グローバル実践型教育 実施報告書 - 岡山大学 地域総合研究センター

平成27年度
グローバル実践型教育
実施報告書
-森林利用グローバルインターンシップ
+ UBC Co-op in Okayama -
平成27年11月
岡山大学地域総合研究センター
平成27年度 グローバル実践型教育 -森林利用グローバルインターンシップ+UBC Co-op in Okayama- 実施報告書
目 次
1.はじめに 1
2.森林利用グローバルインターンシップとUBCのCo-opプログラム 2
2-1 実践型教育国際シンポジウム 2
2-1-1 開会挨拶 3
2-1-2 【セッション1】日本とカナダの林業、林産業の比較 3
2-1-2-1 カナダの林産業 3
2-1-2-2 カナダから見た日本の林業と林産業 4
2-1-2-3 新しい日本の林産業-CLT- 5
2-1-3 【セッション2】UBCのCo-opプログラムとスーパーグローバル大学構想 8
2-1-3-1 UBC Co-opプログラムの概要と運営 8
2-1-3-2 Co-opプログラムにおける学生と企業のマッチング 9
2-1-3-3 スーパーグローバル大学の理念と実践型教育 10
2-1-3-4 経済界が求めるグローバル人材 11
2-1-4 【セッション3】パネルディスカッション「岡山大学グローバル実践型教育」 12
2-1-4-1 岡山大学グローバル実践型教育プログラム(案) 12
2-1-4-2 パネルディスカッション 13
2-1-5 【閉会】 18
2-2 UBCのCo-opプログラム 20
2-2-1 Co-opプログラムとは 20
2-2-2 カリキュラム 20
2-2-3 Co-opプログラムのメリット 20
2-2-4 Co-opプログラムの流れ 21
2-2-5 岡山におけるCo-opプログラム 22
2-3 森林利用グローバルインターンシップ 24
2-4 両者の関係 29
3.企画・運営の組織と準備 31
3-1 組織 31
3-1-1 包括連携協定 31
3-1-2 林業インターンシップ 33
3-1-3 平成27年度の試行 36
3-2 受入準備 37
3-2-1 森林利用グローバルインターンシップ 37
3-2-2 UBCの受け入れ学生の選考 37
3-2-3 実践型教育国際シンポジウム 40
3-2-4 UBC学生の来日準備 41
3-2-4-1 受け入れ手続き 41
3-2-4-2 作業資材の準備 41
3-2-4-3 宿泊 41
3-2-5 専門用語集 42
3-2-6 森林利用グローバルインターンシップの事前教育 43
3-3 受入後の対応 44
3-3-1 導入教育 44
3-3-2 受け入れ企業・機関での就業・研修 44
3-3-3 事後研修と成果報告会 55
3-3-4 就業期間中のケア 55
3-3-5 休日プログラム 55
4.平成27年度に実施した実践型教育プログラムの課題と展望 56
4-1 就業期間中のヒアリングと報告会 56
4-1-1 UBC学生 56
4-1-1-1 UBC学生からの感想 56
4-1-1-2 UBC学生が学んだこと 56
4-1-1-3 UBC学生から挙げられた課題 57
4-1-1-4 UBC学生から企業(院庄林業)および岡山大学へ挙げられた提案 57
4-1-2 岡山大学生 57
4-1-2-1 岡山大学生からの感想 57
4-1-2-2 岡山大学生が学んだこと 57
4-1-2-3 岡山大学生から挙げられた課題 58
4-1-2-4 岡山大学生から企業(院庄林業)および岡山大学へ挙げられた提案 58
4-1-3 企業 58
4-1-3-1 企業からの感想 58
4-1-3-2 企業における効果 59
4-1-3-3 企業から挙げられた課題 59
4-2 「森林利用グローバルインターンシップ」及び「Co-op in Okayama」成果報告会 61
4-2-1 成果報告会概要 61
4-2-2 「開会の挨拶」および「プログラムの概要説明」 62
4-2-2-1 開会の挨拶 63
4-2-2-2 プログラムの概要説明 63
4-2-3 学生による発表内容 64
4-2-3-1 岡香菜子・植田真妃(服部興業株式会社) 65
4-2-3-2 織田桜子・西中麗奈(國六株式会社) 66
4-2-3-3 塩野谷英明・隅崎翔真(銘建工業株式会社) 67
4-2-3-4 瀬崎景己(院庄林業株式会社) 67
4-2-3-5 下山将輝(倉敷木材株式会社) 68
4-2-3-6 福岡千明(岡山県森林研究所) 69
4-2-3-7 Matt McQueen 69
4-2-3-8 Hugh Grady 71
4-2-4 総合討論と総評 73
4-2-5 閉会の挨拶 74
4-2-6 口頭発表(原稿) 75
4-3 課題と展望 91
4-3-1 派遣・受け入れのメリットとデメリット 91
4-3-1-1 企業 91
4-3-1-2 大学 91
4-3-1-3 将来 91
4-3-2 学生のメリットとデメリット 91
4-3-2-1 メリット 92
4-3-2-2 デメリット 92
4-3-3 実践型教育の教育効果 93
4-3-4 期間の妥当性 93
4-3-5 運営方法 94
4-3-5-1 充実させなければならないもの 94
4-3-5-2 期間中の企業訪問と移動の経費負担について 95
4-3-5-3 充実していく資料 95
4-3-6 UBC学生とGI学生の関係 95
4-3-7 経費 95
5.平成28年度以降の実践型教育プログラムの展望 97
5-1 来年度の枠組み 97
5-2 検討課題 98
5-2-1 UBCでの対象の拡大 98
5-2-2 時期と期間 98
5-2-3 就業内容と大学の役割 98
5-2-4 交換留学制度の確立 99
6.むすび 101
参考:受け入れ企業・機関紹介 103
はじめに
1.はじめに
岡山大学地域総合研究センター
センター長 荒木 勝
岡山大学は、平成26年度文部科学省「スーパーグローバル大学創成支援(Top Global University
Project)
」に採択され、我が国のグローバル化を牽引する大学として、世界で活躍できる『実践人』を
育成することに取り組んでいる。これは、本学の学生が異文化・異分野・異社会に関わることで、リベ
ラル・アーツ教育と語学力強化、グローバルな現場で通用する実践知教育、国際社会に繋がる専門知識
を修得させようというものである。
そのプログラムの一つが、カナダのブリティッシュコロンビア大学(UBC)と岡山県内の企業、自
治体等とで協働ですすめる「グローバル実践型教育・岡山大学版Co-opプログラム」である。本学の学
生とUBCからの留学生が学部横断でチームを組み、各自の専門分野をもちつつ、座学で得た知識をも
とに、企業等を現場とした実社会で課題解決に向けた適切な判断能力を修得することを目的としている。
このプログラムは、一方で、企業・地域等においてグローバルな視点による課題解決、活性化につな
げることを目的とする就業教育プログラムであり、学生には企業・地域に対し具体的な貢献が求められ
る。他方で、大学としては、学生にグローバルな実践知を身に着けさせる。この教育プログラムは、ま
さに企業・地域と大学との互恵性を核とする日本では稀にみる新しい取組みである。
こうした実践型社会連携教育プログラムの成功に向けて不可欠なのが、本学・UBC・企業等3者の
信頼関係の構築である。これはすでに「林業教育コンソーシアム」という形に結実している。またこの
教育プログラムの実施に当たっては、UBC教員を交えた検討会、UBC大学と岡山大学との関係を繋い
でいただいたカナダ・バンクーバー在住の伊藤アドバイザーの関与、企業、研究所等の担当者との度重
なる協議、アゴラの教員による視察等、多くの協議が積み上げられて、プログラム開始に至っている。
以下の報告は、関係者の多大なる努力の成果の結晶である。読者はこの報告集から今後の目指すべき
実践型社会連携教育の、岡山大学版Co-opプログラムの可能性を見いだすことができると確信する次第
である。
1
1
2
森林利用グローバルインターンシップとUBCのCo-opプログラム
2-1 実践型教育国際シンポジウム
2.森林利用グローバルインターンシップとUBCのCo-opプログラム
2-1 実践型教育国際シンポジウム
2015年3月19日に岡山大学鹿田キャンパスのJunko Fukutakeホールで「グローバル実践型教育プロ
グラムの構築に向けて」と題して、国際シンポジウムを開催した(資料1)。
ー スーパーグローバル大学創成支援事業 ー
グローバル実践型教育プログラムの構築に向けて
プログラム
【開会】
プログラム
13:00-13:10 開会挨拶
荒木 勝 (岡山大学理事・副学長(社会貢献・国際担当))
13:10-13:30 カナダの林産業
Robert Kozak (UBC森林学部教授 )
【セッション1】 日本とカナダの林業、林産業の比較
伊藤公久 (K. Ito & Associates Ltd.取締役)
13:30-13:50 カナダから見た日本の林業と林産業
実践型教育国際シンポジウム
安東真吾 (銘建工業株式会社取締役総務部長)
13:50-14:10 新しい日本の林産業-CLT-
【セッション2】UBCのCo-opプログラムとスーパーグローバル大学構想
14:20-14:40 UBC Co-opプログラムの概要と運営
Simon Ellis (UBC森林学部准教授)
15:20-15:40 経済界が求めるグローバル人材
萩原邦章 (萩原工業株式会社代表取締役・岡山経済同友会代表幹事)
Sudeh Jahan (UBC林産学科Co-opプログラムコーディネーター)
14:40-15:00 Co-opプログラムにおける学生と企業のマッチング
岡山大学が提案する「世界で活躍できる実践人を育成するPRIMEプログラム」は、国内外の幅広い分
荒木 勝 (岡山大学理事(社会貢献・国際担当)・副学長)
15:00-15:20 スーパーグローバル大学の理念と実践型教育
野において中核的に活躍可能な高い総合的能力と人格を備えた人材育成を目指します。そのPRIMEプロ
グラムの中心となるグローバル実践型教育は、地域・企業・国際社会の現場体験による課題解決に向け
【セッション3】パネルディスカッション「岡山大学グローバル実践型教育」
た実践知の習得を目指しており、21世紀の世界を担う新しい学生教育の展開です。
吉川 賢 (岡山大学大学院環境生命科学研究科教授)
15:50-16:50 司会:
カナダ、ブリティッシュ・コロンビア大学(UBC)のCo-opプログラムは、長期就業体験により地域と
岡山大学グローバル実践型教育プログラム(案)
企業に貢献し、その経験を自らの学習にフィードバックするプログラムです。岡山大学は平成27年度、
三村 聡 (岡山大学地域総合研究センター副センター長)
パネラー: Simon Ellis (前出)・伊藤公久(前出)・安東真吾(前出)・ 萩原邦章(前出)・ 三村 聡(前出)
【閉会】
岡山県および県内企業と協力してUBCの学生を受け入れ、グローバル実践型教育の一つのヒントとして
16:50-17:00
Co-opプログラムの実践型教育としての特徴を検討することになりました。
本シンポジウムは、UBCからCo-opプログラム関係者と県内企業の方々を招き、岡山大学グローバル
-----------------------------------------------------------------------------------------------------------坂本圭児 (岡山大学大学院環境生命科学研究科教授)
総合司会・進行
実践型教育プログラム構築に向けた第一歩として忌憚のない意見交換が行われることを期待して開催さ
許 南浩 (岡山大学理事・副学長(教育担当))
閉会の辞
れます。
登壇者・司会
安東真吾
銘建工業株式会社取締役総務部長。一般社団法
人日本CLT協会事務局長、株式会社くまもと製
材監査役ほか。
(登檀順・敬称略)
荒木 勝
岡山大学理事・副学長(社会貢献・国際担当)。
専門分野は政治哲学・西洋政治史で研究領域は
アリストテレス「政治哲学」。
Robert Kozak
ブリティッシュ・コロンビア大学森林学部教
授・林産学科長。研究領域は林業における持続
可能な事業経営など。
伊藤公久
K. Ito & Assoc. Ltd 代表取締役。カナダ住宅金
融公社の国際住宅技術指導員を務め木造建築の
推進活動と共に森林育成、持続可能性を追及。
2015年
Simon Ellis
UBC森林学部准教授。学部生の木材加工プログ
ラム担当。木材の品質管理評価手法を研究。木
材科学技術教育の開発に従事。
Sudeh Jahan
UBC林産学科Co-opプログラムコーディネー
ター。国内外の木材産業と連携しCo-opプログ
ラム運営や学生へのキャリアアドバイスに従事。
萩原邦章
岡山経済同友会代表幹事。岡山県倉敷市にて合
成樹脂繊維のフラットヤーンを主力製品とする
萩原工業株式会社代表取締役。
3 月 1 9 日 ( 木 ) 13:00-17:00
岡山大学 鹿田キャンパス
Junko Fukutake ホール
【申込み方法】
お名前・団体名をご記入の上、下記までメールまたはFAXでお送り下さい。
当日参加も可能です。
【お申込み・問い合わせ先】
岡山大学地域総合研究センター
〒700-8530 岡山市北区津島中1-1-1 工学部15号館
Tel/086-251-8855/Fax086-251-8491
E-mail [email protected]
担当:絢野
2015年
主催: 岡山大学
後援: University of British Columbia 岡山県
林業教育コンソーシアム 岡山経済同友会 山陽新聞社
3 19
許 南浩
岡山大学理事・副学長(教育担当)。東京大学医
科学研究所助教授、岡山大学教授・医学部長等
を経て2011年より現職。
--------------------坂本圭児
岡山大学大学院環境生命科学研究科教授。緑地
生態学研究室。専門分野は森林生態学と二次林
保全。
吉川 賢
岡山大学大学院環境生命科学研究科教授。森林
生態学研究室。専門分野は乾燥地緑化と樹木生
態生理学。
【交通アクセス】
■岡山駅東口バスターミナル「5番乗り場」から「2H」系統の岡電バスで
「大学病院」構内バス停下車 約10~15分
■岡山駅東口バスターミナルから 「12」・「22」・「52」・「62」・
「92」系統の岡電バスで「大学病院入口」下車 約10~15分
■岡山駅前(ドレミの街前または髙島屋入口)から八晃運輸の市内循環バス
「医大めぐりん」で「大学病院入口」下車 約10~15分
■岡山駅タクシー乗り場から タクシーで約5~10分
※ホールには専用の駐車場がございません。公共交通機関をご利用ください。
【申込み方法】
お名前・団体名をご記入の上、下記までメールまたはFAXでお送り下さい。
当日参加も可能です。
木)
13:00-17:00
月
三村 聡
岡山大学地域総合研究センター教授 ・副セン
ター長。岡山市総務・市民政策審議会委員、岡
山放送審議会委員など。
日(
【お申込み・問い合わせ先】
岡山大学地域総合研究センター
〒700-8530 岡山市北区津島中1-1-1 工学部15号館
Tel/086-251-8855/Fax086-251-8491
E-mail [email protected]
担当:絢野
岡山大学 鹿田キャンパス
Junko Fukutake ホール
Photo by (c)Tomo.Yun (http://www.yunphoto.net)
資料1 国際シンポジウムのポスター(表と裏)
このシンポジウムは、岡山大学が提案した「世界で活躍できる「実践人」を育成する(PRIME)プ
ログラム」は、平成26年度文部科学省の「スーパーグローバル大学創成支援」事業に採択され、国際化
の推進体制の整備と、教育改革を進めている中で開催したものである。特に、学生が主体的に知の創造
に参画しうる能力を涵養することによって、国内外の幅広い分野において中核的に活躍しうる高い総合
的能力と人格を備えた人材を育成することのできる教育を目指したグローバル実践型教育は、地域、企
業、国際社会の現場(グローバルな現場)を体験し、課題解決のための実践知を修得することを目指し
ており、PRIMEプログラムの中心となるものであり、21世紀の世界を担う学生教育の新しい展開である。
そこで、平成27年度から全学の教養科目において実践型教育を開始し、順次専門科目に拡大する予定
である。そのためにはグローバルな現場体験を含めた新しい教育システムの構築が必要である。
ブリティッシュコロンビア大学(UBC、カナダ)のCo-opプログラムは、修学期間を5年に延ばした
上で、5回の長期就業体験(各4ヶ月)を経て、実務経験を地域・企業にフィードバックするプログラ
ムであり、本学が目指すグローバル実践型教育の一つのヒントとなる教育システムである。そこで、平
成27年度に岡山県内の企業および岡山県と協力して、UBCのCo-op学生を受け入れ、Co-opプログラム
の実践型教育としての特徴を検討することとした。
本シンポジウムは、岡山大学が国際社会との連携を視野に入れたグローバル実践型教育プログラムを
構築するための第一歩として、PRIMEプログラムにおける実践型教育の理念と、UBCのCo-opプログ
2
森林利用グローバルインターンシップとUBCのCo-opプログラム
2-1 実践型教育国際シンポジウム
ラムの課題と成果についての理解を深めることを目的に企画した。したがって、岡山大学版実践型教育
プログラムの構想について忌憚のない意見交換が行われることを期待するものであった。
以下はそのシンポジウムの中での発表内容や質疑応答をまとめたものである。
2-1-1 開会挨拶
荒木 勝(岡山大学理事・副学長(社会貢献・国際担当))
3年前カナダを訪問した際に、カナダの建築家の伊藤さんから、企業と大学が共同で学生を教育する
コーププログラムを紹介していただきました。入学から卒業までコーププログラムに参加しない学生と
同じ教育を受けながら、企業や地域で現場に深く関わって協同するプログラムを私は初めて知りました。
そこで、何とかこの教育システムを日本
の風土に合わせる形で展開できないかと
考えて、伊藤さんと相談しながらようや
く今日を迎えることができました。
いま世界の大学は大学教育をめぐって
大きな岐路に立たされています。アジア
の主要な大学が世界ランキングで急速に
上昇して行く中で、欧米の大学でこれま
での教育システムの改革が検討され始め
ています。我が国の大学教育の将来性は
企業や地域と大学が協同したシステムを
写真1 会場風景
どう構築していくかにかかっているので
はないかと思います。そこで、ブリティッシュコロンビア大学の先進的な事例を徹底的に研究し、お互
いに切磋琢磨しながら、新しい21世紀の大学の教育像を提供したいと考えています。
2-1-2 【セッション1】日本とカナダの林業、林産業の比較
2-1-2-1 カナダの林産業
Robert Kozak(UBC森林学部教授)
カナダの林業の概要を説明します。カナダの森林は34800万ヘクター
ルで、世界の森林の9%を占めます。その93%は公有林です。13500万
ヘクタールは認証を受けて木材生産に利用される森林であり、3500万ヘ
クタールは森林公園になっています。しかし、伐採や気候変動、虫害に
よって森林面積は縮小しつ
つあります。
カナダの森林は生態的に
多様性が高く、針葉樹林が
写真2 Kozak教授
76%、針広混交林が16%、広葉樹林が11%となっています。
東部の森林はカエデとトウヒが優占し、西に向かうとトウ
ヒ林、マツ林、ポプラ林となります。ブリティシュコロン
ビア州の海岸沿いはマツ、スギ、ヘムロック、ベイマツ、
図1 カナダの森林分布
米ツガが優占します。カナダから日本に輸出している木材
3
2
2
森林利用グローバルインターンシップとUBCのCo-opプログラム
2-1 実践型教育国際シンポジウム
のほとんどは西海岸からのものです。
木材伐採量は年間の森林の生長量以下で、森林を持続的に利用するための伐採限度量よりもはるかに
少ない量です。それでも林業がGDPに占める割合は高く、林業従事者が21万6500人、その他間接的従
事者が32万人います。その内の5%はネイティブカナディアンです。平均年収は5600ドル/人で、全国
平均より19%高くなっています。
カナダのGDPは2008年から2009年にかけて起こったアメリカの住宅危機の影響で減少しました。そ
の間、木材の輸出量は増加しましたが、パルプの輸出量は減少しました。そのため雇用が減りましたが、
昨年あたりから改善の兆しが見えています。中国への建築材の輸出が近年増加していますが、2008年の
アメリカの住宅危機で住宅着工件数が減少したため、多くの製材工場が閉鎖し、建築材生産からパルプ
図2 カナダのGDPに占める森林生産の割合
図3 カナダの木材の輸出先
生産に生産構造を転換しました。そのため、建築材の需要増加に十分対応することができていません。
さらに、パルプについては南洋の安価な材が強力な競争相手となっています。また、バイオ・エネルギー
用など建築材以外の低品質な材の需要が高まっています。しかし、日本は1970年代からカナダにとって
非常に重要な市場であり、米スギや米ツガが住宅用材として輸出されています。
カナダでは付加価値の高い製品として直交積層板
(CLT)に代表される木質パネルの生産が拡大していま
す。CLTは虫害を受けた木材も利用でき、高層の木造
建築にも利用できます。
カナダも日本も質の高い木の文化を持っています。
BC州では「wood first act」という、公共の建造物に木
を使うことを義務づけた法律があり、多くの巨大な公共
施設が木を用いて造られています。
写真3 巨大な木造公共施設
2-1-2-2 カナダから見た日本の林業と林産業
伊藤 公久(K. Ito & Associates Ltd.取締役)
カナダは森と湖の国です。東か
ら西まで8000キロの間にたくさ
んの種類の自然があり、その中に
3400万人の人が暮らしています。
その人々が自然をどう利用し、そ
の価値を次代にどのように伝え
写真4 伊藤氏
ていくかが課題です。カナダの先
4
写真5 木造の歩道
森林利用グローバルインターンシップとUBCのCo-opプログラム
2-1 実践型教育国際シンポジウム
住民の言葉に、「地球は人々に属するのではなく、
人間が地球に属している」というのがあります。
含蓄のあるフレーズだと思います。自然を知るに
は自然と接することができなければなりません。
人が歩く道が確保されると共に、自然を壊さずに
自然にどうアクセスするかが大きな課題です。
BC州の面積はおよそ9250万ヘクタールで、日
本の2.5倍あります。その74%が森林です。その森
林の大敵は山火事です。原因はキャンプ場での火
図4 BC州(カナダ)の火災件数と面積
の不始末や夏の乾燥です。子供たちへの教育で人災を少なくしようとしています。いったん火事が起こ
ると消火に億単位の費用がかかります。したがって、山火事の防止はカナダの森林にとって喫緊の課題
です。
カナダの製材工場は非常に大きく、木材製品の供給量は安定しています。その半分以上が東南アジア
に輸出されており、今後日本への輸出も拡大することが望まれています。
北米ではプレカットやプレハブの利用はまだ限られていて、日本と非常に対照的です。日本のプレハ
ブやプレカットの技術は非常に優れており、輸出産業として高い可能性があると思います。
BC州では「Wood First Act」で病院、学校などの公共建築物には木材を使用しなければなりません。
そのため年間3000億円程度の公共施設に多くの木材が利用されています。
ところで、無垢の木材は非常に取扱いが難しいものです。乾燥すると収縮したり、反ったりします。
あるいは曲がったり、割れたりします。そこで、異方性を解消し、高い強度をもたせるために、30年近
く前から構造用集成材などのエンジニアドウッドが開発されてきています。今では曲げ強度、剪断力、
圧縮強度、引張強度が無垢材の倍以上のものができており、高層ビルの建築資材としても利用できるほ
どになっています。また、フィンガージョイント工法によって高い歩留まりを実現しています。
日本には長い木の文化があり、木を利用する高い技術があります。日本の木造建築の技術を世界に広
めていくことで新しい木の文化が生まれると思います。
産学が協力して教育カリキュラムを構築することで社会との結びつきが強くなります。また、産と官
が連携して政策を推進しなければ、さまざまな不要な規制が産業の発展を阻害することになります。そ
して学と産はグローバルなポリシーをもっと共有し、国際人の育成をはかる必要があります。
最後にもう一度カナダの先住民の言葉、「我々は地球を先祖から受けついたのではなくて、子供たち
から借りている」を引用し、未来に残す地球を美しいものにしたいと願っています。
2-1-2-3 新しい日本の林産業-CLT安東 真吾(銘建工業株式会社取締役総務部長)
まず、当社のバックボーンを簡単に説明し、CLT生産の背景を理解してい
ただきます。当社は、①木質構造材生産と、②木質バイオマス生産の二本柱で
事業を進めています。構造材の事業は製材から初めて構造用集成材、エンジニ
アドウッドを生産しています。大断面集成材は木造建築に利用されるので、木
構造の設計や計算を行っています。構造用の集成材工場はたぶん世界最大クラ
スです。集成材の要素技術と建築に関する知見の上にCLTが開発されています。
写真7 安東氏
一方、木材工業や木材産業の発展には廃材などのバイオマスをきちんと使い
5
2
2
森林利用グローバルインターンシップとUBCのCo-opプログラム
2-1 実践型教育国際シンポジウム
切り、使いこなせないものは燃料などとして社会に還元するこ
とが欠かせません。したがって、木質バイオマス生産は構造材
生産と車の両輪です。木質バイオマスの利用を促進するために
新しく建設した発電所を4月から操業する予定です。
日本の林産業を空間軸と時間軸で示します。まずは空間的に
カナダ、オーストリアと並べてみます。カナダは日本やオース
トリアに比べて圧倒的に森林面積が広く、丸太の生産量、伐採
量も圧倒的に多いのですが、寒冷地のため森林面積当たりの伐
図5 銘建工業の軌跡
採量は多くはありません。それでも生産量が非常に多く、規模が違うので、日本と単純に比べることが
できません。BC州と比較する方が分かりやすかったかもしれません。オーストリアは山の険しさや傾
斜が日本と似ていますが、厳しい条件の中で、生産体系が日本
よりも進んでいます。たとえば森林面積は日本の方が圧倒的に
広いのですが、伐採量は同じで、とても効率よく伐採していま
す。輸出入で比べると、日本は木材をたくさん輸入し、ほとん
ど輸出していません。オーストリアの林業は完全に輸出型産業
です。カナダも非常に輸出量が多いです。
日本の林産業の構造的な問題の一つはバイオマス資源の利用
図6 カナダ、日本、オーストリアの比較
用途です。林業先進国と比べて、日本は薪炭材のようなエネル
ギー用の利用が全丸太使用量の1%と非常に少ないのです。ドイツは15%、アメリカは13%、オースト
リアは25%以上です。バイオマスをお金に換えて、社会に価値として提供できていません。
時間軸でみると、日本の立木価額は1980年がピークで、その
後は下がり続けて、今は昭和30年代の水準に戻っています。戦
中戦後の日本はエネルギーとして使える資源が木材しかなく、
用材需要も高かったため
に、森林は徹底的に利用
図7 丸太の用途別消費割合
されました。そこで1955
年に政府は、できるだけ
木材の使用を控えるように「木材資源利用合理化方策」を閣議決
定しました。1959年には日本建築学会で「建築防災に関する決議」
という木造禁止決議が出されました。さらに、伊勢湾台風の後、
木造の建築をできるだけ制限する方針が建築学会から出ています。
図8 木材需要の動向
その結果、住宅以外の建築物に木材を使うことが非常に難しくなりました。さらに、燃料革命で木材の
エネルギーとしての利用がほとんどなくなりました。この時代を林業の暗黒時代という人もいますが、
高度経済成長期から安定成長期にかけて日本の木造住宅のマーケットは大きく、木材の需要が大きかっ
たため、実はあまり努力しなくても木材業界はやっていける時代が長く続きました。ほとんど思考停止
状態でも商売が続けられる時代が長く続いて、木造建築以外のマーケットを捨てたことを気にしない状
況が続きました。そして、木造住宅は構造計算を必要としないため、木構造の計算ができる技術者がい
なくなり、学校でも木構造の計算を教えなくなりました。
住宅市場が低迷する中では住宅以外の需要やバイオマスの利用を計らなければなりませんが、バイオ
マスはこれまでほとんど使っておらず、余ったものはゴミとして捨ててきました。製材業は、住宅建設
6
森林利用グローバルインターンシップとUBCのCo-opプログラム
2-1 実践型教育国際シンポジウム
の国内需要が多かったため、木造軸組み住宅に特化し、和室の
役物などを含めて特殊な製材を続けてきました。生産性を上げ
なくても利益が上がるので、国際競争力も低下しましたが、そ
ういう状態でもやっていける時代が長く続きました。
林業は、昭和30年代からの補助金による拡大造林でスギ、ヒ
ノキを大量に植栽し、経営形態が効率を度外視したものになり
図9 直交積層材
ました。
直交積層材(Cross Laminated Timber)とは製材した板を直行させて重ねて、大きな面材としたも
のです。これはヨーロッパで1990年代に開発されて、BC州をはじめ欧米で大いに注目されているもの
です。いろいろな幅や厚みの部材を有効に活用できますし、低質材も活用できます。日本の木造軸組み
工法には良質の材しか使えませんが、それでは歩留まりが低く、廃材となる部分が多くなります。しか
し、CLTは多くの小さな部材を組み合わせて構造材とするため、虫
食い材のような多少質の悪いものが混じっても性能に影響を与えませ
ん。CLTは部材を直行させて積層することで、異方性が緩和され、寸
法安定性が高まります。また、高い断熱性や耐火性があります。特に、
鉄のようにある温度で一挙に崩壊することがありません。さらに、大
判のパネルを構造材として使うので、高い耐震性があります。床、壁、
図10 CLTによる建築
屋根を工場で加工して、現場で組み立てますので、工期が短く、ゴミ
も出ません。ロンドンにある8階建てのビルでは工期が従来の3分の
2に短縮できました。また、軽量で比強度が高いので、基礎工事費も
25%軽減できました。
林産業の課題は住宅以外の市場を開拓していかなければいけないこ
とです。今まで使ってこなかった低質材が使える市場を作り出さなけ
ればなりませんが、そのためには、安定供給とコストが課題です。
CLTによって中・大規模や高層の建築市場に木材が入り込むことが
写真8 CLTによる建造物建築
できるようになり、木材の消費拡大に繋がります。低質材も有効活用
できます。しかし、日本の林産業の経営の効率化や製材業の生産性の
アップを進めなければ、国際商品として日本からCLTを輸出していくことはできないと思います。こ
れは林野庁と国交省が共同で提出したCLTのロードマップです。これまで建築基準法にCLTは含まれ
ていなかったのですが、28年度に改正され、 CLTを使った建築が可能になる予定です。それに間に合
わせるように工場を作り、市場を開拓しているところです。
図11 CLT生産の戦略
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2
2
森林利用グローバルインターンシップとUBCのCo-opプログラム
2-1 実践型教育国際シンポジウム
2-1-3 【セッション2】UBCのCo-opプログラムとスーパーグローバル大学構想
2-1-3-1 UBC Co-opプログラムの概要と運営
Ellis Simon(UBC森林学部准教授)
コーププログラムがどのようなもので、特に林産学分野でどのように機能して
いるのかを説明します。また我々が直面している課題についても説明し、岡山大
学でも直面するだろう課題にも触れます。
コーププログラムは学部のプログラムです。ふつうの学部教育は4年間ですが、
この場合は5年かかります。林産学プログラムでは通常の林産学のほかに現場で
製造や経営について学ぶことができます。副専攻として商業を取ることもできま
す。
写真9 Simon 准教授
コーププログラムは20年前にドイツから導入したシステムで、
産業界、大学、学生が協力しながら進めて行くものです。その
内容は国の法律と州の条例で定められています。学生には給与
が払われ、会社に対して付加価値を生み出す作業をします。大
学は進捗状況をチェックし、企業によって学生は評価されます。
コープの学生もそうでない学生も同じ授業を受講します。
図12 Co-opの役割
コープの学生は2年目の夏に初めてコープ1を受講します。最
小でも3回のコープを受講し、そのうちの1回は通常の授業が行われている春学期か冬学期に受講しな
ければなりません。そのため、全課程を修了するには最短でも
5年間を要します。林学部ではさらに4回目と5回目のコープ
を設けています。コープ1、コープ2と進むにつれてより責任
のある仕事に就くことになります。コープ1の後で成果をポス
ター発表し、3年生と4年生は口頭発表します。最終学年でレ
ポートを提出します。口頭発表は企業にとっては学生をリク
ルートする機会となっています。
図13 林産学科のco-opカリキュラム
1996年から現在までに完了したコープのうち、62%がBC州内で実施したもので、30%はカナダの他の
地域、8%が海外で行ったものです。コープを受講する学生数は年により変動があり、今年は80名近く
と思われます。受け入れ企業は全部で160社ほどありますが、
いくつかの大きな企業が約半数の学生を受け入れてくれていま
す。コープ学生の53%は5回のコープを受講し、16%は3回の
コープで終わっています。コープ1で体験した職種と就職先に
強い相関があります。まったく同じ会社ではなくても、コープ
1で受け入れてもらった企業と同種の企業におよそ3分の2の
図14 林産学科のco-opプログラムに参加する企業群
学生が就職しています。
UBCが直面した課題は5つあり、岡山大学も同様の課題に直面するかもしれませんので紹介いたし
ます。
1つ目は企業がコーププログラムに参加するメリットです。コープの学生を獲得できることが最大の
メリットです。そしてコープ学生を獲得したことが企業にどれほど有益であったかを企業自身に語って
もらうことが最も効果的に受け入れ企業を増やす方法です。
2つ目は企業の役割を明確にすることです。企業がしなければならないことと大学が行うサポートと
8
森林利用グローバルインターンシップとUBCのCo-opプログラム
2-1 実践型教育国際シンポジウム
をはっきりと区別しておかなければなりません。
3つ目はコープの学生数と受け入れ学生数のバランスです。
受入数が少ないと、学生はコープに参加しなくなります。学生
数が少ないと、企業が興味を示さなくなります。バランスは非
常に重要です。また、マッチングがうまくできるかどうかも重
要です。
4つ目は、コープで受け入れてもらったからと言って、将来
就職できるとは限らないということです。企業が獲得しようと
思うかどうかは、学生の積極さにかかっていることを学生に自
覚させることが必要です。
図15 林産学科のco-opプログラムのHP
5つ目は2年生の学生を受け入れようとする企業が少ないこ
とです。企業は経験のある学生を求める傾向が強いので、若い学生を受け入れることが企業の社員教育
になることや就職先と最初のコープ先とに強い相関があることなどを企業に説明する必要があります。
以上の課題を克服して、コーププログラムを発展させるためには、大学は企業を誠心誠意サポートし
なければなりません。その際、企業にある程度の柔軟性をもたせて任せることが大切です。一方、学生
には厳しい態度が必要です。さらに、マッチングを行う大学のスタッフの質が非常に大切です。
コーププログラムができる前のUBCの森林学部は業界とほとんど接点がありませんでした。個々の
教員は研究目的で業界とコンタクトしていましたが、UBCと業界の間に制度的な相互関係は全くあり
ませんでした。卒業生の就職について教員は個人的に面倒を見ていましたが、組織としてのサポートは
全くありませんでした。しかし現在では、企業の中にコープの学生しか採用しないところもあります。
コーププログラムは企業が学生とコンタクトする重要な場ともなっています。250名の学生のうち200名
の学生のメーリングリストをコープに参加した企業は利用することができます。コーププログラムは業
界、学生そして大学が協力して進めています。続けるには努力が必要で、簡単ではありませんが、非常
にやりがいのあるものです。
2-1-3-2 Co-opプログラムにおける学生と企業のマッチング
Sudeh Jahan(UBC林産学科Co-opプログラムコーディネーター)
コーププログラムには学生、大学、企業という三つの要素があります。コープ
プログラムはこの3つの要素間のパートナーシップを強化するものです。大学は
企業に研究の内容を伝えることができます。また、大学は企業と定期的にコンタ
クトを取ることで、企業が求めているも
のが分かりますので、それに合わせてカ
リキュラムを修正することができます。
写真10 Jahanさん
学生は学んだことを実際に試す場を経験
