うらやす日本語指導力向上講座
講義録まとめ
2009 年 7 月 26 日~2010 年 2 月 21 日
各日曜日 17:30~20:30 (20 回) 於いて 浦安市国際センター
浦安市国際交流協会主催
平成 21 年度「文化庁生活者としての外国人のための日本語教育事業」受託事業
―――― 『うらやす日本語指導力向上講座』 講義録まとめ――――
テキスト: 『みんなの日本語 初級Ⅰ』
教え方の手引き
目 次
1.
7 月 26 日
桜井先生
この講座の進め方。日本語教育の考え方。
P.2
2.
8月 2日
桜井先生
日本語教育の基礎。シラバス。日本語の音声。
P.15
3.
9月 6日
多仁先生
1 課~5 課。Q&Aについて。敬語、漢字の扱い。
P.27
4.
9 月 13 日
多仁先生
5 課~8課。名詞文、動詞文、形容詞文。表記。
P.36
5.
9 月 27 日
岩佐先生
日本語の語彙力を増すために。和語・漢語。類義語。
P.42
6.
10 月 4 日
片桐先生
プレトーク。著作権など。音声と表記。音便・拍など。
P.49
7.
10 月 18 日
多仁先生
9 課~14 課。存在文。助数詞。比較。テ形。
P.58
8.
10 月 25 日 多仁先生
15 課~20 課。テ形、ナイ形、辞書形。プレインフォーム。 P.66
9.
11 月 8 日
多仁先生
21 課~25 課。連体修飾。授受表現。~んです表現。
P.74
10. 11 月 15 日 多仁先生
初級から中級へ。可能、受け身、使役、使役受け身。
P.85
11. 11 月 29 日 多仁先生
シミュレーション。2 課~9 課の中の文型。
P.91
12. 12 月 6 日
多仁先生
シミュレーション。12 課~23 課の中の文型。
P.94
13. 12 月 13 日
多仁先生
実習に向けた教案作り。指導。提出。先生のアドバイス。 P.97
14. 12 月 20 日
多仁先生
実習に向けた教案作り。添削された教案の講評。
P.99
15.
1 月 17 日
多仁先生
実習。16 課、~て。17 課、~なければなりません。
P.100
16.
1 月 24 日
多仁先生
実習。18 課、~ことができます。22 課、連体修飾。
P.103
17.
1 月 31 日
多仁先生
実習。21 課、~と思います。19 課、~たり~たり。
P.109
18.
2月 7日
多仁先生
実習。23 課、~と~。24 課、授受表現(やり・もらい)
P.115
19.
2 月 14 日
多仁先生
実習。25 課、~たら、~なかったら。25 課、~ても~。
P.122
20.
2 月 21 日
多仁先生
総括。入門テキスト。マス形の指導。例文の準備。
P.129
うらやす日本語指導力向上講座を終えて
P.135
実行委員挨拶
1
『うらやす日本語指導力向上講座』 第 1 回
日時:7 月 26 日(日)’09 年 17:30~20:30
講師:桜井 隆 先生
≪一時限目≫
桜井先生自己紹介。
30 歳のころ、オランダのライデン大学で日本語を教えたのが初め。まだ日本語教育という
確立した概念も方法もなく、自分にとっても初めての経験だった。そこは完璧なエリート教育で
何人落としてもいいという考え方。日本語を学ぶ学生は、初めは 100 人→二年目には 50 人→
10 人かそこら→最終年には 1 人か 2 人。教え方どうこうではなく、学ぶ者は自分で学ぶ。
最近は、自分が直接日本語を教えることより指導する教師を養成・監督する立場が多くなり
少々面白くないこともある。
スタッフが配布した、教室運営に関するプリントを題材に。
教室の準備とか後片付け等のやり方や分担が書いてあったが、これは日本独特の文化。
授業後、自分の教室を自分たちで掃除するという習慣は、世界でも珍しい例。
自分の知る限り、欧米でも掃除夫がいて児童・生徒がやることはまずない。
今後のクラスのやり方について。
(今回の受講者の応募用紙に書かれた経歴や希望に触れながら話を進める)
受講者の中にはかなりの指導経験のある人、420 時間の講習修了者、大学で副専攻した人、
学校で教えた経験のある人、指導をごく最近始めた人……キャリアも実にいろいろ。
このたびは、せっかく 20 回という長丁場でもあり、募集要項でも 「初歩からきちんと日本語
教育云々」とあるので、日本語教育の初めから、基礎的なことから勉強していく予定。
中には、すでに知っていることや勉強したことがある事柄も出てくるでしょうが、
そこは聞き飛ばして、またはそれぞれ確認しながら聞いてください。
☆日本語教育の考え方
教育についての発想は主に二つある。
① 減点法――間違えたらマイナス評価される―→何もしない方がいい。何もしなくていい。
*日本語に限らず、言語教育には向かない。
② 加点法――何かを言う。何かをすることが大切―→失敗して当たり前。参加し易い。
*持ち点0からスタート。学習者が平気で失敗できる雰囲気作りが大切。
これは教師の役目であるが、教師の実力、キャラによるところが大。
日本人なら日本語を教えられるか。 ――自分の母語なら教えられるか――
2
(応募用紙を見ながら質問)
日本語教師と一般の人(日本語教育に特に関心のない人)とどう違うか。
例Ⅰ.「水」と「お冷」 とどう違うか。
水―― 一般的な水。すべての水。
お冷――飲む水。……いつでも使えるか?
家庭内では使わない。主に飲食店で使う。
例Ⅱ.「中」 という字をどう読むか。
じゅう
日本中 ――場所については “じゅう”
(例)学校中、浦安中
ちゅう
電話中 ―― ~~する という動作の連続(一定時間)に使えるのが “ちゅう”
必ずしもルールに当てはまらない。
(例) 1年中(じゅう)、夏休み中(じゅう、ちゅう両方可)
どちらでもよい場合を 「ゆれ」 という。
外国人に、日本語を正確に解りやすく説明できるのが日本語教師。そのためにいろいろ
教授法がある。
教授法というと、“すぐ役立つこと”、“明日の授業に使えること” を知りたがるが、
すぐに役立つマニュアルがあるわけではない。役立ちそうなことがあっても、自分の授業に
すぐ役立つとは限らない。要するに、場数を踏むしかない。よい日本語教師とは ○○試験に
パスしたとか、教師の学歴とは関係ない。
☆評価の高い日本語の先生とは。
日本語教師を長くやっていると、高い評価を受ける山が二つある。
1
2
時間軸 ―――――――――――――――――――→
(曲線グラフが入る)
1 の時点では技術は未熟だが情熱がある。
2 の時点では経験も技術もある。
* まず情熱。一生懸命であることが一番大事。技術、テクニックは後でついてくる。
3
☆日本語教授法というものは実はあやふやなもの。
一般大衆レベルで日本語教授法が広がったのは1980年代中ごろから。バブル期の頃。
歴史的に奈良時代、百済など半島や中国から来た人と交流があったり、大和朝廷に仕えたり
人もいたが、限られた人数・身分の者だった。また第2次大戦中の、台湾や韓国(朝鮮)に
対する強制的な言語政策も、教授法といえるものではなかった。
日本語教授法というものは この20~30年に忽然と生まれたものではない。またオリジナル
の言語教授法でもない。元は、英語教授法である。
19世紀にはすでに、英語教授法はかなり確立。国家(イギリス)の勢力の拡大に伴い
英語教育も広がった。したがって、この英語教授法をそのまま取り入れた日本語教授法には
カタカナ語やアルファベットが多い。例えばTPR (Total Physicl Response)など。
そういう教授法には前提がある。
① 教室で、同時に複数の生徒を教える。
(1対1で指導するのは例外的)
・現在、日本語学校では20名以下という規定がある。大半が20名ぎりぎり。
② 対象(学習者)が成人であること。(子供ではない)
したがって、どんなケースにもすぐに応用できるとは限らない。
(受講者の質問に答える形で)
日本語で教えるとはどういうことか。
目標言語 (この場合は日本語)を使って教える直接法。媒介語を使わない教授法。
“直接法”は、元々は英語教授法の言葉 Direct Method の直訳。
一般的にはこの直接法が普通。
なぜ直接法で指導するか。
① 語学学校などでは いろいろな国・言語の生徒がいて、誰にも公平なように
目標言語で教える。例えば英語で指導すると、英語ができない生徒には理解できない。
② 対象(学習者)によっては、共通語がない場合がある。(多い)
③ 媒介語を使った場合、直訳しても概念が違っていたり ズレていることもある。
例えば。「夕方」=evening か?
日没
実際は同じではない。
寝る
時間軸 ――――――――――-――-――――-――→
(図・線の表示が入る)
夕方:薄明るい、薄暗い時間帯。 evening は薄明るい頃から完全に暗くなって寝るまで。
4
(受講者に質問しながら)
言語指導の最初は動作で示す。
語学教師には演劇の素養が必要――演技者(役者)としての素質と声がよく届くことが大事。
ご本人(桜井先生)は劇団に入っていた。(?現在は?) 芸名は アルフレッド桜井。(?)
チョイ役で出演したこともある。
かつて東大留学生センターで教えていた頃の話。
留学生の質問:「ウンチ、って何ですか。」――辞書にも載っていない言葉。
本人は大真面目であり、こういう場合、教師は決して笑ってはいけない。笑ったら、
その学生は二度と質問しなくなる。結局どう説明したか。身ぶり手ぶりで説明。
「食べました―→出しました―→(出た先を手で示して) それがウンチです。」
学習者はいろいろなことを質問する。
・どうぶつ(動物)、しょくぶつ(植物)と、だいぶつ(大仏)を結びつける。
・とうきょう(東京)と、ノーキョ―の関連を訊ねる。
動作や絵(イラスト)で説明するのがよい。
単語を教える際は、実物・写真で示すことができればよいが、事前に分かっているケース
ばかりではない。また、分かっていても用意できるとは限らない。臨機応変に、いくつかの
方法を用いるのが有効。できるだけ正確に、誤解のないように説明することが大切。
・チズ(地図)って何ですか―→実物を持ってくる (時間がかかる)。
mapといえば簡単に分かる場合もある。
・せーふ(政府)って何ですか―→写真を見せるにも、何を見せてよいか分からない。
議事堂の写真では、「国会議事堂じゃないか」と思われる。
*相手の言語の言葉(単語)で説明した方が早い。(government)
外国の人と話すコツ
ゆっくり話せばいいとは限らない。
① 短い文で話す
だらだらしゃべり――新宿へ行ってさァ、美味しいもの食べようと思ってねェ、
あちこち探したんだけどさァ、見つかんなくてさァ……
短文でのしゃべり――新宿へ行きました。~~思いました。 ~~探しました。でも見つ
かりませんでした。
5
② 簡単な、生徒の知っている単語で話す = 「語彙のコントロール」という
従来の方法を改正(?)して ―→ 今までのやり方を変えます
③ 発音をはっきり
口を大きく動かす。これがないと、いくら大きな声で話しても、ゆっくり話しても
聞き取りにくい。「聞こえない」 と言われたら大きな声を張り上げなくても、口を
しっかり動かしたら、聞きやすくなる。 例:落語家(友達がいる)
(桜井先生、鉛筆を口にくわえて話して見せる)――聞き取りにくい。
④ ゆっくり話す。
道で突然外国人に話しかけられたら……。
・ティーチャートーク (teacher talk)ができるのが日本語教師
(?teacher’s talk)
まっすぐ行きます。右へ曲がります。
・フォリナートーク (foreigner talk)
一般の人
こっち、まっすぐね。ずっと行って、右ね。
上級学習者には、普通の速さで話したり、わざと崩して話すこともある。
バックミュージックなどの障害を加えることもある。
(応募用紙を見ながら質問) 文法について勉強したいという希望が書いてありますが。
学習者に教えるときは、“正しい文法” 、というものは難しい。文法を使って説明すると
ピタッと来る人と、かえって分からなくなる人がいる。こういう場合は実例文をたくさん示して
教えた方がいい。
日本人にとっても日本語文法は難しい。
・小中校で国文法を習う―― 習っても習わなくても日本語は使える。知らなくても大丈夫。
知識のための知識、文法のための文法。身につかなくて当たり前。
・中学校で英文法を習う――これがないと英語が解らない。使えない。必要文法
日本語教育においては、日本語文法が大切。しかし、日本語が分かる日本人のための
文法であり、(日本語で何となくわかってしまうので)最後はツメが甘い。
形容詞
名詞
名詞
深い
深さ
深み
厚い
厚さ
厚み
熱い
熱さ
×
←説明がつかない
暑い
暑さ
×
←
6
文法について、文法に限らないが、質問されて答えられなかったら「分からない」とはっきり
言う。「明日までに調べてくる」「次の授業までに~~」と逃げることもある。どう調べても
明確に分からないこともある。このような場合は、あまり突き詰めない。
ぼんやりのままでよい。自分だけが分からないわけではない。誰にも分からないこともある。
(応募用紙を見て)助詞が分からない、どう教えたらよいか知りたいという希望がありますが、
助詞は、最後には感覚しかない、という面(場合)もある。
正しい文法と言っても、何が正しいかは分からない。例えば、「ら」抜き言葉。
見られる――これが正しい (ということになっている)
見れる
――これが間違いか……現時点で、 「ら」を抜いた言葉を使っている
人の方が(人数的には)優勢。
教師は、最初は正しく教えるが、そのうち学習者が外で自然に覚えてくる。
規範文法 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・記述文法
↓
↓
規則(学校で教える) ・・・・・・・・・・・・・・ありのままの姿
この間でズレる。ズレて当たり前。
規範文法は誰が決めるのか。
文化庁文化審議会国語分科会が決める――文法、漢字、送り仮名など。
大先生が、一時代前の感覚で話し合って決めるので、どうしても古くなる。
それを小中高校で教えるので、ズレが生じてくる。
桜井先生:学校の試験は規範文法で。平素は記述文法で。何が正しいか、は言えない。
ズレがあるのは当たり前。 例えば、今どき “音楽会”と言うか。コンサート、が普通。
≪2時限目≫
10 分の休憩中、いくつか質問があった。
「中」の読み方について。
“ちゅう”のとき、“じゅう”のとき。ゆれの話の続き。
発音、アクセントでも ゆれがある。
でんしゃ
でんしゃ
両方可能(正しい)
7
(?文字の上に罫線を引くのは)
自分は両方使います。
私は早口で…皆さんちゃんと聴き取れますよね。私は東京生まれで、東京育ちなので…
早口なんです。「こちとら江戸っ子だぃ……」
初歩では敢えて簡略化、単純化して教える。
テキストP.35 参照
Ⅲ毎日のあいさつと会話表現
わざわざ こういう項目があるということは、日本語では挨拶が非常に重要だから。
挨拶ができることが、その人の評価につながる。
できないと 「あいつは挨拶もちゃんとできないような奴」と言われてしまう。
実際にはあまり使わない挨拶の言葉もある。
さようなら、さよなら――別れの言葉ではあるが、大人同士ではあまり使わない。
子供が使うのはヘンではない。
「課長、さよなら」とは普通は言わない。一般的には
「失礼します」「お先に失礼します」 という。
おはよう、おはようございます―― 一般的には朝会った時に使う挨拶。最近は時間に
関わらず、その日に最初に会った時に使う。昼間でも。
四季の言葉にしても同様。 あまり(厳密な)ややこしいことは言わない方がいい。
1
2 | 3
冬
4
5 | 6
春
7
8 | 9
夏
10
11 | 12 月 (1 年)
秋
冬→
一般的に上記のように分けるが、5 月を春というか? 初めのころをゴールデンウイーク、
あるいは、5 月頃は「初夏」という方が一般的。 6 月を夏というか? 梅雨という言い方を
する方が多い。その他でも、季節を春夏秋冬ばかり(だけ)では区切れない。
(応募用紙を見ながら受講者に問いかけ、質問を促す)
○○さん:文法を教えるのが不安。ルールがあるのであれば、教えたい。
桜井先生:先ほども話したように、すべてが文法で決まってはいない。ゆれもある。
相手を見ながら、少しずつ。
○○さん:助詞をどう教えたらいいか。学習者が 「ややこしくて、よく分からない」と言う。
桜井先生:ちゃんとしようと思ったら、やっぱり難しい。でも、助詞は無くても分かる場合が
ある。特に「は」と「が」なんて、無くても話は通じる。
例えば「きのう、どこ行った」 「それ、オレ行くよ」
しかし、「の」は外せないことが多いです。
8
○○さん:やっぱり 「て・に・を・は」 が難しい。
桜井先生:助詞にもよるが、「間(ま)」の取り方で通じる場合もある。
日本語が解る・できると言っても、いろいろある。
*言語能力
*コミュニケーション能力~~~一般に口頭。書けないが日常生活は不自由しない。
[日本人のように、(ネイティブと同様に)日本語を話さなければならないか]
外国人に対して、受け入れ側の問題もある。彼らのアイデンティティを表す日本語でも
よいのではないか。例えば、シンガポールのシングリッシュ。アメリカでもかなり多様な英語が
認知され、使われている。
その人が、何のために日本語を学ぶのか―――いかに正しいかよりも、どれだけ
コミュニケーションが取れるか。この辺りの順序づけ(?優先順位)を考えることも
大切ではないか。
(再)テキストP.35参照
日本語には挨拶を大切にする文化で、独特の言葉が多い。
*おはよう・こんにちは・こんばんは
この 3 語に相対する英語が3つ
*Good morning・Good afternoon・Good evening
たまたま一致するが、感覚には差異
*韓国語では一つ。一日中、どの時間帯でも。
他に、日本語独特のあいさつ
*いただきます、ごちそうさま
*いってまいります、ただいま
――これらは、何か宣言しているような感がある
テキストや教室で教えている言い方
*おなかがすきました。ごはんを食べます ――あまり言わない「はら減った。メシ食おう」
教える際は きちんとした言い方を教えた方がいい。友達同士ならいいが、目上の人(立場の
上の人)や知らない人と話す際には、失礼にならないような、他人を怒らせないような
日本語が必要。
数か月ぶりに会ったある学生が、 「先生よぅ、どうよ、これ?」と話しかけてきた経験談。
生活・仕事の場だけで覚えてきた日本語。
○○さん:学習者に敬語をどう教えるか。平素は 「です・ます」で話している。
「こちらです」か「こっちです」か、よく分からない。
9
桜井先生:「こちらです」 は 応接・接待の場合のいい方。
人と人のコミュニケーションでは、何を基準にすればよいのか。
敬語については、いずれ他の先生(多仁先生)が話をするが、ここでは少しだけ。
敬語は最近よく話題になり、現在は 5 段階に分けられている。昨年(?)文化庁が
敬語の指針として 5 つに分類して示したが、かえって分かりにくくなった面もある。
もともと曖昧で、ややこしいものなんです。
敬語の分類の中に
①
サービス敬語――サービス(業)でしか使わ
ない語。日常生活では使わない。
例:こちらです。 こちらでございます。 「~~様」(レストラン等で)
この中に “バイト敬語”というものかある。
例:1,000 円からいただきます。 ~~(料理名)になります。
②
ていねい語
こういう分け方もある。
普通体
~だ。
敬語対(ていねい体)
軽卑語(罵倒語)
~です。~ます。
テメぇ、バカヤロー
……これは日本語には少ない
学校では教えない言葉。けんかの時、相手にただちに言い返す必要がある。
これができれば上級、あるいはそれ以上。ただし、子供の日本語では少々事情が違う。
教科書はどの教科書も大人用に作られている。
(ほとんどの)教科書の最初にあるような例。
*私はブラジル人です。
子供はこんな言い方はしない。
*ぼく、ブラジル人だよ。
年齢に応じた語(言葉)を教えたらどうか?
(成長に伴い)成人になったら、大人用の言葉を 別に覚えなければならない。
いろいろな考え方がある。議論も盛ん。
桜井先生が(実行委員に)に質問:
「今回、なぜこのテキストを選んだか」
答え:やはり 『みんなの日本語』を使っている人が一番多いから……。
桜井先生:確かに 『みんなの日本語』が一番多く使われています。日本語学校でも。
海外なんかでも…。何故でしょう。(受講者みんな問いかけ)
10
確かによくできた教科書。他に、周辺教材――解説書、問題集、活動週、それから
中国語や○○語など、外国語バージョンも揃っているし…。
それから、著作権について。詳しくは、10 月でしたか、片桐(講師)が話す予定。
教科書などをコピーする場合、どの程度ならいいのか、ダメなのか。迷うところです。
何かをコピーする度に、何か後ろめたい、悪いことをしているような気になりますが……
一応、こういう規定があるので 目安になるかと思います。
{{学校法人等で、教師が直接コピーする際は、丸一冊でなければよい}}
教科書をどう教えるか。
教科書
|
を
で
手段
教える
|
目的
教科書をすべて教えるのではなく、必要に応じて教科書を使う。
学習者が何をどう学びたいか。
ニーズ(needs)分析が必要。
[何のために学ぶのか] それに合わせて教えることが
||
できるのがマン・ツー・マン方式
この必要・要求と教科書の内容は時として合わないことがある。
テキストP.42 参照
自己紹介の例:
導入:~の~
わたしは___の___です。
この例文の場合、職業か、職業に準ずるポストを持っている人はいいが、縁のない人は
気持が離れてしまう。例えば、主婦など。
教科書の作り
①
文法シラバス(配列)――文法を積み上げる。
やさしい→難しい(一段一段)
②
場面シラバス(配列)――必要な場面を重ね
る
難易度がバラバラ。易→難ではない。
目的に添って学べる。買い物、郵便局など。
::受講者から「シラバスとは何か」と質問あり。桜井先生が「配列です」と回答
(受講者に質問) 学習者に週に何時間ぐらい教えているのか。
受講者: 週に一度、だいたい 90 分です。
桜井先生: 週に一度では、学習者が欲求不満になるんじゃないですか。
一週間の間に起こった疑問やなんかに答えるのが もちろん大事なんですが、
それだけで 90 分ぐらい経っちゃいますね。
11
今知りたいことがある。それに応えて(答えて)やることが一番。
例えば 成人で、母語でもあまり教育を受けていない人がいる。いますよね、中国から
帰還した人とか…。
そういう人に訊いてみるんです。教師:「今、何に困っている?」―→学習者:「カネ(金)」―→
教師:「そうか。じゃあ、カネの数え方からやろう」―→
学校なら 準備して教案を作ったりします。でも実際にその通りにできるか、といえば
まずムリ。(教師の)初心者では、教案を一から順につぶしていくのは無理です。
皆さんのように 一対一なら、質問に答えるだけで かなりの時間は経つでしょう。
日本についての知識も必要です、ある程度。 例えば「日本の自衛隊は何人ぐらいですか」
そんな質問あります。私は興味があるから知っていますが…「陸海空合わせて約 24 万。」
日本で 2 番目に人口が多い都市はどこですか。一番目は東京。では 2 番目は? 横浜。
普通は大阪ってすぐ出るんですが、人口でいえば横浜。よくある社会年鑑などがあるといい。
【注】人口
東京都
約1200万 (うち23区は 780万)
大阪府
約 860万 (うち大阪市は 266万)
横浜市
約 320万
∴市の単位でいえば横浜の方が大きい
文法は、ルールをやると よく分かる人と分からなくなる人がいる―→例文をたくさん教える。
テキストP.9参照 指導事項とその流れ
フローチャート(flow chart =流れ図。作業や処理の手順を特定の記号を用いて
図式的に表現したもの
必ずフローチャートに添って教える必要はない。
○○さん:教科書の アイウエオ表を使って文字を教えている。教科書(自体)を読めない
学習者にどう指導したらいいか。やはり表を使って文字から教えるのがいいのか。
桜井先生:ひらがな、カタカナで 100 以上。漢字は常用漢字だけで 1945、ほとんど 2,000 字。
これだけ読めないと新聞が読めないが、文字習得に時間がかかり過ぎる。
アメリカなどではローマ字で教えて、文字をスキップする。
それでも人の言うことを聞いて、しゃべれるようにはなる。インド人なども、書類は
読んでもらえば解るから不自由はしないという人もいる。 長く日本に暮らす
場合は必要だが、それ以外の人は、文字は ジワジワ覚えればいい。
12
漢字の書き順について
感じを、どういう順番で書くかはとても重要だが、“書き順”の概念のない人もいる。多い。
アルファベットとは根本的に違う概念。 アルファベット文字は、基本的にどう書いてもいい、
結果が同じ形になればいい。Eという字をどんな順番で書こうが、結果、読めればいい。Aも三
角山から書こうが、八のような順で書いても構わない。したがって、知らない単語は
あっても知らない文字はない、という状態。
しかし漢字は別。 木の字も、書き順(書き方)がちがうと画数が変わってくる。各数が違うと
辞書が引けない。漢和辞典(漢字の辞書)は画数がちゃんと分からないと調べられない。
日本語教授法は 英語教授法からきているので 「文字を教える」という点に関しては
欠落している。非常に弱体。
用漢字 1945 文字が 来年から約 2000 字に増えるだろう。(未定)
○○さん:カタカナ語について。
ベトナム人を教えているが、ベトナムでは英語が長く敵性語であったために
(知識としても)英語が入っていない。辞書にも全くでていない。
―→日本語のカタカナ語が理解できない。覚えられない。どうしたらいいのか。
桜井先生:確かに英語教育がないとカタカナ語は理解しにくい。
しかし、現実に使われているではないか。 調べてみるとカタカナ語の多さに驚く。
その中には 定着しているものと そうでないものがある。(分からないうちに消えるも
のもある。
来年度から 日本語能力試験でカタカナ語が増えるだろう。試験は今年度から年 2 回に
なった。(7 月 5 日、12 月 6 日)
今年は回数が増えただけだが、来年からは問題の内容が
変わるかも知れない。
国立国語研究所が改変され、日本語教育部門がかろうじて残った。
ここが カタカナ語を日本語にしようと いろいろ頑張っているが、難しい。現実に
使われているカタカナを語どうするか……。
日本語のテキストなども 近い将来変わる可能性がある。
日本語の発音は “拍”です。
音節――母音を中心とした音の集団(かたまり)
*がっこう(学校)→ [gakko:] 音節で考えると 2 音節
(修正:aの文字の上に‘に似た印)
13
拍―――時間の長さの単位
*が・つ・こ・う―→拍でかぞえると4拍
発音をどうするか、については次回。多分 片桐先生がしっかり……。
14
以上
『うらやす日本語指導力向上講座』 第2回
日時: 8月2日(日)‘09 17:30~20:30
講師: 桜井 隆 先生
配布資料: 2 枚
≪1時限目≫
藤原委員長: 先週、日本語教師の(生徒から見た)評価の高い時期が二つあるという
話でしたが、自分はちょうど、その二つの山の間の所にいるのかも知れないと思う。 そんなに
準備こることも少なくなって……。
桜井先生: 私も日本語教師になって最初の頃は、授業に行くのがイヤでしかたがなかった
ことがあります。 とにかく緊張するんです。授業中は元気出して頑張って、教室で最後の生徒を
「元気でねっ!」と送り出して、そのあと ガクッと疲れが出るんです。とにかく緊張感がひどくて…
終わったらタクシーで帰ったこともあります。 家ではもう昼寝するんです。朝は、電車が止まって、
動かなくなればいいと思ったことも。
まず、最初はやたらと予習するんですよ。 あれを聞かれたらどうしよう、ここを質問されたら
どうしようかと、不必要なことまで予習するものなんです。 でも慣れてくると大体 何を聞かれるか
分かってくるので、予習時間が減ります。 10 年以上たつともう ぶらりと行ってその場で始める
こともあります。
この授業が終わると もう次は 9 月で、多仁先生です。 私は一応これで終わりなので、きょうは
全般的な概論をお話ししようと思います。 前回の補足説明などもしながら。
ところで前回、私の講義が終わったとき 皆さんから拍手をいただきましたが、日本では普通は
こういうことはしません。日本語教育において、何を言うか、と同時に 何を言わないかということも
大切です。
言語活動――①何をいうか
②何もいわない
店に入ったとき、日本では 店員(店側)が 「いらっしゃいませ」 といいますが、客はほとんど
何もいいません。欧米では この「いらっしゃいませ」という言葉はない。その時間帯に合った
挨拶をする。客も同様に挨拶を返す。日本では 客がうっかり挨拶をすると、店員に付きまとわれる
んじゃないか、と思ったりする。
桜井先生が居住していたドイツで。何かを買って、店員が 「ありがとうございました」 というと
客も 「ありがとう」 という。いろいろ見せてもらったし、説明してもらったりしたから。 日本では
定員が 「ありがとうございました」 と言っても 客は「_______ 」、何も言わない、
いうと ヘンな感じがします。
15
明海大でも、講義が終わっても学生は何もいいません。私が 「じゃ、これで終わります」というと
みんな黙ってゴソゴソ帰ります。「ありがとうございました」 と言うのは留学生だけです。
いうと何か奇妙な感じがします。 日本は そうなんですね。
小学校までぐらいは 「先生さようなら、皆さん、さようなら」と言っていますかね。中高では…
「起立、礼」 と言っているところもあるでしょうが、まず大きくなるほど 何も言わなくなるんですね。
日本語には 「ただいま」とか 「お帰り」とか、他の言語にはない宣言のようなあいさつがあるが、
同時に “言わない”こともある。
前回、質問がありましたが、どなたか 「日本語にスラングはあるか」という質問がありましたが、
日本語にも確かにあります。 スラング(slang)は、俗な言葉という意味ですが、国語辞典みると隠
語とか俗語と出ています。 辞書・辞典というものは 今のもの・現在進行形のものは出ていません。
具体的なものは、一昔前のものばかりです。
例えば
*チョベリバ―― 超 very bad を短くしたもの。 今では死語といわれそうですが。
*KY――その場の空気が読めない の単語のイニシャル。 まだ使われていますか。
萌え(もえ)なんて言うのもよく聞きます。これは俗語になる。 元々は “萌える”という言葉で、
芽が出る という意味。萌えいずる春、とかいう。 アキバ系の男子なんかから言われ出した言葉。
*萌え―― 一種の感嘆詞で、半ば恋愛感情が入った ちょっと可愛い、という意味。
「萌え」 だけで独立。 動詞として活用はしない。
隠語というのは、ある特定の集団内部でしか使われない言葉。
*アンパン―― シンナ―のこと。
周囲に聞かれたら(分かったら)困る。
*マッポ―― 警察官
隠語を使う目的
① 目的・対象を隠すため
② 仲間内の団結心を確認するため。意味が外部に分かっても 使われ続けることもある。
これも隠語の一つ。 ジャーゴン(jargon)= 非公式の専門用語。 (部外者には理解できない)
桜井先生には 音大の友達がいる。その人が 「私は 歌科(うたか)です」 という。
本来は声楽科(せいがくか)だが、分からないと 「お前 素人だな」 言われたり思われたりする。
話し言葉としてのみ使われる。書かれることはない。小説等のセリフを除いて。
日本語には 他の人を罵る言葉(軽卑語・罵倒語)は ほとんどない。「バカヤロー」 あるいは
「お前、屁カマしたな」 ぐらい。 「お前、何考えてんだ」 と言ったって 「何にも考えてませーん」と
返されたら終わり。
16
桜井先生: 受講者OOさんに。「応募用紙に目的がいろいろ書いてありましたが…」
○○さん: そんなには考えていなかったんですが、書く欄あったので無理に…
桜井先生: それこそ日本人の語学感覚です。
日本人は、何か書く欄があったら その枠の8割は埋める。 別に書くことがなくても、
訊いてくれた相手に悪いような気がする。 大学で、留学生が 「日本で仕事をしたい」 という
場合がよくある。 そのエントリーシート(応募用紙。履歴書)の書き方指導。
何か書く欄には、8割は文字を埋めるよう教える。 ちょっとしか書かないと 熱意を疑われる。
特に 欧米系の学生は、自分が言いたいことだけを書く。1行で終わっても気にしない。
桜井先生: (応募用紙を見ながら) 学習者に何か書かせると 文法に沿っていない、
どうしたらいいか、というのがある。 文法に不安を持っている人が多いが、これは、漠然とした
不安ではないのか。
アクセントや発音など、音(音声)に関する質問や不安は全然書かれていなかったが、
こういうことは気にならないのかなぁと思う。
“ギター” という言葉は どう発音しますか。 ギ|ター ですか ギ|ター ですか。
流行りのマンガに 『けいおん』 というのがありますが、ご存知ですか。 ある高校で女子校生が
軽音楽部を作る話。 本は2巻まで、DVDも出ていますし TVでもやっています。
TVでは 「ギ|ター」 といっています。 こういうことが皆さん、気にならないのかなあと思います。
答えは世代の差。 20代くらいの人は 大体 ギ|ターです。 桜井先生は意識的にギ|ター。
アクセントの変化で 意味を分けているのもある。
*パンツ ――ズボン
パンツ ――いわゆる下着
*カレシ ――本物の彼氏
カレシ ――どうでもいい3人称
(桜井先生) 東京生まれで東京育ちだから 標準語か? いろいろある。
友人に “中年方言” と言われたことがある。
日本語を教える人は、文字だけではなく もっと音声に関心を払って欲しい。
日本語教育では、書いたり読んだりよりも 話したり聞いたりの方が多いはず。
17
テキストP.78 参照
例文. ○月○日に
助詞
京都に行きます。
=部は 「へ」ではなかったか?
