海 と 安 全 二〇一一(平成二三)年 夏 日 本 海 難 防 止 協 会 9:17:01 2011/05/25 1 海と安全549表1-4.indd 漂着ごみを宝の山に~宝の島プロジェクト 鳩間島での公開実験 2010.11.3 東日本大震災に被災した方々へのお見舞い (社)日本海難防止協会会長 みやはら 宮原 こう じ 耕治 この度の東日本大震災により犠牲になられた方々に、謹んで哀悼 の意を捧げます。また、被災された多くの皆様方に、心よりお見舞 いを申し上げます。 皆様にご愛顧いただいております私どもの情報誌「海と安全」は、 船舶の航行安全や海難防止の活動などの促進を図ることを使命とし ております。この度の未曽有の大津波による被害は、目を覆いたく なるような悲惨な状況を呈し、船舶関係では、特に漁船の流失、損 壊、大破などが多く発生しております。また、その時の港内外での 海岸から集められてきた発砲スチロールの山 上:トラックに 搭載された 移動式油化 装置の公開 混乱した状況は、メディアを通じて生々しく放映されました。 日本郵船(株)代表取締役会長 日本船主協会会長 本誌編集部では、大船渡港に停泊中の内航船が震災と大津波に遭 遇し、船長を中心に乗組員が一丸となって、船舶と人命を守り抜い た迫真のリポートなどを入手しまた。このリポートには、乗組員が 油化装置に発砲スチロールを投入する子供 命がけで大津波と対峙し保船に全力を傾注した状況がリアルに記述されており、今後の参考 になると思われますので海事関係者には是非ご一読していただきたいと考え、特集記事とは 別に緊急リポートとして掲載しました。 発砲スチロールがスチレン油となってでき上がっ てくるのを興味深く見つめる子供たち この度の大震災は、今さらながら日本が地震国であり、これまでの想像を超えた大津波に 見舞われる地域である事をあらためて思い知らされました。この大きな犠牲を将来二度と払 うことのないようにするために、私ども協会としましても、今何がやれるのか、今後何をや っていくのかを考えながら、対応して参りたいと考えています。 海洋ゴミと船舶航行 内外から漂流・漂着するゴミは、海洋を汚染するのみならず美観の低下と海洋環境の破 壊、さらには船舶の航行安全と漁船操業の阻害にもつながる様相を呈しています。 発砲スチロールによってできたスチレン油で、発電機を まわす。右はスチレン油 2009(平成21)年7月、海岸漂着物の円滑な処理および発生の抑制を図ることを目的に、 「美しく豊かな自然を保護するための海岸における良好な景観及び環境の保全に係る海岸 漂着物等の処理等の推進に関する法律」 (海岸漂着物処理推進法)が公布・施行されました。 今号では、依然として減少しない海上に漂流・漂着するゴミ問題についての取り組みを 上:スチレン油で動く発電機の電源で、かき氷を作ってもらう 左、左下:同じく綿アメを作ってもらい大喜びの子どもたち 下:ミニシンポジウムで、「島に流れ着くゴミが燃料になる なんてすばらしい」 と発言する鳩間島小中学校の本間さん 関係省庁や関係団体に紹介してもらうとともに、わが国近海域の環境保全を目的とし1994 年、日本・中国・韓国・ロシア4か国により策定された北西太平洋行動計画 (NOWPAP) の概要と活動、漂流・漂着ゴミによる船舶の航行安全対策、さらには本協会が実施してい る漂着ゴミをエネルギー源に再利用する「宝の島プロジェクト」などを紹介します。 海と安全549表2-3.indd 1 2011/05/25 9:18:21 目次 2011 【緊急リポート】 東日本大地震と巨大津波に立ち向かった船員たち 夏 No.549 大船渡港での巨大地震・津波遭遇報告 太平洋沿海汽船株式会社 陸龍丸船長 岩﨑 正幸────❷ 巨大地震と大津波に遭遇する中でロシア船を救助 第一中央船舶株式会社 硯海丸船長 川﨑 直喜─────● 10 東日本大震災!油タンカーで燃料油の積荷中 富士石油株式会社 袖ヶ浦製油所バースマスター 和田 礼治────● 17 【特集】海洋ゴミと船舶航行 取材ルポ 対馬海流とともに流れ着く多様な漂着ゴミの現実───● 21 海洋ごみの現状と海岸漂着物処理推進法 環境省 水・大気環境局海洋環境室───────● 26 船舶の航行安全対策と海洋ゴミ問題 全日本海員組合 国内局国内部長 冨永 雄一────● 31 国土交通省港湾局の漂流・漂着ゴミ対策 国土交通省 港湾局 国際・環境課 海岸・防災課────● 35 海上漂流物に係る安全対策 海上保安庁 交通部安全課航行指導室海務一係────● 39 漁業者自ら取り組む海岸・海底清掃 いそはる 特定非営利活動法人 水産業・漁村活性化推進機構 事業部次長 近 磯晴──● 42 漂流・漂着物対策に関する水産庁の取り組み 水産庁 増殖推進部漁場資源課海洋保全班──────● 47 海洋ゴミによる漁船の被害状況について 漁船保険中央会 船舶審査部 船舶審査課課長 吹上 圭一────● 51 長崎県の海岸漂着物対策について はら ともはる 長崎県 環境部廃棄物対策課 課長補佐 原 智治 ひ だか ゆき お 水産部資源管理課 課長補佐 日髙 幸生────● 53 取材 港の美観と船舶の航行安全を願って────● 57 NOWPAP(北西太平洋地域海行動計画)と海洋ごみ ㈳日本海難防止協会────● 61 取材 ㈶環日本海環境協力センター(NPEC)の活動────● 64 漂着ごみを宝の山に~宝の島プロジェクト~ ㈳日本海難防止協会 海洋汚染防止研究部────● 68 特集以外の記事 海保だより/電子メールを活用した新たな情報提供サービス/海上保安庁────● 72 海外情報/ソマリア沖海賊事案の現状と対策/ロンドン研究室────● 75 海の気象/「春一番」の定義と「春一番」に伴う海難事故について/日本気象協会─● 76 海守便り/鯨の竜田揚げ/海守事務局────● 78 日本海難防止協会のうごき/編集レーダー────● 79 カラーグラビア/漂着ごみを宝の山に~宝の島プロジェクト~ (表紙・第一中央船舶㈱硯海丸の平 良和機関長撮影、裏表紙・上段は太平洋沿海汽船㈱陸龍丸の提供、 いずれも震災後の大船渡港。下段は海保のHPより) 緊急リポート① 大船渡港での巨大地震・津波遭遇報告 乗組員の全力を出しきって乗り越えた東日本大地震と巨大津波 太平洋沿海汽船株式会社 陸龍丸船長 岩﨑 正幸 突然、突き上げるような衝撃 (3月11日) 平成23年3月11日14時46分、大船渡港野 島桟橋Bバースにおいて今まで経験した事 のない揺れと突き上げるような衝撃に直面 し、直ぐさま自室の窓から桟橋と本船の舷 側を見る。桟橋は上下左右に大きく揺れ、 ベルト(コンベアーの上)のセメントが白 煙を吹き上げていた。本船は桟橋から1∼ セメント専用船:陸龍丸(6544総トン) 全長:132. 7m 幅:19. 5m 載貨重量トン:10836トン 4メートル位離れ、動揺している。ホー サー(係留索)が切れないかと心配してい 下になっているから外せない」と船首(オ る矢先、会社から電話があり、「即座に離 モテ)から連絡があった。「何が何でも外 桟する」と告げ電話を切る。 せ!」と指示する。どうしても外れなけれ 1∼2分で揺れが落ち着いた。間髪入れ ず一航士、甲板長が「地震です」と報告に 来る。 「すぐに出す」と告げた。 機関部に緊急のエンジンスタンバイをか ば切ればいい。「切る道具を準備しろ」と 告げる。 離桟を急ぐもラインマンは来ず けると同時に、三航士に乗組員は全員在船 機関長が帰り次第すぐに出るつもりで機 しているかどうか、確認するように指示。 関部に「エンジンを回しておけ」と指示を ブリッジに駆け上がると周囲はセメント 出した。しかし、「機関長が帰らないと2 の白煙で見づらい。本船の甲板部数人が駆 人では回せない」との返事があり落胆した。 けずり回っている姿を視認し甲板部全員が 辺りを見回すとホーサーが緩み、見るみ いることを確認できた頃、三航士より「機 る潮が引く、漁船が一斉に沖出ししている 関長が上陸中で不在」との報告があった。 のが分かった。この間、地震発生から10分 直ぐに帰ることと即刻連絡を入れる様に指 位だろうか?機関長はまだか?もどかしい 示する。 思いで待つ。代理店から電話で「避難する 本船の (ビットに係留している)ホーサー が、「Aバース接岸中の他船のホーサーの 2 海と安全 2011・夏号 のでホーサーを離しには来られない」と連 絡が入る。 ┒ᕝ ←㔝ᓥᱞᶫ Ḟࣀୗྥᓊቨ Ⲕᒇ๓ᓊቨ ኴᖹὒἢᾏỶ⯪ ←㝣㱟 㔝ࠎ⏣ᓊቨ ❧๓ᓊቨ ➨୍୰ኸ⯪⯧ ◵ᾏ→ ⁻ὶࠊᨇᗙࡋࡓ ࣟࢩ⯪→ ⌈⌸ᓥ 震災直後の大船渡港(Google Earth より 画像取得日2011. 3. 14) 海と安全 2011・夏号 3 甲板部各員の働きで船首(オモテ)、船 した。 尾(トモ)のホーサーが1本ずつになった 前方を向くと、先程とは港内の雰囲気が 頃、 「機関長が帰りました」との連絡が入 一変し、大きくて見たことのない大波に映 る。 「エンジンをすぐに回してくれ」と伝 画さながらに一隻の漁船が昇る。船体の長 え、 「ホーサー切断用のナイフは準備して さ10m以上の漁船が真上から見る形でオモ あるか」と確認した。甲板長が「自分が(桟 テからトモまではっきり映像のよう(に見 橋に上がって)最後のホーサーを離すから えた)。ひっくり返ると思ったが乗り越え オモテを着けておいてください」とオモテ た。2隻目から一斉に、港内に逃げ込んで に(本船に乗り込むための)ジャコップ(縄 来た。陸上の家、建物は津波に依る濁流で 梯子)を下げた。やはりできたら切りたく 瞬く間に呑み込まれている。本船の直ぐ横 はないようだ。 をロシア船が渦に巻かれたかの様に、もの 機関室から「エンジンが準備できまし 凄い勢いで流れていく。 た」との待ち焦がれた連絡が入る。司厨長 これは(本船も)ダメかもと一瞬脳裏に が「何か手伝う事はないですか」と嬉しい 浮かんだ。マイクを握り「やるだけやるか ヘルプも入る。 ら、ダメな時は…」と覚悟を皆に伝えた。 この間、地震発生から15分位。先程より潮 各人より「やれるだけやる」と力強い返事 が引いた。 が返ってきた。 トライエンジン(主機試運転)もスラス 一発目の津波に備える。大船渡港内ほぼ ター(船体を横移動させる推進装置)のテ 中央、桟橋寄りに本船は位置している。針 ス ト も せ ず「ト モ、オ ー ル ラ イ ン レ ッ 路を、南方(湾口方向)にある珊瑚島方向 コー!」 (船尾の係船索すべで離せ)の発 に向ける。野々田岸壁前および大立岸壁前 令。甲板長が桟橋を走る。電話は鳴りっぱ は、流れが川下りの激流に見える。この流 なしだが応答する暇がない。オモテのオー れに入ったら終わり、幸い中央付近はそこ ルラインをレッコー(船首の係船索すべて までない。 離せ)して、スラスターでオモテを寄せる。 甲板長がジャコップを昇るのを確認してか ら桟橋を離岸した。トモの(出港)配置を 解くと同時に 「右舷アンカースタンバイ(投 錨用意) 」を発令した。 想像を絶する大波に遭遇 船の全長ほど、桟橋から離れた位置で陸 瓦礫の流れの中、主機と錨で押 し寄せる波に対抗 「右舷アンカーレッコー」(右舷錨投錨 し)、エンジンはスローアヘッド(前進微 速)でやや前進行き足、(本船位置は)陸 の建物で判断(した)。行き足が止まる、 アンカー序々に出だす。 上のけたたましいサイレンが響く。後ろを 「3シャックルオンデッキでホールドオ 振り返ると先程まで、接岸していた桟橋が ン」(錨鎖3節で止める)と指示した。そ 水没しているのを視認し津波が来たと確信 れ以上、出すと錨鎖が切れると思い、アン 4 海と安全 2011・夏号 に頼らず、陸上の動かない物標で 判断しろ、夜になると真っ暗にな るから自分で分かる物標を見つけ ておけ」と一喝した。 それから緊張感が増したのかア ンサーの声が大きくなった。 オモテから「アンカーが弛んで 来た」と報告を受ける。徐々にエ ンジンをストップに戻す。トモが 右におとされ出しオモテが左にな り(左回頭となる)、引き波だ。 瓦礫の中で、苦闘する陸龍丸 (第一中央船舶所属・硯海丸機関長の平 良和さん撮影。同船も同じく大船渡港で津波 に翻弄されている) 左回頭して流れに立てようと思い 「スラスター左フル、ハードポー カーをドレッヂング(海底を引きづる)さ ト(左転一杯)、デッドスローからフルア せたかった。 ヘッド」(微速から前進全速)までフルに 錨鎖の出方をみてエンジン増幅(すべく)、 「ハーフアヘッド」(半速前進)としたが、 (エンジンを)活用した。 流れの勢いで最短で回頭でき、針路を野 (津波に押し流されて)それでも下がる。 島桟橋方面に向ける。視界に、恐怖を感じ 錨鎖が出終わった頃、 「フルアヘッド」 (全 させる引き波が広がる。川は土石流に見え 速前進)を発令。錨鎖が張ってきて「アン 野島桟橋を呑み込み欠ノ下向岸壁から茶屋 カー一杯」(錨鎖がいっぱいに張る)とオ 前岸壁に架けて高さ5∼6mは充分あろう モテから連絡があり「フルアヘッド」をか 段差が、ナイアガラの滝のように流れ渦を けると、 (船体は)思ったより下がらない。 巻いている。土煙を揚げながら陸上がその 周りは漁船、無人漁船、浚渫船、コンテ まま動いているかのように、赤茶色化した ナ、家、車、ガレキの山、油、タンク、火 が点いている物まで次々に流れて行く。5 分間位しただろうか。 汚濁した激流だ。 「左舷アンカースタンバイ」を告げる。 右舷はまだ弛んでいる。「左舷アンカーレ 野々田岸壁方面を見ると Y(ワイ)潮(反 ッコー」とし、やはり「3シャックルオン 対方向の流れ)が流れ出した。津波が引き デッキでホールドオン」で止める。エンジ 波に変わると確信した。 ンをフルに活用し耐える。 沖に引いていく波との戦い 巨大な上げ波・引き波 そして漂流船 ブリッジ内は、 「本船が下がっています」、 「昇っています」 と正反対な答えが飛び交う。 正横の陸上を見て、本船が流されていな 「浮遊物の流れに惑わされるな、レーダー いことを確認(する)。周囲はガレキの山、 海と安全 2011・夏号 5 漁船、家、油、タンク、車、コンテナ、次々 に流れて来る。 先程、流されたロシア船が正面から流れ て来て、右に左に流れが曖昧。オモテから 「距離200m」と連絡が入る。下手に避け ると本船が流れに対して横になるので立て 直せない可能性の方が高いと判断、衝突も 覚悟する。 「残り100m」と報告あり、その うちに(ロシア船が)トコトコ動き出し安 堵する。幸い引き波にも流されない。 硯海丸の舷窓より見える大船渡港内、港内は漂流する多数の瓦礫 により、航泊禁止となる(第1中央船舶、硯海丸提供) 上げ波、引き波を6回位(繰り返す)、 潮変わりに船首が振れた方向にスラスター、 った、回頭数を数えておいて良かった。 エンジンをフルに活用し回頭し、耐える事 左舷アンカーが揚がると、「爪が右舷錨 2時間位だろうか。大船渡港内の、自船の 鎖に引っかかっている」と報告があった。 位置の確保だけに執着した。この間、スラ アスターンエンジン(主機後進)で右舷ア スターは時折異常アラームが鳴り響き、ガ ンカーがやや張った状態で左舷アンカーを レキの山、家、コンテナの亀裂などを目に 再びレッコー(投錨)した。錨鎖から爪が して、本船主機プロペラのダメージに心配 外れ、 19時00分、上手い具合に左舷アンカー がつきまとう。徐々に周期、流れが落ち着 を納めた。 きだした。 「ガレキの中に被災者が流れて ないか」 「見つけたら助けるぞ」 若干の余裕ができた頃、船橋配置員に「ガ レキの中に被災者が流れてないか、注意深 く監視しろ」と、そして「見つけたら助け るぞ」と告げる。 情報が知りたいが、携帯電話は全く不通。 甲板手に、テレビを見て来るように云った。 5分位して気仙沼、陸前高田、東北太平 洋沿岸、被災状況の報告を受けた。改めて 事の重大さに慄然とした。 陸上からの情報も当てにならず 船橋でも本船の携帯電話で、ワンセグ放 送を写すように指示し、緊急地震速報およ 辺りは薄暗くなり始め、ダブルクロス状 び被災状況が確認できた。大船渡の津波が 態(両舷錨鎖が二重に交差)と思うので、 3. 7mを観測したとの放送だが、「馬鹿な、 アンカーを片舷引き揚げたい。(今までの そんなもんじゃない」と船橋内で罵声が飛 回頭数と回頭方向を思い出しながら)潮位 びかった。(気象庁は4月5日、同港の津 の変化に合わせて右回頭を2回し、左舷ア 波を11. 8mと訂正した) ンカーを揚錨開始。オモテから「クロスは 辺りは暗くなり、潮位の変化が分かりづ していない」との報告。やはり間違いなか らい。陸上では、大船渡病院の非常用電気 6 海と安全 2011・夏号 が薄暗く灯り、火災箇所だけが異常に明る 以外、町は真っ暗である。ガレキはそこら く感じる。津波の上げ下げは野々田岸壁付 中に浮遊し油臭い、消防が来ないのを良い 近が一番早く現れる。 事にわが物顔で燃え広がる火災だけが勢い 探照灯で「野々田岸壁を照らせ」と指示 を増している。 した。双眼鏡で注意深く潮位の変化を見守 船橋内では携帯ワンセグ放送が各地の被 る。外気が冷え、周囲に油の臭いが立ち込 害状況を伝えていた。余震は地震発生から める。 頻繁に続く。潮位の変化を注意深く監視し、 オモテの配置員とブリッジの配置員を交 翌朝まで(潮位の)上げ下げに応じて、ア 代させた。潮位の変化は相変わらずで、周 ンカーの張り具合や回頭を繰り返す状況を 期は長く3m位の潮差がある。引く時は岸 見守った。 壁の支柱が見え、上げは岸壁が水没する。 エンジンは回しっぱなし長期戦になりそう だ。 人影など一切ない大船渡 (3月12日) 周りは有人漁船が15隻程度、上げ下げに 翌12日、辺りが明るくなりだし大船渡港 併せてトロトロ走っている。21時を過ぎた 内、大船渡市内の被害状況が目の前に広が 頃からエンジンを使わなくても、アンカー る。以前の面影はなくなり津波による被害 だけで流れに応じて船体が立つ位に(上流 に唖然とし、人影など一切無い。 側に船首を向けること)、落ち着いてきた。 港内中央にやっと転錨 21時20分、右舷アンカーを揚げ大船渡港 内中央にアンカーシフト(転錨)し、「右 舷4シャックルオンデッキ」とする。 午前9時頃でも潮位の変化が1∼3mあ り余震も頻繁に続く。 朝から(会社との)電話の応対に勤め、 上手く現況が伝えられずもどかしい思いで 食料、水、燃料の残トンを報告した。 12時頃、潮位の変化が見られなくなり、 野島桟橋から、(潮汐の干満の際の)上 石巻保安より大船渡港内、安全が確認され げの最短距離、下げの最長距離をレーダー るまで出入港(航泊)禁止が発令される。 バリアスマーカーで補足した。 21時50分頃、オモテ配置を解く。主機を フィニッシュ(終了)とする。機関部に「何 時でも回せる状態」で自室待機を、甲板部 は当直(ワッチ)の者だけとし、残りはワ ッチに備え休むよう指示した。 会社には、約1時間おきに現状報告の電 節水と食料を長持ちさせるため、献立の 理解を求める張り紙を食堂前に書き出し、 風呂は1カ所にした。 震災後、 強風のため2度3度と転錨 (3月13∼14日) 13日、大船渡港内は北西の強風が吹き、 話を入れた。この夜は風も穏やか、静まり (岸壁との)船尾距離が120m位しかなく、 帰った大船渡港内、大船渡病院の薄暗い灯 安全のためアンカーシフト(転錨)した。 り、漂う有人漁船の灯り、本船の停泊照明 右舷アンカー4シャックルオンデッキとし、 海と安全 2011・夏号 7 船尾(との離岸)距離250mとなる。昼間、 荷役機械のトライアルをするが異常はない。 周囲はガレキの山、油それ以外、人影も なくヘリコプターが時折、飛んでゆく位で 変化は見られない。 翌14日、変わりなく朝を迎え相変わらず 北西の強風が吹いている。11時頃、自室窓 から見える景色が何か変に感じ船橋へ上が る。レーダーを覗くと船尾が120m位しか 走錨の危険を監視しながら錨泊する陸龍丸。(硯海丸提供) ない。ここまでは下がる事はない、当直者 に「エンジンスタンバイ」(主機関準備) き出し右舷アンカーを揚錨、ワイヤー、ロー を告げる。 プ、網などが絡んで上がる。 「左舷アンカー 10分位でエンジン使用可能になったが長 く感じ、船尾(の離岸)距離は20∼30mに なった所でシフト開始、事なきを得る。 6シャックルオンデッキ」とし、船尾距離 250mとした。 この日から甲板部員を休ませ、士官を当 今 度 は 野 々 田 岸 壁150m位 で 左 舷 ア ン 直に入れ交代させた。大船渡港内周囲、自 カーで5シャックルオンデッキとし、船尾 衛隊など人影が見えだし、夜、陸上の電気 距離280mを確保した。当直者に「船位が が若干点くようになる。 おかしいなど、不安、心配があればすぐに 知らせる事」の念を押した。 翌17日午前中、前日右舷アンカーに絡ん だワイヤー、ロープ、網など、ジャコップを この日も周囲に格段の変化は見られず、 降ろしナイフ、ガス溶接機にて切断取り外 大船渡港内への出入港船は漁船以外なし。 した。大船渡港内周囲、格段の変化見られ 巻き上げた錨にはワイヤー、ロー プ、網などが(3月15∼17日) 15日06時、北 西 の 風5∼8m/s。9時 ず。 本船は安全圏を求めて転錨を繰 り返す(3月18∼19日) 頃から翌16日15時頃まで東よりの風が吹き、 翌18日、自衛隊、各国救援隊、救援物資 翌16日15時頃から北西の強風予想となった。 トラック、重機が次々に到着しヘリコプ 東よりの風は野々田岸壁に近づくので北西 ターも飛び交い救援作業を見守り淡々と過 方向に本船が立っている間に08時頃、右舷 ごす。 アンカーを2シャックルオンデッキで投錨、 翌19日08時頃、作業船2隻が入港、震災後 振れ止め錨とする。翌16日15時頃から北西 初めてである。10時頃から作業船2隻で大 の強風が吹き出したら容易に巻き取れる計 船渡港内および珊瑚島周辺の掃海作業を開 算。 始する。昼頃、東亜建設工業より野島桟橋側 案の定、翌16日17時頃、北西の強風が吹 8 海と安全 2011・夏号 にアンカーシフトのお願いの電話があった が、地震前に野島桟橋前は浚渫工事中の為、 フロー管が海底に敷設されており安全が確 認されないとシフトできない旨を伝える。 瑚島周辺の掃海作業を開始する。 13時頃、港外からゴムボートで自衛隊ダ イバー到着した。 14時頃、東亜建設工業より「安全である 翌21日12時頃、石巻保安より「間もなく から」 と再度、アンカーシフトの要請の電 出港できそうですからエンジンスタンバイ 話が入りどこで安全を確認したのかと、矛 お願いします」との電話連絡がある。直ぐ 盾を感じつつ渋々シフトを開始した。30分 さまエンジンスタンバイ待機。14時頃、巡 後、欠ノ下向岸壁前にシフトし、「左舷5 視艇が珊瑚島周辺および港口の浮遊物など シャックルオンデッキ」とする。16時頃か の安全を確認した(との情報を得た)。 ら欠ノ下向岸壁、盛川方面から常時15m/ s以上の北西の強風が吹きつけ、「エンジ ンスタンバイ」とする。 17時頃、本船がアンカーしていた所に巡 重層して浮遊する瓦礫の中から 10日間の苦闘の果て出港 (3月21日) 視船が入港錨泊した。巡視船から VHF で 21日14時20分、揚錨を始め出港した。 現在の港口周辺の情報を得る。 珊瑚島東水路を航行する。東水路は大量 19時頃、風が落ちついてきたので「エン のガレキが厚く重層して浮遊し、本船1隻 ジン・フィニッシュ」(主機関使用停止) がやっと(航行できる)の状態で、何とか とした。この間最大、27m/sの北西の強 珊瑚島の南を通過した。 風が吹きつけた。 目の前に太平洋、大船渡港口が広がる。 防波堤が津波により破壊され、無くなって いるので異常に広く感じる。後方の指向灯 を見ながら慎重に防波堤付近を通過した。 最後に、巨大地震と大津波の遭遇から大 船渡防波堤通過まで約10日間、二度と経験 したくない体験でしたが、シーマンシップ を最大限に発揮し、危険を顧みず的確に指 示に応えてくれた本船の全乗組員に対し、 大船渡港は多数の家屋も流しだされてきて、港内を埋め尽くした。 (硯海丸提供) 携帯電話は通信不能 (3月20∼21日) 翌20日未明、携帯電話の受信音があった 誇りに思うと同時に深く感謝していること を述べて巨大地震・津波遭遇報告といたし ます。(2011年3月28日記) ※本稿は、陸龍丸船長より会社あての報告 書です。原文は専門用語も多数使用されて が、しかし混雑の為か繋がらない。朝から いるので、会社と陸龍丸船長の了解のもと、 巡視艇の小型ボートが測量を開始している。 原文の趣意を損なわない範囲で一部編集部 08時より作業船2隻で大船渡港内および珊 で加筆修正致しました。( )内は編集部。 海と安全 2011・夏号 9 緊急リポート② 巨大地震と大津波に遭遇する中でロシア船を救助 上陸して帰れぬ乗組員を除く6人のみで緊急離桟 第一中央船舶株式会社 けんかい 硯海丸船長 川﨑 直喜 太平洋沿海汽船㈱所属の陸龍丸と同じく、大船渡港野島桟橋に着桟していて地震と大津波 に遭遇した第一中央船舶㈱所属の内航セメント専用船・硯海丸から会社あての報告書を入手 した。