グローバル知的財産ニューズレター vol.2 Issue 1

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グローバル知的財産ニュースレター
July 2013
Volume 2 Issue 1
知的財産一般
【欧州連合(EU)】クロアチア、EU に加盟: 2013 年 7 月 1 日、クロアチア
の加盟により、欧州連合(EU)がさらに拡大した。その影響は知的財産権に
も波及する。2013 年 7 月 1 日より前に出願または登録済みであるか、優先権
を主張済みの欧州共同体商標(CTM)および欧州共同体意匠(RCD)につい
ては、2013 年 7 月 1 日から自動的にクロアチアにおいても効力を発生してお
り、また、2013 年 7 月 1 日以降に行われた CTM および RCD の出願は、すべ
ての EU 加盟国において効力を発生している。CTM の審査において絶対的拒
否理由に該当すると判断された場合の異議申立てや、RCD に対する異議申立
ておよび無効審判の請求については、2013 年 7 月 1 日以降に実施できること
となった。
クロアチアの EU 加盟は、知的財産権の行使においても影響を及ぼす。EU 税
関告知書を提出したブランド所有者は、クロアチアも対象国に含めることが推
奨される。これにより、クロアチア税関は、国境において特許侵害品の流入を
阻止し、ブランド所有者の商品を保護することが可能となる。EU の関税法典
委員会が公開している、クロアチアの EU 加盟による税関に関する影響につい
ては、こちら(英語のみ)を参照。
商標
【ブルネイ】新設のブルネイ・ダルサラーム特許登録局(BruIPO)、2013 年
7 月 1 日から商標出願受け入れへ: 2013 年 7 月 1 日より、ブルネイにおける
商標登録は、BruIPO に出願することとなった。同局は、商標権および特許権
の付与や、工業意匠および商標の登録の実施を目的として設立されている。
特許
【米国】米連邦最高裁、自然状態の遺伝子に対する特許を認めず、相補的DNA
(cDNA)は引き続き特許の対象に: 2013 年 6 月 13 日、米連邦最高裁はミリ
アド・ジェネティクス社(ミリアド社)の遺伝子特許事件 1において、自然状
態の人のDNAから単離した遺伝子は、特許の対象とならないとの判決を下し
た。ミリアド社は、乳がんおよび卵巣がんのリスクを高める遺伝子、BRCA1
およびBRCA2 の特許を取得している。これに対し、医療研究者、医師、患者、
市民団体が、これらの遺伝子は自然の産物であり、特許の対象とはならないと
し、特許の無効を求め、ミリアド社を提訴した。連邦巡回区控訴裁はミリアド
社の遺伝子に対する主張を認めたが、その判決は米最高裁において、ほぼ全員
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Association for Molecular Pathology (APM) et al. v. Myriad Genetics, Inc.
一致で覆された。米最高裁は、ミリアド社の遺伝子に関する特許の主張につい
て、「化学合成物として表されておらず、DNAの特定の断片を単離すること
による化学変化に基づいていない」とし、もともとある物質を単離することは
重大ではないとの判断を下した。
一方、人工的に合成された cDNA(相補的 DNA)について、米最高裁は異な
る見解を示しており、限定された条件下でのみ特許の対象とするとの判決を下
している。
知的財産権の行使
【カナダ】模倣品対策法案を制定: 2013 年 6 月 13 日、カナダ政府は、模倣
品問題や著作権侵害問題に対する法体制を強化するため、模倣品対策法案
(Combating Counterfeit Products Act、以下「法案」)を制定した。本法案につ
いては、2013 年 6 月 13 日に二回目の審議が行われている。法案の主な内容は
以下のとおりである。
•
総合的な国境取締体制が新たに整備される。この新体制下では、権利所有
者が商標または著作権保護対象物を税関に登録でき、カナダの国境職員は、
模倣品/海賊版について、その真偽判定を行う間、短期間(問題の物品が
腐敗しやすいものであるかに応じて 5~10 日)の差止を実施できる。差止
物品が模倣品であった場合、差止の解除を阻止するために、知的財産権所
有者が民事訴訟を起こす必要がある。
•
商標法における新たな刑事犯罪の定義は著作権法の既存の定義に類似し
ている。法案では、売買または販売目的の展示を意図して、模倣品を販売、
レンタル、流通するために所持することを特に禁じている。しかし、並行
輸入の例外的な扱いに関する問題は残ったままである。
•
刑事責任を負う対象の範囲が、権利侵害を実際に行った人物のみならず、
侵害行為を企図した人物にも拡大される。
【英国】英最高裁、キーワード検索での他社の商標使用は権利侵害に該当と判
断: 英国最高裁は、Interflora Inc.(以下「インターフローラ」)と Marks & Spencer
Plc Flowers Direct Online Limited(以下「マークス&スペンサー」)間で長期間
係争中であった訴訟において、判決を下した。本裁判では、マークス&スペン
サーのキーワードを用いた広告キャンペーンが、インターフローラの商標権侵
害に該当するかについて争われていた。
インターフローラは、英国において、生花配達サービスを行う企業として長年
にわたって知られており、さまざまな商品やサービスに対し、英国の商標およ
び欧州共同体商標として、INTERFLORA を保有している。マークス&スペン
サーは、自社のオンライン生花販売事業の広告に「INTERFLORA」および類
似する言葉をグーグルの AdWords における広告キャンペーンで使用した。イ
ンターフローラは、このキーワードの使用が同社の商標権侵害にあたるとし、
マークス&スペンサーを起訴した。
英最高裁は、他者の商標と同一のキーワードの使用が、欧州商標指令において
権利の侵害とみなされるかという点について、欧州司法裁判所に裁定を委ねて
いた。欧州司法裁判所は 2011 年 9 月 22 日、標識のキーワードとしての使用は、
取引の一環であり、また、広告主の商品とサービスに関連する使用とみなすと
判断した。さらに同裁判所は、このような使用は「公正な競争」下においては
防ぐことができないとしたが、商標が持つ出所を示す作用や広告・投資作用等
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に悪影響を及ぼしたかどうかの判断は、英最高裁にゆだね、悪影響を及ぼした
場合は権利の侵害とみなすとの判断を下した。
英最高裁は、マークス&スペンサーの広告手法が、インターフローラの商標が
持つ出所を示す作用に悪影響を及ぼしたと判断した。マークス&スペンサーの
オンライン広告戦略のもとでは、情報を十分に得ているインターネットユー
ザーが、広告の対象となる商品およびサービスの出所をインターフローラか、
その他企業であるかを見極めることが困難であるとし、マークス&スペンサー
は、広告行為によって、対象商品およびサービスの出所をユーザーが明確に判
断できるようにするという義務を怠ったという判決を下した。
インターフローラの商標の広告および投資作用について、英最高裁はキーワー
ドを用いた広告キャンペーンが商標の評判に悪影響を及ぼす場合には、投資機
能も同様の悪影響を受けると判断したが、一方でインターフローラは、マーク
ス&スペンサーがその広告行為によって商標の評判を損なったこと、またはイ
ンターフローラを模倣したサービスを提供したことについて主張しなかった
ため、マークス&スペンサーはフリーライドについては責任を問われないとの
判断を下した。
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を提供する組織体において共通して使用されている用語例に従い、「パートナー」とは、法律事務所におけるパートナーである者またはこれと同等の者を指します。同じく、「オフィス」とは、かかるいずれかの法
律事務所のオフィスを指します。
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