不整脈薬物治療に関するガイドライン(2009年改訂版)

循環器病の診断と治療に関するガイドライン(2008 年度合同研究班報告)
不整脈薬物治療に関するガイドライン(2009 年改訂版)
Guidelines for Drug Treatment of Arrhythmias(JCS 2009)
合同研究班参加学会:日本循環器学会,日本小児循環器学会,日本心臓病学会,日本心電学会,日本不整脈学会
班長
児
玉
逸
雄 名古屋大学環境医学研究所心・血管分野
班員
相
澤
義
房 新潟大学大学院医歯学総合研究科循
新 博
次 日本医科大学多摩永山病院内科・循
環器学分野
上 博 富山大学第二内科
小
川 聡 国際医療福祉大学三田病院
奥
村 謙 弘前大学循環器内科
加
藤
雄 日本医科大学内科学第一
犀
川
哲
友
直
杉
住
環器内科
井
貴
班員
典 大分大学循環病態制御講座
薫 東邦大学医療センター大橋病院循環器内科
方 日本大学小児科学系小児科学分野
中
谷 晴 昭 千葉大学大学院医学研究院薬理学
三田村 秀 雄 東京都済生会中央病院
山
下
武
志 心臓血管研究所付属病院循環器内科
協力員 小
原
俊
彦 日本医科大学付属病院内科
髙
橋
尚
彦 大分大学第一内科
昌
和 厚生労働省労働保険審査会
神 谷 香一郎 名古屋大学環境医学研究所心・血管分野
外部評価委員
大
江 透 心臓病センター榊原病院
平
岡
笠
貫 宏 早稲田大学理工学術院大学院 先進理
堀
江 工学研究科生命理工学専攻
橋 本 敬太郎 横浜薬科大学臨床薬理学
稔 滋賀医科大学呼吸循環器内科
(構成員の所属は 2009 年 8 月現在)
目 次
改訂にあたって…………………………………………………… 2
5.心室期外収縮 …………………………………………… 27
Ⅰ 序 文………………………………………………………… 2
6.持続性心室頻拍 ………………………………………… 30
Ⅱ 総 論………………………………………………………… 4
7.多形性心室頻拍・心室細動・無脈性心室頻拍 ……… 32
1.Sicilian Gambit の意義 …………………………………… 4
8.徐脈性不整脈 …………………………………………… 35
2.我が国のエビデンス ……………………………………… 8
9.小児の不整脈 …………………………………………… 37
3.薬剤選択に影響を及ぼす病態
Ⅳ 解 説……………………………………………………… 43
―心機能,腎機能,肝機能,妊娠― ………………… 11
1.用語解説:基礎 ………………………………………… 43
Ⅲ 各 論……………………………………………………… 14
2.用語解説:臨床 ………………………………………… 54
1.上室期外収縮 …………………………………………… 14
3.主な抗不整脈薬の文献的考証 ………………………… 56
2.心房細動 ………………………………………………… 16
4.抗不整脈薬の適用,用法・用量:成人 ……………… 63
3.心房粗動 ………………………………………………… 21
5.抗不整脈薬の適用,用法・用量:小児 ……………… 65
4.発作性上室頻拍 ………………………………………… 24
文 献…………………………………………………………… 67
(無断転載を禁ずる)
1
循環器病の診断と治療に関するガイドライン(2008 年度合同研究班報告)
改訂にあたって
日本循環器学会合同研究班の「不整脈薬物治療に関す
2008 年に発表された重要な学術情報をできるだけ多く
るガイドライン」は,2004 年に初版が発表された.こ
盛り込むようにした.ただし,心房細動に関しては,
「心
のガイドラインは,科学的な情報と知識に基づいた病態
房細動治療(薬物)ガイドライン」最新版に合わせて,
生理学的なアプローチを目指す Sicilian Gambit の概念を
大幅に書き改め,エビデンス重視の構成とした.日本循
基盤としており,エビデンスを重視する欧米のガイドラ
環器学会から 2004 ~ 2008 年度に新たに発表された他の
イン(ACC/AHA/ESC)とは大幅に異なっている.その
不整脈関連ガイドラインとの整合性にも留意した.
後,我が国でも独自のエビデンスを求める活動が本格的
「不整脈薬物治療に関するガイドライン」は,今後,
に始まった.その嚆矢は,心房細動に対する薬物治療の
論理的な思考の利点と,エビデンスに基づく治療指針を
あ り 方 を 検 証 し た J-RHYTHM 試 験(2003 ~ 2005 年 )
バランス良く組み合わせたガイドラインへと進化させる
であり,その成果を活用して「心房細動治療(薬物)ガ
必要がある.今回の改訂は,そのための第一歩であり,
イドライン」の全面改訂が行われた(2008 年発表).
エビデンスに関しては,限られた章での導入にとどまっ
今回の「不整脈薬物治療に関するガイドライン 2009
ている.この点については次回の改訂の重要な課題とし
年版」は,部分改訂版であり,Sicilian Gambit による論
たい.
理的な薬剤選択という基本骨格は変えずに,2004 ~
不整脈薬選択のガイドライン作成」研究班と合同して作
Ⅰ
序 文
業を進め,2000 年 3 月には CD-ROM 版「抗不整脈薬選
択のガイドライン」が発表された 3).日本循環器学会を
中心とする 2002 - 2003 年度合同研究班「不整脈薬物治
療に関するガイドライン」は,この流れを受けついで発
不整脈に対する薬物治療は,20 世紀の終盤から大き
足したものであり,2004 年にガイドラインの初版を発
な混乱期に突入した.その直接のきっかけは CAST であ
表した 4).
.それまで,治療の現場で最も広く用いられてき
不整脈治療に関する過去 10 年の世界的な動向は,大
た Na チャネル遮断を主作用とする薬物(Vaughan Wil-
きく 3 つに分けて考えることができる.ひとつは心房細
liams 分類のⅠ群薬)を心筋梗塞後の不整脈患者に使用
動や心室頻拍・細動治療に関する大規模臨床試験の結果
すると,予想に反して生命予後が悪化することが大規模
が,つぎつぎと報告され,基礎研究のデータに基づいた
臨床試験の結果として報告された.これを契機として,
理論的な考え方や,経験だけでは得られない重要な事実
不整脈の薬物治療を根本から見直そうとする試みが欧州
が示されるようになったことである.個々の患者に対し
心臓病学会と米国心臓病学会を中心に始まった.その中
て,最も適切な治療を行うためには,論理と経験に加え
心となる活動のひとつが Sicilian Gambit であり,従来の
て,それを実証する証拠(エビデンス)を必要とする時
経験的な不整脈治療から,科学的な情報と知識に基づい
代に入った.これらのエビデンスは,今のところ大部分
た病態生理学的なアプローチへの脱皮を目指している.
が欧米の臨床試験で得られたものであり,不整脈発生の
1990 年から 2000 年までに計 4 回の会議が開催された.
原因となる疾患の違いや,医療環境の違い,人種差など
1996 年からは,Sicilian Gambit の理念に基づいた新しい
を考慮すると,それらの報告をそのまま日本人にあては
不整脈治療のあり方を,我が国でも検討するための「抗
めることは問題がある.このような背景の中で,我が国
不整脈薬ガイドライン委員会」が日本心電学会の小委員
に お け る 心 房 細 動 治 療 の エ ビ デ ン ス を 求 め て,J-
会として発足した.そして,1997 年から始まった日本
RHYTHM 試験(2003 年 1 月~ 2005 年 6 月)が行われた.
循環器学会診療基準委員会「Sicilian Gambit に基づく抗
ふたつめは,カテーテルアブレーションと,植込み型ペ
る
2
1),2)
不整脈薬物治療に関するガイドライン
ースメーカ,植込み型除細動器(ICD)に代表される非
が,最終的には添付文書を確認の上処方していただ
薬物療法のめざましい進歩である.上室性の頻脈性不整
きたい.
脈性については,まずカテーテルアブレーションによる
6.
はじめに,不整脈の種類ごとに薬物選択の実際をフ
根治の可能性を考える時代に入っており,その適用範囲
ローチャートで表示しながら記載した.これらはす
は心房細動にまで広がっている.心室性不整脈による突
べて成人を対象としたガイドラインである.フロー
然死に対しては,生命予後改善の点で ICD の優位性が
チャートの同一枠内における薬剤は我が国における
確立された.しかし,非薬物療法には侵襲に伴う事故の
発売順を重視して列挙した(優先順位ではない).
リスクや,生活の質(QOL)に対する不安,医療経済
ただし,キニジンとプロカインアミド(経口)につ
への大きな負担などの問題があり,一般医療の現場では,
いては,我が国の使用実態を考慮し,下位に配列す
今後もやはり薬物が不整脈治療戦略の中心となると考え
る か, あ る い は 省 略 し た. 大 規 模 臨 床 試 験(J-
られる.第三は,不整脈の発生のメカニズムに関する基
RHYTHM)で我が国の使用実態が明らかになって
礎研究の進歩である.特に不整脈発生基質の成立に関わ
いる心房細動については,使用頻度を重視した配列
る部分(メカニズムの上流,upstream)の研究が進歩し,
イオンチャネルの遺伝子異常に基づく重症不整脈の実態
とし,使用実態のない薬剤は掲載しなかった.
7.
や,心房細動,心肥大,心不全などの病態に伴う心筋の
小児の不整脈薬物治療ガイドラインに関しては,独
立した章として記載した.
電気的リモデリングの概念が整備されてきた.これらの
8.
上流(upstream)を標的とした薬物治療の試みも,既に
1) 用語解説(基礎)
解説は以下の 5 項目を記載した.
始まっている.
2) 用語解説(臨床)
3) 主な抗不整脈薬の文献的考証
4) 抗不整脈薬の適応,用法・用量:成人
ガイドライン作成の基本方針
1.
Sicilian Gambit の概念を基盤とした 2004 年版「不
4)
整脈薬物治療に関するガイドライン」 の基本骨格
を保ちつつ,それ以後に報告された臨床試験のエビ
デンスや,非薬物治療の進歩,基礎研究の進歩を踏
まえて,現時点における最善の指針を作ることを目
指した.
2.
本ガイドラインは,循環器専門医を主な対象とする
が,同時に循環器以外(救急医療など)の医師の診
療にも役立つことを願って作成した.
3.
本ガイドラインは科学的情報と知識に基づいた論理
的な薬剤選択を重視して作成したため,大部分の章
では手技・治療の有効性と有用性についての推奨ク
ラス(クラスⅠ~Ⅲ)とエビデンスレベルが記載さ
れていない*.
4.
このガイドラインは,薬物療法を積極的に奨めるも
のではなく,主治医が治療適応ありと判断した場合
に,安全かつ有効な薬剤を選ぶ情報を提供すること
を企図したものである.また,あくまでも標準的な
薬物治療指針であり,使用にあたっては,症例に応
じた柔軟な対応をしていただきたい.
5.
5) 抗不整脈薬の適応,用法・用量:小児
*各論 2.「心房細動」の章では推奨度とエビデンスレ
ベルを下記の基準で記載した.
推奨度
クラスⅠ
手技,治療が有効,有用であるというエビデン
スがあるか,あるいは見解が広く一致している
クラスⅡ
手技,治療の有効性,有用性に関するエビデン
スあるいは見解が一致していない
クラスⅡ a エビデンス,見解から有用,有効である可能性
が高い
クラスⅡ b エビデンス,見解から有用性,有効性がそれほ
ど確立されていない
クラスⅢ
手技,治療が有効,有用でなく,ときに有害で
あるというエビデンスがあるか,あるいは見解
が広く一致している
エビデンスレベル
レベル A
400 例以上の症例を対象とした複数の多施設無
作為介入臨床試験で実証された,あるいはメタ
解析で実証されたもの
レベル B
400 例以下の症例を対象とした複数の多施設無
作為介入臨床試験,よくデザインされた比較検
討試験,大規模コホート試験などで実証された
もの
レベル C
無作為介入臨床試験はないが,専門医の意見が
一致したもの
第一選択薬,第二選択薬として挙げた薬剤は,不整
脈発生のメカニズムと薬物の薬理作用から,薬効が
期待できることを優先した.このため一部,保険適
用が認められていない薬物も含まれている.それら
の薬物に関しては,そのつど明示するようつとめた
3
循環器病の診断と治療に関するガイドライン(2008 年度合同研究班報告)
研究班が発足し(~ 1999 年 3 月),両委員会が共同して
Ⅱ
ガイドライン作りを進めた.その研究成果として,2000
総 論
年 3 月に CD-ROM 版「抗不整脈薬選択のガイドライン」
が発表された 3).
Sicilian Gambit は不整脈の発生機序に基づく論理的薬
1
Sicilian Gambit の意義
剤使用を推奨するもので,エビデンスに基づいたガイド
ラインとは根本的に異なるが,不整脈診療における意義
と有用性は証明されつつあり,今回のガイドライン改訂
1
にあたっても,その根幹となる概念である.
はじめに
抗不整脈薬に関わる多くの大規模臨床試験の成績に基
づいたガイドライン作りが欧米で進められてきた.一方,
2
Vaughan Williams 分類
Vaughan Williams と Singh が抗不整脈薬をその作用に
エビデンスに基づくガイドライン作成とは異なるもの
基づいて 4 群に分類したのは 1970 年代前半である(表
の,欧米の心臓電気生理学領域の著名な研究者を集めて
1)5),6).以来,Vaughan Williams 分類として抗不整脈薬
過去 4 回開催された Sicilian Gambit 会議からの提言は
の分類法の標準として用いられてきた.この分類法は各
Cardiac Arrhythmia Suppression Trial(CAST)以後の抗
種薬剤の薬理学的作用の特徴を簡潔に表現している点で
不整脈薬療法を大きく変えたといって過言でない.1996
優れており,多くの臨床家により利用されてきた.しか
年 10 月に開催された第 3 回 Sicilian Gambit 会議に,日本
し本分類法が提唱されたのは現在ほど多くの薬剤がなか
からも初めて委員(平岡昌和,小川聡)の参加が認めら
った時代であり,また電気生理学的知識も今ほど豊富で
れたことを契機に,我が国でも Sicilian Gambit に基づい
はなかった.その後,新しい抗不整脈薬を分類するにあ
た独自のガイドライン作成を目的に財団法人日本心臓財
たって必ずしもこの枠組にあてはめられないことがある
団研究助成による「抗不整脈薬ガイドライン委員会・
ことが指摘され,いくつかの修正も行われてきた.
Sicilian Gambit 日本部会」が組織され 1996 年 4 月から活
本分類法では,抗不整脈薬をⅠ群からⅣ群までに大別
動を開始した.この委員会は,新規抗不整脈薬を含めて
した.
現在我が国で使用可能なすべての薬剤について,Sicil-
Ⅰ群に分類される抗不整脈薬は Na チャネル遮断を主
ian Gambit の概念に則り,基礎的ならびに臨床電気生理
たる作用とする薬剤で,心房筋,心室筋,Purkinje 線維
学的作用,薬物動態,心血管系への作用,副作用等につ
に対して活動電位第 0 相脱分極の最大立ち上がり速度を
いて独自に調査し,そのデータベースを基に適正な抗不
減少させ,伝導速度を低下させる.活動電位持続時間
整脈薬の使用を進めるための実践的ガイドライン作成を
(APD)に対しては,キニジン,プロカインアミド,ジ
目的とした.本委員会は 1996 年 10 月には日本心電学会
ソピラミド等は延長,リドカイン,メキシレチン等は短
の小委員会として承認され(~ 1999 年 9 月),さらに
縮させる作用を有する.Singh は前者をⅠ a 群,後者を
1997 年 4 月には日本循環器学会診療基準委員会「Sicilian
Ⅰ b 群とした 6).その後,APD に対しては一定の作用を
Gambit に基づく抗不整脈薬選択のガイドライン作成」
持たないが,強い伝導抑制作用を持つ薬剤が開発され
表 1 Vaughan Williams による抗不整脈薬分類
Ia
Ib
Ic
4
Ⅰ 群 薬
キニジン
プロカインアミド
ジソピラミド
アジマリン
シベンゾリン
ピルメノール
リドカイン
メキシレチン
アプリンジン
フェニトイン
プロパフェノン
フレカイニド
ピルジカイニド
Ⅱ 群 薬
プロプラノロール
ナドロール
Ⅲ 群 薬
アミオダロン
ソタロール
ニフェカラント
Ⅳ 群 薬
ベラパミル
ジルチアゼム
ベプリジル
不整脈薬物治療に関するガイドライン
Ⅰ c 群として新たにつけ加えられた.プロパフェノン,
QT 時間延長に伴う多形性心室頻拍(torsade de pointes,
フレカイニド,ピルジカイニド等がこれに属する.ただ
TdP)がある.各Ⅲ群薬によってこの催不整脈作用の発
し,こうした APD に対する作用は主として K チャネル
現率には差があり,K チャネル選択性や併せ持つ他の作
に対する遮断作用に関係するもので,本来の Na チャネ
用によるものと想像されている.中でもβ遮断作用を有
ル遮断薬の細分類法としては適当ではない.また,APD
するアミオダロンとソタロールで TdP の合併率が低いの
に対する作用は心房筋,心室筋,Purkinje 線維で各々異
が特徴である.Ⅲ群薬のこの他の問題点として有名なの
なっており,実験条件でも差が見られること等,問題が
が遅い心拍時ほど APD 延長作用が強く出る,いわゆる
ないわけではない.例えば,プロパフェノンは我が国で
逆頻度依存性特性を持つ薬剤が多いことである.このた
は当初Ⅰ a 群薬として発売が開始されたが,欧米では前
め,洞調律時に著明な QT 延長が出現し TdP を合併する
述の通りⅠ c 群薬と位置づけられており,現在では我が
危険が高くなるだけでなく,本来抗不整脈作用を発揮し
国でもⅠ c 群とされるようになった.
てほしい頻拍発作時に薬剤作用が減弱する欠点につなが
Ⅰ群薬の特徴として,Na チャネル遮断に伴い細胞内
る.アミオダロンにはこの特性は少ない.さらに,カテ
Na が減少するため,Na-Ca 交換機構が働き細胞内 Ca が
コラミン刺激などの外向き再分極電流が活性化される状
減少して心筋収縮力の低下が生じることがある.Na チ
況で作用が減弱することも欠点の 1 つである.突然死の
ャネル遮断作用による伝導抑制作用に直接関連する催不
発生とカテコラミン刺激との関連性が知られている中
整脈作用と並んで,重大な副作用の 1 つである.
で,Ⅲ群薬を突然死の予防に使用する際の問題点であり,
Ⅱ群に分類される抗不整脈薬はβ受容体遮断を主たる
ここでもβ遮断作用を有するアミオダロン,ソタロール
作用とする薬剤である.カテコラミンによる心筋細胞の
の有効性が確認されていることと一致する.
β(β1)受容体刺激は,アデニール酸シクラーゼを活
Ⅳ群に分類される抗不整脈薬は Ca チャネル遮断を主
性化し,cAMP 産生を増大させ,内向き Ca 電流を増加
たる作用とする薬剤と定義される.これにはベラパミル,
させる.その結果,洞結節をはじめとする生理的自動能
ジルチアゼム等の一般的 Ca チャネル遮断薬に加えて,
や病的心筋での異常自動能を亢進させる.また,再分極
ベプリジルも含まれる.前者は Ca チャネルが主体の房
に関与する種々のイオンチャネル(Ito,IK,ICl 等)を活
室接合部が関与する頻拍症,すなわち発作性上室頻拍の
性化することにより APD を短縮させる.これによる不
治療に用いられるが,後者はⅢ群作用も有しており,そ
応期の短縮はリエントリー性不整脈を促す.Ⅱ群抗不整
の他の組織の関与するリエントリー性頻拍への効果も期
脈薬はこうしたカテコラミン作用に拮抗することによ
待できる.通常の薬効は L 型 Ca チャネル遮断作用によ
り,頻脈性不整脈を抑制する.β遮断薬の中にはプロプ
るものが主体であるが,ベプリジルは T 型 Ca チャネル
ラノロール等,高用量ではⅠ群の Na チャネル遮断作用
遮断作用も有することが知られ,心房細動時の電気的リ
を示すものが多い.ただし通常の用量では純粋なβ遮断
モデリングの予防あるいはその回復に効果があることが
薬と考えてよい.
注目されている.
Ⅲ群に分類される抗不整脈薬は再分極を遅らせ,APD
の延長を主たる作用とする薬剤と定義される.APD を
3
Vaughan Williams 分類の問題点
延長させて不応期をのばすことによりリエントリー性不
前述のごとく,Vaughan Williams 分類にはいくつかの
整脈を治療する.アミオダロン,ソタロール等がこれに
問題点が指摘されている.第一には,各群の分類基準に
含まれる.近年の研究成果により,こうした薬剤の主た
整合性がない点が挙げられる.Ⅰ群とⅣ群がイオンチャ
る作用が K チャネル遮断作用によるものであることが
ネル遮断作用,Ⅱ群がβ受容体遮断作用,Ⅲ群が活動電
判明し,現在では K チャネル遮断薬とⅢ群薬が同義語と
位に対する電気生理学的作用(APD)に基づいている
して使用されるようになっている.アミオダロンは心筋
という点である.第二は,複数の作用を併せ持つ薬剤を
に存在する数種類の K チャネルのいくつかを非特異的
どこに分類したらよいかという問題である.便宜上その
に遮断する薬剤である.我が国で開発されたニフェカラ
薬剤の主たる作用で分類することになるが,実際にどの
ントは IKr のみを遮断する薬剤として知られる.
作用が抗不整脈的に働いているかを個々の例で立証する
Ⅲ群薬はⅠ群薬や他の抗不整脈薬と異なり,心筋収縮
ことは難しい.アミオダロンが代表的なもので,Ⅲ群薬
力の抑制作用がない利点を持っている.アミオダロンに
とはされているもののⅠ群からⅣ群までのすべての作用
は心機能低下例での収縮力改善効果があることが示され
を有しており,前述のごとくβ遮断作用の意義も高いこ
ている.一方,Ⅲ群薬に共通する重大な副作用として
とが推測されており,あるいはすべての総合作用として
5
循環器病の診断と治療に関するガイドライン(2008 年度合同研究班報告)
有効性が高い可能性もあろう.またⅣ群に分類されては
択したらよいのかを一見して読み取れないという危惧が
いるもののベプリジルにもⅠ群,Ⅲ群作用が認められる.
ある.しかし,この表によれば Vaughan Williams 分類に
こうしたことから,同一群に属していても異質の薬剤が
則っていては選択からもれてしまう薬剤や,あるいは逆
含まれていることは明白である.同じⅠ c 群薬のプロパ
に禁忌とされる薬剤群の中にも使用可能な薬剤があるこ
フェノンとフレカイニドでも,前者にはβ遮断作用があ
となども明確になり,臨床的には Sicilian Gambit の新分
り,一方,フレカイニドには K チャネル遮断作用がある
類法の価値は高い.
点などの相違点がある.
この表では,一番左の列に薬剤名が記載され,次いで
4
チャネル,受容体,ポンプに対する作用を示す欄が並び,
Sicilian Gambit による抗不整脈薬
の新しい分類枠組み
右半分には左室機能,洞調律への影響,心外性の副作用
の有無,さらには PQ,QRS,QT 等の心電図上の指標に
こうしたことが,古典的な薬剤分類法から脱し,抗不
対する効果を示す欄が設けてある.Na チャネルに対す
整脈薬の研究,開発,治療に関わる様々な領域での知識
る作用が一番左で,これをさらに Na チャネルへの結合
を従来以上にうまくまとめることのできる新しい分類体
解離動態の差から fast,intermediate,slow に分けている.
系への展開を模索する動きを加速させることとなり,
次いで Ca チャネル,K チャネルへの作用と続き,さら
Sicilian Gambit へとつながったことは前述の通りであ
に洞結節でのペースメーカ電流(If)への作用を挙げて
る.Sicilian Gambit では,スプレッドシート方式ですべ
い る の が 特 徴 で あ る. 受 容 体 に 対 す る 作 用 で は,
ての薬剤のチャネルや受容体への作用を詳細に記載して
Vaughan Williams 分類で挙げられていなかったα受容
いる(表 2).ただし,特別なグループ分けをしてある
体,ムスカリン受容体,プリン受容体への作用も含まれ
わけではなく,Vaughan Williams 分類に慣れた臨床医に
ている.最後に Na/K ポンプへの作用を載せることによ
とってこの表だけを見て,患者を前にしてどの薬剤を選
り,ジゴキシンをこの表に含めることができている.各
表 2 Sicilian Gambit が提唱する薬剤分類枠組(日本版)(文献 3 より一部改変して引用)
薬 剤
リドカイン
メキシレチン
プロカインアミド
ジソピラミド
キニジン
プロパフェノン
アプリンジン
シベンゾリン
ピルメノール
フレカイニド
ピルジカイニド
ベプリジル
ベラパミル
ジルチアゼム
ソタロール
アミオダロン
ニフェカラント
ナドロール
プロプラノロール
アトロピン
ATP
ジゴキシン
Fast
◯
◯
イオンチャンネル
Na
Ca
K
Med Slow
Ⓐ
α
β
M2
ポンプ
A1
◯
◯
◯
◯
●
●
◯
◯
◯
●
●
●
●
◯
◯
Ⓐ
Ⓐ
Ⓐ
Ⓐ
◯
◯
◯
●
●
●
●
●
●
●
●
●
●
■
■
臨床効果
心電図所見
Na-K 左室
洞調律 心外性
ATPase 機能
●
◯
◯
◯
If
●
●
●
Ⓐ
Ⓐ
Ⓐ
Ⓘ
受 容 体
●
→
→
↓
↓
→
↓
→
↓
↓
↓
↓
→
↓
↓
↓
→
→
↓
↓
→
?
↑
→
→
→
→
↑
↓
→
→
↑
→
→
↓
↓
↓
↓
↓
→
↓
↓
↑
↓
↓
●
●
●
●
●
◯
●
◯
◯
◯
◯
◯
◯
◯
◯
●
◯
◯
◯
●
◯
●
PR
↑
↑↓
↑↓
↑
↑
↑
↑
↑
↑
QRS
↑
↑
↑
↑
↑
↑
↑
↑
↑
JT
↓
↓
↑
↑
↑
→
→
↑→
↑
↑
↑
↑
↑
↑
↑
↓
↑
↑
↑
↑
↑
↓
遮断作用の相対的強さ:○低 ●中等 ●高
A =活性化チャネルブロッカー I =不活性化チャネルブロッカー
■=作動薬
6
不整脈薬物治療に関するガイドライン
作用の強弱は 3 色の色分けで示されている.
成分(IKr)を主として遮断する薬剤の問題であることが
薬剤名が左端に縦に並べてあるが,この順は Na チャ
その後明らかにされたが,これによる死亡例や失神例が
ネルに対する作用を主作用とし,その結合解離動態の
報告された.1994 年に発表された SWORD 試験が純粋
fast のものを最初に,以下順に intermediate,slow のも
な IKr 遮断薬 d- ソタロールによる突然死増加を明らかに
のへ,次いで Ca チャネル,K チャネルへの作用を主と
したことを受けて,実質的にほとんどすべての K チャネ
する薬剤が並んでいる.
ル遮断薬の治験は中止に追い込まれた 8).ところがその
5
Sicilian Gambit の基本概念
後心筋 K チャネルの研究が進み,色々な病態で生じるリ
エントリー性不整脈の発生に関与する特異的 K チャネ
1989 年の CAST 以来,抗不整脈薬の使用そのものに
ル等も明らかにされてきた.特に,遅延整流 K チャネル
ついての懸念が世界中を駆けめぐったが,その混乱期に
の遅い成分(IKs)は,アミオダロンもこれへの遮断作用
あってその後の抗不整脈薬療法のあるべき道を探るため
を有しており,新しい薬剤の標的分子として注目されて
1990 年に開かれたのが第 1 回 Sicilian Gambit 会議であっ
いる.さらに電気的リモデリングの概念が導入され,心
た.その基本概念は不整脈診療における従来の経験的ア
房細動時の治療の標的として IKr の意義が再認識される
プローチを改め,より論理的かつ病態生理学的な抗不整
ようになり,現在は K チャネル遮断薬に再度関心が高ま
脈薬療法を推奨したものである.すなわち,①「不整脈
りつつある.
の機序」の決定,②治療に最も反応しうる電気生理学的
1996 年に開かれた第 3 回会議では,特定の方向への薬
指標である「受攻性因子」の同定,③治療の「標的」と
物開発を推奨はしていないが,心房細動を中心に最近研
しての細胞膜レベルのチャネルや受容体の決定を行い,
究が進展している電気的リモデリングの概念を治療に活
最終的に,④この標的に作用する「薬剤」を抗不整脈薬
かすことが議論された.すなわち,電気的リモデリング
一覧表から選択するという論理過程である.例えば,心
の過程では薬剤の標的となりうるチャネルの機能や蛋白
房細動や心室細動の機序はリエントリーであることが知
発現に変化が生じ,例えば心房細動慢性期になると Na
られている.リエントリーを維持する電気生理学的因子
チャネルの発現が減少してくることも判ってきた.その
の中で,特に治療しやすい因子(受攻性因子)は伝導性
状況では,いくら Na チャネルを標的とした薬剤を投与
か不応期の 2 つである.伝導性,特に異常心筋での遅い
しても不応期の延長効果は見られない.したがって,現
伝導がリエントリーに関与している際には,伝導を遮断
段階では不整脈そのもの,あるいはその背景にある病態
すれば不整脈は停止する.そのための標的分子は一般的
の進行につれて起きてくる分子レベルの変化の解明が必
には Na チャネルであり,Na チャネル遮断作用を有する
須であると結論された.それにより,各状況に応じて最
薬剤を選択すればよい.CAST では,突然死をもたらす
適な薬剤を決めることができ,開発が必要な薬剤のプロ
リエントリー性不整脈を予防するために強力な Na チャ
フィールも自ずから明らかになる.
ネル遮断薬を用いて梗塞心での遅い伝導を抑制したわけ
この第 3 回会議はもうひとつ重要な新しい提案をし
で,Sicilian Gambit の論理通りとも言える.しかし,一
た.それは,現状ではリモデリングの過程で的確な薬剤
方では Na チャネル遮断薬の伝導抑制が催不整脈作用を
選択ができないことを踏まえ,不整脈の発生をもたらす
惹起することが明らかにされた.そこで,第 1 回 Sicilian
病態そのものの進行を抑える治療戦略の提案である.前
Gambit 会議では,致死的不整脈予防には第二の受攻性
述の 4 段階の論理過程での薬剤選択を「downstream ap-
因子である「不応期」を攻撃目標として,再分極過程を
proach(下流アプローチ)」として捉え,これが実際に
遅延する K チャネル遮断薬へ大きな期待をかけた 7).そ
不整脈が起こるようになってしまった場合の治療法であ
の結果,多くの K チャネル遮断薬の開発が進められるよ
るのに対して,病態に対する心臓の適応過程が破綻する
うになった.その頃,K チャネル遮断作用を主体とした
ことを防ぐことによって不整脈の発生を予防しようと云
アミオダロンの有効性が既に臨床的に評価されていたこ
う「upstream approach(上流アプローチ)」,すなわちよ
とも,アミオダロンの持つ重篤な副作用のない純粋な K
り上流での治療の意義を強調している 9).心筋梗塞例で
チャネル遮断薬への期待に拍車をかけることになった.
あれば不整脈の基質になる梗塞巣の拡大を抑え,線維組
しかし,この K チャネル遮断薬についても,洞調律時
織の増生や心室拡張を抑制することが慢性期の致死的心
に著明な QT 間隔の延長が生じ torsade de pointes(TdP)
室性不整脈の発生を予防する近道だとする考え方であ
型心室頻拍を合併することが明らかとなった.これは純
る.この目的には,早期の血行再建術やβ遮断薬,ACE
粋な K チャネル遮断薬,特に遅延整流 K チャネルの速い
阻害薬,アンジオテンシンⅡ(A- Ⅱ)受容体拮抗薬が
7
循環器病の診断と治療に関するガイドライン(2008 年度合同研究班報告)
使用される.
2000 年に開催された第 4 回会議では,遺伝子レベル,
7
おわりに
分子レベルでの新しい不整脈の治療戦略を提唱してい
以上,Sicilian Gambit の概念に基づく不整脈の論理的
る.
治療法は,基礎的な電気生理学の知識を要求されるなど
6
Sicilian Gambit の臨床応用
難解な点も多いが,これに基づいた我が国のガイドライ
ンが広く臨床家に利用されることが望まれる.そのため
Sicilian Gambit が 提 案 し た 薬 剤 一 覧 表 に は 従 来 の
には,このガイドラインを利用して治療した際の有効率
Vaughan Williams 分類と比較して臨床的に有用な様々な
や副作用発生率の検討が必要である.心房細動を対象と
情報が含まれている.例えば,Na チャネル遮断薬につ
した J-RHYTHM 試験は心房細動治療(薬物)ガイドラ
いてみても,薬剤の結合・解離動態の差異(活性化チャ
イン(2001 年版)10)に準拠した薬物使用を推奨したが,
ネルに結合するか不活性化チャネルに結合するか,チャ
結果的に高い洞調律維持効果が証明された.この他,心
ネルからの解離が速いか遅いか,中間的か)が明示され
房筋のリモデリングが進行し Na チャネル遮断薬が無効
ており,薬効ならびに副作用(陰性変力作用,催不整脈
と考えられる持続性心房細動例を対象とした J-BAF 試
作用)の判断材料となる.一般的には,解離の速い薬剤
験で,K チャネル遮断作用の強いベプリジルの高い除細
(fast kinetic drugs)はこれらの副作用が少ない代わりに,
動効果が証明された点も Sicilian Gambit の概念と一致し
切れ味が劣り,解離の遅い薬剤(slow kinetic drugs)は
ている.今後の多くのエビデンスの集積によって,Si-
その逆と考えてよく,症例に応じた選択が可能となる.
cilian Gambit の概念の臨床的意義が証明されることであ
「標的」となるチャネル,受容体さえ明確にできれば薬
剤選択は比較的容易である.
ここで問題になるのが前述した K チャネルサブタイ
ろう.
2
我が国のエビデンス
プの選択性である.最近の知見では,発作性心房細動例
の多くで迷走神経がその発生に関与しているとされ,迷
我が国の不整脈診療では,日本人を対象としたクリニ
走神経の興奮はアセチルコリン感受性Kチャネル
カルエビデンスに乏しい点が問題とされてきたが,21
(IK,ACh)の活性化によって心房筋の活動電位を短縮させ,
世紀になりようやく我が国においても科学的な方法に基
不応期を短くして心房細動を発生させる.心筋虚血の際
づいた臨床試験がなされるようになった.現在のところ,
には ATP 感受性 K チャネル(IK,ATP)の活性化を介して
心房細動を対象とした臨床試験に留まるが,大規模臨床
心室筋活動電位が短縮し心室細動を発生させる.なお,
試験といえる J-RHYTHM 試験,臨床治験に位置づけら
Na チャネル遮断薬の中には,IK,ATP 遮断作用を有するも
れるベプリジルを用いた J-BAF 試験ならびにフレカイ
の(キニジン,プロカインアミド,ジソピラミド,シベ
ニドを用いた二重盲検試験の三つの臨床試験が科学的レ
ンゾリン)があることが知られている.さらには交感神
ベルとして適正な臨床試験に位置づけられる.
経活性の亢進は IKs 活性化を介してこの変化を増強する.
したがって各病態で不応期を延長させる治療には K チ
ャネルサブタイプ選択性に関する知識が必要となる.
