こちらから

平成2
平成24年度宝石学会(
年度宝石学会(日本)
日本)講演会・
講演会・総会
プログラム
〇 講
演
会
6月9日(土)
登録受付
9:00~
9:10~17:00
会
場
伊勢観光文化会館4F 会議室
三重県伊勢市岩渕 1-13-15
TEL:0596-28-5105
(裏表紙の周辺地図を参照して下さい)
○ 懇
○ 見
親
学
会
会
6月9日(土)
18:00~20:00
会
場
伊勢パールピア ホテル 多目的ルーム
会
費
5,000 円(会員・非会員とも同額)
6月10日(日)
9:00~13:00(予定)
真珠養殖場とミキモト真珠島見学バスツアー(昼食付)
集合:伊勢パールピアホテル前
解散:ミキモト真珠島
※ 解散後、ご希望の方は伊勢神宮(内宮)経由でJP線伊勢市駅に向かう
予定です。この場合は、JR線伊勢市駅に16時頃到着予定です。
※
交通事情の関係で到着時間に遅れを生ずることもあります。お帰り
の交通機関の予約には時間の余裕を持たせて下さい。
会
費
5,000 円
平成2
平成24年度宝石学会(
年度宝石学会(日本)
日本)講演会
講演会・総会プログラム
総会プログラム
平成2
平成24年6月9日(土)9:00(登録受付)~
登録受付)~1
)~17:00
於,伊勢観光文化会館4
伊勢観光文化会館4F 会議室
一般講演
座 長:渥美 郁男(9:10~10:10)
郁男
1. 赤色系のスピネルの産地ごとの特徴について(9:10~9:30)
○:発表者
㈱彩 ○中島 彩乃
日独宝石研究所
古屋 正貴
2. LA-ICP-MS 分析法を用いた天然及び合成ルビーの鑑別(9:30~9:50)
中央宝石研究所 ○江森 健太郎・北脇 裕士・岡野 誠
3. クンツァイトの色調変化についての考察(9:50~10:10)
東京宝石科学アカデミー
○西村 文子・岩松 利香
大池 茜・藤原 知子
休
憩(10:10~10:15)
一般講演
座 長:堀川 洋一(10:15~11:35)
洋一
4. ブルー・オパールの変色について(10:15~10:35)
聖徳大学 川並弘昭記念図書館 ○林 政彦
早稲田大学 理工学術院理工学研究所 安井 万奈
早稲田大学 創造理工学部環境資源工学科 山崎 淳司
5. 宇宙に水晶はあるか?(10:35~10:55)
狭山市
○川崎 雅之
6. 16世紀の宝石学(10:55~11:15)
お茶の水女子大学大学院
人間文化創成科学研究科 比較社会文化学専攻 ○下村 道子
7. ミャンマー産ルビーの Nam-Ya 鉱山における出現率及び、中国におけるルビーの流通の現状と
課題について(11:15~11:35)
㈱モリス
昼
○森
孝仁
食・評議員会(11:35~12:15)
総 会(12:15~12:30)
招待講演
招待講演
座
長:高橋
泰(12:30~13:30)
新羅の黄金文化(The Gold Culture of the Silla)
国立ソウル科学技術大学校 金属工芸学科(Metal Craft Department, Seoul National University
of Science & Technology, KOREA)
元鐸(Oh, Won Tack)
特別講演
座
長:小松
博(13:30~14:10)
高品質真珠の生産を支えるアコヤガイの育種・養殖技術の開発
~真珠養殖技術のイノベーションを目指して
三重県水産研究所 青木 秀夫
休
憩(14:10~14:15)
一般講演
座 長:林 政彦(14:15~15:35)
政彦
8. 南極大陸セール・ロンダーネ山地から産出したアマゾナイトの特徴
(14:15~14:35)
ジェムリサーチジャパン株式会社 ○福田 千紘・宮﨑 智彦
島根大学 総合理工学部 地球資源環境学科 亀井 淳志
9. 杉石を含む大隅石族鉱物における未記載鉱物(14:35~14:55)
山口市
○三浦 保範
10. ルミネッセンス像による天然及び合成ダイヤモンドの鑑別(14:55~15:15)
中央宝石研究所 ○久永 美生・北脇 裕士・山本 正博
11. ホース・コンク(ダイオウイトマキボラ)とホース・コンクパールの断面構造の考察
(15:15~15:35)
東京宝石科学アカデミー ○渥美 郁男
真珠科学研究所
矢崎 純子
休
憩(15:35~15:40)
一般講演
座
長:小松
博(15:40~17:00)
12.「放射線照射された南洋真珠」の電子スピン共鳴(ESR) 研究(15:40~16:00)
Hanmi Gemological Institute, Laboratory (Hanmi Lab)
○李 宝炫(Lee Bo-Hyun), 崔 賢珉(Choi Hyun-Min), 金 永出(Kim Young-Chool)
13. 放射線照射による真珠黒褐色化についての考察とその鑑別の試み―その2
真珠科学研究所
(16:00~16:20)
○矢崎 純子・佐藤 静香・押切 美奈子
14.「アコヤ真珠のグレーディングについて、その実践的手法の現状と課題」
真珠科学研究所
(16:20~16:40)
○阿倍 有圭子・横瀬 ちひろ・小松 博
15.アコヤ真珠の真珠層内に見られる“稜柱層”の出現形態と結晶構造についての考察
(16:40~17:00)
真珠科学研究所 ○山本 亮・櫻間 馨織
懇
親
会
(18:00~20:00)
平成24
平成24年度宝石学会
24年度宝石学会(
年度宝石学会(日本)
日本)特別講演及び
特別講演及び一般講演論文要旨
招待講演要旨
招待講演要旨
新羅の
)
新羅の黄金文化(
黄金文化(The Gold Culture of the Silla)
元鐸(Oh, Won Tack)
国立ソウル科学技術大学校 金属工芸学科
(Metal Craft Department, Seoul National University of Science & Technology, KOREA)
Abstract
The most flourishing gold culture of Korean history was at its height in Silla of the Three
Kingdoms period ranging from the 5th century to the 6th century. However, it was not
flourishing any longer and it went in decline. The purpose of this article is to look at the
splendid gold culture from the 5th century to the 6th century and analyze the causes of its
decline.
