DC のび太警報システムの紹介 ○シンク・フジイ 柾 成隆 1.はじめに これまで、無線式観測機 DC のび太開発を行ってきた。DC のび太は、地すべりなどの観測のほか 施工時の安全管理などとしても利用され、客観的なデータにもとづいた警報システムが、状況や費用 に合わせ構築できるとともに拡張性が高いこともその特徴である。 そんな DC のび太警報システムの種類と特徴を紹介する。 2.警報システムの種類 一口に警報といっても、その方法はさまざまである。今まで実施してきた警報の種類は a)現場データの目視確認 観測機器のデータをDCのび太のロガーに蓄積し、必要時にロガーのモニタでデータを目視で 確認・記録し、時間当たりの動きや累積値から危険を判断する b)メディア(SDカードなど)によるデータ回収及びデータ確認 観測機器のデータをDCのび太のロガーに蓄積し、必要時にSDカードを使い、ロガーから データをコピーし、パソコン上で、時間当たりの動きや累積値を図化し、危険を判断する。 c)通信機によるデータの受信及び表示 観測機器のデータをDCのび太のロガーに蓄積しデータを送信機からパソコンにつないだ受信 機でパソコンに取り込み、付属ソフトにより、データを図化し、設定した値(閾値)に達した場合、 画面上にメッセージを出力する d)機器による警報 観測機器やDCのび太のロガーから直接または、受信機でパソコンに取り込んだデータを解析し リレーから警報を出力する ①有線式パトランプ・サイレン(写真1,2) 機器自体は安価だが、有線の敷設距離が長くなると費用がかさむ上、動物に線をかじられる、 雷を拾いやすい、作業の邪魔になるなどのデメリットもある。 ②無線式警報機(パトランプ・サイレン)(写真3,4) 警報出力機器(観測機器、ロガー、リレー)に警報用送信機を接続し利用する。有線式に比べ 若干費用が高いが、設置手間がなく、自由に移動することが可能。動物や雷による被害も少なく、 重機作業などの邪魔にならない。また、電源はバッテリーで、ソーラーで充電するため、保守も 比較的楽に行える。ただし、通信距離は最大1km程度であるため、距離のある現場では工夫が 必要である。 ③重機向け無線警報機(写真5) 重機向けの警報装置で、警報出力機器(観測機器、ロガー、リレー)に警報用送信機を接続し て利用する。電源は重機からとるため保守の必要がない。通信距離が100m程度であるため、 設置に工夫する必要がある。 ④音声通報装置(写真6) 警報出力機器(観測機器、ロガー、リレー)に接続して利用する。閾値に達すると、音声通報 装置に接続された携帯電話を通し、登録した最大 6 箇所の通報先へ、あらかじめ吹き込んでお いたメッセージが流れる。携帯電話を利用するため、携帯電話の通話エリア外だと使用できない。 また、安定した電源が必要である。 e)遠隔監視(インターネット・e-mail)による確認(写真7,8) 受信機でパソコンに取り込んだデータをパケット通信等を利用し、会社にあるサーバーへデータ を送り図化・解析し、インターネットに結果を表示したり、メールにより警報を関係者に伝える。 メール出力先数に制限はないが、パソコンを利用するため、商用電源が必要である。リアルタイ ムで関係者がデータを共有できる点が最大のメリットであるが、他の警報手段より費用がかさむ のがデメリットである。 f)組み合わせ これらの組み合わせで、状況や費用に合わせ、警報システムを構築する。 3.警報システム事例 ①地すべりの動きが顕著で直下に民家がある現場の事例 最優先すべきは住民ということで、住民宅に無線警報機を設置した。動きが顕著な上、降雨と動き が連動していたため、伸縮計と雨量計のデータをインターネットでリアルタイム配信し、関係者にメ ールで警報を出力した。あわせて住民には、音声通報装置を使い、電話で避難を勧める警報システム とした。 ②地すべり対策後の監視が目的で、現場に常駐者がいない現場の事例 施工中も動きがあったため、無線警報機を利用していたが、施工完了後も継続して動きを監視し、 動きが顕著な場合、関係者に知らせたいとのことで、音声通報装置を無線警報機に組み込み、現場で パトランプをまわすと同時に音声通報装置から、関係者の携帯電話に音声で動きがあることを伝える システムとした。 ③地すべり対策施工で法面作業者と重機への警報を目的とした現場の事例 施工現場で、周辺に民家や道路や河川はなく、法面作業者と重機オペレータが、地すべりに巻き込 まれないよう、作業者向けに無線警報機を敷設し、重機には重機向け無線警報機を取り付け、閾値に 達した場合は同時に警報を出力させるシステムを構築した。 4.終わりに 警報システムは、目的を明確にすることがもっとも重要である。それに状況、環境、時間、予算を 考え、システムを検討し提案していかなければならない。ただし、いくら機器のシステムが優れてい ても、運用面を考えておかないと機能しなくなってしまうため、機器システムの構築だけでなく、緊 急時の運用方法の取り決めを行って初めて警報システムといえる。 また、シンクフジイ(開発の立場)としては、より確実性の高い、新しい警報システムを開発する ことも大切である。 写真1 有線式パトランプ 写真3 無線式警報機(パトランプ・サイレン) 写真5 重機向け無線警報機 写真2 有線式サイレン 写真4 警報用送信機 写真6 音声通報装置 写真7 インターネット画面(伸縮計の動きと雨量) 写真8 携帯webでのグラフ と警報メール 写真9 無線式警報機と音声通報装置の組み合わせ 現場で警報が出るだけでなく、遠隔地に居る担当者に動きがあったことを音声で知らせる。 インターネットまでは必要ないが、動きがあった場合知りたいというとき、インターネットより 安価で実施できる
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