原文は事実関係の時系列的で実務的な報告となっていて、多くの読者にとって読みづ らい専門用語の多用と、簡略的に記述した内容となっているので、会社と硯海丸船長の了解 の下、編集部が一部加筆・訂正して紹介します。( 1 )内は編集部 本船の動静 (3月11日) 1100 セメントの積荷役終了。東京での荷 揚げスケジュール調整のため翌朝まで待 機。 1446 東日本太平洋沖地震発生、大津波警 報が発令される。 1505 私(以下、船長という)は(直ちに) 帰船し緊急離桟配置を発令する。 セメント専用船:硯海丸(4906総トン) 全長:114. 8m 幅:17. 5m 載貨重量トン:7477トン (同桟橋反対側に着桟していた)陸龍丸は 離桟出港作業に入る。 1515 (在船中の乗組員6人のみで)緊急 離桟実施(する)。 上陸中の5人については後述。 (3月13日) 1000 同港、(海保よりの通達で)航泊禁 止となる。 1100 本船二航士、ロシア人二航士、(ロ 1545 (大船渡湾内に錨鎖3節で)投錨。 シア船の救命艇で)上陸のうえ消防隊に 1730 緊急 S/B(出入港配置)を解除し、 援助を求める。同号の陸上避難中の船員 船長と二航士での交互の(船橋内での) をさらに2人収容。同号全乗組員(15人) 錨泊当直とする の安全を確保した。 (3月12日) 0500 座 礁 ロ シ ア 船 KHREZOLITOVYY 号から、(救命艇で)乗組員13人が(来 船し)救助を要請。直ちに本船内に収容。 10 海と安全 2011・夏号 1300 負傷ロシア人船員(1人)を、 (消 防隊の)ヘリコプターで大船渡病院に搬 出する。 2 緊急離桟作業 (14時46分大地震発生、船長は)15時5 分頃、上陸先より急ぎ帰船した。二航士が 桟橋上で待機しており、在船者は船長を含 み6人(二航士、機関長、一機士、二機士、 司厨長)、出港準備は完了、ホーサーのレ 一度押し寄せた津波が引き、岸壁から瓦礫とともに濁流となって 流れ落ちる。 写真は硯海丸から平 良和・機関長が撮影 ッコー(係留索放し)は(二航士より) 「私 が行います」との申し入れを受けた。 帰船していない乗組員への懸念もあった が、すでに引き波が終わり目に見えて海面 が上昇中であり、在船者・本船・貨物の安 (3月14日) 1320 陸上で避難していた三航士と甲板長 が(ロシア船救命艇で)復船。 全を考え緊急離桟を決断した。 二航士により、船尾・船首の順序でホー サーを放したことにより、本船は桟橋より (3月18日) 数メートルも離れてしまい、スラスターを 1920 (残った)ロシア人船員は(ロシア 全速回転させて岸壁に近づけようとしたが、 船救命艇で)下船、ロシア副領事アテン ドにより帰国の途に着く。 中々岸壁に近づかなかった。 船尾作業を終え船首に向かっていた二機 (3月19日) 士が、とっさの判断で本船のハンドレール 1400 陸上で避難していた甲板手2人が自 を掴んで体を舷外に乗り出し、二航士に目 転車に乗って公共岸壁に到着のうえ、そ 一杯腕を伸ばすよう指示し、かろうじて船 こから(ロシア船救命艇で)復船。 内に引揚げることができた。 甲板部6人(体制)となり連続24時間 航海が可能な体制となる。 この時点で、海面は桟橋上面を洗う状態 であった。主機全速前進とすることにより、 (3月21日) やっと前進行き脚を得ることができ、桟橋 1640 航路啓開(水路障害物を取除き船が 沖約0. 5マイルに錨泊していた陸龍丸をギ 航行できる状態にすること)、測深作業 リギリの距離でかわしたうえ、桟橋沖約0. 8 終了と海保より連絡あり、巡視船先導の マイル沖に錨鎖3節にて投錨した。 もと出港する。 出港後、(沖合は大量の瓦礫が浮流し ていて、夜間航行は危険で不可能)黎明 待ちのため港外でドリフティング(漂泊)。 3 投錨後の津波への対応 投錨後も走錨(錨を引きづったまま、船 体が流される)が繰り返され、二航士・二 (3月22日) 機士を継続して船首配置としたうえ、津波 1140 東京向け出港 の引き波・満ち波に対抗しながら、機関の 海と安全 2011・夏号 11 前進・後進を繰り返し、船首・船尾スラス ターの繰り返し使用により船首方位を湾口 (出港針路)に向け続けることに傾注した。 このため一機士・司厨長の2人に、レー ダーに組込んだ GPS 情報に基づく船位・ 流速などを連続観測させ逐次報告させた。 最大潮流は、離桟・投錨後の引き波で約 6ノットを観測した。 (太平洋セメント工場の)セメントサイ ロ上に避難した上、後日復船した甲板長に 漂流し擱座したロシア船・KHREZOLITOVYY 号 硯海丸から平良和・機関長が撮影 よれば、その時の引き波により野島桟橋付 してもらえるとの情報を確認し、同日午後、 近は海底が見えるほど、海面が下がってい ヘリコプターにより負傷者は大船渡病院に たとの事であった。 搬出された。 なお、 接近してきた大量の漂流物(家屋・ なお、帰船時の救命ボートで、陸上避難 コンテナ・船舶など)は、船首スラスター していた同号の乗組員2人とも会えたので、 により船体姿勢を調整する事により避け続 追加収容し同号の全乗組員15人の安全が確 けた。 認された。 (3月11日)17時30分、津波の影響がやや 以後、大船渡湾に航泊禁止措置が取られ 収まってきたため船首配置を解除し、船長 たため、停泊期間の長期化が予想され、本 と二航士での交互の(船橋での)錨泊当直 社と連絡を密にとりながら、燃料・食料・ とした。 清水の節水に努めるとともに、救命ボート 4 ロシア人船員救助 によりロシア船からの食料調達を実施した。 なお、ロシア人乗組員は、救出翌日より 翌12日 の05時 頃 に 座 礁 し た ロ シ ア 船 彼ら自身により調理実施することとした。 KHREZOLITOVYY 号 の 乗 組 員13人 が、 ロシア船船主による彼らの救出に関する 救命ゴムボートに乗って救助を求めて来船 情報は、同船の代理店を通じ本社(第一中 したので、即刻、全員を収容した。内1人 央船舶)へ順次提供され、その都度、本社 は左脚に骨折と思われる負傷を負っていた。 より本船へ連絡され(ロシア人乗組員に伝 第二管区保安本部に連絡するも、他の人 命救助優先中につき本船での対応を指示さ れた。 え)た。 16日、船主手配のサルベージ船が湾外に 到着したが、保安庁および第二管区保安本 13日朝、本社指示により陸上に負傷者救 部により航路啓開・水路測深が終わってい 助を依頼するため、本船二航士、ロシア人 ないため、二次災害防止の観点より入湾・ 二航士の2人をロシア船救命ボートにより 救助は認められなかった。ロジア人乗組員 上陸させた。途中で消防隊に出会い、救助 は落胆の色を隠せない様子であった。 12 海と安全 2011・夏号 命艇で)無事に帰船した。 甲板長は自転車に乗って上陸していて (地震発生時には同じく大船渡市役所付近 にいたが、自転車のため三航士と別れ)急 ぎ本船に向かい太平洋セメント構内に辿り 着き、本船が桟橋付近にいることを確認し たが、すでに海面は本人の靴を洗う状態で あったため帰船を諦め、(太平洋セメント 瓦礫が重層して流れる大船渡港内 硯海丸から平 良和・機関長が撮影 構内の)セメントサイロによじ登り難を逃 れた。 18日17時頃本社より、またロシア領事館 津波が引いた後、太平洋セメント職員の からロシア人船長に、救助のため手配した 方に発見され保護された。13日大船渡病院 チャーターバスが新潟から大船渡に向かっ に移動、三航士と再会し、以後行動をとも ており、数時間後に到着するとの電話連絡 にした。 があり、彼らは涙を流しながら大喜びして いた。 甲板手Aは、(地震発生時には消防署付 近にいたが、急ぎ)自転車で本船に向かう 同日19時20分、バスの到着に合わせ、救 も太平洋セメント付近まで来たところ、川 命ボートにより全員が下船し、入院してい が氾濫を始めたため、危険を感じ高台に向 た船員1名をピックアップのうえロシア副 かい難を逃れた。14日朝まで大船渡北小学 領事のアテンドのもと帰国の途についた。 校に避難していたが、携帯電話が不通で本 5 上陸中に大震災に遭遇した 乗組員たち 三航士は、(雇い入れ公認手続きのため 船と連絡が取れないため帰船できず、また 自宅(気仙沼市)とも連絡がとれなく心配 なため、自転車で10時間をかけ自宅に戻り、 家族ならびに自宅の安全を確認した。 上陸し、大船渡市役所付近にいたが大地震 15日会社と連絡が取れ、19日、地震発生 に遭遇し、急遽タクシーで本船に向かった 時に自宅で船内休日を取っていた甲板手B が交通渋滞のため下車し)走って太平洋セ とともに自転車も合わせて、残置されたロ メント付近まで来た。横を流れる川が氾濫 シア船救命ボートにより復船した。 し始めたため危険を感じ、無我夢中で走っ 一航士は、船内休日を付与され、隣接の て高台に向かう。途中、トラックに拾われ、 気仙沼市の自宅で被災し、津波襲来に伴い 大船渡病院に避難することができた。 家族とともに高台に避難し無事であったが、 翌々日13日、同じく陸上避難した甲板長 と再会、以後行動をともにした。14日、消 自宅が全損となったため、本社指示により 同日付けで陸上休暇員となった。 防署に設置された臨時電話より本船に連絡 甲板手Bは、一航士と同じく陸上休暇を を取ることができ、同日午後(ロシア船救 付与され気仙沼市の自宅で地震に遭遇した 海と安全 2011・夏号 13 本船の無事を願い、陸上サイド から本船を支援した 海務部長の並河 Q まこと 眞さんに聞く 貴社の会社概要からお話しください。 並河 第一中央汽船㈱の関連会社で、内航 船8隻と外航船4隻の船舶管理を行ってい 揚錨して検錨したところ、大量のロープや網が錨に絡まっている のを甲板長が切り外している ます。日本人乗組員は関連会社を含み122 人です。内航船は、セメント運搬船3隻・ 石灰石運搬船1隻・石炭灰運搬船1隻・石 が、家族・自宅ともに無事であったため、 炭運搬船1隻・タンカー2隻です。外航船 本社と連絡が可能となった時点で早期復船 4隻は、セメント運搬船です。 を希望し、19日、甲板手Aと同道のうえ復 Q 船した。 されていましたか? シーマンシップを発揮して 有効・適切な行動で危機を乗り 切る 並河 在船していた乗組員が少なかったにも関 3月11日地震発生時、並河さんはどう 大阪の本社事務所にいました。長時 間にわたる異様な揺れを感じ、その後テレ ビで詳しい事を知りました。 Q 本船のおかれた状況を知った後、並河 わらず、各自が緊急離桟とその後の大津波 さんや他の会社担当者は、本船に、どの様 に対して最も有効・適切な行動をとってく な指示や対応ができましたか。 れました。ロシア人船員の救助に際しても、 並河 危険を顧みず献身・果敢に行動してくれた 大地震発生が発生し、大津波警報が発令さ こと、また上陸中であったにもかかわらず れたことを知り、担当者より硯海丸が大船 シーマンシップを発揮して目前の本船を気 渡港に停泊中との報告を受けました。 テレビで、東北地方にとてつもない 遣いながら、危険を乗り越えて無事に避難 本船に急ぎ出港・沖出しを指示するため し復船してくれた乗組員、そして各自の協 電話連絡をとりましたが、対応に出た機関 力により、船体に殆んどダメージがなく出 長から在船しているのは4人のみで、船長 港できました。 も上陸中との報告を受けました。機関長に 最後に、本社からの適切なアドバイスと は、とにかく出港スタンバイのうえ船長の サポートに感謝し、大船渡港での東日本大 帰船を待つよう指示しました。その後、本 震災遭遇報告といたします。 船は緊急離桟と大津波に対処するため電話 (2011年3月31日) に出ることができず、また上陸中の乗組員 の携帯電話は不通状態が続きました。 14 海と安全 2011・夏号 状把握と家族対策、救助したロシア船員対 策などで忙殺されました。 16日に硯海丸の全乗組員の安否と被災地 区在住の乗組員・家族の無事を確認し解散 しましたが、その後も海務部(安全運航管 理、船員労務管理担当)では、大船渡港に まこと 取締役海務部長の並河 眞さん 乗組員全員の無事の知らせに安堵 Q もう少し、詳しくお願いします。 並河 15時30分頃、やっと本船が電話で話 すことができるようになり、電話に出た司 厨長が「船長が帰船のうえ無事離桟できた。 閉じ込められている硯海丸への支援とアド バイス、救助したロシア人船員へのケアお よびロシア領事館や代理店などと帰国方法 などの打合わせや、被災地区在住の乗組員 への優先休暇付与、福島原発事故に伴う各 種の対応を継続しました。 緊急時の通信手段の重要性を痛感 現在、船長は操船に専念しているため電話 Q に出られない。また、現在の乗組員は6人 メでしたか。 である」との報告を受けました。 並河 情報通信の手段は何が有効で、何がダ 衛星船舶電話とFAXが、唯一の通 会社全員で吉報を喜んだのはいうまでも 信手段でした。因みに阪神大震災時には携 ありませんが、力が抜けてホットしたとい 帯電話が活躍しましたが、15年間の携帯電 うか、未だ信じられない思いで、とにかく 話の爆発的な普及が裏目に出て、使い物に 「船長に余裕ができれば本社に電話連絡す なりませんでしたね。従来の有線電話も同 るよう」伝えました。 様です。 17時過ぎになって、やっと心待ちにして 今後は、本社被災時に備え、衛星携帯電 いた船長から電話の第一報が入り、出港時 話の設置を検討すべきだと思っています。 の状況、その後の津波と本船との「格闘」 Q の様子、上陸中で帰船できなかった乗組員 たたかっているとき、会社にいる者として の概況、湾内・陸上の状況などに関する報 どう思われましたか。 告を受けました。 並河 絶望的な状況で本船が、津波と走錨と 経験したことのない大津波に接し、 以後、可能であれば30分毎に情況を報告 機関長から本船在船者4人、船長も上陸中 するよう指示し、その後21時まで連絡を取 との報告を受けてから、15時30分に司厨長 り合いました。 が電話に対応してくれるまでの約1時間、 本社では同日21時に、社長を本部長、常 テレビを睨みながら、社長以下全社員がた 務を副本部長とした対策本部を立ち上げ、 だひたすら、本船と乗組員の無事を祈るこ その後、本船との連絡体制の強化とアテン としかできませんでした。何もできないの ド、上陸して復船できずにいる乗組員の現 が残念というか悔しい思いでいっぱいでし 海と安全 2011・夏号 15 たね。 Q 今回の大地震で、船舶の危機管理につ いて感じたことがあれば 並河 緊急離桟、引き続く大津波との対応 については、例えタイムリーに船長と連絡 がとれたとしても、時事刻々と変化する状 況に対して的確な指示・助言を与えること は不可能です。 ロシア船の救命ボートが大活躍した。左は錨鎖に絡んだロープ、 漁網などを除去するのに苦労する甲板長 30日に東京に入港した硯海丸には、高橋 未曾有の甚大な被害を出した大津波に打 章雄常務と小職が訪船しました。乗組員の ち勝てたのは、船長のリーダーシップと卓 元気な姿を確認できた時、本当に涙が出る 抜した操船技量、それに乗組員個々の統一 思いと感謝の気持ちで一杯でした。 的な英雄的行為によるものと思います。 また、本船荷主である太平洋セメントと これは、船乗りだけが持つ、時化や大自 運航者である第一中央汽船の担当者も訪船 然などと日常的に遭遇することによる危機 していただきまして、船長と乗組員に対し 管理に対する意識が一般人と違いがあるの 敬意と謝辞を述べてくれました。 と、シーマンシップが最大限に発揮された 結果ではないかと思います。 遺憾なくリーダーシップを発揮し、卓抜 した操船技量により本船の安全を確保した 本社の支援体制は、それ以後もロシア人 船長、危険を顧みず英雄的ともいえる行為 船員の帰国に向けた関係先(ロシア船代理 でホーサーを離しに桟橋に降りてくれた二 店、海上保安本部、運航者など)との折衝、 航士、その二航士を助けた二機士、不慣れ 長期停泊に対する食糧・清水さらには燃料 な係船装置・航海計器などを適切に操作し、 の確保や精神面でのケア、陸上避難した乗 また本社との連絡役をしてくれた一機士と 組員への対応、福島原発沖航行への情報収 司厨長。機関室で孤軍奮闘してくれ、また 集・助言などを実施しました。 貴重な現場写真を撮ってくれた機関長、さ 危機対応には 優秀な船員の確保に尽きる Q 最後に読者にひとことお願いします。 並河 らに座礁したロシア船乗組員の救助を実施 した在船者の6人、また津波襲来時には帰 船できなかったが、自らの命をも顧みず、 本船の安全を最優先に考え帰船しようと努 当社の場合、幸いにも硯海丸のみな 力し、最終的には複船できた3人、船内休 らず被災地区に住む20人の乗組員・家族が 暇付与により在宅中に被災したが、本船出 無事で良かったのですが、未曾有の大震災 港のため自転車で半日をかけ復船してくれ で、多くの方々がお亡くなりになり、また た1人に、彼らのグッド・シーマンシップ 被災された方々に心よりお見舞い申し上げ に対し心より敬意を表し、お礼をいいたい。 るとともに、被災地の一日でも早い復興を この度の本船乗組員の活躍は、今後の当 心からお祈り申し上げます。 16 海と安全 2011・夏号 社の語り草になるだろうと思います。 緊急リポート③ 東日本大震災!油タンカーで燃料油の積荷中 その時・その後の海は? 富士石油株式会社 袖ヶ浦製油所バースマスター 和田 礼治 平成23年3月11日14:46、宮城沖を中心とした東日本大震災(M=9. 0)が発生し、その とき富士石油㈱袖ヶ浦製油所の12万 DWT 桟橋で、バースマスターとして油タンカーの PETALOUDA 号で燃料油の積荷業務に携わっていました。地震とその振動の大きさに驚き、 危険を感じ急遽離桟を実施しました。震災直後、気象庁より発表された姉ヶ崎の震度は5弱 との事でありましたが、当所設置加速度計ではパルス50Gal 以上80Gal 未満を記録していま した。バースマスター(以下、B/M と記す)として、小生が燃料油の積荷業務に携わって いた船舶の概略は下記の通りです。 当所着桟船舶 PETALOUDA 号の概略 ⥲ࢺࣥᩘ 26,913GT ⯪ D W T 47,322DWT ⯪ 㛗 182.50m ⡠ ⡠ ࣂࣁ࣐ Nassau ⯪ 㛗 ᅜ ⡠ ࣟࢩ ࣟࢩ㸤࢘ࢡࣛࢼ 㸦ィ19ྡ㸧 ᖜ 23.23m ᆺ ῝ 18.10m ✚ⲴணᐃἜ✀ ⇞ᩱἜ ‶㍕ႚỈ 12.617m ✚Ⲵணᐃᩘ㔞 50,600kl ⤌ ဨ 荷役開始直後、巨大地震発生 振動の大きさに驚く 3, 000㎥/h まで流量を上げるため、小生 は甲板上(マニホールド)で安全確認・監 視作業や作業員への指示作業に従事し、所 本船は、当日05:00千葉港外に到着し、 定の流量まで問題なく上昇させ、本船荷役 09:50水先人嚮導のもとシフトを開始し、 制御室(以下、COC と記す)へ戻る途中 11:45着桟完了した。 の14:50頃に地震を感じ、その振動の大き その後、タンク検査など荷役準備が完了 さに驚いた。 し、13:20ローデングアーム(以下、LA 「これは巨大地震(南海・東南海地震?) と記す)の接続・荷役打合せなどを行い、 ではと推察、直ちに計器室に地震のため緊 14:25積み荷役を開始した。 急荷役停止を要請すると同時に、荷役作業 荷役開始時は、 陸側にある統合計器室(以 員へ LA 切り離し準備のため人員の配置を 下計器室と記す)と連携しながら本船との 荷役用無線にて要請し、小生の頭には多少 打 合 せ た 流 量(500㎥/h)を 維 持 し、本 の混乱があったが取り急ぎ COC に戻った。 船の船倉への流入・配管などの安全確認作 業 を 行 っ た。14:35∼14:45頃 に か け て 本船一航士は完全にパニック状態にあり、 緊急停止ボタン(陸上出荷ライン緊急停止 海と安全 2011・夏号 17 ボタン=通常は一航士と B/M が口頭にて くそ力」で窒素押し・2本の LA 切り離し 連携しているが、緊急用に本船に渡してい 作業をなんとか終えたのが、15:20だった。 るバックアップ用無線式緊急停止ボタン) 混乱極める中、たった3人で25分を要した を持ち顔面蒼白で喚いていた。 が良く完了できたと後で思う。 小生はすでに緊急停止した旨を一航士へ この間の15:10頃、計器室より「緊急離 伝え、LA を切り離す準備をするので、船 桟可能か?可能なれば緊急離桟するよう 倉・ラインの弁を現在の状態を維持するよ に」と指示があり、現在急離桟すべく準備 うに伝えた。緊急停止完了を待つ僅かな時 作業中の旨を報告する。 間であったが COC の船窓から見た LA の この時の船体動揺状況は、いずれも目視 大きな揺れを見て、小生も多少パニック状 で横方向へ2m 程 度、前 後 方 向 へ は5m 態に陥りかけた。 程度であった。当時の係留状態は船首部が、 「これはいかん!冷静に対応しなけれ 流し4本・ブレスト2本・スプリング2本 ば」と思ったが、どの様に伝え・どの様に で、口径36ミリの DYNEEMA(特殊な係 指示したのかは、今では定かではない。 船索で通常より細く扱いやすい)は、いず 「火事場のくそ力」で 危機の第一段階を突破 れも本船ドラムに係止していた。船尾部も 船首同様に、32ミリの POLYPROYLENE (これも特殊な係船索)で流し4本・スプ 計器室より、 緊急停止完了(ポンプ停止・ リング2本を本船ドラムに係止、ブレスト 吐出弁閉止)したと14:50に連絡があり、 2本 は32ミ リ の 陸 上 荒 天 用 WIRE(以 下 その後桟橋の中間弁・LA 元弁の閉止を指 SW と記す)をドラム係止で係留しており、 示し、完了したのが14:55。 地震の初動衝撃で前述の移動があったにも 緊急停止が安全に完了した事を確認した 後、LA を切り離すべく甲板上に戻り桟橋 の中間弁などの閉止を確認後に窒素押しを 拘らず、よく切れずに係留を維持できたも のだと思った。 ಀ␃ᴫ␎ಀ⯪⣴ 行う(パイプや LA 内の残油を押し出し漏 油防止する) 。 SW ࣈࣞࢫࢺ㹶㸰 当時甲板上には最終安全確認のためにい た荷役作業員1人、無線を聞いて近くにい て駆けつけてくれた当所運転員1人と小生 ࢫࣉࣜࣥࢢ㹶2 ὶࡋ㹶4 の3人、それと陸上側には数名いたが、 (船 本所は、荒天時や係留力の少ない船を安 体移動の為)乗船不可能な状況にあり、通 全に係留するため装備されている32ミリの 常より少ない人員ではあったが3人で LA SW ワイヤードラムを、本船と組み合わせ 切り離し作業を開始した。 安全な係留を心がけた事と、乗船後打合せ LA 切り離し作業は、通常時では15分位 で、係留索は常時平均に、かつタイトに張 掛かっていたが、3人はまさに「火事場の り合わせるように指示したのが幸いした。 18 海と安全 2011・夏号 係留索は常時平均に、 かつタイトに張り合わせ船体を 保持 あった。たぶん回頭し避難するだろうから その後、船体がなんとか岸壁と接触して 何とか避難終了後に、LNG 船に乗ってい いるのを確認し、陸上の作業員全員の下船 る水先人に本船に乗ってもらい離桟したい を指示、安全な下船を確認後、岸壁近くの と思いながら、通信できないジレンマを感 者は近くの桟橋監視所の二階に退避するよ じていた。 見る余裕が出てきて、木更津方向を見ると LNG 船が某発電所に着桟すべく移動中で うに指示した。ふと東京方面をみると二筋 最悪の場合は、日没までには船長と小生 の火煙が見え、COC に戻る途中、姉ヶ崎 とで離桟を試みようと、その際の操船方法 方向をみると某製油所から火の手が上がっ などの協議を行った。 船長との合意内容は、 ているのを確認できた。以上の状況を確認 しながら COC に戻り一航士に状況を説明 ① した後船橋に昇橋した。 船索を解纜する。 外部との通信は荷役用無線機のみ ② 初めに SW を解纜、その後に後部 係 次にブレストライン巻き、後部を岸壁 から離す。 船橋にはロシア人船長がおり、主機の準 ③ その後、前部流しを解纜する。 備が完了しているので直ちに離桟したいと ④ 解纜後、ブレストライン・スプリング の事。しかし、国際 VHF での通信は錯綜 ラインを同時に巻きながら、機関を使い後 し、どこにも通信が不可能。当時、携帯電 進し、岸壁と船体が離れたら残りの係船索 話を2台所持していたが、これも通信制限 を解纜し離桟する。 がかかり通信不可能。外部との通信は荷役 ⑤ 用無線機のみとなり、どこにも連絡が取れ ける。 ない状態となった。 ⑥ そこで荷役用無線機を使い、陸上側の各 所に水先人への緊急乗船を依頼したが、な かなか連絡は取れなかった。 離桟完了後、安全な水域まで後進を続 安全な水域に来たなら、回頭し安全か つ広い水域で投錨する。 本船の船長は、安全な錨地まで小生も乗 って行って欲しいと嘆願したが、再着桟ま この頃にオイルフェンスの解放作業も終 でどれ位かかるのかわからないのと、製油 了、作業に従事していた小型作業船へ食料 所での次の作業が立て込んでいるのを理由 を積み込み、東京湾の中央で船首を湾口に に断った。 