助詞
4課では 場所+「に」で教えている。
=部は5課、=部は「へ」ではなかったか?
【要確認】 p.73 の半分より下のところ。下記の説明文がある。
移動の方向は助詞 「へ」で示す。「に」の用法もあるがここでは扱わない。
桜井先生が示された例文は、京都に~、となっている。p.78 の半分より下の
枠内の例文は、日時+「に」 の例を挙げているのではないか。
例:○月○日に 京都へ行きます。
場所+「に」が出てくるのは 10 課以降、目的地を表す「に」はもっと後。
上記の赤字の例文、私のノートでははっきりしません。確認してください。
P.78 参照。
真ん中ぐらい。
―― 「何」 を用いた疑問詞のほかに、疑問詞 「いつ」が用いられる。
“疑問詞” という語は、日本語文法では認めていない。日本語文法では、これは代名詞。
英語の翻訳からきた語。 このように、あまり文法を気にすることはない。
P.82 参照。
真ん中ぐらい。
―― 他動詞の直接目的語は 助詞「を」によって示される。
必ずしも いつもそうだとは言えない。例: 庭を散歩する。 この場合の庭は目的語ではない。
このように、一つ一つの文法説明にこだわるより、実際に、どのように使うかの方が大切。
言語学や国語学をやっていると 日本語について理屈をこねる能力はあるが、だからと言って
美しく分かりやすい文を書けるとは限らない。詩人とか小説家の方が よほどうまい文を書く。
しゃべるのもTVに出てくるような人の方が うまくしゃべる。
とにかく文法よりも 文型を教えるのが大切。
~~ここで休憩時間の説明。 今回から およそ1時間に一回休憩をとりいれる~~
シラバスについての説明。
前回、シラバスとは何ですか、という質問があって、私が 「配列」と答えたのは訂正します。
全く間違っているという訳ではないんですが……シラバスについては かなり大がかりな、
日本語教育のグランドデザインの話から始めなければいけないので、一言で簡単に言って
しまいました。
18
きょうは、それを訂正して 全般的なお話をします。
(注:グランドデザイン: 全体構想。全体を長期的・総合的に見渡した構想。)
★日本語教育の全体像を見ると 次のような要素がある。 ①コースデザイン ②授業形態
③ 授業内容 ④教授法 ⑤教材 ⑥期間 ⑦評価法
順にお話します。
① コースデザイン ――全体の授業計画。
まず(指導の)対象を決める。 誰が何のために学ぶか。
対象が決まると、自動的に目的が決まる。 (短期滞在、長期滞在、永住など)
P.2、 1.(頁の上部)対象と目標の項目参照
対象: 「日本語によるコミュニケーションを 今すぐ必要としている外国人」
② 授業形態
一般的には教室で、20 人ぐらい。
UIFAでは 1 対 1 の形態。
③ 授業内容
どんなことを教えるか。 これを具体的に説明したのがシラバス。(詳細は後述)
④ 教授法
教師個人が決めるか、学校などの組織がきめるか分かれているが、一般的には組織。
⑤ 教材
これも一般的には組織で決まっている。 UIFA は教師が自由に選ぶ。
⑥ 期間
学校などではきっちり決める。(決まっている)
⑦ 評価法
組織が決めている。
学校などの組織ではコースデザイン全般に、ほとんどの項目が組織で決まっており
教師個人の裁量で選ぶことができる項目は少ない。
≪2時限目≫
★シラバス (syllbus)について=具体的な教授項目・内容
いくつかのシラバスがある。
① 文型シラバス
『みんなの日本語』のように、文型のパターンを教えていく。
② 場面シラバス
ある特定の場面を設定。 例: 郵便局で何かを送る。
飛行機のチケットを買って子帰国する。
19
③ 話題シラバス
物価など、特定の話題(テーマ)について設定した内容。
④ 技能シラバス
4 技能(聞く話す読む書く)のうちの一つを選択。目的にあわせて設定。
例: 紹介状を書く、など。
⑤ 機能シラバス
言葉の機能を 目的に合わせて設定した内容。
例: お願い、拒絶、感謝の仕方、禁止 など。
⑥ タスクシラバス
タスク=課題。
実生活の中で一定の課題を与え、指導する設定。
任務を達成するまでのプロセスを指導する。
例: 旅行計画を立てる、というテーマ。パンフを集める、交通手段、
宿泊、観光について問い合わせ、お金の計算等の作業がある。
*タスクの場面で、どの側面に注目して 全体のテーマの柱とするかが 指導の上で重要。
*教科書を選ぶと、自動的にシラバスがきまる。
*シラバスを決めて、教科書を選ぶこともある。教科書選びにかかわってくる。
*どの教科書も、一つだけのシラバスではない。他のシラバスの要素も入っている。
★カリキュラム (curiculum)=具体的な授業日程
① 時間数――期間、週に何回か、一回につき何時間か
② 時間配分――テキストの内容をどう配分して指導するか
練習張など複数のテキストを使った場合の配分
1 冊の教科書でも複数の内容がある場合、どう配分するか。 例:練習や会話
P.32 第1課が始まる (本冊ではP.6)――ここに出ている項目は基本的に必修。
P.44 会話の部分 (本冊ではP.7)
上の項目との関連があまりよくない。
会話になって いきなり 「初めまして」が出てくる。文型に当てはまらない。
例文: アメリカからきました。
この文型は 1 課では出てこない。 「くる」という難しい
動詞の活用など、説明がつかない。別に時間をとる。
このように、教科書は一種類でも、内容は複数ある。
③ 進度――1課を何時間で教えるか
日本語学校などでは厳密に決められている。
TV番組のように。1対1では 気にすることはない。
*学校では一人の教師が教えるのではなく、複数の教師が受け持つので、引き継ぎが
難しい。 ○○日の○○時限までに ここまでやると決まっていたら絶対。
教師同士、「ここまでは やっておいてくれないと…どうしてくれる」
「私の分の所までやっちゃって…」 などいろいろある。
④ 教案――レッスンプラン。 一回ごとの授業の計画書。
桜井先生: メールで 「教案を見せて欲しい」とあったが決まった書式はない。 教
員免許を取る時の教案が手本。
20
配布プリント参照。
1)レッスンプラン はじめてのえいご
2)日本語教師の教案みんなの日本語 1 課の教案
教案は ネットで見ることができる。 日本語教育、教案で検索。 ほとんど教室授業用。
教安の内容
教師の説明事項、板書事項
生徒の活動事項――何をさせるか(何を言わせるか)
プリント1) 普通はもう少し詳しく書く。 ショートドラマの項目で 「外人さん」という言葉はよくない。
今では “外人さん”は差別語とされる。言われた方が 「不快だ、やめてくれ」と
意思表示すれば、差別語となる。これが国際性。
プリント2) UIFAのような 一対一の指導ではほとんど教案は必要ではない。
2)のような教安は、1対 1 の指導では不要な項目(役に立たない、余分なこと)も多い。
Tは先生(teacher)、Sは生徒(studennt)。 S1、S2は複数の生徒がいることが
前提。 コーラス=生徒に声を揃えて言わせる。日本語教育の独特の言葉。
要するに教安とは、教師が 「授業の時どうやろうか」と考えて書いたもの。上から順に全部律義
にやろうとすると、一つ一つが時間オーバーになり、授業時間内に収まらない。進み過ぎると
「どうしましょう」となった悲劇もある。
多少 内容を余分に作り、時間が足りなくなったら 重要ではないところは切り捨てる。
時間が余ったら、もう一度練習する。 穴埋めのできる小さなネタを いくつか用意しておく。
一般に日本語学校などは時間に厳しい。始業・終業時間がきっちり管理され、大学のように
教師が遅く来たり早く終わったりすることはない。
★教科書について――教科書を使う必要があるか。教科書がないと授業はできないか。
プリント1)参照。 この教案は、小学生に 教科書なしで教えるためのもの。
教科書を使うとどんな利点があるか。
*安心感がある。
教える方も習う方も
*準備ができる
*ネタに困らない
なければその都度考えなければならない
*学習意欲がわく
お金かかかるので安易な気持ちになりにくい。 経済的に負担がないと
ダレる。 ボランティアで習うと、授業料負担も非常に少ない・ない。注意。
欠点
*教える方も習う方も 教科書に縛られる。
*教科書を作る世代と 今学習する世代とでは 言葉が変化している。
現在ではあまり使われないような言葉が 本文・例分などにも書いてある。
21
教科書を選ぶときは 学習者と一緒に書店等に行って、一緒に選ぶことも面白い。
「これはどう?」と勧めたり、学習者が 「これがやりたい」と言い出すケースもあるかもしれない。
この講座のテキスト 『みんなの日本語 Ⅰ』 教え方の手引き。この本そのものが一種の教案。
なぜ 『みんなの日本語』 がよく使われるのか。
○○さん: 船橋では全部この教科書に決まっている。それ以前は『しんにほんごのきそ』を使用。
桜井先生: ちょうど順番に沿っている。 (教科書の発行年代による)
○○さん: 教室に置いてあるので使っている。いろいろな外国語版があるので便利。
桜井先生: やはり周辺教材が多いので便利。
もうちょっとだけ時間がある。 こんな時小さいネタを出すとよい。
(一冊の本を掲げて)日本語教育のいろいろな本や参考書を見ると、あまり聞き慣れない
言葉や専門用語がでてくる。別に知らなくてもいいが、「知らないの?」と他の人から
言われるとイヤな感じがする。 そんなとき このような用語集を見ると簡単な説明があるので
便利。カタカナ語が多いが、元の英語のスペルが載っていないものが結構多い。
【参考】: 『新合格水準 日本語教育能力検定試験用語集』
発行:凡人社
アークアカデミー編
価格:2,730 円(税込)
≪3 時限目≫
助詞 「の」 は名詞の後ろにつく。
○ きのうのご飯。
× きのう食べたのご飯 (動詞の後ろにはつかない)
★『みんなの日本語』 はどんな教科書か
P.2 参照
P.37 参照
対象と目標――大人向け (子供向けではない)
この本はエリート志向
職業に研究者(普通は出てこない単語)、医者など。
P.60 の ネクタイの挿絵 (イタリア製)等。
学習者によっては、自分とかけ離れた感じがするかもしれない。
工場で働く人などとは違う世界
P.2 参照
話す、聞くが中心になっている。
5 行目:日常生活の基本的な場面において簡単な日本語によるコミュニケー
ションを可能にする、初級段階での実戦的会話力の養成を目的としている。
6 課以降、読むことが入ってくる。
「書く」 ことは事実上出ていない。 それほど重視していない。
22
日本人自身が、書くということをほとんどしなくなっている。メールでプッシュ(タッチ)するだけ。
携帯メールは口語的、きっちりした文章ではない。 手で文字を書いて手紙を書く行為はほとんどな
くなっている。 したがって、書けなくても変換で 見て解ればいい、選択できればいい、
読めればいい。 常用漢字にもこの考え方が強く影響。(文化庁担当)
1998 年、『みんなの日本語』ができた。 ケータイ、メール、ネット…という言葉は出てこない。
漢字の概念が大きく変わってきた。
言語能力には ①受動的能力(聞く、読む) ②能動的能力(話す、書く) がある。
(同心円の図あり)
このうち ①の受動的能力の重要度が高くなっている。 初めからPC変換することを
前提とした文字が出てきた。 これが実態に即している。 教え方も当然変化し、相手のニーズ、
実態に即した教授法が必要。
明治以降、一貫して漢字を減らしてきたが、このところ増えている。 大転換である。
――では、漢字変換をするにはどうするか――
大半の人はローマ字で入力し、変換する。
ならば日本語のローマ字表記を教える必要がある。(漢字を書かせるよりも大切かもしれない)
正しい聞き取り、正しい読みができていないと入力できない。
日本人でも住所と名前以外、手で書くことは少なくなった。
P.2 参照 2.主教材の項目
学習者には、「翻訳・文法解説」まで買えとは言っていないのではないだろうか。
また、「読め」と言っただけでいいのだろうか。
☆アーミーメソッド
第 2 次大戦中、アメリカ陸軍で日本語教育が行われた。
このやり方を アーミーメソッド(Army Method) という。
カリキュラム 午後――文法の習得。 アメリカ人が英語で日本語文法を教える。
晩 ――復讐
次の日の午前――練習。日系人が日本語だけで教える。
この日系人の役目を ドリルマスター(Drill Master)という。
[UIFAでも、学習者に「翻訳・文法解説」を読ませて、教える人(ボランティア)は
ドリルマスターに徹するというやり方もあり得る。]
23
どうして 「文法解説書」が別冊になっているのか。
文法解説まで本冊に入れると、学校で先生がすることがなくなる。
教科書は、「読めば解る」ではダメ。 教師の入り込む余地が必要。 教科書とはそういうもの。
P.3 参照 3.文型と文法の項目
この教科書は文型シラバスではあるが、場面シラバスも取り入れている。 [会話]の場面。
この本では、会話の文が浮いていることが多い。
P.52
2課の会話指導
「これは○○です。」 の文型指導で 「ほんの 気持ちです。」という例文がある。
この例文を教えるのは 非常に難しい。
ほんの――わずか
何故わずか?
気持ち――気持ち? 物ではないか? チョコレートではないか?
同ページの下部の枠内
何ですか――こんなこと、普通はきかない。
コーヒーです――引っ越しの挨拶にコーヒーを持っていくか。
タオル、石鹸などが多い。こういうことを教えるのも一つの授業。
*最近は近所に挨拶に行かないことも多い。 桜井先生:下北沢で 10 年、隣家が
引っ越してきても挨拶にはこない。
*週に一度ぐらい、日本文化や 日本事情(習慣や言葉の意味など)を教える
時間があってもよい。
応募用紙を見ながら受講者に質問
桜井先生: 日本の文化や習慣を教えておられるようですが…
○○さん: 修学旅行の時のお風呂のマナーや、寮生活での銭湯の利用の仕方。
お弁当の話など――どういうものを入れるか。
桜井先生: それは生きた日本事情ですね。 10 年ぐらい前、日本文化を教える老教授が
おられ…日本文化というと 能や歌舞伎、花やお茶など、すぐ伝統文化を
言い出されたんですが、そういうのはもう 2 世代ぐらい前の話です。
戦後日本から発信した文化とは――カラオケ、アニメ、TVゲーム、などのサブカルチャー
(大衆文化)。カラオケは、今や世界中 “カラオケ”といわれている。
百人一首ぐらいは文化かな?
24
教科書を使って
1課(各課)を一生懸命 全部やると、かなり時間がかかる。
P.37 提出項目全部ちゃんとやると、2 回以上かかる。練習まですると、3~4 回必要。
週一回指導で、一か月で1課だと 双方イヤになる。 学校なら事情が異なる。
この教科書は学校用。
P.43 「ちゃん」も入ってくる。 例文:テレサちゃんは9歳です。
下部の囲み――数字をどう教えるか。
*“数” という抽象概念を教えるのは難しい。 カレンダーなどを使って
具体的な数字から教える方がよい。
*序数詞も数が多く難しい。 1ぽん、1まい、3びき…(ひとつ、も?)
具体的な数字を出す。
例: ここは千葉県。日本に県はいくつある?
ここは浦安市。千葉県には市がいくつある。
(新浦安駅から)東京駅まで、駅はいくつある?
日本の学校制度について。 例: 小学校は 6 歳から 12 歳までの 6 年。
日本事情・社会事情についても学ぶことができ、知的刺激もある。身につく。
テキストの、どこの誰かわからないテレサちゃんの歳より現実的。
P.14 文型・例文を覚えさせるのに どうするか。 以下、ドリル(練習)の種類。(p.14~p.19)
P.15 繰り返しドリル
教師:読みなさい。「わたしは がっこうへ いきます。」
生徒:わたしは がっこうへ いきます。
*これではたどり読み。字を読んだのであり、文を読んだことにはならない。
流暢に読ませるには、少しずつ分けて、先生の後に続けて読む。
―→少しずつ(言葉の)かたまりを大きくして読む。―→ 一度に続けて読む。
*シャドーイング(shadowing)=先生の影のように ぴったりあとに続けて読む。
P.16 変換ドリル
~ました ―― ~ませんでした
活用や後続句の定着
P.17 結合ドリル
時間がありません・タクシーで行きます
―→時間がありませんから、タクシーで行きます。
完成ドリル
出かけるとき、「行ってまいります」と言います。
P.18 拡張ドリル(付加ドリル)
文をだんだん長くしていく。
質問応答ドリル(質疑応答ドリル)
25
オーディオリンガル メソッド(Audio-lingual Method)アプローチ
教科書を決めれば 教授法も自動的に決まってします。
文型がきちんと身に付くと会話の文からは浮いてしまう。
やさしい文型―→難しい文型と順に学ぶ。 会話は脈絡なくいろいろなものが出てくる。
オーディオリンガル メソッドでは、先生に対して反応することはできるが、自分から
話しかけることが難しい(できない)。 自主的に話をさせる練習が必要。
「きのう、どこへ行きましたか。」と問い、学習者に長く話をさせる。
学習者が何を学ぼうとしているか、学んで何をしようとしているか、を見極める。
誰でも、必要があれば勉強する。覚えようとする。 言語は意志の問題。
*100%を目指してもなかなかいかない。
(グラフの図あり)
そこまで届くのは牧師さん――格調高い日本語が必要。
お相撲さん――生活を共にする。ヘタすると殴られる。
*途中、「これでいいんだ」と思ったら、そこで止まる。
日本人でも、みんなが字を書けるとは限らない。
年を取ってから 夜間中学などで字を学ぶ人もある。――識字学校(学級)
「孫に手紙の一本でも書いてみたい」 という希望がある。
そういう人はどんな字から覚えるか――想い出のあるものから覚える。「母」という字など。
「山」 などは、画数は少なくとも、なかなか覚えないこともある。
26
『うらやす日本語指導力向上講座』 第3回
日時: 9月7日(日)‘09
講師: 多仁 安代先生
配布資料: 1枚 (講義予定表)
≪1時限目≫
多仁先生の講座の説明・方針に。
この講座は全20回で、90分×20で、大学の一科目の およそ1年分になる。 かなり本格的な
勉強ができると思う。
自分の講義では、受講者参加型の授業にしていきたい。 受講者は、ただ出席して話を聞くだけ
ではなく、実際に授業もやっていただく予定。 水泳をいくら理論的に理解して、畳の上で手足を
動かしても、現実に水の中に入って泳ぐのとは全く違うもの。 それと同じ。
幸いこの講座では、外国人に集まってもらい、実際の授業ができるとのこと。 日本語教師を
養成する学校などでも、教師になる前に 実際に外国人に教えることができるなんてまずない。
お金を払って日本語学校に通っている学生に、教師ではない人が教えることは、その学校としても
困るので……普通は、まずない。 皆さんは本当にいい経験ができると思う。
配布したプリントは、担当する講義の計画を示したもの。 いろいろお話しながらしていく。
(受講者に質問) 「皆さんは、日本語の “初級”というのを、どうとらえていますか。」
大学などでは 留学生がくると必ず “プレイスメント テスト” という日本語の能力を判定
するテストをする。 初級と言っても いろいろな段階がある。 ひらがなも 全くゼロの人から、
少しは話せるという人まで……。
初級の教科書は、どの本もそんなにレベルの差はない。 内容は――現在・過去・可能・意思・
受け身・使役、れば・たら・なら など。 その付足しで敬語などがあり、自分の意志を伝えるのに最
低限必要な文型を覚えるためのテキスト。 上級となると、ほとんど日本人と同じ。
新聞を読んだり 人の話を聞いたりしても、すぐ内容を理解できるレベルに達している。
学習者には留学生や社会人などいろいろあるが、大学では来日してから割合すぐの学習者が
ほとんど。 地域の日本語支援などでは、来日して間もない人から、かなり長く住んでいる人まで幅
が広く、情報量も豊富で、指導も会話中心になり、かえって大変な面もある。
すぐに変な言葉を覚えてしまうこともある。 マジ? めっちゃ、など。
『みんなの日本語』 1課の例文。
「サントスさんは 学生じゃありません。」
この表現の 「じゃ」 は 「では」の変形。
やはり 「では」から教えるべき。 後で 「では」から 「じゃ」と簡略していくのは可能。 逆は難しい。
27
母国などで2,3年日本語を勉強してきた学生。 「ぼくが~」 「~じゃない」 「ちゃんと~」という表
現が多い。 作文も同様。 「ちゃんと」 は 「きちんと」の短縮形。
初級を指導した先生の責任。 初めから正しい言葉を教えた方がいい。
大人の場合は 初めからある程度書くことも必要。 書くことによって確認することもできる。
日本語学校などでは、初級のクラスは 6~7人のグループがベスト。 多くて 10 人。
グループでの指導と、マン・ツー・マンでの指導の比較。
*クラス指導
いい点―― ・教師が質問を次々に回していける。
・学習者が 他の学習者の話を聞くことができる
・ロールプレイができる
・母語がいろいろだと 話題が増える
・休み時間などに 何とか日本語で話そうとする
悪い点―― ・細かい発音を 教師が注意するのが難しい
・消極的な学習者が どうしても参加しにくい
*マンツーマン指導 (1 対 1 の指導)
いい点―― ・年齢など 学習者に合った話題を選べる
・目的がはっきりしているので、それに合わせた指導ができる
・積極的でない人でも ゆっくり勉強できる
・緊張の度合いが高い。 (緊張が極度に高くならないように注意)
日本語学校などの場合、授業は週に何回かある。 1 日に何コマもある。 複数の教師が担当。
次の授業にスムースに入れるよう、必ず 『申し送り』という報告がある。 決まった形式はないが、
多くの学校などで使っているモデル(見本)がある。 改めて示す。
桜井先生からの 申し送りがある。 多くの受講者が 『敬語表現』に関心があるようだ。
【敬語について】 日本語指導において、「初級からでも これぐらいは必要」という言い方がある。
* ここ――こちら、 そこ――そちら、 あそこ――あちら
* かしこまりました
* そふ、そぼ、ちち、はは、あに、あね
この程度は、大人の場合には 最低必要な表現。 日本人でも身についていない人がいる。
多くの現場の教師が思うこと。
例文: きのう テレビを ごらんになりましたか。 (ここまでは不要。 「みましたか」で十分。)
使役・受け身などがきちんとできる方が、中級以降の勉強がスムース。
28
やり・もらいの表現 (授受表現)
さしあげました (↗ 目上の人に)。
やりました (↘
あげました (→ 自分と同等の人に)。
自分より下の人に。 ただし、今はあまり使われなくなった)
「お・ご」 をつけた表現
例: お金、お湯、お茶、お風呂……
ごく一般的に使われる言い方。 「お」をつけないと
乱暴な感じになる。 お金を、初めに「カネ」と覚えると、そのままになりやすい。
気になる表現
例: 留学生が 「先生、おりますか。」 ―→「おられますか。」と直す。
例: 宮沢喜一元総理の言葉。 TVで 自分の考案した防災服を見せている扇千影を評して、
「何をお着になっても お似合いになりますね。」―→「お召しになっても」と言って欲しい。
【漢字の扱いについて】
漢字圏と 非漢字圏の学習者の差は大きい。 日本人でも子供の時から少しずつ練習する。 学
習者にとって、漢字の習得は大変。 中には とても興味をもつ学習者もいる。
【授業の進め方について】
必ず、学習者がすでに習った文型・語彙を使って授業を進める。
教科書は、日本語ゼロの学習者を対象としている。 1 課~3課ぐらいは、すでに日本で生活
している学習者には、ほぼ解っているものとして 簡単なQ&Aで済ませて 飛ばしてもよい。
――配布した講義の予定表について――
第1回~5回
テキストの 25課まで
第6回
可能形、使役形などの指導について
第7回~8回
シミュレーション
ここは勉強の場。 参加者は何をやっても恥ではない。
どの項目を担当するかはクジで決める。 全員違う。
第 9 回以降
教案の書き方、及び実習
教案は、初めは細かく計画案を書く。 学習者に質問する場合の当て方など。
ランダムにすることもあるが、忘れることもある。 慣れてくると、時々確かめる程度。
実習は、実際の外国人学習者に対して行う。 学習者集めは藤原さんにお願いする。
受講者は すでに教えている人も多いが、いくつか指導上の注意点。
〖典型的な誤用例〗
重いのかばん
・形容詞+「の」
白いの花
・過去の 「あのとき」
共通の認識がないと 使えない言葉。
例: キム・ヒョンヒの話。 「あの時は…」 と言っていた。
・テ形の間違い
あそびて
かきて
29
・助詞の間違い
例1: 電車 を 乗ります
―→
電車に乗ります
電車 に おります
―→
電車をおります
同じような行為なのに、なぜ助詞が違うのか。
例2: 家 に います
家 で テレビをみます
・句読点について
(家にいることは同じなのに)
文の終わりには 必ず句点 「。」を付ける習慣をつける。
早い時期から。 あとでは直りにくい。 ピリオド「.」ではない。
★
Q&Aで 表現の誤用(間違い)を正す
1)
Q: 朝ごはんをたべましたか。
(はい、いいえ、を付ける習慣を)
A1: はい。食べました。
A2: いいえ、まだ食べませんでした。 ―→ まだ食べていません。
2)
Q: ~~を知っていますか。
A1: はい、知っています。
A2: いいえ、知っていません。 ―→ 知りません。
3)
Q: 大学を卒業したら何をするつもりですか。 (初級終りのレベル)
A1: 知りません。 ―→ わかりません。
考えるような内容のときは 「分かりません」と
答えるべき。その中に 「知りません」というケースがある。
★
その他の誤用
4)
恋人を みたいです。 ―→ 恋人に 会いたいです。
5)
きょうは 天気が 暑いです。 ―→きょうは 暑いです。
天気の場合は、いい・わるい のみ。 「天気がよくて、暑いです。」 とは言える。
6) ナイ形
「ある」の ナイ形は「ない」だけ。 「あらない」 は存在しない
7) 買い物を 買います。 ―→ します。
8) 食事を 食べに行きます。 ―→ しに行きます。
9) 日本に来た前に 日本語を勉強しました。 ―→ 日本に来る前に~~。
10) 行ってから ――順番。
行ったから ――理由
11) 妹に時計を こわさせました。――使役。
(1字違いで意味が変わってくる)
妹に時計を こわされました。――受け身
12) 表記に関して、ひらがな・カタカナともに独特の形がある。 初めから少しずつ注意。
13) ノートをとる習慣がない人がいる。 黒板を見ても何も書かない。 これも少しずつ指導。
14) できるだけ フルセンテンスをいう習慣をつける。
[例]
Q: きのう カラオケに行きましたか。
A: 「はい」 で終わらず、「はい、きのうカラオケに行きました。」 まで言わせる。
15) 「お疲れ」 「お疲れさまでした」―→ 先に帰る場合は 「お先に失礼します」
30
≪2時限目≫
一般的な初級の授業の進め方―― いつも このまま使えるとは限らない。諸条件に合わせて
① 導入 ②板書 ③Q&Aで確認 ④学習者に書いてもらう ⑤練習問題
⑥その他の練習
①
導入
⑦テスト
⑧前日の文型の確認、などのステップがある。
文法事項を理解させる。
文型を示し、実物・絵カード・DVD等を使
って説明。
例: 可能の表現を教える。
「できます。できません。」の文型。
知恵の輪を使って、できる例―→「できます」。
できない例―→「できません」
*板書をする前に、その日勉強することを理解させることが大切。
②
板書
その日の文型を黒板(ボード)に書く。
特に大人は、書くことを必ず入れ
る。
初めは全部ひらがなか 漢字にルビをふる。
③
Q&A
練習して定着させる
例 Q: 藤原さんは 泳げますか。
A: はい、泳げます。
Q&Aは、しつこいぐらいにやってもよい。
教師―→学習者 (教師から学習者へ質問)
学習者 ⇔ 学習者 (ロールプレイのように 学習者同士で問答)
質問の際の呼びかけ
先生から学生・学習者に対しては 「○○さんは~~」と 名前を使う。
学習者同士の場合も同様。 学習者から先生に対しては 「先生は~~」
*日本語では目上の人に対して 「あなた」とはいわない。 「あなた」は
上から下に対して使う言葉と早いうちに教える。 TV 『徹子の部屋』で、
黒柳徹子がゲストに対し 「あなたは~」と連発するのはおかしい。
④
書く
学習者がある程度書けるようになったら、前に出てボードに書いてもらうのもよ
い。
ずっと座っているより変化がある。
例: 「~たら」 という文型で、教師が前件を書き 学習者が__部を埋める。
ⅰ) 100 万円あったら_____________。
ⅱ) 男だったら_____________。
例: 「~前に」 という文型で、教師が後件を書き 学習者が__部を埋める。
ⅰ) __________前に、宿題をしました。
ⅱ) __________前に、シャワーを浴びました。
全文を書けるようになったら、教室に変化が出てきて面白い。
⑤
練習問題
*
練習の問題は教科書についていることが多い。
31
いつやるかは事前に決めておく。(各授業の途中か終わりか、各課の終りか)
*
CDを聴くときは教科書を見ない方がよい。 閉じさせる。
*
*
教科書の本文・会話の練習
ディクテーション ――教師が読み、それを聞きとったまま書く。 教師は 3 回くらい読む。
(普通の速さ―→ゆっくり―→普通の速さ)
スキット(寸劇) ――会話のページくらいなら覚えてもらって 演じる。
(学習者によってかなり好き嫌いがある)
⑥
テスト
*
ほぼ、80 点くらい取れるような問題をつくる。
助詞の問題など、正解が二つ以上ある場合がある。 日本人が普通に使っていれば
間違いとは言えない。 日本語としておかしくなければ OKとする。
*
「ら」抜き言葉は、容認されつつある見込み。
⑦
次の授業では、前日 あるいは前の授業で勉強した文型の確認が重要。
教科書『みんなの日本語』について
【1課】
日本で生活している人は、場面のイメージが浮かびやすい。
例文4
あの 方は どなたですか。
(人)
1課からすでに敬語。 「方」 は人、「どなた」は
(誰)
誰、であることを教えた方がよい。
例文1,2,3,4を参照
ステップ1.
教
師: わたしは た に です。
学習者: わたしは ○ ○ です。
ステップ2.
回くらい言う。 (初めは ひらがなか ルビをふる)
囲み中の文字を消し、それぞれに言ってもらう。
(以下を)教師―→学習者、また学習者⇔で練習する
Q: あなたは すぎた さんですか。
A1: はい、わたしは すぎた です。
(「はい、そうです。」 だけでなく、全文を。)
A2: いいえ、わたしは すぎた さんでは ありません。
わたしは おおた です。
* いろいろな場面があるが、自分以外には さん を付ける習慣を。
* 教科書では 「~じゃありません」 だが、「では」で教えてた方がよい。
ステップ3.
