国際金融センターの都市比較 赤羽

日 本 国 際 経 済 学 会 第 73 回 全 国 大 会 報 告 論 文 要 旨
報告題目 :国際金融センターの都市比較
赤羽
裕
(亜細亜大学大学院
非常勤講師)
本報告では、いわゆる「国際金融センター」の機能・特色を確認したうえで、 それが都
市 の 経 済 発 展 に 資 す る 側 面 を 検 討 す る 。つ づ い て 、東 京 の 特 色・位 置 づ け を 他 都 市 と 比 較 ・
分析する。そのうえで、今後、東京が国際金融センターとして発展していくための課題や
方策を確認した。
これまで、円の国際化が十分には進まず、東京の国際金融センター化も本格化せず、ロ
ンドン・ニューヨークとは差が開き、香港・シンガポールと 3 番手の地位を争っている状
況 で あ っ た 。そ う し た 中 、昨 年 2013 年 に 、2020 年 の 東 京 オ リ ン ピ ッ ク 開 催 が 決 定 さ れ た
ことを受け、改めて東京の国際金融センター化の気運が盛り上がり、官民から各種の提言
が出され、東京都も具体的な行動を開始した。金融センターとしての競争に関して、どの
ような点が重要なのかを先行研究や複数のランキング資料を参考に検討を進めた。
検討結果としては、いわゆる「国際金融センター」は、金融及び関連業界企業が集積す
る 場 で あ り 、そ こ に は 優 秀 な 人 材 も 必 要 で あ る と の 特 徴 、そ れ を 確 立・継 続 す る た め に は 、
他の都市(金融センター)との差別化が必要であることが確認できた。そうした前提で考
えると、東京がロンドン・ニューヨークはもちろん、アジアの他都市との競合でも厳しい
状況であることが浮き彫りとなった。
東 京 国 際 金 融 セ ン タ ー 化 の 今 後 の 方 策 や 課 題 を 明 確 化 す べ く 、SWOT 分 析 の ア プ ロ ー チ
を採用した。強み・課題を整理する上では有効であったと考えている。その中から、先行
研究や現在出ている各種提言も参考にしつつ、より具体的な方策を検討してみた。日本が
ア ジ ア で こ れ ま で 積 み 上 げ て き た 、ASEAN+ 3 で の 活 動 や 、厚 み の あ る 日 本 国 債 市 場 な ど 、
強みを活かす方策を考えることが、他都市との差別化を図る上で有効なアプローチである
と考えている。
具体的には、外為市場でのアジア通貨の取り込み強化のため、将来の東アジアのバスケ
ッ ト 通 貨 創 出 と そ の メ イ ン 市 場 と な る こ と 。 あ わ せ て 、 Tokyo プ ロ ボ ン ド 市 場 の 活 性 化 で
ある。合わせて、債券市場活性化で重要な役割を果たす日本国債の最近の環境変化のあり
かたについても、検討を加えた。
2020 年 の 東 京 オ リ ン ピ ッ ク 開 催 決 定 は 、東 京 の 都 市 と し て の 整 備・発 展 に 大 き く 寄 与 す
る と 考 え ら れ る 。産 官 学 で の 協 力 の 下 、国 際 金 融 セ ン タ ー と し て も 、実 効 性 の あ る 内 容 で 、
独自性を持った取組が着実に進められることを期待したい。
なお、本稿の内容・見解は個人的なものであり、本務先、その他いかなる組織とも無関
係である。