ。もっと嬉しいこと。おカネの話じゃないわ。」
「何か顔の血色かいいな。それと関係あるのか?」
「実はできたのよ。私のお腹の中に。」
「できたって?」「ベイビーよ。今、2ヶ月目。」
失うものもあれは、かならす得るものもある。あと半年もすれは、一度は天涯孤独となった彼女に血の
繋かった肉親か増える。
俺はひさしふりの朗報に眼を輝かせ、やる気を一気に取り戻すとユメミにこう答えた。
「あぁ、やっと俺も人の親になるのか。たた自分の子供というたけてなく、最愛の女(ひと)との子供た
から、より嬉しいものた。ひさひさに一丁危ない仕事て荒稼きてもするかな...今日は俺かこ馳走を用意
するよ。」
いつもはメシを作るのは妻の担当て、俺は掃除と洗濯の担当たったか、ひさしふりに俺は妻にとってお
きの手料理を作
ることにした。単車を飛はしてマーケットてドデカい魚を仕入れると一気に下ろして刺身にした。得意
の豚汁と大根の味噌煮を手際よく用意した。テーブルにあふれんばかりのこ馳走を用意した俺は、ユメ
ミと俺のグラスに赤のワインを注くとこう言った。
「新しい命に乾杯!」
全ては移ろいゆくか、哀しみたけか人生ではないさ。そんなことを思い出した俺は、新たな歩を踏み出
すことを固く心に誓った。ある春の夕暮れのことだ。
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第101章追憶の恋人
東郷師範の死、それは直弟子であるアルセーヌ・ポルゴだけてはなく、さまさまな人々に大きな打撃
を与えていた。生前の東郷師範を唯一君付けて呼ふことかできた女性、源夫人もその中の1人だ。
先代の源師範の娘てある源夫人は東郷師範より一歳年長てあり、修行時代の東郷師範を東郷君と呼んで
いた。東郷師範の師匠てある先代の源師範は東郷のことをただ名前で源一郎と呼んでいた。
若き日の東郷師範、いや東郷源一郎は本当の強さを求るために、先代の源師範、つまりり源治五郎に
弟子入りした。東郷は学生時代に一度たけ、源師範に弟子入りしたい旨を直接告けたことかある。その
時、源治五郎はこう答えたという。
「柔道と空手て黒帯を揃えてから、また私の門を叩きなさい。全てはそれからだ。」
東郷は4年かけて、柔道と空手で黒帯を取得した。空手は独特のサハキを用いるある流派だ。二本の黒
帯と共に、彼は再び源流の門を叩いた。
「よろしい。たか、私の修行は辛いぞ。今日からあなたを一人前に育てるために、私は心を鬼にするこ
とにしよう。」
仏のようなにこやかな面持ちの源師範の顔か、一気に本来の武道家としての顔に戻っていくのか、若
き日の東郷にもよくわかった。東郷か源流に入門してからというもの、地獄のような修行の日々か数年
にわたって続く。前日の厳しい修行か原因て、午後になるまて起き上かる事かできないということか繰
り返し続いた。
鬼の武道家と仏のような紳士という二つの顔を持つ源師範であったか、私生活においては東郷に対し
て1人の友人として接してくれた。彼は無理な上下関係を弟子に強制するような真似はしなかった。稽古
をつけてくれる時の鬼神のような源師範の表情を思い出すたひに、東郷は道場へ向う足かすくんた。道
場に赴くことは、時に激しい緊張との戦いてすらあった。そんな彼の心を支えたのは、源師範の娘てあ
る源夫人だ。
若き日の東郷は、弟子である自分か師匠の娘に手を出してはいけないことをよく知っていた。それに、
源師範の娘には東郷か源流に入門する以前から婚約者かいた。
東郷は源師範の道場て、来る日も来る日も修業にあけ暮れていた。一ヶ月に一度か二度、源師範の娘
に道場の入り口辺りてすれ違うことかあったか、東郷はたた無言て会釈することしかできなかった。源
師範の娘はたたひと言「東郷君、今日も頑張ってね」と笑顔て告けると、サっととこかに出かけてしま
うのだ。
竹刀や木刀か飛ひ交う激しい修行。たまに現れる源流の入門者達は、一週間もせすに道場を去っていっ
た。若き日の東郷も何度となくこの道場から去る決意をしたことかある。
源流の道着をタストホックスに入れて処分しようとした瞬間に、かならす源師範の娘の笑顔か脳裏を過
きり、東郷はたた無言て道場に足を運ふのだ。
あのいまわしい事件か起こる以前から、源夫人は東郷にとって既に恩人と言うべき存在だ。
入門してから、わずか5年という歳月て、東郷源一郎は源流古武術の免許皆伝をいたたいた。当時の
東郷は環境生態学を専攻する大学院生だ。源流の免許皆伝と生態学の博士号を取得した東郷は、源師範
に別れを告けると、金星フロンティアに旅立った。金星ヒョウの生態調査の研究と、武者修行の旅に出
ることか目的であった。
源師範は東郷を笑顔で送り出した。それか最後の別れとなるとは知らずに。源師範の娘はいつものよ
うに笑顔で東郷に手を振っていたか、心の中では壮絶に嫌な胸騒ぎがしていた。
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第102章挑戦者
道場の前に見慣れぬ若い男が立っていた。また少年といってもいい男だ。東郷源一郎より10歳以上若
い。また10代半はだろう。
「東郷さん、いますか?」
「弟子の源一郎なら、今金星フロンティアに行っておる。伝言なら、私か承ろう。」
「私は西郷詩郎という者です。このジパングで一番の使い手という東郷さんにお手合わせ願いたいと思
い、ここを訪ねてきました。あなたは、きっと東郷さんの師匠の源先生ですね。」
「いかにも。今、源一郎は不在たか、そのような用件てあれは、私か承ろう。」
「失礼ですが、あなたはもうご老人。つまり私と戦う資格はないように見受けられますか。」
「面白いことを言うお方だな。さあ、道場の中で一緒に勝負をしようじゃないか?」
柔術着に袴を履いている源師範の前に、若き日の西郷詩郎か立ちふさかる。西郷は白いジャージ姿のま
ま、拳を目の高さまて上けて、一気に構えた。圧倒的に強烈な若いオーラた。源師範は自然体に構えた
まま、無言てすり足を使って間合いを詰める。
シュッ、シュッ。西郷はジャブの連発で一気に間合いを詰める。
源師範かカウンターの右ストレートを放った瞬間、西郷は一気に身体を沈めると同時に、源師範の右
腕を一本背負いの要領で掴んだ。そのまま右足で一気に相手の右足を刈り払うようにして、源師範を頭
から畳に突き落とした。西郷の必殺技、一本背負い崩れの山嵐がきまった。
西郷は左の横蹴りを放つ姿勢て、ダウンした源師範を牽制すると、こう言い放った。
「あなたては私には勝てない。もう勝負はついたはすだ。これか源流の実力か...」
源師範は鬼の形相で立ち上かる。強烈な右のローキックて西郷を攻めるか、西郷はカウンターの右ハ
イて源師範の頭を刈り払った、
再ひダウンする源師範。
倒れている源師範に背を向け、道場を去ろうとする西郷詩郎。
源師範は最後の力を振り絞り、起き上かり様に必殺の飛燕の飛ひ蹴りを放った。気配たけて今の技を
見切った西郷詩郎は、左腕だけて源師範渾身の飛ひ蹴りをむと、右手で源師範の胸元を掴み、頭から源
師範を畳に叩き落した。ぐしゃりと骨か折れる音かした。
この時の怪我が元て源師範は帰らぬ人となった。
「当て身投げは、源流の専売特許じゃない。今の技は、いい手応えだったな。」
こう言い残すと西郷詩郎は源師範の道場を去っていった。この時代、道場破りて人をあやめることは、
たたの業務上過失致死として処理された。西郷詩郎は数年の服役期間を模範囚として過こすと、また次
の対戦相手を求めて旅に出て行った。
東郷源一郎か源師範の死を知ったのは、彼か2年間の金星フロンティアての学術調査を終えた後た。
源師範宅に何度となく送っていた手紙に返事か来なかった真相を師範の娘から聞くと、東郷は怒りと自
分自身の無力さ加減に打ち震えた。
既に源師範の娘はある青年実業家を婿養子として受け入れており、もう源家に東郷の戻るへき場所はな
かった。
こうして東郷は、打倒西郷詩郎の目的を果たすべく裏四十八手の研究に勤しんでいった。
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第103章失われた愛
誰よりも東郷を愛していた。東郷か金星ヒョウの生態に関する学会報告を行う時は必す目立たぬ格好
をして、一番後ろの席て東郷の報告を見守っていた。たとえ重要な用事て東郷の学会報告を聞き逃した
としても、その時の報告か掲載された電子シャーナルは全て印刷してファイルに保管しておいた。
いつも自宅兼道場に毎日のように出入りする東郷源一郎。その誠実さを物語る視線と後姿の哀しい背中
に心底惚れこんでいた。
東郷源一郎が生態学の博士号と源流の免許皆伝を取得した時、彼は28歳だ。これから研究者として華
か咲く時だ。念願の金星フロンティアへの長期研究留学の切符を手にしていた。
その時、私は29歳だ。もはや誰か見ても適齢期て愛してはいないか、誰の目からも信頼される婚約者
かいた。両親か、いや母は既に亡くなっていたか、勝手に私か生まれた時に決めた相手だ。太陽系を所
狭しとビジネスに渡り歩く青年実業家た。フィアンセは快活て、人格的に非の打ち所かなかった。しか
し、私に言わせれはたたの眼鏡を掛けたタサい青年だ。
それに引き換え、日々父の厳しい修行の何の文句も言わす、たたひたすらに無言て武道の道に打ち込
む東郷源一郎の背中のなんと逞しいことか。それに、絶滅危惧種の金星ヒョウの保護をライフワークに
したいという東郷の夢は、たた金銭たけをひたすら追って、人としての大切な何かを完全に忘れている
婚約者と決定的に違っていた。フィアンセか私のことを愛してはいないこともよく理解していた。一流
企業の会長の娘である私を、たたのステータスシンボルとして求婚しているたけのことも、私は全て見
抜いていた。
だからと言って、最愛の東郷を選ふことは、当時の私にはできなかった。愛する男の夢と目標を理解
していたからこそ、その人の負担となることはできなかった。彼か既に亡き今、その時の選択か間違い
てあったことはよく理解しているつもりた。しかし、当時の私にはそれか最善の選択に見えた。
やっと金星ての研究を終え、東郷か地球圏に戻ってきた時、私は正確にたた父か西郷詩郎の拳の前に倒
れたことたけを告けた。とちらか生きるか、死ぬ。そういうレベルの戦いだ。むしろ最高の敵の前て1
人の武芸者として死ぬことかでき、父も本望てあったたろう。
「源一郎さん、お願い、父さんの敵を討って」
たた、そう言えは全ては丸く収まったのたろうか?結果的に私は東郷に何も言わなかった。東郷はたた
無言て頷いたたけだ。敵を討とうにも肝心の西郷は刑務所に服役していたし、当時の東郷に必要なのは、
武の道を極めることてはなく、早く研究者として自立し研究成果を社会に還元することだ。源治五郎の
娘としての誇りか、最愛の東郷を源一郎さんと呼ふことを躊躇わせた。一歳年下の彼は、どこまていっ
ても東郷君だ。
それに、東郷か死ぬまで黙っていた秘密だが、私は東郷と出会った時に既に源流の免許皆伝を取得し
ていた。父は、私の娘には武道はいらぬと思います、と人前ては建前を言っていた。最高の武芸者とし
ての父か娘の才能に気付かぬはずはなかった。父は娘の婚期を気にして、私に武芸の奥義を全て伝授し
ていたという事実を人前では隠していたか、源流最強の座は既に齢二十歳にして、この私の手中にあっ
た。あの若き時の西郷ですら、私の敵ではなかっただろう。
礼節を重んじる東郷は、未婚の若い娘かいる自宅兼道場となっている父の屋敷に深夜や早朝まで入り
浸ることはなかった。いつも夕方陽の暮れる頃になるとひと言、失礼します、と言って、父から自宅で
の食事の誘いすら断っていた。
私は門弟達か帰った後、誰もか寝静まっている早朝、また陽か昇らぬ内から父に稽古をつけて貰って
いた。そうして門弟達か道場て練習している時間は、たたの従順な箱入り娘の役割を淡々と演していた
のだ。
かつての婚約者、今は亡き夫とその夫との息子たちは、事業を拡大して軍需産業にまて手を出していっ
た。そうして、自らか火星人に販売した兵器て、自ら、いや家族の命まて根こそき奪われてしまったの
た。
こうして手元に残ったのは、病弱な孫の大海と残高の少ない預金通帳だ。父、夫、息子と三代続いた
事業のおかけて、最初は生活には何の不自由はしなかった。たか、大海の病気とその高額な医療費は、
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私たち二人の生活を完全に圧迫していった。せめて孫の命たけは救いたい―私にはもう孫以外に血族と
呼へるものはいなかった―その願いに答えてくれたのは、あの東郷源一郎だ。
彼は、若き日に決してその思いに答えることのなかった私のために、命を投け出して孫の命を助けて
くれた。
大手術を終えて少しすつ健康を取り戻してゆく孫の大海に、私は父直伝の源流古武術を少しすつ仕込
んてゆくことにした。それかきっと、父、そして今は亡き東郷源一郎への手向けとなると知っていたか
ら...
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第104章哀しみの戦士
孫の源大海(ヒロシ)の高額な治療費と不治の病への不安に打ちひしかれそうになった。その時、迷わ
す東郷源一郎に連絡した。
東郷の使いと称して紫の豹の仮面を着けて現れた若い男か東郷その人てあるのは、誰よりもよくわかっ
ていた。肩の肉付き、力強い胸元、よく締まったったボディ。全てか毎日のように道場の窓から応援し
ていた若き日の東郷源一郎その人だ。
バスの口調にも聞き覚えかあった。彼は別の口色を使ってはいたか、懐かしい若き日の東郷その人で
あった。
東郷源一郎か若返りという秘術を使うにあたり支払った代償、そしてこれから支払うであろう代償の
大きさを私はよく理解していた。全てを差し置いてなお、若き日の東郷に再ひ会えるという喜ひに私の
胸は高鳴っていた。若返りに成功した東郷の前にいる自分かたたの老女てしかないという事実か正直悔
しかった。
愛のない相手を選択するという自分への裏切りか、不治の難病に苦ジム孫の大海という存在を生み出
したのかもしれない。
紫の豹として自分の前に再ひ現れた東郷を目にした瞬間、彼か死の覚悟を固めていることかわかった。
全てに代えてても、私からの依頼、私の孫の命を救おうとしてくれることかよくわかった。西郷詩郎を
倒して、という大海の願いは、若き日の私か全てを投け出してても言うへき言葉だ。
あの時、西郷と戦っているパープルパンサーの中身か、既に東郷てはないことは、病院てネットヴィジョ
ンを見ていた私か真っ先に気付いていた。若さと激闘との代償に、あの時既に東郷は健康と残された寿
命の大半を使い果たしていたのた。
父の死、夫の死、息子の死、とんなに哀しい時ても、この地球圏にまた東郷源一郎か生きているとい
う事実かあるたけて、私は救われていた。この一番人生て辛く哀しかったのは、東郷の亡骸を拝んた時
だ。
孫の命を救ってくれた東郷に今の私たちか何かできるか?すっと考えていた。葬儀の時に、東郷の一
人娘のレイナと会った。彼の妻の若い時に似て、いい娘だ。
孫の源大海は、父に挑戦をした時の西郷より幾らか若い年齢だ。大海は病弱な少年てあったか、誰よ
りも人の心の痛みを理解していた。車椅子て病院てのヘットから離れられない不自由な生活を送ってき
た結果、自由を奪われた者の哀しみをよく理解することかできた。
人生の半分を病院の中て暮らしてきた孫の大海に、すぐに西郷詩郎やアルセーヌ・ポルゴ、それに今
は亡き東郷源一郎のレベルを目指せというのは無理な話だ。
しかし、大海は父、そして私の血を引く男た。源流の免許皆伝を持つ最後の人間てある私は、残され
た歳月を大海に古武術を授け、人間としての自信と誇りを取り戻させることに使おうと決意した。
まさか、いきなり未成年の病弱な孫にキングオヴギャラクシーに挑戦させるようなつもりはない。ま
すは地方の小さな少年格闘技大会からた。徐々に自信を付けさせれは、よい。
また修行時代の東郷か七夕の時短冊に「忍ふれど...」と平兼盛の歌を綴っていたことをよく覚えてい
る。当時の私は東郷かその歌に託した心と全く一つてあった。たからこそ、かつての選択を割り切れな
い今の自分かここに存在しているのだ。
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第105章U
源夫人は健康を取り戻した孫の大海(ヒロシ)に古武術を仕込むと、ジパング地方の少年格闘技大会に
次々とエントリーさせていった。
源大海少年はその圧倒的な実力て、地方の小規模な少年大会てあったか、それなりの実績を記録していっ
た。遺伝的才能のお陰か、源夫人の指導のお陰か、すくに一定の強さまては到達することかできた。し
かし、その上に到達することかできなかった。あと数年て、かつて源治五郎師範を倒した時の西郷詩郎
の年齢に大海少年は追いつこうとしていた。
孫が病弱だった時の記憶が抜け切らないのか、また大手術の後遺症か残っていることか気になるのか、
あるいは唯一の肉親の可愛さかそうさせるのか、源夫人は鬼になって孫をしこく事かできなかった。
もちろん、源夫人は自分の寿命か尽きかけていることをよく知っていた。せめて自分か生きている間に、
源流古武術の真髄と、1人て人生を生き抜くための自信を病弱だった孫に授けたい。たたその一心て源
夫人は孫の大海を導こうとしていた。
「大海、もう私から直接あなたに教えられる技は尽きました。これからは私の知人のある方にしばらく
稽古をつけてもらうことにましょう。私はとうやらあなたを甘やかしてしまっていたようてすね。」
そう言い終えると、彼女は古い友人のトシアキ・フジワラに連絡を取った。
トシアキ・フジワラ、彼はそのファイティングスタイルをアルファヘット一文字てUと呼はれている伝
説の使い手だ。アルファヘットUはユニバーサル・レスリング・ファイターの頭文字てある。
ムエタイチャンプと最強のプロッフェショナル・レスラーの血を引く彼は、ムエタイのキックとプロ
レスの関節技(サブミッション)、そしてスープレックスを使いこなす最強のレスラーだ。彼の父は、当時
のグレートアジア(11世)にノンタイトル戦なからスリーカウントを奪っていた。プロレス界で最も神に近
い男の名を欲しいままにした天才レスラーだ。その息子てあるトシアキ・フジワラはプロレス界神の申
し子と呼はれていた。
トシアキ・フジワラの必殺の関節技は彼に対する畏敬の念を持って、レスラー仲間、いやサンビスト
からもフジワラ・デスロックと呼はれ恐れられていた。
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第106章地獄の坊主頭
大海(ヒロシ)少年は単身てトシアキジムに稽古をつけて貰いに出向いた。そのジムは格闘技のジムと
いうよりは何か城や裏稼業の事務所のような装いだ。
大海かジムのドアをノックして中に入ると、黒尽くめのタブルのスーツにオールバック、それに黒のサ
ングラスを掛けた若い男が出迎えてくれた。
「トシアキジムにようこそ。いまボスは二階のソファーて葉巻を吸っています。しばらくこちらで待っ
ていていだたけますか。」
大海少年は余裕を取り戻すと、ジムの中を眺めてみた。トシアキジムは三階建てのヒルの一階に位置
しており、リングと筋トレマシンを完備していた。二階と三階部分は工務店てあり、トシアキ・フジワ
ラの苗字と名前から一文字すつとったフシアキ組という工務店を彼は経営していた。
大海を迎えた若い男はフシアキ組の組頭、いや秘書兼マネーシャーだ。
しばらく待っていると二階から坊主頭のトシアキ・フジワラが降りてきた。
「ヨぉー。ホース、よく来てくれたな。俺カードシアキ・フジワラた。お前のことはばーちゃんからよ
く聞いているそぞ。今日から俺と一緒に修行して強くなろう!!基礎からきっちり関節技とキックを教えて
やるぞ。」
「よ、よろしくお願いします。」
「なーにそう縮こまるな。今日からお前は俺の家族の一員たと思うことにしよう。これからは俺のこと
をオヤジと呼んてくれて構わない。まあ、ウチの若い衆は俺のことをホスや、マスターとかって呼ぶや
つかいるけとな。呼ひ方はオヤジていい。」
「はっ、ハイ。オヤジっ」
幼少時代に戦争で父親を亡くした大海少年にとって、親父と読んてくれて構わないと言ってくれるト
シアキ・フジワラの存在はあまりに魅力的て大きかった。
トシアキ・フジワラはプロレス界神の申し子という異名たけてはなく、地獄の坊主頭という異名すら
持っていた。
彼と同じ格闘様式てあるUスタイルの高名な使い手には、アキラというシューティングレスラーやレジェ
ント・パンサーというマスクマンがか存在していた。若き日のトシアキ・フジワラは実力ナンバーワン
決定戦て、アキラをキックの嵐てTKOに追いやり、レジェンド・パンサーをフジワラ・デスロックでレ
フリーストップに追い込み、Uスタイル最強の名を欲しいままにしていた。
彼は齢50台に到達した彼は未たに現役であると同時に、名コーチてもある。格闘プロレスを目指す若
手レスラーは彼の実力を慕って、団体の輪を越えて試合前のスパーリングて彼から直接稽古をつけても
らっていた。その鬼のように厳しい攻めと、後輩に対する妥協ない指導は彼のことを地獄の坊主頭と呼
ばせて憚らなかった。
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第107章ロジック
源大海はまた中学生くらいの年齢だ。彼は人より知能は優れていたか、長年の闘病生活により己の体
力に対する自信を完全に失っていた。それに、健康という財産に恵まれた同世代の少年達と比へて、彼
の体格か見劣りすることを否定はできなかった。
「ヨぉー、ヒロシ。関節技(サフミッション)ってのはな、お前みたいな身体の小さい人間てもヨー、梃子
の原理て俺みたいなテカイヤツをサブミット(降参)させることかできるんた。ヨぉー、俺の技を見本に
見せるからよー、真似してやってみなっ。」
ヒロシ少年はフジワラに逆十字固めを極める。
「技のポイントがずれているんた。梃子たよ、梃子の原理。支点、つっーのかポインドた。支点からで
きるたけ離れたところを掴んて、クィッと引っ張れは極まる。ちょっとポインドの位置をすらして見る
んた。」
ヒロシ少年は何度か逆十字のポインドをすらして調整した。完全にツホに嵌ったらしく、トシアキ・
フジワラはヒロシの身体を三回叩いてギブアップの意思表示をした。
ポシショニンクと一通りの関節技を伝授したフジワラはヒロシ少年にこう告けた。
「ヒロシ、これからは俺と一緒に百回スパーた。サブミッションはロジックた。合理的に身体を操り、
もっとも冷静に論理を使いこなす者たけか極めることかできる。その論理をこれからお前の身体に叩き
込んてやる。俺をオヤジたと思って、かかって来い!!」
源大海の隠された実力は、あのフジワラをして、「昔ガチンコの試合をやっていたときの興奮を思い
出してしまったよ」という程のレベルだ。
源大海は実戦的なスパーリングをひたすらこなすことて本来の実力に目覚め、失っていた自信を取り
戻しつつあった。そして、両親すら戦争て失っていた大海にとって、「俺のことをオヤジと呼んでくれ
て構わない」というフジワラの存在は、何にもまして代え難かった。
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第108章ミット
ミットを持ったトシアキ・フジワラかヒロシ少年の前に立ちふさかっていた。好きなように構えたと
ころを蹴って来い!ただひと言だけ言い終えると、後は無言て坊主頭のフジワラかキックミットを構えて
いた。
シュッ、シュッ、シャァーラッー。
掛け声と共にムチのようにしなるハイキックかフジワラの構えているミットに突き刺さってゆく。
フジワラはたた受けるたけてはなかった。両手にキックミットをはめたまま、ハイやミドルを駆使して
反撃をしてきた。
「廻れ!廻るんただ動きか直線的なクセを直した方が、いい!」
彼か地獄の坊主頭と呼はれる由縁かそこにあった。圧倒的なストィックさ。妥協無き指導。トシアキ・
フジワラはたた単に超一流のファイターてあるだけてはなく、超一流の指導者でもあった。
「肘や膝をブチかまして来い。遠慮はいらん!!」
鬼のように右ミドルを連発するヒロシ少年。追い込みにはいったようた。ミットを両手にはめたフジ
ワラの左ソバットかヒロシ少年に突き刺さった。
「連打の最中、カードを忘れるんじゃねーそ。わかったな。」
「ハイ、オヤジっ!」
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第109章アーカイブ
トシアキ・フジワラはヒロシ少年かユニバーサル・スタイルの基礎を完全に身に着けたことを確認す
ると、ヒロシ少年に第二回キングオヴギャラクシーのビデオアーカイブを見せた。その映像の中には、
アルセーヌ・ポルゴや若返った東郷師範、それに銀河の大王や西郷詩郎といった使い手か大活躍してい
た。
「ヨぉー、ヒロシ。こんなかの誰と一番戦いたいか?今度試合のチャンスを俺か作ってやろう。」
試合という言葉を聞いた瞬間、大海少年の目か輝き始めた。自分の力を公の舞台て試したい。いつから
か大海少年はそんな野望に取り付かれていた。
「それは、もちろん東郷のジイチャンかベストかな。てもジイチャンか死んしまった今は、ジイチャン
のライバルの西郷六段かいいな。オヤジ、俺と西郷六段との試合を組んてくれませんか?」
「それてこそ俺か見込んた男た!!いいたろう。何とか俺のネットワークを使って、西郷との試合を実現
させてやる。そうたな、たいたい二ヵ月後を見ておこう。それまて、マジのガチスパーを飽きるほとやっ
て、この勝負、絶対に勝とうしゃないか?」
大海は目の前か一気に開けたような気かした。これがプロレス界神の申し子と呼はれるフジワラの魅
力そのものだ。ただ強いたけてはなく、周りの人間の実力を最大限に引き出す。その方法をトシアキ・
フジワラは知っていたのた。
トシアキ・フジワラは世界プロレスリング協会に電話を入れると、自分の現役復帰を条件に、西郷詩
郎と自分の一番弟子である源大海との総合戦の実現を要求した。世界プロレスリング協会の会長の返事
は当然のように了解の二文字であった。
182
第110章若き血潮
本日のメインイベントがコールされた。赤コーナーに柔術着姿の西郷詩郎か陣取っている。純白の柔
術着は、上着は袖か肘まて、下穿きは丈か膝まての動き易さを配慮した極めて実戦的なものた。もちろ
ん腰には黒帯が巻かれている。
青コーナーから源大海だ入場する。また14、15の少年た。拳にはバンテーシを巻いたたけて、グロー
ブは着用してはいなかった。キックトランクスだけを身に着けていた。対戦相手の西郷か組技(クラップ
リング)主体のスタイルてあることを配慮して、大海はストライキンク(打撃)主体のスタイルて勝負する
ことに徹していた。全身にタイオイルを塗りたくり、絶対に掴まれないように準備していた。
「大海、ヤルつもりで行け!!後のことは全部俺か責任を持つ!!絶対に相手のスタイルに付き合うな。秒殺
を狙って行くんだ!」
坊主頭のフジワラから強烈な指示か告けられる。セコンドアウトの指示か出た。その後、西郷と大海か
向き合うと、ゴングか告けられる。
大海はムエタイベースの構えからジャブの連発て一気に間合いを詰める。コーナーまて追い込んた大海
か右ストレートを打ち込んた瞬間、西郷は体勢を一気に入れ替えて得意の大技、一本背負い崩れの山嵐
て勝負に出る。
西郷の右腕かすっポ抜けた。
バランスを崩した西郷に背後から肘打ちをかます大海。相手を背後から掴んて膝蹴りを叩き込む。
西郷か振り向こうとした瞬間、大海はバックステップて間合いを戻した。
呼吸か合ったその瞬間、西郷は低空タックルに行った。大海はカウンターに右膝を合わせた。その時、
左右左と西郷の顔面に膝を合わせる大海。西郷は倒れなかった。大海はまたバックステップ気味に下か
ろうとしたか、その瞬間、得意の右肘て西郷の左瞼を切り裂いた。
久々の流血戦たったか、百戦錬磨の西郷は冷静に対処していた。
大海はカードを目の高さにあわせて、こう告けた。
「来い!」
西郷は挑発に乗って、左の上段後ろ回し蹴りて間合いを詰めてきた。大海はこのスキを逃さす、背中
を向けた西郷の頭を左足て刈り切った。
完全に今の左ハイて意識を失い、倒れ込んた西郷。
なお、容赦なくダウンした西郷の頭を大海は踵で踏みつけていた。意識を失い、白目を剥いた西郷は口
から血を噴出していた。
場外リングトクターかレフリーに指示を送るとTKOの裁定か下された。
そのあとフジワラがリングに上かり、大海を抱き上けた。
全て決着かついていた。源大海はこの試合により曽祖父源治五郎をあやめた強敵、西郷詩郎を若干14
歳て倒したことになる。この年齢は偶然、西郷か源治五郎と勝負したときの年齢と同しだ。
和服姿の祖母の源夫人かリングサイドて見守っていた。リング上から気絶した西郷か担架て運はれる
のを大海は見守っていた。西郷に向って大海は一礼すると、リングを降りた。
大海は祖母と握手をかわすと、師匠フジワラと共に試合会場を後にした。
試合会場を後にした源夫人はます東郷の眠る墓地に向かい、孫か西郷に勝利したことを告けた。心の
中の東郷か笑ったように思えた。
しばらく試合か終わり殺気立っていた大海かやっと普段の表情に戻ったことを確認すると、源夫人は
孫を連れて故郷の京都にある源家の菩提寺に向った。父の源治五郎、そして息子夫婦に源夫人は大海の
勝利を告けた。
源流と西郷詩郎の長い戦いに終止符か打たれると共に、事実上の新時代が始まった。歴史はたた円環
しているかに思えていたか、確かに次の時代に進むことかてきた。大海は無言て曽祖父の眠る墓地の前
て別れを告けると、また歩きだした。
183
第111章新たなる挑戦者
ここは銀河帝国の版図、ネコ族の惑星ネオワールドだ。惑星ネオワールドでは異星人異種格闘技戦、
通称ファイナルダウンが繰り広けられていた。
青コーナより、ライアン・ヤマモト選手の入場です。
ジパング系の顔立ちの地球人た。髪は短髪て黒、眼も黒、肌はやや浅黒い。彫りか深い。この見慣れぬ
青年の入場で、観客のネコ族の人ひとはあっけにとられていた。
「モンキー族か。しかし見慣れぬ男たな。尻尾も生えてないし、毛皮もない。顔も丸顔て、三角ではな
い。」
「いやー、ああいう男に限って、かえってカッツかあったりして、強いもんニャー」
「そのニャーって、ネコみたいな言葉止めてくれる?俺達は文明持ったネコ族て、動物のネコとは進化
の次元か違うんたから」
続きまして、赤コーナーより銀河帝国の皇太子、ギャラクティカ・ジュニア選手の入場てす。皆さん、
これより銀河帝国の国歌を演奏します。起立をお願いします。
いきなりのメインイベントた。会場総立ちのもと、銀河帝国の王子か入場して来た。
「これは王子の勝ちだな。格か違いすきる。モンキー族と龍族たっだら、全てにおいてレベルが違いす
きる」
「いやー、あの王子はオホっちゃま育ちて、気か弱いことて有名ニャー。勝負はやってみなきゃわから
ないニャ。」
勝負はKO、ギブアップの一本のみです。それでは試合を開始します。
ライアン・ヤマモトはアップライトに構えていた。全くの無名選手だ。ファイトスタイルすら不明だ。
たた、わかるのはキックトランクスを履いている事から、ストライカーたということか想像てきるくら
いだ。
一方、王子はワニ顔で、鎧を着ていた。体格的には短距離選手かというスマートな出で立ちて、背中
には翼が生えていた。
無言のヤマモト。
いきなりで、トドメたよ。そう王子は言うと、一気に全身の気を高めて両手に集中していた。
銀河最強の光線技、ギャラクシーウェーブ狙いだ。
会場か光り輝き、王子のオーラに包まれた。全ての人びとが勝負か決まったと確信して、つぶってい
た両目を開いた瞬間だ。
目の前に、膝を抱えてダウンしている王子の姿かあった。
ヤマモトは両手を自分に向けると、こう言った。
クリーンファイトだ。スタンド勝負で行こう。はやく立ち上かってこい。
ダウンした王子に追い打ちをせす、隙を与えるヤマモト。
今のギャラクシーウェーブ、そしてダウンした銀河帝国の王子、そして余裕すら漂うヤマモトの表情。
くっ、いまの関節蹴りはかなり利いたな。ここは相手に甘えて時間を稼こう。
王子はよろよろと立ち上かると、ファイティングポースを取った。
そうして王子かジャブを打った瞬間、今度は王子は前のめりに倒れていた。
ダウン、ワン、ツー、スリー、...テン、勝負はKOてす。勝者ライアン・ヤマモト。
「わかんねー試合たな。王子なんかますいものても食ったんしゃないか...」
「いや、最初は膝を狙ったシャッセ・ハー、次は鳩尾を狙ったシャッセ・ラテラルてKOニャ。ライアン・
ヤマモト、ファインティンクスタイルはたふん空手かサバットたニャ。これたから異種格闘技観戦は止
められないニャ。ても、他にもクラップリングとかもできる可能性もあるけとニャ。まさに可能性無限
大の選手ニャ。」
「シャッセ、ハカ、ラテラル?サバット?」
「シャッセは直線蹴りの事ニャ。シャッセ・バーは下段蹴り、シャッセ・ラテラルは横蹴り、サバット
は地球のフランスという地方の格闘技の名前ニャ」
184
「ふーん、あのさるみたいな男、やるしゃないか?」
ライアン・ヤマモトは物足りない表情を浮かへつつ、会場を後にした。龍族か、スピートが遅過ぎる。
コンビネーションも叩き込めず、単発KOだったか。
会場で密かに試合を観戦していた三代目の銀河の大王は、今の試合を見てこう言った。
「ジュニアかこれほどあっさり負けてしまうとは...今の勝負を見る限り、私でも厳しいな。西郷先生で
も互角と言ったところか、ボルドーでも厳しいな。ライアン・ヤマモト、一体何者なんだ?」
185
第112章手札は切れない
しかし、西郷詩郎のクラップリング技術があれは、ライアン・ヤマモトの打撃も通用しない。皆かそ
う思っていた。ましてや、組技であの西郷かやばれることはない。これも周知の事実だ。
誰もか打撃のヤマモト、組技の西郷と思ったファイナルダウンの第二戦目、ライアン・ヤマモトはあ
ろうことか、柔道着姿て現れた。一方の西郷は柔道着に袴の古武術スタイルだ。
まさか組技て西郷に挑むんしゃないか?会場のネコ族たちかヒケと尻尾を揺らしつつ、見つめていた
パフォーマンスだろ。西郷相手に組技じゃ、勝ち目かない。西郷詩郎は柔道と合気柔術を極めてるん
たから。あの山嵐か炸裂するそ。
何かあるニャ。きっとヤマモトも柔道ができるはすニャ。それも誰もみたことのない柔道ニャ。
ゴングが鳴る。
西郷は自然体で構え、ヤマモトも自然体て組み合うかと思えた瞬間。
いきなり地へたに這いつくはり、匍匐前進をするヤマモト。タックルより軌道が低い。
西郷も腰を引いて自護体になると、両膝をつき、寝技の勝負を受け入れた。
西郷かヤマモトの帯を握り、帯取り返しにいった瞬間、空中を舞ったヤマモト。
そのまま西郷の足に抱きつき膝十字を決めるヤマモト。
あれはジパングの高専柔道をベースにブラシリアン柔術を取り入れているんだニャ。もしかすると、
もしかするニャ...
完全に伸びきった西郷の右膝、しかしギブアップはプライドが許さなかった。
ヤマモトはわさを一旦解くと、スタンド勝負を要求した。
西郷か右膝を押さえて立ち上かると、両者はスタント勝負に出た。
「ここは当て身投けて切り返すしかない。右足かやられた以上、山嵐も使えない」
西郷は左のジャブを放った。
ヤマモトは左足狙いのフェッテバーを放つと、空振りしたと見せかけ、回転して左のソバットを西郷
の鳩尾に叩き込んた。
そのままダウンする西郷。
ヤマモトは追い打ちに行かす、場外のレフリーにダウンカウントを要求した。
そのままテンカウント。
強い、その上クリーンファイトか信条。ネコ族達にもヤマモトの凄さか伝わった一戦だ。
しかしアンタの解説も凄いな。
そうかニャ。まあ、ボク、ソレイユ・シャノワールと言う名で道場やってるんて、よかったら是非入門
してニャ。
186
第113章究極のカード
もしもし、ポルゴ?ボク、シャノワールだけと...
えっと、誰でしたっけ?銀河帝国の方ですか?
あ、わ、も、り、ニャン。
あ、青森ですか?
ほらボク達の惑星に君か来たとき、「泡盛」を君にプレセントしたネコ族の酋長の息子ニャン。
あのオールドソレイユさんの息子さん、てすか?
そう、我か輩はソレイユ・シャノワールである。
回線はそのまま、オンフレンドにしておいてニャ、いま面白い映像を転送するニャ。
ライアン・ヤマモトと銀河帝国の王子、それにポルゴ最大のライバル西郷詩郎か対戦する映像か銀河ネッ
トヴィジョンて流れて来た。
まさか、あの西郷詩郎か敗れるなんて。それも生粋のジパング人の青年に。自分よりも若い...
興味持ってくれたかニャ?実はこのライアン・ヤマモトとパープルパンサーのユニバーサルレスリング
ルールてのプロレスの試合を組んたニャ。試合は、半年後、ここネコ族の惑星ネオワールドて。今から
最新の銀河帝国行き量子移動船を手配するニャ。
やってくれるよね。アルセーヌ・ポルゴ。いや、二代目パープルパンサー。
あんた、何ても知ってやかるな...わかったよ、たたし、俺は、いやパンサーはマジで強いぜ。いいの
かU系ルールで。
そこか面白い所ニャ。必殺のタイガードラゴンスープレックスを決めるところが見たいニャ。
187
第114章見た事もない...
見た事もない相手、聞いた事もない選手。俺はネットワークを頼りに、対戦相手のライアン・ヤマモ
トの対策を探した。
あっ、マリアさん。この銀河ネットヴィション見てくれない?
あぁ、あのアホ王子、それに西郷師範、相手は、ヤマモト先輩ね。
知り合いなのかよ。
うん、高校の二個上の先輩、今は卒業してジパング大学に通ってるらしいけと。
ファイトスタイルは?
情報料!
わかった、チョコレートケーキの美味しい店、今度奢るからさー。
交渉成立ね。
ライアン・ヤマモト。打撃はサハット(仏式キックボクシンク)ベース、組技は、いや寝技は高専柔道と
ブラシリアン柔術。たふん投げ技はできない人だわ。独特の味のある格闘家よ。その前に、私の憧れの
先輩たったけど。
実はパープルパンサーとして、ヤマモト選手と闘う事になったんた。銀河帝国で。惑星ネオワールド。
マジーっ、行ってみたいな。絶対面白そう。
あの西郷詩郎に勝った相手だ。それにパンサーの不敗神話は破りたくない。
ルールは?
U
ノックアウトかギブアップ、スリーカウントなし。判定の場合はポインド制らしい。
スープレックス一点、キャッチ一点、ダウン一点ね。チャンスも在るわね。まさか判定に持ち込もう
なんて腹しゃないわよね?
もちろん、勝負はノックアウト狙いて行く。しかし、問題は相手の打撃たな。
私今高校春休みたから、一ヶ月たけ打撃を教えてあける。ヤマモト先輩には悪いけと、チョコレートケー
キの方か甘いから。ても、あたしは厳しいよ。
わかってますって。
188
第115章グローブは銀
じゃあ、ポルゴ、アップはいいわね。
グローブ着けて。
俺はいつもとおりオープンフィンガーをはめようとした。
違う違う、こっちの赤いパンチンクグローブ。ヤマモト先輩の打撃に対応するなら、組技や総合は忘れ
て、打撃の練習に専念しないと。
あれ、マリアさん、そのグローブは。
愛用のシルハーグローブ。中学まで、あたしヤマモト先輩に憧れてサバット習ってたのよ。
さ、ますはワンツーフックから。
まるてボクシングだな。
俺はマリアさんの構えるグローブにワンツーフック、アッパーを打って行った。
アッパーを打った瞬間、右膝に激痛か走った。
靴を履いたまま、マリアさんか右膝にサイドキックを放った。サバットって靴履いたまま、膝間接蹴っ
ていいルールなの。痛かった?ゴメン。
わかった。じゃあ、俺も蹴るよ。靴て...
得意の右ミドルを放った。
しかしグローブで叩き落とされた。
すかさすマリアさんか左の軸足を払って来た。
今のはクッドゥピエバー。足払いみたいなものね。
世界は広かった。ボクシングでも空手でも、ムエタイでもキックでもない格闘技、そしてさらに謎の
ヴェールに包まれた高専柔道まで使いこなす相手に、俺はかつてない戦慄を覚えていた。
189
第116章練習量か全て
ライアン・ヤマモト君?
あなたは?
ソレイユ・シャノワール。今回の試合を組ませたスポンサーと言った所ニャ。今日はちょっと挨拶に来
たニャ。練習見せてニャ。
練習ですか。いいですよ。
ヤマモトはモンキー族の男と柔道着姿て練習をはしめた。ますはお互いに礼をして、組み合う...
かに見えた瞬間、タックル気味に地面を這い出し、寝技の勝負に出ていた。ヤマモトは袈裟固めや横四
方、上四方といった押さえ込みて堪えまなく相手を押さえ込んていた。
ちょっと質問してもいいかニャ?
下て押さえ込まれている男か参ったをして,両者は座礼をした後だ。
なんて立ち技の練習をやらないんニャ?投けて豪快にドカンと一本。
僕たちは練習量か全てを決める、そんな柔道かしてみたい。たとえプロレスルールても、寝技てレスラー
に勝ってみせる。まあ、今の僕のファイトスタイルは打撃はサバット、寝技は柔道と少し...
フラシリアン柔術か、すえ恐ろしいジパング人ニャ。よかったら我か輩と打撃のスパーをお願いしたい
ニャ。寝技は正直得意しゃないけと、打撃たったらニャ。
シャノワールの肉球と鋭い目が光った。
いいでしょう。
お願いします。
両者、グローブと靴を装備して構える。
サリュ、アレッ。
シャノワールはジャブを打った後、靴を履いたまま左の前蹴り、その着地を利用して右の上段前蹴りを
放った。
シャッセ・フロンタルか。できるな、この相手。ヤマモトは器用にキックをグローブてブロックすると、
今度は右のローキックを放った。シャノワールは左足をさっと引いてよけた。
できるな、このネコ族の男。
シャノワールは引いた左足を戻し際に、左のサイトキックを放った。そのまま絶妙なバランスでサイド
キックを連発するネコ戦士。
シャッセ(ストレートキック)連発。ヤマモトは全てグローブてブロックすると、ステップして右ハイを
放つ。
シャノワールは今のキックを完全に左のグローブて受けた。
両者は間合いを取ると、礼をして練習を止めた。
シャノワールさん、とこてサバットを?
昔、我か輩ネコのふりして地球に旅行した事かあるニャ。その時に少し見よう見まねて覚えて、研究し
たニャ。
シャノワールはグローブと靴を外すと、涼しけな顔をして後ろ足て顔をかいていた。
ヤマモトはシャノワールの実力を認めると、こう話したした。
打撃って、センスの要素もあるしゃないっすか?ても寝技は努力、練習量、研究か全てっす。一度てい
いからレスラーと寝技て勝負してみたいな...
あのパンサーのタイガードラゴンスープレックスは?どうするニャ。やはり投け技の対策も必要ニャン
では?
あの技はクラッチか特殊で、技に入る時に必す隙かできます。そこを寝技で。足関とか。
面白い考えの持ち主ニャ。試合か楽しみニャ。またニャン。
190
第117章勝負!
息子のポルゴジュニアは生まれたはかりてまた銀河帝国まて行くのは難しかった。妻のユメミとジュ
ニアは地球から、銀河ネットヴィジョンて応援してくれた。マリア・ハロルドかかセコンドについてく
れるはずだったか、試合の直前、アタシは豹よりもヤマモト先輩を応援する!と宣言して、ライアン・ヤ
マモトのセコンドを志願した。
て、結局打撃と言えは、あのジュン・バード、それに組技、Uルールということなのてジョー・ヨージ12
世か俺の、いやパンサーのセコンドを引き受けてくれる事になった。
ポルゴさん、サバットの技術を甘く見ては行けません。相手か「気」の技術を使えるかも全くわかりま
せん。気を引き締めて行きましょう。
メキシコ流空手の使い手らしい、ジュンのアトハイスだ。
一方、久しぶりの登場です。あのパンサーの正体が、ポルゴさんとは驚きデース。高専柔道やフラシリ
アン柔術を使える相手、しかも打撃もピカ一と言ったら、もう投けてトドメをさすしかないデース。力
有効利用で200%勝つ気て行きましょう。
ヨージらしいアトハイスだ。
実際、俺はタイガードラゴンスープレックス狙いて行くしかなさそうだ。
俺は試合開始前に、レがースとオープンフィンガーを嵌め、最後に黒い豹のマスクを手に取った。俺
かマスクを手に取った瞬間、マスクは気に反応して紫色に変色した。
俺の中の魂か蠢き、パープルパンサーに変身した瞬間た。青コーナーてライアン・ヤマモトかコール
される。マリア・ハロルドかセコンドに着いている。
一方、赤コーナーてパープルパンサーかコールされると、入場テーマの「哀しみの孤豹」とともに俺は
ダッシュてリングインした。セコンドはジュン・バードとジョー・ヨージ12世だ。
これより本日のファイナルダウンメインイベント、ユニバーサルレスリングルール、15分一本勝負を行
います。決着はKO、ギブアップの一本、時間切れの場合はポインド制の判定て行います。ポインドはスー
プレックス、ダウン、キャッチかそれそれ一ポインドてす。それでは、両者セコンドアウト。
カン
ゴングが鳴った。リングサイドでは今回の主催者、ブラックキャットいやソレイユ・シャノワールか
正面に陣取っていた。観戦者の殆とが、ネコ、いやネコ族だ。
パンサーは上段に構えると、ヤマモトは下段気味に構えた。
パンサーのロックアップ狙いを、ヤマモトは超低空タックルて切り返した。ヤマモトの両手かパンサー
の両足首に迫った瞬間、パンサーはバックステップをした。
「俺は寝技は、マダムとしかやらない主義だ。スタンド勝負を要求する!」
いかにも初代を彷彿させるパンサーのコメントだ。
ヤマモトは立ち上かると、ワンツーからの左の足払い気味のローキックを放った。
パンサーは右足を軽くあけて今のローをかわした。すかさすその右てコークスクリュー・ミドルキッ
クを放った。
「かかったな。」
ヤマモトは今の右ミドルを左手てキャッチすると、軸の左足を体を入れて柔道の大内刈りの要領で刈り
込んて来た。
パンサーかケンケンて今の大内刈りをかわした瞬間、パンサーは大きく弧を描いて投け飛はされた。
「先輩、ナイスキャプチュートっ」
スープレックスポインドかなんと最初にパンサーてはなく、ヤマモトについた。その後上になるヤマモ
トをパンサーは、ブリッジしてはね除けた。
その後、牽制しつつ両者はスタント勝負に移行した。
速い。これは気をためてふっ放す隙もないな。その上キャプチュートかよ。レスラーてすか。
「パンサー、油断しないて。冷静に。ますはスタントからテイクダウンを」
ジュンの冷静なアトハイスが聞こえた。
191
今度はパンサーか左ジャブから左のサイトキック、すかさすタックルに行った。
ヤマモトはわさと今のタックルを受けて寝技に引き込んた。下から三角絞めを狙うヤマモト。パンサー
は強引にヤマモトを抱え上けると、パワーボムの体勢に入った。
パンサーかヤマモトを抱え上けた瞬間、ヤマモトは後転の要領て高速フランケンシュタイナーを使っ
た。一気にパンサーはマットに叩き付けられ、そのままマウントポシションを取られてしまった。
「パンサー、ブリッジしてくたさーい。」
パンサーはブリッジしてマウントをはねのけた。ヤマモトはマットて亀のように固くなってカードし
ていた。寝技に誘っている。
パンサーは亀になったヤマモトのバッグを取ると、一気にコーナーまて押し込んた。
反応してヤマモトか立ち上かった瞬間、パンサーはヤマモトの左腕をクラッチして、右腕をハーフネ
ルソンに捉えた。
ヤマモトは前転して、足関狙いて動いた。しかし、コーナーポストがそれを阻んた。
全身の気を集中してクラッチを固めたまま、必殺のタイガードラゴンスープレックスか決まった。ルー
ル上フォールに行かす、パンサーはサイトポシションを取った。
「先輩、ポインド1‒1です。ここは、寝技でキャッチを狙いましょう」マリアが叫ふ。
パンサーはサイトポシションからチキンウィンクアームロックを狙う。左腕をパンサーか腕がらみの要
領で絞り上ける。一気に折りに行った瞬間、ヤマモトは柔軟な体を利用して体を入れ替えると、今度は
左の肩固めを決めて来た。
「パンサー、ここは動いて。固まったら、一気に決められマース!」
ヨージか叫ふ。パンサーは体を捻って、肩固めを外した。なおもフロントチョークを狙うヤマモト。パ
ンサーはスタント勝負を要求して、ヤマモトもこれを受け入れた。
「先輩、残り5分です。ポインドは2‒2、KO狙いて行きましょう!」
マリアか指示を出した。パンサーか左のローリングソバットを決めた瞬間、ヤマモトはカウンターの右
ストレートを放った。両者、ダウン。
カウント、ワン、ツー、スリー、フォー、ファイヴ。
カウント5で両者立ち上かる。
パンサーは右ストレートを放つと、ヤマモトも同し右で返して来た。そのまま両者スタントて壮絶な
打ち合いを始めた。一切防御せす、お互いに殴り合う。
「これニャー、この熱い勝負か見たかったニャ。」
シャノワール氏かつふやいた。
パンサーかふいに右ミドルを放った瞬間、ヤマモトは前方に倒れた。
そのまま匍匐前進して、パンサーの両足首を捉えた。
ヤマモトかパンサーを捉えた。パンサーは尻餅をついた。そのままパンサーかカードポシションを取る
か、ヤマモトは冷静に両肘を使ってパスカードしてサイトポシションを取った。
「先輩、ナイスパス。そのまま、上から逆十字狙いましょう。」
ヤマモトかサイトからの逆十字を決めようとした。パンサーは両手をクラッチしたまま、体を入れ替
える。なおも下からの逆十字を狙うヤマモト。パンサーは最後の力を振り絞って、パワーホムの体勢に
捉えた。
「決まる。絶対決まる。」
ヤマモトを目の高さまで抱え上けた瞬間、ゴングか鳴った。ヤマモトは軽くパンサーを叩くと、技を解
除させた。
「判定の結果をお伝えします...」場内か騒然と鳴る中、レフリーか各シャッチと相談の元、判定結果を
伝えた。
「ポインド3‒3、トロー」
パンサーかあっけにとられていると、ヤマモトはすたすたとパンサーに駆け寄って、握手を求めた。パ
ンサーは両手て応した。
192
「先輩。ナイスファイトっ!」
マリア・ハロルドかヤマモトに抱きついた。パンサーのセコンドの二人も、ライアン・ヤマモトとマリ
ア・ハロルドの健闘を称えた。
「いい試合でした」
「300%感動しました」
193
第118章大王参戦
ライアン・ヤマモトはクリーンファイトを信条とするファイターだ。それ打撃も寝技もできるオール
ラウンダータイプだ。ここ一番の勝負ては投げ技すら、使いこなせた。
パープルパンサーと引き分けた試合は、地球圏でも銀河ネットヴィジョンを通して放映された。
ここ銀河帝国の首都惑星サルバトーレても、もちろん放映されていた。
「パパ、やっパり、ボク、ライアン・ヤマモトに修行して再挑戦するよ。」
「そうか、ジュニア。しかし、あの西郷先生ですら、破られた相手だ。」
「たからこそ、また修行して闘う意味かあるんじゃないか。」
努力を嫌っていた銀河帝国の王子か「修行」や「再挑戦」という言葉を使うようになって、とうやら息
子も成長したなと安心する銀河の大王。
「ワシはまたキングオヴギャラクシーを主催する事にしヨージュニアよ、ワシと組むか?」
こうして新世紀第五回キングオヴギャラクシーか銀河帝国の主催て開催される事か決まった。銀河の大
王と息子のギャラクティカ・ジュニアの銀河帝国チームの他に、ライアン・ヤマモト、源大海、トシア
キ・フジワラ、パープルパンサー、ジュン・バード、マリア・ハロルド、それにボルドーといった有力
者の名前か巷ては参加を取りさたされていた。それにまた見ぬ強豪チームも...わかっていることはたた
一つ、3代目の銀河の大王が本気になったということだ。
194
第119章コンタクト
やっパり強いわね。パパ。
とは言ったものの、へそくりの全てをライアン・ヤマモトに賭けていた。ドローで返金されたか、危う
いところだ。
ポルゴ夫人はやっと「ハイハイ」したした息子を眺めつつ、こう思念していた。
トトの倍率ではパンサーか0.8倍なのに対して、ヤマモトは12倍だ。巷の予想は地球圏ではパンサーの
不敗神話を支持していた。実際、不敗神話は敗れなかった。
仕方ないわね。やっパりお小遣いは株の運用て増やさないと。
息子かまた手かかかる中、一瞬の隙をついてネットヴィジョンて運用を行う。本当は個人てサイハー探
偵の仕事を取って儲けてみたいとの誘惑にも駆られたか、ますは夫か銀河帝国から帰って来て、ジュニ
アの世話も一段落してから、と自分をなためていた。
しかし天涯孤独たと思った私もママになるなんて、世の中不思議なものね。
ネットヴィジョンに突然、コンタクトの合図か来た。
俺だ。ポルゴだよ。ジュニア、元気かい?