The Three Kingdoms period around the 4th~5th centuries was the developing period which
had the most outstanding cultural and political activities on the international stage in Korean
history. People in the Three Kingdoms period could acquire the foundation of developing
ancient Korean metal craft, especially jewelry because they developed the new way of
mining gold and silver and metallurgy. It was based on this era to build up the imposing
ancient tombs in the Three Kingdoms period, and the knowledge of craft art in the era was
mostly gained from their inside ancient tombs. It was the golden jewelry that was the most
distinctive thing among craftworks excavated from these ancient tombs in the Silla period.
Most of all, the outstanding craftwork is the golden crown excavated in the Gyeongju area.
The golden crowns, belts and earrings presented diversity rarely seen in the jewelry world
history as well as masterful gold jewelry. There are gold metalwork skills developed from the
golden earrings in Silla, which is called “NuGeumSeGong”. It is the same techniques as a
fringe and embroidery of the design with gold thread and grain, which is named “Filligree”
from ancient Greece in the West. In addition, the development of “Gokok” which had been
regarded as the origin from the teeth of some fierce animals also attracts people’s attention
as the Silla jewelry. The “Gokok” of Silla made of Jade, crystal•glass, and other jade was
used in jewelry such as golden crowns, and it had been spread in Japan.
Brilliant golden jewelry of the ancient Silla had been started to decline after the Unified Silla.
The Silla culture around A.D. 6 had been declined with the decline of the culture of ancient
tombs, but it started to build on Buddihism stone pagodas, whereby the installation work to
enshrine small crystals inside of the pagodas had been developed. This is because the
cremation culture of Buddihism got spread, and this made big tombs and diverse golden
ornament disappeared gradually. However, instead, the golden culture turned over a statue
of the Buddha of Buddhist temple and an object of metal craft.
特別講演要旨
特別講演要旨
高品質真珠の
高品質真珠の生産を
生産を支えるアコヤガイ
えるアコヤガイの
アコヤガイの育種・
育種・養殖技術の
養殖技術の開発
~真珠養殖技術のイノベーションを目指して
三重県水産研究所 青木 秀夫
真珠は、アコヤガイの持つ貝殻(生体鉱物)形成の能力によって生みだされる宝石であり、
その美しい輝きは、炭酸カルシウム(aragonite)の板状結晶と有機基質が交互に整然と形成
されることによりもたらされる。真珠養殖業はアコヤガイという生き物の持つ能力を活用し
つつ、自然と生き物が調和した環境のもとで成り立つ産業であり、そのうえで高品質な真珠
をつくるための養殖技術の向上を図ることが重要である。わが国における真珠養殖の産業規
模は、疾病や有害な赤潮によるアコヤガイの被害のほか、世界的な経済状況の悪化や海外産
真珠との競合等により、近年縮小して低迷状態が続いており、この対処として高品質真珠の
生産効率の向上のための技術開発が求められている。
真珠の価値は複数の要因によって決定される。主な要因とは、色調(実体色、構造色)、
光沢、巻き(真珠層の厚さ)、シミ・キズの有無、形、大きさ等である。これらのうち、真
珠に含まれる黄色色素の量によって決まる実体色(黄色より白色の真珠が高価)は、アコヤ
ガイの挿核施術に用いる外套膜片給与体(ピース貝)の遺伝的な性質が関与し、黄色い貝殻
真珠層のピース貝を用いると黄色い真珠ができることが明らかになっている。また、巻きに
ついては母貝の真珠層形成能力に影響され、この性質も遺伝することが示されている。こう
した遺伝形質については、親を一定の基準で選抜することによって子どもの性質・能力を改
良することが可能であり、すでに実用的な育種技術としてアコヤガイ種苗生産施設で活用さ
れている。
次にシミ・キズについては、最近演者らの研究グループは、挿核された直後のアコヤガイ
を塩分の低い海水で一定期間飼育(養生)することにより、シミ・キズの形成を低減できる
ことを明らかにした。シミ・キズは真珠の品質を低下させる大きな要因となるので、現在、
われわれはこの技術の普及に向けた実用研究を継続している。そのほかの要因である構造色、
光沢については、貝の性質や漁場の環境の影響に関する基礎的知見が乏しく、今後それらの
評価と技術開発への展開が期待される。
真珠養殖の生産性を向上させるためには、真珠品質の改善のほかに、生残率の高いアコヤ
ガイをつくることも重要である。特に、養殖現場では夏季のエサ不足による衰弱や疾病によ
るアコヤガイの死亡が問題となっていた。演者らの研究グループでは、その対策としてアコ
