こちら - 日本物理学会北陸支部

2016 年度
日本物理学会北陸支部
定例学術講演会
講演概要集
期日: 2016 年 11 月 26 日(土)
会場: 富山大学五福キャンパス
理学部
主催: 日本物理学会北陸支部
協力: 富山大学
Meeting Abstracts of Hokuriku Branch of JPS
2016 Annual Meeting, November 26, 2016
University of TOYAMA
2016 年度 日本物理学会北陸支部
定例学術講演会 プログラム
期日:2016 年 11 月 26 日(土)
会場:富山大学理学部
特別講演と支部総会
13:00 ~ 14:00 特別講演
「重力波天文学の始まり」
大橋正健 (東大宇宙線研究所重力波観測研究施設長)
於:F 会場(理学部 多目的ホール B243)
14:00 ~ 14:30 支部総会
於:F 会場(理学部 多目的ホール B243)
会場および座長一覧表
受付 8:30~ 理学部エントランスホール
会
場
午
前
前
半
午
前
後
半
A 会場
A238 号室
B 会場
A239 号室
C 会場
A336 号室
D 会場
A337 号室
E 会場
A424 号室
9:00~10:30
素粒子・原子核
杉山弘晃
(富山大)
9:15~10:30
非晶質・薄膜/結晶
成長/X 線・放射線
飯田敏 (富山大)
9:00~10:30
レーザー・分光
小林かおり
(富山大)
9:30~10:30
プラズマ・放電
伊藤弘昭
(富山大)
9:00~10:30
磁性
水島俊雄
(富山大)
10:45~12:00
素粒子・原子核
青木真由美
(金沢大)
10:45~12:00
X 線・放射線
阿蘇司
(富山高専)
10:45~12:00
レーザー・分光
榎本勝成
(富山大)
10:45~12:00
プラズマ・放電
鎌田啓一
(金沢大)
10:45~12:00
磁性
桑井智彦
(富山大)
13:00 ~ 14:00
14:00 ~ 14:30
午
後
前
半
午
後
後
半
14:45~15:45
素粒子・原子核
武田信滋
(金沢大)
14:45~16:00
低温
並木孝洋
(富山大)
昼食時間
特別講演 F 会場(理学部多目的ホール)
支部総会 F 会場(理学部多目的ホール)
休憩
14:45~16:15
レーザー・分光/
物理・応用物理一般
藤竹正晴 (金沢大)
14:45~16:00
プラズマ・放電
安藤利得
(金沢大)
16:00~17:30
物性基礎・計算機
シミュレーション
柿崎充 (富山大)
講演時間は、講演 10 分、質疑 5 分の合計 15 分です。
第 1 鈴は 7 分経過時、第 2 鈴は 10 分経過時、第 3 鈴は 15 分経過時です。
14:45~16:15
磁性
石川 義和
(富山大)
16:30~17:45
磁性
室 裕司
(富山県大)
講演会に関する連絡事項
■ 受付
・受付は理学部の玄関エントランスホールにて8:30よりおこないます。
・参加者は必ず参加登録をお願いいたします。
・参加費は一般1,000円、学生無料です。
■ 一般講演会場
・発表時間は講演10分、質疑応答5分、計15分です。
・第1鈴7分経過時、第2鈴10分経過時、第3鈴15分経過時です。
・発表機材としては液晶プロジェクタのみが用意されています。接続コネクタは標準的なD-sub15ピンで
す。講演のセッションが開始する前に、液晶プロジェクタで正常に表示されるかの試験をあらかじめ行
っておいてください。また、パソコンはありませんので発表者が用意してください。接続に要する時間も
講演時間に含まれます。
・講演会場での飲食はご遠慮ください。
■ 特別講演会場
・13:00より特別講演を多目的ホールでおこないます。
■ 支部総会
・特別講演終了後、多目的ホールにて支部総会をおこないます。
■ 休憩所
・休憩室は2階C202、204室です。
■ 喫煙について
・学内はすべて禁煙です。
■ 昼食・売店について
・生協食堂は五福本店食堂が営業しております。(営業時間: 11:00 ~ 13:00)
■ 懇親会
・本年度も懇親会は開催いたしません。
・休憩室を懇親のためにご利用ください。
■ 講演会本部
・講演会本部は2階C203室です。連絡事項等がございましたらお越しください。
■ 駐車場
・車で来学される場合は、学内駐車場に駐車願います。駐車スペースには限りがございますので、でき
るだけ乗り合わせの上、ご来場ください。
富山大学交通案内
■ 富山駅(JR)から
(1) 市内電車
大学前行 約20分
(2) 富山地鉄バス
「富山大学経由」3番乗り場 約20分
(3) タクシー
タクシー乗り場から、約15分
■ 北陸自動車道から
富山西ICから約10分
会 場 案 内
理学部入口(他の入口は施錠されています)
特別講演・総会
F 会場 多目的ホール
一般講演 A,B,C,D,E 会場
受付
一般・特別講演会場配置図 (理学部棟)
休憩室
多目的ホール
F
会場
B
会場
特別講演・総会
A
会場
D
会場
C
会場
E
会場
本
部
A 会場 午前
前半 09:00 ~ 10:30
素粒子・原子核
(富山大理)
座長: 杉山弘晃
Aa-01.
自発的対称性の破れと弱解 ---イジング模型の平均場近似--A
金沢大, 米子高専 , 神戸大RIEB
※
B
A
B @
青木健一, 藤井康弘 , 小林玉青 , 熊本真一郎 , 小内伸之介
Aa-02.
制限ボルツマンマシンとくりこみ群ー長距離イジング模型への適用
金沢大, 米子高専
A
@
A
青木健一, 藤田達大, 堀祐輔, 小林玉青 , 小内伸之介
Aa-03.
混合複素スカラー模型におけるWIMPシナリオと非対称暗黒物質シナリオの峻別
富山大理, 北海道大理
A
A @
柿崎充, E. -K. Park , 三田明輝, 瀬戸治
Aa-04.
A
拡張されたユニバーサル余剰次元模型における暗黒物質残存量の解
富山大理, 富山大理, 富山大理
石榑良章, 柿崎充, 三田明輝
Aa-05.
加速器実験と重力波実験におけるヒッグスポテンシャルの相補的検証
富山大理, 韓国高等科学院
A
端野克哉, 柿崎充, 兼村晋哉, 松井俊憲
Aa-06.
A
古典的スケール不変性に基づいて拡張された標準模型における一次電弱相転移について
金沢大自然
飴谷義高, 久保治輔
休憩
後半
10:30 ~ 10:45
10:45 ~ 12:00
素粒子・原子核
座長: 青木真由美
Aa-07.
レプトンフレーバーを破るヒッグス粒子崩壊によるニュートリノ質量生成機構の探索
金沢大数物, 富山大理
A
A
A @
青木真由美, 兼村晋哉 , 桜井亘大 , 杉山弘晃
Aa-08.
A
暗黒物質候補を含み電弱バリオン数生成を実現し得る新しいディラックニュートリノ質量の模型
富山大理
@
兼村晋哉, 桜井亘大, 杉山弘晃
Aa-09.
2次元N=1格子Wess-Zumino模型のテンソルネットワーク表現
A
B
C
慶應大自然セ, 筑波大計算科学研究セ , 理研AICS , 金沢大自然 , 金沢大数物
加堂大輔, 藏増嘉伸
Aa-10.
(金沢大数物)
A,B
B @
C
D
, 中村宜文 , 坂井涼 , 武田真滋 , 吉村友佑
テンソルくりこみ群によるCP(N-1)モテ゛ルの相構造の解析
金沢大自然, 金沢大数物
河内比花留, 武田真滋
A
A
A
D
Aa-11.
テンソルネットワークくり込みによる2次元イジング模型の解析
金沢大自然, 金沢大数物
八木健太, 武田真治
A
A
A 会場 午後
前半 14:45 ~ 15:45
素粒子・原子核
座長: 武田真滋
Ap-01.
(金沢大数物)
離散空間上の位相点作用素のシンプレクティック共変性
福井大工
渡辺大輔, 柴田喬之, 橋本貴明
Ap-02.
リフシッツスカラー場の理論におけるローレンツ対称性の回復
金沢大自然, 近畿大理工
@
Ap-03.
藤田達大,太田信義
A
A
ガウス型直交ランダム行列スペクトルにおける等間隔系列の出現頻度
福井大工
田嶋直樹
Ap-04.
甲状腺中の放射性ヨウ素検出器の開発
福井大工
A
B
C
川崎晃平, 中島恭平 , 玉川洋一 , 小川泉
休憩
15:45 ~ 16:00
後半
16:00 ~ 17:30
物性基礎・計算機シミュレーション
座長: 柿崎充
Ap-05.
2次元最適速度模型における自己駆動粒子の集団運動
福井高専電子情報
森長剛志, 野村保之
Ap-06.
為替レートを生成するダイナミクスの曜日間比較
福井大工
谷村亨, 平田隆幸, 高田宗樹
Ap-07.
高精度プロパゲータを用いた経路積分モンテカルロ法における比熱の計算式
福井大工
辻村真琴, 高木丈夫
Ap-08.
NEMS用人工材料の開発・設計指針としてのナノ動摩擦法則の探究(Ⅴ)
金沢工業大学 EOE応用研究センター
@
Ap-09.
池田聖, 小松央征, 林野光輝, 林啓治
NEMS用人工材料の開発・設計指針としてのナノ動摩擦法則の探究(Ⅵ)
金沢工業大学 EOE応用研究センター
@
東側大輝, 中野高嗣, 林啓治
(富山大理)
Ap-10.
NEMS用人工材料の開発・設計指針としてのナノ動摩擦法則の探究(Ⅶ)
金沢工業大学 EOE応用研究センター
@
齋藤公希, 町野太樹, 林啓治
B 会場 午前
前半 9:15 ~ 10:30
非晶質・薄膜/結晶成長/X 線・放射線
座長: 飯田敏
(富山大理)
Ba-01. Biナノ粒子におけるBiシートの構造
富山大理,弘前大理工
A
磯野颯人, 前川 仁志, 池本 弘之, 宮永 崇史
Ba-02.
A
回折条件制御による三次元トポグラフィ
A
B
C
金沢大自然科学 , 金沢大医薬保健 , 物質・材料機構 , 島根大総合理工
A
A
B
C
D
高野駿太朗 , 藤下豪司 , 岡本博之 , 中野智志 , 森川公彦 , 水野薫
Ba-03.
D
D
陽子線治療シミュレータでの即発/X線検出を利用した照射領域の可視化
富山高専
紅井里緒菜, 阿蘇 司
Ba-04.
放射線シミュレーションによるサムピーク法と簡易サムピーク法の評価
富山高専、名古屋大
A
牧野竜大,阿蘇司, 緒方良至
Ba-05.
A
LSCモンテカルロシミュレーションによるTDCR値と計数効率の評価
A
B
A
A
富山高専 , 富山大 , 日立製作所
C
B
B
C
C
C
青山翔蓮 , 阿蘇司 , 原正憲 , 庄司美樹 , 益田拓郎 , 古澤孝良 , 吉村共之 ,加藤結花
休憩
後半
C
10:30 ~ 10:45
10:45 ~ 12:00
X 線・放射線
座長: 阿蘇司
Ba-06.
COBAND実験のためのSTJ検出器テスト用遠赤外光源開発
A
B
C
福井大工、中部大工 , 筑波大数理 , 福井大遠赤セ , 近大理工
A
D
A
B
坂井誠, 浅野千紗, 中村昂弘, 西村航, 吉田拓生, 岡島茂樹 , 中山和也 , 金信弘 ,
B
C
也 , 小川勇 , 加藤幸弘
Ba-07.
B
武内勇司 , 森内航
D
GAGG:Ce結晶の線および陽子線の消光係数測定
A
福井大工, 若狭湾エネルギー研究センター , 高エネルギー加速器研究機構
B
A
高橋成企, 平岡大和, 檜山太旗, 中島恭平, 小川泉, 玉川洋一, 鈴木耕拓 , 小林正明
Ba-08. BGOファイバーによるγ線エネルギー測定精度向上のためのシミュレーション
福井大学工
梅田健太朗, 田後佑典, 吉田拓生
Ba-09.
(富山高専)
核廃棄物ニュートリノモニターのための基礎研究
福井大工
竹内啓人, 中島恭平, 小川泉, 玉川洋一
B
Ba-10.
原子炉ニュートリノ観測に向けてのプラスチックシンチレータ検出器におけるn/ɤ波形弁別
福井大工, 若狭湾エネルギー研究センター
A
清水慧悟, 高橋成企, 戸澤理詞, 中島恭平, 小川泉, 玉川洋一、鈴木耕拓
B会場 午後
前半 14:45 ~ 16:00
A
低温
座長: 並木孝洋
Bp-01.
低温領域における希土類カゴ状化合物 Pr3Pd20Ge6の磁場中熱膨張測定Ⅱ
A
B
C
金沢大理, 新潟大院自然 , 新潟大理 , 新潟大工 , 物材機構
A
A
C
本祐一 , 後藤輝孝 , 武田直也 , 北澤英明
D
A
B
阿部聡, 松本宏一, 阿野元貴 , 赤津光洋 ,
関口祐太, 峯岸光如, 小野拓哉, 宮本惇也,
Bp-02.
(富山大)
A
三本啓輔 , 根
D
超低温・高磁場環境下におけるピエゾカンチレバーを用いた熱膨張・磁気歪測定装置の評価
金沢大学理
生方憲二郎, 峯岸光如, 上野敬介, 井上大貴, 松本宏一, 阿部聡
Bp-03.
エアロジェル中の超流動ヘリウムの熱パルス伝搬の研究Ⅱ
金沢大理工
加藤舜, 岡本竜一, 中島安曇, 阿部聡, 松本宏一
Bp-04.
蓄冷材Gd2O2Sの熱・磁気特性
金沢大, NIMS
A
表秀樹, 裏雄太郎, 宇治山崇, 阿部聡, 松本宏一, 沼澤健則
Bp-05.
A
Cr単層膜の低温物性Ⅳ
金沢大自然, 東北大金研
A
A
澤武正貴, 大橋康平, 宮川昌大, 大橋政司, 窪田崇秀 ,高梨弘毅
C 会場 午前
前半 9:00 ~ 10:30
A
レーザー・分光
座長: 小林かおり
(富山大)
Ca-01.
B/B'(ν=10, 11) –XのCaH 分子のレーザー分光
富山大理
谷伊織, 渡辺響平, 内田佳名子, 小林かおり, 松島房和, 森脇喜紀
Ca-02.
PbOのX(0)[ Σ ](v=0)→B(1)[ Π](v=3、5、6)遷移の精密分光
富山大理
岡元一晃, 鳥飼優輝, 樋沢奈紀沙, 不破秋夜, 羽田尚之, 古田祐司, 小林かおり, 森脇喜紀, 榎本勝成
Ca-03.
遠赤外領域での NH3分子の分光
富山大理
長草 裕志, 山口 瑛真里, 岡野 芳樹, 藤田 瑞樹, 山本 航平、森脇喜紀, 小林 かおり, 松島 房和
Ca-04.
液体He中でレーザーアブレーションによって生成された超伝導微粒子の磁気トラップⅡ
A
B
富山大理, 福井大院工 , 阪大院基礎工
A
B
高橋佑太, 直井惇, 山口滉太, 松島房和, 熊倉光孝 , 芦田昌明 , 森脇喜紀
1 +
3
15
Ca-05.
重力波望遠鏡KAGRAにおける干渉計の補助ロックのためのグリーンレーザーの開発
A
B
C
D
E
F
G
富山大理, 東大宇宙線研 , 産総研計測標準 , 国立天文台 , 東大理物 , 東工大 , 新潟大工 , 防衛大 ,
H
I
東大工 , Korea Univ
A
A
蒲原尚吾, 酒本春人, 横川和也, 松島房和, 小林かおり, 土井康平, 森脇喜紀, 川村静児 , 宮川治 ,
A
A
B
C
D
C
C
D
苔山圭以子 , 中野雅之 , 寺田総一 , 阿久津智忠 , 麻生洋一 , 上田暁俊 , 大石奈緒子 , 道村唯太 ,
E
E
F
F
F
F
G
H
宗宮健太郎 , 矢野和城 , 佐藤孝 , 大河正志 , 齊藤高大 , 志賀和成 , 上原知幸 , 大前宣昭 ,
I
TaiHyun Yoon
Ca-06.
重力波観測に向けたレーザー強度安定化システムの開発Ⅲ
A
B
C
D
E
F
G
富山大理, 東大宇宙線研 , 産総研計測標準 , 国立天文台 , 東大理物 , 東工大 , 新潟大工 , 防衛大 ,
H
I
東大工 , Korea Univ
杉本裕介,森脇喜紀, 松島房和,小林かおり,蒲原尚吾,古畑貴行,坂本春人,北澤秀昌,横川和也,
A
A
A
A
B
C
C
岩田拓也, 川村静児 ,宮川治 ,苔山圭以子 ,中野雅之 ,寺田総一 ,阿久津智忠 ,麻生洋一 ,
C
C
D
E
E
F
F
F
上田暁俊 ,大石奈緒子 ,道村唯太 ,宗宮健太郎 ,矢野和城 ,佐藤孝 ,大河正志 ,齊藤高大 ,
F
G
H
I
志賀和成 ,上原知幸 ,大前宣昭 , TaiHyun Yoon
休憩
後半
10:30 ~ 10:45
10:45 ~ 12:00
レーザー・分光
座長: 榎本勝成
Ca-07.
マイクロ波分光による新しいギ酸メチル励起状態の帰属の試みⅡ
A
B
富山大院理工, 金沢大自然 , 金沢大
A
B
大山諒, 小林かおり, 藤竹正晴 , 大橋信喜美
Ca-08.
1-アミノ-2-メチル-2-プロパノールのフーリエ変換マイクロ波分光
金沢大学 理工
山本健太郎, 藤竹正晴
Ca-09.
N-メチルアセトアミド-DOH,HOD錯体の超音速ジェット・フーリエ変換マイクロ波分光
A
金沢大学 理工, 金沢大院 自然
A
A
奥野雅登, 佐野実穂 , 藤竹正晴
Ca-10.
N-メチルアセトアミド-水錯体の溶媒同位体効果
A
金沢大院 自然, 金沢大学 理工
A
佐野実穂, 奥野雅登 , 藤竹正晴
Ca-11.
超音速ジェット・フーリエ変換マイクロ波分光法のためのスリットノズルの改良
金沢大学 理工
吉田啓悟, 藤竹正晴
C会場 午後
前半 14:45 ~ 16:15
レーザー・分光/物理・応用物理一般
座長: 藤竹正晴
(富山大)
(金沢大)
Cp-01.
DAST結晶を用いたテラヘルツ波のヘテロダイン電気光学サンプリング
A
A
福井大学遠赤センター, 理化学研究所 , ニジーニノブゴロド大学
A
A
加藤博之, 北原英明, 後藤大輝, 安本拓朗, 山本晃司, 古屋岳, 野竹孝志 , 南出泰亜 , マイケル・バクノ
B
フ , 谷正彦
Cp-02.
THz帯偏光分光のための2層フリースタンディングワイヤーグリッドの研究
A
福井大遠赤セ、大阪市立大
A
長田聡, 古屋岳, 北原英明, 山本晃司, 菜嶋茂喜 , 谷正彦
Cp-03.
ハロゲン化合物水溶液のTHz時間領域コヒーレントラマン分光法
A
福井大遠赤センター , カールスルーエ工科大学
A
林昌治, 中江瞬, Stefan Funkner , 北原英明, 古屋岳, 山本晃司, 谷正彦
Cp-04.
CdSe半導体量子ドットの蛍光スペクトルに対する溶媒効果
福井大工
木南安寿花, 杉原隆一, 馬場宥太, 守安毅, 熊倉光孝
Cp-05.
運動負荷が胃の電気的活動に及ぼす影響
福井大工
寺西康平
Cp-06.
睡眠遮断時における座位重心動揺の数値解析
福井大工
川崎 真平, 平田隆幸, 髙田宗樹
Cp-07.
進行波励起ドライバーの作成
金沢大自然
宮坂 風輝, 西崎茜, 柳原 悠人, 向出 俊央, 重 翔馬, 佐藤 政行
D 会場 午前
前半 9:30 ~ 10:30
プラズマ・放電
座長: 伊藤弘昭
Da-01.
(富山大)
イオン風の発生原理についての研究
富山大理
伊東大志, 杉本良介, 三輪悠
Da-02.
宇宙プラズマ中の両方向伝搬磁気流体波による荷電粒子の加速
富山大学人発
南部哲弘, 成行泰裕
Da-03.
カスプ磁場への電子ビーム入射に伴うプラズマ生成と単粒子の軌道計算による評価
A
B
金沢大, 日本工大 , 帝京大
A
B
塚原信也, 小谷野開, 田澤尚賢, 中田健斗, 安藤利得, 佐藤杉弥 , 飽本一裕
Da-04.
純電子プラズマで形成される渦結晶の統計力学的温度
金沢大自然
本田真夢, 曽我之泰
休憩
後半
10:30 ~ 10:45
10:45 ~ 12:00
プラズマ・放電
座長: 鎌田啓一
Da-05.
二重同軸ガラス管を用いた大気圧プラズマジェットのプラズマバレット特性評価
富山大工
三谷哲太, 岡田一樹, 大橋隼人, 伊藤弘昭
(金沢大)
Da-06.
仮想陰極発振器から放射されるマイクロ波電力の評価
富山大工
丹羽郁弥, 寺前元裕, 中村吏, 大橋隼人, 伊藤弘昭
Da-07.
Gyrotron FU CW XAにおける二次高調波発振モードの発振特性
福井大学 遠赤外領域開発研究センター
前田悠斗, 飯澤萌, 高山京也, 福成雅史, 山口裕資, 立松芳典, 斉藤輝雄
Da-08.
Gyrotron FU CW XAにおける複数の基本波モード周波数連続可変
福井大学 遠赤外領域開発研究センター
飯澤萌, 高山京也, 前田悠斗, 福成雅史, 山口裕資, 立松芳典, 斉藤輝雄
Da-09.
電磁波焼結法を用いた高圧下ESR用アルミナセラミックスの開発
A
B
福井大学 遠赤外領域開発研究センター ,神戸大学研究基盤センター
A
A
A
B
蟹江良尚 ,西脇拓生 ,光藤誠太郎 ,櫻井敬博
D会場 午後
前半 14:45 ~ 16:00
プラズマ・放電
座長: 安藤利得
(金沢大)
Dp-01.
二次高調波多周波数ガウスビーム出力ジャイロトロンの実現に向けた二次高調波モード発振実験
福井大学 遠赤外領域開発研究センター
高山京也, 飯澤萌,前田悠斗, 福成雅史, 山口裕資, 立松芳典, 斉藤輝雄
Dp-02.
300 GHz帯ジャイロトロン出力のMOUによる軸対称ガウスビーム整形
A
A
福井大学 遠赤外領域開発研究センター, 核融合研究所 , 東京大学大学院新領域創成科学研究科
A
A
A
新林竜志, 廣部匠, 田中俊輔, 福成雅史, 山口裕資, 立松芳典, 斉藤輝雄, 久保伸 , 下妻隆 , 田中謙治 ,
B
西浦正樹
Dp-03.
300 GHz帯ジャイロトロン出力のコルゲート導波管伝送実験
A
B
福井大学 遠赤外領域開発研究センター,核融合研究所 , 東京大学大学院新領域創成科学研究科
A
A
A
田中俊輔, 廣部匠, 新林竜志, 福成雅史, 山口裕資, 立松芳典, 斉藤輝雄, 久保伸 , 下妻隆 , 田中謙治 ,
B
西浦正樹
Dp-04.
大強度電子ビームの矩形導波管中の伝搬
金沢大自然
高木大, 勝岡桃子, 曽我之泰, 鎌田啓一
Dp-05.
高純度パルス重イオンビーム発生を目指した両極性パルス加速器の開発
富山大工
今井嘉生,朴木太郎,大橋隼人,伊藤弘昭
E 会場 午前
前半 9:00 ~ 10:30
磁性
座長: 水島俊雄
Ea-01.
単結晶GdCr2Al20の電子特性
富山大工
土田響介, 並木孝洋, 西村克彦
Ea-02.
ErTi2Al20の電気・磁気特性
富山大工
細矢駿行, 並木孝洋, 西村克彦
(富山大)
Ea-03.
LaMo2Al20の物理特性
富山大工
出仙浩詞郎, 並木孝洋, 西村克彦
Ea-04.
NdW2Al20の物理特性
富山大工
山内優易, 並木孝洋, 西村克彦
Ea-05.
TmFe2Al10の単結晶の磁気特性
富山大工
張偉, 並木孝洋, 西村克彦
Ea-06.
PrGaの磁気特性と磁気熱量効果
富山大工
山岸紳太郎, 西村克彦, 並木孝洋
休憩
後半
10:30 ~ 10:45
10:45 ~ 12:00
磁性
Ea-07.
UNiX2 (X=C,Si,Ge,Sn)の磁性
A
金沢大自然, 東北大金研
A
大橋康平, 澤武正貴, 宮川昌大, 大橋政司, 山村朝雄
Ea-08.
RFe2SiC(R=希土類)の磁性
金沢大自然
中島陽平, 大橋康平, 澤部正貴, 宮川昌大, 大橋政司
Ea-09.
強磁性体GdX2 (X=Al,Pt)の磁気体積効果
金沢大自然
宮川昌大, 大橋康平, 澤部正貴 , 大橋政司
Ea-10.
CeNiSb3単結晶の磁性と伝導
A
富山県立大, 富山大院理工
A
神谷洋平, 福原忠,室祐司, 桑井智彦
Ea-11.
Shastry-Sutherland型近藤新化合物Yb2T3Ga10 (T=Ru, Os)の磁性
A
富山県立大, 富山大院理工
A
室裕司, 福原忠, 桑井智彦
E 会場 午後
前半 14:45 ~ 16:15
座長: 桑井智彦
(富山大)
座長: 石川義和
(富山大)
磁性
Ep-01.
ミリ波帯パルスESRのためのスピンエコー検出システムの開発
福井大学遠赤外領域開発研究センター
河野海志, 柊木健志, 成岡夢有, 光藤誠太郎
Ep-02.
ミリ波帯多周波ESRのためのFabry-Perot型共振器の開発
A
B
福井大工, 福井大遠赤セ , 株式会社JEOL RESONANCE
A
A
A
A,B
三浦俊亮, 大矢健太 , 石川裕也, 藤井裕 , 浅野貴行, 光藤誠太郎 , 戸田充
Ep-03.
