国際開発援助動向研究会 第 51 回会合 議事録

2006 年 4 月 17 日
JPO 青柳恵太郎
国際開発援助動向研究会
第 51 回会合 議事録
1.日 時:平成 18 年 4 月 17 日(月)12:00~14:00
2.場 所:国際協力銀行 開発金融研究所 大会議室
3.発表者:大野泉 氏(政策研究大学院大学教授)
4.議 題:無償資金協力の有効性向上にむけて
――包括的な国際協力政策における位置づけを――
5.出席者:40 名
6.議 事:
6.1 今後の会合(予定)
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第 52 回会合
日 時:平成 18 年 5 月 22 日(月)12:00~14:00
場 所:国際協力銀行 開発金融研究所 会議室
発表者:園部哲史 氏(FASID 国際開発研究センター主任研究員兼 GRIPS 教授)
澤田康幸 氏(東京大学大学院経済学研究科助教授)
議 題: 市場と経済発展(仮)
6.2 開発援助情報システム「DAKIS」(http://dakis.fasid.or.jp)
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最新開発援助動向レポート No.21
・ 湊直信氏(FASID 国際開発センター所長代行)
「第 7 回 GDN コンフェレンス(サンクトペテルスブルク)」
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課題別基礎情報
・ 千葉杲弘氏(国際基督教大学 COE 客員教授)
「識字教育と開発」
6.3 本日のプレゼンテーション
近年、国際援助のグラント化や最貧国への集中が進んでおり、結果として、対外的に日本の無
償資金協力に期待される役割が増大している。また国内的にも、ODA 予算(特に一般会計予算)
をとりまく財政状況は依然厳しく、その効果・効率的執行を求める声は強い。今、日本の無償資金
協力は、かつてないほど内外でその競争力・有効性が問われている。こういった背景に基づき、ま
た 2008 年度予定の新しい ODA 実施体制の発足もにらんで、日本が無償資金協力の有効性を強
化していくためにめざすべき方向性、とるべき施策について国際協力政策の全体の中で無償資金
協力を位置付けた上での考察がプレゼンテーションの主要テーマであった。
報告では、近年において透明性向上、評価拡充、コスト縮減等のミクロ面で一定の改善努力が
進んでいる点を認識したうえで、国際援助のグラント化、援助協調の活発化、政策対話の重視等
の国際援助環境の変化もふまえた更なる改革が必要であることが強調された。そして、無償資金
協力の競争力・有効性を高める方策として、①細分化されすぎた現行スキームを抜本的に見直し、
目的別に編成すること(例: 開発支援、平和構築・復興支援、草の根レベルの支援、NGO 支援、
高中所得国・中進国との経済協力)、②資金協力として円借款と整合的な運用を行い(例: 審査・
評価・各種ガイドライン等で同一手続きの採用、多年度化、アンタイド化)、必要に応じて財源・金
利体系の見直しを行うこと、等の提案がなされた。
具体的な報告内容に関しては講師配布資料を参考。
6.4 質疑・コメント
報告に対し、以下のような論点が参加者から提起され議論が行われた。
(1)無償資金協力と技術協力の連携
これまでの日本の援助の特徴として、無償、有償、技術協力というスキームを持ちつつも、それ
ぞれがばらばらに動いていたことが指摘できる。無償資金協力の競争力向上ということが問われ
ているが、それぞれのスキーム間で連携が図られていかなくてはいけない。
有償、無償、技協がバラバラというのは日本特有の縦割り制度の弊害である。この点、省庁間で
一体になりにくいというのは分かるが、無償というのは人的資本のないところにやる援助であるの
だから、そもそも技協と組み合わせてやるべきなのに、外務省の中ですらそれをやってこなかっ
たというのは大問題である。これが新しい組織の中でどうなってくるのか注目すべき点である。
(2)有償資金協力との関係
日本の無償資金協力の有効性・競争力向上のために、資金協力として円借款と整合的な運用
を図るべきである、との報告に賛成する。国際開発金融機関(MDBs)はグラント援助の供与を拡
大しており、さらに HIPC 後の支援において債務負担能力を厳密に検討する必要もあり、有償と
無償の連携強化は不可欠になっている。さらに、多年度化や審査手続きの共有化により日本の
援助総体としての効果向上が期待できよう。なお、連携に関し、有償・無償で異なる財源を、一
