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KEK Proceedings 2015-1
July 2015
A/H
第 16 回
高エネ研メカ・ワークショップ報告集
Proceedings of the 16th KEK Mechanical Engineering Workshop
KEK San-Go-Kan Building
10 April 2015
編集:共通基盤研究施設 機械工学センター
山中
将
Edited by
Masashi Yamanaka, Mechanical Engineering Center
High Energy Accelerator Research Organization
High Energy Accelerator Research Organization (KEK), 2015
KEK Reports are available from:
High Energy Accelerator Research Organization (KEK)
1-1 Oho, Tsukuba-shi
Ibaraki-ken, 305-0801
JAPAN
Phone: +81-29-864-5137
Fax:
+81-29-864-4604
E-mail: [email protected]
Internet: http://www.kek.jp
はじめに
第 16 回 高エネ研メカ・ワークショップを平成 27 年 4 月 10 日に開催しました。
今年は桜の開花が早く満開を過ぎましたが、よい天気の下、皆様をお迎えすることが
できました。
今回は 8 件の口頭発表と 16 件のポスター発表が行われました。午後の部はオーガ
ナイズドセッション「振動の制御」とし、当センターの久米達哉講師がオーガナイザ
ーを務めました。オーガナイズドセッションでは、竹中工務店の松永裕樹様に「ナノ
ビーム衝突を目指した相対位置計測および制御技術」という題目で基調講演をお願い
しました。現在、建設が進められている SuperKEKB の衝突点に関する具体的なお話
を紹介いただき、ナノ精度での制御の難しさを認識しました。他にも、振動を切り口
とした様々な講演を頂きました。ポスター会場には昨年より企業紹介コーナーを設け、
今年も 2 社に出展いただきました。
ご発表いただいた内容は興味深く、大学等からは最新の研究成果を報告いただきま
した。ポスター会場には、当方が空洞製造施設で製造した超伝導加速空洞をいくつか
展示させていただきました。これらに対して設計・解析・加工・計測等の機械工学の
視点から活発な議論が行われました。当センターの今後の技術開発について、多くの
示唆と励ましをいただきました。また、当センターの教職員が取組んでいるプロジェ
クト・研究開発とセンターの施設を KEK 内外の多くの皆様にご紹介できたことは、
意義深いと考えております。
尚、参加者は 110 名と盛況でした。本ワークショップが成功裏に終えられたことは、
ご多用の中お越しいただいた多くの皆様、運営に尽力された方々のお陰であり、深く
謝意を表します。
平成 27 年 6 月 16 日
高エネルギー加速器研究機構
共通基盤研究施設
機械工学センター長
山
中
将
第16回 高エネ研メカ・ワークショッププログラム(2015年4月10日)
(講演時間は質疑応答の5分を含む)
時間
開始
会場
終了
3号館1Fセミナーホール
9:30
9:35
開会の挨拶,事務連絡
山中 将(KEK)
9:35
9:55
「平成26年度機械工学センターの活動報告」
山中 将(KEK)
【座長】 江並 和宏
9:55 10:20
「LHCアップグレード用マグネット部品の試作について」
川又 弘史(KEK)
10:20 10:35
コーヒーブレイク
3号館1F会議室(ポスター講演)
大型非球面形状のナノメートル計測 ー機上校正法の評価ー
岩郷 佑美(東京大学)
Temporal-Coherence Interferometer Using Optical Comb for
CMM Verification -Pulsed Interferometer with a Rough Metal
Ball TargetWiroj Sudatham(東京大学)
「ジャイロを用いた大型対象物の高精度形状評価法の検討-回
10:35 11:00 転機構を用いたジャイロ角速度オフセットの除去」
イメージングウェハ全面厚さ計測技術の開発
久米 達哉(KEK)
小貫 哲平(茨城大学)
「長波長X線ビームラインPF/BL-1A用試料交換システムPAM- Development of chemical mechanical grinding (CMG) wheel for
11:00 11:25 HCの開発」
sapphire wafer
平木 雅彦(KEK)
吴 柯(茨城大学)
11:25 11:50
低熱膨張ミラーの超精密加工
岡田 睦(中部大学)
「ニオブの切削機構」
金枝 敏明(岡山理科大学)
11:50 12:30
昼休み(40分間)
ポスターセッション(60分間)
【ポスター講演の会場は3号館1F会議室です】
※ポスター講演の方は,
この時間ポスターの近くでご説明ください.
12:30 13:30
KAGRA用超高真空対応トラバース装置の開発
浦口 史寛(国立天文台)
車載用ヘッドアップディスプレイ(HUD)用大型自由曲面ミラー
の超精密加工
大村 昭(木村製作所)
ニオブ製超伝導加速空洞の縦型電解研磨技術開発
仁井 啓介(マルイ鍍金)
ポスターは,この時間以前に,
休み時間等を利用してご掲示ください.
SRF空洞構造体用純ニオブ素材の加工性関連材料物性
野原 清彦(しのはらプレスサービス)
また,この時間以降に,
休み時間等を利用しておはずし下さい.
アルバックにおける低コスト化に向けた超伝導加速空洞の開発
永田 智啓(アルバック)
液圧成形による超伝導加速空洞の製造
山中 将(KEK)
13:30 13:35
移動
オーガナイズド・セッション 「振動の制御」
【オーガナイザ・座長】 久米 達哉
【基調講演】「ナノビーム衝突を目指した相対位置計測および
13:35 14:20 制御技術」
松永 裕樹(竹中工務店)
14:20 14:25 記念写真撮影
CFFにおけるR&D空洞の製造と評価
清水 洋孝(KEK)
ニオブ材の切削と成形について
井上 均(KEK)
1kHz RF Gunの製作
高富 俊和(KEK)
14:25 14:50
「大型低温重力波望遠鏡KAGRAにおける防振技術」
高橋 竜太郎(国立天文台)
SuperKEKB超伝導4極電磁石磁場測定ハーモニックコイルの開
発
岡田 尚起(KEK)
14:50 15:15
「測定環境の創造」
安田 悦郎(ヘルツ)
BelleⅡ実験用リングイメージング・チェレンコフ検出器の開発と
建設(続)
岩井 正明(KEK)
15:15 15:30
15:30 15:55
コーヒーブレイク
「振動ジャイロ発電機の正帰還制御」
保坂 寛(東京大学)
☆企業紹介コーナー
・株式会社ミラプロ
・共栄電工株式会社
「白色干渉を用いたCompact ERL主加速器クライオモジュール
15:55 16:20 内超伝導空洞の長期精密位置測定装置の開発」
阪井 寛志(KEK)
16:20 16:25
閉会の挨拶
山中 将(KEK)
16:30~17:30 見学ツアー(超伝導低温工学センター(超伝導磁石の試作),機械工学センター) 【定員25名】
参加ご希望の方は当日、受付に申し出てください。
基 調 講 演
第16回高エネ研メカ・ワークショップ報告集(2015.4.10)
ナノビーム衝突を目指した相対位置計測および制御技術
松永裕樹, 吉岡宏和
(竹中工務店)
大澤康伸, 菅原龍平, 増澤美佳, 山岡広
(高エネルギー加速器研究機構)
Measurement and Control of Relative Positioning for Nano-beam Collision
Hiroki MATSUNAGA and Hirokazu YOSHIOKA
(TAKENAKA Corp.)
Yasunobu OHSAWA , Ryuhei SUGAHARA , Mika MASUZAWA and Hiroshi YAMAOKA
(KEK)
In the SuperKEKB and future International Linear Collider project, it is required to measure and control an offset
of very small beams with a precision of several nanometers at the interaction point. This paper is a feasibility
study on measuring and controlling nano-order relative position by using a laser interferometer and a piezoelectric
stage. The first part shows that the precision of measurement position about a direction of laser radiation is less
than or equal to 1 nanometer in frequency region less than 100 Hz. The second part is discussed a measurement of
relative displacement between two points which are 10 meter away on substructures located at the interaction
point in the SuperKEKB. To compare with difference of accelerometers for reference, a relative displacement
measurement with a precision of several nanometers by a laser interferometer became clear. The final part is
discussed a relative positioning control by using a Piezo-Stage between two points on active vibration isolation
tables. We achieved to control a relative displacement below 2 nanometers in frequency region less than 10 Hz.
Key Words: SuperKEKB, ILC, Nano-order Relative Position, Control of Relative Positioning
ている 4∼7).しかし,振動センサを設置した地点のみの
1.はじめに
振動量を観測するものがほとんどであり,離れた 2 点
SuperKEKB1,2)では,ピークルミノシティを KEKB の
間の地盤振動による相対位置ずれを検出するものでは
40 倍に向上させることを目標としており,ビームサイ
ズ(高さ)は 50nm 程度に絞り込むことを計画している.
更に,ILC 計画においてはビームサイズを 5nm 程度に
ない.また,木村ら,増澤らは水管傾斜計を用いて離
れた 2 点間の相対位置ずれ計測
8,9 など)
を行っているが,
振動領域の計測には不向きである.
まで絞り込む計画であるなど,ナノビーム衝突を達成
超伝導電磁石の相対位置制御の既往技術として,山
するためには,電子・陽電子ビーム間の相対位置ずれ
を nm オーダーで計測・制御する技術が不可欠である.
KEKB,SuperKEKB では軌道フィードバックシステ
ム 3)が採用されており,KEKB では約 1μm のビームを,
SuperKEKB ではその約 1/20 の 50nm のビームを制御す
下らは nm オーダーの位置決め性能を目指した位置決
め基台の開発を行っている 10,11).しかし,設置床からの
相対位置のみが計測・制御可能であり,離れた 2 点間
の nm オーダーの相対位置計測・制御はできない.
本稿では,レーザー干渉計を用いてレーザー照射軸
る.一方,ビーム衝突点の Belle 測定器周辺における地
方向に関する相対位置ずれ検出,及び相対位置制御を
盤では 1Hz 以上の積分振幅で 60nm 以上の鉛直振動量
行った結果を報告する.
4)
であるため,SuperKEKB においては地盤振動による超
初めに,1Hz 以上の短期的な振動成分を対象として,
伝導電磁石間の相対位置ずれが,ルミノシティ低下要
レーザー干渉計の相対位置ずれ検出精度確認を行う.
因となることが懸念される.安定したビーム衝突のた
次に,SuperKEKB の BelleⅡ測定器ビーム衝突点周辺に
めには,軌道フィードバックシステムに加えて,超伝
おいて,約 10m 離れた 2 点間を対象に,レーザー照射
導電磁石間の相対位置ずれを nm オーダーで計測・制御
軸方向に関する相対位置ずれ振動計測を実施し,約 10m
する技術が必要と考えられる.本研究では,建築サイ
の距離でも nm オーダーの計測が可能であることを確
ドのアプローチとして,超伝導電磁石間の相対位置ず
認する.最後に,3m 程度離れた 2 点間を対象に,ナノ
れを対象とした計測・制御を目的とする.
ポジショニング XYZ ステージを用いて,レーザー照射
計測に関する既往の研究として,加速器施設におい
軸方向に関する nm オーダーの相対位置制御を行う.
て常時発生している振動を計測する試みが多く行われ
-1-
第16回高エネ研メカ・ワークショップ報告集(2015.4.10)
2.レーザー干渉計
を示す.
図 2(a) は,ピエゾアクチュエータにより精密位置決
nm オーダーの相対位置ずれ検出を行うため,キーサ
めを行う PI ジャパン製ナノポジショニング XYZ ステー
イト・テクノロジー製レーザーポジショニングシステ
ジ P-562.3CL(以下,ピエゾステージ)を用いたシステ
ム(以下,レーザー干渉計)を採用した.使用した光
ムである.ピエゾステージの仕様を表 2 に示す.クロ
学機器を表 1 に,計測原理の概要を図 1 に示す.
ーズドループにおいて 1∼10Hz 帯域で 1nm の振幅で加
レーザー干渉計は,干渉計∼反射鏡間について照射
振可能であり,内蔵センサ出力は 0.4nm の分解能を有
軸方向の相対位置ずれを nm オーダーで計測可能なレ
する.ピエゾステージ上に反射鏡を固定して nm オーダ
ーザー測長システムである.レーザヘッド内部では,
ーの加振を行い,内蔵センサ出力値との比較により精
ゼーマン方式により発振波長を高い安定度で制御し,
度検証を行う.
僅かに異なる周波数 f1,f2 の 2 本のビームを生成して
図 2(b) は,エア・ブラウン製低周波加振器 APS113
射出する.ビームスプリッタを通過させ,分岐したビ
(以下,低周波加振器)を用いたシステムである.た
ームを基準信号(f2-f1)として受光する.
だし,低周波加振器のみでは相対位置ずれ計測ができ
分岐したもう一方のビームは干渉計に進み,内部の
ないため,特許機器製サーボ型加速度計 MG-102S(以
偏光板により 2 本のビーム f1,f2 に分岐される.ビー
下,加速度計)を 2 台用いて,その時刻歴差分を 2 階
ム f1 は測定対象に設置した反射鏡で反射する際に,干
積分することで 2 点間の相対位置ずれとして評価する.
渉計∼測定対象間の相対速度に応じて±Δf1 だけ周波
低周波加振器の可動部分に反射鏡と共に加速度計 1 台
数が変化し,ビーム f1±Δf1 となって干渉計へと戻る.
を固定し,もう 1 台を干渉計と同位置の土間コンクリ
これと,干渉計内部で反射したビーム f2 とが合流し,
ート上に設置する.本システムでは,20∼100Hz 帯域を
測長信号(f2-f1)±Δf1 として受光する.
対象に精度検証を行う.尚,加速度計による相対位置
その後,アクシスボードにおいて基準信号と測長信
ずれ検出の分解能については次節で詳述する.
号の差分を取り,周波数の変化量±Δf1 を相対位置ず
両システムについて,レーザヘッド,ビームスプリ
れ量に変換し,時々刻々と積算することで,干渉計∼
ッタ,干渉計,及び加振装置は全て土間コンクリート
反射鏡間の相対位置ずれを計測する.
表1
上に設置し,外乱の影響を受けにくいよう計測区間を
光学機器の仕様
光学機器名 (型番)
0.15m という至近距離に設定した.
備考
レーザヘッド(C5517)
He-Ne レーザ:λ=633nm
リニア干渉計(10702A)
分解能:λ/2
15%スプリット
アクシスボード(N1225A)
分解能:λ/1024
反射鏡
ピエゾステージ
レーザヘッド
反射鏡(10703A)
ビームスプリッタ(10701A)
計測区間 0.15m
干渉計
ビームスプリッタ
加振方向
(a) ピエゾステージを用いた検証システム
計測区間 0.15m
干渉計
ビームスプリッタ
加速度計 2
低周波加振器
レーザヘッド
加速度計 1
加振方向
(b) 低周波加振器を用いた検証システム
図2
表2
図1
精度検証システム
ピエゾステージの仕様
レーザー干渉計の計測原理
3.レーザー干渉計の相対位置ずれ検出精度の確認
3.1 精度検証用の実験システム
レーザー干渉計の相対位置ずれ検出精度を把握する
ため,1∼100Hz までの振動領域を対象に検証を行った.
この振動数範囲全域を nm オーダーで精度検証するた
めに,2 種類の加振装置を用いた.図 2 に実験システム
-2-
ストローク
:200μm(XYZ 方向)
静電容量センサ(内蔵)
:アナログ出力分解能 0.4nm
クローズドループ分解能
:1nm
第16回高エネ研メカ・ワークショップ報告集(2015.4.10)
分析による周波数ベースでの精度検証を行う.各加振
3.2 加速度計差分による相対位置ずれ検出分解能
加速度計 2 台の差分を用いた相対位置ずれ検出の分
振動数の変位スペクトル振幅値について,ピエゾステ
解能を確認するため,土間コンクリート上に加速度計 2
ージ,または低周波加振器の値を正解値とした時のレ
台を約 0.1m 離して同一水平方向に設置した.ほぼ剛体
ーザー干渉計の値が±10%以内の値である時に相対位
挙動を示すと考えられるこの 2 点について,水平方向
置ずれ検出できているものとした.加振振幅は 5nm 程
の微動測定を 3 分程度実施した.表 3 に示すパラメー
度から徐々に小さくしていき,各振動数ごとに相対位
タの FFT 分析を行い,周波数ベースでの評価を行った.
置ずれ検出できた最小振幅を抽出した.
図 3 に結果を示す.
相対位置ずれを検出できた最小振幅値を図 4 に示す.
図 3(a)は,各加速度計のフーリエ振幅スペクトルを 2
横軸に加振振動数,縦軸にの変位スペクトル振幅値を
階積分したものを示している.図 3(b)は,加速度計 2
示しており,参考値としてピエゾステージ加振を行わ
台の時刻歴差分のフーリエ振幅スペクトルを 2 階積分
ない場合のレーザー干渉計の常時微動測定結果につい
したものを示している.図 3(a)より,加速度計単体では
て,各振動数の変位スペクトル振幅値を示した.
低振動数領域において微動レベルで 100nm 近い振動量
2Hz 以降の加振結果では,全て 1nm 以下の相対位置
であった.それらの時刻歴差分を取った図 3(b)では,あ
ずれを検出できている.1Hz 加振の結果については,ピ
2
る一定範囲の加速度のライン 0.7∼1.5μm/s に分布して
エゾステージ加振を行わない常時微動時に 1.5nm 以上
いる.加速度計分解能のカタログ値が 1.0μm/s2 である
の振幅で相対振動しているため,約 2nm という結果で
ことから,図 3(b)の範囲が加速度計 2 台の差分による相
あったが,S/N 比が取れる状況においては 1nm の相対
対位置検出の分解能と考えられる.
位置ずれを検出可能と考えられる.
表3
以上より,S/N 比がある状況では,レーザー干渉計に
FFT パラメータ
より 1Hz 以上の振動数領域について 1nm 以下の相対位
:256Hz
ウィンドウ幅
:4096 点
窓関数
:ハニングウィンドウ
オーバーラップ
:75%
平均方法
:加算平均
100
Displacement spectra
[nm(0-p)]
置ずれを検出可能であることを確認した.
加速度計1
加速度計2
10
0.01
0.001
10
Frequency (Hz)
100
(a) 加速度計単体の計測結果
Displacement spectra
[nm(0-p)]
レーザー干渉計 (加振時)
加速度計差分 (加振時)
レーザー干渉計 (加振なし)
1
0
1
2
3
5
10
Sine-wave frequency (Hz)
(a) ピエゾステージによる検証システム
1
100
2
10
0
2
1.5μm/s ライン
図4
0.1
加速度 0.7μm/s2 ライン
0.001
10
Frequency (Hz)
20
30
50
70
100
Sine-wave frequency (Hz)
(b) 低周波加振器による検証システム
1
0.01
レーザー干渉計 (加振時)
加速度計差分 (加振時)
レーザー干渉計 (加振なし)
1
加速度計差分
1
精度検証結果 − 各振動数の検出最小振幅値
4.離れた 2 点間の相対位置ずれ検出
100
4.1 計測システム
(b) 加速度計 2 台の差分の計測結果
図3
2
1
0.1
Displacement spectra
[nm(0-p)]
Displacement spectra
[nm(0-p)]
サンプリング
次に,SuperKEKB の BelleⅡ測定器ビーム衝突点周辺
加速度計 2 台の差分の相対位置ずれ検出精度
において,図 5 に示すような約 10m 離れた日光側,大
穂側の橋脚上(B3F レベル)の 2 点間を対象として相対
3.3 レーザー干渉計の精度検証結果
ピエゾステージにより 1, 2, 3, 5, 10Hz の正弦波加振を,
低周波加振器により 20, 30, 50, 70, 100Hz の正弦波加振
位置ずれ計測を実施した.
レーザー干渉計については,日光側にレーザーヘッ
ド,ビームスプリッタ,干渉計を設置し,大穂側に反
をそれぞれ 1 分間行い,表 3 に示したパラメータの FFT
射鏡を設置した.レーザー干渉計との比較用に加速度
-3-
第16回高エネ研メカ・ワークショップ報告集(2015.4.10)
表4
計を日光・大穂側それぞれ X 方向に設置し,nm オーダ
FFT パラメータ
ーレベルの相対位置ずれ検出が可能であることを確認
サンプリング
:1000Hz
する.また YZ 方向についても加速度計を設置し,2 点
ウィンドウ幅
:4096 点
間の各方向の相対位置ずれ振動量を把握する.
大穂側
日光側
約 10m
窓関数
:ハニングウィンドウ
オーバーラップ
:75%
平均方法
:加算平均
レーザー
反射鏡
Z
X
図5
5.相対位置制御の基礎的検討
レーザーヘッド
ビームスプリッタ
干渉計
加速度計
XYZ 方向
BelleⅡ周辺の測定点
5.1 実験システム
次に,離れた 2 点間を対象として,レーザー干渉計
とピエゾステージを用いた nm オーダーの相対位置制
御の基礎的検討を行う.図 7 に実験システムを,図 8
に制御ブロックダイアグラムを示す.
4.2 計測結果
約 10 分間の常時微動測定を実施し,表4に示すパラ
レーザーヘッド
ビームスプリッタ
メータで FFT 分析を行った結果を図 6 に示す.
A
加速度計1
図 6(a)X 方向では 3Hz 近辺に地盤振動によるものと
反射鏡
干渉計
除振台1
考えられる振幅 20nm 弱のピークがある.レーザー干渉
B
制御区間
3m
計の値は加速度計差分と良く一致しており,2Hz 以上の
加速度計2
除振台2
ピエゾステージ
Z
振動数領域では加速度計差分の分解能よりも振幅が大
X
きいことから,10m 離れた 2 点間についてレーザー照
射軸方向の相対位置ずれを nm オーダーで検出可能で
床1
図7
あることが確認できる.一方,図 6(b)YZ 方向では,10Hz
相対位置制御の実験システム
床1変位
レーザー干渉計出力
A点変位
除振台1
程度以下の低振動数領域において Z 方向の相対位置ず
床2
P2
+
れが大きく,2∼3Hz において平均的に 30nm 以上の相
PI コントローラ
対位置ずれが生じていることが確認された.
床2変位
Displacement spectra
[nm(0-p)]
100
除振台2
レーザー干渉計
加速度計差分
ピエゾステージ
B点変位
図8
相対位置制御ブロックダイアグラム
10
本検討では,4 章の SuperKEKB で計測した低振動数
領域における相対振動量とほぼ同等にするため,異な
1
る機種の 2 台のアクティブ除振台
12)
上にレーザー干渉
計の光学機器,及びピエゾステージを設置した.レー
0.1
1
10
100
ザーヘッドは冶具を介して大梁に強固に固定した.反
Frequency (Hz)
射鏡はピエゾステージ上に固定し,干渉計∼反射鏡間
(a) X 方向 − レーザー干渉計と加速度計差分比較
(A 点−B 点間)の距離は 3m とした.
Y方 向
Z方 向
100
Displacement spectra
[nm(0-p)]
P1
+ +
この 3m の区間を制御対象として,X 方向の相対位
置ずれをレーザー干渉計で検出し,ピエゾステージに
10
より単純な PI 制御を実施した(図 8 参照).また,制御
結果との比較用に加速度計を,干渉計近傍と反射鏡近
1
傍(ピエゾステージ上)に 1 台ずつ設置し,その差分
により評価することとした.
0.1
1
10
Frequency
[Hz] (Hz)
100
5.2 制御結果
(b) Y・Z 方向 − 加速度計差分
図6
制御無しの場合,有りの場合について,それぞれ常
10m 離れた 2 点間の相対位置ずれ計測結果
時微動測定を 3 分程度実施した.レーザー干渉計と加
-4-
第16回高エネ研メカ・ワークショップ報告集(2015.4.10)
速度計差分について,表 4 に示したパラメータの FFT
みしか計測できないため,離れた 2 点間の鉛直方向の
分析を行った結果を図 9 に示す.尚,図 9 両グラフの
相対位置ずれを計測するための改良検討や,固定冶
50Hz にあるパルス状の値は電気ノイズによるものであ
具・地盤等の長期変動の考慮など課題が多い.また,
る.
SuperKEKB や ILC で制御対象になると考えられる超伝
制御無しの図 9(a)では,2Hz 前後の領域で数十 nm の
導電磁石の重量に見合った支持・制御系を構築する必
相対位置ずれが生じており,図 6(a)の SuperKEKB にお
要がある.
ける結果と概ね同程度以上の振動量となっている.
今後,これらの課題を解決し,離れた 2 点間の鉛直
制御有りの図 9(b)では,レーザー干渉計の値は 1∼
方向の相対位置ずれを nm オーダーで検出・制御する技
100Hz 全域に亘って 2nm 以下に相対位置制御できてい
術の開発を目指す.
ることが確認できる.一方,加速度計差分の値はグラ
フ中に示す加速度計差分分解能の範囲までしか計測で
参考文献
きないため,6∼7Hz 程度までレーザー干渉計の値と乖
1) K. Oide et al., Proc. of PAC’09, M03RAI01 (2009).
2) M. Masuzawa, Proc. of IPAC’10, FRXBMH01 (2010).
3) H. Ishii et al., “DEVELOPMENT OF A BEAM
POSITION DETECTOR FOR AN ORBIT FEEDBACK
SYSTEM IN SuperKEKB”, Proceedings of the 8th
Annual Meeting of Particle Accelerator Society of Japan,
p.511-515, 2011
4) M. Masuzawa et al., “VIBRATION ISSES FOR
SUPERKEKB”, Proc. of 11th IWAA, DESY, Sep. 11-17,
2010
5) M. Masuzawa et al., “FLOOR LEVEL MOTION
OBSERVED IN THE KEKB TUNNEL.”,
KEK-PREPRINT-2003-97, Dec 2003. 5pp.
6) R.Sugahara et al., "Ground Motion Measurement and
Vibration Suppression at KEK", KEK-PREPRINT-2005-.
77, Nov 2005. 13pp
7) S.Matsui., “FLOOR VIBRATION OF
ACCELERATOR TUNNEL AT XFEL/SPring-8.”,
Proceedings of Particle Accelerator Society Meeting
2009, Ibaraki, Japan, p.140-142., 2009
8) H.Kimura et al., “Alignment Reference and Subsidence
of Floor at XFEL”, Proceedings of the 7th Annual
Meeting of Particle Accelerator Society of Japan, Himeji,
Aug.4-6, 2010
9) M. Masuzawa et al., “SuperKEKB Main Ring Tunnel
Motion”, Proceedings of the 11th Annual Meeting of
Particle Accelerator Society of Japan, p.1398-1402, 2014
10) S.Yamashita et al., “次世代加速器素粒子物理実験
のための新しいナノメーター振動制御システムの
実証研究”, 科学研究費助成事業, 2004-2006
11) Y.Morita, “リニアコライダー加速器のためのピエ
ゾアクチュエーターを用いた振動制御システムの
開発”, 東京大学修士論文, 2007.1
12) H. Yoshioka and N. Murai, "An Active Microvibration
Isolation System," 7th International Workshop on
Accelerator Alignment (IWAA2002), SPring-8, Hyogo,
Japan, 2002.
離する結果となっている.また,本制御実験では測定
区間 3m という条件であるが,3.3 節で示した至近距離
での計測精度と同等の性能を有していることから,レ
ーザー干渉計の計測精度が距離にほとんど依存しない
ことが確認できる.
以上より,離れた 2 点間を対象として,nm オーダー
の相対位置制御が原理的に可能であることを確認した.
Displacement spectra
[nm(0-p)]
100
レーザー干渉計
加速度計差分
10
1
0.1
1
10
100
Frequency (Hz)
(a) 制御なし
Displacement spectra
[nm(0-p)]
100
レーザー干渉計
加速度計差分
加速度計差分
分解能
10
1
0.1
1
図9
10
Frequency (Hz)
100
(b) 制御あり
常時微動時の相対位置制御結果
6.おわりに
本稿では,1Hz 以上の短期的な振動成分を対象として,
レーザー干渉計の相対位置ずれ検出精度の確認,及び
約 10m 離れた 2 点間のレーザー照射軸方向の相対位置
ずれ検出を行い,nm オーダーで検出可能であることを
確認した.更に,約 3m 離れた 2 点間を対象として nm
オーダーの相対位置制御が原理的に可能であることを
確認した.
しかし,レーザー干渉計ではレーザー照射軸方向の
-5-
第16回高エネ研メカ・ワークショップ報告集(2015.4.10)
-6-
一 般 講 演
第16回高エネ研メカ・ワークショップ報告集(2015.4.10)
平成 26 年度機械工学センターの活動報告
山中
将
(高エネルギー加速器研究機構)
Activities of Mechanical Engineering Center in FY2014
Masashi YAMANAKA
(KEK)
The topics of Mechanical Engineering Center (MEC) in FY2014 are as follows; the renewal Mechanical workshop
building #3, the manufacturing of the model super conducting (SC) magnet for Large hadron collider (LHC)
upgrade, and the development of high purity niobium material for the super conducting radio frequency (SCRF)
cavity. The number of manufacturing support was 574 including many kinds of mechanical parts and equipments.
7 requests for the engineering support were accepted, and MEC engineers are joining to 21 science programs and
projects in KEK to support as the mechanical engineering expertise such as design, analysis, manufacturing and
prototyping.
Key Words: MEC, Manufacturing support, Engineering support, SC magnet, niobium
1.はじめに
に示す測定器室に設置した測定機器はユーザーズコー
ナーの一部として,機構職員,共同利用者に開放して
機械工学センターは高エネルギー加速器研究機構共
います.
通基盤研究施設に所属し,機械工学を専門とする研究
者と技術者により構成されています.当センターの業
務は大きく以下の 3 項目に分類されます.
○支援業務
・製造支援:各種部品の製作,測定,組立,設計等
・エンジニアリング支援:各研究プロジェクトに参加
し,装置・設備の設計,製作,実験などを行う.
・サービス:ユーザーズコーナー(工作機械・測定器
の開放),部品・材料の出庫,3D プリンターによる
造形,CAD ライセンス
図 1 測定器室(第3工作棟)の様子
○研究開発
・加速器科学に貢献する,機械工学分野の先進的な研
超伝導低温工学センターが行っている CERN の LHC
究開発
アップグレード用超伝導磁石の開発にエンジニアリン
・新しい加工技術,要素技術の調査
グ支援として参加しています.平成 26 年度は新しく設
○教育・人材育成
・総研大の教育の分担
計した磁石の各部寸法を評価するための図 2 に示すモ
・技術講習会(機械工作,機械製図)の開催
デルコイルを製作しました.製作する磁石はダイポー
・企業への技術移転
ル磁石のため,コイルを長手方向に巻く必要がありま
平成 26 年度のトピックスとしては,第 3 工作棟の改
す.コイルを正確に巻くため,線材の間に高精度に加
修工事完了と LHC アップグレード用超伝導磁石のモデ
工されたスペーサを挟みます.この設計には 3 次元 CAD
ルコイルの製作,および超伝導加速空洞用高純度ニオ
を使用し,形状を確認するために昨年導入した 3D プリ
ブ材の開発があげられます.機械工学センターの主要
ンターを使って造形し,実際に巻き線作業をして機能
な建物は第 1~第 3 工作棟です.第 1,第 2 工作棟は工
を確認しました.形状が確定したら,CAD データから
場であり,第 3 工作棟は測定器室と実験室に利用して
CAM を介して加工データを作成し,当センターが所有
います.内外装工事とエアコンの取替工事を行い,測
する 5 軸マシニングセンターで実際のスペーサに使わ
定器室の整備と実験スペースの確保を図りました.図 1
れるガラスエポキシ材を加工しました.コイルの外側
には鉄製のヨークが配置されますが,この試作に新し
-7-
第16回高エネ研メカ・ワークショップ報告集(2015.4.10)
くレーザ加工を採用し,迅速な試作部品の製造を貢献
ローとして引き続き勤務されます.清水洋孝博士研究
しました.最近導入した設備や新しい加工方法を活用
員とシニアフェローの舟橋義聖さんは任期満了となり
して,プロジェクトの推進に貢献しています.
ました.
2.製造支援
平成 26 年度は 574 件の製造支援の依頼を受付けまし
た.最近の依頼件数の変化を図 4 に示します.依頼件
数は増加傾向にあり,これらを主として 6 名の技術職
員が対応しています.お断りしている依頼も多くあり
ます.製作依頼の内容は図 5 に示すように多岐にわた
ります.製作する部品は装置の一部分であることが多
いのですが,依頼者に実際にどのように使用するかを
教えていただき, 知見を深めるとともに,最適な加工
方法や精度管理を探究しています.
図 2 超伝導磁石のモデルコイル
液圧成形による超伝導加速空洞の製造技術開発に取
り組んでいます.成形性のよいニオブシームレス(継
ぎ目なし)パイプの入手が重要であり,これを国産化
するために(株)アルバックと共同研究を行っていま
す.同社のマテリアル事業部のご努力により,パイプ
製造に必要な高純度ニオブ材の開発に成功しました.
材料の性能を評価するために,図 3 に示す 1 セルの超
伝導加速空洞を機構内の空洞製造技術開発施設(CFF)
で製造し,STF 棟にて縦測定(VT)を行いました.最
図 4 最近の製造支援の依頼件数の変化
大加速勾配は 41 MV/m に達し,空洞材料として使用可
能なことを確認しました.この材料を使ったシームレ
スパイプの開発を進めていきます.
(a) 導波管用治具
図 3 アルバック製のニオブ材を用いて製作した 1 セル
超伝導加速空洞
1 年間の教職員の異動を報告します.平成 26 年 10 月
に鈴木純一先任技師が素核研へ異動しました.かねて
から病気療養中の小池重明技師が 11 月 15 日に,安島泰
雄先任技師が 12 月 12 日にそれぞれ逝去されました.
これまでの活躍に感謝するとともに,ご冥福をお祈り
(b) フラックスコンセントレータ部品
します.また,年度末にて工藤昇専門技師と井上均専
門技師が定年となりました.井上さんは,シニアフェ
-8-
第16回高エネ研メカ・ワークショップ報告集(2015.4.10)
(c) ホトマルケース
図 5 製作依頼の例
(c) ロウ付け後の完成品
図7
3.エンジニアリング支援
C バンド用 RF Gun
平成 26 年度はエンジアリング支援として図 6 に示す
図8は現在,改造工事が進んでいる Belle II 検出器の
7 件の依頼を受付けました.複数年にわたり取組んでい
3 次元 CAD モデルです.検出器は複数の装置から構成
るプロジェクトもいくつかあり,現在 21 件に対応して
され,それぞれに開発チームがあります.最終的に組
います.これらを主として 10 名の職員(教員 4,技術
立を行いますが,事前に干渉が無いかを CAD 上で確認
職員 6)が対応しています.ここでは数件を紹介します
します.装置によって使用される CAD が異なるので,
が,多くのテーマは本報告集に詳述されておりますの
データ変換を行い,高性能の PC を用いて確認作業を行
で,ご覧ください.
っています.
図 6 エンジニアリング支援の依頼件数の内訳
図7は C バンド用の RF Gun です.本体は無酸素銅の
複数の部品から構成されており,水素炉を用いて,ロ
ウ付けで組み立てます.部品の超精密加工もセンター
にて行います.昨年 CAD システムを更新し,装置の設
計は 3 次元 CAD で行うことが多くなりました.数点の
図8
Belle II 検出器の 3 次元 CAD モデル
部品は CAD データを支給して,外注にて製作しました.
空洞製造技術開発施設(CFF)を使って,超伝導加速
空洞の製造を行っています.ニオブ製のセルを電子ビ
ーム溶接で組み立てます.図9は強め輪(補強材)を
溶接しているところですが,強め輪の両側を 2-beam 溶
接という方法で同時に溶接しています.偏向機能を使
って,ビームを左右に高速に振ることにより実現しま
す.これにより短時間で溶接が可能となり,生産性の
向上に貢献します.材料や工法を変えた試験用空洞を
数台試作し,たて測定を行い性能を評価しています.
(a) 3 次元 CAD データ
-9-
第16回高エネ研メカ・ワークショップ報告集(2015.4.10)
素開発を行っています.主として教員が取り組んでい
ます.現在取組んでいるテーマは以下の通りです.
・液圧成形による超伝導加速空洞の製造技術の開発
・タンパク質結晶のハンドリングに関する研究
・ヘリウムチャンバーに対応した試料交換システム
の開発
・ジャイロを用いた高精度形状測定法の研究
図9
強め輪の電子ビーム溶接
・タンパク質結晶化の高速スクリーニング
これらの研究成果については,本報告集に詳述されて
重力波の直接検出を目指す KAGRA 計画において,
おりますので,ご覧下さい.
干渉計用ミラーを納める図10に示すクライオスタッ
トとその冷却を行う低振動冷凍機の開発に協力してい
5.教育・人材育成
ます.これらを,岐阜県飛騨市神岡に建設された干渉
計用トンネル内に精密設置するための測量と測量基準
毎年 6 月に機械技術講習会を開催しています.対象
点設置,さらに,設置された機器のアライメント評価
は機構職員,学生,共同利用者です.機械工作 2 日間,
を行いました.
機械製図 1 日の 3 日間コースです.24 名の受講者があ
りました.図11に示すように,技術職員が指導しな
がら実習を行います.
図 11
機械工作の実習の様子
6.おわりに
機械工学センターは教員 4 名,技術職員 13 名,事務
員 1 名(シニアフェロー,研究支援員を含む)の合計
図 10
トンネル内に設置されたクライオスタット
18 名で運営しています.最新の設備導入や新しい加工
その他にも 3 次元 CAD を用いた構造設計や解析,各
種装置の設計や試作を行っています.KEK が参加する
大型プロジェクトの一部を担当する場合もあります.
技術等を習得し,KEK の研究活動を十分支援できるよ
うに精進します.また独自の研究開発も積極的に推進
します.今後ともご支援をよろしく,お願いします.
実験装置が大型.複雑化する傾向にあり,すべてを当
センターの工場で製作するのは無理ですが,できるだ
け技能を KEK 内に蓄積することを目指して,もの作り
にこだわった支援を行っています.
4.研究開発
設計・加工・メカトロニクス・計測等の機械工学の
基礎的な研究と将来の加速器開発に向けた先行的な要
- 10 -
第16回高エネ研メカ・ワークショップ報告集(2015.4.10)
LHC アップグレード用マグネット部品の試作について
川又
弘史
高エネルギー加速器研究機構

マグネット断面確認のため長さ 200 ㎜
はじめに
高エネルギー過疎機器研究機構では
のショートモデルを作成する、このモ
セルン(欧州原子核研究機構)の CMS、
デル磁石は磁石中心部のみで、端部は
ATLAS 検出器の衝突ルミノシティ向
使用せず、通電も行わない。
上のための、アップグレード用マグネ
2:モデル磁石の制作
2m のショートモデルマグネットを
ットの開発を行っている。
2 台制作、通電、磁場測定を行い、実
衝突点にある左右の加速器用超伝導
機制作のための設計に反映させる。
電磁石(ビーム分離用ダイポール)計
制作は KEK 内で行い、
制作の手順、
4 台を担当する予定である。
治具類の確認を行う。

3:KEK で通電試験を行い、性能評価
現状のマグネット
1 つの衝突点の片側に、常電導マグ
を行う。
ネット 6 台、約 22m で現在稼働してい
制作台数は 7 台を計画している、加
る所を、超電導マグネット、全長約 7m
速器に組み込むマグネット 4 台、予備
に置き換える。
のマグネット 2 台、プロトタイプ 1 台
長さは 1/3 となるが定格磁場は 4 倍
を計画。
セルンと仕様策定やスケジュールを
になる。
KEK 低温工学センターが対応し、機械
工学センターは低温工学センターと共
に設計、試作、製造支援を行っている。