三次元ハイゼンベルグ反強磁性体RbMnF3 の磁気希釈効果
A
B
福井大工, 茨城大フロンティアセ , KEK
A
B
横山太紀, 浅野貴行, 菊池彦光, 岩佐和晃 , 伊藤晋一
Ep-04.
二次元三角格子磁性体Cu2(OH)3NO3の磁気秩序
A
A
福井大工, 福井大遠赤セ , 東大物性研
A
A
A
笠松直幸, 菊池彦光, 藤井裕 , 松尾晶 , 金道浩一
Ep-05.
二次元三角格子磁性体Cu2(OH)3NO3の H-NMR
A
福井大遠赤セ, 福井大工
A
A
A
小泉優太, 笠松直幸 , 石川裕也 , 藤井裕, 光藤誠太郎, 菊池彦光
Ep-06.
磁性体の飽和磁場直下のマグノンBECとネマティック秩序
A
B
富山県大工, 京都大基研 , 理研
A
B
植田浩明, 戸塚圭介 , 桃井勉
休憩
後半
1
16:15 ~ 16:30
16:30 ~ 17:45
磁性
座長: 室 裕司
Ep-07.
単結晶TbFe2Al10の結晶磁気異方性
富山大院理工
上出悠介, 水島俊雄, 桑井智彦, 石川義和
Ep-08.
単結晶HoRu2Al10の結晶磁気異方性
A
富山大理, 富山大院理工
A
A
A
A
岡本昌士, 上出悠介 , 水島俊雄 , 桑井智彦 , 石川義和
Ep-09.
立方晶TbFe2Sn2Zn18の単結晶育成と磁気的性質
A
富山大理, 富山大院理工
A
A
A
A
村松淳, 上出悠介 , 水島俊雄 , 桑井智彦 , 石川義和
Ep-10.
PrNb2Al2のLa希釈系の基礎物性
A
富山理, 富山大院理工
A
A
A
A
A
日比野栞奈, 前田萌子 , 尾池光太 , 水島俊雄 , 石川義和 , 桑井智彦
Ep-11.
SmNb2Al2の単相多結晶試料作製と低温物性
富山大院理工
尾池光太, 佐藤美紀, 水島俊雄, 石川義和, 桑井智彦
(富山県大)
特別講演
重⼒波天⽂学の始まり
東京⼤学宇宙線研究所
⼤橋正健
Open the window of Gravitational wave astronomy
The University of Tokyo, ICRR
Masatake OHASHI
今年はアインシュタインが⼀般相対性理論の帰結として重⼒波の存在を予⾔してからちょうど
100 年となります。ハルス・テイラーパルサー(連星中性⼦星)の観測により、重⼒波の存在は間
接的に証明されており、あとは直接検出されるだけという段階になっていました。しかしながら重
⼒波があまりに微弱であるため、多くの研究者の挑戦にもかかわらず、実現しない状況が続いてい
ました。そんな中、今年の 2 ⽉ 11 ⽇にアメリカの重⼒波天⽂台 LIGO が「ついに我々は重⼒波を
直接とらえた!」という発表を⾏いました。
重⼒波が直接検出されれば新聞の⼀⾯を飾るだろうと⾔われていましたが、そのとおり、翌朝の
新聞はそのニュースを⼀⾯トップで報道しました。その内容も驚くべきものであり、連星中性⼦星
の合体現象をとらえることを想定していたにも関わらず、実際にとらえられたのは連星ブラックホ
ールが合体したときの重⼒波で、それは 14 億年かなたの現象にもかかわらず、⼤きな信号であり
ました。ほとんど全ての重⼒波研究者は、最初の重⼒波検出は、それが重⼒波かどうか⾟うじて判
定できるようなものであると予想していましたが、現実にはそれをはるかに超えたイベントであっ
たということになります。さらに、連星ブラックホールという存在も不確かなものでしたし、太陽
質量の 30 倍ぐらいの重さのブラックホールであったことも驚きでした。今後はそのような重さの
ブラックホールの発⽣起源も研究されてゆくことでしょう。ただし、天⽂学という観点からは、
LIGO が東⻄両海岸に設置した 2 台のレーザー⼲渉計は、重⼒波を同定するために最適な配置(同
じ向き)となっているため⾓度分解能にとぼしく、このイベントの⽅向不定性は約600平⽅度と
いう⼤きなものになっています。今後、ヨーロッパの Virgo および⽇本の KAGRA が LIGO と共同
して国際観測ネットワークを構成すれば、この不定性はかなり⼩さくすることができます。また、
連星ブラックホール以外の天体からの重⼒波もとらえることになるでしょう。
このような重⼒波天⽂学が、いよいよ始まるわけです。講演では重⼒波天⽂学の創成と、その構
成員の⼀員となる⼤型低温重⼒波望遠鏡 KAGRA の建設状況について紹介します。
Aa-01
自発的対称性の破れと弱解 —イジング模型の平均場近似—
金沢大, 米子高専 A , 神戸大 RIEBB
青木健一, 藤井康弘 ※ , 小林玉青 A , 熊本真一郎 B ,
◦
小内伸之介
Spontaneous Symmetry Breaking and Weak Solution – Mean Field Application of Ising Model –
Kanazawa Univ., Yonago Col.A , RIEB Kobe Univ.B
K-I. Aoki, Y. Fujii※ , T. KobayashiA , S-I. KumamotoB , ◦ S. Onai
本研究では、平均場近似をしたイジング模型を用いて、相転移現象の解析をする。ギャップ方程式 :
m = tanh(βzJ + βh)
から、磁化 m(h, β) を解とする偏微分方程式を導出し、その弱解を数値計算する。ただし、得られる方程式は保
存則型ではないので、弱解の定義が使えないため、変数変換が必要になる。そして、得られた方程式を特性曲線
の方法で連立常微分方程式に帰着させる。この方程式の多価解から、物理的な一価の解が弱解より選ばれること
を示す。また、磁化の弱解は、等面積則を満たし、それは Gibbs の自由エネルギーの特性曲線から得られた結果
を凸化させたものとなる。本研究は、イジング模型に対し弱解を適用することができ、その弱解は物理的な解と
して正しいことを示す。
-1.85
U(h,1.6)
m(h,1.6)
0.5
0.08
V(m,1.6)
1
0
c
-0.5
-1-1
-0.5
0
h
0.5
1
-2.25
-0.4
0
-0.04
-1
0.4
h
0
1
m
図. 磁化, Helmholtz の自由エネルギー, Gibbs の自由エネルギー
※ 金沢大学自然科学研究科(2013 年 3 月末まで)。
Graduate School of Natural Science and Technology, Kanazawa University (until the end of March, 2013).
Aa-02
制限ボルツマンマシンとくりこみ群 — 長距離イジング模型への適用
金沢大,米子高専 A 青木 健一,藤田 達大,○堀 祐輔,小林 玉青 A,小内 伸之介
Restricted Boltzmann Machine and Renormalization Group
– Application to the Long Range Ising Model
Kanazawa University,Yonago CollegeA K-I. Aoki, T. Fujita,
Y. Hori, T. KobayashiA, S. Onai
○
画像や音声のパターン認識に関する技術として統計的機械学習が注目されている。これは一種の情報縮約
であり、重要な特徴を抽出し、不要なものは捨てる過程である。この過程を物理の言葉で捉え直すと、ミク
ロ変数から relevant なマクロ変数を自動的に抽出する過程であると考えられる。即ち、一般的な意味でのく
りこみ群の手法に対応すると考えられる。我々は 1 次元 Ohmic type の長距離イジング模型を再現するような
制限ボルツマンマシンの表現を考察する。
制限ボルツマンマシンのパラメータは、標準的な機械学習の手続きに加え、マルチカノニカル法に似た手
法を用いて調整する。この結果を用いて、物理的に重要な量である磁化率及び非線形磁化率を計算し、Block
Decimation Renormalization Group の方法で得られた結果と比較する。この構造を多層化した結果も示す。
Aa-03
混合複素スカラー模型における WIMP シナリオと非対称暗黒物質シナリオの峻別
柿崎充, E. -K. ParkA ,
富山大理, 北海道大理 A
◦
三田明輝, 瀬戸治 A
Distinction between WIMP and asymmetric dark matter scenarios in mixed complex scalar models
Univ. of Toyama, Hokkaido Univ.A
M. Kakizaki, E. -K. ParkA , ◦ A. Santa, O. SetoA
我々はディラックフェルミオンを伴う混合複素スカラー模型を議論する.この模型は Weakly Interacting Massive
Particle (WIMP) シナリオだけでなく,宇宙のバリオンと暗黒物質の残存量を関連づけた Asymmetric Dark
Matter (ADM) シナリオも実現できる.我々はこれらのシナリオにおけるパラメータ領域への制限を比較し,
WIMP と ADM シナリオの峻別の可能性を考察する.ADM シナリオの特徴として暗黒物質のゲージ結合とスカ
ラー結合が相殺し,直接検出実験による制限が緩和されるパラメータ領域が存在することを示す.また将来の直
接検出実験と加速器実験による峻別可能性も議論する.
Aa-04
拡張されたユニバーサル余剰次元模型における暗黒物質残存量の解析
富山大理
石榑良章, 柿崎充, 三田明輝
Analysis of dark matter relic abundance in extended universal extra dimension models
Univ. of Toyama Y.Ishigure, M.Kakizaki, A.Santa
暗黒物質の存在を説明する模型としてユニバーサル余剰次元模型 (UED) が提唱されている。UED 模型は全
ての標準理論の粒子に Kalza-Klein(KK) モードが存在し、この模型に含まれる最も軽い KK 粒子 (LKP) は良い
WIMP 暗黒物質候補である。先行研究において、minimal UED 模型での暗黒物質残存量には 2nd KK モードま
で含めることが重要だと示された。そこで、今回我々は 2nd KK モードまで含めて、KK 粒子の質量をフリーパ
ラメータとする UED 模型 (PUED) において LKP の熱的残存量の解析を行なう。観測された暗黒物質残存量を
説明するには、1st KK モードだけを含めた PUED 模型の典型的な LKP の質量は TeV 以下であるが、2nd KK
モードまで含めた PUED 模型では TeV 以上になることを示す。
Aa-05
加速器実験と重力波実験におけるヒッグスポテンシャルの相補的検証
富山大理,韓国高等科学院 A
端野克哉,柿崎充,兼村晋哉,松井俊憲 A
Synergy between measurements of the gravitational wave and collider experiments for identifying Higgs
potential
Univ. of Toyama,KIASA
K. Hashino,M. Kakizaki,S. Kanemura,T. MatsuiA
標準模型が予言した最後の素粒子であるヒッグスボソンが 2012 年に発見されたことで、標準模型は確立した
が、標準模型の枠内では説明できない観測に基づく諸問題が確認されている。その問題の一つである宇宙のバリ
オン数非対称性は電弱バリオジェネシスのシナリオにより説明出来る。このシナリオは電弱対称性の破れが強い
一次相転移であることを要求する。この条件を満たすためには、ヒッグス三点結合に標準模型からのズレが現れ
る。またその相転移の時に重力波が生じることが知られている。
本講演では O(N) 一重項模型と古典的スケール不変性に基づく (質量項を導入しない)O(N) 一重項模型における
加速器実験と重力波実験による相補的な模型の検証可能性について議論する。本講演は K.Hashino, M.Kakizaki,
S.Kanemura and T. Matsui, Phys. Rev. D 4 no.1, 015005 (2016) の論文に基づく。
古典的スケール不変性に基づいて拡張された標準模型における
Aa-06
一次電弱相転移について
金沢大自然
飴谷義高, 久保治輔
First-order electroweak phase transition in a classically scale invariant extension of the standard model
Kanazawa Univ
Y.ametani, J.kubo
現在の宇宙は、バリオンが圧倒的に優勢で、反バリオンはほとんどないバリオン数非対称な世界である。
標準模型では、Sakharov の3条件の1つである「熱平衡からの離脱として強い1次相転移を実現すること」等
を説明することができないため、インフレーションの後のバリオン数非対称な宇宙を実現できないことが知られ
ている。そのため、Sakharov の条件を満たす宇宙の相転移を説明するためには、標準模型を拡張しなければな
らない。
標準模型の拡張として、古典的スケール不変な QCD like な Hidden sector を用いたモデルを考える。このモデ
ルによって電弱対称性の破れの起源が説明できるとともに、暗黒物質を予言することができる。
しかし、このモデルでは、バリオン数非対称性に関する電弱相転移は一次ではあるが、強い相転移が実現できて
いない。そのため、標準模型の拡張として、Higgs sector に注目し、新たに1つの実スカラー場並びに Two Higgs
Doublet Model(2HDM) を導入し、バリオン数非対称性に関する電弱相転移がどのように実現されるかを調べた。
本講演では、拡張したモデルの具体的な解析方法と得られた電弱相転移の結果について議論する。
Aa-07
レプトンフレーバーを破るヒッグス粒子崩壊による
ニュートリノ質量生成機構の探索
金沢大数物,富山大理 A
青木真由美,兼村晋哉 A ,桜井亘大 A ,◦ 杉山弘晃 A
Exploring neutrino mass generation mechanisms via the lepton flavor violating decay of the Higgs boson
Kanazawa Univ.,Univ. of ToyamaA
M. Aoki,S. KanemuraA ,K. SakuraiA ,◦ H. SugiyamaA
ニュートリノ振動観測によってニュートリノ質量の存在が明らかになっているが、素粒子物理学の標準模型に
はニュートリノ質量が含まれていないため、拡張した新物理模型が必要である。ニュートリノ質量を生成する新
物理模型は多数存在し、実験的にどのように選別していくかは重要な問題である。効率的な選別のためには、模
型を分類しておくことが有効である。先行研究 [1,2] においてはレプトンと新スカラーとの新湯川相互作用に注
目した分類を行なわれ、マヨラナニュートリノとディラックニュートリノそれぞれの場合についての分類結果が
得られている。湯川相互作用行列 (フレーバー構造) のみに注目することでスカラーセクターの詳細を切り離すこ
とができ、また、新粒子の発見がない場合でもフレーバーに関する情報を活用した選別が期待できる。本研究で
はその分類結果を用い、もしレプトンフレーバーを破るヒッグス粒子崩壊が観測された場合にはマヨラナニュー
トリノ質量のシンプルな模型は棄却され、ディラックニュートリノ質量のいくつかの模型が棄却されずに残るこ
とを示す [3]。
参考文献
[1] S. Kanemura and H. Sugiyama, Physics Letters B 753, 161 (2016).
[2] S. Kanemura, K. Sakurai and H. Sugiyama, Physics Letters B 758, 465 (2016).
[3] M. Aoki, S. Kanemura, K. Sakurai and H. Sugiyama,
arXiv:1607.08548 [hep-ph], accepted by Physics Letters B.
Aa-08
暗黒物質候補を含み電弱バリオン数生成を実現し得る 新しいディラックニュートリノ質量の模型
所属 富山大理
氏名 兼村晋哉,◦ 桜井亘大 ,杉山弘晃
New Dirac neutrino mass model for realization of electroweak baryogenesis and explanation of dark matter
Affiliations Univ. of Toyama
Names S. Kanemura, ◦ K. Sakurai, H. Sugiyama
ニュートリノ振動が発見されたことにより、ニュートリノが微小な質量を持つことが確認された。クォークや
レプトンと違いニュートリノの質量はディラック質量項だけでなく、マヨラナ質量項も存在し、どのようなメカ
ニズムでニュートリノの質量が生成されるか解明されていない。それ故、これまでに様々なニュートリノ質量の
模型が提案されてきた。その中にはシーソー模型や、ニュートリノ質量が輻射補正により生成する模型がある。
効率的に真のニュートリノ質量を生成するメカニズムに迫っていくためには、個々の模型を調べるのではなく、
ある基準にしたがって模型を幾つかのグループに分類し、グループの検証可能性を調べるのが良い。先行研究
[1][2][3] では、ニュートリノ質量に現れるフレーバー行列の構造に注目して模型の分類が行われ、レプトン数が
破れる崩壊過程やレプトン崩壊定数の測定により、グループの検証が可能であることが示されている。本講演で
はこの先行研究により発見された新しいディラックニュートリノ質量模型について詳細に議論する。
この模型は 2 ループレベルでニュートリノ質量を生成し、それに加えて暗黒物質や宇宙のバリオン数非対称
性を説明し得る模型である。本講演で、この模型にニュートリノ振動と暗黒物質残存量のデータを満たし、電弱
バリオン数生成のシナリオに必要な強い一次相転移を起こせるベンチマークポイントが実際に存在することを示
していく。
参考文献:
[1]: S. Kanemura and H. Sugiyama, Phys. Lett. B 753 (2016) 161.
[2]: S. Kanemura, K. Sakurai and H. Sugiyama, Phys. Lett. B 758 (2016) 465.
[3]: M. Aoki, S. Kanemura, K. Sakurai and H. Sugiyama, arXiv:1607.08548.
Aa-09
2 次元 N=1 格子 Wess–Zumino 模型のテンソルネットワーク表現
慶應大自然セ,筑波大計算科学研究セ A ,理研 AICSB ,金沢大自然 C ,金沢大数物 D
加堂大輔,藏増嘉伸 A,B ,中村宜文 B ,◦ 坂井涼 C ,武田真滋 D ,吉村友佑 A
Tensor network representation of the two dimensional N = 1 lattice Wess–Zumino model
RECNS, Keio Univ.,CCS, Univ. of TsukubaA ,RIKEN AICSB ,Kanazawa Univ.C
D. Kadoh,Y. KuramashiA,B ,Y. NakamuraB ,◦ R. SakaiC ,S. TakedaC ,Y. YoshimuraA
2 次元 N = 1 格子 Wess–Zumino 模型は超対称性の自発的破れを示す簡単な模型であるが,一般の格子超対称性
理論と同様に複素位相問題の影響で Monte Carlo シミュレーションによる解析が難しい.2014 年には Steinhauer
と Wenger によって複素位相問題を回避してワームアルゴリズムを適用した結果が報告されたが,その正当性を
確かめるために,我々は複素位相問題と完全に無縁であるテンソルネットワーク形式による解析を行なう.
現在までにボソン系,フェルミオン系についてはそれぞれ独立にテンソルネットワーク形式が与えられてい
る.それらを応用し,我々は実スカラーボソンと Majorana フェルミオンの複合系である 2 次元 N = 1 格子
Wess–Zumino 模型の分配関数をテンソルネットワークとして表した.これまでのボソン系のテンソルネットワー
ク表現はコンパクト作用素のスペクトル分解を利用したものであったが,今回我々は経路積分におけるスカラー
場の積分を Gauss–Hermite 求積により評価することでテンソルネットワーク表現に導入される近似誤差を軽減し
た.2 次元 N = 1 格子 Wess–Zumino 模型の分配関数において,フェルミオン部分は Majorana–Dirac 演算子の
パフィアンとして理解できるが,まずこのパフィアンをテンソルネットワークとして表現し,その後でスカラー
場の数値積分を実行することで分配関数のテンソルネットワーク表現が構築できる.スカラー場を固定すればパ
フィアンの厳密解が計算できるので,テンソルネットワーク形式のパフィアンを厳密解と比較することで我々の
計算の正しさを確認した.
Aa-10
テンソルくりこみ群による CP(N − 1) モデルの相構造の解析
金沢大自然,金沢大数物 A
河内 比花留,武田 真滋 A
Phase structure analysis of CP(N − 1) model using Tensor renormalization group
Kanazawa Univ.
H. Kawauchi, S. TakedaA
QCD のトイモデルである CP(N − 1) モデルの解析は、強い CP 問題に関する研究の第一段階としてふさわしい。
これまでの格子ゲージ理論に基づいた解析では数値計算として主にモンテカルロ法が用いられてきたが、シータ
項を含む場合、符号問題が生じるために解析が困難となる。そこで本研究では、近年提案されたテンソルくりこ
み群 (TRG) という符号問題の生じない手法を用いて、CP(N − 1) モデルの相構造の解析を行う。本研究では、
まず、CP(N − 1) モデルの分配関数のテンソルネットワーク表示を行った。これに TRG を用いることで、系統
誤差をコントロールしつつ、分配関数を近似的に計算することができる (図 1)。発表では、テンソルネットワー
ク表示や TRG によるテンソルの粗視化の方法について説明し、CP(N − 1) モデルの相構造を解析した結果を報
告する。
図 1: テンソルくりこみ群
Aa-11
テンソルネットワークくり込みによる 2 次元イジング模型の解析
金沢大自然, 金沢大数物 A
八木 健太, 武田 真滋 A
Tensor network renormarization analysis of 2 dimensional ising model
Kanazawa Univ.
K.Yagi, S.TakedaA
格子 QCD の計算においてモンテカルロ法は非常に強力で成功を収めてきたアルゴリズムである。しかし一方
で、確率論的な計算手法のため有限密度系では符号問題が発生するという欠点がある。そのような問題を回避す
るために我々はテンソルくり込み群に注目した。
テンソルくり込み群とは決定論的に分配関数を近似計算するアルゴリズムである。分配関数を愚直に系の状態
を足しあげて計算しようとすると、巨大な系では計算量が膨大になり実質的に計算は不可能である。しかし分配
関数をテンソルの積の形(テンソルネットワーク)に書き換え、重要でない情報を捨てつつテンソルネットワー
クを粗視化していくことで計算速度を上げることができる。その情報の捨て方は近似精度に関係している。
2 次元系ではテンソルくり込み群がよく使われているが、臨界点近傍での計算では近似の精度があまりよくな
いことが知られている。一方、テンソルネットワークくり込みでは、ディスエンタングラーとアイソメトリーを
導入することによって短距離相関をうまく取り込むことができ、その精度を改善することができる。本発表では
テンソルネットワークくり込みの方法を説明し、2 次元イジング模型に適用した計算結果を報告する。
Ap-01
離散空間上の位相点作用素のシンプレクティック共変性
福井大工
渡辺大輔, 柴田喬之, 橋本貴明
Symplectic Covariance of Phase Point Operator on Discreate Space
Fac. of Eng., Univ. of Fukui
D.Watanabe, T.Shibata, T.Hashimoto
位相点作用素 ∆(q, p) は古典位相点を量子化したものと考えられ、Weyl 量子化により Weyl 順序での量子化手
法を与える。また、線形の正準変換であるシンプレクティック変換は、正準交換関係を不変にすることから量子
力学においても重要な対称性となっている。連続空間上では、シンプレクティック変換の一部である回転 Rθ に
対して、シンプレクティック共変性を満たす特定のユニタリー作用素 U (Rθ ) を定めると、この共変性を満たす位
相点作用素は唯一であるという先行研究がある [1]。そこで我々は連続空間との類推において奇数、偶数個からな
る離散空間上でそれぞれ定義された位相点作用素 [2][3] を用い、シンプレクティック変換 S の群において、シン
プレクティック共変性
U (S)∆(q, p)U † (S) = ∆(S · (q, p))
を満たす群の射影表現が存在するかを調べた。まず奇数次元において離散空間上のシンプレクティック群 SpN を
定め、Euclid アルゴリズムを用いて 2 つの要素から生成されることを示した。その生成子を基にシンプレクティッ
ク群の射影表現をシンプレクティック共変性から定め、それらが位相点作用素を共変にすることを確認した。一
方、偶数次元ではシンプレクティック群が Sp2N である点が奇数次元と異なっており、シンプレクティック共変
性を同様に満足することを確認した。結果、各離散空間上において位相点作用素を共変にするシンプレクティッ
ク群の射影表現が存在しかつ一意であり、Euclid アルゴリズムを用いてその具体的な形を示した。
[1] M.Horibe, A.Takami, T.Hashimoto, A.Hayashi, .Phys.Rev.A65,032105,2002. [2] O.Cohendet, Ph.Combe,
M.Sirugue, M.Sirugue-Collin, J.Phys.A21,2875,1988. [3] U.Leonhardt, Phys.Rev.Lett.74,4101,1995
リフシッツスカラー場の理論におけるローレンツ対称性の回復
Ap-02
◦
藤田達大,太田信義 A
Lorentz symmetry restoration of Lifshitz scalar type theory
Kanazawa Univ.,kindai Univ.A
T. Fujita, N.OtaA
金沢大自然, 近畿大理工 A
一般相対性理論を修正した理論の議論が活発に行われている。その理由は、重力の量子論を一般相対性理論
で考えると発散が生じ、その取り扱いが困難であるためである。様々な修正重力理論の中に、Hořava-Lifshitz
gravity がある。このようなリフシッツ型の理論は、時間と空間のスケール次元が異なるという特徴をもち、高
エネルギー領域での発散が抑えられると期待され、重力はくりこみ可能であると考えられている。時間を特別に
扱うということは、ローレンツ対称性が存在しない事を意味するが、これは実験事実と矛盾している。また複数
の場が存在する場合は、それぞれの場で光速と定義できる定数が存在し、これもローレンツ対称性と矛盾する。
ここでは、リフシッツ型スカラー理論を考え、低エネルギー領域でローレンツ対称性が回復する可能性を探る。
すなわち、低エネルギー領域では、作用の中のローレンツ対称性を破る項が無視でき、複数の場が存在する場合
は、光速と見なせる定数が一致する可能性を調べる。低エネルギー領域の振る舞いを調べるため、非摂動論的に
定式化されたくりこみ群方程式を用いて解析を行う。数値解析を行う際、高エネルギーにおける初期値を定め、
ローレンツ対称性があるスカラー場の理論と比較し、ローレンツ対称性を破る項と光速に対応する項に注目する。
低エネルギー領域の振る舞いを研究し、ローレンツ対称性が回復するか議論した。以下の図は左から、2つの光
速と見なせる定数の差と低エネルギー領域での結合定数の振る舞いを表す。
∆
g
1.4
0.012
b3
0.010
1.2
a3
b8
ローレンツ対称性を
満たす相互作用
0.008
二つの光速の差
1.0
ローレンツ対称性を
破る相互作用
0.8
r1
0.6
0.006
c22
r2
0.4
0.004
b9 c12
0.2
c11
0.002
a9
t
-5
-4
マクロ
Ap-03
-3
-2
スケール
-1
t
-4
ミクロ
マクロ
-3
-2
-1
スケール
0
ミクロ
ガウス型直交ランダム行列スペクトルにおける等間隔系列の出現頻度
福井大工
田嶋直樹
Frequency of occurence of equi-distance sequences in the Gaussian orthogonal random matrix spectrum
Naoki Tajima
Univ. of Fukui
1960 年代に多数の原子核種の中性子共鳴準位スペクトル中に等間隔に並んだ準位系列が発見され、典型的量
子カオススペクトル中の秩序構造的として研究者に驚きを与えたが、その後半世紀経った現在でも明確な説明
はなされていない。本研究では、そのような等間隔系列が量子カオスのよいモデルである Gaussian orthogonal
ensemble (GOE) の固有値列の中に出現する頻度を調べた。GOE スペクトルの統計的性質は、隣接準位間隔が
Wigner 分布で近似されること、離れた準位間の相関が ∆3 統計に現れることなどが詳しく論じられてきたが、ほ
とんどが量子カオス的スペクトルである中に、極めて低い発生頻度で等間隔列という秩序的に見える構造が埋め
込まれているのかどうか、という特殊な現象の理論的考察はなされてこなかったと思われる。
本研究では、GOE 行列をランダムに生成し、それを数値的に対角化して得たスペクトルに対し、等間隔準位
列を探索するという数値実験を多数回行ったが、その第一の成果は、ランダム行列スペクトルの持つ相関の効果
の大きさが、準位の等間隔性の判定精度に強く依存することがわかったことである。判定精度を平均準位間隔の
1%程度にとった場合、GOE スペクトルと無相関なスペクトルとで、等間隔列の出現頻度に差は見られないが、
10%程度とすると、GOE スペクトルのほうが出現頻度が約2倍に増加し、20%, 30% とすると何桁もの増加が見
られることが分かったのである。
次に、この出現頻度の増加の原因を考察した結果、GOE スペクトルの持つ準位相関のうち、隣接準位間隔分
布を考慮するだけで、増加の様子がほぼ再現できることがわかった。ただし、等間隔準位系列の間に挟まる系列
に属さない準位の本数が2本程度以下の場合は、無相関スペクトルの結果に近づく方向へのシフトが見られた。
これは隣接準位間の相関に含まれない多準位相関の効果が、乱雑性に埋没せずに現れているのだと解釈される。
Ap-04
Development of a radioactive iodine detector for thyroid
Fac. of Eng., Univ. of Fukui
K. Kawasaki, K. Nakajima, Y. Tamagawa, I. Ogawa
131I
131I
8
131I
BG
50
50mm
NaI(Tl)
100mSv
2
1mSv
1
BG
N
t
100
31
1mSv
1mSv
S
t
×
N/S2
NaI(Tl)
S
t
GEANT4
2
/2
2
/2
50
131I
364keV
131
CsI
BGO
Ap-05
1.49
BG
99.7%
3
I
50mm
15
133
1mSv
NaI
Ba
GSO
二次元最適速度模型における自己駆動粒子の集団運動
福井高専電子情報,森長 剛志,野村 保之
Two dimensions Optimal Velocity model for Group motion of self-driven particle
Dept, of Electronics and Information, NIT, Fukui College, T. Morinaga, Y. Nomura
交通流や歩行者流といった流れには渋滞現象が密接に関係している。例えば大人数が狭い出口に向かうと
混雑することが挙げられる。このような渋滞は災害などの非常事態に発生すると予想され、多くの人は逃げ
場がなく、犠牲となってしまう。そのため歩行者流における渋滞の解析が求められている。
本研究では間隔に応じた加速と減速という性質をもった 2 次元最適速度模型を用いて、人の反応の非対称
性を持たせた自己駆動粒子による歩行者流のシミュレーションを行う。そして人の最適な行動を解析し、災


害を想定した行動の結果を 1 つのデータとして提供する。
 
d 2 x j (t )
 
 dx j t 
 a V0   F rkj t  

右式の二次元最適速度模型について説明する。a は感応度と呼ば
dt 
dt 2
k


 
れ、人の反射神経を表し、最適速度関数が与える速度に対する加

F rkj  f (rkj )1  cos rkj rkj
速度の大きさを決定する。
は人の視野を表す。この中で一
番近い粒子(最近接粒子)を参照し、引力・反発力といった力を
f (rkj )   tanh  (rkj  b)  c
受ける。 は引力・反発力を決定する。
は経験則で与えられる
定数である。
図(a)の状態から解析を行った。図(b)は最近
接相互作用の場合で、渋滞が発生しているのが
分かるが、図(c)は 6 方向相互作用の場合で、
周囲のバランスを保ちながら進行しているた
め、渋滞が見られないことが分かる。これによ
り、より人らしい振舞が表現可能となる。
(a)
(b)
(c)
 

図
解析結果

為替レートを生成するダイナミクスの曜日間比較
Comparison among the dynamics to generate the exchange rate for each day of week
福井大工
谷村 亨, 平田 隆幸, 高田 宗樹
Ap-06
Fac. of Eng., Univ. of Fukui
T. Tanimura, T. Hirata, H. Takada
並進誤差
為替市場は様々な要因に影響されている。近年、経済の市場予測を行うため様々な時系列デー
タ解析が行われている。為替レートはカオス的な振る舞いに従っていると考えられており、これ
までも為替レートの時系列解析に関する先行研究がある。しかし、それらは日付を連続して解析
していることが多い。本研究では時系列為替レートを曜日別に解析することによって、曜日ごと
の為替レートの特徴を捉えることを目的とした。また、為替市場の月曜日と金曜日は企業の取引
が多いため、一般的にドル高方向への変化が大きいという説が正しいかを検討した。1989 年 1
月から 2016 年 8 月までのドル円の日次為替レート、
1993 年 1 月から 2016 年 8 月までのユーロ円とユー
1
ロドルの日次為替レートの 3 系列とした。その 3 系
0.8
列の日次為替レートを 5 つの曜日(月曜日-金曜日)
0.6
に分割した。そして、曜日毎の並進誤差を算出し、
0.4
決定論性の程度を比較検討した。(図 1)。その結果、
0.2
ドル円の各曜日の為替レートの変動はユーロ円の
0
各曜日と比べて決定論性が高いことが判明した。ま
Mon.
