ハタケシメジ とちぎLD-500号 とちぎLD-1100号 栽培マニュアル 平成18年6月 栃木県林務部 「ハタケシメジ」とは ハタケシメジは、上品な風味とシャキシャキした歯ざわりから炒め物や鍋物など、幅広いど 料理に合い、また、日持ちも良いため、人気があります。 栃木県では、こうしたハタケシメジの優良品種の選抜と栽培技術の開発に取り組み、栽培に 適した2つの品種を開発するとともに、剪定枝葉堆肥を使用したハタケシメジの栽培技術を開 発しました。そこで、これらの品種の特性と栽培方法について紹介します。 開発した品種の特性 今回開発した2品種は、通常のハタケシメジ栽培で必要とされた「覆土(培地表面をバーク 堆肥などで覆うこと)」などの工程が不要で、作業の省力化と商品性の向上が可能です。2品種 のうち、「とちぎLD-500号」は、比較的栽培期間が短く、一方、「とちぎLD-1100 号」は、きのこの形状が良好で、高収量であることが特徴です。 表- 形 開発した2品種の特徴 質 とちぎLD-500号 とちぎLD-1100号 菌糸伸長の最適温度 24℃ 24℃ 菌傘断面の形状 平形 丸山形 菌柄の形状 直幹 とっくり型 収量(※) 120~130g 130~140g 群状 株状 70~75 日 75~80 日 接種~培養完了 45 日 45 日 菌かき後~発生 25~30 日 30~35 日 覆土不要 覆土不要 子実体の発生型 栽培期間 覆土の必要性 ※800ccの容器(下の写真)に560gの培地を使用したときの結果 とちぎLD-500号 とちぎLD-1100号 栽培の方法 ハタケシメジ栽培には、 「空調栽培」と「野外栽培」の2つの方法があります。空調栽培は、 周年栽培では可能です。一方、「野外栽培」は、簡易な施設で栽培できる利点があります。 空調施設栽培、野外栽培共通(とちぎ LD-500 号、とちぎ LD-1100 号共通) 菌 【培地調製】 剪定枝葉堆肥:米ぬか=10:1.5~2 含水率 60~63% 栽培容器…ポリプロピレン製ビン(800~850cc)又は栽培袋(1~2.5kg) (野外栽培の場合は栽培袋を使用) 接種孔…ビンの場合1個、袋の場合3~6個程度開ける 床 製 造 【殺菌】 高圧…121℃、90 分 常圧…98℃、5 時間以上、間断滅菌が好ましい 【接種】 接種量…20~25cc(800ccビンに接種する場合)、30cc(1kg 袋に接種する場合) 【培養】 温度…22℃ 湿度…70~75% 期間…45 日(800ccビン、1kg袋の場合) 空調施設栽培 生 育 管 理 とちぎ LD-500 号 の場合 とちぎ LD-1100 号 の場合 【菌かき】 中央部のみ菌かき 又は平かき 【菌かき】 周縁部のみ菌かき 又は平かき 【芽出し】 方法…逆さ芽出し 温度…17℃ 湿度…95~100% 期間…7~10 日 【芽出し】 方法…逆さ芽出し 温度…20℃ 湿度…95~100% 期間…7~10 日 【発生管理】 温度…17℃ 湿度…95~98% 期間…20 日程度 【発生管理】 温度…17℃ 湿度…95~98% 期間…25 日程度 【収穫】 収量…120~130g (800ccビン) 【収穫】 収量…130~140g (800ccビン) 野外栽培 (とちぎ LD-500 号、 とちぎ LD-1100 号共通) 【菌床埋設】 場所…林地又は畑地 ※畑地ではパイプハウスと寒冷紗 を使用し、直射日光を避ける 覆土…2~3cm 雨滴の防止…落葉、わらで被覆 【生育管理】 乾燥時…散水 雨天時…ビニールシートで被服 管理期間…30 日 【収穫】 収量…200~230g (1kg菌床) 空調栽培 【培地の調製】 ハタケシメジの培地基材には、剪定枝葉堆肥を使用します。栄養材には、米ぬか又はフスマ を用います。培地基材と栄養材を容量比で10:1.5~2で配合し、ミキサーで攪拌します。 攪拌後、含水率を60~63%程度に調整します。含水率は、培地を握ってみて、水がにじむ 程度が目安です。 栽培容器は、ポリプロピレン製のビン、又は栽培袋を使用します。容量は、ビンの場合は、 800~850cc、栽培袋は1kgから2.5kgのものを用います。 培地重量は800ccのナメコ用ビンで540~560g程度にします。その後、詰めた培 地に接種孔を開けておきます。ビン栽培では培地の中央に1箇所、袋栽培では培地に3~6箇 所開けておくとよいでしょう。 ナメコ用ビンに詰めた状況 (中央部に接種孔を開けた) 【殺菌・放冷】 給蒸 140 菌を行います。堆肥の中にはバ 120 クテリアなどの雑菌が多いため、 100 り、121℃で60~90分程 度行う必要があります。また、 常圧殺菌の場合、98℃以上で 5時間程度行います。殺菌を終 えた培地は、放冷室で一晩冷や 温度(℃) 詰め終えた培地は速やかに殺 殺菌方法は高圧殺菌が適してお 殺菌時の菌床の状況 培養袋の接種孔の状況 殺菌 ムラシ 80 60 40 20 0 0 50 します。 