すると共に、就業経験を大学の学びにフィードバックできます。
コープの学生はモチベーションが高く、やる気もあるので、コー
プの学生を雇用したい企業は多いのです。その優秀なコープの
学生を、雇用前に4ヶ月か8ヶ月、就業体験を通して能力を確
認することができるのがこのシステムです。さらに、コーププ
ログラムによって企業名が知られるようになると優秀な人材を
9
図16 Co-opプログラムの構造
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2
森林利用グローバルインターンシップとUBCのCo-opプログラム
2-1 実践型教育国際シンポジウム
得やすくなります。
コープは準備、応募、就労の3段階になっています。
学生からの申請書を受け付けた後、面接で必要な単位の
取得ややる気と仕事への真剣さなどを評価します。その
後、履歴書の書き方や面接のスキル、さらには職場の環
境などについて何度かのワークショップを行います。さ
らに企業が求めているものや知財などの機密事項の守秘
義務などを教えます。
学生と企業のマッチングの流れは次のようになってい
図17 Co-opプログラムの手続き
ます。①企業から仕事の内容が分かる求人票がコープ事
務所に送られてきます。②求人票を学生に配布します。
③学生がコープ事務所に申請します。④学生の申請書を企業に送ります。⑤企業が面接する学生をコー
プ事務所に通知します。⑥コープ事務所は学生に面接を受けるように伝えます。⑦面接をします。⑧企
業は学生に合格通知を出します。⑨学生は締め切り日までに返事をします。
学生の専門が生かせる仕事に就けるようにマッチングを考えなければなりません。また、安全な職場
で、適正な作業で、きちんとした指導が受けられなければなりません。給与が支払われることで学生は
労働に高いモチベーションを持ちます。労働の内容や企業の経営を理解するためには十分な長さの就労
期間を確保することが必要です。そのため、1回のコープは4ヶ月となっています。こうした条件を満
たすために、企業へは5ヶ月前に通知し、求人票の提出を依頼します。求人に際しては、企業の業務内
容や就労の内容とそれに伴う責任などが分かるようにしなければなりません。面接はコープ事務所のサ
ポートのもとで、企業や大学で、あるいはスカイプや電話で行います。採用に際しては、種々の就労条
件(就労時間、給与額、就労場所、指導者名など)を明
らかにして、学生に合格通知を出します。複数の企業か
ら合格通知を受け取った学生は1社を選択して就業希望
を返事します。
コープの就業に何らかの問題があった場合、学生ある
図18 Co-opプログラムの流れ
いは企業から通知があり、コープ事務所は直ちに解決のためのサポートをします。また、私たちは、職
場環境の安全性や学生の就労状況を確認するために企業を訪問します。また、企業から定期的に報告を
もらうことで、強い結び付きを確保します。
コーププログラムは教育の一環であり、単位を取得するために、学生は①雇用主、就業目的を含むリ
ポートを提出し、②コープ事務所による現場確認と、③企業による評価によって、最終評価を受ける。
2-1-3-3 スーパーグローバル大学の理念と実践型教育
荒木 勝(岡山大学理事(社会貢献・国際担当)・副学長)
スーパーグローバル大学の理念を一言でいうと、社会の現場で実践的に役に立
つ教育、
すなわち人と人が直接対話して様々な責任を負い、事務力やリーダーシッ
プを発揮していくことができる教育を行うことです。そのためには、異分野・異
社会・異文化が展開する場が必要です。異分野は学生たちが専門の枠を超えて交
流し、幅広い知識を習得することです。異社会とは大学だけではなくて、地域や
企業と真剣に向き合う経験をすることです。異文化はグローバルに外国の文化と
写真11 荒木理事
10
森林利用グローバルインターンシップとUBCのCo-opプログラム
2-1 実践型教育国際シンポジウム
真剣に触れ合うことです。
これらを遂行していくためには、教養力、語学力、専門力という三つの力を身に付ける必要がありま
す。語学力と専門力は分かりやすいのですが、教養力とは①豊かな感性と知性、②自由な発想能力、③
社会と自然の全体的な問題に対するバランスが取れた寛容の精神が根幹をなすものです。中でも社会で
役立つ知識を身に付けることが重要で、それを実践知と呼びます。実践知は判断力、リーダーシップ、チー
ム力、責任気概の4つで成り立っています。判断力の根源には幅広い知識と深い専門知識が必要です。
私たちは、学生と社会が互恵性をもったプログラムを構築しようとしています。学生が人間として、
市民として優れた人間に成長していくためのプログラムにしたいと思っています。小さな専門分野に限
定されず、将来性のある人格を育んでいくことが究極的な課題です。それは学生が実践的な場面を通じ
て社会に利益をもたらし、 企業は学生と触れ合うことで短期的、長期的利益を引き出すことが出来ると
いう互恵性が担保されたものでなければならないと考えています。
2-1-3-4 経済界が求めるグローバル人材
萩原 邦章(萩原工業株式会社代表取締役・岡山経済同友会代表幹事)
三村 聡(岡山大学地域総合研究センター、副センター長)代読
経済界ではグローバルな展開に必要な能力として、自己学習力、コミュニケーション力、粘り強さ、リー
ダーシップ、人間力が求められています。伝統的な学校教育では「教える」、「覚えさせる」ことが中心
でしたが、これからは自ら学ぶ意識「自己学習力」が大切で、気づきに勝る学習はありません。岡山大
学のSGUの実践教育の根幹にもなっている「良い習慣」は一回の体験では身に付かないものです。継続
して磨きこむことによって自ずと習得できる力であり、継続的な実践教育で持てる才能を超えることが
できます。
専門性があってこそ企業に入った時に全体像、つまり木も森も見えます。専門性がなければ森は見え
ません。自国の歴史、独自な文化、生活様式を習得し、まず自分のことを知らなければ多文化共生はで
きません。自らの国のことが語れないものはグローバルな素養を身に付けることはできません。
世の中の動きについていつもアンテナを張っていることが社会人には求められています。企業経営に
は周りの人が直面している課題について話し合う企業風土の醸成が求められています。それはリスクマ
ネジメントにもなります。コミュニケーション力とは傾聴力、すなわち自分が言うだけではなく、人の
話も聞けることです。日常的にそうした力を養っていくことが大切でする。
粘り強さとパイオニア精神でチャレンジャブルする力が必要です。言われたことはできても、解決策
がない課題に取り組んでいくためにはパイオニア精神が必要です。そのなかで初めて相互理解と協調性
が生まれます。
チーム全体で効率的に活動のできる風通しのよい組織を造るためには、リーダーシップが必要です。
風通しのいい会社づくりを心がけ、その一員になって問題意識を持ち、前向きな明るさがある学生を経
済界は求めています。そうした能力を涵養するには、専門知識とキャリア開発といった単なる就活では
なく、日ごろの鍛錬の中で自らを磨く4年間を過ごしてもらいたいと思っています。
現在ではどの日本企業も海外と関係があるのは当たり前のようになっています。失敗しても粘り強く
取り組む能力を持ち、高い課題発見力によってグローバルに活躍できるようになるために、多文化の中
で学ぶことをコーププログラムに期待しています。
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森林利用グローバルインターンシップとUBCのCo-opプログラム
2-1 実践型教育国際シンポジウム
2-1-4【セッション3】パネルディスカッション「岡山大学グローバル実践型教育」
司会:吉川 賢(岡山大学大学院環境生命科学研究科教授)
2-1-4-1 岡山大学グローバル実践型教育プログラム(案)
三村 聡(岡山大学地域総合研究センター副センター長)
本日UBCからコープ関係者を招いていろいろ示唆に富んだお話を聞かせてい
ただきました。岡山大学グローバル実践型教育プログラムについてこれまで準備
してきましたこととこれからの展開についてお話しします。
岡山大学では美しい学都を作り、大学が地域の資源としてグローバルな視点か
ら目に見える形でお役に立つことを目指しています。そのための実践型教育は、
1年生から大学院生までを対象に、地域、社会、企業、自治体と大学の学生、教
員が連携して、グッドハビット、良き習慣を持った学生を育てることを目指して
写真11 三村副センター長
います。そのためには、学生にとっては社会に出ていく自信を持つことができるようになり、受け入れ
る企業や社会にもプラスになる互恵性が欠かせません。
岡山大学には「先進基礎科学特別コース」という理科系の学生が、企業で修士課程まで含めて2年間
指導を受けながら、実践知を身に付けていくプログラムを実施しています。このプログラムのキーワー
ドは、
「何を教えたか」ではなくて、「何ができるようになったか」で、判断力、リーダーシップ、チー
ム力、責任気概を重視しています。これまで実施してきた実践型教育の例としては、生活に課題を抱え
る家庭の中学生に学生たちが学習の面倒を見たり、水島のコンビナートの環境問題について総社市や社
会福祉協議会などと勉強会を開催しています。また、2週間の間伐ボランティアも実施しており、新見
市の地域おこし協力隊員になる学生も出てきています。
本年実施するグローバル実践型教育プログラムでは、
県内の林産業関係の5企業と連携協定を結び、岡山県の
森林研究所にも参加してもらっています。岡山大学の「先
進基礎科学特別コース」とUBCのコーププログラムと
は企業での学生の受け入れ方が違っています。将来のグ
ローバル実践型教育プログラムの実現を目指して、本年
6月から3ヶ月間UBCから2名の学生を受け入れ、上
述の県内の5つの企業と県の森林研究所でインターン
図19 受け入れ組織
シップを実施します。その際、岡山大学の学生も協働し
てインターンシップを経験します。一部大学院生や農学
部の学生は「林業インターンシップ」という形で参加す
る予定です。
日本の大学が実施しているインターンシップは学生を
企業に預けっぱなしで、教員はほとんど関わることがあ
りません。そういうインターンシップを改善し、新しい
形を模索すると共に、UBCの学生と岡山大学の学生が
相互理解を深め、カナダと岡山の企業の相互交流や
UBCと岡山大学の連携を強化することを目指していま
図20 Co-opで求められるスキル
す。将来はこのプログラムを全学部に拡張していきます。
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森林利用グローバルインターンシップとUBCのCo-opプログラム
2-1 実践型教育国際シンポジウム
今回のUBCとの連携プログラムは林産学を中心とするもので、受け入れ企業は山元から製材、家具
製造、建築業です。合板やプレカット工法と言った一般にはなじみの薄い分野の知見を元に、林産業と
環境保護について学んでもらいたいと考えています。すでに昨年度、 今回の受け入れ5社では農学部の
学生のインターンシップを行っていただいて、UBCと岡山大学の学生の受け入れ準備は進んでいます。
企業にとってメリットのあるものとするための協議も続けています。
6月、7月、8月の3ヶ月間インターンシップを実施するためには地域社会、企業、岡山大学の学生、
留学生、担当教員が一体となって協力しなければなりません。将来は他の産業領域でも同様のプログラ
ムを実施し、さらにほかの大学や海外の大学との連携も考えた新しいチャレンジをしていきたいと考え
ています。そのひとつの具体的なモデルとして、全学部を対象として、卒論や修論を課しながら就業体
験を1ヶ月か2ヶ月実施する案を作りました。岡山大学が平成28年度から導入する60分授業・クォーター
制に適合させながら、地元の企業、全国展開企業、官庁、海外の企業に岡山大学の学生を派遣するもの
です。派遣先や費用負担、サポート体制、さらには派遣中のメンタルケアーまで様々な面での体制整備
についてこれから考えていかなければなりません。
図21 岡山大学グローバル実践型教育プログラム(案)
2-1-4-2 パネルディスカッション
パネラー: Simon Ellis ・伊藤公久・安東真吾・ 三村 聡
モディレーター 吉川 賢(岡山大学環境生命科学研究科教授)
このシンポジウムの一番の目的は、岡山大学で新しくグローバル実践型の
教育システムを作り上げていくための検討を始めることです。UBCのコー
ププログラムを一つのモデルとして、岡山大学ではどのような形がいいのか
写真11 吉川教授
について議論を進めて行きたいと思います。
まず、4人のパネラーの皆さんに、三村先生に示していただいた案につい
ての考えをお話しいただきます。まず、サイモンさんいかがでしょうか。
Ellis Simon:岡山大学の三つの就業体験、すなわち地元の企業、国規模の企
業、そして国際企業で経験するというコンセプトは良いと思います。UBC
のプログラムには5つのコープがあり、その中に3種類のものがあります。
3年生、4年生など学年別に種類の異なるコープに参加しています。卒業し
写真12 Simon 准教授
た後の就職のためには複数の分野の経験が有利になります。同時に、柔軟性
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森林利用グローバルインターンシップとUBCのCo-opプログラム
2-1 実践型教育国際シンポジウム
も必要です。地元企業から国際企業までの3つをすべて義務にするのではなく、その内の2つぐらいを
義務にするのがいいと思います。
吉川:学生が選択する余地を残しておくことが重要であると言うことですね。さて、日本とカナダをご
存じの伊藤さん、いかがでしょうか。
伊藤:このプログラムは、人生の目標を大学での学びとコープのインターン
シップを組み合わせて見つけていこうとうするところが面白いところです。
UBCのコープ学生に「自分の好きな仕事、好きな道は見つかったか」と聞
いたところ、一人の学生が「自分の好きな道はまだ見つからないが、嫌いな
道はたくさん見つけた」と答えました。コープの経験の中で好き嫌いの判断
をしながら、自分のゴールを設定しようとしていました。コープの持つそう
した役割が非常に重要だと思います。また、コーププログラムの面白いとこ
写真15 伊藤氏
ろは社会が給与を払うことです。金銭を受け取ることで仕事に責任を持ち、社会のルールの中で働くこ
とを学ぶことができます。
吉川:日本の企業はまだこのコーププログラムの経験がないので、学生との距離をどうとるのか、ある
いは学生とのかかわりをどうするのかについて、判断ができていません。学生も企業も大学も学んで行
かなければなりません。安東さん、企業としてはいかがでしょうか。
安東:私どもこれから学ばなければならないと思っています。ヨーロッパで
は民間企業と研究機関、学術機関が積極的に交流して、その中からいろいろ
なものが生まれてきています。是非こういうプログラムをきっかけに、もっ
と学と産の連携を深めていきたいと思っています。具体的なプログラムの内
容について云々することはできませんが、UBCの知見と経験を参考に、で
きるだけ早く成果のある形で立ち上げていただきたいと思っています。また、
今後は海外企業へこちらから出ていく取組も考えているというのは非常にい
写真16 安東氏
いことだと思います。日本の中にいては分からないところ、海外に出て行って初めて気づかされ、刺激
を受けることがたくさんあります。学生の時にこのようなプログラムで海外に行く機会を作るのは非常
によいと思います。
吉川:このコーププログラムを通じて海外へ行った学生について、就職の時に学生の経験をメリットと
して企業に判断してもらえるかどうかが重要なところですが、 いかがでしょうか。
安東:確かにそういうところも含めて我々も学ばなければなりません。ちょうど就職活動がスタートし
たところですが、今まで通りの仕方では、ちょっと変わったコースを経験している学生はなかなか採用
されにくい気がします。今後はもっと柔軟な考え方で、より積極的にいろんな経験を積んだ学生が採用
されやすいような環境を考えていきたいと思います。
吉川:新しいプログラムが何単位になるかは今後の検討課題ですが、ただ単に取得単位が多いというだ
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森林利用グローバルインターンシップとUBCのCo-opプログラム
2-1 実践型教育国際シンポジウム
けの評価で企業側が判断されると、学生にとってのメリットはなくなります。大学と企業の間のコミュ
ニケーションが必要ですね。三村先生はいかがでしょうか。
三村:UBCと深くかかわりのある新渡戸稲造さんの『武士道』に、日本は
ものを贈るときに「たいしたものではないですが」と言い、カナダ人の奥さ
んが「なぜたいしたものではないものを人に贈るか」と不思議に思うという
ことが書かれていますが、そのような日本と海外の間に大きな習慣の違いが
あります。学生時代にそういうことを体験することはグローバル化の中でた
いへん大きな力になると思います。
写真17 三村副センター長
吉川:日本ではインターンシップは始まったばかりですが、企業が行うインターンシップは時間をかけ
た入社試験という面が大きいと思います。大学が主体となって行うインターシップには教育的な部分が
必要です。このプログラムが一つのトライアルになればと考えています。来年度はUBCの学生を受入れ、
再来年度には新しいシステムを検討していく予定です。フロアからはどなたかご意見はございますか。
佐々木:岡山大学教育開発センターの佐々木です。
UBCでは学生と企業との間のマッチングをしっかりやって居られます。そ
れでもミスマッチによるドロップアウトもあると思います。今後、岡山大学
で実施するに当たり、マッチングのコーディネートをしっかりやっていかな
ければなりません。また、ドロップアウトした学生へのメンタルケアーも重
要であると思います。
写真18 佐々木教授
吉川:マッチングをうまくするには、発表の中にもありましたように、学生数と求人数のバランスが重
要です。さらにその中でうまくマッチングできるかどうかはコーディネーターの腕にかかっている一番
大きな問題ではないかと思います。
サイモン:UBCのプログラムでは、会社は学生に採用したい順に順位をつけ、学生も働きたい順に会
社を順位付けします。その会社側と学生側のランキングリストを集めて、だれがどこに行くのかのマッ
チングをします。できる限り行きたい会社と採りたい学生がうまく組み合わさるようにしますが、学生
の希望が集中する場合などはうまくいかないときもあります。我々は企業のお世話になっているので、
企業へは欲しがっている学生を送りたいと思っています。今のところはおおむねうまく行っています。
学生も希望する会社を選ぶことが出来るようになっています。
UBCのコーププログラムがこのまま日本でうまく行くかどうか分かりませんが、岡山大学ではどの
ようなモデルが一番いいかをよく考えていただきたいと思います。
吉川:マッチングがうまくいくためには、学生の希望と希望する企業の数との関係が重要です。大学か
ら企業へこういう種類のポストを準備してほしいというような依頼をすることはありますか。
サイモン:そういうことはしません。むしろ、企業からコープの学生たちが期待していることを訊ねて
くることがあります。学生は学年に応じて知識も異なり、できる仕事も違っています。そのことを企業
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森林利用グローバルインターンシップとUBCのCo-opプログラム
2-1 実践型教育国際シンポジウム
に理解してもらって、学生にとって魅力のある仕事を提供してもらいたいと思っています。企業ももち
ろん学生を受入れることで利益がなければいけません。
伊藤:ミスマッチには、企業と学生のミスマッチだけではなくて、職種についてのミスマッチもありま
す。自分が興味を持てる職種かどうかを、いろいろな職種を経験して、自分で判断していければ、自分
の将来の道を見つけることができます。たとえば森林学部の中にも林業から林産業まで非常に幅広い職
種があります。その中で製材所に行ったが、これは自分の将来の道ではないように感じ、次は家具メー
カーや加工業といった別の職種で働いてみることで、面白く、興味を持てる職種が見つかります。その
面白さをさらに追求するために学問があります。その学問を自分で選びながら勉強することでモチベー
ションはいっそう高まります。それがコーププログラムの社会と学問との共通点を学生が見極めて行く
プロセスにおける大きな役割だと思います。反対に、自分が好きな職種が見つからない場合には学部を
変更することも学生の選択肢としてあります。要するに自分の人生を決める上で、大学が大きな支えで
あり、コーププログラムは社会に出て自分が学んでいることが本当に好きなのかどうかを判断する機会
を提供するものです。
吉川:ほかにフロアからご意見ご質問等はありませんでしょうか。
黒田:新庄村の中学でも3年間に3回違う職場を体験するコープと同様の試
みをしています。受け入れ側は特に見返りを求めておらず、社会貢献の一つ
として行っています。是非、UBCと岡山大学の学生には、何を学んだのか、
そしてどうすればもっといいものになるのか、考えたことを発表して頂いて、
最後に感謝して頂ければ、来年も協力しようと思います。
吉川:今回のプログラムではそれぞれの企業での最後の日に、どういうこと
写真19 黒田氏
をしてきたのか、どういうことを受入れて頂いた企業に提案できるのかを話す日をとってあります。ま
た、8月末日には3ヶ月日本で過ごした成果を発表してもらいます。その成果発表の前に丸1日我々が
指導しながら最終的な報告の仕方を教育します。是非8月31日にもお越しください。
吉川:コザクさんはこの岡山大学版のものについてご意見はございますか。
コザク:野心的で大変いい計画だと思います。しかし、カナダやアメリカで
はコープは4ヶ月と考えられていますので、岡山大学の2ヶ月はちょっと難
しいかもしれませんね。
写真20 Kozak教授
荒木:本プログラムはUBCの学生たちと岡山大学の学生たちが一緒に長期
のインターンシップを経験するものですが、岡山大学の学生に給与が払われ
るとすれば、学生には大きなベネフィットとなります。その際、学生と企業
の関係は、給与を支払わない場合とどのように違うのかについて議論してい
ただきたい。また、岡山大学の学生にとってこのインターンシップにどのよ
うなメリットがあるのかについても議論していただきたい。
写真21 荒木理事
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森林利用グローバルインターンシップとUBCのCo-opプログラム
2-1 実践型教育国際シンポジウム
吉川:企業としてインターンシップの学生に給与を支払うことについて安東さんはどうお考えでしょう
か。
安東:給与を払うということは、それに見合った成果を出して頂けるということが前提になります。今
回は給与を支払うような状況が見込めるのかどうかは、やってみなければ分かりません。そのため給与
なしで始めることになりました。今年の結果で給与を支払っても問題ないとなるのか、支払うためには
解決しなければならない課題があるとなるのかがはっきりすると思います。一番困るのはインターン
シップを受け入れた結果、ほかの社員の仕事が止まって、なおかつ給料を払うような状況になることで
す。対価を支払うことができるような関係にならないといけないと思います。
松田:経済同友会の松田と申します。今日は大変素晴らしい仕組みを発表していただいて、ありがとう
ございます。
ドイツの大学進学率は50%以下ですが、そこでは総合的に学問を学ぶジェネラリストの育成を目指し
ています。一方でマイスター制度によって技能を学ぶこともできます。ポートランド大学で行われてい
るサービスラーニングでは、かなり長期間に企業や自治体で働いています。しかし、彼らは学生として
授業料を払って、単位を取得しようとしているので、企業との間にお金のやり取りがあると困るという
話でした。
日本には職業訓練校や専門学校があり、各種の専門的な知識を教え、資格を取るための教育をしてい
ます。今回のコープの仕組みでは、ジェネラリストでありなおかつ専門的な知識を持っている社会人を
作ろうとしているのでしょうか。あるいはもっと職業訓練を受けた専門的な能力の高い学生を育成しよ
うとしているのでしょうか。どの辺を狙って今回このコーププログラムを岡山大学に導入されようとし
ているのか聞かせていただきたい。
吉川:大変重要なご指摘であり、スーパーグローバル大学として岡山大学のグローバル人材養成のため
の教育の方向とも深く関わる問題だと思います。インターンシップという制度は単なるリクルートの方
法ではなく、教育効果のあるものでなくてはなりません。大学がどのような学生を育成しようとするの
かと関わる問題です。グローバル人材の育成をするためには人間力やリーダーシップの能力を高める教
育が必要です。しかし、それは大学だけでは実施できません。企業と連携しながら、大学では学べない
部分を広げて、それによって質の高い学生を育成します。当然学問分野によってはプロパー教育が必要
なところもありますし、ジェネラリストとしての職業力を持っていなければならない分野もあります。
これから作っていくインターンシッププログラムではそのあたりを教育分野、職業分野ごとにフォーカ
スをきちっと決めて行かなければならないと思っています。
三村:UBCのコーププログラムのように、就業体験と大学での専門教育を繰り返しながら、自分に合っ
た職種を探すシステムは、ほとんどの日本の大学にはありません。岡山大学は大学改革の一環として60
分授業・クォーター制度を導入し、実践型教育によって専門知を獲得したグローバル人材養成を目指し
ています。そのためには大学の既存の教育プログラムを精査し直し、地域資源としての大学の役割を果
たしていかなければなりません。これから大学と経済界が意見交換しながら人材育成を進めていかなけ
ればならないと思います。
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2
2
森林利用グローバルインターンシップとUBCのCo-opプログラム
2-1 実践型教育国際シンポジウム
サイモン:カナダにも実践的な教育をする職業訓練的な大学やカレッジがあります。職業訓練校もあり
ます。コーププログラムとは単なる職業訓練ではなく、ジェネラリスト教育やスペシャリスト育成をさ
らに充実させるものです。UBCでは、森林学部、工学部、理学部、芸術学部、経済学部、運動生理学
部などにコーププログラムを設けています。学部ごとに参加する学生の数に多少はありますが、どこで
もコープをやってみたいと思っている学生は多くいます。
伊藤:インターンシップとコーププログラムは全く違うコンセプトのものです。インターンシップは実
社会から学び、企業から教わるものですが、コーププログラムは企業と学生が一体となって、学生が企
業に大きなメリットを与えることができるものです。4ヶ月あるいは8ヶ月間企業で働く中で、大学で
学んだ新しい知見をもとに様々な刺激を学生は企業に提供します。その対価として給与が支払われます。
最後のプレゼンテーションの中の学生からの提言は企業にとって種々の改善点を見つける機会となりま
す。
吉川:今年1月の発表会では企業への提言は不十分であると思いました。学生が提出した最終リポート
を読ませて頂いて、どういう形で企業への提言が行われているのかを知りたいと思います。
6月にUBCの学生が来て、8月末日に成果の発表会を行います。ご案内をいたしますので、どのよ
うな成果が上がったのかを見に来ていただきますようお願いいたします。
2-1-5 【閉会】
閉会の辞
許 南浩(岡山大学理事・副学長(教育担当))
長時間にわたったこの「グローバル実践型教育プログラムの構築に向けて」
というシンポジウムに多数の方々に出席していただき、誠にありがとうござ
いました。開催場所のこのホールは天井も床も椅子も木製で、今日のシンポ
ジウムには誠に相応しい会場であったと思います。
コーププログラムは非常に素晴らしいが、なぜ林業なのかがなかなか理解
できませんでした。岡山は晴れの国で雨が少ない。雨が少ない所にはあまり
木が育たない。そういうところで林業が成り立つのか疑問でした。ところが
写真22 許理事
今日のシンポジウムで、日本の林業に明るい展望が開けつつあることや、岡山県内の林業にそれを率い
て行く力があることを知りました。そういう場で学生を教育することは、単に現場体験をするというこ
とよりもはるかに大きな意義があると思います。
韓国で日本から木材を輸入して日本風の家を作るのが人気だという報道がありました。これは木材を
輸出するだけの話ではなく、建物を作ることで日本の文化を知ってもらうことになります。日本の文化
が様々な方面で注目されてきています。この木材関係の話もそういうトレンドの中にあるのではないか
と思いました。
森林を眺めるとサステナビリティという言葉がつくづく迫ってきます。先ほど素晴らしい言葉があり
ました。自然は子供たちから借りていると。そいう考え方の教育、そういうトレーニングによって地球
環境をどのように維持していくのかを考えなければなりません。コーププログラムを林業分野で、岡山
で実践することに意義があることにつくづく納得がいきました。ただし、このいいプログラムを林業の
18
森林利用グローバルインターンシップとUBCのCo-opプログラム
2-1 実践型教育国際シンポジウム
領域だけにしておくのではなくて、この経験をほかの分野にも広げていければ、岡山大学の教育全体に
とって意義があるだろうと思っています。
伊藤さんには遠路遥々お出でいただき、深く感謝いたします。UBCから来られた3人のゲスト、ロバー
ト・コザク博士、サイモン・エリス博士、スデー・ジャハンさん、本当に遠いところから来てくださっ
てありがとうございました。私たちのプログラムは今まさに出発点を迎えています。これが成功するよ
うこれまでと同様のご協力、ご支援が必要です。よろしくお願いします。それから、この夏にUBCか
ら来られる2人の学生さんが岡山で楽しく、意義深い日々が送れるように私たちも全力を挙げて支援し
たいと思っています。安東様には会社の実情や日本の林業について詳しい説明をいただきありがとうご
ざいます。これからも機会がありましたら岡山大学で講義していただき、多くの人たちの目を開かせて
ください。
このプログラムは学生と、大学と、社会・企業の3者が協力して初めて成り立つものです。この3者
が協力して新しい教育の枠組みを作って、意味がある人材を育てていくことが私たちに課せられた使命
です。それは日本、延いては世界の未来を拓くことになると思っています。私たちも努力しますので、
引き続きご協力をお願いいたします。
今日は本当にありがとうございました。
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2
2
森林利用グローバルインターンシップとUBCのCo-opプログラム
2-2 UBCのCo-opプログラム
2-2 UBCのCo-opプログラム
2-2-1 Co-opプログラムとは
UBCのCo-opプログラムとは、UBCの学部プログラムであり、企業と大学との連携教育を指し、企業
での長期インターンシップによって学生が実践的な知識と能力を身につけることを目的としている。そ
のシステムは約20年前にドイツから導入され、国の法律や州の条例によっても規定され社会的にも広く
認知されたシステムである。企業は学生を準社員として雇用し、学生を実践的に教育する一方で、学生
の就業活動によって企業活動の活性化を期待するとともに学生のリクルート機会を得ることができる。
学生は企業に対して貢献する一方で、就業体験を大学の学習にフィードバックするとともに就職の機会
を拡大する。このような互恵関係がこのプログラムの大きな特徴である。大学はその間に入って全体を
コーディネートし、その進捗状況をチェックし、企業と学生からのフィードバックによってプログラム
のチェックと改善を図る。この3者の相互関係でシステムが出来上がっている。UBCでは様々な学部
とその学科で独自のCo-opプログラムを運営しているが、ここでは今回実施したUBC森林学部林産学科
と林産業関連企業との連携教育について述べる。今回実施したプログラムに参加したUBCの学生はこ
のプログラムに沿って日本での就業を体験した。
2-2-2 カリキュラム
Co-opプログラムを含めた林産学科のカリキュラムは表-1のように示されている。林産学科のカリ
キュラムでは通常の林産学に関する講義のほかに、現場で製材や製造について学ぶことができるCo-op
独特のカリキュラムが含まれる。資料2が示すようにCo-op学生は5回のCo-opを受けることができ、
最終的にCo-op学生として認められるためには、全課程で少なくとも3回のCo-opを受講しなければな
らない。そうすると、Co-op学生は通常の講義が行われている学期に1回はCo-opを受けなければなら
ないため、学部を修了するために最短でも5年を要することになる。Co-opは1から5まであり、
Co-op1は導入プログラムとして3ヶ月、その他は4ヶ月であり、次第に責任のある仕事に就くように
配置されている。このCo-op期間中、学生は準社員として勤務し給与が支払われる。
資料2 UBC森林学部林産学科のCo-opプログラムを含むカリキュラム
2-2-3 Co-opプログラムのメリット
このCo-opプログラムは20年ほど継続されており、その持続性の大きな要因は企業と学生にとってそ
れぞれ次のような大きなメリットがみられるからである。
企業にとってのメリット:
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森林利用グローバルインターンシップとUBCのCo-opプログラム
2-2 UBCのCo-opプログラム
・専門的知識を持った学生を短期間、集中的に雇用できる。
・若い人材の参加により職場の活性化が図れる。
・優秀な人材の育成と雇用につながる。
・学生を実践的に教育することで、大学の教育現場に企業の意向を反映できる。
・大学との連携により最新の研究成果へのアクセスが可能となる。
・学生からの提言をもとに企業改革できる。
学生にとってのメリット:
・学んでいる専門分野を企業活動の中で現実に目にすることができる。
・得られた実践的な知識を大学の学習にフィードバックできる。
・大学で学んだことを実務に還元する機会を得ることができる。
・自分が専門の職種に向いているかどうか判断できる。
・優良企業での実務経験によって就職の機会が拡大する。
・給与を受け取ることができる。
・報告会で発表のスキルを高め、企業への提言によって働くことへのモチベーションを高めることが
できる。
こうした両者の実質的なメリットがCo-opプログラムの特徴であり、その特徴を生かすためには、3ヶ
月あるいは4ヶ月という長期的なインターンシップが必要であることを理解しておかなければならない。
2-2-4 Co-opプログラムの流れ
このCo-opプログラムのフローは次の通りである。これら一連の手続きは、企業と学生の間に大学の
コーディネータが入り、3者の相互関係で成り立っている。学生に対しては、Co-opプログラムを熟知
した大学のコーディネータとよく相談し、情報交換することが奨励されている。これらのプロセスに必
要な様式については、次章の「3-2受け入れ準備」で示す。
(1)学生によるワークショップへの参加:Co-opに参加するためには、そのためのワークショップへ
参加料金を支払って参加することが義務付けられている。ワークショップでは、申請書類や履歴書の書
き方、インタビュの受け方、就業態度、就業に関する法規則、企業や社会に対する倫理と責任、最終報
告の仕方など、プログラム全般にわたって事前に学習する。
(2)企業からの仕事内容の提示:企業は勤務先、勤務内容、学生に求める能力、企業の紹介、問合せ
先などを記載した求人票を大学のコーディネータを通じて提示する。
(3)学生による応募申請書提出:学生は企業による求人票をもとに希望する企業に応募申請書を提出
する。その書類では、自らの経歴、各種資格、および学習やプロジェクト遂行能力などを記載した履歴
書とともに、志望動機を記載したカバーレターを添付する。これらの書類を大学のコーディネータを通
じて企業へ提出する。
(4)企業による学生選抜とオファー:企業は学生からの応募申請書類を審査して、面談する学生を選
び出し、面談によって学生を選抜する。選抜された学生に対して、結果を知らせるとともに、その企業
でのインターンシップ実施の承諾を尋ねる。
(5)学生による承諾:学生は企業からの申し出を受け、承諾する場合には承諾書を企業に提出する。
(6)企業での就業:学生は企業での就業内容と就業規則に沿って準社員として給与を得ながら就業する。
インターンシップ期間中に、コーディネータに進捗状況を報告するとともに、コーディネータは企業を
訪ね学生の状況を確認することがある。
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2