向け、機関で針路を維持しながら、次の指 示を待つように退避を指示した。 船橋で種々の手段で通信を試みながら、 やっと水先人の乗船が決定 15:14、代理店より電話がようやく通じ 現在水先人と連絡が取れない状況にあるが、 たとの連絡があり、前記の LNG 船を嚮導 船長には連絡付き次第離桟することを伝え していた水先人から「本船はどうするの た。この頃には小生も冷静さが戻り外部を か」と問い合わせがあり、即答にて乗船・ 海と安全 2011・夏号 19 嚮導をお願いした。 船長は、どうしても不安があるので小生 舶関係者を配し情報収集が必要と思われる。 ⑤ 以前、大都市大震災軽減化特別プロジ も錨地まで同乗し、再着桟まで乗船してほ ェクト(通称:大大特)などで南海・東南 しいとの事であったが、前記の事情もあり 海地震発生時の津波のシミュレーションが 申し出をことわらざるを得なかった。 なされ、海上保安庁の HP で江ノ島付近は 16:45水先人が乗船し船橋にて、水先人、 公開されたが、東京湾内でもシミュレーシ 船長、小生とで離桟方法を確認し、陸上作 ョンし公開されることを望みたい。 業員に陸上側の SW の解纜準備を指示し ⑥ 降橋した。 2時間後に引き波から始まり目視で約30 降橋後、本船乗組員と 供 に 陸 上 側 SW 当所での津波の状況は、地震発生後約 cm であった。 の解纜作業を監督・指導し無事解纜し下船 ⑦ した。 船するという「暗黙」のルールがあるが、 昔から船長は、最善を尽くし最後に退 本船は、17:05に無事離桟完了し、桟橋 今回は長い船員生活(数知れぬ荒天遭遇、 と陸上側の人的被害も無く、緊急事態を乗 機関や荷役機器のトラブル、荷役中のアク り切れた。また、船体および乗組員も無傷 シデントの経験など)が功を奏し何とか緊 で避難できたことは、何よりも海陸人員が 急離桟の任務が遂行できた。 一体となって取り組んだ機敏な行動と幸運 ⑧ が重なったものと思われる。 受け3月13日12:50水先人が乗船、再着桟 思い出す事と 今後に向けた要望事項 ① 前述したが、携帯電話での通話はほぼ その後本船は、津波警報などの解除を し順調な荷役が推移され、3月14日16:50 無事離桟完了し出航して行った。 ⑨ 東京湾での津波情報や津波被害情報 がなく、1mくらいの津波があったと聞く 不可能で通信状態の確立が急務。(緊急用 が情報開示が望まれる。 通信機器の指定を受ければ可能と思うが、 (4月20日の日本経済新聞によると木更津 申請などはかなり困難と聞いている) でも約2mの水位上昇があったと報道があ ② った) 所内連絡体制は確立され機能していた が、外部との連携が①同様まったく困難だ 最重要点は、今回の大震災で公共通信が った。 陸上電話も携帯電話も全く途絶え、国際 ③ 船舶は、直接外部と連絡するには国際 VHF も使うことができず、通信・連絡手 VHF で行われるが、当時は輻輳し混乱し 段が原始時代の孤島と同じ状態となり、船 て、まったく使うことができなかった。 舶における緊急時の通信手段の確立の絶対 ④ 的な必要性を痛感した次第です。 本当に欲しい地域的津波の潮位変動・ 到達時間などの情報がなく、情報源は陸上 側からの TV 情報のみであり、今回は陸上 から多くの支援があったが、陸上側にも船 20 海と安全 2011・夏号 2011年4月21日記 取材ルポ 対馬海流とともに流れ着く 多様な漂着ゴミの現実 漁業と観光の町・上五島地区 わが国は6, 852の島嶼により成りたつ島国である。このうち本州・北海道・四国・九州そ れと沖縄本島を除く6, 847が離島と呼ばれる。このうち417の島々に人々が暮らしている(2010 年4月現在) 。なかでも長崎県は55の有人島があり全国有数の島嶼を有している。こうした 事から同県は海岸線も長大で、とりわけ島嶼部は、わが国の領域、排他的経済水域の保全、 海洋・水産資源の確保利用、さらには自然環境の保全などに重要な役割を果たしている。そ の中のひとつ、漁業と観光の町・上五島地区を取材した。 長崎県の多くの島嶼部には、アジア大陸 に接する最西端に位置することから、古く から大陸との交通の要所となっていて、元 寇史跡、遣唐使・遣隋使・朝鮮通信使など 中国や朝鮮半島との豊かな交流の歴史が残 されている。 2000(平成12)年頃から、冬季に長崎県 から日本海沿岸地域全般にかけて大量のポ リタンクが漂着するようになり、今日に至 上五島の夕陽と浜辺 (写真提供は民宿・西海壮 角谷和明さん) っても漂着は続いている。長崎県は、島嶼 市が103個と続いていて、今年に関してい の多いことと、黒潮から分岐した対馬海流 えば上五島地区がダントツに多い。 などによって全国有数の漁業・水産物の水 揚げを誇るが、2000年以降、大量の漂流・ 漂着ゴミが押し寄せる深刻な事態が続いて いる。 東京より1時間遅れの日没 進路方向は沈む夕陽でまぶしい 長崎市の旅客ターミナルから新上五島町 2009(平成21)年の廃ポリタンクの漂着 の中通島にある鯛ノ浦港まで、五島産業汽 個数は全国的には約17, 000個となっている 船の高速艇「びっくあーす」(229総トン、 が、長崎県は最も多く約2, 500個が漂着し 30ノット)に乗ると1時間30分で着く。本 ている。また、2011(平成23)年1月、長 船は定刻の午後5時に長崎港を出港し、湾 崎県が実施した2010年の廃ポリタンクの漂 外に出ると一路、西北西に進路を向ける。 着に関する実態調査によると、漂着個数の 旅客室内前方には「お知らせ」としてA 合計が1, 157個、その内訳は新上五島町に 4サイズの印刷物が縦書きで掲示されてい 758個(66%) 、次に五島市に126個、対馬 た。内容は「流木が多く航路上に流れてい 海と安全 2011・夏号 21 ます。その為に急旋回、急停止することが ありますので、十分ご注意されますようお 願いいたします。船長」とある。 流木は高速船の天敵だ。衝突したらひと たまりもない。 港外に出てからブリッジで乗組員に聞い 左:佐々木一明機関長、右:千野康則船長 てみた。針路方向に太陽が沈みかかってい て進路前方の海面は反射して見えにくい。 張りに全神経を注いで航海しているが、漂 流ゴミとりわけ海中に浮遊するゴミは見え ない」と千野康則(ちの やすのり)船長。 視界でとらえられる材木や漂流ゴミは、 当然、減速したり変針して避航するが、視 認できないものは「神のみが知る」ことと 進路方向は夕陽で目がくらむ 高速艇「びっくあーす」のブリッジ なり、海水吸入口が詰まってしまったり、 推進翼を破損してしまうこともあるという。 「この時間帯はいつもの事ですね」と話 高速船はそうしたリスクを抱えながらの連 してくれたのは佐々木一明(かずあき)機 続、「短い航路ですが、無事に航海を終えれ 関長。本船は4000馬力のウォータージェッ ばその都度安堵します」と千野船長という。 ト2基(ウォータージェット推進は、後方 に高圧のウォータージェットを噴出する事 で推進力を得る方式)を搭載した高速艇で あるだけに、海上に漂うゴミには神経を使 うという。 多島美と史跡と キリスト教会のある上五島 長崎県の最西端・五島列島の北部に位置 する新上五島町は、中通島や若松島など7 数年前、大量の材木が流れていたことが つの有人島と60もの無人島が連なり、その ある。そうした時には速度を落としたり、 多島美は日本でも1、2をあらそう。大部 視界不良時や夜間は運航を中止した。 分が西海国立公園に指定され、変化に富ん 現在、夜間航海はなくなっているが、昼 間航行であっても視界不良時はいつも緊張 だリアス式海岸、そして懐かしい集落風景 がそこここにある。 するそうだ。レーダー2台を連続使用して 古くは縄文・弥生時代の遺跡が点在し、 注視しているが、やはり目視が一番頼りに 奈良時代からは遣唐使船の寄港地として、 なり重要だという。 また鎌倉時代には海の要塞として、さらに ウォータージェット推進は大量の海水を は安土桃山時代から江戸時代にかけて、新 吸入して、高圧にして推進力に代えるだけ 天地を求めて島々に渡ってきたキリシタン にロープや網などを吸いこんだらひとたま の里として、固有の文化が今も残っている。 りもない。それだけに「前方を注視して見 そして、五島の自然が育んだ海の幸・山 22 海と安全 2011・夏号 の幸は豊かで、昨年のテレビドラマで有名 な漁業被害には となった坂本龍馬も訪れ、史跡もある。 なっていない」 鯛ノ浦港から北 らしい。ただ漁 西に車で15分位走 業者などが廃ポ ると上五島町漁業 リタンクを発見 協同組合のある青 した場合には、 方港がある。 内容物がある場 合には触ること 最初に上五島町 上五島町漁協・業務部長の切江英臣 さん 漁業協同組合・業 新上五島町役場水産課の古木文雄さん 務部長の切江英臣 課と連携して処分しているそうだ。 を厳禁して環境 さんを訪ねた。切 水産課としては年に数回、集落単位で行 江さんによると っているゴミの回収作業を漁協と共同して 「ゴミが最も流れ着いてきている所は青方 実施していること、船舶や網の破損などが 港沖合にある無人島の祝言島」とのこと。 生じた場合は、漁協と連携して保険金支払 他地区はすでに町役場水産課や環境課の いの事務的手続きの協力などをしているこ 応援と漁協が事務局となって何度もゴミ回 収作業をしてきたが、祝言島や島の西部に ある熊高海岸などの人里離れた海岸は手つ かずだという。 廃ポリタンクの漂着については「町役場 とを話してくれた。 環境課環境政策班の前田光昭(みつあ き)係長にも話をうかがった。 前田さんによると前記の新上五島町に漂 着した廃ポリタンク758個は、前田さん達、 が調査して県の方に連絡している」とのこ 環境課のスタッフが各地の海岸に出向き一 と、県からは役場や海保を通じて漁業者に つずつ回収し、内容物の有無、文字の国別 取扱いの注意喚起がなされるようだ。 識別や表記などを調査し、集約して県に報 切江さんには、中通島の各地区の海岸・ 告したものであること、県に報告した後で 海浜での漂着ゴミの状況を教えていただき、 もさらに廃ポリタンクが見つかっていて 「都合が付くなら祝言島にいってみよう」 872個になっている現状などを説明してく とのこと、また、明日9時から島北部の奈 れた。 摩湾の青砂地区でゴミの回収作業があるの 廃ポリタンクで中身が入っているものに で同行させてもらうことなどを約束して、 ついては、保険所と協力しながら中和して 町役場の環境課と水産課にも行ってみた。 処分する。その後、ポリタンクは破砕処理 漂着した廃ポリタンクは 役場職員が一つずつ回収・調査 して一般ゴミとともに中通島北部の山間に 位置しているゴミ焼却施設で焼却処分する そうだ。そのコストもバカにならないとい 水産課の古木文雄さんによると「廃ポリ う。焼却コストは地域グリーンニューデ タンクの漂着によって今のところ、直接的 ィール基金(海岸漂着物地域対策推進事 海と安全 2011・夏号 23 業)で付保して いるが、あと一 年で終了するの で、その後が気 になるところだ という。 当地区は例に もれず過疎化と 新上五島町役場・環境課環境政策班の 前田光昭さん 熊高海岸に散乱する漂着ゴミ 高齢化が進行し、 青年などが参加 人員と多大のコストがかかる。 するボランティア団体はあっても少ない。 対岸の無人の祝言島もこの熊高海岸から あくまでも漁業者を中心とした集落の人々 見えるが、漂着物の多い島の反対側はどう が、自分たちの生活の場として集落ごとに なっているのか気になるところだ。 海浜の清掃にあたっている。 地図には載っているが、カーナビには表 実施する海岸の清掃については離島漁業 示されない山道を通りぬけて青方港北方に 再生支援交付金制度などで充当されている 位置する奈摩湾に向かう途中の山あいに、 ようだ。 上五島広域グリーンセンター(ごみ焼却施 熊高海岸は漂着ゴミが散乱 設)があった。 同グリーンセンターは8年前に建設され、 人里離れた西岸寄りの山深い中腹の通り 上五島地区全般の家庭ゴミの処理を担って から、熊高海岸が見えたので降りてみた。 いる。建設の立ち上がりから勤務しセン 普段、人の訪れることが少ないであろうこ ター長をしている田中朋玲(ともあき)さ の海岸は、石がどれもこれも真ん丸として んは、「海岸に漂着した廃ポリタンクは内 いるのが特徴的で珍しい。押し寄せる波と、 容物がなくなった時点で、破砕処理する必 この丸い石どうしが幾重にもぶつかり合う 要のあるものは破砕処理し、必要のないも 音だけが聞こえる、典型的にのどかな海岸 のはそのまま家庭ゴミとして処理してい 風景である。しかし海岸には多種多様なゴ る」という。 ミが押し寄せて散乱し一部は偏在し、手付 かずの自然の美観を著しく損ねていた。 一般ゴミは当然、ビンや缶などに分別処 理してリサイクルできるものはリサイク 漁港や海水浴場は、作業場であったり ル・プラザにまわすが、リサイクルできな 人々が頻繁に訪れる海浜であったりするの いものは破砕して900℃以上の高熱で焼却 で、ゴミ回収作業が時々に行われるのであ 処理するそうだ。最終的にはスラグとして ろうが、こうした人里離れた海岸は無視さ 建設資材に再利用するという。田中セン れ放置され、忘れられているのが現実のよ ター長がいつも心掛けていることは「排出 うだ。仮にゴミを回収するにしても多くの ガス基準を常時厳守することはもちろん、 24 海と安全 2011・夏号 住民が安心して安全に暮らせるように処理 することに万全を尽くすこと」だという。 漂着ゴミの回収は年に何度も 過疎化の集落の負担は重い で養殖した「クエは喰えない」と笑う。 年に数回、集落単位でゴミの回収作業を しているらしい。「明日、9時からあそこ でゴミ拾いをやる予定」と、漁協の切江さ んから聞いた同じ場所を教えてくれた。 日差しが柔らかい奈摩湾の人影も見えな 翌日、漁協の切江さんの自家用車に同乗 い小河原地区の岸壁に行ってみると、数か させてもらい青砂地区の海浜に行くと、す 所に回収したゴミが積まれていた。傍らで でに60人位の集落の方が集まっていた。 イケス網の整備に余念のない宇原一郎さん がいた。宇原さんは、元々近海巻き網船に 「来るのを待っちょったぞ」と宇原さん に声をかけられた。 乗っていた漁船員。老後は自宅の傍でクエ のイケス養殖を生業としていて、天気がい いので網に付いた海藻や貝類などの不純物 を取り除いていた。 青砂地区の海浜に漂着したゴミ 集まった方々には若手は見受けられなか ったが、10人位ずつで5カ所に分散し、ゴ ミの回収作業に就いた。海浜には、漁具、 漂着ゴミを回収する青砂地区の人々 後列左端:宇原一郎さん 材木片、網、ロープ、ワイヤー、外国語表 宇原さんによると「台風が来て、風向き 記の飼料か肥料の入ったバッグ、人工的な によってはこの辺(の海)がゴミで一杯に 生活廃棄物さらには「過酸化水素」と日本 なる」こともあるそうだ。そうなると、養 語表記されたポリタンクなどなど。 殖のイケスにもゴミが絡むし、船の出入り 少人数で、完全に回収するのは時間も要 にも悪影響を及ぼす。数年前には、大量の する大変な作業が続く。回収ゴミは、あち 材木が流れ着いてきて「船を出すにも出せ らこちらから軽トラックに乗せられ、青砂 ず、漁にならなかった事もある」と話す。 地区の一カ所に集められ、後日に役場に回 クエは成長して出荷するまで5∼6年か 収してもらうそうだ。 かる。養殖の生育具合を尋ねると「燃料も 漁協の切江さんは「集落の人にとっては 高いし、魚価は下がるし、エサ代はかかる 面倒な作業だが、これをやらないと漁も養 し、やってられないよ」と笑う。しかし、 殖もできんけんね」と語っていたのが、印 エサをやる時に、クエは分かるのか一様に 象的であった。祝言島には、時化で渡るこ 口を空けて宇原さんに寄ってくるそうだ。 とができなかった。 それだけに情が移り可愛いくなって、自分 海と安全 2011・夏号 25 海洋ごみの現状と海岸漂着物処理推進法 環境省 水・大気環境局海洋環境室 はじめに 本稿に寄稿するにあたり、このたびの東 日本大震災によって被災された方々に、心 よりお見舞い申し上げます。被災地域の厳 しい状況が一日も早く改善するよう、我わ れとしても努力してまいります。 今回の東日本大震災によって、甚大な量 の漂流・漂着ごみが発生しており、その処 理についても大きな問題となっています。 長崎県対馬市の海岸に漂着したゴミ 陸上に残された多くの災害廃棄物に加え、 と推定されており、国外から漂着したと思 漂流しているものや海中に沈んだものにつ われるペットボトルが60%以上を占めるな いても、その処理などが引き続き問題とな ど、国外からの漂着ごみが多いことが分か っていますが、本稿においては、通常時に っています。また、当該地域においては、 おける漂流・漂着ごみ問題の現状と取り組 外国由来の廃ポリタンクや漁具などの漂着 みを中心に報告します。その知見は、災害 も多く報告されています。 起因の廃棄物を処理する際にも有益です。 漂流・漂着ごみの状況 近年、日本各地の海岸に、国内外からの また、同報告書によれば、三重県鳥羽市 にある答志島においても、台風や大雨の出 水時に流木や漂流・漂着ごみが大量に生じ るほか、湾口部に位置する島嶼であるため、 漂着物が大量に押し寄せており、海岸の環 海流の関係上、流木、漂流ごみのフィルター 境の悪化、美しい浜辺の喪失、海岸機能の 的な役目となるために、季節を問わずごみ 低下、漁業への影響などの深刻な被害が生 が漂着していることが分かっています。 じています。 こうした問題に対応するため、これまで 例えば、環境省において、漂着ごみの実 にも、国・地方公共団体・民間団体が様々 情を把握するために平成19年度から平成21 な取り組みをすすめてきました。しかし、 年度にかけて実施された「漂流・漂着ごみ これらの努力にもかかわらず、なお処理し に係る国内削減方策モデル調査」の報告書 きれない質・量の海岸漂着物が各地の海岸 によれば、モデル地域の一つである長崎県 に流れ着いていること、海岸漂着物につい 対馬市においては、1年間に海岸1km あ ては排出源が不明な場合が多く、関係者の たり約24トンという大量のごみが漂着する 責任が明確でないこと、国内の他の地域や 26 海と安全 2011・夏号 海と安全 2011・夏号 27 外国からの海岸漂着物が原因であるため、 することが必要であることから、良好な景 海岸における取り組みだけでは問題解決に 観の保全や生物多様性の確保に配慮し、総 つながらない状況にあるといったことなど 合的な海岸の環境の保全および再生を図る から、依然として海岸を有する地域におい ことが基本理念として明記されました。 て重要な課題となっています。 関係者の責任の明確化 こうした状況を踏まえ、平成21年7月に、 法制定以前は、海岸漂着物の処理に関す 海岸漂着物対策の推進を図ることを目的と る関係者の責任が不明確であることが海岸 して、 「美しく豊かな自然を保護するため 漂着物問題への対応が進まない大きな要因 の海岸における良好な景観及び環境の保全 の一つとなっていたことから、海岸漂着物 に係る海岸漂着物等の処理等の推進に関す の円滑な処理を推進すべく、海岸管理者な る法律」(平成21年法律第82号。以下「海 どの処理責任と市町村の協力義務が明記さ 岸漂着物処理推進法」という)が成立し、 れました。 同月の公布と同時に施行されました。 多様な主体の適切な役割分担と連携 また、同法に基づき、海岸漂着物などの の確保 回収・処理、発生抑制について示した基本 地域における海岸漂着物対策推進協議会 方針が平成22年3月30日に閣議決定されま や関係省庁による海岸漂着物対策推進会議 した。今後は、国において定められた基本 の設置、民間の団体などとの連携および支 方針をもとに、各地域において都道府県が 援、外交上の適切な対応や国際的な協力の 地域計画を策定し、持続可能な体制の下で、 推進など、多様な主体の適切な役割分担と 地域の実情を踏まえた海岸漂着物対策が行 連携の確保を図ることが明記されました。 われることが望まれます。 海岸漂着物の発生抑制に向けた施策 本稿においては、海岸漂着物処理推進法 の明記 の基本的なポイントについて説明するとと 海岸漂着物対策は、海岸漂着物の処理だ もに、現在行われている海岸漂着物対策の けではなく発生抑制対策についても併せて 取り組みを紹介します。 行うことが必要であることから、国および 海岸漂着物処理推進法のポイント 海岸漂着物処理推進法の主な内容は次の 地方公共団体が、発生状況・発生要因にか かる定期的な検査、不法投棄防止に必要な 措置ならびに土地の適正な管理に関する必 とおりです。 要な助言および指導に努めることが明記さ 基本理念 れました。 海岸に漂着したごみの多くは、もとは国 都道府県による地域計画の策定 民一人一人の日常の暮らしから出たごみで 海岸漂着物は、被害の実態、発生原因だ あり、良好な海岸の景観の保全や、再生を けでなく、処理などにあたっての関係者の 図っていくためには、国民全体で海岸漂着 役割のあり方なども地域の実情に応じて 物対策の必要性を認識し、取り組みを展開 様々であることから、政府は、基本理念に 28 海と安全 2011・夏号 ⨾䛧䛟㇏䛛䛺⮬↛䜢ಖㆤ䛩䜛䛯䜑䛾ᾏᓊ䛻䛚䛡䜛Ⰻዲ䛺ᬒほཬ䜃⎔ቃ䛾ಖ䛻ಀ䜛 ᾏᓊ⁻╔≀➼䛾ฎ⌮➼䛾᥎㐍䛻㛵䛩䜛ἲᚊ䠄ᾏᓊ⁻╔≀ฎ⌮᥎㐍ἲ䠅䛾ᴫせ ┠ⓗ ᾏᓊ䛻䛚䛡䜛Ⰻዲ䛺ᬒほཬ䜃⎔ቃ䜢ಖ䛩䜛䛯䜑䚸ᾏᓊ⁻╔≀䛾䛺ฎ⌮ཬ䜃Ⓨ⏕䛾 ᢚไ䜢ᅗ䜛 ㈐ົ䞉㐃ᦠ䛾ᙉ ᾏᓊ䛻䛚䛡䜛Ⰻዲ䛺ᬒほཬ䜃⎔ቃ䜢ಖ䛩䜛䛯䜑䚸ᾏᓊ⁻╔≀䛾䛺ฎ⌮ཬ䜃Ⓨ⏕䛾 ᢚไ䜢ᅗ䜛䚹 䐟ᅜ䛾㈐ົ 䐠ᆅ᪉බඹᅋయ䛾㈐ົ 䐡ᴗ⪅ཬ䜃ᅜẸ䛾㈐ົ 䐢ᾏᓊ䜢᭷䛩䜛ᆅᇦ䛾䜏䛺䜙䛪䛩䜉䛶䛾ᆅᇦ䛻䛚䛡䜛㛵ಀ⪅㛫䛾㐃ᦠ䛾ᙉ ᾏᓊ⁻╔≀➼䛾䛺ฎ⌮ 䠄䠎䠅ᆅᇦእ䛛䜙䛾ᾏᓊ⁻╔≀䜈䛾ᑐᛂ 䠄䠍䠅ᾏᓊ⟶⌮⪅➼䛾ฎ⌮䛾㈐௵➼ 䐟ᾏᓊ⟶⌮⪅䛿䚸ᾏᓊ⁻╔≀➼䛾ฎ⌮䛾䛯䜑ᚲ せ䛺ᥐ⨨䜢ㅮ䛨䛺䛡䜜䜀䛺䜙䛺䛔 䐠ᾏᓊ⟶⌮⪅䛷䛺䛔ᾏᓊ䛾༨᭷⪅➼䛿䚸䛭䛾ᅵ ᆅ䛾Ύ₩䛾ಖᣢ䛻ດ䜑䛺䛡䜜䜀䛺䜙䛺䛔 䐡ᕷ⏫ᮧ䛿䚸ᚲせ䛻ᛂ䛨䚸ᾏᓊ⟶⌮⪅➼䛻༠ຊ䛧 䛺䛡䜜䜀䛺䜙䛺䛔 䐢㒔㐨ᗓ┴䛿䚸ᾏᓊ⟶⌮⪅➼䛻ᑐ䛧䚸ᚲせ䛺ᢏ ⾡ⓗຓゝ➼䛾ຓ䜢䛩䜛䛣䛸䛜䛷䛝䜛䚹 䐣ᕷ⏫ᮧ䛿䚸ఫẸ䛾⏕άཪ䛿⤒῭άື䛻ᨭ㞀䛜 ⏕䛨䛶䛔䜛䛸ㄆ䜑䜛䛸䛝䛿䚸ᾏᓊ⟶⌮⪅䛻ᑐ䛧䚸 ᚲせ䛺ᥐ⨨䜢䛸䜛䜘䛖せㄳ䛩䜛䛣䛸䛜䛷䛝䜛䚹 䐟㒔㐨ᗓ┴▱䛿䚸ᾏᓊ⁻╔≀䛾ከ䛟䛜䛾㒔㐨 ᗓ┴䛾༊ᇦ䛛䜙ὶฟ䛧䛯䜒䛾䛷䛒䜛䛣䛸䛜᫂䜙䛛 䛷䛒䜛䛸ㄆ䜑䜛ሙྜ䛿䚸䛾㒔㐨ᗓ┴䛾▱䛻ᑐ 䛧䚸ᾏᓊ⁻╔≀䛾ฎ⌮䛭䛾ᚲせ䛺㡯䛻㛵䛧䛶 ༠ຊ䜢ồ䜑䜛䛣䛸䛜䛷䛝䜛䚹 䐠⎔ቃ⮧䛿䚸䐟䛾༠ຊ䛾ồ䜑䛻㛵䛧䚸ᚲせ䛺䛒䛳 䛫䜣䜢⾜䛖䛣䛸䛜䛷䛝䜛䚹 䐡እົ⮧䛿䚸ᅜእ䛛䜙䛾ᾏᓊ⁻╔≀䛜ᅾ䛩䜛䛣䛸 䛻㉳ᅉ䛧䛶ᆅᇦ䛾⎔ቃ䛾ಖୖᨭ㞀䛜⏕䛨䛶䛔䜛 䛸ㄆ䜑䜛䛸䛝䛿䚸ᚲせ䛻ᛂ䛨䚸እୖ㐺ษ䛻ᑐᛂ䛩 䜛 䐢㒔㐨ᗓ┴▱䛿䚸ᾏᓊ⁻╔≀䛜ᅾ䛩䜛䛣䛸䛻㉳ᅉ 䛧䛶ᆅᇦ䛾⎔ቃ䛾ಖୖⴭ䛧䛔ᨭ㞀䛜⏕䛪䜛䛚 䛭䜜䛜䛒䜛䛸ㄆ䜑䜛ሙྜ䛻䛚䛔䛶䚸≉䛻ᚲせ䛜䛒 䜛䛸ㄆ䜑䜛䛸䛝䛿䚸⎔ቃ⮧䛭䛾䛾㛵ಀ⾜ᨻᶵ 㛵䛾㛗䛻ᑐ䛧䚸ᙜヱᾏᓊ⁻╔≀䛾ฎ⌮䛻㛵䛩䜛༠ ຊ䜢ồ䜑䜛䛣䛸䛜䛷䛝䜛䚹 ᾏᓊ⁻╔≀➼䛾Ⓨ⏕䛾ᢚไ ᅜཬ䜃ᆅ᪉බඹᅋయ䛿䚸 䐟Ⓨ⏕≧ἣ䞉Ⓨ⏕ཎᅉ䛻ಀ䜛ᐃᮇⓗ䛺ㄪᰝ 䐠᳃ᯘ䚸㎰ᆅ䚸ᕷ⾤ᆅ䚸Ἑᕝ䚸ᾏᓊ➼䛻䛚䛡䜛ἲᢞᲠ㜵Ṇ䛻ᚲせ䛺ᥐ⨨ 䐡ᅵᆅ䛾㐺ṇ䛺⟶⌮䛻㛵䛩䜛ᚲせ䛺ຓゝཬ䜃ᣦᑟ Ẹ㛫ᅋయ➼䛸䛾㐃ᦠ䛾ᙉ ᩍ⫱䛾᥎㐍➼ 䛻ດ䜑䜛 ㄪᰝ◊✲➼ ㈈ᨻୖ䛾ᥐ⨨ 䐟ᨻᗓ䛿䚸ᾏᓊ⁻╔≀ᑐ⟇䜢᥎㐍䛩䜛䛯䜑䛻ᚲせ䛺㈈ᨻୖ䛾ᥐ⨨䜢ㅮ䛨䛺䛡䜜䜀䛺䜙䛺䛔 䐠ᨻᗓ䛿䚸ᅜእཪ䛿䛾ᆅ᪉බඹᅋయ䛛䜙㔞䛻ᾏᓊ⁻╔≀䛜⁻╔䛩䜛㞳ᓥ䛭䛾䛾ᆅ ᇦ䛻䛚䛔䛶ᆅ᪉බඹᅋయ䛜⾜䛖ᾏᓊ⁻╔≀䛾ฎ⌮䛻せ䛩䜛⤒㈝䛻䛴䛔䛶䚸≉ู䛾㓄៖ 䜢䛩䜛 䐡ᨻᗓ䛿䚸Ẹ㛫䛾ᅋయ➼䛾άື䛾ಁ㐍䜢ᅗ䜛䛯䜑䚸㈈ᨻୖ䛾㓄៖䜢⾜䛖䜘䛖ດ䜑䜛 ᾏᓊ⁻╔≀ᑐ⟇᥎㐍㆟䛾タ⨨ ᇶᮏ᪉㔪䞉ᆅᇦィ⏬䛾⟇ᐃ➼ ᅜ䛾ᇶᮏ᪉㔪 ᾏᓊ⁻╔≀ᑐ⟇άື᥎㐍ဨ䞉ᅋయ䛾ጤკ 㒔㐨ᗓ┴䛾ᆅᇦィ⏬ 䠄ᾏᓊ⁻╔≀ᑐ⟇᥎㐍༠㆟䠅 ἲไ䛾ᩚഛ ᨻᗓ䛿䚸ᾏᓊ⁻╔≀ᑐ⟇䜢᥎㐍䛩䜛䛯䜑䛾㈈ᨻୖ䛾ᥐ⨨䛭䛾⥲ྜⓗ䛺ᨭ䛾ᥐ⨨䜢 ᐇ䛩䜛䛯䜑ᚲせ䛺ἲไ䛾ᩚഛ䜢㏿䜔䛛䛻ᐇ䛧䛺䛡䜜䜀䛺䜙䛺䛔䚹 ͤᮏἲ䛻䛴䛔䛶䛿䚸⾜䛛䜙䠏ᖺᚋ䛻ᚲせ䛺ぢ┤䛧䜢⾜䛖䚹 海と安全 2011・夏号 29 のっとり基本方針を定め、都道府県におい の対策を講じる必要があるため、日中韓3 ては、必要があると認めるときは、基本方 カ国環境大臣会合(TEMM)などにおけ 針に基づき海岸漂着物対策を推進するため る政策対話や、日本、中国、韓国、ロシア の地域計画を作成するものとされました。 による海洋環境保全のための枠組みである 財政措置 「北 西 太 平 洋 地 域 海 行 動 計 画(NOW- 政府が海岸漂着物対策を推進するために PAP) 」における海洋ごみプロジェクトを 必要な財政上の措置を講じる旨が規定され、 通じ、関係各国に対し、様々な種類の漂流・ 予算措置を構ずる根拠が盛り込まれました。 