防災現場関係者に専用防災無線を用いて安全確実に伝達するシステム

3.5.1.2.B-2
目
(1)
防災現場関係者に専用防災無線を用いて安全確実に
伝達するシステムの開発・研究
次
業務の内容 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・243
(a) 業務題目
(b) 担当者
243
243
(c) 業務の目的
243
(d) 5ヵ年の年次実施計画
243
1) 平成15年度の実施要約
243
2) 平成16年度の実施要約
243
3) 平成17年度実施計画
4)
平成18年度~平成19年度
(e) 平成17年度業務目的
(2)
244
244
244
平成17年度の成果 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・244
(a) 業務の要約
244
1)背景
244
2)内容
245
3)今年度の成果
(b) 業務の実施方法
245
246
1)実証試験場所
246
2)実証実験(有効性の評価)の実施
3) システムの機能の拡張
4) J-Alert との比較
(c) 業務の成果
246
246
246
1)拡張した 実証実験システムの概要
2) 試験結果
246
249
(d) 結論ならびに今後の課題
(e) 引用文献
246
250
251
(f) 成果の論文発表・口頭発表等
251
(g) 特許出願,ソフトウエア開発,仕様・標準等の策定
(3)
251
平成 18年度業務計画案・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・251
242
(1)
業務の内容
(a) 業務題目
防災現場関係者に専用防災無線を用いて安全確実に伝達するシステムの開発・研究
(b) 担当者
リアルタイム地震情報利用協議会
研究部
上席研究員
六郷義典
[email protected]
上席研究員
柳川智明
[email protected]
(c) 業務の目的
地方自治体を初めとした公共機関における防災現場関係者および自治体の住民にと
って、地震が発生して、主要動が到達する前に地震速報を配信することは、身の安全
確保と2次災害防止のためにも大変有効であると考えられる。自治体関係者、地域住
民の防災のために準備されている防災無線システムは自営網であるが故、災害時でも
回線が輻輳しにくく、比較的確実に伝送できると期待されている。また、近年デジタ
ル化が促進されつつあり、アナログ通信方式に比べ多機能になり、多チャンネル化、
データ伝送利用など進化している状況にある。
しかしながら、過去には防災無線を利用して地震発生直後・主要動到達前に地震速
報を配信するという仕様になっておらず、事後対応で主に使用されていた。
本課題では、防災無線を利用して緊急地震速報を配信するためのプロトタイプシス
テムを開発し、実証実験を行って改良を図ると共に、実用化に向けた課題を抽出し、
普及促進策の検討を行うことを目的とする。
(d) 5ヵ年の年次実施計画
1) 平成15年度の実施要約
防災無線システムには、市町村の防災関係職員が業務に利用する移動系と地域住民へ
の防災情報配信のために利用する同報系の2種類がある。まず、地域住民向けの同報
系対応のためのプロトタイプシステムを開発した。従来のアナログ方式防災無線シス
テムは、起動信号入力後実際に放送が可能になるまで、6秒~十数秒掛かっていたが、
今回開発したデジタル通信方式では、送出タイミングを出来る限り縮め、2~3秒で
の放送が実現出来た。また、 実証実験システムを北海道天塩郡天塩町役場内に設置し、
REIC から緊急地震速報を配信し、システムの稼働試験によって実用性の評価を開始
した。すなわち、地震危険情報を住民に放送するシステムをほぼ完成させ、実証実験
を開始した。
2)平成16年度の実施要約
平成15年度に引き続いて、天塩町での実証実験を継続すると同時に、実証実験