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森林利用グローバルインターンシップとUBCのCo-opプログラム
2-2 UBCのCo-opプログラム
(7)企業による学生の評価:大学が用意した評価書をもとに、企業は学生の就業と学習内容を評価する。
(8)学生による報告会の発表:インターンシップ期間を終えた学生は、コーディネータが中心となっ
て開催する報告会で就業体験とその成果について報告する。この報告会には企業が参加し、リクルート
に向けた格好の機会となっている。最終学年の場合には、レポート提出が義務付けられている。
学生にはCo-opの内容が詳細に記載されたハンドブックが用意されている(資料3)。
URL:http://www.forestry.ubc.ca/files/2014/10/Co-op-Student-Handbook-2014-15.pdf
その内容は80ページに及び、このプログラム全般にわたり概要、手続き、ワークショップ、諸規則、
諸サービス、心構え、法規則、倫理、企業情報管理、自己分析、カバーレターや履歴書の書き方、イン
タビュの受け方、職種の選び方、インターンシップ期間、評価、レポート、など、その他にも諸注意が
事細かく説明されている。
資料3 Co-opプログラムの学生用ハンドブック.表紙と目次の一部を示した。
2-2-5 岡山におけるCo-opプログラム
今回UBCからCo-op学生として受け入れた2名の学生(以下、Co-op学生という)も岡山大学へ来る
までに上記「2-2-4Co-opプログラムの流れ」に示された1~5の過程を経ている。岡山で受け入れ
る側としては、岡山県、企業、および岡山大学でコンソーシアムを組織した。そのコンソーシアムが
Co-opプログラムを作成して上記「2-2-4Co-opプログラムの流れ」の2~5に関わり、コンソーシ
アムとして2名の学生を受け入れた。コンソーシアムの組織と具体的なインターンシップ実施の詳細に
ついては次章で述べるが、概要は以下の通りである。
今回コンソーシアムには5企業と1研究機関が参加した。これらの企業と研究機関には森林の育成管
理、収穫、および搬出に関連する企業、製材や材加工生産に関連する企業、家具製造や建築に関連する
企業が含まれている。したがって、林業の生産現場から、製材や材加工生産現場、そして家具製造や建
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森林利用グローバルインターンシップとUBCのCo-opプログラム
2-2 UBCのCo-opプログラム
築現場という、林業と林産業の川上から川下までを就業体験できるようにプログラムを策定することが
可能であった。そのため、これらの企業と研究機関を2つのグループに分け、それぞれのグループで林
業と林産業の川上から川下までの就業体験ができるように、企業と研究機関を組み合わせた。こうした
グループごとに1名の学生を受け入れ、3週間ずつインターンシップを実施することとした。その他に、
UBC Co-op学生にとっては海外Co-opなので、日本語と日本文化の学習、日本の森林と林業に関する学
習を岡山大学が担当することとした。
具体的なスケジュールは資料4の通りである。第1週目は全体のオリエンテーション、日本文化、生
活様式、日本語に関する講義を用意した。第2週目から各企業でインターンシップを開始した。それぞ
れの企業と研究機関での就業内容については、各企業と研究機関が独自にアイデアを出し、最終的にコ
ンソーシアムで決定した。土曜
日、日曜日、祝日、およびお盆
休みの活動については、コン
ソーシアムで用意したいくつか
の活動以外は自由行動とした。
3週間ごとにCo-op学生は岡山
市へ戻り、土曜日と日曜日を岡
山大学の宿舎で過ごすことに
よって、2人のCo-op学生が交
流できるようにした。それぞれ
の企業と研究機関は3週間の期
間中に学生の就業状況を評価す
るとともに、インターンシップ
の最後に報告会を実施して評価
のまとめとした。その間、岡山
大学の関連スタッフは1週間か
ら2週間間隔で企業に赴き進捗
状況、問題点、あるいは課題を
話し合い、企業ごとの報告会に
は必ず参加した。3ヶ月のイン
ターンシップの最後には、最終
報告会を実施した。その最終報
告会ではCo-op学生が就業体験
とその成果を報告し、それをも
とに各企業から最終評価を受け
取り、その評価と最終報告会の
評価を合わせてコンソーシアム
が最終評価した。
資料4 Co-opスケジュール.グループごとの日程と内容を示した。
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森林利用グローバルインターンシップとUBCのCo-opプログラム
2-3 森林利用グローバルインターンシップ
2-3 森林利用グローバルインターンシップ
平成26年度に文部科学省の「スーパーグローバル大学創成支援(Top Global University Project)」事
業に採択された岡山大学のPRIME(Practical Interactive Mode for Education)プログラムでは、教養
教育としての語学力を強化し、国際社会から地域社会まで対応できる能力を持つグローバル人材を養成
するための実践型教育の充実を目指している。
その一環として、岡山大学では平成27年度よりグローバル実践型教育科目「森林利用グローバルイン
ターンシップ」を開講した。本科目は、地球環境の改善・保全に欠かせない森林の機能と特性を理解し、
持続可能な開発による森林資源の利用についての課題と展望を、実務経験を通して学ぶことを目的とし
ている(資料5)。
科目区分
講義番号
授業科目
授業科目(英語)
主題キーワード
学期
単位
対象学生
必修・選択の別
担当教員
所属
電話番号
授業の概要
学習目標
授業計画
主題科目(自然と技術)
911468
森林利用グローバルインターンシップ
Global Internship for Forest Utilization
林業・林産業、製材業、家具製作、林学、森林生産
前期集中
4単位
全
選択必修
吉川 賢
大学院・環境生命科学研究科・教授
251-8987
岡山県内の林業・林産業・製材業および林学研究機関のいずれかで3週間の長期イン
ターンシップを行う。その際、カナダ国ブリティッシュコロンビア大学(UBC)の特別聴講生も
同行し、共同して業務経験を積む。
日本の木材生産とその利用の技術および課題を学び、その過程で、日本の「木の文化」
についての歴史と思想を感得し、森林資源の持続的利用に向けた行動規範を体得する。
さらに、同行するUBCの学生との共同作業で得られる海外の森林と林業との比較を通じ
て、日本の森林、林業の特性をグローバル的な視点から学ぶ。
インターンシップ先
1.國六株式会社新庄事業所
森林での野外作業:伐木、集材、造材。
地域振興と林業活動:他企業、地域コミュニティとの連携の体験。
期間:6月15日(月)~7月3日(金)
2.服部興業株式会社山林部
森林での野外作業:伐木、集材、造材。
地域振興と林業活動:他企業、地域コミュニティとの連携の体験。
期間:6月15日(月)~7月3日(金)
3.銘建工業株式会社大断面事業部
製材:木取り、製材、ジョイント
積層集成材生産:積層作業、品質管理
期間:7月6日(月)~7月24日(金)
4.院庄林業株式会社久米製材工場
製材:木取り、製材、ジョイント
積層集成材生産:積層作業、品質管理
期間:7月6日(月)~7月24日(金)
5.倉敷木材株式会社
家具生産:伝統技術視察、加工作業
住宅建設:在来工法視察、建設作業
販売・営業:営業活動、広報活動
期間:7月27日(月)~8月21日(金)、内8月10日(月)~14日(金)はお盆休み
6.岡山県農林水産研究センター森林研究所(林業研究室、木材加工研究室)
林業・林産業の試験研究:
森林管理法、林木育種、測量・測樹、森林病害虫防除
特用林産物生産、集成材生産、パルプ
期間:7月27日(月)~8月21日(金)、内8月10日(月)~14日(金)はお盆休み
事前の自主学習が必要であり、UBCの学生向けの講義を聴講することが望ましい。
研修成果報告会を実施する。
UBCの学生との共同作業を円滑に実施するために、TOEICは500点以上が必要である。
また、日本の森林とその利用に関心があること。
日本の森林、林業、木材利用に関する現場作業と英語によるコミュニケーションを通じて
授業形態・使用機器
行う国際的相互理解の実習である。現場作業では様々な工作機器や装置を扱う。
「森林・林業白書」、林野庁編 一般財団法人農林統計協会 発行 平成26年
参考書等
「森林・林業実務必携」、東京農工大学農学部編 朝倉書店 発行 2014年
インターンシップ先の担当者による評価と成果報告の結果を総合して判定する。
成績評価
林業、林産業の技術開発を研究課題にしている。
研究活動との関連
業務を通じて森林と木材の利用についての理解を深め、日本の「木の文化」を学ぶもので
あり、そのための準備の授業も用意しているので、専門的知識をあらかじめ習得しておく
備考/履修上の注意
必要はない。むしろ、UBCの学生との共同作業の中で国際的な知見と思考方法のスキル
アップを目指してもらいたい。
授業時間外の学習
(予習・復習)方法
授業内容の前提とな
る知識
資料5 森林利用グローバルインターンシップのシラバス
24
森林利用グローバルインターンシップとUBCのCo-opプログラム
2-3 森林利用グローバルインターンシップ
就業体験期間は3週間で、下記の岡山県内の林業、林産業を営む企業と研究機関でインターンシッ
プを行う。その際、カナダ国ブリティッシュコロンビア大学からCo-op in Okayama(UBCのCo-opプ
ログラム)で来日している学生と同じ企業・機関で実務に就くので、英語力と国際感覚を身に付けるこ
とができる(資料6)。
森林利用グローバルインターンシップ
森林利用
グローバルインターンシップ
の履修者募集
岡山大学の
岡山
大学のPRIME
大学の
PRIME(
PRIME(Practical
PRIME
(Practical Interactive Mode for Education
Education)プログラムは
)プログラムは
平成26
平成
26年度文部科学省の「スーパーグローバル大学創成支援(
26
年度文部科学省の「スーパーグローバル大学創成支援(Top Global
年度文部科学省の「スーパーグローバル大学創成支援(
University Project)」事業に採択されました
Project)」事業に採択されました
)」事業に採択されました。
PRIMEプログラムでは、教養教育としての語学力を強化し、国際社会から地域
PRIME
プログラムでは、教養教育としての語学力を強化し、国際社会から地域
社会まで対応できる能力を持つグローバル人材を養成するための実践型教育の充
実を目指しています。
実を目指しています
グローバル実践教育の一つとして「森林利用グローバルインターンシップ」が
平成27
平成
27年度より開講します。このプログラムは、地球環境の改善・保全に欠かせ
27
年度より開講します。このプログラムは、地球環境の改善・保全に欠かせ
ない森林の機能と特性を理解し、持続可能な開発による森林資源の利用について
の課題と展望を、実務経験を通して学びます。インターンシップ(3週間)を行う
の課題と展望を、実務経験を通して学びます。インターンシップ(
の課題と展望を、実務経験を通して学びます。インターンシップ(3週間)を行う
のは岡山県内の林業、林産業を営む企業や実験研究機関です。企業等の担当者の
指導の下で、ブリティッシュ・コロンビア大学(カナダ国)の学生と一緒に実務
につきますから、英会話力と国際感覚を身に付けることが出来ます
につきますから、英会話力と国際感覚を身に付けることが
本科目
本科目で
目で
✔ 森
森林の機能と特性を実務から学び、地球環境を考える
林の機能と特性を実務から学び、地球環境を考える
✔ 日本の木の文化の神髄を知る
✔ カナダの学生と寝食を共にし、国際感覚を高め、
語学力を強化する
✔ 政府が目指す林業の成長産業化の現場を体感する
【期間】
6月15日~8月21日の間の3週間
【受入先】
岡山県内の林業、林産業関連企業と森林研究所
【単位数】
4単位
【応募資格】 TOEIC500点以上で、森林や林業、地方創生や村づくりに関心を持つ岡山大学
の学部生、大学院生
【募集人数】 6~12人
問合せ先:岡山大学地域総合研究センター
絢野(アヤノ)
Tel./Email: 086
086-251
086251-8855/nachin@okayama
251251
8855/[email protected]
8855/nachin@okayama8855/nachin@okayama
資料6 森林利用グローバルインターンシップ履修者募集のポスター
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森林利用グローバルインターンシップとUBCのCo-opプログラム
2-3 森林利用グローバルインターンシップ
応募資格はTOEIC480点以上で、森林や林業、地方創生や村づくりに関心を持つ岡山大学の学部生、
大学院生である。書類(資料7)と面接で選考し、下記のいずれかの企業・機関を選択する。取得可能
単位数は4単位である。受入企業・機関名とその住所と受け入れ期間は表1に示す。
森林利用グローバルインターンシップ申込用紙
締切:4月22日 17時
氏 名
所 属
学 年
学籍番号
住 所
連絡先 電話番号
メールアドレス
希望する企業と期間
(企業または期間のどちらかを選んで、記入すること。複数可,複数の場合には希望する順番を記載すること)
期間
企業・研究所
6月15日~7月3日
國六株式会社
服部興業株式会社
7月6日~7月24日
銘建工業株式会社
院庄林業株式会社
7月27日~8月21日
岡山県森林研究所
倉敷木材株式会社
TOEIC
英 検 (該当する項目に○を付けてください)
TOEFL
点
点
1級 準1級 2級 準2級
志望動機
面接を受けられない時間帯 23日(木) 1限 2限 3限 4限 5限
(該当する項目に○を付けてくださ
い)
24日(金)
1限 2限 3限 4限 5限
提出先:地域総合研究センター事務室(旧工学部15号館、裏面の地図を参照して下さい)
担当者:絢野 電話:086-251-8855
資料7 申込用紙
表1 受け入れ先とその受入期間
受入先
住所
受入期間
國六
(株)
岡山県真庭郡新庄村3950-1
服部興業
(株)
本社:岡山県岡山市北区平野620
山林部:岡山県真庭市西河内2113-2
銘建工業
(株)
岡山県真庭市草加部1372
院庄林業
(株)
岡山県津山市くめ団地50-1
倉敷木材
(株)
岡山県倉敷市中島1000-1
岡山県森林研究所
6月15日~7月3日
7月6日~7月24日
木材加工研究室:岡山県真庭市勝山1884-2
林業研究室:岡山県勝田郡勝央町植月中1001
7月31日~8月21日
(8月10日〜14日はお盆休み)
学生の参加を促すために(資料8)
、4月7日の教育学部から4月13日の医学部まで、教育学部、文
学科、理学部、環境理工学部、農学部、グローバルマッチングコース、医学部、教育学研究科、社会文
化科学研究科、環境生命科学研究科で授業の内容についての説明を行った。その結果、15名(農学部2
名、環境理工学部6名、理学部1名、文学部2名、経済学部2名、工学部1名、教育学部1名)の応募
があり、英文解釈や英会話(資料9)を含む面接と応募書類によって9人の学生を採択した(表2)。
学生の所属学部は文学部、理学部、農学部、環境理工学部であった。
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森林利用グローバルインターンシップとUBCのCo-opプログラム
2-3 森林利用グローバルインターンシップ
主題科目自然と技術
「森 林 利 用 グ ロ ー バ ル
インターンシップ」 説明会
ー森林と林業をカナダ8%&の学生と学ぶ週間の英語漬けで単位ー
委細裏面
平成年度から、カナダブリティッシュコロンビア8%&大学森林学部の学生が岡山が世界に誇る林
業・林産業界で実践経験を積む ”UBC &RRS SURJUDP LQ Okayama” が開始します。あなたも岡山が誇る
林業・林産業で、8%&の学生とともにインターンとして、地方創生で熱い岡山の林業の「今」を感じて
みませんか"
さらには8%&の学生と週間を過ごすことで、英会話スキルとともに国際感覚を磨きます。
本プログラムの
4
メリット
つの
週間カナダ8%&の学生とマンツーマンで「英語漬け」
企業が求める行動力を示せて「就職活動に強み」
「短期間で4単位」が取得可能
世界に誇る「岡山の林業」を体験
説明会の時と場所
月 ・ 日 : H G ・7 K X 中央図書館)ラーニングコモンズ
問い合わせ先 絢野あやの 086-251-8855/[email protected]
主題科目自然と技術
「森 林 利 用 グ ロ ー バ ル イ ン タ ー ン シ ッ プ 」 説 明 会
時と場所
月 ・ 日 : H G ・7 K X 来てね!!
中央図書館)ラーニングコモンズ
本科目は、カナダ、ブリティッシュ・コロンビア大学8%&の学生と一緒に、岡山県の林業・林産業企業で
三週間のインターンをする、4単位のプログラムです。この科目の目的は、岡山県が誇る林業・林産業企業
で、森林や中山間地の地域社会を学ぶとともに、8%&の学生と過ごすことで国際感覚と英語力を身に着ける
ことです。週間という短期間で単位が取得可能で、英会話を磨き、就職活動では経験をアピール可能です。
興味を持った方はぜひ、日か日の説明会に中央図書館ラーニングコモンズに来てください。
科目概要
【期間】
月日~月日の月曜日から金曜日までの下記のうち一つの3週間
【受入企業】
★國六新庄事務所 岡山県真庭郡新庄村大原
★服部興業山林部 岡山県真庭市西川内
★銘建工業 岡山県真庭市草加部
★院庄林業 岡山県津山市二宮
★倉敷木材 8/21 ※17は休み 岡山県倉敷市
★県農林水産総合センター 8/21 ※17は休み 岡山県赤磐市
【単位数】
単位数
単位
【募集人数】 ~人各企業・名
【経費負担】 インターンシップ期間中に係る宿泊費・食費等の諸経費は自費
【応募資格】
72(,&点以上で、森林や林業、地方創生や村づくりに関心を持つ岡山大学の学生
ラーニングコモンズ
中央図書館
問い合わせ先 地域総合研究センター$*25$ 絢野あやの 086-251-8855/[email protected]
資料8 説明会のチラシ(上:表面、下:裏面)
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2
2
森林利用グローバルインターンシップとUBCのCo-opプログラム
2-3 森林利用グローバルインターンシップ
Recycling
Recycling is very important. A class of Japanese elementary school
students had a good idea. They decided not to throw chopsticks
away but to use them to make useful items, such as pencil boxes
and toys. Their teacher said, “we must be careful with our world.”
Please check the passage silently for 10 seconds.
Please read the passage aloud. [Check his/her pronunciation or intonation]
Now I will ask you three questions.
[Check his/her grammatical accuracy, fluency, communicative attitudes]
1.What do you do for recycling in your life?
2.What Japanese cultures can you tell a foreign student?
3.Do you like sports?
資料9 英語の試験問題
森林利用グローバルインターンシップの学生名簿
表2 GI学生名簿
名前
所属
学年
専門分野
瀬崎 景己
文学部
㻞
哲学芸術学
西中 麗奈
文学部
㻞
日本思想史
植田 真妃
理学部地球科学科
㻟
地球科学
岡 香菜子
環境理工学部
㻠
土壌物理
織田 桜子
環境理工学部
㻠
水文学
福岡 千明
環境理工学部
㻟
植生管理学
隈崎 翔真
環境理工学部
㻞
-
下山 将輝
環境理工学部
㻞
-
塩野谷英明
農学部
㻟
-
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森林利用グローバルインターンシップとUBCのCo-opプログラム
2-4 両者の関係
2-4 両者の関係
Co-op学生はそれぞれの企業で通常の期間Co-opを実施し、それに対してGIによる岡山大学学生(以
下、GI学生という)は3週間ごとに人が入れ替わりながら、Co-op学生と共同でインターンシップを実
施した(表3)。林産学を専門としているCo-op学生は海外の企業で通常のCo-opを実施するということ
である。彼らは企業の活動に対してある程度の知識があるので、それをもとに日本の森林、林業、林産
業の特徴、日本企業の活動内容、姿勢、考え方を学び、カナダでの学習、あるいは将来の活動にフィー
ドバックして生かすことが期待された。同時に、カナダとの違いを通じて日本文化を理解することも期
待された。一方、GI学生は専門を問わず参加しているので、林業と林産業企業という専門性にこだわ
らず就業体験を通して実践的な知識と能力を身につけることを目的の1つとした。さらに、Co-op学生
とコミュニケーションを図り、林業と林産業を通してカナダと日本の違いを学び、語学力とグローバル
な視点を身につけることをもう1つの目的とした。こうしたCo-op学生とGI学生が共同でインターン
シップを実施することによって、この2つの実践教育に相乗的な効果が表れることが期待された。
こうした目的と狙いにもとづき、表-3に示されたようにCo-op学生とGI学生が共同でインターンシッ
プを実施したが、GI学生も事前に知識をある程度持って臨む必要があるため、表-3に示されているス
ケジュールに先立ってGI学生は事前学習を行った。その事前学習では、日本の森林、木の文化、森林
生態、樹木生理、造林、林業機械、砂防、育種、林業法律、林業経理、および林産加工に関する講義が
集中講義の形で実施された。インターンシップ中には、Co-op学生とGI学生が協力して一緒に作業を行
い、GI学生はCo-op学生と企業の間に入って通訳の役割を果たし、企業とCo-op学生とのディスカッショ
ンや交流を深めた。インターンシップ期間中の生活に関しては、企業の宿舎や民宿を利用し、Co-op学
生とGI学生が共同生活に近い形で生活した。休日の活動に関しては、コンソーシアムが用意した活動
以外は学生が相談して活動内容を決めた。企業ごとの成果報告会に対しては、Co-op学生とGI学生が相
談し活動成果や企業への提言を共同発表した。最終報告会では、Co-op学生とGI学生がそれぞれ自らの
成果を発表した。
Co-op学生とGI学生に対する活動評価では、Co-opとGIで目的にやや相違があるものの、インターン
シップを通して獲得する実践的な知識と能力には共通点が多くあるため、両者に対する評価は下記のよ
うに同様な項目によって行った。
Ⅰ リーダーシップに関する評価項目:
主導能力、創造性と革新性、自主性、熱意と関心
Ⅱ チーム力に関する評価項目:
情報取得能力、作業をミスなく行う能力、生産性、コミュニケーション能力(筆記、会話)、チームワー
ク能力
Ⅲ 判断力に関する評価項目:
判断能力、指導者の意見を吸収する能力
Ⅳ 倫理と責任に関する評価:
自己管理能力、信頼性、協調性、規則と方針に対する適応
実際の評価書については次章で示すが、両者に対して同様な項目で評価した。これらの評価項目は、
専門性に関わらず、実践的な教育によって獲得してもらいたい能力を示している。
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2
2
森林利用グローバルインターンシップとUBCのCo-opプログラム
2-4 両者の関係
表3 UBC学生と岡山大学GI学生の組み合わせ.
30
企画・運営の組織と準備
3-1 組織
3.企画・運営の組織と準備
3-1 組織
3-1-1 包括連携協定
岡山大学の長期実践型教育プログラムの構築にあたって、UBCのCo-opプログラムを森林学部林産学
科と提携したことで、地元の林業・林産業の企業、行政組織との連携を基本とすることとし、地域総合
研究センターが中心となって、林業・林産業についての産学官の連携を進めた。その結果、國六株式会
社、銘建工業株式会社、院庄林業株式会社、服部興業株式会社、倉敷木材株式会社および岡山県森林研
究所との連携事業についての協議を始め、平成26年7月に森林研究所を除く5企業と岡山大学の間で林
業とその関連分野にかかる包括連携協定を締結した。岡山県森林研究所はオブザーバーとしての参加と
なった(資料10)
。なお、これらの企業・機関は林業・林産業の分野では川上の木材生産から川下の家
具生産、建築までの木材流通のすべての分野をカバーするものである。
資料10 林業とその関連分野にかかる包括連携協定書
これは林業とその関連分野における各種施策の推進、試験研究、知識・技術の交流等の取組において、
相互の連携を強化し、もって地域活力の向上と林業の一層の発展を図るため、さらに、次世代の林業を
担う人材の育成、林業生産活動の活性化と森林の持続的利用につなげることを目的に、岡山大学は林業、
林産業関連企業との間で締結した包括連携協定である。また、次世代の人材育成のための施策などを中
心に連携・協力し、林業とその関連分野に係る「林業教育コンソーシアム」の設置に合意した。
一方、岡山大学環境生命科学研究科はUBC森林学部と部局間の学術交流協定を締結し(資料11)、教員、
学生の研究、教育交流の基本的枠組みを構築した。
31
3
3
企画・運営の組織と準備
3-1 組織
資料11 岡山大学とUBCの学術交流協定
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企画・運営の組織と準備
3-1 組織
以上の林業教育コンソーシアムの設立と岡山大学とUBCとの間の部局間学術交流協定を元に、UBC
が行っているCo-op教育プログラムによる長期就業体験学習の学生を岡山に受け入れることとした。以
上の受け入れ体制は図22に模式的に示す。
図22 UBCのCo-op学生受け入れ態勢
3-1-2 林業インターンシップ
岡山大学に長期就業体験学習のシステムを導入することを目的として、先進事例であるUBCのCo-op
プログラムによる長期インターンシップ学生の受け入れを行うに先立って、上記の林業教育コンソーシ
アムを使って環境生命科学研究科と農学部の学生を対象とした林業インターンシップを平成26年8月19
日~9月26日に実施した(図23)
。学生の受け入れ先とその期間は表4に示す。この事業は、UBCの学
生と岡山大学生を同時に受け入れて行う長期インターンシップの本格的試行に先立って、林業教育コン
ソーシアムに参加した企業のインターンシップ受け入れの予行演習を行って、学生を企業に受け入れた
際に起こる種々の課題の洗い出しを目的としていた。環境生命科学研究科と農学部の院生、学生計10名
(BC6名、MC3名、DC1名)は4日から10日間、それぞれの企業で就業体験を行い、10月1日にその
成果を口頭発表した(資料12、図24)。
学生への企業の評価はおおむね良好で、学生たちが積極的に作業に取り組んでいたことを評価してい
た。しかし、一部ではインターンシップに参加する際の目的意識をさらに明確にしてもらいたいとの要
望もあった。また、作業内容について企業ごとに
工夫をする必要があり、初めてのために戸惑った
面も認められた。それらの点が次の本格実施に向
けた改善点として把握できた。また、事前教育に
含めなければならない点も明らかとなった。これ
によって大学側は学生の送り出しのための準備、
それぞれの企業・機関は大学生を受け入れてイン
ターンシップを実施するための準備が整った。
図23 岡山大学農学部の林業インターンシップ
33
3
3
企画・運営の組織と準備
3-1 組織
表4 林業インターンシップの派遣先とその期間
岡山大学林業インターンシップ 2014 報告会プログラム
日時 2014 年 10 月 1 日
司会:絢野ナチン
10:00~ 開会の辞:坂本圭児 教授
インターンシップ参加学生による報告
10:05~ 岩本圭太:服部興業㈱
10:15~ 岡田美和:國六㈱
10:25~ 林 有生:國六㈱
10:35~ 郷司理沙:國六㈱
10:45~ 藤林裕二:國六㈱
10:55~ 吉森一道:院庄林業㈱
11:05~ 梶河千紘:銘建工業㈱
11:15~ 粟飯原 友:倉敷木材㈱
11:25~ 中村亮介:倉敷木材㈱
10:35~ 古谷 蓮:岡山県農林水産総合センター森林研究所
11:50~ 総括:吉川 賢 教授
11:55 閉会の辞:奥田 潔 農学部長
資料12 2014年度林業インターンシップ報告会のプログラム
34
企画・運営の組織と準備
3-1 組織
図24 2014年度林業インターンシップ報告会の発表スライド(一部)
35
3
3
企画・運営の組織と準備
3-1 組織
3-1-3 平成27年度の試行
そこで、第1回の林業教育コンソーシアムを平成26年10月1日に開催し、UBCと岡山大学からの休
業体験のための学生受け入れに合意した。
平成27年の6月から8月までの3ヶ月間、UBC森林学部の学生2名をCo-opプログラムとして受け入
れ(Co-op in Okayama)、岡山大学の森林利用グローバルインターンシップとの同時開講とした。UBC
学生は3ヶ月の間に3週間ずつ3つの企業で就業体験を行うことになるので、6つの企業・機関を木材
生産から流通・販売までの川上から川下までを含む3企業に2分した。岡山大学生はその中の1つの企
業で3週間の就業体験をすることとした(図25)。
図25 2015年度のUBC Co-op学生と森林利用グローバルインターンシップ学生の受け入れについての概要
なお、UBCの学生は岡山大学の就学ビザによって来日し、滞在するものとした。岡山大学生は、前
述のように、全学から募集したため、ほとんどの学生が林学・林産学とは無関係な専門分野の学生であっ
た。そのため、後述のような林学、林産学についての事前教育を行った。
36
企画・運営の組織と準備
3-2 受入準備
3-2 受入準備
3-2-1 森林利用グローバルインターンシップ
前述のように平成26年10月の第1回林業教育コンソーシアムでUBCの学生の受け入れを合意した後、
岡山大学生の就業体験のための新規の全学的な教育科目を立ち上げるための検討を開始した。森林利用
グローバルインターンシップのカリキュラムを教育開発センターに提出し、平成27年度からの開講とし
た。
3-2-2 UBCの受け入れ学生の選考
12月9日に林業教育コンソーシアムのメンバーから提出された就業体験の内容をまとめた求人票(資
料13)をUBCに送付し、平成27年1月9日よりCo-op学生の募集は開始した。15日で締め切った後、応
募した19名の学生のリストが17日に送付されてきて、22日までに書類(資料14)で面接する6名の学生
を選考した。学生の面接は1月28日にUBCで行い、2月6日に2名の学生に採用通知を送付した(資
料15)
。1名から辞退の申し出があったため、次点の学生に改めて採用通知を送付し、2月27日に2名
の受け入れ学生を決定した。
資料13-1 UBCへ送付した求人票
37
3
3
企画・運営の組織と準備
3-2 受入準備
資料13-2 UBCへ送付した求人票
資料14-1 応募書類
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企画・運営の組織と準備
3-2 受入準備
資料14-2 応募書類
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3
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企画・運営の組織と準備
3-2 受入準備
資料15 採用通知
3-2-3 実践型教育国際シンポジウム
実践型教育プログラムの構築に向けた準備として、平成27年3月16日~21日までUBC森林学部林産
学科のRobert Kozak教授・学科長とEllis Simon教授(Co-op担当)、Sudeh Jahan専属コーディネーター
を岡山に招き、受け入れ企業・機関の状況の視察を行った。その間、19日に実践型教育国際シンポジウ
ム「グローバル実践型教育プログラムの構築に向けて」を開催した。シンポジウムの内容は本報告書の
2-1を参照されたい。
40
企画・運営の組織と準備
3-2 受入準備
3-2-4 UBC学生の来日準備
3-2-4-1 受け入れ手続き
2月から6月の間、UBC学生の在留資格について種々の検討を行った結果、岡山大学への留学ビザ
で来日することとし、以下の手順でビザ申請のための書類作成等を行った。
①受入教員(各部局)で出願書類受理
②部局での受入決定
・グローバル・パートナーズへ受入学生に関する情報書類と受入手続依頼状を送付
③グローバル・パートナーズでの受入確定処理
・受入確定処理後、学生にメールで入力要請
・グローバル・パートナーズが受入承諾書を作成
④CESRシステム入力完了
・広島入国管理局岡山出張所へグローバル・パートナーズが在留資格認定証明書の代理申請
・通常、申請から3~4週間で交付される
⑤在留資格認定証明書を学生へ送付
⑥ビザ申請
・学生は居住地に最も近い日本領事館に在留資格認定証明書をもってビザ申請
・通常1週間程度で発給される。
今回のCo-op プログラムでは、時間的な余裕が十分ではなかったため、①をグローバル・パートナー
ズで行い、②の前に③を行った。来年度は通常の流れで実施する予定である。
3-2-4-2 作業資材の準備
作業に必要で、岡山大学から貸与するのが望ましいと考えられるヘルメット、作業着、安全靴、長靴、
安全スパイク地下足袋(甲ガード付)、作業用ベルト、ゴム付き手袋、軍手、折り畳み自転車を準備した。
3-2-4-3 宿泊
受け入れ企業・機関は倉敷市の倉敷木材以外は県北に集中しているため(表5)、UBCの学生と岡山
大学の学生は共に就業場所の近くに宿泊する必要がある。そこで、県北での就業の場合にはそれぞれの
就業場所に近い宿泊先を選び、岡山大学で研修を受け、倉敷木材で就業する際には岡山大学の宿舎を利
用した。
表5 宿泊先
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3
3
企画・運営の組織と準備
3-2 受入準備
3-2-5 専門用語集
専門外の岡山大学の学生がUBCの学生に作業中に通訳をする際に利用できるように用語集を作成し
た(資料16)
。現場で使われると思われる専門用語を630語、病気になった際に状況説明に使うと思われ
る用語を87語収録した。日本語とその読み(ローマ字表記)、その英語訳を併記したことで、UBCの学
生が日本語を覚えるためにも利用できるようにした。UBCの学生と岡山大学生だけでなく、この用語
集は企業・機関にも送付し、現場でのコミュニケーションに利用できるようにした。
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日本語
育林
植林、造林
育種
林木育種
精英樹
母樹
採種林
自家受粉
次代検定
種子
不稔種子
苗畑
種苗
播種
挿し木
挿し穂
接ぎ木
稚樹
実生苗
床替え
根切り
地栫え
仮植
植栽
直挿し
適地適木
除草剤
下刈り
刈り払い
坪刈り
除伐
蔓伐り
読み
iku rinn
shoku rinn, zou rinn
ikushu
rinboku ikushu
seiei jyu
bojyu
saishu rinn
jika jyufunn
jidai kenntei
shushi
funenn shushi
nae hata
shubyou
hashu
sashiki
sashiho
tugi ki
chijyu
mishou nae
toko gae
nekiri
jizoshirae
kashoku
shokusai
jika zasi
tekichi-tekiboku
jyosou zai
shita gari
kariharai
tubo gari
jyobatu
turu kiri
英語
cilviculture
cilviculture
breeding
tree breeding
elite tree
mother tree
plus seed stand, tree seed orchard
self polination
progeny test
seed
sterile seed
nursery
seedling
sowing
cutting