漂着ごみに対する協力を含め、引き続き協 海岸漂着物問題への取り組み 働して取り組んでいます。 上記に紹介した取り組みのほか、政府全 環境省においては、海岸漂着物処理推進 体としても河川や港湾における不法投棄防 法に基づき、全国的な海岸漂着物の実態把 止や清掃支援、漁場における漂流・堆積物 握や、効率的な処理手法の調査に加え、典 の除去、海岸漂着物処理に関する技術開発 型的な海岸漂着物に関して発生原因を究明 の支援などを実施しているところです。 して対策を検討するなど、発生源対策の検 討も併せた総合的な対策を推進していると ころです。 また、これまでにも、廃棄物の処理およ まとめ 今後もこうした取り組みを推進し、海岸 漂着物処理推進法および基本方針に基づき、 び清掃に関する法律(昭和45年12月25日法 各地域において地域の実情を踏まえて地域 律第137号)に基づく規制強化などを進め 計画を策定し、国、都道府県、市町村、民 るとともに、地方自治体などとの連携のも 間団体、事業者などが適切な役割分担のも と総合的な施策を実施し、不法投棄などの とで海岸漂着物対策を推進していくことが 不適正処分の未然防止や拡大防止を推進す 望まれます。こうして持続可能な体制が構 るとともに、循環型社会形成推進基本計画 築されるよう、政府としても引き続き努力 に基づき、廃棄物等の発生抑制、再使用、 してまいります。 再生利用(リデュース、リユース、リサイ 今般の東日本大震災に伴って大量の海岸 クル(3R) )の技術とシステムの強化な 漂着物が発生する可能性がありますが、こ どの対策を行っています。 れらの処理についても関係省庁との連携の また、平成21年度補正予算に盛り込まれ 下、適切に処理してまいりますので、関係 た「地域グリーンニューディール基金」 (海 する漁業者の皆様におかれましては、ご理 岸漂着物事業として3年間で総額約60億 解とご協力の程よろしくお願い致します。 円)を活用し、海岸漂着物の処理などを行 う地方公共団体へ財政支援を行っています。 さらに、海岸漂着物は、国外から流れ着 くものも多いことから、各国と連携してそ 30 海と安全 2011・夏号 船舶の航行安全対策と海洋ゴミ問題 全日本海員組合 国内局国内部長 冨永 雄一 全日本海員組合は、外航船、内航船、カー フェリー、旅客船、港湾船そして漁船や調 査捕鯨船から海洋調査船までと、ありとあ らゆる船で働く船員の労働組合で、日本人 と外国人を合わせて約8万人の組合員が加 入している産業別労働組合です。 全国に31カ所ある支部と事務所に「海洋 ゴミと船舶航行」に関する調査を依頼し、 送られてきた報告を基に、このレポートを 五島産業汽船の長崎∼上五島地区鯛の浦間を結ぶ高速旅客船の船 内前方に掲示されていた「お知らせ」 。流木による急停止と急旋 回の注意喚起が記されている。 作成しようとした矢先の、3月11日14時46 分に東北地方太平洋沖地震が発生しました。 間では流木などの漂流物との接触例は多数 後にマグニチュード9. 0と上方修正された あり、鯨類との衝突同様ジェットフォイル 巨大地震です。 (超高速船)にとって、ゴミ吸引による欠 海洋ゴミと津波は不可分な事象ですが、 航や大幅な遅延問題とともに懸念事項とな 通常期の問題として、各地の現場がとらえ っている、②操業中や航海中に漁網やロー た海洋ゴミの実態を報告します。 プなどの漂流物がプロペラに絡まり自力で 各地域の現場から寄せられた 海洋ゴミの実態 北海道からは、①ロシア漁船によるカニ は動けなくなった③操業中、網の中にタイ ヤ・テレビ・洗濯機・自転車・丸太・木の 根が網に入り魚介類が潰れるなどして商品 にならなかった事などが報告されています。 籠の不法投棄により、底引き網漁船の漁網 名古屋、大阪、神戸からも他地区と重複 が損傷した、②底引き網漁船の網に自動車 した内容が寄せられているが、①流木・粗 が入り漁網が大破した、③江差∼奥尻∼瀬 大ゴミによる航行阻害②台風・津波後の流 棚港間は年間を通し多数の流木・漁網・ 木・粗大ゴミ・養殖筏・網などにより観光 ロープが確認され、原因不明のプロペラ屈 船の運休が発生したこと③大阪湾では、豪 曲損傷事故も発生した④ロシア籍材木船か 雨による河川からの生活ゴミが多く、冷却 ら脱落した多数の流木や、大雨後に流出し 水の取り入れ口で吸い込むケース④神戸港 た木材・木片・草・ゴミなどにより各港へ 内は、比較的早い段階で市のゴミ処理船に の入港が困難となったことがあるなどと報 より除去作業が行われているが、アンカー 告されています。 に古いワイヤーを掛けその対応に苦労した 新潟と北陸地区からは、①新潟∼佐渡島 ことなどが寄せられています。 海と安全 2011・夏号 31 関門地区からの報告では、①大雨により 陸地から河川を通じ、プロパンガスボンベ が関門航路・北九州港へ数本流出し、漂着 が確認されたこと②新門司港港外にて錨を 巻き上げ時、ワイヤーが頻繁に巻き上がっ てくる事などが特徴的です。 広域就航船にとっても深刻 次に広域就航船からの報告を列挙します。 ①漁網をプロペラに巻き込み航行不能とな 4月16日、宮城県東松島市丸山山崎海域周辺に流れ着いた大量の 海洋ゴミ。瓦礫の中、潜水して行方不明者を捜索する巡視船「く りこま」潜水士。(海保 HP より) った。また航海中、木材に当たり外板が損 傷した。 (内航タンカー) ②2009年、種子島南沖で大量の流木。冷蔵 庫やテレビなどの大型家電を発見した。 (内航タンカー) ③日本海の荒天により材木船の荷崩れが などが挙げられます。 航行・操業障害となるゴミを大 別する ! 1 コンテナ・流木・家電など あり、材木が漂流して航行障害となり、漂 推進器、舵、外板に損傷を与える恐れが 流海域を迂回したり見張り員を増員した。 あるのは固くて重量のあるものとなる。コ (大型カーフェリー) ンテナのように浮力がある金属の塊は、荷 ④朝鮮半島から流れてきたと思われるハン 崩れ、地震、津波によって海上を漂流する。 グル文字の書かれたポリタンク、テレビ・ 流木は材木船の荷崩れと豪雨による河川 冷蔵庫などの家電製品や漁業用のボンデン、 を通じての海上流出、そして貯木場からの 網、ロープ、係船ブイといった漂流物を見 流出が考えられる。家電は津波以外では不 かけることがあり、衝突の危険がある。 法投棄によるものではないのか。 (大型カーフェリー) ! 2 ⑤車のタイヤ・洗濯機が漂流している。コ 漁網・ロープ 船舶の推進器の構造上、巻き込みやすい ンテナが航行海域に存在することがあった。 網やロープは深刻な被害を引き起こすと同 (内航貨物船) 時に、頻繁に発見される漂流ゴミである。 ⑥平成22年6月京都府経ヶ岬沖約6マイル ! 3 自動車・沈木 にて本船のプロペラに通称「トンバック」 自動車は、デッキ積の中古自動車が荒天 と呼ばれるポリエステル製の荷役資材(6 あるいはラッシングの不備により海中転落 m×5m)がプロペラに絡み航行不能。タ したものであろうと推測できる。豪雨によ グボートにて曳航し着桟してからの除去作 り沖に流された大木の根の部分とともに底 業となった。水面下数メートルを浮遊して 引き網漁船の漁具と漁獲物を損傷するゴミ いたので視認できなかった(内航貨物船) である。 32 海と安全 2011・夏号 ! 4 投棄漁具 いようにする。 北海道近海と日本海側に多いのが主にカ ④離着岸時にゴミ溜りがある場合は、スラ ニ籠などの投棄漁具である。日本の排他的 スターを逆流させることによりゴミを拡散 経済水域において他国の違法操業漁船が取 し、事前にトラブル回避を心がける。 締りを逃れるために投棄した漁具が日本の ⑤各港の岸壁に、陸揚げ用のゴミ箱を設置 漁船に被害を与えている。 する。 ! 5 ⑥貯木場がある港では、所有者が定期的に ビニールなどの生活ゴミ 一見船体に損傷を与えることがないよう 流出の恐れがある木材を取り除く。 にも見える生活ゴミも航行の妨げとなる。 ⑦テロ対策用(ISPS)に設置が進んでい 一般的にディーゼルエンジンを主機、そし るフェンスや防犯カメラは海への不法投棄 て発電機に使用しており、これらは海水に の減少にも役立つ。 より冷却している。その海水取入れ口は水 ! 2 面下に位置しており、ここにゴミが詰まれ ①見張りによって漂流物の早期発見に努め ば冷却水の循環に支障を来たしてしまう。 る。発見した場合は、海上保安部に通報す 航海中海水を吸い上げ続けなければならな る。 い船にとって、海上・海中・海底のゴミは ②航海中、乗客の皆様に海中へのゴミ投棄 大敵である。 防止を促すための船内掲示物および船内放 洋上・漁場 送をする。 ③三国地区(福井県坂井市)では、三国機 船底曳網漁業協同組合、三国漁業協同組合 が事業主体となり、三国沖を操業する沖底 船により海底耕耘および海底清掃なども行 っている。 以上のように、ゴミ対策としては、湾内・ 上五島青砂地区に押し寄せられたゴミ 海洋ゴミ対策と今後の課題 ! 1 湾内・港内 港内においては自主回収と海上保安部・港 湾管理局・地方自治体への処理要請ならび に慎重な操船が特に離着岸時に求められま す。一方、洋上においては厳重な見張り以 ①小型の漂流物はできるだけ自主回収し、 外に有効な回避方法はなく、夜間において 大型の流木などは海上保安部か市港湾部に の発見は相当困難である。 報告し回収をしてもらう。 平成23年3月18日に海事局より「東北地 ②漂流物を視認できた場合は減速運航によ 方太平洋沖地震に伴う漂流物に関する注意 り対応する。 喚起について」が発令されました。それは、 ③岸壁近くは、漂着ゴミや沈んだゴミがあ 緊急避難的な観点から、多数の漂流物があ るのでできるだけプロペラ回転数を上げな るために沿海区域を越えた海域を航行しな 海と安全 2011・夏号 33 いと漂流物との衝突を回避できない状況が 発生した場合にあっては、特例的に沿海区 域を超えて航行することを認める時限措置 である。 東北地方太平洋沖地震によって 広大な海域で大型漂流物 海上保安庁海洋情報部は、東北地方太平 洋沖地震に伴う航行警報位置図を毎日更新 浅瀬に乗り上げ、横倒しとなった漁船 (写真は海員組合提供) しながら発信したが、船舶およびコンテナ、 家屋の残骸を含む物体の多数漂流が確認さ れた。その範囲は当然ながら日を追って広 船舶の安全航行を阻害する漂流物 がりを見せ、4月8日の時点においては石 さらに、犬吠埼の南東300マイルの広い 巻のはるか東方180マイルの太平洋上で上 海域においても多数の大型漂流物が確認さ 記の大型漂流物が確認されている。南北の れており、日本近海のみならず、大洋航海 範囲においても犬吠埼沖から八戸沖までの 中の外航船舶も油断できない状況となって 300マイルの範囲で大型漂流物の確認があ いる。 り概略位置と共に警報が出されている。 全日本海員組合は、船員 OB 会や海友婦 これは、標準的な内航船舶が丸一昼夜か 人会の協力を得て、「海のクリーンアップ かって航行する航程に近く、見張りを厳重 作戦」と称して海浜清掃に長年取り組み、 にしても夜間航行あるいは荒天下において 海辺の景観を保つと共に、ゴミの再流出を は視認、避航は容易ではない。したがって、 防ぐ活動を行ってきた。 被災地以西と北海道を結ぶ輸送においては、 自然災害による大型漂流物や漁具の不法 距離が遠くなっても運航者の指示により日 投棄による海上・海底のゴミに対しては実 本海廻りの航路を選択する期間が続いてい 効ある取り組みができていないのは残念で る。 あるが、船乗りが海を汚さない、そして 人々が浜辺や港でゴミを捨てない、できる だけ回収する啓蒙運動を継続することが大 事であると考えます。 宮城県石巻市金華山の南約46Km沖の漂流物の状況 (海保HPより) 34 海と安全 2011・夏号 国土交通省港湾局の漂流・漂着ゴミ対策 国土交通省 港湾局 国際・環境課 海岸・防災課 漂流ゴミ対策 国土交通省港湾局は、昭和49年度より船 舶航行の安全を確保し、海域環境の保全を 図るため、東京湾、伊勢湾、瀬戸内海、有 明・八代海の閉鎖性海域において、海面に 漂流する流木などのゴミや船舶などから流 出した油の回収を行っている。 当該海域において回収するゴミの量は平 均で年間約6, 600㎥と、4t トラックで2, 500 台分となっている。 これらのゴミを回収する海洋環境整備船 流木回収状況 鹿児島県大隅群島・トカラ群島 西方沖に大量の流木 は約200総トンの双胴船で、潮目などに集 平成21年9月4日、鹿児島湾と種子島・ まるゴミを跨ぎ、双胴間に設置したスキッ 屋久島に囲まれた海域に、大量の漂流木が パーやゴミコンテナに集積し、陸揚げを行 発見された。5日の時点で地元海上保安部 っている。 が周辺海域を含め約5, 000本の流木を確認 している。当該海域では、鹿児島港と種子 島・屋久島を結ぶ高速船が就航しており、 平成18年4月には高速船が海面の物体に衝 突して乗客多数が重軽傷を負った事故が発 生していることから、第十管区海上保安本 部および鹿児島県より九州地方整備局に対 して流木回収の支援要請があったことから 関門航路事務所所属の海洋環境整備船「が 漂流ゴミ回収状況 んりゅう」を派遣し、流木の回収を行った。 「がんりゅう」は通常、関門航路周辺の 時には流木や冷蔵庫などの大きなゴミが 瀬戸内海西部を管轄区域として、漂流ゴミ 浮遊していることもあり、これらは多関節 や油の改修を行う船舶であり、外海の航行 クレーンのグラップルにより掴み取って回 には波高の制約があるものの、6日に北九 収している。 州港を出港し、9日に現地に到着、同日よ 海と安全 2011・夏号 35 り回収作業を開始した。一方、高速船は安 法)が制定され、衆議院・参議院の附帯決 全確保のため、10日より運航を取り止めた 議において漂流物対策についても積極的に ことから、種子島・屋久島の生活航路の一 取り組むこととされていることなど受け、 つが止められることになった。 以下の取り組みを行っている。 折しも秋の連休期間を迎えることから、 ①海洋環境整備船の耐波性向上 観光産業にもたらす影響は大きく、早急な 海洋環境整備船は通常、閉鎖性海域でゴ 流木回収を迫られることになり、漁業関係 ミ回収を行うことから双胴船となっている 者、第十管区海上保安本部、鹿児島県、海 が、前述のとおり流木回収などで外洋での 上自衛隊と連携して回収作業を行った。 作業が発生する可能性があることから、外 その後、「がんりゅう」は30日まで流木 洋に近い管轄区域に配備する船舶を更新す 回収作業を行い、10月3日、北九州港に帰 る際には、耐波性を向上させる。 港した。その間、688本の流木を回収し、 ②海洋短波レーダーを活用したゴミ予測 他機関の回収分を含めると1, 434本の流木 海洋短波レーダーにより表層潮流を観測 が陸揚げされた。高速船も連休途中の21日 し、ゴミの漂流予測を行って回収効率を向 より条件付きで運航を再開、10月1日から 上させる。 ①については、前述の紀伊水道に配備し は通常運航が再開された。 なお、この漂 ている「はりま」を更新した際に、設計波 流木はその後、 高1. 0mから1. 8mへと向上させ、新たに「海 黒潮にのって太 和歌丸」として平成23年1月より就航させ 平洋沿岸を北上 ている。 し、四国沿岸を 通って紀伊水道 付近を漂流した ことから、近畿 地方整備局が海 流木回収状況 洋環境整備船 「はりま」によ り回収作業を行い、9月末までに25本の流 木が回収された。 今後の対応 海和歌丸 ②については、東京湾、伊勢湾、大阪湾、 有明海に海洋短波レーダーを配備し、表層 の潮流を観測してゴミ移動予測を実施中。 平成21年7月に「美しく豊かな自然を保 国土交通省港湾局としては、今後とも船 護するための海岸における良好な景観及び 舶航行の障害となる漂流ゴミの効率的な回 環境の保全に係る海岸漂着物等の処理等の 収に向け、取り組みを強化していく予定で 推進に関する法律」(海岸漂着物処理推進 ある。 36 海と安全 2011・夏号 漂着ゴミ対策 流木およびゴミなどが異常に堆積し、これ を放置することにより、堤防、離岸堤、砂 前述した「海岸漂着物処理推進法」にお 浜などの消波機能の低下、水門の防潮機能 いては、海岸漂着物などの処理に係る海岸 への障害など海岸保全施設の機能を阻害す 管理者などその他の関係者の責任が明らか ることとなる場合に、緊急的に流木などの にされ(法第4条)、海岸管理者は、その 処理を実施する必要がある場合においては、 管理する海岸の土地において、その清潔が 「災害関連緊急大規模漂着流木など処理対 保たれるよう海岸漂着物の処理のため必要 策事業」によって流木などの処理を行うこ な措置を講じなければならない(法第17 とができる。 条)こととなっている。 一方、海岸法第2条第3項において、海 岸管理者は海岸保全区域及び一般公共海岸 区域についてその管理を行うべき者、と規 定されている。海岸保全区域は、海水また は地盤の変動による被害から海岸を防護す るため海岸保全施設(堤防、突堤、護岸、 胸壁、離岸堤、砂浜などの施設)の設置や 消波ブロックの間に流木などが目詰まりし、消波機能が果たせて いない例 管理を行う必要があると都道府県知事が認 海岸管理者である地方公共団体(港務局 めて指定した一定の区域であり、海岸保全 を含む)を対象とした本事業は平成12年4 施設がその能力を損なわないよう、海岸管 月から施行されており、原則として年度内 理者としては海岸保全区域の清潔の保持に に処理完了が見込まれる事業について、国 努める必要がある。 が処理費用の1/2を補助することができる。 なお、海岸保全区域には、農林水産省所 本事業の採択規準は、以下に掲げる要件 管の農地海岸、漁港海岸、および国土交通 を満たすものである。 省港湾局所管の港湾海岸、河川局所管海岸 ! 1 があり、港湾海岸の事業内容について説明 港湾に係る海岸の海岸保全区域内に漂 する。 着したもの ! 2 堤防、突堤、護岸、胸壁、離岸堤、砂 浜などの海岸保全施設の区域およびこれ 海岸漂着物の処理に関する補助 事業 海岸における清潔の保持については、日 常的な維持管理業務であり、基本的には海 岸管理者の自治事務であるが、洪水、台風 ら施設から1km 以内の区域に漂着した もの ! 3 漂着量が1, 000㎥以上のもの 補助対象の拡充の経緯 などにより海岸に漂着した流木およびゴミ 本事業の採択規準においては、前記のと などや外国から海岸に漂着したと思われる おりだが、平成19年度および平成20年度の 海と安全 2011・夏号 37 2カ年にわたり、その補助対象範囲を拡充 出した流木などが、長崎県の島原半島近辺 している。 に漂着し、海岸保全施設に影響を及ぼした (平成19年度の拡充内容) ため、本事業によって処理した例がある。 ※事業の対象を「流木など」に限らず、「漂 なお、当該年度においては、港湾海岸の 着ゴミ」も処理対象とした。 みの漂着量は330㎥であり、本事業の採択 ※補 助 対 象 と な る 処 理 量 を 漂 着 量 の 規準を満たしていなかったが、平成20年度 「70%」から「100%」とした。 に事業が拡充されたことによって、島原半 (平成20年度の拡充内容) 島近辺の農林水産省所管海岸や河川局所管 ※広範囲にわたり堆積した海岸漂着ゴミや 海岸といった「複数の海岸」に漂着した海 流木などを一体的に処理できるよう「複数 岸漂着物と一体的に処理することができる の海岸」に漂着した漂着量の合計が1, 000 ようになったため、採択規準である1, 000㎥ ㎥以上であれば補助対象となるようにした。 以上(合計2, 200㎥)を満たして事業採択 されたものである。 また、平成22年度においては、静岡県の 伊東港海岸に漂着した1, 300㎥の海岸漂着 物の処理に際し、本事業が適用されている。 対象範囲 ※複数の海岸を対象範囲とし、漂着量の合計が1, 000㎥ 以上の漂着ゴミを対象 これまでの適用事例 平成21年災害 西郷港海岸(長崎) ※7/24∼7/26の梅雨前線によって被災し、複数の海岸と一体とな って処理 引き続き港湾局としては、災害に起因し て港湾局所管海岸に漂着した流木などの処 港湾局所管の港湾海岸においては、平成 理を、災害関連緊急大規模漂着流木など処 12年度から平成22年度までの11年間で、21 理対策事業による海岸管理者への補助とい の港湾海岸に漂着した約48, 000㎥の海岸漂 うかたちで支援することとする。 着物の処理を本事業にて行ってきた。 至近では、平成21年7月24日から26日に かけて九州地方に停滞した梅雨前線によっ てもたらされた大雨により河川などから流 38 海と安全 2011・夏号 海上漂流物に係る安全対策 海上保安庁 はじめに わが国周辺海域には、しばしば漂流ごみ 交通部安全課航行指導室海務一係 よび航空機を派遣して漂流状況の調査を行 い、流木の漂流状況を関係機関や付近航行 船舶に提供するとともに、九州地方整備局、 や財産価値のある船舶など大小様々な物件 海上自衛隊および鹿児島県との連携により の漂流が認められますが、こうした海上漂 流木を揚収し、地方公共団体などへの引き 流物の中には船舶交通の障害となるものも 渡しを実施しました。 存在します。 海上保安庁では、海上交通の安全確保な どのため、巡視船艇および航空機による漂 流状況の調査、関係者への情報提供、周辺 船舶への注意喚起等を行うとともに、所有 者において回収を行うよう指導することと していますが、緊急の場合には、可能な範 囲で漂流物の揚収、引渡しなどの措置を行 っています。 巡視船による流木の揚収作業 ここでは、海上保安庁が対応した最近の 主な海上漂流物事例を紹介します。 漂流物に関する主な事例紹介 ! 1 平成21年鹿児島県沖の広域流木 平成21年9月3日、鹿児島県トカラ列島 沖海上で約5, 000本の自然木の漂流が発見 されました。当該海域においては、多数の 流木が漂流した影響により、漁船が水没し 九州地方整備局の「がんりゅう」による流木回収作業 た流木と接触し推進器などを損傷する事故 が続発し、また、鹿児島、種子島および屋 ! 2 平成21年紀伊半島沖の定置網流出 久島の間を結ぶ超高速船が10日間にわたり 平成21年5月28日、紀伊半島東方の沿岸 運休するなど地元住民生活に多大な影響を 海域に設置されていた定置網の一部約2. 3 及ぼしました。 キロメートル(定置網用灯浮標3基含)が 海上保安庁では、当該海域に巡視船艇お 悪天候の影響により流出しました。所有者 海と安全 2011・夏号 39 である漁業協同組合から通報を受け、海上 たところ、中国の工場で製造され、上海か 保安庁では付近航行船舶や周辺の地方公共 らシンガポール向け輸送中の7月18日に東 団体などへ情報を提供するとともに、航空 シナ海で流出したステンレス製液化窒素ボ 機などによる捜索を実施しました。6月8 ンベと判明し、9月1日所有者の代理人に 日に海上自衛隊航空機により伊豆諸島青ヶ 引き渡しました。 島北西約60マイルの海上で多数の小型ブイ などがひと固まりになって漂流しているの が発見されました。 海上保安庁では、航空機による調査を行 い、記載文字などにより和歌山から流出し たものと同一であることが確認されたこと から、所有者に連絡し所有者において回収 させました。 長崎県五島列島西方沖23マイルの海上で、巨大なタンクが漂流。 (平成20年7月29日) 紀伊半島東方の沿岸海域に設置され、流出した定置網の一部(定 置網用灯浮標3基含) ! 3 平成20年五島西方沖に鋼製巨大 タンクが漂流 平成20年7月29日、付近を航行していた 大気圏内で分離し、落下した国産ロケット H−2A のフェアリ ング(衛星搭載部分のカバー)の破片の一部が漂流。 ! 4 国産ロケット H−2A のフェア 漁船により長崎県五島列島西方沖23マイル リングが漂流・漂着 の海上で、巨大なタンクが漂流しているの 平成19年10月、本州南方沖の太平洋上に が発見されました。巡視船および航空機で 金属板が漂流しているのを航行船舶が発見、 調査を行ったところ、長さ約25メートル、 揚収しました。また、平成20年3月にも小 直径3∼4メートルの鋼製タンク状の物体 笠原諸島父島で同様の金属板の漂着が確認 であることが確認されました。有毒ガスが されました。これらは、その形状および材 含有されているおそれがあることから、機 質から、大気圏内で分離し、落下した国産 動防除隊によって安全性を確認したうえ、 ロケット H−2A のフェアリング(衛 星 巡視船により福江港に曳航しました。タン 搭載部分のカバー)の破片の一部であると クに記された文字から所有者の調査を行っ 判明しました。海上保安庁では、同ロケッ 40 海と安全 2011・夏号 トの打上を担当する宇宙航空研究開発機構 (JAXA)に、打上後のフェアリングの捜 索回収の徹底を要請しています。 ! 5 想定を絶する東日本大震災 平成23年3月11日午後2時46分頃、三陸 安全確保のために こうした海上漂流物による船舶への危険 を除くため、海上保安庁では、 ◆航行警報、AIS(船舶自動識別装置)メ 沖を震源とするマグニチュード9. 