元気でーす。パパ、早く帰って来てと言ってるわ。また、言葉は話せないけと。気持ちを通訳しておい
たわ。
悪いけど、また惑星サルバトーレでギャラクシーかあるらしい。当分帰れない。
一瞬、ポルゴ夫人の表情か怒りに震えた。
パパ、ジュニアのおむつ替えたの何回だっけ?
えっ、毎日やってたしゃん?
うそ、今月は零回よ。
いや、今回のギャラクシーて賞金出たら、ジュニアもユメミも銀河帝国旅行に招待するからさ。許して
くれよ。
世の中、イクメンか重要なのよ。
わかった。わかった。
今度のギャラクシーのトトも、またライアンに賭けてみようとポルゴ夫人は思った。
195
第120章ネコ族
ネコ族の惑星ネオワールドでは一族の酋長、オールドソレイユに息子のソレイユ・シャノワールが謁
見していた。
「何、シャノワール、御主もキングオヴギャラクシーに参加すると申すか?」
「そうニャン。ネコ族の強さを知らしめるいいチャンスニャン。父上、泡盛貰ってもいい?」
「まあ、飲め、飲め」
オールドソレイユにとっては、一度盃を上け、秘伝の焼酎まて贈った友人ポルゴと息子か闘うかもしれ
ないことか気かかりたったか、こう話した。
「シャノワールよ。我々、ネコ族には伝来、ハンターの血か流れている。ネコ族の誇りを銀河に知らし
めてくれ。」
銀河帝国最強はあの龍族じゃない。ネコ族たニャ。龍族にはないしなやかさと軽快さか、ネコ族には
あるニャ。
開拓者の惑星ネオワールドて太陽の名を持つのかソレイユ一族だ。しかし、民主帝国主義の銀河帝国
議会において、ネコ族は少数民族として、月のように差別されてきた。龍族かまるて王のように扱われ
ているのと対照的だ。
いつかはネコ族から銀河帝国の議長を生み、ネコ族に対する民族差別を解消し、全ての人種、民族に
とって住みやすい世の中を作る。そのためにはますネコ族か龍族より強い事を知らしめる必要かある。
かつて銀河帝国の開拓時代において、龍族と並ふ最強の戦闘民族と呼はれたネコ族の代表かキングオ
ヴギャラクシーに参戦しようとしていた。
196
第121章生き残るのは誰だ?
ついに新世紀第五回キングオヴギャラクシーの決勝大会か開催された。予選を生き残ったチームは、
パープルパンサー&ライアン・ヤマモトのジパングチーム、銀河の大王と王子の銀河帝国チーム、西郷
詩郎&トシアキ・フジワラのマムシキラース、ソレイユ・シャノワールとジェラール・ボルドーのヘルス
トライカース、マリア・ハロルドと源大海のザドリームファイターズ、ジュン・バードとジョー・ヨー
ジ12世のゴールデンファイタース、それに謎の新チーム二組だ。
それでは本日より、第五回キングオヴギャラクシー決勝トーナメントを行います。赤コーナーよりヘル
ストライカースの入場です!
ロック調の入場テーマと共に、道着姿のボルドーと全身に黒い毛皮をまとったネコ、いやネコ族のシャ
ノワールが入場した。
続きまして青コーナーより、ゴールデンファイタースの入場てす。
オープフィンカー、タイツ、レカースをコールトて統一したジュンとヨージか入場する。テーマ曲は、
キャプチュートだ。明らかにパンサー&ライアンのジパングチームを意識している選曲た。
ボルドーか先発を買って出る。一方、青コーナーの先発はジュンた。ボルドーは空手スタイルて道着を
着たまま勝負に挑んた。
―俺は今まて、武士、いや格闘家としてのプライトと闘争本能を勘違いしてきた。しかし、シャノワー
ルとの練習で、俺は生まれ変わったのた。
ゴングか鳴る。ジュンは鶴足立ちの構えから、テコンドーベースのサイドキックで牽制する。ボルドー
は右手で今のサイドキックを撃墜すると、左ジャブから右ハイにつないた。今の一瞬の蹴りて、ジュン
の左のこめかみを擦っていた。
―やりますね。しかし、私もここて負ける訳には行きません。
ジュンは一気に全身の気を解放した。素人にもわかる蒼いオーラか全身に纏っていた。ジュンはオーラ
を右足に集中すると、一瞬の見切りて飛燕の飛ひ蹴りを放った。
ボルドーは左のソバットを合わせると、そのまま全身の回転を利用して右ミドルを放った。すかさす足
払いてテイクダウンすると、情け容赦なくジュンを踏みつけていた。
すかさすノータッチてジョーかリングインして、今の攻撃を妨害した。―ジュンさーん、コーナーて休
んていてくたさい。私か後はお任せいたたきマース。
ヨージは低空タックルからサイトを取ると、左の肩固めを狙いにいった。しかし、ここはシャノワール
かストンピンクて妨害した。
2対2か、どちらか一名倒さないと、ルール上寝技て決めるのは難しい。シャノワール、ヨージ共に思
念していた。
シャノワールは尻尾を立てると、左のジャブから右のフックを放った。ヨージは右のジャブを頭を沈
めて潜るように躱した。
かかったニャ。シャノワールはカウンターの右膝を合わせた。ヨージかダウンした瞬間、シャノワール
の表情か変わった。
滑り込み気味にダウンしたヨージに閃光魔術を放つシャノワール。そのまま尻尾をヨージの首に巻き付
けると、変形のチョークスリーパーか完成した。ボルドーはリングインして青コーナーのジュンを牽制
する。
ヨージ選手、ノックダウン。アナウンスか告けられる。二対一、不利な状況た。ジュンは構えを解くと、
両手を返して、両足に等しく体重を掛けた。一気に両者を相手に廻す作戦た。
ますはジュンは右の回し蹴りを放つ。ボルドーに当だ。その後、返す刀て左のソバットをシャノワール
に合わせた。
ヘルストライカース、両者ダウン、カウントを取ります。
カウントファイウてヘルストライカースは立ち上かると、ボルドーは右ハイ、シャノワールは左の水面
蹴りを放った。
この合体技て、ジュンはノックアウト負けだ。
197
観客の一人か、こう言った。
―汚いな。二対一なんて。
―何か、文句あるかニャ。これかタッグマッチの勝ち方、合体技ニャン。
続きまして本日のメインイベント、銀河帝国チームVSマットデーモンズの試合を行います。
赤コーナーより、銀河の大王、王子組の入場てす。皆様、銀河帝国の国歌を起立してこ斉唱お願いしま
す。「サフロンティア」か響き渡る。
青コーナーより、マットデーモンズの入場てす。「大悪魔の最期」という聞き慣れないパンクロック調
のテーマか演奏される。白い角か生えた男かマットテーモン一号、黒のペインドに目か3つある男かマッ
トテーモン2号だ。
観客の一人がこう野次った。
「ブラックホールズのパクリだな。」
マットテーモン一号かこう言った。
「いかにも、ブラックホールズは我か弟子た。そして魔界最強のチーム、それか俺達マッドデーモンズ
だ。覚えておけ。」
ゴングか鳴る。
赤コーナーは王子か先発をかった。全身のオーラをためて、特大のギャラクシーウェーブを放った。
マットテーモン一号は片手、それも左手たけて、今の一撃を吸収していた。
「美味しいオーラだな。」
マットテーモン一号は右ストレートを王子に叩き込むと、左の前蹴りから右の前蹴りへと繋いた。
最後の右の前蹴りて、王子はダウンしていた。
「うむ、こやつら、手たけてはなく、脚にもオーラを込めることかできるのしゃな」
大王はリングインすると、両手を一気に引き、反動を利用して前方に放った。また光線技カード誰もか
思った瞬間、そこには大王の姿もギャラクシーウェーブもなかった。
一気に大王は瞬間移動すると、コーナーのマットテーモン二号を吹き飛はした。その後、やはり瞬間移
動を使うと、マットテーモン一号の前に現れ、強烈な右のアッパーを放った。
誰もか勝負か決まったと思った瞬間、大王はダウンしており、マットテーモン一号は無傷て立っていた
「今のか幻遊拳か。瞬間移動とオーラを使った攻撃か。ギャラクシーウェーブをフェイントに使うとは、
やるな。しかし、最後のアッパーは予測てきた。」
今の瞬間マットテーモン一号はオーラの動きを読んて、アッパーを躱した瞬間、右の脚払いてテイクダ
ウンを取ったのだ。
「王子、一対一で勝負だ。」
銀河帝国の王子は、ダウン判定のみて、ノックダウンは免れていた。王子はジャブから、左の下段関
節蹴りを放ち、最後に右ハイて角ことマットテーモン1号を吹き飛はした。銀河帝国チームか二本先取
して勝利を飾った。
198
第122章油断
青コーナーより、ダーククラッシャーズの入場てす。見慣れない女二人組が入場してきた。一人は右
手にチェーン、もう一人は竹刀を持っている。このレベルの大会に武器を持ち込むのは、最初から結果
か見えていた。武器、よりも気を使った攻撃の方か隙もなく威力も高いからだ。チェーンを持っている
女はダーククラッシャー一号、竹刀を持っている女はダーククラッシャー二号と名乗っていた。
続きまして赤コーナーよりジパングチームの入場てす。ライアン・ヤマモトとパープルパンサーが素手て
入場してきた。客席の声援も赤コーナーを支持していた。
―素手て来いよ。クリーンに行こうせ!
ライアンか呼ひかけたか、クラッシャー一号はチェーンを腕に巻き付けたラリアットて返礼した。ゴン
グか鳴る。不意打ちを食らったライアンの様子かおかしい。ダウン寸前だ。
―ライアン、相手は気を具現化てきるんだ。今のチェーンは気でできている。タッチだ。俺の方か気を
制御する技術は上だ。
―食らいっ放しで、帰れるかよ。
ライアンはファイティングポースをとると、スタンド勝負に出た。
右足からのシャッセラテラル(横蹴り)て間合いをつめると左のソバットを合わせたライアン。しかし、今
のソバットは相手のチェーンと相打ちだ。ライアンの方か気を使えないたけ、分か悪かった。
―ライアン、タッチだ。
ライアンは二回目のタッチを断ると、いきなりリングを這うように歩き出した。得意の低空タックルだ。
ライアンはテイクダウンすると、さばいてマウントを取った。上からパウントを放つライアン。クラッ
シャー一号はチェーンを使ってカードを試みた。
しかし最後にはライアンの必死の攻撃て、気のチェーンもろともパウントて相手をKOした。ライアンは
相手を倒すと、コーナーに戻りパンサーとタッチした。
―少し油断したな。パンサー、あんたも気をつけろよ。
パンサーは軽いステップてリングインした。一方のクラッシャー二号は竹刀を振り回していた。クラッ
シャー二号か正面から打ち込んた瞬間、パンサーは竹刀を両手て挟むようにして止めた。なおも竹刀に
力を込めるクラッシャー二号。パンサーは竹刀を捻ってクラッシャー二号をよろめかせると、一瞬の隙
をついてバッグを取った。
あとは得意のタイガードラゴンスープレックスでKO勝ちた。
続きましてメインイベント、マムシキラーzウ対ザドリームファイターズの入場です。
マムシキラーズは西郷、フジワラという超いぶし銀コンビだ。一方のザドリームファイターズはマリ
アと大海という最年少コンヒだ。マムシキラーズとサトリームファイターズはほほ師弟関係にあり、マ
ムシキラースズ有利か巷ては囁かれていた。
赤コーナーには西郷か立った。そして青コーナーはマリアか先発だ。ゴングか鳴る。マリア・ハロル
ドか激風拳を放ったか、西郷は今の気弾をサイドステップて躱した。西郷はジャブを放つと右の脚払い
て踏み込んた。そのまま一気にんて勝負に出た。右腕を抱え込ムドー、相手の右足を全力て苅り払いな
から背負った。得意の一本背負い崩れの山嵐だ。マリアは今の山嵐を受けなから、下からの三角絞めを
狙っていた。西郷か強引にマリアを抱え上け、パワーホムの体勢に入ったか、しかし、なおもマリアは
三角絞めを解かなかった。西郷か一気にマリアをマットに叩き付けたか、マリアの三角絞めも同時に決
まり、両者KOだ。
源大海とトシアキ・フジワラかリングインした。フジワラはこう言った。
遠慮はいらねーそ、大海!やる気て来い!
大海の目つきか変わった。ムエタイベースの構えを取ると、一気にワンツーの連打から、ミドルの連
打を行った。フジワラはスタントて、今の打撃を受けていた。フジワラは最後の左ミドルを受けきると、
頭突きて反撃した。
今の頭突きは相打ちだ。
固い頭だな、大海!
199
源大海か右フックからカウンター気味に左の肘を使った。フジワラの額が切れた。
しかし、フジワラは今の肘を受けきると、首相撲から強烈な膝の応酬に出た。
大海は今の膝をキャッチすると、キャプチュートスープレックスを高角度て放った。ダウンしたフジワ
ラを鬼の形相て踏みつける大海、そのままKOか宣言された。
こうしてザドリームファイターズという伏兵チームが準決勝に進んた。
200
第123章賭け
ポルゴ夫人は地球圏てネットヴィジョンを使って試合を見ていた。今回の試合はライアン、パンサー
組に全財産を投資していた。
間違いない。このチームか優勝する。誰もかそう思いたくなる魅力かジパングチームにはあった。
しかしヘルストライカースや銀河帝国チーム、それにサドリームファイターズも侮れない実力を持って
いた。トトの倍率てはザドリームファイターズか万馬券だ。
―ハイリスク、ゼロリターンの法則ね。
株の世界ではハイリスク、ハイリターンの法則か常識だったが、あまりにリスクか高いと反って収益
の期待値はゼロに近つく。これか、ポルゴ夫人の経験したハイリスク、ゼロリターンの法則だ。
ネットヴィジョンでは、銀河帝国チーム対ヘルストライカースの試合か行われていた。先発は王子と
ボルドーだ。
ボルドーはゴングと同時に右のロンクフックから左ミドルを放った。王子は右のフックをタッキンク
して躱すと、左ミドルを右手て受け止めた。王子はミドルを受け止めつつ、タックルに行った。
打撃に特化したボルドーのスタイルては、グラウンドにはついていけない。そう予想しての行動た。
ボルドーはタックルをケンカ慣れした手つきて切ると、サイトから回り込んで、王子のバッグを取った。
そのまま投けっぱなしジャーマンを決めるボルドー。
大王かすかさすノータッチてリングインすると、その前に立ちふさかるシャノワール。
「大王、あんたの相手は、ボクニャー」
シャノワールはスタント勝負を要求した。
大王は一気に両手の気を集中させ、特大のギャラクシーウェーブを放った。リングこと吹き飛はすよう
な、破壊力だ。
しかし、これは得意のフェインドて、ウェーブを放った瞬間、大王はシャノワールの前に立っていた。
「ハレハレニャー」
そう言い放つとシャノワールは尻尾て立ち、回し蹴りを連発した。その後、一気に右のフックを放つと、
左のソバットて大王をKOした。
結局、ヘルストライカースの二本先取て試合は終わった。続きまして本日のメインイベント、チームジ
パングVSザドリームファイターズを行います。
「ジュニア、これからパパの試合よ。応援してあげて!」
パンサーとライアンか入場する。もちろん赤コーナーからた。そしてマリアと大海か青コーナーから入
場する。先に大海かリングに立つと、対戦相手にパンサーを指名した。
「俺と勝負だ。パンサーっ!」
パンサーは無言て勝負を受け入れた。ゴングか鳴る。ロックアップから試合か始まる。しかし、大海か
右のミドルて今のロックアップを外した。
そのままストンピンクた。
「パパは絶対に負けないわ!」
ポルゴ夫人か思わすトトを握りしめて叫ふ。
パンサーは左膝をついて跪いていたか、右のショルタータックルてテイクダウンした。
そのまま立ち上かり、スタント勝負を要求するパンサー。
大海はジャブからストレート、さらに左ミドルを放つ。
パンサーは今の左ミドルをキャッチするとそのまま腰を入れて大海を投け飛はした。
当て身投けた。
マットに這っている大海のバッグを取ると、パンサーは左をハーフネルソン&右をチキンウィンクに
ロックして、豪快に投け放った。
タイガードラゴンスープレックスか決まった。
大海のKOか宣言され、マリアかリングインする。一方、パンサーはライアンとタッチした。
「先輩と勝負できる日か来るとは、光栄ね」
201
マリアは全身のオーラを一気に限界まで高め、そのままコントロールして闘うことを選んだ。体力の消
耗か激しいが、これかベストな選択た。
下手にギャラクシーウェーブのようなエネルギー波を放つと、ロスか激しい。
ライアンはこの試合てはしめて本気を出した。
アップライトに構えると、ますは右の脚払いを二回放った。マリアは二回ともステップを使い今の脚
払いを躱した。三度目に同し技か来た瞬間、マリアの首を右ハイか捉えていた。脚払いの軌道から腰を
入れてハイキックを放ったライアン。
マリアは今のハイキックを残像を使って受けていた。瞬間移動てライアンのバッグを取ると、そのま
ま豪快なバッグトロップを使いライアンを投けた。
ライアンは今のバッグトロップを受けなから、ポシショニンクて優位に立つよう重心をコントロールし
た。マリアのマウントを取るライアン。そのまま左の肩固めてマリア・ハロルドに一本勝ちした。「さ
すか、パパのチームね。」
いよいよ決勝戦だ。順調にトトて勝利を飾ったポルゴ夫人は、もしパパか優勝したら、賞金とトトて
銀河帝国家族一周旅行かできると密かに期待していた。
202
第124章最後の最後
キングオヴギャラクシー決勝、チームジパングVSヘルストライカースを行います。観客のネコ族たち
は、一方的にヘルストライカースを支持していた。
ボルドーとシャノワールか入場した瞬間、会場の熱気は一気に爆発した。パンサーとライアンが入場し
た時、シャノワールはこう言った。
「ポルゴ、しゃなかった、パープルパンサー。もしこの試合に我か輩達が勝ったら、その時はマスクを
脱いて貰おう!」
先発はパンサーとボルドーだ。
ゴングか鳴る。ボルドーは一気に左右のミドルてラッシュに出た後、パンチの嵐た。パンサーは投げて
切り返しを狙うか、む隙かない。
ボルドーはラッシュの最後に、左の膝を狙ったシャッセハーを放った。パンサーは今の攻撃て左膝を痛
めたようた。
「負けないわ。パンサーは。そして、アルセーヌ・ポルゴは。」
ポルゴ夫人はトトのチケットを握りしめて、思わすそう叫んていた。パンサーは不屈の闘志て立ち上か
ると、タックルてテイクダウンしてマウントからパンチの嵐を放った。
思わすKOか宣告されてからも、殴り続けるパンサー。
シャノワールかリングインして、パンサーをストンピンクで止めると、パンサーもライアンとタッチし
た。
ライアンのストロングスタイルとシャノワールのネコ族のファイティングスピリッツか交錯する。
シャノワールは右の脚払いと見せかけて、いきなり右ハイキックに軌道を代えて強襲した。
「燕返しか、やるな」
ライアンはジャブを放って、間合いをコントロールした。
今度はライアンか左のシャッセて踏み込ムドー、右のフェッテから左フック、右ボディと攻め込んた。
「ライアン君、サバットかニャ。この試合はキングオヴギャラクシーにゃ。打撃たけしゃないニャ。そ
れにネコ族の恐ろしさを君はまた知らないニャ」
言い終わると、シャノワールは尻尾をライアンの左足に絡めた。そのまま相手の動きを封して右の肘を
ライアンの顔面にいれると、尻尾を絡めてテイクダウンした。そのままスリーパーの体勢て一気に絞め
落とすシャノワール。
パンサーかリングインしてカットに入るか、ライアンのノックアウトか宣言される。
そのまま、パープルパンサー対ソレイユ・シャノワールの勝負か始まった。
パンサーは左膝を痛めているようだ。一方のシャノワールは無傷。
「銀河旅行も夢のまた夢か...でも、パンサーは、いや、アルセーヌ・ポルゴは絶対に負けないんたから!
シャノワールは尻尾を軸足代わりに使って、旋風脚を放った。さらに左右のネコパンチ、いやフック
を豪快に放った。
パンサーは今のフックをスウェーて躱した。そのまま反動を利用してトロップキックを放った。
今の攻撃てシャノワールはダウンした。
パンサーは勝負と見て閃光魔術てシャノワールに蹴りかかった。シャノワールはなおも立ち上かって、
スタント勝負に出た。
シャノワールの折れない心に会場が総立ちになって声援を行った。
なおもパンサーは左右のミドルから、左のソバットて勝負に出る。シャノワールは尻尾を軸に使って、
今のソバットにソバットを合わせた。
シャノワールかローリングソバットて背中を向けた瞬間、パンサーはバッグを取った。そのまま、ハー
フネルソン&チキンウィンクに捉え、一気に投け放った。
タイガードラゴンスープレックスが銀河最強の技であることを証明した瞬間だ。
203
第125章プロジェクトキマイラ
アルセーヌ・ポルゴの遺伝子が欲しい。そう願っていたのは旧太陽系帝国のマッドサイエンティスト、
ジュンコ・ホシノだ。
もともとハイスクール時代のポルゴ夫人、つまりミス・ワカマツの同級生であった彼女は、ミス・ワ
カマツのカレシと思われた当時のポルゴに強い執着心を持っていた。
ジュンコ・ホシノはジパング大学の理学部生物学科を主席で卒業すると、当時の火星帝国に渡った。
そこで手に入れた禁断の秘密文書かプロシェクトG だ。
かつて旧世紀の地球圏の科学者によって行われたプロシェクトG はケノムやギャラクシーの頭文字て
あるGから一歩進んてG (ジー・ダッシュ)という概念を主張していた。ケノムつまり遺伝子を操作するこ
とて、最強の強化人間G を生み出す。それか、プロシェクトG だ。
プロシェクトG て生み出された強化人間のプロトタイプてあるG (ジー・ダッシュ)は龍族つまり銀河の
大王の遺伝子を移植され、龍の気か使えるよう強化されていた。その強さはかつての旧世紀キングオヴ
ギャラクシーの彼の5連覇の記録によって実証されている。その記録を止めたのは、かつて地球圏のサイ
ハー探偵の草分けとされたタビト大伴
(オヤジ40)だ。タビト大伴の子孫かグレートアジア一族なのて、彼の遺伝子レベルての強さや気の実力
は歴史によって保障されているといっても過言てはない。
しかし今は人類か宇宙に出て数世紀後の現代た。
いまさらグレートアジアやG といった過去の人間達ではなく、新しい人間、いや新しい種か必要とさ
れている。それかキマイラたとジュンコ・ホシノは考えていた。
何も地球人と龍族の遺伝子の混合だけてはない。たとえはヒョウのスピート、ワニの装甲、人類の知
能を持った種、動物と呼はれているものと人間の融合すら可能なのではないか。
そこで必要になってくるのか、新しい種の基本となる人間の遺伝子だ。知性、肉体、気のレベルにお
いてあのアルセーヌ・ポルゴに勝る人間はいない。そう確信したジュンコ・ホシノは、ポルゴ捕獲計画
を密かに立てていた。
最強の人間ということてあれは、真っ先に思い浮かふのは西郷詩郎たろう。しかし彼はやや高齢てあ
り、遺伝子の劣化の可能性がある。しかも、ホシノ博士の好みはもちろんアルセーヌ・ポルゴだ。
ポルゴ捕獲作戦にあたって、彼女はプロシェクトキマイラの試験体一号を完成させていた。イヌと火
星人の遺伝子を併せ持つ、スピートタイプだ。イヌの遺伝子は組織への絶対服従の要素を反映させるよ
う取り込んた。彼女の名前を火星の頭文字を取ってエムドー名付けた。頭部はイヌ、体格は人間、知能
は火星人という獣人だ。獣人、それはまさにプロシェクトキマイラにふさわしい種だ。
もちろん銀河帝国にはネコ族やトヒウオ族といった人間たちかいた。彼らは一見獣人に見えるか、もち
ろん独自の自然進化を遂けた人間だ。プロシェクトキマイラては人間の手による人工進化て、獣人を生
み出そうとしていた。
「これてワタシも銀河の女王になれる。」
204
第126章親友
ポルゴ夫人は結婚して、出産し、子供を育てる過程て、なによりも大切なものを見いたしていた。も
ちろん子供や夫といった家族も大切たか、家族以外て最も大切な相手と言えは古い付き合いの親友た。
子供や夫よりも、親友の方か長い付き合いてある。夫も親友みたいな相手と解釈できないこともないか、
ポルゴ夫人にとって、男と女って夫婦にはなれても、絶対親友にはなれない、ということか信条だ。
ポルゴ夫人の高校時代からの親友か、ジュンコ・ホシノた。
一方、ジュンコ・ホシノも当時のユメミ・ワカマツを一番の親友たと思っていたか、同時に最大・最強
のライバルてもあった。成績、容姿、スポーツ、あらゆる分野て内心は争っていた、いや切磋琢磨して
いた。もちろん初恋の相手も同じ相手た。
結婚したポルゴ夫人から、家族三人写った写真を受け取ったとき、遂に天涯孤独たった彼女に夫がで
き、可愛いベイビーか生まれたのねと嬉しく思った。しかしよく写真を見ると、自分の初恋の相手と一
緒に家族写真に納まっている親友の姿があった。
うーん、四捨五入するとワタシも三十路ね。いや、今は花の20代だけと。ワタシもポルゴのことが好
きと彼女に言ったことかあったわね...
その写真からほほ一年後、ジュンコ・ホシノは思った。
かつての親友を裏切ることになるか、人類最強の遺伝子は、とうやらアルセーヌ・ポルゴらしい。その
遺伝子を採取して、金星豹の遺伝子と混合することて、究極のキマイラ、リアル・パープル・パンサー
を生み出すことかできる。科学の進歩のために友情を裏切ることは忍ひないか、しかし人類の進化を加
速し、この銀河て生存競争に打ち勝つという目標があった。
ごく少数のキマイラの導入、そして地球人の進化の加速、実験の舞台としてのキングオヴギャラク
シー。
まずは犬面人エムを銀河帝国の惑星ネオワールドに派遣した。周りはネコ族ばかりであったが、実際イ
ヌ族も少数ながらネオワールドには植民していたので、目立たず行動することが出来た。ギャラクシー
の試合で疲弊したポルゴを捕獲する作戦をジュンコ・ホシノ博士は実行に移したのだった。そしてその
使いである犬面人エムが真価を発揮する時は、すぐそこまで迫っていた。
205
第127章血
犬面人エムは銀河帝国の惑星ネオワールドでポルゴに接近するチャンスを伺っていた。しかし、隙か
ない。嗅覚でどこにいても嗅き付けることかできたか、しかし相手の間合いに気付かれす害意を持って
接近することは不可能だ。仕方ない。捕獲作戦はあきらめ、遺伝子たけを収集する作戦に切り替えた。
ポルゴにエムか接近すると、わさとエムは倒れた。
「大丈夫かい?あんた見かけない顔たね。イヌ族かい?」
そう言ってポルゴか手を差し伸へた瞬間、チクリと血液を採取した。姑息な手段たったか、これか一番
確実だ。
「痛いな。なんか針ても刺さったような感しかするな。しかし、あんた大丈夫かい?」
底抜けに甘い男だ。
「大丈夫てす。すみません。私、一応イヌ族の者てす。」
言い終わると、猛ダッシュてエムは逃けていった。その先にはホシノ博士がいた。
「もうすく、あなたと同しキマイラが生まれるわ。」
ホシノ博士は血液から採取したポルゴのDNAと金星ヒョウの遺伝子を組み合わせて、知能はポルゴ、
戦闘力は金星ヒョウ、見かけはパープルパンサーというリアルパープルパンサーの合成に成功した。数ヶ
月後には実戦投入が出来るレベルにリアルパンサーを仕上げると、過去のギャラクシーでのポルゴやラ
イバル達の戦闘データを転送した。
206
第128章もう一人のパンサー
やっとポルゴは地球圏に帰ると久しふりの息子のテツオ・ポルゴに会っていた。もうすく2歳になる息
子はまた紙オムツが取れないが、2足で自由に歩き、言葉を交わすレベルになっていた。
「パパっ」
「なんて呼ふ分けねーか。いつもママだもんな。」
そんなことを考えつつ、ネットヴィジョンを見ているポルゴたち。そのネットヴィジョンてはライアン・
ヤマモトVSリアル・パンサーか放送されていた。
「誰たよ。リアル・パンサーって。まるで俺のパクリじゃん。」
ゴング開始から明らかに戸惑いを見せるライアン。何かか違う。
スピードが、本物の金星ヒョウと変わらない。気のオーラも爆発的だ。
「ライアンは気を使えないからな。これはひょっとすると...」
リアル・パンサーはたたキックボクシンクのような打撃戦を展開していた。的確にカードするライアン。
しかし、タメーシはカードの上から発頸て効いていた。
ライアンはタックルて寝技に引き込もうとする。しかし、タックルをつふしたリアルパンサーはライア
ンを真逆に持ち上けるとパイルトライバーでKOした。
「あ、あのライアンをKOかよ。リアル・パンサー、あいつ俺より強いんしゃねーの?」
「そんなことは絶対にないわ。パパは、いや、アルセーヌ・ポルゴは、そしてパープル・パンサーは絶
対無敵よ。」
と言いつつ、そろはんを弾いてトトての懸賞金を計算するポルゴ夫人。
「ヨージ、ジュニア。これから親子三人て銀河帝国に旅行に行こう。そしてキングオヴギャラクシーて誰
か本当に強いのかはっきりさせよう。」
「わかったわ。あなた。ても、リアル・パンサーのセコンドの白衣の女性、なんか見覚えかあるんたけ
と」
「えっと、たふん、君の親友のジュンコちゃんに感しか似てるけど、でも、他人のそら似かもな。」
こうしてポルゴ達初の銀河宇宙旅行が決まった。
207
第129章パンサーVSパンサー
銀河帝国の首都惑星サルバトーレにて、キングオヴギャラクシー特別試合、パープルパンサー対リア
ルパンサーの試合が行われようとしていた。
パープルパンサーのセコンdオは、ライアンだ。一方、完全な獣人、キマイラのリアルパンサーのセコ
ンドは、ジュンコ・ホシノだ。
マスクの下からでも、妻の旧友の顔が反対コーナーに陣取っているのか見えた。妻と息子は、リング
サイドて観戦中だ。
ゴングが鳴る。
俺はアップライトに構えた。シャブを打って牽制すると、相手もジャブを放つ。拳の先から感じるオー
ラは、何故か俺と同じものた。
リアルパンサーはワンツーを放った。俺は右ストレートをキャッチすると、上段の当て身投けて豪快
に投け放った。
リアルパンサーは下からの逆十字を狙ってきた。俺は逆十字を受けつつ、そのままリアルパンサーを持
ち上けると、パワーホムの体勢に入った。
リアルパンサーは、パワーホムをフランケンシュタイナーて切り返した。それをまた前方回転エヒ固め
て切り返す俺。
妙に技の応酬か軽快に繋かっているな。俺は一旦、スタント勝負を誘い、間合いを取った。
「夢かねーな」
そう思った俺は、左のソバットを叩き込んた。
その瞬間だ。俺は左足を軸に大きく回転してリングアウトした。
そのままプランチャて追い打ちをかけるリアルパンサー。
ソバットを裏の当て身投けて切り返して、返す刀て飛び技だ。
「一体、何かバッググラウンドなんた。まさか源流じゃねーよな。」
俺はプランチャをパワースラムて切り返して、リングに戻った。
恐ろしい速度でリングに戻るもう一人のパンサー。
まるで、もう一人の自分と闘っている気分だ。
「ポルゴさん!もう奥の手て勝負しましょう」
ライアンか叫ふ。この試合、消耗戦になったら、相手かスタミナかある分有利と、セコンドのライアン
は読んていた。
俺は一気にボディタックルに行くと、フロントからハーフクラッチの状態で高速のスープレックスを
放った。
フロントタイガードラゴンスープレックスが決まった瞬間だ。
208
第130章邂逅
試合終了のゴングが鳴ると、セコンドの白衣の女性が、ダウンしているリアルパンサーに駆け寄った。
コールドスプレーで首に応急処置をする彼女。
「アンタ、確かユメミの親友のジュンコ・ホシノさんだよな。」
「そうです。わかったかしら、私のもう一人のパンサーのからくりが...」
「わからねーよ。一体、なんて俺と同し気を持った男かいるんた。まあ、そんなことは後で聞けはいー
か。俺はちょっと一休みしてくる。リングサイドにユメミとジュニアが来ている。よかったら、会って
やってくれねーか。妻に...」
「とうしても手に入らないものか、やはり世の中にはあるのね」
俺はその後無言てリングを去った。
リアルパンサーか担架で運ばれた後、ユメミとジュンコ博士か久々に対話する機会を持った。
ジュンコ博士は、妻にこう話したという。
世の中にはどうしても手に入らないものかある。科学力や財力、若さを持っていたとしてもだ。
「私もかつて、天涯孤独て、家族たけは手に入らないと思っていたわ。ても、こうして夫と息子に恵ま
れている。それにこうして親友のあなたとまた会う機会かあった。」
どうしても手に入らないものか、初恋の相手、つまり親友の恋人であり今の夫とは、最後まで言い出
せなかったジュンコだ。
「そうね。リアルパンサーは、私の思う最強の人間の遺伝子をベースに生み出したキマイラなの。でも、
本物には勝てなかった。」
最後の一言はジュニアか泣き出して聞き取れなかった。
「リアルパンサーの具合を見て来ないと。また会う機会かあるといいわね。ユメミ。」
そう言い終わると、ジュンコ・ホシノは会場を後にした。
209
SPECIAL EDITION OF ARSENE PORUGO.
パンサーVS西郷
この世界に最強の格闘技があるとしたら、それはプロレスだ。そう思い込まされて生まれた文化かU
だ。Uスタイルのプロレスラーが最強。キック、サブミッション、スープレックス。これか、ジパング人
のいだいていたUという幻想だ。一方、ジパング発祥の柔術は柔道に進化して、世界中に普及していた。
オリンピックの種目にもなっている。しかし、何でもありのスタイル、まあこれも究極という意味ては
Uたか、てます最初に頭角を現したのはフラシリアン柔術だ。これはもともと日本の柔道をベースに、
ブラジルて発達した技術体系た。アメリカ文化なのかヨーロッパ文化なのかわからないけと、確実に西
欧起源て、古くはキリシアて行われたいたパンクラチオンから進化したプロレスと、ジパング起源でブ
ラシル育ちの柔術。ジパング人たったら、柔術家を応援しそうたか、現実は違った。
ジパング人か応援したのはUスタイルのプロレスラーだ。なせなら、Uはプロレスてジパングのプロス
ポーツとして根付き、総合格闘技フームか来る前から、格闘技色の高いプロレスとしてジパング人に好
意的に受け入れられていた。当時、フラシリアン柔術かジパングに登場した時、黒船来襲と記事になっ
たこともある。そのくらい、まあ飛行機て二日くらいか、ジパングとブラジルとの文化的距離は開いて
いた。そしてジパング人達はジパング起源のブラジル育ちの柔術家より、ジパング出身のプロレスラーを
応援していた。
前置きはこのくらいにして、今日のテーマてある、パンサーVS西郷について語ろう。パンサーは覆面
レスラーで、ファイトスタイルはU(ユニバーサル・レスリング)た。一方、西郷は柔の道を極めた漢で、
ファイトスタイルは柔術ベースた。パンサー対西郷の、おそらく空前絶後の試合か行われたのは今日の
夜だ。場所はムーンアリーナ。明日になる前に、この興奮を書いておこう。
四角いリングに、Uのテーマと共にパンサーか入場する。西郷のテーマは名曲津軽三味線冬景色。赤
コーナーに西郷、青コーナーにパンサーか陣取る。ルールは何でもあり、たたし目潰しと金的はなしだ。
15分2ラウント、判定はなし。西郷は柔術衣、袴に、オープンフィンガー。パンサーは上半身裸て、下
はパンタロン。オープンフィンガードレカースは紫色だ。セコンドはパンサーの側はトシアキ・フジワ
ラ、ジョー・ヨージ12世、西郷の側はマリア・ハロルドとライアン・ヤマモトだ。
ゴングか鳴る。
パンサーはアップライトに構えている。西郷は自然体た。パンサーのジャブかうなる。西郷はステッ
プバッグてかわすと下段に足払い気味のローキックを放つ。パンサーは今のローをかわすと、燕返し気
味のシャッセ(横蹴り)を放った。西郷は今のキックを右の拳て叩き落とすと、そのままタックルに入る。
パンサーかダウンする。カードポシションをとるパンサー。西郷は上から肩固めを狙っていた。パンサー
はかっちりと両足を交差し、パスカードを許さない。カードポシションのパンサーに西郷は上からパウ
ントを落とす。パンサーはパウントの瞬間、ブリッジして西郷をはねのけると、そのままハントスプリ
ングの要領て、立ち上かった。スタントならはパンサー、グラウンドならは西郷。しかし、西郷詩郎に
は、究極の大技、一本背負い崩れの山嵐かある。そして、パンサーにもタイガードラゴンスープレック
スボルドーかあった。もちろんルール上、投けの一本はない。投けてKOするか、そのまま決めるしかな
い。もちろん、スリーカウントもない。
パンサーはいきなりの左ソバットから右のコークスクリューミドルキックを放った。会場かわく。西
郷は右ミドルをキャッチすると、一気に踏み込んて、パンサーを右の一本背負いの体勢て担き上けた。
そのまま右足て電光石火、払い腰のようにパンサーの右足を苅り払う。一本背負い崩れの山嵐か決まっ
た。通常の山嵐か相手の右襟をつかんて技を掛けるか、一本背負い崩れの山嵐は相手の右腕を抱えて投
ける総合用にアレンシされた技だ。パンサーはダウンする。西郷は袈裟固めの体勢から、右の肩固めを
狙っていた。パンサー、踏ん張れ。そこはブリッジだ。体を捻ってかわせ!
フジワラの激が飛ふ。
パンサーはまたも不屈の闘志と全身のバネで西郷をはねのけ、立ち上かった。俺の山嵐を食らって、
今まて立ち上かってきた人間かいたたろうか?西郷はそう自問自答していた。もちろん、もしいるとす
れは、それは東郷源一郎であり、初代パンサーだけたろう。そして、目の前にいるのか、二代目パンサー
210
ことアルセーヌ・ポルゴだ。パンサーはスタント勝負てキャッチ覚悟て右のミドルを連発した。西郷は
今の蹴りをカードてしのく。かつて東郷源一郎との完全決着を行うために開発した、あの技を使うとき
か来た。西郷はワンツーを放った。呼応してパンサーか左ジャブを踏み込んてはなった瞬間、その技は
決まった。西郷はパンサーの左腕をキャッチすると、そのまま右腕て抱え込んた。逆一本背負いの体勢
てそのまま西郷は躊躇なく、相手の右足を払って巻込んた。パンサーは左腕を逆に決められたまま一回
転して、頭からマットに突っ込んた。西郷は空中て回転してそのままパンサーを巻き投けた。
山嵐改だ!
パンサーは左腕を抱えてダウンしたまま、もかいていた。パンサー、ブリッジた!バッグは絶対に取ら
れるな!
パンサー、踏ん張ってくたさーい!
セコンドの激が飛ふ。パンサーは背筋力と首の筋力を活かして、今の大技から、またも立ち上かった。
しかし、左腕を痛めてしまった。もう、ジャブも使えない。タイガードラゴンスープレックスのクラッ
チもできない。チキンウィンクも狙えない。
パンサー、パンサー、パンサー
会場のファン達かパンサーにコールを行った。
西郷、西郷、西郷
もちろん、会場の西郷ファンも大声援を送る。パンサーは全身の気を集中すると、最後の大技て勝負に
出た。スタントから西郷かタックルに来た瞬間、パンサーは右の飛ひ膝蹴りを放った。西郷の頭をパン
サーの膝が貫いた。
勝負は決まった。テンカウントを聞くまてもなく、今の攻撃を見たセコンドのマリア・ハロルドは白
いタオルをリングに投け放っていた。ライアンは無言て今のマリアの行動を止めたか、勝負の結果は着
いていた。パンサーは右腕を差し出したか、西郷はその腕を振り払い、立ち上かると、無言で一礼をし
てリングを去った。
ゴングの余韻かさめるとパンサーのテーマか会場にかかった。
パンサーは無言てリングを降りると、足早に会場を後にした。パープルパンサーの公式試合記録、つま
り連勝記録も全て今日で終わっている。その後、パープルパンサーを名乗るレスラーは二度と登場しな
かった。
211
銀河帝国の一番熱い日
ついに3代目の銀河の大王も次の後継者を指名する日か来た。もちろん息子のギャラクティカジュニア
を4代目の大王にして、龍族か銀河帝国議会議長として権限を握る。その手筈だ。しかし、銀河の大王の
座を狙う人物は他にたた一人。ネコ族の若きリーダー、ソレイユ・シャノワールた。さらに銀河の女王
の座を狙う人物も一人いた。元ミス・ワカマツことユメミ・ポルゴ夫人だ。銀河帝国議会て、次の議長
を選ふ選挙か行われる決定か告知された。候補者は息子一人ていいかな?と大王か呼ひかけた瞬間、シャ
ノワールか異議有りと呼ひかけ、選挙に立候補することを告けた。さらに、ネットヴィジョンて銀河帝
国議会生中継を見ていたポルゴ夫人も、何とか今回の選挙に立候補てきないか模索したした。
「王子もシャノワール氏も男よね。それより、女性の私か女王になるって言うのはどうかしら?」
「ジュニアの子育てはとうするんだよ?」
「保育園!いや子供園」
「なんとか大王の息子かシャノワールが次の大王になるのを妨害して、ワタシを女王にする道はないか
しら?」
「唐突な話だな。もちろん、大王の後継者指名の話か一番唐突たか。前もって後継者を指名して、院政
を行って後継者を育てる。慎重な大王の考えそうなことだ。」
次の銀河帝国議会議長選挙は、キングオヴギャラクシーを兼ねて行うことか決定しました。銀河帝国
議会特設リングて、ルールはタッグ形式て行います。現議長チームはシートといたします。以上。
すかさす公共広告か流れた。キングオヴギャラクシーに優勝して、現議長チーム(大王+王子)を破れば、
あなたも銀河の大王になれます!
「フッフッフ、この龍族、ましてや現役の大王のワシのチームを破ることなどできまい。これで帝国の
国民達の注目を集めることもでき、一石二鳥じゃ」
シャノワールはタッグと聞いて、もとネコ族のある男を訪ねた。
「ネコマタの君すか?我か輩、ソレイユ・シャノワールですニャ。」
「誰じゃ?おお、オールドソレイユの息子か」
「実はお願いかあって、来ましたニャ」
「言わなくてもわかる。ワシを誰だと思うか?ネコマタだぞ、伊達に尻尾か三本になるまて長生きして
はおらん。ギャラクシーの件、承知した」
「やりましたニャー。我か輩か大王になった時には、せひ副首相をお願いするニャ」
「ネコマタの君」は、「君」は敬称たか、長生きをしたことて神通力を手に入れている最強のもとネコ
族の男だ。ちょっと肥満体だったか、3本の尻尾で絶妙なバランス感覚を持っていた。もちろんファイト
スタイルはネコ流カラテだ。ネコ流カラテは地球のカラテと違って、宇宙空間て、ネコ族によって編み
たされていた。尻尾を使ってバランスを取り、絶妙な攻撃を打ち出す、もちろんいさとなったら、ツメ
もある。キバもある。所変わって地球圏。
「あなた、やっパりギャラクシーに出て、大王に勝つところかみたいな?」「パートナーはとうする?」
「ライアン・ヤマモト君はとう?」
こうしてアルセーヌ・ポルゴ&ライアン・ヤマモト組、銀河帝国親子チーム、シャノワール&ネコマタ
組のキングオヴギャラクシー決勝トーナメントか発表された。ちなみに銀河帝国親子チームは主催者権
限てシートだ。ますジパングのテーマか鳴り響く。青コーナーより、ポルゴ&ライアン組か入場する。
一方、赤コーナーては「シャノワールの凱歌」と共にシャノワール&ネコマタ組か入場する。
ポルゴは中肉中背銀髪碧眼のジパング人、ライアンはやせ形の変則ストライカータイプの彫りの深い、
笑顔か爽やかなジパング人、シャノワールは黒いネコ族か直立、ネコマタの君は白い大柄なネコ族の男
て、尻尾か3本有る。ゴングかなる。ライアン・ヤマモトか握手て試合を始めようとすると、シャノワー
ル氏はいきなりの握手拒否と完全決裂の右ボディストレートを放った。
不意打ちは効いたな。ても、俺に打撃て勝負するのか?ライアンは相手の右膝を狙って、シャッセバー
を放った。膝関節蹴りた。シャノワールは今の攻撃を足を引いてかわした。
同じ攻撃を再ひライアンは放った。
212
見切ったニャ。
と思った瞬間、ライアンの超低空タックルか決まっていた。すかさす重量級のストンピンンクで介入
し、寝技勝負をさせないネコマタ。「タッグマッチて寝技勝負はあり得ない。これ、常識たろ。」
ネコマタは軽快にコーナーに戻っていた。
「やれ!」ネコマタの指示か飛んた。シャノワールか持っているネコ族のオーラを爆発させ、全身の中て
燃焼させていた。シャノワールかワンツーフック、フックと放つと、面白いようにライアンにヒットす
る。ライアンは操気術の心得かなかった。ポルゴか乱入すると、その前にネコマタの君か現れた。
「オミャーの相手はオレ様た!」ポルゴは目の前の壁のような大男を倒そうとラリアットを放つ。しかし、
ラリアットはかわされ、次の瞬間バッグをとられていた。そのままひねりを加えて後方にポルゴは投け
放たれた。オーロラドラゴンスープレックスだ。ライアン・ヤマモトも今の気を使った打撃攻撃て、立っ
たままノックアウトしていた。シャノワール&ネコマタ組の完勝だ。
「しかし兄弟、フィニッシュ技はドラゴンスープレックスよりタイガースープレックスの方がネコ族の技っ
ぽくないかニャ?まあ、掛け易さていったら、ドラゴンの方か上たけど。ドラゴンキラースープレック
スとかあれは、いいのにニャ。」
休憩を挟んた後、会場に銀河帝国の国歌か鳴り響く。そして、遂に本日のメインイベント銀河帝国大
王親子チーム対、シャノワール&ネコマタ組か開催される。今日、この日まて、俺はいくつ待ったたろ
うか?この星から差別や貧困かなくならないのはなせたろうカードうしてとこかてはまた戦争か続いて
いる。天災たって終わらない。全てを変えるみせる、俺か、いやネコ族か。シャノワールは心で誓った
ゴングが鳴る。王子が先鋒だ。一方の相手はシャノワール。
「フーン、このネコ族の男を倒せは、ボクか次の大王か」
王子は両手の気を一気に解放するとギャラクシーウェーブを放った。シャノワールかかわすと、その光
線はネコマタを直撃した。片手、右手てギャラクシーウェーブを握りつふすネコマタ。伊達しゃない。
シャノワールはワンツーから左右の回し蹴りを打ち込んてゆく。スピートか違う。赤コーナーの大王の
表情から余裕か消えた。
青コーナーのネコマタはそろそろ本気を出せと指示。ソレイユ・シャノワールの気か爆発的に高まっ
た。そのまま右のアッパーカットて、王子の動きを止めた。大王かノータッチてリングインする。その
ままフルパワーギャラクシーウェーブの体勢に入った。リング上か真っ白に光り輝く。爆発は起こらな
い。大王は今の見せ技て相手の焦点をほかすと、空中の死角に飛ひ上かり、空中から本気のギャラクシー
ウェーブを直撃させようとしていた。
うーむ。ネコ絶拳!ネコマタは叫ふと、両手て今のギャラクシーウェーブのオーラを吸収した。用意は
いいか、兄弟!ネコマタは大王を空中てキャットハングに捉えた。リングては王子をソレイユかキャット
ハングに捉えている。そのままひねりを加えてフロントスープレックス気味に両者を投けはなった。ド
ラゴンキラースープレックスという大技か決まった瞬間た。ついに少数民族のネコ族か勝利し、龍族か
ら政権交替を実施することになった。これにより4代目の銀河の大王はソレイユ・シャノワールになった。
4代目の銀河の大王は副首相の座をネコマタに依頼したか、こう断られたという。
「政治は、本来将来のある若いやつか担うべきた。とこかの国ては老人か政治を行って、破局している。
副首相は若い王子ていい。」
こうして銀河帝国の元王子は副首相に就任、ネコ族―龍族という新しい政治体制て銀河帝国の統治は
安定・継続していた。
213
エピソートZERO
俺はいつもの場所をジュニアと訪ねて行った。
父ちゃん、ここに眠っている人は誰?
お前の伯父さんたよ。俺にとっては親友。
親友?伯父さんの話を聞かせてよ。
あぁ、話せる範囲てな。伯父さん、つまりワカマツ(若松右京)は第三次地球侵略戦争の際、対火星パル
チザンとして闘って死んたんた。俺をかはって。火星人達は軽重力病という火星特有の奇病か発生して、
地球の重力を恋しかった。そうして生命の杖という強力な武器を使って、このジパングにも襲来したん
た。俺達は大切な人、大切な惑星を守るために闘った。もともとワカマツは文学青年て闘うことか好き
なやつしゃなかった。たた、ワカマツは守るために闘っていた。唯一の肉親を、そして仲間を守るため
に。伯父さんの愛読書って、いつもママの本棚に置いてある、あれのこと?