cuttings
grafting
sapling
seedling
transplanting
root pruning
ground clearance
temporary planting
plantation
direst slip planting
right tree on right site
herbicide
weeding
weeding
spot weeding
salvage cutting, imporvement cutting
vine cutting
資料16 専門用語集(一部)
42
企画・運営の組織と準備
3-2 受入準備
3-2-6 森林利用グローバルインターンシップの事前教育
森林利用グローバルインターシップに参加する岡山大学の学生のほとんどは林業・林産学とは全く異
なる専門分野の学生であるため、林学・林産学についての基礎的な知識を教授するために、資料17に示
すような日程で事前教育を実施した。講義は岡山大学環境生命科学研究科と地域総合研究センターの教
員の他に、島根大学大学院生物資源科学研究科、高知大学大学院総合人間自然科学研究科、岡山県立農
林水産センター森林研究所の教職員が担当した。
資料17 森林利用グローバルインターンシップ事前教育の案内
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3
3
企画・運営の組織と準備
3-3 受入後の対応
3-3 受入後の対応
3-3-1 導入教育
6月2日にUBCの学生二人が来日し、事務手続きの後、6月12日まで導入教育として表6に示すよ
うな概要説明、日本語教育、日本文化紹介を実施した。日本語と日本文化についてはグローバル・パー
トナーズが担当し、日本の林業政策は岡山県農林水産部林政課が担当し、県立博物館では「日本の木の
文化」の特別授業を受けた。そのほか、
「城下ステーション・まちなかキャンパス」で岡山大学が取り
組んでいるまちづくり事業を見学し、市民との交流を行った。
表6 導入教育のカリキュラム
表6 導入教育のカリキュラム
6月
オリエンテーション
3日間
㻟
コンソーシアムメン
バーとUBC学生の
自己紹介
絢野
6月
午前
日本文化
5日間
午後
夕刻
㻠
㻡
ガイダンス
GI学生と顔合わせ
キャンパスツアー
野外実習「日本の
森林」
吉川
坂本
㻤
㻥
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Café
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林業政策(岡山県
庁)岡
担当者:旦
㻶㼍㼜㼍㼚㼑㼟㼑㻌㻸㼕㼒㼑
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L-Café
岡山県立博物館特
別授業
「日本の木の文化」
㻶㼍㼜㼍㼚㼑㼟㼑
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㻶㼍㼜㼍㼚㼑㼟㼑㻌㻿㼛㼏㼕㼑㼠㼥 ちなかキャンパスで
の交流
㼍㼚㼐㻌㻸㼍㼚㼓㼡㼍㼓㼑㼟
農学部見学
㼀㼛㼡㼞㼕㼟㼙㻌㼍㼚㼐
㻯㼡㼘㼠㼡㼞㼑㻌㼕㼚
㻶㼍㼜㼍㼚
3-3-2 受け入れ企業・機関での就業・研修
6月15日〜8月21日まで表1に示した5企業・1機関でそれぞれ3週間ずつの就業体験を行った。受
け入れ期間中にそれぞれの企業・機関で体験した作業は資料18に示す。
44
企画・運営の組織と準備
3-3 受入後の対応
資料 - &RRSLQ2ND\DPD および森林利用グローバルインターンシップ
月
日月 +XJK*UDG\ と 0DWW0F4XHHQ 君らは バンクーバーを出発。
日火 二人は岡山空港に到着。津島宿泊所にチェックイン。
日水
午前:*3 で学生証を、$*25$ で奨学金を受け取る。外国人登録のため市役所を訪ねる。三か月以
内の滞在では登録する必要はなく、オバーステイの場合はビザの更新申請が必要。
午後:$*25$ 会議室で &RRSLQ2ND\DPD についての概要説明吉川、絢野
日木
午前:$*25$ 会議室で荒木理事、神崎研究科長と *, 学生の顔合わせ、&RRS と *, のガイダンス
吉川、絢野。
午後:&RRS と *, によるキャンパスツアー。
日金
午前・午後:野外実習:植生実習坂本
夕方:伊藤氏と 8%& 学生の面談。 名は服部宅でホームステイ。
日土 午前:伊藤氏離岡。
名は牛窓周辺を視察。服部宅で宿泊。
日日 午後:服部氏が 名を津島宿泊所に送る。
日(月)
午前:「日本語と日本文化」を受講する。場所は一般教養棟 ' 教室、担当は植村(*3)
ランチタイムには /Café での活動に参加。担当は藤本(*3)
。
夕方:「異文化交流」を受講する。場所は一般教養棟 % 教室、担当は中村(*3)
日(火)
午前:講義「日本語と日本文化」、一般教養棟 ' 教室、植村(*3)
午後:講義「日本の文化人類学」、一般教養棟 & 教室、小野(GP)
。
講義 社会言語学:「日本の社会と言語」
、一般教養棟 B31 教室、吉田(GP)
10 日(水)
午前:講義「林業政策」
、県立図書館、旦 良則氏(岡山県農林水産部林政課)
昼食時:後楽園見学。GI の学生が一部参加。
午後:特別講義「日本の木の文化」
、県立博物館、内池秀樹(県立博物館主幹)
、野田繭子(県立博
物館学芸員)
夕方:アゴラよるまちつくり活動の紹介、岡山大学「街中キャンパス」
、岩淵(アゴラ)
11 日(木)
午前:講義「映画で見る日本の暮らしと文化:Wood Job」
、
一般教養棟 D21 教室、大林(GP)
1
午後:講義「日本人の考え方と文化」
、一般教養棟 C27 教室、大林(GP)
講義「アニメーション」
、一般教養棟 C31 教室、藤本(GP)
講義「日本の観光と文化」
、一般教養棟 C32 教室、小野(GP)
12 日(金)
午前:L-Café で「岡山に暮らす」の活動に参加。藤本(GP)
午後:農学部見学。坂本・絢野
13 日(土)自由行動
14 日(日)
午前:自由行動
午後:
① ヒュー・グラディと織田桜子は國六新庄事業所へ移動。村営「やまなみ荘」泊。
② マット・マッキーンと植田真妃、岡 香菜子は服部興業山林部へ移動。
「落合山荘」泊。
資料18-1 Co-op in Okayamaおよび森林利用グローバルインターンシップ(導入教育)
――――――――――――――――――――――――――――――――――――
45
3
3
企画・運営の組織と準備
3-3 受入後の対応
受け入れ先:國六
メンバー:ヒュー・グラディ、織田桜子
担当者:黒田眞路 新庄事業所所長
15 日(月)
午前:概要説明、村の主要施設紹介、村長、小学校長、中学校長、教育委員長に挨拶。安全教育、草
刈機、ユンボ運転練習
午後:除草作業
16 日(火)
午前:新庄中学校で木工教室の見学
午後:ヒノキ株式会社でおが屑を主原料とした製品の製造現場を見学
17 日(水)
午前:草刈
午後:伐倒作業
18 日(木)
午前:木材市場で仕分け作業を見学。製材所で製材工程を見学
午後:住宅建築会社を見学。高度な木材加工技術で建設された真庭市役所内を見学
19 日(金)
全日:オーダーメードの家具製造会社を訪問。新庄中学校で劇鑑賞
20 日(土)
出雲大社、足立美術館を見学
21 日(日) 自由行動
22 日(月)~23 日(火)
伐倒、集材、造材作業
24 日(水)
午前:原木市場・製材市場・製材プレカット工場見学
午後:國六天然林・セラピーロード
25 日(木)
午前:伐倒
午後:モザイク植林見学・セラピーロード
26 日(金)
全日:中間報告会
交流会:新庄村と岡山大学の関係者
27 日(土)湯原温泉、遷喬小学校(国定重要文化財)、木山神社、木山寺見学
28 日(日)自由行動。西中麗奈が合流
6 月 29 日(月)
3
午前:伐倒
午後:ハーベスタ作業見学
6 月 30 日(火)
午前:伐倒
午後:蒜山高校を訪問
7 月 1 日(水)
午前:新庄中学校でのプレゼンテーションに向けた準備
午後:天然林ハイキング
7 月 2 日(木)
午前:重機メンテナンス
午後:新庄中学校で中学生にコーププログラムを紹介
7 月 3 日(金)
午前:伐倒依頼箇所の視察
午後:本社関係者に伐倒デモンストレーション。國六本社から代表締役社長等 30 人が参加
評価:坂本・絢野
津島宿泊所(岡山)に移動
7 月 4 日(土)
自由行動
7 月 5 日(日) 午前は自由行動。夕方にヒュー・グラディ、塩野谷英明、隈崎翔真は「原田旅館」に
移動。
資料18-2 Co-op in Okayamaおよび森林利用グローバルインターンシップ(國六株式会社)
――――――――――――――――――――――――――――――――――――
46
企画・運営の組織と準備
3-3 受入後の対応
受け入れ先:服部興業
メンバー:マット・マックィーン、岡 香菜子、植田真妃
担当者:川原洋平 山林部主任
15 日(月)
午前:概要説明、安全教育、作業計画の説明
午後:チェーンソーの使い方とメンテナンス
16 日(火)
午前:伐倒講習(安東)
午後:伐倒・集材作業
17 日(水)
午前・午後:選木・伐倒作業
18 日(木)
午前・午後:炭焼き
19 日(金)
午前:集材
午後:造材、今週の振返りと次週に向けて
20 日(土) 出雲大社、足立美術館見学(三木)
21 日(日) 自由行動
22 日(月)~23 日(火)
午前・午後:伐倒。
24 日(水)
午前:木材市場、バイオマス発電用バイオマス置き場、真庭木材事業協同組合、チップ工場の見学
午後:伐倒、玉切り
25 日(木)
午前・午後:伐倒、集材
26 日(金)
午前:三尾寺神木見学
午後:ワイヤー編み
27 日(土)~28 日(日) 自由行動
6 月 29 日(月)~6 月 30 日(火)
午前・午後:伐倒、集材作業
7 月 1 日(水)
午前:作業用車両のメンテナンス(エンジンオイル交換)
午後:伐倒作業。
7 月 2 日(木)
5
午前:作業現場調査
午後:伐倒・集材
7 月 3 日(金)
午前:伐倒、集材、コスト試算
午後:報告会、評価は吉川教授。
3 名とも岡山に移動。
7 月 4 日(土)自由行動
資料18-3 Co-op in Okayamaおよび森林利用グローバルインターンシップ(服部興業)
――――――――――――――――――――――――――――――――――――
47
3
3
企画・運営の組織と準備
3-3 受入後の対応
受け入れ先:銘建工業
メンバー:ヒュー・グラディ、塩野谷英明、隈崎翔真
担当者:森田 聖 銘建工業総務部
7 月 6 日(月)
午前・午後:会社概要説明・安全教育、CLT に関する講義
7 月 7 日(火)
午前・午後:工場の視察
7 月 8 日(水)~7 月 10 日(金)
午前・午後:大断面工場で集成材(CLT)の製造・加工
7 月 11 日(土)
冷温帯森林の日帰り鳥取大学演習林視察、大山登山、ブナ林散策。
引率:坂本 教授、大住 教授(鳥取大学)
メンバー:マックィーン、瀬﨑、グラディー、塩野谷
7 月 12 日(日)自由行動
7 月 13 日(月)~7 月 14 日(火)
午前・午後:大断面工場で集成材の製造・加工
7 月 15 日(水)~7 月 16 日(木)
午前・午後:図面から模型を作成
7 月 17 日(金)
午前:CLT 住宅温熱環境測定
午後:木造建築事例見学
7 月 18 日(土)~7 月 19 日(日) 自由行動
7 月 20 日(月) 休日(海の日) 自由行動
7 月 21 日(火)
午前・午後:真庭バイオマス発電所のチップの含水率測定。
7 月 22 日(水)~7 月 23 日(木)
伐採現場見学、大型製材所見学、関連資料の英訳(高知おおとよ製材所)
7 月 24 日(金)
午前:研修のまとめ。
午後:研修結果の報告。評価のために吉川教授が参加
3 名とも岡山大学津島宿泊所へ移動
奨学金を受領。
資料18-4 Co-op in Okayamaおよび森林利用グローバルインターンシップ(銘建工業)
――――――――――――――――――――――――――――――――――――
7
48
企画・運営の組織と準備
3-3 受入後の対応
受け入れ先:院庄林業
メンバー:マット・マックィーン、瀬﨑景己
担当者:長瀧正典 院庄林業業務部業務課マネジャー
7 月 6 日(月)
午前:概要説明、安全教育、工場見学。
午後:製品についての説明と日本とカナダの林産業に関する意見交換
7 月 7 日(火)~7 月 9 日(木)
午前・午後:フィンガージョイント(FJ)工程見学、FJ 工程実務研修
7 月 10 日(金)
午前・午後:ヒノキの検品。
7 月 11 日(土)
冷温帯森林の視察(鳥取大学演習林)
引率:坂本 教授、大住 教授(鳥取大学)
メンバー:マックィーン、瀬﨑、グラディー、塩野谷、隈崎
7 月 12 日(日)自由行動
7 月 13 日(月)
午前:ラミナ講習
午後:植林地見学
7 月 14 日(火)
午前・午後:ムラトリ工程
7 月 15 日(水)
午前:伐採現場の見学
午後:仕分け実務
7 月 16 日(木)
午前・午後:板削り工程、仕分け実務。
7 月 17 日(金)
午前・午後:プレス工程
7 月 18 日(土)~7 月 20 日(月) 休日(海の日) 自由行動
7 月 21 日(火)
午前:伝統家屋の見学
午後:仕上げ工程
7 月 22 日(水)
午前・午後:仕上げ工程、梱包
7 月 23 日(木)
午前・午後:品質管理
8
7 月 24 日(金)
午前・午後:まとめの発表と討議。評価を行うために坂本教授が参加。
2 名とも岡山大学津島宿泊所へ移動。
奨学金を受領。
7 月 25 日(土) 自由行動
7 月 26 日(日) 午前は自由行動。夕方にマット・マッキーンと下山は「倉敷ゲストハウス」に移動。
資料18-5 Co-op in Okayamaおよび森林利用グローバルインターンシップ(院庄林業)
――――――――――――――――――――――――――――――――――――
49
3
3
企画・運営の組織と準備
3-3 受入後の対応
受け入れ先:岡山県農林水産センター森林研究所木材研究室
メンバー:ヒュー・グラディ、福岡千明
担当者:大賀哲哉 森林研究所特別企画研究員
7 月 27 日(月) 午前:木材加工研究室の概要説明、OHK 取材。
午後:美咲町の町村林を見学。
7 月 28 日(火)
午前・午後:原木・製品市場、建築現場、プレカット工場の見学。
7 月 29 日(水)
午前:ハーベスタに試乗、玉切り作業。
午後:木造準耐火・耐火建造物の可能性セミナー(岡山県農林水産大学校、赤磐市)
7 月 30 日(木)
午前:柿渋試験
午後:木のせん断破壊試験、木の弾力性からヤング率測定
7 月 31 日(金)
午前:柿渋試験
午後:含水率測定。
8 月 1 日(土)~8 月 2 日(日)
自由行動
8 月 3 日(月)
午前・午後:リンドウ栽培を見学、木質材料の腐朽診断。
8 月 4 日(火)
午前:木材含水率の測定。
午後:CLT の剥離試験
8 月 5 日(水)
午前:研究室間での移動(原田旅館からさわやか荘へ移動)。
午後:林業研究室の紹介。
8 月 6 日(木)
午前・午後:シカ害の調査。
8 月 7 日(金)
午前:炭焼き
午後:マツ林毎木調査。
ヒュー・グラディーは倉敷ゲストハウスへ、福岡千明は岡山市へ移動。
8 月 8 日(土)
マットとヒューはアスエコカフェーで講演。
8 月 9 日(日)~8 月 16 日(日) お盆休み 自由
10
8 月 16 日(日)夕方、マットは倉敷ゲストハウスへ、ヒュー・グラディーと福岡千明はさわやか荘へ
移動。
8 月 17 日(月)
午前:コンテナ苗の育成状況確認
午後:ナラ枯れカシノナガキクイ虫の調査
8 月 18 日(火)
午前:間伐の効果についての調査
午後:岡山甘栗の状況調査
8 月 19 日(水)
午前・午後:ナラ枯れ調査。
8 月 20 日(木)
午前・午後:特用林産物(キノコ)の DNA 分析。
8 月 21 日(金)
午前:林業研究室での報告と討議。評価のために石丸が参加。
午後:木工研究室での報告と討議。評価のために石丸が参加。
2 名は津島宿泊所(岡山)へ移動。
8 月 22 日(土)~8 月 23 日(日) 自由活動
資料18-6 Co-op in Okayamaおよび森林利用グローバルインターンシップ(森林研究所)
――――――――――――――――――――――――――――――――――――
50
企画・運営の組織と準備
3-3 受入後の対応
受け入れ先:倉敷木材(株)
メンバー:マット・マックィーン、下山将輝
担当者:福本邦重 住宅事業部営業課長
7 月 27 日(月)
午前:会社概要説明。
午後:棚卸後の整理。
7 月 28 日(火)
午前:倉敷木材の歴史。日本の木の文化についての講義。
午後:伝統的な建築物(五重塔、吉備津神社)の見学。
7 月 29 日(水)
午前:木材を指定の長さにカット、木材の表面を削る。
午後:掃除、FM くらしきのラジオ番組の取材。
7 月 30(木)
午前:柱の加工。
午後:上棟キッドで家の組立。ソファーの塗料塗り。
7 月 31 日(金)
午前:ソファーのリメイク。
午後:大工道具の説明、墨付け。
8 月 1 日(土)~2 日(日)自由行動
8 月 3 日(月)
午前・午後:住宅構造模型の材料加工。
8 月 4 日(火)
午前・午後:住宅構造模型の材料加工(土台、屋根の垂木を置く部分の加工)
。
8 月 5 日(水)
午前・午後:住宅構造模型の材料加工(接合部(追っかけ大栓継ぎ)の加工)
。
8 月 6 日(木)
午前・午後:住宅構造模型の材料加工(柱の加工)
。
8 月 7 日(金)
午前・午後:住宅構造模型の材料加工(ほぞの加工、隅木、垂木を置く部分の加工)
。
8 月 8 日(土)
アスエコカフェーで講演:
「カナダの森と環境」
8 月 9 日(日)~8 月 16 日(日) お盆休み 自由
8 月 16 日(日)夕方にマットは倉敷ゲストハウスへ移動。
8 月 17 日(月)
午前・午後:住宅構造模型の材料加工(通し梁につなげるほぞの加工、火打土台、火打梁の加工)
12
8 月 18 日(火)
午前:上棟の手伝い。
午後:上棟式に参加。
8 月 19 日(水)
午前:住宅建設の現場見学
午後:垂木、隅木の加工。住宅模型の仮組立。
8 月 20 日(木)
午前:記念品を入れるための道具箱の作成。
午後:文化財補修現場の見学
8 月 21 日(金)
午前:住宅模型の組立。
午後:報告会。OHK 取材。評価のために荒木、絢野が参加。
2 名は岡山大学国際交流会館へ移動。
8 月 22 日(土)~8 月 23 日(日) 自由行動
資料18-7 Co-op in Okayamaおよび森林利用グローバルインターンシップ(倉敷木材)
――――――――――――――――――――――――――――――――――――
51
3
3
企画・運営の組織と準備
3-3 受入後の対応
8 月 24 日(月)
午前:午後:森林生態学実習Ⅰ(坂本、宮崎)、場所:西粟倉村。
8 月 25 日(火)
午前:ビザ更新申請。
午後:森林生態学実習Ⅱ(嶋、廣部)
、場所:玉野市。
8 月 26 日(水)
午前:造林学、林業技術(吉川)、場所:地域総合研究センター会議室。
午後:報告会での発表の指導(吉川、山田)
、場所:地域総合研究センター会議室。
参加学生:岡、植田、福岡、下山。
8 月 27 日(木)
午前・午後:報告会での発表の指導(荒木、吉川、石丸、山田)
。
場所:地域総合研究センター会議室。
参加学生:マット、ヒュー、織田、西中、瀬崎、塩野谷、隈崎。
8 月 28 日(金)
午前:成果報告会の発表準備。場所:地域総合研究センター会議室。
午後:「森林利用グローバルインターンシップ」と「Coop in Okayama」成果報告会。
場所:岡山大学国際交流会館。
夕刻は懇親会。場所:生協食堂。
8 月 29 日(土)~8 月 30 日(日) 自由活動、帰国準備
資料18-8 Co-op in Okayamaおよび森林利用グローバルインターンシップ(事後教育)
上記資料18に示した作業内容を企業ごとにまとめると以下のようになる。カッコ内は作業・研修日数)
●服部興業:
・概要説明、安全教育、作業計画の説明(0.5日)
・チェーンソーの使い方とメンテナンス講習(0.5日)
・伐倒講習(0.5日)
・選木・伐倒・集材・造材作業(6日)
・炭焼き(1日)
・今週の振り返りと次週に向けて(0.5日)
・木材市場、バイオマス発電用バイオマス置き場、真庭木材事業協同組合、チップ工場見学(0.5日)
・三尾寺神木見学(0.5日)
・ワイヤー編み(0.5日)
14
・作業用車両のメンテナンス(0.5日)
・作業現場調査(0.5日)
・コスト試算(0.5日)
・報告会(0.5日)
●国六:
・概要説明、施設紹介、あいさつ回り、安全教育、重機等練習(0.5日)
・新庄中学校訪問(0.5日)
・おが屑加工製品工場見学(0.5日)
・除草作業(1日)
・木材市場、製材所見学(0.5日)
・住宅建築会社、真庭市役所見学(0.5日)
・家具会社見学(1日)
・原木市場、製材市場、製材プレカット工場見学(1日)
・天然林、モザイク状植林現場(0.5日)
52
企画・運営の組織と準備
3-3 受入後の対応
・森林セラピーロード見学(0.5日)
・中間報告会(0.5日)
・ハーベスタ作業見学(0.5日)
・中学生を対象にした報告会とその準備(1日)
・伐倒・集材・造材作業(4日)
・蒜山高校訪問(0.5日)
・天然林ハイキング(0.5日)
・重機メンテナンス(0.5日)
・伐倒依頼箇所の視察(0.5日)
・本社関係者に伐倒デモンストレーション兼報告会(0.5日)
●院庄林業
・概要説明、安全教育、工場見学(0.5日)
・製品についての説明と日本とカナダの林産業に関する意見交換(0.5日)
・フィンガージョイント工程(3日)
・ヒノキ検品(1日)
・ラミナ講習(0.5日)
・植林地見学(0.5日)
・ムラトリ工程(1日)
・伐採現場見学(0.5日)
・板削り工程・仕分け工程(1.5日)
・プレス工程(1日)
・伝統家屋の見学(0.5日)
・仕上げ工程(1日)
・梱包(0.5日)
・品質管理(1日)
・まとめと報告会(1日)
●銘建工業:
・概要説明、安全教育、集成材(CLT)に関する講義(1日)
・工場見学(1日)
・CLT製造加工(5日)
・図面から模型作成(2日)
・CLT住宅温熱環境測定(0.5日)
・木造建築事例見学(0.5日)
・バイオマスチップの含水量測定(1日)
・大型製材所見学(0.5日)
・伐採現場見学(1日)
・関連資料の英訳(0.5日)
・研修のまとめ(0.5日)
・報告会(0.5日)
53
3
3
企画・運営の組織と準備
3-3 受入後の対応
●倉敷木材:
・概要説明(0.5日)
・棚卸後の整理(0.5日)
・講義:倉敷木材の歴史、日本の木の文化(0.5日)
・伝統的建築物巡り(0.5日)
・製材(1日)
・ラジオ番組出演(0.5日)
・ソファーのリメイク(1日)
・大工道具と作業工程の説明(0.5日)
・日本の大工仕事(7日)
・上棟式(1日)
・住宅建設の現場見学(0.5日)
・道具箱作成(0.5日)
・文化財補修現場の見学(0.5日)
・報告会(0.5日)
●岡山県農林水産センター森林研究所:
・木材加工研究室の概要説明(0.5日)
・美咲町町村林の見学(0.5日)
・原木・製品市場、建築現場、プレカット工場見学(1日)
・伐採、玉切り(0.5日)
・木造準耐火・耐火建造物の可能性セミナー参加(0.5日)
・柿渋試験(1日)
・含水率測定(1日)
・木のせん断破壊試験、木の弾力性からヤング率測定(0.5日)
・リンドウ栽培見学(0.5日)
・木質材料の腐朽診断(0.5日)
・CLTの剥離試験(0.5日)
・林業研究室施設及び研究紹介(1日)
・シカ獣害調査(1日)
・炭焼き(0.5日)
・マツ林毎木調査(0.5日)
・コンテナ苗木の育成状況確認(0.5日)
・カシノナガキクイムシ調査(0.5日)
・間伐効果についての調査(0.5日)
・岡山甘栗の生育状況調査(0.5日)
・ナラ枯れ状況調査(1日)
・キノコ菌のDNA解析(1日)
・報告会(1日)
54
企画・運営の組織と準備
3-3 受入後の対応
3-3-3 事後研修と成果報告会
8月24日〜26日は事後研修として「森林生態学実習」と「日本の造林学」、「日本の林業技術」を講義
した(表7)
。26日午後から27日まで最終の成果報告会の発表の準備とその指導を行った。28日は「森
林利用グローバルインターンシップ」と“Co-op in Okayama”の最終成果報告会を開催した。内容の詳
細については4-2を参照されたい。
表7 事後研修のカリキュラム
3-3-4 就業期間中のケア
企業・機関にとって今回の岡山大学生の受け入れは前年に一度経験してもらっているが、外国人の学
生受け入れは初めてのものである。受け入れ期間中に不測の事態が起こらないようにするために、学生
には毎日の作業やその時に感じたことなどを書き留める日報をつけるように指導し、大学へ提出させた。
さらに、毎週金曜日に地域総合研究センターのスタッフが受け入れ企業・機関を訪問し、企業、学生そ
れぞれから作業遂行にあたっての問題点がないかどうかを10分程度聞き取りした。その聞き取りによっ
て得られた課題は「4-1就業期間中のヒアリングと報告会」にまとめた。
3-3-5 休日プログラム
企業・機関での就業は月曜日から金曜日までであるので、土日の休日を利用して、日本文化や日本の
森林など、
就業体験だけでは得られない経験をするためのプログラム(休日プログラム)を準備した(表
8)
。このうち、蒜山のウルシ林の視察は台風来襲のために中止となった。
表8 休日プログラム
55
3
4
平成27年度に実施した実践型教育プログラムの課題と展望
4-1 就業期間中のヒアリングと報告会
4.平成27年度に実施した実践型教育プログラムの課題と展望
4-1 就業期間中のヒアリングと報告会
就業期間中の毎週末に、中間伺いと最終評価として岡山大学教員が各協力企業に赴きヒアリングを
行った。UBC学生・岡山大学生・企業から挙げられた感想・学びまたは効果・課題について、ヒアリ
ング・最終報告の中から特に要望・特筆すべきと思われる意見を下記に簡潔にまとめた。また、院庄林
業では最終報告時に学生に提案を出す課題を与えていただいた。参考までに院庄林業についてのみでは
あるが、学生から出された提案を記す。下記以外にも、特筆する点として、すべての受け入れ先から受
け入れにあたって学生の安全管理、体調管理に細心のご配慮をいただいた。
4-1-1 UBC学生
4-1-1-1 UBC学生からの感想
・‌作業工程やコンセプトはカナダ国ブリティッシュコロンビア州と日本は似ているが、スケールとオ
ペレーションの点で異なる。カナダは分業が基本であり単一の作業に熟練することが求められる一
方、日本はチームで作業全体に携わる仕組みである。
・‌日本は効率性を考えながら細かいところまで配慮して作業をしている。集材方法・コスト管理の点
に感心した。先を見通して動くことは大切であり、1週間ごとにコストを考えるようにしている。
・‌カナダの林業は質より量を重視するのに対し、日本は量より質を重視している。日本の木材、木材
加工品、建築技術は独特で、他国に比べてかなり良質である。
・‌林産加工ではなかなか行くことが出来ない山での業務を見に行ったこと、特に植栽作業を見られた
のが楽しかった。
・‌日本の家は小さいが構造や品質への注力などの点の差異が面白い。また、家具作りは元から趣味で
あり楽しい。歴史的建造物の視察も非常に勉強になった。
4-1-1-2 UBC学生が学んだこと
・‌Co-opにおいて、日本では工程が全部見られる点が長所である。カナダでは、選木なら選木の仕事
しか担当しないが、日本では収支を気にかけながら全工程を体験させてくれた点が大きな成果であ
る。
・‌日本の木材生産は小規模であるが、その作業の中に様々な技術があり、生産効率向上に向けた努力
が行われていることを学んだ。
・‌急峻な山地で行われる日本の林業は、経済面だけでなく、災害防止や環境保全についても考慮して
いることを理解できた。
・‌カナダと日本の林業では規模が違うが、社員間で意思の疎通を図るには適切な生産規模であると考
えられた。
・‌間伐に関して、カナダでは収入が重視されるが、日本の林業では森林の持続性が重視され、過度な
伐採がなされないような伐採計画が立てられている。カナダの政府所有、日本の私有林という所有
形態が造林の形態の違いをもたらしている。
・‌カナダで日本に関することを間接的にしか理解できなかった。この三カ月を通して日本と日本文化
のことをより具体的に理解することが出来た。
・‌柿渋や木粉プラスチックボードなど、自分の専門に還元できることを経験できた。
・‌県の研究所という立場は、身近な企業を助けると言う使命を持っているのが面白く、大切なことだ
56
平成27年度に実施した実践型教育プログラムの課題と展望
4-1 就業期間中のヒアリングと報告会
と実感した。
4-1-1-3 UBC学生から挙げられた課題
・‌プログラムではたくさんのことを勉強できた一方、会社にあまり貢献できていないと感じられる日
が多かった。
・‌単語が専門的な場合の通訳が難しそうだ。
・‌研修には日本人学生は二人の方が通訳や議論などを行いやすい。
4-1-1-4 UBC学生から企業(院庄林業)および岡山大学へ挙げられた提案
・‌品質と生産性の両立が大切であり、そのためには、データ収集、原因究明、およびそのフィードバッ
クが重要である。
・‌データ収集では測定器具とコンピュータをできる限りつなぎ、迅速にデータ化する必要がある。メ
ンテナンスに関しては、複数の担当者による部門あるいはチームを形成する必要がある。各工程で
の進捗と生産性について常にシミュレーションして、最終的な生産量を予測し、どこが律速段階な
のか、どこで無駄ができているのか、を検証するシステムが必要である。製品保証のためには、商
品のコード化とそれに対応する写真データなどの品質を保証する証拠データをもっておけば、消費
者からのクレーム対応がスムーズになる。
4-1-2 岡山大学生
4-1-2-1 岡山大学生からの感想
・‌企業のイメージを具体的に感じ取ることができた。企業とは様々な課題を抱えフィードバックしな
がら常に成長過程であるということに気が付いた。
・‌自分が専門とする農業土木と林業は、材料という点で重なる部分もある。事前学習はしてもらった
が、もっと多くの予備知識を自分で着けておけば良かった。
・‌三週間は長いと来る前は思っていたが、ノミやカナヅチなどを使ったり、実際に現場に行き手伝わ
せてもらうなど貴重な経験をさせてもらった。色々なことが知れて楽しくあっという間に終わった。
・‌専門は違うが企業概要に住宅について学べると書いてあったので、自分の興味が広がるのではない
かと思って応募したが正解だった。
4-1-2-2 岡山大学生が学んだこと
・‌学校では単なる知識として学んだことが、企業では具体的に自らの行動に問われる。こうした経験
が、大学へ戻った際に自信につながると信じたい。しかし、今回の経験をどのように自らの将来で
いかせるかを自分の中で整理するのはとても難しい課題。
・‌アルバイトでは、業界の置かれた状況や、正確な業務計画の立案と収益構造、チームワークの大切
さ、作業の段取りと仕事の流れ、そして効率性について学ぶことは出来ない。こうした諸点を真剣
かつ丁寧に教えていただいて、実社会で働くことの厳しさを知ることが出来た。
・‌普段過ごしている世界とは違った社会経験を積むことが出来、この先自分が社会人としてどのよう
な大人になるべきなのか、また責任を持つとはどういうことなのかを考えるきっかけになった。
・‌語学面でも、参加前と比較するとかなり底上げはされた。今回の経験を通して語学学習のイメージ
もついたので、今後もこのような機会を利用していきたい。
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4
4
平成27年度に実施した実践型教育プログラムの課題と展望
4-1 就業期間中のヒアリングと報告会
・‌林業という分野を通して、日本とカナダ、他国との風土や考え方の違いを勉強することができ、改
めて自分の住む日本の独自性への理解が深まった。
・‌これまで岡山は林業が有名だとは知らなかった。樹皮シートや炭など、専門とする農業土木でも素
材として取り組めそうなことが多くあったので、役立てることが出来ればと思う。
4-1-2-3 岡山大学生から挙げられた課題
・‌週末はもう一方の組と交流したのはとても楽しかった。週末はどちらかの宿舎に集まって業務を報
告し合い、最終報告に向けて用意をする機会にしてくれると良い。
・‌UBC学生とのコミュニケーションには問題を感じないが、専門用語の語彙が乏しい。
・‌3週間の実践型教育では短すぎ、互恵性が出せないまま終わると痛感している。
・‌調理器具がそろっていなかったので食事に少し困った。
4-1-2-4 岡山大学生から企業(院庄林業)および岡山大学へ挙げられた提案
・‌インターンシップの期間が3週間あるので、作業現場での課題とそれに対する学生からの提案は、
現場ですぐ採用できるような具体的なものにする事を目標に、目的意識を持って取り組まなければ
ならない。
・‌事前面談によるインターンシップへの各個人の目的と目標の明確化が必要である。事前に、インター
ンシップの目的、インターンシップを通じて得たいこと、企業に貢献できそうなことなどを、より
明確にしておくべきだろう。そのために、それらの項目を記載するワークシートを用いて面談を行
ない、そのワークシートをもとに達成度を明らかにすれば、単なる体験にとどまらないインターン
シップになる。
・‌日報では、作業内容だけでなく、問題や翌日の目標とそのフィードバックなどの項目も付け加えて
みればよいのでは。また、その日報を大学のインターンシップコーディネータまたは、担当してく
ださる企業の方からフィードバックをもらうことで、よりよい課題解決ができる。
・‌インターンシップの過程で、次のように3点提言を考えた。①品質保証するための検品では、指さ
し確認と目線の統一がより信頼性を高めるのではないか。②外国からの研修生は3年間の短期で労
働なので、すぐに安全面や仕事の効率を図る必要があるが、そのためには指示に関してピクトグラ
ム化と母国語表記が必要である。③工場への視察に対しては、案内デザインの統一感が必要であり、
部門ごとの特徴を出しつつも工程を示す順序の表現など基本的な部分を統一する必要がある。
4-1-3 企業
4-1-3-1 企業からの感想
・‌学生が入ることで売り上げが落ちるという先入観を持っていた。しかし、学生たちに実施してもらっ
た先行伐倒の作業は、学生たちと社員がうまく協力できて、作業能率を落とすことなく実施できた。
・‌特にUBC生が就業経験を通して、いろいろなことを学び、成長しようとしている姿勢に感心した。
・‌UBC学生、岡山大学生ともに真面目な学生で正直驚いた。注意するときちんと対応しているし、
二人とも率直に言ってくれるのでコミュニケーションが良くできた。
・‌UBC学生はこれまでに現場の経験があるので、作業についての察しがよく、仕事内容も良く把握
できていた。そのため質問する内容もしっかりしたものであった。
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平成27年度に実施した実践型教育プログラムの課題と展望
4-1 就業期間中のヒアリングと報告会
4-1-3-2 企業における効果
・‌学生たちを受け入れることで自分たちの仕事に対する誇りを再認識出来た。
・‌UBCの学生が日本とカナダの林業の比較をしようとしていることに感心した。同時に我々もカナ
ダの林業を知ることで、職場が活性化した。
・‌先行伐倒を試験的に学生に実施してもらうことで、作業の有効性を検証することができた。
・‌テレビ局の取材があり、宣伝になった。
・‌森林の管理と施業に対するUBC学生の質問等が刺激をもたらした。小スケールの伐採計画を立て
る日本の持続的経営的林業に対する疑問から、大きな地域レベルを対象とすればより大きなスケー
ルでの伐採の持続性を確保できるのではないかというアイデアをもたらした。そうしたアイデアに
よって新しい発想が生み出され、議論するという機会を与えられた。
・‌國六では地元の新庄村への貢献と地域振興を目指している。学生には地域活動へも参加してもらっ
たが、その活動の活性化に学生たちが果たしてくれた役割は大変大きかった。
・‌岡山大学生の活動が小中学生の憧れとなって小中学生が岡山大学へ進学するというような持続的な
循環を形成するきっかけになってくれればと考えている。
・‌それぞれの工程のリーダーが担当し準備を行ったことで、リーダークラスの人材が、それぞれ自分
たちの部門の理解や意識向上につながったと思う。
・‌岡山大学生の提言は大変わかりやすく重要な課題であり、かつ実現可能なものであり、今後会社で
も検討してみたい。UBC学生からの提言は、コスト面などから実現することは難しいと考えられ
るが今後に大変参考になった。
・‌今年度は三週間の長丁場になり、受け入れ部署が複数にわたるため、部署間の連携が必要であった。
その結果通常の業務では関わりがほとんどない社員間で交流が行われた。プレゼンのために歴史を
復習したり、英語を学んだりするなどの効果があった。またUBC学生からはカナダの作業行程と
の違いなどを教えてもらった。
・‌人に教える機会・英語を話す機会・文化財補修の現場など現場・外部の人々と知り合う機会・社長
や副社長に将来的な展望を聞く機会など、通常業務のうちでは経験できないことを経験できた。
