F 検定(二つの母分散の比に関する検定) 解説 F分布 / / V V F =

■F 検定(二つの母分散の比に関する検定)
解説
F 検定とは、二つの母集団から抜き取った標本から計算した分散 V1,V2 の比である F 値を基にして、
二つの母集団の分散に違いがあるかどうかを検定する。
F 検定: 2 標本を使った分散の検定分析ツールは、2 つの標本を使った F 検定を行って、2 つの母
集団の分散に違いがあるかどうかを検定するツールである。
●F分布
n1 個のデータ x11,x12,・・・,x1n1 が互いに独立に正規分布 N(μ1,σ12)に従い、
さらに、それらと独立に、
n2 個のデータ x21,x22,・・・,x2n2 が互いに独立に正規分布 N(μ2,σ22)に従うとき、
V /
F  1 12
V2 /  2
2
は、自由度(φ1,φ2)=(n1-1,n2-1)の F 分布に従う。
ここで、φ1 を第 1 自由度、φ2 を第 2 自由度と呼ぶ。
φ1:F の分子に対応する自由度
φ2:F の分母に対応する自由度
-1-
自由度(φ1,φ2)=(n1-1,n2-1)
、P=0.95 の場合、即ち F(φ1,φ2;0.95)の値は F 表には記載
されていないので、次のような関係式を用いて計算する。
F (1 ,2 ;1  P) 
1
F (2 ,1 ; P)
-2-
●二つの母分散比の検定の手順
2つの母分散が等しいとみなしてよいかどうかを調べることを,“母分散の比の検定”あるいは“等
分散の検定”と呼んでいる。
2つの母分散σ12,σ22の比に関する検定では,帰無仮説を H0:σ12=σ22 と設定する。帰無仮
説の下で構成される検定統計量 F0 は Vl/V2 であり、Vl/V2 は H0 が正しい下で自由度(φ1,φ2)の
F 分布に従う。帰無仮説 H0:σ12=σ22 の下での検定統計量は、
V1 /  1
V
 1
2
V2 /  2 V2
2
F0 
★検定の手順
手順 1 仮説の設定
帰無仮説 H0:σ12=σ22
対立仮説 H1:σ12≠σ22
H1:σ12>σ22
H1:σ12<σ22
手順 2 有意水準αの設定
α=0.05 または α=0.01
(両側検定)
(等分散の検定)
(右片側検定)
(左片側検定)
→ α=0.05 とするのが一般的である。
手順 3 棄却域の設定 → 棄却域の解説図 参照
帰無仮説 H0:σ12=σ22 の棄却域 R は次の通りである。
表 H0:σ12=σ22 の検定
検定方式
対立仮説
帰無仮説 H0 の棄却域 R
両側検定
V
≧
V
のとき
F0=Vl/V2≧F (φ1, φ2;α/2)
l
2
H1:σ12≠σ22
(等分散の検定)
Vl<V2 のとき F0=V2/Vl≧F (φ2,φ1;α/2)
右片側検定
H1:σ12>σ22
F0=Vl/V2≧F (φ1, φ2;α)
2
2
左片側検定
H1:σ1 <σ2
F0=V2/Vl≧F (φ2, φ1;α)
但し、φ1=n1-1, φ2=n2-1
解説図
図1
図2
図3
手順 4 検定統計量の計算
第 1 母集団からデータ x11,x12,
・・・,x1n1 を取り,
第 2 母集団からデータ x21,x22,
・・・,x2n2 を取り,
検定統計量 F0 の値を計算する。
F0 
V1
V2
or
x
 x 

2
2
1i
1i
V1 
V2 
V2
V1
n1
n1  1
x
 x 

2
2
2i
2i
n2
n2  1
手順 5 判定
① F0 の値が手順 3 で定められた H0 の棄却域に入らなければ,有意水準αで有意でないと判断し,
帰無仮説 H0 を棄却できない。
