特集2 現場実践シリーズ 担当業務 編 そこが りたい 知 実践 3 他院の業務コンテンツ 手術情報入力業務 編 順天堂大学医学部附属順天堂医院 心臓血管外科 手術情報入力業務担当 小島裕子 (株式会社パソナより派遣) .病院概要 今回ご紹介する業務の一つが、NCDへの データ入力業務です。2011年 月より開始 当院は御茶ノ水駅のほど近くにある、西 され、現在3,700施設以上の医療機関が参 洋医学の医療機関として日本で170年近い 加している事業ですので、ご存知の方も多 歴史のある病院です。 いと思います。 特定機能病院や先進医療、救急医療の指 もう一つはJACVSDおよびJCCVSDの 定・承認を受けており、一般病床数は1,005 データ入力業務です。これらは、心臓血管 床、 日平均当たりの外来患者数は3,918 外科手術に関連するデータベース事業で 名、入院患者数は935名という大規模病院 す。どちらも全国規模で行われており、集 です。 まった情報が解析されることで医療の質の 2011年11月から心臓血管外科に派遣職員 として、ハートセンターがあるフロアの医 向上につながる業務です。 私が、この業務に携わる前は つの課題 師室に席を置き、①JACVSD(日本成人心 がありました。一つは入力する医師の負 臓血管外科手術データベース) ・JCCVSD 担、もう一つはデータのばらつきです。 (日本先天性心臓血管外科手術データベー 当科では事務職員がこの業務にかかわる ス)の新規症例入力、②NCD(National ことで、①医師の負担を減らすこと、②こ Clinical Database)への新規症例入力、③ れまで複数の医師による入力のため、バラ その他(予後調査、論文等の英文校正)な ツキが生じかねなかった診療データを一括 どの業務を行っています。 管理することで精度の高いデータにしてい 当科には13名の医師が在籍し、年間500 件以上の手術を行っています。2012年には 成人手術が570例、小児手術が119例の計 689例の診療実績となりました。 くこと、という す。 つの効果を期待していま 特集 図表 .新規症例入力 当科では、JACVSD・JCCVSD、NCDの 新規症例入力の業務を行う際に、カルテ、 オペ記録(図表 )、術前サマリー(図表 術後サマリー(図表 ) )などを確認しなが ら実施しています。入力の基本的な流れは 次のとおりです。 ①対象症例のリスト化:行われた手術を ∼ 日に 度のペースでエクセルでリ スト化する。 ②該当症例の関連資料収集:カルテとfile makerに保存されている関連書類を整え る。 図表 術前サマリー オペ記録 現場実践シリーズ 図表 担当業務 編 術後サマリー ③術前・術中情報は術後数日以内に入力、 また、初めて入力する症例は時間がかか 術後・退院情報は30日以内に入力:100% りますが、件数をこなすほどに把握すべき に近い内容まで入力を行い、不明点は医 情報のポイントがつかめてくるので、徐々 師に確認する。 に入力スピードは上がり、現在は簡単な症 ④医師の確認・承認 例であれば 分、難しい症例の場合でも 20∼30分程で入力しています。 やはり、いちばん大変なのは③の入力作 業です。私自身、心臓血管外科領域はもち 昨年 年間で入力した件数は2,860件(過 去症例含む)です。 ろん、医学知識はほとんどなかったため、 失敗例として、JACVSDのサイトビジッ 慣れるまでは医学用語や術式名などを調べ ト(各施設を訪問して検証すること)が行 る作業に時間を要しました。こういった知 われた際に、入力項目の定義・解釈の理解 識面の課題は、医師に時間をもらい、患者 に違いがあったことが判明し、入力修正を 説明用のVTRや模型、実際に手術に使用す 行ったことがあります。あいまいな点があ る器具を用いて、術式や入力項目の意味な る場合には、その時点で解決しておいたほ どの説明を受けたことでかなり改善されま うが良いと思います。 した。 特集 図表 当院における心臓血管外科領域の NCD入力項目の難易度 簡 単…患者属性、入退院日、郵便番号、担 当医 普 等 .医師への貢献 手術情報の入力や内容理解のために専門 通…ICD-10コード(病名)・手術名、検 的な知識が必要な事柄に関しては、正確に 査名、手術後の処方薬、既往歴、術 入力できるようになるまでにはある程度時 前症状 間がかかります。しかし、医師に質問して 等 関連資料に記載して ある項目 難しい…手術内容、検査内容、判断材料が関 いく中で、例えばフォーマットそのものに 連資料に記載されていない項目 新しい項目を追加してもらったり、CT読 (例:血管の狭窄度など)、合併症 影に関する症例リストを作成して読影情報 の場合 を記載してもらったりすることで、改善策 が見えてくることがあります。 は、心臓血管外科領域のNCD入力 医療機関や診療科によって業務形態や方 項目の難易度です。主観的な内容ですし、 針の違いも多いと思いますが、周囲の医療 他診療科では状況が違う場合があると思い 関係者とよくコミュニケーションをとっ ますが、参考になればと思います。 て、疑問点については質問したり、改善策 図表 .その他のサポート業務 を提案することで、仕事のやりやすい環境 をつくることができると思います。そし ③のその他(予後調査、論文等の英文校 て、このような工夫をすることで、入力さ 正)の業務についても簡単に説明します。 れるデータの精度もさらに向上し、医師の 予後調査では、医師から依頼された患者 負担軽減にも大きく貢献できると思いま リストに基づいて、各医療機関に電話で連 絡を取り予後調査を行っています。私が担 当するまでは医師が行っていました。医師 にとって患者さんの予後はとても重要です す。 .新たな挑戦 2013年 月から順天堂大学大学院に新設 が、情報を得ようとすると、相手先の医療 された医学研究科に入学し、医学知識を学 機関とさまざまな書類のやり取りが発生す んでいます。普段通っている職場の近くと るため、忙しい医師にますます負担がかか いうメリットもありましたし、医学を専攻 ります。また、海外生活が長かった私の英 していなかった人が医学知識を勉強できる 語スキルを生かし、医師が学会等で発表す 学科であったため入学を決めました。 る資料の英文校正も行っています。 手術情報入力業務は 日中行う必要はな いので、このような他の業務と併せて医師 のサポートを行っています。 今後は、より医療の知識を高めることで、 病院や医師へさらに貢献できるよう努めて いきます。
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