片頭痛の生活習慣改善 食事療法編 目次 はじめに 第1章 4 栄養学の基礎知識 5 1.エネルギー産生能力を増強させるために・・ 2.からだづくりはビタミン&ミネラルの補給がカギ。 第2章 5 18 最新の栄養学的知識 32 1.動物性タンパク質の過剰摂取の害 32 2.「牛乳信仰」の弊害・・・牛乳は悪い食品!? 39 3.砂糖の過剰摂取の害 48 4.第6の栄養素「食物繊維」 59 5.ますます明らかになってきた「腸内細菌の重要性」 71 6.脂肪・油の摂り過ぎによる弊害と、油に関する考え方 84 ■1.動物性脂肪と植物性油 84 ■2.脂質についての、新しい分類――分子構造の違いによる分類 87 ■3.各脂肪酸の摂取状況(飽和脂肪酸・オメガ9・オメガ6・オメガ3) 92 ■4.体内での各脂肪酸の変換 94 ■5.最新の油の考え方――「オメガ3」と「オメガ6」のバランス 95 ■6.局所ホルモン(プロスタグランジン)の働き 99 -1- 「酸化ストレス・炎症体質」を益々悪化させるもの 細胞膜と過酸化脂質 第3章 104 119 現代人の栄養摂取状況 122 高タンパク、高脂肪、砂糖過剰、ビタミン・ミネラル不足、低食物繊維 122 食生活改善について・・・ 126 第4章 片頭痛の食事療法の実際 150 1.片頭痛治療における食事療法の原則 150 ミトコンドリアを効果的に増やすには 150 ■お腹をすかせて若くなる「週末断食」のすすめ 151 2.MBT療法(DASCH diet) 152 1.マグネシウムの補充 154 2.ミトコンドリアの機能改善 163 3.フリーラジカルスカベンジャーの増加 164 4 170 セロトニンの改善 3.「酸化ストレス・炎症体質」改善のために 179 1)有害物質となるものの摂取をしない 180 2)乱れた腸内環境を整えるために 181 3)解毒(デトックス)および解毒代謝能力を向上させる 186 4)生理活性物質(エイコサノイド)のバランスの乱れを正す 190 -2- 5)「酸化ストレス・炎症体質」の改善は、インスリン過剰分泌をさせないこと が「鍵」! 194 4.片頭痛(体質)改善のために「行うべき”必須の3つの項目”」 206 1. 悪い植物油(市販のサラダ油など)や加工油(マーガリンなど)をとらない 207 2.万能健康ジュース 215 3.ラブレクラウト 239 第5章 ストレスを解消するための食生活 255 あとがき 277 引用文献 278 -3- はじめに 片頭痛は、”ミトコンドリアのエネルギー代謝異常あるいはマグネシウム低下によっ て引き起こされる脳の代謝機能異常疾患”です。 このミトコンドリアがエネルギーを作り出す際に活性酸素を生み出してきます。 この 「活性酸素」は不安定な状態にあり、近くの物質と結びつこうとします。物質が 酸素と結びつくことを”酸化”といいますが、鉄がさびたり、空気に触れたりんごの切り 口が茶色になったり、あるいは雨ざらしのゴムホースがぼろぼろになったりするように、 活性酸素が体の中でさまざまな「さび」の状態を作ってきます。 活性酸素が過剰になると、物質が酸化によってぼろぼろに壊れてしまうのと同じ現象 が、人体の中でも起こってきます。 その結果、がんや動脈硬化、脳梗塞、心疾患、糖尿病、白内障などの生活習慣病を引 き起こしてきます。また、活性酸素はしみやしわなどの原因になり、老化の最大の原因 であることも分かってきました。 現在の研究では、活性酸素は全疾患の 90 %以上に何らかの形で関っていると言われて います。片頭痛でも、同じように、この活性酸素が関係しています。 こうしたことから、片頭痛治療の考え方は、ミトコンドリアと活性酸素の関与を念頭に おくことが重要となってくることから、生活習慣病・がん予防と同じような視点から食事 療法を考えていくことが大切であり、これらは共通した部分が存在し、片頭痛独自のもの は極めて少ないと言えます。 片頭痛の殆どは、特殊なものは除いて生活習慣病の糖尿病と同様に”多因子遺伝”疾患 です。このため「環境因子」としての食事の関与は重要な位置を占めています。 「片頭痛と食事」がどのように係わっているのかを知ることが大切です。 本書では、「栄養学の知識」「最新の栄養学的知識」「現代人の栄養摂取状況」「片頭痛 の食事療法の実際」の4部に分けて説明しています。 まず、基本的な栄養学の観点から、自分の食生活を振り返ってみて、「片頭痛の食事療 法の実際」の全体像を考えるのが原則です。本書の中の”ごく一部だけ”を実行されるの では、片頭痛の改善は得られることはありませんので、この点は注意する必要があります。 全体像をまず把握して下さい。片頭痛治療上、食生活は極めて重要です。、 -4- 第1章 栄養学の基礎知識 1.エネルギー産生能力を増強させるために・・ 片頭痛とエネルギー エネルギーをつくり出す能力の低下が片頭痛 のひとつの要因になってきます。 60 兆個の細胞が活動することで人は生命を維持。 片頭痛のひとつの要因として、新陳代謝やエ ネルギー代謝など代謝の低下があげられます。 この代謝の低下を引き起こし、また、片頭痛を悪化させるひとつの要因と考えられている のが、エネルギー産生能力の低下です。 私たちの体は、およそ 60 兆個にものぼる細胞から成り立っています。これらの細胞は、 私たちが日々生活を送るために必要なエネルギーをつくり出しています。 心臓を例にとると、心臓を構成するひとつひとつの細胞がエネルギーをつくり出し、そ のエネルギーによって心臓を取り囲む丈夫な筋肉である心筋は、24 時間休むことなく働 き続けることができます。もしエネルギーが十分につくられなくなれば、心筋の働きは低 下。息切れや動悸といった症状が現れることになります。 各細胞内では、食物から摂取した栄養素を酸素が燃焼させてエネルギーを生み出してい ます。栄養素をきちんと補給してそれを燃焼させるというサイクルをしっかり回さなけれ ば、細胞はエネルギーを生み出せなくなり、人は生きていくことができません。また、私 たちの体のほとんどの部分では、常に新しい細胞が生まれ、古い細胞と入れ替わっていま すが、こうした細胞の入れ替わりのサイクルも、生命維持には欠かせない仕組みです。 細胞はひとつの生命体です。細胞自体がいつも元気に活動することでエネルギーが生ま れ、新しい細胞もつくられていきます。(これを新陳代謝といいます) -5- 細胞内のミトコンドリアがエネルギーを生み出す。 エネルギーは、細胞内に存在するミトコンドリアという 小器官の中で、栄養素が酸素で燃焼されることによって生 み出されます。ひとつの細胞に含まれるミトコンドリアは 50 から 200 ほどです。 ミトコンドリアによるエネルギー産出量は、私たちが必 要とする全エネルギーの 95 %にものぼるため、ミトコンド リアは「生命のエネルギー工場」と呼ばれています。骨格筋や心臓、肝臓、腎臓、脳など エネルギー代謝の盛んな臓器・器官の細胞ほどミトコンドリアの数は多く、それだけたく さんのエネルギーをつくり出すことで、筋肉を動かしたり、心臓を働かせているわけです。 そのためエネルギーをつくり出す能力が低下すると、さまざまな形で人の活動は支障を 来します。筋肉を動かす力が衰えると、歩いているときに物につまずきやすくなる。心筋 の働きが低下して、すぐに息切れ する。肝臓の働きが弱くなって、 若い頃には酔わなかったお酒に酔 いやすくなる…。いずれもエネル ギーをつくる能力が低下すること が、ひとつの大きな原因になって いると考えてよいでしょう。 こうしたことが起こらないよう、 エネルギーを生み出す能力をでき るだけ維持・向上させることが大 切になります。 エネルギー産生 エネルギー産生の元となる ATP をつくるうえで欠かせない CoQ10。 エネルギー工場の働き手として欠かせない CoQ10。 -6- 私たちが生きていくうえで必要なエネルギーは、ATP(アデノシン三リン酸)と呼ばれ る物質が元となって生み出されます。ATP はミトコンドリア内で生成されますが、ATP の生成に欠かせない物質が CoQ10 です。 CoQ10 は、体内の酵素の働きを助ける役目を担っています。酵素は化学反応によって 体内の物質を分解したり合成するものですが、CoQ10 はこの酵素の働きをサポートする 「補酵素」としてミトコンドリア内に存在しています。また、ビタミンと同じような役割 を果たすため、「ビタミン Q」との別名もあります。ただし、ビタミンが体内で生合成さ れないのに対して、CoQ10 は体内でつくり出すことができることから、正しくは「ビタ ミン様作用物質」のひとつです。 エネルギー工場であるミトコンドリアでは、数多くの CoQ10 が日夜エネルギーをつく り出し続けています。CoQ10 はいわばエネルギー産生に欠かせない戦力です。この戦力 が休んだり足りなくなると、エネルギーは生み出されなくなります。 スムーズに効率よく、たくさんのエネルギー産生へ。 ミトコンドリア内におけるエネルギー産生の仕組みを、もう少し詳しく見てみましょう。 「ミトコンドリア工場」では、酸素と三大栄養素(糖質・たんぱく質・脂質)をエネル ギーをつくるための主な材料として仕入れます。このうちもっとも重要なのが糖質(炭水 化物)です。ベルトコンベアに乗せられた炭水化物はすぐにブドウ糖に分解され、3 つの 工程を経て、エネルギーをつくる元となる ATP をつくり出します(【図 2】)。 ATP は第一・第二工程で少量がつくられます。しかし、もっとも大量に生成されるの が、第三の工程です。この工程=電子伝達系で必要不可欠な働き手が CoQ10 です。第二 -7- 工程で発生した電子を交通整理して、効率的・スムーズにかつ大量に第三工程に送り、ATP をつくり出しています。 こうした役目を担うことから、CoQ10 はエネルギー産生に欠かせない物質と呼ばれる わけです。 エネルギー産生の促進からさまざまな効果が期待。 CoQ10 は、私たちの体のすべての細胞に存在しま すが、その量は組織によって違います。エネルギーを 多く必要とする組織ほど多く、心臓や骨格筋をはじめ、 肝臓、腎臓などにたくさんの CoQ10 が含まれていま す。エネルギーを大量に必要とする組織に CoQ10 が 多く存在することは、理にかなった、生体の不思議な 力といえます。 反対に、CoQ10 が多く含まれている組織ほど、CoQ10 が不足することによるダメージは大きくなることもう なづけます。CoQ10 は 20 歳の頃をピークに年齢とと もに減少しますが、CoQ10 の減少はエネルギー産生 能力の低下を招き、全身の細胞の機能が低下して臓器 や器官の働きが弱まり、それがさまざまな病気の発症 につながります。 このように CoQ10 の作用について考えると、心臓の働きを強くするといったことはあ くまでも結果であり、そこに到達するまでの過程、つまりエネルギー産生を促すことが健 康維持に重要だとわかります。このエネルギー産生を促進する役割と同じように、CoQ10 のもうひとつの大きな役割が抗酸化作用です。次に片頭痛と関係の深い抗酸化作用につい て簡単に見てみます。 抗酸化作用 エネルギー産生とは違う形で CoQ10 が作用し、抗酸化作用を発揮。 -8- 人が避けて通れない体の酸化を CoQ10 が守る 私たち人間をはじめ、ほ乳類などの動物は、酸素がなければ生きていけません。その一 方では、マウスを酸素濃度の非常に高い場所で飼育すると寿命が縮まるという実験結果が よく知られているように、酸素は強い毒性も併せ持っていますので、「体がサビつく」と いう酸化現象から、私たちは逃れることはできません。 そのため、人には酸化から身を守るシステムが本来備わっています。SOD(スーパーオ キシドディスムターゼ)やカタラーゼ、グルタチオンといった「抗酸化酵素」です。しか しこれだけでは生体脂質の酸化を防ぐには不十分です。ビタミン E や C、カロテノイド などの抗酸化物質が必要となりますが、CoQ10 はそのなかでも第一線で働く強力な抗酸 化作用を発揮します。 酸化の元凶となるのが活性酸素で、これが過剰に生成され続けると体各部の脂質やたん ぱく質などが酸化します。こうして体がサビついた状態を「酸化ストレス」が加わった状 態と呼びます。 酸化ストレスは臓器・器官のあらゆる部分に害を及ぼすといっても過言ではなく、片頭 痛をはじめ動脈硬化や心筋梗塞、がん、糖尿病、紫外線障害に至るまでさまざまな病気を -9- 引き起こします。それだけに抗酸化物質は私たちの健康的な生活にとって欠かせない物質 です。 酸化型 CoQ10 が還元型に変わり抗酸化作用を発揮。 CoQ10 の抗酸化作用は、「還元型」と呼ばれる CoQ10 が重要になってきます。 一般にある物質が酸素と結びつくことを「酸化」、反対に酸素を奪われることを「還元」 といい、酸化と還元は同時に起こる化学反応です。CoQ10 のサプリメントは組成が安定 していることから「酸化型」ですが、体内に入るとその一部は「還元型」となり、抗酸化 物質として働きます。先のエネルギー産生が酸化型によって十分に作用が発揮されるとい う報告がありますので、つまり、サプリメントで CoQ10 を補給すると、酸化型と還元型 の両方の CoQ10 が体内に補給されることになり、エネルギー産生促進作用と抗酸化作用 という 2 つの違った働きを生み出すことにつながるといえるでしょう。 ビタミン同様、日頃から補給を継続することが重要。 CoQ10 は加齢とともに減少するため、食品やサプリメントなどで補給することが必要 です。食品ではいわしなどの青魚、牛や豚などの肉類、卵、ピーナッツなどに多く含まれ - 10 - ています。しかし、いずれも含まれる量自体が少ないので、サプリメントによる補給が望 ましいでしょう。 CoQ10 は比較的長く体内にとどまるとはいえ、補給しても 1 週間程度でもとの血中濃 度に戻るといわれていますので、継続して摂ることで効果が期待できます。ビタミンやミ ネラルと同じように、CoQ10 も日頃から補給し長く続けることが肝心です。 「心臓病の薬と一緒に飲んでも大丈夫なのか?」といった声をよく聞きますが、一部の 例外を除いて問題はありません。これまでに他の医薬品との関連性が指摘された報告はあ りませんし、重篤な副作用も報告されていません。CoQ10 は人が本来持っている物質で すから、安全であることは間違いないといえます。 ■不老長寿の新素材「CoQ10」で若返る■ 年をとると、生命維持の要である心臓にガ タがきてしまいます。心臓は片時も休むこと なく何十年も動き続けているのですから、疲 れて弱ってくるのも当然と言えば当然でしょ う。年をとるにつれ、心臓の元気がなくなり、 細胞が酸化ストレスによる損傷を受けると老 化が進みます。つまり、心臓に活力を与え酸 化ストレスから身体を守ることができれば、 老化を遅らせ、加齢により起こるさまざまな疾病を予防することもできるというわけです。 そこで、注目を集めているのが「Co Q 10」。心臓に活力を与える働きを持つ健康素材で す。“不老長寿の新素材”として期待される Co Q 10 の驚異のパワーを探ります。 Co Q 10 は心臓を元気にする働きを持ち、老化を遅らせる 「階段や坂道を上がると動悸、息切れがする」「皮膚のツヤ、ハ リがなくなってきた」「ちょっと体を動かしただけでもすぐに疲れ てしまう」「歯周病で固いものが食べれない」など、年をとると誰でも老化は進みます。 - 11 - いつまでも若々しく元気でいたい。Co Q 10(=コエンザムQ 10)は、そんな万人の願 いを叶えてくれる画期的な健康素材です。心臓の細胞に活力を与えて、老化を遅らせ、疲 労や加齢により起こる疾病に対応する物質で、私たちの体のすべての細胞内に存在し、ビ タミンのような働きをします。抗酸化ビタミンと呼ばれるビタミンEよりも強力な抗酸化 作用があり、我々の身体が酸化ストレスに侵されるのを防ぎます。 Co Q 10 には、次のような働きがあることが明らかにされています。 Co Q 10 の働き ●心臓病のリスクを減らす ●血圧を下げる ●免疫システムを改善する ●慢性疲労に対 応する ●ビタミンEの抗酸化の働きを助ける ●コレステロールの酸化を防止し、動脈硬 化を予防する ●歯周病を防ぐ ●糖尿病を予防する ●神経疾患を改善する ●アレルギー に対応する ●生殖機能低下を回復させる では、Co Q 10 の機能について簡単に触れておきましょう。 心臓、脳、内臓、筋肉、神経などがきちんと働いたり、歩く、走る、食べる、話す、考 える、見る、聞くなどの行動をするにはエネルギーが必要です。そのエネルギーの重要な 供給源となっているのがATP(アデノシン3リン酸)と呼ばれる物質。ATPは細胞内 のミトコンドリアで生産されます。ミトコンドリアでATPをつくりだすのに欠かせない のが Co Q 10。つまり、Co Q 10 は細胞をいきいきとさせ、効率良く生命活動のエネルギ - 12 - ーを生産するのに不可欠な物質なのです。 40 歳を過ぎると体内の Co Q 10 の量は減少する 成人では、体内に通常約700mgの Co Q 10 があるといわれています。その量には個人差があ り、Co Q 10 が多い人ほど元気で、風邪をひくな ど体調を崩すこともなく、疲れにくい体質である ことがわかっています。 この Co Q 10 は、加齢とともに減少していきま す。20 歳をピークに体内の Co Q 10 の生産量は減 っていき、一般に 40 歳を過ぎるとその生産力は著しく低下します。年をとると、体内の Co Q 10 量が減るため細胞が充分にエネルギーを生産できなくなり、さまざまな疾病が現れ てくるのです。 また、過度の飲酒や肝臓を患っている場合、ストレス、過労でも生産量は減少します。 体の中で特に多くの Co Q 10 が必要なのは心臓、腎臓、肝臓、膵臓といわれています。 とりわけ心臓はたえず血液を送り出しているため Co Q 10 が多く使われます。心臓の Co Q 10 が不足すると、動悸、息切れ、疲労感、足のむくみなどの症状が現れてきます。 40 歳を過ぎたら誰でも、Co Q 10 の補給が必要なのです。特に、「立ち仕事をした後や 夕方になると足がむくむ」「階段や坂道を上がるときに息切れがしてしまう」といった人 は。心臓ポンプ機能を高め、血液循環を改善してくれる Co Q 10 をしっかり摂取しまし ょう。 中年太りは、L-カルニチンと CoQ10 で解消できる 「若い頃より体重が 10 キロ以上も増えた」「お腹の脂肪がだぶついてベルトがきつい」 「毎朝ウォーキングをしているのにいっこうに痩せない」。中高年になって、太りやすく なったと感じませんか。いわゆる“中年太り”です。 肥満は、さまざまな生活習慣病を引き起こします。中高年にとって、中年太りは切実な - 13 - 問題です。この問題を解決してくれる強い味方が見つかりました。新成分 L-カルニチン が、それです。 L-カルニチンと CoQ10 を併用すると、体にたっぷりついた脂肪が減るということが期 待され、一躍脚光を浴びています。 「人間ドックで体重を減らすようにと言われた」-中年太りに悩む人が増えています。 なぜ、中年になると、太りやすくなってしまうのでしょうか。それは、食べ過ぎ、それと も運動不足。もしかしたら、脂肪を燃焼させる 物質が不足しているせいかもしれないのです。 その物質とは、L-カルニチンで、アミノ酸の 一種です。食品では、赤身の肉に多く含まれて います。最も多く含まれているのは、マトン(羊 肉)の足の部分です。 「肉を食べるのを控えているのに痩せない」「運 動を習慣にしているのに痩せない」。そんなあな たは、きっと L-カルニチン不足です。体内に Lカルニチンがたくさんあれば、脂肪を効率良く、 活発に燃やすことができます。しかし、不足し ていると、いくら痩せる努力をしても脂肪を減 らすことが大変、中年太りはなかなか解消でき ません。 この L-カルニチンは、体内で合成することがで きます。原料は、メチオニンとリジン。肝臓で 合成されます。体内で合成されるならば不足する心配はないのではないかと思われるかも しれませんが、合成能力は年とともにどんどん低下していきます。体内の L-カルニチン は 20 代をピークに減る一方で、中高年になると半減するとのデータもあります。 中年になると太りやすくなるのは、加齢により体内の L-カルニチン量が減少するため 体脂肪が燃えにくい体になってしまっているのが大きな要因と考えられます。 - 14 - ここで、脂肪が燃焼される仕組みについて触れましょう。 体についた脂肪は、そのままでは燃えません。まず、燃えやすい遊離脂肪酸に変化し、 血液の中に流れ出します。そして、各細胞内のミトコンドリアへと流れていきます。ミト コンドリアは、エネルギーを生み出す場所。遊離脂肪酸を燃料としてエネルギーを生み出 すのです。こうして、脂肪は燃焼します。ところが、遊離脂肪酸は L-カルニチンがない - 15 - と、ミトコンドリアの中に入ることができません。つまり、L-カルニチンがミトコンドリ アの鍵を開けることで、はじめて遊離脂肪酸はミトコンドリアに入ることができるという わけです。 L-カルニチンは遊離脂肪酸をミトコンドリアに運ぶ役割を果たしています。つまり、L-カ ルニチンが不足していては、体についた脂肪を燃やしてなくすことはできないのです。 L-カルニチンには、もう一つ重要な働きがあり ます。それは、健康な脳機能を維持することです。Lカルニチンが不足すると、脳のアセチル-カルニチ ンが不足します。アセチル-カルニチンが不足する と、脳の細胞が壊れやすくなり、痴呆症になりや すくなります。 このことは、数多くの臨床研究 - 16 - から明らかにされています。L-カルニチンは、ボケ防止にも役立つというわけです。 L-カルニチンは、ミトコンドリアの中で脂肪を燃焼して中年太りを防止し、脳の中でアセ チル化してボケを防止してくれる、中高年には欠かせない物質なのです。 L-カルニチンのパワーは CoQ10 なしでは発揮されない! 中年太りを解消したいからと、いくら L-カルニチンを摂っても、それだけでは効果は あまり期待できません。その優れた体脂肪の燃焼効果を発揮させるためには、CoQ10 が 欠かせないのです。 L-カルニチンだけがたくさんあっても、CoQ10 が不足していては、脂肪はうまく燃焼 されません。逆に、CoQ10 だけがたくさんあっても、L-カルニチンが不足していては、 脂肪はうまく燃焼されません(L-カルニチンと CoQ10 の脂肪代謝のメカニズムについて は、右の図及び解説をご覧ください。)つまり、この二つの相乗効果で、中年太りが解消 できるというわけなのです。 L-カルニチンは CoQ10 と一緒にしっかり摂ってこそ意味があるのです。 Q.L-カルニチンは 1 日にどれくらいの量を摂ればいいのですか。摂り続けても副作用は ありませんか。 A.中高年の人は、1 日 100 ミリグラムを目安に摂れば いいと言われています。L-カルニチンは体内で合成され るもので、非常に安全性の高い物質です。1500 ミリグ ラム摂った際に、一時的に軽度な下痢があったことが 報告されていますが、L-カルニチン以外の物質でも大量 に摂れば下痢は起こります。 Q.L-カルニチンは体内で合成されるのであれば、原料であるリジン、メチオニンを摂れ ばいいのではないですか。 A.いくら原料のリジン、メチオニンを摂っても、加齢により、それらを合成する能力が 落ちてしまっていては、結局のところ合成されないということになります。中高年の人は、 - 17 - やはり L-カルニチンの形で摂ったほうがいいでしょう。 Q.L-カルニチンは、疲労回復にも効果があるのですか。 A.疲労の症状は、人それぞれです。その原因は、ストレス、睡眠不足、運動不足などさ まざまです。疲労を軽減させる方法はたくさんありますが、L-カルニチンの補給も有効な 手段の一つといえます。慢性疲労性症候群の人は、血漿L-カルニチン濃度が低いという 研究報告がなされています。また、筋肉疲労の回復に役立つこともわかっています。 Q.L-カルニチンは羊の肉に多く含まれているとのことですが、マトンは苦手。栄養補助 食品として市販されていないのですか。 A.これまで日本では、L-カルニチンは医薬品として扱われていましたが、2002 年 12 月 の食薬区分の改正により、食品としての利用が可能になりました。L -カルニチンを含む 栄養補助食品も今では多数市販されておりますので、手軽に L -カルニチンが摂取でき るようになってきています。 2.からだづくりはビタミン&ミネラルの補給がカギ 栄養摂取の基本 「備えあれば憂いなし」の実践が、ビタミン・ミネラルの摂取の基本。 毎日きちんと摂取して日頃から健康づくりを 片頭痛のひとつのとらえ方として、代謝が低下していることがあげられます。体の細胞 を日々新しくつくり変える「新陳代謝」に、臓器や器官を動かすエネルギーとなる「エネ ルギー代謝」。これらの代謝がスムーズに行われなくなると、身体機能が低下したり、病 気にかかりやすくなってしまいます。 代謝と深く関わっているのは、食生活であり、栄養素です。なかでも現代人に不足して いるのはビタミンとミネラルです。新陳代謝やエネルギー代謝は毎日行われているもので すから、ビタミン・ミネラルも、毎日しっかりと摂取しなければなりません。 本来、ビタミンやミネラルは人に必要な栄養素です。決して活力剤のようなものではあ - 18 - りません。「シワが増えてきたからビタミン C を摂ろう」などと対処療法的に考えるので はなく、日頃から十分に摂取して体をいつも健康な状態に保つという考え方が基本です。 「備えあれば憂いなし」。その実践によって毎日の元気がつくられるだけでなく、片頭痛 や生活習慣病を予防し、健康寿命をのばすことにもつながります。 ビタミン・ミネラルとは 三大栄養素がスムーズに働くようにサポートする栄養素 体内の酵素の働きを手助けする役目を担う ビタミンもミネラルも食物に含まれている微量栄養素です。ビタミンは有機化合物、ミ ネラルは無機質(鉱物)である点が違いますが、共通しているのは、一部を除いてビタミ ン・ミネラルは人の体内で合成できず、食物などから常に摂取する必要がある点です。 人に必要な栄養素の中でとくに大切なのが「三大栄養素」-糖質(炭水化物)・たんぱ く質・脂質(脂肪)です。これら栄養素はそれだけでは体内でうまく働くことができませ ん。私たちの体内では、数千種類に及ぶ酵素によってさまざまな化学反応が起こっていま すが、この酵素の働きをビタミン・ミネラルがサポートすることで初めて、消化・吸収さ れた糖質・たんぱく質・脂質は体内で活用される物質へと変化します。つまり、ビタミン ・ミネラルが十分でないと、せっかくの栄養素が体内できちんと使われなくなるばかりか、 体に不調を来したり、肥満や糖尿病、高脂血症といった生活習慣病の原因となるわけです。 不足を補うサプリメントは現代人の強い味方 現代人は三大栄養素が過剰気味といわれています。その反面、三大栄養素を活用するた めに必要なビタミンやミネラルは、欧米型の食生活の浸透をはじめ外食やインスタント食 品による栄養のアンバランスなどから、どうしても不足しがちになります。 このようにビタミン・ミネラルの不足が避けて通れない環境に置かれている私たちにと って、サプリメントの利用はもはや欠かせません。サプリメントは、健康な体をつくるた めに頼りになる心強い味方です。 - 19 - ビタミンの働き エネルギーづくりを助けるとともに、抗酸化作用を発揮 水溶性と脂溶性の 2 つに分類されるビタミン ビタミンは、それ自体がエネルギーに なったり、体をつくる材料となる栄養素 ではありませんが、他の栄養素の働きを スムーズにする作用を持っています。現 在、ビタミンには A・B 群・C・D・E・K があり、B 群の 8 種類をあわせて全部で 13 種類。A・D・E・K は油に溶ける脂溶性 ビタミン、B 群・C は水溶性ビタミンです。 水溶性ビタミンは過剰に摂取しても排 泄されるので、たくさん摂っても害はあ りません。一方の脂溶性ビタミンは体内 に蓄積されるので、摂りすぎると頭痛な どの過剰症が出ることがあります。通常の食生活では過剰症の心配はいりませんが、サプ - 20 - リメントで大量に摂る場合には、摂りすぎに注意します。 次に、片頭痛や生活習慣病の観点から、一般にいわれているビタミンの働きを見てみま す。ビタミンの重要性をもう一度確認しましょう。 発がん抑制効果が確認されているビタミン A ビタミン A は夜盲症や疲れ目などを防ぐほか、皮膚や粘膜、胃腸・肺・気管支などを 覆う上皮組織を健康に保つ役目を担います。注目したいのは、がん抑制効果。発がんを抑 えることが研究によって確認されています。また、体内でビタミン A に変化するものの ひとつにβ-カロチンがあります。これは体内で必要量だけビタミン A に変化するととも に、ビタミン A に変わらずに体内に蓄積されたβ-カロチンには抗酸化作用があり、片頭 痛やがん、心臓病の予防などに効果があるとされています。 エネルギーの産生を助けるビタミン B 群 ビタミン B 群には、B1・B2・B6・B12・ナイアシン・パントテン酸・ビオチン・葉酸 の 8 種類があります。これらはお互いに影響しあいながら働きます。そのため「B 群」と して一緒に摂ったほうが効果が期待でき、多くのサプリメントは B 群がまとめて配合さ れています。 ビタミン B 群の最大の役目は、生きていくうえで必要なエネルギーの産生を促すこと です。B1 は糖質の代謝を助けますので、エネルギーの多くをご飯などの「糖質」に頼っ ている日本人にとって重要なビタミンです。 B2 は脂質の代謝を助けるとともに、体内で過酸化脂質が生成されるのを防ぎます。過 酸化脂質は片頭痛や動脈硬化を進行させる有害物質。B2 をしっかり摂ることで、片頭痛 や動脈硬化、さらには心疾患、高血圧など生活習慣病の予防が期待されています。 一緒に摂るとより効果的な C・E の抗酸化作用 ビタミン C・E はともに「抗酸化ビタミン」とも呼ばれています。抗酸化とは、片頭痛 やさまざまな病気の原因のひとつに考えられている「酸化」を防ぐ作用。その横綱格がビ - 21 - タミン E で、脂質の酸化を抑え、老化や生活習慣病の予防につながるといわれています。 一方のビタミン C にはビタミン E の抗酸化作用を高める働きがあるため、C と E は一 緒に摂るようにしましょう。また、β-カロチンやビタミン B2 はそれぞれ独自の抗酸化作 用を持っていますので、あわせて摂取するとよいでしょう。 ビタミン C には抗酸化作用のほか、コラーゲンの合成に関わって血管や各種器官を丈 夫にする働きがあります。シミのもととなるメラニン色素の生成を抑えることも知られて います。 このほかビタミン D は、カルシウムの代謝を助け、歯や骨を丈夫にします。血液凝固 の必須成分であるビタミン K も、骨を丈夫に保ちます。骨粗鬆症の予防に有効で、治療 薬としても認可されています。ただし、血栓症の人や血液抗凝固剤を服用している場合は ビタミン K の摂取量が制限されますので注意が必要です。 ビタミンやミネラルは酵素の働きを助ける「補酵素」です。毎日活躍する栄養素ですの で、体に何か変調が出てあわてることのないように、日頃から摂取・補給して生体機能の 維持・向上を図るようにします。老化や病気の予防・改善のためには、薬を飲んだり適度 に運動することと同じように、食生活もとても大切なもの。その中で自らの食生活を振り 返ってみて、必要に応じてサプリメントを利用し、元気でいきいきとした毎日が送れるよ う心がけましょう。 ミネラルの働き 体の機能の維持・調節に大切な役割を果たす ビタミン同様、微量でも健康に欠かせない栄養素 ミネラルは体の機能の維持や調節を行う栄養素。ビタミンが炭素や水素などの元素から つくられているのに対して、ミネラルは元素そのものです。ビタミンと同じように、微量 でも私たちに欠かせない栄養素です。主なミネラルとしては右図のようなものがあげられ - 22 - ます。 ミネラルは、バランスよく摂取するこ とが大切です。バランスが崩れるとだる い、疲れやすいといった症状が現れるほ か、がんや糖尿病、心臓病などの生活習 慣病の発症につながるといわれています。 相互に連携するミネラルはバランスが大 切 ミネラルはお互いに連携しあい、バランスをとりながら作用します。 たとえば、体内で 300 種類もの酵素の働きを助けるマグネシウムは、筋肉の収縮に関わ っているカルシウムの働きを調節しますが、カルシウムの摂りすぎはマグネシウムの吸収 を妨げます(これは片頭痛治療上、とくに重要です)。カリウムとナトリウムも連携しあ って作用しますが、2 つのバランスが崩れてナトリウム過剰・カリウム不足に陥ると高血 圧を招き、心臓病や脳卒中の一因ともなります。 このようにミネラルは、お互いが協力しあって作用すると同時に、一方が増えすぎると もう一方が減ってバランスが崩れます。摂取量に偏りがあると、お互いの働きが低下しま す。ビタミンと違って、体に有効な量と害を与える量との幅が狭く、適量をバランスよく 摂取するのが意外に困難です。そのためミネラルは多量に摂取するのではなく、食事を改 善して必要なミネラルを摂り、不足するものを中心にサプリメントで補うようにするとよ いかもしれません。 ・ビタミンのはたらき ・ビタミン A・C・E の連携プレー ・生活習慣と不足しやすいビタミン ・主なビタミンの種類と特徴 - 23 - ・筋肉神経に働くビタミン B 群 ■ビタミンのはたらき■ 体の機能を維持する微量栄養素 ビタミンは、私たちの元気の源、エネルギーの代謝に協力したり、食品からとった炭水 物や脂肪、たんぱく質などの栄養素を体に必要な成分に変えるときの手伝いをしているの です。 微量で体内の機能調節を担うホルモンとよく似ていますが、ホルモンが体内でつくられ るのに対して、ビタミンは原則的に体内でつくることはできません。ですから、必要な量 を摂取しなかった場合、体にさまざまな弊害を及ぼします。ビタミンには、体を正常に保 つための調節機能があるのです。 また、ビタミンはその性質から脂溶性ビタミン(A・D・K・E)と水溶性ビタミン(B 群や C)に分けられます。 生理作用と薬理作用 ビタミンには、私たちの生命を維持するのに必要な生理作用のほかに、所要量以上を積 極的にとると一種の薬としての働き(薬理作用)を持つことが報告されています。 たとえばビタミン E には、必須脂肪酸の酸化を防ぐ抗酸化作用がありますが、所要量 以上をとることによって末梢血管の血液の流れをよくし、肩こりや冷え性が改善したり、 動脈硬化やがんなどの生活習慣病なども改善する効果があるのです。 現代人は積極的に摂取を 不足しがちなビタミンを毎日食事からきちんと摂取できていればビタミン不足で体調を 崩すことはありません。しかし1日3食、たんぱく質、脂質、糖質、野菜類など、栄養バ ランスを考えていろいろ食べるとなると、なかなか実行できる人は少ないでしょう。 野菜などは、流通や保存過程で鮮度が落ち、調理時の洗浄や加熱などでもビタミンはど - 24 - んどん消失していきます。また旬のものとそうでないものとではビタミン含有量が大きく 異なります。 日々の食事だけでは、栄養が十分に確保しにくいのが現代生活ともいえるでしょう。基 本は日々の食生活ですが、不足しがちな栄養素を栄養補助食品(サプリメント)などで補 うのもビタミンとの上手なつきあい方といえるでしょう。 ■ビタミン A ・C・E の連携プレー■ がん予防に効果的なビタミン A ・C・E ●ビタミン A と C と E は、正常な細胞からがんができる過程、つまり発がんを防ぐと いう点で今、注目されています。 私たちの体は、食べ物から炭水化物や脂肪などの栄養をとり、酸素を使って分解し燃焼 させてエネルギーにしています。この化学反応を酸化といい、そのとき、できるものが活 性酸素(不安定で攻撃性の強い酸素)です。活性酸素が大量に体の中に発生すると、さら に酸化が進み、発がん物質である毒性の強い過酸化脂質(体の中のサビ)をつくり出して 細胞膜を傷つけたりします。脂溶性のビタミン E は、過酸化脂質の生成を防ぐために脂 の中(細胞膜など)で働き、水溶性のビタミン C は、細胞質液を活躍の場として、それ ぞれ強力な抗酸化作用で活性酸素を捕らえて無害な形に し、不必要な酸化を防いでくれます。 ビタミン A は、ビタミン E や C と同じように抗酸化作 用があり、免疫増強作用も持っています。ビタミン E と 同様に細胞膜などで働きますが、単独でとるよりも、A ・C・E を一緒にとると相互に助け合って、がんなどの 障害を起こす活性酸素と戦う力が増す性質を持っています。 ■筋肉・神経に働くビタミン B 群■ B 群はそろえてとると効果的 - 25 - ビタミン B 群は、B1・B2・B6・B12 とナイアシン・パントテン酸・葉酸・コリンな どがあり、お互いに助け合って、エネルギー代謝に関係しています。 ビタミン B1 は、炭水化物をエネルギーに変え、神経組織にも働きかけるので、ストレ ス解消に役立ちます。 ビタミン B2 は、脂肪の代謝を助け、目や皮膚や口内の粘膜発育に作用し成長を促進し ます。 ビタミン B6 はたんぱく質の代謝を助け、中枢神経系の働きを正常に保ちます。ビタミ ン B12 は核酸の代謝に関係し、赤血球の生成促進に役立っています。欠乏すると貧血が 起こりやすくなります。ビタミン B 群は単体でとるよりも、そろえてとったほうがより 高い効果が得られます。 ビタミンの過剰症 とりすぎに気をつけたいのは、脂溶性ビタミンの A と D と K。 ビタミン E の過剰症は通常起きません。注意したいのはビタミン A で、大量にとると 頭痛や吐き気などが心配されますが、所要量の 10 倍以上を何週間も続けたり、一度に 100 倍以上とれば、急性の障害を起こすことも考えられますが、これは現実的ではありません。 服用をやめれば消えます。またカボチャなどの緑黄色野菜に含まれるベータカロチンの形 でとればその心配もありません。 ■生活習慣と不足しやすいビタミン■ ●手足が冷えて困っている人 冷え性は末梢血管の血行障害が主な原因で す。ビタミン E は、手足や腰などの細かい血 管を拡張して血行をよくし、体内の血液循環 を高める働きがあります。 - 26 - ●疲れやすいと感じている人 ビタミン B1 と B6 は、互いに協力しあって神経組織や筋肉、神経に作用し、弱った神 経の働きを正常に戻してくれます。B12 や E も疲労回復に効果的に働きます。 ●肩こりや腰痛がつらい人 血行障害に効果的なビタミン E。神経のビタミンである B6 と B12。C も椎間板(腰椎 のクッション役)の材料になるコラーゲンをつくるために必要です。 ●ダイエットをしている人 カロリーを抑えた食事内容では、どうしてもビタミン類が不足になりがち。各種ビタミ ンを総合的に補給することが必要です。 ●抜け毛や薄毛が気になる人 神経や筋肉の疲れをほぐすビタミン B2、B6 は髪の順調な生育を助けます。また、フケ 防止に役立つのが抗酸化作用のビタミン E です。 ●たばこをよく吸う人 たばこを吸うとビタミン C を大量に消費します。粘膜に作用し抗酸化作用のあるベー タカロチンと同時にビタミン E を補えば A・C・E の協力パワーが効果を発揮します。 ●甘党や外食の多い人 ケーキや和菓子などが好きな甘党は糖分を代謝するためにビタミン B1 が多量に消費さ - 27 - れます。また外食が多い人は必要量の B1 を摂取する のはかなり困難。B1 の補給を。 ●ストレスを受けやすい人 適度のストレスは活力のもとですが、ストレス過多 は避けたいもの。抗ストレス作用があり、抵抗力を強 くするビタミン C を多めにとりましょう。神経ビタミンの B1・B6・B12 も同時にとりま しょう。 体のサビ・活性酸素の害を抑える 活性酸素は、普通に生活していても発生しますが、通常は活性酸素に対する防御システ ムが働いてとくに問題になることはありません。しかし、強い紫外線や放射線、大気汚染、 過激な運動、喫煙、過食、ストレスなどは活性酸素を多量に発生させやすくします。 その結果、脂質やたんぱく質、酸素、遺伝子に至るまで広範囲に及んで悪影響を与える ことになります。 活性酸素は老化の促進や動脈硬化、高血圧などの生活習慣病、発がんにも深く関与して いることが報告されています。抗酸化作用のあるビタミン類は現代生活に欠かせないもの といえそうです。 ■今、日本人はビタミン・ミネラル不足に陥っている■ 50 年前の 8 倍も 20 倍もの量の野菜を食べなければ栄養不足になる 日本人の食生活は、ここ 50 年で大きく変化しています。脂肪や炭水化物は十分過ぎる ほど摂れているのに、ビタミン・ミネラルは不足しているというのが、現代食の特徴です。 食事がビタミン・ミネラルの摂れる和食から、脂肪分が多くカロリーの高い欧米食に 変わっているのです。 - 28 - そして、素材そのものに含まれる栄養素も減っています。特に、野菜の栄養価が著し く低下しています。例えば、1950 年と 1980 年のニンジン 100 gの栄養価のデータをみる と、ビタミン A の含有量は 1950 年には 13500IU であったのに、30 年後には三分の一の量 に激減していることがわかります。 2000 年のデータは出ていませんが、50 年前に比べて 8 分の 1 から 20 分の 1 の量に下が っているといわれています。緑黄色野菜をたっぷり摂っていても、ビタミン・ミネラルを 十分に摂ることができなくなっているのです。 このように野菜の栄養価が下がってきているのは、日本の土地が痩せてきているから です。土壌に含まれるビタミン・ミネラルは、土から栄養を吸い上げ育つ植物に入って、 その植物を食べる人間の体に入ってきます。つまり、土壌のビタミン・ミネラルが減ると、 必然的に私たちの体に入ってくるビタミン・ミネラルも減るわけです。 調理によってもビタミン・ミネラルは減少するから栄養補助食品で補おう また、加工食品が増えていることもビタミン・ミネラル不足に陥る一因としてあげられ ます。あまり加工食品を食べていないと思っているかもしれませんが、玄米を精製して白 米にするのも、海水の塩を精製して食卓塩にするのも加工していることになります。また、 調理するのも加工といえます。例えば、食材を茹でる場合、鍋に水をはって野菜をさらす と、水溶性ビタミン(ビタミンCなど水に溶けるビタミン)は水に溶け出して失われてし まうし、加熱すれば熱に弱いビタミンは壊れてしまいます。加工するということは、食材 に入っている栄養素の中のカロリーだけを残して、大切なビタミン・ミネラルを削り取る ことになります。 普段の食生活からビタミン・ミネラルをしっかり摂ることが難しくなっている今、ビタ ミン・ミネラルの栄養補助食品を利用することが必要なのです。 ■ビタミン・ミネラル不足は肥満につながる!■ 調理によってもビタミン・ミネラルは減少するから栄養補助食品で補おう 私たちは生命を維持するために食べ物を摂りますが、そのとき体内では二つの代謝が行 - 29 - なわれています。一つは、食べ物から摂取したカロリーを身体を動かすエネルギーに変え ること。もう一つの代謝は、カロリーとタンパク質で、身体の一つ一つの細胞をつくりか えることです。食べ物のカロリーをエネルギーに変えるには、ビタミン・ミネラルが不可 欠。どのビタミン・ミネラルが欠けても、代謝はスムーズに行なわれません。 例えば、食べ物からカロリーを 10 摂ったのに、ビタミン・ミネラルは3しか摂れなか ったとします。10 摂ったカロリーを 10 エネルギーに変えられれば問題はないわけですが、 ビタミン・ミネラルが3しかないと3までしかエネルギーに変えられないのです。それで は、残りの7はいったいどうなるのか。この残りの7は、皮下脂肪になって蓄積し、肥満 につながります。 毎食、この7がたまり続けて肥満になると、特に中高年の方は、糖尿 病、動脈硬化、心臓病、高血圧などの生活習慣病にかかる危険が高くなります。また、腰 痛や膝の痛みなどの誘因にもなります。 カロリーを含まない形で摂取するために、栄養補助食品を活用しよう カロリーをエネルギーに変えるためにはビタミン・ミネラルをしっかり摂ればいいわけ なのですが、ビタミン・ミネラルを5摂れるような食事内容に変えると、たいていカロリ ーも 10 から 15 など増えてしまうことになります。これでは、当然さらに太り続けます。 だからといって、食べる量を減らしたり、食品の種類を減らしたりしてカロリーを減ら すと、ビタミン・ミネラルの摂取量も減ってしまいます。その結果、食べるのを我慢して いるのにちっとも痩せないという状態を招くことになるのです。そればかりか、エネルギ ーがつくりだせないので、筋肉がおちて体脂肪が増加してしまいます。 つまり、肥満を防止し、生活習慣病を予防するためには、カロリーを含まない形でビタ ミン・ミネラルを摂取することができればいいというわけです。ビタミン・ミネラルの粒 状の栄養補助食品ならば、カロリーを気にせずしっかりビタミン・ミネラルを摂取するこ とができます。 ■まんべんなく、保健量を栄養補助食品を利用して摂る■ 最低必要量を摂っていても、ビタミン・ミネラルが足りているとはいえない。 - 30 - 日本人に足りない栄養素は、カルシウムと鉄だけといわれますが、実際にはビタミン・ ミネラルはすべて不足しています。所要量を超しているから足りているというのは間違い。 所要量とは最低必要量(急性の欠乏症にならないために摂らなければならない最低限の量) のことで、理想の摂取量、つまり現代人の健康維持・増進、生活習慣病予防のために必要 な量ではないのです。 現代人はカロリーの摂取量が増えているのですから、そのカロリーを代謝するに見合っ た量のビタミン・ミネラルが必要となります。それに、例えばビタミンCはストレスによ り大量に使われ、一瞬でも 500mg 以上、タバコを一本吸うと 25mg 以上も破壊されてし まいます。最低必要量を摂取できていたとしても、それで足りているとはいえないのです。 それでは、理想の量はというと、その目安はアメリカの保健量。これは、アメリカの栄養 療法が定めた健康維持・増進のために必要で安全な量です。現在、日本人のビタミンC摂 取量は 50mg をやっと超すくらいですが、アメリカの保健量は 1000 ~ 3000mg。若返りの ビタミンと呼ばれるEは、私たちが摂っている量は 10mg ほどですが、100 ~ 300mg とい われます。 ビタミンはまんべんなく摂取して初めて、その効果が期待できる では、ビタミンCだけをアメリカの保健量の 1000mg 摂ればいいかというと、それでは 駄目。代謝は各種ビタミンのうち一番摂取レベルが低いものに帳尻を合わせてしまうため、 いくらビタミンCをしっかり摂っても、ビタミンB群やEなど他のビタミンの摂取量が不 十分だと効果を発揮しません。ビタミンは、まんべんなく摂ることが大切なのです。例え ば、「脂肪を燃焼させるビタミンB群を栄養補助食品で摂っているのに、ダイエット効果 が実感できない」というのは、単品で摂っているから。骨粗鬆症の患者さんの例では、カ ルシウムだけだと骨密度が増えなかったのに、ビタミン・ミネラルをまんべんなく飲んで もらったところ骨密度が増えました。 何種類ものビタミン・ミネラルをカプセルや錠剤で毎日飲むのは大変です。各種ビタミ ン・ミネラルが一袋に入っているタイプの栄養補助食品など便利でいいでしょう。 - 31 - 第2章 最新の栄養学的知識 1.動物性タンパク質の過剰摂取の害 2.「牛乳信仰」の弊害と、カルシウム・パラドックス・・・牛乳は悪い食品!? 3.砂糖の過剰摂取の害 4.第6の栄養素「食物繊維」 5.ますます明らかになってきた「腸内細菌の重要性」 6.脂肪・油の摂り過ぎによる弊害と、油に関する考え方 ■1.動物性脂肪と植物性油 ■2.脂質についての、新しい分類――分子構造の違いによる分類 ■3.各脂肪酸の摂取状況(飽和脂肪酸・オメガ9・オメガ6・オメガ3) ■4.体内での各脂肪酸の変換 ■5.最新の油の考え方――「オメガ3」と「オメガ6」のバランス ■6.局所ホルモン(プロスタグランジン)の働き その1 動物性タンパク質の過剰摂取の害 これまで、肉・牛乳(乳製品)・卵は、栄養価 の高い食品と考えられてきました。これらの食 品はスタミナをつけ、欧米人のような頑強な体 をつくると言われ、積極的に摂るように勧めら れてきました。肉・牛乳・卵は、まさに「欧米 型食事」を形成する中心的な食品です。 必須アミノ酸を含む食品は、私たちの健康維 持のためには不可欠です。そして肉や牛乳・卵などの動物性食品には、この必須アミノ酸 が豊富に含まれ、理想的なタンパク源となっています。従来の栄養学では「完全タンパク 質食品」と呼ばれ、重要視されてきました。 - 32 - しかし科学の最前線にある生化学栄養学・現代栄養学は、これまでの常識を覆し、動物 性食品の摂り過ぎによる、さまざまな弊害を明らかにしています。「タンパク質の過剰摂 取の害」を、科学的に明確にしています。 動物性タンパク質の過剰摂取 穀類・豆など植物性のタンパク質を含む食品には、食物繊維や炭水化物なども多く含ま れています。そのためたくさん摂っても、タンパク質の過剰になるほど食べ過ぎるような ことはありません。一方、肉類などの動物性食品を多食すれば、簡単にタンパク質の過剰 摂取を招いてしまいます。 現代栄養学では、タンパク質の必要量の目安を、大 人では体重1 kg につき、1日に 0.8 ~1gとしていま す。つまり体重 60kg の人では、48 ~ 60 gが適量とい うことになります。現在アメリカ人のタンパク質の平 均摂取量は約 90 gですから、およそ体重 90 ~ 110kg の人の必要量に相当する量を摂っていることになりま す。これでは、いくら体の大きいアメリカ人であって も過剰摂取と言えます。 ところが 1988 年度の厚生省(当時)の調査では、日本人の大人のタンパク質の摂取量 は、およそ 80g にものぼっています。アメリカ人の体格に比べ圧倒的に小さな日本人が、 ほぼアメリカ人並にタンパク質を摂っているのです。必要量の2倍近く摂っていることに なります。アメリカ人でさえも摂り過ぎなのに、最近の日本人は、それ以上に過剰摂取に 陥っているということです。(※タンパク質の摂取源から見たとき、アメリカ人に比べ日 本人は植物性食品からの摂取が多いのですが、現在では半分以上を動物性食品から摂って います。) 大腸ガンの原因となる 肉の過剰摂取に、食物繊維の不足が加わって「大腸ガン」が引き起こされると言われて います。動物性タンパク質を大量に摂ると、食べたものが十分に消化・吸収されないまま - 33 - 大腸に至り、腐敗を起こすようになります。そして腸内環境が悪化し、硫化水素・インド ール・メタンガス・アンモニア・ヒスタミンなどの多くの毒素・発ガン物質がつくり出さ れるようになります。こうした強烈な組織毒が、人体の老化を早め、ガンをはじめとする 多くの成人病を引き起こすことになるのです。 さらに肉に含まれる大量の脂肪によって、いっそう腸内環境が悪化し、発ガン物質が多 量につくられるようになります。加えて 食物繊維の不足が、発ガンを促進するこ とになります。間違った食事により腐敗 し、毒素をため込んだ“便”が長時間に わたって腸内にとどまることで、発ガン 物質の吸収が高まってしまうのです。肉 食の増加にともない、大腸ガンは確実に 増え続けています。 アレルギー反応を引き起こす タンパク質過剰摂取の弊害の1つがアレルギーです。アミノ酸に分解されていない大き な分子のタンパク質(未消化タンパク質)が、腸壁から吸収され、血液中に運ばれること があります。そうした未消化タンパク質が免疫系によって「異物(アレルゲン)」として 認識されると、アレルギー反応が引き起こされます。そして、かゆみや湿疹・腫れ・くし ゃみなどの症状が現れるようになるのです。アトピーや喘息には、こうした「食物アレル ギー」が大きくかかわっています。 現代人が好む肉や牛乳・卵は、アレルゲンになり やすい食品です。日本人はもともと穀菜食民族で、 穀類や豆類・魚からタンパク質を摂ってきました。 それが短期間のうちに、大量の肉や牛乳を摂るよう になったのですから、体はそれをうまく処理するこ とができません。 高タンパク食品は、それ自体がアレルゲンになる とともに、腸管(腸壁)の透過性を高め、さらに未 - 34 - 消化タンパク質を引き込んでしまうことになります。多くの現代人は動物性のタンパク質 を多食することによって、腸壁のバリアー機能を弱らせています。特に子供の場合は腸が 十分に発達していないために、深刻なダメージを受けることになります。こうしたことが 繰り返され、腸の炎症やむくみ・下痢などが起こり、いっそうアレルギーがひどくなるの です。 最近、大腸炎やクローン病といわれ、腸の炎症や潰瘍・下痢などに苦しむ人々が増えて いますが、動物性タンパク質の過剰摂取が、その大きな原因となっています。 カルシウムの喪失と、骨と歯の弱体化 大量に摂取され血液中にあふれたタンパク質(アミノ酸)は、最終的には尿として体外 に排泄されることになりますが、その過程で消化器系全体や、肝臓・腎臓に負担をかける ことになります。過剰なアミノ酸が分解されると、毒性の強い窒素残留物(アンモニア) が生成されます。それは肝臓で処理され、無毒な尿素に転換されます。そして腎臓の働き を通じて、尿として排泄されることになります。このようにタンパク質を多量に摂ると、 解毒の働きをする肝臓と、排泄を担う腎臓に、大きな負担をかけることになるのです。 尿素が増えてくると、それを尿として流し出すために、体は多くの水分を必要とします。 そして尿と一緒に、カルシウムやマグネシウムなどのミネラル類も排泄されてしまうこと になります。尿素の排泄がスムーズに行われないと有害な尿酸が生成され、関節にたまっ て痛風を起こすことになります。(※こうした要因以外に、痛風の発症にはストレスが大 きくかかわっていると言われています。) また大量のアミノ酸が分解されると、血液は急激に酸性に傾き、それを中和するために カルシウムやマグネシウムが必要とされます。それらが血液中に不足していれば、骨や歯 から溶かし出して補うことになります。 さらに肉類は典型的な酸性食品で、カルシウムに対するリンの比率はおよそ 50 倍にも なっています。血液中のカルシウムとリンの比率は1:1に保たれていなければなりませ んが、肉を多く摂ることで、そのバランスが大きく崩れてしまいます。その結果、血液中 の酸・アルカリ濃度を調節するために、いっそう骨や歯からカルシウムが溶け出すことに なります。 このようにタンパク質を大量に摂ることによって、カルシウムなどのミネラルが失われ、 - 35 - 骨の弱体化が急速に進行することになります。肉を多食する先進諸国では、骨粗しょう症 が多発しています。日本においても、動物性タンパク質の摂取が増えた昭和 30 年代以降、 骨粗しょう症や骨折など、骨の異常が急増しています。 ※肉の大量生産と汚染の問題 今、私たちが食べている牛肉は、牧場でのんびりと草をはんで育った牛の肉ではありま せん。その大半が工業製品と同じように、大量生産システムによって飼育された牛の肉な のです。それは豚肉・とり肉も同様です。 家畜たちは、終日、身動きもままならない環境に置かれ、ただエサだけを与えられ飼育 されています。それでは病気になるのは当たり前です。そこで病気を防いだり肉質をよく するために、大量の抗生物質・ホルモン剤がエサと一緒に投与されることになります。現 在では、そうした化学薬剤や耐性菌が肉の中から 検出されることは、日常茶飯事となっています。 平成 14 年度の横浜衛生局の食肉検査統計では、 牛と豚の検査頭数の約 73 %に異常が見られ、肉 の一部が廃棄処分になっています。つまり家畜の 大半が病気だということです。そして、その病気 の家畜の肉を、国民が食べているということです。 数年前から、ヨーロッパやアジアを中心に狂牛病や口蹄疫が大流行してきました。また 2002 年 秋には、日本でもついに狂牛病が発生し大騒動になりましたが、それは、家畜 という生命体を異常に扱った結果なのです。 肉・牛乳(乳製品)・卵の摂りすぎは、片頭痛にどう影響するのか 肉・牛乳・乳製品、これらにホルモン剤(エストロゲン様環境ホルモン)が含まれてい る可能性があり、本来月経期間中はエストロゲン濃度が低いはずですが、肉・乳製品・環 境ホルモンの摂取でエストロゲンが高濃度になると、マグネシウムの体内濃度は低下しま す。 またタンパク質を多量に摂ると、解毒の働きをする肝臓と、排泄を担う腎臓に、大きな - 36 - 負担をかけることになります。尿素が増えてくると、それを尿として流し出すために、体 は多くの水分を必要とします。そして尿と一緒に、カルシウムやマグネシウムなどのミネ ラル類も排泄されてしまうことになります。こういったことから、マグネシウム不足を引 き起こすことになり、マグネシウム不足は片頭痛悪化の元凶となってきます。 また、高脂肪・高タンパク質食品に偏った食生活を続けると、カロリーのとり過ぎとあ いまって、「SOD」(スーパーオキシドディスムターゼ)や「グルタチオンペルオキシ ダーゼ」、「カタラーゼ」といった、抗酸化酵素”の活性に必要不可欠なマンガン、鉄、 銅、亜鉛、セレンなどのミネラル元素の不足を引き起こします。結果、活性酸素の発生が 抗酸化作用より常に優位な状態、いわゆる「酸化ストレス」になり、酸化ストレス・炎症 体質を形成してくることになります。 肉類や乳・乳製品といっだ動物性タンパク質”たっぷりの食事は、腸内環境を悪くしま す。腸内の悪玉菌の大好物は、肉などたんぱく質や脂肪を多く含む食品です。 悪玉菌はたんぱく質やアミノ酸を分解し、悪臭のする有害物質を作り出します。 肉類は悪玉菌の格好のエサです。この点を忘れてはなりません。このようにして、「酸 化ストレス・炎症体質(片頭痛体質)」を増悪させることになります。 肉食の多い欧米人の片頭痛は日本人に比べ、強度なことは、ここに原因があります。 「セロトニンを増やすためには、トリプトファンをたくさん含んでる食べものをとればO K」と思われている人も多いと思われます。 セロトニンは「トリプトファン」というアミノ酸を原料としてカラダのなかでつくられ ます。腸や血液に含まれる大部分のセロトニンは、脳に入っていきません。つまり、単純 にトリプトファンが多い食べもの、たとえば「牛レバーやバナナをせっせと食べよう」な んて本や雑誌を見かけることがありますが、実際にそうしたからといって脳内セロトニン が単純に増えるわけではありません 腸内や血液中のセロトニンは脳に入っていきませんが、トリプトファンはちゃんと脳に 入っていくことができます。ですから、トリプトファンをたくさん取り込むことができれ ば、脳内セロトニンも充分につくることが可能になります。 しかし、トリプトファンが通る場所に問題があってここは、ほかの必須アミノ酸も通っ ていく場所でもあるのです。