-8- 第4章 1 花木・草花の選定と方向 特化すべき花木・草花 (1) 熱海に対して歴史ある花木 熱海には特徴ある貴重な花木・草花 熱海に対して が数多く存在する。その中でも『あた 備 考 歴史ある花木 み桜』と『熱海梅園の早咲き梅』、そして 『ヒマラヤザクラ』は、非常に貴重な 花木と言える。 これらの花木を他の花木とひと括り ① あたみ桜 P9参照 ② 熱海梅園の早咲きの梅 P10参照 ③ ヒマラヤザクラ P11参照 にすることは、その価値を薄めてしま う可能性がある。そこで、実施計画を策定するにあたり、これらの花木を「熱海に対して歴史あ る花木」と位置づけ、その他の花木・草花との差別化を図ることとした。 (2) 国際姉妹都市との架け橋 国際姉妹都市との架け橋 平成2年にカスカイ市国際姉妹都市 ④ より寄贈された世界三大花木であるジ ジャカランダ 備 考 P12参照 ャカランダの苗木は、現在、十数メー トルに達している。その後熱海市では、国道135号線沿いにジャカランダを植樹し、全国でも 数少ない街路樹として注目を浴びている。 ジャカランダは、カスカイ市と熱海市の友好の架け橋として、大切に育てていかなければなら ない。 (3) 話題性のある花木・草花 話題性のある花木・草花 熱海の温暖な気候に適し、形状や華 やかさなど話題性のある花木・草花を 選定し、新たな魅力づくりに取り組む。 2 備 考 ⑤ キングプロテア P13参照 ⑥ ブーゲンビリア P14参照 ⑦ 多種のアガパンサス P15参照 熱海市指定天然記念物 熱海市は、市制40周年時に市の天 然記念物を指定した。その中で『和田 熱海市指定天然記念物 備 考 木の藤』と『土沢のオオムラサキ』は ⑧ 和田木の藤 P16参照 花木の対象であり、その存在価値も非 ⑨ 土沢のオオムラサキ P16参照 常に貴重なものと言える。 8 特化すべき花木 ①【あたみ桜】 (歴史的背景) 明治4年イタリア人によってレモン、ナツメヤシとともに熱海にもたらされ、その後先 人たちの努力により市内の多くの場所に植栽された。 また、下田の御用邸(昭和 47 年)や伊勢神宮(昭和 48 年) 、東宮御所(昭和 51 年) に献上された事により、広く知られるところとなった。 あたみ桜は市制施行 40 周年の昭和 52 年 4 月 10 日に「市の木」に指定された。 (樹木特性) 昭和48年に平凡社から発行された「日本桜集」の中で、 「標準型の『寒桜』に属するも のであろう」と紹介されている。寒緋桜と山桜の雑種と考えられている。 花色は淡紅色または淡紅紫色。病害虫に頑健な桜。 開花時期が長い理由として、花の付き方がひとつの枝に早期に開花する花芽と後期に咲 く花芽が二段構えに形成されていることが一つの要因と考えられている。 (開花時期) 1 月~2 月末頃。 一般的に桜の開花期間は1~2週間と言われているが、あたみ桜の開花期間は1ヶ月以 上と長いのが特徴。 沖縄のカンヒザクラと並んで日本列島で最も早咲き。 (分布) 市内に約 1,100 本 【主な場所】 糸 川 遊 歩 道 29 本 梅 園 前 市 道 22 本 園 11 本 さくらの名所散策路 168 本 海 浜 公 ≪活用方針≫ 糸川沿いにあるあたみ桜の整備を行い、糸川沿いから熱海港観光施設用地までのあたみ 桜散策コースの基点とする。 渚地区の親水公園第三工区の整備に合わせ、第三工区にあたみ桜を集中して植栽し、散 策コースを充実する。 また、あたみ桜の基準木を決め、付加価値を高めるとともに、開花情報の一元化を図る。 あたみ桜の基準木は、街の中心部に設定できるように配慮すること。 9 ②【熱海梅園の早咲きの梅】 (歴史的背景) 明治のはじめ、医祖長与専斉先生が「病気は薬だけではなく、緑の中で適度の運動をし て、身も心も治療してこそ効果があがる」と、熱海梅園を開くことを提唱。 