【種菌の接種】 100 150 200 経過時間(分) 250 300 図- 殺菌スケジュール 放冷した培地に、種菌を接種 します。接種量は800ccのナメコ用ビンで20~25cc程度とします。ハタケシメジは、 初期伸長が遅く、雑菌が侵入したときの被害が大きいため、クリーンルーム内の器具の滅菌や、 無塵衣などの着用の徹底による衛生管理が必要です。 【培養】 接種後の培地は、温度22℃、相対湿度70~75%に調整した培養室で培養します。培養 基間は800ccのナメコ用ビン、又は1kg栽培袋で45~50日程度です。 【菌かき】 培養完了後に菌かきを行います。菌かきの方法は、品種によりその方法が異なります。 とちぎLD-500号の場合…ビン(栽培袋)の表面の接種した部分の中央部を5cmの円 状に掻き取るか、全面掻き取るか(いわゆる平かき)の方法により行います。 とちぎLD-1100号の場合…ビン(栽培袋)表面の接種した種菌部分を全面かき取るか、 ビン表面の周縁部のみをかき取る方法により行います。 中央部のみ菌かき (とちぎLD-500 号) 中央部のみ菌かき とちぎLD-500 号 とちぎLD-1100 号 周縁部のみ菌かき (とちぎLD-1100 号) 【芽出し】 芽出しは、ビンの場合、逆さ芽出し(栽培ビンを倒立させる方法)により行います。芽出し も品種によって方法が異なります。 とちぎLD-500号…温度17℃、湿度95~100% で行います。7~10日すると、きのこの芽がでてきます。 その後発生管理を行います。 とちぎLD-1100号…温度20℃、湿度95~10 0%で行います。7~10日経過すると、菌かきした部分の 菌糸が再生します。その後発生管理を行います。 【発生管理】 芽出し管理後の状況 (とちぎLD-500 号) 培地を温度17℃程度、湿度95~98%程度の条件で管 理します。明るさは200~300ルクスで20~30日程 度管理するときのこが発生します。収量は800ccのビン で120~140g程度になります。 芽出し管理後の状況 (とちぎLD-1100 号) 野外栽培 野外栽培は、培養の完了した菌床を土の中に埋め込む方法により、自然条件に近い環境のも とできのこを栽培する方法です。適期に菌床を埋め込み、こまめな生育管理を行うことが必要 です。 月 作業 培地調製・殺菌・接種 6月 7月 8月 9月 10月 上 中 下 上 中 下 上 中 下 上 中 下 上 中 下 培養 菌床埋め込み 生育・管理 収穫 作業可能期間 栽培例 図- 野外栽培の作業適期の目安 【菌床の準備】 菌床を自分で製造する培地の調製から培養までの工程については、 「空調栽培」と同様の方法 により行います。ただし、培養後、容器を除去して埋め込むことから、培養容器は、ビンでは なく、1~2.5kg用の培養袋を用います。なお、菌床を購入する場合は、直射日光の当た らないところに菌床を保管します。 【栽培箇所の選定】 埋め込み場所は、直射日光が当たらず、木もれ日がちらちらと入る林内が適しています。し かし、パイプハウスや寒冷紗などを用いることにより、日よけをすることで、畑地などでも栽 培することができます。 【菌床の埋め込み】 培養した培地を8月下旬から9月中旬に行います。埋め込み場所の床掘りは、1kg菌床の 場合、3~4個並ぶ幅(60~80cm)で、列状に行います。床掘りの深さは、菌床の高さ と同じくらい(1kg菌床の場合、10~15cm程度)の深さにします。このとき、床掘り 面を平らにします。その後、2cm程度土を被覆し、さらに保湿及び雨滴による土の付着を防 ぐため、予め採取しておいた落ち葉を被覆します。落ち葉の採取時期は、落葉してから早めに 採取し、乾燥して保存しておきましょう。 【発生管理・発生】 発生までの管理は、乾燥と雨滴によるきのこへの土の付着に注意することが必要です。乾燥 した日が続いた場合には、散水します。ただし、きのこが発生してきたときには、きのこに直 接散水しないように注意します。また、雨天時には、パイプハウスの上からビニールシートな どをかけておきます。 埋め込み後、約1ヵ月程度できのこが発生し、1kgの菌床あたり200~230g発生し ます。 菌床の埋め込み作業 発生状況 連絡先 栃木県林業センター 〒321-2105 研究部 栃木県宇都宮市下小池町280 TEL:028-669-2211 FAX:028-669-2212 剪定枝葉堆肥化資材を使用した栽培方法については特許出願中です。 「とちぎLD-500号」、「とちぎLD-1100号」は品種登録出願中です。 Copyright C Tochigi Prefectural Forestry Research Center (2005). All Rights Reserved.
© Copyright 2024 Paperzz