金融経済の分析フレームワーク IS-LMモデル・AD-ASモデル 金融経済論(小川英治) 1 IS-LMモデル 経済の実物的側面と金融的側面の相互作 用を考慮に入れて、金融経済を分析する ための道具 物価が一定であるという仮定の下で生産 物市場のマクロ的均衡条件(IS)と貨幣市 場の均衡条件(LM)から構成される。 金融経済論(小川英治) 2 閉鎖経済におけるIS-LMモデル 生産物市場均衡(GDP=消費+投資+政 府支出) Y C I G P = P + P + P (1.4.3) 所得=消費+貯蓄+租税( Y = C + S + T ) 国内貯蓄=投資+政府支出 S +T Y −C I +G = = P P P S I G −T = + P P P 金融経済論(小川英治) 3 閉鎖経済におけるIS-LMモデル 消費 ⎛ Y −T ⎞ C = f⎜ , r⎟ P ⎝ P ⎠ (1.4.1) 投資 I = g (r ) P (1.4.2) 金融経済論(小川英治) 4 閉鎖経済におけるIS-LMモデル 貨幣市場均衡 ⎛Y ⎞ M = P× L⎜ , r⎟ ⎝P ⎠ MS =M (1.4.5) D MD =MS (1.4.4) (1.4.6) 物価一定(←不完全雇用) P = P0 (1.4.7) 金融経済論(小川英治) 5 生産物市場均衡と貨幣市場均衡 生産物市場均衡(IS曲線) ⎛ Y −T Y = f⎜ P0 ⎝ P0 ⎞ G ⎟ + g (r ) + P0 ⎠ (1.4.8) 貨幣市場均衡(LM曲線) ⎛Y ⎞ M = P0 × L ⎜ , r ⎟ ⎝ P0 ⎠ (1.4.9) 金融経済論(小川英治) 6 I = g (r ) IS曲線の導出 r Y I G −T S = I + (G − T ) S 金融経済論(小川英治) S = Y − f (Y ) 7 LM曲線の導出 r L2 = L2 (r ) L2 Y M = L1 + L2 L1 金融経済論(小川英治) L1 = L1 (Y ) 8 IS-LMモデルの図 r LM IS Y 金融経済論(小川英治) 9 金融政策の効果 r LM LM’ IS Y 金融経済論(小川英治) 10 IS-LMモデルにおける金融政策 の効果 閉鎖経済IS-LMモデルにおいては、金融政策(名 目貨幣供給量の変化)は金利を通じてGDPに影 響を及ぼす((a)「金利チャネル」)。 従って、金融政策の効果は、①名目貨幣供給量 が金利に影響を及ぼすか、②金利の変化が総需 要に影響を及ぼすかに依存する。 他に、開放経済では(b)「為替相場チャネル」、金 融機関の行動を考慮入れると、(c)「信用チャネ ル」がある。 金融経済論(小川英治) 11 物価固定のIS-LMモデル 貨幣市場均衡 m − p = l y y − li i 国内財に対する総需要 y = α y − β i +ν D ( A − 1) ( A − 2) 物価固定 y=y p= p D ( A − 3) ( A − 4) 金融経済論(小川英治) 12 国内総生産 国内総生産 1 1 y = (m − p ) + ν A B li A ≡ (1 − α ) + l y ( A − 5) β B ≡ (1 − α ) + β ly li 金融経済論(小川英治) 13 金融政策の効果(物価固定) 貨幣供給量が国内総生産に及ぼす効果 dy 1 1 = = >0 dm A (1 − α ) li + l y ( A − 6) β 金融経済論(小川英治) 14 金融政策の効果(物価固定) 所得に対する貨幣需要の感応度( l )が高いほ y ど、金融政策の有効性が低くなる。 金利に対する国内財需要の感応度( β )が高い ほど、金融政策の有効性が高まる。 金利に対する貨幣需要の感応度( li )が高いほ ど、金融政策の有効性が低くなる。 所得に対する国内財需要の感応度( α )が高い ほど、金融政策の有効性が低くなる。 金融経済論(小川英治) 15 IS-LM・AD-ASモデル 貨幣市場均衡 m − p = l y y − li i 国内財に対する総需要 y = α y − β i +ν D ( A − 1) ( A − 2) 国内財の総供給(Lucas型供給関数) y =θ(p − p )+ y S e 金融経済論(小川英治) ( A − 7) 16 国内総生産 国内総生産 θ 1 e y= y (m − p ) + Aθ + 1 Aθ + 1 Aθ + ν ( Aθ + 1) β 金融経済論(小川英治) ( A − 8) 17 金融政策の効果(所与の予想物価) 第1のケース(予想物価水準が変化しな い) dy θ 1 = < dm Aθ + 1 A 金融経済論(小川英治) ( A − 9) 18 金融政策の効果(所与の予想物価) 貨幣供給量の増加によってGDPが増加し うるが、物価水準一定のIS-LMモデルにお ける金融政策の効果に比較すると、その 効果は相対的に小さい。 その理由は、物価水準の上昇が実質貨幣 供給量を減少させることから、中央銀行が 増加させた名目貨幣供給量を一部相殺す る効果をもたらす。 金融経済論(小川英治) 19 金融政策の効果(完全予見) 第2のケース(完全予見) pe = p (A-7)式より、 y = y 貨幣市場均衡 m − p = l y y − li i ( A − 1) 国内財に対する総需要 y = α y − β i +ν D ( A − 2) 金融経済論(小川英治) 20 金融政策の効果(完全予見) 物価 ⎧ li ⎫ li p = m − ⎨l y + (1 − α ) ⎬ y + ν β⎭ β ⎩ 物価に対する効果 dp =1 dm ( A − 11) ( A − 12) GDPに対する効果(from (A-8)式) e ⎛ dy θ dp dp ⎞ = ⎜1 − ⎟=0 dm Aθ + 1 ⎝ 金融経済論(小川英治) dp dm ⎠ ( A − 13) 21 金融政策の効果(完全予見) 完全予見の下では、中央銀行が名目貨幣 供給量を増加させると、等しい率で物価水 準が上昇すると民間部門に予想されるの で、国内総生産を自然失業率以上に増加 させることができない。 金融経済論(小川英治) 22
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