度あわせた形で見直すことはできないか。
(3)ODA二分論
日本の援助はアジア重視と言いつつも、一方で国際社会も重視しており、この国際社会重視
の軸から近年はアフリカ重視と言っている。アジア重視と言っている国がなぜアフリカなのかと
いう矛盾がしばしば指摘されるが、報告にあった「ODA 二分論」で考えると、矛盾を矛盾なく説
明でき、いい案である。一方で、若干形式にこだわりすぎているという感もある。具体的な目的
別(人道的支援、平和構築、経済開発等)で整理をしてはどうであろうか。また、日本の国益と
いう目的も露骨に出していくことも必要であろう。
(4)アフリカに対する無償のあり方
日本の無償資金協力のあり方を国際的な視点から論じると、特にアフリカに関してはお金だけ出
して開発政策に関しては無口であった。今後、日本の方向性が問われるが、国際的な潮流に反
応するという形ではなく、日本独自のアフリカの開発を考えていくのであれば、国を絞った形で
深く少ない数の国に関わり、きめ細やかな対応を通じてよいモデルを提示し、例えば開発型であ
ればこういう支援の形があるのだということを打ち出していく必要があろう。
研究支援で日本がある程度リーダーシップを取れるような力を備えないといけない。農業の研究
に関してはそれなりに厚みのあるものがあるが、商工業に関してはほとんどない。アフリカにある
芽というのは現地政府の把握していないところにあり、そこを調査しなくてはならない。日本の研
究者に比較優位があるとすれば草の根からやっていくという点であり、そこをうまく使えば先進
国・援助機関の研究とは次元の違う発見をする可能性があるだろう。自生的な経済発展の芽を
掴み、そこに技協と無償が組んでいけばアフリカの経済支援で日本がリーダーシップをとること
は可能だ。
(5)新興ドナーとの関係
日本にとっては新興ドナーとどのようにパートナーシップを結んでいくかということに関して、競争
者としてではなくて、協力者としてどういう風に広げていけるかというところにポイントがある。援助
を超えた広い視野の下で、種々の連携の中の一つのコンポーネントとして位置付けていく必要
がある。
新興ドナーは国際社会の援助潮流を形成するための戦略的パートナーとしても可能性を有して
いる。例えば、OECD/DAC の議論にアジア発の視点をより反映させていく可能性も積極的に考
えるべきだろう。また、日本からの発信を強めていくためにも、特に研究分野における協同の役
割が大きいのではないか。この点、GRIPS では援助を卒業しつつある国(タイ、マレーシア等)が、
過去キャッチアップの時期に、どのようにドナーをマネージメントしてきたのかという視点から事例
をまとめながら研究を進めている。こうした研究面でのパートナーシップの可能性はまだまだある
し、今の開発政策の議論にリンクすることが望まれる。
(6)官民パートナーシップ
途上国援助について開発資金が不足しているから増額をという議論がされるが、援助現場の実
態を見ると必ずしも金額の問題ではない。キャパシティのないところに援助をどんどん出しても消
化不良を起こすだけである。これまで、こうした途上国のマネージメント能力不足を高めるには技
術協力で対応してきた。したがって無償と技術協力の連携を考えていかなくてはいけないが、実
態としてはそれを可能にするような枠組みがつくれていない。ひとつの方向として、官民を含め
て ODA を有効に使うということが効果的なやり方として期待される。
PPP などの民間の役割に関し、ある程度の所得がある国で、本来国としてやるべきことを無償で
やってもらうという国ベースのモラルハザードと、企業が本来とるべきリスクを無償にとってもらおう
という企業側のモラルハザードという二重の意味でのモラルハザードが生じるリスクを懸念する。
(7)無償資金協力に対する現場からの印象
平和構築における無償資金協力に関しては、治安確保、政治プロセス、人道支援、復興支援な
ど、ケースバイケースで柔軟な活用が可能になるような体制と形態にしていくことが大事である。
ソフト面をどう手当てするのかというのが無償の効果向上のカギとなるのではないか。現地のセク
ター一般の知恵、その国の文脈における具体的な状況、この両者を日本としてしっかり集積して
いかなくてはいけない。この点、知識の集積は東京でやるべきこともあるし、現地では受け皿を
用意し機動的にそれに対応していくことが大切であろう。
ガバナンスが弱い国では、資金協力は若干使いづらく、日本の独自性を出せるのはむしろ技術
協力にある。無償を行うドナーはたくさんいるので、現場としては無償を技術協力にシフトするこ
とで日本の顔が見えるものになると感じている。