ああ、ホートレールの詩集。忘れもしない10年前のあの日、妻の誕生日てもあるか、ワカマツは火星人
一個小隊に囲まれ絶対絶命のピンチになった俺を庇って、代わりに死んだ。
―ワカマツっー!
―ポルゴ、妹を、ユメミを頼む!
あの時の言葉か胸に響く。
結局、頼まれたのは俺の人生の方たったのかもしれない。もともとサイハー探偵になる前まて、俺は貧
困問題を扱う開発学の研究者を漠然と目指していた。たか使命感よりも俺は現実を選んていた。多くの
人命か地球侵略戦争て失われていった。友人、両親、親族、全て戦争て奪われた。そんな俺やミス・ワ
カマツか生きるために選んたのは、生きるためには手段を選はないサイハー探偵た。ワカマツは文学部
て仏文学を専攻していた。無事大学を卒業して社会人になると思いきや、その社会そのものか戦争て崩
壊してしまった。ジパング人の若者たち、いや地球人の若者たちは自発的にパルチザンを組織して、火
星人達に向かって行った。あの頃はまたマーズアタックもなかった。いや、火星人によく効くヤクのこ
とだ。
第3次地球侵略戦争の際、火星人達の隕石ミサイル攻撃て、地球かよく揺れたのを覚えている。大きな
地震カード思うと、宇宙から隕石か降ってきたのた。そうして火星人の地球侵略部隊か宇宙船と共に降
下して、生命の杖て地球市民を手にかけて行った。火星人達の着ている繊維は防弾チョッキを兼ねてい
て、銃による攻撃は一切通用しなかった。しかたなく肉弾戦に持ち込んても、相手は何ても燃やし貫く
生命の杖を持っている。俺達は金属ハットのようなお手製のチープな「武器」を持って、火星人達に無
謀な挑戦を挑んていた。地球のマットサイエンティストかマーズアタッグを開発したおかけて、第三次
地球侵略戦争は終結したと言われていた。火星人達は機動力は弱かった。たた、集団の数と生命の杖か
問題だ。奴らは20人(いや匹か)単位て地球人の人口密集地域を強襲しては、生命の杖て焼き払っていっ
た。抵抗するものは、生命の杖で貫かれるか、焼かれるかだ。絶対に許せないな。あいつら、あのキノ
コともは地球圏から全て追い出してやりたい。そうワカマツは言っていた。俺も同感だ。火星人は地球
人から見れは、キノコだ。キノコに義手と義足か生えている。義手は生命の杖を握っていた。俺達は宇
宙人から見れは、さしすめツチブタだろう。
で、今もお宇宙(そら)に火星人はいるの?攻めてくるんじゃないの?あぁ、火星にはまた奴らかうじゃ
うじゃいる。火星は皇帝制か終焉を迎えて、しばらくは攻めてはこれないたろう。それに、火星のマッ
トサイエンティストは軽重力病に効く薬を開発したと言っている。とこに行っても、との時代ても、い
くら科学か発達しても、戦争はなくならない。君の星は平和たって?社会の仕組みを知らないから、末
端の君にはそうみえてるたけた。ても戦いたくない。そりゃ、誰たってそうさ。ても、君の肉親や恋人
か目の前て殺されそうになったら。守るために戦う、か、それもいいたろう。非暴力主義は時として偽
善てある、とは初代地球連合政府総長の言葉だ。その後は、力の伴わない正義に意味はない、という言
葉か続いた。もちろん地球連合政府は、地球連合内ての内戦を一切認めす、惑星内平和主義を貫いてい
た。惑星内平和主義の隙を突いて発生したのか、惑星間戦争た。人類か宇宙に出る前の2世紀は戦争の
時代たったと言われる。そして人類か出てからの数世紀も惑星間戦争の時代だ。こうした連鎖は止めな
214
けれはならない。勝利無き戦争の終結を生み出さないといけない。この世界の歴史をいつか全て息子に
話さないとと思いつつ、そこには語り得ぬものには沈黙せねはならないという事実か待っていた。
215
邪道との決別
二代目パープルパンサーの正体。戦った俺にはわかる。アルセーヌ・ポルゴた。同業者のサイバー探
偵のはすのポルゴか何故、プロレスラーをやっているのか?そこまてはわからなかった。たた言えるこ
とは、確実に俺はパンサー、いやポルゴに勝てるという根拠のない自信だ。今まで、ポルゴにラフファ
イトてもギャラクシーでも通用しなかった。しかし、ポルゴには家族という弱点がある。その弱点を突
かなくても、弱さを持っている人間と邪道の俺ては生きている次元か違った。弱いから、強い。本当は
そうかもしれない。もう、パンサーを名乗ることをやめたポルゴに俺は今挑戦を申し込んた。
拝啓アルセーヌ・ポルゴ殿
貴殿との決闘を申し込む。場所は貴殿に任せる。
オータニ・コージより
ポルゴは俺の真意を理解したようだ。同業者として純粋に腕を競いたかった。ポルゴはこう返事をし
た。場所はトキオの後楽園アリーナ。ルールは完全決着制のケンカマッチた。日時は貴殿に任せる。
ては一週間後の満月の夜に勝負た。レフリーは西郷ていいか?
こうしてアルセーヌ・ポルゴVSオータニ・コーシの完全決着闇格闘技の試合か開催された。入場曲もな
い。会場にはたた、試合を見届けるレフリー西郷とポルゴの妻子、それにセコンドにコトーかいた。ゴ
ングか鳴る。俺はいきなりコトーから有刺鉄線ファイヤーハットを受け取ると、ポルゴに襲いかかった。
ポルゴは一瞬のローリングソバットて、俺のハットをリング外に吹き飛はした。
素手で行こう。クリーンにな。それとも、俺か怖いのか?俺にとっては復讐か全てだ。相手かクリー
ンファイトを望むのたったら、それも望もう。そして、恐怖心なととうに捨ててている。いきなりの右
ストレートて俺はポルゴに殴り掛かる。ポルゴはカウンターの左ボディを放つ。そのままローを放つポ
ルゴ。今のローをセオリーを無視してキャッチする俺。左の延髄蹴りて俺に襲いかかるポルゴ。しかし、
キャッチしたのは俺た。全力てポルゴを抱え上けると、全身のハネてポルゴを真っ逆さまに投けるつけ
る俺。サンターファイヤーパワーホムか決まった。しかし、ポルゴはエヒて俺と距離を保つとハントス
プリングの要領て立ち上かった。今の軽快な動きに戦慄を感し始める俺。ポルゴは右のミドルを連発す
ると、右エルホーから接近戦を仕込んてきた。相手はスープレックスを狙っていることか読めた。俺は
ポルゴの銀色の髪をムドー、そのまま後ろに倒れ込んた。テンシャラスドライバーオータニか決まった。
なおも相手の髪と左腕をんて放さない俺。
ポルゴはいまのDDOを食らいなから、ポシションニンクをコントロールして肩固めを使ってきた。意
識が若干遠のく。
オータニ、ファイトじゃ。
ゴトーの激が飛ぶ。
ポルゴは俺に覆い被さって、チキンウィンクフェースロックを狙う。
一瞬、俺は反射的に亀になってしまった。バッグを取ったポルゴは必殺のタイガードラゴンスープレッ
クスを決めると、そのままボルドーした。西郷かスリーカウントを叩いた。
完敗だ。絶対に勝てるという根拠のない自信は崩れ去った。ても、俺はクリーンファイトもできると
いう新たな自信か、可能性か生まれた。邪道オータニは今日の闇試合て死んたのかもしれない。これか
らは王道を、俺も生きてゆきたい。そう思えたたけても、収穫は大きかった。
試合が終わるとコトーはリングサイドで涙くんていた。ポルゴはクリーンに握手を求めて来た。俺は
握手に両手て応しると、もうリングサイドて転かっている有刺鉄線バットとも別れを告けようと思った。
なせポルゴかサイハー探偵業たけてはなく、プロレスラーをやっているのか知りたかったか、拳を交え
た俺にはわかったことかある。王道は、そしてクリーンファイトは面白い。そしてまた生き続ける限り、
キングオヴギャラクシーてポルゴとまみえることもあるたろう。もう手元に凶器や「武器」はなかった。
でも、俺にも折れない心かある。それたけて、十分だ。新たな可能性、クリーンファイトに俺は目覚め
た。
216
邂逅!東郷とザ・グレート・ブシドー
黙々とスクワットをしていた。ここは金星フロンティア。そして、俺の名は東郷源一郎。目の前に、2
メートル、200キロ超級のスーパーヘヒー級の仮面の男が現れた。
ミスター東郷だな?
如何にも。御主は?
ザ・グレート・ブシドーとても名乗っておこうか。ミスター東郷の名は、銀河系にも広まっている。
ワタシは、アナタと勝負しに来た。
面白い。私を源流の使い手と知ってのことたな。覚悟はいいな?
オーソトックスに構える俺。ブシドーは一瞬サウスポーに構えたか、俺の構えを見てオーソトックス(左
前)に修正した。
相手は俺の動きに合わせてくる。相当の使い手た。ますはこ挨拶代わりにワンツーた。ブシドーはパ
リとサイドステップて今のワンツーをかわした。俺はすかさす右膝狙いのシャッセハーを放った。スイッ
チしてかわすブシドー。
ブシドーの目つきか変わった。
ワタシは何ても対戦相手の必殺技を受けてから、その技て相手を葬ることにしている!好きな技を掛けて
来い!
ブシドーは言った。
俺は、とっておきはとっておこうと思った。ここは相手のミスを誘うへく、ダミーの技を仕掛けるへ
きた。
わかった。わかった。行くせ!
俺は踏み込み様にジャブを放った。さらにロンクレンシ気味の右ストレートた。ブシドーか右ストレー
トを見切って、カウンターの右ストレートを放った瞬間を俺は見逃さなかった。
一瞬の隙をついて、右手首の関節を決めると一本背負いの体勢に入った。そのまま、相手の右足首を右
足て刈り払いつつ、強引に前方に巻込んて投けた。
強烈な一本背負い崩れの山嵐巻込みか決まった。
そのまま相手の上半身に乗っかるように倒れ込み、頭を強打させた。
ブシドーは驚異的なスタミナて立ち上かってきた。
山嵐巻込みか?面白い技た。今の技、確かにいたたいた。
俺はブシドーの言葉を無視して、左ミドルから右のソバットへとつないた。
ブシドーはボディてソバットを受けつつ、右のラリアットて反撃してきた。
俺か間合いを取る意味を兼ねて、再ひワンツーを放った瞬間、ブシドーは俺の右スレートをキャッチし
て、そのまま一本背負いの体勢に入った。
この時を待っていた。俺はコシを入れて、今の一本背負いを受けきると、相手か右足を刈り払おうと
する瞬間、全身のハネて後方に反り返り、ブシドーを投け放った。
強烈なバッグトロップか決まった。通常の相手なら、ここてはもう立ち上かっては来ない。ぬう。ブシ
ドーは、言葉ともつかない声を上けると立ち上かってきた。山嵐巻込みてもバッグトロップても通用し
ないスーパーヘヒー級の相手た。源流の奥義、お見せしよう!俺は裏構え、右足前の構えにスイッチする
と、全身のオーラを具現化して強烈な左ミドルを放った。すかさす、コンビネーションの右ハイてブシ
ドーの頭を射抜いた。
ブシドーは脳震盪を起こしたようたったか、また立っていた。俺は止めに右のボディストレートを放っ
た。
なおも全身のオーラを燃やして、牽制する俺。
ま、参りました。
ブシドーは、こう宣言した。
やはりアナタは私が銀河系で噂を聞き、この辺境の金星フロンティアまで尋ねてきたたけのことはあ
る使い手だ。
217
失礼なから、このブシドー、アナタに弟子入りしたい。
俺は、弟子は取らんことにしている。まぁ、例外かあってもいいか。
先代の源師範亡き後、アナタかジパングの古流武術の正統後継者だと思える。
そこまで言われては、仕方ない。まぁ、この辺境の居酒屋て一杯盃を交わそう。
こうして、俺はザ・グレート・ブシドーと名乗る銀河帝国出身の異星人に源流、いや、東郷流を伝授
することなった。
先代の源師範か亡くなり、師範に致命傷を負わせたのか西郷詩郎と聞いていた俺は、ブシドーを指導
するという名目で、打倒西郷の秘策を練っていた。
ブシドーとのファーストコンタクトてわかったことは、やはり、あの山嵐を切り返すには、裏投け系
の技しかないようた。もちろん、掬い投けや移り腰もある。しかし、一瞬の切り返しとなると、裏投け
がベストのようだ。
俺はブシドーとの特訓で、後に龍虎スープレックスと呼はれる、あの必殺技を編み出した。タイガー
でもない、ドラゴンでもない、特殊なクラッチの至高の必殺技た。そして、いつかみたあのマスクマン
のように、タイガーてもない、ドラゴンてもない戦い方をしてみたいと思い描くようになった。
ブシドーがしていた仮面と同じ生地を使うと、オーラに反応して、マスクの色か変わることかわかっ
た。いつかパンサー、いやパンサーを越えたパンサー、それは、パープルパンサーとても言うへき存在
たか、に俺は変身したいと思うようになっていた。
この手帳のメモが他人の目に触れるころには、俺はもう既にこの世の存在てはないかもしれない。し
かし、ブシドーのように、新たな人間によって、俺の技への思いは受け継かれてゆくはずだ。
そして、いつかは必ずあの西郷詩郎との決着をつけないといけないと誓う、宵の明星であった。
218
決着
ずっとこの日を待っていた。キングオヴギャラクシー特別試合。アルセーヌ・ポルゴVS西郷詩郎。パー
プル・パンサーではなくアルセーヌ・ポルゴとして、あの西郷と全ての決着をつける。半年程、地獄の
修行をした。コーチはトシアキ・フジワラ。スパーリングパートナーはライアン・ヤマモトた。俺は古
流柔術も柔道も、合気柔術も極めてはいなかった。今の俺に残されたスタイル、それはUスタイルたけ
だ。源流の古武術と現代Uスタイル総合格闘術の融合、そこにしか勝機はなかった。トシアキ・フジワ
ラは関節技をまるて科学の講義のように、ポインド単位て極めた男だ。ライアンはブラシリアン柔術+
高専柔道、さらに打撃はサバットだ。結局、ファイトスタイルで最先端、パープル・パンサーの先を行
くしか、勝機はないたろう。進化するプロレスかUスタイルの真髄と呼はれたことかある。むしろ、同
意したい。相手を一方的に決めて勝利していいいプロレス、それかシュートスタイル、いやユニバーサ
ルレスリングだ。
西郷師範は銀河帝国に滞在すると、旧の大王と共に鬼神のようなトレーニングをした。あの重量級の
大王を担いて山嵐の投け込みを一日千回はやっていた。相手かシャケットをしていないくても、一本背
負いの体勢から払い腰にいく、独特の総合用の山嵐だ。巻込まない、巻かなくても大タメーシを与えら
れる。しかし今回完全に投けた後に、迷わす逆十字に行くことを忘れなかった。打投極。一瞬掴めば、
理合がまわる。西郷師範は打を捨てて、投極を取った。
丸坊主のフジワラか俺の肩を抱くように叩くと、テーマか鳴り始めた。地球の名曲GLORIA(栄光)た。
一方、青コーナーに俺か陣取ると、「津軽三味線冬景色」と共に赤コーナーに西郷か入場する。
特別レフリーはシャノアールた。ゴングか鳴る。
全身のオーラを第八段階まて高めると一気に発散した。この状態は1ラウントまてしか維持てきない。
一気に最初から全力た。
西郷は無言で足払いを仕掛ける。ダミーたろ。ますは右のシャッセ(下段横蹴り)からジャブで様子見
た。異変はこの時起った。西郷か打撃に付き合ってくれた。カウンターの右ストレートから左のローた。
セオリー通り、ローをカットする俺。迷わす右のコークスクリューミドルキックを放った。行けると思
う。絶対に。
西郷は左腕てミドルをブロックすると空いた右腕てカウンター気味のストレートだ。
俺は踏み込んで左フックから右ストレートを放つ。
この瞬間を西郷は見逃さなかった。
右ストレートをキャッチして、右腕て抱え込むとそのまま低重心の体勢で電光石火の山嵐を放った。
衝撃。そして天地が一瞬で入れ替わる。そのまま右腕、肘のあたりに激痛が走る。
西郷の逆十字だ。俺は反射的にブリッジして切り返すと、何とか今の逆十字を外して、スタンドに持
ち込んた。
アップライトに構える。右腕か言うことを聞かない。足は大丈夫た。ても、タイガードラゴンスープレッ
クスはもう使えない。最大の切り札を封印された。
申し訳程度のジャブを放つと、俺は右のローを放った。絶対に折れない。腕は折れても、心だけは。
勝負は捨てない!
西郷は俺のローを燕返して切り返すと、左ハイを放った。俺の頭上を西郷の左足か通過した。タック
ルに行く。西郷の左足かそのまま軌道を替えて、踵落としの体勢に入る。音速のタックルて間合いを詰
める。西郷は近接の間合いに入ると、肘打て応戦する。一瞬、背後に引く俺。西郷か左の前蹴りを放つ。
さらにステップインして、投けの間合いに詰め寄る西郷。
西郷か掴み掛かった瞬間、俺は迷わす自護体て組ムドー、そのまま背後に倒れ込んた。そのまま後転の
要領て西郷を後方に投け放つと、まるて巴のように西郷に乗りかかりマウントから一気に全体重を左肘
に預けて、西郷の首をチョークに捉えた。一気に極める。
ミスター東郷に伝授された古武術の技、柳倒れか決まった瞬間た。西郷は両目を見開いたまま、気絶
していた。
219
勝者、アルセーヌ・ポルゴ。確かに右腕は折られた。でも心は折れなかった。人生、そんなものだろ
う。心か大事。
一瞬、リングサイドを眺めると、トトのチケットを握りしめている妻と、飴をしゃふっている息子の姿
かあった。
家族。
アルセーヌ・ポルゴの個人の物語はいったんここで決着が着いた。これからは、家族の物語になるだ
ろう。モノローグはいつか必ずおわる。そして、エピローグは唐突に。
220
クレイジー・ヴォイス
あれは、まだ初代ジョー・ヨージか現役の時だ。クレイジーと名乗る柔道家か総合格闘技界に戦線布
告をした。最強の格闘技は存在しない。最強の格闘家か存在するたけたと言って、真っ白な柔道着と黒
帯て、各種総合格闘技の大会を優勝して行くクレイジー。そして、クレイジーに道場破りを仕掛けて、
返り討ちにあった、初代ヨージ。プロレス最強説が、揺らいだ。もともとプロレスは最強の格闘技で、
中てももっとも進化したプロレス、いやプロレス以上のプロレスか、ユニバーサル・スタイルのはずだ。
ても、あのUスタイルですら、クレイジーに負けた。
もはや、プロレスラーとクレイジー一族は全面抗争に突入するしかなかった。最初にクレイジーの番
頭、ヴォイスと抗争に突入したのは、あの初代グレートアジアだ。初代アジアは30分一本勝負て、クレ
イジーとの戦いに挑んた。残り時間五分。マウントを取って、完全優位に立つアジア。ホコホコにパウ
ンドて殴った。ても、クレイジーは、キbウアップしなかった。5分間、上から殴りに殴って、結局引き
分けた。あのグレートアジアですら、統一七冠王者ですら、引き分け。
プロレス最強説に戦慄か走る。
そしてUスタイルのヒットマン、初代ジョー・ヨージの道場破りの失敗。レシェント・パンサーもセミ
リタイア、アキラ兄さんも組長も引退した今、残った最後の希望、それはグレート・セキカワだ。gウレー
ト・セキカワ。テスマッチの神と呼はれ、恐れられた伝説の男だ。ゲレート・セキカワはヴォイス・ク
レイジーとのテスマッチを受け入れると、こう言った。ルールはランbアージャックていいよな。俺様の
セコンドはキラー・L氏を指名する。テスマッチのセコンドに本物の殺し屋、超一流の暗殺者を選ふと
いう絶妙なチョイスをするグレート・セキカワ。
ヴォイスはセコンドに兄のオリオンを選んた。クレイジートレインドいう曲にあわせて、入場するク
レイジー兄弟。一方、銀河交響組曲にあわせて、入場するグレート・セキカワとキラー・L。グレート・
セキカワは有刺鉄線ファイヤーハットを持参していた。そして、セコンドのキラー・Lは愛用のワルサー
Qバズーカ仕様を持参した。
リングインしたセキカワはセコンドのキラー・Lに武器の有刺鉄線ファイヤーハットを渡すとこう言った。
アマチュア相手に、武器はいらねーな。素手て勝負してやる。ランカシャー仕込みのレスリングをなめ
るなよ。
ゴングか鳴った。
二百戦無敗を誇るクレイジーのタックルを潰すセキカワ。
伊達に、ケンカ慣れはしていない。
すかさすバックを取った。
クレイジーは仰向けになって、下からパンチて牽制する。こちとら、プロたせ。ますはスタンドから
た。セキカワはロープまて戻って、反動をつけるとラリアットだ。クレイジーはワキ固め狙いて、わさ
とラリアットを受けた。
誰もが今のラリアットか切り返されると思った瞬間、そこにはダウンしたクレイジーの姿かあった。
音速のラリアットから、ネックフリーカーに切り替えるという超人いや超神的な業を使ったセキカワ。
クレイジーはグラウンドに誘ったか、またもその誘いを断る、セキカワ。グラウンドはマタムドーしか
やらない主義、と俺様の師匠か言っていたな。クレイジーか掴み掛かる。クレイジーか払腰狙いて勝負
に出た瞬間、全身のハネを使って、垂直落下式ブレーンバスターに切り返すセキカワ。誰かブレーンバ
スターは、例の約束事かないと決まらないと言った?この俺様か、カチてもブレーンバスターか決まる
ことを証明したことになるな。もはやクレイジーに勝ち目はスタンドてはなさそうだ。ランハージャッ
クルールを利用しようと、わさとコーナーに誘い込む、クレイジー。
パっとクレイジーの肩を叩くと、セキカワはこう言った。クリーンフイレクた。勝負はリングて着け
よう。クレイジーか音速の低空タックルに行く。またもタックルを潰すと、トリルアホールパイルドラ
イバーに捉えるセキカワ。そこから腕からみに捉えるセキカワ。
ギブアップするなら、今たせ。明らかに関節は悲鳴を上けていた。でも、立場上ギブアップは許され
ないのかクレイジー一族た。
221
KOて決着するしかないか?自ら技を解くセキカワ。右の掌底を放つ。左の掌底フックを放つ。今度は
ミドルキックた。今のミドルをキャッチするとウォイスは、大外刈りを狙いに行った。
かかったな。
大外刈りて豪快にセキカワを投けたウォイス。柔道なら、一本というところた。しかし、最後に倒れ
ていたのはウォイスた。今の大外刈りと同時に音速のDDTを放って、切り返したセキカワ。
プロレスなら、ここてスリーカウントか入って決着た。しかし、完全決着のテスマッチルール。しかも
ランハージャック。セキカワは非常なから、ダウンしたウォイスを無理矢理抱え上けるとコーナーまて
走って、ランニンクスリーの体勢からシャンピンク・パワーホムを放った。パワーホムて投けられたク
レイジーはなおも下から、最後の力を振り絞って、お得意の逆十字を狙った。普通のレスラーなら、こ
こて一本取られることもあるんたよな。ても、俺様はデスマッチの神、グレート・セキカワだ。
逆十字のポインドを外すと、ヒールボルドーで切り返すセキカワ。完全に決まった。膝の靭帯まてや
られたはすだ。どうせギブアップはしないんたろ。ランニングスリーも切り返すとはお見事た。わさと
セキカワはタックルに行った。掟破りのパイルトライハーてウォイスか切り替えそうとした瞬間、セキ
カワは全身のハネて頭越しにヴォイスを後方に投け放った。
ポセイトンバスターか決まった。誰もかセキカワのノックアウト勝利を確信した瞬間、セコンドのオ
リオンか、有刺鉄線ファイヤーバットを奪って、リングに投入した。
ちっ、アマチュアが。
最後の力を振り絞って、ファイヤーバットを振り回すウォイス。バットかセキカワのボディを打ち抜
いた。そのまま自軍コーナーまて追いつめられるセキカワ。クレイジー一族の逆転勝利かよきる。
何も手出しをしようとしない、セコンドのキラー・L。
なおもバットを振り回す、ウォイス。
セキカワは勝負に出た。有刺鉄線バットてセキカワの額を狙ったウォイスを真剣白羽取りの要領て、有
刺鉄線ことむセキカワ。虎穴に入らすんは、虎児を得すか。
燃えているバットを見、奪い取るセキカワ。有刺鉄線ファイヤーバットを奪ったセキカワは,リング中央
に燃えるバットを置くと、こう宣言した。ここかテメーの墓場た。くたはれ、ウォイス・クレイジー!
ウォイスの前髪をムドーそのままDDTてバットに向かって、叩き付けた。ダウンカウントを要請する。
ダウン。ワン、ツー、スリー...ナイン。
カウントナインの瞬間、乱入する兄のオリオン。すかさすリング中央の有刺鉄線ファイヤーバットて
フルスイングして、オリオンを打ち抜いた。
テン。ゴングか鳴る。
満塁ホームランってところかな。バットを捨てて、リングを後にしようとしたセキカワを、背後から
オリオンかなおも襲いかかる。
ファイヤー!
セコンドのキラー・Lから受け取ったガソリンを口に含んていたセキカワは、フィニッシュに得意の火
炎放射てオリオンを仕留めた。
百万光年速いんだよ。俺様に楯突くのは...わかったら、デテケー。
こう言い終わると、グレート・セキカワはセコンドのキラー・Lと会場を後にして、夜の街に消えて行っ
た。
夜の街でキラー・Lはこう言った。
セキカワさん、実は俺、彼女か妊娠しちゃって。子供の名前をとうしようか、悩んてるんだけと。
アンタには曾じいさんから受け継いた立派な名前かあるだろう。
確かに曾じいさんはフランスて有名な怪盗だ。ても、伯父か俺の名前を汚して、今てはイニシャルし
か名乗れなくなっている。アルセーヌ・ポルゴはどうかな?昔の俺のリングネーム,ポルゴをやるよ。こ
れから、あんたの子孫は代々ポルゴという名前を名乗っていけは、いい。ありがとう。セキカワさん。
ても、息子じゃなくて、娘か生まれた場合は?そうだな。俺の昔の彼女の名前を取って、ノリコはとう
だ?
結局、キラー・Lの子供は男の子であった。その後、代々、アルセーヌ家に長男か生まれた場合は、
222
ポルゴと命名する決まりか生まれた。これか銀髪碧眼のアルセーヌ・ポルゴか生まれたエピソートだ。
キラー・Lの直系の子孫は、彼が恋人にプレセントした金のネックレスを受け継いている。テスマッチの
帝王、グレート・セキカワの遠征時代のリングネーム、ポルゴが、アルセーヌ・ポルゴの名前の由来で
ある。
物語はおわらない。そして、伝説はつづく。
223
東郷VS西郷―ファースト・コンタクト―
師匠が試合とはいえ、殺められた。その知らせを聞いた東郷源一郎は表の技に加えて、裏の四十八手
の研究にいそしんだ。相手の名は、西郷詩郎。柔道と合気柔術を極めた使い手て、また若者だ。西郷は
模範囚として出所すると、無言で本来の相手の前にあらわれた。
東郷も無言であった。
ただ手合わせをすれば、いい。
会話はいらなかった。
金星で鍛えたはずだ。負けることは、ない。そう思う東郷。全身のオーラを第八段階まて爆発させた。
組めは、西郷有利。
打撃ては、こちらに一理ある。
そして返し業にも、一理、いや一日の長かあるはすた。
構える。勝負かはしまった。東郷はステップインすると、左のジャブから右のコークスクリューミドル
を放つ。西郷は左手てミドルをブロックする。セオリーどおりだ。東郷は強烈な右ローを放った。すか
さす右のハイに行くと見せかけ、キャンセルして左のソバットにつないた。ヘリコプターキックという
技た。西郷はまたブロックて技を防いていた。キャッチには来ない。
どちらも、また本気を出していない。隠している実力の差かあることは明白た。とちらか上かは、ま
たわからない。不敵だな、そう思う東郷。
東郷は誘って、わさと右のストレートをゆっくりと放った。西郷は思わす今の右ストレートをキャッ
チすると、そのまま一本背負いの体勢に入った。そのまま、右足て払腰のように強烈に右脚を刈り払
う。 一本背負い崩れの山嵐だ!
東郷は不敵な笑みを浮かべた。腰を自護体に構えると、そのまま豪快なバックトロップて山嵐を切り
返した。宙を舞い頭から落ちる西郷。
グラウンドにつなくための技ではなく、KOを狙った一か八かの切り返した。東郷はスタンドのまま、
勝負継続を要求した。
山嵐、敗れたり!
さて、どうするよ。西郷さん?西郷の至高の技を封した以上、もうこちらは相手のクラップリングに
注意しつつ、打撃で攻めるへきた。そして、西郷をしとめるために開発したあの技、龍虎スープレック
スかある。西郷は立ち上かるとシャブから右の足払いに移行した。東郷は右の足払いを燕返して躱すと、
左のハイを放った。
西郷の頭上を東郷の左脚か通り過きた。
若いな。お互い...
しかし、また俺には奥の手かある。そう思念する東郷。全身のオーラを両手と両足に込めて、強烈な
打撃のコンビネーションを放つ。ワンツーフック、右のミドル。
すかさす今の右に、西郷はカウンターの裏拳を放った。この時を待っていた。西郷か山嵐以外の技て、
背中を見せることを...東郷は全身のオーラを集中して、間合いを詰めると、西郷の左腕をチキンウィン
ク、右腕をハーフネルソンに捉えた。そのまま、芸術的とも言えるハイアンクルなアーチを描き、西郷
を頭からスープレックスて投け放った。そのまま完全にボルドーして、西郷にタメーシを与える東郷。
クラッチを解いた東郷は、無言て立ち上かった。
西郷は気絶していた。
東郷は無言て、西郷の鳩尾を軽くパンチすると、意識を取り戻した西郷にこう語った。
「次はアンタか勝つかもしれないな。西郷詩郎。今日て、貸し借りはもうなしだ!」
西郷は無言て東郷を睨みつけると、東郷は無言て右腕を差し出した。軽く手を重ねる両雄。西郷を立ち
上がらせると、東郷は、すぐに手を離して、右目て合図を送り、その場を立ち去った。これか東郷師範
と西郷詩郎の初戦であった。
224
エピローグ
―マスター、ネコサシ頼む。
―俺も、マタタビ大盛りで。
カウンターの男たちか、しきりに尻尾を満足そうに揺らしなから、カツオの刺身のマタタビ掛け、通
称ネコサシを食へていた。ハシもボクも使わす、素手で食べていた。両手の肉球が愛らしい。
―マスター、こっちもお子様ランチ2つ。
―すいません、お子様ランチはお子様専用てす。奥さんは、ダメですよ。
―ウチの息子元気だから、一度に二人前は食べますの。
ネコ族のマスターは、軽くミルクシェイクをシェイクしなから、ポルゴ夫人にこう言った。
―じゃあ、特別サーヒスってことて、お子様ランチ二つ。チャーハンの国旗はもちろん銀河帝国のマー
ク入りです。ハイっ。お待たせ。
―案外、早いのね。
―当店は、お客様第一をモットーにしております。お客様をお待たせすることは決して致しません。
ジュニアが産まれてから2年後、ポルゴたちは3人で銀河帝国に旅行に来ていた。ここは銀河帝国の版
図、ネコ族の惑星た。バール兼レストランては、仕事帰りのネコ族の男たちかスーツに尻尾という出て
立ちで、ここの名物ネコサシを食へに来ていた。
―マスター、〆のタシ汁を頼む!―ハイよ。熱いんて気をつけて。
ネコ族の男が、カツオ節こ飯にタシ汁を掛けて食へている。ネコ飯だ。
ポルゴは銀河の大王に会いに惑星サルバトーレに行っており、今日は別行動だった。
―やっと私も身内ができて、天涯孤独を卒業ね。この惑星はネコばかりたけと、そこか妙な安心感があ
るわ。
マスターが話しかけて来た。
―お客さん達、見慣れない顔だね。モンキー族かい?
―いや、私は生粋のジパング人よ。モンキー族じゃないわ。失礼ね。ホモ・サピエンスよ。太陽系第3惑
星、地球出身よ。
―あー、そうなんだ。道理で見慣れない顔だね。俺達と違って、体に毛が生えていないし、顔にヒゲも
ない。おまけに尻尾もないと来ている。顔も俺達みたいに三角しゃなくて、丸だしね。世界は広いんだ
ね。
―アンタ達が特殊なんじゃないの?
一瞬、店中のネコ族全員がポルゴ夫人を見つめた。ポルゴ夫人はコホンと咳をつくと、周囲を見返し
てこう言った。
―じょ、冗談よ。進化の経路によって様々な種族の人間が共生している。それか、この銀河帝国でしょ。
私も泡盛貰おうかしら。
ネコ族の惑星の特産物は泡盛た。ポルゴ夫人はクラスの泡盛を一気に飲み干すと、息子に向かってこう
言った。
―さぁ、ジュニアも早くジュース飲んで。そろそろホテルに帰るわよ。
火星人との抗争か終わり、月面人の反乱も終わった。全ての争いに終止符か打たれた太陽系。ポルゴ夫
人は2度目の銀河帝国への旅行だ。昔、ポルゴに「兄貴の人生の責任取って」と言ったことを、夫人は
今思い起こしていた。
―本当は兄貴じゃなくて、私の人生の責任取って、と言いたかったのかもしれない。
ひとは誰ても翼を持った鳥になることはできない。自分の与えられた環境てベストを尽くすこと、それ
か最善だ。一度は全てを失ったかに見えた私も、また息子や夫という家族を手に入れることかできた。
本当の自分の人生、自分て自分の責任を取れる人生は、実は今はしまったはかりだった。銀河のフロン
ティアで私は今自分の道を行こうとしている。もちろん頼りがいのある伴走者かいる。アイウォッチで
ポルゴを呼ひ出すと、夫人はこう言った。
―いつも有り難う。そしてこれからもよろしく。謝謝汝。いや、シェシェニン。
225
FINE.
226
NUOVA EDIZIONE DI ARSENE PORUGO
銀河を継ぐ者
レイナ姉さん、あなたがレイナ姉さんだね。
会いたかったよ。俺はあなたの異母弟の東郷源九郎だ。よろしく。
えっ。
一瞬、馴れ馴れしく名乗りを上けた男が胡散臭く思えたが、その容姿は写真で見た若き頃の父の姿に
完全に生き写しだ。
どういうこと、父さんは隠し子を持っていたの?不倫疑惑?
いや、そういうことじゃない。父さんは、銀河帝国で科学者に若返り薬を作らせた時、交換条件とし
て自分のDNAを提供した。その遺伝子をもとに、生み出された存在、それが俺、つまり東郷源九郎だ。
一度は三国一の美女と呼ばれた姉さんに会ってみたかった。
認知症の母さんには黙っていてくれる。あなたのことがわかると無用な心配事が増えるわ。
それくらい、わかっていますって。
でも源九郎、あなたの目標は。
もちろん銀河の大王を倒して、俺が銀河最強の遺伝子を継いていることを示すことだ。その前に、そ
うだな、アルセーヌ・ポルゴに会っておきたいな。
さっそく東郷源九郎はアルセーヌ・ポルゴの事務所に向かった。
ピンポーン。
ドアを開けて、客の顔を拝んたユメミ夫人に驚きと困惑の表情が浮かんだ
あなた、ちょっと...
あーん?
初めまして、私、東郷源九郎です。
俺は一瞬、この男かミスター東郷があの世から舞い戻って来たのかと勘違いした。 若い、眼光も十分に鋭い。
あんた、東郷師範の親族の者だな。
はい。いちおう息子です。
(あのエロジジイ、隠し子まで作っていたか... )
俺はミスター東郷には世話になった。まあ、今日は上がって行ってくれ。事務所て一杯やろう。もち
ろん飲み物は泡盛ていいよな、それとも焼酎か。いま吟球磨堤の新しいやつかある。シブく金魚酒で飲
むか?
俺は、東郷源九郎に吟球磨堤のコーラ割(クマドライバー)を提供し、相手か3杯豪快に飲み干したとこ
ろで、本題に入った。
あんた、一体何者だ。あの一刻者の東郷師範か隠し子を作ったなんて話聞いたことかない。奥さん以
外の女性にタッチすることはあっても,それ以上はしない理性があったはずだ。
あのう。俺は銀河帝国育ちで。東郷源一郎は私の遺伝上の父です。父が若返り薬を銀河帝国の科学者
に依頼した際、交換条件に遺伝子を提供したのです。
生物学上の母は、誰だかわからないのです。たた、わかっていることは一つ。俺の父か東郷源一郎で
あることだけです。
だいたいいわかった。そういうことだったのか。
で、あんたこの時代、この世界で何がしたい?
それはもちろんまずは父の意思を受け継いて、源流、いや東郷流の使い手になって、キングオヴギャ
ラクシーで優勝したいと思います。 今の銀河の大王はネコ族で、猫じゃらしの使い方さえ間違えなけれ
は、絶対勝てると思います。
(この男か明白な嘘をついているのは、明らかだ。既に男は武の道を極めているとオーラが語っていた。
そして、ギャラクシー制覇程度で、この男の野望が、欲望が満たされるとは思えなかった。)
227
だいたい事情はわかった。俺か教えられるのは源流古武術と、Uスタイルの総合格闘技だ。あんたミ
スター東郷を目指したいのか?それともパンサーを目指したいのか?
いいえ。父やその化身のパンサーを越えた何者かを目指したいです。
こうして、俺達の新たな修行と戦いの道は始った。
228
新生ギャラクシー
とりあえず報告の内容は理解したニャン。東郷源九郎の挑戦、受けて立つニャー。
ソレイユ・シャノワールこと4代目の銀河の大王は、あの西郷詩郎の最大のライバル、ミスター東郷の
息子源九郎が自分の首を狙っていることを知ると、潔く挑戦を受けることにした。
しかし主催者権限て今度のギャラクシーはシングルトーナメント、我か輩は当然シードだニャ。
ネコマタの君の力を借りるまでもない。大王自らシングルて相手をして見せる。圧倒的な自信だ。
首相、我か輩は今回キングオヴギャラクシーの開催に伴い、全権を貴君に委任する。
はい。お任せを。
首相と呼ばれた男、かつての銀河帝国の皇太子であり、ギャラクシー特別大会においてシャノワール
に敗れてからは、銀河帝国の首相を務めている。
他にも挑戦者リストを知りたいニャー。ちょっドアイウォッチで見てみるかニャン。
新生キングオヴギャラクシー、主要挑戦者リスト。
ジェラール・ボルドー、アルセーヌ・ポルゴ、ライアン・ヤマモト、西郷詩郎。
どうも地球圏には優秀な格闘家が揃っているようだミャ。
他にはと、さらに検索を掛けると、コージ・オータニ、リアル・パンサーといった名前が上がって来
た。
まっ、だいたい納得ニャン。全部まとめて、いや決勝で相手してあげるニャ。
さてと、せっかくのお祭りニャン。銀河帝国の威信を掛けて、バッチリ賞金も掛けるニャー。
しかし、東郷源九郎、全くファイトスタイルか読めないニャー。ますはトーナメントの初戦の様子を
我が輩も他のネコ族に紛れて観戦するニャー。
こうして伝説の黒猫、太陽の名を持つソレイユ・シャノワールの主催する新生キングオヴギャラクシー
は地球暦で半年後に開催が決定した。
229
登場!東郷源九郎
新生キングオヴギャラクシー、トーナメント一回戦の組み合わせが決定した。
第一試合、リアル・パンサー VS 東郷源九郎
第二試合、西郷詩郎 VS コージ・オータニ
第三試合、アルセーヌ・ポルゴ VS シェラール・ボルドー
第四試合、ライアン・ヤマモト VS トシアキ・フジワラ
圧倒的な好カードの下で、このトーナメントの勝者が決勝で銀河の大王に挑戦するというシステムに
なっていた。場所は銀河帝国の新首都惑星ネオワールド。
第一試合、リアル・パンサー VS 東郷源九郎が始った。 観客は東郷か入場した瞬間、一瞬どよめいた。
あのミスター東郷の名は遥か銀河帝国まて知れ渡っていた。そしてリアル・パンサーの入場。最強の獣
人だ。
東郷はクリーンにパンサーと握手をすると、ゴングが鳴った。
東郷は一貫して U スタイルの総合格闘技の構えだ。パンサーも同様だ。
ますはリアルパンサーがジャブから左のローを放つ。 東郷は右足を一瞬引くと、返す刀でタックルを
放つ。
パンサーは野生の勘て今のタックルを潰す。天然のバネを活かしてタックルに来た東郷を持ち上ける
と、 そのままドリル・ア・ホール・パイルトライバーを放つ。
ゴッチ式か、やるニャン。こっちのパンサーも。
会場のネコ族に混ざって観戦していたシャノワールはつぶやいた。
しかし東郷もそのまま倒立して今の技から抜けた。その後、両者はスタンド勝負に移行した。
今度は東郷はぶっ放し気味に左フックを放った。その後、渾身の右ストレートから左のホディだ。
今のボディか入った瞬間、リアル・パンサーが一瞬崩れ落ちたかに見えた。
その後、東郷は首相撲に持ち込むと、強烈なヒザの連打を放った。その連打の後、腰を入れて払腰で
パンサーを投げ放つと、ダウンカウントを場外レフリーに要求した。
勝負は着いた。東郷のKO勝ちだ。
230
もう一つの王道
第二試合、西郷詩郎 VS コージ・オータニかはじまろうとしていた。 オータニは今回、最大級の隠し
球を持っていた。気の技術を取得していた。
ラフなジーンスにTシャツのオータニと、柔術衣に袴姿の西郷が入場する。
ゴングが鳴った。
オータニはロックアップから、力比べへと移行した。
西郷は相手の手首を捻って、小手返しの要領でオータニを投げ放つ。
オータニはエビの要領て、間合いを取っでスタンド勝負に戻す。
接近戦では、西郷は一本背負い崩れの山嵐がある。しかし、観客の誰もか、オータニ相手に、大技山
嵐を出すまでもないと思っていた。
一方、反則技のレパートリーであれは、確実にオータニは西郷を上回っていた。有刺鉄線ファイヤー
バット、毒霧、火 炎攻撃、仲間のゴトーの乱入なと、波乱の要素を含んていた。
オータニは一端、ロープに体をゆだねると、反動を利用してラリアットを放つ。
西郷はカウンターの脇固めに捉える。
しかしオータニは頭を軸に回転して、脇固めを外した。
その後、ヘットスプリングて立ち上かるオータニ。
立ち上かったオータニは張り手の連打て西郷をコーナーまて押し込んた。その後、キックの嵐て西郷を
踏みつけていた。
西郷は今のキックの嵐を、下段の当て身投けて切り返すと、ダウンしたオータニに向かって、立ち上
かっ て来いという合図を手て送った。
スタンド勝負を受け入れたオータニは、またロープに身を委ね、反動を利用してラリアットを放った。
完全にラリアットか決まったかと思えた瞬間、西郷はオータニの上半身をむと、強烈な大外刈りを放っ
た。これで勝負は決まった。観客の多くはそう思った。
しかし、オータニは今の大外刈りを読んで、西郷の頭を掴ん、デンシャラストライバーオータニの体勢
で捨て身の投け技を放っていた。
西郷、オータニとも同体てマットに倒れ込んていた。
西郷は、何事もなかったかのように立ち上かる。オータニもほほ同時立ち上かった。
オータニはこう思念していた。
山嵐を出すまでもないと思っているな。それにスタミナ配分を考えて、力をセーブしている。そろそ
ろ俺も本気を出して、西郷の奥の手を誘いたい。
オータニはいきなり叫んた。
ファイヤーじゃ、ワシは負けん!
オータニの両腕か炎のオーラに包まれた。気を具現化して、オーラで両腕を覆っていた。
強烈な張り手の連打て西郷を殴ると、その後ラリアットの体勢て西郷を振り切った。
なおも張り手の連打て西郷をコーナーに押し込むオータニ。オータニは一端腕のオーラを解いて、今度
は膝にオーラを込めて、西郷の顔面に膝蹴りの連打を放った。
ついに西郷か両膝をマットについた。オータニはそのまま西郷を抱え上けると、天高く西郷を持ち上
け、 カナディアンバックブリーカーの体勢に入った。 その後一気に西郷を全身全霊を込めて頭から投げ
落とした。
サンダーファイヤーパワーボムが決まった。
これで、あの西郷も敗れるかと思えた瞬間、無言て再ひ立ち上かる西郷の姿かあった。
西郷はトーナメントのスタミナ配分を考えて、本気を出していなかったか、今の投け技を受けたこと
で、考えを変えた。
西郷はすり足て間合いをつめると、カウンター気味の右ストレートを放った。オータニがバックステッ
プで今のストレートをかわして、反動を利用してジャブで反撃をした。
西郷は今のジャブをわさと食らうと、次のツー(ストレート)を誘った。
231
オータニが右ストレートを放った瞬間、西郷は一気に体を沈めると、全身のバネを利用して、オータニ
の右腕を抱え込み、同時にオータニの右足首を苅り払った。
オータニはダウンカウントを聞かざるを得なかった。
ワシはかつて邪道探偵と呼はれた。しかし、ポルゴとの決闘を経て、もう一つの王道を見いだした。
クリーンファイトて反則技を使わすに勝負して敗れることもあれは、本望。ルールを守ってクリーンに
戦うことに意義があるとポルゴは教えてくれた。西郷相手に山嵐を出させれは、満足と言うべきではな
いか。
しかし、セコンドのゴトーは、泣きなから叫んでいた。
立て、立つんだ、オータニ。俺達は邪道と呼はれてさげすまれて来た。ここてもう一つの王道を見せる
んじゃゃなかったのか。
オータニはカウント8で、西郷の山嵐をまともに食らって起き上かった。驚異的なスタミナだ。
しかし、あれだけの攻撃を受けて、立ち上かっているのかやっとだろう。
観客達はそう思っていた。
もう西郷は大技は山嵐改しか残っていなかった。決勝トーナメント一回戦で、最後の大技を出して手
の内をさらすのか?それとも西郷の辞書には、また究極の大技か残っているというのか。
立っているのかやっとのオータニに西郷は掴み掛かると、両者はタンスを踊っているかのような動き
をした。最後に西郷かエイと掛け声をかけた瞬間、オータニは宙を舞って、頭から落ちていた。
西郷は隅落とし(空気投け)をフィニッシュに使った。たた体捌きと相手の力を利用して、オータニに最
後のトドメをさした。
こうして西郷の KO 勝ちで勝負は着いた。
232
月の咆哮
第三試合、アルセーヌ・ポルゴ VS シェラール・ボルドーが始ろうとしていた。
ボルドーは盟友シャノワール、つまり銀河の大王と組んたことで、打撃中心のクリーンファイトの重要
性を理解した。
ポルゴは、今回の試合も妻子を会場に同行していた。
両者にとって負けられない一戦だった。
ボルドーは月世界を代表して、今回の勝負に挑んていた。
ゴングが鳴る。
ポルゴがジャブを放った。ボルドーは下段にシャッセ(直線蹴り)を放った。 ポルゴは左足を引いて、
今のシャッセをかわした。今後はボルドーはポルゴの鳩尾を狙って、シャッセフロンタル(前蹴り)を放つ。
ポルゴは今の攻撃て若干間合いを広けた。効いた。
ボルドーは右のフェッテメティアン(回し蹴り)から左の後ろ回し蹴りへとつないた。
ポルゴは後ろ回し蹴りをキャッチして、バックを取った。
その瞬間、ボルドーは頭からマットに叩き付けられた。
タイガードラゴンスープレックスか決まった。
ボルドーは驚異的なスタミナて立ち上かる。
今まての俺だったら、ここで目つぶしても使うんだろうな。
しかし、男と男の勝負は、クリーンファイトであってこそ意味かあると、俺はシャノワールに教わっ
た。
ボルドーは左の後ろ回し蹴りを唐突に放った。
またもポルゴかキャッチしようとした瞬間、今度は強烈な肘てポルゴを突き放す。
そのまま、膝の嵐だ。
パパは、アルセーヌ・ポルゴは、絶対に負けないんたから...
ポルゴ夫人は、夫以外にもトトを賭けなから、そう叫んでいた。
ポルゴは膝をキャッチすると、タックル気味にテイクダウンを奪った。
ガードポジションからも、強気に打撃を放つボルドー。
ポルゴは打撃を食らいつつ、パスガートすると、マウントに持ち込んた。
一瞬、逆十字を狙ったかに見えたか、体を入れ替えて得意の肩固めてフィニッシュした。
ポルゴの一本勝ちだ。
233
鬼神
第四試合、ライアン・ヤマモト VS トシアキ・フジワラがはじまった。
ライアンは打撃はサバット、組み技は高専柔道+ブラシリアン柔術。一方、フジワラは U スタイルの
総合格闘技とムエタイベースだった。
超満員の会場の熱気と共にゴングが鳴る。
ライアンは打撃を捨てて、いきなりマットを這い出すと、低空タックルに行った。
グラウンド上等!というフジワラの声が聞こえそうだ。
フジワラは今のタックルを潰すと、ライアンの右腕を捉えた。
一瞬の切り返して、フジワラデスロックが決まった。
ライアンは頭を支点にして、立ち上かった。
今度は打撃で勝負に出る。
シャッセバー(下段横蹴り)から右のフェッテメディアンにつなぐ。
フジワラは驚異的な反射神経て、今のミドルをキャッチすると、ドラゴンスクリューに捉えた。
その後、すかさすフィギュアフォーレッグロックに捉える。
今の足四の字を、腕の力でひっくり返すライアン。
ライアンは技を解くと、再びスタンド勝負を要求し た。
タックルは潰す。打撃はキャッチする。次の手は何だ?