Tue.
Wed.
Thu.
Fri.
た、月曜日と火曜日の並進誤差の値はドル円とユー
ドル円
ユーロ円
ロ円ともに他の曜日と比べて決定論性が低く、木曜
日は決定論性が高いことも判明した。
図 1 ドル円とユーロ円の曜日別並進誤差の値
Ap-07
高精度プロパゲータを用いた経路積分モンテカルロ法における比熱の計算式
福井大工 辻村 真琴、高木 丈夫
A specific heat estimator in path integral Monte Carlo calculation using a high
precision propagator.
Dept. of Applied Phys., Fac. of Eng., Univ. of Fukui, M. Tsujimura,T. Takagi
通常の経路積分モンテカルロ法 (PIMC) を用いた研究で
は、エネルギーのみを計算することが多く、比熱まで求めている
ものは少ない。エネルギーに対して数値微分を行うと比熱が得
られるが、エネルギーのデータを細かく取る必要があり、さらに
精度が低いという問題がある。そのため、我々は虚時間の分割
幅 τ に対し 6 次までの精度を持つプロパゲータ 1)に対応した
比熱の計算式(estimator)を導出した。これを用い、3 次元調
和振動子に対し τ=1.0 として計算した結果を図 1 に示す。そ
の他にも、液体 4He に応用した結果も報告する予定である。
参考文献
1) The Jour. of Chem. Phys. 130, 204109(2009)
図 1. 3 次元調和振動子における
比熱の理論値と計算値
Ap-08
NEMS 用人工材料の開発・設計指針としてのナノ動摩擦法則の探究(Ⅴ)
金沢工大 EOE 研 池田 聖, 小松 央征, 林野 光輝, 林 啓治
Search for Laws of Nano-Friction as Guiding Principles to Design Artificial Materials for NEMS(Ⅴ)
Kanazawa Institute of Technology Satoru Ikeda, Hiromasa Komatsu, Koki Hayashino, Keiji Hayashi
Nano-ElectroMechanical Systems(NEMS)の使用時に摺動界面で起こる、「NEMS のパーツ同士が原子
スケールに比べ広い面で接して常に擦れ、既に熱を持っている摺動部において なお持続的に摩擦熱が発生
し、」かつ、「磨耗を伴わない弾性接触条件下の」動摩擦現象(以下
では、ナノ動摩擦現象 と呼ぶ)について、我々は、法則性を洗い出
すとともに それらの原子論的由来を解明し NEMS 用人工材料の開
発・設計指針として整理することを目標に、分子動力学(MD)法に
基づくシミュレーション研究を進めてきた[1]。右図のような 2 次
元 MD モデル、および、3 次元 MD モデルを用い、界面に平行に一定
の相対速度(滑り速度) vstroke で結晶 A と C とを滑らせた際に起こる
ナノ動摩擦を解析した。結晶 A、C それぞれの、(滑り方向の)格子
定数を sAA 、 sCC とする。我々は、ナノ動摩擦には普遍的に、“閾現
象”が見られ、“閾法則”が成り立つことを見出した。ここで、“滑
り速度 vstroke に閾値 vth が存在して、 vth より速く滑らせた場合には、
遅く滑らせた場合に比べ、エネルギー散逸レートが飛躍的に大きい”
ことを“閾現象”、“ vth と 格子定数比 sCC / sAA との間に簡明な関
係がある”ことを“閾法則”と名付けた。
今回は,シミュレーション実験条件の高精度化に取り組んで得た成
果を報告する.
本研究は JSPS 科研費 15K13419 の助成による。
[1] K. Hayashi et al., Comp. Phys. Commun., 182, 2032 (2011).
Ap-09
NEMS 用人工材料の開発・設計指針としてのナノ動摩擦法則の探究(Ⅵ)
金沢工大 EOE 研 東側 大輝, 中野 高嗣, 林 啓治
Search for Laws of Nano-Friction as Guiding Principles to Design Artificial Materials for NEMS(Ⅵ)
Kanazawa Institute of Technology
Daiki Higashigawa, Takashi Nakano, Keiji Hayashi
直前の講演にて池田が報告した、ナノ動摩擦を特徴づける“閾現象”および“閾法則”について、これま
での研究で、さらに、それらの原子論的由来を明らかにした。
結晶 A の格子振動の、閾現象の発現メカニズムへの関与に焦点を絞って説明するため、結晶 C における各
C 原子の相対配置は平衡配置に固定されているとする。滑りに伴って、まず、結晶の摺動界面近傍に、周期
的な外力を受けることによる強制振動が引き起こされる。この強制振動は滑り方向に進行する波となる。そ
の波の波数ベクトルの滑り方向成分は、結晶 A と C との取り合わせに応じて決まり、結晶 A に対し結晶 C
が滑って進む向きを正として,、 1 / sCC - 1 / sAA で与えられる。
結晶 A の固有振動モードのうち、時間的のみならず空間的にもコヒーレントな励起によってこの強制振動か
らエネルギー移動が起こり得るのは、“位相整合条件”を満たすもの、すなわち、波数ベクトルの滑り方向
成分が 1 / sCC - 1 / sAA (の任意の奇数倍)のもののみである。このことは、‘摺動界面での滑り方向に沿っ
た、結晶表面の空間並進対称性’に由来する、格子振動励起の‘選択則’として位置づけられる。共鳴励起
され得る位相整合モードが存在する滑り速度 v stroke 、換言すると、強制振動数(washboard frequency)
v stroke / sCC では、その共鳴励起がきっかけとなって、原子間相互作用の非線形性を介した、様々なモードの
格子振動のインコヒーレントな励起が促進される。なお、このインコヒーレントな格子振動励起を経て、フ
ォノンの熱分布へ近づくことで、エネルギー散逸、すなわち熱発生のプロセスは完結する。
以上の解釈に立つと、上述の“閾法則”からさらに踏み込んで、次のことを導ける。すなわち、滑り速度
の閾値と格子定数比との間の関係は、摺動界面で接する結晶における‘フォノン分散関係’を、そのまま反
映したものである。
講演では、上述の強制振動を、熱運動が支配的な原子集団の運動から単離し、可視化した諸例を報告する。
本研究は JSPS 科研費 15K13419 の助成による。
Ap-10
NEMS 用人工材料の開発・設計指針としてのナノ動摩擦法則の探究(Ⅶ)
金沢工大 EOE 研 齋藤 公希, 町野 太樹, 林 啓治
Search for Laws of Nano-Friction as Guiding Principles to Design Artificial Materials for NEMS(Ⅶ)
Kanazawa Institute of Technology
Koki Saito, Daiki Machino, Keiji Hayashi
直前の講演にて東側が報告した以上に精度よく、ナノ動摩擦の閾特性を予測するには、格子定数比の他に、
どのような物性パラメタが、どのような原子論的メカニズムで、“閾現象”に絡むのかを明確にすることが不
可 欠 で あ る 。 そ の 例 と し て 、 格 子 定 数 sAA が 共 通 で 、 sCC が sCC / sAA = 16 / 15 な る 場 合 と
sCC / sAA = 16 / 17 なる場合との、washboard frequency に対する
ナノ動摩擦力の依存性を比較すると、両者で、1 / sCC - 1 / sAA の絶
対値は等しいにもかかわらず、シミュレーション結果に基づく
washboard frequency の閾値 vth / sCC は食い違う。一般に、 sCC が
sAA より 大きい場合の方が 小さい場合よりも、閾値は強制振動数の
低い領域に現れる.なぜこの閾値の食い違いが生ずるか検討した。
滑りに伴って結晶 A の摺動界面近傍に引き起こされる強制振動の周
期に一致した時間間隔での各 A 原子の変位をサンプリングし統計処
理を施すことで、この強制振動を、熱運動が支配的な原子集団の運
動から単離し、可視化した。右図は、 sCC / sAA = 16 / 15 のモデル
について、結晶 C を右方向へ滑らせた場合の、結果の例である。各
A 原子の、釣り合いの位置からの変位を 5 倍に拡大して矢印で示し
た。この強制振動の波数ベクトルの滑り方向成分は理論式と符合す
る。この解析から、上に述べた washboard frequency の閾値の食い
違いは sCC / sAA = 16 / 15 の場合と 16 / 17 の場合とでの 強制振動
の時空パターンの相違に由来することを明らかにした。
本研究は JSPS 科研費 15K13419 の助成による。
Ba-01
Bi ナノ粒子における Bi シートの構造
富山大理,弘前大理工 A
磯野 颯人,前川 仁志,池本 弘之,宮永 崇史 A
Structure of Bi sheet in the nanoparticles
Department of Physics, University of Toyama
H. Isono, H. Maekawa, H. Ikemoto
Department of Advanced Physics, Hirosaki University A
T. Miyanaga
V 族元素の As、Sb、Bi の安定相では、3 配位の共有結合による正三角錐がつながった Bi シートが積み重
なった A7 構造である。これに対し、P の安定相は、2種類の共有結合からなるイス型(A17)構造のシートが
重なった構造である。これまで、Bi 安定相の A7 構造をベースに、1種類の共有結合からなると仮定して X
線吸収微細構造(XAFS)解析を行ってきた。しかしながら、配位数が半減するにもかかわらず、共有結合長が
ほとんど変化しないという矛盾した結果が得られた。今回は、同族元素の P の A17 構造を参考に、2種類の
共有結合が存在すると仮定した解析結果を報告する。
Bi ナノ粒子は、薄く蒸着してナノ粒子を作る島状蒸着法により作製した。粒子サイズは膜厚によって制御
した。Bi 蒸着膜の平均膜厚により、Bi ナノ粒子を表す。Bi と NaCl の多層膜をペレットにしたサンプルを
KEK-PF の BL12C で透過 XAFS 測定を行った。
表1: 1 配位と 2 配位の
XAFS 関数のフーリエ変換の第一ピークのみを逆フーリエ変換して得た
共有結合長の長さ(Å)
XAFS 関数に対し、最小二乗法による解析を行った。今回は、1配位と 2
1 配位
2 配位
配位の共有結合を仮定し、デバイ・ワラー因子を結晶の場合の値に固定し
結晶
3.066
3.063
た解析を行った。表 1 に、得られた2種類の共有結合長を示す。結晶の場
合は3本の共有結合長は同じであるので、表1の2種類の共有結合長はほ 0.5nm
3.169
3.032
ぼ同じ値となっている。これに対し、0.5nm と 2nm の Bi ナノ粒子では、共
2nm
3.165
3.034
有結合長の差は 0.137、0,131Åである。この結果は、Bi ナノ粒子が A17 構
造へ相変態したナノ同素体である可能性を示唆する。吸収端近傍の XANES
解析も行っているので併せて報告する。
Ba-02
回折条件制御による三次元トポグラフィ
金沢大自然科学 A,金沢大医薬保健 B,物質・材料機構 C,島根大総合理工 D
高野駿太朗 A,藤下豪司 A,岡本博之 B,中野智志 C,森川公彦 D,水野 薫 D
3D topographs obtained by controlling the diffraction condition
A,B
Kanazawa Univ, CNIMS, DShimane Univ.
A
A
S. Takano , H. Fujishita , H. OkamotoB, S. NakanoC, K. MorikawaD, K. MizunoD
現在,多くの分野で単結晶が利用される.これらを非破壊で三次元的に評価出来れば,育成条件の精密化
や,加工方法の検討等で多くの利点がある.そこで,ライン状のX線ビームにより多数の断層トポグラフを
取得し再構成することで,格子欠陥の立体的位置や形状を決定する三次元トポグラフィが利用され始めてい
る.我々は更に詳細な評価を行うため,ロッキングカーブを参考にした三次元トポグラフィを考案した.
実験は KEK-PF で行った.試料の高圧実験用ダイヤモンドアンビル(DAC)を鉛直に 5μm ずつ移動させ,断
層トポグラフを約 500 枚撮影した.同様に,結晶を微小回転させ回折条件を変化しつつ,断層トポグラフを
撮影した.そして,ピクセル毎の回折強度曲線をもとめ,それを元に積分強度像,期待値像,強度分布広が
り像のトポグラフを作成した.
図 1 に DAC 上 部 の 断 層 像 を 示
す.(a)積分強度像では明瞭に観察
できる破線部の強度変化が,(b)期
待値像と(c)強度分布広がり像では
不明瞭である.これらより,破線部
の欠陥は歪場を伴わない欠陥であ
ろうと考えられる.今後、この手法
0.5mm
の応用によって,より詳細な欠陥分
(b)期待値像
(c)強度分布広がり像
(a)積分強度像
布の解析が可能になると思われる.
図1:作成した3種類のトポグラフ像
Ba-03
陽子線治療シミュレータでの即発 γ/X 線検出を利用した照射領域の可視化
富山高専 紅井 里緒菜,阿蘇 司
Reconstruction of irradiated field by using the detected prompt γ/X-rays in proton beam therapy simulator
National Institute of Technology, Toyama College
R. Benii, T. Aso
がん治療の 1 つである陽子線治療は,陽子線の特徴であるブラッグピークによって,がん腫瘍のみに線量
を集中させることで治療を行う.安全な治療のために,照射領域の線量の確認が重要となるが,体内の線量
分布を直接的に測定することは困難である.そこで,入射陽子と体内の原子核との核反応で二次粒子として
生成される同位体が放出する γ/X 線を利用した陽子線の照射領域の可視化が試みられている.本研究では,
シミュレーション空間で陽子線照射を再現し,照射領域の画像化を目指している.
シミュレーションには Geant4 を用いており,陽子線照射で生成される二次粒子の種類や,その寿命などを
モンテカルロ法によって確率的に決定する.シミュレーション空間内に,四角柱のアクリルの照射対象物と
円筒型の理想的な検出器を構築し,照射対象物に向かって垂直に 190MeV の陽子線を照射した.検出器が記
録した γ/X 線のデータから投影データを作成し,BP (Back Projection) 法および FBP (Filtered Back Projection)
法による画像再構成によって画像化を行った.FBP 法には Ramp フィルタを用いた.照射領域の再構成画像
と線量分布を比較し,陽子線の照射位置と照射後の検出時間幅の条件の違いによる影響を解析して比較した.
結果として,BP 法による再構成画像は輪郭がぼやけたのに対し,FBP 法による再構成画像は線量分布に近
づき,ほぼ一致した.照射位置を垂直平面方向に 10mm ずつ移動させたところ,再構成画像の照射領域も追
従した.検出時間幅を 1 秒,10 秒,60 秒と変更して画像再構成を行ったが,大きな差異は見られなかった.
エネルギー分布を調べたところ,1 秒と 10 秒では 10C によるスペクトル (718keV) の違いが顕著に見られ,1
秒と 60 秒では 10C のスペクトルに加えて 14O のスペクトル (2313keV) の違いが見られた.また,60 秒と時
間に制限がないときのエネルギー分布を比較すると,概形に差は見られなかった.つまり再構成画像には,
主に即発 γ/X 線で作成されていると言える.
今後の課題として,深度方向の画像を作成し,陽子線のブラッグピークの位置を確認する予定である.ま
た,シミュレーションの条件などを変更し,再構成画像への影響をさらに調べる予定である.
Ba-04
放射線シミュレーションによるサムピーク法と簡易サムピーク法の評価
富山高専 牧野 竜大,阿蘇 司,名古屋大 緒方 良至
Evaluation of the sum-peak method and modified the sum-peak method by radiation simulation
NIT, Toyama College R. Makino, T. Aso, Nagoya Univ. Y. Ogata
高純度ゲルマニウム半導体検出器(以下 Ge 半導体検出器)は,エネルギー分解能が高くγ線エネルギー・スペクトルを
精度よく計測することができるため,核種分析や放射能の測定に用いられている. 絶対測定法として,サムピーク法[1]や簡易サムピーク法[2]がある.本研究では,これら絶対測定法の評価を行うために, 放射線シミュレーションにおいて,Ge 半導体検出器を模した体系を作成し,計算によって得られたγ線スペクトルにサム
ピーク法を適用して放射能を解析した. 本研究の目的は,シミュレーションにより 60Co のγ線エネルギー・スペクトル分布にサムピーク法と簡易サムピーク法
を適用して,シミュレーション条件の確認と放射能の絶対測定が可能であることを検証することである. サムピーク法とは,壊変当たり 2 本以上の X/γ 線を放出する核種に適用できる放射能の絶対測定法である.60Co は,β
壊変後,1173keV と 1332keV の 2 本の γ 線をカスケードに放出するためサムピーク法が適用できる.簡易サムピーク法
では,線源-検出器間距離が無限長となる条件の代わりに 1173keV の全吸収ピークに含まれる計数がゼロとなる極限にお
いて壊変数を求める方法を提案している. 本研究は,モンテカルロ法により放射線と物質との反応を計算する Geant4 シミュレーションツールキット(Ver.10.2)
を用いて,Ge 半導体検出器の装置を模した体系を構築した.点線源の 60Co を,検出窓からの距離を 0.25cm から 8cm の範
囲で変化させ,それぞれの条件でサムピークに含まれる計数が約 104 発になるように 60Co を任意の数発生させてエネルギ
ー・スペクトルを収集した.得られたエネルギー・スペクトルを,データ解析フレームワークである ROOT Analysis Tool
を用いて,指数関数とガウス関数の合成関数で各ピークをモデル化し,ピークに含まれる計数を求めた. 求めた計数を用いてサムピーク法と簡易サムピーク法を適用した結果,サムピーク法は 0.02%の違いで放射能を求める
ことができ,簡易サムピーク法では 1.06%の違いで放射能を求めることができた. 参考論文 [1] G.A. Brinkman, et. al., Int. J. Appl. Rad. Isot. 14 (1963) 153 [2] Y. Ogata, et al., Nuclear Inst. Meth. Phys. Res. A, 775: 34-40; (2015) Ba-05
LSC モンテカルロシミュレーションによる TDCR 値と計数効率の評価
富山高専 青山翔蓮,阿蘇司,富山大 原正憲,庄司美樹
日立製作所 益田拓郎,古澤孝良,吉村共之,加藤結花
Evaluation of Triple to Double Coincidence Ratio and counting efficiency in LSC by using MC Simulation
NIT, Toyama college K. Aoyama, T. Aso, Univ. of Toyama M.Hara, M.Shoji
Hitachi, ltd., T.Masuda, T.Furusawa, T.Yoshimura, Y.Kato
液体シンチレーションカウンタ(LiquidScintillationCounter,LSC)は,放射性試料を液体シンチレータに溶解し,
壊変により放出されるα線やβ線などの荷電粒子によって発生するシンチレーション光を検出する.単位時間当たりの発
光回数を計測することで放射能を定量できる放射線検出器である.本研究では,3 本の光電子増倍管(PMT)を用いて計測
を行う LSC のシミュレーションを用いて TDCR(TripletoDoubleCoincidenceRatio)値と計数効率の関係を求め,その
特性について考察した.TDCR 値は,3 本の PMT を配置し,3 本のうち 2 本の PMT で同時計測された事象数を ND,3 本の PMT
すべてで同時計測された事象数を NT とするとき,NT/ND で定義される.
本研究では,モンテカルロシミュレーションツールキットである Geant4[1]を用いてシミュレーションを行った.Geant4
は,放射線の相互作用のシミュレーションを行うことができる.
オプティカルチェンバーの中心に液体シンチレータ(LS)を充填したガラス製バイアルを置き,その周りに 3 本の PMT
を配置した.14C または 3H を LS 内で一様に発生させ,放出β線のエネルギーに応じたシンチレーション光を発生させた.
壊変ごとに各 PMT に達したシンチレーション光量を基に,各 PMT での検出の有無を判断し,同時計測された PMT に応じて
NDと NT に計測事象数を積算した.そして最後に TDCR 値を求めた.また,シミュレーションでの壊変数に対する ND,NT
の比を計数効率とし,これを求めた.
シミュレーションの結果,核種を変更しても,同じ TDCR 値に対して計数効率は同一曲線上に分布していることがわか
った.この結果から,β線を放出する核種であれば,核種が異なっても TDCR 値に対応する計数効率の予測が可能である
と期待できる.また,35S および 32P についても同様にシミュレーションを行い報告する.