ヤガイの貝殻を閉じようとする力(閉殻力)を指標とした選抜育種による貝の生残率の改善
効果を明らかにするとともに、現在では本技術の実用化に取り組んでいる。
そのほか、大学等研究機関による最近の研究の成果として、アコヤガイのゲノム(すべて
の遺伝情報)の解読や真珠層形成に関与する遺伝子の探索・特定およびその機能の解明が進
められている。これらの成果はアコヤガイという生き物、そして真珠をつくる機構の理解の
ほか、高品質真珠を生みだす優れたアコヤガイをつくる技術の開発に応用が可能である。ま
た、これまで困難であった真珠の光沢および構造色の程度を計測する技術の開発と実用化(製
品化)が進められている。この成果は、真珠養殖技術の高度化のみならず、品質を客観評価
することで流通も含めた真珠産業全体に対しても貢献が期待される。こうした基礎的研究の
成果を、真珠産業の発展に活かしていくため、研究機関と真珠関係者(生産~販売)が連携
し、現場での新しい技術の開発・導入に努める必要がある。
一般講演論文要旨
一般講演
1
レンジ/ピンクのサファイアが大量に日本国
赤色系の
赤色系のスピネルの
スピネルの産地ごとの
産地ごとの特徴
ごとの特徴について
特徴について
内に輸入され話題となった。当初は輸出国側か
㈱彩 ○中島 彩乃
ら一切の情報開示がなく、“軽元素の拡散”と
日独宝石研究所 古屋 正貴
いう従来にはなかった新しい手法であったこ
とから、鑑別機関としての対応が遅れる結果と
スピネルは、近年市場での人気が高い。そ
なった。その後の精力的な研究によって Be 拡
してその傾向は高まる方向にある。これはコ
散処理の理論的究明には進展が見られたが、軽
ランダムにおいては外見向上のため各種の処
元素である Be(ベリリウム)の検出には SIMS
理を施される傾向が強い近年にあって、スピ
や LA-ICP-MS などのこれまでの宝石鑑別の範
ネルはコランダムと類する美しさを備えなが
疇を超えた高度な分析技術が必要となり、その
らほとんど処理が施されないためであり、ま
後の検査機関のあり方を問われる結果となっ
たコランダムに比べて産出量が少なく、稀少
た。
性が高いためと考えられる。
LA-ICP-MS(誘導結合プラズマ質量分析装置)
スピネルは色々な色相があるが、やはり人
は、軽元素を含む多元素同時分析による高速性
気が高い色はピンク~レッドの赤色系である。
と、ppb~ppm レベルの分析が可能な高感度性
近年のピンク~レッドの赤色系のスピネルの
能を持つ質量分析装置である。鉱物等の固体試
産出を見ていくと、現在では様々な産地が知
料の測定にはレーザーアブレーションにより
られている。以前から知られていたミャンマ
直径数 10μm 程度の極狭小な範囲を蒸発させ
ーやスリランカなどの産地に加え、1980 年代
る必要があるが、Be 拡散処理サファイアの鑑
には現タジキスタンのパミール高原が加わり、
別には欠かせない新たな分析手法として宝石
1990 年代になるとタンザニアの Tundulu、ベ
学分野においても活用されるようになった。さ
ト ナ ム の Yen Bai 地 方 、 マ ダ ガ ス カ ル の
らに LA-ICP-MS は蛍光X線分析では検出でき
Ilakaka が加わり、さらに 2000 年代になると
ない微量元素の検出が可能であるため、それら
タンザニアの Morogoro 地方でもスピネルの発
の検出された微量成分の種類や組み合わせが
見があった。
ケミカル・フィンガープリントとして宝石鉱物
これらの産地ごとの赤色系スピネルの産状
の原産地鑑別に応用されている。既にコランダ
をまとめ、その分光スペクトルの観点から代
ム、エメラルド、パライバ・トルマリンなどで
表的な色相やその成分構成およびその他の各
は多くの研究例があり、一定の成果が上がって
種宝石学的な特徴を分析する。
いる。
本研究では、これらの LA-ICP-MS 分析法の宝
一般講演
2
石学分野における他の重要な応用例の 1 つと
LALA-ICPICP-MS 分析法を
分析法 を 用 いた天然及
いた天然及び
天然及び合成ルビ
合成ルビ
ーの鑑別
中央宝石研究所
○江森 健太郎
北脇 裕士
岡野 誠
して、天然及び合成ルビーの鑑別法について検
討した。
1990 年代初頭、新産地であるベトナム産ルビ
ーの発見と同時期に大量の加熱処理されたベ
ルヌイ法合成ルビーが宝石市場に投入された。
2001 年 9 月頃から Be 拡散処理が施されたオ
加熱が施されることにより、鑑別特徴であるカ
ーブラインが見え難くなり、さらに液体様のフ
に元のピンク色に戻った事が言及されている。
ェザーが誘発されることで、識別が困難となっ
色調の変化をより詳しく調べる為に、今回
た。1990 年代半ば以降にはフラックス法によ
複数の産地からクンツァイトを入手した。放
るカシャン、チャザム、ラモラ等の合成ルビー
射線照射、退色テスト、加熱処理を施してそ
に加熱処理されたものが出現した。特にフラッ
の変化を観察すると共に、FTIR、EDXRF、可視
クス法合成ルビーは加熱によって内部特徴が
分光スペクトル測定を行いその推移を考察し
変化すると、標準的な鑑別手法では識別が極め
た。幾つかの知見を得たので報告をする。
て困難となり、他の有効な鑑別手法の確立が必
要とされている。本報告では、ベルヌイ法、結
一般講演
晶引上げ法、フラックス法、熱水法等の合成ル
ブルー・
ブルー・オパールの
オパールの変色について
変色について
4
ビーを LA-ICP-MS で分析し、Ti、V、Cr、Mn、
聖徳大学 川並弘昭記念図書館 ○林 政彦
Fe、Co、Ni、Cu 等の遷移元素や希土類元素等
早大 理工学術院理工学研究所 安井 万奈
の相違について纏めた結果を紹介する。
一般講演
早大 創造理工学部環境資源工学科 山崎 淳司
3
クンツァイトの
クンツァイトの色調変化についての
色調変化についての考察
についての考察
東京宝石科学アカデミー ○西村 文子
岩松 利香
大池 茜
藤原 知子
ブルー・オパールは大変綺麗な色調であり,
人気のある宝石の一つである。その中に変色
するものがあったので、その原因について報
告する。
この変色は、標本ケースに入れた状態で生
じており、ケース内部が青色になってしまっ
クンツァイトとはスポデュメン(リチア輝
ていることから、オパールから染み出てきた
石 LiAlSi2O6)の一種で、ペグマタイト鉱床
ことによることは明らかである。そこで、変
から産出される。スポデュメンのうち、特に
色した標本について、X線粉末回析実験とエ
ピンク~紫色石のスポデュメンはクンツァイ
ルギー分散型 EPMA により化学組成の分析を試
ト、クロム着色の緑色石はヒデナイトと呼ば
みたので、それらの結果を報告する。
れている。クンツァイトは 1902 年にアメリカ
カリフォルニア州にて発見され、近年は主に
(1)X 線粉末回折実験
アフガニスタン、ブラジル、マダガスカルで
装
産出される。クンツァイトは退色しやすく、
・リガク製X線ディフラクトメータ
また、放射線を照射すると緑色に変化すると
ULTIMA3
言われている。
条
GEMS & GEMOLOGY(2001)には米郵政公社が
置
RINT
件
・X線源:Cu Kα
始めた郵便物への放射線照射により、一部の
・電圧/電流:40kV / 20mA
宝石が影響を受けたことが報告された。その
結
中でクンツァイトも放射線照射の影響を受け
非晶質のシリカの回折パターンを示す。いわ
て緑色に変化し、自然光の下で短時間のうち
ゆる Opal-CT である.