Vaughan Williams 分類のⅠ a 群に属する薬剤の K チャネ
1
J-RHYTHM 試験
①プロトコール 11)
ルサブタイプ選択性にかなりの多様性があり,病態ごと
欧米からの大規模臨床試験発信を受けて企画された大
の使い分けが可能となる.例えば,迷走神経緊張が関与
規模臨床試験である.我が国の心房細動患者特性,我が
しているような心房細動症例には,IK,ACh を抑制できる
国で利用可能な抗不整脈薬を用いた場合に,欧米と同様
薬剤が有用となる.しかもムスカリン受容体(M2)を
な結果が得られるかを検証した試験であるが,同時に本
介した抑制ではなく,直接チャネルを遮断する作用のあ
試験では患者の quality of life(QOL)を治療目的とした
るキニジン,シベンゾリンの有効性も期待できるが,臨
場合の洞調律維持治療(rhythm control)と心拍数調節
床的にどこまで差があるかは今後の検討課題である.ア
治療(rate control)の臨床的有効性も 1 つの研究目的と
ミオダロンが心房細動の予防にも有効なことはよく知ら
して取り上げられた.
れており,アミオダロンと類似した K チャネル抑制作用
通常治療が必要と考えられる心房細動患者はすべて適
を有するベプリジルも現在注目されている.
合対象とされ,発作性・持続性心房細動の診断別に登録
され,無作為化により洞調律維持治療(rhythm control)
8
不整脈薬物治療に関するガイドライン
か心拍数調節治療(rate control)に割り付けられた.い
容性(割り付けられた治療方針での QOL 低下)という
ずれの群においても抗血栓療法,抗不整脈薬療法は,基
複合エンドポイントにおける両治療方針の優劣が検討さ
本的に我が国のガイドラインに従うこととされた.我が
れた.複合エンドポイントの評価に関する限り,洞調律
国の心房細動患者の生命予後は,欧米の臨床試験結果よ
維持治療群での event-free survival が心拍数調節治療群
り良好であるという前提のもとに,一次エンドポイント
に比べ有意に良好であった(p = 0.0073,図 1A).しかし,
は,患者の生命予後のみならず患者の QOL を内包した
各評価項目において両群を比較した場合には,死亡・塞
ものとなっている.具体的な一次エンドポイントの内容
栓症・大出血・心不全入院の発生頻度に両群の差はなく,
としては,死亡,脳梗塞,全身性塞栓症,入院を要する
本試験の主要結果は欧米の大規模臨床試験と同一のもの
大出血,利尿剤静注を要する心不全,割り付けられた治
であった(図 1B 左).複合エンドポイントで有意差が見
療方針に対する患者忍容性であり,評価項目としてこれ
られた理由は,患者の忍容性に基づく治療継続率が洞調
らの複合エンドポイントが設定されている.患者の忍容
律維持治療群で心拍数調節治療群より良好であったため
性を一次エンドポイントに含めたこと,ならびに治療が
である(図 1B 右).持続性心房細動の結果は,症例数が
盲検化されていないことは,解析結果に医師・患者間の
不十分であるものの,欧米の試験結果と同様死亡・塞栓
情報バイアスがかかる可能性を否定できず,本試験の大
症・大出血・心不全入院の発生率に関して心拍数調節治
きな限界とも言える.この点については,患者の QOL
療群が良好な傾向を示したばかりでなく,患者の忍容性
をより緻密に評価する目的で心房細動特異的質問表
においても心拍数調節治療群が良好な治療継続率を示す
(AFQLQ)によるアンケート調査を行っている 12),13).
②試験の主要結果 14)
傾向を示した.なお,発作性心房細動における患者アン
ケート調査で得られた QOL スコアは,症状の頻度にお
いて洞調律維持治療群で有意に心拍数調節治療群を上回
1,065 例(発作性心房細動 885 例,持続性心房細動 180
っていたが,症状のつらさ,精神不安感・日常生活制限
例)が登録され,最終的に発作性 823 例,持続性 163 例
については両群で有意な差は観察されなかった.
の計 986 例が解析対象となった.ただし,持続性心房細
動については,目標症例数を大幅に下回ったためその結
果は参考程度に留めるべきである.発作性心房細動の患
者背景としては,平均年齢約 65 歳,男性が約 70%を占め,
2
J-BAF 試験 16)
①プロトコール
年齢は米国・カナダで行われた AFFIRM 試験 15)よりも
ベプリジルは欧米ではほとんど用いられていない抗不
約 5 歳若年であった.基礎心疾患を持つものは 20%以下,
整脈薬であるが,我が国では持続性心房細動に対する低
高血圧合併は約 42 %であり,AFFIRM 試験登録患者よ
用量投与が経験的に用いられている.J-BAF 試験はこの
り合併心疾患,高血圧ともに低い数字であった.脳梗塞
経験的に用いられているベプリジルの効果を科学的に検
のリスクとして CHADS2 スコアが 0 点の患者が 43%,1
証した臨床試験である.
点の患者は約 35 %であり,脳梗塞のハイリスク群は多
対象となった患者は持続 1 週間以上 1 年未満の持続性
く含まれていない.持続性心房細動の患者背景もほぼ同
心房細動を有し,左房径が 50mm 以内,左室駆出率が
様であった.
40 %以上の患者である.心房細動の持続は,携帯型心
洞調律維持治療群では試験登録時に,発作性で約 90
電計を毎日記録することによって確認された.患者は無
%,持続性で約 80%の患者でⅠ群薬が用いられており,
作為二重盲検法により,プラセボ群,ベプリジル 100mg
我が国での医療の特徴を示している.したがって本試験
群,200mg 群の三群に分けられ,12 週間にわたる継続
は主としてⅠ群薬の試験であり,この使用状況は欧米に
投与を受けると同時に,毎日および症状時の携帯型心電
おける臨床試験で用いられている薬物とは大きく異なる
計による記録が行われた.本試験の主要評価項目は持続
我が国の特徴と考えられる.一方で,心拍数調節治療群
性心房細動の停止率であり,副次評価項目は心房細動特
では,発作性心房細動でβ遮断薬が約 50 %用いられ,
異的質問票(AFQLQ)による QOL 評価,洞調律復帰後
残りをジギタリス剤と Ca チャネル遮断薬が二分する投
の心房細動再発率,ならびにベプリジルの安全性であっ
薬状況であった.対照的に,持続性心房細動では 3 種類
た.
の薬剤がほぼ 3 分する投薬を受けていた.
発作性心房細動における平均経過観察期間は 578 日
で,死亡,塞栓症,大出血,心不全入院,患者による忍
9
循環器病の診断と治療に関するガイドライン(2008 年度合同研究班報告)
図 1 J-RHYTHM 試験の主要結果
A
1.0
A:複合エンドポイントにおける event-free
survival curve.
B:左:死亡・塞栓症・大出血・心不全入院
における event-free survival curve. 右:患者
の忍容性における event-free survival curve.
Event-free Survival
0.8
0.6
洞調律維持治療
心拍数調節治療
0.4
log-rank test p=0.0128
0.2
0
0
200
400
600
800
1,000
1,200
(日)
No. at risk
洞調律維持治療
心拍数調節治療
419
341
205
92
404
310
182
79
B
患者の忍容性
1.0
1.0
0.8
0.8
洞調律維持治療
0.6
心拍数調節治療
log-rank test p=0.2568
0.4
0.2
0
Event-free Survival
Event-free Survival
死亡・塞栓症・大出血・心不全
洞調律維持治療
0.6
心拍数調節治療
log-rank test p=0.0142
0.4
0.2
0
200
400
600
800 1,000 1,200
(日)
0
0
200
400
②試験の主要結果
解析対象となった患者は 90 例であり(プラセボ群:
10
600
800 1,000 1,200
(日)
経過は,全例でほぼ 6 週間以内であり,それ以降の心房
細動停止は極めてまれであった.副次評価項目である
QOL 評価は,症状の頻度とつらさにおいて 200mg 群は
29 例,100mg 群:32 例,200mg 群:29 例 ), 平 均 年 齢
プラセボ群に比べ有意な改善を認めたが,精神不安感・
は約 63 歳,男性が 80%を占めた.虚血性心疾患の合併
日常生活制限においては改善する傾向に留まった.洞調
率は約 6 %と低く,平均左房径 43mm,平均左室駆出率
律復帰後の心房細動再発率は比較的高く,心房細動の再
は 63%と心機能が良好な患者が多く含まれていた.
発を認めなかった症例は,100mg 群で 8%,200mg 群で
本試験の主要評価項目である持続性心房細動の停止率
21%であり,薬物投与にも関わらず 1 週間以上持続する
には明瞭な用量反応関係を認めた(図 2).100mg 投与
心房細動の再発を見た患者はそれぞれ 45 %,15 %であ
により患者の約 40 %,200mg 投与により約 70 %で持続
った.残る患者は治療期間中持続 7 日以内の発作性心房
性心房細動が洞調律に復した.心房細動停止に至る時間
細動として再発した.薬物投与の中止は 200mg 群で 29
不整脈薬物治療に関するガイドライン
有効率
(%)
100
90
80
70
60
50
40
30
20
10
0
0
図 2 J-BAF 試験の主要結果
(治療期における心房細動停止率)
プラセボ群
100mg 群
200mg 群
②試験の主要結果
解析対象となった患者は 123 例であり(プラセボ群:
32 例, 50mg 群: 26 例, 100mg 群: 32 例, 200mg 群:
33 例),その平均年齢は約 59 歳,男性が約 80%を占めた.
高血圧合併例は約 40 %であり,弁膜症・心筋症の合併
例は少数であった.
本試験の主要評価項目である症候性心房細動・粗動無
再発率は明瞭な用量反応関係を認め,この結果は欧米に
おいて報告された結果とほぼ同等であった(図 3).症
20
40
60
80
100
洞調律化までの日数
候性心房細動・粗動再発までの時間においても用量反応
関係を認め,100mg を超える投与群はプラセボ群に比べ
有意に延長していた.無症候性を含む心房細動・粗動再
発率,再発までの時間,ならびに平均発作回数のいずれ
例中 7 例と多く見られ,このうち 5 例はベプリジルに関
においても良好な用量反応関係が認められた.なお,治
連した副作用によるものであった.4 例は薬物による著
療期間中の死亡,催不整脈作用による心室性不整脈は全
明な QT 延長が中止原因であり,1 例は治療開始後 35 日
例で認められなかったが,試験の解析症例数が少なく,
目に心室頻拍による突然死を生じている.したがって本
本試験のみから安全性が十分確立されたとは言えない.
試験はベプリジルの臨床的有用性を十分に示したとは言
図 3 フレカイニド二重盲検試験の主要結果
(症候性心房細動・粗動無再発率)
無再発率
60
白人
えず,むしろその使用にあたっては慎重な態度と注意深
いモニタリングが必要であることを喚起している.
3
フレカイニドを用いた二重盲検試験 17)
日本人
50
①プロトコール
40
本試験は欧米で心房細動治療に対して用いられている
30
フレカイニドが,日本人においても同等の効果ならびに
用量反応関係を有するかを検証するために,二重盲検試
20
験として計画された.
本試験の対象は,少なくとも心電図で確認された発作
10
性心房細動・粗動が 2 回以上ある患者であり,そのうち
0
プラセボ
1 回は携帯型心電計で心房細動が記録された患者であ
る.NYHA Ⅲ,Ⅳの心不全,陳旧性心筋梗塞,心拍数
により,プラセボ群,フレカイニド 50mg 群,100mg 群,
200mg 群に振り分けられ,4 週間の薬物投与を受けた.
100mg
200mg
フレカイニド
40/ 分未満の洞徐脈は除外されている.携帯型心電計に
よる心房細動発作の記録後,患者は無作為化二重盲検法
50mg
3
薬剤選択に影響を及ぼす病態
―心機能,腎機能,肝機能,妊娠―
携帯型心電計は,毎日および症状発現時に継続して記録
された.主要評価項目は症候性心房細動・粗動無再発率
心機能低下例や,肝あるいは腎機能低下例,または妊
であり,副次評価項目として症候性発作性心房細動・粗
娠中の症例に対して抗不整脈薬治療を行う際には,不整
動再発までの時間,平均発作回数,無症候性および症候
脈の治療適応を制限すべきであり,自覚症状が著しく強
性心房細動・粗動無再発率,再発までの時間,症候性心
いか,血行動態に悪影響を及ぼす頻脈性不整脈が治療対
房細動・粗動発作持続時間,ならびに症状があげられて
象となる.
いる.
11
循環器病の診断と治療に関するガイドライン(2008 年度合同研究班報告)
性心不全」,「重篤なうっ血性心不全」への投与は禁忌と
心機能低下例における抗不整脈薬の
選択
(LVEF)が 40 ~ 50%で心胸郭比(CTR)が 50 ~ 60%の
抗不整脈薬の種類により心機能への影響が異なり,一
範囲にあって NYHA 分類のⅠないしⅡ度を軽度心機能
1
さ れ てい る. 心機 能 低下 の程 度 とし て,左 室 駆出 率
般に slow kinetics の Na チャネル遮断作用を持つ抗不整
低下とし,LVEF が 40 %未満で CTR は 60 %より大きく
脈薬は心機能抑制が強い(表 2).そこで心機能低下例
NYHA ⅢないしⅣ度を中等度以上の心機能低下とする.
に抗不整脈薬治療を行う際に,fast kinetics の Na チャネ
急性心不全に対しては利尿薬,ACE 阻害薬,カテコラ
ル遮断薬か K チャネル遮断薬を選択する.K チャネル遮
ミン等を投与し,上室性頻拍があれば心拍数調節のため
断薬は不応期延長作用により抗不整脈作用を示すので,
にジギタリス投与を行う.慢性心不全に対しては継続的
心機能にはほとんど影響を及ぼさない.K チャネル遮断
に ACE 阻害薬,β遮断薬,利尿薬投与を行うが,ルー
薬はむしろ活動電位の 2 相~ 3 相を延長させるので,プ
プ利尿薬は低 K 血症を生じやすいので,腎障害がなけれ
ラトー相における細胞内への Ca 流入が増加して収縮力
ば抗アルドステロン製剤が勧められる.
が増大すると考えられている.心筋梗塞後で心機能が低
下している患者に対する抗不整脈薬の有用性について,
2
肝・腎機能障害例への抗不整脈薬投与
それまでに報告された試験の成績をもとにメタ解析を行
抗不整脈薬の薬物動態は,薬物の吸収,体内分布,薬
った結果では,Na チャネル遮断薬は予後を悪化させ,
物除去から成っており,それぞれの区分で肝臓あるいは
Ca チャネル遮断薬も有用性が認められなかった.しか
腎臓の働きにより影響を受ける.抗不整脈薬の薬物動態
し,β遮断薬と K チャネル遮断薬は予後を改善する可能
の特徴としては,①有効血中濃度の幅が狭い,②容易に
性が示唆されている
18)
.このような観点から心機能低下
中毒濃度に達する,③半減期が短い,④遊離型薬剤の血
例には心機能抑制の少ないリドカイン,メキシレチン,
中濃度が臨床効果とよく相関することがあげられる 19).
アプリンジン,アミオダロン,ベプリジル,ニフェカラ
治療濃度と中毒濃度が近いことから腎障害時あるいは肝
ント,あるいはβ遮断作用をもつソタロールが選択でき
障害時には容易に抗不整脈薬の副作用(表 3)が出現し
る.ただし,ベプリジルはその催不整脈作用から,また
やすい.肝障害あるいは腎障害のある場合には抗不整脈
ソタロールはその陰性変力作用から,それぞれ「うっ血
薬の使用も制限されることになる.腎障害時や肝障害時
表 3 抗不整脈薬の種類と特徴
抗不整脈薬
左室への影響
排泄経路(%)
催不整脈要因
心臓外の副作用
リドカイン
→
肝
(QRS 幅拡大)
ショック,嘔吐,痙攣,興奮
メキシレチン
→
肝
(QRS 幅拡大)
消化器症状,幻覚,紅皮症
プロカインアミド
↓
腎(60)
,肝(40) QT 延長,QRS 幅拡大 SLE 様症状,顆粒球減少,肝障害,血圧低下 *
ジソピラミド
↓
腎(70)
QT 延長,QRS 幅拡大 口渇,尿閉,排尿困難,低血糖
キニジン
→
肝(80)
,腎(20) QT 延長,QRS 幅拡大 Cinchonism(眩暈など)
,消化器症状
プロパフェノン
↓
肝
QRS 幅拡大
筋肉痛,熱感,頭痛,悪心,肝障害
アプリンジン
→
肝
QRS 幅拡大(QT 延長) しびれ,振顫,肝障害,白血球減少
シベンゾリン
↓
腎(80)
QRS 幅拡大
頭痛,眩暈,口渇,尿閉,低血糖
ピルメノール
↓
腎(70)
QT 延長,QRS 幅拡大 頭痛,口渇,尿閉
フレカイニド
↓
腎(85)
QRS 幅拡大
眩暈,耳鳴,羞明,霧視,下痢
消化器症状,神経症状(ともに少ない)
ピルジカイニド
↓
腎
QRS 幅拡大
ベプリジル
→
肝
QT 延長,徐脈
眩暈,頭痛,便秘,肝障害,倦怠感,肺線維症
ベラパミル
↓
肝(80)
,腎(20) 徐脈
便秘,頭痛,顔面のほてり
ジルチアゼム
↓
肝(60)
,腎(35) 徐脈
消化器症状,ほてり
ソタロール
↓
腎(75)
QT 延長,徐脈
気管支喘息,頭痛,倦怠感
アミオダロン
→
肝
QT 延長,徐脈
肺線維症,甲状腺機能異常,角膜色素沈着,血圧低下 *
ニフェカラント
→
腎(50)
,肝(50) QT 延長
口渇,ほてり,頭重感
β遮断薬
↓
肝,腎
徐脈
気管支喘息,血糖値低下,脱力感,レイノー現象
アトロピン
→
腎
頻脈
口渇,排尿障害,緑内障悪化
ATP
→
腎
徐脈
頭痛,顔面紅潮,悪心,嘔吐,気管支攣縮
ジゴキシン
↑
腎
ジギタリス中毒
食欲不振,嘔吐
催不整脈要因の( )は過量投与時にみられる. *静注
12
不整脈薬物治療に関するガイドライン
の抗不整脈薬の血中濃度推移の把握は難しく,経験的に
~ 1/2 量を投与するか,投与間隔を少しあけて投与すべ
投与量を減量するか,使用を控えているのが現状である.
きである.また,Ccr が 20 mL/min 以下であれば高度腎
しかし,抗不整脈薬の有効性には個人差があり,腎障害
機能障害として常用量の 1/3 量以下を注意深く投与する
あるいは肝障害のある症例でも不整脈を抑制するために
か,隔日に投与すべきである 19),20).
腎排泄あるいは肝代謝の抗不整脈薬を使用しなければな
外来診療で Ccr を測定する余裕がないときには,これ
らないときもある.そのためには,血中濃度モニターは
までの経験から,血清クレアチニン(Scr)が 1.3 mg/dL
最低限必要であるが,臨床薬物動態
以下であれば Ccr は 50 mL/min 以上(軽度腎機能障害)
20),21)
を詳細に把握
しなければならない.肝代謝の抗不整脈薬と腎排泄の抗
で あ る と 考 え て よ く,Scr が 1.3 ~ 2.0 mg/dL で あ れ ば
不整脈薬(表 3)を知ることにより,肝・腎障害時に使
Ccr は 20 ~ 50 mL/min(中等度腎機能障害)にあるもの
用する抗不整脈薬を選択することができる.
と考えられる.Scr が 2.0 mg/dL 以上であれば Ccr は 20
mL/min 以下(高度腎機能障害)と考えてよい(表 4).
①腎機能障害の指標と投与量の目安
さらに慢性腎不全になって血液透析や腹膜透析を受け
腎障害のある例では肝代謝の抗不整脈薬を使用するこ
ている例で抗不整脈薬治療をしなければならない場合も
とが勧められる.しかし,抗不整脈薬には腎排泄の薬物
ある.透析で除去されない抗不整脈薬であれば,少量に
も多く,症例によっては腎排泄の抗不整脈薬しか有効で
して投与間隔をあけて投与することになるが,透析であ
ない場合もある.そのような症例では腎機能障害の程度
る程度除去されてしまう抗不整脈薬では,透析と不整脈
によって投与量と投与間隔を調節しなければならない.
の出現しやすい時間との兼ね合いで投与量と投与間隔を
腎機能障害の程度はクレアチニンクリアランス(Ccr)
調節することになる.血液透析では使用されるダイアラ
によって表されるが,Ccr がおおよそ 50 mL/min 以上で
イザーの種類により除去率は異なると考えられるが,い
あれば常用量を投与してもよく,Ccr が 50 ~ 20 mL/min
ずれにしても随時抗不整脈薬の血中濃度を測定して投与
の間であれば中等度腎機能障害として通常投与量の 2/3
量を調節することが必要である.過剰投与を避けるため
表 4 腎機能・肝機能障害別の薬剤選択(文献 3 より改変)
腎機能障害
リドカイン
メキシレチン
プロカインアミド
ジソピラミド
キニジン
プロパフェノン
アプリンジン
シベンゾリン
ピルメノール
フレカイニド
ピルジカイニド
ベプリジル
ベラパミル
ジルチアゼム
ソタロール
アミオダロン
ニフェカラント
β遮断薬
アトロピン
ATP
ジゴキシン
透 析
クレアチニン
> 2.0 mg/dL
クレアチニン
1.3 ~ 2.0 mg/dL
●
▲
▲
×
●
▲
●
×
▲
▲
▲
●
●
●
×*
▲
▲
●
●
●
▲
▲
▲
×
×
▲
▲
▲
×
×
▲
▲
▲
×
×
×
×
▲
×
●
●
×
▲
▲
▲
▲
▲
▲
▲
▲
▲
▲
▲
▲
▲
▲
▲
▲
▲
▲
●
●
▲
高 度
ビリルビン
> 3 mg/dL
×
×
×
×
×
×
×
×
×
×
×
×
×
×
▲
×
▲
×
●
●
●
肝機能障害
中等度
ビリルビン
2 ~ 3 mg/dL
▲
▲
▲
▲
▲
▲
×
▲
▲
▲
▲
▲
▲
▲
●
×
▲
▲
●
●
●
軽 度
ビリルビン
1 ~ 2 mg/dL
▲
▲
▲
▲
▲
▲
▲
▲
▲
▲
●
▲
▲
▲
●
▲
▲
▲
●
●
●
●使用可能 ▲慎重投与:投与量の設定に注意 ×禁忌
* 注)ソタロールは血中濃度を下げる目的で透析を行うことがある.
13
循環器病の診断と治療に関するガイドライン(2008 年度合同研究班報告)
に,その抗不整脈薬の副作用に精通していることが,有
ならば薬物治療を避けるべきで,不整脈を助長する生活
効で副作用のない抗不整脈薬治療を進める上で重要であ
習慣の改善を優先させる.それにもかかわらず,症状が
る.
著しく強く,不整脈が妊娠継続の支障になる場合に抗不
②肝機能障害の指標と投与量の目安
整脈薬が使用される.使用できる抗不整脈薬の条件とし
て半減期が短く,妊婦に対する使用経験が集積されてい
肝機能障害のある症例ではできるだけ腎排泄の抗不整
ることがあげられる.米国 FDA の薬剤安全性に関する
脈薬を選択することが望ましいが,不整脈の種類や抗不
分類 23),24)では,妊婦へのリスクが報告されていないの
整脈薬の薬効によっては肝代謝のものを使用せざるを得
はリドカインと一部のβ遮断薬,ソタロールであるが,
ないこともある.そのようなときの抗不整脈薬投与の目
ジゴキシンも安全といわれている.一方,フレカイニド,
安は肝疾患の種類と門脈圧亢進の程度に左右される.
ベプリジル,ベラパミル,ジルチアゼム,ニフェカラン
肝臓疾患の種類により肝障害の指標は異なる.急性ウ
トは禁忌と考えられる.一般に胎児の器官形成に関与す
イルス性肝炎では抗不整脈薬投与量設定のために役立つ
る妊娠初期の 10 週までの期間に催奇性のある抗不整脈
指標はないようであるが,慢性肝炎の場合と同様に血清
薬の使用を避ける.妊娠後期には抗不整脈薬の使用も可
アルブミン値が肝臓の薬物代謝能力を表す指標となる.
能となる.
AST,ALT などの肝酵素値の変動は肝代謝能力の指標
にはなりにくい.肝硬変の場合にも肝酵素値より血清ア
ルブミン,ビリルビン値,プロトロンビン値などが肝機
能障害の指標となる.薬物代謝能力の指標として門脈圧
Ⅲ
各 論
が亢進しているときの肝機能障害の程度を表す Child の
分類 22)が用いられている.肝機能障害があるときにはア
プリンジン,アミオダロンなどの肝機能障害が生じやす
1
上室期外収縮
1
はじめに
い抗不整脈薬は特別の配慮を要する(表 4)
.肝代謝の
抗不整脈薬を使用しなければならないときには血清ビリ
ルビン値を指標にして投与量を慎重に調節する.Child
分類の A(軽度肝機能障害)ではビリルビン値が 1 ~ 2
心房(肺静脈,上大静脈および冠状静脈洞を含む),
mg/dL であり,肝機能障害はあるので通常量の 2/3 量か
および房室接合部を起源とし,リエントリー,トリガー
ら抗不整脈薬を投与するのが無難である.Child 分類の
ドアクティビティ,異常自動能等による早期収縮を上室
B(中等度肝機能障害)ではビリルビン値が 2 ~ 3 mg/
期外収縮と呼ぶ.最近の発作性心房細動に対する臨床電
dL であり,通常投与量の 1/2 ~ 1/3 にしたほうがよい.
気生理学的検討から,肺静脈や上大静脈などの大血管が
Child 分類の C(高度肝機能障害)ではビリルビン値が 3
上室期外収縮の起源になる場合が多いことがわかってき
mg/dL より高値となり,ソタロールとニフェカラント以
た 25).上室期外収縮は心室期外収縮と並んで臨床上多く
外の抗不整脈薬の投与は禁忌で,生命の危険があるか,
みられる不整脈である.
血行動態を著しく障害する頻脈性不整脈があるときに
上室期外収縮は加齢とともに頻度が増加する.
は,カテーテルアブレーションなどの非薬物療法を選択
すべきである 19),20).
3
14
妊婦に対する不整脈治療
2
病態・臨床的意義
基礎心疾患を有さない症例にみられる単発性の期外収
縮は,自覚症状が強い場合を除けば通常臨床的意義は少
妊娠により血管内容量は増加し,腎血流量は増加して
ない.しかし自覚症状が非常に強い場合や,頻度が高く
抗不整脈薬の腎排泄は促進される.また,プロゲステロ
血行動態や心機能に悪影響を及ぼす場合,発作性心房細
ンにより肝代謝が亢進して薬剤のクリアランスは促進さ
動 / 粗動のトリガーとなる場合は治療の対象となる 26).
れる.さらに血漿蛋白濃度の低下により薬剤の蛋白結合
特に僧帽弁狭窄症など心房に負荷がかかる基礎心疾患を
は減少し,組織と血漿中の薬物分布は変化する.薬物代
有する患者の上室期外収縮は心房細動に移行しやすい.
謝が促進する結果,薬物血中濃度は低下する.しかし,
いったん心房細動が生じると心房筋にリモデリングが生
原則として,すべての抗不整脈薬は妊婦と胎児に対して
じ, これが 心房細 動を より発生・ 持続 しやす く させ
毒性をもつと考えなければならない.したがって,可能
る 27).このような観点からも心房期外収縮から心房細動
不整脈薬物治療に関するガイドライン
への移行を予防することは臨床的に重要である.
上室期外収縮の発生には自律神経機能も関与する.ホ
表 5 に上室期外収縮の原因となる病態および誘因をあ
ルター心電図を用いた日内変動の解析では,夜間に比し
げた.これらの患者においては誘因の除去および病態に
昼間に頻発する患者が多く,その発生に交感神経緊張が
対する治療が優先されるべきである.
関与している場合が多いことが示唆される 28).その一方
で,夜間に生じやすい発作性心房細動の発症には迷走神
経の緊張が関与することが報告されている 29).
表 5 上室期外収縮の原因となる病態・誘因
心臓弁膜症-僧帽弁狭窄症など
先天性心疾患-心房中隔欠損症など
虚血性心疾患
陳旧性心筋梗塞
狭心症
高血圧
心筋症
特発性
二次性
心筋炎,心膜炎
心臓手術後
慢性閉塞性肺疾患
甲状腺機能亢進症
電解質異常
疲労,ストレス,喫煙,飲酒,カフェイン飲料など
薬物治療の実際
3
図 4 に上室期外収縮治療の治療方針を示す 3).虚血関
与の可能性あるいは心筋梗塞の既往を重視している.こ
のような場合は,治療対象がたとえ上室期外収縮であっ
ても,CAST の結果に鑑みて解離速度の遅い Na チャネ
ル遮断薬(slow kinetic drug)の使用は避けるべきである.
虚血がない場合の薬物療法の適応および薬剤選択のポイ
ントは,まず不整脈に伴う症状の程度と共存する基礎心
疾患の有無および種類であり,次が心電図所見および心
機能,そして発作性心房細動 / 粗動の有無である.基礎
図 4 上室期外収縮の治療方針 (文献 3 より改変)
上室期外収縮
あり
発作性心房細動・粗動の有無
*保険適用外
なし
不整脈に伴う症状
心房細動の予防
心房粗動の予防 へ
中等度∼重度
なし∼軽度
心機能評価
正常
軽度低下
虚血関与の可能性
あるいは
心筋梗塞の既往
虚血関与の可能性
あるいは
心筋梗塞の既往
あり
あり
〈第一選択〉
β遮断薬
〈第二選択〉
Naチャネル遮断薬
(intermediate)
アプリンジン
プロパフェノン
なし
〈第一選択〉
β遮断薬
〈第二選択〉
Naチャネル遮断薬
(slow)
ジソピラミド
シベンゾリン
ピルジカイニド
フレカイニド*
〈第三選択〉
Naチャネル遮断薬
(intermediate)
アプリンジン
プロパフェノン
〈第一選択〉
β遮断薬
〈第二選択〉
Naチャネル遮断薬
(intermediate)
アプリンジン
プロパフェノン
無治療
中等度以上低下
なし
〈第一選択〉
β遮断薬
〈第二選択〉
Naチャネル遮断薬
(intermediate)
アプリンジン
プロパフェノン
〈第三選択〉
Naチャネル遮断薬
(slow)
ジソピラミド
シベンゾリン
ピルジカイニド
フレカイニド*
心不全,心機能低下に
対するアップストリーム
治療を優先
注)同一枠内における薬剤
は我が国における発売順を
重視して列挙してあり,枠
内の優先順位を示すもので
はない
注)単剤で無効の場合は,第一選択薬と第二/第三選択薬の併用も考慮する.
15
循環器病の診断と治療に関するガイドライン(2008 年度合同研究班報告)
心疾患がなく発作性心房細動 / 粗動の合併がない場合は
ていない部分も少なくないが,空間的にも時間的にも変
基本的には無治療でよい.しかし自覚症状が強い場合は
動する複数のリエントリーが成立しており,心房は統率
第一選択薬としてβ遮断薬が,第二選択薬としてジソピ
のない興奮に陥っている 31).このため心電図では P 波は
ラミド,シベンゾリン,ピルジカイニドなどの slow ki-
消失し,心房は局所的には 250 ~ 350 回 / 分またはそれ
netic drug が,第三選択薬としてプロパフェノンやアプ
以上の高頻度で興奮するようになる.心房細動の発症と
リンジンなどの intermediate kinetic drug が推奨される.
その維持には,トリガーとなる異常興奮と,心房でリエ
これに対して,基礎心疾患のある場合は自覚症状の有
ントリーが成立するための心房筋の電気生理学的および
無にかかわらず薬物治療を考慮する必要がある.心機能
構造的変化(不整脈基質)が関わっている.
が正常で,かつ虚血関与の可能や心筋梗塞の既往がない
統率のない速い不規則な心房興奮のため,有効な心房
場 合, 第 一 選 択 は β 遮 断 薬, 第 二 選 択 は slow kinetic
収縮はみられなくなる.心房収縮の消失は心房内の血流
drug,第三選択が intermediate kinetic drug となる.軽度
低下を来たし,血栓形成の原因となる.また心室充満に
の心機能低下がある場合もβ遮断薬が第一選択となる
おける心房寄与が消失することによって 1 回駆出量が減
が, 第 二 選 択 は intermediate kinetic drug で あ り,slow
少する.一方,心室拍数は房室結節の伝導能によって規
kinetic drug は第三選択である.心機能が正常~軽度低
定されるが,発作性心房細動では 120 ~ 150/ 分以上の頻
下であっても,虚血関与の可能性や心筋梗塞の既往があ
脈を来たすこともあり,心房収縮の欠如と併せて急性左
る場合は,第一選択薬はβ遮断薬で,第二選択薬は in-
心不全の原因になる.この影響は特に左室拡張能の低下
termediate kinetic drug となる.心機能が中等度以上低下
した高齢者や肥大心などでより顕著となる.運動時に心
している場合には,心不全および心機能低下に対するア
室拍数が急激に上昇すると,易疲労感や運動能の低下を
ップストリーム治療を優先する.心筋保護の観点からβ
もたらすが,心室拍数の速い(130/ 分以上)心房細動が
遮断薬,ACE 阻害薬,アンジオテンシンⅡ受容体拮抗
安静時にも長期的に持続すると,頻脈による左室収縮能
薬の使用を考慮する.
の低下をもたらす(頻脈誘発性心筋症)32).特殊な例と
発作性心房細動 / 粗動の合併の有無は上室期外収縮の
して,不応期が房室結節のそれより短く,伝導能の良好
治療の適応を考える上で極めて重要なポイントであり,
なケント束を有する WPW 症候群では,心房細動時に極
発作の頻度,持続,発作時の心室レートなどを十分考慮
度に高頻度の興奮がケント束を介して心室に達し,心室
して薬物治療の適応があるかを判断し,投与に際しては,
細動を来たす危険がある 33).
年齢,性,肝・腎機能を加味して最終的な投与薬を決め
心房細動は基本的に慢性進行性疾患として様々な臨床
る.ジギタリスは経験的に上室性不整脈に多く用いられ
像を呈する.その自然歴は加齢,基礎疾患の有無,医療
てきた.しかし,最近の臨床研究の結果を見ると,ジギ
行為の介入により修飾を受ける.基礎疾患としては弁膜
タリスが発作性心房細動 / 粗動への移行を阻止する効果
疾患,高血圧,冠動脈疾患,心不全,心筋症,呼吸器疾
は他の抗不整脈薬に比し優位なものではなく,積極的に
患,甲状腺機能亢進症など多岐にわたり,それぞれの上
は推奨しがたいと思われる 30).ただし,心不全例ではジ
流(upstream)での管理が下流(downstream)としての
ギタリスを第一選択とする場合もありうる.
2
心房細動
心房細動の動静に大きく影響を与える.Upstream 治療
の中では高血圧や心不全の例に対するアンジオテンシン
変換酵素阻害薬(ACE 阻害薬)やアンジオテンシンⅡ(A
Ⅱ)受容体拮抗薬(ARB)などの投与が心房細動新規
1
はじめに
発症の抑制に有用であることが判明している.
治療に先だって,対象となる心房細動がどのような背
心房細動の出現は単に不快な不整脈として患者個人の
景のもとに,いつから出現し,どのくらい持続している
QOL を低下させるだけでなく,重篤な脳梗塞を合併す
ものかを把握することは極めて重要である.混乱を防ぐ
ることがある.その結果,生命予後に影響を与えるのみ
ために本ガイドラインでは以下の分類を採用する.
ならず,身体障害者や要介護患者の増加につながるなど
様々な社会的問題を引き起こす可能性もある.
2
病態・臨床的意義
心房細動の電気生理学的メカニズムは未だに解明され
16
・ 非弁膜症性心房細動:リウマチ性僧帽弁疾患,人
工弁および僧帽弁修復術の既往を有さない心房細
動
・ 孤立性心房細動:60 歳未満で臨床所見と心エコ
不整脈薬物治療に関するガイドライン
ー所見で高血圧を含めて心肺疾患の全くない状
態
34)
症例ごとの脳梗塞のリスク評価を行った上で適切な抗血
・ 初発心房細動:はじめて心電図上心房細動が確認
栓療法を選択することが奨励されている.その判断基準
されたもの.心房細動の持続時間を問わない.