参考論文
[1]A.Agostinellietal.,Geant4-asimulationtoolkit,Nucl.Instr.Meth.,A596,(2003)pp.1411-1416
Ba-06
COBAND実験のためのSTJ検出器テスト用遠赤外光源開発
福井大工、中部大工 A、筑波大数理 B、福井大遠赤セ C、近大理工 D
坂井誠、浅野千紗、中村昂弘、西村航、吉田拓生、岡島茂樹 A、中山和也 A、金信弘 B、
武内勇司 B、森内航也 B、小川勇 C、加藤幸弘 D
Development of a far-infrared light source to test STJ detectors for COBAND experiment
Univ. of Fukui, Chubu Univ. A, Univ. of Tsukuba B , FIR Univ. of Fukui C, Kindai Univ. D
M. Sakai, C. Asano, T. Nakamura, W. Nishimura, T. Yoshida, S. Okajima A, K. Nakayama A, S.H. Kim B,
Y. Takeuchi B, K. MoriuchiB, I. Ogawa C ,Y. Kato D
ニュートリノは現在では質量をもつことが知られているが、その質量はまだ正確には測定されていない。
ニュートリノが質量をもっていれば、図のように大きい質量のニュートリノが小さい質量のニュートリノと
遠赤外領域の波長を持つ光子に 2 体崩壊すると予測されている。ニュートリノが崩壊する際に放出する光子
(ニュートリノ崩壊光子)のエネルギーを測定することができればニュートリノの質量を決定することがで
きるが、ニュートリノの崩壊確率は極めて小さく、少量のニュートリノではニュートリノ崩壊光子を検出す
ることは難しい。そこで我々は、ニュートリノ崩壊光子を検出するために、宇宙に大量に存在するといわれ
る宇宙背景ニュートリノを利用する COBAND(Cosmic Background Neutrino
Decay)実験を計画している。そして、この宇宙背景ニュートリノ崩壊光子
の エ ネ ル ギ ー を 正 確 に 測 定 す る た め に 、 STJ(Superconducting Tunnel
Junction)検出器の開発を行っている。この検出器開発を円滑に行うために
は、ニュートリノ崩壊光子と同じ遠赤外領域の波長の光源を用いて、開発
中の検出器の性能評価を行うことが必要不可欠となる。そこで我々は、福
井大学遠赤外領域開発研究センターの遠赤外分子レーザーを利用して、
STJ 検出器テスト用遠赤外光源の開発を行うことにした。今回は、その光
図:ニュートリノ二体崩壊
源開発の現状と今後の課題について講演する。
Ba-07
GAGG:Ce 結晶の α 線および陽子線の消光係数測定
福井大工, 若狭湾エネルギー研究センター A , 高エネルギー加速器研究機構 B
高橋成企, 平岡大和, 檜山太旗, 中島恭平, 小川泉, 玉川洋一, 鈴木耕拓 A , 小林正明 B
Measurements of quenching factors for α-rays and proton in GAGG:Ce crystal
Grad. Sch. of Eng.,Univ.of Fukui , The Wakasa Wan Energy Research CenterA , KEKB
N.Takahashi, Y.Hiraoka, D.Hiyama, K.Nakajima, I.Ogawa, Y,Tamagawa, K.SuzukiA , M.KobayashiB
GAGG:Ce( Gd 3 Al2 Ga3 O12 :Ce3+ ) 結晶は、発光量 46,000 photons/MeV、密度 6.63 g/cm3 、最大発光波長
520 nm 、減衰時間 88 ns で総合的にバランスの取れたシンチレータ [1,2] である。我々は、α 線および γ 線によ
る事象の波形情報による粒子弁別能と、α 線、陽子線の消光係数、またそれを利用した GAGG:Ce 結晶内のバッ
クグラウンド事象に関する研究を進めている。これまでの研究により、GAGG:Ce 結晶で室温における α 線と γ
線の波形情報による粒子識別が可能であることが分かっている [3]。しかし、α 崩壊事象を観測した際に、消光効
果により α 線のエネルギーに不定性が残った。このため、バックグラウンド事象から結晶内に存在する放射性核
種を同定することができなかった。これを解消するため、若狭湾エネルギー研究センターのタンデム加速器を用
いて、既知のエネルギーを持つ α 粒子等のビームを用いて、消光係数のエネルギー依存性を明らかにする実験を
行った。昨年度の本会においては、GAGG:Ce 結晶の、α 粒子に対する消光係数の傾向を報告した。本講演では、
昨年度の講演内容に加えて陽子線に対する消光係数に関する報告と、消光係数に関する半経験則である Birks の
式との照合について報告する。
[1] K.Kamada, et al., Crystal Growth and Design 11 (2011) 4484.
[2] K.Kamada, et al., Journal of Crystal Growth 352 (2012) 88.
[3] Y.Tamagawa, et al., Nuclear Instruments and Methods A795 (2015) 192.
Ba-08
BGOファイバーによるγ線エネルギー測定精度向上のためのシミュレーション
福井大学工
梅田 健太朗,田後 佑典,吉田 拓生
Simulation for γ ray energy measurement accuracy improvement by BGO fibers
Fac. of Eng., Univ. of Fukui
K. Umeda, Y. Tango,T. Yoshida
我々は、γ線のエネルギーを測定するためのシンチレーターである BGO(Bi4Ge3O12)を細くし、これによっ
てγ線のエネルギーだけでなく、その飛来位置まで精度よく測定する検出器の研究開発を行っている。
γ線が BGO に当たると、光電効果やコンプトン効果によって電子をたたき出し、その電子が BGO を発光
させる(図)。このときの光量を光電子増倍管やフォトダイオードなど
発光
γ線
e
の受光素子で測定することによって、γ線のエネルギーを測定すること
光電効果
BGO
ができる。その光量を正確に測定することが、測定精度向上につながる
が、シンチレーターの光量は極めて微量であるため、低ノイズ・高感度
な受光素子が必要となる。一般には、光電子増倍管(PMT)、アバラン
シェフォトダイオード(APD)、マルチピクセルフォトンカウンター
(MPPC、図)などの高感度な受光素子が用いられている。本研究では、
受光素子として MPPC を用いることを想定し、その場合のγ線のエネル
ギー測定精度を調べるシミュレーションを行った。MPPC とは数十ミク
ロン程度の微小な APD ピクセルが集積された高感度な受光素子である
が、ピクセルサイズの違いによって、検出効率が異なり、測定精度にも
差が出ることが考えられる。本研究の目的は、γ線のエネルギーを最も
精度よく測定することが出来るのはどのような MPPC か、シミュレーシ
図:BGO ファイバーによる
ョンで判定することである。また、シミュレーションの結果を実験結果
γ線検出の原理と
と比較することも行った。本講演ではこれらの詳細について報告する。
MPPC の写真
Ba-09
核廃棄物ニュートリノモニターのための基礎研究
福井大工 竹内 啓人, 中島 恭平, 小川 泉, 玉川 洋一
A basic study for nuclear waste neutrino monitor
Fac. of Eng., Univ. of Fukui
H. Takeuchi, K. Nakajima, I. Ogawa, Y. Tamagawa
我々は、地下深くに埋められる核廃棄物の保管状況をニュートリノによって遠隔地から監視可能か検討している。こ
こで核廃棄物とは、原子力発電所から発生した使用済み核燃料を再処理して残った高レベル放射性廃棄物を指す。日本で
は、高レベル放射性廃棄物は地下水への溶け込み防止のためにガラス
に溶け込ませてガラス固化体とする。ガラス固化体中の核種と放射能
の時間変化は図のようになっており、ウラン鉱石の放射能(約 1012Bq)
と等しくなるまでに数万年を要する。そのため、長期安定性を増すた
めに金属や粘土などを用いて人工バリアを形成し、地下 300m 以下の
場所に埋め、約 10 万年間閉じ込めておくことが検討されている。し
かし、長期保管による人工バリアの劣化や、地震などの影響によって
放射性廃棄物が漏れ出す可能性は 0 とは言えない。したがって、放射
性廃棄物の保管状況の監視が重要であるが、放射能が高いため実際に
人が測定しに行くことは現実的でない。
そこで我々は、核廃棄物から放出されるニュートリノによる遠隔地
からの監視”核廃棄物ニュートリノモニター”を考えた。ニュートリノ
は物質に対する透過力が非常に高いため、遠隔地からの観測が可能と
なる。核廃棄物中の核種のβ崩壊𝑛 → 𝑝 + 𝑒 ! + 𝜈! で放出される𝜈! の
逆β崩壊𝜈! + 𝑝 → 𝑒 ! + 𝑛で検出を考えているため、𝜈! が反応閾値であ
る 1.8MeV 以上のエネルギーを持っていなければ検出できない。そのよう 図. ガラス固化体の放射能の時間変化
な高エネルギーの𝜈! を放出する核廃棄物中の核種を調べ、適切な検出器の
(出典:地層処分研究開発第 2 次取りまとめ)
サイズ、核廃棄物からの距離などについて検討した。本発表では、核廃棄物ニュートリノモニター研究の現状を報告する。
Ba-10
原子炉ニュートリノ観測に向けてのプラスチックシンチレータ検出器に
おける𝒏/𝛄波形弁別
福井大工
清水 慧悟, 高橋 成企, 中島 恭平, 小川 泉, 玉川 洋一
若狭湾エネルギー研究センター 鈴木耕拓
𝒏/𝛄 Pulse Shape Discrimination using Plastic Scintillator for Reactor Antineutrino Observation
Fac. of Eng., Univ. of Fukui
K. Shimizu, N. Takahashi, K. Nakajima, I. Ogawa, Y. Tamagawa
The Wakasa wan Energy Research Center K.Suzuki
現在世界的に原子炉ニュートリノを用いた物理実験がいく
つか行われており、日本においても同様の研究が計画されてい
る。計画されている実験ではプラスチックシンチレータを用い
て原子炉中で核分裂の際に放出される反電子ニュートリノ𝜈�𝑒
を検出する。検出原理は、入射した𝜈�𝑒 がプラスチックシンチレ
ータ内で陽子𝑝と逆β崩壊𝜈�𝑒 + 𝑝 → 𝑒 + + 𝑛を起こし、そのとき
放出された陽電子𝑒 + が電子と対消滅をしてγ線を出し、これ
が先発信号となる。その後中性子𝑛がプラスチックシンチレー
タの周りにある𝐺𝐺に吸収され、γ崩壊を起こしγ線を出す(後
図: 反電子ニュートリノの検出原理
発信号)。この先発信号と後発信号とその時間差を用いて反電
(出典:Reactor
antineutrino monitoring with
子ニュートリノ検出の証拠とする。
a
plastic
scintillator
array as a new
しかしながら、バックグラウンド事象として宇宙線による核
safeguards method)
破砕で放出される高速中性子があり、検出器に入射したとき先
発信号と酷似した信号を出すため、本研究では高速中性子及び反電子ニュートリノ起因の事象を弁別するた
めの研究を進めている。今回は、高速中性子起因の事象を再現するために加速器からの 2~10MeV の陽子を
プラスチックシンチレータに入射し、出力波形を観測する実験を行った。
講演では、この実験によって得られた波形及び波形を用いた入射粒子の弁別について報告する。
Bp-01
低温領域における希土類カゴ状化合物 Pr3 Pd20 Ge6 の磁場中熱膨張測定 II
金沢大理、新潟大院自然 A 、新潟大理 B 、新潟大工 C 、物材機構 D
関口祐太、峯岸光如、小野拓哉、宮本惇也、阿部聡、松本宏一、阿野元貴 A 、
赤津光洋 B 、三本啓輔 A 、根本祐一 A 、後藤輝孝 A 、武田直也 C 、北澤英明 D
Thermal expansion measurements in magnetic field
of clathrate compound Pr3 Pd20 Ge6 at millikelvin temperatures II
Department of Physics, Kanazawa University, A Graduate School of Science and Technology, Niigata University,
B
Department of Physics, Niigata University, C Faculty of Engineering, Niigata University,
D
National Institute for Materials Science.
Y. Sekiguchi, M. Minegishi, T. Ono, J. Miyamoto, S. Abe, K. Matsumoto,
A
G. Ano , M. AkatsuB , K. MitsumotoA , Y. NemotoA , T. GotoA , N. TakedaC , H. KitazawaD
希土類カゴ状化合物 R3 Pd20 Ge6 (R = rare earth)は、オフセンターラットリングといった興味深い物性を示
す。特に、Pr3 Pd20 Pd6 はプラセオジム (Pr) 原子が有する核スピンと 4f 電子スピンが超微細相互作用を通して
強く結合するために、低温で核スピンに起因した新規な物性が期待される。Pr3 Pd20 Ge6 結晶中の希土類イオン
は結晶学的に異なる 2 つのサイト (4a サイト、8c サイト) に位置しており、4f 電子の結晶場基底状態は、4a サ
イトにおいて Γ5 三重項、8c サイトにおいて非クラマース Γ3 二重項と異なる。弾性定数 [1] と交流帯磁率 [2] の
測定結果から、各サイト由来の磁気秩序及び四極子秩序相転移が報告されているが、秩序パラメーターなどの詳
細はまだわかっていない。
我々は、Pr3 Pd20 Ge6 の低温秩序状態を研究するため、キャパシタンス法を用いた熱膨張測定を単結晶試料に
ついて行った。今回は、H ≥1 T での Pr3 Pd20 Ge6 の熱膨張測定を Sub-mK の温度領域まで行った。熱膨張は立
方晶における [001] 方向の線熱膨張率を測定し、磁場は測定軸に平行な方向に印加した。測定の結果、磁場中熱
膨張は磁気秩序相と四極子秩序相で異なる異常を示した。講演ではその詳細を報告する。
[1] G. Ano et al., J. Phys. Soc. Jpn. 81, 034710 (2012).[2] O. Iwakami et al., Phys. Rev. B 90(10), 100402 (2014).
Bp-02
超低温・高磁場環境下におけるピエゾカンチレバーを用いた
熱膨張・磁気歪測定装置の評価
金沢大学理
生方
井上
憲二郎,峯岸 光如,上野 敬介,
大貴, 松本 宏一, 阿部 聡
Development of dilatometer using piezocantilever at low temperatures
in high magnetic fields
Department of Physics, Kanazawa University.
K. Ubukata, M. Minegishi, K. Ueno, D. Inoue, K. Matsumoto, S. Abe
我々は熱膨張・磁気歪測定による典型的重い電子系物質 CeRu2Si2 の超低温・高磁場環境下における
量子臨界現象を研究してきた。量子臨界現象の研究の発展には、熱膨張・磁気歪の結晶軸依存性測定
が必要であるが、現在使用しているキャパシタンス式歪測定器を実験空間内で回転させることは困難
である。そこで、測定器の小型化・簡易化を行うために、ピエゾカンチレバー素子を用いた新たな歪
測定装置を開発している。今回、Quantum Design 社製の PPMS に挿入
するクライオスタットを製作し、ピエゾカンチレバー素子 PRC400 とロ
ーテータ ANRv51 の評価を行った。クライオスタット低温部(図)に設
置したローテータを回転させ回転量の測定を行った。また、素子のカ
ンチレバーに変位を加え、カンチレバー基部のピエゾ抵抗および参照
ピエゾ抵抗の測定も行った。
カンチレバー変位に対する ΔR/R(カンチレバーの感度)を、温度
2, 4.2, 300K において変位 50μm まで測定したところ、カンチレバー
の感度は 2K で 300K での約 2 倍であり、新たな歪測定装置の実用性が
図:クライオスタット低温部
確認できた。また、ローテータに関しては 4.2、300K において駆動電
圧を変化させて回転量の比較を行った。詳細な結果に関しては学会で
説明する。
Bp-03
エアロジェル中の超流動ヘリウムの熱パルス伝播の研究Ⅱ
金沢大理工
加藤舜,岡本竜一,中島安曇,阿部聡,松本宏一
Study of heat pulse transmission of superfluid ⁴He in Aerogel Ⅱ
Kanazawa Univ.
S.Katou, R.Okamoto, A.Nakajima, S.Abe, K.Matsumoto
液体 4 He は、多孔質体中にある場合、超流動転移温度や超流動密度の抑制など、バルクの液体 4He
とは異なった性質を示す。エアロジェルは SiO2 によって構成された空孔率が高い多孔質体であり、
構造的にやわらかく、超流動 4He の常流動成分と結合しジェルが変形することで、第1音波と第 4 音
波の中間のモード(Fast Mode)、第 2 音波に似たモード(Slow Mode)が存在する。我々は、エアロ
ジェル中の液体 4He を伝播する圧力波(Fast Mode)の観測を行ってきた。数 10MHz の超音波で、臨界
ゆらぎによる減衰ピークの他に、超流動相で異常な減衰を発見した[1]。この原因には Fast Mode と
Slow Mode のモード変換等が考えられる。
本研究ではエアロジェル中の液体 4He における音波伝播機構を研究する為に、Heat Pulse 法を用
いて Slow Mode の観測実験を行った。前回までに空孔率 90.2%のエアロジェルを用いた実験で、Slow
Mode とバルクの第 2 音波に対応する信号の観測に成功したことを報告した[2,3]。しかし、Slow Mode
の速度が速く、信号波形の分離が難しい、信号波形にノイズが多いなどの問題があり解析は困難で
あった。そのため今回は、ヒートパルス発生用ヒーターとパルス発生回路の改良と、エアロジェル
の長さを増し伝搬時間を長くすることで信号の分離を容易にするなどの改良をして再度測定を行っ
た。その結果、Slow Mode の信号観測が改善された。講演では、測定結果の詳細を報告する。
[1]K.Matsumoto,et al., J Low Temp Phys.148:615-620(2007)
[2]中島安曇,山本唯,大野翼,阿部聡,松本宏一 2014 年度日本物理学会北陸支部 D-p8
[3]岡本竜一,中島安曇,山本唯,阿部聡,松本宏一 2015 年度日本物理学会北陸支部 C-p10
Bp-04
蓄冷材 Gd2O2S の熱・磁気特性
金沢大, NIMSA
表 秀樹,
裏
雄太郎,
宇治山
崇,
阿部
聡,
松本
宏一
健則 A
沼澤
Thermal and Magnetic Properties of Regenerator Material Gd2O2S
Kanazawa Univ., NIMSA . H. Omote, Y. Ura, T. Ujiyama, S. Abe, K. Matsumoto, T.
NumazawaA
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GM
2
2
1.2
2
2
Heat capacity [J/cm 3-K]
3
2
Gd2O2S
1
0.8
HoCu2[1]
0.6
Er3Ni[1]
0.4
0.2
2
2
0
0
5
10
Temperature [K]
[1]S.Masuyama, et al. Cryogenics 51 (2011) p340
15
((
%&ƒ„
20
Bp-05
Cr単層膜の低温物性Ⅳ
金沢大自然,東北大金研A 澤武正貴,大橋康平,大橋政司,窪田崇秀A,高梨弘毅A
Electrical resistivity of Chromium thin film III
Kanazawa Univ., ATohoku Univ.
M.Sawabu,K.Ohashi,M.Miyagawa,M.Ohashi,T.KubotaA, K.TakanashiA
金属の中には薄膜化することにより転移温度が変化するなど、バルクとは異なる性質を示すものも存在する
[1]。Cr は薄膜化することで、TN が消失し、Tc~1.5K で超伝導を起こすという報告がある[2]。本研究ではこの
報告の検証を目的とし、様々な膜厚の Cr 薄膜を用意しての電気抵抗測定を試みている。
Cr薄膜はArガス雰囲気中にてイオンビームスパッター法によってSi基板上に生成した。薄膜の生成速度は
58.8Å/minとした。試料評価のため、まず薄膜X線解析を行った。一例として膜厚50nmの多結晶膜の解析結果
を図に示す。これらのデータからフーリエ解析を行っ
たところ、Cr薄膜の表面に約1nm程度の酸化膜が生じて
いることを確認した。次に電気抵抗値の測定を行った。
膜厚50nm~1μm の範囲で評価すると、1.5K付近で電気
抵抗率の低下が観測されたが、その減少はどれも小さ
く、また、ゼロ抵抗は示さなかった。講演では5nm~
200nmの膜厚の薄膜について結果を報告する。
[1]M.Ohashi, K.Ohashi, M.Sawabu, M.Miyagawa,T.Kubota,
K.Takanashi, Physics Letters 380A (2016) 3133
[2]P. H. Schmidt, R. N. Castellano, H. Barz and B. T.
Matthias,Physies Letters 41A (1972) 367
図:Cr 多結晶膜(膜厚 50nm)の X 線反射強度
Ca-01
富山大理
B/B'(ν=10, 11) –X の CaH 分子のレーザー分光
谷伊織,渡辺響平,内田佳名子,小林かおり,松島房和,森脇喜紀
Laser Spectroscopic Study of CaH II
Dept. of Phys., Univ. of Toyama
I. Tani, K.Watanabe, K. Uchida, K. Kobayashi, F. Matsushima and Y. Moriwaki
CaH の電子遷移は太陽の黒点や M 型矮星で観測されており[1]、それらの調査に利用されている[2]。その
ことから天文学的に重要な分子であり、CaH の分光研究は長い間行われてきた。しかし、B/B’ 2∑+と D 2∑+の
振動回転準位については、それらの相互作用が振動や回転の状態に影響を与えているため、未だ理論と実験
に食い違いが存在する。また、B/B’ 2∑+と D 2∑+のバンドはまだデータが不足している。我々はこの相互作用
を実験的に明らかにするために、レーザー誘起蛍光法を用いて紫外領域の振動回転遷移を測定した。
我々はこれまで D2∑+、B/B’2∑+のバンドを測定し分子定数を決定したが、それぞれのバンドがどの振動状
態に帰属されるかは明らかになっていなかった。その後の研究では、新たに B/B'(ν=10, 11) -X バンドを測定
した。また、今まではボルンオッペンハイマー近似を用いて実験で得た振動の構造を計算していたが、状態
間の相互作用を考慮した Carlsund-Levin 氏らによる Coupled-Channel 計算[3]の結果が我々の実験結果をより
良く再現していたため、その計算結果に沿って振動状態について帰属をつけた[4]。今回の発表では、我々の
実験結果と Coupled-Channel 計算との比較と、我々が測定したバンドの帰属について議論する。
References
[1] C. M. Olmsted, Astrophy. J. 27, 66-69 (1908).
[2] B. Barbuy et al., Astron. Astrophys. Suppl. Ser. 101, 409-413 (1993).
[3] C. Carlsund-Levin et al., Scrinzi, Physica Scripta. 65, 306-322 (2002)
[4] K. Watanabe et al., Chem. Phys. Lett. 657, 1-7 (2016).
Ca-02
PbO の X(0)[1 ](v=0)→B(1)[3 ](v=3、5、6)遷移の精密分光
富山大学理
岡元一晃、鳥飼優輝、樋沢奈紀沙、不破秋夜、羽田尚之、古田裕司
小林かおり、森脇喜紀、榎本勝成
High precision spectroscopy of the X(0)[1 ](v=0)→B(1)[3 ](v=3、5、6) transition of PbO
Faculty of Science, Univ. of Toyama
K.Okamoto, Y.Torikai, N.Hizawa, A.Fuwa, N.Hada, Y.Furuta, K.Kobayashi, Y.Moriwaki, and K.Enomoto.
近年、極低温分子気体を用いた研究が盛んに行われており、我々はマイクロ波を用いた低温分子の減速・
捕捉を行うことを目的としている。分子の減速・捕捉には、低温分子ビームが必要であり、我々はヘリウム
バッファーガス冷却法を利用し、低温 PbO 分子ビームを生成している。本研究では、低温 PbO 分子ビーム
を用いて高精度な共鳴周波数測定を行った。B(1)状態のそれぞれの振動準位について、v=3 では 32 本、v=5
では 40 本、v=6 では 37 本の共鳴線を測定し、分光定数 G、Be、Bf を高精度で決定した。表にその結果の一
部を示す。各遷移の絶対周波数の決定は、400 nm 帯で遷移周波数が既知の Rb、Yb 原子の共鳴周波数で較
正された超低膨張エタロンの共鳴周波数と比較して行った。超低膨張エタロンは熱膨張係数が 0 になるよう
に温度コントロールされている。昨年の発
表:208PbO の B(1)状態の各振動準位についての分光定数。
表と比べ、最近報告された Yb 原子の共鳴
周波数の値を用いて[1]、超低膨張エタロン
の共鳴周波数の精度を約 4 MHz まで高め
て測定を行った。
v=3
v=5
v=6
[1] M. Kleinert et al., arXiv:1609.02218v1 (2016)
G (cm-1)
23639.41961(6)
24600.08451(8)
25070.6150(3)
Be (cm-1)
0.254403(6)
0.249421(4)
0.247230(10)
Bf (cm-1)
0.254513(10)
0.249509(3)
0.247327(2)
Ca-03
遠赤外領域での 15 NH3 分子の分光
富山大理
長草 裕志,山口 瑛真里,岡野 芳樹,藤田 瑞樹,山本 航平
森脇 喜紀,小林 かおり,松島 房和
Far-infrared spectroscopy of 15 NH3
Univ.of Toyama. Y.Nagakusa, E.Yamaguchi, Y,Okano, M.Hujita, K.Yamamoto
Y.Moriwaki, K.Kobayashi, F.Matsushima
NH3 分子は回転準位が反転振動運動になり 2 重項に分裂し、
2 重項間の遷移がマイクロ波領域にあるため、
電波分光により星間分子としての研究が進んできた[1]。 観測データから星間ガスの温度や光学的深さを求
めることができ、星間空間の物理状態をモニターするのに重要な分子である。同位体分子の 15 NH3 について
も 1979 年に星間空間で発見されている[2]。近年、電波天文の観測が遠赤外領域に拡張され、NH3 分子とその
同位体についても遠赤外域にある多数の回転遷移の精密な周波数データが必要となっている。そこで我々は、
Evenson 型の遠赤外分光計を用いて、実験室で 15NH3 分子の回
転遷移の精密な周波数測定を進めている。測定は、強度が強い
もの、周波数の高いものを優先的に選ぶようにし、これまでに、
1.7THz から 4.7THz までの範囲で 20 本以上測定した。図1は
1.8THz付近の比較的吸収強度の弱い(J=3,K=2,s)←(2,2,a)線の測
定例である。分子定数の改良には遷移強度の弱いΔK=3 の回転
遷移を検出するのが効果的であるので、今後はそれらの遷移の
検出と測定を進める。
[1] http://www.juen.ac.jp/lab/tosaki/kyouzai/radio/NH3/NH3.html#nature
[2] T. L. Wilson and T. Pauls, Astron. Astrophys. 73, L10–L12 (1979).