果
ントル・地殻に分化している。核には主に鉄
(2)エルギー分散型 EPMA
(+ニッケル)が、マントルにはかんらん石
装
や輝石が濃集し、地殻には玄武岩が形成され
置
・日本電子製 JSM-6360 + OXFORD 製 INCA EDS
た。月の地殻は斜長岩と玄武岩である。水
条
星・金星・火星では地形と分光分析により、
件
・加速電圧:15 kV
その地殻は玄武岩質と推定されている。一方、
・測定範囲:20 mm
地球の地殻は海洋地殻と大陸地殻に分けら
・積算時間:60 sec
れ、海洋地殻及び大陸地殻下部は玄武岩質で
結
あるが、大陸地殻上部は花崗岩質である。
果
シリカ(SiO2)は Na、Mg、Ca、Al など
銅と塩素が検出された.
と共に容易に珪酸塩鉱物を形成するので、シ
以上の結果から,青緑色を呈する塩化銅
リカ鉱物が存在するためには、それらの元素
(Ⅱ)の二水和物によって着色されたオパー
以上に過剰な SiO2 が必要である。玄武岩中
ルと思われる。 なお、無水の塩化銅(Ⅱ)は
の SiO2 量は少なく、シリカ鉱物とは共存し
黄褐色である。
ない。一般的にシリカが単独で存在し得る火
流通しているブルー・オパールのネックレ
成岩は SiO2 量の多い花崗岩である。月物質
スで、身に着けている間に黄色に変色した報
の一部に石英を含む花崗岩が確認されてい
告もある。これは,塩化銅(Ⅱ)の二水和物
るが、量は少なく、他天体を含めても、水晶
が脱水して無水になったためと考えられる。
の存在は希である。分化によってできる地殻
塩化銅が人為的に含浸させたものかどうかは
を構成するのは主に玄武岩ないし斜長岩で
不明であるが、流通しているブルー・オパー
あり、量的に花崗岩はできにくい。マントル
ルの取扱いには注意が必要である。
のかんらん岩が部分溶融してできるマグマ
も玄武岩質である。他天体の地殻が花崗岩よ
一般講演
り SiO2 量の乏しい岩石で構成されていれば、
5
そもそも水晶が存在しにくい。むしろ、地球
宇宙に
宇宙に水晶はあるか
水晶はあるか?
はあるか?
狭山市 ○川崎 雅之
地球表層には大量のシリカ鉱物、特に石英
(水晶)が存在しているが、地球外物質(隕
石、月、火星など)には極めて少ないことが
既に知られている。実際、隕石中に含まれて
いる鉱物は珪酸塩鉱物(かんらん石、輝石、
長石)と鉄ニッケル合金が中心であり、シリ
カ鉱物は一部の隕石に少量報告されている
程度である。
太陽系形成の初期において、惑星は高温の
溶融状態にあり、その後の冷却過程で核・マ
の地殻において水晶が多い理由は大量の花
崗岩が存在することにあると言える。
では、花崗岩はどのようにしてできたの
か?
実験から水の存在下で玄武岩が部分
溶融すると、できたマグマは SiO2 量に富む
安山岩~花崗岩質マグマであることがわか
っている。玄武岩質の海洋地殻は中央海嶺で
生成され、プレートの沈み込み帯で地球内部
に入り込み、大量の水をスラブ(沈み込んだ
海洋プレート)上側のマントルに放出する。
その水が地殻下部を部分溶融させ、SiO2 量
の多い安山岩質~花崗岩質マグマを形成し
水が必須であることから、水の存在こそが鉱
ている。
物の多様性を生み出した原動力と言えるだ
元々、地球は金星、火星や月に比べて、水
に富んだ星である。惑星の分化が進んだ時点
ろう。水晶の普遍性はその結果の一つである。
(地球惑星科学連合 2012 年大会で発表)
で、海洋が存在し、プレートの動きに従い、
地球内部と地表との間で水の循環が成立し
一般講演
ている。その結果、地殻下部への水の連続的
16世紀
16世紀の
世紀の宝石学
6
お茶の水女子大学大学院
人間文化創成科学研究科
比較社会文化学専攻
○下村 道子
な供給が安山岩~花崗岩質マグマの形成を
促進し、大陸の成長につながったといえる。
他の天体ではプレートの動き(プレートテク
トニクス)は無かったか、あるいは限定的で
あったと考えられている。
美しく輝く宝石は古代から人々を魅了し続
地球表層の豊富な水は地殻上部でも循環
けている。古代ギリシアの哲学者は宝石の成
し、熱水作用により、SiO2 の単結晶、すな
因や性質の違いについて思索したが、1世紀
わち水晶を大量に形成した。地球が他天体
のプリニウスは『博物誌』のなかで宝石の色
(月や地球型惑星)に比較して、水が豊富で
や性質や産地のほかに、様々な伝説や効能や
あったこと、プレートテクトニクスにより水
神秘的な力を記述した。その後、中世ヨーロ
の循環が容易に行なわれたことが、地殻上部
ッパでは宝石の美しさよりも神秘的な力や効
における水晶の形成につながった。
能が増幅され、魔力や薬効を列挙した「鉱物
大昔、水晶を見た人々は「水晶は透明な硬
誌」と呼ばれる文学のジャンルの書物が広く
い氷である」と考えた。今日、我々は水晶が
流布した。16世紀になると、現在では「鉱
氷ではなく、SiO2 の結晶であることを知っ
物学の父」と呼ばれているドイツのゲオル
ている。しかし、水晶の形成過程を見れば、
グ・アグリコラが、科学的な観察に基いて『鉱
「水晶こそ水が作った結晶である」と言える
物の性質について』を著わした。しかし「鉱
のである。
物誌」の神秘的な力や薬効が完全に払拭され
もちろん、これは水晶だけに当てはまるの
たわけではなかった。そしてその後、科学の
ではない。花崗岩に伴う鉱物、水から晶出し
発展によって18世紀ころから近代的な鉱物
た鉱物はすべて水の賜物である。2008 年、
や宝石に関する著作が次々に出版されるよう
アメリカの Hazen et al.は鉱物進化論を唱