わたしは せんせい です。
わたしは ○ ○ ○ です。
ステップ4.
職業などを入れてみる。
わたしは がくせい です。
わたしも がくせい です。
前者と同じ職業・身分であることを表す。
例文4. 「あの方は どなたですか」 の文について質問。 「あの」「その」「この」の違いはどこか。
32
この方は 上田さんです。
(一人の学習者にくっついて)
その方は 三原さんです。
(近くの方を指して)
あの方は 川口さんです。
(少し遠くを指して)
*この文型は、教室内では現実的でないケースが多い。 そばにいる人を指して
「この方は どなたですか。」 「その方は ○○さんです。」 はあり得ない。
*文型を積み上げて、「この」「その」「あの」 の距離感を覚えさせることが大事。
*初級の文型では、現実的でない例文もある。
例文5. テレサちゃんは 何歳ですか。
この例文は現実離れしているが、助数詞
(~歳、などの数え方)を教えようとしている。
≪3時限目≫
【2課】
「これは ~~です。」 の文型。
[導入]
教師が手に持って
これは ボールペン です。
(ものの名前をいう)
これは シャーペン です。
これは シャーペン ですか。
(「これ」でたずねる)
はい、それは シャーペン です。
(「それ」で答える)
* この文型を、言葉(名前)を換えて繰り返して練習する。
[板書]
Q:
これは えんぴつ ですか。
A1: はい、それは えんぴつ です。
A2: いいえ、それは えんぴつ ではありません。
* 「それ」 で答える練習をする。 文は最後まできちんと。
[Q&A]
テキストの例文から 類似の文型も加えて練習する。
これは 英語の 新聞です。
「の」は、新聞の種類を表す。
これは コンピューターの 本です。
「の」は、本の内容を表す。
これは わたしの かばんです。
「の」は、かばんの所有者を表す。
この本は わたしの です。
「この本はわたしの本です」の意味。
このかばんは 田中さんの です。
言葉の繰り返しを避ける表現。
この本は だれの ですか。
この本は 山田さんの ですか。
いいえ、それは 山田さんの ではありません。
33
この場合は 「これは」でもいいのではないか、という質問あり。 「これは」
でもいい場合もあるが、初級では基本的な言い方を身に付けたほうがよい。
注: 本冊のp15
会話の例文 「ほんの気持です。」
この課で出す必要はない。
必ず 「本の気持ち」 と誤解されてしまう。 とばした方がよい。
【3課】
ここ―-こちら、 そこ――そちら、 あそこ――あちら、 どこ――どちら、 いくら(値段)
学習者が学生なら、キャンパス内を歩く。
日本で生活している学習者なら、場面設定に問題はない。 時間に余裕があれば。
p23 会話参照
例文: お国は どちらですか。
ていねいな言い方に 「お」をつけることを教える。
「くに」 と 「おくに」では、別の言葉に聞こえる。 学習者にとって
「誕生日」 と 「お誕生日」 は全く別の言葉。
例文: すみません。 ワイン売り場は どこですか。
「すみません」 は謝る場合だけではない。
ちょっとした呼びかけ。 早く教えた方がよい。
【4課】
時間について
例文1: 今、何時ですか。
時間については あまり問題はない。 4時(よじ)と
9時(くじ)だけは、一般的な数字の言い方と違うので注意。
注: 「何」は 「なに」とも 「なん」とも読む。 手段をたずねるときは、「なに」。
例文6: IMC の電話番号は 何番ですか。
電話番号の場合、○○ ― ○○○ ― ○○○○ のハイフンを
「の」 と言ってもいいか。 日本語として不自然ではないので、OK。
【5課】
動詞文―→絵カードなどを使って動詞であるという意識を持たせる。
例文: 働きます = 仕事をします
起きます ⇒ 寝ます
(同じ意味。 この時期に教えてもよい)
(対比する言葉も教える)
例文: ○○時から ○○時まで 働きます。
(時間と組み合わせて練習する)
寝ます、勉強します など動詞を換える。
例文: わたしは けさ 6時に 起きました。
わたしは あさ 6時に おきます。
(「けさ 6時に 起きます」 は言えない)
習慣。 毎朝、の意味合い。
注: 「起きます」 という表現は、「これから起きる」 または 習慣を表す。
「勉強します」 も同様。
34
[練習]
教師のQ:
テレビを 観ましたか。
教師の指示: 「わたしは」 と 「きのう」 で言ってください。
学習者のA: わたしは きのう テレビを 観ました。
文責: 松枝 文恵
35
『うらやす日本語指導力向上講座』 第4回
日時: 9月13日(日) ‘09
講師: 多仁 安代先生
[前回の講義内容の復習・付け足し]
☆ 表記について。 「せんせい」 か 「せんせー」か。
* 欧米系学習者対象の ローマ字表記の教科書では 「せんせー」となっているのがある。
* 戦前・戦中の 植民地向けの日本語教科書は、とにかく音中心で 「せんせー」などの
長音をそのまま表記したものもある。
* ディクテーションの際は、「せんせい」とはっきり発音する。
☆ 誤用例について――間違えないにこしたことはない。 学習者には絶対に先に言わないこと
例: おおきいの かばん。―→ おおきい かばん。
☆ 伝聞・様態について
例 Q: きょうは 雨が ふりそうですか。
A1: はい、ふりそうです。―→ はい、ふるそうです。
A2: いいえ、ふりそう (に、も、にも) ありません。
1字違い。 混乱しやすい。
この 3 つの助詞はどれでも可。 で
は もOK。
ふらなさそうです。
☆
これも聞くことがある。 OK?
*
その人の判断により許容範囲は異なるが、教える際は基本的なものを。
*
質問あり: 「なさそう」 はどういう品詞か。 改めてこたえる。
1課.本冊・練習
例文: ○○人です。
この言い方は適切でない場合がある。
特に、中国と台湾の学習者には気をつける。 ○○の人、○○の方がよい。
☆
板書の前に その日勉強することを学習者の頭に入れておく。
たとえば、ナイ形なら
たべる――たべない
これを、マス形で練習する。 カードをみせながら
*
[4課]
はたらく――はたらかない、など。
たべます――たべません
授業は、全員に満足してもらうことはできない。 繰り返し、少しずつ。
動詞がでてくる。
時間についての文型: __時から __時まで __します。
例文: わたしは 7 じから 10 じまで 勉強します。
銀行は
[5課]
9 じから 3 じまで です。
(名詞や 数詞を換えて練習)
動詞文――動詞 「いきます」 「きます」 がでてくる。 「かえります 」 も一緒にいれる。
*
基本的な動詞なので、「かえります」 も入れるとよい。
*
「きます」 は、「日本に いつ きましたか。」 の例文を示すと解りやすい。
3枚の絵カード いきます
きます
かえります を並べて説明する。
36
*
「くる」 の感覚がない人がいる。 (母語による場合もある)
*
「いく」 「くる」 は覚えても、すぐ忘れる。
*
「あなたは いつ 日本へ きましたか。」 という例文を出す。
*
質問あり: “マス形”という言葉を 教える必要はあるか。 自然に覚える。
☆ 例文: バスで __へ 行きます。
* 同時に過去形の 「行きました」 も入れた方が覚えやすい。(過去形は 12 課から)
Q: きのう スーパーへ いきましたか。
A1: はい、きのうは スーパーへ いきました。
A2: いいえ、きのうは スーパーへ いきませんでした。
*
まず、「はい」 「いいえ」 をつけ、フルセンテンスで。
*
「いく」 「くる」 を同時に教えると、「くる」 は難しい場合がある。
*
「いつ」 「○月○日」 など、を入れると、覚えやすい。
*
「~へ かえる」、は比較的間違えない。
*質問あり: この時期、文字を覚え 書くことにも大事になってくる。
「~は」 「~へ」など、発音と表記の違いを どう教えたらいいか。
日本人でも、発音と表記の違いは難しい。 「は」 「へ」 「を」 だけは覚える。
他の 長音などの表記は、現時点では そのまま覚える。
*質問あり: 「~へかえる」 「~にかえる」 など移動を示す助詞は、
その違い・使い方を いつ教えるか。 5 課の時点では 「~へ」でよい。
☆
例文: あなたは なんで 日本に きましたか。
この教科書では 質問の文 「何で~~」 の「何」 を、「なん」 というように
指導しているが、会話の場合は 「なにで」 といった方がいい。「なんで」 というと
手段か、理由か混乱する恐れがある。
・
これは なに ですか。
・
これは なん ですか。
・
なにで きましたか。 (手段をたずねる場合は 「なに」)
・
なんで きましたか。 (手段・理由。どちらをたずねているのか不明)
5 課では 手段をたずねる 「なん」 のみ。 理由をたずねる 「なん」が出てきたら
また改めておしえる。 耳で聞いて、違和感がなければOK。
☆
短い疑問文を組み合わせて長文を作成する。
例文: いつ いきますか。
なにで いきますか。
だれと いきますか。
どこへ いきますか。
37
わたしは ____
___で
(日時・時間) (手段)
___と
___へ いきます / いきました。
(同伴者) (場所)
わたしは 5 月 5 日 に 京都へ いきました。
(日にち、時間を表す 「に」注意)
Q: いつ 日本へ きましたか。
A: 3 月 5 日に 日本に きました。
質問を覚えて、フルセンテンスで答えるように。
*
日にちの言い方は カレンダーを持ち出して練習。
*
「___の たんじょうびは いつですか。」
家族、ともだちなど。
「おたんじょうび」とは 言わない。統一すること。
*
質問あり: 「これは 3 年前に 写した しゃしん です。」
この 「に」は必要か。 書くときには必要。 会話では なくともよい。
*
質問あり: 例文では、問いに対して「わたしは~」という主語が省略してある。
「私は~」 は必要か。 長く話す練習をした方がいい。 学習者は
勉強に来ているので、きちんと言う練習をさせるべき。
学習者は、文法の参考書を読む暇があったら、文型を覚えた方がよい。
中国語には助詞がないので、注意。 助詞を使ったていねいな文・表現を意識させる。
中級以上になって 長い文を書くようになると、そちらに神経がいってしまい、助詞どころ
ではなくなる。 早くから注意させる。
指導する方は、どんな本を読んで勉強したらいいか。 今後の課題。
[6課]
「のみます」 「たべます」 「~ませんか」 「~ましょう」 ――動詞がたくさん出てくる。
例文1. わたしは ジュースを のみます。
パンを
たべます。
毎朝 なにを たべますか。
習慣について訊いている。
けさ
今朝のことを訊いている。
なにを たべましたか。
きのうは やすみでした。 お酒を のみましたか。
例文2. いえに います。
いえで テレビをみます。
昨日のことについて。
居る、居ないを表す場所は 「に」で表す。
行為を表す場所は「で」。学校で、会社で、図書館で等。
例文3.Q: いっしょに 神戸へ いきませんか。
(動詞+ませんか―→誘う言葉)
A1: ええ、行きましょう。
A2: きょうは ちょっと……。
「ちょっと…」 と言えば、断りの意味。相手は分かって
くれる。 「行きません。」 とは言わない。 相手が
「ちょっと…」 と言ったら、断っている意味と教える。
この点、学習者は案外早く覚える。 難しそうだが。
例文4. ちょっと 休みましょう。
(動詞+ましょう―→誘う言葉)
38
[7課] わたしは ワープロで 手紙を かきます。
☆
会話: 「~ですよ。」
手段を表す 「で」。 ボールペンで、箸で。
「よ」 は、こっち(話者)が思っているだけ。
「~ですね。」
「ね」 は、共通・共有の認識がある場合。
「~ですよね。」
共通認識の確認。
*
終助詞は、なくとも通じるが、会話では よく出てくる。 学習者が覚えてしまうと
書く場合にもつけてしまうので、あえて教えない。 自然に覚える。
*
日本語を教える際は、性別のない言葉を教える。 男性が女性的な言葉を
使うと おかしい。 日本語には、男女の差がある場合があるので注意。
☆
例文3. “Goodby” は 日本語で なんですか。
*
☆
…「さようなら」 です。
あえて母語(学習者の)を持ち出す必要はない。
「やり・もらい」 は非常に重要。
田中: わたしは せんせいに 電子辞書を あげました。
先生: わたしは さとうさんに 電子辞書を もらいました。
「から」 と同じ。 どちらでもよい。
Q: 結婚記念日に ご主人から なにを もらいましたか。
A: 結婚記念日に
夫
から ○○を もらいました。
*
「やり・もらい」 は混乱しやすい。 その場では覚えても、すぐ忘れる。
*
「くれました」 は一緒に教えると、よけい混乱して解らなくなる。
学習者の理解度や 受け入れ具合に配慮しながら指導すること。
*
「やりました」 と 「あげました」 の使い方は微妙。 その人の感覚で異なる。
最近は「あげる/あげました」 が多くなってきた。 使うのはどちらでもよいが、
聞いた感じの差を知っていた方がよい。
*
{さしあげる・あげる・やる} のうち、「さしあげる」 と「あげる」 の
使い分けができるようにした方が便利。
☆
例文6. もう 新幹線の 切符を 買いましたか。
Q: もう 秋葉原へ いきましたか。
A1: はい、もう 秋葉原へ いきました。
A2: いいえ、まだです。
――「もう」 と 「まだ」 の使い方。
A3: いいえ、まだ いって いません。 ――よくできる人は ここまで。
「テ形」がはいっているが、そのままでよい。 「まだ いきませんでした。」 は×。
質問あり: 「くれる」 について――
先生: わたしは 田中さんに シャーペンを あげました。
田中: 先生は
わたしに
シャーペンを くれました。
39
☆
*
わたしに、私の弟に、子供になど、場面が限られてくる。 上から 下へ。
*
混乱しやすいが、学習者によっては 一覧表にして教えるのもよい。
*
ねぎらいの言葉は、いろいろなケースがあることを 教えておくのもよい。
会話: コーヒーは いかがですか。
*
[8課] 形容詞
☆
イ形容詞
「どうですか」 の丁寧な言い方。 敬語。
「ぼく」 は悪い言葉ではないが、友達同士以外では 「わたし」 の方がよい。
『みんなの日本語』は、ナ形容詞から入っている。 普通は イ形容詞から。
おもい ⇔ かるい、
ひろい ⇔ せまい、
あつい ⇔さむい/つめたい/うすい、
あたらしい ⇔ ふるい
たかい ⇔ やすい/ひくい
おもしろい ⇔ つまらない
*
形容詞は 対で教えると覚えやすい。
*
絵カードを示して、対比させながら練習する。 しつこいくらい。
*
否定の表現に進む。
このかばんは 大きいです。―→このかばんは 大きく ありません。
大きく ないです。 (両方可)
そのかばんは 小さいです。―→そのかばんは 小さく ありません。
小さく ないです。 (両方可)
*
イ形容詞の 「ナイ形」は、「~~く」 となる。 しっかり練習する。
小さく ない/ありません、
☆
軽 く ない/ありません
ナ形容詞 ――― この時点で、ナ形容詞は そんなに多くない。
ハンサムな、 しんせつな、 げんきな、 じょうぶな、 しずかな など。
この教科書では 否定形が 「~じゃありません」となっているが、
「~ではありません」 と教えた方がよい。
例: 渋谷は しずかでは ありません。
○○さんの 部屋は きれい ですか。 いいえ、きれいでは ありません。
☆
形容詞+名詞 の文型
例文: 富士山は 高いです。(高さ) ―→ 富士山は 高い 山です。
BMWは 高いです。(価格) ―→ BMWは 高い クルマです。
・_____は 広い 公園です。
____ に合う 名詞を入れる。
・_____は おいしい 食べ物です。
*
いくつか問題をやると 覚える。
ナ形容詞――イ形容詞を先に入れた後、ナ形容詞を教える。
・_____は にぎやかな 町です。
慣れてくると、「私の国は~~」
・_____は 便利な 辞書です。
という文ができるようになる。
40
☆
同時に 二つの形容詞を使うとき
私の部屋は ひろいです。+ 明るいです。
―→ 私の部屋は 広くて 明るいです。
銀座は きれいです。+ にぎやかです。
―→ 銀座は きれいで にぎやかです。
☆
*
イ形容詞と ナ形容詞で異なるので注意。
*
イ形容詞と ナ形容詞という言葉を教える必要があるか。 自然に覚える。
*
「よい」 か 「いい」か。
元は 「よい」である。
会話 p.65
例文: いいえ、けっこうです。
*
「けっこうです」 は いろいろな場面で使う。 ほめるとき、断るときなど。
例文: また いらっしゃって ください。
*
敬語表現。
*
「いらっしゃる」 は 場面によって 行く、くる、居る の意味に使われる。
この時点で、そこまで触れる必要はない。
例文: いいえ、あまり 寒くないです。
*
「あまり~ない」 は弱い否定。 程度が低い。 柔らかい感じ。
Q: 琵琶湖の水は きれいですか。
A: いいえ、あまり きれいではありません。
今回の講義のポイント
○ 誤用例を前もって教えないこと。 学習者が間違えたら 必ず直す。 例で挙げた誤用は
中級以上の学習者にも見受けられる。 初級のうちの矯正が肝要。
○ 問いに対する答えは、「はい」 「いいえ」だけでなく、質問の構文を繰り返えさせ、
Full sentence で答えさせる。 それにより、語彙も覚える。 長い文を短くするのは
容易だが、逆は難しい。
文責 : 松枝 文恵
41
『うらやす日本語指導力向上講座』 第5回
日時:2009 年 9 月 27 日
講師:岩佐 靖夫先生
配布資料:計 14 枚
[1 時限目]
本日の 3 時間の講義のテーマ:「日本語指導において、どうやって日本語の語彙力を増すか」
プリントP.1参照。 『みんなの日本語Ⅰ』のテキストから、動詞を抜き出したもの。
1 課~3課までは、名詞文「~です」の文型で、4課から普通の動詞。 合計 138 個ある。
問題1 動詞の種類別=動詞の語種別
日本語の動詞は 4種類から成り立っている
・和語 ――― 日本語の固有の言葉
例: うらやす、やすむ、のむ、あたま
・漢語 ――― 中国語が元になっている言葉
例: 研究、案内
・外来語 ―― 外来語(中国語以外)
例: コーヒー、ジュース (カタカナ語)
・混種語 ―― これらが組み合わさったもの
例: 缶ジュース
1ページに示された動詞の中では、日常生活に必要な 基本的な言葉が多く
和語が圧倒的に多い。 会う、歩く、返す、食べる、触れる、出すなど。
問題2 音節=ひとまとまりに発音される音の最小単位
日本語の音節は 母音、または母音+子音。 子音で終わることはない。
基本的な動詞では、3音節語が80%。 例: あげる、遊ぶ、浴びる、洗うなど。
その次が 2音節語。 3 番目が4音節語。 初心者は基本的に、和語で 3 音節語がほとんど。
[質問] 和語と漢語の違いについて
和語――古来日本から存在した言葉。
漢字は訓読みが多い。
例: 食べる、飲む、言う、話すなど。
漢語――中国から入ってきた言葉。 漢字は音読み。
例: 食事、飲酒など。
3 音節の動詞において、3 音節目(ウ段)は下にさがる場合と、上がったままの場合がある。
ⅰ) たべる、いそぐ
低高低
ⅱ) いれる、おわる
低高高
42
問題3 「漢語+する」の形をとる動詞の、音節の特徴
「○○する」に当てはめる漢語は、4 音声が圧倒的に多い。 これを教える。
あんない (案内)する
4 音節目の「い」が下がる。 これだけは例外。
うんてん (運転)する
けっこん (結婚)する
けんがく (見学)する
3 音節はあるが 2 音節、5 音節はない。
でんわ(電話)する、さんぽ(散歩)する
低高高
和語と同じ。 最初が低く 2 音節目から高くなり、そのままが 8 割。
あんない(低高高低) は残りの 2 割のうち。
学習者に教えると解りやすい。
もう一つの語彙の分け方
1. 実質語――そのものが目の前にある。 存在が確認できる。 初級ではほとんど実質語。
例: 走る、見る
2. 機能語――最初は機能語中心だが、中級以上に教えるのは 機能語が多い。
一語で意味が二つ以上ある場合もあるので、難しい。 興味を持つ人もいる。
例: ことです、わけです、ものです、思う、思い出す、考えるも 機能語。
思う(おもう)=表(おもて) + 覆う(おおう)――動詞で組成された合成語。
考える(かんがえる)=噛む + 迎える(むかえる)――同様に、動詞+動詞
* これらの機能語には 合成成分がある。 古語辞書に出ている。
プリントP.2参照
異なり語数 と 述べ語数
異なり語数――異なり語の少ない単語は 重複して使われている言葉。 高頻度語。
述べ語数 ――使われている全体の語数。
* 指導教材を選定する場合には、異なり語数の少ないものを選ぶようにする。
問題 4
述べ語数は25。 異なり語数÷述べ語数 = 使用率
使用率が高い言葉が 高頻度語。 (表 1 は訂正個所あり)
★高頻度語 参照
例: D―朝日新聞、順位 18 の「委員」という語について。
新聞などでは頻繁に出てくるが、日常ではあまり使われない。
これを 基幹語彙 という。 指導上は外す。
43
*実質語は絵カードなどで教えやすい。
例: 「カバン」と 「紙」はどう違うか。
見ればすぐ解る。
*機能語は指導上、難しい。
例: 「思う」と 「考える」はどう違うか。
プリントP.3参照
問題5 問題6 高頻度語の特徴――日本語指導において、高頻度語を教えることが大切
1.高頻度語のうち、基本動詞は 「する」、「なる」、「ある」、「いる」である。
2.機能語の名詞は、「こと」、「もの」 以外に 20 個以上。
3.機能語のうち、「こ・そ・あ・ど」の名詞 (指示詞)の使用が圧倒的に多い。
4.高頻度語の中で、漢字のある語について
漢字の一、二、三、四、十、万…などの数字はほとんど和語。
★各言語別カバー率 参照
表中の他の言語と比較した場合、同じ語数では日本語の理解度は少ない。
これを、「カバー率が低い」 または 「カバー率が少ない」という。
日本語を九割以上理解するには 1万語以上必要。
問題7 日本語は多言語に比べ、何故カバー率が少ないか。
1.外来語・カタカナ語が多い。
マンションの名前、車の名前など。
2.造語が多い。 日本語の柔軟性でもあるが、造語しやすい。 例: サボる、朝市、超~、…。
3.天気・感情の状態を表す 擬声語・擬態語が豊富である。
例: ザ―ザ―、きらきら…
4.待遇表現(敬語)が発達している。 特に初級後半から多く出てくる。
例: 来られます、いらっしゃいます、おいでになります。
5.位相表現が豊富。 同じことを表現するのに、複数の言葉がある。
例: おみず―おひや、 つかれた―しんどい
プリントP.4参照
★語の長短と語種別分類
問題8 問題の表に 音節語を書き込む
順位1――4音節語。 順位2――3音節語。 順位3――5音節語。 順位4――6音節語。
順位1~4までで、日本語の90%を占める。
[2時限目]
問題9 問題 10 5音節以上の単語について
5音節以上の単語は、ある語と 別のある語との組み合わせでできている。
これを 高次結合語という。 厳密には6音節以上の語についていう。
44
例: しんうらやす(新+浦安)、 なさけぶかい(情け+深い)、 おもしろい(表+白い)
こころざし(心+指す)
* 初級では4音節、3音節、2音節が大半。 中上級で 5音節以上の単語が出てくる。
* 外来語は、ディクテーション(聞き書き)をやって、正しく書けるかどうか確認しながら
教える。 外来語の効果的な指導法である。外来語は平均して3~5音節。
* 和語は基礎的な動詞がほとんど。 3,4,2,5,6,7音節の単語から教えるとよい。
* 漢語は4音節が中心で、約半数。 4,3,2音節の単語で98%を占める。
プリントP.5,6参照
語彙の指導法
A~G参照
〔A〕 ディクテ―ション(聞き書き)
聞き書きさせる部分を語・句・文と拡大していき、学習者が意味を理解できるまで
何回か聞かせるようにする。 一回の量は少なくして、繰り返し行った方が効果的。
きのう―→きのうは―→きのうはね―→ と拡大していく。
〔B〕 最小音素対立 (ミニマル・ペア minimal pair)練習
AKI ―― KAKI
* Kが多いだけ。 Kの音で最小音素対立。 〔C〕より先に教える。
〔C〕 類音素対立練習
AKI ―― TSUKI
* T,Sの 2 つの子音で対立。 完全に最小音素対立ではない。難
しいので、〔B〕の後で教える。
KAWAII ―― KOWAI
YASASHII ―― YASUI
* これらが同じように聞こえる。 口の動きだけでは
解らない。 こわい先生、やすい先生、となってしまう。
〔D〕 モデル文の写し書き(シャドウイング)
* 教科書が 分かち書きの場合は注意する。
分かち書きはしなくてよい。 続けて書かせる。
〔E〕 部分作文を行う(基本 4 種類)
① 助詞(各助詞)を補う (クローズ法・単純再生法)
② 順序を変える (配列法・マッチング法)――文を書かせる。答えが一つの問題が出る。
③ 文の中間を作成する (完成法)――4 つの文例から選んで書く。
④ 文の後半を作成する (完成法)――選択ではない、作文が含まれる。再生テスト的
☆☆ 日本語能力試験について。 この 12 月で、これまでの試験要領が終わる。
来年度からは変わる。 上記の②③④が出題される可能性がある。
45
〔F〕 指示された文型を使って質問に答える
* 必ず指示にしたがうこと。
〔G〕 一般的な質問に答える。
* 文型練習や読解教材の質問から、答えを確認。または書くことが一般的な方法。
* 教科書から一部を抜粋して指導する。 この形で指導すると、語彙力が増える。
* 聴解教材の一部を選んで使うのもよい。
プリントP.7,8参照
問題 11 学習者の語彙の定着及び語彙力の増強について
(1)代入練習 (substitution
drill)
置き換え練習
(2)転換練習 (transformation drill)
形を変える練習
(3)質疑応答練習 (response drill)
Yes or No question.