に CHADS2 スコアが提唱され,積極的に活用されてい
・ 発作性心房細動:発症後 7 日以内に洞調律に復し
る 37),38).( 表 6,7). こ れ は 心 不 全(Congestive heart
failure),高血圧(Hypertension),高齢(Age ≧ 75 歳),
たもの
・ 持続性心房細動:発症後 7 日を超えて心房細動が
糖尿病(Diabetes Mellitus),脳卒中(Stroke/TIA)の頭
文字をとって命名されたスコアで,前 4 つの項目には 1
持続しているもの
・ 永続性心房細動:電気的あるいは薬理学的に除細
動不能のもの
3
性,あるいは永続性であるかによってではなく,個々の
点を,脳梗塞発症リスクの高い Stroke/TIA の既往には 2
点を付与し,合算して算出する.点数が高いほど脳梗塞
発症のリスクが高くなる.本ガイドラインでも非弁膜症
薬物治療の実際
性心房細動におけるリスク評価に CHADS2 スコアを取
り入れ(図 5),TIA や脳梗塞の既往がある例ではそれ
①改訂のポイント
だけで抗凝固(ワルファリン)療法の適応ありとしたほ
前回のガイドライン作成後,欧米からは ACC/AHA/
か,図 5 右から 2 番目の欄に含まれる項目の中 2 つ以上
ESC ガイドラインが 2006 年に改訂され ,基礎疾患に
のリスクに該当する場合は,ワルファリン療法を勧め,
基づく治療法の分類が発表されたが,そこで推奨されて
1 つの場合は,同療法を考慮してよいとした.リスクの
いる薬剤の多くは日本で保険適用が認められていない.
程度が十分検討されていない図 5 右端の欄に示された 5
一方,日本からは発作性心房細動と持続性心房細動とい
つの項目に関しては,該当する場合は,同療法を考慮し
う 2 つの病型に分けて,洞調律維持(リズムコントロー
てもよい.
ル)治療と心拍数調節(レートコントロール)治療を比
ワルファリン療法を行う場合は,従前通り INR2.0 ~
35)
較した J-RHYTHM が行われ,新たなエビデンスが得ら
3.0 でのコントロールが推奨される(クラスⅠ,エビデ
れた 14).続いて持続性心房細動に対するベプリジルの用
ンスレベル A).また 70 歳以上の症例では INR1.6 ~ 2.6
量依存性除細動効果を明らかにした J-BAF の結果が発
でのコントロールが勧められる(クラスⅡ a,エビデン
表された 16).
スレベル C).抜歯に際しては,至適治療域に INR をコ
先に発表された心房細動治療(薬物)ガイドライン
2008 年改訂版
36)
もそのような変化に対応したものであ
るが,本改訂版もそれに準拠した内容とした.抗不整脈
ントロールした上であれば,ワルファリン内服継続下で
行うことが勧められている(クラスⅡ a,エビデンスレ
ベル B).
薬治療に関する特に大きな改訂は,発作性心房細動と持
続性心房細動に分けて議論したことである.また前回の
ガイドラインでは心房細動の停止薬と再発予防薬を分け
て議論したが,臨床現場では停止に有効であった薬剤を
そのまま予防に使用することが多いため,本ガイドライ
ンでは両者を区別しなかった.肥大心,不全心,虚血心
といった器質的心疾患例に伴う心房細動の管理について
は,個々のエビデンスが乏しいものの,注意点は類似し
ていることから今回は共通したアプローチを提言した.
なお,少しでも混乱を避け,単純化することが重要と考
え,推奨薬剤の数を減らし,使用頻度の少ない薬剤はあ
えて列挙しなかった.
②抗血栓療法
薬物治療としては抗不整脈薬よりも抗血栓療法の方が
より重要であり,その記述を先にする.
非弁膜症性心房細動では,それが発作性であるか持続
表 6 CHADS2 スコアにおけるリスクと配点
Congestive heart failure
Hypertension
Age ≧ 75 y
Diabetes Mellitus
Stroke/TIA
1
1
1
1
2
表 7 CHADS2 スコアと脳梗塞年間発症率
患者数
脳梗塞
CHADS2
スコア (n =1733) 発症例
0
120
2
1
463
17
2
523
23
3
337
25
4
220
19
5
65
6
6
5
2
発症率 *
95%信頼区間
1.9
2.8
4.0
5.9
8.5
12.5
18.2
(1.2 ~ 3.0)
(2.0 ~ 3.8)
(3.1 ~ 5.1)
(4.6 ~ 7.3)
(6.3 ~ 11.1)
(8.2 ~ 17.5)
(10.5 ~ 27.4)
*exponential survival model
National Registry of Atrial Fibrillation(NRAF)登録者の解析
17
循環器病の診断と治療に関するガイドライン(2008 年度合同研究班報告)
図 5 心房細動における抗凝固療法
非弁膜性心房細動
TIA や脳梗塞
の既往
年齢≧75 歳
高血圧
心不全
%FS<25%
糖尿病
心筋症
65≦年齢≦74
女性
冠動脈疾患
もしくは
甲状腺中毒
リスク≧2 個 リスク =1 個
ワルファリン
INR2.0∼3.0
ワルファリン
70 歳未満 INR2.0∼3.0
70 歳以上 INR1.6∼2.6
実線は推奨,破線は考慮可を指す.心房粗動や発作性心房細動
例でも同様に治療する.単独の抗血小板療法はワルファリン禁
忌時に考慮しても良い.ワルファリン療法への抗血小板薬の追
加は以下の場合に考慮しても良い.① INR2.0 ~ 3.0 でのコント
ロール中に血栓・塞栓症を発症した場合.②非塞栓性脳梗塞や
TIA(一過性脳虚血発作)の既往があり抗血小板薬が必要な場
合.③虚血性心疾患を合併している場合.④ステント療法後.
図 6 除細動時の抗凝固療法
心房細動の持続
僧帽弁狭窄症
もしくは
機械弁
<48時間
ヘパリン開始
なし
経食道エコー
で心房内血栓
≧48時間
除細動
ワルファリン
>4 週間
あり
ワルファリン
>3 週間
心房細動の持続時間によって異なるアプローチが選択される.
また除細動後にもワルファリン投与の継続が推奨されている.
ール治療の 2 つの治療法の優劣を,発作性心房細動と持
続性心房細動の 2 種類の患者群別に,死亡,症候性脳梗
塞,全身性塞栓症,大出血,心不全による入院,被験者
の基本的治療法に対する忍容性の限界を複合エンドポイ
ントとして比較したものである 14).その結果,持続性心
房細動においては,両者のアプローチの間に有意差を認
めなかったものの,心拍数調節治療によってこれらイベ
ントがより回避される傾向が示された(p = 0.08).
心房細動例における心拍数調節のための攻撃目標は房
抗 血 小 板 療 法 に つ い て は,Japan Atrial Fibrillation
室結節にあり,薬剤としては Ca チャネル遮断薬のほか,
Stroke Trial(JAST 研究)の結果,心房細動の抗血栓療
β遮断薬やジギタリスなどが有効である.一般にジギタ
法としての意義が疑問視されるようになった 39).この試
リスは副交感神経系の活性時に効果を発揮するため,活
験では,アスピリンを低リスク心房細動症例に投与して
動時の徐拍作用は弱い.そのため心機能良好な例のレー
も非投与群に優る脳梗塞予防効果を示すことができず,
トコントロールではジギタリスよりもβ遮断薬や Ca チ
むしろ重篤な出血性合併症を増やす結果が示された.
ャネル遮断薬の投与を優先し(クラスⅠ,エビデンスレ
一方,48 時間以上続く,あるいは持続時間不明の心
ベル B),ジギタリスはβ遮断薬や Ca チャネル遮断薬だ
房細動に対する除細動に伴う血栓塞栓合併の危険性が指
けでは不十分な際に補強する形で併用する(クラスⅡ a,
摘されている
40)
.このリスクは CHADS2 スコアが低く
エビデンスレベル B)(図 7).急速に徐拍化させる必要
ても存在すると考えられており,ワルファリン療法で最
がある場合には静注薬が使用される.Ca チャネル遮断
低 3 週間,PT-INR を 2.0 ~ 3.0 に保った後に除細動を試
薬のベラパミル 5 ~ 10mg を 2 分間かけて静注するか,
みるか(クラスⅠ,エビデンスレベル B),さもなけれ
ジルチアゼム 0.25mg/kg を 2 分間かけて静注する.β遮
ば直前に経食道心エコー法によって左心耳内血栓の有無
断薬の静注は日本ではプロプラノロールが使用されるこ
を確認するアプローチが勧められている(クラスⅡ a,
とが多く,その場合には総量 0.15mg/kg を 2mg ずつ,間
)
エビデンスレベル B)41(図
6).除細動後にはさらに最低
欠的に静注する.心不全を合併している例や心機能の低
4 週間のワルファリンを継続するが(クラスⅠ,エビデ
下した例にはジゴキシンの静注が用いられることが多い
ンスレベル B),その後にも無症候性心房細動発作の再
が,その場合には 0.25mg を 2 時間ごとに目標心拍数に
発を生じることがあり,安易に中止することは危険であ
達するか,総量 1mg まで静注する.
る.
特殊な場合として WPW 症候群では,Na チャネル遮
③心拍数調節のための薬剤
18
断薬や K チャネル遮断薬による副伝導路の伝導抑制が
レートコントロールにつながる(図 7).静注薬として
我が国で行われた大規模試験 J-RHYTHM は,安静時
はピルジカイニド,シベンゾリン,ジソピラミド,フレ
心拍数 60 ~ 80/ 分を目標にした心拍数調節(レートコン
カイニドなどに加えプロカインアミドも使用できるが,
トロール)治療と,洞調律維持をめざすリズムコントロ
いずれも徐拍化にとどまらず除細動効果を発揮する可能
不整脈薬物治療に関するガイドライン
図 7 心房細動心拍数調節のための治療選択肢
デルタ波
なし
心拍数調節
β受容体遮断薬
Ca チャネル遮断薬
心機能
低下
ジゴキシン
+ジゴキシン
+少量β受容体遮断薬
静注用 Na
(±K)
チャネル遮断薬
ピルジカイニド
シベンゾリン
ジソピラミド
フレカイニド
プロカインアミド
デルタ波
あり
第一選択
第二選択
心機能
良好
副伝導路
アブレーション
Na(± K)チャネル遮断薬= Na チャネル遮断を主作用とするⅠ群抗
不整脈薬(K チャネル遮断を伴うものと伴わないものとがある)
図 8 孤立性心房細動に対する治療戦略
発作性
ピルジカイニド
シベンゾリン
プロパフェノン
ジソピラミド
フレカイニド
*保険適用外
肺静脈
隔離術
電気的除細動
孤立性
心拍数調節
持続性
第一選択
持続が比較的短い場合
洞調律維持を追求するのであれば
ベプリジル
± アプリンジン
ソタロール*
*
アミオダロン
(経口)
房室結節
アブレーション
+
心室ペーシング
第二,第三選択
性もある.最終的には高周波カテーテルアブレーション
が高い(クラスⅠ)17),42).また迷走神経の活性化に伴う
により副伝導路を遮断することが望ましい.
夜間や食後の心房細動には,M2 受容体拮抗作用のある
④洞調律維持のための薬剤
薬剤が奏功することもある 43).本ガイドラインでは孤立
性の発作性心房細動に対する第一選択薬として,ピルジ
1)孤立性心房細動の洞調律維持
カイニド,シベンゾリン,プロパフェノン,ジソピラミ
①発作性心房細動
ド,フレカイニドを掲げた(図 8).ただちに停止をも
発作後短時間で自然停止する心房細動や,初発の発作
くろむ場合には静注が相応しいが,単回経口投与法
性心房細動に対しては必ずしも薬剤治療を施す必要はな
(pill-in-the-pocket)が奏功することもある 42),44)-47).後
い.しかし比較的強い症状を伴う心房細動発作を繰り返
者の方法は自宅あるいは外出先で発作が出現した際に,
す例に対しては,薬剤による洞調律維持(リズムコント
患者本人が通常 1 日量の 1/2 ~ 2/3 を単回で内服して発作
ロール)が重要となる.特に J-RHYTHM において,発
を止めようとするものである.この方法を採用する場合
作性心房細動例に対しては洞調律維持治療の方が心拍数
には,経口後 6 時間以内に催不整脈作用などの副作用な
調節治療よりも有意に優れていたが,その主たる原因は
しに停止することを最初だけでも監視下で確認しておく
忍容性の改善であった 14).
ことが望まれる.再発予防には停止薬と同様の薬剤を経
孤立性発作性心房細動に対してはトリガーと基質の両
口で投与するやり方が一般的であるが,患者の年齢,腎
方に対して抗不整脈効果を発揮する Na チャネル遮断薬,
機能や肝機能などを考慮して薬剤やその投与量を加減す
それもチャネルからの解離が遅い slow kinetic 薬の効果
る必要がある.また Na チャネル遮断薬の投与に際して
19
循環器病の診断と治療に関するガイドライン(2008 年度合同研究班報告)
は,それによって心房細動を心房粗動に移行させたり,
用を示しやすい点も問題となる.基礎疾患のある例では,
洞結節機能不全による洞停止を助長したり,Brugada 症
まずその原因を改善する治療(upstream approach)が施
候群では ST 上昇を増強して,ときに致死性不整脈を誘
されるべきであり,虚血心では虚血の改善が最優先され,
発する危険性のあることを留意すべきである 48)-50).
肥大心や不全心では ACE 阻害薬や ARB55)-58),あるいは
②持続性心房細動
β遮断薬 59)などの使用がまず検討されなければならない
心房細動が 1 週間以上持続した例で,リモデリングが
(図 9).次には副作用の少ない薬剤を利用した心拍数調
進行した心房筋では,抗不整脈薬による除細動が困難に
節治療が勧められるが,特に発作性心房細動を呈し,症
なる.比較的早期では発作性心房細動に使用する薬剤を
状が強い場合には,抗不整脈薬による洞調律維持を追求
そのまま試すことができるが,より長期の持続例での効
せざるを得ない場面もあり,アプリンジン,ベプリジル,
果は期待できず,むしろ心拍数調節治療によって QOL
ソタロール,アミオダロンなどが候補となりうる(図 9)
が確保されることが多い(クラスⅠ).持続性心房細動
35),60)-63)
は原則心拍数調節治療が勧められるが,洞調律維持を追
またソタロールはその陰性変力作用から,それぞれ「う
求するのであれば電気ショックが必要となることが多
っ血性心不全」,「重篤なうっ血性心不全」への投与は禁
い.また,ベプリジル(アプリンジン併用可)や51),52),
忌とされている.ベプリジルには QT 延長から torsade
保険適用外ではあるがソタロール
.ただし,ベプリジルはその催不整脈作用から,
52)
,アミオダロン(経
de pointes(TdP)をもたらす副作用が少なからずあるこ
などによる薬理学的除細動の有効性も報告され
とが報告されており 16),心電図上の QT 間隔を頻回にモ
53),54)
口)
ている(クラスⅡ a)(図 8)
.ベプリジルは通常 100mg
ニターし,慎重に投与する必要がある.
から投与を始め,QT に注意しながら可能ならば 200mg
4
まで増量する.無効の際にはアプリンジンの追加が奏功
非薬物治療の適応
することがある(クラスⅡ b).ソタロールも 80mg から
心房細動のアブレーションでは,上室性頻拍のアブレ
開始し,同様に 160mg ~ 320mg まで増量可能である.
ーションに比べて難易度が高く,また,重大な合併症が
いずれの薬剤も分 2 で投与するのが一般的である.アミ
生じる危険性もやや高いため,患者が受ける利益と不利
オダロンを使用する場合には 400mg から開始し,2 週間
益を十分に説明した上で適応を決定する必要がある 64).
後から 200mg に減量するのが一般的であるが,有効な
また,心房細動の再発,脳梗塞発症に関する長期予後や,
場合にはさらに 100mg まで減量することもある.
心房機能に関する長期予後もいまだ明らかでない.現段
2)器質的心疾患を有する心房細動の洞調律維持
階ではクラスⅠの適応はなく,有症状か QOL 低下を伴
肥大心,不全心,虚血心といった背景が存在する場合
う発作性心房細動で,薬物治療抵抗性(2 剤以上)か,
には,一旦,心房細動が発生すると,たちまち病態が悪
あるいは副作用のため薬物が使用不能な例がクラスⅡ a
化するため,緊急に停止を試みるには電気ショックが用
の適応となる 65).できれば左房径が 45mm 以下で,左房
いられる(クラスⅠ).しかしながらその再発防止は困
内に血栓がない 75 歳以下の例が望ましい.また特殊な
難であるのみならず,これら基礎疾患の存在下には抗不
例としてパイロットなど職業上制限となる場合もクラス
整脈薬による危険な心室性催不整脈作用や,陰性変力作
Ⅱ a とする.一方,慢性心房細動に関するアブレーショ
図 9 器質的心疾患に伴う心房細動に対する治療戦略
*保険適用外
電気的除細動
肥大心・不全心・虚血心
心拍数調節
(ただし肥大型心筋症に
対する経口アミオダロン
は適用あり)
肺静脈
隔離術
洞調律維持を追求するのであれば
アプリンジン
ベプリジル
ソタロール*(不全心除く)
アミオダロン
(経口)*
アップストリーム治療
第一選択
第二,第三選択
20
房室結節
アブレーション
+
心室ペーシング
±再同期療法
不整脈薬物治療に関するガイドライン
ンについては十分なコンセンサスが得られているとはい
発症年齢は心房細動と同様に 60 歳以上に多く,基礎
えず,有症状か QOL 低下を伴い,薬物治療抵抗性また
心疾患や開心術の既往を有する例を認めることが多い
は副作用のため薬物が使用不能な例がクラスⅡ b の適応
が,孤立性の場合も少なくない.心房細動に合併する場
となる 65).薬物治療が有効な心房細動や,QOL の著し
合も多く,心房細動に対するⅠ群抗不整脈薬,特にⅠ c
い低下を伴わない心房細動はクラス Ⅲと位置づけられ
群薬投与後に細動が粗動化する場合も認められる.
る.
3
3
薬物治療の実際
①受攻性因子と抗不整脈薬の効果
心房粗動
峡部依存性心房粗動では粗動周期の約 20 %に相当す
1
る興奮間隙を認める 73).さらに CTI を含む右房下部の伝
はじめに
67),74)
導は他の部位に比して遅い(相対的伝導遅延部位)
.
心房粗動は心房拍数が 240 ~ 440/ 分の規則正しい上室
以上より,受攻性因子は心房筋の不応期と右房下部の相
頻拍と定義される.心電図上は,心房拍数が 240 ~ 340/
対的緩徐伝導で,前者を標的として K チャネル遮断薬
分の比較的に遅い粗動(Type 1)と,340 ~ 440/ 分の速
が,後者を標的として解離速度の遅い Na チャネル遮断
い粗動(Type 2)に分類される
.Type 1 はさらに下壁
66)
薬(intermediate ~ slow kinetic drugs) が 選 択 さ れ る.
誘導にて典型的な陰性鋸歯状の粗動波を呈する通常型
不応期に対する効果としては,Ⅲ群薬のイブチリドやド
(common type)心房粗動と,通常型以外の粗動波を呈
)
フェチリドの有効性が報告されている 75)-77(いずれも我
す る 非 通 常 型(uncommon type) 粗 動 に 分 類 さ れ る.
が国では使用不可).一方,相対的緩徐伝導に対する効
Type 1 粗動の多くは,下大静脈と三尖弁輪間の解剖学的
果としては,強力な Na チャネル遮断薬を用いても伝導
峡部〔cavotricuspid isthmus(CTI)〕を含む三尖弁輪を
ブロックを来たすことは容易でなく,フレカイニド静注
興奮が周回する右房内リエントリーを機序とするた
の有効率は 10 ~ 28%にすぎない 78).
め 67)-69), 峡 部 依 存 性 心 房 粗 動(CTI-dependent atrial
flutter)とも呼ばれる 70).右房内の興奮旋回が反時計方
②治療の進め方(図 10)
向であれば陰性鋸歯状の粗動波を(通常型心房粗動),
心房細動と同様に,頻脈かどうか,血行動態が安定し
時計方向であれば陽性の粗動波を呈する(非通常型粗
ているかどうか,合併する疾患は何か,そして血栓塞栓
動).なお非通常型心房粗動には右房上部,右房自由壁,
症のリスクはどうか,を考慮し治療方針を決定する 70).
左房におけるリエントリーを機序とするものもある
71)
.
Type 2 粗動は心房細動に近い頻拍で,その機序は個々の
洞調律復帰後は,再発予防のための治療や抗凝固療法が
必要かどうか個々の症例で検討する.
例で異なる.
一方,開心術の既往を有する患者に心房粗動や心房頻
拍を認めることがある.峡部依存性心房粗動のこともあ
図 10 心房粗動治療の進め方(文献 70 より引用)
心房粗動
れば,右房壁の切開創,瘢痕組織を周回するリエントリ
72)
ー 性 頻 拍(incisional reentrant tachycardia ) の こ と も
ある.
2
病態・臨床的意義
血行動態
不安定
(心不全,ショック,急性心筋梗塞)
心房粗動の症候は粗動時の房室伝導に依存する.2:
心室拍数調節
(房室結節抑制薬)
1 房室伝導を示すと心室拍数は約 150/ 分となり,動悸や
呼吸困難,胸痛,心不全,血圧低下などを来たす.運動
DC ショック
時や房室伝導が良好な場合は 1:1 伝導のために心室拍
分以下になると無症候の場合が多い.心房細動の約 1/3
の頻度で血栓塞栓症を合併する(後述)70).
洞調律への復帰
・DC ショック
・心房ペーシング
・抗不整脈薬
再発予防治療が必要な場合
数が 300/ 分にも達し,血圧低下や失神など重篤な状態
に陥る場合がある.一方,4:1 伝導で心室拍数が 100/
血行動態
安定
抗不整脈薬
カテーテルアブレーション
洞調律へ復帰させる場合は抗凝固療法の要否を考慮する
21
循環器病の診断と治療に関するガイドライン(2008 年度合同研究班報告)
1)血行動態が不安定な心房粗動の治療方針
る(ニフェカラントは保険適用外).心房粗動(Ⅰ c 群
心室拍数の過度の増加(100/ 分以上)のために心不全
薬投与後の粗動を含む)に対するニフェカラント静注の
やショックとなった場合,あるいは急性心筋梗塞に合併
停止効果を検討した最近の我が国からの報告によると,
した場合など,不安定な症例では DC ショックにより粗
31 例中 24 例(77%)において投与後 60 分以内に(平均
動を速やかに停止させる.静脈麻酔後,心電図 R 波に同
13 分後)粗動が停止し,洞調律に復帰している 79).ニ
期して 50 J で通電する.
フェカラントは QT 間隔を延長し,torsades de pointes を
2)血行動態が安定している心房粗動の治療方針
来たす可能性があるので注意する.なお我が国では使用
心室拍数が 100/ 分以上の場合は,まず心室拍数調節
できないが,Ⅲ群薬のイブチリドが 8 例中 8 例で(100%),
を目的とし,房室結節を抑制する薬物を投与する(図
ドフェチリドが 10 例中 7 例(70 %)で粗動を停止させ
11).症状から比較的緊急を要する場合は静注薬を用い
たことが最近我が国から報告されている 77).第二選択薬
る.WPW 症候群に合併した心房粗動の治療は後述する.
としては,相対的緩徐伝導の抑制を目的とし,解離速度
心室拍数が 99/ 分以下の場合は,以下に述べる抗不整脈
が比較的遅い Na チャネル遮断薬(intermediate ~ slow
薬投与,DC ショック,ペーシングのいずれかの方法に
kinetic drugs)を用いる.抗不整脈薬の投与に際しては,
より洞調律に復帰させる.なお発症後 48 時間以上経過
投与後の粗動周期の延長と,抗コリン作用を有する薬剤
していると思われる場合は左房内血栓の存在を疑い,心
では房室伝導促進作用により心室拍数が増加し,時に 1:
房細動に準じて抗凝固療法を行う
1 房室伝導を来たす可能性があることに注意する.これ
36),70)
.
3)洞調律復帰を目的とした薬物治療(図 11)
を避けるために予め房室結節抑制薬を投与し,房室伝導
まず心房筋の不応期延長を目的とし,中等度以上の K
を抑制しておく.以上の薬剤が無効な場合には,DC シ
チャネル遮断作用を有する薬剤を選択する.静脈内投与
ョックか高頻度心房ペーシングにより粗動を停止させ
が可能な製剤はニフェカラントとプロカインアミドであ
る.ペーシング療法においても,抗不整脈薬〔ジソピラ
図 11 安定した心房粗動に対する洞調律復帰を目的とした薬物治療
安定した心房粗動
心室拍数≧100/ 分
心室拍数≦99/ 分
房室伝導抑制
β遮断薬
ジゴキシン
ベラパミル
ジルチアゼム
ベプリジル*
(比較的緊急を要する場合は静注)
洞調律復帰を目的とした薬物治療
静注
経口
〈第二選択〉
〈第一選択〉
峡部緩徐伝導の途絶
心房筋不応期延長
K チャネル遮断作用の Na チャネル遮断薬
(intermediate∼slow)
ある薬剤
(房室伝導抑制薬と併用)
(中等度∼強度)
ジソピラミド
ニフェカラント*
プロカインアミド
アプリンジン
シベンゾリン
ピルジカイニド
フレカイニド
〈第一選択〉
心房筋不応期延長
K チャネル遮断作用の
ある薬剤
(中等度∼強度)
ベプリジル*
ソタロール*
プロカインアミド*
キニジン
無効
DC ショック
22
*保険適用外
〈第二選択〉
峡部緩徐伝導の途絶
Na チャネル遮断薬
(intermediate∼slow)
ジソピラミド
シベンゾリン
ピルジカイニド
フレカイニド
不整脈薬物治療に関するガイドライン
ミド(静注),プロカインアミド(静注),プロパフェノ
制薬としてジゴキシンが挙げられる.これと併用する形
ン(経口投与)〕を前投与すると粗動が停止しやすくな
で心機能抑制作用が比較的に弱いプロカインアミドかキ
る
80)-82)
ニジンが第二選択となる.
.
4)再発予防を目的とした治療(図 12)
非薬物療法:峡部依存性心房粗動は CTI に対するカテ
心房粗動を助長する全身的要因があればこれを治療す
ーテルアブレーションにより根治可能である.成功率は
る.抗不整脈薬療法としては,心機能に応じて薬剤を選
90 %以上で,合併症もほとんど認められないため,現
択する.心機能正常例および軽度低下例では,心房筋の
在は抗不整脈薬療法よりカテーテルアブレーションが第
不応期を延長させる目的で,K チャネル遮断作用が中等
一選択の治療法となっている 65),70).抗不整脈薬療法と
度以上で,かつ房室結節伝導を抑制するベプリジル,ソ
カテーテルアブレーションの再発予防効果を前向きに比
タロールが第一選択薬として挙げられる(ともに心房粗
較した臨床試験において,平均 21 か月後の洞調律維持
動には保険適用外).両薬ともに QT 間隔延長に注意す
率は薬剤群が 36 %,アブレーション群が 80 %で,アブ
る.第二選択薬としては,相対的緩徐伝導を抑制し,心
レーション治療の有用性が示されている 84).アミオダロ
房粗動の引き金となる心房期外収縮抑制を目的とし,
ンとアブレーションの再発予防効果を前向きに比較検討
Na チャネル遮断薬が挙げられる.ジソピラミド以下 8
した最近の LADIP 研究では,平均 13 か月間の再発率は
種類の Na チャネル遮断薬が示されているが,前述の理
アミオダロン群が 29.5%,アブレーション群が 3.8%で,
由により房室結節抑制薬との併用が必要である.第三選
アブレーション治療がより有効であった 83).
択薬としてアミオダロンが挙げられ,前向き臨床試験
5)WPW 症候群に伴う心房粗動の治療
(LADIP 研究)の結果では(平均 13 か月間),70.5 %の
症例で粗動再発を認めなかったことが示されている
83)
副伝導路を介する伝導のために心室拍数が過度に速く
なることが多く,緊急の治療を要する.薬剤による心室
(我が国では肥大型心筋症に合併した場合に保険適用と
レートコントロール目的では,WPW 症候群に伴う心房
なる).心機能が中等度以上低下している例では,WPW
細動の治療と同様にジゴキシン,ベラパミルは避け,β
症候群(デルタ波)がなければ第一選択薬は房室結節抑
遮断薬を投与する.再発抑制のための治療は WPW 症候
図 12 再発予防のための薬物治療(文献 3 より改変)
心機能評価
正常∼軽度低下
〈第一選択〉
心房筋の不応期延長
K チャネル遮断作用のある薬剤
(中等度∼強度)
ベプリジル* ソタロール*
〈第二選択〉
峡部緩徐伝導の途絶
期外収縮抑制
Na チャネル遮断薬
(intermediate∼slow)
房室伝導抑制薬と併用
(WPW 症候群ではβ遮断薬を用いる)
ジソピラミド
アプリンジン
シベンゾリン
プロパフェノン
ピルジカイニド
フレカイニド
プロカインアミド*
キニジン
中等度以上低下
WPW 症候群(デルタ波)
なし
〈第一選択〉
房室伝導抑制薬
ジゴキシン
あり
〈第一選択〉
プロカインアミド*
キニジン
〈第二選択〉
〈第二選択〉
房室伝導抑制薬(ジゴキシン) アミオダロン*
と併用
プロカインアミド*
キニジン
〈第三選択〉
アミオダロン*
*保険適用外
〈第三選択〉
アミオダロン*
23
循環器病の診断と治療に関するガイドライン(2008 年度合同研究班報告)
群を伴わない場合とほぼ同様であるが(図 12)
,心機能
血圧は低下するが,ときに血行動態の悪化(収縮期血圧
低下が中等度以上の場合の第一選択,第二選択のジゴキ
≦ 80 mmHg,肺水腫など)や狭心症発作などを引き起
シンは避ける.なお WPW 症候群はほとんどの例でカテ
こし,緊急的な対策が必要となることがある.
ーテルアブレーションにより根治可能で,また峡部依存
性心房粗動も根治可能であるため,特に合併例に対して
はアブレーション治療による根治が第一選択の治療とな
る
83)
3
薬物治療の実際
約 90 %の例で房室結節リエントリーあるいは房室回
帰が原因である.したがって,これらの例では房室結節
.
6)抗凝固療法の適応
の伝導を抑制することで発作は停止可能であり,房室結
心房粗動に伴う血栓塞栓症,脳梗塞の発生頻度は心房
節活動電位が「受攻性因子」となり Ca チャネルが「標
細動の約 1/3 とされている
85)
.比較的多数例を対象とし
的分子」となる.WPW 症候群による房室回帰性頻拍で
た後ろ向き検討の結果では,血栓塞栓症のリスクは 1.7
は副伝導路も頻拍発生の「不可欠な要素」である.した
~ 7.0%と報告され,特に 48 時間以上心房粗動が持続し
がって,副伝導路の不応期延長あるいは伝導抑制も頻拍
た症例でリスクが高くなる
86)
.また心房粗動に対する
抑制に有効で,K チャネル遮断薬や Na チャネル遮断薬
DC ショック後の血栓塞栓症の発生頻度は,十分な抗凝
の効果が期待できる.
固 療 法 を 受 け て い な い 場 合,2.2 % と 報 告 さ れ て い
薬物治療は発作の停止と発作間欠期(慢性期)の再発
.洞調律復帰後,28 %の症例で心房収縮が欠如
予防に分けて考える.ほとんどの発作性上室頻拍はカテ
しており(心房スタニング),血栓塞栓症のリスクとな
ーテルアブレーションで根治できるので,薬物治療の意
る
87),88)
89)
.血栓塞栓症の危険因子に関
義は発作の停止にほぼ限られてきた.まれにアブレーシ
しては,塞栓症を発症した心房粗動 12 例と発症しなか
ョンが不成功に終わる例やアブレーションを希望しない
った 169 例の背景因子を単変量解析すると,高血圧,器
例では,抗不整脈薬による発作の予防が行われる.発作
質的心疾患,左室駆出率低下,糖尿病が有意な危険因子
の頻度が低く,短時間で停止して自覚症状が軽微な例で
であり,多変量解析では高血圧が独立した危険因子であ
は発作間欠期の治療は必要ではない.
ることが指摘されている
ったことが報告されている 87).心房粗動に対する抗凝固
療法の適応は未だ確立されていないため,現時点では心
①発作の停止(図 13)3)
房細動に準じて決定する必要がある 85).心房細動と同様
上室性頻拍の発作を停止するにあたり,緊急的な対策
の血栓塞栓症のリスクを有する持続性心房粗動,再発性
の必要性の有無(上述)をまず見極める.
心房粗動に対してはワルファリン療法を行う(詳細は心
1)緊急的な停止を要する場合
房細動の項目参照).心房粗動を停止させる場合,粗動
発作の停止を急ぐ必要がある場合には,DC ショック
が 48 時間以上持続していればワルファリンを 3 週間以
や高頻度ペーシングにより発作を停止させる.
上投与し,停止後も 4 週間継続する.
2)緊急的な停止を要しない場合
4
発作性上室頻拍
緊急的な発作停止の必要がない場合には,迷走神経反
射や抗不整脈薬による停止を試みる.
①迷走神経反射
1
薬物治療に先立ち反射性の迷走神経緊張を試みる.息
こらえ(Valsalva 手技),顔面を冷水に浸す(顔面浸水),
発作性上室頻拍は,頻拍発作の維持に心房が不可欠な
嘔吐反射,深呼吸,頚動脈洞マッサージ(頚動脈の血管
ものの総称である.房室結節リエントリー,房室回帰,
雑音のないことを確認し,まず右側から試みる.無効な
心房内リエントリー,異所性自動能亢進が機序となる.
ら左側を試みる),トレンデレンブルグ体位 90)などが有
発作性上室頻拍の約 90 %は房室結節リエントリー性頻
効なことがある.眼球圧迫は,網膜剥離の危険があるこ
拍(AVNRT)あるいは WPW 症候群に伴う房室回帰性
とや疼痛を来たすので,勧められない.Valsalva 手技以
頻拍(AVRT)である.
外の手技の有効性はそれほど高いものではない(Valsal-
2
24
はじめに
病態・臨床的意義
va 手技 54%,右頚動脈洞マッサージ 15%,顔面浸水 15
%など)91).
発作性上室頻拍では心拍数が 150 ~ 200/ 分となり,動
②抗不整脈薬静注
悸,胸部不快感などの症状を生じる.発作時,一般的に
迷走神経緊張が無効な場合には,ATP(10mg を 1 ~ 2
不整脈薬物治療に関するガイドライン
図 13 発作性上室頻拍の停止(文献 3 より改変)
a)Valsalva 手技など
* 保険適用外
血行動態の悪化(血圧≦80 mmHg,肺水腫)
,
狭心症発作の合併など
あり
なし
DC ショック
高頻度ペーシング
迷走神経緊張 a)
持続
停止
慢性期の治療
停止
停止
DC ショック
高頻度ペーシング
持続
ー静注ー
ATP*
ベラパミル
ジルチアゼム
−頓服−
ベラパミル
β遮断薬
持続
Na チャネル遮断薬
−静注−
ジソピラミド
アプリンジン
シベンゾリン
ピルジカイニド
フレカイニド
秒で.ただし保険適用外)あるいは Ca チャネル遮断薬(ベ
DC ショックあるいは高頻度ペーシングによる停止を行
ラパミル 5mg,ジルチアゼム 10mg,いずれも 5 分前後で)
う.