横浜の豪商茂木惣兵衛氏らがこれに応えて、明治18年(1885年)に、今の梅園の あるところ山林二町五反(2.5 ヘクタール)を開いて梅・松・桜・桃・楓・杉・柿・柳な ど3千本を植えたのが始まり。 梅は市制施行 40 周年の昭和 52 年 4 月 10 日に「市の花」に指定された。 (樹木特性) 現在、園内には樹齢 100 年を超える古木を含め、64 品種 732本の梅が植えられてい る。約半分が早咲きの梅で、早いものでは毎年12月上旬頃に開花が確認される。 八重寒紅『ヤエカンコウ』 (濃紅色、1月下旬頃満開。献上梅。 ) 冬 至 梅『トウジバイ』 (白色、1月中旬頃満開。献上梅。 ) 初 雁『ハツカリ』(白色、2月上旬に満開。) ・・・など (開花時期) 12月上旬~1月上旬に開花。 日本一早い早咲きの梅 ≪活用方針≫ 明治19年に開園した熱海梅園は、梅を中心とした和風庭園として、毎年多くの観光客 で賑わっている。そこに植栽されている梅の中には、樹齢100年を超える古木も現存し ている。特に早咲きの梅は、日本一の早咲き梅として知られ、温かい熱海を象徴する、代 表的な樹木となっている。 今後はこれまでにも増して梅の充実や管理の専門性を高め、古さと新しさを兼ね備えた 熱海梅園と早咲き梅を内外に発信し、活用していく。 八重寒紅『ヤエカンコウ』 10 ③【ヒマラヤザクラ】 (歴史的背景) 昭和 42 年(1967 年) 、東大に留学中のネパール王国ビレンドラ皇太子殿下が伊東に立 ち寄った際、熱海植物友の会の内田勇次会長らが桜と梅の種子等を献上したところ、両国 親善のためヒマラヤザクラの種子交換を快諾された。翌年ヒマラヤザクラの種子 900 粒を 受領。熱海高校法面下のヒマラヤザクラはこのときの種子を育てたもので、日本のヒマラ ヤザクラの原木ということになる。 (樹木特性) ヒマラヤ地方に分布する野生種の一種。 カンヒザクラ群で花色は淡紅紫色。開花と同時に葉も展開する。 比較的温暖なところでは順調に育つが、基本的に四季のある日本では育ちにくい。 二酸化窒素(NO2)の吸収量が、それまで最高とされていたソメイヨシノの5倍というレ ポートがあり、環境浄化木として注目を浴びている。 (開花時期) 11 下旬~12 月に開花。 (分布) 市内に約 70 本 熱海高校法面下(原木1本) 馬頭観音(原木1本) 親水公園第一工区(2本) お宮緑地(1本) さくらの名所散策路(H18 年度記念植樹10本) 熱海市立多賀中学校(2 本) 仮植約 50 本(下多賀) ≪活用方針≫ 南熱海地区に、質の高い花のフォトスポットを整備する。 静岡県が整備している長浜コースタルにヒマラヤザクラを40本程度提供し地域の特殊 性を生かした花のフォトスポットを出現させる。 熱海高校法面下 11 国際姉妹都市との架け橋となる花木 ④【ジャカランダ】 (歴史的背景) 平成2年7月にポルトガルのカスカイ市との国際姉妹都市提携記念としてお宮緑地に植 樹されたのをきっかけに、平成 12 年に親水公園前の国道山側へ 24 本植栽された。この 規模で植栽されているものは日本でとても珍しく特化すべき花木の一つと言える。 (樹木特性) 南米産のノウゼンカズラ科の常緑樹で、ホウオウボク、カエンボクと並んで世界の三大 花木の一つに数えられ、 「熱帯の桜」とも呼ばれている。 花色は藤紫色で熱帯や亜熱帯の各地で街路樹として広く利用されている。 (開花時期) 6月~7月 (分布) お宮緑地(カスカイ市記念植樹 1 本・その他 4 本) 国道 135 号線沿い親水公園付近(24 本) ≪活用方針≫ お宮緑地を中心にワカガエルステーション付近まで、ジャカランダ群として創出する。 特にお宮緑地では、ヤシをジャカランダに植え替えるとか、噴水周辺をジャカランダ広 場にするなど、お宮緑地を利用し、質の高い花のフォトスポットを出現させる。 