D1 磁石構造
構造は旧 J-PARCSCFM と似ており、
制作治具類を修正し、使用が可能であ
る。
通常コイルは円筒の径方向に巻かれ
るが、加速器用コイルは円筒の軸方向
図1:[既存磁石と比較]
に鞍型に巻かれる、端部にスペーサと
呼ばれる、絶縁、非磁性の GFRP を配

開発の流れと KEK の役割
置し、磁場の調整と、線材へ加わる応
1:メカニカルショートモデルの制作
力を軽減させる。
機械構造の検証と組み立て手順、
- 11 -
今回 GFRP に放射線に耐性のある素
第16回高エネ研メカ・ワークショップ報告集(2015.4.10)
材を使用した、S2 ガラス繊維を使用し、
樹脂に BT レジンを用いて成形した製
品を使用した。
これまでの G10 と違い、硬度が高く、
加工がしにくいため、工具寿命が短い。
加工の際はダイヤモンド等のコーテ
ィングが必要になる。
コイルの外周に絶縁層を設け、カラ
ーと呼ばれるステンレスの積層板で、
コイルを抑える。
さらに、電磁鋼板を積層した、ヨー
クでコイルに圧力をかけ、コイル形状
図2:上[既存形状(下)のテーパ形状か
を拘束する。
ら、突起の付いた形状(上)に修正]
最外周にヘリウムの圧力容器となる
図3:下[カラーを組み付けたメカニカ
シェルを溶接し、磁石が完成する。
ルショートモデル]

今回の試作について
1回目のメカニカルモデルで改善点

が見つかり、カラー形状の修正が必要
まとめ
CERN との国際協力として、LHC 高
輝度化アップグレードに向けた超伝導
になった。
このメカニカルショートモデルの結
果により、カラーの最終形状を決める
ため、速やかに2回目の試作を行う必
磁石開発を行っている。
機械構造設計検証のためメカニカル
ショートモデルを試作。
レーザー加工を導入することで迅速
要に迫られた。
既存の磁石は試作にワイヤーカット
放電加工機を使用していたが、加工時
間とコストの問題から、レーザー加工
機を使用し、試作を行った。
ワイヤーカット放電加工機に比べ、
切断面、加工精度等は悪いが、加工時
間が早く、安価であるため、試作とし
ては、修正個所の反映が素早く、複数
回行える。
- 12 -
な試作が可能になった。
2015年度2mモデル磁石を製作
し冷却、励磁試験を実施する予定。
第16回高エネ研メカ・ワークショップ報告集(2015.4.10)
ジャイロを用いた大型対象物の高精度形状評価法の検討
-回転機構を用いたジャイロ角速度オフセットの除去
高エネルギー加速器研究機構(KEK) ○久米 達哉, 佐藤 政則, 諏訪田 剛, 古川 和朗
秋田大学
奥山 栄樹
Precise Profile Evaluation for Large Objects by Using a Gyro
–Elimination of the Gyro Rate Offset by Using a Rotating Mechanism
High Energy Accelerator Research Organization (KEK),
Tatsuya KUME, Masanori SATOH, Tsuyoshi SUWADA, Kazuro FURUKAWA
Akita University, Eiki OKUYAMA
1.
緒
言
科学,工学の進歩に伴い,大型かつ高精度な機器や施設が,航空
宇宙,先端科学分野などを中心に造られるようになり,それらの大
きさや形状を高精度に評価する必要性が増している.現在,これら
の用途には,レーザトラッカやトータルステーションなどの光学
式測量器が主として用いられるが,測定光路中の空気揺らぎや障
害物などにより,実用的な評価範囲は 100 m 程度となる.さらに広
範囲の評価が必要とされる場合は,複数の測量結果を組み合わせ
る測量ネットワークやGPS を用いることになる.しかし一般的に,
高精度な評価が必要とされるような対象物は,環境変化による変
動を抑えるために,堅牢な建造物や地下の限られた空間に設置さ
れることが多い.このような空間では,測量器の設置位置が制限さ
れることなどにより,測量ネットワークの精度が上げられず,GPS
機器も使用できない.これらの理由から,使用環境や対象物の大き
さを問わずに,より広範な用途に適用可能な高精度形状評価法の
実現が,特に 100 m を超えるようなレンジにおいて望まれている.
一方,形状評価は多くの場合,高精度な直定規やレーザビームの
作る直線,干渉計参照面などの形状基準に対する比較測定により
行われる.そのため,これらの形状基準を上回るような精度での評
価は原理的にできない.しかし,角度検出に基づく形状評価では,
形状基準が不要であることから,高精度加工機や計測機の案内面
形状や干渉計参照面形状など,極めて高い精度が要求される形状
の評価に古来用いられ,同時に,形状基準を用意することの難しい,
大型対象物の高精度形状評価に対しても有効と考えられる.1,2)
本研究では,従来用いられてきた傾斜計(水準器)やオートコリ
メータとは異なり,方位基準をも不要とするジャイロを角度検出
に用いることで,より多種多様な,用途,対象物,環境に適用可能な
高精度形状評価法を,特に,既存技術では手薄な 100 m を超えるレ
ンジにおいて,実現することを目指す.
角度検出にジャイロを用いた形状評価では,ジャイロドリフト,
または,ジャイロ角速度(レート)オフセットと呼ばれる,ジャイロ
角度信号の時間変化,または,ジャイロ角速度信号のオフセットを
除去することが,高精度化に対する課題となる.我々はこれまでに,
連続的な反転測定により,高性能なジャイロを地球上にて用いる
場合に問題となる,地球自転の角速度の影響とともに,ジャイロ角
速度オフセットが除去できることを実証した.3)
ここでは,より高速なジャイロ角速度オフセットの変動に対応
するため,回転機構を用いた連続反転測定によるジャイロ角速度
オフセットの除去に関する検討を行った.
2.
原
理
回転するジャイロのモデルを図 1 に示す.ここでジャイロは, p
軸周りの回転角p を検出する.ここで,p 軸をジャイロの角度検出
軸,p 軸を法線とする面 P をジャイロの角度検出面と呼ぶ.ジャイ
ロは p 軸と直交する r 軸周りに回転するものと考え,その回転角
をジャイロの回転角r とする.次にジャイロ初期状態での p 軸方
向をz 軸,r 軸方向をy 軸とした,地球上に固定した直交座標系(x, y,
z)を定義し,x および z 軸周りの回転角x, z を考える.ここで,x, z
は,r軸のy軸に対する方位角のx, z 軸周り成分となる.本検討では,
回転するジャイロから得られる角度信号をもとに,r 軸の方位角
x, z を,ジャイロの角度オフセットや角速度オフセットの影響を
受けること無く導出することを目的とする.
z
p
(r
p
r
x
r
y
z
P
x
図 1.回転するジャイロのモデル
r 軸の方位角x, z は,ジャイロの回転角r でこれらを変調した
(1)式のような角度変化として,ジャイロに検出される.
- 13 -
第16回高エネ研メカ・ワークショップ報告集(2015.4.10)
sin 1 sin  z cos  r  sin  x sin  r 
(1)
と示される.ただし,地球運動に伴う(x, y, z)座標系の位置及び姿勢
変化の影響は,高々数秒程度と目されるジャイロ回転運動の 1 周
期に要する時間において,無視できるものと考える.
(1)式の特別な場合として,r = 2n(n は整数)の場合を,図 2(a)に,r =
/2 + 2n(n は整数)の場合を,図2(b)に,それぞれ示す.前者の場合z
が,後者の場合x が,それぞれ検出される.
z
p
s
r
z
p(t)
z
p
r
x
r
y
r
p
r=2n
x
y
y
P
z
x
z
x
q
P
図 3. 図 1 において,ジャイロに固定した座標系(p, q, r)
を考慮したモデル
x
図 3 において,微小時間 d間にジャイロに作用する角速度s に
起因する角度成分は,
(a).
 z cos  r   x sin  r d
(3)
z
と表され,時刻 0~t 間にジャイロに作用する角度成分は,
 
t
r=/2 +2n
x
0
r
(4)
と,求められる.
時刻t = 0 のときのジャイロ回転角r = 0 とすると,時刻t のジャ
イロ回転角r は,ジャイロ回転の角速度r を用いて,r = rt と示さ
れることから,(4)式は(5)式のように書き換えられる.ここで(5)式
を解くと, (6)式が得られる.
p
x
 
t
p
0
(b)
図 2. 回転するジャイロにおいて,(a).r=2nの場合,および,
(b). r=/2+2nの場合,何れの場合も n は整数である
図 1 に示されたモデルに,ジャイロに固定した直交座標系(p, q,
r)を加え,図 3 に示す.ここで,ジャイロは r 軸周りに一定の角速度
r で回転しながら,p 軸周りの角度p(t)を検出する.t は時刻を表
し,t = 0 の初期状態において,p 軸は z 軸と,r 軸は y 軸と,それぞれ
一致するものと考える.
角速度検出器であるジャイロを用いて,本研究が目的とするよ
うな高精度な角度検出を行う場合,約 73 rad/s の地球自転の角速
度に代表される測定座標系に加わる角速度の影響は無視できな
い.ここでは,s を, 測定座標系に加わる角速度と考え,その(x, y, z)
成分を(x, y, z)と定義する.このとき,それらの p 軸周りの成分
は,
 z cos  r   x sin  r
cos  r   x sin  r d
y
z
P
z
(2)
z
cos r   x sin  r d

z
sin  r t  x cos  r t  1
r
r
(5)
(6)
これが座標系に作用する角速度s に起因するジャイロの角度出
力となる.
ジャイロの角度オフセットと角速度オフセットをそれぞれ0,
0 とすると,時刻 t に検出されるジャイロ角度信号p(t)は,
 p t    0  sin 1 sin  z cos r t  sin  x sin  r t 

1
r
 z sin r t   x cos r t  1  0t
(7)
と示される.ここで,(7)式の右辺第一項は,ジャイロの角度オフセ
ット,第二項は,検出することを目的とするジャイロ回転軸の方位
角,第三項は,測定座標系に加わる角速度s に起因する角度成分,
第四項は,ジャイロの角速度オフセット0 に起因する角度成分で
あり,第二項以外は,除去すべき誤差成分となる.
このとき,ジャイロ回転の半周期後のジャイロ角度信号は,
- 14 -
第16回高エネ研メカ・ワークショップ報告集(2015.4.10)


 p  t 
 r

 sin  z cos  r t 
   0  sin 1 

  sin  x sin  r t 


0
1   z sin  r t


  0t 


t


cos
1


r  x
r
r

 sin  z cos  r t  1
 
sin 1 
  sin  x sin  r t   r
(8)
と示される.(7),(8)式から,ジャイロで検出される角度信号のジャ
イロ回転の半周期後との差を求めると(9)式が得られる.

 p  t 


r

 sin  z cos  r t 
   p t   2 sin 1 

  sin  x sin  r t 

2    z sin  r t  0



 r    x cos  r t   r
(9)
一方,ジャイロ回転の 1 周期後のジャイロ角度信号は,

 p  t 

 sin  z cos  r t 
2 
   0  sin 1 

r 
  sin  x sin  r t 

20
1  z sin  r t


  0t 
 r   x cos  r t  1
r

 p  t 

20
2 
   t  
 r  p
r
(11)
すると,(9),(11)式から,(12)式が得られる.
  2 

 p  t 
1   r 
 
4



 2 p  t  
r







   p t 



(12)
(12)式が,ジャイロの回転角r で変調された r 軸の方位角x, z
の導出式である.ここで,右辺第一項は,測定座標系に加わる角速
度の影響を示す.第二項は,ジャイロから得られる角度信号の,ジ
ャイロの回転周期2/r の半周期後と一周期後の値との二階差分
値に相当する.ここで,(12)式には,ジャイロの角度オフセット0,お
よび,角速度オフセット0 が含まれない,即ち,当該関係式より,0
および0 の影響を受けずに,ジャイロ回転軸の方位角x, z が導出
できる.
一方,(12)式右辺第一項に残留したx, z は,座標系に加わる角
速度である.それらの最大の要因となる地球自転の影響について
は,図 4 に示される,ジャイロ設置位置の緯度と,ジャイロ回転軸
の子午線からの偏角を知ることで,(13), (14)式のように,補正す
ることができる.
(10)
と示される.(7),(10)式からジャイロで検出される角度信号のジャ
イロ回転の 1 周期後との差を求めると (11)式が得られる.
   z sin  r t 


   x cos  r t 
 x   cos   sin  ,
(13)
 z   sin  .
(14)
ここで,は地球自転の角速度を示す.
一方,(12)式は,ジャイロの回転角速度r をx, z に対して十分
に大きくする,即ちジャイロの回転角速度を十分に速くすること
で,右辺第一項が無視できるほど小さくすることが可能であるこ
とを示す.この場合,地球自転に起因するような,座標系に加わる
角速度の影響が除去可能となる.
さらに,ジャイロの回転速度を上げることで,ジャイロのより高
速の角速度オフセットの変動の影響,即ちより低安定なジャイロ
の出力変動の影響が除去可能となる.一般的に,小型,安価なジャ
イロは,その出力安定性に劣るが,ジャイロの回転速度を上げ,よ
り短い間隔の反転測定を適用することで,より小型,安価なジャイ
ロを用いた,より小型,安価な装置が実現可能であることを示す.
3.

検証実験および考察
3.1 実験装置
Meridian line
Sensitive
axis
Rotating
axis
r
Axis of
the earth
 r

図 4. 地球自転の影響,r はジャイロ回転軸,
r はジャイロ回転角速度を示す
図 5. 市販の FOG ユニットを回転機構に搭載した検証実験装置
図 5 に,市販の光ファイバジャイロ(FOG)ユニット,多摩川精機
TA4265N1510(大きさ,65 mm×130 mm×85 mm; 質量,1.5 kg; 測定
範囲,±180°; 演算サイクル,100 Hz; ドリフト,3 °/h-rms)を,回転機
構に載せた実験装置を示す.回転機構の回転数は,0~4 回転/秒
(rps) の間で連続可変であり, 10:1 のボール減速機を介してAC サ
- 15 -
第16回高エネ研メカ・ワークショップ報告集(2015.4.10)
ーボモータで駆動される.なお,以下に示すデータは,空調等を含
めた特別の温度制御や防振対策は施さずに取得したものである.
p
z
p’
3.2 ジャイロ角度信号
r
p(t)
図 6 に,実際にジャイロの回転速度を 0.05~2 rps まで変化させ
た場合に得られた,ジャイロ角度信号の例を示す.ジャイロ回転速
度が大きくなるにつれて,ジャイロ検出角度の時間変動が大きく
なっていることがわかる.これは,ジャイロの角度検出方向とは直
交方向に回転するために,本来検出されることの無いジャイロの
回転運動が,回転機構へのジャイロ取り付け角の誤差により,ジャ
イロの角度検出方向成分を持ち,それが検出されたものと考えら
れる.
図 7 に,ジャイロ取り付け角の誤差を考慮したモデルを示す.
図に示されるようなジャイロ取り付け角の誤差を考慮した場
合,(7)式で表わされる,回転するジャイロから得られる角度信号
は,(15)式のように示される.

z
 sin  z cos  r t 

  sin  x sin  r t 
y
P
(15)
0.5 rps
(t+2/g)-(t) [mrad]
(16)
y = -0.0631x + 42.445
R² = 0.9892
42
41.5
0.2 rps
0.1 rps
0.05 rps
angle [mrad]
2000
1000
0
60
120
180
240
-2000
-3000
-4000
10
15
20
25
3.3 方位角の導出
3000
0
5
図 8.ジャイロの回転周期 T に対するジャイロ回転 1 周期前後の
角度信号差(t+2/r)-(t),
グラフの傾きが0,グラフの切片が 2・sin()を示す.
4000
-1000
x
41
なる関係式が成り立つ.このとき,T=2/r で,ジャイロ回転周期を
示す.この場合,異なる回転速度で,ジャイロ回転の1 周期前後の角
度信号を求めると,図 8 に示される関係が得られる.ここでは, グ
ラフの傾きが0,グラフの切片が 2・sin()を示すが,図に示され
た最小自乗近似直線より,ジャイロ角速度オフセット, 0 = -63.1
rad/s, ジャイロ取り付け角度の誤差,  = 6.8 mrad が求められる.
1 rps
x
T[s]

   t   T  o  2  sin  

2 rps
z
42.5
0

y
q
ただし,このような場合であっても (12)式は成り立つ.即ち,ジャ
イロ取り付け角の誤差の有無やその値に関わらず,求めるべき
ジャイロ回転軸の方位角は,(12)式の関係から求められる.
なおこの時,ジャイロ回転の 1 周期前後に得られる角度信号の
差を求めると,
2
r
r
r