(4)拡大練習 (expansion drill)
言葉を付加していく。 文が長くなる。
5W1Hの問いも含まれる
* 語彙の増強・語彙力の増強のためには、(1)―→(3)疑問詞も入れる―→(4)へ。
* (2)は語彙力には関係ない。
★類義語の示唆的特徴
* 教えやすいもの――反義語
* 5課
行く、来る、帰る――話し手・聞き手の視点によって違う。そのままでは解りにくい。
*17 課
持って行く、持って来る ―― 母語によって感覚が異なる。 (中国語、韓国語、英語)
*24 課
連れて行く、連れて来る ―― 17 課と同様の注意が必要。
* 類義語の示唆的特徴とは、特徴的な違いという意味。
複数の言葉(単語)に共通した概念がある。
問題 12
P.8。 (P.9にも同じ番号があるので注意)
A〕 きれい――(ナ形容詞) 表面的。 見てきれいなこと。
美しい――(イ形容詞) 内面重視。
剥がす――表面を剥がす。 例: シールをはがす。
剥く
――中身が欲しくて表面を剥く 例: みかんを剥く
B〕 気持ち――瞬間。 例:気持がよくなった
気分 ――持続性・継続性がある。 例: いい気分になった
冷たい――触ってみて瞬間感じる
寒い ――しばらくの間持続する感覚
どうも ――すぐに、瞬間
どうやら――継続性がある。 考えている時間がある
46
~らしい――新館的に感じる
~ようだ――継続性がある
C〕 上る(のぼる)――過程を重視。
例: 階段、坂、山などに登る。
上がる(あがる)――到着点、結果を重視。 例:エレベーターで 10 回まであがる。
* 過ごす・経つ、下る・下りるも同様。瞬間と継続、過程と到着点、どちらを重視するか。
D〕 勿論――主観的、個人的な感覚
当然――客観的、一般的な感覚。 当たり前。
随分 ――主観的
かなり――客観的。 韓国語では 前述の“随分”と同一語。
~と言う ――個人的
~と言われる―― 一般的。客観性がある。
プリントP.9参照
★派生語
ある語から派生して形成された語。
転音によるもの
例: 気+降り―→香り
接辞の添加によるもの
問題 12
例: さびしい―→うらさびしい
(P.8 にも同じ番号があるので注意)
A〕 畳語(繰り返し) しみじみ…… 浸む→浸みる→しみじみ
つくづく…… 尽くす→つくづく
ますます……増す→ますます
B〕 擬態語
うっかり……浮く→うっかり (意識していない。気分が浮く)
うっすら……薄い→うっすら
しっかり……然り(確かにある)→しっかり
C〕基礎(語)動詞
D〕和語
問題 13
語る……形(かたち)づくる→かたる
・まとまった形にする。
話す……離れる→はなす
・形がはっきりしていない。
膨らむ……ふくろ(袋)→ふくらむ
・河豚のように。
そで……そば+て(手)→そで
・手のそば。
まぶた……目のふた→まぶた
・複合語
むら……“群れる” の未然形→むら
・合成語
複合語の中で、意味を重視しなければならない場合がある。
前の語と、後ろの語との関係に注意。
立ち食い――立つ+食う……原義+原義。 手足(名詞) も同様
にわか雨――にわかの雨……前の語が、後ろの語を説明
小ぎれい(ナ形)も同様。
*原義+原義、原義+転義、前の語が後ろを説明するなど、複合語にはいろいろな形がある。
47
問題 14 擬態語、擬声語の発音
1. うっかり、うっすら、さっぱり、しっかり、やっぱり……促音の後ろが高い
2. きらきら、さらさら、げらげら、ごろごろ、ぱらぱら……最初の第音が高い
プリントP.10 参照
問題 15 イ形容詞と ナ形容詞の意味上の区分。
イ形容詞――客観的、一般的
例: 大きな
ナ形容詞――主観的、個人的
例: 大きい
* 人によって感じ方が違う場合もある。
プリントP.11 参照
★学習者にとってまぎらわしい助詞
1. は――話題に継続性がある
が――話題に終結性がある。 それで終わり。
2・ に――前の言葉を明確化する。
へ――ぼんやり。 あいまい。
例:へさき(舳先)…どちらに向くがはっきりしない。
3. に――前が強くなる。
で――テ形は後ろに重点がある。
4
ね――話題が共通している場合。
よ――話し手から一方的に話がながれている。
5. ~とか――代表例
~や、~など――並列で示している
P.12、13 は語彙の指導についての参考資料。 「読解本文」ともに参考に。
48
『うらやす日本語指導力向上講座』 第 6 回
日時 : 2009 年 10 月 4 日
講師 : 片桐 史尚先生
配布資料 : 計 17 枚
[1時限目]
日本語のコミュニケーションにおける音声は、それだけが独立して存在するのではない。
相手と話している場合、言葉 100 パーセント聞こえているわけではなく、目の前のジェスチャーや、
目つき、身ぶり手ぶりなどが 言葉の理解を補っている。
レクチャー形式では、いきなり本題に入るのではなく、プレトークなどで その日の心雰囲気作りをし
た方がよい。
日本語の音声について。 母語なら大丈夫か。 そうとばかりは言えない。
普段はあまり聞くことはないだろうが、日曜日の夜 ラジオNHK第2放送で、8時から『カルチャー』、
そして9時から『文化講演会』という番組があります。 聞いたことがありますか。
今夜8時から『カルチャー』の方は、「黒沢明の幻の大作」というテーマで、1時間の話があります。
『文化公演会』の方は「文化とはどういうことか」というテーマだったと思います。 講演はその時の
旬の人が話をすることが多いのですが、聴取率 (ラジオの場合の言い方)は高くないでしょうし、テ
レビと違って かなり言いたい放題の感じで、なかなか面白いです。
この中でそれぞれの講演者の話を聞いてみると、同じ日本語でも話し方や 話の進め方・内容が実
にいろいろで、分かりやすい人や 個性的な人がいます。
自分は録音して寝ながら聞くことが多いですが、皆さんもぜひ一度聞いてみてください。
こういうのを プレトークと言います。
授業が始まったら、その日の話題にちょっと触れておく、授業に入っていきやすい。
プレトークは専門用語で言うと 有意味受容学習 といいます。 教師一人と学習者が何人かいた場
合、学習者の中には そのテーマに詳しい人と そうでない人がいる。そういう場合でも、事前に
ある程度 その日のテーマについて インターアクション(言葉のやり取り)しておくとよい。音声や
読解の授業でも頭に入りやすい。
これは、オーズベル (アメリカの心理学者)という学者が、先行オーガナイザーという言葉で説明し
ています。
これぐらいの話を頭に入れておくと、きょうのこれからの話が理解しやすいと思います。
49
配布資料参照。 本日(10 月 4 日)の講義内容は下記の通り。
・著作権について
・音声の基礎知識
・具体的指導法
■著作権/日本語教育に関係する「権利制限など」
プリントP.1参照
著作権に関しては、教育においては 次の①~⑦の条件を満たす場合に、例外が認められている。
諸々規定があるが、それぞれ許容がある。 ボランティアの日本語教室で教える場合は、学校では
ないが、学校に準ずるものとして拡大解釈して使用してもよい。
① 教育機関であること
② 営利を目的とする教育機関でないこと
③ 授業を担当する教師自身がコピーすること
④ 本人の授業の中で使うこと
⑤ 必要な部数であること
⑥ すでに公表されているものであること
⑦ その著作物の種類や用途から見て、権利者の利益を不当に害しないこと
近年メディアのデジタル化が著しく、注意する必要がある。 日本語教育能力試験にも著作権に関
する問題が必ず出題される。
プリントP.2参照
問の答え――1。
可能。自由に利用できる。 (範囲が限定されている)
著作隣接権とは、著作権のある元のものに何かを加えたもの。(例えば、何かを書き加えたもの)
人類の歴史は、この著作隣接権を積み上げたもの。
音声を教えるにあたって、考えること。
言語教育はどのように捉えられてきたか。
・focus on forms
音声・文法・文型などいろいろなものに焦点を向ける。一つの文
に対して、あれもこれも。
・focus on meaning
意味中心。通じればよいという コミュニカティブアプローチなど。
欧陽韮韮のような日本語。
・focus on form
きょうはここ。フォーカスを一点集中にした。「あれもこれも」から反省。
現在の教え方の主流。
・consciousness raising (説明なし)
50
音声と表記は連動する ――― 音声が違うと正しい表記ができない
例: 西船橋を 「にしふねはし」 とは言わない。
(基礎知識1) プリントP.3参照
■変音現象
① 連濁(れんだく)
後ろの部分が濁音になる。 例: ほんばこ、やまざくら、つかみどり。
② 転音(てんおん)
前の部分の母音が替わる。 例: あまだれ、かざかみ、ふなつきば。
例えば [船橋]
船―― ふね ―→ ふな
FuNe
FuNa
母音が交替している。
学習者には、いくつかの例を示すと ルールができる。
③ 音便(おんびん)
合成語の変化。 例: ぶんなぐる、うっちゃる、ぶっぱなす。
④ 音韻添加(おんいんてんか)
ない音が添加される。例: 見出す(みいだす)、詩歌(しいか)
春雨 haruame---harusame
「s」が添加されている。
学習者には地名・駅の名前などで例をあげる。
人名の「うえの」さんと、駅名の「うえの」ではアクセントが違う。
⑤ 音韻脱落(おんいんだつらく)
音韻が脱落している。例: はだかあし―→はだし。
⑥ 音韻融合(おんいんゆうごう)
連続する音素・音節が融合して、別の音素・音節になる。
きうり―→きゅうり、かりうど―→かりゅうど
⑧
連声(れんじょう)
決まった言葉のみ。新しく加わることはない。
天皇(てんおう―→てんのう)、反応(はんおう―→はんのう)
文字は、一度決めるとリセットできない。音が変わっても 文字はそのまま。
音はリセットの連続で合理化が続く。
特にフランス語は、読まない音も書く。スペルを見ると解らなくなることもある。
専門用語が沢山出てくることに関して。
専門用語がないと考えがまとまらない。
これだ、あれだ、あれね……となる。
専門用語が出て、初めて知識が整理される。
例えば、星を見て「星だ、あれも星だ」では解らないが、「○○座だ」 というと解る。
これが専門用語。 花の名前なども同様。
日本に外国人が来て、何が面白いか。
TVコマーシャルは 面白い。 なぜか? 年中、何度も耳にする声。 頭に刷り込まれる。
まず覚える言葉。 「新発売」 「新登場」
日本の英語の教科書は、知らない単語が1ページに 30 も 40 もでてくる。 しかも大半が
1 度しか出てこない。 覚えても、試験に出てきたら儲けもの、という程度。
51
短期記憶――1 回教えただけで覚える。
長期記憶――短期記憶を長期記憶にするために繰り返す。 これは教師の役割。
「おさらい」する。 TVニュースなどでクリップを示し、「おさらいしましょう。」と
いうのは やりすぎではないか。
(基礎知識2) 造語について (P.3、下部参照)
貿易会社(ぼうえきがいしゃ)は、貿易(ぼうえき)+会社(かいしゃ)。
貿易も、会社も別々には解る。 しかし、一緒になると 「かいしゃ」が 「がいしゃ」となる。
同時に、アクセントも変わる。 明海大学の場合も、「だいがく」 のアクセントが変わる。
日本語は、高低アクセント。 英語は強弱アクセント。
前に熟語が入ると、後の言葉(熟語)のアクセントが変わる。
近隣の言語との比較
音楽で説明すると よくわかる。
ド(1)―レ(1)―――――ソ――――――ド(2)―レ(2)
日本語
ド(1)から ソの間の音
韓国語
ド(1)から レ(1)の間の音 (ソウル近郊のひと。プサン辺りはもっと抑揚がある)
中国語
ド(1)から レ(2)の間の音 (口を開けたままで発音する)
指導上必要なのは アナログ的な感覚。
例: 韓国の学生に 「そ う だ よ」を指導
ソ
ド(1)
P.4参照
造語法――合成、借用、縮約、転成、混交などがある。
日本語では、2拍、3拍、4拍が好まれる。 特に4拍。
例: ケイタイ、デジカメ、ファミレス、ファミコン、リモコン、マザコン、……など。
企業が商品の命名する際、省略して覚えにくいものはダメ。
英語では、AAAなど文字で訳すことが多い。
省略形は外国人には解りやすい。
バイトをすると「ファミレス」などを覚えるが、元の意味を知らないことも多い。
52
キムタクも省略形。 「チョー○○」 は感情を表すのに適している。
造語も20年使われると辞書に載る。
片桐先生――1984 年に教え始めた。 「ガチョーン」 「ゲロゲロ」 が流行した頃。
「ウオークマン」 はソニーの商品名。 これが 上位概念になった。
韓国では、冬のコートのことを 「バーバリー」という。 ブランド名が上位概念(一般名詞)に
なった例。 「先生、そのバーバリー、いいね。」
日本語指導する場合、相手を知ることが大切。
その人のニーズを知ること。 なぜ勉強するのか。
レディネス(readiness)―――準備されたもの。 その人に関する情報。 ニーズもその一つ。
(基礎知識3) P.4参照
日本語は、仮名の各文字が一つ一つの音節を表している。
例外: きゃ、きゅ、きょ などの拗音(ようおん)。 それぞれが一文字分。
促音、長音、撥音などができない学習者もいる。
[2時限目]
P.5参照
「拍」 の感覚を初めから教えることが必要。 促音、長音、撥音は それぞれ1拍と教える。
例: おじさん(4拍)、おじいさん(5拍)――拍数によって意味が異なる。
促音
「っ」――小さい “つ”の字。
オット(夫) と オト(音)
長音
一泊、長く伸ばす。
オジイサン(お爺さん) と オジサン(伯父さん)
撥音
「ん」も一泊
サンマ(秋刀魚) と サマ(様)
この三つのうち、一つができないことがある。 三つともできない場合もある。
また、濁音の表記と音節が連動している場合もある。
忘れたら ケダギ。 ケンタッキーのつもり。 ケ(ン)タ(ッ)キ(ー) の促音・撥音・長音が
全部抜けている。 加えて濁音の音節と表記の間違いが明らか。
日本語のアクセントについて
プリント P.4の中ほど 日本語のアクセントの特徴 の欄参照
日本語のアクセントの特徴は、この枠内の ①~④ のみ。
53
③ 第 1 音節と 第 2 音節とでは必ず高さが変わる。 地域によっては 多少違うこともある。
④ 一語の中では、高いところは一か所だけ。(中国語は上がったり下がったりする)
例: はしもとさん(名前)――「し」以降が高くなる。
P.4 日本語のアクセントの型 の欄参照
① 平板型
ドミミミミ――うしろに 「が」をつけても、さがらない。
② 尾高型
うしろに 「が」をつけると、さがる。
③ 中高型
ド・ソ・ド――まん中が高い。
④ 頭高型
標準語では、最初の音が高い。
P.4の 練習①
せんさい(先妻)が…
平板型。高い部分の上に線を引く。「んさい」の部分。
教師は 毎回なので省略形の記号を使う。
* 高低アクセントは、アゴの部分を使っている。 あごの動きで説明すると 解りやすい。
すみません↘
そうだね↘
空港などでも、日本人はアゴの上下があるのですぐわかる。キムタクの演技も同様。
* 外国人に日本語を教える際は、日本人や日本語の特徴について よく知っていることが大切。
暗示的になんとなく知っているのではダメ。 外国語とどう違うかを明確に。
* 出身地によってアクセント(発音)が違う。 同じ東京でも、異なることがある。
迷ったらアクセント辞書で調べること。
代表的な辞書: * NHK日本語アクセント辞典
NHK放送研究所編、日本放送協会放送文化研修所発行
* 新明解日本語アクセント辞典
金田一春彦監修、三省堂発行
* 標準アクセントはどうやって決まったのか。
明治時代に外国の言語学に触れ、政府が上田万年(うえだ かずとし)をヨーロッパに派
遣した。上田は帰国後、山の手地域の言葉をベースにして標準語を作った。
P.5 実践的手法 教える際の工夫 を参照
特に ① の顎の動きが重要。 アゴを動かす習慣のない人もいるので注意。
その他、外国人の日本語には 「あのー」とか「えー」などの前置きがないので、日本人が
びっくりすることがある。 これを「フィラがない」 という。
プリントP.5参照
ミニマルペア―― 似ている音声を対立させて比較する。 最小対立。
例: いきます―ゆきます、
i
yu
おきます――ときます
o
to
54
アルファベットにすると、母音・子音に分かれるので分析しやすい。
その他、音声やアクセントは、意味からも考える必要がある。
例: おんどり(雄鶏)、ことり(小鳥)、やきとり(焼き鳥)…
* なぜ 「とり」になったり、「どり」になったりするのか。
日本語では多くの場合、小さくて可愛いものには濁音をつけない。
オノマトペ(擬声語・擬態語)も同様。
くるくる――ぐるぐる――ぐるんぐるん
ころころ――ごろごろ――ごろんごろん
* 「リ音」 にも注意。 一回性の擬態語
例: ころり、とろり、ほろり、ぽろり…
* 日本語はオノマトペが多い 。なぜ日本人はジェスチャーが少ないか? 口先で全て言える。
例: マンが 『カムイ伝』――誌面で言葉は要らないほど、オノマトペだけで場面が
描かれている。
フランス語は動きが激しい――サルコジ大統領のスピーチ
プリントP.6 ハ行の変遷の欄参照
・ハ、へ、ホ のグループ
・ヒ
のグループ
・フ
のグループ
の3つのグループがあり、それぞれ息の使い方が違う。
これらを音声記号で表すと、全く別の音。
ハ音の変遷
Pa ―→ Fa ―→ Ha
奈良
平安
400 年前から
* ハハは昔 パパだった――唇音が退化した。
[3 時限目] P.6~7参照
* ハ行の変遷がなぜわかるのか。
ポルトガル人宣教師が作成したキリシタン資料による。 彼らは表音文字である
アフファベットで日本語を表記したので、当時の日本語の発音伝わっている。
平家物語が、「フェイケものがたり」 と表記されている。
* なぞとき
P.6の下部にある詩
「ははには 二たび あひたれども ちちには 一度も あはず」
当時の口、唇の形を表現したもの。 標準語を研究していた上田万年が見つけた。
上田は、チェンバレン(イギリス人。東大で講じた) に言語学を習った。
チェンバレンはアルファベットを用いて日本語の音声を分析。
55
当日配布されたプリント(1枚)参照
上の部分の5行を読む。
* 「教授は男である」 という先入観があると、理解しにくい。
* 概念スキーム(scheme,図式)を デフォルト(default、初期設定)する必要がある。
* ○○は□□だ。
教授は男だ、バスの運転手は男だ、という先入観。
これはジェンダー論ではなく、認知心理学の論理である。 認知分野でスロットが次々に項
目を選んで設定している。
* この、人の先入観を利用して、小説などでは大どんでん返しをみせる。
* 持っている概念をひっくり返すこと。 異文化コミュニケーションの 最初にやった方がよい。
同じプリントの 『しぐさのコミュニケ―ション』参照
* コミュニケーションは言語そのものだけではない。
周辺言語 = パラ言語 が重要な役割を果たす。 教育には重要な要素。
キネシクス = 身体動作学。 これも周辺言語。
例: 「よっか にしようか、ようか にしようか。」 話しながら指で示す。明確になる。
“うなずき” もこれに入る。
初めのプリント P.8参照
問1
a―①の答え 1
パラ言語
b―②の答え
2
話すときの速度
c―③の答え
4
コード・スイッチング
他の人が入ってきて 言葉やトーンが
急に変わるものコード・スイッチング
別冊。音声に関するプリント参照。
人間は口の中で調音・発声。 笛は穴を押さえて音を出す。 どこから空気を出すか、出さないか。
P.49 参照
調音点――(調音者が)ぶつかる部分。当たる部分。
調音者――動く部分。舌や唇。
例: ①の表 両唇音…両唇の動き
サの音…舌が上の歯の裏側に当てるか、接近させるか。
P.102 韓国の学生は、ザとジャ、ゾとジョの区別がつきにくい。
ギンザ(銀座)―→ギンジャ、 ノムゾー(飲むぞー)―→ノムジョー
ザ―→舌が歯の裏に
ジャ―→舌がもう少し後ろに。 ほんのわずかの差。
「つ」が発音できないことが多い。 しかし、先生が「みっちゅ(三つ)」と言うと すぐわかる。
56
P.104
中国語話者の特徴
P.106
その他のアジア言語話者の特徴
P.108
英語・その他ヨーロッパ言語話者の特徴
ラリルレロと ナニヌネノの混同がある。
* できない音、言いたい音でその人の母語がわかる。
* 参考テキスト
日本語教育能力検定試験 『聴解・音声特訓プログラム』
遠藤由美子ほか著
三修社発行
¥2,400 (本体)
元の講義プリント
P.9参照
録音テープ。 『蜘蛛の糸』 加藤武の朗読。 意味によって言葉の速さを変えている。
アナウンサーの試験などにも使われる作品。
* 意味が解っていないと、音声(スピード、声色)を変えることはできない。
* 雰囲気で臨場感が違う。
* 国によっては本を朗読(声を出して読む)習慣がない国がある。 学習者が驚いて
声が出ないこともある。
P.10 参照
音声とオノマトペ
* 擬態語・擬声語を、日本語でどう説明するか。
スベスベと ガサガサ(肌の状態)など。
* 場面設定・登場人物・感情移入、そして解りやすく短文で説明する。
* 外国人に解りやすいように、フリーナ―ズ・トーク も用いる。
(教室で使うと ティ―チャーズ・トークという)
*学習者の経験から、イメージが湧きやすい場面設定・言葉を用いる。
☆ 音声は、ただ音声だけにあらず
57
『うらやす日本語指導力向上講座』 第7回
日時 : 2009年10月18日
講師 : 多仁 安代先生
[1時限目]
前回の質問に答えて。
学習者に、日本語の品詞の説明は そんなに必要ではない。助詞、動詞、イ形容詞、
ナ形容詞くらいは教えるが、細かいことは不要。むしろ文型で教えて、覚えさせた方がよい。
めんどうな例: ある(動詞)、ない(形容詞)
多仁先生の話。 今期は留学生の 「書く」クラスを受け持っている。初級から中上級まで。
当然、初級くらいは終わっている学生だが、文を書かせてみると いろいろ見えてくる。
会話だけでいいという学習者でも、メールくらいは打つ場合がある。その場合、相手に失礼でない
程度に書く必要はある。初めからきちんとした、崩していない形(言い方)を押さえておかないと
中級・上級になってからでは、なかなか直らない。また、同じ意味で、言い方が違うのだという
認識もない場合がある。
ちゃんと―― (元の形) きちんと
~じゃなくて―― (元の形)ではなくて
やっぱり―― (元の形)やはり
~んです―― (元の形)~のです。
初級がいかにたいせつか。 本人は中級だと思っている学生の作文例を提示。
・イ形容詞と ナ形容詞がごちゃごちゃ。
・「天気が暑い」 とは言わない。
・助詞の間違いや、抜けているところが多い。
例: 自転車 に 乗る。
自転車 を おりる
* 助詞が異なることに注意。
・イ形容詞の活用
例: 気持ちいいになって ―→気持ちよくなって
原型は「よい」
* 一度きちんと学んでいれば、忘れても思い出す材料がある。
教えていないと、考える材料がない。
9課 テキストP.110~ 参照
1. 私はイタリア料理が 好きです。 ⇔ △ わたしはイタリア料理が きらいです。
○わたしはイタリア料理が すきではありません。
58
* 「すき」の反対語は 「きらい」であるが、きつく聞こえるので
「すきではありません」の方がよい。
2. サントスさんは歌が 上手です。 ⇔ △ サントスさんは歌が へたです。
○サントスさんは 歌が 上手ではありません。
* 一般的に、他人のことは 「へたです」とは言わない。
○ わたしは歌が上手ではありません。 へたです。
△ イチローは野球が上手です。
* プロの野球選手なので、そのことに関しては「上手です」とは言わない。
3. わたしは日本語が少しわかります。 (「わかる」 は可能の意味を含む動詞)
*可能の前は、助詞「が」を用いる。 「を」も使えるが、この時点では「が」で教える。
例: ~~さんは~~がわかりますか。
*学生のレベルにもよるが、意志のある・なしを比較しながら教えてもよい。
聞こえます (意志なし・可能)
/
聞けます (意志あり)
見えます
/
見られます (意志あり)
(意志なし・可能)
4. わたしは車があります。 (所有を表す)
*所有は 「物」だけではなく 「人」の場合もある。
*「妻があります/子供があります/恋人があります」 も併記しているテキストもある。
5. きょうは子供の誕生ですから、早く帰ります。 (この課では理由の「から」)
「~ので」 理由
「~から」 理由
(この方が少し丁寧)
*「~ので」と 「から」を同様に並べて教えてもよい。
*「誕生日ですから~」 まだプレインフォームが出ていないので、この表現になる。
*「誕生日だから~」 でもよい。
*「~ですから」の 理由を示す単語の品詞はいろいろある。
名
詞―― 誕生日ですから
イ形容詞―― 部屋が暗いですから
ナ形容詞―― 会場が静かですから
動
詞―― おなかがすきましたから
指導において
前件を示して後を言わせる。
休みですから _______。
重いですから _______。
後件を示して前件を言わせる。
_______ 水を飲みます。
_______ 休みます。
電車がきませんでしたから 遅刻しました。
その後は、前件・後件ともに言わせる。
_______ から_______。
59
イ形容詞
はやい
―→ はやく 帰ります。
しずかな ―→ しずかに します。
本冊の[会話]の欄
本冊P.73 参照
会話には敬語がよく出てくる。 敬語でないと どうなるかを教えることが大切。
・コンサート、いっしょに いかがですか。
「どうですか」 が元の言い方。
・金曜日の晩は ちょっと……。
「ちょっと…」 は ほとんど否定、丁寧な断り。
自分が断るときも こう言えばよいと教える。
10課 テキスト P.119~ 参照
「います・あります」 人(動物)や物の存在、自分の国や 環境の簡単な描写が言える。
1. 例文: あそこに佐藤さんがいます。
人・動物―― ~がいます。
2. 例文: 机の上に写真があります。
物
―― ~があります。
家や部屋の写真を見せて、「~があります」 「~がいます」と繰り返すと、よく覚える。
3. 例文: 家族はニューヨークにいます。
4. 例文: 東京ディズ二―ランドは千葉県にあります。
*助詞の、取りたての 「は」 について、この辺で一度説明した方がよい。
取りたての 「は」には次のような意味がある。
・主題を示す/ ・対比を示す/ ・否定を示す。
例: 机の上に 本があります。
机の上に 本はありません。
恋人は どこにいますか。
パスポートは ここにあります。
[2時限目]
例: この近くに 電話がありますか。
*質問には 「はい・いいえ」で答えられる場合と。そうでない場合がある
例: 机の上に 何かありますか。
何もありません。
はい、あります。/ いいえ、ありません。
・必ず「はい」「いいえ」をつけて答える。
例: 机の上に 何がありますか。
ペンが あります。
例: すみません、この近くに 交番がありますか。
いいえ、交番は ありません。 (否定の「は」)
*「すみません」は 謝る場合だけではない。 呼びかけ。 驚かせないように。
相手に返事を準備する時間を与える。 早い時期に教えた方がよい。
60
例: あの時は 嬉しかったです。
*「あの」は、話者と聞き手の両方が知っている、共通の認識がある場合に使う。
P.122 参照
本冊では出ていない言い方
例: 何が ありますか。
何も ありません。
*「箱の中に 何が ありますか」 という問いは おかしい。 箱の中なら、
「何か ありますか」 と、あるか ないかを確かめるだけ。
11 課 テキスト P.127~ 参照
助数詞 (一つ、一枚、一台、一人、一回など)
これらは 覚えるしかない。
*助数詞は、表を作って ひらがなで書く練習をする。
口で言うだけでは 確認が抜けてしまうことがある。
*珍しい数え方に注意。
例: ウサギは 一羽、二羽…
*お金の数え方は 誰でも大丈夫。
4.期間を表す言い方
例文: 田中さんは3カ月スペイン語を勉強しました。
*2時間30分、半時間の言い方に注意。
例: 何時間 寝ましたか。
6時間 30 分 寝ました。=6 時間半 寝ました。
(「6 時半 寝ました」とは言わない)
*かかる時間をたずねる
「どれくらい~~ますか」
例: 家から 会社まで どれくらい かかりますか。
1時間半 かかります。
5. 〈期間〉に一回 ~を します。
例: 1日に 3回、コーヒーを飲みます。
1週間に何回 ~~をしますか。
(学習者に合わせた質問をすること)
会話 本冊 P.89 参照
例文: 「お出かけですか」 「ええ、ちょっと…」
*日本では あまり聞かなくなった挨拶・会話だが、外国人はそれほど気にしていない
ことが多い。
12 課 テキスト P.136~ 参照
過去の出来事や経験について 感想や印象を述べる
・普通形(プレイン フォーム)が出てくる。 ここをしっかり理解し 覚えていないと、後々困る。
例: する・しない・した・しなかった
・テキストの例文だけでは少ない。
・「~と思います」 を入れると、わかりやすい。
61
名
詞―― 男だ と思います。
イ形容詞―― むずかしい と思います。
ナ形容詞―― 六本木は静かだ と思いますか。 にぎやかだ と思います。
動
詞―― ~がある と思います。
(箱の中にペンがあると思います。)
*イ形容詞の間違いが いちばん多い。
例: 今 寒いです。 昨日は寒いでした。―→寒かった。
*練習
みなさんの国は 暑いとおもいますか。
お父さん、お母さんは 元気だとおもいますか。
いま 寒いですか。 昨日はどうでしたか。
*「~と思います」を導入するのは なぜか。 話の場面を増やし、理解・練習をしやすくする。
学習者にとって むずかしい文型ではない。
*マンツーマン指導で行き詰ったら、深追いしない。 学習者に 「自分はできない」と
思わせないことが大切。
例: 「あたたかかった」 「あたたかくなかった」など、「た」を 何度言ったか
分からなくなる。 つまずいたら さらっとやって先に進み、また戻ってもよい。
*12 課で 「~と思います」を導入するのは、学習者に普通形が入っている前提。
まず話すことより、型を覚えることが大切だが、学習者にあわせて。
*プリントの穴埋めなどの練習が必要。
3.4. 比較――例をたくさん示して教えると 覚えやすい。
例: 新幹線と 飛行機と どちらが速いですか。
カタカナと ひらがなと どちらが難しいですか。 (学習者の多くはカタカナが苦手)
紅茶は コーヒーより カフェインが多いです。
ウイスキーは ビールより アルコールが強いです。
中国は 日本より ひろいです。
チョモランマは 富士山より 高いです。
朝です。 遅刻しそうです。 電車と タクシーと どちらが早いですか。
6. 最上級―― 絶対一つしかない。
例: ~が 一番好き。
*勉強中(授業は普通、1時間半)、学生が飽きて来ると 貧乏ゆすりする。
気分変えに前に出て 黒板(ボード)に何か書いてもらうのもよい。
特にアメリカ人の学生は 生き生きする。(ピンクのチョークが珍しい
[3時限目]
62
会話 本冊 P.97 参照 (本冊 P.89、11 課の会話の欄も参照)
日常的な挨拶
行って いらっしゃい。 (見送るとき)
行って まいります。
(出かけるとき)
ただいま。
(帰ったとき)
どうも すみません。
(お礼)
「ありがとう」 でよいものを、「すみません」で済ませるのは どうか?
ありがとうの方が 丁寧に謝意を表せる。
どうでしたか。
(様子・感想をたずねる言い方)
「いかがでしたか」 の方が丁寧。
ええ。
「はい」 の会話での言い方。 「はい」の方が丁寧であることは絶対に
教える必要がある。 会話の試験などでは、教員に対しては 「はい」。
(本冊 P.105、13 課の 会話 にも出てくる)
このテキスト(本冊・解説書)の 会話 では、かなりくだけた言い方を取り上げているが
目上の人と話す時と、友達同士で話しをする場合は 言い方が違うことも多い。
まず基本的な 丁寧な表現を押さえることが大切。 “刷り込み” に注意。
~じゃありません―― ~ではありません
~んです
――― なのです
ええ
――― はい
ちゃんと
――― きちんと
やっぱり
――― やはり
ぼく
――― わたし (私の方が丁寧)
13 課 テキスト P.146~ 参照
1. わたしは ~~ が欲しいです。
手に入れたいと思うものや したいことが言える。
___部は この時点では名詞だけ。
2. わたしは てんぷらを 食べたいです。
「が」でもよい。 「が」は てんぷらを強調している。
否定形(ナイ形ではない)
食べたくないです。 食べたくありません。 どちらも可。
3. わたしは フランスへ 料理を習いに 行きます。
例: 会社へ
仕事(し)に 行きます。
注: 「~しに」の 「し」は入ってもよい。
デパートへ 買い物(し)に 行きます。
学校へ
勉強(し)に 行きます。
学校へ
勉強(し)に 来ます。 (行く・来る、の復習)
*絵カードを用意すると 理解しやすい。
63
カフェへ コーヒーを 飲みに行きます。
「のみます」の ます を取って、「に行きます」 をつける。
銀行へ お金を 出しにいきます。
「だします」の ます を取って、「に行きます」 をつける。
*Q&Aの例
Q: ~さんは 昨日 どこへ行きましたか。
A: ___へ 行きました。
Q: ___へ 何をしに 行きましたか。
A: わたしは ___へ ___をしに 行きました。
*学習者に合った場面を導入する。 できるだけ フルセンテンスで答えるように指導。
間違いは その都度 直す。
○ 食事をしに いきます。
× 食事を食べに いきます。
○ 買い物に 行きました。
× 卵を 買い物に 行きました。
会話 本冊 P.105 参照
昼ごはんを食べに 行きませんか。
じゃ、~~へ 行きましょう。
*誘いの言い方。 教科書によっては 別に項目を設けているものもある。
「~ましょうか。」は 14 課で出てくる。
14課 テキストP.154~ 参照
動詞の テ形 (テフォーム、テFとも表記する)が出てくる。
簡単な依願、指示、申し出ができ、またそれに答えることができる。
今、何をしているかが言える。
動詞の種類(グループ分け)、テ形とは何か。
先に本冊 P.116 の練習のページを見せるとよい。
動詞の種類
Ⅰグループ
(国文法の 5 段活用動詞)
Ⅱグループ
(国文法の 上一段、下一段動詞)
Ⅲグループ
(国文法の カ変・サ変動詞)
*基本的な動詞は 繰り返し練習して、覚えたほうがよい。
・先生が マス形を言う―→ 学習者が テ形をいう。
・絵カード(動詞カー)を用いる。
64
・中級の学習者でも、テ形をきちんと使える人は少ない。
例: 「行く」 のテ形は 「行って」。 「行て」 と書く学生がいる。
・教師は テ形を 日常からよく使っている。
例: 読んでください。 書いてください。 やめてください。
テキストの解説 1、2、3 は、1、3、2 の順で教えた方がよい。
3.