静注を試みる.これらにより 90 %以上の例の発作を停
止できる 92),93).ベラパミルは比較的心拍数が遅い発作
(心拍数< 186/ 分),ATP は心拍数が速い発作(> 166/ 分)
の停止に有効である
94)
②慢性期の治療(発作再発の予防.図 14,15)3)
高い有効性と安全性を持ってカテーテルアブレーショ
.ジゴキシンは静注しても効果が
ンによる根治療法が可能であるので,発作頻度の高い例
発現するまでに 30 ~ 60 分を要するので,使用される機
や発作時に症状の強い例,QOL 低下の著しい例,薬物
会はほとんどなくなった(CD-ROM 版から改変).房室
治療が無効あるいは副作用のため使用できない例などに
回帰性頻拍の停止にも ATP(100%)とベラパミル(94%)
はアブレーションを勧める 65).発作の持続時間が短く,
の有効性が高く,Na チャネル遮断薬の効果はそれほど
症状の軽い例では積極的な再発予防は必ずしも必要では
高くはない(40 ~ 60%)95).なおベラパミルは,血圧低
ない.積極的な再発予防が必要でない例を除き,アブレ
下例や,左室機能低下例,β遮断薬投与例,心房細動の
ーションを希望しない例やアブレーションが不成功に終
既往のある顕性 WPW 症候群,小児には使用しない 85).
わった例では抗不整脈薬による再発予防を行う.
以上の治療で発作が停止できない場合には,房室結節
1)心機能が中等度以上低下している場合
リエントリー性頻拍あるいは房室回帰性頻拍以外の頻拍
陰性変力作用の少ない Na チャネル遮断薬が第一選択
の可能性が高く,Na チャネル遮断薬の効果が期待でき
となる(図 14,CD-ROM 版を改変).ただし房室結節
る.
リエントリー性頻拍の場合には第一選択薬はジゴキシン
③抗不整脈薬単回経口投与(Pill in the pocket)
となり,Na チャネル遮断薬は第二選択薬とする(図
発作頻度が低く,発作時の血行動態は安定しているが
14).
自覚症状が強い例では,継続的な抗不整脈薬による予防
2)心機能が正常~軽度低下の場合(図 15)
の代わりに,発作時に患者自らが抗不整脈薬を頓服して
①頻拍中の P 波が見えないか QRS 波直後に出現する場合
発作を停止させる対応もある 96).ベラパミルやβ遮断薬
房室結節リエントリー性頻拍(通常型)がこのタイプ
のほかプロパフェノンなどが有効である.あらかじめ有
の頻拍の代表である.潜在性 WPW 症候群の房室回帰性
効性と安全性を確認した上で試みる.
頻拍もこれに準じて対応する.
薬物治療にもかかわらず発作が停止しない場合には
房室結節の伝導を抑制するβ遮断薬,Ca チャネル遮
25
循環器病の診断と治療に関するガイドライン(2008 年度合同研究班報告)
図 14 発作性上室頻拍の予防(文献 3 より改変)
発作性上室頻拍の根治療法
望む
望まない
アブレーション
心機能評価
中等度以上低下
正常∼軽度低下
頻拍中の P 波が見えないか
QRS 直後(ただし顕性 WPW 症候群を除く)
なし
図 15 へ
あり
Na チャネル遮断薬
(intermediate)
(β遮断作用のある薬剤は除く)
プロカインアミド
アプリンジン
〈第一選択〉
ジゴキシン
〈第二選択〉
Na チャネル遮断薬
(intermediate)
(β遮断作用のある薬剤は除く)
プロカインアミド
アプリンジン
図 15 発作性上室頻拍の予防(図 14 の続き.文献 3 より改変)
根治療法を望まない場合
心機能:正常∼軽度低下
頻拍中の P 波が QRS の直前
顕性 WPW 症候群(房室回帰性頻拍)
頻拍中の P 波がみえないか QRS の
直後(潜在性 WPW 症候群を含む)
〈第一選択〉
Kチャネル遮断作用のある薬剤
(中等度以上)
ジソピラミド
シベンゾリン
〈第一選択〉
房室伝導抑制薬
β遮断薬
ベラパミル
ジゴキシン
〈第二選択〉
Naチャネル遮断薬
(intermediate ~ slow)
アプリンジン
プロパフェノン
ピルジカイニド
〈第二選択〉
Kチャネル遮断作用のある薬剤
(中等度以上)
Naチャネル遮断薬
(intermediate ~ slow)
ジソピラミド
アプリンジン
シベンゾリン
プロパフェノン
ピルジカイニド
断薬,ジゴキシンが第一選択薬となり,K チャネル遮断
作用が中等度以上の薬剤あるいは Na チャネル遮断薬
(intermediate ~ slow kinetic drugs)が第二選択薬となる.
② WPW 症候群(顕在性)および頻拍中の P 波が QRS
波の直前に出現する場合
26
ャネル遮断作用のある薬剤が第一選択薬となり,Na チ
ャネル遮断薬(intermediate ~ slow kinetic drugs)を第
二選択薬とする.
頻拍中の P 波が QRS 波直前にある頻拍には心房内リ
エントリー,洞房結節リエントリー,稀有型房室結節リ
WPW 症候群では上室頻拍発作から心房細動への移行
エントリー性頻拍が含まれるが,稀有型房室結節リエン
が起こりうるので,そのような場合に心室拍数を増す可
トリー性頻拍は前項①と同様に扱う.心房内リエントリ
能性のあるジゴキシンや Ca チャネル遮断薬の予防的投
ー,洞房結節リエントリーでは心房筋の不応期延長が再
与は行わない.副伝導路の不応期を延長するために K チ
発予防に有効であり,WPW 症候群と同様の薬剤が選択
不整脈薬物治療に関するガイドライン
される.洞房結節リエントリーでは Ca チャネル遮断薬
る場合や,患者が非薬物治療による根治を強く希望する
やβ遮断薬の効果も期待できる.
場合には,最近ではカテーテルアブレーション治療も有
自動能亢進による心房頻拍は一般に抗不整脈薬の再発
力な選択肢の 1 つになってきた 65).
予防効果が弱いので,アブレーションを考慮する 97).
薬物治療に際して,Sicilian Gambit の概念を当てはめ
3)抗不整脈薬による再発予防効果
て病態生理学的にかつ理論的に治療法を選択するには,
抗不整脈薬の経口投与による再発予防効果は欧米の成
発生機序を明確にする必要がある 7),8).したがって発生
98)
績では 60 ~ 75%以上とされている(表 8)
.電気生理
機序の明らかでない多くの心室期外収縮・単形性非持続
検査で有効性の認められた抗不整脈薬を投与した場合の
性心室頻拍に関しては,経験的な治療法選択に頼らざる
再発予防効果は高いことが予想されるが,松川の成績 99)
を得ないのが現状である.
ではⅠ群薬,Ca チャネル遮断薬による再発予防効果は,
平均 39 か月の追跡期間で 68 例中 34 例(50%)であった.
しかし,3 分以内の自然停止と再発なしを有効とした伊
東らの検討
100)
では,Ⅰ群薬,Ca チャネル遮断薬は平均
2
病態・臨床的意義
心室期外収縮とともにここに挙げた非持続性心室頻拍
は,6 連発程度までの単形性心室頻拍で心室期外収縮と
28 か月の追跡で 108 例中 91 例(84%)に有効であった.
同一形態を示し,頻拍中の心拍数が極端に多くなく(150/
欧米の 1995 年以降の成績
では,フレカイニド
分を超えない程度)QRS の変形を伴わない場合で,こ
とプロパフェノンは 80 %を超す有効性が報告されてい
の範疇に入るものは心室期外収縮と同じストラテジーで
る.心疾患のない例の場合,有効性を重視すれば図 15
対処することとした.それ以外の非持続性心室頻拍や心
の薬剤選択順位は変わってくる.
機能低下を伴う例に関しては,欧米における大規模試験
発作性上室頻拍はカテーテルアブレーションにより大
のエビデンス 104)-108)を考慮すれば,非薬物治療を含め
部分の例で根治が期待できるので,抗不整脈薬による再
た別の治療戦略を考えるべきである.
発予防は例外的な治療方針となっている.
治療適応ありと判断し,薬物治療を選択する場合には,
101)-103)
5
心室期外収縮
1
はじめに
以下の考え方に従って用いる薬剤を選ぶのがよい.
3
心室期外収縮・単形性非持続性心室頻拍の治療に関し
薬物治療の実際
①特 発性心室期外収縮・特発性単形性非持続性心
室頻拍(図 16)
ては,自覚症状の強さに加えて,基礎心疾患の有無,種
基礎心疾患がない例における心室期外収縮・単形性非
類,重症度,時期などによって治療適応の有無,考えら
持続性心室頻拍は,特発性で一般に予後はよいと考えら
れる発生機序,それに基づく治療法が大幅に異なるのが
れている.したがって,自覚症状がないか軽度の場合は
特徴である.重篤な基礎心疾患がなく,期外収縮に伴う
あえて薬物投与を行う必要はない.むしろ,睡眠不足や
自覚症状が軽度で患者がそれを容忍できる場合には,あ
喫煙など不整脈を悪化させる生活習慣の改善を指導すべ
えて抗不整脈薬による薬物治療を行わず,生活習慣の改
きである.動悸などの症状が中等度または高度の場合,
善や軽い精神安定剤のみで様子を見ることも多い.一方,
不整脈の存在によって QOL が低下し患者が薬物による
薬物治療に抵抗し自覚症状が強く QOL が著しく低下す
治療を望む場合には,以下の手順に従って用いる薬剤を
選択する.
表 8 抗不整脈薬による発作性上室頻拍の予防(長期効果)
薬剤
ベラパミル
ジルチアゼム
ナドロール
プロカインアミド
フレカイニド
プロパフェノン
用量(/日)
240 ~ 480mg
90 ~ 270mg
80 ~ 160mg
1,000 ~ 2,000mg
200 ~ 400mg
450 ~ 900mg
予防効果
> 70%
60%
> 60%
> 60%
> 65%
> 75%
(文献 98 より引用)
【注】各薬剤の用量は日本人には多すぎることに注意.
特発性心室期外収縮・特発性単形性非持続性心室頻拍
に関しては,その期外収縮ないし心室頻拍の QRS 波形
を分析することによって発生機序をある程度推測するこ
とが可能であるので,それに従って病態生理学的アプロ
ーチで選択すべき薬剤を特定することができる.
1)右脚ブロック・左軸偏位(RBBB + LAD)型 QRS 波
形の場合
発生機序は左脚後枝領域の Ca 電流依存性組織におけ
るリエントリーと考えられる.病態生理学的に考えれば,
27
循環器病の診断と治療に関するガイドライン(2008 年度合同研究班報告)
図 16 基礎心疾患を伴わない(特発性)心室期外収縮・単形性非持続性心室頻拍(文献 3 より改変)
特発性心室期外収縮
特発性非持続性心室頻拍
なし∼軽度
*保険適用外
あり
不整脈に伴う症状
生活習慣の改善
期外収縮波形
RBBB + LAD 型
LBBB + RAD 型
その他の波形
〈第一選択〉
Ca チャネル遮断を
主作用とする薬剤
ベラパミル*
ジルチアゼム*
ベプリジル
〈第一選択〉
β遮断作用のある薬剤
β遮断薬
プロパフェノン
交感神経緊張
(運動,活動,興奮)
〈第二選択〉
β遮断薬
〈第三選択〉
Na チャネル遮断薬
(slow)
ジソピラミド
シベンゾリン
ピルジカイニド
フレカイニド
ピルメノール
Na チャネル遮断薬
(intermediate-fast)
メキシレチン
アプリンジン
プロパフェノン
〈第二選択〉
Ca チャネル遮断を
主作用とする薬剤
ベラパミル*
ジルチアゼム*
ベプリジル
〈第三選択〉
Na チャネル遮断薬
(slow)
ジソピラミド
シベンゾリン
ピルジカイニド
フレカイニド
ピルメノール
Na チャネル遮断薬
(intermediate-fast)
メキシレチン
アプリンジン
受攻性因子は Ca 電流依存性組織における伝導性であり,
関係なし
または不明
関係あり
Na チャネル遮断薬
(slow)
ジソピラミド
シベンゾリン
ピルジカイニド
フレカイニド
ピルメノール
Na チャネル遮断薬
(intermediate-fast)
メキシレチン
アプリンジン
プロパフェノン
β遮断薬
3)その他の QRS 波形の場合
治療の標的分子は Ca チャネルということになる.した
期外収縮波形が上記 1),2)のいずれにも分類できな
がって,第一選択薬としては Ca チャネル遮断を主作用
い場合には,その発生機序を推定することが困難である.
とするベラパミル,ジルチアゼム,ベプリジルが挙げら
したがって,運動時,興奮時など交感神経緊張時に期外
れる.続いて,Ca 電流を抑制するβ遮断薬が第二選択
収縮が多く発生することが分かっている例ではβ遮断薬
として用いられる.これらが無効の場合には経験的に
を優先的に用いるが,その他では理論に基づく選択では
Na チャネル遮断薬が用いられるが,病態生理学的理論
ないものの,第一選択として幅広い抗不整脈効果を示す
に基づく選択ではない.
Na チャネル遮断薬を用いてよい.
2)左脚ブロック・右軸偏位(LBBB + RAD)型 QRS 波
形の場合
②虚血性心疾患に伴う心室期外収縮
多くはカテコラミン依存性であるので,第一にβ遮断
虚血性心疾患を基礎に有する例における心室期外収縮
薬またはβ遮断作用を有するプロパフェノンを選択す
は,ほとんどがリエントリーをその発生機序とすると考
る.また遅延後脱分極(DAD)によるトリガードアク
えられるが,異常自動能やトリガードアクティビティに
ティビティを機序とすることも多いので,第二選択とし
よるものもあり鑑別は困難である.薬剤の選択に当たっ
ては DAD に関与する Ca 電流を抑制することを目的に
ては,虚血状態にあるか否かすなわち期外収縮の発生に
Ca チャネル遮断を主作用とするベラパミル,ジルチア
虚血が関与しているか否かの判断と,心機能低下の有無
ゼム,ベプリジルが選ばれる.これらが無効の場合には
を正確に評価することが重要である.
Na チャネル遮断薬が用いられるが,やはり病態生理学
心筋梗塞あるいは狭心症で,虚血発作に伴って期外収
的理論に基づく選択ではない.
縮が発生するような場合には,まず虚血の改善が先決で
ある.虚血の関与が不明な場合にも,あわてて抗不整脈
28
不整脈薬物治療に関するガイドライン
薬を投与するのではなく各種検査を行って評価するとと
を考慮する.
もに,必要に応じて冠動脈造影を行って虚血があれば積
薬物を選択するに際し必ずしも明確なエビデンスはな
極的に血行再建を図るべきである.
いが,虚血に陥った心筋では膜電位が浅く Na チャネル
1)心筋梗塞急性期(発症 48 時間以内)(図 17)
が不活性化状態にある心筋細胞が多いと考えられるの
心筋梗塞急性期に発生する心室期外収縮に関しては,
で,これに親和性の高いリドカインが用いられる.リド
従来同様 Lown 分類の重症度を参考にして治療方針を決
カインに関してはこれまでに多数の使用実績があること
定する.この時期には,重症度の高い心室期外収縮が致
に加え,陰性変力作用が弱く,心機能抑制を来たす危険
死性不整脈の心室頻拍や心室細動の引き金になることが
性が少ないことも選択の理由である.また欧米を中心に
ある.したがって,Grade 1 では経過観察,Grade 2 ~ 5
プロカインアミドも使用される.しかし,非持続性心室
では心電図を注意深く連続監視し,心室頻拍や心室細動
頻拍が多発し,持続性心室頻拍・心室細動の発生が危惧
の危険性が高いと判断した場合に抗不整脈薬静脈内投与
される場合には,最近の我が国での成績 109)-111)や欧米
におけるエビデンス 112),113)を考慮し,ニフェカラント静
図 17 心 筋梗塞急性期の心室期外収縮・単形性非持続性心室
頻拍(文献 3 より改変)
心筋梗塞急性期
(48 時間以内)
注やアミオダロン静注も積極的に考慮すべきである.な
お,虚血に対する再潅流療法後に発生する不整脈に対し
ては,ATP 感受性 K チャネル開口薬のニコランジルの併
用が奏功することがある.
2)心筋梗塞亜急性期(発症 48 時間~ 1 か月)
(図 18)
Lown 分類
Grade1
Lown 分類
Grade2∼5
経過観察
̶静脈内投与̶
リドカイン
プロカインアミド
ニフェカラント
アミオダロン
この時期には虚血の関与,心機能を再評価し,積極的
に虚血の解除,心機能の改善を図ることが重要である.
現病の治療を進めるのと並行して突然死のリスク評価を
定期的に行い,不整脈に対する治療方針を決定する.通
常は 3 連発未満の期外収縮のみであれば経過観察でよい
図 18 基礎心疾患を有する心室期外収縮・単形性非持続性心室頻拍(心筋梗塞亜急性期を含む)(文献 3 より改変)
心機能評価
正常
軽度低下
心筋梗塞の既往
なし
〈第一選択〉
Na チャネル遮断薬
(slow)
ジソピラミド
シベンゾリン
ピルジカイニド
フレカイニド
ピルメノール
〈第二選択〉
Na チャネル遮断薬
(fast-intermediate)
メキシレチン
アプリンジン
プロパフェノン
ベプリジル a)
注)
あり
心筋梗塞の既往
なし
〈第一選択〉
β遮断薬
Na チャネル遮断薬
(fast-intermediate)
メキシレチン
アプリンジン
ベプリジル a)
〈第一選択〉
Na チャネル遮断薬
(fast-intermediate)
メキシレチン
アプリンジン
プロパフェノン
ベプリジル a)
〈第二選択〉
ソタロール
〈第二選択〉
ソタロール
〈第三選択〉
ソタロール
a)ベプリジルは Ca チャネルおよび
K チャネル遮断作用も併せ持つ
中等度以上低下
注)
注)
あり
〈第一選択〉
Na チャネル遮断薬
(fast)
メキシレチン
〈第一選択〉
Na チャネル遮断薬
(fast)
メキシレチン
〈第二選択〉
ソタロール
アミオダロン
〈第二選択〉
アミオダロン
注)心筋梗塞の既往または中等度以上の心機能低下がある場合
① Na チャネル遮断薬で生命予後を改善するというエビデンスはない
ので,長期使用は控えるべきである.
②アップストリームアプローチとしてβ遮断薬,ACE 阻害薬,A- Ⅱ
受容体拮抗薬の併用を積極的に考慮する.
③心臓電気生理学的検査で薬剤抵抗性持続性心室頻拍 / 心室細動が誘
発される例では,ICD の適用を考慮する.
29
循環器病の診断と治療に関するガイドライン(2008 年度合同研究班報告)
が,非持続性心室頻拍(心室期外収縮 3 連発以上)を認
ある.虚血の解除や心機能の改善を積極的に進めるのと
める場合には治療適応を考慮する.
並行して,不整脈に対する薬物治療の適応があると判断
不整脈に伴う自覚症状が中等度以上の場合,あるいは
したら,ほぼ前項の心筋梗塞亜急性期の治療方針に準じ
非持続性心室頻拍が重症型(頻拍レートが 120 ~ 200/ 分
て考えればよい.
では 5 連発以上,200/ 分以上では 3 連発以上を重症型と
する)の場合には,積極的に治療を行う.実際の治療法
③その他の心疾患に伴う心室期外収縮
選択にあたっては,図 18 に示すように心機能の状態を
心筋症,弁膜症など心筋梗塞以外の心疾患に伴う心室
重視し,心機能低下の有無とその程度を勘案して選択順
期外収縮に関しても,基本的には,前述の心筋梗塞亜急
位を決定する.なお,CAST その他の大規模試験のエビ
性期における心室期外収縮の治療方針に準じて判断して
デンスから
1),2),114)
,slow kinetic の Na チャネル遮断薬は
よいが,やはり薬剤が長期予後を改善するというエビデ
禁忌と考えるべきである.
ンスはない.薬物治療の適応ありと判断した場合にも,
特に不整脈に伴ってめまい・失神を来たす例では,必
特に心筋症など重篤な基礎心疾患を有する例において
要に応じて心臓電気生理学的検査等を行って突然死のリ
は,陰性変力作用の強い薬剤は避けるなど心機能を十分
スクを詳細に評価し,致死性不整脈が誘発されるなど高
に考慮に入れた薬剤選択が不可欠である.またこの際,
リスクと判断された場合は,アミオダロン,ソタロール
低用量のβ遮断薬,ACE 阻害薬,A- Ⅱ受容体拮抗薬の
を第一選択として用いる.薬剤を適正に用いても効果が
併用も積極的に考慮する必要がある.
不十分で,持続性心室頻拍や心室細動発生の危険性が高
いと判断された場合は ICD を考慮する.
6
持続性心室頻拍
1
はじめに
①心機能正常例
心機能が正常に保たれていれば,β遮断薬あるいは
fast ~ intermediate kinetic の Na チャネル遮断薬を第一選
択として用いることができる.第二選択としては強いβ
ヒス束の分岐部以下を起源とする wide QRS 頻拍で,
遮断作用を持った K チャネル遮断薬のソタロールが挙
30 秒以上持続するか,それ以内でも停止処置を必要と
げられる.
する心室頻拍と定義される.一般的には頻拍中は単一波
②心機能軽度低下例
形(単形性)を示し,上室頻拍に脚ブロックや副伝導路
心機能が多少なりとも低下している例では,陰性変力
経由の心室興奮を伴った場合と鑑別が必要である.鑑別
作用の強い薬剤により心不全を引き起こす危険性があ
ができない場合には心室頻拍として扱う方が無難であ
る.Fast kinetic drug など心機能抑制作用の少ないもの
る.
を用いることは可能であるが,心機能に注意し長期使用
は控えるべきである.なお原疾患に対する治療として,
病態と臨床的意義
低用量のβ遮断薬,ACE 阻害薬,A- Ⅱ受容体拮抗薬の
持続性心室頻拍は不整脈による突然死の主因で,突然
併用を積極的に考慮する.
出現する 117),118).頻拍レートが 200 拍 / 分を超えると高
③心機能中等度以上低下例
率に失神を来たす.心機能の低下例では,より低い頻拍
心機能が中等度以上に低下している例で,期外収縮に
レートでも重症となる.
伴う自覚症状が強く治療が必要と判断された場合には,
持続性心室頻拍の基礎疾患は心筋梗塞,心筋症,催不
陰性変力作用の少ない一部の Na チャネル遮断薬は使用
整脈性右室心筋症,心臓手術後(ファロー四徴症,大血
可能で,メキシレチンなどが考慮されるが,生命予後を
管転位など),原因不明のものなど多彩である 119).抗不
改善するというエビデンスはなく,長期使用は避けるべ
整脈薬の催不整脈作用による例もある.機序はほとんど
きである.非持続性心室頻拍ではアミオダロンが推奨さ
リエントリーで,電気生理学的検査で証明できる 119).
れる 115),116).また電気生理学的検査等でリスクが高いと
心筋は島状または索状に線維組織に囲まれ,伝導遅延を
判断された場合には,ICD 植込みを考慮する
106)
.
3)心筋梗塞慢性期(発症 1 か月以降)
30
2
来たしリエントリー回路の形成に関与する.左室起源の
特発性心室頻拍もリエントリーを機序とするが,Ca チ
この時期に心室期外収縮や非持続性心室頻拍を見た場
ャ ネ ル 遮 断 薬 が 有 効 な 病 的 Purkinje 組 織 が 関 与 す
合にも,やはりそれらの不整脈に虚血が関与していない
る 120),121).右室流出路起源の特発性心室頻拍は運動やカ
かどうか,心機能の低下がないかどうかの評価が重要で
テコラミンで誘発され,トリガードアクティビティを機
不整脈薬物治療に関するガイドライン
序とすると想定される 122),123).
3
去する.急性期にはニフェカラントの静注も有用であ
る 111),125),129).
薬物治療の実際
2)基礎心疾患がない場合
右脚ブロック・左軸偏位(RBBB + LAD)型の QRS
①頻拍の停止
波形を示す特発性心室頻拍は,左脚後枝領域(心室中隔
持続性心室頻拍は院外で突然発症し,救急外来に到着
心尖部より)を起源とし,Ca 電流依存性組織がリエン
時に診断されるものがほとんどを占める.治療はまず停
トリー回路の一部になると考えられる.Ca チャネル遮
止を行う(図 19).意識障害のある例や血行動態の不安
断 薬 の ベ ラ パ ミ ル( 静 注 ) が 奏 功 す る こ と が 多
定な例では,直流通電(DC ショック)を行う.直流通
い 120),121).Na チャネル遮断薬(プロカインアミドなど)
電後も単形性心室頻拍が再発する場合は,アミオダロン,
で徐拍化または停止が得られる例もある.ただし,特発
ニフェカラントまたはリドカインの静注後,再度 DC シ
性と診断できない場合はベラパミルは禁忌である 124).
ョックを行う 113),124),125).頻発する単形性心室頻拍には
左脚ブロック・右軸偏位(LBBB + RAD)型を示す
緊急カテーテルアブレーションの適応となる例もある.
特発性心室頻拍は右室流出路起源のトリガードアクティ
血行動態がある程度安定している場合には薬物治療を
ビティによるものが多い.頻発する非持続性心室頻拍と
行う.心電図のモニターを行いながら静脈内投与し,投
しても認められる.しばしばカテコラミン依存性が証明
与中は頻拍が停止するまで血圧,徐拍効果および QRS
される.停止には ATP,β遮断薬,Ca チャネル遮断薬,
幅の延長などに注意する.薬剤投与で血行動態が悪化し
Na チャネル遮断薬を順次試みる 122),123).
た場合は直流通電を行う.
②再発予防
1)基礎心疾患がある場合(不明の場合も含む)
第一選択薬としてアミオダロンまたはニフェカラント
を静注する
111),113),124),125)
心室頻拍が虚血,電解質異常,薬剤などの可逆的因子
.プロカインアミドの静注も有
によるものかどうかを十分評価する.持続性単形性心室
.アミオダロン,ニフェカラント,プロ
頻拍は,積極的に再発予防を考慮する.基礎心疾患の有
カインアミドが使えない場合や心筋梗塞急性期の心室頻
無で治療法が異なるが,長期投与の必要性から,副作用
効である
126),127)
拍ではリドカインも選択される
124),128)
の少ない薬剤の選択が要求される(図 20).
.
持続性心室頻拍はリエントリーを機序とすることか
1)基礎心疾患がある場合(不明の場合も含む)
ら,頻発する例では心室からのプログラム電気刺激でし
血行動態が不安定な持続性心室頻拍では ICD が選択
ばしば停止させることができる
120)
.植込み型除細動器
される 65),130)-132).血行動態の安定した心室頻拍であっ
(ICD)の植込み後に心室頻拍が頻発する例があるが,
ても,基礎心疾患がある場合には長期予後は不良である
この場合は入院の上,全身麻酔の導入も考慮しつつ抗不
ことから ICD が勧められる 124),133).薬物治療は,何らか
整脈薬の副作用による可能性や誘因を検索し,あれば除
の理由で ICD の植込みできない場合と,ICD 植込み例で
心室頻拍の再発と作動を減少させるために行われる.心
図 19 持続性心室頻拍の停止法
*保険適用外
血行動態
室頻拍の停止効果を示しても,その薬剤が再発予防効果
を有するとは限らない 133).
薬物としては,アミオダロンまたはソタロールが多く
不安定な心室頻拍
DC ショック
安定な心室頻拍
心機能低下
(LVEF<40%)
再発
−静注−
−静注−
アミオダロン
ニフェカラント
リドカイン
アミオダロン
ニフェカラント
リドカイン
DC ショック
停止
用いられる 124),125).ベプリジルや,β遮断薬が選択され
ることもある 134)-136).アミオダロンは電気生理学的検
心機能正常
査の評価なしで用いられることが多い 132).電気生理学
−静注−
的検査の結果に基づいた薬剤選択によって長期的に再発
プロカインアミド
ニフェカラント
アミオダロン
リドカイン
より基礎心疾患の悪化を防ぐ努力も忘れてはならない.
a)ベラパミル
b)ATP*
a)RBBB+LAD 型の特発性心室頻拍
b)LBBB+RAD 型の特発性心室頻拍
*
が予防できるかどうかはわかっていない.内科的治療に
2)基礎心疾患がない場合
左室起源または右室流出路起源の心室頻拍では,停止
薬を経口投与して予防に用いることができるが,これら
の心室頻拍はアブレーションで根治できる率が高いこと
から,カテーテルアブレーションを勧める 65).
31
循環器病の診断と治療に関するガイドライン(2008 年度合同研究班報告)
図 20 持続性心室頻拍の再発予防
基礎心疾患
なし
あり*
カテーテルアブレーション
ICD
ICD拒否・できない例
成功
不成功・拒否
LBBB+RAD型
RBBB+LAD型
β遮断薬
Caチャネル遮断薬
Naチャネル遮断薬
Caチャネル遮断薬
β遮断薬
Naチャネル遮断薬
*:基礎疾患がある例でもカテーテルアブレーションの有効例がある.
**:ソタロールまたはアミオダロン+β遮断薬で作動の減少が図れる.
# 心不全例で有用.
ICDに併用**
アミオダロン
ソタロール
β遮断薬
アミオダロン
ソタロール
ベプリジル
β遮断薬 #
Electrical Storm時
(静注)
ニフェカラント
アミオダロン
β遮断薬
アブレーションが行えない場合または不成功の場合,
改善することが判明しており,ガイドラインでも勧めら
左室起源の心室頻拍では,Ca チャネル遮断薬,β遮断薬,
れている 147).心筋梗塞後の心機能低下例では,ICD の
Na チャネル遮断薬の経口投与を順に試みる.右室流出
予後改善効果が証明されていたが 104),106),107),拡張型心
路起源の心室頻拍では,β遮断薬,Ca チャネル遮断薬,
筋症では,これまではっきりしなかった 148),149).しかし,
Na チャネル遮断薬の経口投与を順次試みる(図 20).
最近の報告では心機能の低下した拡張型心筋症での ICD
3)ICD 植込み例
の有用性が示された 107),150).
ICD の植込み後例に抗不整脈薬を併用するかどうかは
症例ごとに,また施設の考えによって異なる.ソタロー
ル
7
多形性心室頻拍・心室細動・
無脈性心室頻拍
1
はじめに
137),138)
またはアミオダロンとβ遮断薬の併用が ICD 作
動回数を減少させる 139).Electrical storm 例は入院の上
管理する.アミオダロン,ニフェカラントを中心に再発
の抑制を試みるが,これらが無効の例では Na チャネル
遮断薬も有効性を確かめながら選択する.
効血流の低下を来たし即時に意識消失となり,適切な治
③突然死一次予防
療により回復しない場合は死に至るものである.心室細
頻拍が突然死にかかわることは,院外心停止例や突然
動と無脈性心室頻拍は心停止の病態として一般的な電気
死例のホルター心電図および突然死一次予防における
生理的背景と言えるが,他に高度の徐脈性不整脈,心静
ICD の有効性により裏付けられている 104),106),117),118).
止があることも少なくない.このガイドラインでは心室
心筋梗塞後に頻発する心室期外収縮や非持続性心室
細動と多形性心室頻拍に無脈性心室頻拍を含め,いずれ
頻拍があると突然死の危険は増すが,これを Na チャネ
もが心停止を来たすことからここで扱うことにした.
ル遮断薬で治療しても予後は改善しない 1),140).心筋梗
具体的な対処につき病態が①発作が自然停止しない場
塞後例および心不全例でのメタ解析では,アミオダロ
合,②自然停止するが反復する場合に大別した.おおよ
ンは突然死を減少させた
141)
.しかし,最近報告された
心不全例の検討では ICD 群で死亡率の低下を認めた
が,アミオダロン群とプラセボ群の間には有意差が認
められなかった 107).心不全例では突然死が好発するが,
β遮断薬は突然死を含めて重症心不全の予後を改善す
る
142),143)
や抗アルドステロン薬
そ①が心室細動,②が多形性心室頻拍に対応する.無脈
性心室頻拍は①に準ずる病態とみなす.
2
病態・臨床的意義
心室細動は,最も重篤な不整脈で,発作後ただちに脈
が触れなくなり意識が消失する.虚血,心不全などに伴
.
重症心不全では,抗不整脈薬以外に,ACE 阻害薬 144)
32
これらの不整脈は,臨床的には発症とともに急激な有
145),146)
が,突然死も含めて予後を
って発症することが多いが,明らかな心疾患を伴わない
で起こる場合(特発性)がある 151).無脈性心室頻拍
不整脈薬物治療に関するガイドライン
(pulseless VT)は脈拍を触知しない心室頻拍であり有効
な循環を維持し得ない不整脈であるため心室細動と同様
に扱う.
多形性心室頻拍は頻拍中の QRS 波形が刻々と変化し,
3
薬物治療の実際
①発作時の治療(図 21)
QRS 波形が基線を中心にしてねじれているように見え
1)自然停止しない場合
る.多くは非持続性で自然停止するが,時に心室細動に
緊急を要し可能な限り早期の停止が望まれるので,た
移行する.多形性心室頻拍は QT 延長を伴っている場合
だちに直流通電(DC ショック)を行う.心室性不整脈
と伴っていない場合に分けられる.この区別は,両者の
による心停止では,DC ショックを除細動器の最高出力
治療法が異なるので重要である 152).
(一般に単相電流使用の除細動器では 360J)で施行する
QT 延長に伴い発症する多形性心室頻拍は torsade de
157)
(原則として 1 ショックプロトコールが推奨される)
.
pointes(TdP)と呼ばれ,二次的原因が明らかな後天性
停止しない場合には,心肺蘇生術(CPR)を ACLS に習
QT 延長症候群と二次的原因を認めない先天性 QT 延長
い速やかに再開するとともにエピネフリンまたはバソプ
症候群に分類される.後天性の原因は薬剤によるものが
レッシンを静注する.原則として CPR5 サイクルを施行
多く,抗不整脈薬(Ⅰ a 群,Ⅲ群)だけでなく,非心臓
し,心電図により発作の停止を確認できない時には再度
薬(向精神薬,抗生剤,抗アレルギー薬など)が原因の
DC ショックを施行する.これでも停止しない場合には,
こともある(表 9).先天性の場合は,遺伝の様式と聾
ニフェカラント,アミオダロンを第一選択として,また
唖の有無から Jervell and Lange-Nielsen 症候群と Roma-
は第二選択としてリドカイン(急性冠症候群(ACS)に
no-Ward 症候群に分類される.今日では Romano-Ward
伴う多形性心室頻拍には妥当とされる)158)を静注し,再
症候群は遺伝子型により LQT1 から LQT10 までの 10 型
度 DC ショックを試みる 113).
が 2007 年までに報告されている
2)自然停止するが再発を繰り返す場合
153)
.
QT 延長を伴わない多形性心室頻拍は,虚血,心不全,
洞調律の心電図(発作前または発作の合間に記録され
ショックなどの心機能低下に伴って起こる場合が多い
る心電図)において QT 延長の有無を診断する.QT 延
が,この場合は心室細動への前駆的不整脈といえる.明
長を認める場合は QT 延長を起こしている原因治療が基
らかな心疾患を伴わず起こる多形性心室頻拍(特発性)
本であるが,いずれの原因でもマグネシウム(Mg)の
の代表的なものに,Brugada 症候群,カテコラミン誘発
静注が有効である 159).また,低カリウム血症など電解
多形性心室頻拍がある.Brugada 症候群は胸部誘導(V1
質異常を認めれば補正することが重要である.QT 延長
~ V3)の ST 上昇を特徴とする疾患で,若年~壮年男性
の原因が徐脈の場合は心室ペーシングが最も有効である
の突然死の原因として注目されている 154).一方,カテ
が,心拍数が比較的保たれている場合でも心室ペーシン
コラミン誘発多形性心室頻拍は,感情の高まり,運動,
グで心拍数を増加させると発作が消失することが多
イ ソ プ ロ テ レ ノ ー ル で 発 作 が 誘 発 さ れ る( 用 語 解
い 160).二次的原因を認めない先天性 QT 延長症候群の場
155)
説)
.その他に,QT 短縮症候群(SQTS)156),明らか
合は,理論的には責任遺伝子の違いで有効薬剤が異なる
な誘因や心電図学的特徴が認められない特発性多形性心
可能性がある.β遮断薬が基本的な発作予防薬 161)とな
室頻拍・心室細動がある.