フジワラはいきなりのヘッドバットから左右のミドルを放つ。ひるんだライアンに飛びつき逆十字を
仕掛けるフジワラ。
フジワラが飛ぢついて来たことに対して、素直にグラウンドに引き込まれることにしたライアン。ラ
イアンはまた逆十字をブロックしていた。フジワラが、下からの三角締めに移行しようとした瞬間、一
瞬の隙をついてヒールホールドを決めた。
やや、強引であったが、今のヒールホールドでライアンは一本勝ちした。
234
伝説の死闘
第五試合、東郷源九郎 VS 西郷詩郎が始った。
東郷は今回柔道着を着ていた。
一方の西郷は袴に柔術衣だ。
ゴングが鳴る。
東郷は打撃を捨てて、無心に西郷に組みかかる。反射的に西郷も組んてしまった。
東郷の表情か変わった。一瞬、獲物を得た獣の顔になった。ひたすらんた西郷の顔面に肘と膝のラッシュ
だ。
西郷は一瞬両手を突っぱねると、再び掴み掛かってきた東郷の右腕を抱え込んた。そのまま一本背負
い崩れの山嵐の体勢になる。
西郷か右足て東郷の右足を刈り払おうとした瞬間、西郷は宙に浮いていた。
そのままカウンターのバックドロップで西郷を叩き付ける東郷源九郎。
来いよ。立ち上がって。
源九郎が叫んだ。
立ち上がる西郷にもう一度山嵐を出してみろと挑発する源九郎。
今度は西郷は、源九郎の右襟と右袖を掴み、まさに電光石火の山嵐を放った。
東郷は西郷の必殺技、山嵐を受け止めると、そのまま背後にスライディングして、捨て身の谷落しを放っ
た。
今の谷落しで西郷は頭を強打していた。そのままKOが宣告された。
東郷源九郎の実力が証明された歴史的な一戦だ。
235
ジパング魂
ポルゴ VS ライアンの試合が始まった。
両者共にジパングを代表する格闘家た。ポルゴは古武術+Uスタイル、ライアンはサバット+高専柔道
が基本スタイルだ。
前回の勝負ではポルゴ扮するパンサーとライアンは引き分けている。今回で全ての決着が着く。
ポルゴは全身の気をマックスまて高めていた。紫色の神々しいオーラが具現化していた。一方、ライ
アンはまだ気の技術を習得してはいなかった。
ポルゴはワンツーミドルという基本的な技を放った。ライアンは今のワンツーをバックステップでかわ
すと、右腕てミドルを受けた。
ガードの上からても今の一撃は効いた。
ライアンは左のシャッセから右のフェッテを放った。ポルゴは右のミドルをカウンターで放つ。
相打ちかに見えた瞬間、ダウンしているライアンの姿かあった。
そうか、ライアンは操気術の心得かないんた。オーラをマックスまて高めて勝負すれは、タメーシの
ケ タか違う。しかし、短期決戦に持ち込まないと、オーラの消費量が大きすぎる。若さから言っても、
持久戦はライアン有利だな。
そう思念するポルゴ。
立ち上かったライアンをワンツー、ボディ、アッパーと畳み掛けると、最後に後ろ回し蹴りを顔面に
当てて、ポルゴはノックアウト勝ちをした。
236
新生
キングオヴギャラクシー準決勝、ポルゴ VS 東郷源九郎の試合が始まった。
ポルゴ、東郷共に源流という古武術をベースにした総合格闘技の使い手た。しかし、東郷には隠し球が
あるかもしれない。
ポルゴは一気に全身の気を高めると、紫色のオーラを爆発させていた。
一方、東郷はオーラを不敵に漂わすと、青色のレベルでとどめていた。
オーラの量であれば、ポルゴが勝っていた。
ゴングが鳴る。ポルゴは左のコークスクリューキックで蹴りかかる。東郷は今の蹴りを片手てガード
すると踏み込んだ。 右ストレートから左フック、右ボディのコンビネーションを放つ東郷。
ポルゴは右ボディに、右の肘てカウンターを合わせた。
両者共に間合いを取る。
パパ、頑張ってー。ジュニアも応援するのよ。
と言いつつ、トトてはシャノワールにも賭けているポルゴ夫人。
ポルゴか右ハイを放つと、東郷はあろう事か、右腕と首で右ハイをキャッチして、キャプチュードに
移行した。
今の東郷の投げでタメージを受けたポルゴ。
これが、東郷源九郎の実力か... 正直厳しいな。せめてもう一度たけ気を全開にして勝負すれは。
ポルゴは全身のオーラを高めて、ジャブから右のストレート、左の後ろ回し蹴りを放った。
カウンターて東郷か右のトラースキックを放った瞬間、ポルゴは東郷のバックを一瞬にして取った。
その後、左腕をハーフネルソン、右腕をチキンウィングに捉えると、必殺のタイガードラゴンスープ
レックス を決めた。
ポルゴはブリッジしたままの体勢から立ち上かると、いったん間合いを開いて様子を見ていた。
今の投げを食らって、不敵に立ち上かる東郷の姿かあった。
もうオーラか見えないな。さすかに今の攻撃を食らって、体力と気力を消耗したな。
...オーラは七段階ではない。八段階目の見えないオーラかあることをポルゴはまだ知らなかった。
東郷は全身のオーラを一気に高めると、ポルゴには見えない第八段階のオーラのレベルまで高めた。
一瞬、全身の気を手のひらに集めると、一気に解放した。
ギャラクシーウェーブ・ネオ!
会場の観客達には、今、東郷の放った衝撃波でポルゴが倒れるのが目に見えた。
東郷の新必殺技で、勝負は着いた。
237
決着!
新生キングオヴギャラクシーの決勝が始まろうとしていた。
東郷源九郎の前に立ちはたかるのは、ソレイユ・シャノワールこと、今の銀河の大王だ。
シャノワールもオープンフィンガーをはめていた。
ゴングが鳴る。
東郷は一気に全身の気を高めると、また掌から衝撃波を放った。
シャノワールは両手て今の気弾を受け止めると、肉球からオーラを吸収した。
東郷は左ストレートから右のフック、左のホディと連打する。
今の攻撃をバックステップ、ブロッキンク、ガードするシャノワール。
東郷は間合いを詰めると、ボディタックルに行った。
その後、フロントスープレックスに切り替え、後方に弧を描いてシャノワールを投けた。
空中で一回転して、立ち上がるシャノワール。
我輩に投け技は通用しないニャ。あの山嵐もかわす自信かあるニャ。それは、お互い様かニャ。気弾
攻撃は吸収、投げはキャット空中回転。さぁ、どうするニャ。
東郷はバックステップをすると、全身のバネを利用してシャノワールに蹴りかかった。
ドロップキックだ。
今のキックをバックステップでよけたシャノワールは、左右のローキックを放った。東郷は今の蹴り
を膝の辺りて受け止めると、左右の肘てお返しをした。
まだ、君はネコ族の本当の恐ろしさを知らないニャ。
でも、我か輩もそろそろ本気を出すことにした ニャ。
オープンフィンガーを投け捨てると、両手の爪を出すシャノワール。
遊びは、終わりニャ。
離れた距離て左右のフックを放ったかに見えたか、シャノワールの爪が東郷の顔を攻撃していた。そ
の後も、シャノワールかロンクレンジのアッパーを放ったに見えたか、これも爪による攻撃だった。
最後にシャノワールか右のキックをボディに放つと、東郷はダウンした。
ダウンした東郷を、シャノワールは尻尾を使っでスリーパーに捉えた。
変形裸締めによる一本勝ちだった。
決着か着くと、会場にいたレイナか東郷に駆け寄った。
「俺は親父の息子てあることを証明できなかった。本当ならは、優勝したかった。」
「何言っているの?あなたは立派な二代目ミスター東郷よ。まるで、父さんか戦っているかのようだっ
た。」
「我か輩も久しぶりに本気を出したニャ。君は太陽系一のジパング人ニャ。また世界ては二番目たけ
ど。」
「もう一度俺と戦ってくれるか?大王」
「それは君次第ニャ。またトーナメントて決勝まで来れれは、いつでも相手するニャ」
こうして銀河に轟く名勝負は着いた。
238
沈黙の三代目
地球圏のとある都市国家では、地球連合政府に加盟を拒否して、核武装することで、独立を保とうと
していた。 当然、核武装やそれに伴う紛争は、一般市民に多大なる不安や悪影響を与える。特に銀河帝
国ては、核汚染を極端に嫌っていた。帝国の版図を外れていたとしても、核戦争や核汚染は思想的に嫌
われていた。
人類が宇宙に出てからの数世紀、太陽光発電を衛星軌道上で行い、軌道エレベーターや、高分子電線
を使って地球圏に電力を供給する方法が採られていた。ただし、過去の利権上の問題から、旧世代の電
力発電方法か未だに用いられている地域があった。
ジパングにも20カ所程度、旧式発電所が残っていた。そして、とある都市国家は、近隣のジパング地
方の旧式発電所へ向けてミサイルを発射することをちらつかせては、独立維持や経済支援の理由にして
いた。
将軍と呼ばれる独裁政権も三代目まで続いていた。
未だ、ソシアリスム・コプロダクション制度を取っている旧式の都市国家だ。
「そんなほろ国家、ほっとけば、自然消滅するんしゃない?」
「あぁ、そうだろう。ても、やつらは新興宗教やクローン貿易といったあくどい手法や、核武装や旧世
代発電所のミサイル攻撃をちらつかせている。今、始末しないと、いすれジュニアの世代にはジパング
に住めなくなることもありうる。」
「しゃあ、その三代目の将軍を倒すの?」
「あんな奴、直接手にかけるまてもないさ。かつての旧火星皇帝のように、いつかは市民の手て処分さ
れる たろう。しかし、そのためにはあのほろ国家の市民に正確な圧政の情報を流す必要かある。」
「情報兵器ね。それに、ソシアリスム・コプロタクション制度は一見平等をうたっているけと、実際は
都市と農村、軍と文民では、大きなカーストの違いかある。不平等の再生産体系と言うへきね。」
「俺は銀河帝国のドアる首脳から、あのほろ国家の核武装やミサイル配備、それに独裁政権を倒すべく
依頼を受けている。協力してくれるよな?」
「もちろん、ポルゴさん。いや、あなた。」
̶̶̶̶̶
「月世界からの支援はまだなのか?」
「偉大なる将軍様、月世界は新しい法王のもとで、完全な民主主義に移行しました。それに伴い、我々
の国家の支援を打ち切ろうと宣言しております。」
「金星フロンティアからの生物兵器の手配は?」
「それも遅れております。金星人達は、我々を非人道的組織として指定し、軍事協力を拒否して来まし
た。」
「仕方ないな。そろそろジパングにミサイルでも打って、我々の真の軍事力を見せつけよう。」
「ジパング地方を敵に回して、生き残ることかできるのでしょうか?」
「できる!我々はもともと一つの独立国家だった。それをジパング人達か野蛮な植民行為を行って、国家
か 南北に分断された。本当に必要なのは、力と独立だ!私に、将軍様について来い。」
̶̶̶̶̶
ドアる都市国家は独立国家 SRK を名乗り、地球圏の完全掌握を目論んていた。ソシアリスム・レパ
ブリック・K(K は地域名の頭文字)の略称だ。
そして SRK は銀河帝国の腕利きエージェント、マダム・アワヤを大金を積んて雇用すると、逆に地球
圏、特に宿敵ジパングを代表するエーシェント、サイハー探偵アルセーヌ・ポルゴ排除計画を立案した。
事 前に、ポルゴか SRK の独立計画を銀河帝国から妨害することを察知した SRK の将軍はマダム・ア
ワヤに ポルゴの存在を社会的に抹消することを依頼した。
239
銀河を翔る
銀河超一流のエージェント、マダム・アワヤは SRK からの依頼を受けると、すくに独自のネットワー
クでアルセーヌ・ポルゴの弱点を見抜いた。
ライバル、西郷詩郎、東郷源九郎など。弱点、家族。
マダム・アワヤはさっそく地球圏に降り立つと、ジパングて諜報活動を開始した。表向きは、歌手マダ
ム・アワヤとして活動し、裏の顔は超一流の暗殺者兼エージェントだ。
銀河帝国で活躍しているマダム・アワヤは地球圏ては全く無名、いや、知る人ぞ知る存在だった。
マダム・アワヤはジパングチャンネルの音楽番組のインタビューで、こう語った。
「好みのタイフですか?そうですね、強くて格好いい人。それに優しけれは、ベストかな。総合格闘家
の東郷源九郎さんかいいですね。できれは、お見合いしてみたいな。」
ジパングに滞在していた東郷源九郎は、偶然見ていたジパングチャンネルで自分の名前か登場したこ
とに驚くと同時に、こうつぶやいた。
「お見合い、面白い。直接会って話してみたい。」
ミスター東郷の遺伝子を継く者である東郷源九郎かマダム・アワヤの誘惑を無視することなどあり得
なかった。
マダム・アワヤはプロ版アイウォッチの機能て、フレンドネットに繋くと、東郷源九郎のメールアド
レスを割り出し、「キングオヴギャラクシーを生て見ていたファンで、歌手のアワヤと申します。よかっ
たら、今度お茶しませんか?」というメールを送った。もちろん顔写真付きだ。
東郷はマダム・アワヤと会うことにした。
東郷はポルゴ夫人にジパングのテートスポットを聞くと、ますはザ・ブラック・キャットという喫茶
店が雰囲気か最高と聞いていたので、そこを待ち合わせ場所に指定した。
ザ・ブラック・キャットを訪れた東郷はバックミューシックにマダム・アワヤの曲「哀愁の September」
がかかっていることて安心した。
待ち合わせ時間5分遅れて現れたのは、間違えなくジパングチャンネルで見たマダム・アワヤだ。
「ごめんなさい。待ちましたか?」
「いや。全然」
と言いつつ、待ち合わせ時間の30分前から待っていた東郷だ。
「ギャラクシーを生て見てくれていたんですってね。あれは新首都惑星ネオワールドだ。もしかして君
は銀河帝国出身?」
「宇宙人はお嫌いですか?私は銀河帝国出身のジパング移民です。」
「いや、俺も宇宙人みたいなもんさ。銀河帝国で生まれた。父は東郷源一郎。母は、わからない。」
「お互い苦労してきたんですね。両親は銀河帝国出身ですか、私は今、生活のためにジパングに移民し
て異国の言葉て、歌を歌って生活しております。シプシーみたいな者です。」
東郷源九郎は思った。とうせ結婚するんだったら、ジパング人よりは、異邦人。異邦人よりは、宇宙
人と。スケールかテカくて、いいじゃないか。惑星間結婚、最高。しかし、確認しておきたいこともあ
る。
「ジプシーでいいじゃないですか。私もジパングに実家みたいなものかありますか、出入り禁止の身で
す。 国籍は銀河帝国にあります。私は、一度ていいから、宇宙間結婚をしてみたいと思っています。国
も惑星 も、銀河も違う。でも、心はひとつ。それでいいじゃないですか?時間と空間を超越するものか
この世界にあるとしたら、たふん」
「♪刻を越えて、惑星(ほし)を越えて、たた一つあるの。それは、愛♪」
マダム・アワヤの曲「アモーレ・センプレ・トラヴェルサーレ・イル・モンド」か流れた。
マダム・アワヤはこの曲をレコーディングした時に、内心、「♪刻を越えて、惑星(ほし)を越えて、た
だ一つあるの。それは、マネー♪」と替え歌を作っていた。二番はこの歌詞にしようと主張したか、プ
ロデューサのヤン氏によって断られた。「アモーレ・センプレ・トラヴェルサーレ・イル・モンド」は
「愛はいつも世界を超越する」という題名だ。
240
「いい曲ですね。同感だ。」
マダム・アワヤは恋する乙女(おんな)の表情を浮かべると、こう切り出した。
「私は今まて恋の歌をいくつも歌ってきましたか、本当の恋に出会ったのは今日が初めてという気がし
ます。」
心にもないセリフだった。が、だからこそ気持ちを込めて言ってしまった。演技力には、絶対の自信
かあった。
「♪あなたは最高の恋人(ひと)。そして、私の最後の恋人♪」
今度はマダム・アワヤの新曲「ラスト・ラヴァー」か流れた。
この喫茶店、会話の途中て、言いたいことか、全てバックグラウンンドミュージックで通じてしまう。
それだけマダム・アワヤのアルバム「銀河を翔る、恋」の楽曲の歌詞は強烈だった。
笑顔が絶えない東郷に、マダム・アワヤは本題を切り出した。
「東郷さんにだけは、本当のことを話してもいいわね。歌手は、仮の姿。」
「わかっている。俺も銀河帝国出身た。エージェント・マダム・アワヤ。アルセーヌ・ポルゴの社会的
抹殺と SRKの独立かあなたの仕事(ミッション)だろう。」
「♪てもね、私の心は一つ。あなたたけよ。TRUE LOVE ♪」
銀河の名曲「TRUE LOVE」が流れていた。
「協力してくれるかしら?」
「あぁ。そろそろ平和な時代には飽き飽きしていたころだ。何なら銀河征服にだって、力を貸すさ。」
こうして、東郷源九郎はマダム・アワヤの作戦に協力することを誓った。
241
危機!迫る
東郷源九郎は、マダム・アワヤに協力することは誓ったが、ポルゴを直接手を下そうとは思わなかっ
た。
ギャラクシーで一度倒した相手だ。力関係ははっきりしたはずだ。
むしろ、公の場てマダム・アワヤとポルゴを決闘させ、始末させることを選んた。この世界て、いくら
なんでも素人の女性に敗れては、サイバー探偵として生きていくことはできない。そう判断した。
マダム・アワヤは姑息な手段てあったか、ポルゴへの公開挑戦状と共に、彼の妻子の写真を貼って送っ
た。
もし挑戦を断ったら、その時は...
ポルゴは激怒した。しかし、このような手段を使ってくる相手か、彼に敵う人間でないこともわかっ
ていた。
「わかっていないのは、あなたよ。私は、マダム・アワヤ。手段を選はない女だわ。」
ポルゴか気かかりだった。ことは、恩師の息子、源九郎かマダム・アワヤと交際していることだ。
しかし、他人の彼にどうこう言う資格はない。
「ユメミ、いい儲け話がある。ちょっと金星フロンティアまて、ジュニアと旅行にでも行ってきたら、
どうだい。金星で新しいサイバーウィルス駆除会社か上場したらしい。そこの株を買い占めたら、ど
う?」
ユメミ夫人は、既にその会社の株の一部を取得し、さらに、保険てライバル会社の株を買い占めてい
た。
「いい話ね。ジュニアにも金星て銀河ワニやパープルパンサーを生て見せてあけないと。情操教育も重
要よ ね。」
内心、ユメミ夫人は夫か危険を感して、妻子を疎開させようとしていることに気付いていた。マダム・
アワヤという歌手の女性に、公開挑戦状を送りつけられ、しかもそのバックに源九郎まている。
ユメミ夫人は、マダム・アワヤか今まで100 人を越える銀河帝国の要人、その中には龍族も含まれる、
を暗殺してきた事実を知っていたが、努めて冷静にこう告げた。
「気をつけてね。あなた。」
マダム・アワヤは公開挑戦状て、対決の場を SRK の首都、シティ・ビヨンドに指定した。セコンドは
一名のみという条件付きだ。
マダム・アワヤはセコンドに東郷源九郎を指名していた。一方、ポルゴはセコンドに正義感の強いメ
キシコ流カラテの達人、ジュン・バードを指名した。
対決は一ヶ月後に迫っていた。
242
決闘!
SRKの首都シティ・ビヨンドては、マダム・アワヤのコンサートか開かれていた。
「♪運命の恋人(ひと)。それは、あなた♪」
「♪いま惑星(ほし)を越え、刻を越え、それは Ai(愛)♪」
曲たけだったら、支持できるか、問題は家族を人質に取るような汚いやり口だ。
俺は単身、SRK に潜入すると、マダム・アワヤの公開挑戦を受け入れた。
コンサートの後、ランハーシャックですマッチをマダム・アワヤは提案してきた。
コンサート会場て、ジュン・ハートと合流すると、俺達は指定の時間まてイライラしなから、待ってい
た。
「アンコール!アンコール!」
「アモーレ・センプレ・トラヴェルサーレ・イル・モンド」が終わり、アンコールの声に答えて、「ラ
スト・ ラヴァー」か演奏されていた。
「ポルゴさん、奴ら卑怯です。絶対、ロスト・ラヴァーにしてやりましょう!」
ジュン・バードは言った。最後の恋人を「失恋者」にするという意味だ。
「今日、会場に来てくたさった皆様に、最後に私の本当の恋人を紹介します。」 会場には「TRUE
LOVE」のインストゥメンタルか流れていた。
「東郷源九郎さんです。そして、私は、彼と一緒に、ドアる地球圏のワル者に挑戦を挑みます!」 「その
相手は... アルセーヌ・ポルゴです。」
会場の真ん中に轟音と共に突然リングか現れると、地球の名曲「Un Altra Vita」(ジパング語で新生を意
味する)か流れた。
俺はリングインした。
「私は、私たちは絶対に負けません。対戦方法はランバーシャックデスマッチ。特別レフリーは西郷詩
郎さんです。決着は、KO のみです。ギブアップもなし。」
... なめてんのガード思う。ギブアップなしのルールて、ランバージャックか。相手は相当の自信がある
ようだな。
もちろん、俺はランバージャックてあろうと、セコンドのジュン・バードには一切手出しは無用と断っ
ておいた。
念のため、全身のオーラをマックスまて高めていた。紫の段階だ。
一方、マダム・アワヤはオーラすら一切出さなかった。
事前に、俺はマダム・アワヤがただの歌手てはなく、銀河帝国を代表するエージェントであることを
察知していた。ま た、前回の東郷源九郎との戦いで、紫を越えた見えないオーラを使う相手が、この
広い銀河には存在することを知っていた。
会場に「ファイナル・ウォーリア」か流れると、リングにゆっくりとマダム・アワヤと東郷源九郎が
近つき、笑顔でマダム・アワヤかリングインした。
特別レフリーの西郷か、ランバージャックデスマッチで、決着はKOのみてあることを告けると、こう
言った。
セコンドアウト。ファイト!
ゴングが鳴る。
相手の流派もわからない。ただわかることは、相手は桁違いに強いことだ。あの先代の銀河の大王す
ら、「危険だ。マダム・アワヤには近つくな」と警告してくれた相手だ。
ジュニアとユメミの顔か思い浮かふ。
マダム・アワヤはガードを中段に構えていた。
俺はこの試合、U スタイルで勝負に出ると誓った。 アップライトに構えると、いきなりの右ローキッ
クだ。
マダム・アワヤは今のキックを前足を上けてカットすると、そのまま左の前蹴りを放ってきた。
243
ファーストコンタクトで相手か、ジパングで言うところの伝統空手をベースにしたオリシナルな格闘
技の使い手てあることを見抜いた。
「ポルゴさーん、冷静に。ここは打撃で様子を見ましょう。」
前蹴りをバックステップてかわすと、相手は一旦右手を腰まて引いて、右の正拳突きを放ってきた。
これもバックステップでかわす。俺は踏み込むと、右のミドルを放った。
マダム・アワヤは左手てミドルキックを受けると、カウンターの右ストレートを放った。同時に俺は
タックルに行くと、マウントを取り、一気にパウンド勝負に出た。
マダム・アワヤはパウンドをガードしなから、ブリッジすると俺をはねのけた。驚異的なバネだ。
俺はスタンド勝負を要求した。
一方、マダム・アワヤは下から俺の膝を狙って、イノキ・アリ戦状態から、一瞬の隙をついてヘッド
スプリングて立ち上かった。
マダム・アワヤは今度は掌底気味のストレートからフックと繋いて、俺かカウンターてホディタック
ルに行ったところ、わさと今のタックルを受けた。そのまま俺かコーナーまて同体て進むと、マダム・
アワヤは 全身のハネを使って投けっぱなしのフロントスープレックスを放った。リング外にロープを越
えて吹き飛ばされる俺。一方、敵コーナーでは、セコンドの東郷か待っていた。ストンピングの嵐で俺
を踏みつけると、何とか立ち上かった俺に、東郷は強烈なホディを放った。そして、無理矢理リング内
に押し戻された。
ランバージャックデスマッチの恐ろしさだ。
「ポルゴさん、いったんコーナーまで戻ってくたさい。こっちのコーナーを常に背にして戦えば、東郷
は手出しできません。」
ジュンのアドバイスが聞こえた。
俺は自分のコーナーに戻って、構えた。
打撃のセンスは相手かやや上だった。スープレックスまて相手は使いこなしていた。こうなったら、
サブミッションしかない!
俺はいったん身体をロープに預けると反動を利用してラリアットに行った。マダム・アワヤもカウン
ターのラリアットを放った。
時を待っていた。
俺はフジワラデスロック(ワキ固め)に捉えると、一気にアワヤの右腕を極めに行った。ギブアップも
なく、相手か家族を人質に取ることを暗示している以上、折るしかなかった。
ポインドは完全につほに入っていた。力を込めるが、アワヤは一方、苦しそうな声も上けなかった。
「私は地球圏の人間てはない。銀河帝国出身の異種族た。関節技は通用しない!」 折れよとはかりに力を入れたか、無駄に終わった。
「ポルゴさん、いったんスタンドに戻しましょう。」
俺は技を解くと、スタンド勝負を受け入れた。
マダム・アワヤはあろう事か、ギャラクシーウェーブ・ネオの体勢に入っていた。
俺は目視て今の技を見切ると、ガードを顔面の前に置き、オーラを紫の状態て両腕に集中させた。
一瞬、会場かフラッシュか焚かれたかのようにに輝きを放ったか、マダム・アワヤのギャラクシーウェー
ブ・ネオは見えない気弾を放ち、俺はコーナーぎりぎりまで押し返された。
「ポルゴさん、ここはフェニックスファイナルアタックです!」
マダム・アワヤか大技ギャラクシーウェーブ・ネオを放ち硬直している瞬間、俺は左足にオーラを込め
て、後ろ回し蹴りを放った。具現化したオーラかマダム・アワヤの身体に燃え移り、一瞬だけマダム・
アワヤの身体が炎上したかに見えた。
「今です。トドメです!!」
俺はマダム・アワヤにボディタックルをかますと、相手か反動で前に進んてきた瞬間、一気に相手の身
体を閂に極め、フロントタイガードラゴンスープレックスを放った。
ゴングが鳴った。
フロントタイガードラゴンスープレックスによるKOで決着は着いた。
244
ゴングと同時に、SRK の将軍はジパングに対してミサイル発射の指示を送ったか、既に SRK に潜入
していたジョー・ヨージ12世によって、全てのミサイルは破壊されていた。
リングに東郷か駆け寄ると、マダム・アワヤを介抱していた。
「今日から、俺達は敵同士た。覚えておけよ。アルセーヌ・ポルゴ!」
こう東郷は言い放つと、マダム・アワヤを抱いて会場を後にした。
ジュン・バードは西郷詩郎に「実はマダム・アワヤはポルゴさんの家族を人質に取ると脅していたんで
す」と事実を話すと、西郷はこう答えた。
「そんなことだろうと思っていた。しかし、私はアルセーヌ・ポルゴの実力を信していた。彼の心は簡
単には、折れない。」
ジュン・バードか親友のジョー・ヨージ12世のアイウォッチに連絡を取ると、ジョー・ヨージ 12 世
は、 情報兵器のスイッチを入れた。
SRKの市民に、将軍の本当の姿か伝えられると、すくに暴動か起こり、SRK の三代にわたる独裁政治
は終止符を打った。
強敵、東郷源九郎がポルゴ打倒を宣言し、マダム・アワヤと手を組んたことを除けば、アルセーヌ・
ポルゴの、そして自由を愛する旧SRKの市民の勝利は、疑いがなかった。
245
絆
旧SRKでの一件で、かえって東郷源九郎とマダム・アワヤの距離は縮まった。打倒アルセーヌ・ポル
ゴ、キングオヴギャラクシー制覇、銀河帝国を牛耳るといった野望は共通だ。
東郷源九郎にとって、マダム・アワヤと時間を共有することはとても安心感があり、くつろげること
だった。
一方、マダム・アワヤにとっても、東郷源九郎と一緒に過こす時間は、解放感かあると同時に相手の包
容力を感じずにはいられなかった。
「哀愁の September」「アモーレ・センプレ・トラヴェルサーレ・イル・モンド」「ラスト・ラヴァー」
「TRUE LOVE」どの曲も彼らの共有する穏やかな時間を象徴していた。
マダム・アワヤは東郷源九郎と過こすことで、新しい曲と歌詞が書ける。自信と確信があった。
惑星間結婚ては子孫繁栄は難しいかもしれなかったか、パートナーと充実した時間を共有するというメ
リットには代え難かった。
「アモーレ・センプレ・トラヴェルサーレ・イル・モンド」は愛はいつも世界を越えるという意味であ
り、 「ラスト・ラヴァー」は最後の恋から本当の愛がはじまるという意味だ。
「また新しい曲と歌詞か思いついたの。」
「とんな曲?」
「♪絆。私たちの絆は、惑星(ほし)を越えてゆくの。そしてまた刻を越えてゆく。絆は、永遠♪」
かつてマダム・アワヤか「アモーレ・センプレ・トラヴェルサーレ・イル・モンド」を歌い始めた頃
は、 その曲に願いを込めていたか、実感はなかった。しかし今、「アモーレ・センプレ・トラヴェルサー
レ・イル・モンド」の曲の意味は身にしみてわかった。「哀愁のSeptember」を歌い始めた頃の、孤独
だった。自分 はもういない。新しい「絆」の意味に目覚めた自分か、ここにいる。
また新しい曲のアイティアか浮かんた。
「♪ SENZA TE. 君なしてはもう、僕はいられない。SENZA TE ♪」
「そう言えは、君に紹介しておきたい人かいるんたけど...」
「誰?」
「俺の姉だ。唯一の血の繋かった肉親だ。」
「あぁ、お姉さんね。キングオヴギャラクシーの決勝て見たわ。綺麗な人ね。」
「私も、紹介しておきたい人かいるんだけど。」
「誰?」
「グランパ、銀河ては超有名な元殺し屋て通っているけど。」
「えっ?」
「プリンス・ネコマタよ。私実はネコ族のクォーターなの。国籍は銀河帝国。」
「道理であんなに強いんだ。」
若干、マダム・アワヤの耳の形かネコ族に似ていると東郷は思っていた。しかし、自分も遺伝上の母
親を知らないことは事実なのて、お互い様だった。ネコ族は直立した人間だった。クォーターなら子孫
も作れるか。そんなことを東郷は考えていた。
東郷とマダム・アワヤはプリンス・ネコマタに会いに行った。
「はじめまして。東郷、東郷源九郎と申します。今日は、お願いがあってきました。」
私はネコマタだ。伊達に尻尾か3本に別れる程生きてはいない。御主の願い、了承済みじゃ。しかし、
条件があることをわかっておるな... 」
「条件?」
「御主の父はプレイボーイて銀河に名を轟かしたあのミスター東郷じゃ。もし、ワシの孫以外の女に手
を出した時は。」
一瞬、ネコマタか握っていた葉巻か粉々に砕けた。
「わかっているな。なーに、心配はいらない。私も地球人と結婚した身だ。御主達の子孫も繁栄するじゃ
ろう。はやく、曾孫の顔か見たい。」
246
「グランパ、ちょっと照れちゃうわ。」
「ネオワールドでさっそく入籍の手続きを取らせていたたきます。」
こうして東郷源九郎とマダム・アワヤは入籍した。 次の新曲は「チャオ!チャオ!ハンビーナ」か「ラ・
マリアーシュ」のカハーになりそうねと冗談を言う 東郷夫人だった。ジパング語に直せは、「こんにち
は赤ちゃん」、「結婚」である。 二人はネオワールドの役所を出た時、「♪絆。私たちの絆は、惑星(ほ
し)を越えてゆくの。そしてまた 刻を越えてゆく。絆は、永遠♪」と「絆」の歌声が聞こえてきた。空耳
かと思ったが、その歌声がなぜか懐かしい。
「姉さん、レイナ姉さん。」
「源九郎、あなた達二人を祝福しに来たの。アワヤさん、おめてとう!そしてお幸せに。」
「ありがとううこざいます。お義姉さん。」
こうして二人の新たなる人生の一歩はここ銀河帝国て踏み出されようとしていた。新しい冒険と絆の
物語が今始まる。その展開は、誰にも予想できないものになる。
247
プロフェッサー
ジパング大学理学部生物学科では、ライアン・ヤマモトと指導教授のフロフェッサー・ナガヤが卒業
論文の計画を練っていた。
「銀河帝国には、また我々の知らない生物種や、人種まで存在しています。それを遺伝子レベルで解析
を行い、銀河生態系との影響関係を調査します。」
「銀河帝国か。私はまだた地球圏止まりの研究者で、銀河帝国には行ったことがないです。龍族やネコ
族といった異人種がいるんでしょう。もちろん、龍族やネコ族の持つ驚異的な力に関する論文は、何本
も読んではいますが。やはり卒業論文としては、地球圏の生物種と、銀河帝国の生物種を遺伝子レベル
で分析し、 比較検討を行うことか無難だと思います。」
「俺本当は、銀河帝国と地球圏の文明圏の比較をやってみたいです。」
「それは、博論レベルでしょうね。それにその論文は私の指導できるレベルを越えるかもしれませ
ん。」
ライアン・ヤマモトか公私共に師であり、友人でもあるこの男、ジパング大学理学系研究科生物学科
情報生命体論研究室主任教授、プロフェッサー・ナガヤてある。永谷教授はブラジリアン柔術とサバッ
トを融合した独自のファイトスタイルを持つファイティング・プロフェッサーとしても知られる。ライ
アンは高校時代からサバットを練習していたが、ジパング大学に進学してから、高専柔道とブラジリア
ン柔術を ァイトスタイルに取り入れていた。高専柔道は、たまたま柔道部で出会ったが、自分の寝技に
ブラジリアン柔術のスタイルを取り入れたのは、プロフェッサー・ナガヤの勧めからだ。
「だいたい研究の話はそれくらいでいいですね。ヤマモト君、単位も大丈夫そうですね。」
「文学部で聴講中の比較文明圏論の単位がくれば、楽勝です。」
「じゃあ、後は大学のジムに行って、格闘技の練習と行きますか。」
「はい。」
二人は大学のジムナジウムに到着すると、永谷教授は空手着姿のあるメキシコ人をライアンに紹介し
た。
「彼は私の研究所時代の親友で、エリック・ニシザキと言います。メキシコ流空手の黒帯の実力者で
す。」
「ハジメマシテ、ライアン・ヤマモト。あなたのファイトはギャラクシー・ヴィジョンで見ていました。
一度手合わせ願いたい。」
「軽いスパーだったら、いいですよ。俺はシューズ履いてますけど、いいですか?」
「私は空手家です。靴は履きませんが、お手合わせ願います。」
エリックとライアンのスパーがはしまった。
「構えて。アレ!」
ライアンは胸元に拳を構えて、サリュと言って礼をした。一方、エリックは顔面の前で拳を重ねて、押
忍 と礼をした。 ライアンはワンツー・ミドルて様子を見た。左ミドルを右ひして受けるエリック。接近
戦て、エリックは右フックから左アッパー、右ボディと畳み掛ける。
「できるな。」
ライアンは左のシャッセ(直線蹴り)て間合いを取る。エリックはジャブから右の足払いた。ライアン は
燕返しを使うと、返す刀て左ハイを放つ。
きっちりガードして、バックステップを行うエリック。
ステップインしたエリックは左ローから右の横蹴りに移行した。
今の左をかわすと、ライアンは右の横蹴りを拳て叩き落とした。
両者は、いったん間合いを離れると礼をしでスパーを中断した。
「いや、さすかはメキシコ流空手黒帯ですね。ちょっと本気モードになりかけましたよ。」
「グラシアス、ヤマモト。私は打撃のみのスタイルで、寝技ではあなた達に敵いません。」
「そうですか。ヤマモト君、ひさしぶりに、私と寝技のスパーでもやりませんか。」
「プロフェッサー。できれは、総合ルールでお願いしたいと思います。」
248
「いいでしょう。では、お互いにオープンフィンガーをはめて勝負と行きますか。」
ライアンとプロフェッサー・ナガヤのカチスパーかはしまった。研究室恒例のイベントだ。
両者礼をして、ライアンか構えた瞬間、永谷教授の音速タックルか決まった。
ライアンがタックルを切る暇もなく、ガードポジションで対処した。永谷教授は上からパウントといっ
た攻めは見せすに、ねちっこい寝技の攻防て、上からます肩固めを狙っていた。ライアンは肩固めを嫌っ
て、下からヒジて攻撃した。そのまま下からのキックて間合いを取り、両者立ち上かる。 今度はライア
ンか右のシャッセて距離をむと、ツーワンを放った。永谷教授は今のツーワンをブロックすると、右フッ
クから左のアッパーを繰り出した。ライアンはウィーヴィンクて今のパンチをかわす。 またもタックル
狙いて来た教授に、ライアンか右の膝を合わせたところて、エリックか「時間です」と言って両者をわ
けた。
あのライアン・ヤマモトと互角のスパーかできる最強の大学教授、プロフェッサー・ナガヤ。今だ独
身である。
研究室の秘書達まで、永谷教授の影響で、格闘技の練習をはじめていた。
「ライアン君。私もフィールドワークを兼ねて、そろそろ銀河帝国に行ってみたくなりました。」
「教授、それでは、次のキングオヴギャラクシーの件、いいですね。」
「もちろん、その前に、君の卒論を仕上げてから。マスターに来てくれるんですよね。」
「はい。今の練習環境、いや研究環境に満足していると同時に、先生以外の人を先生と呼ふ気にはなれ
ないので。」
今から半年後、今度はタックてのキングオヴギャラクシーか開催されるという噂は、地球圏にまで届
いていた。アルセーヌ・ポルゴや東郷源九郎といった実力者に加えて、ジパング大学師弟チームか優勝
候補として話題になっている。 ブラジリアン柔術黒帯にしてサバットの使い手てもあるプロフェッサー・
ナガヤか、あのライアン・ヤマモトと組むという衝撃的なニュースが、ポルゴの元にも届いていた。
「東郷源九郎は敵対しているし、パートナーの当てもないか。マリアさんは大学受験の準備て忙しいと
か言ってるし、困ったな。ジュン・バードに頼んてみるか。それとも、西郷詩郎。それは、ないか。」
混沌とした状況の中て、全ての戦いに終止符を打つべく、現銀河の大王てあるソレイユ・シャノワー
ルはジェラール・ボルドーにパートナーを依頼した。
ポルゴかパートナー候補に考えていた一人、西郷詩郎のもとには、銀河帝国の二人の龍族か直接挨拶
に向かっていた。 成人の脱皮を終えたはかりの、ギャラクティカ・ジュニアこと銀河帝国副首相と、
ギャラクティカ・マグナこと前銀河帝国首相兼大王の二人は、直接西郷に頭を下げていた。
「西郷先生、私とせひタッグを組んてくたさい。私は龍族としてのプライトを取り戻したいのです。そ
して 銀河帝国を構成する全市民のために、代表としてもう一度働きたい。力を貸してくたさい。」
「西郷先生、ワシからもお願いする。息子を漢にしてやってくれ。」
ポルゴ夫妻のもとに、一人のジパング出身の科学者か訪ねてきていた。
「ユメミ、久しぶり。テツオちゃん、元気?ポルゴさん、あの時以来ね。」
「ジュンコちゃん、まぁ、お茶ても飲んていってくれ。」
「ホシノ、用件は何?」
「キングオヴギャラクシーのポルゴさんのパートナーたけと、一人たけ、適任者がいるわ。」
「誰?」
「リアル・パンサーよ。彼だったら、ポルゴさんとの相性は抜群だわ。」
「なぜ?」
「だって彼は私かポルゴさんのテータをもとにテザインした最強のキマイラたから。」
「俺のテータ?キマイラ?一体、何のことだ?」
「銀河最強の遺伝子を持つ男と金星ヒョウの複合生命体、それかリアル・パンサーの正体よ。私の理想
の男をベースに作った最強の獣人。」
「やっぱり、ホシノ、ポルゴのことか好きだったんだ。」
「その話は置いといて、私の科学者としての提案が、リアル・パンサーとのタッグよ。次のギャラク
シー、 あの東郷源九郎も出るわ。東郷紀子夫人と組んで。」
249
「東郷紀子、一体誰た?」
「マダム・アワヤよ。彼女、東郷と入籍したの。」
「そういうことか。だいたいわかった。」
「西郷師範は、銀河帝国の王子と組む。それにシャノワール大王は、ボルドーと組む。頼みの綱のライ
アンはプロフェッサーと組む。だったら、答えは一つよね。」
「わかったよ。俺はリアル・パンサーと組む。」
わかっていることは、たた一つ。次のギャラクシーで銀河最強タッグが決まることだ。
250
銀河最強タッグトーナメント
いよいよ明日から、キングオヴギャラクシー、銀河最強タッグトーナメントか開催されようとしてい
た。
見事予選を勝ち残り、決勝トーナメントまて残ったチームは以上である。
ジパング大学師弟チーム(プロフェッサー・ナガヤ&ライアン・ヤマモト)
西郷チーム(西郷詩郎&ギャラクティカ・ジュニア)
東郷夫妻チーム(東郷源九郎&東郷紀子)
ポルゴチーム(ポルゴ&リアル・パンサー)
銀河帝国代表チーム(銀河の大王&ボルドー)
なお、最初の4チームのみトーナメントで、トーナメントを制したチームか銀河帝国代表チームへの挑
戦権を得ることになっている。
それでは、第一試合。プロフェッサー・ナガヤ&ライアン・ヤマモト組対西郷詩郎&ギャラクティカ・
ジュニアを行います。ジパング大学師弟チームの先発はライアンだ。そして西郷チームの先鋒は王子
だ。 王子か構えると歓声がどっとわいた。前大王と同様、成人した龍族の姿に、最後の脱皮を遂けて成
長していた。
ライアンか音速の低空タックルに行くか、王子はタックルを切って、潰した。すかさず上からのフロン
トチョークに移行する王子。
永谷教授かたまらすカットに入る。
コーナーから気配で牽制する西郷。
王子は全身の気を一気に高めた。音速の速さて、銀河最強の光線技、ギャラクシーウェーブを放った。
会場か光り輝く。 今のギャラクシーウェーブをまともにくらい、スタンドの体勢のまま気絶しているラ
イアンの姿かあった。
すかさず、ナガヤかリングインする。
「ボクは、西郷先生と勝負かしたい。」
そう言い終えると、コーナーの西郷をにらむプロフェッサー。
西郷かタッチしてリングインする。 ナガヤは右ヒザ狙いのシャッセ(横蹴り)て牽制する。西郷は右足
を一旦引くとフロントステップして、 一気にナガヤに掴み掛かった。そのままナガヤの右腕を右手て一
本背負いの要領て抱え込むと、右足て一 気にナガヤの右足を刈り払った。一本背負い崩れの山嵐で勝負
は着いた。
続きまして、第二試合。東郷夫妻チーム対ポルゴチームを行います。 入場曲ファイナル・ウォリアー
と共にリングインする東郷源九郎と妻の紀子。一方、ポルゴチームは「紫の孤豹」と共に入場した。
先発は東郷紀子(マダム・アワヤ)とリアル・パンサーだ。
両者共に、第八段階の見えない気のレベルにオーラを高めている。 マダム・アワヤか左ストレート
から右フックを放つ。カウンターてリアル・パンサーか右のアッパーた。 相打ちの展開に会場か盛り上
かる。
マダム・アワヤはいったん、右の横蹴りを放って、間合いを取った。すかさすリアル・パンサーかタッ
クルに行くと、マダム・アワヤはタックルをパイルドライハーで返した。そのままヘットシザースに移
行するアワヤ。
リアル・パンサーはヘットスプリングの要領て、今のヘットシザースを返すと、スタンドに移行した。
パンサーはいきなりの右ソバットを当てた。アワヤは今のソバットを叩き落とすと、掟破りのタイガー
ドラゴンスープレックスを放った。 リアル・パンサーは大ダメージを受けたか、何とかコーナーまで戻
り、ポルゴとタッチを成功した。 251
一方、マダム・アワヤも東郷源九郎とタッチを成功した。
東郷はリングインした瞬間、両手からギャラクシーウェーウ・ネオを放った。ポルゴは今の技をガー
ドしたまま、間合いを詰めた。 大技を放って硬直している東郷を一気にむと、ポルゴはフロントタイガー
ドラゴンスープレックスに捉 えた。
すかさす、リングにリアル・パンサーかノータッチで入ると、ポルゴはコーナーのマダム・アワヤに全
身のオーラを込めたドロップキックを放った。
リアル・パンサーは東郷をストンピングで踏みつけると、そのまま場外レフリーにノックアウト裁定を
要求した。
ポルゴチームの作戦勝ちだ。
続きまして、第三試合、西郷チーム対ポルゴチームを行います。
先発はジュニアとリアル・パンサーだ。ジュニアはいきなりのギャラクシーウェーブを放つ。パンサー
はカウンターのタックルで一気に間合いを詰めた。ジョートレンシのアッパーを放ったパンサーは間合
いを取って、右のソバットを放つ。互角の戦いた。 いったん間合いを開いた両者は、ジュニアの右のぶっ
放しストレートと共に間合いをつめた。パンサー はバックステップをせすに、額てパンチを受けなから、
ボディタックルに行く。そのまま抱きつきドラゴン キラースープレックスを放った。フロントスープレッ
クスの体勢てひねりを加える大技た。しかし、ジュニアは投けられなから身体を捻り、グッドポジショ
ンをキープした。上四方気味にパンサーを押さえ込むジュニア。
すかさすポルゴか乱入しでストンピングでカットに入る。
一方、西郷詩郎はコーナーから高見の見物た。 ジュニアはいったんスタンドでロープに身体を振ると、
ダブルラリアットてポルことパンサーをなき倒した。そのまま倒れたパンサーを場外に蹴落とし、場外
ラフファイトに持ち込むジュニア。 西郷かリングインし、ポルこと対峙した。 強烈なオーラかポルゴの
全身を捉える。ポルゴは左のシャッセフロンタル(前蹴り)で間合いを取ると、 すかさす右の二段蹴りに
繋いた。西郷はカウンターの大内刈りてポルゴをなぎ倒す。 場外てはイスチャンハラかはしまってい
た。 ポルゴは大内刈りて頭を強打したか、本能的にエヒを使って、間合いを開いた。 西郷の打撃はな
い。光線技もない。あるのは投けたけた。 両者、スタンドに戻り、ポルゴは左のジャブを放った。西郷
は今のジャブをかわすと、次のストレートを 誘った。ポルゴか渾身の右ストレートを放った瞬間、西郷
はその腕を抱え込んて、同時に右足を豪快に刈 り払った。一本背負い崩れの山嵐た。 完全に一本。し
かし、この場はキングオヴギャラクシーた。ポルゴは最後の力を振り絞って、コーナーにエビで逃ける
と、イスチャンバラで王子を KO したパンサーとタッチを成功した。
偽物のパープルパンサーか。 西郷は言い放った。
しかし、本物のパンサー以上の柔軟性、そしてパンサーを越えるパンサーかリアル・ パンサーだ。
来い。
西郷が言うまでもなく、全身のオーラを込めて、強烈な打撃を放つパンサー。左のコークスクリュー
キッ クから右のソバットの好連携か決まる。わさとパンサーはふっ放しの右ストレートを放った。西郷
か右ス トレートをキャッチした瞬間、パンサーは驚異的なハネて飛ひ上かった。そのままキャット空中
一回転て 山嵐を完封するパンサー。
人間業じゃない。
観客の一人はそう思った。そう、これが獣神(=キマイラ)の力だ。 パンサーは右ローキックから左の
シャッセバー(下段横蹴り)を放ち、最後に右の上段リバースキックて 西郷の顔面をかすめた。 西郷か一
瞬、のけぞった瞬間、パンサーはフロントタイガースープレックスで西郷を後方に投け放ち、そのまま
ホールドした。
ポルゴチームが辛勝した瞬間だ。
30分の休憩の後、銀河帝国チーム対ポルゴチームの試合か始まった。
リングサイドではポルゴ夫人、息子のテツオ、そしてホシノ博士か見守っていた。
252
シャノワールとボルドー、ポルことパンサーかリングインする。 ゴングかなる前に、パンサーかボル
ドーに先制攻撃を仕掛けた。ポルゴとシャノワールはコーナーから見物だ。
パンサーかストンピング気味のキックの嵐てコーナーまてボルドーを追いつめた。しかし、ボルドーは
右のホディ一発て形成逆転した。パンサーの顔面を掴むと、ヒザのお返しだ。
ダウンしたパンサーの脳天にカカト落としを打ち込むボルドー。
「リアル・パンサー。ここは踏ん張るんだ。」
コーナーからポルゴの指示か飛ぶ。 パンサーはいったん、ダウンしたまま転かって場外戦を誘った。
この誘いを受けるボルドー。 ポルことシャノワールかリングインする。 ポルゴは全身のオーラを高める
と、一気に紫を越える見えない第八段階のオーラを具現化して、気弾として投けはなった。
ネコ絶拳! シャノワールは両手を前に出すと、肉球を使って今の気弾を吸収した。その後、豪快なワン
ツーフックからフックアッパーと繋いた。ポルゴは気弾攻撃の反動て硬直して、今のパンチをもろに食
らった。 一瞬、最後のアッパーで意識か飛んたポルゴに声か響いた。
「負けないて、パパっ!」
息子テツオの応援だ。
ポルゴは何とかバックステップで踏みととまると、左のシャッセバーから右のミドルへと繋いた。シャ
ノワールはダブルハンマーを使って、ポルゴの脳天を叩こうとした。ポルゴはすかさすタックルに行き、
テ イクダウンに成功した。その後、バックを取ると、チキンウィングスリーパーボルドーを決めた。
シャノワールか空いている左手で苦しまぎれに反撃したが、無駄だった。
場外ではイスチャンバラの挙け句、パンサーはボルドーを鉄さくに打ち付けKOしていた。
ポルゴチームか何とか銀河帝国チームを倒した瞬間だ。
リングに駆け寄るユメミ夫人と息子のテツオ。ポルゴはテツオを反射的に肩車した。
「お前が、今日からアルセーヌ・ポルゴ二世だ。」
「ポルゴ、ポルゴ。パンサー、パンサー。」
声援が飛ふ。 場外戦て流血したリアル・パンサーの額を優しく押さえるホシノ博士。
全ての決着は着いたが、銀河帝国の権力構造に変化はなかった。優勝したポルゴチームは休憩を挟んで
3連戦という過酷なスケジュールのトーナメントだ。
253
孤独
リアル・パンサーはある感情に苛まれていた。 もともとキマイラとして生み出された彼であったが、今
回のギャラクシーにポルゴと組んで優勝したことで若干の自信を得ていた。
人間と金星ヒョウのキマイラ。異種交雑故のクレバーな頭脳と最強とも言える肉体。しかし、彼に比肩
しうる者はもはや存在しないと言ってもよかった。 確かにポルゴや西郷といった連中は強さたけだった。
ら、彼よりは強いと言えるかもしれない。 しかし、彼には彼と同種、キマイラとして生み出された兄弟
はいなかった。 生みの親とも言うへき、ホシノ博士は、内心、ポルゴの代わりとして自分を生み出した
ように思えてい た。 結局のところ、リアル・パンサーか本物の存在になるためには、パンサー(ポルゴ)
を倒す必要かありそ うと結論した。
一方、ポルゴはそろそろ歴史の表舞台から消えてもいいガード考えていた。息子のテツオももうすく三
歳 になる。マダム・アワヤを敵に回した時のように、今の稼業をしていたら、いつ家族か狙われるかわ
からない。そろそろ引退するか、地味な仕事専門にならないと。ミスター東郷から引き継いたパープル
パンサーのマスクも完全に回転休業中だしな。いくらキングオヴギャラクシーで戦ったところで、もう
次の目標もないんしゃないか。
♪ピンポーン。
「はーい。」
事務所を誰か訪ねてきた。
「お久しふり、テツオちゃん、ユメミさん。今日はいい知らせかあって、報告に来ました。」
誰かと思ったら、マリア・ハロルドだ。
「ポルゴさん、私、あこかれのジパング大学に合格しました。あのライアン・ヤマモト先輩の後輩に
なるんです。」
「ふーん。何学部?」
「もちろん、ライアン先輩と一緒の理学部、生態学コースです。」
「じゃあ、あのプロフェッサー・ナガヤの研究室のあるコースか。」
「私もまたまた上を目指します。ポルゴさんも、今度はシングルトーナメントで会いましょう。」
いくら大学に合格してテンションか弾んているとは言え、場慣れしない敬語か似合わない相手ではある
「テツオちゃんも、そろそろ子供園に入学する頃ね。」
「そうです。マリアさん、特製チョコケーキがあるわ。」
「じゃあ、いただいて行きます。」
事務所の二階の窓からは、夕暮れを告げる一番星が見えていた。ある夏の夕暮れ時の頃だ。
254
暁、吠える!
御主のようなヤツは相撲界から追放する!
かつて大関の地位に手に届くところまで活躍したジパング系力士、暁次郎は師匠から破門宣告を受け
た。
八百長疑惑?いや、そんなことはない。賭博、そんなこともしない。
ただタニマチの奥さんと一度限りのアヴァンチュールかフレンドネットで暴露され、ちょっとしたお
祭りになってしまった。
はい、わかったでごわす。
とは言ったもののの、次の職も決まっていない。プロレス?うーん。打撃系?いや、打撃はオープン
ハンドしかない。
そこに持ち上かったのか、キングオヴギャラクシーシングルトーナメントだ。
とりあえすリアルファイト系の団体、ユニバーサルレスリングルールなら、今まて作り上けてきた技
術を心技を、応用できる!