0の巨大 ッセージによる注意喚起 地震が発生し、太平洋沿岸を中心に高い津 ◆海上保安部ホームページ(MICS)によ 波の影響により、甚大な被害が発生しまし る情報提供 た。 ◆地方公共団体、漁協、フェリー会社など 海上保安庁では、直ちに被災者の捜索救 助活動を行うとともに、航行警報や MICS 関係者への情報提供などの措置を行ってい ます。 (沿岸域情報提供システム)、AIS(船舶 船舶の運航に携わる皆様におかれまして 自動識別装置)などにより、付近航行船舶 は、周辺海域を航行する際には、これらの などに安全情報を周知しました。また、船 情報に留意のうえ、海上漂流物を発見した 舶交通の障害となるおそれのある無人漂流 場合には、最寄りの海上保安部署などに、 船舶については、使用の可能性がある49隻 当該漂流物の特徴、発見海域などの情報の (平成23年4月14日現在)を港湾に曳航し 連絡をお願いします。 ました。 操船の理論と実際 いのうえきんぞう 井上欣三著 船舶の安全運航に必要な、操船の「理論」と「実際」を結びつけた一冊。操船論の教科書 には定番といえるものがあるが、これらは初版発行以来、半世紀近くが経過している。本書 はそれ以来となる、およそ40年ぶりとなる本格的な操船の教科書だ。 操船論は、水先人、船長、航海土、そしてこれから海技士資格を取得しようとする者にと って、必ず学ばなければならない教科のひとつである。 本書はそうした読者に理解が届くよう、操船に関する科学的知識を踏まえ、海上で「実際 に船はどう動くのか」を実務的観点から詳細に解説している点が大きな特長だ。 また、現場で有用な各種船舶の操船性能をデータベース化。操船シミュレーターでの研修 にも役立つ内容となっている。近年の船型の多様化と大型化は著しく、そうした各種の技術 革新にも対応している。 学生が学ぶためのテキストとして最適な内容であるのはもちろん、実務においても操船技 術の維持・向上に役立つ好著だ。 B5判・312ページ・定価4, 620円(5%税込) 発行所:〒160―0012 東京都新宿区南元町4―51成山堂ビル ㈱成山堂書店 TEL:03(3357)5861 FAX:03(3357)5867 E―mail : publisher@seizando. co. jp 海と安全 2011・夏号 41 漁業者自ら取り組む海岸・海底清掃 輪番休漁事業による漂流・漂着ゴミの除去 特定非営利活動法人 水産業・漁村活性化推進機構(水漁機構)事業部次長 本法人は、漁業者、漁業関係団体などと こん 近 いそはる 磯晴 施された。 の連携と協力により、水産業の発展および 3カ年に亘る輪番休漁事業は、全国の漁 漁村活性化のための事業を行うことで、広 業者の参加人数延べ75, 782人、参加グルー く国民に対して、水産資源の持続的な利用 プ数延べ943グループ、交付金額の実績ベー を確保しつつ安全・安心な水産物の供給を スで155億円にのぼった。しかし、相当な 確保すること、水産業・漁村の多面的機能 活動成果を上げ、また全国の漁業者から好 の発揮に寄与していくことを目的に2009年 評を博した事業であったものの、種々の理 6月24日に設立された団体である。 由により3カ年で事業が廃止となった。 全国組織の漁業団体である「大日本水産 会(大水) 」と「全国漁業協同組合連合会 輪番休漁事業の内容 (JF 全漁連)」との密接な連携のもとで、 輪番休漁事業は、その名のとおり漁業者 水産業の発展と漁村の活性化に寄与する が「輪番(りんばん) 」で“休漁”するこ 「水産業体質強化総合対策事業」など様々 とで、省エネや地先海域の資源回復・漁場 な事業を行っており、本稿で取上げた“輪 番休漁事業”は、上記の対策事業の中の1 つである。 輪番休漁事業実施の背景と経緯 輪番休漁事業を行う契機となったのは、 2004年頃からの燃油の異常高騰にあった。 水産という産業は、食料供給という重要な 使命があるのにも拘わらず、燃油依存度が 非常に高いという産業特性があり、魚の生 産コストの上昇分を価格に転嫁することが 困難であり、自助努力で解決することが難 しく、漁業経営への深刻な影響が懸念され ていた。省エネを目的にした事業として 2008年度からスタートした輪番休漁事業は、 2009年度から「資源回復・漁場生産力強 化」を目的にした事業となり、計3カ年実 42 海と安全 2011・夏号 輪番休漁事業の紹介パンフ 生産力強化を目指す事業である。 漁業者が交代しながら漁を休む「輪番」 ②清掃活動(漂流・漂着ゴミの除去、海岸・ 海浜清掃、海底清掃) にすれば、少しは海の資源が増加すること ③放流活動(種苗放流、移植放流など) が期待できる。しかし、休むだけではもっ ④害敵駆除(有用魚介類に有害な生物の駆 たいない。そこで考え出されたのが、折角 除) 休むのであれば、休漁の当番になった漁業 ⑤監視活動(密漁・漁場の監視) 者が「漁場の生産力の向上のための活動」 となっている。 を積極的に行えばもっと効果が期待できる、 本稿で取り上げる、②の清掃活動は、輪 というもので、その活動に対して国が日当 番休漁事業で最も取り組まれた地域活動で と用船費、その他消耗資材費を直接漁業者 あり、2009年度、2010年度とも活動の約半 に助成しようというものである。 分は清掃活動(漂流・漂着ゴミの回収・除 輪番休漁事業に参加するためには①「省 エネタイプ(燃油使用量の10%以上の削 減) 」 、②「漁場生産力向上タイプ(漁場生 産力3%以上の向上)」、③「地域住民参加・ 去)となっている。 輪番による清掃活動の成果と 清掃活動の概要 雇用創出タイプ(漁業者以外の5名以上の 2009年度には330グループの活動グルー 参加) 」の3つのタイプがあり、漁業者グ プ の う ち239グ ル ー プ、2010年 度 は334グ ループの選択に任されている。 ループのうち226グループが清掃活動に取 ここでいう、漁業者とはあくまでもこの り組んだ。 事業上の呼称であり、動力船を使用する漁 清掃活動は、海面、海岸、海底で行われ 船漁業者を指している。漁業者以外(定置 たが、最も参加グループが多いのは海岸清 や養殖、その他漁業関係者)の方は、③の 掃である(両年とも全取り組みの4割強を 雇用創出タイプを選択すれば参加できる。 占めている)。次いで海面、海底の順にな この2009年度に新に加わった「雇用者創 っている。特に海底の清掃は漁業者でなけ 出タイプ」を選択する漁業者グループが約 れば行えない取り組みであり、漁業者以外 80%と圧倒的に高い選択率であった。 でやろうとすれば莫大な費用がかかると考 このタイプは、漁船漁業者以外の養殖漁 えられる。また、全国の海底に堆積したゴ 業者や、漁業者の家族の方なども容易に参 ミの量はどのくらいに達しているのか皆目 加できる利点があり、大規模な海岸清掃な 検討がつかない状態である。 どに取り組む場合は、このタイプを利用し ているケースが多い。 輪番休漁事業を対象とした地域活動は、 全国で2カ年の輪番清掃活動に取り組ん だ延べ人数は、2009年度で約24万(人・日)、 2010年度は20万(人・日)となっている。 主に5つの取り組みに分けることができる。 ちなみに、2009年度では輪番休漁事業の ①漁場整備(干潟、藻場の整備、海底耕耘、 延べの総参加人数で清掃活動の参加延べ人 魚介類の育成場の造成、植樹) 数を割れば、約80%強の労力が清掃活動に 海と安全 2011・夏号 43 割かれたことになる。また、投入された費 15㎥/人とほぼ同 ンブルー21の海岸での0. 用は11億円であることから交付助成金実績 等である。また、人工ゴミと自然ゴミの組 の15%強が清掃活動となる。 成は両年とも同じで人工ゴミと自然ゴミの 漂流・漂着ゴミの回収量 漂流・漂着ゴミの回収量は、重量と容積 の両方で報告されているので、便宜的に社 団法人 割合は、ほぼ2:8であった。 漂流・漂着ゴミの内容 人工ゴミは流木、木屑、ヨシ類などの植 海と渚環境美化推進機構(マリン 物に大別されるが、最も発生頻度が高かっ ブルー21)で1トンを3㎥に換算した例に たのが両年ともに流木であり、活動グルー ならって容積に置き換えると、2009年度の プの80%以上が流木を回収している。 ゴミの回収量は約2. 6万トンであり、2010 一方、両年とも人工ゴミは漁業者から排 年度は、延べ参加漁業者数が減少したこと 出される漁具系の廃棄物と一般・産業廃棄 もあり約1. 5万トンになった。 物に大別される。漁具系で最も多く回収さ マリンブルー21によれば、2009年度の海 れたのがロープ類、漁網、ブイなどである。 岸でのゴミの回収量は9. 2万㎥であったの 一般・産業廃棄物では、最も多く出現し で、輪番休漁事業によるゴミの回収量は全 たのがペットボトルで、全国のほとんどの 国の約30%にあたる。 活動地域で回収されている。これに空き缶、 参加活動者1人当たりのゴミ回収量は 2009年 度、2010年 度 の 両 年 と も0. 13㎥/ (人・日)程度であった。この値は、マリ プラスチック、発泡スチロール、ビニール、 ポリ袋、ビン類と続いている。 回収したゴミ中にはテレビ、冷蔵庫、洗 ㍯␒ఇ⁺ᴗ࡛ᅇࡉࢀࡓ⁻ὶ࣭⁻╔ࡈࡳࡢ✀㢮ᾏᗏࢦ࣑ࢆྵࡴ ὀ㸧ࢢࣛࣇෆࡢᩘ್ࡣࠊᖹᡂ21ᖺᗘ୰Ύᤲάືࢆᐇࡋࡓ239ࢢ࣮ࣝࣉࡢ࠺ࡕࠊࡑࢀࡒࢀࡢࢦ࣑ࡢ✀㢮ࢆ☜ㄆ࣭ᅇ ࡋࡓࢢ࣮ࣝࣉᩘ 44 海と安全 2011・夏号 濯機などの家電リサイクル法で定める大型 ゴミや古タイヤ、自転車なども回収されて いる。また特異なものとして注射器などの 医療器具も回収されている。前ページに回 収されたゴミの種類を示す。 ゴミの処分方法 産資源を大きく減少させる要因ともなる。 流木や沈木の回収・除去 河川からの出水時に流出してくる流木や 漁業者自らが廃棄した漁網(下の写真は、 外国から流れてきたと思われるロープや漁 網の塊)は、スクリューに絡まったり、時 輪番休漁事業で回収された漂流・漂着ゴ には破壊したりして、漁船の安全操業の障 ミの処分方法は、市町村の積極的な協力を 害になる。流木がやがて沈木となり底曳網 得られ、公共機関での処理が60%以上を占 漁などの海底を曳く漁業にとって大きな障 めていた。次いで、民間の廃棄物処理業者 害となる。 は30%、他は自主処理となっている。ここ で気がつく大切な視点は、清掃活動は、公 共機関の協力無しでは円滑に進まない活動 であるということを物語っていると思う。 漂流して塊となった漁網やロープ 漁場生産力の向上 輪番による海岸清掃の様子 水産と漂流・漂着ゴミ 海面に漂流するゴミはノリ養殖場にとっ ては大敵であり、ノリの夾雑物となってノ リの品質を著しく低下させる。砂浜にたま 漁業者が輪番活動として取り組む清掃活 ったゴミは魚やエビなどの甲殻類の保育所 動は、“漂流・漂着ゴミ”の回収・除去で 機能を低下させる。特に、海中に漂うゴミ ある。漂流・漂着ゴミは、国内外、河川な はやがて海底に沈み漁場生産力に大きな影 どを通して陸上から、船舶など海上からと、 響を与えている。海底一面にたまったビ 様々な発生形態をとる。漂流したゴミは、 ニールやプラスチック類は、魚などの餌と いずれ海底に堆積したり、海岸に漂着した なるベントス(底生生物)の生息密度を著 りして生物の生息場としての海岸、海底の しく低下させる。実際に輪番休漁事業で海 機能を低下させるやっかいものとなる。海 底ゴミを回収・除去することにより、餌生 岸や海底機能を低下させることは、単なる 物が増え、ヒラメやマダイなどの生産力が 景観を悪くするという問題に止まらず、水 向上した例がある。 海と安全 2011・夏号 45 響を受けて自然環境が悪化し、漁業生産量 漂流ゴミから珊瑚を守り漁業を 復活 の減少、経営不振に陥っている姿である。 中国や韓国の経済発展により発生する漂 南の外洋に面した離島には、外国からた 流・漂着ゴミの量は年々増加している。外 くさんのゴミが漂流・漂着してくる。島の 国からもたらされるゴミ類は西日本の離島 周囲にはサンゴが分布しているが、近年の を中心に深刻なダメージを与えている。ゴ 大規模白化でほとんどが死んでしまった。 ミは回収しても回収してもやってくるので これらの再生が島の漁業である珊瑚礁(イ ある。営む漁業種類を超えて漁業者が集ま ノー)漁業を復活させるためには不可欠で って輪番休漁を行ったことにより漁村本来 ある。しかし、外国から流れてくるゴミに のコミュニケーションが戻ってきたという。 よりサンゴに大きなダメージを与えている。 今、漁業者が海の環境を真剣に考え始め そのため、本来のイノー漁業ができず、燃 ている。漁業者の責任に帰さない環境変 油が多くかかる遠く離れた外洋漁業を余儀 化・要因に翻弄され漁業生産が低下してい なくされている。 る。漁業者は、輪番で休漁し、海の生物資 源の減少を何とか食い止めようと活動して 漁業者が切に望むこと いるのである。今後も漁民の生活を維持さ 輪番休漁事業に取り組む全国の多くの地 せつつ、漁村や海の環境をより良くしてい 区に共通する点は、人為的な開発などの影 くような施策づくりが課題となっている。 海上リスクマネジメント(改訂版) 藤沢 順・小林卓視・横山健一 共著 海上輸送には、貨物の損傷や紛失、輸送に使用する船体の損傷など、さまざまなリスクが 存在する。また、ひとたび海難事故が発生すれば、直接・間接的に計り知れない損害が発生 する。そのため、いかなるリスクにも対処できなければ企業の経営は成り立たない。 そのリスクへの対処法の最たるものが、海上保険である。 本書は、国際物流のリスクマネジメントを行う上で、必要不可欠な貨物海上保険、船舶保 険、P&I 保険の実務を契約から保険約款の解釈、クレーム処理に至るまで簡潔に解説した ものである。 改訂版では、2010年4月施行の保険法のほか、船責法・油賠法・海難審判法、バンカ一条 約・ウィーン売買条約・YAR2004・ICC2009など、関係する国内法・条約等の施行・改正に 対応して内容を更新している。また、ソマリア沖海賊と共同海損、P&I クレームのトレン ドなど最近の動向もとり入れ解説を加えている。また、巻末資料として「船舶保険普通保険 約款、第5種・第6種特別約款」を新たに収録している。 海上のリスクマネジメントは非常に広範囲でありながら、同時に高い専門性も要求される。 海上保険実務に不可欠なノウハウと関連国際規則を効率よく学ぶ上で、手元に備えておきた い一冊である。 46 海と安全 2011・夏号 A5判/418頁/定価5, 880円(5%税込) 発行所:〒160―0012 東京都新宿区南元町4―51成山堂ビル ㈱成山堂書店 TEL:03(3357)5861 FAX:03(3357)5867 E―mail : publisher@seizando. co. jp 漂流・漂着物対策に関する水産庁の取り組み 水産庁 増殖推進部漁場資源課海洋保全班 束原 茂、織田耕二、中山洋輔 本年3月11日に発生した東北地方太平洋 に関する法律(平成21年法律第82号)(以 沖地震とその地震により引き起こされた大 下、「海岸漂着物処理推進法」という)」が 津波は多くの国民の生命と財産を奪うとと 全会一致で可決成立した。 もに、大量の瓦礫を生じさせ、これらの漂 平成22年3月には本法に基づき、海岸漂 流・漂着・堆積物などにより漁場の機能や 着物などの円滑な処理と効果的な発生抑制、 生産力が著しく低下・喪失した。 関係者の連携強化、国際協力の推進に関す 瓦礫などの災害廃棄物の処理などについ ては、現在、関係省庁が連携して対策など る事項などを定めた政府の基本方針が定め られた。 を検討しているところであるが、本稿にお 関係省庁会議は、今般の海岸漂着物処理 いては、23年度当初予算での事業を中心に 推進法により設置された関係行政機関の職 述べさせていただきたい。 員をもって構成する海岸漂着物対策推進会 はじめに 近年、全国の沿岸各地において、外国由 来のものを含む漂流・漂着物は、漁業操業 の支障となることや漁場環境、環境生態系 への影響を与えるなどの深刻化が指摘され ている。 議に引き継がれ、漂流物対策も含め、引き 続き関連対策を推進していくこととなった。 水産庁の取り組みについて 都道府県と協力して 水産庁では、漂流・漂着ゴミ対策として、 平成16年度までは補助事業により、平成17 漂流・漂着ゴミ問題に対する最近の政府 年度は交付金(強い水産業づくり交付金) の取組は、平成18年4月に「漂流・漂着ゴ により漁場における漂流・漂着ゴミの除去 ミ対策に関する関係省庁会議」が設置され、 に対して地方自治体へ支援していたところ 平成19年3月には、各省が実施する状況の であるが、同交付金のうち、漂流・漂着ゴ 把握、国際的な対応を含めた発生源対策、 ミの除去関連事業は平成18年度から地方へ 被害が著しい地域への対策などの施策がと の税源移譲の対象となり、都道府県の一般 りまとめられ、平成21年7月には議員立法 財源により対応することとなった。 で、海岸漂着物の円滑な処理と発生の抑制 しかしながら水産庁としても、漁業系資 を目的とした「美しく豊かな自然を保護す 材 に関する対策や漁場における漂流・漂 るための海岸における良好な景観及び環境 着ゴミ問題に対応するため、次の通りの事 の保全に係る海岸漂着物等の処理等の推進 業により対策を実施することとしている。 1) 海と安全 2011・夏号 47 1 水産環境整備事業 2 漁場漂流・漂着物対策促進事業 平成23年度予算額9, 497百万円 (平成23年度予算額61百万円) (補助率:1/2等) 漁業系資材などの処理費用の軽減および 平成23年度概算決定において、水産基盤 リサイクル技術の普及、漁業者などによる 整備事業は、漁港漁場整備長期計画に基づ 漁場漂流物の処理といった漂流・漂着物に く成果目標とその達成を図る事業との対応 よる漁業・漁場への被害拡大防止の取組に を明確化し、シンプルな事業体系とするた 対して以下の事業により支援を行う。 め、事業の大括り化を図ることとなった。 ①漂流・漂着物発生源対策等普及事業 このうち、資源生産力の向上および漁港 (補助率:定額) 漁場の水域環境の改善を効率的に推進する 本事業の前進事業である「漂流漂着物処 ための漁港・漁場の一体的な水域環境保全 理推進モデル事業(平成19∼平成21年度)」 対策の推進を図る水域環境保全創造事業に では、地域、処理量、処理場の距離などに ついては、水産生物の生活史に対応した良 よって処理コスト2)が大きく異なることを 好な生活環境整備として藻場・干潟から沖 明らかにした(表1)。 合域までを一体的に整備する水産環境整備 事業において実施していく。 また、各処理段階でのコストを求めるこ とで従来コスト3)の効率的な削減を可能と なお、平成22年度は、水域環境保全創造 した。処理コストの半分以上が前処理(フ 事業により全国3地区で堆積物の除去を実 ロート、鉛などの除去)であることから、 施した。 前処理でのコスト削減の検討により、全体 の処理コストを効率的に削減することがで 表1 各モデル地区における取組状況および実証実験結果 実施場所 岩手県大船渡市 長崎県対馬市 処理対象物 48 処理コスト (円/kg) 漁網・ロープ類 破砕減容・サーマル リサイクル6) 96 プラスチック類 破砕減容・マテリア ルリサイクル7) 257 発泡スチロール 製フロート 溶剤減容・マテリア ルリサイクル 604 漁網・ロープ類 破砕減容・サーマル リサイクル 132 発泡スチロール 製フロート 破砕圧縮減容・サー マルリサイクル 95 発泡スチロール 製フロート 溶剤減容・マテリア ルリサイクル 1012 鹿児島県長島町 沖縄県竹富町 処理方法5) 海と安全 2011・夏号 従来コスト (円/kg) 結果 地元のセメント工場が漁網・ ロープをサーマルリサイクル 材として受け入れ可能である 75 ことが判明した。排出者(漁 業者)自ら前処理を行うこと で、コスト削減できることを 明らかにした。 従来は島外での処理・処分を 341 委託したが、島内での減容処 理により低コストでリサイク 726 ルが可能であることを明らか にした。 漁網・ロープ類のサーマルリ サイクルが可能であり、前処 78 理等でコスト削減が可能であ ることも明らかにした。 減容により、低コストで処理 254 が可能となった。 溶剤を繰り返し利用するシス テムの導入等によりコスト削 1014 減が可能であることを明らか にした。 表2 各処理段階でのコスト例 項目 処理費用 ・前処理費用 52円/kg ・破砕処理費用 19円/kg ・運搬処分費 25円/kg 計 96円/kg きる(表2) 。 平成22年度事業では、「漂流漂着物処理 写真2 野積みにされた漁具 推進モデル事業(平成19∼平成21年度)」 で開発した漁業系資材の処理費用の削減方 ②漁場漂流・漂着物対策促進事業 策やリサイクル技術を活用して、代表的な (補助率:1/2) 漂着物被害地域と水産業が盛んな拠点地域 流木などの大型漂流物やドラム缶など内 で、さらなる漁業系資材のリサイクル技術 容物の不明な容器などの漂流物について、 の普及や現場での実証試験(写真1)およ 漁場からの回収、処分を専門業者に依頼す 4) びコンサルティング 、海洋に流出する可 る場合や、漁場を悪化させる要因となる漂 能性のある野積みにされた漁具の把握を行 流物による被害の著しい区域において、漁 い使用済漁業系資材の実態調査を行うこと 業活動中に回収した漂流物を処分するため で効果的な対策の検討を行った(写真2)。 の費用の一部を助成する。 アンケート調査により過半数以上の漁業 なお、平成22年度は、大阪湾および紀伊 が使用済み漁業系資材を野積みまたは保管 水道、有明湾奥部の2地区で漁業活動中の していることなど多様な実態が判明した。 漂流物回収に対して支援した。 3 その他(主な関連事業) 災害関連緊急大規模漂着流木等処理対策事 業 (補助率:1/2) 洪水、台風などにより海岸に漂着した流 木およびゴミなどならびに外国から海岸に 漂着したものと思われる流木およびゴミな どが異常に堆積し、これを放置することに より海岸保全施設の機能を阻害することと なる場合に、海岸管理者が緊急的に実施す る流木およびゴミなどの処理に対し支援を 写真1 現地における普及指導 行うものである。 海と安全 2011・夏号 49 おわりに ア)破砕 海岸漂着物処理推進法において「海岸漂 着物対策は、海に囲まれた我が国にとって 良好な海洋環境の保全が豊かで潤いのある 国民生活に不可欠であることに留意して行 われなければならない。」と謳われている。 水産庁としても海洋環境の保全の観点か ら、漂流・漂着物対策のため、今後とも、 関連事業を着実に実施するとともに、各事 破砕機による漁網・ロープ、プラスチックの破砕の様子 業の成果が現場にいかせるよう、取り組ん で参りたい。 イ)圧縮減容 1)漁業系資材:漁網・ロープ、プラスチック、発泡 スチロール製フロートなどの漁業で用いられる資材。 2)処理コスト:モデル事業でのリサイクル処理に要 したコストを示し、人件費、機械償却費、水道光熱 費、減容品運搬費、最終処理処分委託費(売却益) を含む費用。 3)従来コスト:事業取組前の処理コストをいい、産 廃業者での処理料。 4)コンサルティング:減容品を引き取るリサイクル 圧縮による発泡スチロール製フロートの減容の様子 業者の選定、市町村などの担当部局との協議、減容 措置の活用についてのアドバイスなど。 ウ)溶剤減容 5)処理方法:破砕や減容の方法などがある。さらに、 減容には圧縮による方法と薬品を用いる方法がある。 (右写真参照) 6)サーマルリサイクル:廃棄物をただ焼却してしま うのではなく、熱源として利用することで、熱(エ ネルギー)回収を行うリサイクルのこと。プラスチ ックを固形燃料にする方法、油化し液体燃料とする 方法、直接燃焼して熱を回収する方法などがある。 7)マテリアルリサイクル:廃プラスッチクを再度プ ラスチックの原料として利用するリサイクルのこと。 50 海と安全 2011・夏号 薬品による発泡スチロール製フロートの減の様子 海洋ゴミによる漁船の被害状況について 漁船保険中央会 船舶審査部 船舶審査課 吹上 課長 圭一 日本の稼動漁船の大多数が加入している 漁船保険では、その主たる保険種目におい て、漁船が沈没、座礁、火災、衝突など不 慮の事故によって損傷を受けた場合に、漁 船の損傷を復旧するための修理費用に対し て保険金が支払われます。 海洋ゴミによって航行する漁船が損傷を 受けるのは、主に、流木など浮遊物との接 触や衝突と、ロープなどのプロペラへのて 台風の襲来後、港を埋め尽くす流木などのゴミ ん絡(巻込み)といった不慮の事故による 表1 漁船保険事故件数の推移 ものと考えられ、その結果生じた船体やプ ロペラなどの修理費用が保険金支払の対象 となります。 これらの事故は、漁船保険で対象となっ 䠄௳䠅 㻣㻜㻘㻜㻜㻜 㻡㻜㻘㻜㻜㻜 㻠㻜㻘㻜㻜㻜 た全ての事故をその原因別に集計すると、 㻟㻜㻘㻜㻜㻜 毎年のように、その事故件数、支払保険金 㻞㻜㻘㻜㻜㻜 ともに最も多くなっています。 