4-1-3-3 企業から挙げられた課題
・‌学生の指導には安全面での配慮が常に必要であり、現場で作業員が対応するに当たって、多少戸惑
いもあった。
・‌勉強してもらう目的で様々なメニューを用意したため、現場作業の量が少なかったかもしれない。
・‌岡山大学生とUBC学生の専門知識の差を感じる。事前学習をしてもらっていても、林産加工の専
門知識があるわけではなく、専門用語を通訳する場合などに多少問題があった。
・‌山での作業は天気に左右されるため、必ずしも毎日作業が出来ない。雨天など外の作業が出来ない
間、どのような作業をしてもらうか悩んだ。
・‌現場で実学を学ぶ前提として、仕事の歴史や作業に対する心構え等の教養的な面を大学でもっと教
育しておいてもらいたい。大学の座学にCo-opの実学をうまくミックスできればと思う。岡山大学
の今後の方針を検討する際の課題としてもらいたい。
・‌学生に対するコメントが出来るほど深く付き合えなかった。林業・木材加工と期間中二つに分かれ、
それぞれの研究室の事業を一通り習ったため、各所員の担当はそれぞれ一日程度であった様子。
・‌前段階の期間にどんな研修を受けてきたかは、配布される日程だけでは分からない。どんな経験し
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4
4
平成27年度に実施した実践型教育プログラムの課題と展望
4-1 就業期間中のヒアリングと報告会
て何を理解しているか不明なため、研修の内容を考える時に戸惑った。したがって、学生を受け入
れている企業間で横断的に作業のプログラムを組むような取組が必要ではないか。
・‌宿泊施設にWifiやパソコンがないため、岡山大学の学生からリクエストがあって企業が手配した。
・‌初日にOHKの取材が突如入ったので、録画のために作業内容に変更が生じた。
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平成27年度に実施した実践型教育プログラムの課題と展望
4-2 「森林利用グローバルインターンシップ」及び「Co-op in Okayama」成果報告会
4-2 「森林利用グローバルインターンシップ」及び「Co-op in Okayama」成果報告会
4-2-1 成果報告会概要
平成27年8月28日(金)13時より、岡山大学国際交流会館1F交流ラウンジにおいて「森林利用グロー
バルインターンシップ」及び「Co-op in Okayama」成果報告会が開催された(資料19)。報告会には、
研修先企業の現場ご担当者の方々をはじめ、学内のグローバル・ディスカバリー、長期インターンシッ
ププログラム担当者の教員、林業関係者など、方々から計67名を集めた盛況な報告会となった(表9)。
表9 参加者一覧
報告会は、教育担当理事・副学長の許南浩理事の開会挨拶により幕を開けた。続いて、本プログラ
ムを担当する環境生命科学研究科の吉川賢特任教授により、Co-op教育とインターンシップの違い、
Co-op教育の目的など、本プログラムの概要説明が行われた。進行は地域総合研究センター絢野那泌助
教が担当した。
続いては、
学生発表第一部として日本人学生ら9名による5受け入れ企業・1機関の「森林利用グロー
バルインターンシップ」の発表が行われた。学生発表は、各企業15分で学生1名ないし2名によって行
われ、発表ののちにそれぞれの受け入れ企業または受け入れ機関のご担当者から、学生に対して感想や
質問、また激励の言葉が述べられた。
約10分の休憩をはさんだのち、学生発表の第二部、ブリティシュ・コロンビア大学(UBC)学生2
名による「Coop in Okayama」の発表が行われた。この発表は学生ごとに30分の発表で、まず、Matt
McQueenは服部興業・院庄林業・倉敷木材について、次にHugh Gradyは國六・銘建工業・森林研究所
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4
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平成27年度に実施した実践型教育プログラムの課題と展望
4-2 「森林利用グローバルインターンシップ」及び「Co-op in Okayama」成果報告会
での研修についての発表を行った。発表形式はスクリーンに日本語と英語の2枚を映し出し、口頭発表
は本人らによる英語で行われた。発表の後にはそれぞれ、研修先企業のご担当者から日本人学生らと同
様に感想、提案に対する質問や激励の言葉が贈られた。
続いて、吉川特任教授を司会に、総合討論と総評が行われた。まず各企業からそれぞれ今回のプログ
ラムに対するご意見をいただいた。続いて、吉川特任教授が今後の本プログラムの発展と課題について
まとめ、9月8日に開催の林業教育コンソーシアムで検討を行うとともに、9月下旬のUBCでのCo-op
プログラム発表会や、日本を対象とするカナダCo-opプログラムの事前教育担当者、またウィスコンシ
ン大学における実践型社会連携教育について調査を行い、今後のCoop in Okayamaおよび森林利用グ
ローバルインターンシップの今後の発展性を決定し、本格的なプログラム開発に着手していくことを明
らかにして、盛況のうちに成果報告会は終了した。
その後、17:30からは会場を学生生協ピーチユニオン4階食堂へ移し、UBC学生、岡山大学生、受け
入れ先企業ご担当者、関連部局教員、本プログラム担当スタッフらが出席し、交流会が行われた。会は
非常に和やかに進行し、3ヶ月に及んだUBC学生との交流が終了し、UBC学生との名残を惜しみながら、
交流会は幕を閉じた。
平成 年度
グローバル実践型教育プログラム
成果報告会
平成27年度 グローバル実践型教育プログラム 成果報告会
UBC(カナダ・ブリッティシュコロンビア大学)Co-op
in Okayama
主題科目(自然と技術)森林利用グローバルインターンシップ
27
■プログラム
13:00~13:05
13:05~13:15
開会の挨拶
プログラムの概要説明
許 南浩(理事(教育担当)・副学長)
吉川 賢(岡山大学大学院環境生命科学研究科 特任教授)
”森林利用グローバルインターンシップ“の成果報告(岡山大学生9名、受入企業5社・1機関)
13:15~13:35
13:35~13:55
13:55~14:15
14:15~14:30
14:30~14:45
14:45~15:00
(学生)岡香菜子
植田真妃 (企業)服部興業株式会社
(学生)織田桜子
西中麗奈 (企業)國六株式会社
(学生)塩野谷英明 隈崎翔真 (企業)銘建工業株式会社
(学生)瀬﨑景己
(企業)院庄林業株式会社
(学生)下山将輝
(企業)倉敷木材株式会社
(学生)福岡千明
(機関)岡山県農林水産総合センター森林研究所
==休憩==
“Coop in Okayama”の成果報告
(30分発表、15分質疑応答)
15:10~15:55
15:55~16:40
Matt McQUEEN(服部興業株式会社、院庄林業株式会社、倉敷木材株式会社)
Hugh GRADY (國六株式会社、銘建工業株式会社、岡山県農林水産センター森林研究所)
16:40~17:00
17:00~17:10
総合討論と総評
閉会の挨拶
吉川 賢(岡山大学大学院環境生命科学研究科 特任教授)
荒木 勝(理事(社会貢献・国際担当)・副学長)
UBC(カナダ・ブリッティシュコロンビア大学)
8月28日(金)
2015年
13:00-17:10
岡山大学 国際交流会館
1階 交流ラウンジ
●通訳あり
Co-op in Okayama
主題科目(自然と技術)
森林利用グローバル
インターンシップ
●参加無料
●どなたでも参加できます
世界で活躍できる『実践人』の育成を目標とする
岡山大学では、グローバル実践型教育プログラム
の構築に取り組んでいます。今年度から、カナダ
で長年Co-opプログラムの実施経験を持つブリ
ティッシュコロンビア大学森林学部から学生を招
き、岡山大学の学生と一緒に日本の林業・林産業
をシステム的、かつ実務的に学ぶ科目を開設しま
した。本科目の第一期生たちが林業・林産業の現
場で学んだ成果と考えたことを報告します。
8 28
2015年
【お申し込み・お問い合わせ】
岡山大学地域総合研究センター
〒700-8530 岡山市北区津島中3-1-1 工学部15号館
Tel/086-251-8855/Fax086-251-8491
E-mail/[email protected]
月
日(金)
13:00-17:10
岡山大学 国際交流会館
1階
交流ラウンジ
【事務局】
岡山大学地域総合研究センター
〒700-8530 岡山市北区津島中3-1-1 工学部15号館
Tel/086-251-8855/Fax086-251-8491
E-mail/[email protected]
資料19 成果報告会チラシ(左:表面、右:裏面)
4-2-2 「開会の挨拶」および「プログラムの概要説明」
岡山大学、ブリティシュ・コロンビア大学学生らの発表に先立ち、教育担当理事・副学長の許理事か
ら開会の挨拶が行われた。許理事の開会挨拶では、変動する世界情勢の中でのグローバル実践型教育の
役割とその意義について言及し、そこにおける本プログラムの重要性について述べた。最後に、本プロ
グラムの今後の発展にかける期待の言葉で締めくくり、開会の挨拶とした。
続いては環境生命科学研究科の吉川特任教授より、本プログラムはインターンシップと何が違い、コー
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平成27年度に実施した実践型教育プログラムの課題と展望
4-2 「森林利用グローバルインターンシップ」及び「Co-op in Okayama」成果報告会
ププログラムとは何か、という基本知識の共有のため、プログラムについての概要説明が行われた。内
容としては、コーププログラムの来歴や世界の取組事例、コーププログラムの定義や学生の学びに対す
る効果などについて、学会での研究動向の話題を交えつつ紹介を行い、最後に学生発表において教育効
果として注目してほしい点などを述べて締めくくった。
以下に、
「開会の挨拶」および「プログラムの概要説明」で話された内容の摘要を記す。
4-2-2-1 開会の挨拶
許 南浩(教育担当理事・副学長)
先進国では人口が減少し、IT技術が進展し、グローバル化の中新しいものが生まれ、日本を含めて
世界は大きな変動の中にある。その中で高等教育を担う大学は、どんな状況でもたくましく生きていけ
る人材を育てなくてはならない。学生を地域社会や企業、国際社会の現場で実体験を通じ学ばせ、フィー
ドバックして教室での学びにつなげるグローバル実践型教育は、そのための大きな柱である。課題解決
能力を養い、地域創生に参加する人材を育て、国内外のあらゆる場面で中核的に活躍できる人材の育成
を目指すプログラムである。
このグローバル実践型教育プログラムは昨年岡山大学がスーパーグローバル大学創生支援事業に採択
され、その中核をなすものであり、コーププログラムはグローバル実践型教育の大きな柱である。
三月にUBCから3名の教職員を招いてシンポジウムを開き、学生・受け入れ企業・研究機関・経済
界の方々もご出席いただき、一緒にUBCの経験を学び
協力してこのプログラムを作り上げ、今年度にスタート
した。その報告会を今日開くこととなった。関係者の皆
様に大変のご支援とご協力をいただいたことに対し改め
てお礼を申し仕上げたい。初めての試みであり多くの課
題も見えてきたと思う。我々はその反省をして来年度に
より良い形でこのプログラムを展開できるように努力し、
この経験を他のプログラムにどう生かすかはこれからの
課題だと思う。今日の報告会はその役に立つよう期待し
ながら挨拶を終わる。
写真23 開会の挨拶を行う許理事
4-2-2-2 プログラムの概要説明
吉川 賢(環境生命科学研究科特任教授)
Co-opプログラムは「座学と現場における就業体験を融合させた教育制度」であり、1906年にアメリ
カで、1957年にカナダで始まりUBCでは毎年4000人の学生が参加しているが、先進国の中で日本だけ
このシステムを導入していない。Co-opプログラムとは高い完成度の現場での就業体験と大学のカリ
キュラムを結び付けた教育システムであり、産業界の求人との関係が明確に反映される特徴がある。欧
米を中心に1991年に世界コープ教育協会(World Association for Cooperative Education, WACE)が設
立され、先週に京都産業大学で開催された世界大会に参加して来た。
インターンシップが企業主導の採用活動の一環であるのに対し、コープ教育は学生の学習と就業体験
を融合したプログラムであるため、1.大学は就業期間中の学生の就業体験をきちんと観察する。2.学生
は生産活動に従事し報酬を受ける。3.企業は学生の就業体験の状況を把握し評価する。と大学、学生、
企業がそれぞれの役割を担っており、大学主導の教育プログラムの一環だと考えられる。また、日本の
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4
4
平成27年度に実施した実践型教育プログラムの課題と展望
4-2 「森林利用グローバルインターンシップ」及び「Co-op in Okayama」成果報告会
学生が参加するインターンシップの期間はほとんどが1〜2週間である一方、Co-opプログラムは3ヶ
月から長いもので1年に及ぶ。
Co-opプログラムの学生にとってのメリットは、学生は仕事内容と職場環境を就業以前に知ることで
早期離職を防げることや、職場で求められる技術・技能を就業以前に修得することが可能になり、働き
ながら学ぶ機会を得られる。一方、企業は求める人材を早期に確保可能であり、学生の労働力や大学で
の新しい知識や発想を得ることが出来る。大学としては、教育サービスの向上により競争力が高まる。
社会としては、労働市場のミスマッチを解消し、将来の労働力の生産性を向上させる。これを日本版、
あるいは岡山大学版のCo-opプログラムに改変するにあたり、メリットの強化、修正が必要な点の明確
化について取り組まなくてはならない。
岡山大学ではUBCのCo-op学生を受け入れるに当たっ
て、まず5つの県内の大学、岡山県、そして岡山大学で
林業教育コンソーシアムを立ち上げてUBCの学生を受
け入れた。同時に岡山大学からは森林利用グローバルイ
ンターンシップという授業を立ち上げて、学生を募集し
た。参加した学生は岡山大学から9名、UBCからは4
年生のMatt君と2年生のHugh君の2名だった。学生た
ちがインターンシップでどう教育効果があったかを今日
の報告で聞いて頂いて、良かったと思って頂きたいと思
うので、そのような方向で見ていただきたい。
写真24 概要説明を行う吉川特任教授
表10 学生発表の順番と時間
発表者
研修先
発表時間
1
岡香菜子
植田真妃
服部興業株式会社
15分
2
織田桜子
西中麗奈
國六株式会社
15分
3
塩野谷英明
隅崎翔真
銘建工業株式会社
15分
4
瀬崎景己
院庄林業株式会社
15分
5
下山将輝
倉敷木材株式会社
15分
6
福岡千明
岡山県農林水産総合センター森林研究所
15分
7
Matt McQueen
服部興業株式会社
院庄林業株式会社
倉敷木材株式会社
30分
8
Hugh Grady
國六株式会社
銘建工業株式会社
岡山県農林水産総合センター森林研究所
30分
4-2-3 学生による発表内容
学生の発表内容と、それぞれのまとめを、発表順に下記に記す。数字は成果報告会での発表順番に従っ
て付した(表10)。
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平成27年度に実施した実践型教育プログラムの課題と展望
4-2 「森林利用グローバルインターンシップ」及び「Co-op in Okayama」成果報告会
4-2-3-1 岡 香菜子・植田真妃(服部興業株式会社)
■発表の概要
環境理工学部4年生岡香菜子・理学部2年生植田真妃らは、服部興業における研修の報告を行った。
最初に岡が企業概要および研修内容と、自らが学んだことや提言について述べたのち、続いて植田が学
びと提言について述べる形で発表が行われた。
岡の発表では発表の全体像を示したのち、服部興業における山林状況の紹介を行った。次に作業内容
の紹介に際して、行ったそれぞれの作業が木の生長を通し、林業の中で永続的に繰り返される事を、図
を使って示した。続いて、各作業の概要とポイントが紹介されたのち、服部興業での研修期間全体を通
して重要視されたコストチェックについての説明を行い、作業で学んだこととして、効率よく作業をし
ていくために必要となる仕事への姿勢、安全を挙げた。インターンに参加した目的として、林業を通じ
た地球環境、林業の実態、英語力と国際感覚の獲得を挙げた。
続いて、植田の発表では、インターンに参加したことで学んだことを、自分の専門である地質学の面
で別の視点から理解が深まり、将来的な専門教育の過程で役に立つと述べ、研修期間中に学問的な問い
を見つけたことを報告した。また、研修全体への感想として、研修期間は三週間が適当であったことを
分析した理由と共に述べた。
引き続き行われた企業からの質疑応答では、今回の経験を今後、異なる専門分野でどう生かすかにつ
いて質問が出された。これに対して岡は石垣島の農地の研究を行っているが、山林土壌にも興味が広がっ
たと答え、植田は森林の維持管理状態による土砂災害との関連性を調べてみたいと答えた。
岡・植田の最終発表から、服部興業および今回のCo-opプログラムにおける学びと考察の要点を下記
にまとめる。
◆岡 香菜子
・‌林業が、森林の防災機能やバイオマス燃料による二酸化炭素削減などの環境保護機能を持つことを
理解できた。また、日本の現代林業の実態や課題、問題点を知ることが出来た。
・‌働く責任や、心がけなどを身に付けることが出来た。
・‌英語力も身に付き、向上には何が必要か明らかになった。
・‌専門分野でこのプログラムがあれば、学生の働く意欲も高まり望ましい。
◆‌植田真妃
・‌どのような森林が、土砂災害防災機能を最も発揮するのか調べてみたい。
・‌通常の1週間では気付きを得る前に終わってしまうため、今回の3週間という期間は適当であった。
写真25 服部興業での研修について発表を行った岡(左)と植田(右)
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4
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平成27年度に実施した実践型教育プログラムの課題と展望
4-2 「森林利用グローバルインターンシップ」及び「Co-op in Okayama」成果報告会
4-2-3-2織田桜子・西中麗奈(國六株式会社)
■発表の概要
環境理工学部4年生の織田桜子、文学部3年生の西中麗奈らは國六での研修についての報告を行った。
まず、
織田が就業内容とインターンシップで得たものの報告を行った後、引き続き西中がインターンシッ
プを通して見た企業の姿と得られた学びについて報告を行った。
最初に岡によって晴天時の現場実務、雨天時の業務見学に分けて就業内容が紹介された。晴れの日作
業として伐倒作業や下草刈りの内容や注意点を紹介し、安全や個人で考えて行動することの大切さを学
んだことを述べ、雨天時の見学からは、林学と自身の専門の水文学との繋がりについて考察した。最後
に得たこととして今後の研究・就職活動へのアプローチの改良や、社会人としての責任感、日本人とし
ての自覚や英語力を挙げた。
続く西中は文学部の文系学部の学生としての視点から、安全性への配慮や地域とつながる企業の姿勢
を学んだと述べ、研修で学んだ「先の見通しを立てる」「共生するということ」を今後に活かしたいと
締めくくった。
続いて、受け入れ先企業からのコメントとして、織田には強い意志を持って頑張ってほしい、西中に
は立派な教員になるよう応援しているとのエールが送られた。
織田・西中の最終発表から、國六および今回のCo-opプログラムにおける学びと考察の要点を下記に
まとめる
◆織田桜子
・‌多面的に環境問題を理解でき、今後の研究・就職活動へのアプローチに役に立った。
・‌社会人としての責任と自覚について教わった。
・‌国土面積が小さく大量生産が難しいため、量よりも質を重視する日本の考え方の独自性を感じた。
◆西中麗奈
・‌途中から参加した自分には安全のことを一から丁寧に指導してくれて、安全に対する真摯の姿勢が
印象的だった。
・‌近隣地区の高校に民芸品の木材を提供したり、農閑期に地元の方々を雇用したり、地域とのつなが
りを大事にしていることを感じた。
写真26 國六での研修について発表を行った西中(左)と織田(右)
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平成27年度に実施した実践型教育プログラムの課題と展望
4-2 「森林利用グローバルインターンシップ」及び「Co-op in Okayama」成果報告会
4-2-3-3 塩野谷英明・隅崎翔真(銘建工業株式会社)
■発表の概要
農学部3年生塩野谷英明と環境理工学部2年生隅崎翔真らは、銘建工業での研修報告を行った。まず
塩野谷が研修期間中の作業内容と、気づきや提言のまとめを発表したのち、隅崎が自らのインターンシッ
プでの収穫、受け入れ先への提言を追加発表した。
塩野谷の発表では、在籍する森林系の学科から見た今回のインターンシップの魅力と目的を語り、研
修期間中の作業内容を紹介した。つづいて、まとめとして収穫、提案、今後の大学生活にこの経験をど
う活かすについて発表した。収穫としては、知識として専門と絡めて木材加工や流通に対する理解が深
まったこと、会社の仕組みを実感できたこと、英語力向上や異文化交流を挙げた。提案としては、より
研修先を理解できるプログラムを希望した。更にはこれらを今後の学生生活へ活かすことが出来るとし
て締めくくった。
次に隅崎はインターンで得られたこととして、働くことに対する価値観、実践的英語力、岡山の林業
の価値の見直しを挙げた。
引き続き行われた研修先企業からのコメントでは、研修先をより理解したいという希望が出たが、安
全面で会社としてもう一歩踏み込むことが出来なかったので、今後改善したいというコメントがされた。
塩野谷・隅崎の最終発表から、銘建工業および今回のCo-opプログラムにおける学びと考察の要点を
下記にまとめる。
◆塩野谷英明
・‌専門が森林であり、バイオマス発電と林業の関係性や木材加工から商品化までの流れをつかめた事
が良かった。
・‌顧客のニーズに合わせた生産や、企業が事務と現場作業の両輪で成り立っていること等、企業とい
うものについて理解が深まった。
・‌UBC学生との交流で、英会話能力の向上や、異なる価値観な
どを学べた。
・‌インターンで学んだことは将来的に、学生生活・社会人として
の両方の場面で役に立つ。
・‌より企業を理解出来るプログラムになれば望ましい。
◆隅崎翔真
・‌実際に働くということの責任や肉体労働の厳しさを体験出来た。
・‌様々な価値観や知識の吸収、英会話力の向上。
・‌岡山の林業に対する再評価が出来た。
写真27 銘建工業での研修について発
表を行った塩野谷
(右)
と隅崎
(左)
4-2-3-4 瀬崎景己(院庄林業株式会社)
■発表の概要
文学部2年生の瀬崎景己は、院庄林業での研修について報告を行った。まず、プログラム参加の目的
として、大学と働く現場での距離を知る、日本語のバックグラウンドがない学生との交流による英語力
向上の2点が理由であったことを述べた。引き続いて、会社概要として製品の流れに沿って組織を紹介
し、主力商品の集成材とインターンシップでの作業内容を簡潔に説明した。つづいて、インターンシッ
プでの工具の収納方法の改善案から、ささいなことから効率改善が可能な事への気づきを述べ、林業が
専門分野ではない自分なりの、表示方法をピクトグラム化するという改善提案を挙げ、このような思い
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4
4
平成27年度に実施した実践型教育プログラムの課題と展望
4-2 「森林利用グローバルインターンシップ」及び「Co-op in Okayama」成果報告会
付きを可能にするものが「教養を身に着ける」ということではない
かと考察した。また、英語でのコミュニケーションについて、自発
的な学びへの発展の過程、他者の観察による自分のコミュニケー
ションへの課題などについて考察した。最後に、インターン経験か
らのまとめとして「気づきで企業に貢献し、気づきが私を成長させ
る」として締めくくった。全体としてコンパクトに要点がまとめら
れ、学生の学びに心を打たれる秀逸な発表であった。
続く院庄林業からのコメントでも、文学部の学生で心配をしてい
たが非常に優秀な学生で、理系・文系の垣根はないのだと再認識さ
せられた、提案も独自の視点からの素晴らしいもので有料でも聞き
たいと思った、と非常に高く評価されていた。
写真28 院庄林業での研修について発
表を行った瀬崎
瀬崎の最終発表から、院庄林業および今回のCo-opプログラムにおける学びと考察の要点を下記にま
とめる。
・‌専門分野としての視点からでなくても、ささいなことから効率を向上させ、会社に貢献することが
可能である。
・‌日々の作業での気づきやアイデアをノートに取り書き溜める中で、日本語が読めない外国人労働者
を考慮し、工場内の表示をピクトグラム化するアイデアを得た。
・‌大学の授業に関係する図書からこのアイデアがでたように、大学の勉強で着ける教養とはこのよう
に役立つものだと気が付いた。
・‌研修期間中に感じたもどかしさから自主学習をし、ニュアンスの溝への気づきから英語だけではな
く日本語の語彙力の不足も実感した。
・‌コミュニケーションとは、相手を知ろうとし、交流を楽しもうとする心が根幹である。
4-2-3-5 下山将輝(倉敷木材株式会社)
■発表の概要
環境理工学部2年生の下山将輝は、倉敷木材での研修について報
告を行った。発表内容は大きく分けて、研修期間中の活動内容につ
いてとインターンシップで得られたことの2つについて報告した。
まず、期間中の作業内容の流れを紹介したのち、研修期間中に学
んだ木材文化と日本の暮らしや儀礼との関係について述べたのち、
それぞれの作業を、特に模型住宅の材料加工から組み立てまでの大
工仕事に注目して、紹介を行った。続いて、インターンシップで得
たこととして、生活の基盤となる家は伝統を伝える場であり、木材
が重要な役割を果たしている事への気づき、仕事を通した責任とそ
の責任を果たすための専門科目の重要性について述べ、締めくくっ
た。
写真29 倉敷木材での研修について発
表を行った下山
引き続き行われた倉敷木材との質疑応答では、コメントとして下山の最終発表から、倉敷木材および
今回のCo-opプログラムにおける学びと考察の要点を下記にまとめる。
・‌日本の木と人々とのかかわりを、礼節や感性などの方向から再評価することが出来た。
・‌日本の木造家屋は生活・木材建築技術の両面で日本文化を受け継ぐ場として大きな役割を果たして
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平成27年度に実施した実践型教育プログラムの課題と展望
4-2 「森林利用グローバルインターンシップ」及び「Co-op in Okayama」成果報告会
いる。
・‌仕事で責任を果たすためには、十分な知識と技術を備えなくてはならないと気づき、自分が将来技
術者となる時に専門教育の重要性を実感することが出来た。
4-2-3-6 福岡千明(岡山県森林研究所)
■発表の概要
環境理工学部3年生の福岡千明は、岡山県農林水産総合センター森林研究所での研修について報告を
行った。森林研究所は木材加工研究室と林業研究室からなり、それぞれ約10日間の研修について説明し
たのち、気づきや学びについて述べた。
まず、森林研究所の組織を紹介した後、木材加工研究室で行われている業務として、材性特質の解明、
加工技術の開発・解明、木質材料の開発、林業普及指導について紹介した。つづいて、林業研究室で行
われている業務として、育林育種技術の開発、森林保護に関する調査研究、特用林産物生産技術に関す
る研究、経営機械技術に関する研究、森林環境に関する調査研究について、研修期間中に行った調査研
究と共に紹介した。
つづいて、インターンの経験から得られたこととして、岡山県の研究職として働く経験や英語能力、
岡山県の林業の現状・課題の知識として、自らの将来にどのように影響するかの観点から述べた。最後
に、ポテンシャルを秘めた岡山の林業のため、大学で林業に関する
講義を開講しインターンシップと連動させることを提案した。
引き続いて行われた受け入れ機関との質疑応答では、最初は通訳
として岡山大学生を見ていたが、研究目的や地場企業への貢献の役
割などをしっかり理解してくれた。岡山の林業を良くしていくこと
が研究所の目的であり、感じ取ってくれたことを感謝する、とのコ
メントがあった。そのほか、今回は色々な事業を見せると言うプロ
グラムであったが、これでよいのか今後検討したいという意見が出
された。
福岡の最終発表から、森林研究所および今回のCo-opプログラム
における学びと考察の要点を下記にまとめる。
写真30 森林研究所での研修について
発表を行った福岡
・‌岡山県の研究職として働き、大学の研究とは違う、岡山のために研究を行うという経験が出来た。
・‌岡山の林業にまつわる色々な課題について知ることが出来た。木材を念頭において今後の研究生活
に活かしていきたい。
・‌岡山のことを岡山の人たちで考え、盛り上げることが必要。
・‌英会話能力が向上したことで、海外での仕事などの可能性が広がった。
4-2-3-7 Matt McQueen
■発表の概要
Matt McQueenは服部興業、院庄林業、倉敷木材での研修について報告を行った。まず自己紹介を行っ
たのち、日本でのCo-opプログラムに来た目的として、日本の林業を学ぶ・日本の木材業界を学ぶ・日
本文化を体験する・日本とカナダ間のビジネスチャンスの可能性を知る、の4点を挙げた。
続いて、最初の研修先の服部興業について、研修期間中のプログラム内容と、それらによりどのよう
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平成27年度に実施した実践型教育プログラムの課題と展望
4-2 「森林利用グローバルインターンシップ」及び「Co-op in Okayama」成果報告会
な作業に関する知識・技術を身に着けたかを紹介した。更に期間中に気づいたカナダと日本の林業の相
違について明らかにし、日本の国内市場において国産材が輸入材に対して競争するための要点について
の考察を述べた。
院庄林業の発表では、まず企業の紹介として主要3部門や使用材
などの情報を提供した。つづいて、研修を行った集成材加工のプロ
セスを図を用いて解説し、期間中に行ったプログラム内容を紹介し
た。次にカナダと日本の集成材の使われ方について述べた上で、考
察として生産性向上のための提言を行い、カナダと日本の生産工程
における相違と改善提案、導入可能な技術を指摘した。
最終研修先の倉敷木材では、研修期間中のプログラム内容とそれ
から学んだことがらを紹介し、日本とカナダの住宅建設における相
違点を挙げ、1880年代から現在までのカナダにおける住宅建設の主
流方式の変遷について、日本と同じポスト・アンド・ビーム工法、 写真31 服部興業・院庄林業・倉敷木
バルーン工法、プラットホーム工法の3つを紹介した。最後にカナ
材での研修について発表を行ったMatt
McQueen
ダと日本における住宅建設の相違点を指摘し、総括として今回のCo-opで学んだことを挙げ、これらの
経験を今後にどう生かすかに言及して締めくくった。
発表に引き続き、研修先の企業から、それぞれ英語による質疑応答が行われた。まず、最初の研修先
である服部興業からは「この研修は企業側にも実り多いものであった。カナダと日本の比較で日本企業
の規模が小さい事を挙げていたが、小さい企業で働くことをどう思うか」と質問が出たのに対して「カ
ナダの大企業では毎日同じ作業を行わなくてはならないが、ここではジェネラリストとして色々な作業
を行い、チームワークを持ちみんなで仕事に取り組める」との応答がなされた。
次の研修先の院庄林業からは、
「生産システムに良い提言をもらったので導入したいと思う。ビジネ
スチャンスを見つけたとの発表があったが、具体的にどんなものを見つけたのか」との質問に対し、
「カ
ナダは日本に対して材輸出国である。集成材の規格がカナダ基準だが日本規格に合わせることによって
可能性が広がるのでは」との答えがあった。
倉敷木材からは、
「引き続きカナダからのCo-op学生を受け入れていくにあたり、どの点を改善すれ
ばよいかについて質問があり、
「カナダのCo-opプログラムとは違い、仕事だけではなく見学など色々
なことを学べる。毎日の研修がとても楽しくたくさんの学生が来ることが見込める」との質疑応答がな
され、さらには倉敷木材副社長からの「あなたの大工としての腕はとても良いので、今度はCo-opの林
業の学生としてではなく大工として来てください」との冗談で場がなごみ、満場の拍手のうちに発表を
終えた。
下記に、Matt McQueenの最終発表から、各企業および今回のCo-opプログラムにおける学びと考察
の要点を下記にまとめる。
◆服部興業
・‌カナダと日本の森林の所有形態の違い。カナダは公有林、日本は私有林が多く、施業効率や施業サ
イズに影響を及ぼしている。
・‌カナダは生産量重視の一方、日本は品質を重視する。
・‌間伐の目的が、カナダでは森林環境の改善による成長促進が主要目的であるが、日本では伐採シス
テムの一つである。
・‌日本のような小規模林業で競争力を高めるには、品質向上にかかわる高いマネジメント基準が重要
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平成27年度に実施した実践型教育プログラムの課題と展望
4-2 「森林利用グローバルインターンシップ」及び「Co-op in Okayama」成果報告会
である。
◆院庄林業
・‌カナダでは日本に比較してプレカット住宅が非常に少ない。
・‌集成材の用途が横材か梁、また非住居用途である。
・‌損益につながる生産ラインの停止の牽引となるメンテナンスや検品、オーバーロードに関して見直
しが必要。
・‌集成材生産のプロセスはカナダと日本は非常に似ているが、いくつかの技術の導入により生産性の
向上が見込めると考えられる。
◆倉敷木材
・‌日本の住宅建築は伝統的手法に基づいており、独自の文化・社会と密接に関係している。
・‌日本の木材に関する文化・技術は、木造建築をとおして世代を超えて継承されている。
・‌日本の住宅の耐用年数には高い湿度・降水量が影響していると考えられる。
・‌今回のCo-opプログラム
・‌日本のCo-opで学んだことで、川上から川下までの日本の林業の全体像の理解が出来たとともに、
日本の木材文化にも理解が深まった。
・‌今回学んだことを、例えば輸出国であるカナダと日本のビジネスチャンスに反映するなど将来的に
生かしていきたい。
4-2-3-8 Hugh Grady
■発表の概要
Hugh Gradyは國六、銘建工業、岡山県森林研究所での研修について報告を行った。まず、日本での
Co-opプログラムの概要と特徴をイントロダクションとして紹介したのち、自分が日本でのCo-opプロ
グラムを選択した理由について、全方位的な林産業関連技能の習得、日本とカナダの林業の概況の理解
とカナダとの比較、新しい文化を学ぶことによるコミュニケーション能力の向上の三点を挙げた。
次に、最初の研修先の國六新庄事務所についての企業紹介、研修
期間中に行った作業の紹介とその作業の目的と続き、研修期間中に
自らが得た知識と國六および新庄村の地域に貢献したものについて
紹介した。最後に、國六新庄事務所への提案として、残木の除去方
法、生産ラインの多様化、委託事業や現存設備・労働力の利用の3
点を挙げた。
続く研修先の銘建工業については、まず企業紹介を行い、研修期
間中に行った作業、特に集成材の製材加工、データ測定、模型作成
について紹介したほか、おおとよ製材株式会社への見学で行った資
写真32 國六・銘建工業・森林研究所
での研修について発表を行ったHugh
Grady
料翻訳について述べた。更に、得たものとして作業スキル・多様な
業種・日本の産業に関する知識を挙げ、貢献したこととして労働力・
英文翻訳・カナダ的な視点を挙げた。続いて提言として作業のオー
トメーション化、ボトルネックの解決策、国際市場へのCLT輸出の可能性について指摘した。
最終研修先の岡山県森林研究所では、研究所の構成や主要課題を紹介したのち、研修期間中に行った
試験について、木材強度試験、環境影響評価、森林の健全性、実験作業のカテゴリに分けて紹介した。
続いて研修期間中に得られたこととして、仕事経験・日本の現在の木材および林業研究動向を挙げ、貢
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平成27年度に実施した実践型教育プログラムの課題と展望
4-2 「森林利用グローバルインターンシップ」及び「Co-op in Okayama」成果報告会
