キノ・イグルー キノ・イグルー

食べる を見つめる映画
映画の観方を拡大させ、
今の時代に合う
“場”
を作る。
画を観るということは、誰かの生活をのぞき見するような感覚
ませてくれます。映画を観終わった後の空間というのは、余韻が充満し
もあります。他人の姿を自分に置き換えて、
自分の身になって
ているもの。
その余韻が残っているうちに、
すぐにテーブルを囲むことが
「映
考えられるのが良いところ。
中でも、食べるシーンは特に、映画の中の人
大切で、場所を移動してはダメなのです。料理は大皿で、皆でシェアす
物と観ている私たちとの距離が近づく効果があると思っています。
『美
るようにしていますが、隣の人に料理を取り分けたりしていると自然とコ
味しそう』
とか
『幸せそう』
など感情を共有でき、相手のことを想像しやす
ミュニケーションが生まれてきて、
こちらから
『映画はどうでしたか?』
な
く、
自分の記憶が呼び覚まされることがある。
そんな距離感を縮めるた
んて訊かなくても、勝手に会話が始まっています」
めの装置として 食のシーン が使われていることもあると思うのです」
そんなニワコヤの客層は仙川という土地柄もあり、小学生の女の子が1
∼無人島シアター∼
移動映画館
キノ・イグルー
食べる を見つめる映画について、
そんな話をしてくださった有坂塁
人で来ていたり、若手クリエイティブのような人もいたり、近所のおば
さん。
「誰かとテービルを囲むこと」
や
「何気ない日々の食事の時間」
が
1つの作品を観ても
ちゃんがいたり、
様々な人が集まってくるそうですが、
大切に思えるという観点から、
この下の作品たちを紹介してくれました。
感じ方が全く違い、皆の会話はなかなか面白いそう。
しかし、今、特に若
そんな有坂さんは、
どんな空間も映画館に変えてしまう
「キノ・イグ
者の間で映画離れが起きている、
と言われています。
日本人が1年間に
2014年1月開催の
「無人島シアター 海に浮かぶレンガの要塞」。場所は猿島(横須賀市)
さんと渡辺順也さんの2人が2003年に
「食」「映画」
の企画もこれまで無
ルー」
の1人。今年で13年目を迎え、
観る映画の本数は、1人当たり平均1.2本というデータもあるという。
で、映画のスクリーンは、要塞跡のトンネル内
(フランス式レンガ積みが歴史的遺産)
に設
立ち上げた 移動映画館 。カフェ、雑
置。音響は映画にぴったりの空間で、
ただ真冬で寒かったためホットワインは飲み放題。
貨屋、書店、
パン屋、美術館など様々な
∼ニワコヤ映画祭∼
からは「あなたのために映画を選びま
数に手掛けてきたと言います。
で、最近のお仕事のことを伺ったら、
いき
なり
「離島」「映画」
という話題に…。
「映画って、
日常から切り離されたところに存在しているものなので、
ス
イッチが入らない限り、皆、
なかなか観ようとしてくれないのです。例え
「なぜかここ1∼2年で、急に 離島 の仕事が増えて、今月も3回ほど
『星
ば、飲み会で映画の話で盛り上がって観たくなったり、
テレビでコメント
PROFILE
キノ・イグルー( Kino Iglu)
は、有坂塁
空間で映画の上映を行っている。来年
す」
という個人面談イベントをスタート
させる予定。イベントなど最新情報は
空シネマ』
を開催するのです。100人で熱海からフェリーに乗って、会場
されているのを聞いて観たくなったり、
その『観たい』がスイッチONに
となる初島へ向かいます。到着するのはちょうどお昼頃。
午後はダイビン
なっているということ。
そんなスイッチは、誰もが持っているものだと思っ
で、夜が
グなど、
自由に遊んで、
夕方頃には温泉に入って、
夕食はBBQ。
ています。昨年、東京国立博物館の正門前に大きなスクリーンを出して
た世界一小さな映画祭。毎年秋に実施。上映
更けてきたら広場に集まって、
ハンモックに揺られたり、芝生に座ったり
上映会をやった時、800席しか用意していなかったので1,000人来たら
とおはなし担当は「キノ・イグルー」、
ごはん担
しながら、
野外の大きなスクリーンに映し出された映画を観るんです。今
マズいなと思っていたら、
なんと約4,500人が集まりました。
つまり、2日
当は「ニワコヤ」。今年もまもなく開催に!
年の春に開催した時には、皆で
『冒険者たち』
を観ました。波の音が聴こ
しかも、
お客さんは 映画を観ない と言われている
間で約9,000人です。
える中で、島の風景が印象的なこの作品を観ていると、今日はフェリー
若い層が中心。本当は映画を観たいと思っている人はたくさんいます
に乗ったなぁとか、今の自分の体験が映画の中のシーンと重なっていき
HPに掲載 http://kinoiglu.com/
今年で5 年目、仙川駅(調布市)にある小さな
手作りの小屋で、映画とごはんがセットになっ
∼テントえいがかん∼
10月28日
(水)
∼11月1日
(日)
開催!