るが,LQT3 では明らかな効果がないとする報告 162),あ
るいは LQT1 と比較して LQT2,LQT3 での心事故発症
表 9 後天性 QT 延長症候群の原因
1. 抗不整脈薬:
2. 著明な徐脈:
3. 電解質異常:
4. 向精神薬:
5. 抗生剤:
6. その他の薬剤:
7. 心疾患:
8. 内分泌疾患:
9. 脳血管障害:
10. 栄養障害:
11. 感染症:
Ia 群,III 群薬
完全房室ブロック,洞機能不全
低 K 血症,低 Mg 血症,低 Ca 血症
抗精神病薬①フェノチアジン系(クロールプロマジンなど)
②ブチロフェノン系(ハロペリドールなど)
,抗うつ薬(アミトリプリチンなど)
エリスロマイシン , アジスロマイシン,クラリスロマイシン,ペンタミジン
テルフェナジン,シメチジン,プロブコール,シサプリド
心筋炎,心筋梗塞,心腫瘍
甲状腺機能低下症,副甲状腺機能低下症,褐色細胞腫
クモ膜下出血,脳内出血,頭部外傷
神経性食欲不振,飢餓
HIV
33
循環器病の診断と治療に関するガイドライン(2008 年度合同研究班報告)
率が高いことが示されている 163),164).なお,SCN5A 変
3)再発予防に対する治療(図 22)
異による LQT3 では Na チャネルの不活性化の障害が病
器質的心疾患を有し心機能が低下している場合の長期
因とされることから,メキシレチン,フレカイニドとい
治 療 は, 植 込 み 型 除 細 動 器(ICD) が 第 一 選 択 で あ
った Na チャネル遮断薬が QT 間隔の短縮目的に利用さ
る 132).器質的心疾患を有するが心機能が正常または軽
れる 165).QT 延長を認めない場合は,虚血の関与が最も
度低下の場合は,ICD に代わる治療としてアミオダロン
重要なのでその有無を診断し,虚血が関与している場合
投与がある.
は虚血の改善が最も有効な手段となる.改善するまでの
明らかな器質的心疾患を認めない場合は QT 延長の有
間はアミオダロン静注(二次選択としてリドカイン静注)
無により対応が異なる.QT 延長を認めその原因が明ら
の効果が期待できる 158).虚血の関与がない場合には心
かな場合,原因治療のみで発作は消失する.二次的原因
機能改善の治療とともにニフェカラントないしアミオダ
を認めない先天性 QT 延長症候群の場合は,β遮断薬が
ロンを静注する.QT 延長が明らかでない場合でもマグ
効果的である.β遮断薬使用後も再発する場合は ICD
ネシウムの静注が有効なこともあり,虚血や心不全の治
の適応となる.QT 延長を認めない場合は,心電図と臨
療とともに併用薬として使用してもよい.
床所見から Brugada 症候群,カテコラミン誘発多形性心
図 21 多形性心室頻拍・心室細動・無脈性心室頻拍:発作時の治療
多形性心室頻拍・心室細動・無脈性心室頻拍
持続している場合
反復する場合
DC ショック
DC ショック
QT 延長
あり
DC ショック 1 回施行し停止しない場合は,
ACLS 開始,エピネフリン,バゾプレシン静注
なし
Mg 静注
虚血の関与
あり
なし
虚血の治療
アミオダロン
リドカイン
ニフェカラント
静注
アミオダロン
ニフェカラント
静注
QT 延長の原因
停止不能の場合
ニフェカラント静注,
アミオダロン静注,
リドカイン静注*
DC ショック
あり
なし
後天性 QT 延長群
先天性 QT 延長群
原因治療
心室ペーシング
β遮断薬
静注
*
第二選択として(本文参照)
図 22 多形性心室頻拍・心室細動・無脈性心室頻拍の予防
多形性心室頻拍・心室細動・無脈性心室頻拍
器質的心疾患の有無
あり
なし
心機能評価
正常または
軽度低下
あり
除去可能な
不整脈発症原因
なし
原因除去
34
ICD
アミオダロン
QT 延長
あり
低下
ICD
QT 延長の原因
なし
発作時・非発作時の心電図
あり
なし
後天性 QT 延長群
先天性 QT 延長群
QT 延長の
原因治療
β遮断薬
ICD
Brugada
症候群
カテコラミン
誘発性頻拍
その他
ICD
β遮断薬
ICD
ICD
アミオダロン
不整脈薬物治療に関するガイドライン
室頻拍など特殊な疾患を診断する.Brugada 症候群にお
ける致死的不整脈に対してはイソプロテレノール
キニジン
166)-168)
,シロスタゾール
169)
,ベプリジル
166)
,
170)
が
有効であったとの報告があるが,その再発予防効果は確
立していないので必要に応じ ICD 植込みを行う 171).カ
ック,運動選手や夜間睡眠中にみられる洞徐脈や第 2 度
房室ブロック(Wenckebach 型)は治療の対象とはなら
ない.
3
薬物治療の実際
テコラミン誘発多形性心室頻拍の再発予防にはβ遮断薬
上記の症状が徐脈によることが確認された場合には,
が有効な場合があるが,重篤な発作が起こる場合には
薬物治療ではなくペースメーカ植込みの適応となる(表
ICD 植込みが最も確実である.その他の特発性多形性心
65)
10 ~ 12)
.
室頻拍・心室細動では,ICD 植込みに優る有効な治療薬
徐脈を来たす可逆性の原因・誘因がある例では,これ
はない.
らの原因・誘因の除去を行うが,その効果が出るまでの
8
徐脈性不整脈
間,薬物治療あるいは一時的ペーシングを行うことがあ
る.
ペースメーカ植込みの絶対的適応であっても,患者の
1
はじめに
拒否や全身状態(寝たきり,悪性腫瘍の末期など)によ
っては薬物治療を行うことがあり,ペースメーカ植込み
徐脈性不整脈として,ここでは洞性徐脈性不整脈(持
までの橋渡しとして薬物治療あるいは一時的ペーシング
続する洞徐脈,洞停止,洞房ブロック),第 2 ~ 3 度房
が行われることもある.
室ブロック,徐脈性心房細動を対象にする.
交感神経系の刺激あるいは副交感神経系の抑制によっ
2
病態・臨床的意義
て徐脈の改善を図る.薬物治療に共通する問題点は,①
微妙な心拍数のコントロールが困難であること,②経口
徐脈により十分な心拍出量を維持できないと失神,め
投与された場合には効果が一定ではないこと,③イソプ
まい,心不全などの様々な症状が引き起こされる.しか
ロテレノールや類似薬では陽性変力作用のため,動悸が
し,徐脈の程度の軽いものは健康人にも見られ,症状を
問題となること,④心臓外臓器に対する副作用,などで
伴わず治療を必要としないものが多い.第 1 度房室ブロ
ある.
表 10 洞性徐脈性不整脈のペースメーカ植込みの適応(日本循環器学会ガイドライン.文献 65 より引用)
クラスⅠ
1. 失神,痙攣,眼前暗黒感,めまい,息切れ,易疲労感などの症状あるいは心不全があり,それが洞結節機能低下に基づく
徐脈,洞房ブロック,洞停止あるいは運動時の心拍応答不全によるものであることが確認された場合.それが長期間の必
要不可欠な薬剤投与による場合も含む
クラスⅡ a
1. 上記の症状があるが,徐脈や心室停止との関連が明確でない場合
2. 徐脈頻脈症候群で,頻脈に対して必要不可欠な薬剤により徐脈を来たす場合
クラスⅡ b
1. 症状のない洞房ブロックや洞停止
クラスⅢ
1. 症状のない洞徐脈
【注】
クラスⅠ: 有益であるという根拠があり,適応であることが一般に同意されている.
クラスⅡ a: 有益であるという意見が多いもの.
クラスⅡ b:有益であるという意見が少ないもの.
クラスⅢ: 有益でないまたは有害であり,適応でないことで意見が一致している.
表 11 徐脈性心房細動のペースメーカ植込みの適応(日本循環器学会ガイドライン.文献 65 より引用)
クラスⅠ
1. 失神,痙攣,眼前暗黒感,めまい,息切れ,易疲労感などの症状あるいは心不全があり,それが徐脈や心室停止によるも
のであることが確認された場合.それが長期間の必要不可欠な薬剤投与による場合も含む
クラスⅡ a
1. 上記の症状があり,徐脈や心室停止を認めるが,両者の関連が明確でない場合
クラスⅢ
1. 症状のない徐脈性心房細動
【注】クラスⅠ~Ⅲの定義は表 10 と同様.
35
循環器病の診断と治療に関するガイドライン(2008 年度合同研究班報告)
表 12 房室ブロックのペースメーカ植込みの適応(日本循環器学会ガイドライン.文献 65 より引用)
クラスⅠ
1. ブロック部位に関わらず,徐脈による明らかな臨床症状を有する第 2 度,高度または第 3 度房室ブロック
2. ブロック部位に関わらず,高度または第 3 度房室ブロックで以下のいずれかを伴う場合
①投与不可欠な薬剤によるもの
②改善の予測が不可能な術後房室ブロック
③房室接合部のカテーテルアブレーション後
④進行性の神経筋疾患に伴う房室ブロック
⑤覚醒時に著明な徐脈や長時間の心室停止を示すもの
クラスⅡ a
1. 症状のない第 2 度,高度または第 3 度房室ブロックで,以下のいずれかを伴う場合
①ブロック部位が His 束内または His 束下のもの
②徐脈による進行性の心拡大を伴うもの
③運動または硫酸アトロピン負荷で伝導が不変もしくは悪化するもの
2. 徐脈によると思われる症状があり,他に原因のない第 1 度房室ブロックで,ブロック部位が His 束内または His 束下のもの
クラスⅡ b
1. 症状のない高度または第 3 度房室結節内ブロックで,覚醒時に著明な徐脈や長時間の心室停止がない場合
2. 至適房室間隔設定により血行動態の改善が期待できる心不全を伴う第 1 度房室ブロック
クラスⅢ
1. 症状のない第 1 度房室ブロック(脚ブロックを有するものを含む)
2. 症状のない Wenckebach 型第 2 度房室ブロック
3. 一過性で,原因を取り除くことにより改善し,かつ再発もしないと思われる房室ブロック(薬剤性など)
【注】クラスⅠ~Ⅲの定義は表 10 と同様.
1)アトロピン
①洞性徐脈性不整脈の治療(図 23)
迷走神経緊張が関与した例で効果が期待できる.緊急
持続性の洞徐脈,洞停止,洞房ブロックが対象となる.
時には 0.5 mg を静注する(反復投与する場合,総投与
日本循環器学会のペースメーカ植込みのガイドラインを
量は 3mg までとする).経口では 1.5 ~ 3.0 mg/ 日を投与
表1065)に示す.徐脈による症状があって,可逆性の原因・
する.アトロピンの半減期は 4 時間ほどであり,安定し
誘因がなく,植込みの絶対的適応がある場合に,ペース
た効果を得ることは困難である.抗コリン作用による副
メーカ植込みを行う.徐脈が必要不可欠な薬剤の長期投
作用は避けられず,経口投与することはほとんど行われ
与による場合にもペースメーカの適応である.
ない.
徐脈による(と思われる)症状があっても,ペースメ
2)交感神経作動薬
ーカ植込みの絶対的適応のない場合(徐脈の程度が軽く,
イソプロテレノール 0.01 ~ 0.03μg/kg/ 分の持続点滴
自覚症状が軽い場合など)に薬物治療が行われることが
が,緊急時やペースメーカ植込みまでの橋渡しとして使
ある.
用される.アトロピンが無効な場合,イソプロテレノー
ルに先立って,アドレナリン(2 ~ 10μg/ 分)やドパミ
図 23 洞性徐脈性不整脈,徐脈性心房細動,房室ブロック
(第 2 〜 3 度)の治療方針
徐脈に伴う症状(失神,めまい,心不全など)
なし
あり
無治療
経過観察
可逆性の原因・誘因
(薬剤など)
なし
なし
アトロピン
イソプロテレノール
など
36
あり
ペースメーカ
植込み
60 mg/ 日(分 3 ~ 4)やオルシプレナリン 30 ~ 60 mg/ 日
を増すので,虚血性心疾患のある場合には慎重に投与す
る.
3)テオフィリン
アデノシンは A1 プリン受容体を介してアセチルコリ
原因・誘因の除去
無効,不能
ある 172).経口投与としては,イソプロテレノール 45 ~
(分 3 ~ 4)を用いる.いずれの場合も心臓の酸素需要量
あり
ペースメーカ植込み
の適応
ン(2 ~ 10μg/kg/ 分)の使用を推奨するガイドラインも
有効
ン感受性 K チャネルを活性化して,洞房結節自動能や房
室結節伝導能を抑制する.したがって,アデノシン A1
受容体遮断薬であるテオフィリンは,洞結節の自動能を
経過観察
亢進し洞性徐脈性不整脈に効果が期待される 173)-176).
アトロピンが無効な徐脈性不整脈にも有効なことがあ
る 175).
不整脈薬物治療に関するガイドライン
症状のある Rubenstein Ⅱ型の洞不全症候群(洞停止>
2.5 秒)の 17 例にテオフィリン 200 ~ 400 mg/ 日が 1 か
月間投与され,平均心拍数の増加(51/ 分→ 61/ 分),最
いるので,投与中は慎重な経過観察が必要である.
9
小児の不整脈
長 RR 間隔の短縮(4.7 秒→ 2.2 秒),自覚症状の消失を
認めた.8 ~ 37 か月投与を継続した 11 例中 9 例で症状は
現在,小児においても頻拍性不整脈の治療はカテーテ
改善した 177).
ルアブレーションが主体となっているが,乳児や,先天
消化器症状のためにテオフィリンの投与継続が困難な
性心疾患,先天性心疾患術後などの解剖学的理由でカテ
例も少なからず存在する.徐脈性不整脈に対する保険適
ーテルアブレーションが困難な症例に関しては,抗不整
用は得られていない.
脈薬が使用される.抗不整脈薬の効能,適応,用法,用
4)シロスタゾール
量はすべて成人を対象に考えられ,小児に対しては「有
シロスタゾールはフォスフォジエステラーゼの阻害薬
効性や安全性は確立されていない(使用経験が少ない)」
で,細胞内の cyclic-AMP を増加させて,血管拡張や抗
と添付文書に記載されている.ジゴキシン,フレカイニ
血小板作用を発揮する.洞房結節に対する陽性変時作用
ド以外のすべての抗不整脈薬の投与は安全性が確立され
の機序には不明な点があるが,臨床例において徐脈性不
ていないことになる.しかし,保険上使用することは可
整脈の治療に効果を発揮する.
能であり,臨床的な有用性も数多く報告されている.本
洞不全症候群に対してシロスタゾール 200 mg/ 日が 2
ガイドラインでは,日本小児循環器学会が作成した抗不
週間投与され,平均心拍数の増加(54/ 分→ 79/ 分),最
整脈薬ガイドライン 181)に準じた提案を行うが,決して
大 RR 間隔の短縮(2.68 秒→ 1.96 秒)が認められた 178).
これらの薬物の使用を推奨するものではなく,あくまで
テオフィリン同様,徐脈性不整脈に対する保険適用は得
も小児への抗不整脈薬の使用は医師の裁量で判断するこ
られていない.
とになる.なお,ここでいう小児とは 15 歳前後までを
いう.
②徐脈性心房細動の治療(表 1161))
房室結節の伝導性を高めることにより,心房細動例の
心室拍数を増加させることができる.その基本的な治療
方針は洞性徐脈性不整脈と同様に立てる(図 23).洞性
徐脈性不整脈との違いは,ペースメーカ機能の選択(徐
1
発作性上室頻拍
①不整脈の機序
発作性上室頻拍には房室回帰性頻拍(AVRT),房室
脈性心房細動には VVIR を選択)くらいである.
結節リエントリー性頻拍(AVNRT),心房頻拍(ミクロ
徐脈性心房細動にシロスタゾール 200 mg/ 日が投与さ
リエントリー),心房内リエントリー性頻拍,洞房結節
れ,2 週間後に平均心拍数の増加(52/ 分→ 71/ 分),最
リエントリー性頻拍などがあり,小児期ではほぼこの順
大 RR 間隔の短縮(3.89 秒→ 2.22 秒)を認めた
で頻度が多い.その中でも房室回帰性頻拍が半数以上を
178)
.同様
の効果が他にも報告されている 179),180).
占める.
③房室ブロックの治療
②治療の適応
表 12 示すペースメーカ植込みの適応の有無により治
1)頻拍発作 182),183)
療方針を決めるが,他の徐脈性不整脈と同様,徐脈によ
持続性もしくは反復性頻拍では心不全になる可能性が高
る自覚症状の存在が重要である(図 23).洞性徐脈性不
いのでなるべく早期に頻拍を停止させる.特に新生児,
整脈の場合との違いは,①一過性の誘因として急性下壁
乳児期の症例は治療を急ぐ必要がある.
梗塞がしばしば関係する,②ペースメーカは原則として
2)頻拍発作の予防
DDD(R)あるいは VDD(R)を選択する,③ブロッ
①繰り返す頻拍発作や長時間続く頻拍発作.②新生児期
ク部位によって薬剤の効果に差がある(アトロピンはヒ
に発作があった場合,新生児・乳児期は早期に心不全と
ス束以下のブロックには効果は期待できない),④テオ
なり,頻拍の発見が遅れる可能性が高いので,頻拍発作
フィリンやシロスタゾールの房室伝導能の改善効果は弱
予防のため数か月間抗不整脈薬を投与することが望まし
いこと
178)
などである.
い.
いずれのタイプの徐脈性不整脈であっても薬物治療の
長期的な有効性,安全性については不明な点が残されて
37
循環器病の診断と治療に関するガイドライン(2008 年度合同研究班報告)
フェノン 190),フレカイニド 191),192)など)を投与する.
③治 療
房室伝導抑制作用のある薬(ジギタリス,Ca チャネル
1)頻拍の停止(図 24)
遮断薬など)は副伝導路の有効不応期を短縮させること
① DC ショック
もあるので慎重に投与する 193).顕性 WPW 症候群以外
全身状態が不良で,上室性頻拍かどうか診断が困難な頻
ではジゴキシン,β遮断薬,Ca チャネル遮断薬,Na チ
拍症では,必要に応じて心肺蘇生を行いながらカルディ
ャネル遮断薬などを使用する.
オバージョン(0.5 ~ 2.0 J/kg)(QRS 同期),もしくは
[注意]
除細動を行う.
②迷走神経手技(息こらえ,Ice bag,顔面浸水,頚動
①新生児,乳児期では,Ca チャネル遮断薬の感受性が
脈洞マッサージなど)をまず行い効果がない場合に薬物
高 く, 徐 脈, 心 停 止 と な り や す い の で 禁 忌 で あ
療法を行う.新生児・乳児にはこのような手技は困難で
る 187),188).
あり,薬物治療が主体となる.
② ATP はジピリダモール投与下で作用が増強し,キサ
③薬物療法
ンチン誘導体投与下で作用が低下する.また,喘息の誘
ほとんどの上室性頻拍が房室結節を頻拍回路に含んでい
発には注意する.ATP は半減期が短いため,原液のまま
るため,房室結節伝導抑制のためにまず ATP を急速静
で急速静注し,引き続いて 5%糖や生理食塩水を急速静
注する
184)-186)
.効果が持続しない場合には Ca チャネル
遮断薬(ベラパミルなど)をゆっくり静注 187)-189)また
はジゴキシンを静注する.
房室回帰性頻拍では副伝導路の不応期延長や伝導抑制を
もたらす Na チャネル遮断薬(プロカインアミド,ジソ
注する.
2
非発作性上室頻拍(心房頻拍)
①不整脈の機序
ピラミド,フレカイニドなど)をゆっくり静注する.
心房筋の異常自動能,トリガードアクティビティによ
2)発作の予防(図 25)
ると考えられている.
顕性 WPW 症候群があるときにはβ遮断薬や Na チャ
ネル遮断薬(プロカインアミド,ジソピラミド,プロパ
②治療の適応
自然に頻拍が消失することもあるが,慢性化し,心機
能低下を認める場合(頻拍誘発性心筋症)には治療が必
図 24 発作性上室頻拍の停止(小児)
要である.
発作性上室頻拍
*保険適用外
血行動態の悪化
あり
†新生児・乳児は禁忌
図 25 発作性上室頻拍の発作予防(小児)
なし
DC ショック
発作性上室頻拍
迷走神経手技
停止
持続
副伝導路あり
ATP*
ベラパミル†
ジゴキシン
停止
持続
Na チャネル遮断薬
プロカインアミド
ジソピラミド
フレカイニド
停止
慢性期の治療
38
副伝導路なし
β遮断薬
Na チャネル遮断薬
(intermediate∼slow)
プロカインアミド
ジソピラミド プロパフェノン
フレカイニド
ジゴキシン
β遮断薬
Ca チャネル遮断薬
Na チャネル遮断薬
(intermediate∼slow)
プロカインアミド
ジソピラミド
プロパフェノン
フレカイニド 持続
DC ショック
(カルディオバージョン)
頻回発作
薬剤抵抗性
アブレーション
不整脈薬物治療に関するガイドライン
③治療(図 26)
3
特発性非持続性心室頻拍
薬剤抵抗性の症例や心機能低下の場合にはカテーテル
非持続性心室頻拍の定義は心室拍数 100 ~ 120/ 分以上
アブレーションを第一選択とする.
の心室期外収縮の 3 連発以上または 30 秒以上連続しな
1)心房頻拍の停止,予防
い心室期外収縮の連発をいう.比較的予後良好な症例も
異常自動能には,交感神経β遮断薬(プロプラノロー
多いが,動悸,失神などの症状を訴える例や,長期間心
ルなど)が有効
194),195)
とされ,トリガードアクティビテ
196),197)
室頻拍が持続すると心不全になる例もある.また,カテ
に
コラミン誘発多形性心室頻拍 155),203),204)や short coupled
も停止効果が認められることがある.その他 Na チャネ
variant torsade de pointes(TdP)205)も非持続性のことが
ル遮断薬(ジソピラミド,フレカイニド 191),198),199),プ
多いが,予後の悪いものも少なくないので,厳重な管理,
ィにはβ遮断薬の他,Ca チャネル遮断薬,ATP
ロパフェノン
190)
200)
),K チャネル遮断薬(ソタロール) ,
アミオダロン 201),ベプリジルによる停止効果が期待さ
れる.
治療が必要である.
①不整脈の機序
2)心室拍数の調節
頻拍の機序としては,異所性自動能亢進,トリガード
頻拍の出現や持続を抑制できないときには,房室結節
アクティビティ,リエントリー性のものも含まれる.心
伝導を適度に抑制し心室拍数を調節することが行われ
室頻拍の QRS 波形が左脚ブロック・右軸偏位(LBBB
る.この目的のために,
β遮断薬,Ca チャネル遮断薬(ベ
+ RAD)型の場合は右室(まれに左室)流出路起源で
ラパミル),ジゴキシンの単独または併用が用いられ
遅延後脱分極(DAD)によるトリガードアクティビテ
る
202)
ィも考えられているが,この形の心室頻拍は運動により
.
誘発されるものもある.右脚ブロック・左軸偏位(RBBB
[注意]
+ LAD)型の心室頻拍では左室心尖部付近のリエント
①心機能低下例に陰性変力作用のある薬剤は適さない.
心室拍数調節の目的では,ジギタリスが適当であり,難
治例にはアミオダロンも考慮すべき薬剤である.
② ATP が有効な場合,トリガードアクティビティの他,
洞房結節リエントリー性頻拍,心房内リエントリー性頻
リーと考えられている.
②治療の適応
1) 失神,めまい,心停止,心不全,頻拍誘発性心筋症
など,症状のあるもの.
2) 運動負荷で再現性をもって,心室拍数 200 以上の心
拍なども考えられる.
室頻拍が誘発されるもの.または多形性心室頻拍が誘
発されるもの.
3) 運動とは無関係に心室拍数 200 以上の非持続性心室
図 26 非発作性上室頻拍の治療(小児)
4) 多形性心室頻拍が頻回に見られるもの
非発作性上室頻拍
③治 療
心機能低下またはその可能性
なし
経過観察
保険適用外
*
頻拍が繰り返し起こるもの.
あり
β遮断薬
Ca チャネル遮断薬
ATP*
Na チャネル遮断薬
(intermediate∼slow)
K チャネル遮断薬
ベプリジル*
1)頻拍停止(図 27)
アブレーション
頻拍が停止しない
心室拍数調節
β遮断薬
Ca チャネル遮断薬
ジゴキシン
右脚ブロック・左軸偏位(RBBB + LAD)型では Ca
チャネル遮断薬静注,効果がなければβ遮断薬や解離の
遅い Na チャネル遮断薬(ジソピラミド 206),フレカイニ
ド 191),192)など)を静注する.
左脚ブロック・右軸偏位(LBBB + RAD)ではβ遮断薬,
効果なければ Ca チャネル遮断薬や,解離速度の遅い Na
チャネル遮断薬を静注する.
それ以外の心室頻拍には解離速度の速い Na チャネル
遮断薬(リドカイン,メキシレチンなど)を静注する.
通常の抗不整脈薬が無効の場合にはアミオダロンやニ
39
循環器病の診断と治療に関するガイドライン(2008 年度合同研究班報告)
図 27 非持続性心室頻拍の停止(小児)
非持続性心室頻拍
治療の適応
あり
なし
RBBB+LAD 型
経過観察
その他
LBBB+RAD 型
〈第一選択〉
Ca チャネル遮断薬
〈第一選択〉
β遮断薬
〈第二選択〉
β遮断薬
Na チャネル遮断薬
(intermediate∼slow)
ジソピラミド
フレカイニドなど
〈第二選択〉
Ca チャネル遮断薬
Na チャネル遮断薬
(intermediate∼slow)
ジソピラミド
フレカイニドなど
〈第一選択〉
Na チャネル遮断薬
(fast)
リドカイン メキシレチン 〈第二選択〉
アミオダロン
ニフェカラント
慢性期の予防
図 28 非持続性心室頻拍の予防(小児)
非持続性心室頻拍
RBBB+LAD 型
LBBB+RAD 型
〈第一選択〉
β遮断薬 〈第一選択〉
Ca チャネル遮断薬
β遮断薬
〈第二選択〉
Na チャネル遮断薬
(intermediate∼slow)
プロパフェノン
ジソピラミド フレカイニドなど
〈第二選択〉
Na チャネル遮断薬
メキシレチン
ジソピラミド
フレカイニドなど
Ca チャネル遮断薬
その他
交感神経緊張
(運動,緊張,興奮)
なし
不明
あり
〈第一選択〉
Na チャネル遮断薬
(intermediate∼slow)
ジソピラミド
フレカイニド β遮断薬
Ca チャネル遮断薬
〈第二選択〉
アミオダロン
ソタロール
ベプリジル フェカラントが適応になる.
④交感神経緊張とは無関係もしくははっきりしない場合
2)頻拍予防(図 28)
結合解離速度の遅い Na チャネル遮断薬(ジソピラミ
①右脚ブロック・左軸偏位(RBBB + LAD)型
ド,フレカイニドなど).通常の抗不整脈薬が無効の場
Ca チャネル遮断薬やβ遮断薬の投与を優先して行う.
合にはアミオダロン,ソタロール,ベプリジルが適応に
有 効 で な け れ ば Na チ ャ ネ ル 遮 断 薬( メ キ シ レ チ
なる.
ン
207)-209)
ジソピラミド,フレカイニドなど)を投与する.
②左脚ブロック・右軸偏位(LBBB + RAD)型
β遮断薬,フレカイニド
210),211)
などの Na チャネル遮
断薬を投与する.Ca チャネル遮断薬も有効な場合があ
る.
3)非薬物治療
カテーテルアブレーションは個々の例について適応を
考慮する.
4
特発性持続性心室頻拍
③運動誘発性のものや交感神経緊張時に出現するもの
持続性心室頻拍は心室拍数が 100 ~ 120/ 分以上の心室
β遮断薬 203),204),Ca チャネル遮断薬など
頻拍が 30 秒以上持続するものをいい,若年者では QRS
波形が右脚ブロック・左軸偏位(RBBB + LAD)型の
40
不整脈薬物治療に関するガイドライン
ネル遮断薬(リドカインやメキシレチンなど)を静注す
ものが比較的多い.
る.有効であれば点滴静注を持続する.
①不整脈の機序
③ QRS 波形が右脚ブロック・左軸偏位(RBBB + LAD)
リエントリー,トリガードアクティビティ,自動能亢
型の心室頻拍には Ca チャネル遮断薬(ベラパミル)を
進などが考えられる.右脚ブロック・左軸偏位(RBBB
静注し,左脚ブロック・右軸偏位(LBBB + RAD)型
+ LAD)型心室頻拍は左脚後枝付近のリエントリーと
の心室頻拍には ATP を静注する.効果がなければβ遮
考えられている.また左脚ブロック・右軸偏位(LBBB
断薬の静注,さらに効果がなければ Na チャネル遮断薬
+ RAD)型は右室(まれに左室)流出路付近のトリガ
を静注する.
ードアクティビティが原因のものが多い.
④その他の場合には中間型の解離速度を持つ Na チャネ
ル遮断薬(プロカインアミドなど)や他の Na チャネル
②治療の適応
遮断薬を静注する.効果がなければアミオダロン,ニフ
頻拍が原因の症状または心不全を有するものや心機能
ェカラントなどを静注する.
低下を認めるもの.
⑤薬剤抵抗性の場合には DC ショックまたは心室ペーシ
運動誘発性で心拍数の速いもの.
ング.
心室拍数が 120/ 分以下
2)頻拍予防(図 30)
212)
または洞調律とほぼ類似の
心拍数で基礎心疾患がなく,心機能障害がなければ原則
カテーテルアブレーションは個々の症例について適応
として治療適応にはならない.
を考慮するが,単形性持続性心室頻拍はカテーテルアブ
レーションの治療成績,安全性が飛躍的に向上している
③治 療
ため,多くの症例で治療の第一選択と考えられる.しか
1)急性期治療(図 29)
し,小児のカテーテルアブレーションが可能な施設は限
①血行動態が不安定な場合には緊急に DC ショックを行
ら れ て お り, ま た, 年 齢, 先 天 性 心 疾 患 の 合 併 や,
う.
Fontan 等の先天性心疾患の術後で解剖学的にアプロー
②血行動態が不安定でなければ解離速度の速い Na チャ
チが困難な場合には,薬物治療を行わざるを得ない例が
図 29 持続性心室頻拍の停止(小児)
持続性心室頻拍
血行動態の悪化
あり
なし
DC ショック
なし
治療の適応
経過観察
*保険適用外
あり
Na チャネル遮断薬(fast)
リドカイン メキシレチン
無効の場合
RBBB+LAD 型
LBBB+RAD 型
〈第一選択〉
Ca チャネル遮断薬
〈第一選択〉
ATP*
〈第二選択〉
β遮断薬 Na チャネル遮断薬
(intermediate∼slow)
ジソピラミド フレカイニドなど
〈第二選択〉
β遮断薬
Na チャネル遮断薬
(intermediate∼slow)
ジソピラミド フレカイニドなど
その他
〈第一選択〉
Na チャネル遮断薬
(intermediate∼slow)
プロカインアミドなど
〈第二選択〉
アミオダロン
ニフェカラントなど
薬剤抵抗性
DC ショックまたは
ペーシング
41
循環器病の診断と治療に関するガイドライン(2008 年度合同研究班報告)
図 30 持続性心室頻拍の予防(小児)
持続性心室頻拍
アブレーション
アブレーション施行が困難な場合
RBBB+LAD 型
LBBB+RAD 型
その他
〈第一選択〉
Ca チャネル遮断薬
〈第一選択〉
β遮断薬
Ca チャネル遮断薬
交感神経緊張
(運動,緊張,興奮)
〈第二選択〉
β遮断薬
Na チャネル遮断薬
ジソピラミド プロカインアミド
メキシレチン
フレカイニドなど
〈第二選択〉
Na チャネル遮断薬
ジソピラミド
プロカインアミド
フレカイニドなど
いいえ
不明
Na チャネル遮断薬
ジソピラミド
フレカイニド
はい
β遮断薬
Ca チャネル遮断薬
難治性
アミオダロン
ソタロール
ベプリジル 薬剤抵抗性
ICD
多い.
頻拍である 203),204).本症の定義は,① 3 心拍以上,2 種
① 右脚ブロック・左軸偏位(RBBB + LAD)型の心室
類以上の QRS 波型を持つ心室頻拍がカテコラミンまた
頻拍には Ca チャネル遮断薬を投与するが,効果が
は運動負荷で誘発されること,②電解質異常,心筋症,
なければβ遮断薬や Na チャネル遮断薬(ジソピラ
虚血性心疾患など多形性心室頻拍の起こりうる病態が存
ミド 206),プロカインアミド,メキシレチン 207)-209),
在しないこと,③ QT 延長症候群,Brugada 症候群など
フレカイニド
191),192)
など)も有効なことが多い.
② 左脚ブロック・右軸偏位(LBBB + RAD)型の心
室頻拍にはβ遮断薬や Ca チャネル遮断薬を投与す
が否定されたものと定義される.
①不整脈の機序
るが,Na チャネル遮断薬(ジソピラミド 206),プロ
常染色体優性遺伝例では 1q42-43 に存在するリアノジ
カインアミド,フレカイニド 191),192),210),211)など)も
ン受容体 RyR2 の遺伝子異常が 216),217),常染色体劣性遺
有効なことが多い.
伝 例 で は 1p13-21 に 存 在 す る calsequestrin 2(CASQ2)
③ 運動時や交感神経緊張時に出現するものはβ遮断
薬 194),212)や Ca チャネル遮断薬を投与する.
④ 難治性の場合には K チャネル遮断薬(ソタロール 200)
など)やアミオダロン 213)-215),ベプリジルを投与
する.
⑤ 薬剤での難治例には植込み型除細動器(ICD)を考
える.
遺伝子異常が発見された 218)-221).これらの異常により,
筋小胞体から大量の Ca2+ 放出が起こり,トリガードア
クティビティを機序とする心室頻拍が起こるとされてい
る.
②治療の適応
本症は予後が不良であり,発見された場合全員が治療
の適応となる.
[注意]
頻拍発作の予防をどこまで行い,何を目標とするか考え
る.失神や心不全があれば積極的な治療が必要であるが,
1)頻拍の停止
症状が軽い場合や心室レートが少なければ心室不整脈を
カテコラミン誘発多形性心室頻拍の停止には ATP222)
すべて消失させる必要のない場合も少なくない.
やベラパミルが有効である.
5
カテコラミン誘発多形性心室頻拍
カテコラミン誘発多形性心室頻拍は極めてまれな心室
42
③治療
2)頻拍の予防
β遮断薬(プロプラノロール,アテノロール)204),205),
Ca チャネル遮断薬(ベラパミル)204),が使用される.
不整脈薬物治療に関するガイドライン
ICD の適応も考えられているが 204),223),頻回作動の危険
性も報告されている 224).星状神経節ブロックの有効性
も報告されている.225),226)
Ⅳ
解 説
先天性 QT 延長症候群
6
①不整脈の機序
1
用語解説:基礎
1
不整脈発生機序の上流・下流と
電気的リモデリング
遺伝子異常に基づく K チャネルまたは Na チャネル異
常などにより,活動電位の再分極時間を延長し QT 間隔
の延長を来たし,早期後脱分極(EAD)により torsade
de pointes(TdP)型の心室頻拍が発現する.