䛭䛾䠄ỿἐ䞉ᗙ♋䞉ⅆ⅏䞉⾪✺䛺䛹䠅 䝥䝻䝨䝷䛶䜣⤡ ᾋ㐟≀䛸䛾᥋ゐ䞉⾪✺ 㻢㻜㻘㻜㻜㻜 㻝㻜㻘㻜㻜㻜 㻜 㻴㻝㻡 流木など浮遊物との接触や衝突は 年間2万件前後 (事故全体の約4割) 㻴㻝㻢 㻴㻝㻣 㻴㻝㻤 㻴㻝㻥 㻴㻞㻜 䠄ᖺᗘ䠅 㻴㻞㻝 減少しています。一方で1年間の全体の事 故件数は、平成16年度は約65, 000件だった 漁船保険で対象となった事故件数の近年 ものが、平成20・21年度は約45, 000件にま の推移を表1に示します。1年間に生じる で減少していることから、これらの事故は 事故件数は、近年5万件前後で、このうち いずれの年も全体の事故件数の約4割程度 2万件前後が流木など浮遊物との接触や衝 を占めるという結果になっています。 突と、ロープなどのプロペラへのてん絡に なお、近年の加入漁船数は約20万隻です よる事故となっていることが分かります。 から、約1割程度の漁船が、流木など浮遊 年間最多の10個の台風が上陸した平成16 物との接触や衝突と、ロープなどのプロペ 年度は約27, 000件と近年で最も多くなって ラへのてん絡による被害を被っていること いますが、平成20・21年度は約18, 000件に になります。 海と安全 2011・夏号 51 す。また、近年、事故件数と支払保険金が 表2 支払保険金の推移 減少傾向にあることについては、漁業者の 䠄൨䠅 㻡㻜㻚㻜 䝥䝻䝨䝷䛶䜣⤡ ᾋ㐟≀䛸䛾᥋ゐ䞉⾪✺ 㻠㻜㻚㻜 高齢化、漁船数の減少、燃油の高騰などの 要因が考えられます。 㻟㻜㻚㻜 保険金支払額は 台風の襲来件数に比例 㻞㻜㻚㻜 㻝㻜㻚㻜 㻜㻚㻜 㻴㻝㻡 㻴㻝㻢 㻴㻝㻣 㻴㻝㻤 㻴㻝㻥 㻴㻞㻜 䠄ᖺᗘ䠅 㻴㻞㻝 海洋ゴミによる保険金支払額 年間で約30億円超 (全体の約2割強) 多くの台風が上陸した平成16年度におい て、流木など浮遊物との接触や衝突と、ロー プなどのプロペラへのてん絡による事故が、 件数、支払保険金ともに近年で最多である ことから、台風など荒天の後は倒木などが 流木など浮遊物との接触や衝突と、ロー 河川を流れ海に流出するなどして海上に大 プなどのプロペラへのてん絡事故による漁 量の流木などが浮遊することを裏付けてい 船保険の支払保険金の近年の推移を表2に るのではないかと考えられます。 示します。平成16年度は約42億円でしたが、 流木やロープなどの海洋ゴミによって漁 平成20年度は約30億円に減少しています。 船が被る損傷としては、船体の部分的な損 一方で1年間の全体の支払保険金は、平 傷や船外機のプロペラが曲がるといった事 成16年度は約190億円だったものが、平成 故から、沖合を航行する大型漁船のプロペ 20年度は約130億円にまで減少しているこ ラにロープが巻付いて航行不能となりタグ とから、これらの事故はいずれの年も全体 ボートに曳航されるといった事故まで様々 の支払保険金の約2割強を占めるという結 あります。 果になっています。 さらには、航行不能で漂流中に荒天に遭 なお、この間の1件あたりの支払保険金 遇したり、プラスチック製の船体に破孔が は単純に平均すれば約16万円となっていま 生じて、人命が危険に晒されるといった事 態を招くこともあります。このようなこと から、漁船の事故を未然に防止する観点に おいて、海洋ゴミを削減することは大変重 要であると考えられます。 大量の流木などの漂着によって移動も困難な漁船 52 海と安全 2011・夏号 長崎県の海岸漂着物対策について 長崎県 環境部廃棄物対策課 課長補佐 水産部資源管理課 課長補佐 はら 原 ひ だか ともはる 智治 ゆき お 日髙 幸生 本県は、日本列島の西端に位置し、島の 発生抑制対策、ならびに県、市町、県民、 数が全国第1位、海岸線総延長約4, 200km 民間団体などの役割分担と相互協力を確立 と、北海道に次ぐ全国第2位の長さを有し するための「長崎県海岸漂着物対策推進計 ています。また、黒潮から派生する対馬海 画」(地域計画)を平成22年10月に策定し、 流の影響も受けやすい地形的な特性から、 総合的な海岸の環境の保全を図るための海 毎年多くのごみが海岸に漂着し、景観、自 岸漂着物対策に取り組んでいるところです。 然環境、水産資源、観光などへの影響が深 刻な問題となっています。 長崎県における海岸漂着物の現状 本県における海岸漂着物量は、平成22年 1月から3月に行った実態調査結果による 推 計 値 で、約80, 000㎥(約9, 000ト ン)と なっています。 長崎県の位置・海流の状況 このため、本県では、平成14年度から県 漂着ごみの状況(平成22年 対馬市) や市町・漁協などの関係団体との協議の場 海岸漂着物の内訳は、平成21年度から22 を設けるとともに、漂着ごみ問題対策指針 年度に対馬市において実施された環境省委 や、漂着ごみ問題解決のための行動計画を 託の漂流・漂着ゴミモデル調査によると、 策定し、漂流・漂着ごみ対策に取り組んで 約30%が自然物、約70%が人工物となって きたところです。 おり、重量比率で木材などが40%、流木な その後、平成21年7月に制定された「美 どが約30%、プラスチック類が約20%を占 しく豊かな自然を保護するための海岸にお めています。ペットボトルでは、韓国製が ける良好な景観および環境の保全に係る海 52%を占め、中国製が13%、日本製が8% 岸漂着物等の処理等の推進に関する法律」 を占めています。ライターでは韓国製が (海岸漂着物処理推進法)第14条に基づき、 21%、中国製が16%、日本製が4%となっ 地域の特性を踏まえた回収および処理方法、 ています。 海と安全 2011・夏号 53 の約4割は韓国語標記、約1割は中国語標 記があり、中には注射針がついたままのも のもあり、報道やホームページを使って注 意喚起を行っています。 また、漂流・漂着木は、平成18年7月中 旬から8月にかけて、本県の外洋に面する ほぼ全地域に当たる14市町において、長さ 廃ポリタンク漂着状況(平成22年度 五島市) 2∼6m、直径20∼40cmの自然木、約7 万8, 000本が漂流、漂着しました。 次に、廃ポリタンクについては、昨年12 月から今年3月31日までに、本県の6市2 町に2, 383個漂着しており、うち内容物が あったものは161個、そのうち強酸性の液 体や油などが入ったものが13個ありました (その他は海水)。また外国語表記された ものが1, 006個あり、なかでもハングル文 字が記されたものが多くありました。環境 省によりますと、廃ポリタンクの漂着個数 海岸に漂着した流木(平成18年度 五島市) は、本県が2, 383個で一番多く、続いて山 口県の2, 182個、新潟県の2, 113個となって います。 流木を確認した時点で、海上保安部や県 から関係機関、漁業関係者などに速やかに また、医療系廃棄物の漂着も多く昨年11 連絡し、注意喚起を促しましたが、漁船の 月30日現在のデータでは、全国で約28, 000 スクリューやシャフトの損傷(357隻、被 個に上っており、本県には3, 717個の注射 害額約9千8百万円)、また定置漁具の破 器や薬瓶などが漂着しています。回収個数 損(2件、被害額約150万円)などの漁業 被害が発生しました。 県では直ちに対策会議を開催し、対応を 協議するとともに、国への支援措置などの 要望、県支援制度の創設、漁船保険組合へ の保険金の迅速な支払い要請などを実施し ました。 なお、流木は平成21、22年にも九州や長 崎の近海を漂流しているとの情報があり、 その度に関係者へ注意喚起しています。 医療系廃棄物漂着状況(平成22年度 壱岐市) 54 海と安全 2011・夏号 長崎県の取り組み 「長崎県海岸漂着物対策推進計画」は、 海岸漂着物の円滑な処理の推進、海岸漂着 物などの効果的な発生抑制、県、市町、県 民、民間団体などの多様な主体の適切な役 割分担と連携の確保、国際協力の推進など を基本方針とし、海岸の将来像を「ごみの ない美しく豊かな自然あふれる海岸を目指 す」として、海岸漂着物の円滑な処理、県 民生活で生じる廃棄物の発生抑制、外国由 来の海岸漂着物の削減を基本目標に、計画 を推進しています。 まず、海岸漂着物の円滑な処理の推進に 上下とも 2010日韓市民ビーチクリーンアップ(対馬市) ついては、海岸管理者(県・市町)が平成 21年度より、国の地域グリーンニューデ プ」を実施し、韓国釜山外国語大学の学生 ィール基金を活用して、重点区域(154カ 100人を始め、総勢約400名で海岸清掃を実 所、約3, 800km)として指定した海岸で、 施し、約14. 4トンのごみを回収しました。 海岸漂着物の回収処理事業を実施しており、 また、環境月間の街頭キャンペーンにお 平成22年度は県内の9市2町で行いました ける漂着ごみ対策についてのPRや、日韓 (予算額約6億2千万円)。 海峡沿岸漂着ごみ一斉清掃、ポイ捨て禁止 22年度に実施した市町の中では、対馬市 の看板設置などを実施しています(予算額 が予算額でその7割を占めており、回収見 約6百万円)。今年度も引き続き、街頭キ 込み量も770トンとなっています。また、 ャンペーンや看板設置を実施するほか、壱 地理的特性などから、対馬市では外国由来 岐市においては「ボランツーリズム in 壱 のごみが多くなっているのが現状です。 岐」として、海岸漂着物の発生抑制のため 今年度も引き続き回収処理事業を実施す る予定であり、9市2町において実施する こととしています。 廃棄物の発生抑制対策 の普及啓発事業を6月に実施する予定です。 漁業関係者などの取組としては、平成6 年度から県下一斉浜掃除や環境美化キャン ペーンを実施しています。これは、県、県 漁連などの漁業団体、市長会、町村会など 次に、県民生活で生じる廃棄物の発生抑 で構成される「長崎県海と渚環境美化推進 制対策として、平成22年度は対馬市の井口 委員会」が「守ろう、育てよう、美しい海」 浜海岸において、対馬市と県の共催事業と をキャッチフレーズに、環境美化運動の推 して「2010日韓市民ビーチクリーンアッ 進期間(例年7月第3月曜日の「海の日」 海と安全 2011・夏号 55 おわりに 現在いろいろな対策を実施している国の 地域グリーンニューディール基金は、この 基金の事業期間が平成23年度までとなって おり、その後の財政支援が明確になってお りません。また、漂流ごみや海底ごみは漂 着ごみの発生原因となるため、主に市町や 県下一斉浜そうじ(時津町) 漁業者などが回収していますが、その処理 の前後から8月中旬まで)を設け、この期 責任は明確になっていないのが現状です。 間中、新聞、地域広報紙、ポスターなどに 本県の漂着ごみなどは外国由来のものが多 より海浜美化に関する啓発活動や県内各地 く、繰り返し漂着しており、関係国に対し の海岸で実施される浜そうじへの参加を呼 早急に発生抑制対策を講じるように要請す びかけています。浜そうじには漁業者、地 る必要があります。 域住民など、毎年1∼2万 人 が 参 加 し、 1, 000トン前後のゴミを回収しています。 そこで、本県は国に対し海岸漂着物対策 について、①地域グリーンニューディール また、有明海の長崎、佐賀、福岡、熊本 基金事業後の新たな財政支援措置の創設、 の4県と各県の漁業団体が「有明海沿岸四 ②漂流・漂着および海底ごみの一体となっ 県漁場環境保全総合美化推進事業推進協議 た処理体制の確立、③国外からの漂着ごみ 会」を組織し、「有明海4県クリーンアッ に対する外交上の適切な対応の実施につい プ事業」を平成元年から実施しています。 て、現在要望しているところです。 事業では海浜の一斉清掃やポスター、 海岸漂着物対策は、一部の地方自治体だ リーフレットなどによる啓発活動を実施し けでは解決できない問題です。本県は、次 ており、平成21年度は4県で約1万3千人 世代に「ごみのない美しく豊かな自然あふ が参加し、4トントラック341台分のゴミ れる海岸」を残すため、海岸漂着物処理推 を回収しています。 進法、長崎県海岸漂着物対策推進計画に基 づき、県、市町、県民、民間団体などの関 係機関などとの役割分担と相互協力のもと、 回収処理、発生抑制対策事業などを実施す るとともに、県民や国民の皆様に海と渚の 環境美化などの普及啓発活動を、これから も進めて参りたいと考えております。 有明海4県クリーンアップ事業(島原市) 56 海と安全 2011・夏号 取材 港の美観と船舶の航行安全を願って 港の海洋ゴミを回収する清港会の活動 港湾は機能・用途・運営主体・規模・法令などによって分類されるが、用途による分類で は商港、工業港、漁港などが主である。こうした港には多くのゴミが浮遊し、海中・海底に も散乱している。港の海洋ゴミを回収し処理する、地道な活動を日夜続けている全国各地の 清港会の活動についてはあまり知られていない。その中から神戸と川崎の清港会の活動を紹 介する。 70年余の歴史ある 神戸港の清港会 1938(昭和13)年7月3日、夕方から降 り始めた激しい雨は、翌日、翌々日午前に も止まず、ようやく5日13時20分に収まっ 右から常務理事の中林雅弘さんと永田國生総務課長 た。この3日間、阪神間の広い地域で400 mm を超える未曾有の降雨により各河川流 神戸清港会は清掃事業としては海上清掃を 域で決壊、浸水、さらに土石流などの土砂 筆頭に、臨港地区に限定した陸上清掃、ギ 災害が相次ぎ家屋や流木が港を埋めた。そ ャベージ処理(外航船舶から排出される生 の結果、ミナト神戸の機能は完全に麻痺さ 活廃棄物の回収)その他の関連事業が挙げ せられた。 られる。 長老たちの記憶に長く残る、世にいう阪 海上清掃事業については神戸市みなと総 神大風水害である。こうした事から神戸の 局から借り受けた清掃船3隻で、港内の海 港に、常設的な清掃団体が必要だとして、 上浮遊物などを回収して船舶航行の安全と 1939(昭和14)年9月、海運会社や港湾関 港内の環境保全にあたっている。 係者の呼びかけにより神戸清港会が設立さ れた。 陸上清掃に関しては、1975(昭和50)年 に港湾地域の陸上清掃団体を吸収合併し神 !神戸清港会はポートアイランド(人口 戸港の海陸一体の環境美化体制を確立、そ 島)の北端、タグボート係留所の東端に位 の後も臨港各地区の美化協会も吸収合併し 置し、目前には本土とポートアイランドを て今日に至っている。 繋ぐ巨大な神戸大橋が見える。 海と安全 2011・夏号 57 北西の風が吹くと ゴミは少ない 神戸港は北に六甲連山が屹立し、南方に 広がる大阪湾に位置していることから夏期 に南風に寄せられるゴミが多い。一方、冬 季は北西の風が多くゴミは少なく港内はき れいだ。 大阪湾に流れ着く比較的大きな河川は武 神戸の「秘密兵器」 、第3清港丸のベルトコンベアー式回収装置 で集まったゴミを回収 庫川、淀川、大和川などあるが、その他、 もらった。確かに冬季の神戸港はゴミは少 六甲山から流れる中小河川も数多くある。 なく、停泊船も少ない。しばらく走り回っ こうした河川から大量の家庭ゴミが流れだ た後、一部の突堤の奥まったところにゴミ し、大阪湾内を時計回りに回遊し神戸港に が浮遊・集積していた。本船は船首に取り たどりつく。家庭ゴミといっても洗濯機か 付けてあるアルミ製のベルトコンベヤーを らテレビ、冷蔵庫などの廃家電も多く、タ 海面に突きいれて浮遊ゴミを汲みあげるよ イヤや自転車、流木など比較的大きなもの うに回収する。以前はフックや網でゴミを から、プラスティック製品や発砲スチロー 回収していたそうだ。ベルトコンベヤー方 ルなどの人工系のゴミも多数ある。 式になってから手も汚れず、回収効率も格 台風時期には淀川や大和川からは死んだ 牛や馬なども流れてくることもあるそうだ。 段に向上した。 「広大な神戸港を、毎日走りまわってゴ 港内で回収するゴミの量は、台風発生の有 ミを探して回収するのは大変ですね」と聞 無や土砂災害などによっても違うが、ここ くと、竹島友司船長は「長年の経験で、時 数年は市民のゴミに関するマナーが向上し 期と時間によってゴミの溜まり場が特定の たのか、減少傾向にあると中林雅弘常務理 ところにあることがわかる」という。「死 事はいう。 んだ海亀も毎年のようにあったし、イルカ 総務課長の永田國生さんに、事務室前の やイノシシも浮いていることがある」とい 岸壁に係留している清掃船に案内してもら う。しかし、一番嫌なものはやはり「死体」 った。神戸清港会には3隻の清掃船があり の発見と回収だ。 ベルトコンベヤー方式のゴミ回収は、「神 竹島船長は「神戸空港ができてから、防 戸が最初に取り入れたものです」と永田さ 波堤の役目をしてくれるのかゴミが幾分少 んはいう。 なくなってきた」という。 浮遊ゴミはベルトコンベヤーで 船内に 清港丸に乗って、さっそく港内を走って 58 海と安全 2011・夏号 しかし、毎年200トンから600トン強の港 内に浮遊するゴミを、猛暑の夏も、六甲お ろしが吹く寒気厳しい冬においても、目立 たぬところで黙々と回収作業を続けている。 京浜工業地帯の中核にある 川崎港の清港会 川崎港は東京湾に面し、北に東京港、南 に横浜港の二大港に挟まれ、京浜工業地帯 の中心部に位置する工業港である。周辺は 左から「第一清港丸」と「つばき」の2隻の回収船 東京湾岸道路や東京湾横断道路などの広域 交通網が整備されていて、東京国際空港(羽 から川崎港区域を独立させ、!川崎清港会 田空港)にも近い。明治末期から大規模な を設立した。 埋め立てと港湾整備が始まり、昭和40年代 まで続いた。以来、京浜工業地帯の主要産 業である鉄鋼、石油精製、石油化学、電気 機器、金属、食品などの日本有数の産業を 背景に持つ工業港として発展してきた。 海をきれいにする啓発事業にも 力を入れて 川崎清港会の主な事業は①海面清掃事業 ②流出油事故処理事業③川崎港環境保全啓 川崎清港会の前身は、1949(昭和24)年 発事業などに大別される。川崎港は大規模 5月に設立された(財)横浜・川崎清港で、 な埋め立てによって整備されてきただけに 急速な高度経済成長を背景に京浜工業地帯 海面清掃の事業エリアは、多摩川以西の多 の主要工業港として発展、1964(昭和39) 摩・末 広・大 師・夜 光・桜 堀・水 江・池 年に川崎市や川崎港を利用する船社・荷役 上・入江崎・千鳥・塩浜・田辺・南渡田・ 業者その他140社などの協力により、横浜 浅野・白石・京浜・境の各運河と東扇島防 波堤内の閉鎖区域と なっている。 常務理事の上妻芳 幸(かみつま・よし ゆ き)さ ん は、 「ゴ ミの量は天候に大き く左右され、ゲリラ 豪雨や台風シーズン には多くなる」とい う。多摩川上流の大 河内ダムが放流する と流木も流れて来る そうだ。 海と安全 2011・夏号 59 そして「ゴミの回収も大事ですが、ゴミ を出さない、海をきれいにする啓発事業に も力を入れている」と話してくれた。 川崎清港会には「第一清港丸」と「つば き」の2隻の回収船があり、午前と午後の 2回に港内をまわる。 取材当日、港湾局から、金曜日の強風に よって海面から岸壁上に吹き上げられたゴ 航行中、船首でゴミを探しながら回収のスタンバイ ミの回収要請があり、通常の仕事とは違う 「つばき」は双胴型の回収船で、双胴の 作業で出動する「つばき」に同乗させても 中間にゴミを吸収し、船体中央部にある鉄 らった。千鳥町北岸の基地から塩浜、京浜 製のボックスカゴに収める。ゴミ回収はそ 運河を通り、通称、切通しといわれている れだけでは足りないので人海戦術となる。 狭水路を抜けて東扇島南端に向かう。 「第一清港丸」はそうした装置がないの で、すべてが手作業でゴミを回収する。 市川船長は「台風時期が大変だ」という。 そして遠く千葉県から流れてくるゴミもあ るそうだ。「こっちのゴミもあっちに行っ ているのだから、お互い様だけどな」と笑う。 流木を回収する乗組員たち 手作業でゴミを回収する 人海戦術が基本 本船は市川賢治船長はじめ4人の乗組員 で運航されている。移動中、船首には常時 左から回収船「つばき」の市川賢治船長、青木祐二さん、河西英 二さん、喜多村憲一さん 2人の乗組員がゴミ回収用の網やフックを いずれにしても終わりのない、港のゴミ 持ってスタンバイ。ゴミを見つけ次第、片 回収作業は地味で人目に付かず、延々と続 っ端から回収する。 く大変な作業だ。 船長が前方を注視しながら操船、「前方 何かと便宜を図ってくれた乗組員の1人、 に角材らしきもの!」の号令とともに、本 喜多村憲一さんは「港がきれいになると、 船は急停止する。機関を後進にかけたりし やっぱり嬉しい」と語る。そして市川船長 ながらなんとか流木を回収する。全員で取 は最後に「釣りなどで港に来る人たちには、 り掛かっても回収できないような流木は、 ゴミなど残さず最低限のマナーを守ってほ ロープで括って曳航して帰るという。 しい」と話していたのが印象に残った。 60 海と安全 2011・夏号 NOWPAP (北西太平洋地域海行動計画)と海洋ごみ !日本海難防止協会 開発途上国に本部を置いた 最初の国連機関 UNEP UNEP の地域海行動計画 UNEP が地球環境にかかわる様々な分 UNEP(国際連合環境計画:United Na- 野に焦点を当てている中で、優先的に取り tions Environment Programme)は、国 組む分野のひとつとして「海洋」が挙げら 連諸機関の環境に関する活動を総合的に調 れ、1974年には、海洋および沿岸資源の管 整管理し、国際協力を促進していくことを 理や海洋汚染の規制に対する地域的アプ 任務とする国連の機関で、1972年に国連総 ローチとして「地域海計画」というプログ 会の決議に基づいて設立されています。こ ラムが採用されています。 の機関の本部は、ケニアの首都ナイロビに 「地域海計画」では、特定された海域を 置かれ、開発途上国に本部を置いた最初の 囲む関係諸国が、国際機関の支援を受けな 国連機関です。 がら個々の地域海に即した「地域海行動計 この機関が取り扱う分野は、オゾン層保 画」を作成し、UNEP の政府間会合で 採 護、有害廃棄物、海洋環境保護、水質保全、 択されることになっています。1975年に地 化学物質管理や重金属への対応、生物多様 中海の行動計画が採択されたのをはじめと 性の保護など多岐にわたっています。 して、現在では世界の19海域で計画が推進 されています。(下図参照) 海と安全 2011・夏号 61 NOWPAP について NOWPAP(北西太平洋地域 海行動計画:North Pacific Action Plan)は、前述の「地域海 行動計画」 の11番目として、 1994 年9月に、日本、中国、韓国お よびロシアの4ヶ国による政府 間会合で採択されています。こ の地域海の対象区域は、北緯33 度から55度、東経121度から145 度とされており、日本海全域が カバーされています。(右図参 照) NOWPAP では、海洋汚染に 対する準備および対応、地域モ ニタリングプログラムの構築、 海洋・沿岸環境に関する普及啓 発など、優先的に取り組んでい る7つのプロジェクトがあり、 前記の4カ国の既存の機関・研究所に置か ユニット」(RCU : Regional れた「地域活動センター」 (RAC : Regional Unit)が置かれています。 Activity Center)が各活動の中心的役割 を担っています。ちなみに、日本では、富 山市にある!環日本海環境協力センター Coordinating NOWPAP と海洋ごみ問題 ! 1 海洋ごみ問題への取り組みの始まり (NPEC : North Pacific Regional Environ- NOWPAP では、2004年11月に韓国・釜 ment Cooperation Center)に、この RAC 山で開催された「第9回政府間会合」で「海 が置かれ、CEARAC(特殊モニタリング 洋ごみ問題」が議題となり、この問題に関 及び沿岸環境評価地域活動センター:Spe- する検討作業を進めることが合意されてい cial Monitoring and Coastal Environ- ます。 mental ! 2 MALITA とは Assessment Regional Activity Centre)という名称がつけられています。 2005年11月に富山で開催された「第10回 そして、NOWPAP 全体の調整事務局機 政府間会合」では、「NOWPAP 地域におけ 能を担う組織として、富山市および釜山(韓 る海洋ごみ活動(MALITA : Establishment 国)に、UNEP の 機 関 で あ る「地 域 調 整 of the Marine Litter Activity in the 62 海と安全 2011・夏号 NOWPAP Region) 」が承認され、その後、 力など)、海洋ごみの数量と分布のモニタ この計画に沿って様々な活動が展開されま リング(海洋ごみモニタリング、海洋ごみ す。 