塗装の特性

18 技 術 資 料 塗装の特性
建築物の仕上げは多種多様なものがあります。その中で、塗装仕上げは工期が短く、経済的であるわりに
は多彩な仕上げができ、構造設計には影響されない仕上げです。
塗装設計の要点は、十分準備された素地と、適正に選定された塗装材料と熟練した工法との三者のバラン
スのよいマッチングを立地環境や建物用途、使用部位などの与えられた条件の中で、調整しながら最適な
仕様を決定できるかがポイントとなります。
塗料の構成
あまに油,大豆油 など
松やに,シェラック など
主 要 素
樹 脂
アルキッド樹脂,エポキシ樹脂 など
硝化綿,アセチルセルロース など
塩化ゴム,環化ゴム など
可塑剤(DBP,DOPなど)
塗膜になる成分
添 加 剤
副 要 素
(塗膜形成要素)
沈殿防止剤(ベントナイト,乾燥剤など)
防かび剤 など
着 色 顔 料
顔 料
塗 料
有機溶剤
18
塗膜にならない成分
(塗膜形成助要素)
技
術
資
料
塗
装
の
特
性
水 分
無機系 酸化チタン,カーボン など
塗料は塗膜になる成分とならない成分
との二つに大別されます。塗料を被塗
膜に塗ると ①揮発 ②酸化 ③重合 ④縮
合⑤融合のいずれかの過程を経て塗膜
になります。
今日では、環境保全、安全衛生などの
面から危険性の大きい溶剤系塗料から
水性系塗料が主流となってきました。
有機系 パーマネントレッド,シアンブルー など
体 質 顔 料
炭酸カルシウム,タルク など
さび止め顔料
鉛丹,ジンククロメート など
特 殊 顔 料
蛍光顔料,防汚顔料 など
芳 香 族 系
トルエン,キシレン など
脂 肪 族 系
ミネラルスピリット など
ケ ト ン 系
アセトン,MEK など
アルコール系
エタノール,ブタノール など
エステル系
酢酸エチル,酢酸アミン など
エーテル系
エチレングリコール など
水 系
水道水
塗装のルーツ 東洋では「漆」
、ヨーロッパでは「オリーブ油」がルーツであると考えられます。塗料の定義は流動状態で
物体の表面に塗り広げて薄層を形成した後に、固化し、その物体を美しく飾り、保護する機能をもった塗膜
を形成する材料であるとされています。
樹脂とポリ プラスチック材料の中には、エポキシ樹脂のように「樹脂」という用語を後ろにつけるものと、ポリウレタ
ンのように「ポリ」という言葉が前についているものとがあります。ポリウレタン樹脂のように「ポリ」と
「樹脂」を前後に付けている例外も中にはあります。このような表現が存在すると名称が混乱するので、専
門家の間では、一般に「ポリ」は樹脂を意味するものと解釈しようということで、
「ポリ」を頭に付けたと
きには「樹脂」を後ろには付けないということになったようです。つまりポリ塩化ビニル=塩化ビニル樹脂
ということになります。しかし、習慣上、
「ポリ」を付けない樹脂もあって、すべてのプラスチック材料に
当てはまる原則ではないようです。
塗料の特徴
塗料の種類
記号
JASS18
素地の
分類
合成樹脂調合ペイント塗り
SOP
M
一般に「ペンキ」と呼ばれる。低コスト、垂れにくい、塗りやすいが耐久性、耐水性に劣る。 鋼製建具、手摺、設備機器など
塩化ビニル樹脂
エナメル塗り
M
自己消火型塗料、コストは高いがメンテナンス容易。耐久性、耐水性、耐汚染性に優れる。 鋼製建具、設備機器、設備配管など
EV
C
環境保全、安全性から石膏ボードの仕上げには用いない。
コンクリート、スレート、ALCパネルなど
アクリル樹脂
エナメル塗り
M
溶剤系、水系、無溶剤系のものがある。耐候性、耐薬品性に富み物性も優れる。
外装パネル、鋼製・アルミ製建具など
AE
C
耐摩耗性、防塵性を要する床面にも使用可。石膏ボードには適用しない。
コンクリート、スレート、ALCパネルなど
2夜形ポリウレタン
エナメル塗り
M
長時間の耐候性や美装性に優れる塗膜を形成する。
大型鋼構造物、鉄骨、階段、建具など
2-UE
C
建物内外の耐薬品性、耐摩耗性、防塵性を目的とした床や柱・壁
コンクリート、ALCパネル、GRC板など
常温乾燥形ふっ素樹脂
エナメル塗り