献したこととして補助作業・研究の上でのカナダ人としての視点を挙げた。最後に提言として、岡山県
の企業と密接にかかわる研究所であるという点を重視して新しい製品の開発や学生との共同研究の可能
性について指摘した。
締めくくりとして、本Co-opプログラムを通して得られた技能、日本の林業についての概況の知識、
新しい文化を学んだことによるコミュニケーションスキルが挙げられ、カナダのCo-opプログラムとは
また違った機会を与えられたこと、将来のキャリアに有益な経験であったと評価して発表を終えた。
引き続いて研修先の企業からの質疑応答が行われた。國六からは、質問ではなく「コミュニケーショ
ン能力が素晴らしく、新庄村の活性化にも貢献してくれたことを感謝しており、今後の活躍を期待する」
とのコメントがあった。次の研修先の銘建工業からは、「国際市場へ進出しようとしているので、提言
がありがたかった。具体的な方法について助言をいただきたい」との質問が出され、(現在はアイデア
がないため)いずれお答えするとの回答であった。最後に、森林研究所からは「研修期間中のプログラ
ム内容が多岐にわったが、学びの役に立てたか」という質問に対し、「自分の専門に近い内容だったた
めすべてが大変役に立ったとの応答がなされた。
下記に、Hugh Gradyの最終発表から、各企業および今回のCo-opプログラムにおける学びと考察の
要点を下記にまとめる。
◆國六
・‌カナダと日本の森林の所有経営の違い。日本は私有林が9割を占め、施業サイズが小さく、人工林
比率が高い。
・‌伐採・製材など個々のプロセスが別企業によって行われる分業制である。
・‌カナダは生産量重視の一方、日本は品質を重視する。
・‌新庄村で中学生とコミュニケーションをとることが出来、村の教育にも貢献できた。
・‌提案として生産ラインの多様化や、商品価値の低い木の除去改善。
◆銘建工業
・‌製材、バイオマス燃料、加工木質材料などの多様な商品開発。
・‌オートメーション化による生産効率の向上を提言。
・‌コンピューター数値制御機械(CNC)のスピード改善によるボトルネックの解消を提案。
・‌国際市場への集成材輸出における競争力強化が必要。
◆岡山県森林研究所
・‌樹皮(バーク)を利用した植生基盤等の新しい商品開発にかかわる研究の存在。
・‌地元企業に密着し利益を生み出すことに対する真摯な姿勢。
・‌樹病に関する研究動向の情報交換。
・‌提言として大学と連携した学生の受け入れ。
・‌今回のCo-opプログラム
・‌日本のCo-opで学んだことで、製品の質を重視する、伝統的なセンスを大切にした木材利用など、
木の製品と文化的な影響について学べた。
・‌森林の所有形態の管理手法への影響や、環境保全・災害防止などの日本とカナダの林業施業につい
ての違いを良く理解できた。
・‌仕事の経験だけではなく、日本の林業の概要を学ぶ機会も十分に与えられた。これらは将来のキャ
リアのために有益であった。
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平成27年度に実施した実践型教育プログラムの課題と展望
4-2 「森林利用グローバルインターンシップ」及び「Co-op in Okayama」成果報告会
4-2-4 総合討論と総評
学生らによる発表を受けて、吉川特任教授の司会・進行による総合討論と総評が行われた。はじめに、
吉川特任教授による日本におけるCo-opプログラムの先行的な取り組み事例が紹介され、今後の大学の
研究室を受け入れ先として想定した取組の可能性などに言及した。つづいて、受け入れ先企業・機関そ
れぞれからご意見をいただいた。以下に、「総合討論と総評」の流れについて摘要を記す。
吉川:‌岡山大学では今年初めて実施したプログラムだが、UBCでは50年前から始まり教育効果を上げ
てきた。卒業が1年延びても、時間をかけて就業体験しようとする学生が増えており、産業界も
そういう学生を手に入れようという動きが広がっていることからわかるように、学生・企業どち
らにもメリットがある。日本では今のところ殆どないので、
このCo-opプログラムがスタートし、3週間受け入れていた
だいて、日本の企業研修の中では長い期間となる。ただ、今
の日本の産業界ではこういう動きがないわけではない。新潟
大学、京都産業大学がファーストリテイリングにおいて2ヶ
月間無償で、その後4ヶ月間に週3日間を有償で働くという
長期インターンシップをやっている。ユニクロの担当者によ
ると独自でやろうと思っていたところへ新潟大学の方から話
があり一緒にプログラムの開発を行ったということである。
事前と事後教育において大学の果たす役割が大きいと同時に、
企業側のプログラムにも我々が細かく相談させていただく必
写真33 吉川特任教授司会による総合
討論
要があると思う。UBCでは林学のCo-op学生は半分以上が研究所と大学の研究室で受け入れてい
る。環境アセスメントに4ヶ月従事するなど、卒論が始まるまでに知らないことを事前に学べる。
研究へのサポートは決してCo-opプログラムの就業体験と別物ではない。
森林研究所:‌せっかく来てくれたので日本の木材研究のバリエーションを知ってもらうことに徹したけ
れど、一つのテーマを持ってもう少し長期的にやるのも良いかなと検討している。今後の
受入期間によって中身も変えることができると思う。
服部興業:‌時期は皆伐を実施するなら1、2、3月が最適であるため、今回は出来なかった。印象とし
て、3週間だとやっと業務に慣れきたところで終わってしまうと言う声があった。
「ものを学ぶのに分野は関係ない」ことを痛切に感じた。専門じゃ
国六:‌河崎先生がおっしゃったように
ない人からは我々にとって大変新鮮な感想や意見をもらって、我々にも新しいことを発見させて
くけた。瀬崎さんの発表はまさに「気づきが自分を成長させる」という内容で、素晴らしい発表
だった。
銘建工業:‌期間はもっと長くても大丈夫。一つの作業を3週間でマスターできないので、2、3ヶ月の
受け入れでしっかりやってもらうこともあり得る。事前教育が大事と思う。スタートとゴー
ルに地点によって期間が決まってくる。
吉川:‌事前教育は受け入れ側と一緒に検討していかなければならないと思う。
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平成27年度に実施した実践型教育プログラムの課題と展望
4-2 「森林利用グローバルインターンシップ」及び「Co-op in Okayama」成果報告会
院庄林業:‌どちらかというと我々受け入れ側の方に課題があると思う。
期間は3ヶ月だと長すぎてフォー
カスがぼけ、3週間は短く、1ヶ月か1ヶ月半が適切かと思う。我々は日本人学生の受け入
れに非常に魅力を感じた。学部には垣根がないことを今回の学生が証明してくれた。大学側
が我々の希望を見極めた学生を送っていただき、我々が受け入れ態勢を整えることが今後の
課題と思う。
倉敷木材:‌研修期間は、熱中症対策などを考えると少し涼しい時期が良い。期間は3週間以上になると
準備が大変であったが、今日の発表で3週間の期間に色々な気づきや、仕事の内容の理解を
してもらえたので良かったと思う。我々の事業は期間的に区切られる特徴があるので、その
時期に合わせて受け入れている。
吉川:‌UBCの学生の発表によると、このプログラムはいろんな業種が体験でき、林業の全体を知るこ
とが出来る事が魅力だと言っている。今回は初めての取り組みであり、研修内容を企業側にお任
せしてきたが、情報の共有は大事である。このプログラムは今日で一区切りとなるが、今回色々
なことが明らかになって来たので報告書を作成しており、それをベースにまた議論をさせていた
だきたい。
4-2-5 閉会の挨拶
最後に、社会貢献・国際担当理事・副学長の荒木勝理事の閉会の挨拶によって会は締めくくられた。
下記に閉会の挨拶の摘要を記す。
3ヶ月にわたりCo-opプログラムの教育実践において、粉骨砕身努力していただいた企業の方々、大
学教員、学生諸君に御礼を申し上げる。このプログラムについて3
点について皆様に伝えたい。一つ目は、企業の温かいご支援・岡山
の自然の力により学生が成長し、このプログラムを、岡山という地
域の林業林産業で開始出来て良かったと思う。第二点はカナダの学
生たちが、コスト意識や企業経営の合理性について大変優れた感覚
を持っていることを知り、我々自身の教育を見直す必要性を痛感し
た。最後に、UBCの学生たちや教員たちが持つ林産学の巨大なネッ
トワークを私たちの大学や企業が持つことによって、企業もグロー
バルに展開する可能性が開かれるのではないか。是非とも自分たち
の企業の発展に役に立てて頂きたい。吉川先生は9月28日にUBC
写真34 荒木理事による閉会挨拶
にもう一度視察しに行って、今度は企業の方に細かく視察の予定である。今後大学を利用して世界と向
き合える企業になって頂きたい。私たちの大学もまた世界トップクラスに向き合えるような大学教育を
していきたいと考えている。今日はこの場が日本の中でも稀な教育プログラムの実践のスタートポイン
トになればと願っている。
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平成27年度に実施した実践型教育プログラムの課題と展望
4-2 「森林利用グローバルインターンシップ」及び「Co-op in Okayama」成果報告会
写真35 懇親会における関係者集合写真
写真36 岡山大学・UBC学生ら、
参加学生らによる集合写真
4-2-6 口頭発表(原稿)
【岡 香菜子】
① これから、服部興業のインターンに参加しました岡香菜子がまず就業内容について発表いたします。
これが目次です。
② まず服部興業の概要ですが、地図の赤丸に位置します岡山県真庭市落合に380haの山林を保有して
います。こちらが樹種構成のグラフです。杉が24%、ヒノキが35%、その他このようになっておりま
す。また、右のグラフは人工林の齢級別面積を表しており、10、11、12齢級の木が多いことがわかり
ます。
③ 次に就業内容です。山林業のこのようなサイクルの中で私たちは間伐を特に行いました。その中で、
選木、伐倒、集材、造材、チェーンソーメンテナンス、コストチェックを行いました。2週目には木
材市場にも連れて行っていただきました。青枠の中は、雨の日に行った仕事です。
④ こちらが3週間のスケジュールです。初日は開講式があり、そのあと現場案内をしてもらい、選木
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平成27年度に実施した実践型教育プログラムの課題と展望
4-2 「森林利用グローバルインターンシップ」及び「Co-op in Okayama」成果報告会
を行いました。2日目からは、伐倒集材を行いました。濃い青の枠が雨が降った日ですが、雨の日も
仕事を用意していただき、有意義に過ごすことができました。
⑤ 詳しい就業内容について説明いたします。まず選木です。選木はまずひとつ形質の悪い木を選びま
す。この悪い木のポイントとは①傷、腐れがある②まっすぐではない③背が低い、または細いこのと
き樹幹に大きく穴をあけないように注意します。次に、密度管理を行い、木を生長させるため、木が
近すぎる場所などで木を選びます。このように木を選んだあと、写真のようにピンクのテープをまき
ました。
⑥ 実際に私たちが選んだ木です。傷があったり、まっすぐではない様子がわかると思います。
⑦ 次に伐倒です。選木した木を斜面下の木から伐ります。チェーンソー使用、また足場不安定のため
安全第一の作業となります。手順ですが、まず伐倒方向を決めます。木の間かつ、集材しやすい方向
を狙います。次に、退避場所を確保します。伐倒する木よりも斜面上に確保し、下草などを刈ってお
きます。次に受け口、追い口を作り、木が倒れだしたら、退避します。図のほうに伐倒方向に対して
垂直に受け口を作ります。木の直径の4分1程度切ります。そのあと後ろへ回り追い口をつくります。
このときつりを切らないよう注意します。
⑧ これが実際の写真です。このように伐倒方向を確認し、伐りつつ、方向があっているか確認しつつ
作業を行います。倒れだしたら退避します。この写真はかかり木になっている様子です。このように
なってしまったときは、追い口にくさびをうつ、つりを切る、フェリングレバーを使うなどして対処
します。これがくさびです。
受け口を伐倒方向に向かって作るが、木の重心が伐倒方向と違うときは違う方向に倒れないように、
機械で支えることもあります。
⑨ 次に、集材です。次いで行う造材を効率よく行うための作業です。斜面下にある木を造材が安全に
行える道付近までワイヤーで引っ張る作業です。手順は、図のように集材機から伸びるワイヤーを木
口にくくりつけます。くくりつけたあと、木から離れ、大きく手を回して、集材機にのるオペレーター
に合図をおくります。オペレーターは合図を見て、ワイヤーを引っ張りあげ道そばに置きます。
⑩ これが実際の集材機です。このようにワイヤーで引っ張り上げます。
⑪ 次に造材です。集材した木を3、4、6mに玉切りにし、運搬車に乗せる作業です。木が曲がって
いるポイントを見つけ、曲がっている箇所で玉切りを行います。左の写真が造材機です。私たちも曲
がっているポイントはどこか話し合いを行いました。
⑫ チェーンソーメンテナンスは、オイルチェック、目立て、木屑掃除を行いました。木を伐りやすく、
使いやすく、より長く使うことができます。
⑬ 次にコストチェックです。毎週末、コストチェックを行い、一週間の振り返りを行いました。利益
だけでなく、生産効率も判断基準とします。コストの計算はそれぞれの作業道で行った作業ごとに計
算します。計算の結果を図にしました。私たちは3線目から作業に加わりました。結果として効率は
落ちてしまうという結果になりましたが、目に見えるかたちで効率を表すことで、私たちもコスト、
効率を考えて作業することができました。
⑭ 最後にすべての作業のまとめです。選木、伐倒、集材、造材の作業を止めず、いかに効率よく回し
ていくかが重要でした。そのため、常に効率のよさを考えて作業しなければいけません。一方では造
材を行い、一方では伐倒行う。造材が終わると、集材を行う。また、造材するときのことを考え集材、
伐倒を行います。つまり先へ先へと思考を巡らせなければなりません。また、伐倒前と後では、林床
の明るさが全く違うのが見てわかり、間伐することで、さらに木が生長するのだと身をもって体験し
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平成27年度に実施した実践型教育プログラムの課題と展望
4-2 「森林利用グローバルインターンシップ」及び「Co-op in Okayama」成果報告会
ました。そして、なにより重要なのが安全です。たとえば、チェーンソーにはたくさんの安全装置が
あります。また伐倒時には必ずフェイスガードをつけ、退避場所を確保します。そして、集材時には
退避してからの合図を徹底しました。
⑮ その他の作業として、2週目に木材市場、チップ工場の見学につれて行っていただき、木の流れを
知りました。他3つは雨の日の作業の様子です。
これで就業内容を終わります。続いて、私がこのインターンで得たもの、意見について発表いたし
ます。
⑯ 私がこのインターンに参加した目的は、3つあります。1つは、林業を通じて、地球環境を考える
ためです。私は環境理工学部に所属し、広く環境という分野を学んできましたが、環境の中の森林に
ついての知識は深くありません。そこで、林業を通じて森林での環境を考え、さらに自分の環境に関
する知見を広めたいと考えました。2つは林業の実態を知る。です。林業に興味がありましたが、そ
の実態、実際どういう仕事なのか知りませんでした。そこで、このインターンに参加することで、林
業の一部でも知りたいと思いました。3つめは英語の力をつけ、国際感覚を養う。です。国際化がす
すみ、英語というのは働くうえでも、普段の生活でもかかせないものになってきました。勉強だけで
は得ることのできない話す力、聞く力をつけたいと考えました。
⑰ そして、次に私がインターンで得たものは大きく4つあります。環境に関して、林業に関して、働
くことに関して、英語に関して、です。
⑱ まず環境についてです。私は環境について学んできましたが、その学んだことを実際に経験し、ま
た新たな発見もありました。山に木があることによって、根をはり、土壌を捕まえている。これが地
すべりなどの災害を防ぐ。これが私の学んできたことであり、現場で、木が土岩を支え、せき止めら
れているのを見ました。よって、森林は守るものだと考えてきました。しかし、炭素が固定されてい
る木材製品を使うこと、また木材チップによる発電、これが二酸化炭素削減につながり、これは地球
温暖化防止につながる。また、森林は間伐することで、林床まで日が届き下草が生えることで、雨滴
などによる土壌侵食をふせぐ。そしてまた木が成長しさらに根をはる。適切な管理、間伐などを行う
ことによって、さらに生育し、さらに環境を守ることにつながる。これを作業を通じて実感し、地球
環境を守るというのは、保護だけではなく、使用、適切な管理、育成が行われて成り立つことを林業
を通じて学びました。また、林業が木を売るという産業だけでなく、環境を守ることにもつながる仕
事だと感じました。
⑲ 林業に関してです。林業に対する興味からインターンに応募しましたが、事前指導などで知識を得
ただけでなく、現場でしかわからない大切なこと、大変なことも吸収することができ、実のある知識
を得ることができたと考えます。また、先ほど林業が環境につながるといいましたが、地球環境を守
るにはこれをしたらいいと口では簡単にいえますが、実際行うにはこれだけの苦労があると、理解で
きるようになりました。林業作業を経験することで、大変さも学び、口先だけの知識ではなく、本当
の実態を知ることも重要なことであると気づかされました。これから卒業論文などで研究を進めてい
き、さらには社会に出ますが、このことを頭にとめていきたいです。
⑳ そして、働くということについてです。3週間企業で働くことで、企業の責任、働く責任というこ
とを、強く感じた。懸命に働き、業界全体のことや、経費削減や効率の良さを考えている姿勢。その
姿勢を間近に感じ、指示されたことをやり、先を考えないアルバイトに囲まれていては経験できない、
働く責任を考えた。真剣に働く人たちの中にいたから感じることのできたことでした。
㉑ 英語に関してです。働くうえで必要になる英語の力をつけたいと考えていました
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4-2 「森林利用グローバルインターンシップ」及び「Co-op in Okayama」成果報告会
遠回しでも伝えようとすることが大事である。実践することで定着すること。そして、3週間英語
を聞くことで、リスニングの力はあがったと感じました。3週間英語にふれることで、楽しさを知り
意欲向上につながりました。しかし課題としては、知識、語彙が足りないと感じ、これから励んでい
こうと思いました。
㉒ インターンプログラムについての意見です。よかったことは、木のサイクルを知れたことです。木
材市場、チップ工場の見学に行き、一連の木の流れ、どこでどのようにどのくらいの価値で木が流れ
ていくのかを教えていただくことで、自身の仕事の意味を感じ、単なる作業ではなく、仕事として実
感できました。
㉓ また意見ですが、今回のインターンプログラムは林業についてでありました。これが自身の専門分
野であれば、さらに貴重な体験になったのではないか。様々な分野でこのようなプログラムがあれば、
学生の学び、働く意欲は向上するのではないか。と思いました。
【植田真妃】
① 今回のインターンシップで気づいたことや、考えたことについて話させていただきます。
② 最初に気づいて考えたこととして、木が地面を支えていることについてです。
作業中に、木の根が、大きな岩が崩れてこないように防いでいるのを見つけました。もしこの木が
なかったら、おそらくこの岩は崩れ落ちて、ここにはとどまっていないだろうと思いました。
私は理学部に所属し、土砂災害のおこる原因や、地形の変化について授業で学んでいます。地形変
化は、地震による隆起などもありますが、雨水が集まって流れることで土を削り、山を平らにする、
山の高さを低くしていく作用が働いています。
ですが、雨が降るたびに、山が小さくなっているわけではなく、木が地面を支えているので、そう
はなりません。学校で学んだことを実際に見ることができました。
大きな岩を止めていた木はかなりの太さもありました。木が大きく、根にそれなりの力がないと、
岩を留めることはできないと思います。手入れの行き届いていない山の細い木では、根の太さも細く、
雨水と岩の重さに耐えないと思います。土砂災害や浸食が、全て、木のあるなしや、どんな木の状態
かによって変化するわけではありませんが、木の太さが太い木と細い木で地面を支える強さに差があ
るのか、どんな差ができるのか、木の立っている密度の違いに関係があるのか、新しい興味ができて
きました。
③ 次にインターンシップの長さについてです。
今回のインターンシップは3週間と一般的に行われている2日~1週間に比べて長いものでした。
この3週間の間には、晴れていて山で作業できる日もあれば、雨が降って山での作業ができない日も
ありました。梅雨時で雨の日も多かったため、山の作業以外のことをいろいろさせていただきました。
また、今回の1週目がそうだったのですが、2日間雨となると、3日しか山での作業ができず、もし
1週間のプログラムだったら、自分で選木したり、どの方向に木を倒すかを決めたりするところまで
できなかったと思います。結局、社員の方についていく、言われたことをやるだけになってしまって
は、アルバイトで言われたことをやっているだけというのと変わらなくなってしまいます。働くのだ
から、自分で次どうしたらいいのか考えて動かないといけないと思っていますが、それではとても1
週間ではできません。
また、一般的に行われるインターンシップに対しても言えることかと思うのですが、1週間で身に
付く事はほとんどないと思っています。1週間は本当に体験する程度で、何かを身につけるには短い
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平成27年度に実施した実践型教育プログラムの課題と展望
4-2 「森林利用グローバルインターンシップ」及び「Co-op in Okayama」成果報告会
と思います。3週間作業させていただきましたが、木を倒したい方向になかなか倒せません。専門と
しているわけではない初心者の学生がやるのだから、うまくいかなくて当然と言えばそうかもしれま
せんが、カナダのプログラムでは、長時間で身につけること、身につけたことや、実地で学んだこと
から次の勉強をすることが、目的になっています。それに比べると、日本で行うインターンシップは
短く、3週間でもカナダのプログラムに比べればすごく短いと思います。自然の中で、木一本ずつ違
うし、地形も違うし、商品である木を丁寧に扱うところまで意識するには、3週間でも短すぎます。
ですが、岡山大学の学生は、カナダのプログラムと違い、専門としているわけではありません。学校
で勉強していることと違うことから何か気づき、得るには、3週間という長さがベストな長さだと思
います。
これで私の発表を終わります。ありがとうございました。
【織田桜子】
① 環境理工学部4年生の織田桜子です。今回のインターンシップでは国六さんに行かせていただきま
した。現在研究室に所属しておりまして、水文学を専攻しています。では、成果報告を始めます。
② まず、国六さんでの就業内容をかいつまんで説明します。それから、私が今回のインターンシップ
で勉強になったことをお話しします。
③ 国六さんでの就業内容は、晴れの日と雨の日の内容の2つに分けました。晴れの日が国六さんでの
メインとなる就業内容で、現場での実務体験になります。
④ 晴れの日は主に伐倒作業で、2回草刈り作業もしました。
⑤ 伐倒作業では、チェーンソーを使って間伐をしていきます。間伐することによって、質のいい木が
育ち、森林を豊かに保つことが出来ます。右上の写真は、こちらが間伐前の森林です。木々の間が狭
く、このように暗くなっています。こちらが間伐後の写真です。左の写真と比べて、地面に光が届き
森林全体が明るくなっていることが分かります。
伐倒作業は、まず選木と言って切る木を選ぶ作業から始まります。これは、枯れてしまっていたり
二股になっているなど、なるべく質の悪い木を選びます。それから、この写真のようにチェーンソー
を用いた伐倒作業で木を倒し、倒した木は玉切りと言って3mや4mなど決められた長さの丸太に切
り分けていきます。
⑥ そして重機を用いて伐倒した木を1か所に集めます。この重機の運転の際も重い木材を持ち上げる
ので非常に危険で、慎重に、かつ巧妙に操作しなければなりません。また、重機の腕が届かない範囲
にとれた木は、ワイヤーで重機と木材をつないで引っ張り出すという作業を行うこともあります。よ
り広範囲になりより危険なので、複数人によって慎重に安全確認しながら引っ張り出していきます。
⑦ また草刈り作業も同様に危険な機械、草刈り機を扱います。伐倒作業よりも身軽に動き回る草刈り
作業ですが、互いに半径5m以内に近づかないようにするなど常に周りに気を配りながらの作業です。
また草刈り機は燃料を使用した機械なので、各個人がいかに効率的に動くかで作業時間の他にも使用
燃料量が大きく変わってきます。これは伐倒作業でも言えることです。
⑧ このように国六さんでの業務は現場の作業が中心です。現場での作業は常に危険と隣り合わせで、
周りが見えていなければ命取りになります。現場での作業はあらゆる状況が刻々と変化しているので、
マニュアルを丸覚えすればいいというわけにもいかず、各個人が考え、効率的なふるまいをしなけれ
ばなりません。
⑨ 雨の日は現場での作業は危険なためできません。ちょうど梅雨の時期だったので、何度か雨の日が
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4-2 「森林利用グローバルインターンシップ」及び「Co-op in Okayama」成果報告会
ありました。そのタイミングを利用して、林業に関する他分野の業務内容の見学に連れて行っていた
だきました。
⑩ 製材所や木材市場、建築会社、木工家具会社、おがくずや廃材を再利用して猫砂やアロマなどを作っ
ている株式会社ヒノキさんなど様々な企業さんやお店、木工加工に関わる方のお宅にお邪魔して、丁
寧に説明をしていただきました。今回わたしたちがお世話になった国六さんという伐倒現場だけでな
く、俯瞰的に木材の流通過程の理解を進められました。日本のモノづくりの質がとても高いことも実
感しました。
⑪ また課外活動として、國六さんが所有する天然林でのハイキング体験もさせていただきました。ふ
だん伐倒作業をしているのは杉やヒノキなどの人工林なので、天然林となると大分様相が異なります。
ここは岡山県の水源の最上流部に当たり、樹齢数百年のブナ林や広葉樹林になっており高い生物多様
性を持っています。こういった豊かな森林は、土壌が高い保水能力をもち、豊富な水を蓄えます。こ
のように上流部に豊かな森林があるために、岡山は雨が少なく晴れの国と言われていますが、豊富な
水資源に恵まれているのです。私は循環する水のシステムを研究する水文学を専攻しているので、岡
山の水源である土地に実際訪れられて意義深かったです。豊かな水の元となっているのは豊かな森林
なので、森林の姿は水の研究にも大きく影響を与えます。また、晴れの日に伐倒作業を行っている人
工林では、高い保水能力を維持するために適切な管理をしてやる必要があります。
⑫ このように、林学と専門分野が深い関わりがあることに気付き、インターンシップで学んだことを
専門の勉強にフィードバックすることができました。たとえば、私の卒業論文の課題は、「地球温暖
化に伴う積雪地域の(ダム)必要貯水量変化」というものなのですが、大まかにいうと、適切なダム
の貯水容量を計算することを目的としています。そのためには、河川からどれだけ水を取ってこなけ
ればならないのか、を知る必要があります。河川を流れる水の量には、山の斜面を流れる水の量が大
きく影響を与えます。つまり、山の斜面がどれだけ保水力を持っているか、が水資源利用に大きくか
かわってくるのです。つまり、将来のダム貯水量の確保には森林の管理、保全が不可欠となるのです。
⑬ ではこれから今回のインターンシップで私が得たものを説明します。
⑭ まず、今回の就業体験は元をたどれば専門分野と繋がる点もあり、新たな視点から自分の知識を肉
付けすることが出来ました。全ての環境に関わる要素は、山から海までつながっていてボーダレスで
あり、そして長い目で見ていかなければならない、というこの2つの視点が重要であると思いました。
国六さんも、常に次の世代のために豊かな森林を受け継ぐという視点、使命感を大事にされていて、
人工林では珍しい針葉樹林と広葉樹林をモザイク状に植林するという試みもされていました。今後、
私は大学院に進学して、専門分野の勉強を続けますが、その分野ひとつだけでなく、環境に対して多
面的な視野の知識をこれからも吸収していきたいと思います。また今回現場に行ってみて、現場の面
白さ、大変さを知りました。将来の就職先は専門を生かし土木関係を考えていますが、この経験は生
きると思います。
⑮ また今回3週間国六の皆さんと一緒に仕事をしてみて、皆さんのプロ意識の高さを強く感じました。
どんな状況にも心を乱さず、焦らず、手を抜かず、こなされていて、社会人としてプロ意識を持つと
は、常に一定の質で仕事の成果を出すことなのだなと自分なりに解釈しました。
そして、こうした当たり前のことが出来ていなかった自分を自覚しました。また段取り八分という
言葉のとおり、常にどんな作業の前にもミーティングを欠かさず行い、事前に仕事の目標や課題・対
策などの共通意識をもつ段取りをしていました。そして私にとって一番の苦い経験として痛感してい
るのが、
「体調管理も仕事のうち」という意識です。最後の一週間、体調を崩してしまい、この貴重
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4-2 「森林利用グローバルインターンシップ」及び「Co-op in Okayama」成果報告会
な機会に周りに迷惑をかけてしまったのです。こういったことから、当たり前のことをちゃんとこな
すこと、体調管理をすること、といったことができなかった自分の至らなさや自覚のなさを実感でき
たいい機会だったと思います。これをきちんと自覚して、改善の努力をしていく必要があります。
⑯ そしてこの3週間は通訳としての役割もありました。語学力はインターンシップを経験する前より
確実に上がりました。しかしまだまだ勉強が必要な段階で、今後も語学の勉強は続けていこうと思い
ます。
また、この3週間は、私と同世代であるUBC学生の学習能力や豊富な知識、プレゼンテーション
能力などの高さに驚かされました。私も専門は違いますが、負けずに頑張らなければいけないと思わ
されました。
最後に、林業を通して日本の第一次産業が他国とどう違うのかを実感しました。日本では、国土面
積が狭く、様々な事情によって大量生産が難しいという理由から、量より質を重視した産業の傾向に
あります。こうした独自性をもちつつ、この先世界とどう戦っていくべきなのか、考えるきっかけに
なりました。今後もこの様な機会を利用して、世界を知り、もちろん日本ももっときちんと理解して
いきたいと思います。
以上で私の成果報告を終わります。ありがとうございました。
【西中麗奈】
① 文学部二回生の西中です。私は今回國六さんに一週間お世話になりました。今から私の発表を始め
たいと思います。
② 私は二回生で、今までにインターンシップなどに参加したことがありませんでした。なので、企業
というものに対してほとんど知識がない状態で今回のインターンシップに参加しました。企業という
ものの姿を間近で見る良い経験となりました。私が國六さんという企業について印象に残ったのは、
まず「安全」に対する真摯な姿勢でした。一本の木を切り倒すのにどれだけの安全確認が必要か、周
囲にあるもので気を付けるべきものは何か、後から合流したことで二度手間になったであろう説明も、
一つ一つ丁寧に教えてくださいました。もう一つ印象に残ったことが、地域との関わりでした。写真
は蒜山地方の「すいとん」という魔よけの伝統的な置物なのですが、これを蒜山高校の生徒が作るた
めの材木を毎年國六さんから提供しているとのことでした。今回はその運び込む現場に連れて行って
いただきました。地域総合センターの入り口にその時いただいたすいとんが飾ってあります。もう一
つピンクの本は「新庄村聞き書き集」というものです。新庄村の住民の皆さんに聞いたお話を方言も
そのままに集めた冊子で、この本には農業が休みになる冬の間、國六さんの山で農民の皆さんが働い
ていたことが書かれていました。地域の住民の皆さんと持ちつ持たれつ、協力し合う素敵な関係を築
いておられる企業なのだと思いました。
③ 以上のことを通して、私が今後自分の学業に役立てていきたいと思うことをまとめました。
まず、先の見通しを持つこと。一本の木を切る際にここをこう切ったらどうこの木は動くのか、周
りの草がどう跳ねるのか、自分が起こした行動ひとつでまわりがどう変わるのかを考えました。今自
分が行っていることがどのように将来につながるのか、先の見通しを立てることは例えば研究発表を
行ううえでの段取りにも役立ちます。次に共生するということです。自分は将来教員を目指して今勉
強しているので、今回の蒜山高校へ木材を持って行ったことは、学校と地域とのかかわりを持つこと
を考える上でいい機会になりました。今、教育現場では地域の方とのかかわりが薄くなり、そのため
に学校以外での教育を受ける機会が昔よりも少なくなってしまったことが問題になっています。です
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がこのように、地域の個人個人ではなく企業単位で協力することで、できることも増えます。例えば
その企業への職場体験につながったり、企業の方を招いてお話を聞くような機会も作れるのではない
でしょうか。また、個人に対するよりも人数の単位が大きい分、関係が結びやすくなるのではないか
と思いました。
④ 以上で私の発表を終わります。ご清聴ありがとうございました。
【塩野谷英明】
① 今回のインターンシップの目的として農学部に属しており、伐採経験があります。しかし伐採後が
商品化されるのかを現場に行き、自分の手で作ってみたいと思いインターンシッ
どのように加工され、
プに行くことを決意しました。また、一人の社会人として会社のために働く経験、そして新しい分野
への挑戦をしてみたいと思い参加させて頂きました。もちろん英語の向上も目的の一つです。
② 現場作業。初めにCLT製品の仕上工程を行いました。CLT製品の角取り、ボルトの取付け、節な
どの欠陥部穴埋め、最後に保護材を塗るという作業をしました。
③ 2つ目の現場作業はCNC機械です。CNC機械は設計、規格通りに木材を切ったり、穴を開けたり
します。パソコンで設計した機械で加工しました。僕らでオリジナルな製材を作りました。
④ 3つ目の作業は外国人向けのパンフレット作成。高知にある銘建のグループ会社であるおおとよ製
材は海外のお客さんも多いため、加工工程、会社概要の2点をパンフレットに訳しました。
⑤ 4つ目の現場作業はCLT住宅のデータ分析です。CLTの実験的建造物からのデータ記録取得その
記録は湿度、温度、含水率です。そしてその記録を元にグラフを作成しました。CLTの研究はまだ
まだ発展途中のためにこのようなデータ管理をしています。
⑥ 5つ目の現場作業はCLTの模型作りです。発泡スチロールを用いてCLTや集成材からなる建物模
型を作成しました。
⑦ 続いて社外研修です。社外研修では真庭市バイオマス発電所に行きました。1時間に10000kwを発
電し、バイオマスのみで発電しています。またFit制度により政府から援助してもらっています。そ
して銘建だけでなく他の会社からも廃材を回収しています。
⑧ 次の社外研修は高知県です。先ほども申したように、グループ会社のおおとよ製材所に行ってきま
した。国産材を扱うおおとよ製材所の工場と伐採現場の見学をしました。そして高知市内の観光もし
ました。
⑨ これらの経験をもとに、総まとめしました。
⑩ 初めてインターンで収穫です。大きく4つです。知識、社会の仕組み、英語力、異文化交流です。
⑪ 最初は知識です。私が興味があった木材加工について、伐採後から商品化までの流れを体験でき、
理解することが出来ました。また、知識の少なかったバイオマス発電も深く理解できました。真庭市
のバイオマス発電はバークや端材だけではなく、細くて売り物にならない未利用材を利用し、林外に
出すことにより林内環境を整備し、岡山県の森林全体が改善するということを知りました。ほかにも
建築分野についても新しく知ることが出来ました。
⑫ 次に社会の仕組みです。本社加工工場では規格通りに大量生産するのに対し、顧客のニーズに応え
るために大断面工場で個人的な発注に対応しています。また事務作業を現場作業では仕事内容の大き
なギャップを感じつつも、必ずどこかでつながっていることを理解しました。そして、やはり会社は