この必須アミノ酸というのは、 「フェニルアラニン」とか「口 イシン」というものですが、食品によってはトリプトファンよりもこれらの必須アミノ酸 - 37 - のほうが多く含まれるものがあるのです。これらの必須アミノ酸がトリプトファンの邪魔 をするため、トリプトファンが通過しづらくなってしまうのです。その代表的な食べもの が、肉類や乳・乳製品なのです。……。 つまり、牛レバーにはトリプトファンよりもほかの必須アミノ酸が多いため、実際には 思ったほどトリプトファンがとれないのです。 私たちのカラダの筋肉や骨などはタンパク質で出来ていて、このタンパク質を構成して いるのは 20 種類のアミノ酸です。そのうち、9 種類は必須アミノ酸と呼ばれる体内では 合成できないアミノ酸。その必須アミノ酸の中でもバリン、ロイシン、イソロシンは総称 して BCAA と呼ばれる持久系のアミノ酸で、大切な栄養素です。 この持久系アミノ酸 BCAA は、まぐろの赤身、 肉や卵などの食品に含まれているほか、最高の 栄養といわれる母乳にも含まれています。 このように BCAA が多い環境では脳への取り 込みが阻害され、脳内セロトニンがあまり増え ないことがありますので注意が必要です。 BACC は動物性蛋白質に含まれており、食品 では牛乳、鶏卵、マグロ、牛肉などが挙げられます。食べ物はバランスが大事なので、極 端に摂取を制限すると逆に体調不良の原因になるので注意です。牛乳、鶏卵、マグロ、牛 肉の摂りすぎは逆に「脳内セロトニン」不足を招くことに繋がりますので、注意が必要で す。 セロトニンを増やすためは、ビタミンB3(ナイアシン)、ビタミンB6、およびマグ ネシウム、亜鉛の不足を起こさないことが大切です トリプトファンはセロトニンの原料であると同時に、ナイアシンの原料でもあり、ナイ アシンの合成が優先されます そのため、ナイアシンが不足していますと、折角、脳内に取り込まれたトリプトファン もナイアシンの合成に使われてしまい、セロトニンの合成へはまわってきません ナイアシンは魚介類や肉類などの食品に含まれており、腸内細菌により産生もされます ので、適量の魚介類・肉類を摂食し、腸内細菌を健全に保っている限りにおいて、ナイア シンの摂取不足を起こすことはありません。 この条件が整った状態で、セロトニンはトリプトファンを原料として、ビタミンB6、 - 38 - 亜鉛、マグネシウムなどを補酵素として合成されます。 こういったことから、肉・牛乳(乳製品)・卵の摂りすぎは、腸内環境の悪化をきたし、 ビタミンB3(ナイアシン)が産生されなくなり、結果的に「脳内セロトニン」がうまく 作られなくなってきます。 以上のことから、肉・牛乳(乳製品)・卵の摂りすぎは、片頭痛治療上好ましくないこ とばかりです。 その2「牛乳信仰」の弊害と、カルシウム・パラドックス・・・牛乳は悪い食品!? これまでの「牛乳信仰」 肉や卵と並んで、これまでの栄養学で、栄養価の高い優れた食品と言われてきたのが牛 乳です。「カルシウムを摂るなら、まず牛乳!」というほどに、家庭でも学校でも牛乳を 飲むことが勧められてきました。日本人は欧米人と比べてカルシウムの摂り方が足りない、 牛乳を飲めば彼らのように体格がよくなると、 国民の大半が信じ込んできました。まさに「牛 乳信仰」ともいえる思い込みが浸透してきまし た。特に成長期の子供たちや妊婦、骨粗しょう 症の心配のある閉経後の女性には、牛乳を摂る ことが積極的に勧められてきました。 しかし牛乳も肉と同様、決して健康によい食品ではありません。確かにカルシウムは必 須ミネラルとして、人間の体にとって不可欠な栄養素です。そして牛乳にはカルシウムが 豊富に含まれています。といって、牛乳を飲めばカルシウムが十分に補われ、健康になれ るというものではないのです。実際、世界で最も牛乳を多く飲むノルウェー人の骨折率は、 日本人の5倍というデータがあるのです。 現在では、牛乳を飲むことは健康にプラスになるどころか、かえって深刻な弊害を引き 起こすことが明らかになってきました。アメリカでは一般の医師でも、妊婦や骨粗鬆症の 患者に牛乳を勧めるようなことはしません。欧米の医学関係者の間では、牛乳は健康によ い食品でないことが常識化しつつあります。 - 39 - カルシウムの含有率と吸収率の問題 これまで牛乳は、カルシウムの“含有率”が高いから体によい食品とされてきました。 しかし単に、含有率が高ければよいというわけではありません。牛乳をたくさん摂った場 合には、腸からの吸収を抑えるといった形でカルシウムの吸収を調整するようになります。 その結果として、カルシウムの排泄が促されることになります。 そこで問題となるのが、カルシウムだけでなく、他のミネラルや栄養素も一緒に排泄さ れるようになるということです。(※海外の研究では、カルシウムを多く摂ると便の中の マグネシウムの排泄量が 25 %も増加し、吸収も抑制されることが報告されています。) また、牛乳に含まれるカルシウムは“吸収率”がよいから、カルシウム不足の解消に役 立つと信じられてきました。今でも盛んにこうした宣伝がなされています。しかし、この 見解にはたいへんな問題が含まれています。 まず、本当に牛乳に含まれるカルシウムは吸収率がよいのか、ということです。これに ついてはさまざまなデータがあって、いまだにはっきりとした結論は出ていませんが、一 般には牛乳のような動物性食品のミネラルは、野菜などの植物性食品のミネラルと比べ吸 収率がよいとされています。(※最近では、野菜に含まれるカルシウムの方が吸収がよい という報告もあります。)牛乳では 10 ~ 30 %ぐらいのカルシウムが吸収されると言われ ています。 さて、牛乳のような高カルシウム食品を摂った場合には、急激に血液中のカルシウム濃 度が高まることになります。カルシウムの「吸収率がよい」ということは、このように― ―「飲んですぐに、血液中のカルシウム濃度が高くなる」ということです。 しかし私たちの体には、ホメオスタシス(恒常性維持機能)という働きが備わっていて、 血液中のカルシウム濃度は、常に一定の割合に保たれるようになっています(※1CC中、 9~ 11mg)。カルシウム濃度がこの割合を超えて高まると、急いで排泄しなければなりま せん。早急に排泄しないと、さまざまな障害が生じるようになるからです。 そこで腎臓は、カルシウムを尿から流し出すために、ピッチを上げて働くことになりま す。それには多くのエネルギーが必要とされ、腎臓に余分な負担がかかることになります。 そして過剰なカルシウムが排泄されるのと同時に、マグネシウム・亜鉛・鉄などのミネラ ルや、他の栄養素も失われてしまいます。その結果、さらにミネラル不足が進むことにな - 40 - ります。 このように牛乳に含まれるカルシウムの吸収率がよいということは、人体にとって必ず しもプラスとはなっていないのです。(※カルシウムとマグネシウムの尿からの排泄量に は、相関関係があることが確かめられています。つまりカルシウムの排泄量が増せば、同 じようにマグネシウムの排泄量も増すということです。) 深刻なマグネシウム欠乏を引き起こす ミネラルの不足は健康に大きなマイナスを及ぼしますが、なかでもマグネシウムの欠乏 は深刻です。マグネシウムは、ミネラル間のバランスをとるためのポイントとなる重要な ミネラルです。マグネシウムの欠乏は、細胞内外のカルシウム・カリウム・ナトリウムの バランスを崩し、それらが果たしている、さまざまな生理作用を狂わせることになります。 この4つのミネラルの細胞内外での比率が守られることで、酸素や栄養素の運搬・神経や 筋肉の働き・ホルモンの分泌などが正常に行われるのです。(※「細胞外ミネラル」であ るカルシウム・ナトリウムは細胞外液に多く存在し、「細胞内ミネラル」のマグネシウム ・カリウムは細胞内液に多く存在しています。) またマグネシウムには、酵素の働きを助ける触 媒作用があります。マグネシウムが不足している と、酵素は十分に働くことができません。マグネ シウムはありとあらゆる酵素の働きに関与してい るため、その欠乏は全身の代謝に決定的な影響を 及ぼすことになります。 血液中のマグネシウムの欠乏状態が続くと、これもホメオスタシスの働きによって、マ グネシウムが骨や細胞から溶け出すようになります。骨は多くのミネラルから構成されて いますが、生命維持にかかわる重要なミネラルの不足に備えて、その貯蔵庫ともなってい るのです。 成人の体には、カルシウムは約1 kg 存在しますが、マグネシウムは 25 gにすぎず、そ の差は 40 倍以上です。そのうちカルシウムの 99 %、マグネシウムの約 60 %は骨にあり ます。つまり骨には圧倒的にカルシウムが多く存在し、マグネシウムは、その 60 分の1 程度しかないということです。 - 41 - そうしたもともと少ないマグネシウムが溶け出すと、骨の中でのマグネシウム欠乏は深 刻な状態となり、骨の形成がうまくいかなくなります。マグネシウムが不足していては、 いくらカルシウムがあっても骨の代謝はスムーズに行われません。骨粗鬆症や骨のトラブ ルを防ぐために牛乳を飲むことで、かえって骨の弱化という、逆の結果を招くことになる のです。 「カルシウム・パラドックス」――実はマグネシウム不足による現象 現代人のマグネシウム不足は、きわめて深刻な事態を迎えています。食事から摂取する マグネシウムの絶対量は少ないうえに、ストレスや激しい運動・過労・過食など、その消 耗要因があふれています。そうした状況に おいて、多量の牛乳が摂取されているので すから、体内のマグネシウム欠乏はいっそ う進むことになります。 血液中のマグネシウムが不足すると、骨 や細胞から補われることを述べましたが、 その際には、一緒にカルシウムも溶け出し ます。実際にはマグネシウム不足であって も、骨にはカルシウムが大量に含まれてい るので、カルシウムの方が多く溶け出すこ とになります。 (※これを「カルシウム脱灰」 と言います。骨を構成するミネラルには、カルシウム・マグネシウム・ナトリウム・リン などがありますが、マグネシウムの不足が引き金となって、主要な骨ミネラルの溶出が起 こるのです。) こうして骨から溶け出したカルシウムの一部が、マグネシウムが抜け出た(マグネシウ ム不足の状態にある)細胞内部に入り込むことになります。カルシウムは大切な栄養素で すが、細胞外ミネラルであるため、細胞の中にそれが増えると、細胞の働きが損なわれる ことになります。細胞内に入ったカルシウムは“毒”ともいえる存在で、細胞全体・身体 全体の機能低下を引き起こすことになります。 (※カルシウムの細胞内液での濃度に比べ、 細胞外液での濃度は千~1万倍も高くなっています。これが細胞内外におけるカルシウム - 42 - の正常な比率ですから、余分に細胞に入り込んだカルシウムは、すばやく追い出さなけれ ばなりません。) そこで細胞内に増加したカルシウムを、細胞外に汲み出すことが必要になりますが、そ の働きを担っているのが、細胞膜にあるポンプなのです。しかし、このポンプはマグネシ ウムがないと働くことができないようになっています。マグネシウムが不足していると、 ポンプの働きが低下し、カルシウムを汲み出すことができなくなります。 細胞に沈着したカルシウムは、細胞や組織を硬くし(石灰化)、動脈硬化を招き、心臓 ・血管系の病気を引き起こすことになります。また腎臓結石・胆石など、結石症の原因と もなります。さらに関節に溜まれば関節炎、免疫細胞に入り込めばアレルギーなどをひど くし、ガンや多くの現代病の誘因ともなります。 ここまで「マグネシウム」に注目して、その欠乏が引き起こす、さまざまな問題点を見 てきました。この流れを「カルシウム」の観点から見ると、―「骨のカルシウムは減少す る一方で、細胞の中には溶け出したカルシウムが溜まる」という奇妙な現象が生じること になります。不足と過剰という相反する状態が同時に存在することになるのです。これが 「カルシウム・パラドックス」です。 カルシウムの観点だけから眺めると、矛盾して見えるこの現象も、マグネシウムの観点 から見れば、すべて矛盾なく説明されることです。マグネシウムの欠乏こそが、「カルシ ウム・パラドックス」の根本的な原因なのです。 現代人は、マグネシウムを多く含む緑色野菜や海藻、豆類や種子類などを摂らなくなっ ています。また穀類からも、精製によってマグネシウムが減少しています。それに加えて マグネシウムは、ストレスや過労などによって著しく失われやすいミネラルです。 こうした深刻なマグネシウム欠乏の状態では、カルシウムは十分摂っているはずなのに、 骨の中のカルシウムは減少し、細胞にはカルシウムが詰まるという異常な事態が発生する ことになってしまいます。これが一般的に言われる、「カルシウム・パラドックス」の実 態なのです。 「骨粗鬆症」を引き起こす 老齢化社会の到来を迎え、骨粗鬆症の予防のために、「カルシウムを多く含む牛乳を飲 みましょう」と盛んに言われています。しかし、ここまで述べてきたように、牛乳を飲ん - 43 - でも骨粗鬆症を防ぐことはできません。むしろ牛乳のような高カルシウム食品を摂ること で、骨からカルシウムが失われてしまっているのです。 疫学的なデータにも、それがはっきりと示されています。シンガポール人は、平均的ア メリカ人の3分の1程度しかカルシウムを摂っていませんが、骨折率はアメリカ人の5分 の1にすぎません。カルシウム摂取率の少ない国々の方が、どこも骨粗鬆症の発症率が低 いのです。先に、牛乳を大量に摂ることで他の必須ミネラルや栄養素が体外に排泄されて しまうことを述べましたが、それによって骨の形成に必要なミネラルが失われ、強い骨が つくられなくなるのです。 食品中のカルシウムの吸収率が低い(※血液中のカルシウ ム濃度が、ゆっくりと上がる)ということは、人体にとって 悪いことではありません。体内での利用のスピードに合わせ て、ゆっくりと吸収されるのは、むしろよいことなのです。 体の必要性に応じて徐々に吸収されるのは、自然なことなの です。(※牛乳には脂肪が多く含まれているために、カルシウ ムの吸収が妨げられるという説があります。摂取されたカル シウムは、小腸の表面においてカルシウムイオン化し、吸収されるのですが、そこに脂肪 が入ってくると不溶性のカルシウム塩がつくられ、吸収が阻害されるというものです。牛 乳のカルシウムの吸収が「よいか、悪いか」については明らかではありませんが、牛乳を 摂ることには、多くの問題があるのです。) いずれにしても、カルシウムの摂取を牛乳に頼る必要はありません。穀類や豆類・野菜 ・海藻・ゴマなどにも、カルシウムは十分含まれています。そうしたカルシウムこそが、 体内で有効に活用されるのです。それらの食品には、カルシウムだけでなく、骨の形成に 必要な他のミネラルやビタミンも豊富に含まれています。 菜食主義をしてきた人々に骨粗鬆症が少なく、牛乳を飲む人たちほど多いのは、このよ うな理由によるのです。(※骨粗鬆症の原因は、単なるカルシウム不足だけではありませ ん。食生活に、遺伝的要因・運動不足・性ホルモンの減少などが加わって起こるものです が、ミネラル摂取の欠陥が重大な要因となっています。) 「乳糖不耐症」の問題 - 44 - 牛乳が人間の健康にとってマイナスとなることは、「乳糖不耐症」という問題によって も明らかにされます。母乳や牛乳には乳糖(ラクトース)と呼ばれる糖分が含まれていま すが、それは「乳糖分解酵素(ラクターゼ)」によって分解され吸収されます。 この酵素の活性は赤ちゃんが生まれた直後にピークを迎え、離乳期にはその活性が低下 し大人と同じレベルになってしまいます。そして替わって、「デンプン分解酵素(アミラ ーゼ)」の働きが活発になってきます。つまり赤ちゃんは、乳糖分解酵素の減少とともに 乳離れを迎え、少しずつ自分で食べ物を摂れる体へと変わっていくのです。この生理的変 化は――「もうお乳よりも、ご飯から栄養を摂るのがふさわしい」ことを示しています。 人間には、このような自然な形で“乳離れ”をしていくシステムが備わっているのです。 農耕を主として生活してきた日本人の大半は、欧米人に比べてラクターゼの活性は低く、 大人では 80 %くらいの人に、この消化酵素が不足しています。これが「乳糖不耐症」で す。乳糖不耐症の人が牛乳や乳製品を摂ると、乳糖は小腸で吸収されず、そのまま大腸に いくことになります。そこで大腸菌によって分解され、ガスと酸を生じ、腹痛や下痢、お なかが張ったり、ゴロゴロするなどの症状を引き起こします。そして下痢によって、腸内 の栄養素は体外に排泄されてしまうことになります。せっかくカルシウムを摂るつもりで 牛乳を飲んでも、カルシウムは乳糖と一緒に排泄されてしまうのです。また腸内細菌のバ ランスも、大きく崩されることになります。(※乳糖不耐症の程度は人によって異なり、 下痢を起こさない人もいますが、栄養の利用が妨げられていることに変わりはありませ ん。) ある食べ物が「下痢を起こす」というのは、それが体に有害な食品であることを意味し ています。体に悪いものであるために、身体に備わった防衛機能によって体外に排泄され ることになるのです。この点からも、牛乳は健康にとって「マイナスの食品・悪い食品」 であることが明らかです。 さらに乳糖の中のガラクトースが体内で分解できないため、それが目の水晶体にたまっ て、白内障の発症に関係していると言う研究者もいます。 アレルギー反応を引き起こす さらに牛乳には、次のような問題があります。牛乳の中に含まれているタンパク質(カ ゼイン)が、アレルギー反応を引き起こすということです。先に肉の箇所でも触れました - 45 - が、普通、タンパク質は胃や腸の消化酵素の働きによって分解され、アミノ酸になって吸 収されます。 ところが人によっては、アミノ酸になる前の「ペプチド」という形で腸壁のバリアーを 抜け、吸収されることがあります。これは、腸が十分に発達していない幼児によく起こり ます。こうした未消化のタンパク質は、体内においてアレルゲンとなり、アレルギー反応 を引き起こすことになります。これが牛乳アレルギーです。 カゼインは、「カード・凝乳」と言われる消化されにくい膜をつくり、消化器官に負担 をかけます。現在の牛乳はすべて加熱殺菌を施され、“酵素”が破壊されていますから、 それがいっそう体に悪影響を及ぼすことになります。母乳で育てられた子供は、牛乳で育 てられた子供に比べ、アレルギーや他の病気になりにくいと言われています。それには、 免疫の働きが母乳を通して赤ちゃんに伝わるということだけでなく、酵素の有無もかかわ っているものと思われます。またカゼインは、粘液を増やし、喘息・気管支炎・副鼻腔炎 などを悪化させる原因ともなっています。 現代栄養学の立場からは、牛乳とアレルギーの関係は明らかです。アレルギーの治療に おいて、牛乳・乳製品を断つのは常識的なことと言えます。実際、牛乳をやめるだけで大 きく改善されるケースがよくあります。 牛乳には、母乳の3倍ものタンパク質、4倍ものカルシウム、6倍ものリンが含まれて います。それは胃袋が4つもあり、1~2年で成長する牛にとってふさわしい成分であっ て、人間には必要ありません。余計な成分が入れば、かえって消化不良を起こし、消化器 官や肝臓・腎臓に負担をかけ、体を弱らせることになってしまいます。 また牛乳には、抗生物質やホルモン剤などの残留汚染物質の問題もあります。牛乳・乳 製品の摂り過ぎが、大腸ガン・乳ガン・子宮ガンの一因になっているとも言われています。 片頭痛に対する影響 牛乳の飲み過ぎは、過剰なカルシウムが排泄されるのと同時に、マグネシウム・亜鉛・ 鉄などのミネラルや、他の栄養素も失われてしまいます。その結果、さらにミネラル不足 が進むことになります。このことは、「脳内セロトニン」合成に際して、一連の反応がス ムースに進まなくなり、ひいては「脳内セロトニン」低下に繋がります。 「SOD」 (スーパーオキシドディスムターゼ)や「グルタチオンペルオキシダーゼ」、 「カ - 46 - タラーゼ」といった、抗酸化酵素”の活性に必要不可欠なマンガン、鉄、銅、亜鉛、セレ ンなどのミネラル元素の不足を引き起こします。結果、活性酸素の発生が抗酸化作用より 常に優位な状態、いわゆる「酸化ストレス」になります。 カルシウムとマグネシウムの尿からの排泄量には、相関関係があることが確かめられて います。つまりカルシウムの排泄量が増せば、同じようにマグネシウムの排泄量も増すと いうことです。牛乳の飲み過ぎは、マグネシウム不足につながります。 マグネシウムには、酵素の働きを助ける触媒作用があります。マグネシウムが不足して いると、酵素は十分に働くことができません。マグネシウムはありとあらゆる酵素の働き に関与しているため、その欠乏は全身の代謝に決定的な影響を及ぼすことになります。 現代人のマグネシウム不足は、きわめて深刻な事態を迎えています。食事から摂取する マグネシウムの絶対量は少ないうえに、ストレスや激しい運動・過労・過食など、その消 耗要因があふれています。そうした状況において、多量の牛乳が摂取されているのですか ら、体内のマグネシウム欠乏はいっそう進むことになります。 現代人は、マグネシウムを多く含む緑色野菜や海藻、豆類や種子類などを摂らなくな っています。また穀類からも、精製によってマグネシウムが減少しています。それに加え てマグネシウムは、ストレスや過労などによって著しく失われやすいミネラルです。 細胞内に増加したカルシウムを、細胞外に汲み出すことが必要になりますが、その働き を担っているのが、細胞膜にあるポンプなのです。しかし、このポンプはマグネシウムが ないと働くことができないようになっています。マグネシウムが不足していると、ポンプ の働きが低下し、カルシウムを汲み出すことができなくなります。 マグネシウムイオンは細胞内小器官(ミトコンドリア)の膜構造ならびに細胞膜構造に おいて膜の安定性を保つ役割をしています。 細胞膜にはミネラルイオンが通過できる小さな「穴」があり、透過できるイオンの種類 によって、「ナトリウムチャネル」とか「カルシウムチャネル」といった名がつけられて います。これを使って必要なミネラルを自在に出入りさせることで細胞内のミネラルイオ ン濃度の調整をするのです。ミトコンドリアには、細胞内のカルシウムイオン濃度を適正 に調整する作用があります。 マグネシウムイオンが不足すると細胞内小器官(ミトコンドリア)の”膜構造ならびに 細胞膜構造”のイオンポンプの力が弱くなり、細胞内小器官であるミトコンドリア膜の透 過性も亢進し、ミトコンドリア内に入り込んだカルシウムイオンは、ミトコンドリア外へ - 47 - 出ていけません。カルシウムはミトコンドリア内に少しずつ蓄積してきます。ミトコンド リア内カルシウムイオンの増加が起こります。それを薄めるために細胞浮腫、つまり水ぶ とりの状態になります。 細胞内のカルシウムイオン濃度が異常に高くなり過ぎると、ミトコンドリアの調整機能 は破壊されてしまいます。調整機能が壊れたミトコンドリアは死滅してしまいます。 ミ トコンドリアのエネルギー産生やミトコンドリア自体の生死には、ミトコンドリア内のカ ルシウムイオン濃度が強く係わっており、カルシウムイオン濃度は片頭痛の発症にも非常 に大きな原因となります。 このようになった細胞に、適量のマグネシウムが供給されると、溜まっていたカルシウ ムイオンなどが排出され、それにつづき、水分も排出されますが、この水ぶとり状態も限 度がありカルシウムイオンがある量を超えると、その細胞は不必要となり見捨てられます。 そして、後にはカルシウムイオンなどで一杯になった固まりだけが残されます。これが石 灰化した細胞のことです。動脈硬化の原因の一つです。結果的に、この細胞は死滅してし まいます。 細胞内のマグネシウムが著しく不足すると、カルシウムイオンを細胞外に排出するカル シウムポンプの調整機能が働かなくなり、筋肉は収縮状態(緊張した状態)が続くことに なります。片頭痛の前兆や、発症の引き金となる脳血管の収縮は、脳血管細胞内のカルシ ウム濃度の高まりによっても生じます。それはつまり、マグネシウム不足がもたらす結果 でもあるのです。 そして、マグネシウム不足が持続すれば、ミトコンドリアの働きをさらに悪くさせるこ とに繋がることになり、片頭痛を悪化させる”元凶”にもなってきます。 こうしたことから、片頭痛を治療していく上で、牛乳の飲み過ぎに注意すると同時に、 マグネシウムがいかに不足しがちなミネラルであるかということを念頭において、常日頃 から”マグネシウム”の補充に気を配ることが大切になってきます。 その3 砂糖の過剰摂取の害・・甘い物の好きな方々へ 現代人は昔と比べ、比較にならないほど大量の砂糖を摂るようになっています。アメリ - 48 - カでは、1人1日当たり、大さじ 17 ~ 18 杯(約 160 g)もの砂糖を摂取していると言わ れますが、こうした状況は、現在の日本においてもそのまま当てはまります。 日本における砂糖の平均摂取量は約 65 gですから、アメリカよりかなり少ないように思 われます。しかし現実は、1日にペットボトル1本の清涼飲料を飲み切ってしまうような 青少年が多くいることを考えると、かなりの人がアメリカ人並に摂取していると思われま す。数年前にNHKが放映した小学5・6年生を対象にした調査では、1人1日コーヒー カップ1杯、約 210 gもの砂糖を摂っていることが分かりました。 大量に摂取される砂糖の 70 %は、清涼飲料や菓子・加工食品に含まれる隠れた砂糖です。 コーラ・ジュース・缶コーヒー、チョコレート・ケーキ・菓子パン・アイスクリーム、ケ チャップ・ドレッシング・調理済みの総菜などには多量の砂糖が含まれています。(※ち なみにコーラ 1500ml 中には 160 g、缶コーヒー 250ml 中には 18 g、アイスクリーム1個 には 15 gもの砂糖が入っています。) 砂糖の摂り過ぎは多くの現代病を引き起こす原因となっていますが、ここでは現代栄養 学が明らかにしている、「砂糖の過剰摂取の害」について見ていきます。 ここ 30 年ほど、日本では砂糖の摂取量が減少傾向にあると言われます。確かに砂糖キ ビやテンサイ(砂糖大根・ビート)などからつくられる、昔ながらの砂糖の量は減ってい ます。しかし代わって“異性化糖”と言 われるトウモロコシや芋デンプンを原料 にしたブドウ糖・果糖などの量は大幅に 増加しています。また“調整糖”と言わ れるミルクの成分やソルビトールに砂糖 を加えたものも、かなり増えています。 他にはハチミツやメープルシロップなど の消費も伸びています。 こうした異性化糖や調整糖は、「砂糖の摂取量」として公表されるデータには含まれて いません。砂糖と異性化糖・調整糖を合わせた量は、ほぼ横ばいと考えられます。しかも 重要な点は、約 30 年前(昭和 47 年)当時は、すでに食生活が崩れ「大量の砂糖が摂取さ れるようになっていた」ということです。つまりここ 30 年間以上、糖類の過剰摂取は続 いているのです。 - 49 - 先ほど挙げた、1人1日当たりの平均摂取量 65 gという数字は、平成 13 年度の砂糖の 総需要量(国内生産量に輸入量を足した量)に異性化糖の需要量を加え、総人口で割った ものです。この数字には、調整糖やその他の糖類は含まれていませんし、ゼロ歳児まで加 えた単純な数字であることを考えると、実際の摂取量はかなり上回るものと思われます。 炭水化物(糖質)の種類と特徴 炭水化物である糖類・デンプンは、人体の主要なエネルギー源です。食べ物として摂取 された糖類・デンプンは消化酵素によって単糖(ブドウ糖・果糖・ガラクトースなど)に 分解され、小腸から毛細血管内の血液に入り、肝臓に運ばれます。 吸収された単糖のうち、果糖とガラクトースの多くは肝臓でブドウ糖(グルコース)に 変換されます。ブドウ糖の一部はそこでエネルギー源となりますが、肝臓から血液に送ら れたブドウ糖は、神経・筋肉・その他の組織でエネルギー源として利用されます。ブドウ 糖が各組織(細胞内のクエン酸サイクル)で代謝され、エネルギーが生み出されます。 体が活発に活動しているときは、ブドウ糖は次々にエネルギーに変換されていきますが、 すぐに使われない場合は、インスリンの作用によって「グリコーゲン」に変えられ、肝臓 や筋肉に蓄えられます。しかしグリコーゲンの貯蔵量には限度があるので、あまったブド ウ糖は「体脂肪(中性脂肪)」として蓄積されます。(※体脂肪は予備エネルギー源で、 活動が増えて食事から摂取された糖が不足したときには燃焼に回されます。活動が少なく 消費量より摂取量が多ければ、体脂肪が増加し肥満を招くことになります。) 炭水化物は、主に炭素・水素・酸素からできていて、その最小単位は「単糖」と言い、 ブドウ糖・果糖・ガラクトースなどがあります。単糖が2~ 20 個結合したものを「オリ ゴ糖」、単糖が多数結合したものを「多糖」と言います。(※オリゴ糖は「少糖」とも呼 ばれていますが、その中で単糖が2個結合したものは「2糖」と呼ばれ、麦芽糖・蔗糖・ 乳糖があります。蔗糖は一般に“砂糖”と言われます。) エネルギー源としての“糖” 細胞内に入ったブドウ糖(グルコース)は、「クエン酸サイクル」と言われる複雑なプ ロセスをへる中で燃焼しエネルギーに変換されますが、ブドウ糖の燃焼がスムーズに行わ - 50 - れるためには、ビタミンB群やミネラルが不可欠です。(※ビタミンB1・B2・B3・ B6・B 12・ビオチン・パントテン酸、そしてマグネシウム・マンガン etc.) もし、こうした栄養素が不足するとブドウ糖の燃焼効率が低下し、エネルギー生産に支 障が生じることになります。代謝を進める微量栄養素の不足から、クエン酸サイクルの途 中でブドウ糖の一部が脂肪に変換されてしまいます。それではいくらブドウ糖があっても 十分なエネルギーが得られなくなり、身体の活力低下を引き起こすことになります。 先に砂糖の過剰摂取が肥満につながると言いましたが、単に“糖”が多いということだ けが問題ではなく、一緒に働く栄養素の不足によっても「体脂肪」は増えることになるの です。つまり微量栄養素の不足(とくにマグネシウム不足)による「糖の代謝異常」が、 肥満の引き金になるということです。 砂糖は「空のカロリー食品」 砂糖の過剰摂取が私たちの健康にマイナスとなる理由はいくつかありますが、まず挙げ られるのが、砂糖は「空のカロリー食品」であるということです。現代人が大量に摂取し ている砂糖の多くは、真っ白に精製された白砂糖です。“糖”だけあって、その代謝に必 要な栄養素(ビタミン・ミネラル)がほとんど失われてしまった精製糖です。そのため砂 糖は、カロリーだけあって他の栄養素を含まないという意味で――「空のカロリー食品」 と呼ばれています。 砂糖以外の空のカロリー食品としては、アルコールや純粋なデンプンなどがあります。 米や小麦粉なども精製されて白くなればなるほど、空のカロリー食品に近づくことになり ます。ラードなどの動物性脂肪やサラダ油・テンプラ油などの精製油も、一部のビタミン があるだけで、大半がほとんどカロリーだけの食品です。(※精製されていない黒糖や蜂 蜜・メープルシロップなどにはビタミンやミネラルが含まれていますが、“糖”である以 上、微量栄養素の摂取を期待して摂るようなものではありません。) 「微量栄養素の欠乏」を引き起こす では、砂糖のような「空のカロリー食品」は、どうして健康に害をもたらすことになる のでしょうか。私たちが1日に必要とする“カロリー”は、運動量や体重から適量が決ま - 51 - っています。そこへカロリーだけを含む食品を大量に摂取すると、すぐにカロリー枠がい っぱいになり、他の食べ物を摂ることができなくなってしまいます。残されたわずかな枠 で、「必須栄養素」のすべてを摂取しなければならなくなります。しかし、もともと空の カロリー食品の多い食事には必須栄養素が不足していますから、それが不可能であること は明らかです。 砂糖を大量に摂ればお腹は空かなくなり、食欲は減少します。甘い物ばかり食べている 現代の子供たちは、昔の子供たちのような、まともな食事は摂れなくなっています。ジュ ース・菓子パン・アイスクリーム・チョコレートなどを日常的に摂っている子供は、豆や 野菜などは好みません。 昔は、砂糖や脂肪などの摂取量が少なかったので、ご飯をしっかり食べてカロリーを補 給しなければなりませんでした。そして主食のご飯に加えて、豆や野菜・魚といった副食 をしっかり摂っていました。そうした“まともな食事”には、カロリー以外の栄養素も多 く含まれ、食事全体の栄養バランスが保たれていたのです。それが現代では、砂糖や脂肪 に偏った結果、大きく崩れてしまいました。 食事の中で「空のカロリー食品」の占める割合が増えるほど、カロリーだけは満たされ ても必須栄養素は欠乏するという事態が生じます。現在、日本人が摂取している炭水化物 の 40 %近くは砂糖によって占められています。また米も大半が白米で、栄養素は乏しく なっています。このような食事の傾向が、必須栄養素―特に“微量栄養素”を枯渇させる ことになります。砂糖の過剰摂取の害として最初に挙げられるのは、「微量栄養素の欠乏 を引き起こす」ということです。このなかで当然マグネシウムも不足して来ます。 よい食品というのは、カロリー栄養素の他にビタミンやミネラル・食物繊維などを含んで います。こうした食品で食事を組み立てれば、カロリー枠を超えることなく、必須栄養素 ・微量栄養素を満たすことができます。 食べ物が体内で利用されるためには、代謝を進める微量栄養素が欠かせません。しかし 「空のカロリー食品」である砂糖には、ビタミンやミネラルなどは含まれていないため、 それを摂ることで、体内の栄養素を消耗させることになります。つまり砂糖を摂ることで、 もともと乏しい体内の“微量栄養素”が、いっそう欠乏してしまうのです。 さらに砂糖の過剰摂取は、血液を“酸性”に傾けます。すると体はPHを一定に保つた めに、カルシウムなどのミネラルを必要とします。もし血液中に十分なカルシウムがなけ れば、ホメオスタシスの働きによって、骨や歯からカルシウムを溶かし出してくることに - 52 - なります。 日本をはじめ先進諸国では、貧しい国々とは異なり、カロリー不足からくる栄養失調は ありません。むしろカロリーを摂り過ぎて「微量栄養素の失調」に陥り、病気を招いてい ます。砂糖の過剰摂取は欧米型の食事の特徴ですが、それが“生命の鎖”を弱体化させる 大きな原因の1つになっているのです。 「低血糖症」を引き起こす 砂糖の過剰摂取は微量栄養素の欠乏を引き起こす だけでなく、「血糖値を急激に上昇させる」という 点からも健康に害を及ぼします。2糖類である砂糖 は消化・吸収のプロセスがきわめて速く、摂取後、短時間で血液に運ばれます。そのため 砂糖をたくさん摂ると、血糖値が急激に上昇することになります。(※砂糖は時に直接、 口や胃の粘膜からも吸収されます。) 砂糖の大量摂取によって血糖値が跳ね上がると、血糖の調節のために「インスリン」と いうホルモンが分泌されます。あふれているブドウ糖を細胞内に取り入れようとして、膵 臓は急いで「インスリン」を分泌することになります。(※血糖値が高くなると「インス リン」が分泌されてブドウ糖は貯蔵に回され、反対に血糖値が低くなると「グルカゴン」 がグリコーゲンを分解して、血糖を供給します。膵臓から分泌されるインスリンとグルカ ゴンという2つのホルモンが、血糖のコントロールをしています。) 穀類に含まれるデンプンのように消化に時間がかかり、小 腸からゆっくりと吸収されればよいのですが、砂糖の場合は 一気に吸収され“高血糖”の状態を招くことになります。す ると膵臓は、血糖を下げるためにピッチを上げて多量のイン スリンを分泌しなければならなくなります。こうしたことを 繰り返していると、糖の代謝にかかわる膵臓や肝臓・副腎な どの器官が疲弊し、血糖の調節に狂いが生じるようになります。 わずかな砂糖が入っただけで、膵臓が過剰に反応して、必要以上にインスリンを出すよ うになると、血糖値の落ち込みがひどくなったり、慢性的な低血糖状態が続くことになり ます。これを「低血糖症」と言います。そして長期にわたってオーバーワークを強いられ - 53 - た膵臓は、やがて疲れ果て必要な量のインスリンを分泌できなくなり、低インスリン性の 糖尿病を招くことにもなってしまいます。(※砂糖だけが糖尿病の原因ではなく、脂肪の 摂り過ぎがインスリンの働きを阻害することが分かっています。しかし過剰な砂糖が膵臓 を疲れさせ、糖尿病の誘因となることには変わりありません。) 「低血糖症」による心身の異常 低血糖症とは、脳を含む全身のエネルギー源である血液中のブドウ糖のレベルが、異常 に低くなる病気です。それによって細胞へのブドウ糖の供給が不足し、脳と体のエネルギ ー・ショック状態が引き起こされます。(※低血糖の影響は全身に及びますが、特に心臓 ・神経・脳への影響は重大です。) 低血糖症によって起こされる症状はさまざまですが、まず極度の疲労や脱力感・動悸や 震え・猛烈な飢餓感・あくびやため息などが現れます。特に脳はブドウ糖だけを唯一のエ ネルギー源としているので、低血糖の影響 を敏感に受け、イライラ・かんしゃく・神 経過敏・不安感・集中力欠如などの症状が 現れます。 血糖が低下していると、それがストレスと なり、副腎から「アドレナリン」というホ ルモンが分泌されます。アドレナリンは血 糖を上げようとしますが、このホルモンに は人を興奮させ、攻撃的にさせる作用があ ります。アドレナリンはストレスに対処す るために必要なものですが、それが過剰に分泌されれば、人格を変えてしまうほど強烈な 影響を及ぼすことになります。 低血糖によって不快な症状が現れると、手っ取り早く血糖を上げてくれる甘い物や、ア ルコール・コーヒー・コーラなどの刺激物が欲しくなります。それらは即効的に血糖値を 上昇させ、いったん症状は収まります。しかし、そうしたことの繰り返しによって状態は 悪化し、低血糖症から脱け出せなくなってしまいます。 現在、大きな社会問題になっている子供や青少年の心身の異常さは、「低血糖症」が大 - 54 - きくかかわっていると思われます。落ち着きがなくてすぐにキレる、頭が真っ白になって 考えがまとまらない、無感動で無表情といった精神的脆さ・異常さの背景には、「低血糖 症」の影響があるのです。 アメリカでは、低血糖症についての認識がかなり浸透しています。そして多くの栄養学 者が、砂糖の過剰摂取が低血糖症を引き起こし、心身に重大な悪影響をもたらすことを警 告しています。アメリカで行われた研究では、犯罪者や非行少年の 80 %以上が低血糖症 でした。まさに「犯罪の陰に低血糖症あり」ということです。また、精神病患者の 67 % に、低血糖症が関係していると報告されています。 腸壁のバリアーを壊し、アレルギーを引き起こす 肉や牛乳・卵などの高タンパク食品が腸壁のバリアーを壊し、アレルギーをひどくする ことを以前に述べましたが、「砂糖の過剰摂取」も同様です。砂糖も腸壁を膨張させ、透 過性を高めてアレルゲン物質を血液中に引き込みやすくします。“腸管の透過性”が増大 し、食べ物が大きな分子のまま吸収されてしまうのです。牛乳や卵に大量の砂糖を加えた ケーキやクッキーなどの菓子類は、最もアレルギーを悪化させる食品の1つです。 またアレルギーと低血糖症は、密接な関係があると言われます。低血糖症によるストレ スが副腎を弱らせ、アレルギー反応をひどくします。アレルギーの体は常にアレルゲンに 対処するために、強いストレスにさらされています。そこへ低血糖症のストレスが追い打 ちをかけ、副腎に大きなダメージを与えることになります。すべてのストレスは、特にそ れが長期にわたる場合、副腎を疲弊させ、アレルギーを起こしやすくします。(※副腎が 弱れば、低血糖症も起こりやすくなります。) さらに砂糖の過剰摂取によって細胞が壊れやすくなり、ヒスタミンの放出が促されます。 ヒスタミンはアレルギー反応(抗原抗体反応)の過程で免疫のマスト細胞から放出される “起炎物質”で、腫れやくしゃみ・かゆみなどの炎症反応を引き起こします。 大量の砂糖によって“腸内環境”が悪化すれば、腸のバリアー機能・免疫機能が低下し ます。腸内環境の悪化はアレルギーだけでなく、クローン病など大腸炎の素因をつくるこ とになります。また過剰な砂糖は血液の粘度を高め、細胞・組織を老化させます。 砂糖の有害性を認めない動き! - 55 - このように砂糖の過剰摂取には明らかに問題がありますが、いまだにそれを認めようと しない人たちがいます。砂糖のもつわずかな利点を挙げて、その有害性を否定しようとし ます。 テレビの健康番組で、ある医科大学の教授が――「砂糖には害はない、子供が甘い物を 欲しがるのは体が欲しているからだ」と述べていました。砂糖の有害性を認めようとしな い人たちは―「砂糖は最も効率のよいエネルギー源」「脳には砂糖が不可欠」「砂糖も他 の穀類もカロリーは同じ、砂糖にない栄養素は他の食品から摂ればいい」といった主張を します。 最近では、「グリセミック・インデックス(GI)」という概念が、広く学者の間で言わ れるようになりました。これは摂取した炭水化物が、血糖(グルコース)に変わる速度の 指標です。「血糖上昇反応指数」とも言われ、指数が高い食品ほど消化・吸収が速く、血 糖が急上昇し、インスリンの分泌も促進されることになります。 では問題の“砂糖”のグリセミック指数(GI)はと言えば、人参やバナナよりも低く なっています。 このGIを根拠に砂糖擁護派の学者は――「砂糖は低血糖症の引き金にはならない」「砂 糖は健康によい食品である」と主張します。砂糖はブドウ糖と果糖からなる2糖類で、半 分は代謝にインスリンを必要としない果糖であるため、負担が少ないと言うのです。まず、 これについて考えてみましょう。 GIの検査方法を簡単に言えば、それぞれの炭水化物を 50 g摂取し、一定の時間ごとに 血糖値の変化を測定します。純粋グルコース(ブドウ糖)を 100 として、それを基準に他 の食品のGIを定めます。(※なかには白パンのGIを 100 として、基準にしている研究 者もいます。また検査方法も人によって異なり、同じ食品でもGIにかなりバラつきがあ ります。)ほとんどの報告では、砂糖に比べ人参のGIは、約 10 %~ 40 %高くなってい ます。 ブドウ糖 50 gは大さじ3杯に相当しますが、人参から 50 gの炭水化物を摂取しようと すれば、700 gもの人参を食べなくてはなりません。人参の炭水化物含有量はおよそ7% ですから、700 gと言えば、人参約4本分に相当します。砂糖を1日に 200 g(※ブドウ 糖は 100 g)も摂っている子供がいる現状からすれば、一度に大さじ3杯のブドウ糖を摂 ることも有り得るでしょうが、人参を4本も一度に摂る人が、一体何人いるでしょうか。 - 56 - これを考えただけで、人参と砂糖のGIを単純に比較し、「砂糖は健康によい」などと 到底言えるものではありません。それに砂糖よりGIが高いのはジュースにした場合であ って、調理法や一緒に摂るものによってGIは変わるのです。サラダにしたり加熱すれば GIは低下します。タンパク質や脂肪と一緒に摂っても、酢と一緒に摂っても同様です。 食物繊維と一緒に摂れば、さらにGIは低下します。つまり食事全体の内容によって、G Iは変わってしまうのです。(※バナナのGIは、熟成度によって2倍も開きがあると言 われます。) そのうえ砂糖と違い人参には、ビタミンやミネラル・カロテノイド類など、多くの栄養 素が含まれています。もしGIだけを理由に人参を摂らないとするなら、健康に大きなマ イナスを引き起こすことになってしまいます。GIだけを根拠に、砂糖と低血糖症のかか わりを否定することは、明らかに矛盾しています。 低血糖症の問題の本質は「砂糖の摂取量」であって、GI(吸収率)ではありません。 健全な食事をしている人が、楽しみとして時々、甘い物を摂ることは何の問題もありませ ん。しかし現在では、食事の代わりに甘い菓子パンを食べるような若者がたくさんいるの です。食事全体を崩すほど、大量の砂糖が摂取されていることが問題なのです。 また、「砂糖は脳の栄養源」「ストレス解消には砂糖が不可欠」といった主張もなされま す。しかし同時にその学者自身が、「脳の栄養源はブドウ糖である」と言っているのです から、これはまったく科学的根拠のない詭弁としか言いようがありません。砂糖でなくて もブドウ糖を含む食べ物なら、脳の栄養補給はできるのです。それを砂糖だけが、脳の栄 養源として優れているかのように決めつけています。 脳の栄養源は“ブドウ糖”であって、砂糖ではありません。脳がブドウ糖を求めている というのはその通りですが、それがいつの間にか「脳は砂糖を求めている」に変わってし まっています。明らかに論理のすり替えです。ブドウ糖は砂糖から摂らなくても、米や豆、 芋や果物などに十分含まれています。 砂糖を摂らないと脳の栄養が欠乏して「キレる」とも言っていますが、そんな根拠はど こにもありません。「砂糖こそが、最も効果的な脳の栄養源である」とする短絡的な考え こそ、問題としなければならないのです。仮に砂糖が「脳の健康にはプラス」になるとし ても、「身体全体の健康にはマイナス」にしかならないという点を重要視しなければなら ないのです。 ある学者は、その著書で――「昼食にハム入りのサンドイッチを食べた場合に、同時に - 57 - 砂糖入りのコーヒーを飲み、さらに3時頃おやつとしてケーキや砂糖入りのコーヒー・紅 茶を飲むのは、脳の健康からすると理にかなっています」と述べています。またテレビで ――「ボケ予防には、砂糖を毎食摂るといい」「朝、目覚めたらまず砂糖をひとなめ、毎 食後に砂糖を入れたデザート、3時のおやつには和菓子、寝床につく1時間前には砂糖を 入れたミルクを飲む」と勧めていました。 砂糖の過剰摂取は、「欧米型食事」の典型です。そうした食事に偏った結果、現代病が 多発していることはすでに述べました。老人性痴呆症の1つであるアルツハイマーと、砂 糖の関連も指摘されています。砂糖の有害性、特に青少年の心と体に与える悪影響が明ら かになっているときに、砂糖の摂取を勧めるのは、何と罪つくりなことでしょうか。 ※砂糖の有害性を否定する人たちが決まって取り上げるのが、1997 年にFAO/WHO (国連食糧農業機関/世界保健機関)から発表された――「生活習慣病(成人病)の原因 に、蔗糖・その他の糖・デンプンが直接関与することを示す証拠は得られていない」とい う報告です。(*WHOより入手した報告書の原文による。)砂糖擁護派の人々は、これ を権威に「砂糖は何の問題もない」「砂糖は健康によい」といった主張を繰り返していま す。 しかし実際に、この報告書で触れているのは「穀類や豆類などすべての炭水化物の摂取 と病気の関連」についてであって、“砂糖”だけを取り上げているわけではありません。 これを根拠に、WHOが「砂糖は健康に何のマイナスも及ぼさない」「砂糖と成人病は関 係がない」と宣言したと言い立てることは、明らかに間違っています。 この報告書には他に、「微量栄養素の含有を損なう過剰な糖類の摂取は避けなければな らない」「精製し過ぎない穀類・野菜・豆類・果物は特にすぐれた食品である」といった 重要な勧告も述べられているのです。 炭水化物の摂取が、病気の直接的な原因とならないことなど当然です。適量の炭水化物 (砂糖も含めて)の摂取は、人間の健康にとって何の支障もありません。問題はどこまで も――「砂糖の大量摂取」「砂糖という精製されて微量栄養素が失われた炭水化物への異 常な傾斜」なのです。過剰な砂糖が食事全体のバランスを崩し、その結果、微量栄養素が 損なわれ、それによって肥満や生活習慣病が引き起こされていることが重大な問題なので す。砂糖擁護派の人々は、「砂糖の大量摂取」の問題をすり替え、意図的に砂糖の安全性 を強調しようとしています。 - 58 - WHOの報告は、「適量の砂糖は健康に問題はない」という当たり前のことを述べてい るのであって、異常なほどの「砂糖の過剰摂取」に陥っている現代人の食生活の実情を容 認する宣言をしたわけではありません。 ★WHOは、2004 年5月の総会で、肥満症など慢性疾患を防ぐためのガイドラインとな る砂糖や脂肪・塩などの摂取規制を盛り込んだ「食事と運動と健康に関する世界戦略」を 採択しています。 そこではバランスのいい食事と適度な運動、野菜や果物の摂取を増やすことが勧められ、 砂糖や脂肪・塩・添加物などの摂取規制を求める内容が取り上げられています。 以上のように、甘い物の摂りすぎはマグネシウム不足を引き起こし、さらに「酸化スト レス・炎症体質」を増悪させることになり、片頭痛を悪化させてきます。 その4 第6の栄養素「食物繊維」 食物繊維とは 最近になって日本でも、食物繊維(ダイエ タリーファイバー)が話題になっています。 かつては何の栄養価もない食べ物のカスのよ うに扱われていましたが、栄養学の進歩とと もに、その重要性が知られるようになってき ました。現在では「食物繊維」は――「食品 中にあって、消化の過程で分解されない高分 子成分」と定義されています。つまり食物繊 維は、小腸までの消化プロセスでは消化・吸収されず、大腸まで達する食品成分のことで す。今では新しい栄養素として、その有用性が明らかにされつつあります。 食物繊維は消化・吸収されないために、他の栄養素のように体の構成材料やエネルギー 源とはなりませんが、消化管を通過する間に、健康にプラスとなるさまざまな効果をもた - 59 - らします。(※食物繊維は消化吸収されませんが、実際には大腸で腸内細菌によって分解 され、分解物が利用されることでエネルギーを発生します。) 食物繊維は、成人病・生活習慣病の予防に有効であるだけでなく、体のバイオリズムの 調節や、免疫力・治癒力を正常化するなど、きわめて重要な生理作用にかかわっています。 そのため「食物繊維」は、炭水化物・脂質・タンパク質・ビタミン・ミネラルに次ぐ第6 の栄養素として注目を浴びるようになってきました。 食物繊維の種類 食物繊維は大きく、水に溶けない「不溶性食物繊維」と、水に溶ける「水溶性食物繊維」 に分けられます。 「不溶性食物繊維」は、主に植物の細胞膜を構成していて、立体的ですきまだらけの構造 をしています。胃や腸の中でも水に溶けず、腸内細菌によってもほとんど分解されずに、 そのまま排泄されます。不溶性食物繊維は水分を吸収してふくらみ、それが腸壁を刺激し て腸の運動を活発にし、自然な便通を促します。不溶性食物繊維には、全粒穀類をはじめ - 60 - 豆類・種子類・ナッツ類・野菜や芋類に含まれる、「セルロース」「ヘミセルロース」「リ グニン」などがあります。(※一般に「不溶性食物繊維」という場合には、この3種類を 指しますが、ヘミセルロースの中には、わずかですが水に溶けるものがあります。) 「水溶性食物繊維」は、植物の細胞内にある成分でヌルヌルして水に溶け、ゼリー状に固 まる(ゲル化する)性質があります。胃や小腸で他の食べ物を包み込んで食物繊維が固ま ることで、食べ物が消化管を移動するスピードが遅くなり、それが健康にプラスとなりま す。水溶性食物繊維には、果物や野菜に多く含まれる「ペクチン」や、オーツ麦(カラス 麦)や大麦・ライ麦などの胚乳に含まれる「ガム質」、コンニャクや山芋などに含まれる 「マンナン」、ワカメやコンブなどに含まれる「アルギン酸」などがあります。(※熟し た果物や野菜に含まれる「ペクチン」は“水溶性”ですが、まだ熟していない硬い果物に 含まれるものは“不溶性”です。このように果物が柔らかくなるのは、ペクチン質が変化 するからです。) その他に動物性食物繊維として、エビやカニの殻の主成分である「キチン」があります。 キチンは不溶性ですが、それを加工してつくられる「キトサン」は水溶性です。また動物 の軟骨の主成分である「コンドロイチン硫酸」も、食物繊維の仲間と言えます。これは動 物だけでなく、納豆・山芋・オクラなど、ネバネバしたものに少量含まれています。(※ このように食物繊維にはいろいろな種類があり、広い意味で“多糖類”――ブドウ糖やガ ラクトースなど、たくさんの単糖からできている――に属します。) 食物繊維と現代病の関係 食物繊維の摂取が、病気の発生と深い関係があることを示す有名な研究データが、1973 年に、英国人医師バーキットによって発表されています。それはアフリカ人とイギリス人 の“便”を比較したものです。 その報告によれば、「アフリカ人」の1日の便の量は、イギリス人の4倍にも達し、太 く軟らかく、ほとんど臭いがしません。それに比べ「イギリス人」の便は、硬く圧縮され ていて細く、何よりもひどい悪臭がするのです。研究によって、アフリカ人は食べた物を ほぼ1日で排泄しているのに対し、イギリス人は平均3日もかかっていることが分かりま した。 当時、アフリカの田舎に住んでいた人々の食事の特徴は「低脂肪・高食物繊維」で、食 - 61 - 物繊維はイギリス人の3倍も摂っていました。バーキットと彼の仲間の医師たちは、食物 繊維の摂取と病気との関連を調べ続け、その結果をイギリスの医学雑誌に発表したのです。 彼らの論文は、欧米の医学界に大きな衝撃を与えることになりました。 その中でバーキットは、現代の欧米社会に多く見られる―心臓病・胆石・大腸ガン・虫 垂炎・痔・肥満・糖尿病・静脈瘤などの病気は、「食物繊維」を大量に摂っているアフリ カ人には、ほとんど発生していないことを明らかにしました。(※ところが同じアフリカ 人でも、都会に住み、欧米化した食事を摂っている人々の間には、欧米人なみに“現代病 ”が蔓延していました。) そうした報告に触発された世界中の医師たちのその後の研究によって、バーキット博士 の発表は裏付けられました。大腸内での食物繊維の働きが明らかになり、その重要性が認 識されるようになったのです。 現代病を防ぐ食物繊維の働き 食物繊維の研究が進むにつれ、その重要な働きが徐々に明らかになってきました。ここ では、現代人に不足している「食物繊維」の幅広い効用を見ていきます。 (1)カロリーの摂り過ぎを防ぎ、消化器官の働きを助ける 「不溶性食物繊維」の多い食品は、パサパ サして硬いため、よく噛まないと飲み込め ません。そのため自然にゆっくりと食べる ようになり、早食いによる過食が防がれま す。食物繊維が、食品の水分や唾液・胃液 などと混じり合ってふくれ、長く胃にとど まって満腹感が持続します。 さらによく噛むことで歯ぐきやあごが強 くなり、唾液も多く分泌されるようになり ます。唾液にはアミラーゼ(デンプン分解 酵素)が含まれており、消化が助けられます。また唾液には解毒成分も含まれています。 - 62 - 唾液の解毒作用はかなり大きく、有害物質の種類によっては、毒性を何十分の一にまで低 下させることができると言われます。 (2)ブドウ糖の吸収をゆるやかにし、血糖値の急激な上昇を防ぐ 「水溶性の食物繊維」は、胃の中で水分を吸収してゲル状に固まり(粘度が増し)、血糖 のコントロールを助ける働きをします。食物繊維が胃の中で他の食べ物を包み込んで固ま ると、食べ物が胃から小腸にいくスピードが遅くなり、ブドウ糖などの栄養素がゆっくり と吸収されることになります。それによって食後の急激な血糖値の上昇が抑えられ、低血 糖症や糖尿病の予防につながります。 水溶性食物繊維だけでなく「不溶性食物繊維」 も、ブドウ糖の吸収をゆるやかにします。たと えば玄米などのように精製度の低い穀類に含ま れるデンプンは、食物繊維でしっかりと包まれ ています。これを消化するには、食物繊維の外 皮を少しずつはがし、ブドウ糖を1つ1つ切り 分けていかなければなりません。そのためブドウ糖は、ゆっくりとしたペースで吸収され ることになります。(※デンプンは炭水化物の1種で、非常にたくさんのブドウ糖からで きている多糖類です。) (3)脂肪・胆汁の吸収を抑え、 血中コレステロールを減少させ る 「水溶性食物繊維」は、コレス テロール・脂肪・胆汁などの吸 収を抑制し、血中コレステロー ルを減少させる働きがあります。 ゲル化した食物繊維は、腸内で 脂肪やコレステロール・胆汁な - 63 - どを包み込み、その吸収を妨げて排泄を進めます。 食物繊維が「胆汁」の排泄を促すことで、体内でのコレステロールの消費が増し、血中 コレステロールを減らすことができると言われます。肝臓でコレステロールからつくられ る「胆汁(胆汁酸)」は、腸内で脂肪と結びつき、小腸における脂肪の吸収を助けます。 その胆汁を食物繊維が吸着し、便として排泄させることで、結果的に血中コレステロール が減少することになります。 (4)便通をスムーズにして、有毒物質の排泄を促進する 「不溶性食物繊維」は、水分を吸収して数倍から数十倍(※ 20 ~ 30 倍)にもふくれるた め、腸壁を刺激して腸の蠕動運動を活発にします。水を吸って適度に軟らかでボリューム のある便は、腸内をスムーズに進み、無理なく排泄されることになります。「水溶性食物 繊維」も、便通を助けます。食物繊維を材料にして「腸内細菌」が発酵を進め、その発酵 物質が腸の蠕動運動を促し、自然な排便をもたらします。 このように食物繊維の働きで便通が よくなり、便が腸内にとどまる時間 が短くなり、腸内環境の悪化が防が れます。それによって発ガン物質・ 有毒物質の生成・吸収が抑えられ、 排泄が促進されます。食物繊維には、 食品や空気から取り込まれた農薬や 重金属・有害化学物質などを吸着し て、排泄させる効果もあります。 またスムーズな便通によって力まず に排便できるため、痔や憩室症(※ 腸内の圧力によって大腸に突起ができ、炎症を起こす病気)などが防がれ、静脈瘤の予防 にもつながります。 (5)腸内細菌(有益菌)が働きやすい環境をつくる - 64 - 「水溶性食物繊維」は、大腸内で腸内細菌の“エサ”になり、細菌が働きやすい環境をつ くります。腸内細菌は食物繊維を発酵させ、人体にプラスとなる多くの発酵物質を生成し ます。食物繊維が材料となって生み出された「発酵物質(酸性物質)」は、腸内のPHを 弱酸性に保ち、腸内の腐敗からくる「有害菌」の繁殖を抑えます。そして「有益菌」が生 育・活動しやすい環境をつくり出します。 また「不溶性食物繊維」は、ほとんど消化・分解されませんが、腸内細菌が住みやすい環 境をつくるのに役立ちます。(※一般に有益菌は「善玉菌」、有害菌は「悪玉菌」と呼ば れています。) その他にも食物繊維には、さまざまな効用があります。海藻に含まれる「アルギン酸」 は、消化管内のナトリウムの排泄を促し、ナトリウムの過剰摂取による害を防ぎます。ま た肝機能や免疫力を高める作用なども知られています。 キノコ類に含まれる「ベータ・グルカン」は、免疫力をアップし、ガンをはじめとする 生活習慣病の予防に役立つと言われます。動物性食物繊維の「キチン・キトサン」も、そ の幅広い効果が注目されています。 このように「食物繊維」のもたらすメリットは多くありますが、「(4)便通をスムーズ にして、有毒物質の排泄を促進する」「(5)腸内細菌(有益菌)が働きやすい環境をつ くる」というのが、最も重要な働きです。腸内環境を改善し、腸内細菌のエサになってそ の働きを助けることが、「食物繊維」の最大の効用と言えます。 - 65 - ※ 2000 年4月の『ニューイングランド・ジャーナル・オブ・メディスン』に、「大腸ガン と食物繊維の因果関係」についての人間を対象とした臨床研究の結果が発表され、議論を 巻き起こしました。それによると、これまで一般的に考えられていた「食物繊維が大腸ガ ンの発生を防ぐ」という見解が、必ずしも正しいとは言えないというのです。 しかしその研究は、食物繊維の摂取と大腸ガン(※実際には前ガン病変である大腸ポリ ープ)との間には、直接的な因果関係はないという可能性があることを明らかにしたもの にすぎません。現代人が多食する肉と食物繊維を組み合わせて摂取した場合に、食物繊維 が大腸ガンを防ぐ効果をもっているか、いないかを明らかにしたものではないのです。 そもそも病気と食事の関連については、どこまでも複数の要因を組み合わせたトータル 的な判断が必要とされます。「大腸ガンと食物繊維」という単一の因果関係を調べて効果 のあるなしを論じても、本質的な結論を導き出すことはできません。 欧米型食事の特徴の1つは「肉食(高タンパク)・低食物繊維」ですが、おそらくは「高 タンパク・低食物繊維」という組み合わせが、大腸ガンの発生に結び付くものと思われま す。研究では、大腸ガンと食物繊維との関連についてのみ調査し、その間には因果関係が ないということが明らかにされただけなのです。「高タンパク・低食物繊維の組み合わせ - 66 - が、大腸ガンを発生させない」という結論に至ったわけではありません。 先に述べたバーキットの研究も、一般的には「食物繊維と現代病の関係」を明らかにし たものと考えられていますが、実は「アフリカ人の欧米食化と現代病の因果関係」を明確 にしたものと言えます。バーキットは「食物繊維」という1つの要素に注目して研究成果 を報告していますが、本来は――「高タンパク・高脂肪・低食物繊維という“欧米型食事 ”と、大腸ガンをはじめとするさまざまな現代病との因果関係を疫学的に明らかにしたも の」と見るべきでしょう。 食物繊維を不足させている現代人 百年前の人々と比べ、現代のアメリカ人の食物繊維の摂取量は、20 ~ 25 %にすぎない と言われます。そしてこの傾向は、そのまま現在の日本人にも当てはまります。昭和 30 年以前の日本人と比べ、食物繊維の摂取量はかなり減少しています。 食物繊維は一部を除いて「植物性食品」に含まれます。そのため、穀類や豆類・野菜・ 海藻などを多く食べていた従来の日本人は、食物繊維が不足するようなことはありません でした。しかし食生活が欧米化し、肉や牛乳などの「動物性食品」が大量に摂取されるよ うになった現代では、食物繊維の摂取量は急激に減ってしまいました。 また日本人の主食であり、貴重な食物繊維源である穀類も、過剰な精製によって繊維と - 67 - 栄養をはぎ取られ、真っ白になってしまいました。欧米型の食事においては、決まって「白 いもの、やわらかいもの」が好まれるようになります。こうして、ますます「食物繊維」 は欠乏することになりました。 食物繊維を多く摂るような「食生活改善」 最近では自然食ブームによって、白米や白パンの代わりに、玄米や雑穀・小麦全粒粉の パンを食べる人が徐々に増えてきました。また伝統的な日本食のよさを見直す動きも起こ っています。 植物性食品と動物性食品の摂取比率を「9:1」にするように勧めています。この指 針に従って食事改善をし、植物性食品を多く摂るようにすれば、食物繊維は十分補給でき るようになります。 食物繊維は――「穀類・豆・種子・ナッツ」「野菜・芋・キノコ」「海藻」「果物」に多 く含まれています。そしてそうした食品には、私たちが健康を保つのに不可欠な栄養素も 豊富に含まれています。最近では、植物性食品中のさまざまな生理活性物質についての研 究が進み、その素晴らしい働きが注目を集めています。 海藻やキノコ類は食物繊維の宝庫で、かなり高い含有率を示していますが、食物繊維の 働きは種類によって異なるため、多種類の食品から摂ることを勧めます。そうすれば他の 栄養素もバランスよく含まれた、理想的な「低脂肪」「高食物繊維」の食事ができあがり ます。 片頭痛治療での重要性 - 68 - 食物繊維には、食品や空気から取り込まれた農薬や重金属・有害化学物質などを吸着 して、排泄させる効果もあります。 食べ物が胃から小腸にいくスピードが遅くなり、ブドウ糖などの栄養素がゆっくりと吸 収されることになります。それによって食後の急激な血糖値の上昇が抑えられます。 そして、腸内環境を改善し、腸内細菌のエサになってその働きを助けることが、「食物 繊維」の最大の効用と言えます。 このようにして、「酸化ストレス・炎症体質」の改善にとって重要な位置を占めていま す。 日本人と欧米人での片頭痛は、異なっている 皆さんは、日本人と欧米人の片頭痛とは、異なっていることをご存じでしょうか。 まず、欧米人の片頭痛では小児で 5 %、成人男性で 15 %、成人女性では 25 %にみられ るといわれていますが、日本人では 6 ~ 8 %位ですので欧米に比べると頻度の少ない頭 痛です。 これまでこのような比較は寺本純先生がされておられます。欧米人との比較で、前兆 のある片頭痛の場合、日本人では大半が視覚症状であり、欧米人では、視覚症状は 40 % で、残りは、言語障害、体の半身のしびれであり、日本人では後頭動脈領域に、欧米人 では、前頭動脈領域に痛みを訴え、欧米人では、80 %に吐き気、嘔吐を伴うのに対して、 日本人では低いようです。 欧米人では、わずかな光、小さな音、階段をゆっくり昇る程度の振動でも嫌がることが 多く、頭痛を起こしていなくても、わずかな光、小さな音、階段をゆっくり昇る程度の 振動でも、頭痛が誘発されることが多いのに対して、日本人では少ないようです。食べ 物によって誘発される片頭痛が、欧米人では多いのに対して、日本人は少ないようです。 発症年齢は、ともに 20 歳前後とされています。 薬剤使用率を見ると、日本人では、全体を平均して 56.8 %が市販薬のみで対処していま す。医師の処方薬のみを使用している人は 5.4 %と極めて少なく、市販薬と医師の処方 薬の両方を使用している人は 18.6 %で、薬を使用していない人は 19.2 %でした。アメリ - 69 - カの報告では 10)、49 %が市販薬のみ、23 %が医師の処方薬のみ(このように日本人に 比べ圧倒的に多いようです)、23 %が市販薬と医師の処方薬の両方を使用し、薬を使用 していない人は 5 %のみであることが分かりました。 このように、欧米人の片頭痛は、日本人に比べて発症頻度も高く、さらに頭痛の程度・ 頻度も強度で・回数も多いことが指摘されています。そして、片頭痛と肥満の合併頻度 は圧倒的に欧米に多く、日本人では、片頭痛と肥満の合併率は低いようです。 (米国人健常者のBMIは28.5、日本人健常者のBMIは22.7といわれていま すので、これから推測しても、片頭痛に肥満が多いことは想像できると思います) このような背景をみますと、「片頭痛と肥満」が片頭痛の程度と何らかの関係がありそう に思えます。そこで、まず、以下の点から考えてみましょう。 まず、消化管の構造と機能の面から・・ ”食べ物を食べてから便として排泄されるまでの時間”は 24 ~ 72 時間と言われます。115) 日本人の場合、排便までの時間が平均で 34 時間から 44 時間(一日半から二日)、アメリ カ人は 70 時間(約三日)、イギリ スでは実に 104 時間(四日以上) なのです。 ところが、食物繊維を多く食べる インドやアフリカでは欧米諸国よ りずっと短く、10 時間程度なので す。つまり、食物繊維を多く食べ る国は排便までの時間が短く、肉 食を主とする欧米では時間が長い という傾向があるのです。 ところが、日本人の大腸の長さ が約1.5m、欧米人で約1m。そ う、我々の方が1.5倍も長いので す。このように大腸の長さが、欧米人では日本人に比べ短いにも関わらず、食べ物を食 - 70 - べてから便として排泄されるまでの時間に差が見られます。これは、欧米人は、肉中心 の脂肪分が多い食事ですが、日本人は昔から野菜や穀物中心の繊維が多い食事だったこ とに関係があるといわれています。 このように食事の内容によってこのような違いがあるようです。 食事内容による差は、何を意味するのか 欧米人の”肉中心の食生活”は、マグネシウム不足をもたらすことになります。 また、食品添加物、土・水・大気汚染などが、マグネシウムの働きを阻害しているとも 言われています。 牛乳、鶏卵、マグロ、牛肉の摂りすぎは「脳内セロトニン」不足・その他を招くこと に繋がります。ほかにも諸々の弊害が指摘されることは、前にも述べました。 さらに、脂肪の摂取量も欧米人では、数段日本人より多いものと推測されます。 とくに、米国人のオメガ6系脂肪酸とオメガ3系脂肪酸の摂取比もかなり高いこと からも生理活性物質との関連が示唆されます。 以上のように、食物繊維は、片頭痛治療上重要になってきます。 その5 「腸内細菌の重要性」 - 71 - 最近になって「腸内細菌」に対する認識が広まるようになってきました。腸内細菌には、 体によい働きをする「善玉菌」と体に悪い働きをする「悪玉菌」があり、悪玉菌が多いと、 大腸ガンをはじめとするさまざまな病気が引き起こされると言われるようになってきまし た。そして善玉菌の働きを活発にするためのヨーグルトやオリゴ糖などの売上が急激な伸 びを示し、巨大な市場になっています。 確かに腸内細菌は私たち人間にとって、とても重要な働きをしています。「腸内細菌の 状態が健康を左右する」と言っても過言でないことが、最新の研究で明らかにされていま す。腸内細菌についての研究の歴史は、それほど長いわけではありません。しかし、その 短い期間に急速に進展しています。特にここ数年の間に、数多くの重大な研究成果が報告 されています。従来からの細菌培養法に新たに「分子生物学的手法」が導入され、研究は 一気に進み、腸内細菌の全容が解明されるようになりました。今や腸内細菌についての研 究は、現代科学の最先端に立っています。 ここでは、その最新の知見について述べていきます。 最も身近なエコロジー的共存関係 人間の腸の中には、およそ 500 種類以上、100 兆個以上もの細菌が住んでいます。100 兆 個といえば、私たちの身体を形成する細胞の数よりも多く、その細菌を集めれば肝臓と同 じくらいの重さになると言われます。腸内細菌の多くは、小腸の終わりから大腸全体にわ たって住みつき、私たちの健康状態を決 定する重要な働きをしています。 腸内細菌の住処である大腸は、かつて は最後の消化器官で、水分を吸収して便 をつくるところ、老廃物の蓄積場所とい った程度の認識しかなされていませんで した。しかし腸内細菌の働きの重要性が 明らかになるにつれ、大腸に対する見方 も根本的に変わることになりました。 最近では“エコロジー”が人々の関心 を集め、私たちを取り巻く環境の悪化や - 72 - 自然崩壊が、人類に多くの悪影響を与えていることが知られるようになってきました。と ころが考えてみれば、私たちにとって最も身近で最大のエコロジー的世界とは、腸内細菌 の世界であると言えます。人間と腸内細菌は、持ちつ持たれつの関係の中で共存している のです。 「100 兆個以上もの生き物が住みついて生命活動を行い、私たちの健康に重大な影響を及 ぼしている」「人間は腸内細菌からさまざまな恩恵を受けて生命を保ち、腸内細菌は人間 によって活動する場所を与えられ存在している」という事実は、人間の体に備わっている 免疫システムの働きを考えると、とても神秘的で不思議なことなのです。 人間の免疫システムは、外部から侵入してくる細菌を強力に排除して、生命に危害が及 ばないようにしています。免疫システムは、人間を病気に至らせる多くの病原菌や有害物 を排除して人体を守ろうとします。腸内細菌は免疫の対象となる病原菌と同じように“細 菌”なのですが、腸内細菌は免疫システムによって排除されません。この不思議な事実は ――「腸内細菌が人体にとって有益な働きをするために、免疫システムが味方として認め、 存在するのを許している」ということ を意味しています。 腸内細菌がいなければ、私たち人間 は細菌の海の中で生きていくことはで きません。細菌は必要性があって腸内 に住みつき、それによって私たちは自 然界の中で生活することができるよう になっているのです。 善玉菌と悪玉菌 腸内細菌は、私たちが食べたものをエサにして生命を維持し、さまざまな物質をつくっ ています。そうした細菌の中には、人間に有益な働きをする「有益菌」もいれば、逆に有 害な働きをする「有害菌」もいます。これが一般に言われている「善玉菌」「悪玉菌」で す。その他に「日和見菌」と呼ばれる腸内細菌がいます。日和見菌とは、腸内の状態によ って有害な働きをしたり、無害であったり、有益な働きをする菌のことです。腸内細菌は 大きくこの3種類に分けられます。有益菌が多ければ健康が保たれ、有害菌が増えると病 - 73 - 気にかかりやすくなります。 有益菌は食物繊維やデンプンをエサにして活動し、腸内で「発酵」を進め、人体にさま ざまなプラスの影響をもたらします。有益菌の代表的なものは「ビフィズス菌」です。ビ フィズス菌は「乳酸菌」の1種で、発酵により乳酸などの「有機酸」を生成し、腸内の酸 性度を高めて有害菌の繁殖を抑えます。有益菌が活発に活動していれば消化・吸収が促さ れ、免疫力は高まり、健康を保つことができます。(※乳酸菌は乳酸発酵に関与する細菌 の総称で、現在までに約 350 種類が確認されています。ビフィズス菌はそのうちの1種で、 現在までに約 35 種類が確認されています。ビフィズス菌は人間の腸内に住みつくことの できる細菌で、腸内細菌の中で最も重要な役割を担っています。) 有害菌はタンパク質を好み、腸内で「腐敗」を起こし、健康にマイナスをもたらします。 有害菌の代表的なものは「ウエルシュ菌」です。その他にも「大腸菌」や「ブドウ球菌」 などが知られています。有害菌はタンパク質や脂肪を分解して「有害物質・発ガン物質」 を生成し、腸内環境を悪化させます。それによって老化が早まり、病気にかかりやすくな るのです。(※悪玉菌として名高い「ウエルシュ菌」は、腸内に常在する有害菌「クロス トリジウム」の1種です。) このように聞くと大半の人々は、何とか憎い悪玉菌を体内から追い出して、善玉菌だけ にしたいと思うかもしれません。そして善玉菌を増やすために、ヨーグルトをせっせと食 べるかもしれません。こうした考えが世の中に常識として定着し、安易なヨーグルトブー ムを生み出すことになっています。しかし、その考え方は間違っています。 腸内細菌のバランス 一般的に腸内細菌は「善玉菌」「悪玉菌」に区別 され、悪玉菌はもっぱら不用な厄介者のように 思われていますが、そうではありません。もし 悪玉菌と呼ばれている菌が本当に人体に害をも たらすだけのものであるなら、免疫システムの 働きによって、とっくに排除されているはずで す。一生懸命にヨーグルトを食べて腸内から追 い出そうとしなくても、とっくにいなくなっていることでしょう。ここに大きな生命活動 - 74 - の神秘があるのです。 免疫がいわゆる「悪玉菌」を排除しないでいるということは、実は悪玉菌は人体にとっ て必要な存在であるからです。人体に有益な働きをするために、あえて生かしているので す。これからは従来のように腸内細菌を善玉・悪玉に分けるのではなく、ともに必要なも のとして、ひとまとめに考えなければなりません。100 兆個もの細菌を、単純に善玉・悪 玉と区別することはできません。どの細菌も必要性があって存在していると、とらえるベ きなのです。 最新の研究は、まさにそうしたことをも明らかにしつつあります。例えば普通“汚くて 恐い”と思われている「大腸菌」であっても、状況によっては他の病原菌からの感染を防 いでくれます。その反対に、有益菌の代表である「ビフィズス菌」が、発ガン物質をつく り出すこともあるのです。「同じ細菌が環境によって、プラスにもマイナスにもなる働き をしている」ということです。環境によって有害・無害が左右される以上、単に1種類の 細菌だけを取り上げて善玉・悪玉と論じることは間違いなのです。 ここでもう1つ重要な点は、「有益菌と有害菌と日和見菌は、先天的に一定のバランス - 75 - 比率をもって体内に存在している」ということです。私たち1人1人の顔つきや指紋が異 なるように、人によって腸内細菌の状態は違っており、その基本的なバランスは生まれつ き決定していると言われるようになってきました。 “生まれつき”が遺伝的なものなのか、 あるいは出生時における母親からの細菌情報の伝達なのか、研究者の間で意見が分かれて いますが、1人1人にふさわしい腸内細菌の個性的比率は、おおよそ決まっているのでは ないかと考えられています。そうした基本的なバランスのうえに食事やストレスなどの後 天的な要因が影響を及ぼし、現実の腸内細菌の状態が決定しているということなのです。 もともとその人間に合った腸内細菌のバランスが保たれていればよいのですが、それが 後天的な要因によって崩れると、さまざまな問題が生じるようになります。バランスがと れていたときには何の問題も起こさなかった「有害菌」や「日和見菌」が、悪い働きをす るようになるのです。 腸内細菌のアンバランスを正すには 腸内環境はいろいろな原因で変化しますが、なかでも食生活は大きな影響を及ぼします。 欧米型の食事に偏り、肉や脂肪・砂糖などを大量に摂取すると、間違いなく腸内環境は 悪化します。食物繊維が不足した「不健全な食事」では、腸内細菌のよい働きを引き出す - 76 - ことはできません。高タンパク・高脂肪・低食物繊維の欧米型食事は、腸内環境にとって 最大の敵と言えます。 また「ストレス」や「過労」も腸内環境に深刻な影響を与えます。「運動不足」も問題 です。さらには「抗生物質」などの化学薬剤も、腸内細菌に決定的なダメージを与えます。 抗生物質は病原菌をやっつけるだけでなく、よい腸内細菌まで殺し、腸内フローラを悪化 させます。家畜に投与された抗生物質が肉を摂ることで体内に取り入れられ、有益菌を弱 らせるようなこともあります。 こうした食事やライフスタイルの間違いが、腸内細菌のバランスを崩し、人体にマイナ スの働きを引き出すことになってしまいます。人間と共存・共生している細菌のトータル 的な働きを、よい方向に向けられるかどうかは、人間サイドの姿勢によって決まるのです。 特に食事のよし悪しは、腸の健康にとって決定的ともいえる重要性をもっています。高タ ンパク・高脂肪の肉や牛乳などを減らし、野菜料理に漬物や納豆などの発酵食品を加えた 伝統的な日本食にすれば、“腸内フローラ”の崩れたバランスは回復し、健康を取り戻す ことができるようになります。「食物繊維」の豊富な食事によって、腸内細菌をよい状態 に維持することができるのです。欧米型 の食事をやめて、野菜や発酵食品を中心 とした伝統的な日本食にすることが、腸 内細菌をよい状態に保つ強力な方法とな ります。腸の健康のためには、真っ先に 「食事改善」に取り組まなければなりま せん。 最近では、ヨーグルトを食べて腸内細菌の状態をよくしようという「プロバイオティク ス」の動きが活発になってきました。またオリゴ糖などの「善玉菌のエサ(プレバイオテ ィクス)」を取り入れて腸内細菌の働きを活発化させることも行われています。こうした 試みは、人によっては腸内環境の改善に有効ですが、次の点をしっかりと押さえておかな ければなりません。それはプロバイオティクスは、食事改善を実行してこそ効果を発揮す ることができるということです。 言い換えれば――「食物繊維や発酵食品が豊富な日本食を常食すれば、あえてヨーグル トやオリゴ糖などを摂らなくても理想的な腸内環境を維持できる」ということです。ヨー グルトによってプロバイオティクスの効果を期待する場合には通常、毎日 200 g以上の摂 - 77 - 取が勧められます。しかし食事改善さえしっかりしていれば、そうした不自然なヨーグル ト摂取は必要ありません。ヨーグルトによるプロバイオティクスは、食事改善を徹底して も、なお腸内環境が整えられないときの一手段として考えるべきでしょう。 ※「プロバイオティクス」とは、人体に有益 な働きをする生きた微生物のことです。「プ レバイオティクス」とは、有益菌を増殖・活 発化させることで健康にプラスをもたらす食 品群のことです。発酵食品の納豆や漬物など は、優れた「プロバイオティクス」であり「プ レバイオティクス」と言えます。 ヨーグルトによるプロバイオティクスの摂取については、脂肪の多さが問題となります。 低脂肪のヨーグルトや、脂肪を抜いた自家製のヨーグルトが勧められます。豆乳からつく るヨーグルトなら、なおよいでしょう。最近では、「植物性乳酸菌」を用いて乳酸発酵さ せた野菜飲料なども出回るようになっています。 “便”の状態による健康チェック 腸内細菌の状態がどのようになってい るかは、排泄される“便”によって簡単 に知ることができます。腸内細菌のバラ ンスがとれ、有益菌が支配する「酸性」 の腸でつくられた便は――黄色っぽい茶 色で、軟らかくて量があり、ほとんど臭 いません。前日の食べ物が、翌日にはスッキリと排泄されています。こうした快便が得ら れているなら、腸内細菌のバランスは整っています。細菌が全体として、その人の健康に 貢献していることが分かります。普通、健康な人の便の量は1日にバナナ2~3本くらい で、水に浮きます。 反対に有害菌が繁殖する「アルカリ性」の腸でつくられた便は――黒っぽい茶色で、硬 - 78 - くて量が少なく、強い悪臭がします。こうした便は腸内細菌のバランスが崩れ、細菌の悪 い働きが出ていることを示しています。腐敗が進んでいる腸内に長くとどまっていたこと が分かります。(※ウサギの糞のようなコロコロ便や、太くても硬い便は、2~3日前の 食べ物が排泄されている可能性があります。また下痢便も腸内環境の悪化を示していま す。) 健康な人の便は、約 80 %が水分です。そして固形分の3分の1~半分を腸内細菌が占 めています。残りは食べ物のカスと腸壁からはがれ落ちた粘膜などです。1gの便の中に は、約1兆個の細菌がいると言われています。便の半分ほどが腸内細菌であるというのは 驚きですが、それだけに“便”を観察すれば、腸内細菌の状態がよく分かるのです。 腸内環境が整っていなければ、健康を維持することはできません。病気を克服することも できません。私達の健康は――「腸の健康から始まる」のです。どれほど素晴らしい栄養 価のある食品を摂っても、腸が健康でないかぎり、すべてが無駄になってしまうのです。 便は、毎日とどけられる健康のバロメーターです。“便”の状態をよく観察し、健康状態 をチェックすることを習慣化したいものです。 ※最も理想的な便は、生後数日から離乳期までの赤ちゃんの便です。黄色くて酸っぱいよ うな匂いがしますが、それは、この時期の赤ちゃんの腸内は、90 %以上「ビフィズス菌」 によって占められているからです。ビフィズス菌のつくる発酵物質によって腸内は強い酸 性に保たれ、病原菌が繁殖できないようになっています。 健康を大きく左右する「乳酸菌」の働き ビフィズス菌をはじめとする乳酸菌は、食物繊維 やデンプンを分解・発酵させて、さまざまな発酵物 質を生成します。大腸はちょうど発酵槽のようなも ので、その中でビフィズス菌・乳酸菌は、人体に有益な多くの発酵物質をつくり出してい ます。乳酸・酢酸・酪酸・プロピオン酸などの「有機酸」です。そうした細菌が生み出し た発酵物質は、腸内環境を正常に保ち、さまざまな生理作用を活性化します。そして免疫 力・抵抗力を高めて病気を防ぎます。また菌体成分そのものの有効性も報告されています。 ここでは、最新の研究によって明らかにされつつある「乳酸菌」の働きを挙げておきます。 - 79 - (1)腸内環境を整えて便通を正常化し、有害菌の繁殖を防ぐ ビフィズス菌・乳酸菌がつくり出す有 機酸は、腸内を弱酸性に保ち、有害菌の 活動・繁殖を抑えます。それによって有 害菌が産生する腐敗産物(アンモニア・ アミン・硫化水素・インドール・フェノ ールなどの毒素)の生成が防がれ、便や オナラの悪臭がなくなります。病原菌の 侵入も阻止され、たとえ病原菌が腸内に 入っても働くことができず、感染が防が れます。(※病原菌は普通“酸”に弱い のです。) また有機酸の刺激によって腸の働きが活発になり、自然な便通が得られます。便秘や下 痢が解消されて栄養の吸収がよくなり、有毒物質・発ガン物質の排泄が促進されます。 (2)免疫力を高める ビフィズス菌・乳酸菌の菌体成分や菌がつくり出す多くの物質には、免疫力を強くする 働きがあると言われます。また有機酸の一部が腸粘膜の栄養・エネルギー源となり、免疫 の最前線である「腸管免疫」を活性化させ、それによって身体全体の免疫系も刺激されま す。 免疫力のアップについては、ビフィズス菌・乳酸菌のトータル的な働きによるものと考え られます。免疫力が高まれば、ガンやアレルギー・感染症など、さまざまな病気にかかり にくくなります。 (3)ガンを予防する ビフィズス菌・乳酸菌が優勢なら、有害菌の増殖が抑えられ、有害菌がつくり出す有毒 - 80 - 物質・発ガン物質が減少して、発ガンのリスクが低減します。有機酸の活性作用によって 免疫の働きが高まり、ガンの発生・進行が抑制されます。 (4)アレルギー反応を抑制する ビフィズス菌・乳酸菌の働きとアレルギーには、密接な関係があります。(※それについ ては、次で述べています。) (5)ビタミンやアミノ酸を合成したり、エネルギーをつくり出す ビフィズス菌・乳酸菌は、ビタミンやアミノ酸などを合成しています。「ビタミン」に ついては、B群のかなりの種類・ビタミンKなどがつくられます。またビフィズス菌・乳 酸菌は、消化酵素やはがれ落ちた腸壁細胞のタンパク質をリサイクルして「アミノ酸」を 合成しています。腸内細菌によってつくられる栄養素の量がどのくらいかは明らかではあ りませんが、体内でつくられた栄養素は吸収されやすいという利点があります。栄養素だ けでなく「酵素」も腸内細菌によってつくられます。 さらに有機酸やその他の栄養素の一部が腸から吸収され、「エネルギー」になっていま す。人間の総エネルギー獲得量の 10 %は、腸内細菌の働きによって得られるとする説も あるほどです。 (6)ミネラルの吸収を促進させる カルシウムやマグネシウム・亜鉛などのミネラルは、吸収されにくい性質がありますが、 有機酸によって腸内の酸性度が増すと吸収率が高まります。特にカルシウムは乳酸と結合 して乳酸カルシウムとなり、吸収率がアップします。ミネラルの吸収は、小腸の終わりか ら大腸にかけて促進されると言われています。 他にビフィズス菌・乳酸菌の働きとしては――「コレステロールの吸収・合成を抑える」 「過酸化脂質を分解する」「血圧を低下させる」などが挙げられます。老人性痴呆症や動 脈硬化との関連も指摘されています。 このように私たちの腸内には、100 兆個にも及ぶ生命体が存在し、健康を大きく左右す - 81 - る驚異的な働きをしているのです。 アレルギーと腸内細菌の関係 現代人の半数近くがもっているアレルギーは、“免疫異常”によって引き起こされる病 気ですが、最近では腸内細菌が、免疫の働きに重大な影響を及ぼしていることが分かって きました。 食べた物が完全に消化されて体内に取り入れられるなら、「食物アレルギー」は生じま せん。しかし、たとえ未消化の食べ物が入ったとしても、腸に備わった「腸管免疫」が健 全に働くなら、アレルギー反応が引き起こされるようなことはありません。腸管免疫は、 消化のプロセスで残されたアレルゲンを不活性化させ、アレルギー反応を起こさせないよ うにするのです。食物アレルギーが 生じるのは――「腸管免疫システム が上手に働いていない」ということ です。 腸内細菌は、この腸管免疫と大き なかかわりをもっています。有益菌 が優勢の腸内では、アレルギーの発 症が抑えられることが分かってきま した。腸内細菌がアンバランスな人 は、腸管免疫の働きが弱くなり、食物アレルギーが起きることになるのです。実際にアト ピーやアレルギーで苦しんでいる人たちの大半に、ほぼ例外なく腸内細菌のアンバランス が見られます。いつも頑固な便秘に悩まされていたり、ひんぱんに腹痛や下痢を起こした り、あるいは臭いオナラが止まらないといった「腸内環境の悪化」を示す症状が出ていま す。 すでに述べましたが、有益菌がつくり出す物質や菌体成分が腸管免疫を通じて全身の免 疫システムを刺激し、アレルギー反応を抑制します。また腸粘膜の免疫細胞でつくられ、 粘膜を保護する働きをもつ「IgA抗体」は、アレルゲン物質の侵入を防ぎ、有害菌や病 原菌・ウイルスの毒素を中和する作用がありますが、有益菌の働きによって腸管免疫シス テムが活性化されることで産生が促進されると言われています。 - 82 - さらに有益菌は、細胞増殖促進物質である「ポリアミン」をつくり出します。これが小 腸および大腸の粘膜細胞を強化します。腸のバリアーが強くなれば、アレルゲン物質の通 過を防ぐことができるようになります。食物アレルギーは「バリアー機能の低下」によっ て引き起こされますが、腸内細菌のバランスが整えば、アレルギーを抑えることができる ようになります。 このように腸内フローラのよし悪しは、免疫の働きと密接に関係しています。現在、増 え続けているアトピーやアレルギーは、「腸内環境の悪化・腸内細菌のアンバランス」が ストレートに反映していると思われます。 ★胃と大腸に挟まれ消化器官の中で最も奥に ある「小腸」は、内視鏡が届かなかったため に、これまでその働きがよく分かっていませ んでした。しかし、ここ1~ 2 年の間に内視 鏡の技術が飛躍的に向上し、小腸の内部を見 ることができるようになってきました。 その結果、小腸は単に消化吸収を行う臓器 ではなく、“第2の脳”と呼ばれるほど優れ た判断能力をもつ免疫の司令塔であることが 明らかになりつつあります。小腸には“パイエル板”という外敵(病原菌やウイルスなど の有害物質)をチェックする監視カメラのようなものがあり、リンパ球とのチームプレー でその侵入を防いでいます。(※小腸には免疫を担うリンパ球の6割が集まっています。 また外敵の情報は小腸だけでなく全身のリンパ球にも伝わり、体内への侵入がブロックさ れます。) こうした小腸の驚異的な免疫システムが正常に働くためには、腸内環境が良好でなけれ ばなりません。「腸内細菌」は大腸だけでなく小腸にも数多く存在し、免疫の働きに重大 な影響を与えているのです。 このように腸内環境を健全化させることにより「酸化ストレス・炎症体質」の改善に導 かれます。こういったことから片頭痛治療上重要となってきます。 - 83 - その6 脂肪・油の摂り過ぎによる弊害と、油に関する考え方 1.動物性脂肪と植物性油 動物性脂肪の害 牛や豚など陸上動物の脂肪は、ラードやヘット(牛脂)のように常温では固体です。ス ーパーに並ぶ牛肉の脂肪が白く固まっているところから、それがよく分かります。またミ ルクからつくられるバターも固体状です。それに対し、野菜や魚に含まれる油(oil)は 液体です。 現代栄養学では、まず「動物性脂肪の害」が指摘されます。常温では固体であるという ことは、それが溶け出す温度(融点)が高いということです。つまり動物性脂肪は、低い 温度では固まりやすい性質をもっているのです。むろん体温が約 39 ℃の陸上動物の体内 では支障はないのですが、体温がやや低い人間の体に入ると問題が起きることになります。 (※人間の体温は 36 ~ 37 ℃です。)つまり動物性脂肪は、低い人間の体温では固まりや すい性質をもっているのです。 動物性脂肪は、私たちの血液の粘度を高め、血流を悪化させます。人間の体温が低いた めに、固体化の方向に向かうからです。動物性脂肪を摂ると、血液の粘度が増し、毛細血 管の先端部分に赤血球が行き渡りにくくなります。事実、肉をたくさん食べた後、血液を - 84 - 電子顕微鏡で見ると、赤血球がベタベタとく っつき合っているのが確認されます。血流の 悪化が直接観察されるのです。 血流が悪くなるということは、細胞への酸 素の供給量が減るということです。実験によ れば、動物性脂肪を摂って数時間後には、細 胞全体に対する酸素の供給量が 20 ~ 30 %も 減少することがあると言われます。酸素の供 給量が減れば、細胞での燃焼効率は低下し、 エネルギーの供給量も減ることになります。 酸素が運ばれないということは、栄養素も運ばれないということです。 肉を摂ると元気になると思っている人がいますが、本当はエネルギー不足の状態になり、 グッタリするということです。肉食はエネルギーを高め、パワフルにするのではなく、逆 に活力を奪い去ってしまうのです。肉食の弊害についてはすでに述べましたが、「血流を 悪化させる」という問題点もあるのです。 動物性脂肪の過剰摂取は、血液をネバネ バにし、中性脂肪やコレステロール(※よ く言われる悪玉コレステロール・LDL)を 増やします。そして細胞や組織を硬化させ、 脳卒中や心臓病などの循環器系疾患を引き 起こします。また肥満を招き、糖尿病をは じめ、さまざまな現代病・成人病・片頭痛 体質を生み出します。こうしたことは現在では、一般の人々にもかなり知られるようにな っています。 欧米では早くから「動物性脂肪の害」が認識され、肉食を減らす人々が増えてきました。 また肉を食べるときは、できるかぎり脂肪をそぎ落とし、赤身の部分だけを食べるように したり、牛肉や豚肉ではなく、脂肪の少ない七面鳥を使うなど、意識が変わってきました。 一方、日本ではどうかというと、肉の摂取量はいまだに増加の一途をたどっています。 しかも“霜降肉”などという、赤身の中にわざわざ脂肪を散らした肉をありがたがってい ます。そもそも健康な牛なら、赤身と白身がはっきり分かれるはずです。霜降肉は明らか - 85 - に病的な肉なのですが、それが異常な高値で売買さ れています。そして日本人は一様に、口の中でとろ けるようにおいしいと、その肉を賛美しています。 まさに日本だけの“狂った食習慣”の実態があるの です。 植物性油の害 アメリカでは、動物性脂肪の摂り過ぎが動脈硬化や心臓病を引き起こすことが知られる ようになると、人々は植物油へと向かうようになりました。植物油がコレステロールを下 げるといった実験結果が発表されると、その傾向は一気に進んだのです。なかには植物油 を薬として、スプーンで飲むような人まで現れました。「植物油は健康によい」というあ る種の神話が、先進諸国の間に広まりました。 そうした情報は日本にも伝わり、植物油ブームが起こり、油料理がひんぱんに食卓にの ぼるようになりました。バターに代わってマーガリンが好まれるようになり、植物油が贈 答品として多く用いられるようになりました。植 物油は体によい、植物油は成人病を防ぐと、誰も が信じていました。 日本に植物油の流行が定着し始めた頃(1981 年)、アメリカでは、非常にショッキングな研究 結果が発表されました。NCI(アメリカ国立ガ ン研究所)が 20 年にわたる研究の末、植物油は コレステロール値や心臓病発生の確率を下げることはなく、それどころか「ガンの発生率 を高める」ことを公表したのです。 今まで最高の薬であると思っていたのに、それが心臓病の予防にならないだけでなく、 ガンを引き起こす原因であることを知って、アメリカは大混乱に陥りました。その後、こ のNCIの発表内容は、他のさまざまな研究機関によって確かめられました。そしてFD A(アメリカの食品医薬局)は、植物油が心臓病の予防や治療に効果があると主張するの は違法と見なす、との警告を発するに至るのです。こうした一連の状況は、日本の製油会 社には当然知られていたはずですが、日本国内では相変わらず、植物油は健康によいと宣 - 86 - 伝され続けてきました。 植物油を摂取すると、一見コレステロール値が下がったように見えることがあります。 しかし、それは植物油がコレステロールを肝臓や筋肉に付着させるため、血液中の値がい っとき減ったように見えるだけなのです。コレステロールの代謝の問題が、根本的に解決 されたわけではありません。 現代栄養学では、植物油は酸化しやすく、細胞・組織を変性させ、その過剰摂取がガン を発生させることを明らかにしています。また植物油は血栓をつくり、脳卒中や心臓病を 引き起こすことも知られています。さらにはアレルギーや炎症性疾患をひどくし、免疫力 を抑制してあらゆる病気にかかりやすくします。植物油も動物性脂肪と同様に、健康を害 することが明確にされているのです。 こうした「植物性油の害」については、いまだに日本国民の中に十分浸透しているとは 言えません。今もお歳暮やお中元の季節になれば、健康によい食品との触れ込みで、植物 油がPRされ店頭に並んでいます。 ※最近では、「体に脂肪がつきにくい!」を謳い文句に、次々と健康によいという植物油 が売り出されています。コレステロールの吸収を抑え、これまでの植物油に比べて体に脂 肪がつきにくいので、安心して油料理・揚げ物料理に使えると言うのです。 現代病が蔓延する背景に「油の過剰摂取」がありますが、こうした油を使えば、本当に 健康になれるのでしょうか? 現代病・成人病から守られるのでしょうか? 高脂血症(高コレステロール)は、油脂の摂取を減らし、健全な食事に変えれば、自然 に治るものなのです。そのうえ他の病気にもかからなくなり、健康になれるのです。 健康によいとPRされる油の問題点を1つ1つ挙げるまでもなく、一面の利点だけを取 り上げ、油の摂取を勧めることは間違っています。 2.脂質の新しい分類――分子構造の違いによる分類 脂肪・油の新しい分類法 脂肪・油に対する科学的な研究が進むにつれ、新たな事実が次々と明らかにされるよう - 87 - になりました。これまでは脂質を、脂肪(動物)と油(植物・魚)に分類していましたが、 それとは別に、分子構造の違いによる分類が行われるようになりました。 脂質は、元素である炭素と水素と酸素の組み合わせによって成立していますが、その組 み合わせ・分子構造の違いが大きな性質の違いを生み出します。新しい分類法では、脂質 は分子構造の違いから、大きく「飽和脂肪酸」と「不飽和脂肪酸」の2つに分類されます。 そして不飽和脂肪酸は、 「一価不飽和脂肪酸」と「多価不飽和脂肪酸」に分類されます。 さらに多価不飽和脂肪酸は、「オメガ6不飽和脂肪酸」と「オメガ3不飽和脂肪酸」に 分類されます。 食品中の脂質は、こうした脂肪酸のいくつかが組み合わさってできています。それぞれ の脂肪酸の含有比率はさまざまですが、大半の食品にはすべての脂肪酸が含まれています。 先に述べた動物の脂肪には「飽和脂肪酸」が多く含まれ、植物や魚の油には「不飽和脂 肪酸」が多く含まれています。 脂肪酸の二重結合とは? 脂肪酸は、炭素(C)・水素(H) ・酸素(O)の3つの元素からな る化合物です。炭素には、他の元 素と結び付くための4つの手があ ります。水素にはその手が1つ、 酸素には2つあります。脂肪酸は 炭素同士が手をつないで鎖をつく - 88 - り、それに水素と酸素がつながった構造をしていますが、その炭素と水素の結合の仕方で 種類が分けられます。酸素については、どの脂肪酸でも同じような結合になっています。 炭素同士が1つの手で結合しているのを「一重結合」と言い、2つの手で結合している のを「二重結合」と言います。この二重結合があるかないか、あるとしたら1つか複数か、 また複数あるならどの位置にあるか、ということによって脂肪酸の種類が決められます。 脂肪酸の分子構造と性質の違い それぞれの脂肪酸の、分子構造と性質の違いを見ていきます。 (1)飽和脂肪酸(ex.ステアリン酸) 二重結合はなく、炭素の手がすべて水素と結合しています。これが「飽和脂肪酸」です。 飽和脂肪酸は、肉・乳製品・卵などの動物性食品に多く含まれています。私たちが肥満し て「お腹につく脂肪・中性脂肪」の主成分が、この脂肪酸です。 飽和脂肪酸は、エネルギーとして消費されないかぎり、どんどん蓄積されていきますか ら、摂取は控えめにするべきです。摂取エネルギーが消費エネルギーを超過すれば肥満を 招き、現代病・成人病の引き金となります。(※他の脂肪酸や糖質・タンパク質を含めて のエネルギー総量が問題です。) (2)一価不飽和脂肪酸(ex.オレイン酸) ここでは二重結合が1つだけあります。これ が「一価不飽和脂肪酸」です。そして二重結合 の位置がメチル基(左側)から9番目の炭素に あるので、 「オメガ9不飽和脂肪酸」と言います。 この脂肪酸は、動物性食品やオリーブ油に多く 含まれています。 一価不飽和脂肪酸は、体内で飽和脂肪酸から つくられます。 - 89 - (3)多価不飽和脂肪酸(ex.リノール酸) ここでは、二重結合が2つあります。これが「多価不飽和脂肪酸」の「リノール酸」で す。そして二重結合の位置がメチル基から6番目の炭 素にあるので、「オメガ6不飽和脂肪酸」と言います。 この脂肪酸は、穀類や種子、コーン油・大豆油・紅花 油などの食用油に多く含まれています。 リノール酸は、細胞の成長・維持に不可欠で、体内 では合成されない「必須脂肪酸」です。局所ホルモン の材料として、さまざまな生理機能のコントロールの ために使われます。 (4)多価不飽和脂肪酸(ex.アルファ・リノレン酸) ここでは、二重結合が3つあります。これが「多価不飽和脂肪酸」の「アルファ・リノ レン酸」です。そして二重結合の位置がメチル基から3番目の炭素にあるので、「オメガ 3不飽和脂肪酸」と言います。この脂肪酸は、野菜(特に冬野菜)や海藻・豆・ナッツ類 などに含まれています。亜麻仁油・シソ油・エゴマ油には多く含まれています。 アルファ・リノレン酸は、リノール酸と同じく「必須脂肪酸」で、細胞の成長・維持に かかわり、局所ホルモンの材料として重要な働きをしています。アルファ・リノレン酸は、 細胞や組織を柔軟にし、現代病・成人病を防いでくれる大切な脂肪酸です。 またアルファ・リノレン酸からつくられ、魚の油に多く含まれているのが、オメガ3系 列の「EPA」 「DHA」です。EPA(エイコサペンタエン酸)は、肉の脂肪とは逆に、 血液の粘度を下げてサラサラにし、血流をよくします。近年、EPAの動脈硬化や心臓病 を防ぐ働きが注目されています。DHAは脳をはじめとする神経組織に多く含まれ、脳や 神経組織の成長・維持に重要な役割を果たしています。DHAが不足すると、学習や記憶 能力に障害が起きるようになります。EPA・DHAを多く含んでいるのは、イワシ・サ バ・サンマ・サケ・ブリなどの大衆魚(青魚)です。 - 90 - 各脂肪酸の酸化スピードの違い 「飽和脂肪酸」は、すべての炭素が水素で飽 和されており、最も酸化しにくい脂肪酸と言え ます。分子構造が飽和状態にあるので、他の水 素や酸素などの原子がくっつきにくいのです。 飽和脂肪酸についで酸化しにくいのが、「一価不 飽和脂肪酸」です。二重結合が1つだけで、飽 - 91 - 和度がかなり高いからです。 それとは反対に「多価不飽和脂肪酸」は、酸化が速く進みます。二重結合が複数あって、 他の原子と化合しやすいためです。なかでも「オメガ3」は、不飽和度が最も高く酸化し やすい脂肪酸です。しかし酸化が速いからといって、「オメガ3」が悪い脂肪酸というわ けではありません。酸化が速いというのは、それだけ活性が高く反応性に優れているとい うことです。 人間の体の中で“脳”は最も重要な器官の1つですが、その構成成分の 60 %は脂肪が 占めています。そして、このうち一番量が多いのが「オメガ3」です。無数の神経細胞か ら成り立っている脳は、神経刺激を伝達したり、外からの刺激を受け取ったり、いつも活 発な活動をしていますが、その動きに鋭敏に反応し、素早く対応しているのが「オメガ3」 なのです。脳では「オメガ3」が最も大切な脂肪酸なのです。(※空気中と体内では脂肪 酸の酸化のスピードは異なり、体内ではオメガ6よりもオメガ3の方が酸化されにくいこ とが分かっています。) 3.各脂肪酸の摂取状況(飽和脂肪酸・オメガ9・オメガ6・オメガ3) 過剰摂取の「飽和脂肪酸」 食生活の欧米化によって、「飽和脂肪酸」の摂取量は大幅に増加しています。飽和脂肪 酸を多く含むラード(豚脂)は、これまで家庭ではあまり使われてきませんでしたが、安 価で酸化しにくい(腐りにくい)ために、業務用としてよく利用されてきました。植物の 油にも、飽和脂肪酸を多く含んでいるものがあります。南方地域のヤシの実から採れるパ ーム油・ココナッツ油です。(※動物の脂肪は、飽和脂肪酸・一価不飽和脂肪酸がかなり の割合を占めていますが、リノール酸やアルファ・リノレン酸も少し含まれています。そ の脂肪酸バランスも、家畜の生産システムの変化によって崩れてきています。牧草で飼育 された牛には「アルファ・リノレン酸」が多いのですが、穀物飼料で育てられた牛には「リ ノール酸」が増えているということです。) オリーブ油に多く含まれる「オメガ9」 - 92 - 一価不飽和脂肪酸の「オメガ9」は、オリーブ油に大量に含まれています。全体の 70 ~ 80 %がオメガ9(オレイン酸)で占められています。このためオリーブ油は植物油の 中で、特に酸化しにくい油ということになります。またオリーブ油には、血管系統のトラ ブルを予防する働きがあることが確かめられています。こうした点から調理用としては、 オリーブ油が最も安全性の高いものとして勧められます。他にオメガ9を多く含む油とし て、キャノーラ油(新品種の菜種油)があります。 極端に過剰摂取の「オメガ6」 多価不飽和脂肪酸のうち「オメガ6」は、サラダ油・テンプラ油などに多く含まれ、最 も一般的に使われています。また、そうした精製油をベースにしたマヨネーズ・ドレッシ ングなどは、毎日の食卓に欠かせないものとなっています。 オメガ6は「リノール酸」と呼ばれ、現代人が極端な過剰摂取に陥っている油です。 (※ 先に「植物性油の害」について述べましたが、それはこの「リノール酸」のことです。) 深刻な欠乏状況にある「オメガ3」 すべての脂肪酸中、最も不飽和度が高い「オメガ3」は、ブロッコリー・芽キャベツ・ 小松菜などの冬野菜や海藻などに含まれています。また最近知られるようになった亜麻仁 油・シソ油・エゴマ油には、オメガ3が大量に含まれています。 植物に含まれるオメガ3を「アルファ・リノレン酸」と言います。現代人の大半は、 「オ メガ3」を大きく欠乏させています。現代栄養学では、食事の中に“亜麻仁油”を取り入 れることを勧めています。 (※海の野菜と言われる海藻には、生であれば少し「オメガ3」 が含まれていますが、残念ながら乾燥後には失われてしまいます。しかし海藻は、ミネラ ル・繊維源として欠かせない食品です。) 食用植物油中の脂肪酸組成 次に、一般に最も多く使われている食用植物油の脂肪酸組成率を挙げておきます。 - 93 - 4.体内での各脂肪酸の変換 体内に吸収された脂肪酸は、酵素を触媒として次のように変換していきます。 体内での脂肪酸の変換には――「飽和脂肪酸系列」「リノール酸系列」「アルファ・リノ レン酸系列」の3つがあります。そして重要なことは、これら3つの系列の脂肪酸は「体 内で相互変換しない」ということです。つまり、どれだけ大量の飽和脂肪酸を摂っても、 ガンマ・リノレン酸に変わることはありません。またリノール酸が、EPAやDHAに変 わることもありません。 - 94 - このように「体の脂肪酸バランス」は、食べ物として摂った脂肪酸によって決まってし まいます。すべての細胞の脂肪酸の状態が、摂取した脂肪酸によってストレートに決定し てしまうのです。 5.「オメガ3」と「オメガ6」のバランス 新しい油の考え方 油に関する研究が進むにつれ、より詳しい油の働きが分かってくるようになりました。 必須脂肪酸である「アルファ・リノレン酸(オメガ3)」と「リノール酸(オメガ6)」 は、単なるカロリー源ではなく、細胞膜の構成成分になったり、体のほとんどすべての機 能を調節するホルモン様物質(局所ホルモン)の原料となる不可欠な脂肪酸です。 現代栄養学で問題としているのは、「オメガ3」と「オメガ6」の摂取比率についてで す。 この2種類の脂肪酸の「摂取比率・体内比率」が崩れると、現代人の多くが抱えて いるような病気が引き起こされるということです。必須脂肪酸のアンバランスは、片頭痛 - 95 - ・ガン・心臓病・脳卒中・糖尿病・関節炎・不妊や生理のトラブル・アレルギー・喘息・ 精神疾患など、さまざまな病気にかかわっています。最新の栄養学によって、 「オメガ3」 と「オメガ6」の摂取比率が、私たちの健康を大きく左右するということが明らかにされ てきました。 現代栄養学では、「オメガ3」と「オメガ6」の理想的な摂取比率を、およそ1:1~ 1:3くらいであると考えています。これはアメリカで言えば、百年ほど前の食事の内容 です。それが現代では、極端に崩れてしまっています。オメガ3は、必要量の 20 %程度 しか摂られていません。 その状況は日本においても同様です。我が国では 1960 年頃までは、かなりよい比率を 保っていたと思われますが、その後急速に悪化してしまいました。今ではオメガ3とオメ ガ6の摂取比率は、1:10 ~1:50 というような、ひどいアンバランス状態にあります。 オメガ3の著しい不足に対して、オメガ6は極端な過剰摂取に陥っています。 オメガ3とオメガ6のアンバランスを引き起こす原因 では、どうしてこのような異常な事態を引き起こすようになったのでしょうか。「オメ ガ3」も「オメガ6」も、植物性食品や植物油の中に多く含まれています。そして、その 植物油がアメリカや日本において大量に摂取されるようになったのは、1960 年以降のこ - 96 - とです。食事が欧米型に向かい、油料理・揚げ物料理が多くなった時期ということです。 食事の欧米化の中で摂取量が増え続けてきた油と言えば、コーン油・大豆油・サフラワー 油(紅花油)などです。そして、それらをベースにしたマヨネーズやドレッシング・マー ガリンなどです。実は、こうしたどこの家庭でも毎日のように使う油には、 「オメガ6(リ ノール酸)」が豊富に含まれているのです。(※食用植物油の脂肪酸組成を参照してくだ さい。一般に使われる油の中には、45 ~ 75 %もの「オメガ6」が含まれています。) 一方、「オメガ3(アルファ・リノレン酸)」を多く含む油としては、シソ油・エゴマ 油があり、欧米では亜麻仁油があります。しかし現代人のほとんどは、これらの油を料理 に使うことはありませんでした。(※日本ではあまりなじみのない「亜麻仁油」ですが、 食用に用いられた歴史は古く、ギリシャ・ローマ時代からだと言います。北欧諸国では第 2次世界大戦の前まで、どこの家庭でも使われていました。) - 97 - また食品によっては、オメガ3を比較的多く含むものもあります。野菜(特に緑の濃い冬 野菜)・海藻・魚(背の青い大衆魚)などです。そしてこれらの食品は、昔の日本人は日 常的によく食べていました。そのためかつては、かなり「オメガ3」を摂取することがで きていたのです。油料理をひんぱんに摂るような現代とは違って、オメガ3とオメガ6の バランスは自然に良好だったのです。 現代人は、オメガ3の摂取源となる野菜・海藻・魚などをあまり摂らなくなっているの に対し、オメガ6の摂取量は激増しています。食事が欧米型に傾けば傾くほど、「オメガ 6」だけが多くなってしまうのです。こうして必然的に、「オメガ3」と「オメガ6」の バランスは大きく崩れてしまいました。 現代人の深刻な「オメガ3脂肪酸欠乏」 食生活の欧米化が深刻な「オメガ3欠乏」を招いていますが、その一因としては、次の ようなことも挙げられます。一般に現代人は、寒い地域の食物より、温かい地域の食物を 好んで食べるようになっています。温室栽培や輸入によって、冬でも、トマトやキュウリ ・ピーマンなどの夏野菜が食べられるようになりました。実は、「オメガ6」が暖かい地 域の農作物に多く含まれているのに対して、「オメガ3」は寒い地域の農作物に多いので す。ホウレン草・シュンギク・小松菜・白菜・ブロッコリーなどの冬野菜は、よいオメガ 3の摂取源となっています。 また精白技術の進歩が、オメガ3不足に拍車をかけています。穀類の胚芽にはオメガ3 とオメガ6がともに含まれているのですが、精白することで「オメガ3」が失われてしま います。 さらにオメガ3不足の大きな原因として現代式の製油方法が挙げられます。食用油とい えば、かつては手絞り的な圧搾法「コールド・プレス(低温圧搾法)」で製造されていま した。しかし現代では、そうした方法でつくられているのは亜麻仁油・オリーブ油などの 一部の油のみです。それ以外のほとんどの食用油は、化学的溶剤で原料の中の脂肪を溶か し出し、その後に溶剤を除去するといった方法でつくられています。そして最後の脱臭工 程では、230 ℃以上もの高温処理がなされています。取り出された油には、部分的に水素 が添加されます。“水素添加”とは、不飽和脂肪酸の二重結合部分に、高温高圧下で強引 に水素をつなげて油を飽和状態に変えてしまうことです。こうすると油は酸化しにくくな - 98 - って日もちがよくなり、商品寿命が延びるからです。 こうした製油過程で真っ先に失われてしまうのが、水素と最も反応しやすい「オメガ3」 なのです。原料となる大豆やゴマなどの種子類には、わずかですがオメガ3が含まれてい ますが、今述べたような製油方法では、ほとんどなくなってしまいます。そのうえ「トラ ンス型脂肪酸」という有害な脂肪酸が生成されることになります。(※「溶剤使用」「高 温処理」「水素添加」という現代式の製油方法の中では、オメガ3だけでなく、ビタミン などの栄養素も失われてしまいます。 このような原因が重なって、現代人の「オメガ3不足」は、きわめて深刻な状態になっ ています。 6.局所ホルモン(プロスタグランジン)の働き プロスタグランジンとは? - 99 - 必須脂肪酸であるオメガ3とオメガ6は、全身のさまざまな生理機能を調節する局所ホ ルモンの原料になります。この脂肪酸 からつくられる局所ホルモンはエイコ サノイドと言われ、「プロスタグラン ジン」「ロイコトリエン」「トロンボキ サン」などの種類があります。そうし た調節物質を、ここではまとめて「プ ロスタグランジン」と呼ぶことにしま す。 従来のホルモンが特定の内分泌腺で つくられ、全身を支配しているのに対 して、プロスタグランジンは個々の細 胞でつくられ、細胞レベルでの調節を 行っています。(※そのため局所ホルモンと呼ばれています。)しかし、その働きはきわ めて重要で、身体全体の機能に関係していると言ってもよいほどです。片頭痛でも重要な 位置を占めています。 プロスタグランジンの生成過程と種類 プロスタグランジンは、次のようなプロセスで生成されます。 必須脂肪酸であるオメガ3とオメガ6が体内で化学変化を繰り返し、各種の「プロスタ グランジン」が生成されていきます。(※食物として体内に吸収されたオメガ3・オメガ 6の大部分は、他の脂肪酸と同じく燃焼に回されますが、細胞膜からピックアップされた 一部がプロスタグランジンに変換されます。) プロスタグランジンは原料である脂肪酸の違いによって、3つのグループに分けられま す。そして、そのグループ内でさらに複雑な変化をして数十種類のプロスタグランジンが - 100 - つくられます。 プロスタグランジンによる生理調節作用 ここで大切なことは、プロスタグランジンは大きく3つのグループに分かれ、グループ ごとに異なる働きをしているということです。なかでも「オメガ3系のEPA」からつく られるプロスタグランジンと、「オメガ6系のアラキドン酸」からつくられるプロスタグ ランジンは、相反する働きをして細胞機能のバランスをとっています。 もう少し詳しく見てみると、オメガ6系からは2つのグループのプロスタグランジンが つくられ、互いに相反する働きをしています。現在、その材料となる「オメガ6」は大量 に摂取されています。そのうえ大半の人々は、肉・乳製品・卵などの動物性食品を多く摂 っていますが、そうした食品には直接「アラキドン酸」が含まれています。そのためアラ キドン酸由来のプロスタグランジンが大量につくられることになります。つまり1グルー プ目に比べ、2グループ目のプロスタグランジンだけが過剰に生成され、細胞機能のバラ ンスを欠くことになります。 2グループ目のプロスタグランジンと、オメガ3系からつくられる3グループ目のプロ - 101 - スタグランジンも、相反する働きをしています。しかもこの2つは、オメガ6系のグルー プ同士より強力な競合関係にあり、一方が大量につくられると、他方はその分だけつくら れなくなります。ということは、現在のような「オメガ3欠乏」の状態では、圧倒的に「ア ラキドン酸」由来のプロスタグランジンが生成されることになるのです。「オメガ6」と 「動物性食品」の過剰摂取から2グループ目のプロスタグランジンだけが異常に多く生成 され、「オメガ3」の欠乏から3グループ目のプロスタグランジンが極端に不足してしま っているということです。そのために細胞機能のバランスが大きく崩れ、酸化ストレス・ 炎症体質を形成することになり、さまざまな障害・病気が引き起こされているのです。 例えば“炎症”という作用の場合、それを抑制するプロスタグランジンが「オメガ3」 からつくられるのに対して、アラキドン酸由来の「オメガ6」からは炎症を激化させるプ ロスタグランジンがつくられます。このように―「血栓を減らしたり、増やしたり」「発 ガンを抑制したり、促進したり」「子宮を弛緩させたり、収縮させたり」「血管を拡げた り、狭めたり」して、互いに相反する働きかけをしています。車にたとえれば、アクセル とブレーキのようなものです。1つの生理作用に対して、それぞれ反対の働きかけをしな がらコントロールしているのです。多種類のプロスタグランジンが互いに関係をもちなが ら、身体全体の機能を維持しているのです。 「オメガ3」と「オメガ6」の脂肪酸は、単なるカロリー源や組織の構成成分となるだ けでなく、細胞機能を調節するプロスタグランジンの材料となっています。プロスタグラ ンジンは、神経系・ホルモン系に続く「第3の調節系」と言われ、油の中でも最新の研究 分野となっています。1982 年には、欧州の3人の研究者がノーベル医学生理学賞を受け ています。 エスキモーに“心臓病”が少ない理由 必須脂肪酸の摂取比率が崩れたことによって「プロスタグランジン」のアンバランスが 生じ、さまざまな現代病が引き起こされていますが、それを証明する有名な疫学研究を挙 げておきます。1960 年代にデンマークの研究者によって始められた、エスキモー(イヌ イット)とデンマーク人の比較研究です。 西グリーンランドに住むエスキモーは、伝統的にカロリーの 70 %を脂肪から摂るとい - 102 - う世界一脂肪の多い食事をしていました。現代のアメリカ人の食事は、カロリーの 40 % を脂肪から摂り、その異常さが指摘されていますが、エスキモーは、それをはるかに上回 る大量の脂肪を摂っていました。