仮説検定について (1)仮説検定の考え方 2つの正規母集団 A,B がある。母集団 A の確率変数 X は、N(20,4)で正規分布し、 母集団 B の確率変数 X は、N(30,4)で正規分布するものとする。ここに2つの母集団のいず れかから抽出された1つのサンプルがある。サンプルが X=28 のとき、このサンプルは2つ の母集団 A,B のいずれから抽出されたものと考えたらよいか。 母集団 A では、X=28 は、図1の赤い部分の領域に含まれる。あるサンプルが 母集団 A から抽出されたとき、それが X>26.6(赤の領域で、棄却域と呼ぶ)と なる確率は,0.05、そ れに対して、サンプルが母集団 B から抽出されたとすると、 それが、X>26.6(赤+黄色 の領域)となる確率は,0.802 となる。よって、 サンプル X=28 は、母集団 B から抽出さ れたと考える方が確率的にみて 可能性が大きい。 いま、ここにおいて、X=28 が母集団 A から抽出されたとする(帰無仮説) 。 この仮説の もとで、P(X>26.6) < 0.05。よって、帰無仮説を棄却し、対立仮説 (母集団 B の標本)を 採択する。この結論が誤っている確率は,0.05。これ を危険率とよぶ。 では、X=25 の場合は、どうなるか。この場合、これを母集団 A からの標本と する(帰 無仮説)と、X=25 は、赤の領域(棄却域)にないので、帰無仮説を 採択する。このとき、 帰無仮説を採択するという結論が誤っている確率は、 すなわち、対立仮説(母集団 B から の標本)が正しい確率は、0.198(青の領域)となる。 図1 (2)第1種のエラーと第2種のエラー 第1種のエラー 帰無仮説が正しいとき、帰無仮説を棄却してしまうエラーで、危険率αの 確率で生じる。 第2種のエラー 帰無仮説が誤っているとき、帰無仮説を棄却しないエラーで、βの確率 で生じる。 検定力 帰無仮説が誤っているときに、帰無仮説を棄却する確率(1-β)で、 検定力 が高い検定がよい検定。 帰無仮説 ----------------------------------------- 正しい 誤り ----------------------------------------- 棄却 α 1-β(検定力) 採択 1-α β ------------------------------------------ (3)片側検定と両側検定 図2のように、対立仮説の分布(B)の位置が、帰無仮説の分布(A) の位置の片側に のみある場合を片側検定と呼ぶ。片側検定において 、対立仮説の分布が棄却域と同じ方向 にある場合は、その検定力は 大きいが、図2下図のように、対立仮説の分布が、棄却域と 反対の方 向にあるときには、片側検定の検定力は非常に低くなる。そこで、対立仮説が不 明瞭の時は、図3のように両側に棄却域を設ける。これを両側検定とよぶ。このとき、棄 却域は両側を合わせて、α=0.05 と なるので、有意水準 5%の両側検定とよぶ。 図2 図3 (4)検定のステップ 1)帰無仮説を決める。 2)対立仮説を決める。 3)対立仮説に基づき、両側検定か片側検定かを決める。 4)有意水準αを決める(5%,1%) 。 5)検定の対象の分布が正規分布かどうかチェックする。 6)母集団の分散が既知かどうかチェックする。 7)分散が既知で、かつ、正規分布ならば、検定の対象となって いる値を Z 値に変換する。 8)臨界値(Zc)を求める。 9)Z 値が棄却域いあれば、帰無仮説を棄却する。そうでなければ、 帰無仮説を採択する。 10)結論を書く。有意水準?%の?側検定により、帰無仮説を?? する。 (5)検定の例 問題 財務省で作られた1万円札の重さは、平均 2g で標準 偏差 0.1gの正規分布をすると仮定する。いま、てもとにある1 万円札の重さは、1.7g である。てもとにある1万円札は、財務省 で作られたものと考えてよいか。 帰無仮説 財務省で作られた1万円札と仮定する( μ=2) 。 対立仮説 財務省で作られた1万円札ではない(μ≠2) 。 両側検定 有意水準 5% Z=(1.7-2)/0.1=-3 臨界値=-1.96 |Z| > |Zc| なので 帰無仮説を棄却 結論 有意水準 5%の両側検定により、帰無仮説を棄却する。 すなわち、てもとの1万円札は、財務省で作られたもの とは、考えられない。
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