データベースのメンテナンス、データの取 この MALITA の主な内容は、作業計画 りまとめ、海洋ごみ関連の研究成果の収集 と活動資金であり、2007年までの作業計画 など)、海洋ごみの除去および処理などと には、海洋ごみに関するデータ収集および なっており、その後、この計画に沿って様々 データベースの設立、ワークショップの開 な活動が展開されています。 催、ガイドラインの作成、クリーンアップ この活動のひとつとして、各国で毎年実 キャンペーンの実施、RAP MALI(後述) 施されている「海岸クリーンアップおよび 草案の準備などが挙げられています。 ワークショップ」がありますが、この催し ! 3 には海岸清掃や海洋ごみのデータ収集のほ RAP MALI とは かに「啓蒙活動」という側面があります。 2008年3月に、NOWPAP メンバー国に MALI : NOWPAP メンバー国に囲まれた日本海 NOWPAP Regional Action Plan on Ma- 周辺海域における海洋ごみは、海潮流や卓 rine Litter)」が承認されています。 越風により他の国にも大きな影響を及ぼす より、 「海洋ごみに関する(RAP この RAP MALI の主な内容は、海洋お 地理的状況を考えた場合、当該催しは、こ よび沿岸環境への海洋ごみの流入防止(法 の地域での海洋ごみ問題の解決に向けて大 的手段および行政手段、海洋ごみの適正管 きな意味を持つと思います。 理、教育・啓蒙活動、市民社会との連携協 NOWPAP ,*0 UNEP RCU( CEARAC ) DINRAC ( POMRAC ( MERRAC ( ( ) ) ) FPM FPM ) ( ) FPM ( ) ( /HAB) ( FPM ) 海と安全 2011・夏号 63 !環日本海環境協力センター(NPEC)の活動 環日本海の時代を見越して 日本海および黄海沿岸は近年急速な経済 発展を続けていて、人口が集中することに 伴い深刻な環境破壊が進んでいる。これら の地域では、大気汚染、水質汚濁、海洋汚 染、黄砂被害や油流失など様々な環境問題 が顕在化し、沿岸周辺国の日本、韓国、中 国さらにはロシアなどにも深刻な影響が出 てきている。 富山県は本州のほぼ中央に位置し日本海 富山新港に係留され一般公開されている航海訓練所の元練習船・ 海王丸 に面して、伏木富山港は北陸工業地帯や環 日本海貿易の拠点として発達し、古くは伏 調整ユニット」(RCU)とともに、北西太 木港、富山港などがあり、最近では富山新 平洋(日本海、黄海)の海洋環境保全に向 港が拡充され移出入貨物、輸出入貨物量と けた国際的な取組みの一翼を担っているほ もに拡大してきている。また魚津、滑川、 か、北東アジア地域の地方自治体間の交流 氷見などは暖流と寒流が入り込む富山湾の のチャンネルを活用した国際環境協力事業 豊富な海産物が陸揚げされることで有名。 を進めてきている。 こうした経済的、地理的状況や環日本海 そうしたなか実施された海辺の漂着物調 地域の環境問題の顕在化を背景に、 1996 (平 査の結果によると、2008(平成20)年の調 成8)年当初、富山県の提唱により日本海 査結果では、漂着物の種類(素材)を重量 沿岸の10県の連携・協力によって「海辺の で比較してみると、 「プラスチック類」 (60% 漂着物調査」が開始された。調査は、その 程度)が最も多く、次いで「その他の人工 後前述した4カ国の関係自治体も参画し、 物(主に材木類)」(15%程度)、「ガラス・ 沿岸地域の市民や学生が参加する国際的な 陶磁器類」(9%程度)の順になっており、 共同環境調査となっている。 自然の環境の中で分解されにくいプラスチ 1997 (平成9)年4月に設立された(財) 環日本海環境協力センター(NPEC)は、 ック類のごみが広範に漂着していることが 明らかになった。 NOWPAP(北西太平洋地域海行動計画) また、2000(平成12)年から2008(平成 の CEARAC(特殊モニタリング及び沿岸 20)年までの調査結果から、わが国の海岸 環境評価地域活動センター)として指定さ 全体に年間で漂着したごみの重量を約19万 れ、同じく富山市に開設されている「地域 トンと推計している。 64 海と安全 2011・夏号 内外から流れ着いた漂着物は、ライター、 漁業の町・氷見市で 「漂着物展2011」開催中 電球、財布、ペットボトル、入れ歯、洗剤 などと細かく分類され約60種類、300点以 富山市にある NPEC を訪問する日、偶 然にも氷見市海浜植物園で「松田浜 漂着 物展2011」が開催中で、最終日とのことで あった。 上が展示され、分類種別ごとにコメントが 付けられている。 コ メ ン ト の 一 例 を 紹 介 す る と「ラ イ ター:使い捨てライターが本当に捨てられ 氷見市(ひみし)は、富山市より西北に ていました。ライターは書かれている商店 ある高岡市で氷見線に乗り換えた終点にあ から漂流してきた位置関係が把握でき、研 り、能登半島の東側付け根部分に位置して 究されています。いろいろな国の商店の名 いる。日本海側有数の氷見漁港には、四季 前が書かれていて見るのが楽しく、拾うの を通じて156種類もの魚が水揚げされ、初 に熱くなる漂着物です」と社会風刺と多少 夏の「マグロ」 、冬の「寒ブリ」、そして「氷 のユーモアを交えて、興味や関心を抱かせ 見いわし」は全国的に有名。 るように記述されていた。 氷見市海浜植物園は1996(平成8)年5 「面白く表現することによって、海洋汚 月に松田浜に開園され、海岸に流れてきた 染防止と海洋環境の保全につなげるきっか 異国からの「旅人」や南国の植物、川や水 けになれば良いと思います」と説明してく 辺の不思議を覗くことをコンセプトに運営 れたのは、氷見市役所職員で!氷見市海と されている。 緑の協会に出向中で事務局長の坂本研資さ 同植物園は松田浜の海浜散策園を整備す ん。 ることから海岸清掃にも力を入れ、漂着し 同展示を見学し、案内書を読んで気づい た「ごみ」の中から面白い品物や珍しいも たのだが、漂着物とはいっているが船舶関 のをセレクトして展示することで、市民に 係者の視点から捉えた、漂着ごみとか海洋 海洋環境の保全と美化運動につなげようと、 ごみといういい方はしていない。 年に一度は漂着物展を開催し展示している。 海岸に流れ着いた漂着物を拾い集め (ビーチコーミングという)、博物学、植 物学、民俗学的な視点から考察・研究し現 代社会の断面を考察する分野になっている ようだ。 坂本さんによると「過疎地の植物園で開 催しているので、そんなに多くの見学者は 来ないが、毎年一度か二度は開催し、海洋 氷見市海浜植物園で開催されていた「松田浜漂着物展2011」 2011年3月7日 汚染防止対策の一翼の取り組みとして今後 も続けていきたい」とのことであった。 海と安全 2011・夏号 65 ! 環日本海環境協力センター (NPEC)の主な取り組み の活動、また、行政から法に基づく海岸漂 着物対策などが報告されるとともに、深海 のごみに関する研究者の講演が行われた。 NPEC が実施している事業全体を紹介す NPEC からは、海岸清掃などの市民が取り ると、NOWPAP の地域活動センターとし 組める海洋ごみの対策行動(「海洋ごみア ての役割のほか、環日本海地域の国際交 クション」と称している)について提案が 流・人材育成に関する事業、環日本海地域 なされた。 の環境保全に関する調査研究からなってい る。 平成22年度には、平成23年2月18日に、 日・中・韓・露の自治体担当者による「海 環日本海地域の国際交流・人材育成事業 辺の漂着物調査関係者会議」が開催され、 としては、①海洋環境の保全に関する国際 それぞれの地域と団体で取り組んだ活動事 会議の開催②富山県がコーディネート自治 例が発表されている。 体になっている「北東アジア地域自治体連 翌19日には富山県内高校生の参加を得て、 合(NEAR)環境分科委員会」の運営業務 「海洋ごみアクション・フォーラム」が開 ③沿岸地域との環境協力の推進④北東アジ 催されている。平成23年度のフォーラムは、 ア地域の青少年を対象とした環境教育の推 若い世代が自ら海洋ごみ対策を考えること 進などがあげられる。 を目指したもので、海や環境に関する高校 環境保全に関する調査研究では①中国遼 寧省との環境共同調査研究②人工衛星など 生の取組みの事例発表や海洋ごみを考える ワークショップが行われた。 を利用した環境モニタリング手法や環境評 価手法の開発③人工衛星リモートセンシン グデータの提供などがあげられる。 漂流・漂着ごみ対策推進事業は、これら 双方に位置づけられる事業であり、前述の 海辺の漂着物調査のほか、海洋ごみ問題に 関する普及啓発事業、海洋ごみの削減対策 の検討など多岐にわたっている。 海洋ごみ問題を市民に どうアピールするか NPEC の副主幹研究員の島田博之さん(3月8日) NPEC のこうした取り組みを紹介してく れたのは副主幹研究員の島田博之さん。 海洋ごみに関する普及啓発事業として、 島田さんは「一般の市民は夏には海水浴な 昨年度から、一般市民を対象とした「海洋 どで海に行くが、この時海浜は清掃されて ごみアクション・フォーラム」を富山県と いて海はきれい。ごみが大量に漂着してい 共催している。昨年度は、漁場環境保全活 るシーズンオフに海岸に行くことは少な 動団体や環境保全活動団体の海洋ごみ対策 い」。そうしたことから、「海に関心のない 66 海と安全 2011・夏号 方も含めて、市民にひろく海洋ごみ問題を アピールしていくのは簡単ではない」とい う。また、未来を担う若い世代への環境教 育・学習を重視しているそうだ。講演や説 明だけでなく、あくまでも身体を使った体 験型の学習が後々の記憶に残るのではない かという。 島田さんは、学生や子供たちに体験学習 をしてもらった後は、アンケートを書いて UNEP(国連環境計画)から派遣されている NOWPAP 副調整 官の鐘暁東(ジォン・シャオドン)さん もらっているそうだ。主催者として今後の 下で取り組まなければなりません」という。 参考になるとともに、そのことが、教育・ そして「海洋ごみは人間が作り出したも 学習の面からも、「ふりかえり」の時間と の」と断言、それだけに解決するためには して有効であり、学生や子供たちの考えに 「人間の毎日の生活の中にある」と手厳し も変化が生じることを期待している。 い。 そして「山、川や街に散乱するごみを清 最後に、海洋ごみ問題に関する地域行動 掃することが海の環境保全にもつながるこ 計画を実施するにあたって、最大のネック とを訴えていきたい」ともいう。そうした は何ですか?との問いに対して、鐘・副調 ことを今後も NPEC の活動の中に盛り込 整官はニコッと笑って「財政的な裏付けで んでいくとともに、地元だけではなく、環 す」と答えた。「活動資金は4カ国の信託 日本海地域の市民の環境保全意識の高揚を 資金で賄われているが不十分です。そうし 図っていきたいと話してくれた。 たことから活動も制限される」と率直にい NOWPAP の地域調整ユニット (RCU)を訪ねた 財政基盤の拡充も必要と う。「本誌を通じて、日本のいろんな財団 に資金提供のお願いをしてください」と依 頼された。 UNEP(国連環境計画)から派遣されて いる NOWPAP 副調整 官 の 鐘 暁 東(ジ ォ ン・シャオドン)さんに聞いた。鐘暁東・ 副調整官は韓国から単身で来日して2年に なる。 鐘・副調整官は「海洋ごみの問題は、富 山だけの問題でなく日本沿岸地域の、また 日・中・韓・ロ4カ国の共通の問題です」 と語る。 「それだけに海洋ごみの問題に対 しては、国境を越えて各国が密接な協力の 富山駅前にある NOWPAP と NPEC のあるタワー111ビル 海と安全 2011・夏号 67 漂着ごみを宝の山に∼宝の島プロジェクト∼ 油化装置を用いた新たな海岸漂着ごみの処理システム !日本海難防止協会 離島の漂着ごみ問題は深刻 海洋汚染防止研究部 原因となっている発泡スチロールを、スチ レンを主成分とする石油エネルギー(以下、 海洋ごみ問題は今や全世界共通の社会問 スチレン油という)に燃料化し、取り出し 題である。その中でも海流や季節風の関係 たエネルギーを活用するというシステムの でごみの通り道に位置し、大量のごみが漂 ことである。このプロジェクトは、離島に 着する離島においては喫緊の問題である。 おける海岸の美化や島内の省エネに貢献す 漂着ごみは離島の貴重な自然環境を破壊 るばかりか、ごみ由来のエネルギーを利用 するだけでない。海洋を漂う過程で塩分が した起業を通じ、過疎化・高齢化など離島 付着し、単純に燃やせばダイオキシンが発 が抱える社会問題の解決にも寄与すること 生してしまう。ダイオキシン対応型の焼却 を目的としている。 炉を利用したとしても、漂着物の多くを占 めるプラスチック系のごみを焼却すると炉 を傷めてしまう。不純物が多く混じってい るためリサイクルも難しい。それ故、離島 の漂着ごみを処理するには島外の処理施設 へ運ばなければならず、海上輸送費を含め た漂着ごみの処理費は1立方米につき一万 数千円かかってしまうのが現状である。 なお、離島における漂着ごみの多くは、 海外製品がほとんどであり、 発生源の特定が 難しく有効な抑制策がないのが現状である。 宝の島プロジェクト 西表島の子供たち(西表島・公開実験にて) 漂着発泡スチロールの油化の仕 組み ところで、どのような過程を経て発泡ス そこで、日本海難防止協会では離島に特 チロールがエネルギーに変換されるのか。 化した漂着ごみ問題対策として、油化装置 まず原料を破砕したのちこれを生成油 を用いた新たな海岸漂着ごみの処理システ (装置自身で作られたスチレン油)に溶か ムである「宝の島プロジェクト」を実施し してスラリー状とし、特殊ポンプで熱分解 ている。 釜に供給する。熱分解釜では溶液が350℃ 「宝の島プロジェクト」とは、小型の油 ∼400℃(ポリスチレンが化学的に分解す 化装置を用いて、高額な海上輸送費の主な る温度)に加熱されて分解し、スチレン蒸 68 海と安全 2011・夏号 仕組み 気が発生する。 調整とゴムパッキング類の交換が必要な この蒸気は凝縮器に導かれて液化されス ケースがあるものの、通常は、灯油・重油 チレン油となる。また釜内で分解せずに残 用のボイラーや焼却炉で使う場合は問題な ったものについては油化作業終了時に残渣 く完全燃焼する。 として排出する。 また、ディーゼル機関の燃料に10%混ぜ 本来は塩分を含んでいたり、砂が付着し 使用することもできる。このスチレン油の ていたりするため、リサイクルに適さない ディーゼルエンジンへの使用に関しては、 のが漂着ごみであるが、この装置は異物を 水産工学研究所と共同研究を行い、論文発 全て残渣として排出するため、漂着ごみを 表を行っている。なお、煤が出てしまうの スチレン油として再利用することができる。 で家庭用のストーブでの使用はできない。 難燃剤が混入し、装置の腐食を招くおそ れのある発泡スチロールであっても、事前 に水酸化ナトリウムを霧吹きで噴射して中 和することで対応できる。 スチレン油の特徴 プロジェクトと離島との適合性 本文冒頭で述べた通り、離島でごみを処 理するのに高額な海上輸送費が必要である。 漂着ごみの中でも特に体積が大きい発泡ス チロールは、この高額な海上輸送費の原因 抽出したスチレン油は灯油に近い性状を になっていた。これを島内で油化すること 持っており、硫黄分や灰分が少なく有害成 によって、大幅な輸送費の低減が可能とな 分が出にくい。リッターあたりの発熱量は る上に、スチレン油という有用物が得られ 灯油・軽油より少し大きい。また、若干の ることとなる。とりわけ燃料代の高い離島 海と安全 2011・夏号 69 では、 このスチレン油をエネルギーとして使 うことで、より経済的な効果が期待される。 さらに、離島は、天候の状況によっては 物資の供給が遮断され、孤立する可能性も ある。それ故、発泡スチロールから抽出さ れたスチレン油が、貴重なエネルギー源と して活躍できるのである。すべての物が有 回収した漂着発泡スチロール(鳩間島) 限である離島にとって、エネルギーの一部 功した。これにより、鳩間島の焼却炉の燃 を島内で自給できるということは離島にお 料費を大幅に削減できると期待されている。 いて非常に大きな意味を持つのである。 3)島外からの反響 鳩間島における社会実験 油化装置の導入と社会実験により鳩間島 が多数のメディアからも注目され他地区の 日本海難防止協会は、宝の島プロジェク 官公庁の視察を受けることになった。そう トの効果を検証するため、2009年11月より したことから2010年11月には社会貢献支援 沖縄県竹富町鳩間島で2年間の社会実験を 財団からも鳩間島の NPO による漂着ごみ 実施した。 の油化に関する取り組みが表彰を受けた。 社会実験では、鳩間島の NPO である “南 このように、このプロジェクトを契機に、 の島々守り隊”が主体となり、島内の漂着 鳩間島の認知度が上がり、島の活性化に貢 発泡スチロールの回収と油化を行った。こ 献することができた。 の社会実験より、以下の効果が判明した。 1)海岸の美化 固定式から移動式油化装置の開発 鳩間島海岸における NPO を主体とした 定期的な清掃活動の実施体制を確立するこ とによって島内の海岸が美化された。 2)スチレン油を活用した島内省エネと経 済効果 本社会実験で生成されたスチレン油は、 主として鳩間島内の NPO メンバーの民家 および民宿の給湯ボイラー(灯油用)の代 替燃料として活用されている。 なお、スチレン油は、島内に設置された 固定式油化装置(対馬) 鳩間島での社会実験を進める中で、効果 と同時に課題も浮き彫りになった。 大型の離島や複数の離島を持つ自治体で、 公営の小型焼却炉 (重油用)の代替燃料とし 1台の固定式油化装置で広域の漂着ごみを て利用することも可能である。今後の実現 処理しようとすると、運搬にコストがかか に向け、技術・安全面での検討を行うとと ってしまい、漂着ごみの処理エリアに限界 もに、昨年検証のための予備実験を行い成 ができてしまう。経費を節減し、利便性や 70 海と安全 2011・夏号 検証すべきテーマ(例えば本プロジェクト と社会福祉事業とのコラボレーションな ど)を決めた上で、移動式油化装置を中期 間(3週間程度)出動し、ある程度時間を かけた社会実験を通じ検証を進め、総仕上 げとして「公開実験」を開催し、全国的に 移動式油化装置 アピールするタイプの社会実験のことであ り、②のイベント型社会実験とは、検証す 機動性を向上させるには、自ら移動が可能 べきテーマはこちらからは特に定めず、地 な装置を用い、離島内の各集落や複数の離 域のイベントなどの開催に合わせ、移動式 島を巡回する方法がベストである。 油化装置を数日間の出動して油化のデモン そこで、装置の小型軽量化に取り組み、 装置そのものを4トントラックに搭載した 移動式油化装置を開発し、2010年11月「鳩 間島・宝の島プロジェクト公開実験2010」 において発表した。 ストレーションを行い、当該地域にアピー ルするタイプの社会実験である。 今後の課題と展望 漂着ごみ問題は社会のひずみが生みだし 公開実験では海岸清掃を行い、回収した た複合的な原因からなる社会問題であり、 発泡スチロールの油化を実演した。また、 解決していくには環境面での取り組みだけ 生成油で発電機を稼動し、エコ祭りを開催 でなく、高齢化や過疎化、産業の衰退など した。当日は竹富町長や全国の離島自治体 に対する多面的なアプローチが必要となる。 の職員や海外からの視察者、地元住民など その点、この「宝の島プロジェクト」は漂 大勢が参加し、マスメディアでも大きく取 着ごみ対策だけでなく、前述の諸問題の解 り上げられた。 決策も示しているといえる。なぜならば、 “離島キャラバン隊”について 鳩間島における漂着ごみを油化して燃料 スチレン油の用途次第で、環境面だけでな く、経済や行政、市民生活など様々な分野 に関わっていける可能性を持つからである。 にする社会実験は成功裡に終了した。今後 また、本事業を推進していく上で、地理 は移動式油化装置を用いた広域社会実験事 的、文化的な事情などから、各離島がそれ 業に移行する。具体的には、南西諸島から ぞれ独自の漂着ごみ対策を行なっており、 隠岐までのエリアを対象に①検証型社会実 さらに、一般市民と行政との関わりも島に 験と②イベント型社会実験の2つのタイプ よって様々であることが判明した。今後は の実験を主な離島に立ち寄り実施する。こ この宝の島プロジェクトの離島キャラバン の一連の取り組みを“離島キャラバン隊” 隊がきっかけとなり、離島同士が情報共有 と称して行う予定である。 できるネットワーク作りのきっかけになれ ①の検証型社会実験とは、あらかじめ ばと考えている。 海と安全 2011・夏号 71 海保だより 電子メールを活用した新たな情報提供サービス (緊急情報配信サービス) 海上保安庁交通部計画運用課 海上保安庁では、プレジャーボート、漁 必要なときに」「誰にでも分かりやすく」 船などの船舶運用者や磯釣り、マリンス 提供するため、避難勧告や海難の発生など ポーツなどのマリンレジャー愛好者などを の緊急情報、灯台などで観測した気象現況 対象として、「海の安全情報」を提供する などを、全国の海上保安部などに開設した 沿岸域情報提供システム(以下、 「MICS」 MICS ホームページやテレホンサービスな という。)を平成13年度から運用し、必要 どにより提供してきました。 な情報を「誰もが簡単に」「必要な情報を 図1 MICS 概念図 MICS は、近年、インターネット・ホー 携帯電話を利用して情報の収集を行ってい ムページの利用者を中心に多くの海事関係 るという結果が出ており、今後もインター 者に利用され、 特に、携帯電話からインター ネット・ホームページや携帯電話を中心に ネット・ホームページを利用する利用者が MICS の利用拡大が期待されています。 著しく増加しています(図2)。また、平 今般、海上保安庁では、携帯電話を活用 成20年に海上保安庁が実施したアンケート した利用者の急増を踏まえ、さらなる小型 によると、漁船・プレジャーボートなどの 船舶に対する安全対策の充実強化を図るた 無線設備を有していない小型船舶の多くが、 め、携帯電話に電子メールを活用し、緊急 72 海と安全 2011・夏号 ௳ ⟠ᡤ 80 2,500 70 2,000 60 50 1,500 40 1,000 30 20 500 10 0 0 2004 䝖䝑䝥䝨䞊䝆䠄PC䠅 1,664,792 䝖䝑䝥䝨䞊䝆䠄ᦠᖏ䠅 755,383 Ẽ㇟䝨䞊䝆䠄PC䠅 2,101,090 Ẽ㇟䝨䞊䝆䠄ᦠᖏ䠅 2,036,854 㐠⏝⟠ᡤᩘ 42 2005 2006 2007 2008 2009 2010 2,553,210 3,753,418 2,914,466 2,176,012 2,280,014 2,348,286 1,447,487 2,779,106 3,045,585 4,495,263 3,824,683 3,892,890 4,412,682 3,852,025 5,090,477 4,633,781 5,661,681 4,986,885 4,095,930 52 6,592,115 67 7,979,769 10,519,128 17,647,281 20,118,563 69 69 70 70 図2 MICS アクセス件数の推移 情報を配信する新たな情報提供サービス さらに詳細な情報を確認することができま (以下、 「緊急情報配信サービス」という) す。 を平成23年7月から第三管区海上保安本部 本サービスは、どなたでも無料で利用す 管内(茨城県、千葉県、東京都、神奈川県、 ることができますが、本サービスを利用す 静岡県)で開始し、順次全国展開する予定 るために必要なウェブアクセスおよび電子 となっておりますので、本サービスの概要 メールの送受信に係る費用については、利 についてご紹介します。 用者の負担となります。 概要 提供する情報 緊急情報配信サービスは、避難勧告、海 ❖海上保安庁が発表する緊急情報(一例) 難の発生および気象警報・注意報などの緊 避難勧告の発令 急情報を、事前登録されたパソコンまたは 航路標識の事故 携帯電話のメールアドレスに配信するサー 海難の発生 ビスです。利用者は、利用したい地域およ 航路制限 び情報を登録することにより、当該地域に 航路障害物の状況 おいて緊急情報の配信があった際に、リア など、航行船舶の安全を確保するために必 ルタイムに情報を入手できるとともに、 要な情報(緊急な場合に限る)。 メール本文に記載されている MICS ホー ❖気象庁が発表する気象・警報注意報など ムページへのリンクを活用することにより、 気象警報(暴風雪、暴風、大雨、大雪、 海と安全 2011・夏号 73 波浪、高潮) 海上予報、津波警報・注意報のみが利用可 気象注意報(風雪、強風、大雨、大雪、 能です。(その他の情報は、平成24年度以 波浪、高潮、濃霧) 降、順次提供開始予定です。) 