UBS House View Chief Investment Office WM 2016年11月17日 Monthly Letter 米国大統領選の 結果 ドナルド・トランプ氏が勝利 し、今後数カ月は、次期大 統領がどのような政策課題 を設定するのかに市場の 関心が集まるだろう。 債券市場 トランプ政権が財政出動に よる景気刺激策を実施する との期待から、債券市場は 時価評価で1兆米ドル以上 値下がりした。 これが数十 年続いた債券の上昇相場 の終焉なのかもしれない。 しかし、我々はグローバル 債券利回りがそれほど高 く、あるいは急速に上昇す るとはみていない。 新興国市場 新興国の通貨と株式市場 は、米大統領選挙を受けて 大幅に下げている。 しかし、 各国とも経済と企業業績 は引き続き好調である。 米ドル 対米ドルでユーロのオーバ ーウェイト・ポジションを 開始した。米国ではインフ レ率が上昇して実質金利 が低下し、対ユーロで米ド ルに下方圧力がかかるだろ う。高格付債に対する米投 資適格債のオーバーウェイ トも終了する。 Ain’t no… Mark Haefele Global Chief Investment Officer Wealth Management ab 「Ain't no (あり得ない) 」 -形式は二 重否定だがNoを強調する強否定を意 味するこの俗語は、米国の田舎者の 言葉遣いを不当に揶揄する時に使わ れてきたが、 そんな彼らからの支持も 選挙人団の趨勢がドナルド・トランプ 氏側に逆転したことに貢献した。 そし て、その「あり得ない」 ことが、株式相 場の上昇をもたらした。 世論調査は大 統領選挙の結果を読み違え、多くの 投資家も市場がどう反応するかの判 断を誤った。当初こそ急落したが、融 和的な勝利宣言が株式市場の急騰に 火をつけ、ダウ30種工業株平均は史 上最高値を付けた。 かし市場は党派を超えて承認を得ら れそうなインフラ投資の拡大、共和 党が支配する議会から支持されるは ずの減税、そしてある程度大統領が コントロールできる分野である貿易 へのやや厳しいスタンスなど、 「 既知 の知(known knowns)」 に注目した。 こうした要因が重なって米国株式は 急騰し、債券は急落した。 本稿では、 トランプ氏の勝利によっ て、投資家が今後数カ月で判断を迫 られている最も重 要な疑 問の一 部 に答えることにする。それは(1)今回 の選挙で数十年続いた債券の上昇 相 場は事 実 上 終 焉を迎えるのか? 次 期 大 統 領の最 初のスピーチは、 (2)次期大統領は新興国の回復基 (3)その結 「トランプ大統領」は「トランプ候補」 調を止めてしまうのか? とは違うかもしれないという希望を 果、米ドルはどこに向かうのか?とい 市場参加者に抱かせた。無論、 トラン う3つの問題である。 プ氏が北大西洋条約機構(NATO)、 イラン、米連邦準備理事会(FRB)、 今月の戦術的資産配分では、高格付 中国にどのような政策で臨むのかな 債に対する米国株式のオーバーウェ ど、依然として 「既知の未知(known イト・ポジションを維持する。米国政 unknowns)」である部分は多い。 し 府の財政支出が増えるとインフレ率、 本レポートはUBS AGにより作成されました。本レポートの末尾に掲載されている 「お客様へのお知らせ」 は大変重要なので是非ご 覧ください。投資には一般に損失のリスクが伴い、 また、過去の実績は将来の運用成果等の指標とはなりません。本レポートには 様々な資産クラスに関する記述がありますが、 それらは情報提供のみを目的としたものであり、 お客様に特有の投資目的、財務状 況、等を考慮したものではありません。 よって、 お客様に適合しない投資商品が含まれている可能性があります。 また、本レポートに 記載されている資産クラスや商品群には、UBSが日本で取り扱っていないものも含まれます。本レポートに記載されている市場価 格は、各主要取引所の終値に基づいています。 これは本レポート中の全ての図表にも適用されます。 Ain’t no… インフレ期待がともに一段と上昇する可能性があり、従来型の米国債に対す る米インフレ連動国債(TIPS) のオーバーウェイトを支えるだろう。 