新しい分野への進出が重要なため、CLTの会議を行いその情報を会社全体で共有していて、このよ
うにして会社は成長していくことが分かりました。
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⑬ そして、もちろん英語力も収穫の一つです。ネイティブの方と話すことにより、英語力の向上があ
り、特に専門的な知識を交えた英語は初めてで、慣れるまでには時間がかかりましたが、これから先
将来に役に立つと確信しました。
⑭ 続いて異文化交流です。彼らの積極性に驚かされ、また、旅行を通じて彼らの考え方も理解するこ
とが出来ました。
⑮ 次に提案です。今回のインターンシップで主にCLTの仕上工程に携わっていました。そのため、深
い知識をえられ、そして、貴重な体験をしました。しかしほかの行程に携わる機会がもう少し多くて
もいいなと思いました。三週間という短い期間のため難しい提案であるのは分かりますが、もっと銘
建について理解したかったと思いました。次にCLTの発展についてです。インターンシップに行く
前はCLTのことは全く知りませんでした。ですがCLTの可能性に驚き、是非これから自信をもって
事業拡大して欲しいなと思いました。
⑯ 最後に今後の大学生活についてです。
英語学習についてです。
正直英語能力はほかの方に比べ、明らかに低い方だと思います。そのため、今回のインターンでは
それを痛感し、より英語学習に力を入れなければならないと思いました。
また、専門用語を交えた英語はとても貴重な体験になりました。
社会人としてです。
私は今までバイトでしか社会を経験することなく、初めて社会人として会社のために働きましたが。
一人一人には計り知れない責任があり、自分で次の行動を考えなければならない。このような感じる
ことができたのも一人の社会人として成長できたのではないかと思います。そして素直に父親を尊敬
することが出来ました。インフルエンザにかかりつつも仕事に行った父親は僕の中で誇りになり、そ
う感じるいい機会となりました。
最後に、今回、専門分野とは少し異なる分野でしたが、すごく将来性を感じる新しい分野への挑戦
も視野に入れ、更なる専門分野の学びを深めて行きたいと思いました。
またバイオマス発電は自分の中で衝撃的で、林内に放置されがちである未利用材を林外に出すこと
により林内環境が改善される。このバイオマス発電の可能性を探求するために岡山大学が行うバイオ
マス発電所に2日かけて行う講義にも積極的に参加しようと決意しました。
以上で発表を終わります。ご清聴ありがとうございました。
【隈崎翔真】
① 今回参加したインターンシップが僕にとって初めてのインターンシップでした。ぼくの参加させて
いただいた銘建工業さんでは8時に出勤し5時に帰る8時間労働で実際に自分が社会にでた時に経験
するであろう事を一足先に経験できるとても良い経験になりました。またインターンシップ中に1度
体調を崩してしまい体調管理の大切さを思い知りました。
いろいろな知識価値観を知れた、また実践的な英語力を身につけれた
僕は大学に入学してからタイ、オーストラリアに留学しましたが岡山大学にあるプログラムでは
4、50人近くの学生が参加しており現地でも周りに日本人がたくさんいることで英語を実際に喋る機
会が少なく、語学学校でも実際にネイティブスピーカーと話す機会は多くありませんでした。
しかしこのインターンシップでは会社内での作業の通訳や旅館での日常会話も英語を常に使ってい
たり、彼らは二人とも年が近いので分からない英語を気軽に聞けたり時には間違っている所を指導し
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てくれたりしたので本当に実践的な英語を身につけることが出来たと思います。
岡山の林業がいかに凄いかを知れた。
自分の所属している学部と林業はあまり接点がないので知らなかったのですが岡山県北部がヒノキ
の生産量全国1位であったり、僕の参加させていただいた銘建工業さんは集成材生産、木質ペレット
の生産の国内トップシェアを誇っていたりといかに岡山の林業が凄いかを学びました。
実際に会社にお邪魔することによって社員さんの安全面を考えての毎朝就労前にすることになった
ラジオ体操、目的を明確にし、情報を共有するための各工場ごとでの朝のミーティングなど実績をう
なずける工夫や努力があることを実際にみて思いました。
② もちろん僕らの安全面を考慮してのこととは分かっていますが銘建工業さんには僕らが実際に作業
していた所の他にもたくさんの工場があったのでもう少し他の工場も体験してみたかったと思いまし
た。
【瀬崎景己】
① 岡山大学文学部2回生の瀬崎景己です。
今回のプレゼンでは、私が研修させていただいた院庄林業でのインターンシップでの作業内容と気
づきについて発表します。よろしくお願いします。
② 私がこのプログラムに参加した目的は、主に2つあります。
一つ目は「大学での勉強と働く現場とはどれほどの距離があるのか」を知りたかったからです。
二つ目は「日本語のバックグラウンドのない学生との交流」によって、自分の英語力を鍛えたかっ
たからです。
岡山大学でも教養教育などで外国人の先生や留学生と関わる機会があるのですが、ほとんどの外国
人の方が日本語は話せます。
英語で会話をしていく中でも、英語で何と言っていいかわからない表現は日本語の助けを借りるこ
とが多いです。
今回のインターンシップでは日本語がほとんど通じない学生の通訳も行うということで、語学でも、
研修生としても自分の力を頼りにする、信じるという修行になると思いました。
③ 院庄林業には主に3種類の工場があります。久米工場では国産ヒノキを用いて無垢材を生産してい
ます。
フォレストリーでは輸入材を用いて、集成材を生産しています。
久米工場とフォレストリーで生産された木材をプレカット工場で加工し、住宅建設会社や院庄林業
住宅、工務店などに納品します。
今回のインターンシップではフォレストリーで集成材を生産するラインを中心に作業をしました
④ ラミナーを組み合わせることで柱や梁に使われるような強度のある木材である集成材を生産します。
ラミナーの組み合わせ方によって自分の求める強度の木材をつくりだすことができます。
⑤ インターンシップでは集成材を生産するラインのほぼすべての工程で見学及び作業をしました。
たくさんの作業工程があったのですが、今回はその中からピックアップして3つの作業を発表しま
す。
一つ目はムラトリ工程です。この工程では、欠けなどの欠陥によって直接ラインに流すことのでき
ないラミナーの欠陥を取り除きます。
短く切り取られたラミナーはこのあと、
フィンガージョイントという加工によってつなげ、ラミナー
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同様ラインに流していきます。
二つ目は板削り工程における検品です。機械で選別しきれないラミナーの欠陥を人の目で最終
チェックします。
3つ目は品質管理です。実際に生産された木材から無作為に選び、実際に力をかけて割ることで、
どれくらいの力にたえられるかをチェックします。
⑥ インターンシップ中の気づきとしては、
「現場の改善」が挙げられます。
院庄林業では、現場の方を中心として改善提案が行われており、作業の効率化を図って、様々な工
夫がなされていました。
今回はその中のひとつを紹介したいと思います。
工場での生産はほとんど機械が担っています。多少のトラブルをいかにすぐその場でなおせるかが
生産効率にも関わってきます。
以前は工具を工具箱で一括管理していたそうですが、
道具が探しにくい、それによって機械の修理に時間がかかり、作業効率が落ち、ラインもとまって
しまうといった課題が見つかりました。
そこで写真のようにキャスター付きワゴンに工具を整理したそうです。
こうすることで、工具を作業現場にもっていくことができ、工具も探しやすくなりました。また、
紛失を防ぐこともでき、作業効率があがったそうです。
この「現場の改善提案」を知り、メカニカルな部分でなくとも、ささいなことで効率をアップする
ことができ、会社に貢献できることに気がつきました。
⑦ 私はこのインターンシップが始まる前から「自分の所属する文学部とはかけはなれた林業という分
野に文学の専門分野をそのまま適応することはできない。どうすればインターンシップとして成立す
るだろうか」ということについて心の片隅で考えていました。
実際にインターンシップが始まり、先ほどのスライドにもあった「現場の改善」事例を知り、自分
の専門分野、また林業という分野でなくとも、些細な気付きで企業に対して貢献できるかもしれない
と思い、日々の作業での気づきやアイデアをメモや日報に書き溜めていきました。
そうしていく中で、
「日本語が読めない外国人労働者を考慮し、工場内の表示をピクトグラム化する」
ことをひらめきました。このアイデアは大学での講義に関係する図書をきっかけに思いついたもので
した。思わぬところで大学での勉学が役に立ち、自分でも驚きました。教養を身につけるというのは
こういうことなのかもしれないと気がつきました。
⑧ また、コミュニケーションについても多くの気づきを得ました。
英語でのコミュニケーションでは、林業についての専門単語を事前に学習していたこともあり、日
常会話をはじめ、工場内の説明も通訳することができました。しかしながら、英語を用いて話してい
く中で、自分の話す英語に不自由さを感じることが度々ありました。その不自由さとは何かというと、
私の気持ちやニュアンスを英語にのせることができないということです。伝えたい内容しか英語にの
せることができないと感じました。例えば、日本とカナダの文化の違いから、カナダからの学生に様々
なことを教えたり、時には注意したりしなければなりません。その際に、単なる命令文にプリーズを
付けた英語しか話すことができず、もどかしい思いをしました。
そこで、インターンシップを終え、テストもひと段落した後に、図書館で、日本語と英語の対訳が
されている本を借りて少し読んでみました。日本語と英語のニュアンスの溝に気づき、自分には英語
の能力だけでなく、日本語の語彙や表現力も足りていなかったのだと実感しました。
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また、院庄林業の社員の皆さんのカナダの学生に対する接し方からも、コミュニケーションに関す
る気づきもありました。
現場では英語でコミュニケーションとれなくとも、単語やボディーランゲージで積極的にカナダの
学生に関わっている様子が度々見られました。
カナダの学生にもなんとなく通じているようで、とても楽しそうな雰囲気であったことを記憶して
います。
このことも、外国人とコミュニケーションをとるということは英語を上手に話すことだと思ってい
た私にとっては新たな気付きでした。もちろん、英語でコミュニケーションをとれるに越したことは
ありませんが、それがすべてではない。相手のことを知ろうとし、交流を楽しもうとする心こそ、コ
ミュニケーションの根幹をなす姿勢でした。
【下山将輝】
① これから森林利用グローバルインターンシップの発表を始めます。環境理工学部環境管理工学科の
下山将輝です。僕はこのインターンシップで倉敷木材に行かせていただきました。
② この発表では倉敷木材での主な活動とインターンシップを通して思ったことを話します。
③ まず、倉敷木材での主な活動から発表します。
④ まず、第一週目では、会社の概要や自己紹介、スタッフ紹介などのオリエンテーション、日本の歴
史の中での人々と木との関わりについての講義、さらに森本工務店で材木加工や上棟キットの組み立
てなどを行いました。上棟キットというのは柱や梁などを組み立てて家を作るもので、簡単な家の構
造を知ることができます。
第二週目では一週間すべてを住宅模型のための材木加工のために使いました。
第三週目は実際に建築現場に行き、作業を行いました。また、最終日には第二週目で加工した木材
を組み立てて住宅模型を完成させました。
これらの活動について詳しく説明していきます。
⑤ まず、日本の木と人々との関わりの講義についてです。
日本では古くから平地と山岳の間の里山と呼ばれる地帯で生活し、自然との共生、生き物との共生
を通じて自然の中から豊かさと恵みを享受してきました。しかし、だんだんと欲しいものが手に入る
環境が整ってきて、とても便利な生活がおくれるようになりました。そのため古来より日本人が持っ
ていた鋭い感性や、感謝の心、礼節の心が衰えてきました。これまでの生活を支えてきたのは木の家
です。つまり、木の家は伝承行事や伝統芸能の舞台となってきており、暮らしの文化は木の家と共に
現代までつながっているということです。
⑥ 次は藤木工務店での作業についてです。
まず、左の写真で。これは実際に梁として使用される木材を加工した写真です。加工しないままだ
ときれいなカーブに見えないということで形を整えるために表面を削る加工をします。その作業を少
しやらせていただきました。
次に右側の三枚の写真です。これは藤木工務店が持っている上棟キットを組み立てているところで
す。これは二週目に住宅模型のための木材加工をするため、どのようなものを作りどのようなものを
作るのかイメージを持つために行いました。
⑦ 次は住宅模型のための木材加工についてです。
住宅模型のために多くの加工を行いました。この作業は穴をあけたり、手作業では時間がかかりす
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4-2 「森林利用グローバルインターンシップ」及び「Co-op in Okayama」成果報告会
ぎる工程を行ったりするときには機械を使いました。しかし、基本的に、のみやのこぎり、かんなな
どを使って手作業で進めていきました。
これから、その作業の一部を紹介していきます。
まず、上の三枚の写真からです。これは、木と木をつなげて一本の材木にするつなぎ方の一つです。
最初に左の写真のように墨付けをします。そして、真ん中の写真のように線の内側をくりぬきます。
そして余分な部分をカットします。そしてつなげると左のようになります。これはでっぱりの部分と
それをはめ込む部分の二つを墨付けしておき、それぞれ加工して作ります。
⑧ 次に左の写真です。これは、屋根の垂木を置く部分を加工した写真です。
そして、右上の写真です。作っている工程の写真はないですが、これも基本的に手作業で作りまし
た。これも先ほどのスライドの写真と同様に二つの材木をつなぎ一つの材木にするつなぎ目の部分で
す。
右下の写真は、隅木を置く部分の加工とアリの微調整を行った後のものです。
これらの作業は現在は機械で行われているため、手作業で加工を行えたのはとても良い経験となり
なした。
⑨ 次は建築現場での作業についてです。これは実際の建設現場に行った時の現場の様子です。
この現場では写真のような危険なことはできないため、柱を所定の位置に置く、木と木をボルトで
固定する、といった簡単な作業を行いました。
また、上棟式にも参加させていただきました。日本の伝統を見ることができて良かったです。
⑩ 最後に、住宅模型の組み立てについてです。
最終日には二週目に加工した木材を組み立てて住宅模型を完成させました。この六枚の写真は完成
までの工程を写したものです。
左上の写真のように土台から作り、柱を立てて二階の土台を作って二階を完成させました。その後、
隅木、垂木を置き、最後に屋根板を取り付けて住宅模型の完成です。大きさは高さ180センチ、奥行
き180センチ、横幅270センチくらいです。
以上が倉敷木材での主な活動です。
⑪ 次にインターンシップを通して思ったことを二つ発表します。
⑫ まず一つ目です。
二週目で行った住宅模型のための木材加工で、木材をつなぐ部分は上下、左右さらにねじれに対し
て耐えられる用の作りになっていました。例えば杭を打つことで上下左右のずれを防ぎ、接着部を互
いに噛み合わせることでねじれを防ぐなどです。その一部は実際の現場でも使われていました。様々
な規定がある中、それでも使われているということはかなり丈夫な構造でよく考えられているものだ
と思いました。
ここから、木の組み方は家に使われることで現在までつながっているのだということを感じました。
また、昔から生活の基本となる家はこの場合は木の組み方ですが、様々な伝統を伝える手段の一つと
なるのだということがわかりました。
⑬ 次は二つ目です。
インターンシップの仕事で家具のリメイクや、現場での作業がありました。これらの仕事は、自分
が手を加えた物が直接依頼してきた人の手に渡ります。そのため、失敗したもの、不十分なものは渡
すことができないという重い責任があります。そして、失敗しないためには十分な知識と技術を持っ
ておく必要があります。僕は今後ダムなどの施設を設計、管理する研究をしてみたいと思っています。
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4-2 「森林利用グローバルインターンシップ」及び「Co-op in Okayama」成果報告会
そこでは知識や技術が不十分だと欠陥を持ったものを作ることになってしまいます。そうなると多く
の人に迷惑をかけることになり、きちんとしたものを提供するという責任を果たすことができません。
失敗しないためには専門的な知識が必要不可欠で重要なものとなります。それは、大学では専門科目
で学ぶことのできるものです。よって、これから基本的な部分からきちんと学び、そのうえで発展内
容を身につけていきたいと思いました。
最後に、今回は日本語がほぼ通じないカナダの学生と一緒に仕事をしました。はじめはうまく伝え
られませんでしたが、だんだんと自分の伝えたいことや仕事の内容説明などが伝わるようになり自分
の英語が少しは通用するものだと分かりました。
しかし、それでも社員さんの力を借りる場面や、言いたいことが伝えられなかった場面もたくさん
ありました。そのため、今後もっと英語を勉強する必要があることを強く実感しました。
以上で発表を終わります。ありがとうございました。
【福岡千明】
① 今から私が岡山県森林研究所にインターンシップした経験について話したいと思います。私は岡山
大学環境理工学部3回生の福岡です。よろしくお願いします。
② 今から話していく目次についてですが、まず森林研究所の概要について、そのあと実際に行った仕
事内容、そこから得たもの、それをどう使うか、最後に提案をしたいと思います。
③ まず、概要についてです。森林研究所は岡山県農林水産総合センターの研究所の1つです。森林研
究所には木材加工研究室と林業研究室の2つの研究室があります。
④ ここからはインターンシップで行った仕事内容について話したいと思います。2つある研究室のう
ち木材加工研究室に前半の1週間半で行きました。木材加工研究室には大きな研究テーマとして材質
特性の解明、加工技術の開発・解明、木質材料の開発の3つがあります。その他に林業普及指導も行っ
ています。それぞれの研究テーマの仕事に関わらせていただきました。これからその仕事について説
明していきます。
⑤ まず材質特性の解明というテーマのもとに行った仕事について話します。曲げ試験・五点法による
強度試験はどちらも木材を作る木の品種や作り方による曲げや強度の違いを調べるために行っていま
す。大型の機械は高価であるため企業さんが建築基準の等級を確かめるために調べに来ることもある
そうです。
⑥ 2つ目の加工技術の開発・解明という研究テーマのもとに3つのことを行いました。含水率測定は
木を木質バイオマスとして使用する際に必要な含水率を計る目的で行いました。小口・末口や心材・
縁材など様々な部位で炉乾燥による含水率測定を行いました。この他機械による含水率測定も行いま
した。腐朽試験は、木材の補強・改修を適切な時期、部位で行うために機械で密度抵抗を調べました。
⑦ 次に柿渋によるアンモニア測定です。これは柿渋を作っている企業から依頼されて行っているとい
うことでした。水を塗った木材、柿渋を塗った木材にそれぞれアンモニアを吸収させました。結果と
しては柿渋を塗った木材の方がアンモニア吸収能が高かったです。しかし、更に柿渋によっての種類
の違いや効果の持続期間などまだまだ調べる必要があります。
⑧ 最後に3つめの木質材料の開発として蒜山にあります農業研究所の高冷地研究所と共同研究を行っ
ている木質栽培床の見学を行いました。岡山の名産であるリンドウ栽培を行っています。リンドウは
連作障害が起こる種であり、土を数年ごとに入れ替える必要がありますが高齢の農家さんにとって土
は非常に重いです。一方で木の皮は土より軽く、また木の皮の有効利用はあまりなされていないため
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平成27年度に実施した実践型教育プログラムの課題と展望
4-2 「森林利用グローバルインターンシップ」及び「Co-op in Okayama」成果報告会
価格も安く済みます。いまは木の皮とノリの配合を変えつつどの割合が良いか実用化に向け実験して
いるとのことでした。
⑨ 林業普及指導としてハーベスターでの伐採を見学し実際に玉切りを行いました。
⑩ 以上の他に研究室外の見学として木材市場、院庄林業、建築現場という実際に木が取引され加工さ
れ使われるまでの流れを見ました。
⑪ ここからは後半で仕事を行った林業研究室の内容について話していきます。林業研究室の研究テー
マは大きく5つありそのうち3つのテーマの7つの試験研究に関わらせていただきました。
⑫ まず育林育種技術の開発としてコンテナ苗木の育成調査を行いました。これは低コストで造林技術
を行うために行われているもので苗高・直径・重さを測りました。
⑬ 次に森林保護に関する調査研究のテーマとして3つの試験を行いました。鹿の森林被害調査は岡山
でも増加している鹿の被害を調べる目的で行いました。鹿の被害によって植生は5段階に分けられま
す。そのため木の種や木以外の植生状況、土の深さなどを調べました。松の植生調査は松の花粉の飛
散状況やマツクイムシの被害を調べるために行われています。松の本数と直径を調べました。
⑭ 続いて岡山でも深刻な問題の一つであるナラ枯れに関する調査を2つ行いました。1つはナラ枯れ
の分布を調べるための調査です。実際に自分の目で赤くなっている木を捜し地図に印を付けていきま
した。もうひとつはナラ枯れの原因となるカシノナガキクイムシの調査です。異なる時期・場所で罠
をかけておいてその数を数えることでより効率的な駆除方法を知るために行われていました。
⑮ 最後に特用林産物生産技術に関する研究です。林業研究室で作られた岡山甘栗をさらに普及させる
ために農家さんをまわり虫による病気が起こっている木の問題部分を取り除き薬剤を塗布しました。
キノコのDNA解析は人工栽培がされていないキノコの人工栽培を行い木材以外に林産物を作る目的
で行われています。
⑯ 最後に炭焼きを行いました。この炭焼きを行う炉は林業研究室で開発されたもので電気が通ってな
い地域でも簡単に炭をつくることができるというのを体験しました。
⑰ 今まで話してきた仕事内容やインターンシップ全般から得たものについて話したいと思います。得
たものは大きく3つあります。ひとつめは岡山県の研究職として働く経験です。岡山の研究職という
のは企業でも体験できないし、また大学の教授とも違う立場で岡山県のものを使い岡山のために研究
しているところで仕事するという貴重な経験ができました。また今まで林業に関わることはなかった
ので岡山で起こっている鹿の被害やナラ枯れの問題などを知ることができました。最後に英語につい
てです。私はカナダの子と1対1でたくさん話すことができたので単語や会話力についてはついたと
思います。しかし一方で伝えられず歯がゆい思いをしたことも多くありました。このような経験を今
後どう使用するかです。まず研究職を実際して普段触れられない機械や原因や現状を理解していくと
いう視点を学んだことを今後の研究に生かしていきたいです。また岡山には森林という価値がある資
源があるということを知ることができました。自分の分野にどう使うか具体的考えはまだありません
が、木材というものを頭において何か使用できればよいなと思います。また英語を使ったことで日本
だけでなく海外での仕事や外国の人と仕事する可能性が広がったと思います。
⑱ 最後に提案です。森林研究所だけでなく岡山県の森林全般が岡山大学ともっと繋がっていってほし
いと思います。岡山県の林業はまだまだ進展して利用できる可能性を秘めていると思います。岡山大
学には林業は余り盛んに行われていませんがそのことが逆にいろんな学部の人に考えるチャンスがあ
るのでないかと思います。一般教養などとして林業に関する講義を行い企業・研究所の人をオムニバ
スでよぶなどして林業について知り課題を考えればよいのでないかと考えます。その講義の中からイ
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4-2 「森林利用グローバルインターンシップ」及び「Co-op in Okayama」成果報告会
ンターンシップ生を出すことで更に知識を持ってインターンシップに行くことも可能になります。こ
れからは岡山のことを岡山の人で考え盛り上げていくことが重要になっていくと思います。
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平成27年度に実施した実践型教育プログラムの課題と展望
4-3 課題と展望
4-3 課題と展望
UBCのCo-opプログラムと森林利用グローバルインターンシップによってUBCの学生と岡大生を企業
に派遣し、3週間受け入れてもらうことで、日本においてこれまで行われてこなかったような長期で集
中的な就業体験を継続的に実施するために検討しなければならない課題がいくつか明らかとなった。長
期インターンシップ実施についての将来展望を含めて、それらの課題をまとめると、以下のようになる。
4-3-1 派遣・受け入れのメリットとデメリット
大学が派遣し、企業が受け入れて行う就業体験を通した実践型教育には、企業にも、大学にもメリッ
トがなければならない。
4-3-1-1 企業
卒業前の学生をある期間受け入れて就業体験をさせることの、企業にとっての最大のメリットは人材
確保である。給与を支払い、日常の業務を一旦停止し、自社社員になる可能性の低い新人教育を負担す
るメリットは、コスト計算が出来るようなものでなければならない。職場の活性化や、将来の人材確保、
企業イメージ向上などは、受け入れに伴うメリットの評価項目に含まれるであろうが、業務の停滞や事
故による企業イメージの低下などのデメリットを補って余りあるメリットを企業が実感できるような派
遣・教育システムがなければならない。
4-3-1-2 大学
企業が主体となって行う従来の短期インターンシップを、大学主体の実践型教育とするためには、就
業内容についての教育目的を明確にし、実践の場で確実に実施されるように企業との綿密な打合せが必
要である。同時に、大学における派遣前後の事前教育とフォローアップは欠かせないが、その教育内容
は今後詳細に検討しなければならない大きな課題である。
4-3-1-3 将来
今回の派遣期間中に企業から寄せられた意見の中には、事業を知ってもらえることや、担当する社員
が学生を教育することで安全な作業を考え直すなどの刺激があったことなどのような前向きで好意的な
ものがある反面、受け入れることのメリットがはっきりせず、毎年受け入れを続けるのは困難ではない
かというように本試行が抱える本質的な課題への率直な反応も認められた。UBCの学生と岡山大学の
学生の間での専門知識の違いが、通訳の業務だけでなく、日常の作業の指導においても支障が出ており、
事前教育の充実を望む意見もあった。学生の派遣・受け入れのための持続的な体制整備にそれらの意見
を反映させることが出来るようにしなければならない。
4-3-2 学生のメリットとデメリット
就業期間中に学生から直接聞き取った意見や企業および大学での報告会での反省などを元に、学生に
とっての今回の長期インターンシップのメリットとデメリットをまとめると、次のようになる。
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4-3 課題と展望
4-3-2-1 メリット
グローバルインターンシップとして、英語によるコミュニケーション力向上を謳っており、3週間寝
食を共にしたことで、明らかに能力向上が認められた。
対象とした学生の専門分野を限定しなかったために、参加した岡大生の中に林業、林産業と関係する
専門分野の学生は多くなかった。それでも、専門分野と直接関係しない学生たちから、新しい体験をす
ることができ、環境問題や職業観について得るものが多かったとの感想が多く寄せられている。専門が
近い場合は就職先として検討しようとする意識が育っていた。各企業の積極的で教育的な指導と、UBC
の学生の真摯な取り組み態度とが相俟って、岡山大学生への教育的効果は極めて高いものがあったと結
論できる。特に、3週間という長期の現場体験によって、企業風土や社員の就労意識などを体感するこ
とができて、企業の経済活動への理解や就労感について大きな進展があったように見受けられた。
4-3-2-2 デメリット
参加を希望した学生は多くいたが、時期や期間が問題となって、十分な数の応募者を集めることが出
来ず、結果的にはUBCの学生と共同で派遣するために必要な人数をやっとぎりぎりで超えることが出
来た。最も大きな課題は、実施期間が6、7、8月の3ヶ月で、この間は前期の授業期間が含まれてお
り、試験期間にも当たるために、3週間にわたって授業を休むことが出来ない学生が多かったことであ
る。今回の実施時期はUBCのカリキュラムとの関係で決めたため、こういう不具合が生じた。UBCと
の交渉の過程で、学部生の参加が容易な時期を増やすために7、8、9月の実施を要望したが、今回は
受け入れられなかった。今後の交渉項目の中で最も大きな課題であると認識している。
なお、前期授業期間の終わりの時期に学部生が参加するには大きな困難があることは認識していたが、
その期間は大学院生の参加で本試行を推進できるものと期待していた。しかし、今回の森林利用グロー
バルインターンシップへ参加した学生はすべて学部生で、大学院生の参加が全くなった。大きな理由と
しては広報の不足ではないかと考えている。学部生に対しては4月の教養、学部でのオリエンテーショ
ンの時に資料の配付と口頭の説明を行うことが出来たが、大学院生に対する広報の時間や機会を十分確
保できなった。
本プログラムはUBCの学生が日本に滞在する3ヶ月を全期間とするものであるが、森林利用グロー
バルインターンシップはその間の3週間について岡大生が参加するものである。UBCの学生に対して
は9週間で3企業の就業体験をするように計画しており、その間に川上(森林管理・木材生産)から川
下(木材利用・販売)までの一連の作業工程を体験できるプログラムである。しかし、岡大生はそのう
ちの1企業にしか参加しないために、生産過程を総合的に体験することが出来ない。就業体験を通して
産業構造を理解するためには計画的に組み立てられた複数の企業での就業が必要である。
カナダで調べた報告(WACE2015)によると、興味はあってもCo-opプログラムに参加しない学生の
理由は、
・キャンパスから離れることで友人と離れてしまう。
・卒業に時間がかかる(カナダのCo-opプログラムでは卒業に5年を要する)。
・学業に遅れる。
・一つの企業にしか行かない。
というようなものであった。本学で実施するインターンシップは4年の卒業を前提としているので、
2つ目の理由は対象とならないが、就業期間が長くなると、キャンパスから離れてしまうことで友人と
の関係への影響は大きくなると考えられる。先行している事業における課題をさらに詳しく知ることが
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平成27年度に実施した実践型教育プログラムの課題と展望
4-3 課題と展望
必要である。
4-3-3 実践型教育の教育効果
複数企業での就業体験を有機的に連携させるプログラムを、限られた期間内に実施するためのシステ
ムをどのように構築するのかはこれからの課題の一つである。
各企業で実施した作業内容は資料18に示すように多岐にわたっている。川上から川下まで業態の異な
る企業での作業であるため、様々な作業を経験することが出来たと考えているが、企業ごとに学生の受
け入れに対する認識に違いの認められるところもあった。特に、3週間で活動の全体を理解させようと
したため、研修としての意味合いが強くなり、専門外の岡山大学生にとってのメリットがはっきりしな
くなる場合もあった。一方で、学生の受け入れを企業活動の改善の試みとしてとらえていた企業もあっ
た。多くの企業で、生産活動を紹介するために視察や見学を組み込んでいただき、教育的効果が大いに
上がったと思われる。
今回の試行では、UBCのCo-opプログラムの趣旨や、森林利用グローバルインターンシップの目的、
学生募集の際の説明内容を受け入れ企業に伝えたが、具体的にどのような作業をさせるのかについては、
大学が直接企業と協議することはなかった。そのため、上記のように、企業間で対応に違いが認められ
た。それでも複数企業での就業を体験したUBCの学生はどの企業でも大変有意義な経験をしたと報告
しており、それぞれの企業が学生受け入れについての多大な努力を払っていただいたおかげである。
また、今回の試行では応募学生数が少なかったこともあり、企業への派遣について途中参加を認めた。
そのためすでに作業を始めているにもかかわらず、再度安全教育を実施するなど作業予定が変更となり、
現場に混乱が生じた。
実際の作業内容などについて企業と大学の間で協議をし、グローバル人材養成のために実効あるもの
にするためには、大学が主体になって実施する就業体験が備えるべき教育的側面を明確にし、企業と大
学の意思統一を図る必要がある。
4-3-4 期間の妥当性
実践型教育の目的とするところは、就業体験を通して、大学で学ぶ専門的知見を社会的視野から理解
する能力を涵養することである。また、逆に企業の社員の就労意識や企業活動の実態から、大学での学
びの重要性や必要性を認識することである。そのためには個々の作業のスキルをマスターするだけにと
どまらず、企業活動の中での個々の作業の役割を理解しなければならない。そうした能力は企業が新人
社員に求める資質であり、実践型教育は企業の新人教育と多くの面で共通するものであると考えられる。
各企業での新人教育は、業種、業態によって異なり、今回の受け入れ企業では最低3ヶ月は必要であ
るという所から、1年や2年で作業を任せられるようにはならないという所もあった。ごく平均的に判
断しても、新人教育には少なくとも数ヶ月は要する。したがって、学生が企業の生産活動の内容を理解
し、作業に責任を持って取り組めるようになるためには少なくとも1ヶ月以上の現場経験がなければな
らない。幸い受け入れ企業からは1ヶ月から1ヶ月半程度までの受入期間の延長は可能であるとの意見
をいただいており、適正な派遣期間についての検討をしなければならない。
UBCのCo-opプログラムの1期が4ヶ月となっているのは以上のような状況を考慮した結果であると
考えられる。
本学において数週間以上の期間の就業体験を実施するための課題は以下のものである。
まず、本学の教育システムでは休学期間は最長2ヶ月しかなく、長期に大学を離れることを前提とし
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平成27年度に実施した実践型教育プログラムの課題と展望
4-3 課題と展望
ていないために、授業期間に就業体験をすると学業に支障が出る。来年度から始まる60分クオーター制
で長期の就業体験が出来るようになることを希望する。
また、参加学生に長期就業体験の意味を理解してもらわなければならない。今回の参加学生の中には、
英語の会話能力を向上させることを主目的とした者もいて、本プログラムにおける就業体験の重要性を
必ずしも徹底することが出来なかった。本プログラムの趣旨を理解し、授業期間はアルバイトなどをせ
ずに勉学に集中し、休学期間にフルタイムで就労することで、就業体験を大学での勉学にフィードバッ
クさせることが必要である。大学時代の就労についてのパラダイムシフトを起こさなければならない。
4-3-5 運営方法
今回の事業は、UBCのCo-opプログラムをベースに岡山大学に新しい実践型教育プログラムを立ち上
げるための試行である。そのため実施にあたって、あらゆる角度から課題を抽出することができるよう
に、準備やサポートを出来るだけ慎重に行った。その結果、一部では過剰対応となった面もあるが、多
くは新規事業の立ち上げに伴う跛行的な対応の範囲内のものである。
4-3-5-1 充実させなければならないもの
その中で必ず必要であり、さらに充実させなければならないと考えられるものは広報と事前および事
後教育である。
森林からの生産活動に興味を持っており、かつ国際的に活躍しようと希望している学生、院生に出来
るだけ多く参加してもらうためには、本事業の魅力を周知しなければならない。本年度は試行であった
ために、UBCからの学生受け入れに慎重を期す部分が多く、本学での広報活動が必ずしも十分ではな
かった。その結果、本年度の参加学生はすべて学部生であり、院生の参加が全くなかった。6月、7月