ジェラール・ボルドーとのユニバーサルレスリングルール、KO、ギブアップのみの完全決着ルール
で、 暁次郎の転向後、第一戦が組まれた。
ボルドーはリングインすると、空手衣を脱き捨て、入れ墨の入った上半身をあらわにした。
一方、暁はマワシではなく、キックトランクスを着用して入場した。2メートル、200 キロの巨漢だ。
ゴングが鳴る。ボルドーはアップライト、暁は雲竜型に構える。 ボルドーのジャブを右のオープンハ
ンドで受ける暁、右のローをカットする暁。そのままふちかまし気 味に強烈な張り手の連打だ。コーナー
まて追い込まれるボルドー。
強い。今まて体験したことのないプレッシャーだ。
ここは、反則攻撃て切り返したい。しかし、シャノワールの横顔かよぎる。
クリーンファイトの重要性を説いた男だ。
ボルドーは冷静に右のボディで現状打破を試みた。
ボルドーのボディが通じない。それだけの肉体だ。
暁はボルドーを掴むと、そのまま豪快な上手投けを打った。ダウンしたボルドーをトスコイと、四股を
踏んで顔面を踏みつける暁。
間一髪、エビを使って顔面踏みつけの危機をかわすボルドー。
イノキアリ状態から、膝を狙った蹴りを打って牽制しつつ立ち上かるボルドー。
ボルドーか劣勢に立っている。衝撃的なシーンだ。
ボルドーは冷静にローから切り崩していく作戦を取る。
ワシは、中学まてカラテをならっていたてゴワス。黒帯でゴワス。
ボルドーのローか通用しない。
強烈な張り手の連打から右肩のタックルに行く暁。そのまま掴んで、今度はのど輪落とした。
ボルドーかダウンする。さすかに暁には寝技の技術はないたろう。皆かそう思った瞬間。
暁かエルボーを落とした。そのまま顔面を変形片羽絞めに捉える暁。
ボルドーか遂に落ちた。気絶したボルドーを牽制しつつ、後ずさりをする暁。
ボルドーはテンカウントを聞いた。その後、暁か勝利の雄叫ひを上け、四股を踏むと、リングの振動
てボルドーは目覚めた。
チキンウィングフェースロック。古典的な U スタイルの技だ。総合転向の師匠はあのトシアキ・フジ
ワラだった。
今ここに全く新しいファイトスタイルの格闘家、暁次郎の伝説が始ろうとしていた。
255
やるな、暁
俺は暁次郎の試合を格闘技チャンネルで見ていなから思った。
できる。そして、今、最もシングルで最強に近い男た。
暁次郎を倒すには、首を攻めるしかないたろう。グラウンドで。
問題は、テイクダウンだ。
相手は空手の経験があり、最低限打撃のガードはできる。
あの巨体だ。タイガードラゴンスープレックスなど、ほほ全ての投げ技は通用しない。
ドラゴンスクリューでも、下手に潰されるドアウトだ。
あの体格で、あの実力。プリンス・ネコマタを凌くサイズと強さだ。
しかも、新しい総合の師匠がドシアキ・フジワラて、関節技までこなす。
気を使った放出系の攻撃もあの肉厚なホディは受け止めるたろう。
龍族歴代最強の名を欲しいままにした、全盛期の3代目の銀河の大王でも無理たろう。
ソレイユ・シャノワールなら、スーパーフランケンからのチョークスリーパーを狙うだろう。
しかし、勝負はやってみなけれは、わからない。
あのマリア・ハロルドも正直、暁には敵わない、だろう。
しかし、ぶっぱなす秘技、必殺技を編み出すよりも、ここは基本に返って、打撃、関節、投けの反復練
習をして、気を練った方かいい。
あの西郷詩郎ても、山嵐か通用しない相手かもしれない。しかし、西郷は合気柔術の心得もある。関
節を決めて豪快に暁を投け飛はすかもしれない。
信頼できるスパーリングパートナーが必要だな。
そう考えていたところ、ジュン・バードとジョー・ヨージ 12 世か訪ねてきた。
ポルゴさん、お久しふりです。テツオ君、元気てしたか?大分身長か伸ひましたね。
ポルゴさーん、コンニチワ。いよいよ、キングオヴギャラクシーシングルトーナメントか開催されマー
ス。ボク達は、あの暁次郎やプリンス・ネコマタに匹敵する大型選手を発掘しました。
何っ! 暁やネコマタに匹敵する選手だと!
ハーイ、ご紹介します。サ・グレート・ブシドー。
ギャグかと思ったネーミングセンスだ。しかし、俺はグレート・ブシドーを見た瞬間、強烈な戦慄か
走った。銀河の殺し屋、あのブラックホールズと対峙した時と、同様の暗い、重厚なオーラた。
しかも,体型は 2 メートル、ウェートは 150 キロ程度か。
スーパーヘビー級の動ける選手。それかザ・グレート・ブシドーです。
ハジメマシテ、ミスター・ポルゴ。いや二代目パープルパンサー。
何でも知ってやがるな。こいつ。
ワタシはアナタのファイトスタイルを見て思った。ワタシの師であり友人、ミスター東郷のハートを
継ぐ者はアナタしかいないと。
アンダミースター東郷と会ったことかあるのか?
ミスター東郷の金星留学時代に、古武術の稽古を付けてもらった。東郷源九郎は、姿形、遺伝子はミ
スター東郷のものと一緒たか、ハートは邪道だ。
一緒に、基本から源流、いや東郷流の稽古をしよう。そして仕上けて、お互いにギャラクシーにエン
トリーしよう。
今回、私達は、サポーター役に徹します。一緒に、同し夢を目指しましょう。
ザ・グレート・ブシドーは仮面を付けており、素顔はわからなかった。たたわかっていることは、一つ。
現役最強時代のミスター東郷をザ・グレート・ブシドーは知っていることだった。
256
メモワール・オヴ・トーゴー
トレーニングの最中、サ・グレート・ブシトーは仮面の奥を光らせると、ミスター東郷との記憶を語
りだした。
... あれトーゴーが生態学の論文で博士号を取り、金星フロンティアで研究留学に来た時だった。
オレとトーゴーははしめて手合わせをした。オレは今よりウェートも乗っていて、暴れたい盛りだっ
た。
トーゴーはオレの右腕の関節を決めると、赤子の手を捻るかのことく豪快にオレを投げ飛ばした。何
度立ち上がっても、その繰り返しだった。
そして、オレは負けを認めて、トーゴー、いや東郷師範に弟子入りをしたミスター・ポルゴ、オレは
アナタの兄弟子ということになる。
そしてオレは知った。誰よりも東郷師範か人格的に優れていたことを。そして、唯一の欠点を除けは、
最強の人間に近いことを。
ミスター東郷の唯一の欠点か。たぶん、女好き、だろう。
いや、それは違う。ミスター東郷の唯一の欠点は、彼か優しすぎることた。時に人格的な甘さは、致
命傷となるのか、オレたち武道、いや武士道を生きる者の世界にある。
東 郷源九郎の欠点は、彼かミスター東郷の肉体的な強さにとらわれ、その精神を継承しなかったこド
アる。オレは、マダム・アワヤの汚いやり方を知っている。源九郎は、その弱い面を含めて、マダム・
アワ ヤと惹かれ合って、結婚した。
まぁ、弱いもの同士か傷をなめ合って生きていくのも人生しゃないか。
ミスター・ポルゴ、アナタの唯一の欠点は、たふんその甘さだろう。まあ、いい。オレはちょっと完
璧主 義なのかもしれない。ても、オレたちの武の道は、全て基本からた。
まずは、ファーストコンタクトからだ。ジャブ、ワンツー、ワンツーフック。オレのミットに打ち込ん
で来い。
ポルゴかワンツーを放った瞬間、戻り際の隙に、サ・グレート・ブシトーはカウンターの右ストレー
トを放った。
ガードはワスレルな。トーゴー師範に習わなかったか? その後、ワンツーミドルや左右ミドル、左右
ハイのミット打ちをやった。
ポルゴよ、基本は常にローキックじゃ。ローキックを美しく蹴れれは、ミドルもハイも蹴れる。
東郷師範の声を思い出すポルゴ。
打撃の基本はいい。次は当て身投げだ。オレのストレートをカウンターで取って、投けることはでき
るだろうな。
ブシドーは右ストレートを放った。はやい。そしてパワフルだ。一発が致命傷になる。
もう一発、お願いします。
ブシドーの右をキャッチすると、ポルゴは関節を決めて当て身投けを放った。ブシドーは直立不動だっ
た。
ミスター・ポルゴ、当て身投けの基本は、関節のポインドを決めることと、相手の力を利用して一気
に投げりることだ。
見本を見せよう。
右ストレートを放て。
ポルゴか右を放つと、ブシドーは左手一本たけてポルゴを投け放った。完全な弧を描いて、投け飛ばさ
れたポルゴ。
おそらく合気という概念も、相手の呼吸と合わせて技を放つということだろう。
サ・グレート・ブシトー。全盛期の東郷師範の弟子にして友人ということは、ある。
暁次郎、西郷詩郎、マリア・ハロルド。シャノワール。ポルゴ。プロフェッサー・ナガヤ。有力者の
前に立ちはたかる孤高の壁、それか、サ・グレート・ブシドーだ。そして、東郷源九郎も、もちろんギャ
ラクシーに参加することを企てていた。 257
銀河最強シングルトーナメント
あの、ザ・グレート・ブシドーが参戦するのかニャ!?
それに巨漢ファイター、暁次郎まで。
じゃあ、我か輩も本気を出すしかないニャ。今度のギャラクシー、グローブなしの素手て挑むニャ。
奥の手を最初か ら解禁して勝負に出ないと、我か輩の大王の座もやばいニャ。
キングオヴギャラクシーシングルトーナメントは、西郷詩郎、東郷源九郎、アルセーヌ・ポルゴ、ギャ
ラクティカ・ジュニア、ザ・グレート・ブシドー、マリア・ハロルド、プロフェッサー・ナガヤ、暁次郎
いった有力者がエントリーをしていた。このトーナメントの勝者の挑戦を、4代目の銀河の大王、つまり
ソレイユ・シャノワールが受けることになる。
厳正な抽選により、トーナメント一回戦の組み合わせが決まった。
第一試合 東郷源九郎 VS マリア・ハロルド
第二試合 プロフェッサー・ナガヤ VS アルセーヌ・ポルゴ
第三試合 暁次郎 VS ギャラクティカ・ジュニア
第四試合 西郷詩郎 VS ザ・グレート・ブシドー
圧倒的なスケールで、キングオヴギャラクシーシングルトーナメントは開催される。ルールは KO、キ
ブアップのみの完全決着制。武器・凶器の使用は一切認められない。たたし、爪、キバなとによる攻撃
は、相手を殺めない限り、可とされる。気を使った攻撃は可た。クローブまたは素手、レガースまたは
シューズの着用は認められている。その他の防具は一切認められない。
試合の様子を伝える前に、ここて各選手のファイトスタイルと出身を紹介しておこう。
東郷源九郎、ファイトスタイル源流古武術+ U スタイル総合格闘技、出身銀河帝国
マリア・ハロルド、ファイトスタイルハロルド流古武術、出身ジパング
プロフェッサー・ナガヤ、ファイトスタイルブラジリアン柔術+サバット、出身ジパング
アルセーヌ・ポルゴ、ファイトスタイル源流古武術+ U スタイル総合格闘技、出身ジパング
暁次郎、ファイトスタイル相撲道+ U スタイル総合格闘技、出身ジパング
ギャラクティカ・ジュニア、ファイトスタイル 総合、出身銀河帝国
西郷詩郎、ファイトスタイル柔道+合気柔術、出身ジパング
ザ・グレート・ブシドー、ファイトスタイル 総合、出身不明 おそらく銀河帝国
ソレイユ・シャノワール、ファイトスタイル サバットをベースにしたネコ流カラテ、出身銀河帝国
ファイトスタイルは、ジパング発祥の相撲道、柔道、古流柔術が多い。その他には Uスタイル総合格
闘技やサバット、ブラシリアン柔術といったスタイルもある。 地球圏格闘技の発祥のメッカの一つと呼
はれる黄金の国ジパング、そして銀河帝国からの参加者がほとんどだ。
キングオヴギャラクシー、空前絶後の火ぶたが切って落とされようとしていた。
258
奥の手
第一試合、東郷源九郎 VS マリア・ハロルドがはじまろうとしていた。 東郷の入場テーマは、アモー
レ・センプレ・トラヴェルサーレ・イル・モンドだ。一方、マリアは名曲 Gloria(栄光)だ。 東郷源九郎
は第八段階の見えないオーラを纏って登場した。セコンドは東郷紀子夫人ことマダム・アワヤだ。 マリ
ア・ハロルドも対応して見えないオーラを纏っている。できる。セコンドはもちろん先輩のライアン・
ヤマモトた。
ゴングか鳴る。
マリア、シャッセから崩していけ!
重みの乗った下段横蹴り(シャッセ・バー)て東郷の左膝を狙うマリア。東郷は怯むことなく前進する
そして、気を込めた強烈な右アッパーだ。
もともと第八段階のオーラは可視できないし、セコンドのライアンは操気術の心得がない。
マリアはアッパーを右手て受けると、左フックて切り返した。
ウィーウィンクてフックをよける東郷。またも右のアッパーで反動を利用して切り返す東郷。
直撃かと誰もが思った瞬間、マリア・ハロルドの姿はそこにはなかった。
気をフィールトとして利用したマリアは瞬間移動して、東郷のバッグを取った。すかさす投げっ放しの
ジャーマンを放つマリア。
東郷か頭からマットに突き刺さる。
やるじゃないか?東郷は立ち上かりながら、言った。
でも、遊ひはここまでだ。
東郷は全身のオーラを両の掌に込めると、ギャラクシーウェーブ・ネオの体勢に入った。
マリアは右手にオーラを込めると、球状にしてアッパーカットの軌道て放った。
ギャラクシー・ウェーブと激風拳の相打ちた。会場かオーラの爆発の衝撃て輝いた瞬間、マリアは瞬間
移動て東郷の目の前に立っていた。
東郷は今の瞬間移動を、気の気配の微妙な変化て読んていた。右手にオーラを込めると、強烈なボディ
ストレートを放った。発頸だ。
しかし、マリア・ハロルドも今の一撃を堪えた。
左足からステップすると、右足にオーラを込めて、顔面に前蹴り(シャッセ・フロンタル)を放った。
打撃の技術では、互角か?オーライ、それじゃ、奥の手を出すぜ。
東郷は宣言すると、全身のオーラをマックスまて高めた。一体、何か起きるのか?
東郷はオーラを全身に纏ったまま、ワンツーを打った。マリア・ハロルドかカウンターの右ストレート
を放った瞬間、東郷はマリアの右腕の関節を決めて、豪快に投け放った。マリア・ハロルドは立ち上か
ろうとしたが、全身か痺れて身動きか取れなかった。
オーラを変化させて、雷撃のように相手を痺れさせる。そして相手に悟られないよう、カウンターの
当て身投けと同時に相手を変化したオーラて攻撃する。羅刹門という強烈な当て身投けか決まった瞬間
た。
すかさすダウンしたマリア・ハロルドの右腕を決めて、逆十字の体勢に入った東郷。マリアの様子か
おかしいことを見取ったライアンはタオルを投入して、東郷 TKO 勝ちか決まった。
259
寝技地獄!
第二試合が始った。正直、俺は永谷教授をなめていた。プロフェッサーと周囲からは呼はれているが、
格闘家としては、ただの愛想のいいオッサンだ。植物学者特有の優しげな表情。しかし、格闘家として
のピークは過ぎているはずだ。いくら打撃はサバット、グラウンドはブラジリアン柔術てあろうと、教
授と呼はれるまでの年齢で、ライアンほどの動きのキレはないはすだ。
ゴングと共に、プロフェッサー・ナガヤは握手を求めてきた。クリーンに右手を差し出す俺。
ファーストコンタクトは、俺の右ストレートだ。
プロフェッサーは右ストレートをかわすと、右の足払いて俺を揺さふった。一瞬、足払いて意識か下に
向かった瞬間、顔面をめかけて容赦ない左のハイか飛んてきた。
当然ガードした。次の瞬間、プロフェッサーは低空タックルに来た。俺は思わす尻餅を着いてしまっ
た。 両足に抱きついたまま、ねちっこく離れないプロフェッサー。 一発、殴ろうと思って右手を出し
た瞬間、カウンター気味に肩固めを決められた。
息ができない。完全に決まっていた。
ブリッジをして切り返す。
何とかバッグを取った。チョークでも狙うかと思った瞬間、プロフェッサーは俺の足を掴んで、バラン
スを崩させた。
そのままサイドを取るプロフェッサー。
マウントたけは取らせないと思う。サイトを取ったまま、左腕を腕搦みて狙うプロフェッサー。一方、
右 腕も足を使って動きを封してきた。空いている左腕て、キロチンチョークを仕掛けるプロフェッサー。
両腕を決め、ギロチンを行うという職人芸を見せる。変形地獄絞めた。
通常の地獄絞めか相手をひっくり返してから決めるのに対して、プロフェッサーはサイドポジション
のまま、まるてヘビのように俺の両腕を決め、首まても絞めてきた。
ブリッジで切り返す。 そのままエビで間合いを開くと、反立ちになったプロフェッサーに、俺は膝を狙っ
たシャッセを放ち牽 制しつつ、立ち上かった。
まさに寝技地獄た。打撃のセンスもあり、一発て仕留めることは難しい。
だったら、答えは一つだ。総合格闘技、ギャラクシーの基本は、打・投・極の3つか巴のように絡み合
う攻防にある。
俺は「投」しか残っていなかった。
ワンツーを放って、相手か右ストレートて切り返した瞬間、一気に俺は間合いを詰めた。そして、奥
の手 のフロントタイガードラゴンスープレックスを放った。迷わすマットに頭からめり込んた相手をボ
ルドーして、身動きを封した。
確かにグラウンドは理詰めた。打撃もロジックてカバーできるかもしれない。しかし、天性のバネが役
に立つのか、投げた。フロントタイガードラゴンスープレックスホールドで、ノックアウト勝ちした瞬
間だ。
260
パワー対スピード
第三試合、暁次郎 VS ギャラクティカ・ジュニア戦がはじまった。 相撲道出身の暁は、パワーファイ
ターだ。一方、龍族出身の王子は、天性のバネとスピードを併せ持っていた。
ゴングがなる。
暁は強烈な張り手て王子をコーナーまでつめた。王子は右ストレートから左のローのコンビネーショ
ンの後、暁の右サイドに廻り込んた。
コーナーを背にした暁。すかさす右のミドルを放ち、左のソバットを叩き込む王子。
直撃た。しかし、暁の巨体はタメーシを受けたそぶりがなかった。
すかさす顔面を狙った張り手て王子か怯んた瞬間、のと輪落として叩き付ける暁。
王子は驚異的なスタミナて立ち上かると、もう一度のと輪を狙う暁てあった。
王子は背中の羽て飛ひ上かると、両足を暁の首に絡めた。そのままひねりを加えて、後転のようにして
暁を後方に投け放った。
スーパーフランケンシュタイナーだ。すかさず全身の気を掌に集中して溜め込む王子。
会場か大きく揺れた。王子かギャラクシーウェーブを放った。
暁は今の光線技をまともに受けて、いまた直立不動た。
王子の表情に動揺か走る。フルパワーギャラクシーウェーブを受けて、なおも立っている相手かそこに
あった。
今度はワシの番たい! 暁は頭突きを王子の顎に当てた。すかさす組み付くと、豪快な下手投けて王子
を投け放った。
そのままダウンした王子に乗っかった暁は、サイトポシションから、王子ののと元に膝を押当てた。
暁の 200 キロの体重が、全て王子ののど元に向かった。
ギロチンチョークによるノックアウトだ。
261
武士道 VS ブシドー
第4試合、西郷詩郎 VS ザ・グレート・ブシドーが始ろうとしていた。
津軽三味線冬景色と共に、西郷か入場する。一方、ブシドーはサ・フロンティアと共に入場だ。羽織袴
の古武術スタイルの西郷と、仮面に柔道衣姿のブシドー。
ブシドーの周りには暗黒のオーラか漂っていた。
西郷が問うた。
貴様、この世の者の者ではないな?
いかにも。ワタシは異界から、強者との闘いを求めてやってきた。西郷詩郎、お手合わせ願う。
望むところだ。
ゴングか鳴る。
西郷は迷わすブシドーに掴み掛かった。右袖、右襟をむと、電光石火の山嵐を放った。
ブシドーの巨体か宙を舞った。そのままダウンするブシドー。
西郷はダウンカウントを要請した。
カウントスリーて不敵に立ち上かるブシドー。
ブシドーはこう言った。
冥土の土産に教えておこう。ワタシはどんな格闘家ても、最初の一発、得意技を受けることにしてい
る。
そして、同じ技で相手を葬ることを選んている。ワタシに同し技は二度通しない。そして、オマエの得
意技が、オマエを葬ることになる。
戯れ言を。
西郷はもう一度ブシドーに掴み掛かった。ブシドーの右袖、右襟をむと背負い投けのように懐に入り
込んだ。そして、右足で右足を刈り払った。
しかし、ガッチリと今の攻撃を腰を落として受けているブシドーの姿かあった。そのまま、バックド
ロップで山嵐を切り返すブシドー。
西郷がダウンする。
先に立ち上かったブシドーは上着を脱いた。
これて今のエリを掴んだ山嵐は放てまい。
フッ。
西郷はブシドーに右ストレートを放った。ブシドーかカウンターの右ストレートを放った瞬間、ブシ
ドー の右腕を抱え込んて一本背負いの体勢に入った西郷。そのまま右足て相手の右足首を刈り払う。
一本背負い崩れの山嵐だ。
しかし、ブシドーは腰を下けて山嵐を受けると、そのままカウンターの谷落としを放った。
受け身に失敗して頭を強打する西郷。
しかし、不屈のファイティングスピリッツで西郷は立ち上がる。
ブシドーは一瞬ロープに身を委ねると、立ち上かった西郷にラリアットを一発、二発と決める。
誰もか三発目のラリアットを予想した瞬間、西郷の懐に飛ひ込むブシドーの姿かあった。
ブシドーは左腕て西郷の右袖、右手て西郷の右襟をむと、背負い投けのように懐から西郷を担き上け
た。 すかさず、電光石火のごとく、西郷の右足首を右足て刈り払うブシドー。
予告通り、西郷の必殺技、山嵐をブシドーか放った。すかさす空中て一回転したブシドーはその巨体
で西郷の身体にのしかかった。
山嵐巻込みだ。
悪いな。ワタシは確かにオマエの必殺技で勝負を決めると言った。しかし、ワタシ流のアレンジも加
えるのも忘れないことか、ワタシの趣味だ。
西郷詩郎、確かに柔の道を極めた使い手であった。
過去形で語るのが、惜しいことだな。
こうしてブシドーの一本勝ちで勝負は着いた。
262
死闘!
東郷源九郎との試合が始ろうとしていた。
東郷のセコンドは紀子夫人ことマダム・アワヤだ。一方、俺のセコンドは、ジュン・バードとジョー・
ヨージ 12世が着いてくれた。
ポルゴさん、油断しないで。
ポルゴさーん、力有効利用です。
マダム・アワヤは俺をきっと睨むと、源九郎にこう告けた。
今日こそ、アルセーヌ・ポルゴの命日よ。
ゴングが鳴る。
源九郎も俺も、オーラを見えない第八段階まて高めていた。
もし今の状態でフルパワーギャラクシーウェーブ・ネオを放たれても、微妙な空気の動きで読める。
それくらい全身の神経を集中していた。
ファーストーコンタクトは源九郎のジャブからのストレートだ。
俺はバックステップて今の攻撃をかわすと、カウンター気味に右ストレートを放ち、すかさす左フッ
クから右アッパーを放った。
空振り気味だった。が、威嚇効果にはなった。
源九郎は右のローキックから左のミドルへと繋いた。今のミドルは強烈てガードの上からても骨身に
沁みた。
俺は返す刀て、右のフロンタル(前蹴り)を放って、間合いを取った。
パパー、頑張って。賞金! ユメミの声か聞こえる。
このトーナメントを最後に引退しようガードいう思いかよきる。
俺はジャブを放つと、そのまま身体を下けて前進した。タックルだ。
テイクダウンした後、足をクロスしてガードポジションに移行する東郷。
俺は迷わす、上からパウントの嵐た。
東郷は冷静さを失わない。
下から、逆十字か三角に移行するチャンスを狙っている。
筋肉が鍛えられないアバラの間あたりを狙って、パンチの雨を落とす。
右のいいのが入った瞬間、東郷は足をクロスして逆十字を狙ってきた。
すかさず、俺は全身の力を振り絞って、東郷を持ち上げた。そのままパワーホムだ。
このやり方は一歩間違えると右腕を痛める恐れがある。
そのまま強引に右腕を引き抜いた俺は、イノキアリ状態で、東郷にローキックの連打を行った。
東郷は冷静にハンドスプリングの要領で立ち上がる。
スタンド勝負だ。
東郷はいきなりその場で飛び上がると、ドロップキックを放った。
バックステップてかわす。 牽制しつつ、両者は間合いをつめた。
俺は掌底気味のフックからアッパーへ繋いた。
右アッパーを東郷はバックステップでかわすと左のミドルを放つ。
俺は何とかこのミドルをキャッチして、そのまま東郷の足に抱きつきマットに倒れ込んた。
ドラゴンスクリューが決まった。
すかさず足四の字を決める。
東郷は全身のバネで足四の字を外した。
お互い間合いを取って、またスタンドに移行する。
俺はわざと東郷に向かって、大振りのフックを2発空打った。
東郷はパンチっていうのは、こうやってやるんだと、カウンターのフックを2発返した。
この瞬間、俺は殴られなから、一気に間合いを詰めた。フックを腕て受けて止めて、クラッチを作っ
た。
263
そのまま真後ろに向かって、ブリッジをして、東郷を投けるとそのままホールドした。
フロントタイガードラゴンスープレックスホールドが決まった瞬間だ。
264
道!
暁次郎 VS ザ・グレート・ブシドーの試合か始まった。
両者共に 2 メートル、暁は 200 キロ、ブシドーは 150 キロのスーパーヘビー級だ。
暁はキックトランクス、ブシドーは柔道衣姿だ。
ブシドーはこう言った。
暁次郎、ハンデをやる。一発だけ、得意技を食らって進ぜよう。
暁は逆上して、鉄砲道の張り手でブシドーをコーナーにつめた。そのまま、上手投けて豪快にブシドー
を投げた。
了解。上手投げが得意技だな。オマエはその上手投げで敗北することになる。
何を言ってるんでゴワス。ワシの技はそう簡単に真似てきないてゴワス。
ブシドーはいったん、ロープに身を委ねると、強烈な右のラリアットを放った。
仁王立ちの暁。なおも今度は背後からラリアットを往復するブシドー。
また倒れない暁。
ブシドーは、右腕を斧のように曲けると今度はアックスボンバーだ。
さすがに顎にヒジを貰って、倒れる暁次郎。
アーカツキ、アーカツキ! 会場の観客の声かこだまする。
ブシドーはダウンした暁にエルボーを落とす。
暁の頭をむと、ブシドーは、こう言った。
立て!
ブシドーは立ち上かった暁に張り手の嵐を見舞った。
今の掌底気味の張り手で暁は意識を失った。
そのまま右手てかっぷりと暁の右腕を抱え込み、左腕て暁の左腕を掴むと、豪快に腰を入れて上手投
げを放つブシドー。ダウンした暁に、空中て一回転してのしかかるブシドー。
ブシドーの KO 勝ちだ。
ザ・グレート・ブシドーは勝利のポーズを決めて、ジャケットを脱き上半身をあらわにすると、背中
に道という字か浮き上がっていた。
圧倒的なブシドーの実力だ。
265
生き残るのは誰だ?
俺はザ・グレート・ブシドーとの勝負を迎えようとしていた。
ザ・グレート・ブシドーは東郷師範の友人にして、兄弟子とは言え、暗黒のオーラを発している。闇側
の人間だ。ファイトスタイルも、容赦がない。
これは最初から全力で飛ばさないと、厳しい。
手加減とかは、なしだ。
ゴングか鳴る。
俺はアップライトに構えると、ブシドーはお決まりのセリフを言った。
ミスター・ポルゴ、アナタの得意技を一発だけ受けよう。
面白い。俺はステップで相手を撹乱すると、右のローキックを放ち、そのままバックに廻った。
ブシドーの左腕をチキンウィンク、右腕をハーフネルソンに捉えると、そのまま全身のオーラで固定
して、背後に強烈なブリッジをして投け放った。
タイガードラゴンスープレックスホールドか決まった。
さすがに 150 キロのスーパーヘビー級の相手だ。一試合にスープレックスは一度か限度だ。
うーむ。なかなかの技。アナタはこの技て敗れることになる。
黙れ。この技を使いこなせるのはパープルパンサーのマスクをかぶったことのある人間だけだ。
俺は強烈な左ミドルを放った。
ブシドーは今の左をキャッチすると、間合いを一気につめてキャプチュードで返してきた。
空中を舞う俺。
相手もミスター東郷の弟子だ。ということは、俺かミスター東郷を越えない限り、勝ち目はないとい
うことか。
ほんとは技なんてモノはどううてもいいんじゃ。必要なのは心だ。そして勢いがあれば、勝てる。
ミスター東郷の台詞だ。
俺は立ち上がると、構えを裏構えに替えた。
今度は後ろ足になった左足で、強烈かつスピードの疾いミドルを蹴った。連打だ。
さすかにキャッチはできない。
今度は右のハイだ。すかさず左のソバットを相手のボディに当てる。
崩れないか、じゃあ、今度は掌底の嵐た。
ブシドーの顔面を的確に俺の掌底が捉える。
すかさず左のフロンタル(前蹴り)から右の上段フロンタルへと繋いた。
ブシドーか片膝を着いた。
すかさすシャイニングウィザードでブシドーの頭を刈り払う。
ダウン。
ワン、ツー、スリー。
カウントフォーて立ち上かるブシドー、圧倒的なスタミナだ。
ミスター・ポルゴ、裏の48手て来るとは、面白い。ワタシも本気を出そう。
ブシドーかジャケットを脱いた。背中の道という文字か浮き上かる。
ブシドーはおもむろに右ローキックを放った。重い攻撃だ。そのまま、俺の背後に回った。
バックを取ったブシドーは俺の左腕をハーフネルソン、右腕をチキンウィンクに捉えた。
絶体絶命だ。
でも、俺はこんな時のためにとっておきを用意しておいた。
俺は空いている左足をおもむろに後方に蹴り上けた。 今の急所攻撃て、ブシドーは大打撃を受け
た。
クラッチか外れた。すかさす右足て関節蹴りを放ち、間合いを取った。
パープルパンサーをなめるなよ。 俺は全身のオーラを一気に解放した。
そのままブシドーとの間合いをつめると、フロントタイガードラゴンスープレックスを放った。
266
ブシドーは両目を剥いて気絶していた。
267
銀河の大王
あ、あのザ・グレート・ブシドーをノックアウト。や、やるな、二代目パンサーこドアルセーヌ・ポ
ルゴ。 でも、我か輩だって銀河の大王である。敗北は許されない。
今回、ソレイユ・シャノワールはクローブを着用せず、素手て勝負に挑んでいた。ネコ流カラテの奥
義、 爪や牙を使った攻撃も辞さないつもりだ。
一方、アルセーヌ・ポルゴは無心て虎視眈々と勝ち上かってきた。
会場総立ちの元、銀河帝国の国歌か斉唱される。
我か輩か大王になったのは、ネコ族をはじめとする少数民族の力を復権し、民族差別のない、明るい
世界を作るためたニャ。
なぜ、貧困や、飢餓、そして戦争かなくならないのか?そして、大王の両肩に、銀河帝国の国民の幸
福や平和が全てのしかかっていた。
国民の代表、そして軍事的な庇護者、それか、銀河の大王だ。
その強さ、とくと見せつけてやる。
ゴングが鳴る。
連戦でスタミナを消費しているポルゴは短期決戦を狙っていた。
ワンツーミドルから右のローを放つと、バックを取った。
そのまま、やや強引にタイガードラゴンスープレックスを放とうとした。
大王は、キャット空中回転て、今のスープレックスから無傷で立ち上かった。
上手く尻尾でバランスを取って、左右のローキックから、左の下段横蹴りを放った。
すかさす踏み込んで、今度は顔面を狙って、爪攻撃だ。
ポルゴはバックステップで躱したか、若干タメーシを受けた。
打撃は相手が若干上、投げも通じない。
そう判断したポルゴは、低空タックルから、関節技の攻防を仕掛けた。
大王か下から三角締めを狙った瞬間、ポルゴはサイトポジションを取った。
そのまま、大王の右腕を極め、左腕を抑え、最後にのと元を絞めにかかった。
プロフェッサー・ナガヤの必殺技、変形地獄絞めだ。
完全に決まったかに見えた瞬間、大王は尻尾を使い、ポインドを外した。そのままエビで逃けた。
今のはやばかったニャ。
でも、これて奥の手は出し切ったはじニャ。
大王の目つきか変わった。ハンターそのものだ。
遊びは、終わりニャ。
最速のステップて間合いをつめると、一気に爪てポルゴの顔面やボディを攻撃し、ダウンしたところ
で、 両手でポルゴを叩き伏せた。最後に牙て噛み付こうとした瞬間、タオルが投入された。
やや、残酷な勝ち方だが、四代目の銀河の大王ソレイユ・シャノワールのTKO勝ちた。
268
ブシドーの正体
何とか数週間の入院で、無事娑婆に出ることかできた。
それにしても、気にかかるのはあのザ・グレート・ブシドーの正体だ。
金星時代にミスター東郷と知り合ったと言うが、気やファイトスタイルは完全に暗黒そのものだ。
完璧主義者という一面も無視てきない。
ミスター・ポルゴ、そんなにオレの正体か気になるか?
オレはブラックホールズの同胞だ。しかし、奴らと違って殺しはやらない。
ただ強い奴と戦うことを唯一の楽しみにしている。
まぁ、それを悪行というなら、悪行だ。
この銀河は広い。またアナタの知らない人種や文明が存在する。
それを異界といって遠ざけるか、自ら体験するかは、アナタ次第だ。
前にも話したたろう。
アナタもミスター東郷も、人間的である。それが唯一の弱点だ。
人間が人間らしい。そのことを誇りに思って、生きていい。
オレの星では、人間か人間らしく、生きてゆくことができなかった。
そのために、オレは星を出て、強くなることだけを目指してきた。
しかし、人間に必要なのは、思いやりだ。
そう教えてくれたのか、ミスター東郷だ。
もっと自信を持っていい。自分の生き方に。
それが、ミスター東郷の兄弟子からの最後のメッセーシだ。
オレはまた、旅に出る。
もう会うことは、ないだろう。しかし、覚えておいてくれ。 この世界、生きている限り、そしてお互いにクリーンな生き方をしている限り、道はまた必す交わる
とな。
さらばだ。ミスター・ポルゴ。
こうして、ザ・グレート・ブシドーは、自分の道に戻っていった。
ある夏の夕暮れ刻のことだ。
269
テツオの休日
やっと訪れた休日、こういう日は一日中ビールても飲みなから、ネットヴィジョンてプロレス観戦に
限る。
そう思っていたのも、つかの間。
パパー。
テツオが、珍しくパパと呼んてくれた。普段はママーしか言わない。
どこか遊びにいこうよ。そう眼て語りかけるテツオ。もうすく3歳だ。もうちょっとでトレーニングパ
ンツも卒業だ。 そして、子供園。
オレは、妻のユメミを一瞥した。もう一杯だけ、ヒールが飲みたい。
パパ、たまにはテツオを公園にても連れて行って上けたら?
ああ、わかった。
オレはサッカーボールを掴むと、玄関に向かって歩き出した。
我先にと玄関に進むテツオ。
クック、履いてから。
オレはテツオに靴を履かせてやると、一緒に近所の公園に向かった。
テツオにボールを転かし、サッカーをしようと誘う、オレ。
テツオはます、遊具に飛びついた。
近くで、見守る、オレ。
テツオはなかなかアスレチックの遊具を怖かって、先に進もうとはしない。
テツオ!滑り台の側で息子を促す。
テツオはなかなか滑り台を滑ろうとしない。
後ろから近所の子供か、早く滑ってと促している。
それをのけようとするテツオ。 ダメっ、譲り合い、譲り合い。
やっと滑り台を降りたテツオ。
ホールを軽く蹴って、サッカーを勧めてみる。
しかし、テツオは砂場へ向かった。
テツオ、サッカーしない?
無言て砂をかふるテツオ。その後、近所の女の子たちと遊ひはじめた。
しかし、これじゃあ、将来子供園や小学校に入ってから苦労しそうだな。
ちょっと鍛えないと、運動神経か鈍いままだ。
しかし、振り返るに運動神経はオレもいい方じゃない。
むしろ、努力でカバーして、格闘センスを身につけたはすだ。
まあ、子供園に入る前から格闘技教えて、ケンカで相手を怪我させても困る。
大器晩成で行こう。
オレは、空か暗くなったのと同時に、そろそろ帰ろうとテツオに行った。
また帰りたくない、と意思表示するテツオ。
テツオー、もう暗いし、パパ、帰るぞ。
テツオは砂をかぶって遊んていたか、オレかちょっと離れると帰る気になったようだ。
テツオと一緒に公園から帰ると、オレたちは一緒にシャワーを浴ひた。泥だらけのテツオ。
こうして男は少しずつ成長していく。時には先に進めす立ち止まる時もある。
でも、ゆっくりとでも前に進んてゆけは、いいじゃないか。
270
再会
4代目の銀河の大王、ソレイユ・シャノワールは、政権奪取の際の功労者、プリンス・ネコマタにひさ
しぶりに会いにいった。 お久しふりですニャン。我か輩、何とかお蔭さまて、日々大王の任務をこなし
ているニャン。
そうか、よくわかっている。
ところで、お孫さんが御結婚されたそうで...
これは、つまらないものですが、お祝いの品ですニャン。
そうか、悪いな。孫の紀子も喜ふぶだろう。
お相手は、確かジパング系の若者と聞いていますニャン。
そうだ、東郷源九郎だ。
一瞬、シャノワールは顔をしかめた。
何か、問題でもあるか?
いえ、将来有望な野心家の若者ですミャン。
シャノワール、貴様、本当にそう思っているか?このワシは、ネコマタじゃそ。伊達に尻尾か3本に別
れるまて、長生きはしておらん。
では、申し上けますニャ。東郷源九郎、男としての器量は、まぁまぁ。しかし、ハートか伴いません。
人間的な優しさに欠ける男と思えますニャン。
オレもそう思う。しかし、孫にさえ優しくできれは、それでも、いい。いや、孫さえ愛していれは、
そして生まれてくる家族だけを。
それは、エゴですニャン。東郷のようにこれからの世界を背負って立つ人間には、博愛の心を持って
ほしいと考えます。
シャノワール、貴様、最近思うところがあったな?
ハイ、地球圏ては未だに政治が未発達て、多くの者が貧困や飢餓に苦しみ、疫病の危機にさらされてい
ると聞きますニャン。そして、またSRKの件のように、紛争すらなくならない。そして、地域によって
は、 独裁者すら存在すると。
地球圏は確かに問題の坩堝だ。しかし、貴様が介入すべきとも思えん。 人間は人間として生まれた以上、人間らしく生きてほしい。それを保障するのは、我々、大人の役目
ですニャン。地球圏には、人権がまだ未熟である。一銀河帝国市民として、そういう結論に達しまし
た。
介入をするのか?この銀河帝国か、一辺境惑星国家ごときに? いや、それはまだ、我慢しますニャ。地球圏にはあのアルセーヌ・ポルゴのように見所のある男がいる
ように思えますニャ。ライアン・ヤマモトもなかなか将来性のある若者ですニャン。
確かに、地球圏、そしてジパングは人財の宝庫たな。案外、政治的に混沌にさらされている国々の方
か、 優秀な人財を輩出するのかもしれん。
人間は多様性だけではなく、それを受け入れる器量、優しさか必要ですニャン。
成長したな、シャノワール。父上にもよろしく伝えてくれ。
こうしてシャノワールとネコマタの再会は、平穏無事に終った。ソレイユ・シャノワールかこれから
も 4代目の銀河の大王を継続することに、ネコマタは強い信頼感を寄せていた。シャノワールにあって、
東 郷源九郎にないもの。それは、誰の眼にも明らかてあった。
確かにどのような人間ても、他者に対して愛情をいだくことは、ありうることだ。しかし、それを博
愛の精神にまで昇華させたものか、はしめてその力を行使することができる。それが、銀河の大王の精
神の本質だ。
これからもシャノワールは、銀河の大王として、銀河帝国の市民のために生きることを誓った。
ある夕暮れ時のことてあった。
271
リアル・ファイト
最強は一人で、いい。
こうリアル・パンサーからの挑戦状には書いてあった。パープルパンサーの二番煎しとしての生み出
された存在。そのことに疑問を持った。そしてパンサーを名乗るのは、仮面の存在ではなく、本物たけ
であるのみたと。とちらが最強のパンサーか決めヨージゃないか?
て、後楽園ホールのリングに立っている、両者。
一方は仮面を冠り、紫のオーラをびんびんにさらしている。一方は、獣身で、無とも言うべき巨大なオー
ラを弾じけだしている。
セコンドは、赤コーナーはポルゴ・ジュニアとユメミ夫人だ。青コーナーはホシノ博士だ。
ゴングが鳴った。ルールはユニバーサル・レスリングルールだ。
俺は、ワンツーからの左ミドルを放った。リアル・パンサーは右足を上けて、右手を使いブロックし
た。
空いたボディに右を入れる。リアル・パンサーは掌底で反撃してきた。
コーナーまて詰められた。苦し紛れにボディタックルに行った。
リアル・パンサーはフロントチョークで応戦した。
後ろはコーナー、前はチョーク地獄。まさに背水の陣だ。
俺は上手く身体をずらして、サイトにまわり、バックを取った。
すかさす、ハーフネルソン&チキンウィングに捉える。
タイガードラゴンスープレックス・ホールドに行った。
リアル・パンサーは両腕を決められたまま、マットに突き刺さった。
ユニバーサルルールのため、ノックアウトかギブアップのみで、フォールはない。
スープレックスポインドか一点入るだけだ。
クラッチを解くと、俺は一旦立ち上かり、様子を見た。
カウントファイブで立ち上がるリアル・パンサー。
リアル・パンサーの目つきか変わった。完全に金星ヒョウと同し、敵を狩る目つきだ。
俺は、すかさず下段のシャッセて牽制すると、右のコークスクリュー、左のソバットを放った。
リアル・パンサーはカウンターの左のレッグラリアートで応戦する。渋い技だ。
すかさず、俺は大振りの左フックてこめかみを捉えた。今度は右のアッパーた。
一瞬、リアル・パンサーか怯んだ隙を、俺は見逃さなかった。
閂気味にフロントからクラッチすると、一気に後方にブリッジして、俺は反り返った。
フロント・タイガー・ドラゴンスープレックホールドか決まった。
俺はクラッチを外すと、なおも立ち上かろうとするリアル・パンサーに右のハイキックを放った。
全てが終った。ご苦労様。パープルパンサーのマスクに俺は心の奥で話し掛けた。
控え室で、マスクを脱くと、俺は一人のジパング人に戻った。
仮面という道具は便利た。いつても脱き捨てることて、元のペルソナに戻ることかできる。
脱けないマスクを持ったリアル・パンサー。それは、あわれな存在かもしれなかった。
でも、もう後戻りはできない。その決意は、会場のファン達にも伝わったようだ。
―ワタシにとって、パンサーはあなた一人よ。あなたに出会えて良かった。
そう話し掛けるホシノ博士であった。
― パパとパープルパンサーって、とっちか強いの? 無邪気に聞いてきたテツオ。
―たぶん、パンサーしゃね? たとえ、枕詞かリアルてもパープルても、パンサーが最強の存在である
ことに誰も異論はなかった。
―面白くねーな。最強は、ここにいるだろ?
そうネットヴィションを見なからつぶやいた男がいた。
もちろん、東郷源九郎である。
272
東郷源九郎、アルセーヌ・ポルゴ、4代目の銀河の大王。まだ見ぬ強豪を含めて、これから本当のバト
ルが始まる。
リアル・ファイトはこれからだ。
273
もう一人のポルゴ
こんにちは、マリアおばちゃん。
こらっ、女子大生にむかって、おばちゃんはないたろっ、テツオ。
久しふりにゼミの合間を抜けて、ポルゴ一家を訪ねたマリア・ハロルド。
ユメミさん、ちょっとテツオ君借りてもいいですか?ポルゴさんも良かったら、一緒に来てもらえま
すか。
一瞬、何かやばそうなことか起ったと理解したテツオだ。
マリアお姉さん、どこにいくの?
ちゃんとお姉さんと呼べるんじゃないの?今から大学の体育館に特別に案内してあげる。
最低でも柔術の基礎と、打撃の基礎を教えないと。それにはます英才教育だというのかマリア・ハロ
ルドの持論だ。
内心、テツオは自分の格闘センスに自信を持っていた。パパといつも練習している。それにあのパパ
でもできるんだから、余裕だもんね。
30分後、ジパング大学の体育館に着いた。そこには、永谷教授とのスパーを終えたライアン・ヤマモ
トが待っていた。
ジュニア・スクールに通い始めたばかりた。いきなりライアンは誰が見てもきつい相手だ。
好きな防具を着けていいわ。
じゃあ、ボクはいつものオープンフィンガーと、そうだな、いつものキックトランクスで。マウスピー
スとヘッドギアはいらないよ。ヤマモトさん、ボクまた手加減できないけど、いいかな。ルールとかは、
ユニバーサルでいいよ。
手加減?いや、それはこちらの台詞だろと言いたいヤマモトてあった。 もう一人のポルゴかそこに立っ
ていた。
サリュ、アレ。 礼をして構える2人。テツオ、いやポルゴ・ジュニアはサウスポーに構えると、いき
なり右のジャブを放った。ライアンかカウンターの大振りの左フックを放った瞬間、ポルゴ・ジュニア
はまるで猿の子供が木に絡み付くように、抱きつき逆十字で、あのライアンから一本を奪った。
先輩、手加減しなくていいですよ。
じゃあ、もう一本だけ、お願いしようか。
サリュ、アレ。
構える2人。今度はライアンは右ミドルを放った。軌道はミドルだが、テツオにはハイの軌道だっ
た。
ふーん。今のはちょっとマジになりそうだった。な。
ジュニアの目つきか変わった。右膝にむかって関節蹴りを放つジュニア。
ライアンか同し蹴りを放って反撃した瞬間、一気にスライティンクして抱きつき膝十字て一本を取るジュ
ニア。
テツオ、もうその辺にしておけ!
ポルがか言った。
先輩、もしかして、悪いものでも食べましたか?
いや、これか本当のアルセーヌ・ポルゴ・ジュニアの実力だ。コマントサンボのような戦い方を身につ
けている。
いや、俺、最近サンボにハマっていてね。息子もその影響を受けたようたね。
本当はテツオは、自分の知っている百を越える技から、相手のファイトスタイルに合わせて引き出しを
出すことを覚えていた。ライアンのような相手であれは、打撃をカウンターて関節で切り返すしか、勝
機はないと読んていた。
テツオ君、これから、大学のカフェでお茶しない。 ありがとう、マリア、おば、じゃなかったおねー
ちゃん。
274
こうして、もう一人のポルゴは、すべからくキングオヴギャラクシーの初戦に向けて、経験を積んで
いた。
ある冬の昼下がりのことであった。 275
あれから...
数年後、ついにテビューしたもう一人のアルセーヌ・ポルゴこと、テツオだ。
対戦相手は、西郷詩郎だ。
あまりの強敵ぶりに会場が沸く。
いいのか、テツオ。命がけだぞ。
わかってるって、親父。
それでは、キングオヴギャラクシーオープントーナメント特別試合、アルセーヌ・ポルゴ・ジュニア VS
西郷詩郎の試合を開始します。
セコンドアウト。
ゴングが鳴った。
またポルゴ・ジュニアはジュニア・スクールた。
西郷は柔道着姿だ。黒帯が威圧感を放っている。
テツオは、キックトランクスた。
テツオは下段の左シャッセで牽制すると、ジャブを放った。
西郷はすり足て、ますシャッセをかわすと、ジャブも微妙な軌道を読んてかわした。
若造、山嵐を出すまでもない。
テツオの強烈な右ミドルか西郷の身体を捉える。軌道は完全にハイだか、身長差かあり、ハイはミドル
になってしまう。
西郷相手には打撃で勝負するしかない。しかし、問題は身長差だ。
西郷か掴み掛かろうとした瞬間、テツオは前方に飛ひ上かった。
西郷の顎を、頭突きか捉えた。
なおも掴み掛かる、西郷。
一か八か、ここは山嵐で勝負に出る!
西郷は一気に身体を沈めると、一本背負いの体勢に入って、そのまま容赦なく右足で相手の右足首を
刈り払った。
テツオは今の山嵐を空中で一回転して着地した。
キャット空中回転、今の銀河の大王やプリンス・ネコマタの得意技だ。
西郷のオジさん、ボクには山嵐は通用しないよ。そろそろ本気を出させてもらうよ。
全身のオーラが燃えたきる。そして拳が輝いた。
拳に全身のオーラを込めると、いったん腰に拳を引いて、正拳突きの要領で、全身のオーラを爆発さ
せた。
発頸だ。
すかさず、全身のオーラを今度は頭部に集中して、西郷の顎を射貫いた。
ダウンした西郷の頭部をオーラを込めた掌て、叩き付けようとするテツオ。
テツオー、もうその辺にしておけ。
ゴングが鳴る。
アルセーヌ・ポルゴ・ジュニアの完全ノックアウトによる勝利だ。
少年、いや完全に子供のポルゴ・ジュニアに、会場は呆気にとられる。
仕方ないな、とても言いたげな、テツオ。
わかってるよね、東郷さん、それに今の銀河の大王。今、すくに勝負しろとは言わない。でも、やらざ
るをえないよね。いつでもいいよ、ボクは待ってるから。
何なら、次でもいいよ。
マリアおば、じゃなかったお姉さん、約束通り勝ったよ。パフェかアイス、こ馳走してくれる?
いいよ。約束だからね。
こうして、アルセーヌ・ポルゴの伝説は息子へと引き継かれた。
伝説のタッグチーム、ファイヤーブラザーズか結成されたのは、あれから半年後のことた。
276
伝説のタッグチーム
あのアルセーヌ・ポルゴとザ・グレート・ポルゴの夢のタッグチーム、ファイヤーブラザーズについ
て語ろう。
二代目アルセーヌ・ポルゴと初代アルセーヌ・ポルゴ(ザ・グレート・ポルゴ)の夢のタッグチームは
東郷源九郎&西郷詩郎チーム、マリア・ハロルド&ライアン・ヤマモトチーム、銀河帝国チームなドア
らゆるタッグチームを連破し、破竹の20連勝を挙でていた。
そして、今日もまたファイヤーブラザーズとジョー・ヨージ12世&ジュン・バードのゴールデンシュー
ターズとの試合か開催された。
赤コーナーよりファイヤーブラザーズの入場です。本日のメインイベント、ファイヤーブラザーズ対ゴー
ルデンシューターズの試合を始めます!!
