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APN-IGES-兵庫県シンポジウム
再生可能エネルギー技術普及によるアジアにおける低炭素社会の実現
2013年2月18日
日本・神戸
タイにおける
再生可能エネルギーの促進と展開
バンディット・フンタマサン
タイ・キングモンクット工科大学トンブリー校
1
概要
 タイのエネルギー状況と主要課題
 再生可能エネルギーをめぐる近年の政策および
プログラム
 再生可能エネルギー展開の現状
 将来の課題
2
タイのエネルギー状況と主要課題
3
非常に限られた国内エネルギー資源
(2011年12月現在)
エネルギーの種類
天然ガス
確認埋蔵量
10,060 bcf
7.7
450 mbl
5.5
2,075 mt
97
15,100 MW
該当せず
石油および
コンデンセート
石炭(褐炭)
水力
可採年数(年)
注:bcf:10億立方フィート、mbl:100万バレル、mt:100万トン
出典:EPPO、タイエネルギー統計2012年度版
4
エネルギーの高い輸入依存率 –
2011年でGDPの10%
輸入
国産
総PES:1億3800万TOE
GDP:3450億米ドル
5
原油がエネルギー輸入の大半を占めるが
天然ガスも増加中
コンデンセート
再生可能
電気
石油製品
天然ガス
石炭および
石炭製品
原油
(輸入総額:6500万TOE、2010年)
6
エネルギー消費量の増加傾向
 エネルギー消費量は過去20年間で毎年4.4%増加し、今後20年間で毎年
4.2%増加の予想(BAUのシナリオ)
 電気需要は年率7.1%と、さらに急速に増加しており、電気の近隣諸国
からの輸入依存度が高まっている。
7
化石燃料が大半
(2011年の一次エネルギー総供給量の80%以上)
バイオ燃料
再生可能
水力
0.7
その他
0.2
16.2
2
石油
石炭
36.5
11.8
天然ガス
32.6
化石燃料:82%
総PES:1億2800万TOE
出典:DEDE、タイエネルギー状況報告書2012年度版
8
道路輸送が最終エネルギー消費の大部分を占める―
石油価格の脆弱性
農業
運輸
6%
37%
製造業
住宅
商業
6%
16%
5%
最終エネルギー消費 = 2011年に7000万TOE
出典:DEDE、タイエネルギー状況報告書2012年度版
9
発電用として1つの燃料に過度に依存
石油
0.9
水力
石炭
5.2
再生可能エネル
ギー&その他
1.5
20.9
天然ガス
71.5
(2011年の燃料ミックスの割合)
総設備容量:32GW、総発電量:152TWh
出典:EPPO、タイエネルギー統計2012年度版
10
2011年の二酸化炭素総排出量の70%がエネルギー関連
(1億9800万トン)
住宅&商業
その他
4%
5%
運輸
製造業
27%
22%
電力
42%
出典:DEDEタイエネルギー状況報告書より
11
再生可能エネルギー促進要因
 化石燃料価格の高騰
 燃料源を多様化し、輸入依存度を減らため、国内天然資源
をより効率的に利用
 環境に対する影響を軽減し、CO2排出量を削減する必要
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再生可能エネルギー促進要因 (2)
 遠隔地の農村部の住民が発電(VSPP)や燃料生産に
参加する機会
 政府の発電・送電システムへの投資負担の軽減
13
再生可能エネルギー促進の政策とプログラム
14
主な政策イニシアティブ
 近年の歴代政府は「クリーンエネルギー」と「エネルギー
効率」をエネルギー政策基盤としてきた
 「代替エネルギー・エネルギー効率・低炭素電力開発のた
めの国家計画」を導入
 「環境にやさしい成長」―現在の国家経済・社会開発計画
のテーマ
 最新の気候政策目標:人口当たりの温室効果ガス(GHG)
排出量を2027年までに5CO2換算トン以内に
15
再生可能エネルギー政策目標
2003年以降の、政策目標主導による、再生可能エネルギーの最
終エネルギー消費総量に占める割合
 2011年までに8%(「競争力強化のためのエネルギー戦略」、
2003~2011年)
 2022年までに14%(「代替エネルギー開発計画(AEDP)」、
2008~2022年」)
 2021年までに25%(AEDP修正版、2012~2021年)
16
各セクターの2021年までの目標
(再生可能エネルギー開発計画)
 電力 – 設備容量92億ワット(総発電量の10%)
 運輸燃料 - 第一世代バイオ燃料を1500万リットル/日、
最先端バイオ燃料を2500万リットル/日
 熱源 – 9,335KTOE
熱エネルギー
17
関連規制
省エネルギー促進法(1992年法、2007年修正)により、
以下に関する原則が定められた
 エネルギー効率・再生可能エネルギープロジェクトに対す
る財政支援
 促進プログラムと「省エネルギー促進基金(ENCON基金)」
(1995年)により、エネルギー効率・再生可能エネルギー
