分極ハイドロキシアパタイト上における 骨芽細胞の接着形態と遊走性

The Murata Science Foundation
分極ハイドロキシアパタイト上における
骨芽細胞の接着形態と遊走性
Adhesion Morphology and Motility of Osteoblastic Cells Cultured on Polarized
Hydroxyapatite
A94103
派遣先 International Conference on Materials for Advanced Technologies & Int’ l Union of
Materials Research Societies-International Conference in Asia 2009
(ICMAT 2009 & IUMRS-ICA 2009)
期 間 平成21年6月28日~平成21年7月3日(6日間)
申請者 東京医科歯科大学 生体材料工学研究所 助教 中 村 美 穂
用されているバイオセラミックスの表面特性
海外における研究活動状況
と細胞挙動について検討した。ハイドロキシ
研究目的
アパタイト(HA)等のリン酸カルシウム系セ
本研究では、セラミックスを電気分極処理
ラミックスは、生体骨内に埋入すると周囲に
することにより表面のぬれ性を制御できるこ
新生骨形成を誘導することから、整形外科や
と、そして細胞接着や細胞遊走を制御できる
歯科領域において臨床応用されている。分極
ことを見出し、その成果を国際会議において
処理を施すとH Aは表面に負電荷または正電
報告する。本研究を国際会議(International
荷を誘起し表面エネルギーを蓄積すること、
Conference on Materials for Advanced
分極HAは新生骨形成能を強化することが既に
Te c h n o l o g i e s & I n t ’ l U n i o n o f M a t e r i a l s
示されている。そこで、本研究では新生骨形
Research Societies-International Conference in
成能強化の機構解明を目的とし、H A表面誘
Asia 2009 (ICMAT 2009 & IUMRS-ICA 2009))
起電荷がセラミックス表面特性と骨芽細胞の
で発表することにより、電気分極セラミック
接着、増殖及び分化に与える影響についての
ス材料がぬれ性に与える効果についての材料
研究を行うことを目的とした。
学的専門家と討論を行うことができる。さら
申請者らは、セラミックスを電気的分極処
に、ぬれ性制御により電気分極材料による骨
理し表面特性評価を行った。X線回折、X線
芽細胞様細胞の接着性や遊走性の向上という
光電子分光法、表面粗さ測定の結果より、電
機構は、細胞挙動制御にとどまらず、様々な
気的分極処理後も表面の結晶性や構成元素、
材料利用へと応用できると期待される。その
表面粗さには変化がおこらないことが確認さ
応用性についても、様々なバックグラウンドを
れた。水を用いた接触角測定により、分極処
持つ専門家集団と討論することを目的とした。
理を施すことにより表面のぬれ性を制御でき
ることが確認された。また、電気的分極処理
海外における研究活動報告
によりセラミックス固体内に蓄積されるエネ
本研究では、硬組織代替材料として臨床応
ルギー量についての電気学的検討を行った。
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Annual Report No.24 2010
電気的分極処理を施すと、高温下で数十µ m
考えられる。
レベルの電流を発生すること、そしてその蓄
本研究における上記の成果を国際会議
積された電気的エネルギーは滅菌操作や細胞
ICMAT 2009 & IUMRS-ICA 2009で発表する
培養試験後も維持されることが示された。測
ことにより、電気分極セラミックス材料がぬ
定結果から空気中で室温領域であれば、その
れ性に与える効果についての材料学的専門家
蓄積エネルギーは数百年維持されるというこ
との討論を行うことができた。さらに、ぬれ
とが計算された。
性制御により電気分極材料上における骨芽細
さらに、細胞機能評価においては、細胞接
胞用細胞の接着性や遊走性の向上という機構
着、細胞遊走を制御できることを見出した。
は、細胞挙動制御にとどまらず、様々な材料
細胞接着能評価においては、数時間以内の細
利用へと応用できると期待される。その応用
胞接着性を接着細胞数や細胞伸展度等のパラ
性についても、様々なバックグラウンドを持
メーターで評価すると、電気的分極処理を施
つ専門家集団と討論でき、得られた知見や提
した表面上で細胞数や細胞伸展性に促進作用
案をもとに今後の研究を発展させたいと考え
をもたらすことが確認された。また、細胞遊
ている。
走性においては、電気的分極処理を施した表
最後になりましたが、この度はご支援いた
面上で、数時間以内の細胞遊走性を促進す
だき御礼申し上げます。この場をお借りして
ることがわかった。これは、細胞接着性促進
深謝いたします。
と同様のメカニズムで見られると推察される。
この派遣の研究成果等を発表した
すなわち、電気的分極処理を施した表面上で
著書、論文、報告書の書名・講演題目
は、細胞接着に有効な細胞接着因子等のタン
講演題目
パク質吸着が促進され、細胞との接着点を旺
Adhesion Morphology and Motility of Osteoblastic
盛に形成することが可能であるためであると
Cells Cultured on Polarized Hydroxyapatite
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