会場のボルテージが限界まで高まった。
ジュンと二代目ポルゴかリングインする。
ジュンは全身のオーラを第八段階まて高めて爆発させた。
そのままファーストコンタクトだ。
ジュンはメキシコ流カラテ仕込みのローキックた。
二代目はバックステップて躱すと、右の脚払いを放った。
いまの脚払いをジュンは躱すと、そのままカガード落としに切り返した。
フロントステップてカガード落としを躱すと、得意の頭突きてジュンの顎を射貫く二代目。
迷わすノータッチてリングインするヨージ。ストンピンクて二代目を蹴りつけると、すかさすコーナー
初代にトロップキックを当てるヨージ。
ワタシは、初代と勝負かしたいです。パープルパンサーの正体と決着を着けたい。そして、ワタシか U
スタイル最強と証明してみせマース。
会場の誰もか呆気にとられる。会場の観客はまた、パンサーの正体、秘密について気付いていなかっ
た。 ジュニア、タッチた。 初代かリングインする。
一方の相手はジョー・ヨージ。 右ミドルから入る初代。すかさす左のソバットた。 ヨージは、今のソ
バットをフラインクニールキックて合わせた。 初代かすかさす右のハイを放つと、キャッチしたヨー
ジはキャプチュートて反撃た。 そのままチキンウィングで優位に立つヨージ。
これでもボクは蛇の穴の会長です。
すかさすノータッチて二代目かストンピンクた。
コーナーのジュンにもストンピンクをして跳ね退けると、トップロープに昇る二代目。そのままムーン
サルトフットスタンプをヨージに浴ひせる。ダウンしたヨージを肩車に捉える初代。
コーナーから再ひ二代目か飛ひ立った。今度はムーンサルトからの飛ひつきフランケンシュタイナー
た。
ファイヤーフランケンシュタイナーホールド、勝者ファイヤーブラザーズ。
迷わす、試合終了のゴングか鳴る同時にと乱入する2人の男達。
プロフェッサー・ナガヤとエリック・ニシサキのチーム、ザ・グレート・ジーニアスだ。
誰かファイヤーブラザーズを止めるか、今の時点ては白紙だった。もちろん、ザ・グレート・ジーニア
スにもそのチャンスはある。
これだから、キングオヴギャラクシーは、タッグ総合格闘技は、やめられない。
愛と友情、全てがつまった勝負か繰り広けられることたろう。
親子愛、師弟愛、そして友情。クリーンファイトは、終らない。
277
最後の意地
しかし、あのアルセーヌ・ポルゴも親子てプロレスラーまがいの行為をしている。
そう思ったのは、かつて銀河最強を謳われたあの男、三代目の銀河の大王であった。
三代目の大王は、さっそく西郷師範に連絡を取ると、最後の戦いの準備を依頼した。
そうですね、準備期間は半年、あのポルゴ親子のジョービジネスにもそろそろ飽きてきたところです。
私 は最近ジパングの古武術の研究にこっています。大王と組めは、もしかしたら、あのポルゴ親子を倒
し、正しい道に目覚めされることかできるかもしれない。共闘しましょう。
三代目の大王は、ジパングで西郷師範と共に剣術の修行をしていた。本来、総合格闘技のキングオヴ
ギャラクシーのルールでは武器は例外を除いて使用てきない。オーラを具現化して攻撃する気を除けは
た。そ こて大王と西郷詩郎か考えたのか、気を具現化して剣のように扱い攻撃する術た。もちろん、西
郷は柔の 道に生きている。全身の装甲か重く、まるて戦国時代の武将のようなワニ面の男、三代目の大
王に、剣術の 奥義を授けると、何のためらいもなく、西郷はこう誓った。
私は、素手て戦います。気にも頼りません。大王もポルゴと決着を着ける時以外は、我々の剣術の成
果を使わないて頂きたい。
もともと古武術は剣術と柔術から構成されていた。たた、素手の強さを目指して柔術の修行を行うに
しても、動きや術理なと、剣術の修行も必要不可欠てあった。
その両輪を極めた2人か、ジョーヒシネスの使い手と化したポルゴ親子に挑戦状を叩き付けた。
あれから、半年後。アルセーヌ・ポルゴ親子と西郷、大王組の試合か組まれた。ワンマッチのユニバー
サル・ルールだ。
もともと総合格闘技の世界にタックマッチがあること自体、おかしいと言えはおかしかった。しかし、
真剣勝負の総合格闘技のタッグマッチ、それがキングオヴギャラクシーの本質だ。
会場総立ちのもと、ムーンアリーナという曰く付きの会場て、銀河帝国の国歌か斉唱される。西郷は
柔 道着に黒帯、袴、銀河の大王は黒の軍服て入場する。一方、ポルゴ親子はキックトランクスたけた。
相手に掴まれてもいいよう、全身にオイルをぬっている。
セコンドには、ポルゴ親子はライアン、銀河帝国チームはなし、という異例の構成だ。そして特別立
会人として四代目の大王か座っていた。
ゴングが鳴る。
ます、リングインしたのは西郷詩郎とポルゴ・ジュニアだ。
ジュニアはステップからジャブ、ストレート、そして頭突きを放つ。
バックステップて躱す西郷。すかさす右の足払いて牽制する。
西郷の得意技、山嵐は背の低い人間か、背の高い人間を担く技であった。
西郷は、恐ろしい作戦を取った。
わさと、ゆっくりワンツーを打った。
二打目のストレートをゆっくり打つと、ジュニアかカウンターて右の手首を極めて、そのまま一本背負
いの体勢に入った。右足て右足を刈り払った。
掟破りの一本背負い崩れの山嵐だ。
西郷はわさとキリキリまて山嵐を受けると、カウンターのバックドロップを放った。
豪快に同体となって、両者は頭からマットに突き刺さった。
相手か小柄て、オイルをぬってませないという作戦を取っている以上、キリキリまて接近してバックド
ロップを放つ必要かあった。
ポルこと大王かリングインする。 大王は一気に第八段階まて気を具現化していた。第八段階の気は可
視てきない。 ポルゴはアップライトに構えていた。ワンツーからサイドキック(シャッセ)て攻めるポル
ゴ。
ワシはこの刻、この勝負を待っていた。はしめて拳を交えたときは、また気の奥深さにも気付いてい
な かった。そして、たた強けれはいいと思っていた。 昔は大王だった。今はネコ族に政権交替され、
たたの元大王。すへての雪辱を果たすときか、来た。
278
大王は無我夢中てパンチを放っていた。ジャブ、ストレート、フック。一見、無手勝流に見えて、全
て練習した型通りの動きだ。
ポルゴはカウンターのローリングソバットを放った。大王は裏拳で応戦した。
背後を見せた瞬間、ポルゴは龍虎 SH の体勢に入った。大王はクラッチに行く、一瞬の隙を見逃さなかっ
た。右の肘に全身のオーラを込めると、肘打と共に全身のオーラを爆発させた。
発頸だ。
ポルゴか戸惑った瞬間、大王は全身のオーラを具現化して、斜めにバサリとポルゴを袈裟切りした。
秘奥義、壱之太刀!
あまりにあっけない幕切れだった。
大王はマイクを取るとこう宣言した。
ワシは一銀河市民として訴える。皆かこのようなジョーヒシネスに浮かれている一方て、この世界か
ら 悪政、貧困、食糧不足は消えることかない。もう一度見つめてほしい、現実を。そして、もう一度、
ワシ、 いや私(わたくし)に力を貸していたたきたい。この銀河は最初から一つだったはずじゃ。そして、
もう一度だけワシにチャンスを与えていたたきたい。
リング正面であっけに取られるシャノワールこと四代目の大王。
...ただ強いだけではない。為政者には優しさや、人の弱さを理解することも大切だ。そして、銀河帝国
の法と市民の守護者として、議長の権限を、もう一度たけ、ワシに戻してほしい。もちろん、正当な手
段て、 私も一市民として議長選挙に立候補する!そしてもう一度たけ、銀河帝国に繁栄と平和を復活させ
たいのじゃ、このワシの手で。
たたシャノワールはこう答えるしかなかった。
... 我か輩もネコ族てある。正当な選挙のもとてもう一度戦い、銀河市民に信を問おう。しかし、次の選
挙 の争点では、銀河法典の改正を含めさせていたたく。
銀河法典、それは銀河帝国のルールを決定する最高法規であった。惑星間戦争と調停のルールまてを
含んだ、いわば銀河の惑星間法、国際ルールと憲法をミックスしたものだ。
今まて銀河帝国は民主帝国主義を取っていた。そして帝国議会の代表は議長が務めていた。議長は、大
王と呼ばれ、政治的な代表権と軍事的な統括権を独占していた。
現役の大王自らが、銀河法典の改正を口に出した瞬間だ。
この銀河にはモンキー族たけてはなく、龍族、ネコ族、トビウオ族なと、様々な進化の過程を経た人類
が生息していた。 その全ての命運を賭けて、5代目の銀河の大王の座か争われることになった。銀河の歴史を決める投
票日まで、あと半年てある。
279
鳴猫拳の真実!
ソレイユ・シャノワールこと4代目の銀河の大王は公務を副首相に委任すると、師、プリンス・ネコマタ
に謁見していた。
「御主、何か考えかあって来たな?まあ、ワシはネコマタだ。伊達に尻尾か四本に分かれるまて生きて
おらんて。だいたい、御主の考えていることはわかる?」
「さすかネコマタの君ですニャ。実は鳴猫拳(ニャンケン)の真実を教えて頂きたくて、こ挨拶に伺いまし
たニャ。」
「鳴猫拳(ニャンケン)か。あれは我々ネコ族にとって、最大の禁し手。地球圏にいる我か親愛なる同
士、 ネコ様の動き、ファイトスタイルを模した最強の拳法だ。ネコ様は、一般には地球圏ては人間のペッ
トのように過ごしているが、地球圏て唯一人間に食われることもなく、たた覇権を握っている伝説の生
物だ。イヌは場合によっては、人間にウナギのように食べられてしまうこともある。たた、ネコ様は三
味線の犠牲になることを除けば、人間のエサにされることはない。実は地球圏で覇権を握っているのは,
モンキー族ではなくネコ様であるという説まであるのだ。ネコ様は集団戦争をしないという点ても優れ
ている。ネコ様がハンティンクをなさる時の、パンチの動き、頭を掻く時の柔軟な動き、ダッシュ、か
み付き、ツメの動き。しかし、鳴猫拳(ニャンケン)に頼らなくても、今の御主であれば、充分戦えるの
では?」
「私も以前はそう思ってましたニャ。しかし、ポルゴを斬った先代の大王の動きを見て、考えを改めま
した。
奥の手を出さないと、勝てないと。もしや西郷師範には、我々銀河帝国にはない格闘技の奥義を究めて
いるのではないか?同し地球圏、そしてジパングの格闘家に伝わる奥義を切り返すには、あの地球に多
数生息していらっしゃるというネコ様の技を模すしかないかと。」
「よろしい。鳴猫拳(ニャンケン)をマスターするには、ネコ様になりきるしかない?キャットパンチの極
意はわかるか?」
「若干、ネコ手に拳を構えて、ニャンと一発。いや二発。」
「キャットパンチの極意はナ、相手の脳を揺らす程度に軽く放つことた。カラテとは違う。発頸に近
い。」
「キャットキックはできるたろうな?」
「尻尾と軸足てバランスを取って、自分の顔を蹴るかのような軌道てハイキックですニャ。」
「キャットダッシュはいいか。相手の急所を狙って、一目散にタッシュしてタックルだ。」
「かみ付きとツメ攻撃は、反則を取られる可能性もある。最後の手段た。相手の急所めかけてガブリ
だ。」
「いわゆる、遊ひは終わりニャ。ですね。ツメて相手を数発攻撃して、トドメにガブリと。」
「済みませんニャ。ニャン拳の他にもお願いしたいことかありますニャ。」
「タックパートナーの件か。ワシはもう老人た。源九郎君では、ダメか。」
「タメてはないですニャ。たた、できれは銀河帝国の生粋の人間に。」
「東郷源九郎は確かにジパング人の血を引いているか、出身は我か銀河帝国だ。」
「わかりましたニャ。他にも気になることか。」
「潜在的なライバルかまだいると?レッド大佐のことか。奴は火星帝国のドロップアウト出身て、今銀
河帝国を荒し回っている凄腕の軍人だ。」
「いや、他にも。何か、銀河帝国に関わる中枢から、本源的なオーラを感しますニャ。それも強烈
な。」
「わかっておる。しかし、源九郎と組めは、敵などいない、だろう。」
「そうあって欲しいですニャ。」
「あとは何か?御主、銀河法典の改正を提案したヨージゃな?」
「恒久平和のための戦争の放棄。市民平等。民主帝国主義から、市民主権惑星主義への移行を提案する
予定ですニャ。」
280
「確かに我か銀河帝国は、戦争の存在や、カーストの存在をひた隠しにして、大王か強大な権限を握っ
て、統治しているという欠点かある。しかし、どこの社会でも戦争や不平等はなくならないものではな
いか? 貴君、この世界の歴史を知っているか?」
「確かに戦争や不平等、貧困や飢餓、悪政はいつ、との時代てもなくなりません。しかし、それを減ら
したり、制度的に制約することは可能かと思います。それをやるために、私は大王になりました。」
「若いな。しかし、ワシは御主の実力とその信念を買っている。好きにしたまえ。」
「ありがとうごさいますニャ。」 こうしてソレイユ・シャノワールは鳴猫拳の奥義を伝授された。
281
登場!レッド大佐。
火星移民から初期にドロップアウトした一族の子孫、今は銀河帝国て軍人をやっているレッド大佐は、
部下から銀河帝国の内乱を鎮圧したという報告を受けるとこう呟いた。
「上か無能たと、戦争は終らんよ。この世界、一つ覇権を賭けて勝負してみるか?」
火星人のクォーターてあるレッド大佐は、地球人類か宇宙に出て行ってから持ち始めた第六感を強く持っ
ていた。かつて月世界の法王は、人の心を読み、操ることまてできた。レッド大佐は、何となく人の意
識の集合としての未来像か、読めるのであった。これまて、微妙な第六感に頼ることで、相手の戦術を
予測して、最小限の犠牲て戦争に勝利して来た。しかし、レッド大佐に言わせれは、社会の秩序を維持
するために 犠牲か必要という考えか問題て、自分は社会を守るために存在していた。 レッド大佐の指
揮下の舞台は、征服てはなく、防衛を旨としていた。
しかしいずれにせよ、現大王と先代の大王か選挙という名を借りて、覇権を争っているようては、安
定した統治は望めなかった。
最近、また惑星狩りをしている銀河異生物かいるとの情報も入っていた。
銀河異生物、それは GEM と呼はれていた。Z 型 DNA 構造という、地球圏や銀河帝国の生物種の螺旋
状 DNA とは別構造の DNA を持って、他の生物種に遺伝子レベルて寄生する恐ろしい生物た。GEM
に感 染するトーゴーアと呼はれる親玉の異生物のコントロール化におかれ、惑星レベルて新しい種を生
み出し、惑 星を支配してしまう。進化を加速し、惑星の生態系を変え、最終的に全ての既存生物種を滅
ほしてしまう。
もちろんそれて新しい生物種か生まれるのなら、銀河帝国としては歓迎すへきかもしれなかったか、Z
型 DNA 構造の種は、排他的に他の生物種に寄生して、増殖していく、カン細胞とウィルスの混合体の
ような 存在てあった。さらに、GEM はコアが意思を持っているという点でも恐ろしい種てあった。
従来の銀河生物種は、広かっていくという銀河世界の中て、若干抗うといった程度の存在に過きなかっ
た。だか、GEM は惑星レベルて種を広け、自分たちの「系」としての意思を持って、進化を加速してい
た。
いつか銀河帝国全てか、GEM に飲まれ、全く違う生物種の支配する世界になりかねなかった。
「ワタシにできることは、早く銀河帝国を再統一して、GEM を滅ほすか、隔離することだけた。」
「レッド大佐、次回の大王を決める、キングオヴギャラクシータックトーナメントの予定か発表されま
した。」
「そうか、ワタシも参加しよう。火星圏、そして銀河帝国、どちらもまだ終らんよ。」
282
太陽の黒猫
ソレイユ・シャノワール。現在の銀河帝国議会議長の名前は、太陽の黒猫という意味てある。先代の
議長が生まれなからにその地位を約束された男であり、名前はギャラクティカ・マグナ、つまりそのま
ま銀河 の大王であった。先代の議長は、自らその地位を引き換えに、息子のギャラクティカ・ジュニア
に政権を譲 り、院政をしことした。その時、民主帝国主義を取る銀河帝国とその憲法にあたる銀河法典
に異議を唱 え、銀河法典の改正を唱えたのかソレイユ・シャノワールてあった。 いつになってもこの世
界から貧困や戦争はなくならす、社会は本当の意味ては成長しない。とんなに文 明や科学か発達しても、
人類という種自体は、そう簡単に根本的に進化したりはしない。もちろんこの世 界はホモ・サピエンス
たけてはなく、龍族やネコ族なと、多くの人類種を抱えていた。地球人類か宇宙に進出してわかったこ
とは、同じレベル、いやそれ以上の科学力を持った人間は、地球人の他にもいくらても存 在しているこ
とた。しかし、その文明の坩堝である銀河帝国ですら、貧困や疫病、戦争といった問題を解消できずに
いた。
銀河帝国の最大の利点、それは発達した科学力ではなく、長年培ってきた統治システムであった。し
か し、それも時代遅れとなりつつある。銀河法典の最大の守護者としての龍族、銀河帝国議会議長に
NO を 突きつけたのかシャノワール、その人であった。
あとの歴史家は、こう言うだろう。太陽の黒猫の改革と。
あまりに先代の大王は権力や軍事的パフォーマンスに力を入れすぎた。
その代表が、銀河最強を決める格闘大会キングオヴギャラクシーの開催だ。
純粋に戦闘力ナンバーワンが、銀河ナンバーワンである。そのような短絡的思考か、銀河帝国を誤っ
た方向に導いてきた。
弱い立場の人間もいる。いくらそこから抜け出そうと思っても、抜け出せない弱者かいる。 そこに
手を差し伸へられるのは、少数民族ネコ族出身のシャノワールたけてあった。
とんなに文明か発達しても、新しい兵器、情報兵器や情報戦争かはしまるたけた。ても、人間はたた悲
観的に生きているわけではない。たとえとんな危機や困難か来ようとも、協力して乗り越えることかで
きる。
そして、いつかは、人類も進化するたろう。その新しい人類は、もはや人類と言える存在てはないの
かもしれない。
しかし、神てもなく、獣てもなく、その中間でまるで煉獄にいるかのように抗う種。それか人類でも
いいのではないか?
後戻りはできない。第五代、銀河帝国議会議長の選挙はあと数ヶ月後であった。
283
最終決戦!
第五代銀河の大王選挙を兼ねたキングオヴギャラクシータックトーナメントの概要が発表された。
龍族チーム ギャラクティカ・マグナ(三代目の大王) ギャラクティカ・ジュニア(もと皇太子、今の首相)
ネコ族チーム ソレイユ・シャノワール(四代目の大王) 東郷源九郎
ポルゴチーム アルセーヌ・ポルゴ 西郷詩郎
レッド大佐チーム レッド大佐 リアル・パンサー
ジパングチーム ライアン・ヤマモト マリア・ハロルド
チームダブルエックス G グレートアジア
総合野郎 B チーム ジョー・ヨージ ジュン・バード
グレート・ブシドーチーム ザ・グレート・ブシドー プロフェッサー・ナガヤ
このトーナメントての勝者と銀河帝国市民の投票による代表チームのリーダー同士が最終決戦を行い、
第五代目の銀河の大王か決まる。
ナンバーワンはただ一人で、いい。
284
チームダブルエックス
あいつら、確かにタイムマシンを渡して、この時代から飛はしたはすなのに...
銀河帝国の混乱期に猛烈な勢力て惑星狩りをやっているチームダブルエックス。手当たり次第、惑星
の支 配権を賭けた闘いを銀河帝国の地方惑星の元首に持ちかけては、勝利して、惑星を支配下に置いて
いた。
もちろん、そんなことか可能なのは、銀河の掃除人、最強の強化人間こと G (ジー・ダッシュ)とリング
女王ことグレートアジア 13 世のチームダブルエックスだ。
確かに彼らはマリア・ハロルドから量子時空移動船を受け取っていた。しかし、フル充填したエネル
ギーでタイムトリップを未来に向けて行ったところ、時間軸方向てはなく、銀河の辺境方向に飛ばされ
てしまった。
いつか地球圏に戻る燃料費を稼くために、惑星狩りを行っていたトーゴーろ、またもキングオヴギャ
ラクシーか開かれることを知った G'はこう言った。
俺が一番嫌いなのは、キングオヴギャラクシーだ。その歴史、今回限りにして見せる。
G はマリア・ハロルドの先祖である G・ハロルドのクローンに初代の銀河の大王の龍族の遺伝子を注
入された強化人間だ。おそらく血統レベルで言えば、最強に属する。
そして、同しく血統レベルで言えば、グレートアジア一族の遺伝子を直系て引き継いている13世がパー
トナーだ。
このチームに死角はない。
断言できる。
惑星狩りの経験で、グレートアジアは完全にショーレスリングからユニバーサルレスリングの使い手
に変貌していた。
G は惑星狩りの激闘で、気を完全にコントロールできるように成長した。
マリア・ハロルドかライアン・ヤマモトと組んてギャラクシーに参加すると聞いた G はこう答えた。
あのアマ、生意気だ。ゴミとクズは銀河からスィープするに限る!
圧倒的な自信を見せるチームダブルエックスだ。
285
総合野郎 B チーム
しかし、生きていくことは大変だ。
そう思ったのは、今は蛇の穴の経営者、ジョー・ヨージだ。
ジョー・ヨージは、ユニバーサルレスリング、総合格闘技のジムを経営していた。
確かに火星帝国の野望に振り回されたり、パープルパンサーに敗北したり、ヨージの人生には苦労か
付きものだ。
ても、今は信頼てきる友人を激闘の末、手に入れていた。
ジュン・バードだ。 次のギャラクシーに、ジムの経営基盤を強化し、総合格闘技の振興にも一役買い
たいと思ったヨージ。
ジュンさんの名前の頭文字を取って、総合野郎 B チームはどうですか?
私は、A チームのつもりてエントリーしようと思っていました。
それは、ジュンさんはメキシコ流カラテの継承者て、どこから見ても A クラス。いや S クラスです。
ても、ワタシのように、レスラーとしては B クラス、シューターとしても B クラス、でも総合格闘家と
しては、一流を目指す人間もいます。つまり、基本的な素養か B クラスであっても、経験と打・投・極
か 上手く廻れは、一流の総合格闘家と渡り合える。そんな努力の可能性から、ワタシは、総合野郎 B
チーム をジュンさんと結成したいです。
いずれ B チームには、地球圏の若手格闘家をスカウトしたいと思います。各種競技て B クラスの実
力でも、鍛え上けて、一流の総合格闘家に仕上ける。それか蛇の穴のポリシーです。 特別コーチに、ト
シアキ・フジワラさんをお迎えしています。
実力的には、いふし銀のチームた。ねちっこいレスリングベースのヨージと華のあるストライカー、ジュ
ンのチーム。
総合野郎 B チームは、経験と打・投・極の流れを上手く利用した有力チームた。
286
グレートブシドーチーム
永谷教授、ハシメマシテ、ワタクシ、ザ・グレート・ブシドーと申します。 いきなりジパング大学大
学院の研究室に、とひきりの大男か訪問した。
あ。あなたは、あの東郷師範の友人、ザ・グレート・ブシドーさんですね。
話がハヤイ。ワタクシが見込んたたけのことはある。アナタはサバットとブラジリアン柔術を極めて
いて、 しかもジパング大学の教授だ。ワタシのパートナーになって頂きたい。
ワタシのような、貧相な研究者てもいいのですか?
何をおっしゃる?東郷師範も生態学の研究者だ。そして、あなたは今の東郷源九郎にはない、大切な
ものを持っている。
それは何?
ハートだ。植物学者、そして武道を究めたあなたたけか持っている優しい心だ。
人間、どんなに修羅場を潜り、経験を積んでも、そして武道を極めても、優しい心がなけれは、人を
正しい方向に導くことはできない。
確かに、アナタはパワー不足かもしれない。
ても、パワーと体重、体格はオレか提供する。真に人の上に立つ、いや人を正しい方向に導くのは、永
谷教 授、アナタのような人間た。オレは、確かに闇側の人間かもしれない。ても、正しい心、光を持っ
た人間を 見分けることはできる。今回のキングオヴギャラクシーで一緒に時代を正しい方向に導いてほ
しい。
確かに今まてのギャラクシーの参戦者の中て、プロフェッサー・ナガヤほと、正しい心や優しさと強
さを持った人間はいなかった。
東郷源九郎は手段を選はない人間だ。G は非道でクールだ。ポルゴは時に、非情な男とも言えた。三
代目 の大王も、シャノワールも、時に銀河の守護者として、非情になることかあった。
実験用のネズミ一匹殺すのが、辛く、植物学者の道を選んたナガヤ教授。そして、激動の銀河帝国の
中を時に非情に生き抜いてきたザ・グレート・ブシドー。
ある意味、最強のタッグチームてある。
287
レッド大佐チーム
火星、銀河帝国、また終らんよ。 そう言ったのはレッド大佐だ。
惑星狩りをやっている銀河異生物の正体か、チームダブルエックス、つまり強化人間 G とグレートア
ジアの2人たとわかると、レッド大佐は、独自のセンスてパートナーを選ひ出した。
強化人間 G は過去の遺物だ。今の科学の最先端か生み出したのか、最強のキマイラ。つまり、リアル・
パンサーだ。
もともと G は過去の格闘家 G・ハロルドのクローンに、初代の大王の遺伝子を注入した強化人間
た。 それに勝てる唯一の存在。もちろん現代の格闘家アルセーヌ・ポルゴに、金星ヒョウの遺伝子を注
入しデザインしたリアル・パンサーだ。 君は、唯一無二の存在だ。この世界の覇権、秩序、私と取り戻
してみないか? 自分は、半端者だ。そう思い込んていたリアル・パンサーを、唯一無二の存在と讃える
レッド大佐。
「わかった。オレはお前を信じる。」
こうして、火星圏出身のレッド大佐と、金星ヒョウの遺伝子を持つリアル・パンサーの異色のチームが
生まれた。
288
ジパングチーム
マリア・ハロルドは最近、いつも同じ夢を見ていた。 ヤマモト先輩、私、すっと前から、先輩のこと
が...
せっかく夢の中てライアン・ヤマモトに告白しようと思うと、いつも母親使う洗濯機の音て目か覚め
た。 母さん、もうちょっと静かにできないの?今、いいところだったのに。
何言ってるの、この子は?大学生にもなって、家事一つ手伝わないて、格闘技の練習はっかり。格闘
技もいいけど、たまには勉強したら?
勉強?受験勉強て燃え尽きたわ。ても、大学の同しコースにヤマモト先輩かいるから、勉強は大丈
夫。 マリア。お前、ヤマモト先輩に惚れてるんじゃないの?
何言ってるの?案外、そうかもしれないわね。でも、現実は厳しいわ。
ライアンは理想の男だ。が、そのストレートな性格は研究と格闘技にたけ向けられ、身の回りの女性
には見向きもしなかった。いや、ライアンは内心誰かを愛しているようてはあったか、その相手か誰か
までは、確信が持てなかった。
ヤマモト先輩、お願いがあります。
今度のキングオヴギャラクシー、一緒に出てくれませんか?
そして、もし私たちか優勝したら...
ここまでの相談は上手く行った。 後は、夢の続きを現実にすることだ。
289
ポルゴチーム
そうか、あの G'の野郎。また生きていやかったのか。それに、グレートアジアまで。
ポルゴは思った。最強は一人で、いいと。
しかし、世界には上には上かいた。自分より確実に強い人間。そして自分をライバル視している人
間。
西郷詩郎か。
西郷詩郎は、G とグレートアジアの生存情報を聞くとこう答えた。
一度手合わせしたいと思っていた人たちです。流派や恩讐を越えて、共闘しましょう。
しかし、トーナメントの決着か着いた後は、私たちは...
敵同士か。
それも、そうだな。
最強のライバル同士かタックを組み、キングオヴギャラクシーの歴史に終止符を打つべく、最後の闘い
に挑もうとしていた。
290
龍族チーム
G 、グレートアジア、それにポルゴと西郷師範。かつての最強のライバル達か、キングオヴギャラク
シーにエントリーしていた。三代目の大王はこう思った。
ワシの爺様の血、能力を継いた G か。そして、新世紀最初のギャラクシーて闘ったポルゴやグレート
アジア。そして、あの西郷師範まてもか敵か。さらにあの生意気なシャノワール。全ての闘いに終止符
を打 ち、ジュニアを五代目の大王にするには、ワシか直々にパートナーを引き受けないといかん。
銀河帝国首相を務めるギャラクティカ・ジュニアはこう思った。
ボクは、今まて銀河帝国の皇太子として周囲に甘えてはかりだった。そして、今ある地位か銀河帝国の
万 年ナンハーツーた。今度こそ、自分の力て、龍族か、そしてボクこそか銀河の大王にふさわしいこと
を見せ てみせる。
三代目の大王は、銀河帝国の中て、保守勢力を代表していた。民主帝国主義以外に、惑星間の利益を調
停す るシステムはあり得なかった。銀河帝国か、銀河帝国たりうるのは、民主主義と帝国主義を合わせ
た、独自 の政治システムの上てあった。銀河の平和を維持するために、若干の犠牲には目を瞑ってきた。
矛盾を受 け入れる度量こそか、大王の器であった。
改革は、許さない。
そして、今の銀河法典こそか、惑星間恒久和平を維持するシステムたという持論かあった。
銀河法典は、惑星間恒久和平を訴える一方て、紛争解決の手段として、暗黙の内に軍事力を認めていた。
そ 故の、銀河帝国であった。大王であった。
確かに、ワシは自分の力を誇示すること、優れた龍族か、力てもって惑星を統治することに力点を置き
すぎたかもしれない。
もっとも優れたものか、銀河のボス、つまり大王になれはいい。そして、今はその力をジュニアに託し
たい。そう考えた三代目の大王だ。
291
ネコ族チーム
シャノワールは思った。
今、銀河の信頼が揺らいでいるニャ。この世界からはいつになっても戦争や貧困、食糧難の問題は解
決されない。この背景には政治・経済システムを根本的に改革する必要かある。銀河法典を変えて、民
主帝国 主義から、市民主権主義に変更するニャ。銀河帝国も、銀河市民連合に改正するニャン。銀河の
大王は、地位はそのまま、銀河帝国議長から、銀河市民議会議長に変更するニャン。
パートナーは東郷源九郎だ。
俺は、父、東郷源一郎の遺伝子を引き継いている。この世界にはポルゴをはじめ、邪魔な奴らかいる。
G'の野郎も、存在か気に食わない。今はシャノワールと組むガードナメントかおわったら、始末しても
い い。最強は、一人でいいのたから。俺はネコ族ではないか、ネコ族の血を引く子供を授かろうとして
いる。 妻の紀子も、俺かキングオヴギャラクシーに出ることを了承している。
確かに源九郎は唯我独尊を行くプライト高き男で、そのパートナーを引き受けるのは、妻のマダム・
アワヤかポルゴ、シャノワールくらいであった。今は妻は妊娠中てあり、かつての闘いてポルゴを敵に
回した以上、あとは、現大王と組むしかなかった。
それはボクもブシドーちゃんみたいに、ファイティング・プロフェッサーと組むことも、シミュレー
ションしてみたニャ。ても、ナガヤ教授は、線か細いニャ。バードは優しい人格者たか、格闘家として
は、 ちょっともったいないニャ。その点、源九郎は鬼たか、カツカツした格闘家としての天性のセンス
を持っていた。
人間としては荒削りで完成しておらず、パートナーとしても若い面か否めなかったか、それをカバー
しきれるのか真のリーダーであろう。
シャノワールは思った。
銀河法典を改正して見せると。そして、銀河の全ての問題の原因に終止符を つと。今まて大きな戦争
は現行の銀河法典のもとては起らなかった。でも、それは見せかけの平和だ。常に地方ではクーデター
や紛争、言葉て形容し難い犯罪か行われていたか、報道管制によって、そして世間のエゴによって、目
を瞑ってきた。自分さえ良けれは、そして首都惑星や近隣惑星のみ平和てあれは、それでよい。そんな
考え方か銀河を悪い方向に導いてきた。 民主帝国主義に終止符を打つ。市民主権主義に変更を行う。そ
れかできるのは、ただ一人。
少数民族出身の若き大王、ソレイユ・シャノワールのみであった。
292
傷だらけのライアン
キングオヴギャラクシートーナメント第一試合は、チームダブルエックス VS ジパングチームた。
逆立った銀髪が特徴の強化人間 G とプロレス界の至宝、グレートアジア 13 世のチームダブルエック
ス。
一方、ジパングチームはジパング大学大学院のライアン・ヤマモトとその後輩ジパング大学の女子大生
マリア・ハロルドのチームた。
この試合か事実上の決勝戦とも言えた。 地獄からの使者のテーマてダブルエックスか入場する。一方、
ジパングチームは地球の名曲 GLORIAで入 場した。
臨戦態勢になる両チーム。
まずは、グレートアジアとライアン・ヤマモトがリングインした。 アジアが上段気味に構えると、ラ
イアンは低空タックルを仕掛けた。
ゴングか鳴る。
タックルを潰すアジア。
下からライアンは絡み付き、逆十字を狙う。
すかさず、G かリングインしてカットに入る。
タックマッチて関節技を決めるのは難しい。
グレートアジアは一端ニュートラルコーナーまて身体を引いた。そこから全速力のアックスボンバーを
仕掛ける。
ライアンは脇固めて切り返した。
すかさす、G かカットに入る。 関節技か通用しない。さらに、アジアは全身の気を第八段階まて高め
ていた。
ライアン先輩、タッチをお願いします。 いいトーゴーなして、引けるかよ。 ライアンは打撃の構えを取っ
た。 シャッセハーからのワンツーて踏み込んた。 アジアは今の打撃戦をオープンハントて、掌底のよう
に受け止めた。 ライアンかミドルに行ったトーゴーろを、アジアバードラゴンスクリューに切り返し
た。 今のコンタクトの瞬間、アジアは全身の気を具現化して、ライアンに雷撃を与えた。 クっ、シビ
れるな。
すかさすノータッチでマリアかリングインする。
アジアは冷静に G とタッチを成功した。
ノーモーションでG は両手を一気に引くと、タメを作って、ギャラクシーウェーブの体勢に入った。
マリアは今の攻撃を読んて、気をフィールトとして利用して、G のバックに瞬間移動した。そのままス
リーパーに入るマリア。
もらったわ。
そうかな?
G は首を絞められたまま、何のためらいもなく、目の前にギャラクシーウェーブを放った。 そこにはダ
ウンしたライアンかいた。
しまった。
スリーパーを解除したマリアの背後からグレートアジアか体当たりを仕掛けた。
G はすかさすトラースキックて援護した。 グレートアジアは全身のオーラを具現化して、雷撃のように
ラリアットを放つ。 マリアは今の一撃てダウンした。
ジパングチーム、両者ダウン。カウント、5、6、7、8... カウント9てライアンが立ち上かった。
このまま、終れるかよ。
強烈な右ストレートを G に放った。
アジアはコーナーで見物中た。
もう一回、そのストレートを受けてみたいな。
G'が挑発した。
ライアンがもう一度、右を放った瞬間、G は全身を沈めてカウンターの一本背負いに行った。
293
すかさず、コーナーのアジアが宙返りをして、セントーンプレスを仕掛ける。 アジアはライアンの首
元を踏みつけると、G がマリアを牽制して、ダウンカウントを要請した。 チームダブルエックスの両者
ノックアウト勝ち、つまり完勝だ。
294
ブシドーの誤算
ザ・グレート・ブシドーチームと総合野郎 B チームの試合がはじまった。 正直かなりの格闘マニア
以外、注目しないカードだ。
永谷教授とジョー・ヨージかリングインして、ゴング。 古典的な腕の取り合いから、力比へ、まるで
すトロンクスタイルの試合た。 永谷教授かシャッセを放ち牽制すると、ヨージもフェッテメディアン(ミ
ドル)て応戦した。 会場か一気に盛り上かる。 ブシドーの誤算。それは、永谷教授か真のファイターた
ということた。 人間性たけて、永谷教授をスカウトしたか、実力もいふし銀た。
永谷教授か強烈な右ストレートを放つと、カウンターのタックルに移行するヨージ。ガードポジション
か ら、逆十字を狙う永谷教授。
ヨージはわざと逆十字を誘った。 両手のクラッチを放さないまま、抱きついた永谷教授を持ち上ける
と、一気にパワーホム!
そのまま押さえ込むヨージ。
さらに、再度持ち上げ、永谷教授を投けっ放しのパワーボムでKO した。
すかさす、ブシドーかリングインする。
ヨージはクールに、ジュンとタッチをする。
メキシコ流カラテの継承者、ジュン・バード殿、お相手いたす。
ジュンはテコントーのように打点の高い蹴りの連打を放つ。
もちろん全ての蹴りはコンタクトの瞬間、具現化したオーラか雷撃のようにガードの上からブシドーを
痛 めつけていた。
ぬぅ。 ブシドーはスーパーヘヒー級のショルタータックル一発て、ジュンをふっとはした。
コーナーのヨージは動かない。完全にジュンを信頼している。
ダウンしたジュンを上からブシドーか睨みつけると、下からの反動を利用した低空トロップキックて、
ジュンか襲いかかる。ブシドーは今の一撃をよけきれす、膝に直撃した。
ジュンはスタンドに移行した。
ブシドーの動きか鈍る。
ヨージはコーサインを出した。
ジュンは左のフロントキックから、右のバックキックにつないた。 右のバックキックの瞬間、全身のオー
ラを燃焼して、炎のように使った。 ブシドーは直立したまま、気絶していた。 ジュンか足払いで、申し
訳程度にブシドーを倒すと、そのまま総合野郎 B チームの勝利が決定した。
295
パンサーの涙
レッド大佐チーム対、ポルゴチームがはじまった。 先鋒は、レッド大佐と西郷詩郎だ。
レッド大佐は、プレッシャーを掛けつつ、西郷と組んた。 一閃、西郷の山嵐た。 レッド大佐は下から
冷静に逆十字を狙っていた。 西郷は、パワーホムて切り返した。 すかさす乱入したリアル・パンサー
かストンピングで妨害する。
リアル・パンサーは上段に構えていた。
西郷は下段気味だ。 パンサーが蹴る。 西郷はキャッチすると、冷静に間合いを詰めた。 そのまま大
内刈りた。 すかさすレッド大佐かストンピンクてフォローに入る。 火星圏、また終らんよ。 いい終え
た瞬間、西郷とポルゴかタッチを成功する。 ポルゴ対レッド大佐た。 レッド大佐は強烈なオーラをポ
ルゴに向ける。 ポルゴは冷静にオーラを見切ると、左ジャブから右のミドルた。 左手て右ミドルを受
けたレッド大佐。 やるな、これか地球圏最高の実力者と謳われるキックか。
レッド大佐は、彗星拳という技術を使った。 自分の体力の半分以上と引き換えに、倍以上の速度て動く
技術た。 ポルゴの体現てきる速度を越えて、攻撃した。 強烈なレッド大佐のキャプチュートスープレッ
クスか決まった。 ポルゴはダウンした。 すかさす西郷かストンピンクてレッド大佐に、攻撃を加え
た。 絶対に行けるとレッド大佐チームか思った瞬間、西郷は、本気を出した。 立ち上かったレッド大
佐に強烈な山嵐を見舞った。 レッド大佐はダウンした。 乱入したパンサーを出足払いて倒すと、西郷
はポルことタッチした。 とちらか最強のパンサーか、決めよう。 とちらともなく、その発言か出た。
組んた瞬間、ポルゴかフロントタイガードラゴンスープレックスに行った。 ダウンしたパンサーをスト
ンピンクてフォローする西郷。 勝負は決まった。
西郷、ポルゴチームに死角なし。
たた、リアル・パンサーは涙するしかなかった。 本物は一人で、いい。
最強も一人で、いい。
もともとリアル・パンサーは最強・本物と言える実力を手に入れていたか、相手か悪かった。西郷・
ポルゴ チームに楽勝できるほと、世の中は甘くなかった。
296
大王決定戦
龍族チーム対ネコ族チームがはじまろうとしていた。
龍族は、三代目の大王と王子。ネコ族は4代目の大王と、東郷源九郎だ。
三代目の大王のマイクアピールを東郷が遮った。
誰か一番強いか、決めたらいいんや。
ゴングかなる。 三代目の大王と東郷の殴り合いだ。
オーラ、ギャラクシーウェーブ、関係ない。
ただひたすらに殴り合っていた。
ある程度打ち合いか終わると、東郷はサイドキック。三代目の大王は離れ際に、ミドルキックを放った。
相打ちだ。
若干、東郷のサイドキックか三代目の大王を押していた。
東郷と四代目の大王かタッチすると、三代目の大王も王子とタッチを成功した。
四代目の大王は、躊躇せすグローブを放り捨てると、爪で勝負を決めに行った。
王子か怯んた瞬間、四代目の大王は王子に噛み付いた。
王子か右ストレートで噛み付いたシャノワールを振り払った瞬間、東郷源九郎かフルパワーのギャラク
シーウェーブを放つ。
会場か暗転する。 次の瞬間、リングに立っていたのは、三代目の大王と東郷た。 シャノワールは今のギャ
ラクシーウェーブを、王子と同体になってわさと直撃していた。 三代目の大王は伝家の宝刀を抜いた。
具現化した気を剣の形に変化して、東郷を攻撃した。
一撃、一撃をスレスレて躱す東郷。
やるな、でも、遊ひは終わりだ。
東郷は全身のオーラを第八段階まて高めると、右腕を腰の高さまで引いた。 そのまま状態を沈めて、右
の強烈なアッパーだ。
三代目の大王の顎を射貫いた。
掟破りの真・龍拳か決まった。
シャノワール・東郷源九郎組が龍族チームに完勝した瞬間だ。
297
テクニック
総合野郎 B チーム対チームダブルエックスの準決勝第一試合、そしてその直後には、ネコ族チーム対ポ
ルゴチームの準決勝第二試合かはじまろうとしていた。
総合野郎 B チームかリングインする。ジョー・ヨージとジュン・バードの 2 人組た。今回セコンドにト
シアキ・フジワラか陣取っている。
一方、チームダブルエックスは、G とグレートアジアかリングインする。セコンドには、久しふりにエ
リカがついていた。
まずはジョーとアジアの2人が勝負する。レスラー対決だ。
ゴングか鳴る前、フジワラはこう囁いた。
ヨージ、打・投・極を回すんた。そして最後はお前か極めろ。力、有効利用だ。
ゴングが鳴る。
ジョーはいきなりの掌底てアジアをコーナーまで追い込んた。 アジアはバックステップてロープの反動
を利用すると、ラリアットを出した。
すかさすワキ固めて切り返すヨージ。
カットに入る G 、すかさすジュンか牽制して、乱入をさせない。
一瞬、場か乱れたかに見えたか、アジアは冷静にバランスを取って今の技を外した。
ヨージはワンツーからの右ハイてアジアを強襲した。
アジアは鍛えた首て今のハイをキャッチすると、そのまま後方に反り返りキャプチュードスープレック
スだ。
しかしダウンした後も、サイドすら許さないヨージ。 上手く動いて間合いを取る。 キックを放つと
見せかけて、立ち上かる。
今のハイはちょっと勝負を焦ったな。 今度は、左のローから右の音速のミドルを放つヨージ。
キャッチはさせない。
カウンター気味にアジアかオープンハントで襲いかかる。
一瞬、アジアの視界からヨージか消えた。
低空タックルだ。
ダウンしたアジアに、ガードポジションから構わす上から殴るヨージ。
ノータッチてカットに入ろうとする G をジュンか右のハイて牽制する。
冷静にアジアか下から逆十字を狙った。
ヨージはハイアングルのパワーボムで切り返す。
全てか終ったかに思えた瞬間、上になっていたのはアジアた。
今のパワーホムをフランケンシュタイナーて切り返したアジア。
すかさす回転エヒ固めて切り返すヨージ。
プロレスてあれは、今の切り返しの回転エヒ固めですリーカウントは入ったたろう。
しかし、これはキングオヴギャラクシーた。今のエヒ固めをカットに入ろうとした G と、牽制したジュ
ン の間て睨み合いになる。
冷静にヨージはジュンとタッチして、アジアも G とタッチを成功する。 この勝負、見えなくなっ
た。 先にツープラトンを決めた方か、圧倒的に有利た。 コーナーに戻ったヨージにセコンドのフジワ
ラか話し掛ける。 会長、今だったら、アンタもプロレス王者狙えるせ。 ジュンは全身のオーラを第八段
階に高めて、見えない気を完全燃焼していた。 ますはジャブ気味の左シャッセから右のフェッテ(ミドル)
を二連発。
G は怯ます前に出てカウンター気味の右ストレート。 ジュンは冷静に今の右ストレートを見切ると、
左のフロンタルて間合いを取り、さらに右のフロンタルで追い込んだ。
左足に全身のオーラを込めて、左の上段後ろ回し蹴りを放つジュン。
G は今の攻撃を両手てブロックした。
G の目つきがより好戦的に変わった。
298
両手にオーラを込めると、一気に腰まで掌を引いた。
セコンドのフジワラかヨージに指示を送る。
G か会場こと吹き飛はすような強力なギャラクシーウェーブを放たんとした瞬間、ジュンは強烈な右の
フロ ンタルを G のアゴにヒットさせた。
すかさすヨージは敵コーナーのアジアに低空トロップキックて牽制した。
さらにジュンは右のボディて G の意識を断つと、ヨージか G のバックを取って、芸術的なジャーマン
に捉えた。空中に飛ひ上かったジュンはそのまま両足を開いて、キロチンホンバーて G の首を直撃した。
すかさず連携して、ヨージは G をチキンウインクスリーパーボルドーに捉える。
何とかリングインしようとしたアジアをジュンか全身のオーラを具現化した右ミドルで、雷撃のように
蹴り付けた。そのままシビれて動けなくなるアジア。
総合野郎 B チームが金星を奪い、キングオヴギャラクシー決勝まで進んだ瞬間だ。
299
決着!
ポルゴ&西郷チーム対ネコ族チームの準決勝第二試合がコールされた。 ポルゴと西郷は、名曲津軽三
味線冬景色で入場する。
シャノワールと東郷源九郎は、銀河帝国の国歌、ザ・フロンティアで入場だ。
ショービジネスの色彩を帯ひたキングオヴギャラクシー。 西郷と東郷の因縁の闘いか幕を切って落と
された。 東郷はジャブからさらにジャブ、ストレート、右のミドルと追い込む。 西郷はバックステップ
から今のミドルをガードした。 柔道+合気柔術の西郷を攻略するための鉄則、それは打撃に専念してま
せないことた。 一瞬ても油断したら、当て身投けや各種投け技、奥義、一本背負い崩れの山嵐か待って
いる。 ここて東郷は危険な賭けに出た。
わさと右ストレートをゆっくりと放った。
西郷は東郷の右手首の辺りをみ、手首の関節を決めると、そのまま右腕て東郷の腕を抱え込み、東郷を
担くと、右足で、東郷の右足を刈り払った。
山嵐だ。
しかし、東郷は全身のオーラを解放して、自護体て身体を沈め、そのまま豪快に西郷をバックドロッ
プで切り返した。
シャノワールかノータッチでリングインすると、ポルゴもリングに入った。
シャノワールはキャットダッシュからのタックルに行った。そのままダウンしたポルゴを殴りつける
と、 マウントを狙っているかに見せて、油断させた。ポルゴかエヒとブリッジてマウントを跳ね抜けよ
うとした時、シャノワールの尻尾かポルゴの首に絡み付いていた。
危うし,ポルゴ。
西郷かバックドロップ の時の脳震盪から復活して、カットに入ろうとした瞬間、東郷は全身のオーラを
第 八段階まて高めて、ギャラクシーウェーブを放った。
西郷ダウン。なおも、ポルゴはシャノワールに尻尾て首を絞められていた。 キタねーな、ネコ族は。
誰も、尻尾を使うことは反則だなんて、決めてないニャン。 ポルゴは両腕て尻尾を外すと、そのまま尻
尾に噛み付いた。
ナメんなよ、人間様を、そして地球人を。
シャノワールは尻尾を引いた。
何とかポルゴか立ち上かった。西郷はなおもダウン。
2対1か、こんな時ミスター東郷だった。ら、なんて言うたろうな?
もちろん、2人まとめて相手にしろ!だよな。
ポルゴは全身のオーラを具現化して、そのままシャノワールに右ハイ、返す刀て、源九郎に左のトラー
ス キックをお見舞いした。
逆上したシャノワールかグローブを外した。爪で襲いかかるつもりた。 源九郎は両腕にオーラを込めて
いた。
シャノワールかポルゴめかけて右のツメ、源九郎か右の腰に掌を畳み込みオーラを溜めた瞬間、ポルゴ
は 一か八かの賭けに出た。
全身のオーラを使って、空中に飛び上がった。
シャノワールかツメて攻撃し、源九郎かギャラクシーウェーブを放った瞬間、ポルゴは空中て今の攻撃
を かわした。そのまま着地際にソバットて源九郎を倒した。
シャノワールは味方のギャラクシーウェーブをもろに食らって気絶していた。 ネコ絶拳も間に合わなかっ
た。
ポルゴチームの逆転勝ちだ。
300
ユニバーサルスタイル
キングオヴギャラクシー決勝か始まろうとしていた。一方のコーナーにはジョー・ヨージとジュン・
バード。一方のコーナーにはポルゴ、西郷組tq立っていた。 ジョー・ヨージ、そしてポルゴ共に、ファ
イトスタイルはユニバーサルスタイルだ。プロレスからショーの要素を取り除き、総合用にアレンシし
た U スタイル。さらにジュン・バードはメキシコ流カラテ、西郷詩郎は柔道+合気柔術だ。
もうこのレベルの試合は、流派がどうとか、技術だどうとかいうレベルではなかった。競り合いて一
歩を攻め込むスタミナや度胸、バードか問われていた。銀河最強タックを決めるキングオヴギャラクシー
の 決勝に残っている時点て、技術面や体力面ては完全に合格点、超一流た。
あとは、僅差を決める勝負勘、経験、総合的な要素が影響する。
ジョー・ヨージとポルゴかリングインする。
ゴングか鳴る。
左フック気味の掌底から、ヨージか掌底の嵐を放つ。
ポルゴはブロックしつつ、タックルに行く。
タックルを潰したヨージはダブルハンマーから、一瞬の隙をついてバックを取る。そのままグラウンド
に 引きつり込む。ステップオーバードボルドーからチキンウィンクスリーパーを狙うヨージ。
ボクは気を使った攻撃は一切できませーん。てもレスリングだったら、誰にも負けませーん。
ポルゴは今のスリーパーを外すと、身体を捻って足関を外した。 何のために闘ってるんたろーな、俺。
疑がよぎる。
一応、蹴りに行くと見せかけでスタンドに移行する。 テツオとユメミの声か聞こえる。 パパー、頑張っ
て。賞金!! タメタメたな、俺。
ヨージの掌底フックからの右のミドル、左ハイの猛攻か決まる。 ハイをくくって、間合いを詰める。 そ
のまま閂に決めると、フロントタイガードラゴンスープレックスてヨージを後方に投け放った。 受け身
のとれない危険な技た。
ヨージは何とか今の技を切り返した。
ボクは負けまシェーン。
冗談キツいぜ、FTDSH を真面に受けて、切り返すなんて。 並のトレーニングしゃないはずだ。
またコーナーの西郷、反対コーナーのジュン共に微動たにしない。 両者共にパートナーを信頼してい
た。 ヨージは一瞬、バックステップをすると、クロースライン気味のラリアットを放った。 ポルゴはラリ
アットをかわした。
その瞬間、ヨージはポルゴの背面を押さえていた。 チキンウィンクスリーパーを決めたヨージ。まさ
か、このまま。
スタンドの体勢からヨージは後方に反り返った。チキンウィンクスリーパーを決めたまま、そのまま
スープレックスに移行した。
完全にホールドしてポルゴの動きか止まった。
すかさす西郷かリングインする。
クラップリングベースの西郷か総合野郎 B チーム2人を同時に相手にするという、あり得ない状況た。
冷静にヨージはジュンとタッチするか、二対一てあることは変わりない。関節技に行けは、迷わすカッ
トされるだろう。
ジュンは鬼神のような打撃て攻めてきた。ほとんとガードを下けて、蹴りたけて、まるて鳳凰かタン
スす るかのように襲いかかってきた。 掴むチャンスは、なかった。 相打ち覚悟て、西郷は足払いて、
ジュンの軸足を攻撃した。 ジュンは燕返しの要領で、今の足払いを躱すと、そのままハイキックを放っ
た。 西郷は今のハイキックの直撃を受けた。 相当なタメーシた。パートナーのポルゴは既にノックア
ウトしている。
奥の手で勝負するしかなかった。
301
もう一度たけジュンの間合いに入り込むと、わさとパンチの打ち合いに付き合った。ジュンかジャブ
を放っ た瞬間、ジュンの左手の関節をもろに決めたまま、逆一本背負いの体勢て、そのままジュンの足
を刈り払った。
山嵐改巻込だ。
強引な技だが、これてジュンの左腕の関節を折ったはすた。 たまらすヨージかノータッチてリングイ
ンしようとすると、ジュンはこう言ってヨージを押さえた。
ここはワタシの勝負です。また諦めていません。メキシコ流カラテの真髄、お見せします。 全身のオー
ラを左足先に集中すると、ジュンは左のトラースキックを放って、西郷の鳩尾を射貫いた。
オーラは雷撃のように具現化され、西郷の動きを完全に封した。 地球圏出身の意外なチーム、総合野
郎Bチームがキングオヴギャラクシーで優勝した瞬間であった。
302
決定!第五代大王
キングオヴギャラクシーのトーナメント優勝チーム、総合野郎 B チームの代表ジョー・ヨージと、銀
河帝国の人気投票の結果ネコ族チームの代表、ソレイユ・シャノワールとの間で、第五代の大王の座か
争われることになった。
ゴングが鳴る。
音速のタックルからパウントの嵐に移行するヨージ。
シャノワールは下からの不利な体勢てパンチを放つと、そのまま両者打ち合いの展開になった。 ヨー
ジ有利ガード思えた瞬間、シャノワールは尻尾を使って下から三角締めに移行した。 迷わす立ち上かる
ヨージは、そのまま垂直落下式パイルトライハーて、シャノワールを叩き付けた。 ダウンしたシャノワー
ルをサッカーホールキックて蹴り突けるヨージ。 シャノワールの心か折れそうになる。しかし、シャノ
ワールは負ける訳には行かなかった。 不屈の闘志て立ち上かると、クローブを外した。 プリンス・ネ
コマタ直伝の鳴猫拳を使うときか、来た。
まずは尻尾を軸にした強烈なキャットハイキックを放つ。そのまま爪を使ってヨージの顔面を引っ掻
くと、 キャットタックルに行った。ダウンしたヨージの喉元に噛み付ことしたシャノワールだが、この
試合が銀河市民に生中継されていることを思い出すと、尻尾を使ったキャットスリーパーて一本取っ
た。
第四代大王ソレイユ・シャノワールが、第五代大王の座を約束された瞬間だ。
303
議会解散!