地方海上警報(濃霧警報、強風警報、 登録方法 緊急情報配信サービスの登録は、下記の 暴風警報、台風警報、うねり警報、着 氷警報) 登録ページで行っています。登録ページか 地方海上予報 ら空メールを送信後、折り返し返信メール 津波警報・注意報 が届きますので、本文の案内に従って登録 試行運用 を行ってください。 http : //www7.kaiho.mlit.go.jp/micsmail/ 本サービスは平成23年7月1日から第三 管区海上保安本部において正式運用を開始 reg/touroku.html する予定となっていますが、現在、試行運 (迷惑メール対策機能 用として暫定的に運用を実施しており、登 をご利用中の方は、登 録することにより利用が可能です。 録を行う前に、ドメイ ン指定受信設定に また、第三管区海上保安本部以外の管区 「mics.kaiho.mlit.go.jp」 海上保安本部においては、気象庁が発表す を追加してください) る気象・警報注意報、地方海上警報、地方 緊 急 情 報 䕿๓Ⓩ㘓䛥䜜䛯䝯䞊䝹䜰䝗䝺䝇䛻㓄ಙ 䝭䝃䜲䝹 䜲䞁䝍䞊䝛䝑䝖 䝬䝸䞊䝘䞉⁺༠ Ẽ㇟㆙ሗ䞉ὀពሗ 㻔Ẽ㇟ᗇ㻕 䝯䞊䝹㓄ಙ ➨䕿⟶༊ ᾏୖಖᏳᮏ㒊 䠘⥭ᛴ䝙䝳䞊䝇䠚 ὠἼὀពሗ 䛜Ⓨ௧ <ᑐ㇟ᾏᇦ> 䠆ఀ㇋ㅖᓥἢᓊ 䠆༳䛷♧䛧䛯ἢᓊ䛷䛿┤䛱䛻ὠ Ἴ䛜᮶く䛩䜛䛸ண䛥䜜䜎䛩䚹 䝥䝺䝆䝱䞊䝪䞊䝖䞉⁺⯪⯪➼ ⯟㊰㞀ᐖ≀ሗ 䝩䞊䝮䝨䞊䝆䜈䝸䞁䜽䠄ヲ⣽ሗ䠅 䕿䝩䞊䝮䝨䞊䝆䛾ሗ ᾏୖಖᏳᗇ ⏝⪅䛜ሗ䜢☜ㄆ ⯟㊰ᶆ㆑ 䛾ᨾ 䝩䞊䝮䝨䞊䝆᭦᪂ 䕿⟶༊ᾏୖಖᏳᮏ㒊 ⯪⯧ ὠἼὀពሗⓎ௧୰䠄ヲ⣽䛿䛣䛱䜙䠅 ᣑ 䖃䖃⟶༊ᾏୖಖᏳᮏ㒊 䠍 ⥭ᛴ䢂䡩䡬䡹 䠎 Ẽ㇟䞉ᾏ㇟ሗ 䠏 Ẽ㇟㆙ሗ䞉ὀពሗ Ⓨ௧≧ἣ ᾏ㞴䞉ᨾሗ ᾏୖಖᏳᗇ䠩䠥䠟䠯䝩䞊䝮䝨䞊䝆 図3 緊急情報配信サービス 74 海と安全 2011・夏号 日本も2009年3月に開始された海上自衛 海外情報 ソマリア沖海賊事案の現状と対策 ロンドン研究室 隊護衛艦による護衛活動や支援金拠出など 積極的に活動しています。特に護衛活動に ついては海賊対処法による護衛を開始した 東日本大震災の犠牲となった皆様に対し 2009年7月以降、2011年3月末までに191 心からお悔やみ申し上げます。また被災者 回1639隻の護衛を成功させており、また本 の皆様の一日も早い生活の回復をお祈りい 年3月には日本の会社が運航する船舶を襲 たしますとともに、復旧にご尽力いただい 撃したソマリア人4人を護衛活動に参加中 ております皆様に御礼申し上げます。 の海上保安官が逮捕し、わが国初の海賊裁 震災当日は国際海事機関(IMO)の第 判が行われることとなっています。 15回無線通信・捜索救助小委員会(COM- このような各国の対応に呼応して海賊は SAR15)の 最 終 日 で し た。午 前9時30分 手法を変化させ、より巧妙かつ凶悪化して に始まった取りまとめの本会議では議長を います。元々海賊は小船を利用して沿岸で はじめ、全ての発言者が発言の冒頭に犠牲 活動していましたが、最近では捕獲した船 者に対する弔意を表され、国際儀礼の暖か 舶を海賊母船としアフリカ沖というより、 さと事態の重大さを感じました。 むしろインド沖の東経70度付近まで進出し なお IMO は震災後、日本港湾の利用可 ています。また捕獲した船員に対して、母 能状況などの情報提供を実施しています。 船運航を強要するためや身代金上積みなど 海賊対策について ソマリア沖海賊事案は悪化の一途をたど っています。同事案は2005年から顕在化し のため拷問を用いるようになるなど、凶悪 化しています。前記 IMB の報告によれば 昨年1016名の船員が人質になり死傷者も多 数出ています。 ており、国際商工会議所(ICC)の国際海 この記事をご覧いただいている今も多く 事局(IMB)の年次報告によれば、昨年は の船員が厳しい状況におかれ、その家族は ソマリア海賊によるものと思われる被害件 不安な毎日を送っていることと思われます。 数が219件であったとのことです。 IMO は今年の国際マリタイムデー(9 国連安保理決議に基づく対応や IMO に 月29日)のテーマを Piracy : orchestrating よる各種対策などが積極的に実施されてお the response(海賊対策の組織化)とし、 り具体的には、各国海軍による艦艇の配備、 2月には、各国、国際機関、海運業界など 航行船舶の動静把握、安全確保のための情 多くの関係者の列席のもと、潘基文国連事 報提供など、航行船舶が遵守すべき行動の 務総長により同対策開始が宣言されました。 徹底(Best Management Practice:国土 5月の第89回海上安全委員会では、武装 交通省 HP で仮訳を見ることができます)、 警備員の商船への乗船など、新たな対策が 周辺国の海賊対応能力向上支援などが実施 検討される予定です。 されています。 (室長 倉本 明) 海と安全 2011・夏号 75 「春一番」の定義と「春一番」に伴う海難事故について キンメ漁船の遭難事故 2011. 2. 26 一般財団法人 日本気象協会 気象予報士・環境カウンセラー 富沢 勝 戦国時代の小説を数多く手がけて書いて の激しい気象現象を伴い大きな気象災害を いる作家、加藤廣さんの言によれば、「現 引き起こすので、決して油断できないとい 在起きている事象(問題)の解決策は、必 う観点から考えてみます。1978(昭和53) ず過去の歴史の中に解決の(事象)ヒント 年2月28日の関東地方の春一番の時は、荒 がある」ということから、近年起きている 川鉄橋の上で当時の営団地下鉄東西線(現 船舶の気象災害、台風災害の解決策(防災、 東京メトロ)の車両が横転しました。 減災)は、過去のそうした事例の中にヒン この時の春一番は事後の調査で竜巻であ トや教訓があるというふうに私なりに理解 ったとされています。なお、春一番をもた しています。そこで今回は“春一番”につ らした発達中の低気圧が東の海上へ出た後 いて取り上げます。 は、判で押したように強い冬型の気圧配置 「春一番の発生日の定義」について、気 象庁では以下のように考えています。 ①立春から春分までの期間に限る。②日本 海に低気圧がある。低気圧が発達すれば理 想的である。③最大風速が風力5 (風速8. 0 に戻り、寒気を引きずり下ろして一転して 寒くなるのが相場となっています。 まず、上記「春一番に関する筆者の疑問」 について以下述べます 春一番の一応の定義なるものが気象庁部 m/s)以 上。④ 風 向 は WSW∼S∼ESE で、 内にあり(HP上にも発表)、天気予報番 前日より気温が高い。(なお、関東の内陸 組の中でその定義や条件を詳しく解説して で強い風の吹かない地域があっても止むを いる気象キャスターがよくいます。 私からみればそれは楽屋内の話、「内規」 得ない) 関東地方の春一番の記録 のような話であり、一般的には前記の下線 部分は予報作業指針程度にとどめ、防災関 最早記録 2月5日 1988(昭63)年 係の注意事項を強調すべきと考えています。 最晩記録 3月20日 1972(昭47)年 ここから、春一番に関する海難事故につい 予報用語としての説明は次のようになっ ています。“立春から春分までの間に、広 て以下述べます。今年2011年も残念ながら 漁船遭難事故がありました。 い範囲で初めて吹く南よりの暖かい強い 気象の本などには一般的に上記の「春一 風” (やや強い風でもよい) (予報作業指針 番の発生日の定義」から図―②のような天 14―予報用語および文章―昭和62年3月) 気図が出ています。つまり日本海に発達中 春一番は強風、突風、竜巻、なだれなど 76 海と安全 2011・夏号 の低気圧があることです。 を重視すべきと考えています。 東 京 で は12時30分 ま で の 最 高 気 温 は 20. 2℃で、4月下旬並み。今年一番の暖か さになりました。風速も南南西8. 2メート ルまで強まりました。12時30分までの各地 の最大瞬間風速は東京、南西の風14メート ル千葉、南西の風17メートル、横浜、南西 の風18メートルなど。 この日は寒冷前線通過後一時的に冬型に 図−①2011年2月25日12時天気図 関東地方春一番(やや変則的) 戻り、北よりの風に変り東京は日暮れと共 に気温もがくんと下がり始めて24時には北 北西6メートル、気温6. 8℃でした。また 21時の解析では現場海域は波高2メートル、 西よりの風20ノットでした。 こうした中、報道によれば2月26日未明 に、伊豆下田港を出船したキンメダイ漁船 「第36栄進丸」(19トン)が御蔵島沖で沈 没し8人救助、2人行方不明となったので す。定員(8人)オーバーの10人が乗組ん でいた事、仮眠中で気がついたら船内に海 水がまわり、船が傾いていた事、救命胴衣 図−②2009年2月13日15時の 春一番天気図(典型的) を積んではいたが、休憩時に着用する決ま りはないなど、様々な問題が出ました。 今年2011年2月25日の春一番は、図―① 気象的には、春一番の南よりの強風後の のように日本海に低気圧がなく、日本海側 冬型に戻っての北∼西よりの強風、これに から南下してきた(東北地方を通過)寒冷 よる波の高さの問題、また高いうねりもあ 前線に向かって関東地方のとりわけ南部で って釣りや漁に条件はよくなかったといい 南よりの風が強まり、前日より昇温したた ます。現場海域の伊豆諸島南部には、波浪 め、気象庁はやや変則的ではありましたが 注意報が継続中で25日の22:20∼26日10: 春一番を認定しました。 15までは強風注意報も合わせて出ていまし この事例について、定義から逸脱してい た。全員が仮眠でなく、一人は見張りをた るのではないかという意見も一部にありま てるべきではなかったかと考えます。「春 したが、筆者は定義4項目のうち、3項目 一番が吹いた日とその後も海は荒れるべき を十分満たしており、異論はありません。 と考える」また「海へ出たら常に救命胴衣 何よりも強い南よりの風と昇温という実感 を身に着ける」が今回の教訓でしょう。 海と安全 2011・夏号 77 と思いのほか高価で、依然として庶民の食 海守便り 鯨の竜田揚げ 海守事務局 小学校の給食に復活? 卓には遠い存在ですね。 !小学校に入学後に太平洋戦争が始まり、 悲惨な空襲による戦災生活も敗戦で終わり 平和な生活に戻りましたが、「衣・食・住」 小学校の給食で何が一番の思い出と聞か は悲惨なものでした。バラック住宅と配給 れると、すぐに「鯨の竜田揚げ」と答える では足らない悲惨な食糧事情と不衛生な学 筆者ですが、いつ頃からか鯨肉の値段の高 校生活の中で栄養補給として、鯨より生産 さに遠ざかっていました。ところが、5年 した「肝油」を学校給食として頂きました。 ぐらい前から鯨肉の給食が再開されている 社会人となってからは安月給の身で新宿の とのことです。共同通信社の「海運水産ニ 食堂街で「安くて栄養のある鯨ステーキ」 ュース」によると、2009年度に40都道府県 をたらふく食べられた事に「鯨」様は小生 の4, 009校の小学校と1, 346校の中学校が鯨 が今、生きて居られることの救世主です。 肉を給食として出したそうです。 毎週、釣りの仲間と次回の釣魚と釣行との 使われた鯨肉は南極海で捕れたクロミン ミーティングでの会食では、鯨ベーコンと ク鯨などで、メニューは「竜田揚げ」が目 鯨刺での飲食を楽しんでおります。 立ち、「カツ」 「オーロラソースあえ」もあ !「鯨のベーコン」がベーコンだとず∼っ ったそうです。捕鯨で知られる和歌山県や と思っていました。本物のベーコンを初め 長崎県は「食文化を伝えるため提供してい て食べたのはいつのことだったかなあ。今 る」と説明しています。 は飲み屋でも鯨のベーコンなんて高くてた 食の安全性をめぐり、鯨類を食べる機会 まにしか頼めませんが、尾の身の刺身も20 が多い住民の毛髪中のメチル水銀濃度が高 年以上食しておりませんね。 かったとの調査結果もありましたが、鯨研 !子供のころ、おでんに「コロ」という種 は「南極海は汚染が少なく、水銀濃度は規 が必ず入っていました。今でもコロはある 制値を大幅に下回っている」と説明してお のでしょうか。 ります。これらのことを海守ブログに掲載 筆者と同じ世代の人たちは、好き嫌いに したところコメントをいただきましたので、 係わらず、鯨肉や肝油を栄養のよりどころ いくつか紹介いたします。 として育ちました。鯨肉を食することに反 鯨について寄せられたコメント 対している人たちがおりますが、私は日本 !学校給食では、鯨の竜田揚げやカツに大 の食文化は守る必要があると思います。 変お世話になりました。あの特有な風味は 決して嫌いな味ではなく、よくおかわりし ていたのを覚えています。最近、子どもか ら学校給食で時折、鯨が出ると聞いて関心 を示しています。あの懐かしい味にもう一 度触れたいとは思いますが、専門店に行く 78 海と安全 2011・夏号 海守事務局 TEL 03―3552―7001 FAX 03―3552―8012 URL http : //www. umimori.jp/ E―mail : info@umimori.jp 日本海難防止協会のうごき 月 日 2.8 (平成23年2月∼平成23年4月) 会 議 名 第4回準輻輳海域及び沿岸海域に 主 な 議 題 ①報告書案の検討 おける安全対策の構築に関する調 査研究会 2.9 第2回竹富南航路周辺海域利用連 ①当面の海域利用調整の確認 絡調整会議 ②相互乗船体験の結果 ③竹富南航路(開発保全航路)の拡張整備 ④海域利用上の安全確保のためのルール策定 2.17 2.28 海運・水産関係団体連絡協議会第 ①ヒアリング調査結果概要 2回打合会 ②情報図案 第4回海事の国際的動向に関する ①MSC88審議結果の報告について 調査研究委員会(海上安全) ②COMSAR15対処方針案の検討 ③SOLAS非適用船舶に対する国内法によるAIS強制化について ④海賊事案の現状 ⑤報告書案の承認 3.4 全国海難防止強調運動実行委員会 ①平成20∼22年度全国海難防止強調運動の運動方針(重点事項)にか かる海難の状況及び効果評価 ②過去5年間における海難の発生状況及び分析結果 ③平成23年度以降の全国海難防止強調運動案 ④全国海難防止強調運動実施計画案 3.7 苫小牧港東港区LNGタンカーSTS ①操船シミュレーション結果 液移送計画に係る航行安全対策調 査委員会第1回作業部会 3.15 3.17 海運・水産関係団体連絡協議会第 ①情報図案 3回打合会 ②報告書案 第3回竹富南航路周辺海域利用連 ①追越制限に係わる試験航行 絡調整会議 ②第2基準航路への仮設標識の設置 ③海域利用上の安全確保のためのルール策定 ④今後の海域利用連絡調整スケジュール 2月25日付発行の本誌春号 (特集・船陸間情報通信の 現状と将来)に対して寄せ られた読者のコメントを紹介します。 ※寺井 幹雄 海技大学校非常勤講師 特集「船陸間情報通信の現状と将来」を興味をも って拝読。海上通信技術の現状と将来の姿を垣間見 ることができた。業務用通信装置は記載されている 内容のとおり、会社∼船舶間の事務連絡、気象、海 象、台風情報などの運航支援ツールとして、大多数 の船社が大いに利用しているとは分かっていたが、 福利厚生の一部として考えられる個人使用向けの通 信設備に対する現状が船社によって大きく違いがあ ることに今さらながら驚かされた。 誌上座談会の内容からは、個人用通信手段につい て満足してない様子が窺える。一方、シンガポール 船籍の2隻においては極めて充実した設備を備えて いる。一体この格差はどのような背景なのか? 船 社にとって、期間雇用の外国人船員の再雇用・継続 雇用を維持できることは、安全運航の遂行と人材獲 得コスト削減のためには極めて重要なことである。 本誌では、船陸間での情報通信の実態については よくわかったが、この格差理由には触れていないの がやや残念である。!日本海難防止協会の立場から すれば格差の分析に踏み込むのはやや場違いと配慮 されたのではと推察されるが、離家庭生活を余儀な くされる船員にとって、陸上の家族・友達とのコミ ュニケーションまたは個人的な娯楽・趣味、情報の 入手がどれだけ必要であり、望んでいる事か。一部 の日本船社では、記事にあったシンガポール船籍の 船と同様な個人向け通信設備が設置されており、船 員は恩恵を受けている様子であるが、多くの日本人 海と安全 2011・夏号 79 船員が乗っている船舶ではおそらく不自由を余儀な くされていることが予想される。 日本人の若者が船員職業に魅力を感じず、船員と して就職しても数年以内に退職する理由の一つに、 携帯電話や PC インターネットの使用が不可能なこ とにより、世の中から取り残されているとの失望感 や精神状態の不安定さえ感じているのではなかろう か。そのような若者が船員として就職した場合に、 果たして船員生活を継続できるのか、また乗船中に 孤独感を痛感しないだろうか。 総務省の2007年、2008年の統計では、高校2年生 の携帯電話所有者は95. 5%、さらに携帯電話イン ターネット利用者は、13∼19歳で77. 3%、20∼29歳 で82. 9%である。 2011年の現時点ではこの数値を上回っていること は間違いない。今や若者にとって、携帯電話こそが 人と人とを結び人間関係を強化し、メディアとの繋 がりのツールである。仕事を離れた自由時間に携帯 電話が使用できない環境は、若者たちにとって、不 安や焦燥を感じるだけでなく人間関係を正常に維持 することも困難になるともいわれている。 一方で、インターネット・携帯電話への過剰依存 による種々の問題点と弊害が指摘され、新たな社会 問題ともなっている。上長との関係を忌避したり個 室に籠るなど、適切な人間関係の確立にとって不正 常な事態も生じかねない。船内にインターネット接 続の環境を備えることは、福利厚生環境の向上には なると思うが、依存度をさらに上げ新たなる問題を 背負いこむことになるのか否か。 船員の家族間通信だけの話であれば問題ないが、 一般的な技術の進歩に伴うプラス面とマイナス面の 二律背反の問題は避けて通れない。それだけに今後 の課題として、将来、通信技術がさらに発展するこ とは確実であり、貴協会におかれてはこの種の問題 でさらに掘り下げた企画を期待したい。 ※3月11日午後2時46分、マグニチュード9. 0の巨 大地震が、日本の太平洋沖で発生した◆地震によっ て引き起こされた10∼30メートルもの津波が三陸沿 岸から関東地方の沿岸を襲い、史上最悪の被害を惹 起した◆大地震と津波によって福島第1原発では、 外部電源が全て失われ、原子炉、使用済み燃料プー ルの冷却が困難になり、燃料溶融、水素爆発などに よって大量の放射能が放出する事態となり、今日に 至っても放射能の除去対策が懸命に続行されている。 ※昨年7月、ライフジャケットの特集取材で石巻に 行った。 「浜さ来たら遠慮はいらね∼」と云って、 雨の降る中、採ってきたばかりのウニを気前よく食 べさせてくれた、石巻市雄勝町の大須漁港の漁師た 80 海と安全 2011・夏号 ち◆夫婦でウニの殻を割りながら「ここは海がきれ いだし良い昆布が育つ。その昆布を食ったウニを採 っての商売、幸せだ」と語ってくれた方々を思い出 すと、胸が痛む◆東北太平洋沿岸に住む人々の生活 と命を、一瞬に飲み込んだ巨大地震と大津波。心よ りのお見舞い申し上げるしかない。 ※3月上旬、今号の特集を決定し、取材で出張中に 東日本大震災が発生した。未曾有の大震災によって、 全ての事件・事象が影薄くなってしまい、今号の特 集の意義も例外ではない◆しかし、大地震と津波に より発生した大量の瓦礫の多くは、メディアを通じ て多くの国民が目にするが、その内の相当量が、海 上に流れ、海中に没し未曾有のゴミの集積となって、 船舶航行の妨げとなっている◆その量は通常期に発 生するものとは桁違いな規模となって三陸沿岸に堆 積し、漂流・拡散し続けている。早急な撤去と啓開 を望みたい。 ※編集作業中、大船渡港で地震と大津波に遭遇し10 日間の「格闘」の末、人命と船体を守り抜いた内航 船船長から会社あて報告書と、千葉県の袖ヶ浦製油 所で荷役していた、油タンカーのバースマスターか らの記録を入手したので、緊急リポートとして掲載 した◆巨大地震と大津波から、人命と船体を守り抜 いたのは「リーダーシップを発揮し、卓抜した操船 技量により本船の安全を確保した船長」とシーマン シップに裏打ちされた乗組員たちの一丸となった的 確な行動、さらには長年の船員経験の発露と具現化 に他ならないが、こうした事実から海事関係者は何 を教訓とすべきなのか◆船舶の危機管理と対応策を 構築するだけでなく、船員の育成と教育訓練などに ついても、大きな示唆を与えてくれるのではないだ ろうか。 ※最後に、東日本大震災の発生によって、通常期の 仕事量に加え、震災関連の事後対応に忙殺される中 で原稿を執筆していただいた方々に対し、心からお 礼を申し上げます。 (ふじ) 海と安全 No. 549(45巻、夏号) 発 行 2011(平成23)年5月25日 発行所 社団法人 日本海難防止協会 〒105−0001 東京都港区虎ノ門1−15−16 Tel 03 (3502) 2231 Fax 03 (3581) 6136 E-mail : 2231jams@nikkaibo.or.jp URL http : //www.nikkaibo.or.jp 印刷所 第一資料印刷㈱ 正会員・賛助会員・協力会員の方には年4回、 発行の都度「海と安全」を送付しています。 漂着ごみを宝の山に~宝の島プロジェクト 鳩間島での公開実験 2010.11.3 東日本大震災に被災した方々へのお見舞い (社)日本海難防止協会会長 みやはら 宮原 こう じ 耕治 この度の東日本大震災により犠牲になられた方々に、謹んで哀悼 の意を捧げます。また、被災された多くの皆様方に、心よりお見舞 いを申し上げます。 皆様にご愛顧いただいております私どもの情報誌「海と安全」は、 船舶の航行安全や海難防止の活動などの促進を図ることを使命とし ております。この度の未曽有の大津波による被害は、目を覆いたく なるような悲惨な状況を呈し、船舶関係では、特に漁船の流失、損 壊、大破などが多く発生しております。また、その時の港内外での 海岸から集められてきた発砲スチロールの山 上:トラックに 搭載された 移動式油化 装置の公開 混乱した状況は、メディアを通じて生々しく放映されました。 日本郵船(株)代表取締役会長 日本船主協会会長 本誌編集部では、大船渡港に停泊中の内航船が震災と大津波に遭 遇し、船長を中心に乗組員が一丸となって、船舶と人命を守り抜い た迫真のリポートなどを入手しまた。このリポートには、乗組員が 油化装置に発砲スチロールを投入する子供 命がけで大津波と対峙し保船に全力を傾注した状況がリアルに記述されており、今後の参考 になると思われますので海事関係者には是非ご一読していただきたいと考え、特集記事とは 別に緊急リポートとして掲載しました。 発砲スチロールがスチレン油となってでき上がっ てくるのを興味深く見つめる子供たち この度の大震災は、今さらながら日本が地震国であり、これまでの想像を超えた大津波に 見舞われる地域である事をあらためて思い知らされました。この大きな犠牲を将来二度と払 うことのないようにするために、私ども協会としましても、今何がやれるのか、今後何をや っていくのかを考えながら、対応して参りたいと考えています。 海洋ゴミと船舶航行 内外から漂流・漂着するゴミは、海洋を汚染するのみならず美観の低下と海洋環境の破 壊、さらには船舶の航行安全と漁船操業の阻害にもつながる様相を呈しています。 発砲スチロールによってできたスチレン油で、発電機を まわす。右はスチレン油 2009(平成21)年7月、海岸漂着物の円滑な処理および発生の抑制を図ることを目的に、 「美しく豊かな自然を保護するための海岸における良好な景観及び環境の保全に係る海岸 漂着物等の処理等の推進に関する法律」 (海岸漂着物処理推進法)が公布・施行されました。 今号では、依然として減少しない海上に漂流・漂着するゴミ問題についての取り組みを 上:スチレン油で動く発電機の電源で、かき氷を作ってもらう 左、左下:同じく綿アメを作ってもらい大喜びの子どもたち 下:ミニシンポジウムで、「島に流れ着くゴミが燃料になる なんてすばらしい」 と発言する鳩間島小中学校の本間さん 関係省庁や関係団体に紹介してもらうとともに、わが国近海域の環境保全を目的とし1994 年、日本・中国・韓国・ロシア4か国により策定された北西太平洋行動計画 (NOWPAP) の概要と活動、漂流・漂着ゴミによる船舶の航行安全対策、さらには本協会が実施してい る漂着ゴミをエネルギー源に再利用する「宝の島プロジェクト」などを紹介します。 海と安全549表2-3.indd 1 2011/05/25 9:18:21 海 と 安 全 二〇一一(平成二三)年 夏 日 本 海 難 防 止 協 会 9:17:01 2011/05/25 1 海と安全549表1-4.indd
© Copyright 2026 Paperzz