1  z sin  r t


  0   r sin  t
 r   x cos  r t  1

x
図 7. ジャイロ取り付け誤差を考慮したモデル,
がジャイロ取り付け角の誤差を示す
 p t    0  sin 1 
  t 
s
time [s]
300
図 9(a), (b)に,回転速度 2, 1, 0.5, 0.2, 0.1, 0.05 rps の場合に得られ
た FOG ユニットの角度出力をもとに,(12)式の関係から求めたジ
ャイロ回転軸,r 軸の方位角,sin-1(cosrtsinz+sinrtsinx)の時刻 t に
よる変化の様子を示す.これらは,初期状態において装置を水平に
設置し,回転軸 r を東西に向けて連続回転させた場合に得られた
ものであり, ≒36 °, ≒90°となる.図には,ジャイロの回転周期に
同期した,数10 rad~数100 rad の振幅の周期的な変化が見られ
る.
導出された方位角は,ジャイロ回転周期と同期し,さらに,それ
らの振幅である,数10~数100 radは,回転系の製作精度等を考慮
すると妥当な値である.これらの理由から,導出された方位角は,
信頼するに足るものと考えられるが,その信頼性を議論するため,
今後更なる客観的な検証が必要である.
また,図にはジャイロ回転速度が速くなるにつれて,信号振幅が
小さくなる傾向がみられる.現状において,これは,ジャイロ回転
速度が速くなるにつれて,回転系の角運動量が大きくなり,回転系
の回転軸ぶれ量が小さくなるためと,解釈しているが,そのメカニ
ズムについても,より詳細な検証と解明が必要である.
図 6. 回転するジャイロから得られた角度信号
- 16 -
第16回高エネ研メカ・ワークショップ報告集(2015.4.10)
2 rps
1 rps
0.5 rps
0.2 rps
0.1 rps
0.05 rps
angle [mrad]
0.5
0
-0.5
90
100
110
120
time [s]
(a).
2 rps
1 rps
0.5 rps
0.1
転測定に基づく方法を提案した.
回転するジャイロから得られる角度信号をもとに,その回転周
期の半周期,および,1 周期後の角度信号との二階差分値相当値と,
地球自転の影響の補正値から,ジャイロの角度オフセット,角速度
オフセットの影響を受けることなく,方位角が検出できることを,
解析により示した.同時に,ジャイロの回転角速度を十分に速くす
ることで,地球自転に起因するような,座標系に加わる角速度の影
響が除去可能であること,及び,より小型,安価なジャイロを用い
た,より小型,安価な装置が実現可能であることを示した.
複数の回転速度での測定値をもとに,ジャイロ角速度オフセッ
ト,および,ジャイロ取り付け角の誤差が求められることを示し,
実際に, 光ファイバジャイロ(FOG)ユニットと回転ステージを用
いた実験的な検証より,これらの値を導出した.また同時に,ジャ
イロ取り付け角度の誤差の影響を受けることなく,方位角検出が
可能であることを,解析により示した.
回転するジャイロの角度信号から導出された方位角は,ジャイ
ロ回転周期と同期し,それらの振幅が,回転装置の組付け誤差等か
ら予想される値に対して妥当な値であることから,信頼するに足
るものと考えられた.今後,その信頼性を議論するため,より客観
的な検証が必要である.
angle [mrad]
0.05
謝
辞
0
本研究を遂行するにあたり, KEK 機械工学センターの協力を
得た. 本研究はKEK 共同開発研究 2014-ARL-2,および,科研費
(25420077)の助成を受けた.
-0.05
-0.1
90
95
time [s]
(b)
図 9. (a). 回転するジャイロから得られた角度信号から導出され
た,ジャイロ回転軸の方位角, sin-1(cosrtsinz+sinrtsinx),
および,(b). (a)における 2, 1, 0.5 rps 時の拡大
4.
結
文
100
言
大型対象物の高精度な形状評価への適用を目指した角度検出
に基づく形状評価法において,ジャイロを角度検出器に用いる場
合に最大の問題になる,角度信号のドリフト,もしくは,角速度信
号のオフセットの影響を除去するため,回転機構を用いた連続反
献
1). T. Kume, E. Okuyama, M. Satoh, T. Suwada, K. Furukawa,
“Large-scale Accelerator Alignment Using an Inclinometer, “Precision
Engineering, 2013, 37, pp. 825– 830, (2013).
2). T. Kume, M. Satoh, T. Suwada, K. Furukawa and E. Okuyama,
“Straightness evaluation using inclinometers with a pair of offset bars,
“Precision Engineering, 39, pp. 173– 178 (2015).
3). T. Kume, M. Satoh, T. Suwada, K. Furukawa and E. Okuyama,
“ Large scale straightness evaluation using a gyro - Reversal
measurement for eliminating gyro drift, “The 15th International
Conference on Precision Engineering, B27, pp. 239-242, Kanazawa,
Ishikawa, Japan, July 22-25, (2014).
- 17 -
第16回高エネ研メカ・ワークショップ報告集(2015.4.10)
長波長 X 線ビームライン PF/BL-1A 用
試料交換システム PAM-HC の開発
平木 雅彦 1, 2, 山田 悠介 3, 4 , 松垣 直宏 3, 4, 千田 俊哉 3, 4
1
高エネルギー加速器研究機構 共通基盤研究施設 機械工学センター,
総合研究大学院大学 高エネルギー加速器科学研究科 加速器科学専攻
3
高エネルギー加速器研究機構 物質構造科学研究所 構造生物学研究センター
4
総合研究大学院大学 高エネルギー加速器科学研究科 物質構造科学専攻
2
Development of Sample Exchange System PAM-HC
for Longer Wavelength X-ray Beamline PF/BL-1A
Masahiko HIRAKI1, 2, Yusuke YAMADA3, 4, Naohiro MATSUGAKI3, 4 and Toshiya SENDA3, 4
1
Mechanical Engineering Center, Applied Research Laboratory, KEK,
2
Dept. of Accelerator Science, School of High Energy Accelerator Science, SOKENDAI,
3
Structural Biology Research Center, Institute of Materials Structure Science, KEK,
4
Dept. of Materials Structure Science, School of High Energy Accelerator Science, SOKENDAI
Sample exchange system is one of key technologies for fully-automated data collection at synchrotron beamlines.
The structural biology research center of the Photon Factory (PF) has developed and operated sample exchange
system PAM (PF Automated Mounting system) at macromolecular crystallography beamlines of PF and PF-AR.
BL-1A has been built for longer wavelength experiments and opened for users since 2010. We also installed the
PAM at BL-1A. In order to decrease absorption of diffraction signal by air, we covered whole diffractometer with
a helium chamber recently. In parallel with development of the chamber, we developed a new sample exchange
system PAM-HC. The PAM-HC can mount and dismount samples through a tunnel in a side of the chamber. We
have opened the PAM-HC in October, 2014.
Key Words: protein crystallography, automation, crystallization, synchrotron radiation, beamline
1.はじめに
ミラーを用いて集光し,タンパク質結晶に照射する.
タンパク質の立体構造を知ることは,学術的な興味
だけでなく,立体構造を元にコンピュータ上で薬の分
子設計が行われるなど,創薬の分野においても重要に
なってきている.タンパク質の立体構造の多くは放射
光を用いたX線結晶構造解析によって解明されており,
高エネルギー加速器研究機構(KEK)の PF (Photon
Factory) および PF-AR (PF-Advanced Ring) という2つ
の放射光リングに計5本のタンパク質 X 線結晶構造解
そして,結晶の向きを変えながら複数枚の回折イメー
ジを収集し,専用ソフトウェアで処理することで,タ
ンパク質の立体構造を得ることができる.そのための
実験装置がタンパク質 X 線結晶構造解析ビームライン
である.PF には,BL-1A,BL-5A,BL-17A の 3 本の PX
ビームライン,PF-AR には AR-NW12A,AR-NE3A の 2
本の PX ビームラインが構造生物学研究センターによ
って整備されている.
析ビームライン(以下,PX ビームライン)が建設,運
用されている.全ビームラインに試料交換システムを
2.2 試料交換システム PAM
タンパク質結晶は大きさが 10~100μm 程度で壊れ
導入し,全自動実験,リモート実験等に利用している
が,PX ビームラインの1つである BL-1A にヘリウムチ
ャンバーを設置したことによって,試料交換システム
を使うことができなくなった.そこで,新たにヘリウ
ムチャンバーに対応した試料交換システムを開発する
やすいため,クライオピンの先端のループ内に保持さ
れ,通常は液体窒素で凍結して運搬することが多い.X
線の高輝度化,検出器の読み出し速度の高速化に伴っ
て,回折イメージの収集に要する時間が短くなってお
り,実験時間全体のうち試料(クライオピン)の交換
ことにした.
が占める割合が増えてきている.そこで,効率的に実
験を行うために,試料交換システムの開発が行われて
2.試料交換システム PAM
きた 1-5).
2.1 タンパク質 X 線結晶構造解析ビームライン
筆者らは,米国スタンフォード放射光研究所(SSRL)
X 線結晶構造解析実験を行うためには,放射光リング
の協力の下,試料交換システム PAM (PF Automated
から出てくる放射光から目的の波長の X 線を取り出し,
- 18 -
第16回高エネ研メカ・ワークショップ報告集(2015.4.10)
Mounting system) を開発した 6)(Fig.1)
.PAM は液体窒
けてあるコレットチャックでつかむことができるよう
素デュワー内にセットされた試料を取り出し回折計に
になっており,チャックの開閉も圧空で行うことがで
載せ,回折実験終了後試料を回収し液体窒素デュワー
きる.
に戻す.これを実験ハッチ外から遠隔操作で行うこと
ができる.我々はさらに効率良く試料交換を行うため
に,一度に 2 つのクライオピンを持つことができるダ
ブルトングを開発し,約 10 秒程度で試料の交換を行う
ことが可能になった 7).
Fig.2
New sample exchange system for helium chamber
Fig.1 Sample exchange system PAM (BL-5A)
3.新試料交換システム PAM-HC
3.1 ヘリウムチャンバー対応試料交換システム
BL-1A はタンパク質 X 線結晶構造解析で良く用いら
Fig.3 Liquid nitrogen Dewar
れる波長 0.95~1.1Åの X 線に加えて,波長 2.7~3.3Å
の X 線を用いることが可能なビームラインである.長
試料を保管しておくための液体窒素デュワー内には,
波長 X 線の空気による吸収・散乱を抑えるために,以
前は試料直後から検出器に至る部分にヘリウムパスを
Universal V1-puck を 9 個セットできる台があり,合計
入れていたが,試料から検出器までの距離を自由に設
144 個の試料をセットできる.液体窒素は,液面センサ
定できないため,試料周辺から検出器まで全体をヘリ
を用いた自動供給システムにより実験ハッチ外から供
ウムチャンバーで覆うことにした.しかし,Fig.1 に示
給される.また,ロボットアームを乾燥させるための
した試料交換システムとヘリウムチャンバーが干渉す
ドライヤも取り付けられている.
るため,チャンバー側面の穴から試料を交換できるよ
3.2 温度測定実験
うな新たな試料交換システムの開発を行った.
試料交換は、文献 2 および 5 のロボットと同様に,
試料交換システムは単に試料を液体窒素デュワーか
液体窒素デュワー内に上向きに置いてある試料をロボ
ら取り出し,回折計にマウントすればよいわけではな
ットがつかんで液体窒素デュワーから引き上げた後,
く,運搬中に極低温を保つことが求められる.そこで,
ロボットアームを水平にして試料回転軸の軸に沿って
運搬中の温度変化を測定するために,試料とほぼ同じ
試料をマウントする方式とした.
形状でタンパク質結晶がある位置に熱電対を取り付け
Fig.2 に開発した試料交換システム PAM-HC を示す.
た温度センサを製作した(Fig.4)
.
試料をつかむためのロボットアームは,XYZ ステージ
作製した温度センサを用いて,試料運搬時の温度測
で駆動され,マウント時に回転させる機構は圧空アク
定を行った.通常のピンと異なりケーブルを引き出す
チュエータを用いている.ヘリウムチャンバー側面に
部分が試料下側に付いているため,液体窒素中でロボ
試料交換用の穴を開け,開閉ができるように真空バル
ットが持っている状態から測定を始めている.また,
ブを取り付けた.試料はロボットアーム先端に取り付
回折計にマウントする際に,試料回転軸を 7mm ほど下
- 19 -
第16回高エネ研メカ・ワークショップ報告集(2015.4.10)
げて,マウントした際の熱電対の位置が試料位置と一
時には,熱電対は極低温ガスが吹き付けられているが,
致するようにした.
温度センサのベースの金属の部分は徐々に室温に向か
測定結果を Fig.5 に示す.時刻 0 s の時には温度セン
って温度が上昇している.したがって,ロボットアー
サは液体窒素中にある.窒素の沸点は -195.8℃である
ムと温度センサでほぼ密閉されているものの,温度セ
が,測定結果は -188℃ と約 8℃高く表示されることが
ンサ本体から熱が伝わり温度が上昇するのではないか
分かる.時刻 21.5 s 付近で回折計にマウントし,ロボ
と考えている.
ットアームが退避すると,温度センサには極低温ガス
マウントしてからディスマウントするまでの時間を
が吹き付けられるため,-158℃まで温度が上昇している.
変えて温度変化を測定する,また,Fig.4 の銅の部分を
X 線回折実験はこの状態で行われることになる.一方,
無くした温度センサを製作することで,温度センサ本
ディスマウントする際には,ロボットアームが近づい
体の影響を調べる予定である.また,温度センサで検
てくるときに極低温ガスを遮るため一瞬温度が上昇す
出されているということは,実際のタンパク質結晶の
るが,温度センサをつかむとロボットアームは液体窒
温度も上昇するので,温度上昇を抑えるピンの形状の
素で冷やされているため温度は下がる.その後,運搬
開発にもつながる.
中に温度が上昇し,液体窒素デュワーに戻った際には,
再び温度が下がるという結果を得た.
4.おわりに
ヘリウムチャンバーに対応した試料交換システムを
開発し,その概要について述べた.試料とほぼ同じ形
状の温度センサを製作し,試料運搬中の温度変化を調
べたところ,ディスマウント時に温度上昇があること
を確認した.今後は,温度上昇の原因を解明するため
に,種々の形状の温度センサを製作し,センサの形状
が温度に与える影響について調べる.試料交換システ
ムは,ピンの有り無しセンサ,2 次元バーコードリーダ
ー,液体窒素デュワーの蓋の有り無しセンサ等を取り
付け,より安定した運用を目指す.
Fig.4 Cryopin-shaped temperature sensor
参考文献
1)
A. Cohen et al., “An automated system to mount cryocooled protein crystals on a synchrotron beamline,
using compact sample cassettes and a small-scale
robot”, J. of Appl. Cryst., 35, 720-726, 2002.
2)
G. Ueno et al., “Sample management system for a vast
amount of frozen crystals at SPring-8”, J. of Appl.
Cryst., 37, 867-873, 2004.
3)
F. Cipriani et al., “Automation of sample mounting for
macromolecular crystallography”, Acta Cryst., D62,
1251-1259, 2006.
4)
L. Jacquamet et al., “Upgrade of the CATS sample
changer on FIP-BM30A at the ESRF: towards a
commercialized standard”, J. of Sync. Rad., 16, 14-21,
2009.
5)
G. Snell et al., “Automated sample mounting and
alignment system for biological crystallography at a
synchrotron source”, Structure, 12, 537-545, 2004.
6)
M. Hiraki et al., “Automated Sample Exchange Robots
for the Structural Biology Beam Lines at the Photon
Factory”, AIP Conference Proceedings, 879, 1924-1927,
2007.
7)
M. Hiraki et al., “High-throughput operation of sampleexchange robots with double tongs at the Photon
Factory beamlines”, J. of Sync. Rad., 15, 300-303,
2008.
Fig.5 Temperature of sample exchanging
3.2 考察
マウント時とディスマウント時のロボットアームは,
ちょうど逆の動きになっているが,温度測定結果(Fig.5)
では,対称になっておらず,ディスマウント時に温度
上昇が見られる.マウント時は,温度センサ全体が液
体窒素で冷やされており,運搬中はロボットアームと
温度センサで熱電対がほぼ密閉されているため,温度
上昇がないものと考えられる.一方,ディスマウント
- 20 -
第16回高エネ研メカ・ワークショップ報告集(2015.4.10)
加速管用ニオブの切削特性
金 枝 敏 明
(岡山理科大学工学部機械システム工学科)
Cutting Characteristics of Niobium Plates Using for Acceleratator Cavity
Toshiaki KANEEDA
(Okayama University of Science)
Cutting experiments were conducted to investigate cutting characteristics in Niobium plates. Niobium is used for a super
conductivity material such as an acceleratator cavity because of its high cunductivity, ductility and anti-corrosion property.
However, mechanical engineers are unfamiliar with not only the material properties but also the mechanical properties.
Hence, the cutting charactersitics have yet been determined. The cutting charactersitics such as cutting forces, machined
surface properties, chip formation mechanism are not investigated sufficiently. The results indicated that the cutting provided
not smooth chip formation as a difficult-to-cut material:less than 30 degree rake angle tools offered unstable chip formation
which means alternating change in the cutting forces at the same depth of cut :unstable chip formation resulted in chipping of
tool edge.
Key words : Niobium, cutting, chip formation, machined surface, chipping, adhesion, unstable chip formation
1.はじめに
2.被削材
従来は世の中で特殊な用途に限定されていた材料が,科学技術
が拡大するにつれ,切削加工の必要性も生じ,最適な切削工具や
2.1 ニオブの特性
表1に,ニオブの材料特性を示す.バナジウム族の遷移金
属で,体心立方構造で,原子番号 41,比重は大きく 8.6,ま
た融点も高く 2570K, 熱伝導率は 53.7 W •m −1•K-1(300K) であ
切削条件,効率的な加工方法が求められ,精密な加工面性状の要
る.耐酸性は高く,化学的性質に優れている.
の発展とともに一般にも使用され始めている.そのような材料の
例にニオブやタンタルといった材料が挙げられる.それらの用途
求も増加しつつある.上記の材料は,その機械的特性も一般に周
Table 1 Material properties
知されておらず,切削加工に至っては報告がほとんどない.しか
し,金枝らの報告 1) によれば,いわゆる難削材の範疇に分類され
るものとされている.
ニオブは,一般的には鉄—ニオブ合金(フェロニシブ)として
生産され,高張力鋼等の高級鋼の微量添加剤として使用されてき
たが,近年その極低温(9.2 K)での超伝導特性が注目され,核
物理や素粒子物理の研究に使用される粒子加速器で粒子を衝突
させるための加速管や加速空洞材料に採用されている2).これに
3.実験方法
よって電子,陽子,陽電子等の粒子を高エネルギー状態で加速さ
せることできる.ちなみにヒッグス粒子の存在を認めさせた CERN
3.1 実験装置ならびに方法
切削実験装置には , NC 二次元精密切削実験装置を使用した.
の実験装置でも,加速空洞に使用されている.さらに医学の分野
本装置は,門形の平削り盤の構造と運動機構を有し , 板状の
3)
で放射線治療装置の加速管材料として採用されている . しかし,
上述したように一般になじみが少ない材料ゆえに,詳細で的確な
切削加工特性を明らかにした研究は,著者の調査した範囲では見
出しにくく,さらに加工現場ではその加工条件で頭を悩ませてい
るのが現状である.
そこで,ニオブの切削実験を実施し,切削条件の切削抵抗や加
工面性状に及ぼす影響ならびに切りくず生成のメカニズムについ
て明らかにしたので,ここに報告する.
- 21 -
Table 2
Mechanical properties 第16回高エネ研メカ・ワークショップ報告集(2015.4.10)
Table 3 Cutting conditions
被削材を二次元切削できる装置である4). 切削速度は 50m/
切削抵抗は,水晶製の圧電型切削動力計 ( キスラー社製
min まで,切込みは 1 μ m からそれ以上に設定できる.
9251A) を用いて測定した.
被削材は , 高エネルギー加速器研究機構 (KEK) で作成し
表3に切削条件をまとめて示す.
た加速空洞用のニオブ材である.表2に,その機械的性質
4.実験結果ならびに考察
を示す.被削材の寸法は,長さ 80mm で , 厚さは 3mm である.
施している.
4.1 前加工面の硬度分布 図 1 に , 最終前加工面の硬度分布を示す.言い換えれば,
工具材料は,超硬 K10,cBN である.すくい角α は,α =
本実験での切削予定領域の硬度分布ということになる . 硬
0°〜 30°とした.工具幅は 5mm とした.刃先は,可能な
度は表面からの深さに概ね比例して低下しているが,他の
限り鋭利にするために,工具研削盤によって砥石 #800 で研
アルミニウムや銅,ステンレス鋼と比べ,極表面での軟化
削仕上げをした.このようにすれば,刃先丸み半径ρはρ
傾向8) が少ししか見られない . しかし加工変質層の厚さは,
= 2 μ m 5) となる.
それらと同様に切込み量の数倍以上になっている.例えば,
切込み t 1 は,t 1 = 10 ~ 100 μ m である.金枝らは,各
t L = 100 μ m であれば,その厚さは 200 μ m 以上となって
なお,試料には,993K,10 −5torr の真空中 2 時間の焼鈍を
種金属切削の切削抵抗を正確に測定するには,切削する部
いる.本実験では,切込み t 1 の値によってこれらの加工硬
分の加工硬化度が重要であることを指摘し,特に軟質金属
化度の異なる部分を削ることになる.
ではそれが顕著で,純アルミニウムでは切削速度の低い領
4.2
工具材種の影響
超硬 K10 ならびに cBN を使用して , 切削速度 V =20.0m/
域では,その加工硬化度によって切削抵抗値が最大3倍も
変化することを明らかにしている4).その加工硬化度を制
min, すくい角α = 30°で , エマルジョンを使用して実験
御するには以下で述べる前加工を入念にする必要があるが,
を行ったが,前者でも後述するように良好な流れ形切りく
最終的には最終前加工で実施する.その際のパラメータが
ず生成状態に至る条件は限定されることになった.後者の
最終前加工切込み t L であり,今回も t L = 10 〜 100 μ m と
cBN でも切削を実施したが , 超硬工具の場合よりも刃先へ
した.
の凝着が激しく , 次項で述べるすくい角を大きく変化させ
最終前加工を実施する前には,切削予定領域の加工硬化
ても,また切削速度を変化させても刃先への溶着は超硬よ
度を極力母材の値,すなわち加工硬化を極小にしなければ
りも過大で ,cBN 工具での切削では , 良好な切削状況は得
いけない.そこで以下の過程が必要となる.まず,被削材
られなかった.したがってこれ以降の結果は , すべて超硬
である板材には,切断等によって加工変質層があり,それ
K10 での結果となる.
を除去する必要がある.そこで,ほぼ平面となっている切
Vickers microhardness Hv 削予定部分を切込み t 1 = 30 μ m で切削抵抗が安定するま
で十数回切削する.これを t 1 = 20 μ m,t 1 = 10 μ m で 30
0
μ m と同様に逐次行う.t 1 = 10 μ m では,切削抵抗が同
20
µm したり,安定しなかったり(不確定切削)する 1 種の交番
が存在する.このことについては , 後述する.切り
Depth from top surface d
現象
くず生成が安定した時点で最終前加工切込み t L で最終前加
工を実施する.その後 , 所定の切込み t 1 で本実験を実施す
る. 切削速度 V は塗布効果が大きく現れ7),かつ潤滑効果が
大きい V = 5.3 m/min から 50.0 m/min までとした.
切削油剤は,延性金属切削で塗布効果が大きいオレイン
酸7), 切削油剤メーカー推奨の活性硫黄系極圧剤を添加した
エマルジョン系水溶性切削油剤 (JX 日鉱日石製ユニソルブ
80
100
120
140
160
180
90
100
110
120
Fig.1
Depth of cut in the last pre-cutting :t L = 10 µm tl=10
:t L = 20 µm tl=20
:t L = 30 µm tl=30
200
:t L = 50 µm tl=50
220
:t L = 70 µm tl=70
260
- 22 -
80
60
240
ル EM-R) である.
70
40
じ切込みに関わらず切削する度に,切削が安定(確定切削)
6)
60
Load 0.49 N
Vickers microhardness distribution in last pre-cutting surface
第16回高エネ研メカ・ワークショップ報告集(2015.4.10)
Table 4 Rake angle effects on chip formation
V = 20.0 m/min, K10, Emulsion type
a) Rake angle α = 0°
10µm
20µm
30µm
50µm
70µm
100µm
10µm
20µm
○
×
×
×
×
×
×
×
×
×
×
×
b) Rake angle α = 30°
30µm 50µm
×
×
×
×
×
×
×
×
×
×
×
×
70µm
100µm
×
×
×
×
×
×
×
×
×
×
×
×
10µm
20µm
30µm
50µm
70µm
100µm
○
○
○
○
○
○
■
■
■
○
○
○
■
■
■
■
■
■
■
■
■
■
■
■
■
■
■
■
■
■
■
■
■
10µm
20µm
30µm
■
■
■
50µm
70µm
100µm
○: Flow type ■: Unstable
×: Tear type
4.3 すくい角の影響
なものとなった.繰り返し現象とは,今回の工作物である
4.2 での結果を基に , 表4にすくい角α の切りくず形状
板材の場合 , 切削 1 回目では,(1) 切りくずが刃先に溶着
への影響を示す.切削速度は V =20.0m/min,切削油剤はエ
し,それによる切りくず滞留が発生し,それがむしれ形切
マルジョンを使用している.結果は , α = 30°とそれ以下
りくず生成時と同じように一部加工面に過切削を引き起こ
のすくい角の二つの場合に分かれるので,α = 0°と 30°
し,良好な加工面が得られないものになる.この切削状態
の場合のみを示す.
を不確定切削 (Unsteady cutting) と呼ぶ .(2) 次に切削 2 回目
同表 a) α = 0°の場合,エマルジョンを使用したにも関
では , 加工面には過切削部分(すなわち凹部)があるので,
わらず , 加工面にはむしれ痕が生成されるむしれ形切りく
所要の一定の切込みにならない切削となり,切削は可能と
ずになった.それを×印で表す.
なり比較的良好な加工面になる.この切削状態を確定切削
一方 , α = 30°の場合,表中の■印で示される条件で
状態 (Steady cutting) (3) さらに切削すると (1) と同様な切
は切削抵抗や切りくず,加工面の性状が,切削毎に異なる
りくず生成に至り , 場合によっては刃先の極微小なチッピ
“繰り返し現象(Alternating Process)”を生じ,数回の切
ングが生じる.この (1) 〜 (3) を繰り返し,最終的には刃
削(切削距離数 m) で容易に刃先にチッピングを生じる特異
先の比較的大きなチッピングに至ることになる.この繰り
Table 5 Cutting fluid and speed effects on chip formation type
K10, α = 30°
a) Oleic acid b)Emulsion type
1) V = 5.3 m/min
10µm
10µm
20µm
30µm
50µm
70µm
100µm
20µm
■
×
×
×
×
×
■
×
×
×
×
×
10µm
20µm
○
■
■
■
■
■
■
30µm
×
×
×
×
×
×
50µm
×
×
×
×
×
×
70µm
×
×
×
×
×
×
100µm
10µm
×
×
×
×
×
×
20µm
30µm
50µm
70µm
100µm
10µm
20µm
30µm
50µm
70µm
100µm
■
■
■
■
×
×
■
■
■
■
×
×
■
■
■
■
×
×
■
■
■
×
×
×
×
×
×
×
×
×
×
×
×
×
×
×
10µm
20µm
30µm
50µm
70µm
100µm
○
○
○
■
■
■
○
○
○
■
■
■
○
○
○
■
■
■
■
■
■
■
■
■
■
■
■
■
■
■
■
■
■
■
■
■
10µm
20µm
30µm
50µm
70µm
100µm
■
■
■
×
×
×
■
■
■
×
×
×
■
■
■
×
×
×
×
×
×
×
×
×
×
×
×
×
×
×
×
×
×
×
×
×
2) V = 20.0 m/min
10µm
20µm
30µm
50µm
70µm
100µm
■
■
■
■
■
30µm 50µm
■
■
■
■
■
■
■
■
■
■
■
■
70µm
100µm
■
■
■
■
■
■
■
■
■
■
■
■
10µm
20µm
30µm
50µm
70µm
100µm
3) V = 50.0 m/min
10µm
10µm
20µm
30µm
50µm
70µm
100µm
×
×
×
×
×
×
20µm
×
×
×
×
×
×
30µm
×
×
×
×
×
×
50µm
×
×
×
×
×
×
70µm
×
×
×
×
×
×
100µm
10µm
×
×
×
×
×
×
20µm
30µm
50µm
70µm
100µm
○: Flow type ■: Unstable
× : Tear type
- 23 -
第16回高エネ研メカ・ワークショップ報告集(2015.4.10)
返し現象を呈する切削過程を不安定切削 (Unstable chip
formation) と称す.
しかし,α = 30°の小さい t 1 や t L 条件では , 表4に示
すように流れ形の良好な加工面となった.したがって,以
後すべてのデータはα =30°の場合を対象とする.
4.4 切削油剤ならびに切削速度の影響 有機極性物質の一種で , 油性向上剤であるオレイン酸と
a) Steady cutting
水溶性の切削油剤エマルジョンを使用し,油剤の影響を明
b) Unsteady cutting
らかにした.オレイン酸は,軟質金属切削ではむしれ形切
t L = 50μm,t 1 = 50μm, V = 20m/min
りくず生成に陥るような切削条件での切削抵抗低減に有効
Fig.3 Machined surface in unstable cutting
で,大きい塗布効果が得られる油剤である4).
表5に , その結果を示す.表から分かるようにオレイン
酸では , 今回の切削速度範囲では殆んどの場合スムーズな
切削が不可能であり , それに対してエマルジョンタイプで
は , オレイン酸に比べ,同表b)のように比較的良好な切
削状況が得られる条件が見出された.特に V =20.0m/min の
場合 , 他の切削速度よりも流れ形切りくず生成になる条件
が幅広い範囲となっている.
4.5 加工面
図2に流れ形切りくず生成時に得られた加工面 (t 1 = 10
μ m,t L = 10 μ m, V =20m/min) の 写 真 を 示 す. 図 か ら 分
かるようにスムーズな加工面となっており,加工面粗さ
Ra =0.031 μ m ある.
図3に不安定切削時に得られた加工面 (t 1 = 50 μ m,t L
= 50 μ m, V =20m/min) を示す.同図 a) の場合が確定切削で,
同図 b) が不確定切削状態である.確定切削の場合,流れ形
切りくず生成時と同様な加工面になるが,不確定切削の場
Chip flow direction
合,一般によく使用されている金属材料では見られない特
徴的な加工面性状が現れた.すなわち,数十μ m ピッチの
Upper:Lower, Bottom:Higher magnification
t L = 10μm,t 1 = 10μm, V = 20m/min
うねった加工面となり , その一つのうねりの中にもさらに
Fig.4 Chip morphology in flow type chip formation
小さなうねりが存在する異様な性状となっている.これは
切りくずの一部が刃先に溶着し , それが過切削したのが原
因と思われる.このような独特の加工面は,他の材料では
見当たらないものである.
4.6 切りくず
図4に流れ形切りくず(V =20m/min,t 1 = 10 μ m,t L = 10
μ m) の自由面側を観察した SEM 写真を示す.低倍の上方の
写真から , 一見一般によく観察される間隔が一様なラメラ
模様を呈しているかの様に見えるが,高倍率の下方の写真
からも分かるように一つのラメラが均一の幅(図中の左右
方向)でもなく,また長さも図中の縦方向に長く走ってい
るようにも見えず,それぞれが相互に絡みあっているよう
な複雑怪奇な様相を呈している.
図5は,不安定切削での切りくずラメラである.図4の
Cutting direction
Chip flow direction
Upper:Lower, Bottom:Higher magnification
t L = 10μm,t 1 = 100μm, V = 20m/min
Fig.5
Chip morphology in unstable chip formation
場合よりもラメラ模様がさらに複雑になり,幅も絡み合い
Fig.2
t L = 10μm,t 1 = 10μm, V = 20m/min
もその規模を大きくしている様子が見受けられる . この切
Machined surface in flow type chip formation
りくず模様も他に見受けられないものである.
- 24 -
第16回高エネ研メカ・ワークショップ報告集(2015.4.10)
V = 20.0m/min, Emulion type,
V = 20.0m/min, Emulsion type
Fig.6 Resultant cutting force
Fig.7
Surface roughness Ra on machined surface
形切りくず生成となり,良好な加工面が得られない
4.7 切削抵抗
図6に , 切込み t 1 と最終前加工切込み t L の切削抵抗(合
(4)
すくい角α = 30°以外良好な切削状態にならない .
力)に及ぼす影響を示す.切削速度 V =20.0m/min, 切削油剤
(5)
切削工具として ,cBN は適用不可で,超硬合金が適
は,エマルジョンである.表5に示すように , 図6の切削
切なものである .
条件の一部では , 不安定切削状態となるが,繰返し現象中
(6)
の確定切削状態で測定した値とした . 水溶性油剤のオレイン酸よりも良好な性能を発揮す
図から分かるように , 通常の多くの金属と同様に t L の影
る .
響を大きく受けるが,軟質金属と傾向が異なり,t L が大き
(7) 最 終 前 加 工 切 込 み の 影 響 は , 切 削 抵 抗 な ら び に
い程,切削抵抗が大きくなっていることが分かる.この傾
加工面粗さに現れ,前者では軟質金属のそれとは逆の
向は , ステンレス鋼 SUS304
8)
や Co-Cr-Mo 合金
9)
切削油剤は,エマルジョン系の水溶性切削油剤が不
傾向となる .
と同様で
ある.これには , 切削予定面の硬度分布や切りくず形式等
謝 辞
を考慮せねばならないが , 現在のところ , 支配因子が何で
あるかを特定できるに至ってない.
本研究は,文部科学省の私立大学戦略的研究基盤形成支
4.8 加工面粗さ
援事業の補助で実施されたものであり,試料は高エネルギー
図7に加工面の粗さ Ra を示す.なお,この切削条件は上
加速器研究機構から提供されたもので,ここに記して感謝
述の切削抵抗測定時と同じである.切削抵抗の大小と加工
する .
面粗さ Ra の大小は概ね対応し,切削抵抗が大きければ粗さ
参 考 文 献
も大きくなっているが , 切削抵抗ほど , 各切込みにおいて
1) T.Kaneeda, et al:Chip formation mechanism of pure Niobium plates in a
superconducting accelarators cavities, Proc. of International Conference of
the 13th of the euspen, 2(2013)129. 2) 永田智啓ほか:シームレス超伝導空洞の開発 , 第 14 回高エネ研メ
カ • ワークショップ報告集 (2013)77.
3) 大内伸夫:超伝導リニアック , 高エネルギー加速器セミナー ,OHO
'05, accwww2.kek.jp/oho/oho05/04-Ouchi0809.pdf.
4) 金枝敏明ほか:金属切削における塗布効果 ( 第 1 報 )—塗布効果発
生条件ならびに塗布剤の境界潤滑特性の影響,精密工学会誌 ,61,5
(1995)702.
5) 金枝敏明:切削における分離作用 , 大阪大学学位論文 (1981)12.
6) 財満鎮雄 , 岡崎忠雄:純アルミニウム合金の切削過渡特性につい
て,日本機械学会論文集 ( 第3部 ),33,248(1967)641.
7) 金枝敏明ほか:軟質金属切削における塗布効果 ( 第 2 報 )—切込み
ならびに切削速度と塗布効果機構,精密工学会誌 ,66,1(2000)74.
8) 金枝敏明ほか : ステンレス鋼 SUS304 切削における塗布効果 , 先端
加工 ,27,1(2009)64.
9) T.Kaneeda, et al:Cutting characteristics and machined surface properties of
Co-Cr-Mo alloy plate for artificial joint with tungsten carbide and cBN
tools, Proc. of the 11th anniversary international conference of the euspen,
2(2011)361.
t L の影響の度合に差がないことが図から分かる.
5.結 言
ニオブの基本的な切削特性を実験的に調査した結果,以
下のことが明らかとなった.
(1) 今回調査した切削速度 V ≦ 50.0m/min の範囲では,
良好な切削状態である流れ形切りくずが,V = 20m/ min,小さい切込み t 1 ならびに最終前加工切込み t L
で得られる .
(2) 流れ形切りくずが発生する条件では , 良好な加工面
が得られるが,ラメラ模様は他の金属切削には例が
見られない複雑な形状を呈す . (3) (1) 以外の切削条件では , 不確定切削現象を伴う
繰返し現象を発生する不安定切削かもしくはむしれ
- 25 -
➨ᅇ㧗࢚ࢿ◊࣓࣭࣮࢝࣡ࢡࢩࣙࢵࣉሗ࿌㞟㸦㸧
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第16回高エネ研メカ・ワークショップ報告集(2015.4.10)
測 定 環 境 の 創 造
安田悦郎
(ヘルツ株式会社)
Supporting the Measuring Environment
Etsuro
YASUDA
(HERZ)
Recently, the science technology covering the wide range changes from within a single research,
industrial field to crossing among different fields typified by mechatronics. Therefore, the
development and commercialization of measurement evaluating instruments are making great
progress in performance and function. One of the factors which satisfies the function and
performance of these instruments are micro vibration isolation and damping technologies.
Vibration isolation and damping indicates to reduce the acceleration “gal” (referred as acceleration
hereunder).While various vibration isolation systems are available in the market, not all of the
vibration problems can be solved using a vibration isolation system.