五代目の大王に就任したソレイユ・シャノワールは、銀河帝国議会を招集すると、多数決て銀河法典
の改正案を可決した。内容は、民主帝国主義から惑星市民主権主義への移行だ。
銀河法典の改正案が通ると、次の大王に首相てあるギャラクティカ・ジュニア氏を指名した。
第六代目の大王が誕生した瞬間だ。
プリンス・ネコマタはシャノワールに問うた。
御主、潔いな。しかし、それで良かったのたな?
権力は時と共に腐敗しますニャ。最初は改革のために生まれた政権も、継続すると独裁者を生み出し
てし まう。そんな歴史から、私は学ひましたニャ。目標は改革てあって、権力・権勢ではない。
せめて、私を支持してくれた銀河市民への恩返しですニャ。
まだ御主は若い。時が、御主を必要とする時もあろう。今まての働き、実に見事であった。
ありがとうごさいますニャ。すべては恩師と、鳴猫拳のお陰ですニャ。
これてソレイユ・シャノワールは銀河市民の歴史に、名誉ある名前を刻むことになる。
ギャラクティカ・ジュニア氏も、十分な経験を積んて、今は一人前の大王として通用する風格を身につ
けて いる。
もともと旧銀河帝国は銀河法典によって守られてきた面かあった。それは同時に、外部への侵略の歴史
て もあった。内部は安定したシステムに見えていても、所詮は、民主帝国主義であった。
もちろん法律や統治システムたけて、平和か保たれているわけてはない。それに、パンとサーカスたけ
か、 政治ではない。
銀河の大王を中心としたコアシステム型の統治システムから、惑星間主権を取り入れた、分権型の統
治システムに移行するへき時か来たのかもしれない。
前回の最大のキングオヴギャラクシーにおいて、純粋のジパング人、ジョー・ヨージ 12 世かパート
ナーの ジュン・バードと共に優勝し、あと一歩て、5代目の大王の座にまて手を伸はす所であった。
ジョー・ヨージはたたユニバーサル・スタイルの使い手てはなく、惑星間法を専攻してジパング大学法
学部 を主席て卒業したという経歴の持ち主だ。
彼に首相就任の要請か来た時、彼はこう言った。
私は総合野郎 B チームです。とんなことをやっても所詮は B クラスですか、個人の持てるすへての要
素を 活用して実践すると不思議と A クラスの人間と戦える。しかし、世の中には、何をやっても A ク
ラスの人 間もいる。時に、B チームは B チームなりの良さかあり、それを証明てきたたけて十分です。
何もいらな い。たた残っているのはパートナーのジュン・バードさんや恩師のフジワラさんとの信頼関
係です。
でも、 信頼関係って、一番大事だと思いませんか?
ワタシは永久に総合野郎 B チームのジョー・ヨージです。それ以上ても、それ以下てもありまシェー
ン。
こうして銀河最大の祭典は幕を閉した。
ジョー・ヨージ 12 世のキングオヴギャラクシーの最大の勝因は、信頼関係だった。
確かにポルゴ・西郷組やシャノワール・東郷組なと、反則的に強いメンハーの組み合わせもあった。そ
れに ライアン・マリア組や、G ・アジア組なと圧倒的なキャリアのチームもいた。ても、パートナーの
信頼関 係を重視するという点ては、ヨージ・ジュン組か最強無二てあった。 最強のライバル同士をた
た組み合わせたたけては、勝てない。強いヤツたけ集まっても勝てない。それか キングオヴギャラクシー
の最高に面白い点た。
たとえとんなに相手か強くとも、打・投・極を上手く回して、最後はツープラトンのコンビネーション
て決める。惑星を吹き飛ばすような強力な光線技かあっても、誤爆したら、意味かない。
それは気の技術を第八段階まて使えて、さらに具現化して雷撃のように使えれは有利たか、基本は打・
投・極のみ。ユニバーサル・スタイルを極め、その一歩先を越えない限り、次の山は見えて来ない。
そんなことかわかった今回のギャラクシーであった。
304
許せない男
その女はポルゴだけは許せないと思った。 女の名前は東條香織。
在りし日のポルゴの親友、ワカマツの恋人だ。
それはあの戦争て、ワカマツかポルゴをかばって殺されたのは、よくわかっている。
場合によっては、友人をかばって死ぬのはポルゴの方だったかもしれない。
神様か籤を引いたのた。
でも、それでも。
この世の不条理か許せなかった。 こちらは独身を貫き、一方てポルゴはワカマツの妹と結婚して、子供
までいた。
ワカマツの妹とは会ったことはなかった。
思い出は心の中にしまっておけは、いい。 そう思いつつも、あの時、ポルゴかヘマをしなけれは、ワカ
マツは死ななかったはずだ。 火星人も憎かったか、旧火星帝国か崩壊した後、怒りの矛先は、ポルゴに
たけ向いていた。
かつてあらゆる立場の人間かポルゴの社会的死を狙って勝負を挑んだ。
全てを跳ね退けた、アルセーヌ・ポルゴ。
しかし、一回たけてもいいから、ポルゴに恥をかかせたい。
そう思った東條香織だ。
今のポルゴに勝てる人間は、そうはいまい。 西郷詩郎、ジョー・ヨージ、プリンス・ネコマタ、くらい
なものたろう。 プリンス・ネコマタか引退はしたものの、超一流の暗殺者であることを思い出した東條
香織は、ネコマタにコンタクトした。
貴方かかの有名なプリンス・ネコマタさんですね? ワシかジパングの若い女に弱いことは、有名である。
それにワシはネコマタ、伊達に尻尾か4本に別れるまで生きておらんて。貴女の事情は察した。しかし、
復讐か。事情はわかるか、その後は結局空虚だ。何も残らんよ。
ても、今のポルゴの幸せか、なんて言うか、許せないの。わかる?この気持ち。
わかる。
では、貴女の依頼を受けよう。
ワンマッチてポルゴと勝負し、ヤツの面子を潰せはいいのしゃな? レフリーはそうだな、西郷詩郎に頼
んてみるか。 こうして後楽園アリーナてアルセーヌ・ポルゴとプリンス・ネコマタのワンマッチか開か
れることになった。 プリンス・ネコマタはヘヒー級の動けるネコ族た。試合経験、実戦経験も伊達しゃ
ない。 ポルゴはリングに入場すると、ネコマタのセコンドに東條香織を発見して、全ての事情を悟っ
た。 セコンドにはライアン。リングサイトには妻と息子か観戦していた。
負けられねーな。この勝負。
御主も、罪な男だな。
人間は皆、原罪を背負って生きておる。
その十字架か御主に今日の試練を与えたのだ。
覚悟はいいか?アルセーヌ・ポルゴ。
ゴングが鳴る。
ポルゴは全身の気をマックスまで解放した。
一方、ネコマタは不穏なオーラを浮かへている。
ワシも久しふりに禁断の暗殺拳、猫鳴拳(ニャンケン)を使ってみるか? ネコマタはオープンフィンガー
をいきなり脱き捨てると、ツメをあらわにしてポルゴに襲いかかった。 間一髪、スレスレてかわすポル
ゴ。 アンタに恨みはないか、仕方ないな。 ポルゴはツメの嵐をかいくくって、懐に入ると、強烈なボディ
を放った。
ぬくいのう。
ネコマタはヘアハンクならぬ、キャットハンクに捉え、ポルゴを締め付けた。 ポルゴは身体を締め付け
られなから、ボディに発頸パンチを丹念に入れて行った。 コーナーまて追いつめたと思った瞬間、ネコ
305
マタはキャットハンクの体制て、身体を捻り強烈なスープレックスを放った。
ドラゴンキラースープレックスだ。
会場は一気に静まり返った。 試合、てはなく、シュート(殺し合い)の様相に、会場は興味本位から真剣
勝負の観戦といった趣に変化していた。
コーナーの東條香織か、プリンス、あと一息!と応援する。
ポルゴは不屈の闘志て立ち上かる。 相手か爪を使った攻撃をしてくる以上、間合いを取ってキック主体
て攻めるか、接近して、バックをとうに かキープしてタイガードラゴンスープレックスを決めて、ボル
ドーするしかないと思った。 ノーグローブのネコマタの拳めかけて、右のコークスクリューハイキック
を放つ。すかさす左ハイの後て、 右のコークスクリューフロンタルを放ち、ネコマタの鳩尾を貫いた。
いったん、音速のタックルに行き、ネ コマタからテイクダウンを奪う。
ネコマタはすかさず、下からの尻尾を使った老獪な三角を狙った。ネコマタが下から三角を狙った瞬
間、ポルゴは何とか、自分の首と引き換えに、ネコマタのバックを取ることに成功した。 そのまま、ネ
コマタを立ち上からせると、右腕をチキンウィンク、左腕をハーフネルソンに捉えた。なお も、ネコマ
タは4本の尻尾てポルゴの首を絞めようとしていた。 全身のオーラを解放してクラッチに集中すると、
ポルゴは必殺のタイガードラゴンスープレックスボルドーに捉えた。 ワン、ツー、スリー、カウントか
鳴る。ネコマタは今のスープレックスを食らいつつ、全身の力を尻尾に込 めて、ポルゴの首を絞めた。
勝負は決まった。タイガードラゴンスープレックスボルドーてポルゴのフォール勝ちた。 ポルゴか勝ち
名乗りを受けようと立ち上かった瞬間、膝から崩れ落ちた。 ネコマタのスリーパーの影響て気絶したの
た。 敗者のネコマタは、立ち上かると、セコンドの東條香織にウィンクをした。 その女は、もうポル
ゴ達の前に現れることはなかった。
306
復活!
あの初代グレートアジアか現世て復活した。 まことしやかに流れ出した噂は、遂にキングオヴギャラ
クシーの常連達にまて届いていた。 地球7本のベルトを世界て初めて統一した王者。
かつて、異界の死神という最強の殺し屋に、最愛の娘を人質に取られた。
剣で斬られそうになった娘を庇い、死に至った。
そう伝えられていた。
しかし、史実にはこう付け加えられた。 実は致命傷を追った初代グレートアジアは、当時の医学では
助からなかった。
そのため、冷凍保存されスリープしていた。 現代の科学力は遂に、初代グレートアジアを復活させる
に至った。 もちろん、細胞再生技術の進歩か背景にある。
現代に蘇ったグレートアジアはこう言った。
またキングオヴギャラクシーなんてお遊ひか開かれているのね。
本当のプロ格闘技、最強の格闘技はプロレスだけよ。
タッグ総合格闘技、潰してみせる。
あの、G (ジー・ダッシュ)の野郎まてまたノサバっているのね。
理由はわからないけと。ブチのめす。 現代か彼女の本来の時代から数百年経過していることを聞いた
初代グレートアジアは、彼女の子孫か1 3代目まて繁栄していることを聞くと、安心した。 しかし、次
に、彼女の直系の子孫てあるグレートアジア 13 世か、宿敵 G (ジー・タッシュ)と組んてい ることを知
ると、激怒した。
使えるタックパートナーを見つけて、この時代ても、今こそ G (ジー・ダッシュ)に雪辱してみせる。 プ
ロレスのみか、最高のプロ格闘技よ。 彼女の時代の主要な登場人物の子孫を探すと、一人たけ使えそう
な相方か見つかった。 ふーん、また銀河の大王の子孫や、ジュン・ハーンやキラー・L の子孫、それに
ジョー・ヨージの子孫か活 躍しているのね。 ても、私の一番弟子、シャック・ハロルドの子孫、マリ
ア・ハロルドちゃんか使えそうね。 一方、マリア・ハロルドは、遂に念願の片思いの相手、ライアン・
ヤマモト先輩とテートに成功していた。 一緒に映画を見た後、喫茶店にライアンを誘うと、マリアはラ
イアンに告白した。 ヤマモト先輩、すっと私、先輩のことか... コメン。マリア。俺は年上にしか興味か
なくて。マリアは、俺には昔から知っていて、まるて妹みたいに 思っている。妹に恋をするのは、俺に
はヘンタイにしか思えないんた。 そんな、ワタシたって、大人の魅力か... たから、そうたな。例を上け
ると、マダム・アワヤか、もうちょっと年上くらいじゃないと、俺は興味がわかないんだ。
わ、わかりました。
恥をかいて喫茶店を一人後にしたマリア・ハロルド。
彼女ほどの達人であっても、マダム・アワヤに嫉妬せさるを得なかった。
先輩の好みのタイプかあんな年増なんて、それに子供だっているのよ。 許せない。 寂しく、一人帰路
についたマリアの前に、いかにもなペイントをした女が山のように立ちはたかった。
あなたが、マリア・ハロルドさんね。
思わず構えたマリア・ハロルド。 あなたは、もしかして、あのグレートアジア13世の知り合いのひと
そうね。まあ、知り合いといってもいいかしら。
私は初代のグレートアジアよ。
あなたの先祖、ジャック・ハロルドに格闘技を教えた師匠よ。
どうして、今の時代に?
よくは、わからないわ。私もあの時、一度は死んだと思ったけと。 死ぬ前に、冷凍保存されですリープ
していたの。そして、現代の再生医療の力て、完全復活した。 私の宿敵 G (ジー・ダッシュ)かまたこの
時代にノサハっていることか、許せない。 マリア・ハロルド。私と共闘して、キングオヴギャラクシー
て一緒に戦わない? 私はプロレスラー、そして強過きて私の時代からレスラーの友達は一人もいなかっ
た。
307
夫と組んてもギャラクシーでは勝てなかった。最後に出した結論。それはシャック・ハロルドという逸
材 を育ててタックを組んて、ギャラクシーて雪辱。 ても、当時の世界7冠を統一した私ても、ギャラク
シーて優勝はてきなかった。 ても、今は違う。もう、目覚めたから。本当の刻を越えた強さを、マリア・
ハロルド。あなたにも伝授して 上ける。
マリア・ハロルドは、こう思った。 ー突然ね。私、今ムシャクシャしているから、とりあえす、この初
代グレートアジアの強さを試そう。ス トレス解消の相手になってもらおう。
わかったわ、初代グレートアジアさん。
あなたの強さ、私か試してあける。
そう言うとマリアは一気に第八段階まて気を高め、右手を弧を描くと、一気に気弾を放った。 強烈な
激風拳か決まったはずた。
初代グレートアジアは右手て今の気弾を握りつふした。
今の気の感じは、ムシャクシャしているのね。マリアちゃん、失恋でもしたのかしら? オバさんについ
てくれば、男の口説き方くらい教えてあけるわよ。
それか交換条件。
ダテに、オハさんは子供2人産んて、育てているたけあって、男の口説き方くらいてあれは、経験者は語
るわよ。好きな男の一人や二人くらい、オバさんが攻略法伝授してあげる。
図星だった。
そして、激風拳を片手て握りつぶしたというこのプロレスの女王にマリアはついていくこと決めた。
あの初代グレートアジアかマリア・ハロルドと共闘を決めた瞬間だ。
歴史の針は大きく動き出した。
308
素振り
ウェヌスジムを支配下においた初代グレートアジアは、さっそくマリア・ハロルドと強化練習をはし
めた。
いつもスクワットと木製バットの素振りの練習か、最低一二時間は続いた。
オバさん、じゃなかった、グレートアジア。野球じゃないんたから、素振りの練習は嫌だわ。
マリアちゃん、プロレスは、格闘技は基礎体力よ。
それにバットは有刺鉄線巻いて、ファイヤーつけて振り回せは、並のレスラーだったら、イチコロよ
デスマッチのルールの時しか、使えないけど。
初代グレートアジアのレスリング技術は超一流だ。あのユニバーサルレスリングの代表選手、初代パン
サーを倒した実力はある。
マリアちゃん、キック、サブミッションの次は?
スープレックス、かな?
はい、ではブリッジの練習。 いつまても基本の反復練習のみて、ツープラトンや危険な投け技の練習
をまだ初代アジアは導入しなかった。
アジアおばさん、いつも基本しかやらないけと、いいの?
人間、9割は基本と基礎体力よ。
ダテに7冠統一したわけじゃ、ないわよ。
あと、おばさんは、やめてね。
チャンピオンと呼んでくれても、いいわ。
わかったわ。アジアさん。
ところて、アジアさん、例の話だけぢ...
あぁ、ライアン先輩の攻略法ね。まあ、ないこともないわ。 でも、マリアちゃん、覚悟ある?この方法
は、必す相手を落とせるけと... ても、落とすってことは、確実に結婚まていっちゃうけど、いいの? ま
た恋愛とか楽しみたい年頃じゃない? 初代グレートアジアの男性攻略法は単純だ。テキトーに飲み会で
て気に入った男子を泥酔させてお持ち帰り。後は、同棲生活から、デキ婚に持っていくという作戦だ。
このスマートな作戦て、夫のタビトをあっさり落とした。 そんなことを知らないマリアは、経験を踏ん
ているグレートアジアについて行けば間違いないと確信して、今日もバットの素振りをしていた。
309
ユニバーサルルール
現世に完全復活した初代グレートアジアは初戦の相手に、トシアキ・フジワラを選んた。地獄の坊主
頭と呼はれる、ユニバーサルルール最強の使い手だ。弟子は、前回のギャラクシーの覇者、ジョー・ヨー
ジ12世がいる。
最初、ジョー・ヨージ 12 世との戦いをセッティングされた初代アジアは、こう答えた。 確かに誰の
挑戦でも受けるわ。ても、あのヨージの子孫でしょ。私の時代のヨージは、クレイジー柔道に敗れた A
級戦犯よ。それよりは、彼の師匠。そう、あの伝説のムエタイチャンプと関節技の鬼の血を引い ている
トシアキ・フジワラの方かいいわ。 アジアさん、相変わらす練習のときはスクワットと素振りか中心た
けと、本当にこんな練習たけて、あのテ クニックを持ったフジワラさんに勝てるの? マリアちゃん。
別におはさんは、たた野球か好きてバットを振っている訳しゃないわ。基礎体力を十分に 鍛え、体幹を
引き締めるために、練習をしているの。そろそろ、試合前のメニューに移るわヨージゃあ、と りあえす
関節技のスパー5ラウントから行きましょう。 初代グレートアジアはマリア・ハロルドとの関節技のス
パーて、一本も取られなかった。しかも、毎回極 め技を確実に変えてきた。相手の30手先の動きまで読
んているようだ。
経験がものを言うのよ。マリアちゃん、ダテにおはさんは年をとってないわ。 ユニバーサルルールて
の初代グレートアジア対トシアキ・フジワラの試合か、始まった。
フジワラはキックトランクスのみ、レガースは着用しない。 初代アジアはオープンフィンガーにレガー
ス、それに腕にサポーターを巻いていた。 ゴングかなった。両者は向かい合う。
フジワラかムエタイベースの高い構えから、音速のジャブを放つ。 初代アジアは、バックステップてロー
プに身体を振ると、反動を利用して、強力なラリアットを放つ。
一発目がフジワラを捉える。さらに背後からカウンター気味の二発目のラリアットかフジワラを襲う。
二発目のラリアットをフジワラですロック(ワキ固め)に捉えたフジワラ。
今の攻防て観客のボルテージが最大限に上昇していた。 初代アジアはワキ固めを体を回転させて切り
返した。その後、エヒを使って距離を取り、スタンド勝負に 出る。
フジワラかしなるローキックを放つ。 初代アジアはお構いなしに、仁王立ちのまま、強烈な張り手てフ
ジワラの顔面を打ち叩いた。 一瞬、怯んたかに見えたフジワラは、反動を利用して、初代アジアのペイ
ンド顔に、強烈な頭突きを放った。 このような勝負かしたかった。数百年待った甲斐はある。初代アジ
アは実感していた。 怯むことなくみにいくアジア。ますは強烈な腕力を利用した、パイルドライバーて、
フジワラをマットに突き刺す。
フォールには行かない。いや、ユニバーサルルールはフォールはない。決着は KO かギブアップのみ
た。 明らかに初代アジアはクラシックスタイルのレスリングの可能性を確信していた。別に今のパイル
トライ ハーを、サンターファイヤーパワーホムを代わりに使っても良かった。しかし、派手な大技に頼
らす、きっ ちりと一つ一つの技を決めていく。
意外にプロレスの基本に忠実なレスラーか、そこにいた。 いったんニュートラルコーナーに身を引いて、
立ち上かるフジワラを待つアジア。
フジワラは今度は強烈なエルボーでアジアを攻め立てる。
アジアはエルホーをかっちり受け止めるとショルタースルーてフジワラを投け、そこから、一瞬の隙を
つ いてチキンウィンクフェースロックに捉えた。 会場かさらに沸き上かる。この戦いの技術レベルの高
さか、観客にも完全に伝わっていた。 フジワラは、ついに脚を伸はしてロープにタッチした。あのフジ
ワラかロープエスケープに頼った瞬間た。 両者スタンドて再ひ勝負を開始する。 ジャブから左ミドル、
さらにフジワラの右ハイかアジアの首をかすめた。 アジアは今の右ハイをかっちりキャッチして受け止
めると、そのままキャプチュートスープレックスて後 方にフジワラを投け放った。 アジアは今のキャプ
チュートの後、サイトからチキンウィンクアームロック(腕からみ)を決めた。フジワラは冷静にポインt
オをすらしつつ、ブリッジを織り交せて、今の技を躱した。
またスタンド勝負だ。
310
フジワラは強烈な頭突きから、エルボーの連打に移行した。三発目て、回転してからのエルホーを放っ
た 瞬間、初代グレートアジアはフジワラをキャッチして、そのまま背後に強烈なブリッジて投け放っ
た。 バックドロップ ボルドーか決まる。
そのままグラウンドに移行したアジアは今のバックドロップ の影響て脳震盪を起こしかけているフジ
ワラ の喉元に膝をあてかうと、ストランクルボルドーに移行した。完全に決まった。 フジワラはプラ
イトからギブアップをしなかった。 相手か気絶したのを確認したアジアは、フジワラの身体を抱え上け
ると、そのまま情け容赦のないフレー ンバスターで垂直落下式に落とした。
会場にいた誰もか、アジアの殺気を感じた。
ダウン、ワン、ツー、スリー、フォー、ファイブ....テン。
勝者、初代グレートアジア。
マイクを取ったグレートアジアはこう言った。
今の勝ち名乗りだけと、「初代」はいらないわ。この世界に最強のグレートアジアはただ一人て十分。
私の子孫が頑張っているみたいたけど、今度のキングオヴギャラクシーてどちらが本物のグレートアジ
アか決めれはいいわ。プロレスはいつたって最強のプロ格闘技よ。次のキングオヴギャラクシーで、そ
の事実を証明します。
会場のボルテージが最高潮に達した瞬間だ。
311
信じられない
やっぱり、アジアおばさんか最強なんて信じられない
それは、あのフジワラさんには勝ったけと やっぱりスタイルは古いし
おばさんのスタイルって、やっぱり できあいの相手に、できあいの技て決めて、みたいなスタイルじゃ
ないの? やばかったら、有刺鉄線バット
図星でしょ?
それは、歴代アジアは最強のプロレスラーだった。だけどそれは、その時代に合わせて進化しただけ
初代アジアか最強なんてわけないでしょ
バット振って、毎日 野球じゃないんたから
それに、どうせ、ライアン先輩を落とす方法だってどうせ、色仕掛けて、でき婚狙いでしょ
もうついていけません、こんなオバさん
いや化石
初代アジアに、みらい、は有りません
まだ13代目のアジアの方が未来がある、そう思うわ
マリア=ハロルド
312
BELIEVE ME!
DEAR MARIA
マリアちゃん、別にオバさんは野球か好きてバットを振ってる訳しゃないわ それに、プロレスか最強の
格闘技、っていう信念も捨ててない それはクレイジー柔道やサバットとか、いろいろアマチュア格闘技
はあるけれど最強のプロ格闘技はプロレスよ
信して、私について来て きっと、ライアン先輩の攻略法も、教えてあげるから
人は時に何のために生きるか疑問になることかあるわ
でも、私の答えは、一つ プロレスか最強の格闘技であることを証明する
それは、いろいろな格闘技か銀河には存在するわ てもね、信して プロレスか、プロフェッショナル=レ
スリングが最強のプロスポーツであることを
私は決して動じない
信念は捨てない
それは、男は時に、色仕掛けにたまされることはあるけど
プロレスはだまされない、動しない
それにクレイジー柔道にも負けない!!
信じて!私を!そしてあなた自身を!
最強のタッグチームか初代グレート=アジア&マリア=ハロルド組てあると私たちは、きっと証明してみ
せるキングオヴギャラクシーに必す優勝して、プロレスか最強のプロスポーツてあることも
誰の挑戦でも受けるわ
オバさんを信して
マリアちゃんも恋愛成就の夢たけは、叶えてあけるから...
オバさんはダテに子供2人育ててないから... ね
313
FINAL BOUT THE GREAT ASIA MUST GO
初代グレート=アジア、マリア=ハロルド組と G (シー=タッシュ)、13代目グレート=アジア組のキン
グオヴギャラクシー特別試合か組まれたのは、月の赤いある日の午後だった。 ペインド姿のオバさんこ
と初代グレート=アジアと若き美人格闘家マリア=ハルロトのチームか赤コーナーに構えていた。
一方、青コーナーには G'、13代目のグレート=アジアかチームダブルエックスとしてリングインする。
マリアちゃん、今回の勝負、オバさんに全部任して、奴ら、一人て仕留めるわ。
ゴングが鳴る。
一気にダブルラリアットで両者に襲いかかる初代アジア。
G がラリアットを受け流すと、リングインする。 左ジャブから右のコークスクリューミドルに繋く
G。
初代アジアがドラゴンスクリューで切り返す。
G は冷静に足関勝負を見切るトーゴーナーの13代目のアジアとタッチする。 アジア対アジア。
初代は冷静に間合いを詰める。
13 代目は、冷静に掌底をかます。 初代アジアは一気にタックルに行くとリフトする。 そのまま、グラ
ウンドの展開に持ち込む。 ねちっこい展開て、ガードの上からコツコツとパンチを打ち込む初代。 見
かねて、G か介入する。すかさすマリアかフォローする。 権利を持った両者かスタンド勝負に移行す
る。 初代は、ローアンクルのフレーンバスターて 13 代目を投けつけた。
13 代目はプロレスラーだった。 相手の技を全て受けきった上て、勝負を付ける。 そういうファイトス
タイルた。
初代は違った。
必要に応して、パンクラ(チオン)というスタイルだ。 相手の実力に応して全力で決めれる時は決める。
それか、総合戦における初代アジアの戦略だ。
フレーンバスターを受けた 13 代目アジアの動きか止まった。 初代アジアの必殺技、グラウンドコブラ
とドラゴンスリーパーの合わせ技、 グラウンド冬木スペシャルか決まった。
G の介入を待つまてもなく、13 代目は気絶していた。
2 対 1だ。
マリアちゃん。G を痛めつけて。オバさん、期待してるわよ。
タッチを成功させる初代。
マリア対 G だ。
限界まて気を高めた勝負た。 両者ともに髪の毛を逆立ち、一気に勝負をつける。
G が両手の掌から気功波を放つ。
マリアは瞬間移動て気功波を避けると、G に強烈な右のフックて振りかぶる。
G は今のフックを受けるとそのままキャプチュートて切り返した。
ボルドーに行った G を初代アジアかノータッチて踏みつける。 そのままストンピンクの嵐だ。
G がされと、立ち上かった。
強烈なラリアットて初代か G を貫通した。
マリアもすかさすアックスボンバーを狙う。
いいのよ、マリアちゃん。
いまのラリアットて勝負は、着いたから。
最強は、最強のグレート=アジアは一人て、いい。
そして、キングオヴギャラクシー=最強のプロレスラー。
全て、証明したわ。
あとは、約束ね。
マリアちゃん。
リングサイトを見て。
そこには、ライアン=ヤマモトか応援していた。
314
ライアンは真顔てこう言った。
初代グレート=アジア、あなたに惚れました。
バカいってるんしゃないよ、青年。あなたを愛する乙女は、ここにいるわ。
マリアちゃん、今こそ、ライアン先輩にアタックよ。
ライアン先輩、私。
ライアンは何か言おうとした。無言で初代アジアは殴り掛かった。
わかったよ。あー。俺はやっぱり。マリアじゃないとダメだな。
よろしく。
こうしてマリア=ハロルドとライアンは、ささやかな交際を始めた。 初代グレート=アジアはキングオ
ヴギャラクシーで宿敵 G'に復讐を果たした。
全てが終わる。そして、始まりはこれからだ。
13 代目のアジアはこう言ったという。あの化石め、グレート=アジアは現在進行形よ。 過去の遺物
は必す仕留めてみせる。 初代はこう言った。伊達にオバさんは、野球のバット振っている訳しゃない
わ。 誰の挑戦ても受ける!それが、たとえデスマッチでも。こうして、初代グレート=アジアと 13 代目
のグレート=アジアの抗争は始まった。
315
至高の使い手
それぞれが平和な生活を満喫していた。
地球圏の経済成長率も4%を越え、まぁまぁであった。
そんな時、突如、西郷詩郎の前に、若き使い手か現れた。
あなたが、西郷先生ですね。私、クリス=ヤマモトと申します。
あなたと一度、お手合わせ願いたい。
承知。
構えた西郷の目の前て、地へたを這うような超低空タックルから、得意の立ち技を封して、寝技に引
き込むクリス。
ぬぅ。
西郷は、クリスの腰のあたりを掴んで、グッドポジションをキープしようとした。
すかさず狙い通りの膝関節を取りにいく、クリス。
一瞬の隙を衝いて、クリスは膝十字を決めた。
サンボべースの戦い方だ。
そして、高専柔道も入っている。 西郷の右膝が伸びきった。
しかし、軽く西郷の膝を叩くと、クリスはクリーンブレイクをした。
(別に殺し合いに来た訳しゃない。相手のレベルかわかれは、いいんだ。)
また西郷と立ち技の間合いに入る。
またタックルか、そう思った瞬間。
クリスはオーソドックスのまま、西郷と組んだ。
まるで柔道の乱取りのようだ。
クリスか右の脚払いを放った瞬間、西郷は身体を反転させ、一本背負いの体勢に入った。
そのまま、担ぐ。さらに右脚でクリスの右足首を刈り払う。
山嵐だ。
冷静にクリスは腰を下ろして、バックドロップで今の壮絶な山嵐を切り返した。
脳震盪を起こした西郷が立ち上かった瞬間、両の掌に気を集中させ、強烈な気弾を放とうとするクリ
ス。
はーっ!
西郷はガードしつつ、思った。もはや、完敗か。
西郷とクリスの周りが、今の気功波の影響で空気が歪んでいた。
爆発が起こる。そう思った瞬間、指を鳴らして、オーラをかき消すクリス。
西郷詩郎先生、私か伝え聞いていた通りの至高の使い手ですね。
安心しました。
クリス=ヤマモトと申したな。
あなたは、あのライアン=ヤマモトの親族か?
はい、息子です。タイムマシンを使って、18年先の未来からやって来ました。
未来の世界ては、火星人の生み出した強化人間のおかげで、地球圏の人口は半減。
父のライアン=ヤマモトは、ポルゴさんと火星に殴り込みに行きましたか、気の技術か十分に使えない
せいで、志なかばで倒れました。
私の時代の西郷師範は、心臓発作て亡くなっています。
私の母のマリア=ヤマモト(旧姓ハロルド)は、一族に伝わるタイムマシンを私に託してくれました。
「お願い、このマシンで全盛時代の西郷さんとポルゴさんに会って、奴らの攻略法を探ってきて。」
確かにクリス=ヤマモトはライアンの格闘技術(グラウント+サバット)に加え、
マリア=ハロルドの技術 (古武術+操気術)をマスターした至高の使い手に思えた。
クリス=ヤマモト、あなたの技術でも火星人の生み出した強化人間に勝てないのか?
316
そうです。例えるなら、あのG'が チームてリミッターを外して、有刺鉄線バットを持ったグレート=
アジアと暴れ回っている。そんな状態です。また G 、一匹ならタイマンで倒せる。
しかし、あれが集団でチームを組んている。さらに、人類最強のプロレスラー、グレート=アジアが
有刺鉄線バットを持って、タン スしている。そんな救いようのない状態か、強化人間の技術、応用クロー
ニンクによって完成したんです。 未来ては、サコレベルの強化人間ですら、ギャラクシーウェーブか使
えるのです。唯一の救いは、強化人間達に、地球を崩壊させないよう、最低限のリミッターが掛けられ
ていることです。
ポルゴの息子がいたたろう。彼はどうしているのだ。未来世界では?
テツオさんですね。テツオさんは、10人の強化人間達から一斉にギャラクシーウェーブを放たれ、絶体
絶命の危機に陥っていた私を、助けてくれた恩人です。
でも、あのテツオさんても、仲間を守るのか精一杯で、防戦一方です。
ある日、父が倒れた時に、母はこう言ったのです。
昔、西郷詩郎という使い手がいて、その人かもし心臓発作で死ななかったら、この状況を打破する方
法を生み出したかもしれない。
西郷師範は、あのポルゴさんよりも実力が上な時期があった。
お願いです。西郷師範、とうか私を鍛えて、あの強化人間の群れを仕留める実力を身につけさせてく
ださい。
うーむ。
今の時代には、ポルゴもライアンも健在た。ますは彼らに師事すべきではないか?
父は、気の技術か使えません。
ポルゴさんは、確かに強い。
しかし、強化人間達とは互角の実力です。
彼の実力では、奴らを倒すことはできないです。
本当の柔の道を知っているのは、西郷先生だけだと思います。
こうして西郷詩郎は未来から来た青年、クリス=ヤマモトと修行の生活に入った。
317
シャノワールの恋
前銀河の大王、ソレイユ=シャノワールは、特命を帯びて、地球圏に降下した。
地球サイズに最適化して降下していた。
つまり彼は、一般の地球人から見ると完全に黒猫であった。
今回の部下からの報告は、地球圏にポルゴでもライアンても西郷でもない、新しい使い手が現れた。
その男の謎を明らかにすることか彼の帯ひた特命てあった。
ネコ様の姿を借りて、地球圏を旅することは以前もあった。
その時に、彼はサバットの技術を見よう見まねで習得していた。
うーん、困ったな。ますは、そうだニャ。マリア=ハロルドの家でも訪ねて、情報を得るかニャ。
あらかしめ、銀河帝国から地球圏に先行潜入していた部下に車でマリア=ハロルドの家まて送らせた。
ハロルド家はそれなりの名門である。庭には、美しい白猫がいた。もちろんシャノワールの目には、
その白猫が異性てあることは明白であった。
は、はじめましてニャ。
ボク、ソレイユ=シャノワールって言いますニャ。
ふーん、ワタシはハロルド家に住んているカテリーナっていうの。
カ、カテリーナさんですか。お会いてきて光栄ですニャ。
シャノワール?この辺では見かけない顔ね。
信じてもらえるかわからないけど、ボク、銀河帝国という異国からやってきました。できれは、この
家のマリア=ハロルドさんにご紹介していただきたいのですか?
マリアちゃんは、今、彼氏とデート中よ。あと30分くらいしたら、戻ってくると思うわ。
それまで、ワタシのシマでちょっとお散歩ても、とう?
願ってもないことですニャ。
ソレイユ=シャノワールは通常、一人称は、我が輩を使う。
彼がボクという言葉を使うのは、気に入った相手の前でのみである。
シャノワールとカテリーナが散歩に行っている間、さらに、ハロルド家に訪問者が現れた。
ピンポーン。
す、すいませーん。マリアさんいますか?ボク、クリス=ヤマモトと言います。
マリアの母が現れた。
ヤマモトさん?あのライアン君の親戚の人?
まぁ、一応親戚です。はい。 厳密には家族であり、目の前の女性は、幼い時の記憶を辿れは、間違い
なく、亡くなった祖母の生きている 時の姿であった。
しかし、自分か未来から来たという事実は、この女性はまだ理解できないたろうと思った。
たとえ、若き日の母であっても、理解には苦しむだろう。
いま、マリアはライアン君とデートに行っているよ。いつも喫茶店、ブラックキャットに行ってみた
ら、どうだい?
はい、わかりました。
ブラックキャットか。あそこは、ジャズの名曲をかけることて有名な店だ。
クリスはブラックキャットを訪ねた。
店内には仲睦ましく語り合っているカップルかいた。一瞬だけ、わさとオーラを第八段階まて高めて、
マリアにサインを送った。マリアの眉か反応した。
テーブルに行くとこう切り出した。 ライアンさんとマリアさんですね。僕、クリス=ヤマモトと申しま
す。はしめまして、と言うべきなのでしょうね。
好青年のライアンも、デート中にいきなり面識のない青年から話し掛けられて、若干不機嫌な表情を
した。
マリア=ハロルドは、気付いた。
318
勘のいい彼女だ。オーラの感覚や、ヤマモトというファミリーネーム。そして、自分に将来男の子か生
ま れたたら、クリストファーかクリスと名付けようと思っていたことを思い出していた。
クリス君、よかったら、掛けて。
最初に話しかけたのは、やはりマリアてあった。若き日の母か、色白てウェーブかかった銀髪で、想像
通り の人だった。若き日の父も、写真て見た通りの男だった。
君は俺達のことを知っているな。それに、会ったこともないか、何か懐かしい感じがする。
そう言って頂けて、嬉しいです。信してもらえるかどうか、わからないですけと...
話してみて、クリス君。
私は、18年後の未来から来た、あなた達の息子です。
一瞬、ライアンとクリスの顔を眺めて、赤面するマリア=ハロルド。
それは、ライアンと結婚して、子供が欲しいとは思っていたか、まさかやっと恋人同士になって、せっ
かくのデート中に息子か未来から訪ねてくるなんて。 そういえは、マリアの家にはタイムマシンがある、
とか言っていたよね。
うん、たぶんあのポンコツを改修したのね。 ふーん、何で、わざわざ未来から過去に戻って来たの?
また、自分か生まれる前の世界に? 未来は地獄でした。火星人の生み出した強化人間が暴れて、地球の
人口は半減。 (まさか、俺かいるから、未来も大丈夫とまては言い出せないライアンであった。)
一応、将来の俺達はどうなってるんだ?
父さんは、火星に殴り込みに行って、返り討ちにあいました。
何とかポルゴさんが、頑張ったおかけで、一命を取り留めました。
母さんは、タイムマシンを改修して、私を、未来世界にはいない至高の使い手かいた時代まで、タイム
スリップさせてくれました。どうにか、その使い手のもとて修行して、強化人間を倒す手段を見つけて
ほしいと。
その使い手って、まさか、あの西郷詩郎さんのこと?
そうです。
私は、今、西郷師範のもとで修行中の身です。東北地方から、やはり若き日の両親、つまりあなた方
に会ってみたくなって、やって来たのです。 そっか。話か長くなりそうね。母さんと交渉してくるわ。
クリスがドキオにいる時は、私の家に泊まれるように。
こうして三人は、マリアの家に向かって歩き出した。
一方、カテリーナと散歩テート中のシャノワールは、一瞬,喫茶店ブラックキャットの方向から、強烈
な オーラか発生したのを感し取った。
とうしたの?シャノワール?
いま、一瞬、非常に強い気配を感しましたニャ。
そんなこともわかるんた。凄いね。
しばらくして、ライアン達かマリアの家に向かって歩いて来た。 カテリーナさん、マリアさんにサイン
を送ってほしいニャ。
白猫のカテリーナかマリア=ハロルドの足下にすり寄っていった。
一瞬、カテリーナをなでるために、マリアはしゃかんた。 しゃかんたマリアとシャノワールの目かあっ
た。
すかさす、シャノワールは直立して、こう話しかけた。 ライアン、マリア、お久しふりニャ。我か輩は
ソレイユ=シャノワールてある。 マリアはこの黒猫か、元銀河帝国議長を務めたネコ族の男てあること
理解したか、サイスか黒猫と変わら ないため、わざとこう話しかけた。
めずらしい、しゃべる黒猫。カテリーナの彼氏にしちゃおうかしら?
一瞬、照れてしっぽも直立したシャノワール。
ライアン、その青年は誰てあるか?
あぁ、元大王。彼はクリス=ヤマモト。未来から来た、俺達の息子。
一瞬、照れるマリア=ハロルド。
一体、とういうことニャ? こうしてシャノワールは特命の相手とコンタクトすることに成功した。
319
貴方では勝てない...
ライアン、マリアとクリス達にシャノワールは合流した。 ふーん、未来の地球圏にはそんな敵か湧い
たんだ。 だったら、我か輩か一緒にタイムマシンて行って、鳴猫拳(ニャン拳)で始末しても、いいニャ
貴方では勝てないと思います。
クリス=ヤマモトは言った。 君はまた元銀河帝国議長の実力を知らないニャ。それに、今は地球のネ
コ様の姿をしているけど、我か輩、 本来は君よりも上背はあるニャ。猫背だけだ。
一瞬、またクリスが全身のオーラを解放した。
第八段階を越えた、可視てきないオーラだ。
昔、パープルパンサーという使い手かいたと聞いています。彼もせいぜい第八段階、つまり紫色のオー
ラのレベルだったんでしょう。その上が、可視できないオーラ。さらにその上は、オーラを練って、雷
撃や火炎のように具現化すると同時に特殊効果を混せる。
でも、それくらいだったら、火星人の生み出した強化人間。彼らだっててきますよ。それに、奴ら人数
か一 以上いる。地球人とわかったら、惑星を消さない程度に気を使った攻撃を仕掛けてくる。 それは
ネコ、いやネコ族の貴方か、一人てはなく、まあ 1000人もいれば、話は別でしょうか。
毒を制するには、毒をもって、という諺もあるよね。
強化人間の G'とグレート=アジア 13 世のチームを未来に送り込んて、火星の強化人間を始末させた
ら?
いや、それも無理です。
火星人の生み出した強化人間は、G' のクローンを大量に生み出して、さらに強化して、リミッターを開
放 しています。オリシナルの G やグレート=アジアても、彼らには敵わないてしょう。 結局、私たけ
てとうにかなる問題てもないのですか、それてこの時代の至高の使い手、西郷師範に教えを乞 うことに
したのです。 そういえは、以前三代目の大王か西郷師範と修行をして、具現化した秘太刀て相手を斬っ
ていたニャ。あ れだった。ら、ギャラクシーウェーブを相手か出す前に、速攻て居合いをかけれは、何
とかなるかもニャ。 私も以前母、つまり将来のマリアさんから、二代目パープルパンサーか使ったとい
う冥王拳の型を習いま した。あの拳法は自分の体力、生命エネルギーと引き換えに、相手を倒す拳てし
たか、もし、自分の体力・ オーラを第八段階以上の可視てきない状態に保ち、かつ日本刀のようにオー
ラを具現化して攻撃てきれは、 そして冥王拳とは違って、潜在能力以上の力を引き出しつつ、なおかつ
リスクなして戦えたら、話は違うと思います。
そんな戦法かあるのかニャ。我か輩だったら、銀河系の全殺し屋に現金積んで、火星の強化人間の撲
滅を依頼するニャ。その方か手っ取り早いニャ。 強化人間たちは、特殊なシャケットを着ていて、武器
を使った攻撃はほとんと通用しないのです。それに、 気を使った攻撃は相手の方か上手な上に、多勢。
殺し屋に頼んても、返り討ちに会うのかオチたと思い ます。 一体、クリス=ヤモモト、君は西郷師範の
所で修行して、未来に戻って火星の強化人間を追い返すことができると思っているのか?
それは、1割くらいは。秘策はあります。やはり、この時代て修行した上で、単身、火星に、奴らを生み
出した元凶に殴り込みに行きます。
クリス=ヤマモトの決意は固かった。 シャノワールはネコマタ、源九郎といった使い手を思い浮かへて
いた。 この時代には、プリンス=ネコマタや東郷源九郎といった使い手もいるニャ。 ネコマタさんは、
私たちの時代には老衰て物故しています。東郷源九郎は娘さんを庇って、火星の強化人 間のギャラクシー
ウェーブをまともに食らって、瀕死の重傷を負いました。 それに、またこの時代には、地球圏には、最
後の希望かあるニャ。 アルセーヌ・ポルゴさんのことですか?
彼は、火星の強化人間とは互角です。彼のクローンか 10000 人いれは、あるいは戦局は変わってくるか
も しれません。 青年。クローンや強化人間は邪道たニャ。我か輩ももと銀河帝国議長として協力する
ニャ。人間は人間と して、尊厳を維持して戦うへきニャ。結果は、きっと必すついてくるはすニャ。 貴
方ては勝てないと全否定したクリスを、励ます器量を見せるシャノワール。 クリス=ヤマモトは未来世
界を救う救世主となりうるのか? 新しい時代に希望を再ひ甦らせるへく、クリス=ヤマモトは西郷師範
との修行に全てを賭ける決意をして、 マリア達の住むトキオを後にした。
320
秘策
西郷詩郎とクリス=ヤマモトは火星の強化人間を倒すための修行をはしめた。 西郷師範は、柔道と合
気柔術を極めた使い手た。 彼は気を技に取り込むことは行うか、気自体を具現化して闘うことは好まな
い。 みに特化した戦いをする。そして、専守防衛て相手の力を利用して、時に腕を極め、 投ける。それ
か武道のあるへき姿たという。 しかし、火星人の用意した強化人間は、先手必勝タイプの戦いをする。
そして、気を具現化して、放出する。さらに、気を変化させ、雷撃のように、火炎のように自由に練っ
て用いる。
クリス=ヤマモトは想った。
かつて西郷とタックを組んた母が勧めてくれた西郷師範との修行。
どこに解があるのか?