の範囲を広げ、天塩町役場職員の協力を得て、評価試験を行った。
まず、実証実験の範囲拡大という点では、開発協力機関である日本電気(株)の協
力により、天塩町内に屋外子局のスピーカを14基増設し、町内の約80%の地域
243
を防災無線の聴き取り可能な地域とした。防災無線の親局で緊急地震速報を受信し、
製作した実証実験システムを稼働させ、REICからの配信データをロギングしな
がら、システムの機能・性能の評価を行った。また実証実験の実施にあたっては、
消防庁などの関連機関との連携を図りながら進めた。
3) 平成17年度実施計画
平成 17 年度も天塩町において実証実験を継続した。プロトタイプの機能変更と
して、緊急地震速報の配信回線を専用線から ADSL(インターネット)への変更し
低コスト化を図った。
また、実証実験の範囲拡大という観点からは、役場と消防署を接続する防災シス
テムを構築し、役場内及び防災関係者宅に戸別受信機を導入して実証実験の出来る
環境を構築した。さらに、防災無線を利用することの有効性、限界、今後の改善点
等についての検討を行なった。
4)平成18年度~平成19年度
a) 平成18年度は、防災関係者の自宅に導入した戸別受信機を用い、緊急招集及び
安否確認に関する実証実験を行うと同時に、消防庁などと連携しながら他の自治
体への展開を図り、普及を目指す。
b) 継続して実証実験を行い、H18年度には伝達手段に関して、人向け WG にお
ける検討結果であるサイン音を導入し、推奨される告知文言を導入し、より実用
的なシステムへの改良を進める。
(e) 平成17 年度業務目的
昨年度は、デジタル防災無線野外子局のスピーカを増設し、緊急地震速報の通報シ
ステムの対象エリアの拡大を図った。
本年度は、プロトタイプシステムの実証実験を自治体の協力で継続し、防災無線
を 利 用 す る こ と の 有 効 性 、限 界 、今 後 の 改 善 点 等 に つ い て の 検 討 を 行 う 。防 災 無 線
は 同 報 無 線 に 特 有 の 遅 延 が 生 じ る が 、一 方 で 受 信 機 を 限 定 し て 情 報 を 提 供 す る こ と
が 出 来 、双 方 向 通 信 が 可 能 で あ る 。本 年 度 は こ の 機 能 に 着 目 し 、緊 急 地 震 速 報 を 活
用 す る た め 、防 災 無 線 を 用 い た プ ロ ト タ イ プ シ ス テ ム の 機 能 の 充 実 を 図 り 、防 災 関
係 者 に 必 要 な 情 報 を よ り 確 実 に 伝 送 し 、関 係 者 の 安 全 確 保 、緊 急 招 集 を 行 う と 同 時
に、2次災害防止などを図るための改善点について検討することを目的とする。
(2) 平成17年度の成果
(a) 業務の要約
1) 背景
平成16年度は屋外子局スピーカの増設を行った。実証実験では、特段の制限は
ないが、現在、気象庁では、
「緊急地震速報の本運用開始に係る検討会」において一
般向けの緊急地震速報の報知のあり方についても検討している。この中では、まず、
緊急地震速報の報知にあたっては緊急地震速報について周知徹底された訓練された
244
人のみへの報知とし、平成18年度末には一定の基準を設け、一般への報知が開始
される見込である。
本年度は、防災無線が受信機を指定して報知可能である事に着眼し、戸別受信機
を特定場所に設置し、緊急地震速報を報知するシステムを構築した。また、この、
戸別受信機は、双方向通信が出来るため、センターからの指令や、安否確認が出来
るという特徴がある。そして、天塩町のシステムを継続して評価し、システムの実
用化にむけての改良を継続する。また、緊急地震速報を一斉に放送するためには、
「緊急地震速報の本運用開始に係る検討会」の結果を踏まえ、プロトタイプシステ
ムに反映を行っていく必要がある。
尚、消防庁の全国瞬時警報システムであるJ-Alertにおいても緊急地震速報の配信