多摩川の河川敷で毎年恒
し、映画でしか伝わらない感動があることも、皆、
ちゃんと気づいていま
今年
期間中、
ランチ、
ディナーで1日2回開催。
例の
「もみじ市」
に作った、
の上映作品は、
『オフサイド・ガールズ』
(2006
世 界で一 番 小さな映 画
ます。段々、現実か映画の世界かがわからなくなるように溶け合っていく
す。
ただ、
スイッチが入るようなきっかけがなかなかないだけ。今年、
『映
年/イラン)
『
、スカイラブ』
(2011年/フラン
館。収容人数は15 人。1日
のがとても心地良いんです」
でも、120年って歴史としてはまだ
画館』
の誕生からちょうど120周年。
ス)
『
、次の朝は他人』
(2011年/韓国)
『
、ル・
9 回上映するも、会場は 1
アーヴルの靴みがき』
(2011年/フィンラン
日の来場客数 2 万人のた
そんな有坂さんの手がけてきたイベントについて、
ごく一部だけ右の
スピード化社会の
浅く、下手したら誰か1人の一生分ほどの長さです。
ド)。各回25名限定、1人3,000円
(ごはん付
め、いつも長蛇の列に。
ブ
ページでご紹介しますが、今度は
「食べること」
が伴うイベントについて
今、技術も人々の感覚もどんどん移り変わっていきますし、
スマホやタブ
き)
、
予約は
「ニワコヤ」103・5315・2848 ルーのテントは、
もみじ市
お訊きしてみました。
レットでいつでもどこでも映画を観られる時代に、
スクリーンと2時間向
詳細はキノ・イグルーのHPを参照
のためにオーダーメイド。
「今、毎年恒例でやっているものに、
『ニワコヤ映画祭』
があります。会場
き合って静かに観るというこれまでの映画館のスタイルが必ずしも 映
は仙川にある小さなカフェで、映画を観た後、
テーブルを囲んで皆で食
画を観る正しい形 だと言いきれないと思うのです。
もちろん街の映画
べるだけの小さな映画祭です。上映作品は お店の雰囲気に合っている
館も大事にしていきたいものですが、他の選択肢として、時代に合う 映
か という基準で選び、
あとはお店の人たちが映画の世界観をフードで
画の場 を作っていきたいと思っています」
∼星空シネマ∼
野外上映会を楽しむ1泊2日の旅企画。
表現してくれますが、
アイデアいっぱいで、
いつも期待以上の料理で楽し
場所は初島。宿泊先は、今話題の贅沢
キャンプ グランピング 。今年 5月に初
開催し、10月には2回目を開催した。上
キノ・イグルーおすすめの
“食べる”
を見つめる映画
蜂蜜
VOL. 142
VOL. 135
ル・アーヴルの靴みがき
映作品は、1回目は『冒険者たち』、2回
目は
『ムーンライズ・キングダム』。
[2010年/トルコ]
「森の中に暮らす、家族。一人っ子のユスフは吃音を持つ男の子。
いつもお母さんに
『ミル
クを飲みなさい』
と言われてもいつもどうしても飲めない。
ある日、
お母さんの目を盗んでお
父さんが代わりに飲んでくれ、
ユスフはますますお父さんのことが好きになるのですが…。
そんなミルクが、
お父さんとユスフの関係性を表現したり、
ユスフの意思などを浮き彫りに
自然の音だけ。静けさ
する、
その1杯の存在感が大事なのです。音楽が一度も流れない。
[2011年/フィンランド]
アニー・ホール
OCT. 2014
OCT. 2014
が心地いい」
フランスの港町ル・アーヴルで靴磨きをしながら暮らすマルセルは、妻と愛犬ライカとの暮
らしに満足していた。
そんなある日、
アフリカ難民の少年を警察からかくまうことに…。移民
問題を描いたちょっとユーモラスな作品。
「主人公が大して稼げないまま家に帰る。
そして
[1977年/アメリカ]
ウディ・アレン監督によるロマンスコメディ。
「これも直接食べるシーンではなく、付き合い
今日の上がりを妻に渡すと、
『夕食の支度をする間、
どっかで1杯飲んできたら』
って、少し
立てのカップルが調理をするシーンがあります。
キッチンで、2人で料理をするのですが、巨
お金を渡す場面があるんです。
その後、愛犬とバーに行き、戻ってきたら食事するという流
大なエビを鍋にいれようと思ったらうまくはいらなくて…。
それが 付き合い立て を象徴し
ているようなシーンで、物語の本筋とは関係ありませんが、人物像が浮かび上がってきた
見せていて、最後までずっと心に残るシーンです」
2人が過ごした良い時間の象徴として実に魅力的に描かれています」
り、
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れになりますが、
その食事前のやり取りを丁寧に描いていて、夫婦の関係性を上手い形で