しかも野菜は、ほんのわずかしか摂っていませんでした。 栄養学の常識から考えれば、これでは心臓病や脳卒中などの循環器系疾患が増えて当然で す。 ところが実際には、心臓病になる人が極端に少ないのです。これが研究者の注目を集め ることになり、調査・研究が開始されました。エスキモーの食事の内容や生活習慣・遺伝 的な要因などが、長期にわたって多くの研究者によって調査されました。その結果、エス キモーの健康の秘密が、彼らの食事にあったことが明らかにされたのです。調査によれば、 当時デンマークの都会に住む人たちの脂肪の摂取量は、エスキモーとほぼ同じくらいでし た。それなのにデンマークでは、エスキモーの 10 倍もの国民が心臓病で死んでいます。 こうした事態を招いている原因は何かと言えば、摂取している脂肪の違いにありました。 エスキモーの食事には圧倒的に「オメガ3系」の脂肪酸が多く含まれていたのです。オメ ガ6系の脂肪酸と飽和脂肪酸はデンマーク人の約半分でした。摂っている脂肪の総量はほ とんど同じでしたが、脂肪酸の違いが、心臓病による死亡率の決定的な違いとなったので す。 なぜエスキモーの摂っている脂肪には「オメガ3」が多かったかというと、彼らの食べ 物のほとんどが、生の魚やアザラシ・セイウチなどの海獣だったからです。こうした海に - 103 - 住む動物には、EPAやDHAというオメガ3系の脂肪酸がたっぷり含まれています。 「E PA」からつくられるプロスタグランジンは血液の粘度を下げ、サラサラと流れやすくす る性質をもっているのです。(※オメガ3を大量に摂っていたエスキモーの血液は固まり にくく、出血するとなかなか血が止まらないことが問題でした。) それに対してデンマーク人の摂取している脂肪の多くは、現代の欧米人と同じ飽和脂肪 酸やオメガ6脂肪酸だったのです。血液中の脂質に含まれる「アラキドン酸」(※アラキ ドン酸からつくられるプロスタグランジンは血栓を増やす)の割合は、デンマーク人の方 がエスキモーより 10 倍も高く、逆にEPAは、エスキモーの方が 36 倍も高いことが確か められています。「オメガ3」と「オメガ6」の摂取比率の狂いが、デンマーク人の間に 心臓・血管系の病気を引き起こしていたのです。 もっとも、そうした心臓病とは無縁だったエスキモーも、定住政策によって欧米型の食 事を取り入れるようになると、わずかのうちに欧米人と同じ病気で苦しむようになりまし た。伝統的な生活を捨て、食事内容を一変させたことで、心臓病や糖尿病が多発するよう になったのです。 「酸化ストレス・炎症体質」を益々悪化させるもの 生理活性物質(エイコサノイド) 生理活性物質(エイコサノイド)とは脂肪酸から 作られる炎症やアレルギー反応にかかわるホルモン みたいな物質、または局所ホルモンともいわれるも のです。その原料となるのが穀類や豆類、野菜類に 含まれるリノール酸やα-リノレン酸、および魚介類に含まれるEPAやDHAなどで す。この生理活性物質には、 ①炎症を悪くする、 ②その炎症を調整する、 ③それらの働きを抑制する、 - 104 - という大きく3つの働きがあります。 たと えば 、血管を広げる生理 活性物質があれば、それを収縮 させる逆の作用を持つもの、さ らにそれぞれの作用を抑制する ものが存在します。この3つが バランスよく保たれていれば何 も心配ありませんが、バランス が狂ってしまうと、「酸化ストレ ス・炎症体質」ということにな ってしまいます。 油脂の主成分である脂肪酸に は、①体のエネルギー源となる、 ②体を構成する細胞の細胞膜の 重要な構成成分となる、③生理 活性物質(エイコサノイド)の 原料となる、などの働きがあります。 多くの人は「牛脂やラード」など動物性脂は健康を害すると信じているようですが、 これら動物性脂に多く含まれる飽和脂肪酸や一価不飽和脂肪酸(オレイン酸など)は、 ①体のエネルギー源となると、②体を構成する細胞の細胞膜の重要な構成成分となる働 きだけであり、③生理活性物質(エイコサノイド)の原料としての働きはありません。 したがって、肥満の人がこれらの動物性脂をとり過ぎることによって健康を害する可 能性はありますが、直接「酸化ストレス・炎症体質」に影響を与えることはありません。 しかし、植物や魚類の油分に多く含まれる多価不飽和脂肪酸は、①と②の働きに加え、 ③生理活性物質(エイコサノイド)の原料としての重要な働きがあります。 この多価不飽和脂肪酸のとり方で、「酸化ストレス・炎症体質」が決定づけられ、片頭 - 105 - 痛になったり、花粉症になったり、アレルギー疾患になったり、パニック障害になった り、癌になったり、認知症などの根本的原因となるのです。 また、飽和脂肪酸(パルミチン酸)や一価不飽和脂肪酸(オレイン酸)は必要に応じ 体内で互いに変換されます。オリーブ油のオレイン酸が牛脂に含まれるパルミチン酸に 変換されることも、牛脂に含まれるパルミチン酸がオリーブ油に含まれるオレイン酸に も変換されるということを覚えておいてください。 ・「オメガ-3」、「オメガ-6」って何? 不飽和脂肪酸はよく似た分子構造をしているのですが、分子を構成する二重結合の位 置の違いにより体内で全く異なっ た代謝のされ方をします。 脂肪酸の分子鎖末端を「オメガ - end(エンド)」といい、この末端 から数えて3番目に二重結合があ るものを「オメガ-3系不飽和脂 肪酸」と呼び、6番目に二重結合 があるものを「オメガ-6系」、 9番目にあるものを「オメガ-9 系」などと呼び分類しています。 この位置の違いにより全く異なっ た経路の代謝が起きますが、「オ メガ-9系」からは生理活性物質は合成されません。 植物油に多く含まれる「リノール酸」や肉などに含まれる「アラキドン酸」は「オメ ガ-6系」、野菜やシソ油に含まれる「α-リノレン酸」や青魚などに含まれる「EPA」、 「DHA」は「オメガ-3系」の不飽和脂肪酸です。 この「オメガ-3系」と「オメガ-6系」の不飽和脂肪酸を原料として生理活性物質 (エイコサノイド)は合成されますが、「オメガ-3系」から「オメガ-6系」への変換 や「オメガ-9系」への変換、また「オメガ-6系」から「オメガ-3系」や「オメガ - 106 - -9系」への変換といった系統間にまたがる変換は起こりません。 そのため不飽和脂肪酸の生理作用への影響は、オメガ-何系の不飽和脂肪酸を摂取す るかが重要となります。 結論から先に言いますと、植物油に多く含まれるこの「オメガ-6系」の不飽和脂肪 酸のとり過ぎと、植物油の加工・精製工程で副生される「トランス脂肪酸」という有害 物質をとることが「酸化ストレス・炎症体質」を作り出す最大の原因ということです。 「穀類や豆類に含まれている油が悪い・・??」と思われる方もおられるでしょうが、 そうではなく、正確には穀類や豆類から作られた加工・精製植物油のとり過ぎが悪いと いうことです。 「酸化ストレス・炎症体質」を悪化させる油の要因を簡潔に纏めますと、次のよう なものがあります。 ・オメガ-6系植物油(リノール酸)のとり過ぎ ・トランス脂肪酸など自然界に存在しない有害な油脂の摂取 ・高脂肪・高タンパク質食品に含まれるアラキドン酸(オメガ-6系)のとり過ぎ ・EPAやDHA、α-リノレン酸などオメガ-3系不飽和脂肪酸の摂取不足 この他に油以外の要因としては、次のようなものがかかわっています。 ・暴飲暴食や食事の取り合わせの悪さ(インシュリンの過剰分泌) ・乳・乳製品の摂りすぎ ・腸内細菌の乱れによるビタミン類の生成不足 先進国の中で、「植物油は健康に良い」と未だ信じられている唯一の国、日本。その植 物油が「錆び体質」の最大の原因であることを知ることが、片頭痛をはじめさまざまな 生活習慣病や慢性疾患の体質改善の第一歩といえます。 - 107 - 先に述べましたように、「酸化ストレス・炎症体質」は、次のような3種類の生理活性 物質(エイコサノイド)の働きによりコントロールされています。 ①炎症を悪くするもの ②その炎症を調整するもの ③それら両方の働きを抑制するもの そして、そのバランスが色々な場面において臨機応変に、非常に精密にコントロール され、体の機能を調整しているのですが、このバランスが狂ってしまった状態が「酸化ス トレス・炎症体質」でもあります。 ・3 種類の生理活性物質が作られる道のり! これら3種の生理活性物質が作られる道のりは、一般的に、次のように言われていま す。 ① 炎症を悪くするオメガ-6炎症系経路(アラキドン酸カスケード) ② その炎症を調整するオメガ-6調整系経路(γ-リノレン酸経路) ③ それら両方を抑制するオメガ-3抑制系経路(EPA経路) ①炎症を促進するオメガ-6炎症系経路(アラキドン酸カスケード) この経路で作られる生理活性物質は炎症を悪くする、いわゆる「錆び体質」を誘発す るものですから、この経路での代謝をいかに抑制するかが重要です。 この経路の出発物質は「アラキドン酸」ですが、この「アラキドン酸」はおもに 3 つ の経路、①「リノール酸」が体内で変換されて「アラキドン酸」となり生成される、② 動物性の高脂肪高タンパク質食品から直接摂取される、③体を構成する細胞膜の新陳代 謝により生成されます。しかし、その大部分の「アラキドン酸」は、体を構成する細胞 膜の新陳代謝や炎症により破壊された細胞膜から供給されます。 - 108 - 「アラキドン酸」は細胞膜の重要な構成成分の一つで、細胞の柔らかさや電気信号の伝 わりやすさにかかわっています。通常、細胞は新陳代謝(細胞の破壊と再生の繰り返し) されていますので、「アラキドン酸」は常に生成され、新たな細胞膜として再利用されて います。体に炎症がおきますと、破壊される細胞が多くなりますので遊離した「アラキ ドン酸」の量は増加することになります。遊離したアラキドン酸はアラキドン酸カスケ ードという代謝経路を経て、炎症性の生理活性物質(エイコサノイド)に変換されます。 炎症性の生理活性物質としては、2系のプロスタグランジン(PG)、2系のトロンボ キサン(TX)および4系のロイコトリエン(LT)などがあります。 これらの生理活性物質が生成する過程で強力な活性酸素であるヒドロキシラジカル(・ OH)が生成されます。要はこの経路から片頭痛発症にかかわる、 「炎症性の物質」や「活 性酸素」が作り出されるということです。 そのため、この経路が活性化されますと、炎症作用が高まり、活性酸素の発生も増加 しますので「酸化ストレス・炎症体質」を益々悪化させることになります。 アラキドン酸から合成される生理活性物質(エイコサノイド)には多くの種類があり、 その各々は異なった働きがあります。 たとえば、プロスタグランジンE2は胃粘膜を保護するという私達の健康にとって好 ましい作用がりますが、炎症を起こせば発熱を起こし、ブラジキニンという生理活性物 とうつう しゅちょう ひど 質とともに疼痛を起こし、腫 脹(はれ上がる)を酷くするなどの炎症促進作用を示しま す。 因みに、片頭痛の痛みはこのプロスタグランジンE2やブラジキニンなどの発痛物質 により引き起こされることになります。 また、この経路で生成されるトロンボキサンA2は、血管を収縮させるとともに血小 板を凝固させ、片頭痛発症の引き金となる生理活性物質です。 このように、トロンボキサンA2は非常に悪い生理活性物質のようなイメージがあり ますが、一方では怪我などで血管が破れ止血する際には必要不可欠な物質でもあります。 同じ生理活性物質であっても、その場面によって、人にとって好都合にも不都合にも 働くのですが、この経路で合成される生理活性物質は、片頭痛をはじめ多くの疾患に対 して、炎症性、血管収縮、血栓促進、免疫力低下、アレルギー病状増悪、癌化促進など - 109 - の好ましくない作用が多くあることから、一般的に「炎症性」または「悪性」として扱 われます。 このオメガ-6炎症系経路(アラキドン酸カスケード)の代謝活性を抑制するために は、次のことが重要です。 ・オメガ3系の油(α-リノレン酸、EPA,DHAなど)をとる ・軽い空腹感を作る(グルカゴンや副腎皮質ホルモンの分泌を促す) ・血糖値が上がり過ぎない食事をする(インスリンの過剰分泌を抑える) ・アラキドン酸の多い食品をとり過ぎない また、副腎皮質ホルモンやアスピリンの服薬はこの代謝を非常に効果的に抑制するこ とができますが、いずれも副作用が強く体質改善には用いることはできません。 これら以外には、効果のほどは定かではありませんが、以下のものが有効であったと いう報告があります。 ・共役リノール酸(牛乳・乳製品に含まれる)をとる ・エクストラバージンオリーブ油(有効成分:オレオカンタール)をとる ・ゴマ(有効成分:ゴマリグナン)を摂る ・赤ワイン(有効成分:レスベラトール) 「酸化ストレス・炎症体質」が改善されれば、炎症細胞からのアラキドン酸の生成が 抑制され、さらに炎症体質が改善されるという、良い循環が起きるようになります。 ②炎症を調整するオメガ- 6 調整系経路(γ-リノレン酸経路) この経路の生理活性物質は炎症作用が強くなりすぎないように調整するものですから、 この経路をいかに活性化させるかが「酸化ストレス・炎症体質」の改善に重要となりま す。 この経路の出発物質は「リノール酸」ですが、体内酵素により「γ-リノレン酸」(正 - 110 - 確にはジホモγリノレン酸)に変換された後に、プロスタグランジン1系、トロンボキ サン1系、ロイコトリエン3系の調整系生理活性物質を生成します。 いわゆる、先の「オメガ-6炎症系経路(アラキドン酸カスケード)」で生成する生理 活性物質が炎症作用を「活性化する働き」であったのに対し、この「オメガ- 6 調整系 経路(γ-リノレン酸経路)」で生成する生理活性物質は生理作用全体をバランスさせる ために、炎症作用を「調整する働き」をします。 例えば、免疫系への作用としては、白血球の中でも抑制や調整作用のあるレギュラト リーTリンパ球という白血球を活性化させ免疫系の過剰な暴走を抑制しアレルギー疾患 などを改善します。 また、アラキドン酸カスケードの引き金である脂質分解酵素の働きを阻害し、炎症性 の生理活性物質の生成を抑制するなどの作用があります。 この経路を活性化することにより、「アラキドン酸」の代謝は抑制されるとともに傷害 性の強い活性酸素である「ヒドロキシルラジカル」の発生も抑制されますので「酸化ス トレス」の状態を改善することができます。 また、この経路で生成する生理活性物質は炎症を引き起こすヒスタミン(片頭痛の痛 みの原因物質の一種)の放出を抑制するなどの抗炎症作用を示すことや血管拡張、血栓 抑制、免疫力増強、アレルギー症状寛解、癌化抑制、血糖調整などの作用があることか ら、この代謝経路で生成される生理活性物質は「良性」として扱われています。 この経路の代謝を活性化するためには、次のことが重要で す。 ・オメガ-6系の植物油(リノール酸)をとり過ぎない ・トランス脂肪酸を摂取しない(精製植物油、マーガリ ン、ショートニングなど) ・腸内細菌を健全に保つ(ビオチン不足を起こさない) ・過剰ストレスを避け、アルコール、タバコ、牛乳・乳製品のとり過ぎない ・ビタミンC、ビタミンB3(ナイアシン)の不足を起こさない - 111 - リノール酸は通常の食事をしているかぎり穀類や豆類から充分に摂取することができ ますので、さらなる植物油の摂取はリノール酸のとり過ぎになるということです。 また、マーガリンや精製植物油に含まれている「トランス脂肪酸」はリノール酸がγ -リノレン酸への変換を抑制し、「良性」の生理活性物質の生成を妨害します。 特に「トランス脂肪酸」は、「遊離脂肪酸」として体の組織を傷害するとともに「活性 酸素」も発生させやすく、一般に市販されている加工・精製植物油には注意が必要です。 昔ながらの圧搾製法で造られた植物油はトランス脂肪酸を含みませんのでとり過ぎで なければ健康上の問題となることはありません。 加工・精製植物油植物油は、パンやクッキー、ケーキ、マヨネーズ、ドレッシング、 チョコレート、レトルトカレー、・・・・・・などにも含まれます。 また、リノール酸は体内で非常に酸化されやすく過酸化脂質の生成原因ともなります し、天ぷら等で加熱されたリノール酸はヒドロキシルノネナールという有毒な物質を生 成しますので、天ぷら油のリサイクルは絶対に行はないことが重要です(特に、アルコ ールの代謝の悪い下戸の方や子どもは気をつける必要があります)。 ③炎症経路を抑制するオメガ-3抑制系経路(EPA経路) この経路の代謝はオメガ-6系経路の代謝と競合しますので、結果的にオメガ-6炎 症系経路の代謝を抑制することになります。オメガ-6系の生理活性物質はかなり生理 作用の強いものばかりですので、その作用を鎮めるのがおもな役割ということもできま す。 オメガ-3系の経路は「α-リノレン酸」 からスタートし、体内酵素により「EPA」 に変換されます。EPAはさらにDHAに 変換されますが、DHAは必要に応じてE PAにも変換されます。 この「EPA」からオメガ-3系の抑制 系の生理活性物質である3系プロスタグラ ンジン、3系トロンボキサンおよび5系ロ - 112 - イコトリエンが作られます。 このオメガ-3系EPA経路を活性化することにより、炎症性のアラキドン酸カスケ ードの代謝を抑制し、「酸化ストレス」を弱めることができます。このようなことから、 この経路で産生される生理活性物質は「良性」として扱われています。 「酸化ストレス・炎症体質」の改善ためにはこのオメガ-3系EPA経路の代謝を活 性化させることも重要となります。 そのためには、次のことが重要となります。 ・オメガ-3系の油分(α-リノレン酸やEPA,DHAなど)の摂取量を増やす ・トランス脂肪酸を摂取しない(精製植物油、マーガリン、ショートニングなど) 「α-リノレン酸」を多く含むシソ油(エゴマ油)や亜麻仁油は、そのほとんどが工 業的に造られたものではなく、圧搾製法で造られた植物油ですので「トランス脂肪酸」 は含まれません。 青魚に多く含まれ、また同時に、体内でα-リノレン酸からも変換される「EPA」 は体内でのアラキドン酸の生成を抑制し、アラキドン酸が炎症性の生理活性物質を生成 することを抑制する作用があります。オメガ-3系脂肪酸は、今日の平均的な食生活で むしろ不足しがちな脂肪酸ですので、積極的にとることをお勧めします。 - 113 - ・自然界に存在しない有害なトランス脂肪酸! トランス脂肪酸は構造がトランス型(直鎖状の構造)になった脂肪酸のことをいいま す。トランス脂肪酸は自然界に存在しない有害物質が、工業的に油脂を精製したり、加 工している時にできてしまったというものなのです。 あ ぶ ら 昔ながらの圧搾法による植物油や、天然の植物、魚や家禽などの油脂分に含まれる脂 肪酸は全てがシス型(折れ曲がった構造)という構造をしています。 はんすう くさ 牛などの反芻動物は胃の中で草や藁(わら)を消化する際にバクテリアによってトランス 型(直鎖状の構造)をした構造の脂肪酸ができますが、これはバクセン酸や共役リノー ル酸(ルーメン酸)という構造も明らかな、人体に害を及ぼすことのない脂肪酸です(む しろ、健康サプリメントとして利用されている)。 工業的に副生される有害なトランス脂肪酸は、おもに次の2つの生成過程を経て生 成されます。 ①植物油からマーガリンやショートニングを作ることや揚げ油として「持ち」の良い 油を作るために、植物油に水素を添加するなどして、油を加工する際に副生物として 生成される。 本来、室温で液状であった植物油に水素を添加することにより、マーガリンやショ ートニングのように常温でも固形油脂状にすることができ、長時間の使用に適した酸 - 114 - 化劣化の少ない揚げ油を製造することができます。からっと揚がる油もこのようにし て造られます。 ショートニングの中には50%を超えるトランス脂肪酸を含むものあるといわれてい ます。また、これらのマーガリンやショートニングを使用したビスケット、パン、ケ ーキ類などの加工食品にも有害なトランス脂肪酸は含まれることになります。市販の フライドポテト、フライドチキンなどに使用される揚げ油の中にも有害なトランス脂 肪酸は多く含まれていますので、これらの揚げ物にもトランス脂肪酸は含まれること になります。 ②植物種子などを圧搾して製造した植物油は、その植物油に含まれる不純物などによ り腐敗や変色などの品質劣化をおこすため、市販されているほとんどすべての植物油 は工業的に精製・脱臭されています。脱臭工程では高温・高真空下で水蒸気を吹き込 むなどの処理がおこなわれますが、この精製・脱臭工程でトランス脂肪酸が副生され ます。 市販のサラダ油などのほとんどの精製植物油には有害なトランス脂肪酸が含まれてい ます。 ・ダイオキシン類にも似た、トランス脂肪酸の有害性! - 115 - 植物油とともに体に取り込まれた有害なトランス脂肪酸はある程度はエネルギーに転 換(異化)されます。しかし、生理活性物質など体の重要な構成成分となる(同化)こ とは起こりえません。体のもとなる細胞や生理活性物質の生成などの代謝(同化)は非 常に緻密に特定された構造のものだけが酵素反応にかかわりますので、自然界にあるシ ス体とは異なり自然界に存在していないトランス体が体の一部となることはありません。 しかし、体は無理にでも代謝し続けようとしますので代謝酵素を誘導し続け、補酵素 やビタミン、ミネラルを無駄に消費してしまうことになると考えられます。人間が新た に作り出したダイオキシンやPCBの ような残留性環境汚染物質を代謝でき ないのと同じようなことが体内で起き るのです。 代謝されない脂肪酸は遊離脂肪酸と して血流を通して全身の組織・器官に 達し、他の重要な代謝にかかわる酵素 の働きを妨害するとともに、脂肪酸毒 として組織・器官に傷害(又は障害)を与えることになります。 実際には、血液中に放出された遊離脂肪酸は血液中のたんぱく質(アルブミン)と結 い き ち 合し、その毒性の悪影響が抑制されるのですが、許容限界量(閾値)を超えてしまうと 脂肪酸毒として作用することになります。片頭痛や花粉症、アレルギーなどの症状が現 い きち れている場合は既にこの閾値を超えた状態であると考えられます。 また、トランス脂肪酸はエネルギーに転換されることはあるにしても代謝速度は遅く、 一部は血流中や組織・器官の細胞内、脂肪組織(皮脂、内臓脂肪、皮下脂肪)などに遊 離脂肪酸として蓄積されると考えられます(一部は母乳としてや皮脂腺などを通して排 出されると思われます)。 トランス脂肪酸は、一般的な急性毒性や亜急性毒性的なリスクの心配はほとんどあり ませんが、心臓病や脳梗塞を始め多くの病気の原因物質として疫学的にも世界的に証明 されている有害な物質なのです。心臓病や脳梗塞の影響が明らかなことから、日本を除 - 116 - く先進国ではトランス脂肪酸に対し何らかの 規制や含有量の表示義務などが課せられてい ます。 しかし、日本ではこのような規制などは全 くないため食品に含まれるトランス脂肪酸の 量さえ知ることさえ出来ないのが現状なので す。マーガリンやショートニングなどの硬化 油や硬化油を使用した菓子類などの食品や市販の精製植物油、マヨネーズ、ドレッシン グなどには必ずトランス脂肪酸が含まれています。これらの食品を極力摂取しないこと。 家庭で植物油を使用する場合はエクストラバージンオイルや圧搾法による植物油を用 いることにより、トランス脂肪酸の摂取は避けられます。 ・植物油(リノール酸)の摂取を控え、オメガ3系脂肪酸を摂る(オメガ6/オメガ3比 を1.0以下に)! 植物油のとり方が生理活性物質のバランスを整えるために重要な要因であることは理 解できたところで、どの程度の割合が最 も良いのかということをご説明します。 オメガ6系リノール酸は穀類や豆類、 芋類、野菜類などに多く含まれています ので、通常の食生活をするかぎりにおい て摂取不足を起こすことはありません。 むしろ植物油をさまざまな形で摂取す る機会が多い今日では、オメガ-6系脂 肪酸のとりすぎが問題となります。一方、オメガ-3系の油分は魚介類を除く食品には 極少量しか含まれていませんので、魚をあまり摂らない食生活では不足しがちな油分と いえます。 オメガ-6系脂肪酸のとりすぎは「良性」の生理活性物質を抑制し、「悪性」の生理活 - 117 - 性物質を活性化させます。オメガ-3系脂肪酸の摂取量が少ないと炎症をより悪化させ ます。 簡潔に言い換えますと、オメガ-6系脂肪酸のとりすぎが炎症体質を悪化し、オメガ -3系脂肪酸をとると炎症体質は改善されるということになります。 これらのことから、摂取する「オメガ- 6 系油とオメガ- 3 系油の比」をもって炎症 体質や酸化ストレス体質にならないための油脂の摂取量の目安量を知ることができます。 いわゆる、オメガ-6系/オメガ- 3 系の比が大きな値を示すほど「酸化ストレス・炎 症体質」は悪い状態に向かい、逆に小さな値であるほど「酸化ストレス・炎症体質」は 良好な状態に向かうということなのです。 厚生労働省では実経済への影響を考慮し、望ましいオメガ-6/オメガ-3の比を4. 0としていますが、日本脂質栄養学会では健康であるためにはオメガ-6/オメガ-3の 比は2.0以下を提案しています。 「酸化ストレス・炎症体質」の改善のためには、厚生労働省のオメガ-6/オメガ-3 の比4.0は論外としても、日本脂質栄養学会の提案する2.0以下であることが好ましいよ うに思われます。 私は体質改善の開始当初は1.0以下を目標とし、体質が改善されてくれば2.0以下を維 持することを推奨しています。 そのためには、オメガ-3系のEPAやDHA含有量の高い青魚を積極的に摂取する とともに、植物油の使用に際してはα―リノレン酸含有量が高いシソ油(エゴマ油)を - 118 - 日常的に用いることを推奨しています。 ただし、オメガ-3系の油のとり過ぎは免疫系の活性を弱めますので、「酸化ストレス ・炎症体質」を改善するためには必須のオメガ-3系の油であってもとり過ぎには注意 が必要となります。またオメガ-3系の油は血液をさらさらにする効果はありますが、 逆に出血した時には血が止まりにくくなってしまうことがあります。内科医は EPA や DHA の摂取を薦めても、手術の機会の多い外科医はそうでないかもしれませんね。 なお、エゴマ油(シソ油)は空気中での加熱安定性が良くありませんので、加熱調理 用としては適していません。ドレッシングやマヨネーズなど加熱しないものに限定する か、そのまま頂くことが好ましいでしょう。 また、オリーブ油の主成分であるオレイン酸はオメガ-9系脂肪酸であり、生理活性 物質の代謝には直接関与することはありませんので、加熱用や菓子類の植物油として幅 広く利用することができます。 いずれにしろ、「酸化ストレス・炎症体質」の改善には、マヨネーズ(卵黄、植物油、 酢)やドレッシング(植物油、酢)は有害なトランス脂肪酸を含まないシソ油やオリー ブ油を用いた自家製に変え、加熱用としてはエクストラバージンオリーブ油か圧搾法の 植物油を使用するなどの工夫が必要だといえます。 また、リノール酸をとり過ぎると体内でのリノール酸の代謝が遅延するため血中のリ ノール酸濃度が高まり、トランス脂肪酸と同様に血中の遊離脂肪酸濃度を上げることに なります。血中や組織の遊離脂肪酸の濃度が高くなれば器官や組織の細胞を傷害するだ けでなく、その結果として発生する活性酸素などにより過酸化脂質などの過酸化物を生 成しやすくなります。そのため、体は常に酸化ストレスが増大した状態になってしまう のです。 片頭痛を起こしやすい体質、いわゆる活性酸素を生じやすく、血中の遊離脂肪酸濃度 の高い状態は、このようにして作られていくのです。 細胞膜と過酸化脂質 活性酸素が過剰に発生し、それにより体内で受けたダメージの修復が追いつかなくなる - 119 - 状態が酸化の原因であることはお 伝えしました。とくに、体内に存 在する脂質は酸化されやすく、 「過 酸化脂質」となることが大変問題 なのです。 たとえば、古くなった魚や肉が 嫌な臭いに変化していくのは「過 酸化脂質」が増えて食品の質が低 下した表れです。脂質は私たちの 体内に多く存在しますが、その中 でも重要な場所が細胞膜に代表される生体膜です(これらは脂質を材料の中心としてつく られています)。細胞膜は単に細胞を覆う膜ではなく、細胞が生命維持のためにスムーズ に活動を行えるように、外敵から細胞を守ったり、細胞に必要な栄養素や情報の受け入れ に関わったりと、いくつもの大切な働きをしています。その細胞膜の主な材料である脂質 が酸化されると、細胞自体の働きの低下につながります。 私たちの体は、60 兆個もの細胞が集まってできあがっています。その細胞ひとつひと つがどのような状態であるかが体全 体に大きな影響を与えます。活性酸 素の攻撃によってダメージを受けた 細胞が集まってつくられた体か、細 胞のひとつひとつがイキイキと働き 活動しているか、その違いが年齢な りの若さや、健康状態の違いとなっ て現れてくるのではないでしょうか。 脂質のとり過ぎが活性酸素の発生原因に! ところで、片頭痛の体質とされる「酸化ストレス’炎症体質」の人は、体内で過酸化脂 質が生成されやすく、これが活性酸素を過剰に発生させる原因物質となっています。 - 120 - 過酸化脂質というのは、”コレステロールや中性 脂肪”が活性酸素によって酸化されてできたもの です。これらは体内で作られるのですが、それ以 上に、そもそも過酸化脂質を多く含む加工食品な どを過剰にとる食習慣のほうに問題があると考え られます。 ポテトチップスなどのスナック菓子、インスタ ントラーメン、ピーナッツ、マヨネーズ、マグロ の缶詰(缶を開けたあと)、黒くなった古い油分に は注意が必要です。また、新しいものでもチキン フライなどの揚げ物を電子レンジで加熱すると、 とがった部分や角の部分が過酸化されることがあ ります。 精神的なストレスを受けてアドレナリンが分泌されると、血糖値(血液中のブドウ糖濃 度)を高めるために体脂肪が分解されます。このとき、体脂肪から遊離脂肪酸が生成され、 血液中に溶け出して全身に送られます。 通常、体脂肪は空腹時のエネルギー不足を補うために分解されます。ところが、精神的 なストレスからアドレナリンが分泌されて遊離脂肪酸が生成されると、エネルギーとして 消費されることがほとんどありませんので、その後ストレスから解放されると、血中の遊 離脂肪酸濃度だけが高くなった状態になってしまうのです。この遊離脂肪酸は、血小板の 凝集を促進したり脳血管壁を傷つけたりしますから、これが活性酸素を発生させる原因と なってしまいます。 遊離脂肪酸には細胞毒性(細胞を傷つける性質)が強いという特徴があります。通常は 血液中のアルブミンというタンパク質成分と結合して毒性が弱められた状態で存在してい るのですが、遊離脂肪酸が毒性を発揮して細胞を傷つけるということは、アルブミンとの 結合可能な限界量(間値)を超えてしまっているということです。 このような状態を招く原因は、間違った日々の食習慣なのです。特に、植物油(リノー ル酸)やトランス脂肪酸を多くとり過ぎると、体内での脂質代謝が充分に行われず、血液 中の遊離脂肪酸濃度が高い状態になることがわかっています。 このような状態になれば、ストレスなどのわずかな刺激であっても、片頭痛の引き金と - 121 - なる脳血管内の血小板凝集 106)が起きてしまいます。 また、植物油(リノール酸)の摂りすぎやトランス脂肪酸を摂ると、体内での脂質代謝が 遅延することになりますので、血液中の遊離脂肪酸濃 度をいつも高い状態にしてしまうことになります。 このように、血液中の遊離脂肪酸濃度が常に高い状 態であれば、ストレスなどのわずかな刺激であっても 血小板の凝集や活性酸素の発生が起こり易くなると考 えられます。 第3章 現代人の栄養摂取状況 高タンパク、高脂肪、砂糖過剰、ビタミン・ミネラル不足、低食物繊維 工業化にともなう「食の欧米化」 マクガバン・レポートは、私たち現代人の間違った食生活が、ガン・心臓病・脳卒中・ 糖尿病などの生活習慣病を引き起こしていることを明らかにしました。間違った食事とは、 一言で言えば「欧米型の食事」のことです。工業化に成功し、経済的に豊かになった国々 においては、必ずこうした欧米型の食事が普及するようになります。 ●マクガバン・レポートとは 1970 年代のアメリカでは、心臓病の死亡率が一位で、がんは二位でした。 心臓病だけでアメリカの経済はパンクしかねないと言われる程に、医療費が増大してい ため、全世界から選りすぐりの医学者・栄養学者が集め、「食事(栄養)と健康・慢性疾患 の関係」について、世界的規模での調査・研究が7年間の歳月と数千万ドルの国費を投入 して行なわれました。 - 122 - そのときに、5000 ページに及ぶ膨大な報告がなされているのですが、それを委員長の名 前をとって【マクガバン・レポート】と呼ばれています。 「マクガバン・レポート」は「諸々の慢性病は、肉食中心の誤った食生活がもたらした《食 原病》であり、薬では治らない」としています。 更に「われわれはこの事実を率直に認めて、すぐさま食事の内容を改善する必要がある」 と、7項目の食事改善の指針を打ち出しています。 指針を要約すると、高カロリー・高脂肪の食品(肉・乳製品・卵)である動物性食品を 減らし、できるだけ精製しない穀物や野菜・果物を多く摂るようにとされています。 また、この「マクガバン・レポート」を補足する形で発表されたのが「食物・栄養とが ん」に関する特別委員会の中間報告ですが、そのレポートで特に注目されるのは、「タン パク質(肉)の摂取量が増えると乳がん・子宮内膜がん・前立腺がん・結腸・直腸がん・膵 がん・胃がんなどの発生率が高まる恐れがある」として「これまでの西洋的な食事では、 病気と脂肪・タンパク摂取量との相関関係は非常に高い」と述べています。 そして最も理想的な食事は元禄時代以前の日本人の食事であることが明記されているの でありますが、元禄時代以前の食事と言いますと結局は精白しない殻類を主食とした季節 の野菜や海草や小さな魚介類といった内容です。 このレポートが発表された時、アメリカ国内は勿論、全世界にショックをもって受けと められました。そして、このような背景があるので、昨今の欧米では《日本食=健康食》 といったイメージが広がり、人気となっているのです。 日本も昭和 30 年(1955 年)頃から工業国としての道を歩み出し、それにともない国民 の食生活は大きく変化するようになりました。それまでの、ご飯・味噌汁・豆・漬物・魚 ・野菜料理といった伝統的な食事が徐々に隅に追いやられ、欧米型の食事(洋食)がとっ て代わるようになりました。トンカツやハンバーグに代表される肉料理・揚げ物料理、カ レー、スパゲッティー、ピザなどが毎日の食卓にのぼるようになりました。トーストした パンにバターやマーガリンを塗り、ハムエッグにコーヒーといった朝食が好まれるように なったのです。 多くの人々は、洋食にすることは進歩的であり、これまでの伝統食を続けることは時代 遅れであるかのように思いました。従来の日本食にはなかった欧米型の食事は、人々の目 には、まさに新鮮で進歩的で、ハイクラスの食事スタイルであるかのように映ったのです。 - 123 - また国民の体力アップを目指して政府が行った 牛乳や洋食普及のキャンペーンが、食の欧米化 を後押しすることにもなりました。 こうして欧米的な食事は、昭和 30 年以降、あ っと言う間に国民の中に浸透することになりま した。そして多くの若者の食事は洋食がメイン となり、それになじめない年寄りだけが、これ までの日本食にしがみつくといった状況が展開 することになりました。 世界中に広がる「欧米型食事」 経済発展にともなう「食生活の欧米化」という傾向は、日本にかぎらず世界中の至ると ころで等しく見られます。台湾・韓国・シンガポールといった日本に次ぐアジアの工業国 でも、また近年経済発展の著しい中国においても、欧米型の食事はすさまじい勢いで普及 し始めています。特に世界一の人口を抱える中国では、“肉食化”が急速に浸透しようと しています。こうした国々では、日本と同様に、若者や金持ち層が高価な欧米食に群がり、 これについていけない年寄りや貧しい人々が、それまでの安価な民間食を食べ続けるとい う二極の構図ができ上がっています。 欧米型の食事を象徴するのが、外資系のファーストフードの世界的フランチャイズです。 マクドナルド・ケンタッキー・ピザハッ ト・ミスタードーナツといった世界的フ ランチャイズは、まさに欧米型食事の見 本と言えます。発展途上国の人々にとっ て、こうした食事は一種の憧れともなっ ています。アメリカ資本によるファース トフードは、世界に冠たるアメリカの物 質文化の繁栄を象徴し、多くの若者の中 にアメリカン・スタンダードを植え付けるのに大きな役割を果たしています。 また欧米型の食事は、昔は一部の上流階級や金持だけに許されていた、ぜいたくな食事 - 124 - ・宮廷料理と通じるものです。経済的に豊かになるにつれ、国民の誰もが“グルメ(美食 家)”となり、かつては一握りの金持だけが食べていたのと同じ、ぜいたくな食事を求め るようになるということです。「よりおいしいものを食べたい!」という人間の食本能に よって、欧米型の食事は、物質文化の発展と並行して世界中に広がろうとしています。 病気の元凶となる「悪い食事」――欧米型食事 こうした欧米型の食事が、人々に健康をもたらすのであれば何の問題もありません。し かし食生活が欧米化すると、どこの国においても、決まって「ガン・心臓病・脳卒中」が 死因の上位(1~3位)を占めるようになるのです。欧米化した食事と現代病・成人病と の間には、はっきりとした相関関係が見られます。 マクガバン・レポートは、この点を明確にしたのです。欧米型の食事は、明らかに人々 の健康にマイナスをもたらします。それは、まさに「悪い食事の典型」なのです。 欧米型食事の傾向 では、欧米型の食事の何が具体的に悪い のでしょうか。「伝統食」によって食生活が 営まれていたときには、現在蔓延している ような病気は、ほとんどありませんでした。 その伝統食と比べて、欧米型の食事には、 どのような問題点があるのでしょうか。 悪い食事のモデルと言われる間違った傾 向とは――「肉の多食」「脂肪の摂り過ぎ」 「砂糖の摂り過ぎ」「野菜の不足」です。こ れをマクガバン・レポートが明らかにした、 欧米型食事の問題点です。これを栄養学的に分析すると――「高タンパク」「高脂肪(高 脂質)」「砂糖過剰」「ビタミン・ミネラル不足」「低食物繊維」ということになります。 このような栄養状況が、細胞機能を損ない、健康レベルを低下させ、現代病を生み出して いるのです。 - 125 - こうした食事は、どのような過程で身体を弱化さ せていくのでしょうか。最新の科学の一分野である 現代栄養学は、「欧米型食事」が、どのようなメカ ニズムで病気を引き起こしているかを科学的に明ら かにしつつあります。次から、それについて見てい くことにします。 食生活改善について・・・ • バランスのとれた食事とは・・・栄養学的条件を、すべてクリアした食事のこと • 伝統的な日本料理・長寿村の食事をモデルにした「食事改善」 • 食事改善の 10 のポイント・・・「健全な菜食主義」の指針 • 食生活改善は本当のおいしさを追及するもの・・・“正しい菜食”は決してまずくない • 食事改善の3つのステップ • 主食のパワーアップを図る・・・“5分づき米と雑穀” • 豆類・・・主食の一部(豆類を主食に含める) • メニューの基本は「主食と汁物」・・・おいしい汁物づくり • 副食のメニュー バランスのとれた食事とは・・・栄養学的条件を、すべてクリアした食事のこと 医者や栄養士はよく、バランスのとれた食事が大切であると言います。しかし、これほ どあいまいに使われている言葉はありません。バランスのとれた食事が大切であると言う 医者や栄養士自身が、それが実際にどのような食事を指すのかが分かっていないのです。 具体的な指示を出さずに、どうして患者に食生活の改善を指導することができるでしょう か。それでは口先だけのきれいごとになってしまいます。平和、平和と言っていれば、戦 争がなくなるかのように考える観念論と大差ありません。 「バランスのとれた食事」とは、 どこまでも具体的な内容によって示されるべきものです。 - 126 - 現代栄養学は、病気と健康についての徹底した科学的な探求に他なりません。この最新 の栄養学の立場からは、バランスのとれた食事とは―「これまで明らかにされた栄養学理 論を、すべて満たす食事」ということになります。 具体的に言えば、ビタミンやミネラルなどの必須栄養素・食物繊維・薬理効果の高い植 物栄養素を十分に含み、オメガ3とオメガ6の摂取比率が適正で、抗酸化栄養素・解毒栄 養素・酵素をたっぷり供給できる食事のことです。 しかし、こうした栄養学的条件をすべてクリアした食事を栄養学理論に基づいて組み立 てようとすると、それがいかに難しいことであるかがすぐに理解されます。あまりにも諸 条件が複雑に入り組み、現実にどのようにメニューを立てたらよいのか分からなくなって しまうのです。現代栄養学の理論を忠実に実践しようとすればするほど、食事の組み立て は困難をきわめ、絶望的になってしまいます。 伝統的な日本料理・長寿村の食事をモデルにした「食事改善」 栄養学の考え方を実践に移すことの難しさ 栄養学の理論が分かっても、それを実際の食事改善に結びつけるのは容易なことではあ りません。「必須栄養素を満たす」という1つの条件だけにしぼって考えてみても、その 難しさは十分に理解されるはずです。一定のカロリーの枠内で、50 種類もある必須栄養 素を過不足なく摂取できる食品の組み合わせを、短時間に、しかも毎日計算できるような 人はいないでしょう。 10 種類くらいの必須栄養素なら、何とか理論どおりの食事の組み立てはできると思う かもしれませんが、実際にメニューをつくってみると、すぐにカロリーの枠を超えてしま います。まして 50 種類もの必須栄養素や食物繊維・酵素などを完璧に満たそうとすれば、 毎日毎日、家畜なみに穀類や野菜を食べ続けなければならなくなってしまいます。 さて、ここで発想の転換が必要です―「正しい食事」は人間を健康にし、「悪い食事」 は人間に病気をもたらします。私たちの食事が正しいものかどうかは、それを続けた結果 に反映されるのです。つまり人々の健康状態は、それまでの食事が正しかったか、間違っ ていたかを示す指標と言えるのです。 こうした発想から、食事改善のヒントを探ることにしましょう。 - 127 - 伝統的な日本食への注目 現代栄養学が始まった頃、欧米の栄養学の研究者は、伝統的な日 本人の食事に注目しました。なぜなら日本は欧米と肩を並べる先進 国でありながら、国民の平均的健康状態が飛び抜けて高かったから です。ここで対象となった日本人の食事とは、現代人が一般に食べ ているようなものではなく、50 年以上も前の日本人の食事のこと です。 日本の伝統食についての研究の結果、さまざまな栄養学的事実が明らかにされることに なりました。我が国の伝統的食事の中でも、特に刺身や多種類の発酵食品・大豆食品に関 心が集まりました。そしてこれらが、日本人の健康と長寿を支えてきた大きな要因である ことが突きとめられたのです。 今や欧米では、「日本食は健康によい」という認識が定着しています。そのため、鮨・ 刺身・豆腐・納豆といった伝統的な日本食が、海外で大流行するようになっています。多 くの外国人が豆腐ステーキを食べ、すしバーにせっせと足を運んでいます。 ここに食生活改善の1つのヒントがあります。つまり食事改善の具体的モデルとして、 「伝統的な日本食」を考えてみるということです。(※伝統的な日本食とは、昭和 30 年以 前の食事のことです。) - 128 - 長寿村の食生活 また日本人全般という大きな単位ではなく、 「長寿村」 という特定の狭い地域に注目しても、食事と健康の明確 な関係を理解することができます。日本各地には昔から、 長寿村として知られる村々が点在していました。そうし た中で最も有名な長寿村が、山梨県の棡原です。(*現 在の山梨県北都留郡上野原町) 長寿村という名前が示すとおり、そこでは 90 歳、100 歳を超える老人たちを至るところで見ることができました。さらに驚くべきことは、その 年寄りたちの健康レベルの高さです。かつての棡原では、80 歳を超えた老人であっても 畑仕事を日課とし、特別な病気で苦しむようなことはありませんでした。寝たきり老人は 1人もなく、老人ボケや、糖尿病に代表される成人病とも全く無縁でした。年寄りたちは 亡くなる直前まで普通に暮らし、ある日、眠るがごとく息を引きとっていました。まさに 大往生という言葉がピッタリの、安らかな死を迎えていたのです。 これまで棡原は、多くの研究者によってさまざまな角度から研究されてきました。その 結果、棡原の人々の優れた健康状態と長寿の要因の1つが、村人の日常の食事にあったこ とが明らかにされました。 しかし戦後、バス路線の開通にともない“陸の孤島”の生活は一変しました。村の若者 たちの食生活はたちまち西洋化されたものになり、それと同時に、以前には存在しなかっ た現代病・成人病が急増するようになりました。村人の食生活は、伝統的な食事を続ける 年寄りと、加工食品や洋食などの現代的な食事をする若者に分かれ、中年層の短命化が目 立ち始めるようになってきました。やがて棡原は、かつての長寿村の面影を完全に失うこ とになってしまったのです。 この棡原における出来事は、私たちが食事改善をするに際して、重要なヒントを与えて くれます。健康と長寿が当たり前だった当時の棡原の人々と同じような食事をするならば、 彼らのような健康と長寿が得られる可能性があるということです。そして間違った食事を 続けるなら、すぐに病気で短命化するということなのです。 伝統的な日本食・長寿村の食事こそが、食事改善のモデル - 129 - 伝統的な日本人の食事と、長寿村の食事が、現実的に高い健康レベルをもたらしてきま した。したがって、こうした食事をモデルにして真似ることが、そのまま根本的な食事改 善になるのです。そして驚いたことに、日本の伝統食や長寿村の食事は、現代栄養学が明 らかにした科学的な理論と多くの点で一致しているのです。 つまり私たちが、かつての日本食や長寿村の食事をモデルにして、これにならう努力を するなら、個々の栄養学理論についてあまり神経質に考えなくても、結果として理想的な 食事を組み立てることができるのです。日本の伝統食や長寿村の食事を真似ることによっ て、大半の条件を満たす食事をつくることができるのです。 20 世紀の人類に病気をまん延させてきた欧米型の食事の特徴は、肉・油・砂糖・加工 食品が極端に多く、野菜が少ないというものです。高タンパク・高脂肪・高カロリー・低 食物繊維・低ビタミン・低ミネラルが間違った食事の特徴です。それに比べ、よい食事の モデルである昔の日本食や長寿村の食事は、見事なまでに正反対なのです。欧米型の食事 の最も対極にあります。肉料理・油料理・加工食品はめったに食卓にのぼることはなく、 多種類の野菜が日常的に摂られてきたのです。 「新・伝統食主義」の確立 これで私たちの食事改善の在り方が決まりました。「伝統的な日本食」と「長寿村の食 事」をモデルにして、これに近づけていくことが改善の指針になります。ただし単に昔の 伝統食を真似るのではなく、現代栄養学の最新の科学的知識を応用して、伝統食の利点を 引き上げた、さらに強力な伝統食でなければなりません。食生活改善とは、こうした新し い伝統食なのです。 次にそうした観点から、食事改善の具体的な方向性について見ていくことにしましょう。 食事改善の 10 のポイント・・・「健全な菜食主義」の指針 伝統的な日本食や長寿村の食事を真似てこれに近づけるためには、具体的な食事改善の 指針が必要となります。その指針とは、次の 10 のポイントにまとめられます。 - 130 - •1)加工食品・インスタント食品をできるだけ減らす •2)脂肪・油をできるだけ減らす(オメガ3を摂る) •3)肉・乳製品・卵を摂らないか、ごく少量にする •4)砂糖をごく少量にする。白砂糖を摂らない •5)主食を精製度の低い穀類にする。雑穀を加える •6)豆類を摂る。種子・ナッツ類を摂る •7)野菜をたっぷり摂る。果物を摂る。海藻を摂る •8)魚貝類を少量摂る •9)発酵食品を常に摂る •10)食材・調味料は自然で新鮮なものを使う 食生活改善は本当のおいしさを追及するもの・・・“正しい菜食”は決してまずくない 新・菜食主義(新・ベジタリズム) バランスのとれた健全な食事とは、伝統的な日本食や長寿村の食事であることを述べて きました。食生活の改善とは、こうした食事をモデルにして、それに近づける努力をする ことです。“正しい食生活”の内容は―自然と調和した「健全な菜食主義」のことだった のです。食事改善とは、現代栄養学の最新の知識を導入して健全な菜食主義を目指すこと なのです。 菜食は、まずい食事か? さて“菜食主義”などと言うと、ヨーガの行 者や、仏教の修行僧などのイメージを思い浮か べるかもしれません。食事の喜びを捨て去った、 無味乾燥した食事スタイルのように考えるかも しれません。 「菜食主義に戻せ」などと言うと、 かなりの人々が「あんなまずいものはイヤ」 「病 気になってもいいから、おいしいものを食べた - 131 - い」と言います。ファーストフードに味覚が支配された現代人にとって、“素食・菜食” はとても耐えられない食事のように映るのです。大半の人々は、よほどひどい病気にでも なって、いやおうなく食事改善を強いられないかぎり、菜食など口にすることはないでし ょう。(*素食とは、肉類を加えない野菜を中心とした料理、シンプルな普段の食事を言 います。) しかし、こうした考えはすべて間違っています。健康になるために、まずい食事を無理 をして食べる必要はありません。食事は私たちの肉体を維持するためのものである以上、 十分な栄養素を含んでいることが大切ですが、それだけでなくおいしいものでなければな りません。食事は人間にとって毎日の生活・営みの中心であり、健康と同時に、喜びと楽 しみをもたらしてくれるものなのです。“おいしさ”という喜びを与えてくれるものでな ければ、よい食事とは言えません。勧める食事は、決してまずいものではないのです。 健全な身体は、正しい食事がおいしい ファーストフードの味になれた人間でも、いっとき我慢して食事改善を始めると、食の 好みが 180 度変化するようなことが起こります。それまでおいしいと思っていたものが、 おいしくなくなるようなことがたびたび生じます。味覚が健全化して、大好物だったはず の油っこい料理や甘いお菓子・ソフトドリン クなどに、あまり魅力を感じなくなるのです。 私たちの身体は本来、健康にプラスとなる ものを“おいしい”と感じるようにつくられ ています。栄養のあるものにおいしさを感じ られなかったり、まずいと思うことは、すで に健全な味覚が失われていることを示してい ます。感覚がマヒして、正常な反応ができなくなっているのです。肉体が不健康で病的だ ったりすると、自然と不健全なもの・肉体を弱らせるようなものへと嗜好が傾くことにな るのです。 精神的に不健全な人間は、騒がしい人込みや大都会の雑踏、あるいは本能的な欲望を満 たしてくれるような歓楽街を好みます。しかしそうした人間も、いつまでも同じ環境にと どまり続けることはできません。やがて耐えられなくなり、無意識のうちに心の休まる環 - 132 - 境を求めるようになります。精神的に健全な人であれば、初めから人込みや雑踏を敬遠し、 自然と触れ合うことのできる落ち着いた環境を求めます。そこが一番居心地がよいからで す。 こうしたことが、身体の健康と味覚の関係についても言えるのです。身体が健康であれ ば、おのずと体によいものを求め、それをおいしいと感じます。身体が不健康であれば、 不健全な食べものがおいしくなります。そして病気になって破綻をきたすまで、次々と体 に悪い刺激的な食べ物を求めるようになっていくのです。 味覚革命! 食事改善は、体によい食べ物が自然においしくなり、それを常に欲しくなるようなレベ ルにまでもっていかなければなりません。これまでの「味覚異常」という習性を断ち切る ことは容易ではありませんが―そのためしばらくは、時々の楽しみとして悪いものを食べ ることがあっても―最終的には、体に悪い食品においしさを感じなくなるところにまで至 ることを目標にすべきです。 体によいものが「おいしい!」と感じられる人は、 本当に素晴らしい宝を得たと言えます。なぜならそ の人は、一生を健康に過ごすことができるからです。 どれほどお金があっても健康を買うことはできない ことを考えれば、まさに人生の宝を得たということ になります。それは、親が子供たちに与えることの できる“最高の宝”であることは間違いありません。 これから食事改善に取り組む皆さんに知っていた だきたいことは、現代人から見るとあまりにもシン プルで、おいしくなさそうに見える昔の人々の食事 も、当時の人々にとっては決してまずいものではなかったということです。彼らの誰もが、 おいしい食事を感謝して食べていたはずなのです。もし昔の人々が現代人の食べ物を口に したなら、きっとあまりのまずさに吐き出してしまうことでしょう。 こうしたことを考えると、現代人の大半、特にグルメ指向を自慢する人々の多くが、実 はたいへんな「味覚異常・味覚音痴」であることが分かります。 - 133 - 食事改善の3つのステップ 悪い食品を、きっぱりとやめる決心を固める――食事改善の”第1”ステップ 食事改善の第一歩は、体にとって悪い食品・健康に有害な食品を排除するところから始 まります。特に問題の多い食品・有害性の大きい食品は―「きっぱりとやめる」ようにし なければなりません。少し害がある程度のものは後回しにして、明らかに有害度の高いも のを真っ先に取り除くようにします。 ところが厄介なことに“有害な食品”のほとんどは、現代人、特に若者や子供たちの好 きなものばかりなのです。ハンバーグ・焼肉・ステーキ・から揚げ・フライ・コロッケ・ ピザなどの肉料理・高脂肪料理は、まさに病気になるための食べ物です。砂糖たっぷりの ケーキやソフトドリンク、添加物だらけのインスタント食品・加工食品なども病気の強力 な元凶です。 これらの有害性の大きい食品を完全に排除し ようとすると、大半の人々は1週間の食事の半 分以上に穴が空いてしまうことになるでしょ う。それは現代人の食事が、いかに有害な食品 で埋め尽くされているかということをよく示し ています。そして、こうした悪い食品をきっぱ りとやめるのが「食事改善の出発点」なのです から、食生活を変えることのたいへんさを実感されるはずです。 しかし、ここで後込みしていては先はありません。第一歩さえ踏み出せない人には、食 事改善は無理なのです。これまでどおり自分流に自由にやっていくしかありません。病気 への道を歩み続けるのか、思いきって方向転換するのかは、皆さん自身が決めることなの です。 すでにアトピーなどの病気に苦しみ、その治療のために食事改善に踏み出す場合には、 有害食品の除去は厳格でなければなりません。一定の治療期間(※6カ月~1年)は、そ れらをいっさい口にしない覚悟が必要です。例外をつくってはダメなのです。 アトピー・アレルギーなどでは“悪い食品”を摂った結果が、ただちに身体に現れます。 1回の気のゆるみが、何日にもわたって尾を引くことになります。そのため症状がしっか - 134 - り改善して安定するまで、ひたすら厳格に守っていかなければなりません。 現在、病気や不調のない健康な人が悪いものをたまに摂ることは、さほど問題ではあり ません。有害な食品も月に1~2回程度ならば、楽しみとして食べてもいいでしょう。 よい食材を手に入れるルートを確保する――食事改善の”第2”ステップ 悪い食品を排除したら、次は健康的な食品を積極的に取り入れます。有害な食品に代え て、野菜・豆・海藻・果物・ナッツなど安全で品質のよいものを増やしていきますが、そ のためには信頼できる入手ルートを確保する必要があります。農産物・海産物・調味料な ど良質の食材を、安心して買うことができる店を探さなければなりません。食生活の改善 には―「よい食材を確保する」ことが重要な問題となります。 近くにそうした店があればいいのですが、なければ宅配や生協などを利用するといった 方法もあります。真剣に探そうとするなら現在では、何らかの信頼できる入手ルートが見 つかるはずです。 メニューの立て方(食材の組み合わせ)の原則――メニューづくり3つのルール 食材が準備できたら、メニューづくりに取りかかります。言うまでもないことですが、 よい食材を集めたからといって、それだけで優れた食事ができ上がるわけではありません。 次は―「食材を、どのように組み合わせるのか」ということが問題となってきます。 食品の組み合わせによって食事全体の栄養バランスが決まりますが、それだけでなくよ いメニューであれば、食事のトータル的な力を高めることができます。その反対に食品の 組み合わせが悪ければ、食事のすべてを台なしにしてしまうことにもなりかねません。 メニューをつくるに際して、必ず守らなければならない3つのルールがあります。そのル ールをしっかり覚え、常にそれを指標としてメニューづくりをします。次に、その3つの ルールについて説明していきます。 (1)主食と副食の比率を守る―ルール1 伝統的な食事では例外なく、主食と副食の区別が明確になっています。そしていずれの - 135 - 民族においても、主食の位置は穀類によって占められています。日本人における主食は言 うまでもなく“米”です。 「主食」とは文字どおり食事の中心となるものであり、栄養的に優れているだけでなく、 毎日食べても飽きない食材でなければなりません。めん類やパンは、いくら好きな人でも 食べ続ければ飽きてしまいますが、米はそうではありません。日本人にとって“米”は、 毎日おいしく食べられる唯一の食品なのです。そうした理想的な食材である米に麦や雑穀 を加えれば、栄養的にも味覚的にも「最高の主食」になるのです。 主食は、食事全体の半分以上(約6割)を占めるようにしなければなりません。主食と なる穀類にはカロリー栄養素であるデンプンが多く含まれているため、主食をしっかり摂 っていれば、他の悪い食品を食べることができなくなります。また主食だけでかなりの必 須栄養素が補給され、栄養バランスの土台ができ上がります。 このように主食によって基本的な栄養素は摂取しますが、不足分は副食によって補いま す。主食の足らないところを補うのが「副食」の役割です。食事の核である主食と、それ を引き立てる副食の組み合わせによって、食事全体のバランスが強化されるようになるの です。 しかし何といっても重要なのは―「主食がしっかりしている」ということです。もし主 食が必須栄養素を大きく欠乏させていれば、いくら副食を補っても食事全体の栄養バラン スをとることは難しくなります。反対にしっかりした主食が食事の中心的位置を占めてい れば、多少副食が貧弱であったり乱れていても、深刻な問題とならずにすむのです。 