スイス株式に対する新興国株式のオーバーウェイトを維持し、 先進国通貨バス ケットに対する新興国通貨のオーバーウェイトも堅持する。 当月は、米ドルに対するユーロのオーバーウェイトも開始した。 トランプ政権下 のFRBには、 ますます 「高圧経済」 を続ける (目標の2%を上回るインフレ率を容 認する)余地が広がり、米ドルの重石になる可能性がある。反対に、欧州中央 銀行(ECB) がテーパリング (量的緩和の段階的縮小) を始める可能性はまだ市 場予想に織り込まれておらず、 これまで割安だったユーロの反発を支えるかも しれない。 さらに、我々は高格付債に対する米国の投資適格債のオーバーウェ イト・ポジションを終了する。 クレジット・スプレッドは縮小しており、 ここからも う一段の高パフォーマンスの余地は少ないと見込まれる。 想定外を考える EU離脱を選択した英国民投票。 そして今回の米大統領 選挙。2つの 「二者択一」的イベントで、事前勝敗予想で も金融市場の価格水準でも、 あり得ないと思われてい たことが起きた。世界的に明白となったこの 「予想の危 機」 に我々はどう対処すればよいのだろう? 第1に、投資家は二者択一的な政治イベントの結果を 予想したり、 それに備えてポジションを組もうとしたりす べきではない。人間である投資家は、 「なかなか起こり 得ない」確率を過大に受け止めてしまい、 こうした偏見 が投資判断を歪めかねないことを我々は知っている。米 国と英国での選挙結果は、大きなグローバルな潮流の 一部と捉え、 その根底にある持続的要因から利益を得 ることに集中した方が得策である。 グローバル化対国家主義に関する論争は、人口動態の 変化とともに強まってきた。 例えば先進国の高齢化は低 成長、高貯蓄率、 そして低インフレ率に寄与している。最 近の経済動向や政策が裕福な人々を不当に優遇してい るように見えることも、 世間一般の不満を高めている。 どの国でも同じようなことが起きている。 しかし、民主 的な政治選択と投資結果は大幅に異なる。一つの政治 体制が市場に及ぼす影響が有益か有害かはさておき、 一国の市場への過度な依存を避けるため、我々はあら ゆる資産クラスや地域に渡る十分な分散投資を提唱す る。 第2に、正しい質問をするよう努力し続け、 なるべく多く の情報源からの回答に耳を傾ける必要がある。投資に 関わる問題の多くは想像力の不足、 つまり 「想定外を考 える」能力のなさに起因する。我々はトランプ氏の勝利 を最も起こり得る結果とは考えなかった。 しかし、 「投資 家フォーラム」、 「業界リーダー・ネットワーク」、 「グロー バル投資委員会」に参加すれば、我々の外部から閉ざ 2 UBS House View Monthly Letter — 2016年12月 され、同じ意見しか聞かれない 「反響室」内の議論から 抜け出し、反響室では受け入れられなかったはずの疑 問や意見について考えざるを得なくなる。 こうした様々 な意見に接することは重要である。 さらに、定量的モデ リングの客観性は依然として非常に重要な役割を果た す。 もし我々が正しいデータを用いれば(これは重要な 「もし」 である)、定量的モデリングによって、起こりにく いシナリオに対しても計画を練る必要に迫られるが、世 界を体系的に捉えることができる。統計上の通常の分 布から大きく離れた極端な結果は起こらないとしても、 定量的モデリングにはすべてのリスクを検討するという 規律があるからこそ、我々は基本シナリオへのリスクを 日々考慮しなければならなくなる。米国歴代大統領の ドワイト・D・アイゼンハワーは以下のように述べている。 「Plans are nothing, planning is everything.(意訳:個々 の計画自体は意味をなさない。様々な計画の中から計 画を練ることが重要である)」。 イタリアの国民投票、 オーストリアの大統領選挙のやり 直し、来年に入るとフランス、 オランダ、 そしてドイツでの 国政選挙など、二者択一的な政治イベントはまだまだ やってくる。 しかし、政治的転換点となりかねないこうし たイベントに際しては、 コインを投げてどちらの面が出 るかを毎回予想しようとするのではなく、 どちらの結果 になっても生き残ることを心がける方が、長期的には成 功するということを覚えておく必要がある。