になり、19世紀末にイギリスで宝石学の教
えた(Amer. Mineral., 93, 1693;日経サイ
育が始まった。
エンス 2010 年6月号)。地球の進化(起源、
こうした宝石学の歴史のなかで、16世紀の
分化、大陸の形成、生命との共進化)の過程
イギリスのエリザベス1世の宮廷肖像画家の
に応じて、新たな鉱物形成プロセスが生まれ、 一人であり金細工師でもあった画家ニコラ
ス・ヒリヤード(1546/7-1619)が著わした文
鉱物の種類が増えてきた。特に生命の発生が
地球大気を酸化的にしたことの影響が大き
書は注目に値する。彼は宝石の熱処理、各種
いという。大陸の形成、生命の発生・進化に
宝石の色変種、ダイヤモンドの輝きとカット、
ダイヤモンドと類似石の識別方法など現代の
ンと Nam-Ya 鉱山のルビーの特徴的なインクル
宝石学に通ずる情報を自分の経験に基いて詳
ージョンについて報告します。
細に記述しているのである。また16世紀の
また、品質ごとのルビーの出現率を調査し、
イタリアの彫刻家であり金細工師であったチ
加熱処理の有無も含めた正確な、情報開示を
ェッリーニや、17世紀初期のイギリスの金
積極的に行っていく意義と販売現場での反応
細工師による著述と比較・検討することも興
をお伝えします。出現率につきましては、
味深い。
Nay-Ya, Mogok の両鉱山での鉱山主への聞き
取り調査をまとめました。品質ごとに出現率
一般講演 7
ミャンマー産
ミャンマー産ルビーの
ルビーの NamNam-Ya 鉱山における
鉱山における
出現率及び
出現率及び、中国における
中国におけるルビー
におけるルビーの
ルビーの流通の
流通の現
状と課題について
課題について
㈱モリス
○森 孝仁
の調査は、間接的に加熱処理の有無を判定す
る際の手がかりの一つになると考えます。
その他、6 年前から進出した中国上海市での
ルビーの鑑別についての実情と、これからの
展望を報告します。
鉱区での宝石ルビーの出現率の調査の結果
と処理前後の内包物の熱変化の例、そして、
一般講演
新しい市場である中国における情報開示の実
南極大陸セール
南極大陸セール・
セール・ロンダーネ山地
ロンダーネ山地から
山地から産出
から産出し
産出し
情を報告致します。昨年に引き続き、ミャン
たアマゾナイトの
アマゾナイトの特徴
ジェムリサーチジャパン㈱
マー北部カチン州の Nam-Ya 鉱山における採掘、
カット研磨作業、インクルージョンの撮影、
品質の判定を自社で一貫して行い、ルビーの
品質ごとの出現率について調査しました。
他の産地と比較して、無処理で美しい原石
が産出されることが多い Nam-Ya 鉱区でも、ジ
ェムと呼ばれる品質のものは、とても希少で
あり、供給量を確保するために、原産地では、
加熱処理をして色の改良が行われますが、そ
の情報開示は、充分ではありません。特に低
い温度での加熱処理については、見分けるの
が容易ではありません。モリスでは、10 年前
より、無処理で美しいルビーの内包物の拡大
写真のデータを取集し、そして、その内包物
を実際に加熱処理し、その熱変化したモノを
撮影しデータとして蓄積しております。今回
は、ルビーの内包物で 500 度から 600 度/5 時
間の加熱で、熱変化しやすいインクルージョ
8
福田 千紘
宮﨑 智彦
島根大学 総合理工学部地球資源環境学科
亀井 淳志
1912 年 1 月 28 日は白瀬中尉率いる白瀬南極
探検隊が日本で初めて南極点を目指し、南緯
80 度 5 分、西経 156 度 37 分の地点に到達した
日であり、今年でちょうど 100 周年を迎える。
これを記念し各所でさまざまな式典やイベン
トなどが開催されている。
第 50 次日本南極地域観測隊、セール・ロン
ダーネ山地地学調査隊が 2008 年~2009 年にか
けて現地調査を行った。2009 年 1 月の調査で
は新鉱物であるマグネシオヘグボナイト
-2N4S を発見し国際鉱物学連合(IMA)の新鉱物
命名分類委員会により新鉱物として認定され
ている(Shimura et al.(2011))。マグネシ
オヘグボナイト-2N4S は青色のコランダム(サ
ファイア)と共生するなど宝石となる鉱物も
見つかっており、セール・ロンダーネ山地で
のを準備した。各大陸、プレートテクトニク
は他に宝石質のバナジウム着色のグリーング
ス論上の共通点、相違点を中心に産地ごとの
ロッシュラーガーネットなども産出が知られ
特徴を検討し報告する。
ているが、極地での開発や採掘は国際条約の
制限を受けるため手付かずのまま保護されて
いる。
セール・ロンダーネ山地で採取された花崗
岩質の岩石試料には淡青色の粗粒な結晶が含
一般講演 9
杉石を
杉石を含む大隅石族鉱物における
大隅石族鉱物における未記載鉱物
における未記載鉱物
三浦保範(山口市)
大隅石族鉱物は宝石の杉石を含む鉱物で、
まれているものがあった。これは既に長石(ア
組成はKNaCa長石鉱物にFeとMgを含むのが特
マゾナイト)として存在が知られており予察
徴である(Web mineral, 2012) が、科学論文
的な分析で追認できた。セール・ロンダーネ
でもよく間違って長石と記載されている。そ
山地から産出するアマゾナイトは花崗岩質の
の大隅石族鉱物にまだ未記載の鉱物があるの
岩石中に淡青色の結晶として点在し、形状は
で、この紙面で紹介する。
半自形のものが多い。岩石中のやや祖粒な部
分に集中する傾向がみられた。結晶は明瞭な
1)地球に多く存在する大隅石族鉱物
劈開面が観察され低倍率の顕微鏡下ではラメ