の計画がある。
2) 内容
平成17年度は、まず、消防署に町内全域にサイレン及び放送を行うために遠隔
制御装置を一台増設した。次ぎに、役場内各課及び防災担当者宅に戸別受信機を
5台設置した。遠隔制御装置は、火災などの有事の際あるいは地震や津波警報発
令後、避難誘導などに使用するものであり、町が設置したものである。また、戸
別受信機は、固有の ID 番号を持ち、希望の受信機を選択して放送が出来るもの
である。このため、緊急地震速報等、特定の職場及び職員宅のみを選定して放送
を行う事が可能である。更に、消防庁の全国瞬時警報システム(J-Alert)と本シ
ステムの比較を行った。
3) 今年度の成果
防災行政無線は市町役場からエリア内に設置された受信機に対して、放送やサイ
レンを拡声するものである。一般的には、特定の地域または全域に放送を行うもの
であるが、受信機に対して固有の ID 番号を持たせる事により特定の受信機のみを
選定して放送を行う事が出来る。本年度は、システム製作を担当したNEC、及び
北海道天塩町の協力を得て、戸別受信機を用いて、緊急地震速報を指定した職場及
び防災担当者宅に配信することにより、的確な初動体制を確立するシステムを構築
した。
また、これまで、デジタル専用線で結ばれていた東京四谷(REIC)と北海道天塩町
間を、実証実験の成果を踏まえ、ADSL(インターネット)化が可能と判断して、
これまで、年額100万円を超える回線維持費を年額十万円台まで削減した。また、
ADSL 化による伝送遅延についても評価し、東京四谷(REIC)と天塩町間で、100ms
程度におさまる事を確認した。ちなみに専用線当時の遅延時間は 20ms 程度であり、
専用線に比較すると時間はかかるが、実運用においては全く問題のないレベルに収
まっている事を確認した。
更に、本年度は、他の自治体への展開として、開発支援企業の努力により、宮崎
県の自治体の行政無線調達仕様書に緊急地震速報に関する条項を盛り込む事に成功
した。
245
ところで、消防庁では全国瞬時警報システム(J-Alert)を構築し、災害・防災情
報の一つとして、緊急地震速報を配信することを計画している。そこで、本システ
ムの J-Alert の比較を行い、本システムの特徴を明らかにした。
(b) 業務の実施方法
1) 実証試験場所:北海道天塩町
2) 実証実験(有効性の評価)の実施
平成16年度までに完成したシステムを北海道天塩町において稼働させ、役場の
職員の協力を得て、有効性の評価を継続した。
3) システムの機能の拡張
緊急地震速報を特定の部署及び防災関係者のみに報知するための防災行政無線シ
ステムを構築するため、製作を担当したNECの協力を得て、平成16年度までに
製作した実証実験システムに遠隔制御装置及び、戸別受信機を開発・設置した。
4)J-Alert との比較
全国瞬時警報システム(J-ALERT)は、「対象地域コード」を指定して地域を限
定し、気象庁から送信される気象関係情報や、内閣官房から送信される有事関係情
報を、消防庁が人工衛星の回線を利用して災害・有事の情報に「情報番号」を付与
して、全ての地方自治体に送信する。対象地域の市町村では、同報系防災行政無線
を自動起動し、「情報番号」に従って、事前に録音された放送内容(警報音・音声
放送)の自動放送を行い、周辺住民の避難や防災行動を促す。
J-Alert のシステムと本システムは共に防災行政無線を用いる点に於いて同じで
ある。そこで、J-Alert と本システムの比較を行い、本システムの特徴を明らかにす
る。
(c) 業務の成果
1) 拡張した実証実験システムの概要
図1に拡張した実証実験システムの構成を示す。
246
REIC
配信サーバ
ADSL
トランペットスピーカ
ADSL
緊急地震速報
解析サーバ
空中線柱
3素子八木型空中線
(60MHz帯)
同 軸 避 雷 器
受
信
部
空中線フィルター
被選択呼出部
送 受 信 装 置
(60MHz帯)