ミラーさんは 今 電話をかけています。 (現在進行形)
歩きます (これから歩く)
歩いています (今、歩いている) ――― 教師が歩いて見せる。
歩きました
(過去に歩いた。)
DVDを見ながら 「今、何をしていますか。」と聞いてみる。
テキストなどの イラストを示しながら、「今、何をしていますか。」と聞く。
*「~ています」の型は難しいが、その概念は それほど難しくない。
2. 「窓を開けましょうか。」
申し出、提示の表現。 「開けますか。」より丁寧。 さらっと教えればよい。
*文型の比重(重要度)は、どれも同じというわけではない。
学習者の理解度・必要度によって、重点的に教える個所と、軽く流す個所があってよい。
会話 本冊 P.115 参照
まっすぐ行ってください。 曲がってください。 右。 左。「はい」と 「いいえ」の使い分け。
注: ・動詞のなかで、「借りました」 と 「貸しました」 に注意すること。
中国語では 同じ動詞なので、間違いやすい。
・現在進行形は 中国語でもある。 現在進行法。
65
『うらやす日本語指導力向上講座』 第8回
日時: 2009 年 10 月 25 日
講師: 多仁 安代先生
[1時限目]
先週 教室で回覧した動詞の変化表(プレインフォームの変化)は コピーして渡せない。
以前 もう一人の教師と一緒に作成したもので、その人の許可がないとコピー配布はできない。
著作権に準ずるもので、ご了解願いたい。
大学でも、自分が作った資料を 在職中は周囲と共有するが、やめる際には引き上げてしまう
職員もある。 共同で作る試験問題等は 大学に帰属する。
12課の プレインフォームの説明の際、普通形に 「~と思う」をつけて教えると解りやすいと話し
たが、注意点を一つ付け加える。 後ろ姿の絵(写真)を見せて、「男だと思いますか、女だと思いま
すか」と質問し、前側の絵(写真)を示し、その意外性で印象付けた。 しかし最近は性別を扱うのは、
微妙な問題に触れることもあり、避けた方がよい。
15課 テ形を使って 許可を求める言い方、禁止事項を理解する。
1. ~ても いいです
――許可を表す
~てもいいですか ――許可を求める
学習者に合った例文を用いて示す。
Q: ここで たばこを 吸ってもいいですか。
A1: はい、たばこを 吸ってもいいです
A2: いいえ、たばこを 吸ってはいけません。
(禁止の場合は 「は」を用いる)
Q: ここで 水を 飲んでもいいですか。
A1: はい、ここで 水を飲んでも いいです。
A2: いいえ、ここで 水を飲んでは いけません。
Q: 子供が お酒をのんでも いいですか。
(特に決まっていない国もあるので注意)
Q: 信号が赤の時 渡ってもいいですか。
Q: 電車の中で 携帯電話で話しても いいですか。
(国によってルール―が違う)
飲食禁止、禁煙、私語禁止(大学?)、立ち入り禁止、遊泳禁止等、よく目にする漢字は、読んで
意味が解るように教える。 書くことは不要という学習者でも、ある程度の漢字は書かせる。
あるいはルビを振って読ませる。 目が慣れることによって、意味を理解しやすくなる。
2. ~てもいいですか。
66
Q: お茶碗を 持っても いいですか。
A: いいえ、お茶碗を 持っては いけません。
(持ち上げてはいけない習慣の国もある)
[質問] この課の1,2の例文における 助詞の扱いについて。
「たばこを 吸っても いいですか」
の文のうち、「も」 はなくてもいいのではないか。
助詞はできるだけ省かない。 一般的には 入れるように教える。 この例文の場合、
「も」がなくても間違いではないが、書く場合はあった方がよい。 学習者は 助詞を間違えたり
カットする傾向にあるので、教える側が分を提示する場合は 助詞もきちんと書く。
否定表現の「吸っては いけません。」
の「は」 は絶対必要で、省くことはできない。
「吸っても いいですか」 の 「も」を省いて覚えると、否定の場合の 「は」が
なかなか出てこない。
最近は 日本人でも助詞を間違えて使っていることが目立つ。
例: × まんじゅうが 売っています。
○ まんじゅうが 売られています。
○ まんじゅうを 売っています。
テ形が入ると、日常的な会話の発展には面白い。 テキストの例文にはないが、この課辺りで
一緒に教えた方がよい表現。
Q: ~を 知っていますか。
A1: はい、知っています。
A2: いいえ 知りません。
注: 「いいえ、知っていません。」と言ってしまうことが多い。
3. サントスさんはパソコンを持っています (テキストP.163~ 参照)
動詞のテ形 + います
(この文形で、14 課では、ある動作が継続中であることを表した)
・動詞の性質により、動作が行われた結果の状態が残っていることを表す。
・動詞の性質により、習慣的な行為や長期にわたる動作の繰り返しを表す。
身分・職業・仕事の内容など。
例: ○ 私の父は 中学校で 数学を教えています。
× 私は 学生をしています。
(○ 私は学生です)
× 私は 主婦をしています。
(○ 私は主婦です)
○ 父は 銀行員です。
67
故意に こう言うことはある。
16課 日常生活の行動を 順を追って話せる。
テ形がきちんと入っていないと、いつまでも正しく使えない。
1. 「~て、~て、~。」
の形
一日のことを 一つの文につなぐ
コーヒーをのみました
学校へ行きました
テニスをしました
テレビを観ました
寝ました
―→ コーヒーを飲んで、学校へ行って、テニスをしました。
「~て、~て、」 とつなぐのは、2 つぐらいが適当。 多すぎるのもおかしい。
テ形が解っていると、それほど難しい使い方ではない。
2. 「て + から、~。」
時系列に並べる言い方
Q: これ、どうするの。
A: 今の この仕事が終わってからやります。
質問に対する答えでよく使う
3. 大阪は 食べ物がおいしいです。
「~は~が~。」
は・が構文 (は・が文)という
像は 鼻が長い。
キリンは 首が長い。
動物で示すと解りやすい。 人間は注意。
私の故郷は ~が ~です。
初級の終わりくらいには、この程度は教える。日本人が思うほど難しくはない。
一つの文の中では、助詞が重ならない方がよい。
4. パソコンは軽くて、便利です。
形容詞を 二つ くっつけた言い方。
形容詞を 二つ並べるパターンは 4つある。
ⅰ) イ形容詞+イ形容詞
例: 明るくて 広いです
ⅱ) イ形容詞+ナ形容詞
例: 軽くて 便利です
Ⅲ) ナ形用詞+イ形容詞
例: 親切で きれいです
ⅳ) ナ形用紙+ナ形容詞
例: 丈夫で 軽いです
形容詞文を2つ以上つなぐ時
イ形容詞
「い」 を取って ―→ 「くて」をつける
ナ形容詞
「な」 を取って ―→ 「で」をつける
* 文を見て、その中の形容詞が イ形容詞か ナ形容詞か見分ける。
68
* 形容詞の使い方がきちんとしていない学習者に対しても、ゆっくり
「これは イ形容詞? ナ形容詞?」 ときいていくと かなり分かる。
* まず、習った形容詞を使って文を作る。 それから広げるのはOK。
17課
ナイ形――規則・禁止事項が理解できる。
しなければならないこと、しなくてもいいことが確認できる。
本冊 P.140、練習A 参照
マス形
ナイ形
辞書形
動詞Ⅰグループ
手紙を
かきます
かかない
かく
動詞Ⅱグループ
ご飯を
たべます
たべない
たべる
動詞Ⅲグループ
学校へ
きます
こない
くる
散歩を
します
しない
する
[2時限目]
1. 動詞のナイ形+ないでください
テキスト例文: 写真を撮らないでください。
学習者に身近な例文を たくさん作る。
例: お酒を 飲まないでください。
会社に行かないとき 何をしますか。
学校へ行かないとき 何をしますか。
雨が降らないとき なにをしますか。
2,3. テキスト P.177~189 参照
ⅰ) なければなりません (義務)
「なければいけません」 も提示する必要ある。 細かい違いの説明はいらない。
(「ないといけません」 は、この課では触れない。)
ⅱ) なくてもいいですか (許可)
ⅰ、ⅱは一緒に教えると理解しやすいが、文型が長くて似ているので、学習者は
覚えるだけでも大変。 しっかり教えること。
例: Q: 明日は 会社へ行かなければなりませんか。
A1: はい、______ 行かなければなりません。 (ほとんど質問文のまま)
A2: いいえ、_____ 行かなくてもいいです。
Q: 燃えるものは いつ出さなければなりませんか。
Q: お金を拾いました。 どうしなければなりませんか。
A: 何もしなくてもいいです。
(どうもしなくてもよい国・地域もある)
69
例: 落としたことを届けた人は、拾った人に ○○%お礼をしなければなりません。
(一応 法律で決まっている)
例: インフルエンザにかかったら、学校へ行ってはいけません。
『サザエさん』の漫画を教材に使おうとしたが、作者・長谷川町子の許可がおりなかった。
『サザエさん』 はよく(無断で)用いられたので、作者は嫌気がさした? そんなこともある。
4.レポートは いつまでに出さなければなりませんか。
家賃は いつまでに払わなければなりませんか。
会話
本冊 P.139 参照
医者との会話――病状の簡単な説明ができる。 医者の簡単な指示が理解できる。
* 旅行と 出張の違いは何ですか。
* この項目は、次週 改めて触れる予定。
18 課 できること、できないこと、趣味について簡単に話せる。
1. ミラーさんは 日本語が できます。
運転が、ダンスが…など、この課では名詞のみ。
文型が理解できれば 難しくない。
2. ミラーさんは 漢字を読むことができます。
動詞の辞書形+ことができます。
例: 泳ぐことが~、書くことが~、電話をかけることが~、納豆を食べることが~ など
絵カードを使うと 解りやすい。
* 「こと」 は準体助詞。 活用語の連体形などについて、その活用語を名詞化する。
他に 「の」 などがある。
* 普通は、この文型の後に 可能の動詞が出てくることが多いが、この教科書では
Ⅱで出てくる。 例: 読めます、泳げます など。
3. 私の趣味は 映画を見ることです。
「私の趣味は 映画です」 という学生が かなりいる。
* 自分のことについて話すことができる。
* 『自己紹介』 という言葉そのものも重要。 学生は面接などが多く、この語を知らないと
「「自己紹介してください。」 と言われても 意味が解らず、何もできない。
4. 寝る前に、日記を書きます。
* 「~の前に、~の後で」 を 一緒にセットで教えると理解しやすい。
学習者の理解度にもよる。
70
例: 日本に来る前に 日本語を勉強しましたか。
教室に来る前に 勉強しましたか。
「来ない前に~」 という学習者もいる。 日本人でも けっこういる。
* このレベルまで来ると、表現する言葉に 話し手の日本語感が影響してくる。
例: 電話で 「~さん、おりますか?」
例: TVニュースで 「あの オウム事件を彷彿させます」 という表現があった。
“彷彿” という言葉は元々いいイメージがある。 「事件を思い起こさせます」の
方が適しているのではないか。
例: 目の下のクマは、 クマか クマか。
19課
経験したことについて話せる。 物事や状況の変化が簡単に言える。
1. 相撲を見たことがあります。
Q: ~を見たことがありますか。
A1: はい、_____ があります。
A2: いいえ、____ は ありません。
否定の時は 「は」を用いる。
身近な例文をたくさん提示する。
例: 雪を見たことがありますか。
パンダを見たことがありますか。
日本酒を飲んだことがありますか。
富士山を見たことがありますか。
いいえ、富士山を見たことはありません。
(中国の人にとっては、日本の富士山は憧れの山。 重要な意味を持つ。)
P.191、導入、例2 参照
T: 富士山を見たことが あります。 でも登ったことが ありません。
* 一般的には、否定の場合は 「は」。 「が」では違和感がある。
もし、この教室で違和感を持つ人が 一定の割合いたら、出版社に問い合わせてもいい。
出版社は 検討の上 改訂されることもある。
[3時限目]
2. 「~たり、~たり」
・
同じような動作の反復
出たり入ったり、 行ったり来たり、
上ったり下りたり、 つけたり消したり など
・
複数の動作(行為)の中から、代表的なものを2,3選んで述べる。(普通は二つ)
71
A:そうじをしました
B:買い物をしました
D:本を読みました
E:音楽を聴きました
C:テレビをみました
F:ネットで調べました
ある一日の生活中から、代表的な二つの動作を選んで話す。
Bたり Dたり―― 買い物をしたり、本を読んだり しました。
Aたり、Fたり―― そうじをしたり、ネットで調べたり しました。
* 文型としては 学生が喜んで文を作る。 見たり、読んだり、遊んだり……
[質問]
「タ形」 という言葉は、国文法ではなく、日本語文法で決めた言葉なのか。
特に日本語教育で使われる用語。 テ形、辞書形などと並んで、必須の言葉。
意志・希望の言い方について
ⅰ)~たいと思います(希望) ―― 13 課で既出
ⅱ)~ようと思います。(意志) ―― 意志F,意向形 (書く→書こう)
ⅲ)~つもりです(計画)
(ⅰ―→ⅲに向かうほど、意志が強くなる。)
3. これからだんだん暑くなります
イ形容詞――ボードに極小さい文字を書く
教
師: 読めますか。
学習者: (小さくて)読めません。
教
師: では おおきく 書きます。
「おおきい」の 「い」を取って、「く」をつける
ナ形容詞――図書館では しずかに します。
「しずかな」の 「な」を取って、「に」をつける
* まず形容姿の変化を覚えてから、数を広げる。
* 「だんだん」(副詞)は 少しずつの意味。 「どんどん」は 大きく変わる様子。
会話
場面・状況の確認程度でよい。
からだに よくないですよ。
あまり~ない (12 課で既習)
(ナイ形の確認。 「よくありません」 でもよい。)
「あまり」がくると、必ず 「~ない」がくる。
初級はシンプルに、基本をじっくり学ぶこと。 あまり多くのっ情報は与えない方がよい。
学習者は先に進みたがるが、語彙などは後でも増やせる。
20課
ここまでの まとめの課である。
12 課で普通形は出たが、その時点でナイ形は まだ出ていなかった。
12 課では触るだけで、20 課で一緒にじっくりやってもよい。
72
ない
/なかった
いない と思います
/いなかった と思います
* 普通体は 「~と思います」をつけると理解しやすい。 (12 課で既習)
理由を表す 「ので」――雨なので、 休みだったので
「から」――雨だから、 雨ですから、 雨だったから
「ので」 の前は普通形
「から」 の前も普通形
『です・ます体』(丁寧体) と 『である体』(普通体)
* 一つの文の中で、両方が混じると おかしい。
A: です/だ
B: ます/である
* 作文ではA,Bどちらでもよいが、論文などでは Bの「のだ。である」で
統一しなければならない。
* どちらでも使えるように、変えることができるように指導する。
書きませんでした ⇔ 書かなかった
* 普通の言い方も 丁寧な言い方も、どちらでも使えるように教える。
きれいじゃ ありませんでした ⇔ きれいでは ありませんでした
目上の相手には、「そうではありません」 「そうではございません」 と言う。
「そうじゃありません」 ではしつれいになる。
* この教科書ではコミュニケーション重視。 家族、友だち、目上の人との対話、
特に面接などでは 注意するよう指導。 「じゃ」が悪いのではなく、「では」と関連付けて
教えることが必要である。 初級から きちんと教えることが必要。
* 12 課で示した普通体が、20 課で よりバリエーションが増え 豊かな表現ができる。
[受講者から]
きちんとした話し方とは何か。
* 女性の学習者と交換日記をしているボランティアから。 同居している男性の言葉を
覚えてしまうので、意識して普通の言い方を教える。
* かたい、基本的な言い回しが すべての土台となる。 会社など、外に出てからも
この土台が基本。 「通じればよい」 だけのレベルから、日本の社会で生きるための
日本語を身につけさせるよう、指導。
* 会話体の勉強は 後回しでよい。
* 外国人から 馴れ馴れしい言葉で話しかけられると、感じが悪い。 教える方が
丁寧に、制限された言葉で話すこと。 これが見本となるように。
時間いっぱい、いろいろな質問・ご意見が出ました。
73
『うらやす日本語指導力向上講座』 第 9 回
日時: 2009 年 11 月 8 日
講師: 多仁 安代先生
配布資料: 計 2 枚
[1時限目]
2枚のプリントについて。
①
病気の際、症状を説明するために必要な言葉や 病院で使う言葉。
② よその家を訪問する際のマナーや言葉。 特に 7の「次に会った時」、に注意。
以前に合い、世話になったり 何か感謝を示すようなことがあった場合、次に会った時にも必
ず「先日はどうもありがとうございました。」とお礼を言う。 これは日本の伝統的な習慣で、他
の国にはあまり例をみない。学習者には、日本人は前回のお礼を
期待する、という点を しっかり教えておいた方がよい。
度々注意する事項
・ 男性でフォーマルな場合も「ぼく」という学習者(特に韓国)が多い。注意しても
なかなか直らない。
・ 自分のことを 「あたし」という学生もいる。 日本に来てからではなく、韓国のどこかで身に
つけたらしい。 この方は、からかわれたりするので直りやすい。
留学生の作文朗読
韓国系アメリカ人2世で、現在はアメリカの大学に在籍し、交換留学で日本に来た学生の作文。
日本語が専門ではなく、来日した時は中級で、その後は 週 3 回程度 教科書を使って指導。
「文集を出そう」 という話になり、きちんと章を立てて (文章を、全体でいくつかの大きな段落に
分けること) 書くことにした。
タイトルは 『日本人の天皇』。 各章は 1)日本の天皇
2)天皇の歴史:役割の変化
3)今の天皇:力がない天皇
4)『菊と刀』
5)結論 とした。
その学生の作文を 多仁先生が朗読 ―――――。
まず 『菊と刀』(ルース・ベネディクト著) を読むことを勧めた。 学生は その時点では、日本語
ではきついので英語で読んだ。 天皇については、日本人を理解する上で必要な知識で、外国人の
方が関心が高い。 作文では 天皇の歴史や役割、日本人は天皇の何が必要かなど、よく書かれて
いる。
ほとんど学生自身で書いたもので、教師は表現のちょっとしたニュアンスを直しただけ。
修了式では、この作文を出来るだけ覚えて、メモをみる程度でスピーチした。
日本語学科でもない学生が これだけきちんとした日本語が書けるのは、いかに基礎がしっかり
74
しているか、いかに初級の教育が大切か を物語っている。 この学生はアメリカで 『げんき』を
教科書として勉強した。 大変シンプルで 余分の情報を加えず、骨組みをしっかり教える
教科書だと思う。
学生が伸びるのは、順に
① 本国で初級をきちんと身につけ、日本で磨きをかけた場合。
②
ほとんど何も知らずに日本に来て、日本語学校や大学等の別科で勉強した場合。
③ 母国である程度勉強し、まだ基礎ができていないのに かなりできると思っている場合。
*とにかく、テF(テ形)、ナイF(ナイ形)を しっかり身につけさせることが重要。
21課
P.204~参照
簡単な意見・感想・予想が言える。 人の発言を他の人に伝えることができる。
1. 例文: あした雨が降ると 思います。
降ると 思いますか。
降らないと 思います。
降らないと 思いますか。
* 肯定・否定の質問を学習者に向けてQ&A。 (それぞれの学習者に合わせて)
実際に受講者に、指導者と学習者になってもらい、Q&A。 学習者らしい間違いも提示。
例: Q: あしたは 晴れると思いますか。
A: 晴れると思います。
Q: はい、あしたは……
A: はい、あしたは 晴れると思います。 (はい、いいえを付け、フルセンテンスで)
例: Q: 日曜日には 洗濯をしますか。
A: しませんと思います。
Q: 洗濯を しないと思います。
(違いを板書すると明確になる)
A: しないと思います。
Q: 私は 日曜日には……
A: 私は 日曜日には 洗濯をしないと思います。
例: Q: 日本人は まじめだと思いますか。
A: はい、まじめでないと思います。
Q: いいえ、まじめ……
(はい・いいえの違いを明確にし、正しい答えを誘
導する)
A: いいえ、まじめじゃないと思います。 (この段階で 「~じゃない」を 「ではない」と
直すか。学習者のレベル、ニーズに合わせて)
75
* 11 月 29 日からのシミュレーションも、このように受講者同士が先生役・生徒役に
なり、教える形式の授業。
例: Q: 仕事と 家族と どちらが大切だと思いますか。
A: 仕事だと思います。
(「だ」をいれること)
例: Q: 11 月 27 日にボクシングの試合があります。 チャンピオンが勝つと思いますか。
A: もう一度 お願いします。 (「もう一度言ってください」など よく聞き取れなかった
場合の、聞き返す言い方も大切)
Q: 11 月 27 日にボクシングの試合があります。 チャンピオンが勝つと思いますか。
A: 勝つと思います。
・「勝ったと思います」 「勝つと思いました」など 時制のちがう答えも多く出てくる。
時間軸の図に 日付を描いてよく説明する。
現在
11 月 28 日
過去←―――――・―――――・―――――→未来
11 月 28 日はまだ先のこと(未来)なので 「勝つと思います」が正しい。
「首相は来月 アメリカへ行くと思います。」 このぐらいの短い文を、教室内で
伝言ゲームにして、覚えさせるとよい。 少ない人数で。
教師―→学習者1―→学習者2―→教師
2. テキスト P.207 参照
これだけでも面白い。
首相は来月アメリカへ行くと言いました。
本冊 P.172、例文6参照
例文6: 食事のまえに、お祈りをしますか。
…いいえ、しませんが、「いただきます」 と言います。
*「~~のとき、何と言いますか。」 「~~と言います。」
例文7: 7 月に京都でお祭りがあるでしょう?
* 相手に対する事実の確認や 話し手の発言に同意することを期待する場合に
使われる表現。 イントネーションは(↗)。
* 「~でしょう」 は普通形に接続する。
* 名詞文と、ナ形容姿の普通形の場合は 「だ」が落ちる。(P.209)
* 文型としては扱いはかなり自由にできる。
例: 日本の地下鉄は便利でしょう。
日本の夏は暑いでしょう。 赤道のそばより暑いそうですね。
76
会話
22課
ビールを 飲みませんか。
(ビールがいい、ビールを飲みたい)
ビールでも 飲みませんか。
(ビールでなくともよい、何か飲み物を飲みたい)
例: メシでも食いませんか。
(よくある言い方)
P.211~参照
連体修飾語を使って、人や物のより詳しい描写、説明ができる。
連体修飾とは 名詞を修飾するという意味だが、学習者にはこの言葉の説明は不要。
テキストの例文:
1. 例文: これは ミラーさんが作ったケーキです。
パターン: パーティに ・行く人は だれですか。
・行かない人は ~
・行った人は ~
・行かなかった人は ~
・~ている人は ~
2. 例文: あそこにいる人は ミラーさんです。
3. 例文: きのう習ったことばを 忘れました。
4. 例文: 広い庭があるうちが欲しいです。
5. 例文: 買い物に行く時間がありません。
学習者のレベルやニーズに合わせた質問をする
例: 誰が作った料理が好きですか。
どこへ行くバスに乗りますか。
誰が描いた絵が好きですか。
きのうの試合はどちらが勝ちましたか。 (分からなければ 「きのうあった試合」と説明)
MVPをもらった人は誰ですか。
優勝したチームはどこですか。
文化勲章をもらった人は誰ですか。
きのうデパートで買ったのは何ですか。
A: きのう買ったのは かばんです。
[2時限目]
会話
本冊P.181 参照
ちょっと駅から遠いですね。
そうですね。
* 「ね」 をどう教えるか。
終助詞の 「ね」は感情の共有、「よ」は話者一人の思い。
どちらも無くともよい。 書くときは入れない。 会話でも入れ過ぎるとうるさい。
77
* 本冊 P.189 の、マス形―→普通形を導く表を見ておくこと。
P.170(20 課)にも 同様の表がある。
23課
P.217~参照
簡単な機械の使い方や、道順などが聞いてわかる。
1. 例文: 図書館で本を借りるとき、カードが要ります。
「~~のとき、どうしますか」 文型としては難しくない。
例: DVDを借りるとき 何がいりますか。
二日酔いのとき どうしますか。
遅刻しそうなとき どうしますか。
遅刻したとき どうしますか。
(上の 「~しそうなとき」と比較)
海外を旅行するとき パスポートが要りますか。
A: はい、海外を旅行するとき パスポートが要ります。 (常にフルセンテンスで)
受講者同士のQ&A
Q: 病気になった時 どうしますか。
A1: 医者にいきます。 (「お医者さん」と言う方が丁寧であることを教える)―→
A2: お医者さんに行きます。
Q: ○○さんは本を読むとき どうしますか。
A1: ?……
(多仁先生の指導が入る)
Q: 見えますか。 読むことができますか。
(導入。 何を質問しているかを明示)
A2: 読むことはできません。
Q: 字を読むときには どうしますか。
A3: メガネをかけます。 字を読むときは メガネをかけます。
*基本は、既習の文型・語彙で 学習者が興味を持つQ&Aを進める。
2. 例文: このボタンを押すと、お釣りがでます。
「動詞の辞書形+と、~~」
ある事柄が起こったり、ある動作が行われると必ず
別の事柄や動作が続いて起こることを表す文型。
大切な文型。 類似の「たら」「れば」「ても」は 25 課。
例: 春になると 暖かくなります。
お金を入れると 切符が出ます。
お金を入れると ジュースが出ます。 (学習者は 自動販売機を知っている)
エアコンをつけると 暖かくなります。
運動すると 汗がでます。
78
甘いものをたくさん食べると 体重がふえます。
まっすぐ行くと ○○があります。
(道案内)
* 「~ないと」も 一緒に教えたる。
(注)テキストP.221 では「~ないと、~」はこの課では練習しない、としているが、
比較しながら一緒に教えた方がよい。
例: 勉強しないと ~~
ニュースを見ないと ~~
ケータイ電話がないと ~~
* 「~と」は 動詞・形容詞・名詞のいずれにもつく。
・動
詞
春になると 花がさきます。
・イ形容詞
駅に近いと 便利です。
・ナ形容詞
魚は新鮮だと 刺身で食べられます。
・名
いい天気だと 富士山が見えます。
詞
*Q&Aだけではなく、前件・後件を作って埋める練習をすることもできる。
例: (機械の)このつまみを回すと ________。
会話
本冊P.191 参照
場面・状況の理解・確認
例文: あのう、そちらまで どうやって行きますか。
「そちら」 は丁寧な言い方。 敬語表現が出るたびに、「ちゃんと―→きちんと」、
「~んです―→~のです」 の注意を繰り返すことが大切。
24課
P.224~参照
・授受表現。 やり・もらい表現ともいう。
・「あげます/もらいます/くれます」 の動詞が適切に使い分けられる。
・7 課で 「あげます/もらいます」が出てきたが、使い方がより複雑になっている。
・学習者には 非常にややこしい項目の一つなので注意。
・「くれます」 は混乱するので 入れない方がよい、とする人もいる。
・「あげる/もらう」が解っていれば、「くれる」も すんなり理解できることもある。
1. P.224
佐藤さんは わたしに クリスマスカードを くれました。
わたしは 佐藤さんに クリスマスカードを もらいました。
* 〈人〉は 〈わたし〉に ~を くれます。
* 他の人が 「話し手」に物を与える場合は、「くれます」を用いる。
79
例: 日本に来るとき、両親は何をくれましたか。
ご主人は誕生日に 何をくれましたか。
お年玉をくれました。
○○をくれました。
(これもOK。 間違っていなければよしとする)
母は カードを贈ってくれました。
(動詞のテ形+くれました)
きれいな服をかってくれました。
友だちは 本を貸してくれました。
先輩は何をしてくれましたか。
2.
P.226 わたしは木村さんに傘を貸してあげました。
* 〈わたし〉は 〈人〉に ~を〈動詞のテ形〉+あげます。
* 「動詞のテ形+あげます」は、話し手が 他の人のために何かの行為をすることを表す。
* 目上の人や あまり親しくない人に対しては、押しつけがましい感じで失礼になる。
例: ○○さんは □□さんに~を教えてあげました。 (第 3 者の場合はOKのこともある)
□□さんは ○○さんに~~を教えてもらいました。 (OK)
ご主人の誕生日に 何をしてあげますか。
(仮定を作って Q&A)
友だちが結婚します。 何をしてあげますか。
道がわからない人がいます。 何をしてあげますか。
×友だちに 本を買ってあげました。
(押しつけがましい)
×荷物を 持って差しあげましょう。
(敬語ではあるが、押しつけがましい。
「お持ちしましょう」 の方がよい)
×先生に 教えて差しあげました。 (敬語ではあるが 目上の人にはおかしい)
* 7課では 話し手が主語であったが、その段階で学習者が精いっぱいのこともある。
その場合は 場面を考え、例文で教える。
例: 先生、やってあげます、歌ってあげます、等 ――敬語の範疇だと思い
理解できていたらよしとする。
* P.226 以降は、学習者のレベルによる。 24 課の学習者なら ここまでの理解でも
仕方がない。 途中で、文法的に間違っていなければ よしとする。
* その場合 Q&Aで慣れてもらう。
会話
場面・状況の理解。
「手伝う」 という言葉の理解が大切。 あくまでも メインにやる人がいて、それを助ける、補う
という意味。 五分五分ではない。
80
25課
P.231~参照
ある事柄を仮定して、その条件の下での判断・決定などが言える。
「と・ば・たら」の表現。 いろいろな条件において、どの表現を用いるか。
1.
雨が降ったら 出かけません
2.
大学を出たら すぐ働きます
★ 必然性
○ スイッチを押すと 動きます
○ スイッチを押せば 動きます
○ スイッチを押したら 動きます
★ 仮定法
× もし雨が降ると わたしは行きません
○ もし雨が降れば わたしは行きません
○ もし雨が降ったら わたしは行きません
★ 願 望
× 山田さんに会うと お礼を言ってください
× 山田さんに会えば お礼を言ってください
○ 山田さんに会ったら お礼を言ってください
★ 命 令
× 先生に会うと 挨拶しなさい
× 先生に会えば 挨拶しなさい
○ 先生に会ったら 挨拶しなさい
★ 禁 止
× 授業が始まると ○○語を話し手はいけません
× 授業が始まれば ○○語を話し手はいけません
○ 授業が始まったら ○○語を話し手はいけません
★ 意 志
× 京都へ行くと おみやげを買おう
× 京都へ行けば おみやげを買おう
○ 京都へ行ったら おみやげを買おう
★ 意外・驚き
× 銀行へ行くと 先生に会った
× 銀行へ行けば 先生に会った
○ 銀行へ行ったら 先生に会った
* この表は、学習者には教える必要はない。
* 「たら」 は、どの場合もOK。 迷ったら「たら」!
* 「なら」 もある。
例: 中国へ行くなら ○○を持って行った方がいいですよ。
81
国へ帰るなら 電話をしてください。
(この国での話)
国へ帰ったら 電話をしてください。
(それぞれの国)
[3時限目]
いろいろな例文で練習
例: 地震が来たら どうしますか。
(机の下にもぐるという発想は ない学習者が多い)
男(女)だったら どうしますか。
100 万円あったら どうしますか。
水がなかったら どうしますか。
切符がなかったら どうしますか。
お金がなかったら どうしますか。
(「友だちに借ります」 が出てくればOK)
受講者にQ&Aを考えてもらう
例: Q: 教科書を忘れたら どうしますか。
A: 家に帰りました。
(よくある答え)
指導: これからのことを聞いているので 「教科書を忘れたら 家に帰ります」と教える。
例: Q: もうじき 12 月です。 ボーナスをたくさんもらったら どうしますか。
A: たくさん使いました。
指導: 今は 11 月。 ボーナスは 12 月で、先のことなので 「たくさん使います」と指導。
3. 雨が降っても、出かけます (P.253 参照)
* 「~たら、~」とは反対。 ある条件下で、期待される動作・事柄が起こらない場合の表現。
* 学習者は、文型としての理解はすぐできる。
例: 東京ドームは、雨が降っても野球ができます。
神宮球場は、雨が降ったら野球ができません。
病気だったら 学校を休みます。
病気でも 学校へ行きます。
Q: どうしてですか。
A: 試験がありますから。
1級の試験は 日本人でも難しいです。
運動しても やせません。
子供でも分かります。
お酒を飲んだら 顔が赤くなりますか。
お酒を飲んでも 顔が赤くなりません。
82
朝6時になっても 明るくありません。
水を飲んだら 太りますか。
水を飲んでも 太りません。
*具体的なもので教える。 できるだけ抽象的なものを扱わない。 例えば 「悲しい」など
Q: 寒くなったら どうしますか。――「ても」は なかなか返ってこない。
Q: 教室で暑くなったら どうしますか。
A: 窓をあけます。
Q: 教室で暑くなったら 水を飲みますか。
A: はい、教室で暑くなったら 水を飲みます。
Q: 昼食の前におなかがすいてしまったら どうしますか。 お菓子を食べますか。
「~てしまう」は未習。 出ることもある。理解できればOK。
A: いいえ、昼食のまえにおなかがすいても お菓子を食べません。
「ても」が出ればOK
Q: 電車に乗ったら ケータイ(携帯電話)は切りますか。
A: いいえ。電車に乗ったら マナーモードにします。
教師が求める以上の答えが出ても、正しければOK。
会話
いろいろ お世話になりました―― 挨拶言葉。 それほど深い意味はないことが多い。
場面・状況の理解と確認
「転勤」 「出張」などという言葉は、知っていることが多い。
「頑張ってください。」 「頑張ります」―― あまり深い意味はないということを教える。
多仁先生の 日本語教師養成所時代の話し。
「~たら」の構文を教えることになった。 自分で 双六(すごろく)、さいころを作り
「赤が出たら 一つ進みます」 「青が出たら 二つ進みます」 「白が出たら 一回休みます」と
文を作り、教えた。
他の受講生も 各々凝っていた。 ドアの模型を作り、「ドアをあけると~~」の構文を指導。
中には かなり経験を積んだ人もいた。 経験があると 他の人のアラが見えやすい。
しかし、いざ自分がやってみると なかなか思うようにはいかないことも多い。
25課まで 一応終了。
この先の目ぼしいところ
ⅰ) 「~んです」の表現。 (『みんなの日本語 Ⅱ』、26 課)で扱う。
83
* まず 「~のです」の口語体であることを認識させること。 会話の中で使われる言い方。
* 強調、説明、言い訳する時に よく使われる。
例: Q: どうして遅刻したんですか。
A1: 朝寝坊したんです。
A2: 朝寝坊してしまったんです。
Q: 何をしているんですか。
*余談ながら――毎日新聞に 『散歩の言いわけ』というコラムがある。 赤瀬川源平が
書いている。 この 「言いわけ」 と言うタイトルに違和感を覚える。
「散歩」と 「言いわけ」は合わないような気がするが、それは
個人個人の日本語感であろう。
ⅱ) 「~ことができます」 「~できます」 の表現。
*18 課で既出だか、関連事項が出るたびに前に戻って復習することが大切。
*可能を表現する
〈動詞の辞書形+ことができます〉
例: 車を運転することができます―→ 車の運転ができます。
英語を話すことができます ―→ 英語が話せます。
*可能動詞の前の助詞は「が」
*可能表現には 「ラ抜き」言葉が多い。 ラ抜きでない、きちんとした言い方を知ってから
「ラ抜き」で言うのは、ある程度許せる。
ⅲ)「~ながら」 の表現
*複数の行為を同時にやっているが、どちらに重点があるかを明らかにすること。
例: テレビを見ながら ごはんを食べます。
ごはんを食べながら テレビを見ます。
鏡を見ながら ひげを剃ります。
ひげを剃りながら 鏡を見ます。―― これはあり得ない。
*~ながら、の後に来る方が重要である。
11 月 29 日(日)からの シミュレーションについて
・各文型の導入の練習である
・一応 文型順に進める予定。 受講者各自の担当は 他の人に言わないように。
・一人 10 分。 (短いかもしれない)
・時間が余れば 質疑応答予定。
84
『うらやす日本語指導力向上講座』 第 10 回
日時: 2009 年 11 月 15 日
講師: 多仁 安代先生
配布資料: 1 枚
[1時限目]
明海大学授業見学の件
・日時: 11 月 26 日(木)、12 月 3 日(木)、各 3 クラス。
・人数の割り振り: 教室の大きさなどの都合で調整。
・見学が決まった人は、当日の授業開始 10 分前までに その教室の前に集合。
5 課、11 課 参照
疑問詞(代名詞) 「何」の読み方について。 「なに」 か「なん」か?