(Miyashiro, 1956) はK-Fe (sugilite,
ラ構造が認められる。分析の結果、カリウム、
almarudite, klochite, merrihueite)とK-Mg
ナトリウムに富み微斜長石(マイクロクリン)
(trattnerite, chayesite,
に分類される。主要な成分のほかに着色要因
friedrichbeckeite) に富む2相で、いずれも
として鉄、鉛が少量検出された。また着色に
Kが多いのが特徴で、微粒子ではよくK長石組
はあまり影響しないと思われる微量成分とし
成と誤解されやすい鉱物である。
て Rb,Sr,Ba 等が最大数 1000ppm 程度と比較的
2)また、その他の大隅石族鉱物でNa-Mgに富
高い濃度で含有されていた。
む相 (roedderite, yagiite, eifelite)が報
本研究ではセール・ロンダーネ山地から持
告されているが、Na-Feに富む相は地球ではま
ち帰った試料に含まれるアマゾナイトの結晶
だ未記載である(Miura, 2011)。これも微粒
についてさまざまな特徴、化学組成等を検討
子でNa斜長石と混同して記載した論文報告を
し世界各所から産出が報告されているアマゾ
よくみかける。
ナイトとの比較を行った。比較対象はかつて
3) 残りの大隅石族鉱物でCa-MgとCa-Feに富む
ゴンドワナ大陸として超大陸を形成し現在は
相は地球ではまだ未記載である(Miura, 2011)。
分断されている南米大陸、アフリカ大陸から
これも微粒子でCa斜長石と混同して記載した
採取されたもの、ユーラシア大陸から採取さ
論文報告がある。
れたもの、北米大陸から採取されたもの、沈
み込み帯の島弧である日本から採取されたも
今後の研究の進展が期待される。
Fig.1 大隅石族鉱物の6つの相における代表的な組成と、長石組成と間違われた相のデータそし
て未記載の3つの相のデータをまとめたもの ( Miura, 2011)。
引用文献
A. Miyashiro, Am. Mineral 41, 104 (1956).
Web Mineral (2012): Osumilite-group minerals.
Miura (2011): (in press)
一般講演
10
降、宝石業界においても CVD 合成ダイヤモン
ルミネッセンス像
ルミネッセンス 像による天然及
による天然及び
天然及び合成ダイヤ
合成ダイヤ
ドが注視されるようになり、宝石学の文献に
モンドの
モンドの鑑別
中央宝石研究所
も登場するようになった。2007 年以降、国際
○久永 美生
北脇 裕士
山本 正博
的な宝石鑑別ラボの鑑別およびグレーディン
グ実務に供せられた CVD 合成ダイヤモンドの
報告が散見されるようになり、2010 年 11 月に
1990 年代に入って、合成ダイヤモンドが宝
は高圧法合成ダイヤモンドの製造で知られて
石市場に流通するようになり、業界関係者に
いる Florida の Gemesis Corp.が宝飾用 CVD
もその存在は広く知られるようになった。こ
合成ダイヤモンドの販売計画を公表している。
れらの多くは高温高圧(HPHT)法で合成され
宝石ダイヤモンドを研究対象とする場合、
た 1ct 未満の黄色ダイヤモンドであったが、
すでにカット・研磨が施されており、表面特徴
その後の技術革新により、青色、ピンク色、
の観察は期待できない。従って、宝石ダイヤ
緑色及び無色等の高品質の高圧法合成ダイヤ
モンドの成長履歴を読み取り、逆に成長条件
モンドが製造されるに至っている。2003 年 8
を推定するためには、結晶内部に残された不
月に米国、Boston,
Massachusetts の Apollo
均一性を検知する必要がある。ダイヤモンド
Diamond inc.が CVD 法で合成したダイヤモン
を始めとする天然の結晶は、一定の速度や一
ドを宝飾用に販売する計画を明らかにして以
定の条件下で成長するわけではない。形成過
程においては、成長速度あるいは成長条件が
ぐために{100}基板上にエピタキシャル成長
緩やかにあるいは急激に変化し、部分的な溶
をさせている。また、窒素を添加することで
解・再成長が生じることがある。そのため、
高速度の成長が得られ、成長丘の発生が抑制
欠陥密度や不純物分配が変化し、包有物、格
されて長時間成長が可能となる。しかし、窒
子欠陥(点状欠陥、転位、面状欠陥)、成長
素の添加量が多くなると、“step bunching”
縞(累帯構造)、成長分域などが形成される。
と呼ばれる線状の表面荒れが出現する。この
このようなダイヤモンド内部の不均一性はさ
step bunching は窒素の含有量が多くなると直
まざまな方法を用いて研究されてきたが、宝
線ではなくなり乱れた形状となるようである。
石ダイヤモンドの鑑別にはカソードルミネッ
センス(CL)法や紫外線ルミネッセンス像が
一般講演
有効である。
ホース・
ホース・コンク(
コンク(ダイオウイトマキボラ)
イオウイトマキボラ)と
本研究では、グレーディングに供された 1
万個以上の天然ダイヤモンド及び 250 個以上
の合成ダイヤモンドについて、主として DTC 製
11
ホース・
ホース・コンクパールの
コンクパールの断面構造の
断面構造の考察
東京宝石科学アカデミー
真珠科学研究所
○渥美 郁男
矢崎 純子
TM
DiamondView による紫外線ルミネッセンス像
の観察結果を纏めた。
巻貝に属すホース・コンク(英名)・ダイ
天然ダイヤモンドの結晶のモルフォロジーの
オウイトマキボラ(和名)