出 力 増 幅 部
操
作
卓
選 択 呼 出 部
音 声 調 整 部
自 動 送 出 部
子 局 監 視 部
電子サイレン送出部
現 用 / 予 備
非 常 用 電 源
自動通信記録装置
非常用電源装置
自 動 プログラム送 出
装置 (現用・予備)
耐 雷 ト ラ ン ス
屋外拡声装
置(14台)
外部アンテナ
ロッドアンテナ
受
信
部
被選択呼出部
電
AC100V
源
部
戸別受信機(5台)
親局(役場内設備)
図1拡張した実証実験システムの構成
防災行政無線を用いた緊急地震速報の受信システムの主な構成は、緊急地震速報
解析サーバ、防災無線操作卓、防災無線送受信(親機)および野外拡声装置(子機)
で構成される。本年度は更に子機として、屋内に設置する、戸別受信機を 5 台設置
した。
緊急地震速報は、REIC から XML 形式で、インターネットを介して配信され、
アクセス回線には ADSL を用いる様、変更を加えた。受信された緊急地震速報は地
震情報解析サーバおいて解析され、受信した震源情報をもとに、天塩町の地理座標
を元に天塩町における地震情報を算出する。算出結果を音声放送起動部に転送し、
地震情報に応じて改めて準備している音声放送内容を選択して操作卓を起動する。
防災無線親機からは、緊急地震速報を配信する子機の ID 番号を指定して、音声と
同時に地震データも送信され、受信した子機では音声拡声を行うと同時に、表示装
置に地震の内容を表示する。
現 在 、 天 塩 町 の 導 入 し て い る デ ジ タ ル 防 災 行 政 無 線 は TDMA-TDD( Time
Division Multiple Access- Time Division Duplex)方式を用いている。TDMA は 1
つの周波数帯を短時間に時分割で複数の情報源で共有する方式で、多チャンネルの
通信を実現する。また、基地局と子機の通信では同一の周波数帯で同時に両方向に
通信することはできないが、TDD を用いる事により極めて短時間に周期的に送信
と受信を交互に切り替えることにより同時双方向通信を実現する。この方式を用い
る事により、受信機の ID 番号を指定することにより放送箇所の選定が可能となる
247
と同時に、双方向通信を実現出来る。
天塩町に納入しているシステムの物理層仕様を表1に示す。
表1
実証実験システムの物理層仕様
1.共通事項
(1)変調方式
16QAM(16値直交振幅変調方式)
(2)電波型式
D7W
(3)通信方式
TDMA-TDD方式
(4)キャリア周波数帯
60MHz帯
(5)チャネル間隔
15KHz
(6)発振方式
水晶発振制御シンセサイザ方式
(7)伝送速度
45Kbps(フレーム)
7.5Kbps(スロット)
(8)TDMA多重数
6多重
(9)音声符号化速度
25.6Kbps(S方式CODEC)
6.4Kbps(EL-CELP
CODEC)
2.送信装置の性能
(1)送信周波数
総合通信局指定の60MHz帯の一波
(2)占有周波数帯幅
15KHz以内
(3)隣接チャネル漏洩電力
送信出力
10W; -55dB以下
PN9信号の連続送信にて測定する。
(4)スプリアス輻射強度
送信電力に対して60dB以下、又は2.5μW以下
周波数範囲は10MHz ~ 300MHzとする。
(5)空中線電力
定格出力値の+20%以下、-50%以内
(6)周波数安定度
±3×10
−6
以内
3.受信装置の性能
(1)受信周波数
総合通信局指定の60MHz帯の一波
(2)受信感度
+9dBμV以下
(3)スプリアス感度
53dB以上
(4)隣接チャネル選択度
42dB以上
(5)相互変調特性
53dB以上
(6)副次的に発する電波等
4nW(4000μW/-54dBm)以下
の限度
周波数範囲は1MHz ~ 300MHzとする。
表1に示す通り、本防災行政無線では、60MHz帯の中で、総合通信局の指定する
15kHzを16QAM変調し、45kbpsの伝送速度を確保する。これを一スロット7.5kbp