欧米型の食事では、主食と副食の区別が明確ではありません。それどころか本来は副食 であるはずの肉料理などが、メインディッシュとして食事の中心を占めるようになってい ます。この点から、すでに大きく狂っているのです。副食であるおかずの方に、より多く の栄養素があると勘違いしている人たちは、「ご飯を減らして、おかずを多く摂れ」など と言いますが、主食の重要性が分かれば―「おかずは残してもいいが、ご飯だけはしっか り食べなさい」ということになるのです。 主食の中には穀類だけでなく、豆や種子も含めます。「豆・種子類」は、本質的には穀 類と同じ性質をもった食品だからです。穀類・豆・種子類は、自分たちの種の子孫を残す ために必要な栄養素や生命力をすべてその中に備えています。これらが私たち人類に、“ 天の恵み”として健康と生命力をもたらしてくれることになるのです。 主食とは、単にデンプンという物質的エネルギー源を補給するだけのものではありません。 - 136 - もっと広く、私たちの生命活動を支えるエネルギーの源というようにとらえるべきなので す。その意味で主食には、豆・種子類を含めるのです。 食事の土台を固める主食と、それを補う副食の理想的な比率は―「6:4」です。つまり 主食が食事全体の約 60 %を、副食が約 40 %を占めるようにするということです。 (2)食材間の比率を守る(「穀類」「豆・種子類」「野菜・海藻類」「魚貝類」の比率)―ル ール2 さらに私たちの食事は、摂取する食品の種類別に細分化されます。各食品の比率は、穀 類が全体の約 50 %、豆・種子類が 10 %で、これらが主食を構成し、合わせて 60 %とい うことになります。副食 40 %のうち、30 %は野菜・海藻類で、残り 10 %が魚貝類(動 物性食品)という比率になります。つまり「穀類」「豆・種子類」「野菜・海藻類」「魚貝 類」の比率は―「5:1:3:1」ということになります。 食卓に並ぶ食品が、こうした比率になっているかチェックしてみましょう。(※1日の 食事をとおしてチェックしたとき、食材間の比率は守られているでしょうか。また1週間 分の食事は、適正な比率になっているでしょうか。) (3)植物性食品と動物性食品の比率を守る―ルール3 正しい食事の一番の原則は、「人間の体に適合した食材の組み合わせからなっている」 ということです。動物の歯は、それぞれの動物の“食性”に適した形状をしています。ラ イオンなどの肉食動物は、生肉を食べるのにふさわしい歯をもっています。ゾウなどの草 食動物は、草を食べるのにふさわしい歯をもっています。もし、これらの動物たちが自分 の歯に合わない食べ物を摂るとするなら、生きていくことはできなくなります。 こうした観点から見ていくと、私たち人間には、どのような食べ物がふさわしいのかが 明らかにされます。結論を言えば人間の歯は―「穀類」と多種類の「野菜類」「果物」な どを摂って生きていくようにつくられています。この事実は、人間はもともと植物性食品 摂取動物であることを示しています。人間は決してライオンのような肉食動物ではないの です。 したがって人間が、菜食中心の食事をやめて肉食に偏るならば、健康を損なうことは当 - 137 - 然です。まさに現代人は、“肉類過剰”の食生活によって多くの病気を引き起こしている のです。一昔前の栄養学では、「デンプンよりタンパク質を多く摂れ」「米を減らして肉 を摂れ」というようなことが言われましたが、それは根本的に間違っています。 人間の歯の構成からすると、植物性食品だけでよいということになります。現在の日本 人は、動物性食品の割合をもっと少なくすべきです。日本人は、米や野菜の栽培に適した 風土の中で“伝統食”を築いてきました。そこでは植物性食品と動物性食品の摂取比率が ―ほぼ「9:1」となっており、圧倒的に植物性食品にウエイトが置かれていたのです。 日本の伝統食は完璧なベジタリアンとまではいかなくても、きわめて理想に近い形にな っています。伝統食の比率に近づけることが、メニューづくりにおける大切な指針となり ます。 つまり正しい食事とは―「動物性食品をまったく摂らないか、ほんの少しだけ摂る菜食」 ということです。そして長寿村の食事は、まさにこの原則と一致したものになっています。 (※動物性食品は多くても 10 %までということです。) それに対して大半の現代人が好む欧米型の食事は、植物性食品と動物性食品の比率が大 きく逆転しています。 メニューづくりの3つのルールを図示すると、次のようになります。 - 138 - 主食のパワーアップを図る・・・“5分づき米と雑穀” 食事のよし悪しは、主食によって決まる 食事のよし悪しは、「主食によって決まる」と言っても間違いありません。主食でしっ かりと必須栄養素を固めることができれば、あとは副食として、汁物と少しのおかずがあ ればよいということになります。副食は添え物として、主食の不足分を補うだけで十分な のです。 このように食事の質を決定してしまう主食には、パワーのある穀類を用いることです。 特に主食の核となる米は、精製度の低い「茶色い米」でなければなりません。必須栄養素 や食物繊維・植物栄養素をたっぷり含んだ米でなければ、食事の土台を固めることはでき - 139 - ません。 食事改善においては何よりも―「主食としての米の力をアップさせる」ことが重要なの です。 玄米より5分づき米 自然食愛好家の間では一般に玄米が勧められま すが、必ずしも玄米でなければならないというこ とではありません。自然食やマクロビオティック では、玄米はよく噛めば消化不良を起こすことは ないとされ、ひたすら噛むことが奨励されますが、 現実にはよく噛んでも“消化不良”を起こす人が 多いのです。 玄米を食べるとガスが止まらないとか、吹き出 物ができるというような消化不良の兆候がある人は、玄米は避けた方が無難です。豆類を たくさん食べるとガスがたまりますが、玄米も本質的には豆類と同じ種子であり、大量に 摂ると、豆類を食べたのと同じことになるのです。 また 100 %の玄米食にすると、ひたすら噛まなければならないことから、食卓での楽し い会話が失われがちになります。食事は修行の場ではなく、笑いの絶えない楽しい場であ るべきです。 玄米の調理には一般に圧力釜が使われますが、せっかくの玄米も圧力釜による高温化に よって必須栄養素(ビタミン)の損失が多くなります。5分づき米であれば、ごく普通の 釜で炊くことができます。昔は圧力釜などなかったのです。 したがって主食の基本としては、玄米よりも「5分づき米」を勧めます。5分づき米は 確かに玄米と比べ栄養素が少なくなっていますが、それは麦や雑穀を多めに加えることで 十分に補えます。幼児から高齢者まで無理なく食べられる主食としては、5分づき米と雑 穀の取り合わせが最適です。(※大人だけの家庭であれば、3分づき米も勧められます。) 多種類の雑穀を加える - 140 - 米が主食として広く日本人の間に普及したのは明治以降で、それまで米は、貴族や武士 など一部の上流階級の人々だけが常食できるものでした。一般の人々、特に農民は、麦や ヒエ・アワ・キビなどの雑穀を食べていました。米が主食として一般化した後も、農漁村 の人々は、米に雑穀や芋・豆などを混ぜて食べていました。荒れ地にも育つ雑穀類は、米 に劣らない高い栄養価・生命力をもっており、これによって昔の人々の健康が守られてき たのです。 したがって今、私たちが食事改善において主食のパワーアップを図るには、 「雑穀の力」 を利用すべきです。米に麦や雑穀を混ぜてみると栄養価がさらに高まり、おいしさが増大 することが分かります。風味やコクが加わって、まさに“充実した主食”になるのです。 米や雑穀以外の穀類は、時々に 米は毎日食べても飽きない主食ですが、ときには炊き込みご飯・混ぜご飯・雑炊・おか ゆなどのように調理法を工夫すれば、さらに食事が楽しくなります。また雑煮・めん類・ パスタ類などを取り入れると、いっそう食欲が増すようになります。 ただし、こうした「バリエーションの主食」はあくまでも時々にとどめます。特に米以 外の穀類を使った主食は、うどんやそばなどの伝統的なめん類であっても毎日のように摂 ることは勧められません。米に雑穀を合わせたほどの栄養価はないからです。(※めん類 は週に1~2度程度にします。) 毎朝の主食をパンにするようなことをしたら、たとえそれが全粒粉のものであっても“ 食事改善”は根底から崩れてしまいます。小麦は米に比べて栄養価が低いだけでなく、パ ン食には動物性食品や油を使った洋風料理の方が合うからです。(※小麦粉に雑穀を混ぜ たパンも出回っていますが、食事としては勧められません。ゴマペーストを塗って野菜サ ンドにしたり、スープを添えるなどすれば軽い食事になりますが、毎日の食事メニューに 組み込んでは食事改善はできません。) アトピー・アレルギーの人は、小麦製品やそばには注意が必要です。アレルゲンテスト で反応の見られない人でも、ひんぱんに食べたり、一度に大量に摂ることは避けなければ なりません。また玄米もちにたっぷりの野菜や魚貝を加えた雑煮はよい主食になりますが、 アミノ酸の多いもち米は、うるち米に比べアレルギーを起こしやすいので、人によっては たくさん摂らないようにします。 - 141 - 豆類・・・主食の一部(豆類を主食に含める) 豆類による、必須アミノ酸の補給 完全な菜食にしたときの唯一の問題点は、必須アミノ酸(タンパク質)の欠乏を引き起 こしやすくなるということです。この場合、豆類をしっかり摂取すれば穀類に欠けたアミ ノ酸が補われ、不足は解消されます。 それも主食が「精製度の低い米と雑穀」 によって形成されているならば、かなりの 必須アミノ酸が含まれているため「豆類」 は少しでよいことになります。 しかし主食が小麦の場合には、必須アミ ノ酸の不足は大きくなり、それを補うため には大量の豆類が必要とされます。穀類の 3分の1~2分の1といった量を摂らなければなりません。それが補給できなければアミ ノ酸欠乏を引き起こし、動物食品への欲求が高まることになります。 米と雑穀を主食にした場合には、10 %程度の豆類を摂るだけで必須アミノ酸の不足分 は補えるようになります。それを日本人は、主として大豆から摂取してきたのです。(※ 何度も述べてきましたが、アミノ酸の補給は「米と豆と少量の魚」で十分です。ところが 現代では米の消費量は減少し、パンやパスタ類などの小麦製品が好まれるようになってい ます。そのうえ豆類の摂取も減って“肉食化”が進んでいるのです。) 「大豆の発酵食品」は、民族の叡知の結晶 一般に“豆”には消化吸収が悪いという欠点がありますが、この欠点を民族的な知恵と して解決してきたのが「大豆の発酵食品」です。味噌やしょう油・納豆などは、日本人の 食生活に欠かすことのできない食品です。 刺身と並ぶ日本食の最高傑作の1つが“納豆”です。納豆は日本が世界に誇るべき発酵 食品です。納豆は優れたアミノ酸の補給源であるだけでなく、良質のビタミン・ミネラル 源でもあり、腸内細菌のバランスを正常化するなど、さまざまな効用があります。 - 142 - 納豆は味噌汁と同じように、毎日1回は必ず摂りたい食品です。納豆は食べる直前に冷 蔵庫から出すのではなく、30 分以上、常温中に置いておきます。すると納豆菌が増殖し て驚くほどやわらかく、粘りも増しておいしくなります。 味噌や納豆などの大豆の発酵食品は、普通の煮豆などに比べ、はるかに消化吸収がよく なっています。こうした栄養学的な観点から、味噌や味噌を使った料理・納豆は、毎日の 食卓になくてはならない食品と言えます。(※タンパク質は、一度に大量に摂取しても長 時間体内でキープしておくことはできません。そのため豆類は、1日に2回は摂るように します。) 他の豆類のメニュー 豆類のメニューとしては、多種類の煮豆や炒り豆・スープ・豆モヤシなどがあります。 豆腐や湯葉・豆乳・黄粉などの大豆製品も、利用したい食品です。 豆類は適量ならば体によい必須の食品ですが、食べ過ぎるとタンパク質が腸内で異常発 酵し、ガスがたまる原因になります。そうなれば肉を食べたのと同じ弊害が生じることに なるので、気をつけなければなりません。 豆・種子類の中には、アーモンドやクルミなどの「ナッツ類」も含めます。ナッツ類は 高脂肪食品ですので、できるだけローストしていない生のままで摂るようにします。加熱 による酸化を防ぐためです。(※アーモンドやクルミなどのように生で食べられるナッツ もあれば、クリやギンナンのように生では食べられないナッツもあります。) ナッツ類は少量で栄養価の高い食品ですので、おいしいからといって食べ過ぎないよう にしなければなりません。おやつとして少量つまんだり、砕いてサラダに飾ったり、すり つぶして味噌に混ぜるなどして摂るようにします。 - 143 - メニューの基本は「主食と汁物」・・・おいしい汁物づくり ご飯と味噌汁の組み合わせは最高 ご飯と味噌汁の組み合わせは栄養学的に見たとき最高で、1日に1回は必ず食卓に用意 したいものです。ご飯と味噌汁さえあれば、あとは1~2品の野菜料理と漬物・小魚をそ えるだけで立派な食事になります。ご飯と味噌汁の組み合わせがないと食事全体のバラン スをとるのが難しくなり、おかずづくりが急にたいへんになるのです。極端な言い方をす れば、毎回ご飯と味噌汁を用意すれば、あれこれメニューを考えなくてもよいということ になります。 また食が細くて、あまり食べられない人にとっては、 力のある主食と味噌汁があれば、健康維持のための最 低ラインの栄養素は何とか確保できることになります。 ご飯と味噌汁の組み合わせは、最も合理的なメニュー づくりの基本なのです。 味噌汁は、調理の観点から見たときにも重要な一品です。汁の中に季節のさまざまな野 菜や海藻・魚貝類を入れるだけで、メニューのレパートリーを大きく増やすことができる ようになります。それだけで毎日のメニューに変化をつけることができるのです。 このように味噌汁は、実に便利な汁物です。ご飯に飽きがこないように、味噌汁も飽き がこない優れた料理です。味噌汁があるだけで、どれほどメニューづくりが楽になり、健 全な食事を簡単に整えられるか、その効果は計りしれません。 だしと味噌には、こだわりが大切 さて問題は、誰もが欲しくなるような味噌汁をつくることができるか、ということです。 おいしい味噌汁をつくるためには、「だしと味噌」にこだわることが必要です。ここで本 当のグルメかどうかの真価が問われます。 味噌汁の調理の秘訣は、ひとえに“だしづくり”にかかっています。味噌汁のだしの基 本は、良質のカツオ節と昆布です。それをベースに時にはシイタケを加えたり、たまには - 144 - 煮干しなどを使うのもよいでしょう。 味噌は、材料を吟味した天然醸造の高級品を選びます。米味噌・麦味噌・豆味噌など、 好みに合わせて用います。 だしと味噌には、お金を惜しんではなりません。味噌汁さえ上手につくれるようになれ ば、“味覚異常”の現代人も無条件に日本食が好きになり、食事改善がスムーズに進めら れるようになります。 味噌汁以外の、おいしい汁物づくり おいしい汁物があるかどうかが、食事のよし悪しを大きく左右します。最高の汁物は今 述べたように味噌汁ですが、この他にも多種類の吸物(すまし汁)やスープなどがありま す。 汁物のおいしさ、特に和風の汁物の味を決定するのは、言うまでもなく“だし”です。 カツオ節・昆布・干しシイタケ・干しエビ・煮干しなどの天然の素材からは、インスタン トでは味わえない素晴らしいだしが取れます。汁物は、主食のご飯を引き立てる大切な脇 役です。良質のだしと調味料を使い、取り合わせの具に変化をつければ、メニューのレパ ートリーが一気に広がります。おいしい汁物があれば、それだけで食事の満足度が高まり ます。 調味だしやスープストックをつくっておく―調理の工夫 調理の工夫として、時間のあるときに「調味だし」をつくっておくことを勧めます。 (* カツオ節・昆布・しょう油・酒で濃いめに調味した“だし汁”をつくって冷蔵庫に入れて おけば、4日~1週間くらい保存が効きます。) この調味だしがあれば、それを薄めるだけで、簡単においしい料理をつくることができ ます。薄めて吸い物にしたり、うどんやそばのつけ汁・かけ汁にしたり、根菜を煮たり、 お浸しの味付けなどに使うことができます。 洋風スープを手軽においしくつくるためには、くず野菜を煮込んで野菜のスープストッ クをつくり、冷凍庫に保存しておきます。これをベースにすれば、栄養的に充実したコク のあるスープをつくることができます。 - 145 - こうした「調味だし」や「野菜のスープストック」を常備しておけば、調理の時間を短 縮することができます。忙しいときにも手抜きをすることなく、栄養的にも味覚的にも優 れた食事を整えることができます。食事改善においては―「上手なだしのつくり方」をぜ ひマスターしてください。 副食のメニュー 副食の中心は「野菜」 主食の穀類(米・雑穀・豆)についで重要な食品は「野菜」です。野菜は副食(おかず) の中心に置く食品で、主食をしっかり固めることができたら、あとはいかに多くの野菜を 摂るようにするかが問題です。食事全体に 占める野菜の量は約 30 %が理想ですが、こ れは大半の現代人にとってはかなりの量に なります。 野菜をたくさん食べられる人、野菜の好 きな人は例外なく健康です。野菜の好き嫌 いは、健康度を知るための最も簡単で確実 な指標です。常にできるだけ多くの野菜を 摂取することに意識を向けなければなりません。 野菜の中でも、特に季節の野菜には栄養素がたくさん含まれているため優先的に用いる ようにします。(※野菜料理の半分は、季節の野菜・旬の野菜を使うようにします。) 加熱しないで食べられるものは、できるかぎり“生”で摂ります。加熱による栄養素の 損失を防ぐためです。モヤシや生野菜のサラダは、ビタミン・ミネラル・植物栄養素・酵 素をたっぷり補給できるよい料理です。生野菜をそのままでは摂りづらいという場合は、 少し塩をふってしんなりさせたり、浅漬にすると食べやすくなります。胃腸が弱くて生野 菜が摂れないような場合には、自家製の野菜ジュースが勧められます。 ごく短時間だけ加熱した野菜は、大半の酵素は失われているものの、ビタミン類の損失 は最少限に抑えられています。ほとんど水を加えずにつくる「蒸し野菜」は、理想的な野 菜の調理法です。野菜自体の水分を利用することで、油を使わずに簡単に、栄養豊かな野 - 146 - 菜料理をつくることができます。キャベツ・ブロッコリー・カリフラワー・アスパラガス ・小松菜など、少々の塩だけで野菜のうま味が引き出され、おいしく食べられます。さら に干しエビを加えたりドレッシングを工夫すれば味の変化も楽しめます。(※蒸し野菜の 調理には、ステンレスの“多層構造鍋”が向いています。大半の野菜は数分で調理できま す。) 同じく厚手の鍋でつくる「焼き野菜」も勧められます。カボチャ・ジャガ芋・サツマ芋 ・玉ネギなど、切ってただ焼くだけの簡単さです。時々ならば野菜の炒めものもいいです が、その場合はオリーブ油を使います。 野菜の煮物は、必ず煮汁ごと食べるようにします。汁の中にミネラルが溶け出している からです。煮物のように長時間加熱した野菜は酵素だけでなくビタミンなどの一部も失わ れていますが、汁もすべて摂るようにすれば、多くのミネラルを補給することができます。 野菜料理のおいしさは―「野菜に含まれる栄養素を、いかに損なわずに調理するか」と いうことにかかっています。栄養素があるものは、無条件においしいのです。もう1つは ―「調味料やドレッシングを工夫する」ということです。「生野菜」と「温野菜(加熱野 菜)」を準備すれば、2品の副食が整います。(※具体的な調理法については「クッキン グ・ブック」を参考にしてください。) 食が細くてあまり野菜を食べられない人がいますが、温野菜なら量を摂ることができま す。特に野菜のスープは、少食の方でも摂りやすいものです。味噌汁の中に野菜の具を多 めに入れるだけでも、充実した野菜料理になります。 ただし酵素は失われていますから、ジュースで補うようにします。自家製の野菜ジュー スは―「栄養素が失われていない」「酵素が生きている」「少ない量に栄養素が凝縮して いる」といった点で、野菜摂取の最も合理的な方法と言えます。ガンなどの栄養療法では 大量の野菜ジュースが強力な手段となり、高い治療効果を上げています。 子供は一般的に野菜が嫌いですが、無理じいする必要はありません。調理を工夫したり、 好きな野菜だけを食べさせるなどして、結果的にたくさんの野菜を摂れるようにするのが よいのです。嫌がる野菜を何とか食べさせようとするより先に、油料理・肉料理・乳製品 ・砂糖などを排除することの方が重要です。「ご飯と味噌汁」がしっかり摂れていれば、 あとは好きな野菜だけを食べていても大きな問題は生じません。 「酵素」を多く補給できる副食メニューを増やす - 147 - 酵素を補給するためには「食品を生で摂る」ようにしなければなりません。酵素の研究 者の中には、食事全体に占める生の食品の比率を 75 %程度にするのがよいと言う人がい ます。(※生の食品と加熱した食品を「3:1」の割合で摂るということです。) 酵素の摂取を徹底しようとするなら、そこまで生の食品を増やす必要があるということ ですが、重病人の治療食ならともかく、日常の食事としてはまず不可能です。しかし、で きるだけ生の食品を多く摂る工夫はしなければなりません。そのためには―「野菜の半分 を生で摂る」ことを目安にしたらよいでしょう。さらに酵素をたっぷり補給するためには ―「発酵食品を増やす」ことが効果的です。副食には必ず1~2品の発酵食品を加えるよ うにします。(※納豆と漬物をそえるだけで、簡単に2品の発酵食品を摂ることができま す。) 納豆やぬか漬などの漬物は、酵素の補給源としてとても優れています。さまざまなモヤ シを使ったサラダや大根おろし・とろろ汁・酢の物なども勧められます。また生味噌を使 った味噌だれやドレッシングなども、酵素の供給源となります。 さらに忘れてならないのは“刺身”です。刺身に大根やタデ・大葉などのツマをたっぷ りそえれば、酵素もオメガ3脂肪酸も同時にしっかり摂ることができます。(※果物も優 れた酵素源ですが、食事には加えません。あとで述べるように“間食”として摂ります。) 動物性食品について―多過ぎないことが大切 ここでの動物性食品とは、肉ではなく「魚貝類」を指します。魚の食べ方として最も優 れているのが、刺身や酢の物などです。アサリは味噌汁の具として最高ですが、魚貝類は 生でも煮ても焼いても、おいしい食品です。 しかし動物性食品は、少量に抑えるべきです。1日に摂っていい量は、中サイズのアジ なら1匹、小さめのサケの切り身なら2切程度です。こうしてみると食事全体の中で動物 性食品の占める割合が、いかに少ないかが分かります。これまでの食事と比較して、ずい ぶん動物性食品を減らさなければならないことが理解できるはずです。「動物性食品は食 事全体の 10 %以下にとどめる」というのが原則であり、同時に分かりやすい目安です。 “卵”については、健康な人でも1週間に1~2個以上は摂らないようにします。卵は安 価で手軽に調理できるため、現代人は明らかに摂り過ぎています。アレルギーの人にとっ ては卵がアレルゲンになることが多く、避けることが必要です。 - 148 - “牛乳”については、すでに述べたとおりです。栄養豊富なよい食品という考えを根底か ら変えなければなりません。牛乳は卵と同じようにアレルゲンになるだけでなく、脂肪(バ ター)が大量に含まれ、生活習慣病・成人病を引き起こす原因になります。日本人の多く は乳糖不耐症のために牛乳を摂ると下痢をしますが、そうした人には牛乳はいっさい必要 のない食品であるどころか、健康に大きなマイナスをもたらす“悪い食品”なのです。 これまで牛乳は優れたカルシウム源のように言われてきましたが、むしろ多くの弊害を 生み出しています。牛乳からカルシウムを摂取しようとするのは、時代遅れの間違った考 え方です。もし子供がアレルギーの場合には、学校給食の牛乳も避けるようにしなければ なりません。卵も牛乳も肉類同様、できるかぎり控えた方がいい食品なのです。 では“ヨーグルト”などの発酵乳製品はどうかということですが、これについてもすで に述べたとおり、無条件に勧められるものではありません。ヨーグルトに頼って腸内環境 を改善しようと毎日、大量に摂るとするなら、「食事全体のバランスを崩す」ことになっ てしまいます。ヨーグルトだけで脂肪やタンパク質の必要量が満たされ、他の必須の食品 を摂る余地がなくなってしまいます。 日本には多くの優れた「発酵食品」があり、それらを上手に食事に取り入れるなら、食 事全体のバランスを保ったまま腸内環境をよくすることができるのです。日常摂取する食 品の構成が日本と全く異なる習慣をもつ人々においては、ヨーグルトを無理なく食事の中 に組み込めるかもしれませんが、日本人がそれ をすると、他の食品の構成をすっかり変えなけ ればならなくなります。 時々の楽しみとしてプレーン・ヨーグルトを 摂るだけなら問題はないでしょうが、“乳酸菌が 多い”という1つの長所だけを取り上げて、ヨ ーグルトの大量摂取を勧めるのは賛成できませ ん。 健全な食事・正しい食事とは――「1つ1つの食品が、全体の中にうまく溶け込み、バ ランスを保っているもの」を言います。ある食品を加えることで食事全体のバランス・食 品構成が狂ってしまうなら、それはよい食品ではなくなってしまいます。 - 149 - 第4章 片頭痛の食事療法の実際 1.片頭痛治療における食事療法の原則 ミトコンドリアを効果的に増やすには 片頭痛とは、遺伝素因である「ミトコンドリア働きの悪さ」に、”環境因子”として、 生活習慣(とくに食生活)が原因で”さらにミトコンドリアの働きが悪くなって”、「酸 化ストレス・炎症体質」を形成することにより引き起こされる疾患であり、生活習慣病の 一種です。 ミトコンドリアは、糖と脂肪と酸素から エネルギーを生成する働きを持っていま す。 食べ過ぎるとミトコンドリアは、栄養が 体に行き渡っているため、怠け始めます。 ミトコンドリアが働いてくれないと、体 に入ってくる糖や脂肪はエネルギーに変換 されにくくなってしまいます。 ミトコンドリアは、食事から摂取した栄 養をエネルギーに変えてくれるからです。 余った糖は血液に流れ込み、分解されていない脂肪は細胞に蓄積し始め、肥満へと繋が ります。ミトコンドリアはエネルギーを作り出す時に酸素を必要としますが、この酸素が 活性酸素に変化して片頭痛に繋がります。 ミトコンドリアを増やすには、空腹が最も重要です。 ミトコンドリアは、エネルギーが不足している時や、もっとエネルギーの需要が必要な 時に活性化して増殖します。 空腹になると、体はもっとエネルギーを作らなければと認識してミトコンドリアを増や し、エネルギーを作ろうとするのです。 - 150 - ■お腹をすかせて若くなる「週末断食」のすすめ 88) 鶴は千年、亀は万年!? 実はこれは理に適っているのをご存知 でしょうか? 亀は動きが遅く、エネルギーの消費が少 ない徹底した省エネライフスタイルのため 活性酸素の発生を大幅に抑えることができ るのです。そのため、細胞へのダメージが 少なく長寿でいられるのです。ちなみに鶴 は、ミトコンドリアの数が多く、非常に多 くのエネルギーを作るのに対して活性酸素 の発生が少ないためだと言われています。 なるほど!だから亀は長生きなんです!! 自由に食べ物を食べさせた猿とカロリーを 70 %に抑えた猿との二つの群に分け、20 年 間比較した研究がありました。カロリー制限した猿は、そうでない群に比べ、生活習慣病 や老年病で亡くなる数が 1/3 程度で、しわや白髪が少なく、目の輝きも違っていたといい ます。猿は人間と最も近い動物ですので、カロリーを抑えると若々しく長寿になると考え られます。 しかし、実際に 20 年もの間、3割も カロリーを減らし続けるのは至難の業で す。その後、研究は進み、総カロリーを 減らすよりもミトコンドリアを増やし長 寿遺伝子のスイッチをオンにすることが 大切なこと、そしてミトコンドリアを増 やすには、空腹感が最も重要であること も分かってきました。 - 151 - 更なる実験の結果、20 年間カロリーを7割に抑え続けるのと、週2日、30 %のカロリ ーにすることでは同じ効果があることが分かりました。カロリー制限に捉われるとストレ スに繋がりますが、毎日食事制限をしなくても、時々空腹感を味わう「プチ週末断食」を お勧めします。空腹になると体はもっとエネルギーを作らなければと認識してミトコンド リアを増やし、エネルギーを作ろうとするのです。 難しく考える必要はありません。平日は普段通りの食事を摂り、週末の1~2日だけ3 割程度のカロリーにすれば良いのです。例えば朝は野菜ジュース、昼はざるそばなどの軽 食、軽めの夕食にする程度で十分です。経験者の方はいずれも体調が良くなったと言いま す。但し、回復期が肝心ですから、回復期にはいきなり普通の食事をせずに徐々に普通の 食事レベルに戻していくようにして下さい。 2.MBT療法(DASCH diet) 1990 年代に鳥取大学医学部・神経内科の下村登規夫先生は以下のような DASCH diet を提唱されておられました。そして、これが片頭痛の食事療法の基本とされていました。 片頭痛患者においてミトコンドリア機能の低下,脳内マグネシウムの低下とマグネシウ ムの発作抑制作用,脳内セロトニン減少の可能性,血小板内ラジカルスカベンジャー(S OD)の低下などの臨床的根拠(エビデンス)があることから、頭痛に関しては dietary approach to stop chronic headache (DASCH )と呼ぶ,食生活を中心とする生活習慣を見直す ことで片頭痛治療を提唱されました. DASCH diet では上述のエビデンスに基づいてミトコンドリア機能を高める目的でビタ ミン B2 を摂取し,マグネシウムを摂取します.さらにラジカルスカベンジャーとしてβ カロチン,ビタミンEおよびCなどを摂取します.脳内セロトニンを増加させるため,セ ロトニンの前駆体となるアミノ酸のトリプトファンを摂取するように指導します.具体的 な食物としては,ビタミン B2,E,Cなどおよびβカロチンを多く含む緑黄色野菜,果 物,海苔,うなぎなど,マグネシウムを多く含む大豆製品,ほうれんそう,柿,魚介類, トリプトファンを多く含む大豆製品,卵(卵黄),脱脂粉乳,牛乳などの乳製品やバナナ などをできるだけ多く摂取するよう指導する.緑黄色野菜などの量は体重が約 60kg の成 人で 300g/日以上を目標とします. - 152 - 実際にどの程度摂取する必要があるのかということは個人により異なりますので,患者 に1週間分の食事内容を記録してもらい,その内容から不足している栄養素を判断して食 事指導を行うのがよいとされます。DASCH diet は非常に単純ですが,ほとんどの頭痛患 者は DASCH diet とは大きく異なる生活をしていることが多く.したがって,DASCH diet を行うだけでも生活習慣をかなり変えることになります.ただし,ストレスを感じるほど に厳格な diet を行うと逆効果になることがありますので緩やかな diet を行うようにしま す.錠剤のビタミン剤(合成品)はあまり効果が期待できないことがあり、あくまでも食 品から摂取する栄養素が中心となります。 具体的には、次の5つを改善することで、およそ9割の片頭痛が改善するとされていま す。ただし、最低でも3ヶ月、なるべく半年以上続けることが大切です。 しだいに頭痛発作の回数が少なくなるなどの改善が見られるでしょう。 1 マグネシウムの補充 2 セロトニンの改善 3 ミトコンドリアの機能改善 4 フリーラジカルスカベンジャーの増加 5 自律神経の安定 ・・運動療法で述べます - 153 - ここでは、これらの4つの項目について説明します。 1.マグネシウムの補充 マグネシウムは、生命活動に必要な体内代謝を起こす「酵素」のサポートをします。 300 種類以上もある酵素の補酵素として働くのです。 さらに最初に述べましたように、マグネシウムは「抗ストレスミネラル」と呼ばれ、カ ルシウムとともに神経細胞の活動にかかわり、神経活動を安定させます。また、セロトニ ンを作るために必要なミネラルとしても重要な役割を果たしています。 神経細胞は軸索といわれる非常に長い手のような突起を持っています。マグネシウムが 不足すると、この軸索が刺激に対して過敏になり、刺激の伝わる速度が速くなります。 すると、震え(振戦)や筋肉の痙攣などを生じることになります。 また、脳細胞が興奮しやすくなり、イライラ感や攻撃性を増し、めまい、運動失調、う つ、失見当識(時間や方向感覚が失われる)といった症状を引き起こします。血管も痙攣 しやすくなって痛みに敏感になり、頭痛がひどくなります。 このほかにもマグネシウムには多くの重要な働きがあり、人間の健康を維持するため には必要不可欠なミネラルです。しかし、カルシウムのように直接的作用の強いミネラル とは異なり、あくまでも裏方的な働きが多く、あまり注目して語られることのないミネラ ルでもあります。 通常、食事で摂取されたマグネシウムの 20 ~ 50 %が小腸で吸収され、残りは便として 排泄されてしまいます。マグネシウムは細胞の中に蓄えられ、血液中には微量です。 一度にたくさんのマグネシウムをとっても、血中のマグネシウム濃度は上がりませんし、 細胞内のマグネシウム不足が解消されることもありません。恒常的に充分な量をとる食生 活をし、マグネシウム不足を徐々に改善していくことが必要です。 マグネシウムを一度に多くとり過ぎると下痢の症状があらわれます。しかし、他のミネ ラル分と比較すると、食事ごとの摂取可能量の見極めは容易であり、片頭痛の人は下痢を 起こさない範囲内で、できれば1日に200~400ミリグラムのマグネシウムを追加的 にとるようにすることが勧められます。(マグネシウム液による)。 ちなみに、マグネシウム不足になると瞼がピクピクする、足がつるといった症状が出ま - 154 - す。こんなときは200ミリグラム程度のマグネシウムをとると、翌日にはほとんど改善 されます。 片頭痛では、ミネラルの1種であるマグネシウムの不足が知られています。頭痛発作中 の患者の脳内マグネシウム濃度を調べると、30%から50%の人が、通常より低いこと は実験によりわかっています。 マグネシウムは、血管の収縮を抑えたり、血小板が凝集するのを防ぐなど、血液の循環 機能を整えます。そのため、マグネシウムが不足すると血管が痙攣しやすくなり、痛みに 敏感になるので頭痛がひどくなってきます。 マグネシウムを大量に摂取することで血液の循環がよくなり、また筋肉の収縮も抑える ので、片頭痛にも緊張型頭痛にも効果があります。 こうしたことから、片頭痛治療上、まず、マグネシウムの補充を考えなくてはなりませ ん。そのためには、基本的には食事から摂取することです。 ●マグネシウムを多く含む食品 玄米によるご飯 100g 48mg - 155 - 白米によるご飯 100g 40mg 米、麦こうじ味噌 100g 80mg 豆こうじ味噌 100g 130mg アーモンド 30g 87mg カシューナッツ 30g 72mg 国産大豆 30g 66mg 落花生 30g 60mg 干しひ時期 10g 54mg 納豆1パック 100g 100mg かき 70g 50mg ほうれん草 70g 50mg いんげん豆 30g 45mg かつお 100g 40mg あおのり 3g 40mg あずき 30g 36mg とうもろこし 1本120g 35mg 枝豆 50g 35mg バナナ 100g 34mg マグネシウム不足が持続すれば、ミトコンドリアの働きをさらに悪くさせることに繋 がることになり、片頭痛を悪化させる”元凶”にもなってきます。 そして先程の「マグネシウム不足の原因」でも述べましたように、いろいろな状況 で容易にマグネシウム不足が引き起こされてきます。特に、女性の場合はこの傾向 が著しく、月経時の片頭痛がいつもの片頭痛よりも激しくさせる根源ともなってい ます。 現在、普通の人でもマグネシウムが不足しやすい生活環境にあります。とくに先 程も述べましたように、片頭痛の方々はマグネシウム不足が指摘されています。このため、 日常的に「マグネシウム」を摂取することを意識する必要があり、油断すればすぐに不足 してしまうことになります。 このマグネシウムの摂取量は、それぞれの年齢によって推奨摂取量があります。これを - 156 - 満たすように、毎日摂取することが大切です。マグネシウムの補充は片頭痛治療の”要” となっていますので、このことを常々念頭におく必要があります。 生理時にいつも片頭痛が起き、激しいといった場合は、マグネシウム不足を疑うくらい に大切なことです。こうした場合は、必ず、是正に努めて下さい。 - 157 - 食品から摂取するのが一番ですが、より確実に補充していく場合は「マグネシウム原液」 を作成され、これで必要量を補充する方法があります。 マグネシウム原液の作り方 マグネシウムの原料は、 、 スーパーでニガリ(200円/100cc)を求めるか、薬局で「塩化 マグネシウム」(500g/1本、1000円~1200円)を買い求めることです。豆腐屋で用いる20K g袋を買って(4000円程度です)つくるのは量が多すぎて現実的でないため、薬局で「塩化マ グネシウム」(500g/1本、1000円~1200円)を買い求めるのが適当と思われます。 50 mg マグネシウム原液の作り方: こうしたマグネシウムの原液は、本来「片頭痛治療薬」 として製品化されるべきですが、メーカーには利益になら ないため、市場には出回っていません。ですから、自分で つくるしかないようです。(トリプタン製剤のように利潤が 上がらないためです) 1.2リットルの空きペットボトルの1.2リットルのと ころにマジックインクで線を入れておきます。 2.漏斗等を用い塩化マグネシウム粉末をペットボトルに入れます。 3.加熱後冷却水か市販の飲料水を1.2リットルの線近くまで入れます。 4.ペットボトルに栓をし、よく振って溶解させます(その後、静置し正確に1.2リッ トルになるよう水を追加します)。 5.放置していますと白濁することがあります(これは、水の中の酸素と反応した酸化マ グネシウムで特に体に害となることはありません/便秘改善薬のカマと同じ物質ですが、 微量の場合は胃の中で胃酸により塩化マグネシウムに戻ります)。気になるようでしたら、 コーヒーの濾紙を用いて濾過してください。 - 158 - 具体的な”マグネシウム水溶液”の作り方です 2リットルの空きペットボトルの1.2リットルのところにマジックインクで線を入れて おく。 漏斗等を用い塩化マグネシウム粉末 500 gをペットボトル に入れる 塩化マグネシウムはネット通販で買おう ( 薬局で入手できにくい地域もあります) 加熱後冷却水か市販の飲料水を1.2リットルの線 近くまで入れる。 ペットボトルに栓をし、よく振って溶解させます (その後、静置し正確に1.2リットルになるよう水を追加しま す)。 以上で完成です - 159 - これを、もっと簡略化させたものが、「マグCプラス」です。 「マグCプラス」は、「万能健康ジュース」 の材料に登場する「50 mg マグネシウム原液」 をちょっとアレンジしたものです。つくり方 はすごく簡単です。 材料 水 75 cc 塩化マグネシウム ビタミンC 100 g 3g つくり方 水に塩化マグネシウムとビタミンCをよく かき混ぜて溶かして完成! あとは冷蔵庫で 保存して下さい サプリメントを飲んでもマグネシウム不足は解消されません マグネシウム不足を解消するのが目的ならば、市販のサプリメントでマグネシムを補え ばよいのでは??と思われる方が多いかと思うのですが、残念ながらサプリメントではマ グネシウム不足を解消するのは難しいです。 なぜならばマグネシウムは大量の水で希釈しないと吸収されないからです。サプリメン トでマグネシウム不足を解消しようと思ったら 2 ℓくらいの水と一緒に飲まないと効果は ありません。サプリメントを 2 ℓの水で飲むなんてとても現実的ではありません。そこで 確実&簡単にマグネシウムを摂取する手段として、この「マグネシウム水溶液」が考案さ れました。 - 160 - マグネシウム水溶液の飲み方 [飲み方の基本] 500cc の水に小さじ 1 杯程度のマグネシウム水溶液を入れて飲みます。 [味付けの工夫] 上記の様に水で薄めるだけで、マグネシウム不足を補う事がでますので、効果的にはこ れで問題無いのですが。このままではニガくて飲めないと思います。 味付けを工夫して楽しみながらマグネシウムを摂取するのがよいのです。 クエン酸とビタミンCを 1 gずつ入れて飲む事をオススメしています。 こうする事によってレモン水の様な味になり、味のバリエーションが増えます。 もう一つのオススメはクエン酸、ビタミンCの他、更に「蜂蜜」を加えることです。 甘味が出るので美味しく頂けます。 [実際の飲むタイミング] 飲むタイミングは (1)片頭痛の前兆時に飲む (2)日頃の”水分補給時”に飲む この 2 点です。 これを行うためには (1)先程説明した[飲み方の基本][味付けの基本]を基に出来たものを、ペットボトル等 に詰めて常に携帯し、必要に応じて飲むようにします。水分補給とかねて・・ (2)もしくは、原液の状態(小さじ 1 杯あたり 500 gの水に希釈しない状態) - 161 - の物を小さな小瓶(弁当に入っている醤油挿しの様なもの)に詰めて携帯し、出先で必要 に応じて水に薄めて飲む。頭痛がきそうな予感がしたときに服用します。 の 2 種類の方法をオススメしています。 これらはあなたの生活スタイルに合わせて、やりやすい方を実行して頂ければOKです。 このように、これを原液として、万能健康ジュース(後に述べますが)にも使用できま すし、スポーツドリンクなどの代わりに、500ml の水(ペットボトル)に 2 ~3cc入れ て飲むのもOK。また、ご飯を炊くときに少し入れるのもいいですね。 塩化マグネシウム(粉末)はドラッグストアなどでは手に入れにくいので、ネットで購 入するのがいいでしょう。市販のニガリ(水溶液)でもよいのですが、ちょつと割高にな ります。おとうふ屋さんでもらえるとラッキーですね。 これらの使い方ですが、皆さんはいろいろ工夫されておられるようです。 ①500ccペットボトル(お茶やジュース飲料後)に水(沸騰冷却水or市販のミネラルウ ォーター)とマグネシウム原液5cc程度(10cc入れる方もおられます)。さらに、 ビタミンCを1~2g、梅肉エキス(クエン酸)を1~2g入れる方もおられます。 要するに、自分が一番長続きがする味にするのがよいと思いますので、自分に最も合 った“マイドリンク”にしてください。 いつも持ち歩き、お茶代わりや、食事時の水・お茶代わり、一日1本(500cc) 程度を目安に飲んで下さい。 例えば、500ccのペットボトルにマグネシウム原液5cc、ビタミンC1g,、クエン 酸1gを入れたものを、食卓に置いて2~3日に1本程度を使っています。別の方は出 かけるときには魔法瓶の水筒に氷ととも入れ、水代わりに飲んでおられる方もいます。 ②市販の2Lペットボトルの飲料水にマグネシウム原液を2・5cc程度入れ(5ccで もさほど気になりません)、飲料、料理、・・などに使います。コーヒーなどは味が変わ るのが分かりますが、味が気にならない程度のマグネシウム原液をあらかじめ水の中に 入れて用います。 - 162 - ③マグネシウム原液を小分けして(100cc程度のニガリの容器など)食卓に常備し ておき、味噌汁、飲み水、スープ、カレー、・・・・などに数滴落としてから頂く。 などや、それらを組み合わせているようです。 中にはマグネシウム原液を少量持ち歩き、片頭痛が”キタ!キタ!”と感じたら、そ の場で飲料水に少し苦味を感じるほど入れグイっと飲んでいるという方もおられます(飲 んで直ぐに首・肩に血が流れ出し、間に合うとのことです)。薬として使う人もあります。 毎日のことですので、いやいやながら苦いものを飲むのではなく、美味しく頂くある いは、頂けるようにするのがコツかもしれません。 先程も述べましたが、マグネシウムサプリメントも市販されていますが、よほどの大 量の水とともにとらない限り体内に吸収される事はありません。通常はカルシウムとと もにマグネシウムも排泄されますが、ひどい場合は体内のマグネシウムやカルシウムま で排泄されてしまうこともあるようです(下痢になった場合はこのような状態です)。 2 ミトコンドリアの機能改善 ミトコンドリアは、細胞の中で呼吸し、エネルギーを生産している工場の役割を担って います。ミトコンドリアの働きが低下したり、異常をきたす病気を「ミトコンドリア病」 といい、この病気を持つ人のほとんどが、片頭痛を持病として持っています。 このミトコンドリア病を持つ人々にミトコンドリアの機能をよくするビタミンB2を摂 取させると、片頭痛が改善されることが分かりました。逆に、片頭痛もちの人たちもビタ ミンB2を摂取することで、7割近くの人の頭痛が改善することが分かっています。 1998 年に Shoenen ら 83)によって発表された論文によりますと、ミトコンドリア病の患 者さんに1日1回 400mg のB2を服用させた所、ミトコンドリアが元気になりミトコン ドリア病が改善しました。このミトコンドリア病の主症状が片頭痛です。この事にヒント を得て、ミトコンドリア病に限らず片頭痛の患者さん 55 人に1日1回 400mg のリボフラ ビン(ビタミンB2)を3ヶ月服用させた所、片頭痛の起す割合が半分に減った患者さん が 37 名だったと言う事でした。 その理由は、ビタミンB2がミトコンドリアの電子のやりとり(電子伝達によりエネ ルギーを産生する)を円滑にしたことにより、ミトコンドリア代謝機能を向上させたか - 163 - らだと考えられています。また、ビタミンB2には体内で生成される過酸化脂質を分解 する作用もあり、この作用によって片頭痛が軽減された可能性もあります。いずれにし ても、ビタミンB2が片頭痛患者の半数以上に改善効果を与えたことは事実ですから、 ビタミンB2を積極的にとりたいものです。 ただしこれは1日1回 400mg と言う超大量を3ヶ月続けて服用した場合に効果の示す 事ですので、服用も大変だと思います。例えば、病院向けのB2剤として「ハイボン」が 有りますが、ハイボン 40mg 錠をリボフラビン 400mg に対応させると約 10 錠になります から、1回にハイボン 40mg 錠を 10 錠服用する事になります。大変な服用量だと思いま す。 それとB2は片頭痛に対して保険適応が取れておらず、量的にも保険適応量ではないの で、病院で処方箋を書いてもらおうにも自費扱いになってしまいますから費用も掛かって しまいます。このため、食品から努めて摂取することを心掛けるのが賢明です。 ビタミンB2を多く含む食品としては、牛、豚、鶏のレバーやハツ(心臓)、うなぎ、 うに、すじこ、サバ、ズワイガニ、納豆、いくら、タラコ、卵黄、まいたけ、モロヘイ ヤ、のり、煎茶の茶葉、唐辛子などがあります。 そしてこのビタミンB2は水溶性ビタミンと呼ばれていて過剰量服用した場合、体外に 尿より排泄されてしまって副作用は起こり難いですから安心感も高いと思います。 大量の服用ですと、間違いなく尿が黄色くなり血液検査値にも影響を与えますから服用 中に健康診断を受ける場合は、服用している事を伝える事をお忘れなく。 3 フリーラジカルスカベンジャーの増加 片頭痛やさまざまな病気には、活性酸素が深く関わっています。体内で活性酸素が過剰 に発生して体がサビついた状態になることを「酸化ストレス」と呼び、その抑制は片頭痛 改善のために不可欠な要素と考えられます。 フリーラジカルスカベンジャーは、活性酸素の毒消しをする物質です。これを増やすこと によって、人体に蓄積された有害な活性酸素を無害化することができます。 活性酸素とは、人間の身体に取り込まれて燃焼した酸素からできたものです。本来は殺 菌や消毒作用がある有益なものですが、増えすぎると体内物質を酸化させ、老化や病気の - 164 - 原因になってしまうのです。 動脈硬化やがんを引き起こす活性酸素 酸素は生きていく上でなくてはならない最も大切な物質ですが、これが体内で活性酸素 になると人体にとって有害な物質となり、さまざまな生活習慣病を引き起こします。 例えば、血液内のLDLコレステロールが過剰になり、そこに活性酸素が加わると動脈 硬化の原因となります。また、活性酸素はがん抑制遺伝子を傷つけて、がん細胞の増殖を 食い止める力を無力化させ、がんを引き起こすと考えられています。さらに、リウマチ性 関節炎などの自己免疫疾患や、痛風も活性酸素が関与しています。 もちろん人体には、こうした活性酸素から体を守る防御機能が備わっています。しかし、 あまりに大量の活性酸素が発生すると、防御できなくなります。それを防ぐ薬の役割を果 たすのが、抗酸化作用食品です。 抗酸化作用のある食品 活性酸素が病気を引き起こすということは、鉄などが酸素と結合して錆びるのと同じこ とです。このサビから身体を守ってくれる最も代表的なものとして、ビタミン C、ビタミ ン E、カロテン類を豊富に含む食品があります。 この他、フラボノイド、カテキン、タンニン、ケルセチン、アントシアニン、イソフラ ボンなどに代表されるポリフェノール類、セサミノール、ショウガオール、アスタキサン チン、セレニウム、フィチン酸など含む食品も抗酸化作用があります。 ビタミンC ・野菜類…赤ピーマン、芽キャベツ、黄ピーマン、パセリ、青ピーマン、ブロッコリー、 カブの葉、さやえんどう、キャベツ、ミニトマト、かぼちゃなど(多い順) ・果物類…アセロラ、ゆず、レモン、柿、キウイフルーツ、イチゴ、パパイア、はっさく、 グレープフルーツ、温州ミカン、パイナップル(多い順/アセロラは群を抜いて多い) - 165 - ・イモ類…ジャガイモ、サツマイモ ・海藻類…のり ・その他…ハム、ベーコン、たらこ ※ビタミンCの含有量は多くても、パセリや海苔、ゆずなどは一度にたくさん食べられる 食品でありません。その意味では重量的にたくさん食べられる、キャベツ、ブロッコリー、 かぼちゃ、イモ類、柿、ミカン類などはビタミンCの強力な補給源となります。 ビタミンE ・油脂類…ひまわり油、綿実油、サンフラワー油、大豆油、マーガリン油、菜種油(多い 順) ・種実類…アーモンド、ヘーゼルナッツ、ヒマワリの種、落花生(多い順) ・魚類…すじこ、いくら、ウナギ、たらこ(多い順) ・その他…小麦胚芽、煎茶(茶葉) カロテン(カルテノイド)類 ・βカロテン…シソの葉、モロヘイア、にんじん、春菊、ほうれんそう、かぼちゃ、大根 の葉、にら、小松菜、かぶの葉、チンゲン菜(以上、多い順)、茶類、海藻類 カロテン類の種類は数百種といわれますが、その代表的なものがこのβカロテンで、体 内に入ってビタミンAに変換されます。ビタミンAには目の明暗の識別や皮膚や粘膜を正 常に保つなど、さまざまな働きがあります。 ・リコピン…トマト トマトの赤い色素成分がリコピンで、βカロテンよりも抗酸化作用が強いことで注目さ れています。 ポリフェノール類 ・フラボノイド…野菜・果物全般 - 166 - フラボノイドは野菜や果物などほとんどの植物に含まれる色素の総称で、ポリフェノー ルの一種です。ポリフェノール類の大半はフラボノイドで、それぞれの関係が混乱しやす いのでご注意ください。次に示すルチン、カテキン、ケルセチン、アントシアニン、イソ フラボンは皆、フラボノイドに含まれます。 ・ルチン…そば、イチジク、かんきつ類、ベリー類 フラボノイドの一種で、抗酸化作用の他に、血流の改善効果があります。 ・カテキン(タンニン)…緑茶(渋みの成分) ・ケルセチン…玉ねぎ(特に外皮)、リンゴ、緑茶、ブロッコリー、モロヘイアなど ・アントシアニン…ブルーベリー、さつまいも、なす、いちご、ぶどう、黒豆、黒ゴマ アントシアニンといえば「ブルーベリー=目に良い」というイメージが独り歩きしてい ますが、植物に含まれる青紫色の色素で、抗酸化作用があるフラボノイド類の一種です。 ・イソフラボン…大豆、大豆製品 大豆に含まれる大豆イソフラボンは、女性ホルモン「エストロゲン」と似た化学構造を 持ち、同じような働きをすることで、美容界で脚光を浴びています。でも、抗酸化作用が あるということのほうが重要で、本命でしょう。過剰摂取は美容に逆効果もあるので要注 意です。 その他 ・セサミノール…ごま ごまには、この他にカルシウム、ビタミンB1、鉄分、食物繊維、たんぱく質、リノー ル酸が豊富で、昔から「不老長寿の秘薬」と言われました。ただし、たくさん食べられる 食材ではなく、あくまで脇役。いろいろと料理を工夫して毎日少しずつ摂るとよいでしょ う。 ・ショウガオール…ショウガ ショウガの辛味成分。ショウガにはこの他に殺菌効果や、体を温めて免疫力を高める効 果などもあります。 ・アスタキサンチン…鮭、イクラ、エビ、カニ 赤い色の部分がアスタキサンチンです。食事だけで十分な量をとるのは難しく、サプリ メントがあります。ただし、抗酸化作用のある成分はアスタキサンチン以外にもたくさん - 167 - あることをお忘れなく。 ・セレン(セレニウム)…小麦、肉類、魚介類、鶏卵、牛乳 セレンは有害ミネラルの解毒にも有効とされています。ただし、セレン自体にも毒性が あるので大量摂取には要注意。通常の食事でセレンが不足することはありません。 ・フィチン酸…米ぬか、ごま、小麦、インゲン豆、トウモロコシなど フィチン酸は穀類の外皮(ふすま)に多く含まれ、多くは精製の過程で失われます。米 の場合は玄米に多く含まれますが、ミネラルと結合して吸収を阻害するマイナス面もあり ます。 ■体内の活性酸素を除去する食材をまとめてみますと・・ ビタミンA:ニンジン、ほうれん草、卵黄、牛乳、バター ビタミンC : ブロッコリー、小松菜、ピーマン、トマト、イチゴ、緑茶、ジャガイモ ビタミンE:大豆、落花生、しじみ、うなぎ βーカロテン : ニンジン、小松菜、ほうれん草、かぼちゃ、ニラなど ポリフェノール : 赤ワインなど リコピン : トマトなど スルフォラファン : ブロッコリー、キャベツ、カリフラワーなど メラノイジン : みそ、しょうゆなど - 168 - 強力な抗酸化作用を発揮する CoQ10。 抗酸化酵素だけでは生体脂質の酸化を防ぐことはできません。そこで登場するのがビタ ミン E、CoQ10、ビタミン C、カロテノイド、ポリフェノールなどの抗酸化物質です。 脂質の酸化を防ぐために生命が創り出した物質がビタミン E ですから、これが一番重 要です。しかし、条件によってはビタミン E はかえって脂質の酸化を促進することがわ かっています。これを防ぐには、酸化抑制の過程で生成するビタミン E ラジカルを還元 する必要があり、ビタミン C と CoQ10 がその役を担っています。とくに、同じ脂溶性の CoQ10 の重要性が最近の研究から明らかにされてきました。結局、生体脂質の酸化を抑 制するためには、ビタミン E と CoQ10 とビタミン C がよいチームワークを組む必要があ るのです。 生体が酸化ストレスにさらされたときに最初に減少するのがビタミン C と CoQ10 であ - 169 - ることは強調しておきたいと思います。ご存じのように私たちはビタミン E とビタミン C を体内で合成することはできませんから、食品等から摂取する必要があります。一方、 CoQ10 は体内で合成できますが、肉・魚などの食品に含まれていることも確かです。 CoQ10 で自分自身の根幹=体のチカラを高める。 これらのことを合わせて考えると、食事の基本ではありますが、まず、いろいろな食品 を組み合わせてバランスの取れた食事をしたうえで、サプリメントを利用して、食事から では不足してしまう分の CoQ10 をサプリメントの形で摂取することが一番の方法だと考 えられます。現在、さまざまなサプリメントが出回っていますが、たとえば、自分自身が 「なりたいな」と思う理想的な体調を考え、それに向かって努力をしてみた時に、どうし ても解決できない現実(たとえば生活環境や食生活など)とのギャップを埋めることを自 分にとって必要なサプリメントを選ぶ基準にするといったように、自分なりのサプリメン ト選択基準を持つことが大切でしょう。 また、目に見える症状に対応することばかりに追われたサプリメントの選び方をするの ではなく、自分自身が本来持っている、体の健康を維持するチカラを高めることにポイン トをおいたサプリメントの選び方が良いのではないでしょうか。植物を使って表現すれば、 枝葉の先よりも幹に注目することを忘れないことです。CoQ10 をサプリメントで摂取す る選択は、多くの方にとって、自分自身の体の根幹をしっかりとさせることにつながるの ではないでしょうか。 4 セロトニンの改善(脳内セロトニンの増やし方) 片頭痛発作時には「脳内セロトニンの低下」が分かっており、現在、発作時にはこの脳 内セロトニンを補填するために”トリプタン製剤”が使用されています。 そのため、片頭痛の発作回数を減少させるには脳内セロトニンを増やすとよいのです。 「脳内セロトニン」の前駆物質であるトリプトファンを食物から直接取り入れるです。 脳内セロトニンを確実に増やすためには、いろいろな問題がありますので、この点につ - 170 - いて詳しく述べていきます。そう単純なものではありませんので・・・ レバーを食べても“しあわせ系”(脳内セロトニン)は増えません! ところで、あなたがふだんか ら健康に高い関心を持っている 人だとしたらー・・ ニンを増やすの? 「セロト それならト リプトファンをたくさん含んで る食べものをとればOKよ!」 というかもしれません。さす が、よくご存知ですね! そう、セロトニンは「トリプ トファン」というアミノ酸を原 料としてカラダのなかでつくら れます。だから「正解!」…… といいたいところですけれど、 それではせいぜい正解率は 50 点がいいところです。 じつは、腸や血液に含まれる大部分のセロトニンは、脳に入っていきません。つまり、 単純にトリプトファンが多い食べもの、たとえ ば「牛レバーやバナナをせっせと食べよう!」 なんて本や雑誌を見かけることがありますが、 実際にそうしたからといって脳内セロトニンが 単純に増えるわけではありません。 トリプトファンが多く含まれる食品をとるこ とは、たしかに大事です。でも、そこにはちょ っとしだ工夫”が必要です。その工夫とは、“ トリプトファンのとり方”にあります。 腸内や血液中のセロトニンは脳に入っていき - 171 - ませんが、トリプトファンはちゃんと脳に入っていくことができます。ですから、トリプ トファンをたくさん取り込むことができれば、脳内セロトニンも充分につくることが可能 になります。ここまでが 50 点。 ただしーここからが大切です。-トリプトファンが通る場所に問題があるのです。じつ はここ、ほかの必須アミノ酸も通っていく場所なのです。