という学部の授業がある期間はむしろ院生の方が好都合である。4月のオリエンテーションが学部学生
の場合のように研究科ごとに分散していないため、院生に対して教職員が概要説明をする機会がきわめ
て限られていた。広報の仕方を再検討する必要がある。また、参加学生の中には英語力強化を主目的と
し、就業体験に全く興味を示さないものがいたのは、広報活動においてUBC学生との共同生活による
英語力強化を謳いすぎた面があると考えられる。森林利用インターンシップの趣旨をきちんと説明する
必要もあり、広報の内容についても再考を要する。
就労意識や企業マナーなどのインターンシップにおける基本的な教育は欠かせない。本年度は時間的
な制約もあり、そうした基本的なマナー教育を行わなかった。そのため、一部では就労期間中に企業へ
作業内容の変更を申し出るなどの行為が報告されている。本学で行われている他のインターンシップで
の事前教育を参考に、基本的なマナー教育と就業教育を充実させなければならない。参加した学生の専
門は林業、林産業と関係のないものがほとんどであったので、専門教育が必要であった。林学概論、林
産学概論を1日半かけて実施し、概要の説明は行ったが、十分とは言いがたいものであった。時間的な
制約があるので、派遣企業の業態に合わせたピンポイントの専門教育を行うほうが効果があると考えら
れ、その方向で事前専門教育のカリキュラムを再考する必要がある。
事後の教育として最終成果報告会(資料19)を開催した。2日間の発表指導を経て、表10に示すよう
なプレゼンテーションを行った。単に貴重な経験をしたと言うだけではなく、これからの大学生活、大
学での学びにこの経験をどのように生かしていくのかを学生たちに考えてもらう機会となったのではな
いかと考えられる。
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平成27年度に実施した実践型教育プログラムの課題と展望
4-3 課題と展望
4-3-5-2 期間中の企業訪問と移動の経費負担について
本年度は最初の年であったために、学生、企業が課題に直面した際にコーディネータとの連絡のチャ
ンネルが必ずしも十全に機能しない可能性もあった。そこで、大学と企業、学生の関係を密にする事を
目的として毎週教員が企業を訪問した。今年度の経験から、すでに大学と企業の間での情報交換など連
携すべき点は明瞭になってきた。来年度も就業期間中は企業の裁量に任せて指導を進めてもらうが、企
業および学生にトラブルが生じた場合には速やかにコーディネータに連絡をもらい、課題の解決をス
ムーズに進めることができる。ただし、本事業は今後事前・事後の教育プログラムを整備充実させるこ
とが最も重要な点であり、そのためには現場での生の声や生の姿を知らなければならない。そこで、毎
週行っていた中間伺いは、岡山大学生の成長や企業への貢献を判断することを主な目的として実施する
ので、訪問頻度や時期について今後検討する予定である。
受け入れ企業のほとんどが岡山県の北部に位置しているため、現地までの移動に時間と経費を要する。
そこで、岡山大学から受け入れ企業までと、3週間の就業期間が終わった後で岡大生は岡山に戻り、
UBCの学生もそれに同行して岡山市内へ戻ることになった。その際の移動を岡山大学の公用車で送り
迎えしたが、実践型教育におけるこうした部分のサポートの必要性については今後検討する必要がある。
通常の実習では現地までの移動は学生の裁量に任せ、経費も自己負担となっている。本プログラムの受
講学生を増やしていくためにも、スタッフの負担を軽減し、学生の自己責任での活動の幅を広げること
が必要である。
4-3-5-3 充実していく資料
少数のコーディネータによる運営を可能にするために準備しなければならないものとして、ハンド
ブックが挙げられる(資料3)
。学生、起業、大学にとって必要な情報をすべて一つにまとめておくた
めにはハンドブックは有効である。当然作成には労力と時間を要するが、これによって少数のコーディ
ネータが多数の学生の要求に適切に対応することが出来るようになる。先行のハンドブックを参考に、
岡山大学版を早急に作成しなければならない。
今年度作成した用語集(専門用語の英語と日本語の対訳集)は一部で有効であったとするが、ほとん
ど利用していないという意見もあった。ネットで調べるとほとんどの単語の英語、日本語は判明するが、
専門用語の中にはそうした方法では探せないものもある。用語集をより充実させていくことで、ネット
による翻訳では不足する部分を補うことが出来るようにする必要がある。
4-3-6 UBC学生とGI学生の関係
今後もUBCから学生を受け入れながら就業体験をすることでグローバルな視点で企業活動を理解す
ることの出来るプログラムとしていく予定である。その際、岡山大学生にとって英語コミュニケーショ
ン力向上と就業体験の重要性をどのようにバランスするかを事前に周知しておかなければならない。専
門外の学生に林学、林産学を事前に教育する授業に参加しなかった学生もいた。こうした学生の対応は
本プログラムを受講する学生の意識が英語コミュニケーション能力の向上に置かれているためである。
UBCの学生との共同作業が就業体験と一体のグローバル教育であることを周知させなければならない。
4-3-7 経費
来年度以降継続的に実践型教育を実施していくためには、確固とした財政的基盤を確保しなければな
らない。今年度は岡山大学の概算要求(特別経費)の実践型社会連携プロジェクト実施事業の運営費と
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平成27年度に実施した実践型教育プログラムの課題と展望
4-3 課題と展望
寄付金を利用したが、来年度以降は受け入れ企業からの拠出金を元に運営することが望ましい。
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平成28年度以降の実践型教育プログラムの展望
5-1 来年度の枠組み
5.平成28年度以降の実践型教育プログラムの展望
5-1 来年度の枠組み
平成27年度の森林利用グローバルインターンシップは全学の学部生、院生を対象に募集し、UBCの
Co-opプログラム(Co-op in Okayama)と共同して実施した。就業体験の受け入れは岡山県内の林業
と林産業の企業と研究機関が参加した林業教育コンソーシアムが行った。詳細は2章を参照されたい。
本年度の試行結果を参考に、来年度の実践型教育プログラムは資料20のように岡山大学生の森林利用
グローバルインターンシップを中心にして実施する。したがって、本年同様に、専門は林学、林産学に
限定せず、全学の学部生、院生を対象となるので、事前教育での専門分野の授業内容を検討し、UBC
の学生との知識の差が現場作業に支障をきたさないようにしなければならない。受け入れは、今年度と
同様に、6つの企業・機関で構成する林業教育コンソーシアムとする。
さらに将来的な展望として、単位互換制度を利用して、中四国の林学科を有する大学(島根大学、鳥
取大学、愛媛大学、高知大学)に参加を呼びかけて、岡山大学の学部生、院生と一緒に就業体験をする
ことが出来るシステムの構築も検討に値すると考えている。
また、UBCの学生の専門性についても、本年度の林産学に加えて、林学科の学生を新たに招聘でき
るように対象の専門領域を拡大することで、森林の環境保全から生産活動までを幅広く対象とした就業
体験とすることが出来ると考えている。
受け入れ学生数を増やしていく場合には、受け入れ企業の負担軽減のために、林業教育コンソーシア
ムのメンバーの追加も検討課題として上がってくるものと考えている。
資料20 平成28年度以降の展望
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平成28年度以降の実践型教育プログラムの展望
5-2 検討課題
5-2 検討課題
来年度およびその先を見据えて事業を実施していくために検討しなければならない項目は次のように
なる。
5-2-1 UBCでの対象の拡大
UBCから招聘する学生は今年度2名であったが、対象領域を林学に拡大すると、将来的にはUBCの
学生数は3名から4名とすることも可能であると思われる。UBCの林学部内では林学と林産学でCo-op
プログラムが対象とする企業群が異なるために、林学部内には2つのCo-op事務所がある。本学はこれ
まで林産学科の事務所と連携を進めてきた。対象とする専門領域を林学まで拡大するためには、もう一
つの林学関係のCo-op事務所との交渉を始める必要がある。
本年度の岡山大学の全学を対象とした募集に林学、林産学に専門が近い学生の応募した9名のうち1
名に過ぎなかった。就業体験と学生の専門性のマッチングを計るためには、林学・林産学を専攻する学
生、院生の参加を増やす必要がある。環境理工学部だけでなく、農学部からの学生の参加を促進する対
策が必要である。さらに将来的には中四国の4大学で林学、林産学を専攻する学生、院生を数名、単位
互換制度を利用して本プログラムに加えることで、専門と就業体験の関係を間近に体感することで、就
業体験を自身の専門の勉学にフィードバックする視点を発見し易くなり、本学の学生に対する本プログ
ラムの教育効果はさらに高くなるものと考えている。そのためには、大学間の連携について検討をする
必要がある。
5-2-2 時期と期間
来年度の実施に向けて、まずどの時期に実施するのが適当であるのかを検討しなければならない。本
年度はUBCの学生のCo-opプログラムに合わせたため、授業期間だけでなく、試験期間とも重なり、高
い関心を持った学生の多くが履修をあきらめた。この点を来年度から始まるクオーター制でどの程度克
服できるのかをあらかじめ検討した上で、UBC側と実施時期についての交渉を行う必要がある。
就業体験の教育的効果および企業活動への貢献度を考慮した場合、本年度の3週間が十分であったか
どうかは重要な検討課題である。企業側からは最低1ヶ月、あるいは1ヶ月半は必要であるという意見
もあり、就業内容だけでなく、経費とも関連させながら、慎重に検討しなければならない。
受け入れ学生数を増やすことや期間の延長が企業活動と大学教育に与えるメリットとデメリットを明
確にし、来年度に向けたプログラム改善の方向を決定することになる。
5-2-3 就業内容と大学の役割
Co-opプログラムがインターンシップやアルバイトと大きく異なる点は、企業での就業体験を大学で
の勉学にフィードバックさせることを前提としたものであるところである。したがって、個々の企業に
おける作業内容(資料19)を参加企業群(コンソーシアムのメンバー)で共有し、その内容を大学が企
業と連携しながら修正、発展させていくものでなければならない。岡山大学が企業での就業体験の内容
にどの程度関わることができるのかについては事前教育の内容とも関連させて検討する必要がある。
就業体験の教育的効果を上げるためには、就労意識や職場マナーを含めた学生への事前教育は欠かせ
ないものである。今年度は岡山大学が実施するマナー教育が夏休み前に集中していたために、GI学生
に受講させることが出来なかった。受講できるようにしなければならない。さらに、事前学習と就業体
験の内容がよりマッチするように、授業内容と企業・機関の作業予定を関連させていかなければならな
98
平成28年度以降の実践型教育プログラムの展望
5-2 検討課題
い。また、現場作業は危険なものであり、有償で就業させる場合には、安全講習を受け、チェーンソー
の使用資格を得ておかなければならない。こうしたこともすべて事前学習のカリキュラムに組み込む必
要があり、企業・機関と大学の緊密な連携は欠かせない。
就業体験の後の報告会などの事後の振り返りは就業体験をその後の自身の学習にフィードバックさせ
る実践型教育の最も重要なことである。事前にどのような態度、目標を持って就業するのかを考えさせ
ておくと共に、事後にその成果をさらに検証する作業を学生自身が行うようにサポートしなければなら
ない。また、就業体験の教育的効果を評価するために長期にわたってGI学生と連携を維持していく必
要がある。
学生を派遣している間の危機管理についても改めて検討する必要がある。幸い本年度は物理的な傷害
もメンタルな課題も起こらなかったが、どちらも常に高い確率で起こる危険がある。物理的傷害につい
ては学生傷害保険である程度対応することが出来るように準備は行ったが、メンタルな面では必ずしも
十分でなかったかもしれない。派遣期間中は毎週末にヒアリングに赴いていたが、それで危険を事前に
把握することができるかどうかの検証をし、さらにシステムも充実させなければならない。
岡山大学が行う事前・事後教育の実施方法やその内容について、先行事例を参考に、ハンドブックの
作成などを視野に入れながら、検討しなければならない。
コーディネータの資質向上も喫緊の課題である。
5-2-4 交換留学制度の確立
"The Canada-Japan Co-op program"(日加コーオププログラム)という国際就業体験プログラムが
1991 年から実施されており、2014年度まで、毎年40名前後のカナダ人学生(総計960名)が日本企業で
研修を受けている(資料21)。2014年度も44名が14企業で4ヶ月間の研修を受けた。このプログラムは
カナダで実施されているCo-opプログラムをそのまま日本の企業を対象に行うものであり、本学が今年
度実施したものと同一のものではない。特に、表6、表7、表8に示すように、本学での来日直後の日
本語講座を含む導入教育、就業期間中の週末に行った休日プログラム、および最終週の座学による日本
の森林、林業教育は3週間のきわめて密度の濃い専門教育プログラムである。このことは日加コーオプ
プログラム事務所(カナダ国、バンクーバー)でも把握しており、本学の連携教育は単なる就業体験で
はなく、教育的なプログラムであると認識されている。さらに、今回の受け入れ学生は本学が受け入れ
機関となっている留学ビザで来日している。そこで、Co-opプログラムによるUBCの学生の受け入れを
短期留学生とすることについてUBCと協議する予定である。短期留学生としての受け入れとなれば、
本学からUBCへの交換留学生の派遣が可能となる。それによって、学内インターンシップでUBC学生
と交流経験のある学生の中から毎年数名がUBCに留学することが出来るようになる。その場合、岡山
大学からの学生派遣のシステムについても検討する必要がある。
99
5
5
平成28年度以降の実践型教育プログラムの展望
5-2 検討課題
資料21 Canada-Japan Co-op ProgramのHP
100
むすび
6.むすび
3か月にわたって展開されてきた岡山大学版Co-opプログラムが終わりました。
まずなによりも、この期間を通してプログラムの実施に関わった多くの方々、それぞれ3週間にわたっ
て学生を受け入れてくださった企業、研究所の方々に深く感謝申し上げます。そして、第一期生として
UBCから派遣されてきた2人の学生、岡山大学の9人の学生の著しい成長ぶりを喜びたいと思います。
この報告書の中でも、今回の教育プログラムを通じて、学生のみならず企業・研究所の方々にも新し
い発見があったと報告されており、一定の成果を生み出していることを嬉しく思います。
大学のグローバル化の進展に伴って、大学教育もグローバル化の波に洗われていますが、その中でも、
企業やNPO、その他の団体と協力して実施する実践型の教育が注目を浴びており、カナダや北米の主
要な大学の中で展開されているCo-opプログラムはその代表的な展開といってもよいでしょう。
その意味において、今回の試みはいくつかの不十分な点は残しつつも、今後のグローバルな実践型教
育プログラムを展開する上でも、極めて重要な貢献であったと思います。
今後、本プログラムの根幹ともいうべき、大学と企業・社会組織との入念な協議を踏まえた、互恵性
のある教育プログラムの作成、専門知識と教養との融合、座学と現場教育との有機的結合、高い英語力
の養成等が求められるでしょう。
さらに、この試みについて学内での理解の深化をはかり、また本学からUBCへの学生派遣達成、経
済面での自立的展開等が求められます。
ともあれ、今回の教育プログラムの実施に当たって、企業・研究所の方々、地域総合研究センターの
教員、事務の方々、そしてこの教育プログラム作成の基本構想を提示し、事務局部門も大いに支えてい
ただいた吉川賢先生に、改めて深く御礼申し上げます。
最後に、この岡山大学版Co-opプログラムが、日本の大学におけるグローバル実践型教育の一つの典
型になるべく、更なる努力を積み重ねていきたいと思います。
岡山大学地域総合センター
センター長 荒木 勝
101
6
102
参 考:受け入れ企業・機関紹介
103
104
参 考:受け入れ企業・機関紹介
國六株式会社
國六株式会社

会社概要
【商号】國六株式会社
【創業】明治 31 年 3 月
【設立】昭和 21 年 9 月 16 日
【資本金】4500 万円(平成 27 年 4 月 1 日現在)
【本社所在地】〒500-8175 岐阜県岐阜市長住町 5 丁目 8 番地 地図
【電話番号】058-264-0926
【従業員数】68 名(平成 27 年 4 月 1 日現在)
【免許登録】
宅地建物取引事業者登録 岐阜県知事免許(13)第 1005 号
建設業者登録 国土交通大臣許可(特-24)第 24553 号
一級建築士事務所登録 岐阜県知事登録第 12348 号
【加入団体】
(社)日本木造住宅産業協会、(財)住宅保証機構、(社)岐阜県宅地建物取引業協会、
愛知県木材買方協同組合、岐阜県プレカット協議会、(社)日本林業経営者協会、
(社)岐阜県林業経営者協会
【主要取引銀行】
十六銀行、商工中金、岐阜信用金庫
【主な事業内容】
一戸建住宅及びマンションの販売、注文住宅の建築、木材製品・新建材の販売、
住設機器の販売、住宅のリフォーム、貸ビル等不動産の賃貸、プレカット加工、
山林の経営

岡山県 新庄事業所紹介
【新庄事業所】
•住所:岡山県真庭郡新庄村 3950-1
•TEL:0867-56-2635•FAX:0867-56-3272
•E-mail: [email protected]
105
参 考:受け入れ企業・機関紹介
國六株式会社
~創業以来、山を愛し、木を慈しむ心を大切にしています~
新庄事業所では、社有林 1450ha の維持・管理に努めてい
ます。鳥取県との県境に位置する新庄村は、緑あふれる豊か
な 自然に包まれています。新庄村は岡山県を流れる旭川の
源流にあたり、 下流域に豊かな水を供給しています。
新庄村の森林には様々な木が生い茂っています。杉や桧の
人工林、樹齢 100 年を超えるようなブナやトチノキの天然
冬、雪に包まれる新庄事業所
林…中には幹の周囲が大
人3人でようやく抱えられるような大木もあります。この
森林の一部は、大山隠岐国立公園にも指定されている貴重
な森林となっています。
人工林を健全な状態に保つためには手入れが必要です。
國六では、下刈・枝打・除伐・間伐といった人工林の育成
に必要な施業を行っています。 さらに杉や桧のような針 上空より撮影した岡山の山林
葉樹だけでなく、広葉樹の植林にも取り組んでいます。木
が育つのには長い年月がかかります。現在ある森林も、先人達が大変な苦労をして育ててき
たものです。今を生きる私達も、将来を見据えた森づくりをしなければなりません。また、
下流域へ水を供給している森林を所有している以上、森林のもつ公益的機能を十分に発揮
できる健全な森づくりは、我々に課せられた使命でもあります。
林業は体力的にはきつい仕事です。施業を行うには、鉈・刈
払機・ チェーンソー等の道具や林業機械を使います。
自然相手の仕事ですので、 苦労することも多々あります。し
かし自分が施業を行い、森がきれいに なることで、他では得
られない達成感を味わうことができます。 その時の森は、ま
るで喜んでいるようにも見えるから不思議です。 新庄事業所
新庄事業所前にて
のメンバーは、夏の暑い日や冬の寒い日も、森を守るために 駆
け回っています。
また 2005 年 10 月には、岡山県で「晴れの国おかやま国体」 が開
催されました。その中の山岳(縦走)競技では、 國六の森林がコース
として選ばれました。野土路のスタート地点~金ヵ谷山~朝鍋鷲ヶ山
の 5.4km の 道のりです。標高が上がるにつれ、杉や桧の人工林から
ブナ等の天然林へと景色も変化していきます。競技では全国から参加
「晴れの国おかやま
国体」で使用された
した選手達が、國六の森林を颯爽と 駆け抜ける姿を見ることができ
ました。
國六の森林コース
106
107
勝山中学校
屋内運動場
岡山県
設計 : 有限会社太田建築設計事務所
施工 : 株式会社三木工務店
木構造コンサル・設計補助
構造材・加工・木構造建築請負
大規模木構造・非住宅
岡山県
設計 : 株式会社復建エンジニアリング
施工 : アイサワ工業㈱奥村建設㈱特定建設工事共同企業体
岡山駅西口デッキ
構造用集成材
ヒノキ・スギ乾燥製材
一般住宅向け木質構造材
銘建工業株式会社
木質バイオマス事業
木質バイオマスペレット
本社 岡山県真庭市勝山1209
TEL:0867-44-2695 FAX:0867-44-5105
www.meikenkogyo.com
[email protected]
わたしたちは木質材料の可能性を追求し続けます
大規模木造建築物からペレットまで …
Meiken opens a new Possibility of Wooden Structure
南有馬図書館
倉吉
パーク
スクエア
大断面事業
長崎県
鳥取県
参 考:受け入れ企業・機関紹介
銘建工業株式会社
JPIC-LT215
108
売上高
岡山県真庭市勝山1209 TEL: 0867-44-2695( 代 ) FAX: 0867-44-5105
JAS認定工場
2011年 ( 平成23年 ) 173( 億円 ) 2014年 ( 平成26年 ) 216( 億円 )
2010年 ( 平成22年 ) 167( 億円 ) 2013年 ( 平成25年 ) 213( 億円 )
2009年 ( 平成21年 ) 132( 億円 ) 2012年 ( 平成24年 ) 159( 億円 )
2013年 ( 平成25年 ) 2月 真庭バイオマス発電株式会社設立 ( 筆頭出資者 )。
7月 本社工場にCLT製造ライン完成。
2012年 ( 平成24年 ) 1月 高知おおとよ製材株式会社設立 ( 筆頭出資者 ・ 総販売元 )。
2008年 ( 平成20年 ) 5月 協同組合くまもと製材稼動 ( 筆頭出資者 ・ 総販売元 )。
(平成25年8月、 株式会社に組織変更)
2007年 ( 平成19年 ) 3月 日本政策投資銀行による 「環境格付認定」 を受ける。
2005年 ( 平成17年 ) 10月 ラムコ社の合弁を解消。
2005年 ( 平成17年 ) 9月 バイオマス事業が愛 ・ 地球賞を受ける。
2005年 ( 平成17年 ) 7月 ジョイント工場完成。
バイオマス部門
製材部門
集成材部門
取扱品目
許可登録
低ホルムアルデヒド構造用集成材 ( 中断面 )( 小断面 )
低ホルムアルデヒド直交集成板 (CLT の JAS 認定 1 号 )
構造用製材、 人工乾燥構造用製材、 機械等級区分構造用製材
低ホルムアルデヒド構造用集成材 ( 大断面 )( 中断面 )( 小断面 )
木質ペレット・・・製造過程で出る木屑を原料とする木質バイオマスペレット
電力事業・・・木質バイオマス ( 製造過程で出る木屑 ) 利用の自家発電電力の販売
杉・桧製材 ( 久世工場 ・ くまもと製材 )・・・杉・桧人工乾燥柱および乾燥間柱、 杉人工乾燥平角
優れた乾燥技術と量産化により、 安定した品質とコストを実現
構造用大断面集成材 ( 大断面工場 )・・・構造用大断面集成材の製造、 加工および建築工事
中・大規模木造建築物の多様な設計要求に的確に対応
構造用中断面集成材 ( 本社工場 )・・・集成平角 ( 梁・桁 ) 国内最大級の集成材平角工場
構造用小断面集成材 ( 本社工場 )・・・管柱国内トップクラスの生産能力を有する量産工場
グリーン購入法事業者認定 日集協第 055 号
FSC 認証番号 SGSHK-COC-008712、 SGSHK-CW-008712
FIPC( 合法木材供給事業者認定 )No.321205、 No.321205-2、 No.321205-3
PEFC 認証番号 SGSJP-PCOC-0831
MK ラーメンシステム 財団法人日本住宅・木材技術センター認証番号 : 新工法 NSK2a1
銘建工業株式会社東京事務所 一級建築士事務所 東京都知事登録 第 56575 号
銘建工業株式会社一級建築士事務所 岡山県知事登録 第 14130 号
建設業 国土交通大臣許可 ( 特 -25) 第 22662 号
ISO9001:2008 登録番号 Q1594
中国銀行 みずほ銀行 三菱東京UFJ銀行 日本政策金融公庫
JPIC-CL1
JPIC-LT216
JLIRA-A-044
主要取引銀行
田口 克之
250 名 (2014 年 12 月 )
37,800,000 円
代表取締役専務
岡山県真庭市目木 1-2
中島 浩一郎
代表取締役社長
TEL. 03-5835-5610 FAX. 03-5835-5625
東京都中央区東日本橋 2-15-5 モリビルディング 2F
TEL. 0867-42-7517 FAX. 0867-42-7518
岡山県真庭市目木 1-7
TEL. 0867-42-3660 FAX. 0867-42-5240
岡山県真庭市草加部 1334-4
TEL. 0867-42-2204 FAX. 0867-42-4781
岡山県真庭市草加部 1372
TEL. 0867-44-2695 FAX. 0867-44-5105
岡山県真庭市勝山 1209
真庭流通センター
東京事務所
ジョイント工場
大断面工場
久世工場
本社
MEIKEN LAMWOOD CORPORATION
銘建工業株式会社
2004年 ( 平成16年 ) 8月 木質バイオマスペレットの製造開始。
JAS 認定番号
従業員
資本金
役 員
事業所
社 名
会社概要
2003年 ( 平成15年 ) 8月 真庭流通センター完成。
2003年 ( 平成15年 ) 4月 RPS法に基づき電力販売開始。
2000年 ( 平成12年 ) 12月 本社工場に中断面集成材製造ライン完成。
1998年 ( 平成10年 ) 1月 本社工場にエコ発電所 (1,950kW) 完成。
1997年 ( 平成 9年 ) 2月 オーストリアにラムコ社設立。
1996年 ( 平成 8年 ) 11月 第35回農林水産祭において天皇杯を受ける。
1994年 ( 平成 6年 ) 7月 本社工場に集成管柱製造ライン完成。
1987年 ( 昭和62年 ) 8月 構造用大断面集成材専門工場完成。
1985年 ( 昭和60年 ) 8月 構造用大断面集成材製造ライン完成。
1984年 ( 昭和59年 ) 12月 エネルギーセンター (175kW) 完成。
1973年 ( 昭和48年 ) 3月 久世工場 ( 桧製材工場 ) 完成。
1971年 ( 昭和46年 ) 10月 製材JAS認定工場となる。
1971年 ( 昭和46年 ) 8月 集成材JAS認定工場となる。
1970年 ( 昭和45年 ) 7月 銘建工業株式会社に社名変更し、 集成材生産を始める。
1966年 ( 昭和41年 ) 7月 中島製材株式会社に組織変更し、 会社創立。
1923年 ( 大正12年 ) 中島材木店として製材所を創業。
会社沿革
参 考:受け入れ企業・機関紹介
銘建工業株式会社
参 考:受け入れ企業・機関紹介
院庄林業株式会社
109
参 考:受け入れ企業・機関紹介
院庄林業株式会社
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参 考:受け入れ企業・機関紹介
服部興業株式会社
企業プロフィール
会社名
服部興業株式会社
代表者名
服部俊也
所在地
〒701-0151 岡山市北区平野 620
TEL / Fax
086-293-2111 / 086-293-2112
E-mail
[email protected]
ホームページ
創業 / 設立
1818 年 / 1950 年
資本金
売上高
55 億円(‘15 年 3 月期)
http://www.hattori-k.co.jp
3,000 万円
従業員数
77 名
■建築土木資材の販売及び施工
硝
子
部
ガラス、サッシ、外壁材、セメント、杭、コンクリート二次製品、
外
壁
部
ガードレール、フェンス、エクステリア 他
セメント部
■石油製品の販売、産業用燃料の卸売
事業内容
社
■山林業
長
土木資材部
■不動産管理
〈関連会社〉
事業所
主要仕入先
㈱岡山木材市場
木材全般の市売り及び卸売
㈱服部パーキング
駐車場運営
㈱岡山ガラステクノ
ガラス、土木資材関連施工
セルフ平野 SS
岡山市北区平野 620
倉田 SS
岡山市中区倉田 625-2
グリーンタウン SS
岡山市南区西紅陽台2丁目 58-463
セルフ古都宿 SS
岡山市東区古都宿 248-1
落合山林事務所
真庭市西河内 2113-2
油
部
山
林
部
総
務
部
東燃ゼネラル、ブリヂストン、太平洋セメント、ジャパンパイル、クリオン、ノザワ
新日鐵住金、JFE スチール、セントラル硝子、LIXIL
■経営信条
■考働基本
会社に発展をもたらすものと確信しています。
顧客の満足
期待された以上のサービスの提供
社員の満足
生きがいのある仕事、自己の成長、
生活の向上
会社の満足
適正な利潤の獲得、利益分配
■行動指針
即反応・即実行 気魄・気働き
三つの満足
お客さまに満足して頂くことが、社員の喜びであり、
経営理念
石
好 感
安 心 感
感謝の気持ちを表そう
約束は守ろう
自ら進んで行動しよう
報告はすぐしよう
理解する人になろう
勇気を持って継続しよう
身だしなみを整えよう
相手の立場で考えよう
いつも笑顔で接しよう
自信を持って行動しよう
バイタリティーでやり遂げよう
成功への執念を持とう
即反応・即実行
仕事に気魄と気働き
沿 革
1818 木材業を文政元年に個人創業(若葉屋)
1973
㈱小野田デュロックス(現クリオン㈱)特約店として ALC 販売開始
1931 三井物産㈱特約店としてセメント販売開始
1980
倉田 SS 開設
1937 〃 石油製品販売開始
1984
グリーンタウン SS 開設
1947 小野田セメント㈱(現太平洋セメント)特約店となる
1986
安田火災海上㈱(現損害保険ジャパン)
ゼネラル石油㈱(現東燃ゼネラル石油㈱)特約店となる
三井海上㈱(現三井住友海上㈱)代理店となる
1950 服部興業㈱設立
1989 ㈱服部パーキング設立
1954 ㈱岡山木材市場設立
1990 服部新日軽建材㈱設立
1960 セントラル硝子㈱特約店として板ガラス販売開始
1991 ㈱岡山ガラステクノ設立
1965 富士製鉄㈱(現新日鐵住金㈱)特約店として鋼材販売開始
2010
セルフ古都宿 SS 開設
1972 本社移転(岡山市北区錦町→岡山市北区平野)
2013
セルフ平野 SS 開設
2015
服部新日軽建材㈱、服部興業㈱へ統合
平野 SS 開設
2015.10.1
111
参 考:受け入れ企業・機関紹介
倉敷木材株式会社
倉敷木材株式会社
法人概要
創業 明治 40 年(1907 年)
法人設立 昭和 22 年(1947 年)
主な事業内容
木材・建材の販売
住宅設備機器・アルミサッシ・外壁等の設計施工
木造住宅の新築・リフォーム
不動産仲介
木の家具の製作・販売等
会社の説明
倉敷木材株式会社(クラモク)は、大久保材木店として 1907 年に創業されました。当時
は岡山県内を流れる高梁川を使って運ばれた流域の木材を製材し、販売していました。そ
の後、1947 年に倉敷木材株式会社として法人化。戦後の復興期に合わせて次々開発される
各種建材の取り扱いを開始し、同時に収納家具やキッチン、トイレ、バスユニットといっ
た住宅設備機器も商材に含まれるようになっていきました。
1972 年からは住宅建築にも着手。国内外の木材を使った木造住宅は、現在までに 2,000
棟以上の実績を積み重ねています。また、2000 年にはユーザーが気軽に木に親しめる場と
してショールーム「暮らしらぼ」の展開を始めました。現在「暮らしらぼ」は、倉敷市・
岡山市に 2 か所にあり、無垢材を使ったオリジナル家具や北欧を中心としたインテリア商
品の提案の場所としても活用されています。
創業者が唱えた「無声呼人(むせいこじん)
」という言葉があります。日々誠実な企業行
動を積み重ねることで、地域のお客様が自然と当社に繋がってくれる姿を理想として、私
達は小さな事から努力しています。そのための一歩として木のイベント「暮らしと木のフ
ェア」を年 2 回開催しています。このイベントでは木工教室や地元の木工作家のフリーマ
ーケットなどが行われ、子どもから大人まで楽しみながら木に親しむ良い機会となってお
り、毎回多くの来場者で賑わいます。またユーザーとともに木材の産地である岡山県北を
毎年訪ね、源流域の森と暮らしの関わりについて学ぶツアーを開催するなど、環境啓発活
動や地域社会との連携にも力を入れています。
私達は創業以来一世紀にわたって再生可能な自然素材である「木」を扱ってきたことを
誇りに思っています。これまで積み重ねてきた知識と経験をもとに、
「木」と共にある暮ら
しを提案することを通して、ステークホルダーと共に持続可能な社会作りに貢献したいと
考えています。
112
参 考:受け入れ企業・機関紹介
岡山県農林水産総合センター森林研究所
岡山県農林水産総合 セ ンタ ー森 林 研究 所
1
運営方針及び沿革
(1) 運営方針
本県の林業・木材産業の発展と森林のもつ多面的な機能の持続的な発揮に資するため、地
域における自然的条件や林業生産技術等の特性を踏まえ、長期的な展望に立った試験研究を
行う。
試験研究課題は、森林・林業施策における新たな行政課題に的確に対応するとともに、森
林・林業・木材関係者等から広く公募するなど、地域の要請に沿った実用的な試験研究に取
り組む。
(2) 試験研究調査の重点課題
次の分野を基軸として課題の重点化と明確化を図っている。
・森林・林業研究
育林育種技術の開発
森林保護に関する調査研究
特用林産物生産技術の開発
経営機械技術に関する研究
森林環境に関する調査研究
・木 材 加 工 研 究
材質特性の解明
加工技術の開発・改良
木質材料の開発
(3) 優良種苗の確保
造林事業に必要な優良な特性を持つ種苗を確保するため、精英樹の選抜育種を実施すると
ともに、少花粉ヒノキ採種園の適切な管理やエリートツリー採種園の新規造成により安定的
な種子の採取・配布を行う。
(4) 林業技術普及指導
試験研究及び林木育種の成果を広く普及するため、林業普及指導員と連携して、森林所有
者、林業関係者、一般県民等を対象とした技術研修等を実施するなど、林業技術普及指導の
拠点としての役割を担う。
○沿革
昭和18年
岡山県農民道場三徳塾植月分場開設
昭和25年
昭和27年
岡山県林産種苗場に用途を変更
岡山県林業試験場を設置
昭和46年
岡山県林業試験場本館完成
昭和60年
岡山県木材加工試験研究指導体制整備基本構想の提言
昭和62年
昭和63年
岡山県木材加工技術センター施設の完成
岡山県木材加工技術センターを設置
平成2年
岡山県林業試験場整備基本構想の提言
平成22年
生物工学研究室(平成4年)
、研修棟「森の館」(平成7年)の完成
岡山県農林水産総合センター森林研究所を設置
農林水産部関係6試験研究機関の再編統合により、岡山県農林水産総合セン
ターが設置され、林業試験場と木材加工技術センターは、新たに農林水産総
合センター森林研究所となった。
113
参 考:受け入れ企業・機関紹介
岡山県農林水産総合センター森林研究所
2 組織と事務分掌
総
務
行政職 3
※農林水産総合センター総務課
副参事1、技師1
主任1(木材加工研究室)
・庶務、会計、財産管理
所
長
林業研究室
(研究職1)
研究職 5
特別研究員(林業研究室長) 1
行政職 2
専門研究員3、研究員1
主幹2(事務)
副 所 長
木材加工研究
室長事務取扱
・育林育種技術の開発
・森林保護に関する調査研究
(研究職1)
・特用林産物生産技術の開発
・経営機械技術に関する研究
特別企画専門員
(研究職1)
・森林環境に関する調査研究
・優良種苗の供給
木材加工研究室
研究職 4
特別研究員1、専門研究員3
・材質特性の解明
・加工技術の開発・改良
・木質系材料の開発
・木材、木製品の性能評価依頼試験
普及連携部
普及推進課
林業普及推進班
行政職(林業普及指導員)4
※農林水産総合センター普及推進課(総括副参事1、主幹1、主任2)
・林業技術の普及指導
(特用林産、森林保護、林業機械、林産)
・林業、木材加工技術の研修・指導
・試験研究と普及業務との連絡調整
職員21名(研究職12名、行政職9名)
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平成 27 年度 グローバル実践型教育実施報告書
発行 岡山大学地域総合研究センター
〒 700-8530 岡山県岡山市北区津島中 3 丁目 1 番 1 号
TEL(086)251-8491 FAX(086)251-8491
発行 平成 27 年 11 月
印刷 広和印刷株式会社
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