5 課では手段・方法、特に交通手段をたずねる 「何」が出てくる。 理由や数量・人数・時間・
期間をたずねる「何」は、5 課では まだ出てこない。
テキストP.76、上段の【展開】の枠内参照。
枠内下部の<留意点>も参照。 交通手段を聞く場合は 「なにで」 「なんで」の両方の言い方が
可能であるが、このテキストでは後者で教える、とある。
しかし、枠内の練習例文で、「S: 何で会社へ行きますか」 「S1: 何で京都へ行きますか」と
ある。 交通手段をたずねるのに 「なん」と読ませると、普通は理由を聞いているように思う。
日本語として違和感がある。
多仁先生が出版社に電話で訊ねた結果報告。
問い合わせの 「何」の読み方について。 「~で行きましたか」という場合、助詞 「で」の前では
「なにで」よりも 「なんで」の方が言いやすいので、そう統一した、と回答あり。
実際に教える側が判断するよりない。教科書をどう料理するかは、その教科書を使う人である。
次回 (11 月 29 日)からのシミュレーションについて。
・すでに受講者に割り振った担当文型(項目)を確認。 当日 欠席者があるため、変更あり。
・文型導入の練習。 一人につき 10 分。 (各、5 分休憩)
・担当者が、何の文型を導入しようとしているか、事前に他の受講者には知らせない。
・次回終了したら、割り振り表をコピーして配布する。
・自分の担当する課(項目)より前の、既習のことは理解しているという前提。
・テキストの文例は使ってもよい。
・学習者がある程度字が読めるということと、言葉として理解できるということは別。
事前に文型を板書などしても 学習者は分からない。
・練習の場なので失敗してもよい。 あまり緊張する必要はない!
85
テキスト解説は 25 課まで一応終了。 中級へ進むと急に難しくなるのを、どうつないだらよいか。
教えておいた方がいい文型を提示する。 (主に 初級Ⅱのテキスト教科書から)
28 課 「~し、~し」 文型
話し手の、「さらに、その上」 という添加・並列の気持ちを表す。
Q: どうして そのかばんを買いましたか。
A: 色がきれいです+軽いです+丈夫です―→色がきれいし、軽いし、丈夫です。
Q: どうして日光へ行くんですか。
A: 紅葉がきれいだし、休みだし……
「~し、~し」 はできれば二つくらいまで。
「~たり、~たり」 も同様。
29 課
自動詞・他動詞――この課では自動詞がたくさん提出される。
学習者に 既習の他動詞との違いを理解させる。
自動詞 (意志がない)
他動詞 (意志がない)
・燃えるごみ―→
・燃やすごみ
・電気がついています
・電気がつけてあります
・へそくりが入っている
・へそくりが入れてある
・ポケットにゴミが入っている
・ポケットにパスポートが入れてある
・月が出ている、星が出ている
(自)もえる
(最近の変化した)
(自然現象はすべて自動詞で表す)
(他)もやす
つく
つける
開く(あく)
開ける(あける)
止まる
止める
消える
消す
自動詞・他動詞の概念を教えることが大切。
例
Q: この部屋には 電気がついていましたか?
Q: 今は どうですか?
A: 消えていました。
A: 今は電気がつけてあります。
「~てしまいました」
ⅰ) 完了
ある行為がすでに完了したこと、これから完了することを表す。
ⅱ)残念・遺憾
例: 電車に傘を忘れてしまいました。
失敗して、「しまった!」という気持ちを表す。 「~しちゃった」と言うことも多い。
86
[2時限目]
31課
自分の意志、計画や予定を 意志形(意向形)や 「つもりです」などを用いて表す。
・~(動詞)+たい
希望 (願う気持ちは弱い)
・~(動詞)よう+と思います
意志
・~つもりです
計画
Q: 明日、カラオケに行こうと思いますか。
A1: はい、______行こうと思います。
A2: いいえ、_____行こうとは思いません。
(助詞の「は」が入る)
Q: 明日、レポートを書くつもりですか。
A1: はい、______ 書くつもりです。
A2: いいえ、______書くつもりは ありません。
A3: いいえ、______書かないつもりです。
* A2、A3、どちらでも使えるが、A3 は強すぎて失礼になることもある。
普通はA2 の方がよい。
32 課
1.「~ほうがいい」 の文型を用いて、忠告や助言をすることができる。
導入: 分かれ道の絵を描き、どっちから行った方がいいかを問う。
Q: どちらで行ったほうが 早いですか。
A: こちらのほうが 早いです。
雨が降りそうです。 出かける人に忠告する。
・傘を持って行ったほうが いいですよ。
・傘を持って行くほうが いいですよ。
*間違いではないが、一般的には 「行った方」
慣れてきたら、学習者の国について話す。
・ ○○へ行ったら、ロバの肉を食べた方がいいですよ。
・ ○○へ行ったら ○○を持って行った方がいいですよ。
2.「~でしょう」 「~かもしれません」の文型を用いて、推量の表現が使える。
例文: あしたは雪が降るでしょう
(Ⅱ、P.74)
天気予報などでよく使われる。 現在の状況やデータの分析から判断し、
断定はしていない。 「~でしょう」 は50%以上?
・来ると思います
来るか来ないかを計ると、「来る」 の方が確率が高い。
・来るかもしれません
上記の「~と思います」より、少し確率が低い。
87
34 課
「~あとで、~」文型。 二つの動作の前後関係が 「~あとで」を用いて言い表せる。
例文: ごはんを食べたあとで、歯を磨きます
(Ⅱ、P.92)
18 課で提示された 「~前に、~」 の文型と比較して、一緒に教えてもよい。
35 課
「~なら、~」
ある条件下での判断を述べたり、助言や指示を求めたりすることが
できる。 仮定条件を表す 「~ば」 と一緒に教えることもある。
Q: みなさんの国へ行くなら、何月がいいですか。
アドバイス、忠告を求めたり、与えたりする場合によく使われる。
37 課
受け身の表現
・ 人から受けた行為、迷惑に感じた体験を受け身の表現を使って話せる。
・ 物事の状況や事実を受け身の表現を使って客観的に説明できる。
1. 教室活動
受講生Aさんと Bさんは隣の席に座っています。
Aさんは Bさんを押しました。
Bさんは Aさんに押されました。
★行為を行った方と、その行為を受けた方の、どちらの立場に立つか。 受身形は、
その行為を受けた側の立場から表現する文型。
動詞の活用
辞書形
マス形
受け身の動詞
Ⅰグループ動詞
読む
読みます
読まれる
Ⅱグループ動詞
ほめる
ほめます
ほめられる
Ⅲグループ動詞
くる
きます
こられる
〃
する
します
される
Q: 日記を読まれたことがありますか。
2. 被害の受け身 (迷惑の受け身)
① きのうは雨が降りました ―― きのうは雨に降られました。
(板書の絵あり)
② きのうは 友だちがきました ―― きのうは友だちに来られました
・いろいろな教科書に出ている例文。
・一般的には 「友だちに来られてしまいました」であろう
父が死にました ―― 父に死なれました (比較的若い年で?)
彼女は泣きました―― 彼女に泣かれました
3.ある事柄を述べる際、行為を行う人については特に問題とされない場合
このお寺は 500 年ぐらいまえに建てられました。
(Ⅱ、P.121)
ニュースによると、浦安ではマラソンが行われました。
日本では、入学式は 4 月に行われます。
あなたの国では いつ行われますか。
よく読まれている新聞は何ですか。
88
43課
「~そうです」を用いて、変化の徴候や外観の様子からその状態や性質を推察する。
伝送の 「らしい」 「ようだ」の違いについて。
・~らしい―― 聴覚 70%
視覚 30% ―→ 客観的
・~そうだ―― 聴覚 30%
視覚 70% ―→ 主観的
*学習者から問われれば答える程度。 あまり細かく説明する必要はない。
48課
使役の表現。 行為の強制や容認・許可を使役の文型を用いて表す。
例: 先生は ○○さんに 窓を開けさせました。
* 初めは使役の概念が分かりにくいので、実物やカードを使ってよく理解させる。
動詞の活用
ナイF(形)
使役動詞
マスF(形)
辞書F(形)
Ⅰグループ動詞
かかない
かかせる
かきます
かく
Ⅱグループ動詞
食べない
食べさせる
食べます
食べる
Ⅲグループ動詞
しない
させる
します
する
こない
こさせる
きます
くる
〃
例: 赤ちゃんに、一日に何回ミルクを飲ませましたか。
家族が日本に来たら、何を食べさせますか。
(「食べさせたいですか」も面白い)
ご主人に どんなネクタイを締めさせますか。
〔質問〕 最近「さ」入れ言葉を耳にするが、正しいのか。「払わさされた」 「書かさされた」 等。
〔答え〕
現時点では、間違いであることを はっきりさせた方がよい。
[3時限目]
使役の種類について
1.指令
・先生は 学生に本を読ませます。
・お母さんは 子供に野菜を食べさせます。
2.誘発(自動詞)
・彼は 社長を怒らせてしまいました。
・彼は いつもおかしいことを言って、みんなを笑わせます。
3.許容
・あしたは休ませてください。
4. 恩恵表現
・ゆっくり楽しませてもらいました。
5.謙譲
・失礼させていただきます。
6.放任・放置
・ごはんを腐らせてしまった。
・子供を一人で遊ばせる。
7.責任・手柄
・受験生を有名大学に入学させた。
・子供を死なせた。
8.因果関係
・彼女の出現が 彼の人生を狂わせた。
・失言が大臣を失脚させた。
9.慣用表現
・お待たせしました。
89
・電話をかけさせてください。
* 初級ではまず 1.が重要。
* 3.について。 「休みます」より 「休ませてください」の方が丁寧な感じ。
「ちょっと悪いかな?」 という気持ちが伝わる。
* 「お待たせしました」 は初級でも知っている。 よく使われるので早く教えた方がよい。
使役受け身
大切な項目。 これをきちんと押さえておかないと、中級に進んでから困る。
例: 先生は ○○さんを立たせました。
○○さんは 先生に立たされました。
(日本語では、この方がよく使われる。 「立たせられました」 も間違いではない。)
* カードを用いて、例を出す。
「走らされる」 「洗わされる」など、苦しいことや 悲しいことも出てくるかもしれない。
・人参を食べさせられた
・薬を飲まされた
・無理に言わされた。
・始めさせていただきます
(よく聞くが、へりくだり過ぎの感がある)
* 立つ(辞書形)――立たせる(使役)――立たされる(使役受け身)
「立たす」 はあるだろうか?
49課 50課 配布資料
敬語の扱い―― ・初級では 紹介程度でよい。
・教科書に出ていなくても、「お」を付けて、丁寧に行った方がいい言葉。
男性でも同様。 お金、お湯、お茶、お米、お風呂……など。
・外来語には 「お」を付けない。 「おビール」 は特別の言葉。
・教科書の本文(例文)で提示された程度のものが使えれば十分。
例: お____ になる。 例えば、お読みになる、など。
読まれる、等も敬語ではあるが、敬意はそれほど高くない。
様態 (不確定なことを表現)
明日は 雨が降りそうに ありません。
降りそうも ありません。
降りそうにも ありません。
△
降りそうでは ありません。 (間違いではない)
×
降らなさそうです。
*あまり考えていると、教える方も混乱してくる。
次回からのシミュレーションについて。
時間の関係で、一人ひとりの挨拶はなくてよい。 いきなり文型に入って進める。
90
『うらやす日本語指導力向上講座』 第 11 回
日時: 2009 年 11 月 29 日
講師: 多仁 安代先生
配布資料: 1 枚
[1 時限目]
今回と次回(12 月 6 日)の2回、全受講者が順番にシミュレーションを体験。
それぞれの先生役が担当する課・項目は既に決まっているが、他の受講者には知らせていない。
他の受講生は 模擬生徒になって授業に参加し、どんな文型かを模索する。
多仁先生が喉を痛められ、ほとんど声の出ない状態で指導。
初めに板書で 本日のシミュレーションの進め方などを提示。
・生徒役の受講生は、文型導入の段階で ノートなどにメモしてもよい。
・生徒役は、自分の学習者を思い出してときどき間違えみてもよい。
・先生役の持ち時間は 10 分。 時間になったら多仁先生が合図し、そこでストップする。
その後 5 分で 注意点などをコメントする。
・先生役は、生徒への挨拶などは省略。 今回はいきなり授業に入ってよい。
担当する課の初めの方から シミュレーション開始。
尚、以下の担当項目の番号は、『みんなの日本語Ⅰ』 本冊に提示してある 《文型》の番号。
① 2 課―3 「それは 私の~です」 (所有を表す)
* ごく初級なので、いろいろな文型を出さない。 一つずつ。
* 「これ」が定着してから 「それ」を出す。 比較でよく理解させる。
* 初めは 「はい」の答えが出る質問だけをする。 「いいえ」の答えが出るものはその次。
② 4 課―2 「~時から ~時まで」
* だんだん文が長くなるが、覚えるために できるだけフルセンテンスで答えるように導く。
③ 4 課―3 「~は ~曜日と ~曜日です」
(注) この項目番号のみ、テキスト 『教え方の手引き』 4 課の提出項目3を示す。
④ 4 課―4 「私はきのう~」
(本日は担当者欠席のためパス)
⑤ 5 課―1 「私は ~へ 行きます」 (場所を示す)
* 「~ました」の文型は、「きのう」 を付けて強調すると分かりやすい。
91
⑥ 9課―1 「好きです」 (好みを示す)
(注)本来の順番は、5 課―2であるが、担当者欠席により担当項目を調整し、
この 9 課―1を担当するとなった。
* 教える際に リズム、スピードが大切な項目。
* 学習者同志のQ&Aを活用しやすい項目。
[2 時限目]
⑦ 6 課―1 「私は ~を~」
* 絵の使い方がうまく、自分と相手・対象との関係を明確にすることができた。
* 「飲みます」が出たら、「食べます」も一緒に説明してもよい。
⑧ 6 課―2 「私は ~で~」 (場所を示す)
* 文型が二つ出た。 場所を表す「で」に続けて、手段を表す「で」を提示すると
学習者は混乱する。 この課では、場所を表す 「で」 だけでよい。
* 「駅で何を買いますか」 という質問は、いきなりでは分かりにくい。
郵便局、スーパー、レストランなどの例で徹底した方がよい。
⑨ 7 課―1 「私は ~で ~を~」 (道具・言語・手段・方法を示す)
* 道具の使い方はよかったが、箸・スプーン・フォークばかりを出すと、学習者が
食べることに関する文型かと思い込んでしまう。 ボールペン、はさみなども出すとよい。
⑩ 7 課―2 「あげます・あげました」
* 教える文型は 既習語を使ってシンプルに。
* 「あげる・あげました」 の文型と、「教えてあげる」 は別の文型。
⑪ 7 課―3 「もらいます・もらいました」
* 前の復習、「あげました」から入ったのは、分かりやすくてよかった。
* どんどん学習者同志のやりとりで覚えさせて、使えるように定着させることが大切。
[3 時限目]
⑫ 8課
「形容詞――イ形容詞・ナ形容詞」
* 形容詞は 具体的で分かりやすいものから教える。
* やさしい(易しい)は出にくい。 やさしい(優しい)しか出てこない。
「簡単な」 は出てくる。
⑬ 担当者欠席のためパス
92
⑭ 9 課―2 「わかります」
* どれぐらい理解できるか? 100%分かる、よく、だいたい、少し、あまり分からない、
全然分からない、などを表にするのも面白い。 「あなたは どのへん?」ときいてみる。
⑮ 9 課―3 「~から」 (理由を表す)
* ボードに貼ったカード等は、1 回 1 回替えるのではなく、そのまま何人かに使って
練習させる。 教材作りの手間も時間も 十分生かした方がよい。
3 時間にわたる、13 人のシミュレーション。 かなりのスピードで進んで少し早めに終わった方、
たくさん準備したのに全部をやりきれなかった方など、いろいろありました。
この時間のために 教材の実物(傘やバッグなど)、文字カード、絵カード、ボードに貼るための
マグネットの付きのカード、その他 ご自分で工夫されたイラストや小物など、面白い小道具も
見ることができました。
★★ どの課、どの文型にも共通する導入法として、全体的なアドバイス ★★
* 一度にいろいろな文型を出さない。 一つずつ丁寧に、確実にしていく。
* 説明するのに 既習語・既習文型でないものが出てくると、学習者は混乱する。
特に初級の最初の頃は、教師が使える文型は極端に制限される。
* 教室では 「です・ます」で統一。 会話調になり過ぎず、丁寧過ぎず。
* 「あなたのお国」 とは言わない。 「国」で統一。
「お」 を付けると、学習者には 別の言葉に聞こえて混乱する。
おうち、おはし、お勉強、などは 「お」をつけない。 習慣として、ごく限られた言葉、
お金、お湯、お茶、お米、お風呂などは、男女とも 「お」を付ける。
* 学習者にとっては、あくまでも外国語なので、しつこいぐらいに練習すること。
退屈そうにしている一部の学習者につられて打ち切ることのないように。
* 先生が部屋の隅の方へ行って 学習者に背中を向けると、学習者は関心を失う。
必ず教室全部が見える位置に立つこと。
* 初めは 「はい」の答えが出る質問をする。 「いいえ」の答えが出るものはその次。
* 教師の説明はシンプルに。 できるだけしゃべらないで、学習者にしゃべらせる。
* 文型によっては 学習者同士のやり取り (Q&Aなど)を取り入れるとよい。
* 「分かった人は手を挙げて」とは言わないこと。 それを探るのが教師の仕事。
「分からない人は…」 と言っては、学習者にとって もっと酷である。
* 準備した 文字カード、絵カードなどは、その時間中も、後々も何度も使える。
文責
93
松枝文恵
『うらやす日本語指導力向上講座』 第12回
日時: 12 月 6 日(日)
講師: 多仁 安代先生
配布資料: 1 枚
[1 時限目]
11 月 26 日(木)、12 月 3 日(木)の、明海大学日本語学科の教室見学について。
多仁先生の 「書く」ことに重点を置いたクラスでの話。 自分の中に 相手に伝えようとする内容が
ないと何も書けないし、何も伝わらない。 書くという技術だけでなく、考える力や総合的な日本語力
が大切。
前回 (11 月 29 日)に引き続いて シミュレーション。
それぞれの先生役が担当する項目は既に決まっているが、他の受講者には知らせていない。
尚、担当する課・項目の番号は 『みんなの日本語Ⅰ』 本冊に提示してある 《文型》 の番号。
① 12 課-3 「~は ~より~」 (2つのものを比較)
* 文型を提示したら、コーラスで確認することが大切。
* 誰にも分かる 客観的な比較で指導を進める。
「おいしい」や 「(値段が)たかい」 などは、主観の要素が強い。
② 12 課-4 「~が一番~」
比較する対象の中で一番。
* たくさんの果物を持参。 せっかく用意したものは しっかり使うべき。
* 学習者にいろいろ質問し、学習者同志で Q&Aをさせるとよい。
「これは 何ですか。」 「いくらですか。」 「どれが一番好きですか。」 など。
③ 13 課―1 「~が欲しいです」 (~が欲しい、~は欲しくない)
* 「欲しい」 の前は、名詞しかこない。 その点を強調すること。
④ 13 課―2 「食べたいです」 (~たいです、 ~たくないです。)
* まず学習者に「~たい」の状況を理解させ、それから文型の説明をすること。
⑤ 13 課―3 「~へ ~を ~に行きます」 (ある場所に移動する目的を表す)
* 郵便局へ 切手を買いにいきます。
* 場所の方向を示す場合は 「~へ」で教える。
[2 時限目]
⑥ 4 課―4 「私は きのう~」 (担当者が前回欠席のため、今回に。 課が戻っている)
94
* 板書や絵カードもよいが、カレンダーで 「○月○日」と具体的に示した方がよい。
⑦ 16 課―2 「~てから~」 (テ形+から。 二つの行為の時間的な前後関係を表す)
(例文) 私は お金を入れてから ボタンを押します。
* 自動販売機の絵図は、「~すると、~」の文型導入でよく使われる。
⑧ 16 課―3 「~は~が~」 (文の主題の状態・属性を表す)
* 「~は~が」文は難しい。 人間を例に出すのは、問題がある場合がある。
* 動物で示した方が分かりやすい。 (このテキストは 難しい扱いをしている)
例えば、像は鼻が長い。 ウサギは耳が長い。 キリンは首が長い、など。
⑨ 16 課―4 「形容詞 + 形容詞」
* 初めは 形容詞を二つつなげるだけでよい。 学習者に一つずつ出させる。
* イ形容詞は 「~くて」を付ける。 「~は 新しく~」ではなく、「新しくて~」と教える。
⑩ 17 課―1 「~ないでください」 (ある行為をしないことを依頼・指示する場合の文型)
* マス形→ナイ形に変換する場合、文字カードは裏返さず、そのまま練習させた方がよい。
[3 時限目]
⑪ 17 課―3 「~てもいいです」 (~なくてもいいです。 そのようにする必要がない、という場合)
* 状況の説明が難しい文型。 分かりやすい例で説明すること。
* (例) 病気が治りました。 もう薬を飲まなくてもいいです。
⑫ 18 課―2 「趣味は ~することです」 (動詞の辞書形+ことです)
* 普通形を用いる大切な文型。
* 場所そのものが目的の時は 助詞 「に」を用いる。 「山に登る」など。
⑬ 18 課―3 「~まえに~」 (二つの行為の順番を表す)
* 時系列を表した表は 分かりやすい。 後でも使える。
* 「~まえに」の文型だけで進めた方がよい。 「~てから」を一緒にすると混乱する。
⑭ 19 課―1 「~たことがあります」 (過去の経験を 現在の時点で述べる文型)
* 「経験」という言葉が理解できるように、説明することが大切。
* 年齢座標を描き、「○才の時、~たことがあります」と導くと 分かりやすい。
0 歳―――――10 歳―――――20 歳―――――→
95
⑮ 23 課―1 「~とき~」 (二つの文をつないぐ)
* 二つの文をつなぎ、後の文で表される行為・状況が成立する 「時」を示す。
* 絵カードなどで 「時」を示し、学習者に練習させると理解しやすい文型。
★★ どの課、どの文型にも共通する導入方法として、全体的なアドバイス ★★
* 教材の文字カード、絵カード、実物(レアリア)、表など、準備したものは徹底して活用。
* 外国人にとって、教師が 何を教えようとしているのかを察することは難しい。
導入の場合、まず、どんな状況で使う文型なのかを理解させることが大切。
* 取り組む文型・項目は、客観的で誰にも分かりやすい例文で示すこと。
特に初級では ゆっくり・じっくり指導する。
* 学習者同志のペアワークは、必ず確認すること。
分からない同士でのやり取りは、曖昧になりやすい。
* 質問に対し 否定の答えの時は、助詞は 「は」となることをでてくるたびに注意する。
例: あなたはリンゴが 欲しいですか。 いいえ、リンゴは 欲しくありません。
* 文の終りには必ず句点 「。」を付けることを確認すること。 「.」ではない
* 教師は、教える場にあっては、羞恥心も捨てて何でもやる気で取り組むこと。
次回のシミュレ―ションは一人のみ。
96
『うらやす日本語指導力向上講座』 第 13 回
日時: 2009 年 12 月 13 日
講師: 多仁 安代先生
[1 時限目~3 時限目]
榎本UIFA日本語グループリーダーより、この日に催されたUIFAの年末交流会において
この 『うらやす日本語指導力向上講座』 の活動が高く評価されていることを報告があった。
シミュレーション (一人)
① 「~あとで~」 (二つの行為の時間的な前後関係を表す)
* この構文は 今回のテキストには出ていないが、学習者の理解度によっては
18 課の 「~まえに~」と一緒に教えてもよい。 (『みんなの日本語Ⅱ』34 課参照)
* 「~のあとで ~をします」 の文型は、ある程度習慣性のものを示す。
「~のあとで ~をしました」 の文型は、「きのう~」をつけると分かりやすい。
【シミュレーション総まとめ】 (これまでの 各回のコメントなどと重複する内容もある)
★
初級では、導入しようとする文型より 説明の言葉の方が難しくなりがち。
説明はできるだけ少なく、実物や絵カード、ジェスチャーなどで示した方がよい。
(全く知らない言語の中に飛び込んだ時、いくら言葉で説明されても理解は難しい)
★
初級では語彙が限られており、教師も、学習者が聞いてすぐ理解できるように話すよう
注意する。 日本人が日常使う言葉でも、「お」を付けると学習者には別の言葉のように
聞こえることがある。 (例) おうち、お誕生日、お勉強、お箸 などは 「お」をつけない。
少し乱暴な言葉にきこえるが、最初はそれでよい。
反対に、初めから 男性・女性ともに 「お」をつけて覚えた方がよい言葉もある。
(例) お金、お湯、お茶、お米、お風呂 など。
★
教える際の準備は、十分すぎるほど多めに準備する。慣れて来るとその場で何とでも
できるが、それまでは、3 時間だと 4 時間分ぐらい用意した方がよい。
★
「ナ形容詞」 は「~な」で終わるように注意。 「きれいな」 が「きれい」で終わると
ナ形容詞か イ形容詞か 分からなくなる。 (例) 静かな、元気な など。
★
母語での説明はどんなものか。 複数の学習者に教える場合は、全員が同じ母語で
ある場合を除いて、不公平感が出る。 大勢の学習者の言語を選ぶと、少ない方が
孤立する。 むしろ 少ない言語の方をカバーするよう注意を払うことが大切。
97
★
このたびのシミュレーション全体を通して感じること。 導入の時間が少ないように思う。
まず、どんな場面・状況で使われる言い方(文型)なのかを 言葉も文化も違う外国人が
理解できるように、しっかり時間をかけること。
★
全体的に絵カードや写真などの利用が少ない。 場面に合ったものを選んで利用すると
大変 効果的である。
★
学習者に対する質問のテンポについて。 ある程度のテンポや スピードは必要。
質問は前もって、書いて準備しておく。 よくできる学生から当てた方が 円滑に進む。
★
学習者への質問は、客観的な答えになるように選んで準備する。 例えば、形容詞で
「にぎやかな」 は好感? 「うるさい」 は嫌な感じ?