図1. 15NH 3((J=,3K=2,s)←(2,2,a)線(1次微分形)
Ca-04
液体 He 中でレーザーアブレーションによって生成された
超伝導微粒子の磁気トラップⅡ
富山大理, 福井大院工A, 阪大院基礎工 B
高橋佑太, 直井惇, 山口滉太, 松島房和, 熊倉光孝 A, 芦田昌明 B, 森脇喜紀
Magnetic Trapping of Superconductor Particles Produced by Laser Ablation in Liquid HeliumⅡ
Univ. of Toyama, Univ. of FukuiA, Osaka Univ.B
Y. Takahashi, J. Naoi, K. Yamaguchi, F. Matsushima, M. KumakuraA, M. AshidaB and Y. Moriwaki
超流動ヘリウム中で金属試料にレーザーアブレーションすることで原子やイオンのほか、線構造の物質や
球状の微粒子が生成されることが知られている。この時に作られる球状の微粒子については真球単結晶構造
であると分析されている[1]。我々は超流動ヘリウム中で生成した微粒子の超伝導性のサイズ依存性に興味を
持っている。
超伝導の反磁性を利用して微粒子を四重極磁場中にトラップすることが可能である。これを利用して微粒
子の超伝導転移温度を測定することができる。これまでの実験から、バルク状態の転移温度よりも低い温度
の粒子や、高い温度の粒子があることがわかった。この結果から微粒子の形状によって転移温度が変化して
いると考えている。今回は微粒子を生成する際にレーザーのパルス数を一発に抑えて金属試料のきれいな面
を狙ってアブレーションすることで複合粒子ができないようにして実験を行った。また、アブレーションで
生成される物質のうちトラップされた微粒子のみを取り出すことができた。これによりトラップ微粒子のサ
イズを測定することができる。今回は In と Re について、トラップされた微粒子の転移温度とサイズについ
て報告する。
[1] S. Okamoto, K. Inaba, T. Iida, H. Ishihara, S. Ichikawa, M. Ashida, Sci. Rep. 4, 5186 (2014).
重力波望遠鏡 KAGRA における
干渉計の補助ロックのためのグリーンレーザーの開発
Ca-05
富山大理,東大宇宙線研 A,産総研計測標準 B,国立天文台 C,東大理物 D,東工大 E,新潟
大工 F, 防衛大 G,東大工 H,Korea UnivI
蒲原尚吾,酒本春人,横川和也,松島房和,小林かおり,土井康平,森脇喜紀,川村静児 A,宮
川治 A,苔山圭以子 A,中野雅之 A,寺田総一 B,阿久津智忠 C,麻生洋一 C,上田暁俊 C,大
石奈緒子 C,道村唯太 D,宗宮健太郎 E,矢野和城 E,佐藤孝 F,大河正志 F,齊藤高大 F,志
賀和成 F,上原知幸 G,大前宣昭 H,TaiHyun YoonI
Development of green lasers system for auxiliary cavity lock of KAGRA
Toyama.U, ICRRA, AISTB, NAOJC, Phys.S.UTD, TITECE, Niigata.UF , NDAG , Appl. Phys. UTH ,Korea Univ. I
S. Kambara, H. Sakamoto, K. Yokogawa, F. Matsushima,K. Kobayashi,K. Doi, Y. Moriwaki, S. KawamuraA ,
O. MiyakawaA ,K. KokeyamaA ,M. NakanoA ,S. TeladaB ,T. AkutsuC ,Y. AsoC ,A. UedaC ,N. OhishiC ,
Y. MichimuraD ,K. SomiyaE ,K. YanoE ,T. SatoF ,M. OhkawaF ,T. SaitouF ,K. ShigaF ,T. UeharaG ,
N. OhmaeH ,Tai Hyun Yoon I.
大型低温重力波望遠鏡(KAGRA) は 3km の基線を持ち両腕に Fabry-Perot 共振器をもつ Dual Recycling
Fabry-Perot Michelson 干渉計である。両腕の Fabry-Perot 共振器と Michelson 干渉計、二つのパワーリサイクリ
ング共振器の計5つの共振器を順に主レーザーにロックしていく手順が考えられている。Michelson 干渉計の
lock では腕共振器と主レーザーをまず非共振状態にしておく。そのためにグリーンレーザーを補助レーザー
として使用し、腕共振器を主レーザーと非共振状態のところで lock する。グリーンレーザーの周波数安定化
するために主レーザーと補助レーザーでビートをとり PLL 制御を行う。
Ca-06
重力波観測に向けたレーザー強度安定化システムの開発Ⅲ
A
富山大理, 東大宇宙線研,B 産総研計測標準,C 国立天文台,
D
東大理物,E 東工大,F 新潟大工,G 防衛大,H 東大工,IKorea Univ.
杉本裕介,森脇喜紀, 松島房和,小林かおり,蒲原尚吾,古畑貴行,坂本春人,北澤秀昌,横川和也,岩田拓也,
川村静児 A,宮川治 A,苔山圭以子 A,中野雅之 A,寺田総一 B,阿久津智忠 C,麻生洋一 C,上田暁俊 C,
大石奈緒子 C,道村唯太 D,宗宮健太郎 E,矢野和城 E,佐藤孝 F,大河正志 F,齊藤高大 F,志賀和成 F,上原知幸 G,
大前宣昭 H,TaiHyun YoonI
Development of laser intensity stabilization system for the gravitational wave observationⅡ
Toyama.U,AICRR,BAIST,CNAOJ,DPhys.S.UT,ETITEC,FNiigata.U,GNDA,HAppl. Phys. UT ,I Korea Univ
Y. Sugimoto,F. Matsushima,Y. Moriwaki,K. Kobayashi, T. Kagawa,S. Kambara,M. Fujisawa,T. Furuhata,
S. KawamuraA,O. MiyakawaA,K. KokeyamaA,M. NakanoA,S. TeladaB,T. AkutsuC,Y. AsoC,A. UedaC,N. OhishiC,
Y. MichimuraD,K. SomiyaE,K. YanoE,T. SatoF,M. OhkawaF,T. SaitouF,K. ShigaF,T. UeharaG,N. OhmaeH,
Tai Hyun YoonI
Relative intensity noise[/Hz1/2]
0.0001
重力波望遠鏡 KAGRA では、重力波観測に向けた本格的な
運転が始まる baseline-KAGRA(bKAGRA)の 2017 年度中の完
1e-05
成に向けて作業が行われている。
↓安定化前の相対強度雑音
bKAGRA では、最終的に 200W 級という高出力のレーザー
の使用が予定されているため、レーザー強度の安定化が必要不
1e-06
可欠となる。本研究では音響光学素子(AOM)を用いた強度
安定化システムを構築し、レーザー強度の安定化を行っている。
1e-07
結果が図 1 である。図 1 ではフォトダイオードに入射した
143mW のレーザーの Relative intensity noise を 100Hz で 4.4×
1e-08
10-7Hz-1/2 から 1.1×10-8Hz-1/2 に抑えることに成功している。
↑安定化後の相対強度雑音
現在は、更なる安定化のため、電源ラインや配線、使用して
1e-09
10
100
1000
10000
いる回路の改善などを試みている。講演では現在までの成果に
Frequency [Hz]
ついて発表する。
図 1: 強度安定化前後の Laser の相対強度雑音
Ca-07
マイクロ波分光による新しいギ酸メチル励起状態の帰属の試みⅡ
富山大院理工, 金沢大自然 A, 金沢大 B
大山諒, 小林かおり, 藤竹正晴 A, 大橋信喜美 B
An attempt to assign the new excited state of methyl formate by microwave spectroscopyⅡ
Faculty of Science Univ. of Toyama, Grad.School of Natural Sci. and Tech., Kanazawa Univ.
Ryo Ohyama, Kaori Kobayashi, Masaharu Fujitake, Nobukimi Ohashi
ギ酸メチルに由来する回転スペクトル線はこれまでの電波天文の観測において数多く発見されてきた。特
に、大質量星のホットコア領域のような星形成場所で観測されている。近年では、中小質量の星形成の初期
段階においても、ギ酸メチルの存在が報告されており、今後も数多くの星形成場所での観測が期待される。
我々はマイクロ波分光を用いて、ギ酸メチル内のメチル基の内部回転(ねじれ振動、量子数を Vt とあらわす。
)
の第 2 励起状態までの帰属に成功した。この結果に基づき、星間空間の未同定線の中でギ酸メチルの励起状
態によるものが含まれている事を示してきた。今後の観測により、今まで見えなかった分子のラインが観測
されるようになれば、ギ酸メチルのまだ帰属されていない励起状態の観測が期待される。
一方、実験室で測定したギ酸メチルのスペクトル中には多数の未同定線が残っており、これらの由来とし
ては低い振動励起状態にあることが期待される。Vt=2 よりエネルギーの上の低い振動励起状態としては Vt=3
以上のねじれ振動、および skeletal torsion 励起状態か COC deform 励起状態と考えられる。これまでに金沢大
学で開発された帰属プログラムを用いて、約 300 cm-1 と 450 cm-1 程度高いエネルギー準位について、帰属に
成功したが、Ka=0, 1 の範囲に限られていた。本講演では研究の進歩状況について報告する。
Ca-08
1-アミノ-2-メチル-2-プロパノールのフーリエ変換マイクロ波分光
金沢大学
理工学域
山本健太郎,
藤竹正晴
Fourier transform microwave spectroscopy of 1-amino-2-methyl-2-propanol
College of Science and Engineering Kanazawa Univ. K.Yamamoto, M.Fujitake
1-アミノ-2-メチル-2-プロパノール(BMAE)は強い OH…N 分子内
水素結合を有しているといわれている。水溶液中ではこの分子内水
素結合と水分子との間の分子間水素結合との競争が起きていると期
待され、それを研究するために、我々は BMAE 水錯体のマイクロ波
スペクトルの観測を目指している。そこで今回はまず単量体の測定
を行った。量子化学計算により BMAE の最安定構造は図のような構
造であると予想されている。しかし C-N や C-O 周りの内部回転によ
り、他に 4 つの comformer が存在する。表には量子化学計算で求めた
各 comformer の回転定数 A,B,C、窒素原子核四重極子結合定数を示し
てある。
table1 BMAE の 5 つの comformer
パルス超音速ジェット・フーリエ変換マイク
1
2
3
4
5
ロ波分光計を用いて、純回転スペクトルの測定
A/MHz
4682 4636 4599 4584 4584
を行い、BMAE の 1 つの comformer の帰属と解
B/MHz
2701 2689 2658 2661 2661
析を行った。その結果、核四重極子結合定数の
C/MHz
2623 2640 2602 2599 2599
値から観測されたスペクトルが最安定構造で
χaa
2.23 2.65
-1.29 -1.28 2.65
ある comformer1 のものであることが確認され
χbb-χcc 6.01 -4.17 -1.41 -2.18 -2.12
た。実験と解析の詳細について報告する。
obs
4648.432
2677.698
2597.332
2.152
5.592
N-メチルアセトアミド-DOH,HOD 錯体の
超音速ジェット・フーリエ変換マイクロ波分光
Ca-09
金沢大 理工 A、金沢大院 自然 B
奥野 雅登 A、佐野 実穂 B、藤竹 正晴 B
Fourier transform microwave spectroscopy of N-methylacetamide-DOH and HOD complex
College of Science and Engineering Kanazawa Univ.A, Graduate School of Natural Science & Technology Kanazawa Univ.B
M.OkunoA, M.SanoB, M. FujitakeB
N-メチルアセトアミド(CH3-CONH-CH3 : NMA)は、ペプチド結合の
両端にメチル基を持つ分子であり、タンパク質の背骨となるペプチド鎖
のもっとも単純なモデル分子とみなすことができる。NMA に水分子が
配置することによる NMA-水錯体のメチル基内部ポテンシャル障壁の
D
高さ V3 の変化を実験的に調べている。
Table1. 決定した分子定数の一部
NMA-DOH
NMA-HOD
本研究では、水(H2O)
を DOH、HOD に同位体
図 1.NMA-DOH 錯体 CMe 型
A /MHz
6439.342(71)
6382.13(14)
B /MHz
1564.5169(55)
1525.257(11)
置換した NMA-DOH 錯体及び NMA-HOD 錯体の測定を行い、
C /MHz
1280.6496(12)
1252.2457(68)
内部回転ポテンシャルへの影響を調べた。パルス超音速ジェッ
|λ1a(N-Me)|
|λ2a(C-Me)|
0.573364(30)
0.566555(31)
ト・フーリエ変換マイクロ波分光器を用いて、水錯体の純回転
0.524102(57)
0.516671(86)
スペクトルを測定した。試料を高真空チャンバー内にパルス状
-1
V3,1(N-Me)/cm
87.12(17)
86.00(29)
で噴射し、超音速分子ジェットを生成し、9~25GHz の周波数
V3,2(C-Me)/cm-1
114.21(19)
116.55(33)
領域内で測定を行い、帰属した。PAM により決定した分子定
V12s /cm-1
r.m.s /MHz
-10.4(27)
0.00307
-26.7(40)
0.00222
数の一部を Table1 に示す。これらの実験、解析結果について
遷移数
Ca-10
268
222
詳細に報告する。
N-メチルアセトアミド-水錯体の溶媒同位体効果
金沢大院自然, 金沢大学・理工 A
佐野 実穂, 奥野 雅登 A, 藤竹 正晴
Solvent isotope effect of N-Methylacetamide-water complex
Grad. School Sci. & Tech. Kanazawa Univ., College of Sci. & Eng. Kanazawa Univ.A
M.Sano, M.OkunoA, M.Fujitake
Table1
V3(NMe)/cm-1
V3(CMe)/cm-1
NMA
単量体[1]
78.455(16)
76.6563(16)
NMA-H2O 錯体(normal)
CMe 型
NMe 型
84.94(12)
278.377(14)
111.54(13)
114.838(15)
V3 /cm-1
Fig.1: NMA-水錯体
N-メチルアセトアミド(CH3-CONH-CH3:NMA)はペプチド鎖の最小構成単位であ
NMe 型
る。我々は水分子が配位することによる NMA のメチル基内部回転ポテンシャル障壁
の高さ V3 の変化を実験的に調べている。これまでの研究で NMA-H2O 錯体の配位構造
H
の異なる 2 種類の錯体(CMe 型, NMe 型 Fig.1)の測定と帰属を行った。その V3 の値は
N C
Table1 に示す。 一方、重水はペプチド鎖の高次構造形成に異常をきたし、生体機能
O
の発現を阻止することが知られている。この溶媒同位体効果が NMA 分子のメチル基
内部回転に与える影響について明らかにするため、本研究
では NMA-D2O 錯体(CMe 型, NMe 型)の測定と解析を行っ
Fig.2: normal からの変化量
た。また、同様に水分子の同位体置換を行った分子
14
(NMA-H218O 錯体, NMA-DOH 錯体, NMA-HOD 錯体)も合
V3(NMe) V3(CMe)
12
わせて V3 の変化量の比較を行った(Fig.2)
。同位体置換に
10
よる錯体振動モードの変化が V3 に与える影響について、
8
考察を含め報告する。
6
4
2
0
-2
H218O
D2O DOH HOD
CMe 型
[1]N.Ohashi, J.T.Hougen, R.D.Suenram, F.J.Lovas, Y.Kawashima, M.Fujitake, J.Pyka, J.Mol.Spec. 227(2004) 28-42
H218O D2O
NMe 型
Ca-11
超音速ジェット-フーリエ変換マイクロ波分光法のためのスリットノズルの改良
金沢大学 理工
吉田啓悟, 藤竹正晴
Improvement of slit nozzle for the supersonic jet Fourier transform microwave spectroscopy
College of Science and Engineering Kanazawa Univ.
K.Yoshida, M.Fujitake
我々の研究室では複数の水が配位した錯体を測定するために、スリットノズルの作製を
行っており、以前、入口と出口の面積を同じにしたスリットノズルを作製したが、その間
の断面積が一定ではなかった。スリットの断面積を一定にすることに効果があるのかを確
かめるためにスリットノズルの改良を行った。スリットノズルは金沢大学の技術支援セン
ターでアルミニウム合金を用いて作成してもらった。スリットノズルの性能を評価するた 図 1 スリット内部の
断面
めに、比較的強いスペクトルを観察できる高クラスター
強度の比較
の水ヘキサマーの測定を行い、以前作られたスリットノ
ズルとの比較を行った。
新型
水ヘキサマーのスペクトルを測定し、新型と旧型のノ
が右のグラフである。強度が約 2 倍に強くなっている。
旧型
図 2 入 口 (縦 :0.8mm
横 0.8mm 正方形)
強度
ズルの一番良い条件のスペクトルの強度を比較したもの
このことにより、ノズルの断面積を一定にすることはス
ペクトルの強度を強くすることに効果があるということ
がわかる。発表では、これらの実験、スリットの詳細など
周波数(MHz)
について報告する。
Cp-01
13086.4 13086.5 13086.6 13086.7
図 3 出口 (縦:0.177mm
横:3.62mm 長方形)
DAST 結晶を用いたテラヘルツ波のヘテロダイン電気光学サンプリング
加藤 博之1, 北原 英明1, 後藤 大輝1, 安本 拓朗 1, 山本 晃司1, 古屋 岳1, 野竹 孝志2,
南出 泰亜2, マイケル・バクノフ3, 谷 正彦1
1
福井大学遠赤センター, 2理化学研究所, 3ニジーニノブゴロド大学
Heterodyne electro-optic sampling of the THz waves with DAST crystal
Hiroyuki Kato1, Hideaki Kitahara1, Daiki Goto1, Takuro Yasumoto1, Kohji Yamamoto1, Takashi Furuya1,
Takashi Notake2, Hiroaki Minamide2, Michael. Bakunov3, Masahiko Tani1
1
FIR UF, 2RIKEN, 3Univ. Nizhny Novgorod
Δ
I/I×10-4
我々の研究グループではテラヘルツ(THz)波の電気光学サンプリング(EOS)における Cherenkov 位相整
合の有効性を確認[1]し、プローブ光の位相遅延ではなく、強度変化を直接検出するヘテロダイン EOS[2]を提
案、実証してきた。EOS では、非線形光学結晶の持つ EO 係数が検出感度に決定的な影響を与える。そのた
めこれまでヘテロダイン EOS では EO 係数が大きなニオブ酸リチウム(LiNbO3:LN, r33~31 pm/V)結晶が主に
用いられてきた。今回はさらに検出感度をあげるため LN 結晶よりも大きな EO 係数(r11~47 pm/[email protected] µm)
を持つ有機光学非線形結晶の DAST 結晶を用いてヘテ
1.0
ロダイン EOS の実現を試みた。プローブ光に中心波長
0.5
1.56 µm, パルス幅 100 fs のレーザーパルス光を、エミ
0.0
ッタにスパイラルアンテナを用いて検出を行った。観
測された THz 波の時間波形が図 1 である。EO 信号の
-0.5
変調度∆𝐼 ⁄𝐼 は 1×10−4 以上が得られた。講演では空間
-1.0
結合素子として Si プリズムを使用した場合での結果
10
15
20
25
30
35
40
も報告する。
Time(ps)
図1. DAST結晶を用いたヘテロダインEOSによるTHz時間波形
[1] M. Tani, et al, Opt. Exp. 19, 19901 (2011).
[2] M. Tani, et al, Opt. Exp. 21, 927 (2013).
Cp-02
THz 帯偏光分光のための 2 層フリースタンディングワイヤーグリッドの研究
長田 聡 1,古屋 岳 1,北原 英明 1,山本 晃司 1,菜嶋 茂喜 2,谷 正彦 1
1
福井大遠赤セ,2 大阪市立大
A study of bilayer free-standing wire grid for the THz band polarization spectroscopy
Satoshi Nagata1, Takashi Furuya1, Hideaki Kitahara1, Kohji Yamamoto1, Shigeki Nashima2, Masahiko Tani1
1
FIR UF, 2Osaka City University
Extinction Ratio
テラヘルツ波の発生,検出技術の発展に伴い円二色性分光や偏光イメージングなどへの応用が試みられて
いる.一方で,偏光分光に使用する THz 帯の偏光子はワイヤーグリッドが一般的であるが,可視光領域の偏
光子に比べて消光比の性能が 2 桁以上低く十分ではない.消光比の向上にはワイヤーグリッドを重ねたもの
を用いると有効であるが,挿入損失が大きくなる問題がある.近年,可視光領域において 2 枚のワイヤーグ
リッドをワイヤーが互い違いになるよう配置することで挿入損失を抑え,消光比を向上させることが可能で
あることが報告されている[1]
.本研究では 2 層のフリース
①
1
タンディングワイヤーグリッドの最適構造パラメータを決
②
0.1
③
めることを目的として 2 層ワイヤーグリッドを設計・試作し,
0.01
テラヘルツ帯での消光比をシミュレーション計算と実験に
1E-3
1E-4
より評価した.ワイヤー径 200 μm,ワイヤー間隔 500 μm の
1E-5
完全導体ワイヤーグリッドを積層間隔 300 μm で配置したシ
1E-6
③ワイヤー互い違い2層配置
ミュレーション結果を図に示す.図から分かるように互い違
1E-7
第1層
1E-8
いのワイヤーグリッド 2 層配置の方がワイヤーグリッド 1 層
第2層
1E-9
の場合,および同一周期で 2 層配置した場合に比べ,600 GHz
0
100
200
300
400
500
600
までのすべての領域で消光比が向上した.試作したワイヤー
Frequency [GHz]
グリッドの実験的評価については講演で報告する.
図 シミュレーション結果:①ワイヤーグリッド1
[1] Y. Ekinci et al. Opt. Express, 14, 2323 (2006)
層,②ワイヤー同一周期 2 層,③ワイヤー互い違い
2 層配置
Cp-03
ハロゲン化合物水溶液の THz 時間領域コヒーレントラマン分光法
林 昌治 1, 中江 瞬 1, Stefan Funkner2, 北原 英明 1,古屋 岳 1,山本 晃司 1,谷 正彦 1
1 福井大遠赤セ,2 カールスルーエ工科大学
THz Time Domain Coherent Raman Spectroscopy of Halogen Compound Liquids
Shoji Hayashi1, Shun Nakae1, Stefan Funkner2, Hideaki Kitaraha1, Takashi Furuya1, Kohji Yamamoto1,
Masahiko Tani1
1FIR-FU, 2Karlsruhe Institute of Technology
Delay Time (ps)
-4
Signal Intensity (arb. unit)
我々はフェムト秒レーザーを励起光源に用いて THz
帯(0.1 THz ~ 10 THz)のコヒーレントラマン信号を時間
領域で観測する分光法[1]の研究を行っている。本実験で
は、フェムト秒レーザーパルスをピコ秒までパルス伸長
させた 2 つの励起光を試料中で交差させて差周波光ビー
トを発生させ、励起光の強度変化を検出器で検出してい
る。測定試料としてハロゲン化合物である ZnBr2 水溶液
と CuCl2 水溶液をそれぞれ 0.5 M, 1 M, 2 M, 3 M, 4 M
の濃度で偏光測定を行った。水溶液中では Zn2+あるいは
Cu2+ が水分子との水和により錯イオンを形成している
と考えられる[2]。右図は本実験で得られた濃度[4 M]に
おける ZnBr2 水溶液のラマンスペクトルである。2 つの
励起光の偏光が直交する(90 度)場合は,全体的にスペ
クトル強度が低下し,平行(0 度)な場合に観測されて
いた±5 THz 付近のラマンピークが消失している。講演
では ZnBr2 水溶液のほかに CuCl2 水溶液での結果につい
ても併せて報告する。
[1] Tani et al, Appl. Phys. Express, 3, 072401 (2010)
[2] V. Sharma, Ph.D. thesis, Ruhr-Universitaet Bochum, Germany (2013).
-2
0
2
4
0°
90°
2
0
-2
-20
-10
0
10
20
Frequency (THz)
図: ZnBr2 水溶液[4M]のラマンスペクトル
Cp-04
CdSe 半導体量子ドットの蛍光スペクトルに対する溶媒効果
ナノ粒子の物性は,溶液やマトリックス中,あ
るいは固体表面上で測定されることが一般的で,
周囲の環境に大きく影響されていると考えられ
ている.我々は,この外的要因を低減するため,
噴霧器によってナノ粒子を含む液滴を発生させ,
この液滴から溶媒を蒸発させることによって,ナ
ノ粒子を気相中に孤立して分散させることを試
みている.本研究では CdSe 半導体量子ドット
(Aldrich 社 Lumidot 640)を対象に,液滴の発生
と蒸発に適した溶媒を調べるため,比較的常温で
の蒸気圧が高い7種類の溶媒について,量子ドッ
トの蛍光スペクトルに対する影響を調べた.その
結果,溶媒によって蛍光強度や蛍光スペクトルの
ピーク波長が異なることや,図に示すように,そ
れらが時間とともに変化することが分かった.ま
た,溶媒による量子ドットの希釈度によっても,
これらに違いが生じることも確認された.講演で
は,これらの溶媒効果の詳細について報告すると
ともに,量子ドットの気相中への分散に適した溶
媒について議論する.
Cp-05
Peak Intensity (arb.units)
福井大工 木南 安寿花,杉原 隆一,馬場 宥太,守安 毅,熊倉 光孝
Solvent Effects on Flourescence Spectra of CdSe Quantum Dots
Fac. of Eng., Univ. of Fukui
A. Kinan, R. Sugihara, Y. Baba, T. Moriyasu, and M. Kumakura
Time (hour)
図.蛍光スペクトルのピーク強度の時間変化
運動負荷が胃の電気活動に及ぼす影響
福井大工 寺西 康平 平田 隆幸 高田 宗樹
The effect of exercise load on the Electrogastrogram
Fac. Of Eng., Univ. of Fukui
K.Teranishi, T.Hirata, H.Takada
日本人の死因としてがんが占める割合は最も多く、中でも胃癌の発症件数は肺癌に次いで 2
番目に位置する。2011 年、国立がん研究センターにより公開された「がんを防ぐための新 12
か条」では、1 日の身体活動量が多い人ほどがん全体の発症リスクが低いとされており、運動は
がんの予防策の 1 つとして有効である。一方、胃の電気活動を経皮的に計測する手法として胃
電図が知られている。胃・腸管の機能はそれを支配する交
感神経および副交感神経と、消化管内に存在する壁内神経
叢によって調節されており、先行研究では、座位から仰臥
位への姿勢変化時に、副交感神経の亢進に伴って胃の電気
活動が変化する。そこで本研究では、運動が消化管運動に
及ぼす影響を定量化することを目的とした。
10METs,110Kcal 程度のランニングを運動負荷とし、対照
実験と比較した (Fig. 1)。運動負荷の前後での胃電図の比
較により、運動が消化管運動に及ぼす影響について議論する。
Fig. 1 胃の電気活動の典型例
Cp-06
睡眠遮断時における座位重心動揺の数値解析
福井大工
川崎
真平、
平田 隆幸、
高田 宗樹
Numerical Analysis of Sitting Body Sway during Sleep Deprivation
Fac. of Eng., Univ. of Fukui
S. Kawasaki, T. Hirata, H. Takada
近年、夜勤労働などによってやむを得ず睡眠不足になり、生理的機能の低下した状態で労働事故が生じた場合、労働
者の不注意ばかりが強調される。しかし、睡眠不足による労働者の生理的機能の低下を無視し、不注意ばかりを誇張す
ることは事故予防に対して不十分である。本研究では、睡眠遮断と生理的機能の関連に着目し、随伴陰性変動(CNV)
が減衰した潜在意識下における体平衡機能の働きを明らかにするため、睡眠遮断時における体平衡機能に関する計測を
行った。CNV は覚醒水準の上昇に伴って高くなる。先行研究では睡眠遮断を行った際に CNV が低下し、睡眠遮断から
24 時間後に最小値を記録すると報告がある。
体平衡機能検査の一つとして施行される重心動揺検査は、姿勢の安定性や中枢の疾患による平衡機能障害の診断など
平衡機能の総合的評価に有効である。重心動揺検査は立位姿勢が安定した時点から記録を開始し、開眼・閉眼を連続し
て各々60 秒を基準とする簡易検査である。重心動揺の診断的価値を高める目的で、動揺図の解析指標が提案されてお
り、総軌跡長、外周面積、単位面積軌跡長などがある。
CNV と重心動揺は短時間かつ断続的な同時計測が困難であることから、フリッカー値、スタンフォード眠気尺度を同
時計測することで CNV が減衰することの傍証を得る。また、本研究では座位姿勢時における重心動揺検査で得られた
時系列データに基づき数理モデルを構築し、その数値解析を行った。
Cp-07
金沢大自然
進行波励起ドライバーの作成
宮坂 風輝,西崎 茜, 柳原 悠人, 向出 俊央, 重 翔馬, 佐藤 政行
Making Traveling-Wave Excitation Driver
Kanazawa Univ.