M
コストは高いが施工性は良く、耐久性、耐水性もあるが汚れやすい性質がある。
大型鋼構造物、カーテンウォール、建具など
2-FUE
C
塗装には高度な技術を要するため、大面積への適用は避ける。
コンクリート、セメントモルタルなど
特 徴
適合下地
アクリル樹脂ワンス塗り
AC
C
素地の肌を生かした透明仕上げに使用され、建築物の外壁面に用いられる。
コンクリート、セメントモルタルなど
クリヤーラッカー
LC
W
透明仕上げなので素地表面をパテ修復できないので素地選択に注意。
室内の造作材、木製建具・家具など
スーパーワニス塗り
OC
W
空気中の酸素で酸化して塗膜が徐々に硬化する。
室内の造作材、木製建具など
ラッカーエナメル塗り
LE
W
乾燥時間が速く、高級な仕上り感を短時間で得られる。
室内の造作材、集成材、積層材など
素地の分類 M:金属系素地面 C:セメント系素地面 W:木質系素地面
1046
金属の塗装
浸漬塗装: タンクの中に貯めた塗料の中に被塗物を漬けて塗
装する方法。漬けてから引き上げる時、余分な塗
膜が下に落ち、塗膜厚は下が厚く上が薄い。下の
角に垂れ残りの余分な塗膜が付着するなどの欠点
があります。
電着塗装: 低濃度の水溶性塗料溶液を入れたタンクの中に被
塗物を入れ、対極との間に直流電流を流し、被塗
物の表面に電気化学的に塗料樹脂を析出させる方
法。塗膜厚が通電量により管理でき、複雑な形状
でも膜厚の均一化が図れる。次の2つの方法があ
ります。
アニオン型:被塗物を陽極とするため、素地の金
属の電気化学的溶解で、耐食性や、
耐薬品性が低下し、それによって塗
膜の変色などが多く見られ、主流は
カチオン型に変わってきました。
カチオン型:被塗物を陰極とするため、金属イオ
ンの流出がなく、鉄、アルミ、マグ
ネシウムなどに塗装することができ
ます。自動化や大量生産化が可能。
浸漬塗装の工程
陰極電着塗装の原理
(カチオン電着)
塗料
(アルカリ性)
水
素
酸
素
H-
中和剤
(酸性)
OH-
静電塗装の原理
霧化粒子塗装
静電塗装: スプレーガン(−)と被塗物(+)の間に30,000ボル
ト∼150,000ボルトの高電圧を掛けて塗装する
方法です。こうするとスプレーガンより出た塗料
の粒子は、塗装されるもののプラス極に引き付け
られ、塗装するものに廻りこみガンの反対側まで
塗ることができます。この方法の利点は、塗料の
ロスが少ないことと、突出部、エッジなどもよく
塗れることです。
被塗装物
+
+
−
−
+ (+)極 + 静電界
+
+
18
イオン化
−
+
−
− −
+
技
−
−
−
−
静電スプレーガン
術
資
電気力線
アース
料
(−)極
焼付け塗装:塗装作業をした後、乾燥炉で130℃∼180℃の温度で焼付けします。基本的には金属に限定されますが
150℃までの温度に耐えられる素材でしたら焼付け可能です。
メラミン焼付け:一般的な焼付け塗装で、コストが安く、金属素材全般に塗装が可能です。メラミン樹脂は紫
外線に弱く年数が経つにつれて色あせが生じることがあります。
アクリル焼付け:アクリル樹脂配合によって鮮やかな色合いが出せ、塗膜の硬度があるので密着性・耐光性・
耐油性・耐久性に優れています。また、紫外線に強く薬品・塩分にも優れた耐久性を発揮し
ます。
フッ素焼付け :フッ素樹脂配合によって、アクリル焼付けを上回る塗膜硬度を持つ塗装方法です。静電気を
帯びないので、汚れにくく、色あせが少なく、長期にわたり鮮やかさが持続します。メラミ
ン・アクリルに比べコストが高くつきます。
粉体塗装: 粒状の塗料を被塗物に付着させ、溶融することにより塗膜化させる方法。粉体塗料の被塗物への付着方法によ
り、流動浸漬法、散布法、静電法などに分類されます。
建築基準法改正に伴うホルムアルデヒド規制(平成15年7月現在)
建築確認が必要な現場施工(塗装)の居室用塗料については、平成15年7月より、ホルムアルデヒド放散量を明確化した
「JIS表示」または「業界自主管理登録製品(日本塗料業界)
」か、
「大臣認定」が必要になりました。
1047
塗
装
の
特
性