② F0 の値が手順 3 で定められた H0 の棄却域に入れば,有意水準αで有意であると判断し,
帰無仮説 H0 を棄却し,対立仮説 H1 を採択する。
-3-
●F 検定 棄却域の解説図
★両側検定
両側検定の場合の棄却域を次の図に示す。
検定統計量 F0=V1/V2 が棄却域に入れば、検定結果は有意水準αで
有意であると判定し、帰無仮説 H0:σ12=σ22 を棄却して、対立
仮説 H1:σ12≠σ22 を採択する。則ち、母分散 1 と母分散 2 は異な
っていると言える。
一方、F0 が棄却域に入らなければ、有意水準αで有意でないと判定
し、帰無仮説 H0 は棄却できない。則ち、母分散 1 と母分散 2 は異な
っているとは言えない。
図1
H0:σ12=σ22,H1:σ12≠σ22(両側検定)における H0 の棄却域
ここで、 F (1 ,2 ;1   / 2) の値は、F 分布表に掲載されていない。
F 分布の性質として、次の関係式が成立つ。
F (1 ,2 ;1   / 2) 
1
F (2 ,1 ; / 2)
この関係式を活用して、次のように、両側検定の棄却域が設定される。
*V1≧V2 の場合の棄却域
F0 
V1
 F (1 ,2 ; / 2)
V2
*V1<V2 の場合の棄却域
F0 
V1
1
 F (1 ,2 ;1   / 2) 
V2
F (2 ,1 ; / 2)
両辺の逆数を取ると、次の式となる。
F0 
V2
 F (2 ,1 ; / 2)
V1
≧ 1.0
この二つの式は、全く同じ意味である。
-4-
≦ 1.0
★右片側検定
図2
H0:σ12=σ22,H1:σ12>σ22(右片側検定)における H0 の棄却域
*右片側 F 検定の棄却域
F0 
V1
 F (1 ,2 ; )
V2
*右片側 F 検定結果の判定
検定統計量 F0=V1/V2 が棄却域に入れば、検定結果は有意水準αで有意であると判定し、帰無仮
説 H0:σ12=σ22 を棄却して、対立仮説 H1:σ12>σ22 を採択する。則ち、母分散 1 は母分散 2
より大きいと言える。
一方、F0 が棄却域に入らなければ、有意水準αで有意でないと判定し、帰無仮説 H0 は棄却できな
い。則ち、母分散 1 は母分散 2 より大きいとは言えない。
-5-
★左片側検定
図3
H0:σ12=σ22,H1:σ12<σ22(左片側検定)における H0 の棄却域
*左片側 F 検定結果の判定
検定統計量 F0=V1/V2 が棄却域に入れば、検定結果は有意水準αで有意であると判定し、帰無仮
説 H0:σ12=σ22 を棄却して、対立仮説 H1:σ12<σ22 を採択する。則ち、母分散 1 は母分散 2
より小さいと言える。
一方、F0 が棄却域に入らなければ、有意水準αで有意でないと判定し、帰無仮説 H0 は棄却できな
い。則ち、母分散 1 は母分散 2 より小さいとは言えない。
ここで、 F (1 ,2 ;1   ) の値は、F 分布表に掲載されていないので、次のように、右片側検定に変換
して F 検定が行われる。
F 分布の性質として、次の関係式が成立つ。
F (1 ,2 ;1   ) 
1
F (2 ,1 ; )
この関係式を活用して、次のように、左片側検定の棄却域が設定される。
*左片側 F 検定の棄却域
F0 
V1
1
 F (1 ,2 ;1   ) 
V2
F (2 ,1 ; )
≦ 1.0
両辺の逆数を取ると、次の式となり、右片側検定の棄却域が設定される。
F0 
V2
 F (2 ,1 ; )
V1
≧ 1.0
この二つの式は、全く同じ意味である。
-6-
*左片側 F 検定から右片側 F 検定へ変換後の解説図
*F 検定結果の判定
検定統計量 F0=V2/V1 が棄却域に入れば、検定結果は有意水準αで有意であると判定し、帰無仮