K. Miyasaka, A. Nishizaki, Y. Yanagihara, T. Mukaide, S. Shige, M. Sato
非線形性と格子性の組み合わせで局在するエネルギー励起が安定に存在することは長く知られてきた。
これらは非線形局在励起、discrete breather と呼ばれる。当研究室では局在励起を MEMS マイクロカンチレ
バーアレイ試料で走行させる研究を行っている。
非線形性が調整できるリング状のカンチレバーアレイ(図参照)を作成し実験で走行する局在励起ができ
ることを目指す。また、リング状にすることで周期境界条件を課すことが出来る。
この研究を行うに当たって、リング状のカンチレ
バーアレイを励起させる進行波励起ドライバーが
必要となる。円周に 100 個程度のカンチレバーが
配置されており、理想的には、各サイト(n)のカ
ンチレバー振動子に励起電圧 Vn  A sin(kn   t )
を与えることで進行波励起を行う(図参照)。しか
し、実際にサイトごとに位相がずれた sin 波を与
えることは容易ではないため、sin 波を矩形波とし
て表すことでその問題点を解決しようと試みた。
矩形波を用いることにより、デジタル回路を用い
たドライバーの設計が可能になり、位相を制御す
ることが容易になる。今回は VHDL(ハードウェア
記述言語)を用いたデジタル回路の作成を行った。
本公演では今回作成したデジタル回路の詳細を
報告する。
図. カンチレバーアレイと進行波励起の概略図
Da-01
イオン風の発生原理についての研究
富山大
伊東 大志,
杉本良介,
三輪 悠生
A study on the principle of generation of ion wind
Fac of Sci., Univ. of Toyama
T.Ito,
R.Sugimoto,
H.Miwa
図のようなアルミ箔と細い針金から成る非対称な形状の電極に空気中で十数 kV 程度の高電圧を印加する
と、針金側からアルミ箔側に向かって気流が生じる。この現象はイオン風として知られている。イオン風に
よる推進力を利用すると電極全体を UFO のように浮上させることができる。これはイオンクラフトまたはリ
フターと呼ばれており、動画サイトなどで多く取り上げられている。しかし、イオンクラフトの製作方法に
ついての文献は多いが、イオン風が発生する原理について説明されている文献は見つけることができなかっ
た。そこで、我々は非対称電極から気流が発生するメカニズムについて研究することにした。様々な形状の
電極で実験を行った結果、気流が発生する要因として何らかの電離作用で空気からイオンが生成され、発生
したイオンが電場で加速され、空気中の分子と衝突し運動量を
与えている可能性が高いことがわかった。また、針金側の電極周
辺にコロナ放電と呼ばれる放電特有の発光を確認することがで
きた。コロナ放電は電離作用を持つことが知られており、この現
象がイオンの生成に関与している可能性が考えられる。今後は
さらに条件を変え、例えばコロナ放電以外でイオンを発生させ
た場合などについて調べることでイオン風の発生原理をより明
図: 非対称電極からの気流の発生
らかにする予定である。
Da-02
宇宙プラズマ中の両方向伝搬磁気流体波による荷電粒子の加速
富山大学人発
南部 哲弘、成行
泰裕
Particle Acceleration in bi-directional Magnetohydrodynamic Waves in space plasmas
Fac. of Human development., Univ. of Toyama
T. Nambu and Y. Nariyuki
本研究では荷電粒子に両方向から磁気流体波を与え、その後の加速運動を数値シミュレーションを
用いて解析した。先行研究[1]では同じ振幅を持つ両方向伝搬波動を与えていたが、本研究ではそれぞ
れの波の振幅が異なる場合を考えた。ここでは、一方向伝搬の波動から逆方向伝搬の波動が励起され
る過程を模擬し、それぞれの磁気流体波の振幅は時間変化に合わせて変化していくものとした。具体
的には、両方向伝搬する磁気流体波の波長 1 つ分の長さに荷電粒子を 1000 個均等に並べ𝑡 =200(Δ𝑡
=0.00001)までの加速運動の様子を運動方程式を4次のルンゲ
クッタ法で解くことでシミュレーションした。初期条件は、アル
ヴェン的な平衡点で与えている。右の図Aは𝑥軸正方向に伝搬す
徐々に強めていったとき(𝑡 =200)のグラフである。ここで
𝑉𝑥
る波を時間とともに徐々に弱め、𝑥軸負方向に伝搬する波を
は、𝑡 =0 で𝑉𝑥 =0 であったものが、𝑡 =200 のときは𝑥軸正負方
向ともに荷電粒子が加速していることがわかる。本講演では、そ
の他の条件や垂直方向の加速運動についても紹介したい。
[1]S. Matsukiyo and T. Hada, ApJ 692 1004 (2009).
𝑥
図A 𝑡=200 の𝑥 − 𝑉𝑥 グラフ
Da-03
カスプ磁場への電子ビーム入射に伴うプラズマ生成と
単粒子の軌道計算による評価
金沢大, 日本工大 A, 帝京大 B
塚原信也, 小谷野開, 田澤尚賢, 中田健斗
安藤利得, 佐藤杉弥 A, 飽本一裕 B
Plasma production by the electron beam injection into a cusp magnetic field and,
Evaluation by the orbital calculation of the single particle.
Kanazawa University, Nippon Institute of TechnologyA, Teikyo UniversityB
Shinya TSUKAHARA, Haruki KOYANO, Takatoshi TAZAWA, Kento NAKADA
Ritoku ANDO, Sugiya SATOA, Kazuhiro AKIMOTOB
私たちは、カスプ磁場におけるプラズマの基本的振る舞いを実験的観点から考察すべく、極カスプ模擬実
験を行っている。実験装置には JAXA の高密度磁化プラズマ発生装置(図1)を用いており、チャンバー周
囲には Main Coils と Assist Coil がそれぞれ独立で設置されている。Main Coils と Assist Coil には、お互いに逆
方向の電流を流す事で、カスプ磁場の環境を形成す
る事ができる。ここに、電子ビームを入射する事で
中性ガスを電離し、プラズマを生成する事ができる。
電子ビームを入射する際の初期条件で、カスプ磁場
における電子ビームの運動は大きく変化する。よっ
て、プラズマの振る舞いを詳しく知る為には、電子
銃から出る電子ビームの軌道を知る事が必須であ
ると考えている。今回、単粒子の軌道計算プログラ
ムを作成して、電子軌道の計算を行った。理論的背
景を含め生成したプラズマに対する考察を報告する。
図 1 高密度磁化プラズマ発生装置
Da-04
純電子プラズマで形成される渦結晶の統計力学的温度
金沢大自然
本田 真夢,曽我 之泰
Temperature in a statistical physics of vortex crystal states in a pure electron plasma
Kanazawa Univ.
M.honda, Y.soga
当研究室では Malmberg-Penning Trap を用いて、円筒境界内に生成した純電子プラズマの渦糸の時間発展を
追跡している。強磁場に閉じ込められた電子群の磁場断面内における 2 次元運動は、理想流体における渦糸
の 2 次元運動と等価であると近似できる。渦糸系の自己組織化現象である、純電子プラズマの渦結晶形成の
物理機構を統計力学的な負温度と関連づけて検証を行いたい。
長距離相関をもつ渦糸系に対する負温度状態の概念は Onsager によって提唱された[1]。有限領域に閉じ込め
られた点渦の二次元分布は、位相空間における分布と一致する。そのためエネルギーが大きくなるほど状態
数が少なくなる領域、つまり統計力学的温度が負となる領域が存在することが予想される。これまで負温度
状態を有する点渦系については、正負同数の循環を持つ点渦系についてのシミュレーションなどが報告され
ている[2]。本研究では、電子のみで形成される渦糸系と対応させるために、同符号のみの循環を有する渦糸
についてモンテカルロシミュレーションを行った。等重率の原理に基づいて、N 個の同符号の点渦をランダ
ムにばらまき系のエネルギーを計算する試行を 10^4 回行い、渦糸系の状態数 W のエネルギー依存性を計算
した。その結果、点渦の個数 N=2~100 の領域において、統計力学的温度が負の領域が存在することを確認し、
任意の点渦の配置における系の温度を見積もることができた。
また、当研究室の装置では純電子プラズマの渦糸系の時間発展を ccd カメラで撮影した密度分布画像と、
電子数測定回路で測定した電子数でモニターしている。粒子数 N=10^7~8 のオーダーを持つ実験系を、N~100
のシミュレーション結果と対応づけるため、総粒子数で規格化したエネルギーを実験画像から計算し比較す
ることで統計力学的温度の大小を見積もり、各渦結晶配位と温度の関連について考察した。
[1] L. Onsager, Nuovo Cimento Suppl. 6 (1949) 279.
[2] Y. Yatsuyanagi,et al.,Phys. Rev. Lett. 94(2005) 054502.
Da-05 二重同軸ガラス管を用いた大気圧プラズマジェットのプラズマバレット特性評価
富山大学
三谷 哲太,岡田 一樹,大橋 隼人,伊藤 弘昭
The characterization of plasma bullets in
atmospheric pressure plasma jet using a double coaxial glass tube
University of Toyama
T. Mitani, K. Okada, H. Ohashi, H. Ito
大気圧プラズマジェットは、医療分野への応用や表面処理・表面改質等の材料分野への応用が期待されて
いる。本研究では、二重同軸ガラス管構造の大気圧プラズマジェット装置を開発し、二種類の気体を層状に
流してから合流させることによるぺニング効果を利用して、効率良く外側のガスを電離させて活性種やイオ
ン種を生成させている。しかし、大気圧プラズマの物理的特性は未だ評価段階にある。本研究では、大気圧
プラズマジェットの物理的特性を知る上でプラズマバレットの評価を行った。プラズマバレットとは、ガス
がプラズマ化するとガス流速よりも高速にプラズマ領域
が弾丸のようにガス中を進展することからプラズマバレ
ットと呼ばれており、今回はその進展の様子をゲート付
ICCD カメラを用いてガラス管の側面方向から撮影した。
図(a)に二重同軸ガラス管構造断面の概略図を示す。内側の
ガラス管は銅電極のスパッタリングを防ぐものであり、内
側のガラス管と中間のガラス管の間にはプラズマを発生
させるための Ar ガスまたは He ガスを流す。外側のガラ
ス管の内側には N2 ガスを流した。図(b)は ICCD カメラを
用い露光時間 50 ns で撮影した写真であり、白く進展して
いるところがプラズマバレットである。銅電極-真鍮間に
電圧 8 kV、周波数 20 kHz の正弦波を印加してバリア放電
図(a) 二重同軸ガラス管構造の断面図
を起こしプラズマジェットを生成している。特性評価の詳
図(b) プラズマバレット撮影例
細については講演にて発表する。
Da-06
仮想陰極発振器から放射されるマイクロ波電力の評価
富山大学
丹羽 郁弥,寺前 元裕,中村 吏,大橋 隼人,伊藤 弘昭
Evaluation of output microwave power emitted from virtual cathode oscillator
Univ. of Toyama
F. Niwa, M. Teramae, T. Nakamura, H. Ohasi, H. Ito
仮想陰極発振器とは相対論電子ビームでの空間電荷効果により形成される仮想陰極の振動と電子ビームの
往復運動によりマイクロ波を発生させる装置である。他のマイクロ波発生装置であるジャイラトロンやクラ
イストロンに比べ構造が簡単で、数十 MW から数 GW の高出力のマイクロ波発生が可能である。一方、マイ
クロ波変換効率が低いという問題点があり、効率の改善が必要である。これまで共振器を組み込むなど効率
改善を目指し実験を行ってきたが、出力マイクロ波の電力評価はできていなかった。本研究ではカロリーメ
ータを用いてマイクロ波の出力電力の測定・評価を行った。陰極(カソード)には直径 60 mm のソリッド型
のアルミニウム、陽極(アノード)には開口率 64.5 %のステンレスメッシュを用いた。カロリーメータはマ
イクロ波吸収体であるカーボンに(直径 100 mm、厚さ
0.6 mm)、と温度測定用の K 熱電対(アルメル-クロメル)
から成る。マイクロ波電力は吸収体であるカーボンの温度
上昇から測定評価を行う。図1はマルクス発生器の出力電
圧が 384 kV、アノード‐カソード間 12 mm の典型的な出
力波形である。ダイオード電流はロゴスキーコイルで、ダ
イオード電圧は硫酸銅抵抗分圧器で測定した。発生したマ
イクロ波は方形導波管からマイクロ波ケーブルとクリス
タル検波器を通しオシロスコープで計測した。この条件で
マイクロ波をカロリーメータで計測した結果、60 MW の
電力が得られた。マイクロ波電力のアノード‐カソード間
図1: 仮想陰極発振器の典型的な出力波形
距離依存性等を評価したので講演にて発表する。
Da-07
Gyrotron FU CW XA における二次高調波発振モードの発振特性
前田悠斗,飯澤萌,高山京也,福成雅史,山口裕資,立松芳典,斉藤輝雄
福井大学 遠赤外領域開発研究センター
Operational characteristics of a frequency-tunable Gyrotron FU CW XA
Y. Maeda, M. Iizawa, K. Takayama, M. Fukunari, Y. Yamaguchi, Y. Tatematsu and T. Saito
Research Center for Development of Far-Infrared Region, University of Fukui
福井大学において,二次高調波サブテラヘルツ帯周波数連続可変性を有するジャイ
ロトロン FU CW XA(以下 FU CW XA)を開発中である.これまで,TE8,5 モードの二
次高調波発振を狙った実験において,基本波との競合に起因する,設計とは異なる発
振を観測した.また,Cathode―Anode 間電圧 VKA を大きくしたとき,TE8,5 モードでの
周波数可変幅が広がる傾向があることを確認した.
本研究では,発振の影響が大きい磁場強度 B および VKA に着目し,TE8,5 モードが安
図 1 VKA = 8.5 kV 時の
定に発振する運転領域を調べた.
放射パターン
赤外線カメラを用いて,出力窓からの放射パターンを測定し,この発振が TE8,5 モー
ドであると確認した.図 1,2 に B = 7.150 T での放射パターンの測定例を示す.図 1 は
VKA = 8.5 kV,図 2 は VKA = 8.0 kV での結果である.図 1 では方位角方向に 16 の強度ピ
ークをもつ特徴的なパターンが見られ,TE8,5 の発振を確認できたのに対し,図 2 では
TE8,5 モードとは異なったパターンが得られ,TE8,5 モードの発振があると断定できな
い.そこで,同時にヘテロダイン法による周波数測定を行い,TE8,5 モードに値する周
波数が発振されているかどうか確認した.
このように B および VKA を様々に変化させ,放射パターン測定と周波数測定を組み
図 2 VKA = 8.0 kV 時の
合わせることで,B および VKA に対する TE8,5 モードの安定発振領域を実験的に調べ
放射パターン
た.
Da-08
Gyrotron FU CW XA における複数の基本波モード周波数連続可変
飯澤萌,高山京也,前田悠斗,福成雅史,山口裕資,立松芳典,斉藤輝雄
福井大学 遠赤外領域開発研究センター
Frequency tuning with different cavity modes in Gyrotron FU CW XA
M. Iizawa, K. Takayama, Y. Maeda, M. Fukunari, Y. Yamaguchi, Y. Tatematsu, T. Saito
Research Center for Development of Far-Infrared Region, University of Fukui
Frequency [GHz]
Frequency [GHz]
福井大学において、周波数連続可変機能を付加したジャイロトロンの研究を進めている。本研究で
は、Gyrotron FU CW XA (以下 FU CW XA) を使用し、一つのジャイロトロンで共振器内の複数の基本
波モードに対し、発振周波数の連続可変性を調べた。
図 1、2 は、それぞれ出力窓から放出された TE1,4 モード・TE1,3 モードの発振周波数 f を、ヘテロダ
イン検波により測定した結果である。ここで、B は共振器内の磁場強度、VK はカソード電圧、VA はア
ノード電圧、IC はコレクタ電流である。B を変化させることで、TE1,4 モードに対しては約 6 GHz、TE1,3
モードに対しては約 2.8 GHz に及ぶ周
195
140
波数の変化を観測した。また、図中の
VK=-15 kV
VK=-15 kV
VA=-8.5 kV
VA=-6.42 kV
直線はサイクロトロン周波数 fc であ
193 Ic=400 mA
139 Ic=400 mA
り、 f < fc での周波数の連続変化
191
138
fc
fc
は、ジャイロ後進波発振機構の特徴で
ある。これらに加えて TE1,2 モード,
189
137
TE3,3 モードでも同様の周波数の変化
187
136
が見られた。このように、FU CW XA
において複数の基本波モードで発振周
185
135
6.8
7
7.2
4.9
5
5.1
5.2
波数が連続可変することが示された。
B [T]
B [T]
講演では、測定結果の詳細と出力の評 図1.TE14モードの周波数測定結果 図2.TE13モードの周波数測定結果
価の報告を行う。
Da-09
電磁波焼結法を用いた高圧下 ESR 用アルミナセラミックスの開発
A 福井大学遠赤外領域開発研究センター,B 神戸大学研究基盤センター
蟹江良尚 A, 西脇 拓生 A,光藤 誠太郎 A, 櫻井敬博 B
Electromagnetic wave sintering of alumina ceramics cell for high-pressure ESR measurements
A Research
B
Center for Development of Far-Infrared Region, University of Fukui
Center for Supports to Research and Education Activities, Kobe University
Y. Kanie A, T. Nishiwaki A, S. Mitsudo A, T. Sakurai B
ジュイロトロン応用の一つとして, その高出力電磁波のエネルギー利用があげられる。これ
までにジャイロトロンを用いた電磁波焼結法により, 低温での緻密化効果などの電磁波焼
結特有の効果により、高い硬度と破壊靭性値を有するセラミックスが実現できることを示
してきた。一方, 強磁場・低温・高圧下の多重極限での高周波電子スピン共鳴(ESR)装置の
開発が進められている。ここでは、圧力セルの構造材料としてミリ波・サブミリ波領域で
電磁波の減衰が少なく、高い硬度と靭性値を持ったセラミックス材料の開発が期待されて
いる。圧力セルのピストン材料としてアルミナセラミックスは, 高硬度でミリ波・サブミリ
波帯の透過性能が高く有力な材料であるが, 靭性値は極めて低い。しかし, 靭性値はセラミ
ックスの粒径を小さくしていくことで, 応力ひずみを分散し, 亀裂の進展を妨げることで
靭性値を高めることができる。本研究では, 28 GHz 電磁波焼結法の特殊効果を用い、高い硬
度と靭性値およびミリ波透過性能を持つアルミナセラミックスの焼結条件の検討を行い、
焼結を行った。さらに, 焼結体の特性として密度や機械的特性等の測定を行い圧力セルへの
適応性について議論を行った。
Dp-01
二次高調波多周波数ガウスビーム出力ジャイロトロンの実現に向けた
二次高調波モード発振実験
高山京也、飯澤萌、前田悠斗、福成雅史、山口裕資、立松芳典、斉藤輝雄
福井大学 遠赤外領域開発研究センター
Second harmonic mode oscillation experiment for the realization of a second harmonic multi-frequency
Gaussian beam output gyrotron
K. Takayama, M. Iizawa, Y. Maeda, M. Fukunari, Y. Yamaguchi, Y. Tatematsu and T. Saito
Research Center for Development of Far-Infrared Region, University of Fukui
測定周波数(GHz)
福井大学遠赤外領域開発研究センターでは、二次高調波多周波数ガウスビーム出力ジャイロトロンの
開発を計画している。このようなジャイロトロンの実現には、1 つのモード変換器でガウスビームに変
換できる複数の二次高調波モードを選ぶ必要がある。その二
TE85
次高調波モードの候補として表 1 の 9 つのモードを選択し
450
た。本研究では、二次高調波サブテラヘルツ帯直線型ジャイ
TE75
ロトロン (Gyrotron FU CW XB)を用いて、上記の候補モー
TE65
ドが実際に発振するかどうかを調べた。
400
共振器の磁場強度を変えて、窓から放出される電磁波の周
TE55
波数を測定した。二次高調波の各モードの cold cavity 周波数
TE56
を計算しておき、測定周波数の値と最も近い計算周波数の値
TE64
350
を横軸に、測定周波数を縦軸にプロットした(図 1)。図 1 でプ
ロット点が傾き 1 の直線上に乗っているモードは、候補とし
TE44
てあげた 9 つのモードの 1 つであることを示している。9 つ
300
のモードの内、直線から 2~3GHz ずれている TE75,TE45 モ
ードを除いた 7 つの二次高調波モードについては、実際に発
TE45
振することを確認した。
TE54
表1.次期ジャイロトロン発振モードの候補
TE85 TE56 TE75 TE65 TE55 TE45 TE64 TE54 TE44
250
250
300
350
400
cold cavity周波数(GHz)
450
図1. cold cavity周波数に対する測定周波数
Dp-02
300 GHz 帯ジャイロトロン出力の MOU による軸対称ガウスビーム整形
新林竜志,廣部匠,田中俊輔,福成雅史,山口裕資,立松芳典,斉藤輝雄,
久保伸 A,下妻隆 A,田中謙治 A,西浦正樹 B
福井大学 遠赤外領域開発研究センター,
A
核融合研究所,B 東京大学大学院新領域創成科学研究科
Axisymmetric Gaussian beam shaping of 300 GHz gyrotron radiation beam
R. Shinbayashi, T. Hirobe, S. Tanaka, M. Fukunari J, Y. Yamaguchi, Y. Tatematsu, T. Saito,
S. KuboA, T. ShimozumaA, K. TanakaA and M. NishiuraB
Research Center for Development of Far-Infrared Region, University of Fukui
A
National Institute for Fusion Science, BGraduate School of Frontier Sciences, The University of Tokyo
福井大学では、大型ヘリカル装置(LHD)における 300 GHz 帯協同トムソン散乱(CTS)計測用の光源と
して、出力 300 kW 以上のパルスジャイロトロンの開発が完了した。CTS 計測では、LHD までジャイロトロ
ン出力をコルゲート導波管にて約 60 m 伝送する。LHD に 100 kW 以上の入射を求めると、98 % / m 以上の伝
送効率が必要である。これには低損失の HE11 モードへの結合率の最大化が必要で、ジャイロトロンの出力
ビームを導波管に最適な形に整形しなければならない。
本研究の目的は、整合器(Matching Optics Unit : MOU)で、
ジャイロトロンの出力ビームを伝送試験に用いる 1.25 inch コ
19
水平方向
ルゲート導波管に最適な、ビームウェストサイズ w0 = 9.33 mm
17
の軸対称ガウスビームに整形することである。MOU の鏡面形状
15
鉛直方向
はジャイロトロン出力窓からの放射ビームパラメータに基づい
13
て決定した。MOU 通過後の放射ビームを塩化ビニル板に照射し、 11
9
赤外線カメラを用いて測定した温度上昇分布からビーム形状を
7
ビームウェストの設計位置
解析した。図は、鉛直方向と水平方向のビーム半径(電界振幅
5 設計値
の 1/e 半幅)を放射距離に対してプロットしたものである。横
0
100
200
300
400
500
軸の d = 0 は経路変更用の平面鏡も含めた MOU の出口である。
ビーム放射距離 d (mm)
導波管入射位置 d = 100 mm でほぼ円形の放射パターンが得ら
れた。講演では、MOU の設計、放射ビーム形状の計測・解析・
図 1 MOU 整形後のビーム半径 w (d)
検討を示す。
ビーム半径 w(d) (mm)
20161018
Dp-03
300 GHz 帯ジャイロトロン出力のコルゲート導波管伝送実験
田中俊輔, 廣部匠, 新林竜志, 福成雅史, 山口裕資, 立松芳典, 斉藤輝雄,
久保伸 A, 下妻隆 A, 田中謙治 A, 西浦正樹 B
福井大学 遠赤外領域開発研究センター A 核融合科学研究所, B 東京大学大学院新領域創成科学研究科
Transmission test of 300 GHz gyrotron power by corrugated waveguides
S. Tanaka, T. Hirobe, R. Shinbayashi, M. Fukunari, Y. Yamaguchi, Y. Tatematsu, T. Saito,
S. KuboA, T. ShimozumaA, K. TanakaA and M. NishiuraB
Research Center for Development of Far-Infrared Region, University of Fukui
A
National Institute for Fusion Science, BGraduate School of Frontier Sciences, The University of Tokyo
伝送電力/入射電力 (dB)
福井大学遠赤外領域開発研究センターでは、核融合科学研究所の大型ヘリカル装置(LHD)における 300 GHz 帯協同
トムソン散乱(CTS)計測に使用予定の光源として、周波数 303 GHz、出力 300 kW 以上のパルスジャイロトロンの開発
を完了した。LHD における CTS 計測ではジャイロトロン出力を約 60 m のコルゲート導波管にて伝送する必要がある。
LHD に 100 kW 以上入射することを求めると、コルゲート導波管の伝送効
率は 98 % /m 以上(減衰率では 0.076 dB/m 以下)が必要である。
0
本研究の目的は、303 GHz ジャイロトロンの実際の出力を用いて、300
GHz 帯に最適化された直径 1.25 インチ のコルゲート導波管の伝送効率を
-0.1
調べることである。その為、ジャイロトロンからの放射ビームを、整合器
(MOU)を用いて、この導波管に合うように整形した。この整形されたビ
ームを長さ 2.085 m の導波管 5 本を接続したものに入射し、各接続点におい
-0.2
て塩化ビニル板に導波管伝送後のジャイロトロン出力を照射して、赤外線カ
メラを用いて導波管断面内の温度上昇分布を熱画像として撮影した。得られ
-0.3
た熱画像の温度上昇値を面積分することで、導波管入射前と各導波管の出口
での伝送電力比を評価した。図 1 は導波管伝送距離に対して伝送電力比を示
したものである。この図から、本研究で調べた 1.25 インチコルゲート導波
-0.4
管の減衰率は、0.025 dB/m 程度であることが分かる。これは、0.076 dB/m
0
2
4
6
8 10 12
より十分小さい。講演では、導波管出口毎の熱画像の変化やデータ解析の詳
導波管入口からの距離(m)
細を示す。
図 1 導波管の伝送電力比の距離依存性
Dp-04
大強度電子ビームの矩形導波管中の伝搬
金沢大自然
高木 大,勝岡 桃子,曽我 之泰,鎌田 啓一
Propagation of an intense electron beam through a rectangular waveguide
Kanazawa Univ.