我々は基本 的な資産配分の判断をする際には、中期的な経済トレ ンド、企業業績の伸び、為替動向に引き続き注目してい く。二者択一的なイベント・リスクに備えておきたい投 資家は、 システィマティックなヘッジ・アプローチを検討 できるかもしれない。 これは市場の急落に対して最もコ ストをかけず、最も効率的にヘッジできる指数オプショ ン取引をできる株式指数を見つけ出すというアプロー チだ。 Ain’t no… 最強のカード (Top Trumps) で上昇相場もここまでか トランプ大統領は債券市場の上昇相場を終わらせるのだろうか? そうではないだろう。 次期大統領が財政支出を拡 大し、インフレ率を押し上げ るとの期待から、債券利回り は最近上昇した。 トランプ氏勝利が報じられて以降、世界の債券市場は時価総額を1兆米ドル以 上減少させた。 新大統領による財政刺激策が経済成長と企業業績、 株価を押し 上げるとの期待感から、投資家は資金を株式に移した。 しかし、政府支出の増 加は財政赤字の拡大とインフレ率の上昇という懸念を呼ぶ - いずれも債券に は悪材料だ。 米国のインフレ期待の見直しはまだしばらく続くだろう。10年ブレークイーブ ン・インフレ率は10月初めの1.6%から11月15日の段階ですでに1.9%まで上 昇した (そしてそのおよそ半分は米大統領選の後に実現した) ( 図表1)。 しか し、我々は米国の消費者物価インフレ率が来年上昇すると予想しており、市場 が示唆するインフレ率はまだ上昇する可能性がある。次期大統領の政策は、保 護主義から (税収の穴埋め手段のない)減税まで、総じてインフレを誘発しやす い。 これらは労働市場がすでに逼迫し、米ドル高の終焉が近づき、原油価格が 前年比でプラスに転じたタイミングで実施される。 しかし、米国のインフレ率が FRBの利上げペースを上回る ため、実質金利は低水準にと どまるか、さらに低下するだ ろう。 しかし、 とりわけ米国の実質金利は低水準を続けるか、 さらに下がりそうだ。 イ エレンFRB議長は、 目標水準(2%) を超えるインフレ率をしばらく容認すると我 々は予想する。 したがって、 インフレ率は利上げのペースを上回るだろう。FRBに よる政策金利の正常化スピードも、諸外国の低金利の影響で鈍化すると予想 される。過去30年にわたって金利を押し下げてきた構造的要因(新興国の高 い貯蓄率、先進国の成長率の低迷、 ベビーブーム世代の引退とともに高まって きた 「安全な」債券への需要) は、今後4年間は変わりそうにない。 つまり、名目金利は上昇するものの、 わずかな程度にとどまるだろう。全体とし て、 トランプ氏の勝利は債券の上昇相場を一時的に停止させたように見える。 しかし、米10年国債利回りは、上昇したとは言え1月の水準に戻ったにすぎな い。借り入れコストは過去の標準からするとなお低い。 したがって、債券市場が 暴落する可能性は低いと考える。 図表1:財政出動とインフレ率上昇への 「大いなる期待」 米インフレ連動国債(TIPS) から算出された10年ブレークイーブン・インフレ率 2.0 1.9 (単位:%) 1.8 米国債券市場は、 トランプ大 統領による財政拡大の影響 を織り込み始めた。 1.7 1.6 1.5 1.4 1.3 1.2 1.1 Jan-16 Feb-16 Mar-16 Apr-16 May-16 Jun-16 Jul-16 Aug-16 Sep-16 Oct-16 Nov-16 Dec-16 出所:ブルームバーグ・ファイナンス、UBS(2016年11月15日現在) UBS House View Monthly Letter — 2016年12月 3 Ain’t no… これは新興国の上昇相場の終わりなのか? ちがう。 新興国資産は、 トランプ氏の 通商政策や財政計画の悪影 響を受ける恐れがあるとの 懸念から、最近下方圧力にさ らされている。 新興国株式は現在、年初来で8%上昇しているが、 トランプ氏の勝利以降では 7%下落した。新興国市場は2つの側面から打撃を受けた。 