2012/11/1 ITSについて思うこと • 訳語問題 公共交通(特にバスや路面電車)とITS 総論 横浜国立大学大学院 都市イノベーション研究院 教授:中村文彦 – Intelligent Transport Systems=高度道路交通システム • 輻輳するバランス問題 – – – – – – – – – 警察、建設、運輸、経済、電波免許 欧州、米国、日本 先進国と途上国 円滑と安全、利便性(?) 環境、福祉、経済活力、国際競争、防災 Seeds-Oriented vs. Needs-Driven 評価(対象、主体、方法、項目) 個人交通手段と乗合交通手段 個人の移動と運輸事業としての移動 特にバスに関して • バスのITSと言えば • バスロケーションシステム • 優先信号制御(PTPS等) • 業務のOA化、IT化 – 何のためのITSか • • • • • 現在の利用者のため 現在の非利用者(他手段利用者、外出困難な人) 事業者 都市のシステム全体の効率 政策的目標:環境負荷低減、安全、安心、防災、被災時迅速復 旧、被災後復興活動支援 ケース1 IT駆使のBRT なんのためのITかを学ぶ – 現在の、近未来のバスの「困っていること」の解決に資す るか? • どこかチグハグではないか。 ボゴタ市(コロンビア) • 要点 – – – – – – – – – – – – – 人口730万人 クリチバの経験等を踏まえ、高容量、高性能で実現 公社(トランスミレニオ)管理 ガソリン税を値上げしてその収益でバスインフラ整備 市域全部のバス路線の再編はせず、段階的に。 駅容量強化(数台同時発着、追越可) 情報技術駆使(運行管理、顧客管理) ピーク時の多種多様な急行運転(速い) 幹線+支線(運賃無料) 都市計画と連携せず。(幹線沿いに開発は進む) 自動車抑制策(利用、空間削減)と連携 駅構内売店なし(汚れる原因→確かに駅や車内が綺麗) 人材養成への投資。運転士給与の高額設定 TransMilenio Bogota, Colombia • 現況と課題 – 中間所得層、ホワイトカラーも利用。 – 情報通信技術は韓国LG独占(日本は入る余地なく) – 最近、あまりの混雑激化から暴動発生の報道あり。 1 2012/11/1 朝ピーク時のトランスミレニオ(ボゴタ)(動画) 多種類多数の快速バス(途中通過)→高速で高容量 導入:ディマンド運行への過剰な期待 • ディマンド運行の方式は多様である。 ケース2 イエテボリのフレックスルート なぜDRTかを学ぶ – 停留所も路線もダイヤも決まっている例(タクシーバス) – ダイヤと候補停留所は決まっているが路線はない(フレックスルート) • ITということでディマンドバスが流行している – →どこでも成立するというものではない。 • 導入に際しては冷静な評価が必要 – – – – 通常の運行とディマンド運行を客観的に比較 利用者サイド、運営サイド、地域全体サイドで評価 通常運行よりコストが下がる場合は限定的 通常運行より利用者が増える場合も限定的 • 流行に踊らされていることへの懸念 • スウェーデンの例は参考になるが – 全域バス路線体制、タクシー券補助制度、等との比較の上での導入 – 市民IDなど背景事情の差異 2 2012/11/1 参考:DRTの分類 № 運行形態 1 ダイヤまで確定 関連事例 ケベック 論点 補助制度 2 3 4 5 6 7 途上国 途上国 東急 スウェーデン アメリカ 運行判断 運行判断 意義 役割と効果 同上 対タクシー ダイヤをもたない 停留所をもたない 迂回路線を持つ 路線網を持つ 路線を持たない 乗合or相乗タクシー 参考:タクシーバス(カナダ・ケベック州) • 低密度利用路線でのタクシー車両活用 • 路線、停留所、ダイヤはすべて固定 • 利用者は希望時にセンターへ電話 – センターはタクシー会社へ配車を要求 – タクシーは実車でバスダイヤに沿って運行 – 利用者はバス運賃を支払う。 – メータと運賃収入の差額を後日、市が補填(補 助) – 要求ない便は欠航→Demand Responsive 参考例:フレックスルート(イエテボリ) • 大学病院と郊外SC(ともにバス路線とトラム路線の ターミナル)間を結ぶディマンドバス(DRT)。 • 途中の経由地(ミーティングポイント)は起点発車15 分前までの予約により決定(単純技術)。 • 完全な乗合ではない(移動制約者のみ利用可能)。 • 自宅での予約は電話。帰宅時の予約は各自のID カードで簡単にできる。 • 在来路線バスによるモビリティ確保よりコストを下げ、 かつ利用者を呼び込んだ(福祉政策の効率化)。 3 2012/11/1 論点 • オンデマンド交通は本当に必要なのか? – あれば便利、でもなくても間に合う →× – 効果はある、でも費用も余計にかかる →△ • 導入により、誰のどういう行動をどう変えるの か、それが地域にどうプラスなのか – 在来バス利用者からの転換だけ →× – 利用者は便利という →× これは当り前 条件設定 • ケース1 新規導入 – すでにバスもなにもないところに入れる新規サー ビスの候補としてのオンデマンド交通 • ケース2 置換導入 – 既存バス路線の廃止代替のサービスとしてのオ ンデマンド交通 視点1 費用効率性での優位性 • 費用の優位性 – オンデマンドでないバスと比べて、同じサービス 水準の達成にかかる費用が安価かどうか • 参考→イエテボリのフレックスルート – 新規導入→他の選択肢との費用比較 • ミニバス路線、タクシー券配布より安価 – 置換導入→事前のシステムとの費用比較 • 従前の路線バスより安価になっているか 4 2012/11/1 視点2 効果、目標達成 • 便利になった →それは当然。(不便では困る。) • 地域の目標、交通戦略の目標の達成への貢 献、で評価 • 何人乗ればいい、ではなく、 • 乗ってほしい人に乗ってもらったかどうか、 • 期待していた行動の変化が実現されたかどう か 追記 • • • • 利便性の向上 きわめて危険な表現 情報通信技術の活用 何のためか不明 利用者の満足 非利用者の評価が必要 採算性確保 社会的便益こそ評価が必要 視点3 多様性 • 様々なサービスバリエーションの可能性 • 地域のニーズや条件(地形なども)にあわせ たシステム設計へ。 – ここでも代替案比較、費用評価、効果評価が重 要になる。 ケース3 コペンハーゲンのAバス バスロケーションシステムの 意味を確認 • オンデマンド交通が、今困っている人を救う 最善策として理解されることを期待 A-bus -コペンハーゲンの基本ネットワーク -高頻度 -使いやすく単純 黄色に赤 -単純なタイムテーブル -オフピークでも3-5分間隔 -全バス停に停車 -単純な系統番号 (1A, 2A, 3A, 4A, 5A, 6A) -全バス停で「あと●分でバスが来る」の案内 5 2012/11/1 A-busの運行実態解析に基づいた社会実験 • • • • 3ヶ月間の実験 道路断面構成変更 規制変更 区間1 – 車線半減、突出バス停 • 区間2 – バス以外進入禁止 • 周知不徹底→初日混 乱→慣れるかどうかを みるのが実験 – オオラカ おわりに • 地域再生、福祉、環境、財源制約下の知恵 • 外出困難になっている(なりそうな)地域の人々 を助けるITS • ぎりぎりの経営をしている事業者の経営状況を 改善するIT • 導入及び維持管理費用のかかる提案よりは。。。 (たとえ費用対効果が大きいにしても)。 6
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