プロジェクトや研究開発等を支援
 電力購入規則 - 民間の小規模発電事業者(SPP)・極小規
模発電事業者(VSPP)が再生可能エネルギーを利用し送電
網に接続するのを許可
(ENCON基金:国内で販売された石油への課税を資金源とする公的基金)
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財政メカニズム
 再生可能エネルギー発電やバイオ燃料に対する直接助成
 再生可能エネルギープロジェクトに対する低金利貸付
– 回転資金
 ベンチャーキャピタル – ESCO基金
 税制優遇 - 再生可能エネルギー投資優遇
 CDM (京都議定書の「クリーン開発メカニズム」)
 「加算価格」-再生可能エネルギーで発電した電力に対す
る、通常価格に上乗せした特別価格(上乗価格)のこと
(固定買取価格に変更中)
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加算価格により、ほぼリスク無しに有利な投資のための合
理的な内部利益率が可能に
内部利益率
内部利益率
加算価格
製造コスト
電力料金
・支援期間:営業運転
開始日から7年間(太
陽光発電・風力発電
の場合10年間)
・加算価格は使用する
技術により異なる
・消費者はFTの形式で
支払う
基本料金規則+
自動料金調整メカニズム(FT)
出典:S ThongsopitとC Greacen(2012年)
20
再生可能エネルギー電気の加算価格
(タイバーツ/kWh)(1タイバーツ=3米セント)
加算価格
期間
(年)
バイオマス -設備容量<=1MW
-設備容量>1MW
0.50
0.30
7
7
バイオガス -設備容量<=1MW
-設備容量>1MW
0.50
0.30
7
7
ごみ
-嫌気性&バイオ埋立地ガス
-熱プロセス
2.50
3.50
7
7
風力
-設備容量<=50kW
-設備容量>50kW
4.50
3.50
10
10
小規模および極小規模水力発電
-出力 50~200kW
-出力 50kW以下
0.80
1.50
7
7
太陽光発電
6.50
10
燃料
21
再生可能エネルギーの現在の展開 – 電力
(MW設置済)
再生可能エネルギーのタイプ
設置済
(2011年)
目標
(2021年)
バイオマス
1,790
3,630
バイオガス
160
600
ごみ
25
160
マイクロ水力発電
95
1,608
太陽光
79
2,000
7
1,200
0.35
3
2,156
9,200
7%
19%
風力
地熱、洋上…
計
総発電容量に占める割合
出典:Prasert Sinsuprasert, DEDE
22
成功事例
 極小規模発電事業者(VSPP)
 バイオガス生産
 バイオマス発電所
 バイオ燃料
23
VSPPの成功事例 – 23カ所 2007年7月
出典:Webber, 2011年
24
VSPPの成功事例 – 83カ所、2008年12月
出典:Webber, 2011年
25
VSPPの成功事例 – 45県168カ所 - 2010年10月
バンコク(35カ所)
2011年3月:発電所221カ所、
約1,000MW
出典:Webber, 2011年
26
バイオガス発電所数
バイオガス発電所設置数の急増(1996~2006年)
年度
出典:P. Chaiprasert, KMUTT, 2011年
27
バイオガス技術促進プログラム
(2008年~2012年)
 設置タイプに応じて最大50%の投資助成
 助成対象
- 農産業プラント:338カ所
- 畜産場(中規模~大規模):ブタ430万頭
- 地域社会(残飯):300カ所
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タイのバイオマス発電所モデル
必要な処理エネルギー:
精米・乾燥:30~60kWh/籾1トン
白米
650~700kg
籾1トン
変換プラントからの
副産物バイオマス
精米工場
廃棄物:
籾殻220kg – 90~125kWh
必要な処理エネルギー:
サトウキビ:25~30kWh/トン
蒸気:0.4トン
サトウキビ
1トン
余分な流通コストが不要
製糖工場
廃棄物:
バガス290kg – 100kWh
必要な処理エネルギー:
20~25 kWh/トン
蒸気:0.73トン
蒸気・電気の
コジェネレーション
砂糖
100~121kg
パーム油
140~200kg
実房1トン
パーム油工場
廃棄物:
POME 600~700kg – バイオガス20m3
繊維+殻 190kg
空房230kg
出典:ミトポン, 2012年
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タイのバイオマス発電所の発展
初のSPP規則が
発表
初のバイオマス
発電所が送電網
に供給開始
製糖工場からの
非常時電力8MW
高圧コジェネ
レーションの
実現可能性調査
を開始
バイオマス発電所
で初の高圧(70
バール・510℃)
