建設機械の自動化による次世代の建設生産システムを開発

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[2015 年 5 月 14 日]
建設機械の自動化による次世代の建設生産システムを開発
五ケ山ダムの RCD 施工に自動運転の振動ローラを一部適用、ブルドーザを試験導入
鹿島(社長:中村満義)は、建設機械の自動化技術を核とした次世代の建設生産システム「A4CSEL」
(クワッドアクセル)*を開発しました。福岡県五ケ山ダム堤体建設工事において、RCD コンクリートの振
動ローラによる転圧作業を一部自動で行い、初めて実工事に適用しました。また、コマツ(社長:大橋徹
二)との共同開発によるブルドーザの自動撒き出し作業の実証実験も併せて行い、いずれもその高い
施工精度を確認しています。
鹿島の目指す次世代建設生産システムは、従来のリモコン等による建設機械の遠隔操作とは異なり、
人間がタブレット端末で複数の建設機械に予め指示を出すことにより、無人で自動運転を行うもので、
このほど振動ローラとブルドーザへの適用に成功したものです。
鹿島は、建設業が抱える課題である熟練技能者の減少や作業員不足への対応、土木工事全般の
生産性並びに安全性の向上に大きく貢献できるシステムとして、今後、適用機種を更に増やしていきな
がら、建設工事の自動化を進めていく方針です。
*Automated/ Autonomous/ Advanced/ Accelerated Construction system for Safety, Efficiency, and Liability
「A4CSEL」の施工イメージ
五ケ山ダムでの実施状況(自動ブルドーザと自動振動ローラ)
【開発の背景】
建設業では、技能者の高齢化や若手就業者の減少等による熟練技能者の減少が喫緊の課題となっ
ています。また、建設業は単品受注生産のため人の手による作業に多くを頼らざるを得ず、建設機械と
近接する条件下での労働安全性の向上も大きな課題です。
これらの課題に対し鹿島では、機械が得意な単純な繰返し作業を自動化し、一方で機械が不得意な
作業計画は人間が行うことをコンセプトとした、次世代の建設生産システムの実現を目指して研究開発
を進めてきました。
【システムの概要】
本システム「A4CSEL」(クワッドアクセル)は、①汎用建設機械の自動化技術、②施工状況に応じた運
転を行う制御プログラム、③自律運転を可能とするための計測・認識技術で構成されます。
①自動化技術
専用の建設機械ではなく、汎用の建設機械に GPS、ジャイロ、レーザスキャナなどの計測機器及び
制御用 PC を搭載することによって、自動運転を可能にしている点が特長です。
②制御プログラム
施工条件の異なる、数多くの作業での熟練オペレータの操作データを収集・分析し、制御アルゴリズ
ムに取り入れています。これによって、熟練オペレータと同等の精度を実現することができます。
③計測・認識技術
リアルタイムでの自己位置・姿勢、周辺状況の計測結果から、障害物や走路安全性などを認識し、自
動停止、再開などの機能を備えるなど、安全性を確保した自律運転を実現しています。
以上により、タブレット端末から作業内容を指示するだけで各機械が自律運転を行うため、少ない人
数で複数の建設機械を操作することが可能になりました。また、建設機械を自動化することにより、出
来形データや機械データを取得することがこれまで以上に容易になり、3 次元モデルに反映させること
によって、3 次元 CAD や CIM の推進にも貢献します。
(1)自律型自動振動ローラによる転圧作業の自動化
汎用の振動ローラを自動運転可能に改造し、五ケ山ダムの現場で RCD コンクリートの転圧作業に初
めて実適用しました。本工事では、1 人のオペレータが 2 台の自動振動ローラの操作を行い、直線走行、
切り返し走行とも、誤差が±10cm 以下に収まっていることが確認され、熟練オペレータと同等の施工精
度を確保することに成功しました。
自動化装備した振動ローラ
五ケ山ダムでの稼働状況
(2)自律型自動ブルドーザによる撒き出し作業の自動化
コマツの ICT ブルドーザ D61PXi に自動化機器・装置を搭載した、「自動ブルドーザ」を開発しました。
ブルドーザは、その作業内容や扱う材料が多岐にわたるため、走行やブレードの操作に高い熟練性が
必要とされる建設機械です。本システムではまず撒き出し作業の自動化を目指し、熟練オペレータの実
施工における操作データを取得、分析するとともに、走行経路やブレードの高さの違いによって、材料
の広がり形状を予測するシミュレータを開発・適用しました。
通常の土砂を使った撒き出し作業に、この自動ブルドーザを十分適用できることを確認した後、五ケ
山ダムの現場にて RCD コンクリートの撒き出し作業に適用する実証実験を行いました。RCD コンクリー
トの撒き出しは、通常の土砂と比較して、その材料性能や撒き出し形状に対して厳しい基準があるため、
より複雑な制御アルゴリズムが必要となりましたが、今回の実証実験の結果、熟練オペレータと同等の
精度で撒き出し作業が行えることが確認でき、その有効性を実証しました。
自動ブルドーザのシステム構成
自動ブルドーザによる RCD コンクリート撒き出し作業状況
【今後の展開】
今回、振動ローラの転圧作業とブルドーザの撒き出し作業の自動化に成功したことにより、今後は大
型ダンプや油圧ショベルを対象にした自動運転システムも確立させ、更に適用機種を拡大しながら、造
成工事やダム工事などにおける一連の建設機械の自動化システムを完成させる方針です。
鹿島では既に、東京電力福島第一原子力発電所の解体工事で高線量の解体がれきの搬送に自律
運転による自動搬送システムを開発、実用化しています。(平成 24 年度土木学会賞技術開発賞受賞)
これらの実績やノウハウをもとに、これまでの常識を覆す建設工事の自動化について今後も研究開発
を進め、建設業の生産性向上、安全性向上に寄与していきます。
【工事概要】
工 事 名: 五ケ山ダム堤体建設工事
工事場所: 福岡県筑紫郡那珂川町大字五ケ山
発 注 者: 福岡県
施 工 者: 鹿島・飛島・松本特定建設工事共同企業体
工
期: 2012 年 6 月~2018 年 3 月
工事諸元: 重力式コンクリートダム、堤高 102.5m、堤頂長 556m、堤体積 93.5 万㎥