★
その人によって感じ方が異なる。
質問は 「はい」で答えられるものから始める。 少し分かったら 「いいえ」で答えるもの。
それから 「どこへ」 「いつ」 などに発展させる。
★
学習者に 「分かりましたか」 とはきかないこと。 それを推し量るのが教師の仕事。
「分からない人は手を挙げて」 は決して言わないように。 まず、挙げづらい。
理解できない場合は、学習者は何が分からないかすら 分からないはず。
★
学習者は成人である。 日本語がよくできないからといって、子供扱いしないこと。
あまり 「お上手ですね」 などと言うと、ばかにされているように感じる人もいる。
★
誰でも、この度のシミュレーションのように 人前で何かをするのは大変なこと。
お互いに勉強の場であることを認識して、今後に役立ててほしい。
【教案づくり】
来年(2010 年)、1 月 17 日以降の実習に向けて 教案をつくる。
* 実習は 5 週間にわたり、全10コマ、実際の外国人に教えることになる。
* A~Eの 5グループを、それぞれ二つに分け、3 人ずつの実習グループを作る。
詳細は、以前配布された 多仁先生の [予定表]を参照。
* 教案は、テキストの 『みんなの日本語Ⅰ』――教え方の手引き を参考にして作り
* 導入・展開(Q&Aなど)・板書などの進行を細かく記す。
時間があれば練習・ディクテ―ションなど
* 作成した教案は 一旦集め、多仁先生の修正をうける。 次回 (12 月 20 日)再検討する。
98
『うらやす日本語指導力向上講座』 第 14 回
日時: 2009 年 12 月 20 日
講師: 多仁 安代先生
[1 時限目―2 時限目]
教案修正
前回(12 月 13 日)、受講者が 10 の実習グループに分かれ、それぞれ実習のための
教案を作成した。 講義後全部集め、多仁先生が 修正や細かいアドバイスを
書き加えてくださったものを、本日 それぞれの担当グループに返却。
それを基に、各グループは教案修正や 具体的なの実習計画を立て、教材の準備をした。
また後半には、スタッフを学習者に見立てて 実習の練習するグループもあった。
多仁先生から。
* 実習はあくまでも練習なので、あまり緊張しないで取り組むように。
* それぞれの持ち時間は 20 分。 時間が来たら 切りのいいところでストップ。
* 3 人のうちの最後の人は、時間調整が大切。 Q&Aを十二分に用意しておく。
また、前に出て板書をさせたり、ディクテーションをしたり、いろいろ考えておくこと。
* 実習で使う語彙、特に動詞については、原則として既習のもの (テキストに既に出た
もの)に限るが、学習者のレベルによっては 他の未習の語彙を使ってもよい。
先週に引き続き、多仁先生とスタッフが実習の打ち合わせ。
・
実習当日の 教室内の机やイスの配置を検討。 学習者の机の位置、実習者の位置、
同じグループで 順番を待っている人の待機する位置など。
・
外国人学習者の名札の件。 実習者から見やすいように A4かB5の紙に カタカナで
名前を書き、机の前に垂らす。(セロハンテープで貼りつける)
・
持ち時間は 一人 20 分。 時間を知らせるタイマーを準備。
・
学習者が 『みんなの日本語』 を持っているかどうか確認し、持ってない場合は、
蔵書から貸し出しする。 または コピーを準備する。
・
絵カード等は、当日 実物を探すのではなく、コピーして準備しておくよう受講者に確認。
・
実習に参加する外国人学習者について。 実習には毎回、8 人の学習者を予定。
だいたい初級で、該当する課に近いレベルであることが望ましい。
99
『うらやす日本語指導力向上講座』 第 15 回
日時: 2010 年 1 月 17 日
日時: 多仁 安代先生
[1 時限目]
いよいよ日本語指導の実習が始まる。 今回から計 5 回の予定。
実習担当は、既にある受講者のA~Eの5グループを それぞれ二つに分け A1、A2~E2の
計 10 グループ。
第 1 日目。 外国人学習者は計 8 名。 ベトナム、中国、インドネシア、タイ、メキシコと
出身国・母語が異なる方々で、なかなかバラエティに富んだ組み合わせだった。
学習者には、教科書 『みんなの日本語』 を持参するよう指示し、持っていない学習者には
事前にコピーして配布した。
16 課 実習担当: グループ・A2
実習文型: ~てF(動詞のテ形)
導入・展開・練習
・
動詞のグループ分けと テ形の確認
例文:顔を洗って、歯を磨いて、会社へ行きます。
朝 7 時に起きて、子供のお弁当を作って、朝ごはんを食べます。
・
「~て、~て、~」 文型で 3 つぐらいの行為をつなぐ。
・
誰々に会う、という場合の 「会う」という動詞のテ形は 「会って」であることを確認。
何度か 「会いて」 と言う学習者がいたので 確認した。
・
「正月に、何をしましたか。」という質問に対し、「正月」 という語を知らない学習者が
いたので 改めて説明した。
[2 時限目]
17 課 実習担当: グループ・A1
実習文型: ~なければなりません (動詞のナイ形 + なければなりません)
~なくてもいいです
(動詞のナイ形 + なくてもいいです)
導入・展開・練習
・
赤信号で 待たなければなりません。
・
通関でパスポートを 見せなければなりません。
・
動詞のグループ分けと ナイ形の導き方の確認。
Ⅰグループ: 飲みます―→飲まない―→飲まなければなりません
Ⅱグループ: 食べます―→食べない―→食べなければなりません
Ⅲグループ: 行きます―→行かない―→行かなければなりません
100
・
例文: 7時に 飛行機に乗ります。
6時に 空港へ行かなければなりません。
5時に 家を出なければなりません。
4時に 起きなければなりません。
・
~なければなりません ⇔ ~なくてもいいです
この二つの言葉は 反対の表現であることを説明。
・
例文: TDLでは 4歳の子供は お金を払わなければなりません。
3歳の子供は、お金を払わなくてもいいです。
[3 時限目]
多仁先生の講評
・
本日の実習を見て、シミュレーションの時からは 格段に上達している。 この講座の
コースデザインを考えた際、シミュレーションは蛇足かもしれないと迷ったが、
やはり実施してよかったと思う。 それがベースになって、飛躍的によくなった。
・
学習者は 指導者の日本語を必死に聞き取ろうとしているので、その妨げになるような
音や声を立てないように配慮すること。
・
新しく導入される文型に気を取られて、助詞が抜けることが多かった。 学習者は助詞を
省略しやすいので、抜けたらその場で直すことが大切。
・
学習者の発言は、その時指導する文型と異なっていることもあるが、一度は全部
言わせてみる。 日本語として間違っていなければ、否定はしないでよい。
・
学習者は自身がないと声が小さくなる。 少し板書して 確認してあげるとよい。
・
例文では、「です・ます体」か 「~た」などの普通体で統一すること。
・
非漢字圏の学習者がいなくても、漢字にはルビをふった方がよい。
韓国・中国の学習者でも、日本語の読み方は難しい。
・
時々 板書をさせた方がよい。 自身のある学習者は書きたがる傾向にある。
できるだけ偏らないように 全員に。
・
学習者同士、他の人の文字・文をみるのも いい勉強・刺激になる。
・
ボードが ゴチャゴチャになり易いので、人数によっては 予め区切った方がよい。
・
テ形が不確かな場合は、書かせて確認する。 例: 友だちに 会いて―→会って
・
各実習者がほとんど 20 分の持ち時間をうまく使っていた。
時間を計って練習した人も、特に計らずに実習した人もあった。
・
制限時間のベルが鳴ったら 切りのいいところでストップする。
・
質問――文中の助詞が抜けたのを どう指導すればよいか。
例: わたしは 7時 □ 起きました。
学習者の言うとおりに板書して、はっきりさせてから修正する。
助詞は 省略に流れ勝ちなので、教える方は根気よく直す。
101
・
質問――既出の漢字は 次からはそのままつかってもよいか。
学生の場合は試験があるので 覚えていて当然と扱われるが、ボランティアで指
導する場合は あまり厳密でなくともよい。
大人(社会人)として 「勉強」、「先生」 程度は読んで書けた方がよい。
・
「~なければなりません」 「~なくてもいいです」の文型は、法や規則について
述べることが多い。 そうでない場合もある。
・
車が 道路のどちら側を走らなければならないかとか、交通信号などの例が出たら
「火事の時は 119番」と教えておいた方がよい。
・
「~なければなりません」 の文型は、ナイ形を導入してから教えると 混乱し易い。
・
例文は、身近でシンプルなものを提示すること。
・
今回は、学習者の母語がバラバラで とてもよかった。 普通は こうはならない。
・
発音について。
あまり聞き取りづらい場合は直すが、少々でよい。
何度も注意すると 学習者が委縮してしまう。
その人の母語によっては どうしても出にくい音がある。
・
できる学習者には 積極的に話させて方がよいが、できるだけ均等に。
・
質問に対し、できる人が先に答えを言ってしまう場合がある。
一回はいいが、度重なると 他の学習者の勉強の妨げになるなるので配慮すること。
102
『うらやす日本語指導力向上講座』 第 16 回
日時: 2010 年 1 月 24 日
講師: 多仁 安代先生
[1 時限目]
実習第 2 回目。 前回同様 8名の学習者が揃った。 ベトナム、中国、韓国、メキシコなど
出身国・母語が異なる方々で、一般の日本語学校や 大学の教室などでも、珍しいと思われる。
教室実習者は2グループ(各グループは3人)、計6人。
学習者には、教科書 『みんなの日本語』Ⅰ・本冊を持参するように指示し、持っていない
学習者には、スタッフの手持ちのものや 蔵書から貸し出した。
18課 実習担当: グループ・B1
実習文型: 「~ことができます」
§導入
私は 綾とり(あやとり) ができます。
(実際に毛糸で綾とりをやってみせ、説明する)
私は 25 歳の時免許を取りました。 私は車の運転ができます。
ジョーさんは 平仮名を読むことができます。
私は プールで 100 メートル 泳ぐことができます。
「~ができます」 という言い方には 2 種類ある。
☆ 名詞 + ~ができます
☆ 動詞の辞書形 + ~ことができます
辞書形って何?
「読みます」 は辞書にありますか。 (辞書を示し、実際に学習者に探させる)
ありません。 では どうしますか。
「読む」がある。 どうやって この形を見つけたらいいでしょうか。
14 課でテ形、17 課でナイ形、この 18 課では辞書に出ている 《辞書形》を勉強します。
動詞をグループ分けして、それぞれ辞書形を求める。
Ⅲグループ―――このグループの動詞は二つなので覚える
します→する
きます→くる
Ⅱグループ―――[ます] を取って、[る] をつける。
たべます→ 食べる
おきます→起きる
103
Ⅰグループ―――[ます] を取って、[ます]の前の イ段を ウ段に替える。
かきます→かく
いきます→いく
のみます→のむ
よみます→よむ
フラッシュカードを使って練習。 各グループの動詞の辞書形がすぐ使えるように。
海ホテルと 山ホテルという例を出し、表にして文型練習。
海ホテルでは
~ができます。 ~することができます。
山ホテルでは
~ができます。 ~することができます。
§展開
「動詞の辞書形+こと」 の例を板書
例: かくこと、うたうこと、のむこと
漢字を かくことができますか。
はい、わたしは かんじをかくことが できます。
いいえ、わたしは かんじをかくことは できません。 (否定形の時、助詞は 「は」)
熱が出ました。 でも、タクシーを呼ぶことは できません。
学習者に紙を配る。 隣り合う二人一組で、自分ができることを話し合う。
その後、お互いに 相手のできることを紙に書くよう指示。
アリさんは 料理することができます。
ジョーさんは 漢字を書くことはできません。
* 実際には 「~することは できません」 という答えがたくさん出た。
「わたしの趣味は ~することです」 という表現の練習。
趣味の場合は できる・できない、とはならない。
わたしの趣味は サッカーをすることです。
わたしの趣味は 泳ぐことです。
§練習
ボードに表になった絵を貼り、「日本では ~歳から○○することができます」 の文型の練習。
例: 次の文を 「~することができます」 という文型にする。
・結婚します。 お酒を飲みます
・たばこをのみます(吸います)。
・小さいオートバイに乗ります
・大きいオートバイに乗ります。
・自動車を運転します。
104
・日本では 男の人は 18 歳から 結婚することができます。
・日本では 女の人は 16 歳から 結婚することができます。
・日本では 何歳から お酒を飲むことができますか。
・日本では 20 歳から お酒を飲むことができます。
・日本では 20 歳から たばこを吸うことができます。
・日本では 16 歳から 小さいオートバイを 運転することができます。
・日本では 18 歳から 大きいオートバイを 運転することができます。
・日本では 18 歳から 自動車(車)を 運転することができます。
・日本では 18 歳から 運転免許を 取ることができます。 ―――運転免許について説明
[2 時限目]
22 課 (予定では 19 課であったが、実習者の都合で入れ替わった)
実習担当: グループ・C1(若杉さん、霜田さん、宮崎さん)
実習文型: 連帯修飾の文について
§導入
あなたは どこからきましたか。 (学習者に出身国・出身地を聞く)
どんな町ですか。 (暑いところ、静かなところ、にぎやかなところ等々の例を出して言わせる)
*二つの文をつないで 一つの文にする練習
これは ケータイ電話です。
これは わたしが 新宿で買いました。
―→ これは
わたし
が
(人)
新宿で
買ったものです。
(場所)
これは マフラーです。 わたしが作りました。―→これは わたしが作った マフラーです。
これは 主人にもらった ボールペンです。
これは 先輩にもらった 本です。
これは わたしが作った おにぎりです。
§展開
これは お茶です。
わたしは 中国で 買いました。
―→これは わたしが 中国で 買った お茶です。
「買いました お茶」 とはならない。――大切な約束事
★必ず 普通形で 「買った」となる。
105
動詞の 「普通形」とは どんな形か。
前の時間に 辞書形の勉強をしたが、今からは 普通形の勉強。
マス形
普通形
マス形の過去(ました)
普通形(過去)
かきます
かく
かきました
かいた
いきます
いく
いきました
いった
いそぎます
いそぐ
いそぎました
いそいだ
よみます
よむ
よみました
よんだ
とります
とる
とりました
とった
します
する
しました
した
きます
くる
きました
きた
これは カメラです。 わたしは 秋葉原で買いました。
―→これは わたしが 秋葉原で買った カメラです。
これは 古いコートです。 わたしは (これを) 母にもらいました。
―→これは わたしが 母にもらった 古いコートです。
これは本です。 子どもが 読みます。
―→これは 子どもが読む本です。
プリント配布 (間違い探しの問題が 3 問)
①
わたしが 買い物をしますスーパーは 野菜が安いです。
→ する
② わたしが 住んでいますアパートは お風呂がありません。
→ いる
③ これは 友だちが描きました 絵です。
→ 描いた
§練習
ジョーさんは イギリスから来ましたね。 イギリスでは 誰が 料理を作りましたか。
☆ 各学習者に 同様の質問をすると、「お父さんが作ります。」 お母さんが…、
お姉さんが…と、いろいろな答えが出た。
次の文に言葉を入れて、文を完成させる。
わたしは______が作った_______が 好きです(すきでした)。
(誰々)
(料理の名前)
106
・わたしは 母が作った 牛肉の料理が好きです。
・わたしは お父さんが作った シーフード料理(魚料理) が好きです。
・わたしは お姉さんが作った ケーキがすきです。
プリント配布 (空欄を埋める問題)
・これは わたしが _____ で買ったイヤリングです。
・これは わたしが _____で借りた本です。
時間になったので、22 課の練習問題をしておくように指示。
[3 時限目]
多仁先生の講評
(1 時限目)18 課
「~ことができます」文型
導入 ・ 「~ことができます」 ⇔ 「~ことはできません」 の例を表にしたものは よかった。
・
フラッシュカードの見せ方に注意。 学習者一人ひとりの前にいかなくてもよい。
学習者みんなに注意がいくように、中央に立ってカードを見せる。
自分が当たっていないときは 休んでいる学習者がいないように。
・
カードを見せて 言わせる。 →カード無しで 言わせる。
・
前に出て板書させる場合、本日の 8 人の中でも 書こうとする人が決まっている。
書く習慣を身につけている人と そうでない人がいる。
勉強の仕方を知っている人と、そうでない人の差もあるが、母国での習慣の
差も大きい。 少しずつ 書くことを習慣づけた方がよい。
最近は 日本人でも、見ているだけで 書かない学生が増えている。
展開 ・ 肯定の 「はい、~ができます」 と、否定の 「いいえ、~はできません」の助詞を
しっかり意識させていたのは よかった。
・
常に フルセンテンスで言わせるように指導していて、よかった。
・
学習者に 紙に書かせるのは時間がかかるが、確認しながら練習できるので
時々取り入れた方がよい。
・
Q&Aが少なめだったが、学習者同志で ごく簡単な言葉で会話させるとよい。
例: ~を読むことができますか。 ~歌うことができますか。
100 円で何を買うことができますか。
練習 ・ 学習者に プリントに書き込んでもらったのは 確認の意味でよかった。
・
「~ことができます」 の文型は、法や規則的な場合と 能力的な場合がある。
・
応用のQ&Aは、教える方がたくさんタネを準備し、メモしておいたほうがよい。
107
(2 時限目)22 課
連体修飾
導入 ・連体修飾の表現を教えるのは難しい。
・
「~(誰々)に もらった~」 「~(誰々)から もらった~」 は、ほとんど同じ意味。
間違っていなければ 厳密に区別する必要はない。
・
「~(誰々)が作ったの おにぎりです。」
この「の」 はすぐに注意して直すこと。
学習者が よく間違える点である。
展開・練習
・
例文などの板書に 句点 「。」 が入っていなかった。
日本語では、文の終りには必ず「。」が入る。 ピリオド「.」ではない。
中級以上の学習者でも あまり意識していない人もいるので、注意すること。
・
この3人のグループは、話すペースのバランスがよかった。
多少 早口の方がいたが、これは複数の教師が指導するよさでもある。
いろいろな日本人の話を 耳にした方がよい。
教師としては、普通のペース(スピード)で話すことを要求されることもある。
・
自分の家族の言い方について。 特に敬語が必要な場合でなくとも
自分の両親のことを 「父、母」 ということは、早い時期に教えた法がよい。
日本人と話をする場合、特に面接などで 印象が違う。
・
指導の仕方は、「私の父」 「あなたのお父さん」、「私の母」 「あなたのお母さん」
と繰り返す。
・
二つの文を一つにする練習をする場合、
これは わたしが 中国で買いました お茶です。―→ 買った お茶です。
★ 動詞が普通形になると教えていたが、ナイ形や、~テイル形も
可能なことを 加えておいた方がよい。
例: こない人、こなかった人、歩いている人 など
・
Q&A がもっとたくさんあった方がよい。
<質問> 指導する上で、学習者に質問する際は どの程度の敬語を使うことが必要か。
<多仁先生のお答え> 初級では 「です・ます」 程度で話す。 日常 知っていた方がいい
敬語表現は、その都度教える。 例えば きょうの 「父・母」や、これまでの講義で話してきた
いくつかの表現など。 フォーマルな言い方は、学習の場でしか学ぶことができないので、
線引きが難しい場合もあるとは思うが、教えるときと 雑談とでは区別した方がよい。
文責
108
松枝 文恵
『うらやす日本語指導力向上講座』第 17 回
日時: 2010 年 1 月 31 日
講師: 多仁 安代先生
[1 時限目]
実習の 3 回目。 今回も 外国人学習者 8 名が揃った。 その中には、1 回目の実習から
連続参加の学習者もいて、教室の雰囲気にもなじんできたようだ。
21 課
実習担当: グループ・C2
実習文型: 「~と思います」
§導入 赤い紐を出し 「何だと思いますか」
大きな紙箱を出し、振って音を出して 「何が入っていると思いますか」
学習者の答え 「お金が 入っていると思います」
「薬が 入っていると思います」 「薬 だと思います」
ボードに人が考え込んでいる絵を貼る。「どうかなあ、何かなあ」と考えている、と説明。
はっきりしないとき、「どう思いますか」「何だと思いますか」といいます。
絵本を取り出す。野菜の断面図の絵を集めた絵本を広げる。あるページを示す。
「この絵は 何だと思いますか」 「わかりません」
ページをめくると、だんだん分かりやすい絵になっている。
「分かりません」 「これは、ねぎでした」 (葱の断面図の絵であった)
次々に ピーマン、タケノコ、サツマイモ、キャベツ、タマネギの絵を示した。
別の絵本を示す。
「何をしていますか」「~をしていると思います」の文型を示す。
「わたしは明日、公園へ凧をあげに行きます。明日の天気は どう思いますか。」
「晴れると思います」「晴れだと思います」「「いい天気だと思います」
「雨だと思います」「雨が降ると思います」
普通形 + ~と思います 文型の確認
「あります」の普通形――ある*ない*あった*なかった*ではなかった
ある部屋の絵を ボードに貼り、「山田さんの部屋です」と説明。
「山田さんは 男の人だと思いますか。女の人だと思いますか」
その他、山田さんについて「~と思いますか」「~だと思いますか」とQ&A。§展開
109
地図・
絵図を示し、丁寧形を普通形にかえて、「~と思います」の文をつくる。
郵便局があります―→郵便局が あると思います
パーティに来ます―→パーティに来ると思います
★教師の話を、板書などを見ないで 耳で聞くだけで理解し、答える。
日本は物価が高いです―→日本は物価が高いと思います
パソコンは便利です―→パソコンは便利だと思います
エミさんはお酒を飲みます―→エミさんはお酒を飲むと思います
袋入りのチョコレートを、二袋を見せる。(袋には①、②と番号が記してある)
学習者に順番に「どちらが重いと思いますか」とたずねる。
① だと思います。 ②だとおもいます。 同じだと思います。
3 種類の答が出た。実はチョコレートが 20 個入り袋と 22 個入り袋。
3 枚の写真を提示。 「どれが一番きたないと思いますか」と質問。(4 人に)
2番が一番きたないと思います。 (皆同じ答え)
各学習者に絵のコピーを配布。
「この女の子は どこへ行くと思いますか」と質問して、答えを板書させる。
他の質問
「AとBの人は 何を話していると思いますか」
「Fの人は 誰を待っていると思いますか」
「Tの人は どうして泣いていると思いますか」
§練習 動詞の普通形、動詞のナイ形の練習
・配布したプリントの空欄に 動詞の辞書形・ナイ形を書きこむ。
・いくつかの例文の中から 適当なものを選ぶ。
(例)Q:浦安の水道の水はどうですか。
A1:おいしいと思います。
A2:おいしいじゃないと思います。
A3:おいしくないと思います。
(その他いくつかの例文)
(例)Q:あなたは試験に合格できますか。
A1:はい、勉強したので 合格できると思います。
A2:いいえ、勉強しなかったので 合格できないと思います。
・ 「~と思います」の文に付け加えて、程度を伝える便利な言い方がある。
とても――程度を強める言い方
きっと――予想の程度を示す。 90%以上
たぶん――同様に予想の程度を示す。70%くらい。
あまり~でない――否定の程度を弱める。
110
プリント配布 これらの表現の練習。 空欄に書き込む。
・ 例文 彼女は きっと来ると思います。
彼女は たぶん来ないと思います。
○○さんは 英語がとても上手です。
□□さんは 英語があまり上手ではありません。
・ 便利な言い方
明日は 晴れると思います。
*わたしも そう思います。
*わたしは そうは思いません。
・ プリントの続きは来週までの宿題に。
[2 時限目]
19 課
実習担当: グループ・B2(受講者の都合で、このグループの実習者は二人)
実習文型: 「~たり、~たり~」 (前回、受講生の都合で実習順序が変更に
なったため、19 課に戻った)
§導入 「前の時間から緊張していると思います。リラックスして聞いてください。」
学習者に質問。 「朝起きて 何をしますか。」 一人、二つずつ言わせる。
それを板書し、辞書形、タ形に変化させる。
朝起きてすること
辞書形
タ形
________________________________
歯をみがきます
みがく
顔を洗います
あらう
あらった
つくる
つくった
ごはんを作ります
みがいた
食事をします
する
した
テレビを観ます
みる
みた
朝ごはんを食べます
たべる
たべた
コーヒーを飲みます
のむ
のんだ
新聞を読みます
よむ
よんだ
服を着ます
日本語を勉強します
会社へ行きます
きる
きた
勉強する
いく
勉強した
いった
・ 板書の後で 各自、自分の言ったものを 声を出して読ませる。
・ 二つ、または三つの文を、「~たり、~たり~」の文型を使って 一つにする。
111
(例)ごはんを作りました。+ 食べました。
―→ごはんを作ったり、食べたりしました。
コーヒーを飲みました。+ 新聞を読みました。
―→コーヒーを飲んだり、新聞を読んだりしました。
§展開
絵カードをボードに貼り、文型練習。
・ 買い物をしたり、映画に行ったりしました。
これから未来のことや、習慣についていうときに どんな言い方をするか。
・ ~します。 ~したいです。 ~するつもりです。
Q:マリさんは日曜日、何をしますか。
A:わたしは日曜日、テレビを観たり、料理をしたりしました。
→ します
・ いつも日曜日は そうする、という場合は「~します」を使う。
Q:休みの日は、何をしたいですか。
A:わたしは休みの日に、映画を観たり、ショッピングをしたいです。
Q:お正月に、何をしましたか。
A:わたしはお正月に 餃子を作ったり、ビールを飲んだりしました。
Q:図書館は、何をするところですか。
A:図書館は、勉強したり、本を読んだりしました。
Q:春休みには、何をするつもりですか。
A:春休みには、~たり、~たりするつもりです。
絵カード(1 枚の絵に二つの行為が描かれているもの)を提示し、練習。
・わたしは夜 お風呂に入ったり、テレビを観たりします。
・わたしは学校で 本を読んだり、レポートを書いたりします。
・わたしは休みの日、自転車に乗ったり、ジョッギングをするつもりです。
・わたしはパーティで、ギターを弾いたり、ダンスをしたりしたいです。
(ギターは 弾く(ひく)もの だということを確認)
学習者一人ひとりに、文を作ってボードに書いてもらう。
ボードを 8 つに区切って 書かせるが、ほとんど描けない学習者もいた。
112
~~特別スピーチ~~
この日、多仁先生のご紹介で 明海大学の留学生一人が見学。
韓国からの学生さんで、実習を見学後 10 分余のスピーチがあった。
[3 時限目]
多仁先生の講評
* 2 回のシミュレーションを欠席し、実習に臨んだ受講者にアドバイス。
学習者に教えるときは 原則として既習の文型と語彙で。特に初級では注意。
「~なさいました」「お勉強」などは、日本人相手の場合はいいが、外国人には
全く別の言葉に聞こえてしまう。
21 課(1 時限目)について
・全体的にQ&Aが少ない。
・いかに 学習者の口を開かせるか、たくさん発話させるかが工夫することが大切。
・そのクラス(グループ)の中で、比較的よくできる学生からあてて言わせるとよい。
・あまりできない学生は、何人かの答えを聞いた後であてられると 楽になる。
・既習の動詞を使って、どんどん言わせる。 単純な質問でよい。 機関銃のように。
・「~と思います」の文型は、前(過去)のことについて話を進める方がスムース。
○○さんは きのう、お酒を飲んだと思いますか。(過去)
○○さんは きょう、お酒を飲むと思いますか。(未来)――考える必要がある。
・質問事項・使う動詞はメモして 手元に準備し、そこから選択して使う。
その場ではなかなか思いつかない。
・「こんなことを聞いては、失礼ではないか」「何度も同じ質問をしたらバカに
しているように思われないか」と心配する必要はない。 繰り返し練習が大切。
・導入部分はよかった。絵カードや 絵本も面白かった。
・助詞が抜けたら その場で修正する。 言っている本人は気がつかないことが多い。
・学習者の発話。 「天気はどうですか」「いいだ と思います」
この間違いは重要な点。 板書して「これでいいですか」と聞く。
―→ 誰かが気がつく。―→ だ を囲んで印象付ける。
・系統だった勉強をしていない学習者がいる場合、オウム返しで少しずつ、きちんと。
・展開部について。 普通形の練習を 文字や形のだけの練習から、耳で聞いて
答える方式に入ったのはよかった。
・単純なQ&Aで口慣らしして、だんだん長くて、難しい文を練習。
113
・板書する際には 文字の形を正確に書く。 初級の平仮名も注意。
外国人は 何の文字か類推することはできない。
・練習の部について。 イ形容詞の変化に注意。
× おいしいじゃない。
○ おいしくない。
よくある間違いなので、その場で注意。
イ形容姿の「い」を取って、「く」にする。
修正したら もう一度言わせて確認する。
・きっと~(90%以上)、たぶん~(70%くらい)、~でしょう(50%)と
数字で示したのはよかった。 学習者が安心する。 覚えやすい。
例:朝青竜はやめると思いますか。(きっと、たぶん、~でしょう)から選ぶ。
日本語は難しいと思いますか。(はい、いいえ を必ずつけるように指導)
・「あまり~でない」の文型は、しっかり学習者に言わせる。教師がやり過ぎないこと。
19 課(2時限目)について
・導入で、動詞の確認はよかったが、時間をかけ過ぎると文型の練習が少なくなる。。
・教師の質問に対し、学習者の誰から 何人に当てるか。 決まってはいない。
様子をみて判断。 この文型に限っては、全員に当てなくてもよい。
・一日を表す表(図)があると、経過が分かりやすい。
朝
ある一日
昼
夜
――――――|―|――――|―――――――|―――→
・学習者にいろいろ言わせてから 文型を導き出すこと。
・「きのうは~」で進めると、発話がスムースになる。
・文の終りに「。」がないと きちんとした日本語ではない、ことを常に指導すること。
・学習者に改めて「大きな声で」と言ったのはよかった。
・A B C D の例を出し、AたりBたり、CたりDたり、AたりDたり…
どの組み合わせでもよいということを確認した方がよい。
・同じ質問を 何度も繰り返すことが大切。その方が定着する。
・お正月は 誰でも経験したのもだから、例に取り上げたのはよかった。
・大勢の人が描かれている絵は よかった。
・基本的な言い方「します・しました」だけで、初日は十分。
~したいです(希望)、~するつもりです(予定)の表現は 別の機会に
教えた方がよい。
文責
114
松枝 文恵
『うらやす日本語指導力向上講座』 第 18 回
日時: 2010 年 2 月 7 日
講師: 多仁 安代先生
[1 時限目]
日本語教育実習も 4 回目。 いつものように 8 人の外国人学習者が揃い、実習する受講者、
見学する方々にも熱が入った。
23課
実習担当: D2グループ
実習文型: 「~と、~」
§導入 「動詞の辞書形+と、~」 の文型を勉強する。
使用する動詞を マス形で示した表をボードに貼る。
押します・行きます・急ぎます・引きます・動きます・出ます・食べます・します・勉強します
手をたたきます。音が聞こえます。―→手をたたくと、音が聞こえます。
(絵)つまみを回します。音が大きくなります。―→つまみを回すと、音が大きくなります。
(絵)部屋が暗いです。電気のつまみを回します。―→つまみを回すと、部屋が明るくなります。
(絵)ドアを引きます。ドアが開きます。―→ドアを引くと、ドアが開きます。
(実物)紐を引きます。ブラインドが上がります。―→紐を引くと、ブラインドが上がります。
紐を引きます。ブラインドが下がります。―→紐を引くと、ブラインドが下がります。
(絵・券売機))キップを買います。お金を入れます。ボタンを押します。切符が出ます。
―→お金を入れて ボタンを押すと、切符が出ます。
(絵・自動販売機)お金を入れます。ボタンを押します。ジュースが出ます。
―→お金を入れて ボタンを押すと、ジュースが出ます。
学習者一人ひとりに 「~と、~」の文を作って 言ってもらう。 既出の例文でもよい。
・つまみを回すと、音が大きくなります。
・140 円入れると、切符が買えます。
・紐をひくと、ブラインドが上がります。
・お金を入れてボタンを押すと、ジュースが出ます。 (切符が出ます。 ~が出ます。)
・つまみを回すと、電気が明るくなります。
ボードに地図を貼る。 移動できる矢印(⇒の絵)を、地図上を動かして指導。
私は駅へ行きたいです。駅はどこですか。――交差点を右に曲がると、駅があります。
どうやって図書館へ行きますか。――交差点を左に曲がると、図書館があります。
交差点を左へ曲がると、郵便局があります。(公園、図書館、病院など)
交差点をまっすぐ行くと、市役所があります。
115
日本には しき(四季)があります。 春・夏・秋・冬、この 4 つの季節を 四季といいます。
春になると、花が咲きます。
夏になると、海へ行きます。
秋になると、葉っぱが色づきます。
冬になると、雪が降ります。
§展開
「__と、__ます」 の文型についてもう一度。
例文: 図書館へ行くと、本を読むことができます。
学習者に質問: 映画は好きですか。 映画を観たい時、どうしますか。
どこへ行くと、映画を見ることができますか。
――イクスピアリに行くと、映画を見ることができます。
パンが食べたい時、どこへ行きますか。 (コンビニ? スーパー?)