でのコジェネレー
ション
初のPPAによる
確定契約
バイオマス発電所で
初の105バール・
520℃でのコジェネ
レーション
バイオマス基盤の発
電容量が1420MWに達
し、720MWが送電網
に販売
出典:ミトポン、2012年
30
大規模バイオ発電の事例 –
バイオエネルギー・コジェネレーション(ミトポン)
 設備容量:65MW
 燃料:バガス
補充燃料として、サトウキビ葉、
籾殻、ウッドチップ
 ボイラー:70バール、510℃
タービン:抽気復水タービン
 CER:102,493 CO2-q/y
出典:ミトポン、2012年
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バイオマス発電所の主な成功要因:
バガスの事例(ミトポン)
地域社会による受入
燃料の主要供給源に近接
コジェネレーションの構成(プロセス蒸気を使用)
政府の強力な政策による支援
大規模発電による経済性
強力な財政支援
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社会経済的利益
地域社会の企業活動の活性化
雇用の増加
多くの農業廃棄物に付加価値
新技術を産業界に移転
タイの発電用化石燃料の輸入量減少
33
環境へのプラスの影響
スタック排気:よりきれいな空気
 微粒子
20~50ppm
 NOx
100~150ppm
 Sox
0~8ppm
固形廃棄物:農場で再利用
ボイラーから出る灰を土壌改良剤として使用できる
地球温暖化:温室効果ガス削減
- グリッド排出係数:500kg Co2/1MWh
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タイがソーラー・ファストレーンに参加 –
大規模な太陽電池設置事例
 SPC:2012年末までに太陽光発電所34カ所、204MW
 初の太陽光発電:2011年に38MWのプラント 32MWのプラント
を建設中、48MWのプラントが2013年に完成
 NEDが最大のプラントを建設中:2013年末までに73MWのプラ
ントが完成
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風力タービン設置の事例
 EGAT(公社):2009年に1.25MWのタービンを2基、平均風速
5~6m/秒
 ウィンド・エナジー・ホールディング社:2012年末までに
2カ所の風力発電所に207MWのジーメンス90SWT_2.3_101
(タワーとブレードは中国製)を設置
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エタノール生産 – 主にE10・E20・E85に対する
助成価格の価格差により促進
100万リットル/日
 2011年:19カ所、300万リット
ル/日の生産能力
国内需要140万リットル/日に対
し、170万リットル/日を生産
 主にカッサバの廃糖蜜が原料
 2021年までの目標:
900万リットル/日
出典:DEDE
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バイオディーゼル生産 – 燃料規定(B2、その後B3、
オプションとしてB5)、助成価格の価格差により促進
100万リットル/日
 2011年:13カ所、450万リットル
/日の生産能力、160万リットル/日
を生産
 主にアブラヤシのステアリン、
粗ヤシ油を使用
一部VOを使用
 2021年までの目標:600万リット
ル/日
出典:DEDE
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将来の課題
技術的問題
 バイオマス燃料生産量の向上(単位面積あたり)、非食用
エネルギー作物(例:ネピアグラス)の使用、エネルギー/
サトウキビ繊維
 持続可能な農業、精密農業
 よりクリーンで、効率的なバイオマスの処理、加工、転換
 先端的バイオ燃料技術
 農村地域住民が利用しやすい価格の低炭素燃料
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将来の課題(2)
技術的問題 (2)
 太陽光発電補助冷却
 低コストで高効率の太陽電池
 洋上風力
 エネルギー保存、変動的な再生可能エネルギーに関する問題
太陽熱収集器 蓄熱タンク
吸着式
冷却機
蓄冷
タンク
冷却天井
空調機
暖かく湿度が高い
冷房負荷
冷たく湿度が低い
吸着式太陽光冷却システムの概略図
40
将来の課題(3)
政策的な問題
 土地利用、土地区画、国立公園および不毛地・荒廃地の利用
 バイオマスの価格
 助成金、とりわけ固定買取価格の根拠(消費者に対する
公平性等)
 低価格化実現のための設備設計・製造のローカリゼーション戦略
 人材、制度面での能力
41
ありがとうございました!
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