メキシコや韓国、台 湾、 コロンビアなど、米国に最も多くの財やサービスを輸出している国々 (図表 2) は、保護主義への懸念に苦しんでいる。一方、財政赤字と貿易赤字を埋める ために米ドルでの資金調達に大きく依存している国々は、債務コストの上昇か ら、米ドル建てでの調達条件の悪化に苦しんでいる。 しかし、新興国市場は、 ポートフォリオにとって今後もリスクというよりは投資 機会だと私は考えている。 2013年に起きた 「テーパー・タントラム (米国の量的緩和縮小観測を受けた市 場の混乱)」 の再現はなさそうだ。世界の流動性は当時よりもはるかに潤沢だ。 3年前に債券利回りが急騰した時には、 リスク回避的な市場センチメントがあら ゆる資産に広まったが、今回はグローバル株式が急騰した。新興国通貨は、低 利回りの先進国通貨よりも依然として比較的高いキャリー収入が見込める。 トランプ大統領は選挙期間中に提案していたほどには保護主義政策を採らな いかもしれない。 当時、 トランプ氏は重商主義的な議論を展開することが多か ったが、最近のコメントは 「自由だが公平な」 貿易という微妙な言い方に変わっ ている。 こうした発言は、貿易動向に左右されやすい新興国経済に少なくとも 一定の安定感を与えた。 しかし、経済成長率の改善と 世界的に潤沢な流動性を背 景に新興国資産はなお魅力 的に見える。 以上を考え合わせると、新興国のリスクは上昇しており、近々市場が混乱する 可能性はある。 ただし、来年も経済成長率とリターンの改善は続くため、 ポート フォリオに一定の新興国資産は保有できるはずだ。 図表2:貿易に関してはすべての新興国の状況が等しいわけではない 新興国の米国への輸出 (輸出総額に占める割合、GDPに占める割合(%)) 出所:ブルームバーグ・ファイナンス、国際通貨基金(IMF)、UBS (2015年時点) 4 UBS House View Monthly Letter — 2016年12月 アルゼンチン ペルー ブラジル チリ コロンビア メキシコ 中南米合計 インド 米国への輸出(輸出総額に占める割合(%)) 米国への輸出(GDPに占める割合(%)) インドネシア 中国 フィリピン 韓国 タイ 台湾 マレーシア アジア新興国合計 トルコ ロシア ポーランド チェコ共和国 南アフリカ ハンガリー 欧州・中東・アフリカ (EMEA)合計 米国への輸出依存度の高い 国は関税引き上げに苦しむ かもしれない。 90 (単位:%) 80 70 60 50 40 30 20 10 0 Ain’t no… 米ドルはどこに向かうのか? 対ユーロで下落 次期米大統領の政策プラン に対する米ドルの当初の反 応は反発だった。 というのも 市場はFRBが利上げペースを 急ぐと予想したからだ。 米ドルの実質実効為替レートは11月8日の終値から1.9%反発した。 投資家は政 策の重点が金融政策から財政政策へ移ると予想している模様で、 共和党が減税 を実施するとFRBは積極的に利上げせざるを得なくなるだろう。米ドルは、米国 の短期金利の見直しに対する期待感で上昇した。 歴史を振り返ると、 かつて 「米 ドルの強気相場」 と呼ばれた時代がある。 レーガン大統領時代の財政刺激策で 米ドル指数が1981年から1985年の間に45%も急騰したのだ (図表3参照) 。 我々はこのシナリオが繰り返されるとは考えておらず、 当月のグローバル戦術的 資産配分では米ドルを対ユーロでアンダーウェイトするポジションを開始した。 米ドルは対ユーロで下落する と予想され、戦術的資産配 分ではユーロのオーバーウェ イトに対する米ドルのアンダ ーウェイトを開始した。 まず、米国の通商政策と移民政策が国内総生産(GDP) の潜在成長率にどのよ うな影響を及ぼし得るかが見えない限り、FRBは積極的に利上げを進めないだ ろう。FRBの漸進主義は米国の実質利回りの低下を招き、米ドルの重石となる はずだ。 第2に、 ファンダメンタルズとユーロ圏の政策見通しはいずれも来年のユーロ 高を示唆している。経済モメンタムは堅調で、原油価格安の影響が薄れるにつ れ、10–12月期(第4四半期) からインフレ率は加速し始めるだろう。欧州中央 銀行(ECB) は、来年にはテーパリング(債券購入の段階的縮小) に言及し始め るかもしれない。