――パン屋へ行くと、パンがあります。
泳ぐことが好きですか。 泳ぎたい時、どこへ行きますか。
――(スポーツ)クラブへ行くと、プールがあります。
どんな料理が好きすか。 魚料理が好きです。 どこで食べますか。
――レストランへ行くと、魚料理が食べられます。
地図をボードに貼る。 地図上の目的地 (学校、魚屋など)へどうやって行くのか。
自分の現在地を地図上で変えて いろいろな言い方を学ぶ。
私は学校へ行きたいです。 どうやって行ったらいいですか。
――この道をまっすぐ行くと、学校があります。
(「まっすぐ」 の発音が難しい学習者がいた。 別に指導)
――交差点を右に曲がると、学校があります。
――交差点を左に曲がって まっすぐ行くと、学校があります。
――この道をまっすぐ行って 2番目の角を左へ行くと、右側に魚屋があります。
ダイエーを知っていますか。 おなかがすきました。 ダイエーのどこへ行ったらいいですか。
――ダイエーの1階に行くと、フードコートがあります。 (レストラン、アイスクリーム)
魚が食べたいです。
――スーパーへ行くと、魚があります。
§練習
「~と、~ます」「~と、~です」の文型
皆さん、肩を回して下さい。――肩を回すと、気持ちがいいです。
深呼吸をしてください。――深呼吸をすると、気持ちがいいです。
116
ボードに表を貼る。(元の表は全てひらがな) 組み合わせて文を作る。
暑い
暑くなります
寒い
寒くなります
涼しい
涼しくなります
暖かい
暖かくなります
桜(さくら)
紅葉(もみじ)
春(はる)
夏(なつ)
すいか
みかん
お花見(おはなみ)
海(うみ)
秋(あき)
いちご
スキー
雪(ゆき)
冬(ふゆ)
かき
もみじがり
海水浴(かいすいよく)
何人かの学習者に質問: 「あなたの国には春・夏・秋・冬がありますか。」
「はい、あります。」 「それを四季といいます。」
冬になると、寒くなります。
春になると、暖かくなります。
夏になると、暑くなります。
秋になると、涼しくなります。
夏になると、スイカを食べます。
春になると、桜が咲きます。
学習者に 「~になると、~になります」の文型で 文を作らせる。 その後コーラス。
夏になると、海で泳ぎます。
冬になると、雪が降ります。
雪が降ると、スキーができます。
春になると、桜が咲きます。 桜が咲くと、お花見に行きます。
秋になると、紅葉がきれいになります。 紅葉がきれいになると、もみじがりに行きます。
「もみじがり」 について説明を加える。
夏になると、いちごを食べます。 すいかも食べます。
みんなで大きな声で笑ってください。(学習者、受講者全員で笑う)
わらうと、楽しくなります。
[2時限目]
24課
実習担当: D1グループ
実習文型: 「あげます・あげました、 もらいます・もらいました、 くれます・くれました」
117
§導入
私は スーさんに ボールペンを あげます。
私は スーさんに ボールペンを あげました。
私は エミさんに ボールペンを あげました。
私は ジョンさんに ボールペンを もらいました。
「あげました」 「もらいました」の文型で、学習者にペアトークを指示。 順に発表。
勉強する文型の表を ボードに貼る。
<わたし> は <人>に ~を Vテ形 + あげます・あげました ――①
<わたし> は <人>に ~を Vテ形 + もらいます・もろあました ―②
14課で勉強した テ形の復習。
☆~てあげます・~てあげました
☆~てもらいます・~てもらいました。
動詞のグループ分け。 いくつかの動詞の辞書形と テ形+もらいました、の型を示す。
例: Ⅰグループ
読む
読んでもらいました
Ⅱグループ
教える
教えてもらいました
Ⅲグループ
連れて来る
連れてきてもらいました
私は 山田さんに 電話番号を教えてあげました。
私は 佐藤さんに 山田さんを紹介してあげました。
私は 佐藤さんに コンピュータの使い方を教えてあげました。
[もらいます・もらいました] の文型を示す。
私は 佐藤さんに 傘を貸してもらいました。
私は お母さんに 送ってもらいました。
☆ 「送る」 のテ形が 「おくれて」となってしまった学習者がいたので確認。
私は 先週 引っ越しました。
友だちが 手伝ってくれました。――私は友だちに 手伝ってもらいました。
お母さんが病気の時、何をしてあげますか。 お母さんに 花を買ってあげます。
お母さんが病気の時、料理を手伝ってあげました。
§展開
学習者一人ひとりとのトーク。
私は スーさんに ボールペンを貸してもらいました。
私は マーさんに ノートを見せてもらいました。
私は ハーさんに 電子辞書の素敵なカバーを見せてもらいました。
118
前の時間(P.4)の文型表 ①、②を再確認。 その後 新しい文型表 ③を提示。
<ひと> は <わたし>に ~をVテ形 + くれます・くれました ――③
スーさんは 私に ボ-ルペンを 貸してくれました。
〃
テキストを見せてくれました。
〃
本を読んでくれました。
〃
消しゴムを貸してくれました。
☆フラッシュカード= 語彙や文型などの小さな文字カード。素早く替えて練習するもの
1冊に綴じた、大きめのフラッシュカードを使って練習。
動詞の辞書形を提示し、「~てくれました」 の文型に変化させる。
貸す
――貸してくれました
買う
――買ってくれました
教える
――教えてくれました
紹介する ――紹介してくれました
説明する ――説明してくれました
絵カードを使って練習
エミさんは 私に 傘を貸してくれました。
山田さんは 私に 佐藤さんを紹介してくれました。
佐藤さんは 私に コンピューターの使い方を教えてくれました。
§練習
ボードに 3 枚の表を並べて練習。
~してあげます・してあげました
~してもらいます・してもらいました
~してくれます・してくれました
☆これらの文型は、自分(私)から見て 主に家族や友達など、
近い関係・親しい関係の場合に用いる
私は ハラさんに 花をあげました。
私は クーさんに 花をもらいました。
先生は 妹に 試験の説明をしてくれました。
T先生は 藤さんに 花をあげました。―→藤さんは T先生に 花をもらいました。
友だちの鈴木さんが病気です。 Aさんは 鈴木さんに 料理をしてあげました。
―→鈴木さんは Aさんに 料理をしてもらいました。
119
プリント配布
≪あげました・くれました・もらいました≫ のうちからどれかを選んで 文を書きこむ。
私は エンさんに 学校を案内してもらいました。
――エンさんは 私に 学校を案内してくれました。
ワンさんは スガさんに ベトナム料理を教えてあげました。
――スガさんは ワンさんに ベトナム料理を教えてもらいました。
次は、選択ではなく 答えの文を書きこむ。
問い: レストランで、誰がお金を払ってくれましたか。
答え: タダさんが払ってくれました。
問い: コピーをたくさん取るのは大変です。 誰か手伝ってください。
誰に 手伝ってもらいましたか。
答え: パクさんに手伝ってもらいました。
[3 時限目]
多仁先生の講評
―― 日本語を教えるということ ――
外国人に日本語を教えるということは、単に文法や教え方の技術を身につければいいと
いうものではなく、日本の文化や歴史、そして日本語教育の歴史も含めて、多くのことを
知っておく必要がある。
言語というものは、常に歴史的・政治的・社会状況と密接な関係があるので、教える立場の
人は 外国の事情なども知っておく必要がある。 決して教える側からそういう問題を持ち出すこと
はないが、教室では異なった国々の いろいろな地域から来ている学習者があり、お互いに難しい
感情を持っている場合も多い。 特に、日本と関係の深いアジアの国々との関係は難しく、学習者
同士の気持ちも微妙なことが多々ある。
マンツーマンで指導する場合でも、お互いに気持のよい関係を保つためには、外国の事情を正し
く認識し、できれば無意味な行き違いを避けたい。
23課(1 時限目)について
「~と、~」の文型は ある条件のもと、いつもそうなる、必ずそうなることを教える必要がある。
「~ば~、~なら、~」の文型とは明らかに異なる
自然現象などを例に出すとよい。
夏になると、海へ行きます。 ……人による。 誰でも必ず、ということはない。
地図の使用はよかったが、地図上をあれこれ動かすのは 分かりにくい場合もある。
地図で、自分の位地から目的地へどう行ったらいいか、は大切な練習。 よかった。
120
単純な例文がよい。
まっすぐ行くと、廊下があります。
練習すると、上手になりますか。
運動すると、痩せますか。
コーヒーを飲むと、目が覚めますか。
夏になると、スイカが出ます。 (「スイカを食べます」、は人による)
夏は好きですか。 はい、夏 好きです。……助詞が抜けたら、その場で注意すること。
24 課(2 時限目)について
ややこしい文型を、教える側が混乱することなく教えることができた。
「やり・もらい」 の文型については、やり・もらいという動詞の説明があってもよかった。
自分と 自分の身近な人、関係の遠い人を表す図はよかった。
例文の 「結婚するとき、何をしてもらいましたか」――この文型は難しいところ。
説明しにくく、教える方が混乱し易い。
文型の理解が難しい学習者には、その人に合った例文を板書して 確認した方がよい。
私は マウさんに ボールペンを貸してもらいました。
マウさんは 私に ボールペンを貸してくれました。
総じて、とてもよかった。
121
『うらやす日本語指導力向上講座』 第 19 回
日時: 2010 年 2 月 14 日
講師: 多仁 安代先生
[1 時限目]
この講座の実習も5回目となり、実習は本日が最終日となった。 外国人学習者8名が揃い、
カタカナで書かれた自分の名札の貼ってある席に着くのも 慣れた感じの人も何人かいた。
25 課
実習担当: E2グループ
実習文型: 「~たら~」
§導入
これは 家です。 (家の絵を示す)
これは 私の家です。
大きな家が欲しいです。
お金がたくさんあります。 (お札を出す)
―→お金がたくさんあったら、大きい家を買います。 (大きな家の絵を示す)
これは何ですか。
新幹線です。
私は 9 時の新幹線に乗ります。 今、8 時です。
―→タクシーで行ったら、乗ることができます。 (大丈夫です)
―→バスで行ったら、乗ることができません。
今のお天気は なんですか。 お天気はどうですか。 (絵を示す)
くもりです。
午後には雨が降ると思います。
―→午後に雨が降ったら、ピクニックに行きません。
絵カードを示し、学習者に文を作らせる。
海へ行きます。 釣りをします。―→海へ行ったら、釣りをします。
釣りをします。 魚が取れます。―→海へ行ったら、魚が釣れます。
「釣れます」 に直した。
お酒を飲みます。 運転しません。―→お酒を飲んだら、運転しません。
熱があります。 熱が下がります。―→熱が下がったら、サッカーをします。
学習者に小さい紙を配る。 二つの文を 一つの文にして、大きな声で言わせる。
時間があったら、手紙を書いてください。
疲れたら、少し休んでください。
122
間違いがあったら、直してください。
ゆっくり話したら、わかります。
辞書を調べたら、意味がわかります。
ボードに表を貼る。 動詞のマス形を ~たらの形にする。
板書
聞きます――聞いたら
買います――買ったら
行きます――行ったら
待ちます――待ったら
泳ぎます――泳いだら
話します――話したら
読みます――読んだら
食べます――食べたら
帰ります――帰ったら
見ます――見たら
あります――あったら
します――したら
イ形容詞
たかい ―→たかかったら
やすい ―→やすかったら
デジカメが やすかったら 買います。
デジカメが たかかったら 買いません。
§展開
「~たら~」 の文型には 仮定のかたちと、確定のかたちがあります。
あることをしたら 次に来ることが決まっている場合につかいます。
駅についたら、新聞を買います。
12 時になったら、昼ごはんを食べます。
30 分泳いだら、休みます。
電車に乗ったら、本を読みます。 (本を読みます。寝ます。日本語の単語を覚えます。)
家に帰ったら、手を洗います。
ごはんを食べたら、薬を飲みます。
昼ごはんを食べたら、学校へ行きます。
夕ごはんを食べたら、お風呂に入ります。 (ちょっとテレビをみます。)
否定のかたち。 動詞の「~なかったら、~」の表を貼る。
Ⅰグループ
Ⅱグループ
行きます――行かなかったら
食べます――食べなかったら
会います――会わなかったら
起きます――起きなかったら
話します――話さなかったら
調べます――調べなかったら
あります――なかったら
着ます―― 着なかったら
「ない」 は形容詞
123
言葉がわからなかったら、辞書で調べます。
お金がなかったら、残業します。
バスが来なかったら、歩いて行きます。
Ⅲグループの動詞の変化について
します――しなかったら
くる―――こなかったら
前件を示し、後件を学習者に考えさせる。
日本語がわからなかったら、一生懸命勉強します。
9 時の電車に乗ることができなかったら、バスで行きます。
病気の時 薬を飲まなかったら、直せません。 (直りません)
約束の時間に友だちがこなかったら、電話をかけます。
§練習
「~たら~」「~だったら~」の練習
文字カードを示して練習
家が近いです。便利です。―→家が近かったら、便利です。
安いです。パソコンを買います。―→安かったら、パソコンを買います。
使い方が簡単です。買います。―→使い方が簡単だったら、買います。
速達です。あした着きます。―→速達だったら、あした着きます。 (
☆速達の説明。
☆「着」という漢字の読み方の確認。 着く(つく)、着る(きる)、その他。
文字カードを読ませてから、「~たら~」 の文型を使って 一つの文にする。
駅まで歩きます。30 分かかります。―→駅まで歩いたら、30 分かかります。
この薬を飲みます。元気になります。―→この薬を飲んだら、元気になります。
疲れます。少し休んでください。―→疲れたら、少し休んでください。
ゆっくり話します。わかります。―→ゆっくり話したら、わかります。
各学習者に紙を配る。 それぞれの紙に、季節や 各季節の模様を書いてあるもの。
それを見て、文を作らせる。
雪が降ったら、スキーに行きます。
春になったら、花が咲きます。
暑かったら、海に行きます。
[2 時限目]
25 課
実習担当: E1グループ
実習文型: 「~ても~」
§導入
各学習者に質問。 「皆さんは泳げますか。」 結果、泳げるのは 8 人中 1 人だけ。
「今は寒いです。 寒くても暑くても、泳ぎません。」
124
動詞の変化 「~たら~、~ても~」 の使い方
ふります
ふったら
ふっても
食べます
食べたら
食べても
飲みます
飲んだら
飲んでも
落とします
落としたら
落としても
見ます
見たら
見ても
来ます
来たら
来ても
形容姿の説明――名詞にかかる言葉。 イ形容詞と ナ形容詞がある。
イ形容詞
こわい(話)、いたい(病気)、高い、安い、暑い、寒い など。
ナ形容詞
すきな(人)、きらいな(食べ物)、簡単な、 など。
名詞に 「~だったら~」 つける
雨だったら、病気だったら、先生だったら、自分だったら など。
学習者に質問
サイフを落としたことがありますか。 サイフを落としたらどうしますか。
サイフを落としたら 交番に行きます。
〃
家族か友だちに電話します。
〃
何もしません。 (諦める?)
交番の絵を示し、日本には交番がたくさんある。 千葉県に488、東京都に1.200ある。
サイフを拾ったらどうしますか。
サイフを拾ったら 交番に行きます。
〃
交番に届けます。 (話す、物を運んで届ける、二つの意味がある)
サイフを落としても、拾っても交番に行きます。 日本のルール。 何か落としても 80%は戻る。
§展開
二つの文を 「~ても~」 を使って一つの文にする。 表を貼る。
全員で読み、一人ずつ文を作る。
覚えます。 すぐ忘れます―→覚えても すぐ忘れます。
考えます。 わかりません、―→考えても わかりません。
学校が終わります。 勉強します。―→学校が終わっても 勉強します。
勉強します。 上手になりません。―→勉強しても 上手になりません。
薬を飲みます。 よくなりません。―→薬を飲んでも よくなりません。
「~ても~」 を使った練習。
イ形容詞+ても~
125
高くても 買います。
安くても 買いません。
おいしくても 食べません。
古くても 好きです。
眠たくても 勉強します。
ナ形容詞+でも~
勉強が大変でも 頑張ります。
元気でも 運動しません。
ゲームが下手でも 面白いです。
名詞+でも~
雨でも 洗濯します。
日曜日でも 仕事をします。
病気でも 会社へ行きます。
日本人でも 漢字を書けません。
前件を示して選択し、後件を埋める練習。
・忙しくても 働きます。
・便利でも 使いません。
後件を示して選択し、前件を作って一つの文にする練習。
・ラーメンは辛くても 好きです。
・漢字は難しくても 面白いです。
§練習
話す練習
「~ても」 は、ネガティブな場合にだけ使う言い方ではない。
これはコップです。 このコップは落としても 割れません。
これはマイクです。 スイッチを入れても つきません。
雨が降ります。 「雨が降っても ~」、「雨でも~」―― 同じように使います。
動詞
名詞
雨が降っても 公園に行きます。
雨が降っても 降らなくても 友だちに会います。
お化け屋敷はこわくても 入ります。
ダイエットしても やせません。
冬でも セーターを着ません。
私は便利でも ケータイを使いません。
126
[3時限目]
多仁先生の講評: これまでの実習において、どのグループも準備がよくできていて、よかった。
実習そのものも、とてもよかった。 実習を見ている側も そのうまさに だんだん慣れて
しまって、その都度評価するのを忘れてしまうほどだった。
全体的に、学習者に口を開かせるのが少ないように感じる。 せっかく8人も集まって
いたので、学習者同士のやり取りも もっとあった方がよかった。
25課(1時限目) 「~たら」 文型
・ 導入はとてもよかった。
・ 全体のコーラスの後、時間があれば 何人かに言わせて確認することも大切。
・ よくできる学習者には、その時のバランスで 先に言わせてあげてもよい。
やり過ぎると、他の学習者が意欲をなくしてしまう。
・ 一人の学習者について。 「どうなりますか」 という時、長音が聞こえなくて 「どなりますか」と
聞こえた。 似た音の言葉で 「怒鳴りますか」 という別の言葉があるので、注意すること。
・ 展開も 分かりやすくてよかった。
・ 全員に言わせるのも よかった。
・ 同じカードを もっと繰り返して使ってもよい。 せっかく作ったものは徹底して使うべき。
・ Q&A もよかった。
・ 否定の 「~なかったら、~」 の文型がよく分かっていない学習者がいた。 オウム返しに
何か言えても、理解できていない場合もあるので、注意すること。
・ 練習用の表はとてもよかった。 表は何度も いろいろな使い方ができるので、徹底利用。
・ 説明もよかった。
・ できるだけ学習者に言わせた方がよい。
・ 《速達》 の説明はよかった。 一般的には、初級のうちは難しい語彙は控えた方がよいが、
日常使う 速達などは教えた方がよい。
25 課(2 時限目) 「~ても」 文型
・ 導入の表はよかった。
・ 「皆さんは泳げますか」 という問いに対して、学習者 8 人中、7 人が泳げないと答えた。
予想外であったが、臨機応変に対応したのは よかった。
・ ~たら、~ても、の導入において、「かぜをひいたら 休みますか」 と
「かぜをひいても 休みません」 とを並べて教えるとよい。
・ 文型を パターンで覚えて繰り返すうちはよいが、文型としての理解は難しい学習者がいた。
文型を理解して 使いこなすまでなるには大変。
127
・ 雨が降っても出かけません。 (値段が)安くても買いません。 忙しくても働きます。
――これらの表現は、例文としては適当ではない。 普通は このような言い方をしない。
・ 可能動詞の前の助詞は 「が」。 漢字を 書けません。―→漢字が 書けません。
・ 洗濯しません。―→洗濯を しません。 助詞は省かず、きちんと付けるように指導する。
・ 「使いません」 が「ちかいません」 と聞こえる学習者がいた。 「誓いません」と同じ音なので
直した方がよい。 発音指導はあまりしつこくならないように、個人指導の方がよい。
・ 練習において 板書させた際、選ばれた 3 人は前で一生懸命書こうとしていたが、他の 5 人が
休んでいた。 注意が逸れている学習者には 何か質問するなどして 注目させる。
当てられた人、聞く人、見ている人など、みんなに緊張感を持たせるよう配慮する。
・ 教科書の課が進むほど、ぴったりした例文を いかに提示できるかが力量。
*水を飲んでも 太りません。 水を飲んでも 太ります。――場合によっては両方可能。
*普通の薬を飲んでも 治りません。
*朝 5 時になると 明るくなりますか。5 時になっても明るくなりません。――「と」 と比較。
*その言葉は辞書を引いても ありません(わかりません)。
*練習しても 逆立ちができません。
・ 動詞の可能形の、「ら抜き」言葉は、教える立場からは まだ使わない。
例: 食べる――食べられる (×食べれる)
見る―――見られる (×見れる)
文責
128
松枝 文恵
『うらやす日本語指導力向上講座』 第 20 回
日時: 2010 年 2 月 21 日
講師: 多仁 安代先生
配布資料: 3 枚 (14 日に配布)
[1 時限目]
いよいよ本日が最終講義となる。 1時限目は 5:30~6:45pm とし、これまで20回の
総括となった。 主に、これまであった質問 及びこの日の質問を中心にまとめられた。
7時からは修了式に移る。
質問①: 全くゼロからスタートする学習者には、どんなテキストを使ったらよいか。
日本の小学校1年生用の教科書でもよいか。
答え: 日本の小学校の教科書は、あくまでも 日本語がその年齢相応に理解できる 日本人の
子供のためのもので、外国人が初めて日本語を学ぶ教科書には適していない。
最初は 絵カードや 入門用の教科書などを使って教えた方がよい。 新聞など、日本人と
同じものを使えるのは、上級になってから。
質問②: 動詞のマス形の指導について。 マス形に適していない動詞があるか。
答え: 普通はマス形から教える。 それから ナイ形、辞書形、仮定形、意志形などをテキストに
沿って、または必要に応じて教える。 日本語として不自然な、マス形表現もある。
例: 動詞 「知る」について。 「しる」 のマス形は 「しります」だが、通常は 「しります」とは
言わない。 「しっています」 が一般的。 教える際は、次のように指導する。
「しります」 は敢えて教えない方がよい。
Q: しっていますか。
A1: はい、しっています。
A2: いいえ、しりません。
質問③: 通常 自分が早口だと感じる人は、日本語を教える際 どんな注意が必要か。
答え: 話すスピードは、そのままでよい。 慣れてくると学習者に合わせることもできるが、
日本人にも いろいろな日本語があることを教える例にもなる。 3 回言うところを
4 回言う、または 文と文の間に一呼吸置く、というくらいの注意をすればよい。
質問④: 本人の日本語の実力は初級なのに、自分は中級だと言い張る学習者がいるが、
どう指導したらよいか。
答え: よくある例である。 学校などでは、自分の力に合ったクラスできっちり勉強した方が
後々伸びる。 初級後半は、受け身、使役など難しいので この辺りがしっかり
129
身についていないと 後で困る。 一応、中級クラスに組み込み、または それなりの(中級
の)テキストを使いながら、並行して 初級をしっかり復習しながら指導するとよい。
以前、「あんた」という言葉は辞書に載っていない、と言ったが、載っている辞書もあった。
十数年前、ミクロネシアの ポナペ島に調査に行き、10 日ほど滞在した。 そこは、第2次大戦が
終わるまで 日本が統治(委任統治領)していた地域である。 当時70代後半~80代後半で
日本語がかなり堪能な人々が残っていた。 その人たちの多くが、2人称の呼び方を 「あんた」と
言っていた。
いろいろ検証したところ、その地では 現地の人たちの日本語教育のため 〔公学校〕を作り
教科書を4回出版していた。 そのうち、第2回目、第4回目の教科書をチェックしたが、「あんた」
という言葉を教えた痕跡はなかった。
当時 公学校では、午前中は学校で勉強し、午後は日本人の家庭に行って お手伝いとして
働きながら日本語を学んだ。 その時に 当時の日本人の各家庭で、現地の子供を 「あんた」と
呼んだのであろうと思われる。 その呼び方が 当時の子供に 身に付いたのであろう。
また、その地の日本人の多くが九州・沖縄など 特定の地域出身者で、その日本人の言葉
(方言を含む)が現地の子供たちに移って 残った可能性もある。
日本人も最近は、書く言葉と 話す言葉がゴチャゴチャになっている。 特に若い世代。
「ヤバい」 「ビミョー」など。 山形大学では、学生に対し 言葉の指導を始めた。 面接などで
そういう言葉を使うと、そのような人間だと思われて、マイナスのイメージを持たれたしまう
からである。
[配布資料参照]
前回(2 月 14 日)、次の週の資料として配布されたもの。
テーマ別 『中級から学ぶ日本語』(改訂版)から 1 課(3 枚)をコピー
著者: 荒井礼子、太田純子 ほか
発行: 研究社 (KENKYUSHA と表記)
この本は、前半は著者のクセのある文もあるが、後半は一般的な感覚だと思える。
初級のテキストは、どれを使っても、扱う文型やレベルは あまり変わらない。若干違うのは
敬語の扱いである。 「ご覧になりましたか」 くらいの敬語は、本によってかなり異なる。
中級は幅が広く、急に難しくなる面もあるので、1 冊の本を初めから順にやるのではなく
適当に選んで集中的に指導してもよい。 項目によっては 読んで流すだけでもよい。
130
このコピー資料の元の書籍には、学習者の書き込みが少し残っていた。
先生が例文を読むのを聞きながら、その学習者が漢字に振り仮名をうったと思われる。
面白い例である。
・使って――すかって
P.2 例文 【たとえる】
・失礼――しすれい
・小判――こうばん
初級で出てきた文型や表現がたくさん出てくる。
ざっと復習ができる。 また、丁寧に復習しながら読み進むこともできる。
* 「忙しくて忙しくて~」
イ形容詞のテ形をくっつけた 「~て、~て」 文型
* 「誰でもいいから」
~でも。 強調した言い方。 一人でもいい。
例: 試験の時は1点でも多く~。 1円でも多く~。 一人でも多く~。
* 「手伝ってもらいたい」
~てもらう、~てあげる、~てくれる の表現
* 「そんな時」
そのような時
* 「借りたいほどだ」
~ほど―― 程度を表す表現
例: 西船橋駅は人が多くて、落ちてしまう人が出てきそうなほどだ。
ハイチでは ひどい地震で、国が成り立たないほどだ。
* 「手伝ってくれても~」
~ても の表現
* 「~と思って、こう言うのです」
このように言う、の意味
* 「~言いたければ」
~ば の復習――仮定の表現
* 「猫の額ほどの」
猫の額とはどこか、質問して確認。
* 「猫に聞かれたら」
受け身の表現
* 「~てしまいそうです」
~てしまう の表現。 いくつかの例文をあげて比較・確認。
* 「昔のお金ですから」
~ですから―― 理由を示す。 「から」について質問を準備。
* 「今なら」
~なら―― 仮定の表現
* 「持っていても」
~ても の表現。
* 「全然使わずに」
~ずに = ~ないで
例: メガネがなくても…
否定の表現。 使い方の例を示す。
例: メガネをかけずに~。辞書を引かずに~。 窓をあけずに~。鍵
をかけずに~。 エアコンを消さずに~。
☆「全然~ない」 という表現について
これまでは 否定形の意味に使うのが一般的。
最近は「全然 美味しい」など、肯定的な意味合いに使われることも多いが おかしいか。
明治の文豪・夏目漱石も、文中で肯定的に 「とても」 という意味で使っている。
中級になると、こういう疑問が 学習の興味につながることもある。
131
*「それほど役に立つとは思えません」
それほど~ない・でもない
否定の程度を表す。
「役に立つ」 の意味を理解しているかどうか要確認。
*「猫に小判だね」
どんな時に使いますか
*「是非~してください」
「是非」 の文法的な使い方、表現方法を練習。
細かい表現の復習・確認については、文を読みながらやってもいいし、練習問題等で
触れてもよい。 本文の後の、[答えましょう] [使いましょう] をやってからでもよい。
[使いましょう]
A 比喩(ひゆ)の表現
・スカイツリーの上から見ると、家がおもちゃのようです。/マッチ箱のようです。
・リンゴのような ほほ。 (名詞)
・魚のように 泳ぐ。 (動詞)
B 「たとえ~ても」 強調した言い方
・みんなで掃除をしても きれいになるとは思いません。
・たとえ病気が治っても 元のようには動けない。
・景気が回復しても バブルのような景気はもう来ないだろう。
C 「~ほど~はない」
説明するよりも 例文をたくさん示して、使って覚えさせた方がよい。
☆☆ 文をたくさん作らせる。 文法的に合っていて、日本語として違和感のないもの。
学生はどうにかして文を作ろうとする。 辞書をひいたり、他の人にたずねたり、してでも
作ろうとするが、そういう勉強に慣れていない学習者もいる。 ある程度 訓練が必要。
初級、ゼロからの学習者は、大変だが それなりの面白さも生まれる。
P.4 の[まとめましょう] [書きましょう] は使いにくい面がある。 初級と違い、その場に
合わせて用いればよい。 特に[書きましょう]の Bは、書くのが得意でない学習者には
つらいかもしれない。
再び受講者の質問
質問⑤: 「回復したそうだ」 と 「回復したのだそうだ」とは、どう違うか。
答え: 前後の文脈が出ていなくて、これだけだとよく分らない。 後者の「~のだそうだ」の方が
より客観的な感じではあるが、あまり捉われるほどのことではない。 もっと 大意を
重要視した方がよい。
132
質問⑥: 『みんなの日本語』Ⅱが終わるころ、それと並行して この『中級から学ぶ~~』を
使って指導した。 その学習者が 「難しい。本を勉強するより、会話をやりたい。」と
言い出したが、どうしたらいいか。
答え: 「会話をやりたい」と言いだすケースは多い。 折角なら日本できちんと勉強した方がよい。
初級の後半は難しい。 その時点では中級のテキストを出さない方がいいが、
この 『中級から~~』は、中級のテキストの中では 易しい方である。 これが難しいなら、
初級の力が不足しているのではないか。 初級のテストで80%くらい取れないと、本当は
中級へ進むのは難しい。
質問⑦: 聞き取り(聴き取り)を上達させるには?
答え: 導入の時、下を向かせない。 聞き取って、理解させる。 最初に全部聞かせて
大意を取らせる。 そのあと、短い文から長い文へ 区切りを替えて繰り返す。
ディクテーションをどんどんやる。 テープ・DVDは 本を見ないで聞く練習を。
質問⑧: 他の人の言うことは分かるが、自分でしゃべるのは うまくできない。
答え: Q&Aで的確な答えを言う練習を重ねる。
漢字圏と非漢字圏の学習者の差は?
漢字圏の学習者は 「わかった!」と思いがち。 非漢字圏の学習者は、「大体わかった。」と
思う。 中級の勉強では 漢字圏は有利だが、それでも個人差の方が大きい。 最後は
積み重ねが大切。
ベトナム、中国は 比較的積み上げることに慣れているが、中には慣れていない学習者も
いる。 きちんとした日本語に慣らしながら、積み上げていく以外に 方法はない。
地域ボランティアで指導する場合、「試験で○○点以上取らなければダメ」 という基準や
厳密なレベル判定はできないが、オウム返しで「何となく、大体わかった」 で続けても、
伸びない。 耳で聞くだけではよく分からないことが多いが、読むと明確に分かることもある。
教え方として 「これが一番」 というものはなく、どのレベルでも、どんな学習者の場合でも
試行錯誤しながら 続けていくものである。 この講座において学んだことを、それぞれの
立場・場面で活かしていって欲しい。
文責
133
松枝 文恵
うらやす日本語指導力向上講座を終えて
2010 年 2 月 21 日で講座は幕を降ろしました。毎日曜日の夜 3 時間、8 ヶ月に亘った受講を
30 名の参加者の殆どが最後まで続けられたことは、主催者として望外の喜びでした。
2009 年 3 月に文化庁の「生活者としての外国人のための日本語教育委託事業」を知った時に
は申し込み締め切りまでに3週間しかありませんでした。早速明海大学桜井隆教授に相談に
行き指導いただき、企画書を提出しました。5 月に文化庁より採択通知が届き、広報うらや
すでの公募、市川、習志野、船橋の国際交流協会への公募依頼、数回の準備会を経て、定員
30 名の参加者が集まり、7 月 26 日の開講に漕ぎ着けました。
講義に加え、明海大学の留学生の日本語授業の参観、具体的文型を例にした教案、導入、Q&A
の作成をしたシミュレーション、そして一人 20 分ずつ 8 名の外国人学習者への実際の授業実
習、この 3 つが講座をより実り多いものにしました。
講座内容もさることながら、受講者を最後までひきつけたのは 20 回のうち 16 回を担当して
いただいた多仁安代先生の熱意と、エネルギーだと思います。熱意は受講生の熱意を反映さ
せたものと思いますが、さらに考えますとそのエネルギーは外国人学習者に対する先生の愛
情から生まれるのではないかと思います。なぜなら、習った我々がより効率的に正しい日本
語を学習者に教えれば、それは学習者にとって大きな幸せだからです。
多仁先生は最後の授業で「この講座において学んだことを、それぞれの立場・場面で活かし
ていって欲しい。」と言われましたがその通り実行したいものです。
2010 年 3 月 7 日
うらやす日本語指導力向上講座実行委員;
榎本宏邦、小泉保子、谷口優子、能登洋子、藤原豊太郎、松枝文恵
134
うらやす日本語指導力向上講座を終えて
2010 年 2 月 21 日で講座は幕を降ろしました。毎日曜日の夜 3 時間、8 ヶ月に亘った受講を
30 名の参加者の殆どが最後まで続けられたことは、主催者として望外の喜びでした。
2009 年 3 月に文化庁の「生活者としての外国人のための日本語教育委託事業」を知った時に
は申し込み締め切りまでに3週間しかありませんでした。早速明海大学桜井隆教授に相談に
行き指導いただき、企画書を提出しました。5 月に文化庁より採択通知が届き、広報うらや
すでの公募、市川、習志野、船橋の国際交流協会への公募依頼、数回の準備会を経て、定員
30 名の参加者が集まり、7 月 26 日の開講に漕ぎ着けました。
講義に加え、明海大学の留学生の日本語授業の参観、具体的文型を例にした教案、導入、Q&A
の作成をしたシミュレーション、そして一人 20 分ずつ 8 名の外国人学習者への実際の授業実
習、この 3 つが講座をより実り多いものにしました。
講座内容もさることながら、受講者を最後までひきつけたのは 20 回のうち 16 回を担当して
いただいた多仁安代先生の熱意と、エネルギーだと思います。熱意は受講生の熱意を反映さ
せたものと思いますが、さらに考えますとそのエネルギーは外国人学習者に対する先生の愛
情から生まれるのではないかと思います。なぜなら、習った我々がより効率的に正しい日本
語を学習者に教えれば、それは学習者にとって大きな幸せだからです。
多仁先生は最後の授業で「この講座において学んだことを、それぞれの立場・場面で活かし
ていって欲しい。」と言われましたがその通り実行したいものです。
2010 年 3 月 7 日
うらやす日本語指導力向上講座実行委員;
榎本宏邦、小泉保子、谷口優子、能登洋子、藤原豊太郎、松枝文恵
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