sに分割し、TDMAにより6多重する。この時の音声は6.4kbpsのEL-CELP符号化
が用いられる。また、4スロットを同時に使用することにより25.6kbpsのS方式の
符号化を用いることも可能となる。
248
また、電波形式のD7Wは複数の信号を組み合わせた多チャンネル振幅変調を表し
ている。
2) 試験結果
a) 実証実験の進捗
実証実験システムは、北海道天塩郡天塩町役場の関係者のご協力を得て天塩町
に設置して、REICから配信する緊急地震速報(疑似試験データを含む)をも
とに、システムを稼働させている。しかし、現段階では、一般町民向けの放送は
行っていない。また、戸別受信機についても本年度は設置段階であり、実証実験
を行うまでには至っていない。
また、緊急地震速報配信回線を 64kbps の NTT デジタル専用線(デジタルリー
チ 64k)からインターンネット(アクセス回線:ADSL)に置き換え、REIC の配
信サーバからの XML 形式の緊急地震速報を RC-4 で暗号化して配信し、緊急地
震速報解析サーバで複合するという改修を行った。この時の通信プロトコルは
TCP/IP である。
更に、データ配信の内容を、従来の Hi-net の情報から気象庁の統合化情報に切
り替え、正常に動作することを確認した。
b) 実証実験の内容
回線のインターネット化に伴う遅延時間の評価を行った。専用線に比べ、回線遅
延及び暗号化/複合化による遅延の増大はあるが、トータル遅延として 100ms 程
度に収まっており、専用線時代の 20ms には劣るが、実用上問題ない事を確認した。
更に、平成 18年1月~平成 18年3月まで、NEC社内において戸別受信機の
機能評価を行い、ID 番号別の放送が実現されていることを確認した。
また、戸別受信機の性能評価結果を図2に示す。この図に示す用に、一般放送と
しては設計目標である3秒を最大値でも達成している。また、割り込み放送につい
ては、設計目標の 4 秒に対して、最大値で、4.1 秒となり、0.1 秒のオーバーとなっ
た。
結果
一般放送(一括)
割込放送
目標値
3秒
最小値
2.9秒
最大値
3.0秒
4秒
4.0秒
4.1秒
図2.
戸別受信機の性能評価
c) J-Alert との本システムの比較
J-Alert でも、緊急地震速報を防災無線を用いて伝達することとしている。ここ
では、REIC プロトタイプシステムと J-Alert システムとの比較を行う。詳細は、
消防対応(3.5.1.2B1)を参照。
J-Alert では、情報センターで「対象地域コード」を指定して配信する地域を限
定し、そこへ対象となる警報の種類に対応する「情報番号」を通知し、同報系地
249
域防災行政無線を用いて、一斉報知をする。この中の情報の一つに緊急地震速報
がある。以下に REIC プロトタイプと J-Alert の特徴を述べる。
1) REIC プロトタイプ
REIC プロトタイプシステムでは個々の特定場所にシステムを導入し、更に
個々の場所を指定して、その場所の予測震度と余裕時間を計算して該当受信機
を指定して通知する。この時、ある基準を設ける事により、一般住民への報知
が出来るが、プロトタイプでは、受信機の ID 番号により、放送する受信機を
特定することが出来る。このため、特定の部署及び防災関係者宅のみを特定し
て、情報を流すことが可能となっている。従って、防災関係者等に限定して報
知出来る。また、双方向通信が保証されているので、安否の確認ならびに情報
の交換ならびに、緊急招集等が可能となる。
2) J-Alert
一般向け報知の典型であり、ある前もって設定された震度を超える強い揺れ
(震度5弱以上)が推定される地域への一斉警報発信となる。また、放送であ
り、国からの一方向の伝達となる。必要とされる地域に衛星を用いて「情報番
号」を通知し、同報系防災行政無線に対して音声で警報を発する。すなわち、