D.Takagi, M.Katsuoka, Y.Soga, K.Kamada
当研究室では、大強度相対論的電子ビームを周期磁場中に入射させる自由電子メーザー方式での大強度ミ
リ波源の開発を行っている。高周波化を見越して新たに伝搬路には平行平板型を採用する。複数ビームを平
板と平行に並べて伝搬させることで、相互作用する電子の数を増やし、大強度の発振が期待できる。しかし
ビームは伝搬路内の電場の非対称性によって変形し、複数ビームの
場合には、相互作用によって相対的に回転することが確認されてい
る。その中で当研究室では、平行平板中の複数ビームの伝搬のパラ
メータ決定を行うため、簡便な伝搬のモデル化を試みている。そこ
で間隔 14.5mm の平行平板に電子ビーム(500keV,150nsec,300A)を
1 本または 2 本入射し、伝搬特性を検証した。また数値計算と実験
の結果を比較した。
平板間へ挿入した金属棒にビームを当てることで、ダメージ痕か
図 1:1 本のビームのダメージ痕
ら伝搬路断面でのビームの形状変化を観測した。1 本のビームを入
射した際のダメージ痕を図 1 に示す。円柱形で入射されたビームが、
伝搬に伴い、断面形状が水平方向に広がる結果が得られた。数値計
算ではビーム断面を分割し、それぞれの重心に電荷を置き、ビーム
内部が作る電場上で各電荷の軌道を計算してビーム形状の変化を
見積もる簡単な方法を用いた。
数値計算の結果を図 2 に示す。実験と数値計算の結果はおおむね
一致している。実験結果の詳細や、上記のモデルを 2 本のビームに
図 2:数値計算の結果
適用した結果を講演にて報告する。
Dp-05
高純度パルス重イオンビーム発生を目指した両極性パルス加速器の開発
富山大学
今井 嘉生,朴木 太郎,大橋 隼人,伊藤 弘昭
Development of bipolar pulse accelerator to produce high purity pulse heavy ion beam
Univesity of Toyama
Y. Imai, T. Honoki, H. Ohashi, and H. Ito
新パワー半導体材料である炭化ケイ素(SiC)へのイオン注入と
アニール処理を同時に行うことができるパルスイオン注入法の実
現に向け,本研究では高純度パルス重イオンビーム発生用の両極
性パルス加速器の開発を行い,加速されたイオンビームの特性評
価を行った。両極性パルス加速器はイオン源,ドリフト管,接地
した陽極および陰極から構成されている(図 1 参照)。ドリフト管
に両極性パルスを印加することで,最初の負極性電圧により接地
陽極とドリフト管で初段加速され(①),次に正極性電圧によりド
リフト管から接地陰極で再び加速される(②)。不純物が存在する
場合,質量差による加速度の違いから特定のイオンが選択的に効 図 1: 両極性パルス加速器による2段加速概念
率よく加速されるためビームの純度が向上する。初段加速検証実
図
験 で は 陽 極 表 面 か ら 60 mm 下 流 の ド リ フ ト 管 内 に 開 口 径
5 mm の BIC (Biased Ion Collector)を設置し,イオンビームを測定
した。マルクス発生器出力電圧 210 kV,窒素ガスをガスパフに封
入しプラズマガン充電電圧 15 kV で動作させたところ,PFL 電圧
VPFL = 209 kV,両極性パルス電圧 VOUT = -118 kV,+102 kV,イオ
ン電流密度 Ji = 23.9 A/cm2 が得られた(図 2 参照)。1 価の窒素イ
オンを仮定しイオン飛行時間法からエネルギーを概算すると
117keV となり,これは初段加速電圧 VOUT より得られるエネルギ 図 2: 初段加速実験における典型的な出力波形
ーとほぼ等しいため,イオンが初段加速されたと考えられる。
Ea-01
単結晶試料 GdCr2Al20 の電子特性
富山大工
土田 響介,並木 孝洋,西村 克彦
Electronic Properties of Single Crystal GdCr2Al20
Fac. of Eng., Univ. of Toyama
K. Tsuchida, T. Namiki, K. Nishimura
10
30
40
50
(664)
(931)
(844)
(771)
(555)
(733)
●
●
(444)
(711)
(642)
(553)
(442)
(422)
(333)
20
(660)
(440)
(311)
(220)
(222)
Intensity(-)
(531)
(620)
(622) (533)
RT2X20(R=希土類、T=遷移金属、X=Al,Zn,Cd)は、立方晶 CeCr2Al20 型の結晶構造を持ち、R イオンが 16 個
の X 原子で形成されたカゴ状物質であり、近年 R=Pr で重い電子状態からの超伝導転移[1]など興味深い結果が
報告されている。R=Gd の研究においては、単結晶 GdT2Al20(T=Ti,V)で反強磁性転移[2]することが報告されて
いる。また多結晶 GdCr2Al20 において TN=3.9[K]で反強磁性転移[3]することが報告されているが、単結晶では
報告されていない。そこで本研究では単結晶 GdCr2Al20 を作製し、その物性を調査することを目的とした。
磁化測定には Quantum Design 社の MPMS、比熱と電気抵抗測定
GdCr2Al20
には同社の PPMS を用いて測定した。磁化測定から T~3[K]で反強
● 不純物
磁性転移とみられる磁化率の減少を確認した。逆磁化率はキュリー
・ワイス則に従っており、有効磁気モーメントμeff=8.26[μB]、キュ
リー・ワイス温度θCW~-7[K]となった。比熱測定ではゼロ磁場で
T=2.5[K]にピークを観測し、磁場を印加していくと低温側にシフト
していくことから反強磁性秩序していることを確認した。
また、GdCr2Al20 の磁化測定と比熱測定において、試料ごとに測定
結果が異なることから試料依存性が強い可能性が考えられる。
60
2(deg.)
[1]Michael J. Kangas et al. : J. Solid State Chem. 196(2012) 274-281
図: GdCr2Al20 の X 線回折測定
[2]Ramesh Kumar K et al. : J. Phys. Condens. Matter, Vol.28, Number 43(2016)
[3] Yu. Verbovytsky, K. Łątka, K. Tomala : J. Alloys Compd. 442(2007) 334-336
Ea-02
ErTi2Al20 の電気・磁気特性
富山大学
細矢駿行、並木孝洋、西村克彦
Electrical and magnetic properties of ErTi2Al20
Fac. of Eng., Univ. of Toyama
T. Hosoya, T. Namiki, K. Nishimura
M/H(emu/mol)
(M/H)-1(mol/emu)
RT2X20(R=希土類、T=遷移金属、X=Al,Zn)は、立方晶 CeCr2Al20 型の構造を持ち、R イオンが 16 個の X 原
子で囲まれたカゴ状構造の物質である。このカゴ状構造を持つ物質はその特異な結晶構造に起因する様々な
物性を示すことから、近年注目されている。今回報告例のない ErTi2 Al20 について初めての物性報告を行う。
試料はアーク溶解を用いて試料を作製し、単結晶の取り出しは Al フラックス法を用いて行った。作製し
た試料は粉末 X 線回折測定によって、目的の試料ができているかを確認した。その結果格子定数が 14.665[Å]
となり、文献値 14.662[Å]と比較しても近い値となり目的の試料を作製することができた。
得られた単結晶を用いて磁化測定、電気抵抗測定及び比熱測
7
30
定を行った。測定によって得られた逆帯磁率のグラフが直線的
6
25
に変化している。このことよりキュリーワイス則に従うことが
わかった。有効磁気モーメントは 9.50[μB]であり、理論値で
5
20
ある 9.58[μB]に近い値になった。またキュリーワイス温度は
4
15
6.36[K]となった。しかし 1.9[K]までの磁化測定及び比熱測定で
3
は、磁気転移を観測することができなかった。一方で比熱測定
10
ErTi 2Al20
2
において 1.9[K]付近で急激な増加を確認でき、1.9[K]以下で磁
H//<111>
5
0.1[T]
気転移が起こると考えられる。キュリーワイス温度が正の値で
1
あること、比熱測定において印加磁場を増やすとピークが高温
0
0
0
50
100
150
200
250
300
側に移動することから ErTi2 Al20 が強磁性であると考えられる。
T (K)
図: 磁化率の温度依存性
Ea-03
LaMo₂Al₂₀の物理特性
富山大工
出仙 浩詞郎,並木 孝洋,西村 克彦
Physical Properties of LaMo₂Al₂₀
Fac. of Eng., Univ. of Toyama
K. Desen, T. Namiki, K. Nishimura
(cm)
(cm)
RT₂X₂₀(R=希土類、T=遷移金属、X=Al、Zn)は R が 16 個の X によって形成される籠に囲まれている構造
を持つ。同様の籠状の結晶構造を持つ充填スクッテルダイトでは重い電子挙動や超伝導など特異な物性が報
告されている。今回の研究では以前物性の報告[1]があった LaMo₂Al₂₀を作製した。今回は以前より大きな試
料の作製に成功したためその物性を調査した。
140
目的の組成 La:Mo:Al=1:2:20 となるように材料を秤量
LaMo2Al20
し、アーク溶解を行い試料を作製した。アーク溶解後、
120
Al 自己フラックス法により単結晶の試料を作製した。結
H=0[T]
100
晶構造の評価には粉末X線回折法を用いた。格子定数は
14.65Å となり、以前の報告と同様の値であった。このよ
80
うにして用意した試料を用いて電気抵抗測定を行った。
5
60
4
LaMo₂Al₂₀の電気抵抗測定の結果であるが、室温から
3
低温まで単調に減少し、3.2K で超伝導転移によるものだ
2
40
1
と思われるゼロ抵抗を観測した。以前の報告でも同様の
LaMo Al
0
H=0[T]
20
温度で超伝導転移をしていたが今回の研究ではより転
-1
0
2
4
6
8
10
12
T(K)
移幅が狭いため、より質の良い単結晶を用いて研究する
0
0
50
100
150
200
250
300
ことが出来たと考えられる。
T(K)
2
[1]2014 年度日本物理学会北陸支部定例学術講演会
P35 D-p2 井上健司、並木孝洋、西村克彦
Ea-04
20
図. 電気抵抗測定結果
NdW2Al20 の物理特性
富山大工
山内優易,並木孝洋,西村
Physical Properties of NdW2Al20
Fac. of Eng., Univ. of Toyama
克彦
Y. Yamauchi, T. Namiki, K.Nishimura
M/H (emu/mol)
M/H(emu/mol)
-1
(M/H) (mol/emu)
RT2X20(R=希土類、T=遷移金属、X=Al、Zn)は R が 16 個の X によって形成される籠に囲まれている構造
を持つ。近年では NdV2Al20 や NdCr2Al20 がそれぞれ TC=1.8[K],1.7[K]において強磁性転移することがわかって
いる[1]。しかし NdW2Al20 についての物性の報告例はない。今回初めて NdW2Al20 の単結晶育成に成功し、そ
の物性を調査した。
単結晶試料の作製には Al 自己フラックス法を用いた。結晶構造の評価には粉末 X 線回折法を用いた。格
子定数は 14.62[Å]であり、以前の報告とほぼ一致した。その後、作製した試料は背面反射ラウエ法を用いて
方位を決定した。このようにして用意した試料を用いて磁化測定、電気抵抗率測定、比熱測定を行った。
右図に NdW2Al20 の帯磁率の磁場依存性を示す。逆帯磁率が
0.8
200
高温で曲がっているのは、パウリ常磁性の影響だと考えられる
NdW2Al20
0.7
[2]
。高 温 で の 逆 帯 磁率 か ら 求 め た有 効 磁気 モ ー メ ン ト は
0.1T
0.6
150
3.98[μB]となり、理論値の 3.62[μB]と比べ大きな値となった。ま
H//<110>
0.5
た、キュリー・ワイス温度は-65.48[K]となった。また、挿入図
0.4
100
は 0.01T における低温部での帯磁率である。1.1[K]付近から磁
12
NdW
Al
10
化が急激に増大し、0.5[K]ではほぼ飽和している。このことか
0.3
0.01T
8
H//<110>
6
ら NdW2Al20 は T=1.1[K]付近で強磁性転移することがわる。
0.2
50
4
また、磁場中比熱の温度依存性測定では高磁場になるにつれ
2
0.1
0
0 0.5 1 1.5 2 2.5
ピークが高温側にシフトしていく結果となった。
0
0
[1] T.Namiki et al: J. Phys: Conf. Ser.683(2016) 012017
0
50 100 150 200 250 300
[2] T.Namiki et al: J. Phys. Soc. Jpn. 85, 073706 (2016)
図 NdW Al の帯磁率の温度依存性
2
2
20
20
(挿入図は 0.01T での低温部の拡大図)
Ea-05
TmFe2Al10 単結晶の磁気特性
富山大工
張
偉,並木
孝洋,西村
克彦
Magnetic properties of TmFe2Al10
Fac. of Eng., Univ. of Toyama
ZhangWei, T.Namiki, K. Nishimura
B
M ( )
試料の RT2X10(R=希土類 Tm、T=遷移金属 Fe、X=Al)は、斜方晶の構造を持つ。本研究ではこれまでに報告
がない TmFe2Al10 の単結晶試料を育成し、その基礎物性を調べた。試料作製では、Tm,Fe,Al を 1:2:10 の組
成比で秤量したものを Ar 雰囲気下で、アーク炉で溶解した。その後、Al 自己フラックス法を用いて TmFe2Al10
単結晶を約 1 週間をかけて育成した。結晶構造をX線回折測定で確認し、目的の試料ができているかを確認
した。X線背面ラウエ法によって方位を確認した。
得られた単結晶を用いて磁化測定と比熱測定を行った。測定によって得られた逆帯磁率のフラフから、キ
6
ュリーワイス則に従うことがわかった。a 軸での有効磁気モーメ
ントは 9.01μB であり、キュリーワイス温度は-14.6K となった。b
5
H//b
軸での有効磁気モーメントは 7.95μB であり、キュリーワイス温
度は 1.1K となった。c 軸での有効磁気モーメントは 8.05μB であ
4
H//a
り、キュリーワイス温度は-21.3K となった。
3
1.9K で試料 No.3 の a 軸、b 軸、c 軸のそれぞれ磁化率の磁場依
H//c
存性を図示し、b 軸が磁化容易軸であると判明した。b 軸に外部
2
TmFe2Al10
磁場を印加して比熱を測定した結果も報告する。
1
T=1.9K
0
0
1
2
3
4
0H (T)
5
6
7
図: 磁化の磁場依存性
Ea-06
PrGa の磁気特性と磁気熱量効果
富山大工
山岸
紳太郎,西村
克彦,並木
孝洋
Magnetic properties and magnetocaloric effect of PrGa compound
Fac. of Eng., Univ. of Toyama
S.Yamagishi, K.Nishimura, T. Namiki
近年、斜方晶で空間 CmCm の CrB 構造で結晶化する二元型希土類金属化合物 PrGa の磁気エントロピー変
化⊿Sm が報告された【1】。しかし、単結晶の PrGa の磁気熱量効果の報告がないことから本研究では、磁化
測定、比熱測定の結果を用いて、単結晶 PrGa の磁気熱量効果を算出することを目的とする。
試料はアーク溶解法を用いて作製した。アーク溶解後、真空中 995℃で 1 週間アニールすることにより単
結晶の試料を作製した。結晶構造の評価には粉末 X 線回折法を用いた。格子定数は a=4.460Å、b=11.340
Å、c=4.210Åとなり、文献値の値(a=4.443Å, b=11.340Å, c=4.198Å)とほぼ一致した。このようにして
用意した試料を用いて磁化測定、比熱測定を行った。磁化測定
は、
SQUID を用いたカンタムデザイン社製の MPMS で測定し、
比熱測定には熱緩和法を用いた同社製の PPMS で測定した。
右の図は PrGa の磁気比熱の温度依存性を表したものであ
る。磁気比熱を求めるために比熱から格子比熱と電子比熱を取
り除かなければならない。今回は非磁性体の LaGa を代用し
PrGa の比熱から LaGa の比熱を差し引くことで PrGa の磁気
比熱を求めた。今回はこのデータから磁気エントロピーを算出
した結果と磁化の結果より求めた磁気エントロピー変化を報
告する。
【1】Q. Zheng at al., Scientific Reports 5, Article number: 14970
(2015)
図:c 軸の磁気比熱の温度依存性
Ea-07
金沢大自然,東北大金研
A
UNiX2(X=C, Si, Ge, Sn)の磁性
大橋 康平,澤武 正貴,宮川 昌大,大橋 政司,山村 朝雄 A
Magnetic properties of UNiX2 (X=C, Si, Ge, Sn)
Grad. School Sci. & Tech. Kanazawa Univ., IMR Tohoku Univ.A
K.Ohashi M.Sawabu, M.Miyagawa, M.Ohashi, A.YamamuraA
UNiX2 は斜方晶 Cmcm の空間群に属し、長い b 軸を持つ結晶構造を持つ。我々は以前 CeNiGe2 の単結晶育
成に成功し、2 つの反強磁性相およびその圧力効果について調べた [1,2]。本講演では関連物質として
UNiX2(X=C, Si, Ge, Sn)の基礎物性について報告する。
UNiSi2 に関してはフラックス法による単結晶育成および基礎物性の報
告があるが[3]、今回我々はチョクラルスキー法による単結晶育成を行っ
た。この系は Tc=95K の強磁性体であり、大きな磁気異方性を持つ。容易
軸は ac 面内にあり、図 1 に 5K における磁場依存性のグラフを示す。磁
化比は M(H⊥b)/M(H//b)=9.4 であった。ab 面内に対して帯磁率測定を行
ったところ、有効磁気モーメントはeff=2.47B と見積もられた。これは
多結晶試料による報告 2.03B[4]と比較して大きいが、U4+および U3+の自
由イオンから予想される値よりも小さいものである。
[1] M. Ohashi, G. Oomi, K. Ishida, I. Satoh, J. Phys. Soc. Jpn. 75 (2006) Suppl.
図 1 UNiSi2 の 5K における
124.
磁化の磁場依存性
[2] M. Ohashi, G. Oomi, I. Satoh, J. Phys. Soc. Jpn. 76 (2007) 11472
[3] V. A. Sidorov, P. H. Tobash, C. Wang, B. L. Scott, T. Park, E. D. Bauer, F. Ponning, J. D. Thompson, Z. Fisk, J.
Phys.: Conf. Series 273 (2011) 012014
[4] D. Kaczorowski, Solid State Commun., 99 (1996) 949.
Ea-08
RFe2SiC(R:希土類)の磁性
金沢大学自然
中島陽平,大橋康平,澤部正貴,宮川昌大,大橋政司
Magnetic properties of RFe2SiC(R: rare earth)
Grad. School Sci. &Tech. Kanazawa Univ.
Y.Nakashima ,K.Ohashi,M.Sawabu,M.Miyagawa ,M.Ohashi
希土類化合物の中では磁気構造転移に伴ってメタ磁性転移を起こすものがあるが、これが低い磁場で起こ
れば応用面でも優位である。例えば RRu2Al2B(R=Ce,Pr)では 30 K 程度までの温度領域において、 数十 Oe 程
度の非常に低い磁場でメタ磁性転移が発見されている[1]。我々は同様な特性を持つ希土類化合物の探索を目
的として RFe2SiC に注目し試料合成及び磁性測定に取り組むこととした。
試料は R,Fe,Si,C を目的の組成比に従い秤量し、
Ar ガス中でアーク溶解法にて作成した。粉末 X 線回
折法により、作成した試料が単相である事を確認し
た。結晶構造は斜方晶であり、得られた格子定数(例
えば GdFe2SiC では a=3.761, b=10.583, C=6.851(Å))
は過去の報告[2]とほぼ一致した。MPMS を用いて磁化
を測定した。図1に RFe2SiC(R=Gd,Tb,Dy,Ho,Er)の温
度と磁化率の関係を示す。図 1 において複数の試料
において 2K から 50K までの間に転移が観測された。
本講演では試料の作成方法や有効な熱処理条件等
の試料の育成方法、それらに関して磁気転移温度や
キュリー・ワイス則を用いてのフィッティングを行
図1 RFe2SiC の温度と磁化率の関係
った結果等の磁性について報告する。
[1] E. Matsuoka et al., J. Phys. Soc. Jpn. 81 (2012) 043704
[2] A.M.Witte, W.Jeitschko, Journal of Solid State Chemistry 112 (1994) 232
Ea-09
強磁性体 GdX2(X=Al,Pt)の磁気体積効果
金沢大自然
宮川昌大,大橋康平,澤部正貴,大橋政司
Magnetovolume effect of GdX2(X=Al,Pt)
Fac. of Eng., Univ. of Kanazawa
M.Miyagawa,K.Ohashi,M.Sawabu,M.Ohashi
C(J/K・mol)
GdX2(X=Al,Pt,Ni 等)は C15 型ラーベス相を結晶構造として持つ強磁性体である。これらの物質群では強磁
性転移にともなって正または負の磁気体積効果が観測される[1]。これらは,強磁性の起源が Gd の局在磁気
モーメントによるものであり,局在モデルでは磁気的交換エネルギーJ の符号や大きさは原子間距離に依存す
ると予想される。本研究では GdX2 について熱膨張,比熱,磁化といった基礎物性測定をおこない,得られた
結果から J と結晶構造との関係を明らかにすることを目的とした。
測定の一例として、図 1、2 にそれぞれ GdAl2 の熱膨張率、比熱の測定結果を示す。
図 1 は、GdAl2 単結晶の 100 軸、110 軸についての熱膨張率の温度依存性である。全温度領域で一致してい
ることから、磁気相転移にともなう構造相変態は生じていない。従って、J は体積変化率ω=dV/V に依存する
45
と考えて良い。また、170K 付近に不連続
80
40
70
点が見られる。この温度は過去に報告さ
35
60
れた Tc と一致し、負の方向に膨張してい
30
50
る[1]。
40
25
Tc 近傍でのαの転移幅Δα、及び図 2
30
20
の比熱測定により得られた転移幅ΔC か
100軸
20
GdAl2(測定値)
15
110軸
デバイ模型
ら dJ/dω=-1.42×10-22J が得られた。
10
10
0
本講演では GdPt2 においても同様の測
5
0
50
100
150
200
250
300
0
100
200
300
定を行い、求めた dJ/dωを報告する。
T(K)
温度(K)
図 1 GdAl2 の熱膨張率
図 2 比熱の温度依存性
[1] T.Oishi et al, Journal of Physics:Conference series 200(2010)082022
Ea-10
CeNiSb3 単結晶の磁性と伝導
神谷洋平,福原忠,室裕司,桑井智彦 A,増渕伸一 B
富山県立大工,富山大院理工 A,東京医大医 B
Transport and Magnetic properties of CeNiSb3 single crystal
Y. Kamiya, T. Fukuhara, Y. Muro and T. KuwaiA
Toyama Prefectural University, Toyama UniversityA
層状構造をもつ正方晶 CeTSb2(T:遷移金属)は、重い電子強磁性(CeAgSb2[1])、磁場誘
起量子相転移(CeAuSb2[2])など多彩な物性を示す。中でも CeNiSb2 はその基底状態につ
いて常磁性[3]と強磁性[4]の報告があり興味深い。一方、CeNiSb2 に類似した構造の斜
方晶α-CeNiSb3(空間群 Pbcm)[5]は TC~6K の強磁性体[6]と報告されているが、磁性や
伝導の異方性については詳しく調べられていない。そこで我々は Sb 自己フラックス法
でα-CeNiSb3 の単結晶を育成し、結晶軸の各方位について磁化、磁化率、電気抵抗、ホ
ール効果を測定したので報告する。
[1] Inada et al., Philos. Mag. B 82 (2002) 1867.
[2] Balicas et al., Phys. Rev. B 72 (2005) 064422.
[3] Y. Muro et al., J. Alloys Compd. 257 (1997) 23.
[4] A. Thamizhavel et al., Phys. Rev. B 68 (2003) 054427.
[5] R. T. Macaluso et al., J. Solid State Chem. 177 (2004) 293.
[6] V. A. Sidorov et al., Phys. Rev. B 71 (2005) 094422.
Ea-11
Shastry-Sutherland 型近藤新化合物 Yb2T3Ga10(T=Ru, Os)の磁性
富山県立大,富山大院理工 A
室 裕司,福原 忠,桑井
智彦 A
Magnetic property of Shastry-Sutherland lattice Kondo compounds Yb2T3Ga10 (T=Ru, Os)
Toyama Pref. Univ., Univ. ToyamaA
Y. Muro, T. Fukuhara, T. KuwaiA
希土類 3 元化合物 R2Ru3Ga10 (R=Yb, Lu)は,空間群 P4/mbm の正方
晶で新しい結晶型とる化合物である[1]。図1内挿図に示したように,
Yb 元素は Shastry-Sutherland(SS)型[2]をとる。我々は Ga フラックス
法により単結晶試料を作製し,さらに同じ結晶構造の新化合物
R2Os3Ga10 を発見し,これらの磁性を研究している。
磁化率から,Yb2T3Ga10 (T=Ru, Os)はいずれの化合物も 3 価で,c
面内方向のみ Curie-Weiss 則を示す強い面内異方性をもつ。比熱およ
び電気抵抗率から,T=Ru では TN = 1.4 K で反強磁性に,T=Os では
TN1 = 2.0 K, TN2 =1.6 K, TN3 =0.7 K と逐次の磁気転移を示す。特に TN3
以下では自発磁化を伴う。電子比熱係数は T=Ru で 300 mJ/K2 mol,
T=Os で 180 mJ/K2mol と大きく,いずれも 40 K 以下で電気抵抗に
−logT 依存性を示す。近藤効果と(SS)型を起因とした磁気フラストレ
ーションから,T=Ru の TN は B//[100]において僅か 0.2 T で消失し,
0.2 T の電気抵抗では 1.5 K 以下で T に比例する。T=Os でも B//[100]
では 0.25 T で磁気秩序が消失する。さらに T=Os の磁気相図はドー
ム型をとり,ドーム内に 2 種類の磁気秩序相が存在する。ドーム型
の磁気相図は,SS 型の Ce2Pd2Sn でも観測されている[3]。
[1] M. Schlüter and W. Jeitschko: Inorg. Chem. 40 (2001) 6362.
[2] B. S. Shastry and B. Sutherland: Physica 108B (1981) 1069.
[3] J. G. Sereni et al.: Phys. Rev. B 80 (2009) 024428.
図1: Yb2T3Ga10 の磁気相図
ミリ波帯パルス ESR のためのスピンエコー検出システムの開発
福井大学 遠赤外領域開発研究センター 河野海志、柊木健志、成岡夢有、光藤誠太郎
Ep-01
Development of spin echo detection system for a millimeter-wave pulsed ESR system
Fir-Center,University of Fukui K. Kohno, K. Hiiragi, M. Narioka, S. Mitsudo
パルス ESR は電子スピンの動的性質を調べるために有効な手法である。電子スピンの動的性質は量子コンピュ
ータや巨大タンパク質の構造解析などの実現にとって重要な情報となっている。高周波のパルス ESR 装置の発振
源として自由電子レーザーによるパルス ESR 装置が開発されているが、我々は高出力ミリ波光源である 154 GHz
Gyrotron FU CW VIIA を用いることで、コンパクトであり研究室レベルで実現可能な高周波パルス ESR 装置の開発
を行っている。
本研究ではミリ波帯パルス ESR 装置のための検出システムの開発を行った。パルス ESR 法で得られる free
induction decay (FID) や spin echo 信号は図 1 のように数百 W から数 kW の励起パルス(π/2 及びπパルスと呼ばれ
る)を伴って検出系にやってくる。 FID や spin echo の信号強
度は通常、励起パルスの強度の 1/1000 以下であり、高感度
の半導体検出器で検出する場合、励起パルスを除いて検出器
に導く必要がある。そこで高抵抗 Si 板に Nd:YAG のナノ秒
パルスレーザー(SHG)光を照射し、光駆動のミリ波のスイッ
チとして用いることで、ミリ波帯の FID や spin echo 信号の
みを切り出して(反射させて)半導体検出器に伝送するシステ
ムの開発を行った。ここで Nd:YAG 光が当たっていないとき
にミリ波の反射を最大限抑えるためには、直線偏光のミリ波
を Si 板に対してブリュースター角 (入射角 73.70°)で入射す
る必要等がある。実際のパルス ESR 装置への組み込みと本
図 1.ミリ波帯パルス ESR のためのスピンエ
システムでの信号抽出の結果について報告する。
コー信号検出システムの概略図
Ep-02
ミリ波帯多周波 ESR のための Fabry-Perot 型共振器の開発
福井大工, 福井大遠赤セ A, 株式会社 JEOL RESONANCE B
三浦俊亮, 大矢健太 A, 石川裕也, 藤井裕 A, 浅野貴行, 光藤誠太郎 A, 戸田充 A, B
Development of Fabry-Perot type resonator for millimeter-wave band multi-frequency ESR measurements
Dept. of Appl. Phys, Univ. of Fukui; FIR Center, Univ. of Fukui A; JEOL RESONANCE Inc. B
S. Miura, K. Ohya A, Y. Ishikawa, Y. Fujii A, T. Asano, S. Mitsudo A, M. Toda A, B
ミリ波帯の電子スピン共鳴(ESR)測定を極低温で行う際、透過法と共振器法の2通りがよく使われている。
透過法は、導波管中に試料を置くシンプルな構成で、周波数を容易に変えられるので多周波 ESR に向いてい
るが、共振器を用いないために信号検出感度を高くするのは困難である。一方、共振器法は、検出感度を高
くすることができるというメリットがあるが、共振器形状で決まるとびとびの共振周波数でのみ測定可能で
ある。外部から共振周波数を任意に調整するには、共振器形状を変えられる機構が必要である。
最近我々は超低温・高磁場で ESR と NMR の二重磁気共鳴が可能なシステムを希
釈冷凍機に構築し、MnxMg1-xO(x=1/10000)の ESR 測定を行った [1,2]。このシステム
においては、平面-球面の 2 枚のミラーによって構成されるファブリ・ペロー型共振
器を採用している。この共振器は、ミラー間距離の調整により共振周波数を変えら
れるが、これまでは外部から調整できる機構がなく、固定周波数での測定であった。
そこで我々は共振周波数を外部から調整できる機構の搭載を試みている。今回
我々はピエゾ素子による共振周波数調整機能を持った共振器の製作を行い、ESR プ
ローブに搭載した。そしてこの製作したプローブでの信号検出感度を見積もるため
の ESR 測定を行った。詳細は当日報告する。
[1] Y. Fujii et al.: J. Phys.: Conf. Ser., 568, 042005 (2015).
[2] 石川裕也ら: 日本物理学会第 71 回年次大会 19aPS-84 (2016),
2016 年秋季大会 13aPS-92 (2016).
図. 製作した共振器
Ep-03
三次元ハイゼンベルグ反強磁性体 RbMnF3 の磁気希釈効果
福井大工, 茨城大フロンティアセ A, KEKB
横山太紀, 浅野貴行, 菊池彦光, 岩佐和晃 A, 伊藤晋一 B
Magnetic Dilution Effect in 3D Heisenberg Antiferromagnet RbMnF3
Dept. of Appl. Phys, Univ. of Fukui, iFRC, Univ. of IbarakiA, KEKB
T. Yokoyama, T. Asano, H. Kikuchi, K. IwasaA, and S. ItoB
RbMnF3 は、磁性イオンである Mn2+(S=5/2)が単純立方格子を形成した三次元ハイゼンベルグ反強磁性体の
代表的なモデル物質である。Mn2+を非磁性イオンである Mg2+で置換した RbMnxMg1-xF3 において、パーコレ
ーション濃度(x=0.312)以下に磁気希釈した領域では、Mn2+イオンが反強磁性的に結合したスピンクラスター
を形成しランダムに分布している[1]。極端に希釈した x=0.03 におけるパルス磁場を用いた磁化測定(T=1.7 K,
H<40 T)が報告されており、Mn2+イオンの単量体や二量体では説明することができない階段状の興味深い磁化
過程が観測されている[2]。この起源を明らかにすることを目的とし、母物質 RbMnF3 の広範な濃度領域での
磁気希釈効果の実験的研究を開始した。
右 図 は 、 RbMnxMg1-xF3(x=1.0,0.8,0.6,0.15,0.03) の 定 常 磁 場 下
(H=0.1T)における磁化率の温度依存性の結果である。x=1.0 では、
これまでの報告と同じように約 80 K において反強磁性磁気秩序
(TN)を示唆する異常が観測された[3]。高濃度領域(x=0.8,0.6)では、
TN が各々約 70 K と 55 K に観測され、Mn 濃度の低下に伴い低温側
へ移動している。低濃度領域(x=0.15,0.03)では、TN を示唆する異常
は最低温度(T=2.0 K)まで観測されず常磁性的な振舞が観測された。
当日は、定常磁場及び交流磁場下での磁化測定や電子スピン共鳴
の結果を報告し、併せて議論したい。
[1]K.Iwasa et al., J. Phys. Soc. Jpn. 63 (1994) 2862.
[2]Y.Ajiro et al., Physica B 246-247 (1998) 222.
[3]G.Chaddha and M.S.Seehra, Solid State Commun. 44 (1982) 1097.
図 1. RbMnxMg1-xF3 の磁化率の温度依存性
Ep-04
二次元三角格子磁性体 Cu 2 (OH) 3 NO 3 の磁気秩序
福井大工, 福井大遠赤セ A, 東大物性研 B
笠松直幸, 菊池彦光, 藤井裕 A, 松尾晶 B, 金道浩一 B
Magnetic ordering of 2D triangular lattice magnet Cu2(OH)3(NO)3
Dept. of Appl. Phys., Univ. of Fukui, FIR-Center, Univ. of FukuiA. ISSP, Univ. of TokyoB
N.Kasamatsu, H.Kikuchi, Y.FujiiA, A.MatsuoB, K.KindoB
C (J/K mol)
Cu2(OH)3NO3 (鉱物名: Rouaite, 単斜晶)は、Cu2+ (S=1/2)が c 面内で二次元三
角格子的に配列する磁性体である[1]。これまでに、磁化率測定が報告され
ており、7 K 付近にブロードなピークが見いだされている。第一原理計算
による交換相互作用の評価に基づいて、本化合物を三角格子というよりも
むしろ一次元的な磁性体とみなすモデルが提案され、磁化率のピークも一
次元系特有の短距離秩序に起因すると解釈されている[2], [3]。ところが、我々
が強磁場磁化過程を測定したところ、飽和磁化の 2/3 あたりに磁化プラト
ー的な挙動を見いだした。この結果は一次元モデルでは説明できない。更
に、磁気秩序の特性を知るために比熱測定を行ったところ、磁化率のピー
ク温度に対応する温度域でなんらかの磁気秩序の発生を示唆する異常を
観測した(図 1)。この異常の特性を微視的観点から調べる目的で、NMR 実験を
行う予定である。
rouaite
0T
5T
7T
T (K)
図 1. rouaite の比熱の磁場
及び温度依存性
[1] H.Effenberger, Z.Kristalloger. 165 (1983) 127.
[2] G.G.Linder et al., J. Solid State Chem. 116 (1995) 1
[3] E.Ruiz et al., J. Phys. Chem. B 110 (2006) 115.
Ep-05
二次元三角格子磁性体 Cu2(OH)3NO3 の 1H-NMR
福井大遠赤セ, 福井大工 A
小泉優太, 笠松直幸 , 石川裕也 A, 藤井裕, 光藤誠太郎, 菊池彦光 A
1
H-NMR study of 2D triangular lattice magnet Cu2(OH)3NO3
Research Center for Development of Far-Infrared Region, University of Fukui; Dept. of Appl. Phys., Univ. of FukuiA
Y. Koizumi, N. KasamatsuA, Y. IshikawaA, Y. Fujii, S. Mitsudo, H. KikuchiA
A
Cu2(OH)3NO3(鉱物名:rouaite, 単斜晶系)は、層状化合物であり、磁性イオン Cu2⁺(S = 1/2)の二次元三角格子
が ab 面内に形成されている(図1)[1]。結晶中には、結晶学的に異なる2つのサイトの Cu がある。Cu 間の
結合は、OH 基の O を介したボンドと NO3 基の O のひとつを介したボンドがあり、それらの組み合わせによ
り Cu-Cu 間の結合は六種類ある。磁化率は先行研究では 7~8 K に極大を示しており、
低次元性を示唆する[2]。
最近の理論計算に基づいた相互作用の見積は、強磁性的相互作用と反強磁性的相互作用が混在することを示
唆しており、このパラメータを用いて磁化率の温度依存性が比較的よく再現されている[3]。しかし現在まで、
磁気相転移の有無や低温での磁気状態については不明である。
本講演の前に講演する笠松らが報告するように、rouaite の粉末試
料の比熱測定を行ったところ、T = 7 K 付近で磁気秩序を示唆する
H
ような比熱の極大が観測された[4]。そこで、我々は、低温での磁気
1
的状態をミクロな観点から調べるために、 H-NMR 測定を行った。
O
1
H は 3 つの異なるサイトがある。当日は NMR 測定の結果を中心
に講演する予定である。
N
[1] H. Effenberger, Z. Kristalloger. 165(1983)127.
[2] G.G.Linder et al., J.Solid State Chem. 116(1995)1.
[3] E. Ruiz, et al.: J. Phys. Chem. B 110 (2006) 115-118
図1.Cu2(OH)3NO3 の結晶構造
[4] 笠松 他:日本物理学会北陸支部定例学術講演会
Ep-06
磁性体の飽和磁場直下のマグノン BEC とネマティック秩序
富山県大工 植田浩明,京都大基研 戸塚圭介,理研
桃井勉
Annual Meeting of Hokuriku Branch of Japan Physical Society
Toyama Pref. Univ. Hiroaki Ueda, YITP Keisuke Totsuka, Riken Tsutomu Momoi
一般に、反強磁性体に十分な外部磁場をかけると、すべてのスピンが磁場方向にそろった強磁性体相が現
れる。この状態で、一つのスピンがフロップする状態は、ボソン(マグノン)が一個あることと、数学的に
等価である。スピンがすべてそろった強磁性体状態から、外部磁場を弱めていくとマグノンの励起のギャッ
プが閉じて、マグノンのボーズアインシュタイン凝縮(BEC)が起こる。マグノン BEC 状態は、飽和磁場直下
でスピンが完全に磁場方向にそろっていない反強磁性秩序状態に対応する。マグノン BEC の手法から、飽和
磁場直下でどのような磁気秩序相が現れるか、解析することができる。また、マグノン BEC の手法を用いる
と、マグノンの結合状態の安定性も解析することができる。マグノン結合状態が BEC を起こすとスピンネマ
ティック相が現れる。マグノン BEC の手法をもちいて、フラストレート磁性体である、擬 1 次元 J1-J2 鎖、擬
2 次元正方格子 J1-J2 模型、3 次元 bcc 格子 J1-J2 模型の飽和磁場直下の磁気相図をしめす。スピンネマティッ
ク相がそれらの模型に現れうることを示す。
Ep-07
単結晶 TbFe2Al10 の結晶磁気異方性
富山大院理工 上出 悠介, 水島 俊雄, 桑井 智彦, 石川 義和
Magnetocrystalline Anisotropy of Single Crystal TbFe2Al10 with Caged-Structure
Graduate School of Science and Engineering, University of Toyama
Y. Kamide, T. Mizushima, T. Kuwai, and Y. Isikawa
TbFe2Al10 は斜方晶 YbFe2Al10 型構造を持ち、希土類原子を Al 原子で囲むカゴ状構造を形成している。TbFe2Al10 は
既に多結晶の磁化、比熱および電気抵抗の温度依存性が報告されている[1], [2]。しかし、まだ単結晶の報告はない。そこで、
我々は TbFe2Al10 の単結晶試料を育成し、磁化・比熱測定を行い、基礎物性を調べることとした。
単結晶の育成は Al フラックス法で行った。格子定数は a、b、c 軸そ
10
れぞれ 8.962、10.149、9.011 Å と求められた。また、背面X線ラウエ
法により a、b、c 各軸方向を決定した。
TbFe Al
2 10
8
図に T = 2 K における磁化の磁場依存性の測定結果を示す。a 軸
は H = 1.0、1.9 T で、c 軸は H = 3.2、4.2、4.8 T でメタ磁性的転移
を示し、その後飽和した。H = 7 T で a 軸の磁化の値は 9.2 μB であり、
Tb3+の飽和磁化である 9.0 μB よりわずかに大きくなった。この結果は、
Fe が遍歴性を示し、磁化を持っていることが原因と考えられる。
また、磁場中比熱測定の測定を行った。それを基に磁気相図を作
T=2K
 = 9.0 
a
6
full
Phys. B Condens. Matter 276-278 (2000) 594-595.
2
[2] M. Reehuis, M.W. Wolff, A. Krimmel, E.W. Scheidt, N. Stüsser, A.
Loidl, W. Jeitschko, J. Phys. Condens. Matter 15 (2003) 1773-1782.
0
9.0 
B
B
c
4
b
成したので、これについても当日報告する。
[1] M. Reehuis, B. Fehrmann, M.W. Wolff, W. Jeitschko, M. Hofmann,
9.2 B
0
1
2
3
4
5
6
7
H (T)
図:T = 2 K における TbFe2Al10 の
a、b、c 軸の磁化の磁場依存性
1.4 B
Ep-08
単結晶 HoRu2Al10 の結晶磁気異方性
富山大理, 富山大院理工 A; 岡本 昌士, 上出 悠介 A, 水島 俊雄 A, 桑井 智彦 A, 石川 義和 A
Magnetocrystalline Anisotropy of Singlecrystalline HoRu2Al10
Department of Physics, University of Toyama
A
Graduate School of Science and Engineering, University of Toyama
M. Okamoto, Y. KamideA, T. MizushimaA, T. KuwaiA, and Y. IsikawaA
当研究室では、RRu2Al10 型の希土類元素 R を含んだ斜方晶の結晶の研究を行っている。今回は R ( = 希土類
元素)を Ho として単結晶 HoRu2Al10 を作製し磁化及び比熱を測定した。HoRu2Al10 は斜方晶 YbFe2Al10 型の結晶
構造であり希土類原子を Al 原子で囲むカゴ状構造を形成している。 2.5
母材となる HoRu2Al10 は各原子のモル比を Ho:Ru:Al = 1:2:12 で秤
HoRu2Al10
量し、アーク溶解法によってボタン状にした。次に、Al を用いた
2
H = 0.1 T
b
自己フラックス法で単結晶を作製するためモル比が Ho:Ru:Al =
1:2:40 となるように Al を追加し、アルミナ坩堝に入れた。作製し
1.5
た 試料の評 価は粉末 X 線 回折法で 行い、結 晶構造 が斜方晶
5K
YbFe2Al10 型であることを確認した。ピークに指数付けすることに
より格子定数を計算すると a = 9.049 Å、b = 10.169 Å、c = 9.087 Å
1
と見積ることができた。また、背面ラウエ法により結晶軸方位を
c
確定するとともに、単結晶試料であることを確認した。
0.5
図に帯磁率 a、b、c 軸方向の温度依存性を示す。b 軸に反強磁
a
性に特有の T = 5 K でカスプが観測された。c、a 軸にも T = 5 K で磁気
転移に相当する折れが見られる。容易軸は b 軸、困難軸は a 軸である 0
ことがわかった。T = 2 K における磁化の磁場依存性の測定により b
0
5
10
15
T (K)
軸方向の磁化は約 H = 0.7 T でメタ磁性的転移を示し、c 軸では約 H = 0.8
T でメタ磁性転移を示し、その後飽和傾向の振る舞いを見せる。H = 7 T
a、b、c 軸の帯磁率の温度依存性
で a、b、 c 軸の磁化の値はそれぞれ 6.8μB 、 8.7μB 、7.2μB である。
この値は Ho3+の飽和磁化である 10μB よりやや小さい。
Ep-09
立方晶 TbFe2Sn2Zn18 の単結晶育成と磁気的性質
富山大理, 富山大院理工 A; 村松淳, 上出悠介 A, 水島 俊雄 A, 桑井 智彦 A, 石川 義和 A
Single Crystal Growth and Magnetic Properties of Cubic TbFe2Sn2Zn18
Department of Physics, University of Toyama
A
Graduate School of Science and Engineering, University of Toyama
J. Muramatsu, Y. KamideA, T. MizushimaA, T. KuwaiA, and Y. IsikawaA
RT2X20 (R = 希土類元素、T = 遷移元素、X = Zn、Al)の希土類元素を含む金属間化合物は立方晶 CeCr2Al20
型の結晶構造を持つ。この結晶構造は希土類元素が 16 個の Zn や Al によって作られた Frank-Kasper ケージと
呼ばれる対称性の高いカゴ状構造に囲まれた特徴的な構造を有する。我々の研究室では、CeCr2Al20 型結晶構
造の 16c サイトが Sn に置き換わっている RT2Sn2Zn18 の四元化合物の研究を行っている。
母材として Tb:Fe:Sn:Zn = 1:2:20:20 のモル比率で秤量し、Sn と
0.25
Zn をフラックス剤として、今回は TbFe2Sn2Zn18 の単結晶を育成
した。育成した試料を粉末 X 線回折法によりピークに指数付けし、
NdFe2Sn2Zn18 型の結晶構造をしていることが分かった。格子定数
0.2
25 K
は 14.257 Åと求められ、RFe2Sn2Zn18(R = La から Nd)の格子定数
が作るランタノイド収縮曲線の延長線上にあることも分かった。
0.15
X 線背面ラウエ法により、[110]、[111]、[100]にそれぞれ、2 回対
H // [111]
6.5 K
称、3 回対称、4 回対称を確認した。
H // [110]
右図に示す帯磁率の温度依存性には T = 25 K と 6.5 K で折れが
0.1
H // [100]
見られた。これは反強磁性転移によるものである。T = 25 K で常
磁性から反強磁性に転移し、T = 6.5 K で反強磁性磁気構造が変化
TbFe2Sn2Zn18
0.05
したものと考えられる。T = 25 K 以上では 3 軸に異方性が見られ
H = 0.1 T
ないが、T = 25 K 以下ではわずかな異方性が見られる。
T = 2 K における H = 7 T までの磁化曲線を見ると、[100]、[111]
0
0 10 20 30 40 50 60 70
方向では H = 1 T で、[110]方向では H = 3.4 T でメタ磁性的な振る
T (K)
舞いが観測され、これは磁気モーメントのスピンフロップを反映
した振る舞いであると考えられる。
図:TbFe2Sn2Zn18 の帯磁率の温度依存性
Ep-10
PrNb2Al20 の La 希釈系の基礎物性
富山大理 富山大院理工 A
日比野栞奈 前田萌子 A 尾池光太 A 水島俊雄 A 石川義和 A 桑井智彦 A
Low-temperature properties of La-diluted PrNb2Al20
A
Dept. of Science, Univ. of Toyama
Graduate School, Science and Engineering, Univ. of Toyama
A
K. Hibino, M. Maeda , K. OikeA, T. MizushimaA, Y. IsikawaA, and T. KuwaiA
S ( V/K )
立方晶 PrNb2Al20 は結晶場基底状態が非磁性の Γ3 二重項であり,四極子自由度に密接に関わる異常物性が
低温で現れることが報告されている [1]。一方,結晶場励起状態における磁気的近藤効果のふるまいが中間温
度領域の電気抵抗率や熱電能に現れる。我々のグループでは,PrTr2Al20 (Tr = Ti, V, Nb, Cr, Ta, Mo)やそれらの
La 希釈系の熱電能のふるまいに着目した研究を行っている [2]。これらの系では低温で四極子近藤効果,中
間温度で磁気的近藤効果の発現が共通しており,近藤温度や結晶場分裂幅などの特性温度が異なっている。
今回はこれまで報告のない Tr = Nb の La 希釈系の作製を試み,
基礎物性を測定したのでその結果を報告する。
測定に用いた試料は,母材の組成比を 1-2-20 よりわずかに変えてアーク溶解によって作成されたボタン状
6
試料を 645 ℃,二週間のアニールを経て得られた(Pr0.5La0.5)Nb2Al20 単
相多結晶試料である。熱電能の測定結果を PrNb2Al20 [2]とともに図に
PrNb2Al20
4
示す。PrNb2Al20 の特徴である,35 K 付近の正のピークと 3 K 付近の負
2
のピーク構造が Pr 50%の希釈系でも観測された。加えて,得られた結
果を 1.9 倍すると,高温領域を除き,PrNb2Al20 の温度依存性と定量的
0
に一致することがわかった。この解析結果は,100% Pr の系と比べて
-2
希釈によって Pr 濃度に依存した定量的な違いのみが現れ,Pr 単サイト
の物性が反映されたものであることを示唆している。
-4
(Pr0.5La0.5)Nb2Al20
[1] R. Higashinaka et al.: J. Phys. Soc. Jpn. 80(2011) SA048.
-6
[2] 桑井智彦他:物理学会第68回年会 2012 年 3 月 26 日(広島大)
0
50
100
150
200
T(K)
Ep-11
SmNb2Al20 の単相多結晶試料作製と低温物性
富山大院理工 尾池光太 佐藤美紀 水島俊雄 石川義和 桑井智彦
Preparation of single-phased SmNb2 Al20 polycrystal and its low-temperature properties
Graduate School of Science and Engineering, University of Toyama
K. Oike, M. Sato, T. Mizushima, Y. Isikawa, and T. Kuwai
カゴ状構造を有する立方晶 CeCr2Al20 型の SmTr2 Al20(Tr:遷移金属元素)化合物は,低温において多極子自由度を反映した異
常物性を示す。SmTr2Al20 (Tr =V, Ta) では,それぞれ転移温度 T* =2.9 K (V),2.0 K (Ta)に磁場に鈍感な相転移を示し,電子比
熱係数 γ は 720 mJ/K2 mol (V),3.2 J/K2 mol (Ta)の大きな値を持つ[1][2]。我々のグループではこれらの化合物の極低温熱電能
(S)に着目し,数 K 付近に近藤効果に特徴的な負のピークや,相転移に伴う符号反転を経て,S/T の絶対零度極限値が大きな γ
に匹敵する大きな値を示すことを発表してきた[3]。今回は試料作製の報告がなく,周期表上で V と Ta の間に位置する Nb を Tr と
した SmNb2Al20 の単相多結晶試料の作製に成功し,基礎物性を調べたのでその結果を報告する。
測定に用いた試料は,不純物を極力排除するために,1-2-20 から僅かに異なる
組成比で母材を準備し,アーク溶解で得られたボタン状試料を真空中約 645℃,
一週間のアニール処理を行って作製された。
4f 電子比熱 C4f を温度で割った C4f/T の結果を図に示す。T* = 2.4 K に相転移
に伴うピークが観測され,γ~1.3 J/K2 mol の大きな値を持つことがわかった。電気
抵抗率 ρ や S には V 系や Ta 系と同様な近藤効果の特徴が見られる。講演ではこ
れらの詳細について報告する。
[1] A.Sakai and S. Nakatsuji: Phys. Rev. B 84 (2011) 201106(R).
[2] A.Yamada, R.Higashinaka et al.: J. Phys. Soc. Jpn. 82 (2013) 123710.
[3] T. Kuwai et al.: JPS Conf. Proc. 3 (2014) 011040.