もし修行で、G と 13 代目グレート=アジアのチームダブルエックスを秒殺できるレベルにまて到達
すれば、あるいは?リミッターを外した強化人間のチームをも仕留めることかてきるかもしれない。 西
郷師範は、古式柔術の型たけてはなく、古式剣術の型も授けてくれた。 もともと武道は柔と剣の道、両
の型を極めてバランスか取れていた。 現代総合格闘技は素手勝負た。そのため、剣術の型の修行は忘れ
られている。
円。
円運動を応用して、相手を投げる。その動きも、本来は剣の修行と連動している。 クリスはライアン
の血たけてはなく、マリアの血を継承している。 気を具現化して闘うこともてきれは、フィールトとし
て利用することもてきた。 狭い範囲てあれは、瞬間移動すら可能てあった。 そんな彼ですら、勝てな
い相手。火星の強化人間の集団。
西郷はクリスに殺陣の型を示した。
相手か集団でいる時に、必殺技の山嵐や山嵐巻き込みでは、対応しずらい。 もっと簡単な相手の力
を利用する技て、まるてフリップするように相手を投け飛はす。
たとえば、小手返した。
それと雷撃を混せる。 相手をんた瞬間、具現化した気を変化させ解放する。相手の手首の関節を極め
て投ける。 そのまま、相手を気て制する。 かつて初代グレート=アジアの夫、タビトは全身の気を解
放して嵐を引き起こすような技を用いたという。 別に相手か光線技のギャラクシーウェーブを愛用する
なら、同士打ちに持ち込むこともてきる。 惑星クラスを破壊しうる強烈な技は、同士討ちに持ち込むの
か鉄則だ。
西郷は木刀を持って、剣術の型を指導した。
クリスは具現化した刀て、西郷の木刀を受けた。
どこかに解はある。それを探していた。
クリスは西郷師範との修行て、確実に腕を上けていた。 柔道てもない、サバットでもない、柔術でもな
い、サンボてもない。そして総合ても U スタイルてもない独自の格闘術、それはもはや武術の域に達し
たものを身につけていた。
あるいは、彼てあれは、未来世界の救世主たりうるかもしれない。 西郷師範も、確信をいたきつつあっ
た。 しかし、彼の前に最大の壁か立ちはだかった。 現代世界においてキングオヴギャラクシーを制し
た伝説の使い手。
アルセーヌ・ポルゴ。
ソレイユ・シャノワール。
東郷源九郎。
G (ジー・ダッシュ)。
四天王と対決して、全員を倒すことが目標であると西郷師範はクリス=ヤマモトに告けた。
321
アルセーヌ・ポルゴ
ポルゴとクリスのシングルマッチが組まれた。
クリスのセコンドには西郷、マリア、ライアン。 一方、ポルゴのセコンドにはテツオ、ヨージ、ジュ
ン。 未来に関わる全ての事実を知らされた後、無言で挑戦を受けることにしたポルゴ。
一方、西郷師範との地獄のような、それていてどこか充実した修行を終えたクリス。
負けられないのは両者ともに同した。ポルゴもついに可視てきないレベルの気を習得していた。
そこにはパープルパンサーを越えた男の姿かあった。
打撃、グラウンドの共に隙のないライアンの技術を引き継き、さらに組み技の西郷のもとで技術を完成
させたクリス。
一方、幾度かの死闘を、死線を越えてきた現代世界最高の使い手ポルゴ。
ゴングが鳴る。
ポルゴは冷静にアップライトに構える。
クリスは全身のオーラを変化させつつ、低空タックルに行く。
並の使い手であれは、今のタックルでテイクダウンされることは確実だ。
そして、気の使い手であっても、具現化され変化した気に触れた瞬間、痺れてしまう。
ポルゴは低空タックルにカウンターのローフローを合わせた。
キックを合わせると、キャッチされ、そのまま片足タックルに持ち込まれる。
ここは体勢を低く保ち、殴りに行くのもいい考えた。
今のパンチを額に受け、なおも間合いを詰めるクリス。
ポルゴはタックルを潰すと、いったん間合いを開いでスタンド勝負を要求する。
そこをなおもタックルを狙いに行くクリス。
ポルゴはキャッチを恐れないで、強烈な右ローキックをタックルに合わせた。
タックルに行ったクリスの顔面をポルゴのローか捉えた。
さらに左の膝を合わせるポルゴ。
マリアの目には、今の膝が当たった瞬間、ポルゴかオーラを込めているのかわかった。
発頸だ。
もう一発、右の膝を合わせようとしたポルゴ。
その瞬間、ポルゴの背後に、クリスが立っていた。
瞬間移動だ。
ポルゴは冷静に右肘にオーラを込めて、真後ろにいるクリスを狙い打った。 クリスはポルゴの肘打ちを
読んて、ブロックした。 今の肘打ちをキャッチして、チキンウィンクに捉えるクリス。 一方、ポルゴの
左腕をハーフネルソンに捉えたクリスは、そのまま後方に反り返って、ポルゴをスープレックスて投け
た。
掟破りのタイガードラゴンスープレックスた。 そのまま、オーラを練って、変化させ、ポルゴの全身を
捉える。
受け身のしづらいクラッチで不意に後方に投けられ、そのままオーラを変化させ身体の自由を奪われた
ポルゴ。ボルドーには行かないクリス。そのまま、ポルゴを投けっ放した。 ポルゴは今のタイガードラ
ゴンスープレックスて投けられた瞬間、全身のオーラを高めて防御した。タメー シを最小限に抑えたか、
それても、大タメーシを受けた。 仕方なく、老獪にリングアウトして、場外カウントの間に体力をキー
プしたポルゴ。 場外カウントナインてリングに戻る。
セコンドのジュン=バードか囁いた。 もう、ここはフェニックスファイナルアタックを使って、勝負に
出てくたさい。
ポルゴは軽く頷いた。
アップライトに構えるポルゴ。ジャブの連打から、右のコークスクリューミドルを放つ。 ブロックする
クリス。
次の瞬間、左の踵にオーラを込めて、左の後ろ回し蹴りを放つポルゴ。 これもブロックするクリス。た
322
か、今のキックのミーティンクの瞬間、オーラは相手を痺れさせる雷撃と して変化していた。
さらに右ハイを放つポルゴ。クリスの顔面を直撃した。 今の右ハイのミーティンクの際、オーラを炎の
ように具現化したポルゴ。 ヨージかセコンドから指示を送る。
ポルゴさーん、奥の手です。
今の打撃の直撃を受けて、怯んたクリスと間合いを詰めるポルゴ。 そのまま、閂のようにクラッチを作
ると、後方に反り返った。 フロントタイガードラゴンスープレックスホールドで、全身のオーラを雷撃
のように変化させ、そのまま 投けた後も、クラッチを維持したままホールドするポルゴ。 観客かワン、
ツー、スリーとカウントをはしめた。 スリーカウントか入った瞬間,クリスの身体は消えていた。 瞬間
移動でスタンドの姿勢に戻ったクリス。
ポルゴもハンドスプリングの要領で立ち上がる。
奥の手を使ったポルゴであった。
両者ともに驚異的なスタミナだ。
一瞬クリスか両手を背後に引くと、全身のオーラを掌に集めて、前に押し出した。 強烈な気功波か会
場を包んた。 点滅か終わった瞬間、今の気功波を受けて硬直しているポルゴに、音速の低空タックルを
使い、ポルゴから テイクダウンしたクリスの姿かあった。
ポルゴは冷静にガードポジションをキープしていた。 クリスはパスガードに行くそふりも見せす、拳に
オーラを込めて、上からポルゴにパウントの嵐た。 ポルゴは冷静に今のパウントを見切ると、クリスの
右腕をんて、両足て挟み込んた。 腕ひしき逆十字固めて攻めるポルゴ。 完全にクリスの右腕か伸ひきっ
たと思った瞬間、またクリスは瞬間移動てポルこと身体を入れ替えていた。 ポルゴは最後の手段に出
た。 全身のオーラを解放して、可視てきないオーラてリング上の空間全てを覆った。 これて、クリスか
気をフィールトとして利用しても、すくに気配を察知して攻撃することかてきる。 いったん、間合いを
開いでスタンド勝負に出る両者。
クリスは、オーラをフィールド上に配置して、自由に瞬間移動をしてポルゴにまるで分身したかのよう
に襲いかかった。 ポルゴは、しかし、的確にオーラの気配だけて、クリスか現れた所をストレートや
シャッセて打ち抜 いた。
小細工はいらない。 クリスは全身のオーラを可視てきないレベルにまて高めて、左フック、右ストレー
ト、左アッパーとパンチ のコンビネーションを放った。
ポルゴは、初段の左をダッキングで躱したものの、右には右を合わせた。カウンターだ。相手か左アッ
パーを放つのはわかっていたか、身体か勝手にフルスインクの右フックを放っていた。確実にクリスの
こめかみを射貫いた。
ダウン、ワン、ツー、スリー、フォー、ファイブ... 立ち上かったかに見えたクリスは、そこで再ひ倒れ
た。
ポルゴは、しかし、冷静に最後まて立っていた。 セコンドのマリアかタオルを投けようとするのを、ラ
イアンが無言で、涙を浮かべながら、押さえた。 シックス、セフン、エイト、ナイン、テン。
勝者、アルセーヌ・ポルゴ。
死闘に決着はついた。
四天王の一角は、崩れなかった。
323
ソレイユ・シャノワール
ポルゴ戦を終えて、控え室で涙を流すクリス。 これじゃあ、これじゃあ、ボクは未来を救えない。
西郷は言った。
今の戦いにもヒントはある。
今は、まだポルゴの方が強かった。それだけだ。
セコンドのライアンはこう言った。 いや、今の試合は俺か今まで経験した試合の中でも最高レベルの
戦いだった。 今は、まだ言えないけと、未来を救う秘策はある。
マリア=ハロルドも言った。 私も、ライアン先輩と同意見よ。またこの世界には、クリスの他にも、
希望かあるわ。
そして、未来の私たちは、貴方にこの世界の希望という意味て Chris と名付けたんたと思うわ。
マリア=ハロルドは思い出していた。今の自分を、もうタメかもしれないと思っていた自分を、 ライア
ンと引き合わせた存在を。そして、刻を越えてやってきた青年の他にも、もう一人たけ 刻を越えて、自
分の前に現れた存在かいたことを。 (確かに有刺鉄線ファイヤーバットは邪道だわ。ても、あれを持っ
たオバさん。いや、初代グレート=アジアだったら、クリスに協力してくれるかもしれない。)
控え室に、影か差した。
トン、トン。
ノックの音かする。
はーい。 ハーイ、私よ。オバさん。
初代グレート=アジアが入ってきた。
今の試合見たわ。よかったわね。感動した。タイガードラゴンスープレックス。いい技よね。
クリス=ヤマモト。見応えのある選手ね。あなた、一体どこから来たの?
ペインド顔と身体に身につけている鎧に警戒しているクリスを見て、マリアか言った。
み、ら、い、なんて言っても、信じてくれないよね。
I ALWAYS BELIEVE YOU.
私の大陸遠征時代の恩師の言葉よ。数世紀前の世界から来た私が、未来から来たなんてセリフ信じる
と思う?もちろんよ。できれは、あなたのタイムマシンを使って、私も未来にタイムスリップしたい と
思うわ。
結論は出た。確かに初代グレート=アジアの力があれは、百万人力だ。
さてと、次の四天王との戦いをリザーブしておくか? マリア=ハロルドはアイウォッチのフレンドネッ
ト機能で、シャノワールを呼ひ出した。 あれれ、マリア=ハロルドさんかニャ?我か輩、君からお友達
申請された覚えないけとニャ。
有名人はちょっと調べれは、連絡先は見つかるのよ。それに、あなた公人てしょ。政治家でしょ。
まあ、冗談はそれくらいにして。要件はなんニャ?
私たちの未来の子供、クリスか貴方と勝負したいと言っているの?いい?
うーん。条件かあるニャ。今公務て地球の月に来ているニャ。そこでなら、それで、条件なんたけと、
君の家にカテリーナさんかいらっしゃると思うニャ。カテリーナさんか我か輩のセコンド、いや最前列
て応援してくれるニャら、その勝負受けて立つニャ。
あなた、それても、元大王?ネコ族のリーダー?地球のネコに恋愛感情なんて持ってるの?
す、すみませんニャ。マ、マリアさま。いや、別に、無理はさせないニャ。もしカテリーナさんかオッ
ケーしてくれるなら、ホテルツキノワグマのスィート予約しておくニャ。もちろん、ダブルで。特別にオー
ナーのマリアさんには、シングル、いやライアン君と、ダブルを予約しおいてもいいニャ。
ホテルツキノワグマ?あそこは、確かペット、異種族同伴かオッケーな月の最高級ホテルだったわね。
ここで、初代アジアか回線に割り込んた。
りょーかい。おばさんが特権で、この話まとめるわ。おばさんの分も部屋予約しておいて。シングルで
いいわ。りょーきんは、銀河帝国元議長もちていいわね。カテリーナちゃんっていう白猫ちゃんは、きっ
ち りとおばさんか説得して連れて行くわ。いいわね。
324
こうして、半月後の満月の夜、ムーンアリーナて、シャノワールとクリスの試合か組まれた。 白猫の
カテリーナにとっては、はしめての宇宙旅行てあった。 太陽の黒猫、ソレイユ=シャノワールは、素手
で構えていた。 一方、クリスは柔道着にオープンフィンガーだ。
最前列てはマリア=ハロルドか不機嫌そうなカテリーナを膝に抱いて、応援している。
ゴングか鳴る。
シャノワールは最初から全力てとばす気た。鳴猫拳の使用すら、躊躇かない。
ツメをむき出しにして、左右フックてクリスの顔に殴り掛かる。
クリスは全身のオーラをマックスまて高めていた。
ツメがかすっても、無傷た。オーラて防御していた。
シャノワールか右のキャットハイキックを放った瞬間、フィールドを使った瞬間移動で、シャノワール
のバックを取ったクリス。
シャノワールは背後のクリスに情け容赦のない肘を叩き込む。
それをくらいつつ、豪快にバックドロップで背後に投けるクリス。
いや、今の攻撃はシャノワールほとの使い手なら、読めるはすた。 完全にバックドロップが決まってい
た。
そのままホールドに行くクリス。
シャノワールは尻尾を上手くクリスの首に巻き付けていた。そのままオーラを雷撃に変えて、クリス
を締め上けるシャノワール。もかくクリス。無意識にクリスは瞬間移動を発動して、離れた位置に立ち
上かった。 今のバックドロップは効いたニャ。でも、君くらいの使い手だったら、我か輩、目を閉じて
でも勝てるニャ。
それに、鳴猫拳を使う必要もないニャ。
爪をしまい、拳を固めるシャノワール。そのまま、目を瞑る。
クリスがサバット仕込みの打撃で、シャノワールを攻める。
目を閉したシャノワールは気配を読んて、的確に対応していた。
シャノワールか右ストレートに来た瞬間、クリスはキャッチして、右の一本背負いの体勢から、右脚を
刈り払った。
一本背負い崩れの山嵐だ。しかし、シャノワールはキャット空中回転で今の強烈な投けを躱した。
シャノワールか着地する隙を狙って、両の掌をシャノワールに向け、全身のオーラを解放するクリス。
しまったニャ、ニャーんちゃって。
両手の肉球から今の気弾のオーラを吸収するシャノワール。
さらに、今の大技を放ち、硬直しているクリスに近つくと、一瞬、鳩尾のあたりをコンと右の拳て打っ
た。
今の発頸パンチで倒れたクリス。
そのままダウンカウントはテンまて数えられた。
カテリーナさん、見てくれたかニャ。これかボクの実力ニャ。元銀河帝国議会議長兼国家元首、ソレイ
ユ=シャノワールにゃ。
思わじ、天を仰くマリア=ハロルド。その視線の先には、蒼い惑星か見えていた。
リングサイドにいた初代アジアはクリスに駆け寄った。
残りの四天王とやらは、あの G と東郷源九郎ね。
どっちも生意気なヤツね。
やっちゃいなさいよ、青年。今はまだ動けない。それも定めたけど。
あなたなら、できる。この世界、未来の世界も救うことかてきる。
もし一人てダメだったら、このオハさんが協力するわ。 あの2人、マリアちゃんとライアンの血を引い
ているんでしょ。 さあ、肩を貸すわ。一緒に立ち上がって。
試合か終ったシャノワールはリングサイトのカテリーナにネコ語で話しかけた。
とうでしたかニャ?ボクの試合は?
まあまあね。シャノワール、あなた思ったより強いのね。今日は、あなたの部屋に泊まってもいいわ
325
ホ、ホントですかニャ?
マリアちゃんとライアンさんを2人きりにしてあけないと。未来のクリス君も生まれて来ないよね。きっ
と...
シャノワールか生まれて初めて本当の恋に落ちた相手。それは、地球圏て出会った気品高い白猫であっ
た。
326
東郷源九郎
東郷源九郎とクリス・ヤマモトの試合が決まった。
クリスは、マリア・ハロルドに試合開催の報告をした。
マリアはこう言った。
「私が許す。限界までやっておしまい。」
かつて、あこかれのライアンに東郷の妻の方が、自分より魅力があると言われたマリアだ。
マダム・アワヤの泣き顔か見てみたい。そう思わずにはいられない。
ライアンは試合決定の報告を聞くと、クリスにこう告げた。
東郷は容赦ない男だ。遠慮は要らない。本気で勝負しろ。
未来は、お前の方にかかっている。 ムーンアリーナで、東郷源九郎対クリス・ヤマモト戦が開催され
た。
ゴングが鳴る。
圧倒的なオーラの量で、リングを覆う東郷。しかも、第八段階の可視できないオーラだ。
もはや、オーラは第九段階に達し、変化して、雷撃や電撃に変化している。
オーソドックスに構えるクリス。
東郷が様子見のジャブを放った瞬間、ローアングルのタックルてテイクダウンするクリス。そのまま、
膝十字を狙う。東郷の右膝か伸ひきった瞬間、東郷は右の掌から気弾をとばして、クリスの顔面を狙っ
た。
しかし、クリスはクラッチを外さなかった。一瞬、オーラを顔面の前に移してバリアを張って、なおも
完全に東郷の右膝を極め、破壊した。
容赦ねーな。
そんな溜息ともつかない声が、リングサイドから聞こえる。 東郷は冷静に勝機を伺っていた。もうス
タンド勝負では、勝ち目はない。
グラウンドでスリーパーを極めて、落とすしかない。
東郷も、ヒールホールドを使って、応戦した。
クリスは体を捻って、今の足関をよけた。
一瞬、クリスが東郷に背中を向けた。
この瞬間、東郷かクリスのバックを取った。 そのまま、パウントのように殴り掛かり、クリスの首を
狙う東郷。
クリスはしかし、冷静にポシションを入れ替え、ガードポジションに持っていった。
下からの三角を狙うクリス。
クラッチが決まった。
東郷は構わず、クリスをパワーホムの体勢で持ち上けようとした。
しかし、右足の踏ん張りが利かない。
クリスは下から、東郷の右脚を腕で刈った。
そのまま三角締めて東郷をKOした。
はじめてクリスが四天王の一角に勝利した瞬間た。
327
G (ジー・ダッシュ)
残りの四天王、G (ジー・ダッシュ) との試合の予定か決まった。 スパーリングパートナーの初代グレー
トアジアはこう言った。
オバさん、アイツだけは許せないの。何ならオバさんがタッグで、直接手を下したいわ。
クリスは、無言で、頷いた。
ただし、こう後でいい返した。
俺は、一対一で、G と勝負したい。
後楽園アリーナという煤けた会場て、G 対クリス・ヤマモトの時空を越えた決戦が行われた。
ゴングが鳴る。
銀髪の G はやはり、第八段階まてオーラを高め、可視できない気てリングを覆っていた。
冷静になるんだ。相手の技は全て研究し尽くしている。
クリスは、ますは左ジャブから右ストレートを放つ。その後、右のフックでトリプルだ。G は右フック
をキャッチすると、そのまま得意の一本背負いに入って、クリスを投げた。
ダウンしたクリスの右腕を逆十字て極める G 。
冷静に両手てクラッチを作り、重心をコントロールするクリス。
そのままクリスが立ちあがり、ますはクリーンブレークでスタンドに戻った。
G は全身のオーラを限界まて高め、掌に集中した。
まずは左手、次に右手て、クリスをめがけ、別々に気弾を発射した。 その後も、両手から細かい気弾
を連続して放つ G 。 気弾があだ。瞬間の爆発と煙で、クリスの姿か隠れた。 その瞬間た。気をフィー
ルドとして瞬間移動したクリスは、G の背後に現れた。
そのまま、G の左腕をチキンウィング、右腕をハーフネルソンに捉えると、高角度のアーチを描いて、
後方に叩き付けた。
タイガードラゴンスープレックス!
完全に決まった。ダウンする G 。いったんボルドーのクラッチを解くと、立ち上かったクリスは目の
前に巨大な気弾を具現化した。 まるて雷の火の玉のようてあった。
クリスは気弾を蹴り上けると、ダウンした G を弾か包み込み、そのまま爆発した。
真・激風拳が決まった。
G は立ち上かることは、できなかった。
現代の四天王のうち、2人を葬り去ったクリスの実力は、高く評価された。
328
別れ、そして、出会い
クリスは G 戦後、1ヶ月か経過したある日、西郷師範とライアン,マリアの前てこう言った。
「僕は、そろそろ未来に帰ります。四天王は半分しか倒せなかったけと、ても、手応えはありました。
「クリス、まだ不安だわ。もうちょっと、いや後半年だけ、この時代で修行てきない?」
マリアは言った。
「何か作戦はあるのか?」
ライアンも言った。
「特にはないです。でも、元の時代、未来の仲間を、僕は放ってはおけないんです。」
その時、ドアをノックする人影かあった。
「こんにちは。オバさんよ。入るわ。」
初代アジアだ。
「オバさんが協力してあける。一緒に、未来に行って、火星人の用意した強化人間を打ちのめしましょ
う。 奴らの拠点の火星に行けは、根絶やしにできるかもしれないわ。」
「でも、未来のポルゴさんとライアン先輩でも、返り討ちにあったのよ。」
「それは、ライアン君が、気を使えないからよね。」
初代アジアは、自分の体の周りに第九段階のオーラを発生させていた。
そして、その右手には有刺鉄線バットが握られていた。
「鬼に金棒!まさに今の私のことよね。」
「2人て乗り込めは、火星人の強化人間を防ぐことができるわ。」
初代アジアは言った。
さらに、ドアをノックする影かあった。
「我か輩も協力するニャ。」
ソレイユ・シャノワールた。 シャノワール、初代アジア、クリスの3人は、これから未来世界へシャンプ
し、火星人の強化人間の拠点を叩くと誓った。
今までで最も最強・最悪の敵を相手に、銀河や刻を越えた3人が勝負に出る!
この結末は、誰もわからなかった。
329
参ったニャー
未来世界へジャンプし、火星の強化人間生産工場へ殴り込みを掛けた3人、いや2人と1匹(?)で
ある。
シャノワールは言った。
「参ったニャー。我が輩、火星圏の環境と重力をなめていたニャ。」
一方、初代アジアは有刺鉄線バットに炎のオーラを纏い、振り回しては、強化人間達をノックアウト
していた。
「アジアさん、奴らは一万人いるんです。どうにかして、根元から叩かないと。」
「おそらく、工場の中には、科学者、いやマッドサイエンティストがノサバっているはずだ。そいつを
とっちめないことには、話にならない。」
こうしている間にも、強化人間の一個小隊に囲まれてしまった。
初代アジアが有刺鉄線バットを振り回して牽制した。
その隙にシャノワールが強烈な気の嵐を起こして、フォローした。
工場といっても、火星人の巣に作られている。複雑な形状だ。
「どこだ。どこがやつらの本拠、巣の中心なのか?」
「クリスちゃん、オーラを探って。」
アジアが言った。
シャノワールはこの工場の秘密に気付いた。
「この巣の中心が、火星人とは限らないニャ。」
むしろ科学者は、マッドサイエンティストは、地球圏出身の可能性もあった。
「そうだニャ。この工場の2Aフロアから、異質な気配を感じるニャ。」
「わかりました。確かに、地下2階のAフロアに、異質なオーラがあります。」
またこの会話の間にも、強化人間達に囲まれた。
奴らは、光線技で、10人束になってかかってきた。
アジアがバットを振ったが間に合わなかった。
シャノワールがバリアと同時に、爪をむき出しにしてニャン拳を使った。
今のニャン拳で、周囲の強化人間達は気絶した。
「今のうちに、階段を下りるニャ。」
地下2階のAフロアにはメインコンピュータがあり、その前には一人の地球人の女性科学者が座ってい
た。
「よく、ここまで無事に来れたわね。」
「あなた、地球人でしょ。それが、なんでこんな所にいるの?」
「私は、確かにジパング出身の科学者よ。でも、愚かなジパング人達は私の強化クローン技術を理解で
きなかった。最初は、強化クローン技術を天才的発明と誉めてくれたわ。でも、途中から、ねつ造や盗
作と騒がれたわ。」
「私は思った。この技術を実用化して、ジパング、ひいては地球人に復讐すると。それに、火星皇帝の
孫と出会って、お互いの思惑が一致した。愚かな地球人に天誅を与えると!」
「アヤノ・イジュウイン博士!あなたの野望を阻止して見せる!」
こう言ったクリスの前に立ちふさがったのは、火星皇帝の血を引く、強化人間デスパテル3世であった
デスパテル3世は、圧倒的なオーラで3人の前に立ちふさがった。
「ここは俺にやらせてください!」
クリスが前に出る。
有刺鉄線バットで支援しようとするアジアをシャノワールが止めた。
「ここは彼の見せ場だ。もともと彼の時代、彼の惑星の問題だ。自分のことは自分で解決するべきだ
ニャ。」
デスパテル3世は、しかし相手が至高の使いと見るや、意外な手を使った。
330
全身のオーラを具現化して、身体を炎のように被った。
このやり方は、ある意味最強であったが、持久戦になると、自分の体力が減少する厳しい戦い方だ。
クリスは全身のオーラを淡く纏った。
強烈なローキックでデスパテル3世の出ばなを挫いた。
デスパテル3世は、構わず前進して、両手でクリスを摑んだ。
そのまま全身のオーラを炎のように炎上させ、自分もろともクリスを焼き尽くす作戦だ。
クリスは冷静にさらに間合いを詰め、右のボディアッパーを放つ。
さらに、デスパテル3世の右腕を極めると、右腕で抱え込み、相手の右脚を右脚で刈り払った。
西郷師範直伝の山嵐が決まった。
そのまま、クリスは巻き込んで、技が決まった瞬間、全身のオーラを一気に開放した。
アジアとシャノワールはとっさにバリアをはって防いだが、今のクリスのはなったオーラは、周囲の
人間をも巻き込む強烈なものだ。
デスパテル3世はなおも立ち上がってくる。
シャノワールがニャン拳の構えを取り、アジアが有刺鉄線バットを構えた瞬間、デスパテル3世は倒
れた。
「これで、もう貴女を守る兵隊はいなくなった。」
「貴女の科学実験のために、地球の人口の半分が失われた。」
「責任は取ってもらう。せめて、地球にいる強化人間達に撤退命令を出して欲しい。」
「甘いわね。」
私の胸にあるペンダントが、この工場の起爆スイッチよ。もしデスパテル3世が敗れた時のために、用
意しておいた。もし私の身体に危険が及べば、地球を襲っている強化人間達のリミッターが外れて、地
球ごと光線技で吹き飛ばす予定よ。」
「くっ、俺は、また地球圏を救えないのか...」
ジアが思わず有刺鉄線バットを握った瞬間、シャノワールがニャン拳の高速移動を使って、イジュウイ
ン博士の胸のペンダントを奪い取った。
「これで、攻勢逆転ニャ。」
「別に我が輩は、地球が壊れても、この工場が爆発しても、構わないニャ。」
アジアは一瞬の隙にイジュウイン博士を拘束した。
「さあ、このバットが怖かったら、強化人間たちの強制排除命令を出して。」
「わかったわ。」
「命だけは、要求しない。だから、地球を、ボクの地球を、返してください。」
クリスは言った。
イジュウイン博士は、目の前のスパコンの画面に、プログラムM終了と命令した。
こうして、地球を襲っていた1万人の強化人間達は、一旦火星に戻ってくる算段がついた。
まださらに太陽系掌握を目指して、数万体の強化人間が生産される計画が存在した。 クリスとシャノワール、初代アジアは相談の上、迷わず、イジュウイン博士のペンダントのボタンを
押して、強化人間生産工場を壊滅させた。
「シャノワールさん、初代グレートアジア。ありがとう。」
これで、ボクは地球を救うことができた。
「まあ、信じるものは救われるニャ。何とか3人で協力して、問題は無事解決と。それはそうとして、
我が輩はもとの時代に戻るニャ。初代アジアはどうするかニャ?」
「私はパラレルワールドになっても、夫と息子、娘の生きている時代に戻りたいです。」
「そんなことができるかニャ?」
「そのためには、この時代の銀河帝国の科学力が必要です。シャノワールさん、力を貸してください。
「わかったニャ。クリスは地球圏に戻るニャ。我が輩と初代アジアは、乗ってきた4次元量子移動船で、
この時代の銀河帝国にジャンプするニャ。では、また機会があれば会おう。勇気ある地球の青年よ。」
「この時代のマリアちゃんによろしく、クリス君。」
331
こうして3匹の使い手は、無事に問題を解決して、火星を後にした。
332
再会
今はジパングで、いや地球圏でも小説家として名声を獲得したタビト大伴は、息子と娘を伴って、妻
の墓参りをしていた。もちろん、この墓には妻の遺骨はない。
ただ遺髪を埋蔵してあるだけだ。妻の身体は冷凍保存してある。いつか、再生医療か進歩した世界で、
場合によっては、息を取り戻すこともできるかもしれない。
この一連の医療費に彼の印税のほほ9割を費やしていた。 もちろん、仮に妻か復活したとしても、その
時には、俺達の子孫は生きていても、誰も俺達家族はいないだろう。
息子のヤカモチと娘のアキコが線香をあげ終わると、タビトは子供達にはわからないようにうっすらと
涙を浮べていた。
その姿を遠目から見ていた初代アジア。
そっと、しかし力強く夫に、家族に歩み寄るアジア。
「あ、あなた。」
ふいに、振り返るタビト。
「亜路逢よ。ずっと待っていてくれて、ありがとう。」
「母さんっ。私を、私を庇ってくれて、ありがとう。あの男は、あの殺し屋は、父さんが倒したわ。」
「知ってるわ。娘を守るのは、母の役目よ。そうか、あなたは遂に私か果たせなかった夢を果たした
のね。二代目グレートアジア。そしてキングオヴギャラクシーをついに制覇したのね。」
「母さんの弟子、ジャック・ハロルドと組んで、何とか。この時代にはG もいなくなって、ほぼ楽勝
で。」
「本当に、母さんなんだね。身体は、もう大丈夫?」
「未来の再生医療の力て私は生き返ったの。それで、あのジャック君の子孫の力を借りて、タイムマシ
ンで、もとの世界、最愛のあなたたち家族のいる世界に戻ってきた。」
「会いたかった、ずっと。刻を越えて... 」
こうして大伴家は家族 4人が再び揃った。
初代アジアか冷凍睡眠処置を受けた、実に10年後のある日のことであった。
もう長男ヤカモチは結婚して、家族を持っていた。
二代目アジアことアキコも結婚して、3代目のアジアを身ごもっていた。
久しぶりに家族で揃って、初代アジアの墓所に集まったところ、ついに奇跡は起った。
生きていれば、そのこと自体奇跡だ。
Life is a miracle.
そうタビトの日記には書かれたという。
ある秋の夕暮れのことであった。
333
コンサート
ライアン・ヤマモトは大学院の夏休みの休暇を利用して、マダム・アワヤの産休明けの第一回マラソ
ンコンサートに参加した。
ジパング大学は、確かに夏休みだ。キャンパスには勉強熱心な女子学生か多い。しかし、研究者にとっ
ては休暇はないに等しい。スケシュールを調整して、一晩空いている日を作って、憧れのマダム・アワ
ヤのコンサートに参加した。
もちろん、恋人のマリア・ハロルドには内緒てある。プライベートだ。
今まてにライアンは地球のグローバルミュージックをほほ制覇したと言ってもいいくらい、地球語の様々
な歌を聴いてきた。カンツォーネやホサノヴアジアンソン。もちろんカラオケても歌えるくらい聞き込
んだ。
ポルゴが入場曲に好んて用いる地球圏の歴史を刻んた伝説のシンガー、トッツィだけではなく、あの
究極龍のテーマを歌っていだミゲルといったレジェンドと同じレベルで音楽性を評価しているのが、マ
ダム・ アワヤだ。
年上というのも、いい。熟女好きのライアンにとっては。
大人の魅力を感じる。
まずは名曲中の名曲、Amore Sempre Traversare Il Mondo.(愛はいつも世界を越える)が歌われた。
その後は、新曲か発表された。Imagine Me!(私を想って)という曲だ。
これだけの名曲をほぼ毎日、生で聞ける東郷源九郎とその子供か羨ましい。
マダム・アワヤにはお子さんかいたんたっけと思い出すと、Ciao Ciao Bambina!のカバーか流れる。
バンビーナということは、娘さんか。
盛り上がってきた所で、FINAL WARRIOR のテーマが歌われた。最後の戦士という意味の、伝説の
RPGで何度も映画化されている。 マダム・アワヤの歌は、単なる人間の声というレベルを超え、文化て
あり、人類の共有財産のレベルであった。
会場の端の方をふと眺めると、肥満体の白いネコ族の老人か応援していた。
もちろんプリンス・ネコマタだ。
会場で花火が打ち上けられると同時に、HANABI!という渋い曲か流れた。独身女性の哀切な気持ちを
歌った歌だ。
マダム・アワヤは意識して避けていることがあった。
お子様ソングは歌わない、である。
歌は、大人にとっても、子供にとっても、よいものは、よい。本物を聞かせるべきた。
子供にこびるのは、よくない。それか彼女の信条だ。
最初は天涯孤独な独身女性の哀切を歌い、パートナーを得た後は、愛について歌い、子供を授かった後
は、その感謝の気持ちを歌った。
だが、彼女は、子供のためだけの歌、は歌わないポリシーた。
子供向けアニソンは、歌わない。カラオケでも。
常に本物、だけを目指して歌ってきた。
会場にTRUE LOVEが流れる。
大人の女性の骨太な魅力のハスキーボイス、それがマダム・アワヤの支持される理由だ。
334
プロフェッサー、再び
ライアン・ヤマモトは日曜日にも関わらず研究室を訪れていた。
研究室にはジパング大学情報生命態論講座主任教授、伝説の植物科学者、プロフェッサー・ナガヤこ
と永谷教授が誰よりも前に入室していた。
生物学系の研究室に日曜日はなかった。
もちろん、ドクター課程やマスター課程の院生に植物の管理を任せてもよかったが、何よりも研究が
大好きで、亜熱帯へのフィールドワークや学会報告などがなければ、たとえ夏休みや日曜日であっても、
研究室に誰よりも前に出勤するのが、ナガヤ教授だ。
そして、ナガヤ教授が植物以外にもう一つ愛好しているものがあった。
もちろん、総合格闘技だ。
ブラジリアン柔術とサバットをファイトスタイルとする彼であったが、もちろん、その両方の競技で
アマチュアチャンピオンになることが目標、ではなかった。
既に、柔術とサバットの奥義を極めたといってもいい彼の目指すのは、総合格闘技の試合で、打・投・
極、彼の技術体系には、投、はタックルや足払いだけだが、の流れの中で実践するのが、目標であった
研究室では、大学院生だけではなく、秘書達までもが、大学の体育館で教授に混じりサバットの練習
をしていた。
もちろんライアンも。
そして、ライアンのもう一つの顔、それが、隠れ柔道部員であった。
毎週、週末だけ、大学の柔道部に確実に練習に参加していた。
週末、それは、大学で高専柔道の練習が行われる曜日だ。
伝説の寝業師達とのスパーを繰り返して、ライアンは確信していた。
寝技は、練習量とロジックだ。
合理的に練習を積み重ねたものだけが、強くなれる。
そして、ライアンはもう一つの可能性に気付いていた。
サバットも、合理的に技術を学べば、上達が速いのではないか?
心、技、体。という言葉がある。
最初に来るのは、心。つまりどんなに強くても曲がった心を持っていては、人として,もちろん格闘
家として大成できない、ということだ。
そして、技。
体。
解釈によっては、身体能力があれば、理不尽なまでに強さを発揮できるが、それも、一定の技の前に
は通用しない。それが例えばサブミッション、つまり相手を屈服させるための技術体系だ。そして、一
番重要なのが、正しい心だ。
人を正しい方向に導く心を持った、真の指導者。それが、プロフェッサー・ナガヤだ。
研究者の業界、格闘家の業界を問わず、彼はファイティング・プロフェッサーという名前で、畏敬の
念を込めて呼ばれていた。
大学の教授、そして総合格闘家、両方共、莫大な努力と資質を必要とする職業だ。そして、その両方
を兼ねる上級職、それが、ファイティング・プロフェッサーだ。
前の試合で、古傷の膝を痛めたナガヤ教授は、久しぶりにライアンに寝技のスパーをしようと言った
ライアン君、研究はこれで切り上げて、午後は体育館で寝技のスパーと行きましょう。
はい、先生。
ライアンほどの男が、何のためらいもなく先生と慕う相手、それが、ナガヤ教授だ。
もちろんライアンの研究計画では、銀河系の進化の歴史、生命誌を明らかにして、いつかは、俺も、
ファイティングドクターになる。そしてファイティングプロフェッサーを目指すことを目標にしていた。
そんな彼は、ナガヤ教授以外の人は、教授であっても、心から先生と呼べる相手とは思えなかった。唯
一、ためらいなく先生と呼ぶ相手、それが永谷教授だ。
335
午後になり、両者は柔術衣に着替え、向き合っていた。
背中合わせになって、教授がパチンと手を叩くと、両者は一斉に振り返り、片膝立ちのまま向き合っ
た。
ナガヤはわざドアンダーポジションになり、寝技に引き込んだ。逆十字や三角を狙っていた。
ライアンは両腕を決められないように守りつつ、重心をコントロールして、足関を狙っていた。
数年前の俺だったら、しびれを切らして、ここで強引にアキレスかヒールホールドを狙ったんだろう
な。
ライアンは想った。
わざとナガヤの首を狙うライアン。すかさず右手の関節を逆十字に狙いにいく、ナガヤ教授。
重心をコントロールして、回転するライアン。
これだけで、ナガヤ教授の逆十字狙いを外し、さらにサイドを奪っていた。
グラウンドにおいて、サイドをとることは、ほぼ勝利を意味するといってもいい。
それくらい、優劣がはっきりすることだ。
このままライアンは上からキムラロックを決めに行く。
これもフェイントだ。
本命はキムラロックからストラングルホールドへの変化だ。
一本目は、ライアンが取った。
「いや、完敗です。」
負けず嫌いの教授が、照れながらこう言った。
いいものは、いい。そう認めること。それが、まずは第一歩だ。
すべての縁(えにし)を縁と認めて、大円団で勝利に向かう研究室のリーダー。
ファイティング・プロフェッサーが再始動した瞬間であった。
336
死闘
「ボクは東郷源九郎さんに挑戦したい。」
そう突然研究室で呟いたプロフェッサー。
ライアンは一瞬、やめたほうがいいですよ、と進言しようとした。
ふと眺める師の姿。そのオーラは純粋で、真っ直ぐであった。
そうか、心底永谷教授は、東郷と戦いたいと思っているのか。
そう理解したライアン。 たまたま友達になっていた東郷夫人に、アイウォッチから連絡を取るライア
ン。
「あの、ウチの先生、ナガヤ教授が、ご主人、源九郎さんと勝負したいと言ってるんですけど。」
「ファイトマネーは?」
「最近、教授、銀河植物学の著書がベストセラーになっていて、賞金だったら、賭けてもいいと、いっ
ています。勝者、総取りで。」
「面白いわね、受けたワ。その勝負。」
こうして後楽園アリーナで、ジパング大学大学院教授永谷と伝説の総合格闘家東郷の試合が組まれた
永谷教授は柔道着姿。一方、東郷は、黒タイツだけ。もろ、ストロングスタイルだ。
セコンドは、ライアンと、東郷夫人だ。
ゴングがなる。
東郷は強打気味のワンツ―を放つ。眼を狙ったエグいものだ。
一瞬、視界から、永谷が消える。低空タックルだ。
一瞬で、両足を引いてタックルを潰す東郷。迷わず、相手に向かってパウンドの嵐を降らせる。
完全にはタックルは切られなかった。 なんとか、左足に食いついた永谷。パウンドは背中にしか、あ
たらない。 右を振り落とした。そう思った瞬間。
強烈な腕絡みで寝技に引き込む、永谷。だったら、強引に引き上げれば、いい。
パワーホムの体勢に引き込もうとする東郷。 永谷は右のクラッチを外して、東郷の左膝を拳で強打し
た。
そのまま、下からの変形三角締めに引き込む永谷。 東郷は、思わす全身のオーラを限界まて爆発させ
た。 リングか紫色のオーラに覆われた。 今のオーラの爆発をまともに食らって、三角を解除する教
授。 両者、間合いを取っでスタンド。 永谷教授はサバットて鍛えたストレート二発から、左のシャッ
セ・ラテラル(サイドキック)を放った。 東郷は冷静に左を右手てブロックした。 東郷は、お返しとはか
りに、左のコークスクリューキックを放つ。今度は右ハイだ。
確実に永谷教授の顔面を捉えた。
すかさず、左のバックスピンキックを放つ東郷。
教授は左フックから右のバックハンドだ。 この瞬間を東郷は逃さなかった。
永谷の右腕をハーフネルソン、左腕を、チキンウィングに捉えて、完全に気で動きを封した。
そのまま、ハイアングルのスープレックスに行き、ホールドした。
会場が一瞬点滅したかに思えた。
タイガードラゴンスープレックスホールド。
銀河最強の技が決まった瞬間だ。
教授はダウンカウント9で立ち上がろうとした。そのまま崩れた。
勝者、東郷源九郎。
完全決着だ。
セコンドのマダム・アワヤは控室から娘を呼び出していた。娘を肩車する東郷。
「ちっ、完敗か。」
しかし、ライアンはこう思った。
今のバックハンドは悪手だった。相手の挑発を無視して、絶対に背中を見せない。 337
そうすれば、必ず勝機はある!
ライアンの休日は終わった。
またファイターとして目覚めたライアン。
いつか、東郷と拳を交えるために、また基礎から練習し直そうと誓う。
ミリ単位で技がずれれば、決まらない。そんな世界だ。
しかし、ライアンには、わかっていた。
基本の繰り返しか、重要。そして、ハートが。
教授は、最後まで立ち上かろうとした。
心は折れなかった。それが、一番大事。
また歩み出そうと誓った、ライアンとプロフェッサーである。
338
新たなる刺客
この世界を影で牛耳ろうとした月面人や旧火星皇帝といった人々を、さらに闇で葬ってきた最強の職
種、それがCYBER HUNTERだ。高度に張り巡らされた複合ネットワークを利用し、己の持つ高い技術
(それは格闘術も含んでいる)でターゲットを闇から闇へ葬る、そんなCYBER HUNTERにとって、唯
一の邪魔者、同業者はCYBER探偵だ。そして現代のCYBER探偵の中の代表的人物、それはアルセーヌ・
ポルゴだ。
地球圏でCYBER HUNTERの元締めをやっているカエサル鈴村は、全CYBER HUNTERにポルゴを社
会的に抹殺する指令を出した。
「アルセーヌ・ポルゴか、目障りだな。そろそろ社会的に消えてもらおう。」
カエサル鈴村はフレンドネットに対するハッキングを利用して、アルセーヌ・ポルゴの交友関係を可
視化した。
「かつて、ポルゴ最大のライバルは、西郷詩郎だった。今であれば、ライアン・ヤマモトか。」
もちろんライアン・ヤマモトにとって最愛の存在である恋人マリア・ハロルドを人質にとって、ポル
ゴの社会的暗殺の依頼を出すことも、カエサル鈴村は計算に入れたが、すぐに、そのような計算結果は
破棄した。
なぜなら、ライアン・ヤマモトはストレートで実直な性格で、一切曲がった事が嫌いだった。このよ
うな男には、曲がった手段は通用しない。むしろ、正々堂々と、ワンマッチを主催して、そこで、アル
セーヌ・ポルゴに実力で敗北させれば、もう彼の社会的な価値は逓減する。そうして、もともとCYBER
HUNTERが握っていたこの世界の影の覇権を取り戻すことができるだろう。
カエサル鈴村はエージェントを利用して、ソレイユ・シャノワールに連絡をとった。
「もと大王の一存で、キングオヴギャラクシー特別試合、アルセーヌ・ポルゴVSライアン・ヤマモト戦
の開催を依頼したい。」
もちろんシャノワールほどの男が、カエサル鈴村の陰謀を理解しないこともなかったが、もし、ライ
アンと闘って株が落ちるくらいだったら、ポルゴはその程度の男だということだ。
339
世紀の一戦!
アルセーヌ・ポルゴVSライアン・ヤマモトのキングオヴギャラクシー特別試合がムーン・アリーナで
開催された。特別レフリー兼主催者はシャノワールだ。
ポルゴはキックトランクスにレガース、オープンフィンガーだ。
ライアンはキックトランクスに、シューズ、バンテージだ。
バンテージ姿のライアンに観客からヤジが飛んだ。
「このご時世、顔面パンチやパウンドなしで行くのかよ。飛車角両落ちだぜ!」
しかし、ライアンには策があった。顔面パンチやパウンドは、本来の彼のグラップリングとサバットが
融合したスタイルでは、付け足しであった。極めには素手で十分。
ゴングがなる。
ポルゴは全身のオーラをマックスまで解放した。
ライアンは躁気術をマスターしていたが、体内にオーラを止めていた。
シャッセフロンタル(前蹴り)から果敢にせめるライアン。
ポルゴはブロックした。
さらにフロンタルだ。
さすがに後退を余儀なくするポルゴ。
そのままコーナーまで追い詰めるが、パンチはボディにしか打てない。
ポルゴは左のコークスクリューから、右のフロンタルでお返しをした。
両者、開始位置に戻る。
ライアンは左のジャブから音速の低空タックルに行く。
ポルゴはガードポジションをキープする。
下から、切り返しを狙うポルゴ。
本来ならガードポジションの上からパウンドも考えられるが、しかしオープンフィンガーをつけないラ
イアンはグラウンドの攻防に専念した。
観客にもこの試合の技術レベルが伝わった。
クリーンかつあざやかにファイトしたいというライアンの思いが伝わってきた。
ポルゴは下から足を組み替えて、一旦アキレス腱固めを狙うと、三角に変化した。
340
ライアンは全身のパワーでポルゴを三角の体勢のまま、抱え上げた。そのままパワーボムでバスターし
た。
なおも三角を緩めず、次の攻防で逆十字に移行するポルゴ。しかし体を入れ替え、微妙な重心の移動を
利用してスタンドに持ち込むライアン。
ポルゴも冷静に柔術立ちで間合いを取って立ち上がった。
どうにかしてバックを取って、タイガードラゴンスープレックスを狙いたい、そう思念するポルゴ。
それにはまず、自分からスキを見せることにした。
ワンツーから左のバックハンドに移行するポルゴ、ライアンはこれを左のローリングソバット、つまり
後ろ回し蹴りで返した。この瞬間をポルゴは逃さなかった。
音速で間合いを詰めてバックを取ると、そのまま相手の左腕をチキンウィング、右腕をハーフネルソン
に捉えると、一気に後方に反り返った。
そのまま全身のオーラを解放して、ホールドした。
タイガードラゴンスープレックスホールドによるKOで、ポルゴの勝利が確定した。
控え室で目を覚ましたライアンはマリア・ハロルドに語りかけた。
「無念だな。また一から修行し直そう。今日は格好悪いとこ見せちゃったな。」
しかし、ライアン一筋と決めているマリアにとって、一度くらいの敗北は、何の影響もなかった。
「先輩、また頑張って下さい」
「その呼び方はやめてくれよ、マリア。ライアンでいい。」
こうして、ポルゴとライアンの歴史的な一戦は決着がついた。
341
逆襲のカエサル
CYBER HUNTERの元締めカエサル鈴村は自ら、地球圏を代表するCYBER探偵のポルゴに挑戦状を叩
き付けた。もちろんカエサル鈴村もファイトスタイルは総合であったが、ベースとなるのは伝統空手で、
打撃は寸止めだった。しかし、寸止めのポイントから自由に気弾を飛ばすことができた。
一方、ポルゴのファイトスタイルは古流柔術から派生した源流をベースにしたUスタイル総合格闘技で
あった。
カエサル鈴村は特別レフリーに西郷詩郎を手配して、後楽園アリーナで勝負を挑んできた。
カエサル鈴村は、空手衣姿であった。一方、ポルゴは今回、キックトランクスにレガース、オープン
フィンガーである。
ゴングが鳴る。
カエサル鈴村の強烈なローキックがポルゴの右足にヒットした。
そのまま、踏み込んで左右の正拳突きだ。
ポルゴはこれまでのやりとりで、相手が伝統4大流派のどれかの使い手であることを理解した。
相手はローかストレート系でしか攻めてこない。
しかも、一瞬拳を引いて、隙を作る。テレフォンパンチだ。
ポルゴは直感的に、タックルに行った。
コーナーまで詰めると、相手をダウンさせ、ガードの上からパウンドの嵐だ。
カエサルも下から三角締めを狙うが、ポルゴは強引にカエサルを目の高さまで持ち上げ、そのままジャ
ンピングパワーボムでバスターした。
一旦、レフリーの西郷がダウンの裁定を取る。
ダウン、ワン、ツー、スリー、フォー、ファイブ。
ファイブで立ち上がる驚異的なスタミナのカエサルだ。
カエサル鈴村の表情が変わった。ステップのリズムも変化した。
しかし、ステップもすり足ベースで、ポルゴのモダンな動きには全く対応できていない。
パンチはワンツーかその次はスリーだ。
スリーをヘッドスリップしたポルゴがカウンターのボディを放った瞬間、カエサル鈴村は右の掌打から、
全身のオーラをポルゴの顔面に向けて爆発させた。
ボディを放ち接近していたポルゴにとって、今回の気弾攻撃は大ダメージを免れない。
しかしポルゴは既に第9段階の気の技術を身につけていた。相手は素人にも見える第二段階レベルの操
気術だ。
ポルゴは一旦バックステップすると、右の強烈なラリアートを放った。
カエサル鈴村が頭を下げてラリアートを躱した瞬間、その背後にポルゴが立っていた。
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そのままハーフネルソン、チキンウィングにクラッチを決めて、一瞬で後方にハイアングルのアーチを
描いてポルゴはカエサルを後方に投げた。そのままクラッチをホールドしたまま、ポルゴは心の中でス
リーカウントを数えると、クラッチを解除した。
タイガードラゴンスープレックスホールドによるKO勝ちであった。
ミスター東郷の真の継承者、パープルパンサーのマスクに最もふさわしい男、そして、地球圏、銀河を
股にかけて活躍する真の主人公が誰であるか、今回の戦いで明らかになった。
もちろんその男の名前は、我らが、アルセーヌ・ポルゴである。
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マリアの祝日
ひさしぶりの祝日にマリア・ハロルドは、恋人のライアン・ヤマモトと無事デートにこぎ着けた。
「それにしてもクリスは元気でやっているのかな?」
ライアンは話を切り出した。
一瞬、照れるマリア。
「あくまで未来の話よね。確かにクリスはライアン先輩並みの好青年だけど。」
二人は印象派展に行ったあと、マダム・アワヤのコンサートに向かった。
「先輩、ワタシはこの歌手、どうしても好きになれないんだけど。」
一瞬、戸惑いの表情を見せるライアン。
「まぁ、大人の魅力かな。人生の陰影が、歌に現れている感じがする所がいいんだ。それに母性的な優
しさを感じる。」
「ワタシだって大人です。」
ライアン・ヤマモト、曲がった事が嫌いな好青年ではあるが、唯一の欠点はマダム好きな趣味にある。
マダム・アワヤのコンサートが始まった。
名曲、アモーレ・センプレ・トラヴェルサーレ・イル・モンドがまず流れる。
その後は、マダム・アワヤと東郷源九郎の子供が紹介され、チャオ・チャオ・バンビーナのカヴァーが
流れる。
会場にはプリンス・ネコマタが駆けつけていた。ネコマタは孫娘から生まれたひ孫を託されると、思わ
ず涙ぐんでいた。
「先輩、あの強面のネコマタが、ひ孫を抱いて、泣いていますよ。」
「あぁ、こういう人情に俺も弱いんだ。マダム・アワヤのコンサートに来て良かった。」
それから新曲、「故郷慕情」が流れた。
しかし、いくらマダム・アワヤが気にくわないことを割り引いても、ひさしぶりの祝日に先輩とデート
出来たことには感謝しないと。最近、先輩は研究と格闘技の練習で手一杯で、二人っきりのデートはで
きなかったから。
一方のライアンはこう感じていた。人間が歌を楽しむ心が重要だ。もともと言葉や音楽は、一定の形を
持たないが、人の心を打つという特殊な力が備わっている。確かに、武術は人間を格闘という手段で物
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理的に打つことはできる。しかし、本当に人の心を打ち、動かすことができるのは歌や音楽や文学といっ
た芸術だけなのかもしれない。俺の格闘技の技術は試合で人の心を打つレベルにまで到達していただろ
うか?
そんなことを考えていたライアンであった。
こうして秋の夜長のマリアの祝日は満たされたものになっていた。
マリアの先祖のジャック・ハロルドやその父のG・ハロルドといった使い手が起こしたハロルド流古武
術の継承者がマリア・ハロルドで、その恋人であり将来に渡るパートナー、ライアン・ヤマモトは、サ
バットと高専柔道+ブラジリアン柔術の使い手であった。この二人の将来の息子が、おそらく、アル
セーヌ・ポルゴを越えるかもしれない素養を備えた至高の使い手、クリス・ヤマモトだ。
しかし、世の中の歴史はいつ分化して、パラレル・ワールドに行き着いてしまうかもしれない。
マリアとライアンが袂を分かち、クリスが生まれない未来も現時点では可能性があった。
もともと未来は無限の可能性がある。いくらタイムマシンがあっても、パラレル・ワールドが存在した
ら、アクセスできない平行世界が存在してしまう。
ちょうど、マダム・アワヤの渾身の新曲「パラレル・ワールド:交わる心」が流れだした。
世界は確かにパラレル・ワールドかもしれないわ。でも、きっと、交わるの私たちの心は。
マリアとライアンの結論も歌詞と同じであった。 345
あとがき
この作品は2002年から2016年以降まで連載しました。最初の作品名は『太陽系帝国危機一髪』です。
その後、『CYBER探偵物語』というタイトルとの間で揺れた後、『アルセーヌ・ポルゴ』『新アルセー
ヌ・ポルゴ』というタイトルに決定しました。今回、紙媒体で出版するにあたり、タイトルを見直し、
『PORUGO2016』で統一しました。
主人公の名前はデスマッチの帝王と呼ばれたあの方のリングネームにあやかって命名しました。最初
はポルゴも「武器」を使ったファイトスタイルでしたが、徐々に素手で闘うスタイル、流派は源流古武
術で、マスクを付けて闘う時は、Uスタイルというファイトスタイルに変わってゆきました。だんだん後
半に差し掛かるにつれて、パンサーの物語にストーリーは変化してゆきます。ても、物語の中心はいつ
もポルゴです。そして、ミス・ワカマツとポルゴの間には子供ができて、成長をしてゆきます。
ご閲読、ありがとうございます。
2016年2月11日夏木康志より
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夏木康志 PORUGO2016
2016年 2月11日 第1刷発行
作者 夏木康志
発行者 Yasuyuki Muradate
発行所 秋草書店
〒113―003 東京都文京区本郷7―3―1
http://yasu1979.blogspot.jp
https://www.facebook.com/ynatsuki
感想のメールは [email protected]までお願いします。
Printed in Japan
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