説 H0:σ12=σ22 を棄却して、対立仮説 H1:σ12<σ22 を採択する。則ち、母分散 1 は母分散 2
より小さいと言える。
一方、F0 が棄却域に入らなければ、有意水準αで有意でないと判定し、帰無仮説 H0 は棄却できな
い。則ち、母分散 1 は母分散 2 より小さいとは言えない。
● F 検定結果の判断
F検定 有意性の判断図
φ1=5
φ2=6
0.8
領域④0.7
0.6
0.5
0.4
0.3
領域⑤0.2
0.1
0
領域③
0
1
2
3
4
5
6
7
F=F1/F2
右片側検定棄却域
右片側検定採択域
左片側検定
棄却域
両側検定
棄却域
領域①
領域②
左片側検定採択域
F(φ1,φ2;1-α)=1/F(φ2,φ1;α)
F(φ1,φ2;α)
両側検定
棄却域
両側検定採択域
F(φ1,φ2;1-α/2)=1/F(φ2,φ1;α/2)
F(φ1,φ2;α/2)
-7-
F 検定の結果の有意性については、上の解説図に示すように、検定統計量 F0=V1/V2 が上図のどの領
域に入るかにより、有意水準 α で、次のように判断する。
領域
①
②
③
④
⑤
○:有意である
△:片側検定で有意
×:有意ではない
検定統計量と棄却域との関係
両側検定 右片側検定 左片側検定
F0 ≧ F(φ1,φ2;α/2)
○
○
×
F(φ1,φ2;α) ≦ F0 < F(φ1,φ2;α/2)
×
○
×
F(φ1,φ2;1-α) < F0 < F(φ1,φ2;α)
×
×
×
F(φ1,φ2;1-α) ≧ F0 > F(φ1,φ2;1-α/2)
×
×
○
F0 ≦ F(φ1,φ2;1-α/2)
○
×
○
検定結果
○
△
×
△
○
① 検定統計量 F0 ≧ 両側検定棄却境界 F(φ1,φ2;α/2)
有意水準 α で、両側検定結果は有意であり、
帰無仮説 H0:σ12=σ22 を棄却し、対立仮説 H1:σ12≠σ22 を採択する。
母分散1と母分散 2 は異なると言える。
有意水準 α で、右片側検定結果は有意であり、
帰無仮説 H0:σ12=σ22 を棄却し、対立仮説 H1:σ12>σ22 を採択する。
母分散1は母分散 2 より大きいと言える。
② 右片側検定棄却境界 F(φ1,φ2;α) ≦ 検定統計量 F0 < 両側検定棄却境界 F(φ1,φ2;α/2)
右片側検定では有意であるが、両側検定では有意ではない。
両側検定の方が判断基準として厳しいので、厳しい判断をすれば、二つデータの母分散には違い
があるとは言えない。
場合によっては、さらにサンプルを取って、精度を上げた検定を実施して判断すると良い。
③ 左片側検定棄却境界 F(φ1,φ2;1-α) <検定統計量 F0 < 右片側検定棄却境界 F(φ1,φ2;α)
両側検定でも、片側検定でも有意ではなく、
帰無仮説 H0:σ12=σ22 を棄却できず、母分散σ12,σ22 は異なるとは言えない。
④ 左片側検定棄却境界 F(φ1,φ2;1-α) ≧ 検定統計量 F0 > 両側検定棄却境界 F(φ1,φ2;1-α/2)
左片側検定では有意であるが、両側検定では有意ではない。
両側検定の方が判断基準として厳しいので、厳しい判断をすれば、二つデータの母平均には違い
があるとは言えない。
場合によっては、さらにサンプルを取って、精度を上げた検定を実施して判断すると良い。
⑤ 検定統計量 F0 ≦ 両側検定棄却境界 F(φ1,φ2;1-α/2)
有意水準 α で、両側検定結果は有意であり、
帰無仮説 H0:σ12=σ22 を棄却し、対立仮説 H1:σ12≠σ22 を採択する。
母分散σ12 と母分散σ22 は異なると言える
有意水準 α で、左片側検定結果は有意であり、