経常黒字が続いていることも合わせると、ECBが強力な金融 緩和策を後退させれば、 ユーロには対米ドルでの上昇余地ができる。 欧州で行われる国政選挙のいずれかで予想外の結果が出れば、 ユーロ高のス ピードは一時的に遅れて為替市場が混乱するかもしれない。 しかし、 健全なファ ンダメンタルズは我々の戦術的 (6カ月) 投資期間ではユーロ高を支えるだろう。 最後に、1980年代の米ドル高の時とは対照的に、出発点である現在の米ドル は割高である。 レーガノミクスが始まる前は、米ドルはそれ以前の12四半期の 水準をおおむね(-0.6%の水準で)維持していた。 それに対し、現在の米ドル は同じ期間の水準よりも19%高い。我々の試算によると、 ユーロ/米ドルの長 期の購買力平価は1.25と、今日のスポット価格よりも17%高く、大幅な上昇余 地(米ドルの下げ余地) がある。 図表3:レーガノミクスが米ドルを押し上げた。 ただし歴史は繰り返しそうにない。 対主要国通貨に対する米ドルの貿易加重レート (FRBが試算) 150 140 130 120 今日は、 米ドルはすでに反発済み・ ・ ・ 110 100 90 2016 2014 2012 2010 2008 2006 2004 2002 2000 1998 1996 1994 1992 1990 1988 1986 1984 60 1982 70 1980 一定期間の横ばい後、 レーガノミクスによ り米ドルが急騰 80 1978 実質金利の低下、財政赤字 の拡大、割高なバリュエーシ ョンは、今後の対ユーロで米 ドル安を示唆する。 指数(1981年 第1四 半期=100) 出所:ブルームバーグ・ファイナンス、FRB、UBS(2016年第3四半期末現在) UBS House View Monthly Letter — 2016年12月 5 Ain’t no… グローバルな戦術的資産配分(TAA) 我々は、戦術的資産配分で新たに対米ドルでのユーロのオーバーウェイト・ポ ジションを加えた。 また、高格付債に対する米国株式のオーバーウェイトに依 然として確信を持っている。 米国経済は、雇用市場が引き締まって賃金の伸びを支え、企業業績も改善す るなど大統領選以前から堅固な成長軌道を見せていた。今年の第3四半期と 第4四半期は、 軟調な原油価格と米ドル高という逆風が収まって企業利益は伸 びるはずだ。 そして、企業利益は来年8%増益と、2016年から7%ポイント加速 すると予想される。 高格付債に対する米投資適 格債のオーバーウェイトは、 予想通りスプレッドが縮小し たため手仕舞うこととする。 トランプ政権が財政支出を拡大すると、 インフレ期待はさらに高まるため米国 の実質金利がここから低下して、従来型の米国債に対して米インフレ連動国債 (TIPS) をオーバーウェイトとする我々のポジションの追い風となるかもしれな い。 当月は、高格付債に対する米投資適格債のオーバーウェイト・ポジションも 終了した。 このポジションを設定して以来、利回りスプレッドは31ベーシスポイ ント (bp) へと半減し、2015年7月以来の低水準となった。投資適格債のスプレ ッドにさらなる縮小の余地は小さく、高利回りゆえのボラティリティ (変動率) の高さは、実際のところマイナスの影響を及ぼす可能性がある。 したがって、今 月はこのポジションから撤退し利益を確定する。 スイス株式に対する新興国株式のオーバーウェイトも維持する。新興国の経 済成長率と企業のファンダメンタルズはいずれも改善している。購買担当者景 気指数は景気拡大を示しており、1株当たり利益(EPS)は2月以降で8%増加 し、業績予想修正率(アナリストによる業績予想が上方修正となった割合から 下方修正となった割合を差し引いたもの) はマイナス40%からゼロまで改善し た。新興国株式とスイス株式はどちらも外国貿易への依存度が高く、米国が関 税を包括的に引き上げると打撃を受けるだろう。 しかしスイス株式は、新興国 株式ほどにはマクロ経済の改善の恩恵を受けていない。 スイス株式指数は 「債 券代替」銘柄となるディフェンシブ・セクターの比重が高いため、 インフレ率が 上昇すると下落する可能性がある。 