お宮緑地 国道135号線山側(親水公園付近) 12 話題性のある花木・草花 ⑤【キングプロテア】 (樹木特性) 南アフリカ産のヤマモガシ科プロテア属の半耐寒性の低木。比較的耐寒性が強く、無霜 地帯ならば地植えでも越冬可能。 海風が当たる斜面でも丈夫に育ち、長い間花を咲かせる。 花色は、赤やピンク・白など。 (開花時期) 年2回。 春(3~6月)と秋冬(10~12 月) (分布) 親水公園フォトスポット (20 本) 熱 海 港 港 湾 緑 地 (30 本) 初 島 公 園 (220本) ≪活用方針≫ 初島公園には、約220本のキングプロテアが植栽されており、本州でこの規模で植栽 されているものはない。初島公園を中心にキングプロテアを充実し、初島でなければ見ら れない特化した花のフォトスポットを出現させる。 初島公園 13 ⑥【ブーゲンビリア】 (樹木特性) 中南米産のオシロイバナ科で非耐寒性つる性低木。 花に見えるのは、苞葉(ほうよう)または苞(ほう)と呼ばれる萼(がく)が発達した もの。苞色は赤やピンク・オレンジなど様々な色がある。 市内の低地では、地植えや鉢植えなどの屋外でも越冬可能。 (開花時期) 年2回。春(6~7 月)と秋冬(10~12 月) (分布) 糸 川 (125 本) 熱海港港湾緑地 (21 本) 糸川を中心に愛好家が存在し、市内各所に分布 ≪活用方針≫ ブーゲンビリアを育てている団体や個人等と協力し、散策マップを作成する。 観光客が減少する時期といわれている5月末から7月初めにかけて、開化時期が重なる ジャカランダと共に、熱海の新しい散策ルートを創出する。 糸 川 14 ⑦【多種のアガパンサス】 (樹木特性) 別名「紫君子欄」と言い、南アフリカ原産のユリ科で半耐寒性多年草、常緑。根は太く 強いので、斜面や土手などの土の流出を防ぐのに役割を果たす。海風にも強く、熱海の温 暖な気候に合っている。 花色は白・紫などがある。 (開花時期) 6~7 月 (分布) 熱海港港湾緑地(10 種約 100 本) 親水公園上段(平成20年度植栽予定) ≪活用方針≫ アガパンサスは、熱海の温暖な気候に適合している。多年草で一度植栽すると長持ちし、 株わけも容易で、維持管理がしやすい草花である。 専門家と連携し、世界の市場に出ていない新種を熱海に植栽できるように依頼し、熱海 ならではの草花として普及する。 植栽場所は親水公園上段花壇を中心に植栽し、熱海に来なければ見ることが出来ない草 花として全国に情報発信する。 15 熱海市指定天然記念物の花木 ⑧【和田木の藤】 (市指定天然記念物) 昭和52年4月25日に、市の天然記念物に指定された。 (樹木特性) マメ科。目通り幹囲北幹67センチ、南幹75センチ。 45平方メートルの棚全面から紫色の花房が垂れ下がり、その長さ2メートル内外に達 し壮観である。 (開花時期) 4月下旬から 5 月上旬頃 (分布) 熱海市下多賀 個人所有 ≪活用方針≫ 市天然記念物ではあるが、あまり知られていないのが現状である。今後、フラワーマッ プ等に掲載するなど、情報発信する。 ⑨【土沢のオオムラサキ】 (市指定天然記念物) 昭和52年4月25日に、市の天然記念物に指定された。 (樹木特性) ツツジ科。幹が19本に分岐し、最大幹囲27センチ、根元周囲2.82メートル。 ケラマツツジとリュウキュウツツジの間にできた園芸種、ツツジの中では花が大型で大気 汚染に強く樹高3メートル、枝張東西8メートル、南北7.4メートルの近隣に類を見な い大株。 (開花時期) 5 月上・中旬 (分布) 熱海市伊豆山土沢 個人所有 ≪活用方針≫ 市天然記念物ではあるが、あまり知られていないのが現状である。今後、フラワーマッ プ等に掲載するなど、情報発信する。 16
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