帰無仮説 H0:σ12=σ22 を棄却し、対立仮説 H1:σ12<σ22 を採択する。
母平均について、μ1<μ2 と言える。
母分散σ12 は母分散σ22 より小さいと言える
-8-
●等分散の検定
例題
新しい特殊導電部品の製造条件が製品の強度に及ぼす影響を検討するための実験の一つとして,副原
料の配合量を 10%とした場合(A)と 15%とした場合(B)との比較実験を行った。
副原料の配合量以外の条件をできるだけ一定として,それぞれの配合比のもとで 11 回ずつの試作を
行い,得られた製品の強度を測定した結果を次のデータ表に示す。
B の場合,データが 10 個しかないのは実験に 1 回失敗したためである。このように、二つのサンプ
ルのデータ数は異なっていても良い。
配合量の違いによって,製品の強度のばらつきは異なるといえるか? → 等分散の検定
★データ表
No.
1
2
3
4
5
6
7
8
9
10
11
XA
42.0
44.4
41.8
43.2
41.7
42.5
43.0
41.1
40.9
43.6
42.1
XB
43.0
41.8
40.5
42.2
42.6
40.8
41.3
43.1
41.4
43.7
★手順 1 仮説の設定
帰無仮説 H0:σ12=σ22
対立仮説 H1:σ12≠σ22
(両側検定)
★手順 2 有意水準の設定
α=0.05
★手順 3 棄却域の設定 両側検定
R:Vl≧V2 のとき Fo=Vl/V2≧F(φ1, φ2;α/2)=F(10,9;0.05/2)=3.96
Vl<V2 のとき Fo=V2/Vl≧F(φ2,φ1;α/2)=F(9,10;0.05/2)=3.78
但し、φ1=n1-1=11-1=10, φ2=n2-1=10-1=9
★手順 4 検定統計量の計算
Excel により、次のように計算される。
x
1i
V1 
V2 
 x 

2
2
1i
n1
 1.148909
n1  1
x
 x 

2
2
2i
2i
n2
 1.118222
n2  1
V 1.148909
F0  1 
 1.027443
V2 1.118222
-9-
★手順 5 判定
F0 
V1
 1.027443 <
V2
F(φ1, φ2;α/2)=F(10,9;0.05/2)=3.96
となる。
検定統計量 F0 の値が手順 3 で定められた H0 の棄却域に入らないので、有意水準αで有意でないと
判断し,帰無仮説 H0 を棄却できない。
従って、二つの母分散は異なるとは言えない。等分散とみなす。
●F 検定
解析事例
分析ツール:F検定の使用上の注意点として、
① F 検定分析ツールでは、検定方式として、
「片側検定」を前提としている。
② V1≧V2 の時は、
「右片側検定」として計算し、
V1≦V2 の時は、
「左片側検定」として計算される。
*Excel F 検定分析ツール 例題(F0≧1) 参照
→ F0=V1/V2 ≧ 1 の例題
*Excel F 検定分析ツール 例題(F0<1) 参照
→ F0=V1/V2 < 1 の例題
*Excel F 検定分析ツール 例題 解析結果のまとめ 参照
→ 例題(F0≧1)
(F0<1)の解析結果をまとめた資料である。
実務的には、検定統計量 F0 が
F0=V1/V2 ≧ 1(V1≧V2)となるように、F 検定分析ツールにデータを入力し、
「右片側検定」として、解析する方が分かり易い。
●参考資料
F 検定とは
http://www.geocities.jp/databooster2/mydoc/Fkentei.pdf
以上
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