ファンダメンタルズがしっかりし、魅力的なキャリー収入をもたらす一部の新 興国通貨は今後も上昇すると我々はみている。FRBが徐々に利上げを進めてい くという環境下で、他の先進国が金融緩和政策を続けているため、高利回り資 産への需要はなお支えられるだろう。次期大統領の通商政策が新興国通貨の 引き下げ要因になるにしても、我々がアンダーウェイトしている先進国通貨に ついては、 コモディティや貿易動向に左右されやすい国との関係が深いため、 新興国通貨よりも下げる可能性がある。 したがって、先進国通貨に対し新興国 通貨のバスケットをオーバーウェイトとするこのポジションは新興国資産の下 落を相殺し、 ポジションのリスク調整後リターンを改善するだろう。 Mark Haefele Global Chief Investment Officer Wealth Management 6 UBS House View Monthly Letter — 2016年12月 Ain’t no… UBS投資家フォーラムの見方 この毎月の会合では、我々がオピニオンリーダーを招いて金融市場に影響 を及ぼす主要トピックスについて議論し、UBSハウスビューに異論を唱えて もらっている。 • 今月はドナルド・トランプ氏の予想外の勝利が討論を支配したが、 これ は驚くべきことではない。財政支出の拡大、法人税の減税、海外資金の 本国環流が新大統領によってすぐに実施されるだろうというのが大方 の予想である。 こうした施策により、来年の米国の経済成長率、 そしてリ スク資産は支えられるだろう。 • しかし、次期大統領の保護主義的な主張は、 もし本当に実施されれば 有害で、 トランプ氏の他の政策による好影響を台無しにする以上の悪 影響を及ぼすかもしれない。 UBS House View Monthly Letter — 2016年12月 7 お客様へのお知らせ 本書はUBS AGが作成したものをUBS証券株式会社(以下、 「UBS証券」) が翻訳したものであり、 日本ではUBS証券またはその金融商品仲介業務委 お客様に特有の投資目的、財務状況、等を考慮したものではあり 託先であるUBS銀行が配布します。本書は情報提供のみを目的としたものであり、 ません。本書に記載されている資産クラスや商品群には、UBS証券で取り扱っていないものも含まれています。 また、金融商品取引法に基づく開示 資料ではありません。本書のいかなる部分についてUBS AG (チューリッヒ本店) の書面による承諾なしに複写または複製することを禁じます。 ©UBS 2016 UBS AGは全ての知的財産権を留保します。 UBSグループは日本において、UBS銀行、UBS証券、UBSアセット・マネジメント株式会社それぞれにサービスを提供しており、独立した業務活動を 行っております。 また、UBS銀行及びUBS証券がそれぞれ個別にウェルス・マネジメントサービスを提供しています。 UBS証券における国内株式等の売買取引には、 ウェルス・マネジメント本部のお客様の場合、 約定代金に対して、 最大1.00% (税抜) 、 外国株式等の売 (税抜) の手数料が必要となります。 ただし、 金融商品取引所立会内取引以外の取引 (店頭取引やトストネッ 買取引には、 約定代金に対して最大1.25% ト取引等の立会外取引、 等) を行う場合には、 個別にお客様の同意を得ることによりこれらの手数料を超える手数料を適用する場合があります。 この 場合の手数料は、 市場状況、 取引の内容等に応じて、 お客様と当社の間で決定しますので、 その金額等をあらかじめ記載することはできません。 インベ ストメント・バンク部門のお客様については、 お客様ごとの個別契約に基づいて手数料をお支払いいただくため、 手数料の上限額や計算方法は一律 に定められておりません。 国内株式等の売買取引では手数料に消費税が加算されます。 外国株式の取引には国内での売買手数料の他に外国金融商 品市場での取引にかかる手数料、 税金等のお支払いが必要となります。 国により手数料、 税金等が異なります。 株式は、 株価の変動により損失が生じ るおそれがあります。 外国株式は、 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