基本は、PBC(Periodic Bond Chain)解析法で
giganteni は東南アジア沿岸やフロリダから
導き出されるように、{111}で囲まれた八面体
一部のカリブ海沿岸に生息すると報告がある。
で、条線模様としての{110}を伴うが、{100}
この巻貝にはホース・コンクパールと呼ばれ
は結晶面上に現れない。これに対して、金属
る真珠層を持たない天然真珠が稀に発見され
溶媒を用いて高温高圧下で合成したダイヤモ
ることがある。それらはゴールデン、赤色、
ンドの結晶は、{111}面のみならず、{100}面
赤褐色、オレンジ色、白色などである。同じ
も良く発達した六・八面体の結晶形をとるの
ような巻貝でピンク貝は主にカリブ海に生息
が一般的で、金属溶媒の種類や温度によって
している。多くは食用にされるが稀に真珠層
は、{110}や{113}面を伴うことがある。また、
を持たない独特なピンク系の色調のコンク・
天然ダイヤモンドでは、{100}面は常にラフな
パールを産出し天然真珠として流通している。
面として振る舞い、スムースな界面として振
しかし真珠層を持たない天然真珠としてはホ
舞うのは{111}面のみである。しかし、高温高
ース・コンクパールはコンク・パールよりさ
圧法合成ダイヤモンドでは、{100}面は{111}
らに産出が希少である。今回はホース・コン
面と共に常にスムースな結晶面として振る舞
クパールと母貝であるホース・コンク(ダイ
い、渦巻き成長機構による結晶成長が行われ
オウイトマキボラ)とダイオウイトマキボラ
ている。CVD 法において宝飾用の単結晶を育成
の亜種の貝殻を切断し両者の断面構造の違い
するためには高速度成長が不可欠である。一
を高倍率の実体顕微鏡および電子顕微鏡下で
般に高速(10μm/h)以上で成長させると、成
観察、分析を行った。通常、流通している宝
長丘と呼ばれる異常成長が起こる。これを防
飾品は非破壊検査が前提である。今回の結果
学名 Pleuroploca
及び、非破壊おける母貝鑑別での可能性につ
低線量となる 0.1 kGy から高線量となる 10
いての考察を報告する。
kGy まで照射実験を行い、放射線によるフリー
ラジカルの変化を観察した。ESR による分析
一般講演
12
「 放射線照射された
放射線照射された南洋真珠
された南洋真珠」
南洋真珠」の電子スピン
電子スピン
共鳴(ESR)
共鳴(ESR) 研究
Hanmi Gemological Institute, Laboratory
(Hanmi Lab)
○李 宝炫(Lee Bo-Hyun)
崔 賢珉(Choi Hyun-Min)
金 永出(Kim Young-Chool)
の結果、放射線処理された真珠では CO2-と関
連したフリーラジカル(g=1.9833)が観察され
た。フリーラジカルは色の変化がない 0.1 kGy
の線量でも生成され、線量に比例して増加す
ることが分かった。そして、フリーラジカル
の放射線照射による依存性は真珠核より真珠
層で強い。このように真珠核と真珠層の特性
放射線処理による真珠の着色は主にアコヤ真
珠や淡水真珠に高線量で行われてきた。高線
量で照射されたアコヤ真珠や淡水真珠は色が
黒く変わり、照射前と比べてその差も大きく
明らかである。[1]
放射線照射による色の変化はマンガンの酸化
数が原因であると報告されている。[2] その
ため、マンガンの含有量が多い真珠核や淡水
真珠の色の変化は照射線量に依存している。
真珠層が薄いアコヤ真珠は放射線照射で黒く
なった真珠核の色が反映され易く、線量と共
に青灰色に変わる。しかし、真珠層が厚い南
洋真珠は高線量で照射してもその変化は軽微
である。[3]
そのため、一般的な検査方法である光透過検
が異なるため、真珠を構成する真珠層、真珠
核、コンキオリンを分離し、放射線によるフ
リーラジカルの変化を観察した。
固体状態の場合、測定方向による
方性から
フリーラジカルのシフトが観察される。
このような傾向から、真珠層のみの微量の粉
末を真珠ドリルを利用して採集し、分析を行
った。得られた真珠層の粉末からは一定な位
置のフリーラジカルが観察された。本研究の
分析方法は、真珠の製品化のため穴を開ける
際に得られる微量の真珠層の粉末で検査を行
うため、真珠を切断せずに検査する方法とし
て有効である。
引用文献
1. T. Tsuji, The change of pearl colors by the
査や真珠穴から真珠核の色観察は判別に限界
irradiation with r-ray or neutron ray, J. Radiat.
がある。
Res. 4 (2-4), (1962), 120.
更なる問題は、最近、低線量で放射線の照射
2. S. Okamoto, Coloring of cultured pearls by
を行っていることである。この場合、真珠を
Gamma-rays
切断してもその差はほとんど分からない。
(1985), 668-674.
このような問題点からこの研究では電子スピ
3. H.M.Choi, B.H.Lee, Y.C.Kim, Detection of
ン共鳴装置(ESR,EPR)を導入し、分析を行った。
gamma irradiated South Sea cultured pearls, J.
irradiation,
Radioisotopes,
34,
Kor. Crystal Growth and Crystal Technology, 22
の品質要素をテリ、キズ、面、かたち、まき
(1), (2012), 36-41.
の5つに分けている。そして各々3~4区切
一般講演
りに設けた評価段階のすべてが最高位に達し
13
放射線照射による
放射線照射による真珠黒褐色化
による真珠黒褐色化についての
真珠黒褐色化についての考
についての考
ているものについては、「最高品質の範疇に
察とその鑑別
とその鑑別の
鑑別の試み―その2
その2
真珠科学研究所
ある」と認定し、鑑定書に「最高品質マーク」
○矢崎 純子
佐藤 静香
押切 美奈子
を添付し、「特別呼称」を記入している。
また評価に入る前に、独自に設けた「パー
ルマーク制度」に沿って、欠陥チェックを行
放射線照射により淡水産貝殻から作られた
っている。
核が黒褐色化することが知られており、その
本報告では、それらの評価について、どの
黒褐色化の原因は、淡水産貝殻に多く含まれ
ような器材や装置を用い、判定基準を設定し
る Mn が2価から3、4価のマンガン酸化物
ているのか、その概要を特別呼称の「オーロ
に変わることによると考えられている(1959,
ラ花珠
花珠」「オーロラ真多麻
真多麻」「オーロラアコ
アコ
花珠
真多麻
堀口)。また近年、放射線照射核の ESR(電
ヤクイーン」の3つについて報告する。
ヤクイーン
子スピン共鳴)測定結果が報告されている
(2011,Hea-Yeon
Kim ら)。
また評価の客観性やその数値化について、
現状および今後の課題についても報告する。
今回淡水産貝殻から作製された核を粉砕後、
放射線照射しその形状等を観察するとともに、
一般講演
15
Mn2+量等を ESR で測定し、
① 照射量と Mn 2+ 量の相関関係は確認でき
ない。
② 同方法で照射量と CO 2 - 量との良好な相
関関係がある。
アコヤ真珠
アコヤ真珠の
真珠の真珠層内に
真珠層内に見られる“
られる“稜柱層”
稜柱層”
という結果を得た。この測定結果と真珠黒褐
真珠の養殖過程において、真珠の表面ある
色化について考察した。
また、放射線照射真珠の鑑別法の試み(2009,
佐藤ら)について、その現状と今後の方向に
ついて報告する。
いは真珠層内部には真珠層以外の異質層が形
の出現形態と
出現形態と結晶構造についての
結晶構造についての考察
についての考察
真珠科学研究所 ○山本 亮
櫻間 馨織
成されることがある。これら異質層の中の主
たる存在が“稜柱層”と総称されている白色
または褐色の不透明な層である。“稜柱層”
一般講演
14
が存在するとその部分から亀裂が生じる可能
「 アコヤ真珠
アコヤ真珠の
真珠のグレーディングについて
グレーディングについて、
について、そ
性があり、真珠が内包する代表的な欠陥と見
の実践的手法の
実践的手法の現状と
現状と課題」
課題」
真珠科学研究所 ○阿倍 有圭子
横瀬 ちひろ
小松 博
られている。
“稜柱層”には様々な形態が存在する。そ
こで真珠によく見られる形態の“稜柱層”を
選出し、光学顕微鏡により真珠表面と断面か
2000年に発表した当研究所の「PSL・パ
らそれぞれ観察を行った。また主たる成分で
ール・グレーディングシステム」では、真珠
ある炭酸カルシウムは結晶構造の違いにより
アラゴナイトやカルサイトなどいくつかのパ
ターンが存在する。これらについて、ラマン
分光を用いて結晶系の違いについても調べた
ので報告する。
宝石学会(
宝石学会(日本)
日本)第 40 期会計報告
1.貸借対照表(
貸借対照表(平成 24 年 3 月 31 日)
単位:
単位:円
資
産
の
部
負
科
目
現
金
252,573 未
預
金
2,761,583 未
金
13,496,490 預
計
16,510,646 小
郵
便
貯
小
合
計
摘
要
金
額
科
金
内
の
目
払
払
原
稿
り
部
金
額
金
0
料
0
金
300,000
計
300,000
基
本
金
900,000
繰
越
金
15,310,646
内
前期繰越金
14,948,613
訳
当期繰越金
362,033
計
16,510,646
16,510,646
預
債
合
訳
普
通
預
金
2,761,583
定
期
預
金
0
※ 前期繰越金の
前期繰越金の内 1,200,000 は預かり金
かり金と基本金
2.損益計算書(
損益計算書(自:平成 23 年 4 月 1 日
至:平成 24 年 3 月 31 日)
単位:
単位:円
収
入
の
部
費(正会員)
530,000
印
刷
費
181,125
(賛助会員)
160,000
原
稿
料
0
入
0
事
費
13,798
入
0
通
費
16,060
出
449,401
費
0
学 会 誌
収
目
部
会
収
科
の
目
告
額
出
科
広
金
支
務
用
品
信
会
収
入
504,000
総
受
取
利
息
482
奨
入
126,112 諸
税
手
数
料
3,875
H
P
維
持
費
105,
05,000
国
際
交
流
費
116,
116,204
雑
費
73,
73,098
小
計
958,561
金
362,033
計
1,320,594
収
当
合
計
1,320,594 合
支
額
総
雑
会
金
励
期
余
剰
宝石学会(
宝石学会(日本)
日本)第 41 期収支予算
(案 )
単位:
単位:円
収
科
入
の
目
部
支
金
額
科
会
費
収
入
836,000 会
会
誌
収
入
0 総
総
会
収
入
600,000 奨
受
取
利
息
500 通
入
120,000 事
雑
収
目
誌
額
600,000
係
0
費
40,000
費
20,000
20,000
費
31,500
31,500
費
120,000
課
5,000
雑
費
70,000
1,886,500 合
計
1,886,500
会
作
金
用
国
制
部
1,000,000
1,000,000
費
励
賞
関
信
務
330,000 H P
用
維
際
諸
計
の
費
繰越金より繰入
合
出
交
税
品
持
流
公
会員状況
(平成 24 年 3 月 31 日現在)
日現在)
会
員
正
賛
種
会
助
会
別 登
録
数 会
費
未
納
者 有
効
会
員
106 名
28 名
78 名
員
5社
0社
5社
10 口
0口
10 口
0名
3名
名
誉
会
員
1名
購
読
会
員
3名
合
計
備
考
115
正会員
賛助会員
新規入会
8名
新規入会
0社
脱会
8名
脱会
1社
員
数
電車ご
電車 ご利用の
利用の 場合
電車でお越しの場合は近鉄(または JR)にお乗りいただき、宇治山田駅(または伊勢市駅)で下
車していただくと便利です。詳細は「近鉄ホームページ」「JR西日本ホームページ」よりお確
かめください。
バスご
バスご利用の
利用の場合
バスでお越しの場合は、下記のバス停にて下車していただくと便利です。
宇治山田駅バス停 徒歩 約 1 分
伊勢市駅バス停 徒歩 約 15 分
※駅近辺は大変混雑しますので、バス発着時間が遅れる可能性がございます。