どういうことかを説明します。 この必須アミノ酸というのは、「フェニルアラニン」とか「口イシン」というものです が、食品によってはトリプトファンよりもこれらの必須アミノ酸のほうが多く含まれるも のがあるのです。するとどうなると思いますか? これらの必須アミノ酸がトリプトファンの邪魔をするため、トリプトファンが通過しづ らくなってしまうのです。その代表的な食べものが、肉類や乳・乳製品なのです。 つまり、牛レバーにはトリプトファンよりもほかの必須アミノ酸が多いため、実際には 思ったほどトリプトファンがとれない、というわけです。 結局、トリプトファンが多いだけではダメで、それと同時にフェニルアラニンとロイシ ンの量が少ないことも大事だということです。なかなか簡単にはいかないのです。 次のページにこの条件を満たすおススメの食べものをまとめてみましたので、参考にし てみてください。しかし、肉類はともかく、乳・乳製品が大好きな女性はきっと多いはず。 - 172 - - 173 - お肉を食べるときは、野菜やくだものはもちろんのこと、「いも類」を一緒にとるのが おススメです。いちばんいいのはしっかりとご飯(米)を食べること。パンやパスタ、ピ ザなどの小麦製品、牛乳や乳製品中心の食事ばかりでは、いつまで経っても“イライラ病 ”はよくなりません。 もう一工夫でストレスに負けないからだに 脳内セロトニンの働きと増やし方、わかってくれましたか? 人間にとって、とても大事なセロトニンの原料はトリプトファン。それを効率よく取り 込むためには、必須アミノ酸(フェニルアラニン、ロイシン)との含有比率が大切だとい うことでした。 ここでさらに一工夫! トリプトファンはセロトニンになるだけが仕事じゃなくて、セロトニン以外にも「ナイ アシン」(=ビタミン B3)になります。 しかも、トリプトファンからセロトニンがつくられるときと同様、「補酵素」として「ビ タミン B6」が使われます。つまり、トリプトファンは同じ方法で、セロトニンとナイア シンになるというわけです。 注目すべきは、ここでもさっきのフェニルアラ ニンやロイシンの場合と同じようなことが起きる ということ。つまり、ナイアシンのほうが優先的 につくられ、セロトニンは残念ながら後回しにさ れてしまうのです。どうしてセロトニンにはこん なに敵が多いのか……。 でもまあ、ものは考えよう。要するに、そもそ もナイアシンが不足しなければいいのです。つま り、ナイアシンたっぷりの食事をとり、あとは補 酵素として使われるビタミン類やマグネシウム、 - 174 - 亜鉛なんかもしっかりとるように心がければいいのです。 ナイアシンは、糖質・脂質・タンパク質の代謝に欠かせません。口内炎になるのはナイ アシン不足が原因です。 補酵素とは、酵素が体内で十分に働くために必要な成分です。 「脳内セロトニンを増やすための食事」は以下のようです ○肉類や乳・乳製品など動物性のタンパク質をとり過ぎないようにする O芋類、野菜類、きのこ類、海藻類を努めてとるようにする Oコラーゲンなどのゼラチン類をとらない ○パン、パスタ、うどんなどの小麦製品にかた より過ぎない(米飯、そばを適宜とる) Oトウモロコシやその加工品、種実類(アーモ ンド、落花生)、小豆(あんこ)をとり 過ぎない ○トリプトファン比率の高い果実類(キウイフルーツ、柿)、種実類(ゴマ、ココア)、 魚介類(カッオ、しじみ)を努めてとる ○ビタミンB3(ナイアシン)、ビタミンB6、マグネシウム、亜鉛を多く含む食品をと る ○筋肉を鍛える(筋肉量を増やす、または落とさない) ○腸内環境を健全に保つ 食品・腸内細菌 ビタミンB6 ↓ トリプトファン (60個) ⇒ ⇒ ⇒ ↓ ⇒ ⇒ ビタミンB3(ナイアシン) 優先 ↓ (1個) ↓ → → → - 175 - → セロトニン ↑ ビタミンB6 亜鉛 マグネシウム 先程も述べましたように BCAA が多い環境では脳への取り込みが阻害され、脳内セロ トニンがあまり増えないことがありますので注意が必要です。 BACC とは動物性蛋白質に含まれており、食品では牛乳、鶏卵、マグロ、牛肉などが挙 げられます。食べ物はバランスが大事なので、極端に摂取を制限すると逆に体調不良の原 因になるので注意です。牛乳、鶏卵、マグロ、牛肉の摂りすぎは「脳内セロトニン」不足 を招くことに繋がりますので、注意が必要です。 トリプトファン比の高い食品を摂ること と筋肉を付けることが脳内セロトニンを増 やすための第一歩なのです。 決して、ダイエットと称して筋肉量を落 としてはいけません。 また、運動量が少ないにも拘らず、トリ プトファンを多く含むからと言って、お肉などの動物性タンパク質や牛乳・乳製品を摂り すぎてはいけません 運動量の少ない方はトリプトファン比の高い大豆製品などを努めて摂りましょう - 176 - トリプトファン比の低い食品と高い食品 トリプトファンをほとんど含まない食品にはコラーゲン(人の酵素では消化はしません。 悪玉菌のエサにはなります)、ゼラチン(効率はよくありませんが消化はします)、トウ モロコシなどがあります。 体にはアミノ酸プール(体内ではタンパク質の分解と合成が常に起こっていますので、 さまざまなアミノ酸がプールされているように考えられています)がありますので、これ らの食品を食べたからといって直ぐにはトリプトファン不足になる事はありません。 しかし、日常から多くを摂り続けますとセロトニン不足以外にもビタミンB3不足など さまざまな悪影響を生じます。 次にトリプトファン比の小さなものとしては、小麦、食パン、アーモンド、小豆、牛肉 (サーロイン)、牛乳、落花生などがあります。 これらの食品の摂りすぎに運動不足が加われば 脳内セロトニン不足の可能性が高まります。 トリプトファン比の高いものとしてはお米があ ります。サツマイモ、大豆、レバー類、マグロ(赤 身)などもほぼ同じ程度です。 これら食品以上にトリプトファン比の高いもの には、全粒そば、サトイモ、ゴマ、ココア、ニン ニクやトリプトファンの量的には少ないですが、 カボチャ、ごぼう、小松菜、春菊、大根葉、ニラ、 ブロッコリー、もやし、えのき、しいたけ、のり、 こんぶなどがあります。 果実類でトリプトファンを比較的多く含むもの に、バナナやキウイフルーツがありますが、キウ イフルーツのトリプトファン比高いですが、バナ ナは小麦やお米の中間程度で特に脳内セロトニンに好ましいと言うアミノ酸組成ではあり ません。 セロトニン合成にかかわる酵素、補酵素やトリプトファンを原料とするビタミンB3の - 177 - 不足を起こさない セロトニンを増やすためは、ビタミンB3(ナイアシン)、ビタミンB6、およびマグ ネシウム、亜鉛の不足を起こさないことが大切です トリプトファンはセロトニンの原料であると同時に、ナイアシンの原料でもあり、ナイ アシンの合成が優先されます そのため、ナイアシンが不足していますと、折角、脳内に取り込まれたトリプトファン もナイアシンの合成に使われてしまい、セロトニンの合成へはまわってきません ナイアシンは魚介類や肉類などの食品に含まれており、腸内細菌により産生もされます ので、適量の魚介類・肉類を摂食し、腸内細菌を健全に保っている限りにおいて、ナイア シンの摂取不足を起こすことはありません。 この条件が整った状態で、セロトニンはトリプトファンを原料として、ビタミンB6、 亜鉛、マグネシウムなどを補酵素として合成されます。 ビタミンB6は、ニンニク、唐辛子、マグロ、カツオ、レバーなどに多く含まれています。 亜鉛の多い食品は牡蠣が有名ですが、牛肉にも多く含まれます。 マグネシウムは非常に不足しやすいミネラルですので、ニガリやマグネシウム水溶液か ら日常的に摂るのが好ましいでしょう。 これらのビタミン剤やミネラルはサプリメントである栄養素を多く摂ったからといって 効果が上がるというものではなく、 全ての栄養素の不足を起こさない というのが改善のための基本とな ります。 一つでも成分が不足しますと、 一連の反応は進まなくなります。 特に偏食も無く、平均的な食事 をしていても、マグネシウムは最 も不足しやすい栄養素です。 - 178 - これがあなたにおススメの「生活スタイル」です。少し補足を。 「運動〇、ダイエット×」……筋肉をつくるときには、トリプトファン以外のアミノ 酸が使われます。ということは、《筋肉が増える⇒血中からほかのアミノ酸が減る⇒逆に トリプトファン濃度が高まる⇒脳への取り込み量が増える⇒脳内セロトニンも増える》と いうわけです。 女性にとってダイエットは「定例会議」みたいなものです。とりあえず「やっとかなき や!」みたいな。そのときは必ず運動も一緒にして筋肉量を落とさないように。筋肉をき たえるには無酸素運動がいいのですけれど、最近の研究では、有酸素運動によって血液中 のトリプトファン濃度が増すといわれています。いずれにせよ、「運動!」は必須です。 「コラーゲン×、ゼラチン×」……お肌の曲がり角が気になる女性にはかなりショック!? コラーゲンの効果については、「お肌にいい」という根拠はないので“賛否両論”です けど、実際たよりにしてる女性は多いかも知れません。でも、結論からいうとほとんど無 意味です。なぜなら、コラーゲンはヒトの消化酵素では消化されないのでカラダに取り込 まれません。むしろ、腸内で「悪玉菌」の工サになり、腸内環境を悪くします。 もちろん、トリプトファンもまったく含まれていませんから、脳内セロトニンを増やす という観点からもまったく無意味なのがコラーゲンです。 3.「酸化ストレス・炎症体質」改善のために 8) 「酸化ストレス・炎症体質」とは活性酸素の発生が除去しきれないほど発生してしま - 179 - う状態のことで、これらが元で細胞が傷つけられ、さまざまな病気(炎症)を引き起こして しまう状態のことをいいます。 ぼろぼろに錆びた金属にたとえ られる、「錆び体質」といわれる ものです。 「酸化ストレス・炎症体質」は 片頭痛発症の根底にある体質と いうことだけでなく、ほとんど の現代人が抱える、さまざまな 慢性病や生活習慣病の根底にあ る慢性病の源となっているもの です。 「酸化ストレス・炎症体質」は長い間の生活習慣などにより起こり、特効薬を飲んだ からといって直ぐに治るようなものではありませんし、特効薬などもありません。 「酸化ストレス・炎症体質」を改善するためには、その根底にある次のような問題を 解決する必要があります。 1)毎日の食事とともに摂取される有害物質をとらない 2)乱れた腸内環境を整える 3)解毒(デトックス)および解毒代謝能力を向上させる 4)生理活性物質(エイコサノイド)のバランスの乱れを正す これらの根本的原因を解決しない限り「酸化ストレス・炎症体質」を改善することは できません。ここからは、それぞれの問題解消方法について説明します。 1)有害物質となるものの摂取をしない - 180 - わたしたちは、知らないうちに「有害物質」を口にしています。「公害」は過去のもの ではなく、有害物質は海底などに堆積する形で残っていますし、単位面積あたりの農薬の 使用量の多さ、何でも焼却処分することから発生する大気汚染などはそのままです。 最終的に有害物質は、海の生物たちに蓄積され、それを最後に人間が食べています。 わたしたちのカラダには解毒機能がそなわっているのですが、これらの有害物質は代謝 されないので体内に蓄積されていきます。その量が限界を迎えると、さまざまな症状とな ってあらわれます。 有害物質となるものは、添加物入りの食品や、農薬を使った野菜などです。食品には、 添加物を使ったものがたくさんあります。このような有害物質になるものを身体に取り込 まないことが大切です。現在は、無農薬野菜なども販売されているので、うまくそういう ものを利用していくことが大切なのです。さらに、この有害物質となっているダイオキシ ンなどは、しっかりと、水洗いすることや火を通す作業を行うことによって、かなりその 量が減少します。これが、環境ホルモンから守っていくためにできることのひとつです。 これらの有害物質は、「酸化ストレス・炎症体質」を悪化させるものです。有害物質ゼ ロが理想です。70) 2)乱れた腸内環境を整えるために 腸内環境も健康には欠かせません 70) 腸内環境の大切さは、あなたもよく知っているはずです。毎日欠かさすヨーグルトや乳 酸飲料をとったりしているのではないですか? 腸内には、おもに小腸の粘膜部分などにいる「常在細菌」と、大腸で食べたもの(内容 物)に生息する「腸内細菌」の2種類がいます。常在細菌は母親から受け継いでいて、小 さい頃の食習慣や生活環境によって育まれ、少年・少女期にはほぼ「確定」し、あとは通 常、死ぬまでそのままです。 ところが、抗生物質を長期間とったり、大きなストレスを受けたり、糖質制限や無理な 断食なんかをするとダメになってしまい、一度そうなると復活しません。とても繊細です から大事にして下さい。 - 181 - なぜ大事にしたいかといいますと、常在 細菌もトリプトファンからナイアシン(ビ タミン B3)をつくってくれるからです。常 在細菌がナイアシンをたくさんつくってく れれば、その分を体内でつくる必要がなく なって、脳内セロトニン用の材料となるト リプトファンを余分に確保できるのです。 「腸内細菌のために、毎日ヨーグルトを 食べなきや!」と思ったあなた、それちょ っと待って下さい! 腸内環境を悪くする のは、肉類や乳・乳製品といっだ動物性タンパク質”たっぷりの食事です。ですから、ヨ ーグルトはむしろ逆効果なのです。 ヨーグルトで善玉菌を増やそうと思ったら、毎日数リットル単位で食べないと意味があ りません。このようなことは土台無理な話です。 「ヨーグルトはカラダにいい」と信じている女性は多い と思います(男性も?)。でも、毎日相当な量を食べな いと効果は期待できないようです。なぜでしょう? ヨーグルトの原料は牛乳。だから含まれる乳酸菌は動 物性”で、これが日本人の体質にはあまり合わないので す。 わたしたち日本人は長いあいた、西欧人とはちがって 乳製品をほとんど食べない生活をしてきました。ですか ら、そもそも動物性乳酸菌とは相性がイマイチなのです。 それに比べると、お漬物などに含まれる“植物性乳酸菌 ”はすっと食べてきたものですから相性がよい。ラブレクラウト(後で述べます)には「ラ ブレ菌」という植物性乳酸菌がたっぷりと含まれているので効果も出やすいというわけで す。 「それなら、ラブレ菌の入った乳酸飲料を飲めばいいんじゃない?」と思うかもしれま せん。でも、とり方も大事なんです。 - 182 - 腸内で細菌が生きていくには、仲間同士で集まって、他の集団と戦ったり共存したりす る必要があります。この集まりを「細菌叢」といい、この状態をつくらないと細菌は生き ていけません。 ヨーグルトや乳酸飲料の場合、乳酸菌たちが細菌叢をつくれず無防備な状態のまま、胃 酸や胆汁、免疫や他の細菌の攻撃を受けてしまうため、ほとんどが負けてしまって腸まで 届きません。 一方、ラブレクラウトの場合、乳酸発酵したキャベツ自体にラブレ菌が定住します。い わば食物繊維にラブレ菌が守られているような状態です。食物繊維は消化されにくいので、 “船”のようにラブレ菌を腸まで運んでくれるのです。 断食よりも小断食がおススメです! 70) あなたはデトックスのために「断食」してたりします か? 断食中は足りない栄養分を補給するために、ためであ った脂肪分が分解されます(ダイエット効果)。また、ふ だん酷使されている内臓を休め、消化吸収に使われるエ ネルギーがカラダのケアに使われるようになるというプ ラス効果もあります。でも、デトックスに限定すれば、 ほとんど意味はないのです。 むしろ、脂肪が分解されると有害物質が血液中に出て きて毒素が全身を駆けめぐり、カラダのあちこちを毒し て回ります。そして断食が終われば元どおりに脂肪細胞 のなかに取り込まれておしまいです。脂溶性の有害物質は糞便で排出されることがないの です(でも残留農薬や食品添加物など、水溶性と残留性のない有害物質をとらないという 意味では効果があるかも?)。 ところで、腸内細菌のところでも少し触れましたが、断食すると腸内環境が悪化します。 善玉菌のエサがなくなる一方、悪玉菌は胃液などの分泌物や、はがれ落ちた腸の古い細胞 などをエサにしているのでまったく困りません。むしろ、善玉菌が弱っている分だけ勢力 - 183 - を増すことになります。 じつは、問題は断食が終わったあと、腸の細胞は栄養分の種類によって消化吸収能力の ちがうものに柔軟に変化します。何も食べなければ、何も消化吸収する必要のない細胞に 変化します。そこへ食べものが入ってきたらどうなるか? 下痢を起こしたり、腸の細胞 を傷つけて炎症を起こしたり……これが厄介なのです! 「3 食健康ジューステー」なら、必要な栄養素を不足することなくとれるので、安心し てできる小断食です! 腸内環境を整えるためには 1)肉の多い食事をやめる 91) 腸内の悪玉菌の大好物は、肉などたんぱく質や脂肪を多く含む食品です。 ハンバーガーなどのファーストフードは悪玉菌が好む典型的な食事といえるでしょう。 悪玉菌はたんぱく質やアミノ酸を分解し、悪臭のする有害物質を作り出します。便秘や 下痢、肌荒れ、腸炎はもちろん、これらの物質が身体中に運ばれ、動脈硬化、高血圧など の病気の原因にもなります。 肉類は悪玉菌の格好のエサです。この点を忘れてはなりません。肉食の多い欧米人の片 頭痛は日本人に比べ、強度なことは、ここに原因があります。 肉の食べ過ぎでニトロソアミンと二次胆汁酸がそろうと、大腸がんのリスクが跳ね上が ります。 2)食物繊維や発酵食品を摂取する 91) 食物繊維は、便の元となり腸を刺激して便通につながる「不溶性食物繊維」と、腸内 で水に溶けて有害物質を吸着し体外へ排出する「水溶性食物繊維」に分けられます。 不溶性と水溶性の食物繊維をバランスよくとることで、おなかの中をよりキレイにする ことができます。 水溶性食物繊維を多く含む食べ物には、りんご、バナナなどの果物類、しいたけ、えの - 184 - きだけなどのきのこ類、わかめ、こんぶなどの海藻類があります。 不溶性食物繊維を多く含む食べ物には、大豆、いんげん豆などの豆類、ブロッコリー、 ごぼうなどの野菜類、さつまいも、さといもなどのいも類があります。 この二つをバランスよく摂取しましょう。 善玉菌を増やすにはヨーグルト、漬物、納豆、チーズなど発酵食品を食べることです。 この項目も食事療法の部分で改めて述べることにします。 3)適度な運動をする 91) 運動不足になると、腹筋が弱まり、腸の蠕動運動が弱まって便秘になりやすくなります。 運動をすれば腸が揺れて動きが活発になるが、強すぎる運動は交感神経を興奮させます。 交感神経が興奮すると腸は動かなくなりますので、むしろ軽い運動がいいのです。 過度な運動は逆効果です。軽い腹筋運動や、ウォーキングなどの有酸素運動が効果的。 4)ストレスを貯め込まない 91) ストレスがたまると、自律神経のバランスが乱れ、腸の運動が悪くなって便秘が起こり やすくなります。 健康な腸内細菌を持つ個体は、不安や心配などのストレスが少ないのが普通です。 腸の健康を保つためには、副交感神経が優位となる「リラックスして過ごす時間」をバ ランスよく確保することが必要になります。 自分に合ったリラクゼーション方法を見つけて、腸内環境を良くしましょう。 5)腸内環境を整える「善玉菌」のヒミツ 91),92) 女性の大半がかかえている便秘の悩みです。便秘になると、腸内に悪玉菌が増殖します。 悪玉菌が増えることでさらに便秘は悪化し、負のスパイラルに陥ってしまいます。そこで、 腸内環境を整えてくれる『善玉菌』に注目しましょう! 腸内をクリーンにしたら、次の ステップとしては善玉菌を増やすことが重要なのです。ここでは、善玉菌を増やしてくれ る食べ物をご紹介します。 - 185 - ・その 1:『生きた乳酸菌』を含むヨーグルト 乳酸菌は悪玉菌の増殖を抑える働きがあります。乳酸菌は体内に存在していますが、加 齢とともに減少してしまいます。しかも、ストレスの多い現代人は、乳酸菌の減量スピー ドも速いのだとか。そのために、乳酸菌を含む乳製品を外部から摂取する必要があるので す。 ヨーグルトは朝食べることで腸が 1 日中活発になります! 乳酸菌と言えば、一番に思い浮かぶのがヨーグルトです。でも、ヨーグルトなら全て OK というわけではありません。乳酸菌は胃酸などによって死滅しがちなので、しっかりと生 きて腸に届くものをチョイスする必要があるのです。 ・その 2:『植物性乳酸菌』を含む発酵食品 善玉菌の増殖をサポートしてくれる、発酵食品。いま流行りの発酵食品ですが、たとえ ばキムチや漬物、味噌、コウジなどが挙げられます。 おなじみキムチなら手軽に植物性乳酸菌チャージ! これらは『植物性乳酸菌』とよばれるものです。同じ発酵食品でもチーズなどの『動物 性乳酸菌』よりも、生きて腸まで届きやすいという特徴があります。 ・その 3:『オリゴ糖』を含む大豆製品 大豆製品には、食物繊維がたっぷり。特にオススメなのが納豆ですが、納豆には善玉菌 の増殖をサポートするオリゴ糖も含まれています。 納豆が苦手な方は、豆乳、おからなどでも OK です。 さらに、悪玉菌の増殖を阻害するのに役立つリノール酸も入っているので一石二鳥! 腸内をクリーンにしながら、さらに善玉菌を増やして健康な腸へと導いてくれるのでと ても効率的です。納豆は健康な腸づくりのためにはパーフェクトな食べ物と言えるかもし れません。 3)解毒(デトックス)および解毒代謝能力を向上させる - 186 - 93),94),95) 毒素の”片頭痛治療”への悪影響 毒素は体内での栄養の吸収を阻害したり、細胞の活動を停滞させたりします。新陳代謝 の低下につながってしまうのです。 水銀や鉛などの有害ミネラルは、体内で酵素と結合しやすい特徴があります。酵素は体 内の様々な器官や組織を活発に働かせる代謝に欠かせない存在です。脂肪を燃焼させる(脂 肪をエネルギーに変えて使ってしまう)ということももちろん酵素の働きが必要です。酵 素の働きが有害ミネラルによって阻害されたらもちろん脂肪だって燃えにくくなってしま います。 また水銀は褐色脂肪細胞の働きを低下させてしまうとも言われま す。褐色脂肪細胞は熱を作ってエネルギーを放射する細胞です。この 細胞がどれだけ活性化しているかということが、ミトコンドリアの働 きをよくさせることによって、体温や基礎代謝に影響するのです。体 温が高いということはそれだけ熱を作るためにエネルギーをたくさん 使うということですから痩せやすいということなのです。しかし水銀 はその褐色脂肪細胞の働きを鈍らせてしまうのです。 それと毒素は自律神経の働きにも影響を与えます。もし自律神経が乱れてしまったらや はり代謝やエネルギー消費が落ちてしまいますし、毒素が溜まっているということは、便 秘になっていたり、血行が悪くなっていたりする場合が多いわけですから、様々な片頭痛 治療への悪影響が考えられるのです。 ですからできれば片頭痛治療の前に毒素の影響や憂いを取り除いてしまいたいところで すが。でも、片頭痛治療を始める前にデトックスをしなければいけないと考えるとそれも またハードルが高いです。 片頭痛治療上の水分補給の重要性 イスラム教にラマダンという断食の習慣がありますが、この時期に片頭痛が増えること が知られており、飢餓や脱水が頭痛に関連することが以前から指摘されています。4) - 187 - また、読売新聞社のサイト「ヨミウリ・オンライン」内の「大手小町」に設置された「発 言小町」という人気掲示板には、片頭痛でお悩みの方々が「片頭痛予防として”水分補給 ”」がいかに重要かについて多数意見を寄せられております。109) また、鹿児島の田村脳神経クリニックの田村正年先生は、慢性片頭痛に対する「片頭痛 予防薬の多剤併用療法」 110)を提唱されておられますが、この治療を行う際には「水分補 給」を厳重に行わないと効果がないと注意を促しており、こうした点を考えるなら、片頭 痛慢性化とデトックスの関連を示唆するように思えてなりません。 水を十分に補給しましよう デトックスするうえで欠かせないのが水です。腸内の水分不足は便秘が起こる原因とも 言われています。「それなら水を飲めば解決できる」と安易に考えてはいけません。大腸 に届く水は、わずか飲んだ量の 10 分の 1 ほどです。便秘解消のためには、“1 日 1.5 ~ 2 リットル”を目標にしましょう。特に、マグネシウムやミネラルを豊富に含むミネラルウ ォーターがオススメです。 冷たい水が苦手な方はぬるま湯でも OK です。 また、やたらと水をガブ飲みしても、体が冷えて逆にむくみなどのトラブルが起こるこ とになります。ポイントは、回数を多く、少量ずつ飲むことです。一度に水分を摂取する より、数回にわけることで、常に腸にも水分がある状態になります。体の冷えが気になる 方は、冷たい水ではなく、ぬるま湯や常温の状態で摂るようにしましょう。 食物繊維を十分に摂取しましょう 食物繊維には 2 つの種類があります。海藻類などの腸の善玉菌を増やす『水溶性』と、 サツマイモや大豆製品などに代表される『不水溶性』。どちらもそれぞれ、違った効果を 持っています。 さつまいもはヘルシーなおやつとしてもピッタリ! ≪水溶性食物繊維の効果≫ ・血糖値の上昇を防ぐ。 - 188 - ・コレステロールの上昇を抑え、生活習慣病を予防する。 ・海藻類に含まれる『アルギン酸ナトリウム』には整腸作用もあり。 ≪不水溶性食物繊維の効果≫ ・腸の運動を促進し、便秘を解消させる。 ・大腸を刺激し、スムーズな排便を促す。 デトックスからみた食事療法 デトックス効果が高い食べ物 排泄をスムーズに行うこと、デトックスを助けてくれる食べ物のことについて述べます。 食物繊維には不溶性と水溶性の二種類がありますが、特に水溶性の食物繊維はネバネバ のゲル状になって体内の毒素を吸着して排出する効果が高いです。不溶性食物繊維は大き く膨張して腸の働きを活発にして排便をスムーズにしてくれます。 「脂溶性が毒素を吸着する」「不溶性が便をスムーズに排泄する」、この二つの特徴が デトックスに役立つのです。 ■腸内で毒素を吸着して排出する食材 としては ごぼう、オクラ、レンコン、こんにゃく、トマト、海藻、玄米 などがあります。 キレート効果 また、包み込むだけなく、外に出したい毒素と化学的に結合して、体外への排出を促し てくれる、「キレート作用」 がある食品もあります。 包み込むだけだと、またもとに戻ってしまうこともありますが、キレート結合された有害 ミネラルは体内で再吸収されることなく尿や便などから排出され、効果的なデトックスが - 189 - できます。 たとえば、魚介類や緑黄色野菜に含まれる亜鉛やセレンは 水銀 や ヒ素 に対してのデ トックスを促進しくれることでよく知られますが、ビタミン A、C、E、や含硫アミノ酸 (にんにくやたまねぎに含まれるイオウを含んだアミノ酸)などもデトックス効果が高い と言われます。 ■血液中の毒素をキレートする食材 にんにく、アスパラガス、ブロッコリー、ねぎ、ほうれんそう、大豆、りんご などが あります。 ■肝臓での解毒機能を強くしてくれる食材 たまねぎ、キャベツ、ブロッコリー、にんにく、ダイコン、わさび など デトックスを考えるとき、何を食べるかということはとても大切なことです。 一つには、なるべく毒素を身体に入れない食事をする。という考え方が大事です。食品 添加物の多そうなもの、加工食品やコンビニのお弁当や、そういったものはなるべく少な く済ませられるようにするとか、また、残留農薬などが少なくなるよう、野菜はよく洗っ て食べるなど、毒素が身体に入らない配慮をすることは大事です。なるべく毒素を身体に 入れないという内容は以前に詳しく書きました。 しかしあまり神経質になりすぎることもよくないです。上に書いてあるような食物繊維 が多い食材、キレート効果のある食材を、なるべく増やすようにする、水分補給をしっか りするなど、できる範囲の努力をしましょう。 4)生理活性物質(エイコサノイド)のバランスの乱れを正す 96) あまり自覚がない女性も多いですが、女性は脂肪分が多いものが好きなのです。 たとえばケーキです。 - 190 - ケーキにはたくさんの脂肪分が含まれているので、1個食べただけでも相当な脂肪分を 体に入れることになります。このほか日常的に食べるものでも脂肪分が多いのが菓子パン やサンドウィッチなどのパン類です。 菓子パンにもサンドウィッチにも油が多い食 品が使われているので脂肪分がとても多いので す。しかも、こういいった食事に含まれている 脂肪は質が悪いです。 良質な脂肪としては、魚に含まれる油やアー モンドに含まれる脂分が有名です。 これらの良質な脂肪は体にも必要なものなの で適量を食べるのが望ましいですが、市販のケ ーキやサンドウィッチ・菓子パン等に含まれる脂肪分はたいていが天然の脂肪分ではなく 合成された質の悪い脂肪分なので、体に必要な脂肪分とはとても言えない成分になります。 ですから、市販のパン類全般を常食し、間食はケーキのようなクリーム系の脂肪分が多い 食事が多い現代女性の食事中の脂肪分は過剰になっています。 といっても脂肪分も多く食べても、体の中できちんと消費されるか、食物繊維が絡め取 って便と一緒に体外へ出れば問題ありません。でも、パン類中心の食事はサラダを食べて いたとしても食物繊維が圧倒的に少ないので体外に出す量も少なく、実際は過剰になって 中性脂肪としてたまってしまっているのが現状です。 そして、体の中で消費されずにたまって脂肪分は、プロスタグランジンの原料になりま す。体の中には脂肪分が余っていますから、プロスタグランジンも多く作られてしまいま す。そのため、多く作られたプロスタグランジンは、生理のときに必要以上に出すぎて、 子宮内膜に収縮しなさいと命令をたくさん送ってしまい、生理痛がひどくなってしまうの です。ですから、脂肪分の多い食事にならないように調整すると、生理痛をやわらげるこ とにつながります。生理痛と片頭痛の起こり方は全く同じなのです。 あなたは「サラダ油」(植物油)を料理に使つていますか? サラダ油というネーミン グは健康的なイメージがありますが、わたしは後藤先生のお話を聞いて、使うのをやめて しまいました。 いまから半世紀も前、「植物油はコレステロール値を下げる」という実験結果がアメリ - 191 - カで発表され、「植物油=健康にいい」というイメ ージが先進各国に広まりました。ところが 30 年前、 「植物油にはコレステロール値や心臓病の発生確 率を下げる効果はなく、むしろがんの発生確率を 高める」という発表が、アメリカの国立がん研究 所からあったのです。そうした発表を受けて、各 国でさまざまな規制が導入されました。サラダ油 はカラダによいものではなかったのです。しかし、 日本ではいまだに「植物油=健康にいい」と信じ られています。そのことを後藤先生が教えてくれ ました。70) 酸化ストレスを悪化させる危ないやつ! 植物油に多く含まれるのが「リノール酸」です。リノール酸は「必須脂肪酸」で、わた したちのカラダには欠かせません。でも、穀類や豆類中心の食事をしていれば、充分に必 要量がとれます。 リノール酸は、活性酸素の発生などを抑える「生理活性物質」(体内でのさまざまな生 命活動を調整したり影響を与えたりする)の原料になりますが、とり過ぎてしまうと逆に それを抑制してしまいます。現代人の食生活は植物油を多くとり過ぎなので、むしろ活性 酸素を過剰に発生させてしまっているのです。 それから問題なのが「トランス脂肪酸」。これは天然の植物油(昔ながらの低温圧搾で つくられたもの)にはほとんど含まれません。 大量生産で工業的につくられる場合にできる副産物で、いわば人工的な有害物質です。 ですから、精製・加工された植物油には多くのトランス脂肪酸が含まれています。このト ランス脂肪酸も酸化ストレス・炎症体質を悪化させます。 トランス脂肪酸は多くの国で使用が制限され、表示義務があります。ところが、日本で はほぼ“Free”という状況です。ほとんどの人がその危険性をよく知りません。あなたは 知っていましたか? - 192 - トランス脂肪酸は、マーガリンやショ ートニングにもたくさん含まれています。 マーガリンは即やめたほうがいいし、シ ョートニングを使っているお菓子なども、 やはり気をつけたほうがいいですね。そ のほかでは、市販の揚げ物なども要注意 です。何度も使い回しができる“持ぢの よい「硬化油」という植物油が使われて いて、これにはトランス脂肪酸がいっぱ いです。 健康によい油、すばり教えます! 70) リノール酸は「生理活性物質」の原料になります。この生理活性物質には、①「炎症を 悪くする」、②「炎症を抑える」、③「両者の働きを調整してバランスをとる」の3種類 があり、リノール酸はとり過ぎると①になってしまいます。 大事なのは③です。「酸化ストレス・炎症体質」にならないようにコントロールしてく れるからです。その原料となるのが「α-リノレン酸」や「EPA・DHA」です。 サプリメントのCMで見たことがあると思 いますが、EPAやDHAは青魚に多く含ま れています。 では、ここで質問です。「おさかな食べてま す?」 「食べてな~い!」と答える女性が多いは ず(わたしも……)。 サプリメントで補えばいいと思うかもしれ ませんが、値段も高いし、人工的につくって るものだから抵抗がある人もいると思います。 そこでおススメなのが「α-リノレン酸」。α-リノレン酸は、体内でEPAやDHAに - 193 - 変わってくれるのです。α-リノレン酸は「エゴマ油(シソ油)」や「亜麻仁油」に多く 含まれています。 だから、健康ジュースのレシピにも入っているのです。 毎朝ジュースと一緒に小さじ1杯ずつとれば、不足することはなくなります。 αーリノレン酸やEPA・DHAは「オメガ3系脂肪酸」といいます。健康の決め手は オメガ3です。 5)「酸化ストレス・炎症体質」の改善は、インスリン過剰分泌をさせないことが 「鍵」! まずは、血糖値を急上昇させると太りやすくなり、片頭痛にもよくありません、という ことを説明しましょう。 血糖値というのは血液中のブドウ糖の濃度のこ とです。ブドウ糖というのは、ご飯や麺類などの 主食に多く含まれる「糖質」が分解されたもので 人間が活動するための主なエネルギーになります。 食事をすると糖質が消化吸収されブドウ糖になり 吸収され、血液によって体のあちこちに運ばれま す。 血液の中のブドウ糖はそのままではエネルギーとして使えません。血管からエネルギ ーを使う器官の細胞に取り込まれないといけないのですが、その取り込む役割をするのが 「インスリン」です。 インスリンは膵臓から分泌されるホルモンで、食事をして血糖値が上昇すると分泌量 が増え、血中に増えたブドウ糖を細胞に取り込みます。 その取り込まれたブドウ糖がエネルギーになって、人間は活動することができるので すが、余分にとってしまったエネルギー(ブドウ糖)は脂肪として蓄えられてしまいます。 ですから必要以上に血糖値を上げない方が良いのです。 急激に血糖値が上がりすぎますと、血糖の急激な上昇を抑制するためにインスリンが 過剰に分泌されることになります。過剰に分泌されたインスリンは血糖を下げすぎるこ - 194 - とになります。血糖値が下がりすぎると、血糖を適正なレベルに戻そうとするからだの 仕組みが働き、体脂肪から遊離脂肪酸がエネルギー源として放出されるようになります。 体脂肪からブドウ糖などエネルギー源としての生成とその消費がバランスしていれば 問題を生じることはありませんが、急激な血糖値の変化にそのバランスが崩れてしまう と血液中の遊離脂肪酸濃度を高めることになります。 この「遊離脂肪酸」が、脳血管内のセロトニン濃度の変化を引き起こす作用や脳表面 の脱分極を引き起こす作用があり、これが頭痛発作を引き起こす引き金になります。 「良性」の生理活性物質の出発物質であるリノール酸がγ-リノレン酸にうまく変換 されても、すぐにアラキドン酸へと変換されてしまっては、「良性」の生理活性物質は作 ることができません。(このことは、前章で詳しく述べました) このγ-リノレン酸からアラキドン酸の変換を促進するのが「インスリン」です。逆 に、空腹時に分泌される「グルカゴン」や「副腎皮質ホルモン」はγ-リノレン酸から アラキドン酸の変換を抑制し、「良性」の生理活性物質の生成を増加させます。 「過食」は「悪性」の生理活性物質を増やし、「空腹」は「良性」の生理活性物質を増 やすということなのです。 暴飲暴食時にはインスリンは多量に分泌されますが、食事法によって「インスリン」 や「グルカゴン」の分泌量を適正にコントロールすることもできます。 こういったことから、インスリン分泌が重要な鍵を握っています。 いわゆる「酸化ストレス・炎症体質」も食事法によってもコントロールすることがで きるということです。そしてこの食事法は、片頭痛体質の改善だけでなく、生理痛、糖 尿病、肥満、花粉症・アレルギー性鼻炎などのアレルギー性疾患、高血圧・癌などさま ざまな生活習慣病の体質改善や健康・美容を維持するための最も共通した基本となる食 事のとり方だということができます。 お菓子などの甘いものを食べると太りやすいといいますが、それは甘いものには非常 に消化吸収の早い糖質である「砂糖」が多く含まれていますから血糖値が急激に上昇して しまいます。その急上昇に対応するため多くのインスリンが分泌され、すぐに使い切れな いほどのブドウ糖が肝臓に運ばれ脂肪になってしまうのです。 そのように、食べる糖質の種類によって、あるいは食事の仕方によって、血糖値の上 - 195 - がり方に違いが起こります。 緩やかな血糖値の上がり方なら良いのですが、急上昇と急降下を繰り返すような食事 をしていると太りやすいのです。上がりすぎた血糖値を下げるためにインスリンが頑張っ て中性脂肪をたくさん作ってしまうということなのです・・・ また、急上昇急降下の食べ方はすぐにお腹が空くので、食べる量が多くなってしまいます し、いつも大量のインスリンを出していると膵臓が疲れてしまい糖尿病になりやすくなっ てしまいます。 γ-リノレン酸からアラキドン酸の変換を促進するのが「インスリン」 ですので、「インスリン分泌を疲弊させない」ようにすることが重要です。 では、どういう食事をすると、血糖値の上がり方になってしまうのかというと、お菓 子を食べる、ソフトドリンクを飲む、などの糖分摂取だけでなく・・ 「いただきます」と言ってすぐにご飯を食べる。 朝食を抜くなど食事と食事の時間を長くあげてしまう。 そういった食べ方は血糖値が急激に上がってしまうのです。最近よく、食べる順番を工 夫することが片頭痛治療・ダイエットに役立つといわれますが、食事の最初に食物繊維を とることが血糖値の急上昇を抑える効果があるからなのです。 そこで、誰にでもできる“正しい食事のとり方”をご紹介しましょう。 その“鍵”となるのが「インスリン」です。 「インスリン」は「糖質」や「タンパク質」 をとった際に分泌されます。「脂質」はインスリン分泌を促しません。 タンパク質の刺激によるインシュリンの分泌は、糖質の時のように“一度にドッと” という分泌の仕方ではなく、消化が終わるまでダラダラと長く続きますので、無駄な分 泌は少なく、食事量に見合ったインスリンが分泌されます。 - 196 - なお、インスリンは血糖値が高くなった時に血糖を下げる唯一のホルモンですので、 血糖を必要以上に上げすぎないことが改善のポイントとなります。 そこで、“一度にドッと”分泌し過ぎないためには、次のように食事を心掛けることで す。 ⅰ、単品に近い食事のときは血糖上昇の緩やか食品を選ぶこと、複数の食品の食事で は血糖が上がりにくい組み合わせにする(インスリンを過剰に分泌させない) ⅱ、食品の消化・吸収の速度が早くなりすぎないように食事をとる(滞胃時間、食べる そしゃく 順番、咀嚼時間などで調整する) ⅲ、血糖を上げない甘味料(難消化性糖質、オリゴ糖など)などを使用する ・インスリンの過剰分泌を抑える食事法とは? 糖質は消化されると、ブドウ糖や果糖、ガラクトース(乳糖の一成分)といった最小の単 位まで分解され、体内へ吸収されます。ブドウ糖はインスリンの分泌を強く促し、血糖 値もすぐにあがりますが、果糖やガラクトースはインスリンの分泌を強く促すことはあ りません。 また、果糖やガラクトースは吸収後に直接エネルギーとして活用されたり、一旦中性 脂肪に変換されたりしたあと、必要に応じてブドウ糖として血液中に放出されるため、 食後すぐに血糖値が上がるということはありません。 食品にはさまざまな種類や量の糖質が含まれていますが、食品によって消化や吸収の 速度も異なってきます。 糖質の中でも消化されやすく、消化したあとにブドウ糖を多く生成するものは血糖の 上昇は大きく、消化速度が遅いものや消化したあとに果糖やガラクトースを多く生成す るものは血糖をすぐに上げることはありません。 そこで、実際の食事においてどの食品がどの程度血糖値を上げるかを知るために「グ リセミック指数(GI)」が用いられることがあります。GIはブドウ糖や食パンをとっ た際の血糖上昇値を基準(100)として、それぞれの食品の数値を相対的にあらわし たものです。GI値の大きいものほど消化吸収が早く、また血糖の上昇も大きくなりま - 197 - す。 また、調理法によってもGI値は大きく変わります。たとえば同じ白米でも、焼き飯 にするとカロリーは高くなりますが、消化吸収に時間がかかるため血糖の上がり方は緩 やかになり、お茶漬けにするとカロリーは低くなりますが、消化吸収が早いので血糖の 上昇は急激になります。 ですから、同じカロリーになるように計算された食事Aと食事Bを食べても血糖の上 がり方はまったく異なってきます。つまり、血糖値は摂取したカロリーで決まるのでは なく、さまざまな栄養素の組み合わせや調理の仕方などで決まるということです。 片頭痛を治すためには、インスリンの過剰分泌を抑制して〝錆び体質〟から脱却する 必要があります。そのためにGI値を活用して理想の食事を導き出せばよいのですが、 それは簡単なことではありません。食事の組み合わせは無数にあり、またGI値も調理 法や体調(絶食、運動、休養などにより異なる体内グリコーゲンの蓄積状況など)によ って変動しますので、あくまで目安にしかならないと覚えておいてください。 また、タンパク質や脂質も消化吸収後すぐにブドウ糖に変換されることはなく、いっ たんアミノ酸や中性脂肪などに変換されたあと、必要に応じてブドウ糖として血液中に 放出されることになります。 ただし、タンパク質は血糖値を食後すぐに上げる要因ではありませんが、インスリン の分泌は強く促します。タンパク質のとり過ぎも「酸化ストレス・炎症体質」を悪化さ せる要因にもなりますので、充分に注意してください。 健康であるための(食後の血糖値を上げすぎないための)、正しい食事方法とは? 「インスリンの過剰分泌を防ぐ→〝酸化ストレス・炎症体質〟からの脱却→片頭痛が 治る」という図式を実現するために、正しい食事のとり方を伝授します。 さて、インスリンを過剰に分泌させないにはどうしたらよいか? ごくシンプルに考える なら、食べ物がゆっくりと消化吸収されればいいのです。つまり―― ◎咀嚼に時間をかける ◎滞胃時間をかける(胃から十二指腸までの移動時間) - 198 - ◎消化吸収に時間をかける これができれば、血糖値が急激に上がることは理論上なくなります。しかも、ちょっ とした工夫でそれが可能なのです。ではご説明しましょう! 滞胃時間を適正にする! 順番は逆になるのですが、先にこちらの説明をします。 食後の血糖の上昇を左右するのは、じつは食べ物が小腸で消化吸収されやすいかどうか 以上に、胃から十二指腸に送り込まれるまでの滞留時間(滞胃時間)にポイントがあり ます。たとえば、栄養素では糖質(炭水化物)よりもタンパク質のほうが2倍長く時間 がかかります。一緒にとれば その分、血糖の上昇が緩やか になります。 また、脂質に注目すると、一 般の油脂に含まれる脂肪酸は 分子が大きくなるほど胃の働 きを抑制して滞胃時間を延ば します。分子の大きい肉類の 脂のほうが、分子の小さい魚 の油よりも胃の働きを抑制する効果が大きいのです。このように、油脂には血糖を上げ やすい(GI値が高い)食品と一緒にとると、血糖上昇を緩やかにする働きがあります (「お茶漬け」よりも「焼き飯」がその例)。 それは酢酸や乳酸のような分子の小さな脂肪酸でも同じです。酢の物や乳酸飲料、乳 酸食品などを食べると滞胃時間が延びることになります。 さらに、調理法によっても変わります。たとえば卵の滞胃時間は、半熟卵では約1.5時 間、生卵では約2.5時間、ゆで卵では約3時間となります。ジャガイモの場合には、焼き ジャガイモにするとブドウ糖を飲んでいるのと同じくらいの速度で消化吸収されてしま います。したがって、焼きジャガイモを食べるときにはサワークリームやバターなど、 - 199 - 胃の働きを抑える働きのあるものを一緒に食べたり、ステーキなどのタンパク質・脂質 の豊富な食品と一緒に食べたりすることで、適正な滞胃時間に調整することができます。 さらにジャガイモに関していうと、ゆでる、フレンチフライにするといった調理法に よってもGI値を下げることができます。 そしゃく 咀嚼に時間をかける! そしゃく 咀嚼には食物を細かく砕くとともに、食物を選別(魚の骨など食べられない物を除く) し、飲み込みやすくするだけでなく、次の効果が期待できます。 ・消化液の分泌をよくする ・食欲の中枢神経を刺激し、食べ過ぎを抑制する ・あごの発達や歯を丈夫にする ・大脳を刺激し認知症を予防する ・集中力を高めストレスを緩和させる ・目のまわりの血行をよくし視力低下を予防する ・虫歯や肥満の予防をする このようなことから、食べ物は大いに噛んでいただくことをお勧めします。 ところで、むかしから、消化吸収には「よく噛んで食べること」が推奨されています が、じつはやたらと噛めばよいというものでもないのです。 ほとんどの食べ物は空腸(小腸の前半)で消化吸収が終わります。ここまでの時点で の消化速度を見ると、食物繊維を多く含むもの、糖質を多く含むタンパク質(豆類など)、 アミロースの多い穀類(インディカ米など)、難消化性糖質など、もともと構造的に消化 しにくいものほど消化吸収がゆっくりで、つまり咀嚼の程度にはほとんど関係なく、食 べ物によって最初からある程度決まっています。 そしゃく 咀嚼の程度ではなく、食べ物自体の消化吸収のしやすさで決まってしまうということ なのです。 ただし、アレルギー皮膚炎やアトピー性疾患などのようにアレルゲンとして未消化物 - 200 - がとなる可能性が高い場合には、空腸と内容物との接触時間 ごく をできる限り短くするためにもよく噛む方が極わずかかもし れませんが好ましいのかもしれません。 そしゃく いずれにしろ、咀嚼に時間をかけるということは、消化吸収 までの時間を長くすることになりますので、食後の血糖値の 急激な上昇を抑えるためにも悪いことではありません。 そしゃく また、咀嚼に時間をかけるようにするためには、調理の際 に根菜類、肉類などは具材を大きめに切ることや、具材を軟らかく調理し過ぎないこと、 丼ものにしないことなどの工夫をすると良いでしょう。 利き手と逆の手で食べると早食いを避けることもできます。 そしゃく 結局、食後の血糖の上昇を抑えるには、咀嚼に十分に時間をかけ(早食いをせず)、糖 質(炭水化物)だけの偏った食事にならないように、タンパク質、油脂(あぶら)分を考慮 した調理・摂り合わせをし、滞胃時間が短くなり過ぎないようにすることが大切という ことになります。 大切なのは、食べても直ぐに空腹にならず、胃もたれもなく、次の食事の時間の30 す 分程度前にお腹がやや空くように、糖質、タンパク質、脂質、食物繊維などを適正に組 み合わせることが血糖の上昇を抑える最良の食事法ということができます。 脂質を多くすると滞胃時間を長くすることができ、食後の血糖の上昇を抑制すること は出来るのですが、反面、滞胃時間が長くなりすぎると胃もたれなどを起こし、胃疾患 や逆流性食道炎などの可能性を高めることになります。 食物繊維を摂る! 食物繊維には消化吸収を遅らせる作用があります。特に玄米や全粒小麦などの食物繊 維の多い穀類、タンパク質と食物繊維を多く含む豆類は消化吸収を遅らせます。 たとえば、食物繊維を多く含む玄米(含有量約3%)は、食物繊維をわずかしか含ま ない精白米(含有量約0.5%)よりも消化吸収速度は遅く、食後の血糖上昇は緩やかにな ります。 食物繊維にはいろいろな種類がありますが、その種類によって生理的な作用も異なっ - 201 - ています。特に水に溶ける食物繊維と水に溶けない食物繊維ではその作用が著しく異な ります。 水に溶けない食物繊維とし て、セルロース(大豆、ゴ ボウ、小麦ふすま、穀類な どに含まれる)、ヘミセルロース(小麦ふすま、大豆、穀類、野菜類など)、リグニン(小 麦ふすま、穀類、完熟野菜類など)などがあります。 水に溶ける食物繊維としては、ペクチン(リンゴやみかんなどの果物、芋類、キャベ ツや大根などの野菜類など)、ヘミセルロース(コンブやワカメなどの海藻類など)、ガ ム質(大豆やカラス麦などの麦類など)などがあります。 水に溶ける食物繊維は一般的に膨潤性が高く吸着作用があり、水に溶けると粘りけが 強くなりドロドロになるなどの特徴があります。 そしゃく 一般に食物繊維の多い食品は噛み応えがあるため、咀嚼に そしゃく 時間がかかり咀嚼力が向上するとともに食事時間が長くなり ます。 食物繊維は胃に入ると唾液や胃液を吸収して膨潤し容積を増し、小腸においてもさらに 水分を吸収して膨潤し、小腸内容物の容量を増やすとともに、ドロドロの状態にしま す。 内容物の容積が増すと、その中に含まれている糖質は希釈されますので、消化・吸収 は緩やかとなり、血糖の上昇も緩やかとなります。 一方、水に溶けない食物繊維は有害な物質と結合したり、有害な物質を吸着する作用 がありますので、カドミウムやPCB、ダイオキシン類などの環境汚染物質やタール色 素、食品添加物などの有害物質の体内への吸収を防ぐことができます。 水に溶けない食物繊維は有害な二次胆汁酸や酸化コレステロールなども吸着し排泄す ることができますので有害物質の排泄に適しています。 しかし、摂りすぎは同時に有用なミネラルや油溶性のビタミン類なども排泄すること は覚えておかなくてはいけません。 食物繊維は体内の消化酵素では消化されないため、小腸を通過し大腸に到達します。 - 202 - 大腸では食物繊維の一部は腸内細 菌によって発酵分解を受け(水に 溶けない食物繊維は発酵を受けに くく、水に溶ける食物繊維であっ ても海藻類はほとんど発酵されま せん)、酢酸やプロピオン酸、酪酸 などの短鎖脂肪酸のほか、炭酸ガ ス、水素ガス、メタンガスなどに 代謝されます。 生成された酢酸やプロピオン酸、酪酸などの短鎖脂肪酸の一部は腸内細菌自体の増殖 にも利用されます。 一般的に、小麦ふすまなど水に溶けない食物繊維は便の量を増す効果(便秘解消効果) はありますが、血清コレステロール濃度を顕著に低下させるほどの効果は認められてい ません。逆に、グアーガムやペクチンなどの水に溶ける食物繊維は血清コレステロール 濃度を効果的に低下させることはできますが、顕著な便秘改善効果は認められないこと が多いようです。 食べる順番を考える! 全く同じ食事をとっても、食品の食べる順番によって食後の血糖が上昇程度は異なる ことをご存知でしょうか? 食べたものは胃などの消化器官内で一部は混合されますが、胃から先では原則的に「先 に入ったものは先に出て行く」ため、先に食べた順に、十二指腸、小腸へと進みます。 そのため、糖質(炭水化物)だけを先に食べると、食後の血糖は上がりやすくなりま すし、逆に食物繊維の多い食品や脂質の多い食品などを先に食べると、食後の血糖上昇 は緩やかになります。 ご飯の前に酢の物を食べる、パン食には牛乳やヨーグルトを一緒にとる、でレッシン グのかかった野菜サラダなどを先に食べるといったことも、食後の急激な血糖上昇を抑 えるのにはよい方法です。 - 203 - 「カロリーが同じであれば、食べてしまえば同じこと」にはなりませんので、日頃より 消化吸収速度を考えた食べ方(順序)に気を配ることも血糖の上昇を緩やかにするため には大切です。 食べる順番の違いが、中性脂肪の溜まりやすさや基礎代謝にも影響を与えることにも なります(ダイエット効果に影響する)。 さ さ い 勿論、食事中は些細なことは気にせず、楽しく、美味しくいただくことが第一優先で あり、大原則ではあるのですが。 ・難消化性糖質、オリゴ糖などの甘味料を使用する! 砂糖や麦芽糖(水あめの成分)、ブドウ糖などの甘味料 は血糖値を上げやすく、インスリン分泌を強く促します。 果糖はインスリン分泌の刺激は小さいものの、中性脂 肪になりやすく、内臓脂肪として蓄積されやすいという 特徴があります。 私のお勧めは、オリゴ糖や糖アルコールなどの難消化 性糖質です。甘味充分にあり、胃や腸の消化酵素によっ てブドウ糖などへ消化されることがなく、インスリン分泌を促進しないからです。 また、これらの難消化性糖質が大腸に到達し腸内細菌により発酵されるときに生成す る酢酸などの短鎖脂肪酸がインスリン分泌を刺激することもありません。 そのため、オリゴ糖や糖アルコールなどの難消化性糖質を摂取しても血糖が上がるこ とや血中インスリン濃度が上がることはありません。 ところで、血糖を上げない甘味料といえばサッカリンやパルスイートなどの合成甘味 料もあります。これらの甘味料は安全性などに疑問が残されていることや、天然に存在 しない化学物質であることから、私はお勧めしていません。 難消化性糖質であるフラクトオリゴ糖は、健常者がとっても血糖値ならびに血中イン スリン濃度に全く影響を与えることはありません。 難吸収性のキシリトールやソルビトールも同様な傾向を示します。また、吸収はされ - 204 - ても体内で代謝されずにそのまま尿中に排泄されるエリスリトールも同様です。 難消化性糖質は小腸で消化・吸収されるこ となく大腸に達し、腸内細菌(善玉菌)のエサ となります。 善玉菌であるビフィズス菌などの勢力が優 勢になると、病原菌の増殖が抑制され、さま ざまな感染症の発症が抑えられる可能性が高 まります。また、難消化性糖質が醗酵・分解 されるときには、酢酸やプロピオン酸、酪酸 などの短鎖脂肪酸が生成されますから、酸に 弱い腐敗菌や病原菌などの悪玉菌が抑制されることになります。 また、これらの短鎖脂肪酸は、全身のエネルギーとしての利用や、腸壁細胞の新陳代 ぜんどう 謝を促進し、大腸の蠕動運動(ミミズが這うように腸の収縮が連続する運動)を促進し、 便秘の改善にも寄与します。 また、悪玉菌が減少すれば、インドールやスカトール、フェノール、アンモニア、硫 化物など腐敗物質の生成が少なくなり、肝臓での毒性物質代謝負荷が軽減されることや 発癌・老化促進物質などの内因性有害物質の生成が抑制されることになります。 同時に、糞便や腸ガスの悪臭も改善されます。 また、フラクトオリゴ糖をとることより血液中の中性脂肪が低下し、血清コレステロ ール濃度が低下するという報告もあります(プロピオン酸の作用)。 難消化性糖質を摂取すると、腸管内pHが低下しカルシウムや鉄などの金属イオン吸 収が促進されるという報告もあります。 オリゴ糖や糖アルコールなどの難消化性糖質は砂糖のような甘味料としての強い刺激 はありませんが、甘味料としての役割は十分に備えていますので、砂糖との併用を含め 日常的に用いることが好ましいでしょう。ただし、急に摂取量を増やしたり、摂りすぎ ゆる るとお腹が緩くなったり、ガスが多くなることがあります(健康上に悪いことではあり ませんが)。 健康をおびやかす「酸化ストレス・炎症体質」 - 205 - 生活習慣病・片頭痛を招く大きな原因には、「酸化ストレス・炎症体質」があり、これ は健康になりたい人間にとっても見逃せない重要な問題です。 ビューティーやアンチエイジングに関心の高い女性なら、「活性酸素」が大敵だという ことは知っていますよね? カラダのなかでエネルギーをつくりだすときなどに発生する 活性酸素は、クルマでいえば「排気ガス」みたいなものです。「毒をもって毒を制す」 みたいに、ウィルスをやっつけてくれる働きもありますが、多く発生し過ぎれば私たち自 身のカラダを攻撃してこわしてしまいます。それが老化や病気につながるのです。 いわゆる「錆び体質」と呼ばれるこの状態が、「酸化ストレス・炎症体質」です。これ が間違った食習慣によってもたらされるものです。それを克服するためのメニューを考案 しました。それが「健康ジュース」や「ラブレクラウト」です。つまり、生活習慣病の病 気も、あなたのビューティーも、根っこのところではつなかっているということです。 4.片頭痛体質改善のために「行うべき”必須の3つの項目”」 ここからが、片頭痛を根本的に改善させていくための具体的な方法です。 これは、片頭痛の根底にある「片頭痛体質」を改善させていく方法です。これまで述べ てきたことの集大成であり、これまで述べて参りましたことを念頭において、ただ、これ を実際に行っていけば”必然的に”改善されてくるということです。 この点に関しては分子化学療法研究所の後藤日出夫先生は、以下の3つを挙げておら れます。8) 1、悪い植物油(市販のサラダ油など)や加工油(マーガリンなど)をとらない。とるのは シソ油(エゴマ油)とエクストラバージンオリーブ油だけにする 2、毎日の朝食は「万能健康ジュース」だけにする 3、食事ごとに「ラブレクラウト」をとる - 206 - 1.悪い植物油(市販のサラダ油など)や加工油(マーガリンなど)をとらない 脂質のとり過ぎが活性酸素の発生原因に! 「酸化ストレス・炎症体質」の人は、体内で過酸化脂質が生成されやすく、これが活性 酸素を過剰に発生させる原因物質となっていま す。 過酸化脂質というのは、コレステロールや中 性脂肪が活性酸素によって酸化されてできたも のです。これらは体内で作られるのですが、そ れ以上に、過酸化脂質を多く含む加工食品など を過剰にとる食習慣のほうに問題があると考え られます。 ポテトチップスなどのスナック菓子、インス タントラーメン、ピーナッツ、マヨネーズ、マクロの缶詰(缶を開けたあと)、黒くなっ た古い油分には注意が必要です。また、新しいものでもチキンフライなどの揚げ物を電子 レンジで加熱すると、とがった部分や角の部分が過酸化されることがあります。 ところで、精神的なストレスを受けて アドレナリンが分泌されると、血糖値(血 液中のブドウ糖濃度)を高めるために体 脂肪が分解されます。このとき、体脂肪 から遊離脂肪酸が生成され、血液中に溶 け出して全身に送られます。 通常、体脂肪は空腹時のエネルギー不足を補うために分解されます。ところが、精神的 なストレスからアドレナリンが分泌されて遊離脂肪酸が生成されますと、エネルギーとし て消費されることがほとんどありませんので、その後ストレスから解放されると、血中の 遊離脂肪酸濃度だけが高くなった状態になってしまいます。