②治療の適応
不整脈は種々の心疾患(心不全,陳旧性心筋梗塞など)
を基盤として起こることが多い.これらの病態では,イ
心臓性の失神や突然死・失神の家族歴があり,かつ心
オンチャネルの量的・質的変化が起こり,最終的に不整
電図上 QT 時間や QTc 間隔の延長のあるもの.または,
脈の発生につながる.これを「イオンチャネルのリモデ
明らかな交代性 T 波が存在する症例,遺伝子診断で QT
リング」あるいは「電気的リモデリング」と呼ぶ.心房
延長症候群と診断されている症例.
細動においても,イオンチャネルおよび活動電位変化が
③ torsade de pointes(TdP)の予防
β遮断薬(プロプラノロール)が一般的に用いられ
162)
起こり,その結果心房細動を停止させても再発しやすく
なる現象がある.これも「電気的リモデリング」と呼ば
れ,その背景にはいくつかのイオンチャネルのダウンレ
.気管支喘息などがありβ 2 遮断作用により呼吸状
ギュレーションあるいはアップレギュレーションがある
態の悪化する症例では,選択的なβ 1 遮断薬であるビソ
と考えられている.元来「リモデリング」という言葉は
プロロール,アテノロールなどを使用する.
心筋梗塞などの疾患に対する適応現象として心臓が形態
る
メキシレチンは,LQT3 症例の QT 時間を短縮する効
学的な変化を来たすことを意味していたが,ここではイ
果が期待できる場合がある 227).β遮断薬と併用するこ
オンチャネルの変化に基づく機能的変化を指すものであ
ともある.
る.
徐脈時に torsade de pointes を起こしやすい QT 延長症
心不全などの病態においては,交感神経系,レニン─
候群に対しては,ペースメーカ植込みが有効なこともあ
アンジオテンシン系といった神経液性因子が活性化し,
る
228)
その結果病態が進行するとともにイオンチャネルのリモ
.
④ torsade de pointes(TdP)の治療
デリングが生じて,不整脈の発生の場となる基質が形成
される.例えば,心不全では活動電位再分極に関与する
β遮断薬(プロプラノロール),リドカイン,メキシ
いくつかの K 電流,具体的には一過性外向き電流(Ito),
レチンなどを静注する.Ca チャネル遮断薬(ベラパミル)
遅延整流 K 電流の速い成分(IKr)や遅い成分(IKs),そ
の静注 229)や,硫酸マグネシウムの静注が有効な場合も
して内向き整流 K 電流(IK1)といった K 電流の密度が
ある
230)
.
心室細動出現時は DC ショック(2 ~ 4 J/kg)を行う.
⑤一時的ペーシング
すべて減少し,不均一な活動電位持続時間(APD)お
よび不応期の延長が生じ,その結果リエントリー性不整
脈が発生しやすくなる.また,これらの K 電流密度の低
下は早期後脱分極(EAD)の発生や遅延後脱分極(DAD)
最低心拍数を 70/ 分以上に維持する(年齢により最低
といった異常興奮の発生にもつながる(図 31).このよ
ペーシング拍数は異なる)
.
うに病態における神経液性因子の活性化からイオンチャ
ネルの変化にいたるまでの部分を不整脈発生機序の上流
[注意]
(upstream)と呼ぶ.
QTc > 0.46 秒 を QT 延 長 の 基 準 と す る が Bazett に よ る
不整脈発生機序の上流を制御することにより,不整脈
QTc は心拍数が早くなると延長する傾向があるので QTc
の発生を未然に防ごうとするのが upstream approach(上
の測定には注意すること .
流アプローチ)と呼ばれるものである.具体的には心不
43
循環器病の診断と治療に関するガイドライン(2008 年度合同研究班報告)
図 31 心疾患に伴うイオンチャネルリモデリングと不整脈発生
心不全,心肥大
心不全
Ito,IK,IK1減少
IK1減少
Ca2+過負荷
不均一な不応期延長
遅延後脱分極(DAD)
誘発
心不全
陳旧性心筋梗塞
IK 減少
Ito,INa 減少
早期後脱分極(EAD)
誘発
伝導障害,不応期延長
全や心肥大で起きる心室性不整脈に対して,アンジオテ
ない.炎症が心房細動に伴う電気的リモデリングに関与
ンシン変換酵素阻害薬(ACE 阻害薬)やアンジオテン
するということから,ステロイドホルモン等の抗炎症薬
シンⅡ(A- Ⅱ)受容体拮抗薬(ARB)の長期投与を行い,
による治療も試みられている 240).酸化ストレスに対す
心不全や心肥大の進行を抑制するとともに K 電流密度
る抗酸化剤や熱ショック蛋白誘導剤の使用も考えられて
の減少などを抑制して,不整脈を抑制することが知られ
いる 238),241).抗不整脈薬による downstream approach(下
ている.また,実験的にアルドステロン受容体拮抗薬や
流アプローチ)としてのイオンチャネルそのものへの作
エンドセリン受容体拮抗薬についても心肥大や心不全に
用が,upstream approach 的な作用に結びついて心房細
伴う電気的リモデリングを抑制し,不整脈発生を抑制す
動の発生の予防や停止につながることも考えられる.例
ることが示されている 231),232).
えば L 型 Ca2+ チャネル遮断薬,T 型 Ca2+ チャネル遮断薬
心房細動においても,発作性心房細動として発症し,
などは,細胞内 Ca2+ 濃度に影響を与え,電気的リモデ
徐々にその発生頻度,持続時間が増加し,最終的に慢性
リングに抑制的に働く可能性がある(図 32).マルチチ
心房細動に移行することが多い.このように心房細動の
ャネル遮断薬のアミオダロンが実験的心房ペーシングに
持続自体が心房細動の誘発・持続を容易にするという現
よる L 型 Ca2+ チャネル密度の減少という電気的リモデリ
象があることが知られ,“Atrial fibrillation begets atrial
ングを抑制したという報告もなされている 242).
fibrillation(心房細動が心房細動を生む)”と表現されて
リエントリーあるいは自動能の異常によって不整脈が
いる.この現象の成立にも電気的リモデリングが関与し,
起 き て い る 場 合, こ れ を 不 整 脈 発 生 機 序 の 下 流
主に L 型 Ca 電流(ICa.L)の減少によって APD および不
(downstream)と呼ぶ.従来から用いられてきたⅠ群を
応期が短縮して,心房細動が起きやすい状態となってい
中心とする抗不整脈薬はこの下流にあるイオンチャネル
る.心房細動が慢性的に持続すると心房の拡大,間質線
そ の も の を 標 的 と す る も の で あ り,downstream
維化などの器質的リモデリングも起き,心房細動が固定
approach(下流アプローチ)と呼ばれる.例えば,発作
化する.
性心房細動が発現した時ピルジカイニドで Na チャネル
心房細動に伴う電気的リモデリングに対しても ARB
を強力に抑制し,停止させる場合や,ジソピラミド等で
や ACE 阻害薬の投与といったレニン─アンジオテンシン
Na チャネルとKチャネルを抑制し,心房細動の薬理学
系 の 制 御 に よ る upstream approach が 試 み ら れ て い
的除細動を行う場合は downstream approach である(図
る 233)-236).それ以外でも,HMG-CoA 還元酵素阻害作用
32).急性心筋梗塞の発症に伴い心室細動が起きた時に
を持つスタチン系による心房細動の上流療法なども注目
Ⅲ群抗不整脈薬のニフェカラントを点滴静注し,心室細
されている(図 32)
.スタチンの心房細動に伴う電気的
動の再発を防ぐのも downstream approach といえる.
リモデリングに対する抑制効果は実験的,臨床的に報告
一般的にイオンチャネル遮断薬を用いる downstream
があり
44
EAD
DAD
237)-239)
,その作用は脂質低下作用とは無関係で
approach は即効性であり,直接的に緊急を要する不整脈
あり,その抗増殖作用,抗炎症作用,抗酸化作用が関係
を治療することは可能であるが,催不整脈作用などの副
するとされているが,その本態は十分明らかとなってい
作用も多く,使用する場合は注意しなければならない場
不整脈薬物治療に関するガイドライン
図 32 心房細動の成立・維持機構と上流(upstream)および下流(downstream)からのアプローチ
ピルジカイニド
フレカイニド等
upstream approach
ARB、ACE 阻害薬、スタチン薬
ベラパミル
アミオダロン
ベプリジル
INa
ICa.L
ICa.T
Ca ++
興奮伝導
リエントリー
電気的リモデリング
心房細動発症
不応期
IKr
Ito
IKs
IKur
IK.ACh
IK1
再発促進
AF begets AF
キニジン
フレカイニド
Ⅰ群
アミオダロン ベプリジル
Ⅲ群
ベプリジル
ベプリジル シベンゾリン
Ⅰ群
アミオダロン
Ⅲ群
キニジン
ベプリジル
downstream approach
合も多い.これに対して upstream approach はすぐに抗
ばれる時期があり,この時期に外から刺激を加えると,
不整脈効果に結びつくことはないが,長期にわたる治療
それに応じてリエントリーがリセットされ,頻拍のレー
によって不整脈発生基質の生成を抑制し安全に不整脈発
トが変化する(entrainment).
現を抑制することが可能である.
「機能的リエントリー」は,特定の解剖学的構造を必
2
機能的リエントリー
要としない興奮旋回であり,条件が揃えば心臓のどの部
分でも発生する.局所の心筋伝導性の低下や不応期の不
心筋細胞はいったん興奮した後は,100 ~ 500 ms の不
均一性増大は,心房や心室内での機能的リエントリー発
応期に入る.このため,心臓の興奮伝導は一心周期ごと
生を促し,頻拍や細動の原因となる.機能的リエントリ
に完結し,そこで消失する.しかし,特別な条件が揃う
ーでは一拍ごとにリエントリー経路が変わるため,頻拍
と,興奮が一心周期の間に消失せずに,再びもとの部分
のレートは不安定であり,excitable gap や entrainment 現
に戻ってきて,心臓を再興奮させることがある.この現
象もわかりにくくなる.機能的リエントリーがなぜ起き
象を興奮の再侵入(リエントリー)と呼ぶ.リエントリ
るかについては,これまでに 3 つの考え方が提唱されて
ーが成立するための条件としては,「一方向ブロック」,
いる.「リーディング・サークル説」と,「異方性リエン
「遅い伝導」,「不応期の短縮」などがある.これらの諸
条件は心臓の複雑な解剖学的構造や,部位ごとの機能的
特性とその変化によって成立する.
興奮旋回が特定の構造を基盤とするものを「解剖学的
トリー説」,そして「スパイラル興奮説」である.
①リーディング・サークル説
1970 年 代 の 中 頃 に 提 唱 さ れ た 考 え 方 で あ る( 図
リ エ ン ト リ ー」 と 呼 ぶ. こ の 代 表 は WPW(Wolff-
33A).組織の一部に,周囲より不応期の長い部分があ
Parkinson-White)症候群である.上大静脈と下大静脈
ると,連結期の短い早期刺激を加えた時に,その領域で
の開口部を旋回経路とする心房粗動や,心房と房室結節
一方向ブロックが生じ,興奮の旋回が始まる.この主要
を結ぶ fast pathway と slow pathway を旋回する房室接合
な興奮波から多くの小さな興奮波が中心に向かって派生
部リエントリー頻拍,脚枝間の興奮旋回による心室頻拍
し,それらの衝突による電気緊張効果により,中心部で
などもこれに属する.解剖学的リエントリーでは,旋回
は静止電位が減少して興奮性が失われ,不活性中心
経路が固定しており,頻拍の一心周期の間に,経路の一
(inactive core)が形成される.リーディング・サークル
部が不応期を脱した「興奮間隙(excitable gap)」と呼
では興奮波の前面(頭部)がその終末(尾部)を最短の
45
循環器病の診断と治療に関するガイドライン(2008 年度合同研究班報告)
図 33 機能的リエントリー
A. リーディングサークル説
B. 異方性リエントリー
C. スパイラル・リエントリー
Planar wave
Circular wave
Spiral wave
A:リーディングサークル説
ウサギ心房筋標本に早期刺激を加えて誘発したリーディングサークルタイプのリエントリー頻拍(標本周囲の数字は興奮到達時
間,
ms).時計回りの太い矢印(主たる興奮波)から多くの小さい興奮波が中心に向かっており,そこで衝突して不活性中心(inactive
core)を形成している(Allessie MA, et al. Circ Res 41:9-18, 1977)
B:異方性リエントリー(anisotropic reentry)
梗塞作成数日後のイヌの心外膜下残存心筋にバースト刺激で誘発した持続性心室頻拍(VT)発生時の興奮伝播過程.マッピング
,
右側は左室側面(LL)
,上方は心基部,
下方は心尖部(心筋線維はほぼ水平に走行している).
領域の左側は左冠動脈前下行枝(LAD)
(Dillon SM, et al. Circ Res 63: 182-206, 1988)
二つのリエントリー回路が 8 字型のループを描いて形成されている.
C:スパイラル型興奮波
,
中央は中心から周辺へと広がる円形の興奮波(circular wave)
,右はスパイラル型興奮波(spiral
左は直線的な興奮波(planar wave)
wave)を示す.太い実線は興奮前面,斜線は興奮波長(wave length, WL)に相当する脱分極領域を示す.Spiral wave では興奮前面
(Pertsov AM, et al. Circ Res 72:631-650, 1993)
が再分極終末に衝突する特異点(q)を形成する.
経路で追いかける形となる.このためリエントリー経路
向性がある.Gap junction は細胞長軸端の介在板部分に
の長さが不応期と伝導速度の積である興奮波長(wave
集中的に分布することが多く,細胞側面には疎らである.
length)とほぼ一致し,経路の中に不応期を脱した部分
加齢が進むと,細胞の束と束の間の結合組織が増えて,
(excitable gap)がほとんど存在しないことになる.
②異方性リエントリー
46
短軸方向の連絡はさらに悪くなる.心筋梗塞後の残存心
筋や,心筋炎,心筋症に伴う細胞配列の乱れや,線維組
織の増加などがあると,さらに複雑な異方性(anisotropy)
1980 年頃に提唱されたメカニズムである.心臓では,
が発生する.このような心筋では興奮伝導の速度や安全
個々の心筋細胞がギャップ接合(gap junction)を介し
性がミクロの心筋構築によって大きな影響を受けること
て隣り合う細胞と電気的に結合しているが,それには方
になり,リエントリーが生じやすくなる(図 33B).
不整脈薬物治療に関するガイドライン
③スパイラル・リエントリー
己増殖的に繰り返し発生することが細動の本体であり,
エンジンに相当する mother rotor の存在は必ずしも必要
スパイラル・リエントリーは,コンピュータ・シミュ
はないとされている 245),246).最近では,これらの二つの
レーションから提唱された概念であり,1990 年頃から
概念は,相反するものではなく,相補的であり,病態や
膜電位感受性色素を用いた活動電位の光学マッピング実
心筋組織の状態によって両者の寄与が異なるとする考え
験で,その実態が解析できるようになってきた.スパイ
方が主流となってきた.
ラル・リエントリーの成立には,興奮波の端が途切れる
現象(wave break)と,興奮前面の彎曲(curvature)が
伝導に及ぼす影響を考える必要がある.心臓の中を進む
3
Na チャネル遮断薬の多様性
(チャネルの状態親和性,結合解離)
興奮波が,先行興奮の不応期がまだ残っている領域や,
現在,不整脈治療薬として用いられている薬物の多く
梗塞巣,瘢痕などといった障害物にぶつかると,興奮波
は,イオンチャネル遮断薬である.それらの薬物は,イ
の端が途切れて,興奮前面に彎曲ができる.
オンチャネル蛋白の一部(薬物受容体)に結合すること
図 33C はスパイラル興奮の特殊性をあらわす模式図
で,イオンの通過を妨げる.この薬物反応(チャネルブ
である.直線的な興奮波(planar wave)や,一点から
ロック)はチャネルの状態(静止,活性,不活性)に大
周囲へと広がる興奮波(circular wave)では,興奮波の
きく依存している.このチャネルブロックの特性の違い
前面(wave front)と,その終末部(wave tail)の距離(興
が,Na チャネル遮断薬の薬理作用の多様性の原因とな
奮波長,wave length)は一定である.スパイラル興奮
っている.
では,興奮前面の彎曲が,端に向かうにつれて大きくな
る.このため,興奮の下流(未興奮部位)に対する上流
①チャネルの状態と薬物結合
(既興奮部位)の比率がしだいに小さくなり,局所電流
心房筋や心室筋を繰り返し興奮させると,活動電位の
の刺激効率が減少して,伝導速度が低下する.興奮波の
発生に伴って Na チャネルの状態が,静止(resting:R),
端では,興奮前面が再分極終末とぶつかって,伝導速度
活性(activated:A),不活性(inactivated:I),そして
が 0 となる特異点が形成される.そして,興奮波は,こ
再び静止(R)と変化する.A と I の部分,すなわち活
の特異点を中心として螺旋を描いて旋回しつづけること
動電位の立ち上がり相とプラトー相では,受容体の薬物
になる.スパイラル中心の位置は不安定なことが多く,
に対する親和性が高まって,薬物結合が生じ,ブロック
容易にさまよい運動(meandering)を起こす.スパイラ
されたチャネルが増える.一方,再分極後の静止状態
(R)
ルが多数に分裂して,全体の統制が完全に失われたよう
では,親和性が低下して,薬物が受容体から離れるため,
に見えることもある.スパイラル・リエントリーは興奮
ブロックされたチャネルが減る.ブロックされたチャネ
前面のダイナミックな特性を基盤としており,リーディ
ルが増えることは,興奮に際して Na を通すことができ
ング・サークルや,異方性リエントリーとは,不応期,
るチャネルが減ることを意味しており,その結果細胞全
伝導性,興奮性の恒常的な不均一を前提としない点で異
体の Na 電流(INa)が減少して,活動電位の立ち上がり
なっている.しかし,これらの不均一性があれば,スパ
イラルのきっかけとなる興奮波の断端(wave break)や
彎曲(curvature)が発生しやすくなる.
速度(・
Vmax)が低下する(図 34).
②使用依存性チャネル抑制
スパイラル・リエントリーが細動(心室細動,心房細
連続する興奮の間隔が短く,R の時期の薬物解離が十
動)の成立にどのように関わるかについては,現在 2 つ
分完了しないうちに,次々と活動電位が発生すると,ブ
の考え方がある(mother rotor 仮説と dynamic wavebreak
ロックされたチャネルが蓄積的に増えることになり,使
仮説).Mother rotor 仮説では,心臓の一部(不応期の短
用依存性の Na チャネル抑制(use-dependent block)が
い部分)に限られた数の速い回転を示す旋回興奮(rotor)
起 こ る. 心 筋 の 刺 激 頻 度 と 薬 物 に よ る use-dependent
があり,そこがエンジンとなって,周期の短い興奮が発
block の関係は,主として再分極後の拡張期(diastolic
生 し, 周 辺 に 不 規 則 に 伝 搬 す る こ と(fibrillatory
interval)におけるチャネルからの薬物解離速度によっ
conduction)が本体であると考えられている243),244).一方,
て規定される.解離速度の速い薬物は刺激頻度が高いと
dynamic wavebreak 仮説(あるいは continuous wavebreak
きだけ use-dependent block が生ずる.一方,解離速度の
仮説)では,スパイラルが興奮前面と再分極終末の相互
遅い薬物は,低い刺激頻度でも use-dependent block が起
作用により分裂し,端の切れた波面(wavebreak)が自
こる.
47
循環器病の診断と治療に関するガイドライン(2008 年度合同研究班報告)
図 34 Na チャネル遮断薬作用下で心筋に反復性興奮を起こしたときの Na チャネルブロックの進行の様子
0
膜電位
(mV)
−80
Naチャネル
状態
R
I
A
R
I
R
A
I
R
A
100
薬物非結合
チャネル分画
(%)
0
・
Vmax
(V/sec)
100
0
リドカインやメキシレチンは,薬物の結合・解離速度
が速く,fast kinetic drug と呼ばれる.キニジン,プロカ
③結合・解離動態と薬物の効果
インアミド,アプリンジン,プロパフェノンは結合・解
リドカインをはじめとする fast kinetic drug の場合は,
離が比較的遅く(中等度),intermediate kinetic drug と
正常洞調律の拡張期に,薬物が Na チャネルからほぼ完
呼ばれる.フレカイニド,ピルジカイニド,シベンゾリ
全に解離する.このため,連結期の短い期外収縮やレー
*
ン, ジ ソ ピ ラ ミ ド は 結 合・ 解 離 が 最 も 遅 く,slow
トの速い頻拍に対する選択的な抑制効果は期待できる
kinetic drug と呼ばれる(表 13).
が,連結期の長い期外収縮や,比較的レートの遅い頻拍
には抑制作用を発揮しにくい.一方,キニジンに代表さ
*ジソピラミドは intermediate kinetic drug に分類される
れる intermediate kinetic drug や,フレカイニドをはじめ
こともあるが,日本心電学会の「抗不整脈薬ガイドライ
とする slow kinetic drug の場合は,拡張期における薬物
ン委員会」では,多くの文献データを検討した結果,
解離が遅いため,比較的レートの遅い頻拍や,連結期の
slow kinetic drug と み な す こ と に し た(2000 年 版 CD-
長い期外収縮にも効果が期待できる.ただし,低頻度か
ROM ガイドライン).
ら use-dependent block が起こるため,正常洞調律時の興
奮伝導にも抑制効果があらわれ,心電図の QRS 延長や
表 13 Na チャネル遮断薬の多様性
使用依存性抑制
(use-dependent block)
fast
intermediate
短 縮(b)
リドカイン(I)
メキシレチン(I)
アプリンジン(I)
slow
I:不活性化チャネルブロック,A:活性化チャネルブロック
48
活動電位持続時間(APD)
不 変(c)
プロパフェノン(A,I)
フレカイニド(A)
シベンゾリン(A)
ピルジカイニド(A)
延 長(a)
キニジン(A)
プロカインアミド(A)
ジソピラミド(A)
ピルメノール(A)
不整脈薬物治療に関するガイドライン
伝導障害を起こす可能性も高い.
時間と共に遅延整流 K 電流の速い成分(IKr)と遅い成分
(IKs)が流れ,第 3 相に移行する.第 3 相後半には内向
④活 性化チャネルブロックと不活性化チャネルブ
ロック
き 整 流 K 電 流(IK1) が 流 れ, 静 止 膜 電 位 に 戻 る( 図
35).心房筋細胞の活動電位も心室筋細胞とほぼ同様の
Na チャネル遮断薬には,チャネルの活性化状態に高
膜電流系によって形成されているが,これに加えて非常
い親和性を示すものと,不活性化状態に高い親和性を示
に速い活性化過程を示す遅延整流K電流(IKur)が再分
すものがある(表 13).活性化チャネルブロッカーは,
極に関与する.活動電位波形は基本的にはこれらの膜電
活動電位の立ち上がり相で薬物結合が起こるため,活動
流で形成されるが,様々な病態,自律神経などによりこ
電位持続時間(APD)が長くても,短くても同じよう
れ以外の膜電流が活性化され,その波形が修飾される.
にブロックされるはずである.不活性化チャネルブロッ
例えば,虚血時には細胞内 ATP が減少して ATP 感受性
カーは活動電位のプラトー相で薬物結合が生ずるため,
K 電流(IK.ATP)が活性化し,活動電位持続時間(APD)
APD の長い心筋細胞ほど,チャネルブロックが生じや
が短縮する.また,心房筋細胞では副交感神経活性化時
すい.虚血などで,静止電位が浅くなった心筋では,不
にアセチルコリン感受性 K 電流(IK.ACh)が活性化して,
活性化状態の Na チャネルが増加している.不活性化チ
APD の短縮が起こる.
ャネルブロックが主体の薬物は,このような傷害心筋に
1990 年代に多くの K チャネルの分子構造が明らかと
対して,正常心筋よりもはるかに著しい Na チャネル抑
なった.多くの K チャネルは膜 6 回貫通型か膜 2 回貫通
制効果を発揮する.
型に属し,それらのサブユニットが 4 つ集まり,チャネ
4
ルポアを形成する(図 35).膜 6 回貫通型の K チャネル
心筋 K チャネルのサブタイプと薬
物の作用
は電位センサーとして機能する部分を持つ電位依存性 K
チャネルである.膜 2 回貫通型 K チャネルは内向き整流
心室筋細胞および心房筋細胞には多くの K チャネル
K チャネルと呼ばれる K チャネル群である.
が存在し,活動電位再分極に関与することが知られてい
多くの抗不整脈薬が K チャネルに対する抑制作用を
る.心室筋細胞の活動電位では,第 0 相は Na 電流の流
持つ.表 14 に主な抗不整脈薬の K 電流に対する作用を
入によって形成され,その直後の第 1 相では一過性外向
まとめてある.これらの K 電流の中で最も重要なものは
き電流(Ito)が流れノッチを形成して,その後 L 型 Ca
遅延整流 K 電流である.特にその速い成分の IKr に対し
電流(ICa.L)が流れ,第 2 相のプラトー相が形成される.
てはほとんどの抗不整脈薬が抑制作用を示す.新Ⅲ群抗
図 35 主な心筋 K チャネルの分子構造と心室筋細胞および心房筋細胞活動電位再分極への寄与
膜 6 回貫通型チャネル
心室筋細胞
膜 2 回貫通型チャネル
Ito
IK(IKr,IKs)
S3
S4
S2
S1
S5
H5
S6
M1 M2
H5
IK1
H5
H5
心房筋細胞
S1 S2 S3 S4 S5
Ito
S6
M1
M2
IK(IKur,IKr,IKs)
IK1
Ito チャネル(Kv4.2/4.3)
IKur チャネル(Kv1.5)
IKr チャネル(HERG+MiRP1)
IKs チャネル(KvLQT1 + minK)
IK1 チャネル (Kir2.1)
IK.ACh チャネル(Kir3.1/3.4)
IK.ATP チャネル(Kir6.2 + SUR2A)
49
循環器病の診断と治療に関するガイドライン(2008 年度合同研究班報告)
表 14 心筋 K +チャネルに対する各種抗不整脈薬の抑制作用
Ⅲ群
Ⅰ群
アミオダロン急性(慢性)
ソタロール
ニフェカラント
キニジン
ジソピラミド
シベンゾリン
アプリンジン
フレカイニド
プロパフェノン
ピルジカイニド
ベプリジル
Ia
Ib
Ic
Ⅰ,Ⅳ群
IKr
+
+
+
+
+
+
+
+
+
-
+
IKs
(+)
-
-
+
-
+
-
-
+
-
+
IKur
(+?)
-
-
+
-
+
+
-
+
-
+
Ito
(+)
-
-
+
+
-
+
+
-
+
IK1
+
-
-
+
-
-
-
-
-
-
+
IK.ACh
+
-
-
+
+
+
+
-
+
-
+
IK.ATP
+
-
-
+
+
+
+
注)括弧内は慢性作用
不整脈薬であるソタロール,ニフェカラントは IKr 抑制
を抑制し抗不整脈的に働く可能性もあるが,膵β細胞に
作用が主作用である.一般的に IKr を通過させる HERG
おいても ATP 感受性 K チャネルを抑制してインスリン
チャネルを抑制すると,その K チャネルからの薬物の解
分泌を増強することから副作用として低血糖を起こす可
離は非常に遅いので興奮頻度が遅い徐脈においても IKr
能性がある.シベンゾリン,キニジンなどが低血糖を起
を強力に抑制する.一方,興奮頻度が高い頻脈の状況で
こすことが報告されている.一方,ATP 感受性 K チャネ
は活動電位再分極への IKs の寄与が大きくなるので,IKr
ルの活性化は心筋保護的に作用する可能性があり,我が
遮断作用を持つ薬物の APD 延長作用は減弱する.この
国で開発されたニコランジルは虚血性心疾患治療薬とし
結果,IKr 遮断薬の APD 延長作用は「逆頻度依存性」と
て広く利用されている.抗不整脈薬のメキシレチンは弱
なり頻脈ではその作用が減弱し,徐脈ではその作用が強
いながらも ATP 感受性 K チャネル活性化作用を持つ薬
く発現して torsade de pointes(TdP)を惹起しやすい.
物である.
IKr ばかりでなく IKs をも抑制するシベンゾリン,ベプリ
ジル,プロパフェノンは APD 延長作用の逆頻度依存性
が軽度となることが期待できる.アミオダロンは急性作
用として IKr を抑制し,慢性作用として IKs の電流密度を
イオンチャネルの遺伝子異常と不整脈
① QT 延長症候群
低下させる.
イオンチャネルの遺伝子異常が重大な不整脈をもたら
IKur は心室筋細胞に比し心房筋細胞における密度が高
す代表的な疾患は,家族性 QT 延長症候群(LQTS)で
いので,この K 電流に対する抑制作用を示すベプリジ
あ る. そ れ ら は, 常 染 色 体 優 性 遺 伝 を 示 す Romano-
ル,キニジンは心房細動の予防効果が期待できる.プロ
Ward(RW) 症 候 群 と, 劣 性 遺 伝 を 示 す Jervell and
パフェノン,アプリンジン,シベンゾリンなどもその作
Lange-Nielsen(JLN)症候群に分けられる.JLN は RW
用は強力ではないが抑制作用を持つ.Ito に対してもいく
に比べて発生頻度が低く,聴力障害を伴うことが特徴で
つかの抗不整脈薬は抑制作用を示し,心房筋細胞で
ある(内耳の K チャネル機能障害).両者とも,心電図
APD を延長させることが期待できるので心房細動に予
では QT 時間が延長し,QRS 軸がリボンを捻るように連
防的に働くと思われる.
続的に変化する torsade de pointes(TdP)タイプの多形
リガンド作動性 K チャネルに対しても抗不整脈薬は
性心室頻拍や心室細動による失神発作や突然死を起こす
抑制作用を示す.多くの抗不整脈薬はムスカリン受容体
危険性がある.
を遮断するか,あるいは K チャネルを直接的に遮断して
1990 年代の中頃から,この疾患群の病因が心筋イオ
IK.ACh を抑制する(表 14).その作用は心房筋細胞で副
ンチャネルの遺伝子異常であることが次々と明らかにさ
交感神経刺激時の APD 短縮に拮抗し,心房細動の発生
れ て き た.2007 年 ま で に,RW 症 候 群 は LQT1 か ら
を予防する.慢性心房細動患者ではこの KACh チャネル
LQT10 ま で の 10 型 が,JLN 症 候 群 は JLN1,JLN2 の 2
が活性化しやすい状況となっているということも示され
型が報告されている(表 15).
ており
50
5
247),248)
,この抑制薬は心房細動治療薬として再び
LQT1(KvLQT1 の遺伝子異常)は,最も頻度の高い
注目されている.また,ATP 感受性 K 電流(IK.ATP)に対
LQTS である.心筋細胞では,膜 6 回貫通型のα subunit
して抑制作用を示す薬物は虚血心筋における APD 短縮
で あ る KvLQT1(KCNQ1) と, 膜 1 回 貫 通 型 の β
不整脈薬物治療に関するガイドライン
表 15 家族性 QT 延長症候群(LQTS)の遺伝子異常
RW 症候群
染色体
遺伝子
チャネル
LQT1
LQT2
LQT3
LQT4
LQT5
LQT6
LQT7
LQT8
LQT9
LQT10
11p15
7q35
3p21
4q25
21q22
21q22
17q23
6q8A
3p25
11q23.3
KCNQ1(KvLQT1)
KCNH2(HERG)
SCN5A(Nav1.5)
ANK2(ankyrin-B)
KCNE1(minK)
KCNE2(MiRP1)
KCNJ2(Kir2.1)
CACNA1C(Cav1.2)
CAV3(caveolin-3)
SCN4B(Navb4)
IKs ↓
IKr ↓
INa ↑
Ca handling 異常
IKs ↓
IKr ↓
IK1 ↓
ICa,L ↑
INa ↑
INa ↑
11p15
21q22
KCNQ1(KvLQT1)
KCNE1(minK)
IKs ↓
IKs ↓
JLN 症候群
JLN1
JLN2
RW: Romano-Ward, JLN: Jervell and Lange-Nielsen
subunit である minK(KCNE1)が会合して,遅延整流
RW 症 候 群 の う ち で LQT1 ~ 3 は 約 90 % を 占 め る.
型 K 電流の遅い活性化成分である IKs チャネルを構成し
LQT4 ~ 10 については,その頻度が少ないため,病態の
ている.IKs は,交感神経β受容体刺激時に増加し,活
特 徴 は ま だ 十 分 に 解 明 が 進 ん で い な い.LQT4 は,
動 電 位 の 短 縮( 心 電 図 で は QT 短 縮 ) を も た ら す.
ankyrin-B という細胞膜の裏打ち構造蛋白をコードする
LQT1 では IKs チャネルの発現低下や機能異常があって,
遺 伝 子(ANK2) の 変 異 で あ り,Na-K ポ ン プ(Na/K
このような状況下でも K 電流が十分増加しないため,心
ATPase)や Na-Ca 交換機構(NCX)などの細胞膜発現
室の再分極が遅れて,その不均一性が増したり,L 型 Ca
の異常と,細胞内 Ca 負荷を来たす.LQT5 は IKs チャネ
電流(ICa,L)が増加して過度の APD 延長から,早期後脱
ルのβ subunit(minK)をコードする遺伝子(KCNE1)
分極(EAD)が発生し,TdP タイプの多形性心室頻拍が
の変異であり,IKs チャネルの機能喪失のため LQT1 に類
発生しやすくなる.
似 し た 病 態 を 示 す.LQT6 は IKr チ ャ ネ ル の β subunit
LQT2 は遅延整流 K 電流の速い活性化成分(IKr チャネ
(MiRP1)をコードする遺伝子(KCNE2)の変異であり,
ル)のα subunit である HERG(KCNH2)の異常が原因
LQT2 と同様 IKr の機能喪失をもたらす.LQT7 は周期性
で発症する.このチャネルを特異的に抑制する薬物(抗
四肢麻痺と骨格異常を合併する Anderson-Tawil 症候群
不整脈薬,抗ヒスタミン薬,あるいは抗生物質の一部)
であり,原因遺伝子としては,内向き整流 K チャネル電
によっても LQT2 に類似した病態が生ずることがある.
流(IK1)のα subunit(Kir2.1)をコードする KCNJ2 が
LQT2 でも,運動や精神的興奮,驚愕が引き金となって,
同定されている.LQT8 は Timothy 症候群と呼ばれる先
TdP タイプの多形性心室頻拍や失神発作などが起こりや
天異常であり,心奇形,合指症,免疫不全などを伴う.
すい傾向がある.HERG チャネルは細胞外 K 濃度に対す
原因遺伝子は L 型 Ca チャネルのα subunit(Cav1.2)を
る感受性が高いため,LQT2 では低 K 血症で症状が悪化
コードする遺伝子(CACNA1C)の変異であり ICa,L の異
し,高 K 血症で軽減する.
常(機能獲得タイプ)をもたらす.最も新しく同定され
LQT3 は Na チャネルのα subunit をコードする遺伝子
た LQT9 と LQT10 の原因遺伝子は,それぞれ caveolin-3
(SCN5A)の異常が原因である.正常の Na チャネルは,
と Na チャネルのβ subunit(Navb4)をコードする CAV3
活動電位の立ち上がりの部分で速やかに活性化されたあ
と SCN4B の変異であり,いずれも Na チャネル電流の増
と,ただちに不活性化される.LQT3 の Na チャネルでは,
大(機能獲得タイプ)をもたらす 171),249),250).
不活性化が不十分なため,活動電位のプラトー相でも内
JLN 症候群は,極めてまれな疾患であり(人口 100 万
向 き 電 流 が 流 れ 続 け,APD が 延 長 す る. そ の 結 果,
人に 1 ~ 6 人),KCNQ1(KvLQT1)の変異による JLN1
LQT1 や LQT2 と同様,EAD や,心室再分極の不均一性
と,KCNE1(minK)の変異による JLN2 が報告されて
増大が生じ,TdP タイプの多形性心室頻拍が起こりやす
いる.これらの変異はいずれもホモ接合であるため,内
くなる.LQT3 では,LQT1 や LQT2 と異なり,徐脈時
耳のリンパ液産生障害による難聴と重症の QT 延長を合
に QT が延長しやすく,TdP や失神発作が夜間の睡眠中
併する.
