埼玉縣信用金庫の企業への経営改善支援の取組み事例 (2)

埼玉縣信用金庫の企業への経営改善支援の取組み事例
当金庫では、リレーションシップバンキング機能強化計画に引き続き地域密
着型金融推進計画においても中小企業の再生支援に積極的に取り組んでおりま
す。この中で当金庫が取り組んだ取引先企業への経営改善支援の取組み事例の
一部をご紹介させていただきます。当金庫では、今後も引き続き取引先企業へ
の経営改善支援を積極的に取り組んで参ります。
取引先企業への経営改善支援の状況(ケース1)
業種
製造業
経営支援前の企業の状況
A社は、鉄骨素材を製造加工している企業であります。ここ数年の間に取引
先の倒産や長引く建設需要の低迷の中で、売上が低下傾向にありました。さら
に、本業以外の業種への進出等の多角化の失敗もあり、その有する資産に不良
なものが存在し、実質債務超過の状況にありました。
経営支援概要
当金庫で作成した顧客向けの財務分析資料である「財務診断表」に基づく説
明を実施し、顧客との現状に対する共通認識を醸成しました。さらに、財務調
査を実施、計画書策定を支援しました。A社はキャッシュフローと借入金返済
のバランスを崩していたため、借入金返済額をA社のキャッシュフローに合わ
せた返済計画の見直しを実施しました。
当該企業の施策
5年以内の実質債務超過解消を実現するために、
①売上総利益管理の徹底
②債権管理体制の構築
③将来成長の見込まれる新製品の営業強化
を計画の骨子として実施しました。
経営支援後の企業の状況
売上高、利益が当初計画を上回りました。懸念されていた売掛債権の貸倒れ
も発生せず、利益体質が構築されつつあります。財務内容に関心の薄かった社
長の意識改革が図れ、試算表等の計数に基づく意志決定がなされつつありま
す。
経営支援が成功したポイント
顧客とのコミュニケーション維持と財務を中心とした助言、計画書策定、計
画進捗モニタリングを通じて信頼関係が構築できました。
再生に関して金庫が行った役割
返済計画の見直しの実施と計画書策定支援並びにモニタリングを通じてのコ
ンサルタントを実施しました。
取引先企業への経営改善支援の状況(ケース2)
業種
運輸業
経営支援前の企業の状況
B社は、運送業を営んでいる企業であります。売上減少傾向であるものの、
販管費の変動費化が図れており連続5期以上の利益を計上している。一定の現
金水準を保ちながら借入金の返済をしているものの、キャッシュフローを上回
る返済金であり、返済バランスが保たれていない状況でありました。また、排
ガス規制など環境面の影響により、車両入替に伴う資金負担を余儀なくされて
いる状況でありました。
経営支援概要
B社に対して、経営改善計画書策定支援と平行して企業パワーアップ資金導
入による資金繰り支援を実施し、収支バランスの均衡を目指しました。改善計
画策定にあたり、B社を取り巻く環境面、具体的には運送業界動向や軽油価格
推移など現状把握に必要な情報の提供を行いました。さらに、経営課題である
車両入替を事業計画として定期的に盛り込むよう打診をしました。計画スター
トと同時に月次試算表に基づくモニタリングの定期開催を実施していく方針に
て取り組み、現状実態把握に努めています。
当該企業の施策
経営課題である将来のトラック入替需要に備え、キャッシュフロー増加に寄
与する改善策を行っています。具体的に売上増加策として、価格値上げ交渉や
新規受注先開拓によるトラック1台あたりの売上増加が挙げられます。また、
収益性向上策としては、人件費削減とトラック空輸送を減らすことによる効率
性アップを実行していきます。以上より返済バランス均衡を図るべく取組中で
あります。
経営支援後の企業の状況
業況良化傾向であります。既存取引先との価格値上げ交渉成立も、傭車費や
燃料費で若干コスト高となっているため目標キャッシュフローに届いていない
ものの、経営者にコスト意識が醸成しつつあり、一定の効果が現れ始めていま
す。
経営支援が成功したポイント
経営者とのヒアリングを充分に行い、現状把握や経営実態把握に努めたこと
による顧客との信頼構築が成功の一番のポイントといえます。
再生に関して金庫が行った役割
当金庫関与にて作成した中長期経営計画に基づき経営改善をスタートしまし
た。作成には、細部に渡り情報収集・提供に努めました。あわせて企業パワー
アップ資金により資金繰り支援を実施しました。月次モニタリングによるコス
ト意識醸成効果として、キャッシュフローも一定額を蓄積できております。