この遊離脂肪酸は、血小板の 凝集を促進したり脳血管壁を傷つけたりしますから、これが活性酸素を発生させる原因と なってしまいます。 - 207 - 遊離脂肪酸には細胞を傷つける性質が強いという特徴があります。通常は血液中のアル ブミンというタンパク質成分と結合して毒性が弱められた状態で存在しているのですが、 遊離脂肪酸が毒性を発揮して細胞を傷つけるということは、アルブミンとの結合可能な限 界量(閥値)を超えてしまっているということです。 このような状態を招く原因は、間違った日々の食習慣なのです。特に、植物油(リノ ール酸)やトランス脂肪酸を多くとり過ぎると、体内で の脂質代謝が充分に行われず、血液中の遊離脂肪酸濃度 が高い状態になることがわかっています。 このような状態になれば、ストレスなどのわずかな刺 激であっても、片頭痛の引き金となる脳血管内の血小板 凝集が起きてしまいます。 低血糖にも注意が必要 ところで、皆さんは甘い清涼飲料水やお菓子をよく召し上がりますか? これらに含ま れる糖質は、私たちの体が短時間に分解・処理可能なレベルを超える量が含まれているも のが数多く見受けられます。 体内でどのような変化が起きるかを見てみる と、清涼飲料水やお菓子を過剰に摂取すると急 激に血糖が上がり、その上昇を抑制するために、 膵臓からインスリンが分泌されます。インスリ ンには血中のブドウ糖濃度を調整してくれる働 きがあることはご存知のとおりです。清涼飲料 水などの消化吸収のよい糖質を短時間でとると、 体はたくさんの糖質が摂取されたと認識してインスリンを過剰に分泌します。その結果、 血糖値が必要以上に下がり過ぎるという現象が起きます。これが低血糖です。 急激な血糖値の低下も、体がストレスを感じている状態です。そうなると、今度はそれ を適正なレベルにまで戻そうと体が働き、アドレナリンなどのホルモンが分泌されます。 すると、体脂肪が分解されて遊離脂肪酸が血液中に放出されて濃度が高まり、これが活性 - 208 - 酸素を発生させて片頭痛の原因となるわけです。 スポーツドリンクや清涼飲料水などを大量に飲み続けることにより引き起こされる「ペ ットボトル症候群」という現代病もこのようにして発症します。体がだるい、のどか渇く、 トイレに行く回数が増えるなどの急性糖尿病的な症状や、ひどい場合には血液が酸性にな り昏睡状態に陥ることもあります。 清涼飲料水やお菓子のとり過ぎ以外にも、過激な 運動や無理な絶食なども血液中の遊離脂肪酸の濃度 を高めることにつながります。ご注意ください。 精製・加工処理された植物油をとらない 片頭痛にはいろいろな症状の違いがあり、発症の 原因もさまざまです。でも、どのようなタイプの片頭痛の人にも共通した発症要因が「酸 化ストレス・炎症体質」です。 「それはなぜ?」はのちほど説明することにして、とりあえずここでは。どうすれば改 善できるのかを解説することにしましょう。その筆頭に挙げたいのが食習慣の見直し、 その中でも特に「食用油に気をつけること」で す。 皆さんの中には、「植物油は健康によい」と思 っている方も多いのではないでしょうか? も しあなたが「植物油は健康によい」と信じてい るのであれば、「植物油のとり過ぎが、じつは健 康を害する最大の原因である」と認識を変えて ほしいのです。 もちろん、植物油の中にも「よい植物油」と「悪い植物油」があるので一概にはいえな いのですが、悪い油のとり過ぎが、片頭痛発症の引き金となる「活性酸素」と「遊離脂肪 酸」を発生させることにつがなっていることは確かです。よいものと悪いものを見極める 目を持つことが大切です。 - 209 - 私かお勧めする植物油は、昔ながらの製法「低温圧搾」 で造られたシソ油(エゴマ油)や亜麻仁油などのオメガー 3系脂肪酸を多く含む植物油と、エクストラバージンオリ ーブ油、低温圧搾で作られたゴマ油やナタネ油などの植物 油です。これら以外の市販されているサラダ油など多くの 植物油は、いずれも「悪い油」といってもよく、多くとっ てはいけないものばかりです。また、マーガリンやショー トニングなどの脂もダメです。 こうした「悪い油」を原材料とするマヨネーズやドレッシング、植物性ヨーグルト、ケ ーキ、ビスケット、クッキー、チョコレート……なども、できるだけ避けたい食品といえ ます。加工食品の成分表を見ればわかるのです が、植物油が加えられていない加工食品はまれ にしかありません。これらの植物油のほとんど は悪い油です。注意してください。 危険な「トランス脂肪酸」について 悪い植物油というのは、工業的に精製・加工されたもので、その製造過程で副産物とし て生成されるトランス脂肪酸という非常に危険な有害物質を含んでいます。トランス脂肪 酸は悪玉コレステロールを増やし、善玉コレステロールを減らす働きがあることがわかっ ていて、動脈硬化や心臓病につながるなど、健康被害の原因となります。海外では、加工 食品にトランス脂肪酸がどれくらい含まれているかを表示する義務や含有量の制限がある 国もあるほどです。 このトランス脂肪酸をとることと、植物油の主成分であるリノール酸のとり過ぎが、片 頭痛やさまざまな生活習慣病を発症させる原因となる「酸化ストレス・炎症体質」の最大 の誘発因子となっています。ですから、悪い植物油を料理などに極力使用しないこと、こ うした植物油を使って作られた加工食品を極力とらないことが大切です。 ところで、今でもマーガリンが「健康によい」と信じている人は結構多いようです。 - 210 - もし、料理にマーガリンを使う必要があるのであれば、ただちにバターに切り替えてくだ さい。バターのとり過ぎも体にはよくないのですが、それでもマーガリンよりは健康上の 問題は少ないといえます。 マーガリンやショートニングを使用している市販のケーキやクッキー、お菓子類なども 極力とらないようにすることが、「酸化ストレス・炎症体質」を改善するためには大事で す。 市販の揚げ物を食べてはダメ’・ 市販の揚げ物にも、油の”持ち”をよくするために、トランス脂肪酸を多く含む硬化油 という植物油が使用されています。硬化油を使用した鶏の唐揚げやポテトフライなどの揚 げ物類も極力とらないようにしたほうがよいでしょう。揚げ物を食べたい場合は家庭で作 るようにしてください。その際には、圧搾製法で造られたナタネ油やゴマ油、またはオリ - 211 - ーブ油を使うようにしましょう。 また、悪い植物油はドレッシングやマヨネーズをはじめ、多くの加工食品に使用されて います。ですから、加工食品を手にとったら、必ず成分表を見るようにしたいものです。 「植物油使用」と書かれているものは、いずれも悪い植物油が使われていると思ってくだ さい。 マヨネーズやドレッシングは、エクストラバージンオイルやシソ油を使った自家 製のものにすると、健康にもいいし、美味しく安心していただくことができます。 日常の調理には加熱用としてエクストラバージンオリーブ油を使い、ドレッシングやマ ヨネーズなどの非加熱用途には、シソ油(エゴマ油)ま たはエクストラバージンオリ-ブ油を用いるとよいでし ょう。 また、穀類、種実類(ナッツ)、豆類、芋類など、天然 の植物に含まれる油分にはリノール酸が多く含まれてい ますが、これらはよい油分であり、有害なトランス脂肪 酸は含まれていません。 なお、リノール酸は必須脂肪酸です。摂取不足が気になるところですが、通常の食事(穀 類や豆類を含む)をしているかぎり、あえて植物油や植物油を含む加工食品をとらなくて も摂取不足を起こすことはありません。 また、穀類や豆類を中心とした通常の食事では、リノール酸のとり過ぎを起こすこと もありません。知らず知らずのうちに加工食品から摂取されるトランス脂肪酸やリノー ル酸のとり過ぎ、ドレッシングやマヨネーズ、唐揚げなどからの直接的な植物油のとり 過ぎが問題です。 脂肪酸の種類 たとえばビタミンにもいろいろな種類があるように、脂質(油脂)にもいくつかの種 類があります。これらは。分子構造上・脂肪酸として次のように分類できます。 I.飽和脂肪酸……酸素などと反応しやすい「二重結合」を持たないもの (ヤシ油や牛乳・バターに多く含まれる) - 212 - Ⅱ.一価不飽和脂肪酸……「二重結合」がひとつだけあるもの (オリーブ油の主成分であり、ナタネ油や牛脂に多く含まれるオレイン酸など) Ⅲ.多価不飽和脂肪酸……複数の「二重結合」を持つもの (シソ油に多く含まれるα-リノレン酸や植物油に含まれるリノール酸、青魚に含ま れるEPA・DHAなど) 飽和脂肪酸や一価不飽和脂肪酸は、 おもに体を構成する細胞膜に使用され たり、中性脂肪として体に必要なエネ ルギーとなったりするものです。ただ し、体をコントロールしている生理活 性物質(私たちの生理活動に影響を与 えるホルモン様物質)の合成に使用さ れることはありません。 一方の多価不飽和脂肪酸には、細胞 膜の構成やエネルギーの供給源となる ほかに、「酸化ストレス・炎症体質」を 決定する生理活性物質の原料になるという重要な役割があります。 最近注目されているのが、多価不飽和脂肪酸の中の「オメガー3系脂肪酸」です。シソ 油(エゴマ油)、亜麻仁油の主成分であるαーリノレン酸をはじめ、青魚に含まれるEP A(エンコサペンタエン酸)やDHA(ドコサヘキサエン酸)などが代表です。サプリメ ントとしても発売されていますから、皆さんもご存知のことでしょう。 多価不飽和脂肪酸には、このほかにもリノール酸やアラキドン酸などのオメガー6系脂 肪酸のグループがあります。体内でEPAやDHAはα-リノレン酸からも合成され、ア ラキドン酸はリノール酸からも合成されます。このように、同じグループ内の脂肪酸は体 内で必要に応じて作りかえられるのですが、オメガー6系からオメガー3系などグループ を超えての合成は決して起こりません。 大切なのは「オメガー3系脂肪酸」 - 213 - 一般にオメガー6系脂肪酸をとり過ぎると 「酸化ストレス・炎症体質」が悪化し、逆にオ メガー3系脂肪酸は「酸化ストレス・炎症体質」 の悪化を抑制する働きがあります。 今日の食生活では、オメガー6系脂肪酸はと り過ぎとなり、逆にオメガー3系脂肪酸は不足 しがちです。これは近年急激に摂取量が増えた植物油に、リノール酸などのオメガー6系 脂肪酸が多く含まれること、さらに私たちが主食とする米をはじめ、小麦やトウモロコシ、 そばなどの穀類の油分にもオメガー6系脂肪酸が多く含まれるからです(オメガー3系脂 肪酸の 15 ~ 30 倍)。 当然、片頭痛でお悩みの方には、オメガー3系脂肪酸を含む食べ物を積極的にとるよう お勧めするわけですが、なかでもEPAやDHAを多く含む青魚が有望です。 ただし、ここで注意しておきたいことがひとつ。青魚のうち、ブリやマクロなどの大型 魚には、メチル水銀やダイオキシン類といった環境汚染有害物質を多量に含むものが多い ということです。小さければ小さいほど、こうした有害物質をわずかしか含みませんから、 目安としては「手先から肘までより小さな魚」であるイワシやアジ、サバなどの小型の青 魚がお勧めです。 また、オメガー6系脂肪酸とオメガー3系脂肪酸の摂取比率は、体質改善当初は[1: 1]、改善後は[2:1]が望ましく、私はシソ油(エゴマ油)や亜麻仁油を日常の食生 活に取り入れることを勧め ています。 ところで、もしあなたが 花粉症やアレルギー性鼻炎、 アトピー性皮膚炎などのア レルギー疾患で悩んでいるのであれば、これまで述べてきた植物油にかかわる注意事項を 忠実に守るだけで、その悩みは解消に向かうことでしょう。 片頭痛の場合には、残念ながらこれだけでは充分な改善効果を実感することはできない のですが、まずはこの植物油の問題をクリアすることが、片頭痛体質改善への第一歩です。 ぜひお試しください。 - 214 - 2.「万能健康ジュース」 毎日、リンゴとニンジンを中心とし た「万能健康ジュース」だけの朝食を とり、必要に応じて週に一度、または 月に一度から二度、三食とも“万能健 康ジュースだけの日“を設けるという シンプルな方法です。 朝ごはんの代わりにジュース 1 杯がいい理由 もし、あなたが朝ごはんを抜いている人なら、その時点ですでに負け組確定です。「ち ゃんと食べてるから大丈夫」と思った人も、実は何を食べるががとても重要なのです。 交感神経と副交感神経の話はすでにしました。朝ごはんの時間は、副交感神経から交感 神経への“切り替え時”です。ここで何を食べるかによって、この切り替えがうまくいく か、いかないかが決まるのです。 目覚めると同時に、セロトニンの働きによって交感神経が活動を開始して、ちゃんと働 けば、朝から頭が冴えわたり、カラダも軽く、集中力UPも間違いなし。ところが、朝食 が“タンパク質たっぷり”のメニューだと、消化吸収能力が高くない日本人は、消化吸収 のためにかなりのエネルギーを必要とします。特に女性はそれが顕著です。せっかく目覚 めたのに、交感神経ではなく、消化吸収のために副交感神経が働くモードに逆戻りしてし まいます。そうやってカラダが夜型に戻ってしまえば、起きてるだけでしんどいー。「朝 からダルつ」とかいってるあなた、もしかするとそれはパン食のせいかも知れません??? もちろん、朝食抜きは絶対にダメです! 血糖値が下がるためにカラダが「ストレスを 受けた」と勘ちがいして、活性酸素や遊離脂肪酸といったカラダを傷つける物質を発生し てしまいます。 では、何をとるのがいいのでしょうか? ここで、登場するのが分子化学療法研究所の後藤日出夫先生の提唱される万能健康ジュ ースです。 - 215 - 「万能健康ジュース」の特長 ○不足しがちなビタミン類、ミネラル類、 抗酸化物質をバランスよくとることがで きる ○腸内環境(善玉菌)を健全にする ○自律神経がバランスよく働くようになる 必須の材料 レシピ (2人分) リンゴ(皮付きで) 1個(約350g) 人参 1本(約80g) バナナ 1本 水 250ml ビタミンC(アスコルビン酸の原末) 1~2g クエン酸(梅肉エキスが一番です) 1~2g オリゴ糖 お好みの甘さになる程度で エゴマ油 or 亜麻仁油 小さじ1 塩化マグネシウム水溶液の原液 1ml~ 以下、お好みで キウイ、パイナップル、イチゴなどの果実 セロリ、パセリ、大根葉 エクストラバージンオイル などの葉物野菜 大さじ1 作り方です - 216 - リンゴ1個を上の写真位の大きさにカットし(皮付きのまま)ミキサーに入れま す ニンジンは皮を剥き、上の写真位の大きさにカットし バナナも上の写真のような大きさに切り - 217 - ミキサーに入れます ミキサーに入れます オリゴ糖はお好みの甘さになる様に えごま油(亜麻仁油でもOK)を小さじ1杯(目 分量でOKです!) クエン酸を 1~2 g(目分量OKです!) 梅肉エキスがあれば、一番です をミキサーに入れます。 ビタミンCを1~2g(目分量OKです) 水 250ml マグネシウム水溶液の原液を1 ml(目分量 OK で す)をミキサーに入れます。 - 218 - 材料を全てミキサーにかけたら完成です (写真は1人前) 材料を切るところから初めても、2人分であれば ので手軽で簡単だと思います。 ワンポイント - 219 - 5分少々時間があれば作る事できます ★必ずミキサーを使って”もれなく”召し上がって下さい ★夏は水の一部を氷に、冬はお湯にすると飲みやすくなります ★夏はバナナが傷みやすいので、あらかじめ皮をむいて凍らせておくと冷たくておいしい ジュースになります ★季節の果物や葉物野菜をお好みで。水の代わりに野菜ジュースや豆乳でも OK ! ★オリーブ油を使うときは「エキストラバージンオイル」を使って下さい。ピュアオリー ブ油などはNG ★ビタミンC(原末)無水クエン酸はドラッグストアかネット通販で手に入れましょう ★ジュースは作り置きせずに、その都度つくりましょう ★ゴマ(黒)は飲む直前にすってトッピングを! 「万能健康ジュース」にはこんな効果が! 「万能健康ジュース」は健康を願う人や、病気になりやすい体質を改善したい人のため に、分子化学療法研究所の後藤日出夫先生が考案した究極ともいえるジュースです。 ジュースというと、朝の忙しい時にグィー!っと一杯という感覚の方が多いと思います が、そうではなく、朝の食事に必要なものを一まとめにした朝食と考えてください。 「たかがジュースくらいで・・・・」と思われる方も多いと思いますが、その効果は花粉 症、アレルギー性鼻炎、喘息、アトピー性皮膚炎、乾癬、クローン病、自己免疫疾患のよ うな免疫異常による病気のみならず、糖尿病、脳卒中、心臓病、高脂血症、高血圧、肥満、 高尿酸血症、痛風などの生活習慣病、癌、骨粗鬆症、さらには認知症、うつ病、パニック 障害、片頭痛、不眠症などの神経系の病気の体質改善のためにも作られた「分子化学療法」 のベースとなるジュースです! 言い換えますと、解毒、酸化ストレス解消、腸内細菌健全化、アレルギー体質改善、便 秘解消、基礎代謝アップ、ダイエット、美容関係(シミや肌荒れ)など、多くの健康や美 容上の障害要因の改善に効果が現れるように作られています。 毎朝のジュースで片頭痛やパニック障害、自律神経までもが改善される・・・そんな馬 鹿な、と思われる方が多いかもしれません。 - 220 - でも、「事実は小説よりも奇なり!」といいますか、まず試してからその効果を実感し てください。 では、「万能健康ジュース」がこれらの病気の体質改善に良い理由の三つのポイントを、 先にお話します。 ①、不足しがちなビタミン類、ミネラル類、抗酸化物質がバランスよく取れること ②、腸内細菌を健全にすることができること ③、自律神経のバランスが正しく働きだすこと この様に「万能健康ジュース」は作られています。 「ジュース!」を飲んで「ビタミンやミネラル」、「腸内細菌」は分からないでもない が、「自律神経のバランスは・・・・???」と思われる方も多いのかもしれません。 最も効果的な飲み方(食べ方?) さて、ジュースが出来上がっていただく前に、私達はゴマを粗引きにして、トッピング しながらいただきます。 噛むことが脳内セロトニンを増やす(気分がリラックスしてくる)ことは、ご存知です ね。ジュースというと短時間で、ゴクゴクというイメージですが、これでは効果半減です。 私は NHK の朝ドラが始まってから終わるまで(15分間)にジュースを頂きます。 このとき、トッピングした粗引きゴマを奥歯でゴマをすりつぶす(噛む)と、何ともゴ マのイイ香りがします!ゴマの香りが嫌いな方はアーモンドでもいいと思います。ここで は、それらをよく噛むことが大切です。 ダイエットをしたい方は朝は「万能健康ジュース」だけ、昼からの食事を今まで通りに して、週に1度か、月に1~2度、三食とも万能健康ジュースにする日を設けるだけでか なりの効果が出ます。 では、一般的な注意事項を述べます。 - 221 - 毎朝、「万能健康ジュース」だけの朝食をとります。目標体重を超えている場合は、必 要に応じて週に一度、または月に一、二度の三食とも「万能健康ジュース」だけの日を設 け、目標体重を維持するように努めてください。 毎朝、他の食べ物は一切摂らず、朝食の代わりとして頂きます。昼食まで空腹になるこ とは無いように作られていますので、原則、他の食べ物は昼食までは一切摂らないように してください(消化器官の休養も目的の一つです)。 しかし、もし昼食までの間に空腹感が強いようであればオリゴ糖の煮リンゴ(あらかじ め作っておく)やバナナなどを昼食までのつなぎに摂ると良いでしょう。 リンゴや季節の果物、野菜類であれば「万能健康ジュース」とともに追加的に摂っても 構いませんが、目玉焼き、ソーセージなどの動物性タンパク質は一切摂らないことが大切 です。 ただし、午前中に山登りやスポーツ大会などに参加するなど運動によるカロリー消費量 が多いと予想される際は、消化の良い炭水化物(おむすびなど)を予測されるカロリー分 だけ摂ってもかまいません。 短時間の空腹感は基礎代謝を上げるためには良いことですが、強い空腹感を我慢するこ とや空腹が長く続くことは自律神経を乱し、且つ、基礎代謝を下げることにもなります。 朝食は「タンパク質を摂らず」、「滞胃時間が短く」、「強い空腹感を生じないもの」と いうのが、基本的な朝食の食事法となります。 「万能健康ジュース」だけの朝食では、昼までお腹が持たないように思われる方もおられ るかもしれませんが、かなりの運動をしない限り「万能健康ジュース」は昼まではさほど 空腹感を感じないように作られています。 なお、「万能健康ジュース」だけの朝食は、成長期の子供や妊婦の方はこの限りではあ りません。より多くの栄養素を必要とする成長期の子供や妊婦の方は、肥満児を除き朝食 からしっかり食事を摂ることが好ましいでしょう。運動量の多い成人も朝からしっかり食 事をとりましょう。 「万能健康ジュース」を作るときのポイント 重度の便秘(便秘薬に完全に依存するなど)でなければ、「万能健康ジュース」を始め - 222 - て数日で便秘解消と減量(ダイエット)の効果が現れ始めます。 腸内細菌が乱れている方は当初下痢になることがありますので、下痢を起こした時は、 いったんジュースの量を減らし徐々に通常量に戻すようにしてください。 下痢の改善が目的であれば、次に説明します「ラブレクラウト」を摂ることを優先し、 便通が正常になってから「万能健康ジュース」を始めると良いでしょう。 また、基本処方の「万能健康ジュース」で便秘が改善されない時は、まずニンジン(生) の量を増やします。次に、ビタミンCを3g~6g(1.5~3g/人)程度まで増量す ると効果が現れることも多いようです。 大さじ一杯程度のオリーブ油を加えることにより便秘改善効果が現れた方もおられま す。 また、便秘改善には「ラブレクラウト」の効果も大きいように思いますので、是非「万 能健康ジュース」とともに「ラブレクラウト」の両方を併せて実践してください。 それでも便秘が改善しない場合は、原因に精神的なストレスや運動不足、セロトニン不 足のような他の要因が大きくかかわっていますので、そちらを直すことを優先してくださ い。 「万能健康ジュース」を飲まれて胸焼けが起こるようであれば、一気飲みをせず食べるよ うにいただくことやニンジンを加熱して用いるとほとんどの胸焼けは解消します。また、 オリーブ油の量を減らすことや(便秘で無い方はオリーブ油は必要ありません)、マグネ シウムの量を増やすことも効果があります。 花粉症やアレルギー疾患の人はα-リノレン酸(エゴマ油やシソ油、亜麻仁油)を増量 します。 風邪気味の際はビタミンCを増量します。 高尿酸血が気になる人はクエン酸を増量します。 片頭痛や神経系の疾患の人はマグネシウムを増量します。 ただし、マグネシウムを増量し、苦にがくなりすぎて美味しくなくなるようであれば、 「万能健康ジュース」では増量せずに、白湯や昆布茶にマグネシウムを入れて摂るなど「万 能健康ジュース」とは別の食事の機会に頂くと良いでしょう。 ニガリにはマグネシウム以外にナトリウム、カリウム、カルシウムなどのミネラルが多 く含まれていますので、マグネシウム以外のナトリウムなどのミネラルの摂取が問題とな る場合は塩化マグネシウム水溶液を用いてください。 - 223 - マイジュースの薦め: 「万能健康ジュース」の材料の効能については後で説明しますが、自分だけのこだわり の品(しな)を加えて、マイジュースとして自分だけのジュースにされるのも楽しいと思 います。たとえば、水を野菜ジュース(トマトジュースやニンジンジュースなど)や豆乳 に変える。手作りの甘酒を加える。ラブレクラウトを入れる。貝割れ大根やブロッコリー スプラウトを入れる。ブロッコリーを入れる、・・・・・・などなど。 「万能健康ジュース」はジュースと名前がついていますが、単なるジュースではありま せん。急激な血糖の上昇がなく、昼までお腹が空かないように緩やかな血糖上昇と維持を 高度の計算から導き出して作られているのです。 「万能健康ジュース」は朝食時の摂取カロリーを単に制限することが目的ではありませの で、昼食までの摂取カロリーが足りないと思われる際は追加的に果物を摂ってもかまいま せん。果物を追加的に摂られる際は果物に含まれる糖質の種類に気を配ってください。 果物に含まれるブドウ糖やショ糖(ブドウ糖+果糖)は食後直ぐに血糖を上げます。果物 に含まれる果糖は食後2時間くらい経ってからジワジワと血糖を上げます。 ショ糖の多いバナナなどを一度に多く摂ると血糖値が上がりすぎることがあります(内 臓脂肪の増加や強い空腹感の原因となる) 昼食まで、急激な血糖の変化がなく、バランスよく血糖をコントロールすることが重要 です(朝食時の追加にはりんごを、つなぎ食の際はバナナにすると一般的にカロリーのバ ランスがよくなります) 代表的な果物に含まれる糖質の違いを次の表に示しますので、参考にしてください。 代表的な果物の糖質の割合(%) りんご キウイ バナナ ブドウ みかん 5.5 4 2.5 8 1.5 ブドウ糖 3 4 4 7.5 1.5 ショ糖 2.5 0.5 16 0.5 5.5 果糖 - 224 - 全糖 100gのカロリー 0~13 40~52 7~10 23 6~10 8~12 28~40 92 24~40 32~48 (Kcal/g) なぜ「万能健康ジュース」は効くのでしょうか。 「万能健康ジュース」は、次のような改善を目的に作られています。 ①、不足しがちなビタミン類、ミネラル類、抗酸化物質がバランスよく取れること ②、腸内細菌を健全にすることができること ③、自律神経のバランスが正しく働きだすこと この中でも、「自律神経のバランスが正しく働き出す」ということについては納得しが たい!? 「万能健康ジュース」か何か知らないが、ジュースごときを飲んで何故、自律神経のバラ ンスが正しくなるのか!?といった疑問をお持ちの方が多いのではないかと思います。 実は、生活習慣病や体調不良などは、結構、食事のとり方に大きな原因がある場合が多 いのです。 言い換えますと、消化能力が優れた欧米人の食習慣を模倣することや欧米式の考えをベ ースにした、日本人にとって間違った食事方法の結果がさまざまな生活習慣病や体調不良、 自律神経の障害などを引き起こしているのです。 「ジュース」が直接的に自律神経を正すのではなく、間違った食習慣を「ジュース」で正 すことにより、自律神経のバランスが正しく働き出すということなのです。 自律神経の働きを正す「万能健康ジュース」 ご存知のように、私達の体に必要なさまざまな代謝は私達の意思にかかわらず、自律神 経によりコントロールされています! 自律神経には日中に活発に働く交感神経と、夜になって活発に働く副交感神経がありま す。また、交感神経は体の活動時や緊張している時に活発に働き、副交感神経は食事時や - 225 - リラックスしている時に働くと いうように、互いに相反する働 きがあります。 そして、健康であるためには この自律神経が正常に機能して いなければなりません。 たとえば、睡眠中は副交感神 経が優勢に働いているのです が、交感神経が優性であれば眠 りは浅くなり(よく目が覚め る)、体力回復機能も弱まって しまいます。 このようなことから、良い睡眠を得るためには就寝前にキッチリと交感神経を抑制し、 副交感神経を十分に高めておく必要があるのです。 このように、副交感神経優位から交感神経への切り替えや、交感神経優位から副交感神 経への切り替えには、切り替えに必要な時間を充分に取ることが必要となります。 決して、熟睡中に突然起こされ、全力疾走するようなことを毎日やってはいけないので す。 食べ物を食べれば副交感神経が活発化され、胃や腸が働き、栄養素の消化吸収がおこな われます。 また、副交感神経は排尿や排便を促し、昼の間に消耗した体のメンテナンスをつかさど ります。 目覚めの朝は、この副交感神経が優勢な状態から、昼の活動にそなえ交感神経が優勢な 状態に切り替わっていく非常に大切な時期なのです。 交感神経が働きだした朝の消化吸収能力は低く、昼・午後に向け向上していきます。 そして、夜間が最も消化吸収能が高くなり、再び目覚めとともに消化吸収能力は低下す ることになります。 ここで問題となるのが、一人ひとりの消化吸収能力のレベルなのです。 一般に欧米人は歴史的な食文化の違いから消化吸収能力は非常に高く、日本人でも成育 期の子ども達や異常に消化吸収能力の高い成人はいます。 - 226 - しかし、一般的な日本人、中でも特に低体温症の方や片頭痛、パニック障害など神経系 の病気の人たちの消化吸収能力は低く、「朝食」が自律神経のバランスを乱す原因となる のです。 栄養素的に、動物性タンパク質は消化吸収時の代謝負担は大きく、特に朝食では摂取し たタンパク質の大半が消化吸収に費やされてしまいます。 たとえば、消化吸収能力の低い人が朝からビーフステーキを食べると、消化吸収にかか わる全ての器官では、熟睡中に起こされ全力疾走するようなことが起きてしまうのです。 そのため、朝から全ての代謝機能は乱され、自律神経の働きが乱れるとともに集中力の ないけだるい一日が始まるのです(食事の内容により異なりますが、通常は食後1時間~ 5時間で消化吸収エネルギーは最大となります) 朝食を「万能健康ジュース」に変え、副交感神経の大きな役割である消化吸収のリズム を正しくすることにより、朝から頭は冴さえ渡り、体は驚くほど軽くなり、集中力も上が り、疲労感はなくなり、気分が明るくなるのです。 交感神経の働きを乱す最大の原因は「ストレス」、副交感神経の働きを乱す最大の原因 は「過食」と憶えておくといいように思います。 比較的少ないと思った量の食事であっても、特に消化吸収能力の弱い朝では「過食」と なってしまうのです。 特に栄養素の中でもタンパク質は消化吸収の負担が極めて大きいのです(朝は、わずか な量でも「過食」となりやすい) だからといって、朝食を抜くと血糖が下がりすぎ、「ストレス」を受けたときと同じよ うな体の仕組みが働き、「酸化ストレス・炎症体質」の原因となる「遊離脂肪酸」や「活性 酸素」が発生することになります。 また、短時間の弱い空腹は基礎代謝を上げ、健康にとってもプラスとなるのですが、強 く長い空腹はホルモンの異常な分泌を招き自律神経までも乱してしまいます。 このように、交感神経が働きだす朝に必要以上に副交感神経を刺激しすぎることで、自 律神経のバランスを乱すことになるのです。 消化吸収にかかわるエネルギー負荷を最小限にし、且つ、昼食までに大きな空腹感じさ せない基礎代謝程度のエネルギーを与えることが重要になってきます。 そして、夜間の代謝(同化)で消耗したミネラル、ビタミンや昼からの活動時に発生する であろう活性酸素のための抗酸化物質を朝食時に補給することを目的に「万能健康ジュー - 227 - ス」は作られているのです。 朝食を「万能健康ジュース」に変え、単に朝食の消化吸収エネルギー負荷を極小化し、 胃の負担を軽くすることにより、ほとんどの逆流性食道炎は1週間~2週間程度で改善し ます。 さらに、「酸化ストレス炎症体質」の改善のためには、腸内細菌を健全に保ちビオチン を十分に産生させることや食事後のインスリンの分泌を如何に抑制するかということが大 きな課題となります。 そのため、「万能健康ジュース」には、ビオチン産生菌であるアシドフィルス菌の好む りんごをベースとし、食後の血糖値を急激に上げずに血糖が持続して補給されるように作 られているのです。 ただし、「万能健康ジュース」は運動不足気味の成人向け(特に生活習慣病が心配な 方や、すでに生活習慣病である方など)に作ったものであり、成育盛りの子ども達やスポ ーツ選手(運動量の多い人)、妊婦の方は、朝からしっかりタンパク質もとってください (その分に見合った消化吸収能力は充分にあります。逆に、タンパク質を多くとるときは、 しっかり運動することが必要です。 「朝はしっかり食べましょう!」の嘘と本当 管理栄養士や医師の多くは誰にでも口をそろえて、「三食キッチリ、特に朝食はしっか りとりましょう!」といいます。 前にも述べましたが、確かに成育期の子ども達、運動量の激しい人たち、妊婦さんの多 くはその通りなのですが・・・・ 体がいつもだるい方、朝の目覚めが悪い方、いつも胸焼けしている方、・・・・・など など、そして片頭痛の方、うつ病やパニック障害の方、自律神経失調症といわれた方、・ ・・・・・などなどは、朝食をしっかりとっている限り、永遠に病状が改善されることは 期待できません よく TV でやってる、朝からタンパク質でダイエットなど、最悪の結果になります。 というのは、朝のタンパク質を中心とした食事が自律神経を乱す張本人だからです。 とは言っても、朝食を抜くのはこれまた低体温や内臓脂肪を溜める原因となり、全く良 - 228 - くありません。 朝は副交感神経から交感神経に切り替わる非常に大切な時期ですので、スムースにバト ンタッチすることが自律神経を正しく働かせるポイントなのです。 ですから、「朝はしっかり食べましょう!」というの多くの方にとって「嘘」というこ とです。朝食は昼食までのカロリーの繋ぎ、しっかりした交感神経の立ち上げ、消化管の ちょっとしたお休みというのが基本です。 「万能健康ジュース」はそのためにも作られた究極の朝食なのです。是非、朝は「万能健 康ジュース」だけの朝食とし、すがすがしい一日をお過ごしください。 「朝に果物を取る意味合いは分かるが、ジュースにする必要はない」など、理屈をこねる 「群盲象を評す」を地で行く小賢い先生もおられますが、「象の足を触っては、象は柱の ような生き物だ!」などということからぼちぼち脱皮して頂きたいものです。 材料の目的や効能について りんご(必須): りんごはペクチンを多く含み、腸内細菌のビオチン産生 菌が特にこのリンゴペクチンを好むことから、腸内細菌の 改善を第一の目的として用いています。 その他の働きとして、リンゴペクチンには悪玉コレステ ロールを下げ、善玉コレステロールを上げる効果があると されています。 また、リンゴポリフェノールには血圧を下げる働きや抗がん作用、動脈硬化を予防する、 血液をさらさらにする、育毛効果、筋力アップ効果、内臓脂肪の分解を促進するなどの効 果があるといわれています。 果皮に含まれるオクタコサノールは酸素の利用効率を高め、グリコーゲンを効率よく消 費し、エネルギー産生量を増やし、持久力を高めるといわれています(オクタコサノール は渡り鳥のスタミナ源として有名です) リンゴに比較的多く含まれるカリウムには血圧を下げる効果があります。 - 229 - これら以外にも、効能として、抗アレルギー作用、中性脂肪低下作用、虫歯予防作用、 消臭作用、メラニン生成抑制作用、白内障予防作用、美白作用などがあるといわれていま す。 リンゴの品種はペクチンの多い紅玉を用いていましたが、青リンゴでも赤リンゴでも特 に品種にはこだわらなくて良いと思います。 もし自分にこだわりの品種のリンゴがあればそれはそれで楽しめると思います。 ニンジン(必須): ニンジンは抗酸化作用のあるβ-カロチンの摂取と 腸内細菌の健全化のための食物繊維摂取を目的に用い ています。 水溶性のビタミン C と異なり、β-カロチンは油溶性 ですので、細胞内の抗酸化作用に有効に働きます。 美容上のシミ、シワなど紫外線のダメージには、ビ タミン C はほとんど抗酸化作用を発揮することはできませんが、β-カロチンはビタミ ンAとして強い抗酸化作用を発揮します。 「万能健康ジュース」に用いる際は、少し手間はかかりますがニンジンを電子レンジなど で加熱して用いればβ-カロチンの吸収効率が上がります(ビタミン C 分解酵素も失活 します) ニンジンにもカリウムは含まれていますが、根以上に葉の方にもより多くの栄養素が含ま れています。 ニンジンに含まれるコハク酸カリウムは血圧を下げる効果もありますが、水銀を排泄す る作用もあります。 コハク酸カリウムはセロリにも含まれますので、魚介類を多く摂り、メチル水銀などの 摂取に不安がある場合は、ニンジンの葉やセロリを毎日のジュースに追加することをお奨 めします。 ゴマ(必須): - 230 - ゴマには抗酸化作用の強いゴマリグナン(セサミン) をはじめ、微量ミネラル類(鉄分、亜鉛、銅、マンガ ンなど)、ミネラル類(カルシウム、マグネシウム、リ ンなど)、トリプトファン(セロトニンの原料)、メチ オニン(血液中のコレステロール値を下げ、活性酸素 を取り除く)、葉酸などの不足しがちな有用な栄養素を多く含みます。 「万能健康ジュース」の時だけでなく、日常から摂取を心掛けるようにするといいと思い ます。 オリゴ糖(必須): オリゴ糖は大腸腸内細菌の健全化のため(善玉菌のえさ)と大腸腸管に直接エネルギー供 与する(大腸の細胞の再生や蠕動ぜんどう運動を向上)ために用いています。 オリゴ糖には色々な種類がありますので、代表的なオリゴ糖の種類と特徴を調べてくだ さい。 オリゴ糖の中でもイソマルトオリゴ糖や大豆オリゴ糖を用いますと食後の血糖が幾分上 がりますので、糖尿病などで血糖が気になる場合は還元麦芽糖やビートオリゴ糖、ガラク トオリゴ糖、フラクトオリゴ糖などの血糖が上昇しないもの を用いてください。 オリゴ糖はジュースに甘みをつけること以外に腸内細菌の エサとしての役割のために用いていますので、腸内細菌のエ サとなることのないサッカリンやパルスイートなどの合成甘 味料は用いないでください。 オリゴ糖をエサとする大腸内善玉菌は酢酸やプロピオン酸、酪酸などの短鎖脂肪酸を産 生し、腸管の細胞の新陳代謝や蠕動を亢進します。 α-リノレン酸(必須): α-リノレン酸を多く含む食品にはシソ油(エゴマ油)や亜麻仁油があります。 α-リノレン酸は今日の食生活では不足しがちなオメガ3系の脂肪酸ですので、「酸化ス - 231 - トレス・炎症体質」の改善を目的に用いています。 α-リノレン酸は体内で代謝され EPA や DHA に変換さ れます。 EPA や DHA は青魚などに多く含まれるオメガ-3系脂 肪酸として有名ですが、常時青魚を食べることが少ない こ と や、 大 き な 魚 には 環境 汚染物質も含まれていることから安心して摂取できるオメガ -3系脂肪酸としてシソ油(エゴマ油)を用いています。 また、ニンジンに含まれるβ―カロチンなど油溶性微量栄養 素の吸収を助ける目的も含め用いています。 α-リノレン酸は「酸化ストレス・炎症体質」を改善します ので、効能としてはほとんど全ての病気の改善に役立ちます。 特に花粉症やアレルギー性鼻炎などは、他の精製植物油の摂取を控え、朝食に「万能健康 ジュース」を実践するだけで、直ぐに症状は改善され始めます。 花粉症やアレルギー性鼻炎がほぼ完治するまでには通常数ヶ月~半年は必要です(皮下脂 肪が多い人はもっと長い期間が必要となります)。 また、高血圧や高脂血症、高コレステロール血症には比較的早く効果が現れます。 マグネシウム(必須): ニガリや塩化マグネシウム水溶液(マグネシウム液) などから、最も不足しやすいミネラルであるマグネシウ ムを摂取することが目的です。 ニガリにはナトリウムを始め他のミネラルも多く含ま れていますので、ナトリウムやカリウムの摂取制限をし ている方はマグネシウム液が適しています。 勿論、マグネシウム自体もミネラルとして腎臓に負荷 を与えることになりますので、透析が必要な腎臓病の方は担当の医師の指示を受けてくだ さい。 マグネシウムはカルシウムやナトリウム、カリウムに比較し話題となることの少ないミ - 232 - ネラルですが、現在のようなストレス社会では最も摂取不足を考えなければならない、非 常に重要なミネラルです。 特にストレスの多い人や運動量の多いスポーツ選手などは、マグネシウム不足が顕著で す(スポーツ選手の突然死にも大きくかかわっているのではないかと考えています)。ま た、いかなる病気でも、病気にかかっている人のほとんどはマグネシウム不足の状態にあ ります。 マグネシウムは筋肉の働きや神経伝達物質の伝達を調整する作用がありますので、高血 圧をはじめ、パニック障害など神経系の病気にも有効に作用します。 勿論、片頭痛には非常に効果があります。 夜中に足がつるなど筋肉の痙攣には200mg~400mgのマグネシウムを追加的に摂 取するとほとんどの場合翌日には改善しています。 鎮痛剤を飲むくらいだったら、マグネシウム液を飲むといつの間にか治っているようです (30分以内には) マグネシウムはストレス社会と日本の風土で最も不足しがちなミネラルということがで きます。 近くの薬屋で塩化マグネシウム(MgCL2・6 H2O)/500gを求め、沸騰冷却水(消 毒剤抜きや殺菌が目的)で、1.2リットルにすると、50mg/ccのマグネシウム原 液ができます。(これは最初に、作り方は説明した通りです) 万能健康ジュースの材料とともに、この原液を1~2cc程度(苦くならない程度)加 えます。500ccペットボトルの飲料水にビタミン C:500~1000mg、クエン 酸:500~1000mg、マグネシウム原液2~5ccを入れ(好みの味になるように)、 マイドリンクとして常時チョクチョク飲むのも効果があります! 沢山飲めば効きも強力というわけではありませんので,長く続く味にして飲むのがポイ ントです。 頭痛の時はマグネシウム原液小さじ1杯分を、コップの水に溶かし、クイーやるとすぐ に効果が現われます。 ビタミン C(必須): - 233 - ビタミン C はドラグストアー(一般の薬屋や大 手薬屋チェーンなど)に粉末のアスコルビン酸 K などとして売っています(錠剤は駄目です)。 ビタミン C(アスコルビン酸)は通常の食事で不 足しがちなビタミン C の補充のために用いています。 果物や野菜にもビタミン C は含まれていますが、 一般にその量は少なく、果物や野菜だけからでは十分な量を摂取することは困難と考えら れます。 ただし、サプリメントなどで一度に多くのビタミン C を摂取したからといって、多量 のビタミン C が吸収され、体内に蓄積されるわけでもありません。 過剰に摂取されたビタミン C は数時間のうちに尿として排泄されてしまいます。 厚生労働省はビタミン C の一日の最低摂取量を100mgとしていますが、この量で は「酸化ストレス・炎症体質」の改善には全く不足しています。 一人一人の酸化ストレスの状態により異なりますが、有害物質などの摂取機会の多い今 日では、一般的に一日に1000mg程度は摂取する必要があります。 「万能健康ジュース」には一度で500mg以上が摂取できるように作られています。 ビタミン C の効能については多くの方がご存知と思いますが、抗酸化作用以外にはおも に次のような作用・効果があるとされています。 ・コラーゲンの合成に必要であり、欠乏すると細胞が弱くなり出血したり、肌のシワが多 くなります。 ・シミのもとであるメラニン色素の合成を抑えます! ・鉄分やカルシウムなどミネラルの吸収を促進します。 ・肝臓でのおもな解毒酵素であるシトクロム P 450を活性化します! で、「万能健康ジュース」で500mgのビタミン C をとっても、全部オシッコに??? という方のために、ビタミン C の隠れた才能をお教えします。 ビタミン C には酸化されたものを、元に戻す性質(還元といいます)があります。 細胞の中で活躍する抗酸化ビタミン E や A は、抗酸化作用を発揮する(酸化される) と一回の酸化で不活性になります(役に立たなくなる)。 - 234 - それを、再活性させる(抗酸化作用を復活させる)のが、還元作用のあるビタミン C なのです。ということは、ビタミン C をとるということは、ビタミン E や A をとったの と同じことなのです。 ですので、毎朝の「万能健康ジュース」で一日に一度はタップリ体を清め、あとは、先 日お話したマイドリンク(マグネシウム、ビタミン C、クエン酸入り)で、チョコチョコ 体を清めるのが健康であり続けるために必要なのです。 とりすぎたビタミン C は数時間のうちに排泄されてしまいますが、その間にたくさん の“いい仕事”をしてくれる訳です。 最近、脂肪酸とくっ付けて、細胞に入るようにしているから抗酸化作用の強いビタミン C などという製品が出回っているそうですが、これにはビタミン C のような還元作用もな ければ、ビタミン E に比べ抗酸化作用もたいしてありませんので、新しがり屋さんは要 注意です。 クエン酸(必須): クエン酸は一般の食品スーパーチェーンや Co - OP などに売っています。純度の 低い排水管掃除用のクエン酸も売っているところが ありますので、必ず「食品添加物」など記載の食品 用途用を使います(これも粉体です)。 尿PHの酸性化を防ぐために用いています(尿酸の排 泄を適正にする)。 食肉や乳製品などの酸性食品といわれるものを多く摂る と尿のPHが酸性に傾きます。 尿酸は酸性になると溶解度が極めて低くなるため、尿から排泄されなくなってしまいます。 その結果、高尿酸血症になり、痛風を引き起こす可能性が高くなります。 クエン酸は体内で代謝された後に、尿のPHをアルカリ性にする作用があります。 梅肉エキス(梅肉汁を煮詰めたもの)には多くのクエン酸を含み、最も好ましいのです が、入手しにくいため、クエン酸で代用しています。 また、クエン酸には消化管を刺激し胃の働きを良くする作用もあります。 - 235 - なお、クエン酸はクエン酸回路というエネルギーを産生する代謝の効率を上げるとも言 われています。ミトコンドリアの働きを助ける核心の部分に作用します。 生のニンジンにはビタミンCを分解する酵素が含まれていますが、クエン酸はその働き を抑制します。 バナナ(任意): バナナは味がまろやかになり美味しくいただけますの で、特にカロリー制限をする必要がない場合は必須とし てください。 他の果物に比べて総糖質量が多く(特にショ糖)血糖 値が上がりすぎることもありますので、糖尿病の方は気 をつけてください。 果物の中ではトリプトファン(セロトニンの原料)を比較的多く含みますが、特に脳内 セロトニンを増やすというような作用はありません(キーウイは OK です)。 バナナは美味しくいただけることと、カロリーの不足分を補うのを目的として用いてい ます。また、バナナには食物繊維やカリウムが多く含まれていますので、その効果も期待 できます。 オリーブ油(任意): 「万能健康ジュース」の基本処方ではオリーブ油は含めていませんが、便秘が改善されな い場合に効果があることがあります。 オリーブ油を加える際は良質のエクストラバージ ンオイル(オレオカンタールを含む)を用います。 オリーブ油を加えますと胃の働きが抑制され、滞 胃時間が少し長くなりますので血糖の上昇を緩和す ることができます。 ただし、オリーブ油を加えることで胸焼けを起こ - 236 - す方もおられます。 エクストラバージンオイルに含まれている苦味成分であるオレオカンタールは炎症性の 生理活性物質の生成を抑制するといわれています。 その他季節の葉もの野菜や果物(任意):その季節の果物や葉物野菜を好みにより入れ 「マイジュース」として楽しむことをお薦めします。パイナップル、トマト、大葉、セロ リー、ニンジン葉、・・・・。 驚きの「万能健康ジュース」を始めて 「万能健康ジュース」を実践し始めますと、ほとんどの体調の悪い方は劇的な変化を体感 することになります。 特にスッキリした目覚め、からだが軽くなる、やる気が起きる・・・・・とともに、悪 かった病気の症状が軽減していくのが実感できます。 このことは「万能健康ジュース」により、不足しがちなビタミンやミネラルなどが補充 されることや腸内細菌が健全化されていくことも大きな要因のように思われます。 しかし、「万能健康ジュース」の最大の効果は体の抗酸化作用をリニューアルすること に加え、「自律神経の働きを整える」または「消化吸収のリズムを整える」ということに あります。 「自律神経の働きを整える」というと、脳の中だけでおきること考えられがちですが、実 際に「万能健康ジュース」を実践してみると、いかに“食”の影響が大きいかが分かりま す。 勿論、ストレスも自律神経の働きを乱す最大の要因なのですが、実際にそのストレスを どのようにして取り除くかは極めて難しいことですよね!? しかし、食生活の改善により自律神経が正しく調整されてくると、ストレスを処理する 能力も高まってくるのです。 逆に、食生活が乱れ、自律神経のバランスを乱していくと、ストレスが処理できず、ス トレスは増幅されていくのです。 特に、交感神経から副交感神経に切り替わる時のストレスや副交感神経から交感神経へ の切り替え時の食事(朝食)の影響は大きいようです。 - 237 - 夜更かしし「夜食を摂り過ぎ、朝は食べない」や「朝からたっぷり高脂肪高たんぱく質 の食事をとる」のも好ましくありません。 「消化吸収のリズムを整える」ことが「自律神経の働きを整える」ことになり、スッキリ した目覚め、・・・・・とつながっていくのです。 「万能健康ジュース」は、特に糖尿病の方の朝食をイメージしながら、肝臓に溜まって いるグリコーゲンに着目したカロリー設定をして作られています。 血糖が下がりますと、糖新生(中性脂肪やタンパク質からのエネルギー供給)が始まり ますので(毒性のある遊離脂肪酸が増えます)、血糖をそこまで下げないようにしていま す。 反対に、糖尿病の方がたくさんの糖質をとると血糖値が上がり過ぎるため、肝臓からブ ドウ糖が適正量供給されるのとほぼ同じになるようにイメージして処方を設定したもので す。 体には短期用のエネルギー貯蓄として、筋肉と肝臓にグリコーゲンを蓄えます(各々、 300g/1200 Kcal、100g/400 Kcal) 筋肉に蓄えられたグリコーゲンは筋肉用にしか使われませんが、肝臓の貯蓄分は全身用 に利用されます。その供給量は平時1時間に10g(40 Kcal)、マラソン中は30g(1 20 Kcal)といわれています。 夕食を終えますと、筋肉や肝臓にはほぼ満杯のグリコーゲンが溜まります。その後、朝 まで食事を取りませんので、筋肉中のグリコーゲンは少し減り、肝臓のグリコーゲンはか なり減ります。 ですので、朝に糖質をとらない(食事を取らない)のはよくありません(昼までの間に 必ず糖新生が始まります) しかし、糖尿病の方は朝食を普通通りとりますと、血糖が上がりますので薬を飲まなく てはいけません(薬は膵臓への鞭です)そこで、考えついたのが、“肝臓の働きと同じに してやればイイのだということです。 そこで、朝食で肝臓からのグリコーゲンと同程度のブドウ糖を供給し昼まで持たせれば、 消化吸収作業も休まるし、昼食時には血糖はすばやくグリコーゲンへ転化されるはず(血 糖の上がりが抑制される) で、作られたのが「万能健康ジュース」です。因みに、りんごは300g(1単位)、 ニンジン80g(1/2単位)、バナナ100g(1単位)、植物油5~15g(1/2 ~1 - 238 - ・1/2単位)、ごま15g(1単位)、オリゴ糖20g(0~1/2単位)で、総計5~6 単位(1 単位:80 Kcal)になります。ひとり分はその半分で、200 K c al 程度にな ります(40 Kcal ×5時間((朝食から昼食まで))=200 Kcal となるように) こうして、昼食まで肝臓のようにダラダラ(適正に)とブドウ糖が供給されるになるよ うにしたのが「万能健康ジュース」なのです。 だから、消化管を休め、自律神経を整え、酸化ストレスを沈静化し、炎症体質を鎮め、 糖尿病、片頭痛、逆流性食道炎、関節炎、花粉症、パニック障害、・・・・・・・などさ まざまな病気体質を改善する効果があるのです。 3.ラブレクラウト ラブレクラウトも後藤日出夫先生がレシピを開発した食べものです。 ラブレクラウトの「ラブレ」は、ラブレ菌のラブレです。最近、「ラブレ乳酸飲料」が 次々に発売されているので、あなたも知っているかもしれません。京都の伝統的なお漬物 「すぐき漬け」から発見された植物性乳酸菌で、腸内で酢酸や乳酸などをつくり、悪玉菌 の増殖を抑える働きがあります。また、 腸の新陳代謝を活発にしてくれるので、 消化吸収力や免疫力を高めてくれるとい われています。実際、すぐき漬けをいつ も食べている人ほど、がんの発生率が平 均値よりも低いというデータがあり、こ こに着目しました。 「グラウト」はザワークラウトのグラ ウトです。ビア・レストランなどでソー セージと一緒に出てくるキャベツの塩漬 けです。腸内環境を整える乳酸菌(善玉 菌)がたくさん含まれていることから、かつて永い航海に出る西欧人たちが、不足しがち なビタミンを補給するためにつくりだした食べものです。 ザワークラウトの主役であるキャベツには、「キャベジン」と呼ばれるビタミンUが豊 - 239 - 富に含まれ、胃潰瘍や十二指腸潰瘍を予防する働きがあり、「食べる胃腸薬」なんていわ れています。 また、キャベツに含まれる辛み成分には解毒作用や抗酸化作用があることも知られてい ます。さらに、血管をやわらかくして血流もよくなりますから、肩こりや片頭痛の女性に はうれしい食べものです。では、さっそくつくり方を! 以下、ラブレクラウトのレシピです • キャベツ 一玉(約1kg) • リンゴ 1/2 個(約150g) • 出汁用の昆布 適量 •塩 27g(キャベツ+リンゴ+水の重量比2%) • あら挽き粒こしょう 2粒 • ローリエ 2枚 • 唐辛子(鷹のつめ) 1本 • 水 (※ラブレ乳酸菌飲料 ) 200CC(※初回はラブレ乳酸菌70 g +水130 g) • クエン酸 1g • ビタミンC 1g ☆作り方 1.まず香辛料の調味液を作る ①ローリエ二枚に手で切り込みを入れる - 240 - ②鷹のつめ1本は種をとってハサミで細切にする ③昆布(適量)を軽く洗ってハサミで細切にする ④リンゴ半分(約 150g)の種を取ってすりおろす 水 200 g(初回はラブレ乳酸菌 70g +水 130g)に①から④を入れ - 241 - その中に塩27g(キャベツ+リンゴ+水の重量比2%) ビタミンC (1 g) クエン酸(1 g)を加え 溶かせば調味液の完成です 次にキャベツ(1 Kg)を洗って 0.5cm 程の細切にし、先程作った調味液に入れ、満遍な - 242 - く軽く揉んでラップをし重石をする。この時重さで空気をしっかり抜くこと 空気をしっかり抜かないと、腐敗しますので気をつけて下さい。 注意!! 私の失敗の原因をお伝えします 調味液を作り 千切りにしたキャベツを加え 調味液に浸したキャベツを揉みます。 失敗の原因は以下です キャベツを揉んだらラップをして重しをし 暫く常温に置いて醗酵させるのですが このラップの仕方が悪く、重しをした時に上手く空気が抜け無かった為、腐ってしまっ たのです - 243 - ラブレクラウトは空気に触れると腐るのでしっかりラップをし、重しをした時にちゃんと 空気が抜けるように気を付けて下さい この時期に常温で腐らせると悲惨な目にあうので(大変でした…)私と同じ失敗をしない 様、皆様ご注意ください 半日から 1 日で表面から水が上がってきたら、もう一度ラップをかけ直し空気に触れな いようにして再び軽く重石をします。 夏ならば2~ 3 日、春秋は 4 ~ 5 日、冬は一週間くらい置けば発酵して酸味が出て、食べ 頃になります。 その後は冷蔵庫で保存。 初回の水は、ラブレ乳酸菌飲料(70 cc)と水(130 cc)を用います。 次回からは漬け汁の残り全部と水で200 cc としてもOKです 漬け汁が多い時は、水を加える必要はありません。 以上ラブレクラウトの作り方でした。以下もう一度、まとめます。 1.香辛料の調味液をつくります。粒こしょうはあら挽きに、ローレルは手で切り込み を入れ、唐辛子は種をとって細切りに。昆布は軽く洗って細切りにし、調味液用の容器に 入れる。塩、ビタミンC、クエン酸を加え、リンゴは芯をとって皮ごとすりおろして入れ る。水(最初はラブレ乳酸飲料入○のもの)を加え、よく混ぜて溶かしておく 2.キャベツは洗って 0.5cmくらいの千切りに 3.香辛料の調味液とキャベツを合わせます。漬け樽(ポリ容器)に千切りにしたキャベ ツを入れ、香辛料の調味液を入れて、まんべんなく&軽~く揉んでおく。重石をして半日 から 1 日すると表面に水が上かってくるので、そうしたら重石をとり、ラップで表面をお おって空気に触れないようにして、再び軽く重石をする 4.発酵させます。夏なら 2 ~ 3 日、春秋は 4 ~ 5 日、冬は 1 週間くらい常温に置いてお くと酸味が出てきて食べ頃になります。その後、冷蔵庫に入れて熟成・保存し完成! - 244 - ワンポイント ★生食でバリバリ召し上がれ!1日に 100 gくらいが目安 ★夏場など、ザワークラウトのような臭みが出るようならクエン酸の量を多少多めに ★漬け汁は次回から「水」として再利用します ★塩は「自分のこだわりの塩」を使って下さい ★酸味が出て食べにくくなったら、少量オリゴ糖を混ぜると食べやすくなります ビールとソーセージとラブレクラウトの蜜月関係!? 飲み会で、「と0あえずビール!」とい う女性も多いと思います。ビールの苦味 成分には、善玉コレステロールを増加さ せ、肝臓でコレステロールや中性脂肪が たまるのを抑えてくれる働きがある反面、 気になるのがビール酵母由来の「プリン 体」。通常は体内で尿酸に分解されて排出 されるものの、飲みすぎると尿酸を処理 しきれずに血中の尿酸値が高くなり「痛 風」の原因となります。 これを防ぐには、尿を酸性ではなく、 アルカリ性側に誘導してあげるとよいの ですが、それに効果的なのが、ラブレクラウトに含まれる「クエン酸」です。 次にソーセージ。ソーセージやウインナーには、「第二級アミン」という成分が多く含 まれています。一緒に生野菜をとった場合、野菜に含まれる「亜硝酸塩」と胃のなかで反 応して、「ニトロソアミン」という“発がん物質”に変化してしまうのです。亜硝酸塩は 「発色剤」にも含まれているので、色あざやかなウインナーや魚肉ソーセージなどは、発 がん率の高い食べものだといえます。 この第二級アミンは、肉類や魚介類に多く含まれているので、「野菜は健康にいい!」 - 245 - と思って一緒に食べると、逆に発がん物質をつくりだしてしまうことになります。この反 応を抑えるのが、ラブレクラウトに含まれている「ビタミンC」です。 癌で悩む前に「ラブレクラウト」を ラブレクラウトは、癌予防・癌転移予防、および腸内細菌の健全化の目的で作られてい ます。(癌予防ということは、活性酸素の発生を抑えることを意味しています) 健康に良いと思っている魚介類と野菜の組み合わせの食事をすると発癌物質ができると いうことは余り知られていないのではないでしょうか。 実は、魚介類や肉類に含まれている第二級アミンという物質と、野菜や漬物に含まれて いる硝酸塩(または、亜硝酸塩)という物質は胃の中で反応をし、ニトロソアミンという 発癌物質を生成するのです。 特に日本人に胃がんが多いのはこのニトロソアミンのためであるとも言われています。 勿論、ニトロソアミンは癌の転移にも影響を与えます。 魚介類は特に第二級アミンを多く含みますので、魚介類を多く食べる日本人にとって、 癌といえばまず第一に考えなければいけない大きな問題なのです。 これらのことを踏まえ、癌に援軍を送らず、押さえ込もうと作られたのが「ラブレクラウ ト」です。 