や安静時に起こりやすいことが特徴である.
51
循環器病の診断と治療に関するガイドライン(2008 年度合同研究班報告)
異が報告されている(INa 減少をもたらす).また最近で
② QT 短縮症候群
は,Brugada 型 ST 上昇と QT 短縮および突然死の既往を
QT 短縮症候群(Short QT Syndrome,SQTS)は,比
もつ患者に L 型 Ca チャネルのα 1 ならびにβ 2b サブユ
較的最近になって確立された遺伝性不整脈の概念であ
ニ ッ ト を コ ー ド す る 遺 伝 子(CACNA1C,CACNB2b)
り,QT 延長症候群(LQTS)の鏡像をなすまれな疾患
の 変 異 が あ る こ と が 報 告 さ れ,L 型 Ca チ ャ ネ ル 電 流
で あ る 249)-252). 病 像 の 特 徴 は ① 心 電 図 の QT 短 縮
(ICa,L)の減少をもたらす機能喪失タイプの異常である
(QTc<330 ms),②器質的心疾患を伴わない VT/VF,③
心臓突然死の家族歴であり,心房細動の合併も多い.発
の Brugada 症 候 群 患 者 で は, 原 因 は 不 明 で あ る.
症は若年者に多い傾向があるが,成人にも認められる.
Brugada 症 候 群 の 病 因 と し て は, 遺 伝 子 多 型
これまでに 5 つの遺伝子型が報告されている(SQTS1 ~
(polymorphism) の 面 か ら も 研 究 が 進 め ら れ て お り,
5).SQTS1 は IKr のα subunit(HERG)をコードする遺
SCN5A にアジア人特有の多型があることが注目されて
伝 子(KCNH2),SQTS2 は IKs の α subunit(KvLQT1)
いる 254).
をコードする遺伝子(KCNQ1),SQT3 は内向き整流 K
チャネル(IK1)のα subunit(Kir2.1)をコードする遺伝
子(KCNJ2)の変異であり,いずれも K チャネルの機
④リ アノジン受容体遺伝子異常とストレス誘発突
然死
能増強をもたらす.SQT4,SQT5 は L 型 Ca チャネルの
交感神経緊張時に致命的な心室不整脈が発生する症例
α subunit(Cav1.2)をコードする遺伝子(CACNA1C)
の一部には,筋小胞体(SR)の Ca 放出チャネルであるリ
と β 2b サ ブ ユ ニ ッ ト(Cav β2b) を コ ー ド す る 遺 伝 子
アノジン受容体(RyR)の遺伝子異常を伴うものがある.
(CACNB2b)の変異であり,Ca チャネルの機能低下を
これまでに,2 つのカテゴリーが報告されている.1 つ
もたらす 253).SQTS では,外向き K 電流の増大あるいは
はカテコラミン誘発多形性心室頻拍(catecholaminergic
内向き Ca 電流の減少により,心臓全体(心房,心室)
polymorphic ventricular tachycardia:CPVT)または家族
の不応期短縮とその空間的不均一性が増大し,重大なリ
性 多 形 性 心 室 頻 拍(familial polymorphic ventricular
エントリー不整脈(頻拍・細動)が発生しやすい.
tachycardia:FPVT)と呼ばれる疾患であり.もう 1 つは,
不整脈源性右室異形成(arrhythmogenic right ventricular
③特発性心室細動
dysplasia)のタイプ 2(ARVD2)である.これらの遺伝
特発性心室細動とは,明らかな基礎心疾患を持たず,
子異常では,RyR の正常な機能を保つ上で重要な役割を
一見健康と思われる人に突然出現する心室細動である
果たすタンパク(FKBP)との結合が阻害されて,SR か
(電解質異常,QT 延長などを伴わない).Brugada らは
らの Ca 漏出が起こりやすいために,トリガードアクテ
1992 年に,非発作時の心電図に特徴的な所見(右脚ブ
ィビティによる異常興奮が発生しやすくなっている可能
ロックと,V1-V3 の ST 上昇)を認める一群の特発性心
性がある.
室細動症例を報告した.その後,同様な症例がつぎつぎ
に発表され,Brugada 症候群と呼ばれるようになった.
6
抗不整脈薬の新たな標的分子
患者は働き盛りの男性に多く,20 ~ 30 %に突然死の家
心筋に存在する多くのイオンチャネルや機能分子の分
族歴がある.心室細動発作は夜間睡眠中や食後などの安
子構造が明らかにされ,それらの不整脈発生機構への関
静時(副交感神経優位の状態)に多く,Na チャネル抑
与およびそれらに作用する薬物も明らかにされている.
制薬の投与は本症候群の心電図変化を増強させ,心室細
それらのいくつかの分子は将来的に薬物の標的となり,
動の発生を促す傾向がある.Brugada 症候群の患者の一
抗不整脈薬作用が期待される可能性もある.ここでは抗
部(18 ~ 30 %)には Na チャネルのα subunit をコード
不整脈薬の標的となりうるいくつかの機能分子について
する遺伝子(SCN5A)の変異があることが確かめられ
述べる.
ている.変異遺伝子を用いた発現実験・機能解析では,
Na チャネルの機能欠損,ゲート機構の異常,細胞内蛋
白移送の異常が観察されており,いずれも Na 電流(INa)
の減少をもたらす機能喪失タイプの異常である
52
ことが示された 253).しかし,残る大部分(70 ~ 80 %)
249),250)
.
① If チャネル
1990 年代の後半,cAMP などのヌクレオチドによっ
て直接的に制御され,過分極によって活性化して Na や
その他の遺伝子異常としては,頻度は低いが glycerol-3-
K と い う 一 価 イ オ ン を 通 過 さ せ る HCN チ ャ ネ ル
phosphate dehydrogenase 1-like protein(GPD1L) の 変
(hyperpolarization-activated cyclic-nucleotide-gated cation
不整脈薬物治療に関するガイドライン
channel)がクローニングされた.心筋においては洞房
不全においてもこの Ca 放出チャネルが異常化し,心不
結節のみならず心房,心室組織にも存在する.心房と肺
全の悪化や不整脈の誘発につながると考えられている.
静脈組織の境界部にも存在するので異所性自動能による
この筋小胞体からの Ca 遊離を調節する薬物はこの多形
心房細動の原因となる可能性もある.また,心肥大など
性心室頻拍の抑制薬となり得る可能性がある.
でも心室組織における第 4 相緩徐脱分極が増強すること
も知られているので,心室性不整脈のトリガーとなる可
⑤ギャップジャンクション
能性もある.海外においては徐脈薬として If チャネル遮
心筋細胞同士の電気的結合を修飾して,心房細動の治
断薬のイバブラジンが,虚血性心疾患や心不全の治療を
療をめざす実験的試みもなされている.心房由来のヘキ
目的として既に臨床使用されている 255).多くの抗不整
サペプチドがギャップジャンクションのコンダクタンス
脈薬がこのチャネルに対して抑制作用を示すが,その作
を増加させ,不整脈を抑制することが示され,安定的な
用が強いのはアミオダロンとベプリジルである.このチ
アナログとしてロチガプチドが見出されている.このペ
ャネルに対して抑制作用を示す薬物は異所性自動能を抑
プチドは膜電流系には影響を与えず,コネキシン 43
制する可能性もあるが,洞房結節細胞自動能も抑制する.
(Cx43)に働き,イヌの実験的心房細動の持続時間を短
縮させたとの報告もある 257).
② ICa.T チャネル
T 型 Ca チャネルは心筋に存在するがその病態生理学
⑥イオントランスポータ
的役割は十分明らかとなっていない.以前より洞房結節
心筋には多くのイオントランスポータが存在すること
細胞の活動電位において第 4 相緩徐脱分極の後半の部分
が知られている.心筋細胞膜には Na-K ATPase(Na-K
で ICa.T が内向き電流で流れ,自動能の発生に関与するこ
pump)が存在し,このトランスポータを抑制するのが
とが知られているが,その寄与はあまり大きくない.そ
ジギタリスであり,治療量では強心作用を示すが高用量
の病態生理学的意義は明らかとなっていないが,心肥大
では中毒を起こし,催不整脈作用を示すことが古くから
などで ICa.T の電流密度が増加することが知られている.
知られている.一方,Na-H 交換系も存在し,細胞内 pH
最近,ベプリジルのようにこの T 型 Ca チャネルに抑制
の調節に重要な役割を果たすことが知られている.カリ
作用を示す抗不整脈薬が存在することが明らかになって
ポライドなどの Na-H 交換系抑制薬は虚血・再灌流時の
いるが,それがどのような臨床的意義を持つかは不明で
心筋障害や不整脈の発生を軽減することが報告されてい
ある.
る.また,Na-Ca 交換系は細胞内 Ca の処理機構として
③ストレッチ活性化チャネル
重要であるが,この抑制も虚血・再灌流による心筋障害
を軽減し,抗不整脈的に働く可能性がある.アミオダロ
伸展刺激によって活性化され,種々のイオンを非特異
ンは治療域濃度で Na-Ca 交換系を抑制することが報告さ
的 に 通 過 さ せ る チ ャ ネ ル が SAC(Stretch Activated
れている.
Channel)である.このチャネルの活性化がどの程度心
房細動の発症に関与するかは,十分明らかとなっていな
⑦その他のイオンチャネル
いが,くも毒の GxMTx-4 投与が心房内圧の増加によっ
心筋細胞には今まで注目されているもの以外に,多く
て起きやすくなった実験的心房細動の発生を抑制したと
のイオンチャネルが存在することが知られている.例え
いう報告もあり
256)
,現在このチャネル抑制薬も探索さ
れている.
④ Ca ハンドリング蛋白
ば,細胞内 Na の増加によって活性化する Na 活性化 K チ
ャネル,数種類(cAMP 依存性,膨化誘発性,Ca 感受
性など)の Cl チャネル,背景 K 電流を通過させ膜 4 回貫
通型の基本構造を持つ K チャネルなどである.Na 活性
最近,多形性心室頻拍の一部に筋小胞体のリアノジン
化 K チャネルはジギタリス中毒や心筋虚血時に観察さ
受容体(RyR)の遺伝的異常によるものが明らかとなっ
れる活動電位幅短縮に部分的に関与すると考えられてい
ている.カテコラミンによって心筋細胞のβ受容体が刺
る.これらがヒト心筋細胞においてどのような病態生理
激されると細胞内 cAMP が上昇し,ICa.L の増強によって
的役割を持つかが明らかにされれば,抗不整脈薬の新た
異常リアノジン受容体を介して筋小胞体から大量の Ca
な標的となりうる可能性がある.
流出が起こり,その結果一過性内向き電流(ITI)が流れ
て遅延後脱分極および撃発活動が誘発される.また,心
53
循環器病の診断と治療に関するガイドライン(2008 年度合同研究班報告)
⑧ upstream approach に関連した標的分子
既に述べたように upstream approach として,神経液
の症例に限ると 3 群の間に有意差なし
⑥解説
性因子を調節して不整脈の発生を制御する方法もある.
慢性心不全例では,たとえ致死性不整脈がいまだ出現
具体的にはアンジオテンシン変換酵素阻害薬(ACE 阻
していなくても,予防的 ICD 植込みがアミオダロンよ
害薬),アンジオテンシンⅡ(A- Ⅱ)受容体拮抗薬(ARB),
りも生命予後を改善することを示した.プラセボ群とア
β遮断薬(カルベジロールなど)が臨床で用いられてい
ミオダロン群との間には有意差が認められなかったが,
る.この他にエンドセリン受容体(ETA)拮抗薬も心不
これは致死性不整脈のない対象に抗不整脈薬を投与して
全に伴う不整脈の治療に有効である可能性がある.サイ
も効果を期待できないことを実証したに過ぎない.この
トカインを抑制する薬物や,フリーラジカルを消去する
試験では予防的 ICD がプラセボよりも相対危険率を 23
薬物も抗不整脈的に作用する可能性があり,アミオダロ
%減らしたが,絶対危険率では 5 年間で 7.2 %減らした
ンやカルベジロールがこのような作用を持つことが示唆
に過ぎず,大多数は無駄な植込みを受けたことになる.
されている.
実務的にはハイリスク群をさらに抽出する工夫が求めら
2
れよう.NYHA の重症例において差が出なかった理由
用語解説:臨床
は不明だが,シングルリードを右室にのみ植込んでいた
ことが関係しているかもしれない.
SCD-HeFT(Sudden Cardiac
107)
Death in Heart Failure Trial)
1
2
①試験の目的
安定した慢性心不全例の生命予後に対する一次予防手段
としての薬物,非薬物療法の効果を比較.
①試験の目的
ICD の生命予後改善効果は明らかだが,不快な ICD ショ
ックを減らすために薬剤が有効かを検討.
②対象例
NYHA Ⅱ / Ⅲ度(70/30 %)で左室駆出率 35 %以下(中
②対象例
央値 25%)の慢性心不全例
自然発生の,あるいはプログラム刺激によって誘発可能
虚血性が 52%,非虚血性が 48%.
な VT/VF が確認された 3 週間以内に ICD を植込んだ 412
例(8 割が心筋梗塞例).
③方法
総計 2,521 例の対象例を 3 群に分け,従来からの心不全
③方法
治療 に加え, プ ラセ ボ 投 与 群,ア ミオ ダ ロン 投与群
対象例をβ遮断薬単独投与群,ソタロール単独投与群
(800mg × 1 週 + 400mg × 3 週 + 200 ~ 400mg)
,ICD 植
(240mg),アミオダロン(800mg × 2 週+ 400mg × 4 週
込み群の生命予後を 45.5 か月追跡.
+ 200mg)+β遮断薬投与群の 3 群に分け,1 年間追跡.
④一次エンドポイント
④一次エンドポイント
死亡
ICD ショック
⑤結果
⑤結果
n
死亡数 死亡率 危険率 vs プラセボ(p)
[注意]
n
ショック例数
発生率
β遮断薬単独
危険率vsβ遮断薬(p)
プラセボ
847
244
29%
-
138
41
38.5%
─
アミオダロン
845
240
28%
1.06(ns)
ソタロール単独 134
26
24.3%
0.61(0.055)
ICD
829
182
22%
0.77(0.007)
アミオダロン+ 140
β遮断薬
12
10.3%
0.27(<0.001)
虚血性と非虚血性とでは有意差なし.また NYHA Ⅲ度
54
OPTIC(Optimal Pharmacological
Therapy in Cardioverter
139)
Defibrillator Patients)
アミオダロン併用群は適正作動と不適正作動の両者を有
不整脈薬物治療に関するガイドライン
意に減らしたが,副作用として肺合併症,甲状腺機能低
下症,症候性徐脈が多かった.
薬剤中止率はアミオダロン 18.2 %,ソタロール 23.5 %,
⑤結果
⑥解説
n 自然停止率<3週 再発までの中央値 1年後洞調律率
アミオダロン 267
27.1%
487 日
52%
ソタロール 261
24.2%
74 日
32%
プラセボ
137
0.8%
6日
13%
ICD の有用性が確立された現在,アミオダロンは生命
アミオダロン,ソタロールいずれも持続性心房細動の除
β遮断薬 5.3%.
予後よりも QOL の改善に有益であることが示された.
細動に有効であった.
不快感を減らすのみならず,失神を防ぎ,車の運転への
再発予防にはアミオダロンの方がソタロールよりも有効
期待を持たせる意義は無視できない.その作用はソタロ
であったが,虚血性心臓病では有意差を認めなかった.
ールよりも強力であったが,副作用の出現には注意が必
洞調律維持例では QOL 改善と運動耐用能増加を得た.
要である.ただし比較的非虚血性心疾患の多い日本にこ
の結果を適用できるかどうかは未知数(NIPPON study
⑥解説
にて検討中).
使用された 2 剤はいずれも洞調律維持用の薬剤である
アミオダロンの VT/VF に対する抗不整脈作用のほか,
が,同時に心拍数調節(レートコントロール)作用も示
上室性不整脈の抑止作用や徐拍化作用による誤作動防
す薬剤でもある.本研究は薬剤の効果が発揮されるまで
止,さらには徐拍化に伴って抗頻拍ペーシングを有効に
に日数がかかることや,薬剤による無症状化を考慮に入
させた可能性などが推測される.
れて慎重に企画されたものであるが,高血圧例がアミオ
3
SAFE-T(Sotalol Amiodarone
53)
Atrial Fibrillation Efficacy Trial)
①試験の目的
ダロン群に多く,肥満・飲酒はソタロール群に多かった.
ソタロールとアミオダロンの効果の違いが IKr 遮断作用
やβ遮断作用以外の何によるものかは不明.アミオダロ
ン群で 2 例の肺合併症を認めたほか,ワルファリンとの
相互作用によると推測される出血合併症が多く発生し
持続性心房細動例に対する洞調律維持(リズムコントロ
た.なおソタロールによる TdP の発生を防ぐために,本
ール)治療に至適な薬剤を選抜.
研 究 で は QT < 550msec を 厳 守 す る 方 針 が 推 奨 さ れ,
②対象例
72 時間以上持続する心房細動で,抗凝固療法を受けて
いる 665 例.
TdP は 1 例に認めたのみであった.
4
AF-CHF(Atrial Fibrillation and
258)
Congestive Heart Failure)
③方法
①試験の目的
対象例をアミオダロン投与群(800mg × 14 日+ 600mg
慢性心不全例における薬理学的洞調律維持(リズムコン
× 14 日 + 300mg × 1 年 + 200mg), ソ タ ロ ー ル 投 与 群
トロール)治療の予後改善効果を検証.
(160mg × 1 週+ 320mg),プラセボ投与群の 3 群に分け,
1 ~ 4.5 年間追跡.毎週,心電図の電話伝送によりリズ
②対象例
ムを確認.28 日以内に洞調律化しない場合には電気シ
左室駆出率 35 %以下の症候性うっ血性心不全で心房細
ョック施行し,除細動不成功例は脱落.
動の病歴を有する 1,376 例
④一次エンドポイント
28 日目以降に認められた心房細動再発
平均 LVEF27%,48%が冠動脈疾患例 発作性心房細動
が 3 割,持続性が 7 割.
③方法
対象例を洞調律維持(リズムコントロール)治療群(主
にアミオダロンで 6 週以内に除細動されなければ電気シ
ョック,
以後も再発時電気ショック)と,心拍数調節(レ
ートコントロール)治療群(ジゴキシン+β遮断薬で安
55
循環器病の診断と治療に関するガイドライン(2008 年度合同研究班報告)
静時 80/ 分以下,6 分間歩行時 110/ 分以下)の 2 群に分け,
死に関する ACC/AHA/ESC ガイドラインでも,リドカ
平均 37 か月追跡.
インの使用は推奨されず,「急性心筋梗塞 / 虚血による,
安定した持続性単形性心室頻拍には使用可能かもしれな
④一次エンドポイント
い」との記載にとどまっている 158).我が国で 2006 年に
策 定 さ れ た 日 本 版 救 急 蘇 生 ガ イ ド ラ イ ン(ALS) に
心血管死までの時間
も 265),「リドカインが急性冠症候群発症時の心室頻拍 /
⑤結果
心室細動の予防に有効であることを示すエビデンスはな
n
リズムコントロール 682
レートコントロール 694
心血管死
27%
25%
全死亡
32%
33%
脳卒中
3%
4%
心不全悪化
28%
31%
く,副作用増加の報告が多いため,推奨はしない.」と
記載されている.
リドカインは肝臓で速やかに代謝され半減期は 2 時間
以下と短い.不活性化チャネル阻害薬であるので心房性
洞調律維持(リズムコントロール)治療群において心房
不整脈には無効である.投与方法としては,初回,0.5
細動が記録された例は 4 か月以降 2 割以下に抑えられた
~ 0.75mg/kg(最大量 1.0 ~ 1.5mg/kg まで可)を静注し,
のに対し,心拍数調節(レートコントロール)治療群の
以後,必要に応じて 0.5 ~ 0.75mg/kg を 5 ~ 10 分ごとに
6 ~ 7 割で心房細動が持続した.
反復投与する.総量は 3mg/kg とする.
いずれも有意差は得られず,リズムコントロールの優越
副作用としては,房室ブロックや洞性徐脈など刺激伝
性は否定された.
導系の抑制作用と中枢神経作用(せん妄,めまい,眠気,
嘔吐など)に注意が必要である.特に高齢者では,血中
⑥解説
濃度の上昇に伴い意識障害,振戦,痙攣など中枢神経中
QOL については検討されていないが,生命予後に関
してはこの downstream 治療によってほとんど影響を受
けないことが示された.対象例の生命予後は不整脈より
毒症状が生じやすい.
2
メキシレチン
も,さらに upstream の機序によって左右されている可
リドカインの類似体で,頻脈性心室性不整脈が適応と
能性が考えられる.一方,洞調律維持治療の利点が使用
なり,上室性不整脈への適応はない.これは本剤が Na
薬剤固有の抗不整脈作用の限界や副作用の出現によって
チャネルに不活性化状態で結合し静止状態で解離するた
制限されている可能性も否定できず,新たな薬剤やアブ
め,活動電位持続時間(APD)の短い心房筋に対して
レーションなどによる洞調律維持治療が,異なる結果を
は効果が軽微となるためである.Na チャネルへの結合・
もたらす期待は残されている.
解離速度は非常に速く,遅い興奮(洞調律など)にはほ
3
主な抗不整脈薬の文献的考証
とんど作用しないが,連結期の短い早期興奮や高頻度の
興奮に対して使用依存性に作用する 266).心抑制作用は
弱い 267).K チャネルには作用せず,正常の洞結節,房
1
リドカイン
リエントリー回路内の病的心筋に対して強い伝導抑制作
リドカインは,即効性があり心筋収縮力低下作用や血
用を示す 268).経口薬と静注薬が発売されているが,経
圧下降作用が少ないため,我が国において救急現場で広
口薬は「糖尿病性神経障害に伴う自覚症状(自発痛,し
く使用されてきた抗不整脈薬である.しかしその有用性
びれ感)の改善」にも保険適用となっている.
についての認識は大きく変化している.急性心筋梗塞
心室性期外収縮および心室頻拍に対する静注薬の効果
(AMI)発症時の一次性心室細動(primary VF)に対す
としては,それぞれ 73 %,75 %の例において有効とさ
るリドカイン予防投与については,その発症を抑制する
れている.経口薬の心室性不整脈(期外収縮および心室
が死亡率は抑制しないかむしろ増加させることが判明し
頻拍)に対する効果としては,71 %の例において有効
.これらの知見を受けて,2004 年の ST 上昇型
とされている.再分極時間の貫壁性バラツキを反映する
心筋梗塞(STEMI)管理についての ACC/AHA ガイド
T 波のピークから終末部までの間隔が長い例において特
た
259)-263)
264)
,AMI 発症後の心室細動および心室頻拍
に有効である可能性が報告されている 269).心機能抑制
の予防を目的としたリドカインの使用は避けるべきと明
作用は比較的弱いため 267),心機能低下が軽度であれば
記されている.2006 年の心室性不整脈および心臓突然
器質的心疾患に伴う心室性不整脈にも投与される 270).
ラインでは
56
室結節に対する抑制作用は認めない.正常心筋に比して
不整脈薬物治療に関するガイドライン
心筋梗塞既往例の心室性不整脈の抑制効果予測に加算平
心室期外収縮に関しては,600mg/ 日分 3 投与で 30 ~
均心電図の spectrotemporal 解析が有用と報告されてい
60 %が有効(> 70 ~ 80 %減少)であった 284),285).持続
.他の抗不整脈薬(ジゾピラミド,プロパフェノ
性心室頻拍についての報告では 600mg/ 日の経口投与中
ンなど)との併用療法も報告されているが 270),投与量
に施行した誘発試験では,50 %の症例で誘発が抑制さ
に注意する必要がある.最近,Ⅰ a 群薬,Ⅰ c 群薬が無
れている 286),287).
効で,リドカインに感受性を示す再発性心房頻拍が報告
副作用は約 20 %に発現し,多くは抗コリン作用に基
されているが,メキシレチンの経口薬が再発抑制に有効
づくものであったが,心機能の悪化(10 ~ 20%の低下),
る
271)
な可能性がある
272)
心 電 図 上 QRS 幅 延 長,QT 延 長 な ど も 報 告 さ れ て い
.
メキシレチンは Na チャネル遅延電流を抑制し,遺伝
る 288).
性 QT 延長症候群(LQT3,Na チャネルαサブユニット
ジソピラミドの陰性変力作用を利用し,閉塞性肥大型
遺伝子(SCN5A)変異に起因する)の QT 間隔を短縮す
心筋症にジソピラミド(平均で 432 ± 181mg/ 日)を経
ることが示されている 273),274).一方,K チャネル(IKr)
口投与したところ,約 3 年間の経過観察の結果,予後に
をコードする HERG 遺伝子変異に起因する LQT2 には効
は差がみられなかったものの,継続使用した症例では大
果がない 227),273).ただし LQT3 におけるメキシレチンの
動脈弁下左室流出路の圧格差を約 50 %減少し,NYHA
QT 間隔改善作用が心事故の予防効果につながるとは限
機能分類の改善をみたとする報告がある 289).
らず,長期効果については未だ明らかでない.エリスロ
マイシンにより誘発された QT 延長と早期後脱分極に対
しメキシレチンが抑制効果を示すことが報告されてい
る
275)
プロパフェノン
プロパフェノンは,肝代謝型薬剤として知られ,頻脈
性不整脈に関する有効性の検討は,心房細動を対象とし
.
3
4
た報告が多く,心室性不整脈を対象としたものは比較的
ジソピラミド
少ない.欧米では広く心房細動,発作性上室頻拍の治療
ジソピラミドの頻脈性不整脈に対する有効性の検討
薬として汎用されている.
は,我が国では上室性不整脈に関するものが多く,心室
心 房 細 動 停 止 に つ い て, 海 外 で は 450mg な い し
性不整脈については海外からの報告が多い.
600mg 単回経口投与の成績が知られるが,心房細動発症
心房細動の停止効果は 50 ~ 150mg/5 ~ 10 分の 1 回静
から 3 ~ 7 日以内の症例を対象とし,投与後 4 ないし 8
注による成績が示されており,静注後 30 ~ 120 分まで
時間での評価で 56 ~ 78%の停止率であった 290)-292).こ
に 56 ~ 98 %(平均 70 %)で洞調律を回復させている.
の単回経口投与による発作性心房細動の停止法は安全性
症例の多くは発作性で比較的若く(平均 58 歳),いずれ
を確認した後,患者自身に薬剤を携帯させる単回経口投
も心機能が良好(器質的心疾患を有さない)な症例を対
与法“pill in the pocket”として広く認知された 45).静
.なお 60 歳未満の症例では 60 歳以
注薬は我が国では使用できないが,心房細動に対する高
上の症例より静注による停止効果が良好との報告もあ
い停止率が報告されている 293).再発予防効果について
る 278).
は,Ⅰ群抗不整脈薬の中では良好な成績が報告されてお
心房細動の再発予防には 300mg/ 日(分 3)経口投与
り 46),294),投与開始 100 日後の非再発率が 70 %,1 年後
の成績が示されているが 12 か月の観察期間で洞調律維
で 65 %であったとの報告がある 46).発作性上室頻拍に
持率は 54 ~ 67 %であった 279),280).対象症例は発作性な
おいても,心房細動とほぼ同様に使用され,プラセボ対
いし持続性(DC ショックで洞調律化した症例が多い)
照試験でその有効性が検証されている 46).
で,心機能が良好なものであった.発作性心房細動の発
米国を中心として施行された心房細動の治療戦略を検
症時間帯でジソピラミドの効果を検討した報告では,夜
証した AFFIRM 試験 295)において,洞調律維持(リズム
間発症型は日中発症型,混合型に比較し,有意に洞調律
コントロール)治療群でプロパフェノンは試験開始初期
象としている
276),277)
.ジソピラミド 2.0mg/kg 静注
には 9.3 %,全試験期間中に 14.5 %の症例で使用され,
により心房細動停止後に心房ペーシング閾値を上昇させ
Ⅰ群抗不整脈薬では最も使用頻度の高い薬剤であった.
ることが報告されている 282).
一方,我が国の J-RHYTHM 試験ではリズムコントロー
発作性上室頻拍については海外の報告であるが 600 ~
ルを目的として使用された薬剤のほとんどはⅠ群薬であ
1500mg(分 3 ~ 5)を 1 日投与後,電気生理学的検査に
ったが,プロパフェノンの使用頻度は 12%(第 3 位)で
よる誘発試験では 50%前後の有効率であった
あった 14).
維持率が高率であった
281)
283)
.
57
循環器病の診断と治療に関するガイドライン(2008 年度合同研究班報告)
我が国で施行された心室期外収縮に対する有効性の検
数を減らし細動周期を延長することに起因していたとい
討では,主に 450mg/ 日分 3 使用で著明改善(ホルター
う 306).併用が効果を増強した背景に肝代謝酵素の遺伝
心電図で 75 %以上の減少)と判定された症例が 50 %で
子多型に伴うベプリジルの代謝促進に対してアプリンジ
あった 296).持続性心室頻拍を対象とした誘発試験では
ンが抑制的に働くことが関係している可能性が推測され
プロパフェノン投与により 25 %で誘発不能となり,ま
ている 307).このほか電気的除細動抵抗例に 100mg のア
た心室頻拍は誘発されるものの徐拍化したもの 32 %,
プリンジン点滴後に再度直流除細動を試みたところ 9 例
非持続性となったものが4%であったとの報告があ
中 8 例で除細動に成功したとの報告もある 308).
る 297).心停止患者を対象とした長期有効性を植込み型
一方,心房細動の再発予防に関しては,アプリンジン
除細動器(ICD),アミオダロン,メトプロロールと比
40mg/ 日,ジゴキシン,プラセボを各 47 例ずつ投与し,
較した CASH 試験では,他の治療法に比較し効果は低
6 か月追跡した SMART 試験(Sinus Rhythm Maintenance
い結果であった
in Atrial Fibrillation Randomized Trial)があるが,3 群と
298)
.
副作用発現率は 7.8%とされ 296),消化器系,中枢神経
系,循環器系のものが多い
46)
.循環器系の副作用として
は心機能低下,刺激伝導障害,催不整脈が報告されてい
るが,いずれも器質的心疾患を有する症例,心機能低下
例に多く発症していた 296),299).
5
58
アプリンジン
も同様の再発率が観察され,本剤に有意な予防効果は認
められなかった 309).
6
シベンゾリン
シベンゾリンは INa を強力に抑制するほか,IKr,IKs,
IKACh,IKATP,ICa や,M2 受容体など多くの標的に抑制作
用を示すことが知られている 300),310),311).また心房高頻
アプリンジンは半減期が長く,1 日 1 ~ 2 回投与で維
度刺激に伴う Kv1.5 発現増加を抑制する抗リモデリング
持可能なことと,腎不全患者,心不全患者,呼吸不全患
作用も実験レベルで認められている 312).しかし臨床例
者などでも比較的安全に投与できる点が特筆される.し
での報告は,大部分が日本とフランスからのもので,一
かしその一方で肝機能障害(5%)や振戦などの中枢神
部ドイツからも散見されるが,大規模といえる臨床試験
経症状(1.4 %)などを来たすことがあり,副作用出現
は行われていない.
に注意が必要である.不活性化状態の Na チャネルに親
心房細動の停止効果に関しては,単回経口投与を試み
和性を有しながら,解離時定数が比較的長いために心室
た小規模な多施設共同試験の報告がある 311).この試験
筋 の み な ら ず 心 房 筋 の 伝 導 も 抑 制 す る 300). ま た IKr,
は発作後 48 時間以内の心房細動 32 例にシベンゾリン
IKACh,IKur などの抑制によって心房不応期延長作用を示
200mg を単回経口投与したもので,2 時間以内に 24 例(75
す 301),302).さらに Kir6.2 チャネルを安定化させることに
%)で 停止 が得ら れ,本剤 によ る単回 経 口投 与治療
よって IK,ATP を増加させる作用もあり,虚血心における
(pill-in-the-pocket)の有用性を示した.またシベンゾリ
活動電位短縮をさらに促進する可能性が指摘されてい
ン 70mg 静注を用いた小松らの発作性心房細動 44 例にお
る 303).
ける検討では,52%の例で洞調律が得られているが,こ
心室性不整脈に関する報告は古いものが多いが,心筋
の数字はジソピラミドの 29 %,アプリンジンの 22 %と
梗塞 143 例にアプリンジン 100mg/ 日かプラセボを投与
比して有意に高い 313).シベンゾリンの心房細動停止機
し た Gottlieb ら の 報 告 で は, 本 剤 が 心 室 性 不 整 脈 の
序には心房細動中の心房内電気興奮の周期を延長させる
Lown grade を改善したものの,1 年後の予後には差がな
とともに,空間的不均一性を縮小する作用が関係してい
かった 304).
るとされる 314),315).
心房細動の停止に関しては,アプリンジン 2mg/kg 静
一方,心房細動の再発予防に関しては,やはり小松ら
注が,発症 1 か月以内の心房細動 50 例中 22 例(44 %)
がシベンゾリン静注が停止を導いた症例に限れば,同剤
を停止させている 305).特殊な使用法として,3 か月以上
300mg/ 日の内服が平均 28.4 か月の追跡期間中,65 %の
持続した心房細動でアプリンジン 2mg/kg 静注が無効で
例で洞調律を維持したと報告している 313).なお無作為
あった 32 例にベプリジル 200mg/ 日を投与し,4 週後に
化二重盲検試験では予防効果にフレカイニドと有意差が
まだ心房細動が持続していた 16 例にアプリンジン 40 ~
ないとされている 316).また冠動脈バイパス術後の心房
60mg/ 日を経口投与したところ 11 例が洞調律に復した
細動の抑制効果について調べた報告では,術直後から
との報告がある 51).細動波のスペクトル分析によればこ
10 日間シベンゾリン 300mg/ 日を内服させた 35 例のうち
の追加による除細動効果は,心房内のリエントリー波の
2 例(6 %)しか心房細動が発生しなかったのに対し,
不整脈薬物治療に関するガイドライン
非投与群では 59 例中 20 例(34%)に発生を認めたとい
う 317).
8
フレカイニド
発作性上室頻拍に関しては,藤木らによるとシベンゾ
本剤は Vaughan Williams 分類のⅠ c 群に分類され,強
リンは心房筋や心室筋の不応期を変えることなしに伝導
力な Na チャネル遮断作用と弱い K チャネル遮断作用を
抑制作用を発揮して,房室回帰性頻拍(AVRT)8 例中 3
併せ持つ.上室性,心室性不整脈の双方に有効で,経口
例,房室結節リエントリー性頻拍(AVNRT)5 例中 4 例
薬は頻脈性不整脈(発作性心房細動・粗動,心室性)に,
を誘発不能に導いている
318)
.
静注薬はこれに加え発作性上室頻拍も保険適応となって
期外収縮に対するシベンゾリン 300mg/ 日の効果は 75
いる.心筋梗塞既往例に対しては禁忌であるが,特に心
%以上の抑制率でみると,上室性では 33 %と少ないが
筋虚血を有する例において生命予後を悪化させる 331).
,心室性では 52 %と高く,特に後者はジソピラミド
319)
の 33%を上回っている
320)
.
心室期外収縮に対する予防効果は,200 mg/ 日の経口
薬投与で 63 %の例において 75 %以上の不整脈減少率が
しかし 12 例と少数例ながら持続性心室頻拍に対する
得られた.非持続性心室頻拍に対しては 40 %で有効で
シベンゾリンの効果をソタロールと crossover させて比
あった.
較した Hoffman らの報告によると,シベンゾリンにより
上室性頻拍に対する静注薬の停止効果としては,発作
心室頻拍の誘発を防止できた症例は 8%と,ソタロール
性上室頻拍の 81 ~ 88 %の例で,心房頻拍の 100 %で頻
の 33 %よりも低く,しかも心室頻拍の自然発生を促す
拍が停止した.単回経口投与(3 mg/kg)も 80%の例で
催不整脈作用が観察されている 321).