A “Vibration” transmitted to instruments causes various disturbances. A disturbance involved with
vibration is a troublesome factor which needs to try fixing each time and fusing the sensitivity of a
human which can be expressed as “Experimental Engineering” and mathematical science will lead to
“Supporting the Measuring Environment”. While there are many factors which would disturb the
measurement environment such as vibration, acoustics, electromagnetics, temperature, humidity,
contrast, wind, rain and so on, in this chapter, it reports about “Vibration generated while walking”
り道に建つ建物ある。これらの建物は工法、形状、大
1.はじめに
きさ、階層など様々な研究実験棟があり、建物内では
多くの人々が業務を遂行している。
近年、広範囲にわたる科学技術はメカトロニクスに
多種多様な計測機器を使用するうえで障害をもたら
代表されるように、一分野の研究・産業領域から他分
す振動源は多くの場合、建物に設置する諸設備や実験
野にまたがる複合領域となってきている。その為に、
機器を思い浮かべる。これら振動源となる機器に付随
測定評価機器の開発と商品化も機能と性能において長
するホースや電気コードが振動を伝えることは知られ
足の進歩を遂げている。これらの機器の機能や性能を
ていない。エレべーターの起動やモーターを動力源と
満足させる要素の一つが微小振動の防振および制振技
する機器は一定の周期性を持つために振動障害を減少
術である。防振および制振技術とは加速度(gal以
させることは容易ではないが解決の可能性は高い。
後加速度という)の減少を指す。加速度を対象に様々
測定障害の振動源として見過ごすことのできない要因
な防振台が市販されているが、防振台ですべての振動
として、人々の歩行時に発生する振動加速度がある。
問題を解決することはできない。機器に伝わる「振動」
歩行時の一歩の衝撃的な加速度は大きく、一歩一歩は
は多種多様の障害を引き起こすため、その都度、解決
低周波を発生させる。人々の歩行には定則性が無く、
を試みなければならないやっかいな要素であり、
「実験
伝わる振動は測定機器等の構造や機能および性能に障
工学」とも云える人間の持つ感性と数理の融合が「測
害を与える。また、高層建物や柔らかな地盤に建つ建
定環境の創造」につながる。測定環境に障害となる要
物の振動数と共振し、障害を発生させる原因となる。
素は振動・音響・磁力・温度・湿度・明暗・風・雨な
実例として、十階建て実験棟の一階で受付を担当し
ど数多くあるが、この項では「人の歩行時に発生する
ていた女性が履いていたハイヒールが、大きな加速度
有害振動と一般的には過去に例の無い固有振動数を持
つ開発中のパッシブ防振システム」について報告する。
をともなう低周波振動を発生させた。歩行振動は全館
に伝わり、六階で使用されていた空気ばね式防振台の
固有振動数とほぼ一致して共振を起こし、光学系の計
2. 人の歩行時に発生する振動
測に支障をきたした。衝撃的加速度をともなった振動
は実験テール上の測定機器にも伝わり測定値にバラツ
大学、国立研究機関、民間研究機関、工場は高層
キを起こした。以後、この会社では、建物内で使用す
化が目立つ。これらの建物は固い地盤と柔らかな地盤
る履物をクッション性の高い靴を指定した。
に跨って立つ建物、柔らかな地盤に建つ建物、風の通
- 30 -
第16回高エネ研メカ・ワークショップ報告集(2015.4.10)
図4
低周波歩行時の建物の揺れ
(イメージ)
3.歩行時の振動測定
図2-1歩く一人の女性 図2-2ハイヒール
人々の歩行時の振動測定は19階建て商用ビルの1
8階、当社実験室において行った。振動検出器は三軸
120
80
40
0
-40
-80
-120
ンクリート床面にワックスで固定した。振動要素は縦
軸を加速度、横軸は周波数または時間とした。
水平前後X方向
0.77gal
10
0
-10
-20
加速度 [gal]
値は通常では考えにくい
-103.00gal
0
5
10
時間 [s]
15
歩一歩の周波数は2Hzであった。
0
-10
0
5
10
時間 [s]
例3
15
ナースシューズを履いた女性の歩行振動
図1-2
垂直Z方向
20
定常振動時の加速度[gal]
1.67gal
10
0
-10
0
振動発生源である。
1.5
図3の最大加速度は垂直方向で103gal である。一
0.66gal
10
0.5
1
時間 [s]
図3歩行時の振動加速度
水平左右Y方向
20
-20
0
図1-1
-20
低周波かつ大きな加速度
加速度 [gal]
20
図3に示した計測された
⊿t=0.51s ⊿t=0.54s
実験室内歩行者不在時の定常振動
加速度 [gal]
加速度 [gal]
例1
垂直Z方向
加速度 [gal]
圧電型加速度計を使用し、歩行者から約1m離れたコ
5
10
時間 [s]
15
図1-1
最大0.77
図1-2
最大0.66
図1-3
最大1.67
図1-3
⊿t=0.59s
10
0
-10
-20
図5-1ナースシューズ
垂直Z方向
20
-7.90gal
0
0.5
1
時間 [s]
図5-2
1.5
歩行時の振動
図2の同一人が図3のナースシューズを履いてコンク
リートの床面を歩行した時の加速度波形を図5-2に
一般的な実験施設の建物の床振動の加速度は、設備品
示す。ナースシューズの踵内部には歩行時の衝撃を緩
や階層にもよるが、おおよそ0.7gal~1.2ga
和させる目的の空気溜りがあり、最大加速度は3.0g
lが数多く見受けられる。
alであった。図2-2のハイヒールと図5-1のナ
したがって、図1-1、図1-2、図1-3の値は床
ースシューズを比較すると歩行時の衝撃的加速度は約
振動の通常値として差し支えない。
97%減少したことになるが、分解能の高い測定機器
を使用する振動環境にはなっていない。
例2
ハイヒールを履いた女性の発生振動
次に複数の女性が一斉に歩行した時に発生した振動加
速度を図6に示す。
図6は、複数の女性が様
図2はハイヒールを履いて歩く女性、図3は履いてい
加速度 [gal]
たハイヒール。トップリフト(踵)の接地面積は約1
0mmである。図2の左の図は縦軸に加速度(gal)
横軸は時間(s)である。一歩から発生する最大10
3galを計測した。歩く速さの周波数は約1.2Hz
ず
~約1.8Hz である。
5.81gal
10
ートの床面を歩行してい
0
る時に発生した振動で、
-10
-20
0
0.5
1
時間 [s]
図6女性の歩行振動
- 31 -
々な靴を履き、コンクリ
垂直Z方向
20
1.5
最大加速度は5.8gal
である。
第16回高エネ研メカ・ワークショップ報告集(2015.4.10)
スコープに表示させている。
振動発生原因
11.81gal
10
0
図10-1に水平(X)方向の周波数を示す。
の靴を履いてコンクリー
図10-2に水平(Y)方向の周波数を示す。
トの床面を幾分早めに歩
図10-3に垂直方向の周波数を示す。
いた時に発生した振動加
-10
-20
図8は、男性一人が皮底
⊿t=0.60s ⊿t=0.63s
0
0.5
1
時間 [s]
1.5
最大加速度は11.8
図7男性一人の歩行
galであった。
0
-2
5
時間 [s]
振動発生原因
垂直Z方向
20
革靴やスニーカーなど、
10
0
-20
リートの床面を歩行した
-14.00gal
0
0.5
1
時間 [s]
1.5
振動で、最大加速度14.
0
-2
-4
0
5
時間 [s]
10
図10-2
0.250Hz
0.5
0
-0.5
-1
0gal であった。
0.232Hz
2
垂直Z方向
1
様々な靴を履いてコンク
-10
10
図10-1
図8は、複数の男性が
変位 [mm]
加速度 [gal]
0
水平左右Y方向
4
0.224Hz
2
-4
例5
水平前後X方向
4
速度である。
変位 [mm]
垂直Z方向
20
変位 [mm]
加速度 [gal]
例4
0
図8複数男性歩行
5
時間 [s]
10
図10-3
振動計測データが示すように、人々の歩行で発生する
現在、使用中の加速度検出器のメーカー保証は、周波
大きな加速度は、精密計測機器に振動による障害を発
数1Hz以上、加速度の感度は1mgal以上である。
生させる。障害は数値データの誤りや再現性および画
1mgal以下の加速度を保証された状態で直接計測
像の分解能に影響を与える。したがって、研究実験棟
する検出器は無い。そのため信頼性のある計測ができ
などの建物内では実験室はもとより、玄関ロビーや廊
ない。間もなく、超低周波用加振器と変位計その他の
下でも固い底の靴の使用を制限すべきである。
実験計測機器が納入されるので、更に実験を重ね、実
用面で究極の小型防振システムを完成させることと、
防振効果が搭載機器によって示されるようにする。
4.開発途中の「超低周波防振システム」について
図11-1に3D卓上型空気ばね式防振台と超低周波
防振システムの水平X方向振動伝達率のイメージデー
実例として述べた、柔らかな地盤の上に建てられた
建物は図5に示したように低周波でゆっくりと揺れ、
タを示す。
空気ばね式防振台の固有振動数と合致し、共振現象を
図11-2に水平Y方向の振動伝達率のイメージデー
起こし振動障害を起こすことは述べた。共振現象を避
タを示す。
けるためには、空気ばね式防振台の空気ばね部と空気
図11-3に垂直Z方向の動伝達率のイメージデータ
タンク部の間に設けられた空気の通路である「オリフ
を示す。
ィス」の直径を大きくする。または小さくする。これ
らは防振性能は低下するが、共振現象は避けられる。
このような振動障害を起こす問題を解決するために
「超低周波防振システム」の開発目的を下記に示す。
①固有振動数〝ゼロ〟の防振システムの開発を目指す。
②低周波で揺れる建物内でも使用できる超低周波防振
図11-1
システムを開発する。システムの詳細は避けるが、現
在の実験システムは、W670mm×D620mm×
H900mmの箱の中に機器を想定した約60kgの
おもりを搭載板に載せている。実験結果は、目標値の
垂直(V)方向
0.25Hz、水平(X・Y)方向と
もに0.25Hzの再現性のある固有振動数が得られ
ている。
図11-3
固有振動数の測定はレーザー変位計を用いて、オシロ
- 32 -
図11-2
第16回高エネ研メカ・ワークショップ報告集(2015.4.10)
5.おわりに
「測定環境の創造」を標榜し、振動減衰に携わる者
として、多様多岐にわたる振動障害を起こす原因を探
し出し、言わば主役となる実験機器の機能と性能を充
分に発揮できる状態を維持するために今後とも模索す
る。その為には黒子役に徹し、縁の下で脇役として持
てる経験と想像力を磨き、将来の豊かさをめざして科
学技術の発展に少しでも役立つ努力を続ける。
「測定環境の創造」にご理解をいただき、発表の機
会をくださいました機械工学センター
久米達哉様な
らびに関係者皆様に厚く御礼申し上げます。
- 33 -
第16回高エネ研メカ・ワークショップ報告集(2015.4.10)
振動ジャイロ発電機の正帰還制御
東京大学 荒井 洸, , 保坂 寛
Dynamic analysis of positive feedback gyroscopic generator
As the study to increase power density of the gyro generator generating electricity from random vibration, the
motion analysis under the feedback system considering the mechanical loss mainly windage loss was conducted. In
that analysis, rotation velocity of the rotor and electric power generation were analyzed. As the rotor rotates fast,
windage loss and the energy gained by feedback are balanced. Then, rotation velocity of the rotor comes to be
constant.
1. 序論
近年、ユビキタス社会が実現しつつあり、それに伴う
携帯型電子機器の増加により、それらへのエネルギー供
給源の確保が大きな問題になっている。その解決策の一
つとして環境発電が注目されている。環境発電とは、光
や熱、その他我々の身の回りに拡散してしまっているエ
ネルギーを用いた発電である。筆者らはランダム振動に
対応するジャイロ発電機の製作に着手した。本研究では、
先行研究[1]を受け、ジャイロ発電機の高出力化のための、
発電機の機械損失を考慮した理論式の導出とそれによる
解析を行った。以下ではジャイロ発電機の原理および理
論について説明をする。
2. ジャイロ発電機の原理
ジャイロ効果とは、高速で回転する物体がその回転の
軸を一定方向に保とうとする性質のことである。ジャイ
ロ発電機では、高速で回転するロータの軸がわずかにず
れた際の大きな角運動量の変化を利用し入力振動を増幅
し、発電をする。図 1 にジャイロ発電機の原理図を示す。
ロータをモータで回転させ、この状態で入力振動軸に回
転振動を入力することでジャイロ効果が発生し、入力振
動軸と自転軸に垂直な軸(歳差軸)回りに回転運動がおこ
る。この回転運動から電磁誘導の法則を用いて発電をす
る。図 2 はジャイロ発電機のモデル図である。ここで、
歳差軸が 1 軸、入力振動軸が 2 軸、ロータの自転軸が 3
軸である。この時、歳差トルクはロータの自転速度に応
じて大きくなるので、自転速度を大きくすれば微小な振
動からでも大きな発電を行えるようになる。そこで筆者
らは、発電した電力の一部をロータに回転エネルギとし
て正帰還させることでロータの回転速度を上げ、より大
きな発電量を得ようと試みている。今回その研究として、
機械損失を考慮した発電機の動作シミュレーションを行
った。
図 1 ジャイロ発電機原理図[2]
図 2 ジャイロ機構モデル図[2]
0
0
0
3.ジャイロの運動方程式
(1)式は、ジャイロの微小振動における一般的な運動方
程式、(2)式はこの式に入力振動としてξ2=Asinωt を与え
た式である。この時 ξ1,ξ2 は各軸における角変位、k はバ
ネ定数、f1,f2 は図 2 中の各軸に働く力、I1,I2,I3 は各軸回り
の慣性能率、ω3 は 3 軸回りの回転速度(ロータの自転速度)、
Ce, Cm はそれぞれ電磁ダンピング、機械損失の係数である。
荒井、山本、保坂、「正帰還ロータジャイロ発電機の動特
性解析̶第一報 理論解析̶」、
2014 年度精密工学会春季大会学術講演会 C32, pp. 203-204
より一部修正の上転載
0
… 1
I
cos
0 … 2
(1)式の第1行は歳差軸回りの運動方程式を表しており、
ジャイロ効果により発生するトルクはI ω ξ で表されて
いる。第2行は入力振動軸回りの運動方程式を表してお
り、この式から加振力 f2 を求めることが可能である。今
回加振力は重要ではないので、第1行のみについて考え
た。
4.フィードバックの運動方程式
まず、ロータにエネルギが正帰還されているときの微
分方程式を立てる。電磁誘導による発電量に損失がない
とすると、発電量 P は(3)式のようになる。
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第16回高エネ研メカ・ワークショップ報告集(2015.4.10)
にも成り立たない.よって,式(9)は振動入力が極めて微
小な場合にのみ成り立つ.
…(3)
Ce
また、ピボット軸受で支持し、十分にバランスがとれた
ロータの機械的損失は風損が支配的となり、層流にける
風損は(4)式となる。[3]
L=2r
…(4)
r はロータの半径、μは空気の粘性係数、ρは空気の密度
である。発電エネルギを損失なくロータの自転運動エネ
ルギに変換した場合、正帰還の運動方程式は(5)式である。
d 1
I ω
dt 2
Ceξ
2
… 5
ω3 と ξ1 を未知数として、 (2)式と(5)式を連立して解き、
そこで得られたξ1 を(3)式に代入すれば、発電量が得られ
る。
5. 計算結果
フィードバック状況下でのシミュレーションを行った。
各 パ ラ メ ー タ は , I1=9.36 × 10-4[kg.m2], k1=4.14 × 10-2,
Ce=0.125[Ns], Cm=0.0098[Ns], r=3.2×10-2 である.入力振
動について入力振幅は 5[deg]、周波数は共振周波数を与え
た。
ロータ自転速度及び発電量のグラフはそれぞれ図 3,図
4 である。グラフの概形から、始めのうちはフィードバッ
クの効果が大きくロ―タ角速度は指数関数的に増大して
いくが、一定角速度を超えると風損の影響が大きくなり、
やがて両者は釣り合い一定値に落ち着くことが確認でき
る。また、発電量もロータ自転速度に対応して増大して
いくことが分かる。
次に,発電量の最大値と振動条件の関係を考察する.
定常状態においても ξ1 は振動するから,式(5)により ω3
も振動する.しかし,ω3 が十分に大きければ,相対的な
変動は小さいので,振動1周期分の平均値により ω3 を近
似する.このとき,式(2)において ω3 を定数とし,さらに
Ce>>Cm とすると,共振時の ξ1 は次式となる。
ξ
cos ωt
6. 結論
風損を考慮したロータのフィードバック中における運
動方程式の導出と、それを用いたロータ自転速度及び発
電量 ̇のシミュレーションを行った。また、電磁ダンピン
グ、入力振幅、入力周波数を変化させた時の発電量を比
較した。ロータの自転速度及び発電量は初め指数関数的
に増大するが、いずれフィードバックされているエネル
ギと機械損失がつり合い一定値に漸近していくことが確
認された。また、電磁ダンピングや入力振幅、入力周波
数が変化すると、発電量が大きく変化することも分かっ
た。
参考文献*
[1] 山本花菜,良本真基,岩越智哉,保坂寛:ランダム
振動型ジャイロ発電機の研究―第2報ポジティブフ
ィードバックによる自転増速,2013 年度精密工学会
春季大会学術講演会講演論文集 pp.483-484
[2] Crandall, Karnopp, Kurtz, and Pridmore-Brown;,
Dynamics of mechanical and electromechanical system,
McGRAW-HILL, 1968, p240~p243
[3] 岩越智哉,山本花菜,良本真基,保坂寛:ランダム
振動型ジャイロ発電機の研究―第1報 自転機構の
設計,2013 年度精密工学会春季大会学術講演会講演
論文集 pp.485-486
…(6)
δ
図3
ロ―タ自転速度変化
また,式(5)を1周期について平均すると左辺が 0 となる
ので次式を得る.
⁄
Ceξ
2
⁄
…(7)
ここで上線は平均値を示す.式(6)を式(7)に代入するとω
を得る。
…(8)
ω
これを式(6),(3)に代入すると平均発電量を得る.
P
…(9)
図4
上式よりPは入力振動の周波数と振幅の 10 乗に比例し,
電磁ダンピングの 5 乗に反比例する.前者は,発電機の
加振エネルギが増大するためであり,後者は Ce と ξ1 が
反比例するためである.ただし式(8)により単純にPを計算
すると,図 4 の条件より振幅を 2 倍するだけで発電量は
240kW と な っ て し ま う . こ の と き ω3=2.0 × 105 ,
ξ1=50[rad]となり,微小振動や層流の仮定が崩れ,機構的
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発電量の時間変化
第16回高エネ研メカ・ワークショップ報告集(2015.4.10)
白色干渉を用いた Compact ERL 主加速器クライオモジュール内
超伝導空洞の長期精密位置測定装置の開発
阪井寛志 1,梅森健成 1、江並和宏 1、佐藤昌人 1、篠江憲治 1、古屋貴章 1、沢村勝 2、Enrico Cenni3、
青戸智浩 4、林恭平 4、神崎努 4
(高エネルギー加速器研究機構 1、原子力機構 2、総研大 3、(株)東京精密 4)
Development of the position monitor using white light interferometer and the precise
measurement of superconducting cavity displacement in Compact ERL main-linac cryomodule
during the long-term beam operation by using its newly developed position monitor
Hiroshi Sakai1, Kensei Umemori1, Kazuhiro Enami1, Masato Satoh1, Kenji Shinoe1, Takaaki Furuya1,
Masaru Sawamura2, Enrico Cenni3, Tomohiro Aoto4, Kyohei Hayashi4 and Tsutomu Kanzaki4
(KEK1, JAEA2, Soken-dai3, Tokyo Seimitsu Co. LTD4)
Alignment of superconducting cavities is one of the important issues for next generation accelerator like energy
recovery linac (ERL). To measure the cavity displacement under cooling to liquid He temperature more precisely,
we newly developed the position monitor by using white light interferometer. This monitor is based on the
measurement of the interference of light between the measurement target and the reference point. It can measure
the position from the outside of the cryomodule. We applied this monitor to the Compact ERL(cERL) main linac
cryomodule and successfully measured the displacement during 2K cooling with the resolution of +-5 m. And by
monitoring these displacements in detail, we achieved the energy recovery with more than 80uA CW beam.
Key Words: ERL, Super Conducting Cavity, precise measurement, position monitor, white light interferometer
1.はじめに
次世代の加速器であるエネルギー回収型ライナック
(ERL) [1,2]やリニアコライダー(ILC)またX線自由電子
レーザー(XFEL)などに用いられる超伝導空洞はビーム
性能を決める重要な開発要素の一つである。次世代加
速器である ERL では高品質ビームの安定化のため、空
洞のビームラインへの設置精度は 1mm 以下とされてお
り、その精度を保つよう空洞をアラインメントする必
要がある。ビーム運転中の超伝導空洞は常時極低温環
境を維持するため、2K 温度の He 液体を保持した容器
内に内装(ジャケット化)され、さらに超伝導空洞へ
の常温からの入熱を防ぐための大きな断熱槽によって
おおわれている。これらを称してクライオモジュール
と呼んでいる。超伝導空洞はビームラインに並べる前
には室温でアラインメントされ、室温時には数 100μm
以下の精度でアラインメントが可能であるが、冷却時
には熱収縮の影響を受け、空洞の位置は変化する。そ
の変化は機器の大きさにもより、おおよそ数 100μm~
1cm 程度と場所によりばらばらである。そのため、2K
への冷却時への空洞の変化をクライオモジュールの外
から随時モニターする必要がある。
今まで冷却中の空洞の変位測定として検討されてい
たモニターは 1)ワイヤーポジションモニター[3]と 2)三
角測量型レーザー変位計[4]の2つであったが、1)に関
してはワイヤーの収縮により、ワイヤーが冷却中に切
れるなどの問題が多発している[5]。また測定箇所が空
洞と異なり、正確な変位を測定に疑問が残っていた。
また 2)に関しては、レーザー光の測定面からの乱反射
の情報を用いた三角測量を基本としたものである。光
の受光散乱角度が大きく必要であり、原理的に角度が
45 度に近い散乱角度にて分解能が上がるため、輻射熱
を避けるために 500mm ほど先に小さく設けられたモジ
ュール外部の狭い真空窓からの測定では 10μm の分解
能を有する測定は不可能である。これらを背景として、
2010 年に新たに白色干渉を用いた超伝導空洞精密位置
測定装置(白色干渉モニター)を提案し、開発を始め
た。特に近年の周波数安定な光コムによるモード同期
レーザーを用い、長距離(1m 以上)での干渉測定により、
10μm 以下の精度で長期的に空洞位置測定が可能であ
ることが、本研究の開発動機である。具体的には超伝
導空洞をモジュール外部から入熱を抑え、非接触に空
洞の位置を 10μm の分解能で長期的に精密測定するモ
ニターを開発し、ビームへの影響を詳細に調べること
が本研究開発の目的である。
図1: 白色干渉による位置測定の原理。
白色干渉モニターの原理を簡単に述べる。低コヒー
レンス干渉法[6]がベースであり、白色周波数安定化レ
ーザー(光コムモードロックレーザー)のようなスペ
クトルが広くコヒーレント長の短い白色光源を図1に
示すように2つに分けて、測定対象物に対し、参照光
路長を変化させると反射された光に強度の干渉が見ら
れる。この干渉縞信号は測定対象物と参照面からの光
の光路差がコヒーレンス長以内の時に現れ、光路差が
0で最大となる。参照面側の光路をリニアガイドにて
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第16回高エネ研メカ・ワークショップ報告集(2015.4.10)
調整し、強度のピークをモニターし、リニアガイドの
位置の変化を追いかけることで測定対象物の位置変化
を常時測定可能となる。位置の測定レンジはリニアガ
イドの最大移動距離で決まると同時に測定分解能は光
源の波長以下精度を有しているため、可視光近くであ
れば、サブミクロンの精度で位置測定が可能である。
さらにピーク近くの干渉縞の位相も測定するなら、数
10nm レベルの測定も可能である。実際には本モニター
はリニアガイドをスキャンさせるため、リニアガイド
の位置精度によって決まるが、その位置精度はミクロ
ンの精度を有するものを用いて測定を行った。
fiber
power meter
cryomodule
表1: 各測定対象物の表面粗さに対する測定可
能な干渉強度の範囲
表面粗さ(Ra)
測定可能な角度
detector
reference (v)
light
superconducting
cavity
target on SC (v)
光カプラーにて分岐した測定対象物と参照ターゲッ
トからの白色レーザーの反射光の干渉強度を参照ター
ゲットの距離の関数として、随時モニターすることで
、性能評価を行う。まず既存の半導体レーザー光であ
るSLD白色光源(20mW)を用い評価を行った結果、測定
精度には現状、スペクトラムの形よりも強度が重要で
あるとの結論を得たため、光コム光源より安価の白色
光源で強度が既存の5倍以上を確保できるASE光源にて
測定を行った。この高強度白色光源を用いて、まずは
テントベンチにて、測定対象物の表面粗さと測定可能
な傾きを調べた。
20.95 m
4.38 m
0.23 m
reference (h)
target
on SC (h)
white light source
図2:モニターのクライオモジュール設置時の概念図。
図2は本モニターの超伝導空洞の位置測定に対する
概念図である。空洞は測定面を用意すれば、クライオ
モジュールの外から測定可能である。そのため、モニ
ターの故障などに対して即座に対応可能である。また、
測定面に対し、レーザー光を viewport を介して、直接
入射し、さらに同じパスにて測定面からの反射光を見
ることができる。そのため、三角測量法と違い、数 mm
φ程度の小さな aperture のみで超伝導空洞の変位を測
定可能であるため、空洞への輻射熱の影響なしに測定
が可能とすることができる。さらに白色レーザー光の
強度を上げることで複数測定面を図2に示すようにフ
ァイバーを介し、測定を可能とできる。
原理的には数 10m 程度離れた位置に対しても、1um
以下の分解能を持つことができるが、実際の我々の測
定は加速器の運転中を通じた非常に長い時間での測定
を行うことを念頭におく。そのため、このモニターが
長期的に安定に動作が可能かをまずはテストベンチに
て確かめることから始めた。
0 度~30 度
0 度~30 度
0 度~20 度
表1が測定可能な干渉強度が得られた範囲である。
粗さが0.23~20μmの広範囲でなおかつ測定対象が垂
直から20度ずれた場合でも十分な干渉強度が得られる
ことがテストベンチの結果から分かった。この結果を
反映し、1000mm離れた表面粗さRa4.4μmの測定対象物
に対し、長期間での測定精度の測定を行った。
図4が測定器の温度、湿度、気圧の変化に対する測
定位置の長期安定性の結果である。12時間の測定で、
温度変化が±0.3度の環境下にて、±5μm以下で安定で
あった。特にレーザー光はφ30mmのパイプとガラスの
viewportを通じて行った断熱槽外部からの測定を模擬
しており、測定精度、長期安定性に対し、位置モニタ
ーとして、十分な性能が確保できた。
2.テストベンチでの性能評価試験
テストベンチにて、白色干渉を用いた位置測定精度
評価試験を行った。図3がそのsetupである。
図4: テストベンチでの長期安定性測定。
図3: テストベンチでの setup。
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第16回高エネ研メカ・ワークショップ報告集(2015.4.10)
3.実機 cERL 主加速部超伝導空洞クライオモジュー
ルでの白色干渉モニターの実証実験
テストベンチでの性能評価と平行に、クライオモジ
ュールの設計を進め、熱シールドなどとの干渉なしで
、本レーザー位置モニターで測定するターゲットの場
所と設計を進めた。
図5:Compact ERL 用主加速部超伝導空洞クライオ
モジュールとターゲットの配置。
テストベンチでの評価を基にして、実機の白色干渉
位置変位計を製作し、製作したERL用クライオモジュー
ル(図6)を用いた2K冷却中の位置測定を行った。まず、
最初は空洞の一か所(図5のターゲット#1)のみの垂直、
水平の2方向の測定に絞り、実機位置測定装置として
製作した。また、ターゲットの中心をLEDで照らし、冷
却中の動きに対する光学ターゲットとの相関データを
取得した。
図7:クライオモジュール内ターゲットと実機白色干
渉位置測定装置の配置。
図5がCompactERLの主加速部用に設計した9セル空
洞を2つ収める超伝導空洞クライオモジュールである
。空洞は2Kに冷やされるがそれらのアラインメントな
どを確保しやすくするために5Kフレームと呼ばれる空
洞固定用のサポートを空洞回りに設置。またそれらは
クライオモジュール内の5Kフレーム下部の常温部に置
かれたバックボーンと呼ばれる堅牢なサポートによっ
て、支えられている構造とした。特にバックボーンか
ら5Kフレームに対しての支え(5Kサポート)は合計8か
所で支えており、室温から2Kへの冷却の際、5Kフレー
ムの位置が極力変化しないような熱収縮をキャンセル
する構造としている。5Kフレームおよび、5Kサポート
を通じ、空洞への熱侵入を防ぐとともにアラインメン
トを確保する設計とした。特に収縮時の空洞変位のた
めのターゲットは5Kフレームの上部とサイドに合計8
つ、空洞の前後に置くことで、空洞の冷却中の変化を
追えるような設計を進めた。特にターゲットの中心に
目盛を刻んだガラスを用意し、望遠鏡でその中心を読
める構造とした。ターゲットの側面(表面粗さRa 1.6μ
m)を白色干渉モニターにて、位置測定することで、冷
却中の変位を干渉計と望遠鏡(測定精度は0.1mm程度)
の両方で測定可能な設計とした。
2012年秋までにCompact ERL主加速部超伝導空洞ク
ライオモジュールを完成し、2012年11月から本格的な
冷却を行った。クライオモジュールの2Kまでの冷却中
の測定の詳細を述べる。図7に示すように測定光学タ
ーゲットはセンサーのファイバー出口から600mm離れ
た断熱真空槽内に置かれ、ビューポートを通して水平
方向、垂直方向の変位を冷却中常時測定した。特に加
速器室内での温度変化抑制のため、温度安定化ファイ
バーを用いて測定を行った。室温から2Kまでの冷却は
2週間かけてゆっくり行われ、図8が冷却中の実機白
色干渉モニターによるクライオモジュール内のターゲ
ット(#1)の測定位置変位である。常温から2K冷却後の温
度変化はモジュール熱設計通りに、水平方向で0.2mm、
垂直方向で1.2mmの変位が測定され、空洞中心では
0.4mmの変化に留まっていることが測定から判明した。
図8: (左図)モジュール内ターゲットの冷却時の水平
方向(青)と垂直方向(赤)の変化。 赤丸、青丸は
ターゲットを望遠鏡で覗いた結果であり、赤線、青線
が白色干渉位置測定装置による測定結果である。緑線
は空洞温度を示す。(右図) 左図一部拡大図。
4.モニター改良後の実機 cERL 主加速器クライオモ
ジュールでの白色干渉モニターの実証実験
図6:Compact ERL 内に設置された主加速部超伝導
空洞クライオモジュール。
2012年11月の実験ではクライオモジュール冷却時の
空洞変位はファイバーの温度変動の影響を抑えるため
、ファイバー長を3mと短く抑え、温度が±0.5℃以下に
安定な本超伝導空洞モジュールが設置されている加速
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第16回高エネ研メカ・ワークショップ報告集(2015.4.10)
器室内環境下に測定系を置き、冷却中の変位測定の実
証実験を行ったが、その後の2012年12月の空洞加速勾
配実現のためのハイパワー試験時には放射線の影響が
大きく、加速器内部に設置していた本測定装置を一旦
加速器室から出したため、パワー試験時の位置測定は
不可能であった。2013年冬に控えたビーム運転時の測
定を可能とするために、以下の改良を行った。(a)光路
差の温度変動を無くすために、測定対象用ファイバー
光路内に参照面を同時に設けた。結果、80mのファイバ
ー長にて、25±5℃の温度環境下、40時間以上で±3μm
以下の超高安定位置測定を実現した。(b) 空洞1か所の
水平、垂直方向(2軸)の測定から空洞前後の2か所
の垂直、水平方向(4軸)に測定点(図5のターゲット
#1&#4)を増やし、ビームに対し、2K冷却中のモジュー
ルの位置と角度両情報の測定を可能とした。
図10: ビーム運転時の空洞位置測定結果。(2日間)
さらに、他ビームモニターと合わせ、データベース
化され、空洞位置の詳細測定のもと、ビーム調整がス
ムーズに行われ、空洞位置によるビーム不安定性も見
られず、2014 年の実験時には 6.5uA の CW ビームのエ
ネルギー回収を実現[8]。最終的に、現在 80μA 以上の
CW ビームで 20MeV のエネルギー回収運転を実現して
いる。
5.まとめと今後
新しい白色干渉の原理のもと、空洞変位を精密(10μ
m 以内)に測定する装置を開発するとともにモジュール
内の空洞の変位情報から、ERL に対するビーム不安定
性に対する知見を得ることを目指した。まず、テスト
ベンチ、実機、そしてビーム運転時と段階的な試験を
踏まえ、白色干渉の原理のもと空洞モジュールの4か
所を±5μm の精度にて約半年の長期間測定を行える位
置測定装置を開発した。これは今後の4空洞また8空
洞入りの ERL 空洞モジュールの製作にとどまらず、将
来の ILC、また X 線自由電子レーザーなどの超伝導空
洞を用いた先端加速器の精密アラインメントや位置測
定に非常に大きく貢献するものである。また、現装置
を用いて空洞がアライメントの範囲内におさまり、80
μA 以上の CW ビームで空洞起因の不安定性もなくエ
ネルギー回収を実現したことで、モジュール製作に対
する指標が確立しただけでなく、今後の大電流ERL
運転に向けて大きな指標を示すことができた。
今後測定精度を上げることやさらに参照ターゲット
を固定させ、空洞以外での長距離の精密測定が必要な
装置(真空封じアンジュレータや極低温や放射線環境
下での電磁石の位置)などの長期的な測定にも応用す
ることを考えているとともに、干渉縞の位相をモニタ
ーすることで nm レベルでの振動測定などの開発を続
けていく予定である。
図9: (上図)改良白色干渉位置測定装置による 2013
年 11 月から約半年間のターゲット(#1&#4) の水平方
向の測定結果(赤、青)。(下図)垂直方向の測定結果
(桃、黒)。水色、緑は空洞温度。
上記(a),(b)の改良後、PC など測定機器は加速器室外
で制御可能となり、2K 冷却後のビーム運転が始まって
から2か月の長期に渡り、ビーム運転中の空洞変位を
詳細にモニターすることが可能であった。図9は
Compact ERL の再冷却およびビーム運転が開始した
2013 年 11 月~2014 年 4 月頭まで2回の冷却サイクル
過程を経た長期運転時の改良後白色干渉位置測定装置
の測定結果である。2K 冷却後は水平方向 0.2-0.3mm、
垂直方向では 1.2-1.3mm と 2012 年の変位をほぼ再現し
た。運転中も放射線の影響なく、長期的にビーム運転
時の 2K 冷却時では±5μm で空洞の安定性を確認する
(図10参照)と同時に、ビームに対しても、空洞が
要求値の 1mm 以内に設置していることを確認した。[7]
6.謝辞
Compact ERL の運転をするにあたって、建設に携わ
ってきた多くの方々に感謝する。本研究は JSPS 科研費
23740221 を受けたものである。
参考文献
[1] R. Hajima et al. (ed.), KEK Report 2007-7/
JAEA-Research 2008-032 (2008) [in Japanese]
[2] H.Sakai et al.,”High Power CW Tests of cERL
Main-Linac Cryomodule”, Proc. of SRF2013, Paris,
France, Sep. 2013, p288-293 MOP069 (2013).
[3] D. Giove et al., “A wire position monitor (WPM)
system to control the cold mass movements inside the
- 39 -
第16回高エネ研メカ・ワークショップ報告集(2015.4.10)
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[4]
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Osaka, 533-8555, Japan.
[5] Edited by N.Toge et al., “S1-Grobal Report”, KEK
Report 2013-3 (2013)
[6] R.C. Youngquist, et al., Opt. Lett, 12 (1987) 158-160.
[7] N. Nakamura et al. “Effects of Alignment Error of
Main Superconducting Cavities on ERLs and Their
Correction”, proceedings of IPAC10, Kyoto, p2314
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[8]S.Sakanaka et al., “The First Beam Recirculation and
Beam Tuning in the Compact ERL at KEK”, Proc. of
LINAC14, Geneva, Switzerland, Sep. 2014, p599-602
TUPP075 (2014).
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ポス タ ー 講 演
第16回高エネ研メカ・ワークショップ報告集(2015.4.10)
大型非球面形状のナノメートル測定
岩郷 佑美,高村 智彦,高橋 哲,高増 潔,
(東京大学)
近藤 余範,尾藤 洋一
(産業技術総合研究所)
Nanometer Profile Measurement on Large Aspheric Optical Surface
Yumi Iwago, Tomohiko Takamura, Satoru Takahashi, Kiyoshi Takamasu
(The University of Tokyo)
Yohan Kondo and Youichi Bitou
(National Institute of Advanced Industrial Science Technology)
Recently, large aspheric mirrors and lenses with high accuracy are widely used in the telescopes, semiconductor
exposure apparatuses and other industries. However, measuring method of large aspheric optical surface is not
confirmed. So, the goal of our research is to measure the profile of large aspheric optical surface with accuracy of
about 50 nm. We have conducted research on the method of measuring aspheric surface using autocollimator. In
this report, self calibration method of sensitivity of autocollimator which can be conducted in experimental set up
was proposed, and the effectiveness of the self calibration method was evaluated by using an absolute surface
profiler in National Institute of Advanced Industrial Science Technology.
Key Words: Large aspheric surface, Scanning deflectometry, Autocollimator, Self calibration
1.緒言
軸上を走査しながら等間隔に角度測定を行う.表面角
近年, 天体望遠鏡や半導体露光装置に用いられる大
型の非球面ミラーやレンズは高精度化が進んでおり,
その形状を数 100 nm 程度で測定する要求が生じている.
しかし,そのような大型形状の高精度の測定法は,確
立されていない.そこで本研究では,直径 300 mm 以上,
最大角度変化 10°程度以上のなめらかなミラーやレン
ズなどの光学非球面を 50 nm 以下の精度で測定するこ
とを目的としている.この目的を達成するため,本研
究では,オートコリメータ(AC)をリニアステージに取
り付け X 軸上を走査[1]することで大型の形状を測定す
る手法を採用した.この手法には,さまざまな複雑表
面の対応が可能,基準面を必要としない,ステージ精
度にあまり依存しない,という利点がある.
本測定手法では,Fig. 1 のように,AC を用いて,X
度が AC の測定範囲を超えそうになると,AC を回転さ
せて測定範囲を調整する.得られた角度を AC の回転位
置において繋げる補正を行い,求めた角度を数値積分
することによって形状を復元する.
測定に使用する AC はレンズ収差や,受光素子として
用いている CMOS の個体差等により感度誤差が生じる.
そのため,感度関数の校正を行うことが望ましい.感
度関数の絶対的な校正を行うためには,何らかの基準
と比較する必要があるが[2],感度関数の非線形性につい
ては,基準を用いずに自己校正することが可能と考え
られる. 本報では AC の感度関数の非線形性の校正を
実験装置上で行う手法を提案し,産業総合研究所での
絶対表面形状測定装置を用いた AC の自己校正実験に
ついて述べる.
x
Z
X
t
Fig.1 Schematic of measurement method
Fig.2 The principle of self calibration for AC
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第16回高エネ研メカ・ワークショップ報告集(2015.4.10)
Fig. 3 Measurement angle data(p0,p1)
Fig. 5 Profile difference using different autocollimator
ことで校正曲線を求めることができる.
f  p 0  x   f  p1  x 
f '  p x  
p 0  x   p1  x 