ビタミンCは胃の中でこの第二級アミンと亜硝酸塩の反応を阻害します。 また、キャベツには体内での発癌物質の生成を抑制するイソチオシアン酸塩という抗癌 物質が含まれています。 腸内で活躍するラブレ菌にもNK細胞を活性化し癌を抑制する効果があるといわれていま す。 このように「ラブレクラウト」は胃の中、腸内、体内で発生する発癌物質を何段もの防 御体制で癌を制圧するように考えられています。 また、日本古来の漬物は善玉乳酸菌などを効率よく腸内に取り込むことはできるのです が、概して塩分が高いため、多く摂ることは好ましくありません。 しかし、「ラブレクラウト」は塩分が少なく比較的多く摂取できるように作られていま - 246 - す ので、腸内細菌の改善には絶大なる効果を発揮することができるのです。 また、「ラブレクラウト」は腸内細菌を健全化し、癌を予防したり癌の転移を防ぐ目的 以外にも、ビタミンUによる胃を丈夫にする効果も期待できます。 「ラブレクラウト」の名の由来 「ラブレクラウト」の名の由来は「ラブレ菌」と「ザワークラウト」を組み合わせた造語 です。 「ザワークラウト」は比較的塩分の少な い 北 欧 で 発達 し た 乳 酸発 酵 食品 の一種 で、ソーセージなどと一緒に食卓に供さ れることの多いすっぱいキャベツの漬物 です。 一方、日本古来の漬け物は美味しく、 少量で塩分の補給になるものが多く、長 い間重宝されてきました。 しかし、今日の食生活では日本古来の漬け物を多く摂ると、塩分を必要以上に摂りすぎ ることになります。 そのため、腸内細菌が歓迎するほどの漬け物を摂取することは逆に塩分の摂りすぎによ る健康を損なう可能性を高めてしまうことになってしまいます。 そこで日本古来の乳酸発酵した漬け物に含まれている乳酸菌の優等生である「ラブレ菌」 と塩分が少なく比較的たくさん食べることができるドイツ発祥の「ザワークラウト」を組 み合わせて、作り出した究極の漬け物が「ラブレクラウト」なのです。 効能については「ラブレ菌」と「ザワークラウト」の各々のものを後ほど述べますが、 「ラブレクラウト」が腸内細菌に良いことと、「酸化ストレス・炎症体質」の改善に有効 であることは多くの実践結果から確かめられています。 特に、肉類、魚介類などの動物性のタンパク質と一緒に摂るとその効果を直ちに実感で きます。 摂取を継続することで体調が良くなっていることは必ず実感できるようになります。 - 247 - 「ラブレクラウト」は食事毎にそのまま漬け物として一日100~150グラム程度を 目安として摂ると良いでしょう(多くて摂っても問題はありません)。 食事の最初に酢の物の代わりに食べると血糖値の上がり方が緩やかになり、食事の量も 減ることになります(ダイエット効果が増す)。 勿論、ザワークラウトのように加熱調理をして食べることも可能ですが、生きたまま善 玉菌を大腸まで送り届けるためにも、加熱しないで摂られることをお薦めします(かなり 酸っぱいので好き嫌いはあるかも知れませんが)。 また、酸っぱいのが苦手な方かたは、浅漬けでいただくと随分食べやすくなります。 美味しく頂くのが一番ですが、体質を改善する薬のようなものだと思うことも大切かも しれません。 特に、比較的多めの魚介類や肉類などの動物性タンパク質を摂る場合には、発癌物質の 生成を抑えることや、未消化タンパク質をエサとする悪玉菌の増殖を抑制するためにも、 「ラブレクラウト」も多めに摂るようにしてください。 「ラブレクラウト」は乳酸発酵した漬け物ですのでキャベツそのものに乳酸菌が定住して いることから、乳酸飲料以上に生菌で大腸内に到達する確率が高くなります。 また、食物繊維とともに細菌叢(細菌の集まり、細菌は単独では生息できず、叢そうを作 ることによって生息している)を形成したものを食べることになりますので便秘や下痢の 解消法としては驚くほど早くその効果が実感できます。 繰り返しになりますが、健康に良い と思っている魚と健康に必要不可欠な 野菜や漬物を一緒に食べると胃の中で 発癌物質を作り出してしまうという意 外な落とし穴にも「ラブレクラウト」 は有効に作用するように作られていま す。 日常の食事に「万能健康ジュース」 と「ラブレクラウト」を取り入れることで、便秘や下痢はすぐに解消され、体の倦怠感が とれてくるのを実感できます。 過食気味で肥満の人が他の食生活は従来のままであっても、朝の「万能ジュース」と家 - 248 - 庭での食事毎に「ラブレクラウト」のとることを実践するだけでも、数週間で減量(ダイ エット)効果が顕著に現れてきます。 「ラブレクラウト」の材料を揃えるのが大変だ。もっと簡単に作れる方法はないか、と いう方には、キャベツ、塩、ラブレ乳酸飲料、ビタミンC、クエン酸と水だけで作ること も出来ます。 キャベツ1Kgに対して、塩は24g、ラブレ乳酸飲料(70ml程度のもの)、ビタ ミンC&クエン酸0.5g~1g程度、水(200mlからラブレ乳酸飲料を差し引いた 量)が基本となります。 この簡易処方の「ラブレクラウト」であっても、便秘解消、がん予防、肝臓の解毒機能 向上など、ほぼ同じような効果が期待できます。 美味しく作るポイントは、繰り返しになりますが醗酵中は空気に触れさせないことです。 「ラブレクラウト」は何故そんなに聞くのか!? 「ラブレクラウト」の効能は、おもにその材料として用いられている「キャベツ」と「ラ ブレ菌」により発現されます。 さらに、ビタミン C とリンゴはその作用を補充的に高めるために加えています。 その他の昆布やキャラウェイシード、粒胡椒、ローリエ、唐辛子、クエン酸にも多くの 栄養素は含まれているのですが、ここでは「ラブレクラウト」の、旨み付け、香りつけ、 風味付けなどをおもな目的として用いています。 キャベツの効能: キャベツは古くから「食べる胃腸薬」として利用されてきましたように、キャベジンと も言われるビタミンUを含んでいます。 ビタミンUは胃・十二指腸潰瘍の予防や治療に用いられ、胃酸の分泌を抑え、肝臓の脂 肪蓄積を抑制する作用があります。 - 249 - キャベツに含まれるイソチオシアン酸塩には抗酸化 酵素の生成を促し、解毒酵素を活性化することで肝臓 の解毒力を高める作用があります。 また、発酵の過程でイソチオシアン酸塩の生成は促 進されますので、生のキャベツを摂取するよりも効果 が高まることになります。 最近、がん予防や解毒効果で話題になっていますブ ロッコリースプラウトに含まれるスルフォラファン (イソチオシアン酸塩の一種)と同じ成分です。 ブロッコリースプラウトには多量のスルフォラファンが含まれていますが、量的にさほ ど多くを摂ることは難しいのではないでしょうか。 その点、「ラブレクラウト」では量的にも比較的多く摂ることができます。 また、抗酸化作用のあるビタミンCは摂取後数時間で尿から排泄されてしまいますが、 スルフォラファンは抗酸化物質としての効果が三日間と長く持続するといわれています。 このようなことから「ラブレクラウト」を毎日、摂り続ければ癌の発症や転移を予防す る可能性が高まります。 その他に、イソチオシアン酸塩は血小板の凝集を抑え、血管を柔軟にし、血圧を下げ、 血流の流れをよくする作用があります。 朝食時の「万能健康ジュース」と一緒に「ラブレクラウト」を摂ると胸焼けの原因とな ることがあります。 胸焼けを起こすようであれば、「ラブレクラウト」を朝食時以外の食事毎にとるか、「万 能健康ジュース」の一材料として用いてください。 また、イソチオシアン酸塩にはピロリ菌の殺菌効果、皮膚や目の紫外線によるダメージ を防御する作用があります。 なお、発酵中にキャベツに含まれるビタミンCや葉酸が減少することはありませんので、 発酵食品である「ラブレクラウト」には漬ける前のキャベツに含まれるビタミン類のほと んどは残存します。 イソチオシアン酸塩:ワサビ、カラシ、大根、ブロッコリー、ケール、キャベツなどの アブラナ科植物に含まれるフィトケミカルの一種。抗癌・抗菌作用があり、抗酸化力は長 時間(約3日間)作用し続け(ビタミンC、Eは数時間)、癌予防効果は高いといわれて - 250 - います。 一方、甲状腺へのヨウ素取り込みを阻害し甲状腺腫などの原因となりうるのですが、日 本では土壌に多くのヨウ素を含み全ての食品を介してヨウ素が豊富に摂取されることやヨ ウ素を多量に含む海産物の摂取量が多いことなどから、むしろヨウ素の過剰摂取が懸念さ れる状況にあり、問題を生じる可能性は少ないといえます。 ラブレ菌の効能: 「ラブレ菌」は京都の伝統的な漬け物“すぐき漬け”から見出された植物性の善玉乳酸菌 です。 「ラブレ菌」は他の善玉乳酸菌と同じように腸内で短鎖脂肪酸(酢酸、乳酸、酪酸など) を生成するため悪玉菌の増殖を抑制する作用もあります。 また、腸管の新陳代謝を活発にし、栄養素の消化・吸収を高めることや腸管免疫力を高 め、癌、老化、自己免疫、免疫低下などを予防するなどの作用があるといわれています。 その他ほかにも、ラブレ菌はナチュラルキラー細胞(NK細胞)を活性化する作用やイ ンターフェロンα(NK細胞やマクロファージなど免疫系を刺激する)の生成を促進し、 癌の予防や転移を予防すると言われています! また、植物性乳酸菌であるラブレ菌は胃酸や胆汁などの影響を受けにくく、動物性乳酸 菌よりも多くの生菌が生きたまま腸に届くともいわれています。 ただし植物性の乳酸菌であっても、市販の乳酸飲料の形態のものでは大腸まで届くこと は非常に難しいことになります。 ところが、「ラブレクラウト」には既に食物繊維のなかにラブレ菌の細菌叢が形成され ていますので、食物繊維とともに大腸まで容易に到達することが出来ると考えられます。 手漕ぎのボート(乳酸飲料)で太平洋(小腸)を渡るのと、大きな旅客船(食物繊維) で太平洋を洋行するような違いが生じることになります。 乳酸飲料でラブレ菌をとったからといって、ラブレ菌の棲みかである乳酸飲料の栄養分 は小腸で吸収され、ラブレ菌は小腸で棲みかのない単独な細菌になってしまいます。 単独になった細菌は容易に小腸を通り抜けることができませんので、大腸に届くことが できないということなのです。 - 251 - 一方、漬物などの発酵食品は大腸まで届く食物繊維を含みますので、大腸内細菌の健全 化には適しているのですが、日本古来の漬物では塩分の摂りすぎが気になります。 そこで、塩分を気にすることなく比較的多量にとることの出来る「ラブレクラウト」が 整腸作用に優れる発酵食品として登場してくるのです。 材料の成分と効能 りんご:「万能健康ジュース」のところでお話しましたように、りんごペクチンによる腸内 細菌の健全化を目的にしています。量は多くなってもかまいませんので、量の増減はお好 みで行ってください。 りんごはすりおろさなくても小さく刻んでもいいですが、漬かったりんごはかなり酸っ ぱくなります。 セロリなどを追加しても美味しくいただけます。 ビタミン C:キャベツにも含まれていますが、不足しがちなビタミンですので、追加的 に加えています。 特にビタミン C は魚介類と野菜の組み合わせで生じる発ガン物質の生成を止めること ができますので、食事毎にビタミンCが摂取できるように用いています 勿論、吸収後はビタミン C としての抗酸化作用を発揮します。 既に癌にかかり、再発や転移が心配な方はビタミン C の量を増量するといいようです。 クエン酸:おもに、夏場などは雑菌が入りやすく、多少腐敗臭的な発酵キャベツ独特の いやな臭いがすることがあります。 特に健康上の問題は無いのですが、美味しくいただくた めには腐敗臭的な臭いを消す目的で用いています。 勿論、万能健康ジュースのところで説明したように代謝 を向上したり、高尿酸血症を改善する効果もあります。 昆布:ミネラルを多く含むことで有名ですが、ここでは味 をまろやかにするために用いています。 キャラウェイシード:せり科植物の種子で少し辛みのあるさわやかな香りのあるシードで - 252 - すビックリマーク脂っこいものの消化を助けてくれるといわれています。 風邪薬のトローチ剤や胃腸薬に利用されていたようですが、ここでは特に薬効というより 香りつけとシードのぶつぶつした歯ざわり感のために用いています! クミンシードやデイルシードでもいいですし、お好みでそれらと併用してもいいです ローリエ:消化を助けたり、肝臓腎臓の働きを活発にする作 用があるといわれています。ここでは、単に香辛料として用 いています。 唐辛子:辛み成分のカプサイシンには消化促進、食欲増進、 強心作用、脂肪燃焼、代謝促進などの効用があります。 ビタミン類も多く含まれますが、ここは辛み付けが目的です ので必要に応じ増減してください。 粒胡椒:ブラックペパーの粒を使用前に潰して利用します。辛み、香りつけが目的です。 分子化学療法研究所の後藤日出夫先生は、著書「お医者さんにも読ませたい片頭痛の治 し方」(健康ジャーナル社)の中で、「万能健康ジュース」の効果を、以下のように紹介 されています。 ◎健康ファイル 片頭痛が日に日によくなっていきます 40 歳代後半女性 「私は若い頃から片頭痛持ちで、子どもが生まれてからさらに悪くなりました。朝は主人 の朝食作りのために起きるのですが、作るとすぐに横になっていました。昼も寝てばかり。 寝ないと夕食を作ることさえできなかったのです。 寒い日、雨の日、季節の変わり目など、ほぼ毎日病院で処方された発作止めを飲んでい ました。激しい頭痛と嘔吐を起こすので、たまに体調がよいからと気晴らしに外に出かけ るときでも、薬が手放せませんでした。 お風呂に入ると発作が起きるので、ここ数十年お風呂に入ったことがなく、いつもシャ ワーで済ましていました。かつての主治医は、 「温い湯で入浴をし、体を癒すべきだ」、 「軽 い運動をしなさい!」というのですが、それができないから苦労しているのがまったくわ かってもらえませんでした。 冷え性もひどく、手や足の先だけでなく、太ももや二の腕までもが極端に冷たくなって - 253 - しまいます。夏でも二の腕に使い捨てカイロを貼りますが、温かくなることはなく、腕は 熱のため黒ずんでしまい、まったく腕を出すことができません。 大学病院では徹底的に検査して頂くために入院しましたが、あまりのつらさに先生と口 論になったこともあります。結局、何の改善策も見つかりませんでした。でも一番つらか ったのは、主人から「特に異常もないし、たかが頭痛くらいで大げさだ。甘えるな!」と 言われたことです。悔しくて悲しくて涙が出ました。 そんなとき、この「万能健康ジュース」のことを知りました。半信半疑でしたが、飲み 始めて数日も経たないうちに、血液が体を流れ始めるのが実感できたのには本当に驚きま した。そして1週間もすると、朝もすぐに起きられるようになり、苦もなく朝食が作れる ようになったのです。 こんな経験は初めてでしたので、「万能健康ジュース」だけではなく、先生のアドバイ ス通りに生活習慣全般を見直すようにしたところ、1ヵ月もすると薬を飲む回数が週に一 回程度にまで減りました。それ以前は、月に 20 ~ 25 日は飲んでいたのです。昼に寝るこ ともなくなり、いろいろとやる気も起きてきて、昔よく作っていたケーキを焼いて主人に 喜ばれたり、天気の日には近くを散歩したりするようにもなりました。でも、急に寒くな ったり、運動をし過ぎたりしたときにはまだ薬が必要です。 先生に教えていただいた、ビタミンB2のサプリメント(含有量の多いもの)をアメリ カから取り寄せて2週間ほど続けましたが、これは特に大きな変化はありませんでした。 その後、マグネシウムを1日400ミリグラムとるとよいとお聞きしたので、試してみ ました。発作の前には肩がガチガチに固まってしまう感じがするのですが、マグネシウム 水溶液を飲むと、首の付け根あたりから肩にかけて、温かい血液が流れていくのがはっき り実感できるのには驚きました。それからは、食事のたびにマグネシウムをとっています。 また、常時マグネシウム濃縮液(50 ミリグラム/ cc)を小瓶に入れて携帯し、もし肩が こってきたら(発作の前触れです)、薬の代わりに小さじ一杯分を飲料水に溶かして飲ん でいます。 いろいろな生活習慣の改善も影響していると思うのですが、「万能健康ジュース」と「マ グネシウム」の効果は衝撃的でした。私と同じように苦しんでいる人は、ぜひ一度試して みてほしいと思います。」 この方は、その後ヨガを始められ、テニスボールマッサージを続け、今では薬はほとん - 254 - ど必要なくなったとのことです。 私にとって、この方で一番印象に強く残っている言葉は、「私がこんなに陽気な性格 だということを、今まで知りませんでした!」ということと、「体が冷えているときに、 お風呂に入るとまさに天国ですね!」ということでした。血色も良くなり、実年齢よりも 10歳は若く見られるようになったとのことです。 第5章 ストレスを解消するための食生活 これは、食事療法についての考え方のまとめです。参考までにご覧下さい。 ストレスと栄養素の大量消費! ストレスに弱い現代人を作っている原因として、食生活において栄養バランス崩れに あるようです。 日本人の食生活は大きく様変わりし、食事の欧米化が進んだことで、動物性脂肪の摂取 が増大した一方、ストレス対策に欠かせないビタミンやミネラルなどの微量栄養素の摂取 が大幅に低下しています。 現代の微量栄養素の潜在欠乏を招いている大きな要因として、「若い女性の無理なダイ エット」と「インスタント食品の多食」を指摘されています。 和食、つまり家庭で作る「おふくろの味」というのは、ストレスを緩和するうえでも理 想的だったのです。 和食は、海の幸、山の幸がふんだんで、栄養素でいえば炭水化物、脂質、タンパク質、 ミネラル、ビタミンという五大栄養素、そして第六の栄養素といわれる食物繊維がすべて バランスよく揃っています。 ストレスで失われやすい大切な栄養素や、活性酸素の消去に役立つ抗酸化成分も多く含 まれているのです。日本が世界一の長寿国となった背景にも、無意識のうちに食材をたく さんとっていたことが大きく関係しているのではないでしょうか。 油の面から見ても、インスタント食品は保存のきくリノール酸を多く含む一方で、α- - 255 - リノレン酸系は含まれません。油はオメガ 6 系のリノール酸とオメガ 3 系のα-リノレン 酸の摂取バランスが重視されていて、健康を保つうえではリノール酸系「3」に対してα -リノレン酸系「1」の摂取比率が理想とされています。 α-リノレン酸系のDHAを積極的に補給すると、両者の摂取費比率が回腹してスト レスの緩和に役立つのです。 ストレスは、体の基本物質のタンパク質やコラーゲンをどんどん消耗します。そのぶん 食事でしっかり補っていかないと、細胞レベルから健康が損なわれてしまいます。 栄養欠乏の最大の原因は食生活にありますが、実はストレスそのものも、体内の栄養素 をどんどん減らします。 パントテン酸というビタミンの欠乏が体のストレス耐性を弱めるとの報告が有ります。 脂肪を分解してエネルギーを取り出したり、必要な脂質やアミノ酸などを体内で作り出 すのに必要な栄養素です。 パントテン酸が特に多く含まれている食品は、牛や豚のレバー、豆類で、米やパンにも 含まれている。 ビタミンやミネラルといった微量栄養素の消費が激しく、例えば、ネズミの実験でスト レスを与えると、体内のビタミンEとCが明らかに減ります。 これはストレスによって体の中で大量に生み出される活性酸素の排除に、ビタミンEと C、亜鉛などのミネラルがどんどん使われるためです。 ●ある大学の陸上部の学生の実験です。 ビタミンEの血中濃度を 1 年間にわたり測定をしました。 スポーツなどでハードな練習をしたとき 肉体的な強いストレスが、ビタミンEの消費 が多く血中濃度が低下したと考えられます。そして、もっと極端にビタミンEの血中濃度 が下がっていたのが、大きな競技大会のあった数日間で、競技というイベントで精神的な ストレスが倍増しているときのほうが、ビタミンEの消費が激しい、つまりストレスの影 響が大きいと理解できます。 活性酸素を排除に働くビタミンEやCの減少は、心身の健康を損なうような要因になり ます。ビタミンEを与えないで飼育したネズミにストレスを加えると、肝臓中の過酸化脂 質(活性酸素がつくり出す体のサビ)の量が明らかに増えます。 - 256 - 慢性的なストレスは副腎皮質ホルモンの分泌を悪くしますが、ビタミンCを十分に摂る ことで、ストレスで副腎皮質ホルモンの分泌が長く保たれるというのです。 ビタミンEとC、パントテン酸のほか、ストレス対策に欠かせない栄養素はたくさんあ ります。ストレスに負けない、こころと体を育むには、そうした微量栄養素(とくにマグ ネシウム)を日常の食生活でバランスよく確保していくことが何より大切となります。 ストレスは副腎皮質ホルモンの分泌を悪くしますが、ビタミン C を十分摂取するとス トレスの多い状態でも副腎皮質ホルモンの分泌が長く保たれることをアメリカの実験での 結果があります。 ちなみに、副腎は、体のストレス耐性を生み出すカナメの臓器で、ストレスがかかると、 ここから副腎皮質ホルモンなど数種のストレス対抗ホルモンが分泌され、ストレスと闘う 準備が整えられるのです。 ストレスをやわらげる食生活! ●ストレスを和らげる食生活にするために 日常の食生活のなかで微量栄養素を十分に確保するすることです。まず一日に食べる食 品の数を増やす必要があります。 ストレスの問題を根本から解決するには、なにより毎日の食生活で補給する栄養が最大 の武器になるのです。 肉、魚介類、野菜、穀物、きのこ類、豆類など、いろいろな種類の食品をまんべんなく 食べるようにすれば、無意識のうちに複数の微量栄養素が体内に取り込まれていきます。 一つの地域や産地にこだわらず、いろいろな土壌で収穫されたものを食べることも大切 です。というのも、収穫地や時期によって食物に含まれる微量栄養素の含有量の違ってき ます。 そして、海の幸を毎日の献立にふんだんに取り入れることも、微量栄養素を上手にとる コツです。 海藻類や貝類には海永のミネラルが濃縮されているし、丸ごと食べられる小魚もミネラ ルの優秀な捕給源となります。食生活とストレスの関係で栄養とは別に、食物の味わい方 - 257 - も食生活の中で、ストレスをやわらげる重要な要素となります。 ●年をと取るどうしても、味覚がにぶる 年を取るとどうしても,、味覚がにぶってききて、何を食べてもおいしくない、食欲が わかない、まずいものでもとりあえず食べている、という状況に陥りがちです。 ところが、いろいろ工夫しておいしく食べられるようにする、おいしいと感じるように するだけで、免疫力が向上します。 ストレスを和らげる食生活は、まずいと思いながら食べていると、それがストレスとな って免疫機能が低下してしまいます。毎日の食生活が重要かがお分かりかと思います。仕 事のあいまに立ち食いソバをかき込むのと、静かなレストランで広い庭でも眺めながらゆ っくり食事をとるのでは、同じものを食べてもまったく印象が違ってくることでしょう。 一人で食べるより、気の合う友人たちと一緒に食べたほうが食が進みますし、充実した 時間が過ごせます。 ●ちょっとした工夫で食生活はより豊かなものに 食生活をより豊かなものにすることで、その豊かな食生活感が、ストレスをやわらげる 一つの有効なことを知ってください。 ストレスは、体の基本物質でタンパク質やコラーゲンをどんどん消耗します。そのぶん 食事でしっかり補っていかないと、細胞レベルから健康が損なわれてしまいます。 ちなみに、このようにたった一つの栄養素が欠乏するだけでも、ストレスに対する抵抗 力が失われ、生命を落とす場合もあるのです。 ●健康のための食材キーワード「マゴワヤサシイ」で、ストレスを和らげる食生活 マ :大豆、納豆などの豆類 (良質のタンパク質やビタミンB群、食物繊維、マグネシウム、亜鉛などが豊富) ゴ :ごま、ナッツなどの趣子類 (マグネシウム、亜鉛などのほか、ゴマの背連などの抗酸化栄養素が豊富) - 258 - ワ :ワカメ、昆布などの海藻類 (ビタミンB群や、マグネシウムをはじめ とするミネラルが多く含まれている) ヤ :緑黄色野菜、淡色野菜 (ベーターカロチン、各種ビタミンを豊富 に含み、免疫システムを活性化させる) サ :魚介とくに小型の青魚類 (オメガ3系脂肪酸やビタミンB群、亜鉛 やタウリンが豊富) シ :シイタケなど、きのこ類 (食物繊維やカルシウム、免疫力を高める 多糖体が含まれる) イ :サツマイモ、里イモなど (食物繊維のほかビタミンCカルシウム、ムチンなどが豊富) マゴワヤサシイはあくまでも基本中の基本です。 食材選びの目安に参考にしてみてください! ミネラルの働きが生命力の要! 栄養学では、必須ミネラルという呼名をつくり、いくつかの限定されたミネラルのみの 必要性を強調していますが、微量物質の分析技術が進歩するなか、その他の微量ミネラル や超微量ミネラルの必要性が徐々に明らかにされつつあります。人体に必要なミネラルの 種類とその量については、まだ明確な回答が得られていません。 人間の身体の構成成分は、有機物が量的には圧倒的に多いため、有機物に目がいきがち ですが、生命誕生の過程から、身体の中に地球の成分、つまりミネラル(無機物)が必要 なのです。しかし、ミネラルといってもその種類は豊富です。 元素普存説というものを 1932 年に提唱した方がいました。地球上の岩石や鉱物1片中 には周期表中のすべての元素が含まれているとする仮説です。岩石中に、ある元素が含ま れていないというのは、それは分析ができないだけで、将来分析技術が進歩すれば、すべ - 259 - ての元素が岩石1個体中に検出されるはずとの考えです。 ●命の誕生とミネラル 岩石中にすべての元素が含まれているとすれば、その岩石の風化・溶解成分が堆積した 堆積物、またそれらが溶解している海水や湖沼水などの天然水にもすべての元素が含まれ ているはず。陸上植物は光合成をおこなって、二酸化炭素と水から有機物を生産し、その 生命活動に必要な水と養分は根を通じて土壌から吸収しています。 また、動物は植物を摂取し、水を飲んで生活しています。植物の成長や植物に依存した 動物の食物連鎖を考えると、植物および動物にもすべての元素は含まれているはず。 植物の代表として桜の花びらと茶葉、動物の代表として牛の肝臓と、人の頭髪の元素濃 度分析を実際に行われ、どの試料においても全元素の 70 %近くの分析に成功しています。 そして、残り 30 %に関しても将来分析技術が進歩すれば、その存在が明らかになるだ ろうといわれています。 ミネラル(無機物)の生体での必要性について、わかっていることはたくさんあります。 人間を含めた生物の二大特徴は自己複製と物質交代です。この2つの特徴を備えていれ ば生物とみなされます。特に物質交代に重要な役割を果たしています。 ●ミネラル不足は酵素不足 物質交代に中心的な役割を果たすのが、酵素です。生命維持に欠くことのできない、酸 化、還元、加水分解などの反応は酵素によって行われ、この酵素の活性が低下すると、同 じ化学反応を起こすのに 109 ~ 1020 倍も反応時間がかかるといいます。 つまり、酵素活性があれば1分で完了してしまう反応が、その酵素が不活化してしまう と最低でも10億分(約 1900 年)かかる、つまりその反応は起こらないと同じになって しまうのです。そして、その活性に金属(ミネラル)を必要とする酵素(金属酵素と呼ば れます)が半数以上です。 ミネラルの存在が生命にとって重要かがおわかりですか。生命維持に不可欠な、ヘモグ ロビンなどの酸素運搬、神経伝達、筋肉の収縮、チトクロームなどの電子伝達システムな どにもミネラルは重要な役割を果たしています。これも、無機物あっての有機物という、 - 260 - 生命誕生から見ると、生命維持の重要なポイントでミネラル(無機物)が利用されている のも当たり前といえるかも知れません。ミネラルは生命力の要なのです。 ●人間に必要なミネラル補給源 生物の営みに欠かせないミネラルを、人間はどこから取っているのでしょう? ミネラ ルは地球、つまり石や土にあります。しかし、残念ながら人間には、石や土を食べる能力 も与えられていません。 それらの能力を持っているのは植物です。植物は土に根を張り、根毛からの酸と土中の 微生物の力を借りながら、土を分解し、必要なミネラル分を根から吸収して成長します。 そして、それを食べることにより、植物に含まれるミネラル分を吸収し、自分たちのもの としています。 また、石や土の隙間を流れ出てくる水の中にも種々のミネラルが溶け出し、それを飲料 水にすれば、ミネラルが補給できます。日本人は、塩から補給しているミネラルも無視で きません。日本食は塩を多く利用することを特徴としていて、塩をそのまま利用したり、 味噌や醤油といった形で利用しています。 ●野菜などの現状 日本は農地が狭い上に、あまり肥沃な土壌ではありません。近代化が進むにつれ、単位 面積あたりの収穫量を追及することにより質は二の次とされてきました。農地に多くの化 学肥料を使い、農薬の使用も収穫量の追及にはやむを得ませんでした。 そこで育つ植物に含まれるミネラルは急速に減少しているのです。化学肥料は土壌に含 まれるミネラル成分を追い出し、土壌中の虫類がいなくなってしまうことと同時に、土壌 中の微生物相を変えてしまいました。この微生物相は、植物が根から土壌中のミネラル分 を吸収する際に欠かせない存在です。 農薬の使用により、土壌はますます悪化していき、有害成分が農作物に吸収されること になるのです。同じく収穫量の追及のため、促成栽培や二毛作も行われました。植物が根 から十分なミネラルを吸収するには、十分な時間が必要です。人間の都合で促成栽培を行 い、収穫を早くしてしまうと、ミネラル分が不十分な植物が収穫されてしまいます。 - 261 - 植物を育てると土壌は一時的にやせてしまいます。それを回復させるためは土壌を十 分に休ませる必要があります。人間の都合で、二毛作を行うと、やせた土壌を酷使するこ とになり、当然そこで育つ植物のミネラル分は不足することになります。 加工食品の保存性をよくするため、ポリリン酸やフィチン酸などの食品添加物が加えら れますが、これらはミネラルと強く結合する性質があるため、口に入ると食材に含まれる ミネラルとともに、体内のミネラルとも結合し、添加物とともに体外に排泄されてしまう 可能性もあるようです。 また、調理の際のミネラル消失も無視はできません。食材に含まれるミネラル分が、水 や熱を使った調理により、流失してしまうのです。 活性酸素とストレス! 活性酸素は、私たちが空気中から吸い込んだ酸素が体内で電子を一個失い不安定な状 態になったものです。酸素というのは、モノを錆びつかせる強い酸化カを持っています。 硬い鉄でさえボロボロにする姿を想像できるでしょう。その酸化カがさらに2倍、3倍に なるのが活性酸素です。 私たちは、酸素を吸わないと生き ることができません。体内ではつね に活性酸素が発生しているわけです。 ストレスで病気が発生する背景には、 活性酸素の影響が大きいことがいわ れています。 本来なら体内で活性酸素が生じて も、抗酸化酵素の働きですみやかに 消去されますが、ストレス状況下にあると、抗酸化酵素の主成分であるタンパク質とそれ を補助する微量栄養素がどんどん消費されて、抗酸化酵素の能カが低下します。その結果、 活性酸素が我がもの顔で、老化や病気の発生原因となるのです。 体内で酸素消費が最も多い臓器はどこかというと、脳ではなく、肝臓です。吸収した酸 素の 50 %を肝臓が、脳は 20 %、腎臓は 15 %、その他 15 %といった割合で消費している - 262 - のです。したがって、肝臓での活性酸素の発生が最も多いことになります。 体内の免疫システムは、この活性酸素の強カな酸化力を利用しています。体内侵入して 来た病原菌を排除する免疫細胞の一部が、活性酸素を武器として利用するのです。これは、 活性酸素の善玉としての顔です。 ところが、この活性酸素が必要以上に過剰発生すると、まるでジキルとハイドのうに、 悪玉に変身してしまいます。活性酸素は、免疫細胞や正常な細胞まで、細菌もろとも攻撃 して傷つけ、暴走化して押さえが効かなくなるのです。この活性酸素を過剰に発生させる 原因が、偏った食生活とストレスです。 過剰に発生した活性酸素は、細胞膜を突き破り、遺伝子(DNA)が格納されている細 胞核まで攻撃して遺伝子を変異させてしまいます。細胞膜は不飽和脂肪酸という脂質で構 成されていて、異物から核を守る細胞のガードマンといわれています。活性酸素はその不 飽和脂肪酸を過酸化脂質に変え、ガードマンとしての機能を失わせます。そして細胞核ま で簡単に侵入し、遺伝子に影響を与えてしまうのです。 ●抗酸化酵素ポリフェノールで活性酸素対策 赤ワインに抗酸化作用で、赤ワインが動脈硬化を予防すると話題にもなりました。赤ワ インに含まれるのはタンニンというポリフェノールで、同じものが緑茶や柿、バナナなど に多く含まれています。 赤ワインの抗酸化物質の一つポリフェノールは、色が鮮やかな野菜や果物にたっぷり含 れています。含有量の多いものを積極的にとっていけば、活性酸素の酸化作用を抑えるこ とができます。 ポリフェノールといえば、ブルーべリーなどに含まれるアントシアニン、豆腐や納豆な どの大豆製品に含まれるイソフラボン、ココアやチョコレートなどに含まれるカカオマス ポリフェノール、春菊やほうれん草などに含まれるケルセチンなどです。 柑橘系の果物やキャベツなどに多く含まれるビタミンC、にんじんや小松菜、かぼちゃ などに多く含まれるβ-カロテンも、代表的な抗酸化物質なので、毎日の食卓に多く取り 人れるよう心がけたいものです。バランスよく抗酸化物質が多く含まれた、食品を意識的 にとることが大切です。 - 263 - ●老化とは、どういことでしょうか。 歳をとるにつれて身体の機能が衰えるこですが、この原因について 、活性酸素によっ て身体の細胞や組織が酸化して変質するためです。体内で活性酸素は次のような影響を及 ぼします。遺伝子(DNA)を形成する核酸を酸化させて変質させ、がん細胞などを発生 させ細胞膜に含まれる不飽和脂肪酸を酸化させて、過酸化脂質を作り、細胞や組織を破壊 をする老化色素といわれるリボフスチンを作ります。 この強力な活性酸素を迎え撃つべく、体内で作られるスカベンジャーなどが準備されて いますが、年齢とともに減ってしまいます。自然界は多くの植物の中に抗酸化成分を持つ ものがあります。 活性酸素と結びついて、害の少ない物質に変化させてくれるのです。 代表的なものに、 SOD(スーパーオキシドディスムターゼ)、カタラーゼ、グルタチオンなどがあります。 うまく食生活を工夫して活性酸素をなだめる食材を工夫しましょう。 活性酸素が体内に増えると、ガンが生じる危険性が高まるほか、血管の老化(動脈硬化) も深刻です。血液中の LDL コレステロールが酸化され、動脈壁に蓄積しやすくなります。 日本人の死原因の第1位がガンで、第2位と第3位が動脈硬化に基づく、心臓と脳の血 管障害であることを考えると、ストレスはまさに生命に関わる危険因子といえます。 ●あなたは生命の切符をあと何枚持っていますか? アメリカのあるお医者さんが、9才までに病気になった子供達の肝臓での遺伝子のテロ メア(寿命を決める染色体)の長さを調べたところ、 『45 ~ 57 才までしか生きられない』 という結果が出たというので話題になったことがあります。 人間の体を構成しているのが、約 60 兆個の細胞であることはすでにご存知のとうりで すが、その細胞の一つひとつに細胞の核があり、その中に 23 対の染色体がそこに折たた まれているのが、生命の設計図といわれる DNA(遺伝子)です。そしてそれぞれの染色 体の端には、テロメアという回数券のようなものがついています。 これは別名「生命の切符」とも呼ばれて、年々一枚ずつ、ちぎられていきます。 通常ならば、この回数券は、125.6 年あるとされています。つまり人間は 125.6 歳まで は生きられると生命の設計図にプログラミングされている、というわけです。 - 264 - 栄養不足や生活環境の厳し生活環境ならば、人間の寿命は短くなることでしょう。世界 一の長寿国の日本でさえ、男性 78 歳と女性 82 歳、生命の設計図には 34 年以上もたらな いのです。間違った生活習慣やストレスが原因ではないでしょうか。 病気とはいえ、9才の育ち盛りのお子さんの寿命が 57 才までしかない! これは生命 の回数券、つまりテロメアの切れるスピードが一般の人よりずっと早いということを示し ているわけです。その後の調査の結果、その大きな原因は、体内で過剰に発生する活性酸 素の害を防げない間違った食生活と微量栄養素の不足にある、ということが突き止められ たということです。 食品の栄養素の活用! 生活の偏りにより食生活のみだれが指摘されています。普段の食事から、必要不可欠な 栄養素などを含む食品を選びましょう。ストレスで失われがちな栄養素を日頃から、スト レスに負けないために補給をお忘れなく。 ストレスがかかると、体のストレス耐性を生み出すカナメの臓器である腎臓から、副腎 皮質ホルモンなど数種のストレス対抗ホルモンが分泌され、ストレスと闘う準備が整えら れます。ちなみに、たった一つの栄養素が欠乏するだけでも、ストレスに対する抵抗力に 失われ、生命を落とす場合もあるのです。 ●微量ミネラルの重要性 亜鉛やカルシウム以外の微量ミネラルも欠乏すれば、ビタミンや酵素が働けなくなり、 細胞の活動ができなくなるのです。細胞の活動が活発であればこそ元気でいられ、老化を 遅らせることが可能になるのです。 ●ミネラル不足の現実 私たちに必要なミネラルの主な供給源は、植物(野菜など)、水、塩ですが、一昔前と 比べ、現代のミネラル状況はどうでしょう。野菜などは、化学肥料、農薬使用(昭和30 - 265 - 年頃より)によって土壌中の微生物相を変えてしまい、ミネラル分が不十分な野菜などが 収穫されています。また、加工食品・食品添加物の氾濫、水や熱を使った調理により、食 材のミネラル分が流出しています。 水は、水質汚染や河川、湖の水の浄水過程でミネラルが取り除かれています。塩は、天 日干しから、生産性を重視した製造方法の変更によりミネラルが激減しています。日常生 活においてミネラルやビタミンの補給を心配しなくてはならないでしょう。 ●ファイトケミカルをご存知ですか。 植物に含まれるビタミンやミネラルとは異なる機能性成分のことで、ファイトはギリシ ャ語で植物を意味しています。普段から、病気や老化の原因といわれる活性酸素の攻撃に さらられダメージを受けています。その攻撃から体を守ってくれるのが抗酸化物質で、と りわけ野菜に多く含まれているビタミンAやC・Eミネラルが効果を発揮します。 しかし、それ以上に優れた抗酸化パワーを持つことが分かってきました、第7の栄養素 といわれる機能性成分が所謂ファイトケミカル なのです。ファイトケミカルは植物の色素、香 り、辛味、苦味などに多く含まれています。 にんじんに多く含まれるβ・カロテン、トマ トのリコピン、たまねぎのケルセチン、ぶどう のアントシアニン、大豆のイソフラボン、ゴマ のゴマリグナン、お茶のカテキンなどもその仲 間です。微量栄養素であるビタミンA、C、E を組み合わせるとさらにパワーを発揮といわれ ています。多彩な野菜や果物からファイトケミ カルを取るように工夫することで、抗酸化をパワーはますますアップさせましょう。 【大豆イソフラボン】 大豆、大豆製品等に含まれて、体内で女性ホルモンに同じようなはたらきをするため、 女性のホルモンバランスを整える働きをする栄養素です。 - 266 - ※ 1 日摂取目安は 50 ~ 70mg ですが、豆腐、納豆 1 パック(50g)、 きな粉大さじ3杯、豆乳 1 カップのいずれかひとつを摂取すれば補給できます。 【ビタミン Bl】 豚肉、うなぎ、レバー、牡蠣、ごま、のり、胚芽米などに含まれ、B6,B12 とともに神 経ビタミンともいわれ、精神を安定させるセロトニン代謝に関与している栄養素です。 【ビタミン B12】 あさり、牡蠣、レバー、納豆などに含まれ、自律神経のはたらきを維持をする栄養素で す。 【ナイアシン】 ホルモン合成や神経の健康維持に関与してる栄養素です。 (たらこ、カツオ、鶏ささ見、ブリ、アジなど) 【ビタミンС】 抗ストレス作用があります。 ほうれん草、ブロッコリー、ピーマン、キウーイ、オレンジなどに含まれる栄養素で、 ストレスを感じると、ストレスに対抗するため副腎皮質ホルモンの 分泌が増加し、エネ ルギー源の代謝が促進されます。 ビタミンСは、副腎皮質ホルモンの原料となります。体内でコラーゲンを作るために不 可欠です。また活性酸素の害を防ぐ栄養素としも有名です。 【ビタミン D】 - 267 - レバー、カツオ、イワシなどにふくまれ、カルシウムの吸収を助け骨への沈着をよくす る栄養素です。 【ビタミン E】 アーモンド、かぼちや、アボガドなどに含まれ、女性ホルモンのバランスを整えます。 また、血行促進作用がある栄養素です。 【カルシウム】 牛乳、小松菜、小魚などにふくまれる脳細胞の興奮を抑制し、不眠を解消しする栄養素 です。 【ギャバ】 アミノ酸の一種です。 お漬物(浅漬けよりも、ぬか漬けやキムチ)や納豆・胚芽玄米などに含まれる栄養素で す。ギャバはその刺激が伝わらないように神経細胞の興奮を抑える、抑制性の神経伝達物 質です。 精神安定剤などの不安を抑えてくれる ギャバの働きです。発酵食品に含まれる「乳酸 菌」は、「グルタミン酸」を「ギャバ」に変えてくれる酵素をもっています。 【メラトニン】 睡眠を誘発するホルモンです。 (とうもろこし、玄米、大根、生姜、キャベツ、バナナなどがよい) 体内時計を介して睡眠と覚醒の周期を整え、睡眠の質を高める役割をしています。メラ トニンの分泌量は子供の頃が最も高く、20 歳以降になると急激に低下します。年を取る と共に寝つきが悪くなるのもそのためです。 - 268 - 【L -トリプトファン】 体内でセロトニン(睡眠誘発物質メラトニンの前駆体)に変化するアミノ酸で、人間が 体内で合成できない必須アミノ酸の一種です。牛乳や鳥肉に多く含まれていて。昔から「寝 る前に牛乳を飲むとよく眠れる」と言うのは、トリプトファンを摂取することでメラトニ ンの分泌が活発になることを経験的に感じていたのでしょう。 (牛肉、鶏肉、魚介類、卵、牛乳、大豆) ※タ食時の積極的な接取が効果的です。 【アセチルコリン】 副交感神経において刺激を伝達する物質です。消化管の運動を促進させるはたらきがあ ります。 (トマト、ナス、里芋、マツタケ、そば、ローヤルゼリーなどがよい) 健康の鍵を握る酵素! 酵素は体の中でつくられるタンパク質の一種で、触媒として傾き、消化や呼吸、代謝な ど、生体内で起こる膨大な数の反応を引き起こす大切な働きをしています。食品に含まれ る酵素が不足しているようです。 食品の中には自己消化のための酵素が含まれています。しかし加熱調理によって大部分 が失われてしまいます。そのために、酵素不足の体になっているのです。健康を考える上 で欠かせない存在なのです。 たとえば、食べ物が消化されるには、唾液や胃液、膵液に含まれるアミラーゼや小腸の 上皮から分泌されるマルターゼなどの酵素が働いてデンプンをブドウ糖に変えてくれま す。脂肪やタンパク質を消化するには、リパーゼやペプシンなどの酵素が働きます。 酵素はエネルギーの代謝にも必要不可欠な役割をしていますし、神経や内臓の働きを支 え、体温維持や代謝の調節など、健全で健康な生命を保つために欠かすことができません。 エネルギーの代謝のために必要な酵素までも消化酵素として使用なければいけない現代 - 269 - 人の生活です。 遺伝子の発現にも酵素が関係し、健康な睡眠が円滑に行えるのも、脳内の酵素の作用に よるのです。 人間の体の中には何百種類もの酵素が存在し、調和のとれた健康な生命活動が保たれて いるのです。 新陳代謝が正常に行われるのはもちろん、体内の解毒作用や免疫システムも正常に働く ことで、病気を防ぐことができます。 酵素のタンパク質と結びついて複雑に働きを引き起こす補酵素も、酵素の働きには重要 なものです。補酵素やミネラルも酵素の働きに大切です。まさに健康維持を支える酵素の 裏方のような働きは、無くてはならない存在です。 ●日常生活の中でも、酵素が利用されているもの多くあります ▽洗剤や歯みがき粉にも、衣類の汚れや歯のプラーク(歯垢)を分解する酵素が含まれた ものもある。これらの酵素はいろいろな微生物のカでつくられることが多い。 ▽日本酒やパンを作るときのアルコール発酵やチーズの熟成、ヨーグルトの乳酸発酵など にも、酵素や乳酸菌など微生物の酵素が働きます。 ▽健康診断の際の血液や尿の分析にも、多くの酵素が利用されています。 ●伝統的な発酵食品が長寿をかなえる 沖縄やロシアのコーカサス、中国の貴陽など、100 才以上の高齢者が多い地域では、昔 から発酵食品を食べる独自の食文化が発展し、それが長寿や健康を支えてきたといわれて います。 日本でも、大豆を納豆菌で発酵させた納豆。ナットウキナーゼという酵素には血栓を溶 かす働きがあり、アンジオテンシン変換限害酵素には高血圧を下げる働きがあります。 このほか、脂肪分解酵素や、タンパク質・デンプン・糖の分解酵素など納豆は酵素の宝庫 です。 また大豆を発酵させたみそも酵素たっぷりの食品。酵素は加熱すると失われるので、み そ汁を作るときは火を止めてからみそを溶き入れるのがコツです。 - 270 - チーズは牛乳を乳酸菌の作用で熟成発酵させたもの。 乳酸菌から分泌されるプロテアーゼ酵素がペプチドという成分をつくり出し、 肝機能 の強化や血液中のコレステロール低下などに働きます。 ヨーグルトはビフィズス菌などの善玉菌が多くの酵素を生み出すほか、ほかの善玉菌を ふやして悪玉菌を押え、便秘の解消と下痢の緩和の両方に役立ちます。 昔から各地で多種多様の漬物が作られてきましたが、これも伝統的な発酵食品で、漬け 物は乳酸菌や酵素をたっぷり含んでいます。 ●植物発酵食品 これらは米胚芽、小麦胚芽、果実、野菜、野草、海藻などの植物やそのエキスを発酵さ せた飲料、およぴぺ-スト、顆粒、粉末にした発酵食品の一種です。発酵に用いられるの は麹菌、酵母、乳酸菌、納豆菌など、伝統的な発酵食品(味噌、酒、チーズなど)に用い られてきた有用な徴生物です。 酵素を補給して栄養素を整える! 酵素は人間の生命活動の源になる存在ですが、その重要性はこれまで、あまり注目され てきませんでした。 酵素はタンパク質を主成分として生成されるので、タンパク質をとっていれば必要なだ け体内でつくられる、と考えられていたのです。 ところが最近の研究から一生のうちに体内でつくりだされる酵素の量は遺伝子によって 決まっていることがわかってきました。この一定量の酵素を「潜在酵素」と呼んでいます。 酵素の摂取で健康を増進し、病気の治療を行う酵素栄養学のエドワード・ハウエル博士 は著書の中で「潜在酵素」を早く使い切るか、温存しながら大事に使うかによって健康維 持が大きく左右されるばかりか、寿命まで関係してる。と言っています。 潜在酵素には食べ物の消化や分解を行う消化酵素と分解した栄養素が効率よく働けるよ うにする代謝酵素があります。現代人は消化酵素を使いすぎて慢性的な潜在酵素不足にな り代謝酵素までも消化酵素として使わなければならない状況に有るというのです。 - 271 - 食品に含まれる酵素を利用すれば潜在酵素の減少をくい止められると指摘しています。 肉料理などのタンパク質や、酸化した油を使用した加工食品、インスタント食品、白米 や白砂糖などの精製食品や食品添加物などを、消化酵素を大量に必要とする食品を取りす ぎるためです。 酵素が不足するとさまざまな健康障害が生じます。たんぱく質が酵素によって分解され ないと、窒素残留物となって腸内に残り腸に腐敗菌を増加させるなど、大腸炎や肝障害な どにつながる大きな原因となります。 潜在酵素の生産には限りがあり消化に多量の酵素が使われると代謝機能が低下するとい った弊害も生じます。酵素不足を解消するには生の食品に含まれる酵素や発酵食品がお勧 めです。 ●酵素の働きとミネラルの関係 細胞はアミノ酸情報で酵素を作っていきます。酵素は我々の体温に合わせて1秒間に1, 000~9,000回も働いているというとんでもない世界なのです。この酵素の外側に おいてはNa、K、Mg、Mn、Caが、種々の酵素の活性には必要です。 酵素の中には金属元素をつまりミネラルそのまま分子内部に含みます、ミネラルがなけ れば働かない金属酵素というものがあります。1/3の酵素が金属酵素である事は解って います。残りの2/3については消化酵素のペプシンとかトリプシンなど、ミネラルの必 要ないものもありますが、酵素の働き(健康)には、ミネラルという栄養素が大切なキー ワードになっているようです。 ●食品の酵素を残さずに もやし、カイワレ大根、そばの芽、ブロッコリーの芽などのスプラウト(芽出し野菜) には、発芽という生命の活動が躍動する原動力に、酵素も最大限に関与しています。 大根のジアスターゼは有名です。ジアスターゼには、米やパンなどのデンプン質のほか、 脂筋やタンパク質も分解する酵素も含まれています。焼き魚に大根を添えるのも、タンパ ク質を分解する働きが知れていたためです。 - 272 - ●野菜や果物の皮ごとすりおろすのがコツ ジアスターゼは大根の皮の付近に多く、おろすことによって消化酵素が細胞の外に出て 活発に働くので、皮ごとすりおろすのがよいようです。 タマネギをスライスすると、С・Sリアーゼという酵素が出てきますが、その酵素とタ マネギの成分が反応してできる物質には、血液をサラサラにして、動脈硬化など生活習慣 病を予防する作用があります。 加熱したり、水にさらしたりすると酵索は失われやすく、スライスし生で食べましょう。 乳酸菌と共存共栄が健康を左右! 乳酸菌やビフィズズ菌を代表とする善玉菌と、人体に悪い影響を与えてしまう悪玉菌と がいます。腸内細菌は善玉菌(乳酸菌)が増えれば悪玉菌が減り、悪玉菌が増えれば善玉 菌が減っていくという勢力関係に特徴があります。私たちのおなかの中(腸内)には、3 00種以上100兆個もの腸内細菌が存在しています。 ●善玉菌である乳酸菌は、 ビタミンを合成したり、消化できない繊維質を分 解し消化を助けたり、感染を防止してくれたりする からです。また、小腸に 70 %も集中しているといわれ、免疫細胞を鍛え免疫力を向上さ せたりもします。 また免疫力が上がることで感染症と闘う力がつき、乳酸や酢酸を作り出すために腸内の PH を下げる働きもあり、カルシウムの吸収にも役立ちます。ビフィズス菌が病原性大腸 菌など外部からの病原菌の増殖を抑えることも確認されています。 ●乳酸菌の一番の働きは、 たくさんの乳酸菌の働きの中でも、最大の働きと言えば、活性酸素との関係も見逃せま - 273 - せん。「消去酵素」を作り、活性酸素の害を除く働きのことです。いま、酵素(エンザイ ム)の存在が注目を浴びています。 酵素はタンパク質を元に構成され、生体 で起こる化学反応(性化学反応)の触媒の 役割を果たしています。人間の体で働てい る酵素は、5000種類以上ですが、その うち腸内細菌がつくりだしているものが約 3000種類あるといわれています。 この酵素を活性させるものに、多くのミ ネラルが関係しているといわれます。 ●植物性乳酸菌 乳酸菌のなかに胃酸のなかで生き抜き、腸の奥まで生きたまま届くことができるものが あります。乳酸菌ならではのプロパイオテイクス効果(腸内細菌のバランスを改善し、体 の防御機能を高めること)を十分に得るには、乳酸菌が生きて腸まで届くことが必須条件 です。 植物性乳酸菌は、酸やアルカリにも強く、動物性乳酸菌よりも過酷な環境でもある程度 生息できる乳酸菌であると言われています。乳酸菌が腸に届くと、腸内に住みつく「善玉 菌」であるビフイズス菌を増やして、大腸菌などの悪玉菌の働きを抑えます。 腸内で善玉菌が優勢になると、腸の機能は高まり、消化吸収が促進され、結果的に便秘 や下痢などを防ぐのです。悪玉菌が優勢だと、腸の働きが弱まってお通じが悪くなるだけ でなく、悪玉菌が発生させる有害物質、たとえば硫化水素、アンモニア、インドール、フ ェノールなどが腸内にどんどん発生してしまいます(発ガン物質なども!)。 腸内に悪玉菌が多いと、このような有害物質が絶えず腸内に発生し、体内へ吸収されて しまいます。その結果、病気の原因や、老化が早まったりしてしまいます。 このように、身体には、いてほしくない悪玉菌なのですが、年齢や、食べもの、ストレ スの多い生活習慣のせいで、私たちの腸内には悪玉菌が増えてしまいがちです。特に、肉 類、油物、などに偏った食生活には注意が必要です。 - 274 - ●日本人の食習慣と植物性乳酸菌 日本人の場合、消化に時間のかかる繊維質の多い食物を食べてきたため、腸は、欧米人 よりも長いといわれています。そのため、発酵 食品においても漬け物など植物性のものを好ん で食べてきました。つまり、乳酸菌についても、 植物性の乳酸菌を摂取してきたことになりま す。 植物性乳酸菌は苛酷な環境でも生き抜くこと のできる強い菌です。昔から日本人は自らの体 にあった乳酸菌をうまく摂り入れ、腸内環境を 守ってきたのです。 ヨーグルトや発酵食品、食物繊維、オリゴ糖を意識して取り入れることで、善玉菌に良 い食生活お勧めします。乳酸菌といえばヨーグルトなどの乳製品を思い浮かべますが、味 噌・醤油・酒などの風味を増す「乳酸発酵」の進んだ食べ物にも多く含まれています。 漬物やキムチなども乳酸菌を摂るには効果的です。日本人が食べなれてきた植物性乳酸菌 を取りたいものです。 ●花粉症にも乳酸菌 食生活の乱れやストレスの影響によって免疫細胞のバランスがくずれると、花粉と反応 する物質(IgE 抗体)が作られ、くしゃみ、鼻みず、鼻づまりなどのアレルギー症状がお こります。免疫細胞のバランスを改善すれば、苦しいアレルギーの症状を軽減することが 可能になるのである。 乳酸菌にはいくつかの種類があり、さらにその特徴によって菌株まで細かく分類されて います。その中でも「ラクトバチルス・アシドフィルス NG>L-92 乳酸菌」という乳酸菌 は、免疫バランスを改善することによってアレルギー症状を改善することを証明する試験 が行われました。その試験では、花粉症の人に対するスギ花粉の影響を「L-92 乳酸菌」 摂取前後で比べたところ、眼のかゆみと鼻のかゆみが L-92 乳酸菌の摂取によって軽減さ れることが確認されました。 - 275 - - 276 - あとがき これまで多くの頭痛研究者から、片頭痛の大半は生活習慣病である糖尿病・高血圧症・ 高脂血症と同様に”多因子遺伝疾患”であると指摘されてきました。 にも係わらず、頭痛専門医は、こうした観点から「片頭痛治療」を考えることなく、相 変わらず「国際頭痛分類」という診断基準に照らし合わせて「片頭痛の診断」を下し、 「慢 性頭痛診療ガイドライン」に従って、もっぱら「薬物療法」のみに終始されます。 医療・医学の原点から遠ざかり毎日の治療特に対症療法に終始し、魂をどこかに置き忘 れた製薬メーカーの走狗のような方々が頭痛研究者に多く、この点が最大の問題です。 頭痛に限らず、ほとんどの医師が対症療法に走るか、病名あてクイズのようなパターン 医療しか行えない脆弱な体質になってしまっっている現状は極めて嘆かわしい次第です。 片頭痛の領域でも然りです。トリプタン製剤も「あくまでも鎮痛を目的」とした”対症 療法にすぎません。また予防薬にしても、片頭痛発作そのものを無くしてしまう程の効果 はなく、あくまでも「頭痛の回数・程度」を減少させるだけの対症療法にすぎません。 片頭痛が、多因子遺伝疾患であり、ミトコンドリアの機能障害による、いわば生活習慣 病であるとの立場から、その”環境因子”としての食事の関与を取り上げたものです。 本書の全体像を把握された上で、片頭痛改善のために何が必要なのかを把握して下さい。 頭痛専門医が「片頭痛を考える」場面では、あくまでも「症状」からのみ判断されます。 要するに、上っ面のみを眺め、その根底に何があるのかを全く想像すらされない方々です。 こうした観点からは、到底、片頭痛が改善されるはずはないことは自明の理です。 今回は、こうした立場から「片頭痛の生活習慣の改善」として、「食事療法編」を提示 させて頂きました。 平成 26 年 9 月 13 日 和歌山県田辺市芳養松原2丁目 15 番 17 号 成和脳神経内科医院 田草川 良彦 - 277 - 引用文献 1)間中信也:片頭痛は 15 億年前の因縁?.頭痛大学 1996 http://homepage2.nifty.com/uoh/kyouyou/10in-nen.htm#mitochondria 2)間中信也:片頭痛のもとは、8億年前には生まれていた!?.頭痛大学.1996 http://homepage2.nifty.com/uoh/kyouyou/10in-nen.htm#mitochondria 3)古和久典、竹島多賀夫、中島健二:片頭痛に関連する神経伝達物質遺伝子、頭痛診療ハ ンドブック(鈴木則宏編集)中外医学社、東京、2009、95-113 4)竹島多賀夫,井尻珠美,福原葉子,楠見公義,古和久典,足立芳樹,中島健二.片頭 痛の遺伝子研究.神経研究の進歩 46:351-359,2002. 5)竹島多賀夫,荒木治子,楠見公義,福原葉子,古和久典,足立芳樹,中島健二.頭痛を めぐる最近の話題:2 片頭痛の分子生物学と遺伝子研究. 脳神経 56:645-654,2004 6)竹島多賀夫, 楠見公義, 福原葉子, 古和久典, 足立芳樹, 中島健二. 家族性頭痛 Update. 臨 床神経学 2004;44(11):944-947. 7)丸川浩子、下村登規夫、中野俊也、ほか:片頭痛患者及び緊張型頭痛患者における唾液 中神経伝達物質の検討.自律神経、31:668,1994. 8)下村登規夫、北野あゆみ、丸川浩子、ほか:片頭痛患者および緊張型頭痛患者における 末梢血単核球 c-fos mRNA の検討ならびに片頭痛におけるミトコンドリア DNA 異常. 頭 痛研究会会誌、22:111.1995. 9)竹島多賀夫,中島健二.片頭痛の分子生物学.日本内科学会雑誌 90:648-653,2001. 10)下村登規夫、小谷和彦、村上文代:片頭痛とミトコンドリア.神経研究の進歩:46(3) 391-396. 2002 11)下村登規夫、村上文代、猪川嗣朗:片頭痛の病態と発症機序. 神経内科 45:95-101,1996 12)下村登規夫:頭痛患者の生活指導の基本と応用ー DASCH diet を中心に コツと落とし穴,坂井文彦編 中山書店,東京, 頭痛診療の p 164、2003 13)下村登規夫、村上文代、小谷和彦、猪川嗣朗:片頭痛治療のトピックス。医薬ジャー ナル 35(11):2876-2880, 1999 14)下村登規夫, 村上文代, 小谷和彦ほか:新しい治療概念「分子治療学(Molecule-based - 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