ある前もって設定された震度を超える強い揺れ(震度5弱以上)が推定される
地域への一斉警報発信となる。
3) 対比結果のまとめ
一般への報知は、J-Alert からの情報を用い、特定部署及び防災関係者宅等特
定者への報知にはプロトタイプを用いる等の棲み分けが考えられる。ただ、ア
ナログ方式の防災無線が殆どの現状では、割り込み放送の場合で最大約15秒
程度の遅延が発生することも十分考慮して、分担を考える必要がある。
(d) 結論ならびに今後の課題
防災行政無線は地域住民に対して緊急地震速報を報知するには極めて有効な手段で
ある。しかしながら、現段階では、気象庁の「緊急地震速報の本運用開始に係る検討
会」において議論されている如く、緊急地震速報を一般住民向けに報知するためには、
緊急地震速報の性質及び限界等について、周知徹底と訓練が必要である。
ところで、防災行政無線は、防災無線受信機を ID 番号で特定して、特定の部署及
び防災関係者宅のみを対象にした緊急地震速報の報知を行うことができる。また、双
方向通信が出来るという特徴がある。そこで、本年度は、防災行政無線のこの特徴を
活かすため、特定の部署及び防災関係者宅に戸別受信機を導入し、緊急地震速報報知
システムを構築した。
また、宮崎県の自治体などに対して、開発協力企業である NEC と連携して防災行
政無線を用いた緊急地震速報システムを提案し、共同研究の働きかけを行って来たが
成功していない。このことに見られる如く、自治体の防災行政無線を導入する目的は
自治体毎に異なると考えられる。防災行政無線を用いて緊急地震速報を活用するため
には個々の自治体の要求に合致させながら、将来的な住民への緊急地震速報伝達のイ
ンフラストラクチャーとして整備する必要がある。また、各自治体のニーズを十分に
250
明確にして、システムを改良して対応する必要がある。
また、今後の課題として、
①人向けWGで検討結果を活用してサイン音の採用ならびに、ピクトグラムの組み合
わせたシステムに改善する必要がある。
②住民への報知にあたっては、報知基準の設定、ならびに、住民への周知徹底及び訓
練が必要である事を念頭において、各自治体へきめ細かくアプローチする必要があ
る。
③J-Alert と対比して、気象庁からの緊急地震速報を直接用いた場合の特徴を出す必
要がある。
④今後防災行政無線のデジタル化が図られていくものの、現在、防災行政無線はアナ
ログ方式が主流である。このため、アナログ方式での報知方法、特に処理時間の短
縮を図る必要がある、
⑤緊急地震速報は主要動到達前に、地震の大きさ、余裕時間を特定出来、防災情報と
して極めて重要な情報である。このため、システムの安全な稼働を保証するためシ
ステムの二重化を図る必要がある。
⑥ 普及促進にむけて、天塩町のシステム特に、戸別受信機を実運用のもとで評価を行
う必要がある。
⑦防災行政無線を用いた緊急地震速報の報知システムを各自治体に展開するためには、
総務省/消防庁との連携を密にして行く必要がある。
(e) 引用文献
( * 1)
気象庁、緊急地震速報の本運用開始に係る検討会(第3回)参考資料、平成18
年2月
http://www.seisvol.kishou.go.jp/eq/EEW/kentokai3/20060210_sankoshiryo4.pdf
(f) 成果の論文発表・口頭発表等
なし
(g) 特許出願,ソフトウエア開発,仕様・標準等の策定
なし
(3) 平成 18年度業務計画案
これまでにデジタル防災無線による緊急地震速報の通報システムのプロトタイプを
開発し、実際の地方自治体の防災従事者や公共・生活関連機関の職員が活用している防
災無線システムに組み込んだ実証実験を継続する。
平成18年度は、防災関係者の自宅に導入した戸別受信器を用い、緊急招集及び安否
確認に関する実証実験を行うと同時に、消防庁などと連携しながら他の自治体への展開
を図る。
また、一般住民への報知のあり方について検討する。
251