有効であった 96).予防効果に関しては,上室期外収縮に
ピルメノール
7
対しては 50 %で有効で,発作性上室頻拍に対しては 74
~ 81 %で,心房頻拍に対しては 83 %で再発が抑制され
Vaughan Williams 分類のⅠ a 群に分類され,活性化 Na
た 332).1 歳以下の小児の再発性上室頻拍に対し,フレカ
チャネルに親和性を持ち,静止チャネルにはほとんど親
イニドは有効かつ安全であった 333).
和性がない.Na チャネルへの結合・解離速度は遅い(slow
発作性心房細動に対する停止効果は,静脈内投与によ
kinetic drug300)).軽度ではあるが Ca 電流,遅延外向き
り 2 時間以内に 57 ~ 92%の例で 334),300 mg の単回経口
K 電流および一過性外向き電流も抑制する 322).本剤は
投 与 に よ り 3 時 間 の 時 点 で 59 % の 例 で 洞 調 律 に 復 し
抗コリン作用を有するが,M2 受容体(心臓)への親和
た 335).なお心房粗動に対して静注薬を使用する場合は,
性が高く,M3 受容体(分泌腺,平滑筋)への親和性は
心室拍数が過剰に増加する可能性があるため,予め房室
弱い
300)
.このため口渇や尿閉の発現は少ないとされる.
結節を抑制しておく必要がある.心房細動の予防効果と
各不整脈に対する効果としては,心室期外収縮に対し
しては,1 年間で 49 ~ 66%の例で再発が抑制された 336).
ては 55 ~ 71%,上室期外収縮に対しては 52%,発作性上
携帯電話伝送心電計を用いた我が国の多施設前向き研究
室頻拍に対しては 71 %,発作性心房細動・粗動に対し
の結果では,28 日間の観察期間中,発作性心房細動・
ては 60 %の例で有効であったとされている 323)-327).心
粗動の無再発率がプラセボ群では 3%,50 mg/ 日投与群
室期外収縮の抑制効果について見ると,期外収縮数を減
では 8 %,100 mg/ 日投与群では 9 %,200 mg/ 日投与群
少させるのみならず,多形性や 2 連発,3 連発以上など
では 39 %であり,フレカイニドの効果が用量依存性で
期外収縮の重症度も軽減することが示されている.Na
あることが示された 17).発症時間別に有効性を検討した
チャネル遮断作用と M2 受容体選択性抗コリン作用を有
報告では,夜間発症型に比して日中に起きる発作性心房
しているため,特に副交感神経依存性の夜間発症型の発
細動の予防に有効であった 337).フレカイニド静注によ
作性心房細動に対する効果が期待される.なお,我が国
り心房細動から粗動へと変換することがあるが,心房粗
では現在,頻脈性心室性不整脈のみが保険適応となって
動に対するカテーテルアブレーションとフレカイニド経
いる.
口薬の併用が心房細動の再発予防に有効である(Hybrid
高齢者や器質的心疾患を有する例には少量から投与を
療法)338).
開始し,心電図や血清電解質検査等を行い,効果を見な
Na チ ャ ネ ル α サ ブ ユ ニ ッ ト を コ ー ド す る 遺 伝 子
がら増量する 328),329).器質的心疾患合併例では増量によ
(SCN5A)に変異を有する遺伝性 QT 延長症候群(LQT3)
り効果の増大よりも副作用発現のリスクが大きい 330).
に対し,フレカイニドが QT 間隔を正常化したとの報告
がある 165).フレカイニドは Brugada 症候群の心電図変
化を顕性化 / 増悪させるが,LQT3 の約半数がフレカイ
59
循環器病の診断と治療に関するガイドライン(2008 年度合同研究班報告)
ニドにより Brugada 症候群の心電図異常に移行したと報
告されている
9
339)
薬と異なり心外副作用の報告は低率である.腎排泄型の
.
薬剤であり高齢者,腎機能低下例に使用する際には適切
ピルジカイニド
な用量調節が必要となる.
ピルジカイニドは我が国で開発された Na チャネルブ
ロッカーであり,生体内でほとんど代謝されず,未変化
10
ベプリジル
体で腎から排泄される抗不整脈薬である.今日まで海外
ベプリジルは Na チャネル,Ca チャネル,および K チ
において有用性の検討は行われていないが,国内では使
ャネルなど,複数の心筋細胞のチャネルを抑制する.特
用頻度が最も高い抗不整脈薬となっている.主な使用目
に K チ ャ ネ ル に つ い て は,IKur,IKs,IK1,Ito,IK,ACh,
的は心房細動の停止・再発予防であり,そのほか薬理学
IK,ATP,IK,Na とほぼすべてを抑制することが知られている.
的特性より Brugada 型心電図の誘発目的に利用される.
持続性心房細動例では,高率(69 ~ 71 %)に洞調律
心房細動停止では,この薬剤の薬理学的特性を利用し
化がみられることが我が国から報告されており 51),348),
た単回経口投与による成績が示されている.対象は発症
本剤の適応拡大につながっている.実験的には,心房電
後比較的持続が短い(2 ~ 7 日以内)発作性心房細動で,
気的リモデリングの改善が認められている 349),350).他剤
100 ~ 150mg の単回経口投与により,投与後 90 ~ 120 分
で心房細動の停止がみられない例で,ベプリジルを追加
の範囲で 45 ~ 73%で洞調律に復帰させた
42),277)
.発症後
したり,アプリジンと併用することで洞停止が得られる
6 か月以内の持続性心房細動を対象とし,150mg/ 日分 3
例がある 52),351),352).また再発予防にもベプリジルはⅢ群
経口投与による停止効果の検討では,2 週間以内の停止
薬を含む従来の治療に比べて有効である 52),352),353).
率はプラセボ群の 2%に対しピルジカイニド群で 22%で
ベプリジルは発作性および持続性心房粗動例の停止ま
あった 340).ピルジカイニドの心房細動抑制については,
たは発作回数の減少をもたらす 354).Ⅰ c 薬による心房
左房・肺静脈接合部の不応期延長により,薬理学的肺静
細動から心房粗動への移行例でも,粗動の停止と再発予
.再発予防効果
防に有効例がある 355).発作性上室頻拍でも頻拍の停止
を み た 成 績 で は, ピ ル ジ カ イ ニ ド 75 ~ 200mg( 平 均
可能例があり,ATP 剤やベラパミルでは頻拍停止時に一
脈隔離を来たすことも示されている
341)
140.8mg)/ 日の経口投与で 12 週後の累積有効率は担当
過性の心停止や心室不整脈を認めることがあるが,ベプ
医師の判定によるものであるが 54%であった 342).
リジルでは停止時にこれらの不整脈は伴わないとされ
発作性上室頻拍の停止効果を二重盲検試験で評価した
る 356)-358).
成績では,塩酸ピルジカイニド 1.0mg/kg 静注終了後 15
ベプリジルは心室期外収縮を減少させ,70 %以上の
分までの停止率はプラセボ群の 20 %に対しピルジカイ
減少は 48 %に見られている.持続性心室頻拍の停止効
ニド群では 89%であった 343).電気生理学的検査による
果は 50%に認める 359).電気生理検査で持続性心室頻拍
誘発抑制効果は,150 ~ 200mg 単回経口投与で投与 1 時
に対する誘発阻止効果は 30 ~ 66 %に見られ 135),360),361),
間後に 9/13 例(69 %)で誘発不能となり,電気生理学
これは他のⅠ群薬に比べて高く,アミオダロンやソタロ
的には AH 時間,HV 時間のいずれをも延長させ,また
ールに匹敵する.電気生理検査での有効例では長期治療
洞房伝導時間,右室有効不応期も延長させた 344).また,
成績は良好とされる 136).
100 ~ 150mg 単回経口投与による成績でも 71%の誘発抑
ベプリジルは心室不応期を延長させ,QT延長をもた
制率であった
345)
らすので 362),TdP には注意する 363)-365).ベプリジルに
.
初期に行われた心室期外収縮を対象とした臨床試験
(ジソピラミドを対照とした二重盲検試験)で,不整脈
改善度の中等度改善以上はジソピラミド群 52 %であっ
たのに対しピルジカイニド群は 67%であった 346).心室
よる QT 延長や QT dispersion の増大はβ遮断薬で軽減す
る 366).
11
ベラパミル
頻拍の誘発抑制をみた試験では 0.5 ~ 1.0mg/kg 静注によ
抗不整脈薬としてのベラパミルは,発作性上室性頻拍
り誘発不能となったものは 9 例中 2 例のみであったが,
の停止,頻脈性心房細動 / 粗動に対する心室レートコン
持続が短くなったもの,誘発されにくくなったものが 4
トロール,およびベラパミル感受性特発性心室頻拍の停
例で他の 3 例は無効と判定された
60
薬理作用に基づく伝導障害の報告が多い.他の抗不整脈
347)
.
止や予防に対して用いられる.2008 年,従来の注射剤
添付文書による副作用発症率は経口薬で 6.8%,静注
に加え,内服薬にも頻脈性不整脈(心房細動・粗動,発
薬で 2.9%と比較的少ない.QRS 幅拡大など薬剤本来の
作性上室性頻拍)への効能・効果が承認された.
不整脈薬物治療に関するガイドライン
ベラパミルは発作性上室頻拍に対する停止効果が高い
ールはジルチアゼム単独で投与するよりジギタリスとの
ため,ATP 製剤と並び頻拍停止の第一選択薬となる.通
併用で効果が増強され,その変動も少なくなる 380).し
常 5 ~ 10 mg を静脈内投与する.その停止効果は 80 ~
かしジルチアゼムに除細動効果や洞調律維持効果は期待
98%である 103),367).予防薬としても用いられ,頻拍を抑
できない.
制できない症例においても頻拍の徐拍化や誘発領域の縮
心室性不整脈に関しては,冠攣縮性狭心症症例におけ
小効果が確認されている.
る心筋虚血に伴う致死的不整脈に対して,冠攣縮を予防
心房細動に対しては心室拍数減少を目的に使用され
することにより不整脈を抑制する可能性がある 381),382).
る.1990 年代,心房細動持続における心房筋の電気的
また高血圧患者における心室期外収縮出現数を減少させ
リモデリングの概念が提唱された後,ベラパミルがこの
たとの報告もある 383).このほかベラパミル感受性特発
リモデリングに有効であることが示され 368),369),臨床的
性心室頻拍に対しても,ベラパミルと同様に頻拍抑制効
有用性に期待が高まった.しかし,最近の研究から,ヒ
果があるため,副作用等でベラパミルが使用できない場
ト心房筋に対して電気的リモデリング抑制効果はな
合の代替薬として用いられる 384).副作用は主として L
く 370),また除細動後の洞調律維持効果もないことが判
型 Ca チャネル抑制による洞房結節自動能および房室結
明した 371),372).現在,洞調律維持を目的にベラパミルを
節伝導抑制作用(高度徐脈,房室ブロック)と心機能抑
使用することは一般的でない.
制であり,特にβ遮断薬との併用で増悪する可能性が高
心室性不整脈に対しては,基礎心疾患を有さない右脚
くなるため注意が必要である 385).
ブロック・左軸偏位(RBBB + LAD)型の心室頻拍,
いわゆる左室起源特発性心室頻拍に対してベラパミルは
13
ソタロール
特異的に有効である 373)-375).静脈内投与による頻拍の
強力な非選択性β遮断薬で Ikr ブロッカーの作用を有
停止および経口投与による頻拍の予防に使用可能であ
する薬剤である 386),387).
る.また少数例であるが先天性 QT 延長症候群患者に対
CAST 以後に施行された ESVEM 試験 325)にて注目され
して,早期後脱分極(EAD)を抑制することにより心
たⅢ群作用を示す薬剤である.他の Ikr ブロッカーの不
室性期外収縮や多形性心室頻拍を改善させることが報告
応期延長作用はイソプロテレノール存在下で消失する
されており,臨床上の有効性を示唆している
229)
.
が,ソタロールはβ遮断作用のため維持されることより
副作用は L 型 Ca チャネル抑制による,主として洞房
不整脈に対する臨床効果が期待された 388).その薬剤特
結節自動能および房室伝導の抑制作用(高度徐脈,房室
性から心臓手術後の心房細動予防薬 389),あるいは除細
ブロック)および心機能抑制である.
動閾値に影響しないことから植込み型除細動器に併用す
12
る薬剤として検討されている 390),391).
ジルチアゼム
ヨーロッパからは,心房細動を含む発作性の上室性頻
ジルチアゼムは一般的に冠攣縮性狭心症や高血圧に対
脈性不整脈に対しソタロールはキニジンとベラパミルの
して使用される頻度が高いが,一部では抗不整脈薬とし
併用と同等の効果を示すことが報告されている 392).ソ
ても使用されている.発作性上室頻拍症に対して,ジル
タロールは,海外で心臓手術後の心房細動予防のための
チアゼムはベラパミルと同程度の有効性をもって頻拍を
使用が推奨されている 393),394).心房細動については,ア
停止させる 367).心電図モニター観察下に 2.5mg/min の
ミオダロンとの比較試験が施行されており,持続性心房
速度で静注し,最大 10 mg まで投与可能である.頻拍停
細動の再発抑制効果ではプラセボに有意に優ったが,ア
止を確認して投与を中止する.単回内服でもⅠ群抗不整
ミオダロンに劣る成績となった 53).しかし,虚血性心疾
脈薬を併用することで頻拍を停止できる症例もある 96).
患を背景とする患者群でみるとアミオダロンに匹敵する
しかし頻拍予防効果は認められない.
効果が示されている 53).欧米のガイドライン 395)では虚
頻脈性心房細動や心房粗動に対して,ジギタリス,β
血性心疾患を有する症例で洞調律維持のために使用する
遮断薬およびベラパミルと同様に心室拍数調節(レート
第一選択薬として記載され,我が国の心房細動治療(薬
.静注薬を
物)ガイドライン 36)には孤立性心房細動の予防ないしは
使用した場合の心室レート減少効果の発現は,β遮断薬
心不全のない持続性心房細動の洞調律維持(リズムコン
コントロール)を目的として使用される
やジゴキシンよりも速やかである
376)
377),378)
.ジルチアゼム
による心房細動の心室レートコントロールは運動耐容能
を改善する
379)
.心房細動に対する心室レートコントロ
トロール)に使用する薬剤として記載される.
持続性心室頻拍ないし心室細動が誘発された症例を対
象として,ソタロールと 6 種のⅠ群薬,計 7 種の抗不整
61
循環器病の診断と治療に関するガイドライン(2008 年度合同研究班報告)
脈薬を使用し,平均 6.2 年の経過観察をした ESVEM 試
ると問題はないとされる 390).
験(致死性不整脈の再発,死亡,有害事象発現を比較し
非持続性心室頻拍および期外収縮を有する心筋梗塞後
た試験)ではソタロールの有効性が 35 %であったのに
例では,対照群に比較してアミオダロンは全死亡と突然
対し,他の抗不整脈薬の有効性は 16 %のみであったこ
死 を 減 少 さ せ る か そ の 傾 向 を 示 す( オ ッ ズ 比 は
とから,Ⅲ群薬としてのソタロールは注目された
325)
.
致死的心室性不整脈の長期予後改善に関しては,植込み
するが(オッズ比は 0.14 ~ 1.93 に分布),とくに非虚血
型除細動器(ICD)にその主役を譲り,抗不整脈薬は併
性例で有用性が指摘されている 116),405).
用薬としての意義が求められている.ソタロールは除細
しかし,心筋梗塞後の心機能低下例(駆出率が 0.35
動閾値を低下させることが示され 390),391),その効果が期
以下または 0.30 以下)で,非持続性心室頻拍を有しか
待されるが,The OPTIC Study
139)
でソタロールはβ遮断
つ電気生理検査で心室頻拍が誘発され,さらにプロカイ
薬より高い効果を示したものの,アミオダロンとβ遮断
ンアミドで誘発が阻止されない例では,アミオダロン治
薬の併用と比し劣る成績となった.我が国で施行された
療群より ICD 治療群の方が予後改善に優れていた 104).
初期の臨床試験では 80 ~ 320mg/ 日(多くは 160mg/ 日)
心筋症を含む心不全では,アミオダロンとプラセボ間で
で心室頻拍症の消失をみた著明改善が 22 %,出現頻度
差異は認められず,これらの 2 群より ICD 治療群で突然
の減少と心室拍数の低下で改善と判定されたものが 39
死発生は有意に少なかった 107).
%であった 396).
発作性心房細動の洞調律化は,最初の 8 時間ではアミ
有害事象についてみると,我が国の臨床試験 396)では,
オダロンはⅠ群に比べ劣るが 406),24 時間では同等とさ
63 例中 9 例(14%)に何らかの有害事象(頭痛,立ちく
れる 407).メタ解析でもアミオダロンの洞調律化率は 4
らみ徐脈など)があり,torsade de pointes(TdP)の発
週間の観察でコントロールに比べ有意に大で,心房細動
症はなかったが,6 例に心電図で 0.55sec 以上の QT 延長
の持続時間が長い程有効とされる 408).アミオダロンに
をみたと報告されている.海外では催不整脈作用に基づ
よる洞調律維持率(再発予防効果)は他剤よりも高率で
くものが 4%(torsades de pointes 2%を含む),心不全 3%,
ある(洞調律維持率は 600 日の観察で 60%)409).低用量
徐脈 13 %,呼吸困難 21 %,めまい,疲労感が各 20 %,
のアミオダロンにロサルタンまたはペリンドプリルを併
無 力 症 13 %, 立 ち く ら み 12 % な ど が あ げ ら れ て い
用すると再発防止効果はより有効とされる 410).
る
心臓手術後に心房細動は 10 ~ 35%に発生するが,ア
387)
.
14
ミオダロンを手術前から手術後 7 日間程度まで投与する
アミオダロン
ことで心房細動の発生は抑制される 411).術後の心房細
我が国でもアミオダロンの静注が可能となり,今後持
動予防効果は,アミオダロン+メトプロロールはプラセ
続性心室頻拍・心室細動の停止にも用いやすくなっ
ボまたはメトプロロール単独群よりも有効であった 412).
た
397),398)
.心臓手術例の検討では,静注により心拍数は
11.5/ 分減少,平均血圧は 6mmHg 低下し,およそ 15 分
で回復することが認められた
399)
.
メタ解析から,アミオダロンは心臓手術後の心房細動と,
心室不整脈および脳梗塞の発症を有意に減少させ,退院
を早めることができると言える 413)-415).
心室頻拍・心室細動の 2 次予防では,アミオダロンは
経口薬の導入は比較的高用量(400mg/ 日程度)で 1
生 存 率 を 高 め, 心 室 細 動 の 発 生 を 有 意 に 減 少 さ せ
~ 2 週間行い,その後低用量(50 ~ 200mg/ 日)の維持
る
62
0.87)115),403),404).心不全群でも全死亡率と突然死は減少
131),397)
.アミオダロンの電気生理検査での誘発阻止率
投与に移行する.注射薬は急速投与としてアミオダロン
は 30 ~ 40%で,阻止群で再発が少ない 400).
125mg を 10 分間で静脈内投与する.その後の負荷投与・
AVID 研究では 132),主にアミオダロンを用いた内科的
維持投与としてはアミオダロン 750mg を,それぞれ 6 時
治療群に比べ,ICD 群は 3 年の観察で死亡率を有意に低
間及び 24 時間かけて点滴静注する.アミオダロンの副
下させた.同様な結果がいくつかの臨床研究でも確認さ
作用としては肺線維症が知られており,投与中は自覚症
れている 298),401).左室駆出率が 0.35 以上の群では ICD と
状(咳など),ラ音の聴診,胸部 X 線,血液(KL-6)の
アミオダロンによる治療成績に差異がみられなくな
定期的なチェックが必要である.低用量では副作用の発
る 132).アミオダロンを ICD に併用すると作動は増加す
症は少ない.心臓の副作用には,徐脈,TdP を含む心室
るという成績もあるが,β遮断薬との併用で作動頻度を
性不整脈,心不全増悪などに注意を要する.他に甲状腺
減少させた(ハザード比= 0.27)139),402).アミオダロン
機能異常(亢進または低下),肝障害,光線過敏症,消
は除細動閾値を上昇させるが,最近の ICD 機能からみ
化器症状および神経症状(振戦,運動失調,末梢神経障
不整脈薬物治療に関するガイドライン
害)がある.角膜色素沈着は 6 か月以上の投与でほぼ全
入室率,24 時間および 1 週間生存率が高かった 427),428).
例にみられる 416),417).
直流通電に抵抗性の心室細動例に対する検討では,ニフ
15
ェカラント投与群の方がリドカイン投与群よりも,生存
ニフェカラント
入院と 24 時間生存率が有意に高かった 429).ニフェカラ
ニフェカラントはⅢ群抗不整脈薬のひとつであり,IKr
ントに左交感神経節ブロックを併用すると VT・VF の抑
を 抑 制 し て QT 間 隔 と 有 効 不 応 期 の 延 長 を も た ら
制に有効との報告がある 430).
す 418),419).その効果は逆頻度依存性であり 420)-422),徐拍
ニ フ ェ カ ラ ン ト は VT(n = 53) の 53 %,VF(n =
時の QT 延長と torsade de pointes(TdP)の発生には注
26)の 29%を停止させ,DC 通電に抵抗例の除細動効果
意を要する.持続性心室頻拍における誘発阻止作用はア
を高める 111).電気生理検査によるニフェカラントの VT
ミオダロンやソタロールに劣るが 423),難冶性の心室頻
誘発阻止効果は約 50 %にみられ,誘発阻止群では頻拍
拍 / 心室細動(VT/VF)への効果が注目されている.
周期はより短かい 431).電気生理検査でのニフェカラン
心筋梗塞急性期の VT・VF がニフェカラントの静脈内
トの誘発阻止有効例では,ソタロールも有効であること
.投与
が多い 432).ICD 植込み後の Electrical Storm は難渋する
量は,初期には 0.3mg/kg を用い,次いで 0.05 ~ 0.15mg/
が,麻酔導入やβ遮断薬以外に,ニフェカラントの静注
kg/ 時間の点滴投与を行うことが多いが,TdP の出現に
の有効例がある 433).
は注意を要する.
心房細動では,ニフェカラントは除細動閾値を低下さ
院外心肺停止で搬送され心室細動を認め,病院到着時
せ(平均 9.5 ± 7.0J)434),DC 通電に抵抗性を示す心房細
に心拍再開のない 665 例の検討では,ニフェカラント使
動例で除細動効果を高める 435)-437).心房粗動や難治性
用群(n = 58)の方が非使用群(n = 697)に比べ,ICU
の心房頻拍でも有用例が報告されている 79),438).
投与後に停止することが報告されている
4
424)-426)
抗不整脈薬の適用,用法・用量:成人
リドカイン
メキシレチン
ジソピラミド
プロパフェノン
アプリンジン
シベンゾリン
ピルメノール
フレカイニド
不整脈に対する保険上の適用
組成・剤形・用量
用法
上室性および心室性の期外収縮およ 静注用:100mg 注射:1 回 50 ~ 100mg(1 ~ 2mg/kg)を 1 ~ 2 分間
び発作性頻拍,急性心筋梗塞および (5mL)
で緩徐に静注,点滴用:1 ~ 2mg/ 分(最高 4mg/ 分
手術に伴う心室性不整脈の予防
点滴用:2g
まで)
(200mL)
頻脈性不整脈(心室性)
カプセル:
内 服:1 日 300 ~ 450mg,3 回 に 分 服, 注 射:1 回
50mg,100mg. 125mg(2 ~ 3mg/kg) を 5 ~ 10 分 か け て 静 注 又 は
注:125mg(5mL) 0.4 ~ 0.6mg/kg/ 時で点滴
上室性および心室性の期外収縮およ カプセル:
内服:100mg を 1 日 3 回,R 錠は 150mg を 1 日 2 回,
び頻拍,心房細動・粗動
50mg,100mg. 注射:1 回 50 ~ 100mg を 5 分以上かけてゆっくり静注.
R 錠(徐放剤)
:
150mg.
注:50mg(5mL)
頻脈性不整脈
錠:100mg,
内 服:1 回 150mg を 1 日 3 回,100mg 錠 は 高 齢 者 等
150mg
への初期用量
頻脈性不整脈
カプセル:
内服:1 日 40mg から開始し 60mg まで増量可,1 日 2
10mg,20mg
~ 3 回に分服,注射:5% ブドウ糖液で 10 倍希釈し 1
注:100mg
回 1.5 ~ 2mL/kg(1.5 ~ 2mg/kg)を 5 ~ 10mL/ 分の
(10mL)
速さで静注,注入総量は 100mg まで
頻脈性不整脈(内服は他剤無効例) 錠:50mg,
内服:1 日 300mg から開始し 450mg まで増量可,1
100mg.
日 3 回に分服,注射:1 回 0.1mL/kg(1.4mg/kg)を
注:70mg(5mL) 生食又はブドウ糖液で希釈,血圧・心電図監視下で 2
~ 5 分かけて静注.
内服:1 回 100mg を 1 日 2 回
頻脈性不整脈(心室性)他剤無効例 カプセル:
50mg,100mg.
頻脈性不整脈(発作性心房細動・粗 錠:50mg,
内服:1 日 100mg から開始し 200mg まで増量可能.
動,心室性)他剤無効例
100mg.
1 日 2 回 に 分 服 注 射:1 回 0.1 ~ 0.2mL/kg(1 ~
注:50mg(5mL) 2mg/kg)ブドウ糖液で希釈し血圧・心電図監視下で
10 分かけて静注.総投与量は 1 回 150mg まで
63
循環器病の診断と治療に関するガイドライン(2008 年度合同研究班報告)
ピルジカイニド
不整脈に対する保険上の適用
頻脈性不整脈 他剤無効例
組成・剤形・用量
用法
カプセル:
内 服:1 日 150mg を 3 回 に 分 服 1 日 225mg ま で 増
25mg,50mg
量可 注射:期外収縮;1 回 0.075mL/kg(0.75mg/
注:50mg(5mL) kg)まで 頻脈;1 回 0.1mL/kg(1mg/kg)まで,い
ずれも生食またはブドウ糖液で希釈,血圧・心電図
監視下で 10 分かけて静注
錠:50mg,
持続性心房細動内服:1 回 50mg 1 日 2 回より開始
100mg
し 1 回 100mg 1日 2 回まで増量可,
頻脈性不整脈(心室性)内服:1 回 100mg 1 日 2 回
錠:40mg.
内服:1回 1 から 2 錠(40 ~ 80mg)を1日 3 回 注射:
注:5mg(2mL) 1 回 5mg を徐々に静注.
(必要に応じて生食またはブ
ドウ糖液で希釈)
錠:30mg,
不 整 脈 に は, 注 10 と 注 50 の み が 保 険 適 用 1 回
60mg.
10mg 約 3 分間で緩徐に静注
R カプセル:
100mg,200mg.
注:10mg,
50mg,250mg.
錠:40mg,
1 日 80mg から開始し,320mg まで漸増可.1 日 2 回
80mg.
に分服
錠:100mg
内服:導入期は 400mg/ 日,維持期:200mg/ 日を 1
注:150mg(3mL) ~ 2 回分服
注射:点滴静注にて時間経過とともに所定の用法・
用量で 詳細は添付文書で
ベプリジル
持続性心房細動 , 頻脈性不整脈(心
室性)他剤無効例
ベラパミル
頻脈性不整脈(心房細動・粗動,発
作性上室性頻拍)
ジルチアゼム
注射:頻脈性不整脈(上室性),手
術時異常高血圧の救急処置,高血圧
緊急症,不安定狭心症
ソタロール
生命に危険のある心室頻拍,心室細
動 他剤無効例
錠:生命に危険のある心室頻拍,心
室細動,肥大型心筋症に伴う心房細
動 他剤無効例
注:生命に危険のある緊急性の血行
動態の不安定な心室頻拍,心室細動
致死性の心室頻拍,心室細動 他剤 注:50mg
無効例
アミオダロン
ニフェカラント
生食又はブドウ糖液で溶解,心電図監視下で単回静
注 は 1 回 0.3mg/kg を 5 分 間 か け て, 維 持 点 滴 は
0.4mg/kg/ 時を等速度で.
内服:1 日 30mg から開始し 90mg まで増量可 1日
3 回に分服.
注射:詳細は添付文書を参照のこと
プロプラノロール 錠:期外収縮,発作性頻拍の予防 、 錠:10mg,
頻拍性心房細動,洞性頻脈,新鮮心 20mg.
房細動,発作性心房細動の予防,* LA カプセル:
徐放錠は狭心症,本態性高血圧症の 60mg.
みの適用
注:2mg(2mL)
注射:期外収縮,発作性頻拍,頻拍
性心房細動,麻酔に伴う不整脈,洞
性頻脈,新鮮心房細動
アトロピン
迷走神経性徐脈,迷走神経性房室伝 末:98% 以上
内服:1日1.5mg を3回に分服 注射:1回0.5mg 皮下,
導障害,その他の徐脈 ・ 房室伝導障 注:0.5mg(1mL) 筋注,静注
害
注射:10mg を 1 ~ 2 秒で静注
ATP
不整脈に対する保険上の適用はない 注:10mg
(ただし,保険適応外)
ただし,発作性上室性頻拍に有効
マグネシウム
不整脈に対する保険上の適用はな 注:2g(20mL) 注射:1 回 1 ~ 2g を徐々に静注
い.ただし Torsade des Pointes 型心
室頻拍に有効とされる
ジゴキシン
心房細動・粗動による頻脈,発作性 錠:0.125mg, 内服:急速飽和療法(飽和量 1 から 4mg)初回 0.5 ~
上室性頻拍,手術・急性熱性疾患・ 0.25mg
1mg 以後 0.5mg を 6 ~ 8 時間毎
出産ショック・急性中毒における心
注射:添付文書参照
不全および各種頻脈の予防と治療
内服:1 回 250 ~ 500mg,3 ~ 6 時間毎 静注:1 回
プロカインアミド 錠:期外収縮,発作性頻拍の治療・ 錠:125mg,
200 ~ 1000mg,50 ~ 100mg/ 分 の 速 度, 筋 注:1
予防,新鮮心房細動,発作性心房細 250mg.
動,陳旧性心房細動,急性心筋梗塞 注:10%,1mL, 回 500mg,4 ~ 6 時間毎
における心室性不整脈,手術・麻酔 2mL
に伴う不整脈予防.注射:期外収縮,
発作性頻拍,手術および麻酔に伴う
不整脈,心房細動,心房粗動(静注
のみ)
キニジン
期外収縮,発作性頻拍,発作性心房 錠:100mg
漸増法:1 回 200mg,1 日 3 回投与し漸増する.6 日
細動の予防,新鮮心房細動,陳旧性
間で無効なら中止 維持:1 日 200 ~ 600mg,1 ~ 3
心房細動,心房粗動,電気ショック
回分服,大量投与は 3 日間で無効なら中止
療法との併用およびその後の洞調律
の維持,急性心筋梗塞時における心
室不整脈の予防
64
不整脈薬物治療に関するガイドライン
5
抗不整脈薬の適用,用法・用量:小児
抗不整脈薬
リドカイン
心室頻拍
メキシレチン
頻脈性不整脈(心室性)
ジソピラミド
上室性頻拍,心室頻拍
プロパフェノン
フレカイニド
頻脈性不整脈
頻脈性不整脈
ベラパミル
頻脈性不整脈
ソタロール
アミオダロン
心室頻拍
生命に危険のある心室頻拍,心室細動
ニフェカラント
心室頻拍,心室細動
ベプリジル
プロプラノロール
頻拍性不整脈(心室性)
頻脈性不整脈,QT 延長症候群
ビソプロロール
アテノロール
アトロピン
ATP
心室性期外収縮
頻脈性不整脈(洞性頻脈,期外収縮)
迷走神経性徐脈,迷走神経性房室伝導障害
保険上の適用なし
但し,発作性上室性頻拍に有効とされる
保険上の適用なし
但し,Torsade de pointes 型心室頻拍に有効
とされる
発作性上室性頻拍
マグネシウム
ジゴキシン
不整脈に関する保険適用
投与法
投 与 量
静注 1mg/kg,を希釈静注
有効ならば 0.025 ~ 0.05mg/kg/ 分を持続点滴
静注 2 ~ 3mg/kg を 5 ~ 10 分で希釈静注.
効果あれば 0.4 ~ 0.6mg/kg/ 時間で持続点滴静注
経口 5 ~ 15mg/kg 分 3 ~ 4(最大 450mg)
静注 1 ~ 2mg/kg を 5 分以上で希釈静注
経口 5 ~ 15mg/kg を分 3(最大 300mg)
経口 5 ~ 10mg/kg,分 3(最大 450mg)
静注 1 ~ 2mg/kg10 分間で希釈静注(最大 150mg)
経口 1 ~ 4mg/kg,分 2(最大 200mg)
静注 0.1mg/kg5 分以上で希釈静注
経口 3 ~ 6mg/kg,分 3
経口 1 ~ 2mg/kg から始め,8mg/kg まで増量分 2
静注 初期急速投与:2.5mg/kg を 5% ブドウ糖液で希釈し,
10 分間で投与.
負荷投与:1mg/kg/ 時を 6 時間投与する.
維持投与:0.5mg/kg/ 時を 42 時間投与する.
追加投与:血行動態が不安定な心室頻拍あるいは心室
細動が再発し,本剤投与が必要な場合に 2.5mg/kg を
5% ブドウ糖液で希釈し,10 分間で投与.
継続投与:0.5mg/kg/ 時
経口 初期投与量は 1 日 5 ~ 10mg/kg,分 1 ~ 2,1 ~ 2 週間
維持量は 1 日 2.5 ~ 5mg/kg,分 1 ~ 2
静注 単回 0.3mg/kg(10 分かけて)
,維持 0.2 ~ 0.4mg/kg/
hr
経口 2~4mg/kg,最大 200mg
静注 0.05 ~ 0.1mg/kg を 10 分以上かけてゆっくり静注
経口 1 ~ 3mg/kg,分 3 ~ 4
経口
経口
静注
静注
0.08 ~ 0.1mg/kg/ 日(分 1)
1 ~ 2mg/kg/ 日(分 1)
0.01 ~ 0.02mg/kg
0.1 ~ 0.3mg/kg を原液のまま急速静注
静注
20 ~ 40mg/kg を 1 ~ 2 分で静注
維持量は 0.05 ~ 0.3mg/kg/ 分を持続静注
静注
乳幼児 0.03 ~ 0.05mg/kg を 3 ~ 4 回に分割静注
学童 0.02 ~ 0.04mg/kg を 3 ~ 4 回に分割静注
乳幼児 0.01 ~ 0.025mg/kg(維持量)
学童 0.008 ~ 0.02mg/kg(維持量)
2 ~ 10mg/kg を希釈して 10 分以上でゆっくり静注
頻拍が停止すれば中止
20 ~ 60mg/kg,分 3 ~ 4
経口
プロカインアミド
頻脈性不整脈
静注
経口
」
注)現在ジゴキシン,フレカイニド以外の抗不整脈剤はすべて「小児への有効性や安全性は確立されていない(使用経験が少ない)
と添付文書に記載されており,適応外使用に該当する.また経口薬を粉砕するなどして,体重換算で投与する場合も,剤形変
更として,適応外使用に該当する.
65
循環器病の診断と治療に関するガイドライン(2008 年度合同研究班報告)
日本で使用されている抗不整脈薬の発売年
(同一年の薬剤は発売月順)
薬品名
プロカインアミド
リドカイン
キニジン
ベラパミル
ジルチアゼム
ジソピラミド
メキシレチン
アプリンジン
シベンゾリン
プロパフェノン
ピルジカイニド
フレカイニド
アミオダロン
ベプリジル
ピルメノール
ソタロール
ニフェカラント
66
発売年
1953
1955
1956
1965
1974
1978
1985
1987
1991
1991
1991
1991
1992
1993
1994
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