t
p 0  x   p1  x 
f  p 0  x   
t
  p 0 ( x  x)  p 0  x 
p 0  x   p1 x 
このとき x は走査ステージのステップ関数とする.
Fig. 4 Angular difference between p0 and p1
傾斜ステージを手動で動かしているため,t を高精度に
求めることは難しい.そこで p0と p1の差を平均化した
2.AC の自己校正法
Fig. 2 に AC の自己校正法の概要図を示す.測定対象
物の下には傾斜角ステージが挿入されており,被測定
物を傾斜させることが可能である.このステージを用
ものを t として用いている.もしこの t の高精度な測定
が可能であれば,感度関数の絶対校正も可能であると
言える.
いて傾斜角の異なる状態での測定を行い,2 つの測定デ
3.異なる AC での測定実験
ータを用いて自己校正を行う.
まず,傾斜ステージを用いて傾斜角を変化させて 2
前節において実験装置上で行える AC の自己校正法
回の測定を行うと,Fig. 3 のように出力角度が異なる 2
の手法を説明した.本節では使用する AC の違いによる
種類のデータが得られる.AC の位置を x,傾斜角ステ
測定形状の変化についての検証実験を行い,この自己
ージによる傾斜角を t,測定対象物の位置を X,測定対
校正法を評価する.
象物の表面角度を Z’,AC の感度校正関数を f,AC の測
測定に異なる AC を用いた場合,それぞれの持つ感度
定角度出力を p,傾斜角 が 0 の場合の位置 x における
誤差の違いにより,同一の測定物でも異なった形状が
検出角度を p0,t だけ傾斜した場合の同じ x での検出
求められる.もし感度誤差の校正が行われていた場合,
角度を p1とする.リニアステージにある程度の再現性
AC の違いによる形状差は小さくなると考えられる.
があるとすると,それぞれの校正後の値は以下のよう
本実験では使用する光源の異なる 2 つの AC を用いて
になり,差分は t となる.このとき,測定対象物の測定
測定実験を行った.それぞれの光源は LD,LED であり,
位置は(X/cost)-X だけ異なるが,t が十分小さい場合は無
どちらも受光素子として CMOS を用いている.測定対
視することができる.
f  p 0 x   Z ' ( X )
象物は曲率半径 1000 mm の凸面ミラー,
走査距離 18 mm,
走査ステップ 0.05 mm として測定を行った.それぞれ
 X 
f  p1 x   Z ' 
  t  Z ' X   t
 cos t 
の AC について,自己校正を行っていない状態で復元し
た形状及び自己校正後の測定角度で復元した形状を算
理想的な p1 と p2 の差分は t であるが,実際の測定値に
出し,AC の違いによる形状差を求めた.Fig. 5 に校正
は AC の感度誤差が乗っているため,差分は Fig. 4 のよ
前の測定角度で復元した形状差,及び,校正後の測定
うに一定値 t にはならない.
角度で復元した形状差を示している.AC の違いによる
t が微小な場合,この p0-p1 の値を用いて以下のように
校正曲線の微分値 f’が得られる.この微分値を積分する
形状差は校正前では標準偏差が 19 nm であるのに対し,
自己校正後の形状差では標準偏差が 3 nm になってい
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第16回高エネ研メカ・ワークショップ報告集(2015.4.10)
Fig.7 Calibration curve of AC in case of different tilt angle
Fig.6 Schematic of absolute surface profiler
る.このことは,自己校正によりそれぞれの AC の持つ
感度差が減少したことを示している.AC を実験装置上
で付け替える際に測定位置が変化してしまう可能性が
あるという課題はあるものの,自己校正法のある程度
の有効性を示すことができた.
4.異なる AC での測定実験
前節では異なる AC による測定実験よりの自己校正
法の評価を行った.本節では産業技術総合研究所の絶
対表面形状測定装置を用いた測定実験により傾斜角 t
の校正への影響を調べるとともに,校正方法の評価を
行う.
Fig. 8 Profile difference using different aperture before and after
calibration
5, 10 arcsec の場合の校正曲線を示す.0.5 arcsec 及び
1.0 arcsec の場合は傾斜角が比較的大きい場合の校正値
から大きく外れていることが分かる.傾斜角に対して
装置の持つ測定誤差が相対的に大きくなり,校正に影
響していると考えられる.また,提案した校正方法で
4.1 絶対表面形状測定装置
この測定機は始めに述べた測定手法と異なり,AC で
はリニアステージの繰り返し位置決め精度が高く,傾
はなくペンタミラーをリニアステージに取り付け,
斜前後の測定において同じ位置を測定できると仮定し
Fig. 6 のように AC の測定光を直角に曲げ,測定対象物
ている.しかし実際にはリニアステージの位置決め誤
に照射する.ペンタミラーを走査しながら角度測定を
差により測定位置が変化してしまう.このリニアステ
行い,求めた角度を積分することで表面形状を得る .
ージの位置決め誤差による影響も傾斜角が小さいほど
測定対象物の下には傾斜ステージが挿入されており,
大きくなると考えられる.一方,傾斜角が大きいこと
測定対象物を傾斜させることができる.測定対象物と
は校正曲線の微分値を求める際の 2 点間の幅が大きい
ペンタミラーの間にはアパーチャが挿入されており,
ことを示し,微分値を求めることができないと考えら
測定光の径を変化させることが可能になっている.こ
れる.提案した機上自己校正においては以上の影響を
のアパーチャ系を変化させることで AC の感度誤差が
考慮し,最適な傾斜角を用いることが重要と言える.
[3]
変化すると考えられる.この測定装置における AC の感
度誤差も前節で述べた自己校正法によって校正が可能
だと考えられる.
以下の実験においては測定対象物として曲率半径
30000 mm,径 50 mm の凹面レンズを用いた.測定範囲
は 40 mm,走査ステップは 0.5 mm としている.
4.3 アパーチャ径の違いによる感度誤差の校正実験
次にアパーチャ径を 3 mm に設定し,同一直線状の形
状測定を行った.ペンタミラーと測定対象物の間のア
パーチャ径を 3 mm にすることで 6 mm の場合と比べて,
角度測定に用いる測定光が絞られ,測定角度に対して
の感度誤差が大きくなると考えられる.この感度誤差
に対して提案した手法で校正を行い,校正前後の形状
4.2 傾斜角の違いによる校正法への影響
はじめにアパーチャ系を 6 mm に設定し,傾斜角 t を
をアパーチャ径 6 mm の場合の結果との比較を行った.
変化させた場合での校正曲線を求めた.Fig.7 に 0.5, 1.0,
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Fig. 8 に自己校正前後での形状差を示す.自己校正に
第16回高エネ研メカ・ワークショップ報告集(2015.4.10)
は傾斜角 10 arcsec の傾斜角を用いた.自己校正前の形
状差標準偏差は 0.46 nm であるのに対し,自己校正後の
形状差の標準偏差は 0.36 nm となっている.このこと
より,アパーチャ径 3 mm にした場合の AC の持つ感度
誤差が自己校正により減少したと言うことができる.
5.結言
本稿では AC を用いた表面形状測定装置において,実
験装置上で行える自己校正法について述べた.異なる
AC を用いた実験により,提案した機上自己校正法のあ
る程度の有効性を示すことができた.また,この自己
校正法を産業技術研究所の絶対表面形状測定装置に適
用し,傾斜角の違いによる影響を調べるとともに,自
己校正法の評価を行った.自己校正に用いる傾斜角を
変化させて実験を行った結果,傾斜角が小さすぎる場
合は校正曲線を求めることができないことが分かった.
また,アパーチャ径を変化させたことによる感度誤差
をある程度取り除くことができ,提案した自己校正法
がこの装置に適用が可能であることを示すことができ
た.
今後の展望としてはさらに大型の測定物に対し,こ
の自己校正法を適用し,AC から測定物までの距離が変
化した場合の感度誤差を取り除くことが可能かどうか
の検討を行う.また,機上自己校正法を角度接続法に
適用することの影響についての考察を行う.
参考文献
[1]
1)
R. Geckeler, “ESAD Shearing Deflectometry:
Potentials for Synchroton Beamline Metrology”,
Proceedings of SPIE, Vol. 6317,(2006) pp. 1-11.
A Just, M Krause, R Probst and R Wittekopf,
“Calibration
of
high-resolution
electronic
autocollimators against an angle comparator”
Metrologia, 40, pp. 288-294, 2003
[3] 近藤余範, 尾藤洋一, "局部傾斜角測定に基づく絶
対表面形状測定装置の開発 (第 2 報)." 精密工学
会学術講演会講演論文集 (2013): 935-936.
[2]
- 44 -
第16回高エネ研メカ・ワークショップ報告集(2015.4.10)
Temporal-Coherence Interferometer Using Optical Comb for CMM Verification
- Pulsed interferometer with a rough metal ball target –
Wiroj SUDATHAM, Hirokazu MATSUMOTO, Satoru TAKAHASHI, Kiyoshi TAKAMASU
(The University of Tokyo)
An optical-comb pulsed interferometer was developed for the positioning measurements of the industrial
coordinate measuring machine (CMM); a rough metal ball was used as the target of the single-mode optical fiber
interferometer. The measurement system is connected through a single-mode fiber more than 100 m long. It is
used to connect a laser source from the 10th floor of a building to the proposed measuring system inside a CMM
room in the basement of the building. The repetition frequency of a general optical comb is transferred to 1 GHz
by an optical fiber-type Fabry-Pérot etalon. Then, a compact absolute position-measuring system is realized for
practical non-contact use with a high accuracy of measurement.
Key Words: Optical comb, Pulsed interferometer, CMM Verification, CMM
1. Introduction
A coordinate measuring machine, (CMM) is defined by
ISO 10360-1 as a measuring system with the means to move
a probing system and the capability of determining spatial
coordinates on a workpiece surface [1]. CMMs are widely
used to measure the three dimensional sizes, forms, and
positions of manufactured parts. However, CMM
measurement inaccuracy occurs when there is an error in the
relative position between the measured points and the
probing points. The errors affecting a CMM have a
systematic and a random component. They also directly
influence the quality of the product inspection [2]. Therefore,
CMMs must be calibrated on installation and verified
periodically during their operation. The standards and
guidelines for CMM verification are based on sampling the
length-measurement capability of a CMM to decide whether
its performance conforms to the specification [3, 4]. Many
methods and artifacts are developed to verify CMMs [2-10].
Most standards prefer to use end standards such as a series of
gauge blocks, a step gauge, and a ball plate or laser
interferometer. However, there is no one perfect method for
CMMs, mainly because of the complicated constructions and
the three-dimensional positions of many measured points that
are necessary in coordinate metrology. In addition, the range
of positioning verification is limited by the length of end
standards [11, 12]. Although a continuous-wave (cw) laser
interferometer can measure for the long length, the
measuring path cannot be interrupted during the
measurement period because it is operated by a cw laser and
interference fringe counting method.
Recently, an optical frequency comb has been considered
as a useful tool for dimensional metrology, because of their
high frequency-stability and direct traceability to SI unit [13].
Several methods for length measurement with an optical
frequency comb have been proposed [14-17]. This paper
proposes a new technique for the verification of the
positioning accuracy of CMMs using an optical-comb pulsed
interferometer. A rough metal ball is used as the target of a
single-mode fiber interferometer. Because the sphere ball
provides 3D targets, the measuring system can be
constructed at any location on the surface of a CMM. In
addition, the proposed measuring system can be installed on
more than one system to measure many positions at the same
time of the measurement with a target as shown in Fig. 1.
A single-mode optical fiber more than 100 m long is used
to connect a laser source from a 10th floor of a building to
the proposed measuring system inside a CMM room in the
basement of the building. The repetition frequency of a
general optical comb is transferred to 1 GHz by an optical
fiber-type Fabry-Pérot etalon. Then, the relationship between
time and length was determined. Subsequently, the surface
roughnesses of the targets were studied; the effect of the
surface roughness of the target is also examined. Finally, a
compact absolute position-measuring system is established
based on a single-mode fiber interferometer; a rough metal
ball is used as the target. The position errors of a moving
bridge-type CMM were measured by the proposed
measuring system paired with a commercial cw laser
interferometer.
Main comb installed unit
Optical comb
Optical fiber
CMM
Target
Traking
stations
Measuring
system
Fig.1 The concept idea of a CMM verification using an
optical-comb pulsed interferometer with a rough metal ball target.
2. Principles
An optical pulsed interferometer diagram is shown in
Fig. 2. It remains the principle of an unbalance-arm
Michelson interferometer. An optical comb generates pulses
train, laser pulses are divided into two beams by optical
beam splitter (BS). One beam is reflected in the direction of
scanning mirror (M1) while the other is transmitted through
a reference position (OPD = 0) to the target mirror (M2).
Both reflected light pulses are recombined with the beam
that returned from M1 to produce interference fringe when
the optical path difference (OPD) of two arms satisfies the
following Eq. (1) [15, 16].
OPD 
mc
nf rep
(1)
where m is an integer, n is refractive index of air which is
- 45 -
第16回高エネ研メカ・ワークショップ報告集(2015.4.10)
determined by the group index [18] and frep is the repetition
frequency.
Fig. 2 Principle of pulsed interferometer
Generally, two interference fringes will overlap with
each other when observed by an oscilloscope. In practical,
the envelope peak of interference fringes pattern will be
separated if we provide a little displacement, (L).
Therefore, the position/length under measurement is
determined as following equation:
(CIR) to the fiber beam splitter (FBS), and then the beam is
divided into two paths by the FBS. One beam falls onto a
scanning mirror (M1) that is fixed on a voice coil actuator;
the other falls onto a target mirror (M2) attached to a precise
translation stage via a collimator (C2) and a sapphire window
(SW). A linear gauge (Laser Hologauge LGH-110,
Mitutoyo) with a resolution of 10 nm was installed behind a
target mirror (M2). In practice, two interference fringes will
occur on the screen of an oscilloscope when the distance
from the reference position to the target is approximately 150
mm. After that, the target was moved far away from the
reference position by a translation stage controller (FC-401,
Sigma Tech). Then, the length scales were measured by a
linear gauge. Using the same process, the time scales were
determined from the peak-to-peak measurement of the
envelope interference fringes, which appeared on the screen
of an oscilloscope. In this experiment, a voice coil actuator
was operated with a constant speed of 0.001 m/s. The
measurement results are shown in Fig. 4.
200
OPD
L
 L
2
(2)
160
120
However, two envelop interference fringes are presented
in the time domain. Therefore, the relationship between time
scale and length scale must be calibrated to determine the
value of L.
80
40
0
0
10
20
30
40
50
Fig. 4 Best-fit line of time and length scale.
3. Experiments and results
3.1 The relationship between time and length
Because the peak-to-peak of the envelope interference
fringes is presented in the time domain, the relationship
between time and length is required. The measurement setup
diagram is shown in Fig. 3; a laser source (an optical comb
C-Fiber Femtosecond Laser, Menlo Systems) generates a
short pulse train with a repetition frequency of 100 MHz and
a central wavelength of 1560 nm. The repetition rate was
modified by a Fabry-Pérot fiber etalon.
An optical
fiber-type etalon was prepared from a special-cut length of a
single-mode optical fiber (SMF-28). Both ends of the fiber
are FC connectors (fiber-optic connector) whose surfaces are
coated with 93% reflectivity to generate a 1 GHz FSR (free
spectral range). The stability of repetition frequency after
passing through a Fabry-Pérot fiber etalon was observed by a
universal counter (SC-7206, Iwatsu). It was performed at an
order of 10-9 over 2 hours [16].
Fig.3 Measurement setup diagram of the relationship between time
scale and length scale measurement; CIR is optical fiber circulator,
FBS is fiber beam splitter, C1 and C2 are collimators.
Subsequently, the laser beam was amplified by an optical
amplifier. The laser beam crosses an optical fiber circulator
Fig. 4 is a least-squares fitting of the data set between the
length scale (y-axis) and the time scale (x-axis); this was
repeated 11 times. The maximum deviation between the
dependent variable (length scale) and the best-fit line is
approximately 0.31 m, the standard deviation is
approximately 0.23 m, and the correlation coefficient (R2)
is approximately 0.9999. This indicates that two data sets
match a straight line that is obtained by a correlation
coefficient value. This relation is linearity. In experiments,
the hysteresis of the scanning-fringe device is not considered
because a one-way direction of scanning fringe is required
for the proposed method. Conversely, this relation relates to
the scanning speed of a voice coil actuator. Therefore, a
constant speed of the scanning-fringe device is necessary
during measurement.
3.2 Interference fringes with their surface roughness
targets
To study the effect of surface roughness of the target to
interference fringes, the measurement setup diagram is
illustrated as Fig. 5. A surface roughness scale plate was
used as the target of an optical pulsed interferometer. It has
had the surface roughness (Ra) of 0.025 m, 0.05 m, 0.1
m and 0.2 m, respectively. After that, the interference
fringes at the positions of 150 mm, 750 mm and 1500 mm
were recorded which related to Ra of the target. Each
distances/length was measured 10 times to determine the
repeatability of measurement which corresponds to their
surface. The results of measurement are shown in Table 1.
The results in Table 1 show that the rough surface of the
target affects to reflected light which returns back to the
interferometer system. Therefore, the power of pattern
fringes is weak; standard deviation of measurement is
increased when Ra of the target enlarges. In addition, by the
- 46 -
第16回高エネ研メカ・ワークショップ報告集(2015.4.10)
target, Ra of 0.2 m, no signal returns to interferometer at
the length of 750 mm and 1500 mm.
Sapphire window, SW
Surface roughness
scale plate
Voice coil actuator
M1
C1
shown in table 2. The maximum standard deviation is about
1 m for 10 times of measurement repeatability. The error
source is considered due to the interaction the 1 GHz signal
to the 100 MHz signal. However, these results were
measured in air-uncontrolled laboratory. During experiment,
ambient temperature swing around 19.9 C to 22.3 C,
relative humidity is around 23.7% to 28.4% and air pressure
is around 99.7 kPa to 100.9 kPa.
C2
SW
M1
Fig. 5 Measurement setup of pulse interferometer with a surface
roughness target
Table 1 Measurement results of pulse interferometer and their targets
Surface roughness
Standard
Nominal
length (mm)
target, Ra (m)
deviation (m)
0.025
0.46
0.05
0.53
150
0.1
0.61
0.2
1.17
0.025
0.62
0.05
0.70
750
0.1
0.85
0.2
0.025
0.64
0.05
0.59
1500
0.1
0.74
0.2
-
Subsequently, two metal balls were used to obtained
pattern fringes at the reference position (m = 0). One is a
smooth ball with Ra approximately 0.1 m. The other is
rough metal ball with Ra approximately 0.2 m. The
envelope interference fringes are shown in Fig. 6. Apparently,
they show that the surface roughness of the target affects to
quality of the pattern fringe. A smooth surface of the metal
ball gives a perfect fringe than a rough surface of metal ball.
Fig. 7 Measurement setup diagram of pulse interferometer with a
rough metal ball target.
Table 2 Results of pulsed interferometer with a metal ball target
Measured value
Standard deviation
m
evaluated by Eq. (2),
(m)
(mm)
1
149.85724
0.53
2
299.71418
0.29
3
449.57120
0.41
4
599.42804
0.99
5
749.28496
0.47
6
899.14184
0.47
7
1048.99838
0.75
8
1198.84950
0.50
9
1348.70568
0.50
10
1498.56167
1.00
3.4 The measurement of positioning accuracy of a
CMM
The positioning accuracy of a CMM was measured
pairing with a cw laser interferometer (Renishaw) as shown
in Fig. 8.
Renishaw laser head
Metal ball
Retroreflector
CMM
Single-mode fiber from
10th floor of the building
1 GHz FSR fiber etalon
Interference fringes
Renishaw laser
CMM position
Fig. 6 Interference fringes of a ball target with (a) surface
roughness, Ra is approximately 0.1 m and (b) Ra is approximately
0.2 m.
3.3 Pulse interferometer with a rough metal ball target
The preliminary measurement setup diagram of pulsed
interferometer with a metal ball target is shown in Fig. 7.
According to measurement results in section 3.2, a metal ball
with Ra approximately 0.1 m was selected as the target. It
was moved each position/length by 150 mm. Each length
was measured 10 times to determine the repeatability of
measurement. In this experiment, although an etalon plays a
role of frequency mode selector, the laser power is reduced.
And the surface roughness of the target also affects to the
laser power that returns back to the interferometer. It is very
difficult to detect interference signal by simple optical
detector. Therefore, a frequency-selective amplifier was used
to amplify a small interference signal and noise was also
rejected by this technique. The measurement results are
- 47 -
Fig. 8(a) The photograph of measurement.
Fig. 8(b) The measurement setup diagram.
第16回高エネ研メカ・ワークショップ報告集(2015.4.10)
A rough metal ball with an Ra of 0.1 m; a diameter of 25
mm and a retroreflector were attached to the probing system
of a CMM. A moving bridge-type CMM (FALCIO APEX
707, Mitutoyo) was used in this experiment. The positions of
measurement were controlled by the CMM controller. Then,
the linear positions of a CMM were measured by the
Renishaw laser interferometer and the proposed measuring
system. This experiment was conducted in an environmental
control room. The average air temperature, relative humidity
and air pressure were approximately 22.35 C, 21.1 %RH,
and 100.40 kPa, respectively. The summarized measurement
results of five times repetitions are shown in Table 3.
The measurement results shown in Table 3 were corrected
for the group refractive index of air to the reference
temperature [19]. The position error 1 shows the position
errors of a CMM that are determined by the difference
between the values of the CMM positions and the values
measured by the proposed method. The position error 2 is
determined by the difference between the values of the
CMM positions and the values measured by the Renishaw
laser interferometer. The maximum standard deviation of the
measurement is approximately 0.47 m for the proposed
measuring system and 0.24 m for the Ranishaw laser
interferometer. The graph in Fig.9 shows the position errors
of the y-axis of a CMM paired with the maximum
permissible error of indication of a CMM for size
measurement—[MPEE = (1.9+3L/1000)] m, where L is
the indication length of a CMM in mm. This indicates that
the position errors of a CMM show the same trends when
measured by both measuring systems. The maximum
difference between two curves is approximately 0.24 m.
These results suggest that the proposed measuring system
can be applied successfully with high accuracy for industrial
CMMs. However, the maximum permissible error of a
CMM includes usage of a contact probing system when the
measurement is performed. On the other hand, the proposed
measuring system is a non-contact type of measurement, is
not contains the effect of the probing error.
Table 3. Positioning measurement results of y-axis of a CMM.
Position error
Standard
CMM
Proposed
(mm)
method (mm)
1 (m)
deviation (m)
0.000
0.0000
0.00
0.00
149.857
149.8557
1.31
0.29
299.714
299.7127
1.33
0.41
449.571
449.5690
2.01
0.47
Renishaw
Position error
Standard
CMM
(mm)
laser (mm)
1 (m)
deviation (m)
0.000
0.0000
0.00
0.00
149.857
149.8559
1.11
0.14
299.714
299.7126
1.43
0.21
449.571
449.5692
1.77
0.24
Position error 1
Position error 2
MPE
4.0
Fig. 9, the blue solid line is the position errors of a CMM
with gap of the measurement uncertainty that were measured
by proposed system. The red dash line is the position errors
of a CMM that measured by Renishaw laser interferometer,
and the black lines are the maximum permissible error of
indication of a CMM for size measurement.
4. Conclusion
An optical-comb pulsed interferometer whose repetition
frequency is transferred from 100 MHz to 1 GHz by an
optical fiber- type Fabry-Pérot etalon was developed to
verify the positioning measurements of industrial CMMs. A
rough metal ball with an Ra of 0.1 m was used as a target
of the single-mode fiber interferometer. A moving
bridge-type CMM was measured by the proposed technique
paired with a Renishaw laser interferometer in an
environmental control room. Both systems show the same
trend of position error. The results show that the
measurement accuracy is mainly affected by changes in the
environmental conditions, while the noise of the interference
fringe is caused by air fluctuation and mechanical vibration.
The proposed measurement technique is very convenient and
is easier to align than using end standards or a
continuous-wave laser interferometer. It also provides
enough accuracy for measuring linear dimensions of
industrial CMMs. The proposed measuring system can be
installed at any location on the surface of a CMM. It can also
be used on more than one system to measure the lengths
because a rough sphere ball offers a 3D target for a
single-mode fiber interferometer. Therefore, further research
will be undertaken in the future to study the volumetric
errors of CMMs.
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Acceptance and reverification tests for coordinate
measuring machines (CMM). Part 1: Vocabulary.
International Organization for Standardization, 2000.
2)
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coordinate measuring machines and machine tools,
Meas. 1991; 9: 17-22.
Position error ( m)
3.0
2.0
1.0
0.0
-1.0 0
150
300
450
-2.0
-3.0
-4.0
Fig. 9 Position errors of y-axis of a CMM.
- 48 -
第16回高エネ研メカ・ワークショップ報告集(2015.4.10)
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19) ISO 1. Geometrical product specification (SPC).
Standard reference temperature for geometrical product
specification
and
verification.
International
Organization for Standardization, 2002.
- 49 -
第16回高エネ研メカ・ワークショップ報告集(2015.4.10)
イメージング大口径ウェハ全面厚さ計測技術の開発
○小貫 哲平,蛯名 雄太郎,尾嶌 裕隆,清水 淳,周 立波(茨城大学)
Imaging thickness measurements for one-shot full wafer inspections
○Teppei ONUKI, Yutaro EBINA, Hirotaka OJIMA, Jun SHIMIZU and Libo ZHOU
Developments of the thickness measurement systems specialized for wafer thinning process by back grinding are
reviewed. We have developed wider area, wider range and higher preciseness thickness meters by means of the
imaging interferometry and the imaging spectrometry, for on-site, one-shot, full wafer inspection instruments in
the ultra thin wafer manufacturing.
(a)
grinding machine
(b)
wafer
1.はじめに
2.厚さイメージング計測方式選定
PC
Spectrometer
probe
(c)
Lamp
(d)
[ m]
50
45
40
0
[mm]
-100
100
Power spectrum
ウェハ計測技術の進化が半導体デバイス製造技術の
更なる発展のために求められている.多積層高密度集
積デバイスやパワーデバイス,撮像素子,表面弾性波
フィルタなどの性能を高めるために基板の厚みは10ミ
クロン以下まで薄く加工されるようになっており,一
方で低コスト化のためにウェハ口径は大きくなってい
る.その上,ウェハが薄くなるに従い要求される寸法
公差も厳しくなっている.計測技術には加工技術以上
の精度が要求され,広面積の薄材の厚さを高精度に評
価する技術が求められている.我々は次世代薄化加工
技術で用いられるウェハ厚さ計測装置として,図1のよ
うにφ150㎜エリアを最薄1ミクロンまでの計測範囲か
つ誤差0.1ミクロン以内を目標仕様とした研究開発を推
し進めてきた1)-5).本発表では,イメージング計測によ
る次世代型の厚さ分布計測技術の開発状況と展望を報
告する.
75 m
12.5 m
0
20
40
60
80
Thickness [ m]
Thickness distribution
図 1.これまでの機上シリコンウェハ厚さ計測
○厚さ計測方法
・分光方式
・干渉方式
アクティブ
前分光
パッシブ
後分光
時間領域
周波数領域
○イメージング方法
・光学方式
X-spatial
・2 軸走査方式
- 50 -
Y-spatial
Y-spatial
・1 軸走査方式
Spectral or
Temporal
Y-spatial
光学的手法は,片面からの反射光計測で非破壊・非
接触な厚さ計測ができる.その手法は分光方式と干渉
方式に大別される(図 2)
.
通常の RBG 三原色のみの波長分解能カラーカメラよ
りも多数の波長チャンネルのイメージング取得を行う
手法を分光イメージングと呼び,その装置を分光カメ
ラと呼ぶ.分光方式は図 2 のように分類される.自発
光や自然照明を計測するパッシブ方式ではなく,照明
と分光カメラで構成されるアクティブ方式で測定条件
を制御して分光計測を行う.アクティブ方式にも照明
を分光して単色光照射による光学応答を計測する前分
光と,白色光照射による光学応答を光検出器前で分光
する後分光がある.
干渉方式は白色干渉の原理によって,相関波形から
表面と裏面の位置を求めて厚さを求める.相関波形の
取得方法として機械的掃引などで時間軸上で相関波形
を得る時間領域と,同時に周波数チャンネル上で相関
波形を得る周波数領域の方法がある.
イメージング計測において,X,Y 空間座標に加えて
厚さ情報を検出するためにもう 1 軸(スペクトルある
いは相関波形)追加した 3 次元輝度配列を計測しなけ
ればならない.3 次元輝度配列のうち空間座標マップを
得るために撮像素子を用いる光学方式と単一受光器で
機械的な走査を用いる 2 軸走査方式,およびその両方
を用いる 1 軸走査方式がある.
X-spatial
図 2.厚さイメージング計測方式
第16回高エネ研メカ・ワークショップ報告集(2015.4.10)
3.検討例
37
38
分光方式,干渉方式のどちらにおいても,表面から
の反射光と合わせて裏面からの反射光を検出すること
が必要であるため,ウェハ材料の透明な波長帯で光学
測定を行う必要がある.シリコンウェハを測定するた
めには,半導体基礎吸収端波長よりも長波長帯の近赤
外波長帯(800nm〜2600nm)の計測を行う必要があり,
この波長帯に適合した光学測定装置(特に光源および
光検出素子)を選ぶ必要がある.
計測方式の選定のため,市販装置の中から幾つか試
用測定を行った.図 3 はアクティブ後分光-1 軸走査方
式イメージング(JFE テクノリサーチ社御協力,Specim
社 ImSpector)による計測実施例である.分光範囲波長
800nm~1000nm(1024 点)
,Y 軸幅 60mm(1391 点)の
ライン反射分光計測をスキャンさせた厚さ分布イメー
ジである.試料は 8inch 径 37 m 厚仕上げ加工前ウェハ
であり,サブ mm オーダーの梨地状の厚さムラや厚さ
変化が測定できているが,厚さ計測範囲や測定時間な
どに問題がある.図 4 は時間領域干渉-光学方式イメー
ジング(Linx 社御協力 Heliotis 社 Helilnspect)による
計測実施例である.ウェハ面位置を求めるのに波長
820nm~860nm の SLD 照明を用いて相関波形の測定を行
い,1 秒未満で表面と裏面の位置を独立して求めること
ができるが,相関波形振幅からウェハ面を求めている
ため,ノイズに弱く異常値が多数生じるなどの問題が
生じた.前分光-光学方式では高精度広範囲高速計測が
期待される.図 5 はアクティブ前分光-光学方式イメー
ジングのための単色広域照明を構築した例である.波
長 700nm において波長幅 19nm,スポット径 70mm,照
度2
W/cm2,の分光照明が行うことができている.
36.2 [ m]
厚さ像
反射光学像
10 ㎜
図 3 アクティブ後分光-1 軸走査方式厚さイメージング
4.まとめ
超精密研削によるウェハ薄化加工で用いる,オンサ
イト厚さ分布計測技術の開発について報告した.近赤
外イメージング計測技術による広域厚さ分布計測が可
能となった.アクティブ前分光-光学方式によって厚さ
計測範囲や計測時間などの課題解決を行い,数年以内
に高速(ビデオレート程度)で広域(ウェハ全面)の
ウェハ検査をオンサイトで実施する技術を完成させる
ことを目標としている.
本研究は科研費若手(A) (52709005) の支援を受けた.
1mm
図 4 時間領域干渉-光学方式厚さイメージング
液晶分光フィルタ
参考文献
1)
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5)
Teppei Onuki, Naoto Takagi, Jun Shimizu, Hirotaka Ojima and Libo
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backgrinding process, Advanced Material Research 325 (2011) 672-677
Teppei Onuki, Ryusuke Ono, Takahiro Ojima, Jun Sshimizu and Libo
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(2011) 729-732 (in Japanese)
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Shimizu, and Libo Zhou, A thin silicon wafer thickness measurement
system by optical reflectmetry scheme using Fourier transform
near-infrared spectrometer, Advanced Material Research 797 (2013)
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Advanced Materials
Research 1017 (2014)681-685
Teppei Onuki, Ryusuke Ono, Takahiro Ojima, Jun Sshimizu and Libo
Zhou, Silicon wafer thickness meter by reflection spectroscopy using
near infrared spectrometer, Journal of the Japan society for Abrasive
Technology 58 (2014) 515-519 (in Japanese)
- 51 -
コンデンサ
レンズ
テレセント
リック
レンズ
図 5 アクティブ前分光-光学方式イメージング照明
第16回高エネ研メカ・ワークショップ報告集(2015.4.10)
Development of chemical mechanical grinding (CMG) wheel for
sapphire wafer
Ke Wu, Naoki Yamazaki, Yutaro Ebina, Libo Zhou
(Ibaraki University)
Finishing process of sapphire wafer is meeting huge challenge to fulfill the strict requirement of high surface
quality in semiconductor industry. Fixed abrasive process, although can guarantee the profile accuracy, leaves
damaged layer on the surface or subsurface of sapphire wafer. Chemical mechanical polishing (CMP) is
famous for providing great surface roughness, however, sacrifices surface geometrical accuracy. Therefore, a
new chromium oxide (Cr2O3) sapphire grinding wheel based on chemical mechanical grinding (CMG)
principle has been developed and its performance has also been put into examination. The experiment result
has demonstrated that Cr2O3 possesses an outstanding potential in terms of a high material removal rate of
sapphire wafer, meanwhile, largely reduces the surface roughness from about 150nm to below 10nm in one
hour. In addition, the design of experiment (DOE) has also been carried out to study the effect of influencing
factors towards the ultimate surface roughness of sapphire wafer.
Keywords: Sapphire wafer, Chemical mechanical grinding, Surface roughness, Material removal rate, Design
of experiment
1. Introduction
energy of each atom, it is possible to lower the barrier energy
Sapphire, consisting of single crystal Al2O3, has many
by introducing a proper chemical agent as abrasive which
superior characteristics such as high hardness, excellent
possesses the ability of generating a softer layer of chemical
thermal stability, strong chemical resistance and outstanding
reaction product through the interaction between grinding
light transmission and thus has been widely applied in
wheel and workpiece and transports the product out of the
substrate
grinding zone.
material
in
the
field
of
photoelectronic,
microelectronic and semiconductor industries ranging from
new generation intelligence phone’s screen to GaN-based
light emitting diodes (LEDs) [1]. However, due to the above
mentioned properties of sapphire, it poses enormous
challenge to the manufacturing process of sapphire.
Therefore, CMG, which was put forward by Eda and Zhou et
al, can not only integrate the grinding and polishing process
of sapphire wafer into one step, but also emerge defect-free
surface and maintain surface profile accuracy [2]. So far,
CMG has already been successful applied into the grinding
process of single crystal silicon wafer [3-4].
Fig.1 Grinding machine and chromium oxide (Cr2O3)
wheel for sapphire
2. CMG principle and wheel development
It is well known that, removing the material from its
outmost surface, an extra surface barrier potential energy in
addition to its lattice energy which is mainly depended on the
temperature, the degree of chemical equilibrium and
Table 1 Characteristics of chromium oxide grinding wheel
wheel Size (mm)
D300×T43×H220, Φ10X7
2
0.92
elastic modulus (kgf/mm )
558
bending strength (kgf/mm )
2
chemical reaction rate is necessary in order to break the
density (g/cm )
2.55
chemical bond between atoms [5]. Although further research
abrasive size (μm)
3.5
needs to be carried out to quantitatively identify the free
abrasive concentration
- 52 -
3
36 Vol%
第16回高エネ研メカ・ワークショップ報告集(2015.4.10)
The specification Cr2O3 grinding wheel is listed in
From Table 3, it is found that when the wheel revolution
table.1. In addition, the prototype of Cr2O3 grinding wheel
is 600 (rpm) and wafer revolution speed is 100 (rpm), the
which is built in ring type with about 60 abrasive pellets
optimized surface quality of sapphire wafer is achieved,
sticking on the hub in a loop, and it is also specifically design
below 5nm. However, other three combinations of parameter
for the UPG-150, as shown in Fig.1.
lead to the similar result of surface roughness, about 10nm.
The reason of this phenomenon can be explained by the basic
3. Experiment
principle of CMG process where larger revolution speed
Two inch sapphire wafers ((0001) oriented) were
leads to relatively longer contact length, faster relative
purchased commercially and four wafers which had
movement and higher temperature during the grinding
previously been ground by diamond abrasive (SD500) under
process, which, to some extent, lowers the barrier energy at
the same condition were prepared for the sake of carrying out
the outmost surface of sapphire wafer and accelerates the
the DOE. Secondly, it should be noticed that all the surface
solid phase reaction between sapphire wafer and abrasive,
roughness and surface texture of sapphire wafers were
and then chemical reaction product is transported out of the
measured by scanning white light interferometer (New view
grinding zone.
200, Zygo Co.) and 3D measuring laser microscope
(LEXT-OLS4000, Olympus Co.), respectively.
Table 2 The factors and levels of DOE
levels
factors
-
+
wheel revolution speed (n1) (rpm)
350
600
wafer revolution speed (n2) (rpm)
50
100
The DOE is consisted of two factors and two levels (L22),
Fig.2 Surface roughness before and after CMG process
and table.2 lists the parameter chosen in this study. Every
group of experiment was lasting for 1 hour under dry
Fig.2 shows the surface roughness before and after CMG
condition and the sapphire wafer was then cleaned by
process of a specific sapphire wafer whose surface roughness
ultrasonic cleaning machining (UT-305S, Sharp Co.) for 30
is largely improved from above 100nm to below 10nm.
minutes. In addition, Cr2O3 grinding wheel was conditioned
Secondly, the surface roughness after being ground by
by diamond dresser (SD100) after every round of
diamond (SD500) is worse at the fringe than that of at the
experiment.
center. This mainly attributes to the intrinsic kinematics of
cup wheel which leads to a relatively denser grinding
trajectory at the center when compared with the fringe.
3. Result and discussion
The average surface roughness of sapphire wafer after
However, CMG process seems hardly subjected to the
CMG process is listed in Table.3 according to the parameter
influence of above mentioned property of cup wheel because
combination of DOE.
the principle of CMG process is chemically dominated while
diamond grinding is mechanically dominated.
Another evidence of this assumption is also supported by
Table 3 The result of DOE
number
n1
n2
surface roughness (nm)
Fig. 3, where it shows that the material removal mechanism
1
-
-
7.306
of diamond (SD500) is mainly depended on ploughing,
2
-
+
8.351
cutting and rolling of diamond abrasives on the sapphire
3
+
-
9.289
4
+
+
4.968
surface and thus causes surface and subsurface damage in
terms of pits and scratches. However, CMG process relies on
the chemical reaction between sapphire and abrasive and
- 53 -
第16回高エネ研メカ・ワークショップ報告集(2015.4.10)
thus can achieve damage free surface because of the hardness
4. Summary
of Cr2O3 is lower than sapphire.
In this paper, based on the principle of CMG process, a
state-of-the-art Cr2O3 grinding wheel is specifically designed
pit
for sapphire. The obtained result can be summarized as
scratch
below:
1) The basic principle of CMG of sapphire has been
proposed in this paper. However, further study is still
needed to fully understand the essence of solid phase
reaction.
2) A new Cr2O3 grinding wheel for sapphire has been
developed, and its performance has also been put into
investigation. The experiment result suggests that
chromium can efficiently reduce surface roughness of
sapphire wafer, from about 150nm to below 10nm in 1
(a) Surface texture before CMG process
hour.
3) From the result of DOE, the wafer revolution speed
set more effect towards wheel revolution speed during
the CMG process of sapphire. And, it plays an important
guidance to the future optimization of sapphire CMG
process. Besides, it also can be predicted that increase
the relative movement speed between sapphire wafer and
grinding wheel is beneficial to improve the surface
roughness of sapphire wafer.
5. Reference
[1] H. Aida, T. Doi, H. Takeda, H. Katakura, S.W. Kim, K.
(b) Surface texture after CMG process
Koyama, T. Yamazaki, M. Uneda, Ultraprecision CMP for
Fig.3 Surface texture of the center of sapphire wafer
sapphire, GaN, and SiC for advanced optoelectronics
In addition, the effect of two input parameters towards
the
surface
roughness
is
also
calculated
materials, Current Applied Physics. 2011, 12:S41–S46.
by DOE
[2] Zhou L, Eda H, Shimizu J, Kamiya S, Iwase H, Kimura S,
methodology, as shown in Fig. 4. It is very clear that the
Defect-free fabrication for single crystal silicon substrate by
wafer revolution speed poses twice more influence towards
chemo-mechanical
the surface roughness.
55(1):313-6.
grinding,
CIRP
Annals.
2006,
[3] Zhou L, Shimizu J, Eda H, Kimura S, Research on
chemo-mechanical-grinding (CMG) of Si wafer (2nd report),
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silicon
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using
nanogrinding and chemo-mechanical-grinding. Mater Sci
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[5] Taniguchi N. Nanotechnology. Oxford University Press,
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Fig.4 The effect weight of two grinding parameters
towards the surface roughness of sapphire wafer
- 54 -
第16回高エネ研メカ・ワークショップ報告集(2015.4.10)
低熱膨張ミラーの超精密加工
岡田 睦,高木 昭宏
(中部大学 工学部 機械工学科)
Ultra precision machining of low thermal expansion mirror
Mutsumi, OKADA and Akihiro TAKAGI
(Department of Mechanical Engineering, Faculty of Engineering, Chubu University)
Needs of precision optical mirrors are increasing in the astronomical space telescope. In the space having extremely
large temperature differences, the aspheric optical mirror made of low thermal expansion ceramic is very effective in
reducing the focus errors due to the thermal expansion. In order to develop the mirror made of low thermal expansion
ceramic, parabolic mirror of the ceramic is ground and polished to test. By the grinding and polishing test, changes of
form deviation profiles and surface roughness profiles are evaluated and feasibility is studied.
Key Words: low thermal expansion mirror, precision grinding, truing, uniform polishing, magnetic field-assisted
の上に軟質のポリシャが張られており,その上にワークをジ
1.諸 言
宇宙空間における天体観測で従来用いられる高精度反射鏡
グに取り付けて置く.このジグには永久磁石が組み付けられ
はガラス製のものが主流であったが,非常に大きな温度変化
ており,磁力によりワーク上方から磁性メディアを引き上げ
による収差の問題と強度不足の問題がある.一方,低熱膨張
ることにより,ポリシャがワークの形状に密着し,ワーク全
性セラミックス「NEXCERA™」が近年開発されており,本研
面に一定の圧力で接触する機構である.研磨盤を回転させる
究では低熱膨張性セラミックス「NEXCERA™」を用いて放物
と研磨盤上の一定の場所でレンズも同方向に自転しながら遊
面鏡の精密加工を行い加工特性について検証した.本実験で
星運動をし,この回転運動とポリシャ上に散布された研磨剤
はφ120mm の放物面反射鏡の試作実験を行った.ダイヤモンド
との相互作用により,ワーク表面が研磨される.
ホイールを用いて非球面研削を行い,仕上げ加工のため磁気
援用研磨法による均等研磨を行った.
2.放物面鏡の試作
本実験で用いた低熱膨張性セラミックス「NEXCERA™」の
物理的特性を図 1 に示す.NEXCERA は極めて低い熱膨張係
数と優れた機械的特性を持つコーディエライト系のセラミッ
クスであり,2MgO•2Al2O3•5SiO2 の組成を有する.温度変化に
対する寸法の再現性が極めて良好で経年安定性も高い.さら
にアルミニウム合金よりも軽量であり,低熱膨張性ガラスよ
り高い剛性を持ち,強度は 1.5 倍と高い.
試作した放物面鏡の形状を図 2 に示す.無限遠の像は完全
に1点に集光する.軸対称放物面形状は次式で表される.
Cv・Y2
Z(X) =
…(1)
1+
1 - (K+1)・Cv2・X2
ここで,X はミラーの半径方向位置,K,Cv,Ci (i=1 - n)は非
球面係数であり,K=-1,R=1/Cv=500 mm とした.
各種セラミック材の剛性と熱膨張係数
Parabolic
mirror
3.放物面の精密加工実験
3.1
図1
研削方法
図2
放物面の研削加工は X-Z 軸同時制御 2 軸制御駆動して行っ
放物面鏡
Wheel spindle
た.その研削加工の様子を図 3 に示す.超精密加工装置には
ULG100D(SH3)(東芝機械製)を使用した.加工後の形状は非
Mirror
接触青色レーザプローブ形状測定器 NH-3UP(三鷹光器製)を,
表面粗さは非接触走査型白色干渉計 NewView6200(ZYGO 社
製)により評価した.
3.2
磁気を援用した均等研磨法
磁気を援用した均等研磨法の原理図と研磨装置の外観を図
Work
spindle
Coolant
Diamond
wheel
4 に示す.本研磨装置は,研磨盤の溝部に磁性メディアを挿入
したあとに研磨盤を軟質のゴムシートで密閉する.さらにそ
- 55 -
図3
X-Z 軸同時 2 軸制御の研削加工の様子
第16回高エネ研メカ・ワークショップ報告集(2015.4.10)
その結果,低熱膨張セラミック NEXCERA は鏡面加工が可能
Load Slurry
Soft
sheet
Load
Magnetic
media
であり,反射ミラーとして有効であることが示された.
Polisher
参考文献
(1)H. Suzuki, S. Kodera, T. Nakasuji, T. Ohta, K. Syoji: Precision
Grinding of Aspherical CVD-SiC Molding Die, Int. J. of JSPE, 32,
1(1998) 25-30.
(2) H. Suzuki, M. Okada, Y. Yamagata, S. Morita, T. Higuchi: Precision
Grinding of Structured Ceramic Molds by Diamond Wheel Trued
with Alloy Metal, Annals of CIRP, 61, 1(2012)283-286.
(3)H. Suzuki, S. Kodera, S. Hara, H. Matsunaga, T. Kurobe: Magnetic
field-assisted polishing – application to a curved surface, Precision
Engineering, 11, 4(1989) 197-202.
Polisher
Mirror
Jig
Mirror
Polishing pressure
Polishing machine
Air
(a)原理図
(b)外観
図 4 磁気援用研磨法による均等研磨
4.実験結果
NEXCERA 製の放物面形状のミラーを研削,非球面研磨に
より創成し,その形状誤差と表面粗さの変化を検証した.
4.1
研削加工の結果
研削加工条件を表 1 に示す.#1500 のダイヤモンド砥石で研
削加工した放物面の形状誤差曲線を図 5 に示す.補正加工後,
1.1μmP-V の形状精度が得られた.研削したワーク中心部の表
面粗さを図 6 に示す.0.08μm Rz とクラックのある加工面と
なった.
表 1 研削条件
Wheel
Resinoid bonded diamond
Grain size
#400, #800, #1500
Diameter
Φ100 mm ×5 mm t
Tip radius
R10 mm
Rotational speed
10000 min -1
Depth of cut
1 μm/pass
Feed
30 mm/min
Grinding pass
4
Coolant
Solution type
Deviation μm
Before polishing: 1.1μm
After polishing: 1.2μm
Radial position mm
図7
Radial position
Depth μm
Deviation μm
4.2
図 8 研磨除去量分布
Radial position mm
Radial position mm
図 5 研削後の形状誤差
Radial position mm
40 分研磨後の形状誤差曲線
0.08 μm Rz
After primary grinding:
4.0 μm P-V
After secondary
grinding: 1.1 μm P-V
研磨条件
Epoxy-urethane
0.5 mm t
Natural rubber sheet
0.4 mm t
Diamond
0 - 1 µm
1 wt%
3.04 kPa(31.0 gf/cm²)
100 min-1
17 mm
10.7 m/min
Removal μm
表2
Polisher
Thickness
Rubber sheet
Thickness
Abrasive
Grain size
Density
Polishing pressure
Rotational speed
Rotational radius
Peripheral speed
図 6 研削後の中心部の表面粗さ
研磨加工の結果
研磨前と 40 分研磨後の形状精度の測定結果を図 7 に示す.
図 8 は 40 分研磨した後の除去分布を示し,40 分間研磨による
図 9 研磨時間に対する表面粗さの変化
除去量は中心付近で約 1.0μm であった.均一性は最大と最低
研磨除去量から算出され,最大除去量は 1.2μm,最低除去量
は 1.0μm であり,研磨除去の均等性は約 80%であった.研磨
時間に対する表面粗さの変化を図 9 に示す.表面粗さは研磨
時間とともに良くなっていることがわかる. 90 分研磨後のノ
マルスキー顕微鏡の写真と表面粗さを図 10 に示す.表面粗さ
は中心部で 12nm Rz と滑らかな表面が得られている.
20 µm
5.結 言
本研究では,低熱膨張性セラミックスの放物面鏡の研削と
研磨によって試作し,形状精度と表面粗さの評価を行った.
11.8 nm Rz
20 µm
1.49 nm Ra
(a)ノマルスキー顕微鏡写真
(b)表面粗さ曲線
図 10 90 分研磨後の中心部の表面性状
- 56 -
第16回高エネ研メカ・ワークショップ報告集(2015.4.10)
KAGRA 用超高真空対応トラバース装置の開発
浦口
史寛
(自然科学研究機構 国立天文台 先端技術センター)
Development of UHV traverser for KAGRA
Fumihiro URAGUCHI
(Advanced Technology Center, NAOJ/NINS)
A 3-axis traverser has been developed for Large-scale Cryogenic Gravitational Wave Telescope (KAGRA) Project
at Advanced Technology Center, National Astronomical Observatory of Japan. The traverser is required to have 10
µm position accuracy with 250 kg load capacity and to be operable in ultra high vacuum (UHV) environment. In
order to accommodate this requirement, mechanical components such as the linear motion guide were chosen
carefully in terms of outgassing from lubricants. In this article, mechanical design concepts and performance at
ordinary pressure will be described.
Key Words: KAGRA, Traverser, UHV
0-6Paの超高真空環境下とし,構造や駆動性能は安
1.はじめに
国立天文台先端技術センターでは大型低温重力波望
遠鏡KAGRAの開発を重点領域に据え,重力波プロ
ジェクト推進室と協力しながらさまざまな光学系コン
全率3を確保するよう設計を進める.
2.2 装置構成
図1にトラバース装置とペイロードの概略を示す.
ポーネント開発を行っている.先端技術センターのメ
カニカルエンジニアリングショップ設計班は,特に機
械設計においてKAGRAに貢献してきた.今回,干
渉計を構成する鏡の位置調整を超高真空環境下にて行
うための「トラバース装置」の設計依頼をうけ,設計,
トラバース装置
製作,実装および性能評価を行った.本報告では,ト
ラバース装置の設計コンセプトおよび大気圧下での性
能を中心に述べる.
トッププレート
2.装置の詳細
2.1 仕様
ペイロード
トラバース装置の目的は,前述のとおり鏡の位置調
整にあり,具体的には,鏡の懸架装置「ペイロード」
の設置誤差を,ペイロード内の鏡の位置調整機構の調
整範囲まで追い込むことにある.今回,ペイロードの
設置誤差を並進±5mmおよび回転±1°として,こ
れをトラバース装置の駆動範囲を等しく設定する.ま
た,鏡の位置調整機構の性能および位置決めの方針か
ら,トラバース装置の制御分解能を20μm,その分
解能で送り駆動をした際の停止位置精度を10μmと
し,絶対位置精度は問わないこととなった.
ペイロードは質量250kg,全体の高さは約19
00mmとなる.ペイロードの支持はその上端に位置
する外径730mmの円盤状部品で行うが,懸架物と
の干渉を防ぐため,トラバース装置自体に直径700
mm以上の開口を必要とする.動作環境は常温かつ1
- 57 -
図1
トラバース装置とペイロードの概略
第16回高エネ研メカ・ワークショップ報告集(2015.4.10)
トラバース装置は並進2軸,回転1軸の機能をもっ
-1Gを使用する.このスイッチは超高真空対応と明
たステージとする.装置は「トッププレート」と呼ば
示されていないが,KAGRAプロジェクトによる使
れる中空円盤上に取り付けられる.トラバース装置の
用可否判断の上で採用している.
荷重支持点をトッププレートの支持点と一致させるた
図3に直交2軸ステージ構成を示す.ステージ部品
め,一つのテーブルを4つの直交2軸ステージで支持
材質は,アウトガス特性を考慮し304ステンレスを
する構成とする.
基本に用いるが,ベアリングや直動機構には440C
4つのステージのうち,対向した2つを駆動ステー
ステンレスを用いる.
ジ,他の2つを従動ステージとし,並進駆動は駆動ス
テーブル
テージを平行に,回転駆動は駆動ステージを同一円周
ボールねじ(Y)
上に駆動することで実現する.駆動範囲仕様を満たす
原点復帰スイッチ(Y)
ために,同一円周の接線方向に±15mm,法線方向
ハイブリッドベアリング
に±10mmのストロークを設定する.以降,接線方
Yステージ
向に駆動するステージをXステージ,法線方向に駆動
するステージをYステージと呼び,トラバース装置の
ステッピングモータ
(Y)
駆動座標系定義(X軸,Y軸)とする.図2にトラバ
Xステージ
ース装置の概略を示す.
ペイロード
従動ステージ
LMガイド(X)
駆動ステージ
図3
X
トッププレート
直交2軸ステージ構成
2.3 構造解析
トラバース装置の部品は,質量250kgを搭載し
テーブル
Y
Yステージ
た状態で,材質の耐力に対し安全率3を確保するとい
う仕様を満たさなければならない.さらに,micro yield
トッププレート
支持点
による長期にわたる変形を避けるため最大応力が耐力
の20%以下(つまり安全率5以上)となるよう部品
駆動ステージ
Xステージ
の寸法を決定する.図4に解析例として,仕様の5倍
従動ステージ
の荷重をかけたときの最大応力とその位置を示す.最
図2
トラバース装置概略
大応力値205MPaが304ステンレスの耐力21
回転駆動のためには,各ステージとテーブルは回転
が自由となるよう接続されなければならない.回転機
5MPaを下回ることが確認でき,長期の寸法安定性
も期待できる.
構としてはベアリングが一般的であるが,超高真空下
では潤滑剤のアウトガスが問題となり,また無潤滑で
は金属同士の接触による cold weld が懸念される.そこ
で,ステンレスのレースに窒化珪素球を組み合わせた
ハイブリッドベアリングを無潤滑で使用する.
直交2軸ステージは,ころがりによる直動案内を用
いる構成とした.今回,直動案内にはTHK㈱特殊環
境用オイルフリーLMガイドを,送り機構については,
日本精工㈱スペーシア™ボールねじ(E-DFO処理)
を採用した.これらはいずれも総ステンレス製品に超
高真空対応の潤滑を施したもので,許容荷重は同サイ
図4
構造解析例
ズの一般品の静定格荷重と比較し5%程度と低いが,
摩擦係数や効率については一般品と変わらない性能を
2.4 性能評価
有している.駆動用モータについても同様の考慮が必
開発時点でKAGRAプロジェクトから制御系仕様
要であり,オリエンタルモーター㈱超高真空対応ステ
は提示されていなかったが,仕様を保証するために性
ッピングモーターPKシリーズを採用する.原点復帰
能評価は必要である.そこでまず手元の機器を用いて
用スイッチには,オムロン㈱高温用基本スイッチTZ
大気圧下での動作確認および性能評価を行った.
- 58 -
第16回高エネ研メカ・ワークショップ報告集(2015.4.10)
トラバース装置の構成部品の多くはクリーン環境で
あれば大気圧下であっても動作可能であるが,唯一ス
テッピングモーターだけはベアリング潤滑方式の制限
により大気圧下での駆動ができない.そこでモーター
は同寸法の一般品をクリーン環境仕様に改造したもの
を準備した.コントローラにはPLC(パナソニック
デバイスSUNX㈱FP0R-C16)を用いた.当
初,回転駆動には円弧補間機能が必要と考えたが,本
装置は円弧上のストロークに対し基線が十分長いため,
±1°の回転駆動範囲であれば直線補間機能で代用可
能であった.
図6
ステップ駆動誤差分布
図5に性能評価のセットアップを示す.トラバース
装置にペイロードに模した250kgのアルミブロッ
クを搭載し,レーザ変位センサにて並進駆動量の測定
を行う.まず,バックラッシュ量を測定し,X,Yと
もに9μmと得た.これを補正量として制御に組み込
み,ステップ駆動誤差測定に入った.評価範囲は,X
±10mm,Y±5mmとし,この範囲を5mm刻み
で移動しながら,各点にてX,Y±1mmの範囲を2
0μmステップで駆動したときの誤差(指令値と実測
値の差)を記録していく.
図7
リニアリティ補正残差分布
3.おわりに
国立天文台先端技術センターにて開発したKAGR
A用超高真空対応トラバース装置について,その装置
構成と構造解析,および大気圧下での性能評価につい
て報告した.大気圧下では十分仕様を満たすことが確
認され,KAGRAにおいて超高真空下での性能評価
が待たれる.
図5
性能評価セットアップ
図6にステップ駆動誤差の測定結果を示す.X,Y
ともに同方向駆動では誤差が±1μmと,仕様に対し
十分な性能が確認できた.逆転時にはXが±5μm,
Yが±3μmと,バックラッシュ補正の残差と見られ
る誤差が見られるが仕様は満たしている.ステップ駆
動誤差測定後の位置は,開始時と比較しXが+2μm,
Yが+4μmと,累積誤差も大きくないことがわかっ
た.以上より,大気圧下においては仕様を満たす性能
が確認できた.なお,仕様には明記されていない絶対
位置精度については,リニアリティ補正後の残差がX,
Yともに+23μm/-16μmとなった.図7にリ
ニアリティ補正後の残差分布を示す.
- 59 -
第16回高エネ研メカ・ワークショップ報告集(2015.4.10)
車載用ヘッドアップディスプレイ(HUD)用大型自由曲面ミラーの超精密加工
大村 昭 1、鈴木 浩文 2
1
株式会社 木村製作所、2 中部大学 (共同研究)
1.はじめに
新興国企業との競争、生産活動のグローバル化に伴なう経済変動等の製造業を取り巻く課題に対応するべく、当社は
高 付 加 価 値 加 工 製 品 の事 業 化 を目 標 に次 代 の市 場 が要 請 する難 削 材 料 や難 加 工 形 状 品 の超 精 密 加 工 技 術
の開 発 に取 り組 んでいる。
市 場 の拡 大 が注 目 される分 野 の中 から光 関 連 機 器 ・デバイスについて精 査 し、規 模 の急 伸 が予 測 される表 1
に示 す光 学 ・情 報 関 連 機 器 部 品 に組 込 まれる精 密 光 学 部 品 の加 工 を新 たな事 業 化 重 点 策 に選 定 した。
表1 市場規模の拡大が予測される機器
開 発 対 象 機 器
自動車の安心・安全用光学・情報関連機器
市場規模の拡大が予測される機器の例
ヘッドアップディスプレイ (HUD) 等の車載ディスプレイ
車載用ナイトビジョン等の近赤外・遠赤外線センサ
ヘッドランプ
一眼レフ・ミラーレス一眼レフカメラ
光
学
機
器
ウエハレベルカメラ
プロジェクタ
中小機構の京大桂ベンチャープラザにナノ加工研究所を開設、光学部品製造用部材等への応用を目指してナノ精密
加工法の開発に着手し、目下、自動車の安心・安全用センサ等の光学・情報関連機器、ウエハレベルカメラ等の光学機
器等に組み込まれる精密光学部品の製造に供される自由曲面形状ミラーや非球面レンズの成形型等の加工法を開発し
ている。
ヘッドアップディスプレイ(以下、HUDという)は、ダッシュボード内部等から投影される光源をフロントガラスの特殊加工
された部分や専用パネル(コンバイナー)に LCD に表示させた情報をミラーで反射させて虚像としてフロントガラスに情報
を表示させる装置である。視線を大きく移動させることなく運転者に必要な情報を提供できるシステムとして注目を集めて
いる製品であり、現状は高級車中心に搭載されているが、今後は技術の進展による価格低下とともに市場は拡大し、
2022 年には自動車生産台数の約 10%に搭載されるものと予測されている。図1はHUDの生産量の予測を示し 1) 、
図2は HUD によるフロントウインドウに投影された画像の例を示す 2)。
本試験は、HUD 用大型自由曲面ミラー成形型の加工方法の確立を目的に行なったものである。
図1 HUD の生産量(世界)の予測(単位:1,000 台)1)
図2 HUD によるフロントウインドウに
投影された画像の例 2)
2.HUD用ミラー成形型の加工試験
2.1 HUD 用ミラー成形型の材質、ワークサイズ、要求特性並びに切削加工法及び研磨加工法
HUD用ミラー成形型の材質、ワークサイズ及び要求される特性を表2に、HUD用ミラー成形型の切削加工法及び研磨
加工法を表3に示す。図3は加工機へのワーク取付け法、加工イメージ及び研磨加工後のワークの外観を示す。
表2 HUD用ミラー成形型の材質、ワークサイズ及び要求特性
ワークサイズ
材質
母材 アルミ(A5052) / 無電解 Ni メッキ 100μm
16.0×56.0×210.0 mm
要求形状公差
±0010 mm
要求表面粗さ
Ra 20 nm
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第16回高エネ研メカ・ワークショップ報告集(2015.4.10)
表3 切削加工法及び研磨加工法
加工機
切削加工法
加工方法
東芝機械 UVM-350B
フライカット
工具
単結晶ダイヤモンドバイト Φ43.6×R2.966
回転数
5000 rpm
送り速度
50 mm/分
切込み量
切削幅
研磨加工法
0.002 mm
X 0.003 mm ピックフィード
Z 0.1 mm ピックフィード
加工時間
132.0 時間
研磨剤
研磨方法
微粉末高純度アルミナ系研磨剤
手磨き
研磨時間
約 10 時間
ワーク取付け法
加工イメージ
研磨加工後のワークの外観
図3 加工機へのワーク取付け法,、加工イメージ及び研磨加工後のワークの外観
2.2 HUD用ミラー成形型の加工結果-形状精度及び表面粗さの測定結果
形状精度及び表面粗さの測定結果例を表3及び図4に示す。
表3 形状精度の測定結果(NH-6)
Z 設計値との差分
単位:mm
測定箇所
1
2
3
4
5
6
7
8
X設計値
2.000
2.000
18.405
105.000
105.000
165.570
208.000
208.000
Y設計値
51.726
2.000
2.000
99.756
42.380
128.000
128.000
90.410
Z設計値
18.703
17.096
14.387
11.014
5.729
15.331
18.269
10.859
図4 表面粗さの測定結果例(Zygo)
Z 設計値との差分
0.000
-0.003
-0.004
-0.013
-0.002
-0.010
-0.004
0.003
Ra 2.267 nm
3.おわりに
HUD用ミラー成形型の加工試験結果について、形状精度、表面粗さともに要求値をクリアした。今 後 の市 場 規 模 の
拡 大 が予 測 される HUD 等 の精 密 光 学 部 品 製 造 に供 される加 工 製 品 の開 発 を進 め、事 業 化 する。
今後の課題として、① 加工時の象限切替え時に生ずる象限突起の最小化切削条件の吟味、② 最終磨き工数低減の
ための自動化研磨法の開発、及び ③ 計測・測定評価技術の開発 が重要であることが分かり、更なる検討を進める。
4.参考文献
1) 2014 イメージング&センシング関連市場総調査 富士キメラ総研(2014)
2) 日本精機株式会社 ホームページ
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第16回高エネ研メカ・ワークショップ報告集(2015.4.10)
ニオブ製超伝導加速空洞の縦型電解研磨技術開発
仁井 啓介, Vijay Chouhan,
山口 隆宣, 石見 清隆, 井田 義明
(マルイ鍍金工業株式会社)
早野 仁司, 加藤 茂樹, 佐伯 学行, 文珠四郎 秀昭, 沢辺 元明
(高エネルギー加速器研究機構(KEK)
)
Development of Vertical Electro-polishing Technique for Nb Superconducting RF Cavity
Keisuke Nii, Vijay Chouhan, Takanori Yamaguchi, Kiyotaka Ishimi and Yoshiaki Ida
(Marui Galvanizing Co., Ltd.)
Hitoshi Hayano, Shigeki Kato, Takayuki Saeki, Hideaki Monjushiro, Motoaki Sawabe
(High Energy Accelerator Research Organization (KEK))
Marui Galvanizing Co., Ltd. has been developing vertical electro-polishing (VEP) technique for Nb
superconducting RF cavities in collaboration with KEK for the last three years. In this term, we have developed
R , and individual VEP facilities for single cell and nine cell cavities.
our original cathode “i-cathode Ninja”○
Several VEP experiments have been performed for parameter investigation so as to get smooth and uniform
surface of a Nb cavity. In this article, we present some of the results of VEP of a single cell coupon cavity and a
nine cell cavity.
Key Words: Nb, cavity, vertical electro-polishing (VEP), i-cathode Ninja
KEK と共同で行ってきた。 本論文では、研磨均一性向
1.はじめに
現在、最先端の加速器である国際リニアコライダー
(ILC)の建設計画が進められている。このような大型プ
ロジェクトでは、加速空洞などの量産技術が非常に重
上のための新たな独自構造陰極の開発と VEP 実験のた
めの設備開発、これらを用いた VEP 実験の例を紹介す
る。
要であり、製造コストの削減が求められる。ILC に使用
R の開発
2.独自構造陰極 ”i-cathode Ninja”○
されるニオブ製超伝導加速空洞では、加速性能の仕様
(EP)が用いられている。加速空洞の電解研磨には、
VEP を行った場合の空洞内面の研磨均一性向上のた
R と命名)
め、新たに独自構造陰極(”i-cathode Ninja” ○
空洞を横向きに配置して EP を行う横型電解研磨法
を開発した 1)。この電極の構造と電極を空洞にセットし
(HEP)と縦向きに配置して EP を行う縦型電解研磨法
た状態の模式図を図 1 に示す。
を満たすため、製造工程の最終表面処理に電解研磨
(VEP)の 2 つの方法がある。それぞれの特徴を表 1
に示す。
表1
内面状態
HEP と VEP の特徴
横型電解研磨(HEP)
研磨方式
○
縦型電解研磨(VEP)
×
均一性、平坦性良
実績多数あり
均一性、平坦性悪
実績少ない
装置製造
コスト
×
空洞の向きを変える機構
空洞回転機構が必要
○
空洞を動かす機構は必要なし
工程数
×
液を抜くときに空洞の
向きを変える工程が必要
○
空洞の向きを変える必要なし
研磨時間
×
研磨進行は下半分のみ
○
EP時
挿入時
R の模式図
図 1 独自構造陰極 ”i-cathode Ninja” ○
全面の研磨が進む
(左:電極構造
右:空洞にセットした状態)
現在は主に横型電解研磨法(HEP)が用いられており、
R (以下 Ninja と記載する場合あり)
”i-cathode Ninja” ○
内面状態(平坦性、均一性)は良好で加速性能仕様を
満たしているが、コストや研磨時間などの量産性に課
は、空洞のセル部分の形状に応じた羽根状の部材を有
題を残している。この EP の量産性問題を解決する為、
しているところが特徴である。この構造により、通常
マルイ鍍金工業株式会社では量産に有利と考えられて
の棒状電極と比べて以下のような利点がある。
いる縦型電解研磨法(VEP)に着目し、設備の作製と内
①VEP 時に Ninja を回転させることにより、羽根による
面状態を向上させるための EP 条件出しを約 3 年前から
内部撹拌効果が増大し、新鮮な EP 液が均一に空洞内
- 62 -
第16回高エネ研メカ・ワークショップ報告集(2015.4.10)
に行きわたる。
6ヶ所(図中→部に配置、上下ビームパイプ部、上下
②羽根を電極材料で作製すれば、Ninja を回転させるこ
アイリス部、赤道部2ケ所)備えるとともに、VEP 時
とにより、空洞内の極間距離が均一になり、電界分
に空洞内の気泡や電極の様子が観察できるようにビュ
布が均一になる。
ーポートを4ヶ所備えている。これにより、空洞 VEP
この 2 点により、VEP の研磨内面の均一性向上効果が
後の研磨面の詳細分析が可能になった。
期待できる。また、普通に羽根状の部材を取り付けた
だけでは、空洞に挿入する際、空洞内面にあたってし
3.2 VEP 実験(Ninja と棒状電極の比較)
まうため、対策として空洞挿入時は羽根を収納し、VEP
時は羽根を広げることのできる構造としている。
3.1 で述べた設備とクーポン空洞を用いて、VEP 実験
を行った。今回は、Ninja(新規法)と棒状電極(従来
これらの効果を検証するため、1 セル空洞用と 9 セル
法)の比較を行った結果を紹介する
2)
。VEP の詳細条
空洞用の VEP 実験装置を自社作製し、それぞれ VEP 実
件についてはここでは省略するが、参考文献 2)に記載
験を実施した。
が有るので、そちらを参照されたい。尚、羽根には電
極部材を用いた。Ninja を用いて VEP した場合と棒状電
R を用いた 1 セル空洞 VEP 実験
3. ”i-cathode Ninja” ○
極を用いて VEP した場合の評価したクーポン位置を図
の実施
4 に、クーポン表面の表面粗さ(Ra, Rz)を触針式粗さ計
にて測定した結果を図 5 に、表面顕微鏡観察を行った
3.1 VEP 実験設備とクーポン空洞の作製
1 セル空洞の VEP 実験を行うため、実験設備を自社
結果を図 6 に示す。
で新たに作製した。作製した設備の写真と模式図を図 2
①Top beam pipe
に示す。
②Top iris
(-)
Spot Cooler
③Equator
Motor
④Bottom iris
Nb single-cell
cavity
(+)
Pump 1
⑤Bottom beam pipe
Pump 2
図 4 クーポンの位置
Acid Container
(従来法)
Heat Exchanger
図2
1 セル空洞 VEP 用設備
Ra
(新規法)
VEP 設備には、EP 液流動用のダイヤフラムポンプ、
陰極回転用のモーター、空洞冷却用のクーラー、EP 液
(従来法)
冷却用のチラーなどを準備した。また、安価に設備を
Rz
(新規法)
作製するため、配管は市販の PVC 配管、EP 液タンクは
市販のポリタンクを用いた。
②
①
また、VEP 後の研磨内面の評価を詳細に行うため、
③
④
⑤
図 5 VEP 後クーポンの表面粗さ
分析装置に入れる事が出来る大きさのニオブ小片(ク
ーポン、φ8mm)を備えたクーポン空洞を作製した。
①
この写真を図 3 に示す。
②
③
④
⑤
(
新
規
法
)
(
従
来
法
)
500 μ m
図 6 VEP 後クーポンの表面状態
図 3 (左)クーポン空洞
(右)ニオブ小片
棒状電極 VEP(従来法)では、上アイリス部分と赤
このクーポン空洞には、ニオブ小片取り付け場所を
道部分に表面荒れが発生しているのに対し、Ninja VEP
(新規法)では、全ての場所で均一な表面が実現して
- 63 -
第16回高エネ研メカ・ワークショップ報告集(2015.4.10)
いるのが解る。これは従来法では VEP 時の空洞内部の
基本的な構成、使用部材は 1 セル VEP 設備と同様で
撹拌効果がなく、赤道~上アイリス部付近に気泡が溜ま
ある。空洞をセットする架台と EP 液タンクは、9 セル
り表面に気泡跡がついて表面荒れが発生したためと思
空洞にあわせて大型のものを準備した。Ninja について
われる。新規法では羽根部材+回転で撹拌効果が増して
も 9 セル空洞の形状に合わせて、図 1 のような羽根を 9
いるのに加えて、羽根部材から出る気泡が赤道~上アイ
セット備えた大型のものを新たに作製した。
リス部に付着した気泡を押しのけるため、気泡が溜ま
りにくくなって表面荒れが防止されたと思われる。加
4.2 VEP 実験
4.1 で述べた設備を用いて、9 セル空洞の VEP 実験を
えて赤道付近については、新規法により極間距離が縮
3)
まり、電気が流れやすくなった効果で粗さが改善した
行った
と思われる。
るが、参考文献 3)に記載が有るので、そちらを参照さ
次に、空洞の研磨量の分布を超音波厚さ計を用いて
測定した。結果を図 7 に示す。
(新規法)
。VEP の詳細条件についてはここでは省略す
れたい。VEP 実施中の空洞温度(25 ヶ所計測)と電流
密度、電圧のログデータを図 9 に示す。
(従来法)
図 7 VEP 後の研磨量測定結果
新規法、従来法とも上アイリスの部分が他の部分に
比べて 2~3 倍研磨量が多い結果となった。これは、上
アイリス部分に付着、存在する気泡が研磨を促進して
図 9 VEP 中のログデータ
いるためだと考えられる。
現在、研磨量分布の改善をはじめさらなる表面状態
(上)空洞温度
(下)電流密度と電圧
の改善のため、Ninja の構造や VEP パラメータの改善に
通常、ニオブ空洞の電解研磨は、空洞温度を 20~30℃
取り組んでいる。
に保つ必要があるが、今回の実験では設備の空洞、EP
R を用いた 9 セル空洞 VEP 実験
4. ”i-cathode Ninja” ○
液の冷却能力不足により、空洞の多くの部分で温度が
50℃近くになってしまっていた。
の実施
VEP 後の空洞の内面をデジタルカメラと内視鏡にて
4.1 VEP 実験設備の作製
1 セル空洞 VEP に続き、9 セル空洞 VEP 実験を行う
観察した。その写真を図 10 に示す。
ための設備も自社で新たに作製した。作製した設備の
写真と模式図を図 8 に示す。
Degassing tank
EP solution
tank
(左)デジカメ観察
(右)赤道部内視鏡観察
図 10 VEP 実験後の空洞内面観察結果
Water
tank
図8
Waste
liquid
tank
9 セル空洞 VEP 設備
VEP 中の空洞温度上昇が原因と思われる表面の荒れ
が発生していた。現在、冷却能力向上のため設備の改
善と効果の検証に取り組んでいる。また内面状態の詳
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第16回高エネ研メカ・ワークショップ報告集(2015.4.10)
細確認のため、1 セルクーポン空洞と同様のものが 9 セ
ル空洞でも作製できるかどうかの調査も実施中である。
5.まとめ
マルイ鍍金工業では、ニオブ製超伝導加速空洞の
VEP 技術開発を KEK と共同で行ってきた。空洞内面の
研磨均一性を向上するため、独自構造陰極(”i-cathode
R )を開発し、これを用いて 1 セル空洞と 9 セ
Ninja” ○
ル空洞の VEP 実験を行った。
1 セル空洞 VEP 実験では、従来の棒状電極を用いた
場合に比べて、Ninja を用いた方が表面粗さの均一性が
改善することがわかった。現在、研磨量均一性の改善
やさらなる表面状態の改善を進めている。
9 セル空洞 VEP では、
VEP 中の空洞温度上昇により、
空洞内面の荒れが観察された。現在、冷却能力向上の
ための改善と効果の検証を行っている。
マルイ鍍金工業では、これまでさまざまな形状、材
質の部材の電解研磨を行った経験を生かしてこれから
もニオブ製超伝導加速空洞の VEP 技術完成に向けた開
発を行い、ILC 建設のコスト削減に役立っていきたいと
考えている。
参考文献
1)
Y.Ida et al., “Study on Vertical Electro-Polishing by
Cathode with Variable-Geometry Wings” SRF2013
(Paris, France) TUP052
2)
V.Chouhan et al., “Vertical Electropolishing of Nb
Coupon Cavity and Surface Study of the Coupon
Samples” LINAC14 (Geneva, Switzerland) THPP098
3)
K.Nii et al., “Vertical Electro-Polishing of Nb Nine-cell
Cavity Using Cathode with Variable-Geometry Wings”
LINAC14 (Geneva, Switzerland) MOPP108
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第16回高エネ研メカ・ワークショップ報告集(2015.4.10)
超伝導加速空洞用純ニオブ素材の塑性加工性関連を主体とした材料
物性について-HOM coupler 等のプレス加工化を意図して-
野原清彦, 川端信行, 宮島恭平, 篠原正幸
( しのはらプレスサ-ビス株式会社 ( SPS ) )
山本 明, 早野仁司, 山中 将, 佐伯学行, 加藤茂樹
( 高エネルギ-加速器研究機構 ( KEK ) )
Studies on material properties regarding plastic deformation of niobium product for
superconducting accelerator cavity - aiming at production of HOM coupler and other
components by press forming technology -
Kiyohiko NOHARA, Nobuyuki KAWABATA, Kyohei MIYAJIMA, Masayuki SHINOHARA
( Shinohara Press Service Co. Ltd.
( SPS ) )
Akira YAMAMOTO, Hitoshi HAYANO, Masashi YAMANAKA, Takayuki SAEKI, Shigeki KATO
( High Energy Accelerator Research Organization
( KEK ) )
It is known that as massive product application of niobium ( Nb ) , there are cast coins followed by anodic
oxidation coatings, crucibles for synthetic polycrystalline diamond manufacturing etc. Actually, however, Nb is
extensively used as a small amount of additives to mainly iron and steel in the form of ferro-niobium powder.
While Nb has been set a target at developing a condenser to replace Ta, it could be epoch-making that R&D
works are going on to use Nb as structural materials for ILC-SRF cavities. In view of various studies on pure
ingot, grain structure, heat treatment, doping of nitrogen, multi-thinner coatings, effect of Ta, surface quality,
welding etc., the report describes research works on material properties of pure Nb in consideration of press
forming of a cavity components including crystallographic examination.
Key Words:ILC, SRF Cavity, Nb, Mechanical property, Structure / Fractograph, Crystallography, Press forming
1. 諸言
現実的に使用可能な金属中で常圧における超伝導臨界
周知のように、2007 年の RDR に基づいて 2012 年
に TDR が完成し、また同年から 2013 年にかけて
Higgs boson の存在が確定した。これらを更なる契機と
して、国際協力による ILC の建設諸準備が、2018 年
の着工開始目標に向けて、多面的に進められている。
技術開発研究面からは、加速器科学からのアプローチ
を根底に、ILC に要求される機能を満たすことが前提
になるのは云うまでもないが、その availability のため
に多様な技術が関連するなかで、筆者らはプロジェクト
の中核のひとつとなる超伝導加速空洞の cost-effective
な量産性に配慮した HOM coupler 等の end group 部
品の先進プレス ( 塑性 ) 加工化の開発研究を行って
いる 1 )
~ 3)
。
その際に考慮すべき特徴的な事項は、構造材料として
温度が最も高い ( 9.2 K ) 純ニオブ ( Nb ) を使用する
ことである。この材料の超伝導特性については、結晶粒
径の影響 ( 粗大化 ) や RRR の増大を目指した高純度
化の検討がなされてきたが 4 ) 5 ) 、 近年 Ta の影響 や窒
素の doping 及び多層成膜の効果等に関する研究が注
目されている 6 )
~ 8)
。
上記した先進プレス ( 塑性 ) 加工化の研究につい
ても、材料 ( 素材 ) と加工の関係は本来密接不離な関
係にあるゆえ、冒頭の abstract にしるしたように、本
格的に構造材料として Nb 素材を使用するにあたって、
プレス ( 塑性 ) 加工化に際しても、素材材料の検討が
不可避であることを知見するに至ったもので
ある 9 ) 10 ) 。本稿は、かかる材料加工の観点から純 Nb
材料についての研究開発の一端を報告し、今後の展開を
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第16回高エネ研メカ・ワークショップ報告集(2015.4.10)
ρ � µΩ ∙ cm � = ρ intrinsic + 5.28 XO + 5.2 XN + 4.3 XC +
計ることを意図している。
2.
純 Nb 材について
以下に、一般的な公知としてよいと考えられる純 Nb
材料の物性 ( 材質 ) について触れておく。同時に、最
近の研究動向を踏まえつつ、本材料の超伝導加速空洞へ
の適用にあたっての若干の検討・考察も併せて記述する。
2.1
(1)
0.8 XH + 0.249 XTa + 1.1 XW ・・・
侵入型不純物元素 ( H, C, N, O ) 含有量を single ppm
レベルに低減しなければならないとすると、この式にお
いて Ta の係数が H, C, N, O の 1 / 20 程度ゆえ、その
含有量は 200 ppm ( =0.02% ) 程度まで許容されるか
もしれない。そうすると, EBM の回数を減らせる可能
性があるから、素材コストの低減に結びつく可能性があ
高融点 Nb 金属元素
Figure 1 に示すように Nb 元素は周期表中、第Ⅴ周
る ( (1) 式において X M は不純物 M の濃度 )。
期・第五族に分類される「鉄の融点を凌ぐ」いわゆる「高
融点金属」で、かつ「希少金属」のひとつである。密度
は鉄より約 10% 大きいので、重量単位の価格は他の条
件を同じと仮定すると、この量比分高価になる。そして、
ここには示していないが、Nb の 2 元平衡状態図から
判断すると、室温近傍を含む融点までの広い温度領域で
BCC 結晶構造を有し、相変態を生じない。従って、Nb
の物性を利用する場合、変態現象を援用することはでき
ないと同時に、熱膨張・収縮や回避すべき析出現象など
の影響を懸念する必要はない。
2.2
Nbの物理的性質と純度について
Figure 2 に Nb 元素及び比較対象材として純鉄 ( こ
こでは極低炭素冷間圧延薄鋼板;SPC と表記 ) の、主
として物理的性質をまとめて示す。これから純 Nb は
純鉄に比べて上記のように密度が大きいほかに熱伝導
率・比熱・ヤング率 / 剛性率・磁化率が小さい。純鉄 ( α
鉄 ) が強磁性であるのに対し、同じ BCC 結晶構造で
も磁性は殆ど示さない。固体金属中の固溶元素 ( 侵入
型元素及び置換型元素 ) の挙動は、拡散現象の Fick の
第二法則と Boltzmann の関係に基づき、一般に化学反
応速度現象と同様に Arrhenius
タイプの経験則で表
すことができる。
即ち、拡散係数を D とすると種々の活性化現象に特
有の活性化エネルギー Q 項をべき部分に含む次式が
成り立つ:
D = D0 exp(−Q⁄RT)
Fig.1
Nb in part of the Periodic Table showing the elements
focused on high temperature elements / metals
また、Ta と同族なので、高純度化を計る場合、この
元素の含有量を極低値にするには、たとえば電子ビーム
溶解 ( EBM ) を繰り返さなければならず、材料コスト
の上昇を招く。この観点から、上述のごとく Ta の超
伝導特性への影響を把握することは肝要といえる。ただ、
金属 Nb の 4.2 K における電気抵抗率 ρ はマチ-セン
の法則に従い、次式で表されるので 6 ) 11) 、
(2)
ここに D 0 は振動数項、R はガス定数、T は絶対温度
である。Fig. 2 から Nb 中の侵入型元素 C, N の Q が
ほぼ等しく、かつ FCC 構造のγFe 中のそれぞれの値
ともほぼ類似しているのは、Nb 中の C, N の拡散速度
が大きいことを示唆しており、Nb 中の侵入型不純物元
素の濃度分布及び熱処理による物性変化と超伝導特性
との関連性は興味深い。その理由は、水素及び酸素を含
めた原子半径の小さい侵入型元素 ( ただし、Nb 中の
酸素の拡散挙動は、マトリックスの Nb 原子との化合
物反応とともに不詳である ) の cavity の表面近傍の元
- 67 -
第16回高エネ研メカ・ワークショップ報告集(2015.4.10)
素の濃度分布と熱処理条件が加速電圧に影響すること
と理解してよい ) と比較できるよう両者の単軸引張試
が推測されるからである。現に、水素及び酸素に関して
験時の荷重‐変位線図と硬さ試験結果を含む引張特性
は、熱処理による拡散によって、加速電圧の劣化を防ぐ
結果を Fig. 3 に示す ( 試験の都合上、板厚は純 Nb
工程が TDR に採用されている。C, N についても含有
が 2.8 mm, SPC が 1.0 mm である )。
両者の線図から、
量によっては、熱処理の必要性があるかも知れず、要は
まず気づくのは、
「 全伸び ( =破断伸び ) λt 」は純 Nb
侵入型元素の低減と固体拡散熱処理が Nb 製品のコス
のほうが大きい。しかしながら、最高荷重点までの塑性
トに関して、trade-off である可能性が考えられるので
安定領域に相当する「 均一伸び λu 」は SPC のほう
ある。上記 Ta の場合と同断であるといえよう。
が大きいことである。従って、最高荷重点から破断まで
こ こ で 、 酸 素 に つ い て は TDR に 採 用 さ れ た G.
の塑性不安定領域に相当する「 局部伸び λℓ 」は純 Nb
Ciovati の報告 12 ) があるが、その金属物理学的意味は
のほうが大きい。以上の意味するところは、一見純 Nb
必ずしも明確でない。
の伸びは大きいともいえるが、塑性加工の本質からいえ
ば、塑性安定領域の狭い ( λu が小さい ) 純 Nb は「く
びれ ( ネッキング ) / 割れが生じやすい “ 難加工
材 ” 」といえるのである。
Fig.2 Physical properties of niobium ( Nb ) compared with
iron ( Fe )
3.
純 Nb と純鉄 ( SPC ) の
荷重-変位関係及び材質
さて、純 Nb のプレス ( 塑性 ) 加工挙動に関連する
物性 ( 材質・機械的特性・材料特性・CCV や Erichsen
値等の直接的加工性評価指標 ) に関する公表データは
殆ど見かけない。一般に云われているのは、純 Nb は「軟
質で伸びが大きい」ゆえ「加工しやすい」と云われたり、
逆に「難加工 / 難切削材」であると云われたりしてい
るようである。まず、この点について絞り加工を念頭に
おいて、純鉄系材料との比較検討を行い、Nb 素材の特
質について述べる。
3.1
単軸引張試験特性
そこで、かかる材質に関する検討が比較的なされてい
Fig.3
る極低炭素冷延薄鋼板 ( SPC と表記;純鉄とほぼ同等
- 68 -
Load-deformation curves in uniaxial tensile test of
Nb and SPC ( ultra-low C cold rolled steel sheet )
and test results including Vicker’s hardness test
第16回高エネ研メカ・ワークショップ報告集(2015.4.10)
ま た 、 弾性 限 界 ( YS で 表 示 ) か ら 最 高荷 重 点
較して劣ることが容易に想定される。新たな先進プレス
までの流動応力の増加が純 Nb の場合 SPC に比べて小
( 塑性 ) 絞り加工 / 成形方法が待望される所以である。
さく、「加工硬化」しにくいといえる。線図から真応力
同時に鍛造・圧延・再結晶熱処理等の製造技術・条件に
σ-真歪 ε 関係を求めると、両材料ともに Ludwick の
関して、Nb 板材の上記絞り成形材料特性の改善も望ま
べき乗硬化式が成り立つことが示された。即ち、
れるのである。
σ = C ∙ εn
(3)
ここに n を「加工硬化指数」と称し、外力付加による
材料の強化の程度を示す指標であるから、ある程度 n
値が大きくないと外力に抗しきれずに破断することと
なる。
因みに、
純 Nb と SPC の n 値は、
それぞれ Fig.3
にしるしたように 0.12 及び 0.20 と 70%もの差異があ
る。この硬化度を反映して、引張強さ TS にも両者間
𝐫𝐫̅ ≡
で約 2 倍の差が生じている。これらの事実は、Nb 素材
の加工難度をもたらすこととなる (3.3 項をも参照)。
3.2
を構成する HOM cup や port pipe, beam pipe 等、厳
𝐫𝐫̅ = 𝟏𝟏. 𝟕𝟕𝟕𝟕 ( SPC )
異方性 r 値 ( ⊿r )
( 𝐫𝐫𝟎𝟎 + 𝐫𝐫𝟗𝟗𝟗𝟗 )
− 𝐫𝐫𝟒𝟒𝟒𝟒
𝟐𝟐
𝛇𝛇 ≡
機械切削・引抜き・押出し・多工程+熱処理加工方法等
Fig.4
問題を生じるのは否めない。そこで、「 深絞り ( プレ
ス ) 加工」に関連する物性である「 塑性歪比
( Lankford 値 ) r 」について調べた結果を Fig. 4 に示
した。r 値の定義は、
r ≡ | εw ⁄ ε t|
𝐫𝐫̅ = 𝟎𝟎. 𝟖𝟖𝟖𝟖 ( Nb )
⊿ r = 0.75 ( Nb )
⊿ r = 0.60 ( SPC )
絞り成形性-塑性異方性制御指数 ( 𝜁𝜁 ) <新導入指数>
しい深絞り加工を要する部品が必要となる。これらを
に依存すると生産性及び経済性 ( コスト ) に深刻な
( 𝐫𝐫𝟎𝟎 + 𝐫𝐫𝟗𝟗𝟗𝟗 ) + 𝟐𝟐 𝐫𝐫𝟒𝟒𝟒𝟒
𝟒𝟒
⊿ 𝐫𝐫 ≡
絞り加工性指標 r値 ( 塑性歪比 ) について
SRF cavity の end group 部品には、HOM coupler
平均 r 値 ( r̅ )
ζ= 0.85 ( Nb )
⊿ 𝐫𝐫
𝐫𝐫̅
ζ= 0.34 ( SPC )
Example of observed plastic strain ratio r ( Lankford
values ) of Nb sheets in three different directions
based on rolling direction ( RD ; angle = 0°) plus r̅ ,
⊿r, and ζ compared with SPC steel where ζ is a
newly introduced herein to research the press
formability of Nb in the advanced press-drawing
method showing later in details elsewhere
ここで、純 Nb 材料を含む素材の板絞り成形加工性に
(4)
関して新評価・推定指標として次式で示す「ζ 値」を提
であるが ( 分母及び分子は、単軸引張時のそれぞれ板
案する。そして、この指標を仮に「絞り成形性-塑性異
方性制御指数」と称することとする:
厚真歪及び板幅真歪で、単軸引張試験によって測定・導
出できる )、一般に金属・合金は塑性異方性を呈し ( 即
ζ ≡ ⊿ r ⁄ r̅
ち、圧延方向角度を 0°とすると、r 値は角度依存性を
有する ) 、等方性材料ではない。この異方性の程度も
材種や製造条件等によって変化する。
(5)
このパラメータの意味するところは、板材の圧延方向を
含む種々の方向の r 値が大きく、それらの各方向によ
Figure 4 から純 Nb の r 値は SPC よりも著しく
小さく、
かつ塑性異方性が 25%も大きい。
従って、
純 Nb
の絞り加工性が、一般に多用されている SPC 鋼板と比
る r 値の差異が小さいほど、ζ 値が変化して小さくな
ることであり、そして、かかる場合において、絞り加工
性に優れ、「異方性耳」の高さが少ない等方的な加工が
- 69 -
第16回高エネ研メカ・ワークショップ報告集(2015.4.10)
可能となり、絞り成形体の有効利用高さを大きくとるこ
グラフにすると Fig. 5 のようになる ( 参考のため、オ
とができるという有用性が得られ、加えて特に素材価格
ーステナイトステンレス鋼 ( γ-SUS ( 304 ) )も呈
の高い Nb 材料の歩留りを向上させ得るので、新たな
示 )。即ち、σ c r は r̅ 値及び n 値の増大とともに増加
指標として望ましいと考えるものである。当然、ζ 値が
し ( 勿論 σ
大きければ逆センスになるわけである。問題は、いかに
ない )、破断危険部のネッキング ( くびれ ) や割れに
して材料製造及び成形加工技術の工夫・創案によって、
対する抵抗が増すことが知られる。そして、純 Nb の
必要十分に低 ζ を具現化できるかである。筆者らは純
normalize した σ
Nb 材料について、この観点からの開発研究を進めてい
て 15% ( 30% ) も小さいことが分かる。よって、この
るところである 13 ) 。
点の考察からも純 Nb がプレス ( 塑性 ) 難加工材料
u
及び板厚変化が影響するのはいうまでも
cr
が SPC や ( γ-SUS ) と比較し
であることに言及したものである。
3.3
円筒プレス絞り成形加工に関する純 Nb 及び
SPC の比較検討
これら材料の上掲した物性 ( 単軸引張力学特性値 )
を考慮して、HOM cup 等の形状に関連するプレス
( 塑性 ) 加工性を検討してみる。
この場合の最大の眼目は、「素材」と「加工方法」を
如何にバランスさせて、プレス ( 塑性 ) 加工にて低廉
な量産技術を確立するかである ( プレス方法以外では
製造工程内容・時間・工具等ハードの initial cost・材料
歩留等から高価格製品になることを免れない )。ここで
は、材料側 ( 加工・変形 ) からの最大の課題は、単一
Fig.5
工程にて破断を回避して絞り抜かせ、大きな絞り深さ
( 高さ ) を安定的に確保することにある。
3.4
材料変形の基本を考えると、「ポンチ肩部近傍の最も
破断を生じやすい平面歪変形時の α 破断 ( 典型的な延
Diagram of relation between σc r and r̅ with n as
parameters on the basis of equation ( 6 )
再結晶熱処理後低歪付与 OM ( 光学顕微鏡
組織 ) 観察
焼鈍再結晶熱処理済みの純 Nb 及び SPC に 5%の
性破断 ) 抵抗 ( 強度 ) σ c r 」を高めるかが重要である。
は Fig. 5 にも一端を示したように塑性力学
単軸引張軽歪を与えたときの OM 観察結果を Fig. 6
的な考察・検討結果から既出の n 値や r 値などの諸材
に示した。この程度の変形では、OM レベルの「変形帯」
料物性値を使って、次式で表されることが分かっている
の痕跡は認められない。 純 Nb 供試板材は現在開発製
この σ
c r
( r̅ :圧延方向を 0° として 0°, 90°, ±45° の 3 方向の平
造段階 ( 定常的な量産材ではない ) であるが、明らか
均 r 値 ( Fig.4 を参照 ); n:加工硬化指数; σ u:真
に数 100 μm の直径からなる粗大粒組織からなる。こ
応力で表した引張強さ; t o , t:加工前後の板厚 ):
れには、主として次の二つの理由が考えられる。ひとつ
めは、粗大粒のほうが超伝導特性に優れるとの研究結果
σcr = �2⁄√3�
(1+n)
・σu (t 0 ⁄t)
仮に ( 6 ) 式の σ
σ
c r
が存在する ( 必ずしもそうではないとの説もある )
(1+n)
・ �{(1 + r̅ )⁄2}���(1 + r̅ )⁄3��
ところから、再結晶粒の成長が促進するように製造条件
を選択しているのではないかと推測されることである。
(6)
ふたつめは、高融点溶融液相からの凝固インゴットの鋳
と板厚の項を一定にして、r̅ 値の
造組織が柱状晶を呈するとともに、不規則かつ異形組織
への影響を ( n 値はパラメータとして勘案する )
を形成するため、鍛造・圧延後もその影響がもちきたさ
u
- 70 -
第16回高エネ研メカ・ワークショップ報告集(2015.4.10)
れる、つまり回復・再結晶に際して embryo ( 結晶核 )
エネルギー ( SFE;γと表記 ) の推定を試みた。周知
の生成が生じにくく、その数が些少であることを反映し
のごとく、BCC 多結晶体については、FCC 多結晶体
ているものと推察されることである。
のように X 線回折法や透過電子顕微鏡観察法によって
また、純 Nb 材の組織中に、考えにくいことだが、
SFE を直接導出することはできない。そこで、Fig. 6 で
本材が BCC 多結晶体の OM 観察像であるにもかか
用いた 5%の低歪付与試料のミクロすべり変形によっ
わらず、
「変形双晶らしき morphology」が Fig. 6 の何
て生じた転位密度 ρ の測定を Williamson - Hall の
ヶ所かに見られた ( 図中に a, b, c, ・・・と記載した
X 線回折法に準じて、ρ を測定算出し、γの推定値を
部分 )。他方、SPC の組織には、そのような structural
純 Nb と SPC 間で比較推定することとした 14 ) 15 ) 。
morphology は存在しない。これは、純 Nb の金属組
即ち、歪 ε 及び結晶子サイズ D
( 回折現象に対し
織の観点から、また如上のように、この金属が大きな伸
て coherent, つまり原子の配列が非常に秩序よく並ん
びと小さな加工硬化を呈する特徴的な事象を示す観点
でいる領域のサイズ )
からも検討を要するものと見做されたので、次節におい
( 8 ) 式から ρ を計算した:
を求め、以下の ( 7 ) 式及び
て試験・検討を行った。
(β cos θ)⁄λ = (0.9⁄D) + (2ε sin θ)/λ
ρ=
(14.4ε2 )/b2
(7)
(8)
ここに、θ は Bragg の反射角、λ は入射 X 線の波長
( 0.1789 nm ) 、b は Burgers vector
( 転位の方位と
大きさを示すベクトルで、Nb:0.29 nm, Fe:0.15 nm ) ,
β は真の回折ピーク半価幅で、実測値 β
m
と Si 粉末標
準試料値 βS ( 放物線補間近似により求めた ) とから、
Fig.6
Examples of optical microscopic structures of pure
Nb ( a ) and SPC ( b ) , exhibiting several “ twin
crystal-like structures ” in the former
4.
β = �(βm2 − βs2 )
(9)
低歪付与時の転位密度測定と積層欠陥
で計算できる。測定結果から算出したデータと ( 7 ) 式
エネルギー及び延性破断面の観察
に相当する Williamson-Hall プロットを Fig. 7 に示
上述した再結晶焼鈍後の 5%の軽歪を与えた場合の
OM 観察結果に基づき、転位すべり ( 刃状転位及びら
せん転位によるミクロ線状すべり ) と金属材料の焼鈍
組織や変形組織と関連する面状欠陥である積層欠陥に
す。 ( 7 ) 式のとおり両試材とも直線関係を示し、これ
らの傾きと切片から D と ε を求めた。金属組織の相違
が影響して、純 Nb の D が7倍も大きく、ε はほぼ等
しい。そして ρ は、純 Nb のほうが SPC よりも 30%
近く大きい。一般にγは、
よる「双晶生成」について、ならびに両材料の延性破断
面の電子顕微鏡観察を行い、相互比較を行った。
4.1
γ = K ∙ (1⁄𝛼𝛼)
低歪変形時転位密度・積層欠陥エネルギー及び
( 10 )
で表されるので、純 Nb のほうが SPC よりも 30%程
変形加工
純 Nb の OM 組織に見られた ( 複数ロットの一部
ではあるが ) 「変形双晶」らしき組織の存在可能性は、
この材料の物性、ひいては塑性加工性とも関連すること
度γが大きいものと見做される。この式の K は定数、
αは積層欠陥生成確率であり、ここでは両素材の α が
ほぼ等しいと仮定した ( この点は検討の余地がある )。
以上の測定・計算がほぼ正しいとすると、γの大きい
が考えられるので、双晶発生と密接に関係する積層欠陥
- 71 -
第16回高エネ研メカ・ワークショップ報告集(2015.4.10)
純 Nb は SPC に比べて、Fig. 3 に示したように双晶
結果を Fig. 8 に示す。即ち、単軸引張破断を行った
生成による転移の交叉すべりを阻害しにくくなるので、
両者の SEM 像を見ると、純 Nb 材では板厚中心部位
加工硬化度が小さく軟質で、延性 ( 伸び ) が大きい理
の比較的狭い領域で延性破壊・dimple pattern の生成
由を説明できる ( このことと加工性の良否が一概に対
が優先的に進行し、それを囲む領域で安定塑性変形を生
比できないことは、Fig. 5 で触れたとおりである )。
じている。この事実は、全延びが SPC よりもかなり大
ただ、ここで一部の純 Nb の OM 観察において、
「双
きく、かつ伸び量の構成内容については、均一伸びが
晶らしき組織が見られた ( SPC では室温・低歪変形で
SPC よりも小さく、局部伸びが SPC よりも大きい結
は見られない ) 」ことと矛盾する。なぜなら、γが大
果 ( Fig. 3 ) に対応していることを示唆している。他方、
きければ双晶 ( 焼鈍双晶や変形双晶 ) は生じにくい
SPC では、板厚全体に延性破壊と dimple pattern が
筈だからである。この点については、さらなる試験・検
生じている。伸びについては、上記のようであるが、
討が必要であり、今後の課題であると同時に、Nb 材料
Fig. 3 に示したように、SPC の加工硬化度が純 Nb よ
の ( 金属組織学・結晶学的・力学的性質・塑性加工学
りも、はるかに大きいのはこのような破壊メカニズムと
的な ) 特異性を示唆するのかも知れない点において、
関連している可能性がある。云い換えると、同じ BCC
興味深い事象と言える。
結晶構造からなる Nb と Fe とでは、塑性変形挙動な
らびに延性破断機構に差異があることが知見されたと
してよいと考えられるのである。現時点では明確ではな
いが、dimple pattern の深さが純 Nb のほうが SPC
よりも浅い兆候がある。また結晶粒径の相違を考慮しな
ければならないが、dimple pattern の発生密度が、純
Nb の場合、SPC よりも少ないことも推察された。
Fig.7
Williamson-Hall plots with test pieces uniaxial strained by 5% of conventional elongation and
dislocation density, ρ, obtained from X-ray
diffraction
Fig.8
4.2
延性破断面の電子顕微鏡観察
OM 観察について若干の試験・検討を試み、Nb 材料
の特徴・特異な挙動に言及する。本材は、比較対象に選
んだ SPC とともに、室温において安定な BCC 相
( α 相 ) 状態にあり、延性破断を生じる。HOM 部品
などの円筒状製品のプレス ( 塑性 ) 加工を実用化す
Electron-microscopic images of ductile-fractured
surfaces of pure Nb ( a ) and SPC ( b ) by means of
uniaxial tensile experiment, showing in Nb dimple
patterns regions caused by prior induction and rather
smoothly elongated positions synchronously formed
SRF cavity の end group 部品などのプレス ( 塑
性 ) 絞り加工性については、純 Nb は均一伸びが小さ
いこと、加工硬化による強度増加が小さいこと、そして
るに際して、最も回避すべきは破断現象であるゆえ、同
r 値が小さく、その塑性異方性が大きい ( 新導入指標
一結晶構造を有する両材料の延性破断面の電子顕微鏡
ζが小さい ) ことなどの点で、加工難度が高い「難加
観察を行って、破壊工学的な対比を行ったものである。
工材料である」ことが、以上の材料試験・検討の結果、
- 72 -
第16回高エネ研メカ・ワークショップ報告集(2015.4.10)
実証されたものと考えてよい ( このことは、同じ塑性
加工に関わる「切削加工」についても、原理的にいえる
であろう ) 。これらは、両材とも BCC であるにもか
かわらず、多結晶集合組織に起因することが予想される
ので、次に若干の結晶学的な検証を試みた。
5.
結晶集合組織の測定・解析
以上から、純 Nb 材料物性の成形・加工性関連の実
態をさらに把握するには再結晶熱処理材の多結晶集合
組織の測定・解析と検討が必要であることが推察された
ので、電子線後方散乱回折法
( EBSD 法 ) によって、
ここまでに使用した t 2.8 mm の純 Nb 材サンプルと
Fig.9 Pure Nb annealed specimen’s Image Quality ( a ) and
Inverse Pole Figure color maps ( b ) in each
direction-ND, RD, and TD toward rolling direction
obtained from EBSD measurement
t 1.0 mm の SPC サンプル ( ともに再結晶焼鈍済み
の状態 ) を使用して測定・解析を行い、結果の一部の
検討を実施した 16 ) 17 ) 。
5.1
IQ 及び IPF color map
両材料の IQ 像 ( Image Quality ) を Fe-SEM に
よる Fig. 9 及び Fig. 10 でみると、いずれも明瞭な
morphology を呈しており、EBSD 測定・解析上の問
題はないと見做ことができる。材料間で結晶粒組織に大
Fig.10
差があるので、写真 image 上のスケールの大きな差異
に注意を払う必要がある。ここでは Fig. 6 と異なって
試料の板厚すべてを画像に取り込んでおり、IQ 像から
両材料とも表面近傍で細粒化の傾向を認めることがで
き、その程度は純 Nb 材のほうが大きい。この理由は、
純 Nb 材は、冷間圧延に際して加工硬化度が小さくて
軟質であることと、SPC ( t 1.0 ) に比べて板厚が大きい
( t 2.8 ) ことから、板厚断面の板厚方向の圧延圧縮歪分
布が一様でなく、表面近傍において過大になるからであ
純 Nb では、IQ 像でも見られるが、各面・方位の color
で示された結晶粒が、特に ND 及び TD の場合に繊維
状に分布している。これらのいずれにも直交する面に相
当する RD の場合は繊維状態が軽度である。これに関
しては、この材料が極めて軟質であるために再結晶に際
して、冷間圧延時に、前工程の熱間圧延における残存圧
ると推測される。
IPF ( Inverse Pole Figure ) color mapping 像を ND,
RD, TD ( 各圧延面に垂直方向、圧延方向直角断面に垂
直方向、圧延方向平行断面に垂直方向を示す。図中の説
明参考用小図面の通りである ) で見ると、いずれの材
料も結晶粒ごとに種々の面・方位を含む多結晶が色分け
されて表示されている。それら面・方位分布は、方位指
示図同様に併示した説明用参考小図面 ( ( 基本 ) ステ
レオ三角図 ) の結晶方位による色分けに従っている。
SPC ( ultra-low C cold rolled steel sheet )
annealed specimen’s Image Quality ( a ) and IPF
color maps ( b ) in each direction-ND, RD, and TD
toward rolling direction obtained from EBSD
measurement
延組織が冷間圧延方向に伸長 ( elongate ) したのと、表
面近傍で冷間圧延歪が過大かつ圧延方向に偏移してい
たことが、原因として考えられる。他方、SPC の map
は IQ 像に対応して、ND・RD・TD のいずれにおいて
も均一に分布した color mapping 状況を呈している。
結晶面・方位に関しては、まず純 Nb の場合は、ND
において ( 001 ) ~ ( 111 ) 面の発現率が大きく、RD
において [ 001 ] ~ [ 101 ] 位の発現率が大きい傾向
- 73 -
第16回高エネ研メカ・ワークショップ報告集(2015.4.10)
がある。他方、SPC の場合は、ND において、やはり
なお一般に { hkl } < uvw > 表記において、個々の結晶
( 001 ) ~ ( 111 ) 面を示す様相があるものの、 ( 101 )
粒の面・方位を表すには ( hkl ) [uvw] を用い、通常複
面がかなり存在している。また RD において、やはり
数の等価な面・方位が存在し、
[ 001 ] ~ [ 101 ] 方位を示す兆候があるものの、純 Nb
と比較すると [ 111 ] 方位の存在が明らかに認められ
hu + kv + lw = 0
( 13 )
る。IPF map におけるこれらの定性的な様相は、次節
においてステレオ三角図 ( と面・方位強度測定値 ) の
なる関係が成り立つ。
そこで、Fig. 11 及び Fig. 12 において、純 Nb 材
結果及び主転位すべり面・方位の観点から、多少定量的
の SPC 材に対する常温近傍における主すべり面・方位
に論じることとする 18 ) 。
の強度・存在比率を比較するために、すべり面について
5.2
は ND 方向の ( 101 ) 面の強度比 ( 純 Nb の強度 /
ステレオ三角図ならびに面・方位強度
EBSD 法で測定・計算・描画した等軸立方結晶の
SPC の強度 ) 及びすべり方向については RD 方向の
( 001 ) 標準投影内の基本となる低ミラー指数で表した
( 111 ) 面の強度比 ( 純 Nb の強度 / SPC の強度 )
ステレオ三角図を純 Nb 及び SPC につきそれぞれ
を計算した。即ち、以下の数値が得られる:
Fig. 11 及び Fig.12 に示した 19 ) 。電子ビーム照射方向
はいずれも ND, RD, TD の 3 方向である。同時にこれ
純 Nb ( 101 ) / SPC ( 101 ) = 0.012 / 0.047 ≒ 0.25
ら低指数面・方位の random sample を基準にした
純 Nb ( 111 ) / SPC ( 111 ) = 0.005 . 0.007 ≒ 0.70
( 001 ) ,
( 101 ) ,
( 111 ) 面・方位の強度 ( 存在比
( 14 )
率 ) の定量値をカッコ内に示した。
図から彩色の変化によって双方の材料の面・方位強度
計算結果から分かるように、( 101 ) 主すべり面の純
( 存在比率 ) がアナログ的に知られる。しかしながら、
Nb の SPC に対する存在比率は約 0.25 と SPC の約
この状態では必ずしも両者の優先結晶面・方位が明らか
1 / 4 しか存在せず、また [ 111 ] 主すべり方向の純 Nb
とは云い難い。ここに BCC 多結晶体金属の主すべり
の SPC に対する存在比率は約 0.70 と SPC の約 3 / 4
面・方位 { hkl } [ uvw ] は、Schmid の「臨界せん断応
しか存在しない。即ち、BCC 両試材の主すべり面・方
力 ( τ ) 一定の法則」により、τと負荷応力 σ 間の
位 { 110 } <111> の、面・方位とも純 Nb 材の存在比
関係式、
は SPC 材より相当小さいと云えるから、本質的に現用
開発段階における純 Nb 材の r 値や絞り加工性は、結
τ = σ cos ∅ ∙ cos λ ≡ σ ∙ S
晶学的に汎用のプレス絞り加工に多用されている SPC
( 11 )
材 に比べてかなり劣ることが判明した。この点におい
における Schmid 因子 S の大きい面・方位の結晶ほど
ても純 Nb 素材は「難加工材料」であると見做すこと
小さいσで変形することができるので ( ( 11 ) 式にお
ができる。
けるφ及びλは、それぞれ負荷の方向とすべり面の垂直
このような状況を打開するには製造条件の検討なら
方向及びすべり面上すべり方向のなす角度を表す )、
びに先進的なプレス塑性加工方法の開発が必須である。
( 純度の良好な ) BCC 多結晶金属の ( 常温近傍の )
この場合、量産性とコストの両立、ならびに加工性以外
主すべり面・方位は次のようになる 20 ) :
の既述した超伝導特性を始めとする諸特性 ( 切削・溶
断・溶接・表面性状・研磨・凝着・形状寸法等 ) に悪
{ 110 } < 111 > ( 常温付近 )
{ 112 } < 111 >
( 高温の場合 )
{ 123 } < 111 > ( 同上 )
( 12 )
影響をできるだけ及ぼさないことが前提条件として求
められるところであり、これらを解決する新技術の創
案・確率が肝要である。
- 74 -
第16回高エネ研メカ・ワークショップ報告集(2015.4.10)
工技術上で切削・リストライク/ しごき加工での
凝着が懸念される。
(2)
機械的力学特性を単軸引張試験で調べた結果、伸
びが大きく、負荷による加工硬化度が小さく、流
動応力・引張強さ・硬さが小さい。伸びに関して
は、全延びは大きいが、塑性安定域の均一伸びは
小さく、塑性不安定域の局部伸びが大きい構成と
なっている。強度に関しては、本素材でも成り立
つ、べき乗近似式 ( σ = C・εn ) における成形
性評価指標の加工硬化指数 n が小さい。
(3) プレス絞り加工性と関連が深い塑性歪比 r 値が
小さく、その塑性異方性が大きい。新たな絞り成
Fig.11 Pure Nb annealed specimen’s basic stereo-triangle
results in each direction-ND, RD, and TD toward
rolling direction obtained from EBSD measurement,
indicating distribution strength at low Miller’s
indices crystalline faces / directions within blankets
形性関連指標として ζ ( ≡ ⊿r / r ) (“絞り成形
性-塑性異方性制御指数”と仮称 ) を提案した。
純 Nb は r, n, ζ, 均一伸びが小さく、流動応
力・引張強さも小さいため、「力学的に難加工材」
といえる。
(4)
HOM cup 等の円筒形状プレス絞り成形 ( 化 )
を考えた場合、ポンチ肩部近傍破断危険部の臨界
破断抵抗をσc r とすると、σc r = f ( n, r, ( ζ ),
引張強さ, 板厚 ) で表され、r ( ζ ) の効果が大
きい結果からも、純 Nb は「難加工材」である。
(5)
OM ( 光学顕微鏡組織 ) 結果において、純 Nb 組
織に「双晶 ( らしい ) morphology」 が見られた。
そこで、Williamson-Hall 法により 5%単軸引張
変形試片の X 線回折の解析を行ったところ、純
Fig.12
SPC annealed specimen’s basic stereo-triangle
results in each direction-ND, RD, and TD toward
rolling direction obtained from EBSD measurement,
indicating distribution strength at low Miller’s
indices crystalline faces / directions within blankets
Nb は純鉄系より転位密度が高く、約 30%程度
SFE ( 積層欠陥エネルギー ) が高いものと推測
された。従って、純 Nb の伸びが大きく、加工硬
化度が小さく軟質材であることを説明できるが、
6.
OM で見られた「双晶 ( らしき ) 組織」の生成現
結言
象とは矛盾する。
以上、本研究開発をまとめると、要旨は以下のように
なる。同時に今後の課題にも触れることとする:
(1)
(6)
純 Nb 材はいわゆる高融点・希少金属であり、純
鉄系材料と比較すると融点・密度が高く、熱伝導
室温単軸引張破断試験後の延性破面の電子顕微鏡
観察により、本材の破壊工学的調査を行ったとこ
ろ、板厚内で優先破断誘起部が純鉄系より狭く、
その周辺に安定塑性変形領域が認められた ( ( 2 )
率・比熱・ヤング率・剛性率が小さい。広い温度
に対応 )。また、dimple pattern のくぼみ深さや
領域で相変態を生じず、BCC 結晶集合組織から
密度が異なる可能性が示唆された。そして、( 5 ) と
なり、超伝導特性に関与する侵入型元素の拡散速
ともに「組織学的に難加工材」といえる。
度は純鉄系と同等である。これらの事実から、加
- 75 -
第16回高エネ研メカ・ワークショップ報告集(2015.4.10)
(7)
再結晶熱処理後の材料の結晶集合組織関係の調査
回転・材質変化・摺動摩擦摩耗・凝着焼き付き等
検討を EBSD 法を適用して行った。IQ ( Image
の問題の検討と解決に向けた創案開発実験を継続
Quality ) は 両 材 料 と も 鮮 明 で あ っ た 。 IP
する必要がある。
( Inverse Pole Figure ) ( color ) map は、結晶粒ご
との結晶面・方位が ND, RD, TD 各方向で正常に
見られた。IQ 像でも識別されたが、純 Nb の IP
map における組織は、特に ND, TD において繊維
状に分布している。これは、純 Nb が軟質である
参考文献
1)
ショップ ( 2013 )
2)
こと、表面近傍での熱延組織の伸長、冷間間圧延
における表面近傍での圧延歪の過大・圧延方向へ
{ 110 } < 111 > との定性的な相関 / 非相関関係が
(8)
3)
野原清彦ほか:TTCmeeting 2014, つくば, KEK
( 2014 )
4)
H. Umezawa:Matériaux & Techniques,
( 2003 )
認められた。
5)
KEK ( 斎藤健治 ) :特開 2010-40423
この結晶配位につき、EBSD の同様の解析結果で
6)
Fermilab:私信
あるステレオ三角図と配位強度測定結果ならびに
7)
A. Grassellino et al:Supercond. Sci. Technol.,
Schmid の臨界せん断応力一定の法則と、 Schmid
因子をも考慮して、検討したところ、純 Nb は
純鉄系に比べて、BCC 主すべり面・方位 { 110 }
[ 111 ] の生成・発達、即ち存在率がはるかに低い
ことが判明した。従って、結晶学的にも ( 上記の
力学的・変形組織学的観点とともに ) 純 Nb のプ
(9)
川端信行ほか:第 15 回高エネ研メカ・ワーク
ショップ ( 2014 )
の偏移等によるものと解釈される。また、結晶面・
方位分布に関しては、 BCC の主すべり面・方位
野原清彦ほか:第 14 回高エネ研メカ・ワーク
26 ( 2013 )
8)
山中
将:第 2 回 SRF 材料研究会 ( 2013 )
9)
野原清彦ほか:第 1 回 SRF 材料研究会 ( 2013 )
10 ) 野原清彦ほか:第 2 回 SRF 材料研究会 ( 2015 )
11 ) 鈴木亮輔:「金属」, 72 ( 2002 )
12 )
G. Ciovati:Appl. Phys. Letters, 89 ( 2006 )
レス絞り成形加工性は純鉄系よりもかなり劣る、
13 )
T. Saeki et al. : IPAC2014, Dresden, ( 2014 )
即ち「結晶学的に難加工材」であるといえる。
14 )
G. Williamson and W. Hall:Acta Metall ., 1
今後の SRF 空洞部品の製造課題をまとめると以下
のようになる:
「力学的変形・組織学的・結晶学的
に難加工材」といえる純 Nb のプレス ( 塑性 )
絞り加工化を計るには、製造条件の検討による材
( 1953 )
15 )
( 1956 )
16 )
質の改善と、先進的なプレス加工方法の創案・開
発を要する。この際、量産性とコストへの配慮と、
(10) 次いで、今後の材料技術上の課題として以下が挙
17 )
18 ) 野原清彦:経済産業省・戦略的基盤技術高度化支
援事業 ( サポイン 「
) 高疲労強度極薄動力ベルト
の開発」( 新潟県工業技術総合研究所 ) 技術報告
検討 ( 統計バラツキの問題を含む );② SFE ( 積
ならびに力学的特性;③ EBSD 等物理学的材料
JFE Techno-Research Corp.: Physical measurements manual compiled
げられる: ① 新提案指標 ζ を含む力学特性の
層欠陥エネルギー ) と OM, EM ( 電顕像 ) 組織
TSL ( TexSEM Lab., Inc. ) : Technical
instructions from the company’s report
超伝導特性を始めとする諸特性の劣化をできるだ
け招かない配慮が必要である。
G. Williamson and R. Smallman:Philos. Mag.,8
書 ( 2012 )
19 ) 幸田成康:
「金属物理学序論」
、[コロナ社] ( 1967 )
20 ) 日本金属学会編:
「格子欠陥と金属の機械的性質」
、
試験の検証・展開;④ 加工変形進捗過程時の結晶
- 76 -
[丸善] ( 1967 )
第16回高エネ研メカ・ワークショップ報告集(2015.4.10)
アルバックにおける低コスト化に向けた超伝導加速空洞の開発
智啓*,阿部
永田
知之*,増居
井上
浩明*, 篠澤
均**,山中
精一*,長久保
将**,加古
準基*,村上
裕彦*,
永治**
(*㈱アルバック、**高エネルギー加速器研究機構)
Development of Low Cost Superconducting Cavity at ULVAC
Tomohiro NAGATA*, Noriyuki ABE*, Hiroaki MASUI*, Seiichi SHINOZAWA*, Junki NAGAKUBO*,
Hirohiko MURAKAMI*, Hitoshi INOUE**, Masashi YAMANAKA** and Eiji KAKO**
(*ULVAC, Inc., **KEK)
We are studying niobium (Nb) refining and cavity fabrication process. In order to carry out Nb purification, 600 kW electron
beam furnace was introduced in our company. It makes possible the stable refining for cavity-quality RRR>250 grade by
optimization of melting condition. We also obtained RRR > 300 ingot from commercial grade raw material which includes 2200
ppm tantalum. This suggests that cavity production cost might be decrease by using cheap raw materials. We performed the trial
manufacture of two 1.3GHz single-cell cavities by using our high purity Nb ingot (RRR > 300). One is adopted the half cell
conjugation with electron beam welding. We confirmed that an accelerating gradient of this cavity was achieved 41 MV/m at
vertical test in KEK. Another cavity is fabricated by hydroforming from seamless pipe, i.e. direct cavity-shape forming without
electron beam welding process at cell equator. Seamless cavity was successfully formed. We consider that key point of
successful forming is homogenization of crystal grain size all over the seamless pipe.
Key Words: Seamless Cavity, Electron Beam Melting, Crystalline Structure, Hydroforming
1.はじめに
ク独自の技術で作製されるニオブシームレスパイプを
超伝導加速空洞の製造方法において現在主流である
方式は、高純度ニオブの板材をプレス加工し、それぞ
れのパーツを電子ビーム溶接により接合する手法であ
り、この方式で製作された超伝導空洞で高い加速性能
[1, 2]
も得られている
。しかしながら、国際リニアコライ
ダー計画(ILC 計画)のように 1 万本以上の超伝導加速
空洞が必要となるに際しては生産性が高く低コストと
なる空洞製造技術が求められるが、未だ大いに検討の
利用して、液圧成形による空洞の製造技術確立を目指
している。これまでに、周辺部材を除く空洞本体の製
造において溶接を用いないシームレス法はコストメリ
[3]
ットがあることが言及されている 。現状我々は、液圧
成形に耐えうるシームレスパイプ材の調質に主眼を置
いた開発を進めており、将来的にはコストの精査や技
術フィードバックを繰り返し、低コスト化を実証した
いと考えている。今回は、前述した電子ビーム精製炉
で精製された高純度ニオブインゴットを用いて単セル
余地が残されている。
我々は、高エネルギー加速器研究機構(KEK)機械工学
センターと超伝導加速空洞開発に関して共同研究を進
用のシームレスパイプを作製し、液圧成形により空洞
形状への加工を行った。
めており、上述した課題を解決するべく二つの方針に
2.高純度ニオブインゴットの製造
より事業化に向けた超伝導加速空洞開発を進めている。
まず一つが、高純度ニオブインゴットの製造技術確
電子ビーム精製により高純度のニオブインゴットを
立である。ここでは、求められる純度や加速性能を満
得るには、特にガス成分や高融点金属の不純物を効率
たすようなニオブ素材を準備し、そもそもが高価な金
的に除去するために高真空中にて高出力で精製するこ
属元素であるニオブを極力安価な形で供給することを
とが望ましい。我が社ではすでに電子ビーム溶解によ
目的とする。我が社ではこの開発に際して新たに出力
り製造した金属製品の事業化が行われており、蓄積さ
600kW の電子ビーム精製炉を導入しており、今回は高
れた技術と真空装置メーカーである強みを活かして、
純度化に向けた精製への取り組み、およびこのインゴ
高純度ニオブ精製用の 600kW 電子ビーム溶解炉を独自
ットを用いた溶接法による単セル空洞の試作と加速性
の設計により東北工場に導入した。電子ビーム溶解炉
能試験について紹介する。
の外観写真を図1に示す。本装置ではメートルオーダ
もう一つの方針として、ニオブ板を成形したパーツ
を溶接して製造する従来の手法とは異なり、アルバッ
ーのインゴットを製造できる機構になっている。この
溶解精製炉を立ち上げてから数十回の溶解を行い、現
- 77 -
第16回高エネ研メカ・ワークショップ報告集(2015.4.10)
図2
図1
600kW 電子ビーム精製炉の外観
インゴットの作製回数と RRR の関係
(赤線は ILC の仕様である RRR = 250)
※RRR = 比抵抗(300K) /比抵抗 (9.2K)
在では ILC 計画で用いられるニオブ素材の仕様である
RRR250 を超えるインゴットを安定的に生産できる体
制となっている(図2)。初期の段階では、溶解精製炉
の到達圧力や電子ビーム照射パワー、材料への照射方
式などを調整していたため高い RRR を得ることができ
ていなかったが、各種変動パラメータと RRR の関係を
掴んできたトライアル約 30 回以降では RRR250 から条
件によっては RRR650 というものもできている。尚、
図3
RRR 値のばらつき(特に 30 回目以降)は同条件での溶
精製後のタンタル含有量と RRR の関係
解精製で生じているわけではなく、例えば短時間精製
(=低コスト)で仕様値をクリアするためのものや精
にしていきたい。
製効果を追及したものなど、目的に応じて様々に溶解
3.単セル加速空洞の試作
条件を変えた際のデータであることを述べておく。
導入した電子ビーム溶解炉で高純度のニオブを精製
できることが示されたが、実際に事業化が進み大量に
3.1
溶接法による単セル空洞試作と加速性能試験
ニオブ原料が必要になる場合にはコスト面や生産量の
アルバックで精製したインゴットを素材として、加
観点から原料選択の多様化が求められる。そこで、市
速空洞製法の主流である溶接法により単セルの加速空
場へ多く流通している安価な商用グレード(ASTM 規
洞の作製を試みた。図4に製造フローを示す。インゴ
格 Type 2)を精製の原料として溶解試験を進めた。図
ットを切断・加工して円板状の板材を準備し、それを
3に精製後のタンタル含有量と RRR の関係を示す。ILC
プレス加工によりハーフセル状に成形する。2つのハ
計画の仕様としては RRR が 250 以上かつタンタル含有
ーフセルを突き合わせて溶接し、またその両端にはビ
量 500 ppm 以下であり、グラフ左上の領域にあたる。
ームパイプやフランジを溶接して接合させることで完
その右のタンタル含有量 3000 ppm までが商用グレード
成となる。溶接とプレス加工は KEK にて実施した。こ
の規格値となっている。タンタルはニオブより沸点が
こで、精製したインゴットは RRR の値が ILC 計画用の
高いので、ニオブの蒸発を抑えて溶解精製する場合に
ニオブ材の仕様 (RRR>250) を満たすことは述べてき
はタンタルはほとんど除去されることはない。したが
たが、加工や熱処理によって、主に酸素混入の影響に
って今回用いた商用グレードの原料では精製後も 1510
より RRR の低下が懸念される。
ppm や 2180 ppm といった多くのタンタルを含むインゴ
ットも存在するが、RRR としてはそれぞれ 300、309 と
仕様値を満たすものが得られている。このように安価
な原料を用いることによりコストダウンの可能性を示
唆する結果となったが、タンタルの含有が加速器の性
能を決める加速勾配や Q 値にどの程度の影響を与える
かは現状では明らかになっていないので、今後、加速
空洞を試作して加速特性の評価を行うことにより明確
図4
溶接法による単セル空洞の製造フロー
(ハーフセル同士を溶接したものが図5)
- 78 -
第16回高エネ研メカ・ワークショップ報告集(2015.4.10)
表1
図5
円板の不純物分析結果
図7
シームレスパイプの製造フロー
図8
単セル空洞用シームレスパイプ
溶接法により試作した単セル空洞
(400mmL×130mmφ×123mmφ(t = 3.5mm))
とは異なる手法であるシームレスパイプを用いた液圧
成形による空洞製造にも取り組んでいる。インゴット
からシームレスパイプを製造する方法は図7に示すよ
うに、インゴットを鍛造加工し、穴を空けて伸管する
工程を経て製造される。ここではパイプ材に、より強
図6
単セル空洞の加速特性測定結果
力な塑性加工を加えつつ長尺を得るためにスピニング
加工を採用している。上記のような工程により単セル
そこで RRR の測定を行ったところ、インゴットの RRR
空洞用のシームレスパイプ(長さ 400 mm×外径 130
が 330 であったのに対し、円板材の RRR は 324 と加工・
mm×内径 123 mm(厚さ 3.5 mm))を準備した(図8)。
熱処理の影響はほとんどないと考えることができる。
作製されたシームレスパイプは、空洞形状に向けて
また円板材の主要な不純物の定量分析を行ったところ、
図9の流れで加工される。素管はまずネッキン加工に
仕様値を満たしていることも明らかになった(表1)。
より最少径まで押し込む「くびれ」を作る工程を経た
試作した単セル空洞の外観写真を図5に示す。目視
あと、液体をパイプ内に高圧で注入し、外側に配置さ
で確認した範囲では傷・変形や溶接不具合部分は観察
れた金型に押し当てる液圧成形により複数段階でパイ
されなかった。
プを膨らませる加工を行った。ネッキング加工と液圧
この空洞について、KEK において内面研磨処理を実
成形は KEK にて実施した。ここで、ネッキング後に一
施したのち縦測定により加速特性を評価したところ、
工程で最終形状まで液圧成形をせずに複数段階で行う
最大加速勾配 Eacc = 41 MV/m が得られた(図6)。こ
理由としては、元のパイプ形状から最終形状への赤道
こで得られた加速勾配や Q 値は他社のニオブ材を用い
部分(最も変形する部分)の周長変化から見積もった
た単セル空洞と同程度であり、実用的なレベルの材料
要求される伸び率は 60%以上であり、そのようなニオ
であることが実証された。
ブ材を得るのは困難で結晶回復の熱処理が必要となる
ためである(今回のパイプの伸び率は 45%)。
3.2
シームレスパイプは上記の工程を経て、最終形状の
シームレスパイプを用いた単セル空洞試作
加速空洞の製造コスト低減を目指し、我々は溶接法
単セル空洞を得ることができた(図10)。目視観察
では、表面全体に結晶粒を反映するような小さな凹凸
- 79 -
第16回高エネ研メカ・ワークショップ報告集(2015.4.10)
が存在していたが、目立つ傷や溝は見られず、また、
最終形状から大きく外れるような不均質な変形も観察
されなかった。我々はこれまでに何回かのシームレス
空洞の試作に取り組んでいるが、今回初めて空洞の成
形に成功した。これまでの知見を踏まえて今回進めた
材料設計の指針を以下に述べる。インゴット作製時に
形成される鋳造組織は場所によっては数 cm の結晶粒が
含まれており、その後の塑性加工工程により破壊する
ことになるが、組織の破壊が不十分な場合、加工後の
熱処理において、この残存組織を起点に肥大結晶粒や
結晶方位が似た結晶粒の集合組織を形成することがわ
かっている。液圧成形工程でパイプを膨らませる際に、
このような組織がパイプ内に含まれると、これらの周
囲にある微細組織の伸びが追随せずに破断してしまう
ことになる。このことから液圧成形に耐えるためのシ
図9
ームレスパイプとしては、鋳造組織が十分に破壊され、
シームレスパイプから空洞への加工の流れ
パイプ全体にわたって均一性の高い結晶組織であるこ
a) 素管、b) ネッキング後、c) 液圧成形 (50%)、
とが望ましいと考える。以上のような観点から今回は、
d) 液圧成形(100%)
鍛造や伸管による加工量をこれまで以上に増やし、か
つ、熱処理条件の最適化を行った。この組織均質化に
よって、局所的に破断しやすい部分の発生を抑えられ
たため液圧成形に成功したと考えている。今後、結晶
組織の観察によりさらに詳細な考察を進めたい。
現在、このシームレス加速空洞については縦測定の
準備を進めているところであり、空洞両端に周辺部材
を接続し、内面研磨を行った後、加速特性を評価する
予定である。
5.おわりに
図10
液圧成形により試作した単セル空洞
今回、ニオブインゴットの精製から加速空洞試作ま
での一連の工程を通した材料開発について報告した。
インゴット製造に関しては、高出力の電子ビーム溶解
炉を自社に導入し、ILC 計画の仕様である RRR>250 と
いった高純度のインゴットを安定的に生産することが
できるようになった。今後は原材料や溶解精製条件を
進めたいと考えている。
以上、当社では、このような一貫した加速空洞製造
技術(リサイクルを含め)を確立することで、大幅な
製造コスト低減化の実現を目指している。
精査することでコストダウンに焦点を合わせた技術開
参考文献
発を進めていく。この自社製高純度インゴットを用い
て、溶接型およびシームレス型の単セル空洞を試作し、
[1] 人見晴樹 他 “ILC に向けた三菱重工業の取り組み”
第 8 回日本加速器学会プロシーディングス (2011)
共に作製に成功した。溶接型空洞に関しては縦測定を
10
pp.1313-1315
実施し、Eacc = 41 MV/m, Q > 10 の良好な性能が得ら
れた。シームレス空洞についての次の展開としては、
[2] W. Singer et al. “Hydroforming of elliptical cavities”
Phys. Rev. ST Accel. Beams 18, 022001 (2015)
今回試作した単セル空洞の加速性能試験の他にも、表
面の微小な凹凸を抑制する新たな加工方法の検討やス
[3] 上野健治 他 “超電導空洞のシームレス化に関する
ケールアップした 3 セル空洞の試作を行う予定である。
装置開発(第 2 報)” 第 4 回日本加速器学会プロシ
これらの取り組みにより、シームレス空洞が溶接を用
ーディングス (2007) pp.76-78
いないことで本当に低コストであるかどうかの検証を
- 80 -
第16回高エネ研メカ・ワークショップ報告集(2015.4.10)
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液圧成形による超伝導加速空洞の製造
山中 将,井上 均,清水 洋孝,梅森 健成ÉKEKÊ
James A HOCKER (FNAL)ËTsuyoshi TAJIMA (LANL)
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- 81 -
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第16回高エネ研メカ・ワークショップ報告集(2015.4.10)
CFF における R&D 空洞の製造と評価
清水 洋孝
(高エネルギー加速器研究機構)
R&D Cavity Fabrication and Evaluation in CFF
Hirotaka SHIMIZU
(KEK)
In KEK, superconducting cavities could be manufactured internally by using cavity fabrication facility (CFF), and
other existing equipment in mechanical-engineering center. For KEK#01 9-cell cavity, 36MV/m accelerating
electric field was recorded by a vertical test. To sophisticate the cavity performance and also manufacturing skills
including selection rules of the cavity material, several types of test cavity constructions and evaluation tests are
now undergoing.
Key Words: ILC, Cavity, Nb, Electron Beam Welding, Hydroforming
の beam 加速時において Eacc=31MV/m, Qo=1.0×1010 縦
1.はじめに
高エネルギー加速器研究機構(KEK)では、国際リニア
コライダー計画に向けて、超伝導加速空洞の製造技術
の研究開発を推進している。KEK 機械工学センターで
は、機構内の各研究所・施設からの加工依頼や支援業
務依頼に応えながら、ニオブ製超伝導加速空洞の内製
測定時において Eacc=35MV/m, Qo=0.8×109 と定めら
れているが、現在行われている KEK#01 に対する内面
処理の結果次第では、第一回目の測定では僅かに届か
なかった縦測定時に対する要求値も充分達成出来る可
能性がある。この様に内製の空洞が、非常に良い仕上
がりであった事は強調されるべきである。
化に向けた取り組みを行ってきた。
ここで考えている超伝導加速空洞とは、超伝導物質
であるニオブによって作られた特殊な形状のパイプで、
荷電粒子を加速する為の高周波(RF)を内部に蓄え、中を
通過する粒子を効率的に高エネルギー状態に加速する
事を目的とした加速管の事で、実際の使用時は、超流
動ヘリウム環境(絶対温度 2.0K 以下)での運転が想定さ
れている。
2.2 R&D 空洞開発の取組み
TESLA-like 9-cell 空洞の成功により、実際の加速器
project の要求に則した加速空洞の内製が出来る事の証
明に成功した。この事は、空洞作製に関わる各段階に
おいて、仕上がり具合を確認し、次の工程に移る前に
様々な検証が研究所内において行える事を意味してい
る。技術力のある協力作成会社主導の空洞開発では、
以下では、これまでの活動の実績に立脚して、今後
発展させるべき空洞作成の手法や新しい空洞材料を使
って行った、試験用単セル空洞に関する取り組みにつ
いて報告する。
仕様を指定する事は出来るが、最終的に出来上がった
空洞の性能を評価する段階では、大抵予想外の特徴が
見付かり、工程のどの段階で生じた特徴なのかを知る
事が非常に難しい。また、海外の大学・研究所が報告
する新しい研究結果に対し、素早く独自の検証を行う
2.R&D 空洞の作製
上でも、空洞作成時の工程管理 (何を行ったのか) や工
程の quality control (どの様に行ったのか) がきちんと行
2.1 KEK#01 空洞
現在の ILC 計画においては、採用された超伝導加速
方式に則った粒子加速を行うために、加速空洞が1万
われていた事が、空洞に対して担保されている事が非
常に重要である。
上の視点に立った場合、空洞の内製が出来る環境と
本以上必要とされている。KEK 機械工学センターでは、
導入された電子ビーム溶接機を用いて、TESLA-like 型
その空洞の評価の為の縦測定の装置が揃っている KEK
と呼ばれている形状のニオブ製加速空洞の内製に取り
は、試験的な空洞作製とその評価を通じて技術の高度
組んだ結果、KEK#01 空洞を完成させるに至った。この
化を図るのにうってつけの場所であると考えられる。
空洞の性能を評価する為に行われた縦測定では、到達
つまりこれらの作業を通じて、従来”常識”と思われてい
最大加速勾配が 36MV/m, 無負荷 Q 値が 6×109 と言う
た手法や材料の組み合わせの枠を越え、より性能の高
非常に満足出来る性能が得られた。技術仕様書で定め
い空洞作製を目指した、独自の道を切り開く事が出来
られている ILC の空洞に対する要求値としては、実際
ると考えられる。
- 82 -
第16回高エネ研メカ・ワークショップ報告集(2015.4.10)
表 1
開発・評価を行っている R&D 空洞
以上の考えの基に、現在表1に示す様な5種類の
から、細粒 Nb 材に比べて値段が安い事が特徴として挙
single cell 空洞の開発及びその評価を進めている。各空
げられる。しかし、元々難加工性金属として知られて
洞の開発の狙い等に関しては、次節で具体的な例と併
いる Nb 材に、大粒特有の加工し難さが加わる事から、
せて詳しく紹介する。
空洞製品そのものの歩留りの低下を考えると、積極的
に cavity use として導入される理由が弱かった。他の研
究所においても、同様の大粒 Nb 材、若しくは、完全に
2.3 各空洞の比較検討項目について
ここで紹介する R&D 空洞の開発とその評価を行う一
一つの結晶粒から構成される Nb sheet を用いた試験空
連の活動において、比較検討を行いたいと考えている
洞の評価の試みは行われていた[1]。しかしあくまで細
項目について、以下で詳しく見ていく。
粒 Nb 材の補助的な位置付けと考えられていた。しかし、
まず最初に、空洞作成に用いる Nb 材の特徴について
大粒 Nb 材を使った空洞が、非常に高い Qo 値を達成出
考えて見る。現在一般的に考えられている空洞用 Nb 材
来ると言う縦測定の結果が報告される[2,3]に至り、細粒
としては、結晶粒が 15~50um 程度の細粒と呼ばれる結
材に代わる空洞材として、明確な導入意義が認識され
晶構造を持ち、Nb の純度の目安として用いられている
つつある。しかし、実際には、空洞作製が終わってか
残留抵抗比(RRR)が大きい物を用いるのが世界的に見
らであっても、性能評価の為の「縦測定」に至るまで
ても標準的である。表1において、これらの特徴を備
には、数多くの準備工程が必要であり、多くの工程が、
えた空洞としては R-2 空洞と R-4 空洞が該当する事が
先験的に決められた parameter を持っている。これらの
見て取れる。特に R-2 空洞は、これまでに KEK が行っ
複雑さが、大粒・細粒間にどの様な違いがあり、空洞
て来た空洞開発をとおして用いられてきた Nb 材供給会
に関してはどちらが優れた材料であるかの判断を難し
社の材料を用いており、一連の比較検討の活動を通し
い物にしている。(更に厄介な事に、clean room 作業時
て、検査基準とするに相応しいと考えられる為、
の意図しない異物混入など偶発的な空洞性能の劣化が
reference cavity として用いる事とする。対して R-4 は、
ある確率で生じる事も事実である)この問題に対して、
別の Nb 材の供給会社から得た円板を使用しており、他
実際に工程管理された環境下で空洞を作成し、縦測定
の作成方法は R-2 と揃える事で、Nb 材の供給元の違い
を行う事で材料としての優位性の検証を行う事を目的
が空洞性能にどの様に影響を与えるかを検証する事を
としたのが R-1 空洞である。表中、RRR は高い事、製
目的とした空洞となっている。
造方法としては EBW である事が記載されており、結晶
上では標準的な空洞である R-2 と R-4 に関して説明
粒が大粒である事以外は R-2 空洞と揃っている事が見
を行ったが、この時点で既に2つの興味深い比較検討
て取れる。「細粒材と比較して、高い Qo が出易い傾向
項目があった事に気が付く。結晶粒の大きさと RRR に
にある」と言うのがこれまでの多くの試験結果の示す
関してである。細粒と呼ばれる Nb 材は、母材の電子ビ
結論で、何が具体的に効いているのか、本当に統計的
ーム溶解によって得られた ingot から切り出された Nb
に優位性が有るのか、と言う疑問に対してはまだまだ
材に対して、鍛造等の工程を施す事によって得られる。
はっきりしない事が多い。R-1 の開発評価目的としては、
これらの工程を省き、ingot から Nb sheet を切り出した
これらの疑問に対する知見を得る事であったが、後発
だけの素材は、一般に数 cm から数十 cm 程度の非常に
の R-5 空洞の作製に向け、同じ大粒材の空洞として、
大きな結晶粒を持ち、大粒 Nb 材と呼ばれている。ここ
貴重な経験を得る事が出来た。ここで得られた経験が
で述べた様に、鍛造等の後工程を大きく省いている事
feedback され R-5 空洞の作製に活かされている。
- 83 -
第16回高エネ研メカ・ワークショップ報告集(2015.4.10)
の性能評価はまだ行われていない。
ここまでの段階で、R-1、R-2、R-4、R-5 の各空洞に
関して、開発の目的を詳しく紹介してきた。最後に、
表に含まれる空洞でまだふれていなかった W-1 空洞に
関して詳しく見ていく事にする。
先にも述べた様に、機械工学センターでは、Nb 製の
空洞作製の為に導入された電子ビーム溶接機を使った、
標準的な工程の空洞作りを通じて KEK#01 を作成した。
この EBW の手法は、HOM coupler の溶接や flange 溶接
時に必ず必要であり、現在その一切を省く事は難しい
と考えられる。しかし、超伝導空洞の大部分を占める、
RF を蓄積して粒子加速を実際に行う”cell 部分”に関し
図1
RRR 測定結果 (>300 の sample と~100 の sample)
ては、代替の手法の研究開発が行われてきた。代表的
な代替手法の一つとして、液圧成形による空洞製造が
ここではもう一つの項目である RRR に関しての検討
挙げられる。こうした背景の下、機械工学センターが
を行う。超伝導状態での粒子加速が目的の加速空洞に
保有している液圧成形器を用いて、電子ビーム溶解箇
おいて、構成物質の Nb 材の純度は、性能に影響を与え
所の少ない空洞開発に取り組んだのが W-1 空洞である
る非常に重要な項目と思われる。この純度を表す指標
[5]。ATI 社から供給された Nb 材のパイプを用いた取り
として用いられる残留抵抗比が高い Nb 材が広く用いら
組みの結果、これまでに割れの無い single cell 空洞の作
れるのは、上の様な考えに基づいていると考えられる。
製に成功した。現在のところ、空洞の量終端にあたる
Nb 材の供給に関しても、工程管理等の技術が向上した
beam pipe 部分は別途用意された部品を溶接で取り付け
事に伴い、問題のより詳細な切り分けが進められてい
る事になっている為、single cell 空洞の場合に省略出来
る。ここでは特に、tantalum の副産物として生成される
る溶接個所は赤道部1カ所であるが、例えば 3-cell 空洞
Nb 材に関する取り組みを例として取り上げる[4]。
になると、赤道部分が 3 カ所と、中央 cell の両端の iris
Minor metal の一種として非常に産業的価値の高い Ta
部分の 2 カ所の計 5 カ所が省略出来る。この様に cell
は、周期律表中 Nb と同じ第5族元素として存在してお
数が増える毎に液圧成形での利点が強調される計算に
り、非常に似た化学的性質を示す。この特徴から、電
なる。しかし現在の所、液圧成形の各段階(W-1 空洞の
子ビーム溶解時に単離する事が難しく、高度の精錬を
例では 3 段階)において、750℃での anneal 処理と真円度
行うには高い費用を要する。この事実を逆手にとって、
の測定の工程が別途入っており、一概に液圧成形法が
Ta 含有率が高いが低価格の Nb 材を加速空洞作成に利
より簡単な空洞製造の手法を与えているとは言い難い。
用に出来ないかと言う検討が精力的に行われてきた。
しかしこれらの点に関しては、今後改良される可能性
所謂 Low-RRR/Large Grain Nb 材の事である。精錬や鍛
が非常に高いと考えられる。
造の工程において、酸素や窒素や炭素と言った不純物
3.縦測定結果
が混入する事、又表面処理に用いる硫酸からの硫黄の
析出等が高電界試験における放電源となり、思わぬ空
洞性能の劣化を招いてきたが、詳細に各処理工程を制
御していく事で、単純な残留抵抗比の高化には、それ
これまでに作製が終了した R-1、R-2、R-4、W-1 の各
空洞に関して、これまでにえられた縦測定による性能
評価の結果を報告する。
程意味が無い可能性があると考えられ始めている。今
考えている Nb 材の場合、混入している異種金属は Ta
であり、この金属も 4.5K において超伝導転移を起こす。
今回 Brazil の鉱山から得られた大粒 Nb 材の sample を
得る事に成功した経緯から、これまでの”常識”に反する
低い RRR を持つ Nb 材での空洞作製とその評価に目的
を置いたのが R-5 空洞である。例え飛び抜けた結果を
示せなくとも、平均的な加速勾配や Qo 値が得られれば、
それだけで非常に大きな impact が得られると思われる。
この空洞に関しては現在加工途中である為、縦測定で
測定したのは 2.0K 以下の温度での Q-E 曲線及び、
4.2K 以下の温度での Rs-T 曲線である。通常の測定手順
に従うと、2.0K から 0.2K 刻みに温度を下げながら、Q-E
curve の測定を行うが、R-4 空洞の測定時には、空洞内
の真空度の悪化が確認された為に、1.8K 以降の高電界
試験結果が得られていない。また W-1 空洞の Q-E curve
には、X 線 monitor での計測結果が併せて plot されてい
る。これは beam pipe 溶接部分に残った割れ目からの
field emission の影響が Q-E curve に現れている事を示す
- 84 -
第16回高エネ研メカ・ワークショップ報告集(2015.4.10)
図2 これまでに得られた縦測定の結果 (Q-E curve)
4.おわりに
空洞作成技術の更なる高度化を目指し、試験空洞の
作製と評価を行った。製造手法や空洞材料に関して、
今後も R&D を進めながら検討を行っていく予定である。
参考文献
[1] W.Singer et al. 「Advances in large grain/single crystal
SC resonators at DESY 」 Proceedings of PAC07,
Albuquerque, New Mexico, USA
[2] Rong-Li Geng 「Update on raising Qo at ultra-high
gradient via large-grain niobium material 」 ECFA
LC2013, DESY, Hamburg, Germany
図3 これまでに得られた縦測定の結果 (Rs-T curve)
為で、空洞の特徴である、液圧成形法が原因の Qo の低
下では無い事を示す為である。全ての空洞において
35MV/m 以上の加速勾配と、2×1010 の Qo 値が 2.0K の
測定で得られた。(図2) また、表面抵抗の測定結果を
定数部分と温度依存部分に分けて fitting を施した結果、
全ての空洞材料で 10nΩを下回る残留抵抗の値が得ら
れた。(図3)
[3] Rong-Li Geng「High efficiency high gradient cavities」
ALCW2015, KEK, Tsukuba, Japan
[4] S.B. Roy et al. 「 A study on the effect of
tantalum-impurity content on the superconducting
properties of niobium materials used for making
superconducting radio frequency cavities」Supercond.
Sci. Technol. 25 (2012) 115020
[5] M.Yamanaka 「 Hydroforming SRF cavities from
seamless Nb tubes」TESLA Technology Collaboration
Meeting 2014, KEK, Tsukuba, Japan
- 85 -
- 86 -
X1000
3D
表面粗さ(μm) Ra=0.44、Ry=2.5
X1000
X400
A5065
Ra=0.38、Ry=2.2
C 1020
Ra=0.37、Ry=2.0
SUS304
高エネルギー加速器研究機構
機械工学センター
井上 均
Ra=10.44、Ry=62.0
Nb
レーザー顕微鏡 VK‐8500
Nbの切削と成形について
加工サンプル
C1020
Nb
8
1000
工作物
SUS304
0.4
使用したバイト
A5056 C1020 SUS304
rc : コーナ半径 (mm)
h : 理論仕上げ面粗さ Ry(μm) 0.95
f : 送り量 (mm/rev) 0.055
アルミ、銅、ステンレスでは同じような表面粗さになった
A5056
④表面粗さ Ry (μm)結果
A5056 2.5
C1020 2.2
SUS304 2.0
Nb 61.9
③汎用旋盤(A‐25)
②切削工具(超硬 TH10 )
スクイ角:23°
ニゲ角:8°
先端R:0.4mm
①切削条件
切削速度:70~80m/min
送り
0.055mm/rev
切削油 マシン油
同じ切削条件でのNb、Al、Cu、SUS304の表面粗さ
第16回高エネ研メカワークショップ(2015.4.10)
- 87 -
3 回目切削
2 回目切削
x2000
X1000
h=1.84μm
X2000 3D
X2000
理研旋盤によるNb加工(2)バイト再研磨
バイト X200
加工中、バイトに
切り粉が絡んだ!
Ra=0.26
Ry=2.0
NC旋盤(SL‐25)
回転数 :500rpm
送り速度:0.01mm/rev
Nbの加工面
X2000 3D
回転数:380rpm
2回目と3回目の違いは送
り速度を遅くした。
3枚の写真は3回目切削し
たもの。
キズを避けた部分、Ry=1.68
X2000
接触式粗さ計によるキズ、Ry=1.41
X2000
A5056 50%
C1020 42.8%
Nb
50%
SUS304 75%
切削比の結果
切削比=
切削条件
切削速度 V=27m/min 切り込み t1 = 0.06mm
切り込み:t1
切りくず厚さ:t2(薄い)、t2‘(厚い)
せん断角:φ (大)
せん断角:φ‘ (小)
すくい角:α
前逃げ角:β
バイトの進行方向
☆歌川 寛(元都立工業技術センター)
バイトのスクイ角を変えること
によって表面粗さが向上した
ア、切りくずの出やすさ
イ、切削抵抗の大きさ
ウ、加工面の表面粗さ
金属材料の被削性
Old
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理研旋盤によるNb加工(1)
X2000
超硬バイト
すくい角 α : 33°
前逃げ角 β : 8°
第16回高エネ研メカワークショップ(2015.4.10)
Ry=1.66
Ry=3.75
- 88 -
クロスヘッドの移動量(mm)
Nb (LG)
C1020 500℃x2h
Nb 750℃x4h
Nb 850℃x3h
C1020 No anneal
SUS304
☆ Nb(LG)の試験片は大きい結晶粒の中から採った
SUS304
C1020
C1020 Anneal
Nb 750℃x4h
Nb 850℃x3h
Nb LG
硬度(Hv)194
フランジCPの目的はNbパイプとEB溶接するため
CP前、Ra=0.43 Ry=3.6
CP後、Ra=0.4 Ry=2.1
接触式粗さ計で測定
CP後
(図面での指示)
CP前
Ra=0.8μm
3.2Sの面粗さ
Nb:49
Nb:46
Nb(LG):60
SUS304:180
C1020:99.5
硬度(Hv)
X1000 3D
X1000
X400
フランジ(Nb/Ti)シール面の面粗さ
CP後の面粗さの変化
CP前
クロスヘッドの移動量
A6061の試験片
21%で破断 Hv:48
A6061‐O TS:122.5MPa Elong:25%
A6061 anneal
CP後
ε:対数ひずみ
C:定数
3
1
0.359
0.367
Nb
Nb(LG)
*プレス加工データブックから引用
n値大 →
しわが発生しにくい
ひずみ分布が均一化し破断しにくい
☆Nb(LG)は粒界の無いところから切り出した
2
0.08
1
3
0.322
0.132
C1020
3
Cu
0.536
C1020
4
試験数
Nb
0.416
SUS304
n値(実験値)
今回試験で得られたn値
☆歌川 寛(元都立工業技術センター)
加工硬化係数が大きいほど、絞り性が良くなる傾向
引張試験を行い、10%、20%伸びた荷重をP10、P20として計算
850℃x3h
750℃x4h
No anneal
No anneal
500℃x3h
調質
*No anneal は
調質不明
歌川の式
試験方法
スイフトカップ、コニカルカップ、
エクセリン、r値、n値
n=3.55Log(P20/P10)+0.134
σ:真応力
加工硬化係数(n値)を求める
成形について
*参考値はプレス金型
講座から引用
0.05(1/2H)
0.05(1/2H)
0.5
0.42
参考値
引張試験機(RTC‐1325)
第16回高エネ研メカワークショップ(2015.4.10)
製品重さ
10.5%減
加工
ブランク重さ
- 89 -
赤道部
20
30
(mm)
2.7
2.8
2.9
3
%
‐5
0
5
10
15
引張り
19%減
アイリス
Nb disc 2.8t X φ260 X φ56
w=1237g
圧縮
‐15
‐10
40
50
50
アイリス
40
3%減
60
60
70
80
90
周方向
70
80
R方向
90
100
平板肉厚(後)
R方向、周方向の歪
平板肉厚(前)
100
110
110
120
赤道部
120
5%増加
超音波厚み計で測定
プレス前後の肉厚(mm)
加圧力:250KN
φ9mm、ピッチ10mm
のマーキング
成型によるハーフセルの肉厚変化と各部の歪
130
2.7
2.8
2.9
3
2.7
2.8
2.9
3
90度
0度
180度
90
70
90度
50
0度
180度
90
プレス後の肉厚変化
270度
110
270度
110
t:2.833mm σ:0.023
70
50
130
130
周方向
赤道部
R方向
ハーフセル
固定冶具
アイリス部
内面X,Y方向2断面を測定
測定器プローブ
3次元測定器
UPMC850
ハーフセルの内面形状測定
30
30
プレス前の肉厚(mm)
11
70
90
180度
110
0度
50
70
90度
90
180度
270度
110
赤道部
270度
プレス後の周方向の変化
90度
アイリス及び赤道部の真円度
アイリス:0.06mm
赤道部:0.10mm
7.5
8
8.5
9
9.5
0度
50
プレス後のR方向の変化
アイリス部
30
30
10
7.5
8
8.5
9
9.5
10
10.5
130
130
第16回高エネ研メカワークショップ(2015.4.10)
- 90 -
-70
-50
-30
ビーム方向(mm)
-40
センターセル
-20
-10
-0.8
-0.6
-0.4
-0.2
0
0.2
0.4
0
赤道部
Cu-1
Cu-2
Cu-3
Cu-4
Cu-5
Cu-7
Cu-8
Cu-9
Cu-10
Nb-1
Nb-2
Nb-3
Nb-4
形状測定
金型を修正、5回目(V‐5)で誤差が
+0.2mm、-0.38mmに収束した
Ver‐1:Cu‐1~Cu‐8 Ver‐2:Cu‐9,10,Nb‐1 Ver‐3:Nb‐2
Ver‐4 : Nb‐3 Ver‐5 : Nb‐4 OK!
-60
アイリス部
金型
誤差(mm)
センターセルの内面形状測定結果
NC旋盤(SL‐25)による加工
金型の製作(材質:ANP89)
誤差倍率 x100
青色線が空洞設計値
赤色線が法線方向の誤差
2011年4月7日まとめ
断面形状測定結果
アイリス部
赤道部
金型V‐2,銅セル (Cu‐9)
凸型
凹型
測定結果
‐70
‐70
‐60
BLCCu‐1
‐60
‐50
Cu‐2
‐50
Cu‐4
‐30
BLCCu‐5
Cu‐9
‐40
Cu‐10
‐30
‐20
‐20
Nb‐1
Ver‐2 銅&Nbセル
Cu‐3
‐40
Ver‐1 銅セル
3次元測定器の出力結果(KUM)
Cu‐7
‐10
‐10
‐50
‐0.8
‐0.6
‐0.4
‐0.2
0
0.2
0.4
BLCCu‐8
‐0.8
‐0.6
‐0.4
0
Ver‐2
Ver‐3
Ver‐4
Ver‐5
Nb‐2
ニオブ材は銅に比べて成
形性が少し悪い
Nb‐1
Nb‐4
‐30
‐20
Nb‐5
Nb‐1
Nb‐2
Nb‐3
Nb‐4,Nb‐5,Nb‐6
Nb‐3
‐40
‐10
Nb‐6
‐0.8
‐0.6
‐0.4
‐0.2
0
‐0.2
0.2
*
*
*
*
*
*
*
*
*
*
0
‐60
0.1423 |
0.139 |
0.1384 |
0.1395 |
0.1488 |
0.1646 |
0.168 |
0.1815 |
0.1812 |
0.1749 |
0.4
‐70
‐48.9731
‐48.6814
‐48.4149
‐48.1742
‐47.9602
‐47.7735
‐47.746
‐47.6007
‐47.4554
‐47.3101
*
*
*
*
*
*
*
*
*
*
*
*
*
*
*
*
*
*
*
0.2
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0.0608 |
0.0756 |
0.0946 |
0.1091 |
0.1201 |
0.1301 |
0.1356 |
0.1408 |
0.1429 |
0.1432 |
0.016 |
0.0136 |
0.0166 |
0.0287 |
0.0346 |
0.0308 |
0.026 |
0.0326 |
0.0457 |
誤差
0.4
0
42.8986
43.72
44.5686
45.442
46.3375
47.2526
47.4
48.2046
49.0093
49.8139
‐53.0511
‐52.5659
‐52.0945
‐51.6381
‐51.1983
‐50.7761
‐50.373
‐49.99
‐49.6284
‐49.2891
21
22
23
24
25
26
27
28
29
30
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
36.6636
37.0968
37.5766
38.1016
38.6703
39.2811
39.9321
40.6214
41.347
42.1069
11
12
13
14
15
16
17
18
19
20
Z
2
3
4
5
6
7
8
9
10
Y
設計値
1 では計算できません
35
0
‐57.5
35
0
‐57.25
35.0264
0 ‐56.7086
35.1055
0 ‐56.1688
35.2371
0 ‐55.6322
35.4208
0 ‐55.1003
35.6561
0 ‐54.5747
35.9422
0
‐54.057
36.2784
0 ‐53.5486
X
Ver‐2~5 Nbセル
点
0
第16回高エネ研メカワークショップ(2015.4.10)
第16回高エネ研メカ・ワークショップ報告集(2015.4.10)
1kHzRFGun の製作
*高富俊和、**楊金峰、*浦川順治
(*高エネルギー加速器研究機構、**大阪大学産業科学研究所)
1.はじめに
KEK では2000年より S バンドの RF 電子銃
(RFGun)の製作をおこなっている。現在までに国内外
の大学や研究所用として18台の RFGun を製作してき
た。
冷却は本体内部に水路を設け水冷をおこなっている。
1kHzRFGun では冷却効率を向上させるため、ハーフセ
ルの水路を発熱の多い中心に近づけ、外周部にも冷却
管を増設した。また、導波管にも冷却水管を増設した。
空洞内壁を加工するためには,、分割して加工しやす
今回製作した電子銃は、大阪大学産業科学研究所で
開発が進められているフェトム時間分解電子顕微鏡に
使用される電子銃である。2Mev の電子ビームを発生さ
せるため、時間分解能 100fs と空間分解能 1nm を同時
に達成することを目標に 1kHz の繰り返しが必要となる。
い形状にする必要がある。通常は空洞赤道部で分割す
るが、導波管やチューナーがあるためテーパーによる
はめあい構造とした。材料は無酸素銅クラス1に HIP
処理をしたものを使用した。
これらの高品質の超短パルス電子ビームを発生させる
3.
ためには、従来の RFGun に冷却能力の向上と表面の電
場強度を弱くするため、楕円を取り入れた空洞形状に
製作方法について
3.1 製作工程
するなどの改良が加えられた。
RFGun の製作にあたっては、当初様々な問題が発生
本報では、1kHzRFGun を中心に RFGun の製作方法に
ついて報告する。
した。そこで、各工程の問題点を洗い出し、設計段階
より加工性、ロウ付け性を考慮した構造とするなど製
作工程全体を通して最善の方法を構築していった。
2.1kHzRFGun の構造について
RFGun の製作工程を下記に示す。
1kHzRFGun は S バンドの 1.6 セルの空洞を持つ電子
銃である。空洞部はハーフセルとフルセルにより構成
されている。空洞の電場強度を弱くし、エミッタンス
とエネルギー分散の低減させるため、Ra0.05 以下の表
面粗さが必要で、曲面と楕円を組み合わせた形状とな
っている。電子ビームを発生させるカソードは交換で
きる構造となっており、フルセル側に導波管と真空の
引き口がついている。空洞には空洞共振周波数調整機
構(チューナー)が各セルに4個ついている。
①
一次加工
超精密加工の仕上げ代を 0.1mm残した状態ま
での加工をおこなう。一次加工の精度が超精密
加工後の精度に大きく影響するため、寸法精度
は±0.04mm、輪郭度 0.005mmの高精度加工が
要求される。また、加工歪が残らない加工条件、
加工方法を取る必要がある。
②超精密加工
空洞内壁および各セルの接合部を超精密旋盤に
より加工する。加工後、仮組し周波数を測定し
ながら所定の周波数になるように空洞寸法の調
整加工をおこなう
③ロウ付け接合
ロウ付け工程は超精密加工前のアニール工程を
含め4工程必要となる。
④フランジ溶接
フランジは SUS316 の ICF フランジを使用して
いる。エッジ部が軟化することを防ぐためロウ
付けではなく Tig 溶接により接合をおこなった。
図1 1kHzRFGun 図面
- 91 -
第16回高エネ研メカ・ワークショップ報告集(2015.4.10)
3.2 超精密加工
る。加工機はクリンルーム内に設けられたブース内に
空洞内壁は加工精度を向上させ暗電流を抑えるため
設置され、0.5℃以下で温度管理されている。
ダイヤモンド工具による超精密加工を用いた。これに
加工条件は回転数が 400~800min-1 でテーブル送りは
より、1ミクロン以下の輪郭度精度と Ra0.05 以下の表
14mm/min(仕上 7mm/min)、切り込み量は 0.02mm(仕上
面粗さを達成さることができる。
0.002mm)とした。工具は単結晶ダイヤモンドバイトで
空洞内を超精密加工するためには、エンドプレート、
ハーフセル、フルセルの3つのパーツに分け、接合部
先端半径 0.4mm を使用した。切削液にはケロシンをミ
スト状にして加工部に吹き付けた。
を含めすべてを高精度に加工する必要がある。しかし、
フルセルなどは約5kgと重く、導波管取付け部や真
3.3 ろう付け
空引き口がついているため回転バランスも悪い。これ
ロウ付けには機械工学センターで所有する水素炉
らを高精度に加工するためには加工ジグや加工方法に
(ヘザリントン水素炉 B2500S)を用いておこなってい
工夫が必要だった。
る。水素炉は大気圧の水素雰囲気中で高温により処理
各セルの固定はスピンドルに取付けた面盤にネジで
をおこなうもので、水素による還元作用により酸化膜
固定した。機上で面板表面を加工し、双方の接合面の
が除去され、また、高温時に銅表面からの銅の蒸発を
平面度を向上させネジ締付けによる変形を抑えた。ま
抑えることができ、きれいな面を得ることができる。
た、導波管取付け部や真空引き口などにより回転バラ
ンスが大きく崩れているため、面盤に重りを取り付け
回転バランスの調整と最適な回転数の選定をおこなっ
た。
図4
図2
ヘザリントン水素炉 B2500S
RFGun の接合は4回のロウ付けによりおこなわれる。
超精密旋盤 UPL-100 プロトタイプ
ロウ付けは空洞内の精度を維持したまま真空漏れの無
い接合が必要で、ロウ溝の構造やロウ付け方法の検討
をおこないながら作業を進めた。
ロウ付け工程を下記に示す。
①一次ロウ付け
チューナーピン、水冷管蓋および導波管の接合と一
次加工の加工歪みの除去を目的とする。
ロウ材は融点が 1030℃の BAu25/75(WESGO)を使
用した。
②二次ロウ付け
本体部(エンドプレート、ハーフセル、フルセル)
図3
超精密旋盤による加工風景
の接合を目的とする。金ロウは銀ロウのように濡れ
使用した超精密旋盤は東芝機械社製の超精密旋盤を
性が良くないため、全周にわたってロウ溝を掘り真
ベースに高剛性のエアースピンドルを載せかえて使用
空漏れの無い構造とした。ロウ材は一次ロウ付けの
している。テーブルの案内には、ニードルローラーを
ロウ材が溶けないように融点が 1010℃の BAu35/65
用いたダブル V 溝スライドテーブルを使用し、位置決
(WESGO)のワイヤーロウを使用した。
め精度を向上させている。制御系はファナック15T に
③三次ロウ付け
よりクローズド制御を行い、最小単位は 0.01μm であ
- 92 -
本体と導波管のロウ付け。導波管と本体の接合面は
第16回高エネ研メカ・ワークショップ報告集(2015.4.10)
面積が小さいため、融点が 970℃の BAu50/50 のシ
ートロウを接合面の形状に切出し全面でロウ材で
きる構造とした。
④四次ロウ付け
三次ロウ付けが完了したところで周波数の最終調
整をおこなう。最後に導波管チューニングピンで調
節し最終ロウ付けをおこなう。ロウ材は BAu50/50
のワイヤーロウを使用した。
図6
フェトム時間分解電子顕微鏡
参考文献
1) PHOTO CATHODE RFGUN Cavity の超精密加工,
高富俊和,2007,KEK Rep
2) フェムト秒時間分解・MeV 電子顕微鏡,YANG
Jinfeng,(Osaka Univ.),2010,日本加速器学会
図5
三次ロウ付け時の写真
3)
3.5cell S‐band フォトカソード RF 電子銃及び
12cell 加速管開発,AOKI Tatsuro,(Waseda Univ.),2011,
日本加速器学会
4)
極短バンチ電子ビーム生成用エネルギーチャープ
セル付高周波電子銃開発,SAKAUE Kazuyuki,
ロウ付けは温度をコントロールすることが重要であ
る。炉内はどうしても場所により温度差が生じる。ま
た、処理するものの大きさによっても条件を変更する
(Waseda Univ.),2011,日本加速器学会
5)
3.5 cell S‐band フォトカソード RF 電子銃の開発,
青木達朗,(Waseda Univ.),2011,日本物理学会
6)
極短バンチ生成用高周波電子銃の開発,小柴裕也,
(早稲田大学),2012,日本物理学会
必要がある。そこで実体温を計測しながら温度条件を
選定していった。
3.おわりに
S バンドの RF 電子銃の製作にあたって、当初、様々
な問題が発生したが、各工程の問題点を洗い出し、製
作工程全体を通して最善の製作方法を構築した。超精
密加工では重くて回転バランスの悪いものを高精度に
加工するための加工方法と加工条件を確立した。また、
接合では水素炉によるロウ付け方法を確立することが
できた。
今回製作した 1kHzRFGun は現在大阪大学産業科学研
究所のフェトム時間分解電子顕微鏡に設置され実験が
進められている。
- 93 -
第16回高エネ研メカ・ワークショップ報告集(2015.4.10)
SuperKEKB 超伝導 4 極電磁石磁場測定ハーモニックコイルの開発
〇 岡田尚起 A),東憲男 A),大内徳人 B)
A)
高エネルギー加速器研究機構 共通基盤研究施設 機械工学センター
B)
高エネルギー加速器研究機構 加速器研究施設
SuperKEKB ビーム衝突点では、8 台の超伝導 4 極電磁石が 2 台のクライオスタットに組み込まれ設置される。超
伝導 4 極電磁石は、積分値としての磁場の値と磁石軸に沿った磁場の分布を測定することが必要とされる。この為、
磁石全体の磁場を測定する為の長さ 600mm のハーモニックコイルと 20mm のハーモニックコイルが使用される。ハ
ーモニックコイルは、超伝導 4 極電磁石の主要磁場成分である 4 極磁場の絶対値と誤差磁場成分である高次の多極
成分を測定する為に設計されている。1 つのハーモニックコイルには、4 極磁石の磁場成分を測定する為の
Tangential コイル、位相が異なる 3 個の 2 極コイルと 4 極コイルから構成されている。コイルの総数は、7 個である。
このコイルの組合せにより、4 極磁場の絶対値は 1×10-3 以下の測定精度、多極成分については 4 極成分に対する
相対値として 1×10-5 以下の測定精度を目指している。この為、製作されたコイルの形状として 50μm の巻線精度が
要求され、この為、コイルの巻枠となるボビンの加工は 20μm 以下の精度が必要となる。
1. ハーモニックコイルについて
で回転することから、金属を使用した場合、ボビン内に
図 1 に QC2 用 20mm のハーモニックコイルの形状を
示す。ボディの両端部にジョイントを取付けた形状をし
誘導電流が発生し磁場測定に悪影響を与えるため、電
気絶縁物であることが必須条件である。
ている。外径φ68mm、内径φ62mm のボディの両端を
φ50mm に加工し、残った中央部分(22.2mm)の円周
上の各角度に幅 1.5mm、深さ 1.11mm の溝加工を行な
う。溝の両端には長手方向 0.25mm、軸方向 0.244mm
の段加工が施されている。溝幅は中心から 0.299mm ズ
レており、図 1 でいう第一象限と第三象限、第二象限と
第四象限が同形状となっている。また、Tangential 部に
限っては図 2 のような形状の加工を行なった。加工精度
は±20μm、角度方向は±0.05°となっている。現在
QC1 用 20mm、600mm と、QC2 用 20mm、600mm の
図 1 QC2 用 20mm ハーモニックコイル
4 種類のハーモニックコイルがある(以後、順に QC1-S、
QC1-L、QC2-S、QC2-L と呼ぶ)。それぞれ全長や溝
幅等の各寸法は異なるが基本的な形状はすべて同じ
である。今回、その中の QC1-S、QC1-L、QC2-S、の加
工について報告する。
材質は G10(ガラスエポキシ樹脂積層管)を使用して
いる。ハーモニックコイルは、横置きで使用する場合も
あり、コイルの変形を極力抑える目的でこの材料が選ば
れている。又、超伝導電磁石が発生する高い磁場の中
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図 2 QC2 用 20mm ハーモニックコイル
第16回高エネ研メカ・ワークショップ報告集(2015.4.10)
2. 加工について
数 18,000rpm、送り速度 100mm/min、荒加工の切り込
み量は径方向・軸方向共に約 0.1mm、仕上げ加工で
2.1 QC1-S の加工
ハーモニックコイルの製作にあたって円周上の各角
度に溝加工を行わないといけないため割り出しが必須と
なる。そこで、我々機械工学センターにあるマシニング
センタ(FNC106-A20)のテーブルに図 3 に示すような
は径方向・軸方向共に約 0.05mm で加工を行なった。
その結果、干渉も起こらずテールスピンドル側のねじれ
角も公差内に収まったので、QC1-S の本番加工行っ
た。
四爪チャックの NC 円テーブル(MRM160R20)とテー
ルスピンドルの回転軸を設置し、割り出しを行なうことに
した。
図 4 QC1-S テスト加工の様子
2.2 QC1-L の加工
QC1-L の QC1-S と QC1-L の大きな違いは、全長の
図 3 QC1-S の取付け
長さの違いである。それにより新たな問題が発生する。
右側:NC 円テーブル 左側:テールスピンドル
まず、工具の摩耗である。QC1-S では、荒加工で 1
QC1-S の加工を行なう前に加工試験を行なった。加
工試験の目的は大きく 2 つある。
一つは、プログラムの動作確認である。導入したばか
りの CATIA V5 の CAM を用いて NC データを作成し、
それに少し手入力で修正たため、実機での動作確認が
必要であった。また、テーブルとワークの位置が近いた
め、工具・スピンドルがワークに干渉しないかのチェック
も同時に行なった。
もう一つは、ねじれの確認である。今回使用している
テールスピンドルは加工の際はクランプされているが、
割出しする際は NC 円テーブルの動きに追従している
だけなので、テールスピンドル側でねじれが発生するこ
とが予想される。そのねじれ角が公差内に入っているの
本、仕上げ加工で 1 本、合計 2 本の超硬スクエアエンド
ミルφ1mm 4 枚刃(XAL-EM4S)を使用した。しかし、
超硬スクエアエンドミルでは加工距離約 8.5m で切れ味
が悪くなりバリの発生や、加工面不良になってしまう。顕
微鏡によりエンドミルの底刃とコーナーが摩耗しているこ
とが確認できた(図 5)。この距離は QC1-L の溝加工 1
本分に相当するため、このままでは工具交換が多くなる。
工具交換が多くなれば軸方向の誤差が増え、また手間
も掛かってしまう。そこで、高い耐摩耗性も持つダイヤモ
ンドコーティングが施されたスクエアエンドミルφ1mm
2 枚刃(DCES2010-0300)を使用することにした。これ
により、加工距離が約 15 倍に延び、工具交換の回数を
少なくすることに成功した(図 6)。
かを知るためにもテスト加工が必須であった。ねじれ角
の確認は、加工直後の溝幅と割り出し後の溝幅の位置
のずれ量の測定値から角度を計算し判断する。
テスト加工の様子を図 4 に示す。ワークは直接四爪チ
ャックで掴まず、治具を用いて掴んだ。治具により延長
することでスピンドルがテーブルに干渉することなく、同
時に四爪チャックによる傷つきも防止できる。主軸回転
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図 5 XAL-EM4S φ1mm 4 枚刃
左:使用前
右:使用後
第16回高エネ研メカ・ワークショップ報告集(2015.4.10)
①加工する角度によっては治具を外す作業が必要
②治具の一人での取付け・取り外しが困難
③個々に治具を製作しなければならない
これらの問題を解決し、さらにねじれ角が公差内ギリ
ギリなのでこれを追い込む治具の製作を行なった。
図 6 DCES2010-0300 φ1mm 2 枚刃
左:使用前
QC1-L の加工試験用の試料で治具の性能確認を行な
右:使用後
った。これは、QC2-S は QC1-S と全長はほぼ同じだが、
次に、ねじれの問題だ。前でも述べたとおり、今回使
径が約 2.7 倍あるためねじれは少なくなると考えられる。
用しているテールスピンドルは NC 円テーブルの動きに
だが、径が小さく長いものでも公差内に入ることが確認
追従しているだけなのでテールスピンドル側でねじれが
できれば、径が大きくなっても公差内に入ると考えて、こ
発生してしまう。QC1-S では全長が短かったため公差
の試料で確認を行なった。2 号機、3 号機とねじれ防止
内に入ったが、QC1-L では全長が長くなった分だけね
治具を試行錯誤した結果、図 11 のようにテールスピンド
じれが増大した。そのため NC 円テーブルとテールスピ
ルからテールストックに変更しセンターで保持することで、
ンドルの間に治具を付け、剛性を大きくすることでねじ
ねじれ角を公差内に収めることができた。この治具を採
れを小さくすることにした。初期(1 号機)のねじれ防止
用し、QC2-S の本番加工を行なった
用治具を図 7 に示す。これにより、治具無しでは最大約
3°のねじれが、治具有りでは最大約 0.2°のねじれに
改善された。しかし、これではまだ公差内に入っていな
い。そこで、図 8 のようにアルミの板を重ねることで剛性
を大きくした(2 号機)結果、公差内に収めることができ
たので、これを採用し QC1-L の本番加工を行なった。
図 9 ねじれ防止用治具 3 号機
図 7 ねじれ防止用治具 1 号機 (QC1-L テスト)
図 10 ねじれ防止用治具 4 号機
図 8 ねじれ防止用治具 2 号機 (QC1-L 本番)
2.3 QC2-S の加工
QC1-L で治具を製作しねじれを防止し公差内に収め
たが、加工後に以下の問題点が発覚した。
図 11 ねじれ防止用治具 5 号機(QC2-S 本番)
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第16回高エネ研メカ・ワークショップ報告集(2015.4.10)
図 12 テールストック側ねじれ防止用治具 5 号機
3.結果
それぞれの試験加工の結果を基に QC1-S、QC1-L、
QC2-S、QC2-L、他 2 つ、計 6 個のハーモニックコイル
の加工を行なった。加工条件は表 1 に示す。
加工終了後、実機による測定を行なった。その結果、
6 種類のハーモニックコイルの溝部と Tangential 部は、
両端の固定部分付近は±20μm の公差内に収まった。
ねじれ角も全て±0.05°の公差内に収まった。
表 1 加工条件
・主軸回転数:18,000rpm
・送り速度:QC1-S、QC2-S・・・・100mm/min
QC1-L、QC2-L・・・・400mm/min
溝両端部の段加工・・・50mm/min
・割出し速度:30min-1
・切り込み:荒加工・・・・軸方向・径方向 0.1mm
仕上げ加工・・軸方向・径方向 0.05mm
・使用工具
・スクエアエンドミルφ1mm 4 枚刃 荒加工
(XAL-EM4S)
・スクエアエンドミルφ1mm 2 枚刃 仕上げ加工
(DCES2010-0300)
・超硬ロングネックスクエアエンドミルφ0.3mm2 枚刃
(TSC-EM2LB)
4.最後に
6 種類全てのハーモニックコイルの加工が終了し、工
具の選定や治具による固定方法の検討により公差内に
収めることができた。
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第16回高エネ研メカ・ワークショップ報告集(2015.4.10)
BelleII実験用エアロゲル・リングイメージング・
チェレンコフ検出器の開発と建設(続)
1岩井 正明、2足立 一郎、3中村祐一、3澤畠孝博、3寺奥拓史
その他 BelleII ARICHグループ
1:機械工学センター ・ 高エネルギー加速器研究機構(KEK)
2:素粒子原子核研究所 ・ 高エネルギー加速器研究機構(KEK)
第16回高エネ研・メカワークショップ 2015年4月10日
3:金属技研株式会社(MTC)
BelleII実験及びSuperKEKB加速器の建設
前方エンドキャプ粒子識別装置:エアロゲル・
リングイメージングチェレンコフ検出器
電子陽電子衝突によって大量のB中間子対やタウ粒子対を生成、その詳細を調べ、「新しい物理」の探索を行う
Belle実験/KEKB加速器(1999-2010)を改善し、40倍の
強度を持つKEKつくばキャンパスでの加速器実験
現在、それらの建設が進行中
エアロゲルから発生するチェレンコフ光を検出
し、荷電粒子の識別を行う。
高さ8m、幅8m、重さ1400トンの測定器
群からなる大型素粒子検出器
光検出器と読み出し電子回路
新しい真空システム
電磁カロリメーター
200mm
伝搬時間検出器
SuperKEKB加速器
陽電子(4GeV)
陽電子用ダンピングリン
グの新設
高い電流のためのRF
システムの増強
シリカエアロジェル
崩壊点検出器
中央飛跡検出器
新型陽電子標的
KL&ミュー検出器
BelleII検出器
SuperKEKB加速器アップグレード概要
電子(7GeV)
Belle II 検出器
現在、Belle II検出器の各測定
器の建設及び据付けが進行中
BelleII検出器
シリカ・エアロジェルの物性
A-RICH検出器の全体設計
SiO2からなるシリカ分子が3次元的につながった多孔物質:90%程度が空気
特徴的な密度(=屈折率)をもつ
20mm厚のシリカ・エアロジェ
ルを2枚を敷詰める(2種類の
物質
屈折率
密度
シリカ・エアロ
ジェル
1.007~1.07
0.028~0.28
空気
1.00028
0.001293
25度、1気圧
水
1.3428
0.9984
20度
ガラス
1.48~2.0
2.4~2.6
内筒によって、外の検
出器と連結、また、外
筒部も拘束を設置
屈折率)
•  検出器の概要
内径840mm、外径2280mm、長さ280mm、質量400kg
•  衝突点側に輻射体であるシリカ・エアロジェルを敷詰める
•  シリカ・エアロジェルの後方160mmにHAPDを敷詰める
•  シリカ・エアロジェルとHAPDの空間に乾燥空気を流す
•  HAPDは蜂の巣状構造のアルミニウム板に固定
•  ハニカム状アルミニウム板は、内筒と外筒を結ぶ強度部材
•  アルミニウム板にHAPD読み出し電子回路を固定
2013年
アルミニウム板は軽量化のため、肉
厚2mmの蜂の巣構造、蜂の巣構造
の角穴は信号ケーブルの通り道
コメント等
1990年代に疎水性を保持するサンプルの生成に成功
(Belle実験用)
その後、さらに製法の改善が行われ、チェレンコフ輻射体と
しての使用のため、透明度の向上、タイルの大型化を実施
1980年代
疎水性のため、ウォーター
ジェットによる切断加工が可能
A-RICH検出器の製造状況
(HAPD固定板と内筒の仮組立)
1/6毎に分割し、それぞれを機械加工(下写真)。全体の仮組み上げ試験の様子
内筒
(HAPD固定板実機の拡大写真)
ゲル固定板
HAPD固定板
ゲル用組立治具
外側リング
組立治具
つり上げ用穴
組立治具の下から
見た様子
組立治具を回転させた時
各種の組立治具類
つり上げ用カウンターウェイト
回転機構
裏から見た様子
今後の予定
2015年度中に実機の完成、その
後BelleII検出器へ据付け予定
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通計番号:KEK Proceedings 2015-1
第 16 回 高エネ研メカ・ワークショップ報告集
発行日:2015 年(平成 27 年)7 月 16 日
発行所:高エネルギー加速器研究機構
〒305-0801 茨城県つくば市大穂 1-1
電話 (029)-864-5137
FAX (029)-864-4604
印刷所:松枝印刷株式会社