News Letter 3

Japan P&I Newsletter
第3号 2002年3月
ジャパン P&I ニューズ レター
編集:日本船主責任相互保険組合 広報委員会
〒103-0013 東京都中央区日本橋人形町2丁目15番14号
Tel:03-3662-7210 Fax:03-3662-7207
内航船主さん、見直してみませんか、あなたのリスク!
(2)
「法定外災害補償」のために適切な保険手配をお勧めします 。
事 例・・・一航士の死亡例
1 9 9 X 年 1 0月ある日の午 後 、内 航 貨 物 船 A 丸( 4 9 9 G T )は、鋼 材 9 3 0トンを積 載 のうえ東 京 湾 の港より
中京 地 方 へ 向けて発 航しました。当日の視 界はやや 不 良でしたが、まずまずの天 候といえました。出 港
後 間もなく本 船は中ノ瀬 航 路 付 近に差し掛かり、接 近してくる行 合い船を視 認しました。本 船は相 手 船
が左 舷にかわそうとしていると判 断して、右 転 の避 航 動 作を開 始しました。ところが相 手 船も同じく本 船
右 舷 方 向に転 舵したので、本 船 船 長と一 航 士は衝 突は必 至と判 断し、身の危 険を感じて船 尾から海中
に身を投じました。その後 船 長は無 事 救 助され 、
本 船も間 一 髪 衝 突を免れて無 事でしたが、不 幸
にして一 航 士は亡くなりました。
●法定外災害 補 償は船 主 責 任で す
この 痛ましい 事 故において後日関 係 者 間 の
悲 劇と紛 争を招いたのは、労 働 協 約 上また
は 就 業 規 則 上 の 上 乗 せ 災 害 補 償として、
船員保 険 上の法 定 補 償に加 算して一 航 士
の遺族に支給されるべき補償、すなわち「労
働 協 約 上 の 上 乗 せ 災 害 補 償 」に関し、船
主がそのための 適 切な保 険 手 配をしてい
なかったことにありました。船 主に補 償 資力
があれ ば 何 の問 題もなかったはずですが、現 実には
●後悔先に立た ず
船 主は日々の限られたやり繰りのなかから数 千 万 円
船主のこのような労働契約上の責任を担保すべく、
もの 追 加 補 償を行う余 裕 はなく、残された遺 族 の 期
様々な労 働 災 害 総 合 保 険や団 体 生 命 保 険が用 意さ
待に全くといっていい ほど応えることができなかった
れております。当組合もまた上乗せ災害補償付きの「甲
からです 。
契 約」をご用 意して、組 合員のご要 望にお応え致して
●あってはならない保 険 手 配の欠 如
おります 。当組 合は前 述のような不 幸な事 例を見るに
改めて申しあげるまでもなく、事 故は起こさないにこ
したことはありません。しかし現 実には、事 故の絶 無を
期 すことは 極 めて困 難 であるのもまた事 実 です 。以
つけ、保 険さえ付けて頂いていたらお役に立てたのに
と思うと残 念でなりません。事 故が起こってから後 悔
しても間に合わないのです 。
前からいわれておりますとおり、不 幸な事 故は単に人
●今一度見直しを
を不 幸にするだけでなく、その適 切な備えを欠いた場
組 合員におかれましては、業 務 上 起こり得る様々な
合 は 関 係 者 の 悲 劇を倍 加させます 。そして、残 念な
危 険に対し適 切な備えができているかどうか、念 のた
がらこのように保 険 手 配が欠 如していた事 例は 決し
めに今 一 度 見 直され ては 如 何 でしょうか 。本 件に関
てこのA 丸が最 後ではなく、最 近に至ってもしばしば
する質 問がございましたら、当組 合 事 務 局まで何なり
見受けられるのです 。
とお問い合わせ 下さいますようお願い致します 。
ー1ー
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Japan P&I Newsletter
第3号 2002年3月
ジャパン P&I ニューズ レター
A ccident
今回は船主さんにとって
全く思 い も か け な い 状 況 から 事 故 が 発 生した 事 例
をご紹介しましょう。
A ccident
A ccident
case. 1
case. 2
事故例・1/船長の脳梗塞発作で護岸に衝突
事故例・2/香港でコンテナ詰替え検疫不受理に
護岸修理費用¥1,300万
賠償・焼却てん補金$118,000
内 航 貨 物 船 B 丸 ( 1 9 9 G T )が大 阪 南 港で揚げ荷
外 航コンテナ船 C 号 ( 1 6 , 7 0 0 G T )は豪 州 積み冷
役を終了し、出港して間もなく船橋で船長が脳梗塞
凍コンテナ2 本を設 定 温 度 - 2 2℃で日本 向け運 送を
の発 作を起こし倒れた。手 仕 舞い中の一 航 士が本
開 始したが、途中- 1 4℃まで温 度が上 昇したため香
船の針路がやや偏っており、護岸に接近しているの
港 へ 寄 港 、仮 陸 揚げして別 のコンテナに詰め替え
に気付いたが針路を変える暇もなく護岸に衝突した。
東京まで運んだ。
船長は予てより血圧が高く、血圧降下剤を常用して
東京では該貨は動物検疫対象貨物であったが、
香 港は家 畜 伝 染 病 予 防 法 上 の汚 染 地 域とされて
いた。
護 岸 修 理 費用に¥1 , 3 0 0 万 余かかったが幸いに
おり、同 地でのコンテナ開 扉、詰 替えは「 汚 染 」した
ものとされ 検 疫 不 受 理となった。転 売、S h i p - B a c k
も油の流出は無かった。
も検 討されたが処 理できず焼 却 処 分となり、荷 主に
対する賠 償 金、焼 却 処 分 費用 合 せて、てん補 金は
$118,000をオーバーする損害となった。
A ccident
case. 3
事故例・3/温度設定ミスで多くの品が使用不能に
積荷の賠償金$119,000
外 航 冷 凍 冷 蔵 運 搬 船 D 丸 ( 1 , 2 0 0 G T )はインド洋
上で仲 積みの際 、複 数 の漁 船に渡 す 貨 物をN o . 1
ホールドAデッキに積 み 込 み 、途中 Bデッキの予 冷
を開 始した 。ところが 機 関 部 でA デッキも- 5 0℃に
設 定した為 A デッキに積 み 込 んだ漁 具 のテグス、
機 関 部 予 備 品 のオイルシールや パッキング類 、食
品 等 多くの品 物が使 用 不 能となり、船 主は荷 主に
$1 1 9 , 0 0 0を賠 償した。
以 上 3 件は組 合 員が 予 期 せぬ事から大きな出 費を余 儀なくされた事 例ですが 、
P&I 保 険は常に組 合 員の 立 場で事 件 の 解 決 、損 害 の 縮 小に努めております 。
ー2ー
Japan P&I P E ME P acka g e 活 用の勧め
フィリピン 人 船 員 の 雇 用 前 健 康 診 断 が な ぜ 重 要 な の?
昨年10月、P&I特別回報(第01-006号)で当組合のフィリピンにおける雇用前健康診断Japan P&I PEME(Pre
Employment Medical Examination)Packageをご紹介しました。今回はなぜ我々がPEME Packageの活用を
お勧めするのか具体例でご説明しましょう。
当組合Crewクレームの扱い件数
年度
全クレーム受理件数
2002年2月20日現在
Crewクレーム件数
Crewクレームの占める割合
1997 年度
4,109 件
1,798 件
43.7 %
1998 年度
3,917 件
1,633 件
41.7 %
1999 年度
4,004 件
1,591 件
39.7 %
2000 年度
3,632 件
1,493 件
41.1 %
2001 年度
2,864 件
1,075 件
37.5 %
注)各保険年度(特に2000年度・2001年度)につき、今後追加クレームが見込まれる。
1997年度のCrewクレーム1,798件中、なんと1,067件がフィリピン人Crewから
のクレームなのです。年度が変わってもこの傾向にはかわりがないといえます。
さらに、1,067件中病気による死亡(事故死、行方不明等は含まず)が
31件あり、
その内訳は、下の図の通りです。
甲状腺ガン・
・
(1)
食道出血・吐血・
・
(2)
骨髄形成異常・
・
(1)
自 殺・
・
(1)
腎不全・
・
(2)
心臓発作・心不全
心臓マヒ・心筋梗塞
急性呼吸不全・
・
(13)
肺結核
急性肺炎・
・
(4)
肝腫・肝硬変・肝臓ガン・
・
(7)
また高 額 治 療 費($4 0 , 0 0 0 以 上 )
を 要したもの 及 び 回 復 が 見 込 め
ず 後 遺 障 害 手 当を支 払 い 治 療を
打ち切った事例が28件(前者12件・
扁桃炎・
・
(1)
尿管結石・
・
(1)
尿路感染症・
・
(1)
腰髄神経根症・
・
(1)
肝機能障害・
・
(1)
緑内障・
・
(1)
虫垂炎・
・
(1)
高血圧性機能不全・
・
(12)
心不全・脳梗塞・脳血栓
( )
脳内出血 ・ 心筋梗塞
心室肥大・
虚血性心疾患・
・
(2)
後者16件)
あり、右の図の通りです。
腫瘍・
・
(3)
膀胱脈間腫瘍
( )
直腸腫瘍・ガス壊疽
腎不全・
・
(4)
(糖尿性)
乗船後僅か一ヶ月で腎臓の具合が悪くなり、マニラへ 送還のうえ治療を続けたが人工透析が必要とされ、ちょっとおかし
いのではないかと言う組合員の声を聞くことがあります。けれども雇用前検診では何ら異常は認められていなかったのです。
と言うよりはむしろおざなり検査をパスしてきたと言えましょう。
現在の標準的な雇用前検診の項目としては、
7) 胸部X線検査
1) 包括的身体検査
3) 視覚検査
5) 尿検査
8) 血液型検査
2) 心理学的検査
4) 歯科検査
6) 便検査
9) 全血球算定
上記9項目の検査をするとされていますが、心機能検査、糖尿病検査、肝機能検査、腎機能検査、肺機能検査などが含ま
れていないか又は検査はするものの不十分で、残念ながら病因を持った船員が乗船するのを水際で阻止できていないと考
えられます 。前記59件(死亡31件+高額治療等28件)の支払い保険金平均単価は何と$76,500にもなります 。このような
事故が1件起こっただけで保険料をはるかに上回る保険金が支払われることになるのです。Japan P&I PEME Packageの
検査項目では上記9項目検査に9項目を上乗せし、
さらにオプションとして4項目を加えることができ、完璧ではないにせよほ
ぼすべての検査を取り入れて病因を持った船員を排除できるような態勢が取れると考えております。
もちろんこの検査をパスした船員のクレームがゼロになるとは考えておりませんが、減らせることに繋がると確信しております。
元々悪くなる要素を持った船員が乗船中に発病しただけで、例えば腎臓移植手術、
あるいは生涯を通じての人工透析費用
まで支払わなければならない理不尽さは避けて通りたいものです 。そのような避けることができるかもしれない出費はたとえ
保険でカバーできるとしても支払わないに越したことはないと考えます。
既に高度の雇用前検診を取り入れておられる組合員の皆様にはくどい話となりましたが、従来の雇用前検診のみで配乗
をされている組合員には改めてJapan P&I PEME Packageの活用をお勧め致します。
ー3ー
Japan P&I Newsletter
あんな 話 、こんな 話 。
海 賊 の 話
4
Vol.
3
「カリブ海の大海賊∼その歴史と実像」
バッカニア(Buccaneer)
バッカニアはカリブ海の私掠船員或いは海賊の
両方を指すのですが、元はスペイン領エスパニョラ
島の、野生の牛の肉を焼いて生活していた人々を
指していました。その人々がスペイン人に追われて
海賊となり、
その後カリブの海賊がこの名前で
呼ばれるようになったのです。
現在ドミニカ共和国という国があり、
この島の
西3分の1はハイチと言う国です。昔は2つの国の
区別がなく、島全体がスペイン領でエスパニョラ島と
呼ばれていました。
過疎化で無人地帯となったこの国の北西部に、
難破したイギリスやフランスの航海者たちが集まって
きて、野性化した牛の肉を焼いてそこを通る船に食
賭博、女、酒が出てくる海賊映画は大体ポートロイ
料として売りつけていたのです。
ヤルを念頭においていると言えます。
連中の活動がだんだん大きくなり、危険を感じた
しかし、
18世 紀 後 半になり、イギリス/フランス/
スペイン政府が首都サント・ドミンゴから討伐隊を送っ
スペインの交戦状態が無くなり、和平条約が結ばれ
て連中を追い出し、追い出された連中はドミニカ共
るようになると、バッカニアの活躍する余地がなくなり、
和国のすぐ近くのトルトゥーガ島に逃げ出しそこでス
海賊行為ができなくなってしまいます。
ペインの官憲に対して武器を持って戦うようになっ
そこで政府の特使が派遣され、正業に就くよう説
たのです。それがバッカニアの起こりです。
得されたのですが、海の泥棒を続けたい人間も相
バッカニアはいろいろな国籍の人がいて、
トルトゥ
当出てきていわゆる海賊の出現となります。国から
ーガ島はいろいろな国籍の人の海賊の巣となりました。
の免状もなく、国の法律、命令、条約に逆らって略
当時のスペインは中南米にものすごく広大な領土を
奪行為をやる。こうなると自分の国でもなんでも構
抱えており、
とても全部を治めきれず、
カリブ海の島々
わないから襲ってしまえと言う事になり、本当の海
はエスパニョラ島とプエルト・リコ島を除きほとんど
賊になってしまったわけです。スチーブンソンの「宝島」
イギリスとフランスの海賊に取られてしまうのです。
に出てくるシルバー船長に代表される海賊はこの
バッカニアの代 表 的 人 物は、イギリスがスペイン
種の海賊です。
ーこの項終わりー
から奪い取ったジャマイカ島ポートロイヤルに基地を
東京大学名誉教授 増田義郎氏
うみ・ふねセミナー2000 ∼海賊その歴史と実像∼講演録より
持っていたイギリス